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風のままに、君のままに

1匿名匿名希望:2003/08/02(土) 16:39
見切り発車で多分赤信号だらけだと思いますが、よろしくお願いします。
更新はかなり不定期で、長さ的には中編?もしくは・・・
本当に自分でもよく分からない状態ですがスタートです。

448D-R:2004/04/23(金) 20:48
一歩家の外に出れば、私は名前だけのお嬢様から解放される。
でも、解放されたって何が変わるワケでもなかった。
皆私を見ようとしない。
表にだけ目を向けてはすぐにそらす。
その行為は『見る』ではない。
そう、感じていた。
だから私は常に独りだった。
どこにいたって独りだった。

良い子になれば振り向いてもらえるのだろうか、悪い子になれば振り向いてもらえるのだろうか。
そんな風に思ったことなんていうのはなかった。
無理って感じてたから。
無駄って感じてたから。
繋ぎたかった手はそんなことしてもやってこないって、そう、わかってたから。
掴んだスカートの裾はいつしか薄くなり、ほつれ、そして穴があいていた。
そのスカートは、やがて消えてなくなっていた。
捨てた記憶はない。
だから、きっと捨てられたんんだと思う。

昔から人と上手く付き合うことが出来なかった私は話すことも、遊ぶことも、
どんな風にしたらいいのか分からなくて、いつも二重の窓から同年代の子達が遊ぶのを眺めていた。
春も、夏も、秋も、冬も。
ずっと、眺めていた。
一人で、眺めていた。

449D-R:2004/04/23(金) 20:49
この頃からすでに私は人に触れられることが好きじゃなかった。
多分、知ってたであろう手の温もりを再び知ることが怖かったんだと思う。
その温もりを知り、抜け出せなくなるのが怖かったんだろう。
繋ぎたいのに差し出された手を握れない。
矛盾してると気づいてたけど、私はどっちにも倒れることが出来ないでいた。

450D-R:2004/04/23(金) 20:50
右足を出して進む道も、左足を出して進む道も、足を置いた瞬間に他の道が透明になって
見えなくなっていった。
迷子とは違うのに、立っている所はいつも迷い道だった。
正解なんて、いつだって分からない。
決まってない。
そう思うことも出来ず、しようともせず、私は足を踏み出していた。

寂しくて、寂しくて、どうしようもない時もあった。
それでも、いつしか独りでいることを好むようになっていた。
傷の痛みも優しさの温もりも知らないままで。
無知なままで、その時以上のモノを望まないようにしていた。
私がどこで何してたって人は歩み、そして止まり朽ち果てていく。
それだけなんだ。
そう、割り切ってる。
そんな風に、思ってたんだけどな。
寂しさに負けて泣くことも、何かの理由で涙を流すことも、理由もなく涙を流すこと。
自分の中でのタブーになっていたのにな…。

流してしまえば私はきっと独りでいることに耐えられなくなってしまうから。
弱さを認めれば強がることが出来なくなる。
そう、思っていたから。
下唇を噛んで、鉄の味を感じれば逃げ去っていく私。
私は私を逃がし、そして何処までも、何処までも、ずっと、ずっと逃げていく。
無理に決まってるのに、そんな風に、してたんだ。

451D-R:2004/04/23(金) 20:50
***

毎日は淡々と過ぎていった。
寝て起きての繰り返し。
その間に何が入ったって何も変わりはしなかった。
話す相手もいない。
言葉を忘れてしまうんじゃないかと思う程、私は私だけとずっと一緒にいた。
本や勉強にも飽きると、私の向かい合う相手はモニターに変わった。
情報の渦巻く世界。
時間とお金を持て余していた私がその世界に溺れていくのにそんな時間はかからなかった。

交わされる陳腐な言葉を横に退け、私は狂ったようモニターに向かい、溢れ出る情報に目を向けた。
流れる時間の早さは、時折激しく感じる孤独を遠ざけてくれたから。
癒しとは違う感覚。
全てを麻痺させたように、何も感じさせることなく刻まれるリズムは深い深い闇への入り口だった。
一歩でも踏み込めば戻ってなんかこれない。
約束されることのない契約書に判を押し、私はその紙の上に血を垂らした。
そして知る。
私達の中にいるモノのこと。
そして私は過ちを犯す。

