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約束

1Sa:2003/11/12(水) 23:03
初めて書かせて頂きますっ!
間違いなどありましたら、ご指導お願いします。


4月・・・‥校門から抜けると、目の前の通学路は薄く桃色の霞がかって見える。
皺ひとつない制服に包まれた少女達は、高揚した表情で笑いさざめき通り過ぎて行く。
入学式から数日、沢山の輝いた顔が、ひとり静かに歩く少女を追い抜いて行く。
・・・何にそんなに期待してるのさ・・・
ゆっくりと歩を進めながら少女は苦笑いする。

・・・・・やっと、見つけた・・・・・

誰かに囁かれた気がして、少女は立ち止まりゆっくりと振り向いた。
そこにはやっぱり、無意味に輝く団体と薄い桃色だけが瞳に映り消えていった。



後藤真希は、窓辺でじっと校庭を見つめる少女に近付くと身体を斜めにして、その顔を覗き込んだ
「なんかおもしろいモンでもあんの?」
少女は、一瞬ビクッと身体を強張らせた後、真希の方を振り返り微笑んだ
つられるように真希もあはっと笑う
「ね、慣れた?石川梨華さん」
「う〜ん・・・どうかな?わたし、もともと名前覚えるの得意じゃないんだよね」
梨華は困った様に笑う。その顔を見ながら、おどけた風に自分を指差す真希に
「後藤さん」梨華はおかしそうに笑った
「それだけわかれば充分じゃ〜ん。でも後藤さんは止めてよぉ〜ごっちんでいいからさっ梨華ちゃんて呼んでい?」
「うんっ!よろしくね?ごっちん」梨華は更におかしそうにくすくすと笑った
「梨華ちゃんの笑顔って、か〜い〜ね〜。ごとー友達、一番乗りってやつ?」
梨華は窓を振り返り、校庭をひとり歩く少女に一瞬瞳を向け・・・ともだち・・・心の中で呟いた
「ね?ごっちん・・・吉澤ひとみって子、知ってる?」

436約束:2004/01/16(金) 10:34
「・・・だけど、なんとなく解ったの
 きっと、駄目だと思った時が駄目になる時なんだって
 いつくるか分からないってことは、その日はこないかも知れないって
 ことでしょう?・・・だったら、そう思っていこうって
 ・・・だってわたし、生きて行きたいから
 ずっと、ひとみちゃんと・・・いつまでも一緒に・・・」

ひとみは、何か答えたかったけれど、強すぎる想いは、なかなか言葉には
ならなくて口に出来ない
それでも何か口にしようとするたびに、唇からは吐息だけが漏れてゆく
それよりも、ただ、ただ、胸が熱く、一杯で、おそらく言葉とは違うなにかが
先に溢れて零れそうだった

「・・・ひとみちゃん、来て? 腕枕してあげる」
「・・・いいよ」
「よくないもんっ」
「・・・いいって」
「いやぁっ」

梨華の大きな声に、ひとみの心臓はとび上がった
その拍子に、いままでひとみの胸一杯に広がり波打つものは
もといた場所へと還って行くように引いていった

「ちょっとー へんな言葉を大声で言わないでよ
 聞こえたら、誤解されるじゃんっ」
「じゃ、降りてきて」

ひとみは、大きくため息をつくと梯子を降りて、梨華を睨んだ

「・・・随分、強気だね?」
「決めたんだもんっ強くなるって」

437約束:2004/01/16(金) 10:35
梨華は自分の掛布団を捲り、ぽんぽんと、その身体の横の隙間をたたいた
ひとみは、もう一度ため息をつきながら、梨華の伸ばした腕に頭を乗せた

「・・・無理しちゃって、腕、痺れるよ」
「ひとみちゃん、この間してくれたじゃない?・・・無理してたんだぁ?」
「・・・してないよ」
「強がりぃ〜」
「強がるのが好きなんだよ・・・悪い?」

梨華は、悪くないよ、と、クスクス笑った

「わたしも強がりだよー 負けず嫌いっていうのかな?」
「・・・知ってる」
「・・・だけど、わたしと、ひとみちゃんの強がりはきっと違うね」
「・・・そうかな」

・・・よくわからないけど、と梨華はまた笑顔を広げる

「・・・わたしにとって、ひとみちゃんて初恋だったけど
 憧れでもあったの ひとみちゃんと同じになりたいなぁって思ってた
 ・・・だけど、いまはひとみちゃんはひとみちゃんで
 わたしはわたしで、それがいいんだと思ってる
 同じになることなんて必要ないんだなぁって
 違うから、だから、一緒にいることで色んなものが増えて
 広がっていけるのかなぁって
 ひとみちゃんはね、隣にいてくれるだけで・・・わたしにいつでも
 勇気をくれるんだよ?」

ひとみは自分の頭を、梨華の腕から布団の中へと潜らせその胸に顔を埋めた
一度引いたはずのさざめく波は、その前より大きな波へと姿を変え
いま、ひとみの足元まで静かに近づいていた

438約束:2004/01/16(金) 10:35
「わたしね、ずっと気になってたことがあるの
 ひとみちゃんは、わたしのことはすごく大切にしてくれるのに
 まるで、自分はどうなってもいいって思ってるみたいに見えて・・・
 それが、なんでなのかなんて、わたしには分からないし、話たくないことを
 無理に聞こうなんて思ってないよ?
 だけど・・・わたしのいない間に、ひとみちゃんが何かに傷ついていたなら
 その時、傍にいれなかったことが悔しいなって」

梨華は自分の胸に顔を埋めるひとみの頭を抱きしめた

「わたしは、格好いいひとみちゃんだけが好きなんじゃないんだよ
 ・・・もう、わたしには、いつでも守ってくれる王子様に
 ただ守られるだけのお姫様は何かが違うって解るから・・・
 ひとみちゃんが、わたしを大切にしてくれるなら、わたしも同じように
 ひとみちゃんと付き合っていきたい・・・支え合いたいの
 それが、一緒に生きていくってことでしょう?・・・違うかな
 だから、ひとみちゃんをこと、少しづつでいいから教えていって欲しい
 ・・・そしてわたしに見せて欲しいの・・・いろんな顔したひとみちゃんを」

