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バトル・ロワイアル〜タッグマッチ篇〜

1 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 01:35:54 ID:???
もしも戦闘実験六十八番プログラムが男女同一出席番号生徒
一蓮托生のタッグ制だったらという仮定の元にした
原作城岩町立城岩中学校3年B組で行われたプログラムのif篇です。

なにぶん、長編SSを書くのは初めてなんで文章力が
稚拙なのは御容赦願います
あくまでifものなのでキャラクターや解釈に
多かれ少なかれオリジナル要素が加わるかもしれませんが
原作に比べての違和感とかバンバン指摘してください。
(特に川田とか三村とか高見先生の生み出したキャラクターが
 偉大すぎて上手く描ける自信がないorz)
なるべく自分で物語を進めていきたいですがリレーも歓迎です

原作、国信慶時・死亡後からの開始です

2 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 01:37:15 ID:???
―慶時!
秋也は席を立って駆け寄ろうとしたが、それより少し早くすぐ後ろの席の
中川典子の椅子ががたりと動いた。「ノブさん!」と悲鳴をあげて、慶時の
そばにかがみ込もうとしたが…二人ともそこまでだった。
防衛軍の兵士の一人''へらへら''がツカツカと倒れた慶時に歩み寄るとその手に
持った銃を斜め下へむけて引き金を引いた。ぱんっ!と乾いた音が鳴り響くと
慶時の頭がぴくっと一回はね、それきり、二度と再び動く事は無かった。
「あ……」典子が慶時の、その変形した顔を見下ろして声を漏らした。

くそっ!こいつらなんて事しやがるんだ!秋也は慶時を殺した''へらへら''にまさに
食ってかかろうとした―が、その思考は後ろから突然けたたましく鳴り出した…そう、例えるなら
デジタル式目覚まし時計のアラーム音か、はたまた駅の自動改札に失敗してゲートを
閉められたときのような、甲高い電子音によって遮られた。

「…えっ、えっ!?」
後ろを見やるとそれは、窓側から三列目、後ろから二番目の席、日下友美子(女子7番)の
首輪から発せられているものだとわかった。彫りが深いながら、それなりに整った友美子の顔が酷く狼狽してていた。

3 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 01:39:53 ID:???
「友美ちゃん!」
友美子のすぐ左斜め前の席、彼女の親友である北野雪子(女子6番)が声を張り上げた。
彼女だけじゃない教室にいる生徒全員(もちろん死んでしまった慶時は除いて)が
一斉に友美子の方を見た。未だ、アラームがなり続け、生徒たちの困惑した空気が支配する教室に坂持のいやらしい声が響いた。
「あー…そういや説明し忘れていたけれどな、4月に可決された新法で偶数号のプログラムはタッグ戦になったんだよ。」
その瞬間、口元を歪めながら話す坂持の放った言葉と鳴り止まない首輪のアラーム、それの意味するところを恐らく
殆どの生徒が察した事だろう。そして先ほどまで必死に首輪をいじっていた友美子の顔からサッと血の気が引いたのが
遠目からでも判った。
「ま…まさかく国信くんが…死んだ…か…ら」
「おっ、日下さんだっけ?なかなか察しがいいじゃないか〜。まぁ、そういうことだから…残念だが同じ出席番号の人が
 死んでしまったら、もう片方の人にも死んでもらいまーす。」
茶化すよな口調で付き付けられた死刑宣告に、友美子より先にもう泣き出しそうになっていた雪子は
堪え切れずに親友の身体にすがりついた。
「そんな!友美ちゃん!友美ちゃん!」
「ゆ…雪子……い…いや…」
友美子はぶるぶると震える手を差し出し、雪子の手をしっかりと握った。
「くそっ!!!日下さんっ!!!」
もう凍りついたようになってしまっている友美子を見て、秋也もいてもたってもいられなくなり思わず叫んだ。
「七……原くん…」
しっかりと雪子の手を握ったまま、女子の中では背が高い友美子の視線が秋也のそれとぴったりと会った。
ソフトボール部の四番で(ただ、秋也は元は野球部だったが生憎1年の1学期ですぐに止めてしまったので、彼女が
プレイしている姿はあまり目にする機会は無かった。)いつもの凛々しく中性的な顔が、今は酷く歪み
両目いっぱいに涙を湛えて、口元がガチガチと震えていた。

「ごめん…雪子…私、私…七原君の事―――」

4 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 01:42:10 ID:???

そこでまでだった。

彼女の言葉はアラームが止むと同時に教室中に響いたドンッという低く大きな音にかき消された。
同時に彼女の首の周りで火花の煙が上がったかと思うと、赤い液体のシャワーを噴出しながら後ろに座っていた
黒長博(男子9番)の机にゴンと頭をぶつけた。ぐったりと机に寄りかかるように倒れた身体から
雪子の手をしっかりと握ったままの腕だけが上に伸ばされていて、まるでバレエのポーズでも決めているかの
ようだったが―それもすぐ、ずるずると雪子の手をすべり落ちて、床のすぐ2、3センチ上にぶらんと垂れ下がった。
彼女の頭と胴はまだ繋がってはいたが―首は後頭部の皮一枚を残して綺麗に焼失し、黒ずんだ火傷と鮮やかな赤い
肉の切断面のコントラストを晒し、おそらく友美子の首を構成していた物が血や細かい金属片と一緒にそこいらに飛び散っていた。
当の友美子は先ほどと同じ表情のまま、二度と光りの宿らない瞳を天井に向けていた。
「…ひ、ひぃやああああああっ!!!」
黒長博が声を裏返らせ不良グループの一員とは思えないような悲鳴を上げて、すぐに激しく嘔吐を始めた。
そりゃそうだろう。いくら不良とは言え、目の前で人間の首が吹き飛ばされる様を見たことのある人間なんているだろうか?
それと同時に慶時のそれよりさらに濃い、咽るような血と、肉脂の焼ける強烈な匂いが教室中に広がった。
方々から思い出したように悲鳴が上がり始めたが、顔に友美子の身体から噴出したシャワーを浴びた雪子だけが
一人だけ固まったように立ち尽くしていた。無理も無い。秋也の場合と同じ、いやそれ異常に酷い親友の死に様を
目の前でまじまじと見せつけられしまったのだから。

5 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 01:43:45 ID:???
「はーい、静かに静かに!今からそんなことで騒いでちゃ先が思いやられるなー。それとももう2人くらい日下みたいになるか?」

相変わらず人を小ばかにしたような口調で坂持が着席するように告げた。
「ごめんな、日下ー。恨むのなら国信の馬鹿を恨めよ〜。でも、人生そんなものです。自分が悪くなくても、死んでしまう事だってありまーす
 他のみんなも日下さんみたいになりたくなければ、同じ出席番号の人の行動にはくれぐれも気をつけろよー。」
畜生!こうなる事が判っていたら慶時だって動かなかったに違いない。友美子も(自分が先に動いていたら中川典子が死んでいただろう)
一緒に見せしめにするためにワザと、この事を告げずに嗾けたのだ!畜生、それを慶時がまるで友美子を殺したとでも言うような口ぶりで…なんて野郎なんだ!

「おらっ、北野もいつまでもつったってないで座った座った。お友達が目の前で死んじゃってショックなのがわかるけど、
 過ぎた事にクヨクヨしててもしょうがないぞ〜。」

坂持が友美子の亡骸の前で、未だ立ち尽くしていた雪子に歩み寄りポンと肩に手を置いた。

「……あ、あ…ああああああああああああああああああああああああああッ!!!」

ビデオの一時停止を再生に切り替えたときのように、それまで微動だにしなかった雪子が両手で顔を押さえて
そのまま膝を突いて泣き崩れた。

【残り40人】

6 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 01:45:50 ID:???
というわけで導入部終りです。
この通りの拙文ですが、読んでいただいた方、有難うございます。
次回ルール説明になります。

7 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 17:25:20 ID:???
ウハw
もう別の方が書いておられたのですかw

8割り込みすまん:2008/12/13(土) 17:41:17 ID:???
なんか放置中っぽいし気にせず続けて欲しいんだぜ
って作者以外書き込んで良いんだろうか

9 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 18:14:02 ID:???
>>8
自分としては大丈夫ですよー

ありがとうございます
7時くらいまでに続き投下します

10 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 18:42:51 ID:???
「それじゃあ少し遅くなったけど、ルールを説明しまーす。」
もう聞きなれた坂持嫌味なくらい快活な声で坂持が言った。
国信慶時と日下友美子の新鮮な血の匂いが猛烈に漂い始めていた。
坂持に促されて北野雪子は悄然として席に着いたが、涙を流したままの
目はもう焦点が定まっておらず、さながら抜け殻のようになっていた。
兵士たちが友美子の死体の周りへやってくると、頭を床に払い落とし
(まるで消しゴムのカスでも払い落とすようにだ!)
黒長博の机一杯に広がっていた血や吐瀉物を綺麗さっぱり拭き取った。
博の顔はもう涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっていた。
天下の桐山ファミリーも形無しだ。まあ、無理も無い事だが。
ただその博のすぐ隣の席に座っている桐山和雄、
彼だけは眼前でこれだけの事が起こったにも関わらずと
いつもと変わらぬ無表情で教壇の方へ目を向けていた。
秋也にはそれが酷く気味悪く思われた。
そして教室の一番窓側の列の最後尾、川田章吾も表情を崩さないままガムを噛み続けていた。

坂持のルール説明が始まった、告げられた事を纏めると以下の通りだった。

1、会場は周囲6キロの島である。ルール違反はなく何をやっても構わない。
2、生徒は分校から外へ出発する際にデイパックを受けとる。中には水、食料、地図等の他、なんらかの武器が入っている。」
3、会場には2時間ごとに禁止エリアが設置され、そこに進入すると首輪が爆発する。
4、禁止エリア予定地は、1日4回の放送で、それまでの死亡者とともに告げられる。
5、なお、この分校の周囲200メートルは最後の生徒が出発した後、禁止エリアとなる。
6、島の周囲は軍の警備艇が取り囲んでおり脱出は不可。また首輪の電波はいかなる方法でも遮断できない。
7、24時間連続で死亡者が出ない場合、全員の首輪が爆発し、優勝者は無しとなる。

11 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 18:45:06 ID:???
「さーて、そろそろみんなお待ちかねの特設ルールについての説明を始めまーす。」
坂持が待ってましたといわんばかりのウキウキした表情で続けた。
「いいですかー、この度、総統閣下格別の御恩情により、今年度から偶数番号のプログラムの優勝者数がなんと
 今までの倍に増やされる事になりましたー。いやー、お前らラッキーだなぁ。ちゃんと閣下の思し召しに感謝しろよ。」
それだけの「ごおんじょー」とやらがあるんなら最初からこんな糞ゲームをするな!と秋也は内心毒づいた。
「それに伴って新設されたルールがこのタッグ制です。まず…今の、国信と日下を見ればわかるよなー。
 キミたちには同じ出席番号の男女一組で、えー、タッグを組んでもらいまーす。そしてもし、タッグの
 片一方が死んでしまった場合は、えーもう片方の人の首輪にも電波が送られて約30秒で首輪が爆発しまーす。
 30秒ですよー。その間に遺言を残すなり、相手を道連れにするなり自由にしてくださーい。ああ、あと
 動きづらくなるだろうから、タッグ同士がバラバラに行動するのも許可しまーす。よく考えて作戦を
 立てるよーに。あと出発の際は2人一緒に出発するようにしてくださjーい。以上、ややこしい話はここまででーす。」



つまり自分は中川典子と運命共同体になるわけだ。死んだ慶時が生まれて初めて好きになった
女の子と…。これは好都合―ゲームに乗るのならばという話だが。
無論、秋也にはこの糞ゲームに乗るつもりなど毛頭なかった。
なんで立った2人で生き残る為に今日まで一緒にやってきたクラスメイト同士で
殺しあわなければならないんだ!と、そこで坂持は手をパンパン叩いてこう続けた。

12 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 18:46:14 ID:???
「でもこれから言う事は今まで言ったどんな事よりも大事だからよーく覚えとけよー。
 クラスメイト同士で殺し合いなんて無茶苦茶だなんて思う人がいるかもしれませんが
 他のみんなはもうやる気になってるぞー!大事な事だから二回言うけどよーく覚えて置けよー。
 ほ か の み ん な は も う や る 気 に な っ て る ぞ ー 。」

その瞬間これまでと教室の雰囲気が明らかに変わったのが判った。皆が皆、誰からとなく周囲に目を配り
お互いの青ざめた顔を見合わせると、サッと目を背けて坂持の方へ視線を戻し、それっきり
視線を動かそうとはしなくなった。疑心暗鬼に囚われているのだ皆、
ちらと典子の方を見やると、他の大勢の生徒と同じように不安げな表情で坂持の方を見ていた。
まだ落ち着いた表情をしているのは三村信史ほか数名くらいのものだった。
秋也は奥歯を噛み締めた。クソ、それじゃ政府の連中の思う壺じゃないか!

