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SSの館

1名無しさん:2003/11/09(日) 05:43
創作小説をジャンジャンと

115もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:14
DC、かつてのロボット工学の権威、そしてEOT解析の第一人者であったビアン・ゾルダーク博士を
総帥として、地球連邦に反旗を翻した組織は先のDC戦争において崩壊していた。
しかし、ビアン・ゾルダーク、アードラー・コッホといった反乱の首謀者が死亡したとはいえ、
その構成員全てが消え去ってしまったわけではない。
世界ではそのわずかに残ったDCの残党兵による小規模なテロ活動が問題となっていた。
地球連邦政府はそれに対し徹底抗戦の方針を打ち出し、
非情とも言えるほど元DC兵、またはDCに協力した者たちに対する取締りを強化していた。
しかしその目的は単なる治安維持だけではない。

DCに参加した者が全員、ビアンのように異星人に対抗するためでも
アードラーのように世界征服を目的としたわけではなく、
むしろそうでない者が大部分であった事からわかるように
潜在的に連邦政府に不満を持っているものは多い。
そういった者たちによる反乱を抑えるための「見せしめ」としてである事は
誰の目から見ても明らかであり、
陰でこの連邦政府の行動を「残党狩り」と呼ぶ者もいた。

116もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:15
「全機出撃!」
佐世保基地が視界に入ると同時にダイテツの命令が下り、ラウルたちはハガネを飛び出した。
「はあ…」
「どうしたんです…じゃない、どうしたんだリュウセイ?」
「いや、おまえのエクサランスもラミアのアシュセイヴァーもスーパーロボットじゃないんだよなあ…」
「は?」
リュウセイの言葉の意図が分からず思わず聞き返したところに、通信が割り込んできた。
「まだおまえはそんなくだらない事を言っているのか。
 もうすぐ敵の射程範囲に入るぞ。気を引き締めろ」
「くだらないって何だ、ライ!いつもいつも…お前には男のロマンってものが…」
「だから何度も言わせるな。そんなものは知らん」
「はいはい、2人ともそれくらいにしなさい」
「本当にここは軍隊なのか…?」
SRXチームのやり取りを聞き、小さな声で呟いたラミアの声は誰の耳にも届かなかった。
ラウルの方はと言えば未来の雰囲気とのあまりのギャップに苦笑いを浮かべるしかない。
しかしどこか心地良い雰囲気ではある。いつの間にか肩の力は抜けていた。
「敵機判別、リオンタイプFが13機。高機動タイプの敵が相手ね。
 リュウセイ少尉とイルム中尉が敵を撹乱しつつ突撃、
 他のものが援護というフォーメーションで行きましょう」
「了解、行くぜ!R-1フライヤーモード!!」
ヴィレッタの指示を聞くと同時にR-ウィングに変形し、勢いよく先行するリュウセイを見て
イルムは口の端を上げた。
「やれやれ、あいつも相変わらずだね。それじゃ俺も遅れないように行きますか」
グルンガストも飛行形態ウィングガストに変形し、R-ウィングを追いかけた。
「教官、リュウセイでよかったのですか?」
R-2のツインマグナライフルを放ちながら、ライがヴィレッタに問いかける。
その問いにアヤがヴィレッタの代わりに答えた。
「あの子も前の戦争で十分成長しているわ。心配しなくても大丈夫よ」
「別に俺は心配などしていませんが…」

117もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:16
数十分後、戦闘は大した問題もなく終わろうとしていた。
敵機の数は少なくなかったが、万全の状態でないとは言え
前大戦を勝ち抜いたSRXチームたちにとっては大した問題ではない。
また新たに加わったラウルとラミアの実力が想定していたより高かったのもその理由の一つだ。
「へえ…結構やるじゃないか、ラウル」
「それほどでも…!?危ない!アヤ大尉!」
リオンを撃墜し、振り向いてリュウセイに返事をしたラウルが見たのは
援護のため後方に回っているR-3を狙いレールガンを構える敵機の姿だった。
「えっ?きゃああ!!」
援護も間に合わずレールガンから放たれた弾丸がR-3の背部に命中し、倒れこむ。
止めを刺そうと再度構えるリオンだったがウィングガストの突撃、スパイラルアタックを受け
その銃口から弾丸が発射されることはなかった。
「あ、ありがとうございます、イルム中尉」
「いいさ、気にすんな…」
口をつぐんだイルムの視線の先には、淡々と最後に残った敵機を撃ち落した
ラミアのアシュセイヴァーがあった。本人は気付いていないがその視線は
味方を見るものにしては少々険しいものになっている
「何か?」
「……別に」
その視線に気付いたラミアの問いにイルムは肩をすくめてぶっきらぼうに答えた。

「全敵機の沈黙を確認。ハガネに戻るわよ」
「敵兵の捕獲はしなくてよろしいのですか?」
「それは百里基地の方に任せましょう。彼らだって無能ではないわ」
聞き方によっては無責任とも取れそうな指示を出したヴィレッタに続き
他の機体もハガネへ帰艦していく。
ラウルはその最後尾でゆっくりと進んでいた。
(本当にここは過去の世界なのか…だとするとあの人たちはもうすぐ…)
「どうすりゃ…いいんだ…」
苦しげに漏れたその言葉に、答える者はどこにもいなかった

118もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:17
「……え?」
フィオナは目の前のモニターに映し出されている景色に呆然となった。
どこまでも広がる暗闇、そしてその中にいくつか小さく灯る星々。
どこをどう見てもそこは宇宙空間だった。
「えっと…確か私たち、グリーンフラワーの中に突入して…そこでズフィルードって奴と…」
戦闘の途中で気絶し、戦線離脱したフィオナにはなぜ自分がこんなところにいるのか
まったく見当もつかない。
頭を抱えて俯いたフィオナの目に、自分の腰に抱きつく形で眠っているラージが入ってきた。
「な、何してんのよ!!」
思わず蹴飛ばしてしまったラージの後頭部はまっすぐ壁に向かい、
鈍い音が狭いコックピットの中に響いた。

「いたた…あ、フィオナ、気が付いたんですか?」
「そんなことより、これは一体どういうことよ!?」
「…宇宙ですね」
「そんな事見りゃわかるわよ!私が聞きたいのはなぜここにいるかってこと!」
指差したモニターを覗きこみ、眼鏡を押し上げながら言ったラージの言葉に
フィオナはつい声を荒げてしまった。
ラージのいつも冷静でマイペースな性格は、とても頼もしく感じることもあるが
こういった場合だと苛立ちを増大させてしまう。
「ええ…フィオナは気絶していたから混乱するのも無理はないですね。
 落ち着いてください。説明しますから」

大まかにこれまでのことの説明を受けたフィオナはショックを隠しきれないようだった。
「そんな…クロガネはデュミナスにやられたっていうの…?」
「おそらく…あの爆発でしたから…なぜ僕たちが無事なのか不思議ですけど」
「じ、じゃあラウルとミズホは!?」
「周囲に彼のエクサランスの反応はありませんね…おや」
勝手にレーダーのコンソールを操作していたラージは何かを見つけた。
「フィオナ、エクサランスを後ろに向けてくれませんか」
「いいけど…えっ、これって…地球?」
振り向いたエクサランスの眼前に広がったのはまぎれもなく青く光る美しい星、地球だった。
「どうやらここは衛星軌道上のようですね。それよりもこれを」
ラージが指差したモニターの部分には身動きせず漂っている人型機動兵器があった。
「もしかしてレジスタンスの機体かも!パイロットは!?」
自分たち以外の生存者の可能性を見つけ、嬉しそうな声を上げたフィオナは
その機体に近づき、接触通信を試みた。

119もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:17
「…うう…レモ…ン」
「よかった、生きてる!聞こえますか?応答してください!」
「ん…ここは…どこだ?」
「地球近くの衛星軌道上ですよ。あなたはレジスタンスですか?」
「レジスタンス?いや違う。俺は……誰だ?」
「え…もしかして…」
「くそっ、思い出せない。記憶喪失ってやつか」
「あ、私はフィオナ・グレーデン。こっちはラージ・モントーヤです。
 …あなたの名前は?何も思い出せませんか?」
せっかく見つけた記憶喪失ということに少し落胆した様子のフィオナだったが
相手を気遣ってか、明るい声で聞いた。
「君がキスしてくれたら思い出すかもな」
「え?キ、キス?」
「それならお安い御用ですよ。さあフィオナ、あちらのコックピットに…」
「何言ってるのよ!冗談に決まってるでしょう!」
「そうなんですか?」
異常なまでに世間知らずのラージの言うことはどこまで本気なのか判別がつかない。
少し頬を赤くしたフィオナは相手をするのも疲れるだけだと判断して、
記憶喪失という男の方に視線を戻した。
「いや、してくれるんならそれはそれで嬉しいんだが…冗談だよ。
 …自分が誰だかわからないのは本当だけどね」
「…ったく、本当に何もわからないんですか?」
「ああ…いや、ちょっと待ってくれ。
 …アクセル」
「もしかして、それが名前ですか?」
「そう…らしい。他のことはさっぱりだけどな」
少しであるが事態が進んだことで表情がいくらかやわらいだフィオナは次にとるべき行動を考えた。
「それじゃ、いつまでもここにいたってしょうがないし…移動しましょうか」
「そうですね。ここからだと月へ向ったほうがいいでしょう…これは!?フィオナ!」
ラージが何気なく見たレーダーの反応に異変が起こっているのを見つけた。
いつの間にか周囲を小型の機動兵器に囲まれている。
見たことがない機体だが、ところどころに突き出ている突起が
どことなく図鑑で見たことがあるハリネズミという動物を連想させる。
「どう見ても地球のものじゃないわね。帝国監察軍?」
「こんな兵器のデータは見たことありませんが…多分そうでしょうね」
などと話していると、その小型兵器が突然ガトリングを放ってきた。

120もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:17
「燃料チェック…結構消費してるな。
 機体の損傷は…軽微。全然動けそうだな」
「アクセルさん!?」
敵の攻撃を何とかかわしたフィオナは黙々と戦闘準備を始めているアクセルに気が付いた。
「戦うしかないさ。友好的な相手でもなさそうだしな。
 あんたたちは逃げろ!」
「1人じゃ無茶ですよ!記憶だってないのに!」
「大丈夫だ。操作方法は体が覚えているらしい。武器の威力も記憶で変わるわけでもないし、
何とかやれそうな気がするんだな、これが」
「…わかりました」
少し躊躇したが言い争いをしている状況でもない。
覚悟を決めた顔をして振り向きざまに近づいてきた機体にハイコードマグナムを叩きこんだ。
「フィオナ!?逃げろといっているだろう!」
「私だってこんな状況が初めてってわけじゃないですから。
 ラージ!SOSをお願い」
「もうしましたよ」
「さすがね。じゃあ、しっかりつかまっててよ!」
「あんたら…」
コスモドライバーが放った二度目の攻撃を合図にしてか
敵機が一斉に突撃を始めてきた。

121もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:18
「よいしょぉっ!一丁あがり…っと何か近づいてきているみたいだな」
拳を敵機に打ち込み―驚くことにアクセルの機体は現在の兵器にしては珍しく
内蔵兵器を用いず、拳と鋭く尖った肘を武器としていた。
アクセルはこちらに近づく影に気が付いた。
「こちらでも確認しました。戦艦のようですね」
「もしかして…クロガネ!?」
フィオナの淡い機体もむなしく、現れたのは見たこともない赤い戦艦だった。
「あれは…馬鹿な、あれはL5戦役の際に大破したはず…」
ラージの言葉の意味がわからずフィオナが聞き返そうとしたところで通信が入ってきた。
「こちらは地球連邦軍所属、ヒリュウ改艦長のレフィーナ・エンフィールド中佐です。
 SOSを発信したのはあなたたちですね」
「!?レフィーナ艦長!生きていらしたんですか!…でもちょっと若い」
「え…確かによくこの職に就くには若いと言われますけど…」
「すみません、救援には感謝しますが戦闘中ですので話はこの程度に」
お互いに戸惑っている2人をおいてラージが話を切り上げた。
「そうですね。PT部隊出撃してください!」
レフィーナの命令でヒリュウ改から4体の人型機動兵器が出撃していく。
「ヒリュウ改…」
まだ混乱しているフィオナの耳にアクセルの呟きが聞こえてきた。
「記憶が戻ったんですか!?」
「いや…戻ってはいない…」
(そう…見たことはないはず…なのに俺はこの戦艦を知っている?)

それぞれの理由で動きが止まってしまったフィオナたちとは逆に
ヒリュウ改から出撃してきた機体は着々と戦闘準備を進めていた。
「よっしゃ、久しぶりの実戦だぜ!いくぞ!」
赤い量産型ゲシュペンストMk-2に乗る、気の強そうな女が他の機体に確認を入れる。
「オクト2了解、あれは…エアロゲイターか?」
緑の量産型ゲシュペンストMk-2に乗る男は逆に少しおどおどしながら敵を見ていた。
「オクト3了解、しかしまあ…ひさびさ地球に戻ってきたと思ったらこれかよ」
他に比べてかなり大型の機体、ジガンスクードに乗る少年は溜息をついている。
「オクト4了解、嫌なら下がっていなさいタスク、あなたは訓練をよくサボっていたんだから」
黒色のAMガーリオンに乗る、どこかしら高貴な雰囲気を漂わせる少女がタスクと呼んだ少年に言葉を返す。
「お、心配してくれてるのか、レオナ?」
「べ、別にそんな事はなくてよ。ただ…足を引っ張られるのが不安なだけで…」
「お前ら、戦闘中に無駄話してんじゃねえよ!」
なんとも緊張感に欠けた状況で戦闘は再開された。

122もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:18
もう、フィオナたちが手を下すまでもなかった。
ヒリュウ改から出てきたオクト4人はこういった正体不明の敵に対して慣れているらしく、
またフィオナとアクセルでかなり敵機の数を減らしていたこともありすぐに戦闘は終了した。
「あなたのお名前は?」
「あ、はい。フィオナ・グレーデンといいます。あっちにいる人はアクセルという名前らしいです」
「それではフィオナさんとアクセルさん、ヒリュウ改に着艦してもらえますか?
 少しお話を聞きたいので」
「わかりました」
穏やかではあるが決して断れない雰囲気を持ったレフィーナの言葉を聞き、
フィオナとアクセルはヒリュウ改へと進路をとった。
「ねえ、ラージ、これって…もしかして…」
「話は後にしましょう。今は少し考えをまとめる時間が必要のようです」
「そう…ね」
そうは言っても、ラージの苦しげな表情を見て
フィオナは自分の想像がおそらく間違ってはいないことを確信してしまった。
フィオナの少し後ろをついていくアクセルの方も、また難しい顔で考え事をしていた。
(ヒリュウ改だけじゃない。
 あれから出てきた機体も俺は知っている…俺は一体…何者だというんだ…)

123もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:19
フィオナたちがヒリュウ改と合流した翌日、極東支部伊豆基地の司令室には
ヒリュウ改からの通信が入ってきていた。
「それでは、そちらでもヒリュウ改に地球帰還命令が出た理由はわからないということか」
「ええ、何しろ急な話でとにかく戻って来いということでしたから。
 今もその後の命令が来ないので、エルピスコロニーにお邪魔させてもらっていますよ」
腕組みをしたダイテツが話している相手はヒリュウ改の副長のショーン・ウェブリーである。
そばには複雑な顔をしたレフィーナもいた。
「しかし、伊豆基地の方にもお客さんがいらしているとは…
 実はこちらにも来ているんですよ。エクサランスという機体に乗った可愛いお嬢さんたちが」
「宇宙にもか。志願兵と言ってはいるが…少々怪しいところもあるな」
「人を疑うというのはあまりしたくはありませんが
 イングラム少佐の件の二の轍を踏むわけにもいきませんし…」
レフィーナが悲しげな顔をして言うと、ダイテツは元気付けるように少し笑った。
「こういうことについて調べてくれそうな人間に少し心当たりがある。
 そちらにきた3人についても合わせて聞いてみる事にしよう。その代わりといってはなんだが、
 ヒリュウ改が遭遇したという正体不明の機体についての調査は任せるぞ」
「ええ、少なくとも地球製ではありませんし、エアロゲイターの機体とも少し違うようですから…
 もしかしたら別の異星人のものとも考えられますな」
「また…戦争が始まるのでしょうか…」
レフィーナの表情がますます暗くなった。
この若い艦長にはその肩書きにしては少々優しすぎるところがある。
「そんな顔を部下に見せてはいかんぞ、レフィーナ中佐。
 決して喜ぶべきことではないが、我々はそのためにいるのだからな」
「わかっています」
ダイテツの厳しい言葉にレフィーナはそう答えるものも、その表情は晴れなかった。

124もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:20
中国山東省、水墨画をそのまま抜き出したような雄大な自然が広がっているところに、
それには到底似つかわしいとは思えないテントがあった。
慌しく白衣や作業着を着た人間が出入りしている中で2人の美女がお互いに難しい顔をして向き合っている。
眼鏡をかけた女性が一つ溜息をつき黒髪の女性に問いかけた。
「ウェンリーさん…やはり、私たちには協力してはもらえないのですか?」
「はい…あなた方、LTR機構の方々の事情は理解しています。
 本来ならば強行的にもあれを運び出して調査できる権限もあるのに、
 エリ博士は私の話を聞いてくれてここでの調査にとどまってくれている事にも
 感謝してはいますが…
 それでもやはりあれは人の手に委ねるべきものではないのです」
ウェンリーと呼ばれた女性は俯きながらも強い意思を込めた調子で返した。
「我々はただ学術的にあの遺跡から発掘されるものを調査したいだけです。
 それにあれはあくまで過去の遺物でしょう?
 現代で軍事利用も出来るとは思えませんが」
エリもそう簡単に引き下がるわけにもいかず、何とか説得を試みようとするが
ウェンリーの意志は曲がりそうもなくただ首を振るだけだった。
「あれは…科学といったものの常識を遥かに超えたところにあるのです。
 だからこそ私の一族は旧世紀からあれを外に出さないという使命を
 この名前と共に受け継いできました」
こういった押し問答をもう何ヶ月も前から繰り返してきている。

また一つ溜息をついてエリが口を開こうとしたとき、
テントの外から大きな爆発音と振動が伝わってきた。
「何が起こったの!?」
エリがテントの外に飛び出すと、一気に悲鳴と砂煙が襲いかかってきた。
見上げると空から数機のAMリオンが遺跡を攻撃している。
「あれはAM…もしかしてDC!?」
「アンザイ博士!ここは危険です、下がってください」
「私はここの責任者です。自分だけ真っ先に逃げることはできません!」
「し、しかし…」
遺跡から逃げてきた研究者と言い争いをしていると、
攻撃をしていたリオンは地面に降り立ち、何やら作業を始めた。
彼らの目的の見当がついたときにはすでに遅く、
リオンたちは遺跡の中の何かにワイヤーを巻きつけ飛び立っていった。

「なぜDCがこの遺跡を…彼らはあれがどういうものなのかわかっているというの…?」
エリはもう小さくなってしまっているリオンを見続け、自分に問いかけるように呟いた。
「4体!?確かに彼らが持ち去ったのは4体だったんですか!?」
急に聞こえてきた大声に驚き振り返ると、ウェンリーが命からがら逃げ出してきた研究員に
掴みかからんとするような勢いで問い詰めている。
「ウェンリーさん、どうしたんですか?」
ウェンリーは、落ち着かせようとして呼びかけたエリの言葉も聞こえないようで、
その場にへたり込んでしまった。
エリが駆け寄ってきても、この世の終わりが来たかのように絶望の表情を浮かべ
何か呟き続けるだけだ。
「そんな…龍と虎だけではなくあの2体も復活していたなんて…」
ふと遺跡があった方を見てみてが、エリの不安を表したかのように
黒煙が絶えることなく立ち上がっているだけだった。

ラウルとミズホが伊豆基地に保護される1ヶ月前の事件である。

125もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:20
「もう知っているものがほとんどだろうが、彼らがこれよりこの極東支部に協力してくれることになった
 ラウル・グレーデン君、ミズホ・サイキ君、ラミア・ラヴレス君だ。
 ラウル君とラミア君はパイロット、ミズホ君はメカニックでそれぞれ曹長待遇とする。」
ラウルたちはブリーフィングルームで前に並ばされ、レイカーから紹介を受けた。
「…それではヴィレッタ君、これからの事を説明してくれ」
その他の部署などの簡単な説明の後、ラウルたちは下げられ代わりにヴィレッタが前に出た。
「このあと13:00に、ハガネのクルーは戦闘準備をしてまたここに集合…」
「何かあったのか?」
何もなければそのような命令は出ない。
愚問とも言えるリュウセイの質問で説明が中断されても、ヴィレッタは顔色を変えず答えた。
「極東支部にDCの犯行予告が来たのよ。時間は15時ちょうど、場所は神奈川の藤沢地区。
 ハガネはそこで警備を行います」
「藤沢だって!?」
場所の名前を聞きリュウセイは声を荒立てた。
「ああ、そういえばあの地区にはあなたの実家があったわね。
 でもあまり心配する事はないと思うわ。今まで、DCが犯行予告をしたことなんてなかった上に、
 藤沢地区には政治的、軍事的に重要なものがあるわけでもないから
 たちの悪いいたずらといった可能性が大きいし」
「陽動といった事は?」
「もちろんその可能性も考慮して他の極東支部の基地も緊急配備をとっているわ。
 私たちが警備につくのも支部の中で一番小回りがきく部隊だからよ。
 …特に質問がなければこれでブリーフィングは終わらせるわ」

126もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:21
ヴィレッタの話が終わった後もブリーフィングルームの中はざわついている。
その中でリュウセイが難しい顔をして椅子に座ったままでいた。
自分の母親は極東支部の軍事病院に入院しており藤沢地区にはいない。
しかし自分が生まれ育ったところが狙われていると聞いては、
心配する事はないと言われても気が気ではない。
そんなリュウセイの姿が気になりラウルは声をかけた。
「リュウセイさん…」
「……ん?ああ、ごめん。考え事をしてたよ。
 そうだ、まだ俺たちの紹介をしてはなかったかな。この前、一緒に戦ったからわかってると思うけど…
 あそこのキザったらしい金髪がライディース・F・ブランシュタイン少尉。
 さっき説明していたのがヴィレッタ・パディム隊長。後は俺とアヤでSRXチームってのを組んでるんだ。
 そしてあそこでラミアを口説いているのがイルムガルト・カザハラ中尉さ。
 ま、これで俺たちは正式に仲間になったんだ。改めて、よろしくな」
「あ…ああ、よろしく」
無理に明るく振舞っているようなリュウセイの態度にかける言葉が見つからず
横を見てみると、ミズホが信じられない事を聞いたかのように顔色を真っ青にしていた。
「……ブランシュタイン…」
「ミズホ、どうかしたのか?」
「え…あ、なんでもないです」
そうは言っても顔色はまだ優れない。
そのままミズホはふらふらとした足取りでブリーフィングルームを後にした。
「大丈夫か、彼女?」
「さ、さあ…」
残された2人は心配そうな視線をミズホが出て行った扉から動かせなかった。

