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スキップビート

1ごまべーぐる:2002/08/19(月) 07:28
短編集で書いた「夜にスキップ」の続きです。
いしよしも脇でヒソーリ…。

610スキップビート:2004/03/09(火) 22:09
「あ…」

つぎは、ちがう意味でくちにだした。

「かわいいマフラーれすね」

辻希美はウチのマフラーを持って、「ひさしぶり」もなにもなく立っとった。

「どうも」

ウチはなにを言ったらいいかわからへんで、つっけんどんにうけとる。

「元気れした?」

「うん…まあ。自分は?」

「へいっ。健康なのがとりえれすから」

「そりゃよろしいなあ」

「せっかく会えたれすけど、のの、もう明日帰るんれすよ」

「…え?」

「おうちの用事できのう来たんれすよ。長くいれないんで残念れすけど」

「…そっか」

「会えてよかったれす」

そう言うて辻希美は、ポケットからふうとうをとりだした。

611スキップビート:2004/03/09(火) 22:15
「なに?」

「クリスマスカードれすよ。送るより、こっちのほうが早いれすから」

「はぁ」

そういや、封のところに、クリスマスっぽいベルのイラストのシールがはってある。

「じゃ」

辻希美は、そう言うてマフラーを押さえ笑ってきびすをかえそうとした。

「ま、待ってエや!」

「なんれすか」

「ちょ、ちょっと来てエな!」

ウチはなんでそう思たかわからん。

気がついたら、辻希美の手を引いて、駅に向かってダッシュしてた。

612スキップビート:2004/03/09(火) 22:22
着いたトコは『居酒屋裕子』やった。

まだ昼間やし、仕込みの途中かもしれん。

それでもウチはかまわず、

「ごめんくださーい」

戸を開けておもっきしさけんだ。

「ハーイ…あれ?アンタ、どしたん?」

すぐ、キンパツのセクハラ店長が出てきはった。

「店長」

「うん?」

「この子、ウチのトモダチです」

辻希美の腕をつかんでそれだけ言うと、店長はしばらくじっとウチらの顔を見てたけど、

「うん。カワイらしいカノジョやん」

とニヤニヤしはった。

トモダチや、ゆーてんのに。

辻希美はなにもゆわんと、てへてへ笑っとった。

613スキップビート:2004/03/09(火) 22:28
「ヒサシブリやなー。えーっと、ロンドンに行ったんやったっけ」

腰に両手をあてて、店長さんは辻希美の顔をのぞきこんだ。

「へいっ。用事で帰ってきたんれすけど、明日帰るんれす」

「ほお。なんやせわしないな」

「店長さんもお元気で」

「なんや、もう帰るんかい」

「ああ、お父さんたちが夜帰るくらいまでに帰ればいいんれすけど」

「なら、ちょっと寄っていき」

店長さんは、ウィンクした。

614スキップビート:2004/03/09(火) 22:32
「…なんでウチらは先生のクリスマス会に参加してんの?」

「まあまあ、ホラ、アンタもじゃんじゃん飲みな」

ウチはすでにできあがってるケメ子に、バヤリースオレンジを注いでもうた。

今日、ここ『居酒屋裕子』で午後5時というありえへん時間からケメ子ら学校の

先生が宴会の予約を入れとった。

それを知ってて、店長さんはウチらをここにとどめたんや。

ウチと辻希美は家のひとにそれぞれ連絡を入れて、このもよおしに参加。

飯田先生は、辻希美を抱っこして、からあげを食べさせてる。

615スキップビート:2004/03/09(火) 22:37
大谷先生は『ザンギが恋しいねえ』とからあげをつまむ。

「加護、よかったじゃん。また辻に会えて」

ケメ子がウチの肩を、ばしっと叩いた。

「はぁ…」

