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霧が晴れた時―BAD KIDS―

1理科。:2002/08/19(月) 17:16
管理人さんのお言葉に甘えて
銀板から越してきますた。
よろしくお願いします。

142名無し○い○ん:2002/10/04(金) 20:26
完結お疲れ様でした。
前の時から、楽しみにROMっていましたが面白かったです。
番外編も楽しみにしています。

143名無しヌード:2002/10/05(土) 19:34
完結お疲れ様でした。
番外編楽しみです!!

144ひとみんこ:2002/10/08(火) 23:44
も〜、あたしゃなんなんでしょうね?

「よしりか」ってなると、幸せでも、痛くても、泣けてくるなんて?

鼻水(ごめん汚くて)ぐずぐずです。

番外編、たのしみで〜す。

145オガマー:2002/10/09(水) 00:25
うーん。ジーンとしました。
最後までヤッスーも健在で!(藁
よかったー。

完結、お疲れ様です。
番外編も待ってますね(w

146理科。:2002/10/10(木) 20:34
>管理人さん。
 色々…ご迷惑おかけしました(汗
 私の方こそ感謝の気持ちでイパーイですが何か?(w
 番外編書かせていただきますね。

>名無し○い○んさん。
 ありがとうございます。ホント、お騒がせいたしました…。
 番外編がんがりますよほ。

>名無しヌードさん。
 ありがとうございます。 
 楽しみですか…。うぅ…ちょっと緊張。

>ひとみんこさん。
 (O;^〜^)ノ□<て、ティッシュどーぞ。
 ホントに好きなんですね、いしよし。
 って、泣かないでください(w

>オガマーさん。
 ヤッスーは私の生甲斐です。(ウソ
 でも本当かも(w
 ありがとうございます。

147番外編:2002/10/10(木) 20:36
「梨華、まだそのペンダントしてくれてるんだね。」

「あたりまえだよ!ひとみちゃん!だって、これは…」

思いで深い修学旅行からから帰ってきて、
あたし達は2日間のお休み。
二人して、丁度良い温度が保っている部屋で
ぐでーっとベットに寝そべって他愛のないお喋りに
花を咲かせていた。
梨華の胸元にペンダント。
浅黒い健康的な肌から、それは存在を示すかのように
銀色に光っている。

148番外編:2002/10/10(木) 20:37
あれは…いつだったかなぁ…。
そうだ。
秋風漂う帰り道。
真っ赤な夕暮れをバックに、川沿いの土手を
マッタリと歩く。
ふかふかのあんまん片手に自転車こいで。
ホクホクしながら笑いあっていた…―

「あー!うまかった!部活帰りの買い食いカッケー!」

「カッケーかは知らないけど…美味しかったね!」

梨華がクスクス笑いながらあたしを見る。
そんな梨華を見てあたしも笑った。
こみ上げる気持ち。
まだ帰りたくはない。

(さて。どーしよー...)

こうして梨華と時間をずっと感じていたい。
家に帰っても ヒマだしさ。
でもそれだけじゃないんだよね…。
チラリと梨華を見ると、頬に両手をあてがって

『あったか〜い』

なんて言っていた。

(ああん♪梨華ったら!ってあたしキショ!)

149番外編:2002/10/10(木) 20:37
さっきまで熱いあんまん持っていたから、その熱を
利用してるんだね。
美味しかったし、温かいしで
一石二鳥。
100円でこんなに幸せになれるなんて。
あんまん考えた人、カッケー!

もぉ!梨華って可愛い!!
何故かあたしが恥かしがっていたのは気のせい。多分ね。
いや、多分じゃな―

「あれ?こんなトコにお店が出来てるよ、ひとみちゃん」

「え?」

あたしの思考は甘い声に切断される。

本当だ。
でもいつのまに??
土手沿いの脇の小さな公園をちょっと行った
トコに、小さなお店がひっそりとあった。
…外見からして梨華が好きそうだね。
だってピンクなんだよ?

