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軍事選書堂を宣伝する擦れ
1 名前: 松代 投稿日: 2002/08/23(金) 00:54
知人が経営しているWEB書店で、仕事上の資料はほぼ全てここから購入しています。
まぁ、色々な「大人の事情」でココに擦れを立て、この書店で取り扱っている書籍や雑誌の宣伝をすることとなりました。

軍事選書堂
http://www.chickenhead.co.jp/shop/

注意!
このスレッドはあくまでも松代が個人的に立てたスレッドです。軍事選書堂とは一切関係ありませんし、もちろん注文や苦情は受け付けません。また、問い合わせにも応じることができないので、そのむねご了承ください。

2 名前: 鎌やん 投稿日: 2002/08/23(金) 03:28
個人的には、WEB書店のバナーは、板トップより、板ボトムが妥当かと思われます。

3 名前: 松代@書籍紹介 投稿日: 2002/09/16(月) 22:07
政治制度論−議員内閣制と大統領制−白鳥令(編)芦書房

日本においては国政レベルにおける「議員内閣制」と、いわば「大統領制」とでも言うべき地方自治体の首長とが併存しており、政治制度を研究するうえでは格好の研究素材を提供しているといえる。実際、政治制度とはその国家、あるいは自治体における民主主義の基本ルールであり、政治活動の基本原則ともなっている。だが、政治に対して学術的な視点から研究を行うものであっても、政治制度そのものに対する関心は高くないという現状がある。本書は、政治制度に関して特異な環境下にある日本の事例を踏まえつつ、各国の政治制度を研究、分析することで政治制度そのものに対する考察を深めようとしている。特に日本ではなじみが薄く、かつなかなか理解しがたい多民族国家の政治制度や、また政治システムの大変動を経験したロシア、あるいスペインにおける事例は興味深く、かつ示唆に富んでいるといえるだろう。
その他、他者からもたらされた憲法をいかにして国民が受容していくのか、あるいは他者からもたらされた憲法が定着していくのかといった視点からの研究や、大統領制と議員内閣制の比較、政治制度と民主主義との関係など興味ぶかい研究を数多く収録しており、政治に関心を寄せる全ての人々に強く奨めたい資料といえる。

4 名前: 鎌やん (;´Д`) 投稿日: 2002/09/17(火) 17:16
>3
品切れみたいだよ…

5 名前: 松代 投稿日: 2002/09/28(土) 15:27
入荷したとさ

6 名前: 鎌やん (;´Д`) 投稿日: 2002/10/02(水) 02:19
>5
松代さん受け渡しでお願いしたので、よよしくでつ。

7 名前: 松代 投稿日: 2002/10/20(日) 14:04
白団 台湾軍をつくった日本軍将校たち
中村祐悦(著)
芙蓉書房出版[/四六判/220頁/]本体価格 2,136円

太平洋戦争の敗戦後、中国国民党と合流して軍の再建に協力し、蒋介石が台湾へ逃れた後は台湾における様々な活動に関与した日本軍将校達の資料。

http://www.chickenhead.co.jp/cgi-bin/goodslist.cgi?mode=view_detail&this_num_genre=&this_num_goods=&genre_id=00000081&goods_id=00000002&sort=

8 名前: 鳥山仁 投稿日: 2002/10/22(火) 01:57
鎌やんさん>
ようやくHDDクラッシュから50%ほど復帰しました。
例の本は、発見されたのでお貸しいたします。
ちなみ、es BOOKSでは売り切れの模様です。
http://www.esbooks.co.jp/bks.svl?start&CID=BKS503&shop_cd=1&qty=1&product_cd=05042487&pg_from=srh
それから、押しつけがましくて大変申し訳ないのですが、
ROSF書籍部でも載せている今村仁司の『近代の労働観』を
早急に読んでいただけると有り難いです。
ROSFのメンバーには告知したのですが、
ついにあそこに書かれた理屈でフェミニズムを論理的に切り崩す作業が
一部の理屈屋の間で始まっており、しかも正鵠を射ているので、
数年後には女性学の理論が全面的に破綻する可能性も出てきています。
ただし、この話をフェミニストそのものに言っても無駄なので、
せめて近縁にいる人間だけでも回避する準備をする必要があると、
私自身は考えております。
よろしくお願いいたします。

9 名前: 八的 投稿日: 2002/10/23(水) 01:37
『近代の労働観』は、アマゾンドットコムではまだ取り扱っているようですよ。

ぼく愛用のノートパソコンを業者に見てもらったところ、HDDクラッシュではなく、マザーボードクラッシュであることが判明。
修理費、約十万円。
泣いていいでつか? (;_;

10 名前: 松代 投稿日: 2002/10/23(水) 02:14
貧国強兵:「特攻」への道 (光人社NF文庫 も N-348)
森本忠夫(著)
光人社[文庫判/256頁]
本体価格 638円
『国を富まし、兵を強くする』の国家的スローガンの下、強兵を追求すれば国力が軍事力の犠牲となり、国力停滞は強兵の実現を不可能とし、日本は崩壊の道へ悲劇のプロセスを辿る――アメリカとの物的戦力差を明らかにすると共に、その非力を補填する精神主義に基づく人的戦力形成の恐るべき実体を捉えた話題作。

11 名前: 松代 投稿日: 2003/03/05(水) 02:34
■KKベストセラーズ
●暗号名はマジック

KKベストセラーズの1月の新刊『暗号名はマジック』、いわゆる「太平洋戦争
の開戦原因究明もの」ですが、最近流行のセンセーショナルなものとは切り口が
違います。これは表紙の帯を眺めると分かるのですが、「じつは日本もアメリカ
も戦う気はなかった!」とあります。この落ち着いた切り口でもベストセラーズ
で刊行できた理由には、本書の原典がオックスフォード大での学位論文だったこ
とにあります。陰謀説派が軽んじて評価しやすい日米元首の親書交換の話や、マ
ジックの誤訳に着目し、当時の日米の関係から、きわめて面白い分析を行ってい
ます。これが真実かどうかは断定できませんが、日米開戦経緯史に興味のある方
には、必携の一冊となるでしょう。

12 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/03/05(水) 04:41
松代さん>
下さい。
買います。

