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ファルコムエロパロ避難所&代行スレッド

1名無しさんが妄想します:2011/01/07(金) 15:49:24
このスレッドは、ファルコム総合のエロパロ投稿の避難所であると同時に、
エロパロ&文章創作板にある「ファルコムでエロ小説」への書き込み代行の依頼場所として利用するスレッドです。
書き込み代行の際は、その旨を明言してください。

尚、避難所若しくは書き込み代行と冠してはいますが、ここでの雑談・相談等も可です。
その際、書き込み代行の依頼が流れないよう、注意をお願いします。

基本的にsage推奨です。

2名無しさんが妄想します:2011/01/08(土) 00:32:19
早速ですが、代行を依頼します。
現行スレの
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1253185842/
に、以下の書き込みをmail欄はsageで、お願いします。

3名無しさんが妄想します:2011/01/08(土) 00:32:40
***

「おお?」
「これは…。」
「ぴかぴかー。」

ロイドとキーア、ランディの三人は、たまたま同じ時間に起き合わせ、一緒に一階へと降りてきていた。
はじめは日光による錯覚かと思ったが、よくよく見ると部屋においてある家具、窓、壁にいたるまで、見事に磨き上げられている。
手入れの方法も完璧で、クリームで保護された皮のソファは美しい光沢を放ち、壁紙は傷一つ付けられることなく油煙が拭き取られていた。
気配を感じ取ったのか、キッチンからエプロンドレスを身につけたアロネが出て来る。

「おはようございます、ロイド様。今朝は良い天気ですわね。」
「おはよう、アロネ。」
「アロネのお嬢さんが、コイツを?」
「ええ。宿を提供してくださった、せめてものお礼ですわ。」

その後ろから、ティオも顔を覗かせる。ロイドが彼女を見つけると、いきなり睨みつけられた。

「お、おはよう、ティオ。な、何か?」
「いえ…。おはようございます。朝食はもう出来てますので、座って待っててください。」
「おう!キー坊、手あらってこようぜ。」
「はーい。」

セルゲイは既に出かけているようだった。テーブルに料理が並び終わる頃に、エリィが起きてくる。

「よお、お嬢。珍しく遅いじゃねえか。」
「おはよう、皆。」
「エリィ、どうしたの?元気ない?」
「ありがとキーアちゃん。ちょっと寝すぎちゃったみたい。」

椅子から乗り出すキーアを、エリィが抱えるように優しく抱きしめる。そのままロイドの前に座るエリィに、彼は少し遅れて挨拶を送った。

「おはよう、エリィ。」
「…。」

エリィは口を開き、何かを言いかけたが言葉には出ず、返事の変わりに小さく首を傾けた。その様子にロイドが再び声をかけようとしたとき、アロネの腕が横から絡まってくる。

「ロイド様、今日のお仕事はいつまでかかるのかしら?」
「え、いつまでっていうか、仕事の量にもよるけど夜までかかるかな。」
「まあ。それなら、今のうちに沢山食べて、体力をつけませんと。」

アロネがグラタンをすくって、ロイドへ差し出す。

「ロイド様、あーん。」
「ちょ、まってくれ。そんなこと出来るわけないだろう!?」
「未来の予行練習ですわ。照れなくてもよろしいのですわよ?」
「予行練習って、だから昨日も言ったけどそんなつもりは…」
「ふふ、ロイド様ったら。お顔が真っ赤。」

相変わらず会話のかみ合って無い二人を正面に、しかしエリィには覇気が無い。ティオがその姿に、いつかの彼女を見ていた。

「ロイドおきゃくさまと、なにのれんしゅうしてるの?」
「ああ、そいつはだな、前言ってたパパとママっていうやつの」
「ランディさん舌に張り付くほどよく冷えたグラタン、食べたいですか?」
「ああなんてこった!たったいま忘れちまったよ。悪いなキー坊。」
「えー。」

4共に歩みぬく意志:2011/01/08(土) 00:33:17
銀器が食器を打ち、紅茶を注ぐ、それら朝食の音に機械音が割り込んでくる。

「っと。端末か。」
「新規の支援要請が着たようです。」
「そういえばまだ今朝は確認してなかったな。軽く見ておこう。」

しぶるアロネを定位置に戻し、ロイドが端末まで移動した。ランディがパンをむしりながら椅子の背中に顎を乗せる。

「どうだー、ロイド。今日の散歩コースは。」
「ああ、今見て…。」

言葉が途切れた。

「ん、でっかいヤマでも来たか?」
「いや、どうやら今日の帰りは相当遅くなりそうだ。緊急の要請が十件以上ある。」
「十件!?おいおい、とうとう二桁かよ。」

ランディとティオが席を立つ。続いて通信機も鳴り響いた。

「はい、特務支援課捜査官、ロイド・バニングスです。ああ、フランか。」
「こりゃたしかに遅くなるっつーか今日中におわんのか。」
「朝見たときにもすでに多めでしたけど、まさかここまで追加されるなんて。」

端末を囲む三人の中央で、ロイドが表情固く通信を続ける。案件を目で読みながら、何度も確認をしていた。

「住宅街のヘイワース家で最後だ。そうか、うん。解かった、何とか当たってみるよ。またあとで連絡する。」
「どういうこった。」
「昨日の夜のうちに、クロスベル中で盗難や器物破損等の小犯罪が発生したようだ。」
「こんなに一度に…。」
「被害状況で派遣する人員を決めるためにも、捜査の前哨として、簡単な聞き込みに協力してほしいらしい。
あまりゆっくりとはしていられないな。」

ロイドが時計を確認すると、素早く手帳に被害のあった場所を書き込んでいく。
すでに彼の顔つきは、今巷で噂の的となっている敏腕捜査官のそれとなっていた。

(昨日の事も、怒ってはくれないのね、ロイド。ただ真っ直ぐ前だけ見てる…。)

エリィは始終席についたまま、その姿を見つめる。こんな時、彼の頭の中が事件一色に染まることは、良く分かっていた。

(…今は、悩んでなんかいられない。しっかりしないと、彼を支えないと。)

エリィが姿勢を正し、食器を持つ手に力を込める。再び彼らが食卓を囲んだとき、長閑な雰囲気は消えていた。

「朝食が済んだらすぐに出かけよう。他の仕事もあるから、なるべく夕方前には一通り回っておきたい。
アロネは留守番をしててくれ。なるべく外出も控えて欲しい。」
「わかりましたわ。ロイド様。」

若輩ながらも堂々たる威風で頼まれ、アロネは快諾とともにその眼差しにため息を漏らす。
無茶を言うのでは、と懸念したロイドも、その了承に彼女が現状を理解しているということに安堵した。今この街のどこかに、既に「彼」が居る可能性もある。
一同は早々と朝食を済ませ、支度を終えると、玄関に集合した。

「ツァイト、アロネのことを頼んだぞ。キーア、いい子で待っててくれ。」
「ウォン。」
「うん。いい子で待ってる!」
「ロイド様、いってらっしゃいませ。」
「ああ。行こう、皆。」
「んじゃいってくらー。」

5共に歩みぬく意志:2011/01/08(土) 00:33:39
見送りを背に、四人は中央通りへと出た。ロイドが辺りを見渡しながら、もう一度時計を見る。

「分担を決めよう。ランディとティオは、被害のあった部屋や箇所をしらべてくれ。簡単な痕跡程度は伝えたいんだ。」
「ほいきた。ティオすけ、マヌケな忘れ物ごっそりせしめてやろうぜ。」
「了解しました。」
「エリィは聞き込みに立ち会って欲しい。気が付いたことがあったら質問をどんどん追加してくれ。」
「ええ。解かったわ。」

過剰に力んだエリィの声に、ロイドはまるで気付くそぶりを見せず、しかし若干の間を置いて通りを東へと歩きだした。

「この件数は只事じゃない。しっかり調べていこう。まずは東通りのアパルトメントからだ。」

捜査は順調に進んでいった。
ランディとティオは現場の怪しい箇所をざっと見て周り、靴跡などの痕跡を捜索し、聞き込みで得られた情報と照らし合わせながら要所を押さえていった。
質問の内容は被害にあった金品、時間、前後で出入りした人間だったが、エリィも良く気付いた点を述べ、より精密な情報を得て行った。

「二日連続でこの街の観光した気分だな。」

途中ランディがこぼしたのも無理はない。
調査は文字通りクロスベル中に及ぶことになり、終盤に近づいた頃にはすでに正午も半ばを過ぎていた。

「こうしてみると…どれも被害自体はたいしたことがありませんね。」
「窓が割られたりもしてたが、盗まれたものは衣類だの化粧品だの、日用品がほとんどだしな。これじゃまるでガキの悪戯だぜ。」
「犯行時間の推移から大体このルートでぐるりと街を回ってるな。同一犯の可能性は高い。」

手帳を覗き込みながら、四人はヘイワース家に到着した。

「ここが最後だな。」
「大丈夫かお嬢、ティオすけ。かなり歩き回ったけどよ。」
「ええ、なんとか…。」
「街道巡りよりは、いくらか楽です。」

呼び鈴を鳴らすと、ほどなく覗き口が開いた。
ロイド達の姿を一目確認すると、慌てたように鍵を開ける音が聞こえる。
やがて迎えてくれたのは、この家の主人、ハロルドだった。

「ようこそ、皆さん。さきほど警察の方から連絡があって、あなたたちが来てくださると聞いて、お待ちしてたんです。」
「こんにちは、ハロルドさん。早速ですが、いくつかお聞きしても良いでしょうか?」
「ええ、どうぞ!遠慮なく中へ入ってください。お茶も用意してありますからそちらで。」
「えっと、じゃあ遠慮なく。」

エリィとティオの疲れた表情をちらと見て、ロイドは甘えることにした。
奥の客間に通され、それぞれ席につくと、ハロルドのかけた声に、ソフィアとコリンも二階から降りてくる。

「ようこそ来てくださいました。」
「こんにちわー。」
「お邪魔してます。」

二人はハロルドの隣に座った。
聞けばこの家ではこじ開けられた鍵と窃盗のみの被害らしく、現場を聞き許可を得ると、ランディとティオは調査のために席を離れた。
一通り質問が終わり、ロイドが手帳に書き込んでいく様子を、ソフィアがどこか落ち着かない様子で見ている。
先日から散々似たような光景を目にしたせいもあってか、エリィは気になって仕方なかった。

6共に歩みぬく意志:2011/01/08(土) 00:33:52
「あの、ソフィアさん。ロイドが、何か?」
「え?」
「いえ…なにか、彼を気になさっていた様ですので。」

ロイドが顔をあげる。ソフィアがためらっていると、ハロルドが変わりに話しだした。

「実は、家内が夜明け近くに起きてきた時、庭の柵を越えていく人影を見たというのです。」
「人影ですか?」
「ええ、茶髪の若い男だったそうです。その姿が、言いにくいのですが…。ロイドさんとそっくりだったと言うのです。」
「え?」

ロイドが思わず間の抜けた声を出す。エリィもまさか彼の名前が出るとは思わず、またハロルドが冗談を言うような人間ではないだけに、耳を疑う。

「昨晩は良く晴れていたとはいえ夜ですから、髪の色も、顔の形もしっかり見たというわけでもなく、見間違いだとは思うのですが。
 声をかけようか迷ったほどだと言うので。」
「そ、そんなに。」
「私も、意識がはっきりしていないのだと、自分に言い聞かせましたけども…。でもどうか誤解なさらないで。」
「もちろん私たちはロイドさんを疑っているわけではありません。ただ、気にかかることは全てお話したほうが良いかと思って…。気を悪くしたのなら申し訳ない。」
「いえ、むしろ助かります。少しでも情報は多いほうが良いですから。」
「そういっていただけると。」

やがて調査の終了したランディ達と合流し、彼らは玄関でハロルドと握手を交わしていた。

「捜査のほう、頑張ってください。」
「ええ、必ずご期待に副えます。」
「ばいばい、おにいちゃんたち!」
「…お邪魔しました。」

敷地から通り道に出ると、ランディが最初に口を開く。

「で、ロイド。正直なところどうだんだ。」
「いや、俺が一番驚いたよ。まったく心当たりが…。」
「んー。怪しいな。たしかにここの奥さんは美人だからよ。」
「はぁ?」
「しかし夜這いの相手は選んだほうがいいぜ。それこそもっと当たり障りのない相手にな。」
「どうしてそうなるんだよ、ランディ!」

噴き出すランディにロイドがつっかかる。彼らがこんな冗談を言い合えるようになったのも、やはりあのIBCの夜が大きなきっかけとなっている。
このやりとりですら、今のエリィには眩しかった。

「ランディさん。先日の腹いせをしたくなる気持ちはわかりますけど…冗談を言っている場合ではないです。」
「はっはっは、やあ、悪い悪い。にしても変な話だな。ロイドを見かけたなんてよ。」
「ロイドさんが犯人だとしたら目撃者を残すなんて事はしないと思いますが。」
「いえてるな。密室トリックとか得意そうだ。」
「あのなあ。一応信用してもらってるって思ってもいいのか、それは。」
「当たり前よ、なあお嬢。」

話を振られ、エリィが思惑を語る。

「そうね。あの人達が嘘をつくとも思えないけど、見間違いだとしか…。」
「はは。ありがとう、エリィ。」
「べ、べつにお礼を言われる事でもないんじゃないかしら?」
「いや、やっぱりこういう時、信じてもらえるってのは嬉しいもんだよ。特にエリィには、さ。」
「え?」

いつも通りな予想外の言葉にエリィがたじろぐ。

7共に歩みぬく意志:2011/01/08(土) 00:34:06
「だってそうだろう?俺と、君の故郷なんだ。そんな大事な場所を穢すやつだなんて、思われたくないよ。」
「ロイド…。」
「おーおー。すっかり蚊帳の外だ。」
「…ですね。」
「ああいや。もちろん二人を別扱いしてるわけじゃないよ!」

あわててロイドが手帳をしまい、中央へと向き直る。

「とりあえず一度、報告に戻ろう。まだ残りの仕事もあるしな。」
(相変わらずごまかすのがヘッタクソだな。)
(露骨すぎます。)

