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魔境避難所

1ヒカルたん(;´Д`)払払…魔境住人:2002/08/18(日) 19:12
ヒカルたん(;´Д`)払払…
作っときます。

1634木の芽時の猫 ◆lRIlmLogGo:2014/12/13(土) 04:06:57
今のオレはあの公園のネコ。オスに伸し掛られて変な声出してたネコ。
あんななんだと思うだけで、恥ずかしさと興奮でどうにかなりそう。
塔矢いいよ、ゆっくりじゃなくても。もっと早くていい。こないだに比べたら全然痛くないから。
「はっあ、あぁ、あー……っ」
深い場所まで入られて、目の奥が真っ白になる。何も聞こえなくなる。……あれ?

肩を揺さぶられて、真っ白状態から帰還。まさか、落ちてた?
「……大丈夫?」
そんな心配そうな顔すんなって。ちょっとトンだだけだって。おまえがイクまでつきあうからさ。
こっくり頷いて、続きをやれよって言ってやる。
「ふっ、あ、あぅ、あっ、ぁは、ぁあ」
ああダメ、おかしくなる、おかしくなるよ、ヘンになっちゃう。またトンじゃう。
「ぅあ──────!」
首の後ろに衝撃。塔矢が噛みついてる。一緒だ。オレたち、ネコと一緒。
違うのは、オレは塔矢に「ヘタクソ」って攻撃なんかしないこと。
「あ────!あ────!あ、っ!」
挿れられたとこがもうどうなってんのかわかんない。突かれてんのか抜かれてんのかもわかんない。
塔矢のもろとも、溶けてとろけてしまってんじゃないかって。
「なくなる、なくなっちゃうよぉ、あぁ、あ!」
オレがオレでなくなる。スライムみたいにでろでろになる。
「進藤、もう……!」
塔矢が低く唸るように終わりを予告して、後ろからオレの両手を握った。

正気に戻ってから気付いたこと。塔矢はちゃんとゴムしてた。そーゆー、抜かりねーとこがなんか気
に食わない。次はしくじらない的な?次があるの前提みたいな?
確かに終わったあとのラクさはダンチだったけど、やっぱ気に食わない。
「キミの御機嫌の基準が意味不明だ」
そうでしょうともよ。オレの御機嫌はおまえが考えるような理路整然としたもんじゃないし。
だって、オレ自身ですら意味不明なんだぜ?おまえに理解できてたまるかよ。
おまえのこと、好きなのかどうなのかってのすら。どこ探せば見つかるんだよレベルなんだ。
「なあ塔矢。もっかい、しよ」
何度も回数重ねたら、それも見えてくるのかな。どうだろ。
「……せめて、敷布団だけでも必要じゃないか。肘から下、擦り剥けてるぞ」
ちょっと呆れ顔で塔矢がオレの肘のあたりを指差す。オレは答えず、薄い唇にキスをする。
────遠くで、ネコが「しよう」って誘う声が聞こえる。



『猫の恋初手から鳴いて哀なり』 志太野坡

1635 ◆lRIlmLogGo:2014/12/13(土) 04:09:13
タイトル通り発情するヒカルたんですた(;´Д`)ハァハァ
この話のヒカルたんは「わかんねーならわかんねーでいーんだよ文句あっか」的な開き直りが
15の時点で出来てて、『蓮』のヒカルたんはそれが出来なくてミソもクソもごっちゃにして
ズルズル引きずるとああいう24歳に…まあifの分岐点をズラしただけでつが

ぬこはこれで一応完結、さて『蓮』後日談で爛れきったヒカルたんを書くお
…BBQ解除されるまでこっちか…でもNGワードのアレ的に、また焼かれそうなんだよなー

1636泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/01/13(火) 23:20:41
「ぁはあっ……はぁ……はー……あ、あ……」
涙混じりの喘ぎが、アキラの期待感を否応なしに高める。ベッドの端の方に手を伸ばし、おざなりに
シーツで滑りを拭ってから、ダンボール箱をまた漁る。取り出したのは全長がアキラの掌よりやや小
ぶりな、透明で内部が中空の、強いて言えばステムがずんぐりしたゴブレットに似た形状のものだっ
た。ブリスターケースの厚紙部分を雑に破いて出すと、素材はガラスではなく弾力のある樹脂で出来
ているのが判る。決定的にゴブレットと違うのは上部から底までトンネルになっているところだ。
サイズは最大のXLを選んだ。外国人基準の製品で、Mサイズでも日本人にはきついだろうと但し書き
がついていた。小柄で腰骨の幅も狭いヒカルが、その中でも最大サイズをこれから飲み込むのだと思
うと興奮も最高潮になろうというもの。口内に次々溢れる唾液が今にも唇から垂れそうだった。
荒くなる息を抑えようともせず、アキラはそのゴブレットもどきをヒカルの唇に押し付けた。
「咥えろよ」
「……え、無理、デカすぎ……つか何、それ」
確かに大きい。押し付けた口の部分は恐らく六センチほど、胴体の膨らんだところは説明によれば七
センチ以上。ヒカルが無理だと言うのも頷ける。
「おまえをこれから天国へ連れて行ってくれる案内役さ。いいから咥えろ」
二人称が変わった事に、ヒカルがたじろぐような表情を見せる。
これまで一度も、口に出して彼をおまえ呼ばわりしたことは無かった。そうしたいと思ったことは皆
無だったから。
子供だった頃、アキラを翻弄した彼の正体が掴めず苛立っていた時に心の中でそう呼ばわった以外。
咥えようとしないヒカルに業を煮やし、アキラはゴブレットもどきの口の部分を指で挟んで潰し、折
り畳むようにして唇の間に押し込んだ。ヒカルの口内で、それは凶悪な原型を取り戻した。
「ぅご、あっ……!」
「噛むなよ。口開けてろ」
可塑性のあるシリコン樹脂で出来たそれは、噛めば容易く口を閉じられる。アキラはそれを禁じ、底
部のストッパーぎりぎりまで咥えさせた。径が大きすぎて喉を突くのは不可能なようだが、充分唆る
光景だ。
「お゛ぁ、あ゛、っ」
何度もえずき、込み上げる嘔気に苦しみ悶えるヒカルの姿に、忍耐の限界だと下半身が訴える。その
目的で後ろを解したのではなかったが、まあ構わない。
「さっき、おまえナマで欲しいっておねだりしてたよな。食っていいぞ」
頭に描いていた想像図に、更なるデコレーションが追加され。アキラの期待は一段と膨れ上がった。
「ぐぅ……!う゛ぅ────ッ!」
ずん、と一息に突き入れられ、ヒカルは涙を流しながら喘ぐことすら許されず、ただ呻くばかりだ。
「っく、緩いぞ進藤、もっと締めろよ」
念入りに柔らかくした所為だろう、一突きで根本まで嵌まった。緩いと罵ったが、そんな事はない。
口中を占拠する大きな異物への反応がそうさせるのか、ヒカルの内部はきゅんきゅんとアキラの肉棒
全体を締め付けて扱きたててくる。
「ん゛ッ!ん゛おぁう゛う゛う゛!」
異物が中空ゆえに窒息こそしないものの、相当苦しいのが判る苦鳴がたまらなく官能を掻き立てる。

1637:2015/01/15(木) 14:12:22
あんまり書き込みエラーがドイヒーなので、痺れ切らしてこっちに投下するでつ
何だよたぬきとか連投とかチクショーメー!(総統閣下風に)
仕事にならねえよ!

1638泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/01/15(木) 14:13:48
ついさっきヒカルの口に出したばかりにも拘らず、アキラの限界は早く来た。久しぶりに自分主導で
この場をコントロールしているという優越権と満足感が後押ししているのか。描いた青写真通りにヒ
カルが苦悶と快楽の狭間で藻掻く様が征服欲を刺激する所為なのか。どちらでもいい。
「ぉごぁ、ぁがはっ……っ、お゛あ゛ぁっ」
獣の咆哮のような声がアキラの耳を叩く。目を剥いて、溢れる唾液を飲み込めず、さりとて外に垂ら
すもならず、息を詰まらせては喉で濁った音を汚く立てるその顔が、例の映像の彼と二重写しになる。
窒息しないだろうと考えていたが、どうやら認識を改めねばならないようだ。口内の動きを全て封じ
られ、舌すら動かせなければ唾液の誤飲で呼吸が止まる危険がある。
そもそも、これはギャグではなくアナルプラグだ。本来の用途とは違う使い方をしている。
今、ここで、ヒカルの生命を自分が握っている。奪うも残すも自分次第。
そう思った瞬間、アキラの脳内で何かが激しくスパークした。
ガツガツと骨が当たる音が鳴るほどに腰を速く強く打ち付け、一直線にフィニッシュへと向かう。先
にヒカルが絶頂を迎え、内壁が悩ましく蠕動しながら肉棒全体を押し包むように圧迫する。
言葉で煽る余裕など失われていた。ただ本能が体を衝き動かすに任せ、高速ピストンに没頭する。
「くぅぉおお、ッ!」
腹の底から、自然と湧いて出る唸り。喉を通して出るそれと時を同じくして、尿道を灼くほどに熱く
煮えた欲望が吹き出す。
「はぁっ……はぁ……まだ、欲しいだろ?足りないだろ?たっぷり飲ませてやるよ」
足りないのは自分だ。もっと苦しめたい。まだ飾りが必要だ。
欲しい、と答えるかのように、ヒカルの肉壁がやわやわと締め付けてくる。
「可愛い顔が酷いことになってるぞ、もうヒトじゃないな。醜い淫獣だよおまえは」
「……あ゛、あ゛ぁ……」
嘲りの言葉に、反応したかどうか微妙な呻きが強制的にぽっかり開けられた口から漏れる。
どちらが醜いのやら。鏡に写った自分に向けて、腐臭を放つ汚泥をぶつけたような虚しさ。
胸の痛みを新たに湧き起こる性衝動で塗り潰し、アキラはまたヒカルの内部を穿ち始めた。
自分には彼しかいない。最初からだ。ずっと、彼ひとりを想い続けてきた。
彼には自分しかいない?個を魂と肉体に二分割し、それぞれ違う男に分け与えてきた。
その片方とは決別した。ならば今、目の前にいるヒカルは魂も肉体も余さずアキラのものになったの
だろうか?
肉体のない存在のもとへ、あの決別の日、魂を置いてきたのではないか?
肉体だけの不完全な彼を、以前と変わらずただ抱かされているだけではないのか?
約束は出来ないと言った。永遠を誓えないと言った。その真意は。
彼を信じられない。それこそが、アキラの胸に蟠り続けるどす黒い暴力的な感情の源泉。
「好きだ」という言葉すら嘘に聞こえてしまうほどに。
不実だと決めつけておきながら、それでもアキラには彼しかいない。
手に入れたくても入れられない、それでもヒカルの総てを手に入れたい。
────戻れるならば。初めて「好き」と言って貰えた、あの夜に戻りたい。
何の疑いも持たず、ただふわふわと宙に浮くような幸福感だけを味わえた、あの夜に戻りたい。
それは、ほんのひと月ほど前でしかないのだ。

1639泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/01/15(木) 14:14:36
一体いつからだ。社からの電話があった日なのか?それは単なる契機に過ぎない。
ヒカルは行き先も告げず、ふらりと単身どこかへ出掛ける事が多かった。帰宅しても、どこへ行った
のか基本的に言わないし、出先での出来事を殆ど話さない。釣堀だけが唯一の例外だった。
一緒に暮らし始めた翌日には、アキラの視界にヒカルの携帯電話が入らなくなっていた。
どこからの着信を隠したいのか、いまだ判らずじまいだ。否、予測はついたが、何故アキラに隠すの
かが不明だった。探してみれば、隠すに値する理由は幾つか見つかった。そのどれもが、アキラにと
ってプラスの感情を齎すものではなかった。
日増しに膨らむ不安に負けてネットで記事の検索をした事が悔やまれたが、数日前の何も知らなかっ
た自分には、もう戻れない。
あれらの記事の内容は事実なのか?
ヒカルに問い質したかった。同時に、訊くのが怖かった。
自分と彼の歩く道が、決定的に分かたれる。彼の口から、それを聞くのが怖くて堪らなかった。
寒空の下、釣堀でアリバイ作りをしてまで東京からの電話を待っていた彼は、何を思ったのだろう。
どこにいても、何をしていても、碁打ちではいられる。
あの日、少年に告げた彼の言葉が重く伸し掛かる。
ヒカルはまた、アキラを突き放そうとしている。オレを見るな、前を向けと。
餞として、ほんの限られた期間だけ体を自由にさせてくれている。後悔が残らぬよう、アキラが飽食
するまで与え続けてくれている。セックスに積極的で奔放になったのは、これで説明がついてしまう。
好きだから素直になってくれたのではないなんて。
「……嫌だ!認めない、おまえは二度と離れるな!ヒカル!」
射精の兆しを感じて、アキラは猛る肉棒を引き抜いた。

