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約束なんかじゃない。

1オガマー:2002/10/03(木) 11:08
ちょっとばかし気まぐれがおきたのでスレ立てさせて頂きます…。
よろしくお願いします。

467あなたが寝てる間に(仮):2003/02/20(木) 13:43


あれから、ひとみはほんとに真希の病室にやって来なくなった。
気になって梨華が母親に聞いたが、勉強が忙しいなんてめずらしいことを言ってた、なんて笑って答えられた。

どうしても、どうしても、確かめたかった。
真希の側にいても、居心地の悪い気分だけが胸を締め付ける。
ひとみに会わなければならない、そう思って梨華はこの場所までやって来た。

「ひとみちゃん!」
梨華が校門の側でそう呼びかけると、地面を見詰めていたひとみはバッと顔を上げた。

「梨華…。」
呆然と梨華を見詰める。

「え、なんかあった?」

ひとみは梨華の方に小走りで駆け寄ると、生徒の邪魔にならないように、腕を取って歩くように促しながら尋ねる。

「えっと…、」

梨華は何故だか、立ち止まって言葉を詰まらせる。

「そこ、はいろっか?」

ひとみは、その様子から何かを感じたのか、路を挟んだところにある喫茶店を指差し、梨華を促した。

468あなたが寝てる間に(仮):2003/02/20(木) 13:43

「で、なんかあったの?」

梨華は困っていた。
まさか、ひとみに会いたくて来た、とはいえない。
さっき校門前で「どうしたの?」と聞かれたときにはじめてそこに気付いた。

「梨華?」

ひとみが心配そうな声を出して顔を覗きこんでくる。

「今日はなんか優しいね。」

梨華が微笑んでそう言うと、ひとみは照れたように視線をはずした。

「なんも用ないなら帰るけど…。」

梨華は焦る。もう少し、話していたい。
こうして会っていると、ほんとにひとみが好きになっていると実感してしまった。

「えーと、真希ちゃん!真希ちゃん、いつ起きるのかなぁ?」

二人の共通の話題と言えばそれしか思いつかなかった。
ひとみはその言葉に顔を曇らせる。

「知らない…。」
「あ、ごめん。そうだよね…。」

少し興奮して、触れて欲しくないところに触れてしまった、と梨華は後悔した。
しかし、後ろめたい気持ちがあるからこそ、上手いいいわけなんて見つからないものである。

469あなたが寝てる間に(仮):2003/02/20(木) 13:44

「ふふっ。」

ひとみがそう笑ったので梨華は俯いていた顔を上げる。

「?」
目だけで問いかけると
「いや、梨華かわいいな、と思ってー。」
からかうようにひとみが言う。

「……。」
「ん?梨華?」
「帰る…。」
「は?」
「じゃ、またね…。」
「は?え?もう?ちょっと待って!」

レジに歩いて行く梨華をひとみも立ちあがって追う。

結局、割り勘で会計を済ませて、二人で店を出る。
「なんか怒ってるの?」
ひとみは梨華の一歩後ろを追いかけながら、尋ねる。
と、梨華が立ち止まった。

「別に怒ってない。ごめん…。ほんとに帰るね。」
梨華は笑顔でそう言うと、小走りに駆けていってしまう。
「なんだ?」
ひとみは納得いかない顔で梨華の背中を呆然と見送った。

470あなたが寝てる間に(仮):2003/02/20(木) 13:47
更新終了!
レスありがとうございます!!

>462 YUNAさん
いつもありがとうございます。
梨華たんがっ!!(何

>463 名無しひょうたん島さん
初カキコれすか♪
ありがとうございます。嬉しいですよほ

>464 チップさん
愛ですか。どうぞ( ‘д‘)<ウチかい!
スンマセンスンマセン

次回、最終回のヨカム!!

471YUNA:2003/02/20(木) 14:50
更新お疲れさまです。
梨華たんがぁっ...!?
早く気付いてあげてっ、よっちぃ〜〜っっっ!!!
次回、ラストですか??
楽しみにしてますっっっ!!!