13 名前: 松代 投稿日: 2003/03/06(木) 02:27
>>12
うぃうぃ〜
さっそく手配しておきました〜

14 名前: 松代 投稿日: 2003/03/19(水) 01:35
筑摩書房の新刊『戦争倫理学 (ちくま新書382)』

著者の加藤尚武氏は、鳥取環境大学学長で、生命倫理学、環境倫理学、応用倫理学を専門とされている方です。小林よしのりの戦争観を斬り、ナポレオン時代の戦争から、ゲルニカ、
広島と説いていきます。
特に秀逸なのは、「東京裁判史観」に関する章でしょう。幾度と無く指摘されている件「インド人の裁判官パルの無罪論」が、法律論的無
罪しか意味していないことを、意義深い例え話を援用して分かり易く説明しています。
憲法九条問題についても、興味深い視点からの意見を述べています。また、著者の引用する書籍が広範囲なことも特徴的で、『戦争の世界史(刀水書房)』『機関銃の社会史(平凡社)』といった良書も、適切に引用されていると思います。

15 名前: 松代 投稿日: 2003/05/18(日) 22:24
『抗日戦争と民衆運動』 創土社
新解放区や阿片の流れを解明するには、必ず参照すべき資料です。また、日本人の反戦運動を知るにも参考となる記述があります。

『摩擦と合作』 創土社
新四軍本ですよ!
部隊史として、日本語ではこれ以上の価値を持つ資料はないし、また今後もでないと思います。
とはいえ、新四軍という組織に興味がない人にとっては、なんのこっちゃわからん本なのも確かです。


『電撃戦という幻 上・下』 中央公論新社
この資料を読むと「現場指揮官の判断に任せるというドイツ軍の委任戦術」が、危機に際していかに有効と働くか、またその積み重ねでもうまく組み合わせれば事態の解決に繋がるということを理解できると思う。
組織の中心人物だけで情報を独占し、現場の判断を拘束する事がいかに愚かなことか、自分もよく噛み締めつつ読みたい作品です。

『第2次大戦とは何だったのか』 筑摩書房
福田和也氏って、人物評はあまりお得意じゃないようですな。それにしても、基本的な歴史事件の時系列順が間違っている点や、特定人物の同じような作戦に対して「評価が一定しない」点については、著者と編集者の両方を否定的に評価せざるをえないと思います。

16 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/05/20(火) 03:47
新四軍と言えば、
日中戦争当時に八路軍によって捕虜になった日本軍人が2500人弱いた、
という事実はほとんどの歴史書に載ってないですね。
このスレッドを読むまで気づかなかったんですが、
これもひょっとして日本近代史のタブーなんでしょうか?

それから、福田和也の書籍がダメダメなのは、
原稿料欲しさに本人が執筆しているのが主な原因です。
田原総一郎みたいに、きちんとしたゴーストライターを使えば、
「田原は案外マトモじゃないか」と、
事情を知らない人が誤認してくれるんですけどね。

そういう意味では、自分の言葉で喋ろうと必死になっている、
筑紫哲也も福田の同類ですな。
所詮、お茶の間向けの腹話術人形で、
中味なんかありゃしないのだから、
もっと操り師の言いなりになってりゃ良いのにと思います。

あ、なんか『からくりサーカス』を全巻読破したい気持ちになってきました。
しろがね〜。

17 名前: 松代 投稿日: 2003/09/19(金) 21:59
図説世界の監獄史はかなりおすすめなんだけど、いかんせん高すぎ〜

武器としての宣伝 (パルマケイア叢書 3)
ヴィリー・ミュンツェンベルグ(著) 星乃治彦(訳)本体価格 3,689円

総力戦と現代化 (パルマケイア叢書 4)
山之内 靖, ヴィクター・コシュマン, 成田龍一(共著)本体価格 4,078円

理想郷としての第三帝国 ドイツ・ユートピア思想と大衆文化 (パルマケイア叢書 16)
ヨースト・ヘルマント(著) 識名章喜(訳)本体価格 4,800円
未来小説、ユートピア小説など、正統的文学史から見落とされた大衆娯楽小説200点を手がかりに、大衆運動としてのドイツ民族主義の歴史を初めて構築。

セクシュアリティの帝国 近代イギリスの性と社会 (パルマケイア叢書 9)
ロナルド・ハイアム(著) 本田毅彦(訳)本体価格 4,200円

IBMとホロコースト ナチスと手を結んだ大企業
エドウィン・ブラック(著) 小川京子(訳) 右京褚三(監修)本体価格 3,800円

【図説】 世界の監獄史
重松一義(著)本体価格 12,000円

18 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/09(木) 03:33
http://product.esbooks.co.jp/product/keyword/keyword?accd=31191676

ヤクザ・リセッション(光文社)
ベンジャミン フルフォード
『日本がアルゼンチンタンゴを踊る日』の続編的ノンフィクション。
文章は滅茶苦茶軽いが、論旨は明快で簡単に読めるのがヨイ。
内容は、まあ今の日本の現状を知っている人なら、
誰でもそう思うだろうなあというモノで、
私もほとんど異論がナッシング。

以下にかいつまんだ説明を書く。

19 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/09(木) 06:02
1:日本の不良債権の多くにはヤクザが絡んでいる。
特に住友→りそなを筆頭とする、関西系の銀行の不良債権がヤバイ。
これらの銀行を取りつぶすと、ヤクザとそれに絡んだ官僚、
政治家の悪事がバレルので、どうあっても延命させようとする。

2:経済事件、汚職事件に関して、日本の警察はまったく怖くない。
しかし、CIAの逆鱗に触れるのは危険なので、
その動向には注意をしておく必要がある。

3:戦後の政界の汚職事件を調査すると、
最後には必ず中曽根康弘に突き当たる。
しかし、彼が逮捕されたことはただの一度もない。
何故だろう?

4:政界の汚職事件が発生すると、
必ず階級的には低いが重要な情報を持った人物が自殺する。
それは、果たして本当に自殺なのだろうか?
(続く)

20 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/09(木) 06:19
5:日本の経済が崩壊したのは、
政治家、官僚、不良企業、ヤクザの癒着と、
アメリカの外圧が複合したのが原因である。
アメリカは日本の蓄積した資本をはき出させるため、
意図的に円高を起こして輸出産業の背骨を折ったが、
もう一度同じことをやって、日本が蓄積した
資本をはき出させようとしている。
(仁:これは、現在の円高という形で現れている)
しかし、癒着体質の政府にこの攻撃を防ぐ手だてはない。
むしろ、自己の罪悪を隠蔽するために、
アメリカの攻撃を積極的に利用するフシさえ見られる。

6:日本の零細企業が労働人口に占める割合は全体の12%だが、
その生産力は全体の5%でしかない。
その多くが不良化している。
(仁:彼らは零細資本家なので、国家の救済政策に頼ろうとするから、
必然的に国家主義者に肩入れする。だから、彼らは好むと好まざると
に関わらず、政治的にも不良債権化してしまう)

