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(#´▽`)´〜`0 )<Let's レスぽんど!

1名無しよっちぃ:2002/11/09(土) 23:58

あるワンフレーズに心を奪われたこと、皆さんありませんか?

ここはそんなワンフレーズを搾り出し、惜しまずどんどん
放出していこうという、憩いの場という皮を被った訓練所です。


詳しくは>>2->>3で。

222I’m With You:2003/06/16(月) 21:08

彼女は私の耳元にゆっくりと唇を寄せる。


「今でもまだ、私の事が好き?」

223I’m With You:2003/06/16(月) 21:08

五年前。急に居なくなった彼女。
その数日前、駅で昔の好きだった男に会ったと言っていた。

あまりにもその事を嬉しそう話す彼女の目の前で、
包丁をわき腹に当てた。
見せしめように。
ウチにはあなたしか居ないと。


滲む血液。

冷たい手で止める彼女。

224I’m With You:2003/06/16(月) 21:09

「結婚した・・のは。五年前の・・人?」


そうでなければいい。

そうでなければ少しは救われる。


「そうだよ。」


すべては混沌として。

何もかもが灰色がかって見えて。

何処にも救いは無くて、
これは雨なのか、涙なのか。

何も見えない。

何も見えない。

225I’m With You:2003/06/16(月) 21:09

ただ、昔の情景だけがグルグルと頭の中を
回っていた。


「ねぇ。もう一度やり直さない?」

甘く甘美な響き。

「だって、あやか・・結婚して・・。」

手を引っ張られて、無理矢理歩かされて、
気が付くとそこは、ラブホテルだった。

226I’m With You:2003/06/16(月) 21:10
「此処、何処だか分かる?」


ウチは頭を振る。


「私達の初めての場所。」

227I’m With You:2003/06/16(月) 21:13

この人が何を考えているのか、
ウチには理解する事が出来なかった。

ただただ、繋がれた手の、その懐かしい体温と温もり。

あの日々と変わらない気持ちが湧き上がる。

でも。

これじゃいけない。

これじゃいけない。


だけど。

228I’m With You:2003/06/16(月) 21:14

ウチはその時もまだ、石川さんの事を考えていた。

(石川さん待ってるかな?)

あのソファーに、一人で座りながら。

冷たい雨にウチがうたれていないかと、
心配しながら。

229 I’m With You:2003/06/16(月) 21:15

この雨は、いつ止むんだろう。

230jack:2003/06/16(月) 21:16

続く。

231 I’m With You:2003/06/18(水) 21:19

石川さん。

今になって、あなたの気持ちが痛い程分かる。

232I’m With You:2003/06/18(水) 21:21

好きってなんだろう。

誰かを一番好きになった時。

ほんの少し不安な気持ちになる。

会えない時間。

寂しい時間。

ウチは誰が好きなの?

どうしててこんなに心が揺れるの?