「ホラー。だからカオ言ったっしょー?クリスマスにはステキな奇跡が起こるってー」

…恥ずかしながら、ウチもちょろっとそう思たんや。

ステキなんかどうかはわからへんけど。

でも、それはウチの心のなかに、確かにあったかいものを残した。

616スキップビート:2004/03/09(火) 22:43
その夜は。

ウチのお父ちゃんがむかえに来てくれるまで、ケメ子いわく『ドキッ!ピチピチギャルだらけの

クリスマスパーティー』がくりひろげられた。

あいかわらず店長はセクハラ星人で。

ビールのジョッキを運ぶ矢口さんがおしりをさわられとった。

「バカ裕子!もー年末年始オイラバイト入んねーぞ!」

「もーヤグチぃー!そんなイケズゆわんといてェなあ」

「バカ!離せよー!」

店長さんにぎゅっと抱きしめられて、矢口さんはじたばたじたばたしてた。

それを見て、ウチらはみんな笑った。

617ごまべーぐる:2004/03/09(火) 22:45
更新しました。

 バカユウコ!(;〜^◇^从~3~# 从 ヤーグチー!

618名無し(0´〜`0):2004/03/12(金) 12:03
。゚+.(・∀・)゚+.゚イイ!!。゚+.(・∀・)゚+.゚イイ!!
密かに更新楽しみにしています。

619YUNA:2004/03/15(月) 16:18
更新おつかれさまです♪
やぐちゅ〜、なんだか久しぶりっすねぇ。
久しぶりにTVでの絡みが見たくなって来た...w
加護ちゃ〜ん、頑張れっっっ♪♪♪

620スキップビート:2004/03/31(水) 18:49
パーティーはお開きとなった。

辻希美は携帯で誰かに電話してるようや。

ずいぶん遅うまでおるような気がしたけど、まだ8時前やった。

ケメ子の女物の腕時計が、ちょっと光って見えた。

「おまたせしたれす。のの、このまま帰るれすね」

「あ、アタシ送ってくわ。えっと、道さえ教えてくれたら」

ケメ子が言うと、

「カオも行くー!」

と飯田せんせいが元気よく真っ赤な顔で手を上げた。

621スキップビート:2004/03/31(水) 18:55
「児童を守るのはー、我々教師のつとめですからー!」

…完全に酔うてるわ。

大谷せんせいは、他の先生と肩を組んで

「もう一軒行こうー!」

ともりあがって帰って行かはった。

オトナってエエなあ〜。

「先に辻ね」

とウチらはぞろぞろと辻希美の親せきの人の家に向かった。

飯田せんせいはたまに空を見上げて、

「♪う〜えをむーいてあーるこう〜」

とか歌っとった。

上向くんはエエですけど。

コケやんといてくださいよ。

622スキップビート:2004/03/31(水) 18:59
「カオリ、コケんじゃないよ」

同じコト思たんか、ケメ子がちょっと振り返って言うた。

「だーいじょーぶ…い!」

…飯田せんせいは、Vサインをかかげたままそばの電柱にぶつかった。

「いったーい!なんでこんなトコに電柱があんのさあ!」

飯田せんせいは、涙目ででこを押さえた。

「だから言ったじゃん。バッカだねえ」

ケメ子が頭をなでてやったら、

「…ぐすん」

とか言うて、飯田せんせいはケメ子の肩によりそった。

「ホラ、行くよ。帰ったら、冷やしちゃるから」

「うん」

一行は、ふたたび辻希美の親せきの人の家に向かう。

飯田せんせいは、でこを押さえて一番後ろからついてくる。

623スキップビート:2004/03/31(水) 19:04
「いい晩れすね」

ふいに、辻希美が言うた。

「そやね」

「サンタさんが来ても来なくても、いい晩れす」

「へえ、自分サンタ信じてへんの」

「いたらいいな、とは思ってるれすよ」

「サンタはいるー!」

飯田せんせい、声デカイ。

「サンタはー!いると信じることが大切なのであります!