やがて本部からの人員の派遣により、被害のあった家庭の本格的な捜査が開始された。いたるところに捜査官がたむろし、街は騒然となる。
ヘイワース家の証言も、どこから流れたのか一部で噂となるが、ロイド達はそれに気付くこともなく、市外にも及ぶ残りの支援要請を片付けていった。

「ああ、ロイド様、皆さん。おかえりなさいまし。」
「ただいま、アロネ。」
「あー、帰ってきたぜ。」

夕食時もとうに過ぎたころに、ようやく支援課に戻ると、テーブルに座っていたアロネがいそいそと駆け寄ってくる。

「キーアちゃんはお部屋でねんねしてます。あの子、本当に可愛らしいのね。おかげで退屈しませんでしたわ。」
「留守番ありがとう。ツァイトは屋上か。」
「ええ。皆様、もう食事は済ませましたの?」
「そういや喰う暇もなかったな。」
「バスの最終便も近かったですしね。」
「ちょうど良かった。簡単なものですけど用意しましたから、お持ちいたしますわね。」

ほどなく暖かいスープとパンが食卓に並び、遅めの夕飯を取ると、それぞれの自由時間となった。
流石に疲れたのか、エリィとティオは洗い物を済ませると早々に部屋へ戻り、ランディとロイドも稽古を取りやめる。
分室のソファーで、二人はお互いの武器を交換し、手入れを始めた。
これはお互いの武器の特性を知る為にと、ロイドが提案した事であり、毎日欠かさず行っている事だった。

「改めて思うが、このトンファーってやつは万能だがリーチが短いな。ほとんど徒手空拳に近いんじゃねえか。」
「そうだな。でも懐に入れば、それなりに格上の相手でもなんとかなるもんだよ。まあ、入るまでが大変なんだけどね。」

お互いの得意武器を磨きながら、二人が会話を交わす。
アロネはその様子を、先ほどロイドから強引に剥ぎ取った、上着のほつれを直しながら眺めていた。

「フットワークの軽いお前にぴったりだな。調子が乗ってくるとたまにアホみたいなスピードになるのは、俺も初めて見るぜ。」
「あれは、自分でも良く分からないけど、なんだろう。全身が燃えるように熱くなって、気が付くと周囲の時間がゆっくりに感じるんだ。ランニング・ハイに似てるのかもしれない。」
「なるほどな。」

ランディが手に取ったトンファーで構えをとり、縦に横に薙ぐと、半回転させて正面を突いた。

「あまり無茶はするなよ、ロイド。」
「え?」
「お嬢がさらわれたときもそうだったが、あの時もなったんだろ。帰りの車の中じゃ死んだように眠ってたじゃねえか。」
「確かにいつもはめまい程度だったんだけど、急に眠気が来たな。」
「戦いのプロは、戦闘のオンとオフを自在に変えられるように訓練されてるもんだが、お前はまだ実戦経験も浅いんだ。その力は慣れるまで乱発するんじゃねえぞ。
特に気分の高揚もなしに使ったら、それこそ意識不明になりかねねえ。」
「そ、そんなに危険なものなのか?」
「ああ。おそらくお前のそれは先天的な力なんだろうがな。使いこなせるまでじっくり慣れてくんだ。いいな。」

研ぎ澄まされたナイフのようなランディの眼差しに、改めてその過去を垣間見る凄みを感じ取り、ロイドは無言で頷く。
そのあまりに真剣な表情を、ランディはしばらく睨み、急に歯を見せ笑った。

「ま、お兄さんの忠告はありがたく聞いておくもんだぜ?お前が今ぶったおれたら、最低でも十人ほど泣いちまうレディがいるんだからよ!」
「まあ、皆に心配はかけさせたくはないし。せいぜい気をつけるよ。」

8共に歩みぬく意志:2011/01/08(土) 00:34:18
背中を何度も叩かれ、態度のギャップに苦笑しながらロイドが応える。作業を終えたアロネが、その笑い声に誘われるようにこちらへきていた。

「さ、出来ましたわ。ロイド様、ランディさん、楽しそうに何のお話をしてましたの?」
「あー、野郎と野郎の野暮な話ってやつですよ!このあと歓楽街にでもくりださねえかっつー類の…」
「まあ、ロイド様。わたくしというものがありながら。」
「いや、してないからそんな話。」

談笑の後、ランディはロイドからハルバードを受け取り、二階へとあがっていった。ロイドがトンファーをしまいながら、残ったアロネに問いかける。

「…何をしてるんだ、アロネ。」
「うふふ。やっと二人っきりになったんですもの。夫婦のスキンシップの一環ですわ。」
「夫婦でもないしスキンシップもしないってば!」

膝の上に乗っかってくるアロネをかわしながらロイドは続けた。

「それよりも君に聞きたいことがあるんだ。シェバリエについてなんだけど。」
「例の脱獄犯の事ですわね。」
「ああ。プライド高いって言ってたけど、どういうことなんだ?」

ロイドの本職の声色に、しだれかかるのを諦めアロネがその隣に座りなおす。

「シェバリエというのは、私の家にいた時の名前ですわ。その姿ではおとなしくて掴みどころがなかったのですけど。
隻眼の発破工員としては、ピデロという名前でしたけど、彼については色々と問題があったのを聞いてるのです。」
「問題?」
「ええ。それはもう、異常なほどに。」

ピデロは火薬に関する知識が豊富で、優秀な工員だった。ただその言動がどれも鼻にかかるもので、仲間うちの評判はあまり良いものではなかったという。
ある日彼のヘルメットに水袋がしこまれていて、それを被ったピデロは驚き悲鳴をあげた。その様子を他の作業員がせせら笑う中、彼は実行犯を聞きだす。
名乗り上げた者につかみかかると、水瓶に頭を押し込み、あやうく溺死させるところだったという。

「これはほんの一例に過ぎませんけど、どこか子供じみた面があったようですわね。
自分の仕事に文句をつけられる事も嫌ってましたけど、相手にされた仕打ちをそのまま仕返さないと気がすまないようですわ。」
「なるほど。」

ロイドが顎に手を添える。なにかを探るように目を泳がせる彼に、しばしアロネも沈黙する。

「わかった、ありがとう。参考になったよ。」
「お役に立てて幸いですわ。それじゃあ…。」

顔をあげたロイドに、アロネが唇を差し出した。

「な、なんだい?」
「ご褒美を下さいまし。」
「ご褒美って…ちょっと待った!」

そのまま迫ってくるアロネを止め、ロイドが席を立つ。

「もう時間も時間だし、君の部屋まで送っていこう。それで勘弁してくれ。」
「むー。腕を組んでくださるなら妥協しますわ。」
「はは…ありがとう。」

差し出された手を戸惑いながらも優しく引き、ロイドはアロネをエスコートする。
女性の肌を何度も押し付けられては、ロイドの若さとしてはたまったものではないが、それよりも彼にはもっと重大な問題があった。

「なあ、アロネ。一度真面目に話しておきたいんだ。」
「なんですの?」
「君が言う、結婚の事なんだけど…」

三階に登ったところで、彼にしては精一杯の説得を開始するつもりだったが、場所が悪かった。窓の外を眺めていたエリィと出くわしてしまう。

9共に歩みぬく意志:2011/01/08(土) 00:34:33
「え、エリィ!?」
「ロイド…結婚って、何の話?」
「いや、違うんだ。今はその、彼女だけに伝える事があって…。」
「あら、わたくしだけに?じゃあ今からお部屋でたっぷりと聞かせて欲しいですわ。」
「たっぷり聞かせるような話じゃないよ!」

アロネは彼の慌てる姿を堪能し、満足したようにその腕から離れると、部屋のほうへと後ずさった。

「ふふ、じゃあ今度是非、お聞かせ願いますわ。わたくし、お先に失礼いたしますわね。ありがとう、ロイド様。」
「ああ、アロネも、いろいろありがとう。」
「エリィさんも、おやすみなさい。」
「おやすみなさい、アロネさん…。」

エリィに挨拶を告げながら、その側を素通りするときに、アロネが小さくつぶやく。

「あくまでフェアに、ですもの。今なら、二人きりになれますわよ?」

彼女はそのまま、自分の部屋の扉を開き、もう一度こちらに手を振ると、その向こうへと姿を納めた。
二人はしばらく黙りこむ。お互いの顔を見るのもためらうように、床や壁に視線を逃がしている。

「なあ、エリィ…。」

ロイドがおそるおそる声をかけると、エリィは返事をする変わりに、彼のほうへと頭を下げる。

「ロイド、ごめんなさい。」
「へ?」
「昨日の、その、デザート…。」

ぽつりとつぶやく言葉に、しかしロイドは顔を緩ませた。

「や、そんなことか。まったく気にしてないよ。結構いけたしね。」
「でも…。」
「俺にも原因があったわけだしな。でもなきゃ、エリィがデザートを失敗するなんて、まず無いよ。」

エリィは今日のロイドの言葉も思い出し、その胸に飛びつきそうになる。だが、何故かそれが出来ない空気が、彼にはあった。
アロネとの会話の事もあったが、何処と無く彼の仕草が自分を避けている気がする。腕を組んだロイドを見るのは、滅多に無いことだった。

「でも今日は大変だったな。あの数もさながら、まさか俺が目撃証言にあがるなんて。」
「そうね…。」

会話が続かない。エリィは言葉を紡ごうとすればするほど、絡まる鎖に心を縛られていき、そのもどかしさに張り裂けそうになった。
だんだんと重い空気を吸うのも辛くなり、涙をうっすらと浮かべてしまう。

「私、そろそろ寝るわね。ロイドも早く休んだほうがいいわ。」

逃げるようにノブに手を掛ける。彼女は今一刻もはやく、この息苦しさから開放されたかった。

「エリィ!」

突然の叫び声に、扉を開く手が止まる。振り向き見た彼の顔も、眉間がしわくちゃになっていた。
エリィは、こちらに手を伸ばしたまま、明らかに豹変した彼の態度に、思わず岩のように動けなくなる。

「どうしたの?」
「エリィ、俺は…」

10共に歩みぬく意志:2011/01/08(土) 00:34:45
ロイドがエリィの両肩に手を置く。久しく無かった彼の接近に、エリィは反射的に身をすくめてしまう。

「ろ、ロイド?」
「俺は、君の…君の料理、楽しみにしてるから。」
「え。」
「いや、君が次の当番の時、楽しみにしてるよって意味で…。君の料理を。」

やけに気合の入った剣幕のわりに、拍子抜けする事を言われ、しばしエリィはあっけにとられる。
ロイドも頑張った顔もそのままに、困惑の色を浮かべていた。

「ん…ロイド…えりなさぁい。」

声とともに、突き当りの扉を開き、キーアが隙間から顔をのぞかせる。眠そうに目を擦りながら、裸の足音を立てて、おぼつかなく歩いてきた。
慌てて二人してかけより、その身体を支えると、ロイドが彼女を抱き上げる。

「起こしちゃったか、悪いな、キーア。」
「ごめんね、キーアちゃん。」

目をしょぼつかせるキーアを、彼はあやす。エリィもその乱れた寝巻きを調え、優しく髪をなでた。
共にいつもの習慣故に自然と出た行動だったが、キーアを挟んだ姿に、エリィは以前セシルの暴想により三人が家族に仕立て上げられたのを思い出す。
愁眉の彼女に、ロイドは目を合わせ狼狽し、キーアを抱えなおす。

「じゃあ、俺はキーアと部屋に戻るよ。エリィも、おやすみ。」
「うん…おやすみなさい、ロイド。」

そうして彼は、まるで逃げるように二階へと退散していく。人気の無くなった廊下で、エリィはしばし呆けたように立ち尽くし、部屋へ入った。
矛盾だらけの彼の言動に戸惑いながらも、彼女はロイドが肩に残した感触を両手に抱きしめる。

(ロイド…本当は何を言うつもりだったの?)

彼がとっさにあつらえたのであろう不自然な行動が、彼女の脳裏に鮮明に残っていた。苦悶ともとれる表情がどこか痛々しい。
しかし彼女は、悲観に包まれながらも、どこか喜びを隠せずにいた。彼は、かつて自分を救いに来た時も、似たような表情をしていた。およそ想像のつかないほどに情けの無い顔である。
ロイドの見せた弱みが、エリィに決心を思い出させる。彼女もまた、自分自身に誓っていたのだった。温もりから痛みまで、全てを与えてくれた人に対する、ひとつの決意を。

開かれた瞳には、一等星の如き輝きがあった。

11名無しさんが妄想します:2011/01/08(土) 00:36:55
避難所は、私が一応作成しました。注意書きなど、不足してると思われる点は、指摘してくださるとありがたいです。
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/movie/2964/1294382964/

>>384 これは、私も思いつきました。
サイトだと、書き手と読み手の立場がはっきりと区別されてしまうので、この掲示板のような、誰でも意見し、誰もが好きなときに小説をばらまけるという、雰囲気は出来ないと思うのです。
私はこういった西部の酒場のような(嗜むものは、ちょっと大声でいえるものではないですがw)雰囲気が好きなので、ここで書こうと思った次第です。
さらに言えば、スレッドの活気の足しになればと思い、書き込みもあえて避難所ではなく、本スレに残したいのです。
ただ、その考えのせいで、代行で幾たびも手を煩わせているので、その点、問題があればお伝え下さい。サイトを立ち上げるかどうかは解かりませんが、別の手段を考えます。
読みにくいという点もありますが、そこは、ごめんなさい。

尚、ここまでの書き込みで、「共に歩みぬく」に関しては、終盤までのフラグがほとんど出尽くしています。
推理ものというにはあまりに稚拙な単純なものなので、結末を予想していただけると、嬉しいです。

12名無しさんが妄想します:2011/01/08(土) 00:38:13
以上です。
最初の、小説本文の題名を書き忘れました。出来れば名前の欄を「共に歩みぬく意志」に、書き直していただけるとありがたいです。

お願いします。

13名無しさんが妄想します:2011/01/08(土) 08:29:03
>>2
いってきます

14名無しさんが妄想します:2011/01/10(月) 02:20:32
>>13 確認しました、ありがとうございます。

15名無しさんが妄想します:2011/01/23(日) 21:15:56
続きをはやくー

16名無しさんが妄想します:2011/03/05(土) 21:13:49
保守

17名無しさんが妄想します:2011/04/06(水) 15:28:33
本スレ、容量いっぱいで書き込めなくなった…。

次スレたてようとしたけどレベル足りなくてダメだった…。

すまん、誰か頼む。

18名無しさんが妄想します:2011/04/07(木) 03:22:15
立てました

ファルコムでエロ小説PartⅦ
ttp://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1302114036/

19名無しさんが妄想します:2011/04/07(木) 18:00:27
>>18
ありがとう!

