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詩集読書感想文

1 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/03/20(水) 00:48
詩集を読んだらここに書こう!
簡単な感想でも、批評でもOK。
詩人論になだれ込むもまたよし。
そんな感じで。

2 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/03/20(水) 00:57
『牛丼屋夜間アルバイト』 小野省子

発行所:本の森、発売元:星雲社。880円。

 言葉のテンポのよさが印象的でした。詩集のタイトルにもなって
いる「牛丼屋夜間アルバイト」、「カエッテオイデ」のなかの小品
「うまく言えなくても」が私としては気に入っています。さばさば
とした明るさを感じる一方で、その明るさは孤独を知ったうえのも
のであるように感じました。だから押し付けのないほどよい温かみ
と、ユーモアも感じ取れるような気がします。

3 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/03/21(木) 16:35
『帰りなき者たち』 天澤退二郎 著

河出書房新社 1981年
(入手が難しいかもしれません。私は図書館で借りました)

 全体が31編からなる連作詩になっています。時々行分け詩も混じりますが、
ほとんどが散文詩です。散文詩のひとつひとつはショートストーリーのように
なっていますが、描写が独特で濃厚で、読み応えがあります。かといって重い
ばかりでなく、時々混ざるユーモアがまた別の魅力を加えます。次から次へと
イメージが展開し、読み手を惑わし揺さぶる作風は、昔から批評家泣かせだっ
たらしいです。ですから私がうまく書けてないとしても責めないで下さいね(笑)
詩の奥行きを知るために能動的に読んで向き合えば、彼の詩は多くのものを与
えてくれるものと思います。

4 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/03/21(木) 16:51
『空の重ね着』 北岡都留 著

詩学社 1800円

 それまでに経験した人との出会いや別れの重なりを、空の青さに
見出す冒頭の詩「空の重ね着」が、この詩集の全体を暖かくそして
爽やかに語っているかのようです。人との関わりが詩の源になった
と北岡さんはあとがきで語っていますが、詩には何らかのかたちで
いろいろな人が、北岡さんの暖かい眼差しを通して、飾らずに優し
く語られます。読んだ後空を見上げたら、私自身が関わってきたい
ろんな人たちが空の向こうに浮かぶように感じました。穏やかであ
たたかい気持ちになれる詩集だと思います。

5 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/03/26(火) 10:16
『倚りかからず』 茨木のり子 著
筑摩書房 1999年 1800円

 この詩人の書く詩や文章はどこか柔らかさがあります。タイトルの詩
「倚りかからず」の言葉を借りれば、「できあいの思想」etc.などで武
装せず、「じぶんの耳目」「じぶんの二本足」のみで何かを感じ、考え、
言葉を綴っているからなのでしょう。武装された言葉に食傷気味の私に
とって、この人の詩はやわらかく、心地よく響きます。でも同時に「椅
子の背もたれ」にいつまでも倚りかかっていられない気にもなります。
それは駆り立てられるのではなく自然に。詩の源泉が自分の心に、それ
も何事にも囚われない自由な心にあることを彼女は詩をもって語ってい
るかのようです。それに気付かされ、自分の心を怠惰から解放させる力
が彼女の詩にはあるのでしょう。木でさえも旅好きなのです。人間が何
に束縛を感じる必要があるでしょう。

6 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/03/29(金) 13:05
ちょっとエピソードなどを挿入
kanoppism 4  詩集に挟まっていた手紙 より

 古本屋で買った詩集のひとつに、作者の肉筆の手紙が挟まっていました。
きっとお世話になった人に詩集を贈呈したのでしょう。顔もみたことのない、
名前も知らなかった詩人ですが、その筆跡をみてなぜか安堵を感じ、
詩の世界にすっと入って行けるような気がしました。

インターネットで詩を読みあい、感想を書きあう楽しみを知ったので、
こうしたオフラインの人たちとも、詩集を通じて、たとえば手紙で感想を書くとか、
そういうやり取りをしてみたら面白いかもしれないと考えました。
偶然挟まっていた手紙が、肉筆の文字も、詩のかたちも、
ひとつとして同じものはなく、ひっそりと存在し、読まれたがっている、
そんなことを教えてくれたのかもしれません。
ひとつひとつ読んで行きながら、それぞれの詩人、詩の世界を感じ、
感想を書くことを繰り返して行きたいです。
そしてもし自らの肉筆をもって伝えたいほどの思い入れを懐いた詩に
出会った時には、詩人にファンレターのひとつでも出してみようと思います。

(2002年3月27日)

7 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/03/29(金) 23:05
『夢占博士』 網谷厚子著
思潮社 1990年

 散文詩23編からなる詩集です。あるいは23通りの夢ということもできるかも知れ
ません。日常の面影は残しつつも、不思議な出来事や人間、あるいは網谷さんが愛
読しているであろうエッセイや小説、詩なども織り込まれ、それらが一遍ごとに、
やわらかく不思議な夢の像をぼんやりと結びます。仏教の世界観や古代ローマから
来た商人が描かれたり、かと思えば月と太陽でお手玉を始める、といった具合に、
時間、空間、あるいは次元さえも自由に飛び越えるけれども、日常と連続させた描
き方はあくまで穏やかです。懐かしく、けれども広がりのある夢の世界にひっそり
と浸りながら読みたい詩集です。