「ライディース少尉…」
廊下を歩いていたライは、ともすれば聞き逃してしまいそうな小さな声が自分を呼ぶのを聞いて足を止めた。
振り向くとミズホがこちらを向いて俯いている。
「君は…ミズホ君だったかな、俺のことはライでいい。…何か用か?」
「あの…ぶしつけなことを聞いてすみませんが、
 エルザム・V・ブランシュタインという人を知っていますか?」
「エルザム?兄だが…何か?」
「兄弟…いえ、なんでもないです。呼び止めてすみませんでした」
会釈をして走り去っていくミズホの背中をライはわけのわからないといった顔で見つめた。

127もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:21
先程リュウセイに口説いているといわれていたイルムとラミアだが、
2人の間を包んでいる空気はそんなものではなかった。
「話とは何でございますでしょうか?」
「この前の戦闘だがな、あの時のお前の位置だったら
 アヤが撃たれる前に助けることもできたんじゃないか?」
「そうだったでしょうか…なにぶん始めての実戦だったでございますから
 ただ一番近くの敵を攻撃した方がいいと思ってしまったですわ」
「それだ。お前は自分を戦闘に関しては初心者と言っているが、
 この前の動きでは俺には到底そうとは思えないんでな」
もともと穏やかとはいえないラミアの目がますます鋭くなる。
「何が言いたいのでありますか?」
「単刀直入に言うと、俺はお前が信用できないってことさ。
 前も手痛い裏切りを受けたことがあってね。何度もそういう目に遭うのはごめんだ」
何秒かお互いの視線がぶつかりあい、ラミアの方が口を開いた。
「私からは信用してくれと言う他ありませんですわね」
「…ふん、まあいいさ。こっちも証拠があるわけではないしな。
 ただ俺が言ったこと…忘れるなよ」
一方的に話を切り上げイルムは立ち去った。
(あの男…中々勘が良いようだ。今後の任務の邪魔になるかもしれんな…今のうちに消しておくか…?
 ちっ、アクセル隊長がいればもう少しうまくいくのだろうが)

128もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:21
藤沢地区にハガネが到着し警備に就いてからかなりの時間が経った。
「…何も起こらないな」
ラウルがぼやいたのも無理はない。予告された時間からとうに1時間は過ぎている。
「他の地区が攻撃されたというのも聞きませんし、やはりいたずらだったのでしょうか?」
「…かもしれないわね」
ライとヴィレッタがそんな事を話している中、リュウセイは落ち着きなく周りの景色を見渡している。
「どうしたのリュウ?」
「あのさアヤ…ちょっと外に出たらダメ…だよな」
リュウセイにとって前大戦終結後の休暇以来の故郷である。
しかも、そのときには母親といることが多かったため家から出ることも少なかった。
しばらく見ないうちに様変わりしてしまったように感じる景色を見てみたいと思ったのだ。
「そうね…もうDCが来る気配もないし、地域住民の人も避難先から戻り始めたみたいだから…
 ただ、すぐに戻りなさいよ」
「サンキュ!やっぱアヤは話がわかるぜ」
そう言ってリュウセイはR-1を屈ませて、コックピットから飛び出した。

「確かこっちの方だったよな…」
あたりを見渡しながら見慣れた街並みをぬけると、そこにまた懐かしい建物が見えた。
「お、あった。はは、さすがにこれは変わってないや」
それは学校だった。
今はアメリカのラングレー基地で看護兵をしている幼馴染のクスハ・ミズハと共に通った高校。
軍にスカウトされたため卒業を目前にして中退となってしまったが、
ここで作った思い出は忘れた事はない。
「リュウセイ…?リュウセイでしょう!」
懐かしい気分に浸っていたところに突然自分の名前を呼ばれ振り向くと、
浅黒い肌の元気そうな少女が手を振りながらこちらに駆け寄ってきた。
「お前…カーラか!それにユウも、久しぶりだな!」
「やっぱりリュウセイだ。ほらユウ!あたしの見間違いじゃなかったでしょう」
近づいてきた少女はリルカーラ・ボーグナイン、
それに困ったような顔をして歩いてついてくるのはユウキ・ジェグナン。
リュウセイとクスハの中学時代からの友人だった。
特にカーラとクスハは親友同士で以前はよく4人で遊びに出かけたりしていた。

129もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:22
「本当に久しぶりね、リュウセイ。でもその制服…軍に入ったって話は本当だったんだ」
「まあな、今は伊豆の方にいるよ」
リュウセイの返事にカーラは心底落ち込んだように溜息をついた。
「なんだ、つまんない。じゃあ、クスハと駆け落ちしたって噂は嘘だったんだ」
「その噂を流したのもカーラだっただろう」
「そうだっけ?」
「何でそうなるんだよ。大体クスハは今、彼氏と一緒にアメリカにいるんだぞ」
「ええっ!どうして!?あの子あなたにベタ惚れだったじゃない!」
今度は大声を上げて自分に詰め寄るカーラに少しリュウセイはたじろいだ。
「お前なんでそんな事を…」
「そんなの見てりゃ誰でもわかるわよ。気付いてなかったのはあなただけ。
 まったくどこをどうやったらこんなに鈍感になれるのやら」
「うっ…別にいいだろ。こっちにはこっちの事情があったんだから」
そう言ったものの、カーラはまだものすごい形相で自分を睨んでいる。
仕方なく軍事機密にかかわらない範囲で成り行きを説明することにした。

「へえ、白人美男子と愛の逃避行か…それはそれでまたロマンチック…」
「おい、全然違うぞ。お前…本当に俺の話を聞いてたのか?」
リュウセイの突っ込みも耳に入らないのか、
説明とはまったく違う想像をしているカーラは胸の前で手を組み目を輝かせている。
「無駄だ、リュウセイ。こうなったらこいつに何を言っても聞かないのはわかっているだろう」
「ユウ…お前も相変わらず苦労しているみたいだな…」
「まあな」
自分の世界に入ったままのカーラに置いていかれた2人は苦笑いを浮かべた。

そのまま3人で昔話に花を咲かせていたところで、
ポケットに入れていた携帯通信機の発信音がそれを遮った。
「やべ、時間をとりすぎたかな」
急いで通信機を取るとアヤの慌てた声が飛び込んできた。
「リュウ、早く戻ってきて!連邦軍の輸送機がDCに襲われてこっちに向ってるの!」
「何だって!?わかったすぐに戻る。おっと、ユウとカーラはすぐに避難所へ戻ってくれ」
「ねえ、その輸送機ってあれ?」
カーラが指差した先には煙を吹きながら近づいてくるタウゼントフェスラーがあった。
「何でこんなに近くまで…HOSジャマーでも使われてたのか!?」
「そんなことよりも、あれ…こっちに落ちてくるぞ!」
慌てて3人が逃げ出したと同時に学校へタウゼントフェスラーが突っ込んでいった。

130もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:22
「いたた…なんでこんなところを軍の輸送機が通るのよ…」
数十秒ほど気絶していたカーラが目を覚ますと周りは以前の面影もなく瓦礫だらけとなっていた。
「ユウ…リュウセイ…生きてる…?」
「うぅ…」
うめき声が聞こえた方を見るとリュウセイがうつ伏せで倒れていた。
「リュウセイ!大丈夫!?」
急いで駆け寄り、体を揺するとリュウセイも気がついた。
「痛ぅ…足をひねったみたいだな。カーラは怪我ないか?」
「うん…ユウは…?ユウ!返事をして!!」
見渡していてもユウの姿は見当たらない。当然返事も聞こえなかった。
「う、嘘でしょ。さっきまで…一緒にいたんだよ…」
「カーラ…」
リュウセイは呆然としたカーラにかける言葉もなく、思わず視線をそらすと
その先にある撃墜されたタウゼントフェスラーの中に、PTの影があることに気がついた。
「カーラ、俺をあのPTのところまで運んでくれ」
「え、でも…ユウが…」
「早くしろ!まだDCの攻撃は終わってはいないんだ!このまま死にたいのか!!」
「死ぬ…って…」
認めたくはなかった現実を突きつけられ、覚悟を決めるしかないとわかったカーラは
リュウセイに肩を貸し何とか立ち上がらせ、タウゼントフェスラーへと向かった。

「これは…ゲシュペンストMk-2のタイプTT!?」
ようやく姿を見せたPTはリュウセイが始めて乗り込んだ機体だった。
何とか外からコックピットのハッチを開け乗り込むとリュウセイは手際よく機体の操作を始めた。
「エンジンに火が入っている?それにこの出力…かなりチューンされてるぞ」
「そんな事よりさっさと出しなさいよ!」
「カーラ!?何でお前まで入ってるんだよ!?」
「あんたが連れてきたんでしょうが…それとも、か弱い女の子を1人であそこに置いていくつもり?」
「仕方ねえ…タイプTT、起動!」
2人を乗せたゲシュペンストMk-2タイプTTが力強く立ち上がった。

131もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:22
「あれは…!?一体誰が動かしているんだ!?」
外ではすでに本格的に戦闘が始まっており、
リオンの攻撃をR-2の巨体に似合わないすばやい動きでかわしたライは
リュウセイたちが乗ったゲシュペンストに気がついた。
「俺だよ」
「リュウ!?どうしてそこにそんなものが?」
「話は後だ!民間人を1人保護している。R-1はまだそこにあるか?」
「民間人だと?お前…その機体に民間人を乗せたのか!?」
ゲシュペンストMk-2自体はそう新しい機体でもないが
タイプTTが搭載しているT-LINKシステムはいまだ最重要機密となっている。
ライが神経質になるのも当然と言えた。
「そこまでにしなさいライ、今は戦闘中よ。リュウセイの処罰は後で決めるわ。
 リュウセイ、R-1はハガネの陰に移動させてあるわ。急いで戻りなさい」
(それにデリケートなあのシステムが2人乗っていても変わりなく作動しているということは…)
「しかし隊長…わかりました」
ヴィレッタの有無を言わせない雰囲気にライも口を閉ざすしかなかった。
「やっぱ、あたしが乗るとまずかった…?」
「気にすんなよ。…急ぐからしっかりつかまってろよ!」

132もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:23
R-1のところへは他の味方機が敵を近づけさせないように配慮してくれた事もあり
難なくたどり着くことが出来た。
リュウセイはR-1のコックピットへと乗り換えタイプTTに一人残ったカーラへ言った。
「いいか、ここもじきに危険になるから、早く後ろに下がっていろよ。
 そいつの操縦方法はバーニングPTと同じだからお前もわかるだろ」
確かにこの機体のコックピットは
よくリュウセイに付き合わされてプレイした事のあるゲームのコントローラーに似ている。
しかし、ゲームと実戦ではかなりの違いだ。リュウセイに抗議しようとしたが、
R-1は変形し戦場へと飛び去っていってしまった。
「ちょっと、リュウセイ!
 …もう!何かに集中すると周りが見えなくなるのは相変わらずね。
 えっと…確か、これで移動を…」
危なげな感じで後退を始めたタイプTTだったが、ある程度ハガネから離れたところで
敵機に見つかってしまい、リオンの攻撃が襲い掛かってきた。
「わっと…攻撃は…これ!?」
装備していたマシンガンで応戦するが実戦の素人、ゲームも付き合い程度しか経験のない
カーラでは機動性の高いリオンにかすらせる事も出来ない。
そんなカーラへ向けてリオンは容赦なくレールガンを発射する。
狙いは何とか外したが脚部に命中してしまい、バランスを崩して尻餅をつく形で倒れこんでしまった。
リオンの銃口が今度は外さぬよう慎重にコックピットへ向けられる。
「ダメ…まだ…こんなところで死ねない!」
カーラのその叫びに呼応して、背部の武器パックから刃の付いた円盤が飛び出し、
回転をしながらリオンへ向っていった。
「な、T-LINKカッター!?カーラが使ってんのか!?」
救援に入ろうとしたリュウセイが驚きの声を上げる。
カーラが意識して動かしたわけではないのだがT-LINKカッターは
耳障りな金属音と火花を撒き散らしながらリオンを叩き落し、
そのまま首と胴体を捉えビルを背に磔にした。
カーラにも何が起こっているのか理解できなかった。
「うわああああっっ!!!」
だがそれ故に、単純な死への恐怖が彼女にマシンガンを乱射させた。

133もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:26
「カーラ……カーラっ!」
ふと我に返ると自分の名前を呼び続けるリュウセイの顔がそばにあった。
どうやらこれに乗り込んだときと同様に外からハッチを開け中に入ってきたらしい。
「リュウセイ…あの敵は…?」
まだ体が震えて操縦桿から手も離せなかったが、ただそれだけは声に出すことが出来た。
「ああ…戦闘は終わったよ。もう大丈夫だ」
そうリュウセイは言うがその表情はどうもぎこちない。
体も意識的に外を見せないようにしているように見えた。
視線を脇にそらし外を覗き込んでみると
「ダメだ!見るな!」

そこに見えたのは
マシンガンが直撃したのだろう、大きく穴を開けたリオンのコックピット
真っ赤な血に染まったその中央にあるのは
以前の姿を想像させることも不可能な、人間"だったもの"の塊

「あ…あれ……あたし…あたしが……殺した…?」
胃からこみ上がってくるものを何とか抑えカーラは呟く。
その声は先程とはまた違った恐怖に震えていた。
「落ち着け!お前のせいじゃない!」
自分へ呼びかけるリュウセイの声がどんどん離れているように感じた。

「い…や……嫌ああああぁぁぁっっっ!!!!」

134もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:26
寝ぼけてますね。また大きなミスをしてしまいました。
以下が>>124>>125の間に入る予定でした。


「ラウル、いいですか…?」
「ち、ちょっと待った!」
ミズホがラウルに当てられた部屋に入ると、着替え中でトランクスだけ穿いているラウルと目が合った。
「…ごめんなさい!」
「いや、扉のロックもしてなかった俺も悪いし…それより何か用?」
とりあえずズボンだけでも急いで穿いて、顔を真っ赤にして後ろを向いているミズホに問いかける。
「ええ…レイカー司令からなんですけど、
 ラミアさんと私たちを基地の皆さんに改めて紹介するので、
 ブリーフィングルームに来てくれということらしいです」
「なんか…今更って感じだな」
「仕方ありませんよ。ラウルはずっと寝込んでいて、私もあまりここの人と話していませ
 んし…」
この前の戦闘の後、病み上がりの状態での機体の操縦でラウルは基地についた途端に倒れ、
また医務室に逆戻りになってしまい、再び2日ほど寝込んでしまっていた。
やっと今日、普通の生活に支障がないほど快復したばかりである。
ミズホもまたその間、ラウルの面倒とエクサランスの整備を往復しているだけだった。
リュウセイや、アヤなどは何度か見舞いに来てくれて話も少ししたが、
他では顔と名前すら一致しない者もいる。
「そうだったな…ごめん、俺のせいで」
「いいですよ。でもこれからは自分の体のこともちゃんと考えて行動してくださいね」
やっと着替えも終わり、ラウルとミズホはブリーフィングへ向った。

135もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:27
「こちらタウゼントフェスラー9。L4宙域到達まであと0100」
他に何も聞こえない静かな宇宙空間に1隻の輸送艇がゆっくりと進んでいる。
その操縦席に座っている、少々気の弱そうな少年がいずこへと連絡を取っていた。
少年の名はリョウト・ヒカワ。その優しそうな顔から想像もつかないが、
これでも先の戦争で活躍したハガネに搭乗し、活躍したパイロットの一人である。
「どうしてこんなに定時連絡の回数が多いのかな…?やっぱり、僕じゃ頼りないのかな…」
「何言ってるの。あなたはこの輸送機の機長なのよ。もっと自信持たなきゃ!」
「う、うん…」
リョウトが落ち込むように呟くと、後ろからリョウトと逆に気の強そうな少女の声が聞こえてきた。
少女の名はリオ・メイロン。彼女も同様にハガネに搭乗していたパイロットである。
2人はホワイトスター戦役終了後、軍を辞めて月のマオ・インダストリーに就職していた。
もともと機械いじりが趣味だったリョウトにとって、血生臭い軍よりは性に合っていたのだが、
突然、謎の荷物の輸送任務を言い渡されエルピスコロニーへと向かっていた。

リョウトはリオに気づかれないようにズボンのポケットの中に手を入れた。
中には映画のチケットが2枚ある。
この仕事を終えたら2人には休暇が与えられることになっており、リオを誘おうと考えていた。
オペレーションSRWの前日にも横浜の中華街へデートに誘ったのだが、
結局マオ社の入社でうやむやになってしまい、その後も休暇が合うことが滅多になかった。
―リョウトは知らないのだが、それはリオの父親でありマオ社常務のユアンがそう仕向けていたらしい。
とにかく、疎遠になっていた2人にとってこの休暇はチャンスである。
リョウトは緊張のため高鳴る鼓動を抑えるために一度深呼吸をして口を開いた。
「あのさ、リオ…」
「それにしても、今私たちが運んでいる積荷って何なのかしら?」
いきなり撃沈である。
それはともかくリオの疑問はリョウトも気になっていた。
DC残党のテロが問題となっているが、ホワイトスター戦役を終えてからは世界情勢もいたって穏やかと言える。
それなのに兵器製造が主な業務であるマオ社の社内は何やら慌しくなっている感じがしていた。
そこに意図不明の輸送任務である。どうもきな臭いものを感じられる。

136もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:27
「mk-2の量産型かしら?」
リオの言った量産型とは、マオ社で自分たちが開発をしていたヒュッケバインmk-2の量産型のことである。
兵力補充を急務とした連邦政府の指針で開発を急かされた機体だ。
「でもあれはもう1ヶ月前にロールアウトしたよ。いまさら極秘で運ぶ必要もないと思うけど…」
リョウトの言う通り量産型ヒュッケバインmk-2はすでに起動実験も終え、
各コロニーや地球連邦支部にいくつか配置されている。
「じゃあ、何だって言うの?」
「それは…」
リョウトがまた俯いて考えていると、リオは操縦室から出て行こうとした。
「どこへ行くの?」
「ここで考えてみてもしょうがないから実物を見てみるのよ」
「で、でも…」
「リョウト君はここにいていいわ。私だけで見てくるから」
「待って、僕も行くよ」
リョウトは操縦をオートパイロットに変更し、1人で格納庫へ行こうとするリオを慌てて追いかけた。

その時、急いでいたためリョウトは気づかなかったが、
輸送機のレーダーはこちらに向かっているいくつかの機体を捉えていた。

137もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:28
「さあ、召し上がれ。口に合うかどうかわからないけど…」
所変わってエルピスコロニーに停泊しているヒリュウ改の食堂。
結局ヒリュウ改に乗り込むことになったフィオナが他のメンバーに料理を振舞っていた。
エルピスコロニーについて1週間ほど経ったがあの正体不明の機体は依然発見されず、
したがって戦闘もないまま過ごしていたフィオナはエクサランスの整備に忙しかったラージと違い
とにかく暇をもてあましていた。
そこでいささか遅れたが救援の礼ということで昼食を自分が作ることにしたのである。

「へえ、結構美味いじゃないか」
「一応前は毎日作ってましたから」
エクサランスを開発していた当時はラージもミズホも作業に専念しており、
かといってラウルに任せるわけにもいかないので家事一般は全てフィオナの仕事となっていたのである。
「いや、でも本当に美味いよ。イカロス基地にいたころはほとんど毎日レトルトの料理だったし
 たまに手料理があっても作るのがカチーナ中尉やレオナだったからとても食べれるものじゃ…」
勢いよく料理を口に運びながらフィオナを褒めるタスクは自分に突き刺さる2つの冷たい視線を感じた。
「タスク…後で外に出て実戦訓練だ。サボっていた分を一気に取り返させてやる」
「中尉、私も手伝わさせていただきますわ」
死刑宣告ともいえる言葉を聞き、冷や汗をかいたタスクは周囲に目で助けを求めるが
皆、何も言わず料理を食べているだけである。
(ご愁傷様…)
そこにいた全員が言葉に出さずそう思った。

半分泣きかけながらタスクが何とか言い訳を考えていると、
突然緊急事態を知らせるサイレンが艦内に鳴り響いた。
「L4宙域にてSOSを受信しました。総員第二種戦闘配置についてください!
 繰り返します…」
「これは大変だ!急がないとな!」
不謹慎ながらこれ幸いとタスクは一目散に飛び出していく。
「あの野郎…」
カチーナも苦々しく舌打ちをしてタスクを追いかけていった。
「フィオナ、僕たちも行きましょう」
「ラージ…いいの?」
自分たちがタイムスリップをしてしまったことに気づいた後、
フィオナはラージにあまりこの時代に干渉しないように釘を刺されていたのである。
「もしかしたらラウルたちかもしれません。それにあまり消極的に動いていると
 かえって怪しまれてしまいます」
「…そうね」
そうは言ってもフィオナの表情は少し嬉しそうだった。
未来で自分の無力さを痛感していたフィオナは誰かの役に立つということが
ただ単純に嬉しかったのである。

138もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:28
時は少し戻る。
リョウトたちはタウゼントフェスラーの格納庫で突然襲い掛かった振動に驚いていた。
「これは…爆発!?」
自分が出るときにはぶつかるような隕石や小惑星のたぐいは無かったはずである。
すると自分たちは今、何者かに攻撃を受けているということになる。
「どうして…操縦席に戻ってみる!」
「もう間に合わないわ!あれで脱出しましょう」
振り返り戻ろうとするリョウトをリオは呼び止めた。
指差したところには一機の戦闘機がある。
「あれは…PTのパーソナルファイター?何でこんなものが…」
「考えたってわからないわよ。早く乗りましょう!」
パーソナルファイターにリョウトたちが乗り込み、脱出するのと同時に
タウゼントフェスラーはエンジンに攻撃を受け爆発した。

