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プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!!

1プチ住民:2003/01/31(金) 19:21
愛好会スレのプチ住民の(゚ε゚)キニシナイ!!
おまいら、煽られちゃったり・放置されちゃったり、流れにのれずレスを外しても(゚ε゚)キニシナイ!!
そこにアキラたん(*´Д`*)ハァハァ(*´Д`*)ハァハァがあるなら(゚ε゚)キニシナイ!!
合言葉は(゚ε゚)キニシナイ!!

2名無しさん:2003/02/04(火) 15:30
ここ何につかうんだろ?

3名無しさん:2003/02/09(日) 01:22
クリード同じ手何回使うんだよ…
(゚ε゚)キニシナイ!!ようになりてい

4名無しさん:2003/02/13(木) 13:43
ここにチャットを設置したらどうなるか、と言ってみる。

5失楽園:2003/03/01(土) 00:32
ここを使わせてもらっていいものかとたずねてみるテスト。

6名無しさん:2003/03/02(日) 00:10
いいんじゃね。
このスレ、あんま使われてないし、プチ住民(゚ε゚)キニシナイ!! といってるくらいだから(w、
有効活用したら(・∀・)イイ! と思うyo。
アキラたんとオガタンの情事の後、リビングにいるヒカルたんとはどんな展開になるか、楽しみだ。

7名無しさん:2003/03/02(日) 11:33
プチヤマネコが機能しない時はここにうpしてもいいものだろうか?と問いかけてみる。

8名無しさん:2003/03/02(日) 12:32
>>7
それオレ賛成だな。ヤマネコ見れなくて寂しいよ。
ここでうpしてくれれば嬉しい。

9失楽園:2003/03/02(日) 13:36
じゃあ遠慮なく(w

10失楽園:2003/03/02(日) 13:37
 開け放たれたリビングのドアを潜ると、ソファの上に脚を組んで座る進藤ヒカルがいた。
そのいかにも健康的な色艶をしている頬が赤いのは、自分とアキラのセックスの様子を
彼が想像していたからに違いない。ただでさえ想像力が逞しい年頃である上に、我を忘れ
かけたアキラは奔放に声を上げていた。目を閉じて耳を塞いでも、このマンションがどれ
ほど防音設備が整っていても、掠れた嬌声は幻聴のように頭の中で何度も繰り返し響いて
くるはずだ。
 アレはそういう生き物だ。自分がそう仕向けそして躾けた。元来の生真面目さがアキラ
にとっては仇となり――緒方にとっては嬉しい誤算ではあったが――期待以上に成長した
インキュバス。それがアキラだった。
 緒方はドアに凭れ、自分にまだ気づかずにいるヒカルを見遣ると口の端を僅かに上げる。
こちらを確かに見ているはずなのに、ヒカルの視線は虚ろだった。
「マスターベーションでもしているかと思ったんだが」
 何気ない口調の一言にさえ、ソファの上に座った小柄な身体は大げさなほど激しく反応
する。教師に居眠りを注意されたときの同級生の仕草を思い出し、緒方はクックッと喉を
震わせた。
「流石にここでする男気はないか」
「――――っ」
 緒方の言葉を侮辱と取ったのか、ヒカルはギリと奥歯を噛み締める。
 大きな瞳に漲る怒りはしかし、緒方が室内に一歩足を進めると途端に弱くなった。

11失楽園:2003/03/02(日) 13:38
 緒方は気怠げにソファの前まで歩み寄ると、ヒカルの胸元に手を伸ばした。遠慮なく伸
ばされた緒方の手から逃れるように身体を捩ったヒカルは、ソファの背に背中をぴたりと
着けた。追い詰められた猫さながらに。
「ふぅん…怯えているのか?」
「……っ、誰が」
 ヒカルの喉元をゆっくりと指先で擽りながら、緒方は酷薄の笑みを浮かべる。アキラも
凛とした美しい眼をしているが、この子の強い眼差しもどうだ。まだほんの子供のような
のに…アキラの誘いを拒否できる強靭な意志さえ、この子供は備えているのだ。
「安心しろ、もうおまえには手を出さん。――喉が渇かないか」
「すっげ渇いた」
 一つ頷くと緒方は踵を返し、リビングと繋がっているキッチンへ向かう。
「オマエが飲めそうなものといえば、オレンジジュースとミネラルウォーターしかないが」
「両方欲しいや」
 こういった場面でのヒカルの遠慮のなさは、アキラには決してないものだった。だが、
その無遠慮さは子供らしくとても好感が持てるものである。ヒカルの希望通りに、緒方は
グラス2つと、冷蔵庫の中から取り出したボトルを持ちリビングへ取って返した。
 ヒカルは緒方がグラスに注ぎ手渡した水を一気に飲み干した。緒方が呆れ顔で2杯目を
満たすと、それも勢いよく傾ける。
 緊張し、そして泣き、身も世もなく喘いだのはほんの1時間ほど前のことだ。
 ヒカルの喉が常になく渇えているのは当たり前のことだった。

12CC</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/02(日) 14:01
じゃあオレもいいかな?
コレ、かなり(盤上もだけどw)自分の趣味に走りすぎた感があるんで
ここでうpさせていただく。あと、平安幻想異聞録のゲームをやったことないので
細かなところとかは設定が違うかもしれないのは勘弁。

13月の船(2)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/02(日) 14:09
part26
>>859

《孤独な陰陽師》

内密の指令は 苦もなく すぐ片付いた。
明は夜明けとともに任務の依頼を受けた貴族に事の結末を筆にしたため
て、すぐ文を出す。
そして自分の館に戻るため、朝日が顔を出すとともに牛車に乗る。
本当は式神の1人である銀夜叉に跨れば宇治から都までは一飛びなのだ
が、出来るだけ普通の人間らしく振舞おうとする明は牛車で帰る方法を
選択した。
異質な者との付き合いや、また その環境に長く身を置くと世間の常識が
分からなくなる事があるためである。

帰り道の途中、朝早くから畑で農民達が息を白く吐きながら歌い、畑仕事
に精を出している。その農民の中の1人の女は背中に幼子をくくりつけな
がら農作業をしていた。女を見ると まだ年若いが、子をあやす姿は母親
の役目を よく理解し、母性が滲み出ている。背中におぶさっている子は、
満ち足りた幸せそうな表情をしている。
明の耳に その女の子守唄が届いた。
明は母を知らない。母どころか父も兄弟の話を聞いた事がない。
物心ついた時には、すでに陰陽道の修行に身を投じていた。
明は知識は並外れ長けて豊かだが、どこか無機質で人間らしさが感じられ
ない雰囲気を醸し出すところがある。それは幼少時の育った土壌が原因で
あるのは明白なのだが、人と相容れなく、交わるのが苦手な明は常に冷淡
な印象を人に与えた。

14月の船(3)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/02(日) 14:10
一般的に人は親の愛情に触れて愛するという感情を覚えていくものだが、
明には その肝心な過程を得られなかった。
それは すなわち情を知らない事になる。情に触れることが少なかった
者は、人間関係に やや不器用なところがあるのが多い傾向にある。
明は愛情には関心がなく、自分には縁のないものと思っている節がある。
男と女は成長して成人になると自然の法則に習い、結ばれて子を成し、
血脈を絶やすことなく新たな命を この世に生み出す。
生きとし生ける者達のごく自然の道理の輪から逸脱している自分を以前
は特に何も感じなかった。
でも、今は違う。
もう二年も前のことになるが、都に多くの妖怪が現れて、近衛などの
多くの人達で命がけで妖怪討伐した時から自分の中の何かが変わりだし
た。あの時、初めて人の情に直に触れた。
近衛に自分の手を握られた出来事は、昨日の事のように今でも その情景
が鮮やかに脳裏に甦る。
明は賀茂一族から異端視されて、人の手ではなく幼い頃から式神達の手で
育てられた。だから、人の肌の暖かさを知らずに十年以上も生きてきた
経緯がある。
近衛の柔らかく暖かな手の感触は、明に大きな衝撃を与えた。
他人と一線を置いてきた明は、その時 初めて人と触れ合って生きていき
たいという人間として当たり前な感情が湧いた。暖かな手は、明の身の上
を改めて孤独なのだと心身に痛感させ、また自分の本心に気付く結果と
なった。

15月の船(4)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/02(日) 14:17
自分は愛情を最初から望んでいないのではなく、自分には縁の無いものと
諦めていたという事を―――。
心奥片隅で そんな自分を寂しい人間だと思ったりもする。
明は そんな自分自身をよく自覚していた。

──では、幸せとは どういうものだろうか。

明の思考は いつもそこにたどり着き、そこで止まる。いつまでも答えの
出せない問いに、暗澹とした気分になる。
牛車は、山里・宇治から平安京へと長く続く路を ゆっくり向かう。
都に着いたのは、すでに陽が傾き雲が桃色に染まり、茜色が空を埋め尽く
している時刻だった。
「賀茂様、館に着きました」
従者の声と同時に牛車は明の館に着き、敷地内で止まった。
「・・・ご苦労であった」
牛車と従者は、主人である依頼元の貴族の館へと帰っていった。
明の館は装飾少なく質素な造りで、寝食住さえ出来れば構わないという
館の主の趣向を見事に表している。また、敷地内には、これまた花々の
咲く木々など一つもなく、松などの針葉樹だけの殺風景な庭園であった。
平安時代の高貴な人々は、館や造園をお互い競って手にかけ、色艶やかな
四季の移ろいを上手く取り入れて優雅な王朝文化を築いた。
それらは、主の心模様を映し出しているといっても過言ではない。
花の一つも無い寂しげな庭園・質素な館は、明の心そのものを投影して
いるのかも知れない。以前は式神達を館の中に自由にさせていたが、今は
必要な時だけ呼ぶようにしている。なので、館には明が独りで住んでいる。
誰も自分を待つことのない館を改めて見ると、やりきれない感情が込み
上げてくるのを感じた。
内心 荒波の如く飛沫を上げうね狂う心を無理やり隅に追いやり、
無表情で つとめて冷静に明は振舞う。そんな部分も長年に渡って形成
された心の有様である。
そんな自分を また改めて愚かだと明は思う。

16トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/02(日) 15:04
(40)
アキラは、口の中で急激に大きくなったヒカルの分身に対応しきれずに、息苦しくて
一度口を離して大きく息を吸った。ヒカルの亀頭は、薄暗い中でもピンク色に艶々して
いるのが分かる。アキラが舌を出して、裏筋をスーッとなめると、刺激を悦ぶように
ヒクヒクと陰茎が揺れ、ヒカルの声が大きくなって下腹部に力が入るのが分かり、
さらにアキラを駆り立てる。
息を整えたアキラは、再び刺激を待ち望んで震えている陰茎全体を口の中に収めた。
歯が当たらないように、喉の奥を開くようにして咥え込み、弾力のあるヒカル自身を、
目を瞑って味わう。
鼻先にはヒカルの柔らかい茂みが触れ、甘酸っぱい匂いがして更に五感を刺激する。
アキラは夢中で初めてのヒカルの分身を味わっていた。唇にキスをしてヒカルの舌を
捕らえた時とは違った一体感があり、より深くヒカルを手に入れられるような気がした。
アキラの口の動きに合わせるように、ヒカルの声も大きさを増していく。一回目に
アキラの手によって果てた時と違って、声の中に震えが混ざっており快感の深さを
感じさせる。その声を聞きながら、アキラは一直線に動きを加速させた。口の中に
入り切らない根元の部分は右手を使って早い動きで扱き、口は比較的柔らかく吸い
上げるように出し入れする。
アキラの唾液と舌の動きで『ジュルッジュルッ、ビチョビチョッ』と淫猥な音が部屋中に
響き渡っていた。
その音に二人はさらに煽られて頂点に向かって走って行く。ヒカルは苦しいのかと
思わせる喘ぎ声を出し続け、アキラの髪を掴んで押し付けるようにして自らも腰を
動かして快感を貪っていた。
フィニッシュが近い事を感じたアキラは、左手をヒカルの腰から胸に回して、硬く
なっている突起を捕らえて摘みながら、口の動きを加速した。
ヒカルは喘ぎながら頭を打ち振り、一瞬体を硬直させるとアキラの髪を強く掴みながら
泣きそうな声を出す。
「・・トーゃぁっ、出ちゃう・・・・トーゃぁぁ!ん・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」
アキラの口の中でヒカルの分身は悦びの証を放出した。

17トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/02(日) 15:05
(41)
喉の奥に放出されたその液のためにむせて、アキラは一瞬胃の中の物が逆流しそうに
なったが、それを何とか押し戻し、ヒカルから断続的に放出される精を、喉を鳴らして
飲み込んだ。

連続して与えられた刺激に、ヒカルは完全に虚脱状態だった。
体の力が抜け切っており、汗ばんだ身体の周りは熱気が揺らめいていた。
暫く大きく肩を上下させて呼吸を整えていたが、立て続けの放出の余韻から徐々に
醒めると、やっと思い出したようにアキラの頭を軽く撫でながら話しかける。
「トーヤぁ・・・・・・、トーヤぁ?」
「・・・・・・・・」
「トーヤぁ、なぁ、トーヤ?」
そう言いながら、自分の股間に顔を埋めているアキラの頭を揺すった。
だが、アキラはヒカルの分身を咥え込んだまま、全く動く気配が無い。ヒカルは心配に
なって何度も声をかけるが、聞こえてくるのは荒い息遣いだけだった。
「トーヤ?どうしたんだよ?トーヤ、大丈夫か?」
ヒカルは自分の胸に当てられているアキラの熱い左手を握り締めながら、もう一度頭を
揺らしてみるが、アキラは顔を上げようとしなかった。