不肖、飯田圭織はそう思うであります!」

「はいはい、飯田先生。

少し静かにしててね」

ケメ子にたしなめられて、飯田せんせいはちょっとおとなしくなった。

酒のせいか。それとも、さっき電柱にぶつけたのが悪かったんやろか。

飯田せんせいは、相変わらず一番後ろで軽やかにスキップしてた。

624スキップビート:2004/03/31(水) 19:08
「いいらせんせいは、スキップ上手れすねえ」

まるでウチに対するあてつけのように、辻希美が言った。

「うっふふ〜!だって、カオ運動神経いいも〜ん!」

飯田せんせいはくるくると回った。

「ホホ!アタシだって負けないわよッ」

対抗してケメ子がやってみせたスキップは、

「…なにソレ?馬のギャロップ?」

と飯田せんせいがシラフに返って言うモンやった。

「う、うっさいわよ!」

とヤケになって再度やってみせたスキップは、やっぱりギャロップ。

ウチらはおなかを抱えて笑た。

625ごまべーぐる:2004/03/31(水) 19:15
更新しました。
              アレガウワサノ ケメコバシリダヨ
((((;`.∀´)ノ  ( ゜皿 ゜)         (‘д‘;) (´酈`;) 
 
レスのお礼です。

>618の名無し(0´〜`0)さん

( ゜皿 ゜)<ヒソカニ コウシンシタヨ

密かなお楽しみをお届けします(w もう春なのにクリスマスて(汗        


>YUNAさん

( ‘д‘)ノ<がんばるで〜!

やぐちゅー、ヒサブリに書きますた。ヤグチを溺愛する姐さんってなんかツボなんです(w

626スキップビート:2004/04/12(月) 17:39
「それじゃ、おやすみれす」

辻希美の親せきの人の家について、ウチらはおわかれのあいさつをした。

「ん。また日本に来ることあったらいつでもおいでね」

飯田せんせいは辻希美の頭をなでる。

「困ったことがあったらいつでもメールしてらっしゃい。キリキリ答えるわよ!」

ケメ子がおそろしい笑顔で言う。…ウィンクつきや。

「へいっ。ありがとうれす」

辻希美が笑顔で言ううしろでウチは何も言えずただだまってた。

627スキップビート:2004/04/12(月) 17:42
「加護、ほらなんか」

ケメ子に肩をたたかれてはっと我にかえる。

そんで。

しばらく言うことを探しあぐねて

「…ぜったいスキップは負けへんからな」

ぼそっとつぶやいた。

飯田せんせいとケメ子は大きな目を開いて、顔を見合わせて少し笑う。

辻希美は苦笑いして、

「ええ。ののも絶対負けないのれす」

と答えた。

628スキップビート:2004/04/12(月) 17:52
「加護は意地っ張り子さんだね〜」

辻希美を送ってつぎは加護家に向かおうというとき、飯田せんせいが『うーん』と

うめいて背伸びしていうた。

「まあ、この子なりの愛情表現なんだろうし」

ケメ子の苦笑いのフォローに、

「あいしてへん」

ウチは即こたえた。

「べつに恋愛のことだけ言ってるんじゃないわよ。

友情も愛情のひとつよ」

「あいしてへん」

「そっか」

ケメ子は小さく笑って『それにしても冷えるねー』

と手に持ってたカバンを肩にかけた。

「圭ちゃんはカオのこと愛してるぅ〜?」

「キモイよ」

なんや、自分で言うといて。

説得力ないな、ケメ子。

「カオはあ、圭ちゃんのことも加護のことも辻のこともみんなのことも

愛してるよ〜!ラーブアンドピース!」

『ブイッ!』とでっかくピースをつきだして、飯田せんせいはポーズをとった。

ウチとケメ子は顔を見合わせて静かに笑った。

「…カオ、もしかしてハズした?」

「…うん」

とケメ子。

「…おもきし」

と、ウチ。

「やあだー!笑わせるんならともかく笑われるなんて、カオ、芸人として失格じゃん!」

「アンタはなにを目指してんのよ?」

「歌って踊れて絵も描ける優しくて美人な図書館の先生」

「…もっと自分を顧みな」

「ブー」

そんな感じで、ケメ子と飯田せんせいの漫才を聞かされながら、我が家へと向かった。

629スキップビート:2004/04/12(月) 18:02
「おお!あいぼん!」

家についたら、となりの梨華ちゃん家に梨華ちゃんとひと休みがおった。

かげにかくれてさいしょはちょっと見えんかったけど、柴田さんもおった。

「あいぼんクリスマスおめでとうな〜!」

ひと休みはダッシュしてウチを抱きしめて頬ずりする。

「やめい!キショいんじゃ!それにクリスマスはキリストさんのお誕生日やろ?

