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合唱部支援用空き教室

1名無しさんだよもそ:2006/09/18(月) 23:00:12
仁科 りえ(CLANNAD)

            渚シナリオに登場する合唱部所属の少女。
    _       ものすごい和みぱうあ〜を持つが、実はその陰には、事故のために
   '´  ̄ ヽ     ヴァイオリンが弾けなくなり、海外留学やヴァイオリニストへの夢を
  ノ .jノノリノ))     奪われ、失意の日々を過ごした過去があった。
 ( ノ! ゚ ヮ゚ノ) 〜♪ しかし、杉坂に励まされ、彼女と共に合唱部を設立、『脅迫状事件』の
  ) γつと))     後は渚達に協力し、創立者祭の演劇を成功に導いた。
 ( ( く/_l〉(     ことみシナリオやアフターにも登場するなど、ヘタな立ち絵あり脇役を
  ` (ノ J      凌ぐほどの出番を誇り、コミック版で念願の立ち絵(?)もゲットした。


そんな仁科さんや、杉坂、原田といった合唱部の三人組のために……!?

29支援SS(ブロック三回戦):2006/09/19(火) 20:12:48
113 仁科さん支援ss、一発目! sage 2006/07/12(水) 00:39:48 ID:Pntl0Mso0


 廊下を歩いていると、ふと仁科の姿を見つけた。何やら楽しそうな顔をしてダンボールを運んでいる。何となく気になったので俺は仁科に声をかけてみることにした。
「おーい、仁科」
 俺の声に気付いた仁科がぱたぱたと駆け寄ってくる。
「先輩、こんにちはです。なにかご用ですか?」
「いや、何をしてるのかと思ってな。妙に楽しそうだったし」
「ふふ、実は今ちょっとした計画を立てているんです。これはそのための道具です」
 そう言いつつ、仁科がダンボールを下ろし中からクラッカーを取り出した。
「クラッカー?誰かの祝いか」
「はい。合唱部の顧問の先生の誕生日なんです。いつもお世話になっているので」
 たいしたもんだな、と俺は思った。顧問の誕生日を祝ってやるなんてそうそう考えられるものじゃない。よほど人望のある顧問なのだろう。
「ふうん、そんでその顧問ってのは誰なんだ?まあ俺も知らない奴かもしれないけど」
「はい。幸村俊夫先生です」
………
「なんだって?」
 俺の聞き間違いでなければ確かに奴の名前が出てきた。
「はい。幸村俊夫先生です」
………
「なんだって?」
「はい。幸村…」
「あんたら、つっこまないわけ?」
 いつのまにか姿を現した杉坂が呆れたように言った。
「いや、杉坂に期待していたんだ」



「そりゃどうも。で、りえちゃん。先生に明後日来てくれるように伝えたよ」
「ありがとーすーちゃん。それじゃ、今日はこれを運んだらおしまいにしよっか?」
 それから荷物を運び終えた後、二人は今後の予定について話し合う。どうやら、幸村の誕生日は明後日らしい。…そういや、あいつって何歳なんだろうな。
「先輩も参加しますか?」
「…ん、何か言ったか」
 考え事をしていたので聞いていなかった。
「先輩も幸村先生の誕生日に参加しますか、って言いました。誕生日を祝ってくれるのは一人でも多い方がいいですし」
「そうそう。あたしたち三人だけじゃ、少し寂しいですしね。出来れば参加してほしいですけど」
 杉坂も同調する。意外な申し出だったが、さてどうするか。
 確かに幸村にはさんざん世話になったが、今更祝ってやってどうこうというものでもない。むしろ下手に祝いの言葉をかけてやろうものなら『何か悪いものでも食ったか』とでも言われそうな気がする。
 俺が答えを出しかねていると仁科が手を合わせて言った。
「お願いします、先輩。先生、来年で退職されるんです。ですから一人でも多い方がありがたいので…」
 仁科の発言に俺は思わず、本当なのか、と聞き返してしまった。
「はい…定年退職だそうです」
 知らなかった。幸村、退職するのか…
 俺は窓から空を見上げる。考えてみれば俺が今こうして学校に来れているのも幸村あってこそだったかもしれない。
 学校なんて大嫌いだったが、幸村だけは好感をもって付き合うことができた。そういうことなら、花を持たせてやるのもいいかもしれない。俺らしくもないが。
「分かった、俺も付き合う。何かすることはあるか」
 俺がそう返事すると、二人とも嬉しそうに笑った。