472名無しひょうたん島:2003/02/21(金) 15:55
次回最終回ですか…。
すんげー楽しみにしています。
ワクワクワクワクしています!!

473あなたが寝てる間に(仮):2003/02/22(土) 20:38

ひとみはその足で、結局病院に向かった。
梨華の不可解な行動で真希のことがふと心配になった。

病室には誰もいなくて、真希の顔が窓から差しこむ西日に照らされていた。
「あつそーだね。」
ひとみは呟いて、そっとカーテンをひいた。
「ってか、なんで…あんなかわいい彼女いるなら、紹介しないのさ。家に連れてきたりとか…。」
ひとみはベッドの側の椅子に腰掛けて真希に話しかける。
「あ、そっか。あたしがライバルになると困るもんね…。ごめん…。諦めるから…。」
ひとみは、そう言うと、ベッドに肘をついて顔の前で腕を組み、何かを遮るようにギュッと目を瞑った。
(あー、なんで涙なんか溢れそうになるんだろ…。)

「…ん…。」
ふと、側から聞こえた声にバッと顔を上げる。
「真希…。」
声が震えた。
真希の瞼がピクピクと動いてる。
「真希!?」
ひとみは真希の名前を呼ぶと、急いでナースコールをした。

474あなたが寝てる間に(仮):2003/02/22(土) 20:39


ひとみは迷っていた…。
公衆電話の前、
真希の意識は戻った。すぐにまた眠ってしまったが、医師の話しだと、もう眠り続ける心配はないらしい。
明日、きちんと検査も行われるらしい。

梨華に連絡をいれるべきかどうか…。
嬉しいはずなのに…胸が苦しくてしょうがないのは…。
結局、すぐに母親が迎えにきて…
ひとみが梨華に連絡を入れたのは、翌日だった。

475あなたが寝てる間に(仮):2003/02/22(土) 20:40


来る時が来たのだ…。

梨華は緊張で胃が痛くなるのを感じた。
病室の前、大きく深呼吸する。

『真希の目が覚めた!来て!!』
ひとみからメールが入って、すぐに駆けつけた。

どっちにしろ、こうなる瞬間はくるとわかっていたはずじゃないか。
何よりも、真希の無事を確認したい気持ちが先に立った。
それから…増え続けていた罪悪感からも…逃れたかったのかもしれない…。
例え、仲良くなったひとみと母親の信用を無くすとしても…
ひとみに…嫌われてしまったとしても…

ガラッー

「梨華!」
ひとみがすぐに名前を呼んだ。
梨華はつくり切れない笑顔を浮かべながら、ベッドで首だけ起こしているその人物に目をやった。

「あー。」
真希は体こそ、ベッドに横たえたままだったけれど、以外と元気そうな声でそう言った。

ひとみがジッと顔を伏せる。
梨華は、そっとベッドの側に歩み寄った。

「よかった。ごめんなさい…私がボーッとしてたせいで…。」
「あははっ!心配して来てくれたの?後藤の不注意でもあったんだからさー、先輩には悪いことしちゃったね。」
「ううん。ほんとに悪いのは私だから…じゃ帰るね…。」
「え!?」

そう声をあげたのはひとみだった。
「ひとみちゃんも、今までありがとう。」
梨華は泣きそうな微笑みになりながら、そう言って病室を出ていった。

476あなたが寝てる間に(仮):2003/02/22(土) 20:41

「ひとみ?」
呆然とその様子を見つめていたひとみを真希が呼ぶ。
「なんで?え、彼女なんでしょ?」
「ん?誰が?」
「は?」


(これでよかった。全部、私のせいなんだもんね…。これでよかったんだよね…。
なんで涙なんて出てんだろう…。もうせめて一人になるまで我慢してよー私っ!)

