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涙たちの物語5 『旅が続いて』
1 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 09:08 [ eLj14s5A ]
前スレ:涙たちの物語4 『旅は道連れ』
http://jbbs.shitaraba.com/game/bbs/read.cgi?BBS=5091&KEY=1064882510&LAST=100

涙たちの物語3 『旅の流れ』
http://jbbs.shitaraba.com/game/bbs/read.cgi?BBS=5091&KEY=1058854769&LAST=100

涙たちの物語2 『旅の続き』
http://jbbs.shitaraba.com/game/5091/storage/1054164056.html

涙たちの物語 『旅は終わらない』(避難先)
http://jbbs.shitaraba.com/game/5091/storage/1048778787.html

初代【涙たちの物語 『旅は終わらない』】はxreaから撤退したためログ無し

倉庫等
(Wiki)http://kooh.hp.infoseek.co.jp/
(新)http://f12.aaacafe.ne.jp/~apururu/
(旧)http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/4886/index.html

2 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 09:09 [ tkQiFnUs ]
久しぶりの2GET!

3 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 09:37 [ 3h7Z0Dyc ]
3?

4 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 09:42 [ 9zUCn/6k ]
んじゃ4ゲト

5 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 10:41 [ LCHKye6c ]
5なのか?

6 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 11:32 [ eiYI.ldM ]
6っぽい

7 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 11:34 [ 5fqsCRq6 ]
ついでに6

8 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 11:35 [ 5fqsCRq6 ]
_| ̄|○

9 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 11:58 [ FM7NcSKM ]
9

10 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 13:28 [ /uafyGwQ ]
初めての10げっと!

11 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 15:01 [ urdTpKHg ]
すれたて乙です。

12 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 16:35 [ Zp8bk3jw ]
(・ω・)




(`・ω・´)

13 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 18:52 [ KoD9TCxE ]
>>7 胃㌔

14 名前: 白き探求者・作者 投稿日: 2003/11/20(木) 20:18 [ .TevtdnM ]
お、書き込めるじゃないか!…永かった(つД`)

15 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 20:26 [ MnJi4qHM ]
>>14
ヾ('-'*)オカエリ

細い兄弟……(つд⊂)
実際こんな日がくるなんて、思いもしなかった.

16 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/20(木) 22:34 [ FVCOvVyY ]
おかえりなつぁい(゜∀゜)
もうこっち移転してたのか



(`・ω・´)

17 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 00:22 [ Pm6ZTr4w ]
>>14
うお! おかえり&カキコ復活おめでとう(*゚∀゚)

18 名前: 1/4 投稿日: 2003/11/21(金) 01:02 [ 2CgKhRUI ]
[ マリーにおまかせ! 可愛い双子 事件編 ]

吾輩はミスラの少女である。
名前はマリー・ハドソン。
職業は・・・。

「その技は一度見た!吾輩に同じ技は通用しないのだよ!」

今は聖域を守る聖闘士などをしておるが、
これは世を忍ぶ仮の姿なのである。
その正体は・・・。

「所長、探しましたよ!なに遊んでるんですか?
もう大変なんですよ、所長?!」
「ワトソン君、静かに。
君は、この攻撃的な小宇宙を感じないのかね?」

そうなのである。
吾輩は薔薇十字探偵所の所長なのである。
そして、この者は吾輩の助手でワトソン。

「そんな事より、所長!仕事ですよ、仕事!」
「あいや。今日は気が乗らないのだよ。」

「なに言ってるんですか?お客様は神様ですよ!
それにこの不景気、滅多に仕事の依頼なんて無いんですから、
真面目にやって下さいよ!」
「まあ、それも良かろう。で、どんな依頼なのだね?」

19 名前: 2/3 投稿日: 2003/11/21(金) 01:02 [ 2CgKhRUI ]
「あ、はい。じつはあれこれしかじか・・・。」
「ふむ。かくかくうまうまなのだね。」

依頼のあらましはこうである。

依頼人はヒュー川ム助(仮名)。
どうやら彼は、悩みを抱えているらしい。

「ワトソンさん、じつは困った事がありまして・・・。」
「ム助さん、大丈夫です。僕がなんとかします。
だから、安心して話して下さい。」

「ありがとうございます。
じつは近所に住んでいる家族の事なのですが・・・。」
「何か、問題でも?」

「いえ。問題というか・・・。
その家族は、母親と子供二人の三人家族なんです。」
「ほうほう。」

「そして、昼間は母親が働きに出ているので、
それと、ご近所だという事もあって、
僕はよくその子供達の面倒を見ていたんです。」
「ふむふむ。」

「子供達も僕になついてくれて、
母親にもお礼を言われたりして、
僕も嬉しい限りなのですが・・・。」
「へむへむ。」

20 名前: 3/4 投稿日: 2003/11/21(金) 01:03 [ 2CgKhRUI ]
「あ、ちなみに、どうでもよい事かもしれませんが、
子供達の名前は『ゆうな』ちゃん、『まいな』ちゃん。
それと彼女達は、僕を『お兄ちゃん』と呼んでくれます。」
「うは。本当にどうでもよい事ですね。」

「それで最近、彼女達のちょっとした悪戯に困っているんです。」
「悪戯ですか?」

「はい。それで悪戯をした子を叱ろうとしても、
どちらが悪戯をしたのか、名前がわからないんです。」
「名前がわからない?」

「はい。彼女達は双子なんです。」
「双子?どこか違いはないんですか?」

「違いですか?そうですね・・・。おしりにホクロ・・・。
ゆうなちゃんはおしりの右側に、
まいなちゃんはおしりの左側にホクロがあります。」
「それだ!」

「え?!スカートをめくって、パンツをおろして確認ですか?
でも、それだと人前では確認できないですよ?」
「あ・・・。そういえば、そうですね・・・。」

「それに彼女達は、たまに嘘を付くんです。」
「嘘?」

「はい。僕が何か質問すると、本当の事を答えたり、
嘘の事を答えたりするんです。
あ、でも、嘘を付くときは、とことん嘘を付き通します。」
「それは厄介ですね。」

21 名前: 4/4 投稿日: 2003/11/21(金) 01:04 [ 2CgKhRUI ]
「はい。それでどうやって、
彼女達を見分ければ良いのでしょうか?」
「う〜ん、困った・・・。」

以上である。

「所長、どうしましょう?!
双子ですよ?!たまに嘘を付くですよ?!」
「ワトソン君、世の中に不思議な事なんて、何もナイのだよ。」

「はぁ?」
「ワトソン君、まずは条件を整理するのだよ。
論理的に考えれば、どちらかに一度の質問で見分ける事が可能なのだよ。」

「え?!所長、それで本当に見分けられるんですか?」
「もちろんなのだよ。
ワトソン君、君も考えてみたまえ。ヒントは3つ。」

1.彼女達の証言は真か偽。
2.彼女達が偽の証言をする場合は全てが偽。
3.教科書の中さがしても、見付からないの、答えは。

22 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 01:23 [ 77M1La6A ]
(´・ω・`)ム・・・ムズカシイ・・・

23 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 01:58 [ vPsRGLPs ]
つーかその名前は…
しっかりプレイ済みだがなー

24 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 09:33 [ jn3bRqWQ ]
つまり、嘘を付いているからその逆が正解というわけだ

25 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 09:55 [ GopDBvvI ]
というか、まだワトソンの種族が謎のままだ…
本当にオポオポ?

26 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2003/11/21(金) 14:40 [ wxMwts0g ]
どうにも私の話というのは長くなりがちなので、
Wiki倉庫管理者さまに許可を頂いてあちらに直接アップすることにしました。
とりあえず、前にやったやつの(大幅すぎる)手直しと、新しいのをひとつアップいたしましたので
よろしければ是非ご覧ください。

ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9

またアップした際は報告に参ります。では。

27 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2003/11/21(金) 14:43 [ wxMwts0g ]
あ。リンク上手くいかない・・・・
・・・Wikiのほうに直接訪れていただくということで。

28 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 15:24 [ 4baPwNt6 ]
>>27
んー……おお、"?"が抜けてるだけかな?
ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9
これで飛べるといいけど。

29 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 19:19 [ nATerDQw ]
やべぇぇぇぇぇ!!!「タルタル戦士は夢を見る」とか
ちょっと覗くつもりだったのがめっちゃ面白いじゃねぇか!!!!!!!!
いつも通学中に読んでる小説より面白いよぅ、プロ顔負け?ていうかプロ?
うはwwwwwおkwwwwwwwwwwwwwwwwww

30 名前: マユ 投稿日: 2003/11/21(金) 19:26 [ 3oV6WnTI ]
覗き見してみてネ★
http://www.ncdonald.com/

31 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/21(金) 21:03 [ JjVXobYc ]
雪の彼方   <雪の彼方  1章>

ルクルルはいつもどおり早朝練習を行い、
そしてジュノまでの道程を旅した教官リノナノとルリ、ラナウェイたちとともに
サポアイテムゲットに駆け出していった。
戦いの最中、ルクルルのポケットから転がり落ちた『古びた手紙』
雨にぬれ所々文字は読めなくなっていた。
モンスターが何らかの方法で手に入れたものだ。
「これ、なんだ?」
「あ。今朝早朝練習の時にやったウサギが持っていた手紙ですわっ」
リノナノの問いにルクルルは元気いっぱい答えた。
「サンドリア…住所は読めねぇなぁ」
リノナノの言葉にルクルルは小さな肩をすくめた。
「金の縁取りで蝋止めしてありますから…名の在る方からの手紙だと思って…」
ボロボロの封筒は横にしたら手紙が転がり落ちた。
「相当古いな」
「はいです。たまにあるんですわ。こういう手紙が。もう持ち主の手に届かないですわね。
住所も雨でインクが滲んでますから」

32 名前: 2 投稿日: 2003/11/21(金) 21:04 [ JjVXobYc ]
「何とか少し読めそうだけどな」
住所が中に書いてあるかもしれないと何気なくリノナノは開いた。
中は汚れと滲みでほとんど読み取れなかった。
「なにか書いてありますの?教官」
ルクルルは手紙を覗き込んだ。

ボスティ 氷河で   戦 を発見した。
意識不    あずかっ い 。
所属国 不明だが、3国に属す 戦士のよ
ボステ  ン 河で行方不明に   兵士が貴国にいないか確認をお願   い。
そのものは    戦 の     だ

「行方不明者の確認のお便りのようですわ。日付けは…3年近く前ですわね」
かろうじて読み取れた所を解釈する。
「教官どうしたにゃ?」
ルリが首をかしげる。
「この手紙、あずかっていいか?ルクルル」
リノナノの言葉にルクルルは敬礼をする。
「はいですわ!」
リノナノは手紙の文面を食い入るように見つめた。
無事ルクルルのサポジョブアイテムをとり終えたリノナノは飛空挺でジュノに帰っていった。

33 名前: 3 投稿日: 2003/11/21(金) 21:06 [ JjVXobYc ]


ジュノの詩人酒場でリノナノがタルタル用の椅子に座り酒を飲んでいた。
後ろからロストがペシッとリノナノの頭を叩く。
「よ。相変わらず強い酒飲んでるな」
ロストの後ろには白姫アンジュがいた。
「ああ…」
リノナノは心ここに在らずという表情でぼんやり呟いた。
リノナノの手には、古びた封筒があった。
「お前もリュートの歌、聞きに来たのか?」
「…ああ…―」
「サポアイテムさくっと集まったようだな」
「ああ…」
ぼんやり応えるリノナノにロストは遊び心がうずいたのか、さらに声をかける。
「リノナノはタル白の貧弱の臼王様だな」
「ああ…」
頷くリノナノにロストとアンジュは肩をすくめた。
リュートが舞台に立った。
ロストがひょいっとリノナノの手元の封筒を取り上げる。
「あ、おい。返せよ!!」
そこで初めてリノナノは覚醒したようだった。
「なんだ。サンドリアからの手紙、か?」

34 名前: 4 投稿日: 2003/11/21(金) 21:08 [ JjVXobYc ]
「返せって」
じたばたと手を伸ばしても、エルヴァーンの身長にリノナノがかなうわけもない。
「あ〜〜この封筒はおそらく、オフィサー家のか?」
ロストの言葉にリノナノは蒼い目を見開いた。
「わかるのか?!」
「ん〜〜。たぶん、だけどな。
この封書の蝋の紋章が…端っこが二つのタガーと…見えにくいが…たぶん盾だ。
てことは、おそらくオフィサー家に類する家のってことになる」
「何でロストがそんなことわかるのかしら」
アンジュの言葉にロストはただ肩をすくめた。
サンドリアの貴族社会はロストにとっては当たり前の知識だった。
「たぁいっても、オフィサー家といえば名家中の名家だな。
親類縁者でこの印使えるのは…と。こっちの下の方がかすれていなけりゃ、
特定できるんだけどな」
「まったくどこで仕入れた知識かしらね…でも、確かにそれっぽいわね」
アンジュもその封筒を見て呟いた。
「オフィサー家ってのは、どんな貴族だ?」
リノナノの言葉にロストは目を伏せた。

35 名前: 5 投稿日: 2003/11/21(金) 21:10 [ JjVXobYc ]
「んぁ、若い当主が立ったとか立たなかったとか、代変わりしたかもしんねぇな。
…家柄血筋ともに生粋のエルヴァーンだ。何かあるのか?」
「いや、なんでもねぇ」
リノナノが必死で手を伸ばして取り返そうとする手紙を見るに見かね、
アンジュが封筒をリノナノに返した。
ロストはふぅ〜んと見透かすように漆黒の瞳でリノナノを見下ろした。
「言っとくが、貴族に関わろうなんて馬鹿な考えはおこすなよ」
「………」
「サンドリアのエルヴァーンってのは、気位だけはどの種族より高い。
ましてお貴族様様って奴はもう同種族すら見下してる。
ヒュムはかろうじて仲間と認められているが、
タルタル族やガルカ族なんざカスとしかみなしてないからな。
口をきくのも汚らわしいって考えてる馬鹿も多数いる」
「すごくむかつく言い方だけど、あなたにしては珍しく正しい認識ね。ロスト」
「サンドリアにいってもタルタルは不快な思いするだけだぞ」
ロストの忠告をリノナノは聞き流した。

36 名前: 6 投稿日: 2003/11/21(金) 21:12 [ JjVXobYc ]
リュートの透きとおった綺麗な歌声が酒場に広がる。
拍手が、散った。
「そんなことより、リノナノ。いー加減パーティーくまねぇか?」
ロストは珍しく下出にでていった。
「却下」
リノナノのにべもない言葉にロストはリノナノの顎をグイとあげる。
「どーしてそう強情なんだよ。みんなでパーティーなんていつもの事だろ?
お前が嫌がるから、暗黒だってひかえるようにしてるんだぜ。これでも」
その言葉にアンジュは小さく笑った。
「嘘のような話だけど、ほんとなのよ。リノナノ」
「そりゃ、俺らのパーティーじゃアタッカーは俺一人だから当然やるときゃやるけどよ。
普段は後衛に負担かけないように気を使ってるつもりだ」
ロストの言葉は、前からくらべれば信じられないほどの変化だった。
「その調子で、がんばれ」
リノナノは椅子の上に立ってロストの肩をたたき、椅子から飛び降りた。
「おい!帰るなよっ」
「ちょっとサンドリアに行ってくる」
リノナノはそれだけ言って、詩人酒場の扉を閉めた。

37 名前: 7 投稿日: 2003/11/21(金) 21:14 [ JjVXobYc ]
「あんの、バカッッッ」
ロストは酒を一気にあおりリノナノの後を追おうとした。
その手をアンジュが掴む。
「どこに行くのよ」
「サンドリアだ」
その言葉にアンジュは目を細めた。
「ロストまで行くの?」
「リノナノ一人で行かせるわけにもいかねぇだろ。
エルヴァーンの貴族社会はリノナノの想像を越えて排他的だ」
「ロスト、一体何者なの?」
アンジュの言葉にロストは言った。
「ロストだよ」
アンジュの腕を振り払ってロストは詩人酒場を出て行った。
「どうしたの?」
リュートが歌を終え舞台を下りてきた。
言い争いは気になっていたが、バードとしての仕事が先だった。
「どうやらサンドリアに旅に出ることが決まったみたい」
アンジュの言葉にリュートはただ頷いた。

38 名前: 8 投稿日: 2003/11/21(金) 21:16 [ JjVXobYc ]
「リュートもいくの?」
「ええ。リノナノが行ったんでしょう?なにか手助けできることがあるかもしれないわ」
リュートは当たり前に言う。
「貴女達って、ほんとに…」
アンジュがリュートをきゅっと抱きしめた。
「アンジュ?」
「私も久しぶりに、一肌脱ぐために実家に帰ろうかしら」
アンジュはリュートを抱きしめたまま、言った。

アンジュ・リュート・ロストは3人で飛空挺に乗った。
時間がなくてガーディとミュミにはメモだけを残して。
「仲間はずれ、か」
「お留守番にゃァ」
そのメモを見た二人が呟いたが、それはおいておく。

<続く>

39 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/21(金) 21:20 [ JjVXobYc ]
>>1  様スレ立てありがとうございました。
書かせていただきます。
また保存サイトのみなさま。ありがとうございます。
時間軸まで…感涙…

書き手のみなさん頑張ってくださいませ^^応援しています。
そして、多くの応援感謝です。

40 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 21:56 [ 8vEOrKsQ ]
ニャ━━━━━━(;∀;)━━━━━━━ン!!!

41 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 22:17 [ jioK3AGk ]
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━ン!!!
(´-`).。oO 嬉しいような悲しいような、いろんな期待が入り混じり

42 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 22:50 [ wW4VJzrA ]
やっほーーい 雪の彼方



キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!

43 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 22:53 [ jioK3AGk ]
>>18謎ハスベテ溶ケタ(・∀・)!!

質問内容
ゆうなちゃんは、まいなちゃんのお知りのほくろがどっちにあるか知ってますか?

ゆうなちゃんに聞いた場合
  嘘つき:右 と答える
  正直 :左 と答える

まいなちゃんに聞いた場合
  嘘つき:いいえ と答える
  正直 :はい と答える

これであってるのか・・・・?
間違ってたらハズカシイナ・・・

44 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 23:20 [ floy1ShI ]
>>39
「雪の彼方」の作者様!いつもいつも楽しみにしています。
手持ちのログからWikiに保管させていただきました。
もし時間軸等間違っていたらごめんなさいです。
(容赦なく訂正なり突っ込みなり入れてください)

ストーリーが現在に戻ってラストへ向かってるようですが、
エルヴァーンのように、いやダルメルのように首を長くして続きを心待ちにしてます。
がんばってください〜。

45 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/21(金) 23:31 [ 77M1La6A ]
>>43
当たりっぽ(・∀・)イイ!!

46 名前: ガルカの昔話 13話1/4 投稿日: 2003/11/22(土) 00:17 [ vvjOQkCg ]
細い兄弟の右目と左手から赤い血がしたたっている。
女の頬を生暖かい血液が伝い、彼女を呆然とさせた。
クゥダフは振りぬいた剣を握り直していた。

すんでのところでヒュームの女は、この銀髪のエルヴァーンに命を救われた。
その代償に彼の腕は銃弾で打ち抜かれ、目の辺りはクゥダフの斬撃にかすめられたのだが。

クゥダフの二の太刀が、間髪入れず兄弟の首を凪ごうと迫る。
彼はヒュームの警邏隊長から奪った片手剣で受けるが、流しきれずに体勢を崩した。
端正な顔は右目付近の出血のせいで、半分以上が赤く染まっていた。
あれでは視界も利くまい。
三度、四度…そしてクゥダフの剣を五度受けたとき兄弟の持つ唯一の牙はポキリと中ほどから折れた。
銀の弧が落日を受け妖しい軌跡を残して大地に突き刺さる。

47 名前: ガルカの昔話 13話2/4 投稿日: 2003/11/22(土) 00:19 [ vvjOQkCg ]
私はそのときになって初めて我を取り戻し、咆哮を上げ亀のような獣人の脇腹に突進した。
これにはたまらず亀もよろめく。
わたしは獣人と力比べをしながら、チラリとヒュームの女の姿を確かめた。
彼女は動揺しながらも、震える手で銃口から発射薬と弾丸を詰めなおしているところだった。
目には涙が、白い肌には細い兄弟の血液がべったりとついていた。

一方の兄弟は、ひどい出血のせいか膝を折ったまま立ち上がれないでいた。
手には折れた剣が握られていたが、これ以上応戦するのは体力的にも無理に思えた。
鉱山で鍛え上げられた私の肉体は、幸いにも獣人を押さえ込むには十分な力を発揮していた。
だが当然、武道の心得のまったく無い私ではこのまま亀と素手で殴り合い、撲殺せしめることなど不可能である。
我々に残された唯一殺傷力のある攻撃は…
「女!撃て!!」
声を荒げ、力いっぱい叫んだ。
彼女の持つマスケット銃。それがただ一つの武器。この銃と彼女の腕前に賭けるほか無い。
ヒュームの女は私の怒号にビクリと大きく反応し、そのあと冷静さを取り戻したのか
大きく深く息をつき呼吸を整えると、マスケット銃を構え獣人に狙い定めた。
今度は手に震えが無い。

48 名前: ガルカの昔話 13話 3/4 投稿日: 2003/11/22(土) 00:19 [ vvjOQkCg ]

銃声が再び轟く。

銃弾はこの亀のような獣人の腹を綺麗に射抜いた。それも組み付いていた私の身体を見事に避けて。
言葉にならぬ絶叫を上げるがごとく、クゥダフは口を広げ顔を歪ませた。
どす黒い血の泡がくちばしの様な形状の口から溢れ出てくる。
私は力の抜けていく巨体をそのままなぎ倒し、己の丸太のような腕でヤツの太い首を締め上げた。
惨いようだが、とどめは刺さねばなるまい。
クゥダフは最期まであがき、救いを求めるかのように空をかいた。
次第にその力も弱くなってきた頃、
「…あっ……」
最初にそのことに気付いたのは女だった。
私も獣人が絶命するのを看取ってから、顔を上げ、なぜ女が声を上げたのかを知った。

49 名前: ガルカの昔話 13話4/4 投稿日: 2003/11/22(土) 00:21 [ vvjOQkCg ]
私たちのいるところからは少し距離がある。
屠ったクゥダフが救いを求め、手を伸ばした方向。
谷のように窪んだ地形になっている場所。
そこに蠢く無数の何か。

目を疑った。
三百以上はいる。

この日最後の落日を受け、鈍く光るクゥダフたちの背甲。
奴らは窪地に身を潜め、今か今かと待っている。
夜を、……そして、裏切りのガルカたちがバストゥークの外門を押し開き、
彼らクゥダフを招き入れるその時を。

50 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/11/22(土) 00:54 [ vvjOQkCg ]
(`・ω・´)ノ次は1週間後くらいだよ

51 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/22(土) 01:24 [ e3K0eh4M ]
楽しみに待ってます!!!!

52 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡6話-1 投稿日: 2003/11/22(土) 01:53 [ qvdEX44s ]
「空に浮かぶ群青の軌跡」第6話

 おいらはLady。今、ウィンダスって場所を目指して旅をしている。
 一緒に旅をしているのは、カーナとラズィっていうヒューム。
 カーナ以外と一緒に旅するのって久しぶりだけど、こういうのもなんかいいな。
 だけど……この砂ぼこりは勘弁してほしい。
 自慢の毛並みがばさばさになっちまう。
 しかも、なんかしょっぱい匂いがするこの風。体がべたべたする。
 カーナが言うには海ってのが近いかららしいんだけど……。
 なあ、カーナ。街ってやつについたら、おいら、水浴びしていいかい?

53 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡6話-2 投稿日: 2003/11/22(土) 01:54 [ qvdEX44s ]
>>>>>>>>>>>>

 それはアウトポストと呼ばれる場所で、休憩していたときのこと。旅は相変わらず順調で、もうセルビナまであと一息というところだった。
「なんとかここまで来たわねぇ」
「本当、よもや二人でここまでこれるとは思わなかったよ」
「あら、Ladyのこと忘れているわね」
 おどけたようにして微笑む彼女に、同意するかのようにして、竜は鳴く。
「ご、ごめんよ、忘れてたわけじゃないんだけどさ……ただ、カーナとLadyって、一緒で一人って感じがしてね」
「うーん……まあ、誉め言葉として受け取っといてあげる」
「そうしてくれると助かるよ」
 柔らかく微笑して、カーナは竜の体を撫でる。一時期心配していた、毛並みも申し分なく、竜はすこぶる元気だった。少々、その毛がべたべたすることを除けば、だったが。
「そういえば、カーナはセルビナに何をしにいくんだい?」
「えっと……マウラに渡るの。私、今ウィンダスを目指しているのよ」
「へー、ウィンダスかぁ、里帰りとか?」
「ううん、私はサンドリア出身。ウィンダスには料理を教わりにいくの」
「料理?」

54 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡6話-3 投稿日: 2003/11/22(土) 01:55 [ qvdEX44s ]
「そうよ。何、その信じられないって、顔は!」
「いや、だって、君、竜騎士だろ?」
「竜騎士は料理しちゃいけないって法でもあるの?」
「そりゃぁ、ないけど……」
 彼女はぴょんと立ち上がると、座ったままのラズィへと詰め寄った。
「いいこと? あなたも知っているように、Ladyは街の中に入れないわ」
「うん」
「でも、私はLadyと一緒に美味しい食事をしたいの」
「うん。カーナは食いしん坊だから……」
「何か言ったかしら?」
「い、いえ、何も……」
 慌てて首を振る相手に、カーナは一瞥すると、かまわずに先を進めた。
「で、外で食事するにしても、手に入るものといえば、干し肉だの、そんな簡易食ばっかり。もううんざりだわ」
「他にも料理は売ってるじゃないか」
「確かにそうよ。でもね、美味しくて長持ちする食材って、大体高いか、かさばるのよ!」
「それが何?」
「ラズィ……あなた、顔はいいんだから、もうちょっと頭を働かせなさいな」

55 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡6話-4 投稿日: 2003/11/22(土) 01:57 [ qvdEX44s ]
「悪かったね……」
「とにかく! 美味しくて、外でも食べられて、かつ、安くて、
かさばらない食事! それが今の私とLadyには必要なの」
 高々と握りこぶしを振り上げると、合わせて、竜も声高に鳴く。
そんな彼女らの様子に、ラズィは小さく、本当に小さくため息をついた。
 いったい、この少女は、とっても頭がいいのか、それよりもただの考えなし
なんだろうか、どちらなのだろう……。哀しいかな、疑惑に答えはなかった。
「で、私は考えたの。どうせなら自分で作れるようになれば一番じゃない。
材料さえあれば、いつでも美味しい食事のできあがりよ。
しかも、手作りだから、作りたてで食べれるわ!」
「お腹壊さないように、祈っておくよ」
「……ケンカ売ってる?」
「とんでもない」
「なら、勘弁してあげる」
 ごまかすようにするラズィを、あきれたように見つめる。
その視線を受けながら、立ち上がるラズィのズボンの埃をはらい、
カーナは一言だけ、進言した。
「ラズィ。あなた、頭を使うことを覚えるのと同時に、
【口は災いの元】っていうのを理解したほうがいいわ」
 両手剣と荷物を背負いながら、ラズィは心の中でのみ、呟いた。
 ――カーナにだけは、言われたくない――と。

                     <続く>

56 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡6話 投稿日: 2003/11/22(土) 02:00 [ qvdEX44s ]
ぎゃぁぁぁぁ! 改行みすったぁ!!Σ( ̄ロ ̄lll)
す、すいません、すいません。久しぶりにアップするので、ぜんぜん忘れてました;;
読みにくいかと思いますが、貼りなおすのもなんなんで、このままです……。
お手数をおかけいたしますが、このままでお願いいたします<m(__)m>

>1
スレたて乙です。

これからもこのマターリとした雰囲気にまどろんでいたいと思います。
これからもよろしくです。 /bow

57 名前: 1/4 投稿日: 2003/11/22(土) 10:30 [ nLyR6DZQ ]
[ マリーにおまかせ! 可愛い双子 解決編 ]

吾輩はミスラの少女である。
名前はマリー・ハドソン。
職業は・・・。

「カツレツの二度揚げ!これが吾輩の工夫なのだよ!」

今は日之出食堂で天才少女料理人などをしておるが、
これは世を忍ぶ仮の姿なのである。
その正体は・・・。

「所長、探しましたよ!なに遊んでるんですか?
もう大変なんですよ、所長?!」
「うるさいな、ワトソン君。
まだまだ、百舌などには負けないのだよ。」

そうなのである。
吾輩は薔薇十字探偵所の所長なのである。
そして、この者は吾輩の助手でワトソン。

「そんな事より、所長!例の双子の見分け方、
そろそろ教えて下さいよ。」
「しょうがないな、ワトソン君は・・・。
まあ、見分け方は色々とあるのだよ。」

ここで紹介するのは、その一例である。

双子のどちらかに次のような質問をすれば、
双子を見分ける事が出来るのである。

58 名前: 2/4 投稿日: 2003/11/22(土) 10:30 [ nLyR6DZQ ]
「もし僕が『君はまいなちゃん?』と質問したら、
君は『はい』と答えますか?」

1.もし質問をした相手がゆうなちゃんで、本当の事を証言する場合。
ゆうなちゃんは、まいなちゃんではないので、
『君はまいなちゃん?』の問いに『いいえ』と答える。
そして『はい』と答えないので、最終的な答えは『いいえ』となる。

2.もし質問をした相手がゆうなちゃんで、嘘の事を証言する場合。
ゆうなちゃんは、まいなちゃんではないので、
『君はまいなちゃん?』の問いに『はい』と答える。
そして『はい』と答えるので、最終的な答えは『いいえ』となる。

3.もし質問をした相手がまいなちゃんで、本当の事を証言する場合。
まいなちゃんは、まいなちゃんなので、
『君はまいなちゃん?』の問いに『はい』と答える。
そして『はい』と答えるので、最終的な答えは『はい』となる。

4.もし質問をした相手がまいなちゃんで、嘘の事を証言する場合。
まいなちゃんは、まいなちゃんなので、
『君はまいなちゃん?』の問いに『いいえ』と答える。
そして『はい』と答えないので、最終的な答えは『はい』となる。

つまり相手の証言の真偽に関係なく、この質問に対して、
ゆうなちゃんは、常に『いいえ』と答えて、
まいなちゃんは、常に『はい』と答えるのである。

以上である。

59 名前: 3/4 投稿日: 2003/11/22(土) 10:31 [ nLyR6DZQ ]
「なるほど。そうか、そうですよ、所長!」
「うむ。これは否定に否定を重ねると、
真になる事を利用した質問なのだよ。
他にも『ゆうなちゃんのおしりにホクロがある側の手で、
ゆうなちゃんを指差してみて。』と質問し、
指差した側の手で証言の真偽を判定、
指差した相手を判断するという方法もあるのだよ。」

「えっと、その場合はアレがこうなって・・・。う〜ん。」
「むははは。ワトソン君、じっくりと考えてみたまえ。」

「あれ?所長。」
「む?何かね?」

「所長、今、鍋に何か入れました?」
「うむ。隠し味なのだよ。」

「隠し味ってソレ、味の素じゃないですか!
ダシはちゃんと昆布で取って下さいよ!」
「うるさいな、ワトソン君は。
成分は同じグルタミン酸なのだよ。」

「いや、だから、そういう問題ではなく、昆布には・・・。」
「ワトソン君、君がいまさら昆布にこだわっても、
もう手遅れだと思うのだよ。」

「むか!それって、どういう意味ですか!」
「さて?くくく。」

60 名前: 4/4 投稿日: 2003/11/22(土) 10:32 [ nLyR6DZQ ]
「所長こそ、そうやって手を抜いてばかりだから、
栄養もどこかに抜けてしまうんですよ!」
「む〜!なんだと!」

「ちび!」
「ハゲ!」

この世に争いある限り、吾輩の仕事は無くならないのだ。
だがしかし、どんな謎も事件も吾輩が、見事解決してみせよう。

マリーにおまかせ!

61 名前: 0/0 投稿日: 2003/11/22(土) 10:32 [ nLyR6DZQ ]
>43 Bravo !!

62 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2003/11/22(土) 19:05 [ AwY5mKHY ]
こんにちは。
久々に他の作者さまの作品を読み直して、ものすごいリスペクトを受けたせいかなんだか書きまくれてしまいました。連投でございます。もしよければ、またご覧ください。感想なんかも聞かせてもらえると嬉しいですよね。もちろん、スレが汚れない程度に、ですが。


ではどうぞ。
ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9

63 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2003/11/22(土) 19:06 [ AwY5mKHY ]
>>28
貴方のような方のことを、私達の言葉で「ナイスジェントル」と呼びます。
ナイスジェントル!

64 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/22(土) 19:32 [ Dsb74UlA ]
>>62
ジェントルメン?Σ(゚Д゚)

65 名前: 43 投稿日: 2003/11/22(土) 21:14 [ NAp7o88k ]
ブラボーと貰いましたが、どうも少しズレてたようで・・・・
修行が足りませんな・・・・・・(´・ω・`)

66 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/22(土) 23:00 [ uXvl43HU ]
>>62 セイブ・ザ・アワー・ワールド
あの自分のことを「愛らしい」とか言い放つタルのジョブはいったい……
魔法使えるっぽいけど…しのび?むー?

続き続きー!

67 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/23(日) 09:17 [ o6Yci4Ew ]
>>31-38 雪の彼方  一章

68 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/23(日) 09:19 [ o6Yci4Ew ]
雪の彼方 <雪の彼方  二章>

サンドリアにつくとそのままオフィサー家にロストは向かった。
石畳の道の上、
大きな屋敷の門の前にリノナノは途方にくれたようにたたずんでいた。
「リノナノ。ったく、足短いくせに速いってのはどういうこった」
ロストは冗談めかして言った。
「リノナノ?」
リュートが心配そうに座りリノナノに視線を合わせた。
「屈みこむなって」
リノナノはリュートをぐいと押しのけた。
おそらく、入れてもらえるどころか話すら聞いてはもらえなかったのだろう。
「ね。リノナノ。うちにこない?」
アンジュは明るく言った。
「アンジュ」
リュートの心配そうな顔を振り払うようにアンジュは天使の微笑みを見せる。
「うちの実家近いのよ。
もしかしたらそのオフィサー家とやらと、ツテがあるかもしれないし。
こんな所に立っていても何にもならないわ」

69 名前: 2 投稿日: 2003/11/23(日) 09:21 [ o6Yci4Ew ]
「だな。姫、リノナノを頼む。俺もちっと心当たりがあるし」
その言葉にリノナノは顔をあげロストを見た。
「ロスト?」
探るようなリノナノの目に、ロストはヘラッと笑った。
「どうしたどうした?ん?おチビちゃんがそんな顔して」
リノナノの頬をむぎゅっと引っ張って笑う。
「お前がそこまでする必要は、ねぇからな」
「了解了解〜」
「ロスト」
「だーいじょうぶだよ。俺もちっと心当たりがあるから探りいれてくるだけだって。
オフィサー家で変わった事がねぇか調べてくりゃいいんだろう?」
「………」
リノナノの複雑な表情でロストを見あげた。
「任せておけって。この国なら俺の守備範囲だしィ。それにお前が言ったんだ。
俺はロストだろ?」
確認をするロストに、リノナノは力強く頷く。
ロストは笑ってリノナノの胸を拳で軽くトンッと叩いた。
「ロストの居場所はここにある。だーかーら、なにがあっても大丈夫だよ」
そういってロストは顔をあげた。
「姫、リュート、リノナノ頼むな?姫の家どこだって?」
ロストは白姫アンジュの家を確認し身軽に歩き出す。
「ロスト!!」
リノナノの言葉。
捨てたはずの国でロストはツテをたどる。
その気持ちにありがとうといえばいいのか、すまないといえばいいのか。
わからないリノナノに、ロストは身軽に手を振った。
「ちっと、いってくらぁ」
暗黒騎士ロストのぬけるような笑みに、リノナノは唇を噛んで頷いた。

70 名前: 3 投稿日: 2003/11/23(日) 09:24 [ o6Yci4Ew ]


アンジュの家は豪邸と呼んではばかられない大きさだった。
「悪こともして儲けてるんだけどね」
アンジュは複雑そうに言って、リュートとリノナノを導いた。
扉を開くと召使いが驚愕の表情をした。
「お嬢様っ。今まで一体どこに」
「お帰りなさいませ」
頭を下げる召使い達にアンジュは微笑んだ。
「大切な仲間と一緒なの。彼らの部屋を用意してね。父様たちに挨拶してくるわ」
リノナノとリュートを振り返り、にっこりと微笑む。
優雅な動作、優美な微笑み。伊達に姫と呼ばれていたわけではなかった。


リュートは通された居間の家具を見て深いため息をついた。
「なんていうか…いくらの調度品なのか想像もつかないわね」
マホガニー材の深い色合いの机にリュートは吐息をついて振り返った。
「リノナノ…お茶でものんだら?」
召使いに差し出されたサンドリアティを見てリュートは言うが、
リノナノは心ここにあらずといった様子だった。
リュートは心配そうなまなざしでリノナノを見ていた。
数刻後、白いドレスのアンジュがカチャリと扉を開いた。
「お待たせ。二人とも」
「アンジュ……」
「ああ。服については言わないでね。親の趣味なのよ。
動きやすい冒険者の服の方が数千倍ましだとはおもうんだけど」
そういってアンジュはあざやかな金髪をかきあげた。

71 名前: 4 投稿日: 2003/11/23(日) 09:26 [ o6Yci4Ew ]
「早速だけど、リノナノ」
アンジュの言葉にリノナノは顔をあげた。
「期待に応えられるわけじゃないから、そんな眼をされちゃっても困るんだけど。
明後日、プラズマ家でパーティーが開かれるわ。
どうやらオフィサー家の若い当主がそのパーティーにくるみたい。
リノナノがそこに行くわけにはいかないけど…私とリュートなら潜入は可能だから
ちょっと行ってくるわ」
リノナノは頷いた。
ツテなど何もない国でアンジュの言葉は唯一の糸に思えた。
「というわけで、リュート」
ふいに振られた話にリュートは驚く。
「え?私…?」
「着飾るわよ」
「ちょっと、アンジュ!!冗談でしょう?!」
リュートは身を引く。
「冗談じゃないわ。エルヴァーンの男は同属の女に弱いのよ。
ヒュムじゃもしかしたら相手にしてもらえないかもしれないわ。
だから、これはリュートの役目でもあるの」
リノナノの深い蒼い瞳で見あげられ、リュートは吐息をついた。
いとおしい人のこんなまなざしに、たえられる女なんかいるわけもない。
「リュートは銀髪だから…ドレスはシックな白と青が似合いそうね。
胸は開けたデザインの方が可愛いと思うし、
腰は細いからゆるやかに絞った方がいいわ。
宝石は、貴女の瞳の色と同じ青に近い紫メインで。
オーダーメイドは時間的に難しそうだから、既製品を手直ししてもらいましょう」

72 名前: 5 投稿日: 2003/11/23(日) 09:29 [ o6Yci4Ew ]
「ちょっ、ちょっと、アンジュ!!」
「胸元のネックレスはサファイア、イヤリングは瞳と同じアメジスト、
ブレスはシルバーがいいかしら」
「そんな、着飾るのは…」
アンジュはリュートの目を見て吐息をつきに首を横に振った。
「リュート。衣装やアクセサリーに手を抜いちゃ駄目よ。
私の家はバス出身の宝石商だから、アクセサリーに関して
最高級品を用意できるわ」
「……楽しんでるわね、アンジュ」
リュートの少し拗ねた口調に、アンジュは微笑んで頷く。
「当たり前でしょ。リュートは衣装が簡素すぎるのよ。
綺麗なんだから着飾ればもっともっと素敵になるわ」
アンジュの言葉にリュートは小さく吐息をついた。


アンジュとリュートはそれからパーティーの準備に余念がなかった。
リノナノはどうしていいのかわからず、
ただゆるやかにすぎてゆく時間にも耐えられず
アンジュが大聖堂から借りてきた蔵書をあさるように読んでいた。

73 名前: 6 投稿日: 2003/11/23(日) 09:32 [ o6Yci4Ew ]
そしてパーティー当日。
誰が見ても美しいと吐息を漏らすほど磨き上げられたアンジュとリュートは
プラズマ家に行った。
重厚な家具。きらびやかな衣装。
午後の日差しと穏やかな時間。
サンドリアの騎士達は優雅な茶会を楽しいでいた。
「リュート、あそこにいるの、プラズマ家の子息ね。行くわよ」
慣れたしぐさのアンジュにリュートは泣きそうになりながらついていった。
「はじめまして、本日はお招きいただき……」
アンジュの言葉が、宙に浮く。
プラズマ家の子息の横には見知った顔があった。
黒い髪黒い眼…アンコックなタラシと仲間内で言われる男。
ロストは黒騎士服を胸元まできっちり着込み、
あざやかな蒼いローブを片肩にかけていた。
白い手袋に、手にしたグラスのシードル。
ロストは優雅に微笑んだ。
「ここまで来れたか。二人とも」
そして、ウインク。
アンジュは自分の目を疑った。

74 名前: 7 投稿日: 2003/11/23(日) 09:35 [ o6Yci4Ew ]
「こんな綺麗なお嬢さんと知り合いとは、相変わらずだな。
ロシュートリア」
プラズマ家の子息の言葉にロストは笑う。
「見た目に誤魔化されない方がいいぞ。二人とも気はオークより強いからな」
その言葉に、アンジュの肘とリュートの踵が人ごみにまぎれてロストに入った。
プラズマ家の子息は笑った。
「それは、タイプだ」
そして、順番に挨拶をしアンジュとリュートの手を取り、くちづけを落とした。
「ロスト…いったい!!」
アンジュの言葉にロストはただ肩をすくめた。
「んなことより、あそこにいるのがオフィサー家の現御当主オフィサー卿だ」
ロストの視線が、一人の銀髪のエルヴァーンに注がれた。
「さて、落としに行くか。アンジュ、こっちへ。リュートはプラズマ、頼んだぞ」
「了解」
プラズマ家の子息が、リュートの前にたち微笑む。

75 名前: 8 投稿日: 2003/11/23(日) 09:37 [ o6Yci4Ew ]
「綺麗なお嬢さんにそんな顔は似合わないな。
お菓子でもいかがです?歌姫リュート」
「アンジュたちが…私も行かせてくださらないかしら?」
慣れない敬語を使い、リュートが囁く。
「大丈夫ですよ。ロシュートリアなら」
「ロシュートリア?」
「あなたたちがロストと呼んでいる男です」
「?」
「家柄なら、ロシュートリアはこの国の貴族の誰にも負けませんからね。
オフィサー卿と対等に話すことも可能な、数少ない名家の貴族です」
プラズマの言葉に、リュートはただ驚愕のまなざしで見た。
「それより、貴女…その。ロシュートリアのことをどう…?」
「え?」
「や、失礼。気にしないでください」
プラズマは言って吐息をつく。
本来なら、エルヴァーンのリュートも連れて行った方が、
オフィサー家の当主との会話は弾んだはずだ。
なのに、それをしなかったというのは…。
本気の女を、道具には使いたくなかったのだろう。
「タラシ気取ってるワリには、不器用だよな。相変わらず」
幼い騎士時代に剣と師匠をロストと供にしたプラズマは小さく呟いた。

<続く>

76 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/23(日) 09:39 [ q7AEByEo ]
ニャ━━━━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━━━━ム!!!

77 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/23(日) 09:41 [ o6Yci4Ew ]
今回の章立ては何章になるか未定です。
まったりえがかせていただきます
>>44氏がダルメルになっては困るので、今回は速めにアップ^^

書き手のみなさんが頑張っていらっしゃるので嬉しv
応援いつも感謝です。

78 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/23(日) 09:44 [ 2ElQJ2C2 ]
プラ&オフ家 キターーーーーーーーーーー
(意味不明ですみません)
雪の彼方さん、いつも楽しみに読ませていただいております。

いろいろ新キャラ出てもりあがってきましたw

79 名前: 白き探求者・作者 投稿日: 2003/11/23(日) 19:08 [ aNbqehOs ]
雪の彼方キタ━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━!!!
セイブザアワーワールドキタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━━!!!ってジェントルメン!?…会った事ある予感!
細い兄弟キターキターキター!!!!!
マリーハァハァ(*´Д`*)

書き込める!みんなも帰ってきてる!うう、続けててよかったYO-!

さて、オイラも白き〜31話UPいたしました。
http://www.miracle-key.gr.jp/white/ からどぞん。

wikiも充実してきましたし、ここも安泰なよかん(*´Д`*)

80 名前: 白き探求者・作者 投稿日: 2003/11/23(日) 19:09 [ aNbqehOs ]
h抜き忘れた Σ(゜□゜;)!

81 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/23(日) 19:19 [ 5y2GkmKI ]
イ㌔

82 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/24(月) 03:21 [ y./fXk7. ]
白き探求者
キタ━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━!!!

あった事あるってまさか同じ鯖?!Σ(゚Д゚)

83 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/24(月) 09:46 [ vUDeeHik ]
ガルカキタ━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━!!!
なんか見たことないタイプの性格で新鮮(*´Д`)

84 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2003/11/24(月) 12:34 [ 3VHbB..6 ]
というわけで、続きアップとかしましたよ。
無事Stage2突入でございます。
キターとか言ってもらえたことに喜びを感じつつ・・・

ではどうぞ。
ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9

85 名前: あぷるる 投稿日: 2003/11/24(月) 18:56 [ OJM3/G1k ]
元書庫番です。
あっぷ板でzipが使えない事が判明。
Wikiがあるので使う率は低いと思いますが、お知らせでした。

遅くなりましたが、Wiki管理人様 おつです。
白作者様 カキコ復活おめ〜

86 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/24(月) 22:11 [ GFcF47b2 ]
書き込みテスト

87 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/24(月) 22:13 [ GFcF47b2 ]
書き込みができるううううううううううううううううううううううううううううううううううう
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

88 名前: Kooh 投稿日: 2003/11/24(月) 22:25 [ ooJ/IFvw ]
>>85
Wiki管理人です。
いえいえ、自分もあなたの倉庫のおかげでこんな良いスレに
巡り会えた一人なのです。
お礼申し上げる機会を逸っしてました。
今ここに!万感の思いを込めて!

ありがとうです!!

89 名前: Kooh 投稿日: 2003/11/24(月) 22:34 [ ooJ/IFvw ]
前スレ、板ごと消失寸前にタイトル不明な作品がちょっとだけうぷされてますねぃ。
ちょっとマニアックでノリがいいので、とりあえず保存。

続き続き〜!

90 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/25(火) 03:50 [ DLfb7BKk ]
誰か、闇を背負う者をwikiにうpしてください…
読みたくてたまらないよ…(;´д`)

91 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/25(火) 06:47 [ MiAEnqKA ]
>>86-87
おめえええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!

92 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/25(火) 11:00 [ dva7ffRM ]
書き込みできるかテスト。

93 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/25(火) 11:13 [ dva7ffRM ]
できますた(*´д`*)

以前、美化シリーズ書いてたものです。
またちょこちょこ書いてきますので、よろしくです〜。

94 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/25(火) 12:47 [ 5MIlYnfs ]
>>93
おかえり〜
美化シリーズすごい好きなんで、また是非おながいしまつ

95 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2003/11/25(火) 18:03 [ zZ4Oi1s2 ]
8話までアップしたわけです。今回のラストのところが一番やりたいことだったり。是非ご覧ください。

>>66 もう書いちゃったので。正解は赤です。赤/モ。・・・・・垢とかいうなやい
>>いろんなかた。 事情がよくつかめてないですが復活してめでたいらしい。おめでとうございます。
>>85>>88 あなた方のおかげでいくつもの世界が救われている!すばらしい!


ではどうぞ。
ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9

96 名前: Scrapper 投稿日: 2003/11/25(火) 20:52 [ 4JfU1uA2 ]
新作アップしました.
今回はちょっとだけミッションのネタばれが含まれているので,ご注意を.
多分,次回に続く...ことになると思います.

Wikiシステムが起ったのであれば,私もそちらに移行しても良いのかな,と思っていますが.


また最近作品がどんどん復活したり増えていたりするのでうれしいですね.
もう読みまくってます.唸らされっぱなしです.
私のはヘボヘボなので,もちっと精進しなければなぁ,などと思ってます.

では皆様,頑張ってください.

http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ango/5451/

97 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/25(火) 23:51 [ nwJKHLr2 ]
フェムヨノノとリンツァイスまってましたーーーーー
ナイスガルカな予感〜。

98 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/26(水) 08:15 [ 1XXurH6I ]
>>31-38  一章
>>68-75  二章

99 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/26(水) 08:20 [ 1XXurH6I ]
雪の彼方  <雪の彼方  三章>

「おや、行方不明の坊やがやっと国に帰ってきたか」
オフィサー家の当主が破顔して手を開いた。
ロストはあからさまに嫌な顔をした。
「オフィサー卿」
ロストの言葉にオフィサー家の当主は笑う。
「若いうちの冒険はつきものだ。無事、帰ってきたならそれでいい」
「ずっとこの国にいるとは、一言もいってないのですがね」
「こちらのお嬢さんは…宝石商の」
「はじめまして。アンジュです」
アンジュの手を取りくちづけを落として、オフィサー卿は笑った。
「ロシュートリアが帰って、やっとあの家も落ち着くな」
「冗談はやめてください。家は分家についでもらうつもりです」
「何を言う…。坊やは騎士の才がある。人をひきつける魅力もある。
サンドリアの貴族社会や騎士社会は今過渡期にある。
古臭い風習は捨て新しい風を入れるべきだと私は思うよ。
それには坊やは適任だ」
ロストは苦い表情で目を伏せた。
「血筋を考えれば…俺がたつべきではないでしょう。
今回帰ったのはあくまで一時的のつもりです」
「おば様は坊やの帰還にとても喜んだんじゃないのか?」
その言葉にロストは歯を食いしばった。
「ええ。母も父も喜んでくれました」
「私も喜ぼう。坊やの帰還を」
掲げたグラスを飲み干し、オフィサー卿が微笑む。
「で、何かな。あの坊やがただで戻ってくるとも思えないが」
喰えない男だった。

100 名前: 2 投稿日: 2003/11/26(水) 08:22 [ 1XXurH6I ]
「3年前、ウィンダスに手紙を出しませんでしたか?」
その言葉に、オフィサー卿はちょっとピクっとしたようだった。
「おしえてくださいません?」
アンジュの優雅な微笑に、オフィサー卿はちょっと戸惑ったようだった。
そして、溜息。
「こんな綺麗な女性にねだられたら、答えない訳にはいきませんね。
レディアンジュ」
長い腕を組んで、オフィサー卿は苦笑した。
「3年前…たしかに、手紙を出しました。バストゥークとウィンダスに。
もっとも返事はかえってはきませんでしたが…。
3国間の手紙が紛失することは良くある話です」
「行方不明者、とか?」
ロストの言葉にオフィサー卿は笑う。
「一体どこから情報が漏れたのかな」
「それは…ボスティン氷河」
言いつのるロストの言葉にオフィサー卿は頷いた。
「騎士団のフェインの軍行中にね。見つけた」
「………その人は…?」
アンジュがおそるおそる口にした。
「私が預かっているよ」

101 名前: 3 投稿日: 2003/11/26(水) 08:25 [ 1XXurH6I ]
ロストの言葉にオフィサー卿は難しそうに眉を寄せた。
「生きているとは、いえない。が、死んでいるともいえない」
「どういうことでしょう?」
「北の地で氷にやられたせいなのか、何かに襲われ頭でも打ったのか…。
発見されてから一度も目を覚ましてはいないのですよ。レディアンジュ」
その言葉に、アンジュは手で唇を押さえた。
「………誰か、知り合いでも?」
「かもしれない奴がいるんだ。タルタル族、なんだが」
「タルタルか」
吐き捨てる嫌悪感を察してロストがピクンと反応した。
「おい。俺の仲間馬鹿にしたら、ギロティン喰らわすぜ」
ロストが、ずいっとオフィサー卿に近寄ってその瞳を睨みつけた。
「坊やともあろう者が、下等種族に媚を売るのか?」
「………」
「と、言ってやりたいところだが…
国家間での問題が起こると、いろいろまずいしな。
その、タルタル族は、私の預かっている者を知っていると?」
「その可能性がある、だけだが。あわせてやってくれないか?」
ロストの真剣なまなざしに、オフィサー卿は吐息をついた。
「ロシュートリアたっての望みなら聞かぬわけにもいくまい。
私は顔を望んで合わせるほどタルタル族と友好的にはなれないが、
坊やが同席するならそのタルタル族を家に入れることを許可しよう」

102 名前: 4 投稿日: 2003/11/26(水) 08:27 [ 1XXurH6I ]
「………ありがとうよ」
ロストの不満そうな感謝の言葉に、オフィサー卿は笑った。
「感謝したまえ。そして、恩を忘れないように。
私は坊やが家を継ぐことを望んでいるし、坊やが騎士団にまた戻る事を望んでいる。
それを、覚えておくように」
オフィサー卿はそういって、他のエルヴァーンと話に行った。
ロストはメイドの運ぶ高級なブブリムワインを乱暴に一気飲みした。
「ちっ。一応、交渉成功、か」
苦々しく吐き捨てた言葉に、アンジュはこわごわ呟いた。
「ほんとに…排他的なのね」
「……あれはまだ、ましなほうさ。
本当ならタルタル族なんざ、家に一歩だって入れねぇとかいう馬鹿もザラだしな。
あれでも、話がわかるほうなんだ」
ロストはローブをバサリと払うようにひろげて振り返り、
リュートとプラズマを探した。



ロストがリノナノを導く。
エルヴァーンのために作られたオフィサー家は
ドアノブ一つとってもタルタルには利用しずらい。
緋の絨毯の上を歩き、正面の細かな彫刻をほどこされた扉を開ける。
そこには、植物を育てるハウスが作られていた。
光と、あざやかな緑が眼に痛い。

103 名前: 5 投稿日: 2003/11/26(水) 08:29 [ 1XXurH6I ]
「違うかもしれねぇし、あんまり期待すんなよ」
ロストの言葉はリノナノの耳には届かなかった。
作られた温室の中央に大きな白いベッドがあった。
リノナノはゆっくりとちかずいて行く。
ベッドサイドにある椅子にリノナノは飛び乗った。
白いシーツの上に淡く長い茶の髪が柔らかく散っている。
ゆるやかな胸の双丘は確かな呼吸を伝えるように規則正しく動いていた。
整った綺麗な顔立ち。淡い桜色の口唇。
リノナノは手を伸ばし、そっとベッドの上の女性の頬に触れた。
「………ミウ……」
押し殺した、声。
喜びとも悲しみともつかない、声。
リノナノは美しい女性の顔をただ食い入るように見つめた。
気が違ってしまうと思うほど求めた相手だった。
探しつづけた女性だった。
ロストは明るい日差しの入る温室の蒼い空を見上げ、吐息をついた。
「ビンゴ…か」

104 名前: 6 投稿日: 2003/11/26(水) 08:31 [ 1XXurH6I ]
「ミウ…ミウ……―」
あまやかに語りかけるリノナノを、ロストは痛いまなざしで見つめていた。
「リノナノ」
ロストがリノナノの肩をそっと抱く。
「……傷跡もない。凍傷のあとも…綺麗な身体のままだ」
リノナノの呟きにロストは大きな声で言った。
「リノナノ」
その言葉すら無視するリノナノに、ロストはリノナノの頬を軽く叩いた。
リノナノは、やっと視線をロストに向けた。
「3年…目覚めてないんだ。リノナノ…」
「………」
「オフィサー卿が行方不明者にこれだけの環境を与えてるんだ。
おそらく、可能な治療は全てしているはずだ。
なのに、目覚めていないんだ。
この意味が、わかるだろ?リノナノ」
呼吸していても、目も開かない、眠っている状態では…。
リノナノはゆっくりと首を振った。
そして、眼を閉じる。
レイズⅡの詠唱、ケアルの詠唱、カーズナの詠唱、
ウィルナの詠唱、パラナの詠唱、ストナの詠唱、
リノナノは知りうる限りの状態異常回復魔法を唱えた。
気力が尽きるまで、何度も。

105 名前: 7 投稿日: 2003/11/26(水) 08:35 [ 1XXurH6I ]
それでも、ミウの長い睫はピクリとも動かなかった。
「……―ミウ?」
リノナノは不思議そうにミウに語りかける。
「無駄なんだ」
ロストの呟きにリノナノは信じられないというように首を横に振った。
「起きろよ、ミウ。迎えに来たんだ。目を覚ませよ…バストゥークに帰らないと…」
リノナノがミウの手を取る。
そして自分の頬に当てる。
「リノナノ…」
「もう、眠っていなくてもいいんだ。
俺の白魔法じゃ、ミウを起こす事は出来ないのか?
ミウ…、ミウ…―起きろよ、ミウ…ミウ!」
リノナノの頬にこぼれた涙が、ミウの細い指に滑り落ちる。
暖かいけれど…、ピクリとも動かないミウの指にリノナノは眼をふせた。
「この家の当主は、出来うる限りの治療はしている。リノナノ…」
繰り返すロストの言葉。
涙を瞳にため見あげるリノナノに、ロストは目を伏せた。
こんな眼で見られたら…どんな人間でも耐えられないだろう。
それほど悲しげな…濡れた瞳だった。
ロストは吐息をついた。
リノナノが悲しむ事はわかっていた。
わかっていて…引き合わせなくてはならなかった。
「リノナノ。姫ン家で少し落ち着いた方がいい。な?」
ロストらしからぬ、慰める声にリノナノは困ったような表情でミウを見下ろした。
「あんまり長時間いていいって許可ももらってねぇし
…リュートたちも心配している」
ロストの言葉にリノナノはやっとこくりと頷いた。

106 名前: 8 投稿日: 2003/11/26(水) 08:37 [ 1XXurH6I ]
もう一度、白く透きとおるような肌のミウを見下ろす。
「行こう」
ロストの言葉に、リノナノは自分の耳の片ピアス…
双子石のピアスを外しミウの耳につけた。
離れても、引き合う石が再会を約束する伝説の双子石。
「また、来るよ。ミウ」
リノナノは大切そうにミウの頬に触れ、ぐいっと涙を拭きロストを見あげた。
「ロストにも…したくない事までさせて…おかげでミウに逢えた。
ありがとう、な」
リノナノの言葉にロストは首を横に振った。
「いんだよ。別に…んなことぐらい」
数年ぶりに帰ったロストの実家は、暖かかった。
母親はやつれ、父親は一人篭っていたと召使いが言っていた。
ロストの帰還に母親は泣いてすがり、父親は何が不満だと問うた。
冒険者になり暗黒騎士になったというと、両親は驚愕をした。
たった一人の息子として…ロシュートリアとして、
ひたすらに愛されていたのは今も昔も変わらなかった。
「黙って出て行くな。どれだけ捜したと思っている」
父親の静かな怒りの言葉にロストはただ、頷いた。
「怒らないで。やっとロシュートリアが帰ってきてくれたのだから」
とりなす母親。
突然帰った息子の我侭な望みに訳も聞かず様々に手を打ってくれた両親。
やさしい、人たちなのだ。愛されていたのだ。
たとえ、ロストと認められる事はなくても…
この家にいる間はロシュートリアとして生きてみてもいいとおもえた。
両親との再会は、ロストにとって意味のあることだった。

107 名前: 9 投稿日: 2003/11/26(水) 08:39 [ 1XXurH6I ]
それよりも…リノナノの方が心配だった。
いままでの行方不明と意識不明…
どちらが幸せだったかと問われれば、ロストはこたえられない。
本当は死んだと思っていた方が未来に顔を向けることができて
リノナノにとって幸せだったのかもしれないとすら思う。
「帰ろう」
ロストがリノナノの小さな背中を、おす。
どうして…
リノナノの小さな身体にこんなに悲しみが詰め込まれなくてならないのか
ロストは慈悲の女神アルテナに問いただしたいと思った。


ロストが噛んで含むようにリノナノを説得した。
リノナノにできることは、何一つない。
十分な治療が施されてあの状態である、と。
それは残酷な言葉だった。
眠り姫を起こす手段もなく…約束された希望もなく
不安定な生と死の狭間でミウをただ見守っていろというのは…
見守る側には酷な宣告だ。
それでも、それしか術がないのだというしかなかった。
リノナノはロストの言葉を聞いていた。
その瞳に、光が宿っているのをロストは不思議な面持ちでみていた。
この状況にあってなおリノナノは絶望しているようには思えなかった。

<続く>

108 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/26(水) 08:46 [ 1XXurH6I ]
過去のキャラをこの章でほぼ全員出したいなぁと思っています。
どこまで、書くか。
そして、どこまで想像にまかせて書かないか。
そのバランスが難しいです。

書き手さんの復活宣言喜んでみています。
応援、感謝です^^

109 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/26(水) 09:17 [ Mahgpy1w ]
キタ−−−−−−−−(・∀・)−−−−−−−−−−−!!!!!!!!

相変わらず・・・イイ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

110 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/26(水) 12:47 [ g88e1uC6 ]
>>90
作者です。ちょこちょこっと改訂して近日中に上げておきます。
覚えててくれてありがとう。

111 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/26(水) 16:41 [ mwW1FTjQ ]
すみません;;またしてしまいました。
2と3の間にロストの台詞が抜けています。
ごめんなさい。本当はこうなる予定でした。

「………その人は…?」
アンジュがおそるおそる口にした。
「私が預かっているよ」
「てことは…生きてるのか?!」
ロストの言葉にオフィサー卿は難しそうに眉を寄せた。
「生きているとは、いえない。が、死んでいるともいえない」

112 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/26(水) 17:46 [ /SBbqHAw ]
雪の彼方
キタ━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━!!!

リノナノ一筋でしたが、ここにきてロストの株が急上昇↑

113 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/26(水) 19:07 [ 3oCGu/dk ]
リノナノ、いよいよ大団円なのかー
結末は思う存分、悩んでください^^いい子にして待ってます
こんなにいい物語なんだから悩んじゃうのは当然ですよね

114 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/26(水) 22:46 [ Aplg3ZPE ]
切ね〜〜〜!!!リノナノ(・∀・)イイ!

ところでモマエら、空に奏でる君の歌が、ここ最近激しい勢いで更新されてまつよ
ttp://www.geocities.co.jp/Milkyway-Sirius/3161/

まとめてキキキキキキ━━━━━━━(゚゚゚゚゚∀゚゚゚゚゚)━━━━━━━タタタタタタ!!!

115 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/27(木) 02:17 [ /PGZ5vIM ]
唐突に騎士手紙期待sage

116 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/27(木) 08:50 [ 1DY0Gh8. ]
案の定前板唐突に消えたな・・・

117 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/27(木) 11:02 [ gELtSpCU ]
9日前から警告があったのに唐突ってのはどうかと

118 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/27(木) 17:13 [ nm/pxXr6 ]
空に奏でる〜の続きが激しく気になる...

119 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/28(金) 10:41 [ YOrtwoHU ]
赤レイズにデルクフって事はもう40近いのか…

120 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/28(金) 10:42 [ 4egmznEQ ]
続きは気になるのだが、個人的事情でまだ読めない。(当方ランク3)
なんか、一緒にランク上げてる感じで、ものすごい楽しい。
週末にランク4になって一気読みしてやるぜええええ!

121 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/28(金) 11:20 [ qDjzD7JU ]
タル戦まだか・・・orz

122 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/28(金) 13:18 [ .0lE9ZlI ]
>>120
特別に楽しんでるみたいで、すごく羨ましい。
ランク上げ頑張れ。

123 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/28(金) 14:06 [ /n3D1A9A ]
>>120
目を覚ませ
いつまでFFやってんだyo!!!  ( ´,_ゝ`)プッ

124 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/28(金) 16:49 [ x3J/QS.Y ]
ついにまた〜り板消えたぞみんなヽ(;´д`)ノ
こっちに誘導してくれた人たちに感謝(゚∀゚)
それにしてもマジぎりぎりだな(;´Д⊂)

125 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/28(金) 20:01 [ u8oDyJeo ]
http://www3.tokai.or.jp/nob.bitaosi/R3_temp.swf?inputStr=%8D%D7%82%A2%8CZ%92%ED%82%AA%8BC%82%C9%82%C8%82%C1%82%C4%96%B0%82%EA%82%C8%82%A2%82%E6%83%7D%83%7D%83%93%28%81L%81E%83%D6%81E%81M%29+

126 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/28(金) 23:58 [ V6Zr1lmw ]
かなり久しぶりに覘いてみたんですが、面白そうな話がいっぱーい(゚∀゚)
細い兄弟(?)復活したんですか??
タル戦も兄(白)と病気の妹(黒)と一緒に旅をし始めるトコぐらいまでで(;´Д⊂)

いろいろ読んでみたいのですが、宜しければオススメの話を教えてください。。
出来れば、それをまとめているページとかも教えてくれると嬉しいです!!





過去ログ嫁!?うはwwwwwwおkwwwwwwwwww!!!11

127 名前: ガルカの昔話 14話1/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:38 [ CYUkzMz2 ]
突然だが自己紹介だぜ。
俺様はジーク・レオンハルト。
バストゥーク正規軍にこの人ありといわれた金髪剣鬼「蒼の閃光」といえば、商業区ではみな遠慮がちに微笑んでくれる。
超美形!
もちろん産まれも高貴なものだ。
彫金ギルドの元締め、鉱山運営のレオンハルト商会といえば知らぬものはいないだろう?

そう、俺様はそのレオンハルト商会会長の息子ってわけ。8番目の、だけどな。
この国はギルを持ってるやつが偉いんだよ。俺様みたいな勝ち組は汗もほとんどかく必要ない。
いま百人隊長なんて地位についてるのも、社会勉強の一環みたいなもんだぜ。
前線に出ることも無い。
このあと千人隊長として予定調和的に昇級して、その後は軍部の幹部候補になるはずさ。
いわゆるエリートってやつ?
努力とかしてるヤツとか見ると、マジ笑いとまんねぇ。
ごくろーさんってかんじw

128 名前: ガルカの昔話 14話2/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:38 [ CYUkzMz2 ]
今日みたく鉱山区にパトロールしに行った連中が、ガルカたちとの押し問答で帰りが遅いなんて日は、
ガルカどもをいびる良い口実になるのよ。
10人ほどの部下を連れて権威と白刃ちらつかせれば、あの堅物どもは妙に悟った顔つきでスゴスゴ引き下がりやがる。
汚らしい煤にまみれた獣人もどきが!!
俺様はやつらと同じ空気吸ってるかと思うだけで、ちょートサカにくるわけ。

「ジークさま、見えましたw鉱山区ですw」
「おkw」
などと軽く応答したあと、俺様は天性の勘でなにやらいつもと違う雰囲気であることに気付いたね。
普段なら入り口あたりに一人くらいはヒュームがいて、状況報告の一つも上げることになってるからさ。
で、足を止めたw
取り巻きは気にも留めずズンズン鉱山区に入ってくし。血の気の多いヤツら連れてきたからな〜w
まあ、いいか。どうってことないだろ。
それはさておき今日はどうやって、ガルカどもをいたぶってやろうかなw
なんてことを考えると、み・な・ぎっ・て・きたぜー!

129 名前: ガルカの昔話 14話3/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:39 [ CYUkzMz2 ]
ヒュームの一団が鉱山区と商業区の境、アーチ状の門をくぐったそのとき
ガルカたちの手によって門の上から煮えたぎった油がかけられた。
聞くに堪えぬ絶叫が上がる。
リーダー格らしい金髪の男以外のヒュームはみな一様に蒸気をあげのたうつ。
「おまえら、待て!落ち着け!!」
リーダーの悲鳴にも似た警告。
しかし苦悶に身をよじる彼らの耳に届くことは無かった。
混乱の中、彼らのうち一人がマスケット銃の引き金を引く。
鈍い爆発音。
油が勢いよく燃えはじめ、ヒュームたちの身体をより苛烈にさいなんだ。
成す術もなくただ呆然とその様子を見守る他ないジーク。

炎のむこう。
憤怒にかられたガルカたちが、勝利の雄たけびを上げていた。

130 名前: ガルカの昔話 14話3/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:39 [ CYUkzMz2 ]
ヒュームの一団が鉱山区と商業区の境、アーチ状の門をくぐったそのとき
ガルカたちの手によって門の上から煮えたぎった油がかけられた。
聞くに堪えぬ絶叫が上がる。
リーダー格らしい金髪の男以外のヒュームはみな一様に蒸気をあげのたうつ。
「おまえら、待て!落ち着け!!」
リーダーの悲鳴にも似た警告。
しかし苦悶に身をよじる彼らの耳に届くことは無かった。
混乱の中、彼らのうち一人がマスケット銃の引き金を引く。
鈍い爆発音。
油が勢いよく燃えはじめ、ヒュームたちの身体をより苛烈にさいなんだ。
成す術もなくただ呆然とその様子を見守る他ないジーク。

炎のむこう。
憤怒にかられたガルカたちが、勝利の雄たけびを上げていた。

131 名前: ガルカの昔話 15話1/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:40 [ CYUkzMz2 ]
細い兄弟の傷は思いのほか深かった。
ヒュームの女が白魔法の心得があるというので、兄弟のことは彼女に頼んだのだが。
「しょうがない」
女はムスッとした様子で言う。
彼女の白魔法、初歩的なものばかりでお世辞にも事足りるとは言えなかったのだ。
「私は白魔法なぞ基礎しか学んでいない。本業は銃士なのだから、必要も無いだろうと思っていた。」
そう、とやかく言うな。撃ったのは悪かったと思ってる。
ケアルの合間に女は言った。
これでも一応は反省しているのだろう。
「助けてくれたこと、感謝してる……ぞ」
目は真剣、額には玉の汗が浮いていた。

ヒーリングには10分ほどかかった。
兄弟は「もう、平気だ」と低く呟いたが、その腕、どう見ても銃弾の衝撃で折れている様子だった。
きっと、慣れぬケアルで疲弊した女に気を使ったのだろう。
私は兄弟に腕を見せるよう言い、左腕に添え木を当てて「あまり動かすな」と釘をさしておいた。

132 名前: ガルカの昔話 15話2/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:41 [ CYUkzMz2 ]
「行こう」
クゥダフの広刃の剣を拾い上げると兄弟は小さく言った。
「どこに?」
私は聞き返す。お前は仲間のところに戻るんだろう?
私らと一体どこへ行こうというのか?
「そうだな、もはや猶予はない…」
女はこのエルヴァーンの意図が汲み取れたらしい。
マスケット銃を地平線に向け倒す。
銃口に指し示された先。
岩山のむこうは、太陽のものとは違う鈍い光が稜線を際立たせていた。
バストゥーク。
ヒュームとガルカの棲む街。

133 名前: ガルカの昔話 15話3/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:42 [ CYUkzMz2 ]
「だが、迂回しなくては…真っ直ぐバストゥークに向かえばクゥダフの大群とぶつかる。」
あの数はどうしようもない。
私は頭(かぶり)を振る。
日が暮れ、今はその姿を見ることは叶わぬが、宵闇のなか獣人の獰猛な気配を確かに感じた。
「迂回していては間に合わん。あの鉱山ガルカたち、…やつらすでに外壁門に押し迫っているに違いない。」
ひとたび門を開放されクゥダフが街に流れ込めば…。
考えたくも無い。
悲劇はもうたくさんだ。
「わかった、わかった!だが兄弟は来るな。」
なぜ?といった様子で兄弟は振り向く。
「バストゥークに帰り、国の危機を知らせたとしても、今の時勢。エルヴァーンは…」
「処刑されても不思議ではないな。文句も言えまい。」
私の言葉を受ける形で女が続ける。
遠慮の無いヤツだ。
だが兄弟は、私たちの警告を聞いても、
なんだ、そんな事か、といった表情を浮かべただけ。
クゥダフの剣の握りの感触を試しながら、銀髪のエルヴァーンの青年は再び言った。

「行こう。俺たちの故郷、バストゥークに」

134 名前: ガルカの昔話 16話1/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:43 [ CYUkzMz2 ]
笑顔。
兄弟と呼び合える仲間。
煤にまみれていても、それらがエルヴァーンをもってしてバストゥークを「故郷」と呼ばせたのか。
走る、走る。
ガルカとヒュームとエルヴァーン。
荒野を飛ぶように越え、バストゥークを目指す。
途中、幾度か歩哨と思われるクゥダフと遭遇したが、手負いのエルヴァーンの相手になったものはいなかった。
そして3人が歩みを止めたとき、目の前の窪地にはひしめき合う甲羅、甲羅、甲羅。

「無理だ」
私は二人を制止した。やはり迂回しよう。小声でささやく。
クゥダフは耳が良い。
物音、話し声でこちらの存在を気取られたら、面倒という言葉では済まされない状況になる。
闇にまぎれて突っ切るのは不可能。むろん、力づくでなど論外だ。

135 名前: ガルカの昔話 16話2/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:44 [ CYUkzMz2 ]
「臆したか、ガルカ!わたしは一人でもゆくぞ。」
ヒュームの女の啖呵に兄弟も同意の様子だ。
私は肩をすくめた。
冷静で慎重な私の提案が、この無謀で大胆な女と青年のまえでは、まるで卑屈な小心者の悲鳴のような扱いだ。
「行くのはいい。だが、走り抜け、やり過ごせる数じゃあない。」
「この地形では迂回している間にバスは滅ぶ。街には私にも親がいるんだ。
血縁関係の無いガルカにはわからんだろうがな、情の機微など」
「ふざけるな!」
わかるに決まっているだろう!!
声を荒げたために、兄弟が慌てて口を押さえに来た。
我々ガルカには確かに血縁はない。だが、血よりも深い絆がある。
転生を繰り返すガルカ種だけに許された魂の絆。
「家族」を想う気持ち、ヒュームになど負ける気はしない。

「そうだな…」
珍しく細い兄弟が「ふふ」っと微笑む。
「ヒュームもガルカンソーセージを食べてみるといい」
低い呟き。
だが、だからこそ、その言葉は我らの心に響いたのか。
「あれは食べ物だが、調理するためにかかる待ち時間のほうが何よりのご馳走だ。
ガルカたちと差し向かいで、同じ焚き火を囲んで、
他愛ない会話をつまみに料理の出来上がる様を楽しむといい。
そうすれば、彼らの言う魂の絆というものが少しは理解できるだろう。」

136 名前: ガルカの昔話 16話3/3 投稿日: 2003/11/29(土) 01:44 [ CYUkzMz2 ]
これほど饒舌な彼を、私は始めて見た。
破顔し、楽しげに語る細い兄弟。
今でも忘れられない…。

「俺が引き付けよう。その間に先に進め、兄弟。
バストゥークを、…家族を守るんだ」
彼は私にそう囁くと、抜き身の剣を手に窪地に降りていった。
止める間もない。

「さあ、急ごう」
エルヴァーンの姿を見送りヒュームの女が言う。
「バカを言うな。
私は決して兄弟を見捨てては行かんぞ!!」
「それではヤツの思いを踏みにじることになる。ガルカ、分っているのか?」
「…くっ…」
私の心は揺れた。
兄弟の意に背き、兄弟を助けるため、
彼の後を追ったとしても足手まといになるだけだろう。
かといって、このまま見捨てる気は毛頭無い。
どうする?
焦燥感にかられる私。
どうする?

そのとき、ヒュームの持つマスケット銃が私の目に止まった。

137 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/11/29(土) 01:48 [ CYUkzMz2 ]
>>130連カキコしちゃった。
ごめんなさい。

14話 はじけてみました
15話 実は狩人30/白5
16話 また来週〜(´―`)ノシ

138 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/29(土) 01:56 [ UUjKZ5cI ]
みなぎーってwきwたwぜーーーーwwwwwwwwwww!!!1!11
ゴメンwww最初どっかの厨が荒らしに喜多のかと思ったwwwwwww
許して長大wwwwwwwwwwwww

139 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/29(土) 08:49 [ xWCc2yxI ]
昔話キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
勇者様ワロタ。細い兄弟かっけえ。

140 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/29(土) 10:02 [ TozAh6qA ]
昔話、宣言どおりに
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!

141 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/29(土) 11:54 [ LP4f5SdM ]
>>126
過去ログって言うか・・・>>1を読め。
倉庫にまとめてあるぞ。
@倉庫(Wiki)‥‥更新活発だけど昔の作品は収容もれあり(?)
@倉庫(新)‥‥途中から更新がとこどおり気味。でも昔の作品はばっちし収容。
とりあえず見に行ってこい!

142 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/29(土) 16:46 [ UUjKZ5cI ]
なぁ、ところでwikiの管理人の英語が激しくテキトウな気がするんだが気のせいか?
漏れは、英語いつも赤点なので断言はできないんだが・・・・(´・ω・`)

143 名前: 126 投稿日: 2003/11/29(土) 16:55 [ kFKyAu/M ]
>>141
ありがとぉー(*^з^)ノシ チュ!!

144 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/29(土) 20:37 [ MDkQtAgU ]
>>142
今、ザッと眺めてみたけど、激しくって程でもないような。
「charenge」は「challenge」の間違いだとは思うけど。

あと気付いたけど、作者様サイトの一つは「Take a story」じゃなくて「Talk a story」ですね。
って、ここで報告してもいいのだろうか……

145 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/29(土) 21:16 [ xip6ARDQ ]
>バストゥーク正規軍にこの人ありといわれた金髪剣鬼「蒼の閃光」といえば、商業区ではみな遠慮がちに微笑んでくれる。


ジーク:いまここにwww最凶の俺様後輪wwwwwまたの名は「蒼の閃光」でよろwwwwwwwww
PTメン1:^^;
PTメン2:^^;
PTメン3:^^;
PTメン4:^^;
PTメン5:^^;

こんな感じか。

146 名前: Kooh 投稿日: 2003/11/30(日) 02:18 [ uSXYgsdU ]
>>142,144
……ぐはっ、恥ずかしい限りです。直しておきました。ありがとー!

他にも間違いなどあったら、Wikiの掲示板でもここでもいいので
教えてください。当方、技術屋でして、あぁいうのを設置したり
工夫してみたりってのは大好きなんですが、それ以外がとんと無頓着で…。

147 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2003/11/30(日) 08:07 [ kluzM5go ]
「名無しの話」外伝の4 −手紙−

お元気ですか。
風邪をひいたりしていませんか。
怪我などしていませんか。
こちらは父さんも母さんも元気にしています。
もうすぐお誕生日ですね。
少し早いけど、十七才の誕生日おめでとう。
お祝いのクッキーを焼いたので送ります。
たくさん焼いたので隊のみなさんと一緒に食べてください。
服も幾つか送ります。
前に戻った時からもう一年になりますね。
今の寸法が判らないので少し大きめのものを買いました。
もし合わなかったらごめんなさい。
先日、村にも駐在の兵隊さんが来てくれました。
これで安心して畑に出られるとみんな喜んでいます。
あなたもこんなふうによその村や町を守っているのでしょうね。
みんなの為に戦うあなたを母さんは誇らしく思います。
がんばって下さい。
でも身体にも気をつけて下さい。
病気をしないようにして下さい。
怪我をしないようにして下さい。
父さんも口には出さないけれど心配しています。
忙しいのでしょうが、もう少し手紙を下さい。
   母より。

追伸
次はいつ帰れますか。

148 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2003/11/30(日) 08:09 [ kluzM5go ]
前略、返事が遅くなってごめん。
こちらに届くのが少し遅れました。
一度軍を通るので、遅れる事もあるみたいです。
でも、クッキーも服もちゃんと届きました。
ありがとう。
誕生日は過ぎてしまったけど、久しぶりのお母さんのクッキー、
とてもおいしかったです。
小隊のみんなに分けたら、あっという間に無くなってしまいました。
みんなおいしいと言ってくれました。
小隊長にも食べてもらいました。
お前のお母さんは菓子を焼くのが上手だと誉めてくれました。
とてもうれしいです。
服は合いました。
でも、服はお仕着せで足りてます。
送ってくれなくてもいいので、その分で、何か自分の物を買って下さい。
今、僕の部隊は北の町にいます。
町の人達はみんな優しくていいところです。
僕はがんばってこの町を守ります。
お父さんお母さんがいる町だと思って守ります。
実は、来週に休みがもらえます。
何日かまとまってもらえるので、家に帰れます。
こちらの珍しい物をお土産に持って帰ります。
きちんと日が決まったら知らせます。
あと、僕は元気です。
病気も怪我もしてません。
お父さんにも心配しないでと伝えて下さい。
   お母さんへ

149 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2003/11/30(日) 08:12 [ kluzM5go ]
面当てを下ろせば、景色は鋼の格子越しになる。
幾度もの訓練で見慣れたそれ。
けれど今。
格子の向こうには敵がいる。
血と肉と命を奪おうと、血剣を振るう敵がいる。
「ワ゛ー!」
叫ぶ。
ひたすら叫んで剣を振る。
まわりを見る余裕なんかない。
隊列がどうなったかなんて判らない。
部隊がどう動いてるかなんて考えてる暇がない。
ただ目の前の敵に斬りつける。

重い。
剣が重い。盾が重い。鎧が重い。
使い慣れたはずのそれが、濡れた革帯のように全身に絡む。
夢中で剣を振るうち、鈍い感触。
ガックリと敵が跪く。
やった!
そう思った瞬間、脇腹に重い衝撃。
息が詰まる。
身体が、弾かれる。
流れる視界の隅に、斧を振り抜く別な敵。
倒れ込む。

お腹が痛い。
イヤだ。
苦しい。
イヤだ!
怖い。
イヤだ!
必死に起き上がる。
手をつき、膝をつき身体を起こす。
けれど、もう一度。
鋼の擦れ合う音と共に、背中から何かが潜り込み、抜ける。

腹の痛みが、消える。
ガクンと身体が力を失う。
倒れ込む。
目の前には地面。
面当てに入り込む土の匂い。
手も、足も、動かない。
感じる。
流れ出してる。
大切なものが、身体の中から流れ出してる
消えていく。
大切なものが、体の中から消えていく。

周囲にあふれる戦いの喧噪が、静かになっていく。
なんだか、一人きりになったよう。
気が付けば闇。
何も見えない。
何も聞こえない。
そして、その闇さえも、消えて、いく。

手紙…届いたかな…
また…おくれてるかな…
おとうさん…
おかあさん…
ごめんなさい…
ぼく…かえれなく…なりまし…た……

150 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2003/11/30(日) 08:15 [ kluzM5go ]
お手紙ありがとう。
元気そうで何よりです。
来週には帰れるのですね。
父さんに話したらとても喜んでました。
納戸から釣り竿を持ち出して手入れをしています。
川の様子も見に行ってます。
いろいろと話したいことがあるみたいです。
帰ったら一緒に釣りに行ってあげて下さい。
母さんもあなたの好きなものを沢山作ってあげようと思います。
日が決まったら早めに連絡を下さい。
楽しみに待ってます。
   母より。

「名無しの話」外伝の4 −おわり−

151 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/30(日) 08:19 [ 7tdc7Tkw ]
えーっとえーっと・・・
リアルタイムでみてたんだけど・・・まさかここでおわじ???
なんでなんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ??????!!!!!!!
日曜の朝から悲しくなってきたよ(´・ω・`)
でも作者さん・・・gj・・・・

152 名前: 名無しの話の作者の蛇足 投稿日: 2003/11/30(日) 09:23 [ kluzM5go ]
ごめんなさい、ごめんなさいm(_ _)m
はい、この話は>150でおわりです
ふと、気づきました

あの戦いは大勢の命を奪い
戦地へ赴いた多くの若者が帰れなかった
そして、思いを込めた多くの手紙が、その宛を失った

私たちの分身は生きて戦ってる
けれど、ヴァナで出会う多くの人のなかには
たとえセリフになくても
クエストになくても
今も待ちつづけている人がいる
帰らない人や、届かない手紙を…

思い込み激しすぎですね…m(_ _)m

153 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/30(日) 09:29 [ /COjjOAI ]
>>31-38    一章
>>68-75    二章
>>99-107   三章

154 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/30(日) 09:32 [ /COjjOAI ]
雪の彼方  <雪の彼方 四章>

みんなでジュノに帰って。
そして、酒を酌み交わした。
いつもの詩人酒場でリュートの歌をつまみにくだらない事を語り合う。
ミュミはミルクを飲み、アンジュは相変わらずの生足で男達を魅了した。
ロストはリノナノにPTに戻って来いと説得をし、リノナノはにべもなく断る。
ガーディはそんな姿を見守りながら違和感が拭えなかった。
そしてその翌日、リノナノはジュノから姿を消した。

155 名前: 2 投稿日: 2003/11/30(日) 09:34 [ /COjjOAI ]
「あんの、ばっかやろおおおおお!!!」
ロストはリノナノのレンタルハウスで絶叫をする。
「ご主人様…モグに国に帰れってたくさんお金おいていったくぽぉ」
モグハウスのモーグリーが情けなさそうに言った。
「どこに行ったか、わかんねぇのか?!」
ロストの絶叫にみなが押し黙った。
「リノナノが考える事といえば…ミウさんのことよね」
リュートの言葉にガーディは頷く。
「あいつは昔ひとりで魔法詠唱も行なえないのに氷河にいた奴なんだ。
目を放すべきじゃ…なかったな」
「ったく、
無謀だ無茶だ散々人のこと言ってくれたが、あいつが一番無茶じゃねぇか」
ロストは吐き捨てるように言った。
「リノナノ、どこにいっちゃたのかにゃぁ。昨日はいつものリノナノだったのに」
「心に決める事でもあったんだろうさ。くそっ。あいつにはだまされてばっかりだ」
「くぽぉ〜」
みんなの言葉の中、アンジュがぼそりと呟いた。
「もしかしたら…ベドーかもしれないわ」
「なんでそう思うの?アンジュ」
リュートの言葉にアンジュは考えながら言った。
「リノナノがうちにいる間、することもなくて本読んでいたでしょう?
リノナノが読んでいたのは大聖堂の蔵書だったのよ」

156 名前: 3 投稿日: 2003/11/30(日) 09:36 [ /COjjOAI ]
「姫、要点を簡潔に頼む」
イラついたロストにアンジュは肩をすくめた。
「魔法にはまだ、様々な謎がある。新魔法も…ね」
「新魔法を求めて、ってか?」
「ええ、もしそうだとしたら、
リノナノが欲するのは白魔道師にとって伝説の高位蘇生魔法…レイズⅢ」
「そんなものが、手に入るのか?」
「そんなわけないでしょう。新魔法なのよ。
そう簡単に手に入るなら…みんなが手にしているわ」
「だよな…」
「でも、リノナノが考えるとしたら…たぶん」
「それっきゃねぇか」
ロストは自分の拳で自分の手の平をパンっと叩いた。
「ロスト」
ガーディは低い声でロストの名をよんだ。
「あん。なんだよ、おっさん」
「みんなにも、言う。リノナノを追おうなんて、思うな。
ベトーは獣人の本拠地だ」
ガーディは重々しく言った。

157 名前: 4 投稿日: 2003/11/30(日) 09:37 [ /COjjOAI ]
「おっさん!!」
「ロストが言いたい事もわかる。みんなの気持ちもわかる。
でも、冒険と無謀は違う。
勝算があるのが冒険で、愚者がすることが、無謀だ。
死にに行くのは、愚者のすることだ」
ガーディの言葉にロストはキッと睨みつけた。
「リノナノほっとけるわきゃねぇだろっ」
「命がけなのはいつもの事だし。確率はちょっとわるいけど」
「一人でも、私行くわ…」
「ミュミも、ミュミも今度は仲間はずれ嫌にゃン」
4人の言葉にガーディは吐息をつく。
「馬鹿野郎共が」
「私たちを残して行こうったって許さないわ、ガーディ。抜け駆けはなしよ」
アンジュの言葉にガーディは考え込むように顎に手を当てた。
「亀だろうがなんだろうがやってやろうじゃない」
アンジュの勇ましい台詞にロストはあいずちをうった。

158 名前: 5 投稿日: 2003/11/30(日) 09:39 [ /COjjOAI ]


リノナノは暗い洞窟のなかで吐息をついた。
周囲には、自分よりずっと強いクゥダフが徘徊している。
こんな強敵相手に…たった一人で立ち向かって何になるのかと自嘲したい気分だった。
でも―じっとしていられなかった。
ずっと捜しつづけ待ちつづけていたミウをその眼で見て…
雪の中で差し出された腕のあたたかさを思い出していた。
今度は、リノナノがミウを救うばんだ。
あの時本当は、死ぬのはリノナノだったのに…身代わりにミウを―。
ミウを助けられる可能性があるのなら…
どんなわずかな可能性でもかけたかった。
準備は入念にしてきた。
バックに詰められるだけのエクスポーションやハイエーテル、ヤクードドリンク。
取り出しやすい位置に変え、最期の食事をとる。
リノナノはちょっと俯いた。
腹の底から湧きあがる絶対的な力に対する恐怖。
自分よりはるかに強いものに対峙する恐怖感がわきあがる。

159 名前: 6 投稿日: 2003/11/30(日) 09:42 [ /COjjOAI ]
「いまさらになって…ロストのすごさがわかるな…―」
紙より薄い防御力だ、無謀アタッカーだと散々リノナノは文句を言ってきたが
ロストはいつだって、自分より強い敵に臆さず対峙し、
その鎌で背後のものを守ってきた。
死の前にあってすら、
自分を置いて逃げろと叫んだ強靭な精神力はある意味賞賛に値する。
死ぬかもしれない…そして、死ぬとわかってすら鎌を振り上げた、
あの勇気をリノナノは今、心から欲していた。
足がすくまないように。
棍をふるえるように。
一人での勝算の薄い戦いは、リノナノには恐怖だった。
それでも――。
前に進みたくて。
手前のクゥダフを、釣る。
クゥダフはリノナノに棍を振り上げた。
ガンと殴られる衝撃は、一撃で意識が飛びそうになった。
弱いと、ロストに言われた。
それはわかっている。
でも、心まで弱くはなりたくなかったから、いつだって意地を張っていた。
重い一撃を耐えならが片手棍を何とか振るう。

160 名前: 7 投稿日: 2003/11/30(日) 09:44 [ /COjjOAI ]
盾で前が見えない。
クゥダフが大きすぎて…頭に強い衝撃がガンときた。
「あぅっ!!」
洞窟の側壁に叩きつけられる。
この程度の敵で、手間取るなんて…。
悔しさに目がくらんだ。
「うらあああああああ!!暗黒ギロティンだぁ!!」
聴きなれた声に、リノナノは耳を疑う。
何故??!こんな所にロストがいるのか?
「リノナノ、かばうからなっ!!」
ガーディの大きな身体がクゥダフとリノナノの間に入った。
「なっ」
洞窟の奥に眼をやると、多くの冒険者たちが駆けつけてきていた。
アンジュの手がリノナノを引く。
「ガーディ背中借りるにゃwフイダマにゃ!!」
ミュミの声に、リュートの竪琴が響く。
「あ、操れそうなのは残しといてくれよ。操るから」
デニングが走りならがガーディの肩を軽くはたいた。
「なっ、なんだ?いったい??」
状況についていけないリノナノの瞳をアンジュが覗き込む。。
「大丈夫?リノナノ」
「いったい…なにが」
「後で説明するわね。今は戦闘がさき」
アンジュは言って、戦う者にケアルの暖かな光を投げかけた。

161 名前: 8 投稿日: 2003/11/30(日) 09:47 [ /COjjOAI ]

戦闘終了後ぞろぞろと狭い洞窟内に人があふれていた。
「なぜ?」
こんな所にこれほど大勢の冒険者が集まったのかリノナノには理解できなかった。
「ごめんなさいね。リノナノ遅くなって」
アンジュの言葉。リュートはリノナノを手当てしながら悲しそうに言った。
「ちょっとジュノをでるのに人を集めてて手間取ったから…
リノナノにこんな怪我を負わせてしまったわ」
「どういう?」
まだ理解できていないリノナノに、デニがウインクをする。
「や、ま。なんだ。スキルあげと金稼ぎ、アイテム収集。
それに、新魔法発見の可能性をガーディから聞いて物好きが集まってきたのさ」
ガーディは普段リノナノが嫌がることをしっているからリノナノの前にひざまずく事をあまりしない。
が、今回はひざまずきリノナノに視線を合わせ、
大きな手でリノナノの頬についた血をごしりとぬぐった。
ガーディは重い真摯な声で言う。
「何故、話してくれなかった。
リノナノ、困っていたんだろう。
俺はそんなに頼りないか?
俺たちが一緒に過ごした時間はなんだったんだ。
万一リノナノに一人で逝かれでもしたら、俺は自分をけして許せなかっただろう。
本当に今、情けない気持ちなんだからな」
ガルカ特有の悲しいまなざしにリノナノは歯を食いしばった。
巻き込みたく、なかった。
共に死んでくれとは、いえなかった。

162 名前: 9 投稿日: 2003/11/30(日) 09:49 [ /COjjOAI ]
「……」
「そういうこと。ったくみずくせぇよなぁ。仲間だってのに」
ロストの言葉にリノナノは顔をあげる。
仲間ではないとリノナノは彼らの前で無言で言い放ったのに…。
ロストはリノナノを見下ろし、にっと笑う。
「いんだよ。お前が俺のこと仲間だと思ってなくても。
俺がお前のことを仲間だと思ってるんだから。
それに、ま、いまじゃなくても…
いつかはお前に俺のことを仲間だと認めさせてやるさ」
リノナノは眼を閉じた。
「馬鹿。男がンな顔すんじゃねぇよ」
ロストはリノナノの頭をスパンとはたいた。
デニはリノナノの前で人差指を立てて言った。
「それにさ。もし未知の新魔法を俺たちの手で見つけることが出来たら
俺たちが伝説やバードの歌になるかもしれない。
それは、ちょっとそそらないかい?リノナノ」
リュートが竪琴を抱きしめる。
「私が、謳うわ」
デニは両手を軽く広げ、笑う。
「そうやって伝説は創られる」
リノナノは顔をあげられなかった。
顔をあげたら…涙がこぼれてしまいそうだった。

               <続く>

163 名前: 通りすがりの元艦長 投稿日: 2003/11/30(日) 09:50 [ IscD.xxk ]
>162

リアルでいただき、いつも読ませてもらってます

164 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/11/30(日) 10:09 [ /COjjOAI ]
色々と謝りたいです。
ミッション、クエではありませんが、
可・不可の判断がつかないのでこれ以上の場所限定・敵限定はいたしません。
展開が読めていた方も…お約束でごめんなさい。

152さまGJ&素敵なお話感謝です。
たくさんの応援ありがとうございます^^

165 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/30(日) 10:10 [ KcD/QrmM ]
朝からご馳走様(´人`)。

あ、空を奏でる...の方も更新されてますね。テイム君、漢だねぇ。

166 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/30(日) 11:07 [ znXMDWO6 ]
>>164
謝る必要など・・・
あなたが謝りたい気持ちでも、読者の殆どは謝る必要なんてないと思ってるから・・・
と名言を流用^^。

終わり近そうですが、がんばって。めっちゃ楽しみにしてる。

167 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/30(日) 11:08 [ znXMDWO6 ]
あ、忘れてたよ
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!

