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若者よ、恋をしろ!

1大淀:2004/03/19(金) 12:43
はじめまして。
更新も少しずつになるかもしれませんがよろしくお願いします。
では。

2大淀:2004/03/19(金) 12:44
高校時代の友達と飲みに行って、私は今最終電車に揺られている。
お酒が少し回っているのも手伝って、少し気分が悪いかも。
早く家に帰りたい。

「次は、…です。お忘れ物のないよう、ご注意ください。」

到着を知らせるアナウンスが流れ、私は降りる準備をする。
シャワーを浴びて、もう寝よう。
明日の講義は午後からだし、今日はゆっくりできる。

3大淀:2004/03/19(金) 12:45
ゆっくりとドアが開いて、私はホームに降りる。
地下鉄のせいだろうか、ムッとした熱気に包まれる。
いち、にぃ……
私と同じ電車だったのは私を含めて4人だけだった。

会社帰りの中年サラリーマン。
大きな旅行かばんを持ったおばさんに、いかにもフリーターって感じの若い女の子。
いたって普通な、大学生の私。

―――最終電車。

なぜか悲しい雰囲気がするのは私だけだろうか。

4大淀:2004/03/19(金) 12:45
私がやってきた方と逆方向の電車はもうすでに終電を過ぎている。
つまり、この駅にはもう電車が止まることはない。

この駅にはホームがひとつしかなく、線路に挟まれるような形でホームが存在する。
わたしはエスカレーターを上がり、改札口へと向かう。

「…行きへの最終電車です。お乗り遅れのないようご注意ください。―――ドアが閉まります。」

私は階下でドアの閉まる音を確認した。
ヴ――ンと、電車は何事もなかったかのように発車して行った。

5大淀:2004/03/19(金) 12:46
改札に定期を通して出口から出ると、同じ電車だったはずのサラリーマンが、遠くを歩いていた。
さっきの若い女の子は私の10m程先を歩いている。
私って、歩くのが遅いのかな。

コツ、コツ、コツ、コツ………

女の子のブーツの音と、私のブーツの音が共鳴して、一定のリズムを刻んでいる。
それはなぜかとても心地よくて。

だだだだだだだだだ!!!!

6大淀:2004/03/19(金) 12:46
遠くから、ものすごい勢いで駆けてくる足音が聞こえた。
静かな地下通路に、それはとてもよく響いていた。
けれど、姿は見えない。
足音からして、背は高そうだなと思った。

その人物は意外に早く姿を現す。
通路の角を曲がり、マラソン選手さながらのスピードで走っている。

肩より少し短めの髪の、金髪の女の子だった。
肌の色は透き通るように白く、金髪のせいもあって外人のような風貌だ。
―――服装はジャージだけど。

7大淀:2004/03/19(金) 12:47
10m先を歩く、フリーターの子(勝手に決め付けている)の横を通り過ぎると、
フリーターの子は金髪少女を振り返った。
うん。確かに目を引く子だよね。

あっという間にわたしをも通り過ぎた。
私もつられて金髪少女を振り返る。

「はあっ、はあっ、はあっ……」

規則正しい呼吸も、またマラソン選手を感じさせた。
ジャージなのは、トレーニング中だからかな。

「あれっ」

その声は、金髪少女の声だった。
低めの、アルトな声だけど、私の好きな声だった。

8大淀:2004/03/19(金) 12:47
「すいませんっ!」

一段と大きな声を発した。
おそらく駅員さんを呼んでいるのだろう。

ざーんねん。終電はもう行ってしまったよ。
トレーニング中でも何でもなく、彼女は電車に乗り遅れてしまったようだ。

「すいませんっ!そこのアナタ!」

―――私?