***

452D-R:2004/04/23(金) 20:51
成長すればする程、独りでいることが苦しく感じるようになってしまった。
それは成長してくにしたがってリアルになっていく痛覚によく似ていた。
見るモノ、聞く音、触れる痛み。
痛みを知れば、次からそれは感じる痛みに変わった。
その痛みは心の痛みにも繋がり、私の寂しさは他から入り込んでくる情報でも感じるようになっていった。
どんどん、弱くなっている気がした。

見て欲しい。
そう思ったワケじゃない。
でも、必要とされたかった。
重なる年齢、変わっていった身体。
鏡を見れば映る姿。
人の目に、この身体はどう映ったんだろうか。
求められたのはこの身体。
心なんてモノは必要ない。
私は必要とされたんじゃなくて欲しがられた。

初めてを差し出すことに、抵抗はなかった。
興味がなかったワケじゃないし、痛みの波は時間が経てば消える。
感触もきっとすぐに消えるだろう。
そう、思ってたから。

453D-R:2004/04/23(金) 20:51
求められたのは私じゃなかった。
分かってた。
私の身体だってこと。
だからどんなに痛みを訴えようとそんなことは関係ない。
そんな訴えは必要なモノじゃないから。
だから下唇を噛み続けた。
鉄の味がしようと、痛みの声は喉の奥へ、私自身は全部奥へと抑えこんだ。
耐えれば過ぎていく不快感や痛みはそんなに苦痛でもなかった。
足の間から血が流れた日の記憶なんて、あんまり残っていない。
痛いと感じたことも感触も、全てかすれていった。
わずかに残っている記憶なんて、その部屋が血のように濃い赤一色で埋め尽くされていたという記憶だけだ。

孤独感を拭う為に重ねたはずなのに、身体を重ねるごとに私の孤独は大きくなっていた。
痛みも感触もなかなか消えなくなった。
積み重なるように残り続けた。
それなのに求め続ける私がいて、泣けない私もいて、独りになるとただ空に目を向けていた。
何かを見てるワケでもない、見ようとしているワケでもない。
もう、下を俯き続けることが怖かったんだ。
もう、イヤだったんだ。

454匿名匿名希望:2004/04/23(金) 20:57
更新しました。
突然ですが、Dはあと2回か3回で終わる予定です。
ひっそりこっそりsage進行で行こうと思っております。

>JUNIOR 様

>んん!?なんて言ったんだー!!想像すればいいんですか?(想像中)
最後に言った言葉は明らかになる予定ですが、予定です(w
想像して下さい。
人それぞっす。
明らかになるかもしれない言葉は吉澤さんの言葉ですから。
行き着いてみないと分からないことって、すげー沢山あるんですよね。
行き着くまでが大切だったり、行き着いた先も大切だったり。
分からないことだらけっす(苦笑)

455JUNIOR:2004/04/24(土) 19:11
更新お疲れ様です。
私はいまだに想像してるの〜てんきな人です。
梨華ちゃん・・・。相当難しい過去を持ってるんだ・・・。
あと2,3回ですか・・・・。どんな結末になるか楽しみにしてます。
これからも頑張ってください。

456D-R:2004/05/02(日) 00:16
一度、入ってすぐに大学を辞めたことがあった。
理由は…なんだっけな。
多分たいした理由じゃなかったと思う。
近寄ってくる人がイヤだったのかな。
いや、どうだろ。
覚えてないや。
ともかく私は寂しいくせに、人が苦手だった。
だから最初はキライだった。

ほっといて欲しいのにつきまとってくる、本を読んでいたいのにかまってくる。
痛いくらいの笑顔を向けて、何度も何度も私のことを捕まえようとしてきた。
何がしたいのか、どうしたいのか、そんなの分からないけど、ただ、あの人は私につきまとってきた。