21 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/09(木) 06:30
7:2003年6月27日に可決した、
労働基準法の改正によって、
企業がサラリーマンを解雇しても、
その正当性を裁判で立証する必要が無くなった。
(正確には裁判所の裁量次第ということになる)
これで、企業側は以前よりも容易に
サラリーマンをレイオフする権利を、
手に入れることができるようになった。

また、ホワイトカラーにも裁量労働制が採択された
(要するに、ある作業を終わらせない限り、
賃金は支払われないってことですね)
ために、サービス残業を合法化することが可能になった。

とどめに、契約社員の雇用期間が1年から3年に延長された。
このことによって、毎年契約を更新していれば、
年数によって正社員と同等の扱いを受けるという裁判例が、
事実上無効化された。
同じ判例を契約社員が得るためには、
今までの3倍の時間を同じ会社で費やさなければならないからだ。
(仁:以前、労働搾取問題でぶーたれていた人たちが、
この改正案を知っていたとはとても思えないが、どうなんだろう?
松代氏が労働基準法を読めと言っていたけれど、
とてもそれだけの読解力があったとは思えないのだが………)

22 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/09(木) 06:40
8:日本では事実上の権力者が誰なのかがわからない。
総理大臣に官僚の任命権のない国家は異常である。
(仁:日本の集団はセクショナリズムを過度に重んじるので、
正しい意味での権力者は存在しない。
これは政府に限らず、あらゆる集団について言えることだ。
私がAMIや焚火派を問題視したのもこの部分だが、
案の定、官僚と一緒でまともな返答は戻ってこなかった)

アメリカのポリティカルジョークには、
「日本の総理大臣と米国の大統領が会見するのは、
ただ握手をするのが目的であって、
日本の総理大臣にはそれ以上の裁量権がない」
というシャレにならない話がある。

23 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/09(木) 06:54
余談になるが、
道路公団の藤井総裁が解任させられるのは、
道路公団の改革要請に従って、
青木幹雄参議院幹事長の地元である、
島根の道路建設を中止にしたことを、
青木が怒っているからだそうである。

その役目を石原伸晃に押しつける小泉は、
見かけの軽さとは裏腹に、
政治家としてはなかなかの「寝業師」って
ことになんるんじゃないだろうか?

まあ、若手をこういう目的で使う組織は、
往々にして末期的な状態にあるとも言えるんだけど。
タコが自分の足を食っちゃうのと一緒だね。

24 名前: СТАЛКЕР 投稿日: 2003/10/11(土) 18:16
私もこの本を読みましたが、絶望の二文字しか頭に浮かびませんでした。

ヤクザといえば、私が住んでいる町は統一教会との関係をマスコミに
報じられた過去もある自民党代議士とヤクザの親密ぶりが小学生にまで
知られている様な目茶苦茶な土地柄で、未解決になっている某モーター
会社社長の家族が殺害された例の事件でも、この癒着の構造から発生
したものではないかと発生当初から囁かれていました。
この町ではヤクザ絡みの話には本当に事欠きません。今度の選挙に、
お茶の間では「ゲッ●!」のCMで有名、地元では土地収得絡みで起きた
右翼とのトラブルで有名(笑)という巨大ドラッグチェーン店社長の息子
が出馬するのですが、もう既にアレな話が伝わってきています。

25 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/13(月) 04:24
24さん>
フルフォードは言及していませんけど、
ヤクザと政治家が土木関係の公共事業を通じて一体化している、
という日本的な構図は明治時代からあるので、
この関係を断ち切るのは政府が経済的に破綻するのを待つか、
選挙で政権を交代させるしかないでしょう。

清水の次郎長の逸話に、
県令から「堅気になるなら、公共事業の人集めの仕事を
振るから、そこで金を稼ぎなさい」と諭される、
という冗談みたいなシーンがしっかり残っていたりしますからね。

また、政治家と商人の癒着があまりにも酷いので、
西郷隆盛が怒って帰郷したのが西南戦争の遠因になった、
という話しも残っていますし。

絶望の二文字が浮かんだという気持ちはよくわかります。

26 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/17(金) 05:13
さらば外務省! 私は小泉首相と売国官僚を許さない

http://product.esbooks.co.jp/product/keyword/keyword?accd=31194271

話題の一冊と言うことで。
内容は………正論ですけど、どういう訳か電波度が相当に高いです。
多分、作者が著書の中で国家主義者と民族主義者を明確に分けていないせいでしょう。
国家と民族の区分がつかない人は日本人に多いんですけど、
民族主義礼賛に近いことを言っていて、かなり萎え萎えです。
官僚批判の骨子は『ヤクザ・リセッション』と基本的に一緒です。
今の日本の政治体制を批判すると、
似たり寄ったりの結論しか出てこないってことなんでしょうね。

27 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/31(金) 04:54
日本風俗業大全 欲望の半世紀

http://product.esbooks.co.jp/product/keyword/keyword?accd=31202066

戦後風俗史を年代と業種別にコンパクトにまとめた良作。
この手の本は資料的に信憑性が薄いのが相場なのですが、
本作に限ってはSM系を除いてほぼ正確なので、
資料的な価値が極めて高い内容になっています。

また、SM系風俗の項目が上手くいっていないのは、
当時としては最もディープだった風俗業である、
ゲイ系のSMサークルに関する記述が欠落しているためで、
これは当事者から直接話を聞かないと分からないことだから、
著者の責任とは言い難い面もあり、批判の対象にはならないでしょう。
(紙数の都合で敢えてオミットした可能性すらあるぐらいです)

問題は、本書の著者がセックスワーク完全賛成派とおぼしき言説を垂れ流していることで、
「日本人はキリスト教的価値観が輸入されるまで、
セックスワーカーを差別しなかった」という趣旨に近い、トンデモ説を開陳しています。
セックスワーカー差別は、他の被差別民と同じく都市文化の成立と共に発生した
(日本では安土桃山時代以降)と解釈するのが通常で、
その責任をキリスト教倫理観のみに帰するにはいささか無理があります。

また、現代でもセックスワーカーと社会階層には密接な関連性があることや、
その労働環境が劣悪であるという指摘もほとんどなされておらず、
「セックスワーカーは自発的に働いている(から問題なし)」
という言説を垂れ流しているのもダメダメです。