やべー。あたしの気持ちが生み出したんじゃない?この店。
なわきゃーない。
そんな事だったらあたしは魔法使いじゃん。
魔法使い(ヒ)トミー?
マジつまんないし、訳わからんちん。
とんちんかんちん 一休さん♪だ。

150番外編:2002/10/10(木) 20:38
いやいやいや。
そんな妄想はいいんだけど…。

「ね!ちょっとだけ寄ってみない?」

「うん!いいね。」
(やった!もうちょっと一緒にいられる♪)

大きな木製の扉を二人で開ける。
何かいいなぁ。

「…うわぁ。」

見渡す限りファンタジー。
やっぱり魔法だよ。
うーん。目がチカチカするね。

しかしあたしの大好きな人はと言うと…
梨華の瞳はキラキラ輝いている。
う〜ん、ベイベェ。
夜の空に瞬く一番星みたいだYO!
…くっせぇ。

151番外編:2002/10/10(木) 20:38
両手を組み、感動中だ。
あぁ。
こうなっちゃえば梨華はあたしの声なんか耳に
てんで入ってないワケで…。

行っておいで―と。
あたしは愛犬をほっぽり出し
ベンチにドカっと腰掛ける少し疲れ顔の主人で…
言うなれば梨華は楽しそうにハシャギ回る犬状態。
犬に例えるのは申し訳ないんだけど…
だって本当にそんな感じなんだ。
あたしの愛犬ラッキーは忙しそうに走りまわる。
ニコニコニコ…。
あんまり遠くに行っちゃダメだよ。
なぁ〜んて声をかけたいぐらいだ。

(…ん?)

ピタっと足が止まっていた。
まるでおわずけ食らってるみたい…。(プ
のそりとあたしは梨華の元へと向かう。
彼女の近くまで行っても、あたしなんか視界に入っては
いなかった。

目をキラキラさせながらジーっと睨めっこ。

152番外編:2002/10/10(木) 20:39
「梨華?どした??」

「…きれい。」

彼女の視線に目を運ぶ。
そこには銀色に光ってる一つのペンダント。
一向に梨華の目はそのペンダントを見つめ続ける。
仕方ない。
可愛い愛犬の為だ。
丁度良く一昨日の日
おこずかいを貰ったばっかだからさ。
ここはご主人様が…

(!た、高ぇ…!!)

値段を見て、あたしは大きな瞳をさらに丸くさせた。
おいおい!落ちるよ あたしの目玉ってぐらいね。
まぁそんなハズはないし…ってか取れねーだろ!

…コホン。

中学生には、到底簡単には買えない品物。
いや!ムリだし!
だって...38000円だよ?
よく分からないけど、あたしはあの時、
結婚指輪は給料3ヶ月分なんてフレーズ(?)を
思い浮かべた。

153番外編:2002/10/10(木) 20:39
「…凄い値段だね。」

「うん。…でも。いいね…コレ。」

ハァーっとペンダントを見つめ、溜め息を吐く梨華。
ハァーっと梨華を見つめ溜め息を吐くあたし。
後ろ髪引かれる思いで梨華とあたしはその店を
後にした。

「・・・。」
「・・・。」

…沈黙が重苦しいのですが。

(…え〜い!決めた!)

あたし頑張ってアレ買う!
買って梨華にプレゼントしよう!
ヤバ!あたしカッケー!
そうと決まれば…膳は急げ!

154番外編:2002/10/10(木) 20:40
「梨華!あたしさぁ…ちょっと学校に忘れ物してきたみたい
 なんだ…あはは。だから先帰っててよ。」

「え?何忘れたの?」

「あ…体育着!ほら!体育館に脱いだまま来ちゃって!」

「…ひとみちゃん、カゴに入ってるのはなぁに?」

「え…?」

おおぅ!まさにコレは…あたしの体育着じゃん!
チラリと梨華を見ると…不思議そうな顔をして
首をかしげていた。

「あ――!そ、そう!トレーナー!あたしの大好きな
 ハリケンジャーの!そうそう!あれがないと眠れないんだよね!」

「…ひとみちゃん、ハリケンジャーのトレーナーなら、私のお家に
 忘れていったじゃない。買ってもらったって、嬉しそうに見せに
 きたの忘れたの?」

155番外編:2002/10/10(木) 20:40
粉砕。玉砕。
しかし梨華もツッコむな。
梨華はその後に付け足した。

『そんな大事なトレーナー、何で持っていかなかったの?』

…さいですね。
いや、しっかりぐっすり眠れてますが。
じゃあ、あたしは学校に何を忘れてきたんだろ?
学校で名高い、忘れ物王のあたしは今日に限って何一つ
忘れてこなかった事に気付く。
勉強道具でしょ?
体育着でしょ?
財布に、タオル。