なんで赤の他人のウチがおめでとうゆわれなアカンねん」

「ハッハ、加護らしいね」

ケメ子たちはのん気に笑う。

「あなたたちは、夏にうちの学校の紛失物を一緒に探してくれた人たちね。

あのときはありがとう。本当に助かったわ」

ケメ子が梨華ちゃんたちに軽く頭を下げる。

「いいえ〜。夏休みでヒマでしたから」

柴田さんが笑って手を振った。

「ウチのイトコにもゆっときます。彼女、東京のコなんで」

ごとーさんのことやな。げんきにしてるやろか。

「先生、美人っスね」

ひと休みが飯田せんせいのほうに近づいていった。

「アラ、ありがとう」

せんせい、さては言われなれてるな。

リアクションがよゆうや。

笑顔やし。

「先生、何年生持ってるんスか」

「カオは図書館担当なの。学校司書だよ」

「司書カッケー!」

でたよ。『カッケー!』

「ウチ、先生の犬になりたいです。アンアン!」

ひと休みのあほは腰をかがめて両手首を犬のようにくいっとまげて、

まるでしっぽをふってるかのように鳴いた。

「も〜!ひとみちゃ〜ん!」

梨華ちゃんがマジで怒ってた…。

630ごまべーぐる:2004/04/12(月) 18:06
更新しました。

よっちぃ誕生日おめ。(0^〜^)ノ

  ∧∧
(0^〜^)<犬になりたい!アンアン! ||(‘〜‘;川 (`.∀´;)

( ` ▽´)ノ<コラー!