梨華は病院の正面玄関を伏し目勝ちに通りぬけながら、溢れ出る涙をしきりに拭っていた。

人通りもまばらになった道で、見上げた空は青い。
ふいにひとみの優しい笑顔を思い出した。
なんで…
梨華は考えそうになってブンブンと頭を振ってまた歩き出した。

「梨華!!」
ふいに背後から聞こえたその声に心臓が高鳴る。
近づいて来る足音に振りかえることができない。
すぐ近くでその足音は止って…
梨華が罵声を浴びせられると思い、目を閉じた瞬間だった…。
スッと何かに包まれる気配を感じて目を開けた。

477あなたが寝てる間に(仮):2003/02/22(土) 20:41

「…ひとみちゃん?」
ひとみが梨華を後ろから抱きしめた。
「あのさー、悪いけど、真希は梨華のこと好きでも嫌いでもないって。」
梨華は頭にハテナマークを浮かばせたまま、うるさい心臓の音を聞いている。

「だから、聞いたんだよね…、あたしが梨華貰ってもいいの?って…」
「!?」
梨華は顔を上げて、少し緩くなった腕を解いてひとみを見た。
「好きだったんだ…。」
ひとみは少しはにかんだ笑顔を浮かべてそう言った。
「……っく…。」
涙腺が緩んでしまっている梨華は自分でもおかしいほどポロポロと涙を零した。
「え゛?嘘っ、なんで??」
急に泣き出した梨華にひとみはおろおろしている。
梨華はそのまま、ひとみの胸に寄りかかって
「私も好き…。」
「ほんとに!?」
ひとみは嬉しそうな声をあげて、梨華をギュッと抱きしめた。

478あなたが寝てる間に(仮):2003/02/22(土) 20:42

「ん?」
しばらく抱きしめ合って梨華の家まで、手を繋いで歩いていた時だった。
「どうしたの?」
急に不思議そうな声を出したひとみに梨華が聞く。
「梨華、なんて真希の彼女とかって嘘、ついたの?」
梨華は顔がボッと熱くなる…。
もじもじしながら、小さな声で
「え、好き、だったの…真希ちゃんが…。」
「マジ?」
ひとみが俯く。
「で、でもそれは憧れみたいなもんで、ほんとに、今好きなのはひとみちゃんだけだよ!?」
梨華は早口でそうまくしたてた。
「ひとみちゃん?」
梨華がひとみの顔を覗きこむと、ひとみは小刻みに震えながら笑っていた。
「なによ?」
梨華は馬鹿にされてるような気分になって、むくれる。
ひとみはそんな梨華がかわいくて抱きしめた。
「そんなのわかってるってぇー、それに、」
「ん?」
「梨華ちゃんのこと例え真希にだってもう渡す気はないから。」
ひとみはそう言うと、チュッと梨華にキスをして、先を歩いて行く。
「…ちょっ、ちょっと待ってよぉ〜。」
梨華は真っ赤な顔をしてひとみを追いかけて、ためらいがちにその手を繋いだ。



〜FIN〜
( ´ Д `)<んあ?あたしは何だったのぉ〜 …ま、いっか。

479オガマー:2003/02/22(土) 20:45
更新終了!完結だぜぇ〜(w

>471 YUNAさん
>472 名無しひょうたん島さん
ご期待に添えるラストになったれしょうか?
レスどうもありがとうございやした!!

480455:2003/02/22(土) 21:51
完結、お疲れ様でした。
いやっほぉ〜!最高のラストでございました。
やっぱりオガマーさんのいしよしはイイ!
元ネタが大好きなんですが、これがいしよしだとこんなにもハマるとは・・
また新作をマタ〜リとお待ちしております。

481名無しひょうたん島:2003/02/23(日) 13:06
完結、お疲れ様でした。
交差する二人の思いが、ひとつになったエンディングが
暖かくて、とてもいいです。
新作、楽しみにしています。

482YUNA:2003/02/23(日) 18:16
完結お疲れさまでしたっっっ!!!
最後まで切なかったっす...
もう、期待以上っすよぉ〜〜!!!
次回も、期待して待ってまぁ〜す♪♪♪

483(ToT):2003/02/23(日) 22:58
いい話でした!続きおねがいします〜♪

484ごまべーぐる:2003/02/24(月) 03:22
お疲れ様ですた。
ゴチーン、イ㌔
( ´ Д `)<んあ〜

485名無し蒼:2003/02/25(火) 12:17
いつもオガマーさんの作品楽しみにして読んでいます
このタイトルどこかで見たことあるのですが…
原作が思い出せない(;´Д`)
そんなことも関係なく!w
とてもよかったです!新作ありましたらお待ちしてます〜w

486名無しひょうたん島:2003/03/24(月) 17:26
( ´ Д`)<んあ〜新作キボーン!!(w

487オガマー:2003/04/17(木) 08:52
レスのお礼から。
ありがとうございます!!