アキラの頭の中は霞がかかっているようにぼやけており、口の中で小さく脈打って
いるヒカルの分身を感じながら、別世界を漂っている気分だった。
───もっと、もっと、もっと、もっと、もっと・・・・・・・・・
頭の中で呪文のようにこの言葉が反復しているが、それ以上先の言葉が見えて来ない。
ヒカルの自分を呼ぶ声が遠くで聞こえるが、せっかく口の中にある愛しいヒカルを
手放すと、何もかも失うような不安が襲って来て、顔を上げる気にならなかった。

18名無しさん:2003/03/02(日) 18:38
小説ありがと〜!
自分もヤマネコがポシャった時にここを使うのはありだと思うよ。

19名無しさん:2003/03/03(月) 00:33
なんかプチ荒れてるようなので、ここに新作うpさせて下さいです…

20碧の楽園−1:2003/03/03(月) 00:37
今日は久しぶりに碁会所で、アキラとヒカルは一局打った。
打ち始めた時は碁会所も閑散としていたが
終局の頃にはギャラリーも増え、賑やかになっていた。
その場で軽く検討をしたが、周りが賑やかすぎて話が進まず、
結局その場は一旦切り上げて、アキラの家で続きを再開することになった。

塔矢邸への道すがら、検討の途中ではあったが、碁盤を離れていると
自然と話題は他愛ない日常の話になった。
ヒカルは、あかりにせがまれデパートで買い物に付き合った話をした。
「あいつ、彼氏が出来たらしいんだけど、プレゼントが選べないから助けて、
 とか言ってきてさー。
 でも、デパートなんて行くの久しぶりだし、なんか居心地悪かったー。」
ヒカルは頭に手をやり、ばつ悪そうに笑った。
アキラはふと、ヒカルの周りの空気に心地よい違和感を感じた。

21碧の楽園−2:2003/03/03(月) 00:39
アキラの部屋は、殺風景にさえ思える程に物がない部屋だが
唯一、書棚には沢山のファイルが並んでいた。
ヒカルは、その中から自分の名前が貼られたファイルを手に取った。
中には棋譜が納まっていた。随分たくさんあるようだ。

「おまたせ」
アキラがカップを二つ持って部屋に入ってくる。
「サンキュ。ね、塔矢、これ……?」
「あぁ、棋譜?」
「俺の棋譜って、こんなにないと思うんだけど?」
アキラと違いヒカルは、公式戦で棋譜が残るほど上位の予選までは
まだ食い込めていない。

「ボクと打ってるだろ。うちとか、碁会所とかでさ。」
「えー、そんなんもいちいち取ってるのかよ!」
「当たり前だろう。それよりキミは棋譜残してないの?」
アキラは持ってきたカップを置き、ヒカルのすぐ隣でページを繰る。
ほら、この間のやつだって、と開かれたページは、
確かに前回手合わせしたときのものだった。
この分なら、さっき碁会所で打ったやつも後で足されるに違いない。

22碧の楽園−3:2003/03/03(月) 00:40
「進藤、なんかいつもと匂い違うね。シャンプー変えた?」
「あ、分かった?実は香水つけてみたんだけど・・・どう?」
「どう、って……?香水って?どうした?」
アキラは驚きで、一瞬目をしばたたかせた。
「うんまぁちょっとさ。それより、どう?俺結構気に入ってんだけど」
ヒカルは満面の笑顔でアキラの顔を覗き込んだ。その瞳は嬉しそうに輝いている。
本当に気に入ってるんだな、とアキラは嬉しくなり、笑顔を返した。
でもなぜ、香水をつける気になったんだろう?
一瞬のうちにいろいろな可能性が逡巡した。
アキラは笑顔のままだったが、ヒカルはアキラの瞳の混乱を見て取った。
アキラの両頬に手を伸ばし、アキラの額を自分の額に引き寄せた。
「いつ、気がついた?」
アキラは、ヒカルからはっきりと立ち上る、慣れない香りに少しむせた。
「今さっき。でも、うち来る途中でなんかちょっと違和感あったんだけど。」
「打ってるときは、気づかなかったんだ…?」
ヒカルの口調はさらに穏やかだった。アキラは軽く頷いた。

23碧の楽園−4:2003/03/03(月) 00:40
「塔矢、これ、この匂い、俺達だけの秘密な。」
「秘密?って??」
「うん・・・香水にもいろいろあって、これは、俺と、俺の腕の中の人にしか匂わない
 オレの腕の中の人のためのもの、だから。」
ヒカルは、あかりにせがまれ連れていかれたデパートで見た、
クレオパトラか楊貴妃のような迫力の、オリエンタル美人の店員の言葉を
聞いたままになぞった。

「腕の中の人、って、ボクの他に何人居るのかな・・・?」
アキラはすこし意地悪しようと思い、わざと不安げに囁いた。
「なんだよ、それ・・・」ヒカルはぴくりと身を堅くした。
「塔矢のほかに居る訳ないじゃん・・・!これだって、塔矢のために選んだんだぜ?
 でも、塔矢が嫌なら、もうつけないよ」

アキラは返事の代わりに、ゆっくりとヒカルを抱きしめて顔を埋め
深呼吸してヒカルの香りを確かめた。
それは甘くてすがすがしく、それでいてしっかりした花の香りで、
遠い南国の、穏やかに澄んだ青空や海を思わせた。
進藤らしい匂いでもあり、らしくない匂いでもあったが
暖かさを感じさせる、心地よい香りだった。
香りに引き寄せられるままに、アキラはヒカルにキスをした。
ヒカルの体温が、いつにも増して暖かく、心地よかった。
やさしく何度もキスを重ねながら、瞼の裏に、碧の楽園を垣間見た。

24トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/06(木) 00:54
(42)
心配になったヒカルが、自分の身体を持ち上げるようにしてアキラの頭を両手で
掴もうとしたが、サラサラとした固い髪がアキラの意思に従うように邪魔をして、
ちゃんと持ち上げる事が出来ない。
それでも身体を何とかアキラから離そうとして腰を少し動かした瞬間、アキラは再び
弾かれたように勢い良く口と舌を動かし始めた。

「!やっ!!やめろ!放せ!トーヤ!・・・・・うっ、やめろってば・・・ぁぁぁ!」
ヒカルは無理やり与えられる刺激に一瞬眉をひそめながら、何とか逃れようと腰を
移動させる。
ズボンと下着が太腿に絡み付いているので、上手く足を動かす事が出来ない。
無理に動かした足が障子に当たって、ドタンと大きな音をたてたので、驚きで二人の
動きが一瞬止まった。アキラが怯んだ隙に、ヒカルはさらにアキラの髪を掴んで
ひっぱり上げながら腰をずらして行くが、自分の大事な部分を咥えられているので
腰が思ったように動かず、結局横に倒れる姿勢になってしまった。アキラもヒカルの
動きに合わせて身体を捻ったのでやはり倒れ込む姿勢になったが、それでもヒカルの
分身を口から離す事は無かった。
───もっと、もっと、もっと・・・・・・・離さない、絶対に離さない・・・・・・・

アキラは夢中でヒカルの分身をしゃぶっていた。さっきのヒカルの反応で、感じる
所は分かっていたので、そこを重点的に舌で嘗め回し吸い上げると、たちまち固く
なり容量を増してきた。アキラの的を射た舌の動きに、ヒカルは堪らず声を上げた。
「うっっ、トーヤぁ、ダメだってばぁ・・・・・・うぅっっっぅ・・・あぁぁ!!!」
ヒカルは逃れる事を諦めてバタリと頭を畳に落とすと、新たな快感に身を委ねる。
気がつくと、目の前にアキラの下腹部があり、仄かな明かりの中でも、チャックの
部分が盛り上っている事が見て取れる。
ヒカルが左手で盛り上っている部分に強く触れると、アキラが大きく反応した。
「うググっっ、んっっっ!!」
その声を聞いたヒカルは、上体をさらにアキラの下腹部に近づけてチャックに手を掛けた。

25トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/06(木) 00:56
(43)
ひたすらヒカルの分身にしゃぶりついていたアキラは、首から上がひどくのぼせて
いて思考能力が低下しており、身体の感覚も鈍くなっていた。いきなり下半身を
ヒカルに触れられて忘れていた自分の分身の感覚が急激に蘇って来た。

ヒカルがチャックを開けようとする動きに、ヒカルの意図を察して、アキラは逃れ
ようと必死に下半身を動かし始めた。アキラは、一度放出して精液にまみれた自分の
分身をヒカルに見られたく無かったし、昂ぶったソレは触れられたらすぐにでも果てて
しまいそうだったからだ。
アキラは何よりもヒカルを味わうことに固執していた。
二人の横たわった身体は、畳の上でモゾモゾと下腹部を追いかけて這い回っていたが、
ヒカルはアキラの腰を左手で強く押さえ込んで、
「動くなよ、トーヤ!」
と声をかけると、素早い動きでチャックを開けて、中の陰茎を引っ張り出し、迷わず
咥え込んできた。
「!!グググっっ・・・・・ぅんガぁぁぁぁ!・・・・・」
アキラはヒカル自身を咥え込んだまま悲鳴を上げた。今まで味わった事の無い快感に、
全身から汗が噴き出して、のぼせた頭がさらに熱くなり、涙が溢れてくる。
ヒカルが自分の分身を咥え込んでいると思うだけで、アキラはすぐにでも果ててしまい
そうになるが、神経を自分の舌にだけ集中する事によって、なんとか踏み止まっていた。
アキラは、今まで以上に舌を使ってヒカルの男根を嘗め回し、口による抜き差しを繰り
返していた。アキラが強く吸い上げると、ヒカルも負けまいと吸い上げる。アキラが
激しく抜き差しすると、ヒカルも同じように激しさを増す。アキラが右手で根元を強く
擦るとヒカルも真似をして擦る。
「うググぁぁぁっっ!!!んグっっっっ・・・・・!!」(ビチョビチョ、ジュルジュル)
「グぅぅぅぅんグっっっ!!うグぅぁぁっっ・・・・・!!」(グチョグチョ、ブチュブチュ)
お互いに自分自身の陰茎を咥えている錯覚に陥りながら、二人自慰行為に溺れて行った。
静かな部屋に、二人の呻き声と淫猥な音が混ざり合って木霊する。

26失楽園:2003/03/08(土) 15:07
「先生もオレンジジュース飲むの?」
 グラスをテーブルに置いたあと、思い出したようにヒカルが顔を上げた。
「いや…。彼が飲むだろうと思って」
 二人の間に、沈黙が落ちる。今まで喋っていたのはこの沈黙を避けるためだったのかと
思わずにいられないような沈黙だった。
「……彼、ね」
 ヒカルはぼそりと繰り返し、まだ栓を開けられていないトマトジュースにしか見えない
真っ赤な液体の入ったオレンジジュースのボトルを見遣る。
 緒方がこれを買い置いているのはたまたまだったのか、それとも『いつかあるかもしれ
ないアキラの訪問』に備えてだったのか、そう信じたい自分の希望を満たすためだったのか。
 ヒカルには判らないでいる。そして、ヒカルが見ているものを無表情で眺めている緒方も
その真意を解らないでいるに違いなかった。
「緒方先生…アイツは?」
「――シャワーを浴びてる」
「そっか」
 緒方とアキラが今まで寝ていたことは今更疑いようのない事実だった。緒方の少し乱れた
髪や、スラックスの皺や匂いがそう知らしめている。
 アキラを再び捕らえたことを、ヒカルに無言のうちに見せ付けている。
 自分でアキラの手を拒んだはずなのに――ヒカルはそれらを複雑な思いで見ていた。

27トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/10(月) 20:37
(44)
先に根を上げたのはヒカルだった。すでに二回、アキラによって到達させられていたが、
アキラの巧みな口撃に三回目の限界を迎えようとしていた。口の中でそれを感じた
アキラは、自分の神経を下半身に集中させて、ヒカルの愛撫を全身で感じる事にした。
生暖かく柔らかい壁に包まれて刺激されるアキラの分身は、極楽界に居るようで、全身が
震えて今まで以上に汗と涙が溢れてきた。
お互いに、自らの腰も動かして最後の快感をむさぼり合い、絶頂へと到達した。
「!ん!グうぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「!うぅ!ん!うぅぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
二人はほぼ同時に、くぐもった嬌声を上げた。
ヒカルは嬌声と共に口を半分開けてしまったので、放たれた精を全部は飲み込めずに、
口から頬にかけて白濁液を流しながら顔をアキラの分身から離して大きく空気を吸い
込み、何もかも弛緩した状態で横たわった。
アキラは、ヒカルの分身を咥えたまま吐き出された精をうまく飲み込むと、急激に
身体が重くなるのを感じて意識が朦朧として来たが、口の中で脈打つヒカルの分身が
愛しくて仕方なく、意識が無くなる直前まで舌を動かして舐めまわしていた。

暖房を入れていない部屋の中は、それでも二人の熱気でむせ返っており、静かな部屋の
中には二人の息遣いと柱時計の振り子の音だけが響いていた。
一体どれ位の時間、二人は横たわったまま意識を飛ばしていたのだろう。
最初に動いたのはヒカルだった。そしてアキラの息が下腹部に触れることで、アキラが
まだ自分の分身を咥えたままでいる事に気付いた。
「なぁ、トーヤ・・・・・・トーヤ?」
そう言いながら上体を起こしてアキラを見ると、アキラは黙ってヒカルの股間に顔を
埋めていた。
「おい、聞こえるか?トーヤ?トーヤ!・・・・・・トーヤってば!」

28トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/10(月) 20:37
(45)
アキラは意識を失っているのか眠っているのか自分でも定かではなかったが、夢の中を
漂っているようで重かった体がふわりと浮いているような気分だった。
他の人間が触れることの出来ないヒカルの身体の一部分を手に入れた事で、刹那的な
満足感で一杯だったが、何か言い知れぬ物足りなさを感じてもいた。
ヒカルの淫靡に輝く眩しい顔が目の前をグルグル回って誘っているのに、抱き締める事が
出来ずに、もどかしい気持ちで追いかけているような気分だった。
遠くから自分を呼ぶ声がして、だんだん意識が現実に戻って来る。あれ程熱かった身体も
冷めて来て、部屋の空気を寒いと感じるようになっていた。
大好きなヒカルの自分を呼ぶ声が段々はっきりと聞こえて来た。

ヒカルは心配になって大きく体を動かそうと下半身に力を入れて横に動こうとした。
その瞬間、アキラは条件反射の様に口の中のモノを奪われまいと、強く噛み付いて来た。
「うわぁぁ!痛ってェ!!!バカ!!何すんだよ、痛いだろ!!やめろよ、塔矢!!」
強い口調でヒカルに怒鳴られて、やっと完全に意識が戻ったアキラは、慌てて顔を上げた。
アキラは下を向いたまま声を出す。
「ゴ・・・・ごえん・・・・」
「??塔矢??」
アキラはずっと口を開いてヒカルの分身を咥えていたので、顎がガクガクになっており、
口を閉じる事が難しく、言葉をちゃんと喋る事が出来なかった。
二人は起き上がって向かい合った。
情けないアキラの顔を近くで見て、ヒカルは大声で笑い出す。
「ウッヒャヒャ!!お前のそんな顔、始めて見たぜ。アッハハハハ」
「ヒ・・・・ひろい・・・・」
「そんな泣きそうな顔する事ないだろ。どれ・・・・」
ヒカルは穏やかな表情でアキラの両顎を手のひらで押さえて、軽く撫で回した。
「お前、やり過ぎなんだよ、もう、全くさぁ・・・・・・ほら、ちょっとゆっくり口を閉じて
みろよ」
「あん・・・・あ、ううぅぅ・・・いたっ・・・・」

29失楽園:2003/03/11(火) 22:15
 喉の渇きは未だ収まらないでいる。
 赤いオレンジジュースを飲みたいと言ったら、緒方はどうするだろう。勿論ここに持ってきてく
れているということは、自分が飲んでもいいということなのだろうが、それは塔矢のために取って
おくべきものなのかもしれない。緒方の塔矢へのメッセージが隠されているかもしれない。
 ヒカルは纏まらない頭で色々なことを目まぐるしく考える。取り留めのないことを考えるのは
小さいころから得意ではなかったが、偶には考えなければならないこともある。
 アイツがいなくなったときだってオレはたくさん考えた――そして折り合いをつけることができた。
 たくさん考えて、自分の中で納得させて。その繰り返しが人生というヤツかもしれない。
「ねえ先生」
 ヒカルは隣にどかりと腰を下ろした緒方を見上げた。日本人離れした彫像のような横顔を緒方は
持っている。確かにカッコいいのは認めるが、どことなく爬虫類を思わせる目は好きになれない。
 それでも、緒方はヒカルの窮地を助けてくれた。初対面のときはやたらと大きくて怖いイメージ
しかなかったのに、ヒカルが緒方に対して臆することがなかったのは、院生試験を受けられるよう
口添えしてくれた緒方を”思ったほど冷たい人ではないのだ”と認識したからなのかもしれない。
「――なんだ」
 いつも自信に満ち溢れ、滑舌がハッキリしている緒方には珍しく、疲れきったような溜息交じり
の応えがあった。ヒカルは気後れしたようにテーブルのグラスを手に取る。待っていても緒方はお
代わりの水を注いでくれそうになかったから、ヒカルは氷が溶けたあとの水を一口飲んだ。
「あのさ、先生さぁ…」
「なんだと聞いているだろう。アキラくんに聞かれたくない話なら、さっさと終わらせろ」
 だらしのない喋り方は好かん。緒方は吐き捨てるように呟くと、足を大きく組み、膝の上で頬杖
を付いた。顎を上げ、上からヒカルを見下ろすように視線を投げてくる。

30失楽園:2003/03/11(火) 22:15
 緒方に至近距離で睨まれたのは初めてだった。
「さぁ、オマエが馬鹿じゃないんなら簡潔に言ってみろ。何が言いたい?」
 与えられる視線のその冷たさにヒカルは唾を飲み込んだ。
「――っ、じゃあ言うけど、先生さ、塔矢のこと、すき、なんだろ?」
 好きという単語を口にすることにもヒカルは慣れていない。つっかえつっかえ紡いだ言葉だったが、
蔑むような視線を放つだけだった緒方の眼は虚を突かれたように見開かれた。
「自分じゃ隠してるつもりなのかもしれないけど、オレには解るよ」
「好き――か…」
「何で笑うんだよ」
 ヒカルは頬を膨らませた。俯いた緒方が突然笑い出したからだった。
 緒方は一頻り肩を揺らして笑った後、仮の話だがと前置きして顔を上げた。
「オマエの手元にオモチャがあるとする。ずっと欲しくて、欲しくて…ようやく手に入れたオモチャ
だ。だが、どんなに大事にしていてもやがて飽きる。それは避けられようがないし仕方がない。
――オマエならどうする?」
 仮の話だと言われても、緒方が例える『オモチャ』が何を指すのか、判らないわけではなかった。
だが、ヒカルはその問いに上手く答える術を持たないでいる。
「どうする……っていったって、いつか飽きたら仕方ないじゃん」
 飽きることを認識する前に、その存在を忘れてしまうのが普通だ。そもそも玩具に飽きたからと
いって一々悩んだこともヒカルにはなかった。
「オレは、飽きていつのまにか失くしてしまう前に必ず壊した。オレの手でだ」
 ヒカルは緒方の手を見つめた。いかにも棋士らしい整った爪先を持った指は、しかし節は太く
手の甲には幾筋もの血管が浮かんでいる。手だけではない。鍛えた身体なのはその服の上からでも
容易に判っていた。
「まさか、塔矢も…?」
「……彼もいつかは、セックスを覚えるだろう。彼がいつか誰かの手に触れられ、そして汚される
しかないのだとしたら――、彼を汚すのはオレでありたかった」

31トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/17(月) 20:16
(49)
戻ってきたヒカルは、コートとバッグを拾い上げて身につけながらアキラを見ずに言う。
「やっべー。もうこんな時間だったんだな。早く帰って来いって怒られちゃったよ。
明日は学校にも行かなくちゃいけないし、オレ帰るわ」
「・・・そうだね。駅まで送るよ」
「大丈夫だよ、一人で」
「きっと道が分からないよ。来る時はけっこう裏道を通って来たし、その方が早いから
送るよ」
「そうか?悪いな、塔矢」

隣家の横にある細い脇道を抜けて、駅に向かって二人は歩いていたが、どこかぎこちなく、
そこはかとなく緊張感が漂っていた。
肌を触れ合った事による気恥ずかしさもあったが、ヒカルがアキラのPCを意識した事が
大きな原因である事を二人とも十分に分かっていた。
アキラは、少しでもヒカルを手に入れた気持ちになっていた自分に腹立ちを覚えていた。
───そう、キミには大きな秘密がある。それをまだボクに明かしてくれていない。
視界の中に入るヒカルを横目で見ながら、アキラは出来ることならここでヒカルを問い
詰めたかった。
───キミとsaiはどういう関係なのだ?saiはキミの何なのだ?
今のアキラにとって、saiが誰であるかよりも、ヒカルとsaiがどんな関係にあるのか
という事のほうが何倍も気になるのが本音だった。
出会った頃のヒカルの打つ碁がsaiであると感じていたが、最近は現在のヒカルが彼の
全てだと思うようになっていた。そしてアキラにとって、今のヒカルが何よりも大事な
存在であるために、saiの事には蓋をして、いつか話してくれると信じながら心の奥底に
閉じ込めていたのである。
それが思わぬ形で蓋が開いてしまい、新たな疑念が湧いてくる。
───キミにとってsaiはそれほど大事な存在なのか?saiと何を共有しているのだ?

32トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/17(月) 20:17
(50)
喉まで出掛かる言葉を飲み込みながら、アキラの頭の中に、ヒカルがほんの少し前に
薄暗い部屋の中で見せた嬌態と、PCを見て強張らせた顔が交錯していた。
ヒカルの身体は敏感で、触れる所全てに驚くほど反応してアキラを酔わせた。
まるで人肌に接するのに慣れているかのように・・・・・。
───ま、まさか・・・・・キミとsaiは肌を触れ合わせるような関係だったのか?!
そう思いついた途端に、アキラは鳩尾で異物がざわめくのを感じて嘔気がして来た。
心拍数が上がり、握り締めた手が震えて来る。
───そんなはずはない・・・・経験があるようには思えなかった・・・・いや、自分に経験が
無いから分からないだけかも知れない・・・・経験があったとしても、相手は女性かもしれ
ない。saiは女性か?・・・・まさか・・・・それは考えにくい。それにキミは触れられる事に
敏感な気がする。経験があったとしても構わないが・・・・いや、キミに触れた事がある
人間が居るなんて考えたくない・・・・だが、もしそれがsaiだとすれば、今saiはどうして
いるのだろう?キミが手合いに出て来なかった事と関係があるのか?それ程親しい関係
なのか?進藤!!教えてくれ、saiとキミの関係を!!
アキラは考えれば考える程息苦しくなってくる。存在すらはっきりしない相手に、激しい
嫉妬を感じて心が千千に乱れ、さっき触れ合ったばかりのヒカルが信じられなくなり、
さらにそんな自分に自己嫌悪していた。
ヒカルを失うのが怖くて直接聞くことなど到底出来ない。

少しでもさっきの温もりを感じるために、アキラはヒカルの手を取りたかったが、
ヒカルは両手をポケットの中に入れており手を伸ばしただけでは触れる事が出来ない。
ヒカルが意識して手を隠している訳ではないと思っても、拒絶されたようで心がさらに
落ち込んでいく。

33○○アタリ道場○○(4)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/19(水) 00:54
<おかっぱの国から2003・春ノ巻>

お父さん、だんだん日差しが暖かくなってきました。
ボクは今、日中韓ジュニア北斗杯真最中です。
北斗杯は5月に行われるのに、なんで春なんだというツッコミは
さておき・・・。ボクは毎日、進藤と社のお守りで大変です。

進藤は韓国戦の大将をやりたいと駄々をこね地団駄して、倉田さんに
ラリアートを一発喰らわしました。
そして、挙句の果て何故かホテルロビーでパラパラを踊りだしました。
まったく、彼の行動は いつも意味不明で不可思議な人物です。
社は社で、よく壁に向かってブツブツと1人ボケ突っ込みをかまして、
自分のネタに自分で大うけしています。
・・・・・・疲れます。

あと お父さん、緒方さんの行方は分かったのでしょうか?
緒方さんが行方不明になる前に最後に会った時、
「アキラくん、男は夜の生活に いつも勝利するためは、ひたすら日々
修行僧のように励まなければならない。
そして、腰は男の命だから大事にしろっ!!!」
と、言っていました。
何故か そのセリフを言った緒方さんの背中は、どことなく哀愁が漂って
いました。
ボクは緒方さんのセリフがイマイチよく分かりません。でも、ボクなりに
考えてみました。

34○○アタリ道場○○(5)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/19(水) 00:56
確かに碁を究めようとすれば、毎日が修行のようなものだと思います。
それに長時間の正座は、腰に負担がかかるのも確かです。
緒方さんのセリフには、本当に つくづく考えさせられます。
さすが緒方さんだなあと思いました。

・・・・・・・ああ お父さん。
ちょうど今、進藤が寝ながらホテルの部屋からゴロゴロと音をたてて
勢いよく廊下に転がってきました。
そして階段からドカドカと落ちています。←現在進行形
また、社の部屋から
「はもяもおおお%う?おぉぉж醞あああぁぁほが――――――――――――――!!!!!!」
という雄たけびが聞こえます。
寝言のウルサイ奴です。

はあ・・・、またボクは見なくてもいいものを見てしまいました。
眼前で、中国チームのメンバーがコマネチをしながら廊下を横切って
います。
さらに今度は、韓国チームのメンバーがレストランのテーブルの上で
生け花を始めました。
・・・ホント、疲れます・・・・・・。



お父さん・・・・・・、もう春ですねぇ・・・・・・・・・。
(おかっぱの国から2003・春 おわり)

35トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/21(金) 22:40
(51)
二人は殆ど会話をしないまま駅に着いた。
アキラが足を止めるとヒカルが振り向き、久し振りに視線を合わせた。アキラの顔を
見たヒカルは少したじろいでいるようだった。それだけ、アキラの表情は固く鬼気迫る
様相だったからだ。
それを感じたアキラは無理をして笑顔を作り、疑念を取り払った本当の気持ちを伝える。
「今日は来てくれて嬉しかった・・・・・」
そう言いながらヒカルの手に触れたくて腕を前に伸ばしかけるが、ヒカルはポケットに
手を入れたままでアキラの顔を見ている。笑顔のアキラの顔を見て、少しホッとした
ヒカルは真剣な表情で答える。
「うん・・・・・あのさ、塔矢・・・・・」
アキラの心拍数が激しく上がり表情も再び固くなる。
「何?進藤」
「・・・あ、いや、別に・・・・・じゃあ、またな」
と、言いながらヒカルは体を翻して足早に改札口に向かって行った。
その後姿は、さっき部屋で抱き締めていた人物とは別人のようで、アキラは無性に寂しく
切なく、結局ヒカルの何も手に入れられなかったような虚しさに襲われる。
ヒカルは振り向きもせず歩いて行く。背中のバッグだけが揺れながらアキラに手を振って
いるように見えて、思わず軽く手を上げてそれに応えた。
アキラの視界からヒカルが消えても暫く動かず、脳裏に浮かぶプラットフォームに立つ
ヒカルを見続けながら想う。
───キミを絶対に離さない、誰にも渡さない、誰にも触れさせない・・・キミの全てが
欲しい・・・キミの身も心も何もかも手に入れたい。