ひとみはその目を強く瞑った

梨華にとって何が幸せかなんて、よく解らないから、梨華が幸せだって
感じられればいいって、そう思ってた
そう思い続けることだけが、まるで自分が梨華の傍にいてもいいという証みたいに

・・・だけど、それは詭弁だ
自分自身にその価値があるって納得する為だけの言い訳に過ぎなくて

439約束:2004/01/16(金) 10:36
本当は、ずっと、ただ独占したかった
その心も、その身体も、その唇が紡ぐ言葉のひとつ、ひとつや
風に運ばれる微かな香りまで

だけど、いつからか自分自身こそが、自分をこれっぽっちも信じて無いんだと
知ったとき、そこにあった筈の自信は浜辺に築かれた砂の城が寄せては返す波にと
さらわれるよりもあっけなく崩れ去った

・・・何も無いちっぽけな自分
・・・ジタバタと、ただ足掻いてばかりの自分

そんな自分からは、いつか梨華が離れて行くんじゃないかといつも不安だった
だからこそ、例え、偽りだったとしても、いつでも余裕ある自信家でいたかった
・・・そしてそれだけじゃ無くて・・・ずっと軽蔑もしていた

梨華に再会するまでの自分が過ごしてきた日々を

梨華を愛しく思えば思うほど
大切なかけがえの無いものに感じれば感じるほどに

何かを探し求めてはいても、何を探してるのかが解らないから
見つかりようもなくて 孤独だけを何十にも胸に押し込んだままで
見つからない答えを探すように、袋小路に迷い込んだような毎日

誰かと抱き合うことで、その瞳の奥に答えを探したりもした
何かが薄れていくような感覚を気にするだけの余裕もなく
自分を大切にしようなんて、これっぽっちも考えもしないで
自分自身を見失い続けた毎日

ふと気づいた時には笑い方さえ忘れていた・・・そんな自分自身を

440約束:2004/01/16(金) 10:36
「・・・幻滅するよ?」

「・・・しないよ・・・幻滅なんて絶対しない
 ひとみちゃんは、ひとみちゃんだもん
 いつでもわたしの大好きな、とってもとっても大切な人なんだよ
 ・・・そうだなぁ、例えば泣き虫なひとみちゃんとか
 すごく、すごーく、可愛くって、きっとキスしたくなっちゃうくらい
 だと思うよ?
 だから、我慢しないで・・・涙だけじゃなくって、いろんなことを
 ひとりきりで抱え込まないで欲しいの」

梨華は優しくひとみを包む腕を外すと、指先を伸ばしてその顔を上げさせた

「ひとみちゃん・・・目を開けて、ちゃんとわたしを見て?」

ひとみが、固く閉じられたままで微かに震える瞼をゆっくりと開けていくと
そこにはある梨華の無言の眼差しは、高らかに愛を響かせる

・・・たとえどんな時でも、何があっても、わたしはあなたの傍にいる・・・と

ひとみが溢れ出す温かな水源に逆らうことを止めると、その跡を梨華の唇が
辿る様にとなぞってゆく・・・そっと、そっと、まるで純白な天使の羽が触れるように

許しを奏でるように流れ落ちる雫は、心地よくひとみの頬を伝い
慈しむように滑らかに降りてゆく

いく筋も、いく筋も、涸れることなく・・・それはまるで、もう迷うことはないんだ、と
一人の旅人の行く先を示す、控えめな道標の様に

441約束:2004/01/16(金) 10:37
もう、立ち止まり、色褪せ過ぎ去った日々を振り返るのはよそう
・・・そこからは、何も生まれはしないから
そう、いらなくなった殻を脱ぎ捨てるように、偽りや、自分を飾る
ことは止めればいい

そして、愛しい人が告げつづけようとする愛するということは、自分へと向けられた
心に宿る形無き想いをこの胸へと受け取るということなのかも知れない

何も急ぐことなどない
自分達は歩き出すことの意味を知ったばかりなのだから
何か大きなことを成し遂げるよりも、今、胸に宿るこの消えることない想いを
抱きしめ、歩き続けることこそ、いつの日かきっと自分達の力になるから
確かな足跡を残す様に一歩ずつを踏みしめて、前だけを見て進んで行けたらいい
そんなふうにして、いつか、自分を好きだと胸を張って言える大人へと、なれたらいい

初めて出会ったあの幼い日々から、当たり前のように差し出され続けた手を
いま繋ぎ、目の前に架けられた希望の橋をふたりで渡ろう

その先へと続いていく・・・そう、ふたりの未来へと進んでいく為に

442Sa:2004/01/16(金) 10:39
更新終了でございます

JUNIORさん>
  まいどっ♪
  作者も寂しい気はしますが(w
  お勉強がんがって下さいませね(o^-')b

ちゃみさま>
  まいどっ♪
  エエ、いつのまにやらこんなコトに…フト頂いたレスを見て思ったのですが
  いしよし、チャイニーズマフィア風味って似合いそうですね?(w

152さん>
  まいどっ♪
  ですね〜日本はナンノカンノ言っても四季があるのが良いと
  作者こそって…って、少しだけ、セッカチですね(w


月曜日、ネラッテタ訳ではナイのですが、ヒロインのバースデェ〜に
最終回の更新を致します
シバシお待ち下さいマセ

443JUNIOR:2004/01/16(金) 12:12
更新お疲れ様です。
やばいです。むちゃくちゃ心にきました。
まだ最終回でもないのに・・・。
このままで行くと最終回泣くと思います。
月曜日絶対、絶対×∞見ます。
最終回頑張ってください!!