206-404:2011/05/02(月) 22:20:55
スレで書き込んで馴れ合いになってしまうといけないので、こっちでこそっと。
いつもレスしてくださる方、感想くださる方、ありがとう。感謝してます。

>>7-93
嬉しい事いってくれるじゃないの(*´∀`)
スパコミいけない悔しさが癒されたよありがとう。
でも次はランティオなんだ。エロに入るまでの前振りが長い……orz

>>7-95
嬉しい同意をありがとう。
なのにすまん、あ○るせくろすものは苦手……。

21名無しさんが妄想します:2011/05/09(月) 16:14:06
ご無沙汰しています。
遅ればせながら投稿再開させていただきます。
本スレに、メール欄はsageで以下の内容の書き込み代行をお願いします。

22共に歩みぬく意志:2011/05/09(月) 16:14:52
***

翌朝、アロネはやはり誰よりも早く起き、玄関で接客をしていた。挨拶をいくつか交わし、荷物を受け取る。

「じゃあ、私はこれで。」
「お疲れさまですわ。どうかおきをつけて。」

うやうやしくお辞儀をすると、配達員は帽子のつばに手をかけ礼を返した。後姿が消えた後、彼女は受け取った荷物を置き、一つ一つ手に取り確認する。

「結構いろんなところから来ますのね。あら、この小包…。」

それは小さな箱だった。簡単な包装が施してあり、宛名が添えてある。

「私宛ですけど、ヘンですわね…。」
「おはようございます。」

アロネが振り返ると、エリィが立っていた。その顔はどこか晴れやかで、装いも瑞々しく整っている。

「おはよう、エリィさん。今日はお早いのね。」
「ええ。何度も寝坊してたら、ティオちゃん達に心配かけるもの。あ、それ、受け取ってくれたのね?」
「ついさきほどいらしたの。」

アロネが包みの紐を解いていく。

「その小包も?」
「ええ。わたくし宛なのですけど、どなたからか書いてないの。おおよそお父様でしょう。」

なるほどと声無く頷いたエリィだが、妙な違和感を感じた。
あの手紙を思いだす。

「ふふ、それにしても、あんなにお疲れの様子だったのにそんなに元気になるなんて。一体ロイド様にどんな励ましを受けたのかしら?」

彼女は心ここにあらずといった手つきで、出て来た木箱を取り出し、なんのためらいもなくその蓋に手を掛けた。

「アロネさん、だめっ!」
「え?」

突然の大声に驚きながらも、アロネの手はすでに贈り物を開いていた。小箱から火柱が上り、無防備な彼女に襲い掛かると同時に、エリィが飛びつく。

「きゃあっ!」

立ち上った炎は火の粉をまきちらし、アロネに抱きかかったエリィの肩をかすめる。
二人して横転したが、不思議とアロネに痛みは無かった。エリィの腕が、しっかりとアロネの頭に敷かれていた。
火はしばし空を舐め、徐々に縮んでいき、木箱の縁に留まった。二人はやおら身を起こし、呆然とその様子を眺める。

「これは…なんで、こんな?」

退かず熱波を浴びていた場合を想像し、アロネが身を震わせる。エリィがその肩を強く抱き、背を撫で、席に着かせる。
布巾で火を払いのけ、くすぶった箱を覗くと、赤燐の香りが鼻をついた。
アロネの隣に腰掛け、もう一度両手を添える。

「どうして、解かりましたの?」

彼女も流石にしたたかだった。すでに声には落ち着きが戻っている。

「以前似たような虚偽の手紙を受け取ったの。そもそもあなたにここの住所を教えてないもの。誰からも届きようがないわ。」
「じゃあ何故…」

23共に歩みぬく意志:2011/05/09(月) 16:15:16
アロネが襟首を硬く握り締めた。

「咄嗟にわたくしを助けてくださったの?貴女を、意地の悪い言葉で惑わしたこのわたくしを…。
身を裂くほど苦しんだはずですわ。心が衰弱なさってたもの。」
「こういう仕事だから、私情を挟んでは、勤まらないわ。それに…ふふ。やっぱりあなたが、ロイドの言った通りだから、かな。」
「ロイド様の?」

エリィが、アロネの腕を優しく掴み、諭すように続ける。

「確かに色々考えちゃったけど、あなたはそんな私に時々、悲しそうな眼を向けていたもの。お互い様なんじゃないかしら?」
「…。」
「あと、私とロイドのことだけど…今の立場としてはあなたとあまり変わらないみたい。確実に言える事は、私が彼を好きって事だけ。」

何処か寂しげなはにかみに、アロネは鏡を見るようだった。
故郷を飛び出してからこっちの、彼女の活動源は全てロイドにあった。しかし立ちはだかる壁の高さに、表に出していないだけで、挫折の兆しがあったのも確かだった。
アロネに勝るとも劣らない気品を持つ女性が、その傍らにいたせいである。

「でもね、決めたの。ロイドの気持ちがどうあれ、私を何度も励ましてくれた彼を、いつまでも支えて行こうって。」
「エリィさん…。」
「もちろん、諦めてる訳ではないのよ?だから、改めてあなたの宣戦布告、受けさせてもらうわ。」

エリィの眼差しに、決意の深さを思い知らされる。アロネは、自分が好いた相手を、目の前の女性がこんなに等しく想っている事に、奇妙な感動を与えられた。

「相手にとって不足なし、ですわ。貸しが出来てしまいましたけど、手加減はしませんわよ?」
「望むところよ。」

アロネは居直ると、差し出された手をしっかりと握り迎える。

「ただ、一番の難敵はロイドかもしれないわね。昨日だって、逃げるように部屋に帰っちゃったし。」
「まあ。あんな夜中に、レディを一人で置いていくなんて。そういえばわたくしもご褒美をはぐらかされましたわね。」
「かとおもえば、遠い国からお嬢様を連れてきて、困ったものね。」
「貴女のうしろにもあと何人控えてるのかしら。考えたくもないですわ。」

そして、まるで旧知の仲のような笑顔を交わした。

「ふあーあ。なんだあ、ドタバタ音がしてたけどよ。…何かあったのか?」

間の抜けた声とともに降りてきたランディが、机の上から黒い煙を立てる箱を見て、声のトーンを落とす。
エリィとアロネが事情を説明すると、ランディによりすぐさまロイドとティオも起こされ、メンバーは客間に集合していた。

「肉親すら知らない場所に届いた、アロネ宛の贈り物、か。」
「これはもう…。」
「ああ。どうやら来たみてえだな。」

言葉と目配せで互いに確信を得た。

「しかしなにか?そいつはこんな嫌がらせするために、クロスベルにまでわざわざおこしいただいたってわけかよ。」
「彼の本職を考えると、穏やかなほうなんだけど…。」

通信機が鳴る。ロイドがそれを取ると、端末も鳴った。デジャブのような光景に、嫌な予感に纏わりつかれ、一同は端末に群がった。

「やっぱりですか…。」
「おいおい、今度はこっちの件かよ…やれやれだぜ。」
「ああ、解かった。ああ。フランも、あまり無理しないでくれよ。じゃあ。…また忙しくなりそうだな。」

先日とほぼ同数同内容の、端末にうつされた依頼を、ロイドがメモにとっていく。

24共に歩みぬく意志:2011/05/09(月) 16:15:37
「にしても、これでお嬢さんの居場所も丸解かりだったってことだな。さすがに一人にしておくのは、ヤバイんじゃないか?」
「そうですね…この贈り物も、警告の意味だとしたら、ターゲットはロイドさんだけではなさそうです。」
「ああ。でもアロネ、君はたぶん今更故郷に戻れって言っても…。」
「あら、帰りませんわよ、私。この程度の脅しに屈していては、パスキューブ家の名折れ。今回は少し油断していましたけど、相手の出方がはっきりわかった今、遅れは取りませんわ。」
「こりゃテコでも動かなさそうだな。」

ランディがお手上げだとばかり笑った。諦めたようにロイドが肩を落とし、手帳をしまうと、アロネに向き直った。

「解かった。でも、そうだとしても、君には安全な場所に居て欲しい。少なくとも今まで見たいに、ここで留守を任せるわけにはいかないよ。」
「あ、だったら、いい提案があるわよ。」

エリィが間に入り、アロネの背に手を回す。

「彼女にも、私たちの調査に一緒についてきてもらえば良いのよ。」
「え?」
「ほう。なるほどな、それなら確かに護衛しつつ、調査も出来るな。」
「伯仲堂々仕掛けてくることもないでしょうし…それは、良いかもしれません。」
「ね、いいでしょ?ロイド。」

エリィが、意気揚々とロイドにせがむ。こういった押しには慣れているはずのロイドだが、提案した人間のせいなのか、僅かに眉をひそめただけで、反論は出来なかった。
そも理にかなっているのも、もちろんその理由だが。

「よし、解かった。アロネ、一緒にいこう。エリィと一緒に、被害者の証言を噛み砕いて欲しい。観点を増やせば、気づくことも多いはずだ。」
「嬉しいですわ、皆様の役に立てるよう、頑張ります。エリィさん、ありがとう。」
「ふふ、良かったわ。あなたのことだもの、そろそろ放っておいてもついてきてそうだったけどね。」
「あら、そんなこと…大いにありましてよ。」

二人は手を取り微笑み合う。意外な雰囲気に三人は少し驚いたが、邪気の無い様子に、見合わせた顔は安心していた。

「よし、時間も惜しいし、早速調査に向かおう。」
「おいおいロイド、とりあえずは朝メシ食おうぜ!」
「あ、そうか…まだだったっけ。」
「頼むぜリーダー!」
「おなかが空いていては戦はできません。」
「今日は俺が当番だったな。まっててくれ、すぐ作るから。」

ロイドが架けてあるエプロンを手にとると、エリィとアロネの手が左右から伸び、支度を整えた。

「私たちも手伝うわ。ロイド。」
「ロイド様のお料理する姿も、見たいですわ。」
「あ、ああ。頼むよ。」
「なんだか学生時代を思い出すわね。家庭科の授業は大好きだったもの。皆で作る料理は、楽しかったわ。」
「わたくしも、家で家事を習ったのが懐かしいですわ。メイドや友人を招いてそれは賑やかに。」

出遅れたロイドが、キッチンにかけていく助っ人を見ながら、頬をかく。

「知らないうちに、すっかり仲良くなっちまったな。」
「実は気が合うのではないですか。共通点も多そうです。色々と。」
「そうだな。」
「ウォン!」

三人が振り返ると、いつの間にか起きてきたツァイトが、エサ入れの前に待機していた。

***

旧市街の廃屋は、ほぼ民間に委託されていることもあってか、何処も管理が甘い。だから今のように、侵入者が屋上で双眼鏡を手にしていたとしても、さして特別な事ではなかった。

『はーあ、仕事の量によって特別手当でも出ないもんかね。』
『それで、ロイドさん。お話というのは、なんでしょう?』

25共に歩みぬく意志:2011/05/09(月) 16:16:47
イヤホンを付けた侵入者の耳から、小さく会話が漏れている。

『ああ、これまでの事件について、一度整頓しておこうと思ってね。エリィ、アロネは?』
『キーアちゃんと、部屋に居るわ。』
『わかった。じゃあ皆、とりあえずこの手帳を見てくれ。』

双眼鏡が、暗がりに浮かび上がる、特務支援課分室の窓に向けられた。
ロイドの手帳を四人の頭が囲んでいる。

『洗剤、衣類、大量のマッチに化粧品…っかー、何度みてもチマチマスってんなあ。』
『ケチな泥棒ですね。』
『犯人の目論見は別にある。俺達をひっかきまわして、疲弊するのを待ってるんだ。ここ一番の仕掛けは、とってある可能性が高い。』

ロイドが頁をめくる。
くっくと、と暗がりに笑みが響く。双眼鏡を下ろすと、尚も耳に流れてくる会話を拾いながら、おもむろに彼は右目に手を伸ばした。

「ああ、そうだね…マニーニ。肩透かしをくらった気分だよ。正直、ガッカリだね。」

誰に向けるでもなく放たれた言葉は、愉快そうに続いた。
さらにロイドは頁をめくっていく。

『それにしても、ずいぶん目立ちましたね。噂が。』
『ああ。目撃証言も、だんだんと色濃くなってきたぜ。ロイド、お前双子の兄弟とかいたんじゃないのか?』
『いや、俺には兄貴が一人だけだよ。なんだよ、もしかして疑ってるのか?』
『ちげーって、でも流石に火の無いところになんとやらってやつだろ?』
『疑うのも、私たちの仕事ですので。』

「あんな男に、君の恋人は殺されたんだ。そう思うと、僕も悲しいよ。ああ、悲しいさ、だけどもうすぐ。もうすぐあの男に、同じ、まったく同じ苦しみを、たっぷり味わってもらえるよ。」

『おいおい、頼むよ。エリィも、何とか言ってくれ。』
『…私はもちろんロイドを信じてるわ。でも、こんなに噂の頻度が多いと…何も言えない。』
『え、エリィ…。』

「そう、たっぷりとね。たっぷりと…。」

侵入者の笑い声は、夕闇に煙のように四散し、魔都を冠する街に相応しい演出を与えた。
満足そうにイヤホンを外すと、手袋をしめなおし、立ち上がる。

「だから今日も、僕を支えておくれ。愛しいマニーニ。彼の分まで僕が、君を幸せにするから。」

手にしていた懐中電灯を消すと、彼の姿は街並が織り成す黒の凹凸に混じり、消失した。

***

「こいつはいったいどういうことだ?今日で四日目だぜ。」
「小規模なテロのような件数になってきてますね。しかも、例の噂はもう、街中の話題です。」
「アロネのお嬢さんの件もあるってのに。ったく、こんなツラじゃとうぶん“潤いちゃん”と遊べねえな。」