家に帰ったアキラはPCの前に座って暫く放心していた。
さっきまでこの部屋に居たヒカルの残り香を感じながら、今日の対局の事、緒方に浴びせ
かけられた言葉、そしてヒカルの事を考える。色々な事がありすぎて心の整理がつかない。
疲れていたからか、アキラはそのままウトウトと眠ってしまった。

36トーヤアキラの一日</b><font color=#FF0000>(3kp4n9f2)</font><b>:2003/03/21(金) 22:40
(52)
目が覚めるとヒカルが側に立っていて、碁を打とうと誘ってくる。久し振りの対局に心を
躍らせて碁石を持って打ち始める。お互いに息もつかせず物凄い速さで打ち続け、
アキラがやや優勢の盤面で、ヒカルは大きな音をたてて黒石を打ち込んでくる。それは
見事な一手で百戦錬磨のsaiを思わせる打ち回しだ。驚いたアキラがヒカルの顔を見ると、
ヒカルは声を出して笑いながら立ち上がり『ヘヘヘ、じゃあ、またな塔矢。オレsaiの所に
行くから』と言って金色の前髪をなびかせて楽しそうに走っていく。『待て、進藤!対局は
終わってないぞ!待て!待ってくれ!』
アキラは机をドタッっと叩きながら「進藤!!」と叫び起き上がった。
───夢か・・・・・・・。

アキラはPCの電源を入れた。
目的は、ヒカルと肉体的にさらに深く結ばれるために、おぼろげな知識をさらに確実に
するためだ。
今まではその未知の行為にそれ程の意味があるとは思っていなかったのが事実だ。
最初は抱き締め合えば満たされると思っていたのに、キスをしても、素肌に触れても、
二人で慰めあっても、身体に渦巻く欲望は満たされ尽くす事は無かった。
もっとヒカルの乱れる姿が見たい、自分の名前を漏らしながら喘ぐ声が聞きたい、
ヒカルを自分の手で溺れさせたい、全てを知り尽くしたい。
ヒカルの心を全て掴もうと思っても、ヒカルは秘密を打ち開けてくれず壁を作っている。
それだけは今のアキラにはどうしようもない事が分かった以上、せめて肉体だけでもより
深く手に入れたいとアキラは強く思った。

37</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/22(土) 23:39
プチ荒れてるから、今日はこっちでうpするよ。
プチ避難所の397たんの意見にオレは同意。

38盤上の月(49)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/22(土) 23:43
対局は終了した。
アキラの5目半勝ちだった。ヒカルはジッと盤上に視点を落としていて動かない。
いつもは憎まれ口の一つや二つを言うのが当たり前なのに、今日は ただ静かに黙っている。
明らかにヒカルの様子が普段と違う事にアキラは不思議に思った。
「進藤、いったい今日は どうしたんだ?
いつものキミらしくないし。何かあったのか?」
その時、ヒカルは今日初めてアキラの目を真正面から見据えた。ヒカルの目は、何処か強い怒りを
含んでいるようにアキラは感じた。
何故そのような目で自分がヒカルに見られるのか、アキラは まったく分からない。
「──塔矢、お前に話があるんだ」
「話?」
ヒカルは店内を気難しい表情で見回す。
「ここではできない・・・・。外へ行かないか・・・?」
「・・・それは別にかまわないが・・・・・・」
ヒカルが何を考えているかアキラには全然理解出来ない。分かる事といえば、今のヒカルは
何らかの事に強く動揺しているという事。それは今の盤上の一局で分かる。
何かに酷く心揺れているような、少し不安定で危なげな石の流れ。迷いの手の数々。
明朗活発な いつものヒカルの碁らしくない。
アキラとヒカルが碁会所を出た途端、店内がザワザワと騒然になる。常連の客達は、いったい何が
起こったのかと次々と話し始める。今までの二人のやり取りをよく知る常連客の一人である広瀬は
困惑した表情を晴美に向けた。
「市河さん 今日の進藤くん、なんか様子がおかしかったね。それに終局まで対局中にあの2人が
一言も口を聞かなかったことってなかったよね?」
「ええ、そうよねぇ・・・」
何が起こったのか晴美には分からない。晴美の胸に、何かこれから大変な事になるのでは
ないか・・・・・・という一種の胸騒ぎがした。

39盤上の月(50)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/22(土) 23:45
アキラとヒカルは、碁会所を出て近くの大きな公園に行き、噴水前のベンチに座る。
空は晴れ渡り透き通るような青空が広がり、噴水の水の粒は光に反射してキラキラと白銀に輝く。
柔らかな日曜日の午後がゆっくり流れる中、二人の間には張りつめた空気が辺りを包む。
ヒカルは一向に話し出す気配を感じさせなく、ただ黙って眼前の噴水をジッと見ている。
時間だけが流れて らちが明かないので、アキラから話をきり出す。
「進藤、話とは何だ? 黙っていても何も分からないだろ」
「・・・・・・・・・」
ヒカルは無言でアキラの方を見た。
「──お前、本当に何も覚えていないのか?」
「またそれか。いったい何のことだ?」
ヒカルは また黙ってアキラの顔をじっと睨むように見る。最初 ヒカルの表情は怒りに満ちて
いた。が、次第に目には悲しみの色を帯び、徐々に悲痛な表情に変わっていく。
──対局では何食わぬ澄ました顔をして碁を打つ。でも この前は目をギラギラさせて欲情し、
オレに抱かれようとする・・・・・・。
いったいどっちが お前の本当の姿なんだっ!?
普段は穢れなど一切知らない清廉潔白な印象で、威厳ある雰囲気を纏うアキラ。
でも、熱を持ち濡れた蠱惑的な瞳でヒカルを見つめ、白い肌を惜しげなく全てヒカルに預けようと
するアキラ。どちらも塔矢アキラという人物の持ち合わせている一面である事に、ヒカルは
恐ろしくなる。
どんな人間にも表の顔と裏の顔の二面性があるのは、ヒカルにも理解できる。もう何も知らない
無垢で幼い子供ではない。厳しい勝負の世界に生きる事を定めた人間でもある。
だが、アキラは強烈な光と闇を持つ。それらが深く交じり合い混沌とする性質を ごく当然に最初
からそこにあるかのようにアキラの中に存在している。それは あまりにも自分とは違う異質な
ものだとヒカルは感じる。
ヒカルはアキラの顔から自分の足元に視線を移し、左右に頭を振る。そして目を瞑った。

40○○アタリ道場○○(6)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 02:51
<お袋おかっぱノ巻>

「じゃあ行ってくる。戸締りは、気を付けるんだぞアキラ」
「アキラさん、後は お願いね」
「はい分かりました。いってらっしゃい、気をつけて」
日の落ちた夕方、行洋と明子は邸宅前の道路でタクシーに乗り、韓国に
行くため空港に向かった。
おかっぱは それを見送ると邸宅に戻り、居間で1人お茶をすする。
「あっ、そうだ。お母さんに頼まれていたことしなくちゃ。
もう、夕食時だし丁度いいや」
湯飲みを台所の流しで洗いながら、おかっぱは ある物に目を向ける。
その視点先にあるのは、古ぼけた一つの壺。
壺の上に置いてある板を取ると、中は ぬか床になっている。
塔矢家では食卓に漬物は欠かせない。このぬか床は、明子が結婚した時に
持ってきた物で、明子の実家秘伝とされる門外不出のぬか床だ。
そのぬか床は、すでに百年を経過していると言われ、漬ける野菜は極上の
ぬか漬けになる。まさに美味しんぼにも登場しそうな極上で究極のぬか床。
留守を預かる間、明子から おかっぱは「ぬか床コネコネ係」という塔矢家
食卓事情を左右する重大な使命を任される。
おかっぱは腕をまくり、「よっこいしょ」と、壺の前にしゃがみ、ぬか床
を右手でかき回し始める。
ぬかは毎日手入れをしないと、美味しいぬか漬けが作れない。
ぬか床をこねていると、幼い頃の記憶が おかっぱの頭に浮かんできた。
おかっぱは幼少時、明子と一緒に このぬか床に野菜を漬けた時、ぬかを
泥と間違え、お団子を作ったこともある。

41○○アタリ道場○○(7)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 02:53
「わー、べちゃべちゃだああっ」
4歳のチチャーイおかっぱは、楽しそうに壺に両手を突っ込み、ぬかを
コネコネする。
ネチャネチャとした感覚が楽しくて、覚えた手の歌を歌いだす。
「ほーらぁ おしょれないーで みーんなのためにぃ
あいとゆーきだけが とーもだーちぃさあぁあー♪」
「ほらアキラさん、コネコネしてばかりいないで、人参さんと
キュウリさんを その中に漬けてちょうだいな」
「はあぁ〜い、わかりましたぁあ!」
チチャーイおかっぱは いきなりズボッとぬか床から両手を抜き取る。
すると、勢い余ってぬかが飛んで、チチャーイおかっぱの頭や顔にベタリと
ついた。
「わぁああっ〜、くしゃいよおっ〜!!」
チチャーイおかっぱは、今にも泣きそうな表情をする。
「あらあらアキラさん、そんな元気に触ると そういうことになっちゃう
のよ」
明子はチチャーイおかっぱについたぬかをタオルで取り、おだやかに笑う。

・・・そんな事を思い出しながら ぬか床をこねていると幼い頃に、昔よく
歌っていた歌が自然と口から出る。
「ほーら おそれないーで みーんなのために
あいとゆうきだけが とーもだーちさあー♪」
(↑日本の囲碁界を震撼させている15才・射手座・AB型の天才おかっぱ
棋士)

42○○アタリ道場○○(8)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 02:54
その頃、塔矢邸玄関先に1人の男が立っていた。
それは緒方兄貴。塔矢門下一の出世頭である兄貴は いつも上下純白の
スーツ・紺のシャツ・黄色のネクタイという格好に徹している。
一見さまになってはいるが、純白の上着の変わりに赤の上着を身に付ける
と、実はルパンと同じ格好になってしまうのを他の門下生達は分かって
いるが黙っている。
ルパンネタは塔矢門下生、また囲碁界の禁句内容なのは暗黙の了解だ。
兄貴のスタイル。それは、お笑いとシリアスは まさに紙一重だという事
を無言で物語る。
兄貴は、偶然塔矢邸の近くを通ったので、一応様子がてらに足を向けた。
「そういえば、先生と奥様は今日に韓国に行かれたのだったな」
兄貴にとって おかっぱは、赤ん坊の頃から知っており、従兄弟・弟に
似た感情を持つ。手には、有名メーカーのプリンを携えていた。
が、何故か邸宅の中から、歌声が微かに聞こえくる。
「・・・アキラくん、何か音楽でも聴いているのかな?」
(※現在 塔矢邸台所、ぬか床前にて塔矢おかっぱ三段によるアンパンマン
の歌を生ライブ中)
機嫌良くぬか床をコネコネしながら、アンパンマンを歌うおかっぱの耳に、
呼び鈴が聞こえた。
急いで手を洗って玄関に向かい、ドア越しに「ハイ、どなたでしょうか?」
と、訪ねる。
「アキラくん、オレだよ」
「緒方さんですか?」
聞き覚えのある声におかっぱは、パッと顔を明るくし、玄関の鍵を開ける。
「近くを通ったまでに寄ったのだが、もう先生と奥様は出かけられた
のか?」
「ハイ、つい先ほどですけど」
兄貴は邸宅の奥を眺めながら耳を澄ますが、特に音は聞こえない。

43○○アタリ道場○○(9)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 02:56
「気のせいかな?」
「何がですか?」
「あっ、いやなんでもない。そうだ、アキラくんコレ」
兄貴はプリンを おかっぱに渡す。
「わあ、どうもありがとうございます」
おかっぱの顔がニッコリほころぶ。
「緒方さん、これから夕食を作るんですが、もしよろしかったら一緒に
どうですか?」
「そうだな。たまにはいいかもしれんな」
「じゃあ、決まりですね!」
親密な付き合いのある人物にしか見せない、屈託のない笑顔を おかっぱ
は兄貴に向ける。
おかっぱは兄貴を居間に通すと、再び台所に行く。しばらく居間に座る
兄貴だが、おかっぱにだけ料理をさせる訳にはいかないだろうと思い、
腰を上げ台所に足を運ぶ。しかし、目の前に異様な光景が映った。
そこには白の割烹着を着て頭に同じく白の三角巾をし、そそくさと家事に
いそしむ おかっぱの姿があった。
兄貴の背広は肩下に下がり、メガネはズルッと横にすべる。
「ア・・・、アキラくんっ、その格好はいったいどうしたんだっ??」
「どうしたって何がですが?」
何事もないように平然と振舞うおかっぱに対し兄貴は、急いでくずれた
背広を正し、ズレたメガネを手で直す。

44○○アタリ道場○○(10)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 02:57
「なっ、なんでまた いかにも『お袋さん』ってな格好をワザワザして
いるんだっ―――!?」
「何事も形から入れというじゃないですか?」と、おかっぱはシラッと
言う。
「まあ、それはそうだが。
っていうか、キミはもろハマリすぎなんだっあぁっ――――――――――――――!!!!!」
「そんなことはどうでもいいですよ、そうだ緒方さん。
今日はサバの煮つけ、それか鰆西京焼きのどちらがいいですか?」
「あ、オレはサバの煮つけがイイ・・・・い、いやそうじゃなくてっ!」
兄貴は焦った。日本の囲碁界を背負う人間の1人であるおっかっぱの
美的感覚を なんとか普通にしようと必死だった。
「アキラくん! ちょっとオレの話を聞いてくれっ」
「だから聞いているじゃないですか。
サバの煮つけと鰆西京焼きのどちらがいいって」
「だぁあ〜あああ〜からぁぁああ〜、人の話を聞けえええぇぇえ―――!」
「ハイハイ、何ですか?」
「ゼイゼイッ・・・・・、キミはもう少し日本の、いや世界の碁界を背負う自覚
を持たなくては・・・」
兄貴が言いかけていたその時、コンロにかけていた鍋が沸騰して、煮汁が
噴出した。
「あっ、火を小さくしなきゃ!」
おかっぱは、自分の目の前に立っている兄貴を勢いあまって吹っ飛ばして
しまった。が、鍋を優先して床に倒れている兄貴の背中の上を踏んづけて
火を止めに行った。