「はーい、それじゃあ机の中に紙と鉛筆がありますから、出しなさーい。」

なんだいきなり、こんな時に漢字の書き取りでもしようとでもいうのか!?

「いいかあーこれから先生のいう言葉をそれぞれ三度書きなさい。
 まず、私たちは殺し合いをする、私たちは殺し合いをすると、三度書きなさい。」

紙の上を鉛筆が走る音がし始めた。逆らえば何をされるかわからないので、秋也も仕方なく言うとおりにしたが
当然、殺し合いなんてするつもりはなかった。ちらと慶時の死体を見やった。いつかの慶時の告白が頭をよぎり、
中川典子を守り抜いて、この殺し合いを潰すという決意がいっそう固まった。
「はい、やらなきゃやられる、これも三度書きなさ〜い!」
日下友美子の死体の方もみた、床に寝かされてしまった死体はもう見えなかった。
しっかり者でスポーツ万能、親友の雪子は勿論、誰にでも優しい女の子だった。
彼女の最期の表情と、自分に伝えようとした言葉―それを知る術は永遠に失われてしまった―が目の前にフラッシュバックした。

「はーいそれじゃあ、いまから最初に出発するペアを決めまーす。最初のペアが出発した後、間に2分インターバルを置くからなー。」

そして坂持の方を見上げた。
―クソ野郎、この鉛筆を心臓に突き刺してやる!

【残り40人】

13 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 21:00:54 ID:???
稲田瑞穂(女子1番)…いや、光の戦士プリーシア・ディキアン・ミズホは
支給された両刃ナイフを片手に、分校へ向かう道を引き返していた。

「ぜぇ、ぜぇ…ま、まってよぉ〜稲田さぁん!」
「遅いですよ!ディアス・ヴォルカヌス・ヨシオ!光の戦士の従者たるあなたがそんな事でどうするのです!」

その後ろから息切れを起こしながらやってくる大柄の男は彼女のペア、赤松義生(男子1番)だった。
義生はクラス一の巨漢だったが、気が弱く普段から笹川竜平(男子10番)などにからかい半分で虐められていた。
また、勉強も運動もからっきしで特に体育の成績は女子をひっくるめたクラス全員でダントツの最下位だった。

(なんと愚鈍な…、やはりこの男に従者の称号を与えたのは間違いだったのでしょうか。)

ミズホは心の中で、光の国に住まう絶対神=アフラ・マズダに語りかけた。
2年間同じ出席番号なので、日直や調理実習、理科の実験などでミズホと義生は接する機会が多かった。
ただ、普段の義生の仕事ぶりといえば、黒板を拭かせれば黒板消しを取り落として床を汚し、
調理実習ではじゃがいもの皮ひとつ満足に剥けず、理科の実験では薬品をひっくり返すなどヘマばかりだったので
あまり良い印象は抱いていなかった。

―いいえ、ミズホ。短気を起こしてはなりません。どんなに愚鈍であってもか弱きものには慈愛の心を持って接するのが
光の戦士としての勤めなのです。それにえー、そうです。馬鹿とハサミは使いようとも言うではありませんか。
忘れたのですか、ディアス・ヴォルカヌス・ヨシオが、あの悪魔どもを誅滅するための画期的な作戦を提供してくれた事を。

そうでした。アフラ=マズダ様!私はなんと愚かだったのでしょう、弱い役に立たないと邪険にしてはあの悪魔
―例えば、アマイモン(笹川竜平(男子10番)のことだ)やハルピュイア(こちらは清水比呂乃(女子10番))の事だ。
どもと同じではありませんか!危うく、道を踏み外すところでした。今は一刻も早く、ヨシオの作戦に従って、
より多くの悪魔どもを地獄に叩き込まねば!

14 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 21:01:39 ID:???
彼女、稲田瑞穂は元々占いマニアのごく普通の少女だったが、町の占屋で光の戦士である聖なる部族ディキアン族の
生まれ変わりであるという啓示を真に受け、現在のような光の神に仕える戦士と自ら称するようになった。
彼女が先ほどからしきりに口にしている悪魔とは学校の不良生徒、そう例えば桐山和雄(男子6番)や相馬光子(女子11番)や
その仲間たちの事で、普段から彼らに対して憎悪の炎を燃やしていた。修学旅行のバスから拉致され、分校で
国信慶時や日下友美子が殺された後、彼女はこのプログラムは神が自分に与えた試練であり、悪魔たちを誅滅する
絶好の機会なのだと考えた。ミズホは分校を出てから、聖戦を行える喜びと高揚感に打ち震えていた。

かと言って、ミズホには別段何かしら作戦があるわけではなかった。ただ、悪魔に遭遇次第
手当たり次第に正義の鉄槌を加えていこうと考えていたのだが…愚鈍な平民としか思っていなかった
赤松義生から、思いがけなく悪魔退治の有効な策を教えられたのだ。
分校を出た直後、義生はミズホには目もくれず、一目散に走り出した。幸い義生は足が遅く
意外と女子の中では運動能力が高い瑞穂は容易にその後を追うことが出来た。
半ば呆れながら付いていくと、義生は適当な茂みでごそごそとデイパックを開き、武器を取り出した。
(それより前にミズホは分校の前で自身の武器、「両刃ナイフ」を取り出していた)。
中から出てきたのは、弓を板の上に水平に渡したような武器「クロスボウ」だった。
義生は説明書を片手に矢の装填にしばし悪戦苦闘した後、クロスボウを抱えて
どういうわけか今来た道を逆戻りし始めたのでした。ミズホは思わず声をかけた。

「どうしたのです?!分校はすぐに立ち入り禁止になるのですよ。」
「み、みんな弱い僕をこ…殺しにくるんだ!や、やられるまえにやらなきゃ駄目なんだ!」

ミズホはハッとした。そうか、分校を出たばかりで武器すら手にとっていない悪魔どもを襲撃すれば
より有利な条件で戦えるではないか!ミズホはすぐさまこう義生に告げた。

「今、アフラ=マズダ様から啓示が下りました。あなたに光の戦士の従者、
 ディアス・ヴォルカヌス・ヨシオの称号を授けると!」

15 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 21:04:09 ID:???
そういうわけで、2人は分校のすぐ前まで戻ってきた。見ると、何人かの人影が見えたが
自分たちの近づく物音を察したのかすぐに立ち去ってしまった。
暗がりでよく見えなかったが背格好からすると一人は杉村弘樹(男子11番)―あの背が高くて、地味な平民。
正義感溢れる善良な平民秋也や美しく高潔な平民・貴子と仲がよかったが、あの淫魔アスモデウス(三村信史だ)
などとも仲が良い風だったのは気に食わなかった。―だったのではなかろうか…。
とすると、既に悪魔ルシフェルを初めとして多数の悪魔は分校を出てしまっているという事になる。
もう少し早く戻るべきだった。ミズホは、アフラ・マズダに自らの不明を詫びた。

―過ぎた事を悔やんでも仕方がありません、ミズホ。今は残る悪魔を出来るだけ多く退治する事が先決です。

「はい、はい、アフラ・マズダ様。」ミズホとアフラ・マズダの会話は口から言葉となって漏れ
それを見ている赤松―ディアス・ヴォルカヌス・ヨシオは不安といぶかしむ様な様が混じった
表情でそれを見ていた。
「いいですか。ディアス・ヴォルカヌス・ヨシオ。光の戦士の従者として、アナタには聖戦に参加する光栄が与えられたのです。
 誇りに思いなさい。しばらくしたら、ここから悪魔たちが続々と現れるでしょう。私が言いといったらその聖なる弓で悪魔を
 撃つのです!ただし、善良でか弱き平民は手に掛けてはなりません!わかりましたね…。」

「え…?あ?…う、うん…」
「返事は『はい!!!』と言いなさい!」
「はっ!?はい!!」

ヨシオはまだ自体が飲み込めていないようだったが、ミズホにすごまれると姿勢を正して勢い良く答えた。
悪魔は有無を言わさず斃し、善良な平民には声をかけて聖戦に誘う。それがミズホの導き出した方針だった。
まて?確か、分校であの憎憎しい小男の悪魔(当然、坂持だ)はタッグ戦だと言っていた。悪魔を殺せばそれと対を爲す
善良な平民まで命を落とすのではないだろうか?

―ええと、それはですねミズホ…そう!大事の前の小事という奴です。悪魔に呪いをかけられた彼らには気の毒ですが
これは天命なのです。尊い犠牲者となる彼らの魂は死後、しかと光の国へと生まれ変わるでしょう。

お導き下さって、ありがとうございます。アフラ・マズダ様。もう私は迷いません!
果たして、次に現れるのは悪魔か平民か…?アフラ・マズダから授けられた聖なる剣を構え、
ミズホは分校前の茂みで息を潜めて待った。

【残り 40人】

16 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/13(土) 21:04:56 ID:???
とりあえず今書いた分はここまでです。続きはまた後日。

17 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/14(日) 19:48:04 ID:???
しばらくすると分校の入り口から、薄ぼんやりと人影らしきものが見えた…。ミズホは目を凝らしてその招待を見定めた。
暗がりの中、見えたのは長身で体格のいい男と、その後ろに重なるようにしている女子のものらしき影。
ようやく、その人物が周りの様子を見渡しながらその姿を現した。暗がりでもよくわかる特徴的なリーゼント…
月岡彰(男子14番)―いや、悪魔ベールゼブブだった。

ベールゼブブは魔王ルシフェル―不良グループのボス桐山和雄(男子6番)の事だ―の
眷属の一人であり、まずそのハエのように醜悪な容貌といつも人を小バカにしたような
ニヤついた表情がミズホには溜まらなく不快だった。他の悪魔と違い、周囲に暴力を
振るうなどという事はあまりなかったが、学校内で隠れて喫煙や飲酒したり
しばしば授業をサボったりなどと無法を働いていた。それでいてルシフェルほどでもなかったが
成績はそれなりに良かったのも(春休み明けの復習テストの平均点はミズホのそれの倍に近かった。)
ミズホにとっては不快だった、きっと使い魔を呼び出して不正を働いているのだ。
それより何より許しがたかったのがこの悪魔は男でありながら女のように振る舞い
同性を愛するという(悪魔同士なので同情はしなかったがアスモデウスなどがよく彼の誘いを受けていた)
神の定めた自然界の掟を冒涜するような行為を常日頃行っていた事だ。以前、悪魔たちの様子を
探っていた時、奴は悪魔の分際で軽々しくもこう軽口を叩いてきた。

『瑞穂ちゃん、アンタ随分アタシ達をおっかけまわすのに熱心みたいだけど、そんなんじゃ全然駄目よ。
 よかったら、アタシが愛の尾行術のレクチャー☆してあげちゃおうか・し・ら♪で、この中の誰が好き
 なのか今この場で、言っちゃいなさいよ♪アタシが全面バックアップしてあげる♪あ、ちなみにアタシ
 ってのは無しね!アタシ、同性愛の趣味はないし三村くんっていう運命の赤い糸で結ばれた男性(ヒト)が
 いるんだもの♪』

その時のミズホは腸が煮えくり返る思いだった。顔に生ゴミを浴びせかけられるより酷い侮蔑だと感じた。
以来、彼はミズホの天誅を加えるべき相手の第三位に躍り上がった(一位は魔王ルシフェル、二位はか弱き
平民・恵を迫害した悪魔ハルピュイアだった)。

ミズホはその姿を認めると義生に言った。

「今です!義生!光の矢を放つのです!」

18 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/14(日) 19:49:38 ID:???
「はっ、はいいっ!!!」

義生はほぼ反射的に隠れている茂みから矢を放った。義生の放った矢はベールゼブブを掠め
分校の正面玄関の廂(ひさし)の柱に突き立った。

「キャッ!なっ、なんなのよぅ!」

外れはしたが、ベールゼブブはその矢に大きく怯んだ!未だ!