特務支援課の朝は、いつもと違っていた。深夜に及ぶ仕事が続いたせいか、全員目がくぼみ、黒ずんでいる。

「何でこうも俺達ばっかり引っ掻き回されなきゃならんのかね。とんだとばっちりだぜ。」
「ランディ…。」
「あ…わり。今のナシな。」
「いや、言ってることは間違ってないけどさ…。それについては悪く思ってるよ。原因は俺にあるのは確かなんだし。」
「…。」

日ごと傾き続ける雰囲気に、キーアもいつもの元気はなく、まるで暗がりに押し込まれたように身をすくめている。

26共に歩みぬく意志:2011/05/09(月) 16:17:10
「まあ仮に、ロイドの悪戯だとしたら、クロスベル一タフな男…タイムズの記事も間違っちゃいないな。警察と怪盗の二役を見事に、ってよ。」
「どういう意味だ?」
「あ?いや、だとしたら不眠不休で、タフな上に役者だろって話で。」
「どこまで本気なんだって聞いてるんだ。」
「おいおい…おいおい!何ムキになってんだ。冗談だよ冗談。」
「冗談でも時と場合を考えてくれよ。笑えないよ。」
「ちょっと待て、そんな時と場合の原因はロイド、お前がひっぱってきたんじゃないのかよ。何イラついてんだよ。」
「大体俺は毎晩キーアと一緒なんだ。仮もなにもないじゃないか。」

男二人の鋭い応酬に、一同が静まり返る。
ただならぬ雰囲気にオロオロするアロネの正面で、キーアがおそるおそる口をひらいた。

「で、でも…。」

キーアがロイドのほうを見上げる。

「どうしました?キーア。」
「ロイド、いつも夜になると、ベッドからおりてどこかにいってたよ…?」

はっと、ロイドが顔を上げる。ランディが鋭利な瞳をロイドに突きつけた。

「聞き捨てならねえな。説明してもらおうか。リーダーさんよ。」
「どういうことなの?ロイド。」
「いや、それは違うんだ。それは…。」
「み、みなさん、どうか落ち着いて。ロイド様があんな姑息で卑劣な事をするはずありませんわ。そうでしょう?」

一触即発の気配を感じ、必死になだめるアロネ。ランディの肩を抑え、彼を座らせると、玄関の扉が開く。

「どうもー。郵便です。」
「あ、ありがとうございます。いつもお疲れ様ですわ。」

アロネが足早に駆け寄ると、静まったテーブルをやや背伸びして眺め、配達員は小声で問う。

「なんかあったんですか?いつもあんなに愉快な皆さんが。」
「いえ、どうかお気になさらないで。」

郵便を受けとると、心配そうにこちらを見返しながら、配達員は去っていった。アロネがテーブルに戻ると、かろうじて仕事の話に戻っている。

「さて今日も退屈な朝礼を聞く代わりに、特大のトラックを一周するわけだ。調査にはいくけどよ、あんまり被害がひどいようなら、考えもんだぜ。」
「この調子なら、いずれ予想外の答えが見つかりそうですね。」
「ああ、好きにしてくれ。俺自身が一番よくわかってるんだ。何も問題なんて無いよ。」

一度濁った雰囲気は、食事が済んでも、そのままだった。アロネは、だんまりと決め込んだエリィと共にその様子を見守る他無かった。
ランディが上着を羽織り、靴紐を直しながらあくびをする。ティオも早々に玄関を出て、背中を向けたまま待機していた。
キーアが不安そうにしがみつくツァイトの尻尾は、ぴくりとも動かず、ロイド達のしかめた顔をじっと見つめている。

「いってらっしゃい。」
「いってきますわ。」
「お留守番、お願いね。」

つぶやくような見送りの声に振り返ったのは、最後尾のアロネとエリィだけだった。
お互いの距離も離れたままに、中央へと向かう階段を上っていく。ついに上りきるまで、誰も口をきかず、目も合わせなかった。

「さて、お好きな方角はどちらですか、リーダー殿。」
「…今回はとうとう傷害に至った所がある。そこに最初に行こう。」

うやうやしくたずねるランディに、顔色一つ変えず、ロイドが手帳を開いた。

27名無しさんが妄想します:2011/05/09(月) 16:17:42
ご無沙汰しています。
ずいぶんと長く間を空けてしまい申し訳ありません。
またよろしくしてあげてください。

28名無しさんが妄想します:2011/05/09(月) 16:19:27
以上です。よろしくお願いいたします。

Kメンテさんの新作期待しつつ、続きを推敲します。
今週中に事件解決までアップする予定です。

29名無しさんが妄想します:2011/05/09(月) 23:46:59
待ってました!
早速いってきます

30名無しさんが妄想します:2011/05/10(火) 12:01:40
連日お騒がせいたしますが、代行お願いいたします。
本スレに、メール欄はsageで以下の内容の書き込み代行をお願いします。

31共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:02:22
***

クロスベル警察の会議室には、冷めたコーヒーが二つ並び、椅子に座ったままのけぞるドノバンと、机につっぷしたままいびきを立てるその部下レイモンドが、つかのまの休息をとっていた。

「ったく、こういう肝心なときに一課の連中ときたら、そろいもそろって共和国の観光とはいい気なもんだぜ。」

ドノバンがぼやきながら身体を起こし、たばこをくわえる。

「ん。ん。ん!クソッたれ、安物はすぐこうだ。おい、レイモンド。起きろ。休憩時間終わるぞ。」
「ううーん、あと五分…。」

彼はレイモンドの肩をゆすりながら、鳴った携帯通信機を取り出し応じた。

「はいよ、こちら二課のドノバン…なんだお前か。どうした。ああ。おう。
最近その噂しか聞かねえからな…何?本気かおい、ちょっとまて!くそ、切りやがった。」
「おおお、ゆれる、世界がゆれる…」
「いつまで寝ぼけてんだ、さっさと起きろ!」

椅子を蹴り飛ばされ、レイモンドが跳ね起きる。
しぼんだ目をこすり、だらしなく口を開ける彼に呆れながら、再びドノバンがたばこをくわえた。

「なんか、誰かと話してましたか。ドノバンさん。」
「ああ、セルゲイとな。話すだけ話してさっさと切りやがった。」

ドノバンが何度もライターを鳴らす。空の女神が彫ってあるそれは、血管が硬く浮き出た拳の中、火花だけをむなしく散らした。

「セルゲイさんかー。そういえば言ってましたね。ライターが言うこと聞かない時は、オイル切れ疑う前に、自分の頭冷やせって。」
「ああ?俺が焦れてるってのかよ…。今回の事件といい、あの野郎どういうつもりなんだ。」

とうとう火をあきらめ、ドノバンがたたばこを噛み締め、席を立った。

「いくぞレイモンド。逮捕令状の申請せにゃならん。」
「犯人見つかったんですか?」
「頭にくるぜ、噂に食いつくだけなら、なんのための警察なんだよ。」
「あ、ちょっと、待ってくださいよ!」

二人が上着を手に取り、部屋を出て行く。
廊下を足早にあるくドノバンに、レイモンドは様々に問いかけるが、彼は黙ったままエレベーターの前まで足を運び、止まった。
扉を開けると、レイモンドに向き直る。

「お前は先に出て車を用意しとけ。すぐに出れるようにな。」
「解かりました。あ、でも俺の車今フロントこすられて不細工になってるから、ドノバンさんの車借りたいなあなんてって、ドノバンさん?」

エレベーターの扉が閉まる音とともに、既にドノバンの姿は無い。

「はあ…修理さっさと出しておくんだったなあ。」

受付のレベッカに投げキッスをするも無視され、しかしそれも気にする風もなく肩をすくめると、彼は駐車場へと足を運んだ。
自分の車の正面に立ち、腕を組んで眺める。

「女の子の知り合いに見られなきゃいいんだけどね。」

ほどなく、本署からドノバンが令状を手に出て来ると、正面に止まっていた車のライトが点滅した。
乱暴にドアを開け、身体を放り込むように彼が乗り込むと、車が大きく傾ぐ。

「ドノバンさんもうちょっと優しく乗ってあげてくださいよ。ただでさえ『彼女』、不機嫌なんですから。」
「悪いが俺は上に乗せるほうが好きでな。東通りに行け。」
「はいよ。」

32共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:02:34
ぬける通り全てに、警官がたむろしており、こちらの姿をみると敬礼を送ってきた。
ハンドルを操作しながら、ドノバンの広げる令状を、レイモンドが細かく横目を送る。
大きく綴られた名前が目についた。

「へ?ロイド・バニングス?」
「馬鹿野郎、前みて運転しろ。ほれ、そこにつけろ、降りるぞ。」

車を降り、旧市街に向かうドノバンを追う途中も、レイモンドは信じられないといった表情で何度も額に手をあてていた。
鉄橋を渡り、広場を抜けると、ナインヴァリの前にセルゲイが立っている。

「おう、来たか。」
「ああ。やっこさんは?」

顎で示され、店内に入る。
小さな窓から差す光に塵がきらめき、うなる換気扇の影がはためいた。寿命の近い電灯のせいで薄暗い室内に、淀んだ空気が蔓延している。
そんな中、特務支援課のメンバーは向く方向も様々にたむろしていた。

「お役目ご苦労様です。」
「ロイド…。」

不安そうなエリィの視線を浴びながら、椅子に力なく座っていたロイドが、表から入ってきたドノバン達を見て立ち上がり、敬礼する。
奥で壁と対面していたランディが、砂を噛んだような横顔を見せた。

「敬礼してくる相手に仕事するってのも変な気分だな。」
「…。」
「罪状は窃盗、器物破損、傷害…およびテロ未遂、か。話じゃ爆弾を盗んだらしいな。」
「爆弾!?」

レイモンドが素っ頓狂な声を上げる。
びくりと、エリィに背中を支えられたアロネが肩をすくめた。うつむいた顔はすっかり青ざめている。

「な、なんだってそんなものを?いや、まだキミだって決まったわけじゃ無いけど。」
「なあロイド、本当にお前なのか?俺はどうも腑に…。」
「さっさと連れて行け。」

ドアの脇に背を預けたセルゲイが促した。

「いつからうちの署は現地取調べの形式になったんだ。仕事は素早く、だろう。」
「ああ。そうだな。」

すでにドノバンは逮捕状を受け取る際、副所長から詳細は聞かされていた。その際、キツネの機嫌が良かったのも気のせいではなかっただろう。
彼は大きく肩で息をつき、ロイドの肩を叩くと、レイモンドがおそるおそる出した手錠を、目で制した。

「こいつにはそんなもん要らんだろう。車に乗せろ。」

ロイドが出口をくぐる。一瞥もくれずに、セルゲイはたばこを咥えた。
ドノバンは深く息を吐くと、頭を掻いた。

「冷淡なもんだな。それも班長としての心得の一つってわけか。」
「何がだ。」
「部下パクって何がだは無いだろう。」
「フ…別れを惜しむ女のようにむせび泣いたほうが良かったか?」

33共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:02:55
アロネが面をあげ、きっとセルゲイを睨む。

「あんまりではありませんこと?」
「ん?」
「わたくしあなたの事を誤解していました。素っ気無いそぶりの中に、部下思いの一面を垣間見たのは、幻覚だったようですわね!皆様もよ。仲間なのではなくて?」

彼女はランディ、ティオに視線を移した。

「俺もあいつがガキを殴るとは思えねえが…何か隠してるのは確かだ。信用はできねえ。」
「私情は挟めません。」
「そんな…。」

奥から咳払いが聞こえる。暗がりに灯る赤い点を中心に、顔の輪郭が浮かび上がった。店主のアシュリーだ。

「アタシとしても腑に落ちないね。」
「アシュリーさん…。」
「あの坊やが本気でこんなことするとでも思ってるのかい?モノも出てない、裏も取れてない。ずいぶんと手際が良すぎるじゃないか。」
「変わりもんだな。娘を殴った相手の肩を持つのか?」
「この商売はね、剣で肉を切られたときの痛みも、銃で撃たれる熱さもしっとかないとダメなんだよ。
あの子にとっては良い勉強になったろうよ。」

白黒きっちりつけな。彼女の瞳が語っていた。セルゲイは片方の口角を吊り上げ、低く笑う。

「血は争えんな。逮捕されて尚、ここまで女に心配されれば、あいつも本望だろう。火あるか?」

セルゲイが内ポケットをまさぐりながらたずねる。
ドノバンは自分のガスライターを差し出したが、納得の行かない表情もそのままに吐き出す。

「安モンだ。付きが悪い。」

その言葉が終わらないうちに、セルゲイの手の中で一度だけ鳴り、ライターは火を噴いた。
タバコに移し、彼は深く煙を吸い込む。

「仲が悪いようだな。安モンなら貰っても構わんだろう。」

そういい残し、店を後にする。外で様子を覗いていたレイモンドが飛びのいて道をあけると、表に出たドノバンもその後姿を見送った。

「さすがに動揺を隠すのが上手いっすねー。まったく落ち着いてるように見えますよ。」
「いや…。冷静すぎる。」
「へ?」

ドノバンは早々に車に乗り込む。
頭に疑問符を浮かべながら、レイモンドは何度もセルゲイに向き直りながら、後に続いた。

「出せ。」

何か言おうとした彼を制するように、ドノバンは告げた。
エンジンが鳴り、景色が動き出す。ロイドは後部座席の左側に体を預け、窓の外を見ていた。
バックミラーの向こう、ナインヴァリの外に、アロネとエリィの姿を捉える。

沈黙が時間を泥に浸し、車は本部へと向かっていく。
静かに冷たい風が吹く、旧市街を残して。

34共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:03:11
***

「ロイド・バニングス逮捕。」

号外は風に乗り、噂は、動揺、悲嘆、裏切りへの罵倒、あるいは犯人の擁護へと姿を変え街を伝播する。
英雄の住処は、家宅捜索の現場へと姿を変え、多くの捜査官がたむろしていた。

