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【お気軽】書き逃げスレ【SS】

1名無しさん:2004/11/03(水) 14:07
ここはなんでも書けるスレです。初心者、エロエロ、ムード系、落ち無し、
瞬間的モエ、特殊系、スレ内SS感想等なんでもщ(゚Д゚щ)カモーン!!
どんなカプでもお気軽にドゾー!!
投稿ルール、スレ説明は>>2、その他意見・質問はまずロビスレへ。

※もちろん個人での派生スレ設立は、さらに大推奨※

2名無しさん:2004/11/03(水) 14:11
スレ説明

1 誰でも書き込める書き逃げ専用スレです
2 脈絡やオチがなくても、書きたいシーンだけ書くことができます。
  一応読む人に分かりやすいよう、シチュエーション程度は説明しましょう。
3 他の人と共有スレになりますので、レスの区別がつくよう、名前欄を変えることを推奨
  また、おおよその使用レス数を明記
  例)名無しさん→「尚六鬼畜1/18」などの簡単な内容説明・もしくはその場だけの
    コテなど。1は1レス目の意、18は総レス数の例
4 書きたいシーンを書き終えたら、終了が分かる言葉を入れて下さい
5 書き手が終了した場合、続きを他の人が書くことも可
  (その場合、続きだと分かる言葉を入れて下さい)
6 書き手の意向によっては、最初からリレー形式も可
  (その場合、そうと分かる言葉を最初に入れて下さい。長くなりそう、になってきた場合は、
   その話専用にスレを別で立てること推奨)
7 長くなりそうな場合など、このスレ内に留まらず、落ち無しでも個人別スレ立ても歓迎です。

3名無しさん:2004/11/16(火) 23:30
では適当に始めさせて頂きます。
傾向はたぶんキチーク? 適当なのでわかりません。
テキトーに参加してくれる人がいなければ書き捨て。

4鬼畜王楽俊:2004/11/16(火) 23:44
   ↑
  これがタイトルね。

今までのあらすじ
 天帝の作ったシステムは何やらの電波を浴びて崩壊。常世も蓬莱も鬼畜王楽俊に統一
された。おそるべき電波が楽俊をかつての彼とは全く正反対の性格に変えてしまった
のである。電波により最高の妖力を手にした楽俊は鬼畜王として君臨。彼の手下に
広瀬がいる。高里事件により就職の道を阻まれた広瀬はマッドな生物学者になって
いた。このマッドな広瀬とまともな後藤先生を雇った楽俊。泰主従、延主従、景麒、
その他の人々などを監禁。常世の人々や神仙を解剖などして生物学的に見ていくのが
目的であるようだ。

5鬼畜王楽俊:2004/11/17(水) 00:11
泰主従、延主従、そして鎖で繋がれた獣形の景麒。
彼らが入れられた牢にホタホタとやってきた者がある。鬼畜王として恐れられている楽俊
である。後ろには広瀬と後藤を従えている。
「やあ、延台輔、ご気分はどうだい」
「楽俊、いったいどういうつもりなんだ? ここから出してくれ」
「ふん、生意気を言うんじゃないぞ。おいらは今や王なんだからな」
と言って楽俊はひげをそよがせた。
その背後から広瀬が前へ進み出た。
「高里、ずいぶんと髪が伸びたようだな」
「先生、お願いです、ここから出して下さい。せめて主上だけでも」
「ふん、そのうちな」
広瀬は高里事件の後、世間の厳しい目にさらされ、すっかり性格が歪んでいた。
「おれはあの事件の後、猛勉強して生物学者になったのさ。常世の生き物に興味
津々なんだ。五百年も生きてる延王とか獣に転変する麒麟とかな。そのうち解剖
して肉体の構造を研究してやるさ。それにお前ら木に実るんだってな。普通の人間
に見えるけどな。生殖器官とかどうなってるんだ? そっちもそのうち解剖して
研究だな」
楽俊は頼もしそうに広瀬を見上げた。
「おいらも学問には興味津々だ。解剖のほう、よろしく頼むぞ。解剖後は、もったい
ねえから麒麟は干物か剥製にして標本とするかな」
我ながら名案だとばかりに、再び楽俊はひげをそよがせた。

6名無しさん:2004/11/17(水) 00:23
飽きたんで別ネタ。
こっちもてきとー。カプは「海神」の登場人物で適当に。

7適当な東の海神:2004/11/17(水) 00:36
あらすじ
 斡由は更夜に命じて六太を誘拐させた。その真の目的は性的いたずらをすることに
ある。六太がものすごくかわいいということを更夜から聞いた斡由はそうせずには
いられなかったのである。

8適当な東の海神:2004/11/17(水) 01:04
六太は暇なので厨房から斡由の寝室まで、いろいろと見て周ることにした。
厨房の後、斡由の寝室に行ってみると、そこには当の斡由と更夜がいた。
更夜が口を開いた。
「やあ、六太のほうから来てくれるなんて」
と、言うなり更夜は六太を後ろから羽交い締めにした。
「六太、随分と肌触りの良い服を着ているね。相当な贅沢をしてきたようだね。
おれなんて苦労のし通しだったのになあ。これからは六太に苦労してもらわないとね。
卿伯は子供を激しく愛されるのがお好きなんだよ。疲れるかもしれないけど、がんば
ってほしいんだ」
斡由はつかつかと六太に近づくと手を六太の顎にかけ、まじまじと顔を眺めた。
「見れば見るほど美しくかわいらしい。顔も体も。いや、失礼、台輔。
ここでは台輔は囚われの身。私の好きにさせていただきますよ」
六太は意味がよくわからず、少し不安げな不思議そうな表情で更夜のほうに目を
移す。生まれてからこの方、性的なこととなど全く縁が無かった六太には、斡由の
企みなど知る由も無かったのだ。
 急に斡由の言葉遣いが乱暴になった。
「さあ、ここに寝るんだ。いつも王とやっているのだろう?」
ぐい、と六太は肩を押された。不安げな顔で斡由と更夜を見比べる。

9適当な東の海神:2004/11/17(水) 01:28
王のものに手をかけるという喜びに斡由は浸っていた。
「更夜、あの男を呼んでこい。風漢という男だ」
「風漢、ですか」
風漢、という名前に六太はハッとした様子を見せる。
「信じ難いことだがな、あの風漢という男、正体は延王だ」
「ええっ」
更夜は驚いたが、六太も驚いていた。六太は王としての尚隆に不満もあって家出
してきたわけだが、その尚隆が王という身分にもかかわらず、地位を隠して
ここに来ているなんて。
「どうせやるなら、王の目の前で見せつけてやろう。何、風漢なぞに負けはせん。
どっちがより良いか、台輔には感想を言ってもらう。その間、皆で風漢を押さえ
つけておけ」
「あ、あのう、その、皆が見ている前で、されるのですか?」
「しかたなかろう。私は風漢に見せつけたいのだから。さ、奴が来るまでに、
少し馴らしておかねば」
言うと斡由は六太の顔に唇を近寄せた。
「い、いやっ」
六太は必死で顔を背けて抵抗した。斡由はおかまいなく、ジタバタする六太を抱き
上げて運ぶ。
横たえられ、押さえつけられ、顔に首筋に、斡由が唇を押し付けてくる。
「あっ、やぁっ、やめて」
服を脱がそうと斡由の手が巧みに動く。胸元がはだけた。首筋から胸へと斡由の唇
が動いた刹那、六太の体が、びくん、と跳ねた。

10名無しさん:2004/11/17(水) 01:51
今のとこ、あまり良い続きが浮かばないので、もう寝る。
ちょっと不発な内容のままだけど、それなりにストレス解消。
誰かエロい続き書いてもっとストレス解消させてくれたらネ申。
キチークの続き書いてくれる人はもっとネ申。
書き逃げか、気が向けば更新。ストレス溜まったら更新。

11名無しさん:2004/11/17(水) 20:21
姐さん乙。ストレス溜まってるね。
相手が斡由のキチークは自分には無理だけど、海神の続きが気になります。

12適当な東の海神:2004/11/17(水) 21:29
やっとのことで六太が上体だけは起こすことを許され、荒い息を吐いていると扉が
開き、尚隆が連行されてきた。
尚隆は暢気な声を出した。
「おや、何をされてるんで」
「見たらわかるだろう。しらじらしい奴だな。風漢、お前の正体は延王だろう。
私は全て見とおしているのだ。私が台輔を誘拐させた真意がわかるか?」
「謀反と見て間違いないだろうな。わざわざ誘拐したくなるような、かわいげの
ある子供でもなし」
と尚隆は落ちついている。
「そ、それはやせ我慢というものだろう? 私など謀反を起こしてまでも台輔を」
斡由の顔に焦りが見えた。何か予想を裏切られた気分がしたのだ。
「ふ、ふんっ、見得をはっていられるのも今のうちだけだ。ここは私の居城なの
だからな。お前たち、いいから、やれ!」
「えっ、本当によいのですか」
「かまわん」
大勢に押さえつけられている尚隆を、家来の一人が思いきり殴りつけた。
「いやっ、やめて! やめてくれ!」
と六太が悲痛な叫び声を上げた。

13名無しさん:2004/11/17(水) 21:36
少し更新。11姐さんも一緒にキチクりましょうよ。
楽俊のほうは鬼畜というより猟奇かな。今はまだ勇気が出ないけど。

14名無しさん:2004/11/18(木) 06:25
王を慕う麒麟の本性の所為か、それともそれ以外、六太という人間の心の動きか
分からない。
とにかく尚隆がひどいことをされていると、たまらないのだ。
自分の身をそがれた方がましな気がする。
「やめてくれ・・・」
力の限りに叫ぶ。
にやりと、六太が思い通りの反応を示したことに気を良くした斡由が、笑う。
この場にいる人間の気持ちを自分が支配する心地よさ。
その反面思う通りに動かない尚隆へのいらだちが募る。
「これを見てもまだすましていられるものかな」
そう尚隆に言うと家来の方を向いた
「やれ」
家来のうち二人がすっと六太に近づくと、やにわにその服を剥き始めた。
六太の若いと言うにはまだ幼さの残る白い肌が露になってゆく。
「な・・なにすんだよ、やめろ、・・・うわ」
慌てる六太。
押さえつけられた尚隆もぴくりと躰をふるわせ、動けないながらも目つきが
険しくなってゆく。
「いやだ・・」
六太の躰を覆っている布は男たちの手で取り払われてゆく。
上着の留め具が外され、まだ細い肩、肉の薄い白い胸、平らな腹が露になる。
少年のままの、男性と言うにはまだ青い、性の区別もないような、そのくせ
ぞっとするほど艶かしい躰。
光を集めたような暖かい金の鬣が白い躰に映えて、何とも言えない神々しさが
あった。
服を脱がせていた家来たちの手が一瞬躊躇したように止まる。
ここにいるのは神獣であり,それが人の形をとった少年なのだ。
微かに、畏れが心に生まれる。

15名無しさん:2004/11/18(木) 07:07
様子を見ていた斡由もしばし我を忘れ、その神々しい光に引きつけられた。
だがはっと我に返ると「何をしているサッサと全部剥ぎ取ってしまえ」
と叱責する。
家来たちはあわてて下を脱がせ始めた。
少年として自分の性に無頓着に生きてきたせいか、羞恥よりも、他人が
自分を押さえつけて好きにしていると言う屈辱、何をされるか分からない
恐怖が六太を支配していた。
服がはだけられ、下半身も露になる。
すんなりとのびた足、その付け根のまだ子供じみた性器にはまだそれを
隠す茂みすらない。
すべらかな肌は美しく、それに触れた家来ははじけるような、それでいて
柔らかくしっとりした手触りに、もっと触れていたいと思う気持ちを抑えていた。
上着は六太の腕にかかる程度、下はむき出しにされ,さすがに羞恥に
顔を赤くし、躰を固くした。
青い果物がほのかに赤く色づいたような、清冽な色香がそこにあった。
そこにいたものすべてに、無意識のまま劣情をあおる。
言葉もなく、怒りと羞恥にふるえる六太の姿が斡由の嗜虐心をそそった。
「では、台輔に縄をかけよ、主上にその姿がようく見えるようにな」

16適当海神続き:2004/11/18(木) 08:22
すんません、上二つタイトル入れ忘れました
勝手に続きすんません。ここはリレーじゃなかったんだった・・・


六太があっと思う間もなくその躰に素早く縄がかけられた。
腕をぐっとくくられ、寝台の柱につながれる。
仰向けのまま足を大きく割り開かれ、その形のまま、縄で固定される。
肉棒だけでなくその後ろの蕾まで晒される形となり、六太はあまりのことに
声も出ない。
自分のそんな淫らな姿をよりにもよって尚隆に見られていることで、恥ずかしさの
あまり、血が上ってしまい、混乱してしまっている。
更夜がそっと近づくと六太の蕾に何やら薬のようなぬるぬるしたものを
塗り付けた。ピクンと六太の躰が微かに反応を見せた。
「なに・・」六太が怯えたような声を絞り出す。更夜は六太を見て微かに笑うと
すっと立ち上がり、寝台の脇の扉の取っ手をつかむと重そうに引いた。
ギイと思い音を立てて扉が開く。

17適当海神続き:2004/11/18(木) 08:50
その扉の奥から出てきたのは
何やら気味の悪い,ぬるぬるとした植物の茎のようなもの。
それがうごめいてこちらに進んでくる。
六太はぞっとして、思わず助けを求めて尚隆に目を向ける。
しかし尚隆は更夜に香のようなものをかがされており、魂の抜けた瞳で
ぼんやりしている。
気味の悪い植物はその枝を六太の方に伸ばしてきた。
その先端が六太の蕾に塗り付けられた薬に引かれて触手を伸ばす、つと蕾を
なでる。息を飲む六太。触手の先端は蕾の周辺を撫で始めた。
くすぐったいような気持ちが悪いような感覚に六太の躰がその枝から逃れようと
揺れた。
だが、縄でしばられた躰に自由はなく、触手はその先端をつぷと蕾に沈めた。
「あう」ぴくんと躰が跳ねた。
ずぶずぶと触手は蕾の中に入り込む。気持ちが悪い。
嫌悪感に涙が浮かぶ。だが,何かむずむずするような別の感覚も生まれていた。
触手が六太の躰全体に伸びる。
前の肉棒に絡み付くとそれをいじり始める。
肉棒は慣れない刺激に反応し、むくと形を変えていく。
菊座に侵入した触手が内部で蠢く。大きく割られた足は閉じようがなく
その化け物にさし貫かれてている様を見せつける。
六太は顔を上気させ喘ぎ声を漏らし始める。

18海神適当続き:2004/11/18(木) 09:09
六太は自分の中が触手の侵入によっていっぱいになっているのを感じた。
腰のあたりにぞくんと何かを感じ始めた。
触手全体からにじみ出る液体に協力な媚薬が含まれていたのだ。
触手はまだ狭い蕾にあわせて細いものだったが、六太の躰にはいっぱいの
大きさだった。
それをずぷと引き抜かれ、圧迫感がなくなった安堵を感じていると
その油断をあざ笑うかのように、先ほどの触手よりも太いものが六太を
貫いてきた。「ーーーーっ」
更なる圧迫感にうっすら涙を浮かべ悲鳴をあげた。だが腰のあたりに感じる奇妙な感覚は
大きくなっている。息が荒くなる。
ぞくぞくとその感覚は背中の方まで上ってくる。
触手は六太の口内、胸の突起、肉棒、可憐な蕾、ありとあらゆる場所を
攻めてきた。
まるで意思を持っているかのように執拗に,蕾に差し込まれた触手が
ある一点をぐっとつくと、堪らず声を上げた。
きゅうと、蕾が締め付ける。
それが心地よいのか触手はぐりぐりと蕾を容赦なく攻め、動き始めた。
浅く引いて深く刺す、動きにあわせて六太の腰も微かに動く。
「はあっ・・ああ」息が荒くなり声が上がる。
うっすらとももの花の色に染まった肌、潤んだ水晶のような瞳はぞっとするほど
美しく、扇情的だった。

19名無しさん:2004/11/18(木) 11:22
姐さん、朝からイイヨ、イイヨ〜!
更夜たんの妖術、最高だわー

20海神適当続き:2004/11/18(木) 11:44
萌えだ〜!センエツながら自分も少しだけ…



「だ…め…」
六太の唇から抵抗の言葉と共に唾液がこぼれる。
六太を貫いた触手は重い抜き差しを始めた。
「…ぅっ──う、んぅ…っ…!」
奥まで差し入れられる度に六太がくぐもった、だが甘い声を上げるのを、
その場にいた誰もがとりつかれたように見つめていた。
──よもや神獣のこのような姿を目にすることが出来るとは。
ごくりと唾を呑む音がどこからともなく聞こえ始める。
「…気持ちいいかい、六太」
更夜が近付き、涙目で喘ぐ六太の顔に顔を寄せる。
「可愛いね…六太…」
囁くと、濡れて開いた唇を覆うように口付けた。
「ぅ…、ふっ…」
苦しさに顔を振って逃れようとするも、更夜の舌がそれを許さない。
絡められ、吸われる。
その間も六太の内部を犯す触手の動きは止まず、六太の腰を淫らによじらせていた。

21名無しさん:2004/11/18(木) 14:37
あれ?
別の人が続き書いていいんだっけ

22名無しさん:2004/11/18(木) 15:23
>10で続き書いてもいいって言ってると思ったROM者。
いいよいいよ〜萌えます姐さん方!(少なくとも二人入ってきてるよね?)

23名無しさん:2004/11/18(木) 17:18
そのとき、尚隆を押さえつけていた家来が吹っ飛んだ。
何事かと更夜が顔を向けると、魂が抜けていたはずの尚隆が家来を床に叩き付け
腰の刀を奪いさっと走ると斡由をがしと捉えた。
そののど元に刀の刃を当てると更夜をねめつける。
「主の命が惜しいなら、その化け物を下がらせよ」
皮一枚刃先が斡由ののどに食い込む。つと流れた血を見て更夜があわてて
化け物に六太から離れるよう命じた。
ずる、と六太の蕾に埋め込まれた触手が抜き取られる。
ぞくりとした感覚に「ひっ」と声を上げる六太。
微かな快感が腰を這い回る。
体内に感じる圧迫感が消えほうと息をつく。
「神経麻痺の毒を嗅がせていたはずだが」悔しげに更夜が睨む。
尚隆はにやりと笑う。「毒は効きにくい体質なのでね」

24海神続き:2004/11/18(木) 17:41
悔しげに睨む更夜の脇を抜け、六太を抱え上げるとがつんと刀の柄で
斡由の後頭部を一撃する。斡由は気を失ってその場に崩れ落ちる。
主に駆け寄る更夜を後に、既に床に転がっている家来を避け、尚隆は肩に
六太を抱えて駆け出した。

地下を抜け、秘密の通路から城を抜け出した尚隆は、川のそばの木の茂みに
隠れるとやっと息をついて座り、肩に担いだ六太を柔らかな草の上に横たえた。
衣類をはぎ取られ,六太は生まれたままの姿で尚隆を見上げた。
瞳はまだ先刻の気味の悪い植物から注ぎ込まれた媚薬の所為で潤んで
ほおはうっすらと赤く上気している。
ぞっとするほど妖艶な表情だ。
「ん・・・っ」六太は躰を押さえ、喘いだ。躰に残る媚薬が若草の柔らかい感触
すら、堪え難く、淫微な刺激に変える。
六太の幼い肉棒はぐっと固いまま、更なる刺激を求めて先端からうっすら雫を
零す。
そんな自分の浅ましい有様を尚隆が見ている。
恥ずかしさのあまりどうにかなってしまいそうだ。
尚隆は苦しげな六太に手を伸ばし、唇にそっと触れた。

25適当海神続き:2004/11/18(木) 18:40
「ん…」
くちづけられ、自身の唇も尚隆を求めそうになっているのに六太は気付いた。
「尚流…。おれ体の感じが変なんだ。上着貸してくれ」
「大丈夫だ。そのままではつらかろう。俺がおさめてやろう」
思えば、と尚隆は王になってからの自分を振り返った。
尚隆は六太の子供らしいかわいらしさを愛してきた。だから六太がふと見せる
艶やかさに欲情させられることがあっても、手を出さずにきた。
しかし時を見て、もちろん六太の全てを自分のものにするつもりだった。
初めてのときは、六太が驚かぬよう、行為がつらくないように充分気をつけて
最高の時間を分かち合おうと、漠然とながら大切に考えてきたのだ。
それを…。あの者たちはなんの予備知識もない六太にいきなりあのような刺激を
加え…。尚隆の中には激しい憤りが湧きあがっていた。
一方、その頃、斡由たちは、次なる秘策を練って二人を探していた。

26適当海神続き:2004/11/18(木) 20:44
「六太、らくにしてやる故、しばらく我慢するのだ。変に思ってくれるな」
「うん…」
「さあ、目を閉じておれ」
言われた通り目を瞑って待っていると、その場所に柔らかく触れたものがある。
「あっ、」
思わず目を開けると、なんと尚隆が六太の股間に顔を埋めているではないか。
尚隆の唇は優しく六太のものをなぞると吸い上げてきた。
「んっ、」
思わず甘い声が洩れてしまう。
一方、尚隆のほうも、今までに感じたことのない不思議な感覚に囚われ、夢中で
吸い上げることを止められずにいる自分にとまどった。
吸い上げてそこから放出されたものを飲み込むと、体にえもいわれぬ神聖な力が
満ち溢れる感じがする。体の疲労も回復していく。これが麒麟というものなのか。

27名無しさん:2004/11/18(木) 21:08
書き逃げだからと思って、姐さんがた大暴走してますね。
いえ、とてもイイです(*´Д`)ハァハァ

28名無しさん:2004/11/18(木) 21:33
すげえストレス解消になるね
触手プレイ

29名無しさん:2004/11/18(木) 21:46
触手のあたりは
イ申イ山 の御業かとオモた。
真君のごとき姐さん。

30名無しさん:2004/11/18(木) 21:49
の、伸びる仙ってな、なんだ〜 間違いです

  ネ申 イ山

31名無しさん:2004/11/18(木) 23:51
尚隆六太食べちゃった編
誰か描いてくれー

32名無しさん:2004/11/19(金) 00:43
一方六太も、自分自身に混乱し戸惑っていた。
さっきまでの触手に嬲られていた時に感じたようなものではない
心地よい疼きが昇ってくる。
思わず上ずった声が漏れる度、尚隆の六太への愛撫が深くなって行く。

33適当海神続き:2004/11/19(金) 00:58
気がつけば、六太が悩ましい声をあげ続けているのにも気付かないほど夢中になって
味わい続けている自分がいた。六太のそれが萎えるたびに刺激を送り再び吸う。
気付き、いくらなんでも、これでは六太の身がもたぬであろうと唇を離す。
荒い息を吐く六太に上着を着せかけ抱き締めてやる。六太は尚隆の胸に顔を寄せ
縋りつく。
「尚隆、ごめん…おれ、不注意で誘拐されて。そのうえ、こんなふうに…あの、
してもらって…もう、なんか変な感じは治ったから」
尚隆は六太を抱き締めながら、誘拐者たちへの怒りに燃えていた。
掌中の珠玉を土足で踏みにじられた。六太の初めては、自分が幸せとして六太に
与えるはずのものだったのに。それをあのような妙な生き物に…。
「尚隆…ごめん…」
「いや、許さん」
許さないというのは六太の軽率な行動のことではなく、誘拐者たちのことである。

34適当海神続き:2004/11/19(金) 01:01
うわ、かぶっちゃった。ごめんなさい。
再びエチ続けてほすぃ。

35名無しさん:2004/11/19(金) 20:29
姐さんがた、気の合うバッティングぶり。
どちらでもよいので続きをお願いします。
ストレス堪ってエロエロなものが
読みたい・・・・

36いいかげん海神続き:2004/11/19(金) 20:51
尚隆のきつい言葉に六太は思わず小さく震える。
主の怒りは、麒麟である自分に何よりも恐ろしく悲しい。
自分の上着に包まりながら胸に縋って震える六太に、
自分の思考にふけってしまっている尚隆は気付けずにいた。
「・・・どうしたら・・何をすればこんな俺を許してもらえるんだ?」
かすれる声で六太は聞いた。
「お前にもおれがしてもらったように、すればいいか?」

37名無しさん:2004/11/19(金) 20:54
内容もかぶってて何だかハピ♪
嬉しいです。
誰でも良いから続けてプリーズ

38ん〜・・海神続き:2004/11/19(金) 22:07
六太は、顔を上げられないまま尚隆の下帯に手を伸ばす。
「おい・・・」
腕に手をかけると、六太は微かに震えていた。
「おれ、さっきあのヘンなのに身体中触られて、吐き気がするほど気持ち悪かった。
おれの身体の中から、穢れていくような気がしたんだ」
顎を捉えて上向かせると、大きな瞳に涙を浮かべながらこう告げる。
「・・でもさっき尚隆に・・してもらって、その穢れを拭われたような気がしたんだ。
おれの身体かが清められるようだった。・・気持ちよかった」
「・・・六太」
「だから・・尚隆にも気持ちよくなって欲しい」

39海神いい加減続き:2004/11/19(金) 22:20
はたと、傍らの六太が不安げに自分を見つめていることに気がつく尚隆。
六太は尚隆が自分を怒っているのだと勘違いしている。
なぜそういうことになったのか、誤解を解こうと声をかけようとする前に
六太は震える手で、尚隆の腰紐を解き始める。
六太は主である尚隆に嫌われるのが何よりも苦しいし恐ろしい。
尚隆に疎まれてしまえば自分の存在など意味がなくなってしまう。
麒麟は主のものだから。
主の心がもらえなくては生きてゆけない。
意表をつく展開に内心慌てる尚隆。だけど尚隆のものは六太の淫微な姿を
見ていた所為で既に固くなっている。
それを震える手で六太が取り出すと、未知の行為に戸惑いと怯えを抱きながら
そっと口に先端を含む。
自分のものとは違う大人の男のそれは太く、ややグロテスクでもあり、違う生き物
の様に形を変え、ぐっと上を向き始める。
それを六太は可憐な唇を開き氷菓子の柱を舐めるように舌を絡ませる。
たどたどしい愛撫に尚隆の欲望は熱を持ち、固さを増し、大きく膨らむ。
その快楽にはあらがいがたく、尚隆は止めようもなく六太のなすがままにさせている。
尚隆の高ぶりに触れながら、六太のそこも熱を持ち始める。
まるで既にどこかつながっているかのように快感が伝わってくる。
尚隆は六太の頭をつかむと「出すぞ」と目を瞑る。
「え」と六太が思う間もなくぐっとのどの奥まで深く昂りを差し込まれ
咳き込もうとした口内に尚隆が熱いものを放った。

40名無しさん:2004/11/19(金) 22:22
おやまたかぶりすまん
続きプリーズ

41名無しさん:2004/11/19(金) 23:25
のどの奥に差し込まれたものにむせる六太。
苦しそうに咳き込むと、尚隆を見る。
尚隆はじっと六太を見ていた。
自分が一線を踏み越えたことを感じている。主従としてでなく
尚隆と言う人間と六太と言う存在として、別の絆を作ろうとしている。
「六太」
低くよく通る声で六太を呼ぶ。その声に常にはない熱を感じぴくんとろく太の躰が
反応する。
尚隆の瞳が自分を見ている。そこにこもる熱を感じてどうしたらいいか分からない。
いたたまれない気持ちになって不安になる。
初めてではない、尚隆がこんな熱を見せるのは。
ふとした瞬間に自分を見る瞳に熱がこもるのを感じることが今までも何度かあった。
だけど、その次の瞬間にはふざけた顔で自分をからかうから、意味を考えることも
なく過ごしてきた。
尚隆の瞳に怯えながら六太は目を逸らすことができない。
尚隆の顔は意外に整っていたんだなあと関係のないことをぼんやり考える。
尚隆は自分の上着を脱ぐと草の上に敷き、六太をひょいと持ち上げるとそこに
横たえた。
尚隆が横たわる自分を見ている。
その瞳の熱が自分の躰にも伝わって何やら熱い。
胸の音ががどきどきと早くなる。
尚隆は顔を近づけると六太の目を見つめた。
強い瞳。
そして六太の唇に強く唇を重ね、食いつくように舌をからませる。
一瞬抵抗する六太だが。大人の男の力には敵わず、自分の口内を蹂躙する
尚隆の舌に官能の扉をこじ開けられる。

42適当海神続き:2004/11/19(金) 23:44
六太は自分の腰のあたりにぞくぞくとしたものが生まれるのを感じていた。
尚隆が自分を求めるのがうれしくて、不器用に自分の舌を絡め返す。
尚隆の右手は六太の顔を押さえ、その金の髪を絡ませる。
そして左手で幼い肉棒を刺激すると、そこから零された汁を掬いとり
後ろのすぼまりに塗り付ける。
「んんっ」口を塞がれたまま六太がびくんと跳ねた。
尚隆の手は蕾に抜き差しを繰り返すと、解れた感触を確かめ、自分の昂った
一物をつかみ、蕾にあてがう。
にちゃ、と濡れた粘着質な音。
自分のそこを尚隆が貫こうとしている。先ほどの触手の恐怖を思い出し、躰を
固くする六太。
その様子に気づいた尚隆は六太の角があるはずの額をべろりと舐める。
一番敏感な部分を刺激され、「あ」と六太は声を漏らす。
尚隆は優しい目で六太を見ている。
六太は恥ずかしいような愛しいような何とも言えない気持ちになって
尚隆の袖にしがみつき胸に顔を埋めた。
尚隆は己のものをその入り口にぐっと差し込むとずぶずぶと躰を埋めていった。
触手によってほぐされていたとは言え、尚隆の与える圧迫感に六太は息を止める。
「そんなにきつくするな力を抜け」困ったような尚隆の顔。
無茶言うな、そんなことを言う余裕すら今の六太にはない。
息を荒くして自分の中をいっぱいにしているそれの圧迫に耐える。

43適当海神:2004/11/19(金) 23:53
自分を貫く尚隆の楔が、熱い。
「動くぞ」
「やっ・・待って無理・・・」
そんな六太におかまいなく尚隆は腰を動かしてくる。
尚隆のものをくわえこんでいるそこは一瞬きゅっと締まり、危うく尚隆は
そのまま精を放ちそうになる。ぐっとこらえ、また腰を動かす。
六太は尚隆のなすがまま貫かれ、喘いでいる。
その色づいた表情に尚隆は心を動かされる。
「は…あああ…あん」六太の鮮やかに色づいた唇から嬌声が漏れる。

44名無しさん:2004/11/19(金) 23:59
六太の肉棒も尚隆が自分に与える快楽に熱を持ち始めクッと上を向く。
六太の腰のあたりに熱い熱のようなものがあって、尚隆が突いてくるごとに
強く熱くぞくぞくと自分の感覚を支配してゆく

45失道:2004/11/20(土) 00:13
六太は寝台に横たわっていた。
がっくりと投げ捨てられたおもちゃのように横たわる。
力なく目を開けると、大儀そうに腕を支えにして上体を起こす。
「んっ・・」ぴくんと体が揺れる。
白いすべらかな双丘の奥のつぼまりからつっと精の残滓が溢れる。
それを見て六太は悲しい目をする。
それは自らの主が昨夜自分を押さえつけ体内に放ったものだった。
ばたんと扉が開く。顔を向けると尚隆が血に汚れた刀を下げて歩いてくる。
彼はもう飽きてしまったのだ、国を支え続けることに。
有能な部下もすべて殺し尽くし、軍を動かし、延国を滅ぼそうとしている。
なにかいたずらをする子供のような表情を見せる尚隆。楽しそうな色さえそこには
あった。
六太はそんな自分の主を悲しそうに見つめた。

46失道:2004/11/20(土) 00:34
民の嘆きがここまで聞こえるような気がする。
「街を一つ滅ぼしてきた」
六太の傍らに腰を下ろすと尚隆がつぶやく。
六太は胸がつぶれるような気がした。力のない民がまた、殺されてしまった。
失道の病が体中に痛みを走らせる。
寝台に突っ伏して苦しげに息を荒げる。
そんな六太を尚隆は、黙って見つめる。
その瞳からはどんな感情を宿しているのか読み切れない。
悲しいような、愛しいような、諦めのような、いろいろなものが複雑に混ざり合っている。
「俺は延を滅ぼす」
尚隆の言葉に六太が喘ぐ。
尚隆の手が六太の髪をひと掬いつかむと口づける。
「お前をおいては行かぬ、お前をほかの王になど渡しはせん。俺はお前を
つれてゆく。」
そう言うと六太の首筋に唇を這わし、体を乱暴にまさぐる。
「やめろ尚隆、今からでも遅くはない、前のように・・・」
尚隆の手に肉棒をつかまれ、息を飲む六太は終わりまで言えない。
慣れた手つきで六太の昂りを呼び寄せる、尚隆の手。
その大きな手の中に精が吐き出される。
はあ・・と息を荒げる六太の尻肉をぐっとつかみ割り開く。
ひくひくとしている蕾が露になり、尚隆はそこを舌で嬲り始める。
「うんっ・・」
反応するまいとしても体が言うことを聞かず、苦しみより快楽で息が荒くなる。
ずぶと尚隆の舌が蕾に入り込む。
「あうっ」ぴくんと体を揺らし六太は声を上げる。
尚隆は既に固くなった己の一物を取り出すと、六太の腰を押さえ、一気に
六太の中に差し込んだ。

47失道:2004/11/20(土) 00:37
民の嘆きがここまで聞こえるような気がする。
「街を一つ滅ぼしてきた」
六太の傍らに腰を下ろすと尚隆がつぶやく。
六太は胸がつぶれるような気がした。力のない民がまた、殺されてしまった。
失道の病が体中に痛みを走らせる。
寝台に突っ伏して苦しげに息を荒げる。
そんな六太を尚隆は、黙って見つめる。
その瞳からはどんな感情を宿しているのか読み切れない。
悲しいような、愛しいような、諦めのような、いろいろなものが複雑に混ざり合っている。
「俺は延を滅ぼす」
尚隆の言葉に六太が喘ぐ。
尚隆の手が六太の髪をひと掬いつかむと口づける。
「お前をおいては行かぬ、お前をほかの王になど渡しはせん。俺はお前を
つれてゆく。」
そう言うと六太の首筋に唇を這わし、体を乱暴にまさぐる。
「やめろ尚隆、今からでも遅くはない、前のように・・・」
尚隆の手に肉棒をつかまれ、息を飲む六太は終わりまで言えない。
慣れた手つきで六太の昂りを呼び寄せる、尚隆の手。
その大きな手の中に精が吐き出される。
はあ・・と息を荒げる六太の尻肉をぐっとつかみ割り開く。
ひくひくとしている蕾が露になり、尚隆はそこを舌で嬲り始める。
「うんっ・・」
反応するまいとしても体が言うことを聞かず、苦しみより快楽で息が荒くなる。
ずぶと尚隆の舌が蕾に入り込む。
「あうっ」ぴくんと体を揺らし六太は声を上げる。
尚隆は既に固くなった己の一物を取り出すと、六太の腰を押さえ、一気に
六太の中に差し込んだ。

48『台輔の勤め』1:2004/11/20(土) 02:49
姐さん方に触発されて自分も…。とりあえず氾×六です。



──気が重い。
六太は朝から滅入っていた。
今日はあれだ。他国からの賓客を迎えねばならない。
「あーあー…」
何度目の溜め息だろう、気の利いた官が書き留めてくれていたりはしないだろうか。
起きてからしばらく経つというのに部屋から出て来ない六太を迎えに来たのは。
台輔、と声をかけたのは朱衡だった。
「台輔。女官が待ち詫びて困っております。急ぎ召し替えにおいで下さいませぬか」
「…わかったよ…」
諭すような口ぶりでありながら明らかに有無を言わせぬ強いその声音に、
六太は諦めて渋々と臥室を出た。
「そう子供のようにすねられますな。これも台輔としての大切な、
いえ最も重要な仕事なんですから」
「…人事だと思って」
「人事ではありません」
麒麟事です、と真面目な顔をしてつらっと言うのが恨めしい。
「…尚隆は」
「主上もむくれて自室に閉じ籠っておいでです」
「……」
廊下を並んで歩きながら六太は更に顔を曇らせた。
─そりゃそうである。国賓を出迎える麒麟の役目はその接待係だが、
その内容は訪れる客の位によって大きく違う。ただ話をし宮を案内してにっこり帰す相手もいれば、
労いとして酒の酌をする立場にならねばならない相手もいた。
そして今回のような国賓─王である!─に至っては一分の礼も欠かぬようにしなければならないのであった。
この場合、訪問を受けた側の麒麟はホストというより、一旦己の王から離れ、
実質その王専属の側付として仕えるような状態となる。
そしてこの度訪れる王とはかの氾王であった。出迎えの瞬間から装いにも気を抜けない。
女官が慌てているのもそれが理由であった。とにかく念入りに装いを整える必要があるのである。

49『台輔の勤め』2:2004/11/20(土) 03:23
召し替えの部屋へ入ると女官らが駆け寄ってくる。
「──お待ちしておりました、台輔!さ、こちらにお掛け下さりませ!」
六太はのろのろと、言われるままに椅子に腰を掛ける。
「髪型はどのようにいたしましょうか…」
「そうねぇ…高く結って…ええ、上の部分を結い上げましょう。それから簪を二つ…いえ三つかしら」
「それよりこちらの髪を少し垂らした方が…」
などと女官らが鬣をいじりながら相談をするのを六太はじっと耐え、
もういっそのこと目を閉じることにする。
「羽織はどちらを合わせます?」
「帯と帯留めが…」
「やはりこの玉の色では着物の地がくすんで見えますかしら…」
目を閉じた六太がやがて訪れた軽い眠気にうつらうつらと夢現で聞いている間に
女官達の素晴らしい働きによってその見目はあっと言う間に美しく飾り立てられていった。



召し替えの済んだ六太の姿に官の誰もが息を呑んだ。
「……」
裾を軽く引きずりながら回廊を歩く六太は決まり悪くて仕方がない。
平伏する官が誰もがその前の一瞬、目を奪われ動きを止めるのである。
六太が無言で通り過ぎた後に上げた顔を見ればどれもこれも目を恍惚とさせ、
頬に赤みを宿している。言葉にならない溜め息が漏れるのを六太は後ろ背に聞いた。
「何と…お美しい…!」
「ああ…。あれほどに美しいお方は麟と言えどおられますまい」
「かように艶やかに変わられるとは…何とも…」
「私は昇仙する以前にあちこち国を回ったが…雁国、いや十二国広しと言えど
あれほどの美女を目にしたことはない…」
陶酔と称賛の囁きを、六太は眉をしかめながら遠くにした。



「──おやまあ、…──!」
再会した朱衡までもがそう言ったきりぽかんと口を開けたままであるのは少し面白かったが。
「…何も言うなよ」
だが、一応睨んでおくことにする。




すぐエチーにいくはずが…前振りが長くなってしまう…orz

50『台輔の勤め』3:2004/11/20(土) 03:51
「もうすぐお着きになるでしょう。正午と青鳥が申しておりましたから…」
その前に主上を叩き起こしてきませんと、と思い出したように朱衡が駆けて行くのを
六太は溜め息で見送った。
むくれている、と言っていた。無論氾王が苦手であるだけの理由ではない。
自分が彼の目の前で氾王にかしずくのを見たくないのだ。
「あーあ…」
──何で麒麟にこんな役目があるんだよ…。
二日前の晩に、いつものように尚隆に抱かれた。
彼は普段そうするように六太の体を愛おしむように指で、舌で愛撫した。
そして肉体の奥深くまで尚隆を受け入れ、六太は声が出なくなるまで歓喜の喘ぎを上げたのだ。
自分と尚隆は王と麒麟としてだけではなく、唯一無二の愛人として愛し合い、求め合ってきた。
…それなのに。
昨夜は有能な秋官長によって引き剥がされたのだった。
『…お肌に跡がついていてはなりませぬ故。万が一にも、台輔は完璧な状態で
氾王の御前にお出しするのが秋官としての私の勤めでございます』
…畜生人を仕出しか何かのように言いやがって。
温かい内に出すのに気を遣ったりするのは粥か汁物だけで十分だっつの!
胸の内で怒鳴るが、確かに致し方ないことだ。だからもちろん口に出して朱衡を責めることはしない。
彼は正しいのだ。
最上の待遇を以って出迎える相手。…そのもてなしの内容には伽も含まれ得るのだから。




今日はこの辺で…続きは明日にでも。
マイペースで更新します。早く終らせられるようにはするつもり。

51名無しさん:2004/11/20(土) 04:11
六太おめかしバージョンかわいい・・・

52突発海神:2004/11/20(土) 05:36
斡由は

53名無しさん:2004/11/20(土) 13:36
感想書いて良い? 盛況ですね。
「失道」…国を滅ぼすと決めてからお初(しかも陵辱)なさったということ?
     悪い熱にうかされたようなムードがよいですね〜。今までの平和な時期
     と対比して考えるとせつなくなります。
「台輔の勤め」…アヌメのいつもの服も好きなんだけど、違う服も見たいですよね。
     どなたかが描かれた本で「これだ!」っていう感じの洋装ろくたんを
     オクで見かけたけど買わずじまいだったのを思いだした。
「適当な海神」…もはや禁断症状が。斡由の活躍が楽しみ。
     つづきが無いので生殺し状態でもだえ中。つ、つづきぃっ…!

54『台輔の勤め』4:2004/11/20(土) 14:40
六太が一人待つ広間に憮然とした面持ちで尚隆が現れたのは、やっと正午に間に合うかという頃であった。
無言で広間に入ってきたその姿を認めた瞬間、声をかけようと体を少し浮かせた六太であったが、
着飾った自分を見ようともせず少し離れた所にどっかと腰を下ろしたその主の目が
完全に据わっていることに気付き、断念して元のように居ずまいを正した。
「……」
その様は完全にむくれている。
黙ったまま俯いている六太をちら、と尚隆は見上げた。
見慣れぬ格好をした己の麒麟。その艶やかな姿に目が釘付けになるのをかろうじて堪える。
何とも口惜しいほどに美しいのであった。
「…あいつの為に紅までつけているのか」
怒りを含んだ低い声に六太は顔を上げる。
「…仕方ないだろ。女官が勝手にこうしたんだ」
答えて六太は口をとがらす。
着物に合わせて、と薄い化粧を施されたことを思い出した。
頬に小さく丸く差された頬紅は六太の健康的な白い肌を艶やかに彩り、
明るい朱の口紅は小さく形の良い唇を濡れたように輝かせている。
可憐な花びらと言うよりは、肌にしっとりと咲いた鮮やかな梅の実のようである。
今すぐにでもそれをついばみ、味わいたい。その中に隠された紅い舌を己のそれによって引きずり出し、
口中にきつく捕え貪ることが出来たなら。
狂おしく掻き立てられる欲望が身体の奥からふつふつと沸いて出るのを
尚隆は行き場のない怒りに混ぜその心を熱くさせていた。
チッと短く舌を打ち、顔を背ける。
「大体、招いた覚えもないのに勝手にやってくるあいつの為に
何でおまえがそこまでせにゃならんのだ」
「知らねえよ…そう決まってんだから仕方ないだろうが」
誰が喜んでこんな役やるかよ、と六太は吐き捨てる。
「…こんな格好までさせられて」
まるで妓楼の女妓ではないか。誰がこんな典範を作ったのか。
そう思うと今更ながら天が恨めしかった。
「おまえがそんな格好せんでも美しいのは俺が一番良く知っておる」
見つめた主の顔はしかめ面のままであった。
「…来る途中官がどいつもこいつもおまえの話をしておったわ。
美しい美しいとな。──当然だ」
おまえにその匂うような色をつけたのはこの俺だ、と
尚隆は苦虫を噛み潰したような表情で言い捨てた。

55『台輔の勤め』5:2004/11/20(土) 15:43
「──お着きになりました」
その時、氾王到着を主従に知らせに官が広間に入ってきた。
「台輔、どうぞお出迎え下さりませ…」
そう言いかけて六太の方を見やった官も例に漏れず言葉を呑む。
「はぁ──…!…何とお綺麗になさっておられた…」
うるさい、言うな、と思わず一喝すると官は慌てて平伏し、急ぎまた出て行く。
「…じゃあ、行ってくる」
国賓の場合、秋官長や他の官は無論のこと、台輔が出迎えるのが基本となっている。
六太は呟いて広間を出て行く。尚隆は返事をせず、見送りの言葉の代わりに鼻を鳴らした。




六太が禁門に降りると騎獣は既に厩へ連れられたか、かしずく諸官の向こうに背の高い人物が一人見えた。
急ぎ、だが喧しい音を立てぬよう心を配りながらその前に近付く。
振り向いた朱衡が台輔、と声をかけた。
「…おやおや」
その声に、微笑みながら何事かを口にしていた氾王その人も視線をそちらに向ける。
「──遠方よりのお越し、痛み入ります」
そう言って目の前に膝を付き、両腕を重ねるようにして顔の前に上げた六太を
氾王は目を瞬かせて見つめる。
「いや、こちらこそ突然の訪問につき…煩わせたようだの。延台輔」
かような装いのお主に出会えるとは、と笑いを含んだ声が囁いた。
「…主上は広間にてお待ちです」
作法に則った遣い慣れぬ口調だが、その装いには実に良く似合っていた。
「そうかえ。では拝謁たまわるとしよう」
延台輔、これへ、と手招きする。
「はい──…え」
立ち上がった六太の金の鬣に指が触れた。と思う間も無くぐいと引かれ、その体が氾王の胸に寄せられる。
「ちょっ…!氾…」
「…まこと愛らしい形(なり)をしておる」
背に回された腕に抵抗する術もないままの六太の首筋に、氾王は顔を寄せ囁いた。
「ふむ…沈香か。伽羅かえ。雁にもかような質の良い上物があったか。…趣味の佳い女官がいるようだね」
耳の裏に唇が触れる。六太はぴくりと反応を返したが、氾王が
己につけられた香について言っているのはわかった。
「…お主の持つ香りと良く合っておる」
笑う囁きが肌をくすぐり、六太は身を捩った。
ふふと氾王は笑う。
意外であった。子猿子猿と思っていたが、装い一つでこのように艶やかに変わる子供であったか。
──悪くない。
久々に食指が動くのを感じていた。

56『台輔の勤め』6:2004/11/20(土) 16:33
設定がパラレルに近いので説明をば少し…今更orz




実のところ、氾王が雁を訪れるのはこれが初めてではない。
それならば六太が身なりを整えるのも初めてではないかと言えばそうではなかった。
早く言えば訪問の手続きが違うのである。
通常訪れる時は青鳥で親書を交わしたり、または前もっての口約束によるものであったりするのだが、
その場合は受け入れる国側の態勢もその相手国との普段の関係に準じたものでよい。
だが、今回何を思ったか氾王は正式な手続きを踏んだ。
数ヶ月前から雁に日取りを申し入れ、可否を問うた。
典範に則った文書を製作し、何度かやり取りをする。
訪問の理由は国間の貿易に関する協議となっている。
…が、特に緊張をもたらす懸念が浮上したわけでもなく、氾王の性格から察するに
ただ気まぐれに思い付いた戯事に過ぎないのであろう。
『──たまにはこういうのも良かろう?』
文書とは別に送られてきた青鳥は笑いを含んだ彼の声を伝えたから、まず間違いはない。
暇な奴だと尚隆は毒づいたが、さりとて断る理由もなく、無論そうすることは安易に出来ることでもないのであった。
全く、氾王からすればただの暇潰し程度の遊戯であった。
雁国の正式な歓待にふと興味を持ったというのもあるのだが、正直互いの宮の性質はすっかり見知っている。
武骨な官に質素な宮である。正式である故最上のもてなしと言えど、そこに期待などはしていなかった。
つまり、まことただの余興のつもりだったのである。
──だが。
そう思って訪れてみればやはり普段と全く異なる正統な歓迎には目をみはるものがあった。
出迎えの官の数も典範に参考として記されている数を遥かに越え、
服装も皆氾王に気を配った、雁の官にしては彩りの良いものを身につけている。
雅を解さぬ山猿の国だと思っていたがやはりそこは大国、正式な場での心得は見事であった。
もっとも、そこは王の器というより秋官長朱衡の有能さを見るべきであろう。
そして、軽い驚きは台輔の登場によって頂点を見ることとなった。
出迎え、訪れた王を接待するのは台輔たる麒麟の役目となる。
あの子猿がどう出るか、とは思っていたのだが、まさかこのように現れるとは。



「…一本とられたわ」
氾王の少し先を案内しながら広間へ向かってしずしずと進んで行く六太の後ろ姿に、
笑いながら氾王は呟いた。

57『台輔の勤め』の中の人:2004/11/20(土) 19:15
>53
感想ごちそうさまです。
六太に思い切り着飾らせ綺麗にしてみたいという歪んだ欲望の産物です…。
もちろんアヌメはアヌメで可愛いんだけど。でもたまにはパンツスタイルじゃない彼を見たいなと…。



「失道」と「適当海神」の続きはまだかなー。
かなり萌えなんですが姐さん方ー!!
ハァハァ(*´Д`*)

58名無しさん:2004/11/20(土) 20:33
微妙に鬼畜王楽俊が笑えて楽しかった
悪役ネズミ・・最高だ
さて六太ちゃんは氾王様にこれから何をされてしまうのかしら
楽しみ

59海神適当続き:2004/11/21(日) 00:39
尚隆の楔が六太を貫く
「ああっはあ・・・ああ」
その細い腰をすりつけて声を上げる六太。その紫の瞳からは涙がこぼれ
金の透き通るまつげを濡らす。
あまりにも淫微な神獣の姿に、尚隆の劣情は強く刺激され、自分がその獣の快楽を
支配し、その中を蹂躙していると言う状況がますます昂りを呼び寄せる。
六太の幼い肉棒がこらえきれずに精を放つ。
「っ・・・」
悲鳴のような声を上げて果てた少年の中を貫く尚隆の昂りは衰えることを
知らずますます熱を持ってその中を蹂躙し続ける。
荒々しい尚隆の欲情の波に翻弄され、六太は力なくなすがまま受け入れている。
つっと口から糸を引く唾液にもどうすることもできず、ぼんやりした瞳は
透明な涙を流し、金の睫毛を煌めかせる。
そんな己の姿がどれだけ人の劣情を煽るか、無邪気にも知らない。
六太のすべらかな白い足を抱える尚隆は、一度浅く自分のものを抜くと
ぐるっと六太の向きを変え、うつぶせにし、腰を抱えた。阻止と足を
ぐっと割り開き、深く深くその昂りを差し込むと、強く腰を動かし楔を強く
体内に打ち付ける。
尚隆の目に、白く突き出された双丘があり、その奥のひくひくとうす桃色の
蕾が自分のものをくわえ込んでいる。その蕾の主は眉を寄せ、苦しいのか
快楽に狂いそうなのか分からない上気した顔で喘いでいる。
金の髪は光を放ち、暖かさを持って揺れて、白い肌に散っている。
扇情的な、これほどまでに美しい姿を見たことがない。
尚隆は六太の腰を強く押さえぐっと深くつき込むと
その熱い六太の体内に精を放った。
「あうっ・・」
びくっとろく太の体が跳ねるが、尚隆の力からは抜け出せない。
押さえつけられ深く結合したまま、熱くほとばしる精を注ぎ込まれた。
「ひ・・ああ・・」
喘ぐ六太は涙を流し凄絶なまでに妖艶な表情を見せた。
六太の腰の辺りに甘い甘い感覚がはじけ、すっと高いところから落下するような
感覚が生まれた。
そして体中の力が一気に抜け、尚隆に後ろを挿し貫かれたまま、
快楽に翻弄されぐったりと六太の力が
抜けた。
六太は体を震わせると、しよろしよろと小水を漏らした。
恥ずかしさに息が止まりそうになるが、体に力が入らずどうしようもない。
尚隆に見られていると思うと、さらに自分の失態がいたたまれない。
下に敷く尚隆の上着を濡らすそれは細く注がれ
恥ずかしさに体を震わせる六太はどこか快楽をこらえている風情にも見えた。
尚隆はまだ六太の中に入れたまま、珍しいものを見たと帰って楽しげな顔すら見せた。

60名無しさん:2004/11/21(日) 01:25
>58
ありがとう。
そっか、ムリに猟奇にしなくてもお笑い路線という手もあるな。

61名無しさん:2004/11/21(日) 01:26
おもらし六たん・・・(*´Д`)ハァハァ
まさに聖水ですな。
「失道」と「氾六」も首を長くして待ってます。

62名無しさん:2004/11/21(日) 02:14
聖水って・・・姐さん、尚隆(オヤジ)化進んでまっせ 笑

63麒麟ちゃん2匹:2004/11/21(日) 07:38
泰騏は訪れた六太をで迎えた
「延台輔、いらっしゃいませ、よくおいで下さいました」
ちょこんと頭を下げる仕草が愛らしい。
六太は微笑んで「遊びに来たぞ、ちび」
と、にっと笑った。
六太は泰騏の遊び相手としてよく戴を訪れていた。
「今日は何をして遊びますか」
「そーだな、川で水遊びでもするか」
二匹ではしゃぎながら川へ向かう。
二人は服を脱ぎ捨てると川へ飛び込みきゃらきゃら笑いながら水をかく。
六太は泰騏に対してはお兄さんぶって「深いところへは行くなよ」
など声をかける。尚隆が見たら吹き出しそうな光景だ。
ひとしきり泳ぐと、陸に上がり草の上に寝転んで冷えた体を温める。
裸で寝転ぶ二人の子供は指令に見守られ安心しきっている。泰騏はふと
すやすやと寝息を立てて横たわる六太の足の付け根に虫が張り付いていた。
泰騏はそれを六太が目を覚まさぬよう気をつけながら払いのける。
ふと泰騏は六太の後ろの窄まりに目を向ける。
かわいらしいぽつんとしたその穴に、ふと指を入れてみた。
ツプッと泰騏のかわいらしい指が沈み込む。
六太はんっと声を微かにあげたが目を覚まさない。
泰騏はなんだか楽しくなって、今度はその窄まりを舐めてみた。
「うん・・・」六太が身をよじる。六太の反応が面白くて
もっと舐めてみる。
そうすると六太の前の部分が形を変えて大きくなってきた。
ますます面白くて、今度は前のそれを舐める泰騏。
流石に変な感じに目を覚ました六太は、泰騏が自分のものを舐めているではないか
「泰騏!!なにやって・・あっ」
もう、抵抗できないほどそこは反応している。
泰騏はお兄さんとして自分を導く六太が自分の行為で反応する姿が楽しくて
舐めることをやめない。
「あっ・・・やめっっはあっ・・」
喘ぐ六太、涙目になった六太を見て、自分がいたいことをしてしまったのかと
勘違いして泰騏は舌を離す。
中途半端なところで放り出された六太は涙目で喘いでいる。
「延台輔、大丈夫ですか、ごめんなさい痛くするつもりはなかったんです
しっかりしてください」
本気で心配する泰騏に怒るに怒れず、六太は自分の昂りをどうしたらよいものか
これまた子供故知識もなく分からない。
自分の腰が熱を持ってそれがじんじんする。
つらいけど甘くてだけど持て余す。
泰騏はそんな六太の姿が艶めかしく感じられてどきどきしている。
上気した桜色のほほや潤んだ瞳、金の鬣が白い肌に散って光をはじく。
大人であればその泰騏の気持ちがどんなものか分かっただろうが
、子供である泰騏にはこの気持ちが何なのか分からず、素直に感動している。
「僕驍宗さまを呼んできます。驍宗様ならなんとかしてくれます」
駆け出す泰騏。黒麒麟に転変して風のように翔てゆく。
残された六太はじっとうずくまって体の熱に耐えていたが、だんだんと
それが収まってきてほっとした。
「なんだったんだよ、もう」
泰騏は驍宗に涙声で六太の様子を訴える。
後にそこにいた人々全てが「あれほどこまった主上のお顔を初めて見た」
と言っておかしそうに笑った。
李斎だけは、一応笑いをこらえていたが。影で大笑いしていたことを
驍宗は知っている。

64『台輔の勤め』7:2004/11/21(日) 16:37
広間に入ると尚隆が長卓に頬杖をついていた。
「…氾王がお見えになりました」
やはり遣い慣れぬ言葉で主に氾王を通す。全て儀礼なのだから仕方がない。
「よぅ…」
椅子に腰をかけたままの体勢で尚隆は目の前の男をちろりとねめつける。
「機嫌が良くないようであるな、台輔の主は」
「…尚隆!」
六太が非難めいた声で主をせっついた。いくら腹が立とうが面白くなかろうが、儀礼を済ませねばならない。
尚隆はやっと立ち上がり、いかにも不愉快な顔でよく参られた、と言った。
ふ、と氾王が愉快気に面を崩す。
「いかにも。よく来たよ。歓迎の意、有り難く頂戴いたした」
尚隆は無言で席を掌で指す。では、と腰を下ろす前に六太が近付き、その椅子を軽く引いた。
氾王はその顔を見、笑んだ。
「…かたじけないね、台輔」
氾王を席に着かせた後、六太も彼の横、尚隆と氾王の間に少し引いて置かれた椅子に腰を下ろす。
はあ、と最初に声を出したのは六太だった。
「…あー、喉渇いた。ったくさぁ…」
参った、と言って目を瞑り天井を仰いだ六太に、声を上げて笑ったのは氾王。
「驚いたわ。あの子猿が見違えるものよ。常よりそのように気を遣えば良いものを」
「ひー、冗談じゃねえよ。肩は凝るわ鬣は突っ張るわ…。簪の先は刺さるし」
席に着かせる、ここまでが儀礼であった。
かしこまった口調から解放された為か六太はやや饒舌である。
「──して、用向きは何だ。本当に何か国貿に問題があったわけではあるまい」
溜め息と共に低い声が割って入った。
「それとも何か目新しい提案でもあるか。
細工の技術が落ちたのでこちらの関税を上げて構わぬとかな」
「…お主も余興を解さぬ男よの。そう下世話に金の話かえ。皮肉にもなってはおらぬがの」
氾王はちろりと横目で尚隆を見やり、その細い眉をしかめてみせた。
「…何が余興だ…。その余興ごときに振り回されるこっちの身にもなってみろ。
嫌味の一つや二つや三つや四つ、言いたくもなるわ」
あまりにも不機嫌なその様子に、氾王は面白くて堪らぬといった面持ちで軽い笑い声を上げる。
「ほほ…成程の。そうだね、お主は面白くないだろうね…」
優美な目の動きでちらりと横の六太に視線を流す。
「私の為に、あの延麒がこのような姿をしているのだからねえ」
それを見られただけで今回の訪問の収穫があったというもの、と笑いを含んだ声が続いた。
「…では用は済んだだろう。さっさと帰れ」

65適当海神続き:2004/11/21(日) 18:00
麒麟は臣下ではあるが、尚隆を王にしたのは自分である。そう思って、尚隆と対等
にふるまい苦言を呈したりもしてきた六太である。それなのによりにもよって、小水
をもらすなどという、いかにも幼い姿を見られてしまった。六太はやり場のはい羞恥
に真っ赤になった。しかも今日はさんざん恥ずかしい姿を見られている。というか、
今現在、後ろには尚隆のものを入れられ、つながったままで…。
 尚隆のほうは、やり過ぎか、と思いながらも自分を抑えられずにいる。なんといって
も六太は今日初めてこのような経験をしたのだ。初めてだというのに、最初は妙な
蔓植物のようなもの、しかも衆人監視のもとで。その後、既に幾度となく主の
たくましい腰をうちつけられて…。
 しかし幼形の麒とはこういうものなのか。尚隆に突かれ続ける部分は何故か自然な
潤いがあり尚隆を誘う。そればかりではない。ここまでの尻の形の良さは尚隆も見た
ことがない。一瞬にして男を誘う、このような行為のために生まれたかのような体。
突かれるたびに上げる可憐な声。信じられないほどの感じやすさ。
しかしこれらを全て誘拐者たちにも見られてしまったのだ。
彼らとてこのままは引き下がらないだろう。あの六太の淫靡な姿は麻薬のように
彼らの劣情を刺激し続けているにちがいない。

66海神適当:2004/11/21(日) 19:34
「んっ」六太の体がぴくんと跳ねる。
六太の中に入ったままの尚隆がまた固く大きくなっているのだ。
つながったまま、尚隆はまた腰を動かす。
「あっ・・はあっああん」
六太が喘ぐ。紫の瞳から金の睫毛を伝い涙が溢れる。
その口からは涎が一筋糸を引き、乱れた様が美しい。

67海神適当:2004/11/21(日) 19:58
「も・・やあ・・」
息も絶え絶えに六太が抵抗する。
「駄目だ御漏らしなどしおって。おしおきをせねばな」
そう言うとぐっと六太の中にその他かぶりを打ち付けた

68海神適当続き:2004/11/21(日) 20:09
六太はもはや自分の置かれた状況にまで頭が回らなくなってきていた。
ただただ熱くて、苦しくて、でも尚隆に触れられるのがたまらなく嬉しい。
それが本能からなのか、六太自身の感情からなのかは判然としなかったし
それを考えるような余裕は六太にはなかった。
「あ、あ、あぅ…ぁっ」
尚隆が腰を打ちつけるたびに、痺れ疼く感覚が背筋を這い上がり
嬌声となって口から漏れる。

69名無しさん:2004/11/21(日) 21:14
適当海神続きを書いてる姐さん
楽しいです
もっと書いて

70名無しさん:2004/11/21(日) 21:27
尚隆は己の昂りを何度も六太の中に放つと
やっと自分の放った精を溢れ零すその窄まりから
ずるっとそれを引き抜いた。
六太は息を荒くして、ぐったりと横たわる。
動く力も残っていない。
そんな六太を見て、満足げな笑みをこぼすと、軽く服を直し、「待っておれ
羇獣を連れてくる。」そう言うと尚隆は早い身のこなしで去っていった。
残された六太は遠ざかる王気に微かな寂しさを覚えたが
体を休められることに安心してホウッと息をつき、目を閉じた。
そんな六太を木の陰から、更夜が見ていた。

71海神適当続き:2004/11/21(日) 21:33
六太はいつの間にか気を失っていた。
更夜が炊いた香が六太の意識を奪う。
ぐったりした六太を更夜が抱える。
ふと更夜は六太の白い体に、花びらのような痣が散っているのを見つける。
それを見て少し顔をしかめると、わざとそれらから目を離し
六太を妖獣に乗せて連れ去った。

72海神適当続き:2004/11/21(日) 21:51
六太が目を覚ますと、何やら薄暗い寝室のようなところにいた。
自分は寝台の上に横たわっている。香が強く焚かれその甘ったるい匂いに
頭がくらくらした。
「尚隆?」
おそるおそる呼びかけるが返事はない。
ここはどこだろう、誰かいるのか。
香がきつく考えがまとまらない。
いつの間にか薄い少し透けた衣をまとっている。
さらさらと体を滑る感触がくすぐったい
透けた布越しに白いからだがぼんやり浮かびほのかな淫猥さがある。
ぼんやりとあたりを見回して、寝台から下りようとするが
動こうとすると、腰がびくんとうずき熱を持つ
「なに・・これ」
自分の体がおかしな感じになっている。どうしたことか考えるが
きつい香が思考を妨げる。
「うんっ・・」
腰にうずきを感じ六太の白い体が跳ねる。苦しい。この熱をどうにかしてほしい。
六太自身は熱く昂り、じんじんとしびれる。
苦しい。誰か、助けてくれ。
喘ぐ六太の前に更夜と斡由が姿を現した。
「お・・お前たちは」
「何とも見苦しい様だな、台輔。浅ましいにもほどがあろう」
六太は顔を赤くした。
その初々しい様に斡由の情欲はかき立てられたが、それを隠し、六太を見て
軽蔑したように笑った。
「その昂ったものはどうしたと言うんだ、全く我らが台輔はとんだ淫乱だ」
六太は恥ずかしさに消えてしまいたいと思ったが、体の火照りは勢いを増し
六太のそれは先端から先走りを零し始めた。
「あ・・見るな」
喘ぎながら涙を零し絞り出すように言う六太に、斡由は己のものを固くした。

73海神適当続き:2004/11/21(日) 22:07
六太は熱に浮かされ、香の甘い煙に意識を半ば奪われ、
朦朧としている。
「台輔、おつらそうですね。私が助けて差し上げましょうか。」
にやっと笑うと斡由は六太の衣をたくし上げその震えて雫を零している可憐な
それと、白くすんなりした足をむき出しにした。
「やめろ、あっ・・」
斡由は六太のそれを口に含むと舌を使って嬲り始めた。
「はあっ・・」
求めていた快楽を与えられ、六太はぞくっと体を震わせた。
達するかと思われた瞬間、斡由はそれを口から抜く。
六太は中途半端に刺激を受け腰が浮き立つような感覚に苦しむ。
「苦しいのでしょう」
こくんとうなづく。
「ではお願いしなさい。うんといやらしい仕草でね。私を誘惑して
その気にさせることができたら続きをしてやりますよ」
斡由は陰険な目つきてにやにやと笑う。
そんなことできる訳がない。
だけど苦しい。気が狂いそうだ。もう我慢できない。
朦朧とした意識の中、羞恥に震えながら六太は斡由に背を向ける。
そして震える手で二つの白い丘を割り開きひくつく蕾を斡由に晒すと
「ここに入れて・・」と消えそうな声を絞り出す。
「何を?」
意地悪く斡由が問う。六太は流石にそれは言えない顔を赤くしたまま俯く。
だが体のうずきは堪え難く六太を責めさいなむ

74海神続き:2004/11/21(日) 22:19
だが斡由自身のそれも限界だった
六太の痴態に既に弾けんばかりの大きさに膨張したそれを
六太の可憐な窄まりにぐっと差し込んだ。
「ひいっ・・」悲鳴のような声を上げて六太が涙を流す。
香の淫力で六太の体はコントロールがとれなくなっていた。
だがそれでも、自分の王以外のそれを受け止めてしまい快楽に溺れる自分の
浅ましさが恐ろしく、悲しかった。
六太の体は意志に反して腰を振り、斡由のそれをくわえ込み、締め付ける。

75海神続き:2004/11/21(日) 22:53
斡由は夢中で六太の中を突いた。かつて得たことのない快楽に口から呻きを漏らしながら、腰を振る。
「…っ…何という…体だ…絡みついて…堪らぬ…っ…!」
その顔は恍惚としている。

76海神続き:2004/11/22(月) 00:35
その桃色の蕾の内部はえも言われぬ快楽をもたらす場所だった。
その持ち主である少年も、腰をつかまれ挿し貫かれながら
ほほを薄紅に染め凄絶な色香を放つ。

77海神続き ひゃっほぅ:2004/11/22(月) 00:35
(これが麒麟というものなのか…)
夢中のうちに果てた斡由であったが、次なる劣情がこみ上げてくるのに時間はかから
なかった。通常では考えられないほどに己の精が増強される感覚。さすがにこの子供
は人間ではない。これほどの快楽を与えてくれる存在がこの世にあったとは。
 六太は後悔に苛まれていた。王以外の人間の精を受け入れてしまった。だが、体が
いうことをきかないのである。あさましいほどに求め続ける。
 一度抜かれたものが再び入り口に押し当てられた。
「あ…だめっ…」
今度こそ避けねばならない。六太は必死でそれをよけた。
「ふん、生意気な尻だな。男をそそっておきながら逃げるとは」
斡由は六太の切なげに逃げる腰をがしりと掴んで捕まえると、キュンと上がった双丘
を両手で揉みしだく。
「だめっ…もう入れたらだめなんだっ…もうこれ以上…あ・・あうっ…
 お前はっ……あ、…王、・・じゃ・・ないからっ…あんっ…いやぁ!…だめっ」
そんな抵抗の言葉を楽しむように斡由は己の肉棒の先で六太の可憐な蕾を追い詰め
つつく。じらすように間をおきながら。逃げおおせたと思えばそれの先があたる。
必死で腰をよじって避けようとする六太は、艶めかしく扇情的に過ぎた。

78適当海神:2004/11/22(月) 00:40
肉棒の先が入り口を掠めるだけでも感じてしまう。
でも尚隆以外を受け入れたくはなかった。快楽を求めたい感覚を己のただ一人の主の
ために必死でこらえる。

79名無しさん:2004/11/22(月) 00:45
金の睫毛に涙をにじませ、うわごとのようにつぶやく
「尚隆・・・」
自分のものに貫かれながらほかの男の名を呼ぶその聖獣を、斡由は怒りに
任せて深く差し込む。そしてその昂りを一気に内部に放った。
「ああ・・」
うめき声を上げる六太からそれをずるりと抜き取り怒りに燃えた瞳で
忌々しく見つめた。
まだ香の力で六太は朦朧としていた。

80名無しさん:2004/11/22(月) 00:47
バッティングすんません。姐さんつづき頼んます。
ひゃっほうにやられちまった

81海神続き:2004/11/22(月) 00:56
斡由の手が強く六太の腰を捉え
その肉棒の先がぐにゅと蕾を割り開く。
その先端をくわえさせられた六太の体はその先の刺激を求めてわなないた

82延、冬:2004/11/22(月) 01:16
寒い延の夜。
六太は暖を求めてこっそり尚隆の寝室へ忍び込む。
ばれないようそーっと尚隆のそばの布団に潜り込んだ。
尚隆はよく眠っている。気づいていない。
いたずらをやり遂げたようににっと笑う六太に
「今夜は冷える。もっとよれ」
と尚隆が声をかける。
あっさり気づかれていたのだ。
尚隆がこちらにくるりと向くと、六太に布団をかけてやる。
何とはなしに悔しい六太に尚隆が優しく笑った。

83名無しさん:2004/11/22(月) 01:21
ひやっほう萌え
たまんねえ

84名無しさん:2004/11/22(月) 01:24
うわ、新しいSSだー! 
麒麟2匹も良かったです。チビ相手でも受けだなんてロクタンって…。

85てきとー海神祭り♪:2004/11/22(月) 01:39
「や・・・やめて・・・っ」
体は貪るように快楽を求め、心はここに居ぬ主を求めて悲鳴を上げる。
「・・も・・やだっ・・・しょうりゅう・・っ」
肩を震わせながらポロポロと涙をこぼす六太の姿は、斡由に新たな強い嗜虐性を呼び起こす。
誰よりも高貴で尊い存在の麒麟を、手中に収め好きにいたぶる今の自分に斡由は酔った。
「あ・・やっ・・いやあぁっ・・」
再び勢いを増した自身を小さな蕾に押し当て、一気に体を刺し貫いた。
待って居たかのように疼く体内と、主を求めて悲鳴を上げる心とその声が響き渡る。

86名無しさん:2004/11/22(月) 01:41
待ってました!優しい尚隆!!
その優しさで六太を酔わせてイかせてぇぇぇっっ

87延・冬:2004/11/22(月) 06:33
子供は体温が高いからな、こういう冷える夜は重宝する。
言いながら尚隆は六太を抱きしめる。
俺は湯たんぽじゃねえぞ。文句を言いながらも、王気が心地よい。
尚隆の広い胸に安心してほほをすりつける。

88『台輔の勤め』8:2004/11/22(月) 16:43
「尚隆…。身も蓋もない言い方すんなよな」
さすがに六太が口を挟む。一通りの儀礼が済んだからとは言え、今回はいつもとは違う形の訪問であることには違いない。
今の六太の立場は台輔として氾王接待の筆頭である。
無礼な行いは主と言えど抗議せねばならなかった。
ふん、と尚隆は横を向く。まるですねた子供のような態度はしかし、六太を少し感動させてもいた。
いつもこのような態度をとるのはどちらかと言えば自分の方だ。
それが今は違う。
尚隆が自分のことで他の誰かに嫉妬して、あからさまにそれを表に出しているなんて。
少し嬉しい。
「さてね」
氾王がくすりと笑った。
「せっかくのもてなし、早々に帰るというのも場が悪かろう。
──何、安心いたせ。お主に相手してもらおうなどとははなから思うてはおらぬ」
尚隆は訝げに、その優美に整った顔を見る。尚隆のこの態度を目にしても氾王の機嫌は良い。
もともと、美しく、趣味の良いものが彼の感情を左右するのだ。
氾王は六太を見ると優雅に笑んで立ち上がった。
「──台輔、お付き合い願えるね。さよう…ここの庭などゆるりと眺めたことがなかった故、案内を頼もう」
恐らく茶席の用意も済んでいようぞ、と六太に問う。
「ああ、うん。多分…庵の方に」
「では一巡りしたのちにそちらで碁など交えるかえ」
かつてなく優しげにゆるりと微笑んだ氾王に促されるまま、六太も席を立った。
後ろ髪引かれる思いで並んで広間を後にしながら、ちらりと主を振り返る。
彼は先程と同じようにふてくされた顔で頬杖をついていた。
「…やれやれ、あの顔に宵の宴まで会わぬでいいと思や、少しは気も晴れたわ」
皮肉めいた氾王の呟きを六太は無言で聞いた。

89海神続きmore kiticlly:2004/11/22(月) 17:49
その時、部屋の外から声が上がった。
「おとりこみ中、失礼します。連れて参りました」
斡由は荒い息の中それに答える。
「よし、通せ。お前たちも全員入ってこい」
その声に答え、家来達が入ってきた。かなりの数である。そして彼らがひったてて
きたのは尚隆であった。今度は厳重に縛り上げられている。
斡由に命じられ部屋に明りが灯される。
「しょ、尚隆!」
「六太っ」
そんな二人を見て斡由はほくを笑む。
「さあ、お前達、この風漢とかいう男をひっぱたけ。そして最後には首か胴を断つの
だ」
「やめてくれ!」と六太は夢中で叫んだ。
「ふん。では代わりに台輔がなんでも引き受けてくれるというわけですね。何回でも
やらせてくれる。そうでしょう? 私だけでなく、家来の全てにもね。私は家来達
を大切にする主義なのですよ。この快楽を皆にも与えたい。そしてさらに、その後、何を
されてもよいでしょうな。全て風漢の見ている前でね」
言葉が終わらぬうちに家来の一人が尚隆をおもいきり殴った。
「やめて、やめてぇ!」
「次はもう胴を断つ準備をしてよいぞ」
「だ、だめだっ。おれには何をしてもいい。だから尚隆にはっ…!」
そこに尚隆の声が割って入る。
「俺を殴れ。胴を断て。ただ、約束してくれ。その子にもう触れないと。更夜とやら、
お前、証人になれるか。お前の妖術なら証しで六太を守れるだろう?」
尚隆は真剣な眼差しで更夜を見る。

90海神続きmore kiticlly:2004/11/22(月) 18:02
斡由は言う。
「ふん、お互いをたすけようと美しい主従愛ですね。まあ、あなた方の場合、性愛が
入っていますから単なる主従愛とも違いますが。更夜、その必要はないぞ。私は台輔
の言のほうを重んじることにするのだから。さあ、風漢、いや主上。あなたのその目で
しっかりご覧になって頂きたい。あなたの何より大切な美しいものが私や家来たちに
蹂躙されて、よがり声を上げ腰を振るさまを。そして、その後は台輔の美しい顔も
玉の肌のしなやかな体もえぐって傷だらけにして原型をとどめないようにしてさしあげ
ます。もちろん小さく愛らしい尻の蕾もね。抉り取って大きく広げてしまいましょう。
二度と主上がお楽しみになれないようにね。これだけの名器はもったいないが、あな
た一人を楽しませておくのは私は我慢がならないのですよ。醜く夜のお相手の役にも
たたなくなった台輔を連れてどうぞお帰りになって下さい。私は謀反人とし断罪されて
も本望ですから」

91海神続き ちょこっと純愛編:2004/11/22(月) 18:22
すると、尚隆は意外な顔をした。この状況で、ふとかすかに笑ったのだ。
「…言っておくがな」
さすがに苦しそうな息の下、小さく、だがはっきりとした言葉を投げる。
「俺はそいつがどんな姿になろうと、気持ちは変わらん…俺はそいつに、惚れているのだからな」
見た目に意味などない、と尚隆は言った。

92海神続き:2004/11/22(月) 18:28
「六太にさわらないでくれ!」
「いいんだ、尚隆。おれはどんな姿になっても。尚隆が生きていてくれれば、それで
いいんだ」
「ふん、台輔。台輔は醜くなったことがないから、今後のことがおわかりでないのかも
しれないですね。常世一の美貌から常世一の醜い生き物に成り下がる。そうなれば
誰も台輔を愛さないでしょうね。王でさえも。その体も二度と誰も抱こうなどとは
思わなくなるのですよ。淫乱なあなたがいくら尻を振って誘うような声を出してもね。
そのかわいい尻も抉って醜くしてしまうのですから。あなたは今後どのようにお暮らし
になるやら。オトコ無しで淫乱な体がもちますまい」

93海神続き:2004/11/22(月) 18:31
うわ、バッティングすまぬ…

94名無しさん:2004/11/22(月) 18:33
どなたか両方をいかして上手くつじつま合わせて
続きお願いしたく…

95名無しさん:2004/11/22(月) 18:47
ええと、91と92を逆の順番にし、私の92は1行目と、2行目の「いいんだ尚隆」
を削れば、なんとかつじつま合いますね。

96海神適当続き:2004/11/22(月) 19:18
斡由は、二人を脅しつけながらも、それを実際に
やり遂げる気持ちはさらさらなかった。
六太の体を一度味わってしまったら、それを忘れることはできない。
尚隆を殺し、六太は地下につなぎ自分一人の玩具として
仙の長い寿命を持って、味わい尽くすつもりだった。
だが自分をコケにした尚隆には仕返しをせねばならない。
六太がほかの男に蹂躙される様を見せつけてやろう。

97名無しさん:2004/11/22(月) 19:34
六太は俯き泣いていた。こんな状況では聞きたくなかったけど。
惚れてる―。この世にそんな嬉しい言葉が有ったのか。だがそれは、尚隆が発した言葉だから。
もう、それだけで十分だ。

「…そんな泣かせる台詞は、事が全て終わるまで取って置いて頂きましょうか。
果たして醜く変貌した台輔を前に、そんな台詞が出てくるやら…」
そう言い、尚隆の顔を蹴ろうとしたが、その脚が止まる。
「ああ、貴方も女が寄り付きそうな良い男振りをしておられる。…そしてこちらも」
蹴ろうとして止めたその足で、尚隆のものを軽く踏み付けた。そして大仰に驚いてみせる。
「流石は、王だけの事はありますな」
芯を突く痛みにギリ、と唇を噛む。気違いが、と睨め付けるが斡由は意に介さない。
その瞳は限り無く虚ろであった。
―もう、軍が動く迄どうにもなるまい。
尚隆は六太を見据える。これから数々の男達に輪姦され精を受け、麒麟としての矜持など
粉々にされるであろう六太を。
「…六太。今からお前がされる事、お前の身に起こる事、全て目を逸らさず見届ける」
全て受け入れてやる、何もお前の身が穢れる事は無いのだから、と言外にそう言う。
その意を受け取ったのか、六太は顔を伏せ小さく頷いた。
その様子がまた斡由の癪に障る。
この後尚隆は殺され、六太は自分の性具になるとも知らずに。

斡由は家来達を振り返り、軽く手を上げる。
「主上のお許しが出たようだ。お前達、台輔に日頃の労を労って頂け」

98海神続き:2004/11/22(月) 20:58
体に引っ掛けただけの薄い絹は瞬く間にはぎ取られ
六太は白いすんなりした体を晒された。
そして家来たちは六太の腕を押さえつけると
足をつかみ大きく割り開く。
ひくんと六太自身とその後ろの可憐な少し湿った蕾が
男たちの目に晒される。
「やめろ・・」抵抗するが、その強い力には敵わず、六太を押さえる家来たちは
その艶かしいからだが、揺れて抵抗する様に情欲をそそられ、つばを飲み込む。
皆このような艶かしい体を見たのは初めてだった。
更夜の炊く香が甘く、六太の思考を妨げる。
黄海でとれる麒麟にのみ効き目のある高価な媚薬。
体が痺れる。
「ん・・・」
ぴくんと反応する六太の体を男たちが見下ろしその目に情欲をにじませた。

99名無しさん:2004/11/22(月) 21:18
だが、家来たちの中で動ける者は居なかった。
人の扇情を煽るような痴態を晒しながら、なおその瞳の輝きを失わない台輔に、
自然畏れの念が湧く。
家来達が、皆で顔を見合わせたまま動かないのに剛を煮やした斡由が怒り叫ぶ。
「意気地無しどもめ!!この身体を見て抱こうともせぬなど、此処は不具者の集りか!?」
「もうやめろ斡由。」
六太がつぶやく。
「お前は数十年前の荒れた雁を忘れたのか?王である尚隆を殺せば、またあの頃に逆戻りだ。
俺はどうされても良いから、お前のしたいようにすれば良いから、尚隆手出しはしないで・・」
言い終わらぬうちに斡由の掌が六太の頬を強くぶつ。
「何と・・何処まで慈悲ぶかいのやら!!お言葉通りずっと俺の性奴になって頂こうか?」
叩かれてうつ伏せた六太の腰を後ろから掴むと膝だけを立てさせて、準備のまだ整わぬ身体に請求にに己の猛ったモノをねじ込んだ。
「うっ・・ああぁっ・・・・・」
苦しげに呻く六太にかまわず、強く深く何度も腰を打ち付ける。

100ええかげん海神:2004/11/22(月) 21:30
狂ったような自分たちの主とは対照的に、囚われている王はただ静かに二人の姿を見つめている。
家来達の間に静かな動揺がうごめく。
皆が卑屈にうつ伏せ加減な視線で、それでも二人の情事に目を取られて居る中に、
尚隆とはまた違う静かな視線で二人を見つめる者が居た。
「王は麒麟を返して欲しいんだよね?もし返してやれば、俺の望みを叶えてもらえるの?」
脇に立っていながら王を見もせずに小さくつぶやく。
尚隆が見上げると、静かに。
しかし焔を宿した瞳の少年が、六太を犯し続ける斡由を見つめていた。



・・・・請求・・・・・→性急(汗)

101海神続き:2004/11/23(火) 01:00
「俺は妖魔に育てられた。でも誰もが妖魔を恐れる。その妖魔と一緒に住める場所が
欲しい」
と尚隆を見もせずにつぶやく少年。
「その場所を与えよう。妖魔に襲われることの無い国だ」
その言葉を聞き、少年は初めて尚隆の顔を見つめた。

斡由はあいかわらず六太の体を攻め続けている。
六太は快感に溺れそうになりながらも、なんとか斡由に一矢報いたいと最後の気力
を振り絞った。その唇から必死に嬌声以外の声を出そうとする。
「しょうりゅ…に・・比べ…れば、お前はっ…あ、・・んっ、…あぅ!…
お前は…屑だ!」
突き上げられながら必死にその言葉を言った。
「しょう…りゅ…なら…んっ…あ、ああん、んっ、…そんな…ふうに、は、しない…
もっと強くて…んっ!……もっと気持ち、よくて…お前など…」

102海神続き:2004/11/23(火) 01:13
「私が王に劣るというのか!」
斡由は頭に血が上った。斡由としてはこれ以上ないほどの精力を傾けているのだ。
それに自身は果てしないほどの快楽を得ている。台輔のほうだって相当感じているよう
に見えるのに。
「もっと強くて気持ちいいと仰られましたね。ふん、それならもう私だってなんの
容赦もしません」
斡由はそう冷酷に言い放った。そして今までにも増して狂ったように腰を六太の体に
打ちつける。
「ぁ…んっ! しょうりゅ…あっ! たすけてっ! あぅ!」

103名無しさん:2004/11/23(火) 01:53
ああもう鼻血吹いてしまった

104名無しさん:2004/11/23(火) 02:18
楽しい・・・
海神続き頼んます
ついでに延の冬、えっちくならんので
誰か協力プリーズ

105雁いや延・冬(ソナ?):2004/11/23(火) 04:35
いよっしゃぁ・・ほのぼのHで〜・・・


いつに無く素直に甘える六太に尚隆は目を細める。
人前では決して見せない姿が愛おしい。
小さな半身を胸身に抱き、その金の鬣を優しく梳く。
さらさらと心地良い手触りのその鬣は、尚隆がいつも触れるのを好む六太の一部分だ。
優しく自分に触れる尚隆の手が嬉しくて、六太はうっとりとされりが侭になっている。
鬣を梳く手が顎に下りてきて、尚隆の唇が額に頬に触れる。
その耳元で低く囁く。
「六太・・」
自分の声に、小さな身体がピクリと反応する。
「したくなった。抱いてもいいか?」
「・・あ・・・えと・・・」
頬を上気させて、少し困ったような顔になってあれこれ考えを巡らす様子の六太の姿も可愛らしくて、失笑してしまう。
「このままが良いのなら、無理強いはせん。が、許しが出るならもっと暖めてやるぞ」
六太はじっと尚隆の顔を見上げる。
ゆっくりと尚隆の首に腕を絡ませながら告げる。
「・・・暖めて」

106延・冬:2004/11/23(火) 05:44
六太の言葉に答えるようにゆっくり口付けながら、その帯を解き夜具をすり落とすと、真っ白な肌が露わになる。
降ったばかりの雪のごとくの無垢さを表す肌に、紅い飾りが2つポツリと散らされ尚隆を煽る。
耳元で「綺麗だな」と囁いてやると、真っ赤になり「見るな」と身体を丸めて背を向ける。
身を隠そうとしているのだろうが、今度はうなじや肩、背中から細い腰、そして臀部を曝してしまっているのに気付かぬあたりが、この麒麟の可愛さだ。
脇腹から手を差し入れ、胸の突起を触りながら背中に唇を這わすと、小さな吐息が漏れる。
敏感すぎるほど過敏な六太の身体の中でも、背中は感じ易い部分の一つだ。
「・・ぁっ・・・・・」
小さく声が上がる。

107名無しさん:2004/11/23(火) 07:05
姐さん素晴しい
延(うちのへっぽこ辞書には正式な国名がでねえ)
冬ソナ
いい!!
ネッチリ優しくエロエロ頼みます

108名無しさん:2004/11/23(火) 07:42
お前らいい加減にしろ!
徹夜しちゃったじゃないかー (´Д`;)ハァハァ!

グッジョブ!

109名無しさん:2004/11/23(火) 10:35
107> 「雁」は(がん)か(かり)で出ますぜ姐さん(^^d
お褒めサンキュです
此処がキチクのみでなくネッテリエロンでもオケと判って嬉しいっす
(ソノワリニハゴジダツジオオシ・・・・テチヤヅカレトミノガシテ・・・・アセアセ)

110雁・冬…甘々:2004/11/23(火) 11:27
雁にしたけど良かったかな?