彼はたった独りで、味方など誰もいない戦場へ戻らんとしている。鋭い針の山を裸足で歩くが如く。
アキラを置いて。

「離さない……っく、ふぅ……っ、絶対、っ」
何度目か忘れたほど出したために、勢いも粘りもさほど無い。色の薄まった白濁が、無防備に大きく
開かれた口の中とその周辺を汚す。
飲み込みも出来ず、咳き込めば余計に喉を塞がれてヒカルがのたうつ。
「いいよ……いい眺めだ。記録に残しておきたくなるね」
もとよりそのつもりだ。アキラはヘッドボードに置いた自分のセカンドバッグに手を伸ばし、このた
めに購入したデジタルカメラを出した。ビデオカメラは携帯性に劣るし、スチルだけでなく動画も撮
影できるならコンデジで充分だと思ったのだ。
涙と鼻水、汗、精液で汚れた安いダッチワイフのような顔面を中心に、血と粘膜を模したリボンと拘
束テープで飾られた手首、金糸で括り出された乳頭までフレームに収まるように調整したものも何枚
か。勿論、動画もだ。
メモリーカードは最大容量のものを買った。撮りたいものが撮れないでは計画倒れになる。
「これを棋院に送りつけたらどうなるかな。ボクと切れる事がおまえの復帰の条件なんて、言ってら
れなくなること請け合いだ……ハハッ」

1640 ◆lRIlmLogGo:2015/01/15(木) 14:16:13
書き込めるまで待つのに疲れたよ、パトラッシュ…
ヒカルたん、ただいま絶賛ラッピング中でつ(キッパリ
ラッピング中でつ(大事なことなのでry
本編と違うのは、口を使えることに尽きる…ふぅ
若゛「写真売るよーコラじゃないよー1DLにつき1000円だよー(ダミ声」

本スレ>>156,157
お礼をしたいのはこっちの方だぜ…俺の垂れ流す妄想を読んでくれてありがとーなー

1641 ◆lRIlmLogGo:2015/01/15(木) 14:17:15
つか、こっちだと新しいPW入れても古い鳥が出るのは何故だ

1642 ◆lRIlmLogGo:2015/01/15(木) 15:11:02
×優越権→○優越感
久々にデカイのをやらかしたwwどういう間違いをしたらこうなるんだ

1643 ◆lRIlmLogGo:2015/02/02(月) 20:56:22
投下しようとしたら鯖移転だとう(´;ω;`)ウッ…
なのでこっちへ

1644泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/02/02(月) 20:57:52
頭の中はぽっかりと空虚なのに、手と足が勝手に動いて乗り換えのために体を移動させ、電車の到着
を待とうと列に並ぶ。駅前で客待ち中のタクシーに乗り込み、口がひとりでに目的地を告げる。
────────どうして、ここへ戻って来てしまったのか。
ひと月余りを過ごした小さな隠れ家の前で、暫し立ち尽くす。手の中の合鍵が、体温で生温くなって
ゆく。握った手の外側は、冷たい空気に晒されて痛さすら感じるのに。
帰れと言っただろ、なんで戻って来た。そう詰られるのが怖い。
何度も生唾を飲み込んで、そろそろと玄関ドアの鍵穴に鍵を挿す。チェーンが掛かっていたら、拒ま
れた証拠。諦めて実家に帰ろう。
恐る恐るドアノブを回して引く。チェーンによる抵抗はなかった。詰めていた息を吐き出すと、強張
っていた体が少し弛緩した。
部屋の中から声がしない。口も利きたくないのか。少なくとも、ヒカルに歓迎されてはいないと思う
と、アキラの胸に詰まった重い石の塊が圧迫感を増す。
「……………………」
布団は敷かれっぱなしではあったが、空だった。手洗いだろうか。いや、気配がない。
リュックが消えているのに気付き、漸く思い出す。
(そう、だった……今日は外出するって)
昨日の昼前、確かそう言っていた。どこへとは教えて貰えなかった。
外出していたならチェーンは掛かっていなくて当然だ。外から掛けたくとも掛けられないのだから。
ヒカルにアキラを締め出す意志があったとしても、先に帰宅出来なければ無理な話。
ただそれだけ。
ヒカルが帰る前に、ここを出なければ。くたくたの体が、これ以上動くのを拒否する。
歓迎などされるはずがないのだ、だから早く出て行かなくては。そう心と体に鞭を打つが、逆らう脚
ががくりと膝から落ちて、へたり込んでしまう。
「……。あ」
ローテーブルの上に、見慣れぬものが置いてある。
その文庫本はカバーが擦れて印刷がところどころ剥げ、角も潰れている。古いというよりは扱いが悪
い印象を受けた。これだけボロボロなのに、手垢がついていない。
タイトルと著者に覚えがあった。中学時代、国語の便覧に載っていたのを暗記させられた。近代文学
の著名な作品と作家だ。内容までは知らない。文学史の流れを学習するのに名前を覚えただけだ。
ヒカルがこんなジャンルの小説を好んで読むようには思えない。どこに読む理由があるのか、アキラ
は少しだけ興味を持った。
カバー折り返しの概要によれば、明治から昭和にかけた女性の三代記らしい。ますます、ヒカルが手
を出しそうな物語ではない。
ぱらぱらと斜め読みしていくうちに、とあるページでアキラの手が止まった。
「これ……は……」
ページ内の、ある単語に赤線が引いてある。それはアキラにとって、忘れたくても忘れられない文字
列だった。
「貪、婪…………」

1645泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/02/02(月) 20:58:28
それは主人公の娘が母親に宛てて送った手紙の一節だった。夫の海外赴任に付き従って東南アジアで
暮らす彼女は、現地のギラギラ輝く太陽を貪婪と表現したのだ。受け取った母は、その表現を下品だ
と批判した。
ヒカルがこんならしくもない本にその単語を見出したのだ、まず間違いなくあの少年がここから引用
したのであろう。意気揚々と書いて寄越した娘ではなく、下品と扱き下ろした母の持つマイナスイメ
ージでもって。
(出典がこれだ、とネット記事にでもあったのだろうか……?)
アキラがここに戻らないと踏んで、もう隠す必要はないとリュックから出して置いて行ったのか。
もしそうだとしても、少しだけ。少しだけ休ませてはくれまいか。
萎えた脚が歩く力を取り戻すまで、少しでいいから時間を。

いつの間にか、寝入ってしまったようだった。窓の外はとっぷりと暗くなっている。
ガチャン、とドアが乱雑に閉まり損なう音と、どさりと何かが落ちて上り框にぶつかる大きな物音に、
アキラはびくりとして突っ伏していたローテーブルから慌てて顔を上げた。
(しまった、帰る前に出て行くはずだったのに)
言い訳を頭でこねくり回しながら玄関に向かう。閉じきっていないドアの前、上り框に身を投げ出す
ような格好で倒れているヒカルが目に飛び込んできた。
思わず駆け寄ったが、どう声を掛けていいものか迷う。
(あんな体調で出掛けたりするから……!)
そう怒鳴りたかったが、喉元でつっかえて出てこない。取り敢えず半端に閉まったドアをきちんと閉
じ直し、鍵とチェーンを掛けた。
倒れたヒカルを起こして部屋の奥へ連れて行こうと傍らに膝をつき、まずは頭を腿に乗せてから、出
来た隙間に手を入れて支えようとした。
(…………!)
やにわに、ヒカルがしがみついて来た。アキラの腿に頭を預けたまま、両腕を伸ばしてセーターの腰
の辺りをぎゅっと強く掴んでくる。
「……よかったァ……ホントに、帰っちゃったかと思った……」
拒まれてなどいなかった、その安堵よりも先に。混乱と怒りと、やるせなさがアキラを襲った。
ヒカルの上半身は黒のダウンジャケットでいつも通りだった。なのに、ボトムスが違う。微妙にサイ
ズの合わない社のお下がりジーンズではない。黒いギャバジンの生地と、すんなり綺麗に伸びた脚の
ラインがよく判るスリムなシルエットは、スーツのスラックスに相違ない。靴も愛用のスニーカーで
はなく、黒革のモンクストラップ。これだけで、ヒカルが誰とどんな用事で会って来たのか見当がつ
いてしまう。
「もう、隠そうともしないんだな。その格好」
返事の代わりに、セーターを掴むヒカルの手の力が増した。ぐっと引っ張られ、ニット地が伸びる。
「教えてよ。ボクはどこへ向かって進めばいい。キミと歩こうにも、キミの選んだ道をボクが歩くの
は許されない。他の道を選ぼうにも、そっちは閉ざされていると父は言う」
真っ暗な闇の中、どこが前で、どこが後ろなのか。右も、左も、上も下も。判然としない。
ヒカルは自分にとっての『前』を見出し、歩き出したというのに。
「どこにも行けない、何にもなれない……ボクはもう、どうしていいかわからないんだ」

1646泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/02/02(月) 20:59:18
「塔矢……オレ、自分を騙すのはもうやめたんだ……おまえが、そっちのオレのが好きなの、わかっ
てるけど……引き返さないよ」
熱で荒れた呼吸の下、呼気に紛れてしまいそうな声でヒカルは告げる。
触れた額は燃えるように熱かった。それに反するように、アキラを見上げる繊細な面からは血の気が
失せ、青白い頬に乱れた黒い前髪が纏わりついて、ぞっとするほど凄艶な美しさを醸成していた。
「好きなものは好き、欲しいものは欲しい……だからオレ、したいようにする」
閉じ込められた袋小路を打破してアキラを救い出してくれる、そんな期待など持てない言葉だった。
それなのに、アキラが東京に帰らなくて良かったとしがみついて来る。どこまで身勝手なんだろうと
心中嘆かずにいられなかった。

ヒカルの熱はなかなか下がらず、排尿痛も改善を見せなかった。
お互い、それぞれの理由で出掛けた日から数えて三日目。ついに音を上げたヒカルがあれだけ嫌がっ
ていた病院へ朝から行った。アキラの付き添いは正体を必要以上に喧伝すると断られた。
近所の泌尿器科で抗生剤と解熱剤を処方され、夕方には少しだけ楽になったようだ。枕元に所在なく
座るアキラに向けて、ヒカルはぽつぽつと間をもたせるように話をし始めた。
「オレさー肺炎で耐性できちゃったせいで抗生剤の効きイマイチなんすよー、つったらじゃあキツイ
のぶちかますしかないねって、えーソレ大丈夫?って」
「……………………」
「うーぎぼちわる……パネェな強力抗生剤……でさ、そん」
「……………………」
浮かぬ顔で相槌すら打たないアキラに、ヒカルが半ば困ったような表情で笑みを浮かべる。
「……あのさ。最後に死にそこねたあと。周りが想像してた通りにオレ、ただ息してるだけの人形み
たいになっちゃってた」
訊きたくとも訊けなかった空白の期間について語りだしたヒカルに、アキラは思わず居住まいを正し
た。緊張で動悸が激しくなる。
「もうさ、指の先ちょっと動かすのも、息ひとつするのも、いちいち全力疾走したあとみたいにスッ
ゲー消耗すんのな……生きてるだけで超疲れた。死にたいって思って行動すんの、エネルギーの消費
量えげつないんだってのも実感したよ」
ああやはりそうか。ヒカルは燃え滓のようになってしまって、死にたくてもその意思表示すら出来な
かったのだ。アキラは改めて、自分のした事の罪深さに締め付けられるような胸の痛みを覚えた。
「当然、面会なんて禁止なんだけど……そこへ来ちゃうんだなあ、どうやって来たんだか」
アキラの眉間に皺が寄せられる。そんな無神経な真似をする輩と言えば。
「警察か」
「ハハハ、ブッブー。不正解……あれ多分、下手したら十一月にもなってなかったよな」
やけに楽しそうだ。では誰なのだろう。
「ま、あのジジイも半分人間やめてるっつか棺桶に片足ガッツリ突っ込んでるから、幽体離脱でもし
て壁抜けて来たんじゃないかって説が有力かなァ」
「…………もしかして、桑原先生?」