44454:2004/01/16(金) 18:11
更新、お疲れ様です。

今回のふたりの姿・深い絆は、まるで絵画のような美しさを感じました。
タイトルの意味がようやく分かりかけて来たような気がします。

1.19.に最終回ですか・・
さすがにイイところを突いていらっしゃいますねぇw
最終回、本当に楽しみです。

445ちゃみ:2004/01/16(金) 21:25
今日は涙でグズグズでレス出来そうに有りません。
(と、言いながらレスするな、と自分自身に問いつめる事、小1時間)
梨華たんの誕生日に、このお話の最終日を迎えられるなんて
これ以上の幸せは有りません。

446152:2004/01/17(土) 00:03
更新お疲れ様です。
も〜・・おみごと!のひとことにつきます。
言葉を読めば読むほど感じいります。大人になるにつけ、守れない約束を
口にしてしまっていますね・・痛っ・・
19日・の更新、楽しみです!・・でもさみしいです・・

447Sa:2004/01/19(月) 10:52
いしかーさん、お誕生日オッメデト 〜〜〜♪
(*^▽^)<ハッピィ〜?
 
JUNIORさん>
 ありがとうございます(ペコリ)
 作者が言うのもなんですが、前回が一番の盛り上がりドコかと…
 あまり、期待なさらないコトをお勧めします(w 

54さん>
 ありがとうございます(ペコリ)
 イヤァ〜、今日の日は本当にねらったワケではナイんで…って
 あんまり弁解するのもウソクサイですかね?(w

ちゃみさん>
 ありがとうございます(ペコリ)
 ( ^▽^)つ□<ハンカチいかがですかぁ?
 そう言って頂けて、作者にもこれ以上の幸せはありえませんっ!!!

152さん>
 ありがとうございます(ペコリ)
 ハハハ… 自分で書いといて実は作者もオレはどーよ?とか思ってたりして(w
 最後まで楽しんで頂けたら、本望でございます

それでは更新に参ります

448約束:2004/01/19(月) 10:53
ふたりで迎えた初めての冬は、駆け足で過ぎて行った

真希と合流した初詣で、真希だけが大凶のおみくじを引くと
真希はしゃがみこみ ・・・なんで、ごとーだけ?・・・ と呟いた

「・・・引くヤツ、はじめて見た」
ひとみは、なかばあっけにとられた様な顔で言い、その後 笑った

梨華は梨華で、オタオタと慰めにならない慰めを口にした
「ごっちん!すごいよっ・・・だって、なかなか引けないよ?」

あさ美だけは、本気で心配そうな顔をしながら言った
「・・・お取替えしましょうか?」

梨華の誕生日にはまた四人で集まりパーティを開いた

真希は梨華へと、新たなる挑戦の結果だと言いながら、梨華とひとみの
編みぐるみの人形をプレゼントした
それは、梨華が黒い猫の着ぐるみを着て愛くるしく微笑み
ひとみは、白い犬の着ぐるみを着て、どうでもいいや、という顔をしていた

ひとみはその二体を眺めながら、・・・随分、出来に差がない? と嫌な顔をした
すると真希は ・・・ごとーって持久力がイマイチなんだよねぇ〜 と悪びれずに
へらへらといつもの調子よさで笑った

そして、あさ美は真希に習ったと嬉しそうにケーキを焼いた

449約束:2004/01/19(月) 10:54
クリスマスにお金を使わせたから、誕生日プレゼントはいらない、と言う梨華に
ひとみは照れくさそうに笑った

「・・・あたし、今まであんまりお金使うことって無かったからさ、意外と
 金持ちだったりするんだよ」

そして、繊細な銀細工が四葉のクローバーを象ったリングを、梨華の右手の小指に
結ぶ様にと、ゆっくりはめた

ふたりきりになると、ひとみは梨華の左手を取り、薬指へと唇を落としながら言った

「・・・次は、ここね」
「ひとみちゃんって、意外とロマンチストだね?」

梨華が笑みを零しながら言うと、ひとみは唇を尖らせてむくれた
そんなひとみの無防備で、どこか幼い表情を見ると、梨華の胸は温かく
緩んでいく

指輪の贈り物はもちろん嬉しかったけれど、以前よりもひとみの眼の色が
明るくなり、無邪気さを漂わせた顔つきをすることが増えた事こそ
梨華には何よりも嬉しかった

バレンタインデーには、真希の指導の下、四人でチョコレート菓子を
たくさん作り、品評会のように騒いで食べた

ホワイトデーには、大きな瓶詰めのキャンディーを買い、四人がそれぞれの口へと
投げ合って、取り損ねたお互いの顔を笑い合った

450約束:2004/01/19(月) 10:54
そして、また春がやってきた

優しい春の女神が微笑みを零すように、立ち並ぶ木々の上へと彩りを広げ
春風が運ぶ桜色の粉雪が降る中、四人でその袂を囲んだ

ひとみが豪華な重箱を、手品の様に次々開けていくと、残りの三人は目を丸くした
それぞれが、驚きや賞賛の声を上げるとひとみは満足げに大きく頷いた
「・・・ま、こんなもんでしょ」

四人は体重増加を気にするほどお腹につめこむと、温かみを増す日差しの中
柔らかく漂う空気に新たな誕生への息吹を感じながら、川原まで散歩した

真希がふと思いついたように言う
「ごとーも医学部、目指そうかなー」

残りの三人に、まじまじと見つめられて、真希はへらへら笑った
「あはっ・・・なにかに燃えてみるのもいいじゃん これぞ、青春ってね?
 だから梨華ちゃん、よっすぃーがコケても、ごとーがいるから
 安心していいよー」

ひとみは真希を小馬鹿にするように目を細めた
「ごっちんさ、今まであたしに勝てたことがあったっけ?」

ふたりが僅かに睨み合うと、あさ美が感極まった声で口にした
「完璧ですっ 不肖ながらこの私も看護婦になりたいと常々思っていたのですっ!」

451約束:2004/01/19(月) 10:55
土手につくと、まずは体力だー と言いながら、真希はあさ美を連れて
バトミントンを抱え、芝生の斜面の下の砂利道に駆け下りて行った