233I’m With You:2003/06/18(水) 21:21

大丈夫。
大丈夫。

一人でも大丈夫。

その理由を必死で考えた。

自立した大人だから。

もっと苦しい思いをしている人がこの世の中に
たくさんいる。

ウチはまだ、幸せだ。

又新しい人を探せば良い。

あの時そう考えた。

眼下に広がる、ネオンを眺めながら。

234I’m With You:2003/06/18(水) 21:22

「ひとみ。何考えてるの?」


幸せになろう。

生涯を誓おう。


永遠を誓おう。


だからこの人じゃ無くても大丈夫。

ただ、囚われていた。

思い出と。記憶に。

235I’m With You:2003/06/18(水) 21:23

「ねぇ。」

ウチはあやかの挿す傘から抜けた。

「ねぇ。あの時。あの時思ったんだ。」

ウチは目を瞑る。

「あの時?」

236I’m With You:2003/06/18(水) 21:23

そこは高い高いビルの屋上。
下にはたくさんの光。

あそこに落ちていけば、きっとウチは楽になれると思った。
苦しみから開放されると思った。

だけど出来なかった。
飛び降りなかった自分を、臆病者だと思った。

237I’m With You:2003/06/18(水) 21:24

「ひとみ?ねぇ。もう私の事好きじゃ無いの?
 あなたあの時言ったじゃない。私の事いつまでも好きだって。」

ウチはあやかの髪を撫でた。ゆっくりと。

「ウチは、あなたが好き。あなたがどんなに
 他の男と付き合っていても。あなたの事を一番愛してた。」

この命をかけて。この心をかけて。

あなたと一緒に。ずっとずっと。

238I’m With You:2003/06/18(水) 21:24

ウチは髪を撫でる手を止めて。


「ねぇ、あやか。何がそんなに悲しいの?」


涙が出た。

石川さんを想った。

あの人は全部知っていたんだ。


ウチが誰かに恋焦がれている事を。


それなのに側に居てくれた。


何も望む事も無く。

239I’m With You:2003/06/18(水) 21:25

「あやか。ウチ、今でも好きだよ。だって決めたんだ。
 ウチが心から愛する人はあなただけだって。」
「だったら・・。」


目の前の人が、突然哀れになる。


この人は愛されたいんだ。身も心を委ねられる。
本当に自分を理解してくれる人に。

たとえ誰かと永遠を誓ったとしても。

我侭だね。

240I’m With You:2003/06/18(水) 21:25

ウチも同じだよ?

だから。

だから。

241I’m With You:2003/06/18(水) 21:26

「ウチの事をこの世で一番愛してくれる人がいるんだ。」


ウチもその人の事が中々好きなんだ。
あなたの時程では無いけど。

だけどあなたがくれなかったものを、たくさんたくさんくれるんだ。


「ごめんね。」


そう言ってウチは背を向けた。

うらびれたラブホテルの前で。

びしょびしょに濡れていたけど、
気にはならなかった。

242I’m With You:2003/06/18(水) 21:26

帰ろう。石川さんの所に帰ろう。

そして何もかも話すんだ。

そして、一緒に。

ウチと一緒に居て下さいって言おう。


今迄ごめんね。って。

243I’m With You:2003/06/18(水) 21:27

その時後ろで、水の跳ねる音が聞こえた。

ウチはゆっくりと振り返る。



ああ。そうだ。

そういえば昔。神様にお願いした。



消えて無くなりますように。って。

出来ればあやかの目の前でって。

244I’m With You:2003/06/18(水) 21:27

雨にまじり、赤い液体が道を染める。

245I’m With You:2003/06/18(水) 21:28

「嘘付き。嘘付き。」

あやかが呪文のようにそう呟き続ける。
ウチのわき腹にギラギラ光るものを突き刺しながら。

246I’m With You:2003/06/18(水) 21:29

石川さんが待ってるんだ。

あの部屋で。

ウチの事だけ待っているんだ。


今度一緒に、海を見に行くんだ。
いつも寂しくなると海を見に行くんだよって、
まだ教えていないんだ。


たくさんたくさん、話しをするんだ。

247I’m With You:2003/06/18(水) 21:29

石川さん。

梨華ちゃん。


ウチと一緒に。

いつまでも・・・


いっ・・しょ・・・に・・・・



ウチの・・事・・



心・・・から




愛シ・・・・テ

248jack:2003/06/18(水) 21:30

続く。

249名無し(0´〜`0):2003/06/19(木) 01:35
連続更新多謝

250オガマー:2003/06/20(金) 07:51
やべぇ・・
泣けた。
どうなるんだ、よっすぃ〜!!

251名無し(0´〜`0):2003/06/20(金) 19:33
いい!

252名無し(0´〜`0):2003/06/20(金) 19:46
。・゜・(ノД‘)・゜・。よっちぃ〜〜〜
どうなっちゃうんだろ?(オロオロ

253 I’m With You:2003/06/24(火) 19:40

あなたには『特別』な人がいますか?

その人は、あなたの隣で笑っていますか?