「覚悟なさい!悪魔・ベールゼブブ!」

ミズホは茂みから飛び掛りベールゼブブに飛び掛った!
だが敵もさるもの、ベールゼブブは無理な体勢から
その巨体からは想像もつかないような瞬発力でミズホの振り下ろしたナイフを避け
結果、ミズホの攻撃はベールゼブブの学ランの袖に切れ込みを入れるだけで終った。
ミズホは横目に、自体が飲み込めずに困惑した表情を取る地味な平民・天堂真弓(女子14番)の姿を確認した。
残念だが、彼女には聖戦を勝ち抜くための犠牲となってもらわねばならない。心の中で陳謝すると
すぐさま、ミズホはナイフをベールゼブブの体のある左側に横薙ぎに振るったが
これも交わされた。

「あ、アンタッ!?瑞穂ちゃんね!?一体、なんのつもりよもう!」
「悪魔と話す事などありません!」

ベールゼブブの言葉に耳を貸さず、ミズホは体制を立て直すと聖なる剣を正面に構えて
ベールゼブブに突進した。

「もう、仕方ないわねぇ…。」

とベールゼブブはミズホの一撃を交わしざま、後ろに回りこみその肩を掴んだ。
しまった!と思った瞬間、ミズホの身体は凄い力で逆の方向に引き込まれ
左腕を脇に抱え込まれて手首を掴まれ、聖剣を持った右腕をひしぎ上げられた。

「こっちは毎日、酔っ払ってドスを振り回すようなお客様を相手にしてるんだから、なめてもらっちゃ困るのよね。」

ミズホは聖剣を奪われまいと必死に右腕を伸ばし、彰の左手首をしきりに掻き毟ったがそれも無駄だった。
まさか、光の戦士たる私がこんな所で!?アフラ・マズダ様!もう一度御加護を!
ミズホの凄まじい執念がそうさせたのか、それともアフラ・マズダ加護か、必死に拘束から
逃れようとするミズホにたじろいだベールゼブブが二歩、三歩と体勢がずれた。
ふとミズホが横目に見ると忠良な従者・ヨシオが光の弓に矢を再装填し終えた所だった。
今、ヨシオからみて調度ベールゼブブは斜めに背を向ける格好になっていた。
今なら、ベールゼブブに会心の一撃を与える事ができる!

「なにをしているのですヨシオ!!!はやく!はやくこの悪魔を撃つのです!!!」
「はっはいいい!!!」

ヨシオは慌てて第二矢を放った。

19 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/14(日) 19:50:36 ID:???
「ぐぅうッ!!!」

だが、苦痛に表情を歪めたのはミズホの方であった。
ヨシオは緊張のあまり、弓を大きく滑らせ、ベールゼブブを狙った矢は
大きく開かれていた、ミズホの左脹脛に突き立ったのだ。
痛みのあまり、ミズホは手にした光の剣を取り落とした。
しまった!と思った瞬間、ドンッと強い衝撃がミズホの背中に走り
そのまま地面へと突き倒された。

どこまで愚鈍なのだ!あの男は!アフラ・マズダ様!やはりあの男に
従者の称号を与えたのは間違いでした!

―オーケイです。ミズホ、愚かな男の事は今は放って置くのです。
それよりも先に剣を―

ここで突然ミズホの背中に再び衝撃が…と言っても、先ほどとは種類の違う
鋭い衝撃が矢を受けた時の何倍もの激痛を伴って走った。
それっきり、アフラ・マズダの声も、目の前の視界も、あらゆる感覚も
全てがミズホの思考から掻き消えていき、その思考も間も無く一切停止した。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

稲田瑞穂の背中に彼女の持っていた両刃ナイフをつきたてた月岡彰は
姿勢を起こすとすぐさま後方に振り返った。

赤松義生の首輪が先ほどの日下友美子の時と同じ電子音を奏で出した。

「う、ううああああああああああああああ!!!いや…いやだああああああああああ!!!」

そう叫ぶと義生はボウガンを取り落として、茂みの奥へと駆け出していった。
彰はすぐに義生の立っていた位置へ行き、足元に落ちていたボウガンと彼のデイパック
…すぐ傍にあった瑞穂のデイパックも回収した。

20 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/14(日) 19:53:33 ID:???

「ふぅ、やぁねぇ…。出来るだけ殺しはしたくないのに…。」

彼、いや彼女と言うべきか?ともかく月岡彰はこの美しくないゲームには
あまり乗り気ではなかったが、襲い掛かってくる相手に情けをかけるほど
甘い考え方の持ち主ではなかったし、やはり生きて帰るには優勝するしかない
と考えていた。だが、開始早々この手でクラスメイトの命を奪うことになってしまったのには
やはり良心が痛む。ふとそれとは別の痛みに左手首を見ると先ほど瑞穂に引っ掛かれたせいか、
所々皮が向けて血が出ていた。―ああ嫌だ。乙女の柔肌に爪を立てるなんて。

「瑞穂ちゃん、赤松くんごめんなさいね。でも最初にオイタをしたのはアナタたち。恨みっこなしよ。」
「あの…、月岡くん?」

ふとふりかえると自分のペアの天堂真弓が立っていた。よく見ると右手には小型の銃
「22口径二連式ハイスタンダードデリンジャー」が握られていた。先ほど、稲田瑞穂と
格闘を演じている際、加勢しようと自分のデイパックから取り出したらしいが、撃つ間も無く
決着がついてしまったらしい。まだ弾も装填されていないらしく、左手には折りたたまれた
説明書らしき紙を手にしている。月岡はやれやれといった風に真弓に語りかけた。
「真弓ちゃん、貴女中々どうして度胸あるじゃないの。でもちょっと行動が遅かったわね。
 アタシというペアがいなかったら貴女、もう死んでるかもよ。」
真弓は少し表情を引きつらせたがすぐに言葉を返した。
「は…はは、今度からは用心するわ…。で、どうするのこれ…。」
真弓は地面に突っ伏したままの瑞穂をチラとみた。
「もう、七原くんたちが出てきちゃう頃よ。ぐずぐずしてたら厄介な事になるわ。行きましょう。」
「え、ええ…。」

彰たちがそそくさと立ち去ろうとしたその瞬間、少し離れたところからドンという音が聞こえたが
気にも留めず二人はその場を立ち去った。後には、ただ魂が光の国へと去っていった
戦士、プリーシア・ディキアン・ミズホの亡骸だけが残された。

【残り38人】

21 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/14(日) 19:57:06 ID:???
というわけで瑞穂・義生編終了です。
真弓の支給武器が原作と違うのは
自分はデイパックの中身は生徒ごとではなく
出発する順番で決定されるという設定を採用しているため
友美子が死んだために男子8番〜女子18番の武器がひとつずつ
原作からずれ込んでいくためです。

これは他の生徒の動向にも大きく影響が出ると思いますので覚えておいてください。
出来れば、今日中にもう一話投稿したいかな?感想お待ちしております。

22七誌:2008/12/14(日) 20:53:54 ID:???
やっぱプ(ry (と赤松)負けちまったかw
合掌

23 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/14(日) 21:52:49 ID:???
「これは…。」
中川典子とともに、分校を出発し、外へ出た七原秋也の目に最初に飛び込んできたものは、
背中にナイフを突き立てられた、稲田瑞穂の死体だった。あまりの事に二人はその場に
しばし呆然と立ち尽くしてしまった。


「秋也くん…これって…。」
不安げな表情で典子が秋也の顔を見上げ、口を開いた。
「嘘だろ…もうゲームに乗った奴がいるのかよ!」
信じがたい事だが、目の前に転がる瑞穂の死体という現実から導き出される結論はそういう事だった。
赤松義生の姿は見えないが、分校での日下友美子の有様を思い出せば、彼も既にこの世の人では無いのだろう。

「でも…秋也くん。ちょっとおかしくない。」
「え、なにがだい?典子サン?」
「稲田さんたちは…いの一番で分校を出発したじゃない?なんでその彼女がここで死んでるの?」

言われて見れば確かにそうだった。赤松義生と稲田瑞穂は確かにいの一番に分校を出発したのだ。
その彼女がこの分校で死んでいるということは、瑞穂は出発してから一度(赤松義生を伴っての
事かどうかはわからないが)、この分校に戻ってきたということになる。何をしに?

「まさか…。」

ひょっとすると、ゲームに乗ったのはこの瑞穂の方なのではないか?
稲田瑞穂は分校から出発した後、武器を確認し後続の出発者をしとめる為に
分校に舞い戻った…、が逆に男女2番以降の誰かに返り討ちにされた―
勿論、今から自分がそうしようとしているように、誰か仲間を集めようとして分校まで舞い戻り
果たせず誰かに殺されたという可能性もあるが、後続で出発した者がそこまで手際よく
事を済ませるとは思わない。政府のサクラ?いや、あの糞どもは自分たちを殺し合わせたくて
たまらないという風だったし、サクラだとしてもわざわざ面倒なナイフなんて使うか?
やはり…ゲームに乗ったのは瑞穂と考えるのが一番辻褄が合う。

24 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/14(日) 21:53:47 ID:???
それでも秋也は信じたくなかった。確かに稲田瑞穂はちょっと変わったところがあって
クラスでは男女問わず敬遠されているところがあったが、それでも潔癖と言っていいくらい
不正を許さない性質だったし、なにより女の子だ。そんな、瑞穂でさえクラスメイトを
殺そうとするのか?自分を待っていてくれていると思っていた杉村弘樹がいないのも
瑞穂に襲われたか…それより前に瑞穂みたいな連中がくると思って逃げたのかもしれない。
それにそうこうしている間に第二、第三の瑞穂がここへやってくるかもしれなかいのではないだろうか。
自分も三村たちを待つのを止めて、すぐこの場を立ち去るか――待て!秋也!お前は何を考えているんだ!?
疑ってばかりいたらきりがないのではないか…。今はともかく…いまは…

「や、やっぱり三村たちを待とうと思う。まずは、稲田さんを弔ってあげよう…。」
「う、うん…。」

秋也はまず、瑞穂の背中に突き立ったままになっていたナイフを抜き取った。
セーラー服に染み込んだ血はまだわずかに湿っていて、彼女が息絶えてから
そうそう時間が経っていないことがわかった。とすると、彼女を殺ったのは
自分たちのすぐ前に出発した月岡彰たち(あの不良グループの変わり者。彼の仲間たちも
そうだったがずいぶん余裕綽々といった態度で出て行ったのが見て取れた。出発前に
桐山が彼らにメモを回しているのを秋也は見た。)だろうか。いや、今は
犯人探しなどしていても意味は無かった。そして、教室で国信慶時や
日下友美子にそうしたように遺体の目を閉じさせようとして、うつ伏せに
倒れていた彼女を、仰向けに寝かせなおしたところで―