30支援SS(ブロック三回戦):2006/09/19(火) 20:13:02
「ありがとうございます、先輩。それで、もうほとんど準備も終わっているので特に何もしなくてもいいですよ。あ、でもプレゼントは用意しておいたほうがいいですね。
 そうだ、明日一緒にプレゼントを買いに行きませんか?」
「仁科、まだ買ってなかったのか?」
「そうなんですよ。りえちゃんったら、決まらない決まらないって結局買ってないんです」
 杉坂が呆れたように呟く。
「ま、あたしはりえちゃんとは違ってもう買ってますけどね」
「うーっ、ひどいなぁすーちゃん。間に合えばいいんだよ、間に合えば」
「はいはい。ってことで明日りえちゃんに付き合ってあげてくれません?あたし、明日委員会なんです」
 仁科は不服そうに頬を膨らませているが特に気にしないことにする。
「だったら構わないが…んじゃ、放課後に校門で待ち合わせるか」
「はい。私はそれで構いませんよ。…あっ、そろそろ時間危ないかなぁ。それでは、また明日ですー、先輩」
「りえちゃんのこと、お願いしますよー」
 ああ、と返事して後輩二人と別れ、俺は校門へ歩きはじめた。

 しかし、プレゼントと言っても何を贈ればいいのかさっぱり見当もつかない。というより俺自体がプレゼントするのが久々…いや初めてだと思うのでつくわけもなかった。
(ふーむ、ゲートボール一式でも買ってやるか…?)
 退職後の老人の楽しみと言えばそれくらいしか思いつかない。しかし、買ったら買ったで幸村からはたかれそうな気もする。



「いよぅ、岡崎。探したぜ。どこにいたんだよ。一緒に帰ろうぜ」
 春原だった。ちょうどいいので、こいつにも参考までに聞いてみる事にする。
「なぁ、春原。老人の誕生日に贈るプレゼントって何がいいと思う」
 そう言うと、春原はどこか不審そうな目つきで俺を見た。
「…お前、本当に岡崎か」
「………」
 ばこっ! 取り敢えず殴っておいた。
「痛ぇなっ!何すんだよっ!」
「誰がエキストラだって?」
「だって、信じられねぇよ。お前が、お前が老人ホームに贈り物をするなんてそんなボランティアな行為を」
「あほ、勘違いするな。老人と言っても一人だ。ついでに名前は幸村という」
 すると、春原はますます信じられないというような目つきになった。
「幸村、って、ヨボジィかよっ!岡崎、熱でもあるんじゃねえのか?」
 げしっ! 今度は脛に蹴りをかましておいた。「何が悪い」と付け加えて。
「ぐぉぉ…だ、だってさ、ヨボジィなら尚更じゃん。僕達がそんな事をするタマかよ」
「ついでに新情報を与えてやろう。明後日が幸村の誕生日だそうだ」
「…誕生日プレゼントってわけ?」
「まぁ、そういうことだ。で、春原は何かいい贈り物の案はあるか」
「プレゼントなんて…僕だって贈ったことも、贈られた事もほとんど無いのに。んなもん分かるかよ」
 やはり春原ではダメか。俺は若干の失望を覚えながらため息をついた。
「って言うか、誕生日とは言えどうしてプレゼントなんてする気になったのさ。普段の岡崎ならくだらないとか言って気にもしないくせにさ」
 春原の疑問ももっともだった。確かに、今までの俺ならくだらないと言って一蹴していただろう。今までの俺なら。
 ふと、仁科の顔が頭に浮かんだ。彼女と話すようになってから色々と、周りに対して少しは大らかな目で見る事ができるようになってきた。
 仁科には、きっと人の気持ちをほんわかさせる何かがあるのだと思う。