ひとみと、梨華は斜めに続く芝生へと腰を下ろし、小さな鳥のように
歓声を上げる二人の間を行き交う羽を見ていた

ひとみは組んだ指先に頭を乗せ、ごろりと横になった
そして、遮るものもなく、どこまで行っても終わりなき様に広がり続ける
大空を眩しげに見上げて口を開いた

「来年、あたしが医学部に入って、卒業式が終わったらさ
 ・・・一緒に暮らさない?」

梨華の息を呑む気配に、ひとみは小さく笑った

「・・・まださ、一年も先のことだから考えておいてよ」

・・・そんなの、無理だよ と、梨華の困惑を漂わせた音色の呟きに
ひとみは、顔だけ梨華の方へと向け短く聞いた

「・・・なんで?」
「・・・だって・・・・わたし・・・だって・・・」
「だって・・・なに?」

ひとみは、梨華の方へと身体の向きを変え、立てた肘の上の手で頭を支えると
眉を寄せ、泣き出しそうに顔を歪める梨華をじっとみつめた

452約束:2004/01/19(月) 10:55
「・・・だって、わたし・・・一緒になんて暮らしたら、ひとみちゃんに
 きっと、迷惑掛けるから・・・」

「・・・迷惑?」

「身体のことだけじゃないの・・・わたし、ひとみちゃんに窮屈な思いさせちゃうと
 思うから・・・だって、だってね?・・・わたし・・・すごく欲張りで、我がままだから
 ひとみちゃんのこと、縛り付けちゃうもん
 ほんとはわたし・・・あさ美ちゃんやごっちんにまで、ときどきね・・・
 焼きもちやいちゃうくらいだから」

「・・・知ってる・・・梨華はさ、分かりやすいから」

梨華は・・・それだけじゃないもん と言いながら、額を並んで立てた膝に
押し付けた

「・・・わたしがね? 生きて行きたいって思ったのは、生きるのを諦めないとかって
 そんな格好いいことじゃ、全然なくて・・・解ったから
 わたし、ひとみちゃんの想い出の中でなんか生きていきたくないって
 ・・・わたしがいなくなったからって、誰かと幸せになってね、なぁんて
 絶対言えないって・・・よく解ったから
 ・・・独り占めしたいんだもんっ いつでも、ひとみちゃんのこと」

「ちょうどいいんじゃない?」

梨華は、ひとみの言葉が思いもつかないことらしく、膝から顔を上げると
ほへぇ、と間の抜けた顔をして、ひとみの口元を見た

ひとみは起き上がると、目元を甘やかに微笑ませた

453約束:2004/01/19(月) 10:56
「・・・だって、わたし・・・一緒になんて暮らしたら、ひとみちゃんに
 きっと、迷惑掛けるから・・・」

「・・・迷惑?」

「身体のことだけじゃないの・・・わたし、ひとみちゃんに窮屈な思いさせちゃうと
 思うから・・・だって、だってね?・・・わたし・・・すごく欲張りで、我がままだから
 ひとみちゃんのこと、縛り付けちゃうもん
 ほんとはわたし・・・あさ美ちゃんやごっちんにまで、ときどきね・・・
 焼きもちやいちゃうくらいだから」

「・・・知ってる・・・梨華はさ、分かりやすいから」

梨華は・・・それだけじゃないもん と言いながら、額を並んで立てた膝に
押し付けた

「・・・わたしがね? 生きて行きたいって思ったのは、生きるのを諦めないとかって
 そんな格好いいことじゃ、全然なくて・・・解ったから
 わたし、ひとみちゃんの想い出の中でなんか生きていきたくないって
 ・・・わたしがいなくなったからって、誰かと幸せになってね、なぁんて
 絶対言えないって・・・よく解ったから
 ・・・独り占めしたいんだもんっ いつでも、ひとみちゃんのこと」

「ちょうどいいんじゃない?」

梨華は、ひとみの言葉が思いもつかないことらしく、膝から顔を上げると
ほへぇ、と間の抜けた顔をして、ひとみの口元を見た

ひとみは起き上がると、目元を甘やかに微笑ませた

454Sa:2004/01/19(月) 10:59
更新終了致しました

約二ヶ月の間、長かった様な短かった様なフシギな気持ちです
作者が最後まで書くことが出来たのは、本当に読んでくださり
オコトバをかけてくださる方々が確かにいるんだ、と思えたからです
作者に書くコトの喜びと、難しさを教えて下さって、本当に
ありがとうございました(ペコリ)
そして管理人様、お世話になり、ありがとうございました(ペコリ)

さて、終わったばかりでなんなんですが、すごく短いその後のハナシが
ありまして、このまま終わった方がよいのかもしれませんが
作者にとっては、そのハナシをあげないと終わった気がしないので
来週中に一度上げさせて頂きたいと思っております
よろしければ、覗いて頂けたら嬉しいです

お付き合い頂けて、この二ヶ月間作者はすごく幸せでした
ありがとうございました(ペコリ)

455Sa:2004/01/19(月) 11:08
すいませんっすいませんっすいませんっ
すごいミスをしてしまいましたっ
同じとこを二回上げて、その先を削除してしまったみたいなんです
本当に申し訳ありませんっ
今から、もう一度書き直して上げますんで、しばしお持ち下さいませ

456約束:2004/01/19(月) 12:00
「特別に教えてあげるよ・・・あたしは顔に出さないだけで
 梨華がそう思うずっと前から、いまは梨華が思うよりずっと強く
 そう思ってる・・・あたしの方が独占欲は、たぶん強いよ・・・
 それでも、いいの?」

梨華は ・・・えぇ?だって、うそぉ、などと口の中で小さく呟いている
ひとみは梨華の頭の後ろに手をやると、その顔を自分の目の前へと引き寄せた

「・・・だから、あたし達はお互いの目の中に映り合えるくらい
 一番・・・近い所にいるのが、ちょうどいいんだよ」

ひとみは、梨華の頭の後ろに回した手の指先に力を入れると
自分の唇へと梨華の唇をそっと重ねた

出会ってから、二人でいられれば記憶に残らない日なんて一日もなかったけど
今はもう・・・それだけじゃ足りないから

きっと、自分達はお互いのいる場所が、お互いの帰る場所なんだと思う

・・・いつもふたりで
・・・ずっと一緒に・・・暮らして行こう

今、終わりなきように遥か先まで広がり続ける青空の下で
想いを馳せるのは、遠い日の幼い約束


・・・そして・・・それが叶えられるのは

・・・もう・・・すぐ

・・・すぐ・・・そこだから 


                         E n d

457Sa:2004/01/19(月) 12:07
本当に申し訳ありませんでしたm(_ _)m
最後の最後で、文章に浸って頂かなくてはならない局面で
こんな大きなミスを犯すのは、大勢いらっしゃる作者様の中で
私くらいなもんでしょう

本当に本当に申し訳ありませんでしたっ

458名無し(0´〜`0):2004/01/19(月) 13:37
約束作者様

完結、乙です!
更新楽しみに、いつもROMしておりました。
エンディング十分浸れました!大丈夫ですよ!!