1647 ◆lRIlmLogGo:2015/02/02(月) 21:00:06
やっと終わりが見えてきたでつ、あと1プレイ分をクリアすれば最終パートでつ
(だからプレイで話を構築すんなと)
没にしたプレイ、結構気合入れて色々調べたのにお蔵で残念無念
ううう死ぬほど寒いお、メイツ諸兄におかれましては風邪などひかぬようご自愛くださいでつ
読んでくれてるメイツにはいつも超感謝でつ

輪舞曲たんが戻って来てくれたので、名無しROMで純度の高い(;´Д`)ハァハァするためにも
早く終わらせなくては…ヒカルたん(;´Д`)ハァハァ

1648 ◆lRIlmLogGo:2015/02/16(月) 23:18:01
本スレがまたしてもエラーなのでこっちへ投下

1649泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/02/16(月) 23:19:03
その後の時間の流れが把握出来ていない。
夜が何度明け、太陽が中空を照らし、沈んだかも数えられていない。
あの夜は確か雪がちらついていたとしか覚えていない。
その雪が積もったのかも、雨に変わったのかも、大して降らなかったのかも。屋外の音どころか、室
内の音すらアキラの耳にろくろく届いていなかった。

どこか現実感を失った聴覚が、ずっと前に短く呻く声と異音を拾ったような気がする。
思い返せば、それはヒカルが外された肩を何らかの方法で入れ直したのだろう。
(自己流でやったら駄目なんじゃないのか)
忠告めいた事が頭に浮かんで、泡沫のように消えた。
外した張本人の自分が、殺そうとして無様に失敗した自分が、そんな心配をしてどうなる。偽善者め。

ずっと同じ姿勢で地蔵のように座り込んでいたのだろうか。動いた記憶もない。何の生理的欲求も湧
いて来ないので、食事も手洗いも必要としなかった。
温かい手が、そっと頭を撫でる感触にもアキラは反応を返さなかった。
少しだけ上を向かされ、唇に柔らかいものが触れる。舌で口を開かされ流し込まれたものに、やっと
自分が渇いていたことに気付かされた。ただの水が甘露に感じられた。
「……自分をなくしちゃうほど誰かにのめり込むのは、経験者だからな、理解できるよ」
それがどうした。今更理解などされたくもない。
「それがいいとも悪いとも、オレには偉そうに言えない……けど」
その続きは、不明瞭で聞き取れなかった。アキラの耳が聞くのを拒否したのかも知れなかった。

アキラをひとりで部屋に残しても大丈夫になったと判断したのか、数日後にヒカルは車で久々に出掛
けて行った。碌に物言わぬ陰気臭いアキラとひとつ部屋に居て、息苦しくなったのだろう。
それ以前に、タクシーで帰ったはずのヒカルがいつ車を取りに行ったかすら気づかなかった。
逃げる二月も、もう下旬だった。
梅はとうに咲き、桃も開花が近い。もうひと月もすれば桜の開花宣言も発表される。
季節の移ろいに、アキラは取り残されている。自分だけが、いつまでも真冬の空気に囲まれている錯
覚をずっと感じ続けている。花は寒椿のみだ。首の落ちる、不吉の花。
いつから?
きっと、ヒカルが釣りに行った、あれが分水嶺。
あれから狂った。全部ひっくり返った。白が黒に。明が暗に。正が負に。整が虚に。
たった半月そこらの出来事だなんて信じられなかった。
アキラが目を閉じ、耳を塞いで知りたくない情報を遮断していたのがいけなかったのか。
アキラから情報を遠ざけていた周囲の人間が悪いのか。
いいや。取得しようと思えば、もっと早く、もっと多く、知り得た事があったはず。
ネットでもいい。テレビでもいい。雑誌でもいい。新聞でもいい。出鱈目と毛嫌いせず、ここに来た
時にヒカルに纏めて問い質して正誤を確認すれば良かっただけの話ではなかったか。
(そうしたところで……あの秘密主義者が、教えてなどくれるものか)
答えは必ず、同じところへと戻って来る。堂々巡り。

1650泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/02/16(月) 23:19:34
頭に響くノイズが、さっきから煩い。途切れては鳴り、途切れては。
(……あれ。頭の中で鳴ってるんじゃ……ない?)
錆びついてしまった脳を無理矢理回転させ、ノイズの出処を探る。
ローテーブルの上で、何かが震え唸っている。ああ、自分の携帯電話だ。
手に取ると、着信バイブが止まって簡易留守録のメッセージが再生され始めた。
表示されている番号の市外局番は03。アドレスに登録されていなくとも、メッセージを聞かなくとも、
どこからの電話かすぐに判った。
ヒカルが今この場に居なくて良かった。
もうこれ以上、見苦しく取り乱す自分を彼の記憶に残したくなかった。
この電話が終わったら、最初に着て来た服に着替えて。セカンドバッグだけ持って。ここを出よう。
何を言い残す必要も、書き残す必要もない。
さよなら。
でもずっと愛してる。

アキラは小さく息を吐き、また震えだした電話機の通話ボタンを押した。

***

その小柄な青年が初めてふらりと現れたのは、年の瀬も押し詰まった頃だった。
如何にも当世の若者風で、この場にはそぐわないと誰もが思った。
だらしなく肩辺りまで伸ばした髪を無造作に後ろで纏め、耳には赤いピアス。冬だと言うのにあちこ
ち破れて色褪せたジーンズを履き、軽薄な雰囲気を全身から発しているように見えた。
「兄やん、どっかと間違ごて来たんかいし」
席亭が訝しむのも無理はない風体だったのだ。
「へ?ここ碁会所じゃないの?どー見てもそうなんだけど、オレ間違った?」
邪気のない、くりくりした丸い目をした童顔で嫌味を言われ、席亭は苦笑いして謝った。
名前と棋力を書くよう受付用紙を出すと、カタカナで『フジワラ』とだけ書いて返してきた。
訊けば、中学の一時期に部活でやったきりだと言う。だから今の棋力は不明だと。
「いやぁ、仕事の話し合いがうまくいかなくてさァ。なんかいい気分転換ないかって思ってたらここ
見つけて懐かしくなっちゃて。だってここらのゲーセン、ショボいんだもん」
東京辺りの出身なのはイントネーションですぐ判った。派遣らしき仕事でここに来たような口振りに、
冬休みの学生ではなかったのかと意外さを禁じ得なかった。
常連客のひとりが、去年問題を起こして現在休養という名の無期限謹慎を食らっている若手トップ棋
士に似ていると言い出すと、周囲も次々同意した。
「やめてよもー、メーワクしてんだよねー。なんかしゃべり方まで似てるとかって。あんなアホ丸出
しと一緒なんて冗談じゃないよ。テレビ出てたら即チャンネル変えるくらい、昔から大っ嫌いだった」
そこまで言うなら別人なのだろう。世の中には三人、似た顔がいるとか。ならば不思議でもない。
さて小僧、揉んでやろうと対局相手待ちだった客が餌食にする気満々で青年を手招きした。
青年は腕まくりして、ぺろりと唇を舐めた。初めての場所に物怖じしないのが長所のようだ。

1651泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/02/16(月) 23:20:17
青年の自己申告はどうやら嘘ではなく、左手でたどたどしく打つ石の筋はてんで出鱈目だった。我流
で、きちんと教えてくれる先生が部に居なかったのが見て取れる。
成程、これでは古風で端正な打ち筋のあの棋士と同一人物の碁とはお世辞にも言えない。
「フジワラ君、石持つんは左かえ」
受付用紙に記入していたのは右手だった事を思い出して、席亭が問う。
「あー、ウン。なんとなく……うわぁ!待って!そこタンマ!ひえー!」
対局しているのは客の中でも弱い部類だ。ある程度は流れを読めるようだが、この男にいいように負
けるようではこの碁会所で最弱確定となる。
「くっそー、ブランクあるだけだもんね!団体戦出て地区大会二位だったんだ、ナメんなよ」
「ほお?なんぼほどガッコあったんかの?」
「うっ……」
詰まるところを見ると、大した数ではないなと皆で大笑いした。

あっという間に、青年は碁会所に溶け込んだ。年長者に対して物言いは無礼で生意気だが、どうして
か角が立たない。終始明るく笑っていて、いじいじした処が無いからだろう。
それに案外素直だ。アドバイスもちゃんと聞くし、教えてもらえば「ありがとう」の一言も欠かさな
い。
次の仕事が上と揉めていてなかなか決まらない、と、週に二回ほど、多い時には三・四回通って来て、
一月も半ばを過ぎる頃にはすっかり常連ぶった顔をするようになっていた。
仕事関連と思しき電話が時折掛かってきて、中座する事が何度もあった。この不況下に大変だなあ、
とリタイア組が大半の客たちも席亭も今時の若者の労働事情に同情した。
その青年が、二月に入ってから顔を出す頻度を落とした。来たら来たで、酷く顔色の悪いのが気掛か
りだと客も席亭も心配したが、当の本人は相変わらず陰のない笑顔で対局相手を募った。
賭け碁を彼が提案しだしたのはその頃からだ。ちょっとまともに打てるようになったと思って猪口才
な、と気の大きくなった彼を最初は皆揶揄ったけれども、祖父と孫ほど年齢の離れた年配客が小遣い
でもやるつもりで受けて、他の客も次第に乗ってきた。
一局あたりの金額はジュース代程度。収入が不透明だろう彼に配慮した額だった。それでも青年はい
いカモにされまくった。
余りに負けすぎて、言い出しっぺで自業自得とは言え流石に気の毒だと思った誰かがある日、ここの
皆で呑みに行こうと青年を誘った。呑み代は持つからと。
「えーと、嬉しいけどオレ車なんだよね」
「かまんかまん、おいやんらタク呼んじゃるさけ、家まで送っちゃらよ」
時間制の駐車場料金が嵩む事も彼は言い募ったが、それも出してやるとまで言われたら断れない。
近場でいいよなと馴染みの呑み屋に繰り出し、次の派遣先が決まらずくさくさしているだろう彼に浴
びるほど呑ませた。狭い店内に、一メートル先も見えないほど紫煙が立ち込めていた。
彼は頻繁に席を立っては手洗いに行き、暫く戻らなかった。戻って来た時には、額に脂汗をかいてい
た。吐いていたのだろうか。体調が悪そうだったのを無理に誘ったのは良くなかったかと一同顔を見
合わせた。彼は嫌な顔ひとつ見せず楽しげに酒席に付き合ったが、やはり体が資本だ。若いと雖も、
日付けが変わるまで呑ませるのは駄目だろうとお開きにして送って行く事にした。
その夜から一週間以上、青年は姿を現さなかった。

1652泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/02/16(月) 23:21:00
深酒させた所為で寝込んでしまったか、と、皆が反省していたところへひょっこり来た彼の顔は血の
気がすっかり失せて、もともと細い体躯が更に小さく見えるほど痩せていた。
席料を払うのに左手一本でもたくさと財布を扱うのを見て、席亭がどうしたのかと尋ねた。
「うん?ちょっとね。古傷やっちゃった。大したことないよ、どうせ石持つの左なんだし」
青年は変わらぬ笑顔で事も無げに答えた。
大したことないだって?嘘だろう。ここに来て席亭も客らも、彼が何か深刻なトラブルを抱えながら
それを隠して明るく振る舞っているのを悟らざるを得なかった。
少なくとも、今月に入ってからだ。顔色が悪かった。来るたびにどんどん悪くなっていた。
今日は声もどこかガラついていておかしかった。今まで見たことのないタートルネックのセーターで
首が隠れているのも皆の目に奇異に映った。
指摘してやると、「風邪を引いた」と当たり障りのない返答。本当にそうならいいのだが。
白目にところどころ目立つ出血がある。血管が切れたとしか思えない。これが風邪の症状だって?
青年はあぶれている客をいつものように賭け碁に誘い、打ち始めた。
十数分ほど経った頃。青年は尻ポケットの携帯電話を手にした。また仕事絡みの電話が来たのか。
そう、全員が思ったのだが。
「あぁ?なに。わっかんねェ、日本語で!」
いつも電話で話す口調ではなかった。そして、彼は中座せず席に座ったまま横だけ向いて通話を続け
た。
「だァから、なにがどーゆーことだなんだって。そっから!えぇ?今どこって、碁会所!」
やけに険悪だ。相手が誰か気に掛かったのは皆同じだったろう。
「どこのって、あーもー、ハナシになんねェ!通じねーし、帰ってからにしてくれよ、今対局の途中
なんだっつのジャマすんなバカ!んじゃな!」
ぱたん、と乱暴に電話機を閉じ、青年は対局相手を向いてにっこり笑った。
「ゴメンね、ちょいギスったとこ見せちゃった。さ、続きやろ続き」
「友達とケンカかいし。タチ悪いんとツレちゃあるんか」
「ハハ、怒らせちゃってさ。ま、大体オレのせいなんだけどね」
左手で石を置きながら、彼は笑顔を崩さず言った。
「……来る、かな」
ふと思案するような表情で独りごちた後、小さく首を振る。
「ま、いっか」
その言葉の意味をその場の全員が理解したのは、それから小一時間ほど経ってからだった。