31支援SS(ブロック三回戦):2006/09/19(火) 20:13:26
「…まぁ、後輩に頼まれてな。それと、幸村は来年で退職するらしいし、一回くらい花を手向けてやってもいいだろう」
「ふぅん、まあいいけどね。あーあ、変わったよな、岡崎も」
 悪態をつきながら足早に帰っていく春原。
「おい、一緒に帰るんじゃなかったのか」
「ばぁか、興ざめしたから一人で帰るんだよ」
 一言そういうとすたすたと行ってしまった。まあ、まとわりつかれるよりはマシだが。
 …あ、結局何買えばいいのかわからねぇ。ま、いっか。仁科と決めりゃいいだろう。それよりも金を用意する必要があるな。預金通帳、どこにあったっけな。

 翌日。待ち合わせ場所まで行くとすでに仁科が待っていた。律儀に手まで振っている。そんなことをしなくても分かるというのに。
 彼女と合流した後、取り敢えず最寄りの商店街まで足を運ぶことにする。俺は仁科に何を買うのか決めたのかと尋ねるとまだ決めてません、と言った。
「幸村先生、何がお好きなんでしょうね」
「さぁな…やっぱ盆栽とか」
「ゲートボールとか」
 発想が同レベルだった。はぁ、と二人してため息をついた後仁科が思い出したように言った。
「そう言えば、幸村先生って昔はものすごく厳しい先生だったそうですよ。数々の武勇伝があるとかないとか…知ってます?」
 噂には聞いた事がある。が、今の姿からは想像もつかない。今は燃え尽きたボクシングの選手という感じだ。
「噂には聞いた事があるが…それがどうしたんだ」
「もしそれが本当だったら、アクション映画とかそういうのが好きなんじゃないかなって思いまして。ほら、こうアチョーーッ、って感じの」
 仁科が中国拳法風のポーズをとる。ものすごく似合わなかった。
「んなアホな。絶対見てるわけが…」
 そのときふと一軒のビデオ屋が目に入る。ガラスにはでかでかとジャッキー・チェン主演の映画のポスターが掲げられていた。
「……買ってみるか?」「買ってみますか」
 結局、俺は『燃えよドラゴン』を、仁科は『プロジェクトA』を購入した。…絶対に誕生日プレゼントには見えない。



 気がつけば、すでに空は赤く染まり日没が近い事を示していた。時計を確認してみるとすでに五時を回っている。ビデオ屋に入ったのが三時半くらいだったからかなり時間をかけて選んだことになる。
「あーっ、足が痛いですっ」
 仁科がふくらはぎをとんとんと叩いていた。無理もない。一時間以上も棒立ちだったのだから。
「ごくろうさん。んじゃ、プレゼントも決まったことだし何か食ってくか?」
「先輩のおごりですか?」
 仁科が期待に満ちた目でこちらを見る。その笑顔が痛かった。
「…分かった。好きにしてくれ。ただし予算は300円以内な」
「…小学生の遠足のおやつですか、それ」
 とたんに不満げな顔に変わる。その様子が可笑しくて、思わず笑ってしまう。
「冗談だ。でもあまり高い物は頼むなよ。今日の買い物で懐が不安だ」
 そう言うと、仁科はわかりました、と言って嬉しそうに先を歩いてゆく。まだまだ元気そうだった。その後ろを追っていると、ふと見たことのある後姿が目に飛び込んできた。
(…春原?何やってんだ、あいつ)
 春原はスポーツ用品店の前でうんうんと唸っていた。手にはゴルフクラブとゲートボールのスティック。俺は近づいてゆき、声をかけてやる。
「強盗でもするのか、春原」
「うわっ…って、岡崎か。びっくりさせるなよな。つーか、強盗って何さ…」
「何って…そのクラブを凶器にするんじゃないのか?」
「ちげーよっ!んな物騒な事しません」
「そうか、だったらそれでラグビー部に復讐か。汚いぞ、男なら堂々と拳一本でいけよ」
「違うっつーの!…あのね、昨日僕に言った事、もう覚えてないわけ?」
 首を捻って考えてみる。…はて、何を言ったか。
「幸村の誕生日、明日なんだろ?岡崎が言ったんじゃないか。プレゼントだよ」
「…は?」
 こいつ、本当に春原か?俺は春原の顔を思いきりつねってみた。
「いててててっ、何すんだよっ!」
 本物だった。だったら何か毒物でも食ったか、浄化されてしまったとか…どちらにしても、こいつは俺の知っている春原ではない。そうか、ドッペルゲンガーなんだな、こいつ…
「…なんでそんな目で僕を見るんすかねぇ?別にいいじゃねえかよ、これくらい。お前も言ってただろ、花を持たせてやるのも悪くない、って。