「支援課のメンバーも薄情なもんだな。こんなときに犬の散歩とは。」
「女性二人はどうした?」
「ああ。三階の部屋にいる。」

捜査官同士の会話は、どこか緊張感が欠いている。
クロスベルの警察は、人員不足、そして立て続けの窃盗事件の捜査により、重いスケジュールをこなしてきていた。
それは彼らの、捜査のプロフェッショナルとして、最も重要なものにダメージを与えている。
セルゲイも例外ではない。そのはずだった。

「キーア。」

キーアはソファーに小さく足をたたみ腰掛けていた。セルゲイの声に顔をあげる。

「かちょー、ロイドは?」
「本部に“務めてる”さ。妙な形だが、ヤツの願いは叶ったな。」
「…。」
「フフ、お前もたいしたもんだな。落ち着いている。」
「だって。」

キーアは丸い瞳をぱちりと瞬かせ、セルゲイを見つめる。

「かちょー、いつもどおりだもん。」

「ほんと。まるで何事も無い日常のような振る舞い。信じられませんわ!」

アロネがつぶやく。エリィは手にした銃を丁寧に磨いている。
セルゲイとキーアのやりとりの少し前の事、彼女達は様々な思惑の行きかう街、そしてお互いの懐疑の念から逃れるようにして、エリィの部屋に待機していた。

「ほんとにもう。エリィさん、何とかなりませんの?」
「大丈夫よ、アロネさん。」

手入れを済ませ、エリィは銃を収めた。

「彼なら大丈夫。ロイドなら。」
「…そうね。そうですわ。」

エリィとアロネは、互いの感情を代行し、昇華していた。エリィの慰めはアロネの言葉でもあり、アロネの憤慨はエリィの動揺でもあった。
何がそこまでの同調をもたらしたのかは、語るまでも無い。

「エリィさんは、いつからロイド様の事を?」

エリィの隣に腰掛け、アロネは問いかける。

「その前に、アロネさん。貴女は自分の言葉に責任をもつべきだわ。」
「わたくしの言葉?」
「呼び方、よ。私も貴女の事、気さくに呼びたい。」

あ、と言葉には出さず、アロネは小さく笑うと、言葉を改めた。

「聞かせて、エリィ。」

エリィは微笑み、答えた。

35共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:03:27
「解からないの。」
「え?」
「不思議だけど、私自身、その瞬間も、変化の過程も、これといって無いのよ。自覚したのはつい最近なのかもしれないけど。
知り合ってから、まだそんなに経ってないのに、そのずっと前から、彼のことが好きだった錯角に陥るの。」

恋に恋をする人間は、遥か遠くを見つめるという。恋人の向こうにいる、華々しい世界にいる自分を見るのだ。
しかしエリィの焦点は、机の上におかれたイヤリングに、しっかりと合っていた。
彼女はその一つを手にとり、慈しむ。

「もしかしたら、貴女の真っ直ぐな気持ちを見たから、純粋な気持ちを取り出せたのかもしれない。」
「私の、気持ち?」
「変な話だけど、ちょっぴり感動しちゃった。貴女みたいな素敵な人に、ロイドが好かれているって事に。」

窓から差す夕日が、エリィの背中を照らした。アロネはその眩しさに目を細める
胸を貫く感情は不安からくるものではなく、むしろすがすがしいものだった。

「私も…。」
「ん?」
「いいえ、ありがとうですわ。話してくれて。」

一年前の青年は、アロネにとってまさに英雄だった。その回想が走馬灯のようによぎる。
彼女を現実に戻したのは、乾いたノックの音だった。

「はーい。どなた?」
「郵便です。エリィさんに直接お渡しするようにと。」
「こんなときに、誰からかしら。」

彼女が扉をあけると、配達員が帽子のつばに手をかけ、お辞儀をする。
手には、首からかけられたサポーターに支えられた箱を抱えていた。

「ハンコをお願いできますか?」
「えっと、差出人は誰かしら?」
「ロイド・バニングス様です。」

アロネが思わず顔を上げる。エリィが一瞬気を取られた瞬間、彼女は腕を背中に廻され、その首に果物ナイフを突き当てられていた。

「すいませんね。うら若き乙女の談笑をお邪魔しまして。」
「エリィ!」
「暴れ、騒ぎ立てれば…解かりますね?」

ナイフがきらめく。アロネはすくむ足で立つのがやっとだった。

「な、何者なの…。どうやってここ…まで。」
「お洒落をしてきたんです。その手にかけた銃でどうするというんです?妙な真似をしないほうがいいですよ。
私のもってきた荷物に引火でもしたら、この建物が花火にはや代わりです。」

銃を握るエリィの手が止まる。

「私が何者なのかは、式場で発表しましょう。差出人が来てからね。それまでに準備をしないといけません。
そこのお嬢さん、いえ、アロネお嬢様。エリィさんをガムテープで縛ってください。」
「やっぱり…やっぱり貴方は。」

配達員の顔が、帽子の下から現れる。歯を見せ笑う彼は、部屋を見渡した。
右側面を見るときだけ、同位置の眼球の動きがほんの一瞬遅れる。

「お二人は大事な来賓です。傷つけはしませんよ。全てはあの男次第です。これは式の、お祝いの品として頂きましょう。」

男はエリィの腰の銃に手をかけた。
彼女はとっさに背の部分を掴み抵抗したが、首の締め付けを強められ、奪取されてしまう。

36共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:03:40
「うぅ…。」
「さあ、急いでくださいアロネお嬢様。」
「エリィ…。」
「アロ…ネ…言うとおりに…して…」
「で、でも…」

ナイフが傾き、肉を撫でた。アロネは唇を噛み、ガムテープを手に取る。

(私に出来るのはここまで…ロイド、信じてるから。)

エリィの瞳の一等星は、輝きを失っていなかった。

そしてその輝きは、ソファからセルゲイを見つめるキーアの瞳にもあった。

「信じているのか。」
「うん。」

小さく、幼い彼女の、強い決心だった。セルゲイはキーアの頭を撫で、部屋を見渡す。
その時、彼の捜査官としての勘が、不自然な点を鮮明に掴んでいた。

「おい、お前。その制服は備品だな。」
「ええ。良く分かりましたね。」
「綺麗すぎる。丁寧にアイロンかける几帳面さは俺達には無いからな。」
「先日まではあったんですが、今朝の召集のとき無くなってたんですよ。おおかた誰かが間違えて持ってったと思ってたんですが。」

セルゲイは拳銃に手をかけ、階段を勢い良く駆け上がっていった。途中すれ違う捜査官を押しのけ、三階に登りきると、男は居た。

「どうも。郵便物を届けにあがったもので…」
「そいつらを放せ。逃げ場はないぞ。」

男はテープで縛り上げたエリィを前に立たせ、その背中に銃口を突きつけていた。
そしてアロネを抱え、やはりその首にナイフを突きつけている。
セルゲイが引き金に指をかけた。
彼の大声を聞きつけ、捜査官が三階へ登ってくる。

「貴方達が探しているものは、これですか?」

男は首からさげた箱に手をあてる。セルゲイは銃を構えたまま歯軋りした。

「ロイド・バニングスを呼んで来れ。早いほうが良い。あとの人間は全てこの建物を出払ってもらおう。私は式場で待っているよ。」

男は屋上へと進んでいく。
銃口を向けたまま、セルゲイは無線を手に取った。

***

ロイドは手の中の、警察バッジの深い傷を見つめた。

――チェック。俺の勝ちだな。

チェスの勝負は何度やっても勝てなかった。ある日その理由を問う。

――お前は攻めと守りのバランスが良い。速攻も得意だ。でも局面において相手の状況を見ていない。勝ちたければ俺を理解しろ。

キングを手の中で転がし、「彼」は続けた。

――どんな時でもそうだ。相手を理解しろ。想像じゃない。相手に関する情報全てから、理解し、予測して動け。そのために相手と立場を同じくするのもいい。

「これはちょっと洒落にならないかな、兄貴?」

37共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:04:13
留置所にけたたましい足音が響く。ロイドが顔をあげると、フランが息を切らせていた。

「ろ、ロイドさん!」

悲鳴に似た声に、彼はバッジをポケットに納める。
特務支援課周辺は厳重体制が敷かれ、導力車がひしめき、何人もの警察が配備されていた。
さらに動力車が追加され、助手席から飛び出した青年は、彼らの間を縫うように駆けた。

「課長!」
「ロイド、屋上だ!」

お互いを見つけるや否や、二人は叫んだ。
セルゲイがトンファーを放り投げる。ロイドはそれを両手で受け、ビルへ突入した。

「狙撃手、どうだ。…そうか。引き続き待機しろ。」
「ど、どうですか?」
「だめだ。人質の影に隠れていて狙えんそうだ。犯人はこの周辺の地形を調べ尽くしている。」

ドノバンが無線をしまい、舌打ちをした。

「ロイド…。」

しがみつくキーアを、セルゲイがもう一度撫でる。
龍のように階段を登り、屋上に飛び出したとき、ロイドを迎えたのは遮りのない星空だった。
そして手すりの側に、三人の姿はあった。

「よーうこそ晴れの式場へ!歓迎するよ、君ももちろん祝福してくれるよねぇ!」

ロイドは瞬時に構え、状況を把握した。
アロネを正面に構え、手にはナイフ。そして足元には口も塞がれたエリィが横たえられ、その頭に向けて彼女の銃が照準を合わせられている。

「どうだった、牢獄の生活は!会話の相手は狂人か、亡霊しか居ない。そうだろう。僕は友と引き裂かれ、孤独だったよ。得たものは屈辱だけだ!」
「やはり連続の窃盗の犯人は、あんただったんだな。」
「そうだ。とても楽だったよ。君の姿になれば、誰もが僕を信用した。雰囲気さえ似せればろくに顔も見られなかったよ。そしてそれは同時に、僕の怒りを増幅させた。」
「これは、復讐なのか。俺に対する。」
「そうだ。全ては、復讐だ!何もかもそっくりそのまま返す!君に殺された親友の為にね!」

男は、すでに演技も変装も引き剥がし、その本質を剥き出しにしていた。

「殺した?何の事だ。あんたの親友なんか知らないぞ。」
「しらばっくれるなぁ!君の手で獄中におちた私を、彼は身を挺して助けてくれたんだぞ。その命と引き換えに、愛する彼女を…マニーニを残して!」
「身を挺して?」

ロイドはアロネの話を思い出す。あの時、彼は確かに失っていたものがひとつだけあった。

「まさか…。」
「僕は誓った。必ずや復讐を遂げると。そしてその瞬間、僕は彼女と一つとなり、生涯守り抜くのだよ!」

男は、鼻腔から激しく息を吐き出しながら、荒波だつ呼吸を整えた。

「僕はね、僕は今まで人を殺したことなんて一度もないんだよ。ロイド。わかるかい?高尚なんだよ。それを君は踏みにじった。」
「爆弾を作る身にありながら、そんなことを良く言えるな。」
「しかし事実だよ。僕は組み立てただけだ。スイッチを押したのはどれも僕じゃない。だから、今回も僕の仕業じゃない。君だ。君が招いた状況なんだよ?」

38共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:04:25
おもむろに彼は、首からさげていた箱をつかみ、投げ捨てた。アロネが目を硬く閉じる。
箱は軽い音を立て、転がり、蓋と分かれた。

「クフ、クフフ、クフゥーン。自分の才能が怖いよ。空箱すらも爆弾にしてしまう。」

男はぎょろりと右目を剥いた。

「あの爆弾はある場所に設置してある。僕に何かあれば、即座に爆発する仕掛けだ。上司にも伝えた方が良いんじゃないか!」
「く…。二人を放せ。お前の狙いは俺だろう!」
「条件は一つだ。君の、死!飛び降りろロイド。そこからビルの下にむかってだ!」
「そんな!正気じゃ…ありませんわ、逆恨みではありませんの!」
「クフフフゥ!お嬢様はロイド様を愛しているのでしたな。そしてこの女も。良い、良い良い良い!尚良い!」

ロイドはゆっくりと構えを解いた。

「約束するんだ。俺が落ちたら、二人を解放すると。」
「クフフ、僕には高尚な理念がある。約束するよ。」

エリィは身をよじり、必死に首を振った。

「だめ、だめですわロイド様!こんな男の言い成りになっては!」
「わめくな!さあ、落ちろ!」

ロイドがゆっくりと後ずさる。男の笑い声は最高潮を迎えた。

「そうだ、失え。全てを失え。友を、名誉を。そして命をぉ!」

「誰が、何を失ったって?」

星空に声がこだまする。ロイドは足を止めた。
男が地上に目をやると、赤毛の男が手すりに腰掛けている。

「お前のシナリオじゃ、俺が爆発する役ってトコだな。ま、ゴメンだがよ。」
「ランディさん…!」
「ああー、そうか。君も私達を祝福しにきてくれたんだね。」
「おう。お祝いの品も持参したぜ?」

ランディが足元の包みを広げた。

「じゃーん。これなーんだ。」
「な…!」

それはバラバラにされた発火装置と、ナインヴァリから盗み出された爆薬だった。

「馬鹿な。僕以外、カバーすら外せないはずだ!」
「わるいねー。俺のガキの頃の玩具、積み木のかわりにずっとコレだったもんで。つい。」
「く、ど、どうやって。この広範囲を、この短時間で…。」
「ウチの課は、優秀な耳と鼻もそろってるんだな、これが。」
「部位で紹介しないで下さい。」

ティオとツァイトが、ランディの傍らに姿を現す。

「さすがにこの街全域は無理だったろうけども、どうやらお前の復讐相手はぜーんぶお見通しだったみたいだぜ。」
「何ぃ?!」

目を見開き、男はロイドを睨んだ。

39共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:06:33
「不審火の処理が終わって、警備が手薄になっていた。事件の起きたところに、再び何かあるとは思わないからな。
それにあんたはパスキューブ家に対するそれのように、貴族や議員といった身分に対しコンプレックスと恨みがある。
隣に共和国議員の邸宅があるのも合わせて、他に候補が思い当たらなかったんだ。」
「ぐ、ぐぐう…。嘘だ、君たちは、確かにバラバラに…。」
「バラバラだろうとぐにゃぐにゃだろうとなんでもなるぜ。リーダーの命令ならよ。」
「チームワークが売りですので…。」