六太の背に口付け、震えるその身を抱き締める。身体と身体の間の隙間を埋めるように。
「…俺は冬が苦手でな。初めてこちらに来た時は、驚いたぞ。あちらは、こうも寒くは
なかったからな」
あちら―尚隆が育った、瀬戸内の小さな国。六太の頭に美しい青い海が開ける。
今はもう無い国ではあるが、六太にはこの尚隆を育てたあの土地が愛しく思える。
実際六太もあの土地に居た当時は、その様に思ったか覚えが無いのだが。
目を閉じてする温かい回想を、遮る様に声が降ってくる。
「お前がこちらに連れて来たのだからな。責任を取って俺を温めろ」
責任を取れ、と言う割りにその声音は限り無く優しい。
六太は体の向きを変えて尚隆と向き合う。そして尚隆の夜着の襟に手を掛け、それをするすると
脱がそうとする。直に肌と肌を合わせた方がより温かい。
「こう寒いと、関弓の街に降りて遊びに行くのも億劫って?」
揶揄する様に言ってやると、「莫迦者」ときつい抱擁と共に返ってくる。




甘くて恥ズカチイヨ…海神ではリンカンネタも有ったのに…。

111海神続き:2004/11/23(火) 12:46
「助けて、とは…。主上が無事なら、何をされても良いのでしょう?本当は自分が
助かりたい…馬脚を露しましたかな、台輔」
知らず助けを求めてしまった。だが違う。六太は激しく首を振る。尚隆の命が有る
のなら、自分はどうなっても良い。それは本心だ。
けれど尚隆なら、あの縛りを解いて己を救ってくれるのではないか、何故かそうも
思った。王など信じては居らぬのに。
「しょうりゅう…」
「いい加減、その口は塞がねばなりませんな…」
言いつつ胸元から大きな張り形を取り出す。
斡由は惜しみつつ六太から自身を抜き、替わりにその張り形を宛がう。小さな蕾を
無理に抉じ開け、突き込む。より大きく、そして無機質な物が六太を苛む。
盛大に上がる悲鳴をやり過ごし、乱暴に向きを変えさせる。
「こんな物を挿しては、多少名器が損なわれるかも知れませんが、神仙ならばすぐ
に元に戻るでしょう」
六太のきれいな髪を掴み、そして未だ隆起したものを強引に口に含ませる。形の良
い唇が歪み、六太の口腔を犯す。
後頭部を押さえ、激しく前後させるが先程のような快楽は得られない。けれど麒麟
に奉仕させている、その状況が斡由を酔わせた。
「もっと真剣にやって頂けませんか?主上の命が掛かっているのですよ?それとも、
あまり慣れていらっしゃらない…」

更夜の背後に居た妖魔のろくたが尚隆に近づく。だが彼はそれを恐れるでもない。
「あなたは、妖魔が恐ろしくはないのですか…?」
「なに、お前が命じぬ限り人を襲いはせんのだろう?」
ろくたはいよいよ尚隆に顔を近付けるが、一向に動じない。むしろその整えられた毛
並みを楽しむ風でもある。
更夜は迷っていた。

112海神続き:2004/11/23(火) 14:03
可憐な蕾に凶悪なまでのものを挿し込まれ
口内を犯される。
苦しげに眉をよせ金の睫毛に涙をにじませる様は
いかにも儚げで。見ていた家来たちは我を忘れ、
その淫微な様に酔いしれた。
小さな窄まりは、限界まで押し広げられ悲鳴を上げる。
その張り型は微かに振動し、六太の中を刺激する。
斡由が張り型のボタンを押すと震動は大きくなり
六太の内部で暴れだす。
「んんーーーー」
口を斡由のものに塞がれたまま、六太は悲鳴を上げた。
家来たちは魂を抜かれたように、責めさいなまれ苦しげに身を攀じる
六太の白い体に見とれていた。

113海神続き:2004/11/23(火) 15:35
何度か六太の口を往復させ、斡由はその口中に精を吐いた。
涙目になり呻く六太の後頭部を押さえ付け、無理にでも飲ませようとする。
だが斡由が少し手を緩めた際、その隙に口を強引に引き離し、結局吐いてしまった。
その様子に斡由は舌打ちし、六太の頭をもって寝台に叩きつける。
苛々と息を切らし、辺りを見やれば興奮し、淫に酔った家来達の様子が窺えた。
斡由は口端を上げ、薄く笑う。そして六太から張り形をずるり、と引き抜く。
「お前達…今度は出来るな?」

その言葉に数人の男が六太の側近く寄る。
尚隆のために、覚悟は決めた。それでも怯え身を震わせる。
知らず男達から後退る様子を眺め、斡由は語り出す。
「真剣に相手をして頂きたいですな。…その者達は二十数年前に昇山しましてね」
二十数年前…昇山…。それが今、この状況に何の関係が有るのだ。
いや、二十数年前に雁の民が昇山したのなら。その時の蓬山公は――自分だ。
「皆、国を思い命懸けで黄海を渡り、延麒に会いに行ったのですよ。それは辛く、
仲間を何人も亡くした旅だった、と。…ところがです。時の蓬山公は昇山者にあ
ろう事か侮蔑的な態度を取り、挙句逃げてしまったという話です」
あたかも自身が昇山したかの様に劇的に語る。
「選定をせず麒麟としての仕事を放棄し、その為に国の復興は遅れ死者は増え…」
思わず目を閉じ眉根を寄せる。それは六太の痛い所を突き、慈悲の心を痛ませる。
「更に、その延麒が選び、王としたのは政を軽んずるろくでなし…」
ちら、と尚隆を見やり肩をすくめ、さも無念そうに嘆いてみせる。
「…酷い話、酷い麒麟だとは思われませんか、延台輔」
斡由の話術により、六太は錯覚に陥った。これは、自身に対する罰なのだ、と。
「まあ彼らも、苦心して会いに行った延麒がこの様な聖獣、ならぬ淫獣だと知り、
それは気落ちしたとの事です。国の恥、だと」
そして恥だと罵られ。
六太はおずおずと小さな尻を男達に差し出した。

114名無しさん:2004/11/23(火) 20:01
「斡由・・まず俺にさせてよ」
男たちの後ろから声が掛かる。
乱れた姿の斡由の前に歩を進めたのは更夜だった。
「お前がこの淫獣とやるというのか?」
面白そうに斡由が問う。
「もともと六太が可愛いって目を付けて、あなたに進言したのは俺だろう?
こんな時くらい、皆より先にやらせてよ。
それに俺は。される方の気持ちも良く判るからね、・・六太をうんと可愛がって上げれるよ?」
そう言って口の端だけで笑ってみせる。
「良いだろう、うんと啼かせて見せてみろ」
更夜は、下卑た笑いを浮かべる主から、今使用されていたおもちゃを受け取ると、凍るような目で六太を振り返る。
「・・そんな・・やめて・・更夜・・・」
顔色も無く怯える六太に更夜はつぶやく。
「何もかももう遅いんだ、六太」

115海神続き:2004/11/23(火) 22:31
「いや、どけ。俺たちが先だ」
目の色を変えた家来たちが更夜を押しのける。
六太の痴態に狂乱のボタンが入った家来たちは息も荒く
六太の小さな尻をわしづかみにすると、まず一人
その狂い猛ったそれを蕾みに乱暴にねじ込んだ。
「ひいっ」
悲鳴を上げ背をそらせる六太。瞳には涙がにじむ。
「お・・おお、これはすげえ・・信じられん」
息を荒くして六太の中をかき回す家来の瞳は恍惚として、別世界へ誘われた
かのように夢中手で腰を振る。
感じやすいだけでなく、香の淫香で性感を支配されている六太は
嫌悪感に涙を零しながら、同時に体中を走る快楽に支配されその細く白い
腰を振った。
ほかの家来たちも息を荒くして、その高貴な生き物が深く男根を飲込み
快楽にほほを染めている様に見入る。
既に雄の野獣のように、家来たちの目は凶悪な光を宿す。

116海神適当:2004/11/23(火) 22:52
「お前だけ楽しむのはずるいぞ、俺にもやらせろ」
「残念だな入り口は一つだ」
「いや、上の口が開いている」
うつぶせに突かれている六太の顔をぐっと起こし猛ったそれを口に押し込む
「ーーーーーっ」
乱暴に押し込まれ苦しさに息が止まりそうになる。
「噛み付くなよ、舌を使え、そうだ。おお・・」
気持ち良さそうに喘ぐ家来。
ほかの家来はうらやましげにそれを眺め順番が巡ってくるまで
六太の可憐な紅い乳首や、白い尻をいじる。
息を荒くし、責め立ててくるものに耐え、快楽に金の睫毛を涙で濡らし腰を振る
高貴で淫微な獣の姿に、ますます情欲は強さを増す。
「駄目だ、我慢できない。俺も入れるぞ。」
欲望を限界まで昂らせたそれを男は強引にまだほかのものが入っている
そこにあてがう。
六太は男が何をするかに思い至り、恐怖にひっと悲鳴を零す。
そのとき六太の口を塞いでいたものがびくんと精を口内に放った。
気持ち悪さにそれを吐き出す六太は、油断している隙に
ぐっと二本目のものを差し込まれる。
「ひああああ」
その小さく可憐な蕾は二本分の昂りを差し込まれ、六太はその苦しさに悲鳴を上げる。
「おお・・これは堪らん」
無理矢理差し込んだ家来はうっとりした目つきで腰を動かす。
割けるぎりぎりに広げられ,突かれるたびに恐怖と苦痛に六太は喘いだが
天性の清純さとともに淫乱さの宿るその体は、ねっとりと二本の欲望をからみとり
しめつけ、六太自身も快楽に腰を振り始める。
「とんだ淫獣だ、主人の目の前で二本も飲込みあげくによがって腰をふるとは」
斡由は軽蔑した目で六太を見下す。
六太は自分のこのような浅ましい姿を尚隆に見られているのが堪らなかった。
だが心に反して体は喜びをむさぼっている。
こんな淫乱な自分は尚隆に嫌われてしまうだろう。
見ないでくれ。
快楽と胸の痛みにぽろぽろと涙を流し、それは白くそして薄桃に上気したしなやかな
体に溢れてゆく。
巧まずして淫猥な一枚の絵に自分がなっていることを六太は気づかない。

117海神適当:2004/11/23(火) 23:08
六太の中に先に差し込んでいた家来がうっとうめく
「もう駄目だ・・出る」
びくんと六太の中に精を放つ。
「ひっ」と声を上げて六太はしなやかな背を反らせた。
精を放った男は満足そうにそれを蕾から抜き取る。ずるっとした感覚に
びくんと体を震わせると、まだ入ったままのもう一本をきゅっと締め付ける。
「すごい・・天の慈悲だ・・おお・・・」
麻薬に溺れたように腰を振る男。
六太の体はそれを受け止め腰を振り、またつるんとした自分のそこを男の固い陰毛が
すりつける感覚に耐える。
周りのものも六太に酔いしれ白い尻を嬲り,背中に舌を這わせ,首筋に甘く噛み付く。
「ああんっ」思わず声を上げてしまう。
王の前で、こんな痴態をさらす自分が嘆かわしく厭わしい。
更夜もしばらく手を出せず静観を決める。
「おいそろそろ俺にもやらせてくれよ」
欲望に目をぎらつかせた男が後ろから声をかける。
その男が帯を解き取り出した一物を見て六太は恐怖に体を固くした。
その締め付けて六太の中の男がうっとりと果てる。
「私にも慈悲を恵んでくださいませんかねえ」
息を荒くした脂ぎった顔で近づいてくるその男のそれは二本分のものをあわせたより
太くそれがむんと欲望を滾らせ天を向いてそびえ立っている。
六太は恐怖に怯え後ずさる。こんなものを入れたら壊れてしまう。
血の汚れにあたる恐怖がまだ痺れる体を懸命に動かし、その男のものから逃れようと
這いつくばるようにして逃げる。

118海神適当:2004/11/23(火) 23:19
「おっと、逃げてはいけませんよ。慈悲は平等に与えてくれなければ」
家来はそう言うと六太の体を子供におしっこをさせるときのような形で抱えた。
そしてその体を待ち構えている男の巨根にあてがおうとする。
六太は恐怖に怯え,尻を揺らしてそれから逃れようともがく。
白い尻をふり、それから逃げようとする姿は,巧まずして淫猥で,同時に儚げでもあり、
見ているものの嗜虐心をそそる。
奇麗なものをめちゃくちゃにしたい子供のような感覚に家来たちは動かされ
ている。
「やめてくれ・・そんなのできない・・いや」
首を振り、恐怖に涙を流す六太は、可憐な蕾をひくつかせる。
その様を見せつけられ、男の巨根は益々猛る。
「し・・しょうりゅう」
主の名を呼ぶ。助けてほしい。もういやだ。

119てきとー海神:2004/11/24(水) 00:14
見ないでくれ、その六太の願いとは裏腹に、尚隆は麒麟を贄とした狂宴を見据える。
何が起こっても、全てを見届け知った上で、事が済んだ後あの子供を抱き締め、受
け入れてやらねばならないのだ。
己の命を救う為に、文字通り身体を張った子供の為に。
だが、今はそう考えるしか出来ない己の不甲斐無さに腸が煮える思いを抱える。
男達が六太を漁っている間に、何か出来る事は無いか。
だが、今己が解き放たれたら、きっと六太を犯した者全てを殺し、六太を血の海に
溺れさせるだろう。

尚隆のその思いが殺気を孕んだのか、斡由は囚われの王を振り返る。
その下肢に目をやり、斡由は眉を寄せ苦笑する。
「おや…主上。愛しい者が穢され犯される様を見て興奮してらっしゃるとは。あなた
も大概ろくでなしの様ですね」
更夜、と呼び掛け立ち尽くしていた少年は振り返る。
「王が苦しんで居られます。お前、鎮めて差し上げなさい」
意を察した更夜は表情を変える事無く尚隆の前に屈み込む。そしてその帯を解き、現
れた尚隆のものに口を寄せる。
「止めろ…!」
その声が大きかったのか、それとも王の声は麒麟には良く届くのか、六太は尚隆を見
やる。何か酷い事をされているのでは、と思えばそれは友が己の王に愛撫を施す光景
であった。
「あ…やだ、嫌だ、更夜、おれから、おれの尚隆を取らないで…!」
弱弱しく吐き出した声に対して、無情な答えが返ってくる。そして更夜は六太から良く
見えるよう角度を変える。
「良いじゃない。君はもう散々王の目の前で王を裏切って、浮気して悦んでいるんだよ?
その上王を独占したいだなんて、王が可愛そうだとは思わない?」
「そんな…!」
何を求めたかったのか思わず手を伸ばす。だがその手は男に掴まれる。もうお喋りは終
わりだ、とばかりに再び差し込まれる。

120名無しさん:2004/11/24(水) 02:19
海神難しくて続きが書けない…
侠気のある姐さん一つ頼みます。

121『台輔の勤め』9:2004/11/24(水) 02:47
適当海神に悶えつつ隙間を見て更新。




何だか居心地が悪い。
氾王を連れ庭を散策したのち、茶席の設けられた庵に向かい合って腰をかけた。
護衛の官が二人を見並べて感嘆の溜め息をつくのもわかるというもの。
背の高い方の貴人の装いは質素な玄英宮ではまず見られないあでやかなものであった。
正式訪問ということで黒が基調ではあるが、その生地は上品な光沢を纏い、薄紅の見事な牡丹が描かれている。
帯は落ち着いた藍色の刺繍が見事な細工で施され、その上を飾る帯留めの玉は水晶であるか、
貴人の優雅な動きにつれてかすかに揺れる度に濃い紫の輝きを散らせる。
髪留めや耳飾りに至るまで、派手ではあるのだが決して下品さを感じさせない。
一つ一つが質の上等なものであるというだけでなく、統一のとれた美がそこにはあった。
氾王の漂わせる気品とその流麗な物腰もあいまって、何か人ではない
─王だから人ではないのだが─、幽玄の佳人をそこに見ているかのような錯覚を起こさせる。
加えてその佳人と向かい合う台輔・六太のいでたちがこれまた可憐な花が咲いたようである。
体型に合わせて特別に縫われた着物は淡い生成色、鮮やかな桜の刺繍が花びらを散らせている。
黒地の羽織は凝った抜き編みのもので、隙間から桜色が覗く。
長い金の髪を多目の後れ髪とこめかみの一筋を残して高く結い、毛先を長く散らしている様が
何とも華やかで、あでやかな色香をかもしだしている。
ここは本当に見慣れた我が宮か、と官は目をしばたかせた。
或いは玉京の眺めとはこの光景のことを言うのではないか。
彼は目の前の二人の姿、そのあまりにも美しい姿に至福の感動さえ覚えていた。
一方、当の六太はやや当惑気味である。
何しろ氾王ときたら機嫌が良いのだ。恐ろしいくらいであった。
普段子猿子猿と自分を呼ぶところが今日に至ってはそれが台輔である。
着慣れない着物とあいまって無性に居心地が悪い。
「…氾王」
とうとう口に出した声にどうしたのだね台輔、とやはり優しげな声が返ってきた。
「降参かえ。…まだ手は残っておると見ゆるがね」
「いや、そうじゃなくて。その…何か変なんだよな…その…態度」
そうかえ、とくすりと笑う顔を見上げる。
氾王は楽しげに目を細め、訝そうに自分を見てくる六太を見つめ返した。
「何、お主の艶姿にちと心を迷わせておる。…認識を改めぬとならぬであろ」
甘やかな瞳に見つめられ、六太は思わず下を向いた。

122名無しさん:2004/11/24(水) 02:54
適当海神が戴国並のメロドラマになっている・・・
二人の恋人を襲う怒濤の運命!!
待ち受ける更なる悲劇と葛藤!!
っつー感じに
続きプリーズ

123『台輔の勤め』10:2004/11/24(水) 03:47
何故かはわからないが、顔を上げられない。何だかとても恥ずかしい。
かすかに頬を染めてうつむいた六太の仕草が無性に可愛らしく思えて氾王はくすりとまた笑った。
「よいよい。では台輔はやめるかえ。延麒、これならよいであろ。…延麒」
近う、と言われて顔を上げる。その瞬間己の立場を思い出した六太は
はい、と答え体を貴人の近くに寄せた。
さら、と氾王の長い指が六太の髪を梳いた。ぴくりと頭が動く。
えっとそちらを向けば氾王の笑みが眼前に近付き、六太は目を見開いて体を固くする。
思わず目を瞑りそうになった時、その唇は頬をかすめた。
髪を梳いた指がそれをかき入り、六太の首筋に触れて優しく撫でる。
耳元に触れた唇の熱があった。
「っ…!」
「まこと感心することよ…こ度の役目をよう心得ておる。私はね、お主を見直したのだよ延麒」
耳に注ぎ込まれる囁きがくすぐったく、六太はかすかに身じろぎした。
「…こ度、我が麒麟梨雪のようにお主を愛でてくりょう…」
囁きと共に氾王の腕が六太の背を引き寄せた。自然前に倒れた六太の体が氾王の胸に落ちる。
慌てて起こそうとしたが、両の腕に抱き締められて叶わなかった。
「あ、あっと…俺…ちょ…」
頭が混乱する。押し付けられた胸は思いの他固く、自分を包む腕の布越しの感覚も
そこについた固い筋肉を想像させる、意外なほどに逞しいものであった。
すっぽりと抱きしめているそうは見えない広い肩幅と共に、
その肉体が成人の男のものであることを六太に伝えてくる。
心臓が不穏な動きをしだす。
氾王は六太を抱き締めたまま離そうとしない。
六太の頬が熱を持った。
「は、氾王…っ!」
思わず上げた己の声が思いの他上擦ったものであったことも頬の熱の温度を上げた。
ふふ、と笑いを漏らした声が耳元に聞こえ、束縛していた腕の力が緩む。
素早くもたれていた胸に手をついて六太は体を離す。
はあ、と荒く息をついた。心臓はまだ早く脈打っている。
「困ったような顔をしておるの」
そんな六太の様子を愉快げに氾王は揶揄した。
「別に、そういうわけじゃ…」
下を向いたまま慌てて否定する。
もてなす責任者の立場は、前提として相手には気に入られねばならない。
だからこそ身なりも相手に合わせて整えるのである。
成功ではないか。氾王は今回の六太の態度を気に入り、
あろうことか半身である氾麟と同等に扱うとまで言ったのだ。

124名無しさん:2004/11/24(水) 05:47
適当海神参加者増えすぎかイマイチ動きに一貫性を作れなくなってきた。
何とか本編合わせに話を纏めようと持って行き過ぎたかしら?
キチク下手な私は出る幕無しだ。
ので尚隆同様しばし股間を難くしつつ傍観しまつー・・・。

125海神まとめに入ります:2004/11/24(水) 09:08
その次の瞬間六太の目の前が真っ赤に染まった。
何事か一瞬訳が分からずぼんやりしたが,次の瞬間覚えのある感覚が
躰を走り力を奪う。
六太は頭から血をかぶっていたのだ。
視力は奪われ、視界は紅い闇に沈む,音が遠ざかる。
だが微かに耳に悲鳴が届く。
断末魔の悲鳴。「うわあああああ」
家来たちの叫びが聞こえる。
遠ざかる意識の中六太は何事か理解した。
更夜の妖獣が家来を襲っているのだ。
更夜は斡由を慕っていた。斡由が望むなら,自分の手を汚してもよかった。
だが、大切な友達である六太に加えられる暴力を見せつけられ、自分のしていることに
自信が持てなくなってしまった。
本当にこんなことをしていいのか.斡由は生きている限り王を嫉み,六太に対して
加虐心を持ち続ける.
本当は領地をよく治める、よい令允であるのに、そのねたみが斡由を歪め苦しめる.
もうそんな斡由を見たくはない、斡由に罪を行わせたくない。
そのねたみを終わらせるためには斡由自身を終わらせてしまうしかないのだ。
それだけねたみは深く,斡由を蝕んでいることを更夜は知っていたのだ。
六太の躰がふわりと持ち上がり優しく抱きしめられるのを感じる.
懐かしく愛しい王気。そのまま気を失ってしまう。
大切なものをこの腕に取り返した思いを噛み締める。血で汚れたこの場所から
一刻も早く去らねばならない。
更夜は次々とその場にいたものを妖獣の鋭いくちばしで屠る.
斡由が血の海に横たわるのが見えた。
斡由はもう一人の自分であったかもしれない。
六太が自分を選ぶことなく誰か別の者のそばに使えていたら、自分はそれを妬まずに
いられたろうか。
麒麟と言う聖獣に選ばれ、すべてを我が手におさめる、王と言う存在。
嫉妬と羨望をその身に集め、欠けることなく幸福を約束されているように見えるだろう。
だがその王座には自分だけが存在する。
誰もいない。
背負った者の重さを知る者は自分以外に、ない。
誰もその孤独を分かちあえはしないのだ。
だからこそ天は、王に麒麟を与えてくれたのだ。
気が狂いそうになるほどの孤独な道のりをともに歩むものを。
王の半身を。
尚隆が六太を抱えその場を走り去る.
悲鳴を残して。

126名無しさん:2004/11/24(水) 09:25
そして、海神は雁、冬ソナへ続くのか
冬ソナねっとりのほほんラブ、いいよー
鬼畜でちょい疲れたので癒してください。

127雁・冬つづき:2004/11/24(水) 10:22
「そんなに子供の身体って暖かい?」
「ああ」
「…尚隆も暖かいよ。すげー…気持ち良い…」
北東に位置する、冬は寒冷な雁国の地。その地を力強く照らす、雁の太陽。…おれの太陽。
その太陽が凍えたなら、暖められるのがおれならば良い。
互いを求め、掻き抱く腕に力が篭る。尚隆の半ば露わになった厚い胸が六太の平らな胸と擦れる。
暫し後、尚隆は少し身体を離し六太の胸元を確認する。赤く、小さな乳首は痛々しく先端を尖らせている。
いつも思うのだが、と前置きして言った。
「お前は授乳をする女でもあるまいに、何故こうも尖らす?俺に吸うて欲しいのか?」
「知るかよ」
ぷい、と拗ねて横を向いたその耳元に唇を寄せ、囁く。
「…淫靡で可愛いな」
言われぞくり、と背筋が反応する。
「可愛いぞ、六太」
耳朶を甘く噛みながら、尖った乳首を指先で転がす。
はあ、と切なげな声を漏らせば頬に口付けが降ってくる。
さっきから綺麗だの可愛いだの。そんなのは女に言う台詞だ。男だと思われていないようで腹が立つ。
腹が立つ一方、心が喜んでいるのを感じる。胸がトキメク、とはこういう感覚だろうか。
「肩が冷えるだろう」
横を向いた際布団からはみ出した裸の肩が、尚隆の大きな掌に包まれる。その手が嬉しい。



海神は原作に沿わないバッドエンドでも良いかなー、とか思ったりしてメロドラマ
にしてスマン。雁冬はハートウォーマーな感じでひとつ…。

128適当海神:2004/11/24(水) 13:28
だが、六太を抱えた尚隆の行く手を阻む者があった。
「ふん、逃げられると思うなよ!」
行く手を阻んだのはあの巨根の男だった。
「卿伯は倒れても俺が卿伯の願いを叶える。約束通り、王の命までは奪いはしないが、
卿伯の願い通り、台輔には常世一醜い姿になっていただく」
この男は無類の忠義者だったのである。しかも常識はずれの巨根故、女達から避けられ
ている自分に斡由は台輔との快楽を与えようとしてくれたのである。そして恐ろしい
ことに、この男は更夜にも勝る妖術使いだった。
あっ、という間に尚隆は金縛り状態にされてしまった。
六太も足が動かなくなり動くことができない。
男は刀を抜く。
「自分たちだけ幸せの限りを味わう王と台輔よ、思い知れ!!」
凶悪な刀は六太の美しい顔を抉った。鮮血が飛ぶ。
尚隆は金縛りで声を出すこともできない。
抉り続けるうち、美しい顔は、目は潰れ鼻は削げ頬といい額といい顎といい、肉を
抉られまくった醜い肉塊となり果てる。血の穢れに倒れた体をさらに凶刃が襲う。
愛らしい小さな尻の双丘は抉りとられ、かわいい蕾も容赦なく抉られ、もはや、
並ぶものがなかったほどの名器の面影を全く留めない。そして体中の柔肌に隙間無く
醜い深い傷が入れられ、足には後遺症を残さずにはおかないほどの打撃が加えられる。
もちろん胸の可憐な桃色の飾りも切り取られてしまう。金の髪も生え際から削がれる。
もはや六太は醜い肉の塊でしかなかった。
男は全ての作業を終えるとその醜い肉塊を蹴り上げ唾を吐きかけた。
そして今度は自らの胸に刀を向ける。
「卿伯、この肉塊を捧げます」
祈るようにそう言うと、刀は胸に突きささり、男の命は果てた。

129海神まとめさせて:2004/11/24(水) 13:51
そして尚隆にとって永遠とも思える時間が過ぎ去ったとき、やっと救援は訪れた。
「主上、大丈夫でございますかっ。さ、参りましょう」
「ま、まて、六太を運ばねば」
「え? 台輔がどこにおられるのでございますか?」
尚隆は足を引きずり、倒れた六太の前に立った。
「は? なぜ、こんなところに肉の塊があるのですか?」
尚隆はその言葉を無視して声をかけた。
「六太…」
意識を失っていて返事はできない状態だろうと思ったが、声をかけずにはいられな
かったのだ。だが、予想に反して、肉塊は微かに動いた。そして掠れた弱弱しい
声が聞こえた。
「しょ・・りゅ・・・。あるけな…い………おぶって」
「六太、聞こえるか。まず、手当てをしてもらおう。それからお前をおぶって帰ろう」
もちろんお互いにおんぶなどできない状況であるのはわかっていた。例えどんなに
手当てしようが、帰るには柔らかい寝床に横たえて運ぶしかないだろう。それでも
六太はそう言ってみたかったのだ。言葉だけでも甘えてみたかった。外見に関係なく
想ってくれるといった主の気持ちを、今こそ味わわねば生きる気力を持続できないか
もしれないと思ったのだ。
「六太、俺がついている」
「尚隆、おれは生き続ける。例えどんな醜い生き物に成り下がろうとも。生きていら
れればそれでいいんだ。俺が生きていさえすれば尚隆は生きられるから」

130海神まとめさせて:2004/11/24(水) 14:05
六太は遠のく意識の中で思った。自分は常世一醜い生き物として生き続け、尚隆の治世
は長く続いていくだろう。今日は初めて尚隆に肉体を愛される幸せを味わったけれど、
そのような幸せはもう二度と戻っては来ないだろう。尚隆はたくましい体を抑制できず、
他の誰かを抱くだろう。美しい誰かを愛するようになるかもしれない。それは六太に
とっては体を引き裂かれるほどにつらいことだけれど、でもそれでもよい。これは
自分で選んだ道なのだから。時がたち醜い六太を見なれるにつれ尚隆は外見に関係無く
「惚れている」と言った言葉を忘れるようになるかもしれない。そうなったって、
自分は尚隆を愛し続けるだろう。尚隆には国を治め続け民に安寧を与え続けてほし
い、そのためなら己の外見など少しも惜しくはない。尚隆を守るため醜くなった己の
姿に六太はむしろ誇りを感じてさえいた。それは人に不快感を与えるものであるから
今後はなるべく人目を避けねばならないけれども。

131海神まとめさせて:2004/11/24(水) 14:26
明るい日差しの輝く庭園の東屋。
尚隆は思い出話をそこまで語った。陽子はこの悲惨な話を気丈に聞いていた。
隣に座っていたはずの楽俊は、そのつつしみ深さ故に聞き終えた途端、卒倒して床に
落っこちていた。
「俺は斡由のほうが玉座にふさわしかったのではと思うことがある。斡由はもう一人
の自分であると」
「そうですか? 私には延王のほうが優れているとしか思えませんが」
「慈悲の生き物である麒麟を切るなど普通、できることではない。家来にそこ
までさせるとは斡由は並大抵の者ではない。そして斡由のこの行動があったからこそ、
俺も延麒もお互いへの真実、深い想いの底に気付くことができた。人にこれだけのことを
気付かせられるというのは、すごいことではないかな……だから、私は斡由が教えて
くれた大切なことを忘れないために、ときどき斡由の墓を訪れ祈りを捧げているのだ」

132海神まとめさせて:2004/11/24(水) 15:00
楽俊もやっと気をとり直して座りなおし、陽子と共に神妙に尚隆の話しを聞いていた。
話の余韻の中、静かな空気が流れ、三人はしばし、それぞれ想いをめぐらせていた。
すると、その空気を破るように明るい声が聞こえてきた。
「よう、陽子と楽俊じゃないか!」
現れたのは常世一の美貌の持ち主、延国の麒麟であった。
「これは、延台輔」
陽子は会釈し楽俊は人間形態に変身し慌てて着物を着、拱手して礼をとった。
「何しけた昔話してたんだよ?」
尚隆は延麒の頭を撫でると、恋人達を二人だけにしてやろうというように立ち上がり、
延麒を促した。
「陽子と楽俊は、まあのんびりしていけよ」
美しい麒麟は笑顔でそう言い残すと、大股で歩き去る己の王に追いつこうと走っていく。
陽子と楽俊は、仲睦まじそうに去っていく二人の背中を見送りながら考えに浸った。
延台輔はこの世に並ぶ者の無いほど美しい。あの思い出話は真実なのだろうか。王は
客人に、この話を通して伝えたことを忘れさせないために、話に色をつけて語った
のだろうか。
 いや、真実の想いや真実の美は何があろうと汚されたり損なわれたりするものでは
ないのかもしれない。民意とはどんな傷をも修復できるほど、本当は強いものなの
かもしれない。天帝はこの世に生る者にそのような強さを与え賜うたのだろう。

                <了>

133名無しさん:2004/11/24(水) 15:14
「適当な東の海神」勝手にあとがき
言い出しっぺのキチーク者が、勝手に最後をまとめさせていただきました。
多くの姐さん方のご協力により、素敵にエロい鬼畜小説に仕上がったと思います。
というか私一人ではとてもここまでのエロさや迫力、アイディアは出せませんでした。
(とゆーより、ほとんど姐さんたちが書いてたんだが)
この場を借りてお礼を言い、完成の祝杯を上げたいと思います。
書き手の皆様、ろむの皆様、本当にありがとうございました。
今後も別館にモエ多かれと祈らせていただきます。
                                一鬼畜者

134名無しさん:2004/11/24(水) 19:50
残酷シーンはちょっぴり気絶しそうになりました。
こわいよう・・・がくがくがく・・・

135名無しさん:2004/11/24(水) 20:40
>133
残酷シーンは読めなかったけど(ゴメン
まとめ、乙です。心情とか、上手くまとまってるなあ…。
「おぶって」が…。六たんが切ないよ…。

136名無しさん:2004/11/24(水) 22:01
>134、135
まとめ読んでくれてありが㌧。怖がらせてすみません。
海神のハイライト書いてくれた他の姐さん方も、それぞれあとがき書いてくれたら嬉しい
んだけど。エンドレスに出来ないのはわかってたけど、いつまでも読んでいたいくらい
素敵でした。一応、結末はつけたけど、体の修復&お清めエチ書こうと思います。
残酷シーンいやな思いされた方は、その辺は無かった
ことにして(尚隆が話に尾ひれをつけたという説で)、お清め編は全くの別の話と
捉えてもらえれば…。むちゃかなー。残酷書きたかったのでユルシテ。

137名無しさん:2004/11/24(水) 23:22
汚しても汚し切れない清らかさが六太の魅力・・・
ちょい参加させて頂けて幸せでした〜
これでちったぁキチクも書けるようになった・・・らいいな(爆)
   一参加おたく

138名無しさん:2004/11/24(水) 23:39
なんだかみんなで「おつかれさまー」って感じですね。
楽しく参加して読めました。
今は氾六の展開と冬ソナのネッチリ加減が気になるところ。

139心の傷痕:2004/11/25(木) 00:50
キチーク者です。なんか136の書き方もヘンだった…。話尾ひれ説ととられた方は、この
続編はスルーということで。さすがにこのままでは気持ちがなんだかなので、じこまん
的に補足させて。

140心の傷痕:2004/11/25(木) 01:34
*誘拐事件の後、なんとか玄英宮に帰り着いた六太である。六太がおそらく常世一
であろうと思われるほどの醜さに変貌し、かつての美しさを取り戻すすべもないと
わかると、女官長は泣き崩れた。彼女にとって台輔の美しさは誇りであり、美しい
六太をさらに美しく磨くのが生きがいだったのである。そして台輔の美を誇って
いたのは玄英宮の他の誰もが同様だった。六太は彼らの落胆する様が気の毒になり
心が痛んだ。足を引きずる癖は奇跡的に治り一人で歩けるようにはなったが、なるべ
く人目につかぬように暮らし、顔の部分には被り物から布を垂らして醜悪な顔で
人々を怖がらせることがないよう装っていた。
 外見は恐ろしく醜悪なままではあったが、黄医の努力の甲斐あって、信じられない
ほどの回復力で痛みは感じられないまでになってきた。それでそれ以後は、これ以上
の回復はもう望めないだろうと、黄医の診察も断り、全く人に素顔をさらすことなく
暮らしている六太である。そんなある日のこと。

 痛みは全く感じなくなった。だが最近は別のことに悩まされていた。体がうずくの
である。それは尚隆の体を求めてのうずきだった。体が火照り、腰に熱がともる。
唯一日、尚隆と体の喜びを分かち合った日のことが頭に浮かぶ。あのときの底知れぬ
快感が心を離れない。他のことで気を散らそうとしても全く駄目だ。それどころか
欲望は日増しに大きくなってきており、もう限界だと感じられた。
 だが、尚隆に求めるわけにはいかない。ただでさえ、こんな醜い姿はさらせない
のに。尚隆は何かと言えば六太と共に過ごそうとするが、六太のほうはなるべく
尚隆を避けていた。こんな欲望に捉えられる前すら、あの事件以来感じる奇妙な
寂しさにかられ、ともすると尚隆に体を摺り寄せたくなってしまうのだ。だが、
いくら尚隆が見かけではなく惚れていると言ってくれたとはいっても、このような
姿になったら醜い者としての分際というものがある。惚れてると言ったって、
こんな姿形の者に擦り寄られたら気持ちが悪くなってしまうだろう。顔を隠した格好
をしていても、あの事件直後を見られていると思えば、近寄れない。あまつさえ、
尚隆は顔を隠す布を剥ぎ取ろうとしたことが一度あったのだ。六太があまりにも
怒ったので二度とはなかったが。自分で見てさえ思わず食べた物を吐いてしまった
ほどの顔なのである。絶対に見せることはできない。
 そしてそんな自分だから、どんなに体がうずこうが、あの日のように肉体を抱かれ
愛されるなど、もう二度と願っても叶わないことなのだ。尚隆なら頼めば抱いて
くれるかもしれない。六太の醜さを思えばあまりに突飛な考えではあるが。だが、
そんなことは死んでもいやだった。心はこんなに尚隆の体を求めているのに。

141心の傷痕:2004/11/25(木) 02:03
 六太は熱に浮かされたように、その場所にやってきた。玄英宮の庭園にこんな場所
があるとは今まで見過ごしてきたほどに、そこは庭園の隅であり、さびれた場所だった。
だが、そこには小さな泉がある。あまりきれいな水ではなかった。だが、ここなら
人は来ないだろう。六太は衣服を脱ぎ捨て、うずきに火照った体を吹き抜ける風に
さらす。全て脱ぐと泉に入る。麒麟が入れば濁った水も浄化される。それは六太の
ような醜く変貌した麒麟であっても同様であった。六太が体を浸けると水は次第に
透明さを増し、きらきらと美しく日光を反射する。
 しかし。泉に映る己の姿がふと目に入ってしまい、六太は硬直し吐きそうになった。
なんとか吐き気を抑え、普通の皮膚というものが見えない傷痕だらけのでこぼこ抉れた
体を水で清め、泉からあがった。
 水浴びを終えても一向に疼きは収まらない。もともと水で疼きを抑えるために
ここへ来たのではない。もっと嘆かわしい理由で来たのだ。
水から出た六太は、自分の手の指が己の肉棒へと伸びて行くのを制止できない。
そのためにここに来たのだから。と言っても水浴びをすれば気が変わるかも等と
空しい期待もあるにはあった。しかしやはりみっともない欲望を抑えることが出来なか
ったのである。肉棒に指を添えただけで、はあはあと息が上がる。
「ん…」
そこからはもう自制心も理性も吹き飛んでしまった。尚隆のことだけが頭にある。
愛しい面影を心にしっかりと抱き指を動かす。あの日の尚隆を思い出す。胸の飾りや
首筋を吸われたこと。そして股間に顔をうずめられ吸い上げられたこと。甘い囁き。
「尚隆…」
指の動きは次第に高まっていく。六太は我を忘れた。
「しょう、りゅ・・あ、あぁん、・…んっ…あぅ…んっ…しょ、お、りゅぅ…」

142心の傷痕:2004/11/25(木) 02:39
 尚隆は珍しい小鳥を捕まえにいくところだった。手ずから捕まえた珍鳥を渡せば
六太を喜ばせることができるかもしれない。女官が庭園のはずれの泉でその鳥
を見たと教えてくれたのである。政務などどうでもよかった。六太は顔を隠す布を
とってはくれないが、なんとか喜ぶ声を聞きたかった。それに鳥を持っていけば
長居させてくれるかもしれない。
 鳥を驚かせぬようにと木の繁みからそっと顔を出し泉の方角の様子を窺う。
だが、そこで尚隆の目を捉えたのは鳥より遥かに美しい姿だった。尚隆は驚きに息
を飲んだ。そこには一人の子供の後姿があった。
 日光に輝く瑕一つ無い白い肌。日差しにきらきらと輝く金の髪。華奢な細腰。
すんなり伸びた足。悩ましく上がった小さな尻。その尻はもだえるように僅かに
動いている。
 思わず何もかも忘れて見とれていると、唐突に自分の名前が聞こえびっくりした。
「ん…しょうりゅぅ…あっ、んっ、あぁんっ…しょ…りゅ…」
尚隆は我に返り、何が起こっているのかを理解した。だが、あの姿は? ありえない
ことではないのか。しかし疑問を長く留めておけないほどに尚隆は欲情を感じ始め
ていた。
「六太」
名前を呼んでも気付かない。そもそも麒麟が王気に気付かないとは。行為に夢中に
なっているせいだろう、と尚隆は思った。こんな状況で声をかけるのはまずいかと
も思ったがこの不思議な光景を見捨てて去ることはできなかった。
 実は六太が気付かなかったのは行為に夢中だったせいもあるが、空想の中で王気
に浸ってみていたというせいもある。尚隆が近づいてきても、その王気を自分の
空想の産物と取り違えていたのだ。
 だからそっと近づいた尚隆が六太を後ろから抱き締め、後ろから廻した手で愛撫を
始めても、それも空想の産物と捉えるしかなかった。いや、むしろ、そう思いたかっ
ただけなのか、そこはわからない。あまりの現実感に、抱き締められたまま首を後ろ
に巡らす。
「ん…しょうりゅう…?」
いつしか肉棒に添えた手は尚隆の手に取って代わられていた。尚隆の手の感触…
俺の想像だ、と六太は思った。
ひとしきり吐精させた後、尚隆は六太を抱き上げた。

143心の傷痕:2004/11/25(木) 03:12
自分の現実感ある想像力に六太はうっとりとなっていた。本当に抱き上げられている
ようだ…。
 
 尚隆は久しぶりに見る美しい顔に見とれていた。裸の六太を抱いたまま自室へ向かう。

欲望、そして二度と戻らないと思っていたものが再び得られた嬉しさに、はやる心を
抑え、遥かな距離を歩き尚隆は自室に辿りついた。通りすがる者たちも部屋の前の
衛兵も目をまるくしてこちらを見たが、かまってはいられなかった。
 部屋に入ると真直ぐに寝台へ向かい六太をそっとそこに降ろす。そうすれば後は
もう己の全身で美しい麒麟に情愛をぶつけていくだけである。六太のほうは、まだ夢見
心地で現実とは気付けない。だからこそ厭わずに裸体も顔も晒せる。感じればその
まま声や体で表現できる。二人の夢のような、だが激しい交情はいつまでも続いた。
尚隆は感嘆するしかなかった。六太はなぜか以前よりさらに美しく、又,交情から
得られる快感も以前を上回るものになっていたのだ。以前でも充分すぎるほどの
快感だったのだが。恥じらいながら尚隆を受け入れるかわいい蕾は以前に増して
尚隆自身をキュッと締め上げ陶酔に導いてくれるのだった。

その翌日だった、尚隆が真実を知ったのは。黄医に六太を診察させたのである。
黄医は台輔の肉体が完璧に再生されたのだと奇跡を告げたのまではよかったが。
だが、事件の後遺症として六太は心に傷を負ったのだった。端から見れば誰よりも
美しい六太であるが、自身が我が身を見れば、それが姿見に映る姿であろうと己から
見える範囲の体の部分であろうと、事件当時の醜い姿にしか見えないのだった。
黄医はこれは難しい症状であると頭を抱えていた。誰がなんと言い聞かせようと
六太は己の目に映る姿しか信じようとしないのだ。

144名無しさん:2004/11/25(木) 03:15
なんか一人でこういうの書くって、すごく恥ずかしいorz

145名無しさん:2004/11/25(木) 03:25
こっちはじりじり萌えながら読んでるっすよ。
ハァハァ…とりあえず身体は治ってて良かったね、六タン。

146心の傷痕モエ:2004/11/25(木) 09:34
ね・・・姐様・・・萌えです〜・・・
こんなナイス続編まで用意して下さるなんて神です!
「二人の夢のような激しい交情」の妄想をおかずに、ご飯3杯大盛りでいけます。
恥かしがらずに、もっと啼いてごらん・・・いい子だ・・
という事で、なるべく流れを妨げずに妄想補足参加させて頂きます。

翌日目覚めた六太は、見慣れた自分の寝台の天井の模様を見上た。
ぼやけた意識が覚醒してきても、どうも自分が此処にいつ入ったのか記憶が定かで無い。
昨日の事で思い出せる事とえいえば、いつもの様にあの隠れた泉で自分に施しをしていて常ならぬほど夢中になった事ぐらいだ。
しかし、いつもならあの行為にふけった後は、後悔と自己嫌悪にさいなまれて、沈んでいるはずの気持ちが、妙にすっきりしている。
身体は、腰がだるく感じられ、後ろの口には甘い痺れと痛みすらあるが、とても満たされた感じがする。
「どうしたんだ?俺・・」
考えを巡らそうとした時、ある気配を察して六太ははっと首を上げる。
間違えようの無い主の気配だ。
慌てて被り物で自分を覆ったと同時に自室の扉が開かれる。
布越しなのに、いつのに増して明るく眩しい陽光のような尚隆の王気に目が眩む。
黄医を伴い部屋に入って来た尚隆は。真っ直ぐ自分の方に歩を進めて来る。
尚隆が近づいて来ると、どうした事か身体が小刻みに震え出す。
混乱し動揺する六太のその心はただ「嬉しい」と叫ぶ。
「目覚めたか。具合はどうだ?」
いつもの尚隆の低い優しい声に「大丈夫」と答えようとしたのに声にならず、溢れた涙が褥にポタポタと落ちる。
慌てたように尚隆が「おい」と声を掛けて来るが黄医に遮られる。
「主上はお外に」と促され、そのまま無言で尚隆が退室する。
静かに遠ざかる王気を寂しいと感じながらも、六太はようやく少し落ち着きを取り戻せた事に安堵する。

147心の傷痕モエ:2004/11/25(木) 09:36
「では診察をいたしましょう」
言ってそっと被り物を取られて、思わずうつむく。
ずっと自分の治療にあたってくれている、自分の素顔を間近に見ている唯一の人間だ。
しかしたとえ自分の主治医である黄医であっても、醜い自分を曝すのにはどうしても抵抗が無くならない。
診察が終わり、ようやく被り物で我が身を隠す事が出来てホッと息をつく。
「今日はとても具合が宜しいようですね?ご気分は如何ですか?」
「ドキドキしてる・・。だって。起き抜けに尚隆に会えるなんて思わなかったから」
クスリと笑ってそういうと、自分を見つめる黄医の目がすっと細められる。
「まだ、主上にお顔をお見せになれませんか?」
ドキリとして顔を背ける。
「・・駄目だ。こんな醜い姿、他の誰に見られても尚隆にだけは見られたくない。」
吐き捨てるようにそう言うと、静かに黄医が告げる。
「主上は寂しがっておいでですよ」
え?と思わず顔を上げると、にこやかに黄医は微笑んでいる。
「一緒に悪さが出来なくなってしまって、毎日一人で官に色々と文句を言われていらっしゃいますから」
なるほど・・と思わず噴出すと、六太の手を取って黄医は告げる。
「今回の乱では、台輔は心にも身体にも深い傷を負われました。同じように主上も傷ついておられるのです。
御自分の心の一番奥を、よくご覧なさいませ。そして主上にも主上のお気持ちが御座います。決め付けずにもっと寄り添うてお上げになってみては如何でしょう。」
そう言って、そのまま静かに黄医は部屋を出て行く。

148心の傷痕モエ:2004/11/25(木) 09:39
・・・・尚隆の気持ち・・・・
あのことが有ってから、自分の辛さばかりにかまけていて、尚隆からにげてばかりいた。
そんな自分を尚隆はどう感じていたんだろう?
考え込んでいた自分の目の前に、金色の鳥篭が差し出される。
びっくりして見上げると、尚隆が笑っていた。
「ぼうっとしおって」
「・・・考え事してんだよっ」
拗ねるように言って鳥篭に目を戻す。
クスクスと笑う尚隆の声が耳にこそばゆい。
「でもどうしたんだ、これ?」
聞くと王宮の庭園で捕まえたという、水色で尾の長い小鳥が2匹入っている。
鳥篭の中では可哀想だと言うと、頭の良い鳥なので慣れてしまえば放しても鳥篭の入り口を開けていればまた戻って来るらしい、と言う。
小首を傾げてこちらを見る様子も可愛らしく、すっかりこの小鳥が気に入った六太は、どの位でなれるのかな、そか考える。
尚隆と鳥篭をはさんで笑いあいながらふと、こんな風に他愛も無い話をするのも、随分と久しぶりなような気がする。
会話が途切れ、小鳥を見つめ合いながら、ゆるやかに時間が過ぎる。
ふと尚隆が問う。
「で、身体の具合はどうだ?昨日の今日ではまだ辛いか?」
「・・・昨日?」
何の事かわからずに、尚隆の顔を見上げる。
しばし自分の顔を無言で見下ろす主の視線は、痛いほどで・・。
「六太」
急に名を呼ばれて胸がはずみ、思わず鳥篭を抱く。
「今晩は俺の部屋に来い。」
全身の血が下がる。
「窓に厚い幕を引こう。部屋に入れば明かりはみな消すが良い。だから、おれの部屋に来い、六太」
「・・・駄目だ・・駄目だ!そんなこと出来ない。尚隆」
指先の震えを止めたくて、指が食い込むほどに鳥篭にしがみ付く。
「今宵の伽をせよ。逃げる事は許さん。勅命だ」
尚隆は静かに、しかし確かにそう告げて、ゆっくりと立ち上がると、部屋を出て行く。
尚隆の背中が扉の向こうに消えても、その閉じた扉から随分と長い間六太は目を離すことが出来なかった。


という事で、エッチ書き逃げは駄目ですよっ♪お姐さん!
お後がよろしいようで〜・・

149名無しさん:2004/11/25(木) 11:28
>148
まさに逃げようかと思ってたんだがw
148さんが書いてくれれば展開のわからないのを読む楽しみがあっていいんだがなあ…

150名無しさん:2004/11/25(木) 23:10
>149さんが頑張ってエチ書いてくだされば、相乗りしますよ〜きっと
148

151『台輔の勤め』11:2004/11/27(土) 16:20
可愛らしい。
よもやこの子供にこれほどの興趣が湧くことがあるとは。
麒麟が美しい生き物であることは知っている。この幼い姿の延麒とて例外ではなく、
あの好色な猿王が唯一溺愛しているというのもわかる。
だが、ここまで変貌するとは思いもよらなかった。
氾王は己の胸に久しぶりに感じる高揚感を楽しんでいた。
──久々に楽しみが出来たようだ。
「いつもと違うお主と対するのは面白いものよ」
頬を染めたまま下を向いている六太に、にこりと笑う。
「…他の顔にも興味が湧くというもの」
「え…?」
その囁きはかすかで、六太の耳には届かない。聞き返した六太に何、と笑い返して氾王はついと立ち上がった。
「他愛のないことよ。…更なるもてなしに期待が出来るやもなと、そう申したに過ぎぬよ」
「そう…か」
やや不安げに眉を寄せた表情も愛らしい。赤く濡れた唇が小さくつぐまれるのを目を細めて眺める。
「…やれやれ、またもうあれに会わねばならなくなったかえ」
氾王の溜め息混じりの言葉に、その視線の示す方を振り向き見れば、
「…もてなし役とは言えお前のものではないぞ。あまり気安くそれに触れるな」
低い声で言った尚隆が目の据わったままの表情で二人の方へ近付いてくるところであった。
「尚りゅ…うわっ」
己の名を呼びかけ立ち上がった六太の腰に手を掛け、その体をぐいと引き寄せた。
「おい、尚隆…!」
「お前は黙っておれ。好き放題されおって。──こいつには
釘を刺しておかねば何されるかわからんのだぞ、六太」
「相も変わらずなかなかに心外なことを言ってくれるの。
…お主と一緒にするでないわ山猿。──延麒、私の側へ」
冷たい火花が散ったような二人の長身の男の間で六太はとまどう。
きつく抱かれた腰を解くことも出来ず、ただ睨み合う二人の王の顔を交互に見つめた。
「尚隆、なあ…」
困ったように主を見上げる。…どうしたらよいのか。
尚隆という自分の主を離れ、訪れた王に誠意仕えるのが今回の自分の責務である。
だが、何分初めてのこと、その境界がよくわからない。
加えて普段と違う格好、身なりによって体が動きずらい。
氾王の意外な反応も手伝っていつものような言動・行動がどうにもうまく出てこないのだ。
その姿は二人の王の目に大変悩ましく可憐なものに映っていた。

152『台輔の勤め』12:2004/11/27(土) 16:56
「……」
六太は眉を寄せて見上げる。その瞳が一瞬細くなったのを見た氾王は突然
一歩前へ進み出ると腕を伸ばして尚隆の手をはらった。
「っ──何をする!」
「たわけ!痛がっておるのもわからぬか」
氾王の一喝に尚隆は目を見開いた。
息をついた六太の姿に知らず力をこめてしまっていたことに気付く。
チッと短く舌を打ち、顔を背ける。
「──…すまん…」
押し殺したようなその呟きに、六太は胸が切なくなるのを覚えた。
「いや…平気だから…」
「足がふらついておろう」
その氾王の言葉と同時に脇の下に両腕が差し入れられたと思った次の瞬間、
不意に視界が高くなり六太は驚く。
抱き上げられたのだ。
「え、あっ!ちょっ…氾王」
「愛でてくりょうと申したであろ。私は半身の梨雪をあのように無体に扱ったりはせぬ主義ぞ。
延麒はいつもあのように扱われておるのかえ。不敏なことよ」
宵の宴席までまだ時間があろう、と六太を腕に抱いたまま氾王はくるりと尚隆に背を向ける。
「無粋な横槍はそれまで望まぬ」
そしてそのまま少し歩を進めたところで振り返る。
「…確かに延麒は私のものではないが、こ度の滞在中は私の配下に置かれる。
王と言えど私の許しなく無体を働くことは認めぬよ」
邪魔することもの、と切り結んだ言葉に尚隆は顔をしかめて吐き捨てた。
「…勝手にしろ」
しばらく対峙したのち、ついとまた向きを変え、六太を抱き上げたまま氾王は小立に消えた。
「くそ…あの野郎」
ぎり、と唇を噛み消えた方向を睨みつける尚隆に、そこにいた官がおろおろと声をかける。
「あの…主上。どういたしましょう…やはり後を追った方が…何かありますと」
それを遮り、構わんと尚隆は怒鳴った。
「邪魔するなと言ったのだ。放って置け!何かあってもあいつの責任なのだからな。
俺は知らん!」
は、はいと官が飛びはねる。
「あ、あの…主上はどちらへ…」
「寝るのだ!くさくさしてかなわん!──おい!」
「はっ、はい!」
「朱衡に伝えておけ!宴の準備をさっさとしろとな。…あー!!おさまらぬ!」
頭から湯気を立てながらやはり小立に消える主を見送り、官ははい、と呟いた。

153名無しさん:2004/11/27(土) 22:15
この後、氾王がどこまでなさるのでしょうか ワクワク
よろしくおながいしますね姐さん。
尚隆もおめかし状態の六太を食べてよいのかしら。

154名無しさん:2004/11/28(日) 02:06
尚隆の主食は六太ですもんね〜・・・♪
それを氾王に横からつまみ食いされちゃ・・・
違う意味で尚隆切れるのかしら??
続き、たのしみで〜す

155名無しさん:2004/11/28(日) 03:15
六太がかわいい・・・
もーめろめろです
続きまってます

156春怨二人1/尚六ほのぼの:2004/11/30(火) 19:49
書き捨てスレなのにレベル高くて書き捨て難い…。
>2を思い出してゴー!!
設定/尚隆碁石集めは飽きた頃以降、陽子とか泰麒が現れる以前。特に意味無いけど。
まだくっついてない主従。
これきり書き捨てか、だらだら続け…ます。


緑の柱が立ち並ぶ、歓楽街のとある妓楼。女達の嬌声かしましいその一房。
男は昨夜の情事に怠い身体を窓辺に凭らせ、春日に呆ていた。
舞い散る桜を何とはなしに見やり、胡弓の音は耳に心地良く転がって来る。
胡弓の弾き手は昨夜の相手の妓女であったが、年端の行かぬ娘には無い、
しっとりとした色香があった。

不意に胡弓の音が止む。気付き、男は続きを促そうと女に目をやる。
すると弾いていた筈の胡弓を傍らに置き、女は三つ指をついていた。その改
まった様子に男は首を傾げる。
「風漢さま。私、この春見受け先が決まりまして…。今までご贔屓にして下
さり、有難うございました…」
女は頭を下げ、感謝の念を示す。瞬時呆け、風漢は目を丸くする。だが直ぐ
に飄々とした面を浮かべ、戯言を吐く。
「何だ、そうか。―惜しいな。俺が見受けしようと思っていたところを」

157春怨二人2:2004/11/30(火) 19:57
「ほほ…冗談ばかり。たびたび有り金を巻き上げられ、店の下働きをされる
方に払える額ではございませんよ、私は」
女の冗談に、風漢は気を悪くするでもなく「そうか」と苦笑する。それに、
と女は話を続ける。眼差しに、戯れを感じさせない。
「風漢さま、心から想う方がいらっしゃるのでしょう?―これは、女の勘で
すが。違いますか?」
これで最後だからか、男に立ち入った事を尋ねる。
暫し、風漢は何かを考える様に窓の外に目をやっていたが、やがてその問い
に答えた。
「…まあな。だが、どうにも手を出し損ねておる」
女はそれには驚いてみせる。初心でいらっしゃる事、と。
「風漢さまに本気で口説かれたなら、落ちぬ女など居ないでしょうに…」
「ならば、そなたを口説こうか」
女の顔を覗き込み、顎に手を掛けるが、女はゆるゆると首を振る。
「それこそ、お戯れ。本当に、掴めぬ方だこと」

その楼の門を後にした。振り向けば楼上から先程の女がこちらに手を振っていた。
初めて会った頃のその女は、物慣れぬが愛嬌の有る娘だった。年を経てそれ相応
に落ち着いたが、その変化も好ましかった。惚れてはいないが、好いていた。
だが共に永い生を生きる者でなければ、それは忽ち過去となる。しかし風漢の恋
愛遊戯の相手は尚隆にとって雁の一民となり、その民の幸せを願う。
女に手を振り返し、楼から去った。

158春怨二人0・5:2004/11/30(火) 20:20
春麗らかな玄英宮。春鶯はさえずり、見上げれば空は桃色で覆われていた。
春眠暁を覚えない、雁国の台輔は四阿に横たわっていた。
暖かい春の光の元での日光浴は、陽光が身に染みるようで心地が良い。
この感覚は何かに似ている、そう思った。


↑冒頭に来る筈が、コピペし忘れた。トホー。

159名無しさん:2004/12/01(水) 08:10
いやん、新作。
楽しみにしてますー

160名無しさん:2004/12/01(水) 16:55
身請け…ぐらい書いてクレロ。
ほかの文がキレイナノニ、もったいないダロ。

161名無しさん:2004/12/01(水) 20:40
尚隆のほうが言い出せずにいた系のは別館では初めてのようで
楽しみです。尚六スレのとパターンが逆ですよね。

162『台輔の勤め』13:2004/12/02(木) 03:44
オフの修羅場の中息抜きに更新。レス下さった方有り難うございます。
どこまでいってよいものやら迷いあぐねている内にこんな数…orz




風が強い。
「…なあ」
あおられて顔にかかる髪をうるさそうに指ではらいながら六太は声をかける。
先程の庵から場所を変えた玄英宮の端、雲海を見渡す広い庭園に二人はいた。
「何だね」
「小姐はどうして来なかったんだ?」
六太はあの生意気ながらも愛くるしい氾麟の姿を思い浮かべる。
「梨雪には小用を任せておったのでね。随分とさみしがっておったが…仕方あるまいよ。
些細なことであるのだがね、ちと手の離せぬ件があるのだ。だが、あれに任せておけば安心出来よう」
「…へぇ!小姐は中々優秀なんだな」
そう言った六太に、意外かえ、と愉快そうに氾王が目を細める。
「梨雪はああ見えて骨があるぞえ。延麒にも劣るまい」
俺は別に、と六太は口をすぼめた。国政の大切な仕事を任されているらしき氾麟に
己の身を照らした六太は彼女を少し羨ましく思ったのだ。
尚隆は自分をそのように見ているだろうか。有能で、いざという時に頼れる麒麟だと。
(ちょっと違うよなあ…)
己が役に立つのはその子供の外見を生かした諜報くらいのものだろう。
尚隆は自分に国政の一端を任したりはしない。
「いいな、小姐は。信頼されてるんだな、随分と」
「延麒とてそうであろ」
「違うよ。俺は何にも出来ない」
「おや!」
随分と殊勝なことよ、と氾王は大仰に笑った。
「子猿の台詞とは思えぬの」
「ちぇ、本音だよ」
「かように台輔の役を果たせておるであろ。…その様装がお主を慎ましくさせているのかえ?」
全く愛らしいことを申す、とやはり氾王は柔和に面を崩したまま呟いた。
「あまりに上出来すぎてお主の王が臍を曲げておるというに…」
くつくつと笑う。
「…そなたはあやつにとりかけがえのない麒麟よ。何を案ずることがある。
あれの無張面なぞ見慣れたものだがね、ほれ。あそこまで臆面ものう
吝気を見せたのはついぞ初めてのことよの」
明らかに尚隆は怒っていた。氾王に、そして六太に対して。
確かにあれが嫉妬ではないと誰が思うだろう。
「…延麒よ」
六太は顔を上げて氾王を見上げた。
「私はね、本来はあまりかような心情を抱くことはない」
意味深げに細められた瞳に、六太は眉を寄せその真意を問う。
「…だがね、あれを見て少々悪趣味な気持ちが湧いた」

163『台輔の勤め』14:2004/12/02(木) 04:52
「え?」
意味がわからずに聞き返す。
氾王はそれには答えずただ笑い、少女のように可憐な装いをした目の前の美しい子供を見つめた。
「景色は悪くないが、ここはちと風があるの…なんと埃を被ったことよ」
立ち上がり髪に手をやった氾王に、六太も慌てて立ちその着物に指をやった。
舞い上げられ薄くついた砂を、布地に気を遣いながらはらい落とす。
甲斐甲斐しいその様を満足げに見下ろしながら氾王はお主もの、と言い六太の髪を撫でた。
「さよう…宴の前に湯を使わせてくりゃるかえ」
口にした言葉は六太の動きを止める。
「え。──ああ!うん。構わないけど…」
「ならば女官を控えさせておかなくてはなるまいね。湯上がりの様装も整えねばならぬであろ」
そなたはね、と氾王は六太を見て微笑んだ。六太の目が開く。
「えっ──ちょ、それって、もしかして──」
俺も、と開きかけた口をそれに触れた長い指が押しとどめる。
「…よもや湯殿での身世話を他の者に任せるなどということはすまいね、台輔?」
「──!…」
何か言おうとしたものの甘く、だが真っ直ぐに煌めく瞳に見据えられ六太はとうとう頷く。
「わかったよ…。──沃飛」
はい、と足元から返した女の声に告げる。
「…女官に氾王の湯殿の用意、…それと、俺の浴着の用意をするよう伝えてくれ。
新しい着物も…それから」
おめかしの支度もですね、と柔らかな笑いを含んだ声がそれを引き継いで絞める。
「…そうだ」
六太は短く応え、女怪を行かせた。
「なあ…。思い付いた悪趣味ってこれか?」
溜め息をついて見上げると、なんの、と言って氾王は笑った。
「湯世話など当然の義であろ、台輔」
「じゃあ何だよ」
「…この場で申すようなことかえ。総い延麒にはその覚悟が出来ておると思うておったのじゃが?」
ぴくりと背が張った。
「…予定は今日一日のはずじゃ?」
日を跨ぐとは聞いてはいない。
胸が不穏な音を立て始める。六太は横を向き、平静を装って尋ねた。
「確かにね。そのつもりであったのじゃが…さてね」
だから宴も早い時間に設定されている。だが湯を使えばそれは遅れることになろう。
そうすれば宴席の終わりには陽は落ちている。国賓を夜に帰すことは有り得なかった。
無論不測の事態に備えて臥室の用意はされている。…だが、この状況でそうなれば。
まさかとは思うが、…だが。
六太の表情が強張った。
「……」
覚悟がない訳ではなかった。


伽という役。

164春怨二人3チラシの裏気分。:2004/12/02(木) 21:19
尚隆は乗騎を預けてある宿屋へ向かい、そして己を乗せたとらを空へと走らせた。
こんな風に、突如時の流れから弾かれた様な日は、あの城へ帰りたかった。
時の流れの緩慢な、己の家へ。

光が、寝返りを打つ金の頭に反射し弾ける。
春光の中、ぬくもりに満たされるこの感覚―。似たものは直ぐに思い出される。
六太はやや眉を顰め、寝そべったまま腕を高く上げ、ある方向を指で指し示す。
「…あっち」
誰に言うでもなく、意味の無い行動は「似たもの」を思い出した事が悔しかったから。
悔し紛れに、己の思考がすぐに主に直結する事を肯定してやった。

不意に、己を満たす心地良さ―陽光が強くなった。もう昼を大分過ぎた頃か。
もしも、もしも尚隆が自分を置いて逝ってしまい、次の王を選んだとしても、この
陽光が有れば自分は生きていけるかもしれない。そう思ったその時。
「人を指で指すな、莫迦者」
突如現れ、ずかずかと歩み寄る背の高い男。
―何だ、本物か。姿を見ずとも分かる、降り掛かった声にやや気落ちする。
己にはこれに代替するものが無いのだ、と。

寝そべったままの六太の隣にどっかと腰掛け、尚隆は項垂れ、大仰にはあ、と溜息
を吐いた。
「…女に振られた」



>160
それがよう、インフォシーク辞典に【身請け/見受け】と有ってよう。
字面の柔らかい方を使いたくてよう。厨でゴメン。

165名無しさん:2004/12/02(木) 21:44
微妙な心のうごきとか、何気ないやり取りの中に見える感情とかが禿萌えなので
春怨二人はなんかすごい楽しみにしておりますよ!
チラシの裏気分で書きなぐってくだせえ。

166名無しさん:2004/12/03(金) 09:36
春怨、いいですね。萌えます
ねちねち尚隆の心をがっちり描いてください。
氾六の六太かわいい!

167春怨二人4そんな良いモンじゃないですチラシの裏。:2004/12/04(土) 21:04
それには六太は腹を抱えて笑ってやった。主の情けなく、しょぼくれているであろう
顔を見てやろうと半身を起こす。気だるく起こす金のあたまから、降り積もった桜の
花弁がはらはらと流れ落ちる。
頬杖を突き面白くもない面をした主を仰ぎ見ると、その姿は想像通りで六太を愉快に
させた。彼をよく見れば服装から、下界からたった今帰って来た事が窺え、足元には
騶虞のたまがじゃれ付いている。
「格好悪いなあ、お前。一国の王様が」
主を無視する様にたまに飛び付き、その抱き心地を楽しむ。一応、主の話し相手も務
めてやる。
「ふん。王は関係有るまい」
「どうせ、遊びだったんだろーが。相手の女の方が迷惑だっての」
背を向けたまとじゃれ合い、六太は何気無く表情を隠した。
どうもこの手の話は良くない。尚隆の只の話し相手として、平然と付き合うのは身に
堪える。それは、悋気などではない。尚隆が下界を遊び歩いている内は、雁はきっと
安泰なのだ。そう割り切りつつ、胸に苛々しさを生じさせる。だが六太にはその苛々
の正体が知れていた。例えるなら、妻を失ったやもおの息子が、その父の再婚に際し
て抱くような気持ち、寂しさだと思う。
尚隆が妻を迎えたなら、自分はきっと寂しい。それだけ。悋気ではない。
決して、ない。

168春怨二人5    ベタ:2004/12/04(土) 22:36
尚隆は多少は色の有る話の中で、ふとこの子供を口説いてみたくなった。
六太と己との平行線とも言える間柄は、いつか、いずれは交わる時が来るのだろう。
そう漠然と思っていた。しかしそこで気付いた事がある。己は姿形を変えず、依然
悠久の時を過ごすつもりなのか、と。

「まあな。…言っておくが、お前には俺を慰める義務が有るぞ」
「はあ?何でだよ。麒麟にそんな義務有るわけねえだろ」
―さもありなん。どうにも伝わらぬ様子がおかしい。元より、男に口説かれるとは六
太も思うまい。
だが暫し間を置き、六太は尚隆を振り返る。そして、慰める訳ではないが、と前置き
して。
「…お前が本気で好きなら、無下にする女はそう居ねえんじゃねえの…」
それは先程の苛々を吹っ切る為に吐いた言葉だった。だが主は眉を寄せ、じっと六太
を見つめる。その為、六太はやや慌てた。
「い、いや、客観的に見て、だな」
「本当か?」
「う…。まあ、良い線行くんじゃねーの」
どうでも良いような口振りに「そうか」と返し、六太の側近く寄り目線を合わせる。そ
して目の前のその小さな手を取り、真摯なまなざしを向けた。
「…我が春怨の君よ。俺の、生涯の伴侶となってはくれぬか」
空気が止まった。それは春風が吹き抜け、桜の花弁を攫う事が見て取れる時間。
この尚隆の全ての行動、発言が六太の考えの及ばぬところであった。六太は目を瞬かせ、
やがてこの上無く白けた顔をする。
「何それ。練習か?…お前な、そんな芝居掛かった爺臭い台詞で口説かれる女なんか、
幾らなんでも居ねーだろ。重いしさ」
尚隆の握る手を払い、前言撤回、とばかりに呆れてみせた。

169名無しさん:2004/12/04(土) 23:27
やばいこれ、もうドキドキでキュンキュンですよ先生。

170名無しさん:2004/12/05(日) 09:06
いかん・・・
続きが読みたい。春怨。
六太と尚隆の微妙な駆け引きが・・・ああん
私を殺す気ですか姐さん

171春怨二人6:2004/12/05(日) 20:56
払った手が、払われた手がそのぬくもりが去っていく事が少し寂しい。
「仕方なかろう。俺も、年寄りだからな」
爺臭いのは勘弁しろ、と言って笑う。
「あのさ、思ってもない事言うなよな。どこにこんな好色な年寄りが居るんだよ。世の
お年寄りが聞いたら呆れるぜ?」
「お前こそ、何時までも子供のつもりだろうが」
お前は変わらんな、と腕を伸ばし六太の頭をくしゃりと撫で付ける。それに少し眉を寄せ。
「そんな事ねえよ。中身はちゃんと大人になってる。気付いてないのは、お前だけ」
そして、尚隆こそ、と言いかけ主の顔を覗き込む。―そうしようとした時。突風が吹き
付け尚隆の黒髪を掻き乱した。
六太は腰を上げ手を伸ばし、彼の面に掛かった髪を側面に除けた。小さな手が頬に触れ、
どうにもこそばゆい。だが、されるがままにしていた。
六太は尚隆の面を、瞳を凝視している。何かを探るように。
面と面が近付き、近付き過ぎ、尚隆は緊張する己を感じた。
このまま腕を伸ばし、この「自分は大人だ」と言う子供の腰を抱き、肩を抱いて少し顔
の角度を変え、目を閉じれば―。

「…うん、今は良い感じだな。悪くない。前は少しやばかった」
不意に身体を離し、一人六太は納得する。だがこちらは納得がいかない。何が良くて何
が悪いのか。そして、己は一体何をしようとしていたのか。
「前?」

172春怨二人7路線変更シリアスくずれ:2004/12/05(日) 21:49
主が問えば、六太は言うつもりではなかったのか顔を顰め、背ける。
「そうだな…。百年くらい前、かな?」
ぽつりと漏らしたそれに、尚隆は思わず身を固くした。
「あの頃さ、なんか上手く言えないんだけど…。仕事するのも、遊びにも、目が死んで
たっつーか。…精彩を欠いてた、っつーの?そのくせ妙にぎらぎらしててさ、…とにか
く変だった、お前」
漸う語り出した六太も、尚隆も互いに顔を逸らし、ただ正面を見やる。先程の突風に吹
かれた花弁はまだゆらゆらと辺りを漂っている。舞い散る桜の花弁が暗示するもの。
「おれさ、あの頃雁の歴史とか、各国の王朝の昔を調べたりしてたんだ。…成笙がさ、
そうしろって」
成笙も無茶を言う。各国の歴史など、麒麟には酷な陰惨な事も多かろうに。だが、前王、
梟王の忠臣としてその変貌する様を知る男は、現王の半身たる麒麟に訴えたい事が有っ
たのだろう。
「で、何が分かった?」
「…立朝三百年頃、善政を敷いていた王が暴君と化して国が滅びる事が多い…って事と
か、かな」
二人は漸く面を向け、瞳を合わせた。六太は固く膝を抱いている。
「…お前がその頃、俺にそのような話をした覚えが無いが」
「お前に説教とか忠告すんの?…お前がその気になったら、おれ達が何言ったって無駄、
かえってお前を煽るだけだろう?」
「それは、突き放しているのではないのか?」
尚隆は眉を寄せる。己が暴走しても、誰も止めてくれぬとは。
「いや、絶対ムキになる。だから、自然の成り行きに任せた」
腑に落ちない尚隆を横目に、でも、と言う。
「おれは、思ってたよ…。お前がそんな例通り、暴君と化す様なつまんない、三流の王
なんかじゃないって…」
「三百年持たせて三流と言うか。…そうなったら、朱衡が嬉々として下らん諡を付ける
様が目に浮かぶわ」

尚隆は否定も肯定もしない。だが六太はこう読んだ。尚隆にも暴君となり得る時期が有
ったのだ、と。
主の顔を仰ぎ見、恐る恐る、慎重に言葉を吐く。ずっと確かめたかった事を聞く。合わ
せた目を、目を逸らさないでくれ、と祈りながら。
「…昔の話、だよな?」
「ああ」
目を逸らさず事も無げに言ってのければ、六太はにんまりと、輝くように笑った。

173春怨二人8:2004/12/05(日) 22:27
「あーあ、心配して損しちゃったなあ。なあ、たま」
倒れ込む様にたまにしがみ付いた。その小さな背中は、肩は震えていた。声を押し殺して、
泣いているのだろう。
背を向け隠しても、こちらから見えるたまはくおんくおん、と鳴き、慰めるように主の頬
を舐めていた。
その涙は、唯一無二の主に仮にも裏切られた悔しさ悲しさの為、しかし現状を省みての安
堵ゆえ。その身体に、きっと百年もの間その憂いを封じ込めていたのだろう。
尚隆に今、六太に掛ける言葉は無い。ただ、気の済むまで泣かせていた。

どれくらい経ったのか、泣き止んだ六太が尚隆を振り返る。少し作った感が有るが、笑顔
を浮かべていた。
「でもさ、良く考えたら、いや良く考えなくても、雁が四百年も持ってる方がキセキ、ま
ぐれな訳だしな!おれ、いつでも覚悟は出来てるよ?」
雁はお前の好きな時に、好きな様にしろ、と言外に言った。
「…そう言われると何やらつまらんな」
「それが、ねらい」
お前の性格なんかお見通しだ、と小さく作った拳を伸ばし、主の頬にぐりぐりと押し付ける。
―この子供の、気丈さ強さが何より好きだ。踏みにじられても、決して折れぬ。もっとも、
これを踏みにじるのは己以外有り得ないが。
「…泣いたくせに」
「はあ?泣いてねえよ?お前何か見間違えたんじゃねえの?」
惚けてみせる六太の、泣き腫らした面の頬を摘み、ぎゅう、と引っ張る。
「どの顔で言うか、鴉かお前は」
そうすると、六太の頬は餅のように良く伸びた。
「いてててててっ!麒麟の御尊顔を引っ張るな!!」
「お前のどこが尊いのだ。よく食うわ遊ぶわ、低俗麒麟が」
「低俗って言うな!てめーだって似たようなもんだろうが、この振られ男!」






コメントに冷や汗する心苦しい中の人です。
春怨=恋に嘆き悲しむさま。って事らしいです。
で、誰も気にしてないと思いますが、台詞に有った「春怨の君」ってのは
「自分を恋に嘆かせるあなた」、てな風に強引に。ウソ語ですが。ウソ日本語。
でも「春怨」→「春エン」→「春雁」と被るのがちょっと良いかと。
恐らくレス15前後掛かるかと思われますが、一応内容もラストも決まりましたので
どんなご都合主義もグダグダヌルい内容も笑って許せるお優しい方、チラシの裏の隅の落書きに
お付き合い下され。
一人リレー気分…。語彙と脳が足リナイヨ!!

174名無しさん:2004/12/05(日) 23:04
春怨、どこまでもついていきます姐さん
突っ走ってください。
どういったらいいのやら
エロがないのにこの上なくエロい…
姐さんの書く尚隆はいい男だ、人間の弱さもありながら
踏みとどまる強い男っぷりに惚れます。
六太がけなげでかわいいし。どうしてくれるんだ、この胸の高まりを。

175心の傷痕モエモエ:2004/12/05(日) 23:31
六太は、一人湯船に浸かってあれやこれやと考えを巡らせる。
勅命だから仕方が無いとようやく心を決めて湯の用意をさせる頃には
すっかり日は傾きかけてしまっていた。
そうしてようやく女官に準備は整えてもらい、一人湯を使っている。
しばらく身体を暖めた後、湯船から上がって小さく口中で女怪の名を呼ぶ。
白い鱗に覆われた手が背後に現れる。
「髪を洗うのを手伝ってくれ。」
醜くなった俺だけど、髪だけは昔と変わらないから。
尚隆が気に入っているこの髪だけでも、せめて綺麗にしておきたい。
ゆったりと髪をすく手に身を任せる。

尚隆は俺に何を求めてるんだろう。
俺の為に、部屋に幕を引き明かりを消すと言った。
まるで自分の心の渇きや身体の疼きを読まれてしまったようで落ち着かない。
そうまして俺を抱いて、尚隆にどんな利点が有るのか皆目見当が付かない。
思考はグルグルと同じ所を回り続ける。
でも、勅命だもの。逆らう事なんて出来ない。
自分にどんな理由があれ、これで主の傍に侍るしか無いのだ。
不安や期待がないまぜな己の心におののいて、六太は小さく身体を震わせた。
「お寒う御座いますか?」
女怪の言葉に我に返った。
「いや、大丈夫だ」
言って心を決める。
何もかも考えても詮無い事だ。
尚隆は俺に伽を命じたけど、俺の姿は見ないで呉れると言った。
その心に、今は素直に甘えたいと思った。


えええん;;;

湯殿に伽!!
ネタ的にはかぶってるので、先に書かせてもらいましたー・・
149さん〜〜〜汗


そして、春怨も台輔の勤めもむっちゃ気になります!ドキドキです!

176『台輔の勤め』15:2004/12/06(月) 00:29
久々にリレスレ書いてこっちも。春怨も心の傷跡も萌え…!!



用意の整った湯殿に氾王を案内する。
「じゃあ…俺、先に行くから」
湯世話をする者の入り口は奥に別にある。六太はそちらに足を向けた。
控えていた女官が手際よく六太を浴着に着替えさせる。
重い着物を脱がされ鬣を飾っていた簪が外されると六太はほっと息をついたが、
それも束の間、今度は手際よく金の髪が結われていく。唇を彩っていた赤い紅は拭き取られ、
薄桃色の紅を塗られた。
「それは…いいよ」
拒んだものの、なりませぬ、とぴしゃりとやられて口ごもる。
「かの氾王のお世話です。そこには一分の隙も許されませぬ」
「……」
朱衡に余程言いつけられているのか、それとも女官の意思なのか。
とにかく普段身世話をさせない六太に、彼女達はここぞとばかりに情熱を燃やしているように見える。
実はそうであった。女官らは、普段六太があまり装いに頓着しないのを口惜しく思っていたのである。
ただでさえ愛らしい容姿のこと、髪を結い、美しい着物を着せめかしつけたなら、
さぞお綺麗になられるでしょうにと語り合ってきたのである。
そのように涙を呑んでいた女官らに、この機会を逃す手はなかった。
──かくして新たにめかしつけられた六太は何とも可憐な湯女であった。
このようないでたちで湯世話をされたなら誰もが心を怪しくさせるであろう、そのような出来であった。
尚隆が見れば頭から湯気を沸かせて憤るに違いない。
「──湯世話の者はまだ来ぬかえ」
しまった、と六太は顔を上げる。
「今──!行くから」
返事を返しながら慌てて湯殿へ入る。
先に来ていた氾王は既に髪も解き、玉で出来た台座にゆるりと腰をかけていた。
「ごめん…遅れた」
六太の姿を見て氾王はくすりと笑った。
「…また愛らしい湯女に化けたものだね。何、構わぬよ。その姿は気分が良い」
六太の身に着けているのは桜色の薄い襦袢であった。頭のやや片側に寄せた形で
高くまとめた金の髪は、耳の横と遅れ毛のみを少しだけ垂らし、何とも艶めかしい。
対して氾王は一糸纏わぬ姿であった。着衣の状態からは予想だにし得ないその裸体は
がっしりとした骨格に沿うように美しく筋肉がついていて、六太は不覚にも鼓動が高くなるのを覚える。
胸がどきどきとして、まともにその体を見ることが出来ない。
「…えと、まず何をすればいい?」
思わず伏し目がちになるのを隠しながら口を開いた。

177名無しさん:2004/12/06(月) 00:51
お風呂祭りですね。いやっほう
どっちも素晴しい。
台輔の勤め、女官の気持ちになって読んでいます。
ろくたんにおめかしさせたい…

178名無しさん:2004/12/07(火) 00:51
祭りに春怨に、いろいろあってクラクラです。
傷痕続きの姐さんほんとにありがとう。私には続き思いつけなかったです。
期待しまくってます!

179春怨二人9:2004/12/07(火) 17:28
「ああ、そうやって主の傷を抉る。不死でも心の傷はなかなか癒えぬものだぞ?」
悲しそうな面を作ったが、それも一蹴される。
「知ってるよ、んな事。でもお前の遊びの心の傷なんか、一晩寝りゃ治るだろ。てか、傷
なんて元々付いてないだろ」
「ばれたか」
「とーぜん」
そして笑い合った。こんな下らぬ遣り取りは、仕事時以外では常の事。共に居る時の同じ
空気。それは、心地の良いものだった。

庭園の、離れの四阿で主従はのどかな春光を受けていた。
「…で、お前はこんな所で何をしておったのだ?政務をさぼりおって」
「お前にだけは言われたくないけどな。午前中に午後の分もまとめてやっちゃったから良いの」
六太はたまの隣に寝転がった。見下ろしてくる主の視線は疑わしげだ。
「今は、日向ぼっこしながら昼寝。邪魔が入っちゃったけどさー」
そう言って欠伸を一つする。寝転がると先程の眠気が再びやって来た。
「昼寝か。気楽な奴。たくさん寝て良く育つ事だな」
「嫌味言うなってのー。…お前は何しにここに来たんだよ?」
すると尚隆は少し言い淀む。六太はちらと主を横目で見やった。
「…下界から帰って来たら空から派手な金が見えたでな、少し遊ぼうと思ったのだ」
「何だよー…。おれは…玩具じゃ、ふわあ…ねえ、ぞ…」
この睡魔は尚隆の王気が気持ち良い為だろうか。そう、今の尚隆は大丈夫。
尚隆がかつて己を裏切る気持ちを起こしたとしても、それは過去の事。それならば良い。
「でもまあ…久し振りにお前と…こんな風に……喋れて……良かった………かなー…」
その言葉は徐々に、すう、と寝息と共に消えていった。

寝入ってしまった六太の隣で、尚隆は軽くその頭を撫でる。
「…俺は、お前に会いに来たのだ」
誰に言うでもなく、そう呟いた。

180春怨10辻褄合わせの為尚隆が純、六タンハアハアに…(不本意:2004/12/07(火) 19:35
尚隆には六太をしばしば放置していた節が有る。それは、この子供の気性を考えれ
ば「王と麒麟」という関係に縛られる事を哀れんだからだ。―六太にとっては残酷
な優しさだろう。
だが今は、尚隆から六太に会いに来た。己の寂しさ、人恋しさを埋める為に。
寂しい、その気持ちを認めてやる。それは心が老いていない証拠だ、と自らに弁明
する。

六太の髪に次第に降り積もる花弁を払ってやる。その面には泣き腫らした名残があ
った。
―泣いたくせに。いっそ泣いて縋れば良いものを。「覚悟は出来ている」などと小
賢しい。あの頃の、国も己をも焼き滅ぼし尽くさんとする炎は今は鎮火している。
燻る火種を心のどこかに感じるが、それでも今、雁は安泰を保っている。
「たまには、褒美をくれても良かろう…?」
卑怯な事をする。春草出る地面に手を置き、眠る六太の上に影を作る。起きぬよう
そっと顎を捉え、微かに上を向かせる。そして面を近づける。先程誘惑に駆られた
事を、行った。
それは軽く触れるだけ。それでも、六太の一部が欲しかった。柔らかく、瑞々しさ
を湛えるそれ。ああ、白粉や紅の匂いはしないのだな、と当たり前の事を思った。
唇を離れる際、舌先で軽く舐める。それは甘く、桃か何かの味がした。恐らく尚隆
がここに来る前に食していたのだろう。

六太に気付かれぬよう、唇を盗んだ。己の心を明かさず相手の心も確かめず、この
卑怯な真似。それは男同士である、等を気にしての事ではない。ただ、この子供を
いつ裏切るとも知れない己が居たからだ。

181名無しさん:2004/12/07(火) 21:08
姐さん、いっそ殺してくれ。
萌え死ぬよ
春怨!!!
いいですー
早く続きを・・・お願いします、早く・・・

182春怨二人11:2004/12/07(火) 21:50
身体を起こしつつ自嘲する。望めばどんな贅沢も出来る己が、これが褒美とはささ
やかに過ぎるのではないか。
知らず唇を主に捧げた六太は安らかな寝息を立てている。もう暫くして、風が冷え
てきたら仁重殿にでも運んでやろう、そう思った時遠くに人の気配を感じた。

「お前らー――!!こんな所におったかー!!すぐに捕まえてくれるわ!!」
「主上は三日分の政務、台輔は午後の政務が残っていらっしゃるでしょう!!」
突然の官吏の声に、尚隆は振り返り六太は目を覚まして身を起こす。
「お前、午後の分もまとめて片付けたのではなかったのか」
「へへへ」
三人の官吏は今にも捕まえん、と二人目掛けて駆けて来る。だが、こちらにはたま
が居た。
「たま、帰って来たばかりですまんが、もう一働きしてくれんか」
その囁きにたまはくおん、と鳴き返す。尚隆はたまに飛び乗り、反射的にたまに手
を掛ける六太の身を掬い上げ、己の前に乗せた。
「こらー――!!逃げるな貴様ら!!」
その声に縛られる事無く、「行ってくれ」という声と共に二人を乗せたたまは駆け
出し舞い上った。
庭園の柵を越え、桜の回廊をくぐり抜ける。その際、尚隆は手を伸ばし桜の小枝を
数寸ほど手折った。

たまを走らせ、空の上から振り返れば官吏達はもう小さく見える。それでも腕を挙
げ、盛んに非難している様は見て取れたが。
「どこ行くんだよ?」
たまの上で六太が主に問うと、特に決めてない、と返ってきた。
「別に政務を執っても良かったのだがな。追われた為、反射的に逃げてしまった」
「お前なあ…。でもそれは、分かる」
二人は互いに顔を向け合うと、楽しげに笑った。

183春怨二人12 ラヴコメ(臭:2004/12/07(火) 22:32
「とりあえず関弓に降りるか」という主の言葉に、六太は常に持っているのか胸元
から巾を取り出す。それを頭に巻こうとしたところ、遮るように声が降ってきた。
「六太」
呼び掛ければ振り返る子供の耳の上、流れる金色の隙間に先程の桜の小枝を挿して
やった。
「…何のつもりだよ」
「いや、少し動くな。…ふむ」
鑑定人よろしく手を顎に当て、暫し見つめる。後、軽く吹き出した。
「…呆れるほど良く似合う」
「お前な、そんな下らない事言う為に花を手折んなよ」
顰めた顔を向けてやれば、主は更に顔を覆いたくなるような事を言い出した。
「なに、お前の髪に飾られて花も幸せだろうて」
「うっわー!尚隆寒いよー、おれの周りだけ冬が来た!」
寒そうに体を抱きつつ簪と化した小枝を抜き、それを手に持ち見つめる。
己の為に手折られたその枝を捨てる気にはならず。そうしていると尚隆は六太の手
からそれを取り、六太の衣の襟元に挿した。
「まあ…勘弁してやる」
仕方なく受け入れた、己の胸元に咲いた花を見やり思う事がある。
それは、主に与えられたもの。

「お前さっき、おれが寝てる間、おれにく…、いや何かした?」
「いや?…墨と筆が有ればお前の顔に落書きでもしてやったところだが」
振り返って問うた六太に恍けてみせた。
「あのなあ。餓鬼かてめーは」
そっか、と前を向き面を伏せる。唇に手の甲を当てる。気のせいだったか。朧に感
じた、その行為が愛情表現の一種である事は六太も知っている。男と女の。
尚隆が自分にそんな事をするわけが無い。願望を夢に映したのだろうか。…そんな
願望を己は抱いているのだろうか。そんな莫迦な。おれは男で、こいつも男で。

六太が思いを巡らせている内に、主従を乗せたたまは間も無く関弓の街に降り立った。





次回、…関弓デート…(鼻汁

184名無しさん:2004/12/07(火) 23:17
萌えすぎて呼吸が苦しいです姐さん!
尚隆の言葉を本気に取ろうとしない六太がじれったい!
非情にイイです。続きをみたい…!

185名無しさん:2004/12/08(水) 18:28
姐さんに人生狂わされそうだよ
尚隆のご褒美キス泥棒にくらくら・・・
続きをくれなければ死ぬので
お願いしますよ

186春怨二人13 萌エ無シダラダラホノボノ。:2004/12/08(水) 19:50
夕を迎えるまで幾らかの時間を残す関弓の街は、道行く人々でひしめき合っていた。
もっとも、数百年前からこの街は静寂を知らなかったが。
そこに有る風景。活気の有る商人達。露店で売られる菓子や点心が蒸篭で蒸され立
ち上る湯気。路上で芸をする朱旌たち、またそれに群がる人々。他国からの旅行者
か、この春に妙に着膨れした者、薄着な者。学生と思われる集団が茶店の店先で何
やら熱心に語り合う様子。子らが駆け回るその横を酔っ払い達が通り過ぎる。
この活気に満ち溢れた街は、延主従にとっての庭だ。

二人がたまを宿屋の厩に預けた後、六太が早速提案した。
「おれ、腹減った。茶店に行きたい」
「そうだろうよ、お前は。先程桃を食っただろうに」
「え?何で知ってんの?」
「いや、…いつも食っておるだろうが」
後、飯を奢れだの手持ちが少ないだの言い合いをしていると、道行く広い通りに妖
獣の群れが現れた。
それは旅の商人に騎獣として躾けられた、売りものであると知れた。
近寄り様、尚隆は何気に一頭の天馬を撫でる。すると天馬は尚隆を気に入ったのか
盛んに頭を擦り寄せている。それに可愛げを見出したのか、尚隆はその背や顎の下
を楽しげに撫で返していた。

六太はその光景、天馬に羨望を覚えた。己は、このように素直に尚隆に甘えた事が
そう有るだろうか。
六太には、尚隆との距離を度々置いていた節が有る。それは己の「王を慕う麒麟の
本能」ゆえ。己が尚隆に纏わり付く事、慕情を示す事を、ただの「本能」ゆえとは
思われたくはなかった。
尚隆を想う故に、尚隆と距離を置いた。矛盾する思いを抱える。
だが、その想いとは一体?