私の知り合いの風俗嬢は、某氏に
「風俗嬢なんて牛や馬と同じ扱いじゃないですか」
と言ったら、
「そういう夢を壊すような発言は慎んでくれ」
と諭されてブチギレていましたが、
まあ、その手の「風俗に夢を抱いている人」
=女性化願望のある男性が著者に含まれているのは一目瞭然で、
かなり萎え萎えになることは請け合います。

この手の「買売春賛成派VS反対派」の論争を見ていると、
「南京大虐殺はあった派VS無かった派」の論争にうり二つなので、
笑えることは笑えるんですけどね。
どちらも、自分に都合のよい資料しか引用しないので、
読者には正確な実体が分からないし、
両者の言い分を併読すると矛盾点が続出する点までそっくりです。

とは言うものの、本書がこの手のジャンルの最高峰であることは疑いようもなく、
またセックスワーク規制にキリスト教矯風会が関連していたことを指摘するなど、
見るべき点もかなり含まれています。
この手の問題に関心のある方には購入することをお勧めいたしますよ。

28 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/10/31(金) 05:12
おまけ:廃娼運動の歴史

http://www.tabiken.com/history/doc/O/O198R100.HTM

>江戸時代の廃娼は,1652年(承元1)会津藩が初めで,佐賀・米沢・長岡藩などがつづいた。

というわけで、廃娼運動は別にキリスト教倫理観のみが主原動力じゃないっすね。
まあ、一時資料を当たっていないから間違っている可能性もあるんですが、
この年表が正確なら西洋よりも日本の方が早くからこの問題に取り組んでいたことになります。
うがが。これも調べなくちゃアカンのか………藪蛇だ。

29 名前: СТАЛКЕР 投稿日: 2003/11/01(土) 08:44
廃娼運動は大都市流入民の排除運動とセットで調べなければ無意味
湯女はよく知られているが
飯炊きをはじめとする移動貧民がセックスワークに従事していた事実を考慮せねばならない
『日本風俗業大全 欲望の半世紀』はそのことを無視している
二丁目のそばには淀橋沼に打ち捨てられたセックスワーカーの慰霊碑まであるのに
上記本の著者達はよほどゲイと貧乏人が嫌いなのだろう

30 名前: СТАЛКЕР 投稿日: 2003/11/01(土) 08:55
>>28
>正式名『十劫山無量寿院成覚寺』の浄土宗寺院。境内には、幕末の戯作者で「金々先生栄花夢」や「鸚鵡返文武二道」など、当時の世相や人情を風刺したベストセラーを記した恋川春町の墓があります。 また、「投げ込み寺」とも呼ばれ、隣接する内藤新宿の宿場の飯盛女(女郎)たちの共同墓地『子供合埋碑』があります。内藤新宿の繁栄の陰に隠れた悲しい女性たちをしのぶ記念碑として、万延元年(1860年)に建立されました。宿場内で不慮の死を遂げた者の供養のために建立された『旭地蔵』もあります。その脇に建てられた、地蔵移転供養に協力した人々の名を記した石碑は、当時の新宿の有力商人の名を知ることができる史料です。
http://www.shinjukuku-kankou.jp/map_shinjuku_04.html

>「風俗嬢なんて牛や馬と同じ扱いじゃないですか」
牛馬と同じならまだマシ
わんころ以下だよ

>江戸時代、元禄年間に設置された犬御用屋敷の跡。五代将軍徳川綱吉は、男子徳松の死後、世継ぎに恵まれず、これを前世の殺生によるものと信じました。そして、貞享4年(1687年)、「生類憐れみの令」を発したのです。これによって生物の殺生きを固く禁じ、とくに綱吉が戌年(いぬどし)生まれであったため、犬を重視したといいます。これに伴って元禄8年(1695年)、飼い主のいない犬を収容するため、四谷・大久保・中野に『犬御用屋敷』が設置されました。 なかでも大久保の『犬御用屋敷』は、なんと総面積2万3000坪という広さを誇り、約10万匹の犬を収容したといいます。元禄10年(1697年)には手狭となり、閉鎖されました。
http://www.shinjukuku-kankou.jp/map_shinjuku_14.html

31 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/11/01(土) 20:24
29さん>
なんつーか、この手のセックスワーカー擁護派は、
隆慶一郎の書いてる『道々の輩』とかに、
ありもしないロマンを投影して、
感情移入をするタイプばっかりですからねえ。
セックスワーク関連の仕事をしていると
この手の輩によくぶつかるし、話をしているだけで苦痛ですよ。

吉原の花魁だけをフレームアップして、
『当時の花魁は社会から承認されていた』
なんて結論づけられたって、
他のセックスワーカーの扱いが悲惨を極めていた
状況を知っていると白々しい気持ちになるだけです。

しかも、こんな嘘八百が世間で通用すると、
本気で信じていたりするからたちが悪いことこの上なく、
仕方がないから現実に被害にあった風俗嬢を連れてくると、
「それは例外」と言って逃げ回るから、どうしようもありゃしません。

前にバクシーシ山下の一件で上記の経験をしているから、
バクシーシ擁護派の宮台が帯を書いていた段階で、
あの本はダメだと思っていたんですけど、
案の定って内容だったからなあ。

救いがあるとすれば、
セックスワーカー完全擁護派は、
宗教DQ派と同じく国際的なパージの対象に、
なりつつあるって事ぐらいじゃないですかね?
あいつらが対消滅してくれると嬉しいんだけどなあ。
無理っすかね?

32 名前: СТАЛКЕР 投稿日: 2003/11/02(日) 03:01
>>31
>仕方がないから現実に被害にあった風俗嬢を連れてくると、
>「それは例外」と言って逃げ回るから、どうしようもありゃしません。

「自身の理想・信条にとって都合の悪い情報は、無意識に、そして瞬時にシャットアウトする」
という姿勢で、これは要するに、この禅道魂流に言うなら、
「ファンシー」(おぞましいものを排除する思考形態)であり、
今の世間風に言うなら「バカの壁」という事になりますな。
例のベストセラーじゃありませんが、
ファンシーな、バカの壁を張り巡らしている人間というのは、
コミュニケーションが全く通らなくなるので、どうにも困りものです。