168 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/11/30(日) 14:50 [ F6XDTb6Q ]
雪の彼方キタ━━━(゚∀゚)━━━━!!
最後に近そうだけど、やっぱ(゚∀゚)イイネ!
昔話も続きまた〜りお待ちしてまつヽ(´−`)ノ

169 名前: 白き探求者・作者 投稿日: 2003/12/01(月) 00:10 [ 1iM/Fnyo ]
ガルカの昔話キタアアアアアアアアアアア!
勇者様風味のはっちゃけ具合にハゲワラしました。
続き気になりますなぁ…ジュルリ

雪の彼方キタアアアアアアアアア!!!
くぅ、もうすぐ終わってしまうのか…さみちぃわ(;Д;)

オイラも白き〜32話追加しました。
ttp://www.miracle-key.gr.jp/white/ からどぞん。

170 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/01(月) 00:54 [ 7TWishKI ]
雪の彼方キタ━━━━━━\(゚∀゚)/━━━━━━ !!!!!

あー、もう泣きそう(;´Д⊂)

白き探求者キタ━━━━━━\(゚∀゚)/━━━━━━ !!!!!

懐かしのキャラも登場で、もう泣きそうですyp!

ってか泣く(;´Д⊂)

171 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2003/12/01(月) 02:47 [ 63I2OEi. ]
第8話を手直しとかしつつ(Wikiほんと便利です)、第9話アップしました。
他の作者の方々の作品も、楽しく読ませて頂いてます。
自分の力不足を痛感しつつ・・・


ではどうぞ。
ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9

172 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/01(月) 09:30 [ ECsBB3IA ]
名無しの手紙で朝から半べそだよ(´・ω・`)

173 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/01(月) 10:18 [ /10L9JDY ]
タル戦作者様・・・いずこ _| ̄|○

174 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/01(月) 10:26 [ HVkMt5w6 ]
>>172
漏れは雪の彼方でも朝から半べそだぞ(´;ω;`)ウッ…

175 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/01(月) 11:40 [ dIAuKxIg ]
雪の彼方を1話目から読んだ。泣いた。
学校に遅れそうなのに読んでしまった。
続き楽しみにしてます。

176 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/01(月) 18:49 [ teC0KoIE ]
名無しの話キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!

消えた命があるからこそ、
生きている命がどれほど儚いもので、大切なものか。
ハッピーエンドもいいけど、こういう話も好きです。
そりゃ、できれば幸せな結末がいいけどさ…(つД`)グスン

177 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 00:26 [ frt9QNyU ]
>>29じゃないけどちょっと覗くつもりでタル戦の話読んでたら結局全部読んでしまった・・・
タル戦話は一応あれで完結なのかな?

178 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 01:19 [ AXL3TUMc ]
>>177
タル戦はまだ続いてるよー。

179 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 01:28 [ Xba3GXok ]
age

180 名前: 1/4 投稿日: 2003/12/02(火) 02:33 [ zvvJ0dlU ]
[ マリーにおまかせ! 最後の切り札 事件編 ]

僕は名も無い冒険者。

僕が冒険者になった訳、
それは世界の真理を探す訳でもなく、
それは何かを守りたい訳でもない。

僕は単純にドキドキしたかった。

僕は冒険者にソレを求めた。
でも現実は違った。
同じ事の繰り返し。
ドキドキしたのは最初だけ。
もう限界かもしれない。

僕は退屈していた。

「J9って知ってるかい?昔、太陽系で・・・。」
「はっはっ。爺さん、またいつものホラ話かい?」
「けっ。ごく。ぷはぁ。ひっく。」

ここはルイーダの酒場。
冒険者が出会いと別れを求めて集う場所。
でも僕は、ここに出会いと別れを求めていた訳ではない。
ただ僕は、ここで流れる会話を聞いていた。

「なんじゃい?なら、とっておきのホラ話をしてやるわい。」
「やれやれ。困った爺さんだぜ。」

「いいか若造?耳の穴かっぽじって良く聞きやがれ。」
「へいへい。」

「そのPTはな、危機に瀕しておった。」
「へぇー。そりゃまた、なんで?」

181 名前: 2/4 投稿日: 2003/12/02(火) 02:33 [ zvvJ0dlU ]
「度重なる獣人との戦闘でな、
前衛は体力、後衛は魔力を削られ続けたからじゃよ。」
「ふーん。とっとと逃げれば良いじゃん。」

「ところがな、そうはいかんざき。
そこは四方を海に囲まれた孤島でな、
そう簡単に逃げられる場所ではなかったんじゃ。」
「あらら。じゃあ、救援要請は?」

「もちろんムダじゃ。近くに他のPTはおらんかった。」
「絶望だね・・・。」

「ああ。PTのメンバはそう考えたじゃろう。
ただ一人を除いてな・・・。」
「へ?!」

「獣人との戦闘が続くなか、後衛の魔力が尽きたのじゃ。
このとき、前衛は死を覚悟したじゃろう。
魔力が尽き、膝を付く後衛。
そんな後衛を守るべく、前衛は獣人との戦闘を続けた。
前衛は剣(拳)に勇気を込めて戦い続けた。
だが、獣人は強かった。
獣人の狂気は暴力となって、
容赦なく前衛の体力を奪い続けたのじゃ。」
「ごく・・・。」

「そして、ついに前衛の体力、
命の炎が消されそうになったとき、
ヤツが、白魔道士が立ち上がったのじゃ。」
「うっ!まさか!」

「ヤツは、白魔道士は、迷うことなくソレを実行した。
ソレによって、前衛は体力を回復できたのじゃ。」
「女神の・・・祝福・・・。」

182 名前: 3/4 投稿日: 2003/12/02(火) 02:34 [ zvvJ0dlU ]
「そしてソレを見た獣人は、
怒りの矛先を白魔道士に向けたのじゃ。
もちろん前衛は必死で獣人の目前に立ちはだかり、
白魔道士を守ろうとした。
じゃが、もはや獣人の目には、白魔道士しか映らんかった。」
「う・・・。」

「自分めがけて獣人が迫ってくる。
じゃが、ヤツは、白魔道士は逃げなかった。
白魔道士は『みんな、最後まで、あきらめるな!』そう言うと、
棍棒を持って、獣人に殴りかかったのじゃ。
そして、その声を聞いて、PTの士気が最高潮に達した。
PTがひとつとなって、獣人と戦ったのじゃ。」
「うはw。おk!」

「じゃが、ヤツは白魔道士・・・。
獣人の攻撃は重く、白魔道士は、
体力をガンガンと削られていったのじゃ。
そして、白魔道士の体力が、命の炎が消えかかり、
ヤツは、白魔道士は・・・。」
「あ・・・。」

「わしは、もう駄目だと思ったのじゃ。
大切な仲間を失うと思ったのじゃ。
だが、ヤツは、白魔道士はそのとき、
『我が人生に一片の悔い無し!』と言って、
右手を高く上げたのじゃ。」
「?!」

「次の瞬間、わしは自分の目を疑った。
そこには、ヤツが、白魔道士が起っておった。
しかも体力、魔力が全快しておった。
そればかりか、なぜかヤツが、白魔道士が、
以前より逞しく見えたのじゃ。」
「なんだってぇ?!」

「そして、ヤツは驚くPTメンバに
『鉄の悪魔を叩いて壊す!俺がやらねば誰がやる!』
と激を飛ばすと、目前の獣人を滅多矢鱈に
棍棒で殴り倒したのじゃ。」
「まじ?!」

183 名前: 4/4 投稿日: 2003/12/02(火) 02:34 [ zvvJ0dlU ]
「ああ。そしてPTは、獣人に勝利したのじゃ。」
「う、胡散クセェ・・・。」

「はっ。ホラ話じゃからな。」
「けっ。食えねぇ爺さんだぜ。」

僕の心に疑問が残る。
ホラ話・・・?
本当にそうなのか?
確かに白魔道士が、蝶(ちょう)回復した件は納得できない。
だが、本当にホラなのか?

「世の中に不思議な事なんて、何もナイのだよ。」

いつのまにか、僕の隣でミスラの少女がミルクを飲んでいる。
そのミスラの少女が、そうつぶやいたのだ。

「?!」
「君は、先程の老人の話に疑問を感じたようだが、
あの話は真実なのだよ。」

「なんだって?なら、白魔道士はなぜ回復した?」
「白魔道士は、切り札を二枚、持っていたのだよ。
一枚は『女神の祝福』、もう一枚は・・・。」

「オマエ・・・誰だ?!」
「吾輩はマリー・ハドソン。」

184 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 02:41 [ AXL3TUMc ]
Lvアップか。

185 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 03:02 [ CMjh4ESk ]
なんかもう正解が出てる気もするがあえて書こう。
その白魔道士は北斗神拳に目覚め(ry

186 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 07:47 [ DeyOKlYg ]
蝶回復したってんだからホムn(ry

187 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 09:38 [ nWKbNapA ]
ランペール戦記使ってLvアップしただけだろ

188 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 14:35 [ 1TlLGD5o ]
マリーとワトソンが初めて出会った時のエピソードでは?
と予想してみる。

189 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 15:51 [ 1fSBsdNg ]
ランペール戦記使用、そして白魔は『ガルカ』だったのだ!!

パワ━━━━━━ヽ(`○´)/━━━━━━━!!!

190 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 17:32 [ YESSILKs ]
出張モグでジョブチェンジ×2(・ω・)(待て

191 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 19:32 [ Xba3GXok ]
ガルカは死の淵から蘇るたび強くなる。

192 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 19:58 [ mmnGRLxw ]
獣人って書いてるけど、複数かどうかわからんのな。
もし複数であれば、単にレベルアップしただけであろう。
…てか、似たような話どっかで見たぞ。

193 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/02(火) 22:42 [ 3YYQqUus ]
HPが近くにあって即復活したと思われ・・・
ちがうかな^^;

194 名前: 1/3 投稿日: 2003/12/03(水) 00:56 [ T3QWbGvs ]
[ マリーにおまかせ! 最後の切り札 解決編 ]

「オマエ・・・誰だ?!」
「吾輩はマリー・ハドソン。」

僕はルイーダの酒場で、
マリーと名乗るミスラの少女に出会った。
僕は彼女の瞳に魔力を感じた。
全てを見通す、千里眼。

「白魔道士は、切り札を二枚、持っていたのだよ。
一枚は『女神の祝福』、もう一枚は・・・。」

白魔道士の最後の切り札、
それは『ランペール戦記』である。

『ランペール戦記』を使用すると、
ランダムで経験値が得られる。

白魔道士は経験値を得てレベルアップ、
レベルアップにより体力、魔力を、
蝶(ちょう)回復させたのだ。

以上である。

195 名前: 2/3 投稿日: 2003/12/03(水) 00:57 [ T3QWbGvs ]
「そうか。そうだったのか。」
「『ランペール戦記』で得られる経験値はランダム、
だから本来、これは危険な賭けなのだよ。
だが、白魔道士の最後まであきらめないという信念が、
この勝利を呼んだのだよ。
奇跡は起こす、伝説は作るものなのだよ。
君も冒険者なら、それがわかるハズなのだよ。」

「・・・。」

そうだ!
僕に足りなかったモノ、
それは自ら何かをやろうとする意思!
他人の作った流れに乗るだけでは、
見つけられないモノ、
それが、僕の求めていたドキドキなのだ!

そして、僕が見つけたドキドキ!

196 名前: 3/3 投稿日: 2003/12/03(水) 00:57 [ T3QWbGvs ]
「君に決めた!僕の名前は・・・。」
「君の名前は、ワトソン。」

「へ?」
「吾輩は探偵なのだよ。
そして、名探偵の助手には、
ワトソンと決まっているのだよ。」

「そうか。僕の名前はワトソン!君の助手だ!」
「うむ。吾輩の事は、所長と呼びたまえ。」

「初潮?」
「違う、所長!吾輩と君で、薔薇十字探偵所の誕生なのだよ。」

「ろ、ろーぜんくろいつ?古風な・・・。まあ、いいか。」

君はマリー、僕はワトソン。
君がいれば、僕の人生は薔薇色・・・かもしれない。
とりあえず、僕が退屈することはもう無いだろう。

この世に争いある限り、僕達の仕事は無くならない。
だがしかし、どんな謎も事件も僕達が、見事解決してみせる。

マリー&ワトソンにおまかせ!

197 名前: 0/0 投稿日: 2003/12/03(水) 00:57 [ T3QWbGvs ]
>188 Congratularsi !!
>184 >187 >189 Bravo !!
>185 >186 >191 Di molto !!
>190 >192 >193 Eventuale !!

『マリーにおまかせ!』コレニテ完結デス。
ご意見、ご感想、ありがとうございます。

それでは、また。

198 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/03(水) 01:03 [ 11vUJvss ]
おつかれさま〜
次回作をたのしみにしてます

199 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/12/03(水) 09:32 [ k6xTqC/k ]
雪の彼方   <雪の彼方 五章>

当然の事ながら、キャンプは長期間続いた。
材料はガーディ達が山ほど持ち込んだので冒険者達に旨い食事をふるまう事は出来た。
夜にはリュートが歌を謳い、見張り以外のものは酒すら口にした。
戦いは苛烈を極めたが、高スキルの冒険者たちの集団だったので危機的な状況には陥らなかった。
繰り返す戦闘は、絆を深める。
冒険の情報をやり取りし、時が来たら冒険者は別れを惜しんで去り、
その代わりのように帰ったものの紹介で新しい冒険者が仲間に加わった。
ある夜。
洞窟のキャンプ地でリュートが六花の歌を、夕食後に奏でた。
「この歌は仲間を謳った歌なんだよな」
リノナノの言葉にリュートは頷く。
「ええ。冒険者、6人のパーティの人間が悲しみを核に集う歌ね」
「なんで、雪なんてとけやすいものを仲間にたとえたんだろうな…」
リノナノが焚き木の明かりをぼんやり見ながら呟いた。
その言葉にリュートは笑う。
「雪が溶けたら、何になるの?リノナノ」
「水、だろ」
「はずれよ」
「……?」
「これは長く暗い悲しみを個々に抱えながら
仲間と共に乗り越える事を約束した歌なのよ」
「?」
「ヒントはここまで」

200 名前: 2 投稿日: 2003/12/03(水) 09:36 [ k6xTqC/k ]
リュートが立ち上がった瞬間、足を洞窟に染み出した水に足を取られた。
「きゃ」
小さな悲鳴を上げるリュートをささえるものが洞窟の奥から出てきた。
「大丈夫ですか?レディ」
その声に、ロストはピクッと反応した。
「もしかして、その声は…」
「はじめまして、冒険者諸君。私はオフィサー、サンドリアの騎士として
今回のミッションに参加させていただきにきた」
背後にはロストの友人のプラズマ他数名の騎士がいた。
「それは助かるが…」
立ち上がりガーディが求める握手に、オフィサーは応えた。
「………ヲイ」
「ん?どうしたね。坊や」
「なんで、アンタがくるんだよ」
人種差別バリバリの生粋のエルヴァーン貴族が
こんな汚い所にすすんで来たことがロストには信じられなかった。
「失敬な。大事な仲間の命がかかっているから助けてくれと
泣き言を手紙で言ってきたのはどこの誰だったかな?」
高貴な整った顔でオフィサー卿はロストに視線をやる。
「だからってアンタがでてくるこたァねぇだろう?!
貴族の当主がホイホイ国空けるなっ!!」
「坊や。見くびられては困るな。
私は、国を守り王を敬愛し仲間のために戦う騎士だ。
戦いに際し常に最前線で剣をふるうのが、我が家の家訓。
他人に遅れをとるなど、それこそオフィサー家の恥だ。
それに、私は眠り姫に出来うる限りの治療を施してきた。
もし、伝説の高位魔法が手に入るのなら、手伝わぬわけにはいくまい?
彼女の治療の一環だ」
「タルタル族や、ガルカ族がいてもいいのか?」
「開かれたサンドリア国を目指す私には、
異種族の彼らを知る義務があると坊やを見ていて気づいた。
高貴な者の義務だ。
ま、坊やが泣きついてこなければ来たりはしないが。
おば様たちも心配していたぞ。
ご挨拶に伺ったらロシュートリアを頼むとすがられた」
ロストの頬がかすかに赤らむ。
「くそっ」
ロストは無条件の好意に、どう反応していいのかわからないのだろう。
その後ろから唐突に両手棍が軽く飛んだ。

201 名前: 3 投稿日: 2003/12/03(水) 09:40 [ k6xTqC/k ]
ポコ!!
へ?
とロストが振り返るとそこには小さなタルタル族が
リノナノの頭を両手棍で殴っていた。
オフィサーが紹介をする。
「かの戦闘魔道師団白魔道師団団長ゴルタタ殿だ。ベドー入り口で合流した」
ゴルタタの出現にリノナノは殴られた頭を押さえて、顔をあげた。
「団長?!」
「まったく、いったいいつまで私に面倒をかければ気がすむのだ?リノナノ。
一人で死地に赴くなど言語道断。リノナノはあの3人に何を教えた?
それをちゃんと実行せねば、教官と呼ばれる資格はないのだぞ」
「………」
アンジュはクスリと笑う。
「2人の過去の上官が出てきたってところかしら?面白くなってきたわ」
ガーディはぼそりと呟いた。
「ご愁傷様…ってところか」
過去など恥しかない。それはみな一緒だが。
ゴルタタ団長は言葉を続ける。
「生きろ。なにがあっても生きろ。生きぬけ。そう3人に語ったときいたぞ。
生きて自分の足でウィンダスに戻ってくるのが、一番大事じゃなかったのか?」
睨まれて、リノナノは俯いた。
「団長…」

202 名前: 4 投稿日: 2003/12/03(水) 09:43 [ k6xTqC/k ]
「まったくもってお前は本当に困った部下だな。
魔道の才はかの博士に勝るとも劣らぬ素質があるのに…
いつまでたっても周囲に心配をかける。
自分のいったことにきちんと責任を持ち実行しろ。
それは大事な事だぞ」
「……」
「返事はどうした?」
「はぃ…」
「聞こえないな」
「はい」
ゴルタタ団長はよろしいというように頷き、ガーディを見あげた。
「リノナノが世話になっているようですね。
みてのとおり無鉄砲で少々考えなしなところがありますが…
ひねくれていて、勉強ばかりで、頭でっかちなところもあったような気もしますし
前衛に対して多少のコンプレックスを抱き、白魔道師としての仕事をおろそかに考え
身長にたいして、タルタルの中でも特別小さいので気にしていますが、
基本的には気のいい奴です。ご迷惑おかけして、申し訳ない」
「団長…俺のこと嫌いですか?」
リノナノの呟きに、ゴルタタ団長は両手棍でもう一度リノナノの頭をぽかっと殴った。
「誰のためにわざわざここまで来たと思っている。人材は、わが国では宝だ。
どんな金や財宝にもまさる宝だ。おそれおいと失っていいわけなかろう。
ガーディ殿に連絡をいただき、やっと日にちを調節してきた元上官にその態度かね」

203 名前: 5 投稿日: 2003/12/03(水) 09:46 [ k6xTqC/k ]
リノナノはガーディに何故知らせたと不満の視線をやった。
「ガーディ…」
「いや。お前とゴルタタ団長の交流があったことは知っていたからな…。
高レベルの黒魔道師と白魔道師を紹介して欲しいと申し込んだんだが」
「それは何名かつれてきた」
団長の後ろには、あの時冒険を共にしたキィもいた。
「…団長…まさか」
ウィンダスの戦闘魔道師団が動くとなれば、
新魔法は個人でどうこうできない問題になる。
「安心したまえ。あくまで確認のためだ。
新魔法が得られたとして…誤まって冒険者が使ってしまっても、
戦闘魔道団を脱退した一人の白魔道士の冒険者を縛る法はない。
魔法を元に戻す事も、出来ない。
好意で協力は求めるかもしれないがな」
ほっと安堵のため息をつくリノナノにゴルタタ団長は笑った。
「オフィサー卿。
このリノナノは料理の腕だけは戦闘魔道師団過去のなかで
最高の腕をもっていると私がお約束できます。
旨い食事を期待していてください。
リノナノ、早速夕食を頼む。キノコのパイがいいかな」
「―了解しました。団長」
リノナノはぶつぶつ呟きながら、クリスタルを選び始めた。
帰る人がいて、来る人がいる。
キャンプをはじめて32日目に…。
クゥダフはレイズⅢをドロップした。

204 名前: 6 投稿日: 2003/12/03(水) 09:52 [ k6xTqC/k ]



レイズⅢの魔法に冒険者達は沸き立った。
そのなかで一人ゴルタタ団長だけは難しい顔をした。
「リノナノ」
ゴルタタ団長の厳しい声は沸き立った冒険者や仲間たちを押さえるには十分だった。
「はい」
「ここにいる皆さんにも聞いていただきたい」
ゴルタタ団長は振り返り冒険者の顔を一人一人見た。
「なんにゃ?団長さん」
ミュミの言葉に団長はこほんと咳払いをした。
「魔法とは無から有を作り出すものではない。
有から有の変換であるとお知りおきいただきたい」
「わからないにゃ…」
「ミスラのお嬢さん。そしてここにいる高レベルの諸君。
蘇生の魔法は、術者の命を削る。
強大な魔法は、相応の代価が必要なのです。
白魔道師は確かに蘇生の術がつかえます。
だたし、その術は常に魔道師が代価として
自分の命を削って払っている事をお知りおきいただきたい。
そしてまた、どのような魔法も、どのような術も常に限界はあります。
蘇生の魔法を持つ白魔道師が旅に同行しているからといって、けして油断せず、
命を粗末にしないでいただきたい。
まず、死なない。これが全ての白魔道師の願いです。
リノナノも、よく覚えておくように。
自分の身を削る魔法を安易に使わないように。
強大な力は、強大な喜びをもたらすと共に、破滅ももたらす。
――それでもリノナノは、この魔法を欲するかね」
ゴルタタ団長の言葉にリノナノは頷いた。
「はい」

205 名前: 7 投稿日: 2003/12/03(水) 09:57 [ k6xTqC/k ]
リノナノの意志の強い瞳に、団長はリノナノの肩を抱いた。
「リノナノは十分わかっていると思うが…
どの魔法もそうだが、こと蘇生魔法に関しては自分のための魔法ではない。
守るべき仲間や部下がいて、はじめて生きる魔法だ。
多くのものに生かされ守られていることに感謝し
自分の力をつくしなさい。
悩む事もあるだろうし、つらい事もあるだろう。
でも、お前は独りではない。
手を伸ばせば、私達がいる。
それは、おまえ自身がきずいてきた、宝だ。
大切にしなさい。
アルタナの祝福がリノナノの上に訪れる事を、祈っている」
ゴルタタ団長の笑顔。
リノナノが魔法を開く。
ふわり。
金の光と金色の詠唱呪文がリノナノの全身を包み、溶けた。

<続く>

206 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/12/03(水) 10:05 [ k6xTqC/k ]
Wikiに更新してくださっている方、ありがとうございます。
前置きはいらないと判断し、今回からなくしました。

マリーひそかな楽しみでした^^書き手さんお疲れ様です。
たくさんの応援感想感謝です。おかげで頑張れます。

207 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/03(水) 10:25 [ Z0RpPpFw ]
キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!

208 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/03(水) 14:28 [ vm9m/SB2 ]
「マリーにおまかせ」お疲れ様!
つか、終わらせちゃうのはもったいない気がする。
1シーズン毎とか、1スレ毎に1回特別編として復活きぼん。
ネタ考えるの大変だろうけど。

209 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/04(木) 00:33 [ B.dkeSF2 ]
樽戦まだかな。。。
もう、ずいぶん待ってるよ・・・

210 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/04(木) 09:33 [ gOMYG1ZQ ]
>>209
物語って、クライマックス近いと悩んじゃうからね。
いい子にして待ちましょーや。

211 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/04(木) 16:02 [ 0McErszM ]
うう。。遅レスですが
名無しの話読んで目からフラッド(ノД`)゜。
作者さんGJ

212 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第7話−1 投稿日: 2003/12/04(木) 19:23 [ gM6ZScpA ]
「空に浮かぶ群青の軌跡」第7話

 おいらLady。
 おいらはワイバーンだから、カーナを困らせている。
 おいらがいるから、カーナがいつも困っている。
 でもカーナ、おいらはカーナが大好きだ。
 できればいつも一緒にいたいんだ。
 だからお願いだ、カーナ。
 おいら、がんばるから……精一杯がんばるから……
 だから、笑っておくれ。

213 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第7話−2 投稿日: 2003/12/04(木) 19:25 [ gM6ZScpA ]
>>>>>>>>>>>>>>>

 まるで白昼夢を見ているようだった。
 目の前は砂埃で満足に見ることもできない。
ギラギラとした太陽は相変わらず自分たちを照らしているのに、それなのに、影が一つ足りない。
 バルクルムの砂丘――白い砂浜に足をとられて、満足に動くこともできない。
 槍を構えて、ふんばろうとしても、砂の中に足が沈んでいった。
「カーナ、走って」
「いや! だって、Ladyが来てないわ!」
「いいから、行くんだ!」
 槍を構えたままのカーナ。そして両手剣を携えたラズィ。
いつもあるはずの影はそこにはなかった。砂嵐の中、ラズィの怒声が響いては消える。
 頑なにカーナはラズィの言葉を振り切ろうした。
どんなにとめようとしても、カーナはラズィの言う通りにしない。
「ダメだ、カーナ!」
 砂に足を捕らえられたまま、なおも進もうとするカーナをラズィは抱き上げた。
瞬間、体中に激痛が走ったが、それはなんとか飲み込むことができた。
彼女がタルタルで良かったと、別の自分が苦笑したのを感じ。そしてそのまま道を南下する。

214 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第7話−3 投稿日: 2003/12/04(木) 19:25 [ gM6ZScpA ]
「ラズィ、離して! 離して!! Ladyが……!」
「………」
「お願い、ラズィ。お願いだから、離して!」
「ダメだ」
 よくよく見ると、二人とも血まみれだった。それぞれの着ている皮の装備もところどころに傷が見える。
「いやぁ!」
 半狂乱になったカーナの怒声が、虚しく、響いては消えた。



 それは、セルビナまであと一日というとき、周囲を警戒し、先を進んでいたはずなのに、彼女らは体中に痛みを感じた。
何かの爆発に巻き込まれたとだけは理解できた。
 ちょうど丘の真下で死角になっていたのだ。しかも砂嵐が視界の悪さをさらに際立たせた。
そんな中、闇色の防具に身を包んだゴブリンが、じろりとこちらを見るのがわかった。
でも、痛みに体が支配されて、すぐに動くことはかなわない。
「う、うごける?」

215 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第7話−4 投稿日: 2003/12/04(木) 19:26 [ gM6ZScpA ]
 どちらかが声をかける。周囲にはいくつかの焼け焦げた塊が転がっていた。
それらが、人のものだと理解するのに数秒。
それから痛む神経を叱咤して、立ち上がり、武器を構えることができた。
 しかし、一瞬にしてラズィは落胆した。
「カーナ、走るよ」
「ラズィ?!」
「臆病とかそんな問題じゃない。こいつは僕たちじゃ無理だ」
「わかったわ…」
 哀しいことに、生き残った人はいない。今はただ、この場をなんとかして切り抜けなければならない。
構えた武器をそのままに、じりじりと距離をとる。
ゴブリンの視線はカーナ、ラズィ、そしてLadyへと交互に動いた。
「合図をしたら走って」
 端的に告げて、ラズィは懐から石つぶてを投げつける。
反射的にゴブリンがそれを叩き落そうとした瞬間、走り出した。
「今のうちに!」
 ラズィの指示のもと、二人は駆ける。セルビナの街への入り口は見えている。
そこまで逃げ込めば、安全になると信じて、二人はひた走った。
しかし、ふとした違和感が、カーナを襲う。

216 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第7話−5 投稿日: 2003/12/04(木) 19:27 [ gM6ZScpA ]
「……Lady?」
 立ち止まる暇などないのに、自然と足は止まり、彼女は呆然と振り返った。
そして目にする真実。
「Lady! だめ、こっちよ! 戻って!」
「カーナ!」
 らしくない、ラズィの怒声。でも、カーナは駆け出した。
今もなお、一体で果敢にゴブリンに立ち向かっている愛しき半身の元へと。
「今行くから、今行くから、Lady。お願いだから戻って!」
 砂に足をとられて、体が沈む。転んだのと理解できないまま、這ってでもなお、進もうとする。
「ラズィ、Ladyが、Ladyがまだ来てない!」
「……ごめん」
 立ち上がり、走ろうとするカーナをラズィは抱き上げる。
怒声のような悲鳴なような声が、耳にこだました。
「いやだ、ラズィ、ラズィ! お願い、離して、離してぇ!!」
 ラズィは無言のまま、ひた走る。
傍らのカーナの声も、遠くから聞こえる戦いを続ける音も、何もかも、振り切るかのように……。
 そして二人は、セルビナの門扉をくぐる。

                <続く>

217 名前: (パーティメンバーがいません) 投稿日: 2003/12/04(木) 20:47 [ WB.e2kRE ]
>>212
+激しくGJ+

218 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/05(金) 01:59 [ XDaYad2g ]
リノナノがきてたよぉ〜
:*:・。,☆゚'・:*:・。,ヽ(・∀・)人(・∀・)ノ ,。・:*:・゚'☆,。・:*:

作者さん、心に響く素敵な文章だと思います^^少なくとも私には。
大ファンです!まったりと最後まで頑張ってくださいね〜
最後が来るのが楽しみなような、待ち遠しいような…

219 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/05(金) 13:00 [ 5sfkN5fc ]
    *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *   
   * ※ ☆ ※  ※ ☆  .☆ ※  ※ ☆ ※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
   * ※キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!※ *    
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※☆  .☆※  ※ ☆ ※ *   
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *   
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *

220 名前: age 投稿日: 2003/12/05(金) 19:20 [ WlSIPVWk ]
もっとがんがれ

221 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/05(金) 19:24 [ 2P1hbFyM ]
サラマの章 第9話 突然のクエスト

ふぅ、こんなに急いで旅の支度をするのは初めてだ。
まぁ無理も無い、アイツにバレないうちに
ジュノを発たないといけないからな。
熱い男の仕事に女は無用ってワケではないが、
これ以上、危険な目に会わせる訳にはいけない。
帰ったら怒鳴られるかもしれないがな…

〜ジュノ港〜

「サラマ兄ちゃーん!」
遠くからはハックの声。
俺は声のするほうに手を振って見た。
俺の視界に入っているゴブリンが
短い足でちまちまと走ってくるのが見える。
ゴブリンは息切れした声で俺に話しかける。
「ごめん、ボルトの補給してたら遅くなった…」
「気にするな、まだ数分しか経ってない」
俺はゴブリン…ハックの肩をぽんと叩いた。
するとハックははっと顔を上げてまだ喋る。
「これからどこに行くんだ?」
その問いに対して答えを言おうとしたそのときだった。

突然のクエスト…救援要請が舞い込んだのは。

222 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/05(金) 19:53 [ 2P1hbFyM ]
「誰か…誰かー!!」
駆け込んできたのはヒュームの青年。
髪の色は金で、王国兵制式の服に身を包んでいる。
その手には王国弓兵制式長弓がぎゅっと握られていた。
きっとサンドリアの人間だろう。
そのヒュームは俺の姿を確認すると、
手に持っていた弓を放り投げ、俺の服の袖にすがりついた。
「ああ、モンクさん!お願いッス!
 教官と仲間を助けてくださいッス!」
このヒュームはすでにパニックになっていた。
俺はまずこいつを落ち着かせることから始めた。
「軽く深呼吸してから話せ。息切れした声は聞きづらい」
ヒュームは俺の指示通り、2,3回深呼吸をした。
そして投げた弓を拾うと事情を説明した。
「実は…俺のミスでラプトルの大リンクを発生させてしまったッス!
 俺は仲間に「救援を呼んでくれ」と言われたので、
 ここまで死に物狂いで走って来たッス…
 お願いッス!みんなを助けてくださいッス!」
俺はそいつの肩を軽く叩いてから語った。
「お前…名前は?」
「はい!バリスタと言うッス!ジョブは狩人ッス!」
「バリスタか、よく走った…この俺様が救援に向かう。
 しかし俺は方向音痴だ…案内頼むぞ」
「…はいッス!」
バリスタはくるっと振り返り、全速力で走り出した。
俺とハックも一度だけ目線を合わせてから、バリスタの後を追った。

223 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/05(金) 20:11 [ 2P1hbFyM ]
〜ソロムグ原野〜

「そろそろ…見えてくると思うッス…!」
全速力で走ること10分。
徐々にバリスタの歩幅が小さくなっていく。
「バリスタ、無理をするなよ」
「だ…大丈夫ッス…」
俺は気遣うが、バリスタは走ることをやめない。
仲間が心配なのだ。それはしっかりと分かる。
すると彼はこんなことを呟いた。
「まさかゴブリンもリンクさせてしまうなんて…
 モンクさんも気がついてないみたいだし…
 バリスタ…不覚ッス…」
俺はその呟きを聞いて腹がよじれそうになった。
彼が全速疾走の理由もわかったことだ。このまま走ってもらうことにした。

すると、俺たちのとは別の大群の足音が聞こえた。
バリスタはそちらに顔を向けると、まっすぐ指を刺し、
俺の方に振り返って叫んだ。
「いたッスー!あそこッスー!」
俺もバリスタが指差す方向に顔を向けた。
体の表面が青と白のラプトルの大群が遠めでも確認できた。
その先には3人の人影が見える。きっと彼らだろう。
「バリスタは下がっていろ!ハックは援護を頼む!」
俺は両手根を構えてラプトルの群れに突っ込んだ。

224 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/05(金) 20:57 [ 2P1hbFyM ]
「教官…早く逃げてください…」
「何を言う!君たちを置いて逃げれるわけがないだろう!」
「ヴィクスを連れて…早く…」
「待て!待つんだカドル!」
ラプトルの群れに向かい両手鎌を振るうヒュームの青年、
既に力尽き、うつぶせになって倒れているヒュームの青年、
そして、倒れたヒュームを守るように構えたエルヴァーンを確認した。
両手鎌のヒュームはラプトル達に立ち向かうが、
その攻撃は空しくかわされ、鋭い牙で肩を噛み付かれた。
「ぐあっ…!」
「カドル!」
エルヴァーンの騎士がすかさずケアルを唱える。
カドルと呼ばれた青年はエルヴァーンに向かって叫んだ。
「行って下さい…ここは僕が食い止めます…
 教官は…ヴィクスを連れて…はや…く…」
カドルは再び構えて群れに向かう。

丁度その時だ。
俺がカドルの前に躍り出て、ラプトルの面に根を振り落としたのは。
「きょうかーん!救援ッス!」
バリスタがエルヴァーンの騎士に呼びかける。
騎士もその呼びかけに応じた。
「バリスタご苦労!君はヴィクスとカドルを頼む!」
「了解ッス!」
バリスタはカドルを取り押さえ、ヴィクスが倒れている所に向かった。
俺はラプトルの群れがバリスタ達に向かわないようにと、
魔法のスクロールを慎重に読み上げる。
「バニシュガ!」
範囲内の複数の相手に光属性のダメージと聞いたが…
実際に唱えるのは初めてだ。
しかし効果はあったらしく、ラプトルのターゲットは俺に定まったようだ。
一斉に襲い来るラプトルの群れ。数は8体ぐらい。
両手根を握り締め、ラプトルに向かう俺の横に、
いつのまにかエルヴァーンの騎士がいた。
「救援、感謝します!」
騎士はそう言うと、群れに向かってファストブレードと放った。
しかしそれもかわされ、ラプトルは騎士の後ろに回りこんだ。
俺はすかさずラプトルの頭で殴り、騎士を引き戻した。
「何やってんだ!死にてぇのか!?」
俺は騎士に激を飛ばし、後方に蹴り飛ばした。
その後俺は手に握り締めた両手根を地面に振り落とした。
「行くぜ!アースクラッシャー!」
高鳴る打撃音、鳴り響く地響き。
ラプトル達はたちまち宙に投げ出され、そのまま地面に叩き落された。

周りに立っているラプトルはいない。
とりあえず、救援クエスト第一段階は終わった。

225 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/05(金) 21:15 [ 2P1hbFyM ]
ラプトルの絶命を確認した俺は、
耳を塞いで蹲っているバリスタの元へ向かった。
「バリスタ、大丈夫か?」
俺の声に反応し、バリスタは顔を上げる。
「あ…ラプトルは…?」
ガクガクと震えながら俺に尋ねた。
「大丈夫だ、始末した」
「そうッスかぁ…よかった…」
安心しきったのか、俺がそう告げるとバリスタは
そのまま気絶してしまった。
「どなたかは知りませんが…助かりました」
後ろを振り向くと、先ほどのエルヴァーンがサンドリア式の敬礼をしていた。
「一時はどうなることかと思いましたが…」
そう言うと力ない笑みを浮かべるエルヴァーン。
しかし、こいつはまだ気がつかないのかと思った。
とりあえずネタバラシと行こう。
「大丈夫か?ライオネル教官?」
俺がそう呼ぶと、エルヴァーン…いや、ライオネルははっと顔を上げた。
「君は…サランドラマ君かい!?」
「ああ、とんだ再会だな…」
「ふふ、確かに…」
ライオネルはバリスタ達の元へ向かい、血まみれのカドルを抱え起こした。
「ジュノへ彼らを運ぶのを手伝ってください…
 もうケアルは唱えられない…」
「分かった」
俺はバリスタとヴィクスを抱え、ジュノへ向かった。

そういえば、何か忘れてるな…
まあいい、まずはこいつらの救助が先だな。


サラマの章 第10話に続く…

226 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/06(土) 02:58 [ opIO4y8s ]
予告の日が来ました。

227 名前: ガルカの昔話 17話1/3 投稿日: 2003/12/06(土) 03:00 [ opIO4y8s ]
さしものエルヴァーンの剣豪も左腕に重傷を負い、
周りを十数という獣人に囲まれては成す術が無かった。
最初こそ勢い良く切り伏せていたものの、クゥダフの連携によりじわじわと追い詰められていった。
鈍った斬撃はやがて亀たちの甲羅をすら貫けなくなっていく。
あの巨漢の兄弟は無事やり過ごしたろうか?
なるべくクゥダフの注意を引き付けるように動きながらも、エルヴァーンの青年はそんなことを考えていた。

思えば彼の人生、ずいぶんと波乱に富んでいた。
剣の道を極め、名誉と賞賛を欲しいままにしたこともあった。
しかし、忠誠を誓う相手を失い、失意のまま隣国に逃れ、生きるため鉱山で働いた。
そこで堅物だが気のいいガルカたちと出会い、彼らはこのエルヴァーンを家族のように扱ってくれた。
見失っていた暖かさに再び触れた。

228 名前: ガルカの昔話 17話2/3 投稿日: 2003/12/06(土) 03:01 [ opIO4y8s ]

だから、俺は戦う。
痺れを覚えてきた右腕を、なおも懸命に振りクゥダフを力いっぱい切り捨てた。
司令官らしい亀が苛立ちを隠せず、奇声をあげ部下を鼓舞している。
それに呼応して、エルヴァーンを取り囲む円陣は徐々に狭められていった。
明らかに青年の剣はクゥダフたちの動きに追いつかなくなってきた。
ここまでか…
戦いの中で死ぬ。
剣を捨てた騎士にとっては皮肉でしかない死に様になったものだ。
自嘲し、覚悟を決めた。

229 名前: ガルカの昔話 17話3/3 投稿日: 2003/12/06(土) 03:02 [ opIO4y8s ]

だが、予想しうる衝撃はエルヴァーンの青年を襲うことは無かった。
そのかわりに大気が震える。

大轟音。

クゥダフたちは突然轟いた爆音に思わず耳を塞ぐ。
聴覚の発達した彼らにとって、予期しえない災難。
何者かが爆発物をこの窪地に投げ込んだ。
そしてこの地形がその音を反響させ、獣人たちの鼓膜を揺さぶり引き裂いた。
宵闇の中、クゥダフたちは索敵のための唯一有効な手段を失い、
気付けば先程まで追い詰めていたエルヴァーンも見失っていた。

230 名前: ガルカの昔話 18話1/2 投稿日: 2003/12/06(土) 03:04 [ opIO4y8s ]
火薬の扱いにおいてヒュームとゴブリンにおよぶ種族はいないだろう。
かといって、ガルカがまったくその方面に疎いというわけでは無い。
経験上、マスケット銃の銃弾を打ち出すための黒色火薬に、ある種の金属を混ぜると
通常は爆轟しえぬこの火薬の破壊力を、幾倍にも高めることができると知っていた。
銃弾を湿気から守るための油紙を慎重に解きほぐし、なるべく多くの黒色火薬を調合した。
黒色火薬は比較的簡単に着火する。
私は焦ることなく、そして速やかに手製の簡易爆弾を作り上げた。

これしか策が浮かばなかったといえば、その通りだ。
だが、私は成功を信じて疑わなかった。
相手が聴覚感知のクゥダフであること。
日が暮れていること。
音の響きやすい地形であること。
いくつもの条件が私たちの命運を好転させた。
女神アルタナの御名など唱えたことも無かったが、
このときばかりはヒュームの女と抱き合って、我らが母に感謝の祈りを捧げた。

死を覚悟したにもかかわらず、クゥダフの動きが止まった。
爆音に頭をかかえのたうっている。
すぐには状況を理解しかねたが、あのガルカの兄弟の機転によるものだと感づくのに時間はかからなかった。
おめおめ死に急ぐこともない。
逃げおおせることができるなら、それに越したことは無い。
エルヴァーンの青年は、彼を取り囲む円陣を飛ぶように越え、バストゥークのある方向に駆け出した。
そのとき、ひときわ大きな獣人が悶えている姿が目に付いた。
先程から周りのクゥダフに檄を飛ばしていたあの亀の司令官だ。

231 名前: ガルカの昔話 18話2/2 投稿日: 2003/12/06(土) 03:05 [ opIO4y8s ]
そう思うがはやいか、青年は司令官亀の前に降り立つ。
クゥダフの方も殺気をまとった気配に気がついた。
悲鳴をあげ続ける鼓膜を押さえながらも、クゥダフは身の丈もあろうかという大剣を薙ぐ。
大気を裂き、荒野に塵風を巻き上げるほどの強烈な一撃。
どれほど頑健なガルカさえも倒しうる必殺の斬撃。
手ごたえは……

無い!

エルヴァーンはその大剣をヒラリとかわし、刀身の上に着地していた。
「アルタナの凡愚どもがぁぁぁぁっっ!!」
クゥダフの司令官は共通語でエルヴァーンを罵ったが、
刀身を伝い走ってきた彼の一閃で、頭部を破壊され絶命した。

232 名前: ガルカの昔話 19話1/2 投稿日: 2003/12/06(土) 03:06 [ opIO4y8s ]
商業区にも夜の帳が降り始めていた。
「この俺様が手も足も出ないとは…」
痛む身体を押さえながら怨嗟の呻きをもらす。
ガルカの大群に襲われ、不覚にも気を失った。記憶は水路に落ちたところでプッツリ切れていた。
だが、命ばかりは助かった。
運良く?
いや。
このガルカが水路の底に沈んだ俺様の身体を救い上げねば死んでいた。
ジークはギリギリと歯軋りした。
何もかもが気に入らなかった。

「ボクはみんなを止めないといけないんだ…」
知ったことか。
ジークはそう吐き捨てるように切り返すつもりだったが、身体を走る激痛で言葉にはならなかった。
「痛むの?」
そう言って触れようとしてくる幼年のガルカ、パゴタの手をジークは振り払った。
「今はヒュームとガルカが争っているときじゃない。」
パゴタはめげずに金髪のヒュームを説き伏せようとする。
「よく聞いて。みんなは騙されてクゥダフの手引きをしようとしてる。バストゥークを滅ぼそうと!」
「ガルカは…」
ゴホゴホと咳き込むジーク。折れた骨は一本や二本ではあるまい。
「…ガルカは…皆殺しだ…」
「!?」
それじゃあ、ダメなんだ。
悲鳴を上げるようにパゴタはジークに懇願した。
「美しい俺様をこんな無様に這わせやがって。ただじゃおかねぇ」
「聞いてよ!クゥダフが…」
「亀がどうした?そんなものは俺様の光輝剣シャインブレードで一刀両断だ。ガルカともどもな。」
「仲たがいしてるときじゃないんだ!」
「相容れることが出来るとでも思ってるのか?おまえらとこの俺様が。」
ジークの表情は不快感で歪んでいた。

233 名前: ガルカの昔話 19話2/2 投稿日: 2003/12/06(土) 03:07 [ opIO4y8s ]

協力してもらうのが叶わぬことだと、パゴタはすぐに理解した。
今は一刻の猶予も無い。
パゴタは膝まづく金髪のヒュームのことは置いておき、
ひとまず鉱山ガルカたちの先回りをするために駆け出した。

「一体何の騒ぎだ?」
そのとき商業区入り口門の防衛の指揮をしていたのは、栄光あるミスリル銃士隊が一人。 
中でも当時最も篭城戦、防衛戦を得意としていたことから「グスタベルクの盾」と称されていた男だ。
その彼が夕食をとるため、一人女神アルタナに祈りを捧げているときのことだった。
突然の喧騒。
思わず食事の手を止め、側近のものを呼んだ。
転がるようにグスタベルグの盾の私室に入ってきた側近は、動転しきった声で言う。
「ガルカたちが…ガルカたちが門に押し寄せてきています!!」
「どういう事だ?もっと仔細を説明しろ」
常軌を逸した報告に、「盾」はすぐに状況が飲み込めないでいた。

234 名前: ガルカの昔話 20話1/2 投稿日: 2003/12/06(土) 03:08 [ opIO4y8s ]
「止まれ!お前たちの行動はバストゥークの治安を著しく乱している!!」
銃を構え、一列に並んだ勇壮なるバストゥーク銃士隊。
その中央。
百人隊長クラスとおぼしき壮年の男が開口一番、ガルカの群れに言い放つ。
鉱山区を出たときには鉱山労働者50人しかいなかったものが、
どこで聞きつけてきたのか、その人数は数倍に膨れ上がり、黒い群集はバスの石畳を埋め尽くしていた。
ガルカ。
ガルカ。
ガルカ。
見渡す限りのガルカ!
何事かと、窓を開き様子を窺おうとするヒュームも、
そのあまりに異様な光景を目にすると、すぐに青ざめ戸を固く閉ざした。
「ヒュームの法で!なにが治安か!!」
黒い群衆の中で誰かが声をあげる。応じて波紋のように、ガルカの波が揺れる。

「ひぃ」
「ダメです。う、撃ちましょう…」
銃士隊の中には、このガルカの大群に恐慌したものが少なからずいた。
この数。あの巨体。
無理からぬことだと思う。
「これは私の言葉ではない。誉れある「グスタベルクの盾」卿よりの勅命である。」

「撃つな!!」

路地に配置された銃士隊の隊長が厳命する。隊士たちは一瞬ビクリと反応した。
ガルカもバストゥークの重要な構成民族。
もしここで力をもって排除しようものなら、この国にとって後々大きな禍根となる。
懐柔し和解せねばならない。

235 名前: ガルカの昔話 2O話2/2 投稿日: 2003/12/06(土) 03:09 [ opIO4y8s ]
「盾」はそうおっしゃった。
「盾」卿がそう命令するのなら、部下である我々は1にも2にも無く従う。
それだけだ。
確かに10年、20年先を見据えた聡明な見解だろうとは思う。
「だが、どちらかといえば政治家向きだ。あの方は」
隊長は呟く。
現場の長い彼は、そんな説法でこのガルカたちが止まらないことを知っていた。
いまは20年先の理想より、目の前の行進を押しとどめる迅速な対応だろうに。

「待って!ぼくの話を聞いて!!」
そのとき、ガルカとヒュームの間に小さな影が割ってはいる。
「…パゴタ…」
行進ガルカの中で、その小さな影と面識のあるものが名を呼んだ。
傷だらけの小さなガルカ。
街灯に照らし出され、闇に沈んだこの街道で、ただ一つはっきりとしたシルエットを落としていた。
ガルカもヒュームも魅入られたかのように動きを止める。
ヒュームの銃口とガルカの暴走の間に割って入ってくる者がいるなどと、双方思いもしなかった。
先程までの喧騒が嘘のように静まり返る。
それは一瞬の出来事だったのだろう。
だが、そのときこの路地に流れた時間はたしかに緩慢であった。

みなが彼の二の句を待つ。
その一瞬が、まるで永遠に続くのかと思われた。

少年の口が開く。
「クゥダフが…」

236 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/12/06(土) 03:12 [ opIO4y8s ]
また来週(´・ω・`)ノシ

237 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/06(土) 04:11 [ WxDLNz9g ]
  *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *   
   * ※ ☆ ※  ※ ☆  .☆ ※  ※ ☆ ※ *
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
   * ※キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!※ *    
  * ※ ☆ ※ ※☆     ☆※ ※ ☆ ※ *
   * ※ ☆ ※  ※☆  .☆※  ※ ☆ ※ *   
    * ※ ☆ ※   ※ ☆ ※  ※ ☆ ※ *   
     *  ※ ☆  ※   ※   ※  ☆ ※  *

ガルカの中の人GJ!!

238 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/06(土) 04:19 [ .KrDXilY ]
キタ〓〓〓〓〓(゚∀゚)〓〓〓〓〓!!!!!

239 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/06(土) 16:28 [ PsCU72nM ]
>236
Σ(・ω・ノ)ノ! ま、またらいしゅう?!

ショック☆<( ̄□ ̄;)>☆ショック
でも、待つしかないのね。耐えてこそ愛!(マテ

240 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/06(土) 16:36 [ vdn80iM2 ]
昔話キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!
終わり方ウマ杉wwwwwwwwwwww
次回楽しみにお待ちしてまつ(・∀・)

241 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/06(土) 22:14 [ ZakItFYQ ]
(゚∀゚)

赤ひげがどう動くのかが気になるところ

242 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/12/07(日) 09:30 [ IE7BwtmE ]
雪の彼方   雪の彼方<六章>

「あーもう、いー加減お風呂はいりたい〜」
アンジュの言葉にリュートが頷く。
「町に帰ったら即、お風呂直行ね」
いくら身体を雨の中水で洗っていたとはいえ、そこは女性。
お風呂に入りたいのだった。
「リノナノ?」
ミュミはリノナノの後ろから飛びつくようにじゃれた。
「ん?」
「ミウさん、起きるといいにゃ」
その言葉にリノナノは皮肉気に笑った。
確かに苦労して手に入れた。
冒険者の食費だけで結構なお金が費やされたが、出資はオフィサー卿が請け負ってくれた。
個人ならおそれおいと出せぬ金額だろう。
時間と、お金と、人材を使ってやっと取った魔法だけど…。
「必ず効くとは…限らないんだけどな」
その言葉にロストは後ろからリノナノの頭をぱしっと叩いた。
「効かなかったら、次の手考えりゃいいだけだろ。馬鹿」
「ん〜、みんな一緒なら、何とかなるにゃ」
ミュミは言って尻尾を振った。
バストゥークに帰るもの、ジュノに帰るもの…
友となった貴重な時間を過ごした仲間達がベドーの出口で別れてゆく。
戦闘魔道師団は、帰国後リノナノにご馳走を作らせることを約束し
デジョンで帰っていった。
「デニ、ありがとう」
リノナノの差し出す手をデニは照れくさそうに受けて笑った。
「気楽に。楽しくやってけよ。また、どこかで逢おう」
デニは、風のように笑い一人でふらりと別れていった。
そして、彼らはサンドリアに向かった。

243 名前: 2 投稿日: 2003/12/07(日) 09:32 [ IE7BwtmE ]


サンドリア国。
さわやかな朝日の差し込むオフィサー家の温室のベッドで、
ミウは静かに待っていた。
ミウのベッドサイドにリノナノはコトリと小さな皿をおいた。
そしてリノナノが魔法の詠唱を行なう。
謳うようなやわらかな声は、いつ聞いても心地よかった。
「慈悲の女神アルタナ…我の願いを聞き届け
我が友を永久の眠りより解き放ちたまえ。
生と死の狭間よりいとし子の魂を
この光の大地ヴァナディールに呼び戻し
我らと共に生きる許しを与えよ。レイズⅢ」
心に浮ぶ呪を詠唱に乗せる。
光があふれた。
ミウの長い髪が、揺れる。
清らかな浄化の光が部屋を覆った。
ふわり。
やわらかな茶色の睫が震え、開かれる。
「ぁ…」
ミウの唇から小さな吐息が漏れた。
「うわあぁ、すっごいにゃぁ!!リュートやアンジュと同じくらい綺麗にゃァ」
ミウの瞳が、二度、三度と睫をしばたかせ、ゆっくりとリノナノを見た。
「君は…、無事でしたかっ?」
起き上がり手を伸ばしリノナノに手を伸ばそうとして…
ミウの身体が不自然に、落ちた。
「わ!!」
魔法を使い体力を失ったリノナノでは支えきれなかった。
が、左右からロストとオフィサー卿がミウの身体をささえた。
ふわん。
暖かな生きているミウの体温をリノナノは感じた。
「あ、ここは…どこですか?」
ミウの言葉にリノナノは目を伏せる。
そしてミウの、足が動いていなかったのをリノナノは見逃さなかった。

244 名前: 3 投稿日: 2003/12/07(日) 09:34 [ IE7BwtmE ]
「ここはサンドリアの、オフィサー卿の邸宅ですわ。眠り姫ミウ」
アンジュの言葉にミウは理解できないというように首をかしげ、そして驚いた。
短かった髪が、今ではやわらかなウェーブで腰まであった。
「私は…?一体」
「混乱していて当然かな。リノナノ、後は任せた。
別室に医者を待機させてあるから必要なら呼んでくれ」
オフィサー卿もあの旅で、多くの友人をつくった。
ガーディやリノナノも友と呼べる一人になっていた。
オフィサー卿の言葉に、みんなが部屋を出て行った。
二人きりになって改めて、ミウはリノナノを見た。
「私は…一体?リノナノ…」
「ミウは、氷河で崖から落ちて…眠っていたんだ。ずっと」
「そう…私は氷河で…。仲間は無事でしたか?!」
「ああ。ミウのおかげで、な。あのあとほとんどが無事に国に帰れた」
その言葉に、ミウは胸を押さえほっと息をついた。
「どれくらい、私は目覚めなかったのです?」
リノナノは言いずらそうに呟いた。
「3年…位か」
ミウは一瞬驚愕を見せた。
それからじっと目を伏せ、数刻の間頭のなかで色々整理しているようだった。
「ミウ。身体でどこかおかしな所はないか?」
その言葉にミウは手を動かし、足を動かそうとして…唇を食いしばった。
「…足が、動かないんだな」
ミウが小さく頷く。
「崖から落ちて…怪我を、したのですね。それでずっと眠って…私は…」
「目覚めてくれて、よかった」
リノナノが、ミウの長い髪をかきあげるように撫で、ミウの顔を見た。
茶色の穏やかな色の中に強靭な意志を秘めた戦士の瞳がそこにあった。

245 名前: 4 投稿日: 2003/12/07(日) 09:37 [ IE7BwtmE ]
「リノナノ…長い時間眠っていて、最初にみたのが君という事は…
君が目覚めさせてくれたのですか?」
「いや…――。俺の力だけじゃない」
リノナノひとりの力では、ミウを起こす事は出来なかった。
多くの助けがあって、やっと一つの奇跡を生んだ。
「……そうですか。――私が寝ている間、リノナノは」
その言葉にリノナノは眼を伏せ、苦笑した。
3年という時間…さまざまな事があった。
「まぁ、色々してたけど、な」
微妙なリノナノの言葉の間にミウは問う。
「戦闘魔道師団は?」
ミウの綺麗なトパーズ色の瞳にリノナノは少しだけ言いずらそうに、苦笑した。
「やめた。今は冒険者してる」
「冒険者…?一人で、ですか」
ミウの言葉にリノナノは少し考え、そして小さく微笑し大切そうに言った。
「いや。仲間がいるよ」
「そうですか。でも、リノナノが無事で…ほんとうによかった」
ミウがリノナノの柔らかな頬に細い指でそ…と触れた。
「今はいろいろ、考えない方がいい。ミウ。ずっと目覚めなかったんだ。
起きているだけでも大変だろう?身体を横にしたほうがいい」
その言葉と脇に置かれたあまやかな香りにミウは首をかしげた。
「これは?」
「まじないみたいなもんだ…」
照れ隠しのようにリノナノは呟いた。
枕もとには、オレンジクーヘンの皿が置かれていた。
「後で、食べさせてくださいね」
リノナノは丁寧な手つきでミウの身体を支え横にしようとする。

246 名前: 5 投稿日: 2003/12/07(日) 09:38 [ IE7BwtmE ]
ミウはリノナノの顔を見て笑った。
「何が、おかしい?ミウ」
「いえ。…服も変わってるし、
リノナノの顔も少し変わったような気がするのですけど…」
「ん。時間がたったからな」
「でも、双子石のピアス…つけているのですね」
そこだけは変わらないというようにリノナノの耳に触れ…そして自分の耳に触れる。
同じ形の石は、引き合い再会を約束する。
伝説の双子石。
「寝ろ。起きるたびに元気になってゆくはずだ」
リノナノの言葉に、ミウは眼をとじる。
そして、語る。
「リノナノ。また一緒に、旅をしたいですね」
「ああ。そうだな」
リノナノは頷いて、ミウの毛布を整えた。

247 名前: 6 投稿日: 2003/12/07(日) 09:40 [ IE7BwtmE ]



ミウの足は動かなかった。
医師の診断では、原因不明という事だった。
それでもミウは絶望した様子もなく、
ただ淡々と穏やかな表情で自分の状況を受け入れた。
「ミウさんの足…どうにかならないにゃん?」
アンジュの家でミュミが言う言葉に、リュートは吐息をついた。
「何とかしてあげられればいいんだけど」
その言葉に、暖炉の前に立っていたロストは肩をすくめた。
「何とかするさ、なぁ。リノナノ」
「あん?」
「おっさん。ジュノの医者とツテがあんだろ。診てもらったらどうだ?」
「だな。たくさん依頼を受けたおかげで、懇意にさせてもらってるしな」
「それに、ヴァナにはまだ未知の魔法も未知の薬草も腐るほどあるっての。
捜していきゃ、きっとなおす方法も見つかるさ」
ロストの言葉にアンジュは肩をすくめる。
「その脳天気さ、どうにかならないかしら?」
「絶望しててもしょうがねぇだろ。やれることやってりゃ、
幸運の女神が向こうから突っ走ってくる」
ロストの言葉にリノナノは肩をすくめる。
ロストはリノナノの頭をパシッと叩いた。
「つぅわけで、リノナノ。まぁ、いろんな冒険のついでになるかもしれないが
一緒に未知の魔法や薬草、追い求めてみねぇか?」
もう一度、仲間として。
さらっと言うロストの言葉に、リノナノはロストを軽く睨みつけた。
「足手まといはごめんだからな。暗黒はひかえろよ」
「アタッカーだからな。そこんとこは約束できねぇけど、努力すると一応いっとく」
ロストはリノナノににやりと笑みを見せた。

248 名前: 7 投稿日: 2003/12/07(日) 09:41 [ IE7BwtmE ]


正直、白魔道士はリノナノには重い。
他人の命を背負うのは…辛いと思う。
仲間とはリノナノにとって失うだけの存在だった。
だからこそ仲間という言葉を否定しつづけてきた。
でも―…一人では起こせない奇跡。
奇跡は偶発的に起こるのではなく
人の強い意志の積み重ねによって造られる。
人の願いが奇跡をつくる。
確かに、失う事は辛い。
でも、失う事や傷つけることに怯えていてはなにも始まらない。
つまずいたら、またそこで立ち止まればいいとデニは笑っていった。
前に進むもうとする意志にこそ、意味がある。


魔法は、自分のためだけではなく…仲間のためにこそ存在する。
今、リノナノは仲間と共に未来を見たいと思った。
リノナノが仲間と共にヴァナディールの大地に駆け出してゆくのは、近い未来の話となる。

                            <END>

249 名前: 雪の彼方 投稿日: 2003/12/07(日) 09:44 [ IE7BwtmE ]

このお話しの続きを読みたいとはじめに書き込みいただいた時
頭のなかでざっとひいたアウトラインがここまででした。
お話のイメージは千と千尋の神隠しEDいつもなんどでもです。

『こなごなに砕かれた 鏡の上にも
 新しい景色が 映される♪』

しばらくオフが忙しくなりそうですので
読み専にならせていただきます。
最期に感謝を
WIKI版の管理者様・PAL様
通りすがりの元艦長様
情報協力・取材協力のLSメンバー
そして、読んでくださった方、この版のみなさま
同じ時を共に過ごせて嬉しかったです。
感想等くださった皆様のおかげで
まったり楽しく書くことができました。
ありがとうございました。

250 名前: 通りすがりの元艦長 投稿日: 2003/12/07(日) 09:57 [ GAX2ynnk ]
>249
お疲れさまでした、すてきな物語を有り難うございました。
時間が出来ましたら、またよろしくお願いいたします。

251 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/07(日) 10:03 [ 3JzZ40ug ]
うおおおおおおおおおおおおおお

お疲れ様でした・・・

休日出勤してきてリアルタイムで読めた・・・泣けた・・・

252 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/07(日) 11:04 [ LfpkubDo ]
>249
おつかれさまでした<(_ _)>

3年間寝たきりだと、足の筋肉もおとろえrh カチャ( ゚д゚);y=ー(ノД`)・∵. ターン

253 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/07(日) 11:27 [ lbmE00G6 ]
キモっ

254 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/07(日) 14:42 [ YfoQPq8c ]
雪の彼方オワタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

乙カレーです。実にいい作品でした。
ゆっくり休んでくだされ。




次回作・・・・期待してまつよ(ボソッ

255 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/07(日) 15:33 [ 0QmrfEB2 ]
ついに終わってしまった・゚・(ノ∀`)・゚・
お疲れさまでした!
感動をありがとうですた!!
リアルがんがってくださいヽ(;´д`)ノ

256 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/07(日) 16:11 [ .RiXcIK. ]
ネ兄   完    糸吉   !!!!

ぬおぉぉぉぉぉおん(つД`)これでリノナノも報われた〜〜〜〜
よかった、よかったよぉぉぉ

257 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/07(日) 18:16 [ WR3A4EkM ]
>雪の彼方の作者さん

お疲れ様です。

正直言って、漏れには合わなかったので読んでいませんが、
一つの作品を完結させるには並々ならぬ努力が必要と思います。

リアルの方が落ち着いたらぜひまた書いて下さいねヽ(´ー`)ノ

リアルのあなたに女神の祝福をヽ(´ー`)ノ

258 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/07(日) 19:23 [ mfbjkNdo ]
タル戦がここに現れないのは書き込みできないからでは?・・・と深読みしてみたり

259 名前: PAL 投稿日: 2003/12/07(日) 20:11 [ doAZb92A ]
>>249
雪の彼方の作者様、長い間お疲れさまでした。
毎回次の話が待ち遠しくなるほど面白かったです。
ハッピーエンドでよかった♪
ありがとうございました〜〜〜!!!

P.S.ダルメルにならずにすんだみたいです(笑)

260 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/07(日) 22:33 [ O7sTvrFA ]
>>258
うーん、俺もこの板に引っ越してから書き込み出来なかったんだよね。
かちゅ使いでさ、外部板登録で末尾に"/"入ってるとエラーになるって
知らなくてさ。やっと昨日から書けるようになったよ。
もしかして、と思って書いておくけど、待ってますタル戦。

261 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/08(月) 01:43 [ 3YsqpJu. ]
ついに雪の彼方完結ですね。お疲れさまでした。
次回作(!?)期待してます。

この板とか他のSSサイトの小説見てると、たまに映像が浮かんできて
勝手にオープニングとかエンディング、ハイライトなどが頭の中で構成
されていくんだけど、こんなことないですかね・・・。

惜しむらくはそれを実際にアウトプットすることができないことであるよ(´・ω・`)

262 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/08(月) 03:24 [ PbUvd9ms ]
>>261
俺もオープニングが勝手に頭の中に・・・_| ̄|○

263 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/08(月) 16:25 [ rtCIJVqo ]
>>261-262
おれもおれも!(・ω・)ノ

こうなんかさ、脳内イメージを映像化できる機械できないかなぁ?
お願い!ド〇えも〜ん!!

264 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/08(月) 16:30 [ h5f/eCX6 ]
>雪の彼方の作者様

お疲れ様でした〜!
リノナノ大好きだったよ〜素敵な話をありがとうでした^^
良かったねぇ、リノナノ(つД`)

265 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/08(月) 18:04 [ FwI9JuUQ ]
空に奏でる君の歌が完結・・・・・・

(つД`)

266 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/08(月) 20:55 [ 3YsqpJu. ]
完結しましたね・・・。また一つ応援していた物語が・・・・

タル戦もそろそろ終わるらしいし・・・秋の番組改編ですか。

267 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/09(火) 01:32 [ SNcMGZu6 ]
雪の彼方の作者さんと空に奏でる君の歌の作者さんに惜しみない拍手を。

とくに空に奏でる…の方はここのところ怒涛の更新だったから覚悟はしてたよ。

お疲れ様でした。どうもありがとう。

268 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/09(火) 05:23 [ mKvn2jig ]
|・ω・) 。o(新番ハジメヨウカナ

|・ω・) 。o(カナリパンチ弱い話ダケドネ

|ミ サッ

| 。o(地味スギテヒカナイデネ……

269 名前: 冒険者の憂鬱(1/4) 投稿日: 2003/12/09(火) 06:36 [ mKvn2jig ]
私は一匹の羽虫である。
安らぐ点を求める羽虫である。

私には対になった羽があり
脚があり、背があり、腹があり
一点の欠損も無い。

私は偶に休む。
偶に飛び立ち、偶に嘶く。

虹色に輝く朝露。緑色に沈む森林。
そのような物を追い求める。

だが私は私が羽虫故、それらに気付くことは無い。

____________________
一。 ミスラとキリギリス

 私の目の前に3羽の雌鳥が輪を描き、騒ぎ立てている。
 一羽目の雌鳥は桃色の羽を持つ。
自分の体験が、いかに素晴らしい事かを誇示するように、
大きく羽を広げたり、閉じたりを繰り返している。
 二羽目の雌鳥は赤色の羽を持つ。
その雌鳥の話を聞き、うなずき、笑い、そして大きく驚く。
 三羽目の雌鳥は金色の羽を持つ。
二人のやり取りを見つめ、目を細めたかと思うと二人の間に割って入り、
桃色の羽の雌鳥に対し冷たい言葉を投げかける。
 さしもの私は止まり木であろうか。
私の場所は三羽の中には在らず。また、私は四羽目にも在らず。
ただ、位置は中心に在る。

 ジュノの下層。人通りが穏やかになっている隅での光景。
近頃は良く見られる何気ない日常の一コマだ。
そして、私自身にとっても幾度も見てきた光景である。
 私はその見慣れた光景をぼーっと眺めながら
(女三人集まれば姦しい……か。……ミスラ三人ならそれも数倍だな。)
等という感慨を、いつも通りに思い浮かべた。
「……ってわたしの話きいてるのぉ?」
「聞いてますよ。で、その内藤さんがどうしたのですか?」
彼女は繭に皺を寄せ、しげしげと私の顔を覗き込む。
彼女の桃色の髪が風に揺れている。
「……あまり険しい表情してると皺になっちゃいますよ。」
私は自分の眉間を指差しながらそう言った。

270 名前: 冒険者の憂鬱(2/4) 投稿日: 2003/12/09(火) 06:38 [ mKvn2jig ]
 LSOという者は道化である。とよく評されるが、
実際自分がLSOとしてこのLSを見守って来て、つくづくそう思うようになった。
(まぁ、道化というには愚痴や泣き言が多すぎるか。……私もまだまだ未熟なんだな。)
空を見上げる。
白い雲が流れている。
今は楽しい。だが楽しければ楽しい程、どこか空しさがある。
何かを成し遂げなければならない。
等と言う得体の知れぬ不安感や責任感が常に付きまとっているからであろうか。
それとも、本心では現状を満足していないからであろうか。
「……大丈夫ですか?顔色が悪いですよ。」
小声で私に耳打ちするのは、赤髪のミスラだ。
「大丈夫ですよ。」
「そうですか……なら、良いのですが。」
にっこり。
……まったく、彼女には救われてばかりだな。
「……あまり険しい表情してると皺になっちゃいますよ。」
私は自分の眉間を指差しながら再びそう言った。

271 名前: 冒険者の憂鬱(3/4) 投稿日: 2003/12/09(火) 06:41 [ mKvn2jig ]
「お久しぶりですー!!」
突然の声に驚き、振り返る。
「うっわ。まだ生きてたんですね。」
「!!?なによその言いぐさわっ!?」
立ち上がり、彼女を見据える。
「おかえりなさい。」

 彼女は創立時のメンバーの一人。彼女もまたミスラである。
どうやら放浪癖のようなものがあるらしく、度々行方を眩ます。
最初に姿を眩ませた時には本当に心配したものだが、
流石に二度目、三度目となるとそれほどの心配は無い。
はずなのだが

「……ただいま。」
お互い顔は直視しない。見られたくないものがそこにあるからだろう。
「はじめまして、こんにちは。」
笑顔で堰を切ったのは赤髪のミスラである。
「こんにちはー。はじめましてー。」
他の二人も次いで挨拶を交わす。
「うっわ何何?!新しいLSの人?!……三人ともそう?」
「新しくもないですけどね。」
「……そっか、だよね。半年以上居なかったもんね……。」
「……てゆっか何でミスラばっか三人も?」
彼女は繭に皺を寄せ、しげしげと私の顔を覗き込む。
「……あまり険しい表情してると皺になっちゃいますよ。」
私は自分の眉間を指差しながら本日三度目の台詞を言った。

272 名前: 冒険者の憂鬱(4/4) 投稿日: 2003/12/09(火) 06:50 [ mKvn2jig ]
しかし、流石ミスラ同士、なのであろうか。
彼女はあっと言う間に三人の輪の中に入り込み、打ち解けあっていた。
「お噂は予々聞いております。」「一体何て聞いてるのさ……。」
「ネタの伝道師?」「ソレ、ネタの本家のアンタにだけは言われたくないから……。」
「はいはーい。半年の間何やってたんですかぁ?」「ソレNG!」
「どうせエルヴァーンの男でもおっかけてたんでしょ。」「煩い。黙れ。」

話は弾み、刻々と時は進む。
一人去り、二人去り。
やがて二人きりになると、彼女がボソリと呟いた。
「……随分差をつけられちゃったね……。」
彼女の服装が居なくなる前と同じ事に気が付く。
違いといえば、前より汚れ、痛んでいるという事だ。
「何、私なんて直ぐ追い付きますよ。」

「というか、いつも皆に抜かれてしまっています。」
両手を挙げて見せる。
すると彼女はじっと私の目を見る。
「うん。頑張って追い付くよ。」

「急いで、無理はせずに。適当に頑張って追い付いて下さい。」
「……無茶イウナ。」

まぁ、落ち込んだ時こそ天は何かを用意するものなのか、思わぬ懐かしい出会いがあった。
このような偶然と、友情が続く限り。
私の冒険は続きそうだ。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|・ω・)。o(起承転結ノナイ話デゴメンネ

|ミ

273 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/09(火) 11:23 [ PPhH5yEY ]
ぐっじょぶ
オーナー色魔ね

274 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/09(火) 14:01 [ RvGKd7X. ]
新作者キタ――――(゚∀゚)――――――!!
GJ!(・∀・)b
でも主人公の種族がわからない・・虫?w

275 名前: 秘密のおはなし0 投稿日: 2003/12/09(火) 21:39 [ 4QwzGLag ]
とりあえず、読みきり短編です。
(書いてる前に、とっとと続き書け! っていうのはもっともですが……)

まあ、なんですか……
ちょっと「甘甘」な話書いてみたかったんだよ〜;;
というわけで、「少女マンガちっく」なのが苦手な方々、ご注意ください<m(__)m>

楽しんでいただけましたら幸いということでよろです!

276 名前: 秘密のおはなし1 投稿日: 2003/12/09(火) 21:40 [ 4QwzGLag ]
「秘密のおはなし」

『星降る丘の大樹。
 そこでゆっくりと空を見上げる。
 それが今の一番の願い事』



 彼の朝一番の仕事は、水の区の出口までの見送り。
「本当にきをつけてね」
「うん、大丈夫だよ」
 小さな二人がお互いを見詰め合う。
「そっちもお仕事がんばって」
「ありがと。……帰りはまた明後日?」
「かなぁ。遅くても4日後には戻ってくる予定」
「じゃ、待ってるね」
「うん。おいしい物期待しているから」
「了解! 楽しみにしてるね」
 そうして彼は背負い袋を手にする。
 笑顔で相手を振り返り、いつものように手を振った。

277 名前: 秘密のおはなし2 投稿日: 2003/12/09(火) 21:40 [ 4QwzGLag ]
 西サルタバルタのギデアス方面に彼は向かう。
 そこが仕事場でもあった。
 きょろきょろと見回して、手ごろな草場を探し出す。
 そして近づくと、今度は一つ一つの草を見聞しはじめた。
「あ! モコ草」
 見慣れた草を見つけて、嬉しそうに背負い袋から草刈鎌を取り出す。
 ざっくざっくの音とともに、モコ草がとれた。
 見ると近くに珍しい薬草も見える。
「ヘンルーダだ!」
 丁寧にまた刈りはじめた。


 彼女は見送りが終わると、調理師ギルドへと向かう。
 なけなしのお金を元手に冒険者用に食料をつくる。
 幸いにして、昨夜はリンゴがとれた。
 パイをつくり、ジュースをつくり、それを随時売り出すことを心に決めた。
「おいしくできますように」
 にっこり微笑みながら、彼女はいそいそと調理にとりかかる。
 それが彼女の毎日でもあった。

278 名前: 秘密のおはなし3 投稿日: 2003/12/09(火) 21:41 [ 4QwzGLag ]
>>>>>>>>

「本当においしいご飯だね」
「ふふ、ありがとう」
「僕、こんなにおいしいもの毎日食べられるなんて幸せ」
「私もおいしそうに食べてくれる人がいてくれて幸せよ」
 二人は顔を見合わせて微笑む。
 いつの頃からか、食事を一緒に採るようになった二人。
 お互いが傍にいることをとても幸せに思った。
 だからこそ、どちらかでもなく、それは告げられた。
「ずっと一緒にいようね」
「うん、もちろん」
 自分の幸せももちろん、相手の幸せも願う。
 そんな時間がとても嬉しかった。


 自然と結婚することを意識した二人。
 至極当然に、結婚式をしたいと思った。
「結婚式したいね」
「そうだね。でも、8万ギルでしょ」
「うん。そうなんだよね」
「貯めないと……」
「そうだね、今、1万ギルしかないし」
「私は1万5000ギル」
「あれ、貯まったんだ」
「栽培で霊芝できたから、冒険者さんに買い取ってもらえたの」
 花のようにほころぶ笑顔を彼女は見せた。
「僕もがんばらないと」
「私もがんばるね」
 そして二人は指きりを交わす。

279 名前: 秘密のおはなし4 投稿日: 2003/12/09(火) 21:42 [ 4QwzGLag ]
>>>>>
 それから3ヶ月後―――
 ようやく目標額に届く頃のこと。
「大変! お願い、助けて!」
 血相を変えた彼女の様子に、ひどく驚いて、
「どうしたの?」
「あのね、お隣のおばあちゃん一家が病気になっちゃったの」
「え!?」
「お医者様におみせしたら、薬がなければ話にならないとかで」
「お薬、売ってないの?」
「売ってることは売ってるの……」
「なら、すぐ買わないと!」
「でも……」
 何故か不意に口篭もる相手に、彼は訝しく首をかしげた。
「どうしたの?」
「だけど…お金が足りなくて」
「そんなに高いの?」
「うん。冒険者さんにも聞いてみたんだけど、めったに入らないものらしいの」
「いくら?」
「……一つ8000Gくらい」
「おばあちゃんとこは、4人家族だったよね?」
「うん」
「ちょっと待ってて!」
 そうして彼は家へと駆け出した。

280 名前: 秘密のおはなし5 投稿日: 2003/12/09(火) 21:43 [ 4QwzGLag ]
 満月の浮かぶ湖の前で、彼女は落ち込んだように湖面を見つめていた。
「おばあちゃんたち、間に合ってよかったね」
 そんな相手に寄り添うように、彼は屈託なく笑んでいる。
 いつもならそんな笑顔は何よりも嬉しいもののはずなのに、彼女に笑顔は浮かばない。
「僕……余計なことしちゃった?」
 彼女は首を振る。
「何か怒ってる?」
 無言で首を振る。
「おばあさんたちが心配?」
 一瞬だけ考えて、彼女はゆっくりと頷いた。
「お医者様がね、もう大丈夫だよって言っていたよ」
 再び頷いて、彼女は小さな石を湖に放り込んだ。
「怒ってるんじゃないんだよね? 何か困ってるの?」
 湖面の波紋が消えるころ、彼女は瞳いっぱいに涙を浮かべて、小さくこぼした。
「ごめんなさい」
「何が?」
「おばあちゃんたちが大丈夫になったのは嬉しいんだけど……お金、無理しちゃったんでしょ?」
「……うん、結婚式用のお金、使っちゃった」
「あんなに楽しみにしてたのに、ごめんね」
 そろそろ目標額が貯まりそうだから、と二人で招待状の用意もし始めていた。
 緑の葉っぱ模様がついた可愛い手紙。渡すことができなくなった。
「結婚式、のびちゃったけど、平気?」
「あたりまえよ! 私がお願いしたんだもん」
「なら、また二人で貯めればいいよね!」
 無邪気に笑って、彼は彼女の手をとった。

281 名前: 秘密のおはなし6 投稿日: 2003/12/09(火) 21:44 [ 4QwzGLag ]
>>>>>

 いつものように草刈鎌を片手に、西サルタバルタを歩いていると、何故か、モコ草がそこに落ちていた。
「あれ、落し物かなぁ」
 とりあえず手にして、周囲を見る。するとまたモコ草が何故か落ちている。
「まただ」
 駆けつけて、草を手にしてきょろきょろ。
 人の姿がない。ついでに言うなら、いつもおっかけまわされるヤグードの姿もない。
「…落し物、だよね?」
 注意してもう一度きょろきょろする。東の方に、今度は花が一輪落ちている。
「……ヘンルーダだ」
 そんな感じに、てんてんとモコ草やヘンルーダ、ギザールの野菜、ウィンダス茶葉が落ちている。
 とりあえずそれらを手にしながら、彼は東へと進んでいった。
 いつしか丘を登るはめになり、地面から顔をあげると、天をも貫くかのような大樹。
「うわぁ」
 ぽかんと口を開けたまま、見上げていた。


 日は暮れて、辺りが藍色に染まる頃、空には煌びやかな星が瞬いた。
「びっくりしたよ」
 大樹の根元に座る影が二つ。慎ましやかに寄り添うようにして、空を見上げている。
「それは良かったわ」
 いたずらっ子のように、微笑む彼女。
 手にした籠には、モコ草やらヘンルーダやら、たくさんの草。
「覚えていてくれたんだ」
「もちろん。あなたのことなら何でも覚えているわ」
「僕も君のことならなんでも覚えているよ」
「それならもしかしたら、私たち、お互いのことのほうがよく覚えているかもね」
「そうかもしれないね!」
 二人は顔を見合わせて微笑むと、再び星空を見上げた。
 流れ星が一つ、二つと流れていく。
 幸せをかみ締めながら、静かによりそっていた。


              <終わり>

282 名前: 秘密のおはなし7? 投稿日: 2003/12/09(火) 21:45 [ 4QwzGLag ]
【おまけ1】

「でも、よくヤグードとか倒せたね」
「倒せるわけないじゃない」
「え? でも、全然モンスターいなかったけど」
「ああ、なじみの冒険者さんにお願いしたの」
「そうなんだ」
「甘いもの好きの冒険者さんでね。
 私の話に感銘受けてくれたらしく、快く引き受けてくれたわ」
「……話している最中、その人、なにか食べた?」
「ええ、私の得意料理のおせんべいを食べてもらったわ」


【おまけ2】

「あ、拾ったモコ草、返すね」
「ううん。いらない」
「いらないの? じゃ僕がもらっちゃうよ」
「うん。そうして」
「それにしても、あんなにたくさんのモコ草、よく集まったね」
「集めてなんかないわ」
「買ったの?」
「ううん。あなたの家に貯めてあったのを借りたの」
「え?!」


                <本当におしまい>

283 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/09(火) 21:53 [ BLk28bo2 ]
し…幸せなんだろうけど、深読みするとなんだか不幸な話なのかも…と
ちょっと思ったり。ま、他人様の人生だが。

284 名前: 秘密のおはなし 投稿日: 2003/12/09(火) 21:54 [ 4QwzGLag ]
ぎゃぁ、間違えていたぁ;;

------------
彼の朝一番の仕事は、水の区の出口までの見送り。
⇒ 彼女の朝一番の仕事は

「了解! 楽しみにしてるね」
⇒「了解! 楽しみにしててね」

です……
脳内補完よろです(><)

285 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/10(水) 19:26 [ 0uqBcpdg ]
空に奏でるさんのとこで新シリーズが始まりましたな

286 名前: 白き探求者・作者 投稿日: 2003/12/10(水) 21:08 [ vEYe3RPQ ]
新作 33話をUPしましたー!

ttp://www.miracle-key.gr.jp/white/ ←こちらからどうぞん

語り終えた歌い手に惜しみない拍手と喝采を!
新たな綴り手に歓迎の抱擁を!
『涙たちの物語』サイコー!!!ウハ――――!!

287 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/11(木) 12:33 [ ADJJZA6M ]
下がりすぎだと思うので
悪いけど、ageますね

288 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/11(木) 12:54 [ mJkO.oH. ]
あのさ・・・
引き際って言葉は知ってますか?
そろそろ止めた方がいいよ
見ていて痛々しいし

289 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/11(木) 13:03 [ BNQuIGZ. ]
誤爆?

290 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/11(木) 16:39 [ UZMNCLS. ]
スルーパス

291 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/12(金) 01:09 [ QR8rNLZ. ]
・・・・・久しぶりに覗いてみたら応援してた物語が2つも完結してる。。
作者さん、御疲れ様でした。

292 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/12(金) 04:12 [ gw5TuXus ]
タル戦こねぇな。。。

293 名前: (1/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:12 [ 1l0soC7E ]
私は一匹の羽虫である。
気まぐれに生きる羽虫である。

私には共に飛ぶ仲間がいる。
輝きを放つ者。鋭い鎌を持つ者。
美しい声で鳴く者。日の陰りを好む者。

私は彼等と語る。
幸せ、楽しさ、悲しみ、怒り、辛さ。

遠くの国の出来事や、昨日出会った者の事。
そのような話を語り合う。

私は幸運である。
だが、今はそれにすら気付いていない。

____________________
二。 無謀な金策(分の悪い博打)

 LS(リンクシェル)と言うものは様々な用途によって作られている。
あるLSは、未だ見ぬ財宝を目指し、その名を轟かせる為に作られた。
あるLSは、冒険者達の間で流行しているスポーツを行う為に作られた。
あるLSは、職人達の取り引きを円滑に行う為に作られた。
あるLSは、自国の繁栄を願う者達が集まり、作られた。
あるLSは、助け合い、自分達が生きて行く為に作られた。
私達のLSは、その、どれでもなく……。

294 名前: (2/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:14 [ 1l0soC7E ]
 『お金がない!』
沈黙を破るようにして、そんな言葉がパールから響く。
『あらら……。』
直ぐ様に別の者が相づちをうつ。
この話題は定期的に出る。
なぜなら金策は、冒険者達が立ち向わなければならない3つの問題のうちの一つだからだ。
「うーん。私は伐採とか採掘とかして生計を立てていますねぇ……。」
『私も採掘をよくしています。』
『うーん……つるはし買うお金が……。』
『あらら……。』
「貴方ならジャグナーで虎辺りを狩れば良いのではないでしょうか?キノコとか。」
『お金稼ぎは大変ですよね……私はいつも虎を狩っています……。フフフ……。』
『やっぱそれかなぁ。』
「クゥダフ族の背甲も、まだ、結構売れますよ。あと、ゴブリン達の鎧とか。」
「ま、追いはぎみたいですけどね。」
『あはは、ですね。』
『うーん。』
『NMでも狩ったらどうかしら?』
『私で勝てるようなのが居ればね!』
『それもそうね。』
『……ムカツク。』
「それじゃ、とっておきのを一つ、教えましょう。」
『とっておき?』
「ええ、さほど効率はよろしくないのですが、確実に安定して儲かる事が出来ます。
ライバルも居ませんし。」
『ほうほう。』
「まずですね。パシュワウで……。」

295 名前: (3/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:17 [ 1l0soC7E ]
『そういえばネネさんも金策に困っているのでは?』
『ふっふっふ。私はもう大丈夫でーす。』
『おお……力強い言葉……。』
『そーですよーネネのお金持ちだいさーくせんですよー。』
『馬鹿?』
『な、何いきなりひどいですー。』
『ほほ、ウザイテンションでしたのでつい。』
いつも通りの無茶苦茶なやりとりに笑い声が起る。これが日常だ。
『その作戦って何ですか?』
『うむ、よくぞ聞いてくれました!』
『さぞかし凄い方法なんでしょうね。』
『……なーんか毒入ってない?』
『勿体ぶらずにはよ言えや。』
『ハイハイ……えっとここに取り出しましたるわ一個のオーブです。』
『オーブですか?』
『うん、……ほらほら、前に皆で挑戦したじゃない。あれの種類の違う奴?』
「いや、聞かれても。」
『違う奴!』
『ああ、わかった、挑戦権を売るとかだ。』
『ブブブブブー。ちがいまーす。』
『いいから一発殴らせろ。』
『うはわhkjfj;……だんだん口調も乱暴になってますよ?!』
『あら……わたくしとした事が……。』

296 名前: (4/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:21 [ 1l0soC7E ]
☆ネネのお金持ち大作戦(痛)☆
(痛)って……。

『良いから早く説明して。』

ハイハイ。
えっとまず、例のおじさんに50枚の獣人印章を支払って、オーブと交換してもらいます。
そしたら、そのオーブをギデアスの祭壇に設置します。

『……って、あれって化物が封印されたオーブなんじゃ……。』

そうですよー。

『貴方じゃかなわないんじゃなくって?』

ふふふ、でも大丈夫なんです。

『私、知っているかもしれません……。』

えとですね、封印を解くと3つの宝箱が現れます。

『……やっぱり……。』

おお、では本当にご存じなんですねー。
3つの宝箱のうち、一つが正解の箱で、開けると財宝がザックザク!

『おお……。』
『……。』

『ちょっとまって、正解を外したらどうなるの?』

さぁ?

『さぁって……。』

大丈夫ですよー。悪運は強いですし、もし外したとしても魔法で逃げます!