>480 455さん
最高のラスト、とな(ww
嬉しいです!

>481 名無しひょうたん島さん
お褒めの言葉、ありがとうございます(w

>482 YUNAさん
切なかったですか。
伝わってよかった(w

>483 (ToT)さん
ありがとうございます!

>484 ごまべーぐるさん
ありあとうございます。
ごちんには派手な彼女がいる筈です(w

>485 名無し蒼さん
サンドラ・ブロック主演の映画ですよほ。
書き終えた後、借りて見ました(w

>486 名無しひょうたん島さん
ありがとうございます!

管理人さんのリクエストにより、書いてみましたが、
少し今までとは違うものになってます。
意味がわからないかもしれませんが(爆)

488オガマー:2003/04/17(木) 08:53

あの人に拾われてから、もう2ヶ月が経った。
OLをしている彼女。

あたしは、きっと彼女のペットみたいなもん。
養ってもらって、それからたまに抱きしめてもらう。
そんなペット。

今日も、彼女が帰ってくるのを待つ。
感情を押し殺して、笑う、準備をする…。

「ただいまー!!」

彼女が鍵を開ける音がすると、シッポ振りながら玄関までお出迎え。

「おかえり。お疲れさま。」
「あ、ひとみちゃん、起きてたの?」
「当たり前じゃん。」

彼女はかわいい笑顔を見せてくれる。
従順な犬はかわいいもんでしょ。

489従順な犬:2003/04/17(木) 08:54


ほんとは寂しがり。
ほんとは愛したがり。
ほんとは、特別愛されたがり。

490従順な犬:2003/04/17(木) 08:54

着替える彼女の背後から近づいて、そしてそっと抱きすくめる。

「今日、疲れてるの。」

そんなの、お決まりの文句。

「ん…。」

首筋にキスすると、すぐにそんな甘い声が漏れる。
手のひらを柔らかい膨らみまで這わせて。
でも、彼女のブラにはワイヤーが入っているから、撫ぜるだけ。

少し、強引めに首を捻じ曲げて、その薄い唇を奪う。
息もできないほど押し当てて。

春はね、盛りがつくんでしょ。

あたしのキスは、彼女の腰を立てなくさせる。
くずれおちる彼女を受けとめて、ベッドへ押し倒す。
肩を指先で押すだけで、その淡い水色に沈んでいく身体。

491従順な犬:2003/04/17(木) 08:55

キレイだね。
今日も、貴方はとても綺麗だ。
心臓をかきむしりたくなる感覚。

押し殺す感情。

彼女をあたしのものにしたい…。

「ぁんっ…駄目…んん…。」

あたしのものに…。

虚しい行為。
燃えあがる胸。
馬鹿みたい。馬鹿みたい。

でも…

「ひと…みっ…ぁ………。」

492従順な犬:2003/04/17(木) 08:55




「お腹空いたよ、梨華さん。」
「ん…。」

ベッドの中、裸の身体をよじって、あたしを見る。

誰にも、見せないで…。

目を伏せる。

綺麗なのに、ね…。

「ひとみちゃん、もう少し一緒に眠ろう?」

あたしは、グルグルと鳴くハラの虫を聞きながら、今日も眠りについた。

493従順な犬:2003/04/17(木) 08:56



飼い犬は、手を噛まない。

「よっすぃー、今日は大人しいね。」

だって、矢口さん、貴方が彼女とあたしの部屋に来てるんだもん。

「しっかし似てないよなぁ、ほんとにお前等。」

矢口さん、それはそうですよ。
だって、ほんとは姉妹なんかじゃないんだから。
夜毎繰り返す卑猥な行為を浮かべてウチは口の端を持ち上げた。

「ね、石川…。」

甘える、矢口さんの声。
聞きたくない。

だから、ウチは耳を塞いだまま、あたしと彼女のベッドを占領した。
飼い犬は、貴方に従順でしょう?