この種の人間が最悪なのは、「自身の理想・信条」をやたらと美化し、
それを意地でも死守しようして、他人にまでその「理想像」を強要してくるという所です。
鳥山氏の言うような、セクシャルワーカーに「ロマン」を求めてくる手合いというのは、
そのロマンを意地でも守ろうとして、生身のセクシャルワーカーに目一杯嫌われたりしてます。
>>27にある、「そういう夢を壊すような発言は慎んでくれ」という発言は、
こうした人種の思考形態を典型的に表していると思われます。
何が困るって、こういうファンシーな、バカの壁を使用する人間が、
「青少年健全育成」なんかにかぶれたりすると、自身の「美しく健全な青少年像」を
この世のあらゆる少年たちに強要して来るという訳なんでして、
しかも当の少年達が異議を唱えても、「バカの壁」ではじき飛ばすから、手に負えません。
こういう人種は、多分、自分達が保護しようとしている少年たちにとっても、
嫌悪の対象にしか成り得ない公算が大きいです。

33 名前: 鳥山仁 投稿日: 2003/11/02(日) 05:54
32さん>
結局、健全育成派もセックスワーカー賛美派も、
セックスワークを排除項にしているという意味では、
どちらもカードの裏表なんですよね。

健全育成派がセックスワークを下方排除、
つまり汚らわしい存在として見なしているのに対して、
セックスワーカー賛美派は、セックスワークを上方排除、
つまり一種の聖なる存在として見なしているって事でしょう。
そうでなきゃ、セックスワークをファンシーな扱いにする、
という信じがたい価値観をぶちあげたりはしないはずです。

セックスワークは典型的な肉体労働で、
日雇いの仕事とそれほど大きな違いはないはずなんですけどね。
一流どころのソープランド嬢なんかは、
マットプレイを繰り返しているうちにつく筋肉、
いわゆる『マット筋』で二の腕が隆々となっていたりしますから。

まあ、「バカの壁」があるんじゃ、こんな事を言っても詮無いですけどね。
説得しても無駄なのは分かっているので、
たわけた発言をしたら、その度にぶっ叩くだけで十分じゃないですか?

34 名前: 松代 投稿日: 2003/12/01(月) 17:40
鉄道と帝国主義との関連、また水運と陸運との消長について、以下の書籍をお薦めします。

「鉄路17万マイルの興亡 鉄道からみた帝国主義」
日本経済評論社:本体価格 3,200円
C.B.ディヴィス, K.E.ウィルバーンJr.(編著)
原田勝正, 多田博一(監訳)

35 名前: СТАЛКЕР 投稿日: 2003/12/03(水) 22:36
労働はすばらしい
労働は喜びである
労働のすばらしさと喜びをかみしめる1冊です

http://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=4788
>『ルポ 解雇』
>島本慈子さん(52歳)
>苦しさを取材で追体験

>不条理なクビは実在する。いまだに、なのか、今だから、なのかはともかく。
>不当解雇の実例を丁寧な筆で追った。クビと言われて会社に理由を尋ねたら、身に覚えのない犯歴が出てきた男性。興信所のずさんな調査を会社がうのみにしていた。
>「マンガのよう? でも本当に切ってんだもん。会社が脅せば従業員は引っ込むという前提があって、たいていは泣き寝入りになる。それを許せない人だけが、裁判を起こしているんです。だから、裁判の百倍、千倍も、不当解雇はあるはず」

36 名前: 松代 投稿日: 2004/01/05(月) 12:00
南窓社 J・リンス, A・バレンズエラ(編) 中道寿一(訳)
大統領制民主主義の失敗 その比較研究
本体価格 3,800円

本書帯より
安定した統治と持続可能な民主主義を提供できるのは、大統領制か議員内閣制か?
著名な比較政治学者達によるこの問題の検証は、我が国における首相公選論や今後の政治制度設計に関する議論に重要な示唆を与える。

コメント
タイトルにもあるように、基本的には大統領制に対して批判的で、どちらかと言えば議員内閣制を評価する内容になっています。個人的には、論証にも説得力が有り、政治制度を論じるうえでは避けて通ることのできない1冊といえます。

日外アソシエーツ
新訂 政治家人名事典 明治〜昭和
本体価格 9,800円

コメント
高いけど、ものすごく役に立つし、必要な本です。

日本経済評論社 G・トレップ(著) 駒込雄治, 佐藤夕美(共訳)
国際決済銀行の戦争責任 ―ナチスと手を組んだセントラルバンカーたち―
本体価格 2,500円

本書帯より
第一次世界大戦敗戦国ドイツの戦争賠償処理を主目的として設立されたBISは、第二次世界大戦中、ヒトラーの第三帝国の戦争経済に協力し、必要な財源確保に荷担した。

日本経済評論社 柴田善雅(著)
戦時日本の特別会計
本体価格 6,200円

日本経済評論社 黒瀬郁二
東洋拓殖会社 日本帝国主義とアジア太平洋
本体価格 3,800円

日本経済評論社 柴田善雅(著)
占領地通貨金融政策の展開
本体価格 8,500円

日本経済評論社の出版物によれば、戦争が日本経済に与えたダメージは一般が想像していたよりもはるかに大きく、また財界人にとっても戦争は歓迎せざる事態であったことがわかります。

37 名前: 松代 投稿日: 2004/01/13(火) 16:35
■現代思潮新社
・知られざるスターリン

スターリン研究に関しては決定的書籍のひとつであり、権力の掌握から第2次世界大戦期の隠されたエピソードを紹介しつつ、最終的には「スターリン謀殺説の真偽」に迫っている。例えば、赤軍首脳部はバルバロッサの開始日を「5月中旬である」と把握していたが、分析の根拠として「ソ連が麦畑を焼き払えないよう青くなった時期」と明解に説明している。また、赤軍首脳部はバルカンが安定しない限り、ヒトラーはソ連に攻めてこないと確信していたとする説明も興味深い見解であろう。そして、この見解に基づき、ソ連はいかにユーゴスラヴィアへ働きかけたも記されている。
一般には、独ソ戦開戦前の情報を信じないスターリンの間抜けぶりばかりが誇張ているが、実情は「備えなかった」のではなく、備えたくても「備えられなかった」のが分かりやすく解説されている。また、その他にも重要な事実が描かれている。有名な「独ソ戦開始直後からスターリンは姿を消し、ソ連は10日間ほど指導者不在に陥った」という逸話が、単なる風説に過ぎないことを明瞭に証明している。この逸話は『オックスフォード第二次大戦事典』にすら収録され、最近刊行されたアラン・ブロックの『対比列伝 ヒトラーとスターリン』(草思社)にまで語り継がれており、少なくとも西側では定説化している逸話だった。だが、ペレストロイカ以前でも、ジューコフの『回想』等に、この逸話を否定する事実はは記されていたのですが、本書では決定的な証拠を提示している。
現在、1924年から1953年の期間について、スターリンのクレムリン執務室への来訪者台帳が公開されているため、この逸話が嘘八百であることは明瞭でだ。
今後、本書を読まずして軽々しいスターリン無能論を唱える人間は、不勉強のそしりを免れえないだろう。