187春怨二人14 萌エ無シダラダラホノボノ。:2004/12/08(水) 19:57
一しきり天馬を可愛がった後、去ろうとした二人の尚隆の袂が引っ張られた。気付
き振り返れば、先程の天馬が袂を銜えていた。行くな、とその瞳が訴える。
中年の騎獣商人がそれに気付き、ずかずかとやって来て尚隆を訴えた。
「おい兄ちゃん、売りものを懐かせないでくれよ!困るよ!」
「そんな気は無かったのだが」
頭を掻きながら、天馬と目の高さを合わせる。そして獣に尋ねた。
「俺のものになるか?それとも、黄海に帰りたいか?」
「おっおい、兄ちゃん、何勝手な事言ってんだよ!あんたのにするも、黄海に帰すも、
まずは金払ってくれよ!」
六太は呆れて呟いた。この、女たらしに獣たらしが―。
「兄ちゃん、どうするんだよ?」
腕を組み睨む商人に、言われ尚隆はその天馬の値札を手に取り見やる。民には法外な
その額に、驚くでもない。
躊躇無く胸元から財嚢を取り出すが、しかし大した額は入っていなかった。
「うむ、俺が買おう。だが今は手持ちが少なくてな。付けで…」
「旅商人に付けが利くかっ!飲み屋じゃねーんだ」
手に顎を置き、財嚢と天馬を見比べ唸り考える、その暫し後。
「では待っておれ。少々金策するでな」
「いやに偉そうだな、兄ちゃん…」
訝しげに見てくる商人を尻目に、尚隆は当てが有るのか何処かへ歩き出した。

「おい、金策って何か当ては有るのかよ?」
天馬と戯れていた六太は、意思の疎通が出来るのか何事か語らっていたが、駆け足で
主を追い掛けた。
「…何か質草にするしか思い付かんな」
尚隆は溜息を吐きながら袂を漁る。何か、金目の物は有っただろうか。その様子を見
て六太は微笑んだ。
「…お前って、意外と優しいんだな」
「意外と、とは何だ。俺は俺を慕うものを邪険にはせんぞ。もっとも、去るものは追
わんが」
―本当に?ただの本能で慕うものも、受け入れてくれるのか?
六太の胸に、そんな思いが去来した。

188春怨15 伏線になるのかこの辺…:2004/12/08(水) 22:43
脚は何処へ向かうのか、袂を漁る手が何かを掴む。「あったあった」と呟きな
がら、取り出した物は。
「範の奴が送ってきた物だ。わざわざ俺宛にな。どうせ、俺の趣味には合わん。
いずれ売っ払ってやろうと思っていたのだ」
そこそこの額にはなるだろう、と天にかざせばきらきら輝く、それは帯留めで
あった。翡翠に細工が施され、見るからに趣味が良い美しい品である。
「それを売ろうってのー?止めとけよ。あの御仁、お前の事〝まだ見込みが無い
訳じゃない、あと百年も有ればなんとか〟とか言ってたぜー?」
「ふん、見込みが無くて結構だ。大体、あと百年あいつが玉座に居るのか」
かの国の王の話となると途端に不機嫌になる自主を宥めつつ、売った後で氾王に
その帯止めの事を問われたらまずい、などと説得しどうにか思い留まらせた。

「風漢さん…。これは買い取れませんねえ」
暫し後、尚隆の馴染みらしき質店に辿り着いた。薄暗く古書や珍品等が佇むそこ
で、彼は勘定台の店主にある物を軽く、投げつけるように渡したのだ。
店主の老人がその渡された包みを開いた後、現れた物。
「〝延王御璽〟とありますねえ。本物ではないでしょうが風漢さん…。何やら犯
罪の臭いがしますねえ…」
尚隆の隣で様子を窺っていた六太は思わず目を疑った。
「おっ、おまっ、あれっ、ぎょっぎょくっ…、んッんんー――!!」
指差して呂律も回らず叫ぶ六太を、尚隆が肩を抱くようにその口を押さえ込んだ。
暴れる子供を訝しみながら見やり、店主は玉璽を元のように包みに戻した。そし
てそれを尚隆の元へ押し戻す。
「ま、お得意さんですから深い事情はお聞きしませんが…。私も善良な関弓市民
として、こういった事には関わりたくありませんねえ」
「それはすまん」と、尚隆は軽く謝罪して突き返された玉璽を袂にしまった。六
太を押さえ込んだ手を離せば、暴れ止んだ六太は大きく息を吐いていた。

もう質草にするような物が無い為か、尚隆は何とはなしに店内をうろうろと見渡
した後、店主に尋ねた。
「今すぐ大金が要るのだが。何か得られる方法は無いものか」
「そう言われてもねえ。…ああそうそう、あんたには打って付けかも…」

189名無しさん:2004/12/09(木) 02:33
姐さん連投お疲れです
いっぱい読めて今日は幸せだあ…
ありがとう
明日もたくさん書いてください
待ってます

六太と尚隆が自分の意志なのか…の意志に踊らされているだけか迷いながら
惹かれ合う様子が…たまんねえ!!
尚隆ご褒美キス泥棒のシーンはマイベストシーンとして何度も読返しちゃいます

190「春怨」中の人:2004/12/09(木) 18:18
>189
すみません、昨日休日だったんでドバッといきました。
これから少し間を置いて、書き溜めてからドバッといこうかと。

結局レス20前後掛かるかと思われますが、どんなご都合主義も
グダグダヌルいゲロ甘内容も耐えられるお優しい方、お付き合い下され。

皆さんのSS、このスレの連載の続きもリレスレも楽しみです!!(エロ待ち)

191名無しさん:2004/12/09(木) 23:35
>190
人類が死に絶えるほどのゲロゲロに甘いの読みたい。

192名無しさん:2004/12/10(金) 01:00
191さん、同意
人類が死に絶えるに笑った
どんなものですかそれは

193春怨16ダラダラ長く…:2004/12/12(日) 21:02
「打って付け?」
店内の商品を物色していた六太も尚隆と共に老人を覗き込む。老人は頷き、そっ
と尚隆の腰に佩いた剣を指差した。
「あんた、剣は強いんだろう?なんでも、市の広場で剣術の競い合いが有るそう
だよ。賞金も出るらしい」
尚隆はふと己の腰の剣を見やり、水を得たとばかりに目を光らせた。
一方六太は自主のその様子に辟易していたが。

競合はもう始まっている頃だろうが、間に合えば飛び入り参加も受け付けるだろ
う、と言う質店の主に礼を言い、路地裏に有るその店を出、早足で広場に向かう。
歩んだ途端、尚隆は己の横に虚を感じ、後ろを振り返る。
果たして、数歩離れたところにその虚ろに居るべき子供―六太は佇んでいた。そ
れを呼ぼうと尚隆が口を開きかけた時。
「おれ、お前が傷付いたり人を傷付けるところ、見たくない…」
だから、この辺で数刻待ってる。どうせお前の居場所は分かるから、と言う。や
や眉を寄せつつ。
「俺に傷を付ける奴が居ると思うか?それに俺も、人を傷付けたりはせぬ」
離れた六太の側近く寄るが、六太は面を伏せ表情を硬くしている。
「では、お前に血を見せぬと約束する。全て、剣を弾いて勝ってみせよう」
尚隆は更に言い募る。
「剣は、俺の唯一の特技なのだ。知ってる奴が見て、褒めてくれねばつまらん」
そう言うと六太は漸く面を上げ主を見やり、小さく笑った。
「…絶対だな?よし、じゃあもしもお前が人を傷付けずに優勝出来たら、おれも、
お前に何かして…」
途中言い淀んだ六太の面を尚隆は背を曲げ、面白そうに覗き込んだ。
「ほう?何かしてくれるのか?」
「…ああ、でもおれがお前にしてやれる事って、あんまり無えよなあ。お前の仕
事を代行しようったって、おれには埒外だし。…せいぜい、お前が出奔する時囮
になってやるくらいかなあ」
己が主に施せる事は何も無い事に気付く。それは、妙に六太を寂しくさせた。

194春怨17 ダラダラ強引に:2004/12/12(日) 21:08
説得に応じた六太は尚隆と共に広場に向かい歩き出す。
「でも、あの天馬買ってどーすんだよ?家にはたまととらが居るだろ」
確かに騶虞が二頭も居れば、天馬に乗る機会などあまり無いかもしれない。
「うむ、それだがな。成笙か毛旋あたりに下賜しようかと思う。…それか」
「それか?」
「白沢の爺にくれてやるのはどうだ?あの爺が妖獣を乗りこなす様はなかなか見も
のだと思わんか?」
「ひっでーなあ、お前。乗りこなせるかよ。白沢の腰が抜けたらどーすんだよ。…
でも」
白沢がふらふらと天馬に乗る様を想像したのか、六太は軽く吹き出した。だがやや
あって表情を戻す。
「…でもさ、あいつお前の事気に入ってたみたいだから。お前の側近く置いて、た
まには乗ってやれ」
必要とされないのは寂しいから、と続ける。一拍の後、尚隆はそれに頷いていた。

広場に近付くにつれ、ざわめく周囲の喧騒は大きくなっていった。


「…お前、気付いてたか?観客皆白けてたぞ?何だよ、五合も合わせずに勝ち抜きや
がって。何か、八百長みたいだったぞ…」
六太は尚隆から投げ渡され、受け取った包みから賞金を取り出し面白くも無さそうに
数えていた。

結局、観客溢れる競合に「風漢」として飛び入り参加をした、世界一の剣豪は難無く
優勝してしまった。
玄人の卓越したその剣技は見る者が居れば唸ったであろうが、素人の観客相手には派
手さを欠き、その試合は面白味の無いものだった。
今はその競合の後に、騎獣を売っていた大通り目指し歩いている最中である。
「人を傷付けるな、というお前の希望に沿ったではないか」
「でもなあ…。そもそもお前が出る事自体、反則みたいなもんだしな。王が民の娯楽
を奪うなよ」
「以後気を付けよう」
その気など無さそうな主に呆れ、六太は賞金を数え終えた。少し首を捻りながら。
「この額で…あいつを買えるかなあ?」

195春怨18 色無し強引に:2004/12/12(日) 21:14
黄昏時も間近、目指す大通りに近付けば人垣が出来ており、何やら様子がおかしい。
野次馬と思しき人垣の隙間から目を凝らせば官府の卒がうろつき、縄に掛かっている
―騎獣商人達。
「何か…夏官が動いているのか?」
「ああ、取引中詐欺が有ったらしいよ。商人連中は官府に連行、騎獣も押収、だとよ」
六太が覗き見呟いた言に、野次馬の一人が節介にもそれに答えた。

項垂れ、卒に連行される罪人達を目に、暫し立ち尽くし呆然とする主従。
―金策に走ったのは何だったんだ。
主従は呆気に取られていたが、六太は見やる現場に見知ったような者を見掛けた気がし
た。卒達を指揮するその男。
「…おい、尚隆。あの、ほらあそこで指揮してる色黒い奴、成笙じゃねえの?」
隣を見上げ小さく指差せば、主よりも先に件の成笙がこちらに気付いた。
「お、お前ら…!!」
成笙は瞬時、身近な部下に指示を出す。恐らくこう言っている、捕らえろ、と。
「あの、背が高くて桃色の巾で髪を結わいている男と、その連れの頭を巾で覆った子供、
そう、子供共、両方だ!!」
気配を感じ取った主従は駆け出した。それは騎獣など要らぬかのような勢いで。
「おっ、おい!?何でいきなりおれ達が追い掛けられるんだよ!?…そりゃ、政務さぼ
ってるけどさー!!」
道行く人並みを縫って走る。怒鳴る六太が遅れそうになれば、尚隆はその手を引いた。
「知らん!俺達があいつらを見ると反射的に逃げたくなるように、あいつらも反射的に
俺達を捕まえたくなるのだろう!!」
追手を撒こうと路地へ路地へと入り込む。それが功を奏しているのかどうか、遠くで無
口な成笙の叫ぶ声が聞こえた。
「その男は、国一番の詐欺師だー!!」
ひどいことを言う。

196春怨19 あと5レスくらい…:2004/12/12(日) 22:19
関弓を良く知る二人が逃走すれば、徐々に追手の気配は失せていった。
気付けば大分街外れに来たらしく、黄昏時にその辺りは少々の侘しさを感じさせた。近
くには河原があり、数本の桜が植わっている。
河原で走る脚を休め、弾む息と上下する胸を落ち着かせる。
大きく息を吐いた後、河原の向こうを眺めつつ六太は呟いた。買えなかった天馬の事を。
「…あいつ、良い主人に恵まれると良いな」
「そうだな。…だが、その点お前は恵まれている」
主たる尚隆が六太を見下ろし笑み掛ければ、従たる六太は一瞬首を捻る。だが直ぐに思
い至り、不愉快な色を面に浮かべる。
「どこがだよ、ばーか」
主の言に急に疲れが出たのか、六太はその場にへたり込んだ。

「尚隆、おれ腹減った。疲れたし…って、最初茶店に行く予定だったんだよな」
「そう言えばそうだったな。金も十分有る事だし、少し早いが飯でも食いに行くか」
先程剣で稼いだ銭を手にすれば、「奢ってやる」と笑む者と、「当然」という顔をした者。
飯屋を探すべく近辺に目をやれば、白い煙を吐く店は直に見付かった。

街の外れらしく少々鄙びた店であったが、既に歩くのが面倒なのか、二人とも異論無く
その狭く薄暗い店の卓に着く。尚隆が菜譜から適当に品を選び、酒と共に注文する。
直に料理が運ばれてくれば、六太は飯に生臭が有ればそれを取り除く。それを残す事は
せず、「人に食われる為に死んでるんだ」と取り除いたものを尚隆の皿に移す。それは
二人で街で食事をすれば常なのか、尚隆は気にするでもなくそれを口にする。

飯に箸を付けながら、六太は今日の出来事を頭に巡らす。何か色々有った。色々な思い
が有った。
ちら、と主を見やりつつ、雑談に紛れて心中を織り交ぜる。
「…ほんと、お前は莫迦だよなー」
違う。そんな事が言いたいんじゃない。
「でも、退屈しない。お前と居ると」
それも違う。そうじゃない。
「…お前と居ると、楽しいよ。王とか関係無く」
珍しく素直に告げた。その思いは最上ゆえに、恐らく手放せない。
そう言われた彼は意外そうに眉を上げ、だがやや目を細め、口元を綻ばせていた。

197春怨二人20:2004/12/14(火) 16:06
尚隆はただ小さく笑い、「そうか」と答えるのみだった。少々の自嘲を込めて。
己は何時まで六太を楽しませる事が出来るのやら。
思いを告げた相手の向かい、六太は改めてその様な事を言った為か、照れ気味
に俯いていた。だが、口にしてしまった為か急に戸惑いを覚える。
己は尚隆と居ると楽しい。けれど尚隆はどうか。ただ、子供の相手をしている
だけではないのか。
これまで思いもしなかった事が不安となり、口数の多い六太を黙らせた。

沈黙したまま、二人は黙々と箸を進める。その為周囲の会話が聞くとはなしに
耳に入ってきた。主従の隣の卓に着いた、恐らく仕事帰りだと思われる男達の
雑談である。
「…恭に新しい王が立ったってさ」
「らしいな。何でも餓鬼だって話じゃねえか」
「まあこれで柳からの荒民が少しは減ると良いが…餓鬼じゃあなあ」
「全くな。柳だか慶だか知らんが、荒民は何とかならんもんかね」
男達の話題が荒民に移ると、彼らのその口が荒れだした。
「そうそう、あいつらのせいで治安が悪いったらありゃしねえ」
「この間なんか、俺の連れが荒民に財嚢を掏られたってさ」
一瞬店内の空気が止まり、他の客達も彼らに注目し出し、話に入り込んでくる。
「何だそりゃあ。荒民ってのは性質が悪いな。…国はちゃんと、そこんとこ考
えてるのかね」

その後も周辺の客同士でざわざわと語り合っていたが、六太はそれには意識を
逸らした。勝手な事を言う民に少々気分が悪い。荒民も好きでその国に生まれ、
そして逃げ出した訳ではあるまいに。
「尚隆…。罪を犯して、捕まった荒民は――雁で裁かれるんだよな…」
「それはそうだ」
間髪置かぬ尚隆に、六太は溜息で返す。それに対し、だが、と彼は続けた。
「これから荒民を保護し、最低限の暮らしを保障する制度を整える。…前から
考えていた事だ」
そうする事で雁の民も守られるだろう、と。
酒を口に運びつつ、だが王の顔を見せる尚隆に、六太は瞳を輝かせ、すごく、
すごく抱きつきたい衝動に駆られた。既に、心は尚隆に抱きついている。
「まだ、やる事は山と有るな…」

198春怨二人21:2004/12/14(火) 17:12
家に帰るか、と六太の気は知らず席を立つ。勘定を済ませ外へ出てみれば既に
陽は落ち薄暗く、地平線にほんの僅かな紅を残すのみ。

その春の残照の紅を、暫し二人佇み見やる。そして尚隆が六太、と呼び。
「―この国が俺を必要とする限り、俺はこの国の王だ」
見上げた主は遠く、地平線の彼方を見つめていた。その瞳は何処を見ているの
か。この緑溢れ、豊かかつ広大な雁国の地か。それとも、六太も知る、彼が成
し遂げられなかった遺恨を残す地か。
「じ、じゃあ、やる事が無くなって、お、お前を必要としなくなったら…?」
問うた矢先。ざあ、と強風が吹き、辺りの桜が風に踊る。尚隆が六太の胸元に
挿した桜の小枝も、花弁を散らし六太の胸から飛び去った。六太は思わず手を
伸ばすも、それはもう何処とも知れず。
強風の後には散り落ちるばかりの桜の花弁。…舞い散る桜の花弁が暗示するも
の。それは、吉とは言えず。
「…さあな。ああ、今年の春も逝くか」
桜を見つつ強風に乱れた着衣を整える、そんな主が恨めしく。
そんな事を言わないでくれ。六太は面を伏せ、その肩を震わせ呟いた。それな
らば、と。

「やる事が、有ればいいのか…?」
その声は尚隆の耳に届かなかったのか、彼は六太に小さく首を傾げて見せた。
為に六太は面を上げ、主に届くよう目一杯叫んだ。
「大昔に約束した、…覚えてるか!?緑の大地は一生受け取らない!!いつか
更夜に会ったら、「雁はまだまだ住めたもんじゃない」って言ってやる!!…
…尚隆、おれは、おれは…」
叫んだ筈の声は徐々に勢いを無くす。
「仕事して…でも出奔して遊んで、帷湍に、追っかけられて、…朱衡に、嫌味
言われて、成笙に、嘆かれて……でも、官は育って、…国は少しづつ発展して
さ、民も、もっと豊かになって…。それで、たまにこんな風にお前と遊んで、
……お前と居られたら、…お前が、居てくれたら!」
知らず胸の内を吐きながら、六太はそうか、と己の心を確認し、納得した。
「…おれは、幸せなんだ…。だから、だから尚隆、お願いだから…!!」
―ずっと優しい王で、おれの王でいて。
おまえの代わりなど、居ないのだから―
慈悲の麒麟が、王の慈悲に縋った。民のために、己のために。
己は我儘だろうか。己の我儘がこれから先、尚隆を縛るのだろうか。
六太はその場に立ち尽くし、泣いた。ただ子供のように。

199春怨二人22:2004/12/14(火) 20:35
毒にも薬にもなる強力な、雁州国の稀代の名君。その半身は弱い民を象徴するか
のような小さな子供。
長い六太の告白を黙って聞いた後、尚隆は六太を掬い上げた。大丈夫だ、と。
その尚隆のぬくもりに緊張を解いたのか、六太は未だ泣き止まずその首にしがみ
つく。
掬い上げ、身を預けてくる六太を安堵させるよう、そっと背を撫でてやる。
きっと己はこんな風に六太が泣けば、何度でも掬い上げるだろう。
この子供の気丈さ強さ、それと併せ持った脆さが愛しい。

「…覚悟は出来ているのではなかったのか?」
嗚咽が止まぬ六太にそう問えば、その彼の首を一層力を込めて抱く。
「そんな訳、そんなわけないっ…!!お前が、おれにいろいろくれたくせに…!!」
六太の幸せ。それはごくありふれた。だが己がそれらに幸せを見出した事が無か
ったと言えるのか。
かつて全てを無くした己が、無から始まった子供の幸せを否、とする事が出来るのか。
与えられた、滅びかけの国に力を注ぎ、その結果国が完成された達成感の後に己
が注いだ力と同等の虚脱感に苛まれ、それを無に帰したいと願った事が有ったと
しても。そして己の命にも見切りをつけ、最愛のこの子供も道連れにしようと思
った事が有ったとしても。

この子供と、六太と共に同じ幸福に生きる道も有るのではないか。完成された国
が己を必要としなくなっても、六太が己を必要とすれば、己は生きていけるので
はないか。
そう思い六太を見上げれば、しがみついて来るこの子供がどうしようもなく可愛く、
愛しかった。

尚隆は暫し六太が落ち着く迄を見計らい、小さく息を吸い込み、そして言った。
「…お前はそれで幸せで良かろうとも、俺は幸せではないな」
六太がそれに身体を大きく震わせ、面を上げればそれは蒼白であった。
「尚隆、そんな…」

200春怨二人23:2004/12/14(火) 21:48
六太は涙でぼやけて尚隆の顔がよく見えていなかったが、彼は微笑んでいた。
「俺にも、幸せになって欲しいか?」
問われ、こくん、と頷く。己の掛替えの無い人、それの幸福を願わぬ訳がない。
「ならば、お前にはして貰わねばならん事が有る」
我ながら卑怯な事を言おうとしている、そう思いつつ尚隆は六太のきれいな面を濡
らす涙を袖で拭ってやる。
「でもっでもっ、…おれがお前にしてやれる事なんか、何も無いっ…!」
「そんな事は無いぞ?俺にはお前が必要だ。例えば…」
六太に何事かを耳打ちすれば、その意を理解したのか、理解出来たのか、衝撃の為
に嗚咽が止まる。そして徐々に、六太の頬が紅に染まった。
「こ、こんな、真面目に話してる時にお前何言って、じょ、冗談は…」
「冗談ではない。お前にはこれ位はっきり言わねば理解せんだろうが。面倒な奴め」
「お、お前には適当な相手がいっぱい居るだろ?何で、おれ…」
「お前でなければ嫌だ」
そう言うと、腕の中に抱き上げていた六太の身を肩に担いだ。歩き出すその脚は一
体何処へ向かうのか。
「嫌って、お前…。大体、おれ男だぞ!?男同士だろーが!!」
「出来るのだな、それが」
「で、出来るって…」
「なに、男同士でも口付けを交わしたではないか。そんな感じだ。…多分」
尚隆の肩に担がれ、暴れていた六太はふと動きを止め考える。口付けを交わした?
そんな事をした覚えは無い。そんな事をした覚えは――。
「…あー!!お前さっき、おれが寝てる時やっぱり本当にやりやがったな!?」
「したかったのだ、すまん」
「謝罪に心こもってねえ!何だよ恍けやがって!!おれは、嬉しかったんだ!!……あ」
「嬉しかった?」
慌てて口を押さえる六太に対し、そうか、と尚隆は顔を綻ばせた。

201春怨二人24 了:2004/12/14(火) 21:53
肩に担いだ六太を下ろし己と向かい合わせに立たせ、尚隆は腰を落し六太と目の高
さを合わせる。辺りは既に夕を過ぎ夜を向かえ、暗がりの中で六太の泣き腫らした
赤い顔が見えた。
「…遠回しな事ばかり言ってすまんかったな」
六太には何が遠回しだったのか分からなかったが、尚隆は手を伸ばし、そっとその
泣き腫らした頬を撫でる。慈しむように。尚隆の、光を宿す漆黒の瞳と六太の菫色
の瞳は暫し出会ったまま二人は動かなかったが、やがて尚隆が口を開いた。
「俺は、おまえに惚れている。…これは俺の偽りなき真心だ」
それは、初めて言った言葉。言えた言葉。六太と共に生きる、そう決めたから。

六太は知らず収まった瞳が、身体が熱を持つ事を感じていた。惚れている。…尚隆
が、自分に。本当に?それを受け入れて良いものか。また己は尚隆によって無上の
喜びを知ってしまったのではないか。そう戸惑う中、尚隆は真摯なまなざしで、お
まえはどうだ、おまえは俺が好きか、と問うてくる。
その問いに六太は声にはならず、ただ頷いた。
何度も何度も頷いた。
懸命に首を縦に振る、それが肯定である事は尚隆にも知れた。


雁州国の、今年の春の終わり。この春は六太の心にある感情――種は植わっていた
のだろうが、それを芽生えさせた。
そして、尚隆の春怨の終わり。




202「春怨」 後書きして良いですか。:2004/12/14(火) 22:05
見 事 な チ ラ シ の 裏 っ ぷ り よ !!
日々不足する尚六分を補う為に書いた。尚六なら何でも良かった。正直スマンカッタ。今は猛省している。
設定で「碁石集めに飽きた頃」なんて書いてしまった為に浅く薄いシリアスくずれに…。
自分でも展開と無駄な長さに驚いてます。通しではきっと読めない…。
「春怨」コメント下さった方、読んで下さった方、ありがとうございました!!
とりあえず、尚六の下らん会話シーンが書いてて一番楽しかったです。そして、自分的糖度臨
界点は見事突破致しました…。アマッ!カユッ!
とにかく、全てにおいて書き逃げって事で勘弁汁。むしろ許すと言え。…ですが一つ言い訳。
六タンの尚隆への想いが本能か自我か、ってな件は話中ちょっと触れながらも最初からその辺は
華麗にスルーの予定でした。それに触れると只でさえアレなのに更に収拾がつかなくなるんで。

ここは私の心のオアシスなのですが、より沢山の萌えで満たされる事を祈りつつ。

203名無しさん:2004/12/14(火) 22:24
春怨、姐さん乙でした!!まさにGJ!!…萌えた…感動した…身悶えた…!!
何じゃこりゃあって感じにやられました。
流れるような文章の上手さが情景を鮮明に瞼の裏に浮かばせました。二人の気持ちも。
尚隆はいい男だしろくたんは可愛いく…二人とも気丈で切なく、何と言ったらいいものかもう。
この二人の過去の一つの史実として私の中で勝手に公式に加えさせていただきます…。
本当に素敵でした。いいお話をありがとう…。
ハラシマ真っ最中の我が身が癒されました。姐さんの文章を見習いたい氾六の中の人…。

204名無しさん:2004/12/16(木) 23:41
春怨の姐さん、ありがとう!!
幸せでした。
もっと続きが読みたいけど、これでいい!!
エロがないのに究極のエロ、姐さんこそ究極のエロ職人!!
いい仕事をありがとうございました!!

205名無しさん:2004/12/17(金) 01:31
姐さん、ありがとう!おいらの尚六不足も解消されました。
個人的に尚隆に背を向けて泣くろくたんに心臓鷲掴みにされました…。
萌えをありがとう!

206名無しさん:2004/12/17(金) 22:29
姐さん、いうほど甘過ぎではないとおもいます。
ベルギー王室御用達という感じです。甘さひかえめでおいしいです。
私は羊羹に水飴と蜂蜜をかけ砂糖100gとチョコホイップをとっぴんぐで食べて
も平気です。
でも今夜はセコ○ヤチョコで甘さひかえめでいこうと思います。

207すとれす解消ss未満:2004/12/17(金) 23:01
セコ○ヤ 本館のネタ続きss未満

常世に来たばかりの尚隆。蓬山に行く前に雁国を見てまわっているところ。
いろんなところで農家の日雇い労働など。夜は焚き火して六太と共に野宿です。
ろくたんは期待でいっぱい。尚隆は雁をどのような国にしてくれるのかと。
「これから‘しょうりゅう‘って呼ぶから」
と勝手に決めて嬉しそうになついています。
でも不安もあります。女仙から以前に聞いた話だと雁の官は厳しいとか。
王宮に行けば式の準備その他、忙しくてなかなか尚隆と時を過ごすことも難しく
なります。その上、ろくたんは仁重殿に住まねばならず、尚隆とこのように添い寝
できるのも今のうちだけでしょう。さらに。王ともなれば王后を持つのが一般的で
す。官たちも后を押しつけてくるかもしれず、尚隆が気に入った女性を迎えいれる
かもしれず。尚隆が大切に扱う女性にろくたんはどのように接すればよいのでしょうか。
そのように考えてろくたんは小さな胸をいためています。
それにしても。昨晩のあれはなんだったのでしょうか。尚隆がろくたんのほっぺたに
唇で ちう と触れたのです。その時ろくたんの体に電流のようなものが流れました。
それで昨晩は尚隆の側に身を寄せてまるくなって寝ようとしても、もんもんとしてしまい
眠れなかったのです。
今、二人は焚き火の前に座っています。ろくたんはふと思いつきました。昨日、ちう さ
れたとき、すごくすごく嬉しくて、なにか赤くなって気が遠くなりそうだった。
あれを自分が尚隆にしてみたらどんな感じがするだろう。それでろくたんは本能的に
そうしてしまったのです。正面から尚隆にしがみついて、右頬に、左頬に、と
ちゅっ、ちゅっ、と繰り返してみました。ちょっと恥ずかしかったけど、良い気持ち
になれました。その往復を5回ほど繰り返してみました。
あっ、でも尚隆の様子が変になってしまいました!
なにかろくたんの見たことのない表情です。しばらく何かこらえているようでしたが
急に立ちあがると、ろくたんを置き捨ててどっかに行ってしまいました。

208すとれす解消ss未満:2004/12/17(金) 23:14
あーもう、あのまま続けられたらモエモエしんぼうたまらんちんとなるところだった…
と尚隆はろくたんから見えないところまで避難してくると、ほっと息をついた。
さて、焚き火のところに戻ってみると、ろくたんの様子が変です。尚隆が近づくと
くりと背中を向けてしまいました。
「ん? どうした」
ろくたんの正面のほうへまわってみると、膝を抱えたろくたんの大きなお目目が
うるうるとしています。ろくたんは ちう をしたのは悪いことだったのだと勘違い
して悩んだのです。それに昨晩のように尚隆が ちう してくれないので少しすねて
いたのでした。
あっ、ろくたんが立ち上がり、焚き火から少し離れたところで寝転びまるくなって
しまいました。一人で寝るつもりでしょうか?! 尚隆はろくたんの側に行くと
掬い上げていつもの場所に置きました。そしてろくたんを抱え込むようにして
いつも通りに添い寝したのでした。

209すとれす解消ss未満:2004/12/17(金) 23:48
さて、尚隆が王になってから、あっという間に月日が流れました。
最近ろくたんはすごく心を痛めています。女官達の間に妙な噂が流れているのです。
主上が寝室の続きの間の改装をお命じになった。いろいろな物も運び入れている。
官がうるさいので非公式に行っているが、あれはどう見ても王后となるべきお方を
迎え入れる準備のようだ。後宮ではなく続きの間を与えられるとは、なんと愛され
ているお方か。官の反対を受けても迎え入れるおつもりのようだ。主上がよく
行かれる下界の宿の女性かもしれない・・・。
ろくたんは最近、もう気が気ではありません。厳しい官達のせいで尚隆に自由に
会えない日々が続いており、しかもこの噂。ろくたんは王気不足で体調もおもわしく
ありません。今日の昼間は「お願い、ちょっとだけ尚隆に会わせて」と尚隆の執務室
の扉の前まで行ったのですが、「お仕事がお忙しいので」と追い返され、涙を飲んだ
のです。おまけに「主上とお呼びになって下さい」と注意も受けました。
その夜。そんなさびしいろくたんの仁重殿に尚隆がやってきたのです!
ろくたんは嬉しさで胸がはちきれそうになりました。おまけに尚隆は
「今夜は六太に贈り物があるぞ」と言い出しました。そしてろくたんを抱き上げると
いいというまで目を瞑っているようにと言いました。
尚隆はろくたんを抱っこしたままどんどん歩いていくようです。相当歩いて、さらに
別の建物の中をも相当歩き、扉を開けてどこかの部屋に入ったと思ったら、
「目を開けていいぞ」と聞こえてきました。
床に降ろされ目を開けてみると、目の前にすばらしい置物がありました。
どうやらこれが贈り物のようです。ろくたんは胸がいっぱいに!
「しょ、尚隆、ありがとう! オレ、ちょうどこんなのが欲しかった!」
ほんとは置物など興味が無いろくたんです。でも尚隆のくれるものなら違います。
ろくたんは、うんしょ、とそれを持ち上げようとしました。しかし重くて動きません。
「だめだ、持てない。後で誰かに運んでもらうよ」
「いや、その必要はない」
その言葉にろくたんはこおりつきました。贈り物を持ち帰ってはいけないなんて。
ろくたんは不安そうな顔で尚隆を見上げました。すると尚隆は言いました。
「ここもお前の部屋にするといい。俺の部屋と続きだ」
ろくたんは置物だけが贈り物だと思っていましたが部屋全部を貰えたのです!
そうです。尚隆はろくたんの輿入れを考えたのでしたが、麒とケコーンするなど、と
厳しい官の人たちに諌められ、非公式にろくたんをものにすることにしたのでした。
ここも改装したとはいえ尚隆の部屋の一部なのですが、ろくたんも自由に使って
良いのです。ろくたんは幸せでした。
   
一応おわり   この文体だと書いてて自分で少し気持ちわるくなりながらも。

210心の傷痕:2004/12/18(土) 01:06
六太が湯から上がり衣をつけていると、どやどやと足音がした。
「台輔、入ってよろしいでしょうね?」
女官たちである。えっ、ちょっと待ってくれ、と六太は思ったが扉は開けられてしまい
女官たちが入ってきた。
「まあ、本当だわ、やはり以前以上にお美しい」
女官たちはひそひそと囁きかわす。
しかし六太は抉り痕だらけの顔を見られていると思うと自然、俯いてしまう。
女官長は厳しい声を上げる。
「さっき、お聞きしたんですよ、台輔。どうして早く勅命のことを教えてくださらない
んです? こちらにも準備というものがあるのですよ? 私としたことが主上から
お聞きするまで知らなかったなんて。ま、台輔ぐらいお美しければ、もっと早く
こういうお話が出ていてもよかったのですけどねぇ」
あのような恐ろしい事件が起こる前であれば、と女官長は唇を噛む。この美しい
麒麟の初夜は当然、王のものであるべきであったのに。無礼者どもが妙な蔓植物を用い
台輔に狼藉をはたらいたことは、どこから洩れたか王宮の人々の間に密やかに知られ
はじめていた。しかしそれにしても、これは奇跡だ、と女官達は思った。常世一の
醜さに落ちぶれたと言われた台輔がこのように、以前に増して美しく甦るとは。
 さて、女官たちは六太を無理矢理別室に移すと、着替えさせ始めた。
「本当は正式な黒が良いけれど、準備の時間も無いしねぇ。台輔には、この白い衣が
お似合いだからこれにしよう。こちらの薄い色の玉石の首飾りをおつけしてね」
短い時間にどうやって準備したのか、六太にぴったりの大きさの衣である。長い首飾り
は六太の眼の色のような菫色やら桃色やらで白の衣を引き立てる。
顔にはなにやら粉をはたかれる。
髪も整えられ、自然な流れが少し緩やかになる。準備が整うと別室に連れていかれた。
「さ、この輿にお乗りあそばせ」
無理矢理、多くの玉が嵌めこまれた豪奢な輿に押し込まれると男たちが担ぎ上げる。
六太は思う。この醜さで、美しい衣をつけたり、あげくに化粧まで施されるとは、
お笑い以外の何物でもない。せめて普通の格好で歩いて行きたかった。
それにこれでは確実に、尚隆に顔を見られてしまうことになるではないか。

211心の傷痕:2004/12/18(土) 01:43
六太は、これは悪夢かもしれないと思った。決して今の醜い姿を恥じてはいない。
この姿は尚隆を守り通した、尚隆への愛の証しだ。しかしこの仰々しい輿やら、
美しい女が着るような衣やら化粧やら。似合わなさ過ぎる…。
跳ねあがりそうな心臓を抑えているうちに尚隆の部屋に輿は降ろされた。
「なんだお前達。こんな大げさにしろと言った覚えはないぞ」
と案の定の尚隆の声だ。何時になく怒気をはらんでいるようにさえ聞こえる。
人々は尚隆によってさっさと部屋から追い出された。すぐに約束通り部屋は真っ暗に
なったようだ。
「六太、たいへんな騒ぎになったようで済まなかったな。暗くとも俺が運んでやる故、
輿から出てこい」
六太は勇気を振り絞って輿を出るしかなかった。
輿から降りると、暗闇の中に薄明りを浴びたように尚隆の姿がぼおっと見える。
部屋は真っ暗だが、王気のせいだ。麒麟である六太には明りがなくともぼんやりと
尚隆の姿が見えたのだった。尚隆にはそのことは知られていないはずなのに、
尚隆の表情に嫌悪感はない。尚隆はオレのことを本心、気味悪がってはいない。いや、それ
どころか、オレの王はなんと優しい慈しみ深い表情をしているのか、と六太は胸が
熱くなった。
 そして尚隆も。六太はその事実を知らなかったが、尚隆にも六太と同じく相手の
姿が暗闇の中でも見えていた。六太の場合よりもはっきりと。麒麟の放つ光燐。
それはおそらく王と麒麟の繋がりが通常より深い場合にのみ見えるものなのだろう。
かつてこれほどまでに深い絆で結ばれた王と麒麟がいなかったため一般には知られて
いない事実ではあるが。美しく装ったこの世のものとも思えぬほどの麒麟の姿に
尚隆の心はうわずった。これほどまでに美しい者を抱けるとは、なんという僥倖。
尚隆の心はうち震えた。美しいものを救い上げ、愛を交わす場所へとそっと横たえる。
しばらく手を触れずにただその美を観賞した。そして静かに手を伸ばして触れる。
その瞬間、その美の化身は、びくん、と身を引いてしまった。
「い、いやっ…尚隆、ごめん、オレ、お前の気持ちはわかった。嬉しいよ。
でも、やっぱりだめだ。こんななりでそんなこと、自分が許せない。オレの王が
醜い者とそんなことするなんて。頼む、勅命を取り下げてくれ」
涙ぐみながら壁際に逃げて震えている。そんな姿を見せつけられると
尚隆は自分がこの美貌の者を捕まえて狼藉をはたらく無礼者になったような気分となった。

212名無しさん:2004/12/18(土) 01:45
ここまで書いた。「心の傷痕モエモエ」を書いてくれた姐さん、
続き書いてくれないかなあ。このあとちょっとまだ思いつけません。

213心の傷痕:2004/12/18(土) 11:36
 尚隆の胸は罪悪感で痛んだ。六太は姿を見られることはないと信じてここへ来たの
だ。それなのに見えてしまうとは。これは自分にも予想外であった。しかし尚隆はもう
抑えられない自分を感じていた。
「勅命をそう簡単に取り下げるわけにはいかん。
 真に命じる。勅命だ、従え」
 その声は六太をいたわる優しさに満ちたものでありながらも断固としていた。
「や、いや…」
「大丈夫だ」
励ますような語調でありながら、荒くなりそうな息を抑えている風情。
尚隆は自分の行為により六太に植えつけられてしまった恐ろしい記憶を拭い去って
やりたいと感じながらも、あの狼藉者達がいやがる六太の様子に煽られた気持ちも、
今ならわかるような気がした。美しい者が切なげにいやがる姿は男の劣情を煽らず
にはおかないのだ。
 尚隆は完全に気持ちがうわずり、もうわけがわからないほどだった。今晩は六太の
ための行為にするつもりだったのに、自制がきかない。
 それからはもう、ただ夢中だった。
 六太のほうはといえば、なんとか自制がきかなくなる前に逃げきろうと必死だった。
逃げ様とした体勢から、うつ伏せ状態で、逞しい尚隆の体の下に組み敷かれていた。
細い腕を尚隆の両手が敷布の上に抑えつける。
「あっ、やっ…」
いやいやをするように体をよじる。その悶えるような下半身の動きに尚隆の劣情はさらに
煽られた。
「六太、…六太…」
少しうわずった声で名前を呼びながら背中に優しく口付けてくる。
双方なにがなんだかわからなくなるうちに、いつのまにやら体勢はかわり、尚隆の唇が
六太の肉棒を捉えた。
「あっ、…あうっ…ああん」
抗議するような調子を帯びた甘い声に尚隆の中心は痺れ上がった。
口に含んだまま、両手の指が蕾の近くにまわされる。左右の手の指が小さな尻の双丘を
割り、それぞれの中指と薬指が蕾の左右にに触れるか触れないかのあたりを円を描く
ようにいやらしく揉みあげる。
さらに様々な甘い責め苦がいつまで続くのかと思った頃、ようやく六太の蕾の入り口に
尚隆のものの先端があたった。それが欲しい気持ちが高ぶり己の肉棒からは先走った
雫を恥ずかしく滴らせながらも、六太は尚隆を醜い生き物とは交わらせまいと必死で
尻を捩った。逃げるために体がせり上がる。
「逃げるなどして俺を悲しませるな」
尚隆のかすれた声が聞こえる。優しくいやらしい愛撫が続く中、とうとうそれは六太の
切ない部分に押したてられてしまった。
「あう! ああんっ!」
六太は絶望の声をあげたが、それすらも甘いものになってしまう。
もう抗えない、六太だって欲しいのだ。主を醜いものから守りたい気持ちとは裏腹に
六太の蕾はいやらしく収縮して尚隆自身をきつく絶妙に締め上げ、その動きは
自分の中に入れられたものを味わいつくそうとするかのようだった。

214心の傷痕モエ:2004/12/19(日) 11:32
は・・はう(大汗)御免なさい〜!姐さん!
時期が時期で・・オフ作業に手と頭を取られたりしていまつ・・
頭ん中は妄想で一杯なんですがははは

腰から登ってくる感覚に尚隆は軽く呻いた。
たまらんな・・・。
既に抗うことを止め、小さく震えながら己のものを咥え込む六太の秘所に、
より深く、ゆっくりと己を沈めて行く。
「・・・・あぁ・・・」
その質量に耐えかねてか苦しげに、しかし甘い吐息がその口から漏れる。
苦しげにそおして切なげに寄せられた眉、細い肢体、甘い声。
この上なく大切にしてやりたい気持ちと、粉々に壊してしまいたくなる嗜虐性。
相反する己の感情を沈めようと、ゆっくりその再奥まで己を収めると、
そのまま動かずにその相手、愛しい半身を見つめる。

一方六太は、逃げ切れずに主に犯される自分の身体に駆け上る快感に翻弄されて
身動きも侭ならず、ただその身を震わせる。
ゆっくりと進入してくる尚隆を、自分の身体はゆっくりと締め付けながらも
もっと奥へと引き込むように蠢くのを自身で感じる。
だめだ、と思っているはずなのに、確かに喜びを感じる自分も誤魔化せず、
六太は混乱する。
そんな自分を気遣うように労わるように、入ったまま尚隆は動かない。
そっと目を開くと、射るような視線を感じる。
己の顔に、肌に、善人に感じる視線に、自然身体が熱を持つ。
その視線を感じる肌が、焼けるようだ。
でも、その熱は、自身を焼くというよりは、ぞの熱で自身を溶かすように感じられて
自然に涙が溢れ、言葉が紡がれる。
「・・ごめん・・な。俺はお前のものなのに、こんなに醜くなって・・」

一瞬目を見張った尚隆は、すぐさま破顔した。
「ばかめ・・、それはもう止さんか。俺はお前が良いと言っとるだろう。」
その身体が、ゆっくりと律動を刻み始める。
「はっ・・あ・・ああ・・」
それはすぐさま六太の身体に快感を呼び起こしていく。

215心の傷痕モエ:2004/12/19(日) 11:42
あう・・続き書きたい〜〜
が・・野暮用が・・
イクのは夜までまってぇ〜

そして、自分でビックリ!セルフ突っ込み逃げます!

善人ってナニ?・・→全身と打ったと思われ・・・・ピー

216名無しさん:2004/12/19(日) 23:41
>215
姐さんまた書いてくれてよかった!
待ち望んでいたけど、でも用事があるときは焦らないで〜。焦らせてしまったかな?
書いてくれるなら年越してとかでも待ってますから、
オフがんばってください。

217『台輔の勤め』16:2004/12/23(木) 20:53
氾王はまずその長い髪を洗う。六太は台座に近寄り、湯を使いそれを手伝う。
洗いあげた細くしなやかな髪を手持ちの櫛で漉き、香油を振った布でくるむと
氾王はうむと頷き、口元に笑みを浮かべた。
「大分心地良うなったわ。先程までの埃はどうにもかなわぬ」
「じゃあ…背中流すな」
言って再び後ろへ回ろうとした六太の腕を、氾王のそれがくいと掴む。
「よい、そなたを先に流してくりょう」
「いっ…!いいよ俺は!」
「湯世話の者が汚れていては具合が悪かろうよ」
抵抗するものの、引かれた腕を無闇に振り払うことはやはり出来ず、
六太は結局氾王の前に向かい合う体勢となった。
台座に座る氾王とその前に立つ六太の目線は同じ高さだ。
濡れた指が頬に触れ、六太はぴくりと顔を背ける。流した視線の内にくすりと笑った瞳が映った。
「あ…」
するりと儒伴が肩から下ろされた。身じろぎした六太の脇に両腕を入れ軽く持ち上げると、
開いた脚の間にその体を挟むように引き寄せる。
「…そなたはじっとしておれ」
口を開くのを牽制するように先に釘を刺され、六太は仕方なく頷いた。
余りにも近くにある氾王の体は既に触れてはいるが、ならばせめて何も見ないようにと瞼を伏せる。
何しろ、こうして間近で他人の裸体に接したことがない。尚隆だけである。
不思議なことだが、実際己の肌を晒すのはそこまで抵抗を感じることではなかった。
それは己の本質が麒麟という名の『獣』であり、獣形をとる時には無論何も身に付けていない為であるからなのか。
とにかく今、六太は己の裸体が晒されることよりも、
氾王の肢体を見つめていることの方に耐えがたい戸惑いがあったのである。
そんな六太の胸中を知ってか知らずか氾王は、目を閉じてあたかも諦観の様を呈する六太の姿に唇を緩ませた。
(さても、こと対人に関しては傍若にして奔放な子供とばかり思っていたが…)
…面白い。
このような表情をするとは。
恥じらいに耐えかねて瞳は伏せたままの六太の唇から、かすかな溜め息が長く吐かれた。
腰紐に手をかければびくりと息を飲む。
氾王は堪えきれず吹き出した。
「そう怖がるでない。取って食おうなどと思ってはおらぬよ」
六太はこわごわ目を開ける。
「いいよ…俺、自分で洗うよ」
ふ、と氾王の眼が細まったのを見たと思った次の瞬間、視界に影が射し六太の体が固まった。

218『台輔の勤め』17:2004/12/23(木) 21:52
突然己の唇を覆ったやわらかなもの、それが氾王の唇であると認識するまでしばらくかかったように思う。
「〜〜〜…───!!」
抵抗する間もなく口中へ差し入れられた温かく濡れた舌。
それはそのまま躊躇することなく六太の舌を絡めとり、吸い上げる。
乱暴では決してないものの、攻める舌に迷いはなく、余すところなく口内を味わい尽される。
捕われた六太の唇が隙間から声を漏らした。
「んっ…ん…っ…んん〜〜〜…!」
相手の肩を両手で掴んで離れようと試みるが、肌に爪を立てる事が出来ない為うまく力が入らない。
六太の顎を唾液が伝う。息が苦しい。
力一杯顔を振ろうとした時ようやく解放され、六太は肩で息をした。
「はぁっ、はぁ…っ…」
一通り呼吸を紡いで涙目で見上げれば、そこには悪戯に瞳を煌めかせた氾王の微笑。
「な、に…。何なんだよ…」
薄い紅はとれたはずなのに一層赤みを増したように見える六太の唇は吸われたことによるものだ。
ふふ、と氾王が笑う。その顔は悪戯が成功した子供のそれ。
だが、揺らめいたその美しい瞳は不思議な妖しさを秘めていた。
「これで口は綺麗になったじゃろ」
「何言って…──、っ!」
不意に六太の背がびくんと反る。腰を降りた腕が着物の裾をまくり上げたのだ。
「…紐を解かれるのが嫌なら無理強いはせぬ」
笑いを含んだ声が耳元で囁き、腿の裏を撫で上げていく掌の感覚に六太は全身をこわばらせた。
「ちょ、ちょ…っ、やめ…!」
腿の付け根までゆるりと撫で上げた手が、双丘へ伸びる。
「や…!」
着物の下には何も着けていない。小さな丸い膨らみを、氾王の掌が直に包みこむ。
いつの間にか六太の体はぴたりと氾王の胸に押し付けられていて、その肩幅の中にすっぽりと収まっていた。
抱きすくめられたような体勢で、容易に身動きもとれなくなっている。
「あっ…あ…─!やめ…ろよ…っ…!」
強く、だが優しく揉みしだかれ、腰におかしな感覚が走るのを感じた。
胸にかすかな恐怖が沸き上がる。
氾王は何も言わず、六太の尻を両の掌で撫でる。
円を描くように大きく、時折軽く揉み込むようにしながら。
六太の顔は氾王の鎖骨のあたりにあって、肝心の相手の表情は見えない。
六太は抗議の声を上げながら眉を寄せ、息を荒くしていく。
両側から広げられた長い指が、膨らみの中心へと触れていく。
「あ…っ!やだ──、やだっ、て!…」
掠れた叫びが上がる。

219名無しさん:2004/12/23(木) 22:59
姐さん、六太がかわいいよ!!
氾王妖しい!!しかもテクニシャン!!
続きプリーズ!!

220心の傷痕モエ:2005/01/02(日) 16:35
あの最初の時のように、媚薬に侵されている訳ではない。
己の妄想の尚隆に抱かれている訳でもない。
はっきりと自分の身体で尚隆を感じられる幸せに酔い、
ゆっくりと己の中を突き上げられる感覚に、意識も飛びそうになる。
「んっ・・・あ・・あん・・・はっ・・しょ・・しょうりゅ・・・っ・・」
たまらず名を呼んでその背にしがみ付くと、同じようにきつく抱き返してくれる。
それが嬉しくて、その胸元に額を寄せると頭上から尚隆の静かな声が降る。
「六太・・すまん・・」
意味のわからぬ謝罪の言葉に、顔を上げると視線がぶつかる。
「俺にはお前の姿が見えているんだ。」

「え・・そ・そんな・・」
その余りの告白の衝撃怯えて、思わず身をよじって逃れようとするけれど
かっちりと身体を捉えられて動けない。
「逃げるな!」
尚隆のきつい言葉に思わず身がすくみ、動けなくなる。
「・・逃げないでくれ・・・」
しかし、続いた言葉は小さなつぶやきだった。
その声にドキリとして、思わず主に視線をもどす。
「お前が傷ついたのは俺の罪だ。お前が醜くなった自分を恥じねばならんのなら
その咎は俺にある。皆からその姿を隠したいならそれを俺が止める事は出来ん。
しかし、俺の前でまでその姿を隠すことは無い。」
尚隆の大きな手が頬を包むのを感じる。
「そもそも、お前の姿が変わったくらいで何で俺がお前を疎んじると思うんだ。
あまり俺を侮ってくれるな。
お前の姿を見たとて、お前の中の俺は萎えてはおらんだろうが。
これでも俺が信じられんのか?」
言われて今の自分の状況に思い至って、顔が熱くなる。
真摯なその視線にに見つられて、胸が高鳴る。
「こんな俺でも、お前の傍にいても良いのか?」
「そう誓ってくれたのでは無かったか?俺の側を離れるな」

ようやく気付いた。
尚隆の傷は俺自身だったんだ。
あの乱で、尚隆と生き延びた事に恥じることは何も無かった。
けれども、変わってしまった自分の姿を自分自身が受け入れられず、
尚隆から逃げ回る事によって、尚隆を傷つけ続けていたんだ。
そんな俺を、己の罪だと言って、責める事もせず見守ってくれた主の思いが嬉しくて
自分が情けなくて、たまらず涙が溢れた。
「ごめん・・ごめん、しょうりゅう・・」

221心の傷痕モエ:2005/01/02(日) 16:55
「・・泣くな・・」
涙を舐め取るように優しく尚隆が頬に口付けてくれる。
「おれ・・もうはなれないっ・・から・・・っ・」
言葉は、きつい口付けに奪われた。
口腔を犯され、息も奪われ苦しいけれど、
きつくなる愛撫や律動ももう構わない。
ただ全身で尚隆を感じられる、その幸せな感覚を六太はひたすら求めた。

あけおめです・・・
新年からこんなモノ書く愚かな私。
今年も尚六萌えで走れそうですよ。
きっと落ち用意されてたんでしょうにすまないです216>の姐さん。
懲りずに続投乞いまする。

222『台輔の勤め』18:2005/01/02(日) 23:51
氾王の指先が双丘の谷間をなぞる。
と、次の瞬間、六太は声を上げて背を反らせた。
「──ひっ…!」
何かぬるりとしたものが窪みに触れたのだ。
「や…やっ…、な、に…っ!?」
触れている質感は指のそれ。だがぬるぬると擦りつけられているものは──
「…そなたを洗ってくりょうと申したであろ」
耳元に響いた笑いを含んだ囁きに、それが洗料であることを悟る。
「いっ…!いいよっ、…やだって!そこ、は…っ…!」
顔を赤くして叫ぶ六太の抵抗は、氾王の体に封じられて全く動きに出せない。
ふふ、と愉快げに笑う声が湯殿に溶ける。
「忘れたかえ。…私は梨雪のようにそなたを愛でてくりょうとも申したぞ。
我が半身、梨雪は常に湯殿ではかように私に身を任せておるぞえ。…のう、」
延台輔、と声が続く。
長い指が優しく、六太の窪みをほぐすように撫でる。
「嘘っ…!──あ、や…っ──!」
片方の手が前に回り、反応し始めていた六太の花芯を捉えた。
掌にゆっくりと包みこまれびくん、と大きく体が跳ねる。
「あ─…あ…っ…」
六太は喘いだ。
ぬるりと握られた花芯は素直に反応しゆるゆると立ち上がり始める。
息が上がる。
氾王は静かに含み笑うと共に、前後への愛撫をきつくしていく。
花芯をしごくように上下に擦り上げ、親指の腹でその先を撫でつけてやると
六太の喉から声にならない喘ぎが上がる。
後口は強弱をつけて何度もくすぐり、円を描くように動かしたその指を徐々に狭めて中に沈めた。
「──っ!」
その瞬間、肩先に六太の爪が食い込んだ。大きく跳ねたその小さな体を押さえこみ、
内部に押し込んだ指先を少しずつ進めていく。
「…のう、台輔」
耳を刺激する甘い囁き。
「洗うという行為は身を清める儀式じゃ。表面だけ磨き上げても無粋よ…
常より目につかぬ、かように奥まった処から丹念に清めぬとの」
特にそなたのこと、と笑いが言葉を紡ぐ。
「…山猿の所有印が残っておるやも知れぬ」
六太は身を震わせて頬を朱に染めた。
「今度の滞在中、おぬしは私の麒麟じゃ。私の手で清めておくに不都合があろうかえ?」
六太は返す言葉につまる。
「そん…なの、詭弁だろうが…っ」
やっとそれだけ口にしたものの、語尾は掠れ、甘い喘ぎが口をついてしまう。
くちゅくちゅと卑猥な音が耳につく。
己の中を巧みに掻き回す指、前を優しくしごきあげる指がもたらす快感に、
六太は眉を寄せて耐えていた。

223『台輔の勤め』19:2005/01/03(月) 00:53
「ひ…──あぁ…!」
下肢から駆け昇る快感に腰が震える。
内部を犯す指はいつの間にか数を増し二本となっていた。
どうしてわかるのだろう、氾王の指先は器用に六太の弱い箇所を探り当て、
そこを執拗に攻めてくるのだ。
六太の先端に蜜が滲む。
執拗な愛撫に己の体が高まっていくのを押さえられない。
目尻に涙が溜っていくのがわかる。
緩急をつけた抜き差しと併せるように前を包み込んで擦り上げる掌の動きも激しくなる。
「ふ…、おぬしの中が熱うなってきたね…。気持ち良いかえ」
あまりの恥ずかしさに何も答えられない六太の、知らず腰が揺れる。
(元来過敏であるようにも見えるが…それにしても随分と開発されておるようじゃの)
撫でつけた洗料だけではなく、今は六太の先端から溢れる蜜が掌を濡らしている。
しごきあげる度にくちゅりくちゅりと水音を立て、
唇からは押しとどめられない甘い嬌声が上がる。
入念に攻め立てる中、六太の掠れた声がかろうじて囁いた。
「も…、や…!だめ…」
やめて、と切なく語尾が消えた。それを聞いた氾王は声もなく笑い、指の動きを早める。
「や、や…あ…っ──!」
大袈裟な程に大きく震えた体に、容赦なく快楽を与えていく。
敏感な箇所を指の腹で強く擦り、握った花芯を一際激しくしごきあげた。
「…っ!〜〜〜──!!」
直後大きく体を震わせた六太の内部がきつく収縮し、握り締めた掌の中のものが弾けた。
声にならない声を上げた六太の全身から一瞬力が抜け、がくりとその膝が折れる。
「…達したかえ」
へたりこみそうになった体を支え起こし、氾王は精を放った六太の
上気した表情を見やって微笑んだ。
荒い息をつき、ぼんやりと潤んだ瞳を向けてくる綺麗な子供の顔を満足げに眺める。
「…可愛らしい顔よ。気持ち良かったかえ」
囁いて目を細めてやれば、慌てたように頬がたちまち赤くなった。
「──おやおや、私が汚れてしまったようじゃの」
悪戯な目をして紡がれたその言葉に六太が目をやれば、
氾王の下腹に己が放った痕跡が散っているのが見えた。
「あ…」
あまりの恥ずかしさといたたまれなさに、すぐに反応を返せず、
六太はとりあえず下を向いて目を伏せる。

224名無しさん:2005/01/04(火) 01:00
氾王はこの後、さらに……なことをなされるのでしょうかっ? うわぁっ!!
は、はやくぅ〜

>221
姐さん、新年早々相変らずノリがいいですね〜。
私のほうは落ちは今のとこ思いついてないです。
もし思いついたら書いてネ。私も考えてみます〜

225名無しさん:2005/01/04(火) 01:19
氾王様のテクにハァハァ
尚六前提なのが更にモエー
純愛好きだけどこういうのもイイ!

226名無しさん:2005/01/05(水) 04:01
氾六に萌える日が来るとは思わなんだよ
氾王様好い!!

227『台輔の勤め』20:2005/01/11(火) 02:57
「背を流して貰う前にこちらを流して貰わねばならぬな」
その言葉に、六太は己が汚してしまった氾王の下腹に再び目をやる。
その下方まで視界に入るのは致し方なかったが、
今の今まで見ないようにしていたその部分が目に入ると、やはり意識せずにはおれなかった。
瞼を伏せた六太の様子を見て氾王はくすりと口の端を上げた。
「…今更照れておるか。可笑しなことよ。お主の王と何か違うものでもついておるかえ?」
見慣れたものじゃろうが、と悪戯めいた声音が笑う。
「そういう…わけじゃ…。別に、照れてるわけじゃねえよ…」
口を尖らして見せるものの、その頬はやはり赤く染まっている。
氾王は六太の体を引き寄せ、口付けた。
先程とは違う、ついばむような軽い口付けを六太も甘んじて受ける。
鼻先を合わせたまま、穏やかな低い声が囁いた。
「…さて、賢明な台輔には、どうするかわかっておるね…?」
六太は目を開く。眼前にある、細められた氾王の瞳が妖しく揺らぐのを見た。
「…口を清めたと申したね」
「……!」
その意図するところの行為に思い当たり、六太は抗議の声を上げようとする。
が、氾王の瞳に囚われて果たせない。
長い指が優雅に動いて六太の頭を撫でた。
促すようなその動作に、六太はあきらめるしかないことを悟った。
膝を折り、氾王の両脚の間に体を沈める。
下腹に唇を寄せ、先程放った己の精を舐め取っていく。
それは矜持高い麒麟にとって屈辱的な行為に他ならなかった。
…が、余りに未知な成り行きと行為であるが故に、
六太の心は本来感じるべき感情を見失い、半ば呆然となってしまっていたのである。
残りの半分は諦観であった。今回の責務に対して己が果たす役割の重要さを、
皮肉にも台輔たるその麒麟の本性が熟知していたのである。
氾王は六太の頭を撫で、愛らしく結われた金の髪を優しく梳く。
素直に全て舐めとり、息をついた六太の唇を伸ばした指でなぞった。
顎にかけた指をくいと持ち上げれば、上気した顔と目が合う。
幼さの残る容姿に浮かぶその表情は、やや眉を寄せた呆としたものであったが、
かすかに震えた菫色の瞳にとまどいの影が射していることは容易に読み取れた。
(…これは愛らしいことよ)

228『台輔の勤め』21:2005/01/11(火) 04:00
口元を緩め、ふ、と笑う。
「台輔…」
六太は氾王の笑みを見つめる。
「…そなたの舌は好い」
その口で、私を清めて貰えるかえ、と、ひどく優しい声が頭に降った。
――六太は息を呑んだ。
「おぬしも雁の麒麟、いくらこ度側仕えと申せ、私に頭は垂れられまい。
…が、この台座は丁度良い高さよの。その舌が私を洗ってくりゃるに不都合はなかろうよ」
言葉もない六太に含ませるように、それとも、と優しい声が続く。
「…この雁は、湯世話に侍ったというに客に体を洗わせたまま
置き捨てるような振る舞いを己に許す台輔がおる国かえ?」
六太は瞳を震わせ、優雅に微笑む氾王の顔を見上げる。
「…なん、か、…きたねえ…それ」
一瞬目を丸く開き、直後氾王は声を上げて笑った。
「ははは、汚いと申すか!…ふふ、さすがに延麒よの、
真から娘のようにはなれぬな。…」
暴言を気にするでもなく愉快気に面を崩した氾王は、
破顔したままじゃがな、と声音だけを低くした。
「…延麒なれば聡いはずよ。先刻も申したと思うたが。
台輔としてこれほど見事に歓待の役を果たしてみせたそなたなら」
覚悟を決めておったのではないかえ。
氾王の紡ぐ言葉に六太は反論の余地もなかった。
「――何、構わぬよ。無体はせぬと申したからね。
…ただ、常より大人振った延麒という子供、しかし内実その見目違わず、
やはり子供であったとね、範の官には知れたところになろうがね」
…六太は観念した。
「…わかった」
短く呟くと顔を伏せ、先程触れた部分に再び舌を這わせる。
しばらく逡巡した後、おずおずとその頭が下げられた。
心持ち変化しかけている状態であるかのようなそのものの、先端に舌先で触れる。
六太は目を閉じた。
唇を開き、口中に納めていく。舌の上をぬるりと過ぎていくそれは、
六太が唇を前に進めるごとに硬くなっていくようであった。
「ん…」
膨れていくにつれて押し上げられた先端が口中の奥を突き、
六太の喉から声が漏れる。

229「囚われた獣」1:2005/03/14(月) 16:51:46
*尚隆の王朝末期*

 酒に酔っているのとも違う不思議な熱が己の頭を蝕んでいる。だが、そのような感覚も
一瞬で、妙に狂おしい熱情にかき消されてしまう。
 そう、延王尚隆は破滅への道へ踏み出していた。それは本来己を助ける者であるべき
はずの麒麟の魅力に惑わされた為か、単に最愛の者を愛しすぎた為か、もはや自分
でも捉えられなかった。まともな思考能力さえ、いくばく残っているのか。ただ、
愛したい、守りたい気持ちだけがとめどなく湧き出でて苦しいほどに胸がつまる。
 ただただ自室へと足を速める。そこには極上の檻に入れた美しい恋人が待っているのだ。
玉をちりばめた銀の檻。そこへ駆けつければ最愛の者は菫色の瞳で上目遣いに見上げ、
「ね、遊んで」
とかわいらしく甘えてくれるだろう。
 延王尚隆は息を切らせながら自室の扉を開けた。

230「囚われた獣」2:2005/03/14(月) 17:20:21
 檻の中に金色の髪が見える。尚隆は懐から木の実を取り出しながら近づく。
「一人で寂しかったろう、すまぬな」
 寂しさに耐えかね縋るように檻に身を寄せて出迎える恋人がそこにいる…はず
だった。
 だが檻の中には、くずした胡座の上に片肘をついて頬を支えている少年が一人。
「どうしたのだ、何故駆けよって出迎えてくれぬのだ」
「血の臭いがするんだよ。いつも言ってるじゃねーか。いい加減にしてくれ」
「寂しかったろう? 遊んでやるぞ」
「遊ぶって何すんだよ。こんな檻の中で。つまんねーや」
 六太は以前の尚隆を思い出し、ため息が出た。昔は尚隆はこんなじゃなかった。
いつでも自由でいさせてくれたし、二人で街へ行き、楽しく遊んだものだった。
 一方、尚隆のほうも悲しげに息をつく。何かが違う。何かが…。
 それでも気を取り直して檻の間から桃を差し入れた。
「そら、桃だ。お前の好物であろう」
「いつも桃ばっかり…。いーかげん飽きたんだよ」
と言いながらも仕方なく手をのばして桃を受け取る。がつがつと齧るが、尚隆の手
から桃に移った血の臭いが鼻につく。それでも食べなければ飢えてしまうので
仕方がない。本当は食べ物にけちなんかつけたくない。腹が満たされるならなんでも
いいはずだ。そう、本当は桃にではなく尚隆に文句をつけたいのだ。
 そんな六太を尚隆はうっとりと眺めている。自分ではなく空想の中の美しい恋人を
見ている…そう六太にはわかっていた。愛らしく儚げな麒麟。王に愛され守られる
ことだけを願い、かわいらしく甘え、王に縋るように生きている…
何故、尚隆は現実が見えなくなってしまったのだろう。何故そのような架空の恋人を
六太に重ねるようになってしまったのか。

231「囚われた獣」3:2005/03/14(月) 17:57:24
 尚隆の頭の中では現実とは違う光景が展開されていた。
尚隆が部屋に入った途端、駆けよって来る六太。
「遅いじゃないか、尚隆。オレ、寂しくて。一人じゃつまらないよう。
遊んでよ」
「よしよし、遊んでやるぞ」
尚隆は檻の隙間から手を入れて六太の頭を撫でた。
「その前にまず食べ物だ。さ、桃だ。お前の好物であろう」
「ありがとう」
菫色の瞳で上目遣いに見上げられ、さらににこりと微笑まれ、尚隆は六太かわいさの
あまり恍惚となる。小さな口が桃を齧るのを尚隆はにこにこと眺めながら
「さて、今日は何をして遊ぶかな。いつものように鞠や玩具で遊ぶのも良いが、
のんびりするのも悪くないな」
六太が食べ終わると口のまわりを布でぬぐってやる。
「ね、ここから出して。尚隆のすぐそばに行きたいんだ」
もちろんだ、と鍵で扉を開け、六太の体を抱き上げて出してやる。
自然と首に手を廻してしがみつく六太に、己への信頼を感じとり満たされる気分だ。
そのまま長椅子へと運ぶ。長椅子の上に六太を降ろすと頬に軽く口づける。
「くすぐったい。尚隆にも」
もうすぐ六太の唇が己の頬に触れる…そう思ったとき
「やめろよー! 離せー!」
ぎゃあぎゃあという叫びとじたばたする感触で尚隆は別の世界へと引き戻された。
六太の足が尚隆の体を強く打った。

232微キチク尚六(?)1:2005/04/27(水) 11:21:39
ろくたんかわいそうなかんじ。時代設定なし。



 王不在時に、政務が滞る事を知らぬようになり早幾年という玄英宮。
けれど稀には王の決が急を要する事も有る。
活気溢れる城の中、延麒六太は官達に不在の王を探すよう促されていた。
正確には、首根っこ掴んででも連れて来い、といったところであろうか。
「ったく、何でおれが…」
「あなたほど、〝王の居場所が分かる〟という性質を生かしている麒麟は
他にはそうは居られぬでしょうねえ」
にこ、と朱衡の笑顔で六太は城を送り出された。

関弓の空の上、とらに騎乗し主を探るべく意識を集中する。間を置かず、
常と変わらぬ太陽の王気はここより大分離れた場所で感じられた。後は
そこに向けてとらを直線に走らせるだけである。

雁の隣国、国境を越えてすぐの辺りの寂れた歓楽街、彼はそこに居た。
夕暮れ時、小さな、やはり寂れた妓楼の門を六太は躊躇無くくぐる。
子供が出入りするような場所ではないため、店の者に咎められる前に
「風漢は」と切り出せば大抵「ああ」と案内される。
案内された房室の扉を押し開ければ、目的の人物、己の王が目に入る。
「…こんなとこに居たのかよ。何やってんだ。朱衡達が切れてんぞ」
軽く溜息を吐く六太に、尚隆は「よお」と手を上げた。

233微キチク尚六(?)2:2005/04/27(水) 11:23:55
突如現れた子供に、房室に居た数人の男達が振り返る。その部屋は酒と、
嫌な空気で満たされており六太は眉をひそめる。
傾き掛けた国の人心は荒み、あまり性質の良くない連中に見えた。

男達の好奇に満ちた視線を無視して、六太は尚隆の側近く寄る。
「急ぎの用なんだ。すぐ帰るぞ。こっからなら城、じゃない…家までとらを
飛ばせばそんなに掛かんねえから…」
「それがな、そうもいかんのだ」
六太は尚隆の腕を取り引いたが、彼は取り合わない。
尚隆によると、毎度の事だが博打で派手に負けて、今その借金の片をどう付
けるか話し合っているところだと言う。
「…どうすんだよ。おれ、立て替える金なんて持ってねえぞ」
「うむ。だからな、またこの店の雑用でも…」
「小間使いをしようってのか?お前、急ぎだって言ってるだろう」
そんな時間無いだろう、と六太が声を荒げれば男達から茶々が入る。
「おい、風漢さんよ。何でも良いが、踏み倒すのだけは勘弁してくれよ」
「分かっておる」
立て膝し、顎に手を当て考えた後、尚隆は突如側に居た六太の腰を抱き引寄せる。
「おいっ、尚隆?」
「今夜一晩、この餓鬼の身体で払う」
六太の訝しげな視線を余所に、周囲の男達――恐らく店の店員、用心棒、そして
博打を打った連中を見渡してそう言った。

234微キチク尚六(?)3:2005/04/27(水) 12:51:20
「ふざけんな、てめー何言ってやがる」
尚隆の借金の形の雑用事を手伝えとでも言うのだろうか。
「そんな小僧よりあんたの方がよっぽど働き手として使えるだろうが」
「今夜、と言ったのだ。分からんか?」
薄く笑い、六太の顎に手を掛け周囲に晒すように上向ける。
「見て呉れは…今一つだが、味の方は悪くないぞ」
どうだ?と問われ、男達は風漢が借金の形にこの子供の身体を売ろうとしている
事を理解した。

男達は六太に注目し値踏みする。そぐわないこの場に現れた時から、この子供の
美しい容姿は人目を引いていたが、良く見れば常人ならぬ、異常と言えるほどの
美形であった。それを今一つと言ってのけるからには、味の方はどれ程のものなのか。
そんな皆の考えを読んだのか、尚隆は六太の衣の襟口に手を掛け、首元から肩口に
かけて覗かせる。
未だ呆然とし、己の置かれている状況が理解出来ずに居たが、その指つきは妙に艶
かしく、六太は背筋に震えが走った。
「鳴き声は、まあ多少喧しいが…そうだな、子供ゆえ肌は良いな」
「尚隆…?お前、何考えて…」
あくまでモノとして扱うように、六太の言を無視して尚隆は取引を続ける。
そして、一通り男達を見渡し言った。
「どうだ?これで貸し借り無しにしては貰えんか?」
男達は互いに顔を見合わせた後、数刻置かずに決を出す。
「…あんたの借金をこの餓鬼一晩でチャラか。悪くねえ」
「餓鬼、しかも男を抱く趣味はねえが、たまには面白そうだ」
ここに至って、六太は漸く理解した。震えだす身で尚隆にしがみ付く。縋る瞳で、
口元は笑みを浮かべながら。
「…嘘だろ?なあ、尚隆、冗談だろ?何なら、おれが今から城に金を取りに…」
「決まりだな」
尚隆は男達の輪の中に六太を軽く突き飛ばし、もう用は無いとばかりに立ち上がる。

235微キチク尚六(?)4:2005/04/27(水) 14:23:40
「悧角、沃飛、連中に手を出すなよ」
身仕度を整えつつ放った言葉は、六太以外その場の誰にも意を捉えかねる事だろう。
部屋を出ようと扉に手を掛けたところ、六太を取り押さえる男の一人から声が掛かる。
「野暮な事を聞く気はねえが…。こいつあんたの何なんだ?子か?」
「俺の子でも弟でもないが、…俺のものだ。下僕だな」
その時、一瞬だが尚隆の面が苦く歪んだ事に、気付いた者は居るだろうか。
「何をしても構わんが、頭にひどい傷が有るで頭巾だけは取らんでやってくれ。」
見たら萎えるぞ、と冷笑を浮かべる尚隆が六太には恐ろしかった。
「やだよ、嫌だよ尚隆…!」
「お前もたまには従者らしく、主の役に立て」
主だの従だの、そんな割り切った関係ではないだろう、…割り切れずにいたのは、自分
だけなのか。
「ちゃんと帰って働くで、明日には迎えに来てやろうよ」
振り返りもせず背を向け出て行く男に、押さえ付けられる中で必死に手を伸ばすも、届
く筈が無く。

狭い臥牀では男達が乗り切れぬだろう、とそのまま床に組み敷かれる。
こんなのは嘘だ。いつでも己が迎えに行けば、尚隆はばつが悪そうに笑い、そんな彼の
頭を小突き、帰り道では剥れた己にご機嫌取りに飴だの煎餅だのを買ってくれ、「餓
鬼じゃねえんだ」などと下らぬ遣り取りを交わし、そして…。
「嫌だ、止めろ!!」
己に跨り体重を掛けてくる男に口ばかりの抵抗をする。男達の、己に注がれる視線が
ただ恐ろしかった。
「そうは言ってもなあ。風漢の借金を返して貰わねえと…!」
「風漢が主なんだろ?文句は主に言うんだな」
「お前は売られたんだよ、風漢に」
その言葉に、強く頭を殴られた。
泣くものか、と思うまでもなく涙は出なかった。心が瞬時に麻痺してしまったのか。

236微キチク尚六(?)5:2005/04/27(水) 15:05:33
四肢を強い力で押さえ付けられ抵抗も出来ぬまま、着物の合わせを左右に開かれ白く
すべらかな肌が露わにされる。
水物の菓子の様に柔らかく潤いが有る肌、そして桜色に色付く両の乳首。それらに、
誰とも知れぬ手が伸びる。
六太は己がこれから何をされるか分かっていた。
男に犯される、こんな屈辱的な行為は尚隆以外には許せるものではなかった。尚隆
以外とは、したくない。
けれど、尚隆によって投げ出されたこの身体。
混濁する意識の中、極度の怒りと、悲しみと、何故、と疑問符が心を占めていた。

男達は容赦無く六太を攻め立てる。
もう如何程の刻が経ったのか、頭部を覆う巾以外は全て取り去られた白い肢体に、
次々と傷痕が残される。柔らかく小さな尻を左右に割り開かれ、果てては入れ替わり
に肉棒を差し込まれるため、六太は下肢を閉じる暇も与えられず、またそうしようと
する意思も次第に潰えていった。
「坊主、可愛いなあ」
「…良い反応しやがる。なんだ?元々風漢の稚児かお前?」
「俺だったら絶対売らねえけどなあ。飽きちまったんかね?」
仰向けで犯されれば床の上ゆえ背が摩擦で痛く、うつ伏せで持ち上げられた尻を突か
れれば、胸と頬が痛かった。
けれど、本当に痛いのは身体ではなく――。


隣国から己が城に向けて、日の沈む方向へ尚隆はたまを走らせる。
既に、この空の上には聞こえる筈の無い六太の悲鳴を聞いていた。

尚隆は六太を憎んでいた。
己に好意を向ける六太を厭うていた。
絶対的に己のものであるのに、絶対的に己のものにはなりえない六太を。
この世における只の装置、と捨て置くにはあまりにも愛しい存在であるそれ。
意思など持たぬ人形に、虜となる愚かな己を肯定出来なかったのだ。




書きたいとこ書いたので終わりますよ…。

237名無しさん:2005/04/28(木) 18:09:18
ねーさん上げてくれたらいいのに。
しかし尚隆の気持ちもなんとなくわかるような。

238名無しさん:2005/05/03(火) 01:40:07
>書きたいとこ書いたので終わりますよ…。

なんかワロタ
>>1の鬼畜楽俊の続き、あなたに期待しております

239名無しさん:2005/05/04(水) 19:47:53
>237
>238
レスありが㌧。鬼畜楽俊は無理ぽ。
自分、ラッブラブでエッロエロな尚六スキーですんで…。
ってか、他の人が続き書いて良いのかな?

240『台輔の勤め』22:2005/05/18(水) 04:11:37
頭の中が白くなっていく。
己のしている行為と、その姿。
六太は目を閉じたまま氾王のものを口中に納め、舌を使う。
「ん、…ふ…っ…」
他の雑念に心を捕られぬようにとも見えるその一心な姿を見下ろし、
氾王は一人笑む。そしてふと、その表情の変化に気がついた。
湯気に濡れた前髪越しに見える六太の頬は赤い。
恥辱のせいもあろう、だが…。
「延麒」
不意に凛とした声で名を呼ばれ、六太ははっと我に帰った。
唇に先端を咥えたまま上を仰ぎ見る。
氾王は首を上に振り、六太にやめるよう指図した。
意味を量りかねて軽く見開いた眼に、氾王の毅然とした、だが穏やかな声が降る。
「もうよい」
「…へっ…?」
思わずおかしな声を出した。
「もうよいと申したのだよ。背を流してくりゃるかえ。おぬしも体を流して上がるがよい」
半ばぽかんとして動けなくなった六太を促すように、氾王の長い指が金の髪に触れる。
「さ、早う。」
背が冷えたのでな、と笑った顔にとりあえず安堵し、六太はゆるゆると体を起こす。
気が変わったのか、そのことにはほっとしつつ、だがとまどいを隠せない。
「でも…なんで…」
「続けたかったかえ?」
「いっ!いや全然!…って、あ…!ごめ…いや、そういうわけじゃ」
挑発するようににやりと笑まれれば慌ててかぶりを振る。
つい本音を口走ると焦り両手をぶんぶん振った。
「あ、いや…。あの、さ…」
そして小さく一つ湧いた不安を口に出してみる。
「おれ…何か失礼なこと…した…?」
我に帰れば、接待役としての今回の立場が頭に蘇る。
願ってもない展開とは言え中断は突然であった。
先程まで己の口で愛撫していた氾王自身は既に形が出来上がっている。
どのような術を用いるつもりであったかにしろ、その状態にしたままで
やめるというのは、如何に六太であっても理解し難かった。
向けられた当然の疑問に氾王は目を伏せて笑った。そして口を開く。
熱くはないかえ、と。
「随分と頬が上気しておる」
言われて六太はかすかな息苦しさを覚えていたことに気付いた。
「え…?うん、少し…暑い」
「大分長居をしたようじゃ。慣れぬ振舞いにさしもの小猿の頭ものぼせたかの」
湯疲れで倒れさせたとあってはこの呉藍滌の名が落ちる、
と、含めるような落ち着いた声が結んだ。





久々に続きを進めに来ました。誰もいない内にコソーリ書いちゃう…

241名無しさん:2005/05/18(水) 23:42:03
氾王さま、お久しぶりです。ろくたんが、んなことしてるというのに
我慢づよすぎです…

242『台輔の勤め』23:2005/05/22(日) 04:41:17
一通り体を洗い、六太は促されるまま自身も肌を清める。
結局なみなみと溢れこぼれる湯には浸かることなく、氾王は湯殿を出ようとする。
埃を流したかった故であるからね、とさらりと言った彼に、
六太はあのさ…と、尋ねたくて仕方のなかったことをためらいながら口に出す。
「それ、どうすんの…?」
ちらと目を向けた、それ、とは氾王自身。
六太によって高ぶった形になったものは幾分元の状態に戻りつつあるものの、
依然雄を鼓舞するかのように角度を保っている。
おずおずと言い憎そうに尋ねてくる六太に、氾王は思いがけぬことが起こったように
一瞬動きを止め、六太の顔をまじまじと見、それから軽く吹いた。
「なに、…うむ、そうじゃの──幼い延麒にはわからぬことやも知れねど」
まともに成人した男なればかようなもの幾らでも鎮める術がある、
と笑いを堪えた声が続いた。
「──その術を知りたいと申すかえ。如何ようにも出来ようぞ。
今なれば…そうだねえ、常に頭にある、我が国の案件を
一つ思い出してくりょう。──わかるかえ?」
男である前に王であるということじゃの、とさらりとした顔が言う。
六太はやおら目を見開いた。
「えっ、本当に?あんた──いや、氾王はそんなんで…萎えるのか!?」
思わず声を高くした六太に、氾王は失笑し、あからさまに眉をしかめて見せた。
「萎えるなどとそれこそ萎えるような言葉を遣うでない。
王とはかようなものじゃ。何時も政事が浮かべば身のしまる思いがする。
私の在りように全てを預けておる国と民とに、常に命の竦む思いを以て向こうておればの」
「…!…」
その毅然とした言葉と物言いに六太は思わず感嘆の吐息をついた。
二の句が継げない。
そういうものなのか。
いや、少なくともこの男──範国国王呉藍滌においてはそうなのだ。
もし次回、尚隆がその気であって己が拒みたい時、言ってみよう。──
六太は一人考えた。
(おれ達がそんな事やってる間も惜しみ無く働き、もしくは
何か心労があって安らかに眠りにつけないでいる民が必ずやいるはずだ)──
だが、その思いはすぐに儚く消えた。
あの尚隆がそんな言葉で萎えるような男でないことを
自分が一番知っている、ということをすぐに思い出したからである。

243名無しさん:2005/06/08(水) 02:15:40
>もし次回、尚隆がその気であって己が拒みたい時、言ってみよう。──
ワロス
尚隆とは別の意味で氾王さまは自在の下半身をお持ちだな。

244『台輔の勤め』24:2005/06/21(火) 03:20:19
(あいつに効くわけねえよなあ…)
六太は溜め息を漏らした。
五百年連れ添った王──彼に、今一瞬でもそのような
「かくあるべき王」の幻想を抱いた己の気の迷いに苦く笑い。

──さて、それぞれ女官に身繕いをさせ湯殿を後にした二人であったが、
背にした女官の内、数名の頬が赤かったのは気にするべくもないことである。


氾王の横を歩く六太の衣装は先程とは趣を異にし、
淡い紫を基調とした華やかなものとなっていた。
女官が自分に嬉しそうに着せるのを半ばげんなりと六太は受け入れたが、
もしかすると彼女らは何着も用意していたのかもしれない。
髪留めや帯などの飾り小物も着物に合わせて品よくまとめられ、
それは六太の瞳の色に良く似合っている。
「…雁にもほんに趣味の佳い女官がいるのだねえ。
日頃の鬱憤を晴らしておるようじゃの」
などと氾王が皮肉を言うのも今は甘んじて受ける。
実際自分も尚隆も服装には全く頓着せず、むしろ面倒としか思わないから、
その感性に秀でた女官には日頃口惜しい思いをさせていたのかもしれない。
今回思い切り好きなようにさせたのだから、
今後も口やかましいことを言われることはないだろう。

245名無しさん:2005/10/14(金) 21:51:57
つ、続き早く・・・・・滅茶苦茶気になるよー

246名無しさん:2005/10/23(日) 00:53:12
おふろでのことを尚隆が知ったら…続き期待してます!

このスレ読み返してました。
「春怨」と「微キチク尚六」、名作だと思います(同じ人かな?)。
ファンです。また書いてもらえたら嬉しいです。

247名無しさん:2005/10/27(木) 18:30:02
>246
舞い上がる様なレスありが㌧です!
「微キチク尚六」…好きな男を思いながらマワされるヒドイシチュ
が書きたかっただけなんて言えません。
「春怨」…流石に今とは尚六観が違って何とも;

文の書き方が未だに良く分からんのですが、尚六キチクものとか
書かせて頂きたいです。来年辺り。今度は同じ人だとバレないように…。

248名無しさん:2005/10/27(木) 21:55:38
来年尚六キチクですか!?
期待しております!!!

249氾六の中の人:2005/11/16(水) 15:44:56
仕事が忙しくて滞ってしまってすみません。
続き書きたい気持ちはあるのですが、遅くなりそうです。
誰か続き書きたい方いましたら、リレーにしてしまっても
いいかなとも思っているのですが…
今更ですねw

250名無しさん:2006/01/21(土) 21:28:38
ここって誰でも小説のせて良いんだよね?

251名無しさん:2006/01/24(火) 20:17:25
うむ 好きなように書くのだ!

252終宴1:2006/02/15(水) 22:14:55
尚隆末期系尚六にチャレンジ精神でお送りします。
(末声までは行きません)



こわいことは、ひとつ。
――尚隆が雁を滅ぼすこと。


常に変わらぬ繁栄を誇る雁国の、木々の静まった真夜中の玄英宮。
延台輔の住まう仁重殿に忍び込む影一つ。

月明かりだけが届く暗闇の臥牀で六太はその気配に気付き、打ち
掛けた寝返りを止めた。
影が帳を捲り牀榻に進入を果たしても、使令共々警戒するでもない。
するとギシ、と臥牀に上がり込む音を立て、既に己を覆う長身の
その正体を確かめる事はせず呟いた。
「…てめー、部屋間違えんな。正寝に帰れ、正寝に」
「あのな、お前に会いに来たのに帰されてたまるか」
「お呼びじゃねえんだよ、帰れ帰れ」
〝風漢〟の出で立ちのまま、豪奢な布団に潜り込んだその人に対する
六太の言葉は冷たいが、口調は冗談めかしていた。決して本心では
ないし、それを分かった上でなのか尚隆は六太を抱き締め、その幼い
柔らかな頬に唇を寄せる。
「俺にはお前が居れば良い…」
「白粉の匂いプンプンさせながら言っても説得力の欠片もねえよ」

253終宴2:2006/02/15(水) 22:23:52
もう遥かな昔、六太は延王の寵となった。尚隆の一となった。
それでも六太が尚隆のただひとりの相手という訳ではなく、彼にとって
女は趣味であるのか、女を愛し、侍らす事は辞めなかった。
六太は彼が女を愛でる事に妬くでもないが、すると尚隆は「妬いても
くれぬ」と臍を曲げるのだ。全く面倒くさい男であるが、そんな莫迦な
ところも愛しく思う。もっともそう思えるのは「己が彼に一番愛されて
いる」事から来る傲慢ゆえであろうか。

被衫の合わせから大きな手が差し込まれ、帯が緩く解かれる。胸や腹、
腹から下肢を愛撫され、月明かりの中白い六太の身体が薄らと色付いて見えた。
互いに裸身で向き合い、尚隆は彼らしからぬやや真面目な視線を送る。
「俺の帰る場所はここだけだ。…ここ、だな」
そう言いつつ六太の下肢を弄り秘所に指を押し入れる。びく、と跳ねた
細い腰を見る目は楽しげだ。
「蓬莱ならば男は女より出で還るのであろうが…」
「…お前、つまんねえ冗談言うなよな」
「つまらんか。本心であるのに」
そうして睦言の代わりに軽口を叩き合った後、夜が更けるまで睦み合った。


それはもう数十年前の夜の事で、時の経った今ではそういった事――身体を
繋ぐ事は無くなった。

254名無しさん:2006/02/17(金) 00:11:23
おお…お?
風漢の格好でしのび込むところが、人目を忍ぶ恋人同士プレイという感じで…!
とりあえず米5㌔買い足ししとかねば

255名無しさん:2006/02/18(土) 01:09:30
いっそ米俵ごと持っていけ。
馴染ませてからいきなり数十年放置プレイとは…尚隆、やるなw

256名無しさん:2006/02/18(土) 20:38:38
おお、更新されとる!
神よ!!

257名無しさん:2006/03/02(木) 05:56:53
変なの来てるので上げますね

258名無しさん:2006/04/19(水) 00:38:45
あげときます。

259終宴3:2006/08/19(土) 01:43:23
王、台輔の身辺を世話をする女御達は女の嗅覚でもって主従の破局を嗅ぎ取っ
た為、玄英宮において「主従がどうやら破局を迎えたらしい」という噂は女官
の間から広がった。
それを耳にした朱衡ら高官達は急ぎ城内に緘口令を敷こうとした。
何しろ常の男女の破局とは違い、一国を巻き込む、国の滅亡をも招きかねない
事件なのだ。真実は置いて、混乱の芽は早々に摘まねばならない。下界に噂が
漏れ伝わる、など有ってはならない。
そうして城内には一時緊張が走ったが、見れば王は以前にも増して出奔するよ
うにはなったが政務を放るでもなく、特に主従が仲違いをしたとも見受けられ
ない。
主従は恐らく以前のような恋愛関係ではなくなり、それによる睦まじさが失せ
たのだろう――官達の見解はこうであった。それならば、政務に国に関わらぬ
のであれば官が口出す事でもない。

だが台輔は麒麟、王を慕うもの。自然、主従の破局は王に原因が有りと思われ
口には出さぬが「台輔、御労しや」という皆の視線を六太は受けるのであった。

尚隆の出奔と共に、六太の出奔も増えていった。そういったものの煩わしさか
ら逃れるために、…己の矜持を保つために。

260終宴4:2006/08/19(土) 02:55:12
その、城での小さな波風となった件は昔の事。

城から出奔した六太は自国内を当てなく飛んでいた。このまま蓬莱まで掛けよ
うか――。だが騶虞に跨り天掛けながら、見下ろした桜は見事で夜中に仄かな
光を放つようであった。

春の終わりの夜中の桜に六太はかつての幻を見た。それは空中を掛け冷える身
体に確かに熱を篭らせる。あれは尚隆を王に迎え四百年が経った頃か。春の宵
口桜の下であの男から「惚れている」と告げられた自分。その幻。それを見る
事は今では酷ではない。
そして連珠のように、初めて尚隆と身体を繋いだ夜を思い出した。あの時もや
はり蓬莱に遊びに行ったのだ。
当時、蓬莱の情勢がかなりきな臭くなっている事は知っていた。だが生来の好
奇心で鳴蝕により飛んだ蓬莱は――。着くや否や、六太は瞬時に血に酔った。
これ程酷い穢れを体験した事が無い。血臭の源。人だけではなくその地に生け
るもの全てが死んでいた。
六太は運悪くも近代兵器による戦争を目の当りにしたのだ。空から撒かれる物
が地に落ち爆音と共に炸裂し、不死の麒麟であってもその命、王と繋がる命を
守れるか危うかった。
麒麟の俊足をもってその地を離れ、すぐに常世に逃げ帰った。

261終宴5:2006/08/19(土) 03:29:26
六太は蒼ざめ、尚隆の、唯一の光の元に帰って来た。生気を失い、地に付かぬ
感覚の脚を必死に動かして。
正寝の牀榻で横になっていた尚隆は明らかに常とは違う六太の様子に驚いた。
身体を起こし牀の上で腕を広げれば、六太はその胸元に縋り付き、泣き出した。
事情を話すように促せば、六太は嗚咽交じりに見て来た蓬莱の姿を語り出す。
「…それはあくまで蓬莱での事だ。こちらでは、雁ではそんな事は起きぬ、…
俺が決してそんな事は起こさせぬ。大丈夫だ。安心しろ」
縋り付いてくる恋人を、尚隆は優しく、だが強く抱き締めた。それでも震えが
止まらず「怖い怖い」と蓬莱での光景に怯え泣く六太を「大丈夫だ」と宥める
事に努めた。そして、安堵を与え、気を紛わすために六太を抱いた。

その夜の事は混乱の内に過ぎ去ったが、その後も暫く体調が優れぬ六太に尚隆は
優しく接したのだ。どんな風に優しかったか、もう記憶は切れ切れで具体的には
思い出せぬが、恋人として優しかった印象は残っている。

それから後、身体を繋ぐようになってから尚隆は己が欲望を全て六太にぶつける
が如く愛してきたし、六太もそれを受け入れていた。
だが、数十年前を機に、そういった事は無くなった。
彼の心は己から離れた。飽きられたのだ。己では彼の心、身体を満たす存在では
なくなったのだ。所詮、麒麟と違い王は麒麟に縛られる事など無いのだ。

今、尚隆は昼には城にその姿を見せるが、夜まで留まる事は無い。

独り寝には慣れた。六太は己の中の主に対する特別な感情――恋慕も風化を認めた。
傷付き心乱される事なく愛人であった昔を懐かしく思い出す事も出来た。

262名無しさん:2006/08/19(土) 05:41:47
おっ、更新されてる(゚∀゚) 神乙!

切ないろくたん、凄く好みだ。

263終宴6:2006/08/23(水) 02:24:55
「お早うございます」
「お早うございます台輔、お起きになって下さいませ」
「ん…おはよ…」
牀の幄が女御によって上げられ、もう何百年と変わらぬ清清しい朝を迎えた。
六太は仁重殿にて大人しく起伏していたが、以前のように「御労しや」といっ
た視線を寄こす者はもう居ない。かつての主従の破局の件は、大分皆の記憶か
ら薄れる位には時が経っていた。

未だ眠気の覚めぬ足取りで立ち上がり、女御達に身支度を任せる。彼女達は慣
れた手付きで六太の被衫に手を掛けるのであるが、昔には、情事の翌朝に自身
の身体を検めると首元や胸元に二、三の痕を得ている事がまま有った為、出来
なかった事だ。そして、朝の仕度の世話から逃げる六太の様子を尚隆は悦に入
ったように笑って見ていたのだが。

今、それとは違った意味で、六太は被衫を纏わぬ自身の身体を見下ろして確認
する。――何の変化もない。
「…どうかなさいました?」
女御の問い掛けに六太は気付き面を上げる。
「いや、何でもない」

朝目覚めたら何の前触れも無く突如として、己の子供の成りが十代後半の青年
の姿に変化しているのではないか。長い手足、大きな掌を持った大人の姿を得
ているのではないか――。
そんな劇的な事が有るのではないか。愚かにもそんなあり得ぬ期待を抱いている。
期待を、天帝に?そうではない。何か超常的なモノに。

別に数百年付き合ってきたこの子供の身体に劣等感を感じるでもない。仮にそ
んなものを感じた事が有ったとしても、過去の事だ。今更だ。なのに無性にこ
の子供の殻を捨てたくなった。
外見はともかく、内面はとうに大人であるのだから。
ここ数年、焦りにも似た感情を六太は強く抱いていた。




過去が飛び飛びで分かり難い…。ゴメー!!

264名無しさん:2006/08/27(日) 18:48:08
神、超乙!萌え萌えですよー!(*´Д`)ハァハァ

しかしこんなに可愛い六太んを捨て置くとは、尚隆めーーー!!

265名無しさん:2006/08/30(水) 00:24:48
おおすげぇ!
せつないろくたん、萌えだーーー!(*´Д`)

266名無しさん:2006/08/31(木) 02:33:53
新しいのキテルー!!!
切なくも気丈な六タンも、今のとこ何考えてるのかよくワカラン尚隆も、
共に気がかりだー!

267名無しさん:2006/09/22(金) 19:28:14
ところで 鬼畜王楽俊 は、もう書かないの?
かなり気になったんだが・・・・・
姐さん、誰かーーーーーーー!!

268名無しさん:2006/11/07(火) 12:50:47
267さんが、らくつんの続き書いてくだせい。
おながい…

269尚+利×六:2007/01/03(水) 01:22:23
誰もいないようなので、今のうちにコソーリと置いていきます。
利広と尚隆が宿の一室かなんかで、六太を襲ってる感じ。3p

条件:挿入なし(指などは可)の濃密でねちっこいエロ

上の条件を守りながら、二人には六太を襲ってもらいます。



ではスタート↓

270尚+利×六:2007/01/03(水) 01:24:33
ふわりとした甘ったるい臭いで六太は眼が覚めた。
頭がぼうっとしている。それになんだか、やけに喉が渇いていた。
体が気だるく、うっすらと熱を持っている。
不快ではないが、ひどく奇妙な感覚。

六太はくらくらする頭を起こした。この甘い臭いは何なのか。
自分は寝る前に香を焚く日課はないし、女官だってそのことを知っている。
ならば誰が・・・・・。
そう思うよりも早く、暖かな陽光のような王気、そしてその持ち主の声が聞こえた。
「よう、眼が覚めたか?」
そちらを見なくても分かる。延王、小松尚隆。
彼は六太の横で、座っていた。
だが、何故彼がここに?