8 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/03/30(土) 22:26
『空への質問』 高階杞一著

大日本図書 1999年 1200円

ソフトな感じの詩が青のインクで印刷されていて爽やかです。
おーなり由子さんのイラストも可愛らしく、詩を引き立ててくれます。
子供の頃の、柔軟な思考と旺盛な好奇心を失わず、それを詩の言葉で
見事に再現した、そんな印象をもちました。読もうとして力まなくても
自然に入ってきて、でも浅いわけではありません。空、地球、星から
アリやムカデ、そしてともだち、未来をみつめる眼差しは素朴だけれど
窮屈な型にはまった感じがなくて、読み手が自由なスタンスで向き合う
ことができます。詩を読んで間もない人から、かなり読んだ人まで、
幅広い層の人が楽しめるのではないかと思います。

9 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/04/16(火) 23:26
『モー将軍』 田口犬男著

こっけいなくせに深刻ぶって気取って威張って世の中を息苦しくしている
ものたちに、この詩集の詩たちは、あくまで柔らかく、時にはユーモラスに、
しかし奥深いまなざしで、静かに抵抗します。いや抵抗なんて力んでいる
わけではないのでしょう。弾丸飛び交う最前線で大きなあくびをして争う
心を和ませたり、この世のほとんどは不協和音で出来ていることを説き、
調和を無理強いする心をたしなめたりして、無用な緊張から人を解放して
くれます。親しみやすく暖かく、静かでどこかもの悲しい詩集だと思いました。

10 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/04/16(火) 23:28
↑補足 思潮社 2000年 2200円

11 名前:かのっぴ 投稿日: 2002/07/22(月) 00:14
『やさしさの旅人』 近藤文子著

東京学芸館 1992

千葉の詩人で、本当に自然を愛しているのだな、というのが
彼女の書く詩たちからにじみ出ているようです。決して多作な詩人では
ないのですが、そのぶん自己を見つめる深い視点がふと詩行の間から
みえてきたり、自然に包まれた心が投影されていたりして、それらが
奥深い「やさしさ」を醸し出しているように感じます。言葉も難解な
ところはなく親しみやすいです。それでも読む人に、ふと立ち止まって、
少し休んでゆこうか、という気持ちにさせるような不思議な力がある
ような気がします。

<印象に残った作品>
チアリーディングによせて書かれた「ひとこまの青春」
母への気持ちを綴った「母」、「あなたへの手紙」など。

12 名前:ボルカ 投稿日: 2003/04/15(火) 20:53
楽しく拝読しています。
>>8
で紹介されている高階さんの別の詩集「キリンの洗濯」を読んだのですが、
不思議な魅力でした。

13 名前:ボルカ 投稿日: 2003/05/18(日) 13:03
>>8、12
高階さんの「早くおうちへ帰りたい」読みました。
彼は、すごく良いですね。

14 名前:かのっぴ 投稿日: 2003/06/07(土) 19:26
ボルガさん、感想ありがとうございます。

さて、実は詩誌や詩集の感想を適度に目立たない場所で書きたいと
思っていたところなのですが、こんないい場所があることを忘れていました。
詩集と、詩誌の感想もここにいったん書いてゆくことにします。
読者は少ない(もしかしたらいない)かもしれないけれど。

15 名前:かのっぴ 投稿日: 2003/06/07(土) 19:27
現代詩手帖2003年6月号(1)

 6月の現代詩手帖の特集「戦後関西詩〜現代詩のもうひとつの風景」は、
読み物というよりは研究資料に近いものかもしれない。それも発表用に
まとめられる前の、聞き取りの結果を書いた調査票に近い。正直言えば、
そこに名前が出てくる詩人の詩と評論を詳しく知らず、なおかつそんなに
知りたいと思っていない人には、おそろしくつまらないものだろう。
とはいえ僕も、死ぬまでにはありとあらゆる詩を読破しようと思い立った
野望の持ち主(変人ともいう)。つまらないなんてたわごと、
読まない理由として自分自身に許すわけには行かない。

16 名前:かのっぴ 投稿日: 2003/06/07(土) 19:30
現代詩手帖2003年6月号(2)

 昔の詩人が何を書いたか、ということを調べようとするとき、
あまり本気でない場合には、歴史書の記述に目を通してよしとする
場合が多い。また作品自体を集めてくるのが困難で、不本意ながら
歴史書で行き止まりとなる場合もある。集めることは絶対不可能では
ないのだが、誰しも詩のことに24時間割けるわけでもない。僕の場合は
1時間も避ければいいほうだろう。だから歴史書に頼らざるを得ない。
歴史書に完全に依存するなら真実を100%知ることは不可能だ。
つまり作品とそれをとりまく当時の詩の書き手と読み手、あるいは
朗読を聞いた人々、ライブで聴く朗読、それらの社会の中の、
芸術のなかの位置付け、といったことを一つももらさず知ることは出来ない。
せいぜい作品のうち絶賛評価付きで現代に伝えられた作品を断片的に
知ることができるだけだろう。それにしたって大変な労力が要る。

