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若者よ、恋をしろ!
1
:
大淀
:2004/03/19(金) 12:43
はじめまして。
更新も少しずつになるかもしれませんがよろしくお願いします。
では。
132
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/17(木) 11:52
「?」
「おきちゃった、かな」
起きてるっつの!
それでもあたしは寝たフリをやめない。
寝ていた嘘を上手く突き通す自信がなかった。
…それに、ごっちんと梨華ちゃんのことを知るのが怖かったからだ。
133
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/17(木) 11:52
怖い?
まるであたし、梨華ちゃんのこと好きみたいじゃんか。
そりゃ、好きだけど…
本気になるのって、何だかしゃく…だし。
今までもずっと、恋は遊びでやってきたわけだし。
134
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/17(木) 11:53
「寝てるよ」
読みが甘い、ごっちん!
「そうだねぇ」
梨華ちゃんものん気に!
そっと薄目を開けると、梨華ちゃんの影が浮かび上がる。
梨華ちゃんの右側からはテレビの青白い光が彼女を照らす。
逆光になって、左側にいるあたしからは黒い梨華ちゃんしか見えなかった。
135
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/17(木) 11:53
表情は暗いから見えないけど、黒と白のコントラストがくっきりと出ていて、あたしの目は釘付けになった。
薄く開いた唇が、色っぽくて。
昼間したキスをもう一度したくなった。
梨華ちゃんの影は、とても、美しい。
じっと正面を見つめている。
正面には、ごっちんがいた。
136
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/17(木) 11:54
そして、視界から消えていたごっちんがあたしの目に映る。
ごっちんも同じように影だけが揺らめいていた。
少しずつ間合いをつめていく。
人のラブシーンを覗き見しているみたいだ。
実際、そうなんだけど。
137
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/17(木) 11:54
?
だ、だめだって!
キスすんの?
だめ、マジやばい!!!
あたしの胸の音はサイレンのようにうるさく、早鐘のように狂い打つ。
「…へくしょい!」
138
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/17(木) 11:55
何て下手な演技だと思った。
驚いた二人は異常な速さで離れた。
あたしが寝てたら、同じ部屋にいてもこんなことすんの?
ムカツク。
それに…すげーショック。
あたしは怒りと嫉妬、悲しみとショックでぐちゃぐちゃになる。
139
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/06/17(木) 11:55
こんなの、あたしらしくない。
こんな必死で、かっこ悪い。
一体、どうしちゃったんだよ。
気がつくと、ごっちんを突き飛ばしていた。
140
:
大淀
:2004/06/17(木) 11:59
更新っす。
読んでくれる方がいたらいいなぁ…なんて。
書かせてもらえるだけでしあわせ、かな。
>JUNIORさま
ありがとうございます。
HPをもっとちゃんとできるようにがんばり保。
もちろん小説のほうも。
ちょっと吉くんがかわいそうな気もします。
ごめんね。
141
:
JUNIOR
:2004/06/17(木) 23:33
更新お疲れ様です。
読んでる人いますよ〜。ほらココに。
吉かわいそうですけど、突き飛ばされた
後もかわいそう。怪我がないか心配・・・・。
次回も待ってます。
142
:
名無し(0´〜`0)
:2004/07/08(木) 23:40
よっちゃん切ないなぁ。。
続き楽しみにしてます。
143
:
大淀
:2004/07/12(月) 17:56
ごっちんはかなり驚いた様子で目を真ん丸くしていて、ずっと黙っていた。
あたしも、自分の行動に驚いて何も言わなかった。
気まずい空気が部屋中を満たす。
「あ、あの・・・ごっちん大丈夫?」
沈黙を破ったのは梨華ちゃんだった。
それでもごっちんを心配したことにあたしはすごく腹が立った。
144
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 17:57
「あたし、帰る。」
「えっ?!」
「梨華ちゃんは、ここに泊まれば?」
立ち上がって財布と携帯をポケットに突っ込む。
ラブシーンでも何でもやっちゃってよ、もう。
あたしはフラフラと玄関まで歩く。
それでもごっちんは何も言わなかった。
「ひとみちゃん!」
梨華ちゃんはあたしの名前を呼んだけどそれでもその場を動こうとはしなかった。
「お邪魔しました。…楽しかったよ」
145
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 17:58
アンタらのラブシーンを見るまでは、ね。
ドアノブに手をかける。
「…ごめん」
ドアが閉まる瞬間、ごっちんの一言を聞いてしまった。
―――謝るくらいなら、しなければいいのに。
しかも、何であたしに謝るんだよ。
イライライライラして、家に帰る気にもなれなかった。
146
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 17:58
【後藤視点】
147
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 17:59
「…泊まって、く?」
自然と口に出したそれは、飲みかけのワインにも溶けずに足元へ落ちた。
さっき、アイツが起きなかったら…
あたしはどうしてた?