「しょうりゅ・・・、お前なんでここに・・・?」
「私もお邪魔してるよ」
いるんだ、と聞こうとした六太を遮って第三者の声が聞こえた。
「利広・・・・・・」
六太の視線を受けて、利広はひらひらと片手を上げる。
「夜分遅くに御免ね、風漢がどうしても寄ってけって言うから」
「お前が勝手についてきたんだろうが」
笑顔で堂々と嘘を言う利広に、尚隆は顔を顰める。

何故二人がここにいるのだろう。
尚隆はまだ分かる、だが利広まで。
一体何が起こっているのかわからなくて、六太は体を起こそうとする。
が、体に力が入らず寝台に倒れこんでしまった。
なんだかこの香の香りをかいでいると、体がまるで自分のものではないかのように動かしにくくなっていく。
「無理はせん方がいいぞ。お前のために特別な香を焚いたのだからな」
「とく、別、な香・・・?」
上手く舌が回らない。疑問符を浮かべても、二人はただ笑っているだけだ。
―――何かがおかしい。
六太の直感が警報を鳴らしている。二人とも口元を笑みの形に歪めてはいるが、眼がまるで笑っていない。
例えるなら・・・・・・・・・・飢えた獣。その表現がしっくりくるような気がする。
不安げに後ずさる六太に、利広が笑みを深めていった。
「範の特別製の媚薬だよ」


「そういうことだ」
言うなり尚隆が、後ろから六太の首筋を舐め上げた。
「っ!」
びくりと大きく体を震わせた六太を、利広が前から押さえつける。
「な、やめ」
「駄目だよ、六太。最高の気分を味わわせてあげるから、ね」
「無駄なことはせずに大人しくしとけ」
言いながら、尚隆は六太を自分の膝の上に乗せる。
後ろに尚隆。前に利広。
六太はこれから自分が何をされるのか知って、可愛らしい顔を強張らせた。

271尚+利×六:2007/01/03(水) 01:27:26
「あ・・・っ」
尚隆に顎をとられて、後ろから口付けられる。
「ん、や、んぅ・・・・」
何度も何度も、啄ばむような口付け。媚薬によって敏感になった体は、それだけでとろとろに溶かされそうだ。
うっとりと瞳を潤ませる己の麒麟の様子に、尚隆は愛しげにその髪を撫でる。
逃れようと首を振るが、その体は尚隆の逞しい腕によってがっちりと固定されている。
その間に利広は、六太の夜着の着物をするりと肌蹴させる。
上半身の肌を晒した六太に、利広は彼にしては珍しくも見入ってしまった。
平らな胸としなやかな背中。赤みが差した頬に、うっすらと汗ばんだ肌。ほっそりとした体。
その純白の肌は薄暗い部屋の中では、ほんのりと白く輝いているのかのようだ。
女ではなく自分と同じ男で、しかもこんなに小さな子供なのに、やけにそそるものがあった。
いや、あるいはこの姿だからだろうか。
そっと指先で首筋をなぞると、六太は「んん・・」と尚隆の腕の中で身じろぐ。
絹よりも滑らかなその肌は、まるで利広の指に吸い付くかのようだ。
(これが麒麟・・・・・)

利広はゆっくりと顔を下ろすと六太の首筋に顔を埋め、そのまま舌を這わせる。
「やぁ・・・・」
漸く尚隆に唇を開放された六太が、声を上げる。
だが尚隆は、今度はすらりとした背中を下から舐め上げた。
背筋に沿ってゆっくりと丹念に。
「〜〜っ」
ぞくぞくとした寒気にも似た快感が、六太を襲う。
「や、めろ・・よ、触るなぁ・・・・・」
弱々しく抵抗するその腕を掴み上げて、六太の体を押さえつける。
その隙に利広の舌が六太の胸まで降りてきた。
淡く色づいた胸の先端を口に含むと、ちゅと吸い上げる。
「ああっ」
「六太、可愛いね・・・気持ちいい?」
「やめ、ああぁ・・・・ん、・・・はぁんっ」
利広は舐めたり軽く歯を立てたりして六太の胸を苛む。六太は顎を仰け反らせ、利広の頭を掴んだ。
羞恥でどうにかなりそうだが、それ以上に気持ちよくて何も考えられない。
むずがるように首を振ると、麒麟特有の金の髪がさらりと揺れる。
尚隆も六太の背に舌を這わせたまま、反対側の胸の先端を指先で弄り始めた。


>270長すぎたorz
もっと短くしなくては・・・・・

272尚+利×六:2007/01/03(水) 01:30:36
六太のそれは赤く尖って、まるで美味しそうな果実のようだ。
摘んだり、噛んだり、捏ね回したり、引っ張ったりと、二人は散々やりたい放題に、六太の胸を味わう。
「う、ふぅぅっ・・・はぁ・・・ん、や、やめぇ・・・・」
「ここを吸われると気持ちがいいだろう?」
尚隆は舌を小さな耳に侵入させる。
ざらざらとした熱い舌で耳の中を丁寧に嘗め回されると、六太はふるふると切なげに睫毛をふるわせる。
異常なほどに肌が敏感で、二人の愛撫が痛いぐらいだ。
切ない疼きに喘ぐ六太に対して、二人もその表情にこそ出さないが、徐々に焦りはじめていた。
はじめは、優しくあまり怯えさせないようにしてやろうと思っていたが、こうもあられもない声を上げられ、
悩ましげに身をよじられると、散々酷くしてやりたい欲求に駆られる。
大人の男が二人掛りで、小さな子供を強引押さえつけ、辱めている。その背徳的な行為に気分が高揚する。
だがあまりにも酷いことをして、後々に尾を引いてはいけない。
尚隆も利広もお互いを戒めるように、やり過ぎないように自制しながら六太の体を愛していく。
「六太・・・」


疲れたので、今日はここまで

273尚+利×六:2007/01/04(木) 21:05:38
尚隆が再び六太に口付ける。先程よりももっと深い口付け。
舌先が口内に侵入すると、六太は体をびくんと反応させた。
柔らかな弾力のある舌が六太の口内で、我が物顔で蹂躙する。
逃れようとする舌を絡めとり、根元からきつく吸い上げると、六太の体中に痺れが走る。
「んくっ・・・あぅ・・・んんぅ・・・・」
初めて味わう六太の口内を、尚隆はじっくりと堪能する。
すっかり六太の体から力が抜けきったのを悟った尚隆は、ようやく桃色の唇を開放した。
「ん、・・・はあ・・・はぁっ・・・はぁ」
長々とされた口付けに、口の端から飲み込みきれなかった唾液を垂らしながら、六太は必死で乱れた呼吸を整えようとする。

その様子に尚隆も利広も思わず手を止め、小さな麒麟を見つめた。いや、視線が吸い寄せられた。
それほどに、今の六太は魅惑的で艶かしい。
荒い息づかいに合わせて上下する胸の突起は、利広の唾液でまるで熟れたさくらんぼの様にぬらりと光っている。
長い金の髪は乱れ、波打つ寝台の上に大きく広がっていた。
汗ばんで淡い桜色に色づいた肌を、弱々しい火灯りがゆらゆらと妖しく照らし出している。
火照った白い小さな体を震わせながら、それでも玉のような紫の瞳でこちらを睨みつけるその姿は、いじらしく健気だ。
ひどく淫靡に乱れているのに、六太自身が持つ高貴な麗質は少しも損なわれていない。
どころか、暗闇でもほのかな光を放つすらりとした白い四肢と金の髪で、神々しくすら見えた。
本人が意識せずとも周りの者を魅了し、引き付ける。
箍が外れそうになる。

274尚+利×六:2007/01/04(木) 21:10:32
誘われるかのように尚隆が無意識に手を伸ばした。
「厭らしい体だな・・・・ここはどうだ?」
尚隆が胸の突起を弄りながら、もう片方の手を腰に絡みついた夜着の中に伸ばした。
「うぁ・・・や、やめろっ・・・下は」
言うより早く潜り込んだ尚隆の手は、細い腰をなぞり、六太の柔らかな尻を鷲掴みにする。
「ひゃああっ・・・尚、隆・・・やめて、よぉ・・・・」
必死で身をよじり、体をくねらせ、尚隆の手から逃れようとする。
だが、それは見ているものに更なる情欲と興奮を煽るだけであった。

それを見て、利広も口はそのままに両手を夜着の中へ忍び込ませ、六太の双球を握りこむ。
「やめ、ろってばぁっ・・・・こんな、こと・・・・・して、良いわけ、が」
「あれ、まだそんなこと言うのかい?もう体はこんなに反応してるのに」
言いながら、六太の尻を円を描くように撫で回すと、六太は華奢な体を強張らせる。
「気持ちがいいのだろうが、いい加減素直になれ」
尚隆は利広よりもっと遠慮無しに、ぐいぐいと柔らかな尻を揉んだ。
無骨な男の指が撫で回し、揉みながら爪を立てる。
「や、だぁ・・・こんなの、やぁ・・・」
うわ言のように繰り返す六太の言葉を気にかけることもなく、利広は六太の乳首を一際強く吸った。
「はあぁあんっ」
六太が悩ましげな声を上げて、白い裸体をくねらせた。

275名無しさん:2007/01/05(金) 00:42:11
なんか淫らなのキター!!
六タンのエロさに(;´Д`)ハァハァ

276名無しさん:2007/01/05(金) 02:07:54
ちょ、ちょっ、!!
ろくたんいやらしすぎるー!!
ねーさん、挿入無しだなんてひどすぎるよ、
もう、がんがんに入れまくってほしー!! お願い!!!

277尚+利×六:2007/01/05(金) 23:08:19
尚隆は片手で乱暴なぐらいに尻を揉みながら、もう片方の手を乳首から離した。
いやらしい手つきで敏感なわき腹を滑らせ、乱れた夜着の中の細い太ももに触れる。
「ふぅううぅん・・・くぅんっ」
六太は嫌がるように首を振った。
足の付け根をなぞりながら、小さな指先に口付ける。
目じりには透明な涙が浮かんでいた。
尚隆が六太の指を堪能している間に、利広はやっと六太の胸から口を離すと、そのまま顔を下へ移動させた。
胸から腹部にかけて舌を這わせたまま、嫌味な位にゆっくりと。
「風漢、もっと優しくやってあげなよ、そんな乱暴なやり方じゃ六太は気にいらないよ。ねぇ六太?」
「あぅう・・・」
「何を言っとるか、こんなに体を蕩けさせておるのだぞ」
それを証明するかのように、尚隆は六太の双球の間、僅かに秘部からずれた位置で際どく指を動かす。
「はぁ・・・・はぁ・・・・駄目、だ、やめ・・・」
「聞こえないな」
柔らかな尻を撫で回しながら、ついに腹に到達した利広の舌は、へその周りを何度も行き来する。

舐めながら、開いた片手で再び胸を弄ってやると、面白いくらいに六太の体は跳ね上がる。
その拍子に、蕾の周辺を弄っていた尚隆の指が秘部に直接当たってしまった。
六太が大きな眼を見開く。
「んっ」
「気持ちいいか、ん?」
尚隆が獰猛に笑いながら、指をわざと小さく動かすと六太は体を反らして「あ、あ、」と愛らしく鳴く。

278尚+利×六:2007/01/05(金) 23:11:24
「風漢が後ろなら、私は前かな」
利広はにこりと笑って、しかしその瞳に獣のように貪欲な色を浮かべ、手を伸ばす。
しゅるりと音がして、辛うじて下半身を隠してくれていた帯が完全に取れてしまった。
腰に絡み付いていた夜着は完全に取り払われ、六太は無防備な性を晒すことになった。
利広は六太の体相応の幼さの残るそれを、うっとりと見やる。
小さく震える薔薇色の可憐なそれは、しつこいまでの責め苦と媚薬とによって完全に立ち上がっており、蜜をにじませていた。
「そ、そんなとこ見るなよ!見るなってばっ」
六太は顔を真っ赤にして力なく暴れるが、尚隆に軽く秘部を擦られ、くたりと大人しくなった。
「こら、大人しくしろと何度も言っておろうが」
「あっあっああっ」
秘部に入りそうで入らない、際どい位置で指を少し激しく動かしてやれば、六太はすぐに泣き言を上げた。
幼い体が羞恥のあまり乱れる様子は、尚隆の、利広の征服欲をひどく煽る。

「お、願・・・・・・もぅ、や、めてぇ・・・・・」
汗ばんだ金の髪を揺らして、六太が整った顔を歪めると、鮮やかな紫の瞳からは透明な涙がぼろぼろと零れ落ちた。
眼が覚めたらいきなり襲われて。
大の男二人にいいようにされて、得体の知れない薬まで使われて。
羞恥と屈辱で涙を流しながら小さな体を震わせ、本気で怯える麒麟に、尚隆と利広は顔を見合わせた。
「・・・・・・・・六太」
尚隆は小さな背中を撫でながら、宥めるように何度も口付ける。
ちゅ、ちゅと啄ばむような、優しい口付け。感じさせるためではなく、慈しむ為の。
「怯えるな、別にお前を傷つけたいわけではない」
「ん、んぅ・・・」
「大丈夫、痛いことは何もしないよ」
利広も落ち着かせるように、優しく金の髪を梳き、その頬に口付けた。

>>276
挿入書ききれん・・・・すいませんorz
誰か、他の姐さん書いてー!

279名無しさん:2007/01/06(土) 01:08:26
挿入なくてもいいのでもっと苛めまくって(*´Д`)'`ァ'`ァ

280尚+利×六:2007/01/07(日) 22:54:09
この行為が始まってから初めて見せる二人の優しい仕草に、六太は微かに安堵する。
だが。
「単に六太を気持ちよくしてあげたいだけ。だから、安心して身を任せて、ね?」
そう言って利広は六太の足の間に、頭を埋めた。
六太は利広のその行動に驚き、眼を見開くが。
何か言うより先に、尚隆に顎を取られてしまった。
しかし今度は尚隆の唇ではなく、指を咥えさせられる。
「!?」
「舐めろ、少しずつでいいから」

尚隆の腕を掴んで、必死で引き剥がそうとするが敵う筈がない。
六太の口の中に進入した指は、強引に動き回り、舌に触れる。
「くっ、ふぐぅ・・・」
しばらくすると指が抜かれ、ほっと息を吐いたのもつかの間、今度は二本咥えさせられた。
利広は六太の足の付け根を丁寧に、舐めている。
膝からなぞるように、六太の性器に触れるぎりぎりまで何度も何度も行き来する。
六太はいつ利広の舌が、己の中心に触れるのかと気が気ではなく。
しかし舌を動かさずにいると、尚隆が集中しろとばかりに強引に口内を掻き回す。
「んくぅ、ん、んんぅ〜〜〜〜〜〜っ」
六太は悶絶して体を震わせるが、抵抗などできるわけがない。
尚隆に三本目まで舐めさせられたところで、ようやく口を開放された。
はあ、はあと、荒い息を吐くと、その背を軽くさすられる。
「さて、じゃあそろそろかな」
利広は熱い吐息をはき、六太の潤んだ眼を見据えた。
「先にどっちから行く?」
「前からでもいいが・・・・敢えて先に後ろを弄りたいな」
「じゃあ、後ろからね」
前、後ろ、六太には何のことを言っているのか分からない。

281尚+利×六:2007/01/07(日) 22:57:31
「何、する気だ・・・・」
どうせ碌な事でもないには違いない。
体を竦ませる六太に、男たちはにやりと凄みのある笑みを浮かべると、くるりと六太の体を裏返した。
「っ!」
仰向けにさせられた六太の体は、さらに腰を高く持ち上げられる。
まるで獣のような四つん這いの格好。
「やめろっ、何をする気なんだよ!」
涙目で睨みつけるが、二人は意に介さず。
六太の腰を固定すると、尻をぐいと左右に割り開いた。
「ひぁっ・・・」
こうすることで六太の蕾の奥まで丸見えになってしまう。
「綺麗・・・・ほんのり色づいてるね」
「ひくひく動いて・・・・そんなに欲しいのか?」
つんと形のいい尻の奥に、薔薇色に染まった蕾があった。
愛らしいそれを、尚隆と利広は熱心に見つめている。
「いやっ、いやだ、見るなよっ」
尻の間の秘部を熱い視線に晒されている、六太にはその事実は耐え難く、あまりに羞恥に涙を流す。
だが、二人にしてみれば恥辱に悶える六太は可愛くて仕方がない。
「大丈夫だ、そんなに焦らずともすぐに良くしてやるからな」
言って尚隆は六太の尻に顔を埋める。
「っ、やめて・・・・おねがい・・・・そんなとこ」
六太の言葉はここで途切れた。
尚隆の舌が六太の蕾に差し込まれたからだ。

282尚+利×六:2007/01/07(日) 22:59:57
「んくっ!うぅうんんっ!」
にゅるりと無遠慮に六太の中に入ってきた舌は、最初は様子を見るようにゆっくりと出し入れされる。
気持ち悪くて六太は体をぶるぶると震わせるが、そろりと内壁を舐める動きに悲鳴にならない悲鳴を上げる。
「〜〜っ」
あまりに感覚に腕の力が抜け、六太は枕に突っ伏する。
だが腰は尚隆の腕によってしっかりと支えられていたため、自ら尻を突き出すような姿勢になった。
中を広げるようにぐいぐいと動き回る尚隆の舌に、六太は涙を流し、あられもない声を上げ、ぎゅうっと枕を握り締める。
「くぅぅうん!・・・・ふぅぅうう・・・・あうぅんん!・・・・」
必死に抗おうとする六太を押さえつけて、利広が情欲に染まった瞳で六太を見やった。
「六太、そんなに声を上げて・・・・もう体が堪らないだろう?」
「あくっ・・・ああぁあん!や、めてぇ・・・・これ以上はっ・・・・・・・・はあぁ!」
既にまともに返答することもできず、それでも必死で否定の言葉を紡ぐ小さな麒麟の腰に手を伸ばした。
「もっと狂うぐらいよくしてあげるよ」
言って利広は六太の熱くなった中心を、ぐいと乱暴に掴む。
「あっ、だめぇ・・・きゃあぁあぁあんっ!」
びくりと体を震わせると、その抵抗を抑えるように尚隆が舌で抉る様に六太の中を蹂躙する。
最初の余裕はどこへいったのか、いまや利広と尚隆は我を忘れ、夢中で六太の体を嬲っている。
しゅ、しゅ、と利広が六太のそれを強く扱くと、六太は泣きながら腰を振った。
「ひああぁっ、はっ、いやぁああ、もっ、許しっ、うあぁん・・・」
既に媚薬と愛撫によって高められていた体を、前を利広に扱かれ、後ろを尚隆に舐められ、あまりの激しさに六太は限界だった。
本来なら、今までの愛撫で何時イってもおかしくなかったのに、そうならなかったのは二人が六太がイく直前で、ギリギリ加減
していたからだ。

283尚+利×六:2007/01/07(日) 23:06:07
だが、今の責めは容赦がない。
「あっ、ああぁっ・・・もぅいやぁ・・・!」
(はあぁ・・・・っ・・・あっ、奥から、何か・・・!)
六太は熱に浮かされながら、体の芯が異常なまでに熱くなっているのを感じる。
激しくうねるそれが迫ってくるのをやり過ごそうと、六太は体をよじり腰を振る。
だが、どれも無駄な抵抗に思えた。結局迫ってくるそれに飲み込まれてしまいそうだ。
頭も心も快楽に犯されてしまう。

とどめとばかりに尚隆が、六太の蕾を強く吸い上げた。
「っ、やああぁぁぁ!」
体を大きく震わせ、六太は悲鳴を上げた。と同時に、六太の精が弾ける。
精をはき出した六太はやがて、脱力した体をどさりと寝台に預けた。
平らな腹に飛び散った白いそれを、利広は舐めて綺麗にしてやる。

だが、二人はまだ終わらせるつもりは更々なかった。

284尚+利×六:2007/01/08(月) 00:09:58
部屋の中は艶やかしい空気で溢れていた。
「ぁん・・・ん・・・・ふぅ・・・・んっ・・・」
体の芯がうづくような感覚に、六太は眼を覚ました。
そのとき既に、六太の蕾には利広の指が挿し込まれていた。
尚隆がまるで親猫が子猫を慈しむかのように、ぺろぺろと六太の体に光る汗を舐めている。
まだ尚隆たちは六太の体を玩ぶ気なのだ。
二人とも笑っているが、笑っていない。
動けない獲物に群がる獣のようだ。
狩りが成功したら、散々いたぶって食してしまう。
体中がビリビリと快感に痺れ、抵抗する気などとうに失せている。
これは何か、悪い夢なのだろうか。
「ふっ・・・俺、・・・あっ・・・許し・・・もぅ・・・」
最初は可憐に窄んでいたそこは、もうぐちょぐちょに蕩けていた。
しかしそれにも拘らず、ぐちゅぐちゅと蕾に遠慮なしに指を出し入れされながら、口から勝手に紡がれる己の喘ぎ声を聞く。
朦朧とした意識で力なく許しを請う六太の腰は、しかし無意識に誘うように揺らめいていた。
「だめだ、お前の体はまだうづいとるからな、もっといいことをしてやろう」
「淫乱な体が満足するまで、たっぷり楽しまないとね・・・」
既に六太の体にどうしようもないほど酔っている尚隆と利広は、幼い体の中心や蕾、胸の突起をこの上ないほど淫らに責め立てる。
「あぁ・・駄目ぇっ・・んぅっ・・くぅん・・っ・・もぅ・・・・・・」
(あぁ、またっ・・・・・)

285尚+利×六:2007/01/08(月) 00:12:12
尚隆が六太の肉棒を口に含むと、六太は一際大きく体を震わす。
「おねが・・・・・・・・あっ、あぁあぁ・・・・・!」
舐め、吸われ、軽く歯を立てられ。その間も、後ろは利広の指を咥えさせられている。
すでに利広の指は三本まで六太の中に入っていた。
「んー、確かこの辺だったと思うんだけど・・・・」
言いながらぐちぐちと指を動かし、六太のいいところを探る。
「あっ・・また・・・・・だめぇ・・・・俺・・・も、いやぁ・・・・・・・・」
「嘘を言うな。こんなに腰を揺らして。まだ足りんのだろう?心配しなくても、満足するまでとことん良くしてやるから」
尚隆は六太のものを口に含んだままそう言うが、咥えられたまましゃべられては堪らない。
「きゃあぁんっ・・・あ、あぁあ・・・」
思わずイきそうになったところを、ぐっとその根元を押さえられる。
「っ!ふぁあああぁ・・・・・・・・んあっ、あ」
イくにイけず、六太はがむしゃらに腰を振った。
だが、それは結果的に利広の指をもっと深く咥え込む事となる。
「んあぁぁっ・・・・は・・な、で・・・・」
「もう少し我慢してね、六太」

286尚+利×六:2007/01/08(月) 00:14:34
背中を舐めながら、利広は指で六太の中を存分に探ると、
「っ、あんっ」
急に六太が背を反らせた。利広は目的の場所を見つけて、笑みを浮かべた。
普通に見れば好意的な印象を抱かせる穏やかなそれは、しかし今の六太には恐怖を抱かせる笑みだ。
「六太、ここがいい?じゃあもっとしてあげようか」
言うなり、六太の感じる場所を指で激しく刺激しはじめた。
「ひぁあぁあっ!」
六太は涙を流して必死で足掻くが、そんなもので逃げ出せるのならとっくに逃げ出せている。
「くんっ、んくぅ、ふぅっ、・・・あぅっ」
突かれるたびに、婀娜な声をあげ、白い裸体をくねらせ、尻を振る。
「まっ・・・いやっ・・・も、だめっ!しょ・・・りゅ、くちっ、はな・・っ・・・せぇ」
いくらなんでも人の口に出すわけにはいかない。そうでなくても、尚隆は六太の主なのだ。
その言葉が聞こえていない筈はないのに、利広はなおさら強く突き、尚隆は出せと言わんばかりに一層強く吸い上げる。
(あっ・・・あぁ・・・また、あれが・・・ああっ・・・こないでぇ・・・・・)
残った理性で必死に抵抗するが、何が何でも六太をイかせようとする二人の手管に勝てるはずもなかった。
襲ってくる快感のうねりに抗えない。
「ああ、んあぁっ、うあぁあぁっ!!」
全身を震わせながら、六太は高みに登りつめた。

その後、倒れるように気絶した六太を二人掛りで清め、よれよれになった寝台を整え。
翌日、昼過ぎ頃に目覚めた六太に、二人は土下座をして謝ることになった。
大層ご立腹だった六太に、二人は一ヶ月の間口を聞いてもらえなかったらしい。

蛇足だけど、オチつけました
無理矢理終了

287名無しさん:2007/01/10(水) 01:33:04
乙カレー
堪能さしてもらいました(*´∀`)
私的に乳首責めがすごいツボだった。

288名無しさん:2007/01/12(金) 00:57:50
ありがとう!!
挿入なくても大満足でしたm(_ _)m

289腐的酒場:2007/07/24(火) 12:26:52
酒場での尚隆と陽子の会話をひっそり投下。
公衆の面前なので会話だけの軽いコメディです。
いちおう尚六のつもり。
Hっぽいのがないのが嫌な方はスルーよろ。
(おまけに一部、表現がビミョーに景陽っぽいかも)

290腐的酒場(1/6):2007/07/24(火) 12:29:01
 関弓の歓楽街の一画。非公式に玄英宮にやってきた陽子は延王延麒に伴われ、
お忍びで小さな飲み屋にやってきていた。
 酒にはあまり強くない陽子だが、何しろ今回の雁国訪問は表向きは政策の相
談ではあるものの、実際は金波宮でのストレスがたまりにたまっての出奔と大
差ない。おもしろがった延王に勧められるままに酒杯を重ね、半刻も経つ頃に
はすっかりできあがっていた。本来、神仙は新陳代謝が良いとあって酔いにく
いのだが、むろん個人差があるし、短時間に大量に飲酒すれば泥酔することだ
ってある。
 料理の大皿や酒瓶の載った卓子に片方の肘をついて半ば身を乗りだし、もう
一方の手で酒杯をあおりながら「だからですね、景麒が」「そうなんですよ、
景麒が」と愚痴ってくだを巻く様は、その辺の酔っぱらいと変わらない。最初
はおとなしく地味に飲んでいた彼女だが、既に目がすわっている。むしろ若い
女の子だけあって逆に始末が悪いかもしれず、これまた珍しく酔っていた延王
尚隆もさすがに手をもてあましていた。
 陽子の隣に座っている六太も既にふにゃふにゃ状態で、先ほどから卓子に突
っ伏している。身体は十三歳のままとはいえ五百年の蓄積で酒には強い六太だ
ったが。それでも、寝ているのかと思えば時折陽子に茶々を入れたり、脈絡も
なく笑い転げたりしているので、それなりに意識はあるようだ。
「延王!」
 みずからも酔っているとあって面倒になって適当に相槌を打っていた尚隆に、
酒杯をドン!と卓にたたきつけるように置いた陽子が向かいからたたみかけた。
「延王は確かにすごいです。ひとりの男性としても素敵です。何より先達とし
てこの上もなくご尊敬申し上げています。でもね!」
「おい、陽子」
 ここは市井の酒場である。しかもそう大きくもない作りで、大声を上げれば
他の席の談笑を抑えて、酒場全体に容易に響く。
 そんな場で「延王」を連発する陽子に、さすがの尚隆も呆気にとられた。し
かし彼も珍しく酔っているだけに普段より反応が遅れ、その合間に陽子は一気

291腐的酒場(2/6):2007/07/24(火) 12:32:11
にまくしたてた。
「でもねっ、麒麟については恵まれていると思うんです! わたしだって六太
くんがわたしの麒麟だったら、最初からもうちょっとうまくやっていけたと思
うんです!」
 王だ麒麟だとわめく陽子を押しとどめようとしたものの、すっかり酔っぱら
った陽子は意に介さない。こいつは意外と酔うと絡むタイプだな、と尚隆はは
っきりしない頭でうんざりと考えた。確かに普段が真面目であるほど鬱憤もた
まろうし、そこに酒が入ればたががはずれて人間が変わっても不思議はないが。
 店員はもちろん、近くの席に座っていた面々が驚いて彼らを注視したが、何
しろ陽子が完全にできあがっているので、尚隆も何をどう言ったりやったりで
きるわけもない。せいぜい「……延王?」「今、麒麟って言ったか?」とささ
やき交わすのを無視して盃をあおるくらいである。
 通い始めてまだそれほど経っていない店だったが、二度と来られないな、と
尚隆は観念した。小さいながらも、女将手製のうまい料理と酒を出す店だった
のに……。まあ諦めてしまえば、あとは開き直るだけだ。
「今回のことだってね、うちの景麒がなんて言ったと思います?」
 そう言って金波宮でのできごとを一通りまくしたてた陽子のほうは、周囲の
様子など気にかけるふうもない。というより酔いすぎて注意力が散漫になり、
酒場の空気には気づいてもいないようである。
「別にね、わたしは蓬莱に帰りたいと言ったわけじゃないんです! ただ向こ
うのやりかたにも一理あるんじゃないかと! 慶は貧乏ですから、とにかく安
く!早く!手軽に!民の生活を支えることが重要なんですよ。わかります!?」
 今度は拳でドン!と卓上を叩く。料理の皿が揺れてぶつかり合い、がちゃが
ちゃと音を立てた。
「あ、ああ……」
「それなのにあいつときたら、また溜息攻撃の連続! 使令に数えさせたら、
最高で一日八十二回溜息をついてました。八十二回ですよ、八十二回! 信じ
られます? 一日二十四時間として、八時間は睡眠、残り十六時間、なんと十
一分間に一回の割合で溜息をついているんです! あいつは本当に麒麟かって
んだ!」

292腐的酒場(3/6):2007/07/24(火) 12:36:47
「景麒のやつ、それはひどいなぁ」
 卓子に頭を載せてゴロゴロしていた六太が、熱弁をふるう陽子を見上げての
んびり相槌を打った。
「でしょう? 六太くんならわかってくれますよね! 本当に初勅で溜息禁止
令を出せば良かった!」
「今度景麒によく言っとくよー。もっと陽子に優しくしろって」
「ふんっ、もういいんだ、あんな奴! それより六太くん、慶の麒麟になりま
せんか? 金波宮に来てくれたら歓待しますよ!」
「えっ、ホント?」
「ほんと、ほんと。毎日ごちそうしますし、また一緒に堯天で甘味処巡りをし
ましょう!」
「わーい、じゃあ俺、陽子の麒麟になる〜v」にへら〜と笑った六太は陽子の
脇にしがみつき、先ほどまでなついていた卓子の代わりに、陽子に顔をこすり
つけた。「陽子の政務も手伝ってやるしぃ。そうだ、王宮からの抜け出し方も
伝授しちゃる〜」
「わ、本当ですか? 六太くん大好き!」
「陽子〜v」
「おい、六太」
 呆れて咎める声を出した尚隆に、陽子は「延王には景麒を差し上げます。楽
俊は雁の官吏になってしまったし、六太くんくらいはわたしにください!」と
きっぱり言いはなった。
「六太、おまえは雁の麒麟だろうが!」
「えー、だってこんなおっさんより、陽子みたいな美人の女王のほうがいいし
ー」
 わざとらしく唇を突きだして答える六太。陽子は腰に手を当て、勝ち誇った
ように胸を反らした。
「ふふふ、延王、こればかりはわたしの勝ちですね!」

293腐的酒場(4/6):2007/07/24(火) 12:39:12
「だがな、陽子」
「何です?」
「おまえ、まだ処女だろう?」
「……今の蓬莱では、女性にそういうことを尋ねるのはセクハラと言って犯罪
ですよ」
「わかりやすく説明しようとしてやっているんだ。六太の基準は俺だぞ。処女
のおまえに六太を満足させられるわけがないだろうが」
 陽子がむせた。「え、え、ええええーっ!?」卓子に両の拳をついて、思いっ
きり身を乗り出す。
「六太はな、色の道を極めた俺が毎晩可愛がって――」
 ガツン!という音がして、なぜか頭上から降ってきた料理の大皿が見事に尚
隆の頭に命中した。
「――!」
 声もなく頭を抱えてうずくまる尚隆。陽子の横で仁王立ちになった六太が、
大皿を投げたときの体勢のまま片手を振り上げ、真っ赤な顔で「こ、こ、公衆
の面前で何恥ずかしいこと言ってんだ!」とわめいた。しかし公衆の面前で身
分をばらしてしまっていることには気づいていないところが、間抜けな酔っぱ
らいである。
「おまえ、俺を殺す気か!?」
「神仙がこれくらいで死ぬわけないだろ!」
 しかし驚いたのも束の間、陽子はなぜか目を輝かせた。
「以前、斡由の乱の小説で、延王と延麒のラブラブシーンを見たことがあるん
ですが、やっぱりアレ、本当だったんですかっ?」
「違う! あれは嘘! こいつとそうなったのはつい最近――あ!」
 いったんは大きく腕を振って否定したものの、しっかり自分で関係をばらし
てしまった六太は自分で口を抑えた。しかしもう手遅れである。おまけにかな
り酔っていながらいきなり激しく動いたことでさらに酔いが回ったのか、気分
が悪くなったらしい。ふたたび椅子に座り込むなり、「うう、気持ちが悪い、
目が回る。吐きそう……」と両手で口元を覆って頭を垂れた。
「もしかしてつわり?」とボケる陽子。期待に目がきらきらしている。
「こっちの世界に妊婦はおらん。それにこいつは男だ。まったく飲み過ぎおっ
て。おい、女将」

294腐的酒場(5/6):2007/07/24(火) 12:41:15
 尚隆は固まっている女将を呼ぶと、苦しそうな六太を吐かせてやった。その
拍子に頭巾が取れて六太の濃い金髪があらわになる。それまで静かだった周囲
がどよめくが、もう開き直っているとあって無視する。自分の隣に椅子を並べ
て寝かせ、頭は自分の膝の上に載せてやる。もはや六太は意識がもうろうとし
ているようで、目をつぶって「うーん」と唸っているだけだ。
 陽子は息を吐くと、酔っぱらって上気した顔のまましみじみと言った。
「やっぱり六太くんの髪は綺麗だなぁ。景麒の髪なんか、同じ金髪でも白っぽ
くて冷たい感じなんですよね。性格があらわれているっていうか」
「この髪が褥に広がる様は美しいぞv」
 目をカマボコ型にしてにやける尚隆。こうなると巷のスケベ親父とどこも変
わらない。陽子はくやしそうに唇をかんだ。
「くっ……。仕方がない、六太くんは諦めます。そういえば延王が蓬莱にいた
時代は戦国時代ですもんね。男同士の関係も普通だったんですよねえ……。で
も官には何も咎められないんですか?」
「ふふん、道を失わない限り、王が何をしようと勝手だ。それに王と麒麟が異
性の場合に限っていえば、野合の例はくさるほどあろうが」
「でも慶では……」
「慶がその手のことに厳しいのは、単に予王が景麒に恋着して国を傾けたから
に過ぎん。それと女王への忌避とな。おそらく男王と麟の組み合わせだったら、
今の慶だとて大して問題にならんだろうよ。要するに景麒とそうなりたいなら、
早く治世を安定させろということだ」
「べ、別に、そんなことは!」いきなり話を向けられた陽子は、うろたえて耳
まで赤くなった。「で、でもそういうのって、麒麟のほうは嫌がらないんです
か? ――あ、王の命令には逆らえないのか……」
「麒麟が王に従う生き物だからと言って、嫌なことは嫌だと言うぞ。その上で、
命令とあれば仕方なく従うだけだ。予王の場合はさすがにそんなことを命令で
きなかったのだろうな。それで景麒に拒まれて精神を病んだのだろう。ちなみ
に六太は俺に惚れておるから、嫌も応もなかったぞv」
「のろけてますね……」
「ふっふっ」

295腐的酒場(6/6):2007/07/24(火) 12:44:13
「腹が立つので、やっぱり六太くんをください。というか少し貸してください。
一ヶ月、いえ、半月でもいいです」
「莫迦を言え」
 一蹴して莫迦にしたように顔をそむけ、酒杯を傾けた尚隆に、陽子は思わせ
ぶりに沈黙したあとで言った。
「……以前金波宮でふざけて、男性が女装、女性が男装したことがありました
よね。六太くんの女装がとっても可愛くて衆目を集めたあれです」
「おう、覚えているぞ」
 少し興味を覚えた尚隆が、片眉を上げてちらりと陽子を見やる。陽子はここ
ぞとばかりに婉然とほほえんだ。
「実はあれから女官たちが六太くんを着飾りたがってまして、是非とも言いく
るめ――いえ、お願いしてまた訪問していただけないかと脅され――いえ頼ま
れていたんです。六太くんに似合いそうな衣装や飾りもいろいろ揃えてまして」
「ほう。それは俺も興味があるな」
「でしょう? うちの女官たちは言いくるめるのが得意ですし、他国の王宮で
よってたかって迫られたら、いくら六太くんでも着ざるを得ませんよ♪ うま
くいったら絵姿を延王にも差し上げるというのはどうです?」
「それではつまらん。付き添いとして、俺も金波宮に行こう」
「だめです。延王まで来たら、朱衡さんがまた怒ります」そう言うと陽子は尚
隆のほうに身を乗りだし、意味深な微笑を口の端に浮かべた。「――さらに慶
国産の白酒をつけるのはどうです? いろいろな銘柄の献上品がたくさんある
のですが、今年のはなかなか出来が良いようですよ。それに六太くんをお返し
にあがるときは女装させたままということで」
「よし、それで手を打とう」尚隆も身を乗りだし、卓子の上で陽子とがしっと
手を組んでにんまりと笑った。
 既に両王とも自分たちの邪な世界に浸っており、周囲の様子など気にも止め
ていない。それまで周囲で聞き耳を立てていた客たちが、あまりにも低次元な
王たちの会話にガックリとなったのも、もはや他人事だった。

-終-

296腐的酒場(後書き):2007/07/24(火) 15:05:38
小説にはまってからまだ四ヶ月という十二国記初心者なので、
おかしいところは目をつぶっていただけると嬉しい。
これでも自分で書いた中では
出来は良いほうなので投下してみました。

いちおう脳内設定がいろいろあって、その流れでのssです。
ただし脳内設定の部分は、さすがに一般向けに書き換えました。

297名無しさん:2007/07/25(水) 11:11:24
age

298名無しさん:2007/07/28(土) 15:43:29
おお新作尚六ジャマイカ
コメディ路線好きだから楽しく読ませて貰いました(*´∀`*)

299名無しさん:2007/07/29(日) 17:19:27
これは共感の持てる陽子さんですね。
やっぱぁっゅの乱に興味深々なわけかw
腐女子でも王になれるとはステキ世界だ。

300王后(1/4):2007/08/04(土) 00:32:34
コメディっぽい尚六ネタです。
オチてないので、ほんとに書き逃げ。
誰かオチつけてくれたらなぁ……。

----------------------------------------------------------------------

 妙な噂を聞いた朱衡は、足早に王の元を訪れた。そこには冢宰の白沢の姿が
あり、何やら延王尚隆と相談しているところだった。
「主上、少しよろしいでしょうか」
 朱衡が問うと尚隆は、手にした書類をひらひらとさせながら「ああ、わかっ
ている。これのことだろう」と笑って手招きした。
「では……王后をお迎えになるというのは本当なのですか?」
「さすがに耳が早いな」
「本気ですか?」
 朱衡は内心の焦りを隠せない。この王が延麒六太と理無い仲であることは、
雲海の上では既に周知のことだ。そのために宰輔が本来住まうところの仁重殿
から、延麒が居室を正寝の正殿近くに移して既に一年。しかもそれは血や穢れ
を厭う麒麟の性質から王に近づけない場合を考慮してのことであって、支障が
ない限りは王と臥室を同じくしている。
 なのになぜ今さら后を迎えて、あえて波風を立てようというのか。
 尚隆は「むろん」とあっさり答えて、署名と玉璽の押印をした書類を差し出
した。朱衡はその文面を見て目が点になった。
「……台輔はご存じで?」
「そもそもその台輔が言ったのだぞ、『后妃を娶ってもいい』とな。せっかく
進言してくれたのだから、ありがたく受け入れてやろう」
「あなたというかたは……」
 朱衡は溜息をついた。これは宰輔に対する王の意趣返しだとわかったからだ。

301王后(2/4):2007/08/04(土) 00:34:41
「俺もあれから、おまえが言ったことをよく考えてな。この際、后を迎えるこ
とにした」
 執務室の書卓で書類をめくりながら、尚隆がこともなげに言った。側の榻で
面倒臭そうに官からの奏上文を眺めていた六太がハッとして顔を上げる。尚隆
のほうは書類から目を離すこともない。
「そ、そうか。わかった」
 内心の動揺を隠して、何とか六太は答えた。なぜいきなりこんな話題が出て
きたのかわからなかった。
 先日、「后妃を迎えてもいいんだぞ」と自分が言ったのは確かだ。尚隆が慰
められるのならそれでもいい、いや、そのほうがいいと思ってのことだ。
 しかし当の尚隆が、その提案を即座に一蹴したのではなかったか。
 その主の反応に、せっかく気を利かせてやったのに、と腹立たしく思った反
面、ほっとしたのも事実だったが……。
「お、俺、そろそろ広徳殿に行かないと」
 六太は急にそわそわとするなり、周囲に散らばった書類をとりまとめ、堂室
を走り出るように退出していった。その後ろ姿を、主がほくそ笑んで見送った
とは知らずに。

302王后(3/4):2007/08/04(土) 00:36:58
 それでも夕餉に王と再び顔を合わせる頃には、六太は少なくとも表面上はい
つもと変わらない様子を取っていた。尚隆の顔を窺うように何度かちらりと見、
やがて意を決したように言う。
「俺、臥室を移らないとまずいんじゃないか。やっぱり元のように仁重殿に―
―」
「別にこのままでかまわんだろう。それに仁重殿はもう靖州府の一部になって
おろうが」
 六太はむっとなった。麒麟が、后を迎えるはずの王と同じ臥室で過ごしてど
うするというのだ。
「后になる女が可哀想だろ! 俺たちのことは絶対に言うなよ! それに王后
が来たら、もうおまえとは同衾しないからな!」
「主上、台輔、失礼いたします」
 そこへ冢宰の白沢が書類を片手に現れたので、さすがの六太も口をつぐんだ。
六太の怒号は堂室の外まで聞こえていたはずだが、百戦錬磨の白沢はまったく
動じず、平然と王に報告した。いわく、これまで長らく本来の使い方をされて
こなかった後宮なので、王后のために整えるに当たって何かと面倒なのだとい
う。
「それに台輔の臥室を後宮に移すにあたり、広徳殿や内殿とさらに遠くなるた
め、政務がいっそう疎かになるのではと疑う諸官から不満が出る恐れもなきに
しもあらず――」
 淡々と報告する白沢に、六太はぽかんとなった。話が見えない。
「六太は臥室を移ると言っておるが」
「しかし後宮よりはこちらの正寝のほうが執務室に近うございますな。天官長
とも相談いたしましたが、臥室などはこれまでのように主上とご一緒なさり、
形式的な居室のみ後宮に設けられるのがよろしいかと」

303王后(4/4):2007/08/04(土) 00:39:07
「……ちょっと待て。何の話をしている」
 六太が口を挟んだ。白沢は顔色を変えず、おっとりと答えた。
「ですから王后は本来、後宮の北宮に住まわれるものですが、台輔が王后にお
なりになるに当たってはこの際、特例で――」
「その書類を見せろ!」
 六太は血相を変えて、白沢が持っている書類の束をひったくった。急いでぱ
らぱらとめくると、現れたのは、宰輔延麒に王后の称号を与える旨の簡潔な文
と御名御璽。
「しょうりゅうぅぅぅー!」文面を尚隆に向けて詰め寄る六太。「なんなんだ、
これは!」
「見てわからんか?」
 六太は、座っている尚隆の襟首をつかんだ。
「おーまーえーはーっ!」
「なんだ? 后妃を娶ってもいいと言ったのはおまえだろう」
「后妃ってのは女がなるもんだろが!」
 尚隆は、手を振って白沢の退出を促した。白沢は何事もなかったかのように
頭を下げて退出していった。
「王も麒麟も正式な婚姻ができるわけでもなし、子も持てん。ならば后が男で
も別にかまわんだろう」
「あのなあっ!」
 脱力しそうになりながらも、六太は必死に踏みとどまった。

----------------------------------------------------------------------

……これだけ。
しょーもない( ´ー`)フゥー...

304名無しさん:2007/08/04(土) 10:25:51
>>300-303
おおお尚六ではいつか必ずぶつかる王后ネタ…いいですね。王宮公認で萌えまくり!
尚隆はけろっとしてるけれどあながち冗談でもない感じだとなおいいです
ろくたん愛されてるなー

続き…
その日の夜に王后イメクラでらぶらぶえちーなどいかがでしょうか…

305名無しさん:2007/08/04(土) 11:17:41
>>304
あー、もしかしなくても王道ネタだったのですね。
十二国記初心者なので余所様のネタを知らずに投下しちゃいました。
スミマセン(´Д`;)

実は王后ネタはもう一個あって、自分ではそっちのほうが気に入ったので、
違うほうを投下させてもらいました。

ちなみに気に入ったほうの台詞を一部だけ抜き出すとこんな感じ。
これもうまい人が加工してくれたらいいなーと他力本願で妄想。

-----
「寵姫に見捨てられるとは、俺も長くはないかな」
「誰が寵姫だ。俺は男だって言ってんだろ」
「何なら王后の称号をやろうか」
「阿呆。俺を十二国中の笑い者にする気か」
「なに、ふたり一緒に笑い者になれば良かろう」
「おまえなー……」
Hのあとで、
「王后の称号なんて下すなよ。そんなことをしたらおまえを捨ててやる。
捨てられたくなかったら、俺と同衾するだけで我慢しとけ」
-----

うちの六太はなにげに尚隆より強いですw

306名無しさん:2007/08/05(日) 21:39:00
>>305
304ですが、流れ的にここではスレチになるかと思いましたのでロビースレの461に
ご相談を書かせて頂きました。ご覧頂ければ幸いですノシ

307腐的酒場2(1/5):2007/08/09(木) 19:07:29
>>290-295の続編と思ってください。
慶で陽子におもちゃにされ (なんか誤解を招く表現)、
帰国してからも尚隆に遊ばれてぶちきれた六太の鳴賢視点のお話。


----------------------------------------------------------------------

 やっとのことで卒業が決まった鳴賢は、既に官吏として玄英宮で働いている
楽俊とともに、「卒業祝いをしてやる」と言った風漢に連れられて高級料亭で
呑んでいた。
 その風漢が延王その人であることを知ったのはつい最近。六太が宰輔である
ことはとっくに知っていたが、これにはさすがに顎がはずれるほど驚いた。こ
れまでにも風漢と差し向かいで呑んだことは何度かあるが、王と知って同じよ
うに振る舞うのは難しかった。
 それでも酒杯を重ね、うまい料理をたらふく食べれば、風漢自身は相変わら
ず気安いし、だんだん気がほぐれてくる。
 そうして、それなりに和やかに一同が談笑していたとき。
「尚隆ー!」
 院子に向けて開け放たれていた窓から、騎獣らしき大きな獣にまたがった人
物が、ものすごい雄叫びを上げて乱入してきた。その勢いと怒号の凄まじさに
驚いた鳴賢と楽俊は椅子から転がり落ちた。
 結いあげた髪に玉を長く連ねた歩揺を何本も差し、精緻な縫い取りを施した
豪奢な衣装に身を包んだ美少女。風になびくその髪は神々しいまでの金色。
 ――麒麟!?
 少女は騎獣から飛び降りると、幾重にも重ねた裳裾を翻してつかつかと榻の
風漢に歩み寄った。その合間に騎獣が床に沈むようにかき消えたので、鼠姿の
楽俊とともに床に座りこんだままの鳴賢は「あわわ」と蒼白になった。
 少女は外見に似合わぬ乱暴さで、榻にゆったりとかけていた風漢の襟首をつ
かんで揺さぶり、「今すぐ勅命を解けーっ!!」と叫んだ。どこかで聞いたよう
な声。
「よ、よう、六太」
 さすがに腰が引きぎみの風漢がそう声をかけたので、鳴賢は愕然とした。
「今すぐ、解けったら解けーっ!!」
「そっちのふたりが固まっとるんだがな」

308腐的酒場2(2/5):2007/08/09(木) 19:09:55
 美少女、いや六太は首を巡らせて鳴賢たちを見やった。言われてみれば、そ
れは確かに六太の顔だった。薄化粧を施し、どこから見ても絶世の美少女にし
か見えないが。
 しかし既に目が据わっており、風漢の言葉にも「それがどーした」といわん
ばかりである。というより「もう限界」という魂の叫びが背景に点滅している
のが見えるようだった。
 六太は、ふん、と鼻を鳴らすと風漢に目を戻した。
「俺はなぁー、もう二週間も女装させられてんだよ。おまけに髪まで結いあげ
て山のように簪を差しやがって。麒麟の鬣は結うもんじゃねえんだよ! わか
ってんのか、てめえ!」
「しかし似合っとるだろうが」
「俺は男だっ! 勅命を解けったら解けっ!」
「一ヶ月間、女装しろと言ったあれか」
「そうだ」
「断る」
 六太は口元をヒクッと引きつらせた。
 ちなみに楽俊のほうは王宮に出仕している関係上、六太が女装させられるに
至った経緯を知っていたので、突然の乱入から立ち直ったあとは決まり悪そう
に、そして気の毒そうにひげをそよがせているだけである。
「王がいったん口にしたことを撤回したら示しがつかんだろうが」
「今、上に氾王と氾麟が来てんだよ」
 六太は声を押し殺すようにして言った。いつになく低音の声音で、凄みをき
かせている。風漢は固まりながらも「ほう?」と言った。
「お前がいなくなってから一週間! 政務を肩代わりさせられているだけじゃ
なく、俺ひとりであいつらの接待させられてんだよ! 毎日毎日、朝昼晩と着
せ替え人形やらされてんだよ! この苦しみがおまえにわかるか!?」
「ほう、それは見たかった――あ、いや」
 ぷつん、と六太のこめかみの血管が切れる音を、鳴賢は聞いたような気がし
た。
 六太は襟首を離して風漢を乱暴に突き飛ばすと、「沃飛!」と叫んだ。途端
にその足元から人妖が浮かび上がるようにして姿を現したので、鳴賢はふたた
び床にへたりこんだ。
「安心しろ、あれは台輔の女怪だ」
 楽俊が鳴賢の服を引っ張って耳打ちする。

309腐的酒場2(3/5):2007/08/09(木) 19:11:59
 そうしている間に六太は、衣装一式らしいかさばる布の固まりを女怪から受
け取り、それを榻に投げ置くと、ふたたび風漢の襟首をつかんだ。
「麒麟は王の半身、王と麒麟は一心同体だよなあ? 俺の苦しみはおまえの苦
しみだよなあ?」そう言ってあざけるような冷笑を浮かべる。「おまえも女装
しろ」
「おい……」
「安心しろ、簪も山ほど持ってきた。この際だ、俺が結ってやる。勅命を解か
ないっていうんなら、せめて苦しみは分かち合わねーとな。言っとくが、おま
えが脱走したせいで今日で二日ほど寝てないからな、容赦はしねぇぞ」
 そう言うなり六太は、風漢の髪を結っていた紐を素早くほどき、ついでその
まま相手を榻に押し倒すと、帯を解いて服をはぎにかかった。
「たたたた、台輔っ!」焦った楽俊が口を挟んだ。「こ、こ、ここにおいらた
ちもいます! おふたりだけじゃねぇです!」
「そうです!」
 鳴賢もたまらず楽俊に加勢する。何しろ髪をほどき、胸元をはだけた美丈夫
の王と、それに迫る美少女の図という、ある意味妖しすぎる光景が眼前に展開
されているのだ。
「妻もいない、彼女もいない寂しい男ふたりとしては、目の前でいちゃつかれ
ると、とっても目の毒ですっ」
 なぜか楽俊とは少し視点がずれている鳴賢であった。
「どこがいちゃついてんだよ、どこがっ」
 振り返った六太が、すかさず突っ込んだ。しかしある意味、確かにいちゃつ
いているように見える。というか美少女が美丈夫を榻に押し倒しているように
見える。
 その反応を見て、風漢が「ふむ」とおもしろそうに顎をさすった。
「そうだ、六太。せっかくだから鳴賢たちに酌をしてやれ」
「なっ……!」
「勅命であるぞ」
 奥の手を使われて抵抗を封じられ絶句した六太に、風漢はにやりとした。怒
りで真っ赤になった六太は、
「〜〜〜〜っ」と声を出せずに肩を震わせて立ちつくした。風漢はその細い両
肩に後ろから手を置いて、楽俊と鳴賢のほうに正面を向かせて言った。

310腐的酒場2(4/5):2007/08/09(木) 19:14:01
「わが国の麒麟はさすがに美人であろう。こんな美少女に酌をしてもらえる機
会はそうはないぞ。今日は鳴賢の卒業祝いだ。宰輔ともども盛大に祝ってやろ
う」
「鳴賢!」と六太は救いを求めるように叫んだ。「友達だろ〜っ?」
 友達。確かに友達だ。彼が宰輔であることを知らない頃、よく一緒につるん
で遊んだものだ。しかし。
 何しろ今目の前にいるのは、どう見ても絶世の美少女。確かにこれほどの美
人に酌をしてもらえる機会などもう二度とないかもしれない。
 彼女いない歴数年に及ぶ鳴賢の心は、妖しい誘惑に揺れ動いた。
「いや、その……」へたりこんでいた床から椅子に座り直した鳴賢は、照れ隠
しに頭をかいた。「確かにこんな美人に酌をしてもらえれば嬉しいけど……」
「鳴賢!?」
「ほら、六太。勅命を果たさぬか」
 にんまりとした風漢に促された六太は、憤りをこらえながら、仕方なく酌を
して回った。
 むろん鳴賢も「六太に悪いな」と思わなかったわけではない。だがそれより
も、すまなさそうに控えていながらちゃっかり楽俊も酒杯を差し出したのを見
て、「おまえもまだ彼女いないしなぁ」と同病相憐れむほうに行った次第であ
る。
 ふたりに酒をつぎ終えたところで、六太は「もうやってらんねぇ!」と叫ん
だ。邪魔な裳裾を膝まで大胆にめくるなり、椅子に胡座をかいてどっかと座り
こみ、自分も酒杯をあおる。
「この裏切り者! 楽俊も鳴賢も覚えてろよ!」
「はは……」
 慈悲深いはずの麒麟に睨まれて冷や汗を流しながら、乾いた笑いを漏らすふ
たり。その六太に、風漢は飄々として「こっちも頼むぞ」と自分の酒杯を差し
出した。
 六太は相変わらず怒りで真っ赤になったまま立ち上がると、主の酒杯に酒を
そそいだ。風漢はその顔を見上げて、「何をふてくされている、もっとこっち
に来んか」と肩に腕を伸ばすなり自分のほうに引っ張った。不意をつかれてよ
ろけた六太は、風漢の胸元に倒れ込むように抱き寄せられて慌てた。

311腐的酒場2(5/5):2007/08/09(木) 19:16:03
「怒った顔も美しいな、ん?」
 至近距離で顔をのぞき込まれた六太は、今度は狼狽と羞恥で真っ赤になった。
見守る鳴賢たちも同じように真っ赤になって固まった。
「風漢!――じゃなくて主上!」鳴賢が叫んだ。「だから目の毒なんですって
ば。いちゃつくのは王宮に帰ってからにしてくださいっ」
 風漢はにやりと笑った。
「なるほど、そう言われればそうだな。ではそろそろ俺は引き上げるとするか」
酒杯を飲みほして立ち上がる。「おまえたちはまだ呑んでいていいぞ。支払い
はもう済ませてあるから、ゆっくりしていろ」
 そう言いながら風漢は、傍らの六太を片腕に抱えた。「はーなーせーっ!」
とジタバタする六太。しかし何しろ体格も力もまるで違う上、普段よりずっと
動きにくい装束をまとっているとあって抵抗のしようがない。
 風漢が六太をしっかりと押さえ込んだまま、どこへともなく「悧角」と呼び
かけると、さきほど六太が乗ってきた騎獣が床から姿を現した。同時に女怪の
沃飛も姿を現し、六太が榻に置いたままの衣装一式を抱えてふたたび六太の影
の中に消える。
「ではまたな」
 風漢は六太を抱えたまま悧角の背にまたがると、開いた窓からそのまま飛び
去っていった。「ばかやろーっ!」という六太の雄叫びだけを残して。
 ふたりが去った窓をしばらく呆然と見つめたあと、やがて鳴賢は言った。
「なあ、文張」
「なんだ?」
「おまえ、王宮で苦労していないか?」
「いんや、別に」
「そうか……」
「とりあえず、人間、何でも慣れたほうがいいと思うぞ」
「おまえ、悟ったな……」
「まあ、とりあえず呑め」
「ああ」
 鳴賢はうなずくと椅子に座り直して酒杯を取った。玄英宮に官吏として出仕
したあとの苦労を想像し、今夜は思いっきり呑もうと思った。

-終-

312名無しさん:2007/08/10(金) 01:19:09
六太の美少女?っぷりににやにやし、人前でいちゃつき光線
出しまくりな小松にもにやにやしました。乙。
それと鳴賢よ、

>「妻もいない、彼女もいない寂しい男ふたりとしては、目の前でいちゃつかれ
>ると、とっても目の毒ですっ」

ツッコむところはそこなのかw

313体の相性(尚六):2007/08/10(金) 19:25:21
熱暑にうだった勢いでくだらないショートショートを投下。
ありがちな話という感じですが、
枯れ木も山のにぎわいということで。

しかしこの酷暑はどうにかなりませんか……。

-----

 六太が、自分たちの関係にいずれ破局も訪れうると覚悟をしていることはわ
かっていた。――つまり尚隆が六太に飽きることを、だ。
「それはありえんと言っておるだろう」
 尚隆が何度言っても、六太は疑いの目を向けるのをやめない。
「なんでそう言い切れるんだよ?」
「だからなあ……」頭をかきながら、この際、白状してしまおうと開き直る。
「感情以前の問題だ。つまりだな、何というか、体の相性がだな」
「?」
「女とやるより、おまえとやるほうがいいのだ」
「はあ?」
「もしかしたらおまえは他の男に抱かれても感じるのかもしれんが、俺のほう
はもともと衆道の趣味はないから、どうせ抱くなら女のほうがいい。しかし正
直に言って、これまでおまえほど快感を感じた女はおらんのだ。だから仮にお
まえに惚れておらなんだとしても、おまえを抱けぬというのは困る」
 六太は絶句して口をパクパクさせた。
「だが抱けばどうしたって情がわく。……わかったか」
「それって……」
「……」
「俺の体が目当てってことかっ!」
 真っ赤な顔で怒鳴る六太。尚隆は頭痛がして額を抑えた。
「だから、そういう話ではないというに……」

314307:2007/08/11(土) 10:45:03
>>312
楽しんでいただけたようで嬉しいです。
何せエロがないと、ここに投下していいんだろうか、
なんて躊躇しちゃうもんで励みになります。

実は鳴賢スキーだったりもする自分です(≧∇≦)

315後朝(前書き):2007/08/13(月) 19:04:08
夏祭りの前にエロ風味の尚六を投下します。初Hの翌日のつもり。

そういう関係になる前から尚隆と六太は同じ牀榻を使っていたという設定ですが、
これは六太の体調が悪いというか (失道じゃないです、念のため)、
そんな理由から回復を願って王の側に置いただけのことであって、
別にやらしいことはまったく起こらず。

でもいろいろあって、ついに小松さんがやっちゃいました……という感じ。


最初のイメージではあくまでキス止まりで、
初々しいろくたんの様子がほほえましいロマンス風だったのに、
書いているうちにちょっと尚隆が暴走してしまいました。

316後朝(1/4):2007/08/13(月) 19:06:11
 ――台輔のご様子がおかしい。
 朝議の場で諸官がすぐに気づいたほど、六太の様子は前日までと異なってい
た。
 まだ体調が万全ではないため、以前のように玉座のすぐ側に立つのではなく、
そこに椅子を置いて座っているのだが、その椅子の上で少しでも王から離れよ
うとするかのように、不自然に反対側に寄って体を固くしている。おまけに眼
前にかしこまる官はもちろんのこと、朝議の間に入ってから王のほうを見よう
ともしない。いや、そもそも正寝からここまでやってくる間も、いつものよう
に王と連れだってはいたものの会話はなく、なぜかほんのりと顔を赤らめてう
つむいていたのだが……。
 朝議のあと、ふと冢宰の白沢が「台輔、いかがなさいました?」と尋ねると、
六太ははじかれたように顔を上げた。
「んっ? べ、別に?」
「何やらお顔が赤いようですが……」
「そ、そう? あ、なんかちょっと暑いかなー、なんて。はは」
 六太は焦ったような笑みを浮かべてどもりながら答えた。白沢が心配してい
たのは彼の体調のことだったが、態度に不審があっても特に具合が悪いように
は見えなかったので、訝しく思いながらもそれ以上追求しなかった。何よりず
っと宰輔につきっきりだった王が、別に心配するふうでもなく、口の端ににや
にやとした笑いを浮かべていたからだ。
 ――どうやら王には原因がおわかりらしい。それも別段、深刻な問題ではな
いと見える……。
 そのまま内殿で政務に就く王に、六太は宰輔として官とともに付き従った。
だが妙におとなしい。王にも官にも声をかけることなく、特に用事がないかぎ
りは堂室の壁際の榻に座ったままなので、白沢もそちらをちらちらと気にせず
にはいられない。以前のようにだらしなく榻に寝そべるとか胡座をかいている
ならともかく、きちんと両膝を揃えてそこに手を置き、体を固くして顔を伏せ
ているのだから、気にしないほうが無理というものだ。
 やはりここは念のために、黄医に診せたほうが良いのではないだろうか。そ
う白沢が考え始めたとき。
 書卓で書類に目を落としながら、記載内容に関する官の説明を聞いていた尚
隆が顔を上げ、隅にいる六太のほうをまっすぐに見た。
「六太、おまえ今朝からおかしいが、どうかしたのか?」
「えっ?」いきなり声をかけられて仰天した六太が榻から飛び上がり、声が裏
返った。「べ、別に、何でも、ないけど?」
 尚隆が溜息をついた。が、その仕草がどうもわざとらしい。いよいよ白沢が
首をひねり始めたとき、
「おまえたち、少し出ていろ。俺は六太と話がある」
 官にそう言って尚隆が人払いを命じた。

317後朝(2/4):2007/08/13(月) 20:32:14
 執務室でふたりきりになると、尚隆は椅子を引いて六太に向き直った。六太
のほうは榻の上でうつむいたまま、耳まで赤くなっている。
 昨日の今日とはいえ、あまりの初々しさに尚隆は苦笑した。――そんな振る
舞いをされると、却って煽られるのがわからんのか……。
 時々やんちゃが過ぎるとはいえ、普段の六太は実年齢にふさわしく取り澄ま
した表情をしている。年端もいかない少年という外見に似合わず、度胸もある
し多少のことではうろたえたりしないのだ。
 それが今は、珍しく自分の感情を取り繕うこともできずにあからさまな狼狽
を見せている。尚隆の顔を直視することもできずに何かというと赤面する。
 そんなに動揺していたら官にはもろばれだろうに、と尚隆はおかしくなった。
 もっとも身の回りの世話をする女官たちには既に、ふたりの関係はばれてい
るはずだ。なぜなら褥の様子を見れば、昨夜何があったのかは一目瞭然。これ
まで牀榻をともにしていたのは、あくまで王の側にいるほうが麒麟である六太
の体に良いのではという陽子の意見を取り入れたがゆえだったし、女官たちも
それを承知していたわけだが、もはやそれだけではない。肉体を交えた以上、
彼らは立派な愛人同士だ。六太としては、思いがけない展開だったろうが。
「ちょっとこっちに来い」
 尚隆は六太を手招いた。六太はびくっとして、赤らめた顔をおずおずと上げ
た。その様子をこの上もなくいとしく思いながらも、いじめてやりたいという
矛盾した衝動に駆られる。いったいどんな反応を見せるのだろう……。
 躊躇している六太をさらに顎で促すと、六太は仕方なく立ち上がり、主の側
に歩み寄った。
「ここに座れ」
 と、自分の膝を示す尚隆。途端に狼狽の度合いを深めた六太だったが、主の
命に逆らえるはずもない。体を固くしたまま、膝の上に浅く横向きに腰掛ける。
顔を伏せた六太のかすかな震えが膝から伝わる。
 尚隆はうつむいている六太の肩に手をかけると、有無を言わさず胸元に抱き
寄せた。
「しょ――!」
 動転して胸を押しのけようとする六太を強引に押さえ込み、その唇に接吻す
る。深く貪るように口づけられたあとやっとのことで離してもらえた六太は、
尚隆の腕の中でぐったりとしてあえぎながら、それでも相手を押しのけようと
力なく無駄な抵抗を見せた。

318後朝(3/4):2007/08/13(月) 22:04:06
「だ――め……。見られ、ちゃう……」
「人払いをしてあろうが。それに見られても別に構わんだろう」
「だ、だって」
「五百年もの治世を敷いた王と麒麟だぞ。大抵のことは俺たちの自由になろう
が。それにこんな光景を見たら、官のほうで慌てて目をそらしてくれよう」
 そう言いながらも尚隆は愛撫の手を止めなかった。六太の官服の胸元をはだ
け、細い首筋に顔を埋める。相変わらず六太は逃れようとしていたが、どうし
ても力が入らないらしい、結局は主になされるがままになっている。尚隆はそ
のまま、なめらかな首筋から乳首にかけて丹念になめ、ついで耳の穴に舌の先
を差し込んで、ぞろりとなめた。
「あ……!」
 六太は思わず官能的な声を漏らしてのけぞり、尚隆の服を握りしめた。尚隆
はしつこく耳の穴をなめたり息を吹きかけたりしながら、「感じるか?」とさ
さやき、愛撫を深めていく。その手管に、もはや六太には抵抗する気力もない。
 尚隆は腰が抜けたようになった六太の小柄な体を抱き上げると立ち上がり、
先ほどまで六太が座っていた榻に仰向けで寝かせた。既に乱れている彼の官服
の前を裾まではだけ、下着ごと袴を太股の半ばまで手早く引き下ろす。そうし
て何をされているのか自覚する隙を与えず、その華奢な腰をむき出しにするな
り、とっくに固くなっていたものを口に含んだ。
 六太は反射的に体を引こうとしたものの、腰をしっかり押さえられていて身
動きがとれない。尚隆は性の快楽に慣れていない相手の動揺にはまったく頓着
せず、容赦のない愛撫を加えた。
「――!」
 強い刺激にさらされた六太は、最後の抵抗だとでもいうかのように目をきつ
く瞑り、あえぎ声が漏れないように口元に握り拳を当ててこらえた。その必死
の抵抗をうち砕こうと、尚隆はさらに執拗に攻め続ける。もっとも六太自身は
気づいていないようだが、その腰は既に愛撫に合わせてわずかに振られ始めて
いた。
 こういうとき男は便利だな、と尚隆は頭の片隅でほくそえんだ。女の場合は
こう簡単にはいかない。生娘なら――尚隆は処女を抱いたことはなかったが―
―なおさらだ。だが男なら、どれほどの堅物であっても、初めての経験でも、
ここを刺激すれば簡単に快感におぼれる。それが恋人の手によるものならなお
のこと。

319後朝(4/4):2007/08/13(月) 22:06:11
 何とか声を漏らさないよう懸命にこらえ続ける六太だったが、そのくぐもっ
たうめき、鼻に抜ける悩ましい吐息が、逆に相手をいっそう刺激することをわ
かっていないようだった。
 別に時間をかけるつもりもなかったので、尚隆はそのまま容赦なく吸ったり
なめ上げたりして、幼い体を絶頂に導いた。
「あうっ!」
 ついに六太は全身を震わせてのけぞり、こらえきれずに快感のうめきを上げ
た。尚隆は放たれたものをすべて口で受けて貪欲に飲み込んだ。綺麗に後始末
をしてやり、六太の官服を整えてぐったりとした体を抱き起こす。
「また今夜、な」目を瞑ったまま榻に背をもたれて荒い呼吸を繰り返す六太の
肩に腕を回し、低い声で官能的にささやく。「もっと可愛がってやるぞ」
 そう言いながらも片手は未練たっぷりに、六太の股間を服の上からゆっくり
と撫でまわした。六太はぼんやりとした態で尚隆の腕を押しのけようとしたが、
すっかり力の抜けた体で果たせるはずもなく、結果的に単に手を添えたにすぎ
なかった。萎えたばかりのものが刺激でまた固くなる。それを知っていっそう
激しく複雑に指先を動かしながら、尚隆はわざと卑猥にささやいた。
「また勃ってきたな。あれでは足りなかったか? ん?」
「あっ……ん」
 もはや理性の半ばまで飛んでしまったのだろう六太は、焦点の定まらぬ目で
尚隆の腕にしがみつくと、あえぎながら腰を主の手にこすりつけた。
「夜までお預けだ。楽しみに待っておれ」
 そう言ってぎりぎりまで煽って興奮させておきながら、尚隆は軽く口づけた
だけで意地悪に愛撫の手を止めた。そうして放心したような六太を榻にきちん
と座らせると、尚隆はそこから離れて官を呼びに行った。

 執務室に戻ってきた諸官はあたりに漂っている妙な雰囲気に戸惑ったが、御
前であるだけにさすがに口にはしなかった。ただ六太が顔を赤くして榻に座っ
たままなのは変わらなかったので、いったい王と何を話したのだろうと不思議
に思う。しかも先ほどよりずっと顔も赤く、髪も乱れている上に何やら呼吸も
早いようだが……。
 白沢を始めピンときた官もいないではなかったが、何しろ今は政務が優先。
何よりも王があからさまに知らぬふりをしているので追求することもできず、
執務が続けられたのだった。

320名無しさん:2007/08/18(土) 23:10:04
攻められるろくたん可愛すぎ・・・・(*´∀`*)
続編キボンというか初夜編キボン

321名無しさん:2007/08/18(土) 23:20:17
>焦点の定まらぬ目で尚隆の腕にしがみつくと、あえぎながら腰を主の手にこすりつけた。

うおぉぉぉお・・・積極的なろくたん激萌・・・・

322(尚隆+利広)×六太(前書き):2007/08/20(月) 07:35:44
315-319です。
>>320
ありがとうございます。実は初夜編はあまり色っぽくないので遠慮。
続編のほうはちょっと長めなので (その割に内容は大したことない)、
できれば他の方の作品投稿を挟んでから上げたいと思います。

さて連日の暑さに脳をやられ、つい出来心で
くだらない3Pを書いてしまったのでこちらを先にうpします。
もっともさほどエロくはないので、箸休め程度にでもとらえていただければと。
というかエロって書けない……。
また微妙に景陽、尚陽が入っております。

六太と妙に体の相性が良い尚隆は、
王と麒麟だからか? これも天帝の目論見か? それとも偶然?と疑い。
たとえば利広とでも六太は感じるのか?と思って利広に試させちゃいます (おい)。
六太のほうはさすがに抵抗するものの、尚隆とだけ感じるわけでもないなら、
尚隆との相性は王と麒麟ゆえではないとわかるから、と言われて押し切られます。
哀れ、ろくたん……。

陽子サイドの話は省略。

323(尚隆+利広)×六太(1/3):2007/08/20(月) 07:37:45
 六太は主以外の愛撫に反応しまいと懸命にこらえた。しかし早くも快感に冒
されてしまった腰は彼の意志とは反対に、すんなり利広を受け入れたまま、さ
らなる快感を求めてみずから激しく動いていた。
「ああっ、あっ、あっ――」
 力の入らない両腕では上体を支えきれず、六太は地面に突っ伏した。そのま
ま尻だけをつきだした格好で、後ろからの利広の激しい突き上げがもたらす快
楽に耐える。
「これ、は……いいね」利広は目を細めてあえいだ。六太の細い腰を両側から
強くつかみ、顎をのけぞらせて荒々しく腰を動かす。「私も、こんなにいい体
は初めてかもしれない。締まりがよくて、吸いつくようで……。それにあえぐ
声もいい。うう、早々にいきそうだ……」
「おい、中に出すなよ」
 風漢が釘を差すと、恍惚としていた利広は露骨に嫌そうな顔を向けて「なん
で」と言い返した。
「どうせ最初で最後なんだから、中に出させてくれてもいいと思うけど」
「阿呆、六太は俺のものだ。中に出せるのは俺だけだ」
「挿れるのはいいわけ?」
「今回は特別だ。二度と挿れさせてはやらん」
「ちぇっ、けちだなぁ」
 利広はそう言いながら諦めたように自分のものを引き抜くと、地面に向けて
精を放った。
「はあ……。でもすごく良かった……。風漢はいつもこんなにいい思いをして
いるわけか」
「まあな」
 そう言うと風漢は、うつぶせになったままぐったりとしている六太の腰を自
分のほうに引き寄せた。

324(尚隆+利広)×六太(2/3):2007/08/20(月) 19:10:26
「どうだ、六太。利広にやられるのは俺より良かったか?」
 いまだあえいでいた六太は声を出せず、代わりに必死に首を振った。利広は
笑った。
「どうだか。挿れたばかりでも腰を振ってすごく感じていたよね。単に風漢に
遠慮しているだけじゃないの」
「抜かせ」風漢は六太の尻を持ち上げると、さっきまで利広が犯していた場所
に自分のものをあてがった。「今度は俺だ、六太。利広なんかよりずっといい
思いをさせてやるぞ」
「言ってくれるね、風漢。百年の長がある私に向かって」
「ふん、六太が惚れているのは俺だぞ。恋人にやられるほうがずっと感じるに
決まっておろうが」
 当初の目的はどこへやら、風漢はそう言うと、遠慮なく一気に根元まで挿入
して突き上げた。
「あうっ!」
 六太はうめいて顎をのけぞらせた。既に全身の力が抜けていた彼の四肢は自
分を支えきれず、地面の上で、風漢の容赦ない腰の動きに引きずられるだけだ
った。
「あ……っ! はあ、ん、あん……っ!」
 六太の頭の中はもう真っ白で、何が何やらわからない。利広から解放されて、
やっと恋人の愛撫を身に受けているという安堵もあるだろう。素直に絶頂への
道を駆け上がっていく。
 やがて六太が快楽の絶叫をあげてくずおれた。ついで腰の動きを早めた風漢
も、すぐに満足のうめきを上げて果てた。そのまましばらく六太の腰をかかえ
て呼吸を整えていた風漢は、ゆっくりと自分のものを引き抜くと、六太の体を
地面に横たえた。

325(尚隆+利広)×六太(3/3):2007/08/20(月) 19:12:28
「あーあ。一回だけなのに、これ見よがしにたくさん出しちゃって」
 六太の秘所からこぼれて太腿から地面に伝う大量の白濁液を見やり、利広が
呆れたように言った。風漢はにやりと笑って「ちょっとたまっていたからな」
と答えた。
「何にしても、私とでも六太は感じたわけだし、私もすごく良かった。王と麒
麟だから相性が良いってわけじゃなさそうだね」
「そのようだな。陽子も俺のほうが景麒よりずっといいと言っていたし」
 利広は目を丸くした。
「風漢、景王にも手を出したわけ?」
「なに、俺はあいつの疑念を煽っただけだ。陽子が一番感じるのが景麒なら、
天帝の掌の上で踊らされているだけかもしれん、とな。だが他の男のほうが感
じるのなら、陽子は自分の自由意志で景麒と恋愛をしていることになる。しか
し陽子は他の男なぞ知らんし、まさか比較するためだけに臣下と寝るわけにも
いくまい。だから協力してやったまでだ」
「屁理屈だね……」
「何とでも言え」
 そういうと風漢は放心している六太を抱えおこし、体を綺麗に拭いて後始末
をしてやってから服を着せてやった。
 そのさまを見守っていた利広は肩をすくめた。そしていい思いをしたのは事
実なので、まあいいか、と考えた。


---
ちなみに(尚隆+悧角)×六太というアレな続編もあったりします。
なぜだか無性にろくたんをいじめたくなってしまいまして(´Д`;)
そこでは尚隆がかなり鬼畜というか壊れていたりしますが、
暑さに脳がやられるとこうなるのね……という感じです。

326名無しさん:2007/08/21(火) 00:47:33
うpされてるーーー!!

ろくたんを苛めるなんて尚隆なんてうらやま、いや、酷い奴
姐さん、尚+悧×六もうpキボンヌ、お願い!!

327名無しさん:2007/08/21(火) 16:32:48
姐さん乙!
六太が他の人に犯されるのってシリアスじゃ重いけど
このくらいの軽さでだったらめたくそに萌えるーーーーー!
自分も同じく尚+悧×六もうpキボンヌ!

328322-325:2007/08/21(火) 19:36:45
>>326
えっ、要するに獣○ってことですけど、需要あるってことですか?(;・∀・)
構わないようであればそのうち、様子を見てうpしますけど……いいのかな。

>>327
いや、そのぅ。続編は倍以上も長さがあって、
おまけに尚隆が壊れてるんで、今回のほどには軽くないかも、です。
尚隆に命令された悧角にろくたんが陵辱されちゃう展開なんで。
もっとも自分の文はエロっぽくないというか淡々としていると思うので、
その意味では、他の書き手さんのより印象はずっと軽いんでしょうけど。

329名無しさん:2007/08/22(水) 00:02:48
|゚Д゚)コソーリ <それでも読んでみたいかも・・・・

330322-325:2007/08/22(水) 19:22:01
>>329
了解です。じゃ、近いうちに続編をうpさせてもらいますね。
この手のシチュが苦手な人はスルーよろ。

331(尚隆+悧角)×六太(前書き):2007/08/24(金) 19:46:28
>>323-325の続編です。
前作と尚隆の性格が少し変わりました。というか壊れちゃいました。
おまけになぜか利広に代えて悧角を加えての3Pです。

こんなアブノーマルなシチュの発想ってないと思っていたのに自分にビックリ。
悪いのは今夏の酷暑か、ろくたんの可愛さか。
なぜだか急に、ろくたんを無性にいじめたくなってしまったんですよねえ……。

悧角とは無理矢理だし、何より尚隆が鬼畜だったりするので、
苦手な方はご注意ください。このままだと失道まっしぐらって感じ。
でも尚隆はともかく、意外と悧角は気に入っていたりするのはナイショヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ

332(尚隆+悧角)×六太(1):2007/08/24(金) 19:52:31
 まだ昼間だったが、尚隆は高級な妓楼の広い一室に六太を連れ込んだ。今回
は別に妓女を侍らすつもりはなかったものの、何しろ六太は感じやすく、尚隆
と交わるときはどうしても大きな声を出すから、普通の宿だとさすがに他の客
への迷惑を考えなくてはならない。
「あのさ、まだ昼間なんだけど……」
 尚隆が臥牀に六太を押し倒すと、六太は困惑の表情を浮かべた。尚隆は鼻で
笑った。
「さっき、利広相手にあんなに感じていたくせに。もう興奮は治まったのか?」
 六太の顔が見る見るうちに赤く染まった。
「あ、あれは! おまえが!」
「口では俺以外は嫌だと言いながら、ここは随分と感じていたではないか」
 六太の体を強く押さえつけたまま、尚隆はその股間に腕を伸ばし、袴の中に
手を潜り込ませて激しく愛撫する。
「は、離せ……!」
 六太は頭を振り、何とか尚隆の体の下から逃れようともがいた。その拍子に
頭巾が取れ、長い金髪が臥牀の上に乱れて広がる。
 尚隆は服を破く勢いで六太を脱がせ、難なくうつぶせにすると上体すべてを
使って六太を押さえこんだ。六太の裸体の下に腕を差し入れて股間に手を伸ば
し、むきだしになった性器を容赦なくしごく。
「あああっ」
 慣れた尚隆に素早く的確な場所を責められ、六太は思わず臥牀の敷布をつか
んであえいだ。その一瞬、抵抗が消える。それでも六太はすぐに、懸命に体勢
を立て直そうとした。しかし尚隆は股間に潜り込ませた手を離さず、ほどなく
六太は達して力なく臥牀に横たわった。
 今のうちとばかりに尚隆は自分も服を脱いでさっさと全裸になると、力の抜
けた六太の腰を両手でつかんで引き寄せた。尻をぐいっと左右に開いて秘所を
確かめる。さっき利広にも犯された場所だ。嫌だと言いながらも、六太が自分
と交わるときと同じように利広相手にも感じていたことを思いだし、どす黒い
嫉妬に身を焦がす。
「利広相手に感じおって……!」

333(尚隆+悧角)×六太(2):2007/08/24(金) 19:59:13
 憎々しげに言うなり、それ以上の前戯を省いて、自分のものを六太に突き立
てる。あれから多少の時間が経っていたとはいえ、ふたりに犯されて快楽を味
わっていた六太の体はすぐに敏感な反応を取り戻した。
「ああん!」
 六太は敷布に顔を埋めたまま、腰をくねらせて悶えた。
「いやらしい体だな。挿れられてすぐ感じるのか」
 尚隆は冷たく言い放つと、激しく腰を振り始めた。慣れた快感が六太の下半
身を冒していく。六太は可愛らしく「ああん、ああん」と鳴きながら、さらな
る快感を求めて、主の動きに合わせて腰を揺らした。
 何しろ無体なことをされたとはいえ、しょせん彼らは恋人同士だ。相手が尚
隆であるかぎり、六太のほうは抵抗する気持ちなど簡単に失せてしまう。
 しかし尚隆のほうは、これまでなかった、あるいは意識していなかった歪ん
だ黒い感情を胸に宿していた。六太が反応すればするほど、わだかまりが大き
くなっていく。
(こいつは相手が俺でなくとも、同じように気持ちいいのだ……)
 いつもなら六太の反応を見ながら、あまり無理をさせないよう気遣うという
のに、今はまったくそんな気になれなかった。とことんまで六太を責めあげ、
抱くというよりむしろ犯すという表現がふさわしいほど乱暴な行為を続ける。
 六太は何度も絶頂に達した。そのたびごとに六太の体から力が抜けていき、
ついには四肢で体を支えきれなくなって、尻だけを尚隆に突きだした形で彼の
激情に翻弄される。
 尚隆のほうは幾度か射精はしたが、一物は抜かないままだった。いつもと違
った黒い感情に彩られているせいだろうか、精を放ってもすぐにまたそそり立
ってしまうのだ。
 長時間後ろから犯されつづけてあえぎ悶える六太を見おろし、よくわからな
い感情に捕らわれる。利広に犯されて六太が激しく感じていた光景がまざまざ
と蘇り、嫉妬に身を焦がしながらも、なぜか情欲を刺激されてますます気持ち
が高ぶった。
「……悧角。出てこい」
『ここに』

334(尚隆+悧角)×六太(3):2007/08/24(金) 20:01:47
 尚隆の命に応じ、悧角がすっと半身を床から現わした。尚隆は背後から六太
を執拗に責め立てながら悧角に命じた。六太を犯せ、と。
『主上、そ、それは』
 さすがに仰天した悧角が口ごもる。尚隆は口の端を歪めて笑った。その間に
も腰の動きは止めない。
「遠慮することはないぞ。別に六太に害があるわけでもなし、どうせ犯されれ
ばこいつは感じるのだ。いわば主に快楽をもたらせてやるだけの話だからな」
 そう言い置いて、やっと六太から自分のものを抜く。六太の体の向きを逆に
して自分のほうを向かせ、うつぶせのままの上半身を膝に乗せた。ついで大き
く股を開かせる格好にした六太の両脚をたたんで彼の体の横につけ、逃げられ
ないよう両方の膝裏に腕を入れてしっかり抱え込む。六太はちょうど、体を丸
めて悧角に対し尻を突き出す体勢になった。
「や――めろ……!」
 何をされるのかようやく気づいた六太が、力が入らないなりに必死に声を押
しだした。しかし尚隆はまったく頓着せず、悧角に向けて六太の細い腰を高く
掲げた。尻を両側から強く押し広げ、先ほどまで尚隆を受け入れていたために
主の精で濡れそぼっている箇所を白日の下にさらす。
「ほら、ここだ。早くしろ。六太が待っているぞ」
『はあ……』
 悧角は困惑した態を示しながらも床から全身を現わすと、臥牀の上、六太の
腰の両側に前脚をかけた。そして後ろ脚の間から思いのほか立派なものが現わ
れたのを見て、さすがに尚隆は驚いた。
 もっとも悧角の体格からすればむしろ小さいと言えるのだが、体格比ではな
く、単純に大きさを比較するなら、尚隆のものよりはるかに大きい。しかし以
前どこかで聞いたところによれば、妖魔には牡しかいないという。それが本当
だとすれば、この立派な一物も無用の長物というわけだ。
(ものがついているなら、その手の欲求はありそうなものだが、妖魔はどうし
ているのやら)
 尚隆の内心の興味をよそに、悧角はそそり立ったものを主の秘所にあてがっ
た。命令された結果とはいえ勃ったということは、そういう方面の欲求はいち
おうあるらしい。

335(尚隆+悧角)×六太(4):2007/08/24(金) 20:05:36
「やめ……!」
 先端が潜り込む感触に六太は必死でもがいたが、尚隆にがっしりと押さえら
れたままなのでまったく果たせない。
『台輔、失礼を』
 悧角は律儀にそう言うと、尚隆に促されるままに挿入した。
「あああああああっ!」
 六太は絶叫した。これほど巨大なものを入れられては、普通の人間なら裂け
ていたところだろう。しかし幸か不幸か六太は神仙だったし、秘所は何度も尚
隆の精を受けてぬるぬると滑っていたので、思いのほかすんなりと悧角のもの
を受け入れた。
 尚隆は興味深く悧角の反応を見ていたが、並の男と同じように、すぐに腰を
揺らしはじめたのでおかしくなった。経験があるのかどうかはわからないが、
快感は感じているらしい。
「あうっ、あうっ」
 六太はのけぞり、悧角の突きに合わせて激しくあえいだ。そのたびに、重心
の定まらない体が尚隆の膝の上で荒々しく揺れる。
「使令とはいえ、相手が妖魔でも感じるのか。この淫売め」
 尚隆はあざけるように言ったが、既に六太にその声は届いていないようだっ
た。もはやいましめから逃れようともせず、ただ激しい快感にあえいでいる。
尚隆は腕をゆるめ、六太を自由にした。しかし悦楽にとらえられている六太は
まったく抵抗せず、ずるずると尚隆の膝の上からずりおちて、背後から悧角に
犯された格好のまま臥牀の下の床に倒れ伏した。
(もしや俺とやるよりいいのか……? ふむ、おもしろくないな)
 何せ一物の大きさでは明らかに悧角に負けている。これから先、自分が不在
の折、六太が自慰で欲求を紛らわすならまだしも、悧角を相手に暗い愉悦に耽
るかもしれないと思うとおもしろくない。
 そう思いながらも、巨大な獣に小柄な美少年が無理矢理犯されて悶える淫靡
なさまは、尚隆のいっそうの情欲をあおるのに十分だった。

336(尚隆+悧角)×六太(5):2007/08/24(金) 20:08:32
 麒麟経由で天地の気脈から力を得ているというだけあって、悧角の体力は無
尽蔵に近いらしい。これが尚隆でも限界だろうと思う時間が過ぎても悧角の下
半身の動きは止まらず、さすがに尚隆が呆れ始めた時分になって、やっと動き
を止めて一物を抜いた。それで終わりかと思いきや、悧角は前脚を器用に使う
と六太の体をひっくり返して仰向けにし、既に果てて萎えていた股間に鼻面を
当ててぺろぺろと舐めはじめた。
(まったく……。何だかんだ言っておきながら、自分でもその気になったわけ
か。使令とはいえ、妖魔とはいえ、確かに男だな)
 尚隆は肩をすくめて悧角の行動を見守った。もっとも日頃から悧角は尚隆と
六太の行為を見ていたはずだから、見よう見まねでやっているのかもしれない。
 悧角の口は大きく、獣にふさわしく舌も広く長いから、六太の後ろから前に
かけて余裕で舐めあげてしまう。その刺激に六太はすぐ反応し、股間のものが
固くそそり立つ。悧角のざらざらとした舌に舐めあげられるたび、「あうっ、
はぅ、あっ、ああっ」と激しくあえぎながら、びくん、びくん、と体をくねら
せる。
 悧角はさらに腹から胸へと舌を進め、全身を丹念にたっぷりと舐めあげてか
ら、ふたたび股間に鼻面を埋めた。口を開けて飲み込むように六太のものをく
わえ込み、舌を添えたまま何度も上下させる。
「ああああああっ!」
 顎をのけぞらせて白い喉を震わせてあえいでいた六太が叫ぶなり、その体か
らくたくたっと力が抜けた。悧角は六太から体を離すと、『これにて』と言っ
て尚隆に向けて頭を下げ、現われたときと同じように床の下に消えた。
 尚隆は臥牀から床に降り立ち、六太に歩み寄った。六太は失神していた。自
分との行為でこれまで気を失ったことはないくせに――と黒い思いが染みのよ
うにどんどん心中に広がる。
 尚隆は六太の体を抱えると臥牀に戻った。意識のない体をうつぶせに寝かせ、
ふたたび腰を持ち上げてみずからのものをあてがう。そこからは悧角の精だろ
う、先ほどまでよりずっと多い白濁液が幾筋もの跡をつけて流れ出していた。
「使令に犯されて感じおって」
 尚隆は冷たく言い放つと、何の抵抗もない六太の腰を引き寄せて自分のもの
を挿入した。悧角の大きな一物を入れた後だからか、先ほどより締めつけが弱
くなっているのを感じる。

337(尚隆+悧角)×六太(6):2007/08/24(金) 20:12:35
「なるほど、もしおまえが悧角と淫靡な遊興に耽ったときは、俺にはすぐわか
るというわけだ……」
 にやり、と笑う。そうしておいてふたたび腰を使いはじめる。
 もっともさんざん出したあとだから、逆さに振ってももう出るものは何もな
い。空打ちというやつだ。しかし先ほどの、六太が悧角に犯される様子に激し
く情欲を刺激されていたせいで、六太を何度責めても、まだまだ飽きることは
なかった。
 六太は時折、ぼんやりと意識を回復した。しかし状態の如何に関わらず尚隆
がひっきりなしに責め立てたので、一度快楽の極限まで達して敏感になりすぎ
た体はもはやどんな刺激にも抗しきれず、またすぐに意識を失うのだった。
 やがて六太とつながったまま胡座をかいた尚隆は、六太の上体を反らして胸
で支えると、彼の太腿を抱えてその股を開き、ふたたび「悧角」と呼んだ。
『ここに』
「六太のものをなめろ」
『は……』
 声音は困惑を示しながらも悧角は、今度は躊躇なく命に従い、臥牀に上がる
と六太の股間に鼻面を埋めた。わずかに意識を取り戻していた六太は「ああっ
――」とあえいで腰をくねらせた。
 もっとも後ろは尚隆に根元まで挿入されたままなので、しっかり彼の腰に縫
い止められたままだ。六太はみずからの腰の動きがもたらした快感に激しくあ
えぎ、身をよじり、やがて前のめりになると、力なく悧角の背に覆いかぶさっ
た。そうして悧角の体に何とか両腕でしがみついている六太に、さらに尚隆が
覆いかぶさるようにして激しい出し入れを繰り返す。前と後ろの両方からひっ
きりなしに責められた六太は、気が遠くなるような法悦の中でまたすぐに失神
した。
 夜になって房間に酒と食べ物を用意させた尚隆は、気が触れたかのようにぼ
んやりとしている六太を片腕に抱え、臥牀の上で盃を口に当てて酒を呑ませ、
食べ物をちぎって食べさせてやった。放心している六太がうまく呑み込めなか
った酒が口の端からだらだらとこぼれ、臥牀の敷布に染みを作る。そうして少
しだけ休ませてから、ふたたび責め立てた。

338(尚隆+悧角)×六太(7/E):2007/08/24(金) 20:16:55
 意識のあるとき、六太は尚隆の動きに合わせて、自然に腰を振っていた。そ
れはもはや快感に対する条件反射だった。利広に対しても、口ではあれだけ抵
抗していたくせに、いざ挿入されたらすぐ快楽にとらえられて腰を振り始めた
ことを思い出す。悧角に至っては悦楽のあまり失神までした。
「この淫売め……」
 黒い嫉妬に捕らえられた尚隆は低くうなるように言い捨てた。自分が彼らに
六太を犯させたことは棚に上げて。
 そうして身勝手な歪んだ嫉妬に捕らえられつつも、自分以外の者に蹂躙され
る六太を見てこの上もなく興奮したことを思い出す。――あれはなかなか良か
った……。
(この白い華奢な体が、見知らぬ暴漢に力ずくで犯されるさまも良いかもしれ
んな。何人もの男たちに羽交い締めにされ、股を大きく広げさせられて前をし
ごかれ、後ろには一物をぶちこまれる。六太のことだから最初は抵抗しても、
すぐに快楽にあえいで、自分から相手の下肢に脚を絡めて腰を振り始めること
だろう。何度も頭を振って狂ったように金髪を振り乱し、相手の体にすがって
快感を求めるに違いない……)
 もっとも主がそんな扱いをされて、使令たちが黙っているとも思えない。使
令が主を性の奴隷として差し出すとしたら、王の命令があってのこと。麒麟の
生命や健康に別状がないなら、使令は王に従うのだから。
 それにそもそもいかに六太とはいえ、そこまで無体なことをされたら転変し
て逃げるかもしれない。もっとも今回は精神的に切羽詰まっていたせいで、そ
こまで思いつけなかったようだが。
(なるほど。結局のところ俺が命令すればいいわけだ。荒くれどもの巣窟に六
太を放り込んで――いや)
 舌なめずりをして、いっそう黒い空想に耽る。
(というより、男たちに無理矢理犯される六太を目の前で見るほうがそそられ
るな。それを肴に酒を呑むのも一興。そうしてとことんまで大勢に責められて
息も絶え絶えになったところを、最後に俺が犯してやろう……)
 尚隆は腰を使いながら、また意識を失った六太を冷たい目で見おろした。
「誰とでも感じるおまえが悪い……」
 いったん彼の胸に巣食いはじめた歪んだ妄想は、留まるところを知らなかっ
た。
                                 -終-