17 名前:かのっぴ 投稿日: 2003/06/07(土) 19:46
現代詩手帖2003年6月号(3)

 だから歴史書の切り口は少しでも多いほうがいい。今月のこの詩手帖の
特集は、戦後関西限定という切り口で「もうひとつ」の現代詩を探っている。
「何と」もうひとつなのかがいまいちよくわからない。ある教養が要求されて
いるのだろうか。また杉山平一という人がごく最近書いた本のことや、小野
十三郎という人の評論とそれが詩人たちに与えた影響も予備知識として
要求されているようだ。そう考えるとブツブツいろいろ言いたくなるけれど、
この特集で名前が挙がっている詩人の詩は、読んで損はなさそうだ。図書館で
ぱらぱらと詩集をめくった限りでは。こういうのは年表や辞書の代わりに
活用するのがよさそうだ。せっかくなのでこの特集で知った詩人の詩の
感想を幾つかここに書いてみたい。それと特集のなかの与太話のなかにも、
当時の状況を知る手がかりになりそうなものがあるので、取り上げたい。
これらは次回書くことにしたい。いつ書くかは未定。

18 名前:ぽげ 投稿日: 2003/06/07(土) 23:10
|ー゚) ミテルヨー

19 名前:ボルカ 投稿日: 2003/06/08(日) 22:08
今月号買って無いけど、たしか高階さんも関西人ですよね。
彼の「キリンの洗濯」の表紙とカットやってる原律子(本業は、どエッチ漫画家)も
マンガ作品は関西人ポイ感じやねんな。

20 名前:かのっぴ 投稿日: 2003/06/15(日) 22:36
>>18
ありがとー
>>19
原律子さん、スピリッツかなんかで見かけたことあるような。

なんだか地域差の問題って、つかみどころがないんですよね。
苦戦中。うちのサイトのレビュウには適当に書いておいたけれど。

21 名前:かのっぴ 投稿日: 2003/06/30(月) 16:03
歴史を考察の前提とするとき、誰もがそれを前提とし得る「正史」は
存在するのか、またその内容は正しいのか、ということを不問にしては
いけない気がする。おそらく正史の内容では、戦後詩の出現の歴史的意義はこうだ。

感情の赴くまま詩を綴る行為が、詩人の裏側にある何か大きな力にたいして
批評的精神を持ちえず、結局それは自由な表現とはならない。内省によって
批評的精神の裏付けのある真の自由を獲得され、より深い表現が目指された。

上記は誰かの言葉を引いたわけではなく、いろいろ読み漁って、時代背景も
考え、こんなところだろうと私が勝手に推測したものに過ぎない。でもおそらく
当たらずとも遠からず、といったところで、上記のような主張は(今でさえも!)
形を変えていろいろなところに現れてきていると思う。小野十三郎の場合、
短歌的抒情の否定という主張にそれが現れているようだ。この言説は、定型批判を
内容とする否定命令として広がっていった。その過程で原文とは違うニュアンスで
広がった形跡もちらほらと見える。それはそういう事実として捉えるべきで、誤解
だからといって軽視してもいけないだろう。そのような誤解を生む素地が当時の
読み手にあったという事実と、その背景にある何か空気のようなもの、それを
探ることも重要だ。しかしながらまずは発信源の小野十三郎について探ることが
先決と思われる。

22 名前:かのっぴ 投稿日: 2003/06/30(月) 16:03
「正史」は必ず歪められている。

これは第四次十字軍を持ち出すまでもなく、もはや一般常識に属することだろう。
検証が可能な限りにおいて、疑うべきは疑い、「正史」の存在を無批判に許しては
いけないだろう。歴史を背負うとか、ある時代は終わったとか、そんなことを言う前に、
依って立つ「正史」は何なのか。レトリックとして語る場合であっても歴史という
言葉を用いる者がこのことに無関心というのでは、あまりに無責任だろう。

23 名前:かのっぴ 投稿日: 2003/06/30(月) 16:17
関西についての私の中にある先入観も、とてもじゃないけど信頼に足るもの
ではないので、あっさり捨ててかかろうと思う。日本のあちこちで区画整理
などの都市基盤の整備が行われ尽くした後では、戦後のどの地域であれ、
現在からその実像を的確に把握することは容易ではない。先入観は邪魔に
なるだけであろう。結局、個々の詩人の生い立ちなり作品なりに依存して
調べざるを得ない。幸い小野十三郎の場合、文献も豊富なのでそれが可能だ。

戦後(歴史)、関西(地理)、といったことは後回しにし、個々の詩人について
探ることにしたい。手始めは小野十三郎から。



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