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読み物

26KAZUKI:2003/12/24(水) 01:33
・新潮文庫『幕末動乱の男たち(上・下)』海音寺潮五郎
 再読。
 俺の歴史小説歴は柴田錬三郎から司馬遼太郎や吉川英治、その後中国物(陳舜臣とその流れを組む
人たち)そして海音寺潮五郎、その後は雑多に何でも…と進んできている訳なのだけれど、最近は再び
海音寺作品を手に取ることが多くなった。
学生の頃や社会人になりたての頃は司馬遼太郎ばかり読んでいて、海音寺作品といえば、堅牢だけども
地味で退屈、という印象ばかりだったのに、今読むとその堅牢、堅実さが逆に心地よい。

一方の雄である司馬遼太郎の作品構成が、まず作品全体を包む大風呂敷を準備し、その風呂敷の中に
読者が退屈しないエピソードやら、登場人物が見得を切るための名セリフやらをゆるやかに収めていく、
といった風情なのに対して、海音寺作品は型紙から丁寧に切り取った布地を緻密に糸で繋ぎ、少し地味だが
渋みのある色合いの、身体にぴったり合った衣服を作り上げる、といった風情がある。

特に楽しめたのは「平野国臣」「長野主繕」「清河八郎」辺り、薩長土肥が表舞台でガチャガチャと
騒ぎ始める以前の名優たちで、彼らがそれぞれの立場で海の彼方からの圧力を感じながらもその実像を
目にすることが出来ず、百家争鳴のカオスの中を泳ぎまわったあげく、結局時代の大波に飲まれて
各々の生涯に見合った場所で非業に落命する辺りは、無類に面白くも妙に悲しい。


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