…仕方ない。
使いたくなかったけど、ここはあの手段で・・・

「あ…イタタタタ。お、お腹が痛い!トイレ!
 …梨華も一緒に」

「しないよ。」

即答ありがとう。
分かってたよ。

156番外編:2002/10/10(木) 20:41
「大丈夫?ひとみちゃん?私…おトイレ探してくる!」

「あ!いいの!さっきのお店で借りるから!」

「え?じゃあ私も行くよ。心配だし…。」

「いい!いいよ!あたし長いしさ!身長の分出さないといけないし!」

「?…うん。わかった。お大事にね?また明日。」

「バイバイ。」

ブンブンと梨華の姿が見えなくなるまで
あたしは手を振った。
サワサワと少し冷たい秋の風が優しく
あたしの頬を撫で付ける。

157番外編:2002/10/10(木) 20:41
「よし!」

勇ましく自転車に飛び乗り、あたしは今来た道を
物凄いスピードで戻っていった。
たまに道行く人達が、ギョ!っとした顔をしてた。
わかってます。ニタニタ笑いながら運転してるってのは。
そりゃ、恐いっしょ?

あたしは立ち乗りして必死でペダルを漕ぐ。
額に薄っすらと汗が滲む。
息苦しかった。
しかし頭に浮かび上がる梨華のビックリして
飛びあがり喜ぶ姿を想像すると
苦しさなんて感じない。

「…あの!」

「ん?さっきの。」

目の前に、金髪、カラコン、咥え煙草の
店員さんが外に置いてあった花を
中に入れる最中だった。
あたしの姿にちょっとだけ驚いたようだったけど
(ってか、あたしもその店員さんを最初見たとき驚いたけどね)
あたしはとにかくさっきのペンダントの事が
気になってどうしようもなかったんだ。

158番外編:2002/10/10(木) 20:42
ハァハァハァ。
自転車を降りると、足がガクガク震えだして。
ピシャリと脹脛を叩く。
スーっと息を吸って…よし!

「すみません…ちょ…ハァ、っと話が…」

「なんや?…凄い汗やけど。」

「あ…大丈夫ですから…。あの…中にある、クロムのペンダント…
 あれ…あたしに売ってください。それで…今、あたしおこずかい
 3000円しかなくて…でも絶対に欲しいんです!お金貯めて
 必ず払いますから…!お願いします!」

一気にまくし立てるあたし。
キョトンとしている店員さん。
さきほどより強い風が、あたし達の間をすり抜けて行く。

159番外編:2002/10/10(木) 20:42

「…ええよ。青年!君のために取っといてやるわ。」

「ほ、ホントですかぁ?ありがとうございます!
 必ず買いに来ます!それと…ですね。」

「まだ何かあるんか?」

「あたし…青年じゃなくて少女ですけど。」

「少女って…ジョークやがな!ジョーク!スカートはいてる
 青年が何処におんねん!おもろいなぁ!」

(ちっともおもろくないんですが。)

…まぁ、予約出来たからよしとするか。


――――――――

160理科。:2002/10/10(木) 20:43
(O^〜^)ノ<更新、終了♪

161名無し垂れ目:2002/10/11(金) 02:03
かわいーなーw
続き期待(w

162理科。:2002/10/11(金) 04:57
>名無し垂れ目さん。
 期待に添えれるようがんがります♪
 (O^〜^)<梨華って可愛いよね♪
 (#^▽^)<…ひとみちゃんも♪
 (O^〜^)<梨華の方が…
 (#^▽^)<ひとみちゃんの方が…
    (エンドレス)