「だ、誰かいるのかっ!?」

多少裏返ってはいたが、男子のものとおぼしき声が聞こえてきた。振り返ると
分校の入り口には自分の後続の出発者、新井田和志(男子16番)と中川有香(女子16番)が
こちらに歩み寄ってきた。
「有香!」「典子!」
普段は同じグループで親しくしている典子と有香がお互いを認め合った。

「な、七原か?お前一体…!?」

和志はなにか言いかけたが、それは音にならず代わりにごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。
その視線が稲田瑞穂の死体に向けられていることが暗がりの中でもわかった。しまった!と秋也は思った。

25 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/14(日) 21:54:09 ID:???
「お、おまえ…殺したのか?い、稲田をやったのか!?」
「違うんだ新井田!これは…」
「うるせえ!言い訳なんて聞かねぇぞ!お前、殺したんだな!稲田を殺したんだな!」

秋也の言葉を遮って、和志はヒステリックに喚いた。

「違うんだ新井田!俺じゃないんだ」
「新井田くん、落ち着いて!」
「そうだよ新井田くん、七原くんがそんなことするわけ」
「うるせえ!じゃあ、そのナイフはなんなんだよ!」

典子や有香がなだめるのも聞かず、和志は秋也を指差した。
秋也は血に染まったナイフがまだ自分の手に握られていることにハッとした。
ああ、抜いたらすぐに捨てておくべきだった!これじゃあ、和志が自分を疑うのも
無理ないじゃないか!とにかく、ナイフを捨てて和志に事情を説明しないと。

「普段、正義感ぶってるくせにいざとなるとこうかよ…!いいさ、お前がそういうつもりなら…うわあああっ!!!」

と、秋也が動く前に和志は突然、手に持ったデイパックを秋也の方へぶんと振るった。
荷物がパンパンに詰まったデイパックだ。即死はしないかもしれないが、十分に殺傷力はある。
かつてワイルド・セブンの異名をとった秋也もさるもの、とっさに姿勢を低くしてそれを交わした。

―だめだ!今は、逃げないと。

「典子さん!逃げるんだ!」
「あっ、秋也くん!」

典子に大声で叫ぶと、その手をとって秋也は走り出した。
和志が叫びながら再びデイパックを振るってきたが、秋也はとっさに
ナイフを新井田の方へ投げつけた。和志は何か飛んでくるのを見ると
慌てて、それをよけた。ナイフはデイパックにカンッ、と当たって地面に落ちた。
有香がなにか叫んでいたようだったがそれも聞こえなかった。
秋也は典子の手をひきながら、自分のうかつさと不甲斐なさ
そしてこの理不尽な状況をかみ締めながら夜の林を走り続けた。

【残り 38人】

26 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/14(日) 21:59:04 ID:???
今日の投下ぶんはここまでです。
タッグルールと支給武器以外に原作と状況が違うのは

①典子が田原に撃たれていないので、足を怪我していないこと。
②藤吉文世が生存していること。
③最後の生徒山本、矢作ペアが分校を出発するまでの時間が、原作より短いこと。

です。果たしてこれらの事は今後、どのように物語に影響を与えてくるのでしょうか?

では続きはまた後日、明日は平日なので投下できないかもしれません。

>>22
やっぱり瑞穂と義生ではヅキには敵いませんでした^^;
分校に戻らせず、悪魔を探して島を歩き回る路線も考えたのですが
今回はあえなく序盤退場となってしまいました。

27ななし:2008/12/15(月) 21:47:20 ID:???
ああ、やっぱり支給武器はズレてたか!ちょっと気になってたんだ
何にせよプry乙w

28チャンス:2008/12/17(水) 00:54:53 ID:ifLMWvZk
更新待ち

29 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/18(木) 01:35:17 ID:???
>>28
ありがとうございます
平日はどうにも忙しくて;
金曜か週末の投下になると思います

30支援:2008/12/18(木) 04:19:44 ID:???
無理せずに。楽しみにしてる

31ななし:2008/12/20(土) 12:29:09 ID:???
頑張れ〜

32 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/20(土) 21:18:57 ID:???

沼井充(男子17番)は、手に既に弾丸を詰めた自動式拳銃「Cz75」を下げ、夜の道を急いでいた。
彼のもっとも信頼するボス・桐山和雄(男子6番)が待っているであろう島の南岸へと向かうために。
実は彼とその仲間たちは分校を出発する前に桐山から一枚のメモを紙片を受け取っていた。
そこにもこう書かれていた。''ここが本当に島ならば、南の端で待っている,,と。
やはり、ボスは違う!俺たち凡人と違っていつも2つも3つも先の事を考えている!
今回もきっと脱出か政府の連中に一泡吹かせる方法をもう考えているに違いない。
メモを受け取ったときから充の胸は躍り上がっていた。ただ、今の充の心
一点だけ気にかかることがあった。それは、プログラム開始時に政府によって
無理やりタッグを組まされた女子・野田聡美(女子17番)の事だった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

話は充と聡美が分校から出発した時へと、遡る。
分校を出た充と聡美の目に飛び込んできたのは、足に矢を突き立て、背中に血を滲ませて斃れる同級生・稲田瑞穂の死体だった。
充にとって、なにかと自分たちの行動わけのわからないに文句をつけ、監視してる風さえあった瑞穂の存在は
煙たい以外の何者でもなかったが、さすがに死んでしまっているのを見ると、悪寒が走った。

「な、なんだよこれ…もう、乗った奴がいるって事かよ…。」
「と、とにかくはやくここから離れましょう」

33 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/20(土) 21:19:45 ID:???
聡美にせかされ充は足早にその場を離れた。道なりにしばらく走った後で、
目にしたトタン張りの粗末な作業小屋を見つけた二人はそこに身を隠し、お互いの武器を確認した。
前述の充のものと同じく、聡美に支給された武器も半自動式の小型拳銃『ワルサーPPK9ミリ』で、
装備としては申し分なかった。充と聡美は懐中電灯片手に説明書どおりに銃をいつでも撃てる状態
にしておいた。充は殺し合いに乗るつもりは無かったが、分校での死体を見る限りいつゲームに
乗った奴が襲い掛かってくるかわからない。何事も用心は必要だ。それに支給武器が銃とあれば、
少なくともボスの足手まといにはならない筈だ。
「これでよしっと!野田、ついてこいよ。島の南の端まで行くんだ!」
「南の端?そんなところ行ってどうするの?」
聡美がくいっと、ずれた眼鏡の位置を直しながら言った。
はやる気持ちを抑え、充は屈託のない表情と声で彼女の疑問に応えた。
「ボスたちと待ち合わせるんだよ。俺たちは分校を出発する前にメモを貰ったんだ。
 あの人なら、きっとなんとかしてくれる!急ごうぜ!」
「ちょ、ちょっと何言ってるのよ!桐山君たちと合流するですって!?」
「そうだよ、わかっらさっさと…」「お断りよ!そんなの!」
聡美が怒気を含んだ口調で充に大して拒絶の意思を示したことに、充は
信じられないといった風に目を見開いた。
「お、おい!なんでだよ!ボスと一緒に動くほど安全な事はないんだぜ!?」
「こっちがなんでっていいたいわよ!さっきの分校、稲田さんが死んでるの見たでしょう!
 もう殺し合いが始まってるのよ。絶対何かあるわよ!」
「待てよ!俺たちファミリーの絆は絶対なんだぜ?!こんな糞ゲームに乗るやつなんていねぇよ!」
そうだ、あの入学式の日に助けられてから、充と桐山の間には、何物にも変えがたい絶対の絆が
生まれたのだ。今の彼のトレードマークである、特徴的なオールバック。あの髪型も充がそれを
薦めてから一度も彼は変えていない。それがわからないから、こんな突飛な憶測でものがいえるのだ。この女は―。

34 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/20(土) 21:21:07 ID:???
そう、あまりクラスの女子とは関わりの無い充であったが、この野田聡美とは―稲田瑞穂と同じく
悪い意味で関わることが多かった。日頃、自分たちの行動に真っ先につっかかってくるのはこの女で
やれ授業や掃除をさぼるなだの、合唱のときにちゃんと声出せの、試験期間の休み時間にうるさくするな
だのと、正直気に障るガリ勉女という程度の認識しか充は持っていなかった。
そんな、聡美に文句を言われたわけだから充は当然、ムッとして言い返した。
だが、聡美は追求の手を緩めない。
「絆って…そんな漠然としたものを根拠に物事進めないでよ!いい!?確かにあなた達が
 凄く仲がいいのは知っているわ!でも、いままでプログラムに選ばれたクラスだって
 あなた達ぐらい中のいい友達同士がごまんといたと思うわ。結果を見てよ!みんな、
 綺麗に殺しあったじゃない!…幸枝たちでさえ、もしかしたらゲームに乗ってる
 かもしれないのに…桐山くんたちだって…。」
「そんな連中とは俺たちは違うんだ!なんてったって鉄の結束の桐山ファミリーだからな!
 大体、なんだ。俺からすれば一番やる気になってるのはお前に見えるぞ!」
「ちっ、違うわよ!私だって人殺しなんてしたくない…でも…でも、
 他の人だってそうとは限らないじゃない…。とにかくどこか隠れる場所を…。」
「あー、そうかい!そうかい!だったら勝手にしろ!俺はボスのところへ行く!
 お前はせいぜいここでびくびく震えてな!」
充はついに怒りを爆発させた。なんだ、この女は自分の事しか考えていないじゃないか。
おまけに俺たちの絆を馬鹿にする文句ばかり並び立てて!もう付き合ってられないとばかりに
充は小屋の粗末な戸を蹴り明け、月明かりの下へとかけていった。
「ちょっ、ちょっと…!」
聡美が呼び止めようとしたが、すぐに頬を伝う夜の空気とともに後ろへと流されていった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

そういうわけで充はあろうことか、聡美を置いて来てしまったのだ。
今更ながら、頭に血が上っていたとは言え軽率な事をしたと反省する。
それにいくらいけ好かないとはいえ、聡美は女の子なのだ。それを
殺人者がいるかもしれない島に一人放置してくるなんて―男として、不良として最低だ!
首に縄付けででも引っ張ってくるべきだった。だが、ここまで来たら桐山と合流したほうが
早い。ボスに言って、すぐに迎えに行ってやらねば…。置いて行った事に関してはちゃんと
謝った方がいいかもしれない。あの女に頭を下げるのは癪だけれど…。

35 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/20(土) 21:21:57 ID:???
そうこうしているうちに、次第に充の目の前の視界が開けて行き、砂浜へと出た。
注意して辺りをきょろきょろと見渡したが、月明かりや水平線の向こうに見える夜景
(おそらくここは瀬戸内海のどこかしらの島なのだろう。)の光はあったが、なにぶ
ん暗がりで人影は見止められない。
「…?あそこか?」
ふと、一箇所だけ、砂浜の上にゴツゴツとした岩肌がこんもり盛り上がっているのが見えた。
充は右手の拳銃や肩にかけた荷物に苦戦しながら、なんとかそれを上り切ったところで―
「充」
背後から突然と声が聞こえ、飛び上がらんばかりに驚き、手に持つ拳銃を構えて振り返ると―
ほっと肩を撫で下ろした。我らの頼もしきボス、桐山和雄がいつもと変わらぬ落ち着いた、
えらく端正な顔をこちらに向けていた。すこし後ろには―北野雪子だ。
そういえば、彼女は桐山と同じ出席番号だった。気弱で人見知りしがちな
雪子が桐山を怖がって、よく日直の仕事を日下友美子―あの分校で殺されてしまった
彼女の親友―にも手伝って貰っていたのを覚えている。今も不安げな表情で、なにやらしきりに
視線を桐山と充の間で往復させている。

