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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

624初詣(尚六)1/6:2017/12/26(火) 19:15:43
尚六の別スレ立てて一話目も途中だというのに、ふと思いついた話を先に書いてしまいました…
ちょっと早いですが初詣デートの話
皆様も素敵な新年を迎えられますように(*^ ^*)

ーー
大晦日の深夜、間もなく年が明ける頃のこと。
関弓山の中腹にある禁門が、内側から少しだけ押し開けられた。門番が訝しんでそちらを見ると、門の隙間から一つの騎影が飛び出した。
三本の尾を持つ狼の背に、二つの人影。
止める間も無く騎影は跳躍し、岩棚の向こうへ降りていく。
二人の門番が騎影の飛んだ方へ走り、岩棚の端から下を見渡した。しかしそこには暗闇の中、街の灯りが散りばめられた星のように輝くのが見えるだけ。三尾の狼の姿はどこにもなかった。

「……やられた」
「五年……いや、六年振りか?」
「確か六年振りだな、大晦日の逃亡は」
「最近なくて安心してたんだがなあ」
「まあ、明日は式典もあるし、夜明けまでにはお戻りになるだろう」
二人の門番はどこか楽しそうに、下界の灯りを眺めた。既に深更だが、大晦日の夜は起きている民が多いのだろう。普段よりも街の灯りは多く、冬の澄んだ空気の中で美しく煌めいている。
「街に降りたくもなるよなあ……」
ぽつりと呟いた言葉にもう一人の門番の男が静かに頷いた。
その時、新年を告げる鐘の音が、凍えるような空気を震わせて厳かに鳴り響いた。


悧角で王宮を抜け出した尚隆と六太は、街の片隅の目立たぬ場所に降り立った。広途の方向からは、さざ波のような喧騒が聞こえる。
「早く早く」
六太は待ちきれないように言いながら、広途の方へ足早に向かう。
「待て六太、もう少し落ち着け」
尚隆は苦笑しながら六太に声を掛け、後ろからついて行く。
「置いてくぞー」
六太は振り返って言い置くと、ぱっと駆け出した。その後ろ姿は、すぐに曲がり角の先に消えた。

尚隆が歩いて広途に出ると、そこには多くの人々が同じ方向へ向かって歩いていた。
道端には一定の間隔で篝火が焚かれ、通りを明るく照らしている。普段この界隈は夜中になると殆ど灯りがないのだが、今夜だけは特別だ。
はしゃぐ子供達が尚隆の前を通り過ぎて行く。夜中まで起きていることは滅多にないのだろう。
街路の先を見やると、幾つか先の篝火の近くに六太の姿があった。尚隆はゆっくりと歩み寄って行く。
揺れる炎に照らされた六太の横顔には、微笑みが浮かんでいる。民を見守る慈愛深い麒麟の表情だと、尚隆は思った。
「……みんな浮かれてんなあ」
呟いて、六太は笑みを深くする。
浮かれた民を見ることが、最上の幸福であるかのように。


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