45○○アタリ道場○○(11)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 02:59
兄貴は、おかっぱに踏まれた時「げふっ!」とガマ蛙が鳴くような声を
あげた。
「さすがは母は強しの〝お袋〟パワーなりっ・・・・・」
兄貴はゴフッと少量の吐血をし、ガクンと床に顔を落とした。
「ちょっと緒方さん! お話は後で伺いますから、そんなところで
寝てないで、とりあえず居間で待っていてください!!」
おかっぱは、目をカァッ──!と見開いて、どエライ剣幕で怒鳴る。
そして、おかっぱは、目で捉える事の出来ない速さで、まな板上の大根を
タタタッと職人技のように みな同じ大きさで切っていく。
おかっぱの体から立ち昇る異様な〝お袋さん〟パワーに圧倒されて、
兄貴は渋々 台所を後にした。

〜本日の塔矢邸の夕食〜
・サバの煮付け
・里芋の煮物(上にゆずの皮を散らしてある)
・大根とワカメの味噌汁(赤・白味噌の2種類使用)
・ほうれん草のおひたし(海苔醤油和え)
・ササニシキのご飯(新潟の農家と個人ルートで入手)
・きゅうりと人参のぬか漬け(美味しんぼにも登場しそうな一品)
・愛媛のミカン

・・・お題目・お袋おかっぱ、まだ続く。

46名無しさん:2003/03/29(土) 20:31
>・・・そんな事を思い出しながら ぬか床をこねていると幼い頃に、昔よく
歌っていた歌が自然と口から出る。
「ほーら おそれないーで みーんなのために
あいとゆうきだけが とーもだーちさあー♪」
(↑日本の囲碁界を震撼させている15才・射手座・AB型の天才おかっぱ
棋士)

このくだりめちゃくちゃハマった…なんか泣けた。天才とはこういうものかもしれない
お袋おかっぱイイっす。こういうの書いてもらえてすごく嬉しいっス。

47失楽園:2003/03/29(土) 21:53
 緒方はどういうつもりでこんな話を始めたのだろう。アキラをオモチャ代わりにしていたとでも
言うのだろうか。
 もし、そうなら――理不尽だ。
 ヒカルの脳裏に浮かんだのはその言葉だった。
 緒方のそれは、完全な独りよがりであり、醜いエゴイズムでしかない。相手の…塔矢の気持ちは
どうなるのだ。幼い頃から家族のように慕っていただろう相手に犯されたアキラの心は。
「そんなの、理不尽だろ」
 搾り出すように呟いたヒカルを一瞬驚いたような表情で見つめると、緒方はテーブルに放って
あったBOXを手に取った。ヒカルがかつてアキラの部屋でも見かけた、あの赤い箱。
「――ま、確かに理不尽は理不尽だろうな。流石に塔矢先生に知られたら、オレはこの世界では
いけないだろうから」
 何がおかしいのか、緒方は片頬を歪めて笑う。
「理不尽なら理不尽でも構わん。オレはオレのやりたいようにやるだけだ。そして、アキラくん
だってアキラくんのしたいようにするだろう。…オマエと寝たようにな」
 箱から一本の煙草を取り出すと、緒方は流れるような所作で火を点けた。溜息とともに吐き出
されてくる紫煙を、ヒカルは手で払いのけずに直接肌で受けた。
 緒方の言葉に、態度に、ヒカルは自分への限りない憎悪を感じる。ほんの数時間前は、ファー
ストフードの店でヒカルに対し多少なりとも友好的だった緒方だたが、それが緒方の本心でなかっ
たことくらい、ヒカルも気づいてはいた。しかし、これほどまでとは。
「……そんなに怒ってるのかよ」
「オマエをボロボロになるまで犯して、棋院の前で棄ててやろうと思うくらいにはな」
 緒方の言っていることが、ハッタリや誇張ではないことをヒカルはもう疑っていない。アキラ
がこのマンションを訪ねてこなければ、恐らく自分は緒方の歪んだ怒りをこの身で受けるしか
なかっただろう。勿論、あらゆる抵抗の限りを尽くすつもりだが、緒方にそれが通用するとは思
えなかった。
「…こっちも飲むか?」
 物騒なことを言ったことを後悔したのか、緒方の手が未開封のオレンジの瓶に伸びる。
 パッケージを破こうとする指先を捉え、ヒカルは首を振った。
「塔矢に飲ませたくて買ったんだろ? 塔矢が来てからでいい」

48失楽園:2003/03/29(土) 21:54
一周年の記念に。
linkageさんとか、どうしてるかなぁ。

49○○アタリ道場○○(12)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 23:52
兄貴が台所から逃げるように退散してから約1時間以内に夕食が
出来上がった。
まるで絵に描いたようなバランス良い見事な純和風の典型メニューに
兄貴は目を見張る。
「コレ、全部キミが作ったのかい?」
「ハイ、料理は昔から お母さんに少し仕込まれてました。
一般的な家事は出来るようにがウチの家訓ですから」
おかっぱは、客用茶碗(大正時代の骨董食器・金額¥40万ほど)に
ご飯を盛って 兄貴に渡す。
「緒方さん、どうぞ召し上がってください」
「ああ・・・、では頂こう」
おかっぱの作った食事の味は、なかなかのものだった。
味噌汁も化学調味料ではなく、きちんと自然素材からダシを取っていて
とても美味だ。
「・・・・・・ところでアキラくん、割烹着と三角巾 取らないのか?」
「ご飯を食べたら、イロイロとしなくちゃいけないことがあるので、
ボクのことは お構いなく」
そうは言われても、眼前にお袋おかっぱがいては食が進まない。
それどころか腹の底から笑いが込み上げてきて、つい兄貴は噴出した。
その途端、おかっぱの目がキラリーンと光った。いつのまにか右手には
ハリセンを握り締め、兄貴の頭上に雷が落下するが如く、スパパーンンンン
と一発しばく。
「食事をするときは、行儀良くしてくださいっ!」
おかっぱは、兄貴にド迫力の般若顔で注意する。
「ハ、ハイ。スミマセン・・・・・・」

50○○アタリ道場○○(13)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 23:54
兄貴は頭に出来た大きなタンコブを擦りながら、黙々と食事をする。
「あれ緒方さん、スーツの右袖のボタンが取れかかってますよ」
おかっぱは、キュウリのぬか漬けを口に入れ、ボリボリと音をたてながら
言う。
「あっ、本当だ。困ったな」
「ボク針仕事、結構 得意なんですよ。スーツ脱いでください、すぐ縫い
ますから」
「いや、いい。後で自分で繕うつもりだ」
「遠慮なんかしないでください」
「そ、そうか。ならば お願いしようか」
そこまで言うなら頼もうかと兄貴は おかっぱにスーツの上着を手渡す。
おかっぱは早速 針に糸を通してチクチクと器用に縫い始めた。
兄貴は その姿を目にした時、フッとある映像が一瞬脳裏によぎった。

兄貴の脳裏をよぎった その映像。
それは、おかっぱの周りは真っ暗な闇夜が広がり、雪が しんしんと
降っている。
針仕事をするおかっぱの頭上からスポットライトが照らされ、吹雪の中に
お袋おかっぱの姿が浮かび上がる。(ナゼか割烹着は、ツギハギだらけ)
「ふう〜」と、おかっぱは息を吐いて両肩をトントンと叩き、
ゴホゴホゲホホホと激しく咳き込む。
「さて、もう一仕事しようかなあ・・・・・」と、おかっぱは しみじみ呟く。
(∮母さんが〜夜なべ〜をして、
てぶく〜ろ編んでくれたあぁぁあああ〜♪)←バックミュージック

昔々の古き良き時代・お袋さんの姿が そこにあり、兄貴の体は感動に
ブルブルと小刻みに震えた。そして目に熱いは、モノが一気に込み上げ、
一筋の涙が兄貴の頬を伝った。

51○○アタリ道場○○(14)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 23:56
──母さ〜ああぁ〜あぁんん、ゴメンよぉおっ!
オレ、忙しくて なかなか故郷の漁村に帰れないでいて。
でっ、でも、オレは母さんのことだって、故郷の海だって 一日とて
忘れたことはないよっ。
父さんが酔っ払って、海に落ちたらしいという知らせを聞いた村のみんな
が総出で捜索してくれたことあったね。
だが実は父さん、隣の山田さん家の鶏小屋の中で寝ていたんだよね。
あの時、母さんは怒り狂ってバックドロップを父さんに数発ぶち込んで
いたね。
あああ、昨日のように鮮やかに思い出せるよ。
・・・って、違うだろおおぅぉおっ!!!

兄貴は、お袋おかっぱの醸し出すムードに危うく飲まれそうになりかけた
スレスレで、正気に戻った。
──あっ、危ないところだったぁあ。
お袋おかっぱ・・・、侮り難しっ!!
「緒方さん、なに独りでブツブツ言ってるんですか?
ボタンつけ終わりましたよ」
おかっぱは、綺麗に折り畳んだスーツの上着を兄貴に渡す。
「すっ、すまんな。ありがとうアキラくん」
「いいえ、どういたしまして。緒方さん、もう食事終わったようですので
片付けますね」
おかっぱは、そう言いながら お盆に食器を乗せて立ち上がった。
が、その途端、客用の高価な茶碗を床に落としてしまい、割ってしまった。

52○○アタリ道場○○(15)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 23:58
「あっ!?」
無残に粉々になった骨董茶碗を、おかっぱは渋い表情で見る。
兄貴も割れた茶碗を しげしげ覗く。確か、40〜50万はする高価な
骨董食器という事は、なんとなく知っている。それだけに、にわかに
サーと兄貴の顔色は真っ青になる。
おかっぱは しばらく目が点になっていたが、いきなりパアーと明るい
笑顔になる。
「はははっ、まあ割っちゃったものは仕方ないや。
他にも沢山 食器あるし」
と、悪げもなくサラッと言う。
「ちょ、ちょっと待てアキラくんっ!
今、割った茶碗は かなり高価なハズだぞ。そんな態度でいいのかい!?」
「えっ、コレそんなに高い茶碗だったんですか?」
「いくらだと思っていたのか?」
「うーんと、千円ぐらいかな」
それを聞いた途端、兄貴の心にピシッという亀裂が入った。
──お坊ちゃまと言えども、度が過ぎやしないか?
先生は子供を甘やかしすぎだっ!!
兄貴は、おかっぱに対して段々と腹が立ってきた。

「ちょい待てい、そこの おかっぱ―――!!!!!
オマエは人生を舐めているだろぉおっ、そこへ座れやっ!
その狂った金銭感覚を徹底的に直してやる!!」
兄貴の強気な発言に、おかっぱの目は またもやキラキラリーンと光った。
いつのまにか おかっぱの両手にはハリセンが握られている。
そして、ハリセン二刀流「ミルキーはママの味(←意味不明)」を兄貴の脳天に
素早くスパパパパァアア―――ンン!!!と、二発食らわす。

53○○アタリ道場○○(16)</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/29(土) 23:59
おかっぱは誇らしげに兄貴に向かって言う。
「この家では、ボクの成す全てのことが法則ですから、よく覚えていて
ください」
兄貴は朦朧とする意識の中で、改めて おかっぱを見た。白い割烹着と
両手のハリセンが、なんだかとても眩しく目に映った。


次の日、おかっぱは目覚めよく起きた。
窓を開けると、空が高く澄んだ空気の漂う気持ちのいい朝が眼前に
広がっていた。
ウーンと背伸びのしながら、今日の朝ご飯は どうしようかと思いを
巡らせる。
「ダシ巻卵、アジの開きに大根おろしをつける。あと納豆の中に沢山の
葱の刻んだ物。それと三つ葉の吸い物にしようかな」
おかっぱは、早速 純白の割烹着・三角巾を身に付け、廊下を歩きながら
アレコレと、朝の献立を組み立てる。
そして客間の部屋の戸を少しあけた。そこには緒方兄貴が大の字で
畳の上に寝転がり、スヤスヤと寝息を たてている。
つくづく大人気なく子供のような人だなあと、おかっぱは兄貴の寝顔を
見ながら そう思った。
ちょうど そこへお隣の佐藤さん家の猫のタマが客間に入ってきた。
タマは寝ている兄貴の額を左足でチョイチョイと、突っついている。
兄貴は「コノー、待てぃクソジジイ──!!」と、ゴニョゴニョと寝言を
言っている。
ヤレヤレ、どんな夢を見ているんだかと おかっぱは客間を後にした。
おかっぱは、台所に行き冷蔵庫から200cc入り牛乳瓶を取り出す。
それを縁側で蓋を開け、腰に手を当てて牛乳をゴクゴクと、一気飲みする。
「あー、朝はコレがなくちゃね」
お袋おかっぱの顔は、こぼれんばかりの笑顔が溢れ、白い歯がキラリーンと
爽やかに眩しく光った。
                   <お袋おかっぱノ巻・完>

54</b><font color=#FF0000>(GWboH.a6)</font><b>:2003/03/30(日) 00:11
だいぶ前から用意していたのに、結局 今日最後は急いで書き上げたなあ。
あまり、見直しできんかった。ところどころ変な文・字があったらゴメンよ。
お袋おかっぱのネタは、スレ内の自分が笑い転げたネタを拾い集めて書いて
みた。思っているより やけに変なものが出来て何とも言えない・・・冷や汗w

>>46
楽しんでもらえてホント嬉しいのだけど、続きも気に入ってもらえるかどうか、
いやはやw

あと、小説キタキタ──。読ませていただくッス!!