泣き声も、聞かせないよ。

494従順な犬:2003/04/17(木) 08:56


ソファーの上、眠りこけてる矢口さんの隣、床で眠っている彼女。
矢口さんを睨んで、あたしは彼女に毛布をかけた。

身体、痛くならないといいね…。
額に途切れそうなキスをして、痛い両目をギュッと瞑った。

495従順な犬:2003/04/17(木) 08:57


「ひとみちゃん、ありがとう。」

翌朝、着替えの為にはやく帰った矢口さん。
梨華たんはそんな風にあたしに笑顔を見せる。

「当然のことでしょ?」

覚られてはイケナイ。
それが、彼女とあたしの約束。
言葉でしたことはないけど、きっとそういう約束。


「ごっちんと会ってきてもいい?」

見詰め合ったまま、彼女が寂しそうな目をするから、
そんな風に言った。
貴方の同情なんてかいたくないよ。

飼い犬は、ただ、可愛がられたい。

「うん、いいよ。」

寂しそうな顔、しないでよ。
ご主人さまには、弱いよ。

「それとも、今夜はあたしに抱いて欲しい?」
「…。」
「なぁ〜んて、冗談。」
「馬鹿。」

496従順な犬:2003/04/17(木) 08:58

覚られちゃ、イケナイ。
愛しい愛しいご主人様。

恋しい恋しいご主人様。

あたしは、貴方を愛してる。

「よっすぃー、ごとーをちゃんと見てよ。」

ワガママな姫は、あたしの余計な考えを取っ払ってくれるから。
ごめんね、ごっちん。
でも、おあいこだよね、ごっちん。

「やぐっつぁん、今日も駄目だってさ。」

矢口さんは、梨華ちゃんに夢中だよ。
可愛そうに。
可愛そうに。

重ねた唇は、温かいね。
何も埋まりはしないけれど。

497従順な犬:2003/04/17(木) 08:58


埋まりはしない心。
犬は馬鹿でしょ。

ご主人を愛して愛して。
何もわからずに死んで逝くの?

考えちゃイケナイ。
優しく掬い上げてくれた腕を。
柔らかい身体の感触を。
柔らかい笑顔の意味を…。

498従順な犬:2003/04/17(木) 08:59



今日で、5日目。
なんて贅沢なことだろう。
セミダブルベッドを占領。

ご主人の声に、胸がバリバリになって。

だけど、今日は、そんな声がしない。


不思議に思って覗いてみた。


「いや、だから、もう石川とは無理…。」

最初は理解できなかった。

「ごっつぁんを抱いたんだ。」

何もかも、壊された。
壊された―――――――

499従順な犬:2003/04/17(木) 08:59


犬は馬鹿でしょ。
ご主人を愛して、愛して。
そして、死んで逝くの…。


「おいっ!」

あたしが歩いて掴んだ包丁が、そんな怖いですか?
従順な飼い犬。
それが、あたしだよ。
矢口さん。

姉妹も、親友も嘘。

彼女だけがあたしの全て。
だから…彼女を抱いてよ。

「待てよ…。オイ…。」

「待つのはどっちですか。」

滲んで、目が見えない。
梨華さん、どこですか。
貴方がいれば、あたしはどんな罪も怖くない。

だから。

500従順な犬:2003/04/17(木) 09:00

「ヤメ…。」

矢口さんの声が途中から聞こえなくなった。
お腹に刺さった小さな刃。



フルーツナイフだよ、笑えるね。

ほんと、笑える。

愛する人を刺してしまった。




笑いすぎで涙が出るよ。
苦しいよ。
誰か…あたしを殺してよ。

501従順な犬:2003/04/17(木) 09:00


苦しい苦しい。

忠犬・ハチ公。
いつまで主人を待ちつづけるの。


もうどこにもいないのに。
苦しい苦しい。

あたしは、捨てられた犬。
涙を流すご主人。
見ていられなくて心ごと。

捨てられた犬。


誰か…あたしを殺してよ。




fin.