631名無し(0´〜`0):2004/04/15(木) 11:13
更新されてたーーーーーーーww
もうすぐ、ののとかおりの絡みも見れなくなるのか・・・

更新楽しみにしてるんですよ。
このさくひんは、ほのぼのしててすきなんです。がんばってくださいね。

632スキップビート:2004/05/01(土) 05:39
「じゃ、またね」

ケメ子と飯田せんせいは、手をふって帰っていった。

このあと、ケメ子の家行って、ふたりで飲むそうや。

ホンマ、よう飲むなあ。

梨華ちゃんたちはこれからお泊り会をするらしい。

ウチも『来る?』ってさそわれたけど、今日はおそなったし、オカンにおこられるから

エエわ、とていちょうにことわった。

いちおう、受験生やしな。

「そっか。じゃ、あいぼんのぶんのケーキ残しといてあげるから、明日取りに来なよ」

と梨華ちゃんが言うてくれた。

ひと休みは

「う〜んとメシ食っておっきくなれよ〜」

とかワケわからんこと言うて、ウチの頭をぐしゃぐしゃなでおった。

それを見て柴田さん、くすくす笑ってる。

「も〜!ひとみちゃぁ〜ん!」

梨華ちゃんがまた怒っとった。

633スキップビート:2004/05/01(土) 06:02
家に入ると、オカンが

『辻さんから電話あったで』

と言うた。

「なんかゆっとった?」

「いや、べつに言うてへんけどな。電話かけたり」

何の用事やろ、と思いながら辻希美の携帯に電話した。

『へいっ』

「あ、自分電話くれたんやて?どしたん?」

『いえ、今日はありがとうれす、って言おうと思って電話しただけれす』

「そっか。自分もう帰んねんな」

『へいっ。加護さんも受験がんばってくらさい』

「なんで知ってんの」

『保田せんせいと飯田せんせいが言ってたれす』

「ふうん…自分も音楽の学校やったっけ?頑張りや」

『どうもれす』

「じゃ、元気で」

『へいっ。電話ありがとれす』

「ああ。じゃ、おやすみ」

『おやすみれす』

それだけ言って、電話は切れた。

ああ、もう冬なんやな。

と、いまさらながら思った。

634スキップビート:2004/05/01(土) 06:06
冬休みはまたたく間に過ぎていった。

ウチは電車に乗って、遠い町の進学塾の冬期講習ってヤツを受けにいった。

帰ったら、週3回矢口さんのカテキョ。

ほんま勉強づけやった。

大みそかも除夜の鐘の音とともに算数の問題解いて、

正月も朝8時からノート広げたし。



そんで、受験の日がいよいよやってきた。

635ごまべーぐる:2004/05/01(土) 06:11
更新しました。

あいぼん、いよいよ試験本番。


レスのお礼です。

>631の名無し(0´〜`0)さん

( ゜皿 ゜)ノ<コウシンシテターーーーー!!!!!

現実ののかおの絡み、本当にあと少しですね…(涙
ののさんを甘やかすいいらさんが見てて微笑ましかったんですが。

楽しみにしてくださってありがとうございます。頑張ります。

636名無し(0´〜`0):2004/05/01(土) 16:32
〜〜〜〜〜(ノ≧ロ)ノぎゃぁぁぁぁぁ
裏に行ってて気づかなかったわーーーーーー
ごまべーぐるさんごめんなさいいい作品なんでageちゃいます
私は続きを、たのしみにしてるんでがんばってくださいね