55名無しさん:2003/03/30(日) 19:11
>54
一言だけ言わせてくれよ。
多分自分もずっとあのスレにいるから、読む端からエピソードが頭に浮かんできて
この小説をダブルで楽しめたよ。
そんで、小説の中でちょっとネタにされて嬉しいよ。


大好きだ。

56失楽園:2003/04/05(土) 21:37
「…別にそんなつもりじゃない」
 緒方はヒカルの指をほどくと、そのままパッケージを破いてキャップを開けた。そして、
『あ〜あ、やっちゃった』というような表情のヒカルのグラスにジュースを注ぎ入れる。
「…アキラくんは、オマエを太陽だと言っていた。だからどうしようもなく憧れてしまうと」
 それを聞いたときには、つい笑ってしまった。――笑うしかなかった。
 口先だけでも笑って、そして裏切りにも似た発言をするその唇を塞ぐことしかできなかった。
「オレにとっては、あの子の存在こそが……。なのに、あの子はオマエに惹かれていった。
息をするようにごく自然にな。傍で見ていて滑稽ですらあったよ」
 かつて、アキラに進藤というコマを与えたのは緒方だった。
 『いずれ我々の目の前に現れるだろう』というアキラの父のようには、緒方はただ待つという
ことができなかった。アキラのより高度な成長を促すために見つけた一つのコマ――それが進藤
ヒカルという少年だった。
 もしかしたら進藤は、院生試験を受けるときに便宜を図ったのが自分であったからこそ、今日
こうしてここにいるのかもしれない。誰に対しても臆すことのない性格なのは美点でもあるが、
他の棋士と自分に対しての進藤の対応に幾分違いがあることは緒方も気がついていた。
 だが、院生試験を早く受けさせたことは、進藤のためを思ってのことではなかった。
 自分の欲求のために、できるだけ早くアキラの成長を早める必要があった。
 それだけのことだ。
 アキラの生まれた時からを知っているような父や自分、そして親しく付き合っていた他の門下
生ではどう足掻いてもアキラの闘争心を今まで以上に掻き立てることは難しい――そう踏んだ緒
方の思惑通り、アキラは進藤ヒカルというライバルを得、そして素晴らしい成長を遂げた。
 しかし、アキラが進藤の持つ「囲碁」だけでなく、進藤自身にも興味を持ったのは明らかに緒
方のミスだった。
 アキラの世界はあくまで囲碁においてのみ拡がり、誰かに心を許し、あまつさえ欲する日が来
るとは思えなかったのだ。かつての自分がそうであったように。

57名無しさん:2003/04/06(日) 22:18
兄貴の誤算か。
自分から焚き付けたようなもんだからなあ…。

58名無しさん:2003/04/06(日) 23:07
兄貴の中に、もしかしてアキラたんがヒカルに惹かれるかもという思いも一瞬あって
だが試してみたいというような自信と自虐ぎみな気持ちもあったのか!?と思ってみたり。

59ひみつ:2003/04/15(火) 20:04
ナースアキラたん。
http://kigaruni-up.ath.cx/~kigaru/cgi-bin/clip-board/img/3099.jpg
このサーバは自作絵専用だが、結構長く残るので便利。

60名無しさん:2003/04/15(火) 20:18
ひ、ひみつたん……(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ
く、黒、黒黒黒黒黒のパンツ・・・……(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ

61名無しさん:2003/04/15(火) 20:31
>59ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)あぁぁぁん!たまらない!
だが、一つ注文つけていいか?下着はガーターベルトの「上」からはかないと、
ガーターベルトをしたまま脱がせるのが難しいぞ!ヒモパンならOKだけどな!
それにチ○コの先が見えそうで見えねえじゃないか!!!

62名無しさん:2003/04/15(火) 21:14
うれしいこと言ってくれるじゃないの。
ところで修正したので見てくれ。
http://kigaruni-up.ath.cx/~kigaru/cgi-bin/clip-board/img/3100.jpg
ガーターベルトのカタログ見ながら描いてたら間違ってしもた。チソコも出した。
てか話題になってたの某ア○ラ受か?見たいが中古同人屋で8千円くらいしたぞ。

63名無しさん:2003/04/15(火) 21:31
>62 お、早速!グッジョブ!!これなら脱がしやすいハァハァ(;´Д`)先っぽがまた
なんとも言えずハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)下着を取った後姿がエロイんだよなハァハァ(;´Д`)

64名無しさん:2003/04/16(水) 00:01
>62
ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)ハァハァ(;´Д`)
なんというハァハァ(;´Д`)
進藤を人質に捕られやむなくというパターンもお約束っぽくてワラタ(W
てかアキラたんがウレシそうに見えるのはなぜだ!?(WW
前誰かがうpしてくれた新初段座間たんセクースはエロかった。あれには世話になったハァハァ(;´Д`)

65名無しさん:2003/04/16(水) 20:16
>64
そうそう。しょうがなさそうなポーズ取りながらアキラやる気満々なのが笑える。

66ひみつ:2003/04/19(土) 00:50
今日は焼き肉食って酒飲んで酔っている。
アキラたんのふんどしにも酔いたい。
http://kigaruni-up.ath.cx/~kigaru/cgi-bin/clip-board/img/3141.jpg

67失楽園:2003/04/20(日) 01:39
 息苦しさを感じたヒカルは救いをグラスに求め、真っ赤な液体を口に含んだ。オレンジジュー
スと言われても、そしてそれを納得していても、視覚から感じるそれはトマトジュースのそれだっ
たが、口全体で感じる味は多少濃い目のオレンジジュースそのものだった。
「……美味いか?」
 緒方は2杯目を注ぐつもりでいるのか、身を乗り出してテーブルの上の瓶を掴んでいる。確か
に美味く感じられる味だったが、小さく首を振ることでヒカルは否定の意を伝えた。
「そうか」
 瓶をテーブルに戻し、緒方は途端に興味を失くしたような顔で頷く。
「アキラくんはこれが好きなんだがな…」
 懐古するような眼差しでラベルを眺めていた緒方が口にする『アキラくん』という言葉がいか
にも言いなれた風で、ヒカルはギリと奥歯を噛み締めた。
 ボクは所詮、緒方さんの愛人に過ぎないから。――いつだったかのアキラがそう言っていたこ
とを、ヒカルは覚えている。聞きなれない『愛人』という響きや、その言葉が瞬時に知らしめた
2人の理解しがたい関係、珍しく自嘲気味なアキラの様子――それら全てが、映画のシーンのよ
うに浮かび上がってくる。 
「やっぱ塔矢のために冷蔵庫に入れてたんじゃねーか。アイツのこと、愛人扱いしてたんだろ?
遊びで振り回してただけなのに……、なんでそんな風に――」
 独占欲を持つんだ? 優しい声でアキラの名を呼ぶんだ?
 ヒカルは両手で髪の毛を掻き回した。そうすることで自身の混乱を落ち着かせることができる
と信じているかのように激しく。
「遊び?」
 ヒカルの呟きを聞きとがめたのか、緒方は目を眇め脚を組み替えた。
「オマエは辞書の一つも引いたことがないのか」
 あまり賢そうには見えないが、もしかして本当にバカなのか? 緒方は溜息交じりに呟くと、
手にしていた煙草を灰皿にねじ込んだ。
「バ…バカで悪かっ」
「……彼を」
 ヒカルの後ろにあるドアにちらりと視線を投げ、緒方は苦笑にも似た笑みを口の端に刻む。
「彼を、愛しているよ。――好きだとか、恋とか、そんなもんじゃない。そんな生ぬるい感情
なんかじゃないんだ」

68名無しさん:2003/04/22(火) 20:20
亀レスになっちまうのでこっちに。
失楽園、兄貴の怖いほどの愛だな。
それに対してヒカルは碁打ちとしての関係しか求めてないようなこと言ってたし。
それにまだガキだしな。恋や愛のなんたるかもわかってないかもしれない。
がしかしさすが洞察力は鋭い。アキラたんはどっちかを選べるのか・・・。
俺はだいぶ兄気に感情移入してしまったぞ。
アキラたんの登場が待ち遠しい!
シャングリラはいつも感覚的な、独特な感じがあって面白いね。
五感が鋭いアキラたんハァハァ(´Д`;)
次はハアハアな展開でアキラたんの菊門にやっと癒しがもたらされるのか!?
舟を漕ぎながら、またもエチーな夢もどきに引き摺りこまれるアキラたんは
そうとう溜まってるし、愛にも人肌にも珍子にも飢えてるんだな。
他の職人さんもどんどん待ってる!
ここにうpしてくれるのも待ってる!

69名無しさん:2003/04/23(水) 21:17
オレ職人の一人だが、今マジ忙しくて家に毎日お仕事お持ち帰り状態な感じ。
落ち着くのは当分先かな。
うpしる他の職人さん達には、いつも楽しませてもらっている。
ホントありがたやです。
イパーイ、イパーイうpしてくだされ、待ってるっス。

70名無しさん:2003/04/25(金) 14:45
>69
がんがれ!待ってるから!

71甘味屋</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/04/27(日) 02:20
あまりにセンチメンタルに走りすぎたんでこっちに避難してきたよ。
原作補完シリーズその2。
前の148局補完(エレベーター編〜昼食編〜検討編〜家路編)の流れで、
20巻第162局「卒業」より芹澤戦その後。

72第162局補完:2003/04/27(日) 02:21
本因坊リーグ6戦目。
厳しい対局だった。ギリギリの線を綱渡りするような緊張をずっと強いられて、終わってみれば
負けた碁だった。
これでリーグ落ちが確定だ。
悔しかった。驕ったつもりはなかったが、それでもまだ力は足りなかった。
まる一日、食事もとらずに碁盤に向かっていた肉体の疲労も大きかったが、なにより精神が
疲弊していた。

持てる力を使い切って消耗したようなその姿に、ヒカルは声をかけるのが少しためらわれたが、
やっと腰をあげて立ち上がりかけたアキラに、それでも声をかけてみた。
「塔矢、」
呼ばれてこちらを見たアキラは、驚いたように目を見開いた。
一瞬、喜色が走ったように思えた顔は、次の瞬間にはきゅっと厳しく引き締まった。
「なんだ。」
「……残念だったな。」
ヒカルの言葉にアキラは僅かに目を見開いてヒカルを見る。
だが言葉を返さずに顔を背け、そのままヒカルの横をすり抜けて対局室を出ようとした。
ヒカルも追って対局室を出て、アキラの背中に呼びかけた。
「塔矢、」
「何しに来た?」
「何しにって、おまえの対局見に、に決まってるじゃん。」
「4月になるまでボクとは会わないんじゃなかったのか。」
顔も見ずに冷たく言い放たれて、思わずヒカルは足を止めて口篭る。
「…あれは……、あれはあそこには行かないってだけで…」
足を止めてしまうとすぐに置いていかれるので、慌てて追いながら、呼び止めようと声を高くする。
「塔矢!何、怒ってんだよ、オレ、折角来たのに!」
「別にキミに来て欲しいなんて誰も言ってない。」
それでも足を止めないまま、アキラは振り返って厳しく言い捨てた。
思わずヒカルが腕を掴んで引き止める。
「!なんだよ!ひでぇじゃんか、そんな言い方!!」
「ひどい!?どっちが!!」
ヒカルの手を振り払いながら、アキラは思わず声を荒げた。

73第162局補完:2003/04/27(日) 02:22
四月になるまでここには来ない。それなら待とうと、最初は思っていた。
けれど日が経つにつれ、寂しさと空虚感は募るばかりで、ヒカルが来ないと思うと自然、碁会所
からも足が遠ざかった。
つい先日までは彼と打っていたこの場所で、一人でいるなんて耐えられない。
気を紛らわすように語学教室に通っても、虚しさは消えない。
それによく考えれば、四月になれば来るという保証はどこにもないのではないか?
「置いていかれそうだ。」などと弱音をはいてしまったのを、自分も歩みを止めないと、まだ大丈夫
だと、自分自身に言い聞かせてなんとか立て直した。
それももう二月も前のことだ。
一度同じ対局日に姿を見かけて以来、打つどころか口を利くことも顔を見ることもない。
そうなってみればむしろ、週に何度もあの碁会所で打っていたことが、まるでありえない事だった
ように思えてくる。

それなのに。
自分が無様な負けを晒したような日に限って前触れもなく現れて、「折角見に来たのに」だって?
ふざけるな。
「馴れ馴れしく触るなよ。キミなんか…キミにとって、ボクなんかどうでもいいんだろ。
ボクのことなんて気にかけてもいないくせに。」
「何馬鹿なこと言ってんだよ、おまえは!」
「またひとを馬鹿呼ばわりか?自分の都合が悪くなるといつもそうだな。まったく、相変わらず勝手
な奴だよ、キミは。」
声を聞くのも腹立たしい。顔なんか見たくない。
ついて来るな。そう思ってるのにどうしてわからないんだ。
「塔矢、」
立ち止まるのが嫌でエレベーターを通り過ぎてアキラは階段に向かった。