339続・後朝(前書き):2007/08/25(土) 18:04:07
酷暑に脳をやられたとはいえ、妙なものをさらしてしまったので、
ろくたんへの罪滅ぼしとして>>316-319の続きも上げておきます。

……ろくたん、好きなんです。ホント。
前のは単にいじめたくなっちゃっただけなんです……ごめん。つД`)

主な舞台が牀榻とあってそっち方面ではあるものの、
こっちは健全(?)な恋愛の延長で、単に恋人同士のいちゃいちゃのつもりです。
ただ六太の思考がかなり乙女なので、別の意味で要注意ではあるかも。

340続・後朝(1):2007/08/25(土) 18:06:29
 ほてる体を引きずるようにして、六太はいったん正寝に戻った。これから昼
餉のあと、靖州候としての政務を行なうために広徳殿に向かわなくてはならな
い。ようやく尚隆と別行動になったことにほっとしたものの、体は彼を求めて
うずいたままだったので、理性と感情の間での苦しい葛藤は続いたままだった。
以前とは違って仁重殿ではなく正寝の長楽殿で起居しなければならない現在、
どこにいても尚隆の存在感から逃れられないことが苦しさに拍車をかけている。
 その様子が傍目には具合が悪そうに見えたのだろう、付き従う官のひとりが
心配そうに「台輔、お具合でも?」と声をかけてきたが、六太は無理に笑って
「別に何でもない」と答えた。こういうとき、何気ないふりをするのは得意な
はずだったが、そもそも顔が赤くなったままだということはわかっていたので、
それで相手を納得させられたかどうかはわからなかった。
 女官たちに給仕してもらい、心身を鎮めるためにゆっくり食事を摂っている
と、ようやくのことで人心地がついた。これが慣れた男なら、さっさと手水に
でも行って自分で慰めて発散させたところだろう。しかしあいにくこの方面ば
かりはうぶな六太にそんな発想はできなかったし、時間の経過という助けを得
て、理性で強引に押さえ込む以外にすべを知らなかった。
 そうして何とか平静に戻った六太だったが、今夜のことを考えるとどうした
ら良いのかわからず、狼狽と興奮のあまりふたたび動悸が激しくなった。いっ
たんはせっかく鎮まったものを、だめだ、と自分を叱咤する。それでもつい想
像せずにはいられない。肌に刻まれた彼の愛撫が鮮やかに蘇る。
 昨夜の尚隆は優しかった。というより、無茶はしないとの言葉通り、かなり
手加減していたのだろう。あれはあくまで既成事実を作るための、彼にしては
抑えた行為だったのだ。
 愛撫の濃密さで言えば、今日の午前に執務室でされたことのほうが、時間は
短いながらもはるかに優っていたように思う。今夜、あれと同じことが起こる、
いや、尚隆の意味深な態度から察するに、もっと激しい行為をされるのではな
いか。六太はますます動揺した。
 深く激しい口づけ、体をなめまわされるときのぞくぞくする感触、敏感なと
ころを口で愛撫されるときの荒々しい快感。耳元でささやく尚隆の低い声、自
分の抵抗を簡単に押さえ込む強い四肢、鍛えられた広く逞しい胸。いよいよと
なったら、きっとあらがえない。尚隆の思うがままに翻弄されて、また悦楽へ
の道を駆け上ってしまう。
 体はほてり、顔はますます赤くなり、がんがんと耳鳴りさえ聞こえてくるよ
うだ。

341続・後朝(2):2007/08/25(土) 18:08:36
 優しくしてくれるだろうか、昨夜と同じように、何度も好きだとささやいて
抱きしめてくれるだろうか。
 動揺しながらも、いつしか期待が心に忍び込む。それと同時に、抑えようも
ない不安にさいなまれる。
 そもそも尚隆とこんな関係になるとはまったく想像していなかった。これま
では片思いだと思っていたし肉体関係もなかったから、それを秘めることで何
とかなっていた。しかしこのままでは自分は尚隆から離れられなくなる。そし
てこの想いがもし麒麟ゆえであるとしたら、自分が心変わりすることはないだ
ろう。だが尚隆は違う。いつか尚隆が離れていくことになったとき、その衝撃
にきっと自分は耐えられない……。
 そう考えると、六太は底なし沼に足をすくわれたような絶望した気分になる
のだった。
 ひどい、と尚隆を恋いながらも恨む。自分をこんなふうにするなんて。秘め
たままの想いでさえあれば、幾夜枕を涙で濡らそうと、人前ではずっと自分を
抑えていられたのに。
 でももう引き返せない。抜け出せない。恋という名の深い深い底なし沼に身
も心も捕らわれてしまった……。

 六太がわざわざ大司寇府までやってきて「仕事はないか」と問うたので、秋
官長大司寇の朱衡は驚くとともに困惑してしまった。こんなことは過去五百年
の間に一度もない。それに神出鬼没の宰輔ではあったが、これまではむしろ面
倒事を背負い込むのはごめんとばかりに府邸を避けていると言って良かった。
もともと宰輔がみずから大司寇府に赴く道理はないし、自分から、それも仕事
を求めてやってくるなど、自慢ではないが雁国の宰輔に限っては絶対にありえ
ない。
 むろんこのたびの事件をきっかけに仕事熱心になってくれたのなら良いこと
ではあるが、朱衡にはどうにも信じられなかった。今朝の朝議での様子と言い、
何かある。
「台輔、こちらへ」
 とりあえず椅子を勧めて座らせてから、六太の硬い表情を覗きこむ。
「いかがなさいました? 靖州府での政務はお済みで?」
「うん、官や令尹が頑張ってくれてるから、あんまりたまってないし、それに
まだ休んでいろって言われて」

342続・後朝(3):2007/08/25(土) 18:10:52
「それはそうでしょう。無理をしてお体に障ってはいけません。仕事の量は黄
医の判断をあおぎながらおいおい増やしていくとして、今日はそろそろ正寝に
お戻りになっては?」
 途端に六太がぎくりとして椅子の肘掛けを強くつかんだので、朱衡は、おや、
と思った。
「い、いや、でも俺、おまえたちにも長いこと迷惑かけたし、そのっ」
「お体が完全に良くなったら、いくらでも仕事を差し上げますよ」
 朱衡が笑いながら揶揄するように言ったが、それでも六太は必死の様子で食
い下がった。
「ええと、あ、ほら、明後日の朝議は秋官の担当だろ? 実際の奏上の前に今
のうちに草案を見ておいたほうが何かと――」
「こんなところにいたのか、六太。捜したぞ」
 執務室の扉の開く音が聞こえるなり不意に王の声が堂室に響き、六太は反射
的に椅子から立ち上がった。その白い顔が見る見るうちに朱に染まる。
「どういう風の吹き回しだ、おまえが内朝にやってくるとは」
 そういって扉の前の衝立の影から尚隆が姿を見せ、つかつかとふたりに歩み
寄った。いったんは立ち上がった六太は後ずさり、その拍子に背後の椅子に当
たって体勢を崩し、へなへなとまた椅子に座りこんだ。
「何をしている。もうおまえの政務は終わったのだろう」
「あ、いや、そのっ」六太はあたふたと腕を泳がせた。「ほら俺、長いこと眠
っていたし、その間にたまっている仕事があるみたいだから――な、朱衡?」
 六太はすがるように朱衡を見た。尚隆が眉根を寄せ、こちらは問うように朱
衡を見る。
 どうやら六太が正寝に戻りたくないらしいことを悟った朱衡は迷った。理由
があるなら、六太の望み通りに口裏を合わせてもいいと思ったからだ。
 しかし尚隆は彼の返答を待たず、呆れたように六太に言った。
「急ぎの仕事は冢宰や靖州の令尹がうまく計らったはずだろう。それにおまえ
はまだ無理は禁物だ。夕餉も食っておらんくせに。さっさと正寝に帰るぞ」
 そう言って六太の腕を取り、そのまま連れていこうとする。六太は赤い顔の
まま助けを求めるように「朱衡!」と叫んだが、事情のわからない朱衡は立ち
つくすしかない。しかも六太が本気で嫌がっているならともかく、どうしてか
狼狽と羞恥から抵抗しているだけに過ぎないのは見て取れたので、仕方なく尚
隆の好きにさせた。

343続・後朝(4):2007/08/25(土) 18:13:31
 腕を引っ張られて立ち上がり、強引に肩を抱かれて連れて行かれそうになっ
た六太は、それでも一縷の望みを託すようにもう一度朱衡を振り返った。その
顔と仕草に、今までにない艶めいた趣が彩っている。
 その瞬間、まさかと思いながらも、朱衡はぴんと来た。いや、朝議の際も考
えないではなかったが、何しろ五百年もの間、この主従の間に色めいた話はな
かったのだ。あのときは何かの間違いだろうと思い、その可能性を頭から振り
払ったのだが……。
 そのとき、あくまであらがおうとする六太を面倒に思ったのか、尚隆がいき
なりその小柄な体を抱きあげた。
「わあっ!」
 思わず叫んだ六太を意に介さず、尚隆はそのまま堂室からさっさと歩き去る。
 後に残された朱衡は、言葉を失って立ちつくした。目をしばたたき、どうし
たものかと考えるが、何しろ王のすることだ。それに六太が本気で嫌がってい
ないのなら、自分ごときの出る幕はない。
「まったく、あの方々は……」
 溜息をつきながら、六太の様子がおかしかったのは今朝になってからなので、
事が起きたのは昨夜だと見当をつけた。そうしてこの事態がいったいどう転ぶ
のだろうと、少々不安を覚えた。
 一方、六太のほうは、尚隆に抱えられたままで正寝に続く道をたどっていた。
「お、おろせよ。おろせってばっ」
 何度も言うが、尚隆は一向に聞き入れない。すれちがう官たちの、表面的に
は畏まっている興味本位の視線を痛いほど感じ、六太は小声で必死に頼み込ん
だ。
「ほ、ほら、みんな訝しそうに見てるじゃんか! 変に思われるぞ、なっ?」
「何を言う」尚隆は澄まして答えた。「まだおまえがうまく歩けなかった時分
も、俺がこうして抱えて、何度も政務に連れていってやったのだろうが。今さ
らだ。それより騒ぐと余計不審に思われるぞ」
 六太は反論できず、ぐっと言葉を飲み込んだ。こんなことなら、おとなしく
腕を取られてついていけば良かったと後悔する。たかだか内朝から戻るだけの
ことなのに、このときほど正寝への道のりを長く感じたことはなかった。

344続・後朝(5):2007/08/25(土) 18:16:05
 夕餉と湯浴みをすませたあと、女官たちが退出してついに臥室で尚隆とふた
りきりになると、六太はもうどうしていいのかわからなかった。酒肴を運ばせ
てちびちびとやっていた尚隆はふと、榻の端でうつむいて座っている六太に向
けて酒杯を傾けて言った。
「おまえもやるか?」
 六太はうつむいたまま首を振った。
「そうか。ま、俺は少しくらい酒が入ったほうがもちが良いのでな」
 その言葉の淫靡な響きに、六太はますますうろたえた。尚隆はその反応を楽
しむかのように目を細めて六太を眺めた。そうしてから、おもむろに軽く音を
立てて酒杯を置いて立ち上がる。その音に六太はびくっとなった。
 榻の前に立った尚隆は、六太の腕を取って「来い」と言った。その強い力に
六太があらがえるはずもなく、あっという間に牀榻の奥に連れ込まれるなり、
主の腕に抱え込まれていた。
 尚隆は抵抗する隙を与えず、さっさと六太の被衫の帯を解き、前をはだけて
肩までむき出しにした。袖に腕が取られたままなので、六太は却って身動きが
取れない。
「今朝は途中だったからな」
 そう言いながら尚隆は、六太の股間に手を潜り込ませると遠慮なくまさぐっ
た。既に固く勃っていたそこを大胆になでまわす。六太は息を飲んだ。
「あのあとはどうした? 自分で慰めたか?」
「自分、で……?」あえぎそうになるのを抑えながら六太は問うた。
「もしやと思ったが、やはり知らんのか? 自慰と言ってな、大抵の男はする
ものだぞ。自分でここを慰めるわけだ」
「あっ……!」
 竿の部分をさするように軽く握られ、先端の敏感な部分を指の腹でそっとな
でられた六太は、びくん、とのけぞった。だが尚隆はそのまま手を離してしま
った。
「尚隆……」
 六太は潤んだ目で、ねだるように彼の腕をつかんだ。しかし尚隆は「自分で
やってみろ」と言った。
「だ、だって」
「恥ずかしいか? 大抵の男がやっていることだと言ったろう。あの朱衡だっ
てやっているはずだぞ」
「えっ……」

345続・後朝(6):2007/08/25(土) 18:22:56
 これには六太も心底驚いた。朱衡が自慰をしている姿などまったく想像でき
ない。本気で驚いている様子に尚隆は苦笑した。
「まあ、むろん見たことはないから推測にすぎんが、自慰を知らん男なぞ、滅
多におらんはずだからな。それにあれはどう見ても枯れてはおらんから、適当
にやっているだろう。これくらい、男にとっては排泄行為の一種にすぎん」
 尚隆は被衫を完全に脱がせると、六太の手を取って無理にその股間に触らせ
た。そのまま強引に六太の手を動かして、股間のものを大胆にしごかせる。
「あっ――ああっ……!」
 既に敏感になっていた六太のそこに、容易に快感が蘇る。尚隆に触られずと
も自分の手でも感じるという事実が、うぶな六太には意外だった。
 六太はあえぎながら、押し寄せてくる快感に首を振り身をよじった。何しろ
今日は一日中、尚隆の愛撫で引き起こされた体のうずきに耐えていたのだ。や
っとのことでその苦しみから解放されると思うと、ついに尚隆の手を離れて、
自分の両手だけで激しくしごきだした。そうしていざ触れてみれば自分のもの
であるだけに、どこをどう触れば気持ちが良いのかすぐわかるのだった。
「はあっ、あっ、ん、あんっ」
 美しい金髪を乱して自慰に熱中する、あまりにも淫らな幼い麒麟の姿に、尚
隆はごくりと唾を飲んだ。自分も全裸になって六太を後ろから抱きしめながら、
「気持ちいいだろう?」とささやいて耳たぶをかむ。そのぞくぞくするほど卑
猥な低音の響きに、六太はあっけなく達した。
「うっ!」
 動きを止めてうめくなり、六太のものが彼自身の手の中でびくんびくんと震
え、放たれた精が掌と太腿を汚した。熱い吐息を漏らした六太は、手をだらり
と離して尚隆に力なくよりかかった。
 尚隆は六太の太腿に手を伸ばすと飛び散った精液に指をこすりつけて目の前
で見せ、「たくさん出たな、ん?」とささやいた。そうして指先についた精液
をぺろりとなめとると、ついでその指を含めた二本を六太の口に強引に押し込
んでくわえさせ「しゃぶれ」と言った。
「これでおまえも一人前に自慰を覚えたな。俺がいなくて寂しいときは、自分
で慰めるんだぞ?」
 そう言ってもう一方の手で六太の濡れた股間を再度愛撫する。そうして精液
にまみれた手を伸ばしてさらに奥に進め、尚隆を受け入れることのできる場所
をさぐる。感触を確かめるように指先を挿入すると、ぐるりと円を描いて少し
広げるように動かしただけで抜き、ふたたび前に戻って性器をなでまわす。

346続・後朝(7):2007/08/25(土) 18:26:03
「ん、んんっ」
 指をくわえさせられているせいで、あえぐこともできずに六太はうめいた。
尚隆はふたたび手を奥に進め、今度は指を二本挿入して、押し広げるように動
かしながら第二関節まで入れた。
「おまえの中は熱くて締まりが良いな。昨夜も良かったが、今夜もまた楽しめ
そうだ」
 尚隆が腕を前から後ろに回しているので、指で奥を探られるたびに性器が彼
の腕にこすれる。声を上げたいのに上げられず、六太は焦れた。
「気持ちいいか? ん?」指を六太の口から抜いて問う尚隆。
「あ……。はぁ、あ……」六太は背を預けたまま体を小刻みに震わせてあえい
だ。
「気持ちいいと言ってみろ。ほら」
「き、気持ち、いい……あ……」
 尚隆は後ろに入れていた指を動かしながら、柔らかい肉壁の中をさらに奥に
進めた。根元まで入れるとそのまま指先を内側に折り曲げ、指の腹で付近の肉
壁を探るようにこする。途端に六太の体が跳ねるようにびくん!となり、背を
弓なりにそらした。
「ああっ!」
 前をいじられたときとはまったく異なり、腰全体にうねるような快感が走る。
六太は目を見開き口を大きく開けてあえいだ。唐突に訪れた予想外の悦楽に、
髪を乱して激しく頭を振る。
「ここか?」
 尚隆はすかさず、六太が反応した箇所を攻める。
「だ、だめっ、だめっ――ああああっ、あっ、ああ――っ!」
 とめどなく嬌声がほとばしる。その反応の思いがけない激しさに尚隆は目を
細めた。
 この幼い体が愛撫に慣れるまで、しばらく無理をさせられないと思っていた
が、昨日の今日でここまで感じるものなら遠慮はいらないか、と考える。もと
もと敏感な体質なのか、あるいは王に触れられているせいなのか。
「ちょっと指を抜くぞ」
 そう言い置くと、六太の腰が跳ねないようもう一方の腕で強く押さえ込んで
から、指をそろりと引き抜く。六太はほっとして「ああ……」と大きく吐息を
ついて頭を垂れた。

347続・後朝(8):2007/08/25(土) 18:31:07
 しかし指を抜かれても、その下半身に快感は強く残ったままだった。六太に
は、なぜこんなことをされて、前をいじられるより気持ち良く感じるのかわか
らない。それに昨夜は同じことをされても、むしろ気分の悪さが先に立ったと
いうのに。
 尚隆はぐったりとしている六太を仰向けに寝かせると、股を大きく開かせ、
太腿の間に自分の腰を進めた。そうしておいて六太の両足を自分の肩にかけて
細い腰を軽く持ち上げ、自分のそそりたったものの先端を目当ての場所にあて
がう。反応を確かめるようにちらりと六太の顔を見やってから、そのままゆっ
くり挿入する。
「あっ……!」
 仰向けになったまま、六太はのけぞった。快楽に耐えるように指は強く敷布
をつかんでいる。様子を見ながら半分ほど入れた尚隆は、特に問題はなさそう
だと判断して一気に根元まで挿入した。
「はっ……!」
 六太はあえいで息を飲んだ。すぐにゆっくりと腰を動かし始めた尚隆は、
「どうだ? 感じるか?」と問うた。
 うねるような快感の波に襲われて顔をそむけた六太は、ぶるぶると震える手
で敷布を持ち上げてつかんだまま、荒い呼吸を繰り返すだけで答えなかった。
尚隆はすぐに動きを早め、激しく突き上げた。こすれる感触のあまりの具合の
良さ、絶妙な締めつけに、さすがの彼もともすれば気が遠くなりそうで、意識
して自分を強く抑えなければ六太の華奢な体を乱暴に扱ってしまいそうだった。
「あああっ!」
「感じるんだな。俺に犯されて、すごく気持ちいいのだろう?」
 みずからも激しくあえぎながら、卑猥な言葉を投げつける。
「うっ……。この締まり具合はたまらんな……。引き抜くとき、おまえのここ
は肉壁が吸い付いてくるようだぞ。そんなに俺を離したくないか? ん?」
 既に行為に没頭している六太には何も答えられなかった。目を瞑って顎をの
けぞらせ、体をくねらせて、「ああん、あんっ」とあえぎながら腰を激しく振
るだけ。
 これほどまでに凄まじい快感を六太は知らない。その快楽の中で彼は、頼る
ものもなく荒れ狂う嵐に飲み込まれる一艘の小舟に過ぎなかった。逆巻く怒濤
に翻弄されては叩かれ、烈風に煽られては横倒しになり、ついには板一枚に至
るまで粉砕されて嵐に飲み込まれる。

348続・後朝(9):2007/08/25(土) 18:33:16
「そうだ、うまいぞ、六太……。もっと腰を振れ。もっと気持ち良くなるぞ――」
 自分の体の下で激しく乱れる六太の痴態に、尚隆の行為もますます過激にな
っていく。こうなったらとことん追いつめてやろうと意地悪く考える。――こ
の悦楽の前に、理性など吹き飛ばしてしまうがいい。
 これまで無数の女を抱いてきたというのに、彼はこれほど相性の良い体に巡
り会ったことはない。年端もいかない未熟な体、それも同性である男だという
のに、どれも悦楽に達するための制約にはなりえないとは。まさに尚隆のため
にあつらえられたかのような体だった。
 あるいはこれも天帝とやらが仕組んだことか、と皮肉な考えがちらりとかす
める。王に対する褒美だとでも言うのか。それともこの快楽を手放したくない
なら、いっそうの治世に励めと。
 まあいい、と荒々しく腰を使いながら、彼はさらに六太を追い込んでいった。
天帝の思惑など知ったことか。今、こうして互いを想う気持ちに嘘偽りはない
のだから。
 容赦のない突き上げにさらされて、下半身全体を快楽に冒された六太の反応
は激しかった。その有様に尚隆自身も煽られ、もう余計なことは何も考えない。
 ほどなく六太は絶頂に達し、尚隆の体の下で「あああああああ――!」と絶
叫した。びくんびくん、と波打つように体を震わせると、力なく褥に横たわる。
同時に尚隆も果てる。六太から自分のものを引き抜き、どろりとした白濁液が
中から伝うのを見て、尚隆はこの上もない満足を覚えた。
 ――六太は俺のものだ。爪先から頭の先まで、髪一本に至るまで。
 尚隆はその目に強い所有欲をみなぎらせて、だらりと四肢を投げ出して放心
している六太を見おろした。そのまま細い体を抱きしめ、絹糸のような髪に幾
度も強く唇を押しつけて感触を楽しみながらささやいた。
「ずいぶん感じていたな。そんなに良かったか?」
「あ……。尚隆……」
 六太は力の抜けた腕を恋人の首に回してしがみついた。いまだあえいでいる
その口元を、尚隆は優しくついばむ。やがて接吻は次第に深くなっていき、互
いに脚をからめあって激しく抱き合った。

349続・後朝(10/E):2007/08/25(土) 18:36:52
「尚隆……。俺を、好き……?」接吻の合間に息を乱しながら、六太は問いか
けた。
「ああ、好きだ。だからおまえがほしい。おまえを離したくない。俺の腕の中
でおまえが乱れるとぞくぞくする。下で誰と遊ぼうと、この褥で抱いたのはお
まえだけなんだぞ。わかっておるか?」
「うん……。尚隆、俺、嬉しい……」
 そう素直に言っていっそうしがみつく六太を、尚隆もさらに強く抱きしめ、
「可愛いやつめ」とささやいた。
 人は時に苦難を分かち合うことで心を近くするが、それは快楽であっても同
じこと。いずれも激しい感情を伴うからだ。恋人同士が快楽を分かち合うこと
はすなわち絆を深めることと同義だった。
 行為の前に六太の心にあった迷いは既に失せていた。こうして尚隆に抱きし
められていると、なぜか不思議なほど幸せで、他のことなどもうどうでもいい
とさえ思えた。もし将来、尚隆が離れていったら自分は壊れるだけだ。それで
いい。
 幾度も激しく愛し合ったあと、やがて疲れ切って恋人の優しい腕の中で眠り
に落ちた六太は、生まれて初めて心から幸せだと思った。       -終-

350名無しさん:2007/08/25(土) 21:41:03
尚隆の鬼畜小説をあげたあと、ちゃんとフォローもしてくれるなんて姐さん大好きだ(*´∀`*)
相変わらずエロくて幸せ
乙女なろくたん萌え、嫉妬のあまり鬼畜入っちゃう尚隆も萌え

351名無しさん:2007/08/26(日) 09:04:57
>>350
どうもです。やっぱりろくたんをいじめたままというのは心苦しくて……。
>>332-338は真夏の夜の夢ということでよろしく。すべては地球温暖化のせい(ぇ)。
自分の中の尚六は、本当は熱烈ラブラブなんですぅ……。

というわけで書いたぶんの大半を上げたのでROMに戻りますね♥

352名無しさん:2007/08/27(月) 21:02:25
姐さん寂しいよ
ROMに戻っても、ネタ思いついたら時々あげてくださいつД`)

353351:2007/08/28(火) 19:32:44
ありがとうございます。
くだらないのも含めてネタ自体はまだまだあるので、
あまりにも過疎っているようなら、こっそり投下に寄らせてもらうことにします♥

354名無しさん:2007/08/28(火) 21:09:46
先週から仲間入りした新参ものです。
細かな心理描写と想像の3年先を行くエロ描写、クオリティの高さに脱毛です!

>>353
首を長くしてお待ちしてまっす!

355秘密の儀式(驍宗×泰麒):前書き:2007/09/05(水) 21:42:03
なぜか驍宗×泰麒の初H話ができちゃったので置いて行きます。
尚六者の自分は別に戴主従に興味ないのにどうしたことやら。
酷暑の間に既に頭のネジが数本飛んでいたのかも。

おまけにすべてHのための設定なので、恋愛ではなく単なるエロ話です。
その割には行為になだれこむまでの説明がくどくてエロっぽくなかったり。
それでもどうせならもう少しきちんと説明をしたかったんですが……力つきました。

大した内容ではありませんが、この程度でも良ければ
戴主従派の方に差し上げますので、煮るなり焼くなり、あとはお好きにどうぞ♪

356秘密の儀式(驍宗×泰麒)1:2007/09/05(水) 21:44:05
 まだ夜が更けたというには早い時分だったが、幼い泰麒にとってはそろそろ
寝る刻限だったため、長楽殿から女官が使いにやってきたことに驚いた。
「台輔、主上がお召しでございます」
 人払いをして泰麒に用向きを伝えたその年配の女性は、普段からいかめしく
近寄りがたい雰囲気だったので、正直なところ泰麒は苦手だった。しかし驍宗
の信任がもっとも厚い古株の女官であるのは確かだったから、特に疑問もなく、
何か驍宗が知らせたいこと――残念ながら、相談したいこと、ではない――で
もあるのだろうと見当をつけた。
「もう今日は遅いですよね。何か急ぎのご用なのかしら?」
「台輔に内密にお知らせしたことがおありとのことです。とても重要なことで
すので、すぐに長楽殿においでになるように、と」
「そんなに大変なことなの? 驍宗さまに何か良くないことでも?」
 泰麒は青ざめて小さな拳を握りしめた。しかし女官は首を振り、泰麒の懸念
を否定した。
「いえ、秘密の儀式のことですので、どうぞご案じなさいませぬよう」
「秘密の……儀式?」
「わたくしにはこれ以上のことは。あとはどうぞ長楽殿においでになって、主
上に直接お尋ねなさいまし」
「あ……。はい、そうします」
 泰麒は慌てて、着崩していた衣服を整えた。人払いのために身の回りの世話
をする女官たちを下がらせてしまったあとだし、内密にとのことだったので、
目の前の使いの女官ひとりに手伝ってもらって何とか身支度を整える。
 件の女官に先導してもらって仁重殿の主殿を出ると、穏やかな夜風が心地よ
かった。こんな時刻に出歩くことは滅多になかったから、暗い中、園林の背の
高い木々に埋もれるようにしているたくさんの屋根が、ほのかに月光を反射し
ているさまが物珍しい。蓬莱で馴染んだ街灯のようなものはひとつもなく、人
気のない石畳をたどる足元を照らすのは、月明かりと女官の持つ灯籠のやわら
かい光のみ。
 無言で女官のあとに続きながら泰麒は、秘密の儀式とはいったい何だろうと
考えた。宰輔が王とともに執り行う儀式は、即位式の前後ですべて済んだはず
だけれど、秘密というからには公に執り行われるものよりもずっと大切なもの
に違いない。果たして自分にうまくできるだろうか。小さな胸に不安がよぎっ
た。

357秘密の儀式(驍宗×泰麒)2:2007/09/05(水) 21:46:40
 長楽殿に着くと、優しげなひとりの女官がひっそりと出迎えてくれた。しか
しそこで「湯浴みの用意がととのっております。どうぞこちらへ」と告げられ
たので、泰麒はびっくりした。
 戴には毎日入浴する習慣はない。顔や手足は毎朝毎晩清めるとしても、湯に
つかるのは数日に一度程度なのだ。蓬莱では毎日風呂を使い、蓬山でも日常的
に水浴びをしていた泰麒からすれば馴染みにくいことだったが、おそらく戴の
気候が乾いて寒いせいなのだろう。確かに汗をかいて洗い流したいと思うこと
も少なかったし、そのため体が汚れて気持ちが悪いと思うこともなかった。
 泰麒は昨夜入浴したばかりだったし、あまり頻繁に湯を使っても却って湯冷
めをすると女官たちが気をもんでしまうくらいだ。だから長楽殿を訪れるなり
湯を使うように言われて驚いても無理はなかった。そもそも自分の住まいであ
る仁重殿以外で湯浴みをするなど、普通では考えられない。しかも自分は大事
な要件で王に呼ばれてきたはずなのに、こんなところでぐずぐずしていていい
のだろうか。
 泰麒の疑問を感じ取ったのだろう、出迎えの側の女官が「儀式の前にお体を
清めねばなりませんので」と教えてくれた。
「そんなに大事な儀式なんですか……」
 泰麒は緊張で声を震わせた。白圭宮に来てから今までうんざりするくらい儀
式に臨んだが、直前に湯浴みをした覚えはない。教えてくれた女官が安心させ
るようにほほえんだ。
「ご案じなさいますな。すべて主上が良いように取りはからってくださいます」
「は、はい」
 そうは言われても、王の私室である長楽殿の湯殿を使うとあっては、緊張し
ないほうがおかしい。ふたりの女官に手伝ってもらって体の隅々まで清めても
らい、ゆったりとした被衫を着せられると、泰麒は気疲れしてぐったりと榻に
座りこんだ。後ろから髪を拭いてくれている女官に問う。
「あのう……。ぼく、被衫を着せてもらったけどこれでいいのかしら? それ
ともこれからまた別の服に着替えるの?」
「このまま主上の臥室にお連れいたします。あとは主上が」
「はい……」
 泰麒はよくわからないなりにうなずいた。驍宗の臥室に入ったことなどない。
それに儀式を臥室で行うとでもいうのだろうか。もっとも秘密で執り行うとい
うのなら、王の臥室ほどうってつけの場所もないのかもしれないが……。

358秘密の儀式(驍宗×泰麒)3:2007/09/05(水) 21:49:17
 ふたりの女官に連れられて、泰麒は緊張した面持ちで驍宗の臥室に赴いた。
人払いをしてあるのだろう、ここまで他の女官にも侍官にも会うことなく、長
楽殿の最奥へたどりつく。年配のほうの女官が、中にいるはずの王の許可を得
ることなく黙って扉を開くと、房間に入るよう泰麒を促した。泰麒が中に足を
踏み入れると、彼女たち自身は廊屋に留まったまま扉を閉めてしまった。泰麒
は気後れしながらも、ほとんど灯りが消されていたためにほの暗い中をおずお
ずと奥に進んでいった。泰麒と同じように楽な被衫姿で髪をほどいた驍宗が榻
に座っているのに気づいてほっとする。
「驍宗さま……」
「うむ。夜遅くにすまないな、蒿里」
「いえ、そんなことはありません」
 普段は恐ろしいと感じるほど覇気に溢れた王だったが、今はむしろ柔らかい
印象のほうが勝っていたので泰麒は安心した。儀式について不安なのは変わら
なかったけれど。
「あのう。秘密の儀式って何をするんですか? ここでやるんですか? それ
とも別のところで?」
「あー……。それは、だな」
 驍宗にしては珍しく口ごもった。彼は手招いて泰麒を自分の隣に座らせると、
大きな手を泰麒の肩に回して自分に抱き寄せた。そんなことをされたのは初め
てなので、なぜか泰麒は恥ずかしくなって顔を赤らめた。
「麒麟は民意の具現と言われているのは知っているだろう」
「はい」
「民の思いが麒麟の言動に表れるということだな。それは民から麒麟へという
一方通行ではなく、逆に麒麟がいい思いをしても、それが民の側に反映される
とも言われている。だから王は、麒麟がいい思いをするように気を配らなけれ
ばならないのだ」
「そうなんですか……」
 泰麒は感心してうなずいた。そう言われてみればわかるような気もする。
「それで各国の王は、麒麟にいい思いをしてもらうべく秘密の儀式を執り行う
のだ。ただし、これはそれぞれの王宮の秘儀なので、詳細は当の王と宰輔以外
は知らぬことになっている。礼儀上、それに触れることも尋ねることもしない。
秘儀だからな」
「はい」

359秘密の儀式(驍宗×泰麒)4:2007/09/05(水) 21:51:49
「そこで、だ。おまえも白圭宮に慣れたろうし、そろそろ戴でも秘密の儀式を
執り行って、民に良いことが起こるように祈念せねばと思ってな」
「はい、わかりました。ぼくは何をすればいいんですか?」
「あー……」驍宗はなぜか顔を赤くして、頭をかいた。「そのう、もしかした
らおまえは嫌がるかもしれないが……」
「そんなことはありません。民のためになるんですから、ぼく、一生懸命やり
ます」
「そ、そうか」
 驍宗はどもりながら、懸命に言葉をつなげた。普段の王らしからぬ様子に泰
麒は不思議に思ったが、それほど大事な儀式なら無理もないとも思った。
「実はおまえは何もしなくていいのだ。この儀式は王が麒麟に奉仕するものな
のだからな。おまえは何も気にせず、じっとしていればいいのだ」
「そうなんですか?」
 泰麒はびっくりしたけれども、内心でほっとした。儀式と名のつくものはす
べからく緊張したし、そもそも手順を間違えるのは嫌だったからだ。しかもそ
れが民のための大事な儀式とあっては。
「あー、その、何だ、この儀式は私とおまえが臥牀で行なうのだが、こうして
体をくっつけあったり、なでたりするので、その、あまり驚かないでほしいの
だが」
「はい、大丈夫です」
「そ、そうか。では、その、始めると、するか」
 そう言うなり立ち上がった驍宗に抱えられたので泰麒はびっくりしした。し
かしあまり驚かないでほしいと言われたばかりだったので我慢して、落ちない
ように驍宗にしがみついた。その拍子に主の顔を見上げると、先ほどよりずっ
と顔を赤くしていたので意外に思ったが、これほど大事な儀式の前ではさすが
の驍宗も緊張するのだと納得した。
 牀榻の奥の臥牀に横たえられた泰麒は、驍宗が震える手で泰麒の被衫の紐を
ほどくのを驚いて見守った。
「驍宗さま、あのう……」
「こ、蒿里、この儀式はな、王も宰輔も裸で行なうものなのだ」
「えっ……」
「案ずるな。灯りが暗いゆえ、そうはっきりとは見えぬ。すべて民のためだ」
「は、はい」

360秘密の儀式(驍宗×泰麒)5:2007/09/05(水) 21:54:20
 泰麒は驍宗と同じように顔を赤くして答えた。そうこうしているうちにすっ
かり脱がされてしまい、一糸まとわぬ姿で驍宗に組み敷かれている格好となっ
た。ついで驍宗は自分も被衫を脱ぎ、鍛え上げられた逞しい体を泰麒の前にあ
らわにした。むろん泰麒は王の全裸など見たことはない。泰麒はさすがに恥ず
かしさのあまり顔を背けた。体がほてり、心臓がどきどきする。
 王の手が泰麒の胸から腰にかけて、幾度もゆっくりとなでていった。泰麒は
くすぐったさと、なぜか背筋に走ったわけのわからない感覚に身を震わせた。
「だ、大丈夫だ。麒麟が気持ちよくなるための儀式なのだからな」
 そう告げる驍宗の呼吸がやけに荒い。彼は泰麒をつぶさぬよう四肢で体重を
支えながら、その胸と腰を泰麒のなめらかな肌に強く押しつけ、そのまま前後
に激しくこすりはじめた。肌と肌がこすれる熱い感覚、驍宗の唇が顔や耳をせ
わしなく這う感触に、泰麒は我知らず甘い吐息を漏らし、主の首に腕を回して
しがみついた。
「驍宗さま……」
「う、うむ」
 驍宗はいっそう呼吸を荒くすると、泰麒の頭をかかえ、その愛らしい唇に自
分の口を押しつけた。泰麒は驍宗の舌が潜り込んでくる感触に驚いたが抵抗は
しなかった。これは大事な儀式なのだ。
 それでも懐かしい蓬莱の記憶で、これは接吻というものではなかったか、と
いう思いがよぎったが、驍宗に幾度も舌を吸われ、口腔内を隅々までなめられ
るうちにどうでも良くなってしまった。耳の穴を、首筋をなめられ、乳首を舌
と指先でひっきりなしにいじられ、体がどんどん熱くなっていく。下半身に集
まった熱が今にも爆発しそうだった。
「ああ――驍宗さまぁ……!」
 背を弓なりにしならせた泰麒は、股を大きく開いて驍宗の逞しい腰に脚をか
らませ、熱くて熱くてどうしようもなくなった中心を主の腰にこすりつけた。
「ぼ、ぼく――何だか変です。とっても熱くて――気持ちいい――」
「それでいいのだ、蒿里。私はおまえを気持ちよくしたいのだから」
 驍宗は腰にからみついている泰麒の脚をふりほどくと、可愛らしく勃ってい
たそこを大きな掌でまさぐり、荒々しくこすり始めた。泰麒は「ああ!」と快
楽の声を上げてのけぞった。みずからも主の手に股間を押しつけて激しく腰を
振る。
「驍宗さま、驍宗さま――っ!」

361秘密の儀式(驍宗×泰麒)6:2007/09/05(水) 21:57:29
 やがて泰麒は大きく体を震わせると不意に腰の動きを止めた。驍宗に愛撫さ
れていた股間がいっそう激しく脈動して何かを吐き出すのを感じ、それと同時
に、これまで味わったことのない快感に襲われて身を震わせた。快感が走り抜
けたあとは途端に力が抜けてしまい、臥牀に横たわった。驍宗は嬉しそうにさ
さやいた。
「うむ。おまえくらいの年だとまだ出ないかと思ったが、なかなか立派なもの
だ」
 泰麒はその言葉の意味を理解できなかったものの、お漏らしをしてしまった
のはわかったので恥ずかしくなった。主がやけに嬉しそうなのが救いだったが。
「驍宗さま、あの、ぼく……。すみません、漏らしちゃった、みたい……」
「いや、違うぞ、蒿里。これは小水を漏らしたわけではない。何よりすごく気
持ち良かったろう?」
「はい……」
「これはな、おまえが大人になったという証なのだ」
「じゃあ、ぼく、変なことしてないんですね?」ほっとして尋ねる。
「していないとも。おまえは立派に儀式を行なったのだ」
 泰麒は褒められて嬉しくなったが、それではこれで儀式は終わりなのだと思
うと残念だった。驍宗に抱きしめられるのは快感だったし、何よりも今まで経
験したことのないほどいい気持ちになれた。しかもそれは民のためになるのだ。
「あのう。これでもう終わりなんですか?」
「いや、まだ半分ほどだ」
「そうですか」
 晴れやかな思いが声音に混じる。ではもっと気持ちいいことをしてもらえる
のだ、と思うと泰麒の胸はまた高鳴った。
 驍宗は泰麒をうつぶせにすると、可愛らしい尻を左右から押し開いた。顔を
近づけ蕾をぞろりとなめあげる。
「あっ……!」
 背筋から脳天にかけて電撃のような快感が走り、泰麒は小さく叫んだ。驍宗
に後ろを丹念になめられるたびに、火花が散るような衝撃と快感に冒されて全
身を震わせた。先ほどと違って前をいじられていないというのに、股間がまた
勝手に熱を持っていく。
 泰麒は思わず、すがるものがほしくて枕を抱え込んだ。驍宗がなめるだけで
なく舌の先をねっとりと挿入してきたときは、まるで雷に打たれたかのようで、
常世の果てまで駆けてしまうのではと思われるほどのすさまじい快感に激しく
あえぎ、ささやかな精をあっけなく放出した。

362秘密の儀式(驍宗×泰麒)7:2007/09/05(水) 21:59:35
 驍宗は枕を抱きしめたままあえいでいる泰麒の腰を両手でつかむと、唾液で
濡れそぼった蕾に自分の逞しい一物を押しつけた。固くなった先端を少しだけ
挿入し、円を描くようにぐるりと腰を回して入口を刺激する。
「ああ……あ……」
 あまりの気持ちよさに泰麒はあえぎっぱなしだった。しかし驍宗が本格的に
挿入してくると大して快感を感じなかったため、泰麒は戸惑った。自分は気持
ちよくならなくてはいけないというのに。おまけに激しく出し入れを繰り返し
始めた驍宗の声は、先ほどまでとは異なり妙に獣じみていて、「あうっ、おう
っ!」という咆吼のような声を上げ始めたので、泰麒の困惑はますます深まっ
た。
 しかし驍宗が咆吼の合間に「ううっ、これは……すごくいいっ……!」と感
極まって叫んだので、彼が非常な快感を感じていることはわかった。
 最初に驍宗は麒麟を気持ちよくさせると言ったけれども、王も気持ちよくな
ったほうがいいのではないだろうか。何と言っても半身同士なのだし。それな
らば先ほどは泰麒が、今は驍宗が気持ちよくなっているのだから、儀式として
はこれでいいのかもしれない。
 そう結論づけてしまうと、自分の上で驍宗が我を忘れて快楽に悶えているさ
まも何だかとてもいいと思えてきた。麒麟である泰麒の体を味わうことで王が
気持ちよくなっているのだから、それは民のおかげで王が幸せになることを意
味しないだろうか。
 ほどなく腰の動きを早めた驍宗は、最後に泰麒の奥まで激しく突き上げたの
ち、不意に律動を止めて「ううっ」とうめいた。泰麒は先ほどの自分の経験が
あったので、驍宗も同じように大人の証を吐き出して気持ちよくなったのだと
理解した。
 だらりと脱力して泰麒に覆い被さったままあえいでいた驍宗は、やがて体を
起こすと、泰麒から一物を引き抜いた。
「驍宗さまも気持ちよかったですか?」
「う、うむ」
 泰麒に無邪気に尋ねられた驍宗はうろたえた様子で赤い顔を背けたが、汗や
大人の証の液体で汚れた泰麒の体を丁寧に拭いてくれた。
「蒿里、そのう。おまえ、最後はあまり気持ちよくはなかったようだな……」
「ええ。でも驍宗さまが気持ちよかったんならぼくは嬉しいです。ぼく、麒麟
だけじゃなくて王も気持ちよくなったほうがいいと思うんです」
「そ、そうか。そうだな」

363秘密の儀式(驍宗×泰麒)8/E:2007/09/05(水) 22:02:12
 驍宗はどもって答えると、「延麒も最初は感じなかったと延王もおっしゃっ
ていたしな……」とひとりごちた。
「延台輔? 延台輔がどうかなさったんですか?」
「あ、いや。その」驍宗は咳払いをした。「何しろ私は王になって間がないか
ら、ひそかに延王にご教示いただいたのだ。雁も男王と麒ゆえ、秘儀も戴と似
ているだろうと思ってな」
「ああ、そうだったんですか」
「もちろん秘儀ゆえ、普通は他国の王にも他言しないものなのだぞ。それゆえ
おまえも、たとえ景台輔が相手であっても、決してこのことには触れぬように」
「はい、わかっています」
 泰麒はにっこりとして答えた。驍宗は泰麒を抱きしめると一緒に臥牀に横た
わり、鋼色の髪をいとおしそうになでた。
「最後のあれもな、回数を重ねればおまえも気持ちよくなるのだ。前をこする
よりはるかにいいそうだぞ」
「えっ……」
 泰麒は顔を赤らめた。驍宗に愛撫されて大人の証を吐き出してしまったとき
は、あれほど気持ちいい思いをしたことはないと思ったのに、あれよりもずっ
といいなんて。いったいどんな感じなのだろうと想像すると、また心臓がどき
どきしてきた。
「この儀式は頻繁に行なう必要があるゆえ、おまえもすぐ慣れて気持ちよくな
るぞ」
 驍宗は低くささやきながら泰麒の頬をなで、胸元に抱き寄せた。そうしてい
る間にだんだん眠くなってきた泰麒は、やがてとろりとまどろみ、主の腕の中
で安らかな眠りに落ちていった。
----------------------------------------------------------------------


もちろん秘密の儀式なんて嘘っぱち。
泰麒を自分のものにしたかった驍宗が、近習の女官を使って仕組んだだけです。

いちおう明け方には泰麒はこっそり仁重殿に戻ることになります。
それから何度か驍宗と床をともにするものの正寝は遠い。で、漣から戻ったら
住まいが驍宗と近くなったので、もっと頻繁に召し出されるという展開の予定でした。
お粗末さま。

364名無しさん:2007/09/05(水) 23:49:34
なんて萌え設定、姐さんGJ!!!!
延編もお願い

365名無しさん:2007/09/06(木) 12:16:31
戴のエチー初めて読みますた。悪いオトナな驍宗様に萌えー

366355-363:2007/09/06(木) 19:32:48
>>364
えっ、雁ですか?Σ(゚Д゚;) いや、その……。
泰麒と違って、自分には六太がこんな口実で言いくるめられるとは思えないので、
雁編はもっと想像力豊かな他の方にお任せします(汗)

>>365
ちなみに驍宗は何だか不器用でヘタそうなイメージだったり。
泰麒のためにあらかじめ尚隆に教えを請うていたものの、
やっぱり講義だけじゃ足りないよね、ってとこ。

……なんて書いていたら、閨での技巧に関する講釈を
偉そうに驍宗にたれる尚隆を見たくなってしまいました。
コメディ半分ほのぼの半分なら、軽い感じでおもしろそう。
おちゃらけている尚隆と、対照的に真面目にメモを取る驍宗とか。
(さすがに500年の蓄積にはかなわないし、驍宗も泰麒のために一生懸命になるかなと)
しかも次第にのろけとも猥談ともつかない話に発展していくとかだと、いいなぁ。
でも自分には無理なので、誰か書いてー。

367金波宮の夜1:2007/09/22(土) 15:40:59
王宮ってどこの国も構造は似通っているから、
初めての場所でもだいたいの道はわかるし、散歩にはうってつけね。
蠱蛻衫をまとっていれば官の目も誤魔化せるし、
それに玻璃宮はなかなか良かったわ。ああいうのは範にはないもの。
ちょっと豪華すぎるのが難だけれど、そうね、もうちょっと装飾を抑えれば……。

あら、あそこの後ろ姿は尚隆ね?
夜も更けたというのに、また掌客殿をうろうろして。六太だったらさっき、
疲れたとか何とか言ってその辺の榻にのびて寝ちゃったわよ。

いえいえ、そういえばあの人、廉麟が目当てじゃなかったかしら?
そりゃあ、このあたりは官の目も届きにくいだろうし、
やりたい放題かも知れないけど、廉麟は難攻不落だと思うわよ。
何たってほほえましいくらい廉王に首ったけですもの。若いっていいことね。ふふ。

まあ、あの人、六太を抱きかかえて出てきたわ。
六太ったらすっかり寝込んじゃって。
山猿にしては、けっこういいところがあるじゃないの。
それなりに自分の麒麟の面倒は見ているってわけね。

――え? 尚隆ったら何をきょろきょろして人目を気にしているの?
挙動不審だわ。思わずこっちも隠れちゃったじゃない。

あらら、その房間には確かに臥牀が運び込まれていたけれど、
陽子があなたたちに割り当てた房間じゃないでしょ。あくまで臨時の休憩所なんだから。
面倒なのはわかるけど、ちゃんと自分の臥牀に戻ってお眠りなさいな。

368金波宮の夜2:2007/09/22(土) 15:43:03
――まあ、扉が開かない。
房間の鍵をしっかり閉めて、何をそんなに警戒しているのかしら。
他国の王や麒麟に危害を加えるものが金波宮にいるとでも?
確かに、何事も気をつけるに越したことはないかもしれないけれど……。

あら? 何か房間の中から妙な声が……。

あら。
あらら。
あらー……。

いいわ、聞かなかったことにしておいてあげる。

それにしたってあまりにも不用心すぎない?
ここに陽子が来たら、あの子、真面目そうだし、きっと卒倒しちゃうわよ。

六太もここは玄英宮じゃないんだから、
もうちょっと声を抑えたほうがいいと思うわ。
それとも寝ぼけてそんなことも忘れちゃったのかしら? ありうるわね。

そういえば尚隆と六太のことって、もしかしたら陽子は何も知らないのかしら?
今度さりげなく聞いてみようっと。



おしまい

369名無しさん:2007/09/24(月) 17:43:59
第三者視点ってかなり萌えますね。尚六ハァハァ
おませさん氾麟もイイ!
後日談を激しくきぼん

370(尚六)玄武に乗って(1):2007/09/27(木) 21:53:18
「ここ蓬山から雁の玄英宮までは一昼夜。どうぞおくつろぎあそばして、延台
輔ともども、ごゆるりとお過ごしくださいませ」
 碧霞玄君玉葉はそう言うと、扇を口元に当ててほがらかに笑った。天勅を受
けたのち、玄武とかいう大亀に乗って俺たちは雁に向かうのだという。
 空飛ぶ亀か。こちらの世界での理にいまだ慣れぬ俺だが、そういうものかと
思うしかない。
 不意に玄君は俺に流し目をくれると顔を近づけ、扇の陰でひそやかにささや
いた。
「必要なものはすべて室内に揃っております。またしきたりにならって、媚薬
を仕込んだ香をたきしめてございますので、心ゆくまでお楽しみくださいませ」
「……媚薬?」
 さすがの俺も真意をはかりかねて問い返した。小僧とふたりきりで過ごす一
昼夜に、なぜ媚薬が必要なのだ。すると玄君は意味深な笑みを浮かべて答えた。
「もちろん王と宰輔の仲を円滑に取り持つためでございます。延台輔はまだ十
三と幼く、いくら麒麟の常で聡いとはいえ、王の欲求に進んでお応えになるほ
ど成熟してはおられません。しかしこれはお国のこれからを占う重要な事柄で
ございますので、古来より媚薬を用いるのが慣例となっております」
「ちょっと待ってくれ。それはつまり……俺とあの小僧が同衾するということ
か?」
「もちろん」目を白黒させている俺をからかうように、玄君は妖しく微笑んで
答えた。「王と麒麟は半身同士。それゆえもともと心身ともに相性が良いとは
言われておりますが、体を重ねることで、さらに互いを理解しやすくなるので
す。何しろこれからおふたりで国を支えていかれるわけですから、最初が肝心。
むろん無理にとは申しませんが、心の垣根を取り払うためにも昔から推奨され
ていることでございます」
 俺は眉根を寄せた。もともと蓬莱で武士だった俺は、稚児を愛でることに別
段抵抗はない。しかし……。
「六太は承知しておるのか?」
「さ、それは延王の手管次第」玄君はまた意味深に微笑した。「あれで延台輔
はうぶなかたでいらっしゃいますから、どうぞ優しくお願いいたしますね」

371(尚六)玄武に乗って(2):2007/09/27(木) 23:42:53
「しかし……」
「蓬山仕込みの媚薬の効果は絶大でございますから、その点の不首尾はござい
ません。どの国の王も、どんなに麒麟が幼くとも、上々の成果を上げられるも
のでございます。特に麒麟はもともと天地の気脈から力を得るものですし、い
かに激しくなさっても体力が損なわれる心配はございません。また神籍に入っ
ておられる以上、閨での行為程度で怪我をなさる心配もご無用ですのでご安堵
くださいませ」
「まあ……それがしきたりであるというのなら、六太と相談の上で考慮してみ
るが」
 俺は今ひとつ納得できないまま六太と合流し、天勅を受けるためにその先の
大扉の向こうへと進んだ。

「なるほど……。何もかも揃っていると言っていたのは、あながち言い過ぎで
もないな」
 玄武の上にしつらえられた建物に入った俺は、その房間をぐるりと見回した。
大して広くはないものの贅を尽くした装飾が施されている。ほのかに香る良い
香りに気づき、これが玄君の言っていた媚薬仕込みの香だろうかと考える。
 傍らの六太は、特におもしろくなさそうに立っているだけだ。そうして、腹
が減ったのだろう、隣の房間に用意されていた軽食の皿をつかむなり、行儀悪
く榻に寝転んで食べ始めた。
「明日には雁につくらしいから」
 そういった六太は、ここでなすべきことを知っているのだろうか? まあ、
玄君の言ったことが真実であるのなら、そのうち香に影響されてくるのだろう
が……。
 ――ううむ、何やら先に俺のほうが妙な気持ちになってきたぞ。この建物に
入ったばかりだが……この媚薬とやらは即効性なのか? こうして見るかぎり、
六太のほうに変わりはないようだが。
 俺は何気なさを装って榻の六太の横に腰掛け、様子を窺った。

372(尚六)玄武に乗って(3):2007/09/28(金) 22:03:44
 ――ふむ。先ほどから、空いたほうの手をやたらと開いたり握ったりしてお
るな。顔を見ると、少しばかり汗ばんでいるようだが……。しかし蓬莱での黒
髪やあの顔立ちも悪くなかったが、金の髪に縁取られたこちらの顔もなかなか
良い。言動が生意気な割に、顔つきも体つきも繊細だ。こいつは褥でどんな声
を上げるのか……。
 ふと、俺と目が合った六太は、何かにおびえたようにわずかに身を引いた。
それでもこのふてぶてしい小僧は、あからさまな動揺は見せない。俺はちょっ
とからかってやるかと思い、六太の太腿に手を置いてそっとなでた。
「な――何すんだよ?」
 六太は持っていた茶菓子を床に取り落として身を引いた。頬がほんのりと上
気している。これはなかなか……。
「いや……なに、碧霞玄君から聞いたのだが、ここで俺たちは同衾することに
なっているそうだな」
「え?」
「つまり、肌を合わせるということだ」
 六太はぽかんとしている。いくらませていても、そっち方面の形容はよくわ
からなかったらしい。こんな子供にどこまで説明すべきか迷うところだが、ま
あ、どうやら体のほうはとっくに媚薬に反応しているようだし、いざとなれば
押し倒してしまえば良いのだろう。
「わからんか? 俺とおまえが交わるということだ。裸になって、褥で、な」
 ようやく意味がわかったらしく、六太の顔がみるみるうちに首まで真っ赤に
なった。
「な、な、何で? そんなの、聞いてない――」
「古来からのしきたりだそうだぞ。何しろこれからふたりで国を治めていくの
だからな、最初に心の垣根を取り払うために有効な方法らしい」
「そ、そんな」
 六太は顔を赤くして動揺していたが、俺はその様子にますます魅入られて唾
を飲み込んだ。普段は生意気な小僧が、こうして少し怯えているところが何と
もそそる。金色の髪が肩から腰にかけて滝のように流れているが、これが裸体
を覆うさまは、どれほど見事だろうと想像した。

373(尚六)玄武に乗って(4):2007/09/28(金) 23:48:41
 気がつくと俺は、六太の細い手首をつかんでいた。確かに蓬山仕込みの媚薬
とやらの効果は絶大だ。うろたえて逃れようとする六太の反応が妙になまめか
しく見え、俺の欲情をますます煽った。
 六太の小柄な体を胸元に引き寄せるなり、そのまま榻に押し倒す。細い首筋
に顔を埋めると、六太は「あ」とはかなくも艶っぽい声を上げた。体が熱い。
もどかしく思いながら、豪華に装っている六太の服の帯を解くと、衣を引き裂
く勢いで前をはだけた。華奢な腰を抱きしめたまま、首元から胸元にかけて激
しくなめまわす。媚薬の効果か、六太は抵抗できず、「ああ……」と悩ましく
あえぎながら俺になされるがままだ。
 俺は六太を抱きあげると、奥の房間に連れ込み、そこにあった大きな臥牀に
押し倒した。そうして服をさっさと脱がせてしまい、自分も全裸になると、六
太の上に覆い被さった。
 既に六太のほうもすっかり媚薬に冒されてしまったようで、きつく抱きしめ
て深く接吻する俺の背に、こいつも腕を回して熱烈に応えてくる。俺は六太の
体を隅々までなめまわすと、可愛らしい一物をしごいて、まずこいつを先にい
かせてやった。六太が見事な金髪を振り乱し、激しくあえいで俺の手に股間を
こすりつけてくるさまはとても淫らで、俺はますます興奮した。
 六太に自慰の経験があるのかどうかはわからないが、まだ女は知らないだろ
うし、何より男にいかされる経験など初めてに違いない。つまりこいつは純潔
で、俺が初めての相手というわけだ……。
 俺は、射精して脱力した六太の股間をまさぐった。飛び散った精液を秘所に
塗りつけたが、これで挿入できるだろうか。わずかに残った理性の片隅でそう
考えた俺の目に、臥牀の横に備えつけられていた香油の瓶が映った。なるほど、
確かに必要なものはすべて室内に揃っているな。
 俺はその玻璃の瓶を取ると蓋を開けて香油を掌に受け、六太の股間と俺自身
の一物にたっぷりと塗りつけた。ついでに少し指先を六太の中に挿入してかき
まわしてみる。六太は「ああっ」とあえいでのけぞった。まあ、怪我はしない
と玄君も言っていたことだし、滑り具合さえ良ければ大丈夫だろう……。
 俺は六太の股を大きく開くと、細い腰を少し持ち上げた。これは……なかな
かいい眺めだ。まさしく絶景だな。

374(尚六)玄武に乗って(5/E):2007/09/29(土) 00:32:21
 俺を待ち受けている秘所に一物をあてがう。力を入れると、先端がずぶりと
中にめりこんだ。おお、想像していたよりはるかに具合がいいぞ。王と麒麟は
心身ともに相性が良いと玄君は言っていたが――その通りなのかもしれん。
 俺はあえぎながら、感触を楽しむために少しずつ挿入した。とてもきついが、
これがまた実にいい案配なのだ。六太のほうも体をくねらせながらあえいでお
り、まるで早く根元まで入れろとせがんでいるようだ。
 半分ほど挿入した俺は、後は一気に奥まで貫いた。
「あうっ!」
 六太が激しくのけぞった。俺は六太の体の両脇に手を突くと、すぐに荒々し
く出し入れを始めた。中は狭いが、たっぷりと塗った香油のおかげで至極なめ
らかだ。最奥まで突き上げるたびに六太の体が上方にずり上がっていく。
「ああん、あん、ああん!」
 ひっきりなしにあえぐ六太の悩ましい声を楽しみながら、俺は六太を犯しつ
づけた。まったくもっていい声だ。こんな小僧に、これほど色っぽい声が出せ
るとはな。突き上げるたびにびちゃびちゃと淫靡に響く結合部の音が、さらに
趣を加えている。
 おまけに媚薬の効果なのか相性の良さのせいなのかはわからんが、これだけ
激しく反応しているところを見ると、初めてだというのに六太はとことん感じ
ているらしい。これはいいぞ。もっともっと乱れさせてやろう。
 この楽しみが一昼夜で終わってしまうことだけが残念だ。

 玄英宮に到着すると、官吏たちが揃って出迎えた。国土があれほど荒廃して
いるというのに、こやつらの過度に贅沢な身なりを見る限りはそうは思えんな。
王を迎えるために礼を尽くしているのかもしれんが、限度というものがあろう
に。心底から腐り果てている感じだ。
 何はともあれ、俺は王の私室だという正寝に落ち着いた。正寝には多くの建
物があるが、ここは長楽殿というらしい。六太のほうは宰輔の住居である仁重
殿とやらに行ったそうだ。
 あとで宮城の作りを確認したところ、長楽殿と仁重殿はなかなか遠いのだ。
同じ宮城内にあるというのに。俺は玄武の例の建物から、香油と、媚薬を仕込
んだ香を土産に持ってきていたのだが、いったいこれを使える機会があるかど
うか。
 むろん、機会がなければ作れば良いのだ……。

375370-374:2007/09/29(土) 00:34:30
「秘密の儀式」の雁バージョンが自分には無理だったので、
代わりにもっと汎用的なネタで書いてみました。
ありがちな内容のように思いますけど (実際に似た話がどこかにあったらすみません)、
玄武はどの主従でも使える便利ネタですね。
お気に召したら、お好きな主従で脳内妄想してください。

376名無しさん:2007/09/30(日) 18:11:07
>375
乙!媚薬ネタはいいなぁ…萌え(´∀`*)

377名無しさん:2007/09/30(日) 21:54:11
なんてもの書くんだ!!
うっかり萌えちゃったじゃないかーー!

378(月渓→仲韃)徒花(1/5):2007/10/05(金) 15:19:41
月渓視点のプラトニック。・・・愛は行間から読み取ってくださいorz


朝廷という泥の中に咲く、一輪の花のような方だった。

公平無私、清廉潔白といえば夏官の健仲韃と当時の官の間では名高く、官席を
賜って間もない月渓ですらその上司の名と人柄を聞き及んでいた。そして対面する
機会を得た後は、多くの同僚と同じように彼を尊崇した。
ここ二代、芳は王に恵まれていない。賢君を戴くことなく腐敗した朝において
眩しいまでの輝きを持つ存在だった仲韃は、自然と心ある官吏を惹きつけ、月渓も
その例外ではなかった。
だからあの夜、身体を引きずるようにして、使われていない房室から出てきたのが
仲韃であったと見分けられたのは偶然ではない。敬愛する上司を
見間違えるはずがないし、少ないとはいえ篝火が焚かれていた。
しかし普段は人の出入りのないこの奥まった場所に、ここを警備する者か、
あるいは月渓のようにその取り纏めをする者以外が訪れるとは可笑しなことだ。
「仲韃さま?」
月渓は我知らず仲韃に駆け寄った。王宮内とはいえ空位の荒れきった王朝では
何が起こるかわからない。ましてや仲韃は、その潔白さ故に後ろ暗い官吏から
疎まれることも少なくないはずだ。
下官も伴わずに何故と訝しんだそのとき、篝火がちょうど真下に来た仲韃の姿を
照らし出した。
「・・・ッ!?」
月渓は息を呑み、灯りの下の仲韃を凝視した。俄かには己の目を信ずることが出来ない。
―――穢されていた
常には緩められることのないのない合わせは大きく肌蹴られ、開いた胸元からは無数の痣が覗く。
きっちりと結い上げていたはずの髪も解け、彼の表情を覆い隠している。
そして彼の太腿を伝う白濁は・・・
「そ、んな・・・」

379(月渓→仲韃)徒花(2/5):2007/10/05(金) 15:23:38
何が起きたか、問うまでもない。腐敗した朝では珍しくは無い事だった。
それでも陰惨な事実に月渓は無言で目を逸らすと、仲韃に旗袍を差し出した。
しかし仲韃は受け取らない。焦れた月渓がなるべく直視しないように向き直ると、
仲韃の身体がゆっくりと傾いだところだった。
慌てて腕を伸ばし、磨かれた床に激突する前にその身体を受け止める。
夏官とはいえ文官であるにも拘らず、鍛えられた身体の重みに腕が軋んだ。
「大丈夫、ですか」
異常に熱い身体に仲韃が発熱していることを悟り眉を寄せると、落ちてきた
前髪に隠された彼の顔を覗き込んだ。
―――穢されてなお、職務に就く時と変わらぬ澄み切ったしかし苛烈な瞳がそこにはあった
一瞬の後、力尽きたように仲韃の目蓋は下がったが、その瞳の強さに圧倒された月渓は、
息を詰めたまま仲韃の身体を支えて立ち尽くしていた。
射抜くような衝撃から我に返ったとき、この方に囚われたのだとそう悟った。
※※※※

380(月渓→仲韃)徒花(3/5):2007/10/05(金) 15:28:02
それから程なく、仲韃は峯麟の選定を受けた。もはやこの王宮に彼を穢した官は
いない。主だった悪吏は放逐され、誰もが芳は清く美しい国になるだろうと信じていた。
(信じていたかったのに・・・)
月渓は唇を噛み締める。立朝三十年の式典のため訪れた鷹隼宮の露台からは、
雲海越しに寒々しい蒲蘇の街が広がっていた。
仲韃が王となって今年で三十年、国庫が潤うことも民が豊かになることも無く、
街角からは挽歌と王への怨言しか聞こえない。最近では峯麟が不調だという話も聞く。
終焉が目に浮かぶようだった。王朝の終焉、即ち―――
(・・・王の死)
仲韃は死など恐れてはいなかった。あくまで己の信ずる正義に殉じる覚悟であると、
再三諫言をしていた月渓は知っている。
(死を恐れているのは私だけなのですか・・・?貴方の信念を曲げてでも王として
在ってほしいと願うのは)
苛烈な瞳で罪を見据え、清く在り続ける仲韃を見ていたかった。寄り添うことは
叶わぬだろうと戒めていたが、共に支えられればとそう思っていた。その為ならば
どんなことも厭わないと。
しかし民は過激な法に虐げられ、諫言は聞き入れられず、道を違っていることは明白
だった。間違いなく数年のうちに峯麟は失道の病に掛かるだろう。
(ならばせめて・・・)
寵臣でありながら主を止めることのできなかった官として、一度は仲韃の道を信じた者として、
最期まで共に在るのも良いかもしれない。それが私情に基づく不純な感傷であることを自覚
しながら、それでも半ば本気で月渓はそう考えた。しかし・・・
「恵州候、主上がお呼びです」
下官の言葉に驚きつつも、すぐに内殿へ向かう。公的な行事は今日で終わりなので、
何故呼ばれたのかまるで見当もつかなかった。

381(月渓→仲韃)徒花(4/5):2007/10/05(金) 15:56:14
堂室に駆けつけると、そこには彼の側近が集結しており、皆一様に困惑気で
あった。月渓は堂室の片隅でやはり困惑している天官長の側に歩を進める。
「小庸、これはどういうことだ?」
「判りません・・・恵侯もご存じないのですね。どうやら主上が主だった大官に
召集を掛けたようなのですが、何の為やら小官には皆目見当も」
つきません、というより早く下官が王の到着を報せ、集まった官たちは
口を噤むとその場に跪拝する。月渓と小庸もそれに習った。
布擦れの音が止まり、面を上げよという言葉に従って伏せていた顔を
上げると、目の前には変わらぬ主の姿があった。
―――登極したときと変わらぬ、曇りなき眼の仲韃が
嗚呼、と居た堪れなさに再び面を伏せそうになったのは月渓だけではあるまい。
仲韃が王らしくあればあるほど、彼と国土の実態の差が浮き彫りになる。
この場にいる官の誰もが仲韃の人柄を知っていた。同時に彼の行った政策に
よって殺されてきた民の嘆きも。
国土を席巻する怨言、半身である麒麟の不調、それですらこの人を変えることは
出来なかったのだと思い知らされるようだった。

382(月渓→仲韃)徒花(5/5):2007/10/05(金) 15:58:42
苦い思いを抱える諸官を余所に、仲韃は突然の召集を詫びると三十年の節目を
迎える歓びを語り、それを支えてきた諸官を労った。
「お前たちが正しい行いをし、罪ある者達を正してきたからこそ、
今の私の治世があると思う」
渦巻く憎悪と諦念、もう夢を見ることすら叶わぬと知った官たちは、
悲痛な表情を隠しながら王の言葉を受け取った。
(破滅の道を行くしかないのか・・・)
月渓も沈痛な面持ちをしながらそれでも、彼が天帝に生を奪われる
その日まで無意味と判っている諫言を繰り返しながら側にあろうと
そう心中で繰り返す。
だが仲韃はそんな月渓の甘えさえも許さなかった。

「明日になればまたそれぞれの職分に戻り、この芳国の為に尽くしてくれるだろう。
決して情に流されず、罪を憎み、多くの民を救ってほしい。それが私の願いだ」

心が、震えた。畏敬でも感銘でもなく、深い悲しみと絶望から。
(憎い・・・)
甘さを断ち切り、共に逝くという逃げ道を塞いだ仲韃を心の底から憎んだ。
罪を憎み、国に尽くせと、そう言った己の主君を。
(情に惑わされず、民を救えと言ってくれるか。他ならぬ貴方が)
それが仲韃の願いだというのならば、月渓がすべきことは一つしかない。

―――貴方を殺す他、術が無いのだ

※※※※
永和六年、恵州候月渓は首都州を除く八州師を率いて芳王を討つ。
彼がその没前に残した言葉は、後の歴史家によって度々取り上げられる。
「誰より清き国を愛したあの方に恥じぬ官である為には、敬慕するあの方を
討たねばならなかったのだ」
王を敬愛しながら謀反を起こした、数少ない弑逆の盟主として。
                               終

383名無しさん:2007/10/06(土) 02:25:09
オオオー乙!
月渓切ない…
エロはエロで好物だけど、こういうのも大好きだー!
最後で少しだけ銀英伝思い出した

384夕暉陵辱「堕ちた月」(1):2007/10/07(日) 18:00:29
801スレ前スレ990の設定を使った夕暉輪姦陵辱ものです。原作キャラは夕暉のみ。
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 その夜遅く、夕暉が書卓に向かって勉強をしていると、房間の扉を叩く音が
した。夕暉が扉を開けると、そこには友人の思文が、大勢の男たちとともに立
っていた。思文はいつものようににこにこした顔をしている。
「思文、何――」
 言いかけた途端。脇をすりぬけて房間に入りこんだ男が、後ろに立つなり夕
暉を羽交い締めにした。驚いて振り向こうとしたそのとき、ふりほどこうとし
た夕暉の腕を他の男たちが強い力でつかんで押さえつけるなり、大声を出そう
と開いた口の中に丸めた布を突っ込んだ。そのまま彼らは夕暉とともに房間に
なだれ込み、奥の臥牀に夕暉を投げ出した。ふたりがかりで夕暉にのしかかっ
て抵抗を封じている間に、残りの男たちが夕暉の両手首、両足首を臥牀の四隅
につなぐ。そうしてすっかり処置してからようやく、大の字になっている夕暉
の体からのいたが、喉も四肢も封じられた夕暉に既になすすべはなかった。
 ――なんで、こんな。
 あおむけの状態で臥牀にしばりつけられた夕暉は茫然とした表情で、にやに
やと笑っている男たちを見上げていた。その間から覗いていた思文の顔に目を
やったが、思文は妙に高揚した気分を窺わせる顔で、他の男たちと同じように
笑みを浮かべていた。
 一番手前にいた男が懐から出した折り畳み式の小刀の刃を見せたので、夕暉
は観念した。
 ――拷問か。
 二年前の和州の乱に彼が関わり、それどころか乱の中枢にいて軍師の真似事
をしていたことは周知の事実だ。あの乱のあと、多くの腐敗した官僚が処罰さ
れたが、この男たちは、思文を含めてその縁者なのかもしれない。それがこの
状況に対する一番妥当な見解だろう。
 つまりは、復讐。

385夕暉陵辱「堕ちた月」(2):2007/10/07(日) 18:02:32
 二年以上も経ってから、こんな行動に出る理由がわからなかったが、彼らの
側の何らかの事情が関係しているのだろう。そして彼らがこうして顔をさらし
ている以上、何か不測の事態が起こらない限り、おそらく自分は殺されるのに
違いない。
 だが一方的になぶり殺されるのはごめんだった。何か抵抗の手だてがないも
のか――。
 そう焦って頭を前後左右に動かし、どこかに隙がないかを必死に探している
と、小刀を掲げた男が夕暉に手をかけた。反射的に目をつむってしまったもの
の苦痛は訪れず、代わりに衣を切り裂く音が房間に響いた。
 目を開いて見ると、男は夕暉の襟元を一気に切り裂いたところだった。腰帯
は扱いにくいと見えてこれは手でほどいたものの、中に着ていた小衫までも小
刀でめちゃくちゃに切り裂いた。そうして下肢に手をかけ袴をも切り裂き、み
るみるうちに衣服の残骸できあがった。他の男たちも手を出して夕暉の体から
衣服の残骸を取り除いたので、まだ少年の甘さの残るみずみずしい肢体が、隅
々まであらわになった。
 男たちの呼吸が夕暉の全裸の肢体を前に荒くなり、傍目からも胸が激しく上
下しているのがわかったので、夕暉は愕然とした。彼らが自分の体を前に、情
欲にかられていることがわかったからだ。
「最初は俺だ。いいだろうな?」
 衣服を切り裂いた男が、小刀を懐にしまうと仲間をちらりと見て言った。
「ああ。さっさとやれ。次は俺だからな」
「その次は俺だ」
 夕暉はつながれている四肢を必死にほどこうともがいたが、丈夫な結び目が
いっそう手首足首に食い込んだだけだった。そんな彼の様子には無頓着に、最
初の男が夕暉の股間に手をかけた。夕暉は、びくん、として腰を引こうとした
が、男は構わず夕暉の男根をつかんだ。
「まあ、そう怯えるな。秀才だか何だか知らんが、どうせまだ女は知らんのだ
ろう? 可愛い顔をしているだけに、男は知っているかもしれんが」
 あちこちからもれた野卑な笑いが、低く房間に満ちた。
「拓峰の乱で軍師を務めたそうだな。あれだけの人間を集めたってことは、体
を使って荒民たちをたらしこんだのか? かなりいい思いをさせてやったんだ
ろう? 今度は俺たちにもいい思いをさせてくれ」

386夕暉陵辱「堕ちた月」(3):2007/10/07(日) 18:05:13
 そうして大きな掌をいやらしく動かして、夕暉の男根をもてあそぶ。竿をつ
かんで親指でさするように何度もこすりあげ、夕暉がうめくと、竿を握ったま
ま、親指の腹を先端の敏感な部分に当てて小刻みに動かした。
 口の中にある布のかたまりのせいで声を上げられない夕暉は目をつむり、頭
を激しく振って腰をくねらせた。抵抗したいのに、官能的な響きのうめきが鼻
から抜けて漏れた。
「こいつ、もう腰を振ってやがるぜ」
 別の男が、荒い呼吸とともに嘲りの声を上げた。夕暉が泣きそうな思いで目
を開いてその男を見ると、彼は下穿きまで下ろして大きな一物をあらわにし、
夕暉の顔を覗きこみながら自分で自分のものをしごいているところだった。
 夕暉の男根を蹂躙している男が指の動きを早くする。激しい刺激に耐えきれ
なくなった夕暉は、ついに我慢しきれずに射精してしまった。
 男はねっとりとした白濁液にまみれた掌を夕暉の目の前にかざすと、にやに
やしながら「お楽しみはこれからだ。俺たち全員でいい思いをさせてやるぜ」
と言った。そうして下穿きごと袴を脱いで下半身をあらわにすると、臥牀に上
がって夕暉の股の間に座りこんだ。夕暉のむきだしの太腿を抱えて、腰をぐい
っと進める。あてがわれた固いものの感触に、夕暉は必死に腰を引いて逃れよ
うとした。
「無駄だ」
 男はそう言うなり夕暉の太腿を抱え直し、たくましくそそり立った男根を、
夕暉の小さな蕾の中に無理やりねじこんだ。
「――――!」
 一気に根元まで挿入され、夕暉は痛みに体をのけぞらせた。こらえきれずに
涙がこぼれる。そんな様子には頓着せずに、男はすぐに激しく出し入れしはじ
めた。
「こ、こりゃあ、いい。へへ。こ、これなら、確かに、体で、荒民も、集めら
れる、な。ううっ」
 腰を激しく打ちつけながらあえぐ男を、仲間たちがせき立てる。
「おい、俺にも早くやらせろ」
「ちょ、ちょっと待て、もう少し……。こ、こりゃ、すげえ」

387夕暉陵辱「堕ちた月」(4):2007/10/07(日) 18:07:15
 そう答えながらも男は一向に腰の動きを止めずに何度も夕暉を突き上げた。
そうしてさらに仲間たちにせっつかれた男は、卑猥にうめくなり、深々と挿入
したまま腰を止めて激しく震えた。自分の中に射精されたのだと知り、茫然と
なった夕暉の目から涙があふれた。
 一物を引き抜いた男が臥牀から降り、別の男と交代した。次の男もすぐに挿
入してきたが、最初の男が一物を抜いた際にこぼれた精液でぬるぬるとしてい
たせいか、夕暉は最初ほど苦痛を感じずに済んだ。
「おう、こりゃ、確かにいいや。このきつさが何とも……。生娘よりいいかも
な。へへ」
 二番目の男が、腰を動かしながら嬉々として言った。
 三番目の男に犯されたときには、夕暉は抵抗を諦めていた。男たちが遠慮な
く中に出した精液のせいで秘所は内も外も濡れそぼり、容赦なく挿入されつづ
けたために既に入口はゆるんでいた。そうして諦めて体の力を抜いてしまうと、
思いのほかすんなりと男たちを受け入れられることがわかり、少しでも苦痛か
ら逃れるため、夕暉はただただおとなしくなされるがままになっていた。
 犯されながらぼんやりと男たちの頭数を数える。五人。それと思文。
 諦めながらも、まさか思文まではと思ったが、六人目として思文が臥牀に上
がってきたので夕暉は彼を凝視した。思文は不自然ににこやかな顔で言った。
「君がいけないんだよ、夕暉。そんなに綺麗な顔で、しかも少学一の秀才だな
んて。おまけに主上に目をかけていただいて、官吏になって王宮に上がるのは
決まっているようなものだ。そうして僕の手の届かないところに行ってしまう
くらいなら、その前に僕が汚してやる。大勢の男に輪姦されて、今さら主上の
元に上がれるわけはないよな」
 思文はそう言って、他の男たちと同じように男根を夕暉の秘所にあてがった。
夕暉は思わず目をつむった。ずるっと挿入される感触。思文は根元まで一物を
挿入すると、あざけるような顔で夕暉を見おろしながら、それでも満足げに腰
を激しく前後に動かした。
「うぅ、すごくいい! 夕暉、君は体も素晴らしいんだね。もっともっと可愛
がってあげるよ――」
 六人が一通り夕暉を犯すと、二巡目が始まった。

388夕暉陵辱「堕ちた月」(5/E):2007/10/07(日) 18:09:17

 どのくらい時間が経ったのかもわからなかった。代わる代わる犯されつづけ
たため、いろいろな感覚はとっくに麻痺していた。
 大量の精液にまみれ、絶え間なく蹂躙されつづけた夕暉は、いつのまにか自
分から腰を動かすようになっていた。大きな一物を根元までぶちこまれて荒々
しく抜き差しされるたび、脳天に突き抜けるような激しい快感が走る。最奥ま
で突き上げられるたびに顎をのけぞらせては快楽にあえぐ。鼻から抜けるうめ
きは既に淫らな香りに満ち、表情は恍惚としていた。
 悦楽のあまり夕暉が理性をなくし、自分から激しく腰を振るようになったと
き、両手足のいましめが解かれ、口に押し込まれていた布のかたまりも取り除
かれた。そうして男たちは深々と突き上げられるたびに夕暉の口からもれる、
すすり泣くようなあえぎ声や、絶頂に達するたびに上げられる快楽の叫びを楽
しみさえした。
 夕暉のほうは、逃げ出す気力も助けを呼ぶ気力も、もう残ってはいなかった。
ただ輪姦されて、これまで味わったことのない快感にひたすら溺れるだけ。
 いましめの代わりに男たちに押さえつけられ、場所を臥牀から床に移動して、
体を起こされたりうつぶせにされたりして、いろいろな体位で犯される。後背
位のとき、夕暉はみずから結合部を高くかかげた。対面座位のときは相手の男
にすがって腰を上下に動かした。
「あぁ、あ、あ、ん、あぁっ」
 中で激しく動く男根に、顎をのけぞらせて頭を振る。
 もう自分は狂ってしまったのだ。そう、頭の隅で考える。こんなふうに喜ん
で腰を振り、ひっきりなしに快感の声を上げるなんて。
 蟻地獄のような性の快楽から、夕暉はもう逃れることはできなかった。
 四つんばいにさせられて何巡目かの男の男根を深々と受け入れた夕暉は、激
しい突き上げによる絶頂感に気が遠くなる思いをしながら、腰を揺らして悦び
の声を上げつづけた。

<終>

389名無しさん:2007/10/07(日) 21:39:28
>>378-382
ふと妄想。
原作でこのあと月渓が峯王になるかどうかはわからないものの、
陽子にとっての浩瀚みたいな、新王の重鎮になればと思った。
そして仲韃を諫められなかった責任を取る形で
芳を立て直してから宮中を辞して市井に紛れる。
しばらく経って月渓が老い、先行きが短くなったときに過去を想起し、
彼にとっての真の王だった前王を静かに偲ぶ……。

390名無しさん:2007/10/08(月) 21:50:09
>>383
初投下だったから感想貰えて本当に嬉しい。
ラストはよくあるフレーズで一度は使ってみたいと思ってたやつ
だったんだが、銀英伝が元ネタだったのか・・・

>>389
うお切ねー!月渓は自分的に仙籍を返上する姿が容易に浮かぶ
数少ない人物だ。里家の閭胥とかやりながら余生を過ごす月渓。
日に一度は凌雲山を見上げ、かの王を偲ぶ・・・とか。
>>384-388
GJ!自分はエロ書くの苦手だから、こういうの書けるのはホントに尊敬する。
ばっちり萌えを補給させてもらったよ。
この後夕暉はこいつ等の玩具になるのか、怒り狂った兄貴が乗り込んで
くるのかと想像・・・

391389:2007/10/08(月) 22:16:07
>>390
うん、自分はなんか月渓が王になる感じはしないんだよね。
で、その路線で妄想してみたら……。

月渓が息を引き取るときは、きっと仲韃が迎えに来てくれると思ってる。

392384-388:2007/10/09(火) 19:30:13
>>390
脳内では既に性奴隷と化していますが何かw
すぐ近くに人がいる物陰に引き込まれてヤられて
「声を出してもいいんだぜ」とか言われてなぶられてますが何かw
誰にも心配をかけたくないがために、ひとりですべてかかえこみ
少学を卒業できる日まで夕暉の悪夢は続く……。

でも何というか、エロって難しいですよねえ。
コメディとかエロなしシリアス程度なら何とか書けないでもないものの、
エロの場合、自分が書くといやらしさに欠ける上、
そもそも文章に余韻がないのが困りもの。

誰か続きを書いてくれる人がいればな……。

393尚六濡れ場(1/4):2007/10/27(土) 14:05:30
少し前に練習で書いた尚六濡れ場シーンです。エロって難しい……。
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 強く口をふさがれて、入りこんできた分厚い舌に中をなめまわされ、舌を強
く吸われる。六太も自分から舌をからめて応えるものの、ひっきりなしに角度
を変えてはその口をむさぼる尚隆の激しい動きの前に、すぐに息も絶え絶えに
なってしまう。
 荒々しい接吻からやっと解放されたとき、六太は空気を求めて激しくあえぎ、
飲み込めなかった唾液が口の端からこぼれて顎を伝った。そんなふうに感じて
いる彼を見るのが尚隆は好きで、激しい接吻の合間にも休めなかった愛撫の手
をさらに強めながら、顎を伝う唾液を舌ですくいとるようにしてなめるのだっ
た。
「尚隆――」
 今度は六太のほうから求めて、尚隆の頭を抱き寄せて激しく口に吸いつく。
口の外と中をなめあったり吸いあったりしているだけなのに、どうしてこんな
に感じるんだろうと思う。ただ唇と唇が触れるだけでも、こんなにも快い。
 熱を帯びた尚隆の大きな手が、六太の華奢な体をまさぐる。胸や脇腹や尻や、
いろいろなところを強弱をつけてなでまわされると、六太はいっそう感じて興
奮し、体をほんのりと染めた。
 尚隆に体で教えられるまでは知らなかった感覚。尚隆に開花させられた性が
もたらすさまざまな悦楽。
 六太は自然と脚を開いて尚隆の腰にからめた。激しく抱き合いながら、敏感
な部分を尚隆の腹にこすりつけてさらなる刺激を楽しむ。固くそそりたった尚
隆のものが尻に当たった。たくましいそれが自分の中に入ってきたときの感覚
がまざまざと想像できて、六太の頭の芯が熱くなった。
「ね、早く……」

394尚六濡れ場(2/4):2007/10/27(土) 14:07:51
 誘惑するように腰を揺らし、鼻に抜ける甘い声であえぎながら哀願する。
「――俺が、ほしいか……?」
 六太の唇をなめながら、尚隆はささやいた。声はあくまで低くひそやかなの
に、呼吸は荒く、顔はまぎれもない情欲に染まっている。
 六太は尚隆の肩や首にすがるように腕を回し、たくましい体をなでるように
掌で幾度もさすった。そうしてゆるやかに股間をこすりつけながら、「尚隆が、
ほしい」と熱くささやいた。
 尚隆は体を起こすと、六太の股の間で中腰になった。そうして六太の太腿を
下から回した両腕でかかえることで、細い腰を持ち上げて軽く浮かせた。物欲
しげにひくつく蕾が、尚隆の前にあらわになる。
 尚隆はそこに自分のものをあてがったが、挿入はしなかった。入口をかすめ
て下方に動かしながら尻の間にこすり入れる。
「あぁん!」
 六太は頭を激しく振って体をくねらせた。熱く固いものが幾度も入口をかす
めるだけなのがもどかしく、自分で腰の角度を変えて、尻の間を激しく動く尚
隆のものに直接そこをこすりつけた。
「あぁ、ぁん、挿れて、挿れてぇ……!」
 身もだえする六太には構わず、尚隆はあえぎながら、猛ったものを先端から
根元まで、幾度も荒々しく入口にこすりつけた。刺激で六太のそこもますます
熱くなっていき、尚隆の先端からもれる先走りでじわりと濡れていく。
 激しくもだえる六太をしばらくもてあそんでいた尚隆は、やがて腰の動きを
止めると、軽くうめいて射精した。彼の前に無防備に開かれていた六太の股間
を盛大に汚す。尚隆は抱えていた太腿を離すと、どろりとした白濁液で濡れた
入口を指でまさぐった。節のある太い指の感触に六太は激しくあえいだ。何も
かもを見られていることに羞恥を覚えながらも、逆にそのことに興奮する。
 尚隆は六太の中をじっくりと楽しみながら、そこをやわらかくほぐしていっ
た。指を増やし、広げてはかき回すようにぐるりと動かし、奥へ奥へと侵入し
ては入口に戻る。その繰り返し。
 こんなことをされると気持ちがいいことを六太に教えたのも尚隆だ。そうし
て……。

395尚六濡れ場(3/4):2007/10/27(土) 14:11:47
「あ、ん、そこ、そこ……!」
 一番敏感な部分を探り当てられ、六太は嬌声を上げた。にやりとした尚隆が
そこをさらに刺激すると、激しい快楽に酔った六太の体が、褥の上で幾度も波
打つように躍った。尚隆は挿入していないほうの手で六太の片方の太腿をかか
えると、必要以上に動かれないよう、その体を押さえつけた。
「あぁ、あっ、あああああぁ――っ!」
 尚隆の複雑な指の動きがもたらす悦楽に、六太は髪を振り乱して溺れた。快
感の波が稲妻となって脳天を荒々しく貫く。尚隆自身のもので貫かれるよりは
弱いものの、たとえようもない快感がうねりのように絶え間なく腰全体に押し
寄せた。
 顎をのけぞらせて幾度も享楽の叫びを上げた六太は、肝心のところで尚隆の
指がそっと抜かれたのを感じた。いまだ最高潮に達していなかった六太は尚隆
をうらめしそうに見た。しかし尚隆はその目をおもしろそうに捉えながら、ふ
たたび猛々しくいきりたった自分のものを六太にあてがおうとしているところ
だった。やっと求めるものを得られる期待に、六太の胸は高鳴った。
 尚隆は六太の痴態を見ながら、自分のものをしごくことがある。それを見せ
つけるようにして焦らしてから六太に挿入するのだが、今、じゅうぶんすぎる
ほど興奮して硬度を得、傍目にもわかるほど大きく脈動しているそれは、わざ
わざしごくまでもなかった。
 入口にめりこむ固い先端を感じて、六太はあえいだ。熱くて太くて固くて…
…。それが焦らすようにゆっくりと侵入してくる。肉壁がいっぱいに押し広げ
られ、圧倒的な存在感を持って徐々に六太の中を支配していく。
「あ――あぁ……」
 六太は目をつむり、求めつづけたものの感触に甘い吐息を漏らした。
 ほどなく根元まで深々とおさめられたそれはとても熱くて、脈打つ様子まで
も六太はまざまざと感じることができた。
 覆い被さって顔を覗きこんできた尚隆の体に、六太は腕を回した。
「尚隆の、すごく熱い……。いっぱい、ぴくぴくって動いてる」
「ふふ、おまえの中も、すごく熱いぞ。どうだ、気持ちいいか?」

396尚六濡れ場(4/4):2007/10/27(土) 14:14:50
「ん、すごくいい。ね、動いて」
 自分も腰を揺らしながら甘える声で六太がせがむと、尚隆はゆるやかに体を
前後に動かしはじめた。半分ほど抜いては、また奥まで挿入する。遠浅の砂浜
に寄せる波のごとく穏やかな動き。かなり物足りないものの、これが前哨戦に
過ぎないことを知っているから、六太はこの感覚を楽しむために神経を集中し
た。
 尚隆が最初に放った精液が潤滑油代わりになっているおかげで、こすれる感
触はなめらかだ。尚隆がゆっくりと中を動くたび、先端からもれる先走りが六
太の中を濡らしていき、さらに動きを助ける。
 まぎれもなく尚隆に犯されているという事実が、性交自体がもたらす快感と
ともに六太を歓喜で満たしていった。
 尚隆の動きが少しずつ早まっていく。それとともに、汗ばんで熱をもったふ
たつの体が境界をなくして溶けあっていく。先ほど指で刺激された場所が、今
度は尚隆のたくましいもので絶え間なく刺激され、ゆっくりと、しかし確実に
六太を高みへと導いた。
「尚隆――尚隆――」
 汗ですべる肌に必死ですがりながら、六太はうわごとのように尚隆の名を呼
びつづけた。もう何もわからない。尚隆の動きが次第に荒々しくなり、腰を打
ちつけるように突き上げられるたび、自分の体が激しくずりあがっていくこと
さえ。わかるのはただ、彼に犯されてひとつになっているという幸せな事実だ
け。
 ひっきりなしに出し入れされる尚隆のものが、六太をどんどん追い込んでい
く。快楽がさらなる快楽を生み、頂点へと至る道筋をつける。
「あっ、あぁっ、あ、ん……っ!」
 尚隆にすがりながら絶え間なくあえぎつづけた六太は、やがて快感の果てに
至福の絶頂に達した。頭の中が真っ白になり、その瞬間、ここがどこで何をし
ているのか、自分が何者なのかさえ忘れた。そうして誰よりも恋しい主の腕の
中で、すべてをさらう快楽の大波に溺れていった。

397名無しさん:2007/10/30(火) 01:03:33
濡れ場ーーーーーーーーーーーーっ!!!
エロ杉です、姐さん、もっとやって(´∀`*)