38 名前: 松代 投稿日: 2004/02/02(月) 11:12
規制推進派の精神構造を理解するうえで、参考になるであろう本といえます。
ぶっ茶けた話、規制推進派の精神構造はアメリカの極右、露骨に言えば「男性原理にまみれた田舎の保守親父」と変らないんですよね。こういう連中とフェミニストが呉越同舟で「反ポルノ活動」を推進している構図は、あまりにもみにくいといわざるをえません。

http://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=5119

アメリカの反知性主義

リチャード ホーフスタッター/[著]田村哲夫/[訳]
出版社:みすず書房
価格:4,800円

書評より

アメリカの反知性主義 リチャード・ホーフスタッター著
国民性に根ざす「敵意」、知性で照射

>著者によれば、まず最初にアメリカ人の精神の型を大きく決定づけたのは、「宗教」的な反知性主義だという。君主制や貴族制の下で民衆を搾取する抑圧的なヨーロッパ文明を否定し、文化の存在しない広大な大地に理想郷を築こうとした移住者たちは、純粋な原始キリスト教に一足飛びに回帰する。彼らの福音主義にもとづく平等主義は、貧者の宗教を称揚する一方、学問は胡散臭(うさんくさ)い聖職者を作るだけだと忌避し、知性に不毛で危険な性格を見る。

>「政治」においても、ほどなく反知性主義が主流となる。知性重視は平等主義を無視する差別だとする政治風土では、知識人は政治の指導者になりえなかった。代わりに一般庶民の英知が重んじられ、無学の男、荒野の丈夫が大衆の英雄となって、大統領に選ばれる事態がしばしばおこる。十九世紀末から、政治のかかえる問題が複雑になると、専門職や知識人の役割がしだいに高まるが、反知性主義はけっして弱まることはなかったという。

39 名前: СТАЛКЕР 投稿日: 2004/02/02(月) 18:00
>「男性原理にまみれた田舎の保守親父」
田舎に対する差別では?w
東京にもうようよいると思うがなぁ・・・・

40 名前: うなぎ 投稿日: 2004/02/02(月) 23:43
少々スレ違いですが、平成14年7月に調査された、調査男女共同参画社会に関する世論調査
http://www8.cao.go.jp/survey/h14/h14-danjo/2-3.html
によると、田舎の年配の男性ほど、やたらと「結婚に拘る」傾向はあるみたいです。

3. 家庭生活について
(3) 結婚観,家庭観等に関する意識
1)結婚について
ア 結婚は個人の自由であるから、結婚してもしなくてもどちらでもよいか聞いたところ〔中略〕 都市規模別に見ると,「賛成」とする者の割合は大都市,中都市で,「反対」とする者の割合は町村で,それぞれ高くなっている。 性別に見ると,「賛成」とする者の割合は女性で,「反対」とする者の割合は男性で,それぞれ高くなっている。 年齢別に見ると,「賛成」とする者の割合は20歳代から40歳代で,「反対」とする者の割合は60歳代,70歳以上で,それぞれ高くなっている。

2)家庭について
ウ 結婚しても必ずしも子どもをもつ必要はないか聞いたところ〔中略〕 都市規模別に見ると,「賛成」とする者の割合は大都市,中都市で,「反対」とする者の割合は町村で高くなっている。性別に見ると,「賛成」とする者の割合は女性で,「反対」とする者の割合は男性で,それぞれ高くなっている。 年齢別に見ると,「賛成」とする者の割合は20歳代から40歳代で,「反対」とする者の割合は60歳代,70歳以上で,それぞれ高くなっている。

3)離婚について
ア 結婚しても相手に満足できないときは離婚すればよいか聞いたところ〔中略〕 都市規模別に見ると,「賛成」とする者の割合は大都市,中都市で,「反対」とする者の割合は町村で,それぞれ高くなっている。 年齢別に見ると,「賛成」とする者の割合は20歳代から40歳代で,「反対」とする者の割合は60歳代,70歳以上で,それぞれ高くなっている。(

あと、平成13年5月に調査された選択的夫婦別氏制度に関する世論調査も、大変興味深かったです。
http://www8.cao.go.jp/survey/h13/fuufu/index.html

41 名前: 松代 投稿日: 2004/02/13(金) 00:18
校倉書房
『昭和天皇の軍事思想と戦略』

事実解釈に関する異論はあるでしょうが、本書では「誰が本当に悪かったのか」をはっきりと示しています。
戦争からだいぶ時間も経過したためか、こういう本も出てきましたね。

大月書店
『中国河北省における三光作戦』
毒ガスと原爆の大月だけあって、毒ガスが使用された河北省定県の北坦村(日本表記)の話が中心です。落ち着いた論
調で、図解を交えつつ当時の粛正掃討作戦の進行状況を詳述しています。粛清掃討作戦と呼ばず、三光作戦と呼ぶところに版元の傾向が現れていますが、非常に高い資料性を持つ書籍です。

吉川弘文館
『二・二六事件 青年将校の意識と心理』
『関東大震災と戒厳令 (歴史文化ライブラリー 162)』

どちらも通説やそれに付随するイメージを打破するに足る内容の書籍で、事件の内容を語るには外せない内容です。
いずれの事件も、ここ数年で実証研究が急激に進み、通説の価値はほとんどなくなりました。しかし、それにも関わらず通説を無批判に援用したり、そればかりかWEB等で垂れ流されている怪しげな陰謀論もどきを振り回す人が後を絶たないというのは、発言者の知性を疑われてもしかたがないと言えましょう。

42 名前: 鳥山仁 投稿日: 2004/02/13(金) 02:09
松代さん>
ツンドクの量が多すぎて、『昭和天皇の軍事思想と戦略』にまで手が回りましぇん。
山田朗先生の本を読まずに、旧軍を語るのは自殺行為だとは解っちゃいるんですが………。
うがが。

43 名前: 鳥山仁 投稿日: 2004/02/13(金) 02:15
そういえば、東京書籍の平成16年度日本史Bの教科書は、
山田先生が近代史関連の担当をやっていて、
内容がかなり濃いらしいですよ。
今の高校生は、贅沢な教科書を使ってるんだな………。

