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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

628初詣(尚六)5/6:2017/12/26(火) 19:24:34
尚隆は六太の右耳に口を寄せると低く囁いた。
「––––六太の性欲がもっと強くなるように」
予想以上に、碌でもない願いだった。
「お前…!ほんとに莫迦だろ?くだらない願い事するんじゃねーよ!」
六太が声を上げると、尚隆は真面目くさった顔を作って首を横に振った。
「いや、これはかなり切実な願いだぞ。どうもお前は俺と比べると、そういう欲が弱い」
「お前と比べんなって、この色欲魔が。……あぁもう、ほんと訊くんじゃなかった」
六太は深い溜息をついたが、尚隆は楽しそうに笑った。
「お前は何を願ったんだ」
「教えない」
「せっかく俺の願い事を教えてやったのに、つれないな」
どうせ本当の願い事じゃないくせに、と六太は心の中だけで言い返しながら、尚隆に指を突きつけた。
「初詣の願い事ってのは、人に言ったら叶わないんだぜ?つまり、さっきおれに言ったお前の願い事は、叶わないってこと」
人に言ったら叶わない、というのはよく聞く噂だが、六太はそれを信じているわけではない。きっと願い事を他人に教えたくない誰かが考えた言い訳だろう。今の六太のように。
「……ほう、それは残念だな」
さして残念でもなさそうに言ってから、尚隆はにやりと笑った。
「神頼みが通じぬのなら、自分でなんとかするしかないか」
「……へ?」
繋いだ手を唐突に強く引かれて、六太は近くの路地に連れ込まれた。篝火の届かないその場所は、濃い闇の中に沈んでいる。
「どこ行くんだよ」
六太が訊ねたのとほぼ同時に、尚隆は突然立ち止まった。咄嗟に止まれなかった六太の身体は、尚隆の右腕に受け止められ、そのまま胸元に抱き寄せられた。
唖然としていると、大きな手に顎を持ち上げられた。尚隆の顔が近づいてきて、六太は驚いて逃れようと身を捩った。
「ちょっ、やめろよ!お前、急に何なんだよ?」
「お前が挑発してきたんだろうが」
「してねぇよ、挑発なんて」
「俺の願い事が叶わないと言ったろう」
「言ったけど、それがどうした」
「あれは『だからお前がその気にさせてみろ』という挑発だろう?」
「はあ⁉︎」
なんでそうなる曲解し過ぎだろう!と出かかった言葉は、尚隆の口に塞がれた。きつく抱擁され頭を押さえられて、逃れることはできない。
歯列の間から入り込んできた尚隆の舌が、執拗に六太の舌に絡みついてくる。その器用な舌は、口腔内の隅々まで丹念に愛撫を繰り返した。
情欲を煽る濃厚な口づけに、六太の手は次第に抵抗する力を失っていく。これでは尚隆の思う壺だ、と考えながら、諦めるように目を瞑った。
六太が口づけに応じ始めると、頭を押さえていた手の力と、苦しい程きつかった抱擁の腕が、少しだけ緩んだ。
自由に動かせるようになった腕を、尚隆の広い背中に回した。全身に広がっていく甘い痺れに浸りながら、今年最初の口づけだ、と六太は思った。


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