私なんかにつきまとう理由がさっぱり分からなかった人。
目的も見えない。
考えてるこても読めない。
何がしたくて、私に何を求められてるのかも分からなかった。

457D-R:2004/05/02(日) 00:17
不快だった。
私は人に触られるのが好きじゃない。
誰かに心の中に触れられるのも好きじゃない。
どこまでいっても他人は他人で私は私だ。
絡まることも、交わることも、全て表の薄皮一枚で起こること。
奥の奥の最後の一枚までは合わさるこてなんてなく、破られることもない。
きっと、この先どこまでもこんな風に進んでゆくのだろうと思っていた。

何度も無視した。
距離をできるだけとろうとした。
なのに、距離は開かず、逆に近づいていった。
近づいてくるくせに、深いところには入り込んでこようともしない。
興味がないのか、それともどうでもいいのか。
ともかく私にはさっぱり分からなかった。
でも、触れて欲しくて、触れて欲しくないところに無理に入りこもうとしてこない彼女は
イヤでもなく、キライだった。

…なのに私は、彼女に近づこうとしていた。
理解出来ない。
私のことなのに私は私を理解出来なかった。
寂しかったのか、それとも彼女の側の温度が、近づいてきた時の温度を少しでも心地よい、
そう感じてしまったのかもしれない。

458D-R:2004/05/02(日) 00:17

***

私は強くなろう。
そう思っていた。
思うとしていた。

***

459D-R:2004/05/02(日) 00:18
彼女と同じ時間を過ごすことが増えた。
彼女と一緒にいると今まで隠れていた自分が溢れてきた。
それは私の知らない自分で、知られることも、知ることも、全てが新鮮で、全てが恐怖と隣り合わせだった。
知られることで去られること。
私自身が気付かないうちに現れている違う私。
はたしてそれは私なのか。
本当に、私なのか。
同じなのに、違う自分がいて、違うのに、それは私。
そんな恐怖があったのに、私はずっと私でいられたのは、どんな私も彼女が受け入れてくれたから。
隠す必要もなく、抑える必要もなく、ただ、私は私でいればよかった。


一度手放してしまった孤独。
彼女の背中を追わない時間、その孤独を感じる量が増えた。
自ら壊してしまった壁。
それは時を過ごせば過ごす程細かくなり、かき集めることも、もう一度作ることも出来なくなった。
私は自分を知られることで彼女が私から放れていってしまうことに恐怖を感じるようになった。
…なのに、知って欲しかった。
もっと、私を知って欲しかった。
私の、全てを知って欲しいと感じてしまった。

460D-R:2004/05/02(日) 00:20
だからだと思う。
彼女を部屋に招き入れたのは。
私がどんな家の子で、私の周りにはどんな人がいるのか。
知られて消えてしまう恐怖よりも、知って欲しいという欲望の方が勝ったのだ。
そして彼女の人生を狂わせてしまった。
なのに、私には悲しみだけが訪れるのではなく、むしろ一つの輪の中に彼女が一緒に入ってくれた。
こんな気持ちも訪れていた。
最低だと思う。
自分で、自分を最低だと、強く思った。
それなのに、この、胸の奥から出て来る気持ちを抑えることは出来なかった。

あの日の夜だって、そのまま彼女を車で家まで送ることだって出来たのに、
そうしなかったのはこの輪から彼女がまた出て行ってしまうのがイヤだったから。
自己中、私の我がまま。
あの日、私は彼女にもっと知って欲しかった。
もっと私のこと、私の周りのことを知って欲しかった。
結果、彼女をこんなにも追い詰めることになるのに。

引きつった笑顔で泣き、笑い、そして震える彼女を抱きしめた時、私はどうしようもない罪悪感に包まれた。
彼女に何も罪はない。
私の我がままで彼女を振り回し、ここまで追い詰めた。
壊した。
彼女を。
彼女から平凡な日常、こんな言葉を奪い去った。