『逃げるって事は?』

『……外れはミミックなんです。それも、とても強い……。』

297 名前: (5/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:22 [ 1l0soC7E ]
『あれから結局向かったみたいですけど大丈夫でしょうか……?』
「うーん……。」
『止めても聞かない方ですからね。』
『私、言い過ぎたのでしょうか……。』
「いやぁ、そんなことないですよ。」
『そうでしょうか……。』
「ま、あれでも数多くの危機を乗り越えたそれなりに熟練の冒険者ですし、大丈夫ですよ。」
『はい……。』
「適当に上手くやるでしょう。転送の魔法も心得ていますしね。」
『……なるほど、少し安心してきました。』「いつも心配しすぎです。」
『……はい。』
「よろしい。」

『でも行くんでしょ?』
「へ?」
『お気をつけて。』
「え?」
『頑張れー。』
「ちょ、ちょっと。」
『頑張って下さい……。』
「あのー?」
『……あ……団長さん……。』

『……有り難う御座います。』
「え、え、え?」

『ウィンダス行きの飛空挺のアナウンスが聴こえてるよ。』

「……まぁ、そゆ事もありますよね。」

298 名前: (6/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:26 [ 1l0soC7E ]
 ギデアスは獣人ヤグード達がサルタバルタの外れに築き上げた、居住区である。

(みんな馬鹿にしたみたいに言って。)

当然、中にはヤグード族が大勢待ち構えている訳だが、
ネネがそれを恐れる事は無かった。
実際、ヤグード達は一見無防備な彼女を襲おうとはせずに、
憎々しげな目で見つめるだけである。
ここに居る者は戦闘に不馴れな者が多く、そして、そのような自分達が、
彼女にはかなわないと理解しているからだ。

(私だってそれなりに考えてるのにさ。)

とはいってもやはり油断は禁物である。
ほんの一瞬の隙を見せたせいで散った勇者は数多く居たし、
大勢のヤグードに囲まれたら、いくら名高い勇者といえどもひとたまりも無い。

(まぁいいや、いっちょ見返してやるかー。)

やがて、祭壇の入り口まで来ると、彼女の目の前には一人のヤグードが立ちふさがっていた。

「キサマ、ココニイッタイナンノヨウダ。」
「別になんでもいーでしょ。そこを退いて頂戴。」
「ギャギャギャ!キサマニシタガウホド、フヌケデハナイワ!」

ヤグードの僧兵と思われるその者は、言うなりに彼女目掛けて蹴激を放った。

____________________

(ウィンダスへ帰って来るのも久しぶりですね。)
無事にウィンダスへついた私は、彼女を追うために港から森の区へと急いだ。
森の区にはチョコボがある。
もし、彼女に追い付けなかった場合、もし無事ならすぐに連絡があるだろうし、
無事で無ければ……。
取りあえず目的地に行く事が先決である。

(ああ、太陽がまぶしい……。)
真上に登った太陽の光を遮るように、手を額に当てた。

299 名前: (7/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:30 [ 1l0soC7E ]
 「てて……口切っちゃったじゃないのさ。」
集中し、力を体の奥から絞り出すように集め、呪文を唱える。
癒しの魔法だ。
彼女が光に包まれたかと思うと、口から流れ出ていた血が止まり、
脚についていた痣がみるみるうちに消えていく。
「これでよし。ちょっと休んでから行くかな。」
彼女はそう、独り言を言うと(普段パールを付けている癖で独り言が多くなっている。)、
祭壇の手前でかが見込む。

(うー……緊張してきたー。)

いや、緊張ではない。
期待感と好奇心とでも言うのだろうか、
今すぐにでも立ち上がり、突入したい気分であった。

(行くか?取りあえず<転送>と<岩肌>と<分身>は使えるな。)
(おおっと、<防御>と<奇跡>は先にやっておかないと……。)

立ち上がり、魔法を唱えはじめる。


「ぎゃぎゃぎゃ!イケニエを見つけたぎゃーっ!」
「敵?!」
彼女は慌てて呪文を中断し、ハンマーを構えながら後ろを振り向いた。

「こんにちは。」

彼女はにこやかな笑顔で、ソレを構えたままこちらへ近付いてくる。
「じょ、冗談ですよ冗談!?」
「私も冗談よ。」

……目が笑っていない訳だが。

「な、ならソレをしまって下さい。」
「あ、ごめんごめん。」
言いながらわざとらしくソレを振り回し、腰におさめる。

(変な読み物流行ってから、こーゆー白魔道士増えたなー……。)

「で、何の用かな?」
「見学です。」

「……そう。」

300 名前: (8/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:32 [ 1l0soC7E ]
「……まぁ、いいわ。それじゃ、もう少し準備するから待ってて。」
ハイハイ。と返事をしつつ、取りあえず間に合った事を誰にでも無く感謝した。

「さ、行くよ。」
「はいはい。」
「……私より団長の方がなめてると思うわ。絶対。」
「何か?」
「いいやなんでもー。」

彼女が祭壇にオーブを置く。
するとオーブが輝きと共にひび割れた!
「ま、三度目の光景ですけどね。」
「何が?」
「いいや、なんでもありません。それより早く、祭壇の中心に。」
「わかってるって……深呼吸ぐらいさせてよ。」
彼女は大きくひと呼吸すると、祭壇へと一歩踏み出す。
私もそれに続く。
一瞬空間が歪んだ時の奇妙な感覚に襲われると、そこは開けた空間になっていた。

「あれですね……。」
中心に箱が3つ。
ご丁寧に大きさが3つ共違う。
「ああ、そういえばウィンダス……タルタルに伝わる民話で聞いた事があります。
小さな箱と中くらいの箱と大きな箱の話……。」
「へー、どんな話?」
「欲を出した者が身を滅ぼす話ですよ。」
「……そっか。」
彼女にはもう、こちらの声は届いてはいないようだ。

「真ん中の箱にしますかー。」
「何故です?」
「道に迷ったら真ん中を歩けと教えられましたー。」
「はは、なるほど。」
彼女はおもむろに真ん中の箱に近付くと、また、深呼吸をする。

「てやっ!」
かけ声と共に箱を蹴り飛ばした!
箱の蓋が跳ね上がると共に、両隣りの箱が宙に消え去る!

301 名前: (9/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:34 [ 1l0soC7E ]
『……で、結局どうなったの?』
『当たりだった……。』
『おお!凄いじゃないのさ!』
『で、中身は何でしたか?』
『……言いたくナイ……。』
「実はね、あれだけ苦労。というか期待して、中身が……。」
『わーわーわーもうやめてやめて!』
「ミスリルの延べ棒一個と、4000ギルぐらい?と、あと指輪です。」
『しょぼ……。』
『その指輪というのはどんな物なんですか?』
『……鑑定してもらったら、テイマーリングだってさ。』
『テイマーリング?』
『そ……獣使いの力をより引き出す為の指輪だってぇ……。』
『へぇ、面白いじゃん。』
『今丁度競売の前にいるんだけど……。』
『……ソレ以上イワナイデ……。』

「ま、当たりだっただけでも良いじゃないですか。」
『……ソダネ。』
『そうですよ。無事で何よりです。』

『いっその事獣使いでも目指そうかな……。』

『『『頑張れ』ね』さい。』

『そんなみんなでハモらなくても……。』


世の中えてしてそういうものである。
そう、再認識した出来事であった。

302 名前: (10/10) 投稿日: 2003/12/12(金) 10:44 [ 1l0soC7E ]
 後日。
『わたくしも行ってきましたわ。』
『ええ!本当?!』
『<再生2>を手に入れました。』
『何それー!』
『やっぱ日頃の行いの違いかしらね。』
『ありえなーい!』
『私なんて……ミミックで死ぬかと思いましたよ……。』
『行ったのですか?!』
「み、みんな無茶しすぎです……。」
『ほほ、貴方みたいに獣使いをやる事にはなりませんでしたわ。』
『私は好きでやってるの!やってみると結構楽しいんだから……。』
「……あんま無茶しないでくださいね。皆さん……。」
『はい……。』『はーい。』『はいはい。』『……。』

いつも私は、こんな時、空を見上げてこう言う。
「太陽がまぶしいな……。」

『『『は?』』』

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|・ω・)。o(パシュワウの金策は修正されました。
|・ω・)。o(ギデアス50BCは楽しいので余裕があったら行ってみて下さい。
|ミ
|。o(オーナーの主観でオーナーの活躍(?)書いてると、何だかオーナー、ナルシストみたいですね。

303 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/12(金) 12:50 [ gr3js77c ]
1l0soC7Eさん、すまん
何書いてるのか分からんので、もう少し簡潔に分かり易く
書いてもらえると助かります

304 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/12(金) 13:49 [ ru6HXHQk ]
私はなんか好きなんだけど(・ω・)こういうの

305 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/12(金) 14:00 [ CvSkGfno ]
BCやアイテムがどんなものかを知らない人にとっては、
何の話をしているのか分からないということでしょう。

306 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/12(金) 14:15 [ y7USpSmo ]
と言うか物語なのかLS会話の写しなのか

307 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/12(金) 16:47 [ lEpOjiOw ]
|ω・)<空に奏でるの人が新しい物語を書いてるのは既出?

|ミ

308 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/12(金) 17:38 [ 1l0soC7E ]
|・ω・)。o(>>305説明は極力省くのと、読み手がFFをある程度やっている事を前提として書いています。
|・ω・)。o(私の判断した最低限の説明と、映像の描写はされてるのでご容赦を。後は文中から想像してください。
|・ω・)。o(>>306LS会話がテーマだったのですが、動きが無くなってしまいましたね。もっと工夫しないと。
|・ω・)。o(今後も「今日ヴァナであった出来事」な話になると思います。
|・ω・)。o(剣と魔法で大活躍とか、愛と感動の嵐な展開は…(ノ∀`)
|ミ
|。o(こうやってレスしちゃう辺りが小市民。

309 名前: 投稿日: 2003/12/12(金) 17:42 [ wgpTOfnc ]
「プロローグ」

赤茶けた大地、タロンギ。
一年中強い風が渦巻き、砂塵が容赦なく旅人を襲う、乾いた土地。

その日は普段より風の強い日だった。
上空は雲もなく、蒼い。
しかし、地上は強風に巻き上げられた砂のせいで赤く見えるほどだ。
そんな中をゆるゆると進む影がある。
それは、一騎のチョコボだった。
普段は風のように駆ける彼らも、この天候では半ば目を閉じ、手ならぬ足探りで進
むしか無いようである。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・・。
よくよく目を凝らして見てみると、その騎上にも小さな影があった。
ヒュームの子供であろうか?
いや、外套から伸び手綱を握るその手は、ヒュームの子供にしても丸く小さ過ぎる
・・・。
ふいにふいた暴風に、はためくフードからこれまた丸い頭部が覗いた。


彼はタルタルだった。

310 名前: 投稿日: 2003/12/12(金) 17:53 [ wgpTOfnc ]
彼らは聡明なことで知られる一族だ。
だが、身体は小さく、肉体的には女神アルタナの産み落とした種族の中でもっとも
貧弱である。
強風の中、彼はその小さな身体を吹き飛ばされないよう、半ばチョコボにしがみつ
くように騎乗しなければならないようだった。



(うううぅぅぅ)
砂が口の中に入りじゃりじゃりする。
口の中だけではない、髪も、服の中も、靴の中にも砂が入り込んでいる。
(まいったなぁ。)
タロンギは何度も通ったことがあるが、こんなことははじめてである。
昨日ジュノを出たときに聞いた天気予報では、タロンギはしばらく晴天と言うこと
だった。
(確かに天気はいいけどさ・・・。)
見上げれば、確かに青い空が見える。
だが、地上ははるかアルテパ砂漠で巻き起こるという竜巻もかくや、と言うような
砂嵐である。
パシュハウの沼地でも、メリファトの岩山でも問題なく駆け抜けるチョコボも、さ
すがにこの天候は苦手なようだ。
(サルタバルタにたどり着く前に、チョコボが根をあげちゃうかな・・・。)
彼はそう思い始めていた。

311 名前: 投稿日: 2003/12/12(金) 17:54 [ wgpTOfnc ]
夕闇がせまり始めた頃。
ふいにチョコボが足を止めた。
(・・・・?)
恐る恐る、砂が入らないよう目を開けてみる。
足元に、砂に埋もれかけた黒っぽい何かがある。
チョコボはそれを気にして、口ばしでつついていた。
どうやら、それは布地らしい。
(う・・・・)
布地には、タロンギの砂の色とは異なる赤が滲んでいる。
盛り上がった砂に埋もれた部分から想像するに、それは地面に横たわる人の背中の
ようだ。
(ゴブリンにでもやられたか・・・・う〜〜ナンマンダブナンマンダブ・・・・)
かわいそうだが、この砂嵐だと墓を作っている間に自分も埋まってしまう。
夜になれば、亡霊達も集まってくるかもしれない。
ここに長くとどまることは得策ではない。
(アルタナさん、迷える彼だjか彼女だかを天国に導いてやってくださいな・・・)
自分なりの短い祈りをささげると、チョコボを急かすように手綱を引く。
しかし、チョコボは動かなかった。
「お、おい、どうした?」
死体をほっておくなということ?
それとも、疲れて動けなくなった?
もう一度手綱を引こうとした瞬間。

「う、うう・・・・。」
死体がうめいた。
いや、死体だと思ってた人がうめいた。
驚きすぎて鞍上のタルタルはチョコボから転げ落ちていた。

312 名前: つД`) 投稿日: 2003/12/12(金) 18:02 [ wgpTOfnc ]
替え歌スレに激しく誤爆してはずかしい・・・・(つД`)

以前美化シリーズ書いていた者ですが、ちょっと長編書いてみます。

とぼけた赤タルと、健気なヒュームの少年が主人公のロードムービー風作品を目指します。
筆は遅めですが、がんばって書きますのでよろしくです。

313 名前: 雪の彼方の作中のミウのモデルになった者の関係者(実はマジで) 投稿日: 2003/12/12(金) 18:14 [ ngBx.WZ6 ]
雪の彼方完結 やっと見れたw
実は作者さんからヴァナで普通に紹介されて読み始めましたw
昨夜の○○様お疲れさまでした。最近FF出来なかったので
この場を借りました。
私的には他の人よりも色々ヒント的な事を
聞いていた分、変な深読みをしていたりしましたが
やっぱり予想以上にすばらしくていつも
次回が楽しみでした。
作中に登場したあるキャラ達のモデル様達にも
読ませてあげたい、といつも口に出してしまいそうになっていましたが^^;
今度の新作にも期待しています。

314 名前: 雪の彼方の作中のミウのモデルになった者の関係者(実はマジで) 投稿日: 2003/12/12(金) 18:15 [ ngBx.WZ6 ]
昨夜→作者

恥ずかしい><;

315 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/12(金) 22:48 [ 1b.Q16Ho ]
つまらん事であげんなよ。
「雪の彼方」は好きな話だし、ここ覗くのも楽しみなんだけど
お前みたいのがたまに出没してきて、気分害されてしまう。

316 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 00:51 [ 5G19699Y ]
まあ、作者も、それを取り巻く人たちも人間なんだ、
こういう側面があってもいいじゃないか。この文見てるとsage方知らんっぽいしな。

…ウチの鯖はどれかの作者いないのか…などと考えながら俺はタル戦を待ち続ける…。

317 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 00:55 [ 5OkV6Y8k ]
モデルとかそりゃいるだろうけど
できればモデルとか、そんなのを見たくない

とかわがままいってみるテスツ(´・ω・`)

318 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 01:22 [ tRxlUF8k ]
ま、この程度だと微笑ましいけどな。うれしい気持ちがちょっと空回りしてるだけだろ。

319 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 02:05 [ 0kmp5jWk ]
>293-302
長いばかりでつまらない。こりゃ小説じゃないよ。ただの日記。
スレ間違えてるんでないか?

320 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 02:49 [ /AkqwCWU ]
モデルになった人の関係者って、思い切り関係ないんとちゃうの?
てか、ただの部外者じゃん。
だからどーした、としか思わんが、唐突だな。
まるでいきなり時の人になったら周りの人間が臆面なくインタビューに
しゃしゃりでてきたような感じだw

321 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 04:31 [ 2Sct1v/g ]
タル戦早くこないかな。
空に奏でる〜の次の話あんまおもろないし、読むものがない。

322 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 05:38 [ 9piQ/4L6 ]
狩人を出せ狩人を。

323 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 09:02 [ NUT/TlX2 ]
>>319
それを面白いと思う人もいる
感じ方は人それぞれだろう?
見たくないなら見なきゃいいだろうに・・

324 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 09:33 [ IhYzQn86 ]
改めて他の作品を見直してみるとマジ面白いよな。
タル戦も雪の彼方も読み出したら止まらんしすごいボリューム。
まあ、白き〜はボリュームがある反面印刷しようとしたら紙もインクも足りなくなったガナ。
モニターであの長さ読むのは苦痛だ。

つーかさ、本になんないでつか。『涙たちの物語』は

325 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 10:24 [ /AkqwCWU ]
>>323
俺は読み飛ばしたクチだが
一応読み直してみると>319に同意。
またつまらんものをずらずら書かれたらたまらんしな。

面白いだけが感想じゃあるまい。
マンセーするだけじゃ作者も書き甲斐がないっしょ。
面白くないもの書いたらちゃんと言われる、てのは
大事なことだと思うがね。

326 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 11:51 [ QlxLyxOA ]
>>1l0soC7E
もう少し描写増やしてみたら?
読んだ感じだと、台詞だけの台本読んでいるような
そんな印象。

主人公?以外は全部ミスラだし、
書いている人の中ではキャラが立っていても、
読む人にとってはキャラを立たせる描写を
もう少し増やして貰わないと見分けにくい。

うるさく言ってスマソ。
せっかく書いたんだし、よくするにはどうすれば?
って足りない脳みそで考えてみた。
がんがれ。

327 名前: 313 投稿日: 2003/12/13(土) 11:56 [ yOq/Wp3k ]
作者様と時間の都合でなかなか会えなかったので
この場を借りてしまったのですが
とても場違いでしたね。
気分を害してしまった方、申し訳ありませんでした。

328 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 11:56 [ tRxlUF8k ]
前も同じことを言ったが「つまらん」「面白くない」は批評じゃないぞ。
あ、感想なのか。「おもろない」なんて感想みてもこっちもおもろない。
ここら辺をこうすればもっと良くなるzeみたいな感想プリーズ。無理だろうけど。

329 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 15:35 [ pIhaCJIg ]
>>328
ここら辺をどうとか言うのはむしろ批評では?
どんな感想も感想ではある。スルーされるよりはマシかと。
てか、そういうレスがついたら二度と書かれかなった作者さんいるからなあ。

330 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 16:29 [ wxq7zUPQ ]
つまらんの一言で済まさずに、どこをどうすればいいみたいなことも一緒に書けばいいだけジャマイカ。

331 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 18:25 [ vnpzeXJU ]
セリフの連続ってのも、面白いと思うんだけどなぁ。
読んでてリズムいいし。
ただ、キャラの名前があまり出てこないから、
セリフだけだと一部区別がしずらい部分があるです。
だからって『○○は〜』って名前を連呼するのでなく、
もうちょい口調に特色を出せば読みやすくなるんじゃない?

あと、「 」で区切ったセリフ以外の文にも、
「○○がどうした」だけじゃなく、心情とかの独白混ぜるとか。


思いつく限り書いてみたけど、こんな感じでいいのかな(´・ω・`)
個人的には好きだから、凹まずにがんがって欲しい。

332 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 19:44 [ 6qx6xqP6 ]
誰の話?

333 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 20:37 [ .muY7Ic2 ]
>>332
ビー!ビー!イイIDだな!

334 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/13(土) 21:01 [ R8OeqnvQ ]
ちょっと遅いけど、リノナノ完結おめでとうございます。
リノナノはいい仲間を持って、強くなったよねー。
定期的に書き込んでくれた作者さんに感謝。そしてお疲れ様。
いつか次回作を読めることを楽しみにしています。

335 名前: 1/1 投稿日: 2003/12/14(日) 10:37 [ Z.FcCPhM ]
にゅぅにゅぅ。
アタシはウインダス生まれのミスラ。
まだ小さいケド、冒険者なのにゃ。

ててん、てん、てん!

「むかしむかしの、お話なのにゃ。
アタシは助けたカメにつれられて、竜宮城にきてみたのにゃ。
絵にもかけない美しさなのにゃ。」

「ようこそ、竜宮城へ。私は竜宮城の乙姫です。
この度はウチのクゥダフがお世話に・・・。」
「挨拶は、いらないのにゃ。」

「あ、はい。そうですね。
では、キュスやイエローグローブの舞い踊りを・・・。」
「それも、いらないのにゃ。」

「え?では・・・。はっ!もしや、私の・・・。ポッ!
いや〜ん!は、恥ずかしい!あ、あ〜ん!でも、でもぉ・・・。
コホン。わ、わかりました。
で、では、あちらの部屋で、生まれたままの私の姿を・・・。」
「にゃ?なんだか、よくわからにゃいけど、
それも、いらないのにゃ。」

「え?!ち、違うのですか?では、なにを?」
「にゃ。アタシ、知ってるのにゃ。
ここは時間の流れが遅いのにゃ。
ここにいたら、アタシはアッという間にウラシマンなのにゃ。
だから、とっととお土産もらって、帰るのにゃ。」

「あ・・・。そうですか。」
「そうにゃ。とっととお土産だすにゃ。」

「はい、はい。では、こちらの空けてはいけない玉手箱を・・・。」
「ふにゃ〜?他のモノがイイのにゃ〜。」

「う・・・。そうですか・・・。
では、こちらをアナタに差し上げましょう!」
「にゃ!そ、それは『大長編 ミスラ譚! 探険ホルトト』なのにゃ!」

「はい。これは、この竜宮城の秘宝なのですが、特別に・・・。」
「いらないにゃ。もう、帰るにゃ。」

「え〜!そんな、ちょっと待ってよぉ!」

ててん、てん!

336 名前: 0/0 投稿日: 2003/12/14(日) 10:38 [ Z.FcCPhM ]
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センデンデス。
冬ですね。冬といえば、大長編。
という訳で『大長編 ミスラ譚! 探険ホルトト』です。

詳細はこちら -> ttp://members.goo.ne.jp/home/diathree

337 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/12/14(日) 17:22 [ GctL1HXo ]
少し遅れました(´・ω・`)

338 名前: ガルカの昔話 21話1/2 投稿日: 2003/12/14(日) 17:23 [ GctL1HXo ]
ガルカ、ヒューム、双方何が起こったのかはすぐに理解できなかった。

とくにヒュームたちは。
ガルカたちの誹謗の声が石畳の路地に響いたあとも、
なぜ自分たちが批難されねばならないのか、まったく納得できなかった。
ただ、ガルカの少年が「クゥダフが…」と言い、そのあと鮮血を口から滲ませ地に伏した。
理解できたのは目の前で起きたこの現実のみ。

「誰だ?銃を撃ったやつは!?」
隊長の声が響く。いや、路地に配置された銃士隊は誰一人として撃ってない。
あなたがそう命令したではないか?
だが、暗がりの中、ガルカたちはそう思わない。
「おまえら、よくもパゴタを!!」
倒れた少年に駆け寄った鉱山労働者風のガルカが、怒号をあげヒュームの隊列に飛び掛ってくる。
それが合図であったかのように、静止していた時間は勢いを増し黒い奔流となって路地を走る。

「うわああぁぁ…」
ガルカの憤怒の突進を見て恐れをなした銃士隊…
まだ若い彼らの中の一人が、誤ってマスケット銃の引き金を引いてしまう。
こちらも、その銃声でタガが外れた。
次々に発砲される銃弾。
銃士隊の停止した思考は、目の前の怪物への敵意だけに反応した。
「撃つな。撃つなーーーー!!」
隊長の悲鳴にも似た命令など、もはや届きようも無い。
眼前に迫る脅威に、ただ無心に銃口を向ける。
最前列のガルカ数名が弾けるように倒れるが、犠牲者を飲み込むようにして群集はヒュームたちに迫った。
隊長の退却命令が響く。
あるものは銃を構えたままガルカの奔流に飲み込まれ、
またあるのもは、待ってましたとばかり一目散に逃げ出す。

339 名前: ガルカの昔 21話2/2 投稿日: 2003/12/14(日) 17:24 [ GctL1HXo ]

足止めのための銃士隊が瓦解したと、「盾」に伝令が走ったのはそれからすぐのことだった。

ガルカによる抗議と怒りの群集が通り過ぎた後。
石畳の上には、傷つき倒れたガルカとヒュームが数名取り残された。
その中に無論、パゴタ少年の姿もあった。
彼は肩口を射抜かれ、多量の血を石畳にぶちまけていた。
虫の息。
そんな形容がぴったり当てはまる無残な姿であった。
その彼の視界に、黒い大きな足元が飛び込んでくる。
少年はできうる限り顔を上げ、それの正体を見ようと目を見開く。
悪魔を思わせる真っ黒な外套。
巨体に、
アゴにたくわえたヒゲ、
ヒゲには赤い毛がチョロチョロと混じってる。
「あ…あかひ…」
「パゴタ…哀れな兄弟。」
赤ひげは残念だといった風に首を横に振った。
「誰がお前を銃で撃ったかのかは分らぬが、いずれヒュームの者であろう。
安心しろ。お前の仇は我々が取ってやる…ヒュームどものこのバストゥークを壊してな…」
諭すように言う赤ひげ。
少年は薄れ行く意識の中、自分の無力さに涙した。

340 名前: ガルカの昔話 22話1/3 投稿日: 2003/12/14(日) 17:25 [ GctL1HXo ]
「盾」は商業区外門の見張り塔に立っていた。
そこからはバストゥークとグスタベルクを一望できる。
本来なら、グスタに布陣する外敵を望まなくてはならないのだろうが、
今は内部に起きた騒乱を鎮めるのが先だった。
「盾」は小さくため息をつく。
膨れ上がったガルカの群集は数百名。
無傷で事を終結させるのは、アルタナの女神でもなければ不可能に思われた。
そのとき伝令がやってくる。
いつもの男ではなかった。

「バストゥーク特殊警邏隊所属、百人隊長ジーク・レオンハルトだ。まず人払いを…」
『盾』は人払いを要求する彼にまず疑問をいだいた。
それにこの臭い…。
むろん『盾』も彼の素性は良く心得ている。
彼の兄は全員、国の要職についおり、いずれは彼もそういった立場に登りつめるのだろう。
だから、『盾』の知人は口を揃えて皆こう言う。
「失礼の無いように…」
後々の人事に影響する。妙なことをすれば、危険な僻地に左遷されるやも知れない。
と、そういうわけだ。

341 名前: ガルカの昔話 22話2/3 投稿日: 2003/12/14(日) 17:26 [ GctL1HXo ]

『盾』は不本意ではあったが、側近たちを下がらせた。
「手ぬるいぞ、『グスタベルクの盾』殿。おまえが大通りに配した銃士隊は瓦解した」
ジークは堰を切ったかのように、まくしたてる。
おまえ、と言い捨てられ、さすがに不快で『盾』は眉をひそめた。
しかしジークにとって、その不快感をあらわにした顔は、
銃士隊の瓦解という采配の失敗に向けられたものと解釈できたらしい。
気にも止めず続けた。
「銃士隊の連中の武装は何だ?警邏の持つような単発式じゃあないか。
あんなものでガルカどもを排除できるとでも思っているのか?」
「ちょっと待て。」
『盾』はこの金髪の男の雄弁を制止する。
「私は発砲を許可した覚えはない。」
「知るか!やつらは撃っていた。己の無能さを棚に上げて何を言ってんだっつーの!!
とにかく、こうなった上はガルカどもを皆殺しにでもするしか方法はねぇーよ」
と、言い、さらに「俺様に30人貸せ。平和的に終わらせてやるぜ。」と彼は持ちかけてきた。

「なるほどな…」
『盾』は一人納得した。
この臭い。

「誰を撃ってきた?ジーク殿?」
ジークの身体から漂う、鼻腔を刺すような硝煙の臭い。
先程から気にはなっていた。
「誰を?そりゃ人間を撃ってきたときに使う聞きかただ。」
ジークにまったく悪びれた様子はない。
「何を?っていうなら話は分る。」

「ガルカのガキを一人ぶち殺してきた。」

342 名前: ガルカの昔話 23話3/3 投稿日: 2003/12/14(日) 17:27 [ GctL1HXo ]

「ありゃあ人じゃあないからな。どっちかっつーと、獣人?ww」
ヘラヘラとジークは言う。
『盾』は冷淡にこの御曹司を見据えた。
彼は続ける。
「オレの部下もやられたんだ。正当な報復行動だ!
ミスリル銃士とはいえ、とやかく言わせねぇ。お前も知ってるだろ?オレ様の親父はよぉ…」
『盾』はうんざりした様子で頭(かぶり)を振る。
こういう男が一人いるだけで、ガルカとヒュームの問題は一層こじれる。
「親の威光を借りてしかモノを言えぬ、小僧が」
「なんだと!?」
「貴公ら、特殊警邏隊が鉱山区でどのような非道を行なっているか、私の耳にも届いている。
本来なら私の名をもって粛清せねばならなかったのだが…」
私も所詮、この国の原理に逆らうことができなかった。
ギルを持つものが、持つもののみが、人として生きることを許される世界。
「報告ご苦労だった。下がっていい。貴公の処分もじき下るだろう。」
「処分だと?どういうつもりで、ミスリル銃士ごときが…」
「バストゥークは法治国家だ。ガルカといえど、当然その法によって保護されている。
幼年ガルカを撃てば罪に問われるは必定だ。」
ジークはしばらく『盾』を睨みつけていたが、
小さく舌打ちを残すと見張り塔の展望台から出て行った。
御曹司も分っているのだろう。
罪に問われたとしても、彼の父親があらゆるコネを利用して、結局は放免される。
こんな処で睨みあっていても無駄だということを。

343 名前: ガルカの昔話 23話1/2 投稿日: 2003/12/14(日) 17:28 [ GctL1HXo ]
門前広場はガルカとヒュームが押し合い圧し合い、乱戦の様相を呈してきていた。
ヒュームの銃士隊には『盾』より「なるべく死人は出さぬよう、生け捕ること」と厳命が下っていた。
ヒュームの警邏隊の数名がガルカにより殺害されたことは、逃れようのない事実。
殺さず捕らえて、バストゥークの法による裁きを受けさせねばならない。
『盾』の考えは理解できる。
だが、その判断が明らかにこの騒乱を長期化させていた。
なにしろ相手はガルカである。
捕らえるためにはヒューム2,3人では手が足りぬ。
じわりじわりとヒュームたちは押され始めていた。

「私も出よう。」
焦れた『盾』は側近にそう言うと、装備を用意させた。
愛用の白銀の鎧。それに壮麗で実用的な盾。
彼の異名通り、この盾は彼の象徴的な装備であった。
サンドリアから、盾だけに賞金がかかっているほどである。

そのとき、見張り塔の長い螺旋階段を駆け上がってくるものがいた。
階段の途中にいたヒュームは、その影に皆切り捨てられた。
塔の最上階に到達する頃には、影の持つ双子の白刃は血に赤く濡れ、
凄惨な輝きを放っていた。
「何者だ!!」
『盾』の側近たちが一喝し、闖入者を取り押さえようと駆け寄った。
だが、側近たちは悲鳴と鮮血を上げ、肢体を展望台の石畳に投げ出すことになる。
闖入者に斬られた。
側近たちも、それなりの使い手であったはずだ。
その者たちを物ともしない。
闖入者…このミスラ。相当強い。

『盾』は無言で腰に帯びた片手剣を抜き放つ。
ミスラの方も応じるがごとく、低く腰を落とし両手に持った双子の刀を構えた。

344 名前: ガルカの昔話 23話2/2 投稿日: 2003/12/14(日) 17:29 [ GctL1HXo ]

一瞬の空白。瞬きもできぬほど、ほんの一瞬。
刃(やいば)の軌跡が白く尾を引き、両者の間でぶつかり合う。
『盾』はミスラの左の刀を剣で、右を盾で受け止める。
ミスラは自分の攻撃が受け止められたことを瞬時に判断し、二撃目のために一瞬刀を引く。
だが『盾』は、その隙を見逃さない。
引いた右の刀を追うように、盾を突き出し相手の体勢を崩す。
ミスラは低く唸る。
右半身が崩され、最速の二撃目が放てない。
スピードを信条とする彼女にとって、これは翼をもがれたようなものだった。

驚くべき身体能力で体勢を引き戻したものの、その間に繰り出された『盾』の蹴りが
ミスラの腹をえぐり転倒させる。
「くそ!」
舌打ちし顔を上げた彼女の喉元に突きつけられたのは、ミスリル銃士の怜悧な白刃。
このミスラにとって本日二度目の敗北。
「攻撃を受けるだけが盾の使い方じゃないんだよ、お嬢さん」
『盾』はそう言うと、武器を捨てるように促した。
圧倒的な力量差。
赤ひげの言うとおり。
このミスリル銃士はアンよりも、おそらくあのエルヴァーンよりも強い。

アンが思うほど、『盾』に余裕があったわけではない。
このミスラも相当の使い手だ。
気を抜けば、やられていたのは彼の方だった。
だが、勤めて平静を装った。
心理戦を掌握することが戦闘においては最も重要だ。

だがそのとき、彼は背後に異様な気配を感た。
反射的に振り返り、手に持った剣で『それ』を食い止めようとする。
『それ』はねじれ曲がり、剣と呼ぶことすら憚(はばか)られる物体だった。
『それ』を振るったのは、黒い外套を目深にかぶったガルカ。
アゴにたくわえたヒゲには、赤毛がパラパラと混じっていた。

345 名前: ガルカの昔話 24話1/2 投稿日: 2003/12/14(日) 17:30 [ GctL1HXo ]
『盾』はすぐに悟った。
片手でこの斬撃を受け続けることは不可能だ。
盾を捨て、両手で剣を持つ。
だが
それでも

受け切れない。

『盾』は片膝をついた。
なんだ?
この剣は!?
いや。
なんだ、このガルカは!?
剣の力ではない。
この赤いひげのガルカの負うた咎と怒りが、この一刀にありえない「重さ」をもたらしていた。
ヒュームでは決して出せまい。
『盾』は恐怖した。
力量は、はるかに『盾』のほうが上だ。
いやそれどころか、このガルカ、武器の扱いは素人同然のように思われた。
それを埋め、のみならず『盾』を圧倒する負の力。
『盾』の生命力を奪った。
『盾』の心を折った。
このガルカの背負った「業」の成せる技。

「アン、今だ!『盾』を討て!!」
赤ひげの声にアンは我を取り戻す。
敗北に打ちひしがれている場合ではない。
大義のため、このチャンスを逃す手はないのだ。
『国』の未来が、私とユルカオルルカの肩にはかかっているのだから。
「悪く思うな、『盾』!」
双子の刀を握りなおし、『グスタベルクの盾』に踊りかかる。

346 名前: ガルカの昔話 24話2/2 投稿日: 2003/12/14(日) 17:31 [ GctL1HXo ]

だが、どちらの刀もヒュームの肉を裂くことはできなかった。
ミスリル銃士とミスラの間に割って入った銀髪長身の青年がいたから。
鉱山区に住む特異なエルヴァーン。
壮絶なる剣の使い手。

細い兄弟。

「どうして、お前がここに!」
アンと赤ひげが異句同音に叫ぶ。
だが、アンの叫びはすぐ声にならない呻きにすげ変わる。
エルヴァーンに押し返され、体勢を崩された。
「ミスラは引き受けた…」
彼は低く言うと、ミスラの方に向き直る。
誰に言った?
赤ひげは不安に駆られ、背後に視線をやる。
と、同時に。
物凄い衝撃。脇腹に巨大な肉塊がぶつかってくる。

同胞。兄弟。鉱山ガルカ。

「ダスクス!!」
赤ひげは見知った鉱山ガルカの名を叫んだ。
ありったけの怨嗟をこめて。
二人のガルカはもつれるように絡み合い、見張り塔の端の柵を乗り越え
混乱と宵闇に支配された門前広場に落下していった。

347 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/12/14(日) 17:37 [ GctL1HXo ]
>>342は22話3/3

寒くてキーボードを打つ手がかじかみます(´・ω・`)

348 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/14(日) 18:27 [ vWFgGbW. ]
昔話キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!
待ってましたかっこいいぜダスクス細い兄弟
アンに惚れそうwwwwうはwww

349 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/15(月) 15:08 [ g3TQ8ijU ]
昔話キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!!!
最近下がり気味だったのですごいうれしい〜wやっぱ細い兄弟最高!!
また続きをまた〜り待ってます(´∀`)

350 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/15(月) 19:37 [ MPZ.b1no ]
ユリノの章 第10話 失態と恐れ

突然ですが自己紹介です。
僕の名前はルイーズ。
気ままに旅をするのが好きな冒険者です。
今はとても面白そうなPTに、唯一の前衛として入ってます。
今日はそんなPTの結成祝い。
でも、僕とクロノスくんと言う黒魔道士が大暴れして、
お部屋がめちゃくちゃになっちゃいました。
そんなわけで罰として、お皿洗いの真っ最中です。

しかし…やたら多いなぁ…
果ての無い作業になりそうです。

351 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/15(月) 20:01 [ MPZ.b1no ]
「あ〜、かったりぃ…」
隣でお皿を洗っているクロノスくんが
飽き飽きとした顔で黙々とお皿を洗ってる。
そんな彼に喝を入れに来たのか、
ユリノくんがおたまでクロノスくんの頭をすかーんと叩きました。
「ってえなぁ!何するんだよ!?」
当然怒るクロノスくん。
「ちゃっちゃと皿洗ってくれない?食器さっさと仕舞いたいからさぁ」
しらっとクロノスくんの怒声をスルーするユリノくん。
このお二人のケンカはいつも絶えない。
いろんな理由からどんどん発展していくよーです。
「おい!もう頭叩くのやめろぉー!」
「うるさいなぁ、黙って洗ってよ」
ふふ…。まだケンカしてる。
そう思ったとき、ユリノくんがすこし呟いた。
「あ、食材買ってこなきゃ」
ユリノくんはおたまを定位置に戻して、
テノースくんを連れてモグハウスを出て行った。
それを見送る僕とクロノスくん。
ぱたんとドアが閉まった時、クロノスくんが後頭部を抑えながら
「あのヤロォ…いつかぶっ飛ばす…」
と、言いながらお皿洗いを始めた。
「凄かったね。頭にたんこぶできてたりして」
僕は微笑を浮かべてクロノスくんに話しかけた。
「アリマーが言ってたコトがウソみたいだよぉ」
「はぁ…」
クロノスくんは少し大きなため息をつくと、
じろりと僕を見つめて話しかけた。
「えっと、『近づいたらぶっ飛ばすみたいな雰囲気』の事か?」
「うん。楽しそうだったしネ♪」
「ふぅん…」
僕が笑顔で答えると、クロノスくんはまるで生気が抜けたような、
暗くて沈んだような声で返事をくれた。
そして、黒特有のとんがり帽子を被り直して、
また僕をじっと見つめて話した。
「ちょっと話してやるよ、オイラとあいつが会ったときの事と、
 オイラの失敗の話を…」
僕は洗い終わったお皿を食器棚に戻して椅子に座った。

352 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/15(月) 20:12 [ MPZ.b1no ]
〜7年前 ギデアス〜

クロノスくんはこの時、シーフだったらしく、
よくヤグードから獣人銀貨を盗んでは競売に出品していたそうな。
そんなある時、彼は中で大リンクを起こしてしまったようで、
何体ものヤグードを連れて入り口まで来てしまった。
その時に現れたのが、1人のローブの少年。
彼はそれを見て、素早く魔法を唱える。
「ディアガ!」
相手の体を蝕んでいくディアの範囲魔法を唱えた少年は、
タックと言う小剣を構えて、ヤグードの群れに突っ込んだ。
魔法を織り交ぜながらの素早い剣術でヤグードを倒していく少年。
クロノスくんは特に、少年の魔法に見惚れてしまったと言う。
ヤグードの大群を退けた少年はクロノスくんに手を差し伸べる。
そう、この少年がユリノくん。
魔法の凄さに魅了されたクロノスくんは、シーフをやめて、
黒魔道士として、新たな道を歩むことにした…って感じかな。

353 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/15(月) 20:22 [ MPZ.b1no ]
クロノスくんにはシーフの時に稼いだギルがあった。
ので、簡単な黒の魔法書を買占め、練習に明け暮れたと言う。
そんな時、クロノスくんの兄であるアッシュくんが、
長期間PTに参加すると聞いたクロノスくんは、
アッシュくんに頼み込んで連れて行ってもらえるように説得した。
結果はOK。クロノスくんは鞄にありったけの魔法書を詰め込んだ。
そして、出発の日。
既に準備を済ましていたアッシュくんが、
PTメンバーの4人に事情を説明していた。
雰囲気暗めの暗黒騎士に、やたら背の低いナイト。
温和そうな侍の隣にいたのは、自分を救ったローブの少年がいたそうな。
そして、クロノスくんは彼に一言言った。
「あ、あの時は…ありがとうな」
少年は無表情のまま答えた。
「ユリノ。これが僕の名前」
ユリノくんはそう言うと、ぶかぶかな帽子を被りなおした。
こうして、彼らの旅は始まった。

354 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/15(月) 20:57 [ MPZ.b1no ]
そして、今度は失敗の話…
彼らの旅が始まって3日目。
一行はタロンギにいた。
ここで狩りをしようと言ったのは暗黒騎士。
食材となるダルメルの肉が目的だったらしい。
この戦いはクロノスくんにとって、初のPT戦。
わくわくとどきどきを抑えて戦いに臨んだとか…。

そして、狩りを開始してから30分。
休憩しようと言い出したのはナイト。
ユリノくんは午後に備えて、クリスタル合成法を利用し、
昼食を手早く作っていた…そんなときにそれは起こった。
急に吹き荒れる砂嵐。目に砂は入り、髪もごわごわしてしまう。
その時クロノスくんは見てしまった。
モンスターの中でも最強と言われている、
精霊、アースエレメンタルを…。
クロノスくんは言った。「アレに挑戦してみよう」って。
当然みんなは首を横に振る。
相手はエレメンタル。物理攻撃は効きづらいと言う暗黒騎士。
しかし、反属性の魔法は効くと言って聞かないクロノスくん。
5人の説得も空しく、クロノスくんはなんと
エレメンタルに向かって魔法を唱えてしまった。
後の事はあまり覚えてないと、クロノスくんは言う。
ただ覚えてるのは、前衛となる暗黒騎士とナイト、
侍が発する断末魔に近い叫び声が聞こえ、
そんな彼らを見て、泣きながらも回りに救いの手を求める
ユリノくんの悲痛な叫びが聞こえたくらいだそうで。
そして、ユリノくんの願いが叶ったのか、
通りすがりの上級者の冒険者がやってきて、
間一髪で助かったと言う…。
みんなは言った、「助かってよかった」「あのままだったら死んでた」
「運がよかった」その他多数の言葉。
みんなはクロノスくんを許した。
冒険者の知識が薄い彼にとっては、ありがちなミスだと。
でも、ユリノくんは許さなかった。
ユリノくんはフライパンでクロノスくんを勢いよく殴った。
ごちんという鈍い音、クロノスくんはさらに岩に頭をぶつけた。
ユリノくん頭を抑えるクロノスくんに言った。
「何が簡単なミスだよ!?前衛3人は死にかけたんだよ!?
 キミがバカみたいに自分の力を過信したからこんな目に遭ったのに!
 魔法でなんでもできると思わないでくれる!?
 どんな力にだって限りがあるんだ!回復が間に合わなかったりとか、
 魔法が効かなかったりとかするんだ!
 いい?もしこんなミスを繰り返してコルト達を死なせてみろ…
 タダじゃおかないからね!」
この時、ユリノくんは大粒の涙を流しながらそう言ったと言う。
平穏だったPTに亀裂が入った瞬間だった。

355 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/15(月) 21:25 [ MPZ.b1no ]
そして夜。
ユリノくんは泣きつかれてすっかり就寝。
他のみんなも同じく寝入っていたそうで。
クロノスくんは1人、星を眺めてたそうな。
そんな時、ユリノくんと親しい侍さんがやってきて、
クロノスくんに謝った。「ごめん」と一言。
侍さんはクロノスくんにユリノくんのことを話した。
「あいつは常にマイナスの方向に思考を働かせるタイプで、
 常にミスを恐れる…要するに自虐的なんだ。
 戦闘中、顔が真っ青なのも、ミスしたらどうしようって、
 すっと考えてるからだと思うんだ。
 しかも、『仲間の死は自分の死』みたいなことも言ってたから、
 かなり必死なんだと思う。
 だから、フライパンで殴ったこと許してやってくれよ〜?」
侍の彼はクロノスくんの頬をつついて言った。
クロノスくんは始めのころ、魔法の指示とかについて
いろいろうるさかったユリノくんのことを、
お堅い性格だと思ってたらしいけど、
すこし違ってたみたいだ…と言っていた。

と、ここまで話すとクロノスくんはふっとため息をついた。
「まぁ、そんなわけだから、ミスるとフライパンが飛んでくるから気をつけろよ?」
そう言うと、クロノスくんはお皿を洗い始めた。
「気をつけますね」
僕は笑顔で言葉を返した。

仲間思いのリーダー、ユリノくん。
これからどんなことをするのかなぁ?
今からとても楽しみになる、このPTに入れてもらってよかった。
マイナス思考はいただけないけど、そのうち改善されることを祈って…。

ユリノの章 第11話に続く…


文字数制限がゆるくなった途端、やたら無駄に長くしてしまいました。
しかも区切りとかがバラバラに…ごめんなさい。
他の作者様には到底及ばない作品ですが、
どうか長い目で、ここにおいてやってください。

356 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/15(月) 22:08 [ PunWq9cw ]
a

357 名前: 無題 投稿日: 2003/12/16(火) 01:05 [ iQezNDSw ]
今でも思うんだ…
何で獣人と人は争い殺しあうのか‥って

俺がまだ子供だった頃、すでに獣人と人は争いを始めてた。
人はこぞって獣人を殺し、獣人達もまた人を…。

俺の両親と姉貴も、
その戦いに駆り出され帰らぬ人となり、
俺一人が残された。

絶望の縁に立たされ
行く当てもなくさまよってるとこを
冒険者と思わしき一人のミスラに声を掛けられた。

「坊主、こんなところで何している?」
「…死に場所…」
「何故死にたがる?」
「親も、姉貴も居ないから…」
「ふむ‥。なら、私と共に来るか…?
その若さで死に急ぐこともなかろう…」
「……」

俺にはもう帰る場所もないし、行く当てもない…
だから俺は、そのミスラの言葉に素直に頷いた。

そして月日が経ち、俺は冒険者となった。

                      続く・・?

お初です。お目汚しえろぅすんまへん(。´Д⊂)
しかも短ぇ…;
荒縄で首吊って逝ってきまふ…

358 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/16(火) 01:07 [ qpHsXjKo ]
昔話・・・イイ!
細兄弟・・・怪我大丈夫か(つД`)・゚・

359 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2003/12/16(火) 09:41 [ 6IeQDNGg ]
報告が遅れましたが、Wiki続きUPさせていただきました。

常々思うのですが、物語を構成するというのは興奮すると同時に酷く孤独な作業です。
私の場合、書き始めるときはもうすでに大体の頭の中でそれは出来上がっていて
脳内の物語を再生するだけで、ひとり電車内で興奮したりするのですが
それを文書に起こしたとたん頭の中にとどめていたとき物語が放っていた光は
とたんに精彩を失ってしまう。
もちろんそれは作者である私の技量不足である(と思う)のですが、
輝きを失わせるために私は書いているのかと。
そういう一抹の空虚さというのは、このスレにいらっしゃる方々ならきっと言わずもがなのものなのでしょう。

「戯言だけどね。」



ではどうぞ
ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9

360 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/16(火) 12:27 [ CTsHHq8A ]
>>357
待て、吊るな。
続きを・・・。

361 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/16(火) 20:38 [ 5DnTJ2WE ]
いつも楽しませてもらってるス!御酢!

1l0soC7Eさんのは自分は結構面白く読めたかな。
オンラインゲームの創作は
「独立したキャラが作家のFF世界観の中で動くもの」と、
「作家自体の体験をキャラ化して動かすもの」という
二つの流れがあると思うス。
そういう意味で1l0soC7Eさんのは後者。
ここの読者の人は前者ガ好きな人が多いと思うので、
あわない人にはあわなかったのかもしれないス。
今後実在のプレイヤーをモデルにするにも、性格に肉付けするなど
してみたらまた違った印象を得られるかもしれないス。

なんか長いのでもずく?

362 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/16(火) 20:50 [ 5DnTJ2WE ]
もづき。
感想に複数レス使ってスマソ。

昔話キタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!
ずっとファンでス。
FF11の結構重苦しい世界観に、見事にマッチした面白さ・・・
登場人物がそれぞれ個性を見せながらも、状況に流されて
事態が緊迫するという流れが見事ス。
丁寧な文章のため、読んでいて「盾」とミスラのアンとの戦闘など
頭の中で場面が浮かんでくるス。
毎週楽しみにしているのでお体に気をつけてがんばってください。

さらにもづいていいかい?

363 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/16(火) 20:59 [ 5DnTJ2WE ]
もづき

友の影を追ってについてだけど、正直、読みにくいという印象があるス。
多分作家さんは「キャラが独立して動く物語」を作りたいのだと思うのだけど、
その割にはゲーム感覚の描写が多いので作者さんの作った世界観に違和感を感じてしまうのです。

ヴァナに独立して存在しているキャラたちの物語の場合、「HP0での死」ってのは基本的に
現実の読者である私たちと同じレベルの「死」であると思うス。
だから、大体の創作において冒険者であるキャラたちは死と隣り合わせっていう
イメージを出していると思うス。
もちろん「名無しの話」とか例外はあるけど、あれは個人的に
ゲーム要素を前面に出して、ギャグにしている部分があると思うス。

作者さんが書きたいものが何かによるけど、今後物語性を出すなら
ゲーム感覚の描写を抑え目にしてみるのがいいかも。

364 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/16(火) 21:05 [ 5DnTJ2WE ]
最後ス

無題さんのはなしについてだけど・・・
うーん、これだけでは感想も何も言えないス。
自分の頭の中のことを外に出すのは大変だし、つらいことだけど、
やった後には何かしら得るものがあると思うのでガンガレでス!(`・ω・´)

セイブ・ザ・アワー・ワールド作家さんへ
倉庫サイト運営など、いつも利用させてもらってます。ありがとうございます。
セイワー(勝手に略称)は楽しみにしていますです。
キャラが生きてて、コーラルキャストとか想像アビも意表をつかれました。
「世界の危機」とあるけど、それがどんなのか楽しみにしながら続き待ってます。

感想を本当だらだらスマソ。
こんなに偉そうにいうなら自分で書けぅていうのは無しでお願いしまつ。
それでは名無し読者に戻ります。
(・∀・)ノシ

365 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/16(火) 21:51 [ wO/vnVQI ]
>5DnTJ2WE

GJ!! (゜∇^d)!
言いたいこと、思ってたことそのまんま (゚∀゚)アヒャ

366 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 11:48 [ kVxjinFM ]
>>361-364
わかったから二度と来るなwwwwwww

367 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 14:46 [ npSvyq/Q ]
>>366
普段は、面白いだけとかつまらん〜ってのは感想とは言わない
ちゃんとした感想かけうんぬん〜とか言ってるんだから・・・

・・・まともに感想書いてる人にそれは無いんで無い?

368 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 14:55 [ E/epGOH2 ]
俺も最初、l 長文感想うざッwwwwww ミスwwwwww
とか思ってたけど、読んでみると別にそうでもないと思った

まあ・・・語尾は鬱陶しいけど(藁

369 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 15:04 [ zs5.OxvE ]
>>350-355

>>288

370 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 15:50 [ jz73u.WM ]
でもさ〜正直みんな、友の影って結構どうーでもいいやって
思ってるんでないか?wwwwwwwwwwwwwwww
感想無いし・・・・。

371 名前: 投稿日: 2003/12/17(水) 16:08 [ EbQDelRM ]
第1章「旅立ち」

バストゥーク商業区の石畳。
お日様の下、僕はそこに絵を書いて遊んでいた。
不意に、大きな影が僕を包む。
見上げるとそこには輝く鎧を身にまとったエルヴァーンが立っていた。
バストゥークではエルヴァーンを見るのは珍しかったけど、僕はその人を知っている。
お父さんと、お母さんの友達のエルヴァーン。

「どうしたの、レイルナーク?」
悲しげな目をして、レイルナークは言う。
「すまぬ・・・・ラックよ・・・。」
差し出される大きな手。
そこには一枚のリボンと、一本の首飾り、そして小さな赤い石。
「すまぬ・・・」

372 名前: 投稿日: 2003/12/17(水) 16:09 [ EbQDelRM ]
〜半年後〜


「行くよ!レイルナーク!」
「よし、こい、ラック!」
鉱山区の広場で、剣術の真似事をする僕とレイルナーク。
棒切れを剣に見立て、僕は一生懸命突く、薙ぐ、払う!
しかし、すべて受け止め、いなされ、かわされる。
そのうち疲れて僕は座り込んだ。
「もうおしまいか、ラック?」
「おしま〜い!」
やれやれといった仕草をしながら、彼は僕のそばにどっかと腰をおろす。
僕はこのエルヴァーンが好きだった。
お父さんとお母さんが死んでから、ずっと一緒にいてくれたレイルナーク。

「私もいつまでもここにいるわけには行かないんだ、ラック。」
不意に切り出される会話。
「私と一緒にサンドリアに来るか?」
僕は迷わなかった。

373 名前: 投稿日: 2003/12/17(水) 16:10 [ EbQDelRM ]
〜3ヶ月後〜


「こ、こんなパーティに僕も出ていいの?」
「かまわん。君は私の大事な友人だからな。」
その日はサンドリアのアシュ・・・・何とか言う人の、パーティらしい。
大きな建物、豪華な食事、綺麗な服を着た女の人・・・。
赤い服を着て、髪をなでつけたレイルナークも普段よりかっこよく見える。
いろんな女の人から話しかけられる、レイルナーク。

「あら、かわいい召使いさんね。」
「いや、違う。」

「使用人も連れてきていらっしゃるの?」
「違います。」

「レイルナーク様、このヒュームの子供はなんですの?」
「私の大事な友人だ。」

冗談と受け止める人もいたし、怪訝そうな顔をする人もいた。

「こちらの方は?」
「私の友人だよ、マーシェル。」
「あら、そうなの。」
マーシェルと呼ばれた女の人はにっこり僕に微笑むと、スカートをつまんで挨拶をした。
そして僕にそっと耳打ちをする。
「あなたのお友達、ちょっと借りるわね。」
驚いてる僕にウインクをすると、マーシェルはレイルナークの腕を取って踊りの輪の中に向かった。

374 名前: 投稿日: 2003/12/17(水) 16:11 [ EbQDelRM ]
〜1年後〜


「おめでとう、レイルナーク! マーシェル!」
「ありがとう。」
「ありがとう、ラック!」
僕は二人を順番に抱きしめる。
レイルナークはばっちり決まってるし、マーシェルは・・・・その・・・とても綺麗だ。
なんていうか、お似合いのカップルだと思う。

大聖堂で女神様の祝福を受けた二人は、チョコボの引く馬車に乗って広場へ向かう。
町のみんなが、二人を祝福して花びらを投げている。
みんな笑顔。
僕もすごくうれしい!

でも、なんとなく・・・・。
なんでだろ、さみしい気がする・・・・。

375 名前: 投稿日: 2003/12/17(水) 16:12 [ EbQDelRM ]
2ヵ月後〜


僕は夢を見ていた。
夢の中で僕は『何か』と話をしている。

「やあ、ラック。」
「やあ。」
「最近調子はどうだい?」
「う〜ん、ぼちぼちかな・・・。ところで、君は誰なの?」
「ずっと君のそばにいるモノだよ。」

不意に気配を感じて、振り向いた。
そこには青白く輝く『何か』がいた。
でも、まぶしくてよく見えない・・・。

「ま、まぶしいね。」
「ああ、ゴメンゴメン。でも、今はまだ姿は見せられないんだ。」
「そ、そうなんだ・・・。」

僕はその光る『何か』と色々な話をした。
お父さんのこと、お母さんのこと、レイルナークのこと、マーシェルのこと・・・。

「レイルナークとマーシェルはいい人みたいだね。」
「うん!」
「でも、なんとなく居心地が悪い?」
「うん・・・。」
「ふむ・・・・。君もそろそろ冒険をしたほうがいいかもしれないね。」
「ぼ、冒険!?僕、まだ、無理だよ、そんなの。」
「そんなことはないよ、君は魔法の筋もいいし、武器も結構上手に扱うじゃないか。」
「でも、力もないし、臆病だし・・・。」
「自分をよく知ってるのはいい冒険者の証さ。」

困る僕を見て『何か』笑った・・・様な気がした。

「さて、もうそろそろ朝だね。」

光る『何か』は飛び上がり、ぐるっと一回転すると、パッと消えた。

(勇気を出してごらん。僕はいつでもそばにいるから・・・・)

目覚めるといつものベッドだった。

376 名前: 投稿日: 2003/12/17(水) 16:13 [ EbQDelRM ]
〜1ヶ月後〜


北サンドリアの広場にいつもいる占い師。
その占いは、なんだかよく当たると言う噂だった。
あれから僕は、『何か』が出てくる夢を毎日のように見ていた。
夢のことがどうしても気になっていた僕は、お小遣いを握り締めその人を訪ねた。

「ほほぅ、君の見た夢は非常に興味深い・・・。」
しわがれた声でその人は言う。
「そして、私の水晶玉は、『西へ向かえ』と告げている・・・。西か・・・海を渡り、ウィンダスへ向かえということか・・・?」
ウィンダス・・・はるか西方の魔法の国。
名前だけは僕も知っている。
「西の方角に君の運命を変える何かが待っている・・・。すまんね、私の占いではこの程度しかわからん。」
「そ、そうですか・・・・。」
「お代はいいよ、あまり役に立てなかったみたいだからね・・・。」
うなだれて、帰路につく僕に占い師は言った。
「もし、ウィンダスを訪ねることがあるのなら、鼻の院に行くがいい。そこならなにかわかるかも知れぬ。」

鼻の院・・・?
なんだか変な名前だ。

377 名前: 投稿日: 2003/12/17(水) 16:13 [ EbQDelRM ]
〜更に1ヶ月後〜


僕は船に乗っていた。
誕生日にレイルナークに買ってもらった短剣と、マーシェルに作ってもらった外套、そして、両親の形見のリボンと首飾りを身につけている。

結局、二人には置手紙を残すだけになった。
(心配、しているだろうな・・・。)
突然、家を出てしまって二人はどんな反応をするだろうか、想像もつかない。

船旅は順調だった。
湿気は多いものの気持ちよい潮風が、髪をなびかせる。

「まもなくマウラに到着します。皆さん、お忘れ物などなされませんよう。」

ウィンダスのあるミンダルシア大陸は間近に迫っていた。
不安は山のようにあった。
でも、後悔はしていなかった。

378 名前: 371-377 投稿日: 2003/12/17(水) 16:17 [ EbQDelRM ]
309-311のつづきの話です。

全体タイトルは「光の獣」にしようと思います。

なんか、バレバレなタイトル及び展開っぽいですが、よろしくお願いします。

379 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 16:27 [ .RO.Ga8w ]
サンドリアからウィンは東にあります。
ヤボツッコミスマソ

380 名前: つД`) 投稿日: 2003/12/17(水) 16:31 [ EbQDelRM ]
○| ̄|_

素で間違えてました・・・。
 西→東 に脳内補完よろしくです・・・。

381 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 16:34 [ .RO.Ga8w ]
いい感じなので(・∀・)ガンガレ!
お箸を持つほうの手が東!

382 名前: つД`) 投稿日: 2003/12/17(水) 16:42 [ EbQDelRM ]
なんか、ミンダルシアは九州のイメージがあって、ついつい西と・・・。
しかし、もう間違えません!

>お箸を持つほうの手が東!

うはwwwおkkkkkwwwww!!!!

383 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 17:44 [ Ytb.06Ak ]
>お箸を持つほうの手が東!
左利きの俺は西が東に東が西に(´・ω・`)

384 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 19:05 [ PucQDbgA ]
>>383
腕をクロスさせれば問題ない。

385 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 23:10 [ UNi7yn7c ]
>>384
うはwwwwwwwwwwwwwwおkwwwwwwwwwww
>>378
大変読みやすいですよ〜、続き楽しみにしてますw
がんがってくださいヽ(´ー`)ノ

386 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/17(水) 23:13 [ su35GRt. ]

 心地よい岩の狭間に身を隠して、彼はようやくその身から力を抜いた。
 全身を甘い痺れが包んでいた。至るところに刻まれた傷からは、すでに血は流れない。
体のすべての血が流れ落ちてしまったのだろうか。だが、己はまだ生きている。
 奇妙な光景であった。熱を感知し、光を増幅して暗闇を見とおす彼の眼には、己がいる
洞窟の奇観がすべて見えている。己が立ち上がっても届かぬほど高い天井、まるで氷柱の
ように垂れ下がった灰色の石。さらに地面からはまるで茸か何かのように石が生え、天井
に向かって伸びているのだ。
 冷たい湿気を拭くんだ風が、時折体に吹きつけるのが、心地よい。息をするたび、風の
中に含まれるカビのような臭いが鼻に残るが、それは不快ではなかった。
 ――屍の臭いだ。
 彼は死にかけていた。消えゆく命が、己と等しい存在の臭いを心地よく感じさせる。
 何故最後の力を振り絞り海を渡り、ここへ至ったのか。その答えはすぐにわかった。
この鍾乳洞のあちこちには、すでに石と化した無数の骨が散らばっている。ある物は岩
の中に閉じ込められ、ある物は地面から無遠慮に飛び出していた。それらの骨が何の骨か、
考えるまでもない。その形、姿、一目見れば己と同類――竜の骨であることがわかった。

 ここは竜の墓場であった。
 遠い昔。屍すらも石に変じるほどの長い時間の果てに、己の先祖たちはここで朽ちた。
 ここで死ぬならば、寂しくはない。仲間たちの魂が迎えてくれるのだから。
 手足を引きずり、歩く。尻のあたりから尾が千切れ落ちているのが幸いだった。戦いの
折には武器として役立つ尾だったが、反面普段は重くて歩きにくいのだ。あれが無いだけ
で、ずいぶんと歩行が楽になる。
 己の体がちょうど納まる窪みを見つけた。その中に身を寄せ、傷ついた体を丸める。穴
の底に転がっていた得体の知れない骨が折れて鳴るが、それは意外に柔らかく、彼の重み
をしっかりと支えてくれた。
 ここでよい。この心地よい骨の寝台で眠ろう。
 彼がそう決めた時、霞んでよく見えぬ目に強い光が差し込んできた。赤い色の光と強い
熱が、鼻の先にある感覚器に反応する。太陽の光ではなく、誰かが炎を焚いている。
気にいらぬ。せっかく見つけた、俺の眠りを誰かが妨げようとしている。
 彼は鎌首をもたげた。もはや手も足も動かないが、最後の力を振り絞れば、最後に毒を
一吹きすることはできるだろう。己の平穏を、眠りを乱す愚かな者を焼き尽くすぐらいは。
首が震える。もう、長くは無い。鼻から精一杯に息を吸い込み、分厚い胸を膨らませな
がら、彼は己の最後が近いことを自覚していた。

 ぎぃぃぃいいいいぃ―――――――。
 
 その音が耳に飛び込んでくる。それは叫び声に似ていたが、それよりずっと高く、耳に
強く響いていた。炎の明かりは近づき、それらは彼の前に姿を見せていた。
 半裸の女たちであった。赤い染料で染められたワシの羽飾りを頭につけ、尻尾の生えた
尻をなめした皮の腰布で覆っている。首に輝くのは翡翠の首飾り、腰から下がるのは緻密
な模様の施された骨の鞘に収まった小刀。胸の膨らみを露にしたまま、洞窟の闇に紛れて
彼らの相貌が金色に輝いた。

387 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/17(水) 23:14 [ su35GRt. ]
 そのうちの一人が、木の胴に五本の弦を張り巡らせた琴を抱えて弾き鳴らしている。さ
らに腰に小さな太鼓をいくつもくくりつけた女たちが、体をくねらせながらそれを叩く。
楽器を持たぬ者達も声を上げ、手拍子を取る。
 そのリズムに乗りながら、中心を歩いていた女が歌った。それはひときわ高い背丈で、
銀色の髪を長く伸ばして編んでいる。黒い煤で唇のまわりと手に模様を書き込み、背には
木の皮で作った矢筒を背負い、緑色に塗られた大弓を肩にかけている。

 Iomante hi ta anakne Mithra menokoutar
 Upopo sinotcaki ruwe ne.
 Kamuy opuni na hok tunke he tuy.

 その歌は途切れることなく輪唱され、力強い掛け声がその合間に入る。
 見たこともない人間であった。彼は猫と言う生き物を知らず、その特徴を持つ人間種族、
ミスラの存在も知らぬ。だが、その歌と楽は不愉快ではなかった。彼女たちが向ける眼差
しは自分に対する敬意に満ち、常に仕草ひとつひとつが彼の心を慰めている。
 何故だろうか、この人間達は敵ではない気がした。彼はブレスを吹こうとした首を収め、
ゆっくりと首を降ろしていった。一度抜けた緊張から体の力が急激に弱まり、萎えていく。
 見ていると目の前で、先端を削り花のように広げた柱が建てられていた。ミスラたちは
その周囲に腰をかけ、椀に酒や魚を乗せ、自分の前に並べていく。

 その一人が背負っていたものを自分の前に置いたのを見て、彼は目を剥いた。
 白く大きな楕円の球体。炎の明かりに照らされて輝くそれは、間違い無く竜の卵だった。
 しかし、それは生きてはいない。竜の卵は土の中に埋められ、天地の精気を吸収して、
生まれるその時までには長い年月を必要とする。その中にはあまりに長すぎた眠りの中で
力尽きたり、十分な精気を吸収することができず、目覚めぬものも多かったのだ。
 彼の目の前に捧げられたのは、そうした卵のひとつであった。

388 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/17(水) 23:14 [ su35GRt. ]


 Tahronti newa Meriphati utur ta Shakhramiputi ari a=ye nupuri an ruwe ne.
 taan ta Kamuy Ron ranke ari a=ye tuytak an ruwe ne.

 言葉は理解できぬ。だが、女たちが望むことはわかった。
 これは送りの儀式であった。己という存在を送り、新たな生命が生まれる。己の魂が受
け継がれ、新たな肉と言う衣を宿すことを、彼らは願い、儀式を行っている。
 これはカムイノミ。神への祈りだ。神とは女神アルタナではない。この天地にあまねく、
大いなる精霊への祈り。素朴な自然のすべてに捧げられたものだ。
 弓を持つ女の手が伸び、彼の鼻面に触れる。禿げかけた黒い鱗の隙間に女の手が触れ、
優しく撫でる。ざらざらと鋭い刺に触れて手から血が滴るが、気にもせぬ。
 心地よい音と歌に身を委ねながら、彼はそっと瞳を閉じた。

 もう、どうなってもよい。
 ただ一人この墓場で朽ち果てるもよい。だが、もしその祈りが聞き届けられるとしたら。
 蘇ることがあるとしたら。

 きりきりと弓が引き絞られる音がする。

 ――カミトナレ。

 矢が放たれ、正確に竜の目と目の狭間に突き刺さった時。
 彼はすでに絶命していた。



 女の手が腰の刀に伸びる。骨の鞘を払い、よく研がれた短剣の刃をそっと舐める。

 今や竜は骸となっていた。
 彼女たちがこれまでに送ってきた竜の中では最も大きく、偉大な竜。練炭のような漆黒
の鱗をもち、死の間際まで傷つけられながらもやってきた、哀れな魂。
 それを尊敬を持ち送り、その生命を受け継がせるのが彼女たちの役目であった。先祖の
代より何千年も続く伝承のままに、ミスラは刃を取る。これは決して罪ではない。
 首元をさぐり、頚動脈を探る。鱗をかきわけてその隙間に刃を当てて切ると、黒くねっ
とりとした重い血が垂れてきた。それを汁椀に取り、残らず受け取る。

 Kamuy opuni na hok tunke he tuy.

 神よ起きろよ。早く移るよ。その声のままに、ミスラの女は受け取った血を、竜の生命
を乗せた液体を、白い卵の上にゆっくりと振り掛けてゆく。
 ミスラに伝わるイオマンテ。神送りの儀式が、今始まろうとしていた。

というわけでこちらにはお初でございます。
先日よりFF11小説を書かせて頂いております者です。
続きは現在連載中なので、宜しければご覧下さいませ。

不慣れなものでやたら長い&うまく区切れなかったです。申し訳無い。

389 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/17(水) 23:58 [ .xEYYKmY ]
お?本編はどこでしょう?

390 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/18(木) 00:09 [ RJeOv0sk ]
http://www.infosnow.ne.jp/~sugata/FF/top.htm

ここでふ。ちなみに長編も一本ありますな〜

391 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/18(木) 00:25 [ oVMaLohA ]
>>390
小説のところ、デザインがいいなあ
おもしろそうなのでゆっくり読ませてもらいますー

392 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/18(木) 00:45 [ r9rhoZG6 ]
オーキッシュソウルを読んで満足していたら、
続きが連載されていたのか!気付かなんだ!

日参するとこが増えて嬉しい悲鳴ちう

393 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/18(木) 00:55 [ RJeOv0sk ]
ありゃ、読者の方もいたんですねえ。いや、あまりにも反応が少ないから誰も見てないのかと思ってたですよ(笑

394 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/18(木) 00:57 [ RJeOv0sk ]
続きと言うか長編の連作もののつもりですー。今はヤグードものを連載してますが、次は亀の予定。
だいたいイメージはできてるので、あとは書くだけなのですが・・・
気長にちまちまやっていきますよう。

395 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/18(木) 16:29 [ X.ArPhNI ]
今日は誰も来なくてさみしいな

396 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/18(木) 17:38 [ E9LY9KIg ]
>>392
続きどこだああ〜〜〜〜〜〜!!
教えてくださいおながいします(;´Д`)

397 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/18(木) 17:55 [ 4jQnH53w ]
>>396

>386-388 は、オーキッシュソウル編で「ピー」されて「ピーピー」された
竜の末期でがしょ? で、「群雄。」さまの連載小説の「a Yagudo's Story.」の
「PROLOGUE --神送り」がまさにその>386-388。

続いてる、というか、繋がってる! かこいい!
硬派ファンタジー物っぽいグロさがたまらぬ!

あとはスティーブンキング的ホラーキボンヌ

398 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/19(金) 20:05 [ idLOhssk ]
>>397
おお〜ありがとうございます(´∀` )

399 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/12/20(土) 01:17 [ qfpKEvPk ]
雪フッタ。

400 名前: ガルカの昔話 25話1/2 投稿日: 2003/12/20(土) 01:18 [ qfpKEvPk ]
「そんな腕で…舐めているのか!?」
すらりと伸びた四肢を震わし、ミスラの双刀使いはエルヴァーンとの距離を詰める。
流麗な動作。一切の無駄を省いた一撃。
見張り塔の頂上、剣と剣の間に走った火花によって、その石造りの展望台が一瞬照らし出される。

先程は確かにこの男の剣技に後(おく)れを取った。
だが、彼女の心を掻き乱す原因はそれだけに留まらない。
これだけ洗練された力量を持つ人間が、鉱山区の煤の中に埋もれてしまっていることに対する苛立ち。
サンドリアはなぜ彼を放逐した?
我流ながらも、剣の道に身をやつす者として、
アンはこのエルヴァーンの太刀筋の美しさに見惚れてしまった。

つまり、行き着くところ、彼女の胸を焦がすは激しい嫉妬。

彼女の目指す『剣』の完成形をまざまざと見せられたのだ。
もっと見たい。
だが、十と打ち合えなかった。
己の無力さに憤りを覚えた。
言い例えようのない焦燥感。
失恋にも似た喪失感。

そして、再び戦えることへの喜び。

401 名前: ガルカの昔話 25話2/2 投稿日: 2003/12/20(土) 01:20 [ qfpKEvPk ]

しかし、再会したエルヴァーンは左腕を腫れ上がらせ、疲労も随分たまっている様子だった。
動きが鈍い。剣に冴えもない。
落胆せずにはいられない。
「遅いよ、首長!!」
ミスラはエルヴァーンの左側面から苛烈な攻撃を叩き込む。
右手に持った剣では、左方向から来る攻撃に対処しづらい。明らかな死角。
そのバランスの崩れた身体で、私の相手を務めようとは!
「片腹痛いんだよ!」
受け流しきれないエルヴァーンの身体がぐらつく。
当然、その隙を見逃さない。
送った二の太刀が、エルヴァーンの衣服を裂き、浅黒い胸板に二筋(ふたすじ)の傷を引く。
噴き出した血が彼の上半身を瞬く間に赤く染めあげる。
返り血を浴びたアンは、頬を伝う男の紅い体液を愛しそうに舌で拭う。
恍惚とした表情。
浅い。
致命傷ではない。

だが…

妖艶なるミスラは勝利を確信した。
双子の刀を構えなおす。
終わりだ…!!
大きく前に踏み出した。
夜の黒い風の中、二つの白刃が閃いた。

そのとき、ミスリル銃士『グスタベルクの盾』は確かに同じ場所にいた。
見張り塔の頂上。
門前広場のみならずバストゥーク商業区を一望できる展望台。
本来なら、彼がエルヴァーンの助勢をするべき場面である。
しかし、彼は彼で、それどころではなかった。
柵を破って落ちた二人のガルカを追い、塔の端から身を乗り出した。
そして見る。
門前広場をうっすら覆う、薄紫の妖光。
それが何であるかは、すぐに理解できた。
「魔方陣…」
瘴気に当てられ、『盾』の身体が震えた。

402 名前: ガルカの昔話 26話1/2 投稿日: 2003/12/20(土) 01:20 [ qfpKEvPk ]
そこは詰所の一角。
外門の開閉を行なう機械仕掛けの装置を置いてある部屋。
ここに至るまでには、詰所に待機する精鋭の銃士隊と堅牢なセキュリティーをいくつか掻い潜らねばならない。
外は随分と騒がしいようだが、ここまでその騒乱が到達するようには思えなかった。
見張りに当たっていた兵は、若いが忠実で腕の立つ男たち。
例え、間者が紛れていようとも、バストゥークの門が外敵にやすやすと口を開けるわけがない。
…はずであった。

「おまえら!!ミスリル銃士『盾』卿よりの勅命だ。外のガルカどもの相手をしてこい!」
ぶっきらぼうに言われ、見張りを行なっていた男たちは当惑した。
「し、失礼ではありますが、命令状を拝見してもよろしいでしょうか?」
当然である。
いつも命令を持ってくる『盾』の側近とは違う男にそう言われれば、
その命令が本当にミスリル銃士から下ったものか確認しなくてはならない。
その上、この男、ボロボロで傷だらけ。不審なことこの上ない。
だが、男は一喝する。
「このオレ様の言うことが信用できないとでも言うのか?」
若輩者の見張り兵たちはビクリと身体を萎縮させた。
噂には聞いていた。
「オレ様が誰だか知らないわけじゃあねぇだろ?このジーク・レオンハルト様をよ!!」
蒼の閃光…
見張り兵の誰とも無く、そう呟いた。

ここはバストゥーク。
ギルを持つものが権力を握れる国。
腹に一物を残しながらも、百人隊長という地位と、その背景にあるレオンハルト商会に
弱卒ごときが逆らえようはずも無い。
残されたのは、金髪のヒューム、ジークのみであった。

403 名前: ガルカの昔話 26話2/2 投稿日: 2003/12/20(土) 01:21 [ qfpKEvPk ]

彼は聞いていた。
あのガルカの少年に、事の真相を。
「ガルカは皆殺しだ……」
門の開閉装置を弄りながら、彼はニヤニヤと顔を歪ませる。
「そして、オレ様のことを侮辱したあのクソ『盾』にも…」
恥をかいてもらわねばなるまい。
この門を任されたあのミスリル銃士が、もしクゥダフの侵入を許してしまったとしたら?
クゥダフが街の人間を幾人か殺害してくれれば、なお良しだ。
どうなる?
考えただけで、笑いが止まらない。
「目にもの見せてやるぜwww」
痛む身体に鞭打って、開閉装置を握る手にいっそう力が入る。

そして、バストゥーク外壁門は音を立てて開いた。

折りしもガルカとヒュームの諍いが膠着状態に陥っていたときだ。
何事かと、両種族は門に顔を向ける。
戦時、閉じられているはずの門が大きく開き、
そして、
門のむこう。
夜の闇から無数の何かがやってくる。
トカゲのような顔。背負った頑丈な背甲。
ひどい臭いと、忌むべき声。
獣人。
「クゥダフ!!?」
争いあっていたヒュームとガルカから漏れる驚嘆の叫び。
あってはならない異常事態。
人間たちの騒乱治まらぬ門前広場に、二百ほどの獣人たちが雪崩れ込んできたのだ。

404 名前: ガルカの昔話 27話1/2 投稿日: 2003/12/20(土) 01:23 [ qfpKEvPk ]
獣人の乱入。
魔方陣。
これが吉兆であろうはずが無い。
「数式が複雑だ…用意に数週間はかけてるな…」
噴き出る脂汗を拭うことも忘れ、『盾』は術者の姿を探した。
闇と人ごみが邪魔をする。
しかし、魔方円のより濃い瘴気渦巻く中心に、場違いなタルタルらしい姿を確認して
すぐにそれが術施行者であると悟った。

詠唱はどこまで進んだ?
八割程度なら、集中を乱すだけでも魔力を霧散させることができるかもしれない。
銃が転がってないか、あたりを見渡す。
『盾』の期待に沿えるものは無かった。

そのとき、はっとして、『盾』は上空に目をやる。
門前広場の魔方陣に集まった魔力に恐怖した『盾』であったが、
地上のそれとは比較にならないほど蓄積された、上空の魔力を目にし、自失しかけた。
あのタルタルは只者ではない。
これだけの魔力を操作することができる者など、ミンダルシア大陸にもそうはいまい。
黒い魔力。
あのガルカといい、このタルタルといい、獣人といい、一体誰の描いた筋書きだ?
偶然だけでこんな不幸がそう続くものか。

405 名前: ガルカの昔話 27話2/2 投稿日: 2003/12/20(土) 01:24 [ qfpKEvPk ]

「天候操作…空間も湾曲してる。それにあの数式…」
『盾』は言葉にしたくなかった。
一度、口にし、音にすればタルタルの紡ぐこの呪文が、決して止まらぬような気がしたから。
だが、意に反してその言葉は口をついて出る。
これもあのタルタルの魔法の一部なのだろうか?
「禁呪メテオか…」
術が完成すれば、商業区は半壊するだろう。
させるわけにはいかない。
手にした片手剣を力いっぱいタルタルにむけ投げつける。
彼の卓越した膂力を持ってしても、魔方円の中央までは届かなかった。
闇の中に飲み込まれたまま、魔法の詠唱も終わることはない。

『盾』には、もう、どうすることもできない。
剣もない。
銃を取りに行く暇もない。
無論、塔を降りてタルタルに切りかかるだけの猶予もない。
ただ、うな垂れてメテオが完成するのを待つことしかできない。
頭の中は真っ白だった。
思考は停止し、いままでの人生が走馬灯のように駆け巡る。
魔力が渦巻く。
暗雲を呼び紫電を走らせる天空を、呆然と見上げるのみ。

406 名前: ガルカの昔話 28話1/2 投稿日: 2003/12/20(土) 01:25 [ qfpKEvPk ]
何故倒しきれない?
アンは焦りを隠せないでいた。
このエルヴァーンは満身創痍で、押せば今にも倒れそうだというのに。
何故、致命傷を与えられない!?
細い兄弟の身体には幾重にも血のスジが走っていた。
が、それだけだ。
命を危険に晒すだけの血液も流れ出していない。
何故だ!

焦りがミスラの攻撃を雑にした。
攻めの組み立て方が単調になり、甘い一撃を振るった。
エルヴァーンの青年がそれを見逃すはずも無く、受け流し跳ね上げる。
両手が空を泳ぎ、刀があらぬ方向を切る。
攻め疲れた身体は、悲鳴をあげるように膝から折れた。
血と汗が入り混じり、ミスラの口の中を鉄の味でいっぱいにした。 

「これ以上は…」
やっても無駄だ、と言いたげに細い兄弟は長い首を横に振る。
左腕を負傷し、身体から多量の血液を失ったいまとなっては、
このミスラと戦って、彼女を傷つけず勝つことは不可能だ。
女を殺すことは彼にとっても不本意でしかない。
だが、彼女の嫉妬に濡れた瞳にエルヴァーンの真意は映らない。
ただ侮辱を受けた、と短絡的に解釈した。

407 名前: ガルカの昔話 28話2/2 投稿日: 2003/12/20(土) 01:26 [ qfpKEvPk ]
「私を…ミスラを蔑むか…エルヴァーン!!」
地を這うような低い体勢で、エルヴァーンの青年に接近する。
足を薙ごうと白刃を振るう。
散華する火花。
「剣の極意とは…」
ミスラの攻撃を捌きながらも細い兄弟は言う、低い声で。
打ち合う鉄と鉄の木霊す中、彼の声はミスラの耳に良く届いた。

「剣に使われるようでは半人前…」
アンの攻撃をゆらりと避ける。
「剣を使って一人前…」
ミスラの最速の突きに、己の剣を押し重ねるようにして捌く。
「剣を使わなくなって、ようやく達人…」
そして、すり上げるように刀身を伝い、ミスラの右肩口をスッパリと斬り上げる。
夥しい鮮血。
刀を持ったままの右腕が根元から落ち、石畳の上に転がった。

遅れてミスラの悲鳴。

「おまえは変幻自在の双刀で、完全に得物を使いこなしていた…。」
苦痛に身をよじるミスラを見下ろし、エルヴァーンは続ける。
「だが、得物を使いこなすだけの随意剣では不完全…。
意思も殺意も超越し、自然の体での、無為の剣でなくては…」

剣としては死んでいる。

刀身を濡らした血を払い青年は言った。

408 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/12/20(土) 01:33 [ qfpKEvPk ]
宴の始末に入ります(`・ω・´)

409 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/12/20(土) 01:41 [ qfpKEvPk ]
あ、ちなみに随意剣とか無為剣とか司馬遼太郎のパクリ。
扱いが雑だけど。
指摘されるまえに言っときます。

410 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/20(土) 03:09 [ B/HSSsGM ]
クウィタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!!

411 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/20(土) 05:00 [ X1dKXtvQ ]
渋いぜ!細い兄弟!

412 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/21(日) 01:01 [ 8gSHTAkE ]
ルインの章 第10話 メアの花嫁修業

「サニー…調子はどうだ…?」
「うん、だいぶ良くなったかなぁ?」
日も暮れて夕方、ベットの中で折り紙を楽しむサニーの側に
付きっ切りで看病に当たるジェイド。
熱も下がり、顔色も良くなったサニーを見て安心したのか、
ジェイドはゆっくりと席を立った。
「今日は大事をとってゆっくり寝るんだぞ…」
「はーい♪」
サニーの返事を確認してからジェイドはドアノブに手をかける。
ルインも部屋を出ようと、荷物を右手で持ち上げた。
すると、
「ああ〜!ルインさんはここにいてー!」
サニーはベットから飛び上がり、ルインをぎゅっと押さえつけた。
ルインは当然のごとく、じたばたと手足を動かしてもがいている。
「お、おい!オレも出るんだって!」
「いやっ!看病してくんないと放さないー♪」
「お、おいジェイド!なんとかしてくれぇ〜!」
ルインはすかさず扉の前に佇むジェイドに助けを求めた。
が、帰ってきた返事は彼の予想もしないものだった。
「サニー、ルインさんが看病してくれるそうだ」
「ホントー! やったー♪」
「って…ええ!?」
ジェイドはサンドリアのシンボルの入ったマントを翻すと、
めったに見せない笑みを見せて呟いた。
「サニーをこんな目に合わせたんだ…償ってもらう」
その次の瞬間、ジェイドは扉を力強く閉めた。
部屋中に響く轟音と、かすかに聞こえ足音と共にジェイドは去っていった。

413 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/21(日) 01:19 [ 8gSHTAkE ]
「おい!それはちょっとした理由がー!」
「ルインさんが看病してくれるなんてうれしー♪」
「ジェイドォォー!」
ルインの叫びも空しく、ジェイドは戻ってくることはなかった。
サニーは素早くベットに潜り、氷袋を額の上に置いてみせる。
「ルインさん、看病よろっ♪」
「…はぃ」
ルインは右手に持った荷物をその場に置くと、
タルタルのぬいぐるみに囲まれた部屋の床に腰を下ろした。

時間は刻々と経っていく…
ベットの向かいの椅子に座っているルインは
猛烈な違和感に襲われていた。
右を向いてもタルタル、左を向いてもタルタルと言う状態は、
タルタルであるルインにとってはとても居心地の悪い空間。
ルインは気を紛らわすため、ぽつりと口を開いた。
「サニー…起きてるか?」
「あい!ぱっちり起きてます!」
「んと…何か果物でも剥いてやろうか…?」
その言葉を聞いた瞬間、サニーは物凄い勢いでベットから起き上がった。
ルインは驚いて椅子ごと後ろへと倒れてしまった。
「うぎゃっ!」
「僕りんごがいい〜! 妖精のリンゴがいい〜!」
「…わかったから急に起きるのやめてくれ…」
ルインは後頭部を抑えながらキッチンへ向かおうとした。

414 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/21(日) 01:37 [ 8gSHTAkE ]
丁度その時、扉がコンコンと鳴り響いた。
その後から聞き覚えのある声が聞こえる。
「サニーさん?起きてますか?」
ジェイドの後を追ってきたと言う、メアの声だった。
「ああ、今開ける〜」
ルインは椅子を扉の側に寄せ、よじ登ってからドアノブを下げた。
と、途端に扉が勢いよく開き、ルインは扉と壁に挟まれた。
「ぐあっ!」
向こう側にはミトンをつけた両手でしっかりと鍋を持って、
足を前に突き出しているメアがいた。
「ふぅ。両手塞がってたんでどうしようかと思いました〜♪」
メアは軽い足取りで部屋に入り、鍋をテーブルに置いた。
「あれ?さっきルインさんの声がしましたが…?」
メアは辺りを見回すが、視界に入るのはタルタルのぬいぐるみばかり。
ベットの中のサニーはじっと笑いを堪えていた。
「メアさん…ドアの裏…」
「まぁいいですね。気のせいって事で♪」
メアはそう言って微笑むと、スキップをしながらキッチンへ入っていった。
その間、ギギギ…と音を立てて扉が閉まっていく。
サニーが身を乗り出して見て見ると、
鼻を両手で抑えたルインの姿が見えた。
その様を見たサニーはくすっと微笑む。
逆にルインは声を出して泣きたい気持ちになった。
「なんなんだよ…こいつらぁ…」
ルインは袖で涙を拭くと、背中で寄りかかりながら扉を閉めた。

415 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/21(日) 01:47 [ BXydtnVU ]
FFの世界ってケアルで腕くっ付けたり出来るのかな…

416 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/21(日) 01:48 [ BXydtnVU ]
う、ゴメンもしかして割り込みかけた?

417 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/21(日) 02:02 [ 8gSHTAkE ]
しばらくすると、メアがスプーンを片手に戻ってきた。
「あら? ルインさんどうしたんですか?おでこに痣が出来てますよ」
「おいコラ!ドアを足で開けるんじゃないっ!」
ルインはびしっとメアに指を刺して怒鳴った。
涙目で訴えるルインを見てメアは微笑む。
「まぁまぁ、硬い事はせずにしたほうが気楽ですよ?」
メアはテーブルに置いていた鍋を掴むと、
サニーの寝ているベットまで運んだ。
「今日は衰弱気味なサニーさんのために…スペシャルなメニューを用意しました!」
勢いよく鍋のふたが後ろに投げ飛ばされた。
と、途端に部屋中に禍々しい煙と悪臭が立ち込める。
素早くマスクを装着したメアがスプーンで鍋の中で
ボコボコと音を立てている液体を掬った。
「メア特製!モルボルのつるとヘクトアイズの眼のミルク煮込みです♪」
ルインとサニーはその場で壁に頭をぶつけた。
そして、ルインとサニーが大声で同時に怒鳴った。
「なんなんだその思いっきり禍々しい料理はーー!?」
「というかコレって思いっきりおいしくなさそう〜!」
激しくブーイングを繰り出す二人に軽く微笑みながら、
メアは度の薄い眼鏡をかけて返答した。
「いいですか? モルボルのつるは薬品の中でとてもレギュラーな
 ハイポーションの原料となるものなんです。
 あと、ヘクトアイズの眼はとても再生力が強くて強くて、
 放っておくとどんどん増えていってしまうんですよ。
 で、あとはセルビナミルクでコトコトと煮込んでやれば…
 2品の再生力を生かしたスペシャル鍋が出来るわけですよ〜」
ふと、メモ帳を開いたメアがぽつりと呟いた。
「まぁ、味の保障はしませんが…♪」
「「………!!」」

418 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/21(日) 02:18 [ 8gSHTAkE ]
>>415〜416様
いえいえ、お気になさらずに^^
では、続きです↓

次の瞬間、サニーはベットから飛び上がり、扉を突き破った。
そして、そのまま夕暮れのジュノ下層を走り抜けて行った。
ルインも釣られてサニーの後を追って走る。
部屋にはメアだけがぽつんと残された。
「…まぁ、サニーさん元気になってよかったぁ」
禍々しい液体の入った鍋をゴミ箱へ捨てると、
先ほどのメモを開いて呟いた。
「…ジェイドならきっとおいしいって言ってくれるわよね…
 これでジェイドの理想の花嫁に1歩近づいたわ…♪」
そう言うと、メアは煙で充満した部屋を後にした。

一方…ジュノ下層では、
「一体全体!なんなんだよぉ!こいつら〜〜!」
「えっと、メアさんって錬金術師の方向に走っちゃってるからね、
 すっごい料理オンチなのだ〜♪」
「ええぃ!オレは食わない!絶対食うもんかぁ〜!」
「あ、ルインさん待ってよー♪」
「てめえも近寄るんじゃねぇ〜〜!!」
大泣きで逃げ惑うように走るタルタルの青年と、
笑顔で後を追うヒュームの少年が見かけられたと言う…


ルインの章 第11話に続く…

419 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/21(日) 16:34 [ AW5P.SsQ ]
細い兄弟 キテタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!!