私はゆっくりと彼女に振り返った。
大きく目を見開いて、真剣に私を見ていた。

9大淀:2004/03/19(金) 12:48

ドックン。

心臓を鷲掴みにされるというのはこのことを言うのだろうか。
ひどく胸が高鳴った。

「もう言っちゃったんですかっ、終電!」

この人、語尾にいちいち『っ』をつけるのが癖なのかしら。
勢いが良すぎてこっちは萎縮してしまう。

「あ、ハイ。行きましたよ、さっき」

文法がむちゃくちゃで、単語をあるだけ並べたという感じだ。
私はおそらく、緊張、している。

10大淀:2004/03/19(金) 12:48

「うあ―――」

金髪少女は両手で頭を抱え込み、うずくまってしまった。
ちょっとかわいそうな気がした。

「やっべぇ。帰れないじゃんかよ。っきしょー。」

私があっけにとられて突っ立っているのに気がついて、彼女は顔を上げた。

「あ、スンマセン。いっすよ、もう」
「うん」

私はくるりと背を向けると、再び歩こうとした。
―――歩こうと、した?
歩けなかった。
私はどうしても、彼女のことが気になった。

11大淀:2004/03/19(金) 12:49
「どうしたんすか?」

一向に歩こうとしない私を不審に思ったのだろう、彼女は声を掛けてくれた。

「ね、ちょっと、どうしたの?」

ぐいと肩を引っ張られ、私は強引に彼女のほうに向けられた。
ご、ごめ、初対面なのに。

「ねぇってば―――」

「うえぇ…」

最悪だ。

12大淀:2004/03/19(金) 12:50


取り急ぎ、二人の出会いまで。
がんばって、早めに更新したいと思います。

13管理人:2004/03/19(金) 13:36
大淀さん。はじめまして管理人です。
連載スタート有難うございます^^

これからよろしくお願いします。

14JUNIOR:2004/03/19(金) 16:43
あぁーーーー!!新作!!
この話すごく面白いです!頑張ってください。
あと某版で「約束の丘」って作品を書いてるヒトですか?

15名無し(0´〜`0):2004/03/20(土) 13:20
新作だぁぁぁぁぁぁぁぁ
面白い!!たのしみですぅぅぅぅ
作者さんがんばってください!!!!!

16名無し(0´〜`0):2004/03/21(日) 01:35
久しぶりに来たら新作がぁーーー。
しかも大淀さんって大淀さんですよね?もしかして運命!?
某所からしっかり付いて来ちゃいましたよ(笑)
新作スタートマジでうれしいです。頑張ってくださいね!

17若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 04:25
「大丈夫すか?」

駅近くのコンビニで、介抱されている私。
お酒で失敗したことって、なかったのにな…

コンコンッ。

ドアがノックされて出てきた人物を見て、私は再び驚いた。

「はい、お茶。」
「あ、すんません…」

さっき一緒に下車した、『いかにもフリーター』な女の子だった。
肩まで大きく前が開いたニットに、ミニスカートから覗かせる足はとても綺麗だった。

18若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 04:26
金髪少女は『いかにもフリーター』な女の子からお茶を受け取り、
ペットボトルのふたを開け、私にお茶を飲ませようとした。