石川さんのことは、決して嫌いじゃない。
だけど、あたしは、あたしには…
『待ってて』
最後の最後まで、欲しかった言葉をくれなかったアイツ。
その言葉さえもらえたら、あたしは今のようにはならなかったのかもしれないのに。
148
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:00
出口の見えない迷路。
きっときっと、夜は明けないだろうし、出口にもたどり着けない。
真っ暗で、寒くて、怖いよ。
アイツにもう一度出会ったら、少しは変われるのかな―――
今はどうしても次の恋には走れない。
石川さんがどうしたいのか分からないけど、あたしだって自分がどうしたらいいのか…
今のままの不安定な関係が楽なんだ。
石川さんが家に電話する声を背中で感じながら、そっと目を閉じた。
149
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:00
「…泊まっても、いいって」
恥ずかしそうに目線は落としたまま石川さんは言った。
「そう」
一言だけそう言うと、温くなったワインを呷った。
「シャワーでも、浴びてきたら?」
あたしに抱かれるとでも思ったのか、石川さんはかわいそうなくらい硬直した。
「え、でも…」
「…別に何もしないから。」
明らかにほっとした表情を見せたら、バスルームに駆け出して行った。
150
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:01
あたしは石川さんに行ったとおり、その夜は何もしなかった。
同じベッドで寝ることもなく、指一本だって触れなかった。
求められたら、それなりのことは出来たかもしれない。
誰の目から見たって、石川さんを欲しいと思うのは当然、みたいな部分があるし。
あたしは少し離れたベッドの上で上下するふくらみを見つめた。
だけど、思い出すのはアイツ。
何年たっても、思い出すのはアイツ。
それぞれの切ない夜は、更けていった―――。
151
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:01
【石川視点】
152
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:02
ひとみちゃんが怒ったようにごっちんの家を飛び出したあの夜。
緊張しながら、それでも少し切ない思いでごっちんの家に泊まったあの夜。
ごっちんは次の日少し目が赤くて、きっと一睡もしていなかったであろうあの夜。
それぞれが、それぞれに、きっと上手くいかなくて。
きっとあの夜のせいで、一緒に遊ぶ回数が減ったり、妙な空気が流れるんだろうと思っていた。
思いのほか私たちはずっと大人で。
あるいはそれを隠してしまいたいほど、精神的には成熟していないのか。
何も変わらずに、日々は過ぎてゆく。
153
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:03
ひとみちゃんは、フットサルをやっているらしく。
『試合を見に来ない?』と私たちを誘ってくれた。
「おはよう、ごっちん。」
「おはよ」
眠そうなのはいつもと同じ。
お隣のユウキ君が元気なのも、いつもと同じ。
ひとみちゃんのチームのベンチ裏に席を陣取る。
「結構、人入ってるじゃん。」
薄いブルーのサングラス越しに、ごっちんは辺りを見回した。
154
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:03
「ビールにお茶、アイスクリームはいかがっすかー」
「ヤグチぃ、休憩しよ」
「バカ裕子!今始めたばっかだろ!」
ヤグチ?
裕子?