男の歯が軋む。

「言っただろう、全部お見通しだってな。盗聴してたことも、覗き見してたことも、マッチでキャンプファイヤーしたのも、配達員に化けてちょくちょく来ては、様子見にきてたのもな。
だから一芝居うったのさ。」
「それを手帳越しにお願いされるとは思いませんでしたけどね。」
「くそっ、あの時の、あの時のか…!」

男の腕の中、アロネが微笑み、ため息をもらした。

「ああ、あああく、くふ、クフフ…。」
「もう逃げ道はないぞ。人質を解放しろ!」
「フフ…ああ、ウフフ…マニーニ、ごめんよ。僕は高尚な、ヒトではいられないよ。」

不気味に男が笑う。ロイドはトンファーをゆっくりと構えた。

「狙撃班!なんとかポイントは定まらないのか!クソッ!」
「ティオすけ、ここからあの二人に絶対障壁、届くか?」
「ダメです。攻撃魔法も、詠唱が終わる前に感づかれます。」
「ちっ、隙を窺うしかねえな。」

男がゆっくりと、ナイフをアロネの首に押し付ける。彼女の緩んだ表情が、再び恐怖に染まった。

「もう、もう僕は獣になるしかない。君の恋人のために。」

男は銃を握り、引き金に指をかけた。エリィがその顔を睨む。

「クフフ、君も素晴らしい女性だ。マニーニには劣るけれども、恋人想いだ。解かってるよ。さっき銃を取るとき、こっそり安全装置をセットしていたね?」

エリィが顔を背ける。装置を外し、男の口がにやりと歪んだ。

「やめろ、銃をおろせ!」
「ロイドォ、最近の新聞を読んだよ!君は稲妻の様に素早く動けるそうじゃないか。でもね、二人だ。
同時に二人守ることは無理だろう!さあ選べ!君の手で救う側、そして殺す側を選べ!」

狂気を孕んだ雄たけびがあがる。ロイドは、エリィを見た。
ウィンクが返ってくる。
ロイドはトンファーを回転させた。

「マニーニの為にいいいい!」

ナイフが高々と振りかぶられる。アロネが目を硬く瞑った。
ごうと風を切り、トンファーが飛翔した。ナイフが宙に舞う。

「クフゥーンヤハハハハハハハ!僕が!君の『初めて』の相手だァ!」

引き金が強く引かれた。

「ブチ込んであげるよォォォ!」

強く、強く引き金は引かれた。しかし銃は沈黙している。

40共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:07:00
「オォォ…あ、あれ?」
「はああ!」

咆哮と共にロイドの全身を巡る血が泡立ち、その体は瞬きの間に男に肉薄する。
同時にエリィが縛られたままでねじり立ち、半身を回転させた。

「マニッ…!」

ロイドのエルボーと、エリィのハイキック。みぞおちと後頭部に流れ星の衝突を受け、鈍い音を立てる。

「…ィ…ニ…!」

ぐらりと崩れ落ち、男はその場に倒れる。
ランディがビルの扉を開き、飛び込む。ティオ、ツァイトも続いた。

「確保だ!」

ドノバンの号令とともに、一斉にビルに捜査官が突入した。
尻餅をついたエリィの拘束を、ロイドが手早く解く。

「ありがとうロイド。前はロープで、今回はテープ。次は鎖かしら?」

ロイドは苦笑し、アロネの側に駆け寄った。エリィは立ち上がり、男の側に落ちていた銃を拾う。

(私の銃の安全装置は、二つあるの。ごめんなさいね。)

撃鉄に挟まったイヤリングが、鈍く星空を映す。

(それに私の初めては、全部…。)

「ロイド様!」

アロネが悲鳴をあげる。エリィもその側に駆け寄り、しゃがみこんだ。顔色が悪く、脂汗を大量にかいている。
例の反動が現れていた。

「ロイド!」
「アロ…ネ…アロネは…?怪我は…?」
「大丈夫です。かすり傷一つありませんわ!」
「そう…か。よかっ…。」

ロイドは深く頭を垂れた。くずれかけるロイドの身体を、エリィがしっかり抱きとめる。

「ロ、ロイド様!?」
「大丈夫、脈もあるし、呼吸もしっかりしてるわ。気絶しただけよ。」
「良かった、無事ですのね…。」

アロネは目じりの涙を拭った。エリィも安堵し、向かい合わせるように抱きしめたその背をさすった。

41共に歩みぬく意志:2011/05/10(火) 12:07:25
「お嬢!」

屋上に到着するなり、ランディが叫んだ。後ろだ!の声は彼女には聞こえなかった。
振り向くと、浮いたナイフが徐々に大きく膨れ上がっている。
研ぎ澄まされた刃が横に白の線を引き、それがこちらに飛んでくるのだと理解する前に、目の前を影が横切る。

肉を貫くがした。

「お嬢ーー!」

アロネが悲鳴をあげる。鮮血が地面に飛び散った。
エリィの鼻先にナイフの先端がピタリととまり、その刃を伝うのは、貫かれたロイドの掌からあふれ出たものだった。
紅に染まり、彼の腕が落ちる。

「マ…ニー…。」

その向こう側で、渾身の力を出し切った男が、倒れ伏す。

「ロイド!」
「ロイド様!」

ランディが、捜査官達が、男の所へ走っていく。
幾人もの足音の中、ロイドはエリィ、アロネの呼び掛けに、覗き込んだティオとキーアに、静かな寝息で返事をしていた。

42名無しさんが妄想します:2011/05/10(火) 12:09:29
以上です。

これまでの作品、Kメンテさんだけではなく、複数の方のものだったのですね。
数多くの方が零の文を書いてくださってとっても俺得です。
どの方のも、新作期待しています。

43名無しさんが妄想します:2011/05/11(水) 00:21:03
遅れましたが行ってきます

44名無しさんが妄想します:2011/05/11(水) 07:27:07
二日に渡り代行感謝いたします。

45名無しさんが妄想します:2011/06/08(水) 22:25:18
再び間が空いてしまいましたがご容赦のほど。
本スレに、メール欄はsageで以下の内容の書き込み代行をお願いします。

46共に歩みぬく意志:2011/06/08(水) 22:25:49
***

不幸中の幸いと言うべきか、鋭く研がれた小さなナイフは、ロイドの手の甲から入り、骨を綺麗に避けて刺さっていた。
簡単な治療を支援課のビルで受けるだけに留まったのは、気絶のその理由も、寝不足からくるものと判断された為だ。

「目が覚めたら栄養のあるものをしっかり摂っていただければ、全快は直ぐですよ。」
「ありがとうございます、リットン先生。」
「いやー、皆さんに先生って呼ばれると照れますね。じゃ、私はこれで。」

お辞儀をし、緊急で駆けつけた医師は、部屋を出た。安眠の妨げにならぬよう、関係者一同もその後に続く。
アロネの部屋のベッドに寝かされたロイドの寝息が、時計の秒針と静かなアンサンブルを奏でていた。その掌には包帯が巻かれている。

「それにしても俺達の役者っぷりも捨てたモンじゃないな。」

一階のリビングに降りたところで、ランディが愉快そうに言う。
今回の犯人を騙す形での捜査には、感づかれることが最も恐ろしいリスクだったが、彼らは見事それを乗り切った。

「これまでも色々似たようなことしてましたから、慣れてしまったのかもしれませんね。」
「ああ。それにしてもロイド、いつのまにキーアにまで仕込んでたんだかな。子供は正直者だからよ。やっこさんもそれで信じたんじゃあねえのか?」
「え、なあにランディ?」
「ほら、ロイドが夜な夜などこか行ってたってやつよ。迫真の演技だったぜ。」
「えんぎ…?でも、ロイドほんとうにどこかいってたよ?」
「おいおい。もう良いんだよキーア。全部終わったんだ。」

本当なのに、と顔を膨らませるキーアの頭を、ランディがかき混ぜながら笑う。

「それで、課長はいつロイドさんから説明を受けていたんですか。」
「ん?なんの話も聞いてねえよ。」
「え?」
「お前らが妙な遊びをしてたからそれに付き合ってやっただけだ。」
「本当に、それだけですか?」
「クク、俺をカヤの外に追い出してくれるとはやってくれるぜ。おかげで逮捕するときは遠慮なくいけたがな。」

そうして、彼はビルを後にし、捜査官の波に消えていった。

「部下が部下なら、上司も上司だな。」
「ドノバンさん…。」
「やっほー。ティオちゃん。」
「ロイドのやつはセルゲイをあえてハブることでリスクを背負ったんだろうよ。何かあれば警察全体の責任に発展しかねないからな。」
「そのわりに妙に落ち着いてましたよねえ。これも捜査官の勘のなせる業ってやつでしょうか。」
「フン。どうだろうな。」

レイモンドが首を傾げながら、突き進んでいくドノバンの後についていった。
ティオは後で腰掛けるツァイトの頭を撫でながら、小さなため息をつく。
このあと受ける煩雑な質問攻めを思い、その返答をあれこれとシミュレーションしていた。
その思考を遮るように、何度もロイドの掌の傷が思い浮かぶ。

(完全に、気を失っていたはず。)

彼女もランディと共に、即座に彼の元に駆けつけていた。
背を向けていたとはいえ、彼女の鋭敏な五感は、彼に意識が無かったことを告げている。

47共に歩みぬく意志:2011/06/08(水) 22:26:28

(それなのに…。)

エリィに届かなかったナイフ。
疑問を浮かべ、推理をすすめ、しかし彼女はその行き着く場所に足を踏み入れるのを拒否した。

(今更ですね。)

そしてその度に、嘲笑が漏れた。

「あ、皆様。ここにいらっしゃったのね。」

やがて二階でカウンセリングを受けていたアロネとエリィが降りてくる。
彼女達はメンバーを見つけると、その輪に加わった。

「おーう。その様子を見るにたいして必要じゃなかったんじゃないか。」
「ふふ、こう見えてもそれなりの厄介ごとには直面してきましたもの。」

そうして微笑むアロネだが、やはりその顔には陰りが見えた。

「皆様には、謝らないといけませんわ。あのお店で言ったことを…。」
「ああ、いいのいいの。気にしてねえよ。」
「当然の反応です。」
「そうですけども、わたくしの気が済みませんわ。本当に、ごめんなさい。」

アロネは顔をあげ、ひそめた眉もそのままに告げる。

「それで、皆様にお願いがありますの。」

振り返るアロネと、エリィの目が合った。

再び街に風が吹く。
わずか一日をして、噂の的に突きつけられた矛先は一部を除いて賞賛の声と変わり、連続窃盗犯、放火犯の完全な沈黙は、人々に安息を与えた。
一部を除いて、というのは、過程において生じた問題に対する批判であり、その責任を問うまでは発展しなかったものの、セルゲイは代表として叱責を受けることになる。
もっとも、彼の監督不行き届きは今に始まったわけでも無く、狐は苦々しげに髭を撫でるのだった。

爆弾騒ぎは朝日に溶けて消え、それが幻だったと錯覚させるほどに、クロスベルは日常へと戻っていった。

「え、じゃあ俺は丸一日寝ていたのか!?」
「そういうこふぉいなるな。」

お見舞いとして届いたリンゴをほおばりながら、ランディが言う。
彼らは皆ロイドが目を覚ましそうというキーアの嬉々とした叫び声に、アロエの部屋に集合していた。

「良かった、本当に良かったですわ。」
「あ、アロネ…エリィ。怪我は無いのか。」
「ええ。おかげさまで。」
「そうか。っつ…これは無事じゃ済まなかったのは、俺のほうだったみたいだな。」

ロイドが右手の包帯を見て苦笑する。
その仕草は、周囲に様々な表情の変化を与えた。
無論彼はそれに気付かない。抱きついてくるキーアを優しく左の腕で抱きかかえ、鼻先をこすりつけてくる無邪気な愛撫に身を任せていた。

「まあ安心しな。全部終わったよ。俺としては楽しかったぜ。またロイド作詞の一幕するときは遠慮なく言ってくれ。」
「…ランディさんの演技にはなにやら日ごろの鬱積が篭っていたように見えましたけど。」
「はーっはっは!さーてお兄さんがうまーい飯つくってやるよ!」

48共に歩みぬく意志:2011/06/08(水) 22:27:05
ランディがリンゴの芯をしゃぶりながら一階へ降りていく。

「今回は名目もあるのですから、今のうちに休んでおくと良いかと。それも、リーダーの仕事です。」
「あ、ああ。ありがとうティオ。」

彼女も部屋を後にした。

「その、二人とも…。」
「良いのです。ロイド様がご無事なら、それで。」
「そうよ。心配したんだから。」

眉間にしわをたくわえるロイドを慰め、二人は立ち上がる。

「私も、お茶をいれてくるわね。」
「わたくしも。ロイド様、どうか養生なさってください。」
「ああ。そうさせてもらうよ。」
「おやすみなさい、ロイド!」

残りの一同も部屋を去る。

「まいったな…ある程度自己管理はしていたつもりなんだけど。一日ごっそり寝て過ごすなんて。」

ふとベッドの下を見ると、ツァイトがうずくまって寝ていた。

「はは、一応守ってくれてる、のかな。」

返事は無く、その尾が左右に二度、振られただけだった。

***

――明日になれば貴方は、発ってしまう。

「ん…。」

――どうして?わたくしの事が…お嫌い?