碁会所のガラス扉が乱暴に開け放たれ、二十代半ばの男がずかずかと踏み込んできた。
青年に負けず劣らず、病人のような顔色だった。血走ってギラついた目が狙いの人物を捉えると、迷
わず大股で突き進んで来た。
「すげェ、予想よっかめっちゃ探し当てるの早かった」
そう口だけで褒める青年の鼻先に、男は紙切れを突きつけた。

1653泥中の蓮・後日譚─貪婪─ ◆lRIlmLogGo:2015/02/16(月) 23:22:40
「これは一体どういうことだ!」
「どーゆーって……まんまじゃん?おめでとう、無職免れてよかったね」
「そうじゃない!だから、どうして!」
紙をぐしゃりと握り潰し、男は怒鳴る。
「復帰するのはキミひとりだって、そう言ったじゃないか!」
「はァ?オレはひとっこともそんなん言ってませんが?そう勝手に解釈して勝手にドツボってたのは
誰でしたっけーハッハー超ウケルぅ」
「────ッ、進藤!」
呼ばれて、青年は少し眉を顰めた。ああ馬鹿、せっかく偽名で誤魔化してたのに。そんな顔だった。
ふう、とひとつ息を吐き、元二冠棋士──いまだ本因坊を保持している青年は猛る男にいつも通りの
笑顔を向けた。
「せっかく来たんだ、誰かと打ってけば?」
もう、この場の誰も、この期に及んで闖入者の素性を間違えたりはしなかった。
どうしてこんな辺境に居るのかも。どうしてふたり一緒に居るのかも。聞かない方がいい事なのだ、
恐らくは。
「そんな気にはなれない」
「あ、そ。オレは最後まで打ってくから。おまえ先帰れよ」
ぎっ、と歯を食いしばって進藤を睨みつけた後、塔矢アキラは踵を返し、来た時同様大股に店を去っ
て行った。
それを無言で数秒見送り、青年は対局相手に向き直った。
「……さて。ここで三谷をハメたおっさんだったら、華麗に利き手に持ち変えるとこだけど」
一旦言葉を切り、彼は左手で右肩を摩った。
「カンジンの右が役立たずじゃイマイチしまんねェな、へへ」
対局相手はどう応じていいのか混乱しているようだった。
「ん?なに?もしかしてキンチョーしてる?だーいじょぶ、ちゃんと碁にするから」
そんな事を言われても。今までのヘボ碁は全部芝居だと知れてしまったのだから。
「芝居?ンなことしてねーよ、ハンデはつけてたけどさ、ガチで打ってたよオレ」
一体どれほどのハンデを?聞けば立ち直れなくなりそうだが、好奇心には勝てなかった。
青年の口から出た情け容赦ない逆コミの数字に、わかってはいたものの周囲は愕然とする。
「あ。そうだ。オレが負けっぱでカワイソーだからって呑み連れてってくれたんだよね。や、ちゃん
と返すつもりではいたけど、こんな形でバレちゃったら早く返さないと悪いね」
うまく折り合いの付かない仕事の話。決まらない次。負けばかりの賭け碁。
何一つ嘘ではない。嘘ではなかったが。いいや。
彼はここで、とても楽しそうだった。それだけは掛け値なしの本物だと信じたい。少なくとも席亭は
そう思った。他の客はどうあれ、自分だけは信じてやりたいと。

僅差で初めての勝ちをもぎ取ったにも拘らず、呑み代と駐車場代を置いて行こうとする青年を席亭は
止めた。そんな事をしなくていい。あれは一同の厚意だから甘えなさいと。
文句を言う客が居たら、説得するつもりだった。だが、誰からも異論は出なかった。
去り際、青年は小さく唇を震わせるのを隠すようにして深々と頭を下げた。
「……ありがとう、ございました!」

塔矢アキラ九段と進藤ヒカル本因坊の復帰が正式に発表されたのは、その翌日の事だった。

1654 ◆lRIlmLogGo:2015/02/16(月) 23:23:31
ちょい納期がアレなんで…まとめて投下、と思ったらなんつータイミングで403出やがる!

これからガンガン回収していくでつ、だからなんでいつも妙な縛り作って書くんだ俺
本編で懲りたんじゃなかったのかorz

本スレ>>297
てこた今回投下分の展開に(  Д ) ゚ ゚なのではないでつか?なんかスマン…

1655名無しさん:2015/03/13(金) 20:12:08
しかしこの不安になりそうなレス数、新スレ立てた方がいいのだろうか
pinkの読み書きできなくなったメイツ続出だろうし

1656本スレ363:2015/03/21(土) 18:32:27
暫定たんへ
保管所運営おつおつ、再び見れるようになるのを気長に待ってるのでゆっくりやってくれ
で、小説倉庫リンク以降の本スレの過去ログ、44-69まで今のうちに取得しといたんで
もし入用なら声かけてくださいな
「もうあるわボケ!」だったら申し訳ない(´・ω・`)

1657本スレ372:2015/04/02(木) 10:36:52
暫定たんへ、Part53の過去ログhtml
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org245985.zip.html
パスワードは俺たちの天使の聖なる降誕日西暦8桁
これくらいの手伝いしかできないが、よければ役立ててちょ
過去ログ倉庫最新までの更新おつー

1658泥中の蓮・後日譚拾遺─変節─ ◆lRIlmLogGo:2015/04/30(木) 03:03:07
「そうですね……多分、あるんじゃないかと思います」
躊躇いながら正直に答える。行洋は小さく息を吐いて、間を置いてからまた口を開いた。
「私にはね、かつてずっと待っていた人物がいたのだよ」
誰だと問うまでもなかった。だが『居た』と過去形なのが引っかかった。
「夜ごと、家人が寝静まった後で。碁盤の前で、上座を空けてね」
「今はもう、待っていないんですか」
「この世に存在せぬ者を待っても詮無き事だと、ある碁打ちと話すうち悟った」
膝の上で固く握りしめた手の中が、じっとりと汗で濡れる。冬間近だというのに。
「誰……ですか」
「キミもよく知っている中国の楊海君だ」
「楊海さん、なんて言ってたんですか」
「ネットにしか現れぬのは、ネットにしか棲めぬ故。ネットにしか棲めぬのは、実体が無い故」
「そんなヨタ話を、先生は信じたんですか」
声が震える。
「完全に鵜呑みにした訳ではないがね。ただ、それを聞いて後、私は待つのをやめた」
頭がぐらぐらする。しっかりしろ。これしきで揺らぐな。
「秀策を研究するのはいい。大いに学びなさい。しかし、完全な模倣を試みるのは」
「オレには意味があるんです。ただのコピーで終わらない……でもまだ、コピーにすら至ってない」
「……………………」
「待つのをやめたなんて……言わないでください」
「キミ自身の碁を殺してまでも、価値のある事だろうか」
目頭からじわりと滲み出そうになるものを堪える。
「キミが再現した『もの』と、私は対局したいとは思わないよ」
ただ首を振るしか気持ちを伝えられない。
火照る肌に雨を受け、叩きつける水滴に感じて喘ぎながら受けた天啓。
誰にも理解などして貰う気はない。
自己満足でしかないのも承知している。
だが実際に、目の前で『紛い物に価値はない』と言い放たれるのはきつかった。
「もういないから、キミが蘇らせようとしているのだろう?」
「それも……楊海さんが」
「いや。秀策没後、一世紀以上も経ってから現れたのは何故か、と疑問を抱いてはいたが」
「じゃあなんで、もういないって」
「一昨年の北斗杯以降の、キミの秀策に対する病的なまでの耽溺。開催直前、既に秀策を巡って一悶
着あったのも倉田君経由で知っている」
「…………ぁ」
「後から思い返せば、あの苦汁を嘗めた北斗杯はキミにとって弔いの戦だったのか……とね」
「そんな、つもりは」
「ならばどうして、キミは泣いているんだね」
堪えたはずのものが、溢れて頬を伝っているのに無自覚だった。
「何者かと問う気はもうない。今はもうこの世に存在しない、ネットの中にも棲んでいない…………
そうだね?」
この身を、目の前の大人の男に投げ出したかった。
何もかもを白状し、大声で泣きながら脳髄がぐちゃぐちゃになるまで抱かれ貫かれたかった。
こんな時にさえ、自分の体は浅ましく穢らわしい。
「『至るに足らず、求むに満たず。道は道に非ずして、此れ則ち迷図の如くなり』」
「え」
「即興だがね、キミの現状だよ。碁打ちに広く当てはまる事でもある。揮毫の参考にでもするといい」
見境がなく底無しの罪深い淫欲に重ねても合っている気がした。
漢文調で書けば、何となく有り難い含蓄があるかに見えそうだった。

1659名無しさん:2015/06/28(日) 12:51:40
70スレ(容量満杯分)
ttp://fast-uploader.com/file/6991018845324/

1660名無しさん:2015/06/29(月) 18:32:05
53スレ(必死に保守してた形跡から、努力むなしく落ちたくさい)
ttp://fast-uploader.com/file/6991125759530/

1661名無しさん:2015/10/20(火) 08:12:36
あっちに全然繋がらなくなっちまったぜヒカルたん…

1662名無しさん:2015/10/20(火) 10:54:50
多分今はいけるぜメイツよ

1663名無しさん:2015/10/20(火) 12:16:06
マジだ!さんくすメイツ!