「ちょっとコレ、飲んだほうがいいと思いますよ。」
「ん、自分で飲める…」

金髪少女はとても心配そうに私を見つめてくれている。
その、まっすぐな視線が、余計につらかったりもするけど。

19若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 04:26

一方。
いかにもフリーターな子は、腕組みをして洗面所の壁にもたれかかってたり。

「………」

その、冷ややかな視線が、もっとつらかったりもするけど。
私は酔い潰れてしまったことをひどく後悔した。
同時にこの場から一刻も早く出たい衝動に駆られて…

「ごっちん。大丈夫そうだね…」

ごっちん?
この二人、知り合いだったのかな。

「あの、ほんとすみません…」

20若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 04:27

うえぇ。

もう何もでないけど、嘔気がこみ上げる。

「ちょっとアンタ、しっかりしなよ。」
「………」

「ご、ごっちん!動かなくなっちゃったよ!!!」

生きてます、生きてます。

「慌て過ぎ。」

ヒラヒラと手を振って、私は生きていることをアピールした。
うぃーあらいぶ。

21若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 04:28

金髪少女はずっと背中を擦ってくれている。
優しいなあ…

「もう少し、ここにいたほうがいい。」

そう言って『ごっちん』は出て行った。
ありがとう、見ず知らずの『ごっちん』。
もう駅で見かけても、話しかけたりしないから。

「あ…」

金髪少女はすでに閉まっているドアに向かってつぶやいた。
空を切る、頼りなさげな右手が悲しかった。

22若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 04:29

「大丈夫。ずっとそばにいるからね。」

私にそう言いにっこり笑うと、私の口元をハンカチでぬぐってくれた。
悲しくなるくらい、優しい彼女。

私もにっこり微笑み返した。
そのとき彼女の顔が一瞬硬直したけど、気のせいだろうか。
それは本当に一瞬で、すぐに元に戻ると、こう言った。

「お酒、飲んだの?」
「え…うん。」

23若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 04:30

「そっかあ。」
「え?」

「いきなり、『うえぇ…』ってうずくまったから、マジびっくりした。」
「…ごめんなさい。」

「や!いいから!ぜんぜん、ね?」

ぶんぶん首を振って否定する彼女。
何だか、すっごくかわいいんですけど。

24若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 04:31
「それよりちゃんと、水分摂って。」

ぶっきらぼうにお茶を渡されて、少し戸惑う。
彼女なりの、照れ隠しなんだろう。

それから、違う人がトイレを使おうとしたので、私たちはコンビニから出ることにした。

25大淀:2004/03/21(日) 04:40

今日はこのあたりで。

>管理人さま
はじめまして。お借りいたしますです。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。

>JUNIORさま
そおです。なんか照れますね。
あっちも今がんばってる最中です。
早めに更新できるようにしたいと思っております。

>15さま
ありがとうございます!
もっとおもしろくできるように、がんばります。
うしゃ。

>16さま
すっげうれしい反応(照)
そんなたいそうなもんでもありませんが、もいっちょの方も読んでいただけているのなら、
これほど嬉しいことはございません!

途中から自分でageてますな。
まいっか。
ではでは失礼いたします。

2616:2004/03/21(日) 15:19
更新お疲れ様です。
某所では12月始めの「読んでます、読んでます」の者です(#^.^#)
自分の感想にセンスがないので本当はROM専なんです。すみません(^_^;)

のっけから引き込まれちゃってるんですけどぉ。ドキドキしちゃったし。
こっちも頑張ってくださいね!

27JUNIOR:2004/03/21(日) 21:19
更新お疲れ様です。
大淀さんの文章イイですね。
なんか、こう、その場その場の感じが解りやすいです。
某板ではROM専なんですがあの作品、好きです。
もちろんこっちの作品も好きです。頑張ってください。

28若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:26
「大丈夫?出れる?」

それでもちゃんと私の体の心配をしてくれる、優しい彼女。

「んー、これからどうする?」
「体も大丈夫だし、もう帰ります。」

「…ほんとに大丈夫?」
「もう、迷惑かけるわけにはいかないですから。」

「あたしのことなら、平気だよ。 それより、あなたのほうが心配なんだ。」
「私…?」

「あったりまえじゃん」

29若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:26
目を細めて、駅前のバスターミナルを見つめている。
もうすでにバスの姿はなく、迎えに来たのだろうか、乗用車で少し渋滞していた。

「で、やっぱり帰っちゃうの?」

私にどうしろというのですか。
見ず知らずの、しかもたぶん年下の女の子に、ここまで介抱されてしまったのだ。
早く彼女を帰してあげないと。

あ。

「ちょっと待って、あなたは?」

確か猛ダッシュで走ってきて、終電を逃してしまったはずだ。
帰れないようなことも言っていたはず。
彼女は、どうするのだろうか。

30若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:27
「あたしね。終電タッチの差で行っちゃって、今晩帰れそうにもないんだよね。」