「ひゅぅーっ、ボス、驚かさないで―」

とここで充の言葉が途切れた。視線を桐山の足元に釘付けになり
目を皿のように見開いた。全身の毛穴からなにかひんやりしたそれでいて
えらく気色の悪いものが吹き出してきた。彼の目線の先―――
―先に出発したファミリーの仲間・笹川竜平(男子10番)が、なにやら
ドス黒い水溜りの中で、濁った瞳をこちらに向けていた。

【残り 36人】

36:2008/12/20(土) 23:26:01 ID:???
野田哀れ過ぎるw清水も死んだんだな
男子不良を相方に持つと大変だ

37 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/21(日) 00:09:59 ID:???
堅い絆で結ばれたはずの仲間・笹川竜平の死体を前に充は凍り付いていた。
そりゃあ…笹川竜平という男はおっちょこちょいで、気取り屋で、単細胞で
乱暴などういようもない奴で、彼が赤松義生などに暴力を振るおうとするの
を押しとどめたりと、手を焼かされた。だが、なんだかんだできっちりと
筋は通す奴だったし、出稼ぎとパートで殆ど家にいない両親の代わりに、
小学5年生の弟の面倒を見てやったりと、いい所もあって、なんとなく憎
めない男だった。なにより、自分が桐山と付き合い始める前からの腐れ縁
というか悪友なのだ。その竜平が今目の前で物言わぬ屍となっている!
なんだ、なんなだこれは一体―
「ここが南の端だ。」
桐山が相変わらず低くは無いが、あまり抑揚の無い落ち着き払った声で告げた。
「ボ、ボス…これは一体…」
桐山は一瞬、きょとんとした表情で充を見ると、すぐその目線の先に顔を向けた。
「ああ、これかい?」
桐山はその上等な革靴の爪先で竜平の死体をちょんと蹴った。
「俺を殺そうとしたんだよ。竜平は。」
充は耳を疑った。桐山の言った言葉がすぐには理解できず。様々な事が
頭の中をぐるぐると巡り―寸刻して、ふぅーっと息を吐き心を落ち着かせた。

38 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/21(日) 00:10:47 ID:???
やはり信じられなかった。竜平はさっきも言ったとおり、なんやかんだで
筋は通す男だった(ただのどういようもない乱暴ものなら今まで充がしてきた
多くの連中と同じようにように、半殺しにして、それからは一顧だにしなかっ
ただろう)。それに、去年の今頃、その竜平の弟が万引きをして店員に捕まり
警察に突き出されそうになったとき―何度も会ったことがあるが、竜平とは違
い礼儀正しく、はきはきとした、ごくごく可愛らしいいい子で、はっきりいっ
て竜平よりよほどしっかりしていた。それでいて、自分と同じく両親との関係
は最悪だった竜平も、この弟はよく可愛がっていて、傍から見ても大変睦まじ
かった。後竜平から聞いた話だが、彼が盗んだのは携帯ゲーム機で沼井家同様、
城岩でも底辺に位置する笹川家からの小遣いでは到底買えない代物だったらし
く、友達で持っていないのは彼だけで、魔がさしたらしい。常習犯の自分と違
って、本来そんなことするたまじゃないからこそ、竜平も助けようとしたんだ
ろう。―桐山のつてて(なんといっても手広く事業をしている西日本有数の大
企業の御曹司なのだ)助けてもらった事を大変感謝していて、恩義に思ってい
たのだ。その竜平が桐山を、ファミリーを裏切るなんて。だが、まて、まて
…確かに、確かにそうだ。結局人間なんて何を考えているかわかったもんじゃ
ない。もしかしたら、もしかするとあいつだって、自分が殺されるかもしれな
いという状況で頭がおかしくなったのかもしれない。特に竜平は普段から精神
的に脆い所があったからなおさらだ。要するにそれだけの小物だったのだ。
こいつは…。残念だが。―と、ここまで考えて充の脳に新たな疑問と違和感が
浮かぶ。

39 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/21(日) 00:11:19 ID:???
「博と、博とヅキはどうしたんですかボス!?それに竜平と組んでる筈の清水は!?」

自分より先に出発した筈のメンバー、黒長博(男子9番)とヅキこと月岡彰(男子14番)
、それに竜平のペアである清水比呂乃(女子10番)の姿が見えなかった。ただ、清水に
関しては、分校であの坂持が言っていた、そして悪趣味にも実演して見せた事が
事実ならここで竜平が死んでいる以上、あの女もまたもうこの世の人ではないのだろう。

「博と月岡はここにはきていないよ。清水も。」
「き、来ていないって…。あいつら二人は俺より先に出発してるんですよ!?」
「いくつか理由は考えられる。ここまで来るのに戸惑っているのか、
 もう誰かに殺されてしまっているのか。組んでいる相手の反対されたのか。
 あるいは最初からここにつもりがないのか。いずれにせよ、俺は分校を出
 てからあの二人には会っていない。」

まず、清水に関してはまあ予想がついた。おそらく竜平も自分と同じように
途中で喧嘩別れでもしたのだ。日頃、竜平と比呂乃は日直の仕事をおし
つけあう犬猿の仲だったから…。比呂乃は既にこの島のどこかで、
首と胴とが泣き別れになってしまっているのだろう。自分が死んだり
したら、野田聡美も同じことに―いや、早くしないと自分が同じことに
なってしまう可能性がある。突然とこの首輪が鳴り出して、あの
日下友美子と同じように。さすがの充も思わず身震いをさせた。
だが、他の二人、博とヅキもここに来ていないとは。ボスの指令に
反する行動を取るなんてファミリーに対する背信行為じゃないのか?
博の方は、まだ来ないのもわかる気がした。あいつはもっぱらパシリ
専門で喧嘩なんてからっきしの臆病な奴だった。使い走りとしては
あくせく働いてもらっているので無理強いはしなかったが、充としては
もうすこしファミリーとしての威厳を持って欲しかった。怯えて
ここまでこれないでいるのかもしれない。それに一緒に組んでいる
榊祐子(女子9番)が博に輪をかけて臆病という事もあるし。
だが、ヅキは―あいつはそんなたまじゃないはずだ。下手をすれば
天堂真弓(男子14番)を引っ張ってでもきそうなものだが…。
それが来ないという事は、ファミリーの絆は絶対という事を鑑みて
もう彼は死んでしまっているという事になる。正直、あまり彼に
関しては口に出したくないが殺しても死なないような奴だと自分
は思っていたが―。だが、この竜平の有様をみたら、あいつは
最初からここに来るつもりがなかったんじゃとあらぬ考えが
浮かんで―まてよ?次から次へと違和感が浮かんでくる。
なんで竜平がここにいるんだ?最初からファミリーを裏切る
つもりだったのならば、清水と分かれて単独行動なんてマズ
いやり方をせずとも、最初から合流指令を無視してしまえば
よかったのだ。そんな危険まで冒して、ボスの所へ来た竜平が、
ここまできて心変わりを起こした理由―まさか、まさか…。

40 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/21(日) 00:12:09 ID:???
「ボ、ボス…竜平は―」「聞いてくれるかな?」

充の言葉を遮って桐山が相変わらずの抑揚の無い調子で
だが、どこか威圧感のある、それでいてどこか悲しげに
語り始めた。充はその場で硬直し額から吹き出した
脂汗か頬をつたって、開きっぱなしの学ランの下に
着込んだ無地のシャツの襟元に落ちた。

「俺はどっちでもいいと思っていたんだ。」
「ど、どっちでもいいって…?」

充には桐山が何を言っているのかわからず、目をしばたたかせた。
だが、桐山はふいに月が煌々と輝く空を見上げ、また目線を
充に戻して続けた。

「俺はときどきなにが正しいのかわからなくなるよ。」
「―ボ、ボス!?」
「今回もそうだ。俺は北野と一緒にここまできた。」

ますます何を言っているのかわからなかった。
だが―だが、充の心に先ほどから芽生えていた
違和感は桐山が口を開くたびにその大きさを増幅させていく。

「俺は、聞いたんだ。北野にこれからどうしたいのか。けれども
 北野もこれからどうしたらいいのかわからないと答えた。」

充はちらと北野雪子の方に顔を向けた。雪子の表情が先ほどとは違い
ひどく申し訳なさそうなものに変わっていた。充は自分がそんなに
頭の良い人間では無いと自覚していたが―彼女の表情を見て最悪の
予想が頭をよぎった―まさか、まさか―――いや、そんなはずはない!
そんな馬鹿な事はあってはならないはずなんだ!

「そこで、俺はコインを投げたんだ。表が出たら政府の連中と戦う。裏が出たら―」

突然、言い終わらないうちに桐山が後ろに飛びのき、とパンッという乾いた音ともに
彼が先ほどまで立っていたあたりの少し前を何かが高速で通過していった。
充が音をした方向を見ると。多少髪を乱し、見覚えのある半自動式拳銃を握った
野田聡美が自分が登った岩肌から、肩から上をのぞかせていた。

「の、野田…」
「沼井くんっ!!!」

聡美の悲鳴ハッと、今までの方向に目線を戻し、そして―――絶句した。

「ボ、ボス…そ、それ…なんすか。」
北野雪子を庇う様に構える桐山和雄の手にはすでに刃を起こした
刃渡り10センチほどの銀色の折りたたみナイフが握られていた。

「いいそびれてしまったな。コインの目は裏だったよ。だから――俺はこのゲームに乗ることにした。」

【残り 36人】

41チャンス:2008/12/26(金) 22:05:05 ID:ifLMWvZk
今日か明日かな?

42nanashi:2008/12/28(日) 17:13:44 ID:???
楽しみにしてるぜ〜

43nanashi:2008/12/28(日) 17:14:06 ID:???
楽しみにしてるぜ〜

44 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/28(日) 17:46:04 ID:???
忙しくて中々進まない;
今日明日にはなんとかなるかと

45NANAし:2008/12/28(日) 18:41:36 ID:???
おおー期待
たのしみにしてるんで無理せずどぞ
ガンバッテ

46 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 14:10:03 ID:???
あまりの自体に絶句していた沼井充の口から再びに放たれた言葉は、困惑に満ちたものだった。

「……え?…えっ!?えっ!?…ボ…ボス?……じょ…冗談で…すよねぇ…!?ねぇっ!!!」
「沼井くん!何やってるの!?早く逃げて!!!」

野田聡美の必死の絶叫も、まるで新幹線の通過する駅のホームの向こう側から聞こえてきている、とでもいう風。

「聞こえなかったのかな?俺はゲームに乗る、そう言ったんだ。」

そういうや否や、桐山が再びナイフを構え、充に向かって駆け出した。
あまりの事態に充の頭の中は真っ白になり、心身ともにその場で凍り付いてしまっていた。
「沼井くん!」
再び、聡美が桐山に銃口を向け銃の引鉄を引く。桐山は一瞬動きを止めるが再び駆け出す。

「の、野田!?」

やっと充がはっと我を取り戻すが、ナイフを手にした桐山が再び眼前に迫っている!
やられる!?―いや、いっその事ボスにやられるのもいいか…そう思いかけた途端。
急にくるりと桐山が踵を返したかと思うと、大きく跳躍し、北野雪子を押し倒した。
きゃっ、と短い悲鳴があがると同時に先程まで雪子が立っていた位置を、鉛弾が通過していく。
聡美が撃ったのだ。そうだ、彼女と自分は一蓮托生。自分が死ぬのは勝手だが、聡美まで
死なせてしまっては申し訳が立たない。桐山は気がかりだが、とにかく、今は一旦逃げ出さねば。

47 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 14:10:41 ID:???
「はやく!」

桐山が起き上がる前に充は岩礁から飛び降り、聡美へかけより、そのまま無我夢中で走った。
砂浜に足を取られ、思うように走れず、靴の中に砂の入り込むいやな感触が体を伝うが、構っては
いられない。とにかく、今はここから離れなければ――――

――その時、充の背中に刺す様な悪寒が走った。走りながら恐る恐る振り返って目を剥いた。
起き上がり、岩礁から降りた桐山が、いつもの貼り付けたような無表情でこちらへ走り拠って来るのだ!
勿論、手にはナイフの刃が月の光に反射してギラギラと輝いて見えた。つい先程まで、
あれほど頼もしく見えた桐山の顔は、今は底冷えするほどに恐ろしい。
さらに桐山はそのクラス、いや学校でも随一の脚力でこちらへ迫ってくる!
一方、充は腕っ節なら桐山には劣るが学校では随一と自負していたが、
運動は特に得意というわけではない。むしろ、この年齢で、タバコの毒が体にまわっているせいか体力もそれほど高くはないのだ。
聡美が、さらに一発、桐山に打ち込むが、走りながらのためか、虚しく空を切るだけ。
桐山も一瞬動きを止めるものの、追跡を止める気配は無い。

「沼井くん!貴方も撃ってよ!」

ここで充は初めて自身も拳銃を持っていること思い出すが、まだ躊躇の色が浮かんでいた。
撃つのか!?仕えるべき俺が王たる桐山を撃ってもいいのか!?