1664名無しさん:2016/09/07(水) 03:03:22
「ん…」
「おはよ、この前はさんざん苛めてくれたよなァ、塔矢」
進藤がボクを見下ろす。
「しんどう…?」
「今日はオレの番だからな、たっぷり仕返ししてやるぜ」
進藤がボクのパジャマのズボンを下ろす。足でボクのを挟む。
「くっ!」
「ふふん…足蹴にしてやる」
進藤がニヤ、と笑う。足でされるのは初めてだった。
「んんっ…むずかしいな…こうかな…あッ、デカくなった…
おまえ…足でされて感じてんのか?」
進藤が嘲笑してボクを見る。
「く…!」
悔しいが気持ち良い。
「ほらぁ…出せよッ!」
「くうぅッ!」
進藤に出せと言われたタイミングで耐えきれなくなり、進藤の足に射精する。
「うわ…ベトベト…」
進藤がティッシュで拭き取る。

ボクは立ち上がり着替えて
朝食を食べに台所へ行った。
「はい、おまえの分」
「ありがとう」
進藤が用意してくれた朝食を食べる。
「いただきます」
足の間から進藤が顔を出し、
ボクのズボンのジッパーを下ろす。
「進藤!?」
「オレにもちょーだい」
進藤がボクのを口に含む。
「く…!」
「はんはってふえよ、ぢゅるッ」
頑張って食えよ、と進藤が言ってボクのを吸う。
これも仕返しのつもりらしい。
食事に集中できない。
「ぢゅるるッぢゅるッ」
股の間で進藤が下品な音を鳴らして吸う。
「行儀…悪いじゃないか…!」
「ハハ、今日だけな」
「く…ぅ!」
思わず進藤の口内で射精してしまう。
「んんッ!ごくッごくッ…ぷはあぁ…ごちそーさま」
進藤が満足そうに笑んだ。

朝食を食べ終わりソファに座ると視界が真っ暗になる。
「なッ…進藤!?」
目隠しをされたらしい。
またジッパーを下げられ肉棒が進藤の手に包まれる。そのまま進藤が上下に扱く。
「見えないといつもより感じるんじゃねェ?」
進藤に耳元で囁かれる。
「しんどう…っ」
「しこしこしてやるからさァ、オレのも舐めてよ…ッ」
唇にコリコリしたものが押し当てられる。
これは多分…進藤の乳首だ。
そのまま吸い上げる。
「あぁん…ッきもちいぃ…ッ」
見えないからか進藤の嬌声もいつも以上に響く。
「オレも…気持ちよくしてやるな…っ」
進藤が扱いてくれる。
「くぅ…ッ!」
進藤の手の中に出す。
「わ…ネチャネチャ…」

「進藤…目隠しは取ってくれないのか…?」
「まだだーめ」
「くぁ…っ!?」
いきなり肉棒が温かいものに包まれる。進藤の中だ。
「んはあぁ、きもちいぃ?」
進藤がボクの膝に乗ってボクの首筋をぺろぺろ舐める。
「ああ…、!?」
進藤が耳孔に舌を入れる。
「し、しんどう…っ」
「んっんっ…んはぁ…見えないとやらしー音…いつもより感じるだろ?」
進藤が耳孔に舌を差し込む卑猥な音が大きく聞こえる。
さらに進藤を腰を揺らす。進藤の中がきゅんきゅんと締めつける。
「し、しんどう、もう…出る…!」
「いいよ…精液…出して…オレの中に…っ」
進藤が甘く囁く。
そのまま進藤に中出しする。
「はあぁんッ!あついの…でて…ふあぁ…ッ」
「はぁ…はぁ…しんどう…」
目隠しを外されキスされる。

「お疲れさま」
「仕返しは…これでお終いかい?」
「まァな…おまえ程Sじゃねーし。後はラーメン巡りに付き合ってもらう」
「それもあるのか…」
気持ち良かったからこんな仕返しならまたあってもいいかな…と思った。

1665名無しさん:2016/09/20(火) 10:19:59
本スレではさすがにもう『蓮』はメイツも…と思って、こちらお借りしまつ

1666泥中の蓮・番外─強奪─ ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:21:21
【2016/08/24 ネット速報記事】
・碁聖戦 進藤七冠誕生!史上初・七大タイトル全制覇
 塔矢、碁聖を失い五年ぶり無冠に 不戦敗での失冠を除けば十年ぶり

【2016/08/25 某新聞スポーツ・芸能欄 囲碁コラム】
『塔矢・進藤、片方がいなければ、もっと早く達成できていただろう。あるいは、このふたりの時代
が終わらなければ誕生しないだろう。そう囁かれてきた記録がついに生まれた。
「ギリギリ二十代、目標だったので間に合ってよかった」と、進藤七冠は笑顔で語った。来月二十日
で三十歳。
この六月に本因坊戦十連覇を決め、二十七世本因坊佐為と公に名乗ることを早くも許された。
本来なら引退するか、現役で六十歳を待たねば、条件となる五連覇または通算在位十回を満たしても
本因坊の永世称号は名乗れない。
十連覇の偉業を讃え、年齢前倒しの特例が六十歳未満の現役棋士に適用されたのは史上二人目。もち
ろん、最年少記録大幅更新だ。
だが、彼自身は“佐為”と号を決めただけで名乗りはせず、相変わらず各棋戦に本名でエントリーし
ている。
「一生、機会はないでしょうね。あれを私が名乗るなど、おこがましいにも程がある」
そう謙遜するほど強すぎる思い入れを持つ号。今回の七冠達成でもまだ合格点には遠いらしい。次の
名人戦でも本名、進藤ヒカルとして挑戦者を待ち受ける。相手はもう何年も同じ、塔矢アキラ九段。
またも上座と下座が逆転しての同一カードである。繰り返されてきたライバル対決のループは絶たれ
る予兆すら見せない。
一方の塔矢九段は、既に先を見据えている。
「彼が持っている七冠、名人から順に剥ぎ取っていきますよ。進藤さんにできて、私にできない道理
はありませんから」
無冠になったばかりなのに、来年の今頃は自分が七冠だという強気の宣言だ。
実力は全盛期の父を超えたと称されて久しいが、父と同じ最大五冠に甘んじている。グランドスラム
も、不倶戴天の敵・進藤による執念の本因坊防衛で阻まれ続けている。本因坊だけがどうしても獲れ
ずだ。
だが、前に出る気概は微塵も揺るがない。
実力伯仲の両棋士にあって、七冠を維持できるか、無冠を返上するかは紙一重。
名人戦は九月に入ってすぐ始まる。要注目の七番勝負である』


「やれやれ。今年の誕生日は沼津の超高級老舗ホテルでおまえとべったり、かぁ」
ヒカルはうんざりした顔で突っ立ったまま、向かいに座って囲碁雑誌を読むアキラを見下ろした。
字面にすれば優雅にリゾート地でくつろぐような感じなのだが。いや、リゾート地、だけは合ってい
る。しかも、泊まるホテルは一部の建物が国の有形文化財にも登録されている名門。
それがゆえに、詐欺っぽさは倍増だ。
「キミの誕生日前後は毎年、名人戦でボクと三泊四日の観光地めぐりだ。不満なのか」
自宅のリビング、完全オフの午後。明日にはアキラ共々、前乗りで対局場のある地方へ向かわねばな
らない。その目的地が沼津の高級ホテル、というわけだ。
向かう場所は同じでも、ふたり揃って、とはいかない。時間差にせねばならないのが、いつもながら
手間である。
ヒカルは相変わらずホテルや旅館が苦手なので、仕事以外で利用した経験はほんの子供の頃だけ。
祖父母・両親との旅行や小学校の行事に限られる。
タイトル戦の全対局を棋院会館・幽玄の間でとは云わないから、せめて家から通える範囲にしてくれ
ればいいのに──と、ここまで考えて。
ふと、いらない事まで思い出す。
(……そういや、ラブホもホテルか)
例の、隠遁生活を終えて以降。そっちのホテルにも全く行っていない。一時的な需要だった。
行く必要が無くなったのだ。今の自宅を含め、情報の漏れない安全なヤリ部屋は幾つか確保している。
「……二連敗で第三局の初日がぴったり誕生日なんて、超絶気分よろしくない」
「ハハ、短い七冠だったね。最短記録かな?」
「最短もなにも、七冠は歴史上オレっきゃいねェ。イヤでも今のオレがものさしだ」
「名人戦、ボクがストレートで勝てば。一ヶ月半足らずの天下になるのかな」
ニヤニヤしているアキラの顔面に、真正面から蹴りをブチ込みたくなる。
「気が早ェ」

1667泥中の蓮・番外─強奪─ ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:22:34
決して不調などではない。通常通りだ。これまでの二局はいずれも半目差で、整地しないと勝敗が判
らないほど細かくなった。突き詰めて突き詰めて、追求して追求して。双方、いい碁だったと思う。
が、結局はアキラの膂力によって、第一局は攻勢をひらりと躱すつもりが躱しきれず泥沼化、第二局
は逃れ損ねての負け。
互いに得手があり、不得手がある。ヒカルにアキラの『碁の本質』の真似は付け焼き刃だし、逆も然
り。技術云々ではない。学習して体得できる範囲を超えたものだ。
鳥が魚になりたくとも、魚が鳥になりたくともなれない。
ヒカルが持っていないものを、アキラは持っている。
アキラが持っていないものを、ヒカルは持っている。
だから、持たざるを悲観するのはナンセンスだ。
アキラはとうに──初めて会った十二の歳には恐らく──その真理を会得していた。
だがヒカルは、持つこと能わぬものを得ようと。十四の歳から何年も何年も無駄に足掻いた。
そして、その間の空白を、ここ六年、我武者羅に埋めようとしている。
師の名を公に刻む念願が叶い、前人未到の七冠を達成してなお。
自分自身の碁打ちとしての空白は埋まっていないという焦燥がヒカルの身を苛む。
もしや、二連敗の原因はその焦りなのか。些細な精神の揺れが勝敗を左右する。師に学んだ事だ。
院生時代、僅差で負け続けていた頃。
(あ。そーいやアイツ、いつまでたってもここ一番てトコでの性根が座ってくれねーけど。第三局終
わったら喝入れなきゃだな)
昨年、ひょんな事から引き受けた新米棋士への助言。実力はあるはずなのに、肝腎な勝負所で腰が引
ける癖はいっかな抜けない。それで勝数をなかなか積み上げられず、まだ初段でもたついている。
いくら大手合が廃止されて二段への昇進が厳しくなったとは云え、自分が見てやっていながらあんな
有様では、師匠同然にずっと彼を教えてきた某ベテラン棋士の手前バツが悪い。
『十四年会』がまだ存続していたら問答無用で放り込んでいたのだが、和谷はもう勉強会を再度立ち
上げる気など無いらしい。あの会が潰れたのは自分の所為とはいえ、いい集まりだったのに、と惜し
む気持ちが今でもヒカルの中に強い後悔として残る。
「安請け合いすんじゃなかった。教える才能ねーのかな」
うっかり口にしていたらしい。アキラは聞き逃してくれなかった。
「そうでもないと思うよ。むしろ教えるのはボクよりずっと上手いくらいだ」
「世辞はいい」
「お世辞じゃないさ。どうもボクは中身が高圧的らしくてね。今時の子供には怖いらしい」
「それはわかる。おまえはほぼ誰にでもすげェ上からなのが、どんだけお行儀よく隠しても出てくっ
からな。それで新初段シリーズ、座間先生に盤上盤外でボッコボコにされただろ」
「……えらい大昔の話を持ちだしてくるな」
「オレもとばっちり食った。初めて座間先生と当たった時、おまえといっしょくたに『可愛げのねェ
ガキは嫌いだ』ってさ」
「確か、負けたよね」
「ああ負けた。でも向こうは碁の内容もオレの態度も気に食わなかったみたい」
「キミがあからさまに生意気だったからじゃない?」
「おまえに云われたくねェ」
「カリカリしてる時に悪いんだけど、進藤」
「あ?」
明後日から二日かけて戦う相手に、ヒカルは不機嫌丸出しの目線を向けた。
「ちょっとばかり早い、三十歳の祝いを」
「三十ゆーな」
それも不機嫌に輪をかける。なんて厭な響きだ。三十歳。
碁打ちの年齢的ピークは早い。国際的な流れもあって、昔より更に早まっている。脳を長時間連続で
酷使するうえにゴリゴリの体力勝負の世界。
人体の経年劣化が、一般人が思うよりも残酷なまでに影響する。将棋棋士と共に、フィジカルがモノ
を云うプロ野球やサッカー選手、力士とも似たカテゴリーにあるのが碁打ち。
だから碁も将棋も、ダイレクトに体を使う競技と混じってスポーツに分類される事があるのだ。
個人戦で、勝ち星に応じ都度地位やランク付けされるという点では、力士が最も近いのだろうか。
角界と違い、若いうちに目一杯精進して経験を蓄積すれば、年齢のピークを大幅に越えても貯金でど
うにかトップ争いが可能になるのがまだ救いだ。
それでも、五十前で五冠だったアキラの父は怪物だし、ヒカルが初めてタイトルを勝ち獲った相手の
桑原は老境にあって怪物を超える何かだった。
一度上がった段位は下がらない。が、それは『通算してどれだけ勝ちを積んだ棋士であるか』の判り
やすい目安であって、強さの絶対評価ではない。若くして早いペースで昇段した者は別として。
その若手が駆け足で得た段位も、年を経て勝てなくなれば単なる『かつては強かった』という印に成
り下がる。自身、二段から七段へのスキップ昇段だったヒカルにはそう思えてしまう。