637スキップビート:2004/05/03(月) 03:21
問題も特に大きなミスはせんかった。

合格ラインは達してるハズや。

体調は万全に整えたし、おなかこわすようなモンも食べんかった。


それやのに、それやのに。




合格発表の掲示板には、ウチの受験番号はなかった。

638スキップビート:2004/05/03(月) 03:24


ウチはぼーっと電車に乗って、知らん駅のホームにずっとおった。



みんな、心配してるかなあ。

なんも言わんと、来てもうたし。


それにしてもさっむいわあ。

この待合室、全然暖房効いてへんがな。

639スキップビート:2004/05/03(月) 03:27
ウチは合格発表で自分の番号がないのを何度も何度も見てから、そのままフラフラと

電車に乗り、この駅に着いた。

今日は土曜で休みやったから、昼の1時からの発表に合わせて行ってんけど。

いま、夜の8時。

寒さもピークに達してきたわ。

640スキップビート:2004/05/03(月) 03:33
「て、エエ?加護…?」

思わぬ人に見つかってもうた。

飯田せんせいは、待合室の外の窓ガラスで顔を近づけ、びっくりしたように目を見開いてる。

扉をイキオイよく開いて、ウチのほうに走って近づいてきた。

「ちょ!なんで逃げんのさ!」

反対っかわの扉を開いて走って逃げようとすると、がしっと腕をつかまれた。

「見逃してください!」

「だから、なにをさ!」

「ウチはもうエエんです!」

「なにを!」

「ウチはもう終わりです!」

「コラ!」

ウチはおっきな腕のなかに抱きすくめられた。

641スキップビート:2004/05/03(月) 03:46
「なにがあったか知らんけどさあ。まだだいじょうぶだって。な?」

「う…ウエ…ひっく…」

気がついたら、頭をぐしゃぐしゃなでられながら、飯田せんせいの腕のなかで

わんわん泣いた。




それから。

ウチは飯田せんせいに家まで送ってもらって、無事帰った。

あの駅は乗り換え駅で、飯田せんせいは今日研修があってあの駅のもっと先の

学校に行ってて、その帰りやったらしい。

帰ったら、オトンとオカン、ケメ子がおった。

梨華ちゃんや、ひと休み、柴田さんも。

帰るなり、オカンになぐられた。

「このあほ!どんだけ心配させたら気がすむねん!」

って。

わんわん、オカンは泣いてた。

オトンはなぐらんかった。

なぐらんかったけど、

「おまえがおらんようになって、どれだけの人に迷惑かけたかわかってるか。

こんだけの人に心配かけたってことがわかったんなら、俺は何も言わん。

みんな休みのとこを来てくれたんや。ちゃんとおわびすんねんぞ」

静かに言うのが、なぐられるよりこたえた。

「よかった…よかった」

ケメ子もぼろぼろ泣いてた。

飯田せんせいに、背中をさすってもらってる。

「先生、ほんまありがとうございました」

オカンがケメ子と飯田せんせいに頭をさげる。

「いえ。あの、あんまり怒らないであげてくださいね。

加護、今日はゆっくり休むんだよ」

飯田せんせいが言うと、ケメ子も

「うん、あとのことは心配しなくていいから」

とうなづいた。

642スキップビート:2004/05/03(月) 03:50
「そんじゃ、オイラたちは帰るよ。またな」

ひと休みがいつものように、ウチの頭をぐしゃぐしゃなでた。

梨華ちゃんと柴田さんも「またね」って帰っていった。


試験に受かっても落ちても、日常はなにひとつ変わらへん。

ウチもお風呂に入って、ごはんを食べてからお布団に入った。

643スキップビート:2004/05/03(月) 03:55


…それから、何回目かの春がやってきて。




あれから、ウチは大学をかろうじてあの中学の付属のトコに受かり、念願を果たした。

紺ちゃんと同じ学科に入って、一生懸命子どものことについて学んだ。

大学を出たあと、ウチは現役じゃなかったけど、あんなにキライやった図書館の司書になった。

なぜか、紺ちゃんも。

地元の図書館で、一緒に働いてる。

あいつ、大学出てふらっとアメリカ行ったと思たら、ハーバードでマスター取って

帰ってきょったんや。

644スキップビート:2004/05/03(月) 04:05
紺ちゃんの友達のオガワさんは、学校の先生になった。

ウチの通ってた小学校でいま4年生を教えてる。

紺ちゃんとよくつるんで、飲みに行ってるようや。



梨華ちゃんとひと休みも相変わらずようつるんでる。

ひと休みは母校の高校の、体育の先生なった。

梨華ちゃんは地元の農協で働いてる。

キミら、できてんの?ってくらい、相変わらずベタベタしとるし。



飯田せんせいは、この春隣の市にできた児童図書館にいる。

自分で絵本も描いて、そこそこ売れてる。

ケメ子はいまは違う小学校で教えてる。

図書館の常連の子どもにケメ子の教え子がおって、たまに近況聞いてる。

やっぱり『キリキリ逝くわよッ!』と言って、子どもらに負けへんくらい、パワフルに

先頭切ってドッジボールとかしてるらしい。

「相変わらずよく飲むのよねえ」

同業なんでたまに飯田せんせいと顔合わすけど、そこでもケメ子の近況は聞く。

まあ、本人とメールのやりとりはしてるんやけどな。

相変わらず、ふたりはようつるんでるようや。

645スキップビート:2004/05/03(月) 04:11