420 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/21(日) 17:27 [ CZkuPXtw ]
>>415さん
自分としては基本的に治癒魔法ってのは
「新陳代謝を早めることによって組織修復を行う」
ことだと考えているので、腕くっつけはありだと思う。

ただ、現実でも繋げれば終わりってわけじゃないし、
しばらくの間四六時中ケアルをかけ続ける必要が
あるんじゃないかと思ったりする。


リジェネで十分という突っ込みはなしでwwww

421 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/21(日) 18:17 [ f7wclegM ]
普通の外科と一緒じゃない?
保存状態が良ければ、引っ付くだろう。

422 名前: 白騎士の聖夜 投稿日: 2003/12/22(月) 00:30 [ zFj7neFA ]
―――ある冬の日
獣人オークの根拠地、ダボイ。
財貨を求める冒険者達と、それを守らんとする獣人達の抗争が度々繰り広げられる場所。
この日、この地に迷い込んだミスラの少女がオークの群れに襲われていた。
長い距離を逃げ回ったせいで、息が上がって苦しそうにしている。

『待ていっ!』

突如、声が響き渡りオーク達を制止する。
そこに現われたのは、白く重厚な鎧に身を包み、巨大な方形の盾を装備したエルヴァーンだった。
『ナイトたる者、か弱き者の盾とならねばならない!
 さあ、邪悪なオークどもよ。かかってくるがいい!』
エルヴァーンは声を高らかに張り上げた。
「あの……。」
ミスラの少女はエルヴァーンの前に駆け寄り、弱々しい声を絞り出す。
エルヴァーンの男は彼女の前で、堂々と胸を張って見せた。
『お嬢さん、俺が来たからには安心して下さい。
 ナイトであるこの俺が、あいつらなど片付けてご覧に入れましょう。』
エルヴァーンは爽やかに微笑んだ。白い歯がキラリと光を放つ。
「口上を述べる暇があるなら、早く助けて欲しかった……。」
少女の身体が前のめりに倒れる。もはや立ち上がる余力もない、完全に戦闘不能のようだ。

『おのれぇぇ! よくも貴様ら、許さんぞっ!』
台詞を叫ぶだけで何もしてなかった自分のことは棚に上げ、
逆ギレしたエルヴァーンは目的を達して帰りかけていたオークの群れにバニシュガを叩き込んだ。
神聖魔法の光を受けて、オーク達が一斉にエルヴァーンの方を向く。
『最初にこれ唱えとけば良かったな……って今更気付いても仕様がないか。』
魔法を浴びせられて怒り狂ったオーク達は、次の標的をエルヴァーンの男に定めた。
だがエルヴァーンは手にした得物を振り回し、次から次へとオークを粉砕する。
忽ちの内にオークの屍体の山が築かれた。
『こいつで終わりだっ!』
最後の一体に対し、エルヴァーンは武器を素早く六連撃する。
哀れなオークは痛撃を受けて、撲殺されて命を失った。

423 名前: 白騎士の聖夜 投稿日: 2003/12/22(月) 00:31 [ zFj7neFA ]
戦いを終えてエルヴァーンは、地面に倒れ伏したミスラの少女を見つめた。
『やっぱりこういうときは人工呼吸……いや、それは溺れた時か。
 眠り姫を目覚めさせるのは、王子様の口づけだよな……。』
エルヴァーンは少女に顔を近づけた。そして彼女の顎に手を当てて引き寄せる……。

「それじゃ、犯罪者だろがっ!」

横合いから綺麗なストレートを喰らい、エルヴァーンの男は吹き飛ばされる。
そいつを叩きのめした拳の主は、端正な顔をしたヒュームの青年だった。
「アホなことするな! 普通に魔法で蘇生すればいいだろ。」
『ちぇっ……。折角、役得かと思ったのに……。』
ブツブツ不平を言いながらもエルヴァーンはレイズ3を唱える。
青ざめていたミスラの少女の顔に血色が戻った。程無くして少女は覚醒する。

『いやぁ、お嬢さん、危ない所でしたね。俺が来るのが間に合って本当に良かったですよ。』
「間に合って無いじゃんか……。アホ……。」
「は、はぁ……。一応、ありがとうございます……。」
少女はペコリとお辞儀をする。
『ふっ……。ナイトたる者、女性を守るのが努めですから。
 どんな些細なことでも一声掛けて下されば、何処からでも馳せ参じ致しますよ。』
「ナイト……? お前は白……。」

喋りかけたヒュームの青年の口をエルヴァーンは慌てて塞いだ。
そして白々しい声で叫ぶ。
『いやぁ、何を言ってるんだい? 俺は1LVの頃からナイトだったじゃないか。』
そう言った後、エルヴァーンは今度は声を潜めて、ヒュームの青年に耳打ちした。

『ヴァナ・ディールトリビューン9号によると、一番女の子にモテるジョブはナイトらしい。
 だから俺は、今だけはナイトだということにしといてくれ。』
「何だ、その理由は。わざわざジョブを誤魔化して……。」
『やかましい! 俺はもう、クリスマスを独りで過ごすのは嫌なんだ!』
「独りって……去年は一緒だっただろ? 忘れたのか?」
『てめーは男だろ。男同士でクリスマスだなんて、寒すぎるにも程があるぜ。
 俺は彼女が欲しいんだ! そのためなら何だってやってやる!』
「そういう必死なとこが嫌われるんだと思うんだがな……。
 今更ジタバタしたって遅いって。」
『うるせー! ともかく俺は今はナイトだ。解ったな!』
「ヘキサストライクやレイズ3を使えるナイトがどこにいるよ……。」

424 名前: 白騎士の聖夜 投稿日: 2003/12/22(月) 00:32 [ zFj7neFA ]
エルヴァーンはヒュームを強引に黙らせると、少女の方に向き直った。

『失礼。ナイトというのは高尚であるが故に、誤解もされやすい職業でしてね。』
「へぇ……。白魔道士さんも大変ですね〜。」
「思いっきりバレてるじゃん……。」

だが、気付かれてることを知ってか知らずか、エルヴァーンは話を継続しようとする。
『でも俺は、貴女がそのような誤解などなさらず、
 ナイトの有るがままの姿を見て下さるのだと信じていますから。』
「は、はぁ。実はアタシ、個人的にはナイトさんよりも暗黒騎士さんの方が好きなんですけどね〜。」
『何だって!? くそっ、トリビューンの役立たずめ!』
「ミッションとかクエストで出てくる、Zeid様が大好きなんですよ〜。
 男らしくて格好いいでしょ〜。」
『Zeid? あいつだけは止めておきなさい。
 ああいうのに限って、ぬいぐるみを着せ替えて遊んでたり、
 幼い女の子に“お兄ちゃん”と呼ばせて悦んでたりするに違いないですから!』
「おいおい……。お前がモテないからって、何もそこまで僻まなくても……。」
『いいや、絶対あいつはそうに違いない。
 “業が深い”とか言って誤魔化してるが、本当は“妹萌え”のはずだ!』
「そんな……アタシのZeid様に限って……。」
『残念ながら、それが真実さ。
 さぁ、あんな変態の事なんか忘れて俺とクリスマスを楽しまないかい?』

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

ミスラは全速力でいずこかへ走り出していった。あっという間に姿が見えなくなる。
『あ……。行っちゃった……。』
「やっぱりアホだよ、お前。」

425 名前: 白騎士の聖夜 投稿日: 2003/12/22(月) 00:33 [ zFj7neFA ]
―――クリスマスイブの夜
ジュノ下層、吟遊詩人の酒場。

『ちっくしょぅ……。今年も寂しいクリスマスかよ……。』
エルヴァーンの男がカウンターに突っ伏しながら呟いた。
その脇には何本ものシャンパンのボトルが開けられている。
『てめーも、もっと飲め! 朝まで潰れるまで飲み明かしてやろうぜ……。』
エルヴァーンはヒュームの青年にグラスを押し付けた。
青年はグラスを受け取ると一気に飲み干す。
『いいね、いいねぇ。それじゃ、もう一杯……。』
だが青年はエルヴァーンが酒を注ごうとするのを遮ると、グラスを置いて席から立ちあがった。
「悪いけど、俺は今夜は付き合えないな。そろそろ帰るよ。」
『ふぇ? 何で?』
酔っ払ったエルヴァーンの問いかけに対し、青年はこのように答えて去って行った。

「実はこの前の娘とあの後で会って意気投合してね。今晩、泊まりに行く約束をしてるのさ。」

『この、裏切り者ぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

426 名前: 白騎士の聖夜 投稿日: 2003/12/22(月) 00:38 [ zFj7neFA ]
お目汚し失礼しました。
少し早めのクリスマスネタです。

皆様にとって、今年が良きクリスマスでありますように。
I wish you a Merry Christmas!

427 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/22(月) 02:55 [ IG6f6QO. ]
さすがにそろそろageるべきか…

428 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/22(月) 08:24 [ GSsTxOVM ]
今日更新しました〜。というか今だが。

429 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/22(月) 09:44 [ OMgB9pwg ]
>>426
Zeid:お前の業もなかなかのものだな・・・
餡刻:兄貴・・・板を越えての出張はやめてくれよ・・・
Zeid:うるせー馬鹿。
餡刻:orz
(そのメッセージは届きませんでした)

430 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/22(月) 12:52 [ ntzY8Kho ]
むう……
最近になって保管し始めたんだが、
しれっちが見あたらねぇ……orz

431 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/22(月) 13:31 [ ZagXWRLU ]
URL忘れてた。場所はここの『連載』ですー

http://www.infosnow.ne.jp/~sugata/FF/top.htm

432 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/22(月) 16:11 [ 1vdaVTt6 ]
皆様に触発されて、こんなもの書いてみました・・・。
ほんの触りですが、書いてもいいのかな・・・?


−−プロローグ:廃墟にて−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

崩れた壁面から、湿気を伴った風が舞い込んでくる。
崩落しかけた床板に振動が伝わる度、薄暗い回廊にかび臭い埃が舞う。
振動は数人の足音だった。追う者と追われる者、忍びの道に長けた者であれば、
その人数を正確に聞き分けたかも知れないが、今その場所にいるのは追い、そ
して追われる者たちだけだった。

追われる者は、若きヒュームの男とエルヴァーンの女の2人。一方、追う者の
数は正確に知ることができない。うち一人は黒衣に身を包んだヒュームの男。
歳の程は追われる男とそう変わらないが、放つ気配には、追われるヒュ
ームにはない禍々しさに満ちていた。男がなにやら呪文のようなものを呟くと
周囲に生じた空間の歪みのような虚(ウロ)から、骸の戦士が姿を現す。
その数はすでに10体を超えていた。

ふと足音が止まる。

追われる2人の進む先に、床板はなく底知れぬ深い闇だけが広がっていた。
行き止まりだった。男と女は互いに一瞬視線を交わし頷き合うと、言もなく
抜刀した。女は見事に磨かれた細剣を、男はやや刀身の曲がったシミターを、
向き直って正面に迫る追跡者の群れに向けた。

骸の戦士が光の篭らぬ眼で、大鎌を振りかざして女に襲い掛かる。
男は、鎌がその切先が天井に届く前に、骸の胴を薙ぎはらった。
骸は音もたてずに崩れ去った。人並みに剣を扱う者であれば
男の恐るべき剣技に警戒心をかき立てられたに違いない。
だが相手は、骸の戦士。恐れと警戒を抱く心など持ち合わせてはいなかった。
骸の戦士達は、男の剣技に臆する事なく、一斉に2人に襲い掛かった。

次に女が男の前に立ち、迫りくる骸の戦士に目にも止まらぬ速さで
斬撃を浴びせる。一度切り落としで1体目の骸を斬り臥せると、返す刃で
2体目の骸を打ち払った。

だが、2人が次々と骸を斬り倒す中で、骸の背後に控える黒衣の男は
次々と空間の歪みから骸の戦士を召還し続けている。いずれ、男と女の
体力が尽きた時が、2人の運命が決するであろうことは疑いようもなかった。

433 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/22(月) 16:13 [ 1vdaVTt6 ]

男も女もそれに気付かない程、愚かではなかった。
早い段階で勝負を決しない限り、自分達に勝ち目はない。
男は、黒衣の男の懐に踏み込む機会を狙っていた。
女は、男のそうした意図を理解していた。女は、何十合目かの一撃で
一体の骸を、突き上げるとそのまま身体毎、女に飛びかかろうと機会を
伺っていた3体の骸に向けて、押し込んだ。

骸の群れの一角が崩れ、2人を阻む包囲陣が解けた。
2人と黒衣の男の間に、誰もいない空間ができた。
男はその一瞬の隙を見のがさなかった。主を守らんとばかりに
隙を埋めようとする骸の合間を潜り抜けて、男は黒衣の懐に飛び込んだ。

闇を裂く一閃。

男が繰り出した斬撃は、間違いなく黒衣の男の胴を真二つに切り裂いた。

筈であった…。

男は刃先に手ごたえを感じることができなかった。
切り裂いた黒衣の先には誰もいなかった。
男の頭上をより深い闇が過る。
男は、振り向き様に背後の気配に一撃を放った…が、斬撃を空を斬る。
振り向いた男の目に、閃光が走った。崩れた壁面から冷たい光が一瞬
回廊全体に広がった。一瞬、男の動き、そして女の剣が止まる。
だが、男の眼は雷光に曝されながらも全てを見ていた。
黒い甲冑に身を包んだ後ろ姿が、手の止まった女に向けて大剣を振りかざしていた。

一瞬遅れて、轟音が響いた。

−プロローグ完−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

こんな感じなのですが・・・はてさて (・ω・)

434 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/22(月) 23:27 [ .zLGaIfQ ]
>>432さん
自分の世界観を出したいのは分かるけど、
キャラ名とか「個性」を感じるもの一切抜き、
客観的な寸劇描写だけでは感想かけないな・・・
プロローグということで、今後期待させていただきます。

友の影を追ってさん
こういう2ちゃんでの無償の創作の投稿、
それにかける意思はすごいと思うし尊敬します。
でも、状況説明が足りない、脈絡のない展開等、
読むのに努力を要する状況で、内容評価できません。

「手前ら読み手が能無しなんだよ」
と思われるかもしれませんが、
読むのに「努力」を要する物語では、
当然いい評価が出にくくなると思います。
(人は対価を求めるものだし)

文章が長くなっても読みやすさを優先させたほうがいいと思いました。

435 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 00:16 [ Dk2wEd9g ]
そういや、騎士手紙の人の『〜に捧げないテクニック』って感じの話、ログ取っとくの
忘れてたんで誰かWikiにアップする人いないかな〜?

436 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/23(火) 02:32 [ u9djJlwE ]
>>397

 キングはあんま詳しくないので難しいですなー・・・
 クトゥルーで納得して頂けませんでしょうか(笑)

437 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 02:56 [ XzPZ.ULw ]
タルタル戦士は夢を見る 第五十八話 長い長い、夢の中で

―― タロンギ大峡谷・メア岩 ――

タロンギ大峡谷の乾いた大地に酷く不似合いな、白い巨大な建造物がある。
それはメア岩と呼ばれ、まるで城か何かのようにも見える。
サーメットと呼ばれる金属で構成されているそれは、あきらかに人口建造物であるのだが、
いつ、誰が作ったのかは謎に包まれている。
さらに不思議な事に、そこにはゲートクリスタルと呼ばれる大型のクリスタルがあり、
高位の白魔道士はそのクリスタルラインを利用し、テレポという白魔法で瞬時に
各地の”岩”へと転移する事が出来る。
そのメア岩へもたれて、ババドラバドは座っていた。
顔色は良くない。それもそのはずで、彼の腹部からはおびただしい量の血が流れている。
(治らない…なんでかな?)
先ほどからありったけのマナを使い、傷口にケアルをかけているのだが、
傷口は少し体を動かしただけで開いてしまう。
(まったく…まいったな、これは)
ババドラバドは、鞄から黒い布を取り出し、無理矢理腹に巻きつけ、きつく縛った。
(最近、おかしいな……ん、最近…?)
そこで、あれ、と彼は思う。最近とはいつの事だろうか?と。
おかしいと思ったのは何故だろう?今の自分が普通じゃないと認識しているということか。
いつだろうか?なんだろうか?
…考えてみるが、何も分からない。というよりも考えたくない、というのが本音である。

438 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 02:57 [ XzPZ.ULw ]
「はやく!ゲートクリスタルのところまで行けば、きっと誰かいるよ!」
「走って!私の事はいいから!」
「駄目だ、そんなことできるものか!」

二人組みのタルタルがいた。一方は男で、短剣や皮製品の防具に身をまとい、軽装である。
どうやらシーフのようだ。もう一方は女で、その格好から察するに魔道士というのがわかる。
そして二人は今まさに”ゴースト”と呼ばれる死霊に追いかけられていた。
この死霊は未熟な冒険者が決して手を出してはいけない強さなのだが、
未熟さ故、その攻撃性、危険性を理解しておらず、襲われる事が多い。
そして未練を残したまま殺された冒険者は死霊となり…という悪循環がここにはあった。
「魔法を唱えてる!今のうちにもっと遠くへ走るんだ!」
シーフのタルタルが魔道士のタルタルの手を引く。
「…おい、どうしたんだよ!?…ああ!?」
彼は見た、パートナーの魔道士の片足があらぬ方向に曲がっているのを。
「だから…いいからいってよ!二人とも死んだら意味がないでしょう!?」
「いやだ!いやだ!絶対に君を守るんだ!」
彼がそう叫んだ次の瞬間、二人の周りを強力な魔力が包み込み、次には体全体に激痛が走る。
それがどのようなものだったのか分からないが、とにかくゴーストの魔法が発動し
二人は壊滅的なダメージを受けてしまった。
ゆっくりと、薄暗い闇の向こうからふわふわと浮きながら、ゴーストが近づいてくる。
今まさにとどめをささんと、その不気味な目がにやりと笑っているようにも見える。
(ああ…ここまでか…)
タルタルの青年は絶望した。

439 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 02:58 [ XzPZ.ULw ]
「彼女の様子はどうだい?」
「ありがとうございます…お陰で助かりました。」
奇跡というのは、本当にあるのかもしれない。
彼の目の前にはローブに身をまとい、体のサイズに不釣合いな漆黒の鎌を背負ったタルタルがいる。
「うん、この程度の骨折ならすぐに歩けるようになるだろう。後は彼女が目を覚ますのを
 待てばいいさ。…よくここまで逃げ切ったね。大したものだ」
「あなたがいなければ、お終いでしたよ。本当に感謝してます」
「礼を言われるほどの事じゃないさ。…冒険者同士にはよくあることだろう?」
…冒険者。自分よりも遥かに実力も、ランクも高いであろう男に同じ冒険者として扱われた事に
彼は心が躍った。
「俺、昔からすばしっこさだけはあって…魔法学校とかじゃあ成績も下の下で、
 だから、シーフになれば少しは役立てるかなって思ったんです。それで…」
青年は嬉しくなり、色々と身の上話をしてしまった。彼女とどうやって知り合ったか、
これまでどんな冒険をしてきたか、これから何処へ行きたいのか、色々話した。
名前も知らない命の恩人は静かに耳を傾けている。

440 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 02:59 [ XzPZ.ULw ]
一通り話し終えたところで、命の恩人は口を開いた。
「君がうらやましいな」
「え?…どういう意味ですか?」
「君の夢には終わりがあるってことが、さ」
この人は、何を言っているのだろう?と青年は思う。
「冒険者というのは、大きな希望と夢を抱き旅に出る。まぁ、富と栄誉を目的とする者もいるが。
 そして、辛い旅を耐え抜いた者には、それぞれの終着点が待ち受けている。
 …それはね、長い長い夢の物語なのさ。そして、その終着点へたどり着いた時が目覚めの時なんだ」
「じゃあ僕も、夢を見ている?」
「ああそうさ。夢ってのはいつかは覚めるものだろう?その時こそ、新しい道が開くのさ。
 そこでまた新たな冒険を目指して夢の世界へ旅立つ者もいるけどね。
 だけどね、僕は夢から目覚める事ができない。長い長い、夢の中を延々と彷徨っている」
「…よく、わかりません。俺は、冒険者ってその、なんていうか。危険だけど、
 ワクワクして、とても楽しくて…単純にそういうものだと…」
「まぁ、分からなくても困る事は無いさ。それに君には輝かしい未来が待っているはずさ。
 だから、その未来を求めるならば、彼女を命に賭けても守り通すがいい。
 自分のできる事を最大限にやるんだ。それが明日へと繋がる。…わかるだろう?」
「…はい!俺、頑張ります。貴方みたいに皆を守れるように強くなります!」

441 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 03:00 [ XzPZ.ULw ]
その時。側に眠っている女がゆっくりと目を開いた。
「…あれ?…天国じゃない…?助かったの?」
「ああ、よかった!ここは天国なんかじゃないさ、この人が助けてくれたんだよ!」
彼が振り向いた先には、命の恩人の姿は無かった。
「あ、あれ!?今の今までここにいたのに!?」
「どうしたの?誰かが助けてくれたんでしょう?」
「どこへ…いっちゃったんだろう。本当についさっきまで話してたのに」


その後、完全に二人はメア岩の周りをくまなく探し回ったが、付近に人影は見当たらなかった。
結局二人は探索をあきらめて、これまた命からがら、無事マウラにたどり着いた。
魔道士のタルタルは「やっぱり神様の使いだったのね」と宿で感謝の祈りを捧げていた。
しかし、青年は確かに見たのだ。きっとあの人は神の使いとかそんなものではない。
今もどこかで長い長い夢から覚めるのを待っているに違いない、と。

青年は永遠の眠り人との再会を切に願う。もしも再び逢えた時、彼は夢から覚めているのだろうか?
もし目覚める事が出来ていないのなら、同じ夢を見たいと思う。そして共に新しい道を
目指してみたい。それが自分に出来る恩返しと彼は考える。

「ねぇねぇ、早くしないと船がでちゃうよ?」
彼女が腕をぐいぐいと引っ張る。どうやら本当に急がないと乗り遅れてしまいそうだ。
「わかったから、そんなに強く引っ張らないでくれよ」

二人で手を繋いで港へ走る。この温もりをこれからもずっと感じていたい。

彼女と一緒に、長い、長い夢を見よう。

冒険はまだ始まったばかりだ。

                                        続く

442 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 03:04 [ tRi3eQgk ]
ふむぅ、どう取るべきなんだろう?
気まぐれで助けたって話か? それとも昔話か? 記憶の中の話?
まぁなんにせよ

キタ━━━━━━━(・∀・)━━━━━━━━!!

443 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 03:08 [ lQtIp.qw ]
タル戦リアルタイムできたああああああああああぁあ!!
まってた!まってましたよ!
ババド・・いいやつなのか悪いやつなのか・・
とりあえずパパさん、乙です!!

444 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 04:15 [ 5igsDaOY ]
叫んでいいんだよね?(・ω・)
タル戦キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!
パパさんお疲れさまです

445 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 07:44 [ c0iV1F1w ]
タル戦キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!

446 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 08:04 [ 9uEv1OQU ]
SSで暗黒優遇されすぎじゃねぇ?
タル戦、空に奏でる〜、雪の彼方など有名どころには必ずメインクラスで出てくるぞ。
ナイトも当たり前みたいに出てくるしよ…

447 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 08:18 [ QXGKWpsY ]
このスレでまでジョブ批判する奴が出てくるのか・・・_| ̄|○

そんな事忘れてタル戦キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

448 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 10:13 [ bSmWWJKE ]
ちょこっと覗いてみたら

タル戦キテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

449 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 10:17 [ sxQ0UX6U ]
良かった・・・場所見つからなくてこれなかったわけじゃなかたのね・・・

450 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 10:39 [ rZZpIoqQ ]

タル戦とうとうキターーーー(・∀・)ーーーーーー!!!!


ずっと待ってましたよ!・・・ううう(;´д⊂)
次回も期待してます(;´д⊂)

451 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 10:40 [ rZZpIoqQ ]
>>446
>>SSで暗黒優遇されすぎじゃねぇ?
今回のverUPで見事暗黒が強化されたわけだが、SSの効果?
なんてなw

とりあえず読者の漏れたちはまたーり行きましょ

452 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 10:48 [ 6YCx6KTk ]
サーメットって金属じゃない気もするが
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

453 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 13:05 [ lLAwjWiI ]
とにかく  キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!

454 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 13:27 [ jpCiuzII ]
やっぱ暗黒の「業」って便利だもの。
まぁ、俺も思ったけど、また暗k(ry


夢を見てるのはトッパじゃなくてパパだったのかなとかなふとオモタ。

455 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 13:40 [ nU162dBo ]
休日出勤してるさなかずっと考えてて分かったw

助け「られた」ほうがババドラバド夫妻だなんだ。

456 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 14:32 [ 2nIUByIM ]
待ってました―――w
タル戦キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
来れないのかと思っちゃったよ(;´Д⊂)
待っててよかたw(´∀`)

457 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 16:19 [ OuC3kmAo ]
タル戦・・・

キタ━━━ヽ(゚∀゚)ノ━( ゚∀)ノ━(  ゚)ノ━ヽ(  )ノ━ヽ(゚  )━ヽ(∀゚ )ノ━ヽ(゚∀゚)ノ━━━!!
       へ )   (  ノ  (  )ノ   (  )    へ  )   へ )    へ  )
         >    >    <      <       <      >       >

458 名前: (つд`) 投稿日: 2003/12/23(火) 16:56 [ XzPZ.ULw ]
>サーメットって金属じゃない気もするが


     _人人人人人人人人人人人人人人_
        >   な・・・・なんだってー!!   <
        ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
        _,,.-‐-..,,_       _,,..--v--..,_
    /     `''.v'ν Σ´        `、_,.-'""`´""ヽ
    i'   / ̄""''--i 7   | ,.イi,i,i,、 、,、 Σ          ヽ
.     !ヘ /‐- 、u.   |'     |ノ-、 ' ` `,_` | /i'i^iヘ、 ,、、   |
    |'' !゙ i.oニ'ー'〈ュニ!     iiヽ~oj.`'<_o.7 !'.__ ' ' ``_,,....、 .|
.   ,`| u       ..ゝ!     ‖  .j     (} 'o〉 `''o'ヽ |',`i
_,,..-<:::::\   (二> /      !  _`-っ  / |  7   ̄ u |i'/
. |、 \:::::\ '' /        \ '' /〃.ヽ `''⊃  , 'v>、
 !、\  \. , ̄        γ/| ̄ 〃    \二-‐' //

459 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 17:31 [ JzTqS8YA ]
サーメットチップス
錬金術で合成された超硬度の焼き物の素

セラミックみたいなものなのかな・・
なんにしろタル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!

460 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/23(火) 23:07 [ hz8YGDhw ]
>>455
ババドラは戦士だったっていう描写があった気がするから
その線は薄いと思ふ。





まぁ、なんにせよ
樽戦キタ━━━(゜∀゜≡(゜∀゜≡゜∀゜)≡゜∀゜)━━━!!!!

461 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 00:54 [ .h23kEa6 ]
おまえらバカだろ?
ただの糞おもしろいSSに叫びやがって。
本当のファンとは俺みたいな奴を言うんだ。
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!

どうだ?俺の業も中々の者だろ

462 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 01:47 [ kLx1ZrZ2 ]
よかった・・・もうみれないかとおもたーよ

463 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 08:05 [ 8TT6P1oI ]
よかったよかった・・・(ノA;)

そろそろタル戦もクライマックスといったところでしょうか。
MONSTERのような人の絡み合いが上手ですなぁ。

464 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 08:13 [ PKQixlYo ]
>>461
うるせーばか

465 名前: 光の雪 投稿日: 2003/12/24(水) 09:10 [ A2OkMkSQ ]
「はぁ…」
アムスレムスは小さな吐息をひとつ、ついた。
小さな財布袋には、一月分の生活費が入っていた。
それが、全財産だった。
「冒険者かぁ。すげぇよなあ。
稼ぐ冒険者ってのは、一回の冒険で俺らの一年分くらい稼ぐんだって?」
「そりゃ、特別な冒険者さ。
でも…ガーディさんのとことかは、きっとすごいんだろうな」
「ありゃ、特別だよ。このあいだ、下層酒場でロストさんにあっちまったけど、
こう迫力ってかオーラが違うの。暗黒騎士、超クールでカッコイイよなぁ!」
「ああ、下層詩人酒場には歌姫リュートさんがくるから、時おり顔を出すって言ってたよな。
またそれ目当てに、新人冒険者も通ってるって。
俺一回でいいから大白魔道士のリノナノさん逢ってみてぇ〜」
隣の男達の雑談にアムスレムスは小さく嘲笑った。
そんな特別な人間と接点なんか、凡人が持てるわけがない。
現代の神話。伝説。バードの歌になるような冒険者は、自分達とは世界違う。
アムスレムスは小さな自分の手を見た。
タルタルの手は、薄汚れていた。
黒魔道士のあかしである少し折れた帽子を引き寄せ、丁寧にかぶる。
この帽子は表情が見えなくなるからアムスレムスは好きだった。
酒の代金をカウンターにおき上層酒場を出る。
外は新月の闇だった。

466 名前: 2 投稿日: 2003/12/24(水) 09:12 [ A2OkMkSQ ]
ふと、光をともしたくて兵士に話し掛ける。
「おっさん、いつものやるよ」
アムスレムスの言葉に、兵士は不思議そうに笑った。
「助かるよ。俺も忙しいからな。しかしお前さんもかわったタルタルだな。
ろくな礼も出せないのに」
「いつも、変わりもんだって言われるさ」
アムスレムスは呟いて街灯に明かりをともしていった。
ぼぉっと光が一つずつ、闇に浮かび上がる。
海の闇に映る光もなんとなく好きだった。
「…明日は…明日は、なにをしよう、かな」
アムスレムスは呟きながら、ゆっくりと歩く。
その間に考えがまとまった。人のいないところで、トラ狩りでもしよう。
パーティを捜して稼ぎに行く気にはならなかった。
本当にやりたいこともあるにはあるけれど…。
最期の街灯をつけて振り返った瞬間、人にぶつかった。
「あ」
「っわりっ」
振り向きざまでお互いが跳ね飛ばされた。
お互い身の軽いタルタルだったからだろう。
相手はブルーシルバーのやや長めの髪を一つに縛り
夕暮れの一番深い群青の瞳をもっていた。
相手の身長が自分より小さい事にアムスレムスは少しだけ優越を感じた。
相手は身軽に飛び起きて、地面に落ちたアムスレムスの帽子を拾った。
「わりいな」
そういってぱたぱたと帽子の埃を払い手渡す。
「いや、俺も街灯つけてボンヤリしてたし」
帽子をまぶかくかぶって、アムスレムスは急いで自分の表情を隠す。
帽子は、アムスレムスにとって大事な自分を守る防御壁だった。
「街灯…アンタが今夜つけてくれたのか」
蒼い瞳のタルタルはにっと笑って頭を下げた。
「…」
「ありがとよ」
青い瞳のタルタルはそのまま走って、去っていった。
アムスレムスは吐息をひとつ、ついた。
そして帽子を目深にかぶりなおす。
暗い顔をしていても、帽子が隠してくれるから助かる。
「ありがと、か」
青い瞳のタルタルは急いで走っていった。
その表情は自信に満ちていたようだし、明るい瞳だった。
「幸せなんだろうな。行く所があるって」
アムスレムスには明日の予定すら自分で作らなくてはない。
ゆっくり顔をあげた。
「いって、みようかな。一人なら、いいよな」
小さな希望、光を手にしてみたい。
アムスレムスは準備のため競売のカウンターに背伸びをして覗き込んだ。

467 名前: 3 投稿日: 2003/12/24(水) 09:13 [ A2OkMkSQ ]
タルタル族の魔道士として魔法にあこがれた。
魔道士だから、魔法は必死でそろえた。
だからいつも、貧乏だった。
着る服を新調する時は、魔法に良い装備が出たとき。
ないお金をやりくりして、それこそ食費すら削って、がんばってきた。
黒魔道士のあこがれ、古代魔法。
いつか手に入れたいと思っていた。
もちろん他の魔法の方がよく使うから後回しになってしまったけど、
ずっとずっとアムスレムスの中では光のように心の中に憧れとして存在した。
いつか、大黒魔道士のように強大な精霊魔法で敵を攻撃したいと思っていた。
でも、現実はちがう。
生活に追われて、未来を夢見る暇すらなく。
仕事でパーティに誘われるのはいつも移動屋としてか、
白魔道士の代わりとしてだった。
毎日毎日ケアルばかりで、いつもうんざりしていた。
それでも、仕事があるだけ…たぶんましだ。
白魔法を使わないといったら、とたんに仕事はなくなってしまう。
そうしたら、アムスレムスは生きてゆく術すらない。
「黒魔道士、なのに。な」
だからずっと、この帽子を手に入れるまでもつばの広い帽子をかぶっていた。
雇い主のヒュム達にアムスレムスの表情が戦闘中見えないように。
黒魔道士としてのプライドは、アムスレムスはずたずただった。
いつでも劣化白として、パーティの薬箱になっていた。
ジュノにきて何ヶ月もたつが、ジュノでいい思い出なんかない。
寒いジュノの風に、小さく笑う。
いや、生まれてこの方いいことなんか…あったか首を傾げたくなる。
黒魔になってから、身体より心がずっと寒かった。
悔しいとか、悲しいとか思ってた昔より、
それでも仕事があるんだからと自分を慰めるようになってしまった今のほうが
心は冷えきってしまった。
それでも、明日の食事を買うために、生きるために様々なパーティにもぐりこんだ。
アムスレムスはそんな自分がなにより大嫌いだった。

468 名前: 4 投稿日: 2003/12/24(水) 09:15 [ A2OkMkSQ ]
翌朝、荷物を整えて部屋を掃除しモグに任せる。
「行ってくるから。もし帰らなかったら、後始末よろしく」
命の危険は荒野ならどこにでもある。出かけるときのいつもの言葉をモグに言う。
「気をつけてクポォ」
モグは笑顔でアムスレムスを送り出していった。
アムスレムスは上層の空を見上げる。
青い澄み切った空にちょっとだけ口元に笑みを浮べた。
「今日は、いい日になると、いいな」
アムスレムスはそのまま古墳に入っていった。


「つーか。なに?アレ」
ロストの言葉にリノナノは肩をすくめる。
「そんなこといわれても、俺にわかるわけねぇだろ」
「気にしするな。自分の戦いに集中しろ」
ガーディの言葉にロストは吐息をついて、チロッと視線をアンジュにやる。
「この生足も、見納めか」
「なにいってんのよ!だーれーが、見納めですって」
アンジュの両手棍がロストの後頭部を小気味いい音を立てて殴った。
「だって、冒険者引退、だろ?」
その言葉にアンジュは吐息をついた。

469 名前: 5 投稿日: 2003/12/24(水) 09:18 [ A2OkMkSQ ]
「完全引退ってわけじゃないって何度言えばわかるかしら?」
「でもこのパーティで色気担当はアンジュだったのに…」
言いかけたときスカコーンっと両手棍が空気をきって、ロストの頭に直撃した。
「色気担当になった覚えはないわよ」
「姫、いいかげんにしてやらねぇと、これ以上ロストが馬鹿になったら俺達が困る」
さすがにリノナノが容赦のない打撃に、ストップにならないストップを入れた。
「でも…アンジュも、大変よね」
リュートが竪琴を抱いて呟いた。
「大丈夫よ。うちの父親頑丈だから。そう簡単に死にはしないわ。
悪人は世に憚るものよ。とはいえ仕事が、ね。
妹の旦那はその点頼りになるタイプじゃないし、私がメインで入るしかなくって」
「彫金士としてアンジュが凄腕なのは知らなかったな」
ガーディの呟きにアンジュはコロコロと笑う。
「凄腕ってほどじゃないわ。まだ印可だもの。
でも、これだけは小さい頃から好きでやっていたから」
「それにしても、すごい」
「アンジュの宝石、ミュミもリングにしてつけてるにゃン」
ミュミは指を誇らしげに見せ、アンジュは嬉しそうに頷いた。
「ええ。でも…そんなことより、私がいなくなって大丈夫?」
アンジュの言葉にガーディはおおらかに笑う。
「大丈夫だが、寂しくはなるな」
「ま。アンジュがいなければ後ろから飛んでくる棍の心配しなくていいし、
敵だけに集中できる」
「一言余計よ。ロスト。ガーディ、早目にメンバーは補充してね。
何かあったらいつでも手伝いにはくるつもりではいるけど…」

470 名前: 6 投稿日: 2003/12/24(水) 09:19 [ A2OkMkSQ ]
「こっちの心配はいらねぇよ。姫」
リノナノは顔をあげてアンジュに笑った。
「そう、ね。だといいけど」
「てか、よ。アレ…どうよ」
ロストの指先には小さなタルタルが必死で戦っていた。
あきらかな劣勢。魔法詠唱もままならず、ガシガシとHPが削られている。
「おいっ、救援だせよ!!!せめて助けをもとめろっ!!死にてェのか」
尋常ではないやばさに、ロストは叫ぶ。
慌ててアンジュとリノナノのかけるスニークを受け、ガーディたちは走り出した。
「あ、ぅ、あ、あ!」
小さなタルタルの黒魔道士が、
涙を浮かべながら両手棍で敵の攻撃を必死に殺そうとしている。
が、少しも防御にはなっていなかった。
リノナノがケアルの詠唱を行いひざまずく黒魔道士を回復する。
「救援も出せねぇのかっ」
その言葉に黒魔道士は小さくふるふるっと首を横に振り、
そしてあきらめたように救援を求めた。
「いくぜ!」
むしろ楽しそうに、ロストは鎌を振り上げた。
「ガーディ、タゲ取りよろしく。姫、みんなにケアルを。俺は黒魔をみる!」
「おお!」
「了解」
息の合ったコンビネーションに、ゴースト族はあっというまに沈んだ。

471 名前: 7 投稿日: 2003/12/24(水) 09:21 [ A2OkMkSQ ]
気まずい空気の中、一番にブチキレたのはロストだった。
「てめぇ、なに考えていやがるんだっ!!
ゴースト族にてめぇみてぇなチビ一人でどうにかなるわけねぇだろうっ」
ひざまずく傷だらけのタルタルの黒魔道士の胸倉を掴んでロストは揺すりあげた。
「つか。ま。言いたいことはおんなじだが…傷の手当てが先だ」
リノナノは言ってロストの腕を背伸びして掴んだ。
「痛かった、にゃん?」
ロストが手を離すと黒魔道士はそのまま冷えた床に落ちた。
リノナノは吐息をついてケアルを注ぎ、
その後大きな治りきらない傷に蒸留水をふりかけセージの葉をもみこんで手当てした。
「どうだ?」
ガーディの言葉にリノナノは眉を寄せる。
「ま、たいした怪我じゃねぇ。
呪いも浄化できたし…でも、いくらなんでも無謀すぎるぜ」
黒魔道士は俯いたまま黙り込んでいたがやっと小さく口を開いた。
「すみません…」
その言葉にロストはパシッと黒魔道士の帽子を叩き落とした。
「すまねぇとおもってねぇだろ。テメェ、そういうのすぐわかんだよ」
叩き落とした帽子をリノナノは拾い上げ、埃をはたき渡そうとして顔をあげる。
「お前もしかして昨日の、街灯の?」
「あなたは…昨日の」
同時にいった。
「なんだよ。知り合いかよ」
ロストの不満げな声に、呟いた。
「いや。昨日街灯でぶつかって…」
「あの、帽子いいですか」
アムスレムスはリノナノから帽子を奪い、目深くかぶってほっと息をついた。

472 名前: 8 投稿日: 2003/12/24(水) 09:23 [ A2OkMkSQ ]
「とにかく、ジュノに帰れ。道に迷ったとか無しだからな」
黒魔道士なら、エスケプもデジョンも使えるはずだ。
が、ロストの言葉にアムスレムスは俯いたまま首を大きく横に振った。
「テメェ!!!」
「ロストっ!手を上げるのは、駄目よっ」
女性には手を上げないロストも、男には容赦はない。
アンジュのとめる言葉にロストは歯を食いしばった。
「一人でここのモンスターとやりあうのは不可能なんだ。わかるか?」
ガーディが重々しい声で厳しく言うが、アムスレムスはもう一度首を横に振った。
「死んでも…いい」
その瞬間、ロストの平手がアムスレムスに飛んだ。
「ロストっ!!」
アンジュが鋭い声でとめたが、
ロストはアムスレムスの胸倉をもう一度掴みあげた。
「自殺志願者、結構。でもな、ここでやるのはやめてくれ。
俺達はここでまだやらなきゃならない仕事があるんだ。
目の前でお前になんかあったら、
テメェの命張って飛び出す白魔様がうちには二人もいるんでな。
死ぬなら、またの機会にしてくれ」
低い本気でおこっている声色のロストだった。
「生きてたって、意味…ない」
アムスレムスの言葉にロストはこんどは片手拳で思いっきりバキッと殴った。
「俺らの目の前にいなきゃ、なんでも好きにやれ。
でもここじゃ迷惑だっていってるんだよっ。
その頭は馬鹿か?言葉わかんねぇわけじゃねぇだろ?!」

473 名前: 9 投稿日: 2003/12/24(水) 09:26 [ A2OkMkSQ ]
アムスレムスをロストはガクガクと揺さぶる。
リノナノは顔に手を当て、ガーディを見あげた。
「わり、ロストぶっ壊れたから、ちっと押さえててもらえるか?」
ガーディはその言葉に肩をすくめて、ロストからアムスレムスを引き離した。
「切れるな、頭を冷せ。おまえが本気で切れたらタルタル族は簡単に壊れる」
暗い古墳では、逃げ場も身を潜める場所もない。
仕方なくロストは通路の壁に背を預けすわり、
正面のアムスレムスを殺すように強い眼差しで見つめた。
リノナノはアムスレムスを覗き込んだ。
「猛獣は隔離したから安心していい。もう手はださねぇよ。
でな、わざわざ理由もなくこんな所で戦ったりはしねぇだろ?
死ぬ気なんかじゃ、ないな?」
落ち着いた白タルの声にアムスレムスはボロッと涙をこぼした。
「も、いい」
「ん?」
「も、いい、です」
「こっちはよくねぇんだけどな。アレ、狙ってたってことは…古代、か?」
その言葉にアムスレムスはぴくんとした。
「あたりだな」
「いいんです。もう、ほんとに…使う戦いなんか、どうせしないし…」
「欲しいんだろ?だからきたんだろ?…―だから、救援出さなかったんだろ?」
リノナノの問いかけに、アムスレムスはしゃくりあげながらコクンと頷いた。
リノナノは振り返り困ったような顔で仲間を見た。

474 名前: 10 投稿日: 2003/12/24(水) 09:28 [ A2OkMkSQ ]
「ったく、うちの白タル王子様は底抜けのお人よしかよっ?!」
ロストが自分の髪をガリガリとかいた。
「一人で魔法取りにいったお馬鹿さん仲間ってとこかしら」
アンジュが肩をすくめ呟く。
「相応の代価は払ってもらうか。俺たち雇うか?」
ガーディの言葉にアムスレムスはそのまま首を横に振って涙をふいた。
「お金、ないし…」
「金がありゃ、競売で買うわな」
ロストは冷たくいった。
「あ…」
話そうとしたリノナノの口をガーディは止めた。
「とりあえず、助けた代価は払ってもらおうか。
しばらく付き合ってもらう。一人にもできないしな」
その言葉にアムスレムスは顔をあげた。
「………は、い」
「おっさん。この馬鹿と組むのか?!」
「しょうがない、わね」
仲間達は様々な声をあげた。
リノナノにも、欲しい魔法があった。
絶対取れないことはわかっていて、無謀だとわかっていて、それでも求めた。
その気持ちは痛いほどわかってしまうから。
リノナノの困ったような眼差しにガーディは心配するなというように、
おおらかに笑った。

<続く>

475 名前: \(^o^)/ 投稿日: 2003/12/24(水) 09:35 [ J84aLDZo ]
初めて書き込みながら
うおーーーーーーーーーーーーー!!!!、
初めてリアルタイムで見れた〜〜〜〜!!!
いつも、読ませてもらってる分すごく嬉しいぃぃ
作者さん頑張ってくだせい〜
夜勤明けで眠かったけど寝なくてよかった・・・・(-_-)zzz

476 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 09:36 [ A2OkMkSQ ]
こそっとお邪魔いたします。
クリスマスプレゼント代わりに。
もしくは、たくさんの言葉のお礼に。
後半またすぐ、更新に参ります。

すべての作家さん、頑張ってくださいな。
書きたい気持ち、伝えたいことを
文字を介して伝えられるように、私もなりたいです。
伝わる言葉を選ぶのは難しいけど。

そしてこれは書かないと
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
わくわくさせられる展開です

477 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 09:56 [ KHdbu4Ew ]
タル戦キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
よかったよかった続きが読めるよダルメルになって待ってます!
雪の彼方番外編?キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
黒タルの気持ち、痛すぎるほどによくわかってしまう。
このスレほんっと最高。

478 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/24(水) 14:55 [ Y4N/d9Ms ]
サラマの章 第10話 惨劇の傷跡

「オラ、さっさと走れ!」
カドルとヴィクスを背負った俺はライオネルに激を飛ばす。
「は、はい!」
バリスタを背負ったライオネルは苦痛の表情を浮かべながらも、
その足を踏ん張らせ、速度を上げた。
その間にもカドルの体の傷口からは血が溢れ、
俺の服を赤く染めていく。
「ちぃ、もっと軽症だと思ったんだがな!」
「もう魔力が残ってないんです!街の白魔に救助してもらいましょう!」
ライオネルの顔色は、まるで生気を失ったかのように青ざめている。

この事態をもう少し早く確認していれば…
俺はそう思うと、余力を振り絞って速度を上げた。
「急げ!こいつはもう長くはもたないぞ!」
「間に合ってくれ…!」
もう何分走っただろう。
こんなに長く、全速力で走ったのはあの時以来だろうか…。

そうこう考えている内に橋が見えてきた。
俺はさらに速度を上げ、喉がイカれるぐらいの大声で叫んだ。
「レイズナー要請ぃ! 誰かこいつらを救ってくれぇ!」

479 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/24(水) 15:23 [ Y4N/d9Ms ]
〜数時間後 ジュノ上層〜

ジュノの名医、モンブロー医師のいるこの病院。
今の俺達のように運ばれてくる冒険者は数知れないらしい。
幸いにも彼らは、白魔道士達の懸命な回復魔法や、医師達の治療を施され、
傷口はとりあえず塞がり、安静に休むことが出来ている。

ちなみに…俺もベットの中だったりする…。
ライオネルが部屋の向こうでモンブロー医師と話をしている。
ライオネルの表情は未だ青ざめていた。
モンブロー医師はレントゲンをペンで指しながら話を進めていた。
最後に彼が微笑むと、ライオネルの顔色にやっと生気を取り戻した。

ライオネルは俺の寝てるベットの側にある椅子に腰掛け、診断結果を話した。
「ヴィクスとカドルは大丈夫だそうです。港の白魔道士の助けが無かったらどうしようも無かったそうですが…」
「港の白魔に感謝しないとな…」
俺はベットから起き上がる、と、ライオネルが俺に布団を被せた。
「いけませんよ、サランドラマ君は過労なんですからしばらく安静にしてなくては…」
「俺を誰だと思ってるんだ? 無類のスタミナをもつサラマ様だぜ?」
俺はライオネルの手を払うと、フラついた足でバリスタに歩み寄った。
「礼はバリスタにしな。こいつが走ってこなかったら今頃ラプトルの胃の中だぜ」
「…そうですね」
ライオネルは申し訳なさそうな笑みを浮かべた。

480 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/24(水) 15:46 [ Y4N/d9Ms ]
ふと、俺はある異変に気がついた。
俺はライオネルの腕を掴んで引き寄せた。
「わっ、どうかしましたか…?」
俺はバリスタの手首に指を当てて答えた。
「こいつ…脈が止まってるぞ!」
「な…!?」
ライオネルは一瞬驚いた表情を浮かべるが、途端に暗い表情になってしまった。
喜怒哀楽の激しい奴だと最初は思ったが、まだ治っていないのか…。
そんな事を思っていると、奴は口を開いた。

「彼…義手なんですよ」
俺はその一言に耳を疑った。
狩人が義手だと? 正確に狙いを定めて矢を放つジョブが、義手の彼に出来るのだろうか?
「バリスタは…狩人だったな…」
俺がそう尋ねると、ライオネルは目線を逸らして話した。
「彼は幼い頃、剣虎に襲われ…右腕を食いちぎられたんですよ」
俺は「そうか」と呟いた時、がざっと物音が聞こえた。
その音に気がついたライオネルは、音の主に声をかけた。
「ヴィクス、目が覚めたようだね」
ライオネルの声に合わせて首を縦に振ると、青い澄んだ瞳で真正面を見据えた。
ライオネルは振り返り、また口を開く。
「彼はヴィクスといいます。白魔道士…ですが…」
そしてまた暗くなる。俺はイラついて聞き返す。
「ですが?」
「…声が出ないんです。視力もゼロの状態です…」

481 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/24(水) 16:09 [ Y4N/d9Ms ]
「…待て」
俺の怒りはピークに達していた。
俺はライオネルの胸倉を掴み上げると、右手に拳を握った。
「狩人は義手で、白魔は声が出ない!そんなやつを何故戦場に向かわせる!?
 そんなやつ、戦場じゃ使い物にならない!死にに行かせるだけだろが!」
その声を聞いていたのか、ヴィクスは瞳に涙を浮かべ、ベットから降りた。
そして、声の聞こえる方を目掛けて突進してきた。
俺は見事なタックルを喰らい、床に倒れる。
その音につられて来たのか、カドルがヴィクスを抱え起こした。
カドルはヴィクスの瞳の涙を拭うと俺に呟いてきた。
「僕はカドル。暗黒騎士です。よろしく」
片言の言葉を吐くと、すっと手を差し出してきた。
「握手…」
カドルはまるで死んだ魚のような目でこちらを見つめている。
思わずぞっとした俺は、カドルの手を払ってしまった。
俺に払われた自分の手を見つめ、カドルはそのまま自分のベットに潜り込んだ。

ライオネルは俺の肩を叩いて囁いた。
「この部隊は…復讐の為だけに戦い続けているんです。
 バリスタは恋人、ヴィクスは親友、カドルは弟の仇であるオークを滅ぼすために志願してきたのです」
俺はその言葉に愕然とした。
「国のためでも…国民のためでもなく…ただ復讐のためだけに…?」
「はい、そして私達はいつからかこう呼ばれるようになりました。


 『復讐の騎士団』…」

サラマの章 第11話に続く…

482 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 19:41 [ sZeWoNkU ]
うお、リノナノだ!作者さんプレゼントありがとー!
なんかこの黒に激しく共鳴しちゃうなあ。時期的にもw

483 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 19:51 [ nEAujbLM ]
リノナノキタ━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━!!!!!
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484 名前: 光の雪<後編> 投稿日: 2003/12/24(水) 23:28 [ IkWoDWFQ ]

「で、名前は?」
「アムスレムス…です」
アンジュは花がほころぶように微笑んだ。
「しばらく、よろしく。アムスレムス。私は白魔のアンジュ。
リーダーはガルカナイトのガーディ、さっきからおこってる暗黒騎士はロストで
ミスラシーフはミュミ、詩人のリュートに白魔のリノナノよ」
その言葉にアムスレムスは茫然とした。
「どした、チビ」
アムスレムスはわなわなと震えていた。
呼吸すら忘れてしまったかのようだった。
「おい、生きてっか?」
ぱしんと殴るロストにやっとアムスレムスは叫んだ。
「伝説のパーティッッッ!!!!?」
「あ?」
「なにそれ?」
「伝説?」
「いえ、あの、だってまさか。ガーディさんがその、あのガーディさんだとはっ」
ガーディは不思議そうに眉を寄せる。
「あのガーディさんてなんだ?どのガーディなのかわからんな」
「だって、ナイト・オブ・ナイト神々の盾といわれるガーディさんなんて…」
その言葉にロストは笑った。
「おっさん。そんな風に言われてるんだ」
「いや、俺もはじめて知った…」
ガーディはビックリしたように呟く。

485 名前: 2 投稿日: 2003/12/24(水) 23:29 [ IkWoDWFQ ]
「アルタナの祝福を一身に受けた大白魔道士のリノナノさんに
…白の天使のアンジュさん」
「やめてくれ。寒気がする」
リノナノは即答しロストは茶々を入れる。
「白い天使?黒い天使の間違えじゃ…」
言いかけたロストにアンジュの生足蹴りがはいった。
「あの、俺…そのっ」
アムスレムスはいまさら慌てたようにパニックモーションする。
「とりあえず、落ち着け」
リノナノは吐息をついて、メロンジュースを差し出した。
「あの…」
「いーから、飲んで落ち着け」
差し出されたジュースをこくこくと飲み干し、
アムスレムスははぁっと息をついた。
「あの、俺…そんなにすごい方々だったなんて知らなくて…その」
「俺たちも俺たちがそんなにすごい方々だったとは知らなかったよ」
ロストは意地悪そうに応えた。
「あ…」
「からかうな。ロスト」
リノナノはロストを睨みつけた。
「おチビちゃんはおチビちゃんに優しいねぇ」
「ロスト!」
「へいへいっと」
ロストは肩をすくめて黙り、リノナノは呟いた。
「ロストのいう事は気にすんな。
ま、どれだけ変な噂聞いたのか知れねぇが、こんな感じのパーティだ」
「あの……ハィ」
小さく言うアムスレムスによしっと言うようにリノナノは微笑んだ。

486 名前: 3 投稿日: 2003/12/24(水) 23:32 [ IkWoDWFQ ]

「だ――!いー加減にしねぇか。このっ馬鹿」
ロストは何度目かのブチ切れ声をあげた。
「あ、その、あの」
アムスレムスはびくっとした。
「なんでテメェ、ケアルケアルケアルケアル。黒魔じゃねぇのか!!」
「………」
リノナノは泣きそうな顔で俯くアムスレムスに、声をかけた。
「このパーティは白魔2なんだ。だから、ケアルは足りてる。
いままでどんなパーティ組んできたのかしらねぇが精霊撃ってもいいんだぜ」
「あの、…でも」
「そんなにケアルが好きなら、白魔になれってんだ」
その言葉にアムスレムスは顔をあげた。
「ちがっ!だって、俺、ケアルが一番パーティの役に立てるからっ!」
「臨機応変って言葉、しらねぇのか?」
「だって…俺」
「野良は、大変よね」
野良パーティで後衛だったリュートはぼそりと呟いた。
ガーディはアムスレスムを元気付けるようにいった。
「あのな、必要なときはケアルして欲しいが、
リノナノとアンジュがいればいまはそっちの心配はない。精霊魔法詠唱してくれ」
ガーディの言葉にアムスレムスは俯いて帽子をきゅっと深くかぶりなおした。
「敵さんの生命力、削るの手伝ってにゃv」
ミュミが気軽にいった。

487 名前: 4 投稿日: 2003/12/24(水) 23:34 [ IkWoDWFQ ]
「はい…ぁの」
「だー。いらつく奴だなっ。言いたい事があるなら言えっ」
「精霊魔法、詠唱しても本当に怒らないんですか?」
その言葉にロストはアムスレムスの頭をパシッとはたいた。
「本気で他人の話きかねぇ奴だな。臨機応変に、だ」
アンジュがアムスレムスにウインクをした。
「ロストも最近までその言葉知らなかったから、得意になって使いたいのよ。
気にしないでね」
「姫〜〜」
はじまる軽い言い合いに笑いがはじける。
そして戦闘。
「わわ、バカッ!!!タゲ取りすぎだっチビ」
「わ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
アムスレムスの連発精霊魔法に、ケアルが飛び交う。
「テメェの魔法の使い方もしらねぇのか。ぼけっ」
ロストの言葉にリノナノがボソッと呟いた。
「過去が見えるな」
戦い方で、その人の生きてきた道や、戦闘のセンスがうかがえる。
思想や信念すら見える事だってある。
ロストは遠慮なくアムスレムスに文句をいった。
遠慮なく怒られて、遠慮なく笑える。
こんなに話すパーティはアムスレムスには初めてだった。
こんなに精霊魔法を打てるのも、こんなに楽しいのも、
たぶん生まれて初めてだった。
「アムスレムスの精霊魔法って、ロストの攻撃より強いにゃw」
ミュミの言葉にロストは切れ、
アムスレムスは少しだけ帽子のつばの下で誇らしげに笑った。
時間が止まればいいと、おもった。

488 名前: 5 投稿日: 2003/12/24(水) 23:38 [ IkWoDWFQ ]

ドロップ魔法は、フリーズ。
敵がドロップしたとき、ロット勝負とガーディは言いアムスレムスをうながした。
アムスレムスははじめてみる古代魔法に
そのロット権をもらえたこと自体嬉しくて胸が高った。
3つの色の違う10面のサイコロを転がし、
数字を出してアイテムを取り合うヴァナの冒険者たちの伝統だ。
アムスレムスの出した数は842。アムスレムスは帽子の下で瞳を輝かせた。
が、最期に振ったリノナノの数字が920だった。
アムスレムスは深い落胆を帽子のつばに隠しているとき、
ちっと舌打ちが二つ聞こえた。
それは、ロストとリノナノのものだった。
「さて、やるか」
ロストは立ち上がり再度鎌を構え、ミュミは敵を釣りに走っていった。

二つ目のフリーズドロップ。
そして、このパーティの気持ちは一つになった。
アムスレムスのロットの時には全員が高い数字出せよ!!!!っと祈り
その祈りが神に届いたのかはわからないが643という微妙な数字がでた。
そして、他の人間のロットのときは全員高い数字出したらコロス!位の
勢いと気迫が表情に表れていたが
目を閉じ祈っていたアムスレムスには、それは気付けなかった。

489 名前: 6 投稿日: 2003/12/24(水) 23:40 [ IkWoDWFQ ]
順調に低い数字を出してゆく。
最期にリノナノの番がきて、リノナノは自分はもう手に入れたからといった。
「え?」
「やったな」
「よかったにゃ^^」
「おめでとう。アムスレムス」
「おめ」
祝福の言葉にアムスレムスは顔をあげ目を伏せた。
「だって、ほんとに?」
その言葉にロストはアムスレムスの頭をはたいた。
「ロットで勝ったのはお前だろ?」
差しだされる魔法にアムスレムスは両手で大事に受け取った。
手の平の中の魔法を信じられない眼差しで見つめる。
「ここで、覚えていけよ」
言われ、魔法を開く。
不思議な感覚。魔法の詠唱呪文が頭の芯に溶けてゆく。
古代の知識と力が自分の中に刻まれる。
「ありがとう…ございました」
帽子のつばを握り締め深くかぶり、丁寧に頭を下げる。
嬉しすぎる時も顔を隠したくなるんだと、アムスレムスは思った。
泣き顔はやっぱり、恥ずかしいから。
「さてっと、落ち着いたら一戦やって帰るか」
「え?」
「撃ちてぇだろ?古代」
リノナノはロストをチロッと見あげた。
「そのまえに、謝っておけよ。ロスト。
アムスレムスにはじめひどいこといったろ」
「謝るつもりはねぇな」
「ロスト」
「あのな。うちの白魔様の前で死ぬって言う奴がいたら、俺はいつでもぶん殴る。
白魔道士は命をつかさどるジョブだろ。
そいつの前で命がいらねえってのは、うちの白魔を否定しているようなもんだ。
いっちゃなんだが、今でもマジにその件については俺は怒ってるんだからな。
謝る必要はねぇな」
ロストの言葉にリノナノは苦笑した。

490 名前: 7 投稿日: 2003/12/24(水) 23:42 [ IkWoDWFQ ]

古代魔法を決め、古墳から抜け出した一向はジュノにむかった。
「あの、今回のガーディさんたちのお仕事ってなんですか?」
アムスレムスは不思議だった事をやっと聞いた。
「んあ。とある黒魔からの依頼で、フリーズだ」
ロストの言葉にアムスレムスの足が止まった。
「じゃ、もしかして…」
一個目がドロップした時点で仕事は終わっていた。
あとはただ、アムスレムスのためだけにいてくれたのかと思うと…。
アムスレムスは帽子のつばをぎゅっと握り締めた。
「俺もお金払いますからっ!!」
「金、ねぇんだろ?」
「あ…」
ちろんとロストに見られ、アムスレムスは俯いた。
「ま、一人で魔法取りにくる馬鹿は手伝うのが、うちの伝統らしくてな。
気にするな」
「うっせ。悪かったな」
ロストの言葉にリノナノはそっぽを向く。

491 名前: 8 投稿日: 2003/12/24(水) 23:44 [ IkWoDWFQ ]
「ほら。とっととジュノに帰るぞ」
背中をドつかれ、アムスレムスはとぼとぼと歩き出す。
魔法を買う黒魔道士がいるのに、無料でもらってしまうなんて…
アムスレムスは暗い表情を帽子のつばに隠した。
「アムスレムス」
ガーディはアムスレムスを振り返った。
「はい」
「ジュノに帰ったら、モグの住所教えといてくれないか?」
「早速勧誘かよ」
「もし魔法を無料で受け取ったのが心苦しいようなら、
2〜3回規定の3割引で仕事受けてくれ」
アムスレムスは帽子を目深くかぶったまま、目を輝かせこくんと大きく頷いた。


バタリアに白い雪が降る。
アムスレムスは足を止め、空を見上げた。
「どうした?」
振り返るリノナノにアムスレムスは空を見上げたまま呟く。
「雪…」
みんなの足が止まった。
「きれいにゃvちょっと冷たいけど」
跳ね回るミュミにみなが天を見あげる。

492 名前: 9 投稿日: 2003/12/24(水) 23:46 [ IkWoDWFQ ]
「そういや、雪の歌があったよな、リュート」
「いくつもあるけど。すべてを無にかえす優しさが降るって奴かしら」
「ああ。ききてェな」
リノナノの言葉にリュートは頷いた。
「あったかなお酒でも飲みながら、仕事あがりの祝杯をあげましょう。
私も謳いたいわ」
「アムスレムスも時間があったら、飲もうぜ」
アムスレムスは真赤な頬で帽子に顔を隠し、うなずく。
差し出される手を取る。
ずっとずっとアムスレムスは寒かったような気がしていた。
ジュノに来てからずっと。
でも、いまは胸の奥が少しだけ暖かくぽっと光がともったような気がした。
小さな重い扉がやっと開いて、先の道に進んでゆけそうな…そんな感覚。
先になにがあるかはわからないけど、進めばきっとわかるはず。
明日も黒魔道士として希望を胸にがんばってゆけそうな気がした。



                    <END>

493 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 23:49 [ IkWoDWFQ ]
こそっとお邪魔いたしました。
思った以上に長くなってしまいました。お疲れ様でした。
また冬眠に入ります。
くくり的には番外編なのか…な。
書き手の皆様応援しております^^

メリクリ&良いお年をお迎えくださいませ。
お風邪など召されませんように。

494 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 23:59 [ Eu.OwuD2 ]


             最

             高

495 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/24(水) 23:59 [ oeB1vMsI ]
んーと、新章かな、「光の雪」!
黒魔なので、ものすごく共感してます。
特にお金がないとことかいろいろ(つД`;) 
どうか幸せになってくれ〜私の分まで!!

496 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 00:49 [ 9G6zpBt. ]
二番煎じだけど・・







             最

             高

497 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 00:59 [ Wv7j0pDE ]
新章である事を(なる事を)祈りつつ寝る。
メリクリ〜

498 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 01:31 [ 9kCKfc8. ]
タルタル戦士は夢を見る 第五十九話 最終試練

―― 北グスタベルグ ――

「試練?」
「ああ、そうだ。試練だ」
それは、トッパと名無しのガルカがまだ北グスタベルグで修行をしていた頃である。
「試練。それはこの大地に生を受けた者全てに必ず訪れる。
 それが一度きりか、はたまた複数回か…それは人それぞれだがな」
おにぎりを頬張るトッパの横に座った名無しのガルカは、ソーセージをくわえながら言った。
(ああ、またわけのわからない説教がはじまっちまったか…)
と、内心トッパはうんざりしていたりするのだが。
「試練とは、様々な形で訪れる。それは生き死にを賭けた戦いであり、もしくは
 人生の運命を変える決断の時であったりもする。お前がこれから生きていく上で、
 必ずその壁にぶつかるだろう。」
「オイラも必ず…ってか?」
「ああ、必ずだ。問題はその時にお前が何を感じ、どうあがくか、だ。
 もしそこでお前が未熟であれば、お前は試練に打ち破れてしまうだろう。
 その壁を越えるには、単に力があればいいというわけではない」
「へ?なんだよそれ?めちゃくちゃ強ければいいんじゃないのか?」
「フ…だからお前はまだまだなのだ」
名無しのガルカはトッパを鼻で笑った。
「いいか?壁を破るには強い精神力が必要だ。器、つまり屈強な肉体があろうとも
 肝心の中身がダメではどうしようもない。まぁ、今のお前は器も中身も全然だがな」

499 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 01:32 [ 9kCKfc8. ]
―― タロンギ大峡谷・メア岩 ――


「はぁ…はぁ…まったく…どうしたんだろう、な…」
ババドラバドは一人、メア岩にもたれて舌打ちをしている。
…傷が塞がらないのだ。布を無理矢理巻きつけて出血は多少抑えている物の、
座っているだけでも消耗が激しい。
ケアルを重ね重ねかけているのだが、やはり時間がたつと傷が開いてしまうのだ。
「少し…疲れた、か」
ババドラバドは目を閉じた。少しでも痛みの感覚を和らげたいのもあるし、消費したマナの
回復をしなければいけない。
ゆっくりと、意識が遠のいていくのが分かる。それは眠りによるものなのか、はたまた
多量出血による昏睡なのかは分からない。…どちらにせよ彼の意識は深い深い闇へと落ちていく。

500 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 01:33 [ 9kCKfc8. ]
―― ウィンダス・森の区 ――

「…ばど!…ばばどらばど!!」
「…ん?」
目を覚ますと、口やかましい幼馴染が上から自分を見下ろしている。
「ん、じゃないでしょ!全く、今日も学校さぼって!私知らないんだからね!」
「ふあぁ〜。イルルかぁ…」
イルルは、その寝ぼけ顔を見て半ば呆れ顔である。
「はぁ…まったくなんでこうもあなたって能天気なの?
 分かってる?今度のテスト、ちゃんといい点とらなきゃあなた落第なのよ?」
「だから、前にも言ったろう?僕はもう魔法学校へは行かないって。
 僕はね、戦士になるんだ。タルタルだって立派に武器を持って戦える事を証明してやるのさ」
イルルは、はぁ、とため息をつく。
「ほんとーに、魔道士あきらめちゃうの?ババドラバドって、昔は誰よりも魔法上手に使えたのに…」
「うん、なんていうかさ。そりゃあ僕は魔道士が向いてる種族なんだろうけど。
 それだと…困るんだな」
「困る?」
ババドラバドはベッドから起き上がり、ぼさぼさの髪を水で洗いながら続けた。
「ほら、約束したろ?一緒に冒険するって。…僕は旅の冒険者の先輩から聞いたんだ。
 魔道士は確かにパーティーに必須だけどさ、でもそれ以上に大事なのは、盾なんだよ」
「盾?」
「ああそうさ。自分の体を盾にして魔道士を守る。…僕はね、体中傷跡だらけのあの冒険者に
 なんていうか、すごく憧れを抱いちゃうんだよね」
「…ババドラバド!あなたそういう趣味だったのね!?」
イルルは顔を真っ赤にして…変な想像をしているのだろうか。
「イルル…多分、君の考えてる事は間違ってるよ…」

501 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 01:35 [ 9kCKfc8. ]
―― ジュノ・モグハウス ――


「ねぇねぇ、何かして欲しいことある?」
「あー…大丈夫。だから心配しなくていいから。イルルは休んでくれよ」
「やだやだ!だって、だって…私のためにこんなに…」
ババドラバドは重症を負って、モグハウスで休養中だった。白魔法で傷自体は癒えるものの、
魔法というのは万能ではなく、やはり見た目は完治していても100%治せないのが限界である。
彼は黒虎の爪により腹を引き裂かれ、水すら満足に飲めない状態であった。
その為、酷くやつれてしまい、イルルは毎日毎日つきっきりで看病しているのである。
「ねぇ、イルル?」
「…なになに?」
「もしもだけど…もしもね、僕が居なくなったら…君はどう思う?」
その言葉を放った数秒後、しまった、彼は反省した。
これではまるで”自分の命はもう長くはない。自分の体の事は自分がよく分かっている”
と、どこぞで呼んだ物語の病気の主人公の台詞そのものだ。
…案の定、イルルは目に涙を溜め…わんわんと泣き出してしまった。
「泣くなよ…僕は絶対に死なないからさ。どんな事があっても君を一人にしない」
「えぐっ…えぐっ…本当?…本当?約束…する?」
鼻水を垂らしながらイルルはババドラバドをじっと見つめた。
「ああ…約束するよ。何があっても君を守り抜いてみせる。絶対にね」
「…うん、うん」
「だから…イルル。…僕と一緒に居て欲しい。ずっと…君の事が好きだったんだ」

502 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 01:35 [ 9kCKfc8. ]
―― タロンギ大峡谷・メア岩 ――

…夜だ。今日は月も出ていない。辺りは漆黒の闇に覆われている。
どのくらいの時間眠っていたのだろうか?
腹部を押さえてみる。どうやら傷口は塞がったようだ。

「…待っていたよ」

ババドラバドはゆっくりと立ち上がる。

「ババドラバド!」

彼の目の前には、トッパ、ゼヴェン、セラフィー、そしてクリームの姿がある。

「それじゃあ…はじめようか…」


何か、夢を見ていたような気がする。それはとてもとても懐かしくて。悲しくて。
…でもそれがどのようなものだったかは思い出せなくて。
ああでも、もうそんな事はどうだっていい。目の前に敵がいるから。倒すべき敵がいるから。
ババドラバドの目は狂おしく輝いていた。

                                     続く

503 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 01:45 [ /3Go8Bfk ]
生タル戦キタワァ━━━━━━(n‘∀‘)η━━━━━━ !!!!!

504 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 01:47 [ JW9a/E5. ]
リンナノキタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
黒魔ガンガレ!超ガンガレ!
タル戦キタ―――――――(゚∀゚)――――――――!!!!
願わくば、ババドラバドに幸せな最後が訪れますように・・・

505 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 01:47 [ fbNK4YDo ]
タル戦リアルタイムでキタ――――――――――――――――――!!

506 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 02:07 [ 3ouBqBx. ]
>タル戦
キタ━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━!!!!!
しばらくここ来てなかったけど、良かった…続いてて…
ドキドキの展開なんだけど、なんかすごく切ない。

>リノナノ
番外編!?すごく良かったよぉ〜
自分もメイン黒なので、私が励まされているような錯覚を(つД`;) 
素敵なクリスマスプレゼントをありがとう^^

続くといいな・・・(コソッ

507 名前: ガルカ 投稿日: 2003/12/25(木) 02:24 [ WpcM7fis ]
なんかいろいろキテル━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!


サンタさんありがとう

508 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 03:38 [ bRKADNC. ]
ウキャ━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━!!!!!
リノナノ来てるー
タル戦きてるー
有難うサンタさんたち

509 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 04:15 [ x7eckl2I ]
メメメメメメメメメメメメメメメメメメメメメメメ
メルウィィィィィィィクリッスマァァァァッス!!

まんせーまんせーーーー今日はいい日だ、
ホントいい日だ

510 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 04:28 [ .UVdJp6. ]
↑AGE↑

511 名前: 名無しの話の作者の蛇足 投稿日: 2003/12/25(木) 05:17 [ xqtkho2A ]
「名無しの話」の14 −聖夜−

夜の闇。
たき火が燃えてる。
囲むのは獣人が五匹。
大きなタレ耳の、でっかい頭の、まあるくて大きな黒目の獣人五匹。
そして、なぜか小さなタルタル。
シーフの正装のタルタルが、敵のはずの獣人たちと仲良く火を囲んでる。
あたりにはチラチラと雪。
「寒いね」
「…」
こくこくと頷くイヌたち。
風がないからましだけど、こんな夜の野宿はこたえる。
と、気配。
立ち上がり、身構える六人。
人、獣人、どちらが来てもややこしい。
けど、誰も来ない。
気配も消えた。
「?」
顔を見合わせて、首をかしげるタルシーフと獣人たち。
腰を下ろそうとして気づく。
焚き火の脇。
いつの間にか置かれてる。
綺麗に飾られた包みが六つ。
「?」
包みの一つを取るタルシーフ。
金糸銀糸を編み込んだリボンの脇に
「僕だ」
タルシーフの名前がある。
リボンを解き、包みを開く。
獣人たちも、大きな目で興味津々にのぞき込む。
「うわあ!?」
声をあげるタルシーフ。
中には、手袋とマフラー。
ふわふわと、柔らかそうで暖かそう。
早速手袋をはいてみる。
サイズはぴったり。
マフラーを首に巻く。
長さもピッタリ。
「「「「「!」」」」」
獣人たちも、慌てて包みを取る。
書かれてる名前を見て、ソレだコレだと渡し合う。
ようやくみんなに渡り、包みを開く。
中身はやっぱり手袋とマフラー。
獣人たちもそれを身に付ける。
同じ色とデザイン。
一人と五匹がおそろい。
「だれからだろ」
「「「「「?」」」」」
わからない。
少し考え、思い出すタルシーフ。
「あ、そうか」
「「「「「?」」」」」
「今日はね、そういう日なんだ。…わすれてた」
なんだか一人で納得してるタルシーフ。
「「「「「?」」」」」
全然判らない獣人たち。
でも
「今夜は暖かいね」
嬉しそうに笑むタルシーフへ
「…」
獣人たちもこくこくと頷いた。

今宵は聖夜。
世の全ての人々に祝福の降る夜。

512 名前: 名無しの話の作者の蛇足 投稿日: 2003/12/25(木) 05:21 [ xqtkho2A ]
夜の闇。
トラが寝てる。
その胸元、強大な体躯にもたれかかるようにして、小さなタルタルが寝てる。
獣使いの正装のタルタル。
あたりにはチラチラと雪。
「ん…」
少し冷えたのだろう、もぞもぞとトラの前脚の方へと移動するタル獣。
半分寝たまま。目も開けずに頭からトラの脇の下へ潜り込んでく。
なんだか、親猫の懐に潜る子猫のよう。
「…」
少し頭を起こし、嬉しいような、迷惑のような、複雑な表情を見せるトラ。
それでもタル獣が潜り込みやすいようにと、少し隙間を開けてやる。
と、気配。
「!」
瞬間に立ち上がるトラ。
コロコロコロ
弾みで転がるタル獣。
「ん…どしたの…」
寝ぼけまなこでトラを見上げるタル獣。
「いや…」
辺りを見回すトラ。
けど、誰もいない。
気配も消えた。
「…なんでもない。すまんな、起こしてもうて」
再び寝そべるトラ。
「あれ?」
声をあげるタル獣。
もう一度トラの毛皮に潜り込もうと這うタル獣の前に、いつの間にか置かれてる。
綺麗に飾られた包みが二つ。
「?」
包みを取るタル獣。
金糸銀糸を編み込んだリボンの脇に
「ぼく?」
タル獣の名前がある。
「こっちトラさん」
トラの名前もある。
リボンを解き、包みを開く。
「うわあ!?」
声をあげるタル獣。
中には、白い手袋とマフラー。
ふわふわと、柔らかそうで暖かそう。
早速手袋をはいてみる。
サイズはぴったり。
マフラーを首に巻く。
長さもピッタリ。
「すごく暖かい」
嬉しそうなタル獣。
「…」
辺りを見回すトラ。
誰だろうか。自分にさえ気づかれずこんな物を置いていけるのは。
と、匂い。
かすかな匂い。
古い記憶のすみに、その主を憶えてる。
「ふんっ、よけいな事するやっちゃ」
言いながらも、怒ってはいない。
嬉しそうなタル獣を見ると、自分も嬉しくなってくる。
「トラさんのも開けてあげるね」
包みを開けると、出てきたのはブラシ。
丸い胴に短い獣の毛を植え付けたブラシ。
「?なんやそれ?」
首をひねるトラ。
自分の手にブラシは持てない。
どう使えというのだろ。
けど、タル獣は一目見たとたん気がついた。
「トラさん。トラさんの毛皮、明日からピカピカにしてあげるね」
ブラシを胸に抱えて、タル獣は本当に嬉しそうに笑んだ。
少し赤くなったトラへ。

今宵は聖夜。
世の全ての人々に祝福の降る夜。

513 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2003/12/25(木) 05:26 [ xqtkho2A ]
奥深い洞窟の中でも夜は夜。
小さなランプの光に照らされて、長々と寝そべる巨大な竜。
その首にもたれるようにして、小さなタルタルがいる。
長槍を手入れしてる竜騎士の正装のタルタル。
愛用の得物を磨きながら、コクリコクリと頭が揺れてる。
そのうち手が止まり
カクン
頭が大きく倒れる。
とたん、ハッとしたように起きる。
けど、すぐにまたコクリコクリ。
ちょっとお疲れ。
今日は一日、竜を狙う冒険者を追い回してたから。
たとえ邪竜でも竜は竜。
タル龍騎の大切な竜。
やらせるもんかー、と勇ましく、切ってつついてやっつけた。
もっとも、竜のブレスにもちょっぴり助けてもらったのだけど。
うん、ほんのちょっぴり。
「ん…」
眠い目をこすりこすりするうちに、とうとうパッタリと倒れ込むタル龍騎。
「ミャア?」
それに気づいて声をかける竜。
返事はない。
かわりにスヤスヤと寝息。
「ミャ…」
なら自分も寝ようと、まぶたを閉じる竜。
と、気配。
ギン!
瞬間にまぶたを開き、血の色の凶眼で周囲を見回す。
油断無く、首を巡らせる。
けど、誰もいない。
気配も消えた。
「ミャア?」
首を捻りつつ見下ろすと。
長槍に抱き付くようにして眠るタル龍騎の脇にいつの間にか置かれてる。
綺麗に飾られた包みが二つ。
「?」
もう一度辺りを見回す。
やっぱり誰もいない。
「…」
包みをつついてみる。
嗅いでみる。
とりあえず危ない物じゃないみたい。
よく見れば、金糸銀糸を編み込んだリボンの脇にはそれぞれに、タル龍騎と自分の名前が付いてる。
けど、知らない包み。
見てても中身は判らない。
なんだか気になる。
−開けよかな…でも…。
鋭いかぎ爪のついた手では、中身ごとずたずたにしてしまうかもしれない。
チラリとタル龍騎を見る。
スヤスヤスヤ。
起こすのはかわいそう。
考えるうち
「ミャア〜ゥ」
大きくあくびがでる。
ホントに眠くなってきた。
−明日開けてもらお…。
巨体をにじらせ、タル龍騎に添い寝する。
起こさないように、そおっと。
すぐ目の前に包みがある。
−なんだろな…たのしみだな…。
そして、竜は眠りに落ちた。

今宵は聖夜。
世の全ての人々に祝福の降る夜。

514 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2003/12/25(木) 05:30 [ xqtkho2A ]
パチパチパチ
暖炉で炎がはぜてる。
灯かりを消した部屋。
炎の照り返しで赤く染まった壁。
ゆらゆらと、何かのいたずらの様に揺れる影。
雪の多いこの町では、宿でもこうして部屋に暖炉がついてる。
炎の暖なしでは、とても朝は迎えられないから。
それほど広くない部屋。
暖炉の正面にはベッドが一つきり。
スヤスヤと寝息をたててるのはタル白タル黒。
ヒュームサイズのベッドだから、二人で使ってまだ余る。
着てるパジャマは白と黒。
タル白が白地に黒の水玉で、タル黒は黒字に白の水玉。
この町で買った、ふわふわ柔らか織りのパジャマ。
外は吹雪。
窓がガタガタと揺れ、隙間からオウオゥとうなりが聞こえる。
でも部屋の中は温かい。
ベッドは柔らかい。
枕を並べる友達がいる。
だから、怖くないし寂しくもない。
タル白タル黒は、互いに向き合い、少し身体を丸めるようにして、安らかに眠ってる。

音もなく扉が開く。
ヒュウ
廊下の冷たい空気が流れ込む。
スルリ
いくつかの影が滑り込み、やっぱり音なく扉が閉じる。
暖炉の炎に照らし出されたのはヒュム戦、ガル戦、エル騎士にミスラ。
おそろいの赤い服に身を包んだ四人。
上着にズボンに帽子がみんな赤。
縁取りの白い毛皮が可愛いけれど、と〜っても派手。
それぞれの手には綺麗に飾った包みが二つずつ。
「よく寝てるね」
とヒュム戦。
差し足忍び足。
そ〜っとタル白タル黒のベッドへ近付く四人。
ギシッ…
お約束のように床板が軋み
「「「しーっ」」」
ガル戦が睨まれる。
「…起きてる間にあげた方がよかったんじゃないかにゃ?…」
とヒソヒソ声のミスラ。
「…忘れていると思っているかもな…」
とヒソヒソ声のエル騎士。
「でも、朝になってプレゼントが増えてた方が嬉しくない?」
とヒソヒソ声のヒュム戦。
「減ってるよりはいいよぉ」
とヒソヒソ声のガル戦。なのに
「「「しーっ」」」
みんなに睨まれる。
「あぅ…」
悲しそうに小さくなるガル戦。
それでもまだ大きい。
「にゃ?」
タル白タル黒の枕元に包みを置こうとしたミスラが手を止める。
「だれにゃ?」
いつのまにか、綺麗に飾られた包みが二つ。
金糸銀糸を編み込んだリボンがついてる。
ついさっきまでは無かったのに。
「あれ?」
「?」
「まだ置いてないのにぃ」
部屋を見回しても四人の他には誰もいない。
と、

515 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2003/12/25(木) 05:36 [ xqtkho2A ]
「!、しっ!」
立てた指を唇に当てるミスラ。
「「「!」」」
ピタリ
動きを止める四人。
シャンシャンシャン…
かすかに聞こえてくる音。
「外だ」
窓を指差すエル騎士。
そろそろと移動する。
いつの間にか吹雪は止んでいる。
窓を開ければ、満天の星。真円の月。
シャンシャンシャン…
音は上の方から聞こえる。
見上げて
「え?」「!?」「にゃ?」「う?」
四人同時に声を上げる。
家々の屋根よりはるか上。
星空を背景に月の光に照らされて。
鈴音と共に飛んでるのは…ソリ!
鳥でなく、飛空船でなく。
大きな角の四つ足の獣に引かれたソリが、透明な雪原を滑ってるように空を飛んでる。
それに乗ってるのは、ヒュム戦たちと同じ、赤い服の人物。顔をおおう白いヒゲ。
「あれって…」
「まさか…」
「ほんものにゃ…」
驚きと感動を一杯にした、子供のような瞳で見上げる三人。
…三人?
『ありがとうございます』
遠ざかっていくそれへ、心の中でお礼を言うヒュム戦。
と、背後で声。
「対空タルタルミサイルゥ〜〜ワンッ!」
同時に、
ブオウッ
唸りと共に何かがヒュム戦の耳をかすめて飛ぶ。
「アンドゥ〜トゥッ!!」
そして、もう一つ。
ヒュム戦たちの視界の中を、見知った形の物が空をめがけて飛んでいく。
二つほど。
「お゛い゛…」
キリキリと振り向いたヒュム戦が見たのは、ビシリと美しいフォロースルーを決めたガル戦。
「お…」
怒鳴りつけるより早く、
「ミー!」
「キャー!」
空から悲鳴が二つ。
目が覚めたらしい。
「!」
同時にソリの人物も、悲鳴を引いて迫る小さな不幸に気がついた。
手綱を引き、ソリの向きを変える。
けど、間に合わない。
「ミー!!」
メコッ
『おうっ』
腹部直撃。
グラッと揺れる人物。
そこへ
「キャー!!」
二撃目。
ゴヅッ
『ぐはぁっ』
顔面直撃。
「「「あ゛」」」
声を上げるヒュム戦たち。
夜空に舞った赤い霧は鼻血だろうか。
そして。
『のおぉぉーーーーーー…‥・』
「…落ちた…」
「…落ちたな…」
「…落ちたにゃ…」
少しあって、いやな音が三つ。
シャンシャンシャン…
身軽になって、なにもなかったかように飛んでいくソリ。
「「「…」」」
見なかった事にしたいなー、とヒュム戦は思った。
あの人にも復活魔法は効くのかにゃ、とミスラは興味がわいた。
来年は来てくれるのだろうか、とエル騎士は不安になった。
「んー、ひさしぶりぃ」
腕はなまってないよぉ、とガル戦は満足だった。

『『…はぁ…』』
タル黒タル白は大きくため息をついた。
けど
『たいへんそうじゃのう、小さいの』
笑って頭を撫でてくれるおじいさんの手が温かくて、なんだかとても幸せだった。
死んでるけど…。

今宵は聖夜。
世の全ての人々に祝福の降る夜。

「名無しの話」の14 −おわり−

516 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2003/12/25(木) 05:45 [ xqtkho2A ]
ごめんなさい、ごめんなさいm(_ _)m
名前欄、なおし忘れてました。
途中で気づきました。
うう…カメの甲羅磨いて修行し直しますぅ…。
と、タル忍出てませんけど、忘れた訳じゃありません。
長すぎて削りました。…って、そのままでも良かったような…
ごめんなさい〜。

517 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 06:46 [ PX6LgC0c ]
朝起きたら作品がいっぱい・・・サンタさん、ありがとう

518 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 07:04 [ qIqixPrM ]
名無…もとい、サンタさん。
朝からいい物をありがと〜。

519 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 08:46 [ XHqyUW7Y ]
やべぇ・・・泣けた・・・

520 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 08:57 [ ylW6woBs ]
なんて素敵なサンタさんたち・・
ここ読んでてよかった・・

521 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 10:41 [ pvw8YIOw ]
タル戦キターーーーーーー(゚∀゚)ーーーーーーー!!!!


     ,,,,,,,,,,,,
   /.::::::::::::ヽ
 /∩ミ"""""ミ∩
ミ,,,ミ| ノ""""""" ヽ    もまえら、作者様
  /  ●   ● |      メリー
  |    ( _●_)  ミ   クマスマス!!     
 彡、   |∪|  、`\ 
/ __  ヽノ /´>  )
(___)   / (_/
 |       /
 |  /\ \
 | /    )  )
 ∪    (  \
       \_)

522 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 11:37 [ x7eckl2I ]
名無しさんもきてたー(つД`)
もう、
皆素敵過ぎwwww修正されないで;;;;;;;;;;;;

523 名前: 1 投稿日: 2003/12/25(木) 15:12 [ lVq7.sU. ]
自分がドジなのは自覚しているつもりだった。
セリナにも私の特性だとからかわれた事が何度あったことか・・・
その度に否定してきたけど、今は肯定しないわけには・・って悔しいから止めよう。
と、自分のことを呪っている間にも、黒い物体はキーッキーッと耳障りな甲高い声をあげつつ、
うずくまっている私に次々と容赦なく襲いかかってくる。
その度に新調したローブが裂け浅い裂傷が生まれ、殴打された箇所はジンジンと痛みを発する。
「いったいなぁ!もう!」
怒りに身を任せ、まだあまり手に馴染みがないブロンズハンマーを振り回す。
もちろん、適当に振り回されたハンマーがあたるはずがない。
敵意がこもったハンマーに反応したのか、黒い物体達は更に勢いをまして襲い掛かってくる。
身体の痛みが我慢できる限界を超えそうだ。ケアルの魔法を唱えれば・・・
そう思い意識を集中させるが、次々と繰り出される痛みのせいでうまく集中ができない。
ここのモンスターは自分から攻撃しなければ襲い掛かってこないと教えてもらったのに・・・
あー、私のバカバカバカバカー!
ただイイワケをさせてもらうとすると、ツェールン鉱山内は粗野な松明しか光源がないため薄暗く肌寒い。
ただでさえ薄気味悪いところなのに、
角をまがっていきなり在りえない大きさのコウモリと鉢合わせなんかしたら私でなくても驚くに違いない。
あまりの驚きに適当に振り払ったブロンズハンマーが、そのコウモリに見事に的中し
(音からすると噂にきくクリティカルヒットだったかも・・・)その近くにたまたまいたコウモリのモンスターが
いっせいに私に襲い掛かってきたのも仕方がないと・・・思えない・・・
2、3体ならどうにかすることも出来たけど、4、5体になると戦うことはもちろん、
逃げることすら出来ない状態になってしまった私はたまらずその場にうずくまってしまった。
動かない私を容赦なく攻撃をするコウモリ達。
ハンマーは当たらず、得意なケアルは出来ず、新調したローブはどんどんと破れほつれ、
痛みが更に重なっていく。
思わず涙がでそうになる。
痛みや恐怖からではない。悔しくてだ。
冒険者になるって誓ったのに。冒険者になってもう一度逢うと誓ったのに。
その始めの一歩。始めの一歩でその誓いが永久に失われるのかと思うと悔しくて涙がでる。
死にたくない、こんなところで死ねない!死ねるものか!
私は覚悟を決めて立ちあがり、コウモリ達に向き合った!