461D-R:2004/05/02(日) 00:21
何日も彼女に会わないかった日。
満たされていないと気付いた。
私にとって必要な人、そしてもっとも恐るべき人。
それが彼女だ。
彼女と一緒にいつことが私の生活の一部になりはじめていた。
言葉が欲しくなった。
存在が欲しくなった。
あの、隣で感じられる温かさが欲しくなった。
変わってしまった私達の間。
変わってしまった彼女。
だけど、彼女は、彼女だった。
どんな風になっても、どんな風に泣いても、笑っても、震えてても、彼女は彼女。
そして、私は私。
怖がられて離れられてくと思ってたのに、彼女は私の腕の中の強さを求めてくれた。

だからだと思う。
きっと、生まれた初めてこの言葉を言ったんだと思う。
そんな言葉だけで許されるものならば、私は何度でも叫ぼう。
そして、彼女に何度でも言おう、そう、思った。
子供のように泣きじゃくる彼女を抱きしめながら、私は何度も、何度も、心の中で謝罪の言葉をくり返した。

462D-R:2004/05/02(日) 00:22

全ては私からだ。
溢れる情報の中から見つけた薬。
受け取ったのも私。
使ったのも私。
そしてそれで全ての人の人生を狂わせたのも私。
彼女の心に、深い傷を作ったのも私。
私はいつも自分ジブンだった。
傷つくことを恐れ、そして人を傷つけ、私は私を守り続けていた。
我がまま。
そして最低なのが私。
これが、私。
こんな私があの熱い手を握ることなんて出来ない。
同じ世界に生きることなんて出来ない。

463D-R:2004/05/02(日) 00:23
彼女の歯車を狂わせてしまった直後、私は私達の運命を知る。
一つの芽から下へと伸びる線を辿り、知ったこと。
『D』のこと。
私は自分の中にあるDのことを知った時、泣き崩れることもなく、ただ、その文面に目を向けていた。
そして運命という言葉があるのなら、こんな私にも運命というのはあるんだと、そう、思った。

抜けだせない横の繋がり。
知られている私のこと。
そして、彼女のこと。
『殺せ』
こう言われた時、冷静な自分がいた。
どっちにせよ、私と彼女は消えてしまうんだ。
そう、もうすぐ消えてしまうんだ。
彼女が消えれば私も消えよう。
何かに取られて奪われてしまう前に私が消してしまおう。
そうすれば彼女は何処にも行かない。
彼女に抱いている気持ちは恋愛感情とは全く別のモノ。
欲しい。
この独占欲。
だから、彼女も消して、私も消えようと思ってた。

464D-R:2004/05/02(日) 00:24
なのに、私は彼女との生活が心地よいと感じ、何度も眠る彼女に向けた引き金を引くことが出来なかった。
まだ時間はある、まだ、時間はある。
日は一日一日と経っていき、その毎日の中で、彼女の眼差しは私だけに向けられていた。
それが私の引き金の引けない理由の一つ。
向けれられたことのない私だけへの眼差し。
彼女は気付いていなかったけど、私は、それが心地良かった。
そして引き金を引けない毎日は続き、彼女の中からはDが強く出始めた。

465D-R:2004/05/02(日) 00:25
『何がしたいの?』

この言葉を使った私は卑怯だ。
私が欲しかった回答を私は彼女に求めた。

私はしたいの。
私は欲しいの。
私はあなたに全てを見て欲しいの。

彼女が言った『抱きたい』という言葉。
それは私の願望。
欲望。
全部、彼女に向けられているモノ。

言葉以上に瞳は饒舌だ。
私は、彼女の瞳の中に言葉を見た。
あんなにも優しく、あんなにも悲しそうな目で見つめられたのは初めてだった。
流すことも出来なくて、受け止めることも出来なくて、ただ、その目を見つめた。
だから私達は見つめあった。

466D-R:2004/05/02(日) 00:27

私は生まれて初めての恋に落ちた。

初めてだった。
人に愛されていると感じたのは。
初めてだった。
ベッドの上で何もされずに大事にされたのは。
重ならない唇と、動かない腕。
体の動きを止めた彼女から伝わった痛いくらいの気持ち。
私が彼女に対して抱いていなかった想い。
そう、その瞬間までは抱いていなかった想い。