かたくなだったひとみが梨華によって解放されていく様、
秀逸で、とても感動しました。
約束という言葉をこの物語のようにとらえると、
とても意味深いことに思えました。

素敵なSTORYをありがとうございました。

459ちゃみ:2004/01/19(月) 13:41
わぁ〜い、完結初レスだぁ〜。
なんのなんの、全然気になりませんよ。
それよりも幸せな結末の余韻に浸っておりまする。
本当に完結、お疲れ様でした。
永久保存版として『いしよし文庫』に入れさせて頂きます。
エピローグが有るとのこと、期待しています。

460ちゃみ:2004/01/19(月) 13:42
しまった、2番手だった。

46174:2004/01/19(月) 15:40
完結おつかれさまです。そしてありがとうございます。
作者樣の小説には、はじまりから
ずーっと引きこまれてました!
終わってしまうのほんとさびしい…
そういえば、某板で新作はじめてらっしゃいますか?
もしそうなら、また楽しませていただきます!

46254:2004/01/19(月) 16:37
完結おめでとうございます。
これだけの大作をほぼ2ヶ月で仕上げられたこと・・
川o・-・)< 完璧です!

導入部分でググっと引き込まれたまま、最後までその魅力を損なうことなく楽しませていただきました。
素晴らしい作品をありがとうございました。
いしよしはもちろんのこと、後藤さんの心の機微まで丹念に描かれていたのがとても印象的です。
(最強の85年組!)

この「約束」を読んでいるうちに、やっぱり人という生きものは誰かと触れていなければいけない
んじゃないだろうか・・と改めて考えるようになっていました。
触れるという行為は物質的な距離とかではなくて、もっと内面的なもので・・
う〜ん、うまく言えないですが。

こんなに素敵なお話を読めたこと、本当に幸せです。
またいつかお会い出来る日を楽しみに。

463名無し読者79:2004/01/19(月) 20:44
お疲れ様です。
途中うまく言葉で伝えられず、レスできませんでした。
でも、この二人の明るい未来が見えてくるようで幸せです。
この小説最高でした。梨華ちゃん、よっすぃー、ごっちん、紺野の気持ちが
すごく伝わってきました。
次回作も拝見させていただきます。

464JUNIOR:2004/01/19(月) 21:21
更新&完結お疲れ様です。
涙が出てしまいました。(つ_T)
ミスなんて何も気になりません。
この小説があるから、勉強が頑張れました。
飽きっぽい私が夢中になって最後まで読みきれた事にとても感謝しています。
そして、言葉や文章にも表せられない位の感動をありがとうございました。
Saさんにはとても感謝します。
その後の作品期待しています。
素敵な感動と小説ありがとうございました。

465152:2004/01/20(火) 00:04
更新お疲れ様でした。本当に、本当にお疲れ様でした。
涙、でした・・感動でした・・・
うまく言葉では表現できないのですが、Sa様のこの小説に
出会えたこと、と〜っても幸せでした!!毎日読ませてもらう
ことが楽しみで、楽しみで・・。秀逸なのは言うまでもありま
せんが、毎日の更新、それに私達へのレス。
Sa様の誠実さ・尊敬でした。ず〜っとついて行きたいです♪
少し、続きがあるとのこと・・。終わりじゃないんだ〜、と
ほっとしてたりして・・ 
でも、本当にありがとうございました。感謝・感謝です。
また、お会いできることを楽しみに・・

466Sa:2004/01/26(月) 15:17
お久しぶりでっす(?)
皆様、お元気でしょーか?(w
温かい御言葉の数々、本当にありがとうゴザイマス(ペコリ)

458様>
 いつも読んで下さっていたとのこと
 ありがとうございました
 普段、簡単で意識せずいることの中にあるものとか
 些細な心の動きで変わっていくこと、などを
 地味に書いていけたらいいなぁ〜と思っております
 
ちゃみ様>
 お付き合い頂いてありがとうございました
 永久保存とは、勿体無くもありがたい御言葉…
 追記のようなモノもお気に召して頂けたら
 幸いです(w

74様>
 こちらこそ、ありがとうございました
 作者も寂しいでございます
 某版は作者だと思われ…(w
 また楽しんで頂けるなら光栄でございます

54様>
 お付き合い頂いてありがとうございました
 こちらこそ、丁寧なレスの数々、毎回楽しく
 拝見させて頂いておりました
 そうですね、多分、自分の話をちゃんと聞いて
 くれる人が一人はいないとシンドイだろうなぁと思います

名無し読者79様>
 お付き合い頂いてありがとうございました
 いえいえ、数々のレス励みでございました
 そうですね、出来るなら明るい未来を思い描き
 進んで行けたらいいですよねぇ?
 またお付き合い頂けるなんて作者は果報者でございます

JUNIOR様>
 お付き合い頂いてありがとうございました
 涙が流せるのは素敵なことだと思います
 作者も感謝の言葉を表すのって難しいなぁ感じております
 欲張って、欲張って、お勉強もそれ以外のことも(w
 楽しんで下さいませね

152様>
 お付き合い頂いてありがとうございました
 こちらこそ、いつもお心のこもったレスを
 下さったこと、忘れません
 たった一回きりの更新ではございますが
 楽しんで頂けたら幸いでございます

それでは追記もどき
「永遠」を上げさせて頂きます

467永遠:2004/01/26(月) 15:18
「お世話になりました」

私が丁寧に頭を下げると、中からは激励とか、別れを惜しんでくれる声が
聞こえてきて、ちょっとだけ涙ぐみそうになった
それでも、もう一度笑顔で挨拶してから、ナースステーションを後にした

医局を覗くと探してる顔はいなかった

・・・今日は確か、外来がない日だよねー
・・・あー・・・じゃ、あそこかな?