524 名前: 2 投稿日: 2003/12/25(木) 15:13 [ lVq7.sU. ]
と、その時、後ろの空気が流れ、
風が私の後ろ髪をゆらし目の前のコウモリ達に凝縮された風のかたまりが叩きつけられた!
叩きつけられた風のかたまりは、爆ぜて鋭い刃となりコウモリを1体ずつ切り刻んでいく。
こ、この魔法はエアロ?!
慌てて後ろを振り向くとそこには、いつものように呆れ顔を浮かべ、
メープル材で出来た杖で偉そうに肩に叩いている私の親友の姿があった。
「せ、セリナ?!なんでこんなところにいるの?!」
コロロカの洞門が閉ざされている今、
ツェールン鉱山に足を運ぶのはここで働いている鉱夫か物好きな冒険者、
またはたまたま迷い込んでしまった運の悪い人達ぐらいなものだ。
用もなく好き好んでこんなところにくる者はほとんどいない。
しかも綺麗好きなセリナが薄暗く非衛生を絵に書いたような鉱山にやってくるなんて・・・
ありえないことだ。
「まったく、なにやっているのさ・・・」
これ以上ないくらい呆れ声のセリナ。
「アビ発動しちゃった・・・」
これ以上ないくらい情けない姿の私。
「ほら、マリ、残りのコウモリもちゃんと倒さないと襲ってくるよ。
せっかく新調した私のローブが汚れる前に片付けてよね。」
『あー、疲れたぁ。』と言って座り込むセリナ。セリナはあくまでセリナだった。

525 名前: 3 投稿日: 2003/12/25(木) 15:14 [ lVq7.sU. ]
「いきなりどうしてそんなこと言うの!!」
セリナのあまりの剣幕にのけぞる私。セリナの大声で他のコ達が起きてしまうのではないかと思い、
わずかに目を私たち二人の部屋の向かい側にあるみんなの寝所の方へと視線を移す。
今は真夜中だ。
「べ、別にいきなりなワケでもなく、前々から考えていたんだけどなぁ・・・」
小さな小声でイイワケの反論・・・
「なーにゴチャゴチャいっているの!ねぇ、マリ、わかっているの?!
マリが出て行っちゃったらここのコ達の面倒は誰がみるの?!お母様達だって良い歳だし・・・
私たちが年長者なんだから貴方が面倒見るのが筋じゃなくって?!」
まったくもってその通りだと思う。「私が」じゃなくて「私たちが」だと思うけど・・・
お母様達には計り知れないほどの恩義がある。
ううん、恩義という言葉はおかしいかもしれない。
お母様達は孤児であった私たちすべての紛れもないお母様なのだから。そこにあるのは恩ではない、
愛だと私は思っている。その愛に応えたいと思う。子として、人として。だけど・・・
「えっと・・セリナがみれ「私はダメ。向いてないもん。持っている資格だって黒魔道士のものだし。
お母様達と同じく白魔道士の資格をもっているマリが適任じゃない?」」
初めは、お母様達のようになりたくて気付いたら白魔道士を目指している自分がいた。
誰にでも分け隔てなく優しく、
女神の慈愛をもって人と接することができるような人間になりたいと思っていた。
でも・・・

526 名前: 4 投稿日: 2003/12/25(木) 15:15 [ lVq7.sU. ]
軽く告白をするつもりだった話がどんどんと重い空気をまとっていく。
私は耐え切れず目を伏せ、沈黙した。
「・・・あのコのこと?」
セリナの声のトーンが落ちる。それは悲しそうな声に聞こえた。
「・・・・・・」
小さく頷く。
「アンタ、まだ気にしていたの??あれから何年たっていると思うの?
3年だよ?3年もたっていたら相手だってマリのこともう何とも思ってないだろうし、
下手すりゃ忘れている可能性だってあるよ?!」
『バカだ、ホントにバカだ、このコ。』セリナの呟きが聞こえる。
「うん・・・そう、かも。でも、私は忘れられないんだ。あって・・・ううん、もう一度逢って話したいの。」
「逢って何を話すのさ?」
「わからない、話にさえならないかもしれない。でも・・・」
でも・・・逢いたい。
「あーーーーーーーーーーーー!
もう バカでマヌケで強情だとは思っていたけどここまで重症だったなんて!
なんかあったまくるなぁ、もう!!」
頭をかきむしり、親指の爪を噛むセリナ。かなりイライラしている証拠だ。
「ごめん。」
私にはそれだけいうのが精一杯だった。

527 名前: 5 投稿日: 2003/12/25(木) 15:15 [ lVq7.sU. ]
ツェールン鉱山内での初戦闘を無事?終えた私達は、体力の回復をし改めて顔を見合わせた。
「セリナ、どうしてこんなところに?」
「なんとなくムシの知らせで・・・かな?」
目を泳がせるセリナ。相変わらず嘘をつくときは相手の目を見て話せないらしい。
「マリこそ、どうして一人できた?冒険者査定ミッションでもPT組むのは許可されているでしょ?
まさかいくらマリでも『PT組むのが面倒だから。』なんて言わないでしょうね?」
「・・・・エヘヘヘ」
「このおバカ娘!」
メープルロッドで軽く頭を小突かれる。いたい。
誤魔化し笑いですませたが決してそれだけの理由じゃなかった。
自分一人の力がどこまで通用するか計ってみたかったから。
結局、始めの一歩すら自分の力だけでは踏めなかったワケだけど・・・
あまりにも情けないのでセリナには黙っていることにする。
「まったく、ガードのおっさん達の話を偶然立ち聞きしなかったら
大変なことになっていたってゆーのに・・・」
「え?」
「なんでもないよ、てかね!アンタにはオート迷子、オートスリプル、オートトラブルメーカー等など
アビ満載なんだから!ちょっとはね、自分の特性を知りなさい、自分の特性を!」
うぅ・・そこまで言わなくても・・・でもさっきの今なので言い返せない・・・
「それで・・・」
一瞬のためらいの後、セリナは続けた。

528 名前: 6 投稿日: 2003/12/25(木) 15:16 [ lVq7.sU. ]
「やっぱり孤児院の子供達の面倒をみることよりもマリにとっては大事なことなの?」
瞬間、可愛いい弟妹達の笑顔が脳裏に浮かぶ。優しいお母様達の眼差しも。
一瞬の逡巡。
でも私の答えは決まっている。もう決めたのだから。
「・・・うん・・・酷い女と思われるかもだけど、多分、そうだと思う。」
それは別れの言葉だったのかもしれない。
「・・・そっか。」
搾り出すようなため息と共にセリナは頷いた。
そして、私の見間違え出なければほんの少しだけ笑ったように見えた。
「じゃ、私も一緒に旅にでるかな。」
「え?」
セリナの表情に気を取られ、言葉の意味が聞き取れなかった。
「なんでもない、さ、いこう。コウモリの形をしているっていっても、
やっぱりモンスターは気持ち悪いよ。早くいって用事を済まそう。」
「てか、コウモリ自体だって気持ち悪いかも。」
「まったくだね、早く帰って湯浴みがしたいね、冷えてきちゃったよ。」
「ホントだね。特にセリナは老化が早そうだしねぇ」
「アンタにだけはいわれたくないなぁ・・・もうボケていげふんげふん。」
今まで深刻な話をしていたはずなのに二人とも笑ってしまう。
久しぶりに二人で笑いあった気がした。
私達は大きく頷きあい、ツェールン鉱山の奥へと歩を進めた。


後半に続く

529 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 15:18 [ lVq7.sU. ]
523-526を書き込みしたものです。
はじめてここに書き込みをします。
この板を発見して以来、こちらの創作小説の虜になってしまいました。
てか、リノナノ外伝キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
タル戦もキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
両作品とも大ファンなので嬉しすぎ。(つД`)
そんな名作品に刺激され私も拙い頭ながら一本書いてみました。
気合いれすぎて長くなってしまったので
1話を分割する形になってしまいましたが、
もしよかったら後半までお付き合いいただければと思います。

530 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 16:51 [ SjZg1XFI ]
アムスレムスがんばれ、がんばれぇぇぇ・゚・(ノД`)・゚・
精霊撃って下さいねってPTにも必ず会えるからー
タゲは渡さないって言ってくれるナイトもいるからー
野良でもがんばれアムスレムスー・゚・(ノД`)・゚・
ちょっぴり泣いちゃったよー(´・ω・`)

531 名前: 7 投稿日: 2003/12/25(木) 18:24 [ lVq7.sU. ]
529です。上に書いたものの後半です。

ツェールン鉱山は奥に行けば行くほど暗闇と冷気が増していったが、
セリナと一緒にいるからか不安や恐れなどはまったく感じなかった。
薄気味悪いことは薄気味悪いけど・・・
「てか、ツェールン鉱山にはコウモリが突然変異したモンスターがいるって聞いていたけど、
まさかあんなにおっきいなんて思わないじゃない!」
「そりゃねぇ、アンタの勝手な思い込みでしょ?だてにモンスターって呼ばれているワケじゃあるまいし
・・・普通の大きさなら普通にコウモリって呼ばれているわよ」
「うぅ・・・」
思わず言葉に詰まる私。
ヘ理屈じゃセリナに勝てるものはバストゥークを探してもそうそういないと私は信じている・・・てか信じたい。
暗く底冷えするような道。でもこのお喋りがあれば私達はきっと無敵だ。
「で。結構歩いてきたと思うけど。まだつかないの?」
「えっと・・・」
と、私は鉱山の地図を紐解き、指定された座標を目で思ってみる。
「あ、この通路を抜けた先かな?」
「おっけー、さっさと行きましょ。」
通路にいるモンスターには気を止めず足早に進む私たち。
そして通路を出た先には探し求めていた人が・・・ゲル状の物体に襲われていた!

532 名前: 8 投稿日: 2003/12/25(木) 18:25 [ lVq7.sU. ]
「ジャイアントアメーバ!なんでこんなところに!」
セリナが驚きの声をあげる。いきなりの展開に私は状況の把握すら出来なかった。
「え?ここの鉱山のモンスターはこちらから襲い掛からなければ襲わないんでしょ?
長年、ここの監督をしていた方が襲われるはずないんじゃない?!」
ネチャネチャと気持ち悪い音を発しながらそれは、
監督官に覆い被さろうと試みており、監督官はそれに奇声をあげつつ必死で抵抗しているが、
身体が倒されるのは時間の問題であることは、戦闘の素人の私でもわかった。
そして、監督官の服のところどころ溶けている!
よく見ると監督官は女性であり、自分の服の事に気付いた様子だった。
その証拠に奇声が悲鳴へと変る!
同じ女性としてこれは許せない!
「なんてことを!はやく、助けないと!」
私はハンマーを片手に構え、そのゲル状の物体に殴りかかった。
「あ。ま、待ちな「こ、このーっ!」い!!」
渾身の一撃!

533 名前: 9 投稿日: 2003/12/25(木) 18:25 [ lVq7.sU. ]
のはずだった私の一撃はボコッと鈍い音をたて、それの表面を少しだけ凹ませる事ができたが
ハンマーから伝わる感触がおかしい。
怯まず何度かハンマーで殴るもやっぱりおかしい。手応えがほとんどない!
柔らかい身体が打撃の力を吸収しているの?!
私がそう気付いた瞬間。それは監督官から私に狙いの矛先を変えて襲い掛かってくる!
ネチョネチョと生理的嫌悪をもよおす音とともにプニプニした長い2本の触手が私の身体に巻きついてくる。
その触感の気持ち悪さに私は思わず叫んでしまう。
「いやぁぁぁぁ!」
力は強かったが我慢できるぐらいだった。でも、この生理的嫌悪感には・・・耐えられない!
「あの突撃暴走オバカ娘・・・!」
セリナが好き放題言っているのが聞こえたが、私には反論する余裕なんてあるはずがない。
セリナがアメーバにむかってエアロやストーンなどの精霊魔法を放つがアメーバはまったく意に介さない様子だ。
「くっ、やっぱりファイアの魔法じゃないとダメか。今の私にはまだ使えない・・・マリ、逃げて!」
逃げれるものならとっくに逃げているって!
そう反論したいが出来ない。アメーバが私に馬乗りになろうとしているのを防ぐので精一杯だ。
アメーバの本体が眼前にある。ってこの気持ち悪さ、耐えられない!
胃の中のものが逆流しそうになるが必死で耐える。女としてのプライドが私を支える。
と、アメーバが密着している身体の所々が熱くなっているのを感じる。
服に覆われていたはずの箇所もあるが、
なぜかそこからは服の感触ではなくアメーバの感触が直に当たっていた。服が・・・溶けている!
「いやああああああああ!」
私は正真正銘の悲鳴を思わずあげてしまった。

534 名前: 10 投稿日: 2003/12/25(木) 18:27 [ lVq7.sU. ]
アメーバを引き剥がそうとする力を強める。が、引き剥がれない。
イヤだよ、ホントにイヤだ!泣きそうだ。
「マリ、落ち着いて!マリ!」
近くにいるはずのセリナの声が遠く聞こえる。
「良い?今からアメーパにポイズンの魔法をかけるわ。
もしかするとアメーバの身体自体液体に近いから毒素の影響が表面にまでまわって
マリにまで毒の影響が出てしまうかもしれないけど・・・ポイズナは使えるはずだよね?!」
セリナがなにが何かを言っているが全く分からない。
「マリのこと、信じてかけるからね。恨むなら恨んでいいよ、だから死なないで!」
泣きそうなセリナの声、初めて聞いたかも。そんなことを頭の片隅で考える。
そして、青みがかかった透明のアメーバの身体が少しずつ紫色に変色してくる。
それと同時に私にも猛烈な寒気が襲い掛かってきた。
こ、これは毒?セリナがやったの?
アメーバの触手の力が徐々に弱まってくる。
いまだ! 私は残りの力をありったけ込めてアメーバを引き剥がすことに成功する。
すぐに距離をとってポイゾナで毒消しをし、ケアルで体力の回復をはかる。
「マリ、大丈夫?マリ、マリ!」
いつも自信にあふれていて高飛車なセリナ。そんな彼女が今にも泣きそうな顔で私の顔を覗きこんでくる。
「う、うん・・・なんとか、ありがとう。いつもホントに。」
「何言っているの、私がいなかったらアンタはダメダメなんだから、もう。」
顔を伏せ鼻をすするセリナ。顔を上げたらいつものセリナがそこにいた。
本当に・・・ありがとう。
心の中で再度感謝の印を結ぶと私は、紫色に変色したアメーバの方に向き合った。

535 名前: 11 投稿日: 2003/12/25(木) 18:28 [ lVq7.sU. ]
アメーバ触手をピンと張り詰めて上に突き出している。
さっきと同じようにネチャネチャと音をさせているが、その様子は明らかに苦しんでいるようだった。
先ほどまであれだけ嫌悪感を催していた相手だったが、今ではなんとなく可哀想に思えてくる。
「あんまり毒の魔法は、好きじゃないんだ・・・マリ、お願い、浄化を。」
どうやらセリナも同じ気持ちだったらしい。私は頷き、心を自分のうちへと集中させ魔法の音律を唱える。
癒しを司る白魔道士が扱う白魔法には基本的に相手を傷つける魔法はない。
唯一、神聖魔法と呼ばれる魔法が相手を傷つけることが可能だ。
いや、正確には傷つけるのではない。悪しき存在、つまり魔物に苦痛を与える魔法だ。
だから魔物以外には全くの意味をなさない。しかし魔物相手には絶大な威力を発揮する。
それが神聖魔法。それが
「バニシュ!」
私の音律により手から生まれた光が苦悶に満ちたアメーバを包み込む。
数秒後、光が消え、そこには既に苦悶に満ちたアメーバの姿はなかった。
私の肩に手が置かれる。
振り向くともちろんそこにはセリナのふてぶてしい笑顔があった。笑顔を笑顔で返す。
「「お疲れ様。」」
やっと終わった・・・安堵して力が抜ける。ホンット疲れたぁ・・・
「マリ、ほら、本来の目的を・・・ったく・・・」
と容赦がないセリナ。ホントにまったく・・・頼りになりすぎだ。

536 名前: 12 投稿日: 2003/12/25(木) 18:28 [ lVq7.sU. ]
監督官の姿を探すと広場の端のほうで息と服装を正している。良かった、命に別状はなさそうだ。
『ちっ』舌打ち?今、視界の隅で大きな影が動いたような気がしたけど・・・気のせいかな・・・
それよりミッションの完了が先で重要だ。幾分か緊張しつつも、監察官の方に私は向かった。
「恐れ入ります、貴方がこのツェールン鉱山の監督官様でいらっしゃいますでしょうか?」
「あ、あぁ、そうだ。私がここの監督官をやっているマカリムだ。
君たちにはとんだ失態を見せてしまった。ともかく助けてくれてありがとう。感謝をする。」
平静を装っているが、心なしか声が震えている。
同じあのアメーバに引っ付かれたもの同士、その気持ちは察することが出来た。
「いえ、ご無事でなによりでした。その・・・同じ女性として本当にそう思います。」
「ふっ、そうだな。あれに抱かれるなど2度と経験したくないものだな。」
抱かれるって・・・監督官は笑っていたがその表現を聞いて私はまたあの感触を思い出し身震いを
・・・そこ、笑わない。
「それで、君達はみたところによると私に用があるようだが、なんの用だ?」
「あ、ガードの方からバストゥーク共和国の冒険者査定のミッションとのことで
監督官様から報告書を持ってくるように指令されてやってまいりました。」
「なるほど。君たちのことだったか。わかった。」
私がそう報告すると、マカリムさんは一瞬難しい顔をしたがすぐに元の顔に戻ってそう告げる。
やった、これで私も晴れて冒険者の仲間入りだ!思わず、顔がにやけそうになる。
「ただ・・・困ったことにな。今期分の報告書だが、先ほどのアメーバに襲われてな。
ボロボロにされてしまったんだ。」
えーーーーーーーーーー!私たち、ミッション失敗!?

537 名前: 13 投稿日: 2003/12/25(木) 18:29 [ lVq7.sU. ]
「そんな顔をするな。安心してくれ。私からガードに話をつけておく。
私も他にやることがあるので通常の手続きより遅くなるかもしれないが
・・・私が保証する。おめでとう、君たち二人、はれてバストゥーク共和国の冒険者になったことを、
私の名にかけて先に認定しよう!」
「ホントですか!ありがとうございます!!!!」
やった〜〜〜!!!これで外の世界にいける!
あの誓いを実現させられる!私は思わずセリナに飛びついた。
「ありがとうございます。監督官様」
深々とお辞儀するセリナ。
「いや、二人とも十二分に冒険者としての才能があるわ。生き残る才能が。」
「あ、あれ?二人?なんでセリナが?てか、二人とも冒険者?」
私は頭が混乱する。え、あれ?だって、セリナはバストゥークに残るんじゃ・・・
不思議そうな顔をする私にセリナはいった。
「言ったでしょ?私がいないとマリはダメダメだって。これからも"ビシバシ"いくわよ!」

後日、私は監督官の前にも関わらず、
子供のように泣きながら喜んでしまったことを報告しないで欲しいと切に願った。

538 名前: 529 投稿日: 2003/12/25(木) 18:31 [ lVq7.sU. ]
以上で終わりです。クリスマスとのことで思い切ってアップしてみました。
って長すぎですね、すみません 書いていたら止まらなくなりました(汗)
最後まで読んでくれた方、お疲れ様です、どうもありがとうございました。
もし許されるのなら続きを書いてみたいんですが、
もうちょっと短く見易くなるように努力したいと思います。
自分の才能のなさがハズカシイ。

自分で書いてみて改めて創作小説を書いている方々の凄さを思い知りました。
今後も素敵な物語が綴られることを楽しみにしています。

長文、乱文失礼しました。<(_ _)>

539 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 22:36 [ WpcM7fis ]
>>538
これはバスミッソン1ですな。
新米冒険者っぽさが出てますね。
行数とか限りあるから、たしかにもっとテンポあるとイイかも。

540 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 23:47 [ 7l1JALEE ]
赤眼のスナイパー

第一話 迫り来る影

走る走る走る......

---バストゥークの鉱山区---

追う者と追われる者2つの影が真夜中の鉱山区を駆ける。
追う方は全身黒装束.....2mはありそうな背丈にとがった耳エルヴァーンのようだ。
追われる方は銃士隊の鎖鎧を着込んだ女ヒューム
鎧は所々裂け体のあちこちに切り傷が出来ている。
手にした細身で片刃の両手剣 刀 も真ん中で折れている。

女は鉱山区のゲートへ向かっているようだ。
そこへ行けば仲間がいる、仲間の銃士に助けを求めれば何とかなると思い必死に逃げている。
しかし黒装束は女がゲートに向かうであろう事を分かっているように女の後をゆっくりと追う。

そして鉱山区ゲート前に着く、女は詰め所に走っていくそしてドアを勢いよく開ける 
がしかし・・・

ガタン!

「誰かいませんか!銃士隊のサクヤです!!警備中何者かに襲撃されて・・・あっ」

ドアを開け女は硬直した、ガードが仲間の銃士が血を流して倒れていたのだ。

541 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 23:47 [ 7l1JALEE ]
「残念だったな貴様の仲間には永遠に眠ってもらった...
 どうせ仲間に助けを求め、ここに行くのは分かっていた
 わざわざ自分から罠の中に入るとはな!馬鹿なウサギめ」

ドアの方から声がした。
どうやら黒装束は、女がここに入るように追い込んでいたらしい。
狩りの時猟師は逃げられないように獲物を追い込む。
行き止まりに追い込めば獲物は逃げられない。
獲物が無傷なら必死の抵抗をするだろうが、獲物は手負い
ここならば人にはそうそう見つからないのと、声を出されても誰も気付かない
黒装束はそう考えて、わざわざここに追い込んだ。
女は迫り来る自分より断然強い黒装束にガタガタと震えだしその場にへたり込んでしまった・・
そう、虎ににらまれたウサギのように。
黒装束が怯えた女の顔を見ながら問う。

「貴様、我々の仲間から盗み出した巻物は何処にある」

女は私は知らないというような目で黒装束を見ながら震えている。
不意に黒装束が女の襟首を捕まえ持ち上げ、そしてそのまま力任せに壁に女を打ち付けた。

ドンッ!

鈍い音がする

「ウッ!」

女は壁に打ち付けられ悲鳴を上げる。
背中に走った衝撃で、握っていた刀を地面に落とす。

カラーン・・・・

落とした刀に女の視線が向く
不意に黒装束が腰に下げた片刃の短剣 忍者刀 を女の右肩に突き刺した....

ドスッ!

鈍い音と共に女の右肩は忍者刀によって貫かれた。
突然の事に女は事態が飲み込めない。

「ヒッ!」

女の肩に激痛が走る。

「急所は外してある・・」

男がもう一本の忍者刀を抜く、拷問に関しては手馴れているのだろう。
痛みと恐怖で脅して相手から情報を引き出そうとしている。
そして、女は死の恐怖と肩の痛みで涙を流しながら震えている。

542 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 23:48 [ 7l1JALEE ]
「もう一度問う・・巻物は何処だ!」

男の顔には少し焦りの色が見えた、既に2人殺害したのだ、遅かれ早かれ気付かれるだろう。
早く探し物の在り処を聞き出さなければ、見つかってしまう。
黒装束は女の襟首を掴んだ腕に力を込める。

「わた・・し・しらない・・」

ガタガタ震え涙を流しながら女は返答する。
黒装束は目を細め女の顔を見た。

「そうかならば」

そして、壁に忍者刀で貼り付けにした女の左肩目掛け、剣を振り下ろそうとした・・
その刹那

パキィィン!

黒装束の忍者刀が弾かれる。
何処からか石弓の矢が飛んできたようだ。
石弓を撃ったスナイパーは耳と尻尾....ということはミスラ

「サクヤから離れなさい!!何にも入ってない頭打ちぬくよ!」

暗闇の先から挑発する声。
黒装束がイラ付いた表情で暗闇の先の声に舌打ちする。

「ちっ!新手か!!」

黒装束が慌ててガードの詰め所から出る。
スナイパーを探して夜の闇に目を凝らす・・・・見つけた!
そして印を結ぶ。

「〜〜忍!」

何やら唱えると一瞬黒装束の影が増えたように見えた。
そして自分に石弓を撃ったミスラ目掛けて、人とは思えないスピードで駆け出した。
どうやら鉱山区の競売所の屋根から目標目掛けて石弓を射たらしい。
夜目の効く猫科特有の能力だろうか暗闇で矢を射るなど常人の技ではない、そこへ向かって黒装束が走る
持っていた石弓を置き、ミスラが長い鉄パイプの様な物を黒装束に向けて構えた

543 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 23:49 [ 7l1JALEE ]
パンッパンッパンッパンッ!!!

4連続の大きな発射音----
人とは思えないスピードで走る黒装束目掛けてこれまた人とは思えない機械の様な正確さで弾丸が飛来する。
さきほど射た石弓ではないようだ、バストゥークが開発した最新兵器 銃 。

「やった当たった!」

ミスラは黒装束に銃の弾丸を命中させた....
はずなのに、忍者は何事も無かったようにさらに加速してミスラの方に向かってくる。

「なんだよあれ!((乱れ撃ち))が効かないなんて聞いて無いよ?!!」

火薬の爆発の光で黒装束に確実に位置がばれてしまった。
これはまずいぞと思ったのか、次の一手を打とうと動く。
ミスラは伏せて射撃していた姿勢から立ち上がり銃を構える何かをするつもりだ。
そして、構えた銃の銃口に青白いエネルギーが凝縮される。
ミスラの両眼が真っ赤に光る・・・眼前の黒装束に狙いを定め引き金を引く!!

「これならどうだ!!!」

ズドゥーン!!

銃から放たれた弾丸は、青白い高エネルギーの塊となって黒装束に降り注ぐ。
((スラッグショット))と呼ばれる、一撃必殺の射撃ウェッポンスキルである。
一撃必殺というだけあって、当たれば半径3mは吹き飛ぶ程の威力を持っている。
だがしかし、弾丸にエネルギーがまとまり青白く発光しているため、
相手に目視され避けられやすい、という弱点があるウェッポンスキルだ。

ウェッポンスキル

万物を司る元素は、8種の属性からなる。我々は、自然にあふれる属性エネルギーを目や肌で感じとることができる。
そして、武器に習熟すれば、属性エネルギーを自ら発現させることすら可能である。
1つの武器を極め、手足のごとく自在に操れるようになった者にして、はじめて繰り出し可能となる武技がある。
それが、ウェポンスキルと呼ばれる奥義である。

その必殺の一撃が、黒装束に命中した。
競売前広場のタイルに巨大な穴が開き、周りに砂が舞う。
そして、ミスラは撃ち抜いた黒装束を真っ赤な両目で探す。
おかしい黒装束の姿は、何処にも見当たらない。
あの一撃をもらって生きているはずは無い・・・ミスラは焦る。

544 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 23:50 [ 7l1JALEE ]
不意に背後に殺気。

「空蝉だ」

黒装束の声が聞こえた瞬間、ミスラは狙撃していた位置を飛びのく。
ミスラが今まで立っていた位置には、鉄の刃 手裏剣 が6つほど突き刺さっていた。
探している間に、背後に回って音も無く手裏剣を投げたようだ。

「なるほどね、アンタ忍者だよね?」

ミスラは尋ねる。

「某に気配を気取られないように初弾に石弓を使ったのか?ミスラの狩人よ、中々出来るな」

2人は鉱山区競売所の屋根の上で向かい合う。
忍者は刀を構え狩人は銃の照準を忍者に向ける。
 
「接近戦で鉄砲は使えまい」

黒装束がニヤリと笑みを浮かべる。
しまったこのままではやられてしまう!ミスラ一瞬死の恐怖に飲まれそうになった。

カーンカーンカーンカーン・・・・

鐘の音が響く、緊急用の鐘だ。
黒装束の襲撃に銃士隊が気付いたのだろう、鉱山区に武器を持った銃士が集まってくる。
そして2人を見つけたのか、競売所の周りをぐるりと包囲する。
ミスラは助かった、という安堵の表情を浮かべてへたり込んだ。

「武器を捨てて降りて来い!貴様はすでに包囲されている!!」

銃士隊長が大声で黒装束に言う。
舌打ちして、忍者は諦めた様に武器を捨て両手を上げた。

545 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 23:50 [ 7l1JALEE ]
そして、忍者は拘束され競売所前の広場に連れて来られた・・

「ヤム殿お怪我ありませんか?」

銃士隊長が狩人のミスラ ヤム に心配そうに駆け寄った。

「僕は大丈夫だ、それよりサクヤが酷い白魔道士を呼んで」

そう言うとヤムは黒装束に襲われた女の所に向かう。
ガードの詰め所に入る・・・・
辺りには生臭い血の臭いが漂っていた、奥のほうに銃士の死体が1・・2・・
2人やられていた、胸から大量の出血の後がみられる。
どちらも心臓一突きのようだ。
そして死体のすぐ横に女がペタンと腰を抜かして座っていた。

「サクヤ大丈夫??」

サクヤと呼ばれた女は下を向きガタガタ震えていた
ヤムは女の顔を除く

「・・だい・・じょうぶ」

女は震える唇で答える。
ヤムはサクヤの傷の具合を見る....どれも致命傷ではないようだ
肩に刺された忍者刀は自分で抜いた様だ、とりあえず自分で布を巻いて止血もしてあった。
震えているのは、脅された恐怖と出血で軽いショック状態になっているようだ。

「忍者は捕まえたから安心して、怖い思いをしたね・・よしよし」

怯えた子犬のようになっているサクヤの頭をヤムは撫でる。

「うはは、天才白魔道士アルフレット様がきてやったぞー怪我人は何処だー」

後ろから思い切り場違いな声が聞こえた。
サクヤはビクッと身構える。

「大丈夫、馬鹿白魔道士のアルだよ。」

医療班の白魔道士が来た様だ。金色の長髪白魔道士。
腕と顔はいいが口は最悪でスケベという自称天才白魔道士のアルフレット
ヤムは、床に落ちていたサクヤの折れた刀を鞘に収め手に取る。

「後は頼んだよアル、サクヤは女の子なんだから傷残したら承知しないからね」

男はぶすっとしながら答える

「俺を誰だと思ってるんだこの馬鹿猫が!天才白魔道士アルフレット様だぞ!
 傷後など残るわけがないわ!」

ふふんと言った感じで男は髪をかき上げた。
それを見てサクヤが一瞬クスッと笑った、少し落ち着いたようだ。
怪我の治療は白魔道士のに任せて、ヤムはやれやれといった感じで刀を持って外へ出た。
そして銃士隊長の所へ向かう。
銃士隊長は部下と何やら話していたが、ヤムに気付いて振り返った。

546 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 23:51 [ 7l1JALEE ]
「あの忍者・・只者じゃないよ、これ見てサクヤの刀折られてる
 剣の腕では僕はサクヤに勝てない、そのサクヤをあそこまでボロボロにするなんて・・・
 後であの忍者について詳しく調べないとね」

ヤムは隊長に折れた刀を見せながら言う。

「黄金銃士である赤眼のヤム殿が、自ら調べるんですか?」

不意に横から銃士隊長の部下が、それほど一大事なのかと驚いた顔で聞いた。

「黄金銃士っていっても国が勝手に称号くれただけで、僕普段は自由気ままな冒険者なんだけどね
 それにサクヤは友達だしっていうか何それ赤眼って?」

部下が、っへ?というよう顔でヤムを見る

「ヤム殿は、「「赤眼のヤム」」と呼ばれてるのをご存知無いんですか?
 みんなヤム殿の事を赤眼のヤムと呼んでおりますよ??」

ヤムはきょとんとして聞き変えす?

「僕の両目が赤いのは生まれつきだけど、そんな変なあだ名がついてたのか・・・
 うーんうーん」

ヤムは困ったなぁという表情をしている。
どうやら、ヤムにとって赤目であることは、コンプレックスのようだ。
小さい時に吸血鬼だの赤目は悪魔の目だの「「アーリマン」」などというあだなまでつけられ、
散々いじめられていたのだ。
変な呼び名を付けられ、困ったなぁと言う顔で銃士隊長の部下と話していると・・・
銃士隊長がヤムの方に向かってきた、どうやら部下と話してる間にサクヤの様子を見に行っていたらしい。

「明日、サクヤからの事情聴取はヤム殿にお願いします
 上司の私が行っても、彼女が疲れるだけでしょうから」

と銃士隊長が笑いながらヤムに言う、友達であるヤムの方が何かと話しやすいと思ったのだろう。
なかなか分かる銃士隊長のようだ。

「それと・・呼び名が付くと言う事は、
 ヤム殿もそれなりに名の知れた冒険者になったと言うことではないですかね」

銃士隊長はヤムのコンプレックスを知ってか知らずか付け足して言った。

547 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 23:51 [ 7l1JALEE ]
サクヤは銃士隊の侍である。
銃士と言えばそれなりの腕っ節はあるはずだ。
サクヤは普段大人しくボケボケしているが、いざ戦闘となると下手な戦士の男より数倍は強い。
一度、遊びでサクヤ目掛けて、拳くらいの石を投げつけ
振り向きざまの一太刀で、その石を真っ二つにされヤムは唖然となったことがあった。
そんなサクヤがやられた相手とは、相当な強さなんだろう。
そんなことを考えながら黒装束の方に歩いて行く。
黒装束は、手錠をはめられて広場の真ん中に座らされている。


「さてさて何故バストゥークの銃士を襲いに来たのか答えてもらうよ」

ヤムは黒装束をにらみながら問いかける。

「・・・・」

男は答えない。

「巻物がどうとか言ってたけどあれはどういうこと?」

さらにヤムが問いかける。

「某は何も話せない」

男はそう言って答える気はないようだ。
ミスラはお手上げといった風に肩をすくめて銃士隊長の顔を見た。
ここでの尋問は諦めて、銃士に黒装束を牢に連れて行くように指示した。

「忍びの者ならば死んでも口は割りませんよ」

銃士隊長がヤムに言う。
ヤムが分かってるよそんなことと言う風に銃士隊長を睨む。

「今日はもう遅いから明日にしよっか」
「そうですね」

2人は疲れた足取りで鉱山区から商業区へ出て分かれようとした瞬間......

ズドォォーーーォン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

耳の鼓膜が破れんばかりの轟音が鉱山区競売所前広場の方から響いてきた。
ヤムと銃士隊長は嫌な予感を胸に抱きながら。
慌てて鉱山区に向かって走り出す・・・・・・



続く

548 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/25(木) 23:52 [ 7l1JALEE ]
うはごめwww長すぎたwww

549 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/26(金) 00:58 [ 4rOe7922 ]
だいじょうぶ         いから。

550 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/26(金) 01:26 [ q8QVq3Zc ]
>538
こう、なんとなくはわかるんだけど

回想なら、回想。 現状なら現状で、はっきり書いてくれるほうがいいかも
「それぐらい察しろ!」ってのは無しで
たとえば>525 

>「いきなりどうしてそんなこと言うの!!」

この台詞の前に、

それは数日前のこと、私は無二の親友であるセリナに相談を持ちかけたのだが…

といった感じに

551 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/26(金) 01:29 [ 15ROngNs ]
とりあえずウェッポンスキルさげ

552 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/26(金) 02:47 [ zSO4j3Hs ]
ウェッポンスキル…

553 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/26(金) 08:58 [ pnfsKXeM ]
文章書くなら読点の使い方勉強したほうが良いと思う。

554 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2003/12/27(土) 01:12 [ Cqkbm03I ]
 クリスマスのせいか冬休みのせいか、それとも2003年が終わろうとしているためか、
ここのところずいぶんと多数の作品がUPされていますね。
 多くの物語が生成されるのはもちろん喜ばしいことではありますが、私は少し複雑な
心境でそれを拝見しております。
 もちろんそれは、駄作に自分の作品が埋もれてしまうとか、そういう意味ではありませ
ん。物語の価値は全て等価です。そしてむしろ、価値が等価であることが問題なのです。
 振り返って、自分の本棚を少し眺めて見ましょう。私などは浪費癖があるので、随分と
この一年で本が増えましたが・・・
 さて、”複数回読了した本”は、いくつあるでしょうか?
 資本主義で何もかもが大量生産のこの時世、一月にでる読みたい本全てをチェックす
ることさえままならない中、過去に出た本などいちいち読み直して入られないのですね。
そうやって多くの物語が消費され、そして捨てられていくわけです。
 大塚英志などはその傾向を受け入れようとしているようですが・・・


「俺はな、人間の欲望って奴を愛してるんだ。」「欲望?」「そう。人として生まれたからには、全ての欲を満たしてみせる。」

 この正月は、少し新しい物に触れたいという欲望に抗って、昔買った本を読み直すことにします。
 よいお年を。そして、ではどうぞ。
ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9

555 名前: ガルカの昔話 29話1/2 投稿日: 2003/12/27(土) 14:52 [ fqwFHV42 ]
ユルカオルルカはくつくつと笑う。

口も目も鼻も耳も。
人としての容姿は、すべてヒュームによって奪われた。
魔法学院を首席で卒業し、将来はいずれかの院の院長になるだろうと期待されていた。
だが、どうだ。
この芋虫より醜い姿になって、誰も見向きしなくなった。
仲の良かった友人も、両親でさえ、この甚大な魔力を持て余す芋虫を恐れた。
あの事故から、彼は孤独だった。
ずっと一人で暗い闇の中生きてきた。

全てを奪ったヒュームどもに、ようやく積年の恨みを晴らすことができる。

そう思うと。

くつくつ…

くつくつ…

笑いが止まらない。
下あごが爆発でなくなってからは、金属のマスクが擦れ合うこの音が彼の哄笑であった。
『国』がどうの、大義がどうの、そんな腹の足しにもならぬご高説など、正直、どうでも良い。
この膨大な魔力に身を預け、呪紋を紡ぐことに没頭できるこのひと時、
彼は言い例えようの無い開放感を感じ、なにもかも忘れることができた。
さあ、来いメテオ。
バストゥークを焼き払え。
全てのヒュームどもの、目を、口を、鼻を、耳を、綺麗に削ぎ落とすがいい!


「終わりだよ…俺を屠ったところで…」
赤ひげは口から血液をゴボゴボと吐き出しながらも、小さく呟いた。
獣人たちの鳴き声。人間たちの悲鳴。
私だけがようやく聞き取れるだけの小さな声。

556 名前: ガルカの昔話 29話2/2 投稿日: 2003/12/27(土) 14:53 [ fqwFHV42 ]
私たちは、クゥダフに先んじ、バストゥークに辿り着くことができた。
ヒュームの女が港区の門番と知り合いであったため、街の中にもどうにか入ることができた。
彼女はいまこの国難を大統領に伝えるため、総統府に走っている頃だろう。
大統領の頭が悪くなければ、このクゥダフの大群を征伐するため援軍がやってくるはずだ。
間に合えば、ヒューム、ガルカ、ともに犠牲者は少なかろう。
私と細い兄弟は、商業区門に走った。
ガルカを、兄弟たちを止めるため。
この国、故郷バストゥークを救うため。
混乱の中、ミスラと赤ひげが見張り塔に入るのを目撃した。
二人で彼らを追い、ミスリル銃士の危機を救い、
そして、わが身を持って赤ひげを引きずりおろした。

赤ひげは私の下敷きになる格好で落下した。
赤毛の混じっていたアゴヒゲは、もはやどれが地毛で赤かったのか分らぬほど
血で濡れ、街灯の暗い光でテラテラと不気味な光沢を放っていた。
助かるような傷でないのは誰の目からも明らかだった。
赤ひげと私は、この闇の中最期の会話を幾つか交わした。
細かくは覚えていない。
ただの罵りあいだったような気もする。

557 名前: ガルカの昔話 30話1/2 投稿日: 2003/12/27(土) 14:54 [ fqwFHV42 ]
「ヒュームたちと…ガルカは分かり合えやしない…」
「俺はそうは思わない…」
「兄弟…お前だって…鉱山で働いてきた…身だ」
分らないはずはないだろう。赤ひげはそう言いたそうな瞳で私を見る。
私は首を横に振る。
当然、私は彼らがどれほど差別的にガルカと接してきたか、この身を持って知っている。
しかし、私が知っているのはそれだけではない。
ヒュームの真面目さ、勤勉さは特筆すべきものだし、なにより気のいい優しいヒュームだって多い。
同じ国に住むもの同士、いつかは互いの手を取り合える日がくるはずだ。
「甘いな兄弟…それは理想論だ…。人間はお互いの差異を認め合えぬものさ…」
「かもな…だがな、兄弟。アレを見てみなよ」
私は門前広場を見るように促した。

広場はそのときすでに、一時的な混乱が終局に向かっていた。
クゥダフという外敵の出現に、ヒュームとガルカは互いにいさかう事も忘れ、
忌むべき獣人と力をあわせ戦うことを選んでいた。
「ヒュームども。怪我人を連れて行け、ここは我らガルカが抑える!」
「冗談を!ヒュームがガルカの足手まといになるとでも言うか?」
頑健なガルカと装備の豊富なヒュームが戦線に立ち、獣人の攻撃を一身に受ける。
その間、魔法の使えるものは前衛の合間からありったけの黒魔法を叩き込んだ。
傷ついたガルカをケアルで癒すヒュームがいる。
獣人の攻撃からヒュームを守るため、立ちはだかるガルカがいる。
ヒュームとガルカの間で、攻撃の連携が図られクゥダフを打ちのめす。
あるものは銃を撃ち、あるものは同国の士を救うため獣人をさかんに挑発する。
系統だった反撃はできていないものの、けっしてクゥダフにやられるに任せるようなことはなかった。

558 名前: ガルカの昔話 30話2/2 投稿日: 2003/12/27(土) 14:55 [ fqwFHV42 ]
「一時的な協力関係さ。分ってる。だが、きっと、ああいう風に…いつかは…」
「…はん…気にいらねぇ…。」
みんな、燃えちまえ。
赤ひげは力なく言う。
その時たまたま彼の瞳に映った夜の空。わたしはギョッとして、思わず彼の視線の先を追う。
紫電が走る暗雲が立ちこめ、バストゥークの上空に不穏な瘴気を撒き散らしていた。
音も光もさほどない。
それほどに、遠い空で起こっている異常なのだ。
「あれは…」
私に魔術の知識など皆無であったから、あれが魔法だとすら、このときは思わなかった。
「メテオだ…もうすぐ。…ユルカ……やれ。ヒュームを…」
赤ひげの呼吸がヒューヒューと一層荒くなっていく。
彼の命も、この魔法の一部として吸い上げられていくかのように。

詠唱は9割終了していた。
人間と獣人の間で起こった争いが、彼の魔術の詠唱を、広場に敷き詰めた魔法円を、見事に隠蔽していた。
多少計画は狂ったが、メテオ完成の支障にはならないだろう。
事故で目を失ったユルカオルルカは、その魔力の一部を擬似網膜とし視覚補助に使うことを常としていた。
有効範囲はあるが、常人のそれよりはるかに鋭敏で使い勝手も良い。
その擬似網膜も、主(あるじ)の周囲に危険がないことを伝えている。
何者かが剣を放ったようだが、それも届かなかった。
仮に届いていたとしても、あの程度のスピードならば
打ち落とすことなどユルカにとっては造作もないことだったろうが。
何の問題もない。
あとはヒュームどもがのたうちまわる姿を擬似網膜に焼付け、後々まで慰みに使うだけだ。

くつくつ…

また笑う。

559 名前: ガルカの昔話 31話1/2 投稿日: 2003/12/27(土) 14:56 [ fqwFHV42 ]
その直後、痺れるような衝撃が身体を襲った。
熱い痛覚が神経を駆け巡る。
何が起こった。理解しがたい。こんなことがあるはずない。
ユルカオルルカは膝をつく。
乾いた土くれは、あっという間にタルタルの血を飲み込んで固くなった。
彼は詠唱の完成という大事を呆け忘れ、
ヒュームの起こしたあの爆発事故に巻き込まれたときのことを思い出していた。
あのときも、何が起こったのか理解できなかった。
熱くて。
痛くて。

気付いたら全てを失っていた。

おちつけ…
ユルカは擬似視覚に指向性をもたせる。
おちつけ。
彼の命を狙う犯人の姿を探した。
一体誰が魔法視覚をかいくぐり、ユルカに手傷を負わせたというのか。
人ごみを縫うように擬似網膜を泳がせる。鋭敏な補助器官はすぐそれを捉えた。

門前広場のはずれ、
木の陰に伏した人影。
銃を構えたヒューム。

女。

そこまでは視認できた。
途端、彼女の構えた銃が火を噴き、次々に銃弾が飛んでくる。
物凄い速度と熱量。
擬似網膜が銃弾の射線に触れ、撓(たわ)み綻んだ。
ユルカは魔力を集中させ障壁を張る。
対抗手段は幾つかあったが、とっさに発動できるのはこれだけだ。
なぁに。
普通の銃弾ならこれでも十分さ。
弾を撃ちつくさせた後、メテオの詠唱をとめて適当に料理してやればいい。
問題ない。
そうさ。何の問題もない。

560 名前: ガルカの昔話 31話2/2 投稿日: 2003/12/27(土) 14:57 [ fqwFHV42 ]

誤算は、女がユルカの想像をはるかに超えた射撃の名手だったこと。

四発放たれた銃弾は驚くべき精度で、障壁のほぼ同じところに着弾した。
初弾はどうにか止めることができたが、衝撃で脆くなった障壁を、残り三発はやすやすと貫く。
魔術によって作られた障壁すら貫通したのだ。
タルタルの脆弱な肉体など物の数ではない。
糸の切れた操り人形のようにユルカの矮躯は石畳をはねる。
あまりの勢いのよさに、滑稽なお芝居を見ているような錯覚さえ覚えるほど。
だが、確実に、火薬で熱を持った銃弾は、この哀れなタルタルの臓腑をグチャグチャにしていた。

三発が三発とも致命傷。
蓄えていた魔力が、虚しく霧散していくのがわかる。
身体から急速に力が抜け、魔力により維持されていた擬似網膜も寸断される。
唯一残されていた触覚すらも、暗く閉ざされていき、ユルカという世界は徐々に小さくなっていった。
最初は痺れが襲い、やがてその痺れすらも無くなる。
意識は遠のき、不安も孤独感さえも消えていく。
安息。
ユルカの求めていた至福は、死という名の来訪者の先触れであったのか。
すべての感覚が失われたとき、ユルカオルルカはバストゥークの大地に骸となって転がっていた。
魔法円は主を失い、メテオの空もありふれた夜空に戻っていく。
遠くの木陰でヒュームの女が立ち上がった。その姿を見咎めたものはいない。
誰の記憶にも残らぬことだが、彼女はこの国を救ったことになる。
それでも女の顔に勝利の余韻はない。
憂いに沈む瞳は、いまにも溢れんばかりの雫を湛えていた。

561 名前: ガルカの昔話 32話1/2 投稿日: 2003/12/27(土) 14:58 [ fqwFHV42 ]
「『盾』卿!!」
若い百人隊長位の男の呼び声で正気を取り戻した。
タルタルは弾けとび、そして動かなくなった。
『グスタベルクの盾』に理解できたのは、メテオが失敗しバストゥークが救われたということのみ。
何故そうなったのかは分らない。
「クゥダフたちにみなで必死に抵抗していますが…組織だった反撃はいまだにできず…」
若い隊長の現状報告も半分は聞いていなかった。
だが、広場に目を落とし、彼はすぐに獣人たちの布陣の欠陥に気付く。
慧眼というべきか。
「なんだ?クゥダフども…まるで指揮官を欠いているかのように纏まりがない…。」
『盾』は百人隊長に指示を下す。
「突出したクゥダフの前衛と後衛を寸断する。中央突破の要員には訓練された銃士隊を使え。
その後、ガルカたちにはクゥダフ前衛を相手させる。
中央突破した銃士隊は後衛の魔法詠唱を邪魔しつつヒーリングを阻止。
相手の白魔道士には特に厳しく当たれ。疲弊させろ。こちらの回復要員は全てガルカたちに回す。
ガルカの頑健さがあれば、総合的な被ダメージはヒュームに比べ低減できる。
この戦いはケアルを最期まで供給し続けられた方の勝ちだ。」

急げ。

最後にミスリル銃士は部下を焚きつけた。
百人隊長は転がるように伝令に走る。
その様子を展望台の隅で眺めていたエルヴァーンの青年が小さく呟く。
「悪くない采配だ…」
その評価にミスリル銃士は苦笑する。
エルヴァーンの青年が相手にしていたミスラは、切断された右腕を残して姿を消していた。
血の跡がグスタベルク側に尾を引くように残っている。
「逃がしたか…後々の禍根にならねばいいが。」
エルヴァーンは、それはないだろう、とでも言いたげに首を横に振って返したのみだった。
「それとも、これがサンドリアの意向かな?彼女の素性に感づいても尚逃がすというのは。」
「…」
「随分痛々しい左腕だが…」
『盾』は、治療のため運び出された側近たちの残していった剣を手に取ると、エルヴァーンに切っ先を向ける。

562 名前: ガルカの昔話 32話2/2 投稿日: 2003/12/27(土) 14:59 [ fqwFHV42 ]
「私はサンドリア騎士じゃあないからな。合理性の追求が信条だ。
以前与えられた汚名は晴らせるときに晴らしたい。」
「…」
「どうした?構えろ?それとも得意の槍でなくては、私には勝てぬと踏んだか?」
「お前さんは…誰かと人違いをしているようだ…」
エルヴァーンの青年はそう言うと、くるりと背を向ける。
「いま、剣を向けるべき相手は獣人のはずだ…」
ふう、と『盾』は鼻で笑う。
「たしかに。おっしゃるとおりだ。」
二人は飛ぶように階段を駆け下りる。
すでに広場では『盾』の立案した作戦が始まろうとしていた。

「ふ…失敗か…。」
上空の異変が収まるのを見届け赤ひげは呟く。
彼の瞳から、生気が急激に薄れていくのが分った。
「赤ひげ…お前のやり方は間違っていたんだ…。我々は、我々ガルカはこの地で彼らと共存していかねばならない。
ヒュームを排除するようなやり方で、上手くいくはずがないんだ。」
赤ひげの息は荒い。私の声が届いていたかどうかも怪しい。
「俺はこのことを次の世代に伝えていくつもりだ。ヒュームに力を持って抗った結果がどうなったかを」
「語り部の真似事か…めでたいヤツだ。」
悪態をつく声にもすでに張りがなかった。
「無理やりに押さえ続ければ、…その反動は…計り知れないものになる。これは予言だよ、ダスクス。
もっと大きな災いがきっと起こる。ヒュームとガルカの間には…。く…くく、そのとき君は私の顔を思い出すのだろうか?」
「また、ガルカとして戻って来い、赤ひげ。そのときに聞かせてやるよ、昔話をな。」
赤ひげはゆっくり目をつぶる。
渇いた血痕の張り付いた唇が小さく動いたが、彼がなんと答えたのか、結局は聞き取れなかった。

そして聞き取ることのできなかったその言葉が、彼の辞世の句となった。

ヒュームとガルカの連合軍に圧倒され、クゥダフたちは駆逐されようとしていた。
戦いは終わろうとしている。
門前広場の夜も、もう明ける。

563 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/27(土) 15:19 [ cJO2M5Zo ]
うは・・・リアルタイムで読めた・・・やっぱしいいねぇ・・・
この話も終局に向かっていくような感じですね・・・

564 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/27(土) 18:03 [ SaE/PAE6 ]
ユリノの章 第11話 信じる力

ここは競売所…
ありとあらゆる武具や魔法書、家具、
娯楽道具まで揃っている…こともある場所。
僕とテノースはここに食材を買いに来たんだけど…問題発生。

テノースが見当たりません…。

やはり力のなさそうな彼に荷物持ちを頼んだのがいけなかったか…と、
今さら後悔の念を浮かべているのですが…
「ユ…ユリノさん…」
あ、追いついたみたいだね。僕は声のしたほうをチラッと見てみた。
「これ…重いですぅ…」
袋を3つほど、両手で抱えながらよたよたと隣に来るテノース。
そして、何かを訴えるような目つきでこちらを睨んでくる。
「そんなに重いなら降ろせばいいじゃん…」
ほんのり涙目のテノースに微笑みかけながら、受付の方に振り返り、コカトリスの肉等を落札。
「よし、テノース帰るよー」
「………」
と、テノースに声をかけて見たが、完全に無反応。

まさか、怒ってるのかなと思いつつ、もう一度…。
「テノース? どうかしたの?」
「あ、ユリノさん…あのハープ…」
と、テノースが指差すのは、白っぽくて高価そうな感じ漂うハープ。
それを見て彼は目をキラキラと輝かせているように見えた。が
「でも、お金が…」
と呟き、しゅんと暗くなってしまった。

その様子を見た僕は、締めたはずの財布の紐を緩めていた。
「じゃ、欲しいハープ1つ奢るよ」
「え、でも…」
「戦火を消す詩人がそんなボロボロハープじゃ…ね?」
僕はそのハープの落札金額を確かめ、入札した。

そして、見事落札できた白いハープを受付から受け取った。
「はい、荷物持ちのお礼」
それを微笑みながら彼に手渡すと、ぱっと花が咲くように笑顔になってくれた。
「あ、ありがとうございます!」
「いいよ、お礼なんて」
それより僕は、笑顔になってくれてホッとしてるよ。

565 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/27(土) 18:36 [ SaE/PAE6 ]
「あの…これ、丁重にお部屋に飾らせていただきますね」
「飾るのかよ…」
少し意外な返答に顔を歪ませる僕。
テノースは古ぼけたハープを抱きかかえて話した。
「このハープ、僕の幼い頃の友人の形見なんです…。だから、片時も手放したことが無くて…」
その言葉を聞いたら、少し胸が苦しくなったような感じがした。

幼い頃の友人…今現在生きているかも分からない友人を探す旅をしている僕…。
僕にはその友人が、たった1人しかいないことに気がついた。
親愛なる友人、コルトは生きてるかもしれないし、死んでいるかもしれない。
いや…死んでいるのかも…

「…ユリノさんに、お聞きしたいことがあるんですが…」
「え? ああ、いいよ。何でも聞いて」
僕ははっとテノースの声に耳を傾けると、思いつめた声で聞いて来た。
「ユリノさんが信じているものって…何ですか?」
「…信じてるものねぇ…」
急な質問に少々驚いたけど、質問の内容でさらに驚かされた。
僕が今までに信じられたものは…教科書、論文、資料集…。
僕が「人」を心から信じられたことは、一度も無かった…。
「ごめん、思い当たらないよ」
「…ルインレインさんの事もですか?」
「うん、ルインレ…!?」

僕はテノースの口から出た言葉にさらに驚いていた。
「ちょっと待って…?なんでルインの事を知ってるの!?」
「ご、ごめんなさい…これ…」
テノースはがくがくと震えた手でポケットに手を入れ、中に入っていた紙切れを取り出した。
そして怯えた表情を浮かべて呟いた。
「キッチンのゴミ箱に入ってた手紙…封が解かれてないので拾ってしまいました…」
「……!」
僕はテノースから紙切れを奪い取り、広げて見た。
それは『ユリノへ。ルインレイン』と書かれた封筒だった
「テノース…!」
「…読んでみてはもらえませんか?きっと大事な事が書かれている気がするんです…」
僕は既にくしゃくしゃの手紙の封を破った。

566 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/27(土) 18:57 [ SaE/PAE6 ]
そして、恐る恐ると手紙を取り出し、広げて読んだ。

『親愛なる我が弟へ

 暗黒騎士のジェイドがお前の事を心配しているが、元気でやっているか?
 まぁ、オレの弟だから心配事はないと思うけどな。
 …お前がウィンダスから抜け出すことは予想できてたよ。
 オレがあの場でジェイドに賛成したのはそのためなんだし、
 むしろここで行かなかったらそこまでの友情ってことと思うことにしてた。
 なんたってコルトはお前の始めての親友だからなぁ。
 でも、飛空挺パスを忘れていくとは…w

 まぁいいか、別に笑うために手紙を書いたわけじゃないしw。
 オレ達も今ジュノにいる。お前達もそうだろ?
 コルト探しを続けたいならジェイドとサニーには会わない様にな。
 ジェイドはともかく、サニーはオレに付きっ切りだから心配ないだろう。
 
 あ、あとは女ヒュムの忍者3人にも気をつけろよ。オレ達とPT組んでるから。
 まぁ、何か情報があったらこっそり送るから、ガンガレw

 お前の親愛なる兄、ルインレインより。』

「そんな… そんなこと思ってたんだ…」
僕は書かれていた内容が、想像してい事と全く違うことに驚いた。
いつもなら『今日はよくよく驚く日だ』と考える所だが、それ所ではなかった。
「ルイン…ありがと…」
僕は手紙を丁寧に折り、封筒の中に戻した。
「あの…ユリノさん」
と、テノースは別の紙切れを持って見ていた。
「これ、さっき滑り落ちてたんですが…追記だそうです…」
「…追記?」
テノースから紙切れを受け取り、また広げた。

567 名前: 友の影を追って 投稿日: 2003/12/27(土) 19:17 [ SaE/PAE6 ]
『追記

 お前は魔法学校ではいじめられる方だったから、人間不審とかまだ治ってないだろ?
 いい仲間と出会って、人間不信とか言う持病を治して来い!w
 これはオレからの宿題だ! 後できっちり提出してもらうぜ?(何を
 なぁに、そんな難しい問題じゃないさ!
 まずは自分から信じて、そっから仲間も信じりゃいいんだからな!w

 それに、もうあんなに思いつめたお前はもう見たくないしな…。
 じゃ、頑張って社会勉強してきな!w』

「余計な事を…」
僕は手で顔を覆った。テノースに涙を見られないために。
自らの手で真っ暗になった視界を、テノースが優しく解いた。
「ユリノさん…」
「ごめん…僕まだ心のどこかでテノースの事を受け入れてない…
 何でかな…なんか怖いんだ。自分も、周りのみんなも、全部…」
ぽろぽろと涙か頬を伝って、雫となって落ちていく。
するとテノースは僕の手をぎゅっと握って微笑んだ。
「まずは自分から始めましょう…ルインさんもそう言っていましたし。
 そしたら…僕らのこともルインさんの事も…そして何より、コルトさんの事も…」
「テノース…ありがとう…」
僕はテノースの手を握り帰した。感謝の気持ちを込めて。
僕はテノースの手に引かれ、立ち上がった。

いつか、みんなを心から信じて行動できる日を願って…


ユリノの章 第12話に続く…

568 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 01:51 [ 2B56oxmc ]
タルタル戦士は夢を見る 第六十話 限界突破

―― タロンギ大峡谷・メア岩 ――

「もうやめて、ババドラバド」
クリームが前に出た。
「やぁ、クリームこの間はすまなかったね。でも無事そうで何よりだ」
「そういう風に思ってくれるなら…もうこんなことやめてよ!
 ババドラバドは充分強いじゃない、こんな無駄な事して何になるっていうの?」
「クリーム…これは君には関係ない話なんだよ。…それにそこのガルカとエルヴァーンもね。
 僕と、そこにいるトッパだけの、ね」
そう言って彼はトッパを見てニヤリと笑った。
「お前は…何が目的なんだよ。オイラと決着を着けてどうしようってんだ?」
「答えは簡単さ…過去を断ち切る。単純にそれだけの事…」
彼は背負った巨大な鎌を持ち、構えた。
「そして…邪魔する者は容赦しない。クリーム。例え君であっても、だ。
 この前は仕方なかったと思うけど…今は君は確固たる意思でここに来てるんだから、ね」
まずい、とゼヴェンは思った。声を上げようとしたが、それは間に合わなかった。
風のような速さで、ババドラバドはクリームの懐へと潜り込んできた。
「離れろ!クリーム!」
トッパが叫ぶ。セラフィーは既に走り出していた。クリームは後ろに下がりながら背中の
両手剣に手を伸ばしたが…

569 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 01:52 [ 2B56oxmc ]
「まず一人目!」
ババドラバドの漆黒の鎌の一閃が、クリームに放たれた。
「うぁあああ!」
振り下ろした両手剣がババドラバドへ届く前に、彼女の体に重たい衝撃と激痛が走る。
「あんた!」
セラフィーが勢い良くババドラバドへ体当たりをかけるが、彼は見事にそれを武器で受け流す。
「はは!もう少し落ち着いたらどうだい?」
体制を崩したセラフィーは、すぐさま振り向いたが…
彼女が最後に見たものは、眼前に迫る黒い鎌だった。
「あぁぁ…目が…あたしの目が…!」
セラフィーが地面に転がりながら顔を抑えている。両手の隙間から血が流れており、
彼女が視覚を失った事は一目瞭然だった。
「セラフィー!」
「貴様!」
トッパとゼヴェンがババドラバドへ左右から迫る。
「ははは!だから!数だけで来ても駄目なんだよ!」

570 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 01:53 [ 2B56oxmc ]
「ねぇ、お母さん、お父さんって何時帰ってくるの?」
「そうねぇ…あなたがいい子にしてたら、すぐに悪い獣人をやっつけて
 帰って来てくれるわ。そしたらね、久しぶりにウィンダスへ帰るのよ」
「ウィンダス…って、何?」

…声が聞こえる。…なんだろう。すごく懐かしくて暖かい声だ。
一体なんなんだ?オイラはどうしちまったんだ?
確か、ババドラバドと戦って…それから、クリームとセラフィーがやられて…
えぇと、よく思い出せない。
「ねぇ、どうしたのお母さん?お母さんも出かけるの?」
「…お母さんの言う事、よく聞いてね。…お父さんね、今お外で悪い獣人と戦ってるんだけど
 やっぱりお母さんがいないと大変みたいなの。だから、だからね。
 お母さん、一緒に戦ってくるからね。いい子にしてるのよ」
…目を開けても、まるで目を閉じているみたいに真っ暗である。ただ、声だけが
彼の耳に響いてくる。
どうやら、母親とその子供の会話のようなのだが…
「ねぇ、お父さんとお母さん…帰って来るよね?僕がちゃんといい子にしてたら…
 帰ってくるんだよね?それで、皆で一緒にウィンダスへ帰るんだよね?」
なんだろう?子供は酷く不安そうな、今にも泣きそうな声である。

571 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 01:53 [ 2B56oxmc ]

「帰っておいで…」
「もし…もし、ね。お父さんとお母さんが帰って来れなかったら…
 あなたが一人ぼっちになっちゃっても…ね?」

なんなんだ…オイラ、この人の声、何処かで聞いた事がある…そう、そうだ。この人は…
泣いている子供は…

「嫌だよ!お父さんとお母さんがいなきゃ、僕嫌だよ!」

「こらこら、我侭言わないの。…それに大丈夫。お父さんとお母さんはあなたの事をずっと
 見守ってあげるから。お空のお星様になって、いつまでもあなたの側にいるから」

嫌だ…!嫌だ…!行っちゃ駄目だ!アンタがそこで行ったら、その子は…オイラは…!

「…だから泣かないで…トッパラッパ」

572 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 01:54 [ 2B56oxmc ]
瞬間、世界が光に溢れる。
「あ…」
そこは、バストゥークのコウモリのねぐらという宿屋だった。
幼き自分は、部屋の隅にちょこんと座って、部屋を出て行く母を見つめている。
そして…目の前には…そう、とっくに顔を忘れてしまっていた、懐かしい人がいる。
「…お母さん…」
すっと、手を伸ばす…が、母の体を突き抜けてしまった。
トッパの体は不思議な事に半透明となっており、そのまま母は自分の事に気付かずに、
するりと通り抜けてしまった。
(なんなんだこりゃ…オイラの記憶の中…なのか?)

「お母さん…!オイラだよ!トッパだよ!」

母は、その声に気付く事なく、そのまま入り口へと進む。

「お母さん!…行くな!…行っちゃ駄目だ!アイツを一人にしないでくれよ!
 オイラ、ずっと一人だったんだ!怖くて、怖くて…毎日泣いてた。
 もう…嫌なんだ!オイラは…僕は…」

トッパは泣いていた。大粒の涙がぽろぽろと流れていくのが分かった。
ずっと前に、クリームの家で泣いた時と同じ気持ちだった。
そして、分かった。自分は、単純に寂しかっただけなんだな、と。
強がって、無理して…一匹狼気取りだったけど、本当は、本当は…

573 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 01:55 [ 2B56oxmc ]
「…トッパ」
(…え?)
「そこにいるのは…トッパでしょ?…随分と大きくなったのね…」
(まさか…嘘だろ?…オイラが分かるのか?)
「姿はぼんやりしててよく見えないけど…間違いないわ、あなたトッパ…でしょ?
 でも、まだあなたがここに来るのは早いんじゃないかしら」
「お母さん…僕のこと、分かるのか?」

もうそれが、夢か幻なのか、それとも現実なのかトッパには分からなかった。
しかし、確かに母はトッパの存在を認識しており、実際に彼に話しかけているのだ。

「お母さん、お願いだ!行くのをやめてくれ。でないと、お母さんは…」
「…ごめんね、それでも私、お父さんを助けに行かないと…」
「そんな!だってさ、行ったら死んじゃうんだよ!?」
「トッパ…いい?よく聞いてね…あなたの名前はね、お父さんが付けてくれたんだよ。
 私たちはタルタルでとっても非力な種族だけど…
 でもね、お父さんは言ってたわ。その種族とか、そういうのを超えた先に真の強さが
 あるっていってたの」
「だから…なんなんだよ…」
「いい?トッパ。あなたの名前にはね、種族の…己の限界を超える、
 突破するという願いが込められているの」
「…お父さんを助けてあげて。それが出来るのはあなたしかいないんだから、ね?」
「お母さん…」
母は、トッパを優しく抱きしめた。
「でも…とっても辛いなら…嫌ならやめてもいいんだよ…?」

母から優しい匂いがした。それはとてもとても懐かしくて…

「…お母さん…僕は…」


                                     続く

574 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 02:23 [ CjpSaXGs ]
タル戦キターーー!!!
最後の「嫌ならやめてもいいんだよ?」でマートを思い出した俺は負け組orz

575 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 02:23 [ DDs1B3Io ]
年の瀬にタル戦キタ━━━( ゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━( ゚∀゚ )━━━!!!!

576 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 02:25 [ zQNT4VIw ]
タル戦キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
こっそり来てたー

577 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 02:36 [ th6RyTg2 ]
ガルカの昔話とタル戦キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
ミスラたん回復は絶望的か…

578 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 03:28 [ th6RyTg2 ]
細い兄弟竜騎士か…
内藤じゃないよな…

579 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 14:41 [ iNurjvMU ]
>>574
「嫌ならやめてもいいんだよ?」が
「いやならやめてもいいんじゃよ?」に脳内変換されますたorz

580 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 15:23 [ l4YQ9jws ]
まぁサブタイトルが限界突破なわけで…

581 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 20:21 [ Q6hchLKU ]
タル戦キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!






















Maatキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

582 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/12/29(月) 20:34 [ zQNT4VIw ]
ガルカの昔話 33話 クォン大陸の覇権、その行方。1


コンシュタット会戦。
幾度目のものだろう。
サンドリア軍とバストゥーク軍がコンシュタットの起伏に富んだ地形に布陣している。
強いオーディン風が吹く。
その風に銀髪のエルヴァーンの女性の髪がたおやかに流れた。
およそ戦場には似つかわしくない気品ある令嬢。
豪奢に着飾れば、そのまま舞踏会にでも出かけられそうなほどの美貌。
ただ、その華奢な身体を包むのは柔らかいドレスではなく、無骨で冷たい鎧であるのが残念でならない。
彼女は、風に揺れる前髪を億劫そうに頭頂部で結う。
「姫、お言葉を」
年配の老将にいわれ、女性は「もう、姫と呼ぶのはやめよ」と諌めながらも、うむ、と頷いた。
「まず、我らマルティユー家に汚名をそそぐ機会を与えてくださったドラギーユ王家に謝辞を述べねばなるまい。」
「サンドリアで最も武名名高いマルティユー家。家長が叛徒の片棒を担いだとはいえ、
このまま御取り潰しはあまりに無体。陛下もそのように」
ドラギーユ王家直属の者らしい身なりの良い男がそう言った。
貴族だろうか?
『叛徒』という言葉にやや顔を曇らせたものの、女性はすぐに気を取り直し口を開く。
「このコンシュタットの起伏は、バストゥークの銃には不利である。
一方我らにはサンドリアの誇るチョコボ騎士団、それに…彼がいる」
女性の声に呼応するように、彼女の背後からチョコボ2,3頭分はあろうかという竜が鎌首をもたげる。

この竜は前家長の愛竜。
そのことを口にするのは、ドラギーユ王家の関係者がいる手前、あまり好ましいことではない。
皆、そのことを理解していた。だから何も口にすることはない。
仕えていた公爵家の謀反騒ぎの煽りを受け、前家長は失脚し姿を消した。
そうなった今となっても、彼と彼の竜は家臣たちにとって絶対の御旗であることに変わりはない。
その壮麗な姿に胸を打たれ、志気を高ぶらせた。
エルヴァーンの女性は竜の額を撫で、小さくささやく。
「力を貸して、あなた…愛しいオージェ…私に力を…」
撫でられたのがよほどこそばゆかったのか、竜はすっと目を細めた。

583 名前: ガルカの昔話 33話2/3 投稿日: 2003/12/29(月) 20:35 [ zQNT4VIw ]

「クロディーヌ。待たれよ、クロディーヌ・マルティユー卿。」
作戦会議を終え本陣に作られた簡易テントに入ろうと身をかがめたところで、
女将軍クロディーヌは先ほどの貴族風の男に呼び止められる。
「何か、御用か?オスカル男爵」
憮然とした表情で女性は答える。
「おお、怖い。幼少のみぎりより遊んだ仲ではないか。そんな顔をするな。」
そう言うと、オスカルは身体を近づけてくる。無粋な下心が彼の吐息と一緒に漏れてきた。
クロディーヌは眉をひそめる。きつすぎる香水の臭い。
不快だ。
子供の頃から大嫌いだった。
親同士の付き合いがなければ、こんな男など歯牙にもかけなかった。
「オージェの名を呼んだな。あの謀反者の名を。」
聞かれたか。女は舌打ちをする。
「私は口惜しかったのだ。オージェがいなければ、そなたは私と一緒になっていたはずだったのに…」
「オスカル様はおもしろい夢を見なさる。」
女は冷笑して言う。
「夢などではない。」
男の鼻息がいつの間にか荒くなっていた。女の肩に手が伸びる。
「マルティユー家など見捨てて、私と来れば良い。こんな戦場で手を荒らす必要もなくなる。
分っているだろう…私の陛下への報告次第ではマルティユー家は…。無下に断わることはできまい?」
女のように柔らかい男の手が、クロディーヌの手甲に触れる。
不必要にオスカルは身体をすり寄せてくる。
鎧で全身を包んでいなかったら、と思うとぞっとした。
「後家の身請けなど、オスカル様には不釣合いで御座いましょう。それに…」
女は、男を巧みに引き剥がすと睨みつけて言う。「そのようなご様子だとあの噂も…」
公爵家の謀反の煽動にはオスカルも一枚噛んでいる、動機は嫉妬。
「…信じてしまいそうです。」
「ふん。大衆とは下卑た噂を好むもの。」
オスカルは幼馴染に嫌疑をかけられたのがよほど不服だったのか、
襟首を正すといつもの冷静で紳士的な態度に立ち戻った。
「しかし、私の気持ちは真実である。色よい返事がいただけるのをお待ちしていますよ。」
そう言って、クロディーヌから離れていく。
「下衆が」
クロディーヌは男に触れられた部分をはたきながら、今度は聞こえぬよう悪態をついた。

584 名前: ガルカの昔話 33話3/3 投稿日: 2003/12/29(月) 20:35 [ zQNT4VIw ]

サンドリア軍の陣内にその伝令が走ってきたのは夜半を回った頃だった。
「クゥダフ軍がパシュハウ方面より接近。数は数千。バストゥーク軍を側面から強襲せんと行軍しています!」
「数千…」
女将軍の取り巻きたちが色めき立つ。それほどの規模でクゥダフが動くことなど聞いたこともない。
「これはチャンスですな。クゥダフどもと戦って疲弊しきったバストゥークを叩けば、
このコンシュッタット会戦は我らの圧勝。奴らをグスタまで後退させることもできよう」
貴族然とした男が女性に耳打ちする。
女性はキッと男を睨む。
「サンドリアの騎士の本懐は勝利にあらず。武心にあり。」
「愚かな。勝たねばマルティユー家に次は無い。」
そんなもの、とクロディーヌは言い、自分の愛鳥の元に駆け寄る。
鞍に飛び乗り、手綱を絞った。
チョコボは小さく嘶く。
「不義に生きるより、義に死ね。これは我が夫オージェ・クリストル・マルティユーの言葉である。」
彼女は帯剣を引き抜き、夜空に幽玄と輝く月を貫かんとする勢いで掲げる。
訓示は、この甘ったれた貴族の幼馴染みのために言ったのではない。
その後ろに控えているマルティユー家に仕える騎士たちに向けて言ったのだ。
応じるように、騎士たちも剣を掲げ鬨(とき)の声を上げる。
「栄誉あるサンドリア騎士ならば私に続け!敵はパシュハウ方面。獣人、クゥダフ!!アルタナの御名を唱えよ」
より大きな騎士たちの歓声。
獣人は人間の怨敵。
女神アルタナに信仰厚い彼らエルヴァーンが、その仇敵を目の前にして放っておけるわけもない。
騎士たちは高揚し、愛すべき女神の御名を幾度も唱えた。

「好きにするがいい。せっかく私が与えてやったチャンスを…」
オスカルは、さも憎々しいといった表情に顔を曇らし、クロディーヌに背を向けた。

585 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2003/12/29(月) 20:37 [ zQNT4VIw ]

往く年(´・ω・`)
 
   来る年(`・ω・´)

また来年〜

586 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/29(月) 20:59 [ pf2QlkGA ]
昔話キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!!
来年もよろしくお願いいたします。
首を長ーーくして待っております。

587 名前: 白き〜作者 投稿日: 2003/12/30(火) 01:56 [ d8yqN7bY ]
みんな素敵すぎ(つД`)連載陣のお話し、全て最高でつ
もっと読ませてください…

白き〜も追加しました。良ければ読んでくださいませ。
ttp://www.miracle-key.gr.jp/white/

もう今年も終わりか・・・。

588 名前: (・ω・) 投稿日: 2003/12/30(火) 02:54 [ tgdBhpik ]
白探もキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!!

589 名前: 群雄の人 投稿日: 2003/12/30(火) 12:09 [ mBsUXrWw ]
とりあえず連載を更新しました。
ちょいと遅れましたが今まででは一番長いロングバージョンですので、
どうぞお許し下さいませ

590 名前: Kooh 投稿日: 2003/12/31(水) 18:42 [ k.hWC0XQ ]
Wiki管理人でございます。
もう300ページを超えるようになり、読み応えありすぎ。
infoseekの報告するアクセス数はもう落ち着いているんです(100/day)が、
たまに初めて見付けた人がいるのでしょう、週に2度程7〜800/dayのアクセスがあります。

自分もここをとても楽しみにしている一人です。
来年も、ゆっくりゆっくり待っておりますので、
ゆっくりゆっくりお話を聞かせていただければと…思う次第。

では皆様、良いお年を!

591 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/01/01(木) 02:22 [ AN1MExAw ]
「名無しの話」の15 −謹賀新年−

深夜。町の広場。
埋め尽くすようにして、いろんな種族や職、たくさんの人々が集まってる。
年明けのニューイヤーイベントを楽しみに。
人出を目当ての物売りもあって、広場はザワザワと騒がしい。
たまに上がる悲鳴は蹴られたタルタルや踏まれたタルタル。
人混みの中ではよくある事。

「すごいねー」
「ねー」
うなずき合うタル白タル黒。
小さい二人にとっては、見渡す限りの人人人…じゃなくて、見渡す限りの脚脚脚。
で、そのスキマからたまに他のタルタルが見えたりする。
けど、挨拶する間もなく脚の向こうに消えるので、ちょと悲しかったりする。
「もうすぐだからね」
とヒュム戦。
「みんなイベント待ちだぁ」
とガル戦。
「期待半分、あきらめ半分」
とエル騎士。
「そういうマイナス思考はよくないにゃ。みんなでがんばって、みんなで楽しむにゃ」
とミスラ。
「そうそう、せっかくのイベントじゃからな」
と……。
「「「「え!?」」」」
一斉に振り向く四人。
視線の下方。
しゃがんでタル白タル黒の頭を撫でてる老人がいる。
歳には派手な赤白の服と帽子。
顔の半分をおおう白いヒゲと優しい笑顔のおじいちゃん。
撫でてもらってるタル白タル黒は、目を細くして気持ち良さそで嬉しそう。
「えーっと…もしかして?」
おそるおそる訪ねるヒュム戦。
「じゃよ」
と老人。
「…帰らなかったにゃ?…」
「うむ、ワシが落ちた後ソリだけ帰ってしまってなぁ。迎えが来るまでもう少しな…」
言いながら、表情は笑顔のまま。
「「「「「…」」」」」
五人の視線を受けて、
「んーたいへんだぁ」
笑ってごまかすガル戦。
と、気づくヒュム戦。
チラチラと周りからの視線。
ほんの数日過ぎただけでも、季節外れ(?)となってしまったサンタ服はよく目立つ。
さらに、あまりに似合いすぎてる容貌。
大部分の人は−まだ着てるんだ
少しの人は−まさかね
ほ〜んのちょびっとだけの人が−もしかして…
その脳裏にはあの噂。
聖夜、どっかのガルカがソリの上から撃ち落としたらしい、という信じるに信じられない噂。
そして、思いつめた顔で一人。
人々を押しのけてやって来る。
つる天に刺青の印象的なハゲモンク。略してハゲモン。

592 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/01/01(木) 02:24 [ AN1MExAw ]
「あの…俺…ずっと貰ったことないんだけど……あの…俺…悪い子なのかな…」
その声には不安と真剣。
周囲の全員の視線がハゲモンを見る。
しゃがむ老人を見る。
じっと老人の言葉を待つハゲモン。
じっとハゲモンを見る老人。
少しの時間。
ふと気づいたように。
「ああ」
笑みかける老人。
チョイチョイと手招きする。
「?」
招かれるまま、老人の前へとひざまずくハゲモン。
老人の差し出す手に、どこから出したのか綺麗に飾られた包み。
金糸銀糸を編み込んだリボンの脇には、ハゲモンの名前。
「え?」
「すまんのう、今年のはずじゃったのに届けるまえにワシが落ちてしもうた」
グリン
なぜか、注目してる全員の視線がガル戦へ向く。
「んーたいへんだったんだぁ」
笑ってごまかすガル戦。
「あの…」
受け取るかどうか、迷ってるハゲモン。
その頭へ、老人の手がのる。
暖かくて、優しい手。
「おまえさんは、良い子じゃよ。今までも、これからも。な?」
やわらかな笑み。
「ありがとう…ございます」
宝物を受け取るように、両手で、うやうやしく、受け取るハゲモン。
とたん!
「俺も!俺ももらったことない!」
「俺だってまだだ!」
「あたしも!」
「くれ!オレにもプレゼント!」
じっと見守ってた人々が、どっと詰め寄る。
「お、お、おぉ〜?」
「ミー」
「キャー」
あっという間に人波に飲み込まれてしまう老人とタル白タル黒。
そして、広場の一部で起こった騒ぎが、だんだん広がってく。
「なんだ、なんかあったのか?」
「クリスマスプレゼントがもらえるらしいぞ」
「今頃?」
「本物がいるんだよ、本物が」
「えー!?」
「貰え、貰え!」
「お前良い子じゃねーだろ」
「うるせぇ。もらったもん勝ちだ」
「あたし良い子だよー」
「オバンはのけ!」
「誰がじゃ、こら!」

593 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/01/01(木) 02:36 [ AN1MExAw ]
小石の落ちた池の波紋のように、どんどん広がってく。
広場から町へ。
「なに?もうニューイヤーイベント始まったの?」
「らしいよ。ほら、みんな騒いでる」
「告知もまだなのに」
「でもほら」
「早く行かないとー」
「はやくはやくー」
町から町へ。
少しずつ変化しながら。
「えー!?もうイベントやってるー?」
「うそ!?」
「まだじゃん」
「向こうの町じゃ、もう始まったって」
「なんか、アイテム貰えるらしいよ」
「なんで」
「ちいきげんてー?」
「かもねー」
「早い者勝ちだって言ってるよ!」
「えー!?」
「凄くいいのもらった人がいるらしぞ」
「そんなのありかよー」
「でも、あり得るわね」
「参加するにゃ!」
「遅れるな!」
「チョコボチョコボ!」
「テレポテレポ!」
そして、広場が動くスキマもないほどの人に埋まる。
町中に人があふれ、それでもまだ人は増えてく。
「どこだよー」
「だれに話しかけんのー?」
「モーグリどこだよー」
「トレードー?」
「探せー!見つけろー!」
「だからアイテムどこよー」
「どこ行きゃいいんだー」
「いそいでー」
「終わっちゃうー」
「おれのアイテムー」
「どけー!」
「なにすんのよ!」
「じゃまにゃー!」
「ピギャー」
「オレのタルタル踏むなー!」
「わしのガルカに触るなー」
「あたしのミスラー」
「そのハゲは俺のハゲだー」
ちゅどーん!
突然吹き上がる爆炎。
吹っ飛ぶ人々。
どさくさまぎれの攻撃魔法。
「やりやがったなー」
ちゅどどーん!!
「やたー、出番だー!」
ばりばりばり
ごおおおおー
「やれー!いてまえー!」
ずどどどーん!
「おどりゃー!!」
「てめー!!」
「フー!!」
だんだんみんな本気になってく。
年の初めの、暴れ初め。
もう、みんなイベントの事を忘れてる。

『人の欲にはきりがないのう…』
『すみません…俺のせいで…』
『おまえさんのせいじゃないて』
『ねー』
『きにしないのー』
老人とタル白タル黒は、明るくハゲモンを慰めた。
踏みつぶされてるけど…。

遙かな天空。創造主の座。
「うぅ…どうして…」
がっくりとうなだれてる女。
「せっかくニューイヤーイベント用意してたのに…」
「まあ、こういうこともあるさ。人間相手だからなぁ」
ポンポンと肩を叩く男。
「うん…」
「な、今からでもうちに変わらないか?獣人は単純だから、楽だよ」
「…」
「ははは、無理だよな。ま、がんばって」
「…」
騒ぎを見下ろしながら、女は本気で思った。
−こいつら見捨てちゃろか
一瞬だけね、一瞬。

「名無しの話」の15 −おわり−

594 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/01(木) 02:44 [ sNrwd3mo ]
名無しキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━

595 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/01/01(木) 02:44 [ AN1MExAw ]
開けましておめでとうございますぅ〜。
…って、字がちがう〜!
のはお約束っと。
本年もリアルに、ヴァナに、したらばに、とよろしくお願いしますm(_ _)m
今年の目標「全職登場!」…書けたらいいなっと。

596 名前: 1/1 投稿日: 2004/01/01(木) 14:33 [ s3L4h4Lw ]
にゅぅにゅぅ。
アタシはウインダス生まれのミスラ。
まだ小さいケド、冒険者なのにゃ。

「アケオメなのにゃー!」
「あ、うん。あけまして、おめでとうございます。」

「コトヨロなのにゃー!」
「うん。こちらこそ、よろしくお願いします。」

にゅぅにゅぅ。
もうイクつも寝たので、オショウガツーなのにゃ!
オショウガツーには、タコのから揚げなのにゃ!
美味しいのにゃ。

「あ、そいうえば、今年はどうだったの?」
「にゃ?」

「ほら、お正月といえば、アレだよね?」
「にゃ!アレにゃ!」

にゅぅにゅぅ。
そうにゃ。そうなのにゃ。
オショウガツーといえば、アレなのにゃ。
アレがなくては、この一年は始まらないのにゃ。

「それで、今年はお年玉、いくら貰えたの?」
「にゃんと今年は、スゴイのにゃ!」

「え?!そんなに貰えたの?」
「そうなのにゃ。
にゃんと、今年は去年の三倍、貰えたのにゃ!」

「え〜!ホント?すごぉい!」
「ホントなのにゃ!今年は、ビーダマ三個なのにゃ!」

「え?!ビーダマ・・・?」
「そうにゃ。お年玉といえば、ビーダマなのにゃ。」

「そ、そうなんだ・・・。」
「そうにゃ。それに今年のビーダマは、
特にキラキラして、キレイなヤツなのにゃ。
うにゃ〜。スゴク嬉しいのにゃ〜。」

「そっか・・・。うん、良かったね。」
「それでにゃ、早速、ビーダマで遊ぶのにゃ。
今、時代はビーダマなのにゃ!」

にゅぅにゅぅ。
去年はコマ回しが流行ってたのにゃ。
でも、今年はビーダマなのにゃ。
アーマーで命中精度アップ、
パーツで機能追加なのにゃ。
あ、でも、人に向けて発射しちゃダメなのにゃ。

「う〜ん。現実は残酷だけど、
それでも、明るく元気なアナタが、私は大好き。くすん。」

「にゃ?なんで、泣いてるのにゃ?」
「ん。なんでもないの。眼にゴミが入ったダケだから。
うん。一緒にビーダマで遊ぼう!」

「おうにゃ!さぁ、アタシのビー魂、見るがいいにゃ!」

597 名前: 0/0 投稿日: 2004/01/01(木) 14:35 [ s3L4h4Lw ]
アケマシテ、オメデトウゴザイマス。

598 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/02(金) 04:19 [ aimbNnLE ]
あけおめー

599 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/02(金) 05:25 [ ndqwovHg ]
あけおめー

600 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/02(金) 10:51 [ FsGHqMcA ]
あけましておめでsとう

601 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/03(土) 00:26 [ 2iQ3623o ]
明けましておめでとうございます。
数ヶ月ぶりにこのスレ見に来ました。
タル戦や白きがまだ続いていてよかった。(´・ω・`)
ガルカの昔話も復活してるみたいで。
ちょっと時間がないのでまた後でゆっくり見たいと思います。

作者の皆さん、この板の住人さんの今年一年のご健勝をお祈りしています。(*'-')

602 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/04(日) 21:12 [ J//nJEQ2 ]
あけおめ、ことよろ。
ななしとミスラの中の人、元日から
楽しいお年玉をありがとう!