467D-R:2004/05/02(日) 00:27
すぐに視線を逸らして、すぐにソファーに横になった彼女は気付いていなかったが、
私はあの後、一瞬で自分の中で生まれてしまった感情をどうすることも出来なくて、
自分で自分の首にずっと手をかけていた。

胸の痛みは治まらない。
欲する欲望も治まらない。
首に手をかけたままベッドの上で天井を見つめていた。
この手の下には彼女の手があった。
その上に自分の手を重ねている。
取り込もうとしていた。
彼女は、私を。
そう思うと、どうしようもなく濡れてきた。

欲していいるのは体だけじゃない。
欲しいのは私の中で動く指や舌じゃない。
見て欲しかった。
私を。
眠っている彼女に、見て欲しかった。
彼女に、全てを知ってもらいたい…

私は、朝日を背中に受けながら、裸のままで彼女の寝顔を見つめ続けた。

468匿名匿名希望:2004/05/02(日) 00:33
更新しました。
あとちょっと。

>JUNIOR 様
>私はいまだに想像してるの〜てんきな人です。
私もきっと探してる途中です(苦笑)
吉澤さんの答え、私の答え、はたして同じなのかどうかは疑問です(爆

石川さん、書けば書く程私が罠にハマっていくんです。
そして、終わりが見えてるはずなのにどうしてか遠い。
ゴールテープをきるまで後わずか。
あれっす、最後の直線に入ったってところですかね。
いつもレスありがとうございます。
頑張るっす。

469JUNIOR:2004/05/02(日) 10:26
更新お疲れ様です。
あと少しですね・・・。
梨華ちゃんは胸のうちはこんな事思っていたんですね、ずっと・・・。
自分は寂しいのに人が苦手。なんとなくわかります。

最後の直線・・・・・・。
もうすぐ終わると思うと悲しい・・.゜.(ノД`).゜.
頑張って、最後まで全力で走り抜けてください。

470D-R:2004/05/06(木) 18:18
彼女を消すことにためらいを覚えた。
残りの日を、彼女と一緒に過ごしたいと思ってしまった。
この小さな空間から彼女を解き放つことなく、私だけを見て欲しい。
もう一日、彼女と同じ空間で、この心地よい温度を感じていたかった。

大切だと思ってしまった彼女。
だから彼女には私の一番大切にしていた思い出の場所を見てもらいたかった。
全てを知ってもらいたかったから。
思い出も、私のことも、彼女のことも。
そして、そこで全てを終わらせようと思った。
私は最後の最後まで我がままで、最後の最後まで彼女の運命を弄ぶ。
だって、彼女の体も手に入れようとしてしまったから。

471D-R:2004/05/06(木) 18:19
最後の夜。
私は彼女に睡眠薬を飲ませていた。
紅茶に混ぜた私の欲望。

欲しいの、あなたが。
感じたいの、あなたで。
聞いて欲しい。
私の声を、私の言葉を。
歪んだ愛情。
これを愛情と呼んでいいのかは分からないが、私は、彼女が以前よりももっと欲しかった。
そして全てを見たかった。

ボタン一つ外す行為ですら私の体は震えた。
沢山聞いて欲しいことがあった。
もっと、もっと彼女を見つめながら話したいことがあった。
彼女を包み込んでいた布を全て取り去っると露になった自分とは違う肌の色。
白く、そして美しい肌。
それは彼女に恋をする前に見た時よりも、もっと、美しく見えた。

472D-R:2004/05/06(木) 18:20
自分の服を脱ぐという行為にさえ、私の指は震えていた。
一枚服を脱ぐごとに、彼女に愛されているという錯角に落ちた。
体が熱くなっていくことを感じ、彼女の唇をなぞった指で自分の唇をなぞるだけで私は欲情した。
ここまで欲しくなるのはDのせいなのか。
それとも、ただ、私が彼女を欲しいのか。
分からない。
でも、私は欲しかった。
そして、もっと、聞いて欲しかった。