1668泥中の蓮・番外─強奪─ ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:23:58
ヒカルが院生や駆け出しのプロだった頃にタイトルを持っていたトップ棋士は、軒並み前線から遠ざ
かってしまっている。海外に活躍の場を移した塔矢行洋は例外として、高齢や健康上の理由で引退し
た者を除けば、滾る闘志は往年のままでリーグ戦に遠く届かなくなった棋士が元タイトルホルダーの
大半。
あれが自分達の将来。否、アキラはともかく、少なくともヒカルは下り坂に入ってしまっている。
自覚してしまえば最後、頭から離れなくなる懸念。
アキラはうまくすれば、父親の血であと二十年頂上を争えるかも知れない。脳の可塑性が極めて高い
赤子の時期から碁を打つ環境に恵まれ、碁とともに育った歴史も戦い続ける力の支えとなるだろう。
だが自分には、そのような遺伝的・環境的アドバンテージは無い。むしろ遅く始めた分、他の同世代
よりも大きなハンデがある。
倉田のように、もともと思考・分析するのが好きな性質なら別だったろうが。生憎、ヒカルは正反対
だった。だから、頭を使う素地も碁を始めるまでは碌に養われていない。
僅か三ヶ月。アキラとの生まれ時期の差ですら、今では『若さ』への羨みの対象になる。
そのうえ二十歳から四年近くにわたり、無駄に心身を磨り潰す愚までやらかしてしまった。
師の真意を汲めず、かの人の心に反する行動に溺れた。
あれで随分、棋士としての寿命が縮んだはずだ。自業自得なのだけれど。
得たものもある。だが、圧倒的に失ったものの方が大きかった。
国内限定で、九段と呼ばれるに恥ずかしくない成績でいるだけなら、まだまだいけるだろう。
だが、求めるのは神の一手。なりたいのは、盤上の全能神。その高処に手を伸ばし続けられるのは。
下手をすれば、ヒカルにはあと五年くらいしかない。
いつまで現在のポジションで戦えるのか。頭は、体は、いつまで際限なき渇望に応えてくれるのか。
不安は尽きず湧いてくる。
師は。心ならずとは云え若くして肉体を捨てた師は。
そのような悩みと無縁で千年。
……最強を恣に出来るはずだ。脳の劣化などとはとうに縁が切れていたのだから。
あいつは狡い存在だったな、と、卑しい事を最近考えてしまう。
しかしその一方で。
『私はもうすぐ消えてしまう』
かの人の、切実な響きを伴った言葉が。
今になって理解できるようになってきている。
時が流れ、自分はやがて打てなくなる。その恐怖。
「進藤、大丈夫だ」
気付けば、アキラに背後から緩く抱き締められていた。ヒカルを落ち着かせるように。
思い切り表情に出してしまっていたようだ。
「キミは大丈夫。ボクが戦う限り、ずっと戦えるよ。落伍なんかしたくても絶対させてやらない」
腕の力が強まる。
「堕ちたボクを、命も身も挺して碁の世界に戻してくれたのはキミだ。二度と、失うものか」
「……ハハ。バーカ。なんのことやらサッパリわかんねェや」
アキラには敵わない。薄っぺらい不安なぞ、お見通しなのだから。
「んで?祝いってなんだよ。今年は対局がカチ合ったんでこれからカラダで、ってか?」
「そんなところだけどね。ガッカリした?」
「べっつに。ただ、もう明日出発だからムチャしてくれんじゃねェぞ……ぁ、ん」
ヒカルを包むように抱いていたアキラの手が、下に伸びて股間を撫でる。ジーンズのボタンを器用に
外し、ジッパーを下ろして下着の中へ潜り込んでくる長い指。
「そういや……ふ、ァ、去年も、ん、ロクなプレゼントじゃなかったなオイ。は、ぁッ、おまえはひ
との誕生日に死にかけやがる、し、っ、不吉極まりねェ」
「死にかけたのは飛行機が悪いんであって、ボクのせいじゃない。心配するな。フライト中に機体が
爆散したって生きて帰ってきてやる」
去年。名人戦第二局が終わったその足で、オレを佐賀に放ったらかして中国なんか行くから事故りや
がるんだ。あのままおまえが死んじまってたら、よりによって名人戦の途中で名人空位じゃねーか。
挑戦者だったオレの立場も考えろ。馬鹿。
「あぁ、あっ……おまえがいう、とっ、……ジョーダンに、きこえね……」
「クソ。ダメだな。あんまりいやらしい声出すものだから予定が狂う」
なんでもいい。早く欲しい。こっちはとうに準備完了だ。
浅く指でナカを掻き回されながら、肉茎を擦りたてられて顎が上がる。膝が笑って、立っていられな
くなる。アキラの右手ひとつで、全身があっさりガクガクだ。まだ脱いでもいないのに。
「あ、あ!くれるなら、はやく……ッ!」
ついに膝から崩れ落ちた。そのまま、床に押し倒される。ジーンズを脱がされる間すらもどかしい。

1669泥中の蓮・番外─強奪─ ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:25:12
「ぅあッ、はぁ、あッ」
下着まで取り払わられるや、アキラが咥えてくる。珍しい。いつもは終わりの合図、一度きりなのに。
肌へのねちっこい愛撫もほぼ省略で、初っ端からとは。
後ろに入っている中指は、変わらずごく浅いところばかり。多分、射精の邪魔をしないようにだろう。
迂闊に深く沈められると、体に染み付いた癖で萎えてメスイキしてしまう。
前後同時攻めは、今のヒカルには気持ち悪いものではなくなっている。巧く連動して、内側から肌を
焦がす熱を産生してくれる。
「もしか、ッ、して、イクの、急かしてんの?」
返事は無い。一心不乱に、ヒカルの下半身に奉仕している。
「んッ、んッ、んんん……ッ!もう、もうダメ……ッ!」
腰がビクビク跳ねようとするのを上半身で押さえ付けられ、出したものをダイレクトに吸い上げられ
る感覚に声が上擦る。
「はーっ、はぁ、ぇ?えぇ?ちょっ、や、あァ!」
達したばかりの陰茎にアキラはまだ、舌で丁寧な施しを続ける。
「なんの……、つもり、っ、ん、ン、ぁ、ヤダ、はァ」
全身の肌に積み重なる感度。熱さ。汗が吹き出て、ヒカルの髪も、まだ着たままのTシャツも、ぐっ
しょり濡らす。体の下にある床板に、小さな汗溜まりが出来ている。
感じやすくなっているのと反して、次の射精までが遠い。いつものナカ達きなら、早くなる一方なの
に。普段やり慣れていない分、相当きつい。こたえる。
「あッヤダっ、も、イキたいイかせてッ」
碁を打っている時なら絶対出さない、序盤で放り投げるような中押し宣言が口をつく。
「そっちじゃなくてナカでイかせてェ!それ無理、無理、ガマン無理!」
聞き入れてくれやしない。アナルをいじくる指はずっと右の中指一本、それも爪が全部潜っているか
どうかの浅さ。それを微妙にもぞもぞと蠢かせ、肛門内括約筋に触れては欲しがるヒクつきを察知し
て意地悪く逃げる。
どこかへ発散させたくともならず、辛いだけの性感は次々ヒカルに襲いかかってくる。
再度、アキラが口内での高速ピストンを開始する。もう出せると判断したのだろう。
どうしてこんな真似を。焦らす意図は無さそうなのだが。むしろ、早く吐精させようとしているよう
な。
見事なまでの長く艶やかな黒髪が、アキラの表情もヒカルの下半身も覆って隠している。
硬質の髪の束が筆責めのようにアキラの顎の動きに従って肌を擽り撫で擦って、ヒカルを余計に悶え
させる。
「あ、あ、あぁッ、はっ、あン、────!」
最後は息を呑み込んでしまって声が出せなかった。二度目の痙攣が、腰を奥から震わせる。
長かった。やっとこれで。
ごくり、と嚥下する音が、やけに大きく下半身伝いにヒカルへ届く。さっきも、飲んでいた。
「は、はぁ、は、……飲みたかったわけ?……ふー、それが、祝いとなに」
返答は言葉の代わりに、咥えっぱなしで三度目の開始だった。
「ちょっと待て、上、汗で気持ち悪いから脱ぐ時間……ッ、くゥ!」
また到達までの時間が伸びる。それまで耐えられるかどうか。アキラがやめろと云われて素直にやめ
る可能性はゼロ。
「ねえまだ飲み足りない?でももうッ、オレ、もう……!」
出るまでの我慢のストックが、とっくに尽きてしまった。
射精より先にナカに欲しい。欲しくて、欲しくて。腹の内側が肉棒を求め痛いほど疼く。
勃たなくなっているなら、勃つまでアキラは舐めしゃぶり続けるだろう。わかっていても、駄目だ。
「ッ、う、塔矢おねが……、挿れ、挿れて、っ、う、ぅ」
いい歳をして、泣きながら懇願とは。本当に碌でもない三十路の前祝い。
ぬちゃぬちゃ、くぽくぽと口淫の音が途切れずにずっと聞こえる。後孔に指で蓋だけされ、放熱を妨
げられた所為で頭の中までオーバーヒートして、灼けついてしまいそうだ。
射精まで待てない。奥に欲しい。ぐちゃぐちゃに深い場所を掻き回して欲しい。そっちがいい。
半端に挿入された指が、腸内を煽る所為だ。早撃ちさせたいのだろうが何だろうが知ったことか。
「あァ!あー!イヤだ、それイヤ、もうヤダァ、っ!奥ぅ、もっと奥!挿れて、挿れてよ!」
矜持もへったくれも吹っ飛んで、ただただ直截に要求を叩きつける。
脚をばたつかせたくとも、相手有利の体勢に予め持ち込まれているので満足に動かせない。
「……いれて、っ、ついてぇ、ナカで、い、ぁ、いかせてぇ……」
まさか、連続フェラでこんなに追いつめられるとは。
口中に溢れかえった唾液が唇の端から垂れ流しになり、既に汗に濡れた髪と頬、耳、首を更に濡らす。
「かんじすぎて、っ、なのに、っ、いけな……!こんな、こんなのもう!」
絶頂を迎えたくとも迎えられないのが、こうもきついとは。

1670泥中の蓮・番外─強奪─ ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:26:24
達きっぱなしは数えきれないほど経験済みでも、これは初めて味わう生殺しだ。
「はやくいかせてよぉ……っ!」
三度目の到達まで、どれほどの時間を要しただろう。実際よりも、体感の方が長かったに違いない。
終わらないかと思った。
やっと陰茎を解放してくれたアキラが、体をずり上がらせてヒカルの額に手を当てる。
「熱出てる……予想より弱かったなァ。尿道いじめるのは別として、もっと鈍いと思ってたけど」
「っなんだよそれ……なんなんだよ……、っ、う」
アキラはやけに嬉しそうなニヤつきを口元に浮かべながら、ヒカルの汗に濡れた鼻の頭にキスを落と
した。。
「囲碁界史上初の七冠棋士が汚い顔して泣くなよ。でも、責め甲斐ありそうなとこがまだあったのは
収穫だ」
「バカッ!死ね!」
「ホラ、欲しいんだろ?ここに」
アキラの右の中指が、今度こそ欲しかった場所まで押し込まれる。
それだけで、馴染んだ絶頂感が訪れる。全身がびくりと跳ね、くん、と頭が自然に反らされる。
「あはァ────!」
「まだ浅いよ?キミの大好きな奥じゃないよ?なのに、たった指一本、挿れただけでメスイキしちゃ
ったんだ」
「ん、あ、ぁあ、はぁ……」
「凄いね、ナカの感度と締まり。ちょっとこれからは、前戯に毎回アレ取り入れようか」
「ヤダっ、……あんなん……ダメ」
脳味噌が使い物にならなくなりかねない。そうなればアキラだって困るだろうに。
「ギブアップするの?残念だな、ささやかに乾杯して軽く呑んだだけなのに、メインのプレゼント受
け取りを拒否されるなんて」
軽く呑んだだけ?あれが?嘘吐くな。ヤリサーのコンパ中にターゲットへのイッキ強要レベルだぞ。
「挿れて欲しい?」
「……ほしい」
自分はどんな表情でアキラにおねだりしているのだろう。きっと、情欲でだらしなく緩んだ顔だ。
ずどん、と一撃が来て、ほんの刹那、意識が飛んだ。凄い。ああ、凄い。待ちかね過ぎて息が止まる。
「まずいな……進藤?起きて?これ、ホント、想定外だ」
なにか云ってる。けれど、理解できない。
「ちょっと乱暴だったけど、挿れただけだよ?もうイキっぱなしなのか?」
知らない。どうでもいい。
「降りてきてるよ、キミの一番イイ場所。そうそうないのに。でも反応が違う……なんていうか」
だからどうでもいい。激しく揺さぶって。もっと。もっと。激しくして。
「ぅ、コリコリだ……あ、ぁ、ダメ、そんな……当てないで、吸わないで、すぐイッちゃう」
イッてよ。出して。何度も。奥の奥で。あああ。
「あッ……!」
耳に届いた喘ぎは自分ではなくアキラが漏らしたもの。
「……あぶ、ない……挿れるまで、ガマンしてた、から、腰砕けに、っ、されそう、だった……」
こっちの腰はもうとっくにグニャグニャだ。プレゼントとやらはこれか?
「と、いうか……挿れる予定は、なかった、て、いうか……」
あれ?じゃあ違うのか?ヒカルもわけがわからなくなっている。
「あーあ、キミの奥でイかされちゃった。そんなつもりでは」
なんだって?
じゃあプレゼントとは一体、と快楽に霞む思考でヒカルが訝しむのは当然だった。
「でもナカに出してはいないからね。それをやったらブチ壊しだ」
ゴム付きでの行為はデフォルト。最近は、中出しまでするのは滅多にない。タイトル戦のカードが互
いと互い、その状態がここ何年も続いているからだ。アキラの怠慢やヒカルの欲求で対局に影響を及
ぼすのは甚だまずい。いや、まずくない対局など一局たりとて無いのだが、一局打つのにひとりの持
ち時間が八時間、ふたり合わせて十六時間、二日がかりの長丁場となる三大棋戦は特にまずい。
ヒカルが大好きな中出しは、いい条件が揃わなければ出来ないプレイになっていた。
が。アキラの主張はそこと違う、というのは快楽に鈍った判断力でもどうにか気付けた。
「……さて」
「ンッ!」
ずる、と抜ける感覚にヒカルが呻く。もう終わりなのか。次は何をする気なのか。
明日には沼津へ発たねばならないのだ。正直後ろで食い足りないが、あまり負担のかかる行為も遠慮
したい。建前では。あくまで、建前では。