163番外編:2002/10/11(金) 04:57
1月19日―。
来年の梨華の誕生日までに。

あたしはお母さんの手伝いしたり、
寒い中、お父さんの車を洗ったりと
必死で頑張った。
そんなあたしを見て弟達は、
お姉ちゃんがおかしくなったと騒いでいた。
少ないお小遣いをコツコツ貯めた。
部活が終った後の一本、一個のジュースにあんまん。
新しい服に、雑誌、ゲームソフト。
我慢した。
梨華がそんなあたしを見て、おかしいと言った。
弟達と同じようなコト言わないでよ…梨華。
毎日…でもないけど、あたしは部活が終ってからの
あんまんは当たり前となっていたわけだから。

親戚の人達が集まる正月は最高だった。
だって一気に懐に38000円が入ったのだから。
…今までのあたしの苦労は何だったんだろう。
そうだ…。お年玉という手があったんだ。
いや!あたしが苦労して買ってあげたかったからいいの!

164番外編:2002/10/11(金) 04:58
そして―。
あれは1月15日―。

「おはよう!ひとみちゃん!」

ピンクのコートに赤いマフラー姿の梨華が
満面の笑みで玄関に立っていた。

「おはよ。はやいね、梨華ちゃん。」

梨華が前日、買い物に付合ってくれって言うから
あたしはヒョコヒョコ付合った。
何処に行くのと聞いても、ニコニコして内緒と
言うばかり。
わき目も振らず、梨華は真っ直ぐに
自転車を漕ぐ。

「ねぇ、梨華。いったいどこに行くの?いい加減教えてよ。」

「あのお店にあったペンダント…お年玉で買うの!」

どんな宝石よりも輝いていた梨華の瞳。
あたしは心の中で

『ななななななんですと〜!』

165番外編:2002/10/11(金) 04:58
って叫んでた。
危なく自転車から転げ落ちそうになった。
だってあれはあたしが買うんだよ。
凄い焦った。本当に。
予約してたから無くなってはいない。

しかし―。

あたしはとんでもない事に気付く。
あれからあたしは店の店員さん、中澤さんって言うんだけど
凄い仲良くなって。
色んな話をした。
学校の事とかは勿論、部活、
…そして何と言ってもシツコく聞いてきたのは
梨華の事だった。だからペンダントを彼女にプレゼントするって
話もしていたんだ。

とんでもないことってのは…
あの店員さんに口止めしてなかったってコト。
…こう言っちゃぁ悪いけど、中澤さんって…
おしゃべりだからなぁ…。
マジでピンチ。
何であたしってつめが甘いのかなぁ…。
ドンドンあたし達と店の距離が縮み始めた。

166番外編:2002/10/11(金) 04:59
(…しかたない。)

あたしはその途中、
得意とする仮病を使おうと決めた。
素直な梨華は、本当に信じてしまう。
悪いと思ってんだけどさぁ…
だって…。
…。

「い、イタタタタ…。お腹が痛い…」

「だ、大丈夫?ひとみちゃん!」

キ!っと自転車を止める梨華。
急いであたしの方へと駆け寄ってきた。

「顔色悪いよ…?」

「え…マジで?」

「うん。真っ赤な顔してる。」

(…そりゃ、ずーっと自転車こいでたし。風が冷たいから…)

167番外編:2002/10/11(金) 04:59
普通、お腹が痛いとなると、顔なんか真っ赤に
なるハズなんてない。(と思う)
青かったり、紫だったり…。
でも梨華がそう思ってんなら好都合だ。
丁度良く、お店の一歩手前にある公園。

「あ、あたし…トイレ行ってくる!梨華はベンチで
 休んでて…!絶対何処へも行かないでね!!!」

「うん!わかった!ひとみちゃんを一人にしないよ!」

真剣な面持ちの梨華…。
ホント…ゴメンよ…。
あたしは心の中でやっきとなって謝った。
しっかりと梨華がベンチに座るのを確認して
公園のトイレに駆け込み、バタン!と鍵を閉める。
あたしは外で梨華ちゃんを待たせ窓から脱出を試みる。

168番外編:2002/10/11(金) 05:00
「…狭い。」

やっとのことで、あたしは裏に出ることが出来た。
あまり使われてないのだろう…。
あたしの頭に蜘蛛の巣や、埃…最悪な事に虫の死骸が…。
こんな事で凹たれてたまるか!
パンパンとそれらを払いながら
壁に隠れて梨華を盗み見。
しめしめ。大人しく座ってるぞ。
そして店に一人でダッシュ。
【梨華貯金】と書かれた袋をスタジャンのポッケに
入れてあるのを右手で確認。