彼女の体を仰向けにし、その上に自分の体を重ねた。
少し冷えた体と体。
密着した部分から彼女の温もりが流れてきた。
胸に耳を当てたら聞こえる心臓の鼓動。
生きている証。
耳を胸に当てたまま、私は沢山のことを彼女に話した。

473D-R:2004/05/06(木) 18:20
───死んじゃったらさ、意識ってどうなっちゃうんだろうね。
Dに飲み込まれること、それって意識を失うことなのかね。
だったら、死んじゃうってことなのかね。
そんなんじゃ『生きてる』なんて言えないよね。

昔ね、死んだらどうなっちゃうんだろうって考えたら眠れなくなっちゃったことがあったんだ。
このまま眠って、目を覚まさなかったら私どうなっちゃうんだろうって。
怖かった。すごく怖かった。
想像なんてしても想像出来なくて、ともかく怖かった。
今もね、考えると怖いの。
すごい、怖いの。
でもね、あなたと一緒なら、大丈夫だと思うの。
今なら、そう、言える。
思うだけで、少しは怖くなくなるんだよ。
一緒になんかいれるはずないのにね。
でも、思えば、そう、思えば、ちょっとは怖くなくなるんだ。


ねぇ、あなたは私を抱いてくれる?
私のこと、愛してくれる?
私のこと、ずっと、ずっと見ててくれる?
こんな私だけど、愛してくれる?
今だけ、愛してくれる?───

474D-R:2004/05/06(木) 18:21
尽きることのない言葉。
生まれては吐き出され、私の息が彼女の胸を駆け抜けた。
言葉のない返事を胸の鼓動で確かめ、そっと指を腹や胸や鎖骨や頬に滑らせた。
口元から規則的にくり返される呼吸を指で感じ、同じように唇でも感じた。

475D-R:2004/05/06(木) 18:22
───自分が人から愛されるような人間じゃない。
そう、分かってる。
それでもいい。
今だけでいい。
全て忘れられる程にあなたが欲しくて、私を愛して欲しいの。
そう、今だけでいいから───

476D-R:2004/05/06(木) 18:23
薄く開いた唇から舌を入れて彼女の中の熱さを知った。
触れた唇の温かさや、触れた頬の柔らかさを知った。
唇でなぞる全ての部分が愛おしくて、全部、私だけのものにしたかった。
他の人が触れたことがあると思うだけでも食い千切りたくなった。

白い肌に指を這わせ、胸の先端を口で含んで舌で転がした。
固くなるのが嬉しくて、愛のない愛を感じた。

私は体中を愛した。
口付けしてない場所なんてないくらいに夢中で彼女に唇と舌を這わせた。
食べて一つに溶けてしまいたい。
お互いを縛るモノを全てなくし、彼女と溶け合ってしまいたかった。

Dが私ならよかった。
私が彼女の中に溶けていればよかった。
彼女を取り込み、私が彼女に、彼女が私になる。
自分で自分を愛し、自分で彼女を愛し、彼女に私は愛さあれる。
背中が溶けてしまう程に熱く、私の胸を焦がす程に熱く。
この指が彼女の指になり、彼女の指が私の指に変わる。

渡したくない。
彼女をDなんかに。
失わせたくない、彼女を他の何かに。

477D-R:2004/05/06(木) 18:24
私は独占欲の固まりだ。
駄々をこねて欲しがる子供。
同じようなモノを持つ体。
同じ所を同じ部分に重ね合わせれ私は彼女と解け合えるだろうか。
そう思って重ねた体。
胸、足、腕、唇。
重ねた所から快感が走り抜け、私から理性という言葉が抜け落ちていった。

下手くそな愛撫よりも感じる彼女の指。
こんなやり方間違っているって分かっていても、私は彼女を求め続けた。
荒くなった息。
背中を伝う汗。
全て、彼女に捧げるもの。
今だけ、愛されてると実感できていた証拠。

…違うのは分かってる。
なのに、彼女の肌触れている時間、私は私だけの世界から抜けだせていた。
終わった後のこの激しい胸の痛み。
私は最悪の状況をつくり出し、彼女を辱め、そして彼女の肌に触れた。