ニカッと白い歯を覗かせて、笑っている。
まるでこういうアクシデントを楽しんでいるかのように。

「…どうするの?」
「そおだねぇ。あなたに朝まで付き合ってもらおうかな。」

「なっ…!」
「お互い女同士なんだし、心配ないっしょ?ね?」

なんだか大変なことになってきた。
そりゃあ、この子も大変だと思うけど、ちょっとそれは…

「ね、いーじゃーん。 気持ちワルイのも治ったんでしょ?」
「え、っと…」

31若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:27

「面倒見てあげたじゃん。お礼だと思って、ね?」

なんだこのコ。
さっきと随分雰囲気が違ってきてない?
さっきよりぐんぐん距離を縮めてきて、しっかり腕も掴まれてしまっている。

「何もしないから。お願いっ!」

ヤバイ。押し切られてしまいそう。

「朝まで…?」
「うん。朝になったら、帰るから。 そこでバイバイだよ。」

「でも…」

32若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:28
急に腕の力が強くなる。
顔はもう、ちょっと伸ばせばキスできそうなくらい近づいていて…

「何やってんだよ。」

「ごっちん!」

彼女は声のほうに振り向いて、少し腕の力が抜ける。
私はすかさずすり抜けて、『ごっちん』の後ろに隠れた。

「あっ」

彼女は私が離れてしまったことに声を上げた。

33若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:28

「何やってんだって。」
「別に。」

腕を頭の後ろにやって、彼女はそ知らぬ顔。
何よ。
朝まで一緒にいてって、迫ってきたくせに。
私はちょっと頭にきた。

「ウソ。」
「なっ…!」

私が『ごっちん』の後ろからボソッと呟くと、彼女は少し慌てた。

34若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:29

「アンタも、さっさと帰りなよ。」

『ごっちん』は顎で何かを指した。
見ると、コンビニの前に1台のタクシーが横付けされていた。
きっとそれも、『ごっちん』が用意してくれたものだろう。

「早く。」

私が何ずっと考えていると、早く乗れとばかりに急かした。

「え、あ…」

35若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:29
彼女の方を見ると、面白くないのか、口を尖らせてすねたような表情をしていた。

きゅんっ。

不謹慎、というのか。
私は悪いことをしてるわけでもなく、どちらかといえば迷惑している立場なのに。
彼女をほっておけない気になった。

「何、気使ってんの。」
「そんなんじゃないんだけど…」

「何が気になるの。」

『ごっちん』がだんだんと不機嫌になっていくのが他人の目からでも良くわかった。
私、どうすればいいの。

36若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:30
「彼女、終電なくなったみたいで、ね。」
「タクシーでも、歩きでも、何でもあるじゃん。」

自分がこんなに優柔不断だとは思わなかった。
それに、金髪少女がこんなに気になるのはなぜだろう。

「そうなんだけど…」
「はっきりしないの、嫌いなんだけど。」

「ごめんなさい」
「謝られる筋合いもないと思うけど。」

コワイ。
『ごっちん』はとてもコワイというのが、よーくわかりました。

「勝手にやってよ。あたし、暇じゃないんだからさ。」
「そうだよね。ごめんなさい…」

37若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:30
私は一体さっきから何に謝っているのだろう。
巨大迷路に迷ってしまったような不安に刈られ、視界が歪み始めた。

「ちょ!何泣かしてんだよ!」

つかつかと歩み寄り、彼女は私を庇った。

「そっちが勝手に泣いたんでしょ。」
「……」

「あたしには関係ない。」
「…のやろうっ…!!!」

38若者よ、恋をしろ!:2004/03/21(日) 23:32
あっという間に彼女は『ごっちん』に馬乗りになり、殴りかかっていた。
私は「やめて!」としか叫ぶことができず、止めることもできず…

殴られっぱなしの『ごっちん』ではなかった。
上になり、下になり、二人は殴り合う。

何でこんなことになってしまったのだろう。

なんか…アタマ痛い。
確実に二日酔いではないその痛みに、私はため息をついていた。

39大淀:2004/03/21(日) 23:38

つづく。

>16さま
感想に扇子も何も!
やっぱ、反応があるとだいぶ嬉しいのです。
これからもよろしくです。

>JUNIORさま
ご購読ありがとうございます。
ROM専と言わずにじゃんじゃんカキコお願いしますっ!
解りやすいですか。めさめさ嬉しいっす。

こんなんでいいかな…もっとちゃんとキャラ立ててきたいんですけどね。
では、また。

40名無し(0´〜`0):2004/03/22(月) 00:23
大淀さんの書かれる話の雰囲気大好きです。
つづきがすごく楽しみ。がんばって下さい。

41若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:17
―――で、何でボウリングなんですか。

ガコ―――ン!