「どうしたの!さあはやく…アッ!」

小型の半自動拳銃とはいえ、やはり女の細腕、無理な体勢で何度も銃を連射した
疲れからか、聡美は銃を取り落としてしまう。桐山はここぞとばかりに距離を詰めようと加速をつける!

48 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 14:11:44 ID:???
「うあああああああっ!!!」

ここで初めて、充ははじめてCZ75を握り、引鉄を引いた。
何発もの銃弾が桐山の足元に撃ち込まれるが、充がこちらに銃を向けたのを
察知したのか、桐山は一瞬動きを止めた後、銃弾が発射される前に横へ飛んで
これを交わす。さらに充が銃を横にすべらせるが、これも桐山はまるで
アクション映画の俳優のように、低い姿勢から後ろに転がるようにして避けた。
すぐに遊底が停止し、前段を撃ちつくした事を知らせる。ここで充は交換用のマガジンを
肩にかけたデイパックの中に入れたままだという事を思い出した。
これを取り出し、暗がりで走りながら、マガジン交換するなどという
まどろっこしい事をしていては、桐山に追いつかれてしまう。

が、桐山は聡美の落とした、ワルサーPPKを拾い上げると、そのまま追撃してくる気配は無かった。
とにかく…とにかく!今は逃げるしかない!充と聡美はここぞとばかりに足を早める。
充は、ちらと、後ろを振り返ると、直立したままの桐山が段々と小さくなっている。

(なんで…なんでだよ!ボス!)

充の瞼から熱いものがこみ上げ、視界が大きくぼやけはじめていた。


【残り 36人】

49 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 14:13:25 ID:???
桐山ファミリー崩壊編の最後まで書き上げるつもりでしたが、
思いがけなく長くなってしまったので一旦ここまで。
続きは今日中に投下できそうです。できれば、別の生徒の場面もやりたいかな?

50なまえないよ:2008/12/29(月) 19:06:23 ID:???
おつです
原作からは予想だにしない展開ですな
これは楽しみだw

51なまえないよ:2008/12/29(月) 19:06:58 ID:???
おつです
原作からは予想だにしない展開なんで
かなりおもしろいです
これは楽しみだw

52 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 19:11:33 ID:???
相変わらず、岩礁にいた北野雪子は松原の奥へ遠く消えていく沼井充と野田聡美と
なぜか追撃を止め、それを見守る桐山和雄の後ろ姿を怯えた目で眺めていた。
しばらくすると、桐山がこちらに戻ってきた。右手には、野田聡美が取り落とした
銃が握られていた。

いつもの、無表情と冷たい視線で、見下ろされ、雪子は大きく萎縮する。
と、桐山がこちらに銃を握った右手を差し出した。

「お前が持っているといい。底の方が熱くなっているから気をつけろ。」
「あ、…え、うん…。」

おそるおそる雪子はその銃を受け取る。

「弾丸は2発しか残っていないから、使い時を考えて使うんだ。撃ち方は俺が教える。」

桐山はあくまで冷静に、抑揚の無い口調で雪子にこう告げた。
合流してからこの方、いや普段からだったのかもしれない。一事が万事この調子なのだ。

まだ、涙を流しながら(坂持に何をされるかわかったものではなかったので、声は押し殺していたが)
雪子が分校を出た時、桐山は自分に支給された武器らしい、折りたたみナイフをベルトに挿すと

「南の浜辺に行くから付いて来て欲しい。そこで充たちを待つ。」

こう告げた。なんと言っても桐山は町内でも有名な不良グループのボス。
友美子が無惨な殺され方をして誰とも口を聞く気分ではなかったのもあるが、そうじゃなくても
とても話かける事など自分には出来そうも無い。桐山もただ黙々と前を向いて歩き続けるだけで、
道中一言の会話も無く、なんとなく気まずい空気が流れていた。

53 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 19:12:21 ID:???
「大丈夫か」

桐山は自分に手をかしてくれた。ああ、意外と優しいところもあるんだな。と雪子は
彼には失礼だが意外に思った。そういえば、二年の家庭科の調理実習に、桐山が珍し
く参加した時は、―桐山は授業をさぼる事が多々あり特に家庭科や美術、音楽と言っ
たものは、月岡彰を除いた彼の仲間たちも一緒に教室から消えているのが常だった―
黙々とだが、率先して調理を手伝っていたし(そしてそれは料理好きの自分でさえ、
味わったことの無い美味なものだった)、派手に喧嘩をしたという噂はよく聞くものの、
教室での彼は静かになにやら難しい本を読んでいたり、仲間の話を静かに聞いている事が
多かったので、そんなに悪い人じゃないかもしれない。雪子はそう思った。ああ、
そういえば友美子が口癖のように言っていたっけ。「このクラスはいい子ばかりだ」って。

「あ、ありがとう…桐山君」

雪子が桐山に礼を言うと、桐山は一瞬目をしばたたかせた後こう言った。

「北野、お前はこれからどうしたい。」

えっ?と雪子は思った。親友を目の前で殺されてしまい、先程まで頭が真っ白。
しかも社交的で、他の男子や女子ともそれなりに付き合いのあった友美子と違い、
内向的な雪子は他のクラスメイトと話す機会もそれほど多くなく、誰か特別に
頼るような相手もいない。自分の想い人、七原秋也なら…と思ったが、出発順は
かなり離れてしまっており、彼を探し出す事は困難に思えた。これからの展望
なんてあるわけがなかった。

54 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 19:14:14 ID:???
それに、桐山は沼井充たちとここで待ち合わせると言ったのだ。それもなにか
考えがあるんじゃないのか?それをいまさら自分が口出ししてもなんら意味を
成さないだろうし、口に出して説明できるようなまとまった考えもなかった。
ただ、一つ、分校を出発した時、いや親友がその首を吹き飛ばされた時から
頭のなかに沸々と沸き出でる一つの感情を除いては。とにかく、ここは桐山に
とその仲間に任せればいい。雪子はそう思ったのだ。

「どうしたいって…わかんないよ、これからどうしたらいいかなんて…。
 ――でも私、政府の連中は絶対に許さない!」
「お前が政府の連中をどう思っているかなどと聞いていない。」

突き放すような桐山の物言いに雪子はムッとした。
さすがになにか文句を言ってやろうと。思った矢先、桐山は再び口を開いた。

「…そうか、お前もわからないのか。」

え?お前『も』?確かに今、桐山はそう言った。

「お前『も』って…桐山くんも何も考えていなかったの!?」
「考えてはいる…いるが、どうしたらいいのかわからないんだ。」

桐山はどことなく悲しげに呟くいた。しかし、雪子の頭はますます混乱する。

「だ、だって沼井くんたちをここに呼んだんでしょう?だったら―」
「充たちを呼んだのは、どちらにせよ都合がいいと思ったからだ。」
「ど、どちらにせよって…」
「聞いてくれるかな」

桐山はさらに疑問をぶつけようとした、雪子を遮って話を続けた。

「俺は時々何が正しいのかわからなくなるよ。今回にしてもそうだ。
 俺たちはこの島でクラスメイトとの殺し合いを強要された。人の命を
 奪うという事は、倫理学上正しく無い行為だが、この国の法律と照ら
 し合わせれば、今回の場合に限り正しい行為と言える。どちらを優先
 すればいいのか俺にはわからない。」

ここで初めて雪子は自分の軽率な発言を後悔した。
政府の理不尽な命令とクラスメイトの命、どちらが重いかなど判りきった事じゃないのか?
それに、沼井たちは自分にとっての友美子や秋也、いやそれ以上に大事な存在じゃないのか?
それにも関らず、桐山は両者を天秤にかけているのだ。この男は、この男は一体――

55 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 19:20:27 ID:???
「だから俺はどうするか…これで決める。」
「待って!桐山く…」

そういうや、いなや桐山はポケットから何かを取り出し指で弾いき、それを手の甲で捕らえた。
桐山が甲に置いた、右手を避けると、外国製だろうか?みたこともない銀色の硬貨が
数字の書いてある面をこちらへ向けていた。

「…裏か。ならば…俺はこのゲームに乗ることにする。」

信じられないような発言に雪子は絶句した。

「な、なんで…!?なんでそんな事、それじゃあ沼井たちもみんな殺しちゃうの!?仲間じゃないの!?」
「確かに充たちは俺の仲間だ。が、一組だけが生き残れるというルールがある以上、彼らも殺さざるを得ないだろう。」
「そんな!そんなのおかしいよ!ね…、そんな、そんな事するよりみんなとここから逃げ出す方法を…。」
「脱出の方法はまだ考えていないが…それも悪くない。だが、俺はもうゲームに乗ると決めた。
 一度決めた方針を度々、翻していてはキリがない。」

グループの仲間のあっさり殺してみせると述べた桐山に雪子は返す言葉を失った。

「それとも…」

桐山が少し目を細め、こちらを凝視する。

「それとも、お前はゲームに乗らない事の方が正しいという事を俺に説明してくれるのか?」
「それは…。」

雪子は言葉に困った。あの光輪教の教えではないが、人の命は何より重いのだ。こんな事は子供でも知っている当たり前のこと。
だが、この国では度々そんなあたり前の事は度々無視される。そう、今この時のようにだ。
それを桐山は法律で決まっている事だから仕方が無いとあっさり流した。それに、人を殺すなという
事は頭で理解しなくても、常識で染み付いていること、今更それを説明しろだなんて…。
いや、出来るかもしれない。今の自分ならなお更。

「自分の大切な人が傷ついたり、死んだりしたら悲しいとは思わないの!他の人だって同じ気持ちだと思うわ!
 だから、だらかゲームに乗るなんて…。」
「それは主観的な感情論だ。それに―俺にはわからない。」
「え…?」

この人は…、この桐山和雄という人は悲しみを知らない?まさか、まさかそんな
機械みたいな人間がこの世に存在するものなのか。だが、だが、とにかく…この男は
普通じゃない。この人はどこか壊れている。とても、話は通じそうに無い。
今、自分はこの男を殺すべきなのではないだろうか。だが、それは自分の死も
意味する事になる。そんな勇気はとてもじゃないが浮かんでこなかった。