478D-R:2004/05/06(木) 18:25
最後の夜。
残りわずかな時計の命は、私が彼女の唇に唇で触れている間にその時を止めた。
永遠のカタチにもならない動きを、その時に刻み込んだ。

終わってしまえ、何もかも。
終わらせてしまえ、私自身も。

降り出した雨を見つめながら、私は彼女の手に自分の手を重ねてみた。
その手は、やっぱり熱すぎた。

479D-R:2004/05/06(木) 18:26
───愛されるような人間ではない私が愛した彼女。
私の記憶に残る優しい風が吹く場所。
最後の時を過ごそうと決めた場所。
ここで全てを終わらせよう。
彼女に全てを知ってもらおう。
そして、選んでもらおう。
どこまでも私は彼女の歯車を狂わせ続けた。
最後の、最後まで───

480D-R:2004/05/06(木) 18:27
まっすぐなひとみは語る程にその姿を隠すことが多くなった。
Dの激しい侵食。
時間のない時間。
彼女は混乱をし、そして私も今まで言葉となって外に出ていくことのなかった感情が溢れ、
彼女と同じように、いや、彼女以上に私が私を管理出来なくなった。

溢れる言葉は止まることを知らず、私は止め方を知らない。
吐き出される想い、彼女の愛を知っていながらに否定をし、そして愛を求めてた。
冷静でいられなくなる私とは反対に、彼女はどんどんと落ち着きを取り戻しているようだった。
そのひとみは私を捕らえ、そして私から最後の鍵を簡単に取り上げた。
転がるように落ちていった私。
Dが私の体を犯していくのに気付いていた。
なのに、止められなかった。
私は、その吐き出しているその時、今までにない幸福感を感じていた。

481D-R:2004/05/06(木) 18:28
彼女の運命を全て狂わせた私。
そんな私なのに、最後の最後まで彼女の運命を弄んでしまった私なのに、
彼女は私から目を反らすことなく、むしろ無ではない目で私を見ていてくれた。
私という人物を見てくれて、私というカタチを見てくれる。
向けられている視線は私だけのもの。
こんな私なのに、見てくれている。
涙が流れた。
彼女を見て、涙が流れた。
もう独りでいることにおびえないでいいって分かったから。
この人なら側にいてくれるって分かったから。
そして昨日の夜のことを思い出し、私は涙を流し続けた。

482D-R:2004/05/06(木) 18:29
戻れない時。
止められなかった自分。
ほんの少しの勇気も持たず、ただ自分を守り続け、相手を傷つけ続けた。
なのに、彼女は答えてくれた。
私に、答えを教えてくれた。
夕べ、私が犯した罪を知らずに自分の手を打ち抜き、短い一生を選んでくれた。
私といることを選んでくれた。

重なる罪の意識。
戻れない時と、戻れない私。
答えを探し出せない私に手を差し伸べてくれて、同じように引き金を弾いてくれた。

痛みは感じなかった。
これがDというものなのか。
それとも、私がもう麻痺をしてしまっていたんだろうか。
流れる赤と、砕け、流れてしまった破片。
戻れない時を選択し、血を混ぜ合わせるようにして掴んでくれた手。
彼女との融合。
体でも、心でもなく、血の融合。
掴んだ手から流れてくる熱さは私に熱をくれ、包み込まれて感じた頬の熱さが私の涙と溶け合った。

483D-R:2004/05/06(木) 18:30
『私から、はなれないで』

こんな言葉を使うなんて思ってなかった。
自然と出てきた言葉。
Dの消えた私から出た私の言葉。
彼女は泣いた。
そして彼女は笑った。
濡れた手を掴み、私をこのまま連れ去っていく。
何処まで進めるかなんて分からないまま、幼い私達は進んでいく。
繋いだ手の熱さ、それを知り、それを幸福と感じなから。