603 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/06(火) 23:38 [ 2sWTLUCY ]
age

604 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/08(木) 05:34 [ N8Nr.AjA ]
ちっとも投下がないね…帰省中かな

605 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/08(木) 15:51 [ 7Gx7hj6E ]
きっと>604が書いてくれるのを待ってるのさ。

606 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2004/01/09(金) 01:10 [ q9TQkK3Q ]
あけおめ(`・ω・´)

607 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 01:11 [ ih24Ioi6 ]
あけおめことよろ〜

608 名前: 1/3 投稿日: 2004/01/09(金) 01:12 [ q9TQkK3Q ]
ガルカの昔話 34話 クォン大陸の覇権、その行方。2

「え?クゥダフ?」
バストゥークの本陣の中で最も地位ある男が、呆けたような声をあげる。
「はッ、斥候の報告によりますと、その数は数千にものぼるかと…」
「おやおや、ずいぶん張り切ったもんだねぇ、亀さんたち。」
男は無精ヒゲを撫でつけると、大きく一つあくびをした。
この男が『グスタベルクの矛』とまで呼ばれた猛将ミスリル銃士だとは、幾度会っても、
いや、会うたびに信じられなくなっていく。
「報告ご苦労だった。斥候のものには温かいスープを出し、休養をとるよう伝えてくれ」
『矛』の傍らにいた、まだ幼さの残る青年が報告に来た兵士に言い渡す。
まるで少女のように頬は赤く、眉目は秀麗なことこの上ない。
サラが女装して敵兵のまえで淫らに踊れば、無駄な血を流す気も双方失せるだろうになぁ、と
『矛』は本気とも冗談とも取れぬ戯言を言い、彼の美貌をいつも茶化した。
その度「サラと呼ばないでください。私の名前はサラディンです」と釘を刺すのだが、
この人は飄々として「じゃあ、やっぱりサラでいいじゃん」と切り返してくるのだった。
本音を言えば、本来は嫌いなタイプのはずなのだが、なぜだか不思議と憎めない。

「だいたい、俺は戦いが嫌いなんだよ。はっきり言って向いてない。」
向いてない人間が、一体どういう廻り合せでミスリル銃士まで登りつめるというのか。
「なんでだろうなぁ〜」
「望むと望まぬとに関わらず、今は獣人とサンドリアの連中を退けることが先決です。」
広げられたコンシュタットの地図に目を落とし、ふん、と『矛』は小さく鼻で笑う。
「各勢力の代表がタルットカードの札遊びで勝敗決める、ってのはどうだ?血も流れないぞ。
とにかく、皆仲良くすれば良い。そうすりゃ、俺の仕事も減る」
「貴方という人は…。私はあなたのお守りに来たわけじゃないんですよ?」
サラに諌められ、『矛』は肩をすくめてみせる。
「クゥダフたちはわざとこちら側に動きを見せてます。おそらく、サンドリアにも筒抜け。
クゥダフは我々が二正面作戦を取り、戦力を分散させることに期待している。
サンドリアもそのことに気付き、絶えずこちらに圧力をかけてくることでしょう…。」
「面倒だな〜…まったく…」
『矛』は小指で耳の穴を弄りながら、嫌そうな表情を満面に浮かべる。
その様子を見て、呆れた表情も顕わにサラはコホンと小さく咳払いをする。
このミスリル銃士は、といえば、サラの思いはどこ吹く風。
内耳の迷路から得た、小指に絡みつく多量の戦利品に驚嘆の声を上げていた。
コンシュタットの地図の一部を指し示してサラは続ける。
もう相手にするのも疲れた。
「私はコンシュタット南部の小路まで南下することを提案します。あの狭い地形は大きな戦力差が出にくい。
クゥダフとサンドリア、両軍を同時に相手にすることもないでしょう」
ふむ、と『矛』は思案を巡らせる。
探索先は耳から鼻に移ったようだ。
決して下の者には見せることのできない指揮官の情けない姿。
サラは頭を抱えずにはいられない。
「お前の考えそうな軍略だ。経験の差かな〜?俺の考えは違うんだわ」
ニヤニヤといやらしい笑いを浮かべて『矛』は言う。
はぁ、そうですか。
サラは気のない返事を返す。
彼は、この危機的状況を回避するためには、自分の立案した作戦しかないと信じていた。
その案を袖にされ、もうどうにでもなれ、と半ば勝利を諦めた。

609 名前: ガルカの昔話 34話2/3 投稿日: 2004/01/09(金) 01:13 [ q9TQkK3Q ]

夜のコンシュタット。
激しい起伏を縫うようにクゥダフたちは行軍していた。
丘陵を撫でる風が、不気味な泣き声をあげる。背の低い草花が幽かに揺れた。
クゥダフたちの太く鱗に覆われた足が、その花を踏み潰し儚く散らせる。
「後方よりィ未確認の軍勢が接近…サンドリア…サンドリア軍ン!!」
夜の静けさを裂くように響く斥候の悲鳴。
クゥダフを率いていた巨大で壮麗な背甲を背負った獣人は、ムゥと唸る。
彼らクゥダフはその身分、等級によって、宝石や金属の名で階級分けされる。
彼は『ダイアモンド』と呼ばれていた。
金剛王ザ・ダの信頼も厚い側近。クゥダフの中でも幹部中の幹部。
ヒュームどもと相対すること数知れず、人間たちの考えることはわかっていたつもりだ。
だが、みな一様では無いということか。
サンドリアのエルヴァーンたちは無策に我ら獣人クゥダフを攻撃してきた。
少し頭を捻れば、我らクゥダフを利用して、バストゥークと有利に戦えるというのに。
きっとヒュームどもなら、そうしたはずだ。

「奴らはァ、バカかァ!?」
想定外のサンドリアの動きにダイアモンドは呻いた。
「全軍、転進ッ!サンドリアを先に叩ぐぞォァッ!!」
と、命令を下し全軍それに従おうと動き出した矢先のことであった。
本隊より先行していた斥候から、またも悲鳴が上がる。
「ぜんぽぅ…後方よりィ、バス軍が……」
言いかけて、その斥候は何処からともなく飛来した銃弾に頭を打ちぬかれる。
兜が跳ねとび脳漿が散った。
その血塵を振り払い、ダイアモンドはトカゲのような醜い顔を一層歪ませる。
「さぞ、名のあるクゥダフと見た…」
怒りに歪むダイアモンドに背後から声がかかる。
チョコボに乗った初老のエルヴァーン。
クロディーヌに付き添い、彼女を「姫」と呼んでいた老将である。
やろうと思えば、背後から不意の一撃を見舞うこともできただろう。
それをせずに、声までかけた。この首長の人間種は我々クゥダフの理解を超える。
「エルヴァーンッ!愚かな人間めェ!!」
人の血を多量に吸い、不気味に黒光りする片手棍を老将に向け撃つ。
だが、その必殺の一撃は横から割り込んできた巨大な両手斧によって阻まれた。
鈍い音。
危険を感じてダイアモンドは飛びのく。
両手斧が追うように伸びたが、寸でのところで虚しく空を切る。
「おまえらが狙ってんのは、俺らだろ?浮気は良くないな〜」
斧を引き戻し、ヒゲを蓄えたヒュームが言う。
幾度か見たことがある。
ミスリル銃士。
誰が呼び始めたのか『グスタベルクの矛』と。
サンドリア、バストゥーク、ともに恐ろしい進軍速度でクゥダフを挟撃し、大部分は散り散りにされていた。
1対1ならばエルヴァーンの老将、ミスリル銃士、どちらを相手にしても負けることはないだろう。
だが、同時にとなれば話は別だ。
無事には帰れぬかも知れぬ。
しかし、覚悟は決まっていた。
「かかってェ来い!アルタナのガキどもぉ!!」
ダイアモンドは愛用の片手棍を握りなおし咆哮した。

610 名前: ガルカの昔話 34話3/3 投稿日: 2004/01/09(金) 01:13 [ q9TQkK3Q ]

丘陵に踊る三つの影。
誰もその間に入り込むことのできない死闘。
その様子をかなり離れた場所でサラは傍観していた。

実際に動いたバストゥーク軍は全軍の三分の一ほどである。
だが、ミスリル銃士が率いることにより、バス本隊であるかのように見せる。
サンドリアが動かねば、サラの率いる本隊がクゥダフを左翼から襲う。
二正面作戦を取らねばならなくなる前に、迅速な行軍を行なうことにより各個撃破。
サンドリアが動くならば、その後に控える彼らとの戦いのため、本隊の戦力は温存する。
「サンドリアがクゥダフを考慮に入れ、なおかつバス軍を攻撃してきたら、どうされるおつもりですか?」
自分がサンドリアの将ならば、そう動く。最も可能性のある選択肢を『矛』は最初から排除した。
サラはそれが不思議でたまらない。
その様子を見て『矛』は豪快に笑うだけだ。
「おまえがエルヴァーンだったら?ははは、おまえエルヴァーンを知らなすぎだよ」
アルタナへの信仰厚いサンドリアの人間が、獣人を目の前にして放っておくわけが無いのだ。
これが『矛』の策。
「結果的に上手くいっただけだ…。」
サラは彼を認めたくない。

611 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 01:15 [ q9TQkK3Q ]
ガルカの昔話 35話 クォン大陸の覇権、その行方。3

バストゥークの外れには、いくつか古ぼけた灯台が建っている。
元々、バストゥークの主要構成民であるヒュームは漁により生計を立てる漁猟民族であった。
工業が興り、炭坑や加工業などが発展した今となっては、厳しい漁生活を好む者も減り、
漁獲量の減少とともに、いくつもの灯台がその火を落とした。
この灯台もその中の一つであった。
誰も近寄らない、忘れられた灯台。

そこに人目を気にするように歩み寄る影があった。
尻尾が揺れる。
右腕が根元のあたりから失われている。
見るものが見れば、ミスラであることが知れただろうが、その憔悴しきった表情からは
快活な彼女らの印象は、まったく汲み取ることができなかった。
「アン。ただいま参りました…」
灯台の中に入ると彼女は小さく呟いた。
潮の臭いと古ぼけた埃が鼻をつく。
壁に穿たれた小窓の月光に照らされ、大小二つの影が姿を現した。
「ユルカは?ユルカオルルカどうした?」
小さいほうの影が、アンに声をかける。
タルタルだろうか。その大きさはアンの腰ほども無い。
残念ながら…。
アンは唇を噛みながら答えた。
ふう、と小さい影はため息をつく。
「そうか。異形ではあったが、おしい逸材であった。残念に思う」
短く言うと、小さいほうは大きいほうの影を見る。
目で会話し、お互い頷く影たち。
「あとは頼んだよ。わたしは帰る。」
小さいほうは大きい方にそう言うと、呪文を詠唱し暗雲の中に姿を消した。
その姿が消えるのを確認してから、大きいほうの影はアンに歩み寄る。
目深にかぶっていたフードを取ると、そこに現われたのは大きな瞳のミスラの顔。
月の淡い光に照らし出され、彼女の美貌に幽玄の儚さを加えている。
「ああ、ああぁ」
アンは狂ったような声をあげ膝をつく。
咽(むせ)び泣き、そのミスラに頭(こうべ)を垂れた。
濡れた鼻が灯台の埃っぽい石畳つくほどに。
「顔を上げよ。」
「あなたに、あなたにお会いしとう御座いました。貴女のためなら、私は…私は…」
顔をくしゃくしゃにして泣くアンの肩に優しく触れる。
そして、力強く抱き寄せた。
「おまえの働き、私は嬉しく思う…」
勿体無いお言葉です。
アンは憧れの人物に触れられる喜びに、その身を震わせた。
恍惚とした表情。体温が嬉しい。
「許しておくれ。」
ミスラは言う。彼女も泣いていた。

612 名前: ガルカの昔話 35話2/2 投稿日: 2004/01/09(金) 01:16 [ q9TQkK3Q ]
「許しておくれ。いまの『国』にはクォン大陸のどの国家にも武力で対抗できるほどの力が無いのだ。」
だから…。
ミスラの涙は止まらない。
一方、アンの恍惚とした光の揺れる瞳からは次第に力が失われていった。
よく見れば抱き寄せられたときに、アンの首には何やら針のようなものが突きたてられていたのだ。
それが彼女の身体から、急速に命の火を吸い上げている。
「許しておくれ。許しておくれ…」
泣きながら何度も彼女はアンに謝罪した。
すでにアンは骸と化していた。
力なくだらりと手が落ちる。
瞳は光を失い白濁していた。
彼女は十分使命を果たした。
ガルカたちをそそのかし、クゥダフたちと密通し、力をつけてきたバストゥークに不和の種をばら撒いた。
しばらくは内紛を抱え込み、サンドリアと戦わなくてはなるまい。
サンドリアにも同じような内紛を起こしてある。
どちらも勝たせてはならない。どちらが負けてもいけない。
お互いの尾に噛み付き、お互いを消化し合う蛇で在ってもらわなくては、『我々』が困るのだ。
その蛇の絵を、彼女が、アンが描いた。
そのアンの後ろにいるパトロンに気付き、蛇たちがキャンパスから重い鎌首をもたげてくるとも限らない。
そうなるまえに、絵描きを消し、パトロンの存在にまで至らぬようにせねばならない。
隻腕となり、間者として役に立たなくなったのなら、なおのことだ。
だけど…
だからこそ…

「許しておくれ」
彼女は泣いた。


この年のコンシュタット会戦は、バストゥークの勝利に終わる。
本隊を温存していたバス軍に、クゥダフと全力で戦い疲弊しきったサンド軍は歯が立たなかった。
サンドリア軍は敗走し、戦線はザルクヘイムまで押し戻される。
マルティユー家はこの後没落し、史上に名を連ねることは無い。
こうして数少ない竜騎士の名家がまた姿を消す。
面白いのは、この会戦について書かれたサンドリア史である。
大きく「大勝利」と書かれているのみ。
バスの歴史資料との食い違いに後々の歴史家は頭を痛めた。
何に対して勝利を治めたのかが、一文も書かれていなかったせいである。

たしかにサンドリア、バストゥークのアルタナ連合は大勝利であったのだが。

613 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2004/01/09(金) 01:19 [ q9TQkK3Q ]
>>607
ことよろ〜(´―`)ノシ

614 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/01/09(金) 03:28 [ xKrxNjZk ]
ルインの章 第11話 病院での再会

〜ジュノ上層〜

メアの作った下手物料理からなんとか逃れたオレ達は、
彼女がまだ待ち構えてると予想し、ジュノ上層をブラついていた。
まぁ、ブラつくと言っても 競売所を覘いているだけ。
しかし、武器マニアのオレにとっては至福の時なのである。

「おぉ… やっぱ村正はカッコいいなぁ… でもあの槍もなかなか…」
で、そんなオレを退屈そうに見下ろすサニー。
「ねぇ〜、まだ終わらないの〜?」
「あ… あともう少しだけ…」
と、煙草を吹かしながら競売所の武器コーナーに見入るオレ。
すると、サニーはオレのベルトを掴み、そのままオレを抱きかかえた。
「うわっ! 急に何するんだよ!?」
サニーは驚いてじたばたするオレを両手で抱え、そのまま競売所から逃げるように走った。
そして奴はまた満面の笑みを浮かべて言った。
「ルインさん〜、 僕の看病そてくれないとジェイドくんに怒られちゃうよ〜?」
「てめぇ…そんなに元気有り余ってるじゃねぇか!」
「うっ… ゴホゴホ… 急に咳が…」
「ウソついてんじゃねぇー!」
恐るべき強制イベント… 最近誰かに振り回されることが多いな…

そんな事を思ったとき、サニーは何かに気がついたように ピタッとその場に止まった。
オレはそのことに全く気づかずに、まだじたばたしていた。
「オイッ! いい加減に放せー!」
「あ、うんうん 放すねー」
ガッシリ抱えていたオレをぱっと放すサニー。
「って…急には…うぎゃ!」
サニーはまた頭を強打してもがくオレにはお構いなしにリンクパールを耳に当てる。
「あ、ニッティさんにセリさんー♪ 調子はどうですかぁ?」
白っぽいパールからの声はとても小さく、オレには聞き取ることは出来なかった。
ただ確認できたことは、サニーの表情が次第に険しくなっていくことだけだった。

615 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 03:38 [ ZFWrcldA ]
ほんと巧いね。

616 名前: 615 投稿日: 2004/01/09(金) 03:40 [ ZFWrcldA ]
ごめ、わりこんだ。ガルカの中の人の事ね。

617 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/01/09(金) 04:02 [ xKrxNjZk ]
通信を終え、パールを鞄に仕舞ったサニーはまた笑顔に戻り、オレに頬をつまんだ。
「僕、ちょっと用事が出来ちゃったんで〜、ジェイドくん見つけてモグで待っててねー♪」
「あ、ちょっと待て!…おい!」
オレが止める間もなく、サニーはジュノの軸とも言える螺旋階段を下っていった。

「ジェイドを探せったって… どこにいるんだぁ?」
オレが周囲を見回すと、ヒラヒラと一切れの紙がオレの顔に覆いかぶさった。
「わあっ! なんだなんだ!?」
慌てながらも顔に引っ付いた紙を手に取り、じっと見つめる。
するとやたら下手な字でこう書いてある。

『病院に急げ!』

「病院ね… 目の前にあるから口で言えばいいのに…」
オレは既にフラついている足取りで病院の扉を目指した。
そしてやっと扉の前に来て、ドアノブを回そうとした…その時。
「サラマくん! そんなに引っ張らないでくれ!」
「うるせぇ! ぐだぐだ言わずにさっさと来い!」
バタンッ!
「がはっ!」
これで本日2度目のドアプレス… オレはまた頭を抱えて蹲った。
どかどか歩いていくのはモンクAFのヒュームとサレットを着たエルヴァーン。
今日はなんだか運が悪すぎる… 早めにジェイドとモグハウスへ戻ろうと決めた。

〜ジュノ上層 病院〜

「…打撲ですね。 それも凄い数…どうかなさったんですか?」
「…聞かないでください」
オレがそう呟くと、モンブロー先生は顔のあらゆる所に薬を塗る。
「いだだっ! し…しみる〜!」
「すこし我慢して下さいね」
じたばた暴れるオレに微笑みかける先生。
受付の所でオレが探していた奴がじっとこちらを見ている。
彼は手に処方された薬の袋を持って近づいてきた。
オレは彼の名前をぼそっと呟く。
「ジェイドォ…」
ジェイドはほとほと呆れた顔をしてオレを見下ろしていた。

618 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/01/09(金) 04:44 [ xKrxNjZk ]
「一体何しにここへ来たんですか?」
「そりゃあ…患者として…」
「サニーが見当たりませんね、一緒じゃないんですか?」
と、辺りを見回すジェイド。どうもオレの心配をする気はないらしい。
その時、向こう側の部屋から若い男の声が聞こえた。

「ジェイドー? どうかしたッスか?」
向こうの部屋から1人のヒュームがやってきた。
サンドリアでちらほら見かけた服を着こなしている。
「ああ、バリスタか、具合はいいのか?」
「もうバッチリッス!」
バリスタと呼ばれたヒュームはびしっとガッツポーズを決めて言った。
拳を握られている右腕は、どうやら義手らしい。
ジェイドはこちらに振り返り、バリスタの肩をぽんと叩いた。
「ルインさんに紹介します。 彼はバリスタ。サンドリアの王国弓兵です。
 バリスタ、こちらはウィンダス出身のルインレインさん」
「バリスタッス! メインはシーフッス! お会いできて光栄ッス!」
「オレは侍をやってるルインレインだ。 ルインでいいよ」
バリスタは、奴にとっては小さなオレの手を掴み、縦に振った。
力いっぱい義手で握られた右手がかなり痛い。
オレが少し表情を曇らせた後、ジェイドはバリスタの義手を押さえて呟いた。
「バリスタもあまり無理するな。疲労の色がハッキリ見えてるぞ」
「ちぇ… やっぱりバレてるッスか… じゃ、寝まッスね…」
ジェイドから忠告を言い渡されたバリスタは、すたすたと部屋に戻っていった。
ジェイドは1度礼をしてから、オレに話しかけた。
「後2人いるんですが… 大怪我を負っていて休養中です」
「大怪我か… 何かあったのか?」
「何でも、ラプトルの集団に襲われたそうで…」
「そうか…大変だなそりゃ…」
「注意力が欠けていたんでしょうね」
「お前、結構厳しいこと言うな…」
「そういう性格なので」
ジェイドは淡々と話を進めながら薬の入った袋を鞄に入れ、ドアノブに手をかけた。
「もう戻りましょうか、そろそろ日が落ちる」
「あ、ああ…」
オレはジェイドの言葉に少し戸惑いながらも、彼の後を追って病院を出た。

ルインの章 第12話へ続く…


遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。

619 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 12:47 [ n22BNtoo ]
昔話、イイ!
うう、かこいいなあ…。

620 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 13:54 [ ih24Ioi6 ]
こういう戦史風なのいいなぁ…
この路線でも一作やってほすぃ…

621 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 13:55 [ ih24Ioi6 ]
そういえば昔仮想三国が戦争したらスレってのがあったよな。
「黒幕」はやっぱり…

622 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 14:43 [ aS0W.FJc ]
>>621
フェザーンか・・・

623 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 15:24 [ 62DGDhg. ]
昔話キテター
今日ウロウロしてたら初代のログ見つけました
http://mst.s1.xrea.com/test/read.cgi?bbs=ff11&key=042463790
テンプレに乗っけていいのかな?

624 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 15:33 [ L1M0SUos ]
>>623
おぉさんくす!!
忘れてなけりゃ次からのっけます。

625 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 16:54 [ 7oXKDyjw ]
>>622
銀英伝スレなくなったな

626 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 20:44 [ FL6MG6AA ]
>>621
http://mst.s1.xrea.com/test/read.cgi?bbs=ff11&key=043209325&ls=100
ここですね。バストゥーク大戦史とティナナ日記が面白かったねえ。

627 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/09(金) 21:35 [ kKClf7XI ]
なつかしいねぇ、
今度ゆっくり読んでみよ

628 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/10(土) 01:09 [ zmESw9GU ]
>>626
全ての始まり、ガルカ女学院を忘れているぞ。

629 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/10(土) 03:38 [ bFoVC6ds ]
ガルカの昔話とりあえず全部読んだ。
ヤバイ、まじでおもろい!!!
いやさ、もちろん他の先生方の作品も好きです。
今まで感想とか書いてなかったが、慰め程度の
応援かもしれんが、これからもがんばって下さい!!

ジークと今回でてきた髭のオッサンが好きだなぁw

630 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/10(土) 16:27 [ lXg5Xwek ]
スイマセン。リレー小説の方どなたか・・・ログをお持ちでないですか?
あっちも後半面白かったのです、最後どうなったのか (・ω・)

631 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/10(土) 18:12 [ VKHWnif6 ]
リレー 完結してないよ (=゜ω゜)
9月26日に書き込まれた18話で止まってる。

WAKIで復活させたら、続く人いるのかな?

632 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/11(日) 01:23 [ fXIYQZ0Y ]
やばい、おまえら。
>>623見て気付いた。
このスレもうすぐ一周年だwwww

というか、>>41の時点でタル戦が光臨してよかったな。
つくづくそう思う。

633 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/11(日) 02:29 [ SnpkgARg ]
まさに神ですな。

パパァ (・∀・) パパァ

634 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/11(日) 02:34 [ LO95j6qY ]
やっぱりベドーの場面は泣ける・・・
クレイ(ノД;)

635 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/11(日) 05:24 [ 7NJvtHpA ]
初代で「ねこ希望〜」と言っていたのが恥ずかしく思える。
2chの書き方を真似てハミ痛ともいっちゃってるし…

636 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/11(日) 08:46 [ H2MmxOaw ]
>>634
涙たちの物語スレ史上最高の場面の一つですな。あの話しのエピローグで泣きそうになったよ。

637 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/11(日) 09:15 [ 7VPJVYH2 ]
>>636
同意

638 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/11(日) 12:07 [ zx2LbJN6 ]
俺なんかボロ泣きですよ。
涙でディスプレイが見えないって、初めて体感したっけなあ…

639 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/12(月) 00:08 [ ENeXYUhA ]
  「語り部様がみている」
皆さんはご存じだろうか?
いや、知るはずもないか。何故ならこれは
私達、ガルカ族だけの秘密。
私達は転生の旅を終え、再び魂を肉体に戻し
幼年期を終えるとガルカ族専門塾、
通称「ガル専」に入学することと、定められているの。

あ、ごめんなさい、まだ私の自己紹介してなかったね。
私はエルモア。
昨夜、第二形態の脱皮・・・つまり幼年期を終えた
ガルカの若輩者です。尻尾がなかなか剥けなくて、
少し強引に引っ張ってしまって、まだ先っぽが
ヒリヒリしてて、少しナーバスだけど、仕方ないか。
こうやって、私達ガルカは大人になるんだもの。

きっと、ヒューム族にも、そういった試練があるの
かもね・・・

今はベットの中、寝ぼけ眼で日記を書いています。
ガルカ族は少年期から、日記を書くことが族の定。
そう、これが初めての日記。だから、何書いていいの
か、正直、まだよく解らない。
手紙なら何度も書いたことあるから、私は顔も
声も知らぬ「あなた」を想って、書いています。
っていっても、公式語ではなく、ガルカン語で
書いているから同種族じゃないとわかんないかな。
ガルカン語はコーネリアねぇちゃんでさえ知らない、
私達だけの秘密だから。

う〜ん、でもこれじゃ、まんま手紙だよね。
日記っていうのは、その日あったことを書くって、
先生が言ってたし。
そうそう、今日初めて塾に行ったんだけど、
びっくりしたんだ。まさか、あそこが塾だとは
思いもしなかった。
鉱山区に行ったことがある人なら、誰しも
目にしたことがあると思う、その建物。
ツェールン鉱山入り口の真向かいにある、
多くて古めかしいその建物が私の通うことに
なる、「ガル専」だったなんて。
え?入り口は塞がれているし、子ガルカなんて
見あたらないだって?
ふふふ、残念でした、入り口は別のとこにあるのです。
鉱山区にある錬金ギルドへ行く途中、右手側に
ガルカの守衛さんいるんだけど、そこが校門
だったの。あ、ちなみに彼は体育の先生って知って
驚いてしまいました。
以前はツェールン鉱山側が校門だったんだけど、
最近はヒューム族が鉱山区にもたくさん滞在する
ようになったため、頑丈なバリケードを作って、
且つガルカの警備をも置いている訳。
私も前から疑問だったの。どうして、あんな
人目のつかないとこに鎧を着たおじさんいるん
だろうって。
ちなみに、お小遣い稼ぎに煤集めして渡していたのが
校長先生。
もうね、訳わかんないね。
ん〜もう眠いや、今日はこのへんで・・・

でも、気になるあの言葉・・・
最長年生、あ、私は初期生で、その上が中期生、
でもって、一番上がさっき言った最長年生ね。
そう、最長年生筆頭である、ズンチャさんが
私に言った言葉・・・

「あなたは今日から、私のウホッ・デルデルパワァーよ。」

一体、どういう意味なんだろう・・・
古代ガルガル語って言ってたかな・・・
それに、周りの驚いた様子も・・・

でも、校庭にあった、語り部様の像、
すごく大きくて・・・・

  (つづく)

640 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/12(月) 00:38 [ 85FNVBaA ]
腹いてぇwww

641 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/12(月) 01:09 [ qUNomJ.. ]
何これwwwwwwwwwwwwww

642 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/12(月) 02:06 [ sQ5V5eso ]
>>639
禿げ藁www

643 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/12(月) 02:30 [ 5FXRnaV6 ]
えーっとマリア様は見てるだっけ?元ネタ。

644 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/12(月) 03:24 [ Y0Nk/j2Q ]
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
 さわやかな朝の挨拶が、澄みきった青空にこだまする。
 語り部様のお庭に集うガルカ達が、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐ
り抜けていく。
 汚れを知らない心身を包むのは、鋼の肉体。
 ローブのプリーツは乱さないように、白いマントは翻らせないように、ゆっくりと歩くの
がここでのたしなみ。もちろんオートランで走り去るなどといった、はしたない冒険者など
存在していようはずもない。
 ここは私立ガルカ族専門塾。ガルカたちの園。

って感じかw

645 名前: 639 投稿日: 2004/01/12(月) 03:50 [ BS89pF6Q ]
うわ!!スルーされるか、もしくは叩かれるかと
思っていたんだけど、皆様、寛容な心で受け入れて
下さってありがとうございます。

まず、ガルカ使いの方、気を悪くしたのなら
ごめんなさい。
次に元ネタのファンの方、ごめんなさい。
ぶっちゃけ、作者である私はここのスレの
「アルタナ様がみてる」を一回、目を通した
だけです^-^;
ですので、元ネタの正式名称わかりません;

明日の夜中に、がんばって続きを書き上げようと
思います。
>>644様、詳しい情報ありがとうございます。
どうやら、「ごきげんよう」っていうのが
お決まりの挨拶なのですね?FF11風に
ガル専でも使用させていきます。

あと、兄弟制度と、その呼び方で詳しい方
いられましたら情報よろしくお願いします。

と、ここまでお願いしていてアレなんですが、
あくまでも、テイストを残しつつ、骨組は
FF11メインでやっていきたいと思いますので
元ネタと全然違うぞ、ゴルァ!!は、無しでT-T

でも、おもしろそうな、校則、校風は随時
取り入れていきたいと思っていますw

だって、この物語にレスを下さった方は
ガルカン語が理解できる兄弟だと信じてますから(/grin)

646 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/12(月) 10:15 [ 7tO69DKU ]
>>645
つーかマリ見てテイストがうけただけだから知らないならボロが出ないうちに
やめといたほうがいいかと。

647 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/12(月) 21:04 [ pc2U3zpE ]
一発ネタとしては最高だwww

648 名前: 639 投稿日: 2004/01/12(月) 23:56 [ i5p5riNc ]
ごめんなさい、ごめんなさい。
ちょっと舞い上がってしまいましたw

板汚してしまいましてごめんなさい。

「やらないか?」
「やらないか?」
ここは私立ガルカ族専門塾。ガルカたちの園。
今日もうら若き、ガルカ達の朝の挨拶が
荒涼とした南グスタベルクの山々にこだまする。

今までも、そしてこれからも変わることなく。

優しい語り部さまの笑顔の下で・・・

  (完)

649 名前: 639 投稿日: 2004/01/13(火) 00:14 [ QxbhMdAk ]
on Wikiで、アップして下さった方、
ごめんなさい。今、覗きにいってびっくり
してしまいました。もし、削除できるのなら
おねがいします。本当にごめんなさい。

650 名前: 白き〜作者 投稿日: 2004/01/13(火) 00:41 [ q8t2ZJp2 ]
語り部様が見てるってタイトルでコーヒー吹きました。
内容で今度は変な所入りました。
グッジョブでつ。削除はしないでくださいませ。

このスレももうすぐ一周年ですか。タル戦とか細い兄弟とか一気に読み返すのが
楽しくてしょうがないです。このまま続けばいいなぁ。

白き〜も新作追加しましたー。よければ眺めてってくださいませー。
ttp://www.miracle-key.gr.jp/white/

651 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 01:16 [ oJA59Lnw ]
>>639 きっと不安と期待を入り交えて「書き込む」
    ボタンを押したんだろうな。

>>645 すっげぇうれしかったんだろうな。
    ここには書いてないが、本人なりにいろいろ模索
    しつつも、ここの住人と楽しみながら物語を作っていこう
    って思っていたんだろうな。

>>648 どんな気持ちで書いていたんだろうか。きっと話も
    まとまっていたんだろ?「ごきげんよう」をガルカらしく
    できてるじゃない。

昨夜、面倒がらずに、俺の知っているだけの情報を書いてやればよかった。
まさか、昨日の今日でこんなオチになるとはな。
残念でしょうがないよ、新しい芽が潰れて。

ねがわくば、もう少し強くなって下さい。
あなたの物語に対しての感想のほとんどがどんな
内容だったかと。
いつか再開するのを期待しています

>>650更新おつかれ様。今から楽しみながら
読まさせていただきます!

652 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 01:39 [ .63tzFOU ]
とりあえずパロる時は一通り目を通してからやるのが鉄則だな。
あとネタ系の時は作者が後でごちゃごちゃ言うと台無しになっちゃうから
なるべく中の人はレスつけないほうがいいかと。

653 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 03:27 [ MmvN4nMs ]
タルタル戦士は夢を見る 第六十一話 最終決戦

―― タロンギ大峡谷・メア岩 ――

「…呆気ない…こんなものか。…ここまで来たんだからそこそこ
 やってくれると思っていたが…興ざめだね」
うずくまるゼヴェン、クリーム、目を損傷しひざまずくセラフィー。
そして、トッパはババドラバドの足元に倒れている。…最悪の状況である。
「ババドラバドよ…目を…覚ませ…」
ゼヴェンが苦しそうに声を上げた。
「目を覚ませ…だと?」
「そうだ…お前は自身の内に秘める業にその身を焼かれつつあるっ…!
 分からないのか…お前の体がもたん時が来ているのだっ…!」
ババドラバドは一笑して、うずくまるゼヴェンの元に歩み寄る。
「だから…なんだっていうんだい?」
「…なんだと」
「どうでもいいんだよ…そんな事は、ね。…もう何もないんだ。考える事もないし、
 明日どうしようだとか、将来がどうこうとか。…考える事はないんだから」
ババドラバドは鎌をゼヴェンの首にあてがった。
「どうにも僕と関わるガルカは説教が好きなようだ。…だが、それもこれで終わり、と」
(これまでか…あっけない物ですね…許せ、兄弟よ…約束は守れそうにないようです…)
ゼヴェンは覚悟を決め、そして心の中で兄弟に謝罪した。遥か昔、ある約束を交わした兄弟へ。
冷たい鎌の感触が首筋にあった。ほんの数秒後には自分の首と胴体が離れるのだろう。

654 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 03:27 [ MmvN4nMs ]
「…やめてよぉ…」
振り向くと、満身創痍のクリームが立っていた。
「おや、クリーム。まだやろうってのかい?…その体で何をしようと…?」
ババドラバドは、そこまで言って、はっとした。
彼女の体から、”気”が放たれているのが見えたのである。
「なんで…なんで無意味に…そんなに傷つけて…笑っているの…?」
転がっている両手剣を拾い上げ、ゆっくりとババドラバドへと向かってくる。
「もう…あたい、分からないよ…獣人とか、種族とか…そんなのどうだっていいじゃない。
 皆仲良く暮らしていけばいいのに…ババドラバドは…」
「クリーム…さすが…僕が見込んだだけの事があるね。自分でも分かるだろう?
 その僕に対する憎しみの力を表現できる器の持ち主なんだよ…君は」
「そんなの、ごたくばっかり並べて!…もう、やめてよぉぉぉ!!」
クリームが、まるで狂人のように、あり得ないスピードで剣を振り回し、ババドラバドに迫る。
対するババドラバドも同じ、いやむしろそれ以上のスピードでなぎ払う。
かん、かんと、金属のぶつかり合う激しい衝撃音と共に、火花が弾ける。

「そこまでするなら…僕も本気を出させてもらおう!」

655 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 03:27 [ MmvN4nMs ]
彼の体から、怨霊の様な、邪悪な意思の塊ような幻影が発せられたように見えた。
(な…この力…!)
クリームは思わず、その気に怯んでしまい攻撃の手を止めてしまった。
「頂きだっ」
ババドラバドの鎌がクリームの膝を切り裂く。ステップして後ろに下がったものの、
膝小僧にかすり傷を貰った。
「このくらい…ぁ…!?」
意思とは反して、彼女の足全体から力がガクンと抜けていく。
(まさか…かすっただけなのに…!)
かすり傷を受けた彼女の右膝は、ぱっくりと割れ、皿までも損傷しているのである。
体制を立て直そうとしたが、片足だけではどうしようもなかった。
そのまま後ろのめりに倒れ、尻餅を着いてしまった。

「これが…実力差という奴さ。クリーム…お別れだ!」

656 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 03:29 [ MmvN4nMs ]
…セラフィーは機を伺っていた。確かに両目の視力は失ってしまっていたが、
彼女はババドラバドの気配を感じ取る事はできている。おおよそだが、どの位置に立っているか、
空気の流れ、足音、そして武器から発せられる金属音で判断する事ができた。
つまり、彼女は隙を見て背後からのふいうちを狙っているのである。昔取った杵柄とやらだ。
(…奴は私がもう戦えないと思っている…今なら…!)
剣を握り締め、そっと立ち上がる。
ババドラバドは、丁度真正面の位置、その先にはクリームがいる。
急がねばクリームが危ない。
「ああ…そうだ…忠告しておくよ」
(え…?)
「後ろからなら…僕をやれると思っているんだったら…おとなしくしていれば良かったものを」
(まさか…そんな…)
次の瞬間、彼女の意識は途切れた。一体自分の身に何が起こったのか、それすらも
考える猶予も無く、彼女は果てたのである。

657 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 03:29 [ MmvN4nMs ]
「セラフィーさん…セラフィーさんっ!!」
一部始終をクリームは見ていた。ババドラバドの背後に視力を失ったはずのセラフィーが
武器を構えて立ち上がった。
しかし…ババドラバドはまるで後ろに目がついているかのように、それを見透かし、
セラフィーを葬ったのだ。

「あぁぁ…うわぁぁぁ!」

必死に立ち上がろうとする。膝から鮮血がほとばしる。痛い。痛い。痛い。
でもそんな事はどうだっていい。
憎い、憎いのだ。目の前にいる、このババドラバドが憎い。殺したい。
(力を…もっと、力を…こいつを殺せる力を!)
この感覚は前にも一度あったような気がする…そう、あればパルブロ鉱山だ。
そう、あの時と同じ…
「…ははは!…凄いじゃないかクリーム!そうか、君は…君は…それが暗黒の力だ!」

658 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 03:32 [ MmvN4nMs ]
……トッパ?……トッパ?

…どうするの…?…どうしたいの…?

オイラ、分かったんだ。ん…。なんていやぁいいか分かんないんだけどさ。
生まれてから、今の今まで、楽しかったんだよ。結局の所、だ。…そりゃあ、辛い事もあったけど。

…辛いの?悲しいの?

ええと、何処かの誰かが言ってたんだ。因果応報って言葉。
そーしたから、そーなる、みたいな。…えーと、なんだろなぁ。
…昔色々あったかもしんないんだけどさ。
オイラ…生まれてきて、一人きりになって…それからクリームに、おっさんに、皆に会って。
色んな冒険して、それで今のオイラがあって…
きっと、これからも楽しい事、たくさんあると思うんだ。
たくさんの知らない土地を冒険してみて、たくさんの人達に出会って…
だから…だから、オイラ。
もうちょっとだけ、頑張ってみるよ。

だから……

659 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 03:33 [ MmvN4nMs ]
「…やめろ…クリーム…その力は…つかっちゃぁ駄目だ…お前じゃあ無くなっちまう…から…な。
 もう…終わりにしようぜ…なぁ…こんな事…無意味じゃないか…ババドラバド」

トッパは立った。致命傷を負い、足はよろめいているが、その眼にはまだ闘志が宿っている。

「やっと目が覚めたかい?…まさかあれだけで終わりと思ってなかったからね」
「トッパ!こいつは…あたいが仕留めるから…下がってて!」

彼はクリームを見つめ、制した。

「…クリーム…お願いだから…ここは俺に…俺がこいつを救わなきゃ…駄目なんだ!」

トッパは再び槍を構えた。それは彼の父が、誇り高き戦士だった頃に愛用していた槍である。
その姿は父と生き写しだった。

「全部…終わらせてやる!…この槍で…あんたを救ってみせる!」



遥かバストゥークの地から始まった、二人のタルタル戦士の長い長い夢は
いよいよ目覚めの時を迎えている。


                                           続く

660 名前: sage 投稿日: 2004/01/13(火) 03:44 [ 3k.IQ/32 ]
ねむいなぁ、ん?(・ω・)

キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!

661 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 04:05 [ DZrNmMh6 ]
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!
キタ─wwヘ√レvv〜─(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─!!!!

662 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 04:22 [ JTDrov0s ]
きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ
たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!!

それと>>660とりあえずもつちけ!!!

663 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 04:26 [ 4A44RrNo ]
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!

664 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 06:46 [ UsRmGSHc ]
きたーーーーーーーーー!!!
きてるよぉぉぉぉぉぉlpぉllppppp!!!!!!!!!

それと、>>662もまいも、もちちき!!!!

665 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 07:53 [ LvbS.zt6 ]
>>664
おちゅけ、おちおゅくんだ!

きたーーーーーーーー!!!!!!!
きてkちぃsだ@べr!!!

666 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 09:00 [ QXsLyizQ ]
にゃーーーーーーーーーーーーーーーーん

667 名前: 暗黒63 投稿日: 2004/01/13(火) 09:20 [ 7ha.oDZk ]
アビ暗黒・・・ 命中率アップとHPのダメ上乗せの効果がものすごく納得いきます。
すげーーーーーーー!!!!>パパさん
ラバドかっこよすぎ

668 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 09:51 [ 70GtTFnQ ]
>>650
キタ━━━( ゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚  )━(  )━(  ゚)━( ゚∀)━( ゚∀゚ )━━━!!!!

しかし、まさか、そんな(;´Д⊂)

>>653
キタ━━━━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━━━━!!!!

669 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 12:21 [ lBv4Fe0g ]
キテル━━━(゜∀゜≡(゜∀゜≡゜∀゜)≡゜∀゜)━━━ッッ!!!!

670 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/13(火) 23:09 [ CepDL2AA ]
おい、オマイラ、これぐらいでそう騒ぐな。

















キタアアアアアアアアアアアアアアアアアさあslfだsfdbblblふぉdびc
;あfんdcふぉそびfぃべあべいおxふgcbr;b;xりお;c!!!!!!!!!

671 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 00:30 [ HgS9TYXo ]
ババドラバドのファンになりそうだwwwwww

672 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 00:40 [ nbylB4pI ]
>>670
タル戦がキタぐらいで騒いでんじゃねぇよwwww














キタァアアァァアアアッァァアァ亜ァアアあそいmたいえぎぇんヴぇ、
s重fjkラメmmpmsだ得はういfp;p^^:gyhfんm
あsgrqpgfnあしるおへっわすy!!!

673 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 03:59 [ 1JoFyxig ]
おいおい、藻前らの気持ちも分かるが、
もう少し落ち着k


着たああああああtwじ@とえjwていwたkwちjr@おtいおてj@お
@t所輪jr@wとイあw@tjr−0いwtk−0w4kとp4あw
会尾pw塩j@あrrrr111111111111111111!!!!!!!!!!!!!!

674 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 06:00 [ VtABE2ys ]
白探&タル戦キ
…(-_-)キ(_- )キ!(- )キッ!( )キタ(. ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!( ゚∀゚ )キタ━━━
しあわせと;ll;dkkぢういds

675 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 06:01 [ 9AP.OKOQ ]
藻前らそれやりたいだけちゃうんかと。
只タル戦きてるだけちゃうんかと。






キタぁぁあじじっふぃいjfじrじゃるgj@らじyらhjdksぢ
kdしひいあおsss@kjづtjdんslfhふぉあぁああ1111

676 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 09:41 [ 5JXFvbCM ]
月h(略)のアルk(略)を思い出した・・・・

677 名前: 呪詛 投稿日: 2004/01/14(水) 14:07 [ tHPVAF6. ]



サルタバルタの乾季は今年異例の長さだった。
例年、乾季の中にあっても枯れることの無かった河が、その姿を消した。
その僅かな水分を頼みの綱としていた動物たちも、多くが息絶えた。
動物だけではない。

サルタバルタの西方、ギデアスの奥地。
そこに棲む巨大な竜。
普段はサルタバルタに群れ成す動物たちを捕食していた彼も、今年ばかりは飢えていた。
空腹に耐えられぬ。
されど、サルタバルタには彼の空腹を満たすことのできるほど餌がいない。
竜とはいえ、彼も一個の動物である。
生きるためには、やむを得なかった。

人間たちの国…ウインダス連邦の地方都市に降り立ち、人間たちを食らった。
逃げ惑う人間たちは野生を忘れ、動物たちにくらべ遥かに狩りやすい。
思う存分、心ゆくまで喉の奥に流し込んだ。
脂肪分が多く、味自体はいまいちだったが、贅沢も言ってはおれぬ。

その日より、彼は空腹になるたび人間の国を訪れる。

異常気象が終わり、サルタバルタに動物たちが戻ってきても、
狩りやすいという理由だけで、この竜は度々ウインダスを強襲した。


この竜の鱗は魔法耐性があったため、ウインダス連邦単体では対処の仕様が無かった。

サンドリア王国へ、助力要請を打診したのも致し方ないこと。
ウインダスのタルタルたちはそう納得するしかなかった。

678 名前: 呪詛 投稿日: 2004/01/14(水) 14:08 [ tHPVAF6. ]
1.千年竜


ギデアス竜の壮麗な鱗は、見るも無残に引き裂かれ、血液が赤い模様を添えていた。
動くたび、動脈から血が噴き出す。
その竜の血液を避けるようにして、6人の人間が彼を取り囲んでいた。
もう2日以上戦い続けている。
双方、疲労の色は隠せない。

ギデアス竜が大きく咆哮した。
人間などという『エサ』ごときが、千年生きた自分を屠ろうというのが片腹痛い。
負けるはずが無い。
失せろ、人間ども。
強く咆哮し威圧すれば、矮小なこやつ等はすぐに逃げ出す。
千年、千年そうだった。
お互いの生活圏を犯さず、うまくやってきた。
なのに…
どうしてこんなことに…

私は負けぬ。

それが竜の断末魔の咆哮となり、ギデアスに口を開く洞穴に虚ろに響いた。

轟音をたて、巨体が崩れ落ちる。血煙が竜の寝床に霞をかけた。
止めを刺したヒュームは、両手鎌をギデアス竜の骸からゆっくり引き抜く。
仲間たちは次々とその場にへたり込んだ。
死力を尽くし、みな疲弊していた。

一息ついて、誰からとも無く帰路に着こうとし始めた頃。

6人は見つけた。

千年の時間が僅かな時間で経過したかのように朽ち、骨と灰に帰した竜の死体から。
髪も肌も、何もかもが真っ白な、真珠のようなミスラの少女を。

679 名前: 呪詛 投稿日: 2004/01/14(水) 14:10 [ tHPVAF6. ]
2.漂白少女


「竜の血には呪いがある。」

6人のリーダーであるナイトのエルヴァーンが、残りのメンバーにそう言った。
ギデアスから帰路に着き、ウィンダスの公的機関より与えられた一室での休憩中。
エルヴァーンは、連れ帰った戦利品の処遇について語った。
そのミスラは助からぬ。そればかりか、むしろ災いとなるだろう。

だから、

殺せ。

と、そう言うのである。
アルタナへの信仰に厚く、厳格な騎士である彼にとって、竜の胎内から這い出してきた人間など
不浄の存在と等しく不愉快であったのだろう。

「あの子は…たぶん付近に住むミスラの氏族が生餌に捧げた子供だ…。
せっかく助かったのに、僕等で手にかけるだなんてこと…よく言えるね、ヴァレリオ」

ヒュームの暗黒騎士が言う。
彼の名はシリルといった。
腕が立つ、と言う理由だけでウインダス側が冒険者の中から見繕った男だ。
確かにその働きは目覚しく、ギデアス竜に最後の一撃を見舞ったのも彼だった。
だが、それが気に入らぬ。
エルヴァーンのナイト、ヴァレリオは不愉快そうに顔を歪めた。

「愚かな。あの子供はいまだに目を開けないではないか。呼吸も遅い。外傷は無いが…」

ヴァレリオは言いかけて、チラリと脇にいる白魔道士のエルヴァーンに目をやる。
彼女はコクリと頷いた。視線は不安そうに泳いでいたが。

「外傷は無いが、おそらく目は覚まさないだろう。竜は捕食した獲物を好きなとき反芻して食べるため
体内の臓器に仮死状態にして保管しておくそうだ。あの子は、その状態だ。」

「だから、殺すと言うのか?なんて乱暴な…
ドミツィアーナさん、あなた白魔道士でしょう?ほんとにそれで良いんですか?」

ドミツィアーナと呼ばれた、エルヴァーンの白魔道士はビクリと身体を振るわせた。
あの…あの…、と口ごもり、小さく何か言う。

「ドミナ!!おまえはどちらの味方なんだ!!」

ヴァレリオの一喝。
ドミツィアーナは目いっぱいに涙を浮かべ、今にも泣きだしそうな顔になる。
たまらずヴァレリオの背に、持たれかかる様に姿を隠した。
シリルの視線が痛い。その場に立っていられなかった。
なにより彼女にとって、この幼馴染のナイトは絶対であった。

680 名前: 呪詛 投稿日: 2004/01/14(水) 14:11 [ tHPVAF6. ]

「治療法はある。ジュノに行けばきっと…」
「この隊に資金を出資しているのが、サンドリアだという事を忘れるな。ヒューム」

あの子供の身柄はサンドリアに一任してもらおう。
誇り高きエルヴァーンであるヴァレリオが、ヒュームであるシリルの愚行などに迎合することなど無い。
お互いの意見は平行線。頃合の良い着地点など見つからないように思われた。
二人のやりとりに巻き込まれたくない、といった風体で
残りの3人は部屋の隅で思い思いに過ごしていた。
巻き込まれたくない、というよりは興味が無い、興味はあるが口をはさめない、というのも手伝っているのだろう。
ともかく、険悪のあとには、僅かな気まずさと停滞感が漂った。

そのときである。

地の底から響くような、不気味な呻き声。
部屋の隅にいたヒュームの女とガルカとタルタルは顔を見合わせた。
腹の虫でも啼いたか?みな、最初はそう思った。
だが、そんな音でないことは、その場にいた全員がすぐに悟ることができた。

隣の部屋からだ。

少女を寝かせている、寝室からだ。

ヴァレリオは隣の部屋との連絡のためにある扉を、勢い良く蹴飛ばす。
右手には愛用の片手剣がしっかり握られていた。

「くそが!言っただろう。竜の血には呪いがある、と!!」

エルヴァーンは刀身を鞘走らせると、激昂しシリルを怒鳴りつける。
しかし、その一瞬。シリルに視線を泳がせた、ほんの幾ばくかの時間。
その隙を突いて、白い何かが、この首長の身体を勢い良く後方に弾き飛ばした。
調度品を打ち倒し、ナイトは崩れ落ちる。ドミナが悲鳴をあげて駆け寄った。

残りの4人の網膜に焼き付けられる、隣の部屋から姿を現した真っ白なミスラの少女。
はだけた胸には不気味な模様が浮かび、大きな瞳は正体を失い金色に輝いていた。
不気味な声がいっそう大きさを増した。
これが、呪いだというのなら…

とびきりの大呪詛だ。

681 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 14:16 [ tHPVAF6. ]
どう?

682 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 14:30 [ 3SIICwUQ ]
続きは?(*´ω`*)

683 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 15:58 [ hmLzwQJE ]
うおおお、なんかすげえの来てる!!!!
続ききぼん〜〜〜〜!!!!!!!!!!!

684 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 16:32 [ hQSJV9Qw ]
ちょっと痺れた…
続き続きー!!

685 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 16:53 [ xoK2fGoc ]
面白い新作キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━
続きバリ待ち!!!

686 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 19:04 [ .rXIgy2c ]
おお!久しぶりのヒット!!
イイ(゚∀゚) 早く続きが読みたくなりますな(*´Д`*)

687 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 19:22 [ prTnChzQ ]
イイネーイイネー(AA略
ぜひとも続きをよろりんこ

688 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第8話-1 投稿日: 2004/01/14(水) 19:43 [ xAJ1Bqnc ]
---------------------------
「空に浮かぶ群青の軌跡」第8話

 セルビナの港町。幾度目かの船がたどり着いては、出港していった。
 カーナはセルビナで一番高い位置に座り込んだまま動かない。
傷ついた身も、防具も、何もかもそのままで動こうとしなかった。
「カーナ」
 小さく、声をかける。しかし返答は無い。
仕方なしに、毛布だけでもと思い、そっとかけようとすると、
「構わないで」
「でも…」
「お願い、ほうっておいて。私、恩を仇で返すようなことしたくないの」
「それは無理、なんだろう」
 跪き、ラズィはうつむいたカーナを見やる。
彼女は膝を抱きかかえ、顔をうずめたまま微動だにしない。
「カーナ、憎むなら憎んでくれたっていいんだ」
「…………」
「でも、僕は、あのとき、ああする以外、方法がなかった……」
「………わかってる……、わかってるわよ!」
 不意に嗚咽交じりの声が響く。くぐもったそれは、哀しい声音を紡いでいた。

689 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第8話-2 投稿日: 2004/01/14(水) 19:44 [ xAJ1Bqnc ]
「あのとき、全員が無事になれる方法なんて無かった。それは事実よ!
 Ladyを助けたければ、ラズィ、あなたを……あなたを見殺しにするしか
方法は無かった……!」
「……そのほうが良かったかい?」
「そんなことできるわけないでしょう!」
 不意に頬が熱く痺れたように感じた。眼前の少女に殴られたのだ。
しかしそれよりも、大きな瞳に涙を溜めているその姿がの方が衝撃的だった。
「ラズィもLadyも、私にとって、大事な仲間よ! ただ、私は……私は……」
 そのまま彼女は泣き崩れた。ラズィは、ただ無言で彼女に寄り添うのみ。
 血まみれのまま、道端で座り込む彼らを数多の人々が奇異な視線で見た。
声をかける者は、幸いにも、いなかった。



「Lady……?」
「カーナ?」
「Ladyの声がする…」
 ふらりと、カーナは立ち上がった。あれから三時間以上もの時間がたっている。
周囲はどっぷりと闇に染まり、街角には二人の姿以外はない。
「やっぱり、Ladyの声だわ!」

690 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第8話-3 投稿日: 2004/01/14(水) 19:44 [ xAJ1Bqnc ]
 カーナは立ち上がり、周囲を見回す。しかし、ラズィには何も聞こえない。
「Lady! 私はここよ!」
 できうる限りの声を上げ、カーナは岩壁を登ろうとした。
けれども傷ついた体ではそれもうまくいかず、彼女は再び路地の上で叫んだ。
「Lady!」
 そのあまりの必死さに、ラズィは言葉を無くした。
止めることも、手伝うこともできずに、ただ、立ち尽くす。
「ラズィ、聞こえない? Ladyの声がするの。お願い、一緒に探して」
「カーナ……」
「ラズィ? 聞こえないの? ほら、今も、鳴いてる。あれはお腹をすかせている声よ」
「……カーナ、聞こえないよ…」
「嘘! 鳴いてる、淋しそうに、鳴いてるじゃない!」
 無言でうなだれるラズィに、カーナは憤りを感じ、駆け出した。
階段を駆け下り、一目散に入り口へと向かう。
「カーナ!」
 呼び止める声も無視して、彼女は今一度、砂丘へと踏み入った。
「Lady!」
 そこには鮮やかな群青色の毛並みではなく、赤黒く染まった竜の姿がある。
「……Lady…?」

691 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第8話-4 投稿日: 2004/01/14(水) 19:44 [ xAJ1Bqnc ]
 ゆっくりと近づく。竜は微動だにしない。よもや、と懸念が心をよぎった。
が、それすらも押しやり、カーナは一歩づつ、それへと近づいた。
 恐る恐る、手を伸ばす。そしてあふれる涙。
「良かった……良かった……」
 そこにはぬくもりがある。愛しさのこみ上げるかけがえのない半身が、小さく鳴く。
「…クゥ…」
「ごめんね、ごめんね。もう置いてったりしないからね」
 伸ばされた手に、竜は顔を摺り寄せる。そして労わるかのようにして、
その赤い舌で微かにカーナの手を舐めた。

                <続く>

692 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 19:47 [ xAJ1Bqnc ]
誰も覚えていないかもしれないけど、
ご無沙汰しております<m(__)m>

リアル事情により、少々忙殺気味なこのごろ。
それでもと時間を見つけ、続きをお届けにまりました。
お邪魔にならなければ幸いです。

たくさんの話がアップされています。
楽しみにしつつ、日々の生活の糧とさせていただきます。
これからも皆様がんばってくだいませ。

693 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/14(水) 22:27 [ .eNE0RjI ]
>>692
忘れて無いYp
マターリと待っております。
どうか終わりまで書き抜いて欲しい。

694 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/15(木) 13:39 [ our5Gzn2 ]
愛してる

695 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/15(木) 15:07 [ 2Ub4DhjA ]
>>694
(* ̄┏Д┓ ̄*) ポッ

696 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/16(金) 23:34 [ 8WUagoZA ]
好きだ

697 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/17(土) 00:30 [ NT9W2irE ]
hosyu

698 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/18(日) 12:21 [ zeaP.m9s ]
そろそろ来るよね?  ってか来て下さい。

699 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/18(日) 13:19 [ D596esJ. ]
そろそろ来て・・





オナガイシマス orz

700 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2004/01/18(日) 14:55 [ 36Rwd1wA ]
行きます。

701 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/18(日) 14:56 [ QqhegL7o ]
カモン

702 名前: ガルカの昔話 36話1/3 投稿日: 2004/01/18(日) 15:06 [ 36Rwd1wA ]
「どういう事だ!」
私は激昂し、ミスリル銃士に詰め寄った。
胸ぐらを乱暴につかみ、充血した目で彼を睨みつける。
クゥダフと戦い終え、疲れた様子のヒュームやガルカたちが、億劫そうにこちらに目を向けた。
「二度言わせるな。そのエルヴァーンを外に出すわけにはいかない。身柄は拘束させてもらう。」
「承伏できるわけないだろう!!」
怒号。
より乱暴にミスリル銃士の身体を引き寄せる。
彼は抵抗しなかった。
その気になれば、鉱山で鍛え上げたこの両腕を振り払うことなど、雑作も無かったろうに。

「兄弟がいなければ、おまえはあのミスラに殺されていた…」
「……。」
「兄弟がいなければ、クゥダフの司令官も生きていて…」
バストゥークはメテオで半壊し、獣人に蹂躙されていたやも知れない。
なにも私は、兄弟一人の力で全ての元凶を退けた、などと言うつもりは無い。
だが、彼の力が大きく貢献したことは確かなことだった。
グスタベルクまで逃げおおせたのに、この国のため自ら舞い戻ってきたエルヴァーン。
彼の働きに対してすら、ヒュームたちは慈悲の心を見せないのか。
「兄弟がいなければ…」
憤怒に頭が痺れ、私の双眸は分けのわからぬ湿気を帯びる。
くやしかった。
自分の無力さ、兄弟の選択した道、ヒュームたちの融通の利かなさ。
言い例えようの無い徒労感。

「…もういい…」
兄弟は静かに私を諭す。
彼の覚悟を悟ってか、私たちを包囲していた銃士隊員たちがその円陣をジリジリと狭めてくる。
彼らも、兄弟が負傷を追いながら、なお、数多のクゥダフを屠る様子を先ほどから見ていた。
用心しているのだろう。
とはいえ、左手は動かず、身体のあちらこちらに軽傷を負い、すでに彼は満身創痍。
対する銃士隊は数十名を数え、『グスタベルクの盾』も健在であった。
一斉に襲い掛かられれば、私たちの敗北は明白。
このエルヴァーンはそのことを十分理解していた。だから、私を諭すのだ。
当然、私は兄弟の意志にそうつもりなど毛頭無かった。
むしろ、彼の諦めの良さに苛立ちさえ覚えていた。
何か言ってやろう。
言って、ここから逃げ出す気になるよう発破をかけてやろう。
そう考えて、私は兄弟のほうを振り返る。

703 名前: ガルカの昔話 36話2/3 投稿日: 2004/01/18(日) 15:07 [ 36Rwd1wA ]
そのとき、目に止まったのは、エルヴァーンの背後にそびえる降し戸の門。
いまは固く閉ざされてしまったバストゥークの外門。

石造りの楼閣は無骨な造りで、冷淡なヒュームと閉鎖的なガルカの国、
バストゥークにはおあつらえ向きに見えた。

私には何の確証もなかった。
ただ漠然と「できる」と、誰かが頭の隅で囁いた。
あるいは、あれが『アルタナ』であったのかも知れぬ。
その門は、この国の暗部の象徴のように見え、私は赤ひげとは違う方法でこの国を変えたかった。

そうだ。
拳を振り上げなくてはならぬ対象はヒュームなどではないのだ。

気付いて、ミスリル銃士から手を離す。
よたよたと、何かに招きよせられるかのように、私は門に近づいた。
その様子をミスリル銃士をはじめとしたヒュームたちは、何事かと注視するのみだった。
止めに入る者はいなかった。
誰もが、一人のガルカにできることの限界を知っていたから。


私は隙間など無い門の接地面に、無理矢理に手を差し入れた。
そして、ありたけの力を両腕に込める。
筋肉の悲鳴が聞こえた。
血管が浮き上がる。
顔は上気し、視界は真っ白になった。

「なにをしている?」
ヒュームはみな唖然とした。
何をしている、と問いかけてみたものの、門を人力でこじ開けようとしている事は一目瞭然であるから
当然、私が何をしているのかに対しての質問ではあるまい。
この門は機械の仕掛けで上下し開閉するよう設計されている。
エルヴァーンの攻城兵器はもとより、クゥダフの侵攻にも耐えうる造りと重量である。
一人の人間が、どれほど力を込めようとも開こうはずも無い。

無謀。

嘲笑と驚嘆にヒュームたちの口が歪んだのだ。

704 名前: ガルカの昔ン話 36話3/3 投稿日: 2004/01/18(日) 15:08 [ 36Rwd1wA ]

かまうものか。
「できる、できる」と私の脳髄で囁くものがいる。
何より、包囲され、出口はここしか残されていないのだから、
私は可能性のある限り諦めるような真似はしたくは無かった。

誇りと信念。

それが何の力も無い鉱夫である私の持つ、唯一にして最大の武器。
そして、兄弟たちを救うためにボロボロになるまで戦ってくれたエルヴァーンの義に、
一個のガルカとして最大限報いなければならない。
ヒュームに嘲笑されようとも。
細い兄弟に諭されようとも。

「細い兄弟よ…」
奥歯の折れる音が頭蓋骨に伝わった。深く噛んだために口からは、どこからともなく血が沸いてくる。
「この国は、見ての通りくそったれさ…」
両手の爪がはがれ、皮膚が裂ける。
だが、同時に、その場にいた全ての人間が息を呑んだ。
ゆっくりと、しかし確かに扉がその口を開けようとしていた。
新鮮な外気が、クゥダフの死臭の篭る門前広場に流れ込んでくる。
それでもなお、私は力を緩めることをしない。

「憤怒に身を焦がすガルカ、」

門がギリギリと悲鳴をあげる。

「ギルと合理性しか頭に無い愚かなヒューム、」

悪く言われたものの、開こうとする門に圧倒され、ヒュームたちは押し黙っていることしかできないでいた。

「どっちもどっちだ…バカらしい。理解し合おうともしない。民族主義、異種族排斥、血の浄化…」

門は私の肩口の辺りまで、せり上がっていた。
そのチャンスを逃すことなく、今度は降し戸の下に身体を滑り込ませる。
咆哮を上げ、筋肉を震わせ、あらん限りの力を持って門を支える。

女神よ。
女神アルタナよ。
ご照覧あれ。
あなたの下さった奇跡を。

705 名前: ガルカの昔話 37話1/2 投稿日: 2004/01/18(日) 15:09 [ 36Rwd1wA ]
「行け、兄弟。…細い兄弟よ…」
長くは耐えられない。
どうした?
さっさとこの国から出るんだ。
私は、お前を殺させたくない。理由はそれだけで十分だ。
私の何もかもを引き換えで良い。
この国に堕ちようとしていた闇を払ってくれた、お前を助けたい。
ガルカとして。

人間として。

エルヴァーンはゆっくりと門に向かって歩き出す。
心通ったのか。
細い兄弟と私の間には会話など必要なかった。

その様子を見ていたミスリス銃士は、思い出したかのように、ふっと前に一歩踏み出す。
右手は腰の得物に伸びていた。
しかしそれを阻むかのように、彼の片手剣の柄の先端が弾け飛ぶ。
焦げた臭い。
白煙。
ミスリル銃士と私たちの間に、ともにグスタベルクを駆けたあのヒュームの女が割って入ってくる。
「行かせてあげてください…」
『盾』は答えない。
彼の表情からは何の感情も読み取れない。
可否すら分らぬ。

ただ、伸ばしていた右手は元の位置に戻した。

それだけで十分だった。
狙いは外さないまま、女は安堵の息を漏らす。


兄弟が私の横を通り過ぎる。
お互い顔を合わすことも無い。
ただ、朝霞に煙るグスタベルクの果てを望んでいた。
ここでお別れだ。
おそらく今生の…。

会話は無かったが、横を通り過ぎたときに感じた、彼の微かな体温、呼吸、気配、臭い。
無口な彼らしい、十分すぎるほどの別れの手向け。

そして、エルヴァーンはグスタベルクへ。

706 名前: ガルカの昔話 37話2/2 投稿日: 2004/01/18(日) 15:09 [ 36Rwd1wA ]

「行かせるかよ!!!!ガルカも!!エルヴァーンも!!死ねよぉぁぁぅぉっっ!!!」
怒号とともに構えられるマスケット銃。
ミスリル銃士の脇から躍り出た金髪のヒュームは、顔を真っ赤にして狙いを付ける。
「ガルカは皆殺しだし、エルヴァーンも皆殺しだ!この青の閃光ジーク・レオンハルトの邪魔をするやつはぁぁっ!」
「全!員!処!刑!なんだよぉぉぉっ!!」
引き金を勢いよく引く。
絶叫。
空白…

だが、手ごたえは無かった。

「確かに…くそったれだ…」
苦笑してミスリル銃士は刀身を鞘に収めた。
その場にいた、誰もが見ることの出来なかった『盾』の神技。
ジークの持っていた銃身と銃弾と火薬は綺麗に分離して切り捨てられていた。
当のジークはその場にヘナヘナと崩れ落ちる。
目の前を走った斬撃と『盾』の放つ殺気で、彼は失禁していた。


朝霞に消えるエルヴァーンの長身。
一度だけ、彼は振り返った。
目を伏せ、軽く会釈する。

「いまは、確かにクソったれだがな…」
私は吼えた。
グスタベルクの朝霞に消えた彼の耳にも届くように。

「きっと、変えてみせる。ガルカとヒュームの間に何の問題も無い、みなが笑って暮らせる…」


剣の使い方など知らなくてもいいような、…そんな世界が来るといい。

細い兄弟の言葉が、私の頭の中で強震していた。


「そうなったら、また来い。俺たちの、俺たちの国に!」

ガルカとヒュームの暮らすバストゥークに…。


その後このエルヴァーンと私が再会することは無かった。
もう百年近く前の話だ。

707 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2004/01/18(日) 15:13 [ 36Rwd1wA ]
次、エピローグって終了です。

ちなみに呪詛の中の人もガルカの中の人と同一人物です。
おおむね好評のようなので、暇だったらまた書きたいです。
着地点がまだ定まっていないので、気長に待ってね(´・ω・`)

708 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/18(日) 15:43 [ ueb754xI ]
キタ━━━━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━━━━!!!!





















モヒトツ、キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)━━━!!!!

709 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/18(日) 16:05 [ mM591cUc ]
細い兄弟



キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!

710 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/18(日) 19:55 [ QZUSVxbI ]
正に神としか言いようが無いな・・・・・・





キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!
キタ─wwヘ√レvv〜─(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─!!!!

711 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 04:30 [ GsyIdFFE ]
愛してる

712 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/01/19(月) 04:38 [ 9sqHfM7. ]
サラマの章 第11話 かつての仲間達

〜吟遊詩人の酒場〜

吟遊詩人の酒場。
疲れきった冒険者達を癒す、まさにジュノのオアシス…。
活気溢れる店内にカクテル、何よりの醍醐味は吟遊詩人の演奏。
ステージ台で誇らしく演奏する詩人のハープの音色に、皆が癒される。

俺はステージに立つ吟遊詩人達を何人も見てきた。
いつものカウンター席で、いつものカクテルを頼んで、いつも1人で…。

だが、今日は二人だ。

「いつもの頼む。 あ、あとこいつにもな」
俺は一番端の席に座って手を組んだ。
ライオネルも深々と被っていた兜をカウンターの上に置いて座る。
「サラマ…私はアルコール類はちょっと…」
「気にするな、薄めのカクテルだから大丈夫さ」
「大体、人の話を中断してここに連れて来ることはないんじゃ…」
「そんな硬い事言うなよ。 今日は飲もうぜ相棒…」
俺はグラスをライオネルの目の前でちらつかせた。
ライオネルの困惑した表情も、やっと男らしい表情に変わった。
「今日は時間が許すまで付き合いますよ…」
「ふん、それでこそ俺の相棒だ…」

しばらくして、俺の持っていたグラスにカクテルが注ぎ込まれた。
グラスの淵にそっと口をつける…と
「乾杯はしないんですか?」
きょとんとした顔で、グラスを目線に合わせていたライオネルは言った。
俺は左手で顔を隠しつつ苦笑した。
「…野郎が二人で乾杯なんかしたくねぇな…」
「…相変わらずですね… 耳まで赤いですよ?」
「仕方ねぇな… グラス構えろ。
 最初に言っとくが… 俺はこういうの苦手なんだぞ?」
「せっかく再会したんですから、乾杯ぐらいいいじゃないですか」

キーン

「「乾杯」」

俺達はそう言うと、カクテルを一気に飲み干した。

713 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/01/19(月) 05:12 [ 9sqHfM7. ]
そんな時、俺の視界に妙な連中が入ってきた。
背中に背丈ほどの斧を背負ったタルタルの戦士。
まぁ、俺にとっては片手斧だが。
後はヒュームの子供が二人… 1人はなにやらゴソゴソ動く鞄を持ったガキ。
もう1人は…なにやら見覚えのある忍者AFの少女。
彼らは円陣を組んで、なにやら相談をしているようだ。
俺は思わずそのことを口に出す。
「…なんだありゃ」
「子供の冒険者もいるらしいですが…こんな時間まで酒場で何を…」

すると彼らはドアを開けて一気に走り去っていった。
何の前触れも無かったからか、無駄に驚く俺達。
「…気になるんだが…なんだか…」
「まぁ、飲みますか… 細かいことは気にせず…」
「そ、そうだな」

と、再びグラスを持ったその時、
「サラマ! ここにいたのね!」
妙な連中とすれ違い様にやってきたのは俺の2番目の相棒だった。
「は、ハヅキ!?」
「もう! ロランベリーに行ったのにサラマいないから…
 あ、ライオネルさんお久しぶりですー」
「はは、まぁお掛けになってください」
ライオネルは自分が座っていた席を立ち、すぐ近くの席に移動した。
ハズキは素早く俺の隣の席に座り、手帳を開いた。
「私の仕入れた情報がないと、あなたクエスト屋はやっていけないでしょ?」
「やっていけないわけではないが…」
「別にそんなことはどうでもいいの。
 情報屋の私がフォローしてあげるから、さっさと仕事こなしてね!」
ハヅキは手帳のページをめくると、内容を読み始めた。

714 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/01/19(月) 05:39 [ 9sqHfM7. ]
「ユリノは現在、PTのリーダーを組んでジュノに留まってるわ。
 どうやら彼もターゲットを探しているみたいで…
 彼を捕まえてもいい情報は得られそうに無いわね…。
 当のターゲットの情報はまるでなし。現在検索中よ」
「ほほう、今回はどんなクエストなんですか?」
ライオネルは興味深そうに尋ねた。
「人探しです。それも2組から来てるんですよ」
「それは珍しい、
 もし私の知り合いの中にいたら呼んでみますか?」
「いないと思うけど… これがターゲット、コルティアです」
ハヅキはライオネルに1枚のSSを手渡した。
SSをじっと見つめるライオネル。

「この人物は…」
と、ライオネルが喋りかけたその時、ドアの方から
「…コルティア?」
…と、呟く声。
俺達3人は驚きの表情でそちらに顔を向ける。
ドア付近で立っていたのは、病院で寝ているはずの暗黒騎士 カドルだった。
ふらついた足取りでライオネルに近寄り、SSを見入るカドル。
「間違いない… コルティアだ…」
そう呟くと、彼はゆっくりと席に座った。
「サラマ…誰なの?」
「ああ、あいつはカドル。 ライオネルの部隊の奴さ」
「なんか…言っちゃ悪いかもしれないけど…
 彼… まるで生気を感じない、なんだか気味が悪いわ…」
少し怖気ついた顔でカウンターに寄り添うハヅキ。
そしてライオネルもはっとした表情を浮かべ、声を上げた。
「そうだ! でも、しかし…」
「どうした? 何か思い出したか?」
「思い出したも何も… 彼は私の仕切る小さな部隊の一員でしたから…」

「…今、そいつはどこにいるんだ?」
そう聞いた途端、辺りが静まり返ってしまった。
最悪のケースを頭に思い浮かべてしまった時、
その予想は…空しくも的中してしまった。

715 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/01/19(月) 06:19 [ 9sqHfM7. ]
静寂を破ったのはライオネルだった。
彼は重い口調で語った。
「彼は…この暗黒騎士、カドルの弟です。
 半年前、ダボイで…オークの魔法で喰らって…」
「そうか…」
俺はハヅキが取り寄せた集合写真を手に取った。
「ウィンダスを発ったのは1年と半年ちょっと…で、半年前に死亡…か」
俺は集合写真をハヅキの手帳の上に置いて、席を立った。

「クエストは失敗だ… 依頼人にte…」
と、言いかけた…またその時。
「ちょーっと待ったぁー!」
と、またドアの方から声。
そこに立っていたのは、緑色を主流とした狩人AFのミスラが、
その足元に、黒魔AFのタルタルがカメラを持って座っている。
「ちょっとそこで死亡と確定するのは早いんじゃないか?」
得意げな表情を浮かべて俺に近寄るミスラ。
「ん? まさかあたしのこと忘れてる?」
「えーっと… どちら様?」
後ろからハヅキも尋ねるが、ミスラは驚きの表情を浮かべた。
そして、一緒にいたタルタルにわざとらしく喋りだす。
「ちょっとピオリオー! なんかあたし達 忘れられちゃってるよー!?」
「ん… そだね」
タルタルは見向きもせずに、カメラをキリキリと弄っている。

するとハズキが思い出したかのように呟いた。
「あ… カメラ好きのピオリオと、探偵気取りのエリ・ジェロム…?」
「正解っ! でも気取りは余計だ!」
その探偵気取りのエリは、ハヅキの額をつついて答えた。
「クエスト屋唯一の探偵部長を忘れるなんてバチ当たりだぜ!?」
「ああ… いろんなトラブル抱えてくる奴がいたなぁ…」

そうだ思い出した。
確か、少し前に探偵事務所とやらを設立し、ここにいろんな厄介事を持ってくるミスラ…
こいつ、俺のクエスト屋に入った気でいやがるのか。
「とにかく! 死亡と断定するのは早すぎるぜ!
 その理由はこのあたしがきっちり説明してやるから感謝しな!」
どうやらまた厄介事を持ち込みたいらしい…。
まぁ、時間はあるから聞いてやるとするか。

サラマの章 第12話へ続く…

716 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 08:24 [ HH3O2J92 ]
ガルカキテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!

717 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 12:30 [ E32czoTI ]
割り込んで申し訳ないです。
ここに初めて拙いですが、作品をうPしてみたいのですが、
お約束とか文章の分割のコツとかありますでしょうか?
(字数制限とか、今一ピンと来ないもので・・・)

過去ログも見れず、テンプレとかも見当たらないので宜しければ教えてください。

718 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 13:17 [ WlIWmRlA ]
>>717
お約束っていうわけじゃないけど、
今までの傾向からすると書き手が作品うp以外でひょいひょいレスしたりするのは嫌われるかも。

字数制限等に関しては実際やってみて慣れるのが一番かと・・・

719 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 13:58 [ jO04/00k ]
>>717
とりあえず、カモーン

720 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 16:49 [ f8ZAk7FQ ]
>>717
カモーン

721 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 17:42 [ 1.WqmVFQ ]
カマーンヌ

722 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 18:08 [ RVSxTga6 ]
ハヌマァーン

723 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 19:56 [ 6x3l7iS6 ]
>>707
なんだか文章のテイストが似ていたのでまさかと思ってたら
ホントに中の人同じだったとは…(;´∀`)

それにしても、間の取り方とか上手いのう…もしかしてメインジョブでつか?

724 名前: @Recoll 投稿日: 2004/01/19(月) 19:57 [ uG88Amtk ]
書き込みテスト。
お久しぶりです…かけるかしら?

ガルカの人待ってました(*´▽`*)

725 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/19(月) 20:50 [ Vu49faY. ]
>>724
Σ(`・ω・´)

おまい戻ってきたのか(;´Д`)

726 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2004/01/19(月) 21:28 [ /mv/R0PQ ]
みなさま新年明けましておめでとうございます。(遅い)
今年もまた例によって面白い面白くないに関係なく駄文を垂れ流す構えです。よろしく。

ヴァナディールの世界を描く上でもっとも重要かつ醍醐味であること、それは文化の違いでしょう。
国同士の交流が極めて断片的でな国際情勢。それが冒険者の登場によって変化しようとしている。
排他から共存への変化はまだ小さな物に過ぎないですが、いずれ大きな潮流となり―――

―――本当になっていくのでしょうか?
ヴァナディールから現代地球に目を移せば、今もって複数の文化は衝突しつづけています。
「21世紀には国ではなく文化が戦争する」といった学者もいましたっけ。
原理主義(ファンダメンタリズム)は貧しくなった時に台頭する、という歴史上の事実を鑑みるに、
現在のヴァナディールは丁度産業革命のような経済成長期であり、
この成長が頭打ちになるときに、世界は大きな試練を迎えるに違いありません。
ただし、こういった考え方もあります。「戦争特需」。
獣人と資源がそこにあるかぎり、希望に満ちた世界は続く。
そんな複雑な世界だからこそ、そこには人生があり、私たちは物語をテキスト化するのです。

「兄さんは世の中に起こる何もかもイヤなんでしょ」「違う!」

ではどうぞ。
ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9

727 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/20(火) 11:21 [ 6O0csJ6c ]
遅レスですが
群青キテターーーーーー
待っていました♪またーりと続きお願いします。

作者の皆様、季節柄、体調を崩されたりしないよう
願っていまする。

728 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/20(火) 21:28 [ Cn0xtMJY ]
>>717まだ〜?


製作途中ならゴメンな…。

729 名前: In the Moonlight@Recoll 投稿日: 2004/01/21(水) 11:54 [ XOHXYf02 ]

私は震える手でゆっくりと古い羊皮紙で綴られた本をジ・タの泉に浸す。



父は、母と同じように眠ったまま二度とその瞼を開くことはなかった。

父が亡くなって半年後、私は初めて父の書斎を片付けた。
エルヴァーンにしては短すぎる一生。母を亡くし、唯一の肉親だった父が、母の後を
追うようにして早々と逝ってしまった事実を、私はなかなか受け止めれずにいたのだ。

父の書斎は簡素で、片付けるものも殆どといってない。
机の上に残された本が、父が生前書き溜めていた回顧録だとは分かっていながらも
それを開くことを私は頑なに拒否していた。
父の知らない一面を知ってしまいそうで怖気づいていたのだ。

私にとって父は、厳格で、常に自信と誇りを持っていた。
そんな父の遠くを見つめ、物思いに耽るその姿が、私の目に焼き付いてはなれない。
晩年何を考えていたのか、何を思っていたのか、知りたいようで知りたくはなかった。

だけれども、本を手にとった私はそんな迷いすら忘れて読み耽った。
一度手にしてしまえば、開くのは一瞬。最初の単語を追いかけ、父の流暢な文字に
見入った。繊細な文字。懐かしさで涙が込み上げる。

そして余り多くを語らなかった父の、母に対する深い愛を知った。

730 名前: In the Moonlight@Recoll 投稿日: 2004/01/21(水) 11:55 [ XOHXYf02 ]
今、私は聖地ジ・タにいる。
父が亡くなってからというもの、私は冒険者を辞め自宅に篭っていた。
鈍っていた足が、長旅に悲鳴をあげている。だが何故かそれが心地よい。
忘れていた美しき風景、色褪せていた私の周りに、彩りが戻ってきたのを身体で感じた。

父と母が愛した聖地ジ・タ。
暮れかかる太陽、深い闇が森を覆い尽くす。
死者の匂いが立ち込める時間。負の気配が私の周囲を取り巻くのが分かった。

涙がとめどなく溢れる。

月明かりの下、薄紫色に煌く水晶たち。
その中で父と母が手を取り合っているのが見えた気がする。
そんなの私の妄想が見せた幻だというのは分かっている。
だけど。

私は果たせなかった父の夢を運んできたと思いたい。
私は震える手でゆっくりと古い羊皮紙で綴られた本をジ・タの泉に浸す。

薄青の月が水面で揺らめき、沈みゆく回顧録。父の思い出と、父の母への愛をのせて。
私は娘としてでなく、一人の女として、母を心から羨ましいと思う。

明日からまた私は武器を取り、傷ついた戦士達の元へ行くだろう。
だから今だけは、せめてこの月明かりのもと、回顧録が見えなくなるまではこのままで。

今だけ、このままで。

夜明けが近づく。涙がまた溢れた。
おやすみ、あの頃。
あの歌、あの場所。

fin

731 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/21(水) 15:04 [ Ww9UdKlg ]
日記の人、お帰りなさい〜!(´ー`)ノシ
早速、作品ありがとうございました。
この独特の雰囲気好きですよ〜。

732 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/21(水) 21:25 [ UO0Reu7M ]
>>729-730
(*゚Д゚)フォルツァ!

この雰囲気(←変換できた!)がたまらない(・∀・)
保存、と。

733 名前: 約束 1/5 投稿日: 2004/01/23(金) 02:49 [ Ca7Ejc8w ]
一瞬の出来事。
風が巻き起こったかと思うと、黒い影が目の端に写った。
はっと息を呑む。
次の瞬間には、私に襲いかかろうとしていた獣人族の戦士は地に倒れ伏し、その場には
驚いてへたり込む私と、剣についた血糊を振り落とす背の高い青年が残された。
年の頃は私と同じか、少し上ぐらいだろうか。タルタル族ほどわかりにくくも無いが、
やはり他族の年齢というやつはいまいちわからない。これは私たちミスラに限ったこと
では無いと思うけど。
背が高く、剣術に優れ、古い歴史を誇る王国の民――このミンダルシア大陸では珍しい
エルヴァーン族の青年は、あきれたような表情を浮かべこちらを振り返った。
「あほか?」
・・・助けてもらっておいてこんなことを言うのも何だが、いきなりこういうセリフは
ないと思う。こういうときは「大丈夫ですか、お嬢さん」とか「お怪我は有りませんか」
って声を掛けるのがふつうでは無いのだろうか。
それとも、私がミスラ族だからか?
同族の女性や、ヒューム族の女性にはもっと丁寧な声をかけるのか?
等と阿呆なことを考える。呆けてる私は、よほど間抜けな顔をしていたのだろう。
剣を鞘に収めた青年はへたり込んだ私の前にしゃがみ、目の前で手をひらひらさせた。
「おーい、頭まわってるか?ぱっと見じゃ怪我はしてねーぞ」
ずいぶんと口が悪い。
それでも、その言葉を聞いて半分思考停止状態だった頭にようやく血が巡ってくる。
とりあえず、助けられたのは事実だ。
「ありがとうございます。助かりました」
すっと立ち上がり、頭を下げて礼を言う。
「おぅ、気をつけろよ」
礼を言われて満足げに青年が笑う。
もう一度軽く頭を下げる。それからあたりを見渡す。
あわてていたので、荷物が大変なことになっているだろうと思っていたが・・・思った
よりも広範囲に私の荷物は散らばっていた。
ため息をついて荷物を拾い始めた私を、青年は少し離れた場所から面白そうに眺めていた。

734 名前: 約束 2/5 投稿日: 2004/01/23(金) 02:50 [ Ca7Ejc8w ]
荷物を拾い終えた頃には、とうに日は暮れていた。このあたりは夜目の利くゴブリン族
が多く徘徊している。下手に動くと危ないと言うことで、私は彼と夜明けを待つことに
なった。

「で。こんなとこで何してたんだ?」
来ると思った質問。このあたりのモンスターはかなり強い。
もちろん目の前にいる青年のような熟練者からするとたいしたことは無いのだが、すく
なくとも駆け出し冒険者の私が一人で相手をするにはきつい敵ばかりだ。
本当のことを言うと呆れられるだろうから、何か良い良いわけは無いかと考える。
だが、何を言ったところで呆れられるのは一緒だろうと考え直し、正直に今日の目的を
青年に告げた。
「探険です。見たことの無いものを見たかったので」
青年は一瞬絶句したようだ。それから、まじまじと私の方を見ると、軽く首を傾げる。
「・・・ウィンダスからか?」
「えぇ」
このあたりをうろつく駆け出しの冒険者。
さらにミスラと来ればその故郷なぞ容易に予測がつくだろう。
青年は何も言わなかったが、「良くこんなとこまで無事にたどり着けたな・・・」と
目がいっていた。
それはそうだろう。実は私はサルタバルタにいるようなモンスターを相手にするのが
やっとだったりする。
「・・・帰りの手段は?」
「考えてなかったですね」
「・・・あほか?」
・・・最初から思っていたのだが、この青年かなり口が悪い。
黙っていれば王子様なのにもったいない。
が、言われていることはかなりもっともなので反論のしようがない。

冒険すること、探険することと無謀であることは似ている。でも、同じでは無い。

735 名前: 約束 3/5 投稿日: 2004/01/23(金) 02:51 [ Ca7Ejc8w ]
「探険が悪いとは言わない。俺だって探険好きが高じて冒険者なんて稼業に就いてる
 わけだし・・・ってか世の中の冒険者の大半はそうだろうさ」

ぱちん。

返事をするように、火が爆ぜる。
一言も言い返せない私の代わりに。
「見たことの無い物を見たい。知らないことを知りたいって欲求はたっくさんある」
炎を見つめながら、青年は言葉を続ける。
「でもなぁ、生きてなきゃ出来ないだろうがそういうことは。
 冒険者になりたいんだったら、まずは自分の力量を見極めて、相手の力量を見極めろ。
 コイツはけんか売っても良い相手なのかどうかってのをきっちり見分けられるように
 なれ。生きてりゃ後はたいていどうにかなるんだから」
真摯な言葉。
熟練の冒険者ということはかなり長いこと旅をしているということだ。
彼の言葉には、経験に裏打ちされた重みが有った。

「ってる」
「あ?」
「わかってるよ、そのぐらい」
思わず口調が荒くなる。わかってはいるのだ。大きな街から離れるほど敵は強くなる。
サルタバルタにいるようなモンスター相手に手一杯の私が、このあたりをうろつくのが
どれほど危険かなんてわかってはいるのだ。それでも、見てみたかったのだ。
見たことのないものを。

「じゃぁ、何でこんなとこにいるんだ。その言い方だとこの辺に出てくるのはまだ早い
 って自覚は有るんだろうが」
それは、ある。有るのだが・・・好奇心というやつを押さえるのはどうも難しい。
ミスラ族というのは元々好奇心はかなり旺盛な方だと思うのだが・・・
私のそれはかなり極端なのだと自分でも思う。
「・・・光が見えたの。道しるべみたいな感じの。その先に有る物が見たくなって、
 つい・・・」
たまたま遠出して、見かけた光。たぶん、噂に聞いていたブブリム半島の奇岩群。
せっかくここまで来たのだから・・・と、半島に入ったとたん獣人族・・・ゴブリン
に襲われた。青年がいなければ、今頃骸となって地に伏していたのは私だっただろう。

736 名前: 約束 4/5 投稿日: 2004/01/23(金) 02:52 [ Ca7Ejc8w ]
「おまえばかだろ」
否定は出来ない。命と好奇心を天秤に掛けて好奇心が勝ってしまうのだから。
「・・・嫌いじゃないけどな、そういうの」
本当にそう思っているらしい。実は、結構な数の先輩冒険者たちに助けられたことがあるのだが、こんな風に話をしてくれたのも、聞いてくれたのも彼が初めてだ。
「最近は安全安全安全・・・って、そりゃ生きてなきゃ出来ないことだろうけどよ〜安全ばっか求めてたら見える物もみえなくなっちまわぁな」
そう言うと、彼は空を見上げた。同じように私も空を見上げる。
月の明かりが降ってくる。
同じ空を見ているけど、たぶん私と彼の見ているものは決定的に違うのだろう。そう思った。

ぱちん。ぱちん。
なんとなく言葉がとぎれた中。火の爆ぜる音が時折あたりに響く。

「どうせなら見に行くか?行くなら、つきあうぞ」
沈黙に飽きたように彼が告げてきた。今までの私なら心躍るであろう誘いの言葉。
でも。
「・・・今は行きません。一回ウィンダスに帰ります」
本当はわかってた。冒険というやつと無謀というやつが違うと言うこと。
そして、自分の冒険にどこか通りすがりの誰かが助けてくれるだろうという甘えが有った
こと。
「自分でちゃんと行けるようになってから行きます。時間はかかります。
 でも、人に守ってもらってぬくぬくで行くのは嫌」
弱くても、行きたいところに行けるとばかりに行動していたけど、よくよく考えれば
それは誰かに守ってもらったからできたことだ。・・・最初はそれでもかまわないだろう。
でも、私はもう自分でやって行かなきゃ行けない。
いつまでも、通りすがりの誰かの好意に甘えてばかりはいられない。
「ほほぅ」
声の調子が変わる。おもしろがっているけれど、どこか真摯な相槌。
「助けてくれて、ありがとうございました。そして、いろいろ教えてくれてありがとう」
今日は頭下げてばっかりだな。と思いながらもう一度彼に礼を言う。
「・・・おまえさん変わり者扱いされてるだろ。最後にもう一つ助言。
 一人でやれることなんざ限界があるさ。
 守られるばかりが、助けられるばかりがいやだってんなら、
 自分も誰かを守ったり、助けたり出来るようになりゃいい」
楽しそうに、告げる彼を見て、本当にそうなれれば良いなと思った。
「一人じゃ出来ないことも仲間がいればたいてい何とかなる。まぁ、がんばりな」

737 名前: 約束 5/5 投稿日: 2004/01/23(金) 02:53 [ Ca7Ejc8w ]
月の明かりが照らす中。夜が明ける前まで、たき火を挟んでとりとめのない話をした。

夜が明ける少し前、彼はタロンギ大峡谷の入り口まで私を送ってくれた。
「お互いに冒険者を続けていればそのうち会うこともあるだろうさ。そんときには一緒に冒険出来ると良いな」
それが別れの挨拶。
彼は彼の目的地。今の私じゃ到底追いつけない場所へと向かい、私はウィンダスへと道を辿った。

最後の言葉は約束。約束と思っているのは私だけで、彼からすれば、ただの社交辞令だったのだと思う。
おまけに次に会えたときには間抜けな新人冒険者のことなど、忘れている可能性の方が高い。


それでも、私はいつかその約束を果たすために頑張っている。

738 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/23(金) 02:54 [ Ca7Ejc8w ]
初めて書いてみました。
読みづらいかもしれませんが、ご容赦を。
みなさまにお楽しみ頂けたら幸せです。

739 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/23(金) 06:19 [ bstjizAU ]
読みやすかったし、結構面白かったよ。
この話はこれで終わりなのかな?
次は長編を期待してます。

740 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/23(金) 07:05 [ 8/ShPOIE ]
>>233-238
良かった。楽しめたよ。
文章が上手いというか、小説に慣れてるのが分かります。
次作の書き込み待ってます。

741 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/23(金) 21:13 [ U0Co0mpk ]
>>738
読みやすかったです。

なんとなく実体験なのかな〜って思った。
遠出して、強い人に助けてもらった経験、誰にでもあるよね。
そういうのを思い出した。
中だと「ありがとう;;」「いえいえ^^」で終わってるものの背景には
こんな会話があるのかもしれない。
そう考えると、とてもとても素敵な気分になれました。

742 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/25(日) 12:24 [ qipMl5.Q ]
タル戦・・・

743 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/25(日) 13:35 [ Nzj3qkD6 ]
待ち遠しい・・・

744 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/26(月) 16:53 [ AG2DbvIY ]
((゚ ゚ = ゚ ゚))・・・ダレモイナイカモ?

745 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/01/26(月) 21:59 [ 17tlLbm2 ]
「名無しの話し」の16 −トラ 前編−

朝になったら日が昇る。
それが一日の始まり。

大岩を背にしてうずくまるトラがいる。
暗い色の毛皮に強靭な筋肉の陰影を浮かび上がらせた強大なトラ。
と、その毛皮の下から這い出てくるもの。
タルタル。
トラにすれば一かじりにも足りないようなタルタルが
「ふぁ…」
あくびしながら這い出てくる。
息が白い。
「おはよう、トラさん」
挨拶しながらもまだ眠そうなのは、タルタルの獣使い。
「ああ、おはよう。あんじょう眠れたか?」
「うん」
大きくうなずくタル獣。
「かお洗ってくるね」
テテテテと走っていくのは近くの草むら。
近くに川が無いので、今日は朝露で顔を洗う。
といっても、草の葉からしずくを集めてだから、洗うというより濡らす程度。
冷たいそれでピチャピチャと顔を濡らしたら、あとはタオルでゴシゴシして終わり。
「いちいち顔洗わなならんのはなんぎやな」
とトラ。
「えへへへ」
とタル獣。
前にトラが
「わしが嘗めたるわ」
と言って顔を嘗めてくれたことがあったのだけど、三日でやめた。
あとがヒリヒリ真っ赤になってしまったから。
ザラザラしたトラの舌はタル獣の顔には少しつらい。

「つぎトラさんね」
皮袋にタオルをしまい、替わりに取り出したのはブラシ。
丸い胴に短い獣の毛を植え付けた、タル獣の手よりも大きなブラシ。
自分でつけた紐でブラシを首に掛けると、ヨイショヨイショとトラへ登る。
しゃがんだトラの背へ登り、首へ這う。
まずは額から。
シュッシュッシュッ
毛並みにそって、ていねいにブラッシング。
額から頭。耳を整えて両の頬から首周りへ。
落ちないようにしっかりつかまって、右へ左へと忙しい。
「…」
目を細めてされるがままのトラ。
とても気持ち良さそう。
猫なら素直にゴロゴロ喉を鳴らすとこなのだろうけど、やっぱりトラのプライドがある。
けど、こっそり。聞こえないように喉の奥で、
ゴロゴロゴロ…

「んっしょ、よいしょ」
ゆっくり時間をかけて、しっかりブラッシング。
とっても大きいトラの全身にブラシをかけるのは小さいタル獣には大変。
けど、トラが綺麗になるとタル獣もうれしいので、一生懸命。
「よいしょ、よいしょ」
耳の先から尻尾の先まで、しっかりブラッシング。
獣の毛皮は、手入れすればするほど綺麗な艶が出るから。

746 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/01/26(月) 22:02 [ 17tlLbm2 ]
草原をトラが行く。
ツヤツヤピカピカになったトラが行く。
走るほどでなく、歩くより早く。
テンポのいい歩速。
背にはタル獣。
正装に白いマフラーと手袋のその姿。
なんだかトラの背に仔羊が乗ってるような、毛玉がくっついてるような。
トラの脚運びに合わせてポヨンポヨンとまるまっちいお尻を跳ねさせながら、タル獣はしっかりと掴まってる。
もう、前のように落ちて泣くことは…ずいぶん減った。
まだトラが本気で走り出すと落ちてしまうけど、普通に走ってるときにはあまり落ちなくなった。
「さあ、今日はどいつしばきに行こか」
とトラ。
とりあえず、見える範囲に獲物は…。
「…」
歩速を落とすトラ。
「あ、」
タル獣もそれを見つけた。
こちらへ走ってくる虎がいる。
しかも三頭。
一直線に向かってくる。
「トラさん…」
少し不安そうなタル獣。
「ええか、しっかり掴まっとくんやで」
ゆっくりと、三頭へ向かっていくトラ。
距離は詰まってく。
近づくと、三頭はまれなほど見事な体躯の若虎。
毛皮に浮かぶ筋肉はたくましく、しなやか。
けど、トラより小柄。
それほどトラが大きい。
筋肉の張りも、毛皮の艶も格段に違う。
やっぱり、ぼくのトラさんがヴァナで一番強くて、一番きれい。
タル獣は少しうれしくなる。
先にトラが脚を止める。
歩速を落として、若虎三頭が近づいてくる。
背にまたがったタル獣のお尻の下、トラの筋肉に緊張がない。
戦いにはならないみたい。
ちょっと安心するタル獣。
すぐ目の前で、若虎は脚を止めた。
「おひさしぶりです、兄(あに)さん」
「「おひさしぶりです」」
若虎三頭が、そろって頭を下げる。
「ああ、元気そうやな。最近はこの辺にナワバリ持ったんか?」
とトラ。
「あれ?トラさんの弟?」
「いや、むかしちょっと世話したった奴らや。そういや、顔会わすんは初めてやな…」
タル獣を紹介しようとするトラ。
けど
「兄さん、今日はワイら大事な話があって来ました」
若虎たちはさっさと話を切り出す。
「…兄さんが獣使いと組んだゆうのはホンマですか」
トラを見つめる三頭の視線は真剣。
「ホンマも何も、当の獣使いがここにおるやないか」
と背中のタル獣を視線で示すトラ。
ギロリ
若虎三頭の鋭い視線がタル獣を突き刺す。
「あ…」
つい身を縮めるタル獣。
「あの…ぼく…」
恐々、挨拶をしようとするけど
「…」
若虎たちはすぐに無視。

747 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/01/26(月) 22:06 [ 17tlLbm2 ]
「最初…兄さんが獣使いと組んだ言いだしたんはヤグのヤセガラス共でした。」
「なんぼ大きいても所詮はネコや、餌くれる奴にはニャアニャア鳴いてついて行きよる、言うてオヤジさんを囃したてたんです」
「そんとき、オヤジさんはホラ話や言うて笑うてました」
「兄さんはヴァナ一の虎や。ワシの跡取る虎や。人間なんぞに耳伏せたりせえへん言うてはりました」
「せやけど、最近客分になった流れもンの虎が言いよったんです。虎のくせに獣使いと組んどる奴がおる。ガタイはええのに根性最悪やて」
「それで、オヤジさんも気にしはじめたんです」
「あいつの事や、心配はないと思う。ないと思うけど、ちょっと様子見てきてくれんか、いうて」
「それでワイらが来たんです」
「…ワイ、さっき兄さんの姿見て、久しぶりに見て、ほんま、嬉しかった」
「ワイもです。遠目でもすぐに判りました。あんなすごい虎は兄さんしかおらんて」
「それが…それが…」
一頭がポロポロと泣き始める。
「なんでですか、兄さん!なんで兄さんほどのおヒトが、人間と組んどんですか。なんで…」
「こんなン、ワイら一噛みにも足りんようなチビタルやないですか!?」
「兄さんが耳伏せるような相手とちゃいます!」
詰め寄る若虎たち。
と、
「あほか!」
吼えるトラ。
バシッ!ベシッ!ドシッ!
若虎三頭の頬に、大山羊も倒す虎パンチが叩き込まれる。
ズダダダッ
吹っ飛ぶ若虎たち。
「きゃっ」
コロン ボテン
弾みでタル獣もトラの背から転げ落ちる。
「ワイが誰と組もうが、おまえらになんの関係がある!」
けど、若虎も引き下がらない。
素早く跳ね起き、
「関係あります!」
「兄さん、クニを出るとき言うたやないですか。虎は群れたらあかん、ヒトの下についたらあかん、て」
「一匹の力で世を渡れるんが本物の虎やて、ワイらに言うてくれたやないですか」
「兄さんは若いもン皆の憧れです。それがなんで…そんな豆玉に使われとるんですか!?」
再度詰め寄る。
「教えてください!」
「「兄さん!」」
気が高ぶってく若虎に対して、
「…おまえらみたいな若造にはまだ話しても判らん」
一転、トラは落ち着きを取り戻してる。
「そんなんで納得でけません!」
「獣使いと組んだ言うことは、ペットになった言うことやないですか」
「ワイら知っとります。いいように使われて、用がなくなったらゴミクズみたいに放り出される。それがペットやないですか。なんで兄さんがそんなもンに成り下がるんですか!?」
「ちがうの!」
「「「「!」」」」
突然、足元から上がった叫びに、四頭の視線が集まる。
いつのまにかタル獣が、若虎とトラの間に割って入るようにして立ってる。

748 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/01/26(月) 22:12 [ 17tlLbm2 ]
「トラさんは使い捨てじゃないの。ゴミじゃないの!」
「おのれはだまっとれっ!」
「!」
若虎の威嚇に身をすくめるタル獣。
けど、引かない。
「ぼくとトラさんは一緒なの!」
再度叫ぶ。
「おのれ粒タルのくせに兄さんと同格や言うんか」
「思い上がっとったらしょうちせえへんぞ!」
「トラさんは…トラさんは、ぼくの家族なの!」
「なんやとぉ!?」
「いっしょにいて楽しいの。いっしょにいてうれしいの。ぼくの家族なの!大切な家族なの!だからぼくがんばるの。トラさんと一緒にがんばるの!ずっと一緒にがんばるの!」
涙目で叫ぶタル獣。
「タル獣、おまえ…」
少し照れ気味にタル獣を見下ろすトラ。
それは若虎たちが初めて見るトラの表情。
驚き、
「…」
そして視線のやり取りする若虎たち。
照れたまま、そっとタル獣を引き寄せようとするトラ。
けど、それより早く!
若虎の爪がタル獣を引っ掛け、
「きゅっ」
振り飛ばす。
ブンッ
軽いスナップだけど、小さなタル獣は大きく飛んで、
ドチャ
「ふきゃっ」
転がる。
「おまえっ!」
怒りの咆哮を上げるトラ。
目の前の若造を殴り倒そうとするより早く。
ガシッ
他の二頭が、それぞれにトラの前脚に噛み付き、力の限りに押さえ込む。
トラの脚を噛み切ろうというわけじゃない。
ただ、ひたすら押さえ込む。
トラが、動けないように。
その全力で。
「おまえらっ!なにしとるか判っとるんか!」
「よう判りました。兄さんはあいつに騙されてはります。あいつさえおらんようなったら、兄さんはもとの兄さんに戻ります。ワイが、戻します」
転がるタル獣へと目をやる若虎。
チャキ
若虎の前足に爪が伸びる。
普段は隠されてる爪。
剣よりも強く鋭い爪。
獲物を引き裂き、切り刻む爪。
「う…ん」
頭を振って起き上がるタル獣。
そのぼやけた目に、こちらへ向かってくる若虎が映る。
けどそれよりも。
飛ばされたとき、落ちたとき、聞こえたいやな音。
慌てて皮袋を探るタル獣。
そして、見つけたのは。
二つに割れたブラシ。
「あーっ」
悲鳴のような叫びをあげるタル獣。
毎日毎日、トラの毛皮を磨いてきたブラシ。
聖夜にもらった、トラのブラシ。
二つに割れた…ブラシ!
「トラさんの…トラさんの!」
迫る若虎を、キッと睨みつける。

「おのれらぁ、生きて帰さんぞ!」
トラが叫ぶ。
「兄さんのためです!」
若虎が叫ぶ。
「トラさんのブラシ!」
タル獣が叫ぶ。

−つづく−

749 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/01/26(月) 22:15 [ 17tlLbm2 ]
…なんだか寂しいので、取り急ぎ前編…m(_ _)m

750 名前: 約束を書いた者 投稿日: 2004/01/26(月) 22:25 [ wHBdhmkI ]
わーい!名無しの話の新作だ〜。
とらさんの大ファンだったりします。
・・・生で更新されるところを見たので少々興奮気味です。
失礼しました。

改めまして、こんばんは。約束を書いた者です。
いつも、みなさまのお話を楽しみに読んでいたのですが、
ふと自分でも書いて見たくなったので、お話を書いてみました。
それなりに楽しんでいただけたようなので、とっても嬉しいです。
今度は、ちょっと長めのお話です。
落としどころは、決めているので、そこにたどり着けるよう頑張って書いていく予定です。
良ければおつきあい下さい。m(_ _)m

751 名前: 初めての冒険 投稿日: 2004/01/26(月) 22:26 [ wHBdhmkI ]
プロローグ

誰にでも、自分のその後の生き方を決めた決定的な出来事というものは有ると思う。
それが、端から見ると大きなことであろうと、小さなことであろうと。

僕にとっての、その出来事はあの夏の冒険。
今でも、ちびで泣き虫な僕が、もっとちびで泣き虫だった頃の話。

僕の初めての冒険・・・

752 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/26(月) 22:27 [ 7MmXHRkQ ]
名無しの人キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
続き期待(・∀・)イイ!!