44 名前: 松代 投稿日: 2004/02/20(金) 00:24
まぁ、これでも読みながら「カスパルの差別意識」が何処から生まれたのか、あるいはカスパルのやってることが「本当に青少年のためになるのか」を、じっくりと考えるのは悪くないと思いますよ。また、可能ならば同じ著者の『「ちびくろサンボ」絶版を考える』(径書房:絶版) も併読して欲しい。
青少年をおもちゃにしている虐待者、差別者はどちらなのか、皆さんひとり独りの言葉で語らなければ、連中がやりたい放題にやっちゃいますよ。

タイトル:ちびくろサンボよ すこやかによみがえれ
灘本 昌久[著]定価2,400円+税

●紹介
黒人も『ちびくろサンボ』が大好きだった!!黒人の図書館員・児童書専門家が、こぞって推薦していた絵本『ちびくろサンボ』は、ある日、突然、「反サンボキャンペーン」にみまわれた。
日本で『ちびくろサンボ』が一斉に絶版になってから10年。アメリカでの調査をふまえて、いま、はじめて明らかにされる『ちびくろサンボ』評価の変遷。
日米に共通の反差別運動の問題点。
被差別者の痛みとはなにか。
差別語の判定基準はどこにあるのか。
被害者意識とルサンチマン。
差別撤廃の希望はどこにあるのか。
被差別者の真の友とはなにか。

●著者プロフィール
灘本 昌久
1956年4月6日神戸市に生まれる
1981年3月 京都大学同学部史学科現代史専攻卒業
1986年3月 大阪教育大学大学院教育学研究科修了
1991年4月 京都産業大学非常勤講師(同和教育担当)
1993年4月より専任講師
1997年4月より助教授
1996年4月 (財)世界人権問題研究センター嘱託研究員
1999年10月 奈良女子大学文学部非常勤講師
2000年4月 京都大学大学院文学研究科非常勤講師
著書に
『「ちびくろサンボ」絶版を考える』(径書房)
『井手の部落史』通史(京都部落史研究所)
『部落の過去・現在・そして…』(阿吽社)
『近代に生きる人びと―部落の暮らしと生業―』(阿吽社)
『ちびくろサンボよ すこやかによみがえれ』(径書房)
翻訳に
『ちびくろさんぼのおはなし』(径書房)
監修に
『The Story of Little Black Sambo』(径書房)
など

http://www.komichi.co.jp/bd/4-7705-0171-4.html

45 名前: 松代 投稿日: 2004/02/26(木) 00:32
今度のインタビュー企画もあるので、目を通してみたらよいかと思います>鳥山さん

色々な意味で良いお話しです。
著者へ取材した記事をみて、再び良さを実感しました。
自分なぞ、足下にさえ遠く及ばないような存在ですが、それでも著者氏の文章力とセルフプロデュース能力にはたくさん学ばせていただきました。

魂の森を行け―3000万本の木を植えた男の物語
一志治夫/[著]
出版社:集英社インターナショナル

著者を取材した記事より

 副題に「3000万本の木を植えた男の物語」。フランスの「木を植えた男」はフィクションだったが、日本には実在する。植物生態学者、宮脇昭さん。鎮守の森の重要性を世に知らせ、全国の植生を調べ、『日本植生誌』としてまとめ上げた人だ。
 3年前、一志(いっし)治夫さんは雑誌連載で初めてインタビューし、圧倒された。このすさまじい気迫は何なんだ? どこから来るんだ? つきとめたくて、改めて取材を申し込んだ。

中略

 小学館ノンフィクション大賞受賞作を始め、アスリートを扱った本が多いが、スポーツ専門ではない。世界のオザワを追った一冊が、この夏に刊行予定だ。並行して、信州の森にカッコウを追う鳥類学者をフォローし、江戸以来の老舗(しにせ)のお豆腐屋さんに取材を申し込む。こっちは本になるあてはない。が、「それを言っていたら、会いたい人に会えません。この本にしても、書き上げてから出版社を探しましたから」

ttp://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=5325

それにしても、売るあてのない原稿を仕上げるなんて、さして特別なことじゃないし、著者が原稿を売り込むのは当然のことなのだが、なぜかそれをいうとえらく驚かれたりする。まぁ、休刊の憂き目にあった雑誌へ掲載された原稿が単行本化されないことを不思議がったあげく、自分の原稿に買手がつかないことを出版界の現状へ責任転嫁して悔しがる作家もいるそうだから、そう言うものなのかもしれないね〜

46 名前: 松代 投稿日: 2004/03/04(木) 00:36
データをチェックするうえで、意外に重要なのは研究者のカンというか、文字通りの「実感」だったりします。
理論や理念優先で、自分自身の感覚や現実を無視する人は、少なくとも研究者にはむかないし、何か立論しても「すぐに電波化する」から、はっきりいって迷惑なんですよね。

>理論より実感
>役所のような年功序列型がいいとは思わないが、転職が米国ほど簡単ではない日本のような企業社会で、報酬と結びつけた過度の成果主義を導入すれば、副作用のほうが多いと思う。そういう実感は、米国直輸入の経営理論には勝てないのだろうが、実行してみれば、理論よりも実感が正しいということがわかるということだろう。
>ツバルの潮位を観測している研究所は平均潮位の推移を調べながら、ツバルの潮位が上がっているという事実はないという。しかし、著者は、ツバルの人々がいう海面の上昇は平均潮位ではなく最高潮位のことで、最高潮位が上昇しても、その反動で最低潮位が下がれば平均潮位は変わらないことに気づき、データを調べ直すと、その兆候が出ていた。実感を大事にする著者の真価が発揮されている場面だ。

http://book.asahi.com/news/index.php?no=118

47 名前: СТАЛКЕР 投稿日: 2004/03/04(木) 11:08
カンには経験の蓄積が必要ですね。

48 名前: 松代代理 投稿日: 2004/03/20(土) 17:16
松代さんから依頼を受け、本を紹介します。

嘘つき大統領のデタラメ経済
ポ−ル・R.クル−グマン/三上義一/[著]
出版社:早川書房
価格:2,200円

 ノーベル賞目前とまで言われる大経済学者ポール・クルーグマンが、この数年でアメリカを代表する名コラムニストになってしまったのにはみんな(当人も含め)驚いている。本書収録コラムの執筆開始直後から、アメリカの政治経済情勢は一変した。同時多発テロ。エンロン等の会計問題。アフガン爆撃、イラク侵攻。強引な減税と巨額の財政赤字。これらの政治的な意味や、長期的な経済への影響をクルーグマンは指摘し続けた。