「とにかく俺はここで皆を待つ。」

56 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 19:21:20 ID:???
それっきり、雪子は桐山にかける言葉を失った。
それからは、桐山和雄が今、沼井充に語ったとおりだった。
二人は無言のまま、岩礁の上で後続のメンバーを待った。
黒長博たちはなぜかこの場に現れず、先に笹川竜平が顔を出した。
清水比呂乃が桐山と合流することに大反対したため、喧嘩別れして
急いできたのだと、気楽そうに話していた。結果的に、正しかったのは
比呂乃の判断だろう。雪子は逃げるよう、竜平に伝えようとしたが
桐山の発散する雰囲気に気圧されて言葉が出なかった。

そうしているうちに、桐山は竜平にゲームに乗る旨を伝え、
笹川は先程の沼井充と同じように、一度硬直し―――
―棒のようなもので桐山に殴りかかった(今、それは桐山の腰に挿してある)。
が、桐山のナイフが彼の喉笛を一閃し、先程の友美子と同じく竜平の首から
鮮血が吹き出して、仰向けに倒れ、ひゅ〜、ひゅ〜と不気味な隙間風のような音をさせ、
ぴくぴくと何度か手足を震わせたかと思うとそれっきり動かなくなった。
本当に、桐山は自分の仲間をあっさりと殺して見せたのだ!
改めて、桐山がやる気である、そう思い知らされ、雪子は戦慄したが、
どうする事もできなかった。

57 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 19:21:42 ID:???
それっきり、雪子は桐山にかける言葉を失った。
それからは、桐山和雄が今、沼井充に語ったとおりだった。
二人は無言のまま、岩礁の上で後続のメンバーを待った。
黒長博たちはなぜかこの場に現れず、先に笹川竜平が顔を出した。
清水比呂乃が桐山と合流することに大反対したため、喧嘩別れして
急いできたのだと、気楽そうに話していた。結果的に、正しかったのは
比呂乃の判断だろう。雪子は逃げるよう、竜平に伝えようとしたが
桐山の発散する雰囲気に気圧されて言葉が出なかった。

そうしているうちに、桐山は竜平にゲームに乗る旨を伝え、
笹川は先程の沼井充と同じように、一度硬直し―――
―棒のようなもので桐山に殴りかかった(今、それは桐山の腰に挿してある)。
が、桐山のナイフが彼の喉笛を一閃し、先程の友美子と同じく竜平の首から
鮮血が吹き出して、仰向けに倒れ、ひゅ〜、ひゅ〜と不気味な隙間風のような音をさせ、
ぴくぴくと何度か手足を震わせたかと思うとそれっきり動かなくなった。
本当に、桐山は自分の仲間をあっさりと殺して見せたのだ!
改めて、桐山がやる気である、そう思い知らされ、雪子は戦慄したが、
どうする事もできなかった。

58 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 19:25:38 ID:???
そして先程の、恐らく彼と特別な信頼関係で結ばれていると思われた、
沼井充でさえも桐山は躊躇無く殺そうとしたのだ。
そして今も平然としている。だが――桐山は沼井たちを仕留める
絶好の機会があったにも関らず、これを追うのをやめた。
やはり、やはり彼の中にはまだ躊躇いがあるのでは?
最後の望みをかけて雪子は尋ねた。

「ねえ、なんで沼井くんたちを追いかけなかったの…?」

笹川竜平の荷物を自分のデイパックに詰め替えていた、桐山が振り返った。

「……あれ以上、北野、お前と距離が生まれてしまえば、お前が誰かに襲われた場合、対処しきれないからだ。
 今後、なるべく俺の傍を離れないで欲しい。」
「そ、そう…。」

桐山の答えはやはりそっけないものだった。

「桐山くん、本当になんとも思わないの。」
「―――ああ。」

雪子の問いに桐山は一瞬、きょとんとした顔つきをしたが、やはり返答は同じであった。
が、その時――桐山が急に左のコメカミのあたりを指で抑えた。

「…!?大丈夫。」
「…なんでもない。時々こういう事があるんだ。――恐らく、黒長と月岡はこれ以上待っても来ないと思う。
 充たちも、今から追いかけていても間に合わないだろう。一旦、北へ向かう。」
「…う、うん。」

言うや否や、桐山は立ち上がり歩き始めた。

「ま、待って!」

雪子は銃と自分の荷物を手にして、後を追いかける。
なんだったんだろう、今のは…。この違和感の正体を知りたい。
桐山の暴挙をなんとか止めたい。だが、今の自分にはどうする事もできないのだ。
みんな殺してしまうのか?沼井充も、黒長博や月岡彰も。自分の想い人七原秋也も…。
(友美ちゃん、私、いったいどうしたらいいの…。)
思い浮かぶ親友の最期の姿、そして、言い残そうとした言葉の意味…。
(まさか友美ちゃんも…七原くんの事を…。)
胸が詰まるような思いで、雪子はただ、波の音を背に桐山の後をついて歩く。
岩礁の上にはただ、笹川竜平の死体と、荷物が殆どなくなったディパックだけとが残された

【残り 36人】

59 ◆L0v/w0wWP.:2008/12/29(月) 19:36:55 ID:???
二重投稿とかw見苦しい様をお見せしました。というわけで桐山ファミリー崩壊編終了です。
充たちは原作と違って、桐山が銃を持っていなかった事、雪子がいたことが幸いし
なんとか生き延びる事ができました。しかし、桐山に裏切られた充は意気消沈、銃も一丁
奪われてしまい危機的状況であることには変わりありません。

雪子も友美子がいないの事と、桐山に気圧されて原作にくらべてかなりメンタルが弱くなっています。
そして、黒長博、月岡彰ら現れなかったメンバーの動向は?今後も波乱含みという状況ですが…。
果たしてこの先どうなるのか、彼らの再登場は今の構想だとしばらく先になりそうです。

60nanashi:2009/01/05(月) 08:27:00 ID:???
次はいつ頃になる?

61 ◆L0v/w0wWP.:2009/01/09(金) 20:07:02 ID:???
三連休中には

62 ◆L0v/w0wWP.:2009/01/13(火) 00:11:45 ID:PzYc5xnY
すみません
PCの液晶がおかしく…
修理に出すのでもうしばらくお待ちください
原稿は書き溜めておきます

63てすと:2009/01/13(火) 12:20:20 ID:GqPm7M72
てすと

64nanashi:2009/01/13(火) 16:28:14 ID:???
>>62
頑張ってください
楽しみにしてます!

65チャンス:2009/01/28(水) 22:54:43 ID:ifLMWvZk
待ち遠しいぜ

66T:2009/01/29(木) 23:53:55 ID:lEPM.PmY
実は俺も楽しみで待ち遠しい^^

67チャンス:2009/02/03(火) 22:17:37 ID:ifLMWvZk
もう2月だ…

68名無し:2009/02/08(日) 09:15:50 ID:???
……まだなのか…?

69:2009/02/08(日) 11:00:13 ID:tK/gSoGc
まあ気長に待とうや

70チャンス:2009/02/08(日) 22:39:11 ID:ifLMWvZk
オレ以外にも待ってる人はいたんだな
待ち遠しくてしかたない

71 ◆L0v/w0wWP.:2009/02/15(日) 20:26:16 ID:???
いろいろと一段落着きました
今週中に再開します

72チャンス:2009/02/16(月) 00:36:42 ID:ifLMWvZk
きた!
今週が楽しみだ

73T:2009/02/17(火) 01:42:23 ID:leLwbXoU
おおっ!でも無理しないでくださいね。
ぜひ作者さんが楽しめる範囲の執筆、発表でm(__)m

74七死:2009/02/17(火) 15:49:51 ID:???
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
待ってたぜ!

75 ◆L0v/w0wWP.:2009/02/21(土) 23:02:53 ID:???
新井田和志(男子16番)は両刃のナイフを握り、目を血走らせ、周囲を見渡しながら
南東の集落への道を歩んでいた。同行者である中川有香(女子16番)が、食料が豊富に
あるであろう、南の集落への移動を強く要望したからである。

「こんな今時犬も食わないようなコッペパンじゃ足りないわよ、うん。育ち盛りなんだからさぁ。
 それに、腹が減っては戦は出来ないっていうしさ」

―まったく…こんな時まで食いモンの話しかよ、この豚は…。

和志は同行者の有香の事をまったく快く思っていなかった。
彼女が和志の好みではなかった事もあるが、彼女の恐ろしく
緊張感の無い言動に、和志は苛々を募らせていた。

「あのな、中川。お前もさっきの見ただろ!七原の奴が殺し合いに乗ったをよ!」
「いや、あれ絶対何かの間違いよ。七原くん、あんなことする子じゃないしさ」

ここまで来てもこの能天気な発言と表情。和志は額に青筋を立てて、がなり立てた。

「なにいってんだよ!見ただろう!?あいつが、稲田を刺してナイフ持ってたのをよ!」
「う〜ん、あ、そうだ、ほら、あれは稲田さんが七原くんに襲い掛かったんじゃない?
 ほら、あの娘さ、普段からちょっとおかしかったじゃない。それに柱とかに矢が刺さってたけど
 七原くん、弓とか持ってなかったしさ」
「じゃあ、七原以外にも人殺しがいるって事だろ!んな事もわかんねぇのかよ!」
「…だけどさ…」
「さっきからうぜぇんだよ!この鈍感女!脳味噌、死んでんじゃねぇのか?」
「なっ…そりゃ、アタシだって怖いわよ!でもうじうじ言ってたってどうにもなんないじゃないのぉ」
「それが鈍感って言うんだよ!ちったぁ黙ってろ!」

76 ◆L0v/w0wWP.:2009/02/21(土) 23:03:53 ID:???
凄い剣幕でまくし立てられ、有香は和志を恨めしそうに見ながら、
ぶつくさと呟いている。文句を言いたいのはこちらの方だ。

(あぁ、どうせ殺し合いなんてさせられるならせめて千草と組ませて欲しかったぜ。
 俺はなんて運がねぇんだ――こんな殺し合いに巻き込まれて、こんな豚女と組ませられて
 渡された武器もこんなんじゃ…)

和志は天を呪った。自分と有香に支給された武器はただのブーメランと三味線糸だった。
アボリジニの戦士(もっとも和志はブーメラン発祥の由来などは知らないのだが)か
どこぞの時代劇の正義の味方じゃあるまいし、こんなものでは身を守る事すらできない。
和志が有香の意見どおり、集落へ向かっているのはもう少しマシな武器を手に入れるためだった。

(嫌だ…俺はまだ死にたくない。サッカーだってもっとやりたいし、美味いもんだって食いたい。
 続きが気になる漫画だってあるし、彼女だって欲しいし…できれば千草がいいけど…
 とにかく俺はこんなところで死にたくねぇ…。)

和志の心は恐怖で支配されていた。




集落に着いた2人はどこかの民家に入り込もうとしたが、一軒目、二軒目とくまなく施錠されており
中には入れなかった。

「もう、窓とか割ってさ、中に入ろうよ。あたしゃ、腹が減って仕方ないよ」
「お、俺にやれってのかよ!?」
「か弱い女の子に力仕事させんの〜?」

本当に可愛い女の子は自分でか弱いとか言わねぇよ!
と言っても、そうこうしていても埒が明かないので、三軒目の家の
今の窓ガラスを墜ちていたブロックで叩き割り、鍵を開けて侵入した。
器物損壊と家宅侵入の犯罪だが、この場では仕方が無いと和志は自分に言い聞かせた。

