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インストゥルメンタリティ(SF)

6スズダル中佐:2002/03/01(金) 20:38
《人類補完機構シリーズ概要》
 西暦3000年頃。忘れられた第1次宇宙時代のあと、<古代戦争>が勃発し、中国以外の全ての国が解体する。生き残った人類は孤立した都市の中に立てこもり、細々と生き続ける。周辺には<けもの>(突然変異した野獣)や<マンショニャッガー>(「第81Q戦争」の表紙に描かれている殺戮機械)たちが徘徊し、しばらくは<暗黒時代>が続くことになる。
 西暦4000年頃。人工衛星からヴォム・アクト姉妹が帰還する。ヴォム・アクト姉妹は第2次大戦中にドイツ人科学者が冷凍睡眠をほどこし、軌道上で待機させておいた娘たちである。当時地球上で権力を握っていたのは<真人>を薬付けにして、専制的な支配を目論む哲学者の集り、ジウィンツ団であった。彼女たちは地球に活力を与え、ジウィンツ団に対抗する組織作りに一役買うことになる。その組織こそがこの後1万年の長きに渡って人類を見守り続ける<人類補完機構>であった。(「マーク・エルフ」「昼下がりの女王」)
 <補完機構>は統治や管理を目的とした組織ではない。監視をし、戦争を食い止め、人類を保護することが彼らの使命なのだ。かくして、世にも珍しい慈愛のみに基づく組織に庇護された人類のさまざまな冒険や生活が描かれていく。
 光子帆船を移動のメインに据えた第2次宇宙時代。(「スキャナーに生きがいはない」「星の海に魂の帆を掛けた女」「青をこころに、一、二と数えよ」)
 新しい航法の発見により人類の惑星移民が飛躍的に進んだ平面航法時代。(「鼠と竜のゲーム」「燃える脳」)
 そして長寿薬ストルーン(惑星ノーストリリアの病気になった巨大羊から生まれた特殊な薬物)の発見、動物を改造した<下級民>の登場を経て、西暦1万年頃から人類は再び長い停滞期に入る。病気も危険もなく、そこにはただ退屈なユートピアが存在するだけだった。しかし変容の兆しもいくつかあった。
 ライバル<輝ける帝国>の出現。(「黄金の船が−−おお! おお! おお!」)
 ダグラス=オウヤン惑星団による一時的な古代パワーの復活。(「老いた大地の底で」)
 犬娘ド・ジョーンの殉教による下級民解放の萌芽(「クラウン・タウンの死婦人」)などである。
 西暦1万6千年頃。ロード・ジェストコーストとレイディ・アリス・モアにより<人類の再発見>と呼ばれる改革が推進される。これは失われた病気や危険をもう一度人類に取り戻し、活力を甦らせようとする運動である。同時にジェストコーストは下級民の解放にも大きな関心を寄せており、ク・メルという下級民を通して、解放運動の指導者イ・テリケリと密かにコンタクトを取り、密約を結ぶ。(「アルファ・ラルファ大通り」「帰らぬク・メルのバラッド」「ノーストリリア」)
 私見によれば、唯一の長編を含めて、スミスの未来史中最も魅力的な作品が集中しているのがこの時期であり、分析や批評はこの時点でほとんど用をなさなくなる。たっぷりと愛情を注がれたキャラクターが破天荒なプロットの下に織りなす未来のおとぎ話に我々はただひたすら酔いしれるしかないのだ。
 3編から成る未訳の連作(「三世界の探求」)に続いて、この後スミスは人類と下級民共通の運命を描く宗教的クライマックスを想定していたようだが、作者の死によりそれは書かれないままに終わった。


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