「うしゃ!」
「……ヘタクソ。」

あれから、警察に通報された私たちは、交番でこってり絞られた。
友達同士の喧嘩ということで、事情聴取を少しした後、すんなり開放された。

「え、いいんすか?」

42若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:18
ポカンとした彼女(吉澤ひとみと名乗った)の表情がやけにおかしかった。
ごっちん(後藤真希)は相変わらずクールだった。我関せずといった感じで。

口元に付いた血がが少し乾いていたので、私は水で濡らしたハンカチでぬぐってあげた。

吉澤さんは素直に拭かせてくれたけど、ごっちんは「いい」ってハンカチを奪い取り、自分でごしごし拭いていた。

こんなところにも、二人の対照的な仕草が出て、とても惹かれてしまう。

43若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:19

「何なんだよ!さっきストライク取ったろ!」
「…マグレ」

「っか!スピードだってお前よか早いんだよ!」
「テクは中学生レベル。」

「うるさい!早く投げろよー!」
「石川さんの番」

「……いちいちムカつくヤローだな!」
「一人でカッカしすぎ。」

「黙れ!それと早く梨華ちゃん投げてっ!」

二人の小学生のような口喧嘩に、思わず噴出してしまう。

44若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:20
「あーっ!梨華ちゃんまで何笑ってんだよっ!」
「ゴメン。つい、おかしくて」

「梨華ちゃん、こうして手首を返して、ふつーに前に出せば真っ直ぐいくよ」
「違う。」

「何っ!」
「手首は少しひねったほうがいい。ちょうど握手するような感じで。」

45若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:20
「真っ直ぐだっつの!」
「ひねるんだよ」

「マッスグ!」
「ヒネル」

「マッスグ!」
「ヒネル」

「マッスグ!!」
「…石川さん、投げていいよ」

「んがー!ムシした!!殴ったろか!」
「勝手に吠えとけ」

「ごっちん!」
「……」

46若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:21


ガコーン。

「ありゃ。ガーターだった」
「「………」」

楽しい夜は続く。

47若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:22



2ゲームやって、結局ごっちんの勝ちだった。
吉澤さんは最後、追い込みがすごかったんだけど。
いいところで力んじゃって点数を稼ぐことができなかった。

「ね、梨華ちゃんて社会人?」

「大学生」
「ふーん。」

ゲーセン前の一角で、テーブルを囲んで話をした。
ごっちんは電話をしに行くとかでさっきからいない。

48若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:23

「吉澤さんは?」
「ひとみって呼んで。」

「ん、じゃあ…ひとみちゃん。」
「えー。ま、いいか」

「あたしは高校生だよ」

ある程度予想はしていた答えだったけど、やっぱりちょっと高校生ということがうらやましく感じられた。
私が講義を受けてバイトをしている間に、彼女は制服を着て、授業を受けているのだ。

「ごっちんは?」
「ごっちんのことは苗字じゃないんだ。」

「えっ?」
「ちょっと、妬ける」

こんな些細なことにさえごっちんにライバル心を持っているひとみちゃんがかわいかった。

49若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:24

「ごっちんのことは、何も知らないよ。今日初めて会ったし。」
「そうなの?」
「そーだよ」

へへ、と上目使いで私を見ながら、メロンソーダの紙コップに口をつけた。

「だから、ごっちん置いて、バックレよ?」

だから、の意味がわかんないんですけど。
このコは、どうしてもごっちんを除け者にしたいらしい。

50若者よ、恋をしろ!:2004/03/23(火) 21:24

「ごっちんが心配するからダメ。」
「えー。 梨華ちゃん、ごっちんのほうがスキなの?」

私の手の上にそっと自分のを重ねて、ギュってしてくる。
少し冷たかったお互いの手が、交わり暖かさが増していく。

「どっちも好きだよ。」
「あたしのこと、スキ?」

「好きだよ。」

初対面の、しかも年下の女の子に、素直にこう言える自分に驚いた。
女の子に好きだって言うこと自体、私はあまりしたことがなかった。


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