484D-R:2004/05/06(木) 18:31
***

あの日、降り続く雨の音と風の音と共に辺りを支配した音と叫び声。
はじまりは私達のはじまりだけではなかった。
私は、愛されていた。

ずっとお父様は私のことを憎んでいるのだと思っていた。
ずっと、ずっと私は愛されていないと思っていた。
全て、それが間違いだなんて気付かずに。

逃げるように、隠れるようにしていた私達のもとに届いた私宛の手紙。
見なれた文字で綴られた言葉。
私はその手紙を抱きしめて涙を流し、長い年月、間違いを犯し続けていたことを悔やんだ。

お父様は私達の為に初めてお爺さまに逆らってくれた。
身寄りのないお父様を引き取ってくれたお爺様。
私はお父様がお爺様に逆らったところなんて一度も見たことがなかった。
それが家では当たり前で、他の答えというのは存在しなんだと思っていた。

485D-R:2004/05/06(木) 18:32
私の写真をずっと大切に持っていてくれたなんて知らなかった。
私を殺せと言ったのはお父様じゃなかった。
私の為に涙を流し、私の為に今までの生活を捨てたことも知らなかった。
お母様がずっと泣いていたことも知らなかった。
何も書かれていなかった弟のことは、今でも分からない。
それがお父様達の優しさだったのかどうかは分からないが、私は消えない罪を一生背負っていく。
そう、そうしなければいけないと思う。

私は何処までも子供で、結局は何も分かってなかった。
見ようとしていなかったのは私の方だった。
ちゃんと、真直ぐと見ていなかったのは私だったんだ。
最後に書かれた一つの言葉。
それは私がお父様とお母様の子供だったという証拠。

もう戻れないあの部屋。
もう戻れないあの家。
消えてしまった空間に、今は緑の草がはえている。
暗く閉まりきった扉は砂となって消え、いつかここにはまた誰かが何かを築くのだろう。
それは私ではない誰かで、彼女ではない誰か。
いつの間にか熱くなっていた私の手は彼女と握られ、そしていつかは消えていくのだろう。

486D-R:2004/05/06(木) 18:33
起きた奇跡は一つじゃなかった。
だからこうして私は彼女と生きていられる。
残っていた破片。
Dは私、Dは彼女。
残った破片は私達に生きる力を残してくれた。
私はD、彼女はD。
同じDを持ち、違うからだを持つ。

残された時間なんて分からない。
それでも私は彼女を選ぶ。
あの時、私が犯した罪を受け入れてくれ、そして、愛してくれた彼女と共に。

487D-R:2004/05/06(木) 18:34
***

「…梨華ちゃん?」

だからこの言葉はあなただけにあげる。

「どうしたの?難しい顔して」

この体も、全部、全部あなただけにあげる。
私を、全部あげる。

「ん、ちょっと、昔のこと思い出してた」


そして私は生きる。
『幸せになる為に生きている』
こう教えてくれた彼女と一緒に。
ずっと、ずっと、どんなカタチになろうと、生きていく。
いつかは消えてしまうものでも、私は生きていく。
これがあなたの幸せに繋がっていくのなら。
それが、私の幸せだから。

488D-R:2004/05/06(木) 18:34
***

489D-R:2004/05/06(木) 18:35
***

490D-R:2004/05/06(木) 18:36
***

491D-R:2004/05/06(木) 18:36
***

492D-R:2004/05/06(木) 18:37
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493D-R:2004/05/06(木) 18:37
***

494D-R:2004/05/06(木) 18:37
***

495匿名匿名希望:2004/05/06(木) 18:45
更新しました。
そして今回で『D』は全て終了です。
読んで下さった皆様、本当に本当にどうもありがとうございました。


>JUNIOR 様
生まれたてほやほやで更新しちゃいました。
勢いがないといつまでも更新しない気がてしまったので(苦笑)
最後の直線、全力ダッシュをしてしまい、気付けばゴールテープをきっていました。
レス、本当にありがとうございました。

496JUNIOR:2004/05/06(木) 23:54
完結お疲れ様です。
とてもとても(・∀・)イイ!話でした。
ゴールテープを切っていましたか・・・・・・・。
それはそれで良い記録が生まれたと思います。
飼育でも頑張ってください。

497名無し(0´〜`0):2004/05/07(金) 01:07
感 動 し ま す た。

完結お疲れ様でした。


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