「む…む。」

――お願い!どうかわたくしを…

「…んんんっ!?」
「ロイドさま。」

ロイドが目を開けると、眼前にアロネの姿がぼんやりと浮かんでいた。
ぼんやりとは一瞬の事で、直ぐにその鮮明な全様が飛び込んでくる。そのほとんどを濡れた磁気のように艶を帯びた肌の色が占めていた。

「アロネ?こ、これは一体…。」
「やはり、まだ充分の休息ではないのですね。わたくしがこうしてお待ちして、一時間目覚めないのですもの。」

ロイドを四肢で跨ぎ、はだけた前を隠そうともせず、アロネは彼を真っ直ぐに見つめていた。
状況の整理が出来ないままうろたえる様に、くすりと微笑む。

「変わってませんのね。思い出しますわ…。一年前もこうして貴方にお情けをと。」
「ああ…いや、それはともかく一時間も?いそいで服を。」
「ロイドさま、お願い。」

49共に歩みぬく意志:2011/06/08(水) 22:27:50
焦るように、アロネはロイドに抱きついた。
柔らかな重みが胸にかかり、ロイドの腕を止める。それは抱きつくというよりは、しがみつくといったほうが正しかった。

「どうか、わたくしを…抱いてくださいませ。」

この時、支援課のビルを、三階を中心に異様な緊張感が支配していた。
二階の部屋には、ランディがくつろぎ、一階ではツァイトがキーアの遊び相手をしていた。
セルゲイが居ないのはいつもの事だが、この雰囲気の異常さは、一階玄関から入っても感じ取ることが可能であろう。

事件を終え、アロネはお願いがあることを告げ、こう続けた。

「わたくしとロイド様に、二人でお話する時間を下さいまし。」

ランディ、キーア、そしてセルゲイからすれば、何故改めて今頃とも思えるものだったが、女性陣は流石にその意味を汲み取れないほど鈍感ではない。
エリィはもとより話しをつけてあったのだろうか。穏やかではないにしても承諾していた。
しかしあと一人の表情は、瞬間明らかに不満を浮かべたことは、誰にも悟られていない。

「アロネ…。」
「一年前のあの日からずっと、この気持ちに変わりはありません。愛しています、ロイドさま。」

見つめあう二人の影が、ベッドランプのほのかな灯りにより、しかし鮮明に壁に映し出される。
その距離は徐々に縮んでいった。
そのアロネの部屋の壁一つとなり、即ちティオの部屋に、愛を育もうとしている二人の部屋側に、ぴったりと背中をつけて座る来客が居た。

「…お疲れなら横になったらどうですか。エリィさん。」

顔を横に逸らし、耳を立てようとしていたエリィが、ハッと向き直る。

「い、いいえ、いいの。これでも十分楽だから。ごめんなさいね急に。なんだか話し相手が居ないと落ち着かなくて…。」
「…別に構いませんけど、お話をしていても落ち着かないみたいですね。」

エリィは先ほどから髪をなぶり足を摺り寄せ、それはまるで雨に踊る百合の花のようだった。
その姿に、ティオは確かな不快感を覚えていた。
彼女はロイドの掌の傷の意味を理解していないのではないか、だからこんな彼女らしからぬ行為に出ているのではないか。
いつしか疑惑は嫉妬を混じえ、怒りへと代わる。
深淵に渦をまきはじめたその怒りは、顔を出すのを待ち構えながら水面を揺らす。

「そんなに気になりますか。お隣さんが。」
「そういうわけではないけど…。」
「ご安心ください。ロイドさんはにぶちんもびっくりの、超一級のにぶにぶですから。それに二人の会話は聞き取れますから大事に至れば把握できます。
前の事件が解決したときの夜だって…」
「えっ…?」

ティオはしまったと口を塞ぐ。いつの間にか渦は表に至り、言葉として出ていた。
それが衝動的な感情であれば、ティオにはありえない失態だった。エリィのほうを見るのがためらわれ、彼女は顔を伏せ、続ける。

「…ですから、気にしなくても大丈夫です。盗み聞きが得意なのは、私一人で十分です。」

吐き捨てるように言い切る。
耳を塞ぎたくなるように頭が鳴り痛んだ。浮かぶのは、居場所が消えるであろう事に対する後悔、そして純粋な恐怖だった。
伏せた顔から、光の感触が消える。彼女は体をこわばらせ、歯を噛み締めた。

「……?」

頬に飛んでくるであろう衝撃は、まったく違う感触として彼女に届く。

50共に歩みぬく意志:2011/06/08(水) 22:28:40

「エリィ…さん?」
「ごめんね、ティオちゃん…ごめんなさい…。」

エリィが謝っている。それが何故なのかティオには理解できなかった。
おいたをしたのは自分であり、それは情事の盗聴という、世間ではおよそ許されないことであり、それを暴露した自分に待っている結果は、痛みのみのはずだった。

「どうして、謝るのですか?理解できません。」
「アロネが言ってたの。ティオちゃんが、ロイドの事を好きだって…。」

ティオの顔がみるみる朱に染まる。

「ち、違います。そんなこと、真に受けないで下さいっ。」
「私だって、根拠もなくこんなこと言わないわ。意識して気づかなっただけで、思い当たるフシは沢山あるもの。
だから今解かったの。ティオちゃんの気持ち。」
「なんでそう言い切れるんですか…。」

エリィは腕の中で、小さな体が震えるのを感じ取りながらも、続ける。

「ティオちゃんは、出会ったときからすごく可愛くて、素敵だったわ。でも、最近はその比じゃないもの。」
「…。」
「嬉しかったり、怒ったりしたときも、顔に良く出るようになったわ。さっきみたいに。
それが誰のせいなのか…考えないようにしてきたけど。」

自分の心のうちを見透かされることほど、気分の悪い事はない。
ティオは渦に飲まれたままの自分を意識しながらも、抑えられずには居なかった。

「それと、謝ることと何か関係があるんですか?。」
「私がティオちゃんだったら、耐えられない。ティオちゃんだって、あの日のロイドが普通じゃなかったことは、気づいていたでしょう?
私は舞い上がってしまっていたの。あなたの気持ちも考えないで…。」
「…そうだとしても、どうして…」

ティオがエリィの腕を押し戻し、真正面から見つめる。

「どうして、ロイドさんの事を信じてあげられないんですか?あの人は…あの人は本当にエリィさんの事が好きなんです!」
「ティオちゃん…。」
「そうじゃなければ…あのナイフだって…。」

エリィはまだこの週の疲れが抜け切っていない表情で、それでも精一杯に微笑む。

「解かってるの…ロイドが、守ってくれたことの意味。信じていない訳では、けっしてないけど、万が一ロイドがアロネさんと、その、そういう事になっても、止めるつもりはないわ。」

え、とティオが声にもならぬまま驚きの表情を浮かべる。

「だって、私にとってもそうなように、彼女にとって、大事な存在なんですもの。一年越しの想いを邪魔をする権利は、今の私には無いわ。」
「…。」
「でも、現実を受け入れるために、直接自分の耳で確かめたかったの。ただ、それだけ…。だからこんなこと…。
笑っちゃうくらいに、独りよがりだけど。」
「…エリィさん。」

51共に歩みぬく意志:2011/06/08(水) 22:29:47

その時ティオの耳に届いたのは、エリィの告白だけではなかった。

「…エリィさんなら…きっと、大丈夫です。」


「…どうしても、抱いていただけないのね。」
「ごめん。アロネ。君が嫌いなわけじゃないんだ。」

ロイドはアロネを抱きしめたまま、天井を見つめていた。

「昔言っていた、想い人が、見つかったからですの?」
「想い人…そんなことも言ったっけか。」
「ええ、おっしゃいましたわ。顔もわからない、声も思い出せない、と。」

ロイドは苦笑した。アロネを抱きしめたまま上体を起こし、彼女の肩を掴む。

「そうだな、見つかったのかもしれない。いや、見つかったんだな。」
「エリィさん…なのですわね。」

ロイドは頷くかわりに、僅かに視線を傾けた。

「わたくしは…貴方の心に彼女がいることも、勝ち目が無いことも存じてますわ。」
「…。」
「でも、二番目以降でも良いの。事故と想っていただいても構いませんわ。一度だけ、どうかわたくしに、貴方への想いを…。」
「尚更、出来ないよ。」

ロイドはアロネの髪をそっと撫でる。

「君みたいに綺麗な人を、事故扱いで抱くなんて。それに…エリィは、俺にとっての、一番じゃないんだ。唯一人、なんだ。」
「…」
「この先、もし俺が好きになる人が出来るとしたら、それはエリィの別の一面に対してだろうし、浮気するとしても、雰囲気が違う、髪型の違う、エリィが良いんだ。」

そこまで言いながら、ロイドはかすかに照れたように頬をかいた。
アロネはしばらく悲しそうな瞳を彼にむけていたが、やがて笑みに代わり、自らの腕を抱きすくめる。

「ふふふ、やっぱり、あなた様は、わたくしの真の理想のお方ですわ。」

(本当の意味で…だからこそ、届かない…。)

「でも、君は俺の大事な親友だ。そうだろう?」
「え?きゃっ…。」
「だからこうして、一緒に寝そべって、昔のことを話すのなら、誰にも咎められないはずだ。」

ロイドは自分の毛布をアロネにかけると、背に手をまわし、自分の隣に横たわらせる。

52共に歩みぬく意志:2011/06/08(水) 22:30:29

「これくらいしか、俺には思いつかないけど、だめかな?」

アロネは少女のように笑い、すこし目尻を拭き、彼の肩に頭を寄せた。


「…だから、ずっとロイドさんの傍にいてあげてください。」
「…。」
「私が好きなロイドさんは、きっと、『エリィさんの事を好きでいる』ロイドさんなんです。」
「ティオちゃん…。」
「支援課の皆も、ランディさんも、ツァイトも、キーアも、セルゲイさんも…皆好きです。
エリィさんのことも…大好きですから。」

エリィは泣き出しそうな顔で、たっぷりの羽毛を持つ親鳥のように、ティオを包み込む。
その腕の中、くすぐったそうに眉をひそめ、しかしその体のふるえはすでに止まり、ティオは、心地よい温もりに身を任せていた。

そして、いつかのウルスラでの出来事を思い出していた。
あの時、心の暗闇に灯った、近く、大きく広がる、血の巡る月の光。
そのパールグレイは、月の表面ではなく、エリィより美しく流れる、髪の輝きだった。

53名無しさんが妄想します:2011/06/08(水) 22:30:57
とりあえずここまでです。
よろしくおねがいいたします。

54名無しさんが妄想します:2011/06/08(水) 23:35:37
おお来てますね〜
では行ってきます

55名無しさんが妄想します:2011/06/09(木) 00:19:30
ちょっと失敗してしまいました。
以前の分を間違えて本スレに書き込んでしまいました。
大変申し訳ございません。
とりあえず今回の分はその後しっかり本スレに書き込んでおきました。
これからは失敗のないようにしていきたいと思うので、今回はどうかご容赦くださいm(_ _)m

56名無しさんが妄想します:2011/06/10(金) 06:38:56
本来なら私が自分で行う書き込みなのですから、ミスの責は私にあります。
こちらこそ申し訳ありません。
私としては、ただ代行していただいたことに感謝するばかりです。
毎度毎度お手数をおかけします。

57名無しさんが妄想します:2011/07/12(火) 14:59:22
いつもお世話になっています。代行お願いいたします。
本スレに、メール欄はsageで以下の内容の書き込み代行をお願いします。

58共に歩みぬく意志:2011/07/12(火) 14:59:57
***

翌早朝。
ひんやりと湿り気を含んだ風の吹く駅のプラットホームに、彼らの姿はあった。

「もっとゆっくり案内したいとこあったのによ。残念だな。」
「ふふ、ありがとうございます。でも、初日の皆様との散策、わたくしにとってはとても有意義な時間でしたわ。」

アロネはたたんだ日傘を両手に、なつかしそうに微笑む。

「それにしてもランディさん、いまだに警察の関係者のお方にはみえませんわね。」
「おいおい、あんまりだな。大活躍だったってのに。」
「ランディさんは普段の素行がふんだんに逆方向だからです。」

ティオの鋭い突っ込みに一同もつられて笑う。

「一週間というのは、こんなに短くも、楽しく、素敵な日々を過ごせる期間なのですわね。皆様がうらやましい。
そして嬉しいです。ロイド様が、その中に居ることが。」
「アロネ…。」
「わたくしは、わたくしの場所で、こんな日常を過ごせるように、務めますわ。
街を治める者の一族として。」
「アロネなら、きっと出来るわ。」
「ふふ。ありがとう。」

導力機関車が徐々に大きさを増し、ゆっくりと入ってくる。
ホームに至り横腹を見せると、高く軋む音と共に巨体は停止する。

「わたくしは、ある意味幸せなのかもしれませんわね。
ここを離れることが、出来るのですもの。」

つんざくような音に、そのつぶやきはかき消され、誰の耳にも届かなかった。ティオを除いて。
眉一つ動かさず振り向いた彼女と、どこか寂しげなアロネの視線が交差する。

「アロネ、かえっちゃうの?」
「ええ。」
「また、逢える?」
「もちろん。きっと逢えますわ。皆様も共和国に来たときには、是非私の街にいらしてくださいね。いつでも歓迎いたしますわ。」
「おう。」
「元気で、アロネ。」
「皆様も、どうかお元気で。」

ベルが鳴り、発車を告げる。
窓から身を乗り出し、手を振る彼女に一同も返す。やがて機関車は日の上りかけた地平線へと消えていった。

「いっちまった、か。」
「ですね。」
「今回も無事、任務達成、だな。」

ロイドが締めくくるようにこぼし、まだ手を振っているキーアを抱え、機関車の消えていった方向を眺めた。
ランディが頭を掻き、その背中を小突く。

「おいロイド。」
「なんだ、ランディ。」
「今日は俺約束があってな…。」

肩を組んだ二人がなにやら話し込む。
それをエリィとティオは、並んで見守った。

59共に歩みぬく意志:2011/07/12(火) 15:00:26

「エリィさん、私このあと、IBCに行ってきます。」
「あら、メンテナンスのお手伝い?」
「はい。夕方には戻ります。」

ティオがエリィの正面に立つ。

「ロイドさんに言いたいこと、一杯あるんじゃないですか。」
「え。」

エリィは一瞬驚いたが、直ぐに思い直す。
考えてみれば、彼女の憤りを共有していたのは、アロネだけではなかったのだ。

「そう、ね。沢山あるわね。」
「それを今日、言ってあげてください。あのにぶちんさんに思い知らせてあげてください。
今まで、今日までずっと、エリィさんがどれだけロイドさんの事で気を揉んでいたのか。」
「ティオちゃん…。」