自分たちを襲った機体を見てリョウトは言葉を失った。
量産型ゲシュペンストmk-2、以前は自分たちが属していた地球連邦の機体である。
「あなたたち!私たちはマオ・インダストリー所属の者よ。なぜ攻撃するの!?」
リオが呼びかけても相手は反応せず、こちらへ攻撃を仕掛けてくる。
何とかそれをかわしたリョウトは、タウゼントフェスラーがあったところに
PTらしき物があることに気がついた。
「ヒュッケ…バイン?見たことないタイプだけど…!
 リオ!あれを使うよ」
「え、本気なの、リョウト君」
「こんなところで死にたくないだろう!?」
敵の攻撃をスレスレのところで避けながら何とかドッキングに成功すると
PTのカメラアイに力強い光が灯った。

(やっぱり…開発計画書で見たことがある。これはヒュッケバインmk-3だ!
 でもどうして…mk-3の開発計画は凍結されたはずじゃなかったの!?)
自分たちが乗り込んだ機体の正体に戸惑うリョウトは目の前の計器が示してある言葉にまた驚いた。
「これは…トロニウムエンジンを搭載している!?」
SRX計画のいくつかの機体が搭載しているトロニウムエンジン。
膨大な出力をもたらしながらも常に暴走の危険性を伴う、最も危険な諸刃の剣を
自分が今扱っていることに武者震いしてしまう。
「ぼうっとしてないで!敵が来てるわよ!」
リオの言葉に我を取り戻しヒュッケバインmk-3を急前進させる。
一応エンジンはクォータードライブに抑えたが、それでもかかるGはすさまじいものだった。
「こんな機体を僕が使うの…!?でも…やるしかない!」
リョウトの顔に先ほどまでの気弱そうな表情と変わって強い意志が浮かび上がった。

139もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:28
「ゲシュペンストとヒュッケバインが戦っているですって!?」
戦闘開始から数分後、ヒリュウ改がSOSが発信された宙域、
つまりリョウトたちが戦っている場所に辿り着いた。
しかし、戦っている相手が連邦軍のゲシュペンストmk-2であるという報告を聞き
レフィーナも判断に詰まってしまう。
「ヒリュウ改、応答願います。こちらはリョウト・ヒカワです」
「リョウト少尉!?ではそのヒュッケバインは少なくとも味方ですね」
「はい、あっちは何度通信を試みても反応してきませんから…」
レフィーナが目配せするとユンは頷いて答えた。
「連邦軍の識別信号は出していますが、こちらの通信にも応答しません」
「ではPT部隊…」
レフィーナがゲシュペンストを敵と見なして出撃命令を出そうとしたところで
その敵機は四散して撤退していった。
「追いますか?」
穏やかな表情を崩さないショーンの言葉にレフィーナは首を振って答えた。
「いえ、罠かもしれません…今回はリョウト少尉たちが無事だったことで良しとしましょう」
「賢明なご判断ですな」
ブリッジとは逆に納得いかない様子なのが今か今かと出撃を待っていたカチーナである。
「おいおいマジかよ…せっかくタスクの代わりしてにストレス発散できると思ったのによ」
(実戦訓練って何をするつもりだったんだろ…)
フィオナは少し想像してみたが、すぐに止めた。

140もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:29
「なるほど…ではマオ・インダストリー社にも問い合わせてみる必要があるかもしれませんね」
エルピスコロニーに帰る途中のヒリュウ改のブリッジでレフィーナたちはリョウトの報告を聞いていた。
「ヒリュウ改に下された地球帰還命令といい、少尉たちが運んできた凍結されたはずの
 ヒュッケバインmk-3のことといい、地球圏も少しきな臭くなってきましたな」
「あの…」
考え事を始めたショーンたちにリョウトが言いにくそうに声をかける。
「そういえば、2人とももう軍は辞めていましたね。
 エルピスコロニーに着いたら艦を降りても結構ですよ」
「そのことなんですが…僕をまたパイロットとして使ってもらえませんか?」
「リョウト君!?」
突然の申し出にそこにいた者の全員が驚く。
「ごめんリオ。でもやっぱり僕は戦争で…理不尽な暴力で苦しむ人をこれ以上増やしたく
 ないんだ」
「仕方ないわね…じゃあ私もこの艦に残るわ」
「いいのですか?こちらとしては願ったり叶ったりなのですが」
「はい」
2人は真剣な顔で声をそろえた。

(はぁ…これで2人きりの休暇も先の話か…)
「どうしたの、リオ?」
リョウトが問いかけると、少しため息をついたリオは顔を真っ赤になって首を振った。
「な、何でもないわ!…これからもよろしくね、リョウト君」
「う、うん」

141もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:29
ある一室の中、一組の男女が電灯もつけずにいる。暗くて顔もうっすらとしか見えないが、普通こういうときにあるような甘い雰囲気は全くなく、むしろ緊張した空気が部屋全体を包んでいる。部屋に盗聴器がないことを確認したあと、女の方から話し始めた。
「ダイテツ中佐からの依頼だけど一応調べてみたわ」
「どうだった?」
「6人とも一癖あるって感じね。…誰から聞く?」
「では記憶喪失という男から聞こうか」
「アクセル・アルマーだったわね。
 …はっきり言ってこの男のことが一番不可解よ。
 この男、連邦軍所属とデータにあったんだけど…死んでいるのよ。
 DC戦争の3年前に」
「死んでいる?」
「ええ、訓練中の事故ということで。
 あの時期は事故での死亡者や行方不明者が結構いたけどその中の一人というわけね。
 DNA検査とかしたわけじゃないから本人かどうかは判別つかないけど…
 乗っていた機体、ソウルゲインについては手がかりなし」

「…そうか。ではラミアという女の方は?」
「ラミア・ラブレスという名前は確かに戸籍データに存在したわ。
 スペランツァコロニーに父親がジャンク屋を経営していて
 その父親もDC戦争中に死亡というのも合っている」
「機体の方は?ジャンク屋に作れるような代物なのか?」
「ジャンク屋っていっても腕のほうはピンキリあるからね。
 不可能ってわけじゃないと思うけど…ただ」
「何かあるのか?」
「データが…似過ぎているのよ。ADの最新機に」
「AD…フレモント・インダストリー社のアサルト・ドラグーンか?
 しかしあのプロジェクトは中止になったはずだろう」
「ええ、元々プロジェクトADはマオ社のPTに対する敵対心から始まったものだし
 企業としては採算が取れないということで開発は無期延期になったわ。
 …だけど気になる事もあるの」
「何だ?」
「DC戦争の時期からなんだけど連邦からフレモント・インダストリー社にかなりの金が流れているのよ。
 初めは少しずつだったんだけど、今では戦後復興という名目でマオ・インダストリーとほぼ同額の
 補助金が出ているわ」
「……」
「この件に関してはZ&R社も同じなんだけどね」

142もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:29
「で、最後にエクサランスという機体に乗ってきた4人ね。
 彼らも戸籍に関しては供述と合っているわ、ほとんどね」
「…こいつらも何かあるのか?」
「フフ、うんざりした顔をしないで。戸籍を見るとこの4人…全員14,5歳のはずなのよ。
 まあ、人によってはその年で20歳前後に見えなくもないこともあるかもしれないけど
 4人が4人とも、というのはおかしいでしょう
 そしてエクサランスという機体…確かにフェル・グレーデン博士たちが新しいエンジンの研究をしている
 というのは知っているけど、実用化のレベルまで研究が進んだというのは初耳だったわね」

「…死んだはずの男、中止された計画の機体に乗る女、そしてデータと年齢が合わない4人か…
 確かにどいつも一筋縄ではいきそうにないな。一応このことはダイテツ中佐に報告しておくが
 もうしばらく調査を頼めるか?」
「ええ、私もそのつもりだったし。
 …そうだ、話は変わるけどあの2人、こっちの要請を承諾してくれたわ」
「そうか……皆には迷惑ばかりかけるな。特にお前には…すまない」
「あなたはあえてそういう道を選んだんでしょう。
 皆わかっているわ…それであなた自身が傷ついているのも。
 だから協力しているのよ、私も含めてね。
 もっと自信を持って…レナンジェス・スターロード中佐」
「ああ…ありがとう、ミーナ」

143もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:31
先の藤沢地区への出撃から1週間が過ぎたある日、
伊豆基地のロビーではリュウセイとカーラが向き合って無言のまま俯いていた。
傍から見ると何やら深刻な雰囲気を漂わせそうな様子だが、実際にはそんなことはない。
それも当然のことで、二人はただDコンを使ってリュウセイはゲームの、
カーラは音楽のデータと睨めっこをしているだけだからだ。
「なあ」
「うん?」
そんな中、リュウセイがカーラに話しかけた。
ぞんざいな返し方にも気を悪くした様子がないところを見ると、
ロビーの中を包む静寂に耐えられなくなっただけなのだろう。
「お前、いつになったら家に帰るんだ?」
先の出撃のときに止むを得なかったとはいえ、
機密事項の塊ともいえる軍の機体に乗り込んだことでカーラは伊豆基地に連行されていた。
恋人であったユウが行方不明になってしまったこと、
初めて自分の手で人を殺めてしまったことで激しく取り乱した
カーラの様子を見たリュウセイにとっては、
彼女を心配せずにはいられなかったのだが、
それを一笑に付せるかのように翌日にはその本人が
何事もなかったかのように元気な様子を見せていた。
「ほら、あたしって昔から嫌なことも一晩寝れば忘れるタイプだったでしょ」
カーラは笑いながらそう言っていたが、注意深く見ればそれは
ただ周りを心配させないための空元気であることは明白だった。
だが、リュウセイは安心した様に見せた。
自分がどんな言葉をつくろっても彼女の傷を癒せないことをわかってしまったからだ。

144もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:31
ともかく、ヴィレッタの厚意もあって無断で機体に乗り込んだことも不問に終わり、
念のための精密検査も2日程前に以上無しとの結果が出たはずで
カーラが伊豆基地に残る理由はなくなったはずである。
「あれ、リュウセイは知らなかったっけ?」
「何をだよ」
「あたしここでパイロットをすることになったから。
 ま、同僚になったわけね。」
「ふうん……何だってぇ!」
適当に聞いていたため、さらりと流してしまいそうになった会話の中に
聞き捨てならない言葉があってリュウセイは大声を上げた。
「きゃ…いきなり大きな声出さないでよ。びっくりしたじゃない」
「パイロットになったっていつから!?」
「えっと…一昨日からかな?」
激しい剣幕に思わずたじろってしまっているカーラの言葉を聞くと
リュウセイは勢いよく立ち上がり部屋を出ようと走り出した。
「ちょっと、どこへ行くのよ」
「パイロットなんてだめだ。俺は許さないからな! すぐ家に帰れ!」
「何で一々あんたに許しを請わなきゃならないのよ」
「とにかく! 今から教官に話をつけてくる!」
カーラの話も聞く耳持たず、リュウセイはロビーを飛び出した。
そんな様子を見てため息をついたカーラは何となしに天井を見上げ、呟いた。
「そりゃあ、あたしだってしたくはないよ…
 戦争なんて…人殺しなんて…」

145もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:32
「どういうことだ!」
ヴィレッタの部屋に入るなり先程と同じ剣幕で怒鳴ったリュウセイを見て、
アヤと何やら打ち合わせをしていたヴィレッタは相変わらずの冷静な態度で聞き返した。
「何のことかしら?」
「カーラのことだよ! 何であいつがパイロットになってんだ!?」
拳をデスクに叩きつけながら詰め寄るリュウセイの言葉に
ヴィレッタは納得いったかのように頷いて、
デスクの上にあったコーヒーを飲みながら切れ長の目でリュウセイを見つめた。
「連邦軍が慢性的な戦力不足にあることはあなたも知っているでしょう。
 それに彼女はT-LINKシステムを扱える貴重な存在よ」
「だからって…あいつは民間人だぞ!
 それに貴重って、俺たちが持っている念動力って何なんだ?」
「今はまだ話すことができないわ。私もよく知っていることではないし
 今言えるのは、イングラムが求めていた力の一つということ…それだけね」
リュウセイの抗議が一旦止まったところでヴィレッタはさらに言葉を続けた。
「それにパイロットにするというのは彼女本人から言い出したことよ」
「えっ、どういうことだよ」
「彼女のボーイフレンド…ユウキ・ジェグナンといったかしら、
 軍が行方不明になっているその人の捜索を続ける代わりに、
 自分をパイロットとして使ってくれとね」
ヴィレッタの話を聞いてリュウセイは何も言えなくなってしまった。
元はといえば自分が勝手にR-1から離れ、カーラたちに会わなければ
戦闘に巻き込ませることもなかったかもしれない。
それでなくても、ゲシュペンストに乗せたとき安全な位置まで避難させておけば
カーラも持っていた念動力の素質が発覚することもなかっただろう。

部屋に入ってきたときの勢いが全く無くなってしまったリュウセイを見て
今までそばで2人のやり取りを見ているだけだったアヤが言葉をはさんできた。
「そのことについて今、ヴィレッタ教官と話をしていたんだけど
 捜索の結果、学校の周辺ではあなたたちの話にあったような人の遺体は発見されなかったわ」
「じゃあ、ユウは生きているのか!?」
かすかな希望が見えたことで明るい表情を取り戻すリュウセイとは逆に
アヤは深刻な顔で首を振った。
「残念だけど…そう楽観視はできないわ。
 生きているとすればなぜ名乗り出てこないのか疑問に残るし…
 今は藤沢地区周辺の病院にも問い合わせているところだけど
 それらしき人が収容されたという報告もまだなのよ」
「結局…どういうことなんだ?」
「わからないわ…今の段階では情報が少なすぎる。
 とにかくこの件は軍の情報部に任せることになったから安心してくれていいと思うけど…
 このことはまだカーラさんには話さないほうがいいでしょうね。
 リュウも注意して」
「…わかった」

146もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:32
事態を少しも好転できなかったことに落ち込みながら
ヴィレッタの部屋を出たリュウセイはふと自分の手の平を見つめた。
ヴィレッタが貴重といった、自分たちが持っているという念動力。
T-LINKシステムを扱えることや前大戦で自分が乗ったSRXの起動に必要など、
軍にとっては確かに普通の人間が持っていないという点もあって、貴重かもしれない。
だがそれで今まで一体何ができただろうか。
結局、前大戦でも敵に捕らえられ、
機械に操られていた哀れな少女一人救い出すこともできなかった。
そして今回も、今はアメリカにいるクスハと同様、
その力を持っているというだけの友人を戦争に身を置かせることになってしまっている。
リュウセイは苦々しい顔で唇を噛み締め、
いつの間にか血の気が引くほど強く握り締めた拳を廊下の壁に叩きつけた。

147もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:32
同じ頃、伊豆基地の司令室でもダイテツとレイカーが深刻な表情で話をしていた。
「ジュネーブの連邦本部が音信不通になった!?」
ダイテツはレイカーの口から出た信じられない言葉に驚き、目を見開いた。
「そうだ。何が起こったのかはまだ不明だが、
 昨日まで異常無かったというのに、現在では一切の連絡が取れなくなってしまっている」
「たった一晩で攻め落とされたとでもいうのか…
 しかし、今ジュネーブは連邦軍の中で最大の戦力を持っているはずだぞ」
前回の戦争の中でDCの襲撃とエアロゲイターのミサイル攻撃によって
2度壊滅させられたジュネーブにある地球連邦軍本部は、
ヒュッケバインmk-2などの量産型を多く配置された結果、
以前より大きな戦力を保持しており
Rシリーズなどの特別な機体を持っているこの極東支部や
アメリカのラングレー基地を含めても
地球圏の中で最も攻め落とすのが難しい拠点となっていた。
「一体どのような方法で…?」
「これを見てくれ。軍事衛星から撮影された今朝のジュネーブの写真だ」
レイカーから渡された写真にはジュネーブのごく普通の風景が写されており、
その他には何も無かった。
そう、何も無いのだ。
本来ならばDC残党のテロを警戒して巡回しているはずの偵察機も、
演習を行っているはずの部隊も写されていない。
まるでジュネーブから軍だけが消え失せたようになっている。

148もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:32
「まともに戦闘を行った形跡すら残されていないとは…
 まさか…エアロゲイターか?」
「いや、それはないだろう。アステロイドベルトのイカロス基地やコロニー統合軍からも
 異星人の軍勢が襲来したという報告はない。全く正体不明の敵というわけだ。
 そこで我々がその調査をするようになった」
量産機の製造を重視した昨今における連邦の方針だが、
ジュネーブ本部以外にそれらの機体はほとんど配属されず、
DC戦争時と同様、この非常時にまともに動ける戦力を持っている支部は極わずかという
皮肉な状況になっていた。
「仕方のないことだな。ハガネの艦首モジュールは?」
「まだトロニウムエンジンの調整が終わってはいない。
 クロガネを使ったほうがいいのではないかね?」
「いや、こういった時ほど使い慣れたものの方がいいからな」
「わかった。艦首モジュールの代わりといっては何だが、
 宇宙にいるヒリュウ改やラングレー基地のATXチームも
 ジュネーブに向かわせることになった。途中で合流してくれ。
 その他の人員や装備も準備ができ次第そちらに補充させる」
「やれやれ…状況は以前より悪いくらいだな。儂にはお似合いと言えるかもしれんが」
不敵な笑みを浮かべるダイテツにレイカーは申し訳なさそうな顔をした。
「すまないな…出発はいつにする?」
「できるだけ早い方がいいだろう。
 機体の整備などから今日はもう無理だろうが、明日にでもここを発つ」

149もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:33
その日の夜、伊豆基地の格納庫では整備員、パイロットを問わず
ハガネクルー総出での作業が行われていた。
しばらく基地を戻ることが無いだろうと伝えられたため、誰もが念入りに整備している。
「なんだかこの雰囲気、未来でのことを思い出しますね」
エクサランスの周りでフレームのチェックをしていたミズホが
コックピットの中を覗き込んで、作業をしているラウルに話しかけた。
「あの時と同じ結末には…しない」
深刻な顔をして呟くラウルを見て、ミズホは少し悲しげな顔をした。
(まだ…吹っ切れてはいないんですね)
ミズホは自分の視線に気付かず作業を続けるラウルに
できるだけ明るい声で話しかけた。
「エンジンの調子はどうですか?」
「だめだ、出力が思ったより上がらない。
 たぶんエンジン本体に異常があるんだろうけど…
 こればっかりはラージじゃないと無理だろうしな…」
大きくため息をついて頭を掻いたラウルは、
その横で通信機のランプが点滅していることに気がついた。

150もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:33
「誰からだ?」
通信機のスイッチを入れると前面のパネルに
この時代に来てからずっと心配し続けていた顔、フィオナが映し出された。
「あ、本当に繋がった!」
「フィオナ! 生きてたのか!?
 しかもこうやって通信できるってことは…お前たちもこの時代に?」
「まあね。そのあたりはラージが詳しく…
 ラージ! ラウルたちと繋がったわよ!」
久しぶりに顔を見たのがよほど嬉しいのだろう、
フィオナは満面の笑みを浮かべながら近くにいるラージを呼び寄せた。
「やはりあなたたちもこの時代に来ていたようですね」
「やはりって…わかっていたのか?」
「今は時間が無いのですから…その話はまた後で。
 今どこにいるんですか?」
「地上の極東支部の伊豆基地って所だけど…
 明日にはここを出るらしいぜ」
「極東支部…もしかしてハガネという戦艦に乗り込んでいるのですか?
 なら丁度いいですね。僕たちは今、宇宙でヒリュウ改に同行しています。
 これからヒリュウ改は地球に下りてハガネと合流する予定ですから
 その時にまた改めてこれからのことを話し合いましょう」
「あ、ああ…」
「それから、この時代の人たちにあまり干渉しないように注意してください、いいですね。
 それではまた地球で会いましょう」
「お、おい。そりゃどういう意味だ!?」
ラージはラウルの呼び止めも聞かず、通信を切ってしまった。
「くそっ、いつだって人の話を聞きやしない!」
光を灯さなくなった画面を殴りつけ、ラウルは不機嫌そうに立ち上がりコックピットから出た。
「ラウル! どうするんですか?」
「寝る。俺にできることはもうやりつくしたし、明日は早いんだ。
 ミズホも早く寝たほうがいいぜ」
苛立ちを隠そうともせず肩を怒らせながら格納庫を出て行くラウルを見て
ミズホの心配そうな表情はますます深くなってしまっていた。

翌日、ハガネは伊豆基地を出発した。
これが新たなる戦いの本格的な始まりとなることを
その時、誰一人として予想してはいなかった。

151もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:36
自室として使ってあるマオ・インダストリーの社長室で
リン・マオは執務に追われていた。
机の上に山の様に積まれている資料や報告書に目を通し、
手際良くサインをすませている姿を見て、
彼女が以前は優秀な軍人であったことを想像できる者はほとんどいないだろう。
仕事が一段落ついたのか、首をまわしてマッサージしながら
紅茶を飲み一息ついていると、どたどたと大きな足音が廊下から聞こえてきた。
「社長!」
入ってきたのはユアン・メイロン。
リンの父親であるマオ・インダストリー先代社長、ティン・マオと共に
一代にしてこの会社を大きくした功労者である。
「どうした、常務? そんなに慌てて」
「どうしたもこうしたもないですよ。Mk‐3を運んでいた輸送機が襲われたって
 なぜ私に教えてくれなかったんです!?」
(こうなるとわかっていたから言わなかったんだが…)
普段の冷静なユアンと、今目の前にいるおろおろしている彼とのギャップに、
リンは悪いと思いながらも微笑みを隠し得なかった。

「大丈夫だ。積み荷は無事エルピスコロニーに届いたそうだ」
「あの社長…私が心配しているのはそちらではなくて、
 いや、もちろんそれも心配ではあるんですが…」
「わかっているよ。リオ…娘さんも無事だ。
 今はリョウトと一緒にヒリュウ改に保護されているらしい」
意地悪そうな笑みを浮かべるリンの言葉を聞き、
ユアンは安心してほっとため息をついた。
「そうですか…しかし、こんなことになるなんて…
 だから私は反対したんですよ」
「常務が反対していたのはあの子たちを2人きりで任務に就かせたことだろう」
「う、それは…」
リオとリョウトがほぼ付き合っているという関係で、
ユアンがそのことを快く思っていないことは社内でもっぱらの噂だった。
ユアンとしてもリョウト個人に対しては悪い印象は持っていない。
開発者としても優秀であるし、人当たりの良い彼の性格はむしろ好感が持てる。
しかし、だからといって今まで愛情を注いで育ててきた一人娘との交際には
簡単に首を縦に振ることができない。
父親としての複雑な心情である。

152もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:36
「傍から見ていると余計な心配だと思うがな…」
どう見ても恋愛事に奥手そうな2人であるため
ユアンが危惧するような事になるには
あと数年はかかるだろうと簡単に想像できる。
もしリオの相手がイルムのような男だったら…
(どうしてここであいつが出てくる!)
そこまで考えたところで、自分が追い出した男の顔が浮かび、
リンは頭を振った。

2人がそれぞれの理由で頭を抱えていると、
備え付けのインターフォンから秘書の声が聞こえてきた。
「社長、イスルギ重工のフィリオ・プレスディ主任が
 ご面会に来られていますが」
「あ、ああ。すぐに行くと伝えてくれ」
「かしこまりました」
自分の考えていたことを聞かれたわけでもないのに
どぎまぎしながらわざとらしく咳払いをするリオと違い、
ユアンの方は仕事に生きる男の顔になっていた。
「例の二社提携によるプロジェクトですか?」
「ああ、開発もいよいよ大詰めといったところだろうな」
「それはよかった。
 あちらのAMとこちらのPT、人型をしているという点では似ていますが
 内部構造はかなり違うらしいですから。
 中々折り合いがつかなかったらしいですから」
「だがこちらにもメリットはあった。
 特に、現時点でテスラドライブに関して、我が社はイスルギ重工にもテスラ研にも
 遅れを取っているからな。そのノウハウを学べるというのは大きいよ」
そう言いながらスーツの上着を羽織っていると、
インターフォンからまた発信音が鳴り響いた。
「どうした? 今出るから主任にはもう少し待ってもらってくれ」
「いえ違うんです。たった今連絡があったのですが、
 セレネ基地で調整を行っていたレッドが何者かに強奪されたそうです!」
「何だと!?」
インターフォンから聞こえてきた言葉にリンとユアンは驚きで目を見開いた。
嫌な感じの冷や汗が背中をつたってくるのを感じた。

153もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:37
一方、エルピスコロニーの方ではジュネーブ陥落の一報が伝わっていた。
「では我々も地球に赴いてハガネと共に調査せよと?」
「ああ、そういうことになった。
 慌しいことになってすまないと思っているが」
レフィーナと話している壮年の男性、ブライアン・ミッドクリッド大統領は
少々申し訳なさそうにしながらも人当たりの良い薄い笑みを浮かべた。
「それに言いにくいことではあるんだが…
 君たちがここに居ることで少しばかりまずいことになりそうでね」
「それは私たちが地球連邦軍に所属しているからですかな?」
ショーンの言葉にブライアンは頷いた。
「そういうことだね。最近、DCの残党狩りの影響もあって
 地球連邦のコロニーに対する風当たりは強くなっている。
 それでコロニー統合軍の中で以前にもまして
 地球連邦に不満を持つものが増えてきているんだ。
 もともと統合軍にはマイヤーの信望者が多かったしね。
 そんな中、連邦軍所属のヒリュウ改がエルピスに停泊しているということは
 彼らに無用の刺激を与えかねない。
 何とか僕の方でも抑えてはいるが、下手をすると第2のDC戦争が始まってしまうかもしれない」
「わかりました。なるべく早くここを出ることにします」
ショッキングなことを言われたにもかかわらず、穏やかな表情を崩さない
レフィーナの返事を聞いてブライアンは深々と頭を下げた。
「本当に申し訳ない。君たちを追い出すような形になってしまって…」
「お気になさらないでください。大統領の責任ではありませんよ」
そう言ってレフィーナはショーンの方を見て頷きあった。

154もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:38
「地球に降りるってことになったら、コスモドライバーフレームじゃ
 少し心許ないわね…」
ラージの部屋のベッドに腰掛けているフィオナが、
同じ部屋の机に向かって資料と睨めっこをしているラージに話し掛けた。
「そうですね…」
フィオナは気の抜けた返事をするラージの背中を溜息混じりに見つめた。
「ねえ、ラージ。何をそんなに苛立ってるのよ?」
「別に、そんなことはありませんよ」
「嘘。何年付き合ってると思ってんの?」
ラージは作業を一旦止めてフィオナの方を振り向いた。
あまり感情を表に出さないラージの顔を見ても
他の人間は何を思ってるのかわからないだろうが、フィオナはそうではないらしい。
「逆に僕の方が聞きたいですよ。なぜフィオナはそんなに落ちついていられるんです?
 僕たちは過去の世界に居るんですよ。」
「だって…仕方がないじゃない。来てしまったことはもう変えられないんだから」
「僕は…父のタイムマシンの研究を否定してきました。
 それが偶然とはいえこんな事態になるなんて…
 科学者としてこれほどの屈辱はないですよ」
苦々しい表情で呟くラージはいつもの落ち着いたイメージと少し離れて見える。
「だからって悩んだってどうしようもないでしょう。
 これからどうするのか考えないと」
フィオナにしても何も不安がないわけではない。
それでもそのまま立ち止まらないだけの強さが彼女にはあった。

「そうですね…とりあえずはラウルたちを見つけ出して、
 未来に戻る方法を考えないと」
「ちょっと待って、ラウルたちもこの時代に来ているの!?」
思わず声を荒げて聞き返すフィオナにラージはさも当然といった顔をして話を続けた。
「あの状況から考えてそうみるのが自然でしょう。
 ただ彼らの居場所が掴めないことにはこちらからも迎えに行けませんし…」
そう聞くなりフィオナは急に部屋を出ようとした。
「どこへ行くんですか?」
「エクサランスよ。あれには通信機を載せてたでしょう。
 うまくいけばラウルたちと連絡がつけるかもしれない」
「あ、その手がありましたか」
フィオナの提案を今まで思いつかなかったのだろう、
ラージは目から鱗が落ちたかのような顔をした。
それを見るフィオナの顔に少し苦笑いが浮かぶ。
「頭はいいくせにそういうことは思いつかないんだから…
 とにかく、早く行きましょう」

155もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:38
明日の出向に向けてまだ騒がしさの残る格納庫で、
フィオナはエクサランスのコックピットにで通信機の操作を始めた。
ラージは他の整備員に捕まり、作業の手伝いをさせられている。
通信機の周波数を合わせ、何度かコールを試みたが
ラウルからの反応は無かった。
(やっぱりダメなのかな…)
そう思って諦めようとした時、通信が開きラウルの顔が画面に映し出された。
「あ、本当に繋がった!」
「フィオナ! 生きてたのか!?
 しかもこうやって通信できるってことは…お前たちもこの時代に?」
「まあね。そのあたりはラージが詳しく…
 ラージ! ラウルたちと繋がったわよ!」
フィオナが呼ぶと外で何やらリョウトと話をしていたラージは
すぐにコックピットに駆け寄ってきてフィオナを押しのけた。
「やはりあなたたちもこの時代に来ていたようですね」
「やはりって…わかっていたのか?」
「今は時間が無いのですから…その話はまた後で。
 今どこにいるんですか?」
「地上の極東支部の伊豆基地って所だけど…
 明日にはここを出るらしいぜ」
「極東支部…もしかしてハガネという戦艦に乗り込んでいるのですか?
 なら丁度いいですね。僕たちは今、宇宙でヒリュウ改に同行しています。
 これからヒリュウ改は地球に下りてハガネと合流する予定ですから
 その時にまた改めてこれからのことを話し合いましょう」
「あ、ああ…」
「それから、この時代の人たちにあまり干渉しないように注意してください、いいですね。
 それではまた地球で会いましょう」
「お、おい。そりゃ…」
ラウルは何か言おうとしていたらしいが、
ラージは自分の要件を告げるとすぐに通信回線を閉じてしまった。

156もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:39
「あれくらいでよかったの?
 もうちょっと話し合った方がいいんじゃないの」
フィオナが少ししか話をすることができなかったことで不満気な声をあげる。
「いや、ここで話し続けていれば他の人に
 怪しまられてしまうかもしれませんから。
 フィオナは部屋に戻って休んでいてください」
「いいけど…ラージは?」
「僕はもう少し作業を頼まれてますから」
そう言ってラージはさっさとコックピットから離れてしまった。
一人残されたフィオナも何もすることが無くなってしまったので
結局ラージの言う通り部屋に戻ろうとしたがその途中、
廊下で自分と同様、所在無さげにうろついているアクセルの姿が目についた。

「アクセルさん、どうしたんですか?」
「ん、いや。リョウトとラージにソウルゲインの整備を頼んでたんだが、
 そばでゴチャゴチャしてると邪魔だっつって追い出されちまったんだな」
よほど暇だったのだろう自分に話し掛けてきたフィオナを見て
アクセルは嬉しそうな顔で話した。
「自分で整備できないんですか?」
「ある程度は戦闘と同じで体が覚えてるんだがな。
 専門知識のいるところまでいくとさっぱりだな」
普段の様子や戦闘の時の熟練した動きを見るとつい忘れてしまいがちだが
この男は記憶を無くしていたのだ。
まずいことを聞いてしまった気がしたフィオナは少し俯いてしまった。
「…早く記憶が戻るといいですね」
「まあ戻るんなら早いに越したことはないけど…
 記憶喪失ってのも意外と楽しいもんなんだな、これが。
 フィオナも一度なってみるか?」
「え、遠慮しときます」
自分たちとはまた違った意味で辛い境遇にあるはずなのに
底抜けに明るいアクセルを見ていると
自分たちが悩んでいることがくだらないことのように思えてしまう。
フィオナはぎこちない笑みを浮かべながら目の前にいる不思議な男に頼もしげなものを感じた。

157もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:40
格納庫ではソウルゲインの整備をリョウトとラージが行っていた。
「この機体は非常に興味深いですね。
 非常識な外見と戦闘方法に比べて内部構造はかなり合理的なものになっている」
コックピットのハッチに背もたれながらラージが呟くと
それにコックピットの中にいるリョウトも頷き返した。
「うん…どうやら駆動系はゲシュペンストmk-2のSタイプを基にしているみたいですね」
グルンガストの基礎にもなったそれならばこの機体のパワーも納得はできる。
「では動力は何を使用しているのでしょう?
 電力を用いているところがありますけど、それだけでは出力が足りないですし…
 他に何か使っているみたいですが…
 ここは一つ、分解してみますか」
リョウトはいきなり物騒なことを言い出すラージを見て、少し冷や汗が流れた。
「い、いやそこまでしなくても…
 それに、多分これは生体エネルギーの一種だと思いますよ」
「生体エネルギー? いきなり非科学的なことを言い出しますね」
「前の戦争のとき、そんなエネルギーを動力にする機体に乗った仲間がいたんですよ。
 もしかしたらこの機体を開発した人も、そのデータを見たのかもしれないですね」
ラージがリョウトの話に興味を示し聞き入っていると、
コンソールを操作していたリョウトがモニターに映ったあるものに気が付いた。

動力系とも駆動系ともつかなく、また火気類を搭載していないソウルゲインに似つかわしくないそれは、
以前自分がハガネに持ちこんでしまったものを想像させる。
「ラージさん、ちょっとこれを見てもらえませんか?」
リョウトに言われモニターを覗きこんだラージの顔色が少し青くなった。
「これは…もしかして、爆弾?」
「やっぱりそう思いますか。
 …どうします? 解除して取り外してみましょうか」
リョウトの声にもさすがに緊張の色が見えるがそれも仕方のないことだろう。
爆弾処理など自分には全く経験のないことであるし、
出港までの時間を考えると専門家を呼ぶ余裕もない。
「止めておきましょう」
「えっ、どうしてですか!?」
予想外のラージの答えにリョウトの声が少し上ずった。
「今までの戦闘で爆発しなかったところをみると
 この爆弾の起爆装置は簡単には作動しないものなんでしょう。
 …おそらく自爆用の物ですね。ならば僕たちのような素人が迂闊に扱うより、
 アクセルさんの記憶が戻ったときに処置してもらう方が安全です」
「そう…ですね」
見つけたときには少しうろたえてしまったが、
冷静になって考えるとラージの言うことの方が正論であるように思える。
「とにかく今は様子を見てみましょう。必要だと判断したら僕が艦長に報告します。
 それでいいですね」
「わかりました」

158もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:41
翌日、エルピスコロニーを出たヒリュウ改は順調に地球への航海を進んでいた。
もうすでに、目の前に地球が広がっている。
「地球…か」
窓から見える青い星を見て呟いたフィオナの後ろからカチーナが話しかけてきた。
「何だ。地球は初めてなのか?」
「いえ、私は地球生まれなんですけど…
 久しぶりに降りるんで、何か懐かしくって…」
父親の行った時流エンジンの研究の為にコロニーへ移住してからは、
地球に戻る暇もなく、そこに帝国監察軍の侵攻が始まったのである。
実質10年近く地上に降りていないことになる。
(そういえば…この時代にも当然昔の私たちがいるのよね…
 何だか不思議な感じね)
フィオナが何も喋らずそう考えていると、不安になっていると勘違いしたのだろうか
カチーナが元気付けるように明るい声をあげた。
「ま、心配するなよ。旧世紀時代ならともかく今は大気圏突入でも危険はあまりなくなったし」
「でも大気圏突入の隙をついた攻撃というのもセオリーの一つッスよ」
どこにいたのかタスクが後ろからいきなり話に入ってきた。
「どこの世界のセオリーだよ…」
カチーナが呆れたように返していると突然艦内に振動が走り、警報が鳴り響いた。

「正体不明の集団から攻撃を受けています!
 PT部隊は直ちに出撃してください!」
「だあっ、タスク! お前がいらん事言うからだ!」
頭を掻き毟りながら走り出したカチーナは八つ当たり気味な言葉を
隣に走るタスクにぶつけた。
「お、俺の所為っすか!?」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねえ!
 フィオナ、お前も早く行くぞ!」
「は、はい!」
カチーナの勢いに呆然としていたフィオナは急に呼ばれたことで我を取り戻し
カチーナたちの後を追って走り出した。

159もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:41
攻撃を仕掛けてきたのは前回と同じ、量産型ゲシュペンストmk-2の部隊だった。
「ドラゴン2から各機へ、本艦は5分後に大気圏突入の態勢に入ります。
 それまでに戻ってきてください」
オペレーターのユンの言葉を聞いてカチーナは薄い上唇を舐めた。
「5分もあれば十分だ。全部片付けてやるぜ」
「まあ、血気盛んな隊長さんだこと…ん?」
肩をすくめて呟いたアクセルはレーダーが捉えた
超高速で接近する機体に気がついた。
「何だ…うわっ」
一瞬の隙をついて黒い機体が物凄い速さでPTの間を縫って通りぬけた。
その機体が一直線に向かう先にはヒリュウ改がある。
「しまった! ゲシュペンストは囮だったか!?」
「ヴァイ…サーガ…」
「アクセルさん?」
意味不明の単語を呟くアクセルにフィオナが問い掛けると、
急にソウルゲインは黒い機体を追いかけていった。
「待って! アクセルさん!」
「フィオナ、黒い奴はアクセルに任せろ!
 あたしたちはここでこれ以上敵を通さないようにするんだ!」
カチーナに呼び止まれ、フィオナは少し躊躇した素振りを見せたが
意を決したように振り向き、ゲシュペンストに向けてフェアリーを放った。

ヒリュウ改に近づいた黒い機体は交差した瞬間に斬撃を叩きこんだ。
小さな爆発が次々と起こる。
だがそれに黒い機体は満足しないのか二撃目を与えるために剣を振りかぶった。
が、その剣が振り下ろされることはなかった。
横からソウルゲインの玄武剛弾が飛んできたため
マントのようなシールドで防いだのだ。
2体は向き合って数秒対峙する。
しかし永遠に続くかのように思われたその静寂を黒い機体のパイロットが破った。
「なぜお前がここにいる?
 お前はW17と共に地球に降りたのではなかったのか?」
「あんた…俺を知っているのか!?」
「何を言っている…?
 …ちっ、時間だ。引き上げるぞ」
そう言ったかと思うと、黒い機体は来たときとは逆の方向に向けて飛び去っていった。
ゲシュペンストもその後に続く。

160もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:41
「引き際を見極める力はあるようですな。
 中々あの指揮官侮れませんぞ」
状況を省みず感心したように頷くショーンの言葉とは逆に
ユンはかなり焦って声を荒げた。
「艦長、先ほどの敵機の攻撃により突入コースから少し外れてしまいました!
 一度戻って再突入を…」
「いえ、このままPT部隊を収容して突入します。
 今、戻れば狙い撃ちされかねません」
ユンの言葉を遮ったレフィーナにショーンはまた頷いた。
「賢明ですな。とりあえず少しばかり角度が狂ってもヒリュウ改なら大丈夫でしょう」
「…わかりました」
ユンもそんな二人を見て頷き、PT部隊が全機収容したのを確認して艦内ヘ放送した。
「これよりヒリュウ改は大気圏に突入する。
 なお、これは予定外の突入となっている。各員は衝撃に備えよ」
「さて宇宙でも色々起きましたが、地上では何が待っているんでしょうな。
 はたして鬼が出るのか蛇が出るのか…」
ショーンの呟きは警報にかき消され誰の耳にも届かなかった。

161もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:41
「こちらw17、応答せよ」
ハガネがジュネーブへ向けて出発した日の深夜、
暗い格納庫にあるアシュセイヴァーのコックピットの中で
ラミアが何処かへ連絡を取ろうとしていた。
だが、通信機が故障でもしているのかスピーカーから聞こえてくるのは
微かなノイズ音だけである。
「応答せよ…駄目か」
落胆したような言葉を吐いたラミアだったが、
声色や表情からは全くそれを感じさせない。
とにかくこのままいても仕方ないと判断したラミアは物音を立てずコックピットから離れた。
その時、誰にも気付かれないように消しておいた電灯の明かりが急に灯った。
「誰だ!?」
「きゃ…ラミアさん?」
「ミズホ・サイキか…何をしている?」
思わずそう聞いてみたが、彼女が手に持っている工具箱を見ると愚問だっただろう、
想像通りの返事をミズホは返してきた。
「ちょっと気になって眠れなかったので、エクサランスの点検を…
 ラミアさんもですか?」
「ええ、そんなところでございますですわ。では私はこれで…」
先ほどの自分の行為を見られていたわけではないことに安心して
いつものおかしな敬語でこの場を立ち去ろうとしたラミアだったが、
ミズホに呼び止められてしまった。
「あのラミアさん、よろしかったら少し手伝ってもらえませんか?」
「…何?」
ミズホが何を言わんとしているのか理解できず、ラミアはその場に硬直してしまった。

162もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:42
(…で、なぜ私はこんなことをやっているのだ?)
ミズホの指示通りスパナを渡しながら、ラミアは難しい顔で悩んでいた。
ミズホの方はそんなラミアの悩みもまったく気づかない風に
楽しそうに笑顔すら浮かべながら手際よく作業を進めている。
「助かりました。こんな広い格納庫に一人でいるとさすがに心細くて…」
(そういうものなのか?)
ラミアには想像できない心理である。
他愛もないことを話しながら進めていたミズホの作業も一通り終わったらしい。
ラミアは先ほどから疑問に思っていたことを聞いてみた。
「ミズホさん、素人目ですけどエクサランスには問題はございませんように
思えたのでありますが、こんな時間にここまでの点検の必要はあったのですか?」
「ええ、特に問題はなかったんですけど…
 私がこうすることでラウルが生きて帰ってくる可能性が高くなるのなら…」
「そんなにラウルが大切なのでごさいますか?」
「えっ!? あ、あの私はそんな…
 いえ、大切なのは確かですよ…ええと…そう!仲間ですから」
耳まで真っ赤にして、一人でうろたえるミズホをラミアは理解できないといった風に、
首をかしげながら見つめた。
兵士は消耗品。確かに無意味に消費するのは愚の骨頂であるが
だからといって、一人一人に必要以上に固執するのもまた愚かしいことである。
ラミアは今までそう考えて、いや、教えられていた。
そしてそれに疑問を感じることもなかった。
そのためミズホの言っていることも理解できずにいた。
「仲間…か」
ラミアの呟きも耳に入らなかったのだろうか
ミズホは相変わらず赤い顔でぶつぶつ言いながら首を振っていた。

163もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:43
夜が明けてもハガネの航海は順調に進んでいた。
進みすぎていることが嵐の前の静けさといった言葉を想像させるのだが…
「ふあぁ…」
「気がたるんでるぞ、エイタ。」
一部、そうでないものもいるようである。
ブリッジの中では欠伸をかみ締めていたエイタが、副長のテツヤにたしなめられるといった
のどかな雰囲気に包まれていた。
「でも思ったような敵襲もなくて暇で暇で…」
「当たり前だ。そのために海路を進んでいるんだからな」
ハガネはDC残党等の攻撃を避けるためにもユーラシア大陸ではなく
太平洋を横断していた。
現在のDCには以前と違いハガネに対抗できるだけの海戦力を保持しておらず、
距離的にも日本からさほど変わらないために選んだ航路である。
また途中で北米のATXチームと合流するにも都合がよかったのも理由の一つである。

「もうそろそろハワイ沖に着くころか」
「え、はい、あと数時間でハワイ島が見えてきますが…」
テツヤはダイテツにそう返したが、そこに何かあるのか思いつかなかった。
「昨日、出るときにレイカーに言われてな。そこで一足先に補充人員が待っているらしい」
「補充人員ですか…誰ですか?」
「フフ…懐かしい顔だぞ」
お世辞にもあまり似合っているとはいえない笑みを浮かべるダイテツの顔を見て
テツヤとエイタは顔を見合わせて同時に首をかしげた。

164もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:43
「イエェェイ! 3、連、勝!」
その頃シミュレータールームではカーラの明るい声が響いていた。
その傍らではラウルがすっかり落ち込んでいる。
戦闘初心者であるカーラの訓練のためにラウルと模擬戦闘を行っていたのだが、
結果は先ほどの通りらしい。
「ほう、大したもんだな」
「昔っからこういったことの要領掴むのは得意なんですよ」
感心したように頷くイルムに向けて
カーラはピースサインを出しながら得意そうな笑みを浮かべる。
「俺だってこのシミュレーターがエクサランスに対応していれば…」
「チッチッチッ。甘いよ、ラウル君。
実戦で敵はそんな言い訳聞いてくれないんだから」
面白くなさそうに言うラウルだったが、逆にカーラにやり込められてますます落ち込んでしまった。
そこに今度はリュウセイが袖をまくりながら入ってきた。
「よし、じゃあ次は俺が相手してやるよ」
「え、いやよ。あんたちっとも手加減してくれないんだから」
「バカ、それこそ実戦で通用するか。
 さっさとシミュレーターに入れ」
まだ文句を言うカーラを押しやっていると艦内に警報が響いてきた。
「どうした!?」
『本艦針路上にて友軍のSOSを受信!
総員、第一種戦闘態勢に入れ』
「ラッキー、急いでいかなきゃね」
これ幸いとばかりに格納庫へ走り出すカーラを見て
他の者も呆れたように苦笑いを浮かべながら後に続いた。

165もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:44
ハワイ諸島の中の小さな島の上で戦闘が始まっていた。
戦っている一方はPT2機と輸送機が1機。
もう一方はとても機械には見えない骨やツタで作られたような物体である。
「クソッ、いったいこいつらは何なんだ!」
「今までのどのデータにも該当するものはない…」
量産型グルンガスト弐式のブーストナックルを撃ちながら、
苛立つように叫ぶ男、カイ・キタムラ少佐とは逆に、
戦闘機に変形している白いPT、ビルドラプターに乗る少女、
ラトゥーニ・スゥボータ少尉は冷静にデータとの照合を試みていたが
それも意味を成していないようである。
「こうなったら…T8! ここから離脱しろ!
 近くにハガネが来ているはずだ」
カイの命令があったがタウゼントフェスラーは一向に離脱する様子を見せない。
「どうしたT8! 早く離脱を」
「カイ少佐、それは出来ない。
 俺の仕事はあなたたちをハガネに届けることだ。
 行こうとしても敵がそうさせてくれそうにない」
「だがレナンジェス中佐!」
「それに件のハガネも今来たところらしい」
その言葉が終わるとほぼ同時に水しぶきを上げて海面からハガネの姿が現れ、
そこから機体が飛び出してきた。

「ビルドラプター!? じゃあ乗っているのは…」
以前の自分の愛機を見つけたリュウセイの声にラトゥーニが返事をした。
「リュウセイ…」
「やっぱりラトゥーニか! 元気そうだな」
久しぶりに戦友の顔を見て自然とリュウセイの顔がほころぶ。
「ってことはそっちの弐式には」
「相変わらず元気は有り余っているようだな」
「やっぱりカイ少佐か…」
「何だ、その扱いの違いは?」
思わず呟きを聞き逃さなかった額に青筋を浮かべながら迫るカイを見て、
イルムは冷や汗を浮かべて目が泳いだ。
「いや、別に他意はありませんよ」
「そんなことより今は戦闘中でしょう!?」
ラウルの言葉がきっかけになったわけではないだろうが
ツタで造られた方の敵からのビームが襲い掛かってきた。
「いったいなんだよ、あれは!? 生きてんのか?」
異様な敵の姿にリュウセイもさすがに驚きで声を上げる。
「それはわからん。いきなり現れて攻撃してきたんでな。
 わかっているのは敵ということだ」
カイの説明を聞き、リュウセイは舌打ちしながら
R-ウィングのGリボルヴァーを放った。

166もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:45
いつもとは勝手の違う敵に、誰もが苦戦を強いられながらも
何とか少しずつ敵の数を減らしていた。
だが慣れというものは、時によっては油断を生み出すものとなる。
ラミアのアシュセイヴァーがガンレイピアで骨のような敵を倒し、
次の目標へ向かおうとしていると、後方からビームが襲い掛かってきた。
「しまった! 避けきれんか!」
せめてコックピットへの直撃を避けようと、
腕で防御する体勢を取ったアシュセイヴァーの前方にR-1が入り込み
そのまま命中した。
「ぐっ!」
「リュウ! 大丈夫なの!?」
「大丈夫だ。少し頭を打っただけだよ」
R-3のアヤが近づき心配そうな声を上げるが、リュウセイの声を聞き安堵の溜息を吐く。
そんな様子をラミアは呆然としながら眺めていた。
「なぜだ?」
「ん?」
「なぜ私の盾になった? 一歩間違えば撃墜されていたところだぞ」
リュウセイの方もラミアの言葉が理解できないといった感じで
頬を掻いて答えた。
「なぜって…仲間だからだろ。当たり前じゃないか。
 それよりもまだ敵は残っているんだ。気を抜くなよ」
リュウセイはそう言ってまたR-ウィングに変形し飛び立っていったが
ラミアはまだ動けずに何やら呟いていた。
「仲間…私が…? 馬鹿な、そんなものは私には必要ない
 だが…なぜ不快な感じがしないのだ…」

167もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:46
半分ぐらいに数を減らしたところで、残りの敵は煙のように消え失せてしまった。
戦闘終了を確認して各機はハガネへと戻っていった。
そんな中、格納庫へ戻ったイルムは同時に収容した
タウゼントフェスラーから降りてきた男を見て驚きの声を上げた。
「お前…ジェスか!?」
「イルム! そうかお前は極東支部にいたんだったな。
 何年ぶりになるかな」
ジェスの方もイルムに気づいたのか、少々驚いた様子を見せながらも
笑顔を浮かべた。
「あいつらの葬式以来だから…3年だな。
 お前こそなんでこんな所に? 参謀本部にいるんじゃなかったのか?」
「見ての通り、少佐たちのエスコートさ。
 もちろん、それだけという訳でもないが…
 すまないがダイテツ艦長の所へ案内してもらえるか?」
「だったら俺たちと行こう。今から報告もしなければならんからな」
2人の話の中に入ってきたカイに連れられてジェスが格納庫を出て行くと
タイミングを図っていたラウルがその場にいた者の疑問を代表する形でイルムに聞いてみた
「イルム中尉、知り合いなんですか?」
「ん? ああ、仕官学校時代の同期さ。
 もっとも、俺と違ってあちらは次席卒業のエリートだがね」
「へえ…中尉と違って真面目そうな方ですね」
「どういう意味だよ」
極東支部に来て日が浅いラウルにまでそういった風に見られていることに
イルムはらしくもなくショックを感じた。

ブリッジで、ジェスはダイテツに封筒に入った書類を渡していた。
「それではこれを…例の報告書です」
「うむ、すまないな。しかし本部は壊滅したというのによく無事だったな」
「ちょうどその時は他の所に行っていたので。
 そういう悪運は強いんですよ」
封筒の中身を気にしながらもテツヤがジェスに恐る恐る話しかけた。
「中佐は先ほどの敵をご存知なのですか?」
「いや、俺も全く初めて見たものだった。
 もしかしたらあれが本部を襲ったのかもしれないが…」
「それはジュネーブに行けば答えが出るだろう」
ダイテツの言葉にジェスは頷く。
「そうですね。それでは俺はこれで、本部が音信不通になって色々と忙しいので」
一礼してブリッジを出て行ったジェスを見送り、テツヤはダイテツに聞いてみた。
「艦長、なぜレナンジェス中佐が危険な輸送任務に?
 中佐は極東支部所属でもないのに…」
「さあ、な」
ダイテツは明らかに何か知っている風な様子だったが、
その雰囲気がこれ以上の問答は無意味というものを感じさせたため、
テツヤはそれ以上何も聞けなかった。

168名無しさん:2003/11/10(月) 04:46
股間王誕生!

キキキ キキキ キングオブハート!!
キキキ キキキキ キングオブハート!!
怒れ 鉛色の股間 赤い赤玉 金の玉
光輝く自慰ストーン 幼女の貞操 汚すため
今こそ 勃ち上がれ
人の女の貞操を 汚す変態許せない
キキキ キキキ キングオブハート!!
キキキ キキキ キングオブハート!!
早朝オ○ニー承認だ!
今だ! 妄想展開だ!
変幻自在! 曲がる・精子!
露出! 妄想! カツ丼! 自慰! 誕生!
無敵の ドデカイ一物 ぼくらの股間王!
キキキキ キングオブハート!!

169名無しさん:2003/11/10(月) 04:47
諸君、私は萌えスレが好きだ。諸君、私は萌えスレが好きだ。諸君、私は萌えスレが大好きだ。

セクが好きだ。質問攻めが好きだ。雑談が好きだ。談議が好きだ。ネタが好きだ。
コテが好きだ。名無しが好きだ。百合も好きだ。薔薇が大好きだ。
元は家ゲ板で、ゲサロで、議論板で、その他はとりあえず無視してこれだけで、この地上で行われるありとあらゆる萌えスレが大好きだ。

ネタを並べたコテの一斉ネタ投下がハゲワラの表示と共に名無しを吹き飛ばすのが好きだ。
空中高く放り上げられた鰤が名無しの書き込みでウワアア━━━━━ヽ(`Д´)ノ━━━━━ ン!!!になった時など心が踊る。
ドモンの操る(ピー)が萌えコテを脅かすのが好きだ。
怒号を上げてアスカが脱いだ服を名無しが鍋で煮て食した時など胸がすくような気持ちだった。

桜島大根をそろえたレビのセルフバーニングをニヤニヤするのが好きだ。
デパ地下にやってきたシュウが、すでになくなった試食皿を何度も何度も刺突している様など感動を覚える。
弟絶対主義のクインシィをgishigishi.exeで攻めていく様などはもうたまらない。
泣き叫ぶ海本が私の振り下ろした手の平とともに金切り声を上げる芋の山にばたばたと薙ぎ倒されているのも最高だ。

哀れなションゲが、雑多なPCで健気にも立ちあがってきたのをfusianasanがPCごと木っ端微塵に粉砕した時など絶頂すら覚える。
フィオナの無乳が滅茶苦茶にされるのが好きだ。

必死に披露したはずだったネタが放置されていく様はとてもとても悲しいものだ。
名無しの物量に押し潰されて轢かれるのが好きだ。
荒らしに追いまわされ空転する談議をするのは屈辱の極みだ。

170名無しさん:2003/11/10(月) 04:47
諸君、私は萌えスレを、地獄のような萌えスレを望んでいる。
諸君、私に付き従ってはいなくて対等の萌えスレ戦友諸君、君達は一体何を望んでいる?
更なる萌えスレを望むか?情け容赦のない祭りのような萌えスレを望むか?
ネタの限りを尽くし、三千世界のコテを圧倒する嵐の様な萌えスレを望むか?

萌えスレ!!萌えスレ!!萌えスレ!!

よろしい。ならば萌えスレだ。
我々は満身の力をこめて、今振り下ろさんとするコテと名無しだ。
だが、この暗い闇の底で200スレ以上もの間堪え続けて来た我々にただの萌えスレではもはや足りない!!
大萌えスレを!!一心不乱の大萌えスレを!!

我らはわずかに1板100人に満たない2ちゃんねらにすぎない。
だが諸君は一騎当千の古強者だと私は信仰している。
ならば我らは諸君と私で総住人100万と1人の住人集団となる。

我々を忘却のかなたへと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう。
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせ思い出させよう。
連中に萌えスレの味を思い出させてやる。
連中に我々のネタとセクの嵐を思い出させてやる。
天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事がある事を思い出させてやる。
100人に満たない住人で世界を萌やし尽くしてやる。

「最初最後のノーマル&薔薇両刀の旦那ことグエン・サードより全住人へ」
目標、萌えスレ本スレ!!
第何次でもいい、とにかく騒いで祭ってやれ作戦。状況を開始せよ。
逝くぞ、諸君。

171白鳥九十九:2003/11/10(月) 04:48
あれは、数日前だったか・・・
最近の俺は出撃任務よりもコンピューター相手に睨めっこしてる時間が多い
肉体派の俺に、こんなもんやらせてもわかるか!
・・と、くだらない愚痴はこの辺にして、とまあそんなわけで
その日もいつものメンバー(月臣とか)と一緒に任務をしていたわけだが
夜も遅くなり、見回りの為俺は懐中電灯を持って一つ一つ部屋を回っていく
そして、現在の俺の仕事場についたとたん。不意にいやな寒気を俺が襲う
しかし、幽霊が怖くては軍人なんぞ務まらんので普通にドアを開け中の様子を見る
・・・・特に異変はない、見回りも終わったのでその部屋を出ようとしたら

つづく

172白鳥九十九:2003/11/10(月) 04:48
つづき

その部屋を出ようとしたら

カチャッ

!!!!・・・・聞こえたのはキーを押す音・・・何故?ここにはだれもいないはず
たった今それを確かめたばかりなのに・・・
恐る恐る後ろを振り返ると・・・
そこにあった端末が一斉に点きはじめたのだ!
そして、画面には4・死 という文字
俺は怖くなったので急いで出口のドアを開け外にでようとした
そしてドア閉めようとしたとき思わず中の様子を見てしまった
・・・画面の文字はこう書いてあった

「さようなら」

ドアを閉め、鍵も掛けるのも忘れ俺は急いで自分の部屋に戻った
そして、一つ深呼吸をしドアを開け外を見る・・・異常はない
・・・・すべては気のせいだったと無理やりにでも思うことにし
プライベートの端末に電源を入れいろんな場所を見て回る
そして、ある場所を覗いた瞬間!
---------------------------
|あなたは | 好きですか?|
---------------------------

本当の恐怖はここから始まったのかもしれない

173白鳥九十九:2003/11/10(月) 04:48
上の最後やつもとネタ分からない人の為に↓
ttp://www.geocities.co.jp/SiliconValley/4358/red_room1.html

174もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:51
「不機嫌そうね…」
「当たり前だろう。なぜ俺が、よりにもよってあの人形と共同任務に就かなきゃならない。
 潜入任務なんぞ俺だけでも十分だ」
「確実に成功させるためよ。あの子は私の最高傑作なのだから。」
「俺が人形に劣っていると言うのか?」
「そうじゃないわ。言ったでしょ、確実に成功させるためだって。
 1人より2人の方が成功確率が高い…単純なことよ。
 私情を任務に持ち込んで失敗するわけでもないでしょう?」
「…無論だ」
「じゃあ行ってらっしゃい…気をつけてね」
「ふっ、お前からそんな言葉が聞けるとはな」
「失礼ね。私が人の心配したら悪いの?」
「そんなことはないさ…行って来る、レモン」

175もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:51
「う…」
アクセルの目が覚めたときに初めに目についたのは、自分にかけられた白いシーツだった。
どうやらいつの間にか気絶してしまい、医務室に運ばれたらしい。
「あ、気が付きました?」
フィオナが心配そうに覗き込んできた。そばではカチーナが腕組みをして、備え付けの椅子に座っている。
「俺は…どうしたんだ?」
気絶したときのショックのためか、どうもその前後の記憶がはっきりしない。
(記憶喪失も慢性化ってもんがあるのか?)
などと考えているとカチーナが呆れた顔で話し始めた。
「お前が大気圏突入ギリギリに格納庫に入って来たりしたから
 機体を固定できずに、色々転げまわって目を回したんだよ。
 今、ラッセルたちがその片付けをしているぜ。ま、外傷とかは全く無いから安心しな。」
「なるほど…」
ということは、この看病というものがいまいち似合わない二人がここにいるのも
その片付けをサボる口実といったところだろう。

「じゃあここは地上ってことか?」
「ええ。北米の西海岸…ロサンゼルスから東へ100キロといったとこです。
 ただ着陸に少し失敗したらしくて、今ヒリュウ改は動くこともできないらしいんですけど」
「そうか…よっと」
「アクセルさん! もうちょっと寝てないと」
ベッドから飛び起きたアクセルを見て、フィオナは心配そうな声を上げたが、
当の本人は何も気にしていないように、軽い柔軟体操を始めている。
「大丈夫そうなんだな、これが。そうベッドにいつまでも寝ていたら体がなまっちまう。」
そんな様子を見てカチーナはため息をつきながら立ち上がった。
「そんなに元気そうなら、もうサボることもできないな。フィオナ、艦長に報告に行っといてくれ。
 あたしはラッセルたちの様子を見てくる。もうそろそろ片付けも終わったころだろ」
背中越しに手を振りながら医務室を出て行くカチーナに続き、
フィオナも少し心配そうに振り返りながら部屋をあとにした。
独り残されたアクセルはいつの間にか体操を止めて、ベッドに座り込んでいた。
その顔にいつもの人当たりの良い笑みはなく、深刻な表情をしている。
「さっきの夢は…俺の記憶なのか?
 人形…潜入任務…か。前から薄々感じていたが、どうやら俺は堅気の人間じゃないらしいな」

176もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:51
「合流予定のハガネ、そしてラングレー基地のATXチームへの通信も完了。
 あとは本艦の修理を待つだけですな」
「ユン伍長、修理はいつ完了しますか?」
相変わらずの落ち着いた調子で口ひげを撫でながら話すショーンとは逆に、
レフィーナは艦長席のアームをせわしなく指で叩いている。
「あと1時間もすれば、通常航行は可能になります。
 しかし戦闘は設備の整った場所で本格的に修理しないと不可能ということですが…」
「艦長、少しは落ち着いたらどうですかな」
「副長…ですが今の本艦はあまりにも無防備な状況です。
 このままでは敵にとって格好の的に…」
レフィーナの危惧ももっともである。最近活発になってきたDCの残党に加え、
一夜にして連邦軍本部を陥落させた敵や、無理な大気圏突入による不時着の原因となったゲシュペンストの部隊
といった、解決すべき問題は山積みになっている。
この中で自らが置かれた身動きすらとれないといういかんともしがたい状況に、歯痒さを感じているのだろう。
「お気持ちもわからなくはないですが、こういうときこそ艦長はどっしりと構えておくべきです。
 上の者がおろおろしていると、部下も満足した動きができませんぞ。
 はい、ここは一つ深呼吸でもして」
生真面目にショーンの動きに合わせて深呼吸をしたレフィーナは少し自嘲の笑みを浮かべた。
「すみません、副長。いつまでも未熟で…」
「いやいや、完璧な人間などこの世にはいませんよ。
 だからこそ、そばに我々がいるのですから」
ショーンの言葉に対して微笑みを返したレフィーナはブリッジの天井を見上げひとつため息をついた。

177もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:53
一方その頃、1機の輸送機がヒリュウ改へ向かって飛んでいた。
その操縦桿を握っている男はキョウスケ・ナンブ中尉。
本来、輸送機の操縦など一部隊の隊長である彼が行うべき事ではないのだが、
連邦軍の慢性的な人員不足の余波はここまで来ているのだろうか。
それはともかく、彼の後ろから心配そうな少年の声がかかってきた。
「キョウスケ中尉、この輸送機にグルンガスト弐式が積まれてましたけど…
 まさかまたクスハを…」
声の主はブルックリン・ラックフィールド少尉。前大戦からの仲間である戦いが似合わない少女、
クスハ・ミズハに想いを寄せており、終戦後看護兵になった彼女がまた戦場に出ることを心配しているのだろう。
「今度の敵はどこまでの規模を持っているのかわからん。戦力は多い方がいい。
 だが心配するな。クスハはあくまでも看護兵として出向することになっている。
 彼女が弐式に乗るとは限らん」
前を向いたまま話すキョウスケの言葉を聞いたブリットは、少し安心したようにため息をついた。
そこに話の種となっていたクスハが元気づけるように話しかけた。
「ブリット君、心配してくれてありがとう。だけど、もしも必要だったら私も戦うわ。
 確かに戦うのは嫌だけど、私だけ安全なところにいてブリット君や皆が傷つくのはもっと嫌だから…」
「クスハ…わかったよ。けど約束してくれ、絶対に無理はしないって」
軍の輸送機の中にはそぐわない雰囲気を醸し始めた2人を
キョウスケの隣で眺めていたエクセレン・ブロウニングは楽しそうに頷いた。

「うーん、青春よねえ。ねえ、キョウスケ。私にもああいうこと言ってくれない?」
「何をだ?」
「だからぁ、『無理するなよ』とか『お前は俺が守ってやる』とか…」
怪訝そうに眉をひそめながら、少しエクセレンを見たキョウスケだったが、
すぐに視線を前方に戻した。
「…これ以上始末書を書かされるのは御免だぞ」
「いや、全っ然違う! って言うか、始末書を書く原因は私よりあなたの方が…って通信が入ってきてる。
 ヒリュウ改からだわ。どうしたのかしら、予定合流時間はもうちょっと先だけど」
通信を開くと、ユンの顔がモニターに映し出された。
先ほどとは打って変わって、エクセレンは満面の笑顔でモニターに手を振る。
「あらユンちゃん、お久しぶり〜。どう? そっちの皆は元気してる?」
「ええ、まあ…こほん。
 ヒリュウ改よりATXチームへ、
 現在、本艦は敵の攻撃を受けています。至急救援に来てください」
能天気ともいえるエクセレンの調子に少しあっけにとられたユンだったが、
すぐに彼女本来の冷静な態度を取り戻し現状の説明を始めた。
「了解、あと10分ほどでそちらに着く。もう少し耐えてくれ」
手短に通信を終わり、モニターはまた暗い闇を映した。
「相変わらず真面目ねえ、ユンちゃんは」
この緊急事態にもかかわらず、エクセレンは相変わらずの調子で呟いた。
あるいは不謹慎ととられかねない態度だが、どんな状況でもマイペースを貫き
自分を見失わないことは、彼女の強さの一つでもある。
「あれから一年も経っていないんだ。そう簡単に人間が変わることはない。
 それより飛ばすぞ、掴まっていろ」
そう言ったかと思うと、輸送機は急加速し、かなりのGが襲いかかった。
「ち、中尉! 急ぐのはいいんですが、安全運転でお願いします!」
ブリットの涙混じりの叫びが操縦席に空しく響いた。

178もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:55
ATXチームとの通信より数分後、ヒリュウ改ではまだ戦闘が続いていた。
襲いかかったのは骨とツタのようなものでできた生物的なフォルムを持つ敵。
彼らには知る由もないことだが、先日ハガネが遭遇した敵と同じだった。
「ちっ、次から次へと湧きやがって…イライラさせやがるぜ
 第一、あたしは防戦ってのが性に合わないんだよ」
「そうだろうなあ…」
「何か言ったか、アクセル? あばら折るぞ?」
「な、何も言ってないさ、気にしない気にしない」
目を座らせて睨めつけるカチーナにアクセルは冷や汗をたらしながらなだめる。
「ったく…キョウスケたちも来るなら早く来いっての」
残弾が尽き、トリガーを引いても軽い音しかしなくなったマシンガンを投げ捨て、
カチーナの赤いゲシュペンストはプラズマカッターで目前の敵に斬りかかった。

「エネルギーは全てEフィールドへまわしてください!
 砲手は弾幕を張ることに専念、敵を本艦に寄せ付けないように!」
レフィーナの勇ましい声がブリッジに響く。
そんなあわただしい中、フィオナから通信が入った。
「レフィーナ艦長、私も出ます!」
「しかしフィオナさん…あなたの機体は地上戦に対応していないのでしょう」
レフィーナの言葉通り、今フィオナのエクサランスには
宇宙戦用のコスモドライバーフレームしかない。
そのため戦闘には参加せず、格納庫で待機していた。
「それでも砲台代わりにはなります!」
「…わかりました、出撃を許可します。しかし、危なくなったらすぐに帰艦してください」
「了解!」