「じゃ、先行ってよ」
「ちっ、わかったよ」

両刃ナイフをしかと握り締め、おそるおそる台所を探す。
何と言う事の無い民家だが、シンと静まり返り、中は真っ暗、不気味な雰囲気を醸し出している。

「くっつくなよ、気持ち悪いな!」
「いいじゃないのよ〜、男でしょ〜!」

懐中電灯で照らしながら、今から廊下に出ると、玉暖簾のかかった入り口を発見。
おそらくあそこが台所であろう。あそこで包丁か何かを手に入れよう。
和志が台所に足を踏み入れ、周囲を懐中電灯で照らしたその瞬間である。

77 ◆L0v/w0wWP.:2009/02/21(土) 23:04:27 ID:???
「!?誰だっ!!!」

台所の隅に固まる2人の人影を電灯の明かりが照らし出した。

「に、新井田か…!?」
「っ!?お、大木…」

そこにいたのは中背の体躯に、鍛え上げられた肉体。
ハンドボール部のエースで同じ体育会系の生徒として、そこそこ付き合いのある
大木立道(男子3番)、そして怯えた表情を見せる小柄な女子は、江藤恵(女子3番)だった。

「お、お前なんでこんなところに…」
「お前こそ・・・!?」

立道は言葉をそこで詰まらせ、見る見る表情を強張らせて行く。
その視線は、和志の右手のナイフに握られている。

「おい…な、なんだよそれ…」
「!?…こ、これは…ち、違うんだよ!」
「お前、血ついて…そうか、お前…お前がその気なら…。
 うわあああああああああっ!!!」

和志は目を見開いた。なんと立道が腰から抜き放ったナタを振りかぶって
襲い掛かってきたのだ。
(その気になってるのはどっちだよ!)
皮肉にも和志の状況は先ほど彼が、七原秋也にした事と全く同じだった。
振り下ろされたナタをナイフで受け止めようとするが、弾き飛ばされてしまう。

「お、大木くん止めてよ!」
「江藤!こいつはもう誰かをやったんだ!やらなきゃ、俺たちがやられるんだ!」

恵が立道を宥めようとするが、聞く耳持たずといった感じである。
表情を引き攣らせ、血走った目をした立道を和志の取り落とした懐中電灯が照らし出した。
さらに、振り下ろされた立道の右手をなんとか受け止めるが、腕力は立道のが上である。
このままではいずれ頭をカチ割られるのは目に見えている。

「中川ぁ!!!なんとかしろ!!!」
「そ、そんな事言っても…」

有香も恵もおろおろするだけでまるで役に立たない。

(なんとか…なんとかしねぇと…そうだ!)

和志は咄嗟に、右足で思い切り、立道の向こう脛を蹴り飛ばした。

「ぐあっ!?」

筋肉で覆われた、立道の脚も、弁慶の泣き所にサッカー部の
エースである和志のキックを受けてはひとたまりも無く悲鳴をあげる。
立道の力が緩んだところで、和志は立道を思い切り突き飛ばした。
あとはこの場から逃げ出せばいい。すぐさま、和志が踵を返し―――

78 ◆L0v/w0wWP.:2009/02/21(土) 23:05:04 ID:???
――――――ゴッ!

「えっ?」

なにか明らかに異質な音と、低く短い呻き声が聞こえた。
和志が足元を見ると、立道が仰向けに倒れたまま起き上がってくる様子を見せない。

「あ…おっ…おい…」

何がどうなったのかわからない和志は先ほど彼が襲い掛かってきた事も忘れて
思わず声をかける。そして…目を見開いた。

倒れた立道の頭から、フローリングの床にどす黒い『なにか』が広がっていくのが見えたから。
取り落とした懐中電灯が照らし出していたから。

『ピーッピーッピーッ』

そして突如部屋中に鳴り響く電子音――それが、炊飯器や電子レンジからではなく
江藤恵の首輪から放たれている事は和志もわかっていた。そしてそれの意味するところも…。

「あ…う…お…おれは…俺は悪くねぇ…こ、こいつが…大木がいきなり……うわああああああああっ!!!」

和志は叫び声を上げると中川有香を突き飛ばし、ドタドタと廊下へ走り抜けていく。

「あっ…新井田くん!ちょっ…待ってよ!」

中川有香も慌ててそれを追いかけた。
そして残されたのは、この上なく不運な少女――江藤恵一人。

「えっ…うそっ…待って、やだ…おいてかないで!有香!新井田くん!ま…
 いや、いやあああああああああっ!!!あたし、死にたくないっ!助けて!たすけっ…」

そして響いた乾いた爆音と同時に、そこには誰もいなくなった。

【残り 34人】

79>>78修正 ◆L0v/w0wWP.:2009/02/21(土) 23:07:48 ID:???
――――――ゴッ!

「えっ?」

なにか明らかに異質な音と、低く短い呻き声が聞こえた。
和志が足元を見ると、立道が仰向けに倒れたまま起き上がってくる様子を見せない。

「あ…おっ…おい…」

何がどうなったのかわからない和志は先ほど彼が襲い掛かってきた事も忘れて
思わず声をかける。そして…目を見開いた。

倒れた立道の頭から、フローリングの床にどす黒い『なにか』が広がっていくのを
そして、そのすぐ後ろ、テーブルの角にこびり付いたそれと同じものを、取り落とした
懐中電灯が照らし出していたから。

『ピーッピーッピーッ』

そして突如部屋中に鳴り響く電子音――それが、炊飯器や電子レンジからではなく
江藤恵の首輪から放たれている事は和志もわかっていた。そしてそれの意味するところも…。

「あ…う…お…おれは…俺は悪くねぇ…こ、こいつが…大木がいきなり……うわああああああああっ!!!」

和志は叫び声を上げると中川有香を突き飛ばし、ドタドタと廊下へ走り抜けていく。

「あっ…新井田くん!ちょっ…待ってよ!」

中川有香も慌ててそれを追いかけた。
そして残されたのは、この上なく不運な少女――江藤恵一人。

「えっ…うそっ…待って、やだ…おいてかないで!有香!新井田くん!ま…
 いや、いやあああああああああっ!!!あたし、死にたくないっ!助けて!たすけっ…」

そして響いた乾いた爆音と同時に、そこには誰もいなくなった。

【残り 34人】

80T:2009/02/22(日) 14:50:50 ID:tC.Be7y.
更新お疲れ様です。今回も楽しかったです^^
今度の退場はあのコンビになりましたか、原作同様浮かばれねぇw

81チャンス:2009/02/22(日) 23:09:38 ID:ifLMWvZk
次はあの眼鏡かカップルかな!
更新楽しみだ

82チャンス:2009/03/07(土) 23:29:43 ID:ifLMWvZk
更新が…

83 ◆L0v/w0wWP.:2009/03/11(水) 18:43:45 ID:???
来週頭までにに更新します

84T:2009/03/11(水) 19:26:41 ID:ko93wbA2
おっこれは楽しみですな^^
来週が待ち遠しい。

85愛飢え男:2009/03/11(水) 22:41:25 ID:EnJLhVFs
がんばれや

86T:2009/03/15(日) 10:11:18 ID:SBA2O2WM
ありがとう。俺頑張るよ!

87 ◆L0v/w0wWP.:2009/03/16(月) 19:16:46 ID:???
明日投下しますね

88 ◆L0v/w0wWP.:2009/03/17(火) 16:39:09 ID:???

島の北端の断崖で、二人の男女が佇んでいた。
男の方は痩せぎすで、背の低い―――どこと無く蛙を思わせる顔の―お世辞にも
あまりハンサムとは言えない少年。女の方は、この年代の女子にしては背が高く、
大変短い髪、そしてどこか落ち着いた容姿の美少女だ。少女はただひたすら祈り、
少年はただひたすら苛立っていた。



(まったく、この緊急事態になにを考えているんだこの女。
 わざわざ敵を眼前に連れてくるような真似をしやがって!)

少年、織田敏憲(男子4番)は、隣でずっとため息を吐いている
自身のパートナー小川さくら(女子4番)を、睨みつけていた。

彼、織田敏憲は県下有数の食品会社の次男坊で
学校ではバイオリンが得意な大人しいおぼっちゃんで通っているのだが、
内心、クラスメイトを下品な有象無象と見下していた。
それに、東京の音楽学校への推薦入学が内定しており、
卒業後の輝かしい未来が約束されていた彼は、当然、このプログラムに乗るつもりでいた。

だが―――(彼にとっては)不幸な事にこのプログラムは
同一出席番号の男女がペアで戦うタッグマッチ形式、
どうしても組んだ相手によって行動が制約されてしまう。
そして、彼と同じ出席番号である、彼女・小川さくらは
恋人である山本和彦とここで待ち合わせると言い出したのだ。
当然・敏憲は反対したのだが、さくらは『和君に会えないのなら死ぬ』とまで
言い出したため、しかたなく彼女の要求を呑んだ。

(まったく、この忌々しい首輪め!どうせこんな下品なゲームに巻き込まれるなら
 通常ルールで実施してくればよかったものを!)

敏憲は政府の理不尽に腹を立てていた。敏憲には一応、当たり武器と言える防弾チョッキが支給され、
小川さくらにも攻撃力の高いショットガン『フランキ・SPAS12』が支給されたので
(さくらは使うつもりが無いらしくすぐ敏憲に渡した)当面、身を守る事はできようが
この女の無気力振りでは、優勝は難しい。

(なんとか、なんとかこの忌々しい女に発破をかけないと…)

「あっ、和くん!」
「さくら!」

そう考えていると茂みの奥から山本和彦―地味で顔がちょっといいだけの男―(男子21番)と
矢作好美(女子21番)―相馬光子などとつるんでいるアバズレ―が姿を現した。
さっさと始末してしまいたいが、二人ともそれぞれ腰から拳銃を下げている。
それに、ここで和彦を殺してしまっては、さくらが本当に自殺しかねない。
ここは慎重に腰を据えてかからねば。

「怪我は無かった?」「大丈夫だよ、さくらの方こそ――」
「再会を喜ぶのもいいけど、今はどんな状況だかわかってるのか?さっさと済ませてくれよ」

早速二人の世界を形作ろうとした二人を敏憲は制した。

「ああ、織田の言うとおりだな。さくら、俺ができる事なら力になるよ…」
「わかった、私が和くんを呼んだのは―――会いたかったから」

やっぱりな。どこまで男の事しか頭が無いんだこの女。
生き残れるのは一組だけなんだぞ!そう、敏憲が怒鳴りつけようとしたとき
さくらの口から信じられない一言が発せられた。

「最期に会っておきたかったの…。自殺する前に―――」

【残り 34人】

89名無し:2009/03/17(火) 20:10:52 ID:EnJLhVFs
哀れなり織田www

90T:2009/03/18(水) 01:57:29 ID:BlXv8I.o
カエル涙目www

91チャンス:2009/03/22(日) 20:13:28 ID:ifLMWvZk
いつのまにか更新が!
ありがとうございまーす

92チャンス:2009/04/01(水) 22:07:09 ID:ifLMWvZk
更新まだかな…

93チャンス:2009/04/08(水) 23:47:38 ID:ifLMWvZk
頑張ってください

94ななし:2009/04/15(水) 21:24:35 ID:EnJLhVFs
ガンバレ!

95チャンス:2009/04/27(月) 09:25:40 ID:ifLMWvZk
スレタイに変化が

96t:2009/05/10(日) 01:01:25 ID:???
そろそろageさせてもらいまっせ!

97 ◆L0v/w0wWP.:2009/05/22(金) 18:35:46 ID:???
今月中に一本書きます

98チャンス:2009/05/26(火) 01:09:09 ID:ifLMWvZk
きた!
もう待ち遠しい!
頑張ってください

99ワイルド:2009/05/26(火) 19:05:20 ID:EnJLhVFs
おお、待ってたかいがあったぜ!

100t:2009/05/28(木) 23:05:08 ID:G4Pn.n6w
よっしゃ!
プレッシャーになっちゃったら申し訳ないけど、楽しみにしてます^^


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