753 名前: 初めての冒険 投稿日: 2004/01/26(月) 22:28 [ wHBdhmkI ]
第一話ウィンダス水の区 〜春・そもそもの始まり

ウィンダス水の区の広場・・・西サルタバルタから訪れた旅人が、目の院の横を抜けて訪
れる最初の場所。
そこで、小さな少年が泣いている。
他族からすれば、年齢のわかりづらいタルタル族だが、その少年がまだ年若いということ
は誰が見ても明らかだった。
なんせ、周りのタルタルたちよりも頭2つ分ほどは確実に小さい。
もちろん、成人したタルタルで少年ぐらいの大きさの者がいないではない。
しかし、わき目もふらず泣いている姿といい、あまりにも素直に感情を出している様といい、
どう見てもこの少年は他族から見た年相応・・・おそらくは7〜8歳ぐらいの小さな少年である。
泣いている少年の向かい側には、同じぐらいの背丈のヒュームの少年が、困ったような表情を
して立っていた。
年齢は7〜8歳というところだろう。このぐらいの年頃までは、タルタル族と、その他の一族の
差というのは見えにくい。
もっとも、10歳を超したあたりからはその差は開く一方なのだが。

柔らかな陽の光、水面に揺れる新緑の影。
高らかに鳥は歌い、春を告げている。

「シャムってばぁ、泣くなよ」
困ったように、ヒュームの少年が言う。
シャムと呼ばれたタルタルの少年は、ぐしゃぐしゃになった顔を上げ、ふるふると首を振ると、
また盛大に泣き出した。
「っだっっで、ロアンいなぐなっぢゃうんでじょ?」
・・・すでに言葉もぐちゃぐちゃだ。ロアンと呼ばれたヒュームの少年は、しょうがないなぁ
という表情を浮かべながら、ポケットからハンカチを取り出すと、シャムの顔をごしごしと拭
く。
「っとに、泣き虫なんだからなぁ。しょうがないだろう?父さんの仕事の都合なんだから」
「で、でも・・・」

ごしごしごしごし

ごにょごにょと口の中で、抗議をつぶやくシャムの顔をロアンは無言でがしがしと拭く。
まるで文句は受け付けないぞ、と言わんばかりに。
「よしっと」
顔が一通りきれいになったところでロアンは満足げに言った。
シャムはタルタル族の例に漏れず愛らしい顔立ちをしている。
泣いていたせいで、鼻の頭が多少赤くなっているのはご愛敬と言うところだろう。

遠巻きに、近所の人間や通りすがりの冒険者たちが少年たちのやりとりを眺めている。

754 名前: 初めての冒険 投稿日: 2004/01/26(月) 22:29 [ wHBdhmkI ]

「きれいにしたんだからな、もう泣くなよ」
ハンカチを丁寧に畳み、ポケットにしまうとロアンはそうシャムに告げた。
そう言われたシャムはまた泣きそうになっていたが、かろうじてこらえていると言った顔をし
ている。
「冬になる前にいっぺん言ったけど。やっぱり引っ越すことになったから」
はっきりと、けれどどこか淋しげにロアンが言葉を紡ぐ。
「出発は・・・明日だ」
引っ越す・・・ウィンダスにはヒュームはそう多くはいない。大抵が商売人。
でなければ領事館の職員だ。
旅の途中に訪れる冒険者もいなくはないし、その中にはウィンダスに籍を移す者もいるが、
彼らは定住しているわけではないからロアンの親は商売人か領事館の職員だろう。
「あ・・」
じわり。シャムの両目にまた涙がにじむ。
「あ゛〜、もう。だから、言い出せなかったんだよ」
決まり悪げに、頬を掻くロアン。
「おまえ、絶対泣くだろうから、言い出せなかったんだよ。
 でも、黙っていったらもっと泣くと思って・・・ぎりぎりになっちまって悪い」
涙目で、自分の目を見つめるシャムに向かって、ロアンは手を合わせ、謝った。
本当に悪いとは思っているのだ。何せこのタルタルの少年はたぶん自分以外の遊び仲間がいない。
初めて合ったときは、自分の方が小さかった。そのうちほとんど変わらないぐらいの背丈にな
った。たぶん、あと数ヶ月もしないうちに追い抜いただろう。
「前から言ってるけど・・・ちゃんとほかの友達作れよな」
いつものように、両手で相手の髪の毛をわさわさといじくる。
ロアンはシャムのふわふわの金髪がお気に入りだった。
「今度は・・・俺がおっきくなったら、今度は自分で会いに来るからさ」
シャムの顔を見ると自分も泣いてしまいそうだから、見ないようにしてロアンは言う。
シャムにだけ、聞こえるように。ほとんど呟くような声で。
「だから、ちゃんとそれまでには友達つくっとけよ」
返事はない。シャムは小さく嗚咽を漏らしている。
けれど、ロアンは知っている。
自分の言葉に小さく、本当に小さくだけどシャムが頷いたこと。
「ロアンっ、僕手紙書くから・・・」
その言葉に小さくロアン笑った。
「じゃぁ、俺は返事を書くよ。手紙をもらったら絶対にな」


翌朝、ウィンダス森の区から東サルタバルタへ向けて一台のチョコボ車が出発した。
5年に渡り、ウィンダスのバストゥーク領事館に勤めたヒュームの男性が、家族とともに次の
任地へと向かうためである。
見送りの人間はそう多くはなかったが、その中に小さな小さなタルタルの少年がいた。
チョコボ車に乗り込む、男性の息子とぎゅっと握手をすると、タルタルの少年は見送りの人間
の間に戻り、手を振り続けた。
ヒュームの少年を乗せたチョコボ車は、東サルタバルタへと走り去り、後には小さなタルタル
の少年が残された。
見送りの人間たちが、自分の仕事へと戻っていく中、残された少年は、目に涙を溜め、砂塵に
紛れチョコボ車の姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。
そう、見えなくなるまでずっと。


それから季節は巡り4度目の春になった。
3度目の春、サンドリアからの便りを最後に、ロアンからシャムへの手紙は届いていない。

755 名前: 初めての冒険 補足 投稿日: 2004/01/26(月) 22:30 [ wHBdhmkI ]
※作中の補足
 チョコボ車は作者の妄想設定です。
 馬車のようなものだと思ってください。
 無いと冒険者じゃ無い人間の移動が不便すぎるだろうって思うのです。
 免許がないと、バスは運転できないけど、無くてもバスには乗れるってことで・・・
 乗り合いチョコボ車みたいなのも有ると勝手に設定。
 (でなきゃ冒険者じゃない人はどうやって3国からジュノに行くんだ)
 ただし、最近の定期便は飛空挺と同じでジュノ-3国を結んでいて、セルビナ行きやマウラ行
 きは無いと思われます。(採算とれないだろうから)。
 あと、有る程度大きめの商売人はチョコボ車の隊商したてて商売するのかな〜と思っていた
 り。

756 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2004/01/27(火) 02:12 [ WnE/.T9g ]
風邪引きました

757 名前: ガルカの昔話 38話1/3 投稿日: 2004/01/27(火) 02:14 [ WnE/.T9g ]
「まあ、今となっては全て昔話だがな」
私はいつもこう言って話を締めくくる。
「嘘でぇ〜」
話が終わると、近所の子供たちは決まってこう騒ぎ立てる。

100年という時間経過はバストゥークに大きな変化をもたらしていた。
あの事件以降ツェールン鉱山には、正式にヒュームの監督官が政府から派遣されるようになった。
産業の発展とともに土も水も淀んだ。
暮らしは豊かになったが、ヒュームもガルカも相変わらずだった、残念なことだが。
それでも、いまでは鉱山区に足を運ぶヒュームや、政府の仕事に登用されるガルカも現われだした。
種族の垣根は、案外早く取り除けるのかもしれない。
そう信じたい。

結局、あのあと私の身体は使い物にならないほどボロボロになっていた。
鉱夫として再び働くことはかなわず、冒険者として世界を見て回るという淡い夢も儚く潰えた。
寝たきりになってからは、しかたなく文献を読み漁り、語り部様の補佐を行い、
民族融和のため身を粉にして働いた。
鉱山での怪我人を治療するために、白魔法を習得して医者の真似事をしたり、
近所の子供たちを集め、文字や歴史など勉学の手ほどきをすることもあった。

あの日、暴動を起こした鉱山ガルカたち。
彼らはヒューム13人を殺害した罪に問われ、年長者の18人が厳罰に処せられた。
不思議なことに、バストゥーク転覆の陰謀は明るみに出ることは無かった。
あれが表に流されれば、ガルカとヒュームの関係は現在ほど良好であろうはずもない。
誰かが情報を恣意的に管制したようだが、誰がどう動いたのかは分らない。

私たちと行動をともにしたあのヒュームの女とも、その後会うことはなかった。
私はこんな身体だし、彼女はヒュームであったから、しょうがあるまい。
風の噂では良い縁があり、港区の住宅地で幸せな家庭を築いたらしい。
そのことを聞いたのも、もう50年以上も昔の話だ。
性格はいけ好かなかったが、彼女には恩義がある。礼の一つも言いたかった。
私の分と、兄弟の分。
こんなとき、長命種であることを呪いたくなる。
他種族との寿命差も齟齬を生じさせる原因なのではないだろうか。
最近は、そう思う。
記憶を受け継ぐ語り部、転生、頑健な肉体、長寿。
明らかに他四種族とは異質…。
女神アルタナは、我らガルカに何を成させようとお考えなのか…。

758 名前: ガルカの昔話 38話2/3 投稿日: 2004/01/27(火) 02:15 [ WnE/.T9g ]

金髪のヒューム、ジーク・レオンハルト。
彼は退役後、親のコネで上院議員になった。
他種族排斥を掲げた過激な政党のリーダーとして、四半世紀ほど活躍していたようだが
レオンハルト商会の没落と、個人的なスキャンダルのせいで資格を剥奪され、
最終的に寂しい余生を過ごしたそうだ。
因果とは、いつかわが身に巡り巡ってくるものである。
彼の行動、政策に憤慨することも多々あったが、亡き後想えば、哀れみすら誘う。

ミスリル銃士『グスタベルクの盾』はあの事件後、ほどなくして世を去った。
彼はパシュハウにあった砦に左遷され、日々繰り返されるクゥダフとの戦いの最中、
沼の毒に当てられ、病となり、あっけなく息を引き取ったそうだ。
左遷された原因は分らない。
銃士隊の内部で何があったのかは、一般人の考え及ぶものではない。
しかし、賢く、理解もあった人物だけにとても残念に思ったのは覚えている。

細い兄弟…あのエルヴァーンのことは、その後噂すら私の耳には届かなかった。
ジュノ建設の際、資材を運んだ商隊の護衛を買って出た、腕の立つ老エルヴァーンの風聞はあったが、
伝え聞いた容姿も少し違う様子だったし、同じくらいの年齢の老妻を連れた槍使いという話だったので、
おそらく別人だったのだろうと今では思ってる。
きっと、剣を振るうことを嫌った兄弟のことだから、血なまぐさい世界からは足を遠ざけ
どこかでひっそりと暮らしたのだろう。

とにかく、あの事件のことを覚えている人間はもう少ない。

759 名前: ガルカの昔話 38話3/3 投稿日: 2004/01/27(火) 02:15 [ WnE/.T9g ]

「こ〜ら、おまえたち!またダスクス老を困らせて!!」
そのとき、私の家に一人のガルカが入ってきた。
立派な鎧を着込んだ巨躯に、人懐っこい笑顔を浮かべている。
彼が入ってくると、さっきまで私のことを「嘘つき」呼ばわりしていた子供たちは、とたんに静かになる。
「鉱山区に帰ってくるなんて久しぶりじゃないか、ゴールドウインドゥ黄金銃士殿」
「よしてくださいよ…」
私が茶化すと彼は恐縮そうに頭をかく。
「そんな風に呼ばないでください、かっこ悪い。此処にいるときは昔の名前で呼んでください。」
「ふ、そうだな。じゃあ、悪いがその悪がき達をつまみ出してくれ、パゴタ。」
「ははは、了解しました」と笑ってパゴタは子供たち抱え上げる。
彼は兄弟に教えられた剣技を生かし冒険者になった。
私の果たせなかった夢をかわりに果たし、世界を見て回ってきた。
旅から帰るたび私のあばら家を訪れ、世界の情勢などを嬉々として語ってくれた。

その後、バストゥークの黄金銃士隊から誘いがあり今に至っている。

バストゥークの黄金銃士隊と言えば、鉱脈調査を行なうための武装調査隊だ。
ヒュームばかりの社会で己を立てた彼の力量に、私は感服するばかりである。


「なあ、パゴタ…」
「はい?」
「エルヴァーンってのも、転生するのかな?」
唐突な話題に、察するところのあるパゴタは顔を曇らせた。
「そんな顔をするな。そろそろ兄弟に会いに行こうと思っただけだ。」
「あなたがいなくなると寂しくなります…。子供たちもきっと…」
ははは、と私は渇いた笑いを上げる。
「それなら、もう大丈夫だろう。お前がいるじゃないか。
ガルカとヒュームを良い方向に持っていけるように働いてくれ」

私の来世では、兄弟と約束したバストゥークが訪れているに違いない。
多くのガルカ、多くのヒューム。
私の出会ってきた多くの人々。

彼らなら、きっとこの国を変えてゆける。

そう確信したからこそ、私は旅立てる。

転生の旅に。

760 名前: ガルカの昔話 最終話1/2 投稿日: 2004/01/27(火) 02:16 [ WnE/.T9g ]
鉱山区が夜の帳に包まれてから、わたしはびっこを引くようにして長年暮らした家を後にした。
弱った手足も、このときばかりは良く働いてくれた。
頼りなくも着実に杖をつき、入り組んだ下町を進んだ。

鉱山区の門をくぐる。

門番のガルカはゆっくりと頭を下げた。
彼も若い頃は、私の他愛ない昔話をよく聞きに来たくちだ。
そのときのことを、今でも懐かしく思い出せる。
言葉はいらない。
にっこりと微笑んで、会釈しかえした。
彼は私の会釈を視認すると、また何事も無かったかのように衛兵としての勤めに戻る。
私の100年ぶりの遠出が、ガルカにとってどんな意味を持つものか?
詮索はおろか、直視すらも憚られる。
神聖であり、忌諱されるものであり、終焉で、永遠。

死とはそういうものだ。

我々、ガルカの場合は趣きが異なるとはいえ、それでもやはり他種族のそれと
大きく扱いの違うものではない。
ことさら口に出したがるものはいない。
みな、悲しみは無いが引き止めることはせず、旅に出るものも極力人目に付くことを避ける。
それが「転生」という線的な生涯を持つガルカにとって、「死」というものに対する精一杯の線引きだ。

グスタベルクの荒野に踏み出す。
寂寞とした荒野に、渇いた風が吹く。
私の網膜にはある一筋の光芒が光差していた。
導きの光だ。
アルタナがガルカの魂を拾い上げようとするとき、なにかに導かれるように我々は旅にでる。
視覚に頼るものではない。事故で盲目になったガルカも転生の旅に出た事例がある。
我々にも上手く説明はできない。
きっと本能的なものなのだろう。
行き着く先は新たな誕生のための終着地。

761 名前: ガルカの昔話 最終話2/2 投稿日: 2004/01/27(火) 02:17 [ WnE/.T9g ]

「なあ、兄弟…」

誰に言うともなく、私は呟く。
「私はきっとエルヴァーンやヒュームにも転生があると思うんだ…」
その形態が異なり、ガルカほど明確でないだけなのだろう。
風が砂塵を巻き上げる。薄い緑がその風に揺れ、私の目を楽しませた。
その緑の中に、小さな花が咲いているのを私は見つける。
背の高い茎に、愛らしい白い花弁。
私は「彼」に話しかける。
「私が現世に戻ってきたら、きっとサンドリアに行くよ」
「転生しても、この記憶は魂に深く刻まれ、片隅にでも残り続けているような気がするんだ」
「だから、サンドリアに行く。行って、真っ先にお前を探そう。」
「おまえはきっと私のことなんか覚えていないだろうな…」
「多くのことが起こりすぎた。夜通しかかるかもしれないが、話してやるさ…」

歴史の闇に葬られたあの事件のこと、

それからのバストゥークのこと、

大切な記憶、

「私の語るべき、おまえと紡いだ物語…」


このガルカの昔話を

762 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2004/01/27(火) 02:18 [ WnE/.T9g ]
ガルカの昔話

  糸冬   了

そして↓

763 名前: 呪詛 投稿日: 2004/01/27(火) 02:19 [ WnE/.T9g ]
3.疾患

濃密な「力」が彼女の姿を揺らがしていた。
可視光まで歪める。それほどの「力」

「冗談じゃないよ!」

部屋の隅に安置されていたソファーで、我関せず、と居眠りを決め込んでいたタルタルが、
あまりの出来事にコロコロと、文字通り転がるように板間を逃げ惑う。

「退け、マイユナイユ!この臆病者が!!」

先ほどまで興味無さそうに、片刃の大刀の手入れをしていた女性のヒュームが、
足元をウロチョロするタルタルを蹴飛ばさんばかりの勢いで前に出る。
タルタルのシーフ、マイユナイユが恐慌を起こす一方で、
ヒュームの侍、サクラサラの表情は嬉々としていた。口元は笑いで歪んですらいる。

戦闘狂…。

邪険に扱われたタルタルは、思わずヒュームに悪態をつく。
その声は届かなかったのか、あるいは血の恍惚に囚われていたためか。
彼女はタルタルなど眼中にあらずと、ミスラの少女めがけて必殺の一撃を見舞う。
申し分ないはずの一撃。
ザクロのように少女の頭部は爆ぜ、サクラサラの血の衝動を満たすはずだった。
しかし、現実はそう上手くいかぬもの。
横から割って入ってきた両手鎌に巧みに受け流された彼女の刀は、床に、その刀身を半ばまで取られる形になる。

「よしてくれ!彼女は子供だぞ!?」

「戯言を!お前の目は節穴か、シリル?」

呪い…。
そう。
呪いに身を焦がすミスラの少女。
屈強なエルヴァーンの騎士を弾き飛ばし、恐ろしい「力」を纏う。
この現状を鑑みても、いまだ子供だからと言う理由だけで擁護しようというのか。

「ならば、付き合いの長いお前と言えど容赦はせぬぞ。」

どのみち、おまえとは白黒はっきり決着つけねばならぬと思っていた!

言うが早いか、床から刀身を引き抜き、そのまま切り上げる。
シリルは、その斬撃を鎌の柄で受け止めた。
淡く火花が散る。
睨みあう二人のヒューム。

764 名前: 呪詛 投稿日: 2004/01/27(火) 02:20 [ WnE/.T9g ]

「うしろ!うしろ!!」

マイユナイユの悲鳴にも似た声。
と、同時に二人は何らかの力で跳ね飛ばされる。
シリルは天井に、サクラサラは壁に。鈍い衝撃が身体を襲う。骨がきしんだ。
言わんこっちゃ無い、とタルタルは目を覆う。

「あれは…呪いなんかじゃないんです…」

ドミツィアーナがポツリと呟く。
大切な騎士を胸に抱きかかえたまま、床に伸びたシリルに向かって。

「竜の血に棲んでる病原菌が…人間の脳に到達すると…ああいう風になる…病気です」

「病気……。なら、やっぱり治るんだ…」

「でも…」

あの白い肌はなんだろう。あの胸を覆う文様は?

凶暴になり、ありえない力を発揮する。
それが腕力である場合もあるし、発病以前、魔力の通し方を学んだものなら、魔法である場合も、稀だがある。
ここまでは確かに病気の症例だ。
しかし、彼女はどうだろう?
サンドリア大聖堂の修道女であったドミナは白魔法のほか、病気やその治療の方法も学んでいた。
あれと同じ症状で担ぎ込まれた人を、幼少の頃幾度か見たことがある。
しかし、それとは明らかに異質の何かが、このミスラの少女の矮躯の深奥で進行しているように思えてならない。

ほんとうに病気だけが原因なのだろうか?
ドミナには確たる自信が無かった。
このエルヴァーンの少女は、いつにも増して不安そうに身じろいだ。

765 名前: 呪詛 投稿日: 2004/01/27(火) 02:20 [ WnE/.T9g ]
4.黒炎

そのとき、唸り声が大きさを増す。
真っ白なミスラの少女が、悶えるように苦しみ始めた。四肢を激しく痙攣させる。

「いかん!!」

不穏な魔力の流れを察知したガルカの黒魔道士ガトは、咄嗟にその巨躯を動かす。
ミスラの真っ白な肌が赤く濡れたかと思うと、次の瞬間には部屋を覆うほど苛烈な熱球が現われた。
炎の塊が、這うように伏していたサクラを飲み込もうとするのを、このガルカは己の身体をもって防ぐ。
チリチリと肉の焼ける臭いがした。
苦痛にガドの顔が歪む。
それだけではない。
炎は周囲の家具や調度品に延焼し、勢い良く燃え出した。
タルタルが混乱の極みに達し、言葉にならない奇声を上げて走り回る。
ヴァレリオは目覚めず、ドミナは泣き、ガルカは膝を折った。

ギデアス竜を死闘の末チームワークで破った彼らは、そのチームワークの崩壊とともに敗れ去ろうとしていた。

「シリルが止めなければ、この程度のヤツは…!!」

自らを守り倒れゆくガルカを一瞥し、サクラは愛刀を握りなおし少女に踊りかかる。
だが、またしても彼女の刀は届かない。
焼け落ちた建物の梁が二人の間に落下してきたために、サクラは退かざるおえなかった。
おそろしい速度で燃え上がる魔法の炎。
もう少女に構っている場合ではない。
ドミナは彼女の騎士を、サクラは倒れたガルカの黒魔道士を、それぞれ連れて建物から逃げ出す。
タルタルも奇声を上げてそのあとに続いた。

そのときマイユナイユは炎のなか、何かキラキラと光るものを拾う。
シーフの性か。価値のありそうなものには、発狂中でも目がなかった。
何かの欠片。透明で、何か神秘的なものすら感じる。
誰が落としたものだろう。いくらで売れるだろう。
そう考えると、彼はこの恐怖から幾ばくか逃避できた。

この建物が燃え落ちるのに、さして時間は必要ではなかった。

ヴァレリオ、ドミナ、マイユナイユ、サクラサラ、ガトは
重傷、軽傷を負いつつも無事に脱出することができた。
しかし、ヒュームの暗黒騎士シリルとミスラの少女の姿を確認することはできなかった。
逃げ遅れ、焼死したのだろうかと思われたが、焼け跡から彼らの死体が見つかることはなかった。
朝露のように消えてしまったのか?
残された5人は訝しまずにはいられない。


「任務ご苦労であったな、ヴァレリオ殿」

サンドリア教会からの使者がやってきたのは、それから1週間後のことであった。
藍色のローブを着込んだ中年の男とドミナは「楽園の扉が開かれますよう…」と互いに礼をする。

「かねてよりの件が、今回の働きで受理されることになった。貴公は早急に本国に向かうよう通達が出ておる。」

そのことを聞いて、ドミナの顔がパァッと明るくなる。
よかった、良かったね、ヴァレリオ。と彼女はまるで自分のことのように喜んだ。
一方のエルヴァーンのナイトはいつもの仏頂面のまま。

頭の片隅で、あの暗黒騎士とミスラの少女のことが、シコリの様に疼いていた。

766 名前: ガルカの中の人 投稿日: 2004/01/27(火) 02:25 [ WnE/.T9g ]
「ガルカの昔話」は自分のサイトに、加筆修正のうえ、挿絵つけて載せるかも。
見つけても無断掲載?などと思わぬよう。

「呪詛」は一話一話の間隔が開くかもしれません。
ガルカの昔話みたいに放置プレイにならないように頑張ります(´・ω・`)

767 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/27(火) 03:56 [ ssb7Gxic ]
わー・・・、昔話の最終話だー!。
なんというか、お見事です。

呪詛の続きも楽しみにしています。
ゆっくりで良いので、是非是非続きを御願いします。

768 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/27(火) 04:48 [ Vjqowsgs ]
( ゚д゚)ノ~オツカレサマ
面白かったよ。

769 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/27(火) 06:31 [ wbH6jnk6 ]
ガルカオワタ━━━━━━━━━━━━ !!!!!

770 名前: ねぇ、フランシア の人 投稿日: 2004/01/27(火) 09:02 [ yCvsM7RM ]
>ガルカの中の人
お疲れさまでした。
最終話の最期の数行、マジ泣き入りました。
呪詛も楽しみにしてます。
改めて、お疲れさまでした

771 名前: ゴブリンキャンディ 1/2 投稿日: 2004/01/27(火) 09:22 [ YHu/nkic ]
バインド覚えたての黒猫がロンフォールでゴブリンと応戦している。
何とかゴブリンにトドメを刺す...と、ゴブリンの鞄から何かが転がり落ちた。

黒猫は、ゴブリンキャンディを手に入れた。

"ゴブリンキャンディなんてあったっけ?...去年の売れ残りかな?"
確か去年のカボチャ祭の時には街中にゴブリンの商人がいて、
色々なお菓子や果物を売ってくれていたような記憶がある。
チョコレートやクッキーやパイが並んでいたのは覚えているけど...
キャンディの記憶はない。

"去年のお菓子...食べられるかな?"
黒猫は手の中のキャンディをしげしげと眺めた、もちろん賞味期限なんか書いて
あるわけがない。ただ小さな字で"Earth time 5 min"とプリントされてる。
たぶん、効果時間だろう。通常の食べ物より短い様だ。

黒魔道士とお菓子の相性は結構良い...と聞く。実際まだレベルは低いため
お菓子の恩恵に預かったことはなく、大概無食、食べてもサンドリアグレープ程度。

"5分位なら...大丈夫かな"
ちょっとの間なら、INTやMPが下がっても支障はないだろう...そう考えて
黒猫はパリパリとキャンディの包み紙をほどいて口の中にキャンディを放り込む。

772 名前: ゴブリンキャンディ 2/2 投稿日: 2004/01/27(火) 09:23 [ YHu/nkic ]
途端。 黒猫の周囲に風が巻き起こった。
ブウゥゥゥゥ...ン プシュゥーーン

黒猫のとんずら→移動速度アップ。

"は?"
同時に黒猫の足がシャカシャカ動く。

"えぇ!?"
黒猫の意志に関係なく、足は動き。

バキ!ゴキッ!メキキ!!
木にぶつかりながらも、黒猫の足は止まることなく、速度をあげる。
オークキャンプの真ん中をつっきって、ゴブの横っ面を走り抜ける......
"何これ〜〜〜〜〜〜!?!?"


黒猫の叫びも虚しく、彼女は包み紙にあった通り効果時間いっぱい、
ロンフォールの森の中を走り続けた。
彼女の名は史上最長の獣人列車の操縦士として、後世まで語り継がれることになる。



そうそう、彼女が落としたキャンディの包み紙の内側にこう書いてありました。

"パ ル プ ン テ"
das Ende


.........ガルカの中の人ありがとう!!

773 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/27(火) 11:16 [ DktjPvsQ ]
自分の気持ちを言葉に表しきれない事に苛立ちを覚えつつ…。

ガルカの中の人、よくぞ書ききってくださいました!
ありがとう、本当にありがとう。

そして新作もがんばってください!楽しみに待ってます。

774 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/27(火) 17:43 [ zsJJ5AKs ]
こんなスゴイ話を最後まで書ききった中の人とか超えらい。
もっとおつかれ。超おつかれ。


呪詛も超楽しみ。超がんばれ。




お疲れ様ですた(´・ω・`)

775 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/28(水) 05:24 [ Fg2un762 ]
>>ガルカの昔話の作者さん
質感、行間を味わうような作品、本当にありがとうございました。
1話目からのファンでした。
本当に、ありがとうございました。

776 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/29(木) 00:36 [ pCrSj81c ]
ガルカの人お疲れ&樽戦、呪詛、名無しの話、新人作者期待age
っと質問、北の炎 西の風って終わっちゃったのかな?
アプルルさんとこは更新されてないし
続きが気になるyp(´・ω・`)

777 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/29(木) 09:41 [ 30PR44Pc ]
タル獣が気になって・・・気になって・・
仕事が手につかないYO ママン(´・ω・`)

778 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第9話-1 投稿日: 2004/01/29(木) 20:07 [ mtDWjutM ]
「空に浮かぶ群青の軌跡」第9話

 彼はそわそわと、船着場で待機していた。既に待ち始めてから二回船は着いたが、
彼の目的とする人物はまだ現れない。
 ラズィは落胆を隠そうともせずに、ため息をつく。そして三回目の船が着いたとき、
彼は人ごみに向かって、目を凝らした。
「……! あ、おーい、こっち」
 大きく手を振る。それに相手は微苦笑して、ゆっくりと歩を進めた。
お定まりの手続きを終えると、彼女はラズィに丁寧のお辞儀する。
「お待たせしました」
「気にしなくていいんだけど、それよりも、ちょっとこっちに来て!」
「ラズィさん?」
「急ぐんだ。君の力なら、どうにかなるかもしれない」
「はぁ……」
 急な出来事に、彼女は目を見開く。それでもラズィの必死さにうなづき、
彼女は案内を求めた。事情はおいおいとわかるであろうと信じて。


 セルビナの門前。所かまわずに砂塵が舞っている。
そんな状況でカーナは無表情のまま竜を抱いていた。

779 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第9話-2 投稿日: 2004/01/29(木) 20:08 [ mtDWjutM ]
 竜は傷に砂が入らないように丁寧に毛布にくるまれ、大人しい。
「Lady。大丈夫? 痛くない?」
「きゅぅ…」
 小さく気丈に鳴く。
 あれから二日。命からがらの状態で逃げ出したと思われるLadyの調子は、今も芳しくない。
 相変わらず街に入ることは拒絶され、仕方なしにカーナは外で昼夜問わずに過ごす。
ラズィが街より食事や毛布を運びこんでくれたおかげで、飢えと夜の寒さは凌ぐことができた。
 普段は一緒にいるはずのラズィも、とうとう約束の人物が来るとかで、離れてから随分と時間がたつ。
彼との旅はセルビナで終わる。今までは待ち人がいない状態だったけれども、
そう遠くない日に、自分はまたLadyと二人だけになる。
「Lady……元気を出して……」
 励ますように、傷にさわらないように撫でる。竜の容態は悪くはならないが、
よくなっているかも不明だった。
 嫌な予感が心をよぎる。それを振り払うようにして、カーナは笑んだ。すると、
「……ナ! ……カーナ!」
「ラズィ?」

780 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第9話-3 投稿日: 2004/01/29(木) 20:09 [ mtDWjutM ]

「Ladyの様子は?」
「見ての通りよ」
 走り続けたせいか、ラズィの息は荒い。肩で息をし、なんとか呼吸を整えると、
傍らの竜を見た。少しだけ沈鬱な表情となるが、すぐさま満面の笑みを浮かべる。
「カーナ、彼女にLadyを診てもらおう」
「彼女?」
「友達だよ。白魔法が使えるから、これでLadyは助かるよ!」
「……気持ちは嬉しいけど……」
「大丈夫だよ。彼女なら、絶対断ったりしないから」
 ラズィの言葉に、カーナは曖昧に笑んだ。
 彼は白魔道士に竜を治療してもらえるよう頼む、と申しでた。
しかし何故かカーナはそれを拒みつづけている。理由は何故か教えてもらえない。
 冒険者といえども、竜の側に寄ることを拒む人は多かった。そのためラズィは、
『断れる恐れ』からと、勝手に解釈していた。カーナはそれに甘えたまま、
真実を告げることはしなかった。
「ラズィ。いいの、放っておいて」
「とりあえず僕が頼むから」
 頑なに拒もうとする彼女に、ラズィは違和感を覚えた。
が、既に引き下がることのできない身、セルビナの街に向かって呼びかける。

781 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第9話-4 投稿日: 2004/01/29(木) 20:10 [ mtDWjutM ]
「リクス。こっち」
 現れたのはチュニックに身を包んだ女性。フードはかぶっておらず、肩で揃えられた黒髪が風に舞っていた。
「はじめまして」
「リクス、彼女がカーナ。ロンフォールからここまで来たんだ」
「よろしく」
 座ったまま、カーナは会釈した。そしてゆっくりと視線を竜へと戻す。
「そちらは、貴方の竜?」」
「そうよ」
「カーナ……」
 そっけないカーナの態度。
「せっかくだけど……」
「そうですね、残念だけど、これは私の手には負えないです」
 沈鬱した表情でリクスは告げる。それにカーナは小さく頷くだけだった。
一人状況がわからないラズィ。
「どうして? やってもみないのに」
「ありがとう、ラズィ。気持ちは嬉しいけど、放っておいて。リクスもごめんなさい」
「カーナ!」
「ラズィさん……無理を言わないで」

782 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第9話-5 投稿日: 2004/01/29(木) 20:11 [ mtDWjutM ]
「リクスまでなんでそんなことを……!」
 一人憤るラズィに、カーナは複雑そうな笑顔で答えた。胸に秘めていた真実を、
「Ladyには……いいえ、ワイバーンには、白魔法は効かないのよ」



 夜、カーナは一人でバルクルムの砂丘にいた。傍らには穏やかに眠る竜がいる。
 月は中天を刻み、ゆっくりと沈んでいこうとしていた。
 砂を踏む音がして、振り向くとそこには気落ちしたラズィの姿。
「カーナ」
「……リクスを放っておいていいの?」
「うん…」
 彼は身の置所のないようにして、立ちすくんでいた。
「何か用?」
「一言、謝らないとって」
「何を?」
「僕は何も知らなかったから」
「知らないことは別に悪いことじゃないわ。それいったら、そもそも教えなかった私が悪いんだし」
「理由を聞いてもいい?」
「………話さなかった理由かしら」
「うん」
 カーナは竜を撫でていた手を止めると、身を包んでいた毛布に視線を落とす。
「毛布持ってらっしゃいな」
「それなら大丈夫、持ってきたから」
「用意周到ね」
 彼女はほんの少しだけ微笑んだ。作り物ではない笑顔は随分久しぶりに見たかもしれないと、
ラズィは遠くで考えた。
「あれは、私がバストゥークいた頃の話よ」
 カーナは緩く目を閉じると、そう語りだした。

               <続く>

783 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/30(金) 09:34 [ MOKIGx/U ]
群青キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!

ガルカの中の人、とても面白かった楽しかったありがとうヽ(´∀`)ノ
そう言えば竜騎士まだ取ってねぇなぁ、、

784 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/30(金) 11:47 [ Llcyu5qA ]
>>783
以前にも、突っ込もうと思ってたんだが…

群青(ぐんじょう) ではなく、群雄(ぐんゆう)な?

それはともかく、ガルカの中の人 乙華麗!
新シリーズの呪詛 期待して待つ

785 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/30(金) 12:09 [ 0TeD45Ik ]
>>784
いや、783は群雄じゃなくて上の作品のことを指してるんでは?
【空に浮かぶ「群青」の軌跡】の「群青」ね。

786 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/30(金) 14:20 [ dpXJaxLE ]
群青ニャ━━━━(゚∀゚)━━━━ソ!!!!!



なんか最近話をいいとこで切ってる方が多いような・・・

ツヅキガキニナッテショウガナイヨママン

787 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/30(金) 14:36 [ 1oLQjEC2 ]
群雄は群雄で、FFの渋いSS載っけてるそんなナイスHPがあったり

それはそうと久々に来たらいろいろキテタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
ガルカの中の人お疲れ様です、ありがとうございました。

788 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/01/30(金) 19:11 [ Llcyu5qA ]
_| ̄|○ 正直スマンカッタ

789 名前: 初めての冒険 第2話 1/2 投稿日: 2004/02/01(日) 04:34 [ gRtgspNQ ]
第二話 ウィンダス森の区 〜初夏・旅支度

シャムの家の台所には日持ちする食料――ようするに保存食の類がいろいろとため込んである。
だから、シャムの家ではこんな会話が日常的に行われていた。

「こんなにため込んで、どうするの?」
「何を言うか、何があっても問題がないように、次に打つ手に困らないように、
 備えをしておくのは当然だろう?」

シャムの父親の口癖は、「備えあれば憂いなし」だ。
そんな父親に影響を受けたのか、シャムもいろいろとため込む癖があった。

「よいしょっと」
がさごそと、ベッドの下にしまっておいた木箱を取り出す。
この何の変哲もない木箱に、シャムはあまった小遣いや、手伝いをしたときにもらった
お駄賃などの思いがけない収入をため込んでいた。

ひぃ ふぅ みぃ よぉ・・・・

小銭のギル硬貨を一枚一枚数えていく。
彼の計画を実行するためにはどうしても、有る程度の元手が必要だった。

「何か合ったときの備え」

こんな時に使わないでいつ使うというのか。

1652ギル・・・子供が持つにはかなりの高額。
ただし、旅の資金にするにはちょっと厳しい。
とりあえず、シャムはウィンダスからサンドリアへ行くための手段を考えることにした。

ウィンダスからサンドリアへ向かう場合、問題となるのは当然「どうやっていくか?」
ということだろう。
一番安全で、しかも速いのは飛空挺を使って、ジュノ経由で行くこと。
しかし、飛空挺に乗ることが出来るのはよほどの金持ちか、高ランクの冒険者ぐらいだ。
シャムのような一般家庭の子供が乗ることなど不可能なので、これは却下。
次に安全で、速いと考えられるのがジュノ-3国間を結ぶチョコボ車の定期便を使うこと。
どちらかといえば、冒険者以外が使う手段だ。
しかし、これも難しい。定期的にジュノへ向かっているチョコボ車は片道500ギル。
ジュノ-サンドリア間も同じ金額だから、シャムの元手では、サンドリアまで往復できない。
全ての元手を交通費に使うわけには行かないから余計にだ。
というわけで、これも却下。
残る手段は、徒歩で行くこと。危険度は高いし時間もかかる。
けれど、これしか手段はない。
ルートとしては二つある。
完全に陸路でジュノを経由して向かうルート。
そして、マウラからクォン大陸へ渡るルート。

そう、シャムの計画とはサンドリアまでロアンに会いに行くこと。

790 名前: 初めての冒険 第2話 2/2 投稿日: 2004/02/01(日) 04:36 [ gRtgspNQ ]
ウィンダスから出した手紙はだいたい二週間くらいでサンドリアへ届く。
サンドリアからの返信も同じぐらいで届く。
だから、だいたい1〜2ヶ月にいっぺんぐらいの割合でロアンとは手紙のやりとりをしていた。
3度目の春まではふつうに返事が来ていた。
その手紙を出して二週間目に返事が来なかったときは気にしていなかった。
きっかり二週間で返事が来ることはむしろ珍しいぐらいだったから。
三週間、四週間とすぎるうちに不思議に思った。ロアンは約束を破るような人間じゃないから。
その後も、何回か手紙を書いた。どの手紙にも返事は無い。
たくさん泣いた。

泣いてばかりいるから、ロアンは僕に返事をくれないのかもしれない。
ふと、そう思った。


今にして思えば、顔から火がでるほどささやかな理由。
そしてあまりにもつたない計画。


夏の初め、緑の色が徐々にその色を深め、サルタバルタから乾いた風が吹き渡る。

シャムは、魔法学校に通っている。成績は中の下か下の上と行ったところ。
相変わらず泣き虫なシャムは、魔法が失敗したと言っては泣き、同級生にからかわれたと言って
は泣き、ある意味問題児としてその名を馳せていた。
ただ、一つだけ教師たちも認めない訳にはいかない美点がシャムにはあった。

一度決めたことは簡単には諦めない、不屈のねばり強さ。

シャムは出発の日を魔法学校の夏期休暇の一日目に決めると、旅の支度を始めた。
親や教師が知れば止めるのは分かり切ったことだから、ばれないように。ゆっくり、こっそりと。

景色が夏の色を深めていくのに合わせて準備は進む。
用意した荷物は、森の区のゲートの外に隠してある。
あまり大きな荷物を持って家を出るときっと親にばれてしまうから。
用意した荷物は、革袋に詰めた食料、納戸の中にあった父親が若い頃に使っていたらしい
古いローブと古い杖。それから魔法の地図。

そうして、夏の休暇が始まる数日前、いつでも出発できる支度が整ったシャムは二通の手紙を書いた。

一通は両親に宛てたもの。

「ロアンに会いに行ってきます」

もう一通はロアンに宛てたもの。

「今から会いに行くよ」

両親への手紙は机の引き出しに仕舞い、ロアンの手紙はいつものように宅配人へと預ける。

夏の休暇の始まりの朝。
シャムは遊びに行くふりをして家を出た。
森の区のゲートをくぐり抜け、隠していた荷物を取り出す。

古いローブと、古い杖。
帽子屋のおじさんの手伝いでもらったお気に入りのとがった帽子。

ぎゅっと革袋を握りしめると、シャムは北へ向かって歩き出した。

791 名前: 1/3 投稿日: 2004/02/01(日) 14:17 [ 86P1oQkQ ]
[ ようこそ、ハウスへ ]

はじまり。

「ご主人サマ、朝ですにゃ!起きてくださいにゃ!」
「う〜ん。あと5分・・・。」

「にゃー。起きてくれないなら、コンボしちゃいますにゃ!」
「う〜ん。あと3分・・・。」

ゴッ!ゴッ!ゴーン!

「ご主人サマ、おはようございますにゃ。」
「エ、エマ・・・。お、おはよう・・・。ア、イタタ・・・。」

アタシの名前は、エマ・ワトソン。
ウインダス生まれの、ミスラの女の子。
アタシはオーサワ家政婦紹介所に所属する家政婦で、
このハウスで、ご主人サマのお世話をさせていただいてます。
これまた、毎日、大忙しなのです。

「ご主人サマ、朝ごはん、用意できてますにゃ。
冷めないうちに、食べてくださいにゃ。」
「うん、わかった。ありがとう、エマ。」

「ご主人サマ、お味はどうですかにゃ?」
「うん。美味しいよ。」

シャリ、シャリ。

「にゃ!ご主人サマ、トリビューン(新聞)は、
ごはんの後にしてくださいにゃ。」
「あ、うん。ごめん、ごめん。」

この方が、アタシのご主人サマ。
ちょっとドジで、お間抜けで、お調子者だケド、
優しくて、頼れる方。
アタシ、ご主人サマのこと・・・。

792 名前: 2/3 投稿日: 2004/02/01(日) 14:18 [ 86P1oQkQ ]
「ごちそうさま。」
「はいにゃ。じゃあ、食器、片付けますにゃ。」

「あ、そういえば、モーグリは?」
「にゃ?モグさんなら、奥で盆栽のお手入れしてますにゃ。
呼んで来ますかにゃ?」

「いや、いいよ。じゃあ、モーグリにも伝えておいて。」
「はいにゃ?なんですかにゃ?」

「僕、今日は遠出するつもりなんだ。だから、今夜は帰らない。」
「にゃ?急ですにゃ!どうしてですにゃ?」

「ん?大丈夫だよ。明日の昼には帰るから。
だから、久しぶりにのんびり過ごして良いよ。」
「そんにゃ・・・。でも、ですにゃ・・・。」

ご主人サマは冒険者。
だから、クエストとか、ミッションとか、
色々な冒険をしてるんだけど、
アタシ、本当は心配してる。
ご主人サマには、危険なことして欲しくない。

「じゃ、モーグリによろしく。行って来ます。」
「あ、にゃ?待って下さいにゃ!」

「へ?どうかした?」
「お出掛け前の、アレ、忘れてますにゃ。」

「あ!そうか、アレ・・・ね。」

ご主人サマが、アタシをじっと見つめる。
なんだか、ちょっと照れちゃう。

アタシも、ご主人サマをじっと見つめる。
なんだか、ご主人サマも照れくさそう。

そしてアタシは、硬いソレを握り締めると、力強く擦り合わせた。

793 名前: 3/3 投稿日: 2004/02/01(日) 14:18 [ 86P1oQkQ ]
カチッ!カチッ!

火打石から火花が飛び散る。
これは遥か東方に、古来から伝わる厄除け。
ご主人サマが、無事でありますように。

「ありがとう。じゃ、行って来ます。」
「はいにゃ。ご主人サマ、お気をつけてですにゃ。」

アタシは、笑顔でご主人サマを見送ると、
気を取り直して、台所に向かった。
まずは、食器を片付けよう。
それから、お洗濯に、お掃除と・・・。

「にゃー!今日も、がんばるにゃ!」

その夜、アタシは一人で、ベッドに潜り込んだ。
ベッドは、とてもとても冷たかった。
ご主人サマが居ないハウス。
こんな夜は、初めて・・・。

寂しくて、震えた。

早く、明日になれば良いのに・・・。
ご主人サマ、早く、帰ってきて・・・。

アタシは、丸くなって眠った。

794 名前: 0/0 投稿日: 2004/02/01(日) 14:19 [ 86P1oQkQ ]
ゴブサタシテマス。

「ようこそ、ハウスへ」第二部デス。

795 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/01(日) 21:00 [ kXOdF8Sk ]
お帰りなさいませ〜
譚の人のは、微妙にエロに走るような走らないような
雰囲気すきっすよ〜

796 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/01(日) 21:14 [ pVJQZE7M ]
譚の人とは違うようにも思うのだがどうか。
わかんないけど。

797 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/02(月) 01:03 [ s.4JAWlk ]
譚 = マリー = ハウス

すべて同じ人ですぞ
壁|Д`)y━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛~~~~゜゜゜゜

798 名前: 1/3 投稿日: 2004/02/02(月) 02:02 [ d0B9faAU ]
[ ようこそ、ハウスへ ]

それから。

気が付くと、朝だった。
あまり、眠れなかった。

夢を見た、そんな気がする。
でも、どんな夢だったのか、思い出せない。
夢の中のアタシは、笑っていた?怒っていた?
それとも、泣いていた?悲しんでいた?

アタシはベッドから抜け出すと、
窓のカーテンを開けた。

朝の光が、アタシを包む。
優しくて、暖かい。
ご主人サマみたい・・・。

ちょっと、元気になった。

「ふぅ〜にゃ〜。」

アタシは、背伸びをして、眠い目を擦る。
そして、お風呂場へと歩きだした。

脱衣所で下着を脱いで、脱衣カゴに入れる。
それから、お風呂場でシャワーを全開、頭からお湯を浴びた。
お湯が耳に入らないよう、ちょっとダケ、注意。

熱いお湯が、アタシの全身を駆け落ちる。
アタシの体が、徐々に熱くなる。
気持ちイイ・・・。

かなり、元気になった。

「にゃにゃにゃ〜。にゃにゃにゃ〜。」

シャワーを止め、脱衣所に戻り、バスタオルで体を拭く。
なぜか鼻歌が止まらない。

「あにゃ!お着替え、持ってくるの忘れてたにゃ。」

799 名前: 2/3 投稿日: 2004/02/02(月) 02:03 [ d0B9faAU ]
ちょっと、失敗。
でも、まあ、いいか。
アタシは、バスタオルを脱衣カゴに入れると、
お部屋に戻って、タンスからお気に入りの下着を選ぶことにした。

ご主人サマ、お昼には帰るってイってた。
だったら、今日のお昼は、ご馳走にしよう。

「にゃー!今日も、ハッスルにゃ!」

もうすぐお昼。
そろそろ、ご主人サマ、帰って来るかな?

ちょっとお昼、過ぎちゃった。
もうすぐ、ご主人サマ、帰ってくるよね?

お料理、冷めちゃった。
まだかな?ご主人サマ・・・。

トントン!

「にゃ?!ご主人サマにゃ!」

アタシは、急いで玄関に駆け寄ると、
勢い良く扉を開けた。
そして、ご主人サマを笑顔でお出迎え。

「ご主人サマ、お帰りさないですにゃ!」

「あ、にゃ・・・?」
「電報デース。」

「あ、ありがとですにゃ。」

アタシは配達員から電報を受け取ると、
ゆっくりと玄関の扉を閉じた。

電報は、モグさん宛てだった。

800 名前: 3/3 投稿日: 2004/02/02(月) 02:03 [ d0B9faAU ]
「モグさ〜ん、電報ですにゃ〜!」
「クポ〜?誰からクポ〜?」

「えっと、にゃ・・・。」

差出人は・・・・。ご、ご主人サマ?!
アタシは、慌てて電報を開き、中を読む。

『今、ジュノの病院に居る。
しばらく入院しなければならない。
だから、着替えを持ってきて欲しい。』

ジュノ?!入院?!どうして?!

「モ、モグさん、大変にゃ!」
「クポ〜?」

アタシは、モグさんに電報を叩き付けた。
モグさんが、電報に眼を通す。
その時間が、とても永く、もどかしく感じる。
居ても立ってもいられない。
どうしようもなく、落ち着かない。

「ふにゃー!うにゃー!」
「と、とにかく、落ち着くクポ!」

「はいにゃ。あ、でも、どうしようにゃ?どうしようかにゃ?」
「と、とにかく、モグは、ジュノに着替えを持っていくクポ!
だから、エマには、留守番を頼むクポ!」

「そ、そんにゃ!アタシもジュノにイクにゃ!」
「で、でも、クポ・・・。」

「イクったら、イクにゃ!もう、決めたにゃ!」
「クポ・・・。わかったクポ!
モグが荷物をまとめて持っていくクポ。
だから、エマは、先に飛空艇でジュノに向かうクポ。」

「はいにゃ!」

アタシは飛空艇パスを握り締め、ウイン港区へと駆け出した!

801 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/02(月) 08:50 [ yq2od0HE ]
��( ̄□ ̄;) パス持ってんのか!

802 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/02(月) 09:53 [ JbbWAr2U ]
名前欄が「1/3」になってると、来たか!って思っちゃう。
新章楽しみっす。

803 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/02(月) 10:25 [ hQO9ZDxU ]
譚もマリーもハウスも中の人は同じだったのか!
全部好きです(#´∀`)ポッ

パスはどうなんだろうねー?
冒険者以外は全員高い金払って買うのかなぁ?
港に乗ってきたって子供もいるし。
家族が持ってたらタダor格安で乗れるのかも…

ともかくこれからどうなるか楽しみ!

804 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/02(月) 10:39 [ eikBF48k ]
所属してるオーサワ家政婦紹介所とやらがOKなのかもしれん
商業的なこう・・・アレだ

805 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/02(月) 13:17 [ apoSVOa. ]
アレか……じゃあしょうがないな

806 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/03(火) 00:39 [ qfaEJt4E ]
白き探求者
キテタ━━(゚∀゚)━━!!

807 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/02/03(火) 01:50 [ u7cWI7Co ]
ユリノの章 第12話 笑顔の騎士の企み

日も暮れてもう夜。
星空が一面に広がってて、とても綺麗だと思った。
普段から見てないからそう思うのかなぁ?
僕はベンチでただ空を見ていた。そしてある事を忘れてた。
「ユ…リ…ノ…さん…」
テノースの荷物持ちを頼んで歩き回っていたことを。
僕はちらっと彼を見つめる、なんでこんなに買っちゃったのかと思いながら。
「ああ、ゴメンゴメン。もう降ろしていいよ」
と、僕が言った瞬間、テノースは仰向けに倒れた。大量の荷物に潰されて。
「た…助けて…」
テノースは言った。弱弱しい口調で。
まぁ、僕もこんなに持つ自信が無かったから頼んだわけで…

まるで鈍器で叩きつけられたマンドラゴラの如く、潰され、すっかり青い顔の彼。
サポートジョブが黒魔道士なら、トラクタで運ぶんだけれど今は戦士。
荷物の3分の1を持ち上げたときに、誰かに肩を叩かれた。
「やあ、遅いから心配したよ」
アリマー先輩だ。
双子のルイーズとは違って蒼く光る瞳を持った人。
僕は驚いて、荷物を手から滑らせた。テノースのうめき声が酷くなったのは言うまでも無いこと。
「先輩!? こんなところで会うなんて思わなかった…」
「散歩さ、コイツにジュノを見せたいと思ってね」
「…コイツって?」
先輩はにやけながら、ごそごそ動く手提げ鞄を取り出し、ボタンを外した。
鞄の中からは、淡く光る…ふわふわっとした感じのがごそごそごそごそ。
ピンと立った耳に2本のしっぽ、額に輝く赤い石…。

カーバンクルだった。
あらする召喚獣の試練の場へと、導く水先案内人が彼。
最近ではその役割を果たしたのか、その姿を目にすることはあまりない。

…この例外を除いてはだけど。

808 名前: 1/3 投稿日: 2004/02/03(火) 02:12 [ fmqMzewU ]
[ ようこそ、ハウスへ ]

どうして。

ジュノの病院に駆け込んだアタシは、
窓口の受付嬢に、ご主人サマのことを問い詰めた。

どうやら、軽い捻挫のようで、
数日で退院できるらしい。

ホッとした。

大きな怪我でなくて良かった。
でも、怪我をしたことは事実。
ご主人サマの痛みを思い、
アタシのちいさな胸がチクリと痛んだ。

「あ、お部屋はどちらですかにゃ?」
「666号室です。お大事に。」

「ありがとうございますにゃ。」

階段を登り、渡り廊下にでる。
ご主人サマの病室へと急ぐ。

ここは病院だから、走ってはいけない。
もどかしい。
だから、足早にカツカツと歩く。

早くご主人サマの顔が見たい。
そして一言、文句を言いたかった。

病室の番号プレートを確認する。
666号室、ここだ。
アタシは扉を開けて中に入った。

「ご主人サマ?」

809 名前: 2/3 投稿日: 2004/02/03(火) 02:12 [ fmqMzewU ]
そこには・・・。

「うふふ。ほら、真っ赤になってる。美味しそう。」
「あ、う・・・。」

「ね?私が剥いてあげようか?」
「だ、大丈夫です!じ、自分で剥けますから・・・。」

「ふぅん。そうなんだぁ。子供じゃないのね。」
「あ、当たり前ですよ・・・。」

「あ?それじゃあ、私、擦り擦りしてあげようか?」
「け、結構です!ま、間に合ってますから・・・。」

「くすくす。遠慮しなくて、イイのに。」
「イヤ、ホント、大丈夫ですから!
怪我したのは脚ですから、
リンゴくらい一人で食べられますから。」

そこにはご主人サマと、
ご主人サマに寄り添うヒュームの女性がいた。

綺麗な人。
優しい瞳。小さく紅い唇。長く艶のある黒髪。
女性的な胸。細い腰。スラリとした脚。
華奢な腕が、繊細な指が、ご主人サマに触れていた。

810 名前: 3/3 投稿日: 2004/02/03(火) 02:13 [ fmqMzewU ]
「ご・・・。」

ご主人サマ、その人、誰?!
でも声がでない。

息が詰まる。鼓動が速くなる。
思考が加速し、耳鳴りが止まらない。

どうしてご主人サマは、ジュノに来たの?
どうして電報の宛名は、モグさんだったの?

その人が・・・いる・・・から?!

アタシは・・・もう・・・お世話しなくて・・・良いの?

「ご主人サマ、どうして、ですにゃ?」

やっと声がでた。
そして、声と一緒にアタシの瞳から涙が溢れた。

「え、エマ?!」

ご主人サマが、ヒュームの女性が、アタシを見つめる。
アタシはその視線に耐えられず、踵を返す。

「エマ!」

ご主人サマが叫ぶ。
でも、アタシは止まらなかった。
ここには居られない、居たくなかった。

アタシは、その場から逃げ出した。

811 名前: 0/0 投稿日: 2004/02/03(火) 02:15 [ fmqMzewU ]
ゴメンナサイ。

30分待ちましたが、書き込みが無いようなので、割り込みました。

812 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/02/03(火) 02:51 [ u7cWI7Co ]
「相変わらずカーバンクルがお気に入りのようで…」
「ああ、なんせ最初のパートナーだからね」
先輩はカーバンクルをひょいと抱きかかえると、ぬいぐるみのようにぎゅっと締め付けた。
なんだかカーバンクルが迷惑そうに見えるのは僕だけなのだろうか…。

と、考え込む僕に、先輩ははっと口を開けて言った。何かを思い出したかのように。
「キミにお客様だよ」
先輩はそういうと、今まで買ってきた荷物の山に腰を降ろした。
下で潰れているテノースには気がついていないのだろうか?
と、考えてるとキリがない。
とりあえず僕は、先輩の言うお客様を探すことにした。

と、その時。
「こんばんは、ユリノくん♪」
聞き覚えのある声。それも最近、ウィンダスで。
「あり? 僕のこと気づいてない?」
幼い口調。
「ねぇ、下向いてよ!」
…背の低い。

ぶかぶかのナイトAF、少し大きめの盾、そしてグラットンソード。
そう、ウィンダスで一方的に別れたはずの彼だった。
僕は彼の名を呟く。とても低いトーンで。
「サニー…」
「あったりー♪」
サニーはラテーヌを駆け回るウサギのように飛び跳ねて回った。
でも僕は、正直当たって欲しくなかった。
サニーに見つかったと言うことは、そのうちジェイドに捕まる可能性大。というか確実。
このままウィンダスに強制送還されそうなので。
サニーは飛び跳ねるのをやめると、こちらをキッとした目つきで見つめて言った。

813 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/02/03(火) 03:09 [ u7cWI7Co ]
>>811
こちらこそすみません。
パソコンの調子が悪くて…


「話があるんだ。クフィムで待ってるよ」
「え?」
「それじゃ…」
サニーはそれだけを言い残して去っていった。
サニーがここまで落ち着きが良くなるのもなんだか気味が悪い。
「クフィムか…今日はオーロラが綺麗だと聞いたんだが」
と、先輩がかつかつと歩み寄りながら呟く。
「だ…誰なんですか? あの人…」
テノースも荷物から逃れて聞いてきた。
「彼はサニーって言う友達。今はちょっとワケありな関係」
「「ワケありな関係…」」
二人の声が重なった。それも凄く綺麗に。
「さて、帰りますか」
って、言ったその瞬間、僕の肩を掴む4つの手。つまり2人分。
「ユリノさん…ケンカ中なら誤った方がいいですよ?」
「は?」
「オーロラを見ながら仲直り… あの子も考えたなぁ…」
「え、いやちょ…」
「大丈夫ですよ、僕達が見守ってますから…」
「もし仲直りできなかったら相談に乗ってやるぞ。
 一応カウンセラーの免許持ってるから」
「え? え?? ちょっと待ってよ…」
と、話をロクに聞いてもらえず強制連行。
僕もジェイドにウィンダスに戻されるときはこんな感じなのだろうか…。

まぁ、思いっきり抵抗してやるけどね…。

814 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/02/03(火) 03:33 [ u7cWI7Co ]
〜クフィム島〜

先輩の言っていた通り、美しいオーロラが星空を漂っていた。
そこで蟹とミミズを狩っているPTのみんなも、この光景には目を奪われている様子。
と、まぁここクフィムはとても人気の多い狩場で、どうも仲直りする場所には不向きな感じがするのは僕だけなのか…?
たしかにオーロラは綺麗なのは認めるけどね。
でもそれがなかなか見れないから…。

奥へ奥へと進んでデルグフの塔の前。
背後にはインビジとスニークをかけた先輩とテノースがいる。
何故分かるかと言うと、足跡で分かってしまう。みんなもそうだと思うけどね。

まぁそれはともかく、こんな広いところで詳しい場所も記さずに「待ってる」なんて言われても…探しようが無い。
と、その場を振り返ったその時。
「来てくれたんだね」
途端に響くサニーの声。それもすぐ近くで。
恐る恐る振り返ると、案の定、そこにはサニーが立っていた。
そして、もう2人、僕の顔なじみが2人いた。
僕はサニーを無視して彼らに駆け寄る。彼らの名前を呼びながら。
「ニムティム! セリ!」
「「ユリノ!!」」
彼らも僕を呼んで走ってきた。でも様子が違う。 なんとなく…雰囲気で。

両手斧を背負ったタルタルのニムティムが叫んだ。
「ユリノ! 早く逃げるんだ!」
「へ?」
唖然とする僕を差し置いて、獣使いAFを着たヒュームのセリも叫ぶ。
「早く! ここに来てはいけない!」
「な…?」
その時僕は、何が起こっているのか全く分からなかった。
逃げろ逃げろの一点張りの発言が理解できなかったし。
でも、その後すぐにわかった。
それはとても最悪な結果だった。

815 名前: 友の影を追って 投稿日: 2004/02/03(火) 04:19 [ u7cWI7Co ]
ジャキン…。
聞き覚えのある音。 特に戦闘の時。片手剣を構えるときの音だ。
その音に驚いて振り向くと、サニーは笑顔のまま、剣を構えていた。
僕はいったん呼吸を整えて言った。まずは落ち着くことから始めようとした。

「サニー…何をする気?」
「ごめんねユリノくん、お話があるっていうのはウソなんだ」
サニーはクスクスと笑いながら言った。
彼はもう既に戦闘モードに突入済みだった。証拠にその歪んだ笑み。
仲間に対しては活力を与え、敵に対しては恐怖を与える笑顔。
それを常に保つことが出来るサニーは、「笑顔の騎士」と呼ばれているそうだ。

僕はとっさに下がり、ホーネットフルーレを構える。
すると、後ろの方からあの2人の叫び声が聞こえた。
叫び声…と言うか、雄叫びに近い声。
僕はサニーから距離を取って、そっと振り向いた。

ブンッ!
すぐ後ろで何かが空気を切る音。
すぐ後ろでニムティムが僕の首を目掛けて斧を振っていたのだ。
先ほど逃げろと叫んでいた2人が、とんでもない変貌を遂げていた。
瞳は濁って、呂律は回ってなくて、構えもガタガタに崩れている。
一体どうしたのかが分からなくて慌てていたその時、
「サニーさん、薬の効果が出てきましたね」
と、言いながらサニーに駆け寄るヒュム忍者。
「そうだね。いわゆる興奮剤にちょっと細工したやつでも凄い効果が出てる♪」
「これですぐに諦めてくれればいいんですが…」

彼らの話してることが凄く耳に引っかかった。
薬、細工、諦めるとか…。
僕はいかにも冷静を装って話した。
「まさか…僕の友人だと知っててこんなことをしたの…?
 彼らはウィンダスで料理の修業をしてるはずなんだけど…」
「うん、ユリノくんが急に出て行ってから、心配してたんだー。
 そこで僕がこっそり連れてきて、事情を話してね、ユリノくんをウィンダスに戻す協力をしてもらうことに…」
「それ…誘拐じゃないか! しかも薬ってどういうこと!?」
「ユリノくんって強いから、手加減するわけには行かないんだ。
 でも彼らはユリノくんのお友達、どうしても遠慮は生まれるでしょ?
 だから僕らが遠慮を無くして上げたの♪」

「ちょっと待って…」
僕は驚きを隠せないような声を出して言った。あんまりにも度が過ぎてるから。
「なんで…こんな酷いことまでするの…?
 人の友達を狂わせて、戦わせようとするなんて、どういうこと?」
サニーの笑顔が一瞬ふっと消えた。
そしてすぐあの笑顔になり、一言だけ呟いた。

「僕、ユリノくんのこと、嫌いなんだよね」
その言葉と同時に、後ろの二人が突っ込んできた。とんでもなく速いスピードで。
「ゲーム開始だよ、その2人はキミをユリノくんとして見てない。ただの獲物だよ。
 親愛なるコルトくんの次に大切な親友を傷つけることが出来るかな?」

美しいオーロラの揺らめく星空の下で、狂気に満ちた戦いが幕を開けた。
まったく信じられない形で。

ユリノの章 第13話に続く…

816 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/03(火) 18:12 [ zg.b.uIQ ]
何もいわずにここも読め・・・

今はいないフレンドへの手紙
http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/game/6493/1075100271/

817 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/03(火) 20:03 [ arAsd4ZY ]
タルタル戦士は夢をみる、白き探求者、作者様。
いつも作品を、こころまちにしてます。

これからも、がんばってください。

818 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/03(火) 20:51 [ VUoqm1yE ]
「白い心・黒い意志」ってもう書き込まれていないのでしょうか?
昨年11月以来続きが書き込まれていないようですが、見落としたかな。
無邪気な顔したカルティエラティエがなにやらハンツを陥れようとしているのが
気になって気になって。タルタルバインドやってるし。
冒頭の男と女にどうつながるのか、白猫のキリは?などなど楽しみにしています。
「白い心・黒い意志」の作者様、続きをよろしくお願いいたします。
それとも作者様のHPとか有りますでしょうか?

819 名前: 群雄の人 投稿日: 2004/02/03(火) 23:15 [ ERjfxnHk ]
本日連載更新しました〜。

時に質問です。
こちらのスレに上げられている他の作者様のものにくらべ、
うちの文体はかなり違った感じだと思いますが、
読者の方おられましたら良い、悪い等ご指摘頂けますでしょうか。

@、まぎらわしい名前で申し訳無いです。はう。

http://www.infosnow.ne.jp/~sugata/FF/top.htm

820 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/03(火) 23:33 [ 9R67F43. ]
白き探求者 最新話アップされてるど〜




キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!!

821 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/03(火) 23:59 [ Vv0FeJzI ]
>818
同士!
同じく待ってます、でも最近気が付いたんだけど
もしかして作者さんココのURL知らないんじゃ?
もしそうだったらどうやって知らせれば・・・・

822 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/04(水) 03:35 [ Q6BgWbHM ]
>>819
今やってる忍者話、司馬遼太郎っぽいw
モンスターを主役クラスに据えてるあたりがユニークで好きでつ。
オーキッシュのセルビナ攻防戦でガクだけ真っ先に沈んでイーグルアイだけ
炸裂しそこねた件にはorz…(当方狩人)

823 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/04(水) 09:46 [ pdEpPAeo ]
>>822
漏れはナウシカの土鬼帝国思い出したよ
何はともあれキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

824 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/04(水) 10:14 [ peI5HL5g ]
>>816
面白いね、そっちも。むちゃくちゃなのも有るけどねw

825 名前: たましいの記憶・2 投稿日: 2004/02/04(水) 12:48 [ 0BkbfE/Q ]
お久しぶりでございます_(._.)_
Wiki書庫管理人様、申し訳ありません。
この話はゆーーーっくりと(作者の都合につき)続いたりするのです。

ここの雰囲気からは遙かに浮いておりますが、、
第一話は
http://kooh.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/fswiki/wiki.cgi?page=%A4%BF%A4%DE%A4%B7%A4%A4%A4%CE%B5%AD%B2%B1

第2話をアップさせて頂きます(ぺこ)

826 名前: たましいの記憶・2 投稿日: 2004/02/04(水) 12:48 [ 0BkbfE/Q ]
たましいの記憶 第二章 真昼の夢・真夜中のリアル

細い指が器用にブブリムグレープを摘むのが見える。
小さなタルタルのキルルが抱えたかごに、ぽとんぽとんと
それは規則正しく落ちてくる。

エルヴァーンほどは背が高くないだろうか。
ヒュームのような体つきでもない。
「あなたは誰なの」
苦笑して、彼は答えた。「ゴースト」
それは真夜中、タロンギの荒れ地深くに浮遊するもう一つの彼の姿。
「わたしが聞きたいのは、、、」
「僕はもう、ゴースト以外の何者でもないんだよ」

陽の光。実る葡萄。手慣れた様子でそれを収穫する彼。
この光景は何だというのだろうか。
「君たちが聞いたことのあるクリスタル戦争よりも、
もっともっと昔の話だね」

「あの時の君と同じだ。僕はもう、戦いたくなくて、ここへ逃げてきたんだよ」

827 名前: たましいの記憶・2ー2 投稿日: 2004/02/04(水) 12:50 [ 0BkbfE/Q ]
小さな村が出来た。果実を育て、暮らす人々。
そこへ、戦い手をほとんど失った彼の国の軍が逃れてきたのだという。

傷ついた彼らに手を伸ばした彼の胸に、
銃口がぴたりと向けられた。
それから、長い間の記憶はないという。

「死ぬって言うのは、本当に怖ろしいことだね。僕の中の人間の心は、
その時に奪われてしまった。
今の姿では外に出られない真昼に、昔のことを少しだけ思い出すんだ」

そして夜が来る。彼が人の心を忘れていくときが。

キルルは少しずつ、通りかかる冒険者のために治癒魔法を覚え始めた。
ゴーストにもたれながら、治癒魔法のスクロールを開く。
びくっ、とゴーストの体が震えるのを感じる。

今はもう。
治癒魔法でさえ、彼を傷つけることしかできないのだ。

              第2話__E__

828 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/04(水) 14:53 [ RE0Lon8E ]
ttp://ifrite.sp-net.ne.jp/modules/pol/novel/anthologys.cgi?action=html2&key=20021227193244
ttp://ifrite.sp-net.ne.jp/modules/pol/novel/anthologys.cgi?action=html2&key=20021228195903
ttp://ifrite.sp-net.ne.jp/modules/pol/novel/anthologys.cgi?action=html2&key=20030109140511
ttp://ifrite.sp-net.ne.jp/modules/pol/novel/anthologys.cgi?action=html2&key=20030126204845
ttp://ifrite.sp-net.ne.jp/modules/pol/novel/anthologys.cgi?action=html2&key=20030608160441

だれかこういうのん書いてくれ

829 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/04(水) 18:55 [ T7aIdqKY ]
>>819

ここのと文体が違うのはしょうがない。
ここは制限があるから、細かい描写はある程度省かないとやってらんない。
群雄さんのとこみたいに細かい描写増やしたいけど、
ストーリーに支障が無いくらいまで割愛してるってのが、実際だと思います。
創作設定好きよ、けっこう

830 名前: 1/4 投稿日: 2004/02/05(木) 02:01 [ SxVo6HBs ]
[ ようこそ、ハウスへ ]

おしまい。

気が付くと、夜だった。
どうやら少し眠ってしまったようだ。

思い出してみる。

病院を飛び出したアタシは、
あてもなくジュノの街を駆けた。

そして、思い切り叫んだ。

「ご主人サマの、バカーーー!
バカ、バカ、バカーーーーーー!」

そして、思い切り泣いた。

「うにゃあ、あん、あっあ!ひっ!え、えっぐぅ!
あう、あああああああああ!」

そう。

アタシは、駆けて、叫んで、泣いて、疲れ果て、
近くにあったベンチに腰を落とすと、
そのまま眠ってしまったのだ。

感情を爆発させたので、少し落ち着いた。
先程よりは、冷静に物事を考えられる。

「ご主人サマ・・・。」

ご主人サマのことを考える。
胸がドキドキした。
やっぱり、アタシ、ご主人サマのことが・・・。

空を見上げると、星が輝いていた。
その瞬きは、アタシに何かを語りかけているかのよう。

831 名前: 2/4 投稿日: 2004/02/05(木) 02:02 [ SxVo6HBs ]
「そうにゃ。逃げちゃダメなのにゃ。
アタシの気持ち、ご主人サマの気持ち、はっきりさせるのにゃ。」

アタシは立ち上がり、病院へと歩き始めた。

病院の面会時間は、とうに過ぎていたが、
かまわず、アタシは病院の中に入った。

夜の病院は、とても静かで、
まるで時が止まってしまったかのような錯覚。

アタシだけが、動いている。

アタシは、ゆっくりと階段を登り、渡り廊下を進む。
そして、ご主人サマの病室の前で立ち止まった。

ここにきて、全身が緊張した。
意識して、呼吸を整える。

アタシは、静かに病室の扉を開けた。

そこには、ご主人サマがいた。
あの人は・・・いなかった。

ご主人サマはベッドに座り、
アタシをじっと見つめている。

「ご主人サマ・・・。」
「エマ・・・。」

「ご主人サマ、あの人は、誰ですにゃ?」
「エマ、誤解だよ。」

「答えて下さいにゃ。」
「彼女は、この病院の看護婦だよ。」

「そんなの、嘘ですにゃ。」
「嘘じゃないよ。」

832 名前: 3/4 投稿日: 2004/02/05(木) 02:02 [ SxVo6HBs ]
「じゃあ、どうして、ご主人サマはジュノに来たですにゃ?!
どうして、アタシには何も教えてくれないんですにゃ?!
あの人に、会うからですにゃ?!」
「それは・・・。」

アタシの頬が、熱く濡れた。

「エマ。それは、違うよ。」
「何がですにゃ?どう違うですにゃ?」

「エマ。窓のカーテンを開いてみて。」
「ごまかさないで下さいにゃ!」

「開いてみて。そうすれば、わかるから。」
「そんなの、わかんないですにゃ!」

ご主人サマはそう言うと、アタシに微笑んだ。
アタシには、その訳がわからなかった。
ご主人サマは、アタシがカーテンを開くのを待っている。
アタシは、訳のわからないまま、
しぶしぶ窓に近づいて、カーテンを開いた。

病室に光が差し込む。
そういえば、今夜は満月。
月の光が、アタシを、ご主人サマを照らした。



ご主人サマの手元が光っている。
否、ご主人サマの持っている鉢植え。
そこに咲いた一輪の花が、青く、白く、輝いていた。

「これ、月光草って言うらしい。
友達から聞いたんだ。
クフィムには、月夜に咲く綺麗な花があるって。
だから、これ、どうしてもエマに見せたくて。
それに、エマ、前に言ってたよね?
『アタシもモグさんみたいに盆栽、始めようかにゃ〜?』って。
だからクフィムに、この花を取りに来たんだ。
この花、色々探してやっと見つけだんだ。
それで、エマの喜ぶ顔を想像してたら、
ちょっと油断して、崖から落ちちゃった。
あはは。僕ってドジだよね。」

833 名前: 4/4 投稿日: 2004/02/05(木) 02:03 [ SxVo6HBs ]
ご主人サマが、優しく語ってくれた。
ご主人サマは、アタシの些細な一言を、
自分の危険よりアタシのことを、
想っていてくれたのだ。

「ご主人サマは、バカですにゃ。」

また、アタシの頬が、熱く濡れた。

「それに、ドジで、お間抜けで、
お調子者ですにゃ。救いようがないですにゃ。」
「エマ。」

「でも、優しくて、いつもアタシを支えてくれますにゃ。」
「・・・。」

「アタシ、ご主人サマのことが、大好きですにゃ。」
「エマ・・・。」

月の光に照らされた二つの影が、寄り添い、そして重なる。

「エマ、愛してる。」
「ご主人サマ・・・。」

「怪我、早く治して、帰ろう・・・。」
「はいにゃ・・・。」

二つの影が、再び重なる。

帰ろう、ハウスへ。
ご主人サマとアタシ、二人のハウスへ。

834 名前: たましいの記憶・3 投稿日: 2004/02/05(木) 16:20 [ 7F6ZhygI ]
今マックから書き込もうとしたら書き込めなくてびびっております、、。
最初構成を考えていなかったので、前回「第二章」でしたが
今回「第三話」で、
今後「話」に統一します_(._.)_(書けるだろうか、、、)

835 名前: たましいの記憶・3 投稿日: 2004/02/05(木) 16:21 [ 7F6ZhygI ]
第三話 遙かに遠い一瞬

陽も弱くなる時間の果樹園で、
キルルはいつかうたた寝していた。
「他人の夢の中で、ぐっすり眠れるのは君ぐらいかもね」
ゴーストがくすくすと笑っていた。
収穫したヤグードチェリーをボトルに詰めて。
「これは糖分が多いからいい酒になりそうだな」
ちょっと指を突っ込んではなめてみるのを眺めて。
ウィンダスが戦乱に巻き込まれる前のような、
キルルが冒険者を志す前のようなあたたかい日常。

陽が暮れて夢から現実に戻るたび、キルルは苦しくなる。
どうして、この世界がせめて彼にとっての現実ではないのだろう。

危険と知られて冒険者もそう通らないタロンギの荒れ地。
「ここがあなたの村だったの?」
闇夜の中、モンスターの姿に戻ったゴーストは何も答えずにふわりと遠ざかった。

836 名前: たましいの記憶・3-2 投稿日: 2004/02/05(木) 16:22 [ 7F6ZhygI ]


彼が何をしたというのだ。
死んでしまったという、
ただそれだけの、しかしどうしても覆せない、ただ一つの一瞬のことなのに。

身体は朽ちて放置され蘇生する人もいなかったのだろう。
身体を失い、記憶のほとんどを失い、この世に思いの残る魂だけが、
行き場なく空に浮かんでいる。

「競売、いってくるね」
彼の夢の中の果樹園で収穫したブブリムグレープを抱えて、ウィンダスへと歩く。
「気をつけてね」
そうゴーストに言ったら、彼はくすっと笑ったようだった。
確かに、モンスターに対して言う言葉ではないだろう。

死にたかった冒険者が。
生きたかった魂を前に、途方に暮れる。
自分には何も出来ないのだ。何も出来ないのだ、と
心の中で呟き続け、サルタバルタを越えてウィンダスへ向かう。

   _vol.3 End_

837 名前: たましいの記憶・4−1 投稿日: 2004/02/05(木) 20:48 [ 7F6ZhygI ]

第4話 氷のクリスタル


タロンギに戻る頃には真夜中を過ぎていた。
いつもに増して静かな、地図の隅の小さなゴーストの住処。
何かをずっと見つめているらしいゴーストに、
キルルは「どうしたの?」と声をかけた。

ある方角に少しだけ身体を動かして、
彼は身を隠した。

その方向に。
迷い込んで傷ついたのか、傷ついてたどり着いたのか。
初期装備の剣を握りしめたヒュームが倒れていた。
息は弱く、今にも消え入りそうだ。
本職ではない白魔法を何度もかけ続ける。
白魔法では、キルルは本来の自分の半分の力しか出せない。
追いつかない。傷口がふさがらない。他の白魔導士が通るあてなんてない。
握りしめた手の力が抜けてゆく。

ぱたり、とその手が地面に落ちる一瞬前、
ヒュームは祈るような眼をキルルに向けた。

蘇生魔法。まだ間に合うに違いない。何日か前にウィンダスの魔法店で
手に入れたばかりだ。
しかし。キルルはゴーストを振り返る。彼だけでなくこの場所に住む
沢山の行き場のない魂が、蘇生後の衰弱した人間が放つ血の匂いを
見逃してくれるだろうか。

朝まで待つには長すぎる。それではもう間に合わない。

838 名前: たましいの記憶・4−2 投稿日: 2004/02/05(木) 20:49 [ 7F6ZhygI ]

『僕らを先に』
声が聞こえた。聞き慣れた、ゴーストの声だ。
『僕らを先に倒してくれ、キルル、君は黒魔導士だ。僕らを相手にするのには
慣れて居るんだろう?』
「・・・待って」
『今のうちに。』
「わたしもう、殺したくないって、言ったじゃない?」
『僕ももう、人の心を失いたくないんだ。お願いだ』

何も言えなかった。歯を食いしばった。すうっと息を吸って。ファイガIIIの詠唱を始める。
スクリーンのような真っ赤な光の向こう、
あっけなく、ゴースト達は消えていった。いくつかの、冷たく氷色に光るクリスタルを残して。
これは彼らがずっと凍り付かせてきた心だ、と思った。

倒れたヒュームのところに駆け寄る。
少し休んで魔力を取り戻し、レイズを詠唱する。
ふわりとヒュームの身体が浮き上がったところに、何度かケアルをかけた。
「しばらく休んでて」
何も言わず、まだ少年らしきヒュームの戦士は頭を下げた。

衰弱が解けて、少年は息を付いた。
「助かりました。でも、どうしてこんなところにいるんですか?」
「それは、、」
ゴーストが。

そのゴーストは、さっき自分の手で。
自分の目の前で燃えていったばかりではないか。

涙が止まらなかった。
おろおろする少年を前に泣き続けた。
右手に氷のクリスタルを握りしめて。
左腕にキルルのまだ抱えていたかごには、
売れ残った、ゴーストの夢の果樹園で取れたブブリムグレープが
甘い香りをたてていた。

Vol.4 _E_

839 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/05(木) 22:41 [ wtaiwGu2 ]
あぁ、、なんかホノボノっつうかまったりつぅか、なんつぅか良い感じだなぁ

840 名前: たましいの記憶・5−1 投稿日: 2004/02/06(金) 16:08 [ Axcf4KPs ]
第五話 Nowhere

まだ一人で歩くには危うい少年を連れて、
キルルはしばらくウィンダスに滞在した。
「ウィンダスって言う国があるって聞いて。
緑の多い綺麗な国だって聞いて、来てみたくなったんですよ。」
少年は無邪気に笑った。
「まだぼくは修行が足りないですね」
「凄かったです、あの時のキルルさん。目を開けたら、モンスターは全て消えていて。」
「ぼくは戦士の練習をちょっとしただけなんですけど、ヒュームは魔導士でも
やっていけますよね?ぼく、キルルさんみたいになりたいなぁ」

マックスと名乗る少年は目を輝かせる。
彼に罪などあるはずはない。

「これじゃあ国に帰ってもかっこわるいですよね」
そう言う少年に、とにかく家に連絡を取るようにと言って、
冒険者養成ギルドへの推薦状を書いた。
彼は自分のようにはならないだろう。キルルは思った。
死の重みにつぶされる事などないだろう。

「バストゥークから、ずっと一人で歩いて。砂丘をなんとかやりすごして。
はじめて船に乗って、ものすごくでかいタコを倒す人たちを見て。」

書類提出を待つ間、マックスは横で喋り続けた。
「ここで修行できるのかなぁ、魔法の勉強も出来ればいいなぁ」

その顔を見ながらふと思った。ゴーストは。
まだマックスとそう年が変わらなかったのかも知れない。

841 名前: たましいの記憶・5−2 投稿日: 2004/02/06(金) 16:08 [ Axcf4KPs ]
キルル自身にもいくつものオファーが届いていた。
行方不明者、の棚に自分のファイルがあった。
黒魔導士としての出張依頼の中に一つ、耳の院からの魔法教官の依頼。
栄えある抜擢だ。これを受ければ、もう、戦わなくてすむ。
子供たちに魔法を教えて。今まで、自分がしてきたことを忘れて。

ゴーストの夢の果樹園に差す陽の光を忘れて。

闇に紛れる黒いクロークを着て、ギルドを抜け出した。
森の区の噴水のはしに座って、空を見上げた。
淡い雲に隠れて光る月。

「帰ろう」そう思った。
彼が待っているはずなどなくても。

荒れ地の隅にある、どこにもない世界に。

   Vol.5 「Nowhere」_E_

842 名前: たましいの記憶・6−1 投稿日: 2004/02/06(金) 16:09 [ Axcf4KPs ]
第六話  願い

真夜中のタロンギに浮遊する魂たちの姿はなかった。

当たり前だ。

手に掛けた自分が一番よく知っているはずだ。

キルルは地面に座り込んだ。もう、涙も枯れてしまったろうか。

「ゴースト、あの時何故わたしを助けてくれたの?」
死に取り憑かれた冒険者の末路など、よく聞く話だ。

あるものはさらなる死を求め。その手により多くの血を求め。
あるものは自分が手に掛けたものと同じ運命を。

彼は自分にその道を選ばせなかった。

そして自分は、この場所にいることを望んだ。

どこにもない果樹園に差す光。甘い葡萄の香り。
器用に農作業を続ける手を見ていたかった。
くすくすと笑う声を、いつまでも聞いていたかった。
彼がとうの昔にこの世にないものだと知っていても。

もうどんな痛みも味あわせたくなかった。

それなのに。

腰のポシェットから、彼らが残した氷のクリスタルを取り出した。

涙で火照った頬を冷たいクリスタルに当てているうち、
キルルはいつの間にか眠りに落ちた。

843 名前: たましいの記憶・6−2 投稿日: 2004/02/06(金) 16:11 [ Axcf4KPs ]
目を覚ますと。

チェリーと強いアルコールの匂いがした。

「おかえり」

小さなグラスを掲げて、ゴーストが笑った。

丸いテーブル、ぎしぎしと音を立てる木の椅子。
テーブルの上のボトルはこの間仕込んだキルシュだろうか。

一挙に、沢山の光景が頭をよぎった。
目を閉じた少年の顔。自分が放った炎。
ひらひらと、消えてゆくゴーストの姿。

「ありがとう、よくやったね」
ゴーストはぽんぽんとキルルの頭をなでた。
「無事だったの?」

「無事って言えばいいんだろうか」

一気にグラスを空けて、ゴーストは言った。
「まだここにいる」

何日か飲み続けたのだろうか。閉じられた窓。
「君も飲む?」

まだ発酵の短いキルシュはきつい生のアルコールの匂いがする。
グラスを受け取りながら。ヒュームの少年の顔がよぎって、混乱した頭でキルルはふと尋ねた。
「ゴースト、あなた成人してるの?」

大笑いが聞こえた。
「幽霊の年を聞かれてもなあ」
「・・ごめん、おかしいよね」
「でも、ホントは酒なんて飲んじゃいけないのかもね」

「僕が死んだのは、二十歳の誕生日の少し前だったよ」
そしてまた、ぽんぽんと頭を撫でた。

枯れたはずの涙がまたこぼれた。
「わたしのほうが年上じゃないの」
「どうだろ?僕の方がずっと前に生まれてるはずだよ」

いつもは背が違いすぎて見えないゴーストの顔を見る。
淡い茶色の髪。深い緑色の眼は、確かにキルルの知る人種には
見かけないものだった。

「本当はね」

ゴーストはもう一度一気にグラスを空けた。

「君が僕を倒してくれたら、消えられるかもしれない、ってちょっと思ってた」

「消えてしまいたかったの?」

「だって、ここに残ったままじゃ無理だから」

「何が?」

「僕は、もう一度だけでも生まれ変わりたいんだ。もう一度本当の世界に生まれたいんだ。」

テーブルの上に、長い時間が流れたようだった。

「やっぱり無理かな、自分と同じ人種はこの世にいない、長い長い時間が経ちすぎた、
 まして僕はゴーストという名で沢山の人を殺めてしまった。

 でも、君に会っていろんな事を思い出したんだ。人間として生きていた頃のことを。
 誰かが許してくれるなら。もう一度生きたいんだ。」

「・・ごめんね、ゴースト」

「君は立派にやるべきことをやったじゃないか。おまけを期待した僕が甘かっただけだ。」

「ごめんね、あなたをここから解き放つことも出来ずに、痛い思いをさせて」

テーブルに突っ伏したキルルに、いつもの調子のくすくす笑いが聞こえる。

「君は謝ってばかりだね」
「だって」

「一番目のことなら、仕方ない。不可能なんだと思うし。
 二番目のことなら。僕は平気さ。もう、慣れてるよ。」


  Vol.6 「願い」_E_

844 名前: セイブ・ザ・アワー・ワールド 投稿日: 2004/02/06(金) 17:26 [ HyMysIzE ]
そんなわけで、13話アップしました。すこし報告が遅れました。

最近の私は例のM爺さんに3連敗中格闘家なのですが、
「限界」を超えるというのは、現実にはいったいなんなのでしょうか。
ある一定のレベルに来たときに自分の「限界」を感じるのはいいとして
なぜそれが墨やら紙やら菌を持ってきたり、変な形の氷をM爺さんに投げつけたり、
果てはかくれんぼの鬼役をすることで、突破できてしまうのか?
爺さんになにか秘密を伝授してもらえるのでしょうか。
きっとその秘密は世界の強者に共有されている凄いテクニックなのでしょう。「オーラ」みたいな。

と、このように、仮想世界を現実の模写である小説に引き上げる為には
ゲーム上の都合でも一定の説明をつけなくてはなりません。
その説明を読むことも、この手の小説の楽しみなのですが、
説明とはいえぶっちゃけそれは個人個人の妄想であって
当然それは作品ごとの差異があったり、
下手したら後々のパッチで公式の説明がでてきて「ああこの妄想どうしよう」みたいな。

何がいいたいかというと、つまり
ほかの小説の妄想と僕の小説の妄想で、食い違っている言い訳です。
しかもあっちの小説面白い・・・orz

ではどうぞ。
ttp://kooh.hp.infoseek.co.jp/?page=%A5%BB%A5%A4%A5%D6%A1%A6%A5%B6%A1%A6%A5%A2%A5%EF%A1%BC%A1%A6%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9

845 名前: Overture 1/4 投稿日: 2004/02/06(金) 18:47 [ C3Gfe54g ]
第1話 導きの光 誓いの咆哮


―東サルタバルタ・西の見張り台

「どの位昔のことかは忘れたが、その時も私は戦いの中にいた気がするよ」
「ん、あぁ…」

東に抜けるヤグードの伝令を見張る傭兵が2人。
初春とはいえ空気が乾くこの時期の見張りは、まだ毛布が手離せない。
遥か高くまで透き通った空が、寒さを一層引き立たせていた。

「まるで戦うために生まれてきたみたいだな」
「…生まれたから戦うんだろ、生きる事に意味なんて無い。
 生まれたからには、穏やかに笑って過ごしたいんだろ、俺達もヤグード共も」
「だから、奪うのか?」
「そう。そして守るんだ、奪われたくないからな」
「…久しくこうして夜空を見上げたことなんて無かったよ」
「ガルカのくせに細かいこと気にするんだな」
「細かいこと…か。はっはっは、ヒュームはウィンダスで育つと神経が太くなるのか?」
「ふん、悪いかよ」
「いやいや、すまん。お前はウィンダスの空気がよく似合うよ」
「…しかも白魔道士だしな、いい笑い種だよ」
「ふふ、それも似合ってるさ」

怒ったような嬉しいような表情を見せて毛布をグッと上げる。
ガルカは顔を下げ東をじっと見据えていた。
月と星の眩しさに、影すら消えそうな夜だった。

846 名前: Overture 2/4 投稿日: 2004/02/06(金) 18:48 [ C3Gfe54g ]
タンッタンッタンッ…
「オウス!アミ!」
ひょこっとタルタルの頭が覗く。
「遅いぞリオン、何してたんだ?」
「ごめんなさい、ちょっとワインを温めてて遅くなりました」
自分の体の半分はありそうな水筒を背中から下ろしニコッと笑う。
「街の方の様子はどうだ?」
「とても静かですよ、最近は動きもなく皆ゆっくり眠れているようです」
「そうか、それは結構な事だが…」

ウィンダスとヤグードの争いは何十年と続いているが、先人の功績により休戦協定が結ばれた。
メリファトとタロンギをヤグードに、サルタバルタとブブリムをウィンダスの土地とし
拙い均衡を保っていたはずだったが、ある日それは突然崩れ去る。
「協定条約を違反した、我々ヤグードに西サルタバルタを差し出し信頼を回復させよ」
心当たりのないウィンダスは彼らの拠点に大使とその護衛を出したが、一人も戻らなかった。
そして戦いが始まり今に至る。

「あまり気を張るなよオウス!せっかくの月と満天の星だ、今夜は奴らも来ないだろうよ」
そう言ってグッとワインを煽る。
「飲みすぎるなよ…それとな、女なんだから股を広げるな」
「俺はだいじょぅ…」「わ・た・し!」
「ふぅ、何度も言葉遣いを直しなさいと言ってるのに。」
「はいはい!わかったよ…ごほんっ、あーあー…私、ワインがもう一杯欲しいの可愛いタルタルさん」
「ダーメッ!」
やれやれ、という表情で2人を見つめているオウス。
さすがに今夜は大丈夫かと少し肩の力を抜いた瞬間。

ヒュンッ!バン!バン!バン!
夜空を一閃、北東に真っ赤な炎が上がった。

「む!合図だ、リオン!」
「うん、知らせに行ってきます!すぐに駆けつけるよ。先に応援に行ってあげて」
東サルタバルタには3つの見張り台がある。
西の湖、中央の川、そして北東のタロンギとの境界。
見張りは3人で行い、敵勢を発見したら各場所の魔道士が空に魔法を打ち合図する。
湖担当の魔道士は東サルタバルタのアウトポストに向かい、仲間に知らせる手はずだ。
「アミ!」
「はいはい、準備はできてるよ。まったく…何もこんな日に来るんじゃないよ」
「上がったのは3発、どうやら敵は大勢のようだ。タロンギの隊と合流だな」

847 名前: Overture 3/4 投稿日: 2004/02/06(金) 18:49 [ C3Gfe54g ]
崖を上り切った辺りから地鳴りのような声が響いていた。
「予想以上に大勢のようだな」
いつのまにか出てきた雲に月が隠れたと思った一瞬、刃物が擦れ合い火花が舞う。
「オウス!あそこだ!」
「ああ…」
グッと腰の片手剣を握りしめ、端にいるヤグードの固まりを水平になぎ倒す。
「数は30程か、こちらはまだ10人。乱戦はまずい…」
ウィンダスという土地柄、魔道士や狩人は豊富だが盾になれる者は少ない。
暗黒騎士のオウスであろうと、ここでは矛より盾を持たなくてはいけなかった。
「どんどん増えてくるぞ、このままじゃ厳しい!」
「…北だ!皆、北の遺跡まで走れ!黒魔道士は先行し、現場から合図を一斉に上げてくれ!!」
「俺が連れて行くぞオウス!」
「ああ、頼んだ」

指示を飛ばして振り向いた瞬間、敵の侍の長刀が振り落とされた。
「ぐっ!タロンギ隊の隊長よ、聞こえるか!?私と囮になりながら後退するぞ!狩人は援護を頼む!!」
刀を盾で抑えたまま声を上げる。
「オウス殿!我が隊は全員後退を始めました、我々も行きましょう!」
「ああ、だが中々こいつがしつこくて…ね!」
盾で殴るように掃い、強引に突き放す。
起き上がったヤグードが距離を詰めようと向かってきた瞬間、オウスの体に寒気が走った。

「彼の者に未来を見せるな…ブリザガ!!」
一瞬にして敵のグループに氷が覆いかぶさった。
足元でリオンが息を切らしている。
「ふぅー、大丈夫ですか?」
「ああ、助かった。今のうちにあの塔まで走るぞ!」
走り疲れてペタンと座っているリオンを抱きかかえ、北西へ走りだす。
月を隠していた雲は晴れ、追ってくるヤグード達の表情は一層不気味な物に感じられた。

848 名前: Overture 4/4 投稿日: 2004/02/06(金) 18:51 [ C3Gfe54g ]
リオン、後ろの様子はどうだ?」
隊のシンガリになって遺跡まで走るオウス。その肩の上からリオンが後方確認する。
「魔法から逃れた数匹が追ってきています!」
「グォォォォ!!」
ヤグード達の唸り声と足音が混ざり2人に迫っていた。

ボゥン!バンバンバンッ!