店の前までやってきて、あたしはその場で感動していた。
今まで頑張ってきた日々が…頭の中をまるで走馬灯のように
かけ走る。全身が震えた。
大好きなハリケンジャーや、アンパンマンのグッズ…
お菓子やアイスにジュース…
あたしマジで頑張った!
ジーンと目頭が熱くなってきた。
あたしはきっと今日という日を忘れないだろう。

169番外編:2002/10/11(金) 05:00
「こ、こんにちわ!予約の品買いにきました!」

とあたしは中澤さんに告げた。
勢いよくドアを開けたんで
最初、ビックリした顔であたしを見ていた中澤さんも
ニッコリと笑って出迎えてくれた。

「こんにちわ。待ってたわ。」

『まぁ、椅子に座り。』って淡い色の椅子を出してくれて
あたしは素直に座って中澤さんを見つめた。
鼻歌混じりで中澤さんは、奥の机から
黒い布に包んだペンダントを、とても大事そうに
持ってきてくれて

「お客さま。こちらの商品で間違いありませんか?」

と言った―。
あたしは初めてここに寄って、梨華と顔を見合わせた
日を思い出していた。
それは間違いなく、あの日のまま、この黒い布の上に
キラキラ輝いていたペンダントだった。

170番外編:2002/10/11(金) 05:01
「は、い。間違いないです…。コレです。」

裏返る声。
喜ぶ梨華の顔。
中澤さんがまた優しく微笑む。
ぐるぐるぐる。
物凄い勢いで、あたし頭の中は
いろんな妄想やら 構想やらでモー大変。

何かいつもの中澤さんじゃない。
冗談混じりの、たまに辛口な中澤さん。
あたしはくすぐったく感じてた。

「今、ラッピング致しますので少々お待ちください。」

そう言って中澤さんはあたしに缶コーヒーをくれた。
静かに流れるBGM。
自然と心が落ち着いてきた。
箱に詰め、キレイなピンク色した紙で包んでくれ、
最後に黒い紙の袋にそれを入れて
あたしに手渡す。

「お待ちどうさまでした。…ようやったやん。」

「はい。」

171番外編:2002/10/11(金) 05:01
あたしは大事に両手で受け取った。
商品そのものは凄い軽かったけど、
あたしにはとても重く感じる。

「本当に、ありがとうございました。」

「こちらこそ、ありがとう。」

中澤さんはくしゃくしゃと、あたしの髪を
撫で付け、優しく微笑んでくれた。
満面の笑みを残し、
あたしは梨華が待つ公園にダッシュした。
そこには、一人ベンチで足をブラブラさせながら
ソワソワしてる梨華がいた。

ダマして悪いと思いながらも、あたしは心底楽しんでいた。
いったいどんな顔をするだろう。
嬉しすぎて泣き出したらどうしようか?
もしかしたら…こんな高いの貰えないよ!
って…受けとって貰えないかもしれない。
とにかくここまで来た。
逸る気持ちを落ち着かせ、
彼女が待つベンチまで足を運ぶ。

172番外編:2002/10/11(金) 05:02
「梨華。」

「ぅわ!ひ、ひとみちゃん!ビックリしたぁ…。
 もー大丈夫なんだね!ね!じゃあ、行こっか。」

ぱぁっと梨華が笑顔に変わる瞬間、あたしは胸が
握りつぶされるかと思ったよ。

「…あのさぁ、ちょっといい?」

「え?うん。どしたの?」

…ヤベぇ…。
緊張してきた。
汗ばむ掌。
タラタラと落ちてくる汗。
あたしはゴクリと唾を飲み込んだ。

173番外編:2002/10/11(金) 05:03
たかがプレゼント。
されどプレゼント。

(よし!…今だ!)