502オガマー:2003/04/17(木) 09:01
なんだかなぁ(汗)。
更新終了、そして完結です。

管理人さん、どうですか?(聞くなよ涙)

503YUNA:2003/04/18(金) 14:18
更新、おつかれさまですっ♪
んぁ、切ない、痛い...
次回作も、期待して待ってますっっっ!!!

504管理人:2003/04/19(土) 10:32
おぉ〜〜〜〜〜〜〜!!オガマーしゃんサンキュウです。
こんなに早くに答えてくださるとは。。。感謝感激!!
ありがとうございました。
よっちぃ切ないよ。よっちぃ。。。
次回は激甘orエ○だめですか??(w

505名無しひょうたん島:2003/04/20(日) 19:54
(・∀・) イイ!(・∀・) イイ!
こういうの好きです!!
オガマーさんファンとしては、新作も期待したいです!!

506オガマー:2003/05/04(日) 05:11
レスがこんなにつくとは思ってなかったので嬉しいです。
ありがとうございます!

>503 YUNAさん
ありがとうございます。

>504 管理人さん
どういたしまして。
無理です(爆)。

>505 名無しひょうたん島さん
新作はかなり難しい感じです・・。

『あなたが寝てる間に(仮)』の番外編といいましょうか。
ごっちんのお話です。短編です。

507プリーズムーンシャドウ:2003/05/04(日) 05:11
あたしが寝てる間に…
ひとみには梨華ちゃんという彼女ができていた。

あたしが寝てる間に…
やぐっつぁんは…


「マジよかったよ。いろいろと悩んでた時間が馬鹿みたい。」

ひとみが息だけで笑って、あたしは入院中に使った荷物を紙袋につめる。

「心配かけたね。」
「は?何よ、気持ち悪いな。」
「いや、ちょっとねぇ。」

ひとみが、すごく優しいことを知っている。
ひとみがすごく一途なことを知っている。
だって、ひとみはあたしの為に泣いてくれたことがあるから。

だから、あたしは…

508プリーズムーンシャドウ:2003/05/04(日) 05:12


「ふぅ…。」

階段を上ってくる間に、蓄積されたいろいろな不消化な気持ちを吐き出すように、
一つ、深呼吸。

バッグから合鍵を取り出して、ドアに挿しこむ。

カチャ−

もう何日も聞いてなかった音。

あたしは、ドアを開けて、そして…固まった。

ドアの向こうにいた彼女も同様に、固まった。
え?その人、…誰?

