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お奨めの本を自慢しよう!

16言い忘れてさようなら:2009/04/24(金) 11:38:04 ID:ddkIkjB.
イッセーさんの今度の新作小説を読むと、奇妙な感覚に囚われる。「関係が濃いのに、通り過ぎる付き合い」とでもいうのかな。一緒にいる時は、あたかも旧知の間柄のようだが、姿が見えなくなると、記憶からも消えるかのような人間関係。

 このリアリティーは、僕たちが外国公演を重ねたからだと、当初、僕は思い込んでいた。海外在住の日本人とは、互いのハイテンションが刺激しあうのか、夜が白むまで話し込んだりする。親友のようになるが、その行き先がない。飛行機の乗ると、生涯互いの顔を見ることもないだろうと思う。いや、思い返すことすらなく、記憶から抜け落ちる。

 で次に、この小説の奇妙な、濃いような薄い人間関係はワークショップから、来ているのかと思った。「4日間で、地元の素人の人たちと芝居を作る」試みを、4年間、全国40ケ所で行ってきた。のべ数千人の人たちと付き合ったことになる。誉めたり、怒鳴ったり、かんしゃくを起こしたりしたのが、どこの誰とも知らない人だったのだ。
 
そしてその素人たちの作る「フツーでは浮上しない世界」に接してきた。一人として同じ人はいない、という感想を僕は持ったが、イッセーさんもそうだったと思う。

 最近、奇妙な夢を見るようになって、ハタと気が付いたのだが、朝方見る夢は独特だ。増築を繰り返したが為に迷路のようになっている家に、僕が住んでいる夢がシリーズとなっている。繰り返し見るものだから、間取りが書けるようになってしまった。

 あるとき、これは単なる夢じゃなく、昔の記憶のような気がして、その家のある場所を捜して歩いたことがある。その家には、間借り人の一家がいて、美少女とその父親が住んでいて、住所もはっきりしていたからだ。
 
むろん夢だったんだけど。こんな夢の家探しの冒険に出かけたのも、イッセーさんの小説を読んだからだと思う。

 現実の辻褄が合わないことを、我々は「記憶から消している」様な気がします。消された記憶も、「自分にとっては宝物」ではないでしょうか。その人の固有性は「消された記憶の中にある」といって過言ではないでしょう。自分に特徴がないと思っている人に、オススメの一冊です。埋もれている記憶を呼び覚ましたくなる言葉が散りばめられている小説です。

                                          
〜4月15日徳間書店より発売しました〜


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