ティオがゆっくりと、エリィに寄りかかる。抱きしめられながら、彼女は自分の行動を不思議に思う。
驚くほどに自然な行動だった。体が勝手に動くというのは、こういう事を言うのだろう。
そうしてまた、仔猫のように、彼女の豊かな温もりに擦り寄るのだった。

一同は駅を後にする。
ランディは繁華街へ、ティオはIBCへと出かけていった。
最後にキーアを日曜学校に送り出し、エリィ、ロイドの二人は支援課ビルへと戻ってくる。

「昨日までの賑わいが嘘みたいだ。」

すでに課長もどこかへ出かけていた。書置きを見ないまでも、また明日の朝ひょっこりと帰ってくるであろう事は、想像に易い。
ロイドが静まり返った室内を見渡し振り返ると、玄関を後から入ってきたエリィが、神妙な顔つきでこちらを見ているのに気づいた。

「ん、どうしたんだ、エリィ?」
「いえ…。ロイド、少し時間をもらえる?」

ドアのベルが乾いた音を立て、閉まった。
リビングにてロイドは手帳を開き、一連の事件を振り返る。
それはいつも彼が報告書を作るうえでのプロットの作成と、チームの反省点を組み立てる前哨としての、大事な作業だった。
エリィがキッチンに入ってしばらくたつが、部屋にはドア越しに彼女の立てる音以外、何も聞こえてこない。
ツァイトもどうやらティオについていったようで、ロイドが机の下を覗いても空のエサ箱だけが佇んでいた。

「なあに、机の下に何かあるの?」

キッチンを出てきた彼女の声、それに返事をするように豪快な音が返ってきた。

「あだっ!」
「きゃっ、大丈夫?ロイド。」

後頭部を机に打ちつけ、頭に手を添えながらロイドが這い出す。顔半分をしかめながら、あわてて隣に座るエリィに微笑みかけた。

「ハハ、ペンを落としたんだけど、うっかりしてたな。」
「ごめんなさいね、急に声かけて。見せて?」

エリィがロイドの頭を優しくなで、打って赤くなっている部位を見た。
彼らしからぬ事故に、彼女は少し首を傾げたが、頭を抑えるロイドの手がやや強張っているのに気づく。

(ロイドも…、緊張してる?)

60共に歩みぬく意志:2011/07/12(火) 15:01:12
いつも彼女は、彼と過ごす日々で、あの夜の甘いひと時を引き合いに出さずには居られなかった。
表情、しぐさ、かけてくれた言葉、だきしめてくれた逞しい腕、全てどの瞬間も鮮明に覚えている。
それなのにまるでこれまでの日常は、夢だったのではと思わせるほどに淡白だった。
実に三週間ぶりの、二人だけの空間である。

「報告書なら私が作るから、今日はロイド、ゆっくり休まないと。」
「ううーん。でもなんかしてないと落ち着かないというか。」
「ただでさえ、利き腕を怪我してるのよ。こういうときくらい、言う事を聞くの。」
「そうだな。ところでエリィ、それ…。」

ロイドはエリィが持ってきたものを目で指す。エリィはそれをロイドの前にスライドさせた。

「ちゃんと作ってあげなかったから…。」
「え、もしかしてずっと気にしていたのか。」

こくんとエリィが頷く。ロイドは嬉しそうに皿の上に載ったものを見つめた。
潤いを含んだ光沢を放ち、表面の細かなきめが見て解かる。
たっぷりとかけられたカラメルソースは、甘すぎることなく、香りと濃淡のグラデーションで目と鼻を楽しませる。
喉を過ぎた後にほんのりと残る苦味までも、彼は脳裏で再現できた。
今度は紛れもなく本物の、エリィ特製、カラメルプリンである。

「心配いらないって言ったのに。」
「ううん。私、身勝手だった。ロイドはただ、アロネを街の案内に連れて行っただけなのに。
それなのにあんな…。」
「君を戸惑わせてしまったのは俺だ。
いや、それもあわせて、むしろ謝るのは俺のほうなんだ。」

ロイドはプリンに視線を落としたまま、続ける。

「あれからずっと、考えてたよ。どうしてもあの日の夜の言葉は、体よくエリィを、苦しみから逃れるために利用するためのものだったんじゃないかって。
それをはっきり否定する自信が、日ごとに薄れてしまって…。」

エリィには思いも寄らない言葉だった。そのまま黙って彼の言葉に耳を傾ける。

「毎晩、改めて気持ちを伝えに行こうと、君がくれた合鍵を持って…。でも結局、あと一歩が踏み込めなかった。」
「…。」
「そんな中、今回の事件がおきた。犯人の照準は俺とランディに向くと踏んだプランで、結局君とアロネを危険な目にあわせてしまった。
肝心な所で一番浮き足立ってたのは俺だったんだ。」

常に一緒に過ごしたメンバーの、誰が彼の表情の曇りに気付けただろうか。
むしろ凛として、毅然としていたからこそ、作戦もスムーズに行われたのだ。
しかし蓋を開けてみれば、今のエリィの眼前には、苦悩にうちひしがれる若い新人捜査官が座っていた。

「だから、ハハ、謝ってばかりだけど…」

しかし、エリィは涼やかな表情で、彼の言葉を遮る。

「ダメよ。」
「えっ?」

ロイドがエリィのほうに顔をあげると、いつのまにか目の前にスプーンが浮いていた。揺れるプリンが、カラメルを滴らせて乗っている。

「はい、あーん。」
「?」
「あーん。」
「え、エリィ、まってくれ。左手を使えば、ちゃんと一人で食べられ…。」

61共に歩みぬく意志:2011/07/12(火) 15:02:10

しかし彼女の眼差しに圧倒され、ロイドはおずおずと差し出されたスプーンをほおばる。

「美味しい?」
「凄く美味しいけど…。」
「良かった。」

エリィはつぶやくと、ロイドの腕を抱き、ぴったりと彼に寄り添った。

「エリィ?」
「今こうして、街に日常が戻ってきたのは、色んな人の努力があったからよ。その中には、確かに貴方もいるの。
そのシナリオが完璧じゃなかったにせよ、誇るべき事よ。」
「…。」
「計画が上手くいかなかったら、フォローしあうのも私達の仕事では重要な事。それをただ謝ってしまっては、貴方を信じてくれた皆に失礼よ?
反省点があるなら、次に活かせばいいの。」
「ああ。そう、だな。君の言うとおりだ。」
「それに…。」

エリィはそっと、包帯に包まれたロイドの右手を撫でる。

「それに、貴方が私にかけてくれた言葉も、全部真実だって、とっくに証明してくれたわ。」
「え、いつ?」
「思い出せない?」

あの時か、いやあの台詞か、と首を傾げるロイドを見上げ、エリィは目を細めた。

「だから、胸を張って。元気を出して、ロイド。」

言葉の締めくくりに、エリィがロイドの頬に、口付けをする。
ロイドは驚き、思わずエリィのほうに振り向く。彼女はゆっくりと彼から身を離した。

「順番が逆になっちゃったけど、おまじない。」

照れ隠しのように再びプリンをすくったスプーンを、ロイドの前に差し出す。
ロイドは微かに残った感触がじんわりと溶けていくのを感じながら、スプーンをほおばった。

「ロイド、いつか市民ホールでクラシックコンサートが開かれたら、一緒に行ってくれる?」
「ン、もちろんだよ。」
「マーケットで水着を買いに行くときも、付いてきて…見立ててくれる?」
「う、うん。」
「ティオちゃんも一緒。良い?」
「え?…ああ。どこにでも、何にでも付き合うさ。」

ロイドの口をナプキンで拭きながら、エリィはよし、とうなずいた。

「ふふ。それならアロネとの浮気、許してあげるわ。」
「う、浮気?」

プリンを口に含んだまま、ロイドが素っ頓狂な叫びをあげる。

「誤解だって言ったじゃないか。初日に受けた説明を真に受けてるのか?」
「え、そうじゃないけど。だって昨日、二人っきりで…。」
「いやいやいや!少し話をしただけで、確かに一緒のベッドでは寝たけど…あっ。」

ロイドがしまったとばかり息を呑む。プリンが気管に入り、盛大にむせた。

62共に歩みぬく意志:2011/07/12(火) 15:02:44
「そう。それは彼女にとっても、素敵な思い出になったんじゃないかしら。」
「うぐっ、こほっ!ちが、エリィ。それも誤解で…。」
「良いのよ。別に何があったとしても、無理も無いもの。私がアロネだったとしても、同じ事をしたでしょうし。」

息も絶え絶えなロイドが見上げたエリィの表情は、予想に反して穏やかだった。

(三週間だけでも、こんなに辛かったんだもの。一年間なんて、私には想像できない。
それに…。)

つい先ほど見送った少女の笑顔を思い出す。

「本当に、困った人。」
「え?いや、だから謝って…!」

おもわず口をついて出た言葉に、ロイドは焦ったようにエリィの腕を掴む。

「あっ。」
「いや、君の言うとおり、謝るようなことじゃないんだ。むしろ、俺の中で出した結論を、もっと早く伝えていれば、君の誤解なんか生じようが無かったんだ。」

ロイドは両手を、エリィの肩に移動させた。いつかの廊下でもあった、距離、彼の表情。
ただあの時と違い、彼女に動揺する暇はなかった。

「エリィ!」
「は、はい。」
「俺と…俺と、結婚してくれ!」
「!」

息付く間も、瞬きする間も許さない、霹靂の如き告白。
誰かが居合わせたのならば、まさに時間の静止が現実におこりうると錯覚しただろう。
想像の世界でよくある、何もかもが停止し、自分だけが自由に動ける世界。それが今、二人によって提供されていた。
彼らの頬をつついても、髪を引っ張っても、眉一つ動きはしないだろう。顔の色だけは例外だったが。
ロイドは、その言葉を実際に口にする事の、想像以上の破壊力に、全身が岩のように強張ってしまっていた。
エリィも茹で上がった顔で、目を白黒させていたが、ロイドの熱い視線に我に返り、それが火照った肌にくすぐったく感じられ、目を逸らす。

「嬉しい。」

エリィがロイドの手に自分の手を重ねあわせる。

「私もそうなれたら、良いなって…。」
「エリィ、それじゃあ。」

ロイドが顔を綻ばせ、エリィに詰め寄る。彼女は慌てて身体をよじった。

「で、でも、こういうことは別に結論を急がなくても、良いんじゃないかしら?
まだ私たち、若いんだし…。」
「もちろん、今すぐとは言わない。婚約という形で良いんだ。君との繋がりを、確かなものにしたい。」

ロイドの言葉一つ一つに、肌を桃と赤に点滅させ、エリィは困惑していた。
喜びは本物だった。目に溜まる潤いが、それを物語っている。
彼女の今後の成り行きについても、すでにロイドは全て承知の上である。
思慮深い彼の事だ、結婚という具体的な言葉を、短絡的に出したわけではないだろう。何の不安も感じなかった。
ただ一点の心配事だけが、彼女を躊躇わせていた。

63共に歩みぬく意志:2011/07/12(火) 15:12:16

「前も言ったけど、エリィが側にいてくれるだけで、俺は嬉しいし、力が湧いて来るんだ。
そんな君と、より深く繋がる事が出来たなら、俺はどんな壁だって越えられる。」
「ロイド…。」
「愛してるよ、エリィ。」

――ああ。

エリィはこの時悟った。最初から選択肢など存在しなかった事を。どんな形であれ、彼を支えるという言葉は、嘘っぱちだったという事を。
拒む事など考えられなかった。彼女が望んだ場所は、そこ以外に無かったのだ。

――ごめんなさい。

誰に対するともわからない、六文字。言葉とすることなく放つと、彼女は瞳を閉じ、ロイドの接吻を受け止めていた。

***

64名無しさんが妄想します:2011/07/12(火) 15:32:35
以上です。↑までの書き込みを、本スレに代行お願いいたします。

余談ですが、碧の軌跡発売までになんとかこの物語含め、続編を一つ、小話を七つ書くつもりです。
もしこのまま規制が続くようでしたら、それら全て代行に依存する形になってしまいます。
お手を煩わせますが、どうか今後とも宜しくお願いします。

65名無しさんが妄想します:2011/07/12(火) 15:58:27
おお待ってました!
いつも楽しみにしているので代行喜んでやらせて頂きますよ〜
では行ってきます

66名無しさんが妄想します:2011/10/12(水) 06:31:28
続きまだー

67名無しさんが妄想します:2011/11/22(火) 01:41:23
待ってますよー

68名無しさんが妄想します:2014/05/30(金) 08:44:58
俺的糞ゲーその310『英雄伝説 空の軌跡FC&SC』 - アメーバブログ
ttp://ameblo.jp/kusowii/entry-11516647382.html


ファルコム尼1位で他社製品名指ししメルマガ配信?
ttp://peace.2ch.net/test/read.cgi/ghard/1334059431/

179: 名無しさん必死だな [sage] 2012/04/11(水) 00:22:41.64 ID:MF11Q/lH0

>>177
現アンチは元信者
現信者は未来のアンチ
圧倒的大多数は興味なし

それがファルコム

ttp://peace.2ch.net/test/read.cgi/ghard/1334059431/179


949: 名無しさん必死だな [sage] 2012/05/04(金) 12:42:55.34 ID:gqnM2mYw0

空の時点で駄作だったのに零から酷くなったと言われてもねぇ
空はそれこそ厨二ファルオタとその素質を持つ奴でないと楽しめないRPGで
零はそれに萌え的なオタク養分と変な一般受け意識をプラスしたブツってだけ

ttp://peace.2ch.net/test/read.cgi/ghard/1334059431/949

69名無しさんが妄想します:2017/08/27(日) 21:54:18
■英雄伝説 閃の軌跡
発売日:2013年9月26日
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発売日:2014年9月25日
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発売日:2029年9月26日?
■英雄伝説 閃の軌跡Ⅹ?
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70名無しさんが妄想します:2017/08/27(日) 21:59:27
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