「あー!梨華ちゃん!!!」
「矢口さん」
「た、すけて…暑っちぃ…」
猛暑にダウンする中澤さんと、それに鞭打つ矢口さんだった。
155
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:04
「なーに?梨華ちゃん達もフットサル観戦?」
「今日の試合に、ひとみちゃんが出るんです。」
「へぇ。ヤグチたちは選手まで見ないからさぁ、知らなかったよ。」
「…矢口さん達は?」
「オイラ達は、飲み物とかの売り子。」
「喉、渇きますもんねー。」
「でもさぁ、裕子が働いてくんないんだよ。」
「あはは。大変そう。」
「う〜。日焼けするぅ」
矢口さんからお茶を三つ買うと、
中澤さんを引きずるようにして販売に走り出した。
試合が終わったら、中澤さんの店で打ち上げをする約束をして。
156
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:05
「ひとみちゃん、お疲れ様。」
「うん、お疲れ。」
ひとみちゃんは2点も得点したけど、結局チームは負けてしまった。
唇をかみ締めて、すごく悔しそう。
『次は絶対勝つから』
なんて言って、とりあえず着替えるためにロッカールームへ消えていった。
「中澤さんがね、打ち上げの準備してくれてるんだよ」
「マジで?…おーい!残ってる人いねー?」
突然のことだったから、メンバー全員はムリみたいだったけど、5人くらい来てくれるという。
157
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:05
「でさぁ、ソイツ、審判の見えねートコで反則してくんの。
コスイって言うかさぁ、そのせいで負けたなんて絶対言いたくないけど。」
「うん…」
ほんとに悔しかったみたい。
試合のことを、熱く熱く語るひとみちゃんはとてもカワイかった。
「今夜は忘れてやるー!」
時々雄叫びを上げながら、ひとみちゃんはずんずんと歩いていた。
カラン、カラン…
鐘の音を鳴らせば、中澤さんと矢口さんの温かい笑顔に出迎えられる。
キッチンからは、何かを焼いている音と、軽快なビートルズの歌が流れていた。
158
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:06
「よっさん、お疲れ!」
「残念だったねー。」
『そうなんスよ!』
まるで男子部員のようにドカドカと入り込んでくるメンバーを、
中澤さんは嬉しそうに招き入れた。
全員に飲み物が行き渡ると、乾杯の音頭は中澤さんが取る。
「「「「「「「「「「「カンパーイ!!!」」」」」」」」」」」
今夜は、楽しくなりそう。
159
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/07/12(月) 18:06
ひとみちゃんや、みんなの笑顔を見てると、自然と私の顔もほころぶ。
「石川さん、だよね?」
静かな炎を背負ったような人が立っていた。
「あたし、藤本って言うんだけど。」
フジモト、さん…?
「ちょっと話があるんだけど」
まだ、1杯目ですよね?
カラまれるのは、ちょっと…ひとみちゃん、ごっちん…
ひとみちゃんは中澤さんと下ネタで盛り上がっているし、
呑み過ぎないようにと気を遣っている矢口さんが横にいた。
ごっちんは早速フットサル部員さんたちに囲まれちゃってるし…
えっと…石川が何かしましたか?
160
:
大淀
:2004/07/12(月) 18:14
ただいまです。大淀です。
えっと、ちょこっとですが更新致しました。
いつもレスをくれる皆々様、
ROMってるけど読んでくれているかもしれない皆々様、
よっさんねるの管理人様、いつもありがとうございます。
ヘボ駄文っすけどこんな風に書かせていただける環境にあることを
心より感謝しております。
>JUNIORさま
ありがとうございます。
お待たせしてすみませんでした。
いつも暖かいレスをありがとうございます。
吉くんは十二分に手加減をしています。
>142さま
お待たせいたしました。
のんびりペースでごめんなさい。
皆が皆、切ない感じになっちゃう、のかなぁ…
161
:
JUNIOR
:2004/07/13(火) 02:34
更新お疲れさまっす。
石川さん何かしてますよね。
当の本人は全く気づいてないようだけど・・・。
のんびり頑張ってください。
162
:
キトキト
:2004/07/20(火) 00:20
はじめまして。
一気に全部読ませてもらいました。
すごく好きな感じの話なのでこれからも頑張ってください!!
個人的には矢口さんがよっすぃ〜の事を見たことがあるって言ってたのが
気になりますが・・・
今後の展開楽しみにしています。
163
:
大淀
:2004/10/29(金) 12:42
時が経つのは早いもので。お待たせしてすみませんでした。
(0^〜^)<待ってくれてる方、いるのかな?
>JUNIORさま
遅くなってごめんなさい。
鈍い石川さんです。
>キトキトさま
嬉しいなぁ。ちゃんと気がついてくれた方がいらっしゃったんですね。
よっすぃーは秘密を持っています。
それはまたおいおいに。
そいではヒサブリの更新でーす
164
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:43
コワイです、はっきり言って。
ぐっと掴まれた左の手首が、痣になりそうだった。
体育会系の皆さんは、ほんとにコワイです。
ジャージ姿にビールジョッキを持っていて。
なんだかアンバランスで思わず笑いそうになる。
「あんた・・・ごっちんの何な訳?」
「何って・・・」
ご・・・ごっちん?