「コレ…ちょっと早いけど!誕生日おめでとう!」

「え…」

乾いた風が吹いていた。
汗が一瞬にしてひいていくのが分かるほど…。
受けとってくれるのか…。
それとも…

心臓が痛い―。

ああ…。何て長い間なんだ…。
あたしは静かに瞳を開け、目の前にいる
梨華ちゃんの顔を見る。

「…梨華…。」

174番外編:2002/10/11(金) 05:04
梨華ちゃんは…泣いていた。
少し大きめなコートの袖口から見える華奢な
彼女の手は、流れ落ちる涙を拾い上げるように
それを拭っていた。
あたしは困った。
いったいどうしたらいいのか?
何だか罪悪感?みたいな…なんつーのか…。
んっと…。
意味もなくあたしはその場でオロオロしていた。
ふと視線をトイレに向けたら、顔を真っ赤にしたおじさんが
切なさそうに駆け込んで行って。
なぜか心の中で応援してたんだ。
あぁ。あたしもそんな時あるよ…って。
んなこたぁ、どーでもいいんだよ!

「…とみ、ちゃん…」

「え?」

「…とみ、ちゃん…私…嬉し…い。で、も…」

「で、でも…?」

175番外編:2002/10/11(金) 05:04
でも―。
その先は分かってた。
梨華が思って今から口から出そうとしてる言葉。

『高いから―。』

「…こんな、高い…の、貰え」

ほらね。

「いいの!あたしが好きでプレゼントした事だから。
 高いとか…そんなんじゃなくて…。えっと。だから…
 素直に受け取ってください…。」

梨華はそれでも申し訳なさそうな顔をしていたよ。
でも、あたしの顔をチラっと見ると…

「…ありがとぉ。」

176番外編:2002/10/11(金) 05:05
泣き顔から笑顔へ。
ぱぁっと眩しいくらいの、それは凄くキレイで美しかった。
可愛いとか…そんな次元じゃなくって。
本当にキレイだと思った。
梨華はあたしから、ゆっくりとそれを受け取った。
渡すとき、あたしの手と梨華の手が軽く触れたんだ。
何度も手を繋いで。
何度も触れ合った手。
何でもない、日常茶飯事的な些細な事に…
何故かドキっとした。
全身に緊張感が走った。
キューってこの大きい体がスピードをあげて
縮まって行くような…
そんな気がしたんだ。

「…開けていい?」

「…うん。」

近くにあるベンチへと移動し、
梨華はおもむろに袋から箱を取り出し
椅子の上に置いた。
コトリと小さな乾いた音が、あたしの耳に飛び込んでくる。

177番外編:2002/10/11(金) 05:05
「…うわぁ。」

彼女の少し潤んだ瞳が輝く。
あたしは照れた。
背中がムズ痒かったけど、微塵もそれを表さないよう、
必死で我慢した。

「…キレイだねー...。…付けて、いい、かな?」

「どうぞ。」

真っ直ぐに梨華の目を見れないよ…。
どうしてあたしはこんな時でもトイレを見てるんだろう。
あ。
さっきのおじさん。
すげー幸せそうな顔で出てきた。

「…ひとみちゃん?」

「どした?」

「…っと。あのね…?これ…ひとみちゃんが付けてくれないかな。」

「…しょうがないな。貸してみ。」

178番外編:2002/10/11(金) 05:06
何がしょうがないだ。
本当は嬉しいくせに。
ああ、そうさ。
ホントはここで『まかせな!』ってさ。
カッケーとこ、見せてやりたいよ?

「ごめんね。」

「いや。」

大人になりたかった。
カッケーく決めたかった。
心とは裏腹に。
勝手に言葉が出てくるんだ。
汗で手が滑る。
梨華にバレるかも。
あたしが緊張してるって。
うまくハマんないぞ?
落ちつけ…
うん。
落ちつけば…きっと…大丈、夫…っと。

179番外編:2002/10/11(金) 05:08
「はい。」

「…へへ。似合うかな?」

「うん…。似合う。」

あたしはベンチから腰を上げ、
『よいしょ!』って背伸びする。
…まともに今、梨華の顔なんか見れないよ。

(…え?)

