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【SS】コスモス文庫&秋桜友達【宮廷社】

184魚屋:2005/03/16(水) 22:59:43 ID:JuhKE.oE
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聖「あなたに言っても分からないでしょ!!」 
 たしかにそうだ。私なんかに聖の気持ちはわからないだろう。けれども話
ぐらい聞いてあげたい。気持ちを共有して、彼女と一緒に悩みたい。友達
だから…大切な人だから…
蓉子「そうね。ごめんなさい、お節介だったかしら。…じゃあ帰るね」
 悲しい。辛い。泣きたい。本当の私が喚いている。けれど、私は聖の前で
本当の気持ちを言えず、強がる事しか出来ない。それがくやしかった。
 聖の顔を見ない様に会議室から出て行こうとしていた時だ。私の肩を聖が掴む。
聖「…ごめん。ちょっと感情的になり過ぎた。」
 私は振り返らずに聖の言葉を聞いた。少し間をおいて振り返らないと心の準備
が出来ない。
一呼吸か二呼吸をおいて、振り返る。
蓉子「いいのよ。私も無神経だったかな、と思ってるんだから」
 まただ、くやしい。
聖「聞いて貰っていい?」
蓉子「うん」
 聖は、悪戯を告白する子供のように、俯きながらたどたどしく告白する。
聖「もう、お姉さまが卒業しちゃうんだなって。そう思ったら無性に寂しく
なっちゃった…」
蓉子「ロサ・ギカンティアは、本当に優しくしてくれたものね」
聖「うん。だから、頭ではお姉さまが卒業するのは分っていても、どこかでそれ
を否定し続けてきた。そしてついに、後二日。」
 ロサ・ギカンティア。その人は聖の心の中に、確かな足跡を残し、この学園
を去ろうとしている。
蓉子「そうね…今は精一杯姉孝行でもしたらどう?」
聖「うん。でも春になったらお姉さまの居ない日々が始まる…どうなっちゃう
のかな、私」
蓉子「人は出会った限り、別れは必ず来る。それは皆、平等なことだから仕方
の無いことね… でも、春になって新しい出会いがあって、自分の全てを受け
止めてくれる人が出てくるかもしれない。だから私達は前に進めるのよ」
 新しい出会い。聖の全てを受け止めてくれる人。その人は果たして誰なの
だろう。祥子達の中からか。それとも、新しく私達の元にやってくる人達の中
からか。それは、私にも皆目検討がつかなかった。けれどその時、私は私の喉元
まで出かけた何かを言おうとしたのを、明らかにためらった。
 …だって言えるわけ無いじゃない。その人は、私では駄目なのか、と。
聖「…凄いな蓉子は。あなただって、お姉さまが卒業なさるはずなのに、私じゃ
敵わないよ。本当に羨ましい。…だからそんな強い貴女が嫌い。」
蓉子「そうね…私も嫌い」
 本当に嫌い。もっと別なことを聖に言いたいのに。

聖「でも、そんなあなたが大好き。」
   
          え?
          
聖「ありがとう。蓉子」
 私を見つめる聖の顔は確かに微笑みかけていた。私は、はたはたと涙が
足元にこぼれていくのを感じた。


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