ひとみちゃんならまだしも、ごっちんと藤本さんに面識があったことに驚いた。
165
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:43
「・・・で、何な訳?」
何、って聞かれても・・・どう返事すればいいのか。
好きってわけでもないと思うんだけど日増しに大きくなっているごっちんの存在。
「ごっちんとはどういう・・・」
「昔っからいるんだよねぇ、あんたみたいな人が。」
全く話を聞こうとしないわ、この子。
「どういう意味でしょうか?」
ついついこっちまでケンカ腰になってしまう。
「だからいるわけよ。ごっちんがお金持ってるからって、遊んでもらおうとか思う人。」
「お金?!」
私はその後絶句した。
ごっちんがお金持ちなんて知らなかったし、それにお金持ちだから友達なわけじゃない。
何を言ってるんだろう。
驚きと怒りで、何も言えなかった。
166
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:44
「美貴はさ、小っちゃい時からずっとごっちんと一緒だったんだ」
「幼馴染ですか」
「父親同士が親友でね。会社も一緒だったんだ」
「だった・・・?」
「だから美貴が一番ごっちんのことを知ってるの」
「はぁ」
「ごっちんには好きな人がいるんだ・・・・・・・ずっと、好きな人が」
ある程度予想はしていたことだった。
時々、周りのものを何一つ映さない瞳。
遠く誰かのことを想っている瞳だった。
167
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:44
「美貴でも、無理だったから。」
「え?」
「昔のごっちんを、取り戻そうともしたけど・・・ダメだった。」
「藤本さん・・・」
「よく笑う子だったんだぁ・・・本当に。嫌なことぜーんぶ忘れさせてくれるような、そんな笑顔だった。」
「それが、どうして?」
「二度も置いて行かれたごっちんの心の傷は、美貴には治せなかった。」
「二度?」
「・・・・・・・・・」
「お願い、藤本さん。話して!」
168
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:45
私は気づけば藤本さんの肩を掴んで、大きく揺さぶっていた。
驚き見開かれた藤本さんの瞳に、ごっちんの真実を探す。
あんな寂しい顔は、もうさせたくない。
私も、ひとみちゃんも、藤本さんだっているじゃない。
ひとりじゃないんだよ、ごっちん。
「美貴と、ごっちん、そして紺野は・・・仲の良い幼馴染だったんだ」
ぐいっとビールをあおる藤本さん。
「ずっと、仲のいい関係が続いてくと思ってた」
「でもそれは、父親たちによって潰されちゃったの」
169
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:46
「美貴たち三人の父親は、同じ会社に勤めてた。
休みの日は家族みんなでバーベキューをしたり、正月旅行は毎年一緒だった。
ホントにみんな、家族のように仲が良かったんだ・・・」
「けど・・・紺野のお父さんが昇進してから、少しずつ変わっていった。
前のように休みの日に紺野のお父さんだけは来なくなって、何だか寂しかった。
子どもには関係のない話だから美貴たちは変わらずに仲良しだったけど・・・」
「とうとう正月旅行もなくなってしまった・・・その年」
「ごっちんのお父さんがリストラにあったんだ」
「しかも、直接ごっちんのお父さんに命令したのは紺野のお父さんだった」
170
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:46
藤本さんは、そこで私の顔色を伺った。
私はただ、藤本さんの目を見ていた。
ふっと笑って視線を逸らして、話は続いた。
「ごっちんのお父さんは何も言わずに会社を辞めたけど。
はじめは脱サラとか言って店を始めるようなことも言ってたんだけど。
・・・ある日、ごっちんのお父さんは失踪したの」
「その後かな、ごっちんのお母さんはユウキを妊娠しているのが分かったのって」
「そんな・・・」
「あれだけ仲良くしてた紺野もその後すぐに進学してこの街を出て行った」
「まぁ、紺野は頭良かったからね」
171
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:47
「おい」
背後で聴きなれた声を耳にした。
ごっちん・・・。
「余計なことをベラベラベラベラ喋りやがって・・・」
「ごっちん。この子は」
「ふざけんな」
「ごっちん、藤本さんは悪くないの!私が勝手に・・・」
「・・・ミキティだけは、分かってくれると思ってたのに」
「ごめん、ごっちん」
「許さない。絶対に。お父さんも・・・紺野も」
172
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:47
ふたりとも、ナイフで傷つけられたように痛そうな顔をしてる。
「あれ、どうしたんだよ・・・みんな怖い顔して・・・?」
小皿にいっぱい料理を乗せ、口いっぱいに頬張ったひとみちゃんがやってくる。