「真里、コイツ誰?」
「…。」

固まったままのやぐっつぁん…。

あたしは、不安に思っていたことが全部、現実になっていて、
溢れ出る涙を…それでも堪えた。

509プリーズムーンシャドウ:2003/05/04(日) 05:12

「シンゴ、帰ってくれるかな?」
「え?ああ…。」

表情を凍らせたやぐっつぁんが、そんな風に言ってシンゴと呼ばれた男の子は
あたしの側を通りぬけて帰っていった。


数秒の沈黙。

「あたしさー、入院してたの。」

覚られちゃいけない。

「意識不明の重態。」

やぐっつぁんは、膝をゆっくりと抱え、そして遠い床を見詰める。

「それ、伝えに来ただけだから…。」

やぐっつぁんは、孤児だ。
今はまともなバイトをしているけれど、昔はちょっとヤバイ仕事をしていたこともある。

ケータイは、番号が変えられていた。
鍵は…変わってなくてよかったな…。
いや…
変えてくれてた方がよかったかも…。

カチャリ−

ドアを閉めると、目から涙が零れた。

510プリーズムーンシャドウ:2003/05/04(日) 05:13


孤独が辛いこと、あたしは知ってた。
孤独が辛いこと、あたしは何時の間にか忘れてた。
優しさに触れたら…忘れられると、信じてた。

あたしの愛は、足りてなかったの?
やぐっつぁん。


あ…。

ギュッと握り締めた手のひらが痺れて、ギュッと瞑った目からいくつかまた雫が
零れた頃…。
ジンワリと焦点の合った眼で、大切なことに気付いた。

あたしは、鍵を握り締めたままだった。

やぐっつぁんの、部屋の鍵。

「やぐっつぁ〜ん。」

涙を綺麗にぬぐって、あっけらかんとした声で。
あたしは、もう一度扉を開いた。

511プリーズムーンシャドウ:2003/05/04(日) 05:13

やぐっつぁんは、動かない。

「これ。」

あたしは、靴を脱ぐとやぐっつぁんの元まで歩き、鍵を差し出す。
やぐっつぁんは動かない。

動かないで…泣いてた…。


「あたし、なんで信じられないんだろう…。」

糸みたく、途切れそうに細い声が聞こえて。

「怖かった…。だから、ごっつぁんのこと…忘れた。」

自分の膝に顔を埋めた小さな身体。
あたしは、一度肩に触れて、
それから、ギュッとその身体を抱きしめた。

「一緒にいたげるよ。一緒に泣いてあげる。どうせならさ…もう孤独じゃないとこにいこっか。」

顔を上げたやぐっつぁんの唇は変色するくらいに噛み締められてて。
あたしは、手のひらで腕を辿ると、やぐっつぁんの腕についてる細い何本もの傷を
ゆっくりとなぞった。

512プリーズムーンシャドウ:2003/05/04(日) 05:14

「あたしが悪いから…。」

いいんだよ。

「あたしは、愛される資格なんて、ない…。あたしが弱いから…。」

違うよ。

「どうすればいいの?」

涙で、やぐっつぁんの顔が滲んで、震える唇で。
やぐっつぁんの震える手のひらが、腕に触れてたあたしの手のひらを掴んで。
だから、あたしはどうすればいいの?

「資格がないやぐっつぁんを…愛しちゃったあたしはどうすればいいの?」

声をあげて泣く背中。
勝手にね、涙が出て来るんだよ。

愛なんてきどっちゃいない。
あたしでは、貴方を救えないんでしょ?
それでも…一緒にいたいよ…。

「ごっ…つぁんぅ…。」

擦れた声で腕を辿ってあたしを掴んで。
背中ごと全部。

あたしは、貴方を救いたい。
なんて、そんなきどっちゃいないよ。

あたしは、やぐっつぁんといたいだけ。
落ちていくなら、落ちていこうよ。

今ここで、固まれるならそれでいい。

小さな身体を抱きしめたまま。
震える背中を撫ぜたまま。

513プリーズムーンシャドウ:2003/05/04(日) 05:14


月が、出た。


「今度ね、楽しいことしよう。」
「楽しいこと?」

裸の肩にやぐっつぁんの息がかかる。

「そうだな…。Wデート!したことある?」
「…ない。」

やぐっつぁんは、少し考えてから、ふふっと笑った…。

「おいで…。」

身体中、溶けてなくなってもいい。
やぐっつぁんの側でなら、それがいい。

普通の幸せで、埋まらないのなら…。
あたしの愛が足りないのなら…。

どこまででも落ちていいよ。
やぐっつぁんは、あたしに乗ってればいいよ。
いい夢が見れるでしょ?

愛してるよ。
愛してる。
そんな言葉じゃ、…足りない。



fin.

514オガマー:2003/05/04(日) 05:15
更新終了。完結です。

515名無しひょうたん島:2003/05/08(木) 21:25
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
当分来なかったら、短編が!!
よかったです。次も期待しています。

516名無し( `.∀´):2003/05/11(日) 11:30
おぉぉぉぉ!!
いつのまにか新作が!!
この話大好きだったんで、別バージョンが読めて嬉しいです!
やぐごまいいですね。


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