「梨華!…どう」

「こっち向かないで。…そのままで聞いて―。」

「…わかった。」

あたしは大きく万歳。
そしてあたしの腰の周りには愛する梨華の手が
回されていた。

180番外編:2002/10/11(金) 05:09
「…ありがとう。一生…大事にするね。」

「マジで?」

「うん。もし…ひとみちゃんとケンカしちゃっても。
 私がお嫁さんにいっても。おばあちゃんになっても。」

「…そんなに大事にしてくれんの?」

「するよ。…だって。」

「だって…?」

ギュっと力が入った。

「…初めて。好きな人から貰った…プレゼントだもん。
 大事にするに決まってるもん。」

「……」

…意識が。
遠のいていくのがわかった…。

――――――――――――

181番外編:2002/10/11(金) 05:10
「…初めて。好きな人から貰った…プレゼントだもん。
 大事にするに決まってるもん。」

「え―――――――!わ、私、そ、そんな事言ってない!」

「言ったよ!言ったとも!めっちゃロマンティック風にさ。
 目なんかキラキラさせちゃってさ!
 ひとみちゃん…私、ひとみちゃんのコト、だぁ〜い好きってね♪」

「いいいいいい言ってないもん!…最初の方は、その…言ったけど。」

「ほらね♪もぉ〜素直じゃないんだから。梨華は。」

「!…もぉいい!ひとみちゃん知らない!」

梨華の耳や顔は真っ赤っか。
猿のケツみたい。
あっはっはぁ〜♪
なんて思ってたら、梨華はあたしに背を向け
薄い布団を頭から被る。

182番外編:2002/10/11(金) 05:10
「ちょ…!梨華」

「知らない、知らない!!」

「ごめん!ちょっと悪フザケしすぎた!」

「…………」

フーっと一息ついてみた。
あたしは静かに布団の脇をまさぐり
進入する事に成功。
頑なに梨華は動こうともしない。
…いつもこうだ。

「梨華。…ごめん。ちょっとフザけすぎた。」

あたしは優しく彼女を包み込む。
…やっと梨華はあたしの方に顔を向けてくれた。

183番外編:2002/10/11(金) 05:11
「…恥かしかったんだから。」

「ごめん。だって梨華、からか―

フワリと
静かに。
梨華があたしに口付けた。
危なくあたしは梨華の唇を噛んでしまいそうになった。
だっていきなりキスされたんだもの。
それにあたし喋ってたし。

布団の中でのキスは―
何だか照れくさかった。
何度か交わしたことはあったけど…
これほどまでに胸漕がれるようなキスは感じたコトがなかった。

「…ズルいよ。梨華…いきなりなんて。」

「…じゃあ、ひとみちゃんからして。」

「…うん。」

スーっと瞳を閉じる。
あたしはゆっくりと愛する人にキスした。

      
        ――――EMD――――

184理科。:2002/10/11(金) 05:12
番外編完結です。
お粗末さまでした。

185名無しナース:2002/10/12(土) 01:46
う〜ん甘くて最高でした!!
ありがとうございました。
次回作も楽しみにしています。

186名無しナース:2002/10/12(土) 23:11
サイコ〜〜〜ですた。
続き!続き!と、言いたい……。

187名無しナース:2002/10/12(土) 23:19
面白くって、感動して、甘くって良かったです。
次回作あるのだったら、楽しみにしています。

188名無しベーグル。:2002/10/14(月) 15:31
お疲れ様でした。
また時間が出来て、書ける時が出来たら書いて下さいね。
ずっと、ずっと待ってます。。。

189ごまべーぐる:2002/10/15(火) 00:11
完結おめでとうございます。
お疲れさまです!
いしよしが心を通わせることができて、ヨカター

また理科。さんのステキなお話に会えるのを楽しみにしています。
名無しベーグル。さんと同じく、待ちます。

190じじ:2002/10/17(木) 09:04
完結おめでとう。
理科。たんの小説ヲタの私としては、完結するたびに
少し寂しさも感じますが(w
また理科。たんの小説に出会えることを楽しみにしています。
ヲレもずーっと待ってるからね。
お疲れ様でした。

191ひとみんこ:2002/10/17(木) 18:36
ご馳走様でした、南無阿弥陀仏、合掌! でございました。

改めて最初から読み通してきました、只々感謝です。

我望新作です。


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