32支援SS(ブロック三回戦):2006/09/19(火) 20:13:44
 …それにさ、最近の岡崎、何か生き生きしてるっつーか元気だからさ、僕もなんとなく、ね」
 春原らしからぬ発言だった。それに、俺はそんなにも変わったように見えるのだろうか?
「変わったよ、岡崎はさ。たぶん、いい方向にね。お前の後輩とやらがよほどいい奴だったんだろうね。僕もそんな奴に会いたいねぇ」
 俺の心を見透かしたように春原が嘆息する。俺が言葉を出しあぐねていると先を行っていた仁科がこちらに戻ってきた。
「先輩、どうしたんですか?お友達の方ですか」
「…仁科」
「へえ〜、この子が岡崎の後輩?ふうん、なるほどねぇ。僕ね、春原ってんの。こいつの友達」
 俺が何か言おうとするより先に春原がしゃしゃり出てくる。
「あっ、どうも。私は仁科りえと言います。先輩にはお世話になってます」
「仁科、ね。ところで明日ヨボジィ…じゃなくて幸村の誕生日なんでしょ?僕も行くからさ、場所教えてよ」
「…合唱部の部室。旧校舎の空き教室だよ」
 仁科が答える前に俺が言う。悪意は無さそうだから、迷惑をかけることもないだろう。
「合唱部なんてあったっけか?…まあいいや。りょーかい。僕はまだ用事があるからさ、これでお別れだ。どっちにするか、悩んでるんだよね」
 両手に持ったゴルフクラブとゲートボールのスティックを掲げる。
「どっちでコンビニに押し入るか、悩んでるんだよな、春原」
「ええっ、ご、強盗するんですか!? だ、だめです犯罪は!」
「違うってーの! そこも簡単に信じないでくれますかねぇ!」
「冗談だ」「冗談です」
 二人してにっこり笑って言う。春原は疲れたような顔になって言った。
「…もうそろそろ帰ってくれませんかねぇ」
 春原をひとしきりからかって遊んだ後、間食を食べて帰る頃にはすっかり夜のとばりが辺りを包んでいた。隣にいる仁科を見てみる。女の子が一人で歩くには少し危険かもしれない。
「結構遅くなったな。帰り、送っていってやろうか」
「いえ、一人でも大丈夫です。問題ないですよ、私はそんなに可愛くないですし」
 そういう問題でもないと思う。



「いざとなったら、大声出して人を呼びますから」
「そっか、合唱部だもんな。声には自信ありか」
 二人の間に少し笑いが起こる。それから仁科が「でも」と付け加える。
「心配して言ってくれたんですよね。ありがとうございます。やっぱり、先輩は優しいですね」
 柔らかな笑みを浮かべて仁科が言う。その表情に俺は不覚にも胸の高鳴りを覚えてしまった。
「…別に。そんなつもりじゃねえよ」
 だからそれを誤魔化すためにあえてつっけんどんに言った。しかし仁科はそれに気付いていたようで、くすっと口元で笑って、
「照れ屋さんですね〜、先輩は」
 ちょっと腹が立ったのでむにーっとほっぺたを横に伸ばしてやった。
「い、いひゃひ〜。はんへんひてくははひへんはいー」
 縦に二回、横に二回、円の字に引っ張った後に勘弁してやった。

 その翌日、合唱部の部室で合唱部の連中と俺と春原を交えたメンバーでささやかな誕生日が催された。幸村は最初驚いていたが俺達がお祝いの言葉をかけてやると静かに、「ありがとう」と呟いた。
 合唱部によるバースデイソングは俺が今まで聞いた中で一番美しいと思った。春原も大したもんだねえ、と感心したように言っていた。幸村はと言うとただ静かに、静かにそれを見守っていた。まるで、我が子を見るかのように。

「happy birthday to you…」

余談だが、燃えよドラゴンとプロジェクトAは予想以上に喜ばれた。今度孫と見るそうだ。楽しめるかどうかは疑問だが。


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