 他の報道メディアが、テロ以降の愛国心至上的な雰囲気からブッシュ批判を避ける中で、その記述は突出していた。カリフォルニア電力問題での価格操作疑惑など、クルーグマンの指摘が後になって検証された例も多い。いまでこそブッシュ批判の本は増えてきたけれど、クルーグマンは数少ないリアルタイムの批判者だった。そして指摘された問題の多くは、解決どころか悪化している。だから本書の第一の意義は、ここ数年のアメリカの政治経済情勢をめぐるまさに現在進行形の批判的記録としてのものだ。

 それにしても、なぜクルーグマンだけにそれができたのか? 特殊な情報源があるわけでもない、一介の大学教授に? そこに本書のもう一つの意義がある。まさに自分が普通の公開情報しか使わなかったからこそまともな批判ができたんだ、と著者は述べる。特ダネだのスクープだのに依存したジャーナリズムは、実は大情報源――往々にしてチェックすべきまさにその相手――への依存体質を生み、報道を偏向させる。本書は、そうした現代のジャーナリズムへの警鐘ともなっている。

 クルーグマンはその経済理論においても、平凡な公開情報に基づく厳密な分析をもとに因習的な理論を次々にひっくり返してきた人だった。その歯に衣(きぬ)着せぬ「熱い」文体になじめず、それだけでかれを「偏向」と決めつける人も多い。でもそれは、正しい分析による結論は甘い通念なんか蹴倒(けたお)すのだという、かれの学者としての――そして一言論人としての――誠実さのあらわれだ。本書でも、その誠実さはくどいまでに貫徹されている。

 評者・山形浩生(評論家)

49 名前: 松代 投稿日: 2004/04/20(火) 12:37
いわゆる「と学会」の本が単なる娯楽であり、かつ多数派による弱い者いじめでしかないのに対して、この本は科学に対する真摯な態度が貫かれています。まぁ、科学の名において多数派の価値観を無条件に肯定することを自明としている連中にはできない芸当でしょうが、真面目な研究者というものが自らのアイディアを研究対象とする際に、通説や従来の科学的常識を批判的に検証することからはじめるという点を指摘しておけば、あとはいわずもがなでしょう。

それにしても、そんなに「とんでも科学」がお嫌いなら、劣化ウラン弾をめぐるとんでも科学あたりを批判的に検証してみればいいと思いますが、反撃が怖くてできないのかな?

トンデモ科学の見破りかた―もしかしたら本当かもしれない9つの奇説
ロバート アーリック[著]垂水雄二:阪本芳久[訳]
出版社:草思社
価格:1,785円(税込)

>ただ一方で世の中には、そうしたイカレポンチの妄想以外に、まだ主流派ではないが筋の通った異説もある。まちがってるけど重要な洞察を含んだ議論だってある。相対性理論だって大陸移動説だって地動説だって、当時の常識からすれば超トンデモだったけど、それを真面目(まじめ)に拾った人がいたからやがて主流になった。ぼくたちもアインシュタインやガリレオを嘲笑(ちょうしょう)して捨て去らないためにどうすべきか?

50 名前: 松代 投稿日: 2004/04/22(木) 22:17
「おたく」の精神史―一九八〇年代論

大塚英志[著]
出版社:講談社
価格:998円(税込)


>彼らが採集物に囲まれて一人ファンタジーできたのは、その背後に彼らの現実(リアル)(衣食住)を完全保障する親たちの企業社会=経済大国化があったからだ。おたく的虚構とは単なる一個のパラサイト(寄生虫)文化の側面をもち、経済のバブル(泡)化とも深く通底していたのではなかったか。本書には、そうした「経済と人間」への洞察が欠けている。

夢雅3月号に掲載された伊藤剛氏のコラムに対して、自分は流通への目配りがなく、実体とはかけ離れていると批判したけど、親玉格の大塚英志がこの有り様では、言うだけ野暮だったのかもね。
評論家を気どるオタクがいくら気ばったところで、オタクメディア以外のことに目を向けようとしないし、目を向ける必要があるとも考えていないようでは、先が知れているとしかいえない。悲しいことに、大塚英志でさえ、同様の批判があてはまってしまう。
ただ、大塚英志がチョットだけえらいというか、世渡りが上手いんだなと思うのは、政治を語るというか「オタクの政治参加」をかたくなに拒否している点だね。まぁ、これは決してほめられたものではないのだけど、それでも「経済と人間」への洞察を欠いたまま、やみくもに政治を語る、あるいは「政治に参加したがる」よりはよほどましだ。まぁ、世の中には「経済と人間」への洞察もへったくれも無いくせ、やたらと政治を語ったり、ひどい奴になると他者の政治参加を煽ったりしはじめるけど、そういう連中がどうなっていったのか、少なくとも大塚英志はわきまえているのだろう。
そう言うところがえらいというかなんというか、まぁ世渡りが上手いんだなと思うところなのだよ。

でもなぁ、大塚英志の読者はあまりえらくないというか、世渡りベタがそろっているんだよね。
少なくとも、自らに「経済と人間」への洞察が欠けているという自覚さえなく、ただやみくもに「オタクの政治参加」煽ったあげく、うまくいかないと掲示板の名無しに責任転嫁してみたりしているようじゃ、知識人どころか大塚英志にもなれないよってね。

51 名前: СТАЛКЕР 投稿日: 2004/05/04(火) 22:05
ttp://book.asahi.com/review/index.php?info=d&no=5714
兵法秘術一巻書・〓〓内伝金烏玉兎集・職人由来書
出版社:現代思潮新社
価格:3,675円(税込)

>さて、収録偽書のハイライトは、なんといっても「ほき内伝金烏玉兎集^(ほきないでんきんうぎょくとしゅう)」。小説に、マンガに、今をときめく陰(おん)陽師(みょうじ)安倍晴明ブームの源流がこれだ。そうはいっても「ほき内伝」の肝心の部分は宣明暦(貞観四年<863>施行、以後八二三年間使用)と重なる「文殊宿曜経」。これを権威づけるために、いかにして唐天竺から伝来したかを西遊記ばりの取経譚(たん)として虚実こきまぜて語ったのがいわゆる晴明伝説で、これが人気沸騰の平成晴明像のネタ本だ。おかげで実際は渡唐していない晴明が先人の阿倍仲麻呂や吉備真備を巻きこみ、さらに大江匡房までもが一役買って、にぎやかなことこのうえなし。

チョット面白そうなので、書評を転載させていただきました。
でまぁ、陰陽師ブームって、まだ続いてるの?

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