- 1 :名無しさん :2017/12/18(月) 19:25:09
- 9,10月に、書き逃げにいくつか投下した者です。
私も尚六の初夜話を書きたいなあと色々妄想した結果、ちょっと長くなりそうなので別スレ立てます。まだなんとなくの流れしか決まっていないんですが、とりあえず書き始めたので投下します。 最初はごく普通の主従関係で、互いにそういう意識もしていない状態です。
- 224 :「確信」5 :2019/08/18(日) 18:48:11
- 「––––風漢、夕餉は?何か注文するかい?」
「いや、夕餉は済ませた」 「酒は?」 「いらん」 「……不機嫌そうだね。何かあった?」 「何もないが」 風漢の口調はひどく素っ気ない。 卓上に六太が残していった杯には、まだ半分ほど酒が入っていた。風漢はそれを手に取ると、一気に煽った。空になった酒杯を音を立てて卓に置きながら、彼は低い声を出す。 「利広、お前」 何やら物騒なことを言い出しそうな声音に聞こえ、利広はほんの少し身構える。 「––––何故六太に声を掛けた」 あまりにも意外な質問に、利広は暫くの間まじまじと風漢の顔を見つめてしまった。 「……さっき六太も言ってたろう。騎獣に慣れてそうだったから、いい宿を知らないか訊いただけだよ」 「建前を聞きたいのではない」 「……へえ、建前だって分かるんだ」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 225 :「確信」6 :2019/08/18(日) 18:50:33
- 風漢の後ろ姿が見えなくなってから、利広は盛大に溜息をついて椅子の背に凭れた。
「なんだか酔いが醒めちゃったなぁ……」 俺の麒麟に気安くするな、と率直に言われたらどう返そうかと考えていたのだが、さすがにそこまで言う気はなかったらしい。だが不用意なことを言えば斬られそうな、どこか剣呑な雰囲気を漂わせていたのは確かだった。
それにしても、五十年程前に会った時と今回で、風漢の印象がすっかり変わってしまった。それは六太が一緒にいたせいかもしれないし、この五十年の間に何らかの心境の変化があったからかもしれない。 いずれにせよ自分の中での風漢の評価を大幅に修正する必要がありそうだ。飄々として気まぐれな男だと思っていたから、彼ならあっさり禅譲を選ぶこともあり得ると思っていたのだが。 「……ないだろうな、あの感じだと」 溜息をつきながら、利広は呟いた。
幸せか、という利広の問いに、微笑んで頷いた六太の様子を思い出す。 雁の治世は三百年を数年過ぎたところだが、懸念していた王朝最大の山はどうやら既に越えたらしい、とあの笑顔を見て利広は確信した。 しかし風漢の予想外の態度を目にして、今度は別の懸念を覚える。 麒麟が笑って幸せだと言うのなら、きっと悪いことではないし、雁の王朝は当分安泰だろう。だが斃れる時は、おそらく悲惨なことになる。これも確信といってよかった。 「ずっと先のことだといいんだけどね……」 利広は腕を組んで暫く物思いに耽っていたが、ひとつ息をついて気を取り直すと、手を挙げて店員を呼んだ。 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 226 :「確信」7 :2019/08/18(日) 18:52:36
- 尚隆が部屋に戻ると、榻に寝転んでいた六太が肘をついて上半身を起こし、意外そうな眼差しを向けてきた。
「……早かったな。利広と飲むんじゃなかったのか」 「飲むとは言っとらんだろう」 「そうだっけ?……まあ、いいけど」 尚隆は無言で上衣を脱ぎ、腰に帯びていた刀を外して床に放り投げてから榻に座る。隣に寝そべる軽い身体を両手で持ち上げて、自分の膝の上に跨らせた。 六太は驚いた表情をしたものの、特段の抵抗を示さずにおとなしく座った。正面から目を合わせ、六太は小首を傾げる。 「……何かあったか?」 「……」 尚隆は沈黙したまま金髪を撫でる。髪を弄んでから両手を滑らせて頰を挟み、柔らかな感触を確かめる。 「あ、分かった。利広と喧嘩したんだろ?それで飲めなくなって拗ねてんだ」 冗談めかした六太の推測に対して、尚隆は深く溜息をついた。 「……見当違いも甚だしいな」 頰を挟んだ両手をしっかりと固定して、六太の瞳を覗き込む。努めて平静な口調で尚隆は問うた。 「––––約束とはなんだ」 「約束、って……誰と誰の?」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 227 :「確信」8/E :2019/08/18(日) 18:54:59
- 「なんか利広ってさあ、ぱっと見の印象では人が良さそうだし、まあ話も面白いんだけど、肚の底では何考えてるか分かんない感じなんだよなぁ」
「同感だな。あいつは相当根性が悪いぞ」 「尚隆と同じくらい?」 「おそらくな」 言って尚隆が笑うと、六太もくすくすと笑い声をたてる。 「––––だから六太、気をつけろよ。初対面の男に簡単について行くな」 「ついて行ったわけじゃないって。むしろ逆だろ?利広がおれについて来たんだから」 「たいして変わらん。しかも二人で酒まで飲むとは、警戒心が薄すぎるだろう」 「最初から酒飲む気だったわけじゃないよ。利広がお前のこと知ってるって言うし、奏の太子だって分かったから。––––お前、昔話してくれたじゃん、出奔先で奏の太子に会ったって。利広に初めて会った時にさ」 「そうだったか?」 「そうだよ。ずっと昔のことだけど、一度だけ話してくれた。……それから何度も会ってるってのは、初耳だったけどさ」 どこか拗ねたように、六太は言う。 出奔先で誰と会ったとか何をしたとか、そういうことは以前は六太に殆ど話さなかった。利広に前回会った五十年程前にも、話した覚えはない。そもそも奏の太子に会ったという話は、六太以外の誰にもしていないはずだ。 「前回会ったのが五十年も前のことだ。六太とて、俺に何でも話していたわけではなかろう?」 「……そうだったかな」 (省略されました・・全てを読むにはここを押してください)
- 228 :書き手 :2019/08/18(日) 18:57:35
- 利広と六太、尚隆それぞれの会話を書くのが楽しかったです( ^ω^ )
そして相変わらず尚隆が心狭い感じになってしまいましたw まあいつも通り最終的には尚六ラブラブなんですがね…
カプ妄想なしに帰山読むとそれぞれの王朝の終わりを考えてちょっと凹むんですが、 尚六フィルターかけて読むと萌え要素が多すぎてものすごく滾ります。
- 229 :名無しさん :2019/08/18(日) 19:38:58
- 乙でした、まさか続きが読めるとは!
心の狭い尚隆、何となく書き逃げの囚われた獣を連想しちゃったり 平常では心が狭いで済むけど、失道すると病的な執着に…
- 230 :名無しさん :2019/08/18(日) 23:13:03
- 続ききてた、乙です。
尚隆のやきもち美味しいし、ラストの大人っぽい甘さがめちゃくちゃ萌えます・・・!
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