74第162局補完:2003/04/27(日) 02:22
「塔矢、待てよ!」
ヒカルは必死で追い縋りながら、隣に並んで呼びかける。
「もしかして、北斗杯の予選が終わるまで碁会所に行かないって言ったの、そんなに怒ってるのか?」
「当たり前だろう!!」
凄まじい勢いで振り向いて怒鳴りつけられて、ヒカルは思わず一歩後退った。
「あんな事を言い捨てて放って置かれて、平気だとでも思ってたのか?」
アキラの剣幕に気圧されしたように息を飲んだヒカルを睨みつけて、アキラは続ける。
「ボクにどうしろと、どうすればよかったって言うんだ。
選手決定なんか辞退して予選に出ればよかったとでも?
ボクだって、ボクの方こそ、」
キミと戦えるかと思ったのに。戦いたかったのに。
実績で代表決定なんて言われて、最初はああそうか、と思った。当然の事のような気もしたけど、
でも別に嬉しくもなかった。
でもその次に思ったのは、進藤はこの事をどう思うだろう、という事だった。
結果は案の定だ。
ボクだって、予選に出たって負けるつもりなんかない。落ちるはずがない。
そんな事よりキミと戦いたかった。
それなのにキミは、ボクのそんな気も知らないで、一人で勝手に怒って。
ああ、嫌だ。こんな事でこんなに苛ついてる自分が嫌だ。こんなくらいの事で泣きそうになってる
なんて、そんな自分が大嫌いだ。進藤のせいで。キミさえいなけりゃこんなつまらないことで腹を
立てることなんてないのに。

75第162局補完:2003/04/27(日) 02:23
「知らないよ。知らない、キミなんか。
いっつも自分の気の向いた時だけ近寄ってきて、そのくせちょっとでも気に食わない事があると、
怒って、ひとを置いたまんま一人で行ってしまうくせに。
馬鹿にするな。
いっつも気まぐれに、気の向いた時だけやってくるキミを、いつもボクが待ってるなんて思うな。」
そう言い捨ててアキラは階段を降りていこうとした。
「塔矢!」
「触るなって言って、あっ!」
伸ばされた手を振り払おうとしてバランスを崩し、階段を踏み外しそうになったアキラを、ヒカルは
慌ててもう一度腕を掴んで引き止めた。
アキラは階段を振り返り、そしてほっと息をつく。それから顔をあげたところを、ヒカルはぐっと引き
寄せた。その腕を振り払おうとしたアキラに、ヒカルは言う。
「暴れるなよ、また落ちるぜ。」
そのまま抱き寄せられて、カッとしてアキラはヒカルを睨み付けた。
ヒカルの方が一段上に立っているために、普段だったら若干見下ろすはずの相手に見下ろされてる
のが余計に腹立たしい。
「ごめん、塔矢。」
真面目な顔で謝られると、言い返すことができない。悔しくて唇を噛んでヒカルを見上げた。
「でも、でもオレは信じてるから。
いつでも塔矢は待ってくれてるって。いつも、今までも、これからも。」
「ふっ、ふざけるなっ…!よくもそんな、図々しい。誰が、キミなんかいつまでも待ってるものか……!」

76第162局補完:2003/04/27(日) 02:24
「…塔矢ぁ、」
宥めるようにアキラの髪を撫でながら、呆れたような口調でヒカルは言う。
「そんな、意地張ってつまんないウソつくなよ。」
「ウソじゃない。本気だ。」
「ウソだよ。」
きっぱりと否定するヒカルに、呆れを通り越して腹が立つ。
「なんでそんなに図々しいんだ。なんでそんな自信があるんだ、キミは。」
「なんでかなんて、そんなの……」
言いかけながらもヒカルは思う。

だってオマエがずっとオレを待っててくれたの、オレは知ってるから。
それにこうやってオレを見るオマエの目は、さっきからずっと、言ってる言葉と全部逆だ。
だってオレを見て嬉しそうにしたじゃんか。
怒るのはオレが会わないって言ったからだろ?それってオマエはオレに会いたかったってことじゃん。
放って置かれて寂しかったって言ったじゃん。
もっと素直になれよ、塔矢。
「…放せよ。キミなんて嫌いだ。」
「でもオレは塔矢が好きだよ。」
ストレートに言ってやると、塔矢は目を見開いてオレを見る。
ああ、オレ、オマエのそういう顔ってすごく好きだ。
「塔矢がオレの事嫌いでも、好きじゃなくても、オレは塔矢が好きだよ。」
更に言ってやると、また悔しそうに口元を歪めて目をそらす。
なんかもう、オマエって、ホントに、どうしてそう素直じゃないんだ。

77第162局補完:2003/04/27(日) 02:24
「塔矢、オレ、予選、絶対勝つからさ。
絶対勝って選手になってオマエの隣に立つから。
だから待ってて。」

「オレが不甲斐なくてオマエを安心させられないかもしれないけど、でも、オレ、絶対やるから、
だから待ってて。オレの事、見ていて。」
「何を、図々しいことを、キミなんか、」
悔しい。
すごく悔しい。
怒ってたはずなのに、こんな事を言われて、こんな風に抱きしめられて、さっきまでの怒りが霧散
してしまうなんて、この腕が心地良いと思ってしまうなんて、悔しい。
それなのに、宥めるように髪を梳かれて、見つめられると、その後に来るものを期待してしまう。
それなのに。
「塔矢…塔矢、キスしていい?」
どうして今日に限ってわざわざそんな事を聞いてきたりするんだ。
嫌だって言ったらやめるのか。なんて無神経な奴なんだ。
「……いつも、そんな事聞いたりしないで勝手にするくせに。」
「ダメ?」
答えることができなくて、アキラは視線を斜め下に彷徨わせた。

78名無しさん:2003/04/27(日) 11:12
甘味たん、甘味たん、ああ、甘味たん…
ああ、甘酸っぱいなぁ〜

79名無しさん:2003/04/27(日) 13:16
新作キタ━━━(゜∀゜)━━━━!!
甘味屋たんハァハァ(;´Д`)甘くて甘くて切なくて涙が出そうだよ。
甘味屋たんは凄いなァ。悲しみを書くことに向けられてさ。
自分はダメだ・・・・今は書く元気が出てこない。でも少しエネルギーを貰った気がするよ。

80第162局補完:2003/04/27(日) 22:48
けれどそのままヒカルが動きもしないので不安になって見上げると、ヒカルが優しげな笑みを
浮かべて自分を見つめていたので、見る間に頬に血が上ってしまった。
慌てて目を逸らして顔を背けようとしたのを、ヒカルの手に阻まれた。
「塔矢、」
逃げようとするアキラの身体をヒカルが更に引き寄せる。
悔しい。
悔しくて涙が滲みそうになる。
まるでこれじゃボクが待ってるみたいじゃないか。
ずるい。卑怯だ。なんてずるい男なんだ、キミは。
いっつもそうやってボクを翻弄して、待たせるだけ待たせて。

そうしてやっと触れてきたヒカルの唇を、震えそうになりながら味わった。
何度しても慣れることができない。
そのたびに眩暈がする。頭の芯が痺れたように感じる。胸が締め付けられるように痛み、鼓動
は高く、早くなる。
柔らかな唇の感触も、触れ合う肌の熱さも、「塔矢、」と呼ぶ、いつもとは違う、低く響く声も、いつ
までたっても慣れることができない。
けれどそれは居心地の悪いものではなく、むしろ逆に眩暈がするほどの陶酔感にで、だからそれ
に慣れることはできないのに、もっと欲しいと思ってしまう。
理由なんてわからない。
どうしてそれが欲しいのかなんて。
どうしてもっともっと触れ合っていたいと思うのかなんて。
もっと深く、もっと奥まで、彼に触れたいと、彼を感じたいと思ってしまうのかなんて。
「塔矢…」
わからない。自分の名を呼ぶこの声が、どうしてこんなに心地良いのかなんて。
理由なんてわからない。
どうして自分が今、泣いているのかなんて。

81第162局補完:2003/04/27(日) 22:49
そっとアキラを抱きかかえながらヒカルは耳元で囁く。
「塔矢……オレの事、好き…?」
応えないアキラに、ヒカルはもう一度耳の付け根にキスを落としながら、ねだるように彼の名を呼ぶ。
「ねえ、塔矢、」
「……好きじゃない。」
アキラは目を開けて、ヒカルを見上げて言う。
「好きじゃない。キミなんか。
好きじゃない。嫌いだ。大っ嫌いだ。」
そう言いながら乱暴にヒカルの髪を掴む。
「好きなもんか、キミなんて。」
そして髪を掴んで引き寄せ、唇を合わせる。
「…と……」
言いかけたヒカルを遮るように、ヒカルを睨みながら言う。
「キミなんか好きじゃない。
ボクは、ボクはただ、キミと碁が打てればよかったんだ。それだけでよかったんだ。
それなのに、」
また強く髪を引っ張られて、ヒカルは小さく声をあげた。けれどアキラはそれに構わずに続ける。
「打つだけじゃ足らないなんて、そんな事、思うはずないんだ。
もっと色々話をしたいとか、ただ一緒にいたいとか、そんな事、思うはず、ないんだ。
もっとよくキミを知りたいとか、キミの全部が知りたいとか、キミとキスするのが気持ちいいとか、
こうして抱き合ってるのが好きだとか、そんな事、思うはずないんだ。」

82第162局補完:2003/04/27(日) 22:49
ヒカルから視線を逸らし、ヒカルの肩に頭をぶつけた。
よろけそうになったヒカルは咄嗟に手すりに掴まった。
「思うはず、ない。
そんなのはウソだ。何かの錯覚だ。気のせいなんだ。
ボクは、ボクはそんなの要らない。
欲しいのは碁打ちとしてのキミだけだ。
それだけなんだ。それ以外のキミなんて、要らない。要らないはずなんだ。」
遣り切れない思いを晴らすように拳をヒカルの胸に打ちつける。
「キミより強い碁打ちなんていっぱいいる。
キミじゃなくたっていいはずなんだ。
キミじゃなきゃダメだなんて、キミがいなかったら誰と打っていても楽しくないなんて、そんなはず、
ない。どんなに強い、手強い相手と打っていても、どんなに興奮するような勝負を戦っていても、
それでもキミの事を考えてしまうなんて、そんなはずないんだ。」
もう一度、強くヒカルの胸を打ってから、アキラは顔をあげてヒカルを見た。
「進藤、」
黒く濡れる瞳に見つめられて、ヒカルは言葉を返すことができない。
アキラの腕が伸びてヒカルの首に絡まる。有無を言わせずアキラの唇がヒカルの唇を覆い、熱く
柔らかな舌が侵入してくる。荒々しく乱暴に、アキラはヒカルの口内を探り、絡めとり、吸い上げる。
その激しさに、ヒカルはそれを受け止めるしかできない。
酸素を求めるように僅かに唇が離れた隙に、アキラの唇がヒカルの名を呼んだ。
「進藤……」
熱く掠れた甘いアキラの声に、ヒカルはアキラの身体を抱きしめた。強く、強く抱きしめながら、また、
唇を重ねると、首に絡まる腕に、更に力がこめられたのを感じた。

83第162局補完:2003/04/27(日) 22:50
けれどどれ程強く抱き合っていても、一つになれるわけじゃない。
それでもいつかは唇が離れてゆき、ゆっくりと目を開けた二人の視線がそこで絡まった。
アキラはヒカルの存在を確かめるようにヒカルの頬に触れ、両手で顔を挟み込むようにしてじっと
ヒカルを見つめる。
潤んだ瞳に、切なげにひそめられた眉に、紅く濡れた唇に、胸が締め付けられる。
見つめるうちに湧き上がってきた涙がアキラの頬を零れ落ちるのと同時に、唇から言葉が零れた。
「ボクは………ボクは、キミなんか好きじゃない……」
そして涙を振り落とすように目を閉じてヒカルの顔をもう一度引き寄せ、今度はそっと、唇を重ねた。
そんなアキラを抱きすくめようとするヒカルを、けれどアキラは押しとどめた。
「…塔矢……?」
するりとヒカルの腕の中から逃れ出ると、アキラはヒカルに背を向けて、階段を降りようとした。
「塔矢?」
後ろからかけられた声に立ち止まって、けれど振り返らずに応える。
「……帰る。」
そうしてまたトントンと階段を降りていく。
後を追ってヒカルが降りてくる気配を聞きつけて、アキラが言った。
「ついて来るな。」
言いながら足を速める。つられるようにヒカルも足を速める。
その足音を聞きとがめるように振り返ってアキラは言った。
「ついて来るなって言ったろう…!」
「塔矢!」
思わず立ち竦んでしまったヒカルを置いて、アキラは静かに階段を降りていく。
そうして踊り場まで降りて立ち止まったアキラはポツリと言葉をこぼす。
「………嘘つき。」

84第162局補完:2003/04/27(日) 22:51
「もっと打ちたいって言ったくせに。」
添えていた手で、ぎゅっと手すりを掴む。
「もう待たせないって言ったくせに。」
そして振り返って顔をあげ、ヒカルを睨み上げた。

「神の一手はオレが極める、だって?」
揶揄するように言われた言葉に、ヒカルは息を飲んだ。
「キミとボクとで、二人で極めていくものだと思っていたよ、ボクは。
キミと、ボクとで、打ち合って、競い合って、そうやって一歩ずつでも高みに近づいていくものだと、」
アキラの口元が嘲笑うように歪む。
「……勝手に一人で極めればいいさ。
キミなんてもう知らない。
嘘つき。裏切り者。キミなんて、」
じわりとアキラの目にまた涙が浮かぶ。こらえるようにギリッと奥歯を噛み締めてヒカルを睨みつける。
「とう…」
「キミなんて大っ嫌いだ!!」
ヒカルの呼びかけを叩き切るように言葉をぶつけ、火花が散るほどにきつく睨み付けた後、アキラは
ヒカルに背を向けて階段を降りていった。
呆然と立ち尽くしたヒカルは、アキラを追う事ができなかった。

(終わり)

85Hope&Wish</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/04/29(火) 00:36