398尚隆×六太(1):2007/11/18(日) 21:32:41
ベッドシーンがあるため、いちおうエロの範疇に入るんでしょうが、
描写自体はあっさりです。
基調はシリアスでちょっと感傷的だけど、大して深刻じゃないし、結局は甘々。
時期的にいつ頃かは決めていないので、適当に想像していただければと。
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 尚隆の臥室でふたりで酒盛りをするのは、そう頻繁にあることではないが、
かと言ってめずらしいことでもなかった。ただその夜は尚隆が上機嫌で、傍目
にも酔っているのがわかるほど飲んでいたのを不思議に思ったことを六太は覚
えている。
 尚隆は酒を飲んでも酔っぱらうことはほとんどない。武将気質ゆえ、おそら
く常に周囲の様子に気を配っているからだろう。多少良い気分になるのがせい
ぜいで、酔っているように見えても実際は平静であることが多い。
 だからその夜のように、酔いで顔を赤くして上機嫌で笑っている彼を見るの
は、六太にとっても初めての経験だったかもしれない。肩に力強い腕を回され
て抱き寄せられたときはさすがに驚いたが、素性を隠して市井に紛れるとき、
尚隆が荒くれ男たちと乱暴に、それでいて楽しそうにどつきあいながら肩を組
んだりするさまを見ることがあったから、単に今も同じような気分なのだろう
と想像した。
 何より尚隆の笑顔を見られるだけでなく、こうして彼のぬくもりを肌で感じ
られるのはすごく嬉しかったから、六太も何となく楽しくなり、自分でも思っ
たより酒を過ごしてしまった。
 六太は酒好きではないが、酒に弱いわけでもない。外見こそ十三歳のまま止
まっているものの、長い時間をかけて飲酒の経験を積むにつれ、酒量自体はし
っかり向上してしまったからだ。
 そうして、あとから何を話していたのかも思いだせないほど酔っぱらってし
まった六太は、いつのまにか尚隆の胸に抱き寄せられて接吻され、座っていた
榻にわけがわからないうちに押し倒される段になっても、心中では激しくうろ
たえながら、結局何も抵抗することができなかった。

399尚隆×六太(2):2007/11/18(日) 21:35:22

 明け方近くになって、ふと目が覚めた六太は、自分が尚隆の腕の中で眠って
いたことに気づいて狼狽した。ここは王の牀榻の中、おまけにふたりとも素っ
裸だ。既に酔いが醒めていた六太は、動揺しつつも、尚隆の目が覚めないうち
に何とかこの場を去らなければと考えた。昨夜は自分も酔っていたが、それは
尚隆も同じはず。これは酔った勢いでの戯れに過ぎない。すっかり酔いの醒め
た尚隆が冷静な目を自分に向ける前に立ち去りたかった。うまく行けば、尚隆
は覚えていないかもしれないのだから。
 尚隆の重たい両腕で抱きしめられていたとあって、そこからそっと抜け出す
のには苦労した。普段なら尚隆の眠りは浅いため、六太が身じろぎしただけで
気づかれたはずだが、今はぐっすりと眠り込んでいるようで、まったく目の覚
める気配はなかった。
 やっとのことで牀榻を出ると、床の上に尚隆と六太の装束が乱雑に散らばっ
ていた。そういえば尚隆に、愛撫がてら、榻の上ですっかり脱がされてしまっ
たんだ、と思い出す。いくら酔っていても、あんなことをされた記憶は脳裏に
しっかりと刻み込まれていて、忘れようにも忘れられない。六太にとっては何
もかもが初めての経験だったからだ。
 彼は動揺と羞恥で震えながら自分の下着と官服を拾いあげ、急いで身につけ
た。そうしてこっそり窓を開けると、使令を呼び出して背に乗り、まだ夜明け
前の暗い中を仁重殿に戻っていった。

 沃飛に内側から鍵を開けさせて窓から自分の臥室に入りこむと、六太はやっ
と少し緊張をほどいた。女官たちが起こしにくる刻限にはまだ時間がある。ち
ょっと考えて、何気なさを装うために被衫に着替えて臥牀にもぐりこんだ。
 だがぬくもりのないひやりとした褥は、彼の頭をさらにはっきりとさせた。
すっかり眠気の覚めてしまった頭で、どうしよう、と必死で考える。
 昨夜のことは酔っぱらった尚隆の戯れに過ぎないことは確かだ。彼が女好き
であることは、あらためて言うまでもなくよく知っているし、少年であれ、こ
れまで男を抱いたことは一度もないはずだ。かと言っていくら酒のせいとはい
え、六太を女と間違えたとも考えにくい。それよりはまだ、麒麟というめずら
しい生きものを抱いてみたらどんな感じがするのかと興味をそそられたという
ほうがありえそうな気がした。

400尚隆×六太(3):2007/11/18(日) 21:40:11
 あと一刻もすれば、朝議で彼と顔を合わせなければならない。尚隆のことだ
から、いくら酔っていても昨夜のことを都合よく忘れていてくれるとは期待で
きないが、それならそれで、こちらが何事もなかったような顔をしなければと
考える。
 ――そう、自分が深刻な素振りを見せてはだめだ。そうすれば尚隆も、一時
の戯れに過ぎないのだからすぐに忘れてくれるだろう。もしかしたら口直しに、
今日にでも関弓に降りて妓楼に行ってくれるかもしれない。
 そこまで考えて、六太は鋭い胸の痛みを覚えた。
 きっと尚隆は、六太が接吻すら初めてだったとは知らないだろう。外見は外
見として、これだけ長いこと生きていれば、情交の経験があると考えたほうが
自然だ。相手が男であれ女であれ。
 だが実際には六太は純潔だった。十三歳という微妙な肉体年齢は、少なくと
も彼の場合は性的な欲求をもたらさなかった。常世には性教育もないし、そも
そも子供が里木に生る世界だ。子を持つために夫婦が交わる必要すらない。だ
から六太は、尚隆が好きだったけれども、その意味での欲求をいだいたことは
一度もなかったし、たまにふざけて頭をくしゃくしゃにされる程度のふれあい
で満足していた――満足しようとしていた、今までは。
 なのに。
 六太は自分の腕で両肩をいだいた。尚隆にきつく抱きしめられたときの感覚
が蘇る。榻の上で――臥牀の上で。
 あれは夢だ、と彼は必死に自分に言い聞かせた。きっと尚隆は覚えていない。
覚えていたとしても軽い気持ちで戯れただけだろう。六太と違い、大勢の女を
遊びで抱いてきた男なのだ、一回一回の情交がさほど重きを置くとは思えない。
何かあるとしても、せいぜい「いやあ、昨夜はすまなかった。酔っていたもの
でな」と軽く笑って言ってくる程度だろう。
 だから自分も調子を合わせて「ったく、欲求不満かよ」とでもからかうよう
に返そう。少し呆れた感じで。どうでもいいように。

401尚隆×六太(4):2007/11/18(日) 21:44:20

 しばらくして朝議の場で顔を合わせた尚隆は、特に変わったところはないよ
うに見えた。六太は内心で「やっぱり」と思いつつ、自分も平静を装えている
ことにほっとした。まだ狼狽は残っていたから、相手の目をまっすぐに見るこ
とはできなかったが、少し時間を置けば、また以前のように振る舞えるように
なるだろう。
 そうして日が落ちて臥室にさがった六太は、ほんの少しだけ、尚隆から呼び
出しがあるのではないかと心の底で期待した。昨夜のように「酒でも飲まんか
?」と。その反面、本当に戯れだったのなら、そんなことがあるはずはないと
もわかっていた。
 しばらく暗い臥牀の上で膝を抱いてまんじりともせずに過ごしていた六太は、
やがて褥にもぐりこむと何とか眠ろうとした。しかしなぜだか涙が出てきて、
結局朝方までほとんど眠れなかった。

 結局、良くも悪くも尚隆の言動は変わらなかった。傍目からは六太との間に
何かあったとは決してわからないだろう。それほど変化がなかった。
 やはり彼にとって、戯れの情交など記憶の片隅にも残らないのだ。そう六太
は鬱々と考えた。それに女と違って、男など抱いてもおもしろくはなかったの
だろう。興味本位で麒麟を抱いてはみたものの、期待はずれでつまらなかった
のだ。
 仕方がないことだとはわかっていた。何より六太自身、あれが情交というも
のなら楽しんだとは言えない。
 確かにぎゅっと抱きしめられたことは嬉しかったものの、口の中を隅々まで
なめられたり舌を吸われたりするのは変な気分だったし、思ってもいないとこ
ろに後ろから尚隆のものを挿入されたときは、衝撃のせいもあっただろうが、
正直なところ気持ちが悪くなりかけた。挿入されたまま尚隆の膝に座らされ、
前に回された手で股間を容赦なくしごかれたときは激しく動揺した。あとから
思えば、あれが快感というものなのだとわかったが、そのときは初めての感覚
に動揺するばかりで、おまけに小水とは違う奇妙な色の物を尚隆の掌に放出し
たときは、何が起こったのかわからずに恐慌に陥りかけた。尚隆がなだめるよ
うに「大丈夫だ」とささやいて、もう一方の腕でしっかり抱いていてくれたか
らそれ以上混乱せずに済んだだけだ。

402尚隆×六太(5):2007/11/18(日) 21:46:21
 その後、尚隆は六太を褥にあおむけに押し倒してのしかかり、六太の股を強
引に大きく開かせるなり、また挿入してきた。激しくあえぎながら六太の名を
幾度も呼んでいたが、六太のほうは何が何だかわからずに、尚隆の荒々しくも
律動的な腰の動きにただ耐えていただけ。
 ああいうとき、尚隆がよく通っている妓楼の女がどのように反応するのかは
知らなかったが、きっと六太よりはるかに男を楽しませる反応を見せるだろう
ことは想像に難くなかった。第一、女なら肌は柔らかいだろうし、豊かな胸や
尻、引き締まった腰など、見たり触れたりするだけで大人の男は楽しいだろう。
六太のように、単に細いだけのおもしろみのない体とはわけが違う。
 尚隆があんなにあえいでいた以上、六太を抱いて少しは気持ちが良かったの
かもしれないとしても、普通に女と交わるときとは比べものにならなかったに
違いない……。

 そんなふうに鬱々と過ごしていた六太は、数日後の夜、尚隆に夕餉に誘われ
て動揺した。夕餉に誘われること自体は、これまためずらしくもなかったが、
今回は何しろ先日のことがある。いったい尚隆が何を考えているのかわからな
かった。
 ――いや。彼にとって大した問題ではなかったから、以前のように気軽に六
太を夕餉に誘えるのだろう……。
 ここで断れば、何かと勘ぐられないともかぎらない。そう思った六太は、極
力平静を装って正寝に赴いた。
 王の夕餉となれば普通は豪勢なものだが、華美を好まない尚隆の場合はささ
やかなものだった。その割には、その夜は普段よりずっと豪華な食卓に見えて、
六太は訝しんだ。それでいて王と麒麟の料理が分けられておらず、尚隆の前に
ある料理もすべて六太と同じものが並んでいた。おまけに見た目が色とりどり
で美しいのはもちろん、少しずつさまざまな料理を盛りつけて、決して小食で
はないが大食漢とも言えない六太がいろいろな味を楽しめるよう工夫が凝らさ
れていた。
「どうした、おまえの好きなものばかり揃えたのだぞ。遠慮しとらんで食わん
か」
「う、うん」

403尚隆×六太(6):2007/11/18(日) 23:17:56
 六太は戸惑いながらも箸を取り、料理を口に運んだ。宮城の一流の料理人が
作ったものだ、まずいはずがない。六太の顔が少しほころぶのを見たためだろ
うか、やがて尚隆も嬉しそうに同じ料理を食べ始めた。そうして普段よりずっ
と無口な六太の気を引くように、今日、内殿で起きた話を、おもしろおかしく
語り出す。いわく、どの官がこう言った、あの官がああ言った……。
 どれほど気分が沈んでいようと、うまい料理を腹いっぱい食べればそれなり
に気は晴れるものだ。それに尚隆がやたら気を引き立てようと話をするので、
六太はやっと、数日来の気鬱から抜け出せたような気がした。
 これでいいんだ、と思う。こうして今までと同じように、笑って喋って尚隆
と過ごせるなら。
 そんなふうに結論づけた六太が、やがて夕餉を終えてその場を辞そうとする
と、尚隆が酒瓶を掲げて「付きあえ」と声をかけた。六太は内心でどきりとし
たが、何とか笑って「この飲んべえ」と返すと、なみなみと注がれた酒杯を持
って尚隆の向かいの榻にくつろいだ。
 ただ、あのときのように酔っぱってしまわないように気をつける。適宜酒肴
をつまみながら、ちびちびと飲んでいる程度なら大丈夫だろうが。
 夜もかなり更けた頃、ふと官の噂話をしていた尚隆が立ち上がるなり、話を
続けながら、六太の座っていた隣に腰掛けてきた。六太は焦ったが、ここで逃
げては逆に変に思われると我慢して、動揺を隠すように酒杯をあおった。
 だが空になった杯を卓に置いたところへ尚隆が手を重ねてきたので、びっく
りして反射的に手を引っ込めようとした。しかし尚隆が素早く彼の手をつかん
でしまったので、引っ込めるに引っ込められず、とりつくろうことも忘れて、
動揺の面持ちをあらわにしてしまった。「この酔っぱらいめ」とふざけたよう
に言ったものの、取り繕いきれずに声が震えてしまった。手の震えも、尚隆に
伝わってしまっているはずだ。六太は混乱して顔をそむけてしまった。
「酔っぱらい、とな」尚隆の声音に、かすかな苦笑が混じる。「確かに酔って
はいるが、酔っぱらってはおらぬぞ」
 そうして六太がどうしていいのかわからずに体を固くしていると、やがて尚
隆はひそやかな声で「今夜は泊まっていけ」と言った。六太は激しくうろたえ
た。どうしよう、と混乱するとともに、あの夜の羞恥が蘇ってきて耳まで赤く
なる。尚隆はそんな六太を強引に胸元に抱き寄せると言った。

404尚隆×六太(7):2007/11/18(日) 23:20:29
「おまえも知ってのとおり、俺は商売女や浮かれ女ばかり相手にしてきた。何
しろ遊びのつもりだからな、素人女や生娘に手を出したことはない」
 彼が何を言おうとしているのか六太にはわからなかったが、あの夜のことを
尚隆が覚えていることだけはわかった。
「だからそういううぶな相手を抱くからには、俺はそれなりの覚悟をしている
つもりだぞ。まあ、相手がおまえだけに、今さらどうにも照れくさくて、酒の
力は借りたがな」
 そう言って六太の顔を覗きこむ。だが六太のほうは取り乱したあまり、彼の
言葉の意味を考える余裕などどこにもなかった。
「おまえ、初めてだったのだろう?」
 必死に顔をそむけていた六太は、何もかもを見通されていたことを知って絶
望した気分になった。これ以上、尚隆は自分の何を知っているのだろうと思い、
泣きたい気持ちになる。
 六太が動揺のあまり、ますます体を震わせているのがわかったのだろう、尚
隆はその体をそっと抱きしめると、なだめるように背をゆっくりとさすった。
「この間はいきなりだったからな、優しくしようと思っていたが、つい激しく
しすぎてしまったようだ。おまえの衝撃が大きすぎたかと思ってしばらく様子
を見ていたのだが――」
 そう言いながら、そっと相手の唇をついばむ。六太の体がびくっと震えた。
「――そろそろ俺のほうの我慢が限界でな。おまえがいやでなければ、そろそ
ろまたおまえを抱きたいのだが」
 そう言って、また唇を寄せる。今度は先ほどよりも強く。六太は狼狽のあま
り、却って抵抗できなかった。
「で、でも、俺、男で――」
 何とかそんな言葉を押しだしたが、尚隆は意に介さなかった。今度は耳元か
ら首筋にかけて唇を這わせながらささやく。
「確かに男だな。それで……?」
 優しくも淫靡な低音の響きに耳をなでられて、六太は思わずぎゅっと目をつ
むった。尚隆の胸を押しのけたかったが、幾度も首筋に唇を這わせられて力が
抜けてしまい、すがるように尚隆の衣をつかむのが精一杯だった。
「まあ、おまえのほうはあまり良くなかったようだから、拒まれても仕方がな
いが……。だがこういうことは慣れが大きいものだぞ。俺も男とやるのは初め
てだから勝手がわからんが、聞くところによると、幾度もやっていれば良くな
るものらしい。それまで少し我慢してくれんか」

405尚隆×六太(8/E):2007/11/18(日) 23:23:05
「……尚隆は……?」
「ん?」
「尚隆は、少しは良かった……?」
 六太は羞恥でいっそう赤くなりながらも、消え入るような声で思い切って尋
ねた。尚隆はかすかに苦笑しながら、「少しどころか、かなり良かったぞ」と
答えた。
「なんだ、そんなことを心配していたのか? ん?」
 どこか嬉しそうな尚隆の声に六太は何も答えられず、相手の首元に顔を埋め
た。それを了解と受け取ったのだろう、尚隆は六太の体を強く抱きしめると顔
を上げさせ、荒々しく唇を奪った。

 褥で裸の六太を組み敷き、激しく腰を動かして一物を出し入れする。女とは
多少勝手が違うものの、もたらされる快感は勝るとも劣らない。ただ最初に六
太の股間をしごいて先にいかせてやったのだが、自分に犯されることで六太も
快感を味わってくれればと、尚隆はそれだけが残念だった。しかし妓楼で聞き
かじった話を信じるならば、もう少し回数を重ねれば六太も感じるようになっ
てくれることだろう。
 六太は隠しおおせていたつもりでいたようだが、時折、自分に熱い視線を向
けてくることは知っていた。あれほど一途な目で見られて、心が騒がないほう
がどうかしているというものだ。
 だが同時に、六太が純潔で、うぶであることもわかっていた。これまでそん
な相手の想いを受けとめるだけの覚悟はできていなかった。
 しかし尚隆の王朝はとうに安定し、既に長く繁栄している。そろそろ自分に
褒美を与えてもいい頃だろう……。
 六太の髪はしなやかで、花の香りがした。褥に乱れて広がる見事な金の髪が、
それだけで相手の情欲を煽るなどとは、六太自身は思いもしないだろう。まろ
やかな頬と同じく唇は柔らかく、夜目にも鮮やかな白い肌はなめらかだった。
尚隆の首にしがみついて愛撫に身を委ねるさまはとても官能的で、反応自体は
まだまだぎこちないながらも、小さな唇から漏れる吐息は甘かった。
 腕の中の六太の初々しい反応を愛でながら、尚隆はいっそう激しく腰を動か
して快楽にのめり込んでいった。

(終)

406名無しさん:2007/11/19(月) 23:00:10
ろくたんと小松の初夜ーーーーーーーーーーーーー!!!!ヽ(*´Д`)ノ
清純なろくたんに何ということを!まったくうらやry

407六→尚?「春信」1/10:2007/11/21(水) 10:36:50
初投下。ケータイからの為、小分けで読み辛くてスイマセン。エロ無いしorz


 六太は王宮内の通路を、内宮にある尚隆の私室へと向かっていた。
 月の明るい春宵。辺りには、桃李花の微かな香りが漂っている。

「なあ尚隆、朱衡がさあー……」
 辿り着いた主の部屋は、しかし闇に包まれていた。六太が室内を見渡すと、
窓際に置かれた椅子の辺りが仄かに明るい。近付くと、休息用の椅子に座った
まま眠る彼の主の姿があった。
 常の尚隆にしては珍しく、宵衣肝食の一日を送った所為で疲れたのか、どう
やら熟睡している様である。

408「春信」2/10:2007/11/21(水) 10:39:25
 眠っている間に灯火の油が切れたらしく、薄闇の降りた室内に、蒼く冴えた
月明かりだけが、軽い寝息を立てて眠る尚隆の姿を照らしている。
「ったく……餓鬼じゃあるまいし、こんなとこで寝るなよなぁ」
 平素の自分の行為はかなり高い棚に上げ、主を起こそうと近付いた足が、ふ
と立ち止まる。
 ――そう言えば、こんなに近くで尚隆の顔を見るのは初めてかも知れない。
 先年、元州の乱の折には、彼の背に負われたりもしたが、六太自身はその時
意識が朦朧としていた為、当時の事は殆ど憶えていないも同然だった。

409「春信」3/10:2007/11/21(水) 10:41:14
 そんな事を思い出し、改めてよくよく観察すると、尚隆は以外に睫毛が長い
のだと気付く。すっと通った、意志の強そうな鼻筋も、如何にも武人然として
いて凛々しい。
 尚隆は蓬莱にいた頃も仲々の好男子だったが、こちらに渡ってからは、それ
こそ老若男女誰が見ても、文句の付け様が無い程の美丈夫へと変わっていた。
 暫し興味深げに尚隆の顔を検分していた六太の視線が、とある一点で、はた
と止まる。
 引き締まった口元。細めだが逞しい顎の線も、精悍な尚隆らしい。そして。
 ――尚隆の、唇……。

410「春信」4/10:2007/11/21(水) 10:42:53
 ――元州からの帰路、騎獣の背に微睡んでいると、耳元でお前が好きだ、と
囁かれた。その時は眠ったふりで誤魔化したつもりだったが、尚隆には分かっ
ていただろう。
 あれ以来、尚隆は何も言ってこないし、自分も未だ返事はしていない。

 不意に、六太の中に不可解な感情が湧き起こった。
 ――尚隆に、触れてみたい……。
 一瞬そんな事を思った自分を疑ったが、一旦芽生えた感情は、どうにも抗い
難いものだった。
 六太は、何かに引き寄せられる様に尚隆の身体の上に屈み込むと、その唇に
そっと、口づけた。

411「春信」5/10:2007/11/21(水) 10:44:38
「……!」
 いきなり我に帰る。慌てて後退り、傍の卓の上に飛び乗って膝を抱えた。
 鼓動が、早鐘の様に鳴っている。
 ――おれ、何やってんだ……。
 震える指で、自分の唇にそっと触れる。尚隆の唇の熱がまだ残っている様な
気がした。
 ――何だか、胸が痛い……。

 すると、不意に尚隆が目を覚ました。大きく伸びをしつつ、椅子から身体を
起こす。――と、瞬間身構え、直ぐにそれを解いた。
「そこにおるのは……、六太か」
 御名答、と薄闇の中、俯き加減で答える。部屋が暗くて良かった、と心底思った。

412「春信」6/10:2007/11/21(水) 10:47:02
「――どうした、何か用か?」
 欠伸を噛み殺しつつ訊ねる主に、わざと大袈裟に手を振って答える。
「ん、ああ!――そうだ。朱衡達がさ、今夜は月が綺麗だから、園林で月見酒
でも飲もうって!」
 上手く誤魔化せたのか、尚隆は別段不審に思う様子も無さそうだった。
「ほう、あいつらもたまには気が利くな」
「ま、時々は飴も舐めさせてやらなきゃいかんと思ったんだろ」
「まったく……あいつら、一体どちらが主だと思っておるのやら……」
尚隆が溜息混じりに苦笑する。六太も少し落ち着いて、主に笑い掛けた。

413「春信」7/10:2007/11/21(水) 10:48:33
「あはは……。まあ、せいぜい頑張れ、王様」
 尚隆に怪しまれる前に退室しようと、じゃあ先行くから、と言いつつ、卓を
飛び降りた六太の背に、ああそうだ、と声が降ってくる。恐る恐る振り返ると
怖いくらいに笑顔全開の尚隆と目が合った。
「――さっきの接吻、仲々良かったぞ」
 一瞬、六太は激しい目眩と動悸に襲われた。
「な、お前……!寝てたんじゃ――」
「生憎、他人の気配には敏感な質でな。生来の貧乏性だ、仕方無いだろう」
 しれっと言ってのける尚隆の眼前で、六太の顔がみるみる赤くなっていく。

414「春信」8/10:2007/11/21(水) 10:50:10
「あ……あれは、その……別に深い意味はないっつーか、気の迷いで……」
 夜目にも明らかな程、赤面し慌てる六太の姿に、尚隆の口角が上がる。
「……まあ、まだまだ及第点とは言えんがな……」
 呟いた言葉は、混乱している六太の耳には届かなかった。
 ――なに、これから幾らでも特訓してやれば良いだけの事だ、と尚隆は一人
ごちる。
「何しろ、時間だけは腐る程あるのだからな……」
「な、なんか言ったか!?」
「いや別に……さ、園林に行くか」
 さり気なく肩に置かれた尚隆の手を、六太は乱暴に払いのける。

415「春信」9/10:2007/11/21(水) 10:51:43
「おっ、お前先に行け。おれは後から一人で行くから……」
 焦りまくる六太を後目に、尚隆は先程から上機嫌である。
「そう、つれない事を言うな。何なら接吻の礼に抱いていってやろうか?」
「ふ、ふざけんなっ!!次そんな事抜かしたら、本気で使令の餌にしてやる!」
 六太の菫色の瞳は、充血の所為ですっかり赤紫に変色している。
「おぉ怖。我が麒麟殿は気が立っているな。もしや月の障りか?」
 言いながら六太の腰に素早く手を回して、顔を覗き込んでくる。今にも額が
触れそうな近さに、思わず息を飲んだ。

416「春信」10/10:2007/11/21(水) 10:53:15
「!!――お、お前阿呆かっ!?おれは男だ。つーか、こっちの世界にゃんなもん
ねえだろうがっ!!」
「本気にするな、単なる言葉の綾だ。はっはっは」
「何がはっはっはだあ!?てめーいっぺん死ね!!」

 ――月は未だ中天に達せず、今宵の酒宴は荒れそうである――。
〈了〉


「はじめてのチュウ」六太編です。尚隆への想いに戸惑う齢34のウブな
ろくたんを書きたかったのですが…SSって難しいorz
「初チュウ」ネタは他にも利広→利達や正頼→英章等があるので、
いつかまた気力があれば、書いてみたいと思います。

417名無しさん:2007/11/21(水) 21:09:59
わー!ろくたん可愛すぎる(´∀`*)尚隆が羨ましい…
他CPも是非キボン

最近書き手さん増えて嬉しいなー

418利広→利達「夏日」1/13:2007/11/25(日) 11:25:51
「初チュウ」利広編。今回も分散投下&エロ無し御容赦下さい。
※利広12歳の夏、一人称は「僕」です。
*****

 ──胸の奥で炎が燃えている。激しい紅蓮の炎では無く、静かな蒼白の炎が。
それは、もうずっと以前から消える事の無い、決して叶わぬ恋の欠片──。

 利広が居室に入ると、兄の利達の姿だけがあった。
「ただいま、兄さん。──父さん達は?」
 卓に向かい、帳簿を繰っていた利達が顔を上げる。
「おかえり。お父さんは帳場で、お母さんは厨房。文姫は飯堂の手伝い」
「そう。……今日も舎館の方、忙しそうだね」

419「夏日」2/13:2007/11/25(日) 11:26:55
 利広は兄の隣の椅子に座る。持っていた本包を開くと、一通の手紙を取り出
し、広げて読み始めた。字面を撫でる様に一読すると、溜息混じりで卓の上に
ぽいと放る。
 帳簿に目を落としていた利達は、その動作に再び顔を上げた。
「……また貰ったのか。今度は誰から?」
 弟の顔と手紙を交互に見ながら尋ねる。
「同級の淑麗。──帰り際に学舎の前で待ち伏せされたんだ」
 答えつつ、兄の前に置かれた薄荷の香りの冷茶を一口失敬する。
「今月に入ってもう三通目だよ。みんな、一体何が楽しくてこんな物寄越すん
だろう」

420「夏日」3/13:2007/11/25(日) 11:28:00
 ぶつぶつ言いながら薄荷茶を飲む利広を見ていた利達が、急に声を上げて笑
った。普段物静かな兄の楽しそうな笑い声に、利広は一瞬面食らう。
「やっぱりお前はまだまだ子供だな……」
 笑声混じりに言われ、利広は不審そうに兄を見た。利達は言葉を継ぐ。
「利広くらいの歳になったら、想う相手の一人も出来て当たり前だろう。そこ
へお前みたいな、上士確実で六芸に秀でた奴が近くにいたら、もてない方がお
かしいと思うぞ」
「おかしくないよ。だって学校は勉強する所じゃないか。なのに恋文なんか持
って来たりしてさ」

421「夏日」4/13:2007/11/25(日) 11:28:51
 利広が早口でまくし立てると、利達は再び笑う。
「だから子供だっていうんだよ。誰かを好きになるのは、別に悪い事じゃない
だろう?」
 諭す様な利達の言葉に一瞬、利広の視線が揺らぐ。卓上の手紙──薄桃色の
如何にも女の子が好みそうな書箋だ──をちらりと一瞥し、呟いた。
「そんな事分かってるよ。それに──僕だって想い人がいない訳じゃない」
 利達は少し驚いた様に目を見開いたが、すぐにいつもの穏やかな表情に戻る
と、横を向いたままの弟の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「そうか。……でも良かったよ」

422「夏日」5/13:2007/11/25(日) 11:29:54
「……どうして?」
 振り向いた利広が尋ねる。
 利達は弟の為に薄荷茶を煎れ直すと、帳簿を脇に避け、利広の方を向いて座
り直した。
「勉学に励むのも大事だけど、最近のお前、少し根を詰め過ぎてる感じだった
からな。たまには息抜きも必要なんじゃないかと思ってたんだ。……で、相手
はどんな娘なんだい?」
「どんな、って……」
 利広は困った様に俯く。利達はその顔を覗き込んだ。
「学校の友達か?」
 ふるふると首を横に振る。
「じゃあ、友達の姉さんか妹?」
 またしても首を振る。
「……歳はいくつ?」

423「夏日」6/13:2007/11/25(日) 11:30:48
 一瞬、間を置いて答えが返る。
「……四つ、上」
「俺と同じか。知ってる娘かな」
 利広は急に顔を上げると、本包から書籍や書き付けを取り出した。
「もういいだろ。……宿題しなきゃ」
 急に元気の無くなった弟の姿を利達は不審に思ったが、それ以上の追求はせ
ずにいた。
「ああ、そうか。……利広、俺に手伝える事があれば何でもするからな」
 それを聞いた利広の手が止まる。暫し手元を見つめた後、ゆっくりと利達の
顔を見上げて訊いた。
「何でも?本当に……?」
 利達は微笑って頷く。
「ああ、勿論」

424「夏日」7/13:2007/11/25(日) 11:31:55
「だったら……告白の練習相手になってよ」
「……告白?」
 いつになく真剣な利広の表情に利達は驚く。弟はこんな目をしていただろう
かと疑いたくなる程、大人びた視線を向けられ暫し茫然とした。
「あ……、ああ。いいよ」
思わず頷くと、利広は開いていた本を閉じ、兄の方へ向き直った。
「……どうして、いつまでも僕を子供扱いするの?」
「え……?」
 利達の心臓が跳ねる。
「もう始まってる……。兄さんは黙って聞いてて」
「ああ……、分かった」
 利達が原因不明の心許無さを感じた瞬間、腕を取られていた。

425「夏日」8/13:2007/11/25(日) 11:32:48
「利こ……」
「僕だって、もう小さな子供じゃないんだ」
 利達は驚いた。自分の手首を掴んでいる利広の手は、力が入っている様には
見えないのに、全く引き剥がす事が出来無い。
「……いつも思ってたんだ、早く大人になりたいって。立派な大人になって、
貴方に吊り合う様な相手になりたいって」

 利広は目を逸らさず、利達は逸らせずに見つめ合う。
「……それでも、いつまで経ったって歳の差だけは縮まらない。当たり前だけ
ど……貴方はいつまでも僕を子供扱いするんだ」
 一旦言葉を途切り、溜息を吐いて俯いた。

426「夏日」9/13:2007/11/25(日) 11:33:41
「……でも、諦め切れない。何度も忘れようとしたけど駄目なんだ……」
 顔を上げた利広は、泣いていた。
「もう、どうしたらいいのか自分でも分からない。このままじゃ、いつか貴方
を傷付けてしまいそうで──」
 両目からぼろぼろと大粒の涙を零す弟の姿に、利達の胸は締め付けられる様
に痛んだ。利広にこれ程心を痛ませる相手がいるとは、思いもよらなかったの
だ。
「利広──」
 もうやめよう、と継ごうとした言葉は出口を失った。利広に唇を塞がれた為
に。
「──!?」
 気付いた時には舌を絡め取られていた。

427「夏日」10/13:2007/11/25(日) 11:34:36
 利達は混乱していた。接吻の経験は初めてでは無い。だが利広のそれは利達
の知る限りのどんなものとも違っていた。
 利広の舌先が巧みに利達を誘う。触れては離れ、絡めては逃げる。貪る様に
強く吸われたかと思うと、直ぐに優しく甘噛みされた。
 止めさせなければ、と利達は思った。だが身体が動かない。全身が痺れた様
に疼いて、指一本すら自由にならなかった。
「ん……っ……」
 我知らず声が出てしまう。固く瞼を閉じ、許し難い感覚をやり過ごそうと必
死になった。
──利広の身体を、今直ぐ撥ね除けたい……。

428「夏日」11/13:2007/11/25(日) 11:35:29
 しかし、利広の接吻からは、その想いが痛い程伝わって来る。愛情、憧憬、
ほんの少しの憎悪、そして何より圧倒的な悲愴感──。
 利達が戸惑っている間に、口付けは更に深くなっていく。そして利広の指先
が利達の衿の合わせに割り入った時、不意に表通りで盛大に爆竹が鳴った。
「──!!」
 同時に身体を離す。利達は混乱していたが、利広は直ぐに笑顔を作って言っ
た。
「……つい気持ちが入り過ぎちゃったよ。変な事してごめんね、兄さん」
 利広、と呼び止めようとした時には、既に居室の戸口に手を掛けていた。

429「夏日」12/13:2007/11/25(日) 11:36:22
「父さん達の手伝いに行ってくるよ……そろそろ夕飯の時間だしね」
 そのまま出て行こうとする利広に、利達は問い掛けた。
「利広……お前、そいつの事──」
 利広は再び、悲し気な表情で真っ直ぐ兄を見つめ返し
た。
「……好きだよ。ずっと前から好きだった。これから先も、僕はあの人の為に
生きて、死ぬんだ──」

 利達は暫くの間、利広が出て行った扉を見つめていた。追い掛けようか、と
一瞬思ったが、実行される事は遂に無かった。
 窓の外からは、夕方の生ぬるい風と共に、表通りの喧噪が流れ込んでくる。

430「夏日」13/13:2007/11/25(日) 11:37:17
 利達がふと床に目をやると、利広宛の恋文が落ちていた。それは、多分もう
二度と読まれる事の無い、決して叶わぬ恋の欠片──。
 利達は何も出来ず、ただ、その場に立ち尽くしていた。

〈了〉

*****
再び投下してしまいました。下手ですが萌えのみで書いてます(汗
因みに作中の利広はショウ学(ケータイ変換不可)に通ってる設定。
利達の年齢は利広の4歳上(16)に勝手に決めました。
次回は正頼→英章(半分出来た)を投下する予定です。

>>417
レス有難うございます。六太気に入って頂けて嬉しいっす!

431名無しさん:2007/11/25(日) 21:45:42
なんという萌え兄弟
姐さんGJ!!

432名無しさん:2007/11/25(日) 23:43:14
初々しい兄弟に禿げた。
大人カプ大好物なんで次回も期待してます姐さん

433「春信」「夏日」書き手:2007/11/26(月) 11:57:58
読んで下さっている方、どうも有難う御座います。

>>431
こんなバカ兄弟に萌えて下さるなんて…(嬉泣
利広は4本目にも出ますので、又読んで頂けたら嬉しいです。

>>432
大人カプですか…(汗 どうも自分が書くとガキ臭漂ってしまうので
あまり期待はなさらない方がよろしいかと…orz

予定では、近日中に後2本は確実に投下出来るSSがあるのですが
一人が続けて何本も投下して良いものかと考えています。
特に自分の場合ケータイなので、使用レスも他の方より多いし。
でも別スレ立てる程レベル高くも無いので、ちと悩んでます…。

434名無しさん:2007/11/26(月) 19:40:32
いいんじゃないでしょうか。
むしろここ、尚六物が多いので、
姐さんが他のカプをガシガシ投下してくれると
他の人も投下しやすくなるような。
多少長くなるようならスレ立ててもいいかと。

435名無しさん:2007/11/26(月) 20:55:42
連投やレス数は別に構わないんじゃないかな
自分も色んな書き手さんの色んなカプ読みたい

436「秋思」前書き:2007/11/27(火) 18:55:35
>>434さん、>>435さんのお許しを頂けたので、このままガシガシ
行かせて頂く事にしました。ビバ!マイナーカプ!!

と云う訳で、「はじめてのチュウ」正頼編です。相変わらずエロ無し。
何だか、十二国記のキャラを借りただけの、ただのベタなオリジナルに
なってしまった様な感じです。戴好きの方ゴメンナサイorz
でも私は大変楽しかったです。武人とか軍人とか鎧とか軍服とか
大好物なので。そう云えば、驍宗配下の顔ぶれが某金髪の元帥府と
重なって見えるのは私だけでしょうか?

次は、利広の話の続編?を投下予定です。相手は兄さんじゃ無いけど…。

437正頼→英章「秋思」1/16:2007/11/27(火) 18:57:07

*****

 戴国禁軍左軍、驍宗将軍配下の軍吏、正頼と云えば、頭脳明晰で常に冷静沈
着。そして何より、その容姿の美しさで右に出る者はいないと、王師の間でも
有名な存在だった。
 また、彼が怒りを露わにしたり、不機嫌そうにしている姿を、ついぞ見た事
が無いと云う噂も、半ば公然と囁かれていた。

 斯く云う正頼本人も、自分は滅多な事で腹を立てたりする様な、器の小さい
人物では無いと信じて疑わなかったし、事実、現在に至るまでずっとその様に
振る舞って来ていた。
 ──あの日、あの男に出会うまでは。

438「秋思」2/16:2007/11/27(火) 18:58:24
 その日、城内の堂屋では、驍宗旗下の軍吏が一堂に会し懇親を兼ねた軍議が
開かれていた。
 そこで新たに紹介された男は名を英章と云い、元は瑞州師の師帥を務めてい
たという。先の王師の訓練で偶然、驍宗の目に留まり、その戦術の才能を買わ
れて禁軍に招聘されたらしい。
 斯くして、鳴り物入りで驍宗軍の幕僚の仲間入りを果たした彼は、早速正頼
に目を付けた様だった。

「──貴公が正頼殿かい?」
 酒宴が始まるや、杯を片手に正頼の許へやって来て、隣に陣取った。
「ええ、そうですが。……何故私の名を?」

439「秋思」3/16:2007/11/27(火) 18:59:42
 正頼が尋ねると、英章はまるで新しい玩具を手に入れた子供の様な笑顔で答
えた。
「お噂はかねがね伺っている。驍宗様旗下の文官の中でも、貴公は一番の逸材
だそうだね」
 正頼は微笑みつつも心の中でまたか、と嘆息した。自分に関する口さがない
噂のお陰で、近付いて来る者は跡を絶たない。その殆どが、嫉妬や下心をちら
つかせていた。
「とんでもない。私などより英章殿の方が、余程将軍の覚えは目出度かろうと
存じますが」
 我ながら百点と思える微笑で答えた。こう云う手合いは適当にあしらってお
くに限る。

440「秋思」4/16:2007/11/27(火) 19:02:02
 すると、英章の顔から急に笑みが消えた。それに続いて浮かんだのは、侮蔑
にも似た表情だった。
「当然だ。私は驍宗様に認められ、旗下に加わらんが為に今まで努力してきた
んだから。武人としての一刻も早い栄達へ、最善の方法をとったまでだよ」
 暗に驍宗を利用しているとも受け取られかねない表現を、英章は涼しい顔で
口にした。正頼は思わず辺りを見回す。
「何を怯えているんだい?私は本音を言ったまでだよ」
 不意に英章が正頼の首の後ろに触れる。何事かと発するより早く、頭をぐい
と引き寄せられていた。

441「秋思」5/16:2007/11/27(火) 19:02:58
「!!何を──」
「貴公も、たまには本音で喋ってみたらどうなんだ?いつも人形みたいな顔で
笑ってるばかりじゃ疲れるだろう」
 耳元で囁き終わるや、その頬に素早く口づけた。
「──!?」
 瞬間、堂内にぱしん、という鋭い音が響いた。動転した正頼が、思わず英章
の頬を張ったのだ。
 賑やかだった広間が、一瞬にして水を打った様に静まり返った。その場に居
た全員──驍宗までも──が、ぽかんと正頼を見つめていた。
──あの正頼が、怒っている……?
 殴った方は真っ赤な顔で手を上げたまま、肩で息をしている。

442「秋思」6/16:2007/11/27(火) 19:03:56
 そして殴られた方は、頬をさすりながら子供の様に破顔して言った。
「うん、やっぱり貴公はこっちの方がずっと魅力的だ──」

 それ以来、正頼と英章が一緒に居る姿が頻繁に目撃される様になった。尤も
真実は、英章が半ば強引に正頼に纏わり付いていたのだが……。
 最初は彼の行動の不可解さと初対面時の印象の悪さから、警戒の色を濃くし
ていた正頼も、徐々に英章の居る日常に慣れていった。

 ある秋の午後、正頼は珍しく一人で宮城内の回廊を歩いていた。両手には、
軍務の書面の束を幾つも抱えている。

443「秋思」7/16:2007/11/27(火) 19:04:51
 暫くすると、驍宗軍の同輩である師帥の霜元と行き合った。二人の付き合い
は長い。折角だからと、近くの四阿で休んでいく事になった。
 櫨や紅葉が美しく色づいた園林の中を並んで歩く。
「今日は英章の姿が見えない様だが……」
 霜元の問いに、正頼は溜息混じりで答える。
「朝から自師の兵卒の訓練だそうですよ」
 そして、まったく英章ときたら普段から真面目に訓練してこないからこの時
期に皺寄せが来るのだ兵達が不憫でならない──などと散々悪態を吐く。
 そんな同輩の様子を、霜元は目を丸くして窺っていた。

444「秋思」8/16:2007/11/27(火) 19:05:43
 それに気付いた正頼が、ふと怪訝な顔で霜元を見上げる。彼はふわりと微笑
んで答えた。
「いや、失礼。──本当に変わったなと思って」
「……は?」
 何の事かと訝しむ正頼に、霜元は続ける。
「最近の貴公だ。──とても良くなったと思う」
 益々話の見えなくなった正頼に、朋友は苦笑する。
「気を害さないで貰いたいんだが、以前の貴公は何処か、真意を計りかねる様
な雰囲気を纏っていた感じがする。良く言えば孤高。悪く言えば──冷血、か
な。……でも、最近の貴公は、人前でも素直に感情を表す様になったと思う」

445「秋思」9/16:2007/11/27(火) 19:06:35
「別段、以前が悪かったと云う訳では無い。我々は軍吏なのだし、あからさま
に感情を露わにしてしまうよりは余程良い……」
 だが、と霜元は続ける。
「人は、時に本音でしか分かり合えない事もある。私や巌趙、臥信の様に、貴
公と付き合いの長い者ならば良いが、そうで無い者達には、貴公は少々近寄り
難い存在の様だったからな。誤解を恐れずに言えば──そう、いつも笑っては
いるが、その笑顔は人形の様だと」
 正頼の脳裏に、ある言葉が蘇る。それを発した男の子供の様な笑顔と共に。
──あの時は、わざと──……。

446「秋思」10/16:2007/11/27(火) 19:07:31
 何となく気付いていた。最近、自分に向けられる周囲の視線から、刺々しさ
や畏れの様なものが徐々に消えつつある事には……。
 正頼が霜元に向き直った丁度その時、回廊の方から臥信が走って来た。何事
かと振り返った二人の耳に、臥信の慌てた声が届く。
「正頼……!英章が訓練中に怪我をしたんです。すぐに邸へ──」
 正頼は、抱えていた書面の束を石畳の上に取り落とした。緑の苔の上一面に
降り積もっていた落ち葉が、一瞬音も無く舞い上がった。

 正頼が房室に入ると、丁度医者が手当てを終えたところだった。

447「秋思」11/16:2007/11/27(火) 19:08:24
 英章は正頼の姿を認めると、右手を軽く上げて笑んだ。彼の上半身と左腕に
は、包帯が痛々しく巻かれている。
「……怪我の具合はどうなのです?」
 正頼の問いに、医者は穏やかに答える。
「傷は深いですが、大事御座いません。傷口が塞がれば問題無いでしょう」
 そこで医者は退室し、ほうと溜息を吐いた正頼が枕許の椅子に座り込んだ。
「部下と手合わせしていたら、突然相手の剣先が折れて飛んで来たんだ。格下
の相手だからと油断して、皮甲も着けていなかった私の不注意だよ」
 英章は何でも無い様に淡々と語った。

448「秋思」12/16:2007/11/27(火) 19:09:18
「……痛みは?」
 正頼は俯いたまま訊ねた。
「今は殆ど無いよ。出血は酷かったけど、血止めの薬も付けたし、苦い薬湯も
飲んだしね」
 また、子供の様に笑う。正頼は息苦しさを覚えた。
「……心配、したんですよ」
「うん。悪かったね」
 英章は笑顔を崩さない。正頼は徐々に腹が立って来た。
「もっと自分を大切にして下さい。……軍で栄達したいんでしょう?もし何か
あったら──」
「死なないよ」
 ぴしゃりと返された一言に、正頼は凍り付く。
「欲しいものを全て手に入れるまで、私は絶対に死んだりしない。」

449「秋思」13/16:2007/11/27(火) 19:10:06
 正頼の瞳を真っ直ぐ見据えて言葉を継ぐ。笑みは消えていた。
「軍での地位も、戦での名誉も。それから──」
 右手でそっと、正頼の頬に触れる。
「貴公の事も。……全部、必ず手に入れてみせる。」
「英章……」
──なんだ、分かってしまった、と正頼は思った。自分は、この男に惹かれて
いるのだ。自らの思いに正直過ぎるくらい忠実な、この英章と云う男に。
「──だから、これくらいの怪我は何とも無いよ。まあ、貴公が看病でもして
くれるなら話は別だけどね」
 再び、いつもの笑顔に戻る。子供の様な無邪気な顔。

450「秋思」14/16:2007/11/27(火) 19:10:57
 正頼は苦笑した。どうやら自分は、この笑顔にとことん弱いらしい──。
「私だって忙しいんだから、そんな事出来ませんよ」
 あっさり断ると、英章は少しだけ悲しそうな顔をした。
「──なら代わりに、怪我が早く治る呪をかけましょうか」
 正頼の突然の申し出に、英章はやや驚く。
「正頼、妖術の心得があったのか?」
「多少はね。──目を閉じて下さい」
 大人しく目を閉じた英章の傷に触れない様、正頼はそっと、彼の首に腕を回
した。
「?正……」
 唇が、触れる。

 ほんの一瞬の出来事だった。

451「秋思」15/16:2007/11/27(火) 19:11:46
 英章は暫くの間、無言で瞬きを繰り返した。正頼はそれを見て微笑む。
「これで十日は回復が早まりますよ」
「……あ、ああ──うん」
 何だか本当に小さな子供の様だな、と思った時、英章が口を開いた。
「正頼、貴公──密かに呼ばれている別字があるのを知っているかい?」
「?──いいえ、存じませんが。何と云うんです?」
 正頼は首を傾げる。こんな時に何の話だろうか。
「……“月下美人”と云うんだよ。夜、褥を共にした相手しか、貴公の本当に
美しい表情は見られない、と云う意味でね」
「は……!?」

452「秋思」16/16:2007/11/27(火) 19:13:29
 すかさず正頼の手を握り、耳元で囁く。
「……で、呪いついでに今夜あたりどうだい?多分ひと月は回復が早ま──」
「おい、英章!見舞いに来てやったぞ──」
 その時、房室に入って来た巌趙、霜元、臥信の耳に、ばきっと云う鈍い音が
響いた。呆気に取られる三人の視線の先には、真っ赤な顔で拳を震わせている
正頼と、寝台の上で頭を抱え突っ伏している英章の姿……。

 以来、王師の間に、正頼は顔は美しいが、怒らせると口より先に手が出るか
ら用心すべし──と云う噂が、かなりの信憑性を伴って広まったのだった。

〈了〉

453尚隆→利広「冬星」1/14:2007/11/28(水) 19:20:41
「初チュウ」利広編その2。今から百年ちょっと昔の設定です。
最後まで分割投下&エロ無しで本当に申し訳ありませんorz
*****

 雁の冬には珍しく、その日は午後から雨が降り出した。
 尚隆は登楼先で傘を借り、乗騎を預けてある馴染みの舎館まで歩いて帰ると
ころだった。
 冬の雨はただでさえ陰気な上に、雨風は強くなる一方で、普段は賑わう関弓
の夕暮れの往来も、今日は流石に人出が少ない。
──雨が止んだら、塒に帰るとするか。
 尚隆がそう一人ごちた時、側の橋の袂に、傘も差さずに立っていた男と目が
合った。

454「冬星」2/14:2007/11/28(水) 19:21:33
「──利広……?」
 尚隆の驚きを含んだ問い掛けに、ずぶ濡れの男は微かに笑んだ。
「風漢、……久し振り」

 ──舎館の一間。利広が火鉢の前で丸くなっていると、酒肴を乗せた盆を片
手に尚隆が入って来た。
「──騎獣は、ここの厩に預けておいたぞ」
「……うん。あの、色々と有難う。湯も、着替えも……」
 尚隆は軽く頷くと、利広の向かいの椅子に座る。
「──立派なスウグだな」
「ああ、……星彩の事?」
「星彩というのか。洒落た名だ」
「……私が付けたんじゃないけどね」
 不意に利広の表情が曇った。

455「冬星」3/14:2007/11/28(水) 19:22:25
「──飲め。温まるぞ」
 利広の前に、ずいと酒杯が差し出される。口を付けると丁度良い燗になって
いた。
「……美味い」
 そうだろう、と言わんばかりに尚隆が笑む。
「蓬莱製法の米の酒だ。雁の冬が寒いお陰で、毎年良い酒が出来る」
 言いつつ、一人手酌でぐいぐい飲んでいる。利広は笑んだ。
「美味い酒は、良い国の証しだからね……」
「奏の酒だって美味いだろう」
「まあね。……でも、私は自国じゃ殆ど飲まないから」
 素焼きの杯を掌で弄びながら呟く。尚隆は少し意外そうに利広の顔を見た。
「……そうなのか?」

456「冬星」4/14:2007/11/28(水) 19:23:17
 利広は頷く。
「……悪酔いしてしまうから」
 言って、自嘲する風に微笑う。尚隆は呆れた様に天井を仰いだ。
「俺には到底考えられんな」
「みんなが風漢みたいな笊じゃないんだよ」
 利広は苦笑し、杯を干した。雨が甍を叩く音だけが、静かに流れる。

「……言ってしまえば良いだろう」
 ぽつりと尚隆が呟く。
「いっその事、すべてぶちまけてしまえば良い。そうすれば楽になれる」
 利広は黙って首を横に振る。尚隆は構わず続けた。
「──そうやって、いつまで自分を誤魔化すつもりだ?」
 利広の肩がぴくりと動く。

457「冬星」5/14:2007/11/28(水) 19:24:11
「──前の数百年、何とか無事にやり過ごせたから、この先も同じ様に上手く
いくとでも?」
 利広は俯いたまま答えない。
「傍にいるのが辛くなる度に逃げ出して、遠く離れた余所の国で好きでもない
男に抱かれて自分を慰める。その繰り返し──」
「悪いと思ってるよ、……あんたには」
 利広が顔を上げると、尚隆は目を合わせず乱暴に杯を呷った。
「……別に、謝れと言っている訳では無い」
 だが、と尚隆は言葉を継いだ。
「そんな事を繰り返していては、お前の方が保たんだろう?」
 再び俯いた利広を見やって尋ねる。

458「冬星」6/14:2007/11/28(水) 19:25:05
「私の事は……いいんだ」
 下を向いたまま利広が答える。
「良い訳がなかろう。……お前、自分の立場を分かって言っているのか?」
 苛立っている所為か、尚隆の語尾は少し荒い。対照的に利広の口調は穏やか
なままだった。
「……分かっているよ。たとえ自分一人が死んだところで、国の存亡には一切
関係が無い。──私の立場なんて所詮その程度のものだ。風漢とは違う……」
 突然、尚隆が椅子から立ち上がった。卓を挟んだ反対側にいる利広の傍につ
かつかと歩み寄る。どうしたのかと顔を上げた利広は、思わず息を飲んだ。

459「冬星」7/14:2007/11/28(水) 19:26:01
 ──尚隆の瞳が、かつて見た事も無いほど苛烈な色彩を帯びている。
「そうか。──貴様はそこまで己の命を軽んじるのか……」
 利広の全身が総毛立つ。──これが、世界に名高い剣豪、延王の覇気──。
 尚隆は、指一本動かせずにいる利広の襟首を掴むと、乱暴に引き起こして椅
子から立たせ、そのまま背後の壁に思い切り叩き付けた。
「──ッ……!」
 背中を激痛が走る。直後、眼下で尚隆が抜刀する、しゃりんと云う音が響い
た。利広の頭から血の気が引いていく。
「丸腰の相手を斬るのは少々気が引けるが、仕方無いな。」

460「冬星」8/14:2007/11/28(水) 19:27:13
「風か……」
「──折角の永の命を、“その程度”などと言うのなら、今、この場で俺が殺
してやろう」
 言うなり太刀を振り翳す。──利広は思わず目を閉じた。──

 激しい衝撃音と共に、尚隆の刀が壁に突き刺さる。刃の先端が利広の首筋を
掠め、そこから一筋、紅い血が流れた。
「……あ……」
 利広は、目を見開いたまま硬直している。
 尚隆は、無言で太刀を壁から引き抜き、鞘に収めると、利広の顔を挟む様に
壁に手を付いた。
「──どうだ、一度死んだ気分は」
「……あまり、いいもんじゃ、ないね……」

461「冬星」9/14:2007/11/28(水) 19:28:07
 尚隆は、乾かす為に解いてあった利広の髪を、そっと撫でた。
「あまり自分を卑下するな。……お前だって、立派な奏の礎だろうが」
「風漢……」
 尚隆は静かに笑むと、傷薬を貰って来てやる、と言って房間を出て行った。

 部屋に一人になった利広が、ふと窓の外を見ると、いつの間にか雨が上がり
星空が広がっていた。どうやら、風が雨雲を運んで行ったらしい。
 利広は、決して忘れられない、ある光景を思い出していた。

 ──数年前、父王から下賜された最高の騎獣。馴らしを兼ねて兄と二人、遠
駆けをする事にした。

462「冬星」10/14:2007/11/28(水) 19:28:58
 足の速い騎獣に乗り慣れない兄を後ろに座らせ、逸る心で手綱を握った。
 疾風の様に空を翔る獣の背で、兄の少し緊張した両腕が、自分の身体に回さ
れている。吐息が耳に掛かる程の近さで、速いなぁ、と感嘆した様に呟く声が
幾度も聞こえた。
 ──どれくらい走ったのだろう。いつの間にか、頭上には満天の星空が広が
っていた。それを見上げていた兄が、思いついた様に、そうだ星彩という名に
しよう、と笑いながら言ったのだ──。

 尚隆が房間に戻ると、そこに利広の姿は無かった。厩からは彼の乗騎も消え
ていた。

463「冬星」11/14:2007/11/28(水) 19:29:45
 関弓の町外れの閑地で、利広は星彩の背に鞍を乗せているところだった。
「──黙って帰るとは酷い奴だな」
 利広が声のした方を見上げると、彼と同じ獣に跨った尚隆が、空を駆け下り
て来た。
 尚隆が着地すると、利広は苦笑しながら歩み寄る。
「ごめん。──さっき風漢にあんな事を言われたものだから、急に里心が付い
てしまって……」
「別に構わんさ。──俺も、そのつもりで言ったのだからな……」
 暫しの間見つめ合う。──尚隆がその沈黙を破った。
「……首、大丈夫か」
 言って、利広の首筋にそっと触れる。

464「冬星」12/14:2007/11/28(水) 19:30:54
「あ、……うん。掠っただけだから──」
 言い終わらない内に唇を塞がれていた。

 随分長い時間そうしていたらしい。どちらからとも無く離れると、夜風が冷
えた手足に染み渡った。
 尚隆が利広を見下ろしていると、不意に利広が苦笑めいた表情を浮かべた。
「……何だ?」
「いや……あんたとは今まで何度も寝てるけど、接吻したのは今日が初めてだ
なと思って」
 利広は可笑しそうに言った。
「そうだったか?」
 尚隆は素っ気無い。
「そうだよ。──ああ、もう行かなくちゃ」
 踵を返した利広の背を、尚隆の声が追う。

465「冬星」13/14:2007/11/28(水) 19:31:46
「利広、──もう、俺のものになってしまえ」
 利広は振り返らない。
「──俺は決して、お前の想い人の様にお前を苦しめたり、寂しい思いをさせ
たりはせんぞ」
 利広は小さく息を吐くと、笑顔で振り返った。
「有り難う、風漢。すごく嬉しいよ。……でも、駄目なんだ」
 利広は尚隆の目を見つめ、噛み締める様に言葉を紡ぐ。
「私は、あの人だけのものなんだ。十二の夏に、そう決心してから、ずっと」
 それに、と微笑む。
「風漢にだって、大事な人がいるんだろう。──隠したって分かるよ」

 利広は星彩に跨った。

466「冬星」14/14:2007/11/28(水) 19:33:14
 尚隆は暫くの間、利広が消えた南の夜空を見上げていた。
 ──不意に、星河の様な金の髪の少年が脳裏に浮かぶ。何故か無性に、彼の
顔が見たくなった。
「──雨も上がったし、俺達も帰るとするか……」

 尚隆は乗騎に跨ると、星空の中に佇む関弓山に向けて、獣を飛翔させた。

〈了〉

*****
ケータイの調子が悪い為、壊れる前にと昨日に続けて投下させて頂きました。
この4本で一応、自分の中の萌えはほぼ吐き出せたと思います。
下手糞なSSに最後までお付き合い頂き、どうも有り難う御座いました。
(本業?は漫画の書き手)

467名無しさん:2007/11/30(金) 01:01:43
GJGJ!!!!!!!!!
少し弱っている利広に激モエしますた。尚隆優しいな。
尚利の中に見え隠れする利広→利達にも更にその
後ろ側にあるような尚六にも萌えたよー!
投下㌧でした。

468「春夏秋冬」書き手:2007/11/30(金) 19:11:53
>>467
お褒めのレス有り難う御座います!尚×広のウラの広→達や尚×六まで
感じ取って頂けるとは…。恥を忍んで投下した甲斐がありました(嬉泣

尚隆×利広は個人的に一番好きなカプです。悩める恋を抱えたオトナ同士の
傷の舐め合い(同情>>>愛情)に激烈に萌えます(*´∀`)=3ハフゥー

この尚(六)×広→達エピに関しては、他にも幾つかネタがあるので
またいつか、書き逃げにコソーリ投下させて頂くかも知れません。

469名無しさん:2007/12/01(土) 17:21:45
姐さん、乙、乙!!
その裏側の尚六や帰った後の利広もお願い(*´∀`*)

470468:2007/12/01(土) 20:10:32
>>469
乙を2コも!有り難う御座います〜(*´∀`)ウレシイ!

昨夜、突然ネタの天啓がありまして、番外編みたいなものを書こうと
思っていたのですが、>>469さんの下さった「帰国後」と云うアイデアと絡め
ちょい甘な時節モノを1本書いてみたいなと思っております。尚六メインで…

しかしホントに下手糞な上、エロ書けない自分ばかり投下してしまって
良いのでしょうかorz(書き逃げとかリレ読み返す度に自分のダメさに鬱…)
年末・冬祭り前で皆さん御多忙の最中とは重々存じ上げておりますが
姐さん方の素敵なお話も読みたい…です…うぐっ(禁断症状

471名無しさん:2007/12/01(土) 21:07:34
ちょい甘な時節モノ!しかも尚六メイン!!
激しく投下キボン、というか投下してください。゚+.(・∀・)゚+.゚

472尚隆×六太&利広×利達「北垂・南冥」1/20:2007/12/20(木) 23:42:42
>>453->>466の「冬星」その後。エロ無し。
*****

 ──深夜の玄英宮。
 帰城した尚隆は正寝への長い通路を渡りながら、つい先刻言われたばかりの
言葉を思い返していた。
「──隠したって分かる……か」
 俺も他人の事をどうこう言える立場では無いな、と苦笑したところで、ふと
移した視線の先が、見慣れた金色の髪を捉えた。

 雲海上に張り出した露台の手摺に腰掛け、白い息を吐きつつ星空を見上げて
いた六太の頭上に、ばさりと上着が被せられる。
「馬鹿は風邪を引かんと聞くが、お前そんな格好で寒くは無いのか」

473「北垂・南冥」2/20:2007/12/20(木) 23:43:40
 六太は厚い服地の下から顔を覗かせると、上着の持ち主を振り返った。
「……尚隆」
「子供は早く床に就かんと、明日の朝議の席上で舟を漕ぐ事になるぞ」
 そう笑って言いながら、尚隆は六太の傍に歩み寄る。
「……朝帰りの奴なんかに言われたくねーよ」
 わざと愛想悪く返された言葉をそれもそうだな、と鷹揚に返すと、尚隆は六
太が座る手摺の隣に、ゆったりと凭れ掛かった。

「──お前に星占の趣味があったとは、意外だな」
 自らも暫くの間天上を仰いだ後、尚隆が言う。
「そんなんじゃない。……ただ、綺麗だなと思ってさ」

474「北垂・南冥」3/20:2007/12/20(木) 23:44:53
 星空を仰いだまま答える臣下の横顔を、尚隆はじっと見つめる。六太はその
視線に気付くと、ほんの少し頬を赤らめて主を見上げた。
「……なんだよ」
 尚隆は無言で微笑む。六太は更に顔を赤くし、声高に言った。
「ああ、分かってるよ。おれに星が綺麗なんて台詞の似合わない事は──」
 その瞬間、一陣の朔風が吹き渡り、六太の絹糸にも似た金の髪をなぶる様に
散らしていった。
「──うわっ……と」
 主の大きな上着を飛ばされない様、両手で押さえた六太の蓬髪に尚隆はそっ
と手を伸ばす。
「──少し、風が出て来たな……」

475「北垂・南冥」4/20:2007/12/20(木) 23:45:41
 そう独語しつつ、六太の頬や額に散った髪を優しく撫で梳いてやる。六太は
小さな子供の様に、大人しくされるが儘になっていた。

「……眠れないのか」
 不意に呟いた尚隆の言葉に、六太は微かに身じろぐ。その鬢の一房を指先に
絡め、尚隆は苦笑気味に言葉を継いだ。
「──どうも家の台輔は、悩み事を溜め込む癖があっていかんな。たまには範
の小娘に倣ったとて、罰は当たらんだろう」
 それまで黙って俯いていた六太は、足下の岸壁に打ち寄せる銀色の波頭から
そっと視線を上げた。目の前の雲海は、全て星夜の中に沈んでいる。

476「北垂・南冥」5/20:2007/12/20(木) 23:46:33
「──もうすぐ、冬至だろ。だから……」
 そう言って、今は墨一色の彼方を見晴かす。六太が見つめる西南の方角には
世界の中心を囲む黄海が在る。そして、そこに通じる令艮門が開く冬至まで、
あと数日に迫っていた。
 一人の少年の姿が脳裏を過ぎり、唇を引き結んだ六太に尚隆が問う。
「──会いたいのか?……あいつに」

 宵闇色の髪をした妖魔の養い子──遥か昔に別れたきり、未だ再会出来ずに
いる六太の友。現在は、黄海の深奥に住まう筈だった。
「……うん。会いたい──」
 六太は静かに、だがはっきりと呟いた。

477「北垂・南冥」6/20:2007/12/20(木) 23:47:19
 その言葉を聞いた尚隆は暫しの沈黙の後、白い溜息を一つ吐くと、低く呟く
様に言った。
「──奴の事なら、心配は要らん」
「……え?」
 きょとんと主を振り返った六太に、尚隆は静かに語り始めた。
「……雨期の前、元州の──斡由の塚墓へ参った時、墓前に今し方供えられた
ばかりの花があってな……」
 六太は身動き一つせず、尚隆の話に聞き入っている。時折吹き付ける冷たい
夜風に、その金色の髪が弄ばれるのも構わずに。
「──あの天領の凌雲山には、お前もいつぞや行った事があろう?」
 六太は、こくんと頷く。

478「北垂・南冥」7/20:2007/12/20(木) 23:48:06
 ──今から凡そ三百八十年前、元州で起こった反乱の首謀者として、延王自
らの手に因って討たれた逆賊、斡由。その塚墓がある天領の禁苑は、梟王の時
代より打ち捨てられたまま荒れるに任せ、並の者には到底辿り着く事の不可能
な場所だった筈だ。そう訝る六太に、尚隆は続けた。
「……それは美しい山百合でな、今まで見た事も無い様な花色だった。それに
あの時季は、百合の見頃にしてはちと遅過ぎる──不思議だとは思わんか?」
 そう言って、尚隆は六太の瞳を見つめた。その表情は見る間に明るくなって
いく。
「──更夜だ……」

479「北垂・南冥」8/20:2007/12/20(木) 23:48:51
 嬉しさの余り、六太の身体は微かに震えた。──更夜が生きている……。
「……でも、どうして直ぐに教えてくれなかったんだ?」
 至極真っ当な疑問を投げ掛けると、尚隆は急に、ふいと視線を逸らした。
「……教えたところで、到底大人しくしては居れまい?」
「えっ……」
 一瞬、六太の菫色の瞳光が揺らぐ。尚隆は、雲海の見果てぬ先に視線を投げ
たまま黙り込んだ。

「……おれって、ほんと信用ねーのな」
 不意に六太はそう呟き、くすくすと笑い出した。
「ま、実際そう思われても仕方ない事、山程為出来してるしなぁ……」

480「北垂・南冥」9/20:2007/12/20(木) 23:49:33
 でも、と言って六太は主の横顔を見上げる。その瞳に惑う色は無かった。
「心配すんなよ、尚隆。──おれは、何処へも行かない」
 振り向いた尚隆と、視線が絡み合う。
「……勿論、今でもあいつに会いたい気持ちに嘘は無いけどさ。──でも、元
気でいるのが分かれば、それでいいんだ」
 微かに驚きの表情を浮かべた尚隆を見遣って、六太は笑う。
「──四百年近く探しても会えなかったんだ。きっと何か理由があるんだよ、
あいつにも。それに、……更夜に離れたくない場所があるみたいに、おれにも
離れられない奴がいるから……」

481「北垂・南冥」10/20:2007/12/20(木) 23:50:18
 六太は不意に小さな嚔をすると、苦笑しつつ上着の衿元を掻き合わせた。
「やっぱ寒いや……」
 ふと、暖かいものに身体を包まれる。──尚隆に背後から抱き締められたの
だと分かった。
「尚隆……?」
「──六太……」
 尚隆は六太の細い身体を、上着ごと強く抱き締めた。つまらない嫉妬をした
事、六太を信じてやれなかった事を謝罪し、許しを乞う様に。
 主の心中を察してか、六太はその腕の中に大人しく抱かれていた。
「──こういう時、良く思うんだ。……おれにとっての尚隆みたいな相手が、
更夜にも居ればいいなって……」

482「北垂・南冥」11/20:2007/12/20(木) 23:51:12
「──ああ、そうだな……」
 六太の言葉に尚隆は頷く。──赤い有翼の狼を連れた寂し気な瞳の少年は、
今頃どうしているのだろうか……。

 腕の中の六太が再び嚔をし、尚隆はくすりと笑った。
「……ほんとに寒くなってきた。おれ、そろそろ臥室に戻る──」
 言い終わらない内に、ひょいと抱き上げられ、六太は仰天した。
「わあっ!──な、なにすんだよっ」
「臥室に戻るのだろう?連れて行ってやる」
 尚隆は真面目な顔で答えると、自分の居処である正殿の方へと踵を返した。
直ぐに勘付いた六太が、主の前髪を引っ張る。

483「北垂・南冥」12/20:2007/12/20(木) 23:51:59
「……おい、尚隆。方向違うぞ」
 努めて冷静に抗議する六太には構わず、尚隆は自室へと向かう。再び文句を
言い掛けた六太は、しかし直ぐに諦めて苦笑し、ぼそりと呟いた。
「……白端銀針」
「──何?」
 尚隆は聞き慣れない単語を訝り、歩みを止める。
「……確か、お前んとこに美味い白茶があったよな?白端産の。まずは、それ
飲ませろよ。──いいか、絶対だぞ?」
 紅潮した頬を見られまいと、俯き加減で六太が言う。尚隆は一拍の後ふわり
と笑むと、六太の額にそっと口づけた。
「ああ、勿論。──茶くらい、何杯でも」

484「北垂・南冥」13/20:2007/12/20(木) 23:52:43
 夜半の風が吹き抜けていく回廊の縁で、ふと尚隆は南天を仰ぎ見た。いま一
人、寂し気な目をした男の事を思い出し、そっと願う。自分にとっての六太の
様な存在が、どうかあいつにも在らん事を、と。


 それから数日後の同じく深夜。奏国、清漢宮の禁門に、一体の騎影が降り立
った。慌てて駆け寄る門番の兵卒を笑顔で制し、自らの手で騎獣の手綱を引い
て行く。
 厩の手前まで来たところで、不意に獣が嬉しそうに一声鳴いた。見遣った方
向から、小さな灯火の明かりが近付いて来る。利広は目許を綻ばせた。
「……兄さん、ただいま」

485「北垂・南冥」14/20:2007/12/20(木) 23:53:27
「──おかえり、風来坊」
 利達は弟に微笑む。その傍らの獣にも、優しく声を掛けた。
「星彩も、おかえり。──元気だったか?」
 言いつつ耳の後ろを掻いてやると、星彩は気持ち良さそうに喉を鳴らし、鼻
面を利達の手に擦り付けた。
「……相変わらず、星彩は兄さんが好きなんだなぁ」
 まるで子猫の様に兄に甘える己の乗騎を見遣って利広が言うと、利達は可笑
しそうに笑った。
「俺はこいつの名付け親だぞ。ただ乗り回しているだけのお前とは違うよ」
 利広は苦笑する。
「それは酷いなぁ。私だって結構可愛がってるのに……」

486「北垂・南冥」15/20:2007/12/20(木) 23:54:09
「……とにかく、お前が無事に帰って来て良かった」
 利達はそう言うと、自分より僅かに長身の弟を振り返る。
「……みんな心配していたんだぞ。三月近くも黙って留守にするから、今度こ
そ何かあったんじゃないかってな」
 軽く窘める様に利達が言うと、利広は苦笑を浮かべて兄に拱手した。
「うん……みんなには、いつも心配掛けて済まないと思ってるよ」
 珍しく従順な弟の姿に、利達は少し意外そうな顔をし、直ぐに微笑んだ。
「……素直で宜しい」
 そう言って弟の髪をくしゃりと撫でる。利広は、胸の奥が微かに疼くのを感
じた。

487「北垂・南冥」16/20:2007/12/20(木) 23:54:56
「──利広、久し振りに帰って来たんだから、一杯付き合わないか?」
 兄の誘いに利広は一瞬戸惑う。ふと、雁で会った男の言葉を思い出した。
 ──言ってしまえば、楽になれる──。
 利広は軽く頭を振ると、微笑って頷く。
「……うん、そうだね。少しだけなら──」

 利達の私室からは、東南の雲海が一望出来た。利広が露台に出ると、澄んだ
夜風と共に、微かな潮の香りに包まれる。懐かしい故国の空気だ、と利広は思
った。
 露台に据えられた陶製の卓子を挟んで、二人は酒杯を重ねる。肴は専ら利広
の土産話だった。

488「北垂・南冥」17/20:2007/12/20(木) 23:55:42
 久し振りに兄と向かい合い、利広は杯を干す。奏国産の冷えた黄酒は、彼の
喉にしんと滲みた。雁の街で熱燗を飲んだのが、遠い昔の事の様に思えた。

「──ああ、そろそろ夜が明けるな……」
 不意に、利達が陶磁の丸椅子から立ち上がった。露台の縁まで行くと、手摺
に凭れて雲海の果てを見渡す。天空に浮かんだ水平線の先は、深い紺から紫へ
その色を変えようとしていた。
「利広、お前も来てみろ──」
 利達が振り返る。襟足の位置で軽く括っただけの長い髪が風に靡き、その姿
を酷く危ういものに変えた。利広の鼓動が跳ねる。

489「北垂・南冥」18/20:2007/12/20(木) 23:56:24
 利広は椅子から立ち上がり、そっと利達に近付いた。払暁の淡い光に包まれ
た細い背中に、躊躇いつつ手を伸ばす。──しかし、利達の肩に触れる直前、
その手は静かに下ろされた。
「……利広?」
 再び振り返った利達に何でもないよ、と笑い掛け、利広は手摺に凭れる。兄
には聞こえない程の、小さな溜息を吐いて。

「──お前、また直ぐに出掛けるのか?」
 燃える様な紅色の東天を望んだまま、利達が尋ねる。
「……いや、春節明けまでは大人しくしてるよ。冬至の郊祠を手伝えなかった
分、新年の祭礼には真面目に出ないとね」

490「北垂・南冥」19/20:2007/12/20(木) 23:57:04
 利広が苦笑しつつ答えると、利達はそうか、と頷いた。
「──じゃあ、久し振りに家族揃って新年を迎えられるな……」
 微笑む兄の横顔が、交州の港街に居た、遥か昔を想起させた。──あれから
数え切れない程の年月が過ぎたが、自分の想いはあの頃と少しも変わらない。
多分、この先もずっと──。
 利広は、静かに目を閉じた。

 突然、世界が来迎に包まれる。余りの眩しさに、利達が翳した手指の間から
黄金色の晨光が零れた。
「……一年で一番、短命の太陽か……」
 利達がそう一人ごちた時、何かがそっと肩に触れた。

491「北垂・南冥」20/20:2007/12/20(木) 23:57:52
「利広?どうし──」
言い掛けた利達は、弟の寝顔に柔らかく笑む。その肩に凭れたまま、利広は静
かに寝息を立てていた。
 外殿の方角から、微かに暁鐘の音が聞こえてきた。──冬至の朝が始まる。

〈了〉

*****
追記
この頃の蓬山公は供麒(珠晶出生直前…)。

今年も、数字板及び別館の姐さん方には沢山モエモエさせて頂き、
有り難う御座いました。少々早いですが、皆様どうぞ良いお年を…。

492千年王国(ほのぼの尚六)(1):2007/12/24(月) 18:00:37
治世千年以上になった雁主従のほのぼの話。できたてのほやほや。

たまたま別のネタを妄想していたら、その延長で何となく話ができちゃいました。
恋愛色はないも同然だし、エロに至っては皆無ですが、それでもいちおう尚六のつもり。

尚隆が六太にこんな国を贈りました、というのが裏テーマなので、
こじつけでクリスマスプレゼント代わりに。
----------

「尚隆、尚隆、早く! もう始まってる!」
 人混みの中、小柄な少年が連れを振り返って急き立てる。服装は地味でとり
たてて特徴はないが、金色に輝く長い髪は見間違えようもない。騶虞を連れて
あとに続く長身の男のほうは、元気の良すぎる少年に苦笑いを返したものの、
諦めたように足取りを速めた。
「待て、待て。そうちょこまか動き回られてはかなわん。こっちは騎獣連れだ
ぞ」
「あっ、すげえ。まさかあの梯子に上るのかな?」
 人混みの向こう、そびえ立つように直立する何本もの梯子に目を向けて驚き
の声を上げた六太は、連れの言葉など聞いてはいない。曲芸団がしつらえた演
台にはまだ遠いが、その梯子は長く、人の頭をはるかに越えて飛び出していた
ので、てっぺんだけは良く見えた。
 演台に近づくにつれ、混雑の度合いはさらに激しくなったので、さすがの六
太も立ち止まらずを得なかった。
「あー、見えない」
 うーん、と背伸びをしてみるものの、見えるのは大人たちの頭だけだ。
「尚隆。肩車」
 そう言って主の服をつんつんとひっぱると、相手は苦笑しながらも肩車をし
てくれた。長身の男の肩に座ると、周囲を楽に見渡せる。小走りにやってきて
汗ばんでいたから、頬に当たる穏やかな風が心地良かった。
 そんな彼らを、近くにいた旅装束の男が驚きの表情で凝視した。
「ありゃ、ありゃ、麒麟、じゃ……」
 思わず六太を差した指を、たまたま隣にいた女が眉をしかめてぴしりと叩い
た。

493千年王国(ほのぼの尚六)(2):2007/12/24(月) 18:03:20
「あんた、他国のお人だね? 他人様を指差すのは失礼なことだって、母ちゃ
んに教わらなかったのかい?」
「し、しかし、あれは」
「ふん」女は腰に両手を当てて胸を反らした。「そうだよ、あれはうちの台輔
さ。で、肩車して差し上げてるのがうちの主上。それがどうしたの?」
「しゅ、しゅ――」
 目をむいた男に、後ろにいた男が笑って肩を叩いた。
「雁じゃあな、町中にいるときは王も麒麟もないのさ。あんたもそんなことは
気にせずに祭りを楽しむこった」
 旅の男は目を白黒させていたが、周囲の者が一様に肩をすくめているのを見
て、おそるおそる尋ねた。
「……そういう法律なのかい?」
「法律?」最初の女がまた顔をしかめた。「別に何も決められちゃいないさ。
ただ、あたしたちがそうしたいからそうしてるだけ。六太だって尚隆の旦那だ
って、それを望んでいるんだからね。あ、六太ってのが台輔のお名前。尚隆は
主上のお名前。言っとくけど、町中で主上だの台輔だの、無粋な呼びかたをす
るんじゃないよ」
「名前……」
 国によっては、貴人の名前を呼ぶことは死罪に値する。それだけに旅の男の
困惑は半端ではなかった。
 だが彼が麒麟の少年のほうを伺うと、確かに周りの人間が気軽に「おう、相
変わらず餓鬼だな、六太」と声をかけ、少年も笑いながら「うるせー。今日は
祭りだからいいの!」と返している。見事な金髪さえなければ、近所の者同士
の気軽な挨拶と何ら変わらない。
 そのとき、高らかに笛が鳴り響き、演目が始まった。屈強な男たちが高い梯
子にするすると上ると、支えもなく、てっぺんでさまざまな曲芸を繰り広げる。
誰もがはしゃいで曲芸団の演台に注目し、王と宰輔のほうを気にする者はいな
くなった。旅の男は頭を振って「雁ってのは変わった国だな……」とひとりご
ちた。

494千年王国(ほのぼの尚六)(3):2007/12/24(月) 18:05:29

「えーと、そっちの芋飴とそば饅頭をちょうだい」
 多くの屋台が連なる一画。甘味処の屋台で、棒に差した飴と饅頭の小袋を受
け取る六太の傍ら、尚隆が小銭を払う。
「おまえ、さっきから食ってばかりではないか」
「だって今日はこれが夕餉の代わりだもん。明玲にだって、夕餉はないから外
でちゃんと食べてくるようにって言われてるし」
 女官長の名前を出し、傍らに並べられている木の椅子に座りこんで、にこに
こしながら小振りのそば饅頭をほおばる。その無邪気な様子は、とても麒麟の
最長老には見えない。尚隆は隣の屋台から酒の小瓶とつまみを調達すると、同
じように六太の隣に座りこんだ。そのふたりの前で寝そべった四代目たまの鼻
面に、六太がそば饅頭をひとつ差し出す。たまはぺろりと食べてしまい、次を
ねだった。
 饅頭の小袋を空にした六太は、芋飴をなめながら「あ、あれ、何だろう?」
と言って、別の屋台に行ってしまった。一日中付きあわされた尚隆のほうは、
面倒になって座りこんだままだ。甘味処の屋台の主人と目が合い、ふっと笑う。
この屋台は、六太がよく通う店のものだった。
「うちのが迷惑をかけておらんか? まったく、あれはいつまでも餓鬼で困る」
「いえいえ、むしろ楽しませてもらってますよ。坊ちゃんは手先が器用ですか
らね、この間もうちの孫に風車を作ってくれてました」
「あれは、遊びのこととなると途端に熱心になるからな」
「おう、最近はお見限りだったじゃねえか」
 後ろから尚隆の肩を、どん、と突いて声をかけてきた男が、だみ声でからか
らと笑った。尚隆と同じように酒瓶を携え、既に吐息が酒臭い。
「なんだなんだ、今日も餓鬼連れか。いい男が女も連れねえで、だらしねえぞ」
「あいにく、その餓鬼で手一杯なものでな。いい女がいたら紹介してくれ」
「おっ、なんだ、浮気か? そりゃあ、まずいだろ」
「おまえ……。言っていることが矛盾しておらんか?」
「そうか? いやあ、すまんすまん。すっかりいい気分になっちまってな、細
かいことは気にならねえ。そういえばこないだの賭博場でな――」

495千年王国(ほのぼの尚六)(4/E):2007/12/24(月) 18:08:24
 そうしてまたひとり、ふたり、と馴染みの男たちがふらりと尚隆のもとにや
ってくる。
 そんな主を放っておいて、六太のほうは屋台めぐりに余念がない。どこから
ともなく聞こえてくる祭囃子も、うきうきした気分に花を添えている。
 投擲の屋台を覗き、これは的がおもちゃで、投げる物も布を丸めた柔らかい
玉だから、六太も遠慮なく遊んで目的のおもちゃを手に入れる。傍らで見知ら
ぬ幼い子供が「あー、お兄ちゃん、いいなあ」と声を上げたので、その子が持
っていた食べかけの饅頭と交換してやった。
 そうしてたまたま出くわした顔見知りと雑談をしたり、別の屋台を覗いたり、
講談を聞いたりしているうちに、夕暮れの色が濃くなっていき、やがてとっぷ
りと暮れてしまった。
「おい、六太。そろそろ帰るぞ」
 背後からそんな声をかけられても、まだ遊び足りない六太は「えー、まだい
いじゃん。もうちょっといようよ」と甘え声で抵抗した。だがそれもいつもの
ことなので、尚隆には通用しない。体重の軽い六太を、尚隆はまるで猫の仔の
ようにひょいと持ち上げて、たまの背に乗せた。そうして自分もその後ろに乗
り、六太を抱えるようにして手綱を取る。
「世話になった。ではまたな」
 そんな声を周囲にかけてふわりと飛び立つ。六太もちょっと上げた片手を振
って人々に別れを告げる。

 関弓の町から禁門まではあっという間だ。後にした街の灯りは、こうして上
空から見ると何百年経っても変わらない。ただ何となく、昔よりは灯火の範囲
が広がって賑やかな感じだな、と思うだけだ。
 五百年前、尚隆が約束してくれた国がそこにある。髪を隠すことなく、六太
が自然体でいられる街。当時の知り合いは街にも宮城にも、他国にすらもうひ
とりとしていないけれど、尚隆だけは変わらずに側にいてくれる。
 それでいい、と六太は思った。
「また来ような」
 心地よい眠気を感じながら、六太はつぶやいた。そうしてたまの足が禁門の
石畳につく前に、穏やかな眠りに引き込まれていた。

(終)

496名無しさん:2007/12/24(月) 21:05:55
尚六ーーーっ
クリスマスにありがとう、姐さん!!

497名無しさん:2007/12/28(金) 14:55:40
>>472->>491
GJ!密かに利広と利達の身長差に萌えますた。
更夜の話まで絡めた姐さんの構成に脱帽です。

498ほのぼの尚六「初日(はつひ)」(1/3):2008/01/01(火) 14:01:21
新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。できれば新刊が出ますように……。

初日の出を拝む雁主従のほのぼの話……かな? せいぜい15禁程度の軽いネタ。
地の文が童話風だけど、その辺が却ってキモかったらごめん。
-----


 夜明け前のまだ暗いお城の中を、この国の麒麟ちゃんが元気よくぱたぱたと
駆けていきます。お城に仕えている召使いの人たちもお役人も、この麒麟ちゃ
んが大好きなので、落ち着きのなさに「あらあら、台輔ったら」なんて言いな
がらもにっこりして見送ります。
 ばたん!とものすごい音を立てて王さまのお部屋の扉を開けた麒麟ちゃんは、
まだベッドでぐっすり眠っていた王さまの上に乗って、ぽんぽんと飛び跳ねま
した。
「しょうりゅうー! 起きろ、起きろ。初日の出を拝みに行くぞーっ」
 この国の王さまはとっても頑丈な人ですが、さすがにトランポリンのように
お腹の上で飛び跳ね回られてはたまりません。
「こ、こら、六太。やめんか」
「とっとと起きろよ、おっさん」
 他の国の麒麟ちゃんはずっとおとなしくておしとやかなのに、この麒麟ちゃ
んはまったく違います。乱暴だし、口は悪いし、サボり癖はあるし……。でも
王さまはこの麒麟ちゃんとラブラブなのでつい甘やかしてしまい、たまに少し
文句を言うだけで本気では叱れません。
 ただし今朝の王さまはちょっとご機嫌斜め。だっていつもはこの可愛い麒麟
ちゃんと、ベッドの中であーんなことやこーんなことをいっぱいするのに、昨
夜の麒麟ちゃんは「明日は早く起きて、御来光を拝みにいくからな!」と言っ
て、さっさと自分のお部屋に帰ってしまったので、王さまは何にもできなくて
欲求不満なのです。

499ほのぼの尚六「初日(はつひ)」(2/3):2008/01/01(火) 14:04:19
 でも麒麟ちゃんのほうはまったく気にしません。王さまがかぶっていた掛け
布団を勢いよくはいで、王さまの寝間着の紐を器用に解いていきます。不機嫌
だった王さまのほうは、麒麟ちゃんにすっかり寝間着を脱がされてしまうと、
もっと別のいやらしいことを連想してにやにやして機嫌を直しました。大人っ
てしょうがないですね。
 ちゃんとした服装をすると、この王さまはとってもイケメンです。麒麟ちゃ
んは内心でちょっとどきどきしたのですが、照れ屋さんなので素直に口に出せ
ません。その代わり「おらおら、行くぞー!」なんて乱暴に言って、先に立っ
てさっさと歩き始めます。
 お城はものすごく高い山の上にあるのですが、お城の端っこのほうにもっと
高くなっている小山があります。麒麟ちゃんは王さまと連れだって、その小山
に上りました。
 お供の人はいません。みんな、王さまと麒麟ちゃんの水入らずを邪魔しては
いけないと遠慮しているからですが、何よりこの国には初日の出を拝むという
習慣がないのです。この国の人たちにとっては王さまと麒麟ちゃんこそが文字
通りの神さまなのに、毎日毎日昇っては沈む当たり前の太陽を、その神さまが
拝むということが理解できません。これは蓬莱という遠い遠い国で生まれ育っ
た王さまと麒麟ちゃんにしかわからない気持ちなのかもしれません。
 そういえば最近はお隣の国の女王さまも、同じように御来光を拝み始めたと
いう噂です。その女王さまも蓬莱の人だからでしょう。
 夜明けが近づくにつれて、あたりはだんだん明るくなっていきます。やがて
東の地平線に、金色に輝く太陽の縁が現われました。四方八方に光の筋が放た
れて、とっても綺麗で神秘的な感じです。
「わー……」
 いつもはうるさく騒ぐばかりの麒麟ちゃんも、このときばかりは神妙な顔を
しています。そうして、ぽん、ぽん、と柏手を打つと、御来光に向かってお祈
りします。これは麒麟ちゃんがまだずっと小さかった頃、蓬莱で誰かに教えて
もらったやりかたです。
 王さまも同じようにして柏手を打って礼拝します。

500ほのぼの尚六「初日(はつひ)」(3/3):2008/01/01(火) 14:07:03
「……また来年も来ような」
 太陽がすっかり昇ってしまうと、真面目な顔のままの麒麟ちゃんはそう言っ
て王さまにもたれかかりました。でも不謹慎な王さまは、自分が欲求不満だっ
たことを思いだして麒麟ちゃんの肩に腕を回しました。
「御来光でさわやかな気分になったところで、姫始めというのはどうだ?」
「ば、ばっかじゃねーの!」
 呆れた麒麟ちゃんは、真っ赤になって王さまにかみつきます。破天荒に見え
る麒麟ちゃんですが、実はけっこう常識人なので、こうやって堂々と変なこと
を言われると恥ずかしくて仕方がないのです。
「これから官たちが続々と集まってくるんだろうが! 州候たちも、昏君の治
世をありがたくも讃えるために挨拶にやってきてくれるんだろー! このばち
あたり!」
 そんな麒麟ちゃんを、王さまはにやにやして見ているだけです。
「そ、そもそも姫始めってのはそーゆー変な意味じゃなく、二日の真面目な行
事のことじゃねーか。今日は二日じゃなくて一日だからな、そんなことを言う
なら明日の晩までおあずけ! 今晩も独り寝しやがれ!」
 そう叫んで王さまの腕をふりほどいた麒麟ちゃんは、ひとりでさっさと小山
を降り始めました。でも気になって途中でちらっと後ろを見ると、王さまは木
に背中をもたれて腕組みをしたまま、麒麟ちゃんのほうを眺めているだけです。
 麒麟ちゃんはその場で足踏みをして迷ったものの、「くそ!」と悪態をつく
と、王さまのところへ走って戻りました。そうして大好きな王さまの首に抱き
ついて、ちゅう、をしてあげました。
 そのまま、また走って王さまから離れると、振り返ってあかんべーをします。
でも顔が真っ赤になったままなので、王さまは相変わらずにやにやしています。
きっと頭の中では、明日の晩に麒麟ちゃんとするあーんなことやこーんなこと
を考えているのでしょう。
 雁の国はきっと、今年も平和です。

(おしまい)

501名無しさん:2008/01/03(木) 21:51:31
おおおー、年末年始にまさかの大量投下が!
姐さん達、ありがとう!

>>500
姫初め編もぜひキボン!

502498-500:2008/01/05(土) 12:54:04
ありがとうございます。
姫始め編……は、残念ながら表現が下品すぎて
さすがにちょっと投下できないので、自由に妄想してください(^^;
考えた話のあらすじだけかいつまんで書くとこんな感じです。

-----
元日にろくたんに冷たくされたことで仕返しをする尚隆。
式典などの待ち時間で控え室にいる間にろくたんに何度も戯れかかるものの、
そのたびに中途半端すぎて、ろくたん大不満。
ついにキレて尚隆の服をはいで押し倒し、一回戦目は騎乗位→対面座位、
二回戦目は後背位→背面座位で大奮闘。
その間、ずっと待たされた式典の客たちも、
もともと主従がラブラブのはわかっているので苦笑い程度。
むしろラブラブ光線に影響されて
彼らも普段以上に恋人といちゃいちゃするようになるので、
皆欲求を発散して宮城は自然と和やかな雰囲気になるほど。
やっぱり雁国は今年も平和みたい。
-----

お粗末さま。

503金波宮の夜2:2008/01/26(土) 14:23:15
今日もいい月夜ね。雲海の上って気候が穏やかで過ごしやすいけど、
雲間から覗く月って風流だから、それを見られないことだけは残念だわ。

あら、あれは陽子ね?
そういえばさっき、李斎を見舞ってから様子を見にくるって言っていたっけ。

あら? あんなところで急に立ち止まってどうしたのかしら。
あの子には珍しく硬直しているけど――あ。

……また尚隆ね。だからあの房室でやるのはおやめなさいって言ってあげたのに。
それともわざとかしら。尚隆ならありうる気がしてきたわ。
妙なところで露出狂なんですもの。こういうことは秘めたほうが花でしょうに。
範に来たときだけは、いつもしっかり取り繕うくせにね。

あらー……。陽子ったら顔を真っ赤にして。
顔を伏せて、こちらへずんずん歩いて戻ってくるわ。
相当、衝撃だったみたい。きっと、あの子って処女よね。
確かに色事には疎い感じがするし、かなり動揺しているんじゃないかしら。

こんばんは、陽子、どうしたの?
いいのよ、そんなに慌てなくても。知っているから。
尚隆と六太のことでしょう? 呆れちゃうわよね、何も他国の王宮に来てまで。

――え? まあ、わたしも実際に出くわしたのはこの間が初めてだけど、
雁にはいろいろ噂があったからすぐわかったわ。
だってあの色欲魔の尚隆の麒麟なのよ?
考えるまでもなく、六太が純潔でなんかいられるわけないじゃない。

ほらほら、落ち着きなさいな。
大丈夫よ、ふたりとも夢中だろうし、気づかれてなんかいないから。ね?

