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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

629初詣(尚六)6/E:2017/12/26(火) 19:26:35
舌が溶け合ったのかと錯覚するくらい、長い口づけだった。やがて尚隆の唇は離れ、陶酔感の余韻が、六太に吐息をつかせた。
六太が瞼を上げると、間近に尚隆の笑みが浮かんでいる。
「その気になったか」
「……」
沈黙していると、尚隆は意地悪げに目を細めて、六太の首に巻いてある襟巻きをするりとほどいた。露わになった六太の首筋に、尚隆が顔を埋めた。
尚隆の冷えた鼻先が首筋に当たり、思わず首を縮める。そこに暖かい舌が這い出して、首筋からうなじへとゆっくりと移動し、そして耳朶に至った。
「あ…ん、やめ……尚…隆」
舌が耳に侵入してきて、ぞくぞくと背筋が泡立ち、声が上擦った。
「その気になったと言うまで続けるぞ」
尚隆の含み笑いと低い囁きが、耳をくすぐった。無駄な抵抗と知りつつも、六太は抗議する。
「……今夜は、そういうことしないはずだろ」
「誰がしないと言った」
う、と六太は言葉に詰まる。しない、とは確かに言ってない。
だが閨で過ごす時間がないと文句を言って、初詣に来るのを渋っていたのは尚隆だ。散々揉めた末に尚隆も初詣に行くと言ったのだから、閨事は諦めたと思っていたのに。
「でも、戻ったらどうせ夏官が待ち構えてて、それぞれ臥室に連れ戻されるだろ」
これまで夜中に初詣に行った時は、毎回そうだった。各自の臥室に連れ戻され、早朝の起床時間まで牀榻に押し込まれて、抜け出さないよう見張られるのだ。
新年の重要な式典に差支えないよう、ちゃんと寝ろということだ。それはもっともな言い分だし、まあ夜遊びした後だから仕方がないと、これまではおとなしく従っていたのだ。
「街の宿に入ればよかろう」
「え……いや、でも」
「それとも玄英宮に戻って、勅命を出すか?」
「勅命?」
「姫初めの邪魔をするな、と」
六太は一瞬、言葉を失う。なんでこいつは、こんなくだらない勅命を思いつけるのだろうか。
「––––阿呆!新年早々、莫迦な勅命考えるんじゃねえ!絶対、そんな勅命出すなよ!」
「では宿に入るか」
「う……」
答えに詰まる六太に、尚隆は軽く溜息をつく。
「まだその気にならんのか。強情な奴だな」
そう言ってから尚隆は、再び耳朶に舌を這わせ始めた。
「あっ…や……、分かっ…た、宿に、入るから…!もう、よせって」
上擦った声で言うと、尚隆は舌を離し、その大きな手が六太の頰を包むように優しく触れてきた。
そして尚隆は、至近から六太の顔を覗き込んで囁いた。
「その気になったと、ちゃんと言え」
「……その気に…なった」
顔が熱くなるのを自覚しながら、六太は囁き返した。
満面の笑みを浮かべた尚隆は、六太の唇に軽く口づけを落とす。次の瞬間、六太の身体はひょいと抱え上げられた。
「では行くぞ」
六太が慌てて尚隆の上衣を掴むと、路地の奥に向かって尚隆はすたすたと歩き出す。広途は通らず、裏道から宿に向かうつもりのようだ。
いつものことながら本当に強引な奴だ、と六太は溜息をつく。今年もこんなふうに尚隆に振り回され続けるのだろう。
でも、と六太は微かに笑む。
それでもいいか、とも思う。いつまでも尚隆のそばにいることが、六太の願いだから。
六太は、自分を抱え上げる男の首に、腕を回してしがみつく。そいつの耳朶を甘噛みして、ぺろりと舐めてやった。
尚隆が笑った振動が、触れた唇に直接伝わる。
「待ちきれないのか?」
「……ばーか」
小さく笑いながら耳元で囁くと、六太の身体を抱き締める腕の力が強くなった。
ひとつの影となった二人の姿は、密やかな笑い声を響かせながら、深夜の路地裏の暗闇へ溶けるように消えていった。




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