『居酒屋裕子』は場所を移って、ちょっと手広くなった店舗で変わらず営業中や。

農協で梨華ちゃんの先輩であるみっちゃんと、ダンスインストラクターのあっちゃんが

やっぱり飲んだくれてる。

変わったのは、そこに梨華ちゃんやひと休み、柴田さん(地元の会社で事務やってるらしいわ)が

加わったってことか。

ひと休みに聞くと、後藤さんは大学出てニューヨーク行ったらしい。

帰国して、振付師なったとか。

テレビで出てるアイドルのダンスとか、結構後藤さんの振り付けのが多いらしいワ。

そんな話を、郷土研究家になった矢口さんも笑いながら聞いてる。

この人の進路が一番意外やったわ。

646スキップビート:2004/05/03(月) 04:19
「あいぼん」

「あいぼーん」

「うるさいな!加護さんって言いや!」

図書館の隣のイベントホールで催しの準備に追われてるとき、常連の子どもらに

呼び止められた。

「あいぼーん、スキップ教えてーやー」

「うちも」

「オレも」

「あ〜?あいぼんは、いま忙しいんや」

「なにがあんの?」

「隣で、明日ピアノリサイタルがあるんや。

有名なひとが弾きに来はるんや」

「あ、オレ知ってんで!お母ちゃんが言うてた。昔、ここに住んでたんやろ」

「そうや、よう知ってんな」

昔この市に住んでたという、有名なジャズミュージシャンが明日ここに来る。

本来ならそんな有名人、ギャラなんかとても払えんけど、昔住んでたってことで

安いギャラでOKしてくれたそうや。

子どもらと話してると、その中で一番ちっこい子が見てられへんスキップしてたんや。

「スキップはこうすんねん」

ウチは手に持ってた段ボールを下に置くと、その場でスキップした。


「相変わらず、ヘタだね」

647スキップビート:2004/05/03(月) 04:25
顔を上げんでも分かる。

だって、ウチの完璧なスキップにケチつけんのなんて、アイツくらいや。


『辻希美リサイタル』

ホールのポスターに目を走らせると、彼女はくすっと笑った。


「スキップは、こうやるんだよ」


ウチらは何度でもめぐり会う。

そして、そのたびに、スキップするんや。

自分らだけの、スキップを。








おしまい

648ごまべーぐる:2004/05/03(月) 04:26
スレ流し

649ごまべーぐる:2004/05/03(月) 04:27
(o^〜^o)ノ<カッケー!

650ごまべーぐる:2004/05/03(月) 04:28
     ビシッ
m9っ`.∀´ )<キリキリ逝くわよッ!

651ごまべーぐる:2004/05/03(月) 04:29
( ゜皿 ゜)ノ<オワッターーーーー!!!!!

652ごまべーぐる:2004/05/03(月) 04:30
( ´ Д `)<んあ〜、長かったね

653ごまべーぐる:2004/05/03(月) 04:30
(〜^◇^)<キャハハ!本当にな

654ごまべーぐる:2004/05/03(月) 04:39
更新しました。

「スキップビート」、これにて完結です。

で、読み返して書き忘れにいまさら気付く。

『居酒屋裕子』アルバイト藤本嬢は、地元北海道に帰り、焼肉屋を経営しております。

おみやげコーナーで売ってる鮭トバも好評のようです。

大谷先生は、相変わらずマイペースに小学校の先生です。

担当は家庭科なので、日夜縫い物や調理実習に励んでおります。

そんな感じです。



最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。

レスのお礼です。

>636の名無し(0´〜`0)さん

( ‘ д‘)ノ<おおきになあ!

どうもありがとうございました。無事(?)終わりました。
たまに裏にいってて、自分でも「あれ?」と思うこともしばしばでしたが(笑)。
今まで読んでくださって、本当にありがとうごいました。

655ごまべーぐる:2004/05/03(月) 04:41
最後の最後にやっちまった(ニガワラ

ありがとうございました。

(;`.∀´)<あ〜あ。しょうがない作者ねえ

656名無し(0´〜`0):2004/05/03(月) 23:08
良かった
ほのぼのとした雰囲気がすごく好きでした

657名無し(0´〜`0):2004/05/04(火) 21:47
完結おつかれさまです。
こちらの辻加護はずっとこのままかなぁなんて勝手に思っていました。
終わったばかりではありますが、またあったかい作品をお待ちしています。

658タロイモ:2004/05/04(火) 23:06
完結ご苦労様でした。
舌足らずでない辻ちゃんの言葉で時の流れを感じさせられ、
少し胸が熱くなりました。
またこのような心温まる作品を期待しております。

659YUNA:2004/05/05(水) 16:39
完結おつかれさまでしたぁ!!!!!!
いんやぁ、鳥肌がぶわぁ〜っときましたょ。w
読むたびに、胸が温かかったです。
よっちゃん、体育の先生カッケぇ♪♪♪
加護ちゃん、スキップできるよぉになったんですね...
やっぱり、下手なようですが...w

自分も更新しなきゃ...↓
次も期待してますよぉ、お疲れ様でした。


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