254I’m With You:2003/06/24(火) 19:41

色とりどりの花が毎日私を向かえてくれる。
あれから五年。今日も私はあなたを想う。

寂しそうな、それでいて透明な瞳を持った、
この世でたった一人の私の『特別』な人を。

255I’m With You:2003/06/24(火) 19:42

「いらっしゃいませ。あれ?」
「よっ。石川。元気でやってる?」

軽く手を上げて現れたのは、このお店の一番の常連客。

「保田さん。こんにちは。」
「はい。こんにちは。っと。」

私は黄色いヒマワリをたくさん腕に抱える。

「まだあいつの事好きなの?」

私は黙って頷く。

256I’m With You:2003/06/24(火) 19:42

「そう。ねぇあんたもそろそろ」
「保田さん。」

保田さんの言いたい事は痛い程分かる。

『早く新しい人見つけなよ。』
『あんただって幸せにならなくちゃ。』

「私はもういいんです。この世でたった一人の人と
 もう出会ったから。もういいんです。」

257I’m With You:2003/06/24(火) 19:43

あの人が私のたった一人。

可笑しいかな?
世界には、たくさんの人がいるのに。

でも私にはあの人だけで。

258I’m With You:2003/06/24(火) 19:43

まだたくさん話したい事があったのに。

たくさん伝えたい事があったのに。

私の中のあの人は、いつも寂しそうだったから、
私が幸せにしてあげたかった。


それとも少しは幸せだったのかな?
こんな私でも、少しは幸せにしてあげる事が出来たのかな?

259I’m With You:2003/06/24(火) 19:44

「ほんとにこのままでいいの?」

私は黙ってうなずく。
腕の中のヒマワリも一緒になって震える。

「そっか。」

それ以上は何も言わず、保田さんはただ少しだけ
寂しそうに笑った。

260I’m With You:2003/06/24(火) 19:45

今日は、あの人が消えてしまった日。


今でもあなたを想う。

永遠にあなただけを想う。

261I’m With You:2003/06/24(火) 19:46

時々、胸が張り裂けそうな程痛いけど。

一人の部屋で、声を殺して泣く日もあるけど。


だけど、あなたを愛してる。

あなただけを愛してる。


私はあなたとずっと一緒に居る。

ずっと。ずっと。ずっと。

262I’m With You:2003/06/24(火) 19:46

「保田さん。お店もう閉めますよ。」
「はいはい。んじゃ、又来る。」

手を振りながら保田さんは帰っていった。
ピンクのチューリップを一本買って。

263I’m With You:2003/06/24(火) 19:47

今もまだ、あの部屋を引っ越せずにいる。
吉澤さんとの思い出がたくさん詰まった部屋。

あれから何も変わっていないような気がする。

変わったような気もする。

264I’m With You:2003/06/24(火) 19:50
ポツポツと雨が降って来た。

「ただいま。」

今はもう誰も尋ねてはこないこの部屋に私の声
だけが虚しげに響く。

私は窓の外の雨を暫く眺める。

優しい雨音が、心地良い子守唄に聞こえる。


ウトウトと意識は遠い遠いまどろみの中へと。

265I’m With You:2003/06/24(火) 19:53

『石川さん、ほら、こんなとこで居眠りしてると、
 風邪引いちゃうよ。』
『ごめんね。ウチ道に迷っちゃって。帰ってくるのに
 五年もかかっちゃったよ。なぁ〜んて。』
『もう、ほら。早く起きてよ。』

何処か遠くの方で誰かの声が聞こえる。
心地良い。低い声。

私はなんだか、ひどく心地良くて。

266I’m With You:2003/06/24(火) 19:55

『でも、やっぱり待っててくれたんだね。』

ああ、これは吉澤さんの声だ。
夢の中に出てきてくれたんだ。


ありがとう。


アリガトウ。


吉澤さん。大丈夫。大丈夫だから。
私はいつまでも待ってるから。

267I’m With You:2003/06/24(火) 19:57

「石川さ・・梨華ちゃん。愛してる。ただいま。
 これからはずっと一緒に。」

頭の上に手が置かれた。
温かい。優しい手。

私はその声と温もりに安心して、深い眠りへと落ちた。


ずっと一緒に。

ずっと・・ずっ・・と、一緒・・に。

268I’m With You:2003/06/24(火) 19:58


END

269jack:2003/06/24(火) 19:59

終わりです。読んでくれた皆さん。ありがとうございました(w

270名無し(0´〜`0):2003/06/25(水) 19:36
。・゚・(ノД`)・゚・。泣きました。
最高でした。ありがとうございました。

271名無し(0´〜`0):2003/07/20(日) 20:09
あ〜〜〜〜jackさんの新作読みたい!読みたい!読みたい!!
気づいてくれないかなぁ〜


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