北斗杯が終わってしまった。
進藤と社は負け、ボクは…ボク一人だけが勝ってしまった。
進藤の泣き顔を見たのは初めてだった。
下手な慰めは、よけいに彼を苦しめることになるだけだろう。
「これで、終わりじゃない。終わりなどない」
精一杯のボクからの言葉だった。ボクは冷たい人間だろうか。表彰式が終わり、各自荷物をまとめてホテルを引き払う。
社は新幹線で大阪に帰り、ボクもそのまま自宅に戻るはずだった。
進藤に呼び止められるまでは――。

「塔矢」
まさか彼のほうから声をかけられるとは思わなかったので驚いた。
そして続いた言葉は予想外のものだった。
「このまま、二人でどこかへ行かないか」
現実感のともなわない声。何でもないことのように彼が云った。
「いいよ…」 
ボクはそう返事を返していた。

86Hope&Wish</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/04/29(火) 00:37

進藤と二人で遠くへ行くのは初めてだった。
電車に揺られて、進藤は二人座席の窓際に座り、窓の外の景色を眺めていた。
オレンジの夕焼け空が拡がっている。
いつだったかインターネットカフェの前。
キミとsaiのことで言い合いになった、あの時の色に似ていると思った。
ふいに、進藤の手がボクの手の上に重なった。
驚いて見ると、進藤は窓の外に顔を向けたままだった。
その温もりが切なくて、ボクは手の平を返して、そっと彼の手を握りしめた。
窓の向こう側に海が見えたのは、それからしばらく経ってからのことだった。海辺の静かな町。電車を降りて、宿を探した。
小さな旅館が見つかって、宿泊名簿に名前を書いていると、受付の奥に貼ってあるポスターに目が止まった。
『碁盤、貸し出します』
仲居さんに訊いてみると、時々、碁打ちの客がくるのだそうだ。
何も知らずに選んだ宿なのに、ボク達は囲碁からは逃げられないらしい。
部屋に案内されて、もう夜だからと、布団をひいてもらった。

87Hope&Wish</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/04/29(火) 00:38

仲居さんが出て行ったのを確認してから「進藤」声をかけた。
進藤は窓の近くのチェアに座って、相変わらず外を眺めていた。
決してボクの方を見ようとしない。それがつらかった。
ボクは部屋の電気を消した。そして、布団の上で、昼間から着ていたスーツを脱ぎ始めた。
「進藤」
もう一度、呼びかけた。
進藤が立ち上がった。窓から差し込む月明かりが彼のシルエットを浮かび上がらせる。
「………」
ゆっくりと歩いてくる。
もう少しで触れるというところで、急に彼はその場に座り込んでしまった。
ボクはそっと近づき、そんな進藤を抱きしめた。
彼は小さく震えていた。
ボクは言葉を持たない。どうすれば、この人に力を与えてあげられるのか分からない。
碁打ちは孤独だ。孤独に戦い続ける。
どんな苦しいことも自分で解決するしかない。それは囲碁だけでなく人が生きるということも同じなのだろう。

88Hope&Wish</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/04/29(火) 00:39

ふいに進藤の唇がボクの首筋に落とされた。
「あっ…」
思わず、声を上げてしまい、ボクは身を震わせた。
進藤の手がボクの身体をまさぐり始める。されるがまま、進藤に身を委ねた。
熱い吐息が闇に溶ける。
今日の昼間、碁石をはさんでいた指先が、ボクの敏感な箇所に触れ、微熱を帯びていく。
先端を弄られ、濡れ始めた粘液が卑猥な音を立て始める。
「…っぁ…」
指で唇を塞がれた。声を出させない気らしい。
進藤の指の下で、ボクは小さく喘ぎ声を漏らす。
強引に足を開かされて、その間に身体を割りいれられた。
進藤の熱くいきりたったモノが、まだならされていない入り口にあてがわれる。
「…っ…」
強引な進入に、引き裂かれるような痛みを感じる。
声も出せずに、ボクはぽろぽろと涙をこぼした。
進藤自身も痛みを感じているに違いない。
低くうめくような声が進藤の口から発せられていた。
「!」
苦しくて、目を見開く。
こんな無理やりな抱かれ方は初めてだった。
でも…もしキミが望むなら、どんなに酷い扱いをされても構わない。
それでキミが少しでも癒されるのなら、ボクが救いになるのなら――。
何度も何度も突き上げられて、痛みも快感もメチャクチャに交じり合って。
ボク達は際限なく、汗と涙と精液で何もかも解らなくなるくらいのセックスをした。

89Hope&Wish</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/04/29(火) 00:39

窓の外から聴こえる潮騒の旋律。差し込む朝日の眩しさに目が覚めた。
気を失って、そのまま眠ってしまっていたらしい。
「――塔矢」
進藤がボクの顔を見つめていた。
ああ、数時間ぶりに彼の声を聞いた。
「…進…藤…」
ボクは手をのばして、彼の髪を撫ぜた。
と、進藤が、ふいにそのボクの手を掴むと、自分の口元に寄せた。
ボクの指に彼の唇がふれる。
「オレは、これからも、この指と碁を打ちつづけるんだな。何十局、何百局、何千局…。
きっとオレは生涯、碁打ちだ。オマエの言う通り、終わりなんかないんだ」
「………」
「オレはアイツの遺志を受け継いだ。だからオレは神の一手を極めるんだ。
遠い過去と遠い未来を繋げるんだ、オレの手で」
そうやってキミは一人で何もかも背負っていこうとするのか。
――ボクがいるのに。ここにボクはいるのに。

90Hope&Wish</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/04/29(火) 00:40

「進藤…碁は一人では打てないんだよ」
ボクの声に、進藤が顔を上げた。
そう、ボクも最近になって、やっと分かったんだ。
「棋士は孤独で、でも独りじゃないだ。キミは何もかも一人で抱え込もうとしてる。
ボクとキミは似てるなと思ったよ。だから、きっと惹かれあったんだ」
だからこそ、間違えないで。気づいてほしい。キミは独りじゃないということに。
「キミを支えてくれていた人はいなくなってしまったのかもしれないけれど、
でもキミにはボクがいる。一緒に生きていこう。二人で未来を作っていくんだ」
これからだって、もっと大きな困難が立ちはだかるかもしれない。
だけど傷ついて迷いながらも歩いていけるだろう。キミとなら、どこまでも。
「塔矢…」
進藤の目を見つめながら、静かに涙を流すボクに、驚いた表情をした進藤がいて。
ボクの言葉がちゃんと伝わったのか、確信は持てないけれど。
それでも、少しでも、ほんのわずかでも、キミの心に何らかの変化を与えられますように。
『希望』という名の二文字を感じてもらえますように。「…進藤…」

いつかまた彼の心からの笑顔が見られる日が来るよう願いをこめて……。

91</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/04/29(火) 00:43

少し寂しい話を書いてしまったけれど、今の俺にはこれが精一杯。
アキラたんへの愛は不滅です。
一箇所、改行訂正。

『希望』という名の二文字を感じてもらえますように。

「…進藤…」

いつかまた彼の心からの笑顔が見られる日が来るよう願いをこめて……。

92</b><font color=#FF0000>(F8h.WANA)</font><b>:2003/04/29(火) 00:45
あ、何箇所か改行おかしいな。
修正要望いってくる。

93名無しさん:2003/05/02(金) 22:34
やっとゆっくり読めたので、今更ながら感想。
第162局補完
意地っ張りで素直でないアキラたんだが、ヒカルたんへの想いの深さが
ひしひしと感じられるな。アキラたんにとってヒカルたんの存在は
単なる「好きな人」では無いんだよな。一緒に高みを目指す、無くては
ならない存在なんだな。甘いけど切なくてジーンとしたよ。
Hope&Wish
一人で背負ってるヒカルたんを何とか楽にしてあげたいというアキラたんの
想いが切ないな。ヒカルたんは無意識のうちにアキラたんに救いを求めてる
事に気付いて無いのかも知れないなが、アキラたんの言葉がちゃんとヒカルたんに
通じて笑顔が見られるようになると良いな。

甘味屋たん、罠たんのアキラたんへの想いが伝わってくる心打たれる作品だったよ。

94甘味屋</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 01:59
162局補完は時間設定こそ162局だけど、内容的には151局、152局補完に近かったかもな。
意地張り通した挙句、泣きながら捨て言葉吐いてったアホを、
どうにかして「打とうか」まで持っていくべく思案中なんだが、
その前に出しそびれてた話を放出。

95断点-1.5</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 02:00
気付いたのはいつからだったろう。
ふとした時に視線を感じた。
それが最初だったかもしれない。

そしてそれは繰り返される。
気のせいではない、と告げるように。
無性に苛ついた。
腹立たしかった。
許せない。そう思った。

君は僕を馬鹿にしているのか?
気付かれないとでも思っているのか?
それとも、そんなものを僕が簡単に受け入れるとでも思っているのか?
何のつもりだと、何を考えているんだと、問い質してやりたかった。
そうやって君はそんなに簡単に壊してしまえるのか、と。

許さない。
絶対に、認めてやらない。

96断点-1.5</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 02:00
飢えていた事にも気付かぬほどに渇望して、ようやく手に入れることが出来たと思ったのに。
それを君はそんなに簡単に壊してしまうつもりなのか。汚してしまうつもりなのか。
僕がどれ程追い求め、焦がれていたかも知らずに。
至高の存在だと信じていた。
互いにとってなくてはならない、何にも侵し難い、純粋な絆だと、信じていた。
その透明な輝きが、少しずつ曇って、濁って、段々に薄汚れていくのを眺めているくらいならば、
いっそこの手で粉々に打ち砕いてしまう方がいい。

――だからといってそれがあんな事をした理由になるのか?
他にやり方はあったのか?

認めよう。
彼に欲情した事を。

素直に自分の感情を隠そうともしない彼を見ていたら無性に腹が立った。
それなのに僕のその腹立ちに気付きさえしない。
その素直さが妬ましかったのか?
そうかもしれない。

傷付けてやりたかった。
辱めてやりたかった。
僕の感じた怒りを、腹立ちを、苛立たしさをぶつけてやりたかった。

97断点-1.5</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 02:01
にこやかな笑顔の裏に本心を隠して、期待の極まったその瞬間に裏切ってやった。
なんだ、その顔は。僕が君にキスするとでも思ったのか?図々しい。
そんな風に嘲ってやった。
そして、呆然と驚きに見開かれ、今にも泣き出しそうな目に、そそられた。
嗜虐心が欲望に火をつけた。
もっと痛めつけてやりたいと思った。
恐怖と苦痛に歪み、泣き叫ぶ顔が見たいと思った。
屈辱と絶望にわななく唇を見たいと思った。
抵抗されればされるほど、嫌がれば嫌がるほど、燃え上がった。

どうしたらもっと手酷く痛めつけてやれるだろう。
そんな残虐な愉悦に僕は酔った。
身体ごと心まで引き裂いてやりたかった。
立ち直れなくなるくらいずたずたに引き裂いて、打ちのめして、起き上がろうとしたその足を払って、
踏み付けて、とことんまで貶めてやりたかった。

そんな薄ぼんやりした目で僕を見るな。
言ったろう?
欲しいのは戦う相手だ。
べたべたと甘ったれた馴れ合いなんかじゃない。
だから君はそんな縋るような目で僕を見るな。
そんな目は僕を苛立たせるだけだ。

98断点-1.5</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 02:02
それとも君は忘れたいか。
忘れてしまいたいか。
けれど君は僕から逃れられない。
どんなに逃げたいと思っても、君は必ず僕と向かい合う。
だから忘れたいなんて、思うな。
自分の傷を見つめろ。そしてその傷を付けたのが誰なのか、決して忘れるな。
そして君は、君を傷付けた僕を許すな。
僕に怒り、僕を憎め。
僕の暴力に、僕の理不尽さに、怒りを蓄え、憎悪を募らせろ。
欲望のままに君を陵辱した僕を、君は決して許すな。

なぜ僕があんな振る舞いに出たのか、君の何が僕にそうさせたのか、きっと、君は何もわかっていない。
けれどわからなくても構わない。
そんな事は僕にはどうでもいい。
僕が必要とするものを、望んだものを、もう一度取り戻す事ができるのならば。



それなら、僕には僕のことがわかっているのか?
きっと――わかっていない。
これが何なのか。
僕は知らない。認めてなんかやらない。
認めない。
絶対に。

99名無しさん:2003/05/03(土) 03:23
甘味たん!!断点のつづき密かに期待してたんだよ!
ショックを受けたヒカルたんはどうなるんだろう…?

100断点-2</b><font color=#FF0000>(b71tdwpI)</font><b>:2003/05/03(土) 23:23
「和谷、いるか?」
声をかけながら控え室のドアを開けたら、そこにいたのは別の人物だった。
ソファに斜めに腰掛けて目を閉じて――眠っている?――塔矢アキラ。

そのまま部屋に入り、後ろ手で静かにドアを閉めた。
足音を立てないようにそっと近づいていった。

疲れてるのかな。
こいつがこんな風にうたた寝してるなんて。
「塔矢、」
すぐ側で声をかけてみても、塔矢は目を開けなかった。
間近に見る塔矢はやっぱりキレイだ。
頬にかかる真っ直ぐな髪。長い睫毛。白い肌。紅い唇。
どうして。
こうして見ているとドキドキしてきてしまうのは、どうしてなんだろう。
あんなに酷い事をされて、冷たくされて、それでも嫌いになれないのはなんでなんだろう。
髪にそっと触れてみた。
それでも塔矢は目を開けなかった。
「…塔矢、」
胸が詰まる。心臓の音が苦しい。目の奥が熱い。
塔矢、オレは……

気が付いたら身をかがめて、眠り姫のように静かに眠る塔矢に、オレはキスしていた。


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