1671泥中の蓮・番外─強奪─ ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:30:53
ヒカルの本能は、燃え盛る体の奥は、餓えを訴えてやまない。まだまだ肉棒を食べたい、空っぽの腸
壁はそればかり主張して虚しくうねっている。
アキラの口腔に、またも陰茎がねっとりと押し包まれる感覚。ヒカルは思わず抗議の声をあげた。
「やめ……ッ!もうイヤだ!」
四度目の口淫。パターンからすれば、これで行為は終わりなのだが。
プレゼントとやらをまだ貰っていないので、続きがあるはず。
丹念にねぶり回されたとて、すぐ元気になるほど若くもないし。ナカ達きしたてのオーガズムが全身
を支配している。今度はどれだけ長い時間、感じるばかりで達けない状態に曝されるのか。
「しっかりしてくれ。これじゃ予定倒れだ」
おまえの予定なんか知るかよ。
「やっぱり挿れるんじゃなかった」
だから知らないって。
股間に顔を埋めていたアキラが、口を離して上体を起こした。
「まだ心許ない感じだけど……これ以上はキミが辛そうだからね」
「オイ、まさか……待て、おまえナマ、でっ」
ヒカルに跨ったアキラが、息を吐きながら、頑張って勃たせたヒカルのモノを我が身に納めようとし
ている。俯瞰で見上げるその姿は迫力だ。
下は脱いでいるが、生成色のポロシャツは着たまま。その上半身に纏わりつく、豊かな長い髪。
情欲に濡れ、半眼に伏せられた黒い瞳。かるく開いた、形のいい唇。
ヒカルの胴体を挟み込んで逃がさない、剥き出しの長い脚。
癖の少ない毛質をした茂みから、ヒカルの後ろをまだ欲して屹立している美味そうなモノが誘う。
これをまた挿れて欲しい。挿れて欲しくて堪らない。
つい、うっとり見蕩れそうになる。そんな場合ではないのに。
「中折れなんて、ん、ダメ、だからね?く、ちゃんと満足させて?」
アキラは無茶を云う。ヒカルにあれだけ消耗を強いながら、後ろでの経験値が少ない自分を達かせろ
なんて。
予定予定と煩いはずだ。しっかり解されて、ローションも仕込み済み。
しれっとした顔しながら、いつ用意したんだ。
「毎度キミがやってることだよ、っく、ボクに乗って勝手に腰振って、勝手に、っ、イクの、はっ」
そんな毎回やってるもんか。おまえが乗り気じゃない時だけだ。
毒づいたところで、アキラが中断してくれるわけもなく。
「出して進藤、ナカに、はや、くッ」
お株を奪われた感じがして癪に障る。
さほど気持ちよくなさそうなくせに。そんなんならオレに譲れよ。ビンビンのソレ、食わせろよ。
イキまくって、イかせまくってやるから。プレゼントならそっちがよかった。
おまえだってそうだろ?
「塔矢、指、っ、指いれて、っ、もう前だけじゃイけない……だから、ァ」
「甘える、な、出せよ、ホラ、さあ!」
「あッ、あ、あァん!イけない、くるしい、イかせてェ、ッ!」


「……なんのイミがあったんだ」
結局、四回目も搾り取られた。贈られたよりも盗まれた感が凄まじい。
三度アキラは飲んで、最後は後ろで直接受け止めた。
「ぜんっぜん、プレゼントなんかじゃなかったじゃん」
「プレゼントさ、ボクから」
「わからん」
リビングでの事後。寝室のベッドに倒れ込んでぐったりしたヒカルを尻目に、アキラは纏めた荷物の
確認をしていた。ふたり分。
「明日の新幹線のチケット、うん、よし」
「乗る時間ズラしてんだから、オレの分のチェックはいらねーよ。最悪、忘れても自由席買えばいい
んだし。沼津なんてすぐそこだろ、ドライブ圏内だ」
「ならキミだけ車で行けば?高速乗ったら三島で在来線に乗り換えるより早いか?知らないけど」
「だから。なにがどう、プレゼントだったんだよ」
「布告さ」
「はい?」
「予告状、のほうがいいかな。これから、キミの持ってるものを全部いただくって」
長年ひとつ屋根の下で暮らしても、たまにアキラの思考回路が理解不能になる。
それは常ならば直情径行ゆえと相場が決まっていたのだが、今回は輪をかけて不可解だ。

1672泥中の蓮・番外─強奪─ ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:33:20
「去年、名人位を獲られてから。いいとこなしで全部掻っ攫われたからね。悔しくないわけないだろ」
「だから事前に体力と気力を削っとこうってか。塔矢アキラ先生ともあろうお方が、コスいこと考え
やがる」
「そうじゃないさ」
「ならなんだよ」
「キミが出したのを体に取り込んだらね。勝てそうな気がして」
糞真面目な顔で似合わないトンデモ話を口にする。やっぱり不可解だ。
「……ほー、これまた非科学的な」
「オカルティストのキミに云われたくない」
「誰がオカルトだ。対局相手の精液飲んだら勝てそう?なんだそりゃ」
「単なる気分の問題だ。云ったろ、贈り物は予告状だって。だから本当は挿れるつもりなんかなかっ
た。上座にいながら腰が蕩けてぐらぐらしてる名人なんて論外だからな」
ヒカルが持っているタイトルを、これから全部貰う。手始めに体から、音を上げるまで搾って奪う。
やっと見えた。プレゼントと称して果たし状を押しつけたつもりなのだと。
同時に、七冠棋士の体液を吸血鬼よろしく一方的にチューチューすることで、らしくもなくご利益に
与ろうという意味も持たせた。
その理屈でいけば、ヒカルに挿れて達ったら『奪う』というコンセプトに反して『奪われて』しまう
から、おじゃんになる。が、出したのはゴムの中なので、アキラ基準でとりあえずセーフ。
よくもまあ、こんな七面倒臭い事を考える。
「だーもう!わかりにくい!めっちゃくちゃ、わかりにくい!回りくどいっ!おまえらしくねェ!」
「そのくらいの気でいなきゃ、キミからは奪えない」
それは過大評価だ。何故なら、もう、自分は。
「ボクにこれだけみっともないマネをさせる打ち手が、ありもしない衰えを気にして悩むのを見ると
腹が立つ。ほかにやることがあるだろ」
一瞬、返答が遅れた。
そうだ、アキラがこの馬鹿げた行為を始める前に。見透かされていたんだった。
「励ましてるつもりかよ」
「事実を述べたまでだ。キミはいちいち自己評価が低くて困る。そこに付け込まれて地獄を見たのは
もう忘れたのか。下らん杞憂などに揺れるから、前の二局で終盤、鈍るんだ。ボクはあの二局、勝っ
たと思っていない。勝ちを譲られた。大三冠のひとつを争う、名人戦でだ。この意味がわかるか」
「……」
「屈辱なんだよ。そうとも、この上ない屈辱だ!」
アキラは強がり以外の嘘を決して口にしない。瞳に宿る怒りの火は、本物。
「譲ってなんか……ないって、云ったろ。あれはオレの力負けだ。しつこいな」
あの悪夢の日々。
忘れやしない。ケリが付いてから六年経っても、決して忘れられやしない。死ぬまで。
「勝ちを譲るつもりでなんて、誰を相手にでも打った覚えはない。碁を始めてから、一度だって」
「無自覚なら今ここで肝に銘じろ進藤。また、過ちを繰り返すぞ」
「しないさ、間違いなんて。二度と」
果つるまでまどふことなし。
迷ってなどいない。征くべき道は見えている。デコボコで、深い水溜まりに倒木や落石まみれ。亀裂
が入って崩れた場所もある。崖沿いの、どこまでも険しく上り勾配のきつい細い道。途中、道ですら
なくなる事もあるだろう。だが、自分が踏み固めて進めば、そこに道は生まれる。
どこまでクリアな頭で歩き続けられるのか、などと懸念している場合では、確かになかった。
命ある限り只管、邁進する。
浅学であった愚者の身として出来る事は、己が定めた『前』だけを向いて一歩でも進む。
それ以外、どんな選択肢があろうか。
疲れて俯き、進むべき『前』が視界から外れたら、こうしてアキラが顔を上げさせてくれる。
やはり、彼は自分の羅針盤だ。昔から変わらず。
だが、以前のように一方的な負い目は感じない。
十代の頃から云い続けてくれた「ボクの碁にはキミが必要なんだ」という言葉に。
今のヒカルは全幅の信を置いている。
アキラが、過去も未来も、碁打ちとしての存在意義も、何もかもかなぐり捨てて。
ヒカルを殺し己も死のうとした、あの日以来。
信じている。自分自身よりも、ずっと。
あの日まで、どうしても信じられずにいた。オレごときがおまえに必要だなんて、と。
けれどもう欠片も疑わない。

1673泥中の蓮・番外─強奪─ ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:35:14

おまえの碁にとってオレの存在が前に征くための推進剤なら。
ずっとそうでいる。おまえに恥じぬ打ち手であり続ける。
オレの碁にとっておまえの存在そのものが、征くべき前を示してくれる標だ。
傾いていようが、後ろを向いていようが、エロ目線でオレを見ていようが自由にしてろ。
壊れてデタラメな方向を指すようになったら、今度はソッコーぶっ叩いて直してやる。
オレのせいでどうたらなんてウジウジしねェ。
ボロッカスに負かして、クソミソにけなしまくってやっから。


自身への鼓舞のつもりが、アキラは意図せず敵に塩を送ってしまったらしい。
九月二十日・二十一日。名人戦第三局。
先の二局同様、火花を散らす大接戦の末。勝利をもぎ取ったのは進藤名人。
またしても半目差が勝敗を分け、名人は節目となる三十代のスタートを幸先良く飾った。
十月後半に入れば王座戦・天元戦の五番勝負も重複し、七冠棋士とその挑戦者であるふたりにとって
緊張の極を迎える時期となる。
弱気になる暇など、双方に等しく、与えられてはいなかった。

<了>

1674 ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 10:36:41
まあ区切り的にはここだろうな、と思っていたので書きますた
もう『蓮』投下はしないと言い切って、いい加減にしろとお叱りを受けそうな気がして
避難所にさせてもらいますた

リアルでは二十六世本因坊が井山七冠(年齢的に号はまだみたい)、
十連覇による前倒しはチクン先生なんですが、
『蓮』全話通して井山七冠は「いない」ことになってもらっていて
チクン先生は「っぽい人」として桑原の爺さんの前の代の本因坊として存在だけ
匂わせてまつ
なので、二十六世が桑原の爺ちゃん、二十七世がヒカルたんとなりまつ

去年の名人戦の日程調べずに前のアレ書いたので、今回の話とちと食い違ってまつが
正しくは今回書いた「若゛は名人戦第二局が終わって即中国に飛び、ヒカル誕の日に
飛行機がトラブって急遽帰国した」でつ
調べずに書くとえらい目に遭うと、いい加減学習しろよ俺…

全話再構成の一環で生まれた話でつが、ひとりでも読んでくれたメイツがいたら
大感謝でつ

再構成が完了したら、リニューアル版本編の序盤(まるまる新規ww)
を何レスか投下して、続きはどっかのうpろだにzipで上げる予定でつ

しかし本スレのバカエロ、どうしてこうなった…

1675 ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 11:06:18
ああっBBQされた!
しかたない、本スレ分は続きをこっちで…無念!

