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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

463盤上の月2(26) ◆RA.QypifAg:2012/06/10(日) 19:48:47

アキラの碁会場常連客である広瀬が、たまたま通りかかり偶然に2人を目撃していた。
楽しそうに話しをするヒカルとあかりは、他者から見て恋人同士に見えなくもない。
「まあ、進藤君もお年頃だしねえ……、いいねえ若い子は」
広瀬はヒカル達の姿が人だかりで見えなくなるまで珍しそうに目で追い、その後行きつけの囲碁サロン
へ足を運ぶ。
「いらっしゃい広瀬さん、北島さんはお先に来ているわよ」
碁会場にはいつものように受付嬢の晴美が、笑顔で広瀬を迎える。
「こんにちは市河さん、今日はいい天気だね」
「遅いよ、広瀬さん」
すでに席についている北島が、広瀬に苦言を放つ。
「いやあ、すまんです北島さん。今日、つい珍しい光景を目にして遅くなってしまって。
おや、今日は若先生が来ているんですね、お久しぶりです」
「こんにちは、広瀬さん」
奥の席で1人棋譜並べをするアキラは、広瀬に頭を軽く下げて挨拶をする。
「珍しいって何を見たんだい?」
北島が広瀬に訊くと、広瀬はヒカルが女の子と歩いているのを見たことを話し出した。
「いやあ、進藤君もやるもんだねえ。女の子は遠くから見ただけだけど、結構可愛い子でしたよ」
「へっ! 若先生はここで碁の鍛錬をしているのに、進藤はデートかい。いいご身分なことだな。
進藤なんざ棋聖戦の最終予選決勝で落ちて、今いちパッとしないぜ」
緑茶を淹れて広瀬へ運ぶ晴美は、顔をしかめながら北島を諌めるように言う。
「北島さん、最終予選決勝に残るってすごいじゃない。
それに進藤君だって年頃なんだから、デートの一つや二つはするでしょうよ」
「そうだよねえ市河さん……、確かに年頃だものねえ……でもそれは進藤君だけじゃないよね……」
「うん………その……頑張れっ……市ちゃん!」
広瀬と北島は2人顔を見合わせて、心配そうに晴美を見つめる。妙齢の晴美が独身であるのを密かに心
配しているのは他客にも多いので、独特の雰囲気が碁会場に漂っている。
年配男性2人が良縁の無い自分を心配しているのに気付いて、晴美は声を荒げた。
「おふたりに心配されなくても結構ですっ!  私はこれでも毎日楽しいのよっ!」
北島らがヒカルの話で盛り上がるのを、アキラは棋譜並べを続けながら静かに聞いていた。
碁石を持つ手が一瞬だが強張り、そして口元をきつく噛みしめる。アキラの瞳には暗い光が滲み揺らぐ。
ほとんど見ず知らずのあかりに対して、アキラは煮えたぎるような激しく赤黒い感情にかられる。
アキラの心に、嫉妬が芽生えていた。


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