そうして、勢いよくカタパルトから飛び出したエクサランスだったが
すぐにバランスを崩し地上へと落ちてしまった。
「ったぁ…こんなに大気圏内が動きにくいものとは思わなかったわ。
 フェアリーはさすがに使えないわね…ならハイコートマグナムで!」
何とか立ち上がったエクサランスは危なげな動きでマグナムを放つが、
全てを宇宙用に調整されているコスモドライバーでは照準もままならなく、
中々敵に命中しない。
「このっ! このっ!」
半ば意地になって乱射するが、冷静さを欠いてしまっては当たるものも当たらない。
その上、あまりに攻撃することに集中してしまったため、後ろから近づく骨の敵に気付かなかった。
いつもならばするはずのない致命的なミスだ。
「きゃあ!」
突然の衝撃にエクサランスがうつ伏せで倒れる。しかも当たり所が悪かったのか、
思うように脚部が動かず立ち上がることすらできなくなってしまった。
そんなエクサランスに対し、骨の敵は無慈悲に腕を振り上げ、止めを刺そうとする。
「こんなところで…っ」
後悔と無念だけが頭をよぎる中でフィオナは目を閉じた。

179もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:55
が、その後に聞こえてきたのは予想とは違う大きな火薬の音と何かが地面に落ちた音だった。
目を開き何とか上を振り向くと、腕から硝煙を立ち上げている赤いPTが悠然と立っていた。
ATX計画で製造された特別機、コードネーム「アルトアイゼン」である。
「そこのパイロット、大丈夫か?」
どこかで見たような光景にフィオナが呆然としていると、アルトアイゼンから通信が入ってきた。
「キョウスケさん!?」
モニターに映し出された顔は―身に纏う雰囲気はかなり違うが、確かに未来で共に戦った男のものだった。
フィオナは驚きの声を上げると同時に未来での出来事を鮮明に思い出し、言葉を続けられなくなってしまったが
キョウスケにしてみればそんなことがわかるはずもない。
「確かに俺はキョウスケ・ナンブだが…どこかで会ったことがあるか?」
「あ、いえ…その…」
なんと説明してよいやら迷っていると、横からカチーナの怒鳴り声が割り込んできた。
「キョウスケ! てめえ遅いんだよ!」
「まあまあ中尉、これでも急いできたんだから怒らないで。
 それに言うでしょ、『過労は寝て待て』って」
「少尉、それを言うなら『家宝』ですよ」
「『果報』だ」
「…相変わらずそうですね。」
どこか懐かしささえ感じてしまう漫才にレフィーナは苦笑いを浮かべた。
「すまない、艦長。キョウスケ・ナンブ以下ATXチーム4名、これより貴艦の指揮下に入る」

「……ハジ…マ…」
「!?」
「喋った!?」
いまいち気の抜けたやり取りをしている中で突然敵から聞こえてきた声に
キョウスケとエクセレンは驚いたが、どうやら反応したのはその2人だけらしい。
「何を言ってるんです、少尉!」
ブリットがチャクラムシューターで敵を切り裂きながら叫ぶ。
声が聞こえなかった彼からは、まだふざけているように感じたらしい。
しかし、そのブリットに倒された敵が、また消滅する前に言葉を残した。
「ア……ウグ…ス……」
「また!? ねえキョウスケ、聞こえたでしょう!?」
「ああ…」
(だが、聞こえたといっても通信を受けたり、外から聞こえたわけじゃない…
 むしろ、頭の中に響いたといったほうがいいのか…?)
「本当にどうしたんスか、中尉たち? もしかしてあの化物たちを知ってるとか?」
いつもと様子の違う2人にタスクが怪訝そうに聞くが、
当のキョウスケたちもあのような敵を見た覚えはない。
「いや…俺も知らない」
「う〜ん…ああいうデザインなら一度見たら忘れるはずがないんだけど…」
「アインストですの」
2人が考え込んでいると、また急に、今度ははっきりとした少女の声が聞こえてきた。

180もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:55
声が聞こえた方を見ると、赤い髑髏のようなもの身に着けた禍々しい印象の機体が浮かんでいた。
「やっと会えましたの…エクセレン、そして…キョウスケ」
声の主の青い髪をした少女は、長い間会えなかった恋人を見るような安らかな眼差しで
キョウスケとエクセレンを見つけた。
「明らかに他のとは違うって感じね。あなたが親玉かしら、お嬢ちゃん?」
「アルフィミィですの」
また聞き慣れない単語が出てきた。話の流れから考えると少女の名前だろうか。
「アルフィミィちゃんって言うの? じゃあ、少しお姉さんとお話しない?
 どうも、私たちのことを知っているみたいだけど…」
「残念ですけど、それはできませんの。今日は顔を見せに来ただけ…
 帰りますのよ、クノッヘン、グリード」
アルフィミィと名乗った少女がそう言うと、ヒリュウ改の周りを囲んでいた敵が次々と姿を消し始めた。
「逃げる気か!?」
「そうはさせん!」
そう言い終わる前にアルトアイゼンは背部のバーニアをふかして、
その巨体に似合わないスピードでアルフィミィの機体へ迫り、右腕のステークを突き出した。
しかし、その寸前に目標の影は陽炎のように消え去り、ステークも空を切るだけだった。
「慌てなくてもまた会えますの。そして、その時は…」
また頭の中に響くアルフィミィの声だけを残し、アインストと名乗った集団は全て消えてしまった。
「おしかったんだな、これが」
気がつくと、アルトアイゼンの隣にアクセルのソウルゲインが立っている。
近づかれた気配がなかったことを考えると、アルフィミィへの突撃の際に、同時に攻撃を仕掛けていたのだろう。
「お前は?」
「あ、挨拶がまだだったな。俺はアクセル・アルマー、職業は記憶喪失。よろしくっ」
「…おかしな男だ」
自分のことは棚に上げながらキョウスケは、彼にしては珍しく薄い笑みを浮かべた。

181もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:56
戦闘を終えた後、キョウスケはチームを代表してブリッジに来ていた。
「では、中尉たちは本当にあの敵…アインストについては知らないのですか?」
「はい、相手は俺たちのことを知っているようでしたが、こちらには全く記憶はありません」
「声が聞こえたというのは?」
「はっきりと言えるわけではありませんが…空耳や聞き間違いではないと思います」
やはりというべきか、話の内容は先程の敵、アインストのことが中心となった。
しかし、キョウスケにとっても訳のわからないことばかりで、逆に誰かに質問したいくらいである。
「そうですか…この話はここまでにしましょう。
 で、これからのことですが、もうすぐ合流するハガネも含めて
 中尉にはまた戦闘指揮を採ってもらいたいんです」
レフィーナの申し出はキョウスケにも予想できていたことだった。
前大戦で同じ職に就いたキョウスケが確かに適任だろう。
「了解しました。ところで、いつの間にか新しい顔が増えたようですが?」
「ええ、話せば長くなるんですが…とにかく皆さん心強い味方ですよ」
「そうですか。彼らは今ロビーに?」
「多分そうだと思いますよ。行ってみますか?」
「はい…」

ロビーでは久しぶりに顔を合わせたことで、
以前の思い出や近況といった話に花が咲いていた。
「ホントみんな変わりないみたいね」
「それはこっちのセリフだぜ」
話の輪の中心になっているエクセレンをフィオナは外れたところから見つめていた。
(あの人がエクセレンさん…キョウスケさんの恋人…)
そして未来で聞いた話によればいずれ命を落とす女性、それもキョウスケ自身の手によって…
複雑な気持ちで見ていることを気付かれたのか、ふとこちらを向いたエクセレンと目が合った。
「フィオナちゃんだっけ? 私の顔に何か付いてる?
 まあ、熱い視線を受けるってのは悪い気はしないんだけど、私そっちの気はないのよね…」
「い、いえ、そんなんじゃないです。すみません、ええと…」
何やら怪しい話の流れになってフィオナがうろたえていると、ロビーの扉が開きキョウスケが入ってきた。
「あ…」
考えていたことが知られたわけでのないのに、申し訳ないような気持ちになってしまい、
思わず目をそらしてしまう。
そんなフィオナを一瞥した後、キョウスケはエクセレンたちがいるところへ歩いていった。
「あら、ダーリン。どうだった?」
「その呼び方は止めろ…とにかく、結局配置は前大戦時とほとんど同じようになるようだ。
 それより、あと数分でハガネと合流するらしい。
 それと共にヒリュウ改は戦闘ができないからPT等の機体は全てハガネに移すことになった。
 自分の機体がある者は準備をしろ」
キョウスケの言った言葉に一部からブーイングが起こりながらも、
ロビーからどんどん人がいなくなっていった。
フィオナもそれに続こうとしたとき不意に隣から声がかけられた。
「思ったより早くラウルたちと合流できましたね」
「ラージ!? いつからそこにいたの?」
「さっきからいましたよ。
 …フィオナ、はっきり言っておきますが、僕たちは歴史を変えることを極力抑えなければなりません。
 だから…」
「それ以上言わないで…わかってる。
 ……わかってるわよ」
フィオナはそう言うが、俯いた彼女の瞳はいつもと比べて弱々しい。

外ではもうすでにハガネのエンジン音が聞こえ始めていた。

182ゴーマン大尉:2003/11/10(月) 04:57
俺の名はゴーマン大尉。ベガ星連合軍の大尉だ。
今回の話も俺の若い時、軍に入りたての時の話で、キャンプ訓練の時の話だ。
夜の訓練も終え、俺達訓練生は睡眠を取る事になった。
テントは10人用で、俺を含め7人の訓練生と全員のリュックサック等をおいて丁度いい くらいの広さだった。

夜になり寝袋をひいて中に入る俺達、これが学生なら怪談話等で盛り上がるのだろうが、訓練で疲労の為に俺達はグッスリと寝てしまった。

しかし、夜中に寝苦しさを覚えふと目をあけて見るた、なにかテント内が異様な雰囲気だった。
どうだったと上手く言えないが、寝た時とは少し様子が違ったのだ。
(…おかしいな?)
テント内にはみんなの寝息とともに、寝袋のすれる音のみが聞こえていた。
(みんな寝てるはずだよな…?)
点検のつもりで、頭を少し上げてグルーっと見まわしてみました。
そのときわかったのです!
(なっ、8人いる!?)
俺を含め7人のはずが、しっかり8人居るのだった!何度数えても、どう見ても8人 いるではないか!

テント内は管理人室からの明かりで、どうにか輪郭が見えるといった程度で、 見間違いかも知れないと思ったのと、単純な好奇心から 全員の顔を確かめようと、上半身をおこし 懐中電灯でひとりひとり顔を照らしていった。
7人並んで寝ていた中で俺は 左の入り口から2番目だったので、右側から見ていった。
しかし二人の顔は確認できたのだが、後はすっぽり寝袋を被ってたり、そっぽ を向いていたりでよく見えなかったのだ。
すると私の左側に寝ていた唯一の訓練生ジグラ(俺の左にはこのジグラ一人だけ)が、 大きな目を開けて俺を見ていたので、思わず叫びそうになってしまった。
(うわっ!!)
するとジグラが小声で、
「おい…」と言うので、
「脅かすなよ…起きてたのか?」と聞くと、
「ああ…さっきな、なんかチーってチャックの音がしたから…起きちまったんだ…」
と言うのだった。
「あん?リーダーでトイレの近いゲッペルか?」
「俺が知るかよ…」
ちょっとした恐ろしさも有ってか、俺は少し興奮気味だった。俺の右側にいる6人を思いっきりたたき起こして、 正体を暴いてやろうかと思ったのだが…ふっと右側を見て俺は驚いた。
(なっ!?ひ、一人減ってやがる!)
そう、何故か5人しか居なかったのだ。
俺の見間違いだったのか?それとも本当に別の何かがいて…?
まさかな…俺は恐怖も有ってか「まあ良い、もう寝ようぜ…明日も早い」
といって寝袋におさまった。

次の朝になって、訓練生の皆がテント内の掃除を始めた。すると同じ班のの訓練生であるホワイターが 「おい、落し物だぞ」 見てみると、名前の書いていないキャップだった。
「どこにあったんだ?」と聞くと、
「俺達のテントの中だ」というので、全員で調べまたのだが、全員名前の書いた
キャップを持っていた。念の為、他の班や教官にも聞いて見たが、誰も該当者が居なかったのだ。
ついでに昨夜、誰か見まわりに来たか聞いたのだが誰一人、テントのそばにさえ 来ていないと言うのである。
ましてや、チャックを開けて見るなど…

そのキャップはキャンプが終わるまでに、どこかへ無くなってしまった。
上の人間が保管しているのかも知れない。
今思えばチーっというチャックの音は、すでに誰かが中に入り、内側から閉めた音かもしれない…俺はそう思いたかった…

183:2003/11/10(月) 04:58
ハガネが着陸してすぐ、ヒリュウ改からの搬入作業が始まった。
急な決定ではあったが、何とか滞りなく作業は進んでいるらしい。
ブリッジのモニターにはダイテツの顔が映し出されており、
これからのことについて話し合っていた。
「レフィーナ艦長、色々と大変だったようだな」
「ええ…申し訳ありません、このような非常時に」
「気にするな。君の判断には間違いは無かった。他の者だったら地球に降りることすらできなかっただろう。
 それで、これからはどうするのかね?」
「はい、一度テスラ・ライヒ研究所に立ち寄って修理した後、ジュネーブに向かおうと思います」
レフィーナの言葉にダイテツは頷いた。
ハガネも同様であるがEOTによって改修されているヒリュウ改は、それだけで整備する環境すらも限られてしまっている。
その点、EOTの研究機関の一つであるテスラ研ならば畑違いとはいえ、比較的満足な修理を行うことができるだろう。
「うむ…今の連邦軍基地にヒリュウ改の修理ができるほど余裕のあるところも少ないだろうからな。
 では、本艦が近くまで同行しよう」
「それでは任務に支障が…」
「いや、方向はさほど変わらないから大した回り道にはならん。
 それにDC残党や例のアインストとやらが狙ってくるとも限らん。
 今ヒリュウ改は連邦軍の貴重な戦力だ。失うわけにはいかんからな」
確かに護衛部隊もハガネに送ってしまった今のヒリュウ改では、攻撃を受けるだけでひとたまりもない。
「…それではお言葉に甘えさせていただきます」
「それでいい、わざわざ気を使う必要もない。副長、搬入作業はあとどれくらいで終わる予定だ?」
「はい、あと一時間で発進できるそうです」
「よし、できるだけ急がせろ。なるべく早くここから移動した方がいい」

184もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 04:59
ハガネが着陸してすぐ、ヒリュウ改からの搬入作業が始まった。
急な決定ではあったが、何とか滞りなく作業は進んでいるらしい。
ブリッジのモニターにはダイテツの顔が映し出されており、
これからのことについて話し合っていた。
「レフィーナ艦長、色々と大変だったようだな」
「ええ…申し訳ありません、このような非常時に」
「気にするな。君の判断には間違いは無かった。他の者だったら地球に降りることすらできなかっただろう。
 それで、これからはどうするのかね?」
「はい、一度テスラ・ライヒ研究所に立ち寄って修理した後、ジュネーブに向かおうと思います」
レフィーナの言葉にダイテツは頷いた。
ハガネも同様であるがEOTによって改修されているヒリュウ改は、それだけで整備する環境すらも限られてしまっている。
その点、EOTの研究機関の一つであるテスラ研ならば畑違いとはいえ、比較的満足な修理を行うことができるだろう。
「うむ…今の連邦軍基地にヒリュウ改の修理ができるほど余裕のあるところも少ないだろうからな。
 では、本艦が近くまで同行しよう」
「それでは任務に支障が…」
「いや、方向はさほど変わらないから大した回り道にはならん。
 それにDC残党や例のアインストとやらが狙ってくるとも限らん。
 今ヒリュウ改は連邦軍の貴重な戦力だ。失うわけにはいかんからな」
確かに護衛部隊もハガネに送ってしまった今のヒリュウ改では、攻撃を受けるだけでひとたまりもない。
「…それではお言葉に甘えさせていただきます」
「それでいい、わざわざ気を使う必要もない。副長、搬入作業はあとどれくらいで終わる予定だ?」
「はい、あと一時間で発進できるそうです」
「よし、できるだけ急がせろ。なるべく早くここから移動した方がいい」

185もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:00
次々とハガネの格納庫に入れられていく機体の中に、フィオナのエクサランスの姿もあった。
「あ、来た来た。本当にあいつらもこの時代に来てたんだな」
搬入作業の手伝いも兼ねて、様子を見に来ていたラウルとミズホはその影を見つけ、
嬉しそうな声を上げた。
あちらもそれに気付いたのかコックピットハッチがすぐに開き、
フィオナがこちらに勢いよく駆け寄ってきた。
「ラウル! ミズホ!」
(俺たちがいなくて寂しかったのかな、なんだかんだいってフィオナも女の子だよな)
などと思い、ラウルは両手を広げてフィオナを待ったが、
フィオナはその横をするりと通り抜け、後ろにいたミズホに抱きついた。
「久しぶり! 元気そうね、ミズホ」
「フィオナも。でもちょっと痩せました?」
「あ、わかる? 最近色々大変だったからね…」
盛り上がる会話を背中で聞きながら、固まった笑顔のまま広げた両手をどうしたものかと悩んでいると
フィオナに遅れてラージがいつの間にか目の前に来ていた。
「抱きついた方がいいですか?」
「いや、やめといてくれ」
何やらどっと疲れてしまったラウルは力無くうなだれた。

「とりあえず無事に会えてよかった。
 色々と話すことがあるので人が来ないところに案内してもらえませんか、ラウル」
「ああ、そうだな…俺の部屋に来いよ。あそこなら多分大丈夫だ」
そうして格納庫を出ようとした4人だったが、
ちょうどその時入ってきたヒュッケバインmk-3を見て、ミズホは立ち止まった。
「あれは…どうして…?」
「どうしました?」
「いえ、何でもないです。行きましょう」
声をかけられて、慌てながら3人の元へ走り出したミズホの後ろにあるヒュッケバインmk-3を
ラージは少し険しい目で見つめていた。

186もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:00
また別の場所でも再会に喜ぶ者たちがいた。
「クスハ!」
クスハは自分の名前を呼んで、駆け寄ってくる少女を見て目を丸くした。
「カーラ? どうしてここにいるの!?」
「えへへ…まあ成り行きでね。ちょっとここでパイロットをやってるの」
「そんな…」
「クスハ、知り合いか?」
「あ、うん。高校のクラスメイトのリルカーラ・ボーグナインっていうんだけど…」
「この人が噂の彼ね。…ふーん」
クスハの後ろから声をかけてきたブリットは自分を値踏みするようなカーラの視線に
居心地悪そうに少しうろたえた。
「な、何だよ」
「ま、顔はいいわね。リュウセイも顔だけ見れば結構いけるし、クスハって意外と面食いだったんだ」
「ちょっと、カーラ!」
頬を染めて声を荒立てるクスハを尻目にカーラはからからと笑った。
「あはは、ごめんごめん。とりあえずよろしくね、ブルックリン君」
「ブリットでいいよ」
「じゃあ、あたしもカーラでいいよ」
こちらもまだ少し顔が赤いブリットだったが、その頬は緩んでいた。
このように誰に対しても気軽に付き合えるのもカーラの才能の一つと言えるかもしれない。
そんな和やかな雰囲気の中にリュウセイが近寄ってきた。
「クスハ、ちょっといいか?」
「え…うん」
彼にしては少し似合わない、深刻な雰囲気にクスハは少し戸惑いながらもリュウセイの後についていった。

187もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:01
「いいのか、ブリット?」
2人の後ろ姿を見送るブリットの背中から今度はタスクが話しかけてきた。
「何がだよ?」
「いやさ…ほら、あの2人。
 クスハちゃんもリュウセイのこと完全に吹っ切れたってわけでも…ないんだろ」
さすがに言い辛そうに目線をそらしながら話すタスクだったが、
ブリットは逆にさほど気にしないようだった。
「大丈夫だよ…うん」
「あらあら、余裕ねぇ。この前のデートでも手を繋ぐところまでしかいかなかったでしょう」
「し、少尉! いつからそこに…って何でそのこと知ってるんですか!?」
「わお…まあいいじゃない、そんなことは」
「何だ。お前らまだそんなものなのかよ」
「そ、そういうお前こそレオナとはどうなんだよ?」
笑ってごまかすエクセレンと、呆れたように言うタスクに追い詰められたブリットは言い返したが、
苦し紛れのその言葉はタスクにとって触れたくない話題だったらしい、彼の目が明らかに泳いだ。
「……お互い、がんばろうな」
「…ああ」
奇妙な男同士の友情が再確認された瞬間だった。

「そんな…ユウ君が…」
格納庫の一角でリュウセイから聞いたカーラの話はクスハに少なくないショックを与えていた。
少し顔が青ざめている。
「でも、さっきのカーラはそんな素振りは…」
「あいつもああいう性格だからな。多分心配かけたくないんじゃないかと思うんだ。
 でも…きっと無理してる。それでさ、クスハにあいつを見ていてほしいんだ。
 俺は…どうもそういった心配りってのが苦手だからさ」
「……わかったわ。でも…ふふ」
突然嬉しそうにに微笑んだクスハを見てリュウセイは眉をひそめた。
真面目に深刻な話をしたつもりだったのに馬鹿にされたような気がしたのだ。
「何だよ。おかしな事言ったか?」
「ううん、そうじゃないの。
 リュウセイ君がそんな風に女の子の気持ちがわかるようになったのがなんだか嬉しくて。
 前のリュウセイ君だったら、そんなこと気がつかなかったと思うから…」
クスハがそう言うとリュウセイはばつが悪そうにそっぽを向いて口を尖らせた。
「おふくろみたいなこと言うなよ」
「同じようなものよ。小さな頃から一緒にいて、見ていたんだから」
「…とにかく、カーラのこと頼むぜ」
これ以上居ては昔のことを色々と蒸し返されそうだ。
リュウセイは一方的に話を切り上げて、逃げるように格納庫から出て行った。
クスハはそんな様子をまだ微笑みながら見ていたが、
ブリットたちと楽しそうに話すカーラの方を向くと悲しそうな眼をした。

188もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:02
そしてここでも。
しかし、他のところとは少し様子が違っていた。
「アクセル隊長!?」
「ん?」
ハガネへ入ってくるソウルゲインを見つけ、まさかと思いつつもラミアが格納庫へ入ると
物珍しそうにきょろきょろとあたりを見渡しているアクセルを見つけた。
「無事だったようでありますわね。指令のことでございますですが…」
「ちょっと待ってくれ。あんた俺のことを知っているのか?」
「は?」
予想外の返事にラミアが唖然とすると、笑いながらアクセルが言葉を続けた。
「俺、どうも記憶喪失ってやつらしいんだ、これが。
 あんたが俺のことを知っているなら教えてほしいんだがな」
(記憶喪失だと…?)
ラミアがいぶかしげに目の前でへらへらしているアクセルを見ていると、
そんな2人を見つけたのか、キョウスケが声をかけてきた。
「アクセル、知り合いなのか?」
「ああ、どうもそうらしいんだな」
(どうする…これでは使い物にならない…)
「本当なのか?」
押し黙ったままの、様子がおかしいラミアを見て、
キョウスケが聞き返すがラミアは首を振った。
「いえ、人違いだったりしちゃったようですわ。失礼いたします」
おかしいながらも丁寧な言葉使いとは逆に、
愛想なく背を向けて歩いていったラミアを見てアクセルは呟いた。
「変なしゃべり方だな」
「…お前が言うか?」

189もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:02
「どういうことだ! ラージ!!」
部屋の中にラウルの声が響いた。
しかしそんな怒声をぶつけられた当のラージは、相変わらず落ち着きはらって眼鏡のずれを直している。
「どういうことと言われても、さっき言ったとおりですよ。
 僕たちはこの時代で表立った行動をすべきではない。
 つまりは必要以上にここの人たちの手助けをしないということです」
「お前…本気で言ってるのか!? この後皆がどうなるか、お前も知ってるだろう!」
「ラウル、ちょっと落ち着いてよ。大体ここの人たちって皆強いよ。
 …それこそ私たちが助ける以前にさ。それに多分問題となるのはL5戦役でしょう。
 だったらまだ先の話よ」
すっかり興奮した様子でラージに詰め寄ろうとするラウルを押さえながら、
フィオナは必死になだめた。
「いえ、それだけではないようですよ。
 …そうですよね、ミズホさん?」
ラウルの剣幕にすっかり身が引けてしまっていたミズホは、急に自分が呼ばれて思わず聞き返した。
「え…何のことですか?」
「先ほどヒュッケバインを見たあなたは少し様子がおかしかった。
 そう…そこにあるはずのない物を見たように」
「どうなの、ミズホ?」
「はい…私も本で見ただけですから詳しくは言えないんですけど…
 あのヒュッケバインシリーズには異名というか、少しいわくがあるものなんです。
 バニシングトルーパーという…」
3人の視線を受け、少しまごつきながらミズホは話し始めた。

「その名前も初めは起動実験の際に暴走事故を起こして基地一つを消滅させたmk-1だけを意味するものでした。
 しかし、その原因となったEOTを排除して造られたmk-2も、DC戦争の際に2号機をDCに奪われて行方不明に。
 続いたmk-3も一機は起動実験に失敗して廃棄、成功したもう一機も輸送途中の事故で行方不明になったんです。
 そういったことからその高いスペックと相まって
 マオ・インダストリーをいい意味でも悪い意味でも代表するシリーズなんです。
 だから…ここにそのmk-3があるはずはないんですが…」
「輸送途中の事故って、あのゲシュペンストたちのことね…
 ……ちょっと待って、あの時私たちは特に何もしてないわよ?」
確かに襲われているリョウトたちを助けたときにフィオナは出撃した。
しかし、その時はろくに戦闘もしないままに相手は撤退していったはずだ。
「ええ…でも事実としてmk-3はここにある。
 本来の歴史であれに乗っていたリョウトさんたちがどうなったかまではわかりようもないですが…」
ミズホの話に得心がいったように頷きながらラージは言った。
「確かにフィオナが言うとおり、あの時は僕たちの行動が歴史を変えたとは思えません。
 しかし…僕たちがここにいるということ自体が歴史に影響を与えているとしたら?」
「え…?」
「本来僕たちはこの時代にいるはずのない人間です。そんな存在が因果律に影響を及ぼさないはずがありません。
 こんなことを見落としていたとは僕の失敗としか言いようがありませんが…
 このままでは取り返しの付かないことになります」
「タイムパラドックス…私たちの存在が消えてしまうって言うの?」
思っていた以上に深刻な話に誰もが口を閉ざした。
ただ一人ラージは変わらぬ調子で淡々とフィオナの言葉に答えた。
「それはまだいい方ですね。最悪の場合、この宇宙が崩壊します。
 それも決して低くない可能性で…」

190もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:03
その言葉が決定的となり部屋の中の雰囲気は一層重いものになった。
望んだことではなく、そして事故が原因とはいえ自分たちの存在がそこまで重要なものになっていることに、
誰もがショックを隠し切れなった。
「だけど…俺は…!」
ラウルは拳を握り締めながら吐き出すように言う。
そんな様子をミズホは心配そうに見つめた。
「ラウル…」
「ねえラージ、結局のところどうすれば解決するの?
 ここの歴史に介入しないとは言っても、それは問題を先延ばしにしているだけでしょう?」
「僕たちが元の時代に帰ることですね。それも一日でも早く、歴史への介入を最小限にして…
 それにはまず、時流エンジンの研究を進めなければなりませんが」
「だったら話は決まりね。
 今のところは現状維持、私たちはエクサランスで戦ってエンジンのデータを集める。
 その結果がどうなるかはわからないけど」
「フィオナ! 僕の話を聞いていたんですか!?」
フィオナの言葉に今度はラージが声を荒立てる。
仕方がない。先ほどまでの話からどうしてそうなるかラージには理解できなかった。
「聞いて、ラージ…
 私は…もちろんラウルも、トレーニングとかシュミレーションじゃなくて実際に戦場に出てるからわかる。
 あそこでは結果は2つしかない…勝つか、負けるか。死ぬなんてことも…全然珍しいことじゃない。
 そんな中では、私たちは必死になって戦うしかないの。
 うまく立ち回ろうとか都合のいいこと考えている余裕なんてない。
 もっと私たちに力があれば違うかもしれないけれど…」

「フィオナ……わかりました」
口ではそう言うが納得してはいないのだろう、ラージの表情がいつも以上に厳しくなっている。
そんな様子を少し寂しげな目で見た後、フィオナは暗い雰囲気を変えようと明るい声で言った。
「と言うわけで、ミズホ、フレームの在庫ってある?
 私が今持ってるのはコスモドライバーフレームだけだから地上じゃちょっと辛いのよね」
「すみません、私たちの方にも乗ってきたガンナーフレームをだましだまし使ってるんです。
 …あ、でもフライヤーフレームなら1週間ほどくらいあればできると思います。
 設計図のデータディスクなら持ってますし、
 コスモドライバーフレームと互換性が利くパーツも結構ありますから。
 …そうだ、そういえばこっちの方もエンジンの調子がおかしいようなんですよね、ラウル?」
「ああ…そうだったな」
「それは僕が見てきますよ」
そう言って不機嫌な様子のままラージが部屋を出て行った。
それに続いてこちらもまだ苛立った表情のラウルも出て行こうとする。
「ラウル、どこへ行くの?」
「ダイテツ艦長のところだよ。もしかしたら2人ともしばらく出撃できないかもしれないだろ。
 そのことを言いに行ってくる」
ぶっきらぼうに言葉を残してラウルは部屋を後にした。
そして残されたフィオナとミズホは顔を見合わせた後、同時にため息を吐いた。
「まったく、男ってやつは…」
そんなフィオナの呟きにミズホは苦笑いを浮かべる。
「はは…じゃあ私もディスクを取ってきますね。
 ……フィオナ、2人の言うことを同時に…いえ、忘れてください」
首を振りながら言ってミズホも自分の部屋へと向かっていった。
結局一人だけ残ってしまったフィオナは窓から見える景色を見つめた。
ガラスに映るその顔に先ほどの元気は少しばかり消えていた。
「できることならそうしたいけど…無理よね、多分…」

191もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:03
一方、ロビーでは明るい話し声が響いていた。
と言っても、そこにいるのはリオ、レオナ、クスハ、そしてカーラの4人である。
女が3人寄れば…とは言うのもこの場合も間違いはではないようだ。
その盛り上がっている話題はどうやら彼女たちのボーイフレンドのことらしい。
年頃の少女にとっては最も気になる話題の一つだろう。
「そんなこと言ったの? まったくタスク君ったらどうしようもないわね!」
「でも、私もあの時はちょっと悪かったかも…」
「だめよ、レオナ。男ってのはちょっと甘やかすとすぐつけあがるんだから」
「リオったら…リョウト君もそうなの?」
苦笑いを浮かべるクスハの言葉に、大人ぶって頷いていたリオは急に顔を真っ赤にした。
「べ、別に私たちはそんなんじゃ…
 そうだ、カーラはどうなの?」
「へ、あたし?」
いきなり話を振られてカーラは少し戸惑ったが、
どうにかして話題を自分たちのことから離したいリオは勢いよくまくしたてた。
「そうよ。いるんでしょ、彼氏の1人や2人。なんだったらクスハの高校時代の話でもいいけど」
「ちょっとリオ!」
慌ててクスハが止める。そんな話題になればユウのことに触れるわけにはいかない。
できるなら今はそのことは忘れさせてやりたかった。
そのために年齢が近いリオたちの中にカーラを紹介したのだ。
「気にしなくていいよ、クスハ。
 うーん、なんだか話し続けて喉が渇いちゃった。皆はどう?」
「え…うん、そうね」
2人のやり取りに違和感を感じながらリオとレオナは頷いた。
「じゃ、お茶入れてくるね。
 紅茶に関してはちょっとは鍛えられてるから期待していいよ」
そうしてカーラはロビーを出て厨房へと向かった。その後、恐る恐るリオが尋ねる。
「クスハ…もしかして私、悪いこと言っちゃった?」
「うん…でも気に病まないで。後で説明するから」
そう、リオは悪くはない。事前に彼女のことを説明しなかった自分が悪いのだ。
そう自分に言い聞かせてクスハも厨房に向けて走った。
リオのフォローもしたかったし、何より一言謝りたかった。

192もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:05
「新たな〜伝説を〜 今この手で〜♪」
厨房に入るとカーラが得意な歌を歌いながら棚を探っていた。
「カーラ…」
何と声をかけたらよいか迷いながら呼びかけると、
カーラはいつもどおりの明るい顔を向けた。
「あ、クスハ。一緒にお茶っ葉探してくれない?
 どうも勝手がわからなくてさ」
何もなかったかのように振舞うその様子を見て、かえって心苦しくなってしまったクスハは
慎重に言葉を選びながら話し始めた。
「あのね、カーラ。リオは何も知らなくて…その…悪気があったわけじゃないのよ。
 だから…」
「ああもう、大丈夫だって。あたし気にしてないって言ったでしょ。
 昔からクスハはそんな風に人のことを気にしすぎなのよ」
カーラは心配など必要ないかのように手を振り笑顔を浮かべる。
「でも…辛くないの?」
言った後でしまったと思った。
リオのフォローをしようと思ったのに、こんなことを言ってしまっては本末転倒である。
すぐに謝ろうとしたところにカーラが抱きついてきた。
その肩が小刻みに震えている。
「か、カーラ…」
「なあんちゃって!」
予想外の展開にクスハがうろたえていると、ばあと先ほどと変わらぬ笑顔でカーラは顔を上げた。
「え…」
「少しはびっくりした? …心配しなくていいよ。ユウもきっと見つかる。
 軍の人たちが探してくれているんだから…きっと見つかるよ」
あくまで笑顔を崩さないカーラを見て、クスハも少し頬が緩んだ。
「そう…よね」
「あ、お茶っ葉、見っけ! クスハと話して手間取っちゃったんだから少しは手伝ってよね」
「はいはい。そうだ、せっかくなら隠し味に私のドリンク…」
「それはだめ!」
今度は慌ててカーラがクスハを止めた。

193もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:05
その日の深夜、ラウルはどうも寝付けなかった。
しばらくはベッドの中でもんどりうっていたのだが、
それにも飽きてしまい部屋を出て散歩に出てみることにした。
すると、廊下で人影が見えた。よく見るとそれはカーラだ。
「カーラ、お前も寝付けないのか?」
「あ、ラウル。まあちょっとね…嫌な予感がすると言うか」
「それってリュウセイたちも持ってる念動力ってやつか?」
何気なく聞いたことだったが、カーラはあごに指をあてて真剣に悩んだ。
「い、いや、そんなに悩まなくても…」
「うーん、よくわかんないや。
 大体さあ、特別な力があるって言っても
 あのリュウセイも同じ物があるってんだから結構微妙なのよね」
「お、俺はよくわからないかな…はは」
なんとも答えようがないことを言われて愛想笑いでごまかす。
「ところで、ラウルはどこへ行くの。
 もしかしてミズホのところへ夜這いとか?」
「そ、そんなわけ!…ないだろ…」
人の悪い笑みを浮かべるカーラの言葉に慌てて怒鳴ってしまったが、
今の時間帯を思い出してその勢いは急激にしぼんだ。
「何だつまんない。…でもいいよね、大切な人がそばにいるって」
聞こえないように呟いたのだろう、思わず聞き逃してしまいそうな小さな声だったが、
そう言ったときのカーラの表情を見て少し胸が痛んだ。
人づてに聞いたにすぎないが、ユウのことはラウルも知っている。
2人の間に気まずい空気が流れた。
(こんなのを見せられても…何もするなって言うのかよ)
「あのさ…」
とりあえずこの沈黙を破ろうと口を開いたラウルだったが、
ちょうどそれと同時に艦内に震動が走った。
「な、何!?」
「敵襲か!?」

194もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:06
「被害は!?」
「報告ありません、被弾はしなかったようです」
ブリッジは深夜ながらも喧騒に包まれた。
寝ているところを叩き起こされて、少しばかり服が乱れたままの者もいるが気にしてはいられない。
「…次の攻撃がきませんね」
すぐに対応できるようになって数分経ったが、初めの震動以降に敵の攻撃らしきものはない。
少し苛立ったようにテツヤが呟いた。
「レーダーに反応は?」
ダイテツもしかめっ面で聞くが返ってきた返事も異常なしとのことだった。
「超長距離射程からの狙撃か…」
「発射された方角はわかりました。追跡しますか?」
「いや、本艦はここに停止。偵察部隊を編成しよう」
「先ほどのは囮…ですか?」
「そうかもしれないということだ。編成についてはキョウスケ中尉とヴィレッタ大尉に任せよう」

「で、俺たちが偵察に行くってわけか」
ブリーフィングルームに呼ばれて集まったのはリュウセイ、ライ、イルムの3人だった。
「ま、ヒリュウ改の奴らは昼間からの疲れがまだとれてないだろうからな。
 ラウルのエクサランスも今使えないらしいし」
臨時部隊の隊長となったイルムが欠伸を噛み締めて、頭を掻きながら言う。
どうやら彼も気持ち良く眠っていたところを起こされたくちらしい。
「とりあえず、詳細はさっき話したとおりだ。特に質問がなければ出発するぜ」
「あの…」
申し訳なさそうに聞こえた声の出所を3人は探すが、その声の主は扉のそばにいた。
「カーラ? どうしたんだ」
「あのさ、あたしもついて行っていいかな?」
「君はなぜ俺たち3人だけで行くように言われたのかわからないのか?」
「それはわかるんだけど、何かあたしも行かなきゃいけないって予感がするのよ」
「そんな理由で…」
少し目が険しくなったライをなだめたのはイルムだった。
「まあまあ、いいじゃないか。こう言っちゃ何だが1人ぐらいだったらさほど変わらんだろ」
「しかし中尉…仕方ないですね」
ライはまだ何か言おうとしたが結局諦めた。
この面子でこうなってしまっては自分が折れるしかないのは前大戦からわかりきっている。
「よし、行くぜ」

195もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:06
「ハガネからの反応ありませんね」
「まさか、あなた直撃させたりしてないでしょうね?」
「いや大丈夫、うまくかすらせたって。
 大体な、今更そんな心配するくらいだったらブラックホールキャノンで超長距離狙撃なんて
 無茶苦茶な命令すんなよ」
「男だったらぶつくさ言わない」
「ぐ…」
「あの…来たようですが」
「どれどれ…グルンガストにR-1、R-2とこれはゲシュペンストmk-2のタイプTTか。
 ほら、うまくRシリーズが出てきたじゃない」
「絶対偶然だ…」
「何か言った?」
「いや、何も」

196もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:07
「ねえ、陸地がずいぶん遠くになってきたんだけど」
カーラの言うとおり、狙撃された方角へと進んできたが一向に敵らしき影は見当たらず、
偵察部隊一行はすでに海上を飛んでいた。
ホバー機能のないゲシュペンストはウィングガストの背に掴まっている。
「もう逃げちまったんじゃねえのか?」
リュウセイはもうすっかり疲れたような声で言ったが、それはすぐに否定された。
「いや前方3キロってところの島に反応がある。多分それだな」
その機体が目視できるところまで近づくと、目に映ったものに4人は驚きの声を上げた。

「なっ…黒いグルンガストに赤いヒュッケバインだと!?
 おいライ、まさか…」
そこにあったのは漆黒のグルンガスト、真紅のヒュッケバイン、
そしてカーラの乗るものと同じゲシュペンストmk-2タイプTTだった。
趣味から軍のPTに詳しいリュウセイも、このようなカラーバリエーションは聞いたことがない。
だが自分の乗機を全て黒く塗る人物については1人だけ心当たりがあった。
「いや、それはないな。
 確かにあの男ならグルンガストも黒く塗りつぶしかねんが、グルンガストシリーズは奴の趣味ではないはずだ」
「それにマオ社にいたときに聞いたことがある。
 グルンガスト壱式とヒュッケバイン008Lにそれぞれ改良計画が挙がってるってな。
 親父たち、いつの間にか完成させていたのか?」
「じゃあ、あれ連邦軍なの!?」
イルムたち4人がそれぞれの反応を示す中、悠然と立っていたグルンガスト壱式の改良型、
グルンガスト改のパイロットから通信が入ってきた。
「久しぶりね、イルム」
「女!?」

197もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:09
その声は確かに女性の声だった。年の頃はイルムと同じくらいだろうか。
「その声…まさか!?」
イルムがそう言ったと同時にモニターにその女の顔が映し出された。
「聞いてるわよ、前大戦では活躍したそうじゃない。
 同期として鼻が高いわよ」
「やっぱり…パットか。なら、そっちのヒュッケバインはヘクトールか!?」
「お、お前が男の俺の名前を覚えてるなんて珍しいな」
「知り合いかよ、中尉?」
「ああ…パトリシア・ハックマンにヘクトール・マディソン。
 この前、ジェスって奴と会ったろ。あいつと同じで士官学校の同期だ」
そう言うイルムだが彼らの間にある雰囲気は久しぶりに会った旧友を喜ぶものではない。

たまたま狙撃された方角に、
たまたまそれが可能な技術を持つ者がいて、
たまたまそれが可能な機体に乗っている。
そんな偶然があるだろうか?

答えは、否。

「お前たちがハガネを狙ったのか?」
「ええ、そうよ」
「撃ったのはヘクトールのヒュッケバインか? そのブラックホールキャノンで」
「そうだぜ。だけど当たらなかっただろ。そのように狙ったからな」
「なっ!」
イルムとの淡々とした受け答えを聞いてライが驚きの声を上げる。
改良されたものとはいえ、あのヒュッケバインの同型機に乗り、
そして事故を起こした本人であるライにはそれがどれだけのことか誰よりもわかっているからだ。
「お前ら何を考えている!? それがどういうことかわかってるのか!!?」
「私たちの目的は一つよ。
 …Rシリーズ全ての破壊」

「何だと!?」
パットが発した言葉に今度はリュウセイが驚く。
そして、その声を皮切りにしてグルンガスト改、ヒュッケバインEX、ゲシュペンストmk-2の3機が
戦闘態勢に入った。
「あなたたち個人に恨みは全くないけれど…その機体、破壊させてもらうわ。
 ヘクトール! あなたはR-2とゲシュペンストをお願い。イルムは私が相手をするわ」
「俺は…R-1ですね」
「ええ、だけど無理はしないこと。動きを抑えるだけでいいから」
「俺でも倒せますよ?」
「彼らを過小評価しないで。DC戦争、ホワイトスター戦役を生き抜いたのよ。
 乗る機体もEOTの塊の特別機。あなたのゲシュペンストもフルチューンしてはいるけど、
 それでもまだ性能差があるわ」
「…了解」
敵3人のやり取りを聞いたカーラが唇を震わせながら呟いた。
「そんな…どうして…」
「どうしたんだ、カーラ?」
「どうしてその機体からあの声がするのよ!?」
「っ、来るぞ!」
爆音を轟かせながら3機が突撃してきた。

198もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:09
グルンガスト同士の対決は計都羅喉剣のぶつかり合いで始まった。
暗い夜空に火花が走り、2つの機体のよく似た姿をを映し出す。
数秒の鍔迫り合いの末、イルムのグルンガストが身を引いた。
そこにすかさずグルンガスト改のファイナルビームが襲い掛かる。
爆風と轟音が立ち上る中、ウィングガストが尾を引いて飛び立った。
何とか直撃は避けられたらしい。
「くそっ! パワーが違いすぎる!
 変形機能をオミットした分、出力を上げたってわけかよ!」
彼にしては珍しく、思わず毒づく。
「それでも普通のパイロットだったら、さっきので仕留められたわ。さすがね」
「何でこんなことをするんだ!? 確かにRシリーズは危険すぎる諸刃の刃かもしれないが…
 それでもこんなテロ紛いの方法を取ることはないだろう!」
「あれが単なる兵器だったらね。だけど、あなたたちは知らない。Rシリーズが作られた本当の目的を」
「何…だって?」
「だから私たちは確実に破壊するの。正義のためにね」
そう言ったかと思うとグルンガスト改は突き出した拳を握り、ブーストナックルを発射した。
グルンガストもガストランダーに変形し、迫り来る拳にオメガキャノンを放つ。
だが1発、2発、そして全弾命中してもブーストナックルの勢いは止まることはない。
とっさに回避運動を取るがわずかに間に合わず、肩部の装甲が吹き飛んだ。

「ちっ、長期戦になると不利か…だったら!」
グルンガストが計都羅喉剣の刃を相手に向けて水平に構える。
「最大パワーでの一撃に賭ける…か。結構好きよ、そういうの!」
そしてグルンガスト改も全く同じ構えをとった。