1676はじめてのにんげんどっく ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 11:08:03
「さ、えき、さ……せーかく、わる、っ」
「ホレ。口がお留守だ。ちゃんと舐めろ」
首を冴木の方に伸ばし、ヒカルは差し出された怒張を口内に深々と咥え込んだ。門脇は忘れた頃にイイ
場所をツンと強く突き、合間に脇腹を撫で回したり、乳首を舌で転がしたりと
テクニシャンとご指名を受けただけある技巧でヒカルを夢中にさせた。
冴木も焦らし上手で、今日の一発目に挿れられた時は何度「イかせて」と懇願させられたか。今いる
部屋は冴木のマンションの寝室。防音がしっかりしているから、とヒカルはよく使わせてもら
っている。部屋の主である冴木とふたりでの行為はもちろん、彼を加えての複数プレイにも。特定の
相手を決めてはおらず、「ヤりたい」と思ったらスケジュールが合う人間を探すのがヒカルの
セックスライフだった。嫉妬深く独占欲の強い性格の持ち主は面倒なので対象にしない。昔、そうい
うのを何人か相手して懲りた。冴木や門脇のようなタイプが楽でいい。

「お、お、ノッてきた、な、進藤。すっげ、ノド奥、当たる、っ」
喜色を声に表し、冴木が激しく口内に出し入れして粘膜を虐めて感じさせる。
「こっちも、ギュウギュウだ……奥に引っ張り込んで、ッ放しやがらねェ。く、ぅ」
呼応して締まった腸内に、門脇が音を上げそうになる。
「オイオイ門脇さん、投了すんな、よ、勝負所、だろ」
悪戯心で冴木が初めて抱いたのは、まだヒカルが十代半ばの年頃だった。
口八丁で丸め込み、騙くらかすような格好で本番に持ち込んだと記憶している。
顔を真っ赤にしながら狼狽えて、羞恥に全身を染めながら体を任す姿はどうしようもなく可愛かった。
その時の初心な少年が、こんな誰かれ構わぬ淫欲まみれになるとは。
(ま、これはこれでイイもんだけどな。見た目さえ大丈夫なら実際のトシなんざどってこたねェ)
女に種蒔きするなら別だが。責任云々に先立って、本能が「若いのがいい」と主張する。
それは生物として仕方がない。
ヒカルは都合のいいオナホールだ。それ以上の意味は無いし、本人もそれで納得している。
『あんたがオレに勃たなくなったら、どっかで老け専でも探すさ』と、あっけらかんとしたものだ。
「ぅお、ダメだ、こりゃ一旦ガツンとブッ込まなきゃラチがあかねェ」
ついに門脇が降参した。まったりした焦らしを返上し、ガツガツと激しい突きにチェンジする。
「えぇ?……くぁ、こっち、も!アンタが激しいから、ッ、巻き添えだ!」
後ろへの強烈な責めに耐えかねて、ヒカルが呻きながら冴木を口で責め上げ、痛いほど強く吸う。
「欲しいか?っ進藤、上にも下にも!そんなに欲しいか!」
その冴木の、苦し紛れの罵声への返答は、尿道をストローに見立てたきついバキュームだった。
ほぼ同時に門脇が吠えるような声を漏らして、ヒカルの奥で果てた。


「なあ進藤……ところで一点、気になる部分があったんだが」
予定外に消耗した第二ラウンドによる荒れた呼吸が少し治まって。冴木が疑問を口にした。
「なにが」
ヒカルはどことなしか満足げで、機嫌が良さそうだ。
テクニシャンに翻弄されたい気分だったなんて嘘だろ、と思わず云ってしまいそうな程に。
「おまえのエロ夢のことさ。膀胱の内視鏡なんか現実にはやったことないんだったよな」
「ないよ。門脇さんが結石やったから、多分その話が頭に残って夢に出たんだと思うけど」
「……詳しすぎる」
「は?」
「門脇さんの話を昔聞いただけでロクに知らないはずが、やけにディテールが細かすぎる」
「え?」
「夢を見た後、話を盛るために調べでもしたのか」
「しねェよ、ンなヒマなこと」
「ちなみに門脇さん。進藤の話、膀胱のくだり。アレ正しいのか」
冴木の疑問を聞くにつれ。物凄く、神妙な顔に。門脇はなっていた。
「正しい」
「「えっ」」
ヒカルと冴木、同時に、同じ驚きの響きを持つ声が出てしまった。
「トンデモなエロ部分はともかく、正しいとこは正しい」
「……」
次には、ふたりして黙りこくった。
「膀胱鏡って男は麻酔なしじゃキッツイらしいからな。事前にキシロカイン入れるってのはマジだ。
オレが尿路結石やった時、医者にそう説明された」
「……どーゆー、こと」

1677はじめてのにんげんどっく ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 11:09:03
「どーゆーもこーゆーも、おまえの夢はやけにリアルだってこった。引っかかってたんだ、碁以外の
知識も記憶力もサッパリのおまえが、なんでンな薬の具体名まで出してくるんだって」
「冴木さんちょっとまって、オレ、アタマ混乱して」
「で?あんた実際、進藤が夢で乗せられそこねた分娩台みたいのに乗ったのか」
「ああ乗った。ありゃ恥ずかしくて消えてなくなりたくなるぜ」
ヒカルが門脇を思わず見る。門脇も、何か得体の知れないモノを見るような目でヒカルを見ている。
「進藤」
「なに、門脇さん」
「胡蝶の夢、って、知ってるか」
「しらない」
「冴木君は」
「そりゃ……オレも今、あんたと同じことを」
「だから!ふたりとも何云ってるかわかんねェ!」
ウチ帰ってから辞書引くかネットで調べろ!と揃って怒鳴られ、ヒカルは首をすくめた。
「で、最後の質問だ。検査から何日も空けてオレらと遊ぶ予定立てたのはどうしてだ」
「……門脇さん、もういいよ、なんでそんなこと訊くの」
「尿道から内視鏡ぶっこんだらな、その後何日かシミるんだ。それ治まるの待ってたんじゃないのか」
「…………」
ヒカルは、ついにフリーズした。


ふふふ、ヒカルたん……乱れる姿、とてもかわいかったよ。とてもいい三十歳の記念になったね。
来年の人間ドックも、ウチの病院へおいで。
夢と現の区別がつかなくなるくらい、いいや?ヒカルたんが無意識に記憶改変しちゃうくらい。
また、オレらがキモチよくしてあげるからさ。

と、忍び笑いを漏らしたのは、はたして誰であったか。

こわいこわい。
(;´Д`)ハァハァ

<了>

1678 ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 11:11:18
無念!IP焼かれてしもうた!これではもうしばらく本スレに書けん!

バカエロでつよ?嘘はこいとらんでつよ?
ただ俺の性癖が大全開になっただけでつよ…

ヒカルたんに松茸たっぷり食べて欲しかった
触手プレイでアンアンよがって欲しかった
それだけだったんだ信じてください

でもこのネタ、ヒカルたんが三十になったおかげで使えたのも事実
若いヒカルたんには無理だった

三十路のヒカルたんに乾杯
俺も>>310たんに便乗して昼はラーメンにする!

1679 ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 12:26:43
ごめんいろいろ間違ってる…推敲したはずなのに
側位で左脚持ち上げて、ぶら下がってるのは右脚でつ
でもって、。。と続いてるのは削除しそこねでつ

本スレに書き込めないのがなんてもどかしいorz

1680 ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 12:32:55
あり?しかも抜けてる!
>>1676の前に、以下のが続きまつ
スマン!ほんと申し訳ない!

1681はじめてのにんげんどっく1676の前 ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 12:37:07
「──という、夢を見たんだ」
「夢オチかよ!」
門脇が盛大に突っ込んだ。初めての人間ドックから数日後の夜。
「現実にあってたまるか。人間ドックそのものは、時間かかるし胃カメラキツイし面倒ではあったけ
ど、ごくフッツーだったさ……ただ、ね」
「ただ?」
冴木が割り込んで問う。
「オプションの大腸ガン検診と、その前の浣腸で、うっかり感じちゃったのは、その、ガチで」
少しだけ視線を冴木の方へやって、ヒカルは答えた。
相変わらずの大きな瞳が、男を誘うように濡れている。
「なるほど。その流れでヘンな夢見ちまった、ってワケか」
「冴木さん正解。もー二度とやらねェ。恥ずかしすぎる。大腸ガンで手遅れになったらその時だ」
「それで欲求不満になって、スケジュール空いた途端に3Pのお誘いとは。この淫乱三十路」
「云わないでよ門脇さん……ぁ、ぅふ、ソコ、グニグニは、カンベン」
「そういや門脇さん、あんた四十超えてるから無料ガン検診のお知らせ、来てんじゃないの」
「ヤなこと思い出さすなよ冴木君、なんで知ってんだそんなこと」
休憩がてらに夢の話を聞いて、第二ラウンドを始めようと仰向けのヒカルに腰を入れかけた門脇が渋
い顔をした。
プロ棋士としては冴木の方が、と云うよりもこの場の面子では門脇が最も後輩なのだが。
門脇の年齢が他ふたりをぶっちぎりで引き離している所為で、二人称がややこしくなっている。
もっと正確には、年齢的にヒカルと門脇のほぼ真ん中が冴木、となる。
「白川さんが、何年か前に研究会で『ボクにもついに来た』ってガックリしてたから」
「キミだってもう目の前じゃないか冴木君。進藤、いいこと教えてやる。三十の声聞いたら坂転げ落
ちるように時間流れっから」
「ンなコトゆー人には挿れさせませーん」
「それが挿れちゃうんだ、な、っと」
「ンぁッ!」
先刻から散々、冴木の肉棒によって熱く柔らかくされた場所は難なく門脇を迎え入れた。
「で?今日はどういう人選なんだ?素直に吐いたら、コレやるよ」
ヒカルが咥えられそうで咥えられない微妙な位置で先端をゆらゆら見せびらかしながら、冴木が訊く。
「はッ、ぁ、テクニシャン、が、イイな、って」
「そりゃ光栄。なあ、門脇さん」
御褒美とばかりに肉棒を近づけてやると、ヒカルは舌を差し伸ばし、冴木の先端を絡め取った。
「簡単にイかすんじゃないぜ門脇さん。他でもない、進藤先生のリクエストだ」
「っ、へッ、わーって、る、って」
焦らして焦らして狂わせてやる、と予告され、ヒカルの全身が熱を帯びる。
「トシ食うと、イクまで、時間がなあ、かかるし。先に、っ、と、イかれたらシャクだ」
「一晩で休み挟んでも体力的に二回が限度になったり、っ、切ないよ、ねえ、うッ」
そうなりゃ若いのを上に乗っけて動かさせて、自分はラクすんだよ、と門脇は笑いながらヒカルを浅
く小さく掻き回す。
「あ、ン、ん、はァ、ァ……ヒデェ……あッ!、オレ、だって……もう」
「もう若くない、なんて云わずに、ッ頑張れ最年少。夜は長いぜ?」

1682 ◆lRIlmLogGo:2016/09/20(火) 18:20:01
抜けはこれだけでつ
ホンマスマンかった

昔の羞恥プレイがトラウマでテストスレ使わんかったからこんなことにorz

1683名無しさん:2017/03/08(水) 18:35:49
test


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