その横を避けるようにしてごっちんは走り去っていった。
「ごっちんっ!!!」
藤本さんは呼び止めるけど、届かず・・・ごっちんは店を飛び出していった。
「・・・トイレか?」
ひとみちゃんはフォークを咥えながら、暢気な声を出していた。
173
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:48
「梨っ華ちゃーん!!!」
両手をぶんぶんと振りながら、制服姿で駆けてくるひとみちゃん。
小さく手を振って、応えた。
「梨華ちゃんから誘ってくれるなんて、初めてじゃん?嬉しいなぁ」
「とりあえず、どっか入る?」
私は、どうして藤本さんが初対面の私にあんなことを話してくれたのかが、
ずっと気になっていた。
そして、あれからずっとずっとごっちんのことを考えていた。
174
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:48
「・・・梨華ちゃん?」
「え?・・・あぁ、ゴメンね。何?」
「さっきからずっと、上の空じゃん」
「ゴメンね・・・」
ひとみちゃんはつまんなそうに、アイスティーの氷をさくさくとストローでいじった。
「何か、気になることでもあるの?」
「そ、それは・・・」
「ごっちんか」
175
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:49
私は、ひとみちゃんを呼び出して何をするつもりだったんだろう。
ひとみちゃんなら、ひとみちゃんだったら、何か助けてくれるかもしれないって。
そう、心の中で思っていたのかもしれない。
こんなときでも、一番大切にしたいのはごっちんの笑顔だった。
目の前のひとみちゃんのことよりも。
「そう、だよ」
「・・・・・・・・・」
ひとみちゃんの表情に明らかに落胆の色が見えた。
それがどうしてなのか私にはよくわからなかった。
176
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:49
「つまり梨華ちゃんは、ごっちんのことが好きなんだね?」
「ええっ?!」
まっすぐと見据えられながら問いかけられると、私は硬直するしかない。
だって、そんなことちゃんと考えたことがなかったから。
ちゃんと、改めて人に問われたことがなかったから。
「・・・やっぱりひとみちゃんも、そう思う?」
「はぁ?」
「私、ごっちんのこと・・・好きなのかなぁ」
「そんなの知らないよ」
ふいっと私から顔を背けて、ひとみちゃんは通りに目を向けた。
177
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:50
「やだぁ。意地悪しないで教えてよ」
「意地悪とか・・・そんなんじゃないし」
手を伸ばすと、甘く香るミルクティー。
『紅茶がいい。ミルクたっぷりのやつ。』 彼女はいつもそう言っていた。
私はオーダーする飲み物にさえ、ごっちんを求めていたのかと気がついた。
「わかんないよ!そんなの言われても」
「わかるでしょ。自分のことなんだからさ。」
いつのまにか、ひとみちゃんはイライラし始めていた。
「わかんないよ!好きとか嫌いとか自分の気持ちって、一体いつ気がつくのっ?!」
「じゃ、もういい」
「ちょっと、ひとみちゃん?!」
178
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:50
ひとみちゃんは会計の紙を引っつかむと、レジに向かっていった。
違う。そうじゃない。
ひとみちゃんと、喧嘩をしに来たわけじゃない。
もっとみんなで笑い合っていたいから・・・
好きとか嫌いとか関係なく、ただ楽しく笑い合っていたいのに・・・!
「ひとみちゃん・・・」
私が甘いだけなのかな。
ちゃんと、友達である以上気持ちの線引きはきちんとしておかないといけないのかな。
でもその前に、私たち 『友達』 じゃない・・・
でも初めからわかっていた。
ひとみちゃんとごっちんに対して、違う感情が芽生え始めていたことに。
179
:
若者よ、恋をしろ!
:2004/10/29(金) 12:51
どうして気になるんだろう
どうして思い出すのだろう
どうして悲しくなるのだろう
どうして嬉しくなるのだろう
どうして幸せな気持ちになるのだろう
様々な思いが混在して、私を惑わせる。
たぶん、これを恋と呼ぶのだろう。
そして私は、どうやってもひとみちゃんが怒って出て行ってしまった理由がわからなかった。
私と同じミルクティーを頼んだはずなのに、ひとみちゃんはミルクを入れていなかった。
その理由さえも・・・。
解けた氷の音が、からんと大きく響いた気がした。
180
:
大淀
:2004/10/29(金) 12:51
ひとまず終了です。
181
:
JUNIOR
:2004/11/04(木) 00:15
更新お疲れ様です。
この後が気になりすぎて涙が止まらない・・・・。
マターリと今度の更新待ってます
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