あら、そうなの、李斎もずいぶん良くなったのね。
じゃあ、どんな具合なのか、お茶でも飲みながら軽くおしゃべりしましょうか。
泰麒捜索の状況についても、陽子に伝えたいことはあるし。

――そう、いい子ね。じゃあ、むこうの房室へ行きましょう。
鈴って言ったかしら? 陽子のお気に入りのあの女御に頼んで、
お茶とお菓子をもらいましょうね。

504尚六:2008/05/05(月) 17:14:34
尚六濡れ場.和姦でも強姦でもお好きに妄想ドゾー



根元まで挿入したまま六太に覆い被さり,小柄な体をしっかりと抱き込む.
こうしてしまうと下が繋がっているだけに六太は身動きすらままならない.
せいぜい脚をばたつかせる暗いが関の山だが,
こんな風に仰向けで大股にさせられている不安定な体勢では,
多少脚を動かした処で何にも成らなかった.
尚隆は逞しい男根で果断なく小刻みにグイグイと突き上げながら,
為す術もなくただ快楽に身悶えする六太の喘ぎ声を楽しんだ.
「あっあっ……ん,あん,んっ」
最初は握った拳を口元に当て,何とか喘ぎを漏らすまいと耐えていた六太だったが,
ここまで激しく犯し続けられては無理というものだ.
無意識のうちに尚隆の責めに合わせて腰を,頭を振り,
それでも快楽の渦に呑み込まれまいと最後の抵抗を続ける.
尚隆は首筋から肩にかけての汗ばんだ肌を激しく舐めまわしては
「どうだ?感じるだろう?」と低い声で卑猥に囁いた.
快感のあまり六太の秘所が断続的に収縮し,その度に尚隆をきつく締め付ける.
ただでさえ狭いのに,こうまで締め付けられては
さすがの尚隆もそう長くは保たないが,達するのは六太の方が早かった.
「ああッーーあーーあああぁーーッ!」
思い切り背を反らしたかと思うと,途端に今まで以上に
尚隆をぎゅうぎゅうと締め付けて来た.
数瞬の後,六太の体からフッと力が抜け,尚隆の体の下でグッタリとなる.
それを見極めた尚隆はようやく上体を起こすと,
達した余韻ではあはあと荒い息を吐く六太を見おろし,
その体勢のまま,六太の体内の奥深くで精を放った.

505名無しさん:2008/05/05(月) 21:34:34
ストーリーも何も無いのに、テラ萌えた
自分的には尚隆がいきなり襲ってきたということで、強姦にしときます。

506尚六2:2008/05/06(火) 21:12:36
じゃ,黒尚隆でちょい続き.でもエロって難しいね……




尚隆は情欲で上気した顔に満足そうな笑みを浮かべると男根を引き抜いた.
濡れて萎えた男根と供に六太の体内から流れ出た精が,
シーツにじわりと染みを作る.
「なかなか良かったぞ」
尚隆は事も無げにそう言うと,
先程ビリビリに引き裂いた六太の服を寝台の片隅から拾い上げた.
全裸のまま床に降り立ちながらそれで自らの股間を無造作に拭い,
ゴミでも捨てるかの様に床に落とす.
やがて尚隆はさっさと己の装束を整えると,
犯されていた時の体勢のまま寝台の上で
ただ茫然としている六太を残し,部屋から出て行った.

507名無しさん:2008/05/06(火) 23:07:51
ぎゃーーーーーっ尚隆が黒い
自分は和姦で甘い続きを希望。。。

508尚六2別ver.:2008/05/07(水) 20:08:45
甘い……
何とか頑張ってみたけど長くなった(´・ω・`)ショボーン



射精の快感が尚隆の腰から脳天に駆け抜け,ふぅ,と吐息を漏らす.
彼が男根を包む温かな肉壁の心地よさにしばらくじっと余韻を楽しんでいると
やっと正気付いた六太と目が合った.
途端に六太の顔がカァッと上気し,狼狽えた様に顔を背けたので,
尚隆は内心で苦笑しながら,今だ繋がったままの腰を小刻みに揺らした.
「あッ…!」
六太は反射的に手を伸ばして尚隆を押し退けようとしたが,
尚隆は六太の腰を両脇からしっかりと掴んでしまったので,
腰を引く事はできなかった.
「だ,だめぇ,尚隆…!」
「なんだ,さっきまでお前も散々楽しんでいたではないか」
「だ,だって,誰か来たらっ」
何しろ今は真っ昼間.政務をサボって下界に遊びに行くため,
小部屋に隠れて様子を窺っていた筈なのに,一体どこでこんな展開になったのか.
「それはそれで緊張感があって良かろう」
尚隆がそんなふざけた事を言ったので,六太は「信じらんねー」と拗ねた.
「それに……俺,湯浴みしてなかったのに」
小さな声で恥ずかしそうに続けた六太に,尚隆が再び覆い被さった.
「では後で一緒に湯浴みに行こう」
「そういう問題じゃ」
だが六太がそれ以上不平を言う前に,尚隆に唇を塞がれた.
やがて小部屋に再び淫猥な空気と快楽の呻きが満ちていく.
どうやら関弓に遊びに降りるのはまたの機会となりそうだ.

509名無しさん:2008/05/10(土) 22:41:32
GJ、GJ!!
甘くて最高です(;´Д`)ハァハァ

510名無しさん:2008/05/23(金) 01:14:07
今日初めて来て途中までしか読んでないんだけど、
『台輔の勤め』って24で終わってる?リレーもなし?
嫉妬した尚隆とのその後を激しく読みたいんだが…

511名無しさん:2008/05/24(土) 17:58:35
自分的にはあの後、氾王様へ夜伽中・・・・嫉妬に狂った尚隆が乱入
で、二人に攻められちゃうろくたんの流れだと思ってた
続き気になるよ、姐さん

512名無しさん:2008/07/10(木) 19:46:58
なんか滅茶苦茶甘い尚六が読みたい

513延王延麒登遐:2008/11/03(月) 20:52:35
簡単なシーンだけ&801ぽくないですが、一応尚六の積もり。末声ネタ注意。





   戴を救うに当たって、天帝側と対峙する事になった陽子達。
   何とか危機を脱し当初の目的を達するが、陽子と別行動だった
   延王の王気が消えた事を、陽子と一緒にいた六太が察知する。
   取り乱す六太。それを何とか宥めて帰途につくが、脱出路の渓谷で、
   不意に尚隆が同道の臣下等と共に陽子達の目の前に現れた……。

何かがおかしい。陽子は直感した。この気配は奇妙だ。
「来い、六太」
対峙している一団の中から尚隆が手招いた。茫然とした表情のまま、
フラフラと引き寄せられそうになった六太に、陽子は思わず叫んだ。
「だめだ、延麒……!」
すると六太はフッと笑って陽子を見た。
「尚隆が呼んでいるんだ」
「六太君!」
再び叫んだ陽子を六太は振り返った。
「ありがとな」
それだけ言って尚隆の元に駆け寄る。
陽子は満面に笑みを湛えて六太を迎える尚隆と、
同じように嬉しそうな顔で彼の腕の中に飛び込む六太とを見た。
途端に濃い霧が辺りに立ち込め、一寸先も見えなくなる。
程なくして霧が晴れた時には、尚隆も六太も、
尚隆と共ににいた武将達の姿もどこにも無かった。

   無事、慶に帰り着いた陽子達。王と宰輔が救出された戴は
   一応救われた事になるが、いきなり両者を失った雁の方は混乱。
   それでも日頃から官吏がしっかりしていただけに、
   今のところ傍目からは落ち着いているように見える。そんな日々。

白雉が落ち、延果が生った。その意味が指し示す物を陽子も
よく知っている筈なのに、彼女はどうしても思い切る事ができなかった。
失道と言う平凡な経緯を経ず、元気な姿のまま突然陽子の前から姿を消した彼等は、
いつかまたひょっこり現れるような気がしてしまうのだ。
「よう。久しぶり」
無造作な挨拶と共に、今にも金波宮の窓から六太が飛び込んで来るような気がする。
「いつも突然のお越しですね。入口はあちらですが」と呆れる陽子に、
「ここが近道だからな」とにやりとしながら。
そして六太に続いて房室に入り込んだ偉丈夫も、「そう堅いことを言うな、陽子。
慶の者はどうも堅苦しくていかん」と大らかな笑みを向けてくるのだ……。

ふとそんな想像に捕らわれた陽子は、
ただひたすら窓の外を見ながら椅子に座り込んでいるだけだった。

514ほのぼの尚六「新婚だもん」(1/3):2010/09/11(土) 08:02:39
尚六初夜SS「除夜」スレに落としたネタで書きはじめてはみたものの、
長くなった上に途中で詰まって筆が止まったので
書き逃げに捨てていきます。

ネタ:
尚隆と関係ができたばかりで何かというと「尚隆が」を連発する六太に、
「あいつは『尚隆』しか言えんのか」とぼやく帷湍
-----


 六太の様子がおかしいことには誰もが気づいていた。ある日の朝議で、いつ
になくぼんやりとして口数も少なく、そのまま数日。まさか失道ではあるまい
に、と官らも少々不安に駆られはしたものの、主君が自分の麒麟に手を出した
がゆえだとは思いもよらなかった。
 手を出したと言っても、もちろんひっぱたいたとかそういう暴力沙汰の話で
はない。
「はあ……」
 帷湍が溜息をついた横で、朱衡は「過ぎてしまったことは仕方がありません」
と言った。そもそも尚隆が事態を隠しておらず、毎晩仁重殿に渡るようになっ
たから彼らにも原因が知れただけで、最初にコトが起きてから既に十日は経っ
ていよう。
「まさか黙認するとでも言うんじゃないだろうな?」
 帷湍がにらむと、今度は朱衡が溜息をついた。
「他に何ができると言うのです?」
「このまま台輔を見捨てられるか!」帷湍は声を荒げ、目の前の卓を拳でドン!
と叩いた。「尚隆の不行状にはこれまでもさんざん悩まされてきたが、今度と
いう今度は本気が愛想が尽きた!」
「……あなたはどこを見ているんです」
 眉根を寄せた朱衡に、帷湍は「はあ?」と問うた。

515ほのぼの尚六「新婚だもん」(2/3):2010/09/11(土) 08:04:50
「何の話だ」
「だから台輔ですよ。ぼんやりとなさったかと思うと気もそぞろで」
「そりゃあな、毎晩無体をされているとなれば仕方なかろう」
「その割には上機嫌でいらっしゃいますね」
「無理をしているんだろう、可哀相に」
「わたしたちと話をされていても、その場に主上がおいでになると、お姿が見
える前からそわそわとなさって」
「怯えているのか。麒麟は王気がわかるからな」
「いざ主上がお見えになると、顔を赤らめて、はにかんで」
 帷湍が目をしばたたいたところへ、当の六太が「話って何?」と顔を出した
のでふたりとも黙り込んだ。尚隆の毒牙からこの少年を守るべく、帷湍がここ
に呼び出していたのだ。
 自分が呼んだとはいえ不意を突かれて反応に窮した帷湍は、「あ、いや……
その」とうろたえた。その傍らで朱衡は微笑し、椅子と菓子を勧めた。
「帷湍が美味な菓子を手に入れましたのでね、せっかくですから、ぜひ台輔に
もご賞味いただこうと」
「え? あ、そう……なの?」
「最近はまじめにご政務に励んでおられるようですから、ご褒美ですよ」
 よく意味がわからない顔をした六太だったが、勧められるままに座って菓子
を口にした。
「どうです? 昨日、領地の視察に行ったときに買い求めた生菓子だそうです
が、なかなか美味でしょう?」
「うん」
 六太はにこにこして菓子をほおばっている。とても主君に無体を強いられて
鬱々としているようには見えない。帷湍は幾度も目をしばたたき、何を言うべ
きか迷って、結局一言も口から出てこなかった。
「えーと。あの、悪いんだけど、他に用がないならすぐ行っちゃっていいかな?
これから尚隆とお茶を飲む約束してんだ」
「そうでしたか。もちろんです」

516ほのぼの尚六「新婚だもん」(3/3):2010/09/11(土) 08:07:21
 六太はふと手の中の食べかけの菓子を見て言った。
「これ、尚隆も食べるかなぁ?」
「どうでしょう。主上はあまり甘いものは食されませんから」
「そうだよなー……」
 がっかりした様子に、朱衡はほほえんで続けた。
「よろしければ少しお持ちください。台輔がお持ちになったものなら、主上は
喜んでお召しになるでしょうから」
「そう? そう思う?」
「はい」
「じゃあ、少しもらってこうかな」
 朱衡は女官に命じて小綺麗な包みを作らせると六太に渡した。六太はそれを
大事そうに懐に入れ、足取りも軽く、房室から駆け去るようにして出て行った。
「……浮かれてるな」
「だから言ったでしょう。上機嫌でいらっしゃると」
「しかしこれは……。どういうことなんだ?」
 混乱しきりの帷湍は頭を抱えた。

「尚隆見なかった?」
「尚隆が言ってたけど――」
「尚隆喜ぶかなあ?」
 気づいてみれば、六太の口から出るのは主君の名ばかり。最初のうちこそぼ
んやりとした様子が勝っていただけで、日が経つにつれ、どこから見ても浮か
れている様子が見て取れた。
「うーむ……」
「猪のように唸ってばかりいないでください」
「うるさい」

517名無しさん:2010/09/13(月) 12:28:19
ラブラブでんなw
朱衡と帷湍の掛け合い
も萌え

518ほのぼの尚六「新婚だもん」続き(1/2):2010/09/26(日) 13:32:00
尻切れトンボだったのを、無理やりですが終わらせました。
-----

 澄ましている朱衡を一喝して考えこむ帷湍。彼には信じがたいことではあっ
たが、六太は主君に無体をされて鬱々としているどころか、どこから見てもの
ぼせ上がっていた。
「もしや、最初から合意の上だったのか……?」
 ようやくそんなことを考えた帷湍の混乱をよそに、最近の六太ははしゃぎっ
ぱなしだった。政務の合間の休憩は必ず尚隆と一緒で、池のほとりの瀟洒な四
阿や開放的な露台で茶と軽食を楽しむ。周囲の女官が給仕しようとするのを押
しとどめ、自分が茶を注いだり菓子を皿に載せたりとあれこれ尚隆の世話を焼
く。一方、尚隆はと言えばされるがままで、苦笑しながらも目を細めて六太を
見やるのが常だった。
 帷湍は一度、なかなか休憩から戻ってこない尚隆にしびれを切らして迎えに
行ったのだが、張り切って主の世話を焼く六太の姿に何となく気後れし、その
まま外殿に戻ってしまった。どう見ても自分は邪魔者だったからだ。
「まあ、しばらくすれば台輔も落ち着きますよ。今はまだ、ああなって間もな
いだけに有頂天なのでしょう」
 朱衡はそう言って肩をすくめ、ここに至って帷湍は主従が相思相愛であるこ
とを認めざるを得なかった。

「あれ? こっちに尚隆来なかった?」
 休憩がてら庭院に空気を吸いに出た帷湍は、途中で行き合った六太にそう尋
ねられた。既に政務が終わったのか、六太にはめずらしいことに官服ではなく
きらびやかな長袍を着ている。

519ほのぼの尚六「新婚だもん」続き(2/2):2010/09/26(日) 13:34:01
「今さっきまでいたようだが……外殿に戻ったようだな」
 そう言って建物のほうに顎をしゃくる。「そっか」と言って立ち去りかけた
六太は、ふと振り返った。
「これ、尚隆が作らせてくれたんだ」
 そう言ってにこにこしながら、さまざまな吉祥の図絵が織り込まれた長袍の
袖と裾を広げて見せる。普段は服などどうでもいいとばかりに無頓着だし、む
しろ市井に降りるときの簡素な服装に比べれば長袍すらわずらわしいと言って
いたはずなのに、今は本当に嬉しそうだった。
「あ、そ、そうか。いや、その――似合うんじゃないか?」
「うん、尚隆もそう言ってくれた」
 六太は頬を染めて答え、帷湍が固まっている間にぱたぱたと建物のほうに駆
けていった。

「尚隆が――」
「尚隆の――」
「尚隆に――」
 六太の口からは、二言目には尚隆の名前が飛び出す。朱衡は「しばらくすれ
ば落ち着きますよ」と言っていたが、少なくとも当分は浮かれ調子は治まりそ
うになかった。
「あいつは『尚隆』しか言えんのか」
 ついぼやいた帷湍に、耳ざとく聞きつけた尚隆は笑って「新婚だからな、大
目に見ろ」と言った。

520名無しさん:2010/10/19(火) 07:56:33
>>207-209
ろくたん、かわええー(*´Д`)ハァハァ
にやにやしながら何度も読み返しちゃったよ

最近たどり着いたので今さらでスマソ

521名無しさん:2010/10/22(金) 11:45:28
エロもいいけど
可愛い話もいいよね

522尚六「夜這い」(1/2):2011/04/23(土) 10:16:49
「夜這いにきた」
 夜半、そんな莫迦なことを言いながら、尚隆が牀榻にもぐりこんできた。俺
はようやくうとうとしかけたところだったので、面倒臭そうに「あ、そう」と
答えて寝返りを打ち、彼に背を向けた。一ヶ月もどこをほっつき歩いていたの
やら。
「つれないな。せっかくみやげを持ってきたのに」
 そのまま無視していると、尚隆は続けた。
「そう冷たくするな。市井の女房連中は、亭主元気で留守がいいと平気でうそ
ぶくぞ」
「誰が亭主だ。阿呆」
「俺はこの国の主人だろうが」尚隆はおかしそうに答えた。
「で、俺が女房役ってか? ふざけんな」
 背を向けたままなじると、尚隆が衾の下の俺の太腿にそっと手をすべらせて
きたので、眠気の覚めた俺はあわてて腰を引いた。尚隆が含み笑いをする。
「そうすねるな。いつもいの一番におまえのところに帰ってくるだろうが。毎
度毎度ここに忍びこむのも大変なのだぞ」
 進入者が王とあっては、仁重殿の不寝番がことごとく見逃すに違いないこと
を知っていながら、いけしゃあしゃあとそんなことを言う。
「脂粉の匂いをぷんぷんさせながら、俺のそばに寄るなっての」
「ほう。やっぱりすねておるのか」
「何だよ?」
「今回は荒くれ男たちと漁に出ておってな。女には指一本触れておらん。脂粉
どころか潮と魚の臭いにまみれておるはずだが」
 黙りこんだ俺に尚隆はまた含み笑いをすると、後ろから俺の体に腕を回して
きた。
「おまえの肌に触れぬと、帰ってきた気がせん」
 そんなことをささやきながら首元に顔を埋めてきたので、俺は肩を揺らすよ
うにして尚隆の腕をふりほどこうとした。だが尚隆はしっかりと俺を捕らえて
離さない。俺は簡単に体の向きを変えさせられ、あおむけにされて彼に組み敷
かれていた。
「俺の帰る場所はここしかない」低い声で艶めいた睦言をささやきかけてくる。
「忘れたとは言わさぬぞ」
「忘れた」

523尚六「夜這い」(2/2):2011/04/23(土) 10:19:03
「それは残念だな。では体に聞くとするか」
 尚隆はそう言ってさっさと俺の被衫を脱がせにかかったので、俺は唇をとが
らせて、「ばか」とだけつぶやいた。その口も、すぐに荒々しい接吻でふさが
れてしまったが。

 そうやって久しぶりに褥で一緒に過ごしたというのに、翌朝の尚隆はまだ朝
日が昇らないうちにもぞもぞ動き出した。俺は半分寝ぼけながらも衾から頭を
出して、市井から戻ったときのままの粗末な衣服を身につける尚隆に「もう行
くのかよ」と文句を言った。どうせ朝議には出ずに、朝寝を決めこむくせに。
「秘め事というものはな、暗いうちと決まっておる。互いに後ろ髪を引かれつ
つ、しめやかに立ち去るのが風流というものだ。夜が明けきってから互いの顔
を見ることくらい間抜けなことはないぞ」
「へー。おまえ、そんな間抜けな顔をしてるわけ」
 減らず口をたたいた俺を残し、尚隆は軽く笑って牀榻を出ていった。
 臥室の扉が静かに閉まる音がし、あいつの気配がなくなってから、俺は臥牀
の上にむくりと起きあがった。
「ばか」
 何度か漏らしたつぶやきをふたたび口にし、適当に着物を羽織って牀榻を出
る。すると臥室の中ほどに置いてある大卓の上に、大きく口を開けた頭陀袋が
載っているのが見えた。中から桜桃や枇杷、晩生の柑果といった果物がごろご
ろと顔を出している。特に柑果は、南国の奏で採れるような大振りの見事なも
のだ。
「これがみやげ?」
 いつも食いもんで俺を釣れると思ってるんだから。そうは思ったものの、果
物であふれた頭陀袋を担いで帰ってきたのかと思うと、ちょっとおかしかった。
 漁に出ていたと言っていたが、さすがに魚を俺へのみやげにするわけにはい
かなかったのだろう。この山盛りの果物は、穫れた魚とでも交換してきたのだ
ろうか。
 俺は無造作に柑果を手にとって皮をむき、かぶりついた。ややきつい酸味は、
どこか夏の訪れを思わせた。
「夏の匂いがする……」
 俺は、ふふ、と笑ってふたたび果肉にかぶりついた。

524名無しさん:2011/06/30(木) 20:55:11
522-523、雰囲気が良い〜
想いは通じてるんだけど、放浪癖のある亭主に、諦めたように振り回されてる妻なろくたんにモエ

525名無しさん:2011/07/01(金) 00:04:48
熟年夫婦だからねぇw

526名無しさん:2013/09/09(月) 16:38:26
人もいないようなので、思いついた話をひっそりゆっくり投下します
黄昏の後の話なので、かなり勝手な妄想上の展開です
麒麟の設定についても勝手な妄想をしてます
不要と思われることはなるべく削ぎ落としたつもり…
何か問題あったら教えて下さい


省略したここまでの状況は、

垂州城を経て文州に向かった泰麒と李斎
途中、正頼・霜元とも再会し、その他の協力者を得て、ようやく琳宇へと辿り着いた
なんだかんだあって涵養山で驍宗が助けられたことを知り、いてもたってもいられなくなった泰麒は李斎たちの同意を得る間もなく単身涵養山に向かったのだが…

という感じです

527戴の話1/10(ぐらい):2013/09/09(月) 16:43:42
早く会いたかった
昔、僕はたった一時驍宗さまと離れるのも寂しくて仕方なかった
会えれば無条件で嬉しく、一秒でも長くおそばにいたかった
7年の失われた時間の中でも、記憶こそなかったもののずっと恋い慕っていた

ーー決しておそばを離れないと誓ったのに

失われた時間が恨めしく、だからこそ一瞬でも早く取り戻したい

ーーお姿を見たら、溜まらず抱きついてしまうかもしれないな

行儀の悪いことだとは思ったけども、驍宗に会ったときに溢れ出す気持ちを抑える自信はなかった

泰麒は未だ角を失ったままである
指令も持たず、王気も見えない
人型のまま必死に走って、涵養山の最深部までたどり着いていた
遠くに火が見えて、泰麒はそちらに向かう

「どう した? 坊主、どこかから逃げてきたのか」
火は松明で、それを掲げていたのは一人の男だった
「家を無くしたのか、帰るところは?」
男は泰麒に火を向けて訊ねる
優しい言いようだったが、声の底に警戒心が聞き取れた
男は泰麒に見覚えが無いようだった
しかし泰麒はこの声をどこかで聞いたような気がする

ーーどこだったか。遥か昔、確か…
松明が揺れる

その明かりが男の頬を照らしたとき、泰麒は思わず声を上げていた
「英章…!」
英章は戴国禁軍中軍の将軍
元々は驍宗軍の師帥で、軍略に長けた知能と、アンバランスなほど若い見た目を持った美貌の武人だ
英章は驚いた顔をした後怪訝そうな顔になり、再び驚いた顔をした
「もしや、台輔…!」
「ええ、そう。そうです、英章。覚えていてくれたんですね」
「いえ、すぐには分からなかったのです。だって、あんなにいとけなく…お小さく…。坊主だなんて、とんだ失礼を…」
「それは僕も同じです。声だけではすぐに英章だと気がつけなかった。だから何も気にしないで。ーー何してたの?」
何もない山の中である
こんなところで一人松明を焚いて、何をしていたのか
「主上は他の者とともに隠れています。こんなに早くいらっしゃるとは思いませんでした。早くて明日の早朝に皆で向かってくるものと思い、私が今夜から番をしていたのです」
まさか台輔お一人でいらっしゃるとは、と英章は苦笑する
「よほど早く主上にお会いしたかったのですね」
「もちろんです! 僕はーー」
泰麒は矢継ぎ早に話した
7年間蓬莱にいたこと、記憶を失っていたこと、角と指令を失ったこと
7年間ずっと記憶が無い中でも驍宗に会いたかったこと、驍宗を思い出した瞬間がどれだけ幸せだったか、今もどれだけ会いたいか、次にあったら二度と離れたくはないこと、もしかしたら会った瞬間抱きついてしまうかも知れない、はしたないと怒られるだろうかとーー

528戴の話1/10(ぐらい):2013/09/09(月) 16:48:42
英章は目をパチパチさせながら、ときおり頷いて黙って聞いていた
多分、口を挟む隙がなかったのだろう
話したいことを全て話し終えてからやっと、泰麒はそれに気がついた
「ごめんなさい、英章。僕、気持ちがいっぱいいっぱいで。思わず…」
なんだか少し恥ずかしいことも言った気がする
だが、聞いていたのは英章だけなのだから、きっと大丈夫だろう
この紳士は気が利くし、不要なことを広めて回ったりするタイプではない

英章は優しく笑う
「いえ、台輔のお気持ちよく分かりました。ーーねぇ、主上」
英章が地面に手を伸ばし、足元から山の斜面に向かって土をひっくり返した
返したように見えた

泰麒はぽかんとする
うまく造ったものだ
英章が翻したものは山肌を模した布で、泰麒が山の斜面だと思っていた部分の一部にはぽっかりと穴が空いている
入り口は小さく、中はドーム上に
真ん中に火が焚かれていて、大きなかまくらのような作りである
その中には10人ほどの人がいて、泰麒の方を、ニコニコと見つめている
知っている顔もいくつかあった
その中に一人…一番奥の中央、渋い顔をした紅い目が、英章を睨んでいる

「私が聞いていると、早く教えてやればいいものを」
「だって台輔が口を挟ませてくれなかったんですよ」
「この幕を開ければ済む話だろうが」
「そうお思いならご自分でお開けになればよろしかったのに」
「『なんの罠があるか分からない。私が開けるまでは何があろうと、例え台輔の声がしようとお開けになりませんように』と言ったのは誰であったか」
「さあ、そんなことも言いましたかね」
英章は涼しい顔で言う
そして少し申しわけなさそうな笑みを浮かべて泰麒を見ると
「台輔のお気持ちは十分伝わったでしょう。抱きつこうが殴りかかろうが、主上は決してお怒りにならないと思いますよ」
と、じっと硬直している泰麒の背を、土のかまくらに向かって押したのだった

529戴の話3/10(ぐらい):2013/09/09(月) 22:15:25
かまくらの中、紅い目の主は英章に向けたものとは打って変わって、優しい瞳を泰麒に向けた
「久しいな、蒿里。なるほど、時というのは儚い。私が無為に過ごすうちに、こんなにも大きくなったのだな」
かまくらの中、円座に座っていた人々は、座ったままずるずると移動して英章と泰麒のために驍宗の両側を開けた
「さあ、台輔。早く入り口を閉めなければいけません」
英章はもう一度泰麒の背を押した
それで泰麒は、力なくかまくらに入って、驍宗の前に立つ
「主上…」
絞り出すように、やっとそれだけ言った
どこか疑問符が付くような言い方だった
だが、それにこだわる人はどこにもいない

7年ぶりの主従の再会
それは戴国民の悲願であり、希望である
ただでさえ感動的なこの瞬間を、泰麒は布の外の告白で彩ってくれた
麒麟の主を思う心とは、かくも切なく美しい
この場に居合わせたことを、かまくらの中の人々は幸せに思っていた

「長くおそばを離れましたこと、誠に申し訳ありません」
泰麒は膝を付き、頭を下げる
「主上には長くのご辛抱、私が至らない麒麟であったために、まことにーー」
「そんなことはない。私が至らない王だったのだ。蒿里には並々ならぬ苦労を掛けた。申し訳ない」
「いえ!」
泰麒が慌てて顔を上げると、驍宗は立ち上がっていた
顔を上げた泰麒を見て、両腕を広げる
「きなさい」
泰麒は一瞬目を見開くと、よろよろと立ち上がり、そのまま驍宗の胸に頭を預けた
驍宗は左手でしっかりと泰麒を抱きしめると、右手で頭をぽんぽんと優しく叩く
「辛い思いをさせたな。私もお前に会いたいと思っていた。会えて嬉しい」
普段の驍宗は、こんなことを言う人物ではない
ましてや自分から麒麟を抱きしめるような人物でもない
これは全て、泰麒の気持ちを思ってだろう

かまくらの中の人々は、その場面を感動を持って見守っていた
無慈悲で有名なあの英章さえ、涙を浮かべて見つめている!
「二度と側から離すようなことはすまい。この戦いが終わったら、玉座を取り戻したら、どこに行くにもお前を離さなくていいように、国のどこにも一滴の血も流れぬような、そんな国にしてみせよう」
「ーーはい、主上…」
ずっと黙って気をつけの姿勢をしていた泰麒が、やっとそれに応えた
驍宗の背に手を回し、ぎゅっと抱きしめる

かまくらの中は感動に包まれた

始め、泰麒は戸惑っていたのだろう、と人々は思う
ずっと会いたかった主人が急に目の前に現れて
英章だけに聞かせるはずだった秘密の告白を、驍宗や、自分たちに聞かせてしまって
それが恥ずかしく、狼狽えてしまったのだろうと

明日、李斎たちが来るまではここで密やかに過ごさなくてはいけない
またまだ緊張を解くことはできない
しかし、今夜は今まで幾度となく越えてきた寒い夜とは違う
今夜は良い睡眠が取れそうだ、と人々は暖かい気持ちで周りの者たちと視線を交わした

530戴の話4/10(ぐらい):2013/09/09(月) 22:20:59
だがその感動のさなかーー
たった一人氷のような気持ちでそこにいた人物がいることに、誰が気がつけただろうか
しかもそれが他ならぬ泰麒であるだなんて、誰が想像しえただろうか

泰麒は、自身の気持ちに愕然としていた

「そういえば、台輔」
小声で話しかけてきたのは、泰麒の隣にいる年嵩の女だった
そろそろ休もうということになって、火は焚いたまま皆目を閉じている
泰麒はぼんやりと目を開けていたので、声を掛けてきたようだった

泰麒は驍宗の左隣に座って、驍宗に凭れている
自分から凭れているというよりは、驍宗がしっかりと泰麒の左肩を抱き寄せているので自然とそうなったという感じだ
これも驍宗がそうしたいからというよりは、泰麒がそうしてほしいと思っていると思ってのことだろうな、と泰麒はぼんやり考える

「何か…」
「すみません、寝られなくて、私。台輔とお話しできる機会なんて、きっともうないから。おそれ多いんですけど、お話ししてみたくて」
すみません、と女は縮こまる
泰麒は微笑んで
「なんでもお話し下さい」
と女に合わせて小声で返した

女とは10分ほど話した
蓬莱の話、最近の戴の話、他国の噂話や身の上のことなど
女は元は文州の一兵卒だったが、結婚したくなって野に下ったのが弘始元年、いろんな縁が絡み合って、今はこうして王を守りながらまた武人の真似事をしているということだった
「そういえば」
と、大分眠そうになった瞳で女は言う
「麒麟は王気を感じることができるとか。布越しとはいえ王のお側にあって、驍宗さまがいることにお気づきにならなかったのですね」
「ええ、さっき外で言いましたがーー僕は角を失いました。それは僕の麒麟としての本性が失われたということなんです。ですから、王気も、何も…」
女を見やると、もう眠ってしまったようだった
泰麒は溜め息をつく

そう、僕は麒麟としての本性を失った
それは分かっていた
だから王気が感じられないことも、なんの役にも立てないことも分かっていた
でも、これは予想外だった

ーー驍宗さまに会えても、全く嬉しくなかった…

いや、もちろん会えて嬉しい
王が無事でほっとしている
でもそれは、至って普通の感情だった
霜元と再会できて嬉しかった
正頼に涙を流して喜ばれて嬉しかった
それと同じような、当たり前の感情…

蓬莱式にいうならば、小学校のとき憧れていた人に20年ぶりの同窓会で再会したら、何か違った
うん、まさにそんな感じ

阿選は、泰麒の麒麟としての本性である角、それに付随する「王が愛しくてたまらない」という気持ちも一緒に奪っていってしまったのだ

531戴の話5/10(ぐらい):2013/09/10(火) 00:17:04
ーー僕は驍宗さまが好きだと思っていたけど

目を閉じた驍宗の横顔を見て、泰麒は困惑の表情を浮かべる

ーーこんなに近くにいるのに、なんとも思わない…

それはつまり、蒿里として驍宗自身を想っていたわけではなく、泰麒として泰王を想っていただけだということだ
それは泰麒にとって少なからずショックだった

ーー麒麟の本性がなければ、僕はこんなに冷めた気持ちでこの人を見ることになるのか…

目の前にいる人に愛しさを感じられず、7年育て続けた愛しい人に会いたいという気持ちだけが行き場を失って、泰麒の心にたゆたっていた


〈長くなるので途中を説明文で〉
翌日李斎たちが迎えに来て、驍宗たちは軍備を整え、半月掛けて密かに鴻基山の近くまでやってきた
阿選側は内側から瓦解を始めているようで、ここに着くまでに目立った戦闘をする必要もなかった(李斎たちが初めに軍を整えられたのもそのため)
麒麟としての本性を失った泰麒は、ちょっとした戦闘の中にあっても平気だった
驍宗はなるべく泰麒のそばにいようとしたし、あの時かまくらにいた10人によって、王と麒麟の再会がどんなに感動的だったか、少々尾鰭をつけながら李斎たちの軍内に噂も広まっていた
白圭宮を目指すもの全員が、王と台輔を二度と離してはいけないと心に誓っていた
でも泰麒は特に側にいたいとも思えず、驍宗が泰麒の7年の思いに応えようとしてくれるのを感じる度に心苦しい
明日には白圭宮に攻め入ろうという夜、驍宗たちはささやかで慎ましい宴を開き、勝利を約束しあった
その夜は初めてちょっとした天幕をいくつか作ることができ、泰麒は再会以来初めて驍宗と二人で過ごすことになった

532戴の話6/10(ぐらい):2013/09/10(火) 00:19:23
「7年の間、私はいろいろなことを後悔した」
この7年で互いの身に起こったことを報告し合い、一息着いたところで驍宗が言った
「その最たるものが、もっとお前を信じ、なんでも話すべきだったということだ。臣は裏切ることもある。だがお前は私の半身。何を置いても支え合い、分かり合うべき相手だった」
泰麒は頷く
「そのことで悪い夢も何度も見た。もうお前は私の元には帰ってこないのではないかと。私が死んで新たな王を迎えることを望んでいるのではないかと。だから姿を現さないのではないかと。分かり合うべき相手だと反省したはずのその頭で、またお前を疑っていた。もしお前の告白を聞かずに再会していたら、私たちの間はもっと殺伐としていたかもしれない。でもお前はこんなにも、私を想ってくれていたのだな」
泰麒は麒麟だ
だから泰王を愛している
でもそれは、その本性が戻って来さえすればだ
麒麟で無くなったただの蒿里に、今の驍宗もまたただの人にしか見えない
それは蓬莱風に言えば
「学校先輩としては好きだけど、個人的なお付き合いはちょっと」といったところか
うん、ちょっと違うけど、気持ちはそんな感じ
そう言われていい気分がする者がいようはずはない
しかもまずいことに、この先輩は後輩が自分を好きだと思っている
他ならぬ後輩自身の言葉によって

身が裂けるほど心苦しい
相手を思ってとはいえ、嘘を付くのは蒿里自身の性分としてできないことだった

ーー正直に言おう

意を決したが、先に驍宗が口を開く
「私はもうお前に嘘をつかない、隠し事をしないと決めた。正直に言おう。私はお前を片時も離したくはないし、二度と離れたくはない。それは何も民のためだけではない。お前のためでもない。私がそうしたいからだ。ずっと近くにいてほしい。目の届くところに…」

ーー言えない

心が折れるのを感じると同時に、その言葉はやはり嬉しかった
誰だって、好かれていることは嬉しいんだ
好きじゃないと言われて悲しくない人はいない
そばにいたいと言ってくれている人に「私はそうでもありません」なんていうのは、泰麒にとって嘘を付くよりもっと難しいことだった
驍宗はじっと泰麒を見ている
泰麒がなんと返事をするか待っているのだろう

泰麒は返事をせず、驍宗に抱きついてみた
嘘をつくのは難しい
本当のことを言うのは心苦しい
何も言わないのが、一番良いように思われた
「自分から抱きついてくるのは初めてだな」
そう言って驍宗は頭を撫でてくれる
泰麒は意識を集中させて、自分に問いかける

ーー嬉しいか? 嬉しいか? 一緒にいられて。やっと会えて。嬉しいはずだ。ずっと会いたかったんだ!

でもいくら探しても、心のどこにも愛しさは芽生えてこなかった

533名無しさん:2013/09/10(火) 20:37:08
うーむ、一晩寝たらよく分からなくなってしまった
すみません
ここで止めます

534名無しさん:2013/09/12(木) 01:31:19
乙です。
もし続きできたら読ませていただけたらうれしいです!

535名無しさん:2013/09/15(日) 12:05:12
>>534
まじですか!
大変嬉しかったのでちょっとがんばってみたんだけど、やっぱり無理だった…

536名無しさん:2013/12/25(水) 20:47:06
>>535
凄く面白いですよ!
どういう展開になさるのか書き手さんの着地点がわからないけど
色んなパターンで妄想しがいのある素敵視点のSSだと思いました
私も続き待ってます!

537尚六1/3:2014/03/07(金) 03:15:47
誰もいない……初投下するなら今のうち(´∀`)

・やさぐれ六太と尚隆@碁石集め中
・最近書きはじめたので間違いあったら指摘していただけたら有難いです
・携帯からなので読みにくいかもしれませんがよろしければ



 寝そべったまま腹の上で瓶を開け、無造作に手を突っ込み引き上げる。
 金色に透き通るそれが、滴り、服を床を汚していく。
 うっすら開いて待ち受ける唇を、濡れた指が割って入った。
 とろりとした甘さが舌に絡んで、喉を焼いて胃の腑へと落ちていく。

 広がる金糸の上に散らばる粒の一つを、幼い指先が探り当て口に放り込む。
 かりとそれを噛みながら、星になってしまえばいいと六太はぼんやり思う。
 淡い薄水の小さな星屑は、さらりと口内で融けて消えていった。

 絹の敷布に広がる蜜溜まりの中から、同じ色の塊を拾いあげる。
 すべらかな舌触りのそれは、六太に女官達の挿す簪を思い浮かばせる。
 がりりと噛み砕きながら、それとも、と投げ遣りな思考は見当違いの言葉で感情を吐露する。
 この甘さに閉じ籠って眠ってしまおうか。
 砂糖漬けの花が、盛りの姿のまま冬を越えるように。
 樹木の流すそれに囚われた虫が、形を留めたまま時を越えるように。
 この甘さに閉じ込められて眠ってしまえば、永遠を獲られるのだろうか。
 酸味も苦味もない、ただひたすら一途な甘さばかり集めて、溺れてしまえば。

538尚六2/3:2014/03/07(金) 03:17:04
 袋を開け、天井を仰いだまま掌に中身を空ける。
 摘まみあげた一つを除いて、後は受け止められずに溢れた分に紛れこませた。
 丸く、色ばかり赤い、香料と砂糖の塊を口へと押し込む。
 流石に胸焼けがしてくるが、構わずに口内で転がす。
 大粒のそれは先客とぶつかり合って、かちかちと口の中で小さく鳴った
 さらさらとした舌触りの黒は、幾つもの甘味が過ぎ去っていく中で、少しも融けてくれやしない。
 まるで、見つけてしまった事実はなかった事にはならないのだと、知らしめているようで嫌になる。
 別段、それが何を意味していると決まった訳でもない。
 ただ何故だか見つけると同時に、自身でも驚く程冷めた心地でその事を理解していた。
 六太の主は未だ帰らない。
 尚隆は三月程前に城を出て、まだ帰らなかった。
関弓にもいないようなので、どこか遠出をしているのだろう。
 そう珍しい事でもないし、殊更慌てるような事でもない。少なくとも今まではそうだった。
 顔は動かさずに横目を巡らして、横たわった周囲を確認する。
 この有り様を見たら怒るだろうか、呆れるだろうか。
 王の反応を予想しようとしたが、上手くいかずに途中でやめる。
 己でも当て付け染みた事をしているとは思いながら、その実六太にそんなつもりはさらさらない。
 じゃあ何なのだろうと考えようとして、途端に億劫になってこれもやめた。

 ちりちり焼けつく胸を無視して、舌で転がし歯て削り。口内に甘みが拡がるのを促して、それでも充たされない。
 更なる甘さを求め、傍らに転がした瓶に手をのばそうとして、夜の向こうに近づく気配を見つけた。

 久方ぶりの自室で、尚隆は何とも言い難い表情で牀榻の惨状を眺めていた。
「……ここは俺の部屋だと思ったが」
「そうだな」
「何をしている」
「何だろうな」
 惨状の原因らしき麒麟に説明を求めた声には、仁辺もない返事が返る。
「寝床が無いんだがな」
「どうせろくに使いやしないんだ、いいだろ」
 ふと、何の気もなく六太が手を伸ばした。

539尚六3/3:2014/03/07(金) 03:18:22
 何か言おうとしていた尚隆の腕を引いて、近付く顔を伸び上がるようにして迎える。
 存外柔らかな感触。距離が無くなる刹那、見開かれた深い色の瞳と一瞬目があった。
 薄べったいそれを、重ねた唇から舌で押し込んでやって手を離す。
 唇というのは存外柔らかなものなのだな。
感想を抱きながら、再び離れた距離を見上げれば、らしからぬぽかんと間の抜けた表情があった。
 滅多に見れない表情が可笑しいと、六太は表情に出さずに心で笑う。
 これだけ生きて尚知らぬ表情がある。
それが少しばかり惜しいと思って、内心首を振る。もう終わることだと。
 絶句して立ち尽くす主を尻目に、するりと牀を降りた。
「なあ」
 そのまま横を通り抜ける際、声を掛ける。足は止めない。
 金色の気配。己だけが知る、今はまだ変わらずに暖かでいてくれるそれ。
「全部溜まったら教えてよ」
それなりに長い付き合いの誼でさ。
 そう付け加えて、返事は待たずに房室を出た。

 奇行の末、何も語らず麒麟が去った後。
 何とはなしに追いも出来ず、尚隆は甘い匂いに満ちた房室に一人残された。
 悪戯と言うには質の悪いやり方で、六太の寄越した飴のせいで口の中まで甘い。
 時折訳の判らぬ事を仕出かすどうしようもない餓鬼ではあるが、あの子供は徒に食物を無駄にすることはしないのだが。
 尚隆は割れそうに薄くなった飴を舌でなぞりながら、改めて目にした牀榻の有り様に閉口する。
 敷布は蜜でべたべた、その上に色とりどりの飴やら砂糖菓子やらが散らばっている。
 宵闇の中、僅かな灯りを照り返すそれは綺麗と言えない事もなかったが、
兎にも角にもこのままでは使い物になりそうもない。
 敷布を引き剥がして何とかなるだろうか、面倒だから榻を使うか、いっそこれから関弓に出るか。
 考えながらその前に、取り敢えず今回の戦利品を収めてしまおうと懐を探る。
 房室の片隅に隠した蓋付きの鉢を手にして、ふと違和を覚えた。
 軽い木で造られたそれが、詰めたものがものとはいえ、常と比べても妙に重い。
 訝しく思いつつ蓋を開けた所で、尚隆の手が止まった。宵の色の目がただじっとそれを見る。
 木鉢の中で、八十二の白と黒の石が縁まで浸された透き通る金色に沈んでいた。

540名無しさん:2014/03/15(土) 12:19:15
>>537-539
投下乙でした!
初キッス(らしい)って事は一応ノーマル主従なのかな?
でもここから尚隆が六太を強烈に意識し出して
碁石集めが馬鹿馬鹿しくなると同時に本当の尚六になりそう。
というか相手のベッドルームに籠もってわざと汚したり色々するのって
既に六太は相手に甘えてるし、意識的にしろそうでないにしろ
それを隠してもないって事だよねぇ。

541名無しさん:2014/04/02(水) 01:42:27
乙でした!

戸惑ってる尚隆にニヤニヤしつつ、気だるげな六太にドキドキしつつ、楽しく読めました
碁石集めを止めたのがこんな風に六太きっかけだといいなーと思った!

…感想言うの下手ですみません
また読みたいです

542名無しさん:2014/10/26(日) 01:53:42
その日驍宗は泰麒を抱いて寝た
それまでも皆で雑魚寝をしていたので常に隣にはいたのだが、二人で天幕で過ごすようになってまでそうしてくれるとは思わなかった
気持ちは痛いほどに嬉しいが、やはり抱き締められていることを嬉しいとは思えない
申し訳なくて泣きたくて、泰麒は目を閉じてかつての気持ちを思い出してみる
記憶の中の自分は驍宗のことが大好きで、そばにいたくて会いたくて堪らない
その気持ちは今も変わらないのに、目を開けてみれば目の前にいるのが会いたいその人と思えなかった

泰麒はそっと驍宗の胸に付けていた顔を上げる
元々獣のように気配に鋭い上に警戒心が強くなった彼は、周りの微かな動きでも目を覚ましてしまう
それを知っていたので、泰麒は細心の注意を払って驍宗の寝顔を見つめた
長年の潜伏で以前よりも頬が痩せて、青白く潤いのあった髪は艶を無くしている
泰麒の慈悲の心が痛んだ

彼は玉座の重みをきちんと理解している
この国の状況が自分の責であると自覚出来ている
中にははっきりと驍宗を責める者もいるだろう
驍宗はそれに対して言い訳などしないはずだ
しかし例え周りが「あなたのせいではない。全ては阿選が悪いのです」と言ったところで、彼はそれを認めはしないと思う
驍宗が治めるべき戴で民が苦しみ亡国に瀕したのは事実だからだ
その、一人で抱えるには大きすぎる責任

今の彼には味方が必要だ
心から彼を愛し、支える、決して裏切らない存在が
どれだけの者が驍宗を責め恨んでも、この者だけは自分を慕ってくれているのだと信じられる存在が
それはどう考えても麒麟の役目だ
天帝もきっとそのために王に麒麟を遣わせたのだろう

──では僕は、今日から意識して麒麟になろう

自分の個人的な感情など今はとるに足らないことだ
この人のために、王を愛し慕う、最高の麒麟を演じてみせよう

泰麒はそう決意して、再び驍宗の胸に頭を押し付けた
その僅かな身じろぎに目を覚ました王が抱き直してくれたので、泰麒もぎゅうと、背中に回した手に力を込めた

543名無しさん:2014/10/26(日) 01:58:06
>>532の続きでした(先にそう書き込もうと思ったのに忘れた)

ちょっとノッてきたので続けてみました
もしかしたらまだ続けるかもしれないんですが書き逃げスレってこういう使い方しても大丈夫ですかね?
なんかわりと長くなりそうだしいつ続き書くか分からない

50もは使わないと思うんですけど新しくスレ立てた方が迷惑にならない?

544名無しさん:2014/10/26(日) 19:46:18
好きでいいと思うよ。50も、というぐらいにあるなら1スレ使ってもいいだろうし
迷惑になるってのは気にしなくていいと思います、あとは好みだよ
532の話結構ツボってたので続ききたの嬉しいですよ
続きもまたーりまたせてもらいます(・∀・)

545名無しさん:2014/10/26(日) 23:12:08
ある程度長くて間が開くなら
後から読み返すほうからすると
独立したスレのほうが読みやすくていいです
前の話なんだけ?とか探す手間ないし

546名無しさん:2014/10/27(月) 00:08:53
お二方、ご意見ありがとうございます

こっそりここで書きたいな〜というのが自分の希望ではあったんですけど、そこで気になるのが書きたい人が来てくれたときに書きにくくなったらいけないなということでした
それに加えて>>545さんの意見が目から鱗だったので、次書くときにはスレ立てたいと思います
今までのも手直しできるし…

ありがとうございました!

547ほのぼの尚六「適切な頻度」:2015/05/03(日) 16:43:30
一線を越えて二ヶ月ほどのラブラブ主従。
健康を考えると連日の同衾はやりすぎと侍医が進言するものの、
春画まで入手して研究するほど熱心な六太はそんなことはないと抗弁。
-----

「三日に一度?」
「さようで」
 小難しい顔をした侍医が重々しく答える。尚隆の傍らで六太が「えー」と不
満の声を上げた。
「みそかごととて適切な頻度というものがございます。体に負担をかけず、さ
りとて不満もためず、心身の解放と回復を図るには、主上のご年齢ですと数日
に一度程度が適当かと。最初のひと月はとりあえずおふたりのご様子を拝見し
ておりましたが、連日同衾なさってそろそろふた月。このあたりで三日に一度
程度に控えてはいかがでしょう」
 尚隆は六太をひじでつつくと「だ、そうだぞ」と言った。六太はむくれて唇
を突き出した。
「それじゃ全然足りやしない。俺の体は尚隆より若いんだぞ。別に毎日やっ
たっていいじゃんか」
「畏れながら主上にお伺いしますが、市井におしのびになるとき、女性(にょ
しょう)をお求めになる頻度はいかほどで?」
 とたんに冷たい目になった六太が服の上から尚隆の脇腹をつねった。
「いたた」
「台輔。しばらくお静かに」
「さほどではないぞ。たとえば漁師に混じって漁に出れば、逆に女には長期間
触れぬ。それを考えれば平均すると十日に一度、多くても五、六日に一度とい
うところだろう」
「なるほど。そうしますと、やはりそのくらいが主上に適切な――」
「しかし要は間に合わせの相手だからな、六太とは違う」
 尚隆はそう言って、不満げに頬をふくらませている六太の肩に腕を回し、な
だめるように軽く揺すった。
「ふた月ではまだまだ目新しさも抜けぬし、むしろ互いに要領をつかんでおも
しろくなってきたところだ。侍医にも覚えがあろうが、男には始終そのことば
かり考えているような年頃がある。色を覚えたばかりならなおさら。制限など
せずとも、いずれこいつも自然に落ち着くだろう」
「別に俺はやることしか考えてないわけじゃないってば」
 六太が抗議した。侍医は溜息をついた。
「ちなみに昨夜は何回おやりに?」
「ふむ。五回だったかな。挿入三回、兜合わせ一回、こやつの手で一回、だっ
たか」
「尚隆、すげー激しかったんだぞ。挿れた三回とも違う体位で、時間も長かっ
たし、俺もう失神寸前だったんだから」
 だから全然負担になっていないと六太は言いたいらしい。侍医は困ったよう
に頭を振った。
「仕方がありませんな。では後ほど、負担になりにくい体位をいくつか図解で
お知らせしましょう。それを参考に、台輔にそそのかされてもあまり曲芸的な
体位をお試しにならないように」
「曲芸って……」
「台輔のお部屋にあった、『十二国別四十八手完全攻略』と銘打たれた春画は
没収させていただきました」
 それを聞いた六太は赤くなりながらも、ますますむくれた顔になった。
「それから毎日のお食事の内容も少し考えさせていただきます。消耗した体力
を補わねば」
「だからもともと負担になってないんだってば」
 六太はまた唇を突き出すと、同意を求めるように尚隆の顔を見上げて袖を
引っぱった。尚隆は苦笑して六太の背をぽんぽんとたたいた。

548名無しさん:2015/05/07(木) 02:23:51
乙です!

549名無しさん:2015/05/13(水) 19:00:21
ひゃっほー更新嬉しい! ありがとうございます!

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555「ある日の延主従と朱衡」:2016/10/27(木) 16:00:58


「――なぁ、尚隆…」
「……なんだ」
 六太は朦朧とする意識の中、目の前に座る自王を仰ぎ見た。あの精悍だった面影はどこにもない。頬は痩せこけ、目の下には隈ができ、虚ろな双眸からは以前のような覇気が全く感じられなかった。
 六太はそっと目を閉じる。
 ――もう、限界かもしれない。

 互いが向き合うように並べられた書卓に向かい、ひと月近く溜め込んだ政務をこなしていく。
 書卓の上に堆く積まれた書類は、もう幾日も前から、王と靖州候でもある麒麟の裁可を待っている。
 一体どれほど溜まっていたのだろうか。片付けても片付けても終わらない気がするのは、連日の激務と側近たちの締め付けによって、二人の疲労が極限にまで達していたからだ。
「おれ、このまま失道しそう……」
「……ああ、いまにも昏倒しそうな顔色だな」
 くつくつと笑いながら、あろうことか王もそれに同意する。
「…まぁ、お前ほどじゃねぇけどな」
「ほう。……そんなに酷い顔をしてるか?」
 そう言って尚隆は顎に手を当て、僅かに生えた無精髭を撫でた。
「酷いなんてもんじゃない。二枚目が十枚目くらいになってらぁ」
「なに、十枚目でも見れればよかろう」
「ばーか」
 馬鹿はお前の字だろうが、と返す王を無視して、六太は再び山積みになっている書面に目を通した。
 
「――失礼します」
 柔和な顔に笑みを浮かべ、執務室に入って来たのは、王の側近であり雁国の大司寇を務める朱衡である。
「捗ってますか?」
「……見れば判るだろう」
 尚隆は面倒臭さそうに朱衡を見遣る。
「――ああ、漸く二十日分ほど終えられたようですね」
「…まだ、あるのか?」
「はい。いま処理なさっている量の二倍くらい残ってますが」
 そろそろこちらにお運びしましょうか?、と尋ねる朱衡に、尚隆は軽く手を振り拒否を示した。
 
「……なんでこんな事になったんだろう…」
「遊び惚けておったからではないか?」
 自業自得だ、とからかう尚隆を六太は睨めつけた。
「おれはお前と違って遊んでたわけじゃないぞっ!」
「俺とて遊んでいたわけではない」
「じゃあ訊くけどさ、このひと月近く、何処で何してたんだよ」
「さてな」
「ほら見ろ! 惚けるってことは、何か疚しいことがあるからだろっ」
「そういうお前はどうなんだ?」
「尚隆なんかに教えてやる義理はない」
「こいつ……」
 不毛なやり取りを繰り広げながらも、着実に政務をこなしていく様は、さすが五百余年に渡る大王朝を築いただけはある。
 そんな二人を傍らで見守っていた朱衡は、半ば呆れつつもその有能さに感心していた。ただ、だからこそ、もう少し真面目であればと思わずにはいられなかった。

556続き「ある日の延主従と朱衡」:2016/10/27(木) 16:03:13


「――ところで、台輔はひと月近くもどちらにおいででいらしたのですか?」
 区切りのいいところで休憩に入った六太を待って、朱衡は今まで聞きそびれていた出奔の理由を尋ねた。
「んー、慶と蓬莱を往復してた」
「慶と蓬莱?」
「そっ。前に陽子がさ、あちらの法律の仕組みをもっと勉強していれば良かったって言ってたから、その手伝いに。…ほら、景麒よりもおれの方が蓬莱に詳しいだろ? だから代わりに行って、あちらの制度について色々と調べたり、あと法律に関する書物を慶に持って行ったりしてたんだ」
「はあ…そうでしたか」
 微妙な表情を浮かべる朱衡とは対照的に、六太は茶菓子を頬張りながら、その時のことを楽しそうに語った。
「お前はいつから慶の小間使いになったんだ?」
 二人の会話を黙って聞いていた尚隆が口を挟んだ。
「別に、陽子のためだけに調べてたわけじゃないぞ。雁でも何か役に立つかもしれないと思ったから協力してたんだ」
 六太の言い種に、どうだかな、と尚隆はさらに続ける。
「お前は随分と陽子を気に入っとるようだ」
「そりゃあ、陽子はお前と違って真面目だし、律儀だし、美人だし。それに何ったって発想が斬新で面白いからなー」
「ならば、慶の官吏にでもなったらどうだ。――ああ、推薦状も持たせてやろうか?」
「……ひょっとしてお前、泰麒捜索の時、おれが陽子に味方したこと、まだ根に持ってんのか? やだねー、器が小さくて」
「お前は自分の主が誰なのか、よくよく忘れるらしい。まったく、我ながら上手い字を下したものだ」
「なっ…――」
 六太が言い返そうとした時、お二人ともその辺で、と朱衡が制裁に入った。
「主上も台輔もだいぶお疲れのご様子。本日のご政務は終了にして、午後はゆっくりとお休みくださいませ」
 特に主上、と朱衡はどこか含みのある笑みを浮かべ、執務室を後にした。
 残された王と麒麟は暫時、朱衡が退室した方を見ていたが、ふと互いに目が合うと妙な脱力感に襲われたのだった。
 
 
〜 完 〜

557泰麒捜索時の尚六:2017/08/30(水) 01:13:04
黄昏の岸 暁の天の泰麒捜索発足後の尚六。陽子とタッグを組んでノリノリに尚隆をこき下ろした六太が可愛くてその後を妄想しました( ´ ▽ ` )

 三年越しの意趣返しにはきついものだと思った。
 度外れたお節介だと六太はあの場で言ったが、俺から見たらお前の方こそ国に拘らず慈悲の大安売りをしている。
 景王陽子を筆頭にした泰麒捜索談義から解放され、慶から自国へ騎獣に乗って帰る途中尚隆はひどく不機嫌だった。
「そんなにプンプンに怒るなよ尚隆ー。お節介は今更じゃん?」
「………」
 慶に来訪した時と同じように鼻歌さえ聞こえそうな機嫌のいい六太とは逆に、尚隆は談義が終わってから一層眉間の皺は刻まれたままだった。
 確かに戴国の大事は雁とも慶とも無関係ではいられない事柄だ。泰麒の不幸がが各国の優しき麒麟達にとって他人事でないのも十分わかる。
 だが、やり方が気にくわない。
 よってたかって喧喧囂囂と、よくもまああんなに煩く己の主を隣国の王と組んで非難できたものだ。
 お前は俺の延国の麒麟ではなかったのか?と尚隆は談義中何度顔を顰めたのかわからない。
 今に始まった事ではないが主を大事にしない自国の麒麟六太に対して、尚隆は常にない険悪な雰囲気を漂わせていた。
 しかしその元凶である本人はそれに飲まれる事はなく、苦渋の選択末の捜索決定の言に喜びを見せた。それからずっと口元には微笑さえ浮かばせている。
「…おん?」
 いつもとは違う様相をどちらの主人にも感じたたまととらは、色の異なる主人を乗せつつも時折互いの顔を見合わせる。が、解決策など思い浮かべる事は叶うはずもない。
 そうして尚隆はその艶やかな黒髪を流しながら玄英宮に帰還すると、六太と言葉を交わす事なく三官吏を伴うと自らの執務室に入っていった。
 一筋縄にいかない案件は承知の上だ。
 その上で己の王の斜めになった表情も物珍しくて、六太は気持ちが浮つくのを隠すことができない。
 そのまま月が煌々と登る頃に六太も粗方の段取りを身近の官吏に指示した後臥室に戻る。
 すると牀榻にはやはりというか、予想していた人影が垂れた布の中から視えた。
「よう。そっちも大体終わったか?」
「……さてな」
 六太が布をめくった先には既に被衫を身に着けくつろいだ様子の尚隆がいた。
 沈黙が多かった少し前を思いだせば返事がある分少しは機嫌は治ったのかもしれない。
 それでもか細い蝋燭の灯りが照らす顔をじっくり見ても、まだ眉間の皺は皺のままだった。
「そんなに愉快な顔をするな。俺が不愉快だ」
 六太の己を眺める様相が気にくわないのだろう。
 呟く主の小言も無視して六太は苦笑しながら同じ牀榻の中に入った。
 王ほどではないが台輔の牀榻もそれなりに大きい。
 邪魔するように中央に横たわる尚隆を乗り越えて奥に座ると今度はしっかりと視線を合わせた。
「なあー。そんなに不貞腐れんなよ。もう決めた事だろ」
 いつもの二人の対応とはとは逆に、六太が男の精悍に映える頬に手を当て優しい声色でささやく。
「何を言う。よってたかって晒し首のように俺をやり玉に挙げた事、一生忘れぬぞ」
「おー怖い怖い。我が主はほんとにご機嫌斜めだなー」
 もはや茶番の雰囲気になってきているが、それでも流れを簡単に変えるつもりはないようだ。
「どーすれば治るかなー、ここの皺…」
「さてな。自分じゃわからん」
「んー。こうか?こうかな?」
 ちゅ、ちゅ、と六太が戯れるように主の頰に額に己の唇を押し付ける。
 そしてまた表情を伺ってみるが、緩くはなったがまだ皺は刻まれていた。
「足りぬ。その程度では誰がほどくものか」
 苦笑する六太はさらに唇を鎖骨に首に降らした。
「…何がお望みで?」
「皺を刻ませたお前が、それを言わすか」
「聞きたいの。出ないと高尚な我王の望みはわかるわけがねえ」
 言って六太はまたも含み笑いを零す。
「そうか。お前は莫迦だったな。それなら仕方がない」
 ちょっと聞き捨てならなかったが、聞き流すとして六太は尚隆の手に引き寄せられると唇を押し付けられた。
「ん…ぅんっ……は、…尚、隆…」
 避けぬよう押さえた上で尚隆からの更なる口付けを受け入れる。
 六太がほどこした啄むような軽いそれではなく、彼が仕掛けるのは舌を入れ絡み、吸い上げる欲情の誘いであった。
(あーあ。今夜は寝れないかもしれねえなー…)
 まあ、陽子と共に煽った俺が原因だし、これは諦めるしかないよな。
 六太はまだ止まぬ尚隆の口付けに胸中溜息をつく。そしてこれからの事を予想して抵抗を止めた。
 ただの六太からの口付けだけで回復するほど尚隆の矜持は安くない。
 主の気質を嫌という程わかっていた六太だったが、中々みられぬ尚隆の不機嫌に心が踊って仕方がなかった。


 了

558名無しさん:2017/08/31(木) 21:26:54
尚隆……w

559湯浴み(尚六):2017/09/04(月) 15:13:29
永遠の行方に感動し、書き逃げに新しい尚六が投下されていることに歓喜してたら、なんか滾ってきたので、初投下です。
短いしストーリー性も皆無ですが…。

ーー
玄英宮、仁重殿の臥室。
寝るには少し早い時間だが臥室の中は薄暗く、被衫を着た六太は榻に寝転がり目を閉じていた。そうして視覚を遮断していると、気配をより強く感じることができる。
この臥室へ近づいてくる特別な気配を。自然と緩んだ頰を、軽く叩く。

扉が開く音がして、その気配が室内に滑り込んできた。六太は目を開けてそちらを見る。
ほのかな灯りの中、そこに立っているのは旅装姿の尚隆。長旅から帰ってきた王は、そのままの服装で直接ここへ来たらしい。
「お前の臥室は、ここじゃないぜ?久しぶり過ぎて忘れたのか」
わざと冷たい声を出す六太に、尚隆は笑った。
「つれないことを言うな。たまには笑顔で出迎えてみろ」
六太はそれを鼻で笑い、榻の上でごろりと転がって尚隆に背を向けた。

近づいてくる王気を、六太は背中で感じ取る。榻に腰掛けた尚隆の手が六太の頰に伸びてきた。
ふっと不快な臭いがして、六太は眉をひそめた。
「お前……怪我したか?」
尚隆の手を押し留め、顔を直視して訊く。
「いや。……血の臭いがするか?」
「少しな」
「喧嘩に行き合っただけだ」
「……」
尚隆は笑って、六太の背を軽く叩いた。
「たいした喧嘩ではない。片方が軽い怪我をした程度のことだ」
「……」
押し留めていた手が伸びてきて、尚隆の手が六太の頰を撫でる。尚隆の顔が近づいてきて唇を塞がれた。口腔に舌が入り込み、六太のそれに絡みつく。
黒髪が尚隆の肩先から落ちて、六太の顔をくすぐった。
「ん…、尚隆」
六太は手で尚隆の肩を押し返す。
「……お前、湯浴みしてこいよ」
「血の臭いが気になるか」
「うん」
「俺が怪我したわけではないから服に付いただけだろう。脱いでしまえば問題なかろう」
にやりと笑いながら言う尚隆に、六太は顔をしかめた。
「髪に付いてる」
「ああ……髪か。それは盲点だったな」
尚隆は微かに笑って、また顔を近づけてくる。六太は手で尚隆の口を塞いだ。
「湯浴みしてこいって」
「面倒だな、我慢できんのか」
「……集中できない」
六太はぷいと顔を背ける。尚隆が面白そうに低く笑った。
「それは困るな」
尚隆の手が六太の金色の髪を、滑るようにして撫でる。
「では、お前も来い」
「ひとりで行けよ。おれはもう湯浴みした」
六太は顔を背けたまま、尚隆の手を払った。
「六太」
囁くような心地よい声に名を呼ばれるのと同時に、大きな手が頰に添えられて、六太の顔は正面に向けられた。目の前には尚隆は楽しげな笑顔。
「お前も一緒に来い」
その瞳をしばらく見つめ返した後、六太は僅かに視線を逸らした。
「……お前と湯浴みすると絶対のぼせるから、やだ」
くつくつと、尚隆が笑った。
「心配するな。のぼせたら運んでやるから」
そういう心配してんじゃねえよ、と思ったが、言ったところで尚隆の意志が変わるわけではない。六太は深く溜息をついた。
「……変態」
ぼそっと六太が呟くと、尚隆は声を上げて笑った。

ーー
続くかも

560名無しさん:2017/09/04(月) 19:12:35
なんて素敵なしっとり尚六…!ありがとうございます!ありがとうございます!( ´ ▽ ` )。。

561名無しさん:2017/09/04(月) 19:32:56
なるほど湯舟の中で(略
(・∀・)ニヤニヤ

562名無しさん:2017/09/05(火) 21:01:13
続いてください!

563名無しさん:2017/09/06(水) 00:21:47
尚隆「ちなみに湯の中で出すと固まるから外で出したほうが良いぞ。
   俺は一度陰毛に絡んでなかなか取れず、酷い目に遭った。
   だが、六太はつるつるだか――(ドゴッ)ぐふっ」
六太「お・ま・え・は! なんでそういうこと他人に言うかな!?」
尚隆「あるじ兼恋人に膝蹴りは酷いのではないか……?」

564名無しさん:2017/09/06(水) 07:11:38
尚隆強いなwww

565湯浴み(尚六)続き:2017/09/06(水) 12:54:14
>>559です。
反応あって嬉しかったので続き書いてみました。肝心?の湯浴みシーンすっ飛ばしてますごめんなさい。

ーー

それから半刻あまり後、湯殿ですっかりのぼせた六太の身体を、尚隆は大きな布でくるんで抱きかかえ、仁重殿の臥室に戻ってきた。
牀榻まで運び、軽い身体をそっと寝台に横たえる。ほんのり紅潮した六太の頰にひとすじ張り付いていた金髪を、指を滑らせ後ろに流した。
閉じていた瞼が重たげに開き、尚隆の顔に焦点が合う。
「……水」
掠れた声で、六太が囁いた。
尚隆は六太に頷いてみせてから、枕元の台に置かれていた水差しから杯に水を注ぎ、それを口に含んだ。六太の首の後ろに腕を差し込み上体を少し起こしてから、薄く開いた六太の口に自分の唇を寄せた。
熱い口腔内に冷たい水を流し込む。六太は細い喉を小さく鳴らしてそれを飲み込んだ。ふぅ、と漏れた吐息が尚隆の顔にかかる。
「……もっと」
尚隆は口元に笑みを浮かべる。
「もっと欲しいか」
微かに頷いた六太の口を自分の唇で塞ぎ、舌を押し込んだ。熱い口腔の中の感触を楽しむ。六太は顔を振って逃れようとしたが、尚隆は腕で頭を抱え込み、それを許さない。更に深く口づけると、六太は喘ぐように微かな息を漏らした。
「……お前じゃねぇよ、……水」
ようやく解放された六太が、尚隆を睨みながら荒く吐息をつく。
「なんだ。水が欲しいなら、そう言わんと分からん」
尚隆は口の端で笑う。もちろん、分かっていてわざとやっているし、そんなことは六太も承知しているだろう。
「……もういい、自分で飲む」
六太が身を起こそうとしたので、尚隆は手で押し戻す。
「飲ませてやるから、寝てろ」
六太は不満そうな顔をしながらも身体から力を抜き、ふいと顔を背けた。
露わになった六太の鎖骨に鬱血したような痕を認め、尚隆はほくそ笑む。先ほど湯殿で尚隆が付けた痕だ。

六太はいつも湯殿での情事を嫌がる。その行為自体が嫌なわけではなく、本人曰く、普段の倍疲れるかららしい。
尚隆自身は、湯殿での情事を気に入っている。湯に広がりたゆたう美しい金髪も、湯煙の中で見る六太の恍惚の表情も、広い湯殿内に反響する六太の声も。濡れて滑るせいか、六太が普段より強くしがみついてくるのも。全て。
嫌がるものを無理強いすることはあまりしないが、今日は六太が湯浴みしろと言ったのだから、巻き込まれても仕方があるまい。だいたい長らく王宮から離れていて久しぶりに六太に触れるというのに、ひとりで湯浴みしてこいと言われて引き下がるわけがない。
自分勝手だと自覚しながら、尚隆はそう考える。

尚隆は杯から水を口に含むと、六太の顎に手をかけて正面を向かせ、濡れて艶めく小さな唇の隙間に、少しずつ水を落とす。六太が全ての水を飲み下したのを見届けてから、小さな身体を寝台に横たえた。
胸元まで掛かっていた布を剥ぐと、薄く桃色に色付いた滑らかな素肌が現れる。そこに尚隆がそっと掌を滑らせると、六太の手が力なく動いてそれを押し留めようとした。
「やめろよ……、もう……無理」
半ば諦めたような表情をしつつも僅かな抵抗を示す六太に、尚隆は含み笑いを漏らす。
「何を言うか。久しぶりなのに、一回で済むわけがないだろう」
「……お前もそろそろ我慢ってもんを覚えろよな」
「お前に言われたくはないな」
「おれは誰かさんのせいで、いつも我慢してる」
「では聞くがな。お前がものすごく空腹だったとして、目の前に桃を差し出されたのに食うなと言われたら、どうする」
「……なんの例えだ」
「桃を食わずにはおれんだろう」
笑みを湛えながらそう言った尚隆を、六太は呆れたような顔で見つめる。
それからふっと六太の顔に笑みがこぼれて、くすり、と小さな笑い声が唇から漏れた。
「……莫迦」
吐息混じりにそんなことを言われても、誘われているようにしか聞こえない。
尚隆はもう一度唇を重ねながら、六太の胸の敏感な場所を指で弄る。びくっと小さな身体が跳ねた。先ほど一度快楽に達した身体は、いつにも増して反応が良い。
思わず笑みを浮かべながら、長い夜になりそうだ、と尚隆は心中でひとりごちた。



566名無しさん:2017/09/07(木) 08:13:55
うっはー!続きありがとうございまーす!!(*゚∀゚*) 六太!尚隆!ラブラブ!(*´Д`*)

567湯浴み(尚六)番外編:2017/09/08(金) 18:31:22
>>565 です。
湯浴みを第三者視点で。
先輩女官の台詞と新米女官の独白
新米女官は完全に腐女子w
ふと思いついて、勢いだけで書いてます。
仁重殿の臥室から湯殿の女官へ、先触れが来たところから。

ーー
え、また台輔が湯浴みにいらっしゃるの?先ほど一度いらしたのに。
主上も一緒に?ああ、そういうこと……。
主上はどこかへ出奔してひと月近く戻ってないと聞いていたけれど、お帰りになったのね。
そうしたらすぐに準備をしなければ。
あなた、まだ仁重殿に配属されたばかりだから勝手が分からないでしょう。ああ、お二人で湯浴みするときには、お世話は不要だからね。
着替えの被衫を準備して。もちろん、主上のものをね。
台輔の分も一応準備して。まあ、おそらく台輔の被衫は使わないでしょうけど。
他に必要なものは体を拭く布の他に、大きな布よ。
そこの棚の下の段に……そう、それよ。
何に使うかって?それは後で分かるわ。

ちょっとあなた、何をにやけているの?顔も赤いし……。
まあ理由は分からなくもないけど、そんな顔をお二人に見せてはだめよ。
ほら、もういらしたみたい。顔を伏せていなさい。

ーー
ああ、伏せた顔がどうしようもなくにやけてしまうわ。
先輩はすごいわね。どうしてあんなに沈着冷静な顔をしていられるのかしら。

ずっと憧れだった仁重殿の配属になって、やっとひと月。毎日が楽しかったけれど、唯一の不満は主上が出奔してしまって、主上と台輔が一緒にいるお姿を見られなかったこと。
それがついに見られるなんて!
しかも、一緒に湯浴みだなんて……。
ああ、駄目駄目、変な妄想をするなんて不敬だわ。

お二人が並んでいるお姿を見たい、でもこんなににやけた表情は見せられないわ……。台輔が主上に文句を言ってるのが聞こえるけど、なんだかその声が嬉しそうで、すごく可愛い……。
ああ、湯殿の中に入ってしまわれた。

ーー
顔を上げていいわよ。
……あら、まだそんなににやけた顔して。
仕方がないわね、まあお二人が出てくるまで時間がかかるでしょうから、それまでに平静を装えるようになさい。とりあえず、お二人が脱いだ衣服を片付けましょう。

え?お二人の関係?
あなた……そういうことは、直截的な言い方をするものではないわ。
仁重殿の女官なら、察しなさいな。
貴人の秘め事は、私達が口に出していいことではないのよ。

ーー
やっぱりそうなんだわ。主上と台輔は、ただの主従関係ではないのだわ……!
ああ、素敵すぎて目眩がしそう……。
平静を装いなさいと言われたけど、どう考えても無理。というより、考えれば考えるほど、無理。だって、これまで遠くからお二人を見ていて胸の奥で膨らんでいた妄想が、現実だったんだもの。

さっきから、時々湯殿から微かに声が聞こえてくるけど、あれは台輔の声よね。
今まで聞いたことのないような……。
やだ、またにやけてきたわ。胸もどきどきするし。
先輩は慣れているから平気なのかしら……。それともお二人の関係に萌えないのかしら……。でもさっきから全く喋らないところを見ると、きっと耳をそばだてているはずだわ。先輩も平静を装っているけど、これは長年の経験で身につけた技よね。
さすがだわ。私も見習わなければ。

あ……台輔の声がはっきり聞こえたわ!
やだ、もう顔が熱くなってきた。
なんて情熱的なのかしら……。

え?
あ、そろそろ出てくるだろうって?
分かりました。頑張って平静を装います。

ーー
台輔はのぼせてらっしゃるでしょうから、身体を拭くのをお手伝いして、それから大きな布でくるむのよ。
一応、その前に被衫を着るかどうかお聞きしてね。
ほら、にやけるのはもうやめて。自分で頰を叩くといいわ。
私も初めの頃はそうしていたから。

あ、出てきたみたいね。やっぱり台輔はのぼせてらっしゃるわ。お手伝いしましょう。

ーー
大きな布でくるまれた台輔は、主上に抱えられて、臥室へ戻ってしまわれた。
さっきの台輔のお顔が目に焼き付いているわ……。
ひとりで湯浴みした時の湯上がりとは、全く違うお顔だった。
普段は少年らしいやんちゃな雰囲気の台輔なのに、さっきの台輔は全然違っていて、なんていうか……もう……。
台輔を抱きかかえてその顔を見つめる主上の表情も、なんだか……もう……。

ああ、また顔がにやけてきたわ。
でももういい、平静を装う必要なんかないもの。さ、にやけながら湯殿の清掃しましょうっと。

ああ、今頃お二人は臥室でどうなさっているのかしら。臥室付きの女官になりたいわ……。
いいえ、もういっそのこと、牀榻の壁になりたい。



568名無しさん:2017/09/08(金) 22:34:25
私もwwこの尚六してる時のw牀榻の壁になりたいwww

569名無しさん:2017/09/08(金) 23:56:23
じゃあ自分は牀榻の天井でw

570尚六の末声話、その一:2017/09/12(火) 23:58:06
世にも珍しき殯を行った王のお話。


昔々、雁国に治世五百年を治めた名君の王がいた。
登極当初は「政(まつりごと)に興味がない、朝議をさぼってばかりいる昏君と悪声ばかり噂される王だった。
が、ゆっくりと黒かった国土を緑の国土に。腐敗していた官達を乱を基に一掃して国府を整えさせると、後は約束されたかのように大国への歩みを進み始める。

『けして無能ではなく有能だ。しかし、一見出鱈目に見えるのが欠点だ』
と三官吏達は溜息を吐きつつ口を揃えていったとか言わないとか。

そしてその珍しき稀代の王の傍らには、これまた珍しき少年の台輔が従えており、王はその麒麟を大層気に入っていた。
出奔好きで女好きと有名な王と噂された王だったが、五百年以上続いた長き治世の間、一度も後宮に女人を置く事ははなかった。
また王は水もしたたる男前でもあった為、出世を企む官吏達からの美女の贈答や見合い話が絶えなかった。
後宮に美姫を囲んでも、失道にならなければ問題はない。
だが王は、その数多たる美しき縁の中から一つだってその手を取ることはなかった。

いつしか変わらずに傍に置く延麒こそ、伴侶ではないかと云われるようになる。
実際王は登極当初から延麒を半身といって憚らなかった。
国が豊かになるにつれ、民は実らない王の縁談話より楽しそうに語らう王と麒麟の姿を不変に望むようになっていった。
そうゆう廻り合いなのだろう。

普通の麒麟より早熟で、他国の麒麟とは違い『主上』とは一切言わないが誰よりも王を慕う少年の麒麟と、
海客であるが政策はどれも民の心に寄り添ったものを選び、広く大きな慈愛に満ちた我が国の君主は。

少しばかり他国の王と麒麟らしくはないと誰もが思った。
だが雁の国民に仲睦まじいのは微笑ましい事だと見守られながら数百年が過ぎた。
それまでの名君よりも遥かに長く国を治めた稀代の名君であった。
だが、人の治める国である以上いつか終わりが訪れる。

571尚六の末声話、その一続き:2017/09/13(水) 00:01:17
その終わりは、王が失道するものだろうと王宮の多くの官吏達は想像していた。
が、結果は逆に台輔が逆賊に歯向い斃れるというはるか昔に体験した結末に終わったのだった。
なんて惨く、哀れな。
かける言葉は王と麒麟、どちらにかかったのは闇のまま、最悪の事態は以前から予測していたのだろう。
救出に向かう王の前に、血に塗れた使令に担がれた延麒が現れた。
王は一目で彼の受けた傷が深く、最後の息になっているのを見破ってしまう。

どうして?
何故、こんな惨い目にお前があわなければならない?

間に合わなかった半身の悲劇に王はその小さき身体を抱きしめるものの、声さえかけられずに震えるばかり。
そんなありような王に、腕の中の延麒は最後の言を彼に告げる。

それはいつも投げられる小言ではなく、愛の言葉だったかそれとも一緒だったか。詳しい内容は後日の側近にも王は話す事はなかった。
わかった事は王はすぐに逆賊達を鬼神のごとく速さでうち取ると、王宮に戻るやいなや哀しみにくれる事なく王なき後の政の指示を官吏達に授けた事。
自分の死が近日に必ず起こること。それを関係諸国に密やかに知らせた後、王は粛々と延麒の葬送の準備に取り組んだのだった。

当たり前だった下界への出奔は一切なくなり、ひたすらに身辺整理と葬送にかかる。
そのままふた月もしない内に王は静かに斃れる。
驚く事は自分が斃れるまで麒麟は手放さず、葬送にも出さずずっと手元に置き続けたこと。
これには官吏達の多くが反対し、声大きく非難したがそれでも続けたこと。

きっと手元に置かなければ哀しみのあまり狂気に呑まれたのだろう。
そのように親しき官吏は話したが、それほどまでに王は半身の死に苦しみ、突如訪れた果てのない哀しみにくれたのだ。
そして王はこのまま延麒と一緒に棺に入れてくれと、一番の古参の官吏に勅令を出した。

命のとおり王と延麒、二人の葬送の儀を取り行い、殯(もがり)宮に棺を安置した。
使令らが食べ終えただろう頃に棺の中を開けて見る。
するとそこには新たにあつらえた豪華な衣装と剣以外、やはりというか何も残ってはいなかった。

『食べたのか…王も、諸共に…』
『ああ。うちの破天荒な王らしい…六太も迷惑だろうに』
『これが…我が国の王と麒麟の望んだ最期、ですか…』

雁国の建国以来初めての事だった。
王と麒麟が初めて一緒の棺に納められ、一緒に墓に収められた。
王たっての願いだった。
『生前も、死後も一緒に』と。

この天帝が治める広き十二国で、王と麒麟が一緒に殯を行ったのは延国だけだった。
失道した王、または半身を失った王は大抵混乱して麒麟を見送るしか考えられなかったのだろう。
『神出鬼没な割に存外寂しがり屋』と、いつか話した王の慈愛が、終わりの瞬間まで生かされた出来事であった。

激しい恨みを逆賊討伐だけに留め、半身を不条理になくした怒りに身を任せず、最後は半身の心に沿った葬送を王は選択した。
その前代未聞と言える殯を支えた官吏をもった王は、まさしく稀代の名君と言えよう。
後にこの類を見ない珍しき葬送を行った延王以降、延の殯は王も共に入る事が許されるようになる。

『生前も、死後も一緒に』

まさしく王と麒麟。
長きに渡り半身と生き、半身と終わりを迎えた興王の、今は昔の物語。




572名無しさん:2017/09/13(水) 00:18:33
尚隆……六太……(´;ω;`)ウッ…

573名無しさん:2017/09/17(日) 15:45:41
うわああああ、気づかないうちに尚六小説の乱舞・・・!
姐さんたち、本当に有難うございます、有難うございます
永遠の行方が完結して落ちこんでたから、本当に嬉しい・・・!
支部に投稿されたやつも、舐めるように読みつくしてるよ

574赤い果実(尚六)1/3:2017/09/19(火) 12:44:24
先日「湯浴み」を投下した者です。
また尚六書きました。ラブラブです。

ーー
玄英宮に王への献上品が届いた。
それは艶やかに赤い小振りの果実で、香りは桃に似ていた。南国との交易で得た珍しい品物らしく、尚隆は雁でその果実を目にしたことはなかった。
金銀や玉、宝飾品などには一切興味を示さない王だが、珍しい果実の献上には殊の外喜んだ。
今夜までに臥室に準備しておくように、とすぐに女官に命じた。

「珍しい果実が献上された。俺の臥室に準備させておくから、後で来い」
一緒に夕餉を取りながら、尚隆は六太にそう言った。
「へえ、楽しみ」
と、六太は笑って応じた。

夕餉の後で湯浴みを済ませ、臥室に戻った尚隆は、榻の前の卓上に赤い果実が盛られた籠が置かれているのを見て、満足げに頷く。
尚隆が果実の献上品を喜んだのは、もちろん自分が食べたいからではない。むしろ自分のためなら酒の方が断然良い。
尚隆は榻に座り、六太がこれを食べたらどんなに喜ぶだろうかと考えながら、待ち人が来るのを待った。

暫くしてから扉が開く音がして、六太が部屋に入ってきた。
「なんか凄くいい匂いがする」
六太が笑顔で近づいてきて、尚隆の隣に座った。
「これが献上された果実?初めて見るな」
六太は目を輝かせて、籠に盛られた果実を見つめる。
「雁では採れない物らしい。暖かい南国でないと育たないそうだ」
へえ、と六太は感心したように言って、果実をひとつを手に取る。
「食っていいか?」
六太が小首を傾げて訊くので、尚隆は笑って頷いた。
果実を口に近づけた六太は、そのまま匂いを嗅ぐようにして動きを止める。
「どうした?」
うーん、と六太は少し考えるように首を傾げた。
「なんだろう、この香り……。桃に似てるように思ったけど、なんか全然違うような気がする」
「そうか?俺は桃に似ているとしか思えんがな」
「まあ、尚隆の鈍感な鼻じゃわかんねーか」
「それはそうだろう。獣のほうが鼻が効くと決まっておる」
六太ちらっと尚隆を見て笑い、手にしていた果実に噛り付く。瑞々しい実から果汁が滴り、桃のような香りが一層強く感じられた。
「んー、美味い」
六太は満面の笑みで果実を咀嚼する。尚隆は微笑を浮かべながらその様子を眺めた。
すぐに一つ目を食べ終えた六太は、籠に手を伸ばして二つを手に取ると、そのうちの一つを尚隆に差し出す。
「お前も食ってみろよ、美味いから」
尚隆はそれを受け取って嚙る。桃よりも少し酸味があり、歯ごたえの柔らかい果肉だった。
「確かに美味いな」
「だろ?」
六太は嬉しそうに笑って、自分も果実を囓った。それから暫く、果実を食べながら適当に雑談をした。

六太は三つを食べ終えたところで、それ以上は手を出さなくなった。
「もういらんのか?」
「あー、なんか……もう、いいや」
何故か六太は尚隆と目を合わせずに、歯切れの悪い答え方をする。訝しく思ってよく見ると、少し顔が赤かった。
「熱があるのか、六太」
手を伸ばして首筋を触ると、やはり少し熱く、脈が速かった。
六太は慌てたように首を振る。
「いや、熱があるわけじゃない。なんか……酒に酔った時に似てる」
「酒?……お前、果実を食って酔ったのか」
「……そんなわけ、ないだろ……」
六太はやはり尚隆のほうを見ずに少し俯き、そのまま黙り込んでしまった。

575赤い果実(尚六)2/3:2017/09/19(火) 12:46:31
「どうした、六太。こっちを見ろ」
尚隆は六太の頰に手を添えて、自分のほうを向かせる。六太は酔ったように少し上気した顔で、視線は逸らしたままだった。
「尚隆……。お前は、なんともないのか?」
喘ぐように、六太が言う。
「なんともないが……。お前はどうしたんだ。その果実のせいか?」
「……かもしんない」
六太の瞳が動いて、尚隆と目が合う。その途端、閨でしか見せないような艶めいた表情をした六太に、尚隆は驚いた。
「尚隆……おれ、なんか変だ……」
六太はそう囁くと、尚隆の瞳を見つめながら、緩慢な動作で榻に手をついて身を起こし、榻の上に膝立ちになる。そのまま躙り寄って尚隆の肩に手を掛け、膝の上に跨ってきた。
「六太……」
尚隆は吸い寄せられる様に六太の顔を凝視する。柄にもなく、鼓動が速くなっているのを自覚していた。

六太は両手をゆっくりと動かして、尚隆の頭の後ろに回す。
「尚隆……」
掠れた甘い声で名を囁きながら六太が顔を近づけてきて、唇が重なる。尚隆の唇を割って六太の舌が口腔内に侵入してきた。六太の舌は、先程食した果実のように柔らかく甘く、絡んだ舌先から、痺れるような感覚が尚隆の身体に広がっていく。尚隆は六太の腰に腕を回し口づけに応じながら、六太が初めて見せる情欲的な誘いに、驚くと同時にひどく興奮していた。

長い口づけの後、六太は陶酔したような表情で尚隆を見つめた。
「……六太」
囁くように名を呼ぶと、六太は紅潮した顔を綻ばせる。
「尚隆……牀榻、行こう……」
こんなふうに直截に誘い文句を言われたこともない。尚隆は煽られた劣情をなんとか抑えながら、平静を装って笑う。
「……もう眠いのか、六太」
小さくかぶりを振った六太は、尚隆の頭を抱き寄せて耳元に口を寄せる。
尚隆の耳に六太の熱い吐息がかかり、軽く耳朶を噛まれた。
「……いますぐ……欲しい」
耳元で囁く六太の声は、これ以上ないほど官能的に響いた。
尚隆の理性はあっけなく弾け飛んだ。

・・・

悲鳴のような絶頂の声を上げて、六太の身体から力が抜けた。自分の胸の上に倒れかかってきた華奢な身体を、尚隆は受け止める。
「六太」
抱き締めて金髪を撫でながら名を呼んだが、六太は脱力したまま反応がなかった。気を失ったらしい。
繋がっていた身体を離してから、褥の上に六太の身体を横たえる。尚隆も寄り添うようにして横たわり、掛布を被った。
六太の顔はまだ少し紅潮していたが、疲労の色も見える。幾度も達したのだから無理もない。さすがに尚隆も疲労を感じていたが、それを遥かに上回る満足感があり、疲れは全く気にならなかった。

少し冷静になった頭で、尚隆は考える。
あの果実を食べてから、六太は明らかに様子がおかしかった。
酒に酔った時に似ている、と六太は言ったが、酒に酔ってもあんなふうに積極的になることは、今までなかった。むしろ、媚薬のようなものではないだろうか。
尚隆が食べても特に変化はなかったし、もし本当にそんな効果があるなら、それを隠して献上されるようなこともないだろう。
麒麟だけに効果のある媚薬。
そんな考えが浮かんで、尚隆は思わずほくそ笑む。もしそうだとしたら、これまでで最高の献上品だ、と尚隆は思う。
南国でしか採れないのが惜しい。雁でも作れないものだろうか。
とりあえず路木に願ってみようか。雁の南部なら育つ可能性はないか。人にとっては普通の果実として食べられるのだから、民のためになる。
そう考えて、尚隆は口の端で笑った。
なんと言い訳しようと、自分の欲望のためだ。取り繕うこともない。
暖かい場所でしか育たないなら、玄英宮で栽培させれば良い。玻璃の温室でも作れば完璧だろう。

しかし、あれを六太が食べる時に隣にいたのが自分で良かった。もちろん誰彼かまわず欲情するわけではないと思っているが、六太のあんな様子を他の誰かに見られたくない。
六太の寝顔を見つめ、その滑らかな頰と美しい金髪を撫でながら、尚隆は満足げに微笑した。

576赤い果実(尚六)3/4:2017/09/19(火) 12:51:36
六太がぼんやりと目を開けると、そこには尚隆の顔があった。先に目を覚ましていたらしい。
尚隆は微笑して、六太の金髪をそっと撫でた。六太も微笑み返しながら、昨夜はどうしたんだっけ、と考える。
すぐに記憶が鮮明に甦り、はっと頭を上げようとして、ずきっと走った痛みに思わず顔をしかめる。
「どうした?」
尚隆が眉をひそめて、顔を覗き込んできた。
「……頭、痛い。なんか気持ち悪いし」
はっきり目が覚めてみると、頭はがんがん痛むし、軽い吐き気もする。
「大丈夫か。……熱は?」
尚隆の手が動いて、六太の首筋に止まって熱を測られる。
「……熱はないようだな。怠いか?」
六太は頷く。
「なるほど……」
尚隆は少し考えるようにしてから言う。
「昨夜、お前はあの果実を食って酒に酔ったようだと言っていたな。二日酔いのようなものではないか」
「ああ……そうかも」
六太はそう言いながら、昨夜のことを思い出して尚隆から視線を逸らした。
「まあ、怠いのは、他にも原因があると思うが」
尚隆の言う他の原因が何なのかは、もちろん六太も分かっている。
昨夜の自分はおかしかった。六太のほうから積極的に迫ったことなど、今までなかったのに。急に恥ずかしくなってきて、六太は掛布を引き上げて顔を隠した。
絶対に、あの果実のせいだ。
あれを食べたからおかしくなったんだ。

大きな手が掛布を引き下ろして、六太の上に尚隆が覆いかぶさってきた。
「昨夜のお前は情熱的だったな」
六太は何も言えず、顔を背ける。
「お前のほうから何度も求めてくるとは––––」
思わず六太は尚隆の口を両手で塞いだ。
「それ以上、言うな。……昨夜のおれはなんかおかしかったから。もう忘れろよ」
尚隆から目を逸らしたまま、六太は早口でそう言った。尚隆は含み笑いを漏らして、六太の頰を両手で挟み、視線を合わせてくる。
「何を言うか。昨夜のお前のことは生涯忘れんぞ」
六太の顔が一気に紅潮する。
「あー、もう!あの果実のせいだろ、絶対。何なんだよ、あれ。もう二度と食わないからな!」
恥ずかしさを誤魔化そうと声を上げると、頭に響いてずきずきと痛んだ。
「う……頭痛い」
六太が呻くと尚隆が優しく頭を撫でてくれた。
「俺の推測では、あれは麒麟だけに効果のある媚薬のようなものではないか」
「び……媚薬?」
六太は驚愕して声が上擦った。
「俺には効果がなかったようだしな。おそらく普通の人にもないのだろう。……しかし、困ったな」
「……何が?」
「あれを食ってお前が翌日体調を崩すようなら、あまり食わせるわけにもいかん」
「いや、もう食わないって言ったろ?」
「そうつれないことを言わずに、たまには食え。俺のために」
尚隆は楽しそうに笑い、六太は言葉に詰まる。
「まあ、お前の体調不良が長引くようなら考えものだが、二日酔いのようなものなら、昼頃までには治るだろう。とりあえず黄医に薬湯を用意させるか」
そう言って尚隆は六太の唇に触れるだけの口づけを落とし、褥から身を起こした。
「黄医なら、あの果実の効果を知っておるかもしれんな。訊いてみるか」
「いや、訊かなくていい。なんかお前、余計なこと言いそう」
「何を疑っておる。大事な半身の体調を慮っているだけだというのに」
尚隆は笑いながら被衫を手に取り、それを身に付け始める。

577赤い果実(尚六)4/E:2017/09/19(火) 12:55:52
「お前の体調がすぐ良くなるようなら、明日にでもあの果実を路木に願ってみようと思う」
尚隆の突然の提案に、六太は慌てて抗議する。
「ちょっと待て。あれは南国でしか採れない果実だろ?雁では栽培できないだろうが。路木に願って卵果がなっても、民のためにならないぞ」
くつくつと、尚隆は笑った。
「民のためではなく、俺のために願うのだ」
「あー、開き直りやがった。最悪」
尚隆はまた笑ってから、そうだ、と言って六太の顔を上から覗き込む。
「あの果実を食うのは、俺のそばにいる時だけにしろよ」
「え……だから、もう食わないって……」
「分かったか?」
真っ直ぐ尚隆に見つめられ、六太は頷いた。
「……分かった」
尚隆は微笑を浮かべて六太の頰に手を添え、優しい声で名を呼んだ。
「六太」
「……なんだよ」
「昨夜は良かったか?」
不意打ちのように直球で問われ、六太はうろたえて視線を彷徨わせた。
「え……なんで、そんなこと」
「もうあの果実を食いたくないと言うから、あまり良くなかったかと思ってな。身体がきつかったか?」
思いがけず気遣うように訊かれたので、六太は狼狽しながらも嬉しくなる。
「きつくは、なかった。頭痛とかは今朝起きてからだし。昨夜は、えーと……」
六太は尚隆の瞳を見つめて、囁くような声で続けた。
「……すごく……良かった」
尚隆は嬉しそうに笑って頷くと、六太の唇に再び軽い口づけを落とす。
「では、問題は体調がすぐに回復するかだけだな。しっかり休んで早く治せよ」
そう言い残して、尚隆は寝台の端に寄って立ち上がると牀榻から出て行った。

六太は深く溜息をついて、頭から掛布を被る。尚隆がああ言えば、路木に願うのはもう既定路線だ。またあれを食べるのか、と思うと鼓動が速くなってくる。
自分が制御できなくなるあの感覚は、少し恐ろしいような気もするけど、尚隆は喜んでいたし、確かに行為自体はものすごく良かったのだ。

だが、王が自分だけのために欲する果実を路木に願ったとして、天帝は聞き届けるのだろうか。
あんな自分勝手なやつ、たまには願いが叶わず落ち込めばいいんだ、とわざと小さく呟いて、六太は掛布の下でこっそり笑った。




ーー

3回の投下で収まるかと思ったら、はみ出したので4回になってしまいました。
番号ややこしくなり、すみません。

六太のほうから誘う話を書いてみたくなっただけでした…。お付き合いくださり、ありがとうございます。

578名無しさん:2017/09/19(火) 21:30:09
すごい!いつの間にか増えてる!
ありがとう!!