私は、皆によくババ臭いとからかわれた、片手の拳でもう片方の手の平を
ポンとたたく仕草をすると、一人頷いて階段を上った

屋上へと出る灰色のドアをゆっくりと押した
今日は思いの他、風が強いみたいでいつもより更にドアは重く感じた

目の前に広がる洗濯物が、バタバタと音がしそうな程、はためいている
その隙間から、今日の空に流れてく雲みたいな色の煙が浮かんでは漂っている

私はその煙のもとへと足音を忍ばせて近づくと、ぼーーーっと煙をあげる顔に
声をかけた

「吉澤先生っ!」

468永遠:2004/01/26(月) 15:18
「おわっ あさ美ちゃん・・・」

壁に背中をつけて座りながら、タバコをふかしていた先生は、キテレツな叫び声を
上げると、自分の手を見て気まずそうに笑った

「医者のフヨージョーっての?・・・わかってはいるんだけどさ」

携帯灰皿を出すと、吸いかけのタバコを慣れた手つきでその中で揉み消し
ながら私の顔を見た

「・・・梨華には、内緒って事で・・・」
「お姉ちゃん・・・知ってますよ?」
「マ、マジで?・・・っかしなぁ〜〜〜梨華の前で吸ったことないよ」
「お姉ちゃん、あー見えても鼻が利くっていうか・・・隠し事はしても無駄ですよ?
 他の子にちょっとでも目をやったりなんかしたら、かなりヤバイですよー」

私がイジワルく言うと、先生はちょっと上ずった声で答えた

「イ、イヤだなぁ〜〜〜 あさ美ちゃんさぁ、何か勘違いしてない?
 ・・・ないってソレは、ホントにさーーー」

・・・知ってますよ? 先生がよくモテていることも、それでも軽く話を
合わせる程度にしか、誰とも付き合ってなんかいないことも
だから、先生がちょっと狼狽して見えたってことは、お姉ちゃんには
チクったりしないであげますね?

私も先生の横に腰を下ろしながら、さっきよりゆっくりと形を変えながら
流れてく雲を目で追った

469永遠:2004/01/26(月) 15:19
「ここの所、お姉ちゃん、ずっと調子いいですよね?
 ・・・他の先生達がこの間、奇跡みたいだって噂してました」
「・・・奇跡ねぇ〜〜〜?」

先生は、私が知り合った頃と随分雰囲気や話し方は変わったけど
そこだけ昔とあまり変わらない、小馬鹿にした様な笑い方をして言った

「・・・奇跡ってさ、あると思う?」

私はちょっと考えてみた ほんとの所、自分がどう思ってるのか
いまひとつ、はっきりとはしないから

「・・・あると思います、と言うか、あって欲しいなって思います」

「・・・奇跡を祈るとか言うけどさ
 祈るだけで、目の前に突然、落っこってくるなら、ずっと祈り続けたって
 いいし、縋ることで救われるなら、それも悪くはない
 ・・・けどさ、手を伸ばした人が平等に触れることが出来ないモノだから
 奇跡って呼ぶんだとしたら・・・そんなのはいらないんだよ
 あたしはね、そんなんじゃ何かが足りないと思うんだ」

先生は、・・・いい?とタバコを振って見せた
私が頷くと、一本口にくわえて火を点け、一息大きく吸うと目を細めた

「取りあえずさ、目の前の可能性とか出来ることを積み上げていって
 いつかね、今は見えないその先のそう呼ばれるものに、届く橋を
 架けらることが出来たらいいってさ そう思ってるんだよ
 ・・・自惚れてるかな?」

470永遠:2004/01/26(月) 15:20
「・・・それにさ、実は案外ありふれたモノなのかも知れない
 物事の受け取り方や、その人にとっての真実は、人の数だけあるからさ
 結局は自分達で選んで決めていくしかないしね
 ・・・あたしにとってはさ、目の前で梨華が今日も笑ってるってことだけが
 真実で、その笑顔を見るとそれがずっと続く様な気がしてくる
 ・・・永遠なんて、大袈裟だけどさ
 だからあたしは、あの笑顔を守る術を、いつも探してる
 んで、イノシシみたく突っ走ってる・・・それしかないじゃん?」

・・・だけど、と、私は考えてみた

昨日から今日、今日から明日、明日から明後日、明後日からまたその次の日
そんな風に絶えることなく流れ続けているもの
ひょっとしたら、それを永遠と呼ぶのかも知れない
だとしたら、触れる筈のない永遠というものの中に
私達は同じように確かにいるのかも知れない
そして、その中にいる先生の胸の中の変わらない想いは
・・・きっと永遠なんだ

「ところでさぁ、今日はどうしたの?」

私は自分の世界に入って、ボォーっとしてたらしく、横の先生を見ると
その手にさっきあった、タバコは無くなっていた

「制服を返しに来たんです」
「・・・まさか本当に行くとはね・・・正直驚いたよ 何時発つのさ?・・・ごっつぁんの所に」
「今日です・・・今から・・・」
「今日? それはまた随分急じゃない? あさ美ちゃんがそんなに
 せっかちだったとは知らなかったよ 梨華には言ったの?」
「それが・・・時間なくって、言ってないんです」
「・・・あいつ、怒るぞ?」
「少し、落ち着いたら手紙書きますよ」
「・・・手紙って、意外と古風なんだねぇ あさ美ちゃんはさ」
「今まで・・・書いたこと、ないから・・・書いてみたいんです」
「・・・ごっつぁんが、無医村の離島に行くって言い出した時は、度肝を抜かれた
 考えてみれば、らしい様な気もするけど・・・あたしは、どこかでごっつぁんは
 あたし達っていうか、梨華の傍から離れないと思ってたからさ」