「計都羅喉剣!」

「暗、剣、殺!!」

沈みかけの満月を背に2つの超闘士が交差する。
崩れ落ちたのは、イルムのグルンガストだった。

199もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:10
イルムが戦っている同じ時、そばではライのR-2とヘクトールのヒュッケバインEXが対峙していた。
マグナ・ビームライフルとフォトンライフルが撃ち合われるが、
R-2はその強固な装甲で防ぎ、ヒュッケバインEXはその機動性でかすりともせず、
双方とも決定打となる一撃を与えることができずにいた。
「あのヒュッケバインをここまで使いこなすとは…只者ではないな!?」
「かのブランシュタイン家の次男坊にそう言ってもらえるとは光栄痛み入るね。
 だけど、そちらは噂ほどではないかな」
「…くっ」
かつてならば激昂したであろう言葉をかけられたが、ライは必死に自分を抑えた。
(挑発に乗るな…奴はこの拮抗した状態を崩そうとしているんだ。
 この根比べがそのまま勝負を決める!)
そのライの考えは正しく、ヘクトールの方も一向に埒が開かない状況に少しずつではあるが苛立ちを感じ始めていた。
(さすがに乗ってこないか。まあ、乗ってきたらきたで拍子抜けだけどな。
 …ならこれはどうかな?)
突然、ヒュッケバインEXはフォトンライフルを収め、
その最大最強の武器であるブラックホールキャノンを構える。

「そこだ、行け!光の戦輪よ!」
ブラックホールキャノンはそのエンジンから直接エネルギーを採りだすため、
接続の際の一瞬、どうしても隙ができる。
そこを狙ってライはビームチャクラムを発射した。
だがピンチであるはずのヘクトールは相変わらず余裕の笑みを浮かべている。
「かかったな!」
ヒュッケバインEXは持っていたブラックホールキャノンをそのまま地面に落とした。
接続はされていなかったのだ。
迫り来るビームチャクラムをロシュセイバーで叩き落し、そのまま一気に間合いを詰めた。
「しまった!」
自分が犯した痛恨のミスに気付きR-2は防御体勢をとるが、それすらもヘクトールの読みの内だった。
てっきりロシュセイバーで斬りかかってくると思われたヒュッケバインEXは、そのまま肩から体当たりをしてきた。
想定していたものと違う質の衝撃にR-2のバランスが崩れる。
すぐさま体勢を整えようとするが間に合わない。
「テクニックは最高級だし、経験も十分にある…だけど狡猾さが足りなかったな」
自分を照準に定めたフォトンライフルの銃口がモニター越しにはっきりと見えた。

200もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:10
そして、ヘクトールが相手をするはずだったもう一人、
カーラのゲシュペンストは敵にもいた同じ機体へと真っ直ぐに向かっていた。
そこではリュウセイのR-1との戦闘が始まっている。
「機体を捨てろ、リュウセイ・ダテ少尉。俺たちの目標はあくまでRシリーズだけだ。
 君に直接危害を加えるつもりはない」
自分に向けられたはっきりした声にリュウセイも聞き覚えがあった。
「お、お前は!?」
「ユウ! ユウキ・ジェグナンでしょう!? あたしよ、高校で一緒だったカーラよ!」
だが、間合いを離したゲシュペンストから聞こえるユウの言葉は、彼女たちの思いもよらぬものだった。
「何のことを言っている? 君たちに会うのは今日が初めてだ」
「え…」
「どういうことだよ、記憶を失ったのか!?」
「俺は…記憶を失ってなどいない!」
苛立っているような声を上げたユウは、そのままT-LINKリッパーを放った。

ゲシュペンストmk-2タイプTTのT-LINKリッパーは、
Rシリーズの一つであるR-3が持つストライクシールドのように、操縦者の意思のままに動く遠隔起動兵器である。
R-1はコールドメタルナイフで四方から来るそれを、弾き落としたが、
カーラのゲシュペンストはそのまま呆然と立ち尽くしているだけだった。
「何よそれ…冗談にしちゃ、全然笑えないよ…」
カーラは焦点の合わないまま呟く。ぎこちない笑顔だったがその目は今にも涙があふれそうになっている。
「カーラ、何をやってるんだ! 応戦しろ!」
「できないよ! だって…あれにはユウが乗ってるんだよ!」
「…ちっ」
リュウセイはそんなカーラの顔を見て舌打ちし、力づくでユウのゲシュペンストに取り付いた。
「ユウ! 本当に俺たちのことを覚えてないのか!?」
「くどい! 例えそうだとしても…今の君たちは俺の敵だ」
顔面にマシンガンを突きつけられ、R-1は思わず蹴り飛ばして間合いを取る。
「違うよ! あたしたちが戦う理由なんてない!」
「君にはなくても俺には…」
「だったらその理由を聞かせてよ! あたしにできることなら何でもするから!」
「な…戦闘中に何を…うっ」
カーラの言葉に呆気に取られたユウだったが、突然顔をしかめ、頭を抱えた。
「あ、頭がっ…!」
「ユウ! どうしたの!?」
「あ…ああああぁぁぁぁっ!!!」

201もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:10
「ユウ!」
パットたちもユウの様子に気が付いた。
「何が起こっているのかわからないけど、まずいってことは確かね。
 ヘクトール! ここは退くわよ!」
「あいよ!」
フォトンライフルとは違う銃をヒュッケバインEXは打ち出す。
その弾丸は空中で小さな破裂音と共に砕け散り、そこから吹き出た白煙が一帯を包んだ。
「煙幕弾!?」
「動くな! 味方同士で衝突するぞ!」
煙幕が晴れると辺りに敵機の姿はなかった。
レーダーに目を移し周囲を探すと、遠方の空中に小さくなっていく機影を見つけた。
「逃がすか!」
「追うな、リュウセイ」
R-ウィングに変形し追いかけようとしたリュウセイだったが、イルムに止められた。
言い返そうと振り返るが、そこに見えた光景に言葉を失ってしまった。
各部から煙を立ち上らせて倒れこむグルンガストとR-2。
リュウセイの記憶の中でもそんな2機の姿を見たことはない。
「1人で行っても、返り討ちにあうだけだ」
「…くそっ」

R-2のコックピットの中でライは苦々しい表情をしていた。
あのままヒュッケバインEXがコックピットを狙っていれば自分はここにいないだろう。
だが、あの銃口から放たれた弾丸は手足の間接部を貫いただけだった。
R-2の動力であるトロニウムエンジンを避けたことも当然あるだろうが、それだけではない。
遊ばれていただけなのだ。
まるで突っかかってくる子供をあしらう大人のように。
(あの前大戦を生き抜いただけで強くなったつもりでいたか?
 兄を超えたつもりでいたのか? ライディース!)
痛みを感じることがなくなって久しい左手をモニターに叩きつけ、
ライは屈辱に歯をきしませながら呟いた。
「ヘクトール…マディソン…その名前、忘れん!」

イルムの連絡を受けて、ハガネが彼らを迎えに来たときにはすでに空が白みがかっていた。
迎えを待つその間、4人は誰も口を開かなかった。
完全な敗北だった。
戦略、戦術など関係ない、単純な力と力のぶつけ合いで。
それは彼らにとって初めての経験だった。

202もしもR組がOGに出たら:2003/11/10(月) 05:11
格納庫に何とか機体を収め、リュウセイがコックピットから出ると
クスハが息を切らせながら駆け寄ってきた。
看護兵の彼女はずっと彼らの帰還を待っていたのだろう。
「リュウセイ君、何があったの?」
「…ユウがいた。敵の中に」
「え…」
「しかも…俺やカーラの記憶がないみたいだった」
「そんな…カーラは!?」
クスハの言葉で、まだカーラが機体から降りていないことに気付いたリュウセイは
ゲシュペンストの方を見た。
するとハッチが静かに開き、そこからカーラが降りてきた。
「いやあ、まいったまいった。まさかユウがあんな風になってるとはね。
 でも、生きてるってわかっただけでも儲けものよね」
いつもどおりの笑顔が痛々しい。
見ていられずに視線を落とすリュウセイと何も言えずにいるクスハを見て、
カーラはその場の雰囲気にそぐわない明るい声で言った。
「何よ2人とも、心配しなくていいって。あたしは大丈夫だから……あれ?」
カーラの足元の床に一粒の涙が落ちた。
そしてそれは頬を流れる一筋のものとなり、流れてくる量が増えていく。
何度も手の甲でぬぐっても途切れることはなく、むしろ次から次へとあふれ出してきた。
「本…当に…大丈…夫だから……」
クスハは思わず、嗚咽混じりのカーラの首に手を回し、優しく抱きしめる。
「いいから…無理に平気なふりしなくていいから…
 辛かったら、悲しかったら泣いていいのよ。
 心配かけさせないなんて思わないで。
 私たち…親友でしょう?」
「クス…ハ…
 う…うわぁぁぁ…ああぁぁぁ……」
カーラのその泣き声は止まることを忘れたかのようにいつまでも格納庫に響いていた。

203白鳥九十九 </b><font color=#FF0000>(wOd6PnI.)</font><b>:2004/07/22(木) 21:25
その日、俺はとあるハンバーガーショップに来ていた
そこで、何が気に入らないのか分からないが、ガラの悪い連中が店員さんに絡んでいた
俺は迷惑だなぁ・・・と思っていたがそのままにしておくわけにもいかないので
間に入ってとめようとする・・・・
しかし、俺が止める前にピエロが間に入ったんだ・・・
そしてピエロはガラの悪い連中にこういった・・・・
ttp://tune.ache-bang.com/~vg/outitem/up/img/1235.jpg

204白鳥九十九 </b><font color=#FF0000>(wOd6PnI.)</font><b>:2004/07/22(木) 23:15
あれは、ほんの数日前・・・俺はある任務で出撃していたんだ・・・
出撃先でキャンプを張り休んでいると、ふと人の気配を感じた・・・
俺は気配のする方へ向かうと、そこには一人の女性が立っていた
・・驚いた事にその女性は・・・・ミナトさんだった・・・
彼女がこんなとこにいるわけがない・・・俺は不審に思いつつもその女性に話しかける
すると、彼女が口を開いた・・・
「ねぇ・・白鳥さん・・・死ぬときは私たち一緒よね?」
・・・突然そんなことを言われ俺は思わず・・・「ああ」と答えてしまった
その答えに満足したのか、彼女は笑顔になり・・すっと消えた・・
俺はその場に暫く立ち尽くしてしまったが・・疲れで幻覚でも見たのだと思い
その日は眠りについた・・

205白鳥九十九 </b><font color=#FF0000>(wOd6PnI.)</font><b>:2004/07/22(木) 23:15
翌日・・任務を終えた俺はミナトさんに会いに行くため車を走らせる
そして、彼女と会い何事もなく買い物をなどを楽しんでいた・・・
夕方になり、俺は彼女を送るために車を走らす、彼女は疲れていたのか隣で眠っていた
そして・・それは突然起こった・・・
ブレーキがきかなくなったのだ・・・このままでは確実に二人とも死んでしまう!
俺は、休まずブレーキを踏み続けた、すると曲がり角にぶつかるぎりぎりでブレーキがきき
なんとか、事故を起こさずに済んだ・・・俺はホッと胸を撫で下ろしミナトさんのほうを見る
・・・彼女は何事もなかったかのように寝ていた・・・しかしうっすらと口が動いていた
「死ぬときは一緒って言ったのに・・・」
・・・その後何事もなかったかのように彼女は元に戻っていたが
俺はしばらく彼女と笑うことは出来なかった・・・

206宣伝:2004/08/05(木) 12:41
K-O-K-A-N世紀0080・・・世界は混沌の闇に包まれていた。
突如としてやってきた異星人による股間狩りによって、人間達は繁殖機能を失った。
それにより世界は滅亡の危機を迎えようとしていた。
世界連合軍の武力攻撃は異星人達には一切通用せず、正に八方塞の状態であった。

その頃、遠くアマゾンの奥地の小さな村にも股間狩りの魔の手が迫っていた。
その村は遠く昔、股間族として栄えた一族の末裔たちの村であった。
次々と狩られていく村人達の股間・・股間族の末裔とはいえ、今の彼等に力はなかった。
このままでは村は全滅・・それどころか地球そのものが絶滅してしまう・・

それだけは避けなければならぬと、長老は村の少女ルリを使いに出す。
村の守り神として山奥にそびえる神像。そこへ赴き、全裸で神像の股間を撫でるのだ・・と。
長老はただ1人股間族の力を受け継いでいた。最後の力を使い、異性人たちを押さえ込む。
その間、ルリは一心不乱に神像を目指す。聞こえてくる村の人間達の悲鳴・・
ルリが神像に達した頃には、もう村の人間達の声は聞こえなかった。

ルリは神像の前で全裸になり、股間を撫で出す。何秒も、何十秒も・・・
その最中、異星人たちが最後の生き残りであるルリを狙ってくるのだった。
だが、ルリは最後まで股間を撫で続ける。そして奴等の手が掛かろうとした瞬間。
神像からまばゆい光が発せられる。その光を浴びた異星人は消滅していくのだった。
まばゆい光の中、神像の中から人が現れる。逞しい肉体。超絶なる股間。
遠い昔に栄えた股間族の伝説の男・・その強大な力から自らを封印したと言われる、
その男こそ、股間王、その人であった・・!!

世界を、股間を脅かす異星人・・その股間の危機に今伝説の男が蘇る。
股間族の少女ルリとともに、股間を救う旅へ・・
行く手を遮る異星人の刺客・・そして明らかになる股間族と異星人との関係・・
今までに類を見ない壮絶股間アクションストーリー!
「股間王」!!こうご期待! さあ、皆も一緒に自慰ファイト開始だああ!!

207ガチンコファイトクラブ ナデシコの場合――:2004/09/16(木) 06:01
第一話 
たが為に広島弁――

劇場版で奇しくも傷み分けた両雄
だが 事態がその停滞を許すはずはなく ついに合間見えるウサギとお姉さん
一体 ―― どうなってしまうのか?

青龍の方角から、、、艦長ミスマルユリカ選手の入場です
ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5139
ユ 「私が艦長のミスマルユリカでーす! ぶい!V」

白虎の方角から、、、妖精ホシノルリ選手の入場です
ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5141
ル 「ハーリー君 よろしく…」
禿 「OK ボス!」
ル 「……… ハーリー君…変わった?」


7 ゲーム好き名無しさん sage 04/09/16 02:24:58 ID:???
武器の使用以外 全てを認めm

ttp://float-i.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/img-box/img20040916010421.jpg
バチバチバチバチ――ぐにゃーーー ←(何か景色が歪む音)

ユ 「アキトは私の王子様なんだよ?」
ル 「……それ かっこつけてます」

ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5143
ル 「あの人は大切な人だからラーッシュ…」
ユ 「ひえーーーー!?」

ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5144
ル 「ハッキングタイガードライバー…」
ユ 「ひーー! 死ぬ! それ死ぬ!」

                        to be continue―――

208ガチンコファイトクラブ ナデシコの場合――:2004/09/16(木) 06:02
次回予告

ttp://float-i.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/img-box/img20040916012024.jpg
「……ラピス… 俺の知ってるミスマルユリカとホシノルリは、死んだ―――」

激化する龍虎の痴話ケンカ
突如現れ 無責任に引きまくってる天河アキト
そして次回――黒い王子様の前に第三の男の乱入が!?

風雲急を告げるガチンコファイトクラブ ナデシコの場合
一体……どうなってしまうのか!?

209ガチンコファイトクラブ ナデシコの場合――:2004/09/16(木) 06:03
第二話 
 妖精破れる  ユリカさん――先に地獄で待っています
(同時上映) 
 ツインアルティメットバスター炸裂! 復讐鬼を狩る者 汝の名は発情鬼――


ル 「終わりですユリカさん 後家は後家らしく、二時のワイドショー見て みのもんたに人生相談でもしてて下さい」

ユ 「アキト…私に力を…」
ttp://float-i.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/img-box/img20040916012024.jpg
――――   ユリカ……

(キュピーン!)
ユ 「はあああああああーーー!」 ちゅどーん BB+10
ル 「っ!?」

ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5148

ユ 「肘打ち裏拳正拳とおりゃーーー!」
ル 「っイタ! っイタ! か 艦長……ちょと シャレになってn」
ユ 「まずはその口をふさいであげる!」
ル 「っっ!?(ジタバタジタバタ)」

―――― 骨肉の争い 子供相手にマジギレかます 大人げない25歳の図 ――――

210ガチンコファイトクラブ ナデシコの場合――:2004/09/16(木) 06:04
同時刻―――

? 「貴公が天河アキトだな?」
黒い王子様に声をかけたのは
背に悪… いえ ギニアスサハリンの一文字を背負った
、、て … ま ん ま じ ゃ ん 

ttp://float-i.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/img-box/img20040916034853.jpg


天 「生憎だが君たちの知ってる天河アキトは死んだ…」
? 「ならば――――――― 貴 様 も こ こ で 死 ね ー ー ! 」

ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5149

天 「これは木連式抜刀術!?」
? 「違うわヘチマ野郎! これこそが我がシベリアの大地で会得した サハリン心陰流の極意なり!」

                      …………消火器で殴るのが ですか?(ボソ)

ユ 「 ア ル テ ィ メ ッ ト ユ リ カ バ ス タ ー ! 」
ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5150
少 「 ア ル テ ィ メ ッ ト サ ハ リ ン バ ス タ ー ! 」
ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5151

        (ドドオオオオオオオオオオン!)

ル 「っは―――つっ…… たかがコント漫才でバスター系持ち出すなんて……大人って  ズルい……(ガク)」
天 「……済まない二人とも……もう君らにラーメンを作ってやる事はできn…(ガク)」

                            ――― to be continue

211ガチンコファイトクラブ ナデシコの場合――:2004/09/16(木) 06:04
次回予告
ttp://float-i.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/img-box/img20040916012024.jpg
「ラピス オーダー入るぞ…… ニンニクラーメン チャーシュー抜き一丁―――」

300年の時を経て今対峙する―――
何か ガチンコでも何でもないような気がしてきたケド 取りあえずノアだけはガチ
次回――最終回

風雲急を告げるガチンコファイトクラブ ナデシコの場合
一体……どうなってしまうのか!?                



            いや どうもこうもね...    ………バカ?

212ガチンコファイトクラブ ナデシコの場合――:2004/09/16(木) 06:09
最終話
 シベリアサハリンの逆襲 こんなにも苦しいのなら――愛などいらn


ユ 「私の勝ち! 子供は寝る時間よ!」
ル 「うう……」
ユ 「さてと! アキトー アキトはどこー」

? 「    待    て    い    !    」

ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5152

―― 人はみな 代償様々な枷に縛られて生きている
―― 自然の理がそうさせるのだ  だが、
―― 天 地 人の理に逆らい続ける者がいる 不貞を恐れぬ者がいる
―― 人の魂を突き動かす原動力   人それを  愛  という


ユ 「貴方は何者!?」

少 「 ゴ ッ ド ハ ン ド ア ナ コ ン ダ バ イ ス 」
ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5153
ユ 「 ひ い  い ー ー ー ー ー ー!? 名乗る名前がない!はどうしたのーー!?」

少 「  求  婚  ! 」
ユ 「 痺 れ ち ゃ う ー ー ー ! !」


曰く  G−1には魔物が棲んでいる ―――

213ガチンコファイトクラブ ナデシコの場合――:2004/09/16(木) 06:12
魔物 「サア…これが私たちの門出です」
ユ 「うう…アキト――――」
ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5154
   (ずるっ)
魔物 「  た  わ  ば  っ  !  ?  」


ttp://www.strangeworld.info/upload/download.php?file=5155
ユ 「 ギ ニ ア ス さ ん の シ ス コ ン ー ! 」
魔物 「ギニャー! お師さん もう一度温もりをーー!」

――――――
ttp://float-i.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/img-box/img20040916012024.jpg
天 「ユリカ 強くなったな……」
ラピ 「アキト これも所謂 まるっと解決?」
天 「ああ…行こう ラピス…」



帰ってこなければ追いかけるまでd …というか 
勢いに任せて作ったはいいけど…
オチ 考えるの忘れた――

要はアレです    えと
何が言いたかったかというと―――


http://float-i.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/upload/img-box/img20040916045746.jpg
バカばっか……     

―――――――――   お休みなさい  (ペコリ) 

               ――終わり――  っていうか終われ...

214名無しさん:2005/10/14(金) 04:20:41
「このまま時が止まったら良いのに・・」
ルリはそう言い、男の胸に顔をうずめた。
恍惚の表情を浮かべる男の目には、ほんのりと涙が浮かんでいた・・・
「これ以上精子を出したら・・あなたは死んでしまうんですよ・・・?
 どうしてそこまでして精子を出そうとするんですか!?」
男は答えた。
「人類を救うため・・・いや、君を・・ルリルリを救うため・・」
ルリは言葉を遮るように言う。
「私は・・私は貴方のいない世界でなんて生きていたくない・・
 あなたがいないと私、私・・・!!」
ルリの頭を男はスッとなで、そして顔を無理矢理股間へと近づけた。
男はルリを生かすため、彼女の未来を救うため、心を鬼にして股間を口にねじ込む。
「んっ・・・!!」
そして、すぐに口から股間を抜き出す。
男は襲い来る異星人達を正面に迎え、ルリに最後の言葉を投げかける。
「生きろ」と。その表情にもう迷いはなかった。
ルリはそんな男の姿に何も言うことが出来なかった。
世界のために自分を捨て、最後の精子を搾り出そうとする戦士の姿に。
涙で溢れたその眼は、男の姿を捉えて離さなかった。最後の最後まで。

男はルリの唾液に濡れた股間を上下に擦りだした。
異星人たちに向けて、最後の一撃をくらわせるために。
「はあああああああああっっっ!!!おあああああああああああああああっ!!!
 ル・・ルリルリ・・・そ、そんなところ・・・あ・・だ、駄目だって・・やばいよ・・・
 そんなところまで見せちゃっていいのかい・・いいのかい・・・」
彼の恒例の儀式が始まった。いつもなら禍々しい儀式も、今日だけは神々しい光を放っていた。

シコシコシコシココスコスコスコスコスコスシコシコシコシココスコスコスコスコスコスハアッハアハハッハハハッハアアアアコスシコグチョヌポオオオオオオ
コスコスコスシコシコオッハアアアアルリルリシsコソッソアkソアjs・・・・・

そしていままさに男の股間から液体が出ようとした時、男の股間からまばゆいばかりの光が
あらわれ辺りを包み、男の頭に声が響いた。

  【目覚めなさい・・・股間王・・・力を今こそ呼び起こすのです・・・】


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