579名無しさん:2017/09/19(火) 22:14:40
>>577
湯浴みも、この果実の話もめっちゃ萌えました・・・!
甘々の尚六は可愛くて癒されるなあ
ぜひ果実雁で育ってくれ

580名無しさん:2017/09/19(火) 23:39:14
(゚∀゚)  尚  六  祭  り  !!  (゚∀゚)

581名無しさん:2017/09/19(火) 23:50:42
ラブラブな尚六ありがとうございます!わーい六太可愛い!素直!素晴らしい!( ´ ▽ ` )

582帰山その後話(1/5):2017/09/23(土) 21:30:13
結局ラブい延主従の話。だと思います。。

 利広と離れて宣言どおり尚隆は柳から雁へと向かう。
 騎獣の調子はよく、主の様子から帰還とわかったのだろう。
 待ち望んでいた家へようやく帰れるのだと、たまはグルグルと嬉しそうに喉を鳴らしながら街よりはるか上空を颯爽と駆けていく。
(あやつも中々鋭い推察をする。流石は六百年を治める大国の太子は違う)
 先ほどの宿屋で交わした会談を思い出して尚隆は自然と口と手が締まった。
(だが、推察と想像を繰り返すだけでは憂いは晴れはしない。まだまだ利広も餓鬼だということだ)
 大国を長く治めると誰もが罹る病に利広は憂いていたと思う。
 いつか必ずくる国の終焉に怯えることは、神でない人の子なら当然の帰結だ。
(この俺だって二百年ほど前はそれなりに悩んだのだ。…それを早々と抜け出せると、抜け出そうと思うなど青臭く足掻く内は病など完治はすまい)
 まるで自分はそこを抜け出たとばかり尚隆は思考するが、そうではないことは本人がよく知っている。
(大事なのはそのことを忘れぬこと。恐れること。何の為に国が、王があるかと考えること。それらを原点に戻ってじっと見つめていれば、自然とその恐怖や憂いは薄れていくものだ)
「それを、宋王は太子にはあえて教えず自分で見つけだせと放蕩を許すのか…」
(実の家族なのに、案外酷な対応をする)
 ぽつりとたまの上で尚隆は独り呟く。
 すると、斜め上より見慣れた金の鬣が見えた。
 珍しく悧角に乗ったそれはグングンと勢いに任せこちらに向かってくる。
 そしてそれは見えたと自覚するより早く獣からさっと身を投げ出すと、躊躇なくこちらに向けて飛び落ちてきた。
「しょお、りゅう!この、莫迦ー!」
「ち、たま。すまんがこらえよ」
 くおんと主の意向を酌むと可愛らしくたまが鳴く。
 と同時にドサッと米俵並みの思い何かが、尚隆の胸の中に飛び込んできた。
「こら、餓鬼。なんと危ないことをする。落ちていたら厄介なのだぞ」
 言いながら尚隆はささっと落ちてきた六太の体勢を前に抱えなおす。
「へーんだっ。お前が長らく王宮を留守にしていたのが悪いんだ。なー、たま?お家に帰れなくて寂しかったよなー」
 王の小言には返事せず六太はたまの首を優しく撫でる。
「…まあいい。お前が迎えにきたという事は朱衡らはカンカンなのだろう。まったく、たまの遠出くらい伸び伸びと行かせてむらえぬとは…」
 尚隆はたまらず溜息をつく。
「遠出じゃねえだろ。申請してない『お遊び』じゃん。…で、柳はどうだった?」
「あれはもう駄目だな。戻る頃合いは過ぎた」
「っ!…そっかあ。けっこう、もったのになあ…」
 六太は利広と同様、尚隆から告げられた事実に表情を曇らせる。
 その落胆と比例するように腕の中の緊張が溶け、脱力したように尚隆の腹に六太の重みが加わった。

583帰山その後話(2/5):2017/09/23(土) 21:32:31
「なんだ、お前も利広のような事をいう。そんなに国が長く続いてほしいのか?」
「は?利広も一緒だったのか?いやそれより、国が長く安泰に続く事は万国共通の民の願いだろ、何寝ぼけたこと言ってやがる!」
 六太が頭一つ低い位置から振り返つつ尚隆に噛みつくような返事をした。
「それは民からの視点であろう。それを下から支える王は、その安泰を支えるが故に安泰と思う暇はない」
「それはわかってる。でも、それが『王』だっ!」
「……」
 慈悲が本性の麒麟の六太が、今にも泣きそうな表情をしながら王である尚隆を見つめる。
 その透き通るような紫の瞳に見つめられた尚隆は、勢いに押されたのかしばし口を閉ざした。
「お、おい尚隆…?なんか言えよ。…言えって…なあ」
 いつもは口うるさいのに今だけは死んだように黙る尚隆は、六太に不安をもたらす存在になっているのだろう。
 沈黙は解決にならないと、何とかして主の言をもらおうと六太は怖気づきそうな心を奮い立たすと、再度傍らの男の顔を見上げる。
 そこには治世五百年を立派に治めた一人の男がいた。
 あるいは当極当時は枯れた黒い国土とたった30万しかいない民から国を支え続けた精悍な男の面が六太の目前にあった。
「尚、隆…」
 その漆黒の瞳に今何が映っているのだろう。
 ただ目前に存在する麒麟の金の鬣が反射してるだけではないはずだ。
「なんか、言えって…」
 六太が続く沈黙から耐えきれず俯こうとした瞬間、顎に尚隆の手がかかる。
「あ、…んっ!?」
 どうしたと驚く暇もさせぬ程自然に尚隆から接吻を受ける六太は、存外固まってしまう。 
「んぅ…ふ…っ」
 ドンドンと場違いだろ、止めろと六太は尚隆の胸を強く叩く。
 その意を知らないように無視してなおも尚隆は接吻を続けた。
 戯れにしては悪質な悪戯は、六太が根負けをして腕の力を抜くまで続けられた。
「…は、あ…っ。はあ。お前、最低…!接吻でごまかすなよ…」
「そうか?それは悪かった。次はどこでやって欲しいか教えるんだな」
「莫迦。そーゆー事じゃねえって。もう…なんなんだ莫迦尚隆…」
 六太はあまりの尚隆の行動に力が抜けてしまう。
「なあ六太。お前の言ったとおり俺は死ぬまで王だ。それは知ってる。お前とて、死ぬまで麒麟の本性から離れられぬようにな…」
「ああ。そういやそうだったな…」
 ようやく話し始めた尚隆とは反対に、六太にその言葉は不快らしく顔を前方に向けてしまう。
 その逸らした視線の先にある雁への道は、ただ雲の白に覆われ形さえも見えなかった。
「俺は死に際にお前からもらったこの国が大事だ。…自分の命より大事で愛しく思っている。だが、それと国が永遠に続くことに直結するわけではない事も、知っているだろう」
「…知ってる。だから、麒麟がいる」
「そうだな。いつか失道する為に、お前がいる」

584帰山その後話(3/5):2017/09/23(土) 21:35:17
 確認するそれがひどく穏やかなのは、気のせいではないだろう。
 けれど手綱を引く手はたくましく、背を支える体は大きく、そのいつだって飄々とした態度と声は六太に力と希望を。滅茶苦茶な状態であったとしても、何とかなるんじゃないかと自然と前を向かせてくれた。
(そんな稀代の名君と今では言われるようになった尚隆でも、罹る病があるって知ってる。知ってたよ…)
 けどこうも六太は思った。
 それでも、滅亡の時までこの男の傍にいると。見つめ続けると、支えると誓う。
 それがお前を王に選んだ麒麟である自分の責任と、内側から声が自分に告げるのだ。
(お前がニ百年ほど前に失道しようとしてた事、俺は知ってるんだぜ?お前がほっといたあの碁石、持ってるの俺だもん…)
 その期間の尚隆は表向きは何の変化もみられなかった。何もおかしい事はなかった。
 いつものように朝儀はさぼり、政務は休み、下界に変わらず出奔していた。
 ただある一点だけが変わっていた。碁を誰彼ともなく仕掛ける事が増えた。
 今は碁にはまっているのだろう。呑気なことだ。まあそれもよかろう。誰もがそう思った。
 だが、六太だけは何故かそう思わなかった。
 最初は皆と同じで時々碁の相手をしていた。
 けれど勝負の終わりに碁石をさっと掠め取る尚隆の行動に、ふと疑問をもった。
 勝った記念に一つ取るのだと彼は言う。
 本当か?お前そんな可愛らしい性格かよ。
 六太は聞いた当初笑って受け流した。が、同時に何かがひっかかる感触を受けた。
 その碁石を掠め取る尚隆の行動はしばらく続いた。
 一つ記念に取った碁石が五になり十になり、二十、五十に徐々に増えていく。
 律儀に勝つ度に碁石をためる尚隆に、いつしか漠然とした不安と恐怖を六太が抱え込むようになった。
(あれはなんだ?あれはただの碁で勝った記念の行動なのか?)
(何の意味のない行動のはずなのに、なんで俺はここまで不安に思う?恐怖を尚隆に抱く?)
 漠然とした形のないものを心に抱え込むには重すぎるそれを、六太はそっと愛想笑いに隠し尚隆を冷静に見つめ続けた。
 そしてある日露台での官吏を交えたたわいない会話で、その形のない不安と迷いの答えにたどり着いてしまった。
(ああ。尚隆は失道しようと天と話をしているんだ)
 何故?やどうして?とか裏切りだとかは、その時六太の胸中にはわかなかった。
 ただ漠然と、これが答えなんだと麒麟の勘が告げているのに過ぎなかった。
 けれど、だからこそそれは本当の内の一つだと思えた。
(治世は何年になった?もうすぐ三百年か。国内はどうだ?いやまだ安泰だ)
 去年も今年もほどほどに豊作だった。
 乱はどうだ?それもボツボツ起こってはいるが尚隆が出るほど大きなのはここ数十年起きていない。
 だからなのか?だからなのだろう。
 国に緑も民も何もない時はやることがある。混乱がある。豊かにせねばならない責務がある。
 しかし国を興し緑を増やし、官を整理し民の希望どおりの飢えない豊かな道筋をつくった後はどうだろう?

585帰山その後話(4/5):2017/09/23(土) 21:38:03
 ただただ飢えに天災に苦しんだ日々が王と政(まつりごと)によって穏やかに健やかに過ごせる国造りかえられた事は素晴らしいことで、喜ばしく望んだことだった。
 けれどこの状態は長く続く事を求められると、途端にその色を変えてしまう危ういものでもあった。
 水は流れがあるからその清さを保てるように、安泰というゆるやかな国の停滞は王である尚隆の心に影を植え付けてしまう。
 尚隆はそれを『是』として楽しめる男であっただろうか?
 十二国がこの世に出来てから永遠に倒れぬ朝があっただろうか?
 いや、ない。あったことなどない。
 あるのは何百年と続いた朝があり、失道した王と麒麟があったと今までの歴史が語っているだけだ。
 そうだ。この世に、永遠などない。
 蓬莱が素晴らしい世界とこちらで言われるように、人は望まずとも変わってしまう本性なのだ。
 だから永遠を、安泰を望まずにはいられない。
(知ってた癖に…俺。尚隆が朱衡が、政を頑張り過ぎるからその現実をしばらく忘れていただけだった)
 その時の六太はその可能性にいきついて漠然と絶望したことを覚えている。
 そして、尚隆がしたいのなら仕方ないと即座に受け入れてしまったことも覚えている。
 いつか絶対に王と麒麟はこの世での終わりを迎える。
 それがこちらの世界に根を下した王も麒麟も民も巻き込んだこの世界の真理だった。
 だから尚隆がそれを自らの手で始めようと画策しても、仕方ない。
 不思議なほど穏やかな気持ちでそれを受け入れた六太は、思考を中断してまた後ろを振り返る。
「なあ尚隆。だから俺は何度でも言ってやるよ…」
 ニカっと主譲りのふてぶてしい笑みを浮かべ六太は告げる。
「延は『まだまだだ』ってな。技術じゃ範。治世の長さじゃ奏。文化じゃ恭に、延は負けてるじゃねえか。お前には緑豊かな国を欲しいって願ったけど、そろそろ二つ目のお願いとか、叶えてくれてもいいんじゃねーか?」
「なんだと?近年の延国周辺の荒民達に足を引っ張られてるこの状況で、お前はそれを言うのか?」
 尚隆が思いのほか眉間に皺をよせながら六太に文句をいう。
「だからだろ、尚隆。お前にはこれくらい面白い問題がないとつまんないんだろ?なあ」
 六太がその難儀な問題を実は尚隆が求めていると見抜いたかのようなはっぱのかけ方をする。
 自然、顰め面した尚隆もその真の意味が伝わったのだろう。
 六太以上に悪い笑みを浮かべ応えてきた。
「すかした口をききおって。まあいい。…どうせ俺一人の力など精々たかが知れてる。なので周りを巻き込んで問題を解決に導くしかあるまい」
 何も偉い事を眼前の男はいってない。なのに尚隆は胸をはった。
「お前それ、他力本願っていうんじゃねえのか…。ふ、まあいっか!尚隆のやる事だし、こんなもんだ」
 六太も調子が上向きに変わった主に安心したのか、柔らかな笑みを浮かべた。
「こんなもんとはなんだ。この、いつまでたっても可愛げのない餓鬼め。こうしてやる!」
「きゃー。やめてー。王様、お戯れはおよしになってー」
 棒読みも交え、たまの上で延の主従はそれまでの空気をかき消すかのように、じゃれあいはじめる。

586帰山その後話(5/5):2017/09/23(土) 21:41:50
 六太はそれでも麒麟として個人として、尚隆の傍を離れない事を誓い。
 尚隆はそれでも王として個人として、六太を終わりの時まで傍にある事を心中で望んだ。
 互いに表立った誓いはせずに胸中に強く望んだ希望は、ぼんやりでも伝わっているのだろう。
 そうでなければ五百年の治世などもつはずがない。
 言葉足らずだがそれでもと淡々と刻んだ歴史が、彼らと彼らが興した国を彩り表し続ける。
 そしてそれは紛れもなくいつか彼らの治めた延が、有史以来稀代の大国と言われる事を難なく予想させた。
 二人の破天荒な王と麒麟をのせた騎獣は、徐々に暗闇を引き連れる夕暮れの中、王宮へ帰るべくつき進んでいった。



 了

587名無しさん:2017/09/23(土) 22:20:04
シリアス尚六ご馳走様です!
口付けシーンもめっちゃ萌えたけど、仲良くじゃれてる二人も可愛くて萌え
300年目の碁石の賭けは、色々妄想ポイント多いよね

588名無しさん:2017/09/24(日) 10:04:49
帰山SS書いた者です。感想ありがとうございます!( ´ ▽ ` )
どんな怖い尚隆と利広の話なんだろうと恐る恐る読んだんですが、思った程怖くなかったのでこんなん出来ましたww

589蘭雪堂の夜(尚六)1/5:2017/09/25(月) 20:20:03
>>577です。前作萌えたと言ってもらえて嬉しいです。そしてまた尚六書いてしまいました。最近滾り過ぎてやばい。
最初はシリアス、最後はラブラブです。
泰麒捜索中、廉麟が「王のものなんだもの…」という名言を残して蓬莱へ渡った後。

ーー
廉麟は呉剛環蛇を使って蓬莱へ渡った。
蘭雪堂にひとり残った尚隆は、椅子に座り、卓上に置かれた地図を眺めていた。

地図上の塗り潰された部分は麒麟たちが捜索し、泰麒はいないと判断した場所だ。しらみ潰しに探す作戦は体力が必要だったし、傲濫の気配を捉えてからは、強大な妖魔を怖れる獣の本能に抵抗しながらの捜索となり、更なる精神的な苦痛が麒麟たちを苦しめていた。

尚隆は額を押さえて溜息をついた。
氾王に言われなくとも、麒麟たちに負担がかかっているのは重々承知している。ただ見ているだけで何も出来ないのが歯痒かった。
六太もかなり疲れているのは明らかだ。今日も夕餉の後、臥室の榻で倒れるようにして眠ってしまった。尚隆は六太を牀榻に運び、そのままひとりでここへ来たのだった。

扉の開く音がしてそちらを見ると、六太が入ってきた。相変わらず疲れたような表情だったが、先刻臥室で眠る前よりは、ましな顔色をしていた。
「大丈夫か、六太。疲れているんだろう、寝ていた方がいいぞ」
「うん……。なんか目が覚めて、眠れなくなった。……尚隆は戻って来ないし」
あまり力のない声で言いながら、六太は卓へ歩み寄って来る。
「なんだ、独り寝が寂しかったか?」
敢えてからかうように言ってみると、六太は微かに笑った。
「ばーか」

六太は卓上の地図を見て、首を傾げる。
「まだ誰か渡ってるのか?」
「ああ、廉麟がひとりでな」
「……ひとりで?」
六太は奥の戸口へ顔を向ける。その先にある孤琴斎という建物から、廉麟は蓬莱へと渡っていった。
「……廉麟、大丈夫かな。ひとりだけ全然休めないのに……」
そう言って戸口の方へ向いたまま、六太は卓上に座る。
「廉麟は、泰麒のことを考えると眠ることが出来ないそうだ。だから休む前にもう一度だけ、と言って渡った」
「そうか……」
六太は表情を曇らせて、戸口の先を見やる。その横顔を尚隆は見つめた。

六太もあまり眠ることが出来ていないのを、尚隆は知っている。疲労で毎晩気を失うように寝入るのに、必ず夜中に目を覚ますのだ。そしてそっと牀榻から抜け出して、窓から外を眺めていたりする。
最初は「どうした」と声をかけていたが、「別になんでもないから、お前は寝てろよ」と返されるだけなので、今は気付かぬふりをしている。

「廉麟は、泰麒のことを心底案じてる。……それに、あいつは臥室に戻ってもひとりだしな」
呟くように、六太が言った。
「廉麟も独り寝は寂しいだろう、ということか」
軽く言ってみたものの、六太は笑わなかった。ごく小さな溜息をこぼす。
「独り寝っていうか……。廉麟だって、廉王のそばにいたいだろ。でもここではひとりだ。心身ともに疲れて辛い時なのに、王がいないんだ。……でも、泰麒のそばには、六年も泰王がいない。……それを考えたら––––」
六太はそこで言葉を途切らせ、少し俯いた。これは廉麟のことを言いながら、六太自身のことを言っているのだろう。

590蘭雪堂の夜(尚六)2/5:2017/09/25(月) 20:22:05
「同じようなことを、廉麟も言っていたな」
「……同じようなこと?」
六太は首を傾げて尚隆を見る。
「麒麟が王と離れるのは不幸なことだ、自分たち麒麟は王のそばにいないと生きていられない、とな」
六太の視線は、尚隆から戸口の方へと戻った。
「……その通りだろ。王のいない麒麟は三十年くらいで死ぬ。そういうふうに、天が作った」
いかにも六太らしい答え方だと思い、尚隆は苦笑する。

「こっちに来い、六太」
「……なんで?」
「いいから来い」
六太は少しためらう素振りを見せてから、卓から降りて椅子に座る尚隆の傍らに歩み寄って来た。
「なんだよ」
訝しげにそう言った六太の腰を掴んで、その軽い身体を自分の膝の上に横向きに抱き上げた。
「ちょっ……よせよ、こんなところで」
そのまま抱き締めると、六太は身を捩って逃れようとする。
「動くな」
尚隆が低く言うと、六太の身体は動きを止めた。無言のまま抱き締めていると、小さな身体から次第に力が抜けていき、尚隆の胸に少し凭れるような体勢になった。
「……お前もあまり眠れていないだろう、六太」
尚隆が囁くように言うと、逡巡するような気配の後、六太は頷いた。
「俺が隣にいるというのに」
ぼやくように言ってみると、六太はほんの僅か、唇に笑みを浮かべた。だがその微笑みは、すぐに消えてしまった。
「俺のそばでも眠れないか」
今度は真剣な声音で問う。沈黙が降りた。
長い沈黙の後、ようやく六太は低い声で話し始める。
「……毎晩夜中に目が覚めて、尚隆が隣にいて……おれは安堵するんだ。でも、すぐに泰麒のことを思い出して、あいつはひとりなんだ、と思ったら……居た堪れなくなる」
尚隆が口を開きかけると、六太は首を振った。
「分かってる、無意味な感傷だって。そんなふうに泰麒を憐れんでも、誰のためにもならない」
尚隆は無言でそっと金色の髪を撫でた。六太は目を閉じる。
「……おれは、泰麒のためにまだ何も出来てない」
「そんなことはない」
尚隆は即座に否定したが、六太は力なく首を横に振った。
「おれ達の努力は、泰麒にはまだ届いてない。使令の気配はあるのに、麒麟の気配が見えない。真っ暗闇の中を灯りもなく探しているみたいだ。泰麒は……もう六年も、ずっとそこにいるんだ」
震える声でそう言ってから口をつぐんだ六太の頰に、透明な雫が滑り落ちていった。それから堰を切ったように、六太の閉じた瞼の隙間から次々と雫が生み出されては落ちていく。
思うように捜索が進まない焦燥、泰麒に対する憐憫、何度も蓬莱へ渡る肉体的な負担。多くのものが六太を苛んでいる。
もっと早く弱音を吐かせるべきだった、と尚隆は悔やんだ。愚痴は色々言ってはいたが、意地っ張りな六太はいつも平気なふりをする。それは分かっていたのに。

591蘭雪堂の夜(尚六)3/5:2017/09/25(月) 20:24:21
頭を抱き寄せると、六太は尚隆の肩に顔を押しつけるように身を預けてきた。六太の細い肩は震えていて、浅く不規則な呼吸が伝わってくる。
暫くの間、尚隆は黙って六太を抱き締めて、その背を撫でていた。やがて身体の震えは収まり、六太は尚隆の肩から少しだけ顔を離した。

「……大丈夫だ、六太。泰麒は泰王のそばに戻れる」
六太の背を軽く叩いて、尚隆は言い聞かせるように言葉を発した。
「……なんでそんなこと言える」
「泰麒は泰王のものだろうが。持ち主の元に戻るに決まっておる」
わざと軽薄な口調で言った。
「そんなの、根拠になってねぇよ」
文句を言いながらも、六太は少しだけ笑った。
「そうか?俺の麒麟はすぐどこかに行ってしまうが、必ず戻って来るぞ」
「それとこれとは話が別だろーが」
顔を上げた六太は、泣く前よりも随分明るい表情をしていた。
まだ濡れている頰を尚隆が指で拭うと、くすぐったそうに目を閉じた。
尚隆は惹きつけられるように、六太の唇に口づけた。触れるだけの軽い口づけを、二つ。
六太の瞼が上がって、深い紫色の瞳が尚隆を見つめた。
尚隆は六太の後頭部を手で支えて、再び口づける。六太の唇を舌でなぞり、ゆっくりとその間から侵入する。六太の舌の柔らかい感触を舌先に感じた瞬間、思わず抱擁する腕に力を込めていた。六太の口腔内を、貪るように隅々まで舌を入れて味わう。
「…ん……は…ぁ……しょう…りゅ…」
合わせた唇の隙間から漏れる六太の上擦った声が、尚隆の劣情を煽った。
頭の片隅の冷静な部分で、まずいな、と考える。金波宮での泰麒捜索が本格的に始まってから、一度も六太を抱いていない。疲れている六太の負担になるだろうと、自重していた。ましてや最近の六太は臥室に戻ると倒れるように寝てしまうので、手を出す暇もなかった。
同じ牀榻で眠っていても、深く触れられないという禁欲状態は、どうやらかなり尚隆の精神を抑圧していたらしい。

唇を離すと六太が荒く息をついて、戸口の方を気にする素振りを見せた。
「もう……よせって。もうすぐ廉麟戻ってくるだろ」
「そうだな」
尚隆はそれだけ言うと、六太の唇をまた自分の口で塞いだ。六太の頭を手で押さえて更に深く口づけた。六太の手が尚隆の胸を押し、逃れようと無駄な努力をしている。
思うさま堪能して唇を離した尚隆は、六太の頭を抱き寄せて耳元で囁いた。
「抱きたい」
「……!」
六太の身体が硬直する。
「いいか?」
「いや、ちょっと待て、落ち着けよ」
「もちろん臥室に戻ってからだ。お前が疲れているのは分かっているが、今夜抱きたい」
「……」
「いいか?」
尚隆は六太の頭を抱き寄せたまま、返事を待った。六太が何かを言いかけた時、部屋の奥の戸口に淡い光が射した。呉剛環蛇の光だ。
弾かれたように六太が顔を上げ、尚隆の腕を振りほどいて膝から飛び降りたのとほぼ同時に、廉麟が曲廊の先から姿を見せた。

592蘭雪堂の夜(尚六)4/5:2017/09/25(月) 20:26:43
延麒、と微笑んで、廉麟は軽やかな足取りで戸口から部屋へ入って来た。
「麒麟の気配を見つけました」
「本当か?それは泰麒の気配か?」
六太が勢い込んで訊ねる。
「はい。とても細い糸のような気配の残滓です。病んでいるような暗い光でした。間違いなく、泰麒です」
廉麟は卓に歩み寄ると、地図を見ながら泰麒の気配を見つけた場所を説明した。六太はいくつか質問をしながらその説明を聞き、明日の捜索範囲や方針についての意見を述べた。
詳しいことは明日、皆が集まってから話すことにして、それぞれ臥室に引き上げることになった。
廉麟は微笑んで尚隆と六太を交互に見る。
「お二人を見ていたら、なんだか主上が恋しくなりました。––––それでは、お休みなさいませ」
ふふふ、と微かな笑い声を残して、廉麟は蘭雪堂から立ち去った。

少し引きつった顔で廉麟を見送っていた六太が、隣に立つ尚隆を見上げた。
「えーと、じゃあ……おれ達も戻るか」
そう言って歩き出そうとした六太の腕を、尚隆は掴んだ。
「さっきの返事を聞いてないぞ」
「え……」
六太は気まずそうに視線を逸らした。
誤魔化そうとしてもそうはいかない。無理強いする気はないが、無視される気もない。
六太の顎に手をかけて上を向かせ、顔を近づけていくと、六太は焦ったような声を上げた。
「ちょっ……尚隆!だから、ここではやめろって」
「では牀榻でならいいか」
至近距離で見つめると、見つめ返す六太の頰にほんのりと赤みが差した。
「……うん」
尚隆は笑みを浮かべて、六太の唇に軽く口づけを落とした。
「久しぶりだからな、覚悟しておれ」
笑い含みに六太の耳元で囁くと、六太は両手で尚隆の胸を押し返して抗議の声を上げる。
「お前、さっきおれが疲れてるのは分かってるとか言ってたじゃねーか!やるのは一回だけ、それ以上は無理!」
「一回か……。まあ、箍が外れぬよう心掛けよう」
くつくつと尚隆が笑うと、六太は溜息をついた。
「あー、なんかすげー不安……」
尚隆は六太の肩に手を回して、前に押し出しながら言う。
「では急いで臥室に戻るぞ。善は急げと言うからな」
「善、って……」
呆れたように言いながら、六太も歩きだす。二人は寄り添いながら臥室へと戻って行った。

・・・

593蘭雪堂の夜(尚六)5/E:2017/09/25(月) 20:28:51
情事の後の倦怠感に包まれて、六太は目を閉じていた。尚隆の腕に乗せた頰には、心地よい暖かさが伝わってくる。
尚隆はあんなふうに言っていたが、かなり抑えた優しい抱き方をしてくれた。初めての夜のように。尚隆が自分の欲求よりも、六太の身体的な負担に配慮してくれたことが、素直に嬉しかった。

泰麒捜索が始まって毎日蓬莱へ渡るようになってから、六太は常に疲労困憊で、尚隆と同じ牀榻に寝ていても、全く欲求は感じていなかった。それどころではない、というのが本音だった。
触れるだけの口づけを交わしたり、頭を撫でられたり、軽い身体的な接触はあったが、尚隆もそれ以上は触れてこなかった。
その事についてあまり考えていなかったが、今まで尚隆は欲求を抑えてくれていたんだと思うと、言葉に出さない尚隆の優しさが胸にしみた。
先程は、素直に弱音を吐けない六太から弱音を引き出して、泣かせてくれた。

「……ありがとう」
微かな声で呟くと、尚隆は笑った。
「礼を言われるとは思わなかったな。そういうことなら、これから毎晩抱くぞ」
「いや、そういうことじゃないって」
六太も笑った。何に対する礼か分かっているだろうに、尚隆はいつもこんな言い方をする。
「六太」
尚隆が身体を少し起こして、六太の顔を上から覗き込んだ。
「夜中に目を覚ましても、ひとりで牀榻から出るなよ」
「……」
六太は返答に詰まる。毎晩牀榻から出ていくのを尚隆が気付いているのは分かっていたが、ここまで率直に言われるとは思っていなかった。
尚隆は六太の髪を撫でながら、囁く。
「俺のそばにいろ」
「……うん」
尚隆は微笑して頷き、六太の頭を抱き寄せて髪に口づけた。
それから尚隆は、わざとらしい溜息をついた。
「あと二、三回目やりたいところだが、一回の約束だから仕方がない。もう寝るか」
「当たり前だろ、明日からもおれは忙しいんだから」
尚隆は笑って、もう一度六太の顔を覗き込む。
「今夜は眠れそうか?」
「うん……、たぶん」
六太が頷くと、尚隆は微笑してから褥に身体を横たえて、六太の身体を抱き寄せた。
弱音を吐いて泣いたからか、尚隆が優しく抱いてくれたからか、それとも泰麒の気配が見つかったと聞いたからか。いつもより六太の心は軽かった。朝まで眠れそうな気がした。
包み込んでくれる暖かさに安堵と幸福を感じながら、六太はそっと目を閉じた。




594名無しさん:2017/09/25(月) 21:14:06
小説増えてる!幸せな尚六小説ありがとうございます!
シリアスだけど、尚隆が優しくて六太を甘やかしてるところがすごく素敵です

595名無しさん:2017/09/26(火) 23:14:57
あまーい!そして尚隆優しーい!いい男!素敵な尚六小説ありがとうございます!こんな素敵で甘い尚六を読めるなんて幸せ…そりゃ滾りますわ…

596名無しさん:2017/09/27(水) 21:19:43
>>593です。感想ありがとうございます。滾る萌えをここの方々と共有できて幸せです。
尚隆は普段ふざけたことばかり言ってても、六太が本当に弱ってる時は、とことん優しくするはずだ!と思ったのでこんな感じになりました。

あと、>>577赤い果実のちょっとした後日談。

路木に願って卵果は生ったが、やはり雁では普通に育てることができなかった。玄英宮の温室で一本だけ木が育ったものの、果実が生るのは真夏に三つだけ。というわけで、尚隆はその果実が生るのを、毎年それはそれは楽しみにしていたという。

小説にする程ではないので、ネタだけです。あんまりたくさん果実が生ると、六太が大変そうなのでw 年に一度のお楽しみ、という感じです。

597名無しさん:2017/09/27(水) 22:39:24
真夏に三つwww 六太公認食べる精力剤ですねwww 猫にまたたび、六太に果実w
後日談ありがとうございます!三つ実った実を大事に食して頂かないと( ´ ▽ ` ) 尚隆よかったねー。

598名無しさん:2017/09/28(木) 21:38:12
>猫にまたたび、六太に果実
この例え可愛いなあ、六太は性格的にも猫型な麒麟な気がする
供麒は犬型なイメージ

599壁一枚、尚六(1/3):2017/10/03(火) 12:35:20
利広が風漢で出会い、うっかり宿屋の壁を通じて情事を盗み聞きしてしまったお話。



 その男との出会いは三度目だったと思う。
 初めて出会ってから90年は経っていた。
 二度目で普通じゃない男と確信したので、話ながらもどの国の人物かと探ること数回。
 合わない間に消去法で可能性を順々に消していった後、三度目の邂逅が起きる。
 利広は男が初めて連れてきたお供を見て該当国とその人物像がわかった。
(もしやかの大国、延王と延麒…か)

「…久しいね風漢。おまけに珍しい。その可愛らしい子どもはどうしたんだい?」
 まだ騶虞を連れたまま街ですれ違った時、利広は彼にきずき声をかける。
 すぐにはわからなかったが脇に見慣れないこどもを連れた風漢は、不思議に柔らかい雰囲気に見えた。
(連れにしては小さ過ぎるな…彼の子どもか兄弟、は若すぎる。もしかして孫かな?)
 利広は彼が子供を引き連れるような殊勝な性格じゃない事を知りつつ、失礼じゃない程度に連れをじとりと見る。
(服装は民に合わせてるけど質は上等。顔も中性的で綺麗だ。頭を頭巾で覆っているけど…まさか麒麟か?)
「なんだ利広。そんなにジロジロ見おって。そんなに気になるか?よかったな六太。お前生まれて初めて可愛いと言ってもらえたぞ」
 けらけらと風漢が連れをじっくりと観察されて面白げにからかう。
 すると傍の子どもは赤く顔を染めながら彼を怒った。
「ざっけんなよ尚隆!…あっ。い、いいから早く家に帰ろうぜ、なあ早く!」
「なんとせっかちな。そう急くな。ん?雨が降ってきたか…」
「え?雨?」
 尚隆に言われたるまま上を見れば頭上には灰色の雨雲が浮かんでいた。
 その雲よりポツポツと冷たい滴が降り始めていることに一同が気が付く。
「流石に雨の中でたま達を走らせるつもりはないよな、六太?」
「うー、ちくしょうっ。わかったよ尚隆。なら舎館(やどや)まで走って帰るぞ!」
 言って六太と言われた子供が彼の袖を強く握って舎館に向けて誘導し始める。
「くっくっく。待て待て、ちゃんと行くからしばし待て。…と、いう訳だ利広。俺は舎館に帰る。お前は?」
「え。あ、私?うーん、私も同じかな。雨の中うろうろする趣味はないよ」
 言って利広は肩をすくめた。
「そうか。それは賢い選択だ」
 風漢もつられて苦笑した。
 利広はそのまま風漢と談笑しながら先に彼らが泊まっている舎館に歩いていった。

600壁一枚、尚六(2/3):2017/10/03(火) 12:38:11
 そのまま本泊まりと決め、早めの夕餉を共に取る。
 風漢は相変わらず飄々として、自分と同じように様々な街や黄海を放浪しているらしい。
 その彼が話す土産話はなるほど面白く、ただ聞くだけでも時間を忘れるほど楽しいものだ。
 連れもいるので辺り触りのない話を入れつつ、ほどほどに美味い料理を平らげる。
 酒も多少嗜んだ後、二人と一人は就寝を機に堂室に戻る。
 雨は小雨になり、いまだ降りやまない。だが秋の始めなのでそれほど冷たくもなかった。
 しかしそれでも肌寒さを感じたので、利広は手早く荷物を纏めると被衫に着替え牀榻に入った。
 ふう。やれやれ。
 考える事はたくさんあるけれど、とりあえず今日はここまで。明日また考えよう。
 利広が風漢と会った事で沸き立ってしまった好奇心。
 それを心中でそっとなだめつつ、うとうとと眠りの淵にかかりかけた頃、壁からひそひそと音が漏れた事に気が付く。
 『ちょっ!?尚隆まてって…やっ…尚隆、おい!』
 『待てぬ。何か月ぶりだと思っている。お前とてそのつもりで迎えにきたのだろ?大人しくせい』
 『そのつもりって…まあ考えなかった訳じゃねえけどっ、んん…っ。だから、ちょっと…待てって!』
 (ん?なんだこの男女のような甘い会話は?隣の堂室から漏れているが…は?)
 丁度利広が横向きに身体を壁をくっつけていたせいだった。
 壁一枚を隔てた向こうから、何より色っぽい会話が聞こえ始め、利広の意識を再度浮かび上がらせる。
 (確かもう一つの堂室は空だったはず。となると隣は風漢。え?もしや、その相手って…)
 出歯亀はよくない。利広もそれはわかっていた。
 が、そうと頭ではわかっているのだが、いかんせん人より多い好奇心が聞き耳を立ててしまう。
 ついつい声の聞こえる壁側に神経を集中し始める事、数分。
 どうやら久しぶりの逢瀬に一方は同衾を望み、一方はただの共寝を望んでるような会話だった。
 (うわー。風漢も隅におけないねえ…あの子は綺麗だけど男の子なのに。彼はどっちもいけたのか。なるほどなるほど)
 利広は他人事ながらほうほうと耳を澄ませ、事の成り行きに耳をさらに立たせる。
 (中々聞けないものだし、ちょっと頑張って起きて聞いてみるか…)
 利広は風漢とその連れに悪いと思いつつも、ゆっくりと身体を壁に向け直す。するとより一層会話が彼の耳に入ってきた。

601壁一枚、尚六(3/3):2017/10/03(火) 12:41:19
 ようやく朝を迎えた。
 雨は止み、爽やかな空気、晴れやかな朝だった。
 結論を言うと、利広はあれから満足に睡眠を取らず妓楼にも行かなかった。
 (正しくは、行けなかった。だけど…ふぁっ…ねむ、い…)
 まさかあれから風漢が、彼の『許し』を得るために延々とお触りをし続けたなんて予想外だった。
 (お触りだけで四刻は経過していたからね…。それから、本番だもの。小さな彼も可哀想に。彼だって風漢が早々『諦める』と予想していたはず…)
 時待たずして、『許し』を賭けた攻防はすぐにおさまると利広もそう予感していた。
 が、何が風漢のやる気を起こしたのか、彼の攻撃は止むことなく続き。
 二刻を過ぎた頃からは抑えても抑えきれない少年の嬌声が絶えず響くようになってしまっていた。
 (案外彼はねちっこい本性を持っているんだなあ…意外だよ。ふぁ…)
 まんじりとも眠れもしなかった昨夜を恨みつつ、利広が寄せた壁より渋々身体を離す。
 「まあ面白いものを聞かせてはもらったから…いいか」
 (中々聞けない王と麒麟の情事だったし。悔しいけどこれはご馳走様と礼を言うべきは私の方かも)
 利広は止まらぬ眠気を振り払いつつも、身支度をし始める。
 そしてあと一刻ほどで会うだろう二人の人物に、どんな言葉をかけたら楽しいか驚くのか。
 それについて一人愉快そうに欠伸をしながら考えはじめたのだった。



 了

602名無しさん:2017/10/03(火) 15:25:04
思わずニヤニヤしちゃいました
利広うらやましすぎるww
その部屋かわってくれw

603名無しさん:2017/10/03(火) 18:06:04
安宿は壁が薄いからねw

604名無しさん:2017/10/04(水) 09:20:13
尚隆、触ってるうちに面白くなったんだろうなあww

605名無しさん:2017/10/04(水) 22:07:32
壁話を書いた者です。ねちこい尚隆とデバガメ利広、楽しんで頂けたようで光栄です( ´ ▽ ` )

606不機嫌な王(尚六)1:2017/10/05(木) 19:33:21
尚隆が「雁を滅ぼしてみたくなる」と言った理由が実は焼きもちだったという妄想。尚隆の心が狭いですw

ーー
陽子と楽俊は二人で話したいと言い、連れ立って玻璃宮から去って行った。

それを睨むように見送っていた尚隆に、六太は声をかける。
「なあ、尚隆。お前なんであんなこと陽子に言ったんだよ。あいつ、すげーびびった顔してたぜ?」
尚隆は六太を横目で見て、皮肉げな笑みを浮かべた。
「……ほう、よく見ていたな」
なぜだか尚隆は機嫌が悪そうに見える。六太は顔をしかめた。
「なんだよ、おれが見てんの分かってたくせに」
雁を滅ぼしてみたくなる、などと尚隆が言ったところで、今更六太は動じたりしない。雁は尚隆の国だから、思うようにすればいいのだ。自分はただ、そばにいて見届けるだけだと思っている。
だが陽子はそうは思わないだろう。唯一頼りにしている隣国の王の、国を滅ぼしてみたくなるという言葉を聞かされて、困惑と動揺と恐怖の入り混じった表情を浮かべていた。
「隣国がいつ滅ぶか分からないから心構えしとけっていう忠告か?いずれはそういう心構えが必要になるかもしれないけどさ、いま陽子には雁しか頼れる国がないんだ。あんなこと言うなよ」
面白くなさそうにそれを聞いていた尚隆は、六太に向き直るといきなり顎に手をかけ顔を上げさせた。尚隆の顔が近づいてきて、思わず六太は手を払い除けて後ずさった。
「なんだよ!?」
「そんなに陽子が心配か」
「……は?」
尚隆が距離を詰めてくるので、六太はじりじりと後退する。
「いや、だって、隣国の王を心配すんのは当然だろ?お前だって、できる限り手助けしようとか言ってたじゃねーか」
尚隆はまた皮肉げに笑った。
「これ以上慶からの荒民が増えては困るからな。雁のために手助けすべきだと判断しただけだ」
尚隆に詰め寄られて後ずさった六太の背が、四阿の柱にぶつかった。
「お前は随分と陽子を気に入っとるようだな」
六太の頭上、四阿の柱に尚隆が左手をついた。
「……気に入ってる?なんで?」
「別嬪な王だと言ったろうが」
六太は唖然として尚隆の顔を見上げた。口元は笑んでいるが、目が笑っていない。明らかに怒っている。
確かに別嬪な王と言ったとき尚隆に窘められたが、あんなのはただの軽口で深い意味などないのに。
「そんなんで怒ってんのかよ」
「怒っているわけではない」
「嘘つけ。あんなこと言ったのは陽子への八つ当たりか?」
尚隆が低い笑い声をたてた。
「八つ当たりか……。確かに陽子を脅したのは筋違いだったかもしれんな」
尚隆の右手が六太の顎を掴んだ。
「仕置きが必要なのはお前のほうか」
尚隆の親指が六太の唇の間に入り込んできて、歯列をなぞられる。六太は歯を食いしばってそれ以上の指の侵入を拒み、尚隆を睨みつけた。尚隆は人の悪い笑みを浮かべながら六太の顔を眺める。

不意に尚隆は六太の顎から手を離した。
「帰るぞ、六太」
耳元で低く響いたその声に、六太は逆らうことができない。
「……楽俊は?」
「とらを残しておけば、楽俊ひとりで戻れる。お前は俺と一緒にたまに乗れ」
「……ほんと勝手な奴だな、お前は」

607不機嫌な王(尚六)2:2017/10/05(木) 19:36:43
それからすぐに、その辺にいた天官に帰る旨を伝えて楽俊への伝言を託すと、尚隆はさっさと禁門へ向かって歩き出した。

前を歩く尚隆の広い背中を見ながら、六太は心中で溜息を連発していた。
大概のことは笑って受け流す尚隆だが、ごく稀に急に不機嫌になることがある。その原因が分かっても、何故そんな些細なことで怒るのか、六太にはいつも理解不能だった。普段の鷹揚な尚隆は幻かと思う程の狭量さを見せるのだ。尚隆の逆鱗が何なのか、長くそばにいるのに未だに掴み切れない。
確実に言えることは、尚隆の気が済むようにさせなければ絶対に機嫌が直らない、ということだった。

雲海の上を飛ぶのかと思っていたら、尚隆は山の中腹、禁門前の岩棚へ騎獣を準備させた。季節は冬、雲海の下の空気は冷たかった。
「なんで雲海の上を行かないんだよ?下は寒いし、時間かかるじゃん」
六太は頭に布を巻いて金髪を隠しながら、尚隆に問う。
「もう夕刻だ。雲海上を飛んでも今日中に雁に戻れんだろうが」
「……だから?」
尚隆は意味ありげに笑って、それには答えない。
「いいから乗れ」
そう言って六太を抱え上げてたまの鞍に乗せ、自分もその後ろに騎乗した。

たまを飛翔させ、北西へ進路を取る。冬の冷たい空気で六太の手はかじかんできたが、背中は尚隆と密着しているので暖かかった。
暫く無言で手綱を握っていた尚隆が、六太の手を取って手綱を持たせた。
「お前に手綱を任せる」
「……分かった」
なんで、と訊きたかったが今の尚隆は答えないだろうと思い、素直に従うことにした。
手綱を握って前方に注意を向けていると、後ろから尚隆が抱きすくめるように腕を回してきた。六太の耳に尚隆の吐息がかかる。
「動きにくいし、気が散るんだけど」
六太の文句を無視して、尚隆が六太の耳朶を軽く噛み、舌を這わせてくる。背筋にぞくっと痺れが走り、六太は身を強張らせた。
尚隆の右手が六太の上衣の裾から入り込んできた。更に衿の合わせから侵入した右手は、六太の左の鎖骨を指先でなぞりながら下へ移動しようとしている。六太はその手の冷たさと指先の動きが気になり、手綱どころではない。
「やめろよ!手、冷たい」
「手が冷えたから、お前の肌で暖めようとしているのだ。我慢しろ」
「……じゃあ、せめて動かすなよ」
それに対する返答は無かったが、とりあえず尚隆の右手は動きを止めた。
六太は少しほっとして手綱を握り直し、尚隆の右手の存在と耳にかかる吐息を意識の外へ追い出そうとした。

608不機嫌な王(尚六)3:2017/10/05(木) 19:40:43
やがて尚隆の右手と六太の肌の温度差は無くなり、六太はその手をあまり意識することなく前方を注視していた。
しかし唐突に、それは動き出した。大きな掌が肌をゆっくり滑って下へと移動を開始する。
「ちょっ、お前!動かすなって言ったろ!?」
「お前の言うことを聞く義理はないな」
意地悪げな含み笑いが耳をくすぐる。
「お前、ほんと根性が悪……あっ…ん…」
尚隆の指先に胸の突起を摘まれ、六太は思わず喘いだ。
「ちゃんと手綱を持て。たまが困っておるぞ」
手綱を持った六太の手に変に力が入って、たまは困惑したのか鞍上をちらりと窺ってきた。
「ごめんな、たま。尚隆のせい…あ…は…ぁ…」
また敏感な所を弄ばれて、まともに喋れない。六太はもう黙っていようと心を決めた。
尚隆の右手は遠慮なく胸をまさぐり続ける。どこをどうすれば六太が感じるか知り尽くしている尚隆は、容赦なく敏感な場所を攻めてくる。耳に尚隆の吐息がかかり、舌が侵入してきた。たまらず六太は甘い吐息を漏らした。
六太の呼吸は次第に浅く早くなる。上半身を支えていられなくなり、尚隆に凭れかかった。
「どうした、六太」
耳元で囁く低い声に、六太は微かに身を震わせて唇を噛んだ。身体の奥が熱い。
どうした、などと尚隆は訊いてくるが、六太が今どんな状態か手に取るように分かっているだろうに。わざわざ訊ねて六太の反応を見て楽しんでいるのだ。本当に根性が悪い。
「前を見ろ」
なんとか前方に視線を送ると、隔壁に囲まれた街が夕暮れの中に見えた。
「今夜はあの街に泊まる」
そう言うと、尚隆の手はようやく動きを止めた。
やっと解放された六太は、前方を見据えながら大きく息を吸って吐き、ゆっくりと呼吸を整えた。
尚隆は服の中から右手を抜いて、六太の手から手綱を取り上げる。眼下に広がる街の門へ向かって、たまを降下させていった。

ーー

とりあえず書き上げたところだけ投下。
続き書きたいんですが、なんか恥ずかしくて筆が止まっています…
エロ書ける人、ほんと尊敬ですわ…
書く勇気が湧いたら書きます。

609名無しさん:2017/10/06(金) 12:30:06
不機嫌な尚隆萌える・・・・w
続きぜひお願いします!六たんオシオキしちゃってください

610名無しさん:2017/10/06(金) 17:54:08
続きが読みたい!

611名無しさん:2017/10/06(金) 20:51:12
わ、私も!!(*'ω'*)

612不機嫌な王(尚六)4:2017/10/09(月) 06:49:32
途中までですが>>608の続きです

ーー
閉門直前の街に入り、広途を歩いて厩のある舎館を探した。以前来たことがある街なので、尚隆は迷いなく歩を進める。六太は少し俯いて、黙って後ろからついてきていた。
程なくして見覚えのある舎館に到着した。たまを預け、宿の者の案内を断って二階の部屋へと向かった。

扉を開けて、六太を先に部屋の中へ入れる。六太は観念しているようで逃げ出そうとはしなかったが、憮然とした表情で衝立の奥へ入って行った。尚隆は敢えて扉を閉めずに部屋の中へ入った。
さほど大きくない窓には玻璃が入っており、その近くに卓と榻がある。部屋の隅には牀榻があった。貧しい慶国にしては高級な宿といっていいだろう。
案内を断ったため、部屋の灯りは点いていない。日没後の残照と月明りが窓から差して、部屋全体をぼんやりと浮かび上がらせていた。

尚隆は荷を置き、防寒用の上衣を脱いでその上に放った。
榻の近くに佇んでいる六太に背後から歩み寄る。斜め後ろから覗き込むようにして、六太の顎に右手をかけ自分の方を向かせた。六太は不機嫌そうに尚隆を睨む。
「機嫌が悪そうだな、六太」
「……機嫌が悪いのは、お前のほうだろ」
「俺の機嫌を損ねるようなことをした自覚があるのか」
「……ない」
「だろうな」
何が決定的に自分の機嫌を損ねたのか、実は尚隆自身にも分かっていなかった。ただ、六太の言動にひどく苛立ったのは確かで、そんな時には我慢して溜め込むことは絶対にしないと決めている。すぐに発散させるほうが、長い目で見れば互いのためになるだろう。
六太が他人に好意を示すのは珍しいことではない。麒麟だから誰のことでも心配するし、世話も焼く。それは麒麟の本能のようなものだと尚隆も承知している。
だが所詮それは理性の上でのことだ。おそらく無意識下では快く思っていないのだろう。ごく僅かな不満の積み重ねが、今日臨界点を超えたのだ。尚隆は自身の感情を、そう分析している。
六太からしてみれば、ほんの些細なことで不機嫌になった尚隆のことを理解できないだろう。

「……おれが悪いっていうのか」
「いや。……だがお前のせいだな」
「なんだよ、それ。意味分かんねえ」
「分からずとも良い。だが責任は取れ」
六太は唇を噛み、尚隆を睨む瞳が強さを増した。反抗的な目だ。この目が涙に潤むところが見たい、という嗜虐心が頭をもたげる。
左手で六太の頭の布を取って床に落とす。金色の髪が広がり細い肩を覆った。窓からの淡い光に照らされたそれは、薄闇の中では眩しいようにさえ感じられる。尚隆は金糸を一房すくい取って、そこに唇を寄せた。
「泣かせてやる」
ことさら意地悪く聞こえるように囁いた。

613不機嫌な王(尚六)5:2017/10/09(月) 06:54:34
何かを言い返そうとした六太の口を、噛み付くようにして塞ぐ。開きかけていた口は易々と尚隆の舌の侵入を許した。
逃れないように六太の後頭部を手で押さえ、柔らかい舌を乱暴に吸い、容赦なく口腔内を蹂躙する。六太が苦しげに呻いたが、尚隆は荒々しい口づけをやめなかった。

廊下を歩く人の話し声と足音が、衝立の向こうから聞こえてきた。六太が焦ったように首を振って、必死で逃れようとした。
「どうした」
少しだけ唇を離して低く訊くと、六太は荒い呼吸の合間に囁くように言う。
「扉……」
「開いているな」
「……わざとかよ……閉めろよ」
「断る」
紫色の瞳が、また尚隆を睨んだ。
「上衣を脱げ」
六太は何か言いたげな表情をしてから、顔をふいと前へ向け、帯を解いて上衣を脱ぎ始める。尚隆は肩から落ちかけたその上衣に手をかけ、床に落とした。
後ろから六太の身体に左腕を回す。六太の着ている袍は、先程騎獣の上で戯れを仕掛けた時のまま、衿元が乱れていた。尚隆はその衿の間に右手を滑り込ませ、胸の尖りを指先で弄った。腕の中の身体はびくっと震えて、六太の手が尚隆の左腕を、すがるように掴んだ。
尚隆はそこを指先で転がすように弄ぶ。手加減なしに攻めていると、六太の呼吸はすぐに乱れ始め、足に力が入らないのか、尚隆の胸と左腕に全ての体重を預けてきた。
「もう立っていられないのか。お前のここは本当に敏感だな」
耳元に囁いてから、耳朶から首筋へ舌を這わせる。六太は逃げるように頭を引いたが、もちろん逃げられるはずもない。
「…だれ…の…せい……だよ」
掠れた声だが反抗的な口調。尚隆は低く笑った。
「俺のせいだな」
閨事の全てを六太に教えたのは自分だ。
腕の中で六太の身体を反転させ、榻の上に押し倒した。
袍の帯を解いて前をはだけさせる。六太の袴に手をかけ、膝の辺りまで引き下ろした。むき出しになった両脚の間に右膝をつき、六太の顔の横に左手をついた。
尚隆の愛撫で既に硬く勃ち上がっている六太のものを、右手で握り込んで上下にしごく。六太は息を飲み、六太の右手が尚隆の左袖を掴んだ。
緩急をつけて中心に刺激を与え続けると、六太はきつく目を瞑り、空気を求めるように口を開けて、微かな喘ぎを漏らした。
「随分と興奮しているな。俺に触られるのがそんなに嬉しいか?」
耳元で囁くと六太は顔を背け、左手の袍の袖を口元に当てる。声が出るのを抑えようとしているのだ。
尚隆は六太が呼吸を乱して快楽へと昇りつめていく様子を見極めながら、徐々に愛撫を強めていく。そして絶頂に至る寸前で手を止めた。
「まだ出すな」
六太の陰茎の根元を掴み、耳元で低く命じる。吐精の欲を強引に抑えられた六太は、震える手で尚隆の右手を掴んだ。
「出したいか?」
わざと意地悪く訊くと、六太は唇を噛んで顔を背けた。
「まだだ。我慢しろ」
六太の膝に引っかかっていた袴を、尚隆は右足で蹴って床に落とした。太腿の内側を右手で撫でながら膝を持ち上げた。
六太の亀頭の先端に滲んだ、とろりとした液体を中指に絡める。その指で六太の秘所を探り、一気に根元まで押し込んだ。六太は息を飲み、また左手の袖で口を覆った。
熱い内壁を指で擦り、幾度か出し入れすると、六太の腰が物欲しげに動いた。無意識なのだろう。尚隆は口元に笑みを浮かべる。
指を二本に増やし、六太の内部を搔きまわすように刺激する。六太は袖を噛んで声を殺そうとしている。尚隆は六太の耳元に口を寄せて囁いた。
「いい声を聞かせてみろ、いつものように」
衝立の奥の開いた扉からは、廊下を歩く物音が先程から何度も聞こえる。夕刻の宿屋は人の出入りが多く、声を出せば誰かに聞かれてしまうだろう。
だから六太は必死で声を抑えている。それを分かって言っているのだ。

614不機嫌な王(尚六)6:2017/10/09(月) 06:58:05
六太は一瞬尚隆を睨んだが、直後に三本に増やした指を奥まで押し込むと、ついに耐えきれず声を漏らした。
「––––あっ、…くぅ……はあ…ぁ」
尚隆は口の端を歪めて笑う。
「いい声だな、六太」
押し込んだ指をそのまま止めて、六太の反応が落ち着くのを待った。このまま攻め続けたら嬌声が止まらなくなるだろう。声を聞かせろとは言ったが、それに耐える六太を見たかっただけで、他人に聞かせたいわけではない。

六太の呼吸が少し落ち着いたのを見計らって、三本指で六太が最も感じる場所のまわりの肉襞をゆっくりと撫でまわす。袖で覆われた六太の口から吐き出される息が、甘みを帯びて響いてきた。
「…あっ…ぁ…ぁ」
一番感じる場所は敢えて触らず、緩慢に内壁を愛撫すれば、やがて六太の腰が自ら快楽を求めるように淫らに動き出した。
六太はもう理性が飛びかけている。それを見定めて尚隆が指を抜くと、六太は荒く息をつきながら左手で顔を覆った。
その手首を掴んで手を上げさせると、紅潮した顔に恨めしげに睨まれる。
「もっと欲しいんだろう」
「……そういうこと、聞くな」
尚隆は六太の身体を引き起こして、榻から立ち上がらせた。脚に力が入っていない六太は、尚隆に凭れてしがみつく。
その軽い身体を抱え上げて、牀榻へ向かった。寝台に降ろすと六太はぐったりと倒れ込んだ。
「まだまだこれからだぞ、六太」
そう六太の耳元に囁いてから、尚隆は身を起こす。
「扉を閉めてくる」
尚隆は衝立の奥の扉へと向かった。

ーー
中途半端ですみません…
エロ初めてなんで羞恥に悶えながら書いてます
次回こそは本番書きたいんですが…

615名無しさん:2017/10/09(月) 13:10:23
続きありがとうございます!エーロ!エーロ!///
尚隆ってこうゆう焦らしと恥辱を与える役目ほんと上手そう…ww

616名無しさん:2017/10/10(火) 00:05:14
続き来てたああ
やきもち尚隆いいよ

617不機嫌な王(尚六)7/10:2017/10/11(水) 11:10:57
>>614の続きです。

ーー
尚隆は厚みのある木製の扉を閉めて、錠を下ろした。廊下からの物音はほぼ遮断され、部屋の中は静寂に包まれた。
尚隆は踵を返して牀榻へ戻る。
寝台に身を横たえた六太は、目を閉じて浅い呼吸を繰り返していた。火照った身体を持て余しているのだろう。

尚隆は衣服を脱ぎ捨てて寝台に乗る。
六太が羽織っていた袍を脱がせて細い裸体を抱え上げ、自分の膝の上に跨らせた。
「尚隆……」
六太は目を開けて、尚隆の首にしがみついてきた。六太の腰が動いて、尚隆の猛ったものの先端に、六太の後孔が当たる。そこを擦り付けるように動かされ、その中の心地よさを知り尽くしている尚隆は、今すぐ犯してやりたい衝動に駆られる。
「そんなに早く欲しいのか?淫乱な奴め」
尚隆は自分の情欲を抑えながら、低く囁いた。
「まだだ、六太」
尚隆は右手で六太の秘所を探り、指を一気に三本押し込んだ。充分にほぐれていたそこは、難なく指を受け入れる。
「あ…はぁっ……」
六太は顎を仰け反らせて甘い吐息を漏らす。指で緩慢に内部に刺激を与えながら、左手で六太の勃ったものを柔く握り上下に動かした。
「あ…あぁ…」
尚隆にしがみつく六太の手に力が入る。せわしない呼吸を繰り返しながら、六太は金色の髪を振り乱した。
「感じているな」
尚隆の言葉には、六太は何も答えない。六太の腰は、指を奥へ受け入れようとするかのように淫らに動く。
尚隆は右手の指の動きを止めると、左手を六太の陰茎から離した。
「…は、ぁ…、尚隆…」
六太は紅潮した顔を上げて、潤んだ目で尚隆を見つめた。
「どうして欲しい?」
六太は尚隆の首にしがみつき、耳元で掠れた声を出した。
「……もっと、奥に…欲しい」
尚隆は口の端で笑って、六太の中から指を引き抜いた。六太の身体が震えて、荒く息をつく。尚隆の首にしがみついたまま幾度か呼吸をした後で、六太は顔を上げる。すがるような目で尚隆を見つめた。
「自分で動け、六太」
六太は微かに頷いて、尚隆の首に回していた右手を下ろす。そして尚隆の股間で猛るものにその手を添えた。六太は腰を少し持ち上げて、導くように右手を動かし、そこに腰を沈めた。
「あぁ––––は…あ…ぁぁ…」
ようやく尚隆を受け入れた六太は、目を瞑り長く甘い吐息をついた。六太の中はいつもより一層熱く、尚隆を待ち望んでいたかのように肉襞が脈動している。
六太はすぐに腰を動かし始めた。尚隆が寸前で与えなかった絶頂を、自ら求めているようだった。
六太の腰の動きはあまりにも淫らで、尚隆の中心にも快楽の波が押し寄せる。思い切り六太の中を突き上げたい、という欲望が滾る。
「あ…はぁ…ぁん…」
喘ぎながら目の前で金色の髪を振り乱す六太に、尚隆は見惚れた。薄闇に沈んだ牀榻の中でも、そこにだけ淡い光が集まっているようだった。
なんて淫らで美しい生きものだろう。
この神獣を犯せるのは自分だけだ。快楽を与えるのも、自分だけだ。

618不機嫌な王(尚六)8/10:2017/10/11(水) 11:13:53
唐突に尚隆は六太の腰を掴んで持ち上げ、自分の腰を引いた。
絶頂へ向かっていた六太は、突然引き抜かれたことに驚愕したように、尚隆の顔を見た。
「尚…隆…やだ、なん…で…」
上擦った声で言いながら、六太は駄々をこねるように首を振る。華奢な身体はぶるぶると震え、涙が頬を伝った。
「もっと欲しいか、六太」
「はや…く…尚隆…も…う、やだぁ…」
ぽろぽろとこぼれる六太の涙を、尚隆は唇を寄せて舐めとった。
「すぐに俺が犯してやる」
六太の耳元で囁いてから褥の上に押し倒し、震える身体にのしかかった。細い腰を持ち上げて狙いをつけると、一気に奥まで突き上げた。
「あぁぁっ…!」
六太が絶叫した。
尚隆は激しく腰を動かして、六太の中を蹂躙する。六太は尚隆の腕を掴み、喘ぎながら腰を振った。
一切の手加減をせず、尚隆は六太を攻め続けた。尚隆の腕を掴む六太の指に、食い込むほどの力が入る。絶頂が近いのだ。
激しく乱れる六太を眺めながら、ああ、これは失神するだろうな、と尚隆は思った。
容赦なく幾度も最奥まで突き上げると、やがて六太はひときわ大きな嬌声を上げて、痙攣したように全身を震わせた。六太の身体から力が抜けるのを見定めて、尚隆は六太の中に精を放った。射精の快感が全身を貫き、尚隆は六太の身体の両側に手をついて、大きく息を吐き出した。
暫くそのままの体勢で呼吸を整えてから、尚隆は繋がっていた身体を離した。

尚隆は、ぐったりとした六太の身体を褥に横たえて、金色の睫毛に残った一粒の涙をそっと親指で拭う。
「六太」
返事がないのは分かっていたが、微かな声でその名を囁いた。

王を慕い絶対服従するのに、他の誰にでも心を配る仁の獣。決して尚隆の意のままにならない生きものに、時折ひどく苛立つ。
六太を追い詰めるようなやり方をしたのは、自分の手で意のままに乱れるさまを見たかったからだ。六太に快楽を与えられるのは自分だけだということを、確認するためだ。
まったく幼稚な独占欲だと、我ながら呆れる。これでは景麒に恋着した予王を笑えない。
これは六太に対する甘えだろうか。おそらくそうなのだろう。自分だけは何をしても許されることを、全てを受け容れてもらえることを、確かめたいのだ。

尚隆は微かに苦笑を浮かべながら、涙の跡の残る六太の頰を撫で、そっと金色の髪に手を滑らせた。

619不機嫌な王(尚六)9/10:2017/10/11(水) 11:17:00
六太の意識は緩やかに覚醒へと向かう。
目を開けるより先に、規則正しく耳を打つ鼓動を感じた。力強く響くその音は、六太に不思議なほど安堵感をもたらす。
ぼんやりと目を開けると、仄かな灯りがゆらゆらと揺れているのが見えた。
「目が覚めたか」
僅かに身じろぎすると、頭上から低い声が降ってくる。そちらを見上げると、尚隆が覗き込んできた。
揺らめく灯りに照らされたその顔には、先程までの不機嫌そうな雰囲気は微塵も感じられない。大きな手が六太の髪をそっと撫でた。
「大丈夫か?」
優しい声音で訊かれて、六太は苦笑した。自分で散々追い詰めておいて、よくもそんなことを言う、と可笑しくなる。
「大丈夫じゃねーよ。誰かさんのせいで」
わざと不満げな言い方をすると、尚隆は笑った。
「そうか」
まわりに意識を向けると、尚隆は牀榻の壁に凭れて寝台の上に座り、六太はその腕の中にすっぽりと収まっていた。身体の右側を尚隆の胸に密着させるように凭れていて、右耳に尚隆の鼓動が聞こえている。六太の肩には掛布がかけられていた。

「おれ、どれくらい寝てた?」
外は暗い。気を失ったのは日没からさほど経っていない頃だ。長く眠った感じはしないから、まだ夜中ではないだろう。
「半刻も経っていない。お前、腹が減ってないか?」
「……言われてみれば、減ってるかも」
「夕餉を食いに行くか」
「えー……」
確かにいつもなら夕餉を取る時分だろうが、六太はまだ情事の疲れで起き上がる気力がなかった。
「……まだ、起きたくない」
「そうか」
尚隆は微笑して、六太の身体を抱え直した。
「では、もう少し休んでからにするか」
穏やかに言う尚隆は、何事もなかったかのようにいつも通りだ。いや、いつもより優しいかもしれない。
「機嫌は直ったみたいだな」
皮肉を込めて六太は言う。ちょっとは文句をつけておかないと気が済まない。
「まあな」
さらりと言ってのける尚隆は余裕の笑みで、本当に憎たらしい。
「お前、ほんと自分勝手だよな。急に不機嫌になっておいて、もう忘れたみたいにしてさ」
「不機嫌なままのほうがいいのか?」
「そういう意味じゃないって。……分かって言ってるんだからタチ悪いよな」
だが六太の文句を一向に気にしたふうもなく、尚隆は笑った。六太は大げさに溜息をついてみせた。

不機嫌な尚隆は、なんだか子供じみている、と六太は思う。持て余した感情をぶつけてくるなんて。でも結局いつもそれを許してしまうのは、尚隆が王で六太が麒麟だからなのだろうか。それとも、王も麒麟も関係なく、六太個人の心が尚隆の全てを受け容れることを望んでいるのだろうか。
どちらでもいいことかもしれない。答えは決して出ないのだから。

620不機嫌な王(尚六)10/E:2017/10/11(水) 11:19:03
六太は少しだけ身を起こし、左手を伸ばして尚隆の頰を思い切りつねった。尚隆はわざとらしく顔をしかめ、その手を握る。
「なんだ、いきなり」
「仕返し」
尚隆は軽く吹き出した。
六太の左手を放した尚隆の右手が、頰に触れてくる。つねられるかと身構えていると、不意に口づけられた。
「なんだよ、いきなり」
触れただけですぐ離れた唇が、少しだけ名残惜しい。尚隆は微笑して、右手を六太の頭の後ろへ回す。また唇が重ねられた。
尚隆の湿った暖かい舌が六太の唇を這い、ゆっくりと侵入してきた。六太は目を瞑ってそれを受け入れ、舌先に絡む感触に意識を集中させる。尚隆の舌に優しく口腔内を犯される心地よさに身を委ねた。
やがて唇が離れていき、六太は目を開ける。すぐ目の前にある尚隆の顔が、困ったように笑った。
「もう一回やりたくなってきたな」
「え?」
六太は焦る。今はそんな気力はない。
「おれはやだからな。もう、無理」
「俺はまだ足りていないんだがな」
尚隆自身が満足することよりも、六太を追い詰めることを優先するようなやり方をしたせいだろう。
「そんなの、自業自得だろ。おれはもう充分だって」
「つれないな。さっきは泣いて欲しがったくせに」
意地悪げに尚隆は笑い、六太はかあっと顔が熱くなった。
「うるさい!そういうこと言うな!」
六太は拳で思い切り尚隆の胸を叩く。もちろんその程度ではびくともしないのだが。
尚隆は笑って六太の髪を撫でる。
「そう怒るな」
六太はむすっとして尚隆を睨んだ。
「お前って、ほんと根性悪い」
「そんなことは今更だな」
六太の抗議を尚隆は全く意に介さない。
ぷいとそっぽを向いた六太の頭を、尚隆が軽く叩いた。
「夕餉は何を食いたい?好きなものを奢ってやる」
「……お前さ、食いもんで機嫌取ろうとしてねえ?」
「いや、機嫌を取ろうとは思っていないぞ。お前にもう一回やる気になってもらいたいだけだ」
「なんだそれ」
あまりに莫迦莫迦しくて、六太は吹き出した。くすくす笑いながら、尚隆の胸に頭を凭せかける。
「……まだ、もう少し休みたい」
六太がそう言うと、尚隆はずり落ちていた掛布を引き上げて、その上から六太の身体を抱き締めた。
「仕方がないな。お前がやる気になるまで待とう」
ぼやくような尚隆の声を聞きながら、六太は笑って目を閉じた。
夕餉に好物を奢ってもらえるのは、単純に嬉しい。その後のことは……まあ、なるようになるだろう。




ーー

細切れ投下になりましたが、なんとか最後まで書けました…
携帯で小説書いているので、自分が書いたエロい文章を常に持ち歩くという辱めに耐えきれずw書いた分はすぐ投下して手元のデータを速攻消去してましたσ^_^;
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

621名無しさん:2017/10/11(水) 16:50:10
わー姐さんさんきう!ベリーマッチ!不機嫌な王様の続き読めて幸せです!エッロ!
…理不尽なエッチでも結局許してしまう六太が好き( ´ ▽ ` )

622名無しさん:2017/10/11(水) 20:43:35
にやにやしちゃうなあ
嫉妬尚隆もの、大変美味しくいただきました!

623不機嫌な王 おまけ:2017/10/13(金) 17:22:45
楽しんで頂けたようで嬉しいです。
焼きもち尚隆が六太をいじめるけど、結局許しちゃう六太が書きたかったのですw
ふと思いついて軽い気持ちで書き始めたのはいいけど、ちゃんと話を成り立たせるためにはガチエロ必須じゃないか!と気付いた時には戦慄しました…
最後まで書けて良かった…T^T

不機嫌な王のこぼれ話を少々
尚隆と六太が帰った後の陽子と景麒の会話です。

ーー

「即位式のあと延王と二人で話をしていた時に、延王が、きっと俺は雁を滅ぼしてみたくなる––––と言ったんだ。楽俊は、ただの冗談だろうから気にするなって言ってたんだけど……。延王はそういう冗談を言う方だろうか?」
「………」
「……景麒?」
「………」
「……何か思うところがあるなら言ってくれ、景麒」
「冗談、かどうかは分かりませんが……」
「……が?」
「私が主上を捜しに蓬莱へ渡る前、延台輔に助言を求めて玄英宮へ伺ったことがあります」
「へえ。……それで?」
「……延台輔が席を外して、私と延王の二人きりになった時に、延王が仰ったのです」
「……何を?」
「予王の気持ちは分からんでもない、と」
「……それって、民を虐げ国を荒らす王の気持ちが分かるってことか?」
「延王の真意は私には分かりかねますが……。自嘲するように仰っていました」
「そうか……。なんか恐いな、延王は……」

ーー

陽子も景麒も、尚隆がただの嫉妬深い奴だとは気付いてない、という話w

624初詣(尚六)1/6:2017/12/26(火) 19:15:43
尚六の別スレ立てて一話目も途中だというのに、ふと思いついた話を先に書いてしまいました…
ちょっと早いですが初詣デートの話
皆様も素敵な新年を迎えられますように(*^ ^*)

ーー
大晦日の深夜、間もなく年が明ける頃のこと。
関弓山の中腹にある禁門が、内側から少しだけ押し開けられた。門番が訝しんでそちらを見ると、門の隙間から一つの騎影が飛び出した。
三本の尾を持つ狼の背に、二つの人影。
止める間も無く騎影は跳躍し、岩棚の向こうへ降りていく。
二人の門番が騎影の飛んだ方へ走り、岩棚の端から下を見渡した。しかしそこには暗闇の中、街の灯りが散りばめられた星のように輝くのが見えるだけ。三尾の狼の姿はどこにもなかった。

「……やられた」
「五年……いや、六年振りか?」
「確か六年振りだな、大晦日の逃亡は」
「最近なくて安心してたんだがなあ」
「まあ、明日は式典もあるし、夜明けまでにはお戻りになるだろう」
二人の門番はどこか楽しそうに、下界の灯りを眺めた。既に深更だが、大晦日の夜は起きている民が多いのだろう。普段よりも街の灯りは多く、冬の澄んだ空気の中で美しく煌めいている。
「街に降りたくもなるよなあ……」
ぽつりと呟いた言葉にもう一人の門番の男が静かに頷いた。
その時、新年を告げる鐘の音が、凍えるような空気を震わせて厳かに鳴り響いた。


悧角で王宮を抜け出した尚隆と六太は、街の片隅の目立たぬ場所に降り立った。広途の方向からは、さざ波のような喧騒が聞こえる。
「早く早く」
六太は待ちきれないように言いながら、広途の方へ足早に向かう。
「待て六太、もう少し落ち着け」
尚隆は苦笑しながら六太に声を掛け、後ろからついて行く。
「置いてくぞー」
六太は振り返って言い置くと、ぱっと駆け出した。その後ろ姿は、すぐに曲がり角の先に消えた。

尚隆が歩いて広途に出ると、そこには多くの人々が同じ方向へ向かって歩いていた。
道端には一定の間隔で篝火が焚かれ、通りを明るく照らしている。普段この界隈は夜中になると殆ど灯りがないのだが、今夜だけは特別だ。
はしゃぐ子供達が尚隆の前を通り過ぎて行く。夜中まで起きていることは滅多にないのだろう。
街路の先を見やると、幾つか先の篝火の近くに六太の姿があった。尚隆はゆっくりと歩み寄って行く。
揺れる炎に照らされた六太の横顔には、微笑みが浮かんでいる。民を見守る慈愛深い麒麟の表情だと、尚隆は思った。
「……みんな浮かれてんなあ」
呟いて、六太は笑みを深くする。
浮かれた民を見ることが、最上の幸福であるかのように。

625初詣(尚六)2/6:2017/12/26(火) 19:18:13
少しの間、尚隆はその横顔を見つめてから、軽い口調で声を掛けた。
「浮かれとるのはお前だろうが。勝手に先に行くな、迷子になるぞ」
「ならねぇよ。おれはお前の気配わかるし」
六太はそう言ってから、はたと尚隆を振り仰いで、にっと笑った。
「あーそうか。おれじゃなくて尚隆が迷子になるって話か」
尚隆は笑って、拳で六太の頭を小突く真似をする。
やめろよ、と笑って頭を庇おうとした六太の手を、尚隆は掴まえた。そのまま手を下ろして、六太の冷えた手を繋ぎなおすと、六太は少し驚いたように尚隆を見つめてから、悪戯っぽく笑った。
「……お前が迷子にならないように?」
「そうだ。手を離すなよ」
尚隆が念押しするように言うと、六太は楽しそうな笑い声をたて、手を握り返してきた。

人々の波は神社のある方向へと流れて行く。その流れに乗って、尚隆と六太も神社へ向かって歩き出した。
こちらの世界で初詣の風習があるのは、蓬莱の影響を色濃く受けている雁だけだろう。
鳥居へ続く街路には幾つか出店があり、食べ物や玩具などが売られていた。六太は尚隆の手を引っ張りながらふらふらと店を覗いていく。
「甘酒の匂いがする」
鳥居の少し手前で、六太が呟きながらきょろきょろとあたりを見回し、人だかりのある方向に視線を止めた。
「あ、あそこだ。お前の分も貰ってきてやる」
そう言うと六太は繋いでいた手を離し、尚隆の返事を待たずに駆け出した。その後ろ姿を見送りながら、尚隆は微かな笑みを零した。
数百年も生きているくせに、ああいうところは全く変わらない。

人だかりの近くまで歩み寄り、尚隆はそこから六太の姿を眺めた。
甘酒を振舞っているのは年配の男だ。確かあれは酒屋の店主だったはず。六太は笑顔で言葉をかけ、男も笑って何かを言う。そして甘酒の入った小さな杯を二つ六太に手渡した。
六太が両手の小杯の中身をこぼさないよう慎重に歩いて戻って来る。
「あのおっさん、今年のは特別うまいぞって言ってたぜ。なんか前来た時も同じこと言ってたような気がするけど」
六太は可笑しそうに笑いながら、右手の杯の差し出した。尚隆は右手を伸ばしてそれを受け取り、六太の空いたその手を左手で掴んだ。
「手を離すなと言ったろう」
「そっか、忘れてた」
屈託なく六太は笑い、甘酒に口をつけた。うまい、と言ってまた六太は笑う。

626初詣(尚六)3/6:2017/12/26(火) 19:20:17
今夜の六太は上機嫌だ。本当に楽しそうに笑っている。
数日前に初詣に行きたいと六太が言い出した時、尚隆は正直なところ、面倒だなと最初は思った。ここ数年は閨で新年を迎えていたから、今年もそうするつもりだったのだ。
元日は慶賀の式典があるので、準備のため早朝から起こされる。さすがに新年初の重要な行事をサボるわけにはいかないので、
「深夜に抜け出したら閨で過ごす時間がないではないか」
と尚隆が言うと、六太は、
「そんなのいつだっていいだろ。初詣は年に一度の特別なことだぞ。ここ何年か行けてないんだから、今年は絶対に行きたい。お前が行かなくても、おれ一人で行くからな」
などと言い出した。
どうしても譲らない六太に結局尚隆が折れて、初詣に来ることになったのである。
そんなことを思い出して、尚隆は軽く溜息をつきながら六太の笑顔を見やる。
浮かれた様子の民を見るのも、楽しそうな六太を見るのも悪くはないがな、と内心で呟きながら、自分の頰が緩んでいることは十分に自覚していた。

尚隆と六太は手を繋いだまま、他愛のない話をしながら歩いていく。鳥居をくぐり、神社の境内に足を踏み入れた。
凍えるような冷たい空気の中、吐き出される息は白い。境内のあちこちに、赤々と燃える篝火がある。
石畳の参道を参拝客の群れが進む。社殿が近づくにつれ人の密度は増していく。動きが緩やかになり、やがて殆ど動かなくなった。
蓬莱と違って、こちらの人は基本的に神頼みはしない。子や家畜を授けてくれる里木には熱心に祈るが、特に見返りのない神に何かを願うのは無意味だと考える者が多いらしい。
だからこんなに大勢の人々が神社を訪れるのは不思議な気もするのだが、おそらく新年を喜ぶ民が、祭りに参加するような気持ちで参拝に来ているのだろう。

少しずつ列は進み、本殿の前の石段を一段ずつ登る。ようやく尚隆と六太が最前列になった。
賽銭を箱に投げ入れて、垂れた鈴緒を振って鈴を鳴らす。蓬莱の作法に則って拝礼し柏手を打った。
隣に立つ六太が手を合わせて目を閉じるのを、ちらりと見やってから、尚隆も目を閉じた。

初詣の願い事は、こうなったらいいなという夢を語るためのものではない。もちろん、民は自由に夢が叶うことを願えば良いのだが、王である尚隆にとっては、自らの決意を新たにするためのものなのだ。
己の民と半身に、緑豊かな国を渡し続けることが出来るように。

627初詣(尚六)4/6:2017/12/26(火) 19:22:32
六太の願い事はいつも同じだ。
手を合わせて心の中でそれを唱えてから、六太は目を開ける。最後に一礼をしてから隣を見上げると、尚隆はまだ目を閉じたまま、いつになく真剣な様子で手を合わせていた。
何を願っているのだろう。神頼みの御利益など、全く信じていないだろうに。

その横顔を少し見つめた後、ちょっとした悪戯心でその場からそっと離れた。人混みの中に入ってしまえば、小柄な六太を見つけるのは難しいだろう。逆に背の高い尚隆を見つけることはたやすいし、六太には王気が分かる。圧倒的に有利なかくれんぼだ。

尚隆が一礼してから六太が居た場所を見て、それからまわりを見渡すのを、六太は人混みの中から眺めた。慌ててはいないだろうが、きっと呆れているだろう。なんだか可笑しくなって、六太は小さく笑う。
周囲に目を配りながら歩き出した尚隆を、六太はこっそりと追いかけた。ゆっくり歩く尚隆に気付かれないように、慎重に背後から近付いて行く。
三歩程の距離から尚隆の袖を引こうと右手を伸ばした瞬間、不意に尚隆が振り返った。
「あ」
袖を引くより先に気付かれて、六太は思わず声が出た。伸ばしていた手を尚隆の左手に掴まれる。その手は大きくて暖かい。
「まったく、少し目を離すとお前はすぐにいなくなるな」
わざとらしい溜息をついてから、尚隆は笑った。
「迷子になったと思ったか?」
六太はそう言ってくすくす笑いながら、三度目だ、と思う。年が明けたばかりなのに、もう三度も尚隆につかまえられた。
「今度こそ手を離すなよ」
「うん」
尚隆に念を押されて、六太は笑って頷いた。

参拝を終えた人々が、参道から外れた境内の篝火の外側を通り、戻って行く。二人も同じように歩き出した。
広途へ戻ると、神社へ向かう人と戻る人が入り混じって、先程よりも雑然としていた。
「……さっき、何を願ってた?」
手を合わせていた時の尚隆の真摯な横顔を思い出しながら、六太は密やかな声で訊いてみる。
問われた尚隆は少しの間、六太を真顔で見つめた。何かを言いかけてから思い留まったように、人の悪そうな笑みを浮かべる。その表情を見た瞬間、六太は問うたことを後悔した。
「知りたいか?」
「いや、知りたくない。今の質問は無かったことにしてくれ」
尚隆が本当の願い事を教える気がないのは明らかだ。六太をからかうための、碌でもない答えを思いついたのだろう。
「遠慮せずに、聞け」
「聞きたくない」
六太は両手で耳を塞ごうとしたが、右手は尚隆に掴まれていて、左耳しか塞げなかった。これでは全く意味がない。

628初詣(尚六)5/6:2017/12/26(火) 19:24:34
尚隆は六太の右耳に口を寄せると低く囁いた。
「––––六太の性欲がもっと強くなるように」
予想以上に、碌でもない願いだった。
「お前…!ほんとに莫迦だろ?くだらない願い事するんじゃねーよ!」
六太が声を上げると、尚隆は真面目くさった顔を作って首を横に振った。
「いや、これはかなり切実な願いだぞ。どうもお前は俺と比べると、そういう欲が弱い」
「お前と比べんなって、この色欲魔が。……あぁもう、ほんと訊くんじゃなかった」
六太は深い溜息をついたが、尚隆は楽しそうに笑った。
「お前は何を願ったんだ」
「教えない」
「せっかく俺の願い事を教えてやったのに、つれないな」
どうせ本当の願い事じゃないくせに、と六太は心の中だけで言い返しながら、尚隆に指を突きつけた。
「初詣の願い事ってのは、人に言ったら叶わないんだぜ?つまり、さっきおれに言ったお前の願い事は、叶わないってこと」
人に言ったら叶わない、というのはよく聞く噂だが、六太はそれを信じているわけではない。きっと願い事を他人に教えたくない誰かが考えた言い訳だろう。今の六太のように。
「……ほう、それは残念だな」
さして残念でもなさそうに言ってから、尚隆はにやりと笑った。
「神頼みが通じぬのなら、自分でなんとかするしかないか」
「……へ?」
繋いだ手を唐突に強く引かれて、六太は近くの路地に連れ込まれた。篝火の届かないその場所は、濃い闇の中に沈んでいる。
「どこ行くんだよ」
六太が訊ねたのとほぼ同時に、尚隆は突然立ち止まった。咄嗟に止まれなかった六太の身体は、尚隆の右腕に受け止められ、そのまま胸元に抱き寄せられた。
唖然としていると、大きな手に顎を持ち上げられた。尚隆の顔が近づいてきて、六太は驚いて逃れようと身を捩った。
「ちょっ、やめろよ!お前、急に何なんだよ?」
「お前が挑発してきたんだろうが」
「してねぇよ、挑発なんて」
「俺の願い事が叶わないと言ったろう」
「言ったけど、それがどうした」
「あれは『だからお前がその気にさせてみろ』という挑発だろう?」
「はあ⁉︎」
なんでそうなる曲解し過ぎだろう!と出かかった言葉は、尚隆の口に塞がれた。きつく抱擁され頭を押さえられて、逃れることはできない。
歯列の間から入り込んできた尚隆の舌が、執拗に六太の舌に絡みついてくる。その器用な舌は、口腔内の隅々まで丹念に愛撫を繰り返した。
情欲を煽る濃厚な口づけに、六太の手は次第に抵抗する力を失っていく。これでは尚隆の思う壺だ、と考えながら、諦めるように目を瞑った。
六太が口づけに応じ始めると、頭を押さえていた手の力と、苦しい程きつかった抱擁の腕が、少しだけ緩んだ。
自由に動かせるようになった腕を、尚隆の広い背中に回した。全身に広がっていく甘い痺れに浸りながら、今年最初の口づけだ、と六太は思った。

629初詣(尚六)6/E:2017/12/26(火) 19:26:35
舌が溶け合ったのかと錯覚するくらい、長い口づけだった。やがて尚隆の唇は離れ、陶酔感の余韻が、六太に吐息をつかせた。
六太が瞼を上げると、間近に尚隆の笑みが浮かんでいる。
「その気になったか」
「……」
沈黙していると、尚隆は意地悪げに目を細めて、六太の首に巻いてある襟巻きをするりとほどいた。露わになった六太の首筋に、尚隆が顔を埋めた。
尚隆の冷えた鼻先が首筋に当たり、思わず首を縮める。そこに暖かい舌が這い出して、首筋からうなじへとゆっくりと移動し、そして耳朶に至った。
「あ…ん、やめ……尚…隆」
舌が耳に侵入してきて、ぞくぞくと背筋が泡立ち、声が上擦った。
「その気になったと言うまで続けるぞ」
尚隆の含み笑いと低い囁きが、耳をくすぐった。無駄な抵抗と知りつつも、六太は抗議する。
「……今夜は、そういうことしないはずだろ」
「誰がしないと言った」
う、と六太は言葉に詰まる。しない、とは確かに言ってない。
だが閨で過ごす時間がないと文句を言って、初詣に来るのを渋っていたのは尚隆だ。散々揉めた末に尚隆も初詣に行くと言ったのだから、閨事は諦めたと思っていたのに。
「でも、戻ったらどうせ夏官が待ち構えてて、それぞれ臥室に連れ戻されるだろ」
これまで夜中に初詣に行った時は、毎回そうだった。各自の臥室に連れ戻され、早朝の起床時間まで牀榻に押し込まれて、抜け出さないよう見張られるのだ。
新年の重要な式典に差支えないよう、ちゃんと寝ろということだ。それはもっともな言い分だし、まあ夜遊びした後だから仕方がないと、これまではおとなしく従っていたのだ。
「街の宿に入ればよかろう」
「え……いや、でも」
「それとも玄英宮に戻って、勅命を出すか?」
「勅命?」
「姫初めの邪魔をするな、と」
六太は一瞬、言葉を失う。なんでこいつは、こんなくだらない勅命を思いつけるのだろうか。
「––––阿呆!新年早々、莫迦な勅命考えるんじゃねえ!絶対、そんな勅命出すなよ!」
「では宿に入るか」
「う……」
答えに詰まる六太に、尚隆は軽く溜息をつく。
「まだその気にならんのか。強情な奴だな」
そう言ってから尚隆は、再び耳朶に舌を這わせ始めた。
「あっ…や……、分かっ…た、宿に、入るから…!もう、よせって」
上擦った声で言うと、尚隆は舌を離し、その大きな手が六太の頰を包むように優しく触れてきた。
そして尚隆は、至近から六太の顔を覗き込んで囁いた。
「その気になったと、ちゃんと言え」
「……その気に…なった」
顔が熱くなるのを自覚しながら、六太は囁き返した。
満面の笑みを浮かべた尚隆は、六太の唇に軽く口づけを落とす。次の瞬間、六太の身体はひょいと抱え上げられた。
「では行くぞ」
六太が慌てて尚隆の上衣を掴むと、路地の奥に向かって尚隆はすたすたと歩き出す。広途は通らず、裏道から宿に向かうつもりのようだ。
いつものことながら本当に強引な奴だ、と六太は溜息をつく。今年もこんなふうに尚隆に振り回され続けるのだろう。
でも、と六太は微かに笑む。
それでもいいか、とも思う。いつまでも尚隆のそばにいることが、六太の願いだから。
六太は、自分を抱え上げる男の首に、腕を回してしがみつく。そいつの耳朶を甘噛みして、ぺろりと舐めてやった。
尚隆が笑った振動が、触れた唇に直接伝わる。
「待ちきれないのか?」
「……ばーか」
小さく笑いながら耳元で囁くと、六太の身体を抱き締める腕の力が強くなった。
ひとつの影となった二人の姿は、密やかな笑い声を響かせながら、深夜の路地裏の暗闇へ溶けるように消えていった。



630名無しさん:2018/01/16(火) 19:15:44
かわいいろくたんをありがとう!


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