471永遠:2004/01/26(月) 15:21
空を見上げている様で、ほんとは、違うどこか遠くを見るような眼で先生は言った
だから、私も思い出していた・・・真希さんの顔

「・・・実は私、真希さんは、お姉ちゃんのことずっと好きなんだと思ってました
 だから、真希さんが行っちゃうって聞いた時、思わす聞いてしまったんです
 お姉ちゃんのことを置いてですか?って・・・そしたら真希さん
 吉澤大先生がいるじゃん?って言って・・・だけど、誤解しないでよって
 笑ってました
 失恋したとか、身を引いたとかそんなんじゃないんだって・・・真希さんにとって
 お姉ちゃんは心の恋人なんだそうです」

「・・・そっか」

先生は穏やかに微笑んだ
解るのかな?真希さんの気持ちが・・・先生と真希さんの間にはやっぱり特別な
絆みたいなのがあって、私やお姉ちゃんでさえも割って入ることは出来ないって
前から、感じてたんだ

だけど、私には真希さんの言うことはシンプルなんだけど、解りヅライとこが
あって、そう顔に出てたんだと思う 続けて話してくれたっけ・・・

「あさ美ちゃん、好きな芸能人とかいない?・・・ソレにちょっと、似てるかなー
 ・・・心の中に、なんとなくいつもいて、顔を見ればやっぱいいなー
 この子が恋人だったらなーって、時には想像したりもする
 笑顔を見れば、こっちも気持ちは弾むし、悲しい顔されると、なんかツライ
 けど、お互いに一緒に歩いていく人じゃないって解り合ってるし
 触れ合うことはない・・・それを辛いとも思わないんだよ
 ・・・そんな、矛盾した気持ち」

・・・想いの量じゃなくて、質が違うんだ・・・
・・・ま〜、いーじゃん? それもひとつのラブってヤツ?

472永遠:2004/01/26(月) 15:22
真希さんは、ただ笑ってた・・・いつもと同じ、何も変わらない見慣れた笑顔で
・・・だけど、どことなく寂しそうな眼をしてた
私が思い出す真希さんは、いつも笑顔だけど、どこか寂しそうだった
あの日の真希さんは、いつもと同じにおしゃべりだったけど、表情はどこか
思いつめたように真面目だった

「・・・いつからかなー いろんなコト、後藤なりに色んな角度から考えてたら
 なんかもう、訳わかんなくなってきちゃってさー
 なんもかんも見失いそうになるんだよね・・・何、望んでるのかも
 何したくて、こうして医者になったのかも・・・ね
 ・・・そんな中で・・・必要とされたいって、その気持ちだけがずっとあって・・・
 逃げ出したかったよ・・・だけど、どこまでも追いかけてくるんだ・・・影みたいにね
 ・・・自分からは、どうしたって逃げられないってことだけは、解ったから
 追いかけることにした・・・取りあえず、医者の後藤だからっていうのがあっても
 確かに、必要だと言ってくれる人の居る場所で、新しく始めてみるコトにする」

私は眉を顰めて、片手を胸元でぎゅっと握った
あの時は真希さんが居なくなる寂しさよりも、その表情を見てるとただ切なかったから

真希さんは少し困ったみたいに笑って最後にこう言ったんだ

「・・・答えを出すことが全てじゃないってわかってても・・・それでも、やっぱり
 見つけたいんだ 自分の居場所を・・・」

473永遠:2004/01/26(月) 15:22
「うっへぇ〜〜〜!やっべぇっよっ!!!」

またしても、先生のキテレツな叫び声に、私はハッとした
先生は慌てて立ち上がると、お尻をパンパン叩いた

「サボリ過ぎた・・・送れなくてごめん」
「・・・そんなの、いいです そんなコトされたら、かえって寂しくなっちゃいますから」
「ごっつぁんは・・・ヤツはああ見えてかなり寂しん坊だから、あさ美ちゃんが
 行ってやったら、すげー喜ぶと思う」
「・・・そうでしょうか?」
「あぁ・・・きっと、ね」

先生は昔よくそうしてくれたみたいに、私の頭をぐちゃぐちゃっと撫でると
またな、と小声で言いながら首を傾げ、笑った
私も、さよならの言葉は言いたくなかったし、なんて言っていいかわからないから
強く頷いて笑顔を返した

「・・・お元気で、姉のこと、お願いしますね?」
「あぁ・・・言われるまでもないね」

474永遠:2004/01/26(月) 15:23
先生は、両肩を竦めて見せた その皮肉っぽい物言いも、少しだけ意地の悪い笑い方も
すごく好きです・・・そして、こらからも、ずっとずっと好きだと思う

私が胸に焼き付けるように、その顔をじっと見てると、先生はにかっと笑った
そして、ひとつ頷くと白衣の裾を翻して行ってしまった

屋上で、一人きりになると、私は真希さんがくれたメールの文字を思い出した

・・・こっちは、空気も青空も夕日もキレイだよ
・・・いつか、見においで・・・

私は、辺りに人がいないのを確かめると、いま立つ場所に別れを告げる代わりに
新しい場所へと大声で、叫んだ

「いまから、行きますからねっーーー!!!」

475永遠:2004/01/26(月) 15:23
お姉ちゃん、元気ー?!
毎日が、あっという間に過ぎてく感じで、なかなか電話もしないでごめんね?
こっちは空気も食べ物もすごくおいしくって、私も真希さんも元気すぎるくらいだよ

この間ね、道を歩いてたら、お婆さんが真希さんを見て両手を合わせて頭を下げたの
真希さんは、 ははは、と、引きつった顔で笑ってたよ
あとね、朝起きると診療所の前に採れたての野菜なんかが置いてあったりするんだ
後藤は、お地蔵様じゃないんだよって、真希さんは困ったみたいに笑ってる

お医者さんが、真希さんしかこの村にはいないから
最近、難産になりそうな子馬の出産に立ち会ったんだ
無事生まれたんだけど、生まれてすぐ立ち上がろうとしては、膝を付く子馬に
母馬は優しい瞳を向けて、ただ、その体を舐めてあげていたんだ
その姿を見た時、これが見守るってことなんじゃないかなって、私思ったの

私は、お姉ちゃんの病気のことが分かった時、これからはお姉ちゃんは私が
守っていくんだって思ってた、だから看護婦にもなりたかった
私はね、お姉ちゃんが思うよりずっとシスコンだったから
それで、守ってあげてる気にもなってたんだ
だけど、お姉ちゃんは見た目の頼りなさと違って、内面は私なんかより
ずっとしっかりしてる
そのこと、ほんとは分かってたけど、認めたくなかった
ほんとは、私の方がお姉ちゃんを頼っていたことも

476永遠:2004/01/26(月) 15:24
いつだったか、お姉ちゃん家に行って先生が留守だった時があったよね?
あの時、お姉ちゃんこう言ったんだよ、覚えてる?
大切に想える人が目の前にいてくれる、そのことを幸せって呼ぶのかも
知れないねって
それで、おねえちゃん家からの帰り道で、偶然先生に会ったんだ
そしたらね、先生までこう言うの
愛しい人が目の前で笑ってる、そのことこそが幸せだって知ったんだ、ってね
お姉ちゃんと先生は向かい合ってた訳じゃないのに、おんなじ様に心が
満たされてる笑顔を浮かべてた
この二人は完璧だって、私、ちょっと感動しちゃった

だから、私も考えてみたの 私は何があれば幸せなんだろう?
何を見て、心が満たされるんだろう?って
そしたらね、真希さんの顔が浮かんだんだ

私は真希さんに自分の方を見て欲しいとは思ってないんだ
だけど、真希さんの瞳に映るモノを一緒に見て行きたい
そして、真希さんが何かに躓いたり、転んだりしちゃうことが
あったら、私が手を差し出せるくらいの近い場所にいたいって

477永遠:2004/01/26(月) 15:25

私とお姉ちゃんは、姉妹でそれはずっと変わらない
そういう目に見えて、ずっと確かに変わらない絆ってあるけど
その反対に、日々変わり続ける毎日を送るなかで
目には見えなくても、ずっと変わらないものがあるって
今の私には信じられるから
だから私達はもう、別の人を選んで、違う場所で生きて行く
それでいいんだよね?

きっと、お姉ちゃんなら、お姉ちゃんと先生なら
二人なら、どんな時でも微笑んでいられるって信じてるから

それじゃ、またね 今度は電話するよ

追伸
たまに、お姉ちゃんのアニメ声が、どうしようもなく
聞きたいなって思うんだ

                          
                         あさ美



                             End

478Sa:2004/01/26(月) 15:26
これでこのお話は完結でございます

何か感謝の気持ちを申し上げたいのですが
こちらを使わせて頂いた管理人様、読みに来て下さった方々
レスを下さった方々、その全てが作者にはありがたかった、と
最後にお伝えしたい気持ちはそれだけです
本当に、本当に、ありがとうございました(ペコリ)

479名無し読者79:2004/01/29(木) 17:59
お疲れ様です。
紺ちゃん…。なんかこの二人にも明るい未来が待っている感じがして
こちらこそ素敵な小説ありがとうございました。

48054:2004/01/30(金) 00:04
完結、お疲れ様でした。
こんこん視点、楽しませていただきました。
川o・-・)< わたくしを持って来るとは・・まさに完璧です!
いろんな溢れる想いが伝わって来ます。
こんこん、なかなか情熱的で行動的だったんですねw

最高の小説を読ませていただきました。
またここでお会い出来る日を楽しみに・・

481JUNIOR:2004/01/30(金) 05:59
更新お疲れ様でした。
相変わらず暖かい文章で・・・。
言葉にはなかなか表せられないほどの感情が
湧き上がってきました。

Saさん、またお会いできる日を心から待ってます。

482Sa:2004/02/16(月) 20:39
お礼のコトバでゴザイマ〜ス

名無し読者79様
 最後までお付き合い頂いて本当に
 ありがとうございましたっ!!!
 いつでも明るい未来を思い描いて行けたら
 イイですよねぇ〜?
 名無し読者79様の未来にも幸多かれ(ペコリ)

54様
 完結までお供して頂いて、本当に
 ありがとうございましたっ!!!
 川o・-・)ノ<ワタクシで楽しんで頂けるとは、まさに完璧ですっ
 作者にとってサイコ〜のオコトバの数々、パワーの源でした(ペコリ)

JUNIOR様
 ラストまでついてきてくれて本当に
 ありがとうございましたっ!!!
 温かい励ましのオコトバの数々に、いつも支えられていたんだなぁ〜と
 今更ながらに感謝の気持ちでイッパイです(ペコリ)

483名無し(0´〜`0):2004/03/14(日) 12:16
新作キボン!!強くキボン!!!!

484YUNA:2004/03/15(月) 18:19
初めまして!!!
最終回まで、うず②しながら待ってましたょ。w
今一気に読んだんですが、激しく涙が止まりません...
よかった、ハッピーエンドで...
紺ちゃん頑張れぇ〜♪
いしよしは、永遠に不滅なのれすっっっ!!!

485Sa:2004/03/31(水) 20:32
オォッ!!!
まだレスを下さる方がいらっしゃるなんて感激でございます

483様
 そう言って頂けるとカナーリ嬉しいです
 考えてるハナシはあるのですが、果たして書ききれるのか?自分(w
 メドがたちそうなら挑戦いたします
 面白くないかも?ですが、その時はよろしくお願い致しますね?

YUNA様
 初めまして〜〜〜♪
 YUNA様は、あのYUNA様ですよね?
 約束だの、永遠だの何気にカブッタタイトルを使ってしまってすみません(^人^;)
 涙して頂けるなんてモッタイナイッ!!!②←カナリスキ(w
 お読み頂いてありがとうございましたっっっ


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