「先頭は到着したか…しかし、まずいな」
「オウス、降ろして下さい!もう一度足止めしてみます!」
「ダメだ…む!リオン、伏せるぞ頭を抑えろ!」

「放てー!!」
ヒュン!ヒュン!ヒュヒュン!!
オウス達と入れ違いに数本の矢が鋭く空気を裂く。
たまらずヤグードの勢が後ろに仰け反る。
顔を上げた2人の前に美しい銀髪がなびいた。
「遅いぞ、マティアル。」
「ふふ、すまない。中々髪がまとまらなくてね」
「言ってる場合か…さぁ、行くぞ。大勢が迫ってきている」
一足先に到着したミスラ小隊と合流し15人となったウィンダス軍。
しかしヤグード達は更に数を増していった。

「オウス!怪我はないか?」
「ああ、少し傷を負った。悪いが頼むぞ」
アミの手より光が放たれ、オウスの巨体を包んでいく。
リオンを地面に降ろし、遺跡の入り口の味方を見渡し声をあげる。

「すぐに奴らが来る、盾になれる者は私とマティアルに続け!」
「弓を持つものは草地に伏せ、援護を頼む!」
「黒魔道士達は闇の中から、白魔道士は前後に分かれてなるべく固まるな!」
「初めに精霊魔法と弓で蹴散らすぞ!リオン合図を頼む。アミは前衛の支援を頼むぞ」
「傷ついた者は遺跡へ退避していてくれ!」

「ウィンダスへ向かわせるわけにはいかないぞ!叫び声で奴らを引き寄せる!皆、奮い立て!!」
『おおおおおお!!!』
「魔道士達よ!もう一度上空へ魔法を!!」

先程よりも強い光が、花火のように遺跡の上に輝いた。
「開戦だ!!」

                                つづく

849 名前: Overture作者(´・ω・) 投稿日: 2004/02/06(金) 19:01 [ C3Gfe54g ]
こんにちは、最初なので挨拶をさせていただきます。

まず初めに、この作品『Overture』は皆さんの知るヴァナ・ディール
よりも古い時代の中で進行していきますが、実際の歴史を参考にしていません。
投稿は不規則になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。

850 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/06(金) 23:45 [ RdBeqUr2 ]
>>849
GJ!

851 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/07(土) 18:23 [ JpGsJZ86 ]
そろそろage

852 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/07(土) 18:23 [ JpGsJZ86 ]
(´・ω・`)

853 名前: wait 1/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:22 [ QseyxdaA ]
ロンフォールの夜が明ける。
視界を遮る靄の中を、騎士が歩んでゆく。
騎士の右手にはたいまつが掲げられ、左手には手綱…
靄の中から手綱の先のチョコボ、そしてそれにまたがる男が姿を現す。
更にもう一人、チョコボの後ろから槍を携えた騎士が続いた。

口を開く者も、辺りに目を配る者もない。
3人のエルヴァーンは、霧の立ち込める森を、静々と進んでいく。

霧が、二人の騎士の鋼の鎧に朝露をつけていく。
庇(ひさし)の奥の表情は伺えない。
チョコボは重苦しい空気にうんざりしている様だ。
騎乗の男はただ、前を見ていた。
興奮とも冷静とも取れる瞳の奥、心中は量れない。
着古された服をまとっただけの体、その腕は後ろ手に縛られていた。
―――囚人だ。

陽の光とともに薄れていく霧の向こうには、霊峰ホルレーがそびえている。

854 名前: wait 2/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:23 [ QseyxdaA ]
ゲルスバの地に陽光が降る。
オークの築いた野営陣、森を抜け、そこに続く丘の上で3人は歩みを止めた。
男がチョコボから降ろされ、ひざまずかされる。
その前に立つ騎士の手に王国公式を表す紋の入った書類が広げられ、
やがて騎士の声が、響いた。

曰く、
「罪人ヴォーダフォン、王国の宝剣を盗み、獣人オークにその魂とともに売り渡す」
「許されざる罪、なれど女神の慈悲を一度のみ汝に」
「ゲルスバに潜入、宝剣と、栄光あるサンドリアの誇りとを手に戻るべし」
「期限、明日(みょうにち)正午、祝福を持って迎えられんことを」

そして縄を解かれた囚人は、与えられた一振りのビルボと最低限の荷を持って、
ゲルスバ野営陣へと消えていった。

855 名前: wait 3/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:23 [ QseyxdaA ]
チョコボがやれやれという顔で、与えられた草を食んでいる。
ゲルスバを向いて腰を下ろした騎士たちもその横で黒パンにかじりつく…
会話は、無い。

―戻りはしない。槍を肩にもたせかけた騎士はそう考える。
王都に近いとはいえ、オークの砦も近いこの森で、身一つであの男は生きてきたという。
生きる知恵もあったのだろうが、それなりに腕も立つのだろう。
が、ゲルスバに単身潜入など…結局のところ、体(てい)のいい死刑宣告じゃないか。
宝剣とて、ナイフ程度の刃の鞘にそこそこの宝石のはめ込まれたただの装飾品、大した価値はない。
このまま逃げ延びる道もあろう、しかしその先には、国家犯罪者としての、何者からも追われる生活が待つ。
……そして自分達は死刑囚の脱走を防ぐ最初の見張り役、だ。
これが騎士の仕事か!理由はどうあれ敵地に赴く同族を見送ることしかできない。
できる事といえば、奇跡の帰還を女神に祈ること―
「戻りはしませんよ」

隣の同僚が吐き捨てながら立ち上がっている。
彼はヴォーダフォンの犯した罪を、自分より重く考えているようだ。
エルヴァーンとしての誇りを売り渡した、その行為への怒りを隠さない。
彼がチョコボに乗って見廻りに出かけてしまうと、
騎士と槍と、向かうところの無い苛立ちのみが残され―
―騎士は思考をやめた。

856 名前: wait 4/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:24 [ QseyxdaA ]
日が中天に懸かった。

ヴォーダフォンは既に野営陣を抜けようとしていた。
取り戻すべき宝剣は、既にこの奥の砦の司令官の下へ納められたと考えたのだ。
オークとの取引はこの件が初めてでは無く、ゲルスバの地理はおぼろげながらつかめていた。
鼻の利くオークから存在を隠すため川を静かに泳ぎ上りながら、
彼は自身の手で売り渡した宝剣を再びこの手にすることだけを思っていた。

彼の行動に動機は無かった。
あるとすればただ単純に、生きるため、だった。
生きるため知識を身につけ、生きるため剣を振るい、
生きるため、怪しげな男から受け取ったサンドリアの宝剣をオークの元へと運んだ。
そして今生きるため死地へと赴いている。

生きて、何をするのか。
その疑問は彼の脳裏には浮かばない。目前の生が彼の思考の全域を占めていた。
その心中は人というより、野生の生き物に近いのだろう。

857 名前: wait 5/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:24 [ QseyxdaA ]
夕陽がホルレーの峰を赤く染めてゆく。
血を連想してしまうのは戦いに身を置く騎士だからか。
それとも罪を背負った同族の身を案じてか。
やめたはずの思考は、いつともなくまた騎士を襲っていた。

「あの男の心配ですか」
険しい表情に、呆れたように同僚がたずねてくる。
見廻りから戻った彼の鎧には、森をうろつくオークを斬ったのだろう、斑点のように返り血がついていた。
しかしそこからは「騎士としての誇り」が満ちあふれてくるように感じられる。
その彼の盲目的なほど強い眼差しに見られると、返す言葉もつい弁解じみてしまう。
「あの男個人の、というわけではないさ。このところ獣人の動きが不穏だ。
 ゲルスバのオークも日に日に増えているという報告が昨日の会議であったろう」
「・・・森の奴らも動きが変です。複数で行動する者が増えているようなのに、
 報告では襲撃される件数は減っている。その一方で何故か子供を狙ってさらっていく…」
同僚の瞳がゲルスバを射る。その眼には救けを求める子供達が見えているのだろう。

視線を逸らせられたことに僅かに安堵しながら、騎士もまたゲルスバに目をやった。
夕陽が最後の輝きを投げかけていく。
今ゲルスバを染めているのが血の赤ならば、それは誰の血であるのだろう。

858 名前: wait 6/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:25 [ QseyxdaA ]
僕ね、ぜんぜん怖くなんかないんだよ。
オークなんて森で何度も見たことあるし。
よく昼寝してるからさ、木の実とかぶつけてやるんだ、でも起きないの。ぐーって。
昨日はさ、後ろにもう一匹いて、おっきな袋に入れられちゃったんだけど。うん。
でもさ、僕の見たところ、オークのヘイリョクってのも大したことないね。
閉じ込められてた部屋だってぼっろい小屋だしさ。
抜け出すのなんかかんたんだよ、僕はちょっと疲れて眠かったからまだやってなかったけど。
さっきだっておじさんが入ってきたときさ、オークだったら僕、
そこの棒で殴り倒して、宝の一つも持って帰ってやろうと思ってたんだ。
おじさんがしっぽの生えたガルカだったら今ごろ僕にたおされてたね。ばきっ!て。コテンパンだよ。

忍び込んだ砦の倉庫。どうしてこんな所にエルヴァーンの子供がいるのか知らないが、
とにかく宝剣は見つからなかった。
もう少し奥に宝物庫級の倉庫があるが、そちらだろう。
無論警戒も厚く、今までのような完全な隠密行動は無理だろうが。

「お母さんよくいたずらするとさ、『オークがさらいに来ますよ』っておどかすんだ。
 でもそんなのもう怖くないよ。ぜーんぜん。へへ。」

青白い氷曜日の月光が、並んで腰を下ろす二人を窓から照らす。
少年は膝を抱え、視線を落としたまましゃべり続けている。
渡した干し肉にも手をつけない。
いつになったら、俺の指を握り締める手を放してくれるだろうか。

859 名前: wait 7/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:26 [ QseyxdaA ]
子供は護るべきものである、とヴォーダフォンは思う。
だからこそあの少年を連れて歩くことはできなかった。護れる保証はない。

別れ際、少年は泣きも騒ぎもしなかった。ただ出て行く俺を見ていた。
―自分は何をしているのだろう、とヴォーダフォンは初めて「意味」を自問した。
深夜。世界は眠りに包まれ、静寂の世界に彼自身の言葉は、何の障害も無く自身の内に波紋を拡げてゆく。
―騎士団。ここにお前達を待っている者がいる。今すぐに来い。
心の奥で紡がれる言葉は、届くことはない。
が、五体に力を漲らせるには十分だった。

剣を抜く。しかし両手を下げたまま、構えはしない。
宝物倉の周囲には、見張りのオークが3体。それぞれ建物の3方に散らばっている。
そのうちの一匹に狙いを定め、近づいていく。
一足ごとに剣が熱を帯び、冷たい夜気をゆらめかせる。
間合いに入る。剣に炎が起こり、オークが振り返る。

860 名前: wait 8/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:26 [ QseyxdaA ]
斧を振るう事もなく、3体目のオークが兜を割られ崩れ落ちた。
扉の正面に位置していた巨体から鍵束を取り上げ、扉の鍵穴へと差し込み、扉を引く。
―徐々に広がる隙間から灯りが漏れた。

ヴォーダフォンを出迎えたのはオークの魔導師だった。
覆われた顔の表情は読めないが、乱入者同様、驚きに歪んでいることだろう。
一瞬の後、オークの右腕から杖が伸びる。左に持ち替えていた剣で捌くが、
力は流しきれず、身体を部屋の隅に転がされる。
低い視界。その隅の輝きに眼が止まる。
オークが広げていたらしいそれは、積み上げられた装飾品。そして―見覚えのある宝剣。

油断。魔導師の詠唱に我に返る。
隙は突かれた、だがまだ・・・剣を跳ね上がらせ、オークの喉元へ吸い込ませる。
グッ、と不快な音と共に詠唱は止まり、とりあえずの危機は回避した。
しかし集められた魔力が闇に光の帯をひいて四方へと散っていく。
オークに不審感を抱かせるには充分足る現象だ。何人が気づいたか。

オークの喉から剣を抜き、左手に宝剣を取るとヴォーダフォンは、
自身を落ち着かせるように一度、ぐるりと部屋を見回した。

861 名前: wait 9/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:27 [ QseyxdaA ]
一部の宝石には魔力を集める力が宿る。
それをオークは欲したのだろう、だが、何のためか?

ヴォーダフォンは走っていた。プリズムの粉が身体の揺れに合わせて舞う。
先程の宝物倉で見つけた姿を消す秘薬も、既に大部分は身を離れ虚空に消えた。
もとよりこれで逃げ切れるとは思っていない。
彼の匂いはもう覚えられている。初めてオークと取引をした時から。
―あの時、俺はあの騎士たちの言う「誇り」を手離していたのだろうか。

ヒッ、と矢が髪をかすめる。
振り返らずとも追手が近いことは分かっていた。10か、20か。
頭に記憶の限り、ゲルスバの地図を描く。そこに記された出口が一つずつ塞がれていく。
足を止めればオークの波に飲まれる、しかしどこへ向かえば「生き延びられる」!?
―これは・・・罰なのか?

と。

夜明けが訪れた。まばゆい光が追われる者を背後から浮かび上がらせる。
眼前に口を開ける洞穴。ユグホトの岩屋。
それをアルタナの救いと思うのは、罪を負う者には許されぬ事だろうか。

―救いで無くとも。
底の見えぬ深闇へ向かう彼を矢がかすめる。
―これは導きだ。
「信じる」という行為の下、このエルヴァーンは以前の如く思考を消し、目前の生に集中した。

862 名前: wait 10/10 投稿日: 2004/02/07(土) 21:27 [ QseyxdaA ]
洞穴は縦横無尽の拡がりを思わせたが、意に介さず闇を進んだ。
どれくらい経ったか、闇の右からも左からもオークの唸り声を聞いたその時、
彼の身は岩屋の崖を転がり落ちていた。

―意識はある。身を起こすと身体も動くが・・・剣は闇の何処かへ落としたらしい。
どうやらオーク達の足音は遠ざかっていっている。
まだ、まだ生き延びられそうだ、その思いと共に闇へ一歩、足を踏み出す。

何か「違う」空間へ入ってしまった、と感じた。
首筋に寒気が走る。
何者かが、自分を見つめている。この暗闇の中で。
重い頭を無理やりに持ち上げる。
深く、濃い闇に赤く開いた口と、その上に自分を見つめる双眸。
だが視線の主はそれではない。
爛々と輝く双眸の眉間に冷たく透き通る第3の眼。
そこから声が響く。人に非ず、獣に非ず、闇の血族、魔物の声が。

―人間、か。獣が迷い込んだかと思ったが。
  ふむ、こちらの存在を察知して攻めてきた、という訳ではないようだな。
   来るべき闇の王の復活、その時は近いのだ…
  お前は、それを祝いに出向いてくれた客人というわけかな?
 歓迎するぞ―

双眸の持ち主が首をもたげ、自分を見据える。
オークの追って来なかった理由。魔力を宿す宝石の力を借り召喚された、凶なる魔物。
ヴォーダフォンは今、自分が生きるためにすべきことは何も無いと理解し、
それから、初めて「ドラゴン」の荒々しい息遣いに気がついた。


 罪人ヴォーダフォン、宣告、死刑。

 /wait 3

 執行。

863 名前: wait 11/10(overflow) 投稿日: 2004/02/07(土) 21:29 [ QseyxdaA ]
少年が駆ける。
女神の祝福のような朝日の輝きにプリズムの粉が乱反射する。

―数時間前。
再び自分の前に現れた男はサラサラと粉を少年にかけながら、サンドリアへ帰るんだ、と言った。
「おじさんは?どうするの?」
「俺も帰るさ」
男の顔に微笑が浮かんだ、ように思えた。
「だが、この粉で姿は見えないだろう。ロンフォールまで俺を探すな。まっすぐに山を降りるんだ」
男も自身に粉を振り撒き、既に表情は見えない。だがその声からは強い意志を感じられた。

視界が開け、ゲルスバを抜けた、と解ったとき、
前方の丘の上に立つエルヴァーンのシルエットが見えた。

―おじさんだ!
息をついて休めかけた足をまた走らせる。一直線に。
―良かった、無事だったんだね。
 僕の方が遅かったかあ、子供だからしょうがないよね。うん。
 あ、御守りにって預かってたナイフ返さなきゃ。
 なんだか高そうだし、きっと大事なものだから―

朝日を背にしたシルエットは鎧を着け、槍を手にしている。
だが少年には、逆光の影に、あのぼろぼろの服の男の微笑が見えていたのだった。

864 名前: wait 0/0 投稿日: 2004/02/07(土) 21:36 [ QseyxdaA ]
                        -了-

入れ忘れでした。

865 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/07(土) 22:14 [ trZg68eY ]
…息を詰めて読み通しました。
もしかして、プロの作家さんですか?めっちゃすごいです。
このスレでもっかい読み直してみたくなるの初めてだ。

866 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/08(日) 03:35 [ 3uijU1DM ]
ほぉ・・・・

867 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/08(日) 07:09 [ Zq/QTWMw ]
んと… なんつーか
各作者様宛の感想書くのもアレなんで…

早く続きを! もしくは  また違う物語を! クレクレ (`・ω・´)

デモ、セカスノハヨクナイヨネ、タノシミニ、マターリマッテマツ (・ω・)

868 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第10話-1 投稿日: 2004/02/08(日) 18:31 [ tj.vACg6 ]
「空に浮かぶ群青の軌跡」第10話

 おいらLady。
 最近カーナっていうご主人様に会えたばっかりさ。
 ご主人様はカーナ。小さなタルタルだ。

 カーナは気まぐれにいろんなところにいく。
 おいらはそれについていくのがとても楽しい。
 サンドリアから出発して今いるのはバストゥーク。
 何しに行くんだろうと思っていたけど、とりあえず特に目的はないみたいだ。
 そんな振り回される旅も、悪くないな、って思う今日この頃。
 自由に飛ぶのは本当、幸せだ。

869 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第10話-2 投稿日: 2004/02/08(日) 18:33 [ tj.vACg6 ]
>>>>>>>>>>

−半年前・南グスタベルグ−

「腹がたつったらありゃしない」
 憤然と彼女は黒パンにかじりついた。
「カーナ。食事は静かに」
「そんなこと言われなくたってもわかっているわよ」
 つい先ほど、またしても街に入ることを拒否されたことに憤慨する小さな少女。
それに微苦笑しながら、大きな青年は相槌をうった。
「わかっていても、許せないほどの怒り、かい?」
「それよそれ! まったくなんで、私がこんな思いしながら、
せっかくの食事をしなければならないの?!」
 それでも黒パンをぱくつきながら、彼女はそれをぺろりと平らげてしまった。
その上で、まだ食事中の相手の手元を見た。
 体格の違いとはいえ、そこにはまだ大きいパンがある。
 相手をパンを交互に見る。少し考えたのち、ガルカはパンを少しちぎると、
カーナに渡した。
「ありがとう。いただくわ」
「ものほしそうな目で見られていると、こっちの食事が進まない」
「失礼ね。私は成長期なだけよ」

870 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第10話-3 投稿日: 2004/02/08(日) 18:33 [ tj.vACg6 ]
「随分と長い成長期だ」
「あら、タルタルの成長期は長いのよ。知らなくて?」
 真面目に答えたカーナに、彼はからからと笑った。
「さあ私はガルカでも新米だ。世の中に知らないこともたくさんある」
「いいんじゃない? 最初から世の中のことを把握してる人生なんてつまらないわ」
「はは、確かに君の言うとおりだな」
 そうして彼は最後のパンをたいらげた。カーナの手に残るパンも残り少ない。
「で、フィルデ、これからどうするの?」
「私はこれからバルプロに向かう」
「何をしに?」
「………それを聞いてどうする?」
 ため息まじりに、彼、フィルデはたずねた。
答えは、聞かなくてもわかっているような気がしないでもない。
「足手まといはごめんだぞ」
「あら、失礼しちゃう」
 くすりと笑んで、カーナは傍らの竜を撫でる。
「Ladyもあなたが気に入ったそうよ。もちろん私もね」
「タルタルはご飯を与える相手になつくのか?」
「あはは! それもいいかもしれないわ。実際、フィルデのご飯はおいしいし。
理由としては充分ね」

871 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第10話-4 投稿日: 2004/02/08(日) 18:34 [ tj.vACg6 ]
「では私はもう少し食料を多く調達することを心がけよう」
「期待しているわ。じゃ行きましょ、そのバルプロとかいう鉱山へ」
 勇みよく立ち上がったカーナに、彼は微笑んだ。が、
「カーナ、ラテーヌキャベツを残している。好き嫌いはやめなさい」
「………ばれた?」
 その後、苦虫をつぶしたような顔で、彼女はラテーヌキャベツを飲み込んだ。



 バルプロ鉱山。
 クゥダフと呼ばれる獣人たちの手により、人々が追いやられた地。
バストゥークの過去の繁栄を築いた場所でもある。
「うす暗いわね」
「鉱山だからな」
「それに何だか寒いような気がする」
「太陽の光もはいらんしな」
「……会話する気ある?」
「会話を楽しむためにここに来たわけじゃない」
「ごもっともで」
 相手の言葉ももっともだった為、真面目に前方を見据える。

872 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第10話-5 投稿日: 2004/02/08(日) 18:35 [ tj.vACg6 ]
 兔のモンスターと一緒にクゥダフが周囲を闊歩していた。
「見つかると面倒そうね」
「わかっているならば、言うことはない」
「目的の場所は?」
「場所は特にない」
「どういうこと?」
「クゥダフに奪われた認識票を手にいれるだけだ」
「つまり……」
「手当たり次第ということだな」
 言うなり、フィルデの体が白い光に包まれる。すかさず次の瞬間、
その光は傍にいたクゥダフへと吸い込まれていく。それがディアという
白魔法であると理解するのに一拍かかった。
「ちょっと! 戦うなら戦うって先に言いなさいよ!」
 慌てて槍を構え、クゥダフへと身構える。頭上を旋回していたLadyもそれに倣った。
 けれども突進してくるかと思いきや、クゥダフは途中で立ち止まり、
先ほどのフィルデと同様に白い光に包まれる。
「やだ、このクゥダフ白魔道士?」
「いや赤魔道士かもしれぬな」
「冷静に分析しないで!」
「疑問を投げかけたのは君だ」

873 名前: 空に浮かぶ群青の軌跡第10話-6 投稿日: 2004/02/08(日) 18:35 [ tj.vACg6 ]
 げんなりする思いを抱きつつ、彼女は気をとりなおして近づかないクゥダフへと自ら近づいた。
「このデカブツ! 少しは足元見なさいよ!」
「カーナ、口が悪い」
「そんなこと突っ込まないで……って! え?!」
「どうした?」
 立ち止まり詠唱をするクゥダフ。その背後はちょうどカーブがかった道だったため、
フィルデの位置からは見ることはできなかった。それが敗因―――
おびただしいほどまでのクゥダフの群れがカーナの眼前に広がっていた。
「クゥダフが沢山…」
「案外早く見つかるかもしれぬな」
「それ、真面目に言ってる?」
「無論」
 悲しいかな、一体だけと思ったクゥダフは列をなし、カーナとフィルデに襲いかかったのだった。


          <続く>

874 名前: 初めての冒険 第3話 1/4 投稿日: 2004/02/09(月) 01:35 [ eo2eamM. ]
初めての冒険 第三話 東サルタバルタ〜乾季のサバンナ

ウサギと見間違えて、弓を射掛けた。
それがその泣き虫坊やとの初めての出会い。


「えーっと、まずはタロンギ大峡谷に行かなきゃ行けないから」
地図を見直し、道を考える。
タロンギ大峡谷は、東サルタバルタの北に位置する峻険な土地だ。
タロンギ大峡谷そしてその先のブブリム半島のあたりを指す言葉はもう一つある。

コルシュシュ・・・タルタル族の古い言葉で決断の地という意味をもつ。

行ったことのない場所。厳しい土地だという話は知っている。
それでも、その場所を通り抜けなければ、サンドリアへは・・・目的地にはいつまでたっ
てもたどり着けない。
ふと、浮かんだ不安を振り払うように頭を振る。
今から弱気になってどうするというのだろう。道のりはまだ長いのだから、迷っている場
合なんかじゃない。

乾いた風が吹き抜けていく。
その風に押されるようにして、シャムは北へ向かう。
このあたりは、まだ比較的良く知っている部類に入る。
魔法学校では、野外授業も良くやっており、その中にはサルタバルタに点在するホルトト
遺跡の見学も含まれている。
だから、東の塔と呼ばれるあたりまでは、幾度か行ったことがあるのだ。
そこまでの道のりで注意しなければ行けないのは、喧嘩っ早い、ヤグートやゴブリンのよう
な獣人族だけだ。それ以外のこのあたりにいるモンスターは自分が手を出さなければ襲っ
てくることはない。
きゃわきゃわと自分よりも小さなマンドラゴラたちが走り回っている。
見渡せば、モンスターと戦っている冒険者がまばらに散らばっている。

まずは南側のノンピピ川を越え、ヤグートに見つからないようにそっとあたりを窺いなが
らさらに北を目指す。
そうやって、地図を見ながら走り、北側のザンピピ川を越えシャムは自分の選んだ道が間
違っていたことを知った。
目の前に有るのは高い高い崖だった。
タロンギ大峡谷に行ったことのないシャムは知らなかったのだ。
ザンピピ川の北側は大きな崖になっており、タロンギ大峡谷に向かうためにはまず西を目
指さなければ行けないことを。
目の前にそびえる大きな崖を目にしてどうすれば良いかわからなくなったシャムは半泣き
になって、その場に座り込んだ。

そこに矢が飛んできた。
半泣きのシャムは全泣きになった。

875 名前: 初めての冒険 第3話 2/4 投稿日: 2004/02/09(月) 01:37 [ eo2eamM. ]


こんなことを言うと言い訳と思われるだろう。
自分でも言い訳にしか聞こえないから、さもありなん。
それでも、言わせて欲しい。

しゃがんだタルタルは、ウサギによく似ている。

と。


タルタルの少年が足下でぴぃぴぃ泣いている。
彼女がうっかり矢を射掛けてしまったからだ。もちろん、はずれた。
申し訳ないことをしたとは思うし、もし当たっていたら大変だったなと思ってはいる。
が、正直彼女は途方に暮れていた。
足下のタルタル少年は泣きやむ気配がない。
謝ったし、間違えた説明もした。何とかなだめようといろいろ話も振ったのだが、無駄だ
った。
少年が身につけているのは、古いローブに古い杖。一つだけ新しいとがった帽子
・・・そう言えば水の区の帽子屋が新作と言って宣伝していた気がする。
おそらく親の古い装備を引っ張り出してきた初心者だろう。帽子はせめてものおしゃれと
言ったところか。
「悪かった、少年。いい加減泣きやんではくれないか?」
正直、他人に泣かれるのは苦手だ。笑われるのも怒られるのも怒鳴られるのもなれている。
でも、泣かれたらどうしたらいいかわからなくなるのだ。
「ごめんなざい。ぼぐ、なぎむじで・・・」
やっと少年がしゃべった。泣いていて、言葉はぐじゃぐじゃでは有るが、やっと話の出来
る状態になったかと思い少しほっとする。
「いや、泣き虫なのは見ていればわかる。とりあえず落ち着け」
そう言って、手ぬぐいを渡す。ハンカチというしゃれたものは持っていない。
「とりあえず、そこに水は有るし、顔を洗った方が良いだろう」
そういって、川を示す。乾季のサバンナを潤す恵みの水。かつては、大型の獣が水を求め
て闊歩していたため、ミスラ族の絶好の狩り場だったらしい。
今はもうそんな大きな獣を見かけることもないけれど。
少年は、ぱしゃぱしゃと顔を洗うと、彼女の差し出した手ぬぐいで顔を拭いて、少しさっ
ぱりしたようだ。
まだ、少し泣きそうな表情をしているが、とりあえず泣きやみはしたようだ。
「あの、ありがとうございました。ご迷惑を掛けて申し訳有りません」
躾の良い家庭で育ったのだろう。丁寧に手畳んだ手ぬぐいを彼女に返しながら、少年は礼
と詫びを言ってくる。謝るべきはこちらなのに。
「いや、こちらこそすまない。危うく怪我をさせるところだった」
こちらも頭を下げる。そして、ふと気がついた。
新米の・・・駆け出しの冒険者と思っていたが、それにしては少々年が幼すぎるのでは無
いかということに。
もちろん、タルタル族の年齢は解りづらい。しかし、彼女は生まれも育ちもウィンダスだ。
少しはタルタル族の年齢が解る・・・まちがうことも多いのだが。

876 名前: 初めての冒険 第3話 3/4 投稿日: 2004/02/09(月) 01:40 [ eo2eamM. ]

「ところで、君はこれから何処へ?そろそろ日も落ちる。
 ウィンダスへ戻るのならば詫び代わりに送っていくが」
そして、これも気になった点。ここは、袋小路になっている。そこそこに強いモンスター
がうろついてるので、修練をするには丁度良いが、どこかに向かおうとする人間の寄る場
所ではない。
少年は、何処へ?と言う言葉ではっとなったようだ。
「あ、あの・・・僕タロンギ大峡谷に行きたいんですけど、
 地図見て進んだら行き止まりだったんです。道間違えちゃったんでしょうか?」
・・・一瞬聞き間違いかと思った。タロンギ大峡谷?この坊やが向かうには早すぎるので
はないだろうか。
「少年・・・と、いつまでもこの呼び方は失礼だな。名前は?
 私はレイ・アミナスという。レイと呼んでくれ」
「あ、僕シャムザムって言います。シャムと呼んでください」
「シャム、本当にタロンギ大峡谷に行くのかい?見たところ君は初心者だろう。
 まだ行くには早すぎると思うのだが」
このあたりの獣人族に絡まれても死につながる危険が高いだろう。
どう見ても、この少年は旅慣れていない。
「あの、でも行かないと行けないです」
行かないと行けないですという言葉の意味は、いまいちわからなかったが、少年はことの
重大さを良く把握していないように思えたので、言葉を続ける。
「死ぬかもしれないぞ?
 解っているだろう、街から離れるほどうろつくモンスターは凶悪になっていくのだから」
「わかってます。でも、行かないと行けないですから」
「いかないといけない?さっきも言っていたな。私にはよくわからない表現だが」
「行かないと行けません。タロンギ大峡谷抜けなきゃ、
 他国・・・サンドリアへはいけません」
今度こそ、聞き間違いだろう。こんな坊やが、一人でサンドリアだと?
「・・・・ちょっと、まて」
絞り出す様に出した、言葉に少年は本当に不思議そうに答えた。
「はい、何でしょう?」
・・・殴りたくなったのはなぜだろう。こんな坊やが何をしに、あんな高慢ちきなエルヴ
ァーン族の国に行くというのだ。有る程度名の売れた冒険者ならともかく、初心者の・・
・しかもタルタル族の冒険者が行ったって不快な思いをするのが関の山だ。
「君は駆け出し冒険者だろう。なぜサンドリアに行く必要がある?」
シャムは腕を組んで考え込んだ。どうやら、うまく説明するための言葉が見つけられない
ようだ。しばらく、うーん・・・とうなっていたかと思うと。何かを思いついたらしい。
顔を輝かせてこちらを、見上げて告げた。
「僕、確かめたいんです。友達だと思ってたの僕だけなのか
 ・・・何で手紙来なくなっちゃったのか。何があったのか」
・・・ますます意味がわからない。が、この坊やに取ってはとても大切な理由らしい。
とりあえず、先輩冒険者としては止めるべきだろう。この少年では行き着く前に屍となり
かねない。
道行きが以下に険しいか、どれほどの危険が潜むか、彼女はこんこんと説いて聞かせた。

877 名前: 初めての冒険 第3話 4/4 投稿日: 2004/02/09(月) 01:42 [ eo2eamM. ]
結局シャムは納得しなかった。どうしてもサンドリアを目指すらしい。
どうやら、このシャムという名の少年は、見た目に寄らず頑固者で有るらしい。
レイは説得するのは無理という結論に達した。
このままほっといて、ゴブリンの漁師に襲われるのも忍びない。
サンドリアまではついては行けない。せめてタロンギ大峡谷ぐらいまでは道案内をしよう。
「・・・タロンギ大峡谷までの道か、あそこは西の方に迂回しなきゃ行けないんだ。
 案内してやろう」
そう告げると、シャムは顔をあげ、本当に嬉しそうに飛び跳ねた。

「そうだ、そこに面白いものが有るぞ、見ていくと良い」
この無謀な少年に、レイはせめてもの餞として、かつて無謀と笑われた親子の残した軌跡
を教えることにした。
「石碑?」
「ずーっと、昔に地図を書くために世界中をその足で巡り測量してまわった親子がいた
 そいつは、親の果たせなかった夢を受け継ぎ、果たした娘の足跡さ」
誰に笑われても諦めなかった。そうして残された物は今でも、受け継がれ、大事にされて
いる。
その名前を知らなくても、旅をする者なら誰もがその恩恵を受けているのだから。
「世界中を?」
「そう、私もここのと後一つ二つしか知らないが、かなりいろんな処に有るそうだ」
「世界中に残された足跡ですか。素敵ですね」
本気でそう思っているらしい。今までそういうふうに感じたことは無かった。
けれど、確かにそうだろう。
「そうだな」
いつか、自分やほかの冒険者たちの足跡もこんな風に、誰かが見てくれることがあるのだ
ろうか。
ふと、そんなことを考えた。

「で、君は諦めないんだな」
タロンギ大峡谷へ向かう、一本道。別れる前にもう一度だけ確認した。
「はい。心配してくれてありがとです。
 あ、できれば、後2,3日は他の人に僕に会ったこと内緒にしてくれると嬉しいです」
度胸があるんだか無いんだかよくわからない。
すぐ泣くところは、臆病でありとても気が弱い様に見える。
でも、ただの臆病者はこんな無謀な計画たてないだろうし、たとえたてたとしても実行
なんざしないだろう。
さんざん、これからの道行きの厳しさを言って聞かせたのだが、結局行ってしまった。
険しい山道に向かって、とたとたと走っていく後ろ姿を見送りながらレイはふと面白い
気分になった。
酒の肴になる良い話のタネが出来た。
――泣き虫の変わったタルタルの少年の話。

878 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/09(月) 14:50 [ VrelgXCw ]
タル獣待ち・・・・(´・ω・`)

879 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/09(月) 21:56 [ Uf4EvrC6 ]
>>878
タル戦待ち・・・・(´・ω・`)

880 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/10(火) 03:38 [ vrh0TrOk ]
>>874
おもしろかったです

881 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/10(火) 10:45 [ 7RJ9WRoQ ]
関係ないけど、タルタル兄妹の物語ってどんなタイトルだったっけ?
兄妹が両親を探しに旅に出て、ゴブリン姉御みたいなのと出会って(そこまでしか
読んでない)もう1度読んで萌えたり号泣したりしたい……。

882 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/10(火) 10:57 [ vKySU43I ]
にこにこ団だったかな
久しく忘れてたよ

883 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/10(火) 11:01 [ fa73UNTo ]
にこにこ団っすね。なつかしい…。
ストーカー騒ぎとかにまで発展して、最後は(違う意味で)悲しかったっす。

884 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/10(火) 12:00 [ raGM7JPw ]
まだHP残ってるからぐぐればでてくるよ>ニコニコ
楽しみにしてるなら全部ストーリ見てから「必ずお読み下さい」を読むことをお薦め

その上でどう考えるかはあなた次第です
ちなみに鞄鯖では忘れ去られた存在なのでそれ以上は蒸し返さないでね

885 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/10(火) 12:16 [ 6leip65. ]
にこにこ団かー・・・

必ずお読みください を見てなんだ、この作者の態度は!って思ったよ
こんな書き手が居るんだなって悲しくなった

886 名前: Overture 1/3 投稿日: 2004/02/10(火) 18:40 [ 7LVtHrnY ]
第2話 眩暈


―東サルタバルタ・北のホルトト遺跡前

辺りは草木がざわめき、微かに地鳴りを感じる程なのに心臓の鼓動は音を増していく。
先頭に立つオウスの見つめる景色が酷く歪み黒味を増す。

「リオン!!」
「はい!皆さんいきますよ!!せーのっ…」
『ブリザガ!!!』
数発の魔法が炸裂し、嵐のような冷風が頬を裂く。
「我らも続くぞ!放てー!!」
マティアルの合図で四方から飛び交う矢が先頭集団を押し返す。
バタバタと倒れるヤグード。
しかし、それらを踏み越えて手勢は更に押し寄せる。
既に抜刀し構えているオウスの体からは、気の如く湯気が立ち昇っていた。
「行くぞマティアル!うおおおお!!」

ギィンッ!

敵の小刀をなぎ払い、足に一太刀。
盾はモンクの左手を押さえている。
刹那に振り抜かれた右手の正拳突きを受け流し、背中から腹を一突き。
視界の奥では、杖を持ったヤグードの体から不気味な光が漏れている。

「マティアール!!」

美しい模様の入った弓から閃光の如く矢が放たれ、杖もろとも心臓を貫いた。
弓を両刃の片手斧に持ち替え、マティアルが敵の間を縫うように走る。
「厄介な奴は引き受けた!君は壁になれ!後ろは通すなよ!!」
「分かってる、だが…さすがに多いな」
「泣き言なら後にしろよ」
オウスの横に両手棍を構えたアミが飛び出る。
「おい、前に出すぎるなよ、私の傍から離れるな」
「分かってる…よ!」
背中から右肩の先まで振られた両手棍が、鈍い音を残しヤグードを打つ。
「どうだい?俺も結構やるだろ?」

一瞬、やれやれという表情をしたがすぐに気を引き締めなおすオウス。
彼に眠る戦いの本能が、一抹の違和感を訴えていた。

887 名前: Overture 2/3 投稿日: 2004/02/10(火) 18:41 [ 7LVtHrnY ]
「アミ殿!回復を頼みます!」
「皆さん頑張ってください!魔力が切れたら下がって回復を!」
「マティアル隊長!矢が切れそうです!前に出て援護します!!」
刃の交わり、魔法のせめぎ合い、怒号、断末魔。
戦いの音と血の匂いが風に混ざり五感に障る。

「なぁ、こいつら数は多いが…何かおかしくないか?」
「…ああ。急がねばまずいな…アミ!!」
敵の魔法により2人の足元から粉塵が舞い上がり、仰向けに倒れる。
それを見た数匹が不気味な笑い声を上げ飛びかかった。
剣と両手棍を水平に並べ抑えようとするが数の多さに圧倒される。

「オウス!なんとかしろー!!」
「くっ…仕方ない、少々無理をする。回復を頼むぞ」
「…!アレやるんだな!?よし、まかせとけ!いざとなったら…」
「お前の”祝福”はいらんぞ」
ニヤリと笑ったオウスの巨体が邪気に覆われていく。
鉛のように重く冷たい空気を飛散させるように、獣が咆哮する。

「があああああ!!」
その猛りに驚いた敵勢が思わず身を引く。
が、その瞬間には既に左腕が薙ぎ飛ばされ、反射信号が足に届くより先に首が跳んでいた。
立ち上がりその場で一回転したかと思うと、今度はヤグードが仰向けに倒れる。
オウスが駆け抜ける後には鮮血と黒い羽根が舞い、まるで桜の葉のように地面を染めていく。
あまりの禍々しい剣気に、同胞と見間違う者すらいた。

「言葉が分かるなら退け!手加減はできん!2度とこの地を踏むな!!」
剣を振りぬいては盾で掃い、辺りには五体不満足な”破片”が散らばっていく。
邪気を抑えるようにアミの回復魔法が巨体を癒し、残り少ない魔力と弓が援護する。
飛び込むのを躊躇った数匹が目を合わせ、一斉にオウスを討とうとするが
激しい風の前で、塵は為すすべを持たなかった。

刀身が血に濡れ鈍さを増してきた時、場に静寂が訪れた。
暫しの放心状態の後、漂うに死臭に意識が戻る。
東の空は既に白み始めている。

888 名前: Overture 3/3 投稿日: 2004/02/10(火) 18:42 [ 7LVtHrnY ]
「ふぅ…どうやら終ったようだな」
髪を掻き上げながらマティアルが斧を収める。
「…動ける者は負傷者を運べ!白魔道士は回復を頼む!」
違和感は消えない。

クエーッ!ドドドド…。
「マティアル様ー!!」
数匹のチョコボが土煙を上げ近づいてくる。
「おいおい、援軍様は今頃到着かよ!」
文句を言おうと前に出るアミをオウスが制止する。
タッと降りたミスラが息を切らしている、その鎧は妙に汚れていた。
「遅くなりました、申し訳ありません!」
「何があった?」
「はい、2発目の合図と機を同じくしてギデアスからヤグードの軍が向かっていると報告が…」
「大隊長は西サルタバルタの兵力では足りないと判断し、先にそちらの援軍に向かいました」
「して…被害は?」
「それが数の割に手練は少数で、疲弊は大きいですが損害は最小限です」
違和感が増す。

「皆さんが回復したら戻りましょう、何はともあれ脅威は去りました」
「早く一杯引っ掛けて寝たいぜ」
オウスの顔が強張る。
「…なぜヤグードは夜が明けない内に進軍した…?」
「そういや珍しいな、奴ら鳥目だからいっつも明け方にくるのによ」
「…今、西門の守りはどうなってる?」
「数名の見張りがいるだけです。ほとんどの兵は西サルタバルタの守りと街の巡回中ですので…」
「ぐっ…アミ!リオン!マティアル!」

ヒューン!ボゥン!ボゥン!!
東サルタバルタの中央に4度目の合図が上がった。

『!』
「まさか…!」
「アミ、酒はまだお預けだ…すまんがチョコボを貸してくれ」
「…余力のある者は手綱を取れ!まだ終わっていないぞ!!」

消えた違和感が焦りに変わる。
太陽は東の裾から黄金を放射状に放ち、皮肉にも視界を揚々と照らしていた。

                               つづく

889 名前: Overture作者(´・ω・) 投稿日: 2004/02/10(火) 18:48 [ 7LVtHrnY ]
すみません、3番目の西門を東門に脳内補完お願いします。

890 名前: 881 投稿日: 2004/02/10(火) 19:48 [ XAAdgwUI ]
>>882-885
thx

891 名前: 1 投稿日: 2004/02/11(水) 02:42 [ YbKmESrw ]
影たちの宴

 そこはとても薄暗い。
 太陽の光はなく、どんよりとした雲に覆われていた。
 空には光はなく、周囲の岩が、不可思議な色を放っていた。
 そんな淡い光だけが、周囲を照らす。

 ごつごつとした岩が乱雑にあり、茶色い土がほとんどを占めている。
 そして視線をすぅっと延ばすと、何故か急に草が生えていた。
 最初は微かな斑だったそれは、奥へ行けば行くほど、その範囲を広げ、色濃く輝く。
 その中央に、雲と突き抜けるような大きな大きな大木。
 ウィンダスの天の塔よりも巨大な、大樹だった。

 近づくにつれ、大樹には小さな影があることに気づく。
 周囲を漂うもの、大樹に留まるもの、様々だった。
 それは、そんな「影」たちのお話―――。

892 名前: 2 投稿日: 2004/02/11(水) 02:42 [ YbKmESrw ]
>>>>>>>>>>

 ふおおん、と音が鳴った。
 瞬間、もれるため息。
「またかよ……」
 気落ちしたような相手に、隣から笑い声が漏れる。
「人気者で結構なことじゃない」
「たまにはゆっくりしたいよぉ」
「文句をいわない、さぁ、いってらっしゃいな」
 愚痴を言っても始まらないことは知っていた。
 それ故に、大人しく、呟いた。
「いってくる……」
「がんばってねぇ」
 無邪気に送り出してくれる声が、むなしく響いた。


 今度はぼおおん、と音が鳴った。
「お! 俺だ、俺だ!」
「元気だねぇ」
「まかせろ! 気合充分! けちらしてくるぜ!!」
「怪我しないように気をつけなぁ」
 いきまく相手に、微苦笑した。
「土産話を期待していな!」
「はいはい。気長に待ってるよ」
 勇猛果敢に突進する相手を、のんびりと見送った。


 ひゅううん、と音が響いた。と同時に、集まる影の山。
「お、おい、大丈夫か?!」
「うわぁ、すごい傷だらけじゃないか」
「まったく、ひどいことするもんだなぁ」
 影は口々に感想を漏らす。
 そんな声に起こされたかのように、中心にいた影が、こっそりぼやいた。
「……俺、あいつに付き合っていく自信ないよ…」
「まぁ、最初は誰でもあんなもんだよ……多分……」
 周囲に慰めの言葉が満ちた。

893 名前: 3 投稿日: 2004/02/11(水) 02:43 [ NKXvkk7c ]

 今度の音は同時に響いた。
 きゅううん、という音と、ごおおんという音。
「ま、まじか!?」
 影が現れたかと思ったら、すぐにまた消える。
 そんな様子を見ていた周りは、そっと呟いた。
「最近、俺、あいつをこの辺りでみてないんだけど…」
「確かに、クフィムとか、砂丘でしか見てないなぁ」
「私はこの間、巣で会ったわよ」
「おいらは、砂漠でみたぞー」
「……本当、ひっぱりだこだな」
「過労死しないといいけど……」
「まったくだ」
 消えた名前をDukeと言った。


 再びごおおん、と音がなった。
 周囲がそれに青ざめた。
「うは、やばいよ!」
「Mikanいない。どうする!?」
「しょうがない、Luneだ、Lune呼べ!」
「だめ、あいつも出てる」
「めずらしいこともあるもんだな」
「感心してる場合じゃないよ、どうするの?!」
 影たちが騒いでいる間に、再びごおおんと音がなる。
「えっと、えっと……」
「Gabohが、いた!」
「うっしゃ、よくやった」
 影の中で、一人が不満そうに呟く。
「……また、俺か?」
「しょうがないだろ、Mikanがいないんだから!」
「文句いわないでとっとといってきなさい」
「わかったよ……」
 不平不満は言うだけ無駄だと悟っているのか、影は近くの青色の湖にそっと入る。
「いいか、わかってると思うけど……」
「2時間以内に戻ればいいんだろう」
「そうだ、そうしないと正体がばれるからな」
 湖から抜け出た影の頭に、「Mikan」とプレートがついていた。
 プレートの裏には「Gaboh」と本当に小さく、小さく、刻まれている。
「がんばってこいよぉ!!」
 のこされた影たちは、大手を振って、送り出した。


 そして、もう幾度目かわかないくらいに、ごおおん、と鳴った。
 残された、わずかな影は青ざめた。
「や、やばいよ、やばいよ」
「Spike、Belorage、Wawaro、Lady、Vhiki、、、、他。…・・うわぁ、駄目;; 全員いない!」
「……最後の手段しかないのか…」
「仕方ないよ…運がなかったと思おう」
 影たちは口々に、あきらめの言葉を吐いた。
 そんな中、振り切るように、声があがる。
「どこが狙い目だ?」
「クフィムが4、砂丘が2、コロロカ0…・・」
「巣と砂漠は」
「巣は1、砂漠は3ね」
「なら、クフィムか」
「ちょっと待って、ユタンガに、5!」
「よし、OboroとDukeは待機、他は俺についてこい!」
 影が叫ぶと同時に、みな、赤色の湖に入った。
 ぶくぶくと音がする中、影がどんどん消えていく。

894 名前: 4 投稿日: 2004/02/11(水) 02:43 [ NKXvkk7c ]


 ふよよようと音がした。
 同時に影が十何体とあらわれた。
「やったー!」
「成功だぁ!!」
 歓喜の声があがる。
 たくさんの影が、大樹の周りを嬉しそうに飛んでいた。
「今日は、珍しく出動がおおかったなぁ」
「まったく、人遣い荒いわよね」
「俺なんて、休む暇なかったよ……」
「身代わりでいくよりましだろ」
 口々に喜びを口にする。
「でも…一緒にいたほかの人たちには気の毒よね」
「だからぁ、運が悪かっただけだからさ…」
「そうそう。こっちだって自分の身は自分で守らないと」
 どこか痛む良心をさえぎるように、影たちは口をそろえている。
「第一無理なんだってば」
「そうそう」
「あいつら、俺達が1匹づつしかいないって知らないから、頻繁に呼び出すしなぁ」
「人使いあらいしなぁ」
「それを言うなら、竜使いだろ」
 苦笑のような失笑のような声があたりに満ちていく。
「身代わりでもたてなきゃやってられないよな」
「俺…全部、身代わりでしか外いってないんだけど」
「まぁ、そのなんだ……人気の差だから諦めろ」
 うなだれる影は、青い色をした小さな生き物だった。


 ほわわぁんと音がなる。
「ああ、また呼び出しだよ」
「しょうがないよ、2時間たったら呼び出される宿命さ」
「いっそのこと、消えてから2時間だったらまだ楽だったんだけどなぁ」
「でももしもそうなったら、俺達の主人の意義がなくなるぜ」
「そうよ。数少ない外への通路なんだから、大切にしないとね」
「……その割に、この間、ごぶに化けたときの攻撃はすごかったな…」
「あら、竜を竜として扱わないようなやつ、主人だなんて認めてないもの」
「あーあ、言っちゃった」
 口々に、たくさんの言葉がのぼっていく。
 小さな青い竜たちは、今日も呼び出し音に導かれ、外の世界をかけめぐる。

                                <おしまい>

895 名前: 5 投稿日: 2004/02/11(水) 02:44 [ NKXvkk7c ]
【おまけ】

「おーい、あと3匹でたら、最終手段だぞー」
「あ、そのとき私、たまにはゴブじゃなくて、ジャイアントになりたいわ」
「ジャイアントって範囲あったか?」
「せいぜい、ウェポンで我慢してくれ」
「そうそう。さりげなく、範囲攻撃で削るってのが上策なんだから」
「直接やっちゃ、他の人まで巻き込むから、神経使うね」
「まぁ、うまく大リンク起こせたら苦労はないんだけどなぁ」
 口々にぼやく彼らのそばには、一つの大きな台帳が。


Azure Cerulean Rygor Firewing Delphyne Ember Rover Max Buster Duke
Oscar Maggie Jessie Lady Hien Raiden Lumiere Eisenzahn Pfeil Wuffi
George Donryu Qiqiru Karav-Marav Oboro Darug-borug Mikan Vhiki Sasavi
Tatang Nanaja Khocha Dino Chomper Huffy Poumcer Fido Lucy Jake Rocky
Rex Rusty Himmelskralle Gizmo Spike Sylvester Milo Tom Toby Felix Komet
Bo Molly Unryu Daisy Barom Ginger Muffin Lumineux Quatrevents Toryu
Tataba Etoilazuree Grisnuage Belorage Centonnerre Nouvellune Missy Amedeo
Tranchevent Soufflefeu Etoile Tonnerre Nuage Foudre Hyuh Orage Lune Astre
Waffenzahn Soleil Courageux Koffla-Paffla Venteuse Lunaire Tora Celeste
Galja-Mogalja Gaboh Vhyun Orageuse Stellaire Solaire Wirbelwind Blutkralle
Bogen Junker Flink Knirps Bodo Soryu Wawaro Totona Levian-Movian Kagero
Joseph Paparal Coco Ringo Nonomi Teter Gigima Gogodavi Rurumo Tupah Jyubih Majha

 たくさんの名前の隣には、出動中、待機中、身代わり中、と書き込まれていた。
 そして、今日も大樹の元には大きな不思議な音が鳴り響く。
 こおおん、ぼおおん、ふおおん………。

                            <本当におしまい>

896 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/11(水) 02:46 [ NKXvkk7c ]
短編です。
本ちゃんのほうは、今週末にもアップいたします。
というか、会社でしか書き込めないよ、ママン……
週末、会社が開いてれば、書き込めるけど…orz

てか、竜ネタばっかですいません(__;

897 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/11(水) 03:01 [ tLF0kULE ]
>>896

がんばれ竜たち
いつか幸せになれるさ
(* ̄ノ ̄)/Ωチーン (* ̄- ̄)人 i~ 合掌

898 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/11(水) 03:55 [ EDqoMf62 ]
>>886
ブリザガとサブリガって似てない?

899 名前: 初めての冒険 第4話 1/6 投稿日: 2004/02/11(水) 17:12 [ 15Wi2k.s ]
初めての冒険 第4話 タロンギ大峡谷〜けが人とサボテン

傷は思ったよりも、深かったようだ。
無茶をしすぎた。
座り込み、何とか止血する。
失血と毒で頭がぼーっとする。こんな時はあの夢を見るから嫌だ。
あのときから、何度見たのかすら覚えちゃいない悪夢。
とくに、こうして傷を負っているときには。

「ヒカは、いっつも無理ばっかりするんだから」
そうして、この夢を見ると決まって懐かしい、あいつの声が聞こえる。
無茶ばかりしていた自分を、口うるさく叱ってくれた大事な相棒。
「だめだよ〜、冒険者には撤退の判断をすることも大事!」
そうだな。と、答えると、あいつは口癖の様に言った。
「も〜、口ばっかり!」
・・・あいつの言うことをちゃんと理解してれば、あいつは今も生きていたはずだ。
今も、一緒にいて、自分がこんな風に一人でいることも・・・。

ぴたっ・・・。

何かが額に触れる感触がした。
もう、目を開ける気力すらほとんど残っていない。

「大丈夫ですか?」
小さな少年の声。あいつ?・・・まさかな、こんな処にあいつがいるはずもない。
それとも、ついにお迎えでもきたか。
「大丈夫ですか?僕の声聞こえてますか?」
わさわさと揺さぶられる。力は余り強くない。
小さな手・・・タルタル族だろうか。
残った気力を振り絞り、目を開くと小さな少年が、目に映った。
予想通りタルタルだ。
「よかった、気がつきましたか。えと、怪我してますよね、これ飲んでください」
少年が差し出して来たのは、毒消しとポーションの小瓶だった。
・・・せっかくの好意を無碍にするのも悪い。
受け取ろうと体を起こすと、しめらせた布が額から落ちる。どうやら少年が当ててくれていたら
しい。
毒消しを傷に塗り込み、ポーションを口に含む。
ぎりぎりの処まで、落ちきっていた体力が回復する感覚がする。
しかし、ポーションとは・・・薬品の類はそれなりに良い値段がする。
さらっと差し出して良い物でも無いはずだが。

900 名前: 初めての冒険 第4話 2/6 投稿日: 2004/02/11(水) 17:13 [ 15Wi2k.s ]

「大丈夫ですか?」
未だぼぅっとする頭を軽く振り、改めて自分に薬を差し出したタルタルをまじまじと眺める。
「あぁ、だいぶ良くなった。助かったよ」
礼を告げると、タルタル族の少年・・・タルタル族の年齢はよくわからないからもしかしたら、
彼よりも遙かに年上かもしれないがこの際少年で良いだろう・・・は嬉しそうに笑った。
ふわふわの、金色の髪。髪の色は違う。けれど、この少年はどこかかつての相棒を彷彿とさせる
容姿を持っていた。
「それは、良かったです」
身につけている物は駆け出し冒険者が好んで身につけるローブに杖、だいぶ年期がはいっている
・・・もっともこの砂嵐では新品だろうが何だろうが埃まみれで一緒だろうが。
いまいち、初心者なのかそうでないのかが判断つけられない。
自分の仲間以外、見捨てることの多いご時世で、良くもまぁ他人を助けようなどと思ったものだ。
呆れたような気分になる。単なるお人好しだろうが、それでは悪意有る者のカモになるだけだろう。
そのことを注意しようと、考えるが、さらっとポーションを差し出すぐらいだ。
初心者などではなく、その程度のことは先刻承知のそれなりに蓄えのあるただのお人好しだろう。
そういえば、と思い出す。彼の水筒にはもうほとんど水は残っていない、出来ることなら分けて
もらおう。
もし、初心者だとたかる羽目になって気分が悪いが、背に腹は替えられない。
「ついでと言っては悪いが、水を分けてくれないか?水場を見つけられなくてな、
 体力が落ちてるところにモンスターに攻撃をくらってあの有様だったんだ」
「水・・・ですか?」
がさごそと、自分の荷物をあさる少年。
「うーん・・・もう僕の水筒にもあまり残ってませんね。・・・あっ」
困った表情で考え込む少年。当然だろう、人に水を渡して自分が乾いては、本末転倒という物だ。
と、少年はふと何かを思いついたように顔を輝かせた。
「確か、この辺に大きなサボテンが生えてるところが有ったはずです。
 たしか、ものすごくみずみずしくて、2,3日分の水として十分利用できるって・・・
 僕、見てきますね」
言うが早いか、駆け出す少年。
・・・まて、彼もそのサボテンの話は聞いたことが有る。
確か生えているあたりにはゴブリンが多く生息していたはずだ。
あの少年がどのぐらいのレベルの冒険者かわからないが、装備からして、おそらくは白魔道士か
黒魔道士だろう。1対1ならともかく、相手が複数なら命に関わりかねない。
まさか・・・と思う。そんなことも知らないぐらいの初心者か?
だとしたら、あまりにお人好しすぎる。見知らぬ人間のために、おそらく万が一の備えで有るだ
ろう薬品を使うなんて・・・。
あり得ない、そう思う一方で、彼は相棒のことを思い出していた。

901 名前: 初めての冒険 第4話 3/6 投稿日: 2004/02/11(水) 17:14 [ 15Wi2k.s ]

そういうところの有るやつだった。自分が大事とか言いながら、他人のためにいつも何かしていた。
「生き残ることが、大事」
「逃げる判断も必要だよ!」
そんなことを口にしながら、結局最後のところで他人のために力を使って、あっさり女神の元に
いっちまったバカ。
どうしようもないほどの、お人好し。

似ている。容姿もそうなのだが、何よりもお人好しなところが。

今度こそは、死なせる訳にはいかない。
もう、誰も自分のせいで死んで欲しくない。

毒消しで解毒したこと、ポーションで傷をふさいだことで、だいぶ体力は回復している。
自分と少年が協力すれば、無事にサボテンを手に入れることが出来るだろう。
そう判断した彼は、少年の後を追って走り出した。


強い風が、砂を巻き上げながら吹き抜けていく。
目を開けているのもつらい。
服はとうに埃まみれで、髪の毛も口の中もざりざりとしている。
思っていたよりも、ずっと厳しい土地だ。

ここを抜けてサルタバルタにたどり着いたご先祖様たちが、あの土地をサルタバルタ
――約束の地って言ったのわかる気がするな。
そんなことを思いながら、坂道を上っていく。
急峻な坂、切り立った崖・・・この厳しき大地で、ご先祖様たちはどんなことを思って
いたのだろうか。

知らない場所に行くと、ついそんなことを考えてしまう。
人の話や、本で知っている場所。でも、実際に行って見た風景は、聞いていた話よりも
ずーっとすごい。

そんなことを考えながら、シャムは坂道を上る。
たしか、岩陰に入ったところに、群生があるって、鼻の院のお兄さんがいってたよな。
怪我をしている、青年に分けてあげられるだけの水の余裕はない。
だったら、水の代わりになる物が有ればいい。ほんとに単純に考えていただけだった。
だから、サボテンを見つけたときには嬉しくなった。
その周りにゴブリンがいたので、泣き出してしまったのだが。

あーぁ、またロアンに笑われちゃうな。
すぐ泣くって・・・

902 名前: 初めての冒険 第4話 4/6 投稿日: 2004/02/11(水) 17:15 [ 15Wi2k.s ]

彼が追いついたとき、少年はサボテンからだいぶ離れたところで途方に暮れたように泣いていた。
・・・泣くぐらいなら行くなよな。なぜだか思い切りどつきたくなった。
コイツは、いじめられっこだろうなと思う。
「こら、泣くぐらいだったら最初から行かなきゃ良いだろうが」
呆れた思いが、声に滲んでいたのだろう。少年は顔を上げると、泣きながら言い訳した。
「ごめんなさい、僕、取りに行きたかったんですけど。。。倒すの無理だし・・・」
どうやら、危惧したとおり、あまりにもお人好しな初心者だったらしい。
サボテンの周りにはゴブリンが3匹ほどうろついている。
彼の普段の職業なら、あっさり蹴散らせただろう。だが、ここ数日彼はほかの職業を鍛えていた。
さすがに3匹を一度に相手にするのは無理だ。
「おまえ、魔法は使えるか?」
「黒魔法が少し」
一人でつっこむわけには行かない、ならば少年と協力すればすむ話だ。
「・・・俺が、一匹づつ引っ張ってくるから、二人でやるぞ。3匹とも倒せば、
 安全に手に入れられるだろう」
さて、どう反応するか・・・少年の水筒にはまだ水が残っている。
少年はここで無理をする必要など無いのだ。
けれど、きっと少年の答えは彼の予想通りだろう。
本当に、よく似ている。きっとタルタルってのはお人好しばっかりなのだろうなと、そう思った。

「はい!」
予想通りの返事。それでも、嬉しい気分になったのは何故だろう。

久々にすっきりした気持ちで、彼は剣を構えた。

「近づきすぎるな、黒魔法で削ってくれ。あまり、威力があるのは使うなよ、
 おまえの方にいっちまう」
少年は、本当に初心者のようだ・・・というか戦闘したことが無いのかもしれない。
指示を飛ばしながら、そう思う。
何とか、3匹とも倒すと、少年はその場にへたり込んでしまった。

「もしかして、戦うの自体初めてっていわねーよな?」
質問してみると、少年は、てへって顔をした。・・・まさかなぁ。
んなのがこのあたりいるのは問題だぞ。

「サボテン、取りましょうよ。なんとか倒せましたけど、またゴブリンが来るかもしれませんし」
ごまかすように少年が言う。が、言ってることはもっともだ。
本来の目的を果たすため、少年と彼はサボテンの近くまで行き、そっとその茎の一部を切り落と
した。
みずみずしい、果肉。そっと口に含むととても優しい味がした。

903 名前: 初めての冒険 第4話 5/6 投稿日: 2004/02/11(水) 17:15 [ 15Wi2k.s ]

「ところで、助けてもらっておいて今更こんなことを言うのも間抜けだが、
 おまえさん何処に行くところだったんだ?」
サボテンの茎を、3日分ほどの水になるよう切り落とし、荷物の中にしまうと、ふと気になってい
たことを聞いてみた。
「えーと、サンドリアに行くところです。マウラから船に乗ろうと思っているので、
 まずはブブリム半島を目指してます」

ちょっと待て。

「一人でか?」
「はい」
にこにこと返事をする少年。・・・たった3匹のゴブリンに泣いていた少年が、機船航路経由で
サンドリアだと?
「無茶だ。やめとけ」
泣くかもしれないと思ったが、思わず口から言葉が飛び出していた。
「無茶だってのは、言われました。でも、僕行きたいんです」
行きたいんです、で行けるなら誰も苦労しやしないのだ。
「やめとけ、まだ早い。途中でのたれ死ぬのがおちだ」
コイツに死なれると寝覚めが悪い。かつての相棒のことをだぶらせているのは、わかっている。
ただの、身代わり。相棒を死なせてしまったことの悔いを少しでも軽くしたいだけだと他人には
思われるだろう。
それでも、こいつが死ぬのは嫌だ。
「行くなとは、言ってねぇ。まだ早いつってるんだ」
・・・あいつもこんな気分だったんだろうか。
「でも、夏の休暇終わっちゃうし・・・」
「あのなぁ・・・・って今おまえ何つった」
夏の休暇?んなもん冒険者にはない。
「え、魔法学校の休暇終わっちゃうって・・・」
彼は少年のことを初心者の冒険者と思っていた・・・だが、少年は初心者どころではなく、
冒険者ですら無かった。

この日初めて、彼はタルタル族って言うやつに、心底尊敬の念を抱いた。
そして、かつての相棒に向かって心の中で叫んでいた。
「てめー、人のこと無茶っていえるのかよ!」
と。

904 名前: 初めての冒険 第4話 6/6 投稿日: 2004/02/11(水) 17:16 [ 15Wi2k.s ]

こんこんとやめるよう説得した。
少年は頑固だった。
・・・話の聞いたところによると、サルタバルタでも事情を話した冒険者にこんこんと説得された
らしい。それはそうだろう。
どうあがいても、少年はサンドリアまでの旅をやめるつもりは無いらしい。
彼は盛大に心の中でため息をはいた。
「ちょっと、ブブリム半島行くには遠回りになっちまうが、寄りたい場所がある。
 おまえさんもつきあってくれ」
・・・彼は、次の仕事の都合で、そろそろジュノへ向かわなければならない。
が、確かジュノをでるときに、今日あたりマウラにむかうと言っていた知り合いがいたはずだ。
運が良ければ、メアの岩で捕まえることが出来るだろう。
・・・こんなのを一人でほっぽりだすのは、あまりにも心許ない。
せめて、マウラまではその知り合いに同行してもらえれば・・・。
少年は、彼の意図が良く飲み込めないようだった。
それでも、わかりました。と頷くと彼の後をついて歩き始めた。

目的地はメアの岩。白い不思議な建造物。秘法によりくぐることの出来る、ゲートの出口の一つ。

運は彼に味方した。
彼は、馴染みの冒険者に少年を預けることが出来た。
これで、とりあえずマウラまでは平気だろう。

その夜、彼は悪夢を見なかった。
いつも、あの夢を見たときは、2、3日続くのが当たり前だった。
たぶん、あの少年のおかげだろう。
無茶な少年の道行きに幸あれ。
久しぶりの布団のなか、そんなことを思った。

905 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/12(木) 20:58 [ .AqSpgNw ]
ところで、900超えたとこで 提案してみる。

もういいかげん、sageテンプレ張りませんか?
いや、このスレが sage推奨ではない、・・・っていうのなら
いりませんが・・・

たまに・・・まあ、たまにですけど、ageてる人に脊髄とばす人いるし。
テンプレも無いのに いかがなものかと、思っていまして。
住人は、話し合っておかなきゃ いけないんじゃないだろうか。
皆さんは どう思ってますか?
口論するつもりはないです。
討論すべきかなって、思って書いてます。
うまく伝わらないかもしれないけれど・・・

906 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/12(木) 22:18 [ TH1fPZYw ]
ここも姉妹スレじゃ?
フレンドへの手紙
http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/game/6493/1075100271/

907 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/12(木) 23:53 [ k6aoZf2A ]
はやく「キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
って言いたいね

908 名前: てんぷれ案? 投稿日: 2004/02/13(金) 02:16 [ 6Z.ARCBQ ]
【したらば@FF(仮)板】
前スレ:涙たちの物語5『旅が続いて』
http://jbbs.shitaraba.com/game/bbs/read.cgi?BBS=6493&KEY=1069286910

【したらば@マターリ板】
涙たちの物語4 『旅は道連れ』
http://hyakuyen.nce.buttobi.net/FF11log2/1064882510.html
涙たちの物語3 『旅の流れ』
http://hyakuyen.nce.buttobi.net/FF11log2/1058854769.html
涙たちの物語2 『旅の続き』
http://hyakuyen.nce.buttobi.net/FF11log/1054164056.html
涙たちの物語 『旅は終わらない』(避難先)
http://hyakuyen.nce.buttobi.net/FF11log/1048778787.html
(※↑ログ消滅のため【過去ログ図書館】にリンク)

【xrea】
初代 涙たちの物語 『旅は終わらない』
http://mst.s1.xrea.com/test/read.cgi?bbs=ff11&key=042463790
(※↑見れるときと見れないときがあるらしい)

倉庫等
(Wiki)http://kooh.hp.infoseek.co.jp/
(新)http://f12.aaacafe.ne.jp/~apururu/
(旧)http://www.geocities.co.jp/Bookend-Soseki/4886/index.html

------------------------------------------------------------
リンクが激しく切れてるので補正してみました。
【過去ログ図書館】って直リンまずいかな?(汗)

それと「嵐よけのためにsage信仰」ってのは賛成っす。

909 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/13(金) 10:27 [ bb7DNcjM ]
タルタル戦士 まだー

910 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/13(金) 13:21 [ Pez/5sw. ]
すみません、ちょっと質問というかお願いです。
ちょっと思い立って過去スレから「タルタル戦士は夢を見る」だけを
抜き出しているのですが、53〜57話が書き込まれたスレが見つかりません。
>>908さんがまとめてくださった過去スレ以外のところ(重複スレなど?)に
書き込まれたのでしょうか?
該当スレをご存知の方がおられましたら教えていただければ幸いです。

53〜57話自体は倉庫(Wiki)に保存されているのは承知しておりますが、
ナマの書き込み(?)を見たいのです。

911 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/13(金) 15:10 [ k4pfIwcA ]
>>910
【したらば@マターリ板】
涙たちの物語4 『旅は道連れ』
にあります。
消えちゃった板なので、>>908で見れなければ見る方法は
・・・誰かが保存しているのをUPしてもらうとかしか・・・

912 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/13(金) 15:14 [ 3oOJWFbM ]
名無しのトラまだかー

913 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/13(金) 15:28 [ lhVIc.mM ]
>>910さん
>>1 をみれば 良いですよ ↓ 
(Wiki)http://kooh.hp.infoseek.co.jp/

914 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/13(金) 15:34 [ lhVIc.mM ]
あら生でしたか・・・ すいませんでした

915 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/13(金) 16:20 [ N3rc6xzo ]
http://hyakuyen.nce.buttobi.net/
マターリ過去ログ倉庫

916 名前: 1/3 投稿日: 2004/02/14(土) 01:13 [ O6VOQ4yM ]
にゅぅにゅぅ。
アタシはウインダス生まれのミスラ。
まだ小さいケド、冒険者なのにゃ。

「じゃあ、ココに入れて。」
「わ、わかったにゃ。」

「あ!ソコは。」
「あにゃ!上手く入らないのにゃ。」

「くす。大丈夫だよ。慌てなくていいから、ね。」
「は、はいにゃ。」

「そう。そう。ゆっくり、静かに。」
「こ、こうにゃ?」

「そうよ。ココ、いっぱいにして。」
「にゃ。」

「そう、熱くとろけたソレで、いっぱいに満たして。」
「こ、これでイイにゃ?」

「うん!あとは冷やして固めれば完成だよ。」
「ふにゃ〜。疲れたにゃ〜。」

にゅぅにゅぅ。
今日はバンアレン帯で、
ギブミーチョコレートと呪文を唱えれば、
連邦の白いヤツは化け物で、
二刀流に二倍のジャンプに三倍の回転を加えた、
1200万パワーなのにゃ!

917 名前: 2/3 投稿日: 2004/02/14(土) 01:14 [ O6VOQ4yM ]
というのは冗談で、
今日はスイートでとろける、
ビターでせつない乙女の日、
『バレンタインデー』なのにゃ!
だから友達と一緒に、
チョコレートを作っていたのにゃ。

「まだかにゃ?まだかにゃ?」
「う〜ん。もうちょっとかな?」

「ふにゃ・・・。でも、アタシ、手作りって初めてなのにゃ。
美味しくできたかにゃ?ちょっと心配なのにゃ・・・。」
「うん、大丈夫。ちゃんと美味しくできたと思うよ。」

「そうかにゃ?」
「そうよ。」

「うにゃ〜。ドキドキするにゃ〜。」
「くすくす。」

にゅぅにゅぅ。
そんなこんなで、ちょっと時間が経過したのにゃ。

「にゃ!固くなったにゃ!」
「うん。これで、手作り(?)チョコレートの完成です!」

「うにゃ〜!やったにゃ〜!」
「わ〜い。ぱちぱち〜。」

「あにゃ?」
「ん?どうかした?」

「そういえば、そのチョコレート、どうするのにゃ?」
「え?!あ、えっと、私は、その・・・。
そ、そう!お父さんに挙げるの。」

918 名前: 3/3 投稿日: 2004/02/14(土) 01:14 [ O6VOQ4yM ]
「お父さんって、甘党なのにゃ?
チョコレート、十個も食べるのにゃ?」
「うぐぅ!も、モチロン、そうだよ。あ、う・・・。
あ!そ、そっちは、そのチョコレート、どうするの?」

「えにゃ?!」
「ど、どうするのかなぁ〜?」

「え、えっとにゃ・・・。
じ、自分で、美味しくイタダキマスにゃ!」
「へぇ〜。そうなんだ〜。ふ〜ん。」

「そ、そうにゃ!」
「そ、そうよね!」

「にゃにゃにゃ・・・。」
「あはは・・・。」

にゅぅにゅぅ。
そんなこんなで、けっこう時間が経過したのにゃ。

アタシは友達と別れたあと、
作ったばかりのチョコレートを持って、
ここで待ってるのにゃ。

まだかにゃ?もうすぐかにゃ?はやく来ないかにゃ?

にゃ!来たにゃ!いまがチャンスなのにゃ!

とてとて!

「あ、あのにゃ!そ、そのにゃ!
これ、受け取って下さいにゃ!
ちょ、チョコレートですにゃ!」

919 名前: 0/0 投稿日: 2004/02/14(土) 01:15 [ O6VOQ4yM ]
good luck to all,
and please give me chocolate.

920 名前: 910 投稿日: 2004/02/14(土) 09:13 [ qbEQqXDE ]
>>911-915さん、レスありがとうございます。
そのデータ見てて、実際52話とかは抜き出してたんですが
なんで53話以降が見つからないなんて話になったのか自分でもさっぱり・・・  orz
お手数おかけしてすみませんでした。無事抜粋できました。ありがとうございます。

921 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/14(土) 19:23 [ jg/wk1Yw ]
ハートチョコ キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!











送り主はフレのヒゲ・・・・・・・orz

922 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:01 [ 80sH9ekg ]
「名無しの話」の17 −トラ 後編−

「おのれさえおらなんだら!」
牙を剥き出しに跳躍する若虎。
けどタル獣は逃げない。
−大事なトラさんのブラシ割った!
涙の浮かんだまん丸な瞳で、若虎をにらむ。
「往生せぇー!」
若虎の両の前脚が開き
ヴンッ!
タル獣の頭めがけて抱き込むように振り下ろされる。
その必殺の爪が、
ビュウ
空を切る。
ぎゅっと身を縮めたタル獣の頭上を、かすめるようにして。
「な!?」
そして。
着地した虎。見下ろす真下にタル獣。、
「たぁー!!」
全身で跳ねるタル獣。

「…のれー!」
吼えるトラ。
脚を押さえた若虎たちは離すつもりが無い。
それでも、半身は動く。
グイと首をめぐらし、
メリッ
その巨大な顎が、必死に脚を押さえ込んでる若虎の首を捉える。
ビクッ
鋭い牙に鋏まれた若虎の首の筋肉が震えるのが判る。
けど手加減するつもりは無い。
タル獣と若虎。
トラの中の天秤は、もう傾いてる。
一気に引き千切ろうとしたとき、
聞こえた。
ゴギッ!
激しく鈍い音と、
「フギャオゥ!」
悲鳴!
「「「!」」」
驚き送った視線の先。
跳ね転げる若虎と、頭を押さえてしゃがみ込んだタル獣。

923 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:04 [ 80sH9ekg ]
若虎のアゴとタル獣の頭の勝負は、ややタル獣の勝ち。
「あぅ…」
頭を振るタル獣。
ガンガンする。
つ、と鼻血。
けど、顔を上げ、倒れた若虎をにらむ。
−ゆるさないから!
袖で鼻血を拭き
「やぁー!」
挑みかかる。
「こ、の」
やっと顔を上げた若虎。
その同じように鼻血を流す鼻先へ、タル獣の拳。
ビシィ
「ブギャッ」
再度、悲鳴。
鼻は、虎の急所のひとつ。
たとえ小さなタルタルの一撃でも、ダメージを与える事が出来る場所。
ちなみに、どれだけ急所かと身近な例をあげると、
猫の鼻にデコピンすると、一ヶ月は恨まれる。
飼狸の鼻にデコピンすると、一生恨まれる。
これが虎なら…。
そのぐらいの急所だったりする。
さらに、
ビシッ、ビシッ、ビシィッ。
若虎に立ち上がるヒマを与えずに、次々とパンチを決めるタル獣。
立ってなければ、その鼻にも手が届く。
タル獣の拳は小さいけど、虎の鼻は、以下同文。
「おのれ、フギャッ、この、ギャウッ…」
若虎は反撃する間がつかめない。
一旦引いて距離をとればいいのだけど、
−タルタルなんぞに背は見せられん。
無様な悲鳴を上げながら、中途半端なプライドが邪魔をする。
けど、両手両足の指の数ほどパンチを受けて、さすがに我慢できなくなる。
つい痛みに鼻先をそらしたスキをタル獣は見逃さない。
大きく踏み込み
「テャッ!」
全力を込めた頭突きが若虎の側頭へ。
ゴズッ
「グゥ…」
がっくりと動かなくなる若虎。
勝負は…ついた。

924 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:07 [ 80sH9ekg ]
大きく息をつき、
ぺたり
座り込んでしまうタル獣。
そのまま
「うわあ〜ん」
泣き出す。
「トラさんの、トラさんのブラシがぁ〜、ああぁ〜ん、わぁ〜ん」
さっきまでの激しさはどこかへ。
大声で泣いてるタル獣。
「「…」」
呆然としてる若虎たち。
まさかタル獣が勝つとは思っても見なかった。
つい力が抜けて、
ベシバシッ!
あっさりとトラに叩き飛ばされる。
「あぁ〜ん、うわぁ〜ん」
泣きつづけるタル獣へ走り寄るトラ。
その顔は緩んでる。
自分に牙を向いた若虎への怒りはどこかへ。
タル獣を殺そうとした若虎への殺意もどこかへ。、
それほど、タル獣が勝ったことのうれしさが大きい。
「大丈夫か?」
覗き込むトラ。
泣きながらも、うなずくタル獣。
「ようやったなぁ」
その頭をポンポンと叩くトラ。
「ヒック…トラさん…トラさーん」
ヒシッ
トラの太い脚にしがみつくタル獣。
「ブラシが…ブラシが…」
その小さな背中をなでるトラ。
「…うんうん、ようやった、ようやった…」
「…でも…」
「かまへん、かまへん」
タル獣の背をなでながら、
「おまえら、こっち来い!」
すっかり耳を伏せてしまってる若虎たちを呼ぶトラ。
さらに、
「おまえも起きんかい!」
ボコン!
のびてる若虎も叩き起こす。

925 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:09 [ 80sH9ekg ]
「「「…」」」
おとなしく地面に伏せてる若虎三頭。
その前に立ってるトラと、まだ前脚にしがみついて泣いてるタル獣。
「なさけないと思わんか?こんなチビタルに負けて」
とトラ。
チビタル…トラは若虎たちの最初の言葉に皮肉を言ってる。
「「「…」」」
返す言葉のない若虎たち。
「なんで負けたか判るか」
「…」
「タル獣が強いからや。お前らよりもずっと強いからや。そら、タル獣は小さい。強力な武器も持ってへん。
…けどな、強さ言うのはガタイやない。武器やない。心や。心の強さこそがホンマの強さなんや。
心の弱いヤツはどんなええもン持っとっても弱い。強い強い言うてもそんなん表面だけや。最後の最後には、かならずケツまくりよる」
「…」
鼻を真っ赤に腫らした若虎が、ぐぐ〜っと耳を伏せる。
「ワイがコイツと組んだんは、コイツのあやつるに心の強さを感じたからや。一緒にやっていこう思わせる熱さを感じたからや」
「…すんません…」
「すんません、兄さん」
「すんません、坊(ぼん)」
頭を下げる若虎たち。
タル獣の扱いが、「こんなン」から「坊」に変わってる。
虎たちにとっては、強さは全てに勝る。
強さを知れば、素直にそれを認める。
「ワイらがまちごうてました」
「兄さんは、成り下がったわけやない。すばらしいお人と組んではります」
「坊はヴァナ一の獣使いや」
「…世辞はええっ」
スパーン
若虎を張り倒すトラ。
「わかったら、さっさと帰って皆に言うとけ。ワイはもの凄う強い相棒と組んどるってな。文句あるんなら、命がけで来いってな!」

926 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:12 [ 80sH9ekg ]
去っていく若虎を見送って、まだクスンクスンしてるタル獣。
「あのなぁ…」
ちょっとあきれ顔のトラ。
さっきはあんなに強かったのに。
「…ブラシ…」
「割れてもうたんはしょうないがな」
「…うん…」
コシコシと目をこするタル獣。
と、気づく。
手袋をしたまま若虎を殴った、のに、汚れてない。
きれいに白いまま。
「?」
不思議そうなタル獣へ
「ああ、あいつのくれたもンはな、そうなんや。大事に思とる限り、汚れもせんし、壊れもせん。不思議なもンや」
それを聞いて
「!」
はっとするタル獣。
慌てて皮袋を拾いに行く。
−もしかしたら、もしかしたら
半分の期待と、半分のあきらめと、皮袋を探る。
そして。
「なおってるー!」
嬉しそうな声をあげるタル獣。
「ほら、トラさんのブラシ、なおってるー」
飛び跳ねる手には、元通りのブラシ。
割れた跡なんかどこにもない。
「わーい」
さっきまでの涙はどこへやら。
満面の笑みのタル獣。
つられて笑顔で見下ろしながら、ふと、トラは気づいた。
−なんで割れたんやろ−
汚れも壊れもしない。そのブラシが割れたから、タル獣が怒った。本気を見せた。
その本気が、若虎を倒した。
そして、タル獣とトラの関係を納得させた。
−やっぱ、いらんことしいや−
トラは、どこか遠くで、あいつが笑んでるような気がした。
白いヒゲをなでながら。

927 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:18 [ 80sH9ekg ]
「なあ」
「?」
「ちょっと行きたいとこあるんやけど、ええか?」
「うん、いいよ」

ダダーン
バリバリバリ
押し破られる板戸。
転がり込む三下。
「なぐりこみだー」
悲鳴のような叫びに、奥の間からどやどやとカラスが現れる。
「ンだとー!?」
「どこのボケじゃー」
慌てて外へ飛び出せば、散らばる羽毛、累々と転がる見張りのカラスたち。
そして
「なんだてめぇ」
見上げるほどの虎がいる。
隆とした筋肉の強大な虎が、脚下に見張りを踏み潰し、カラスたちを睨み下ろしてる。
その背には、なぜか丸まっちい仔羊が張り付いてる。
「おのれら、ええ噂流してくれたようやな」
ズイと前へ出る虎。
ゾゾと後ずさるカラスたち。
「おかげで、えらい迷惑したわ。…落とし前つけさせてもらうで」
さらに前へ出る虎。
さらに後ずさるカラスたち。
けど
「…ンだとぉ」
迫力に押されながらも、数の多さがカラスたちを元気づける。
「なんのアヤつけとんじゃこら」
「ただの一匹でわしら相手にするんか」
取り囲むように位置を変え
「殺ってまえっ!」
シャシャシャシャ
次々とドスや長ドスを抜き構える。
「ふん」
ぐるりと見回す虎は余裕の表情。
「しっかり掴まっときや」
虎の言葉に
「うん」
仔羊に見えたものが返事を返す。
虎の四肢に音もなく爪が現れる。
轟と咆哮。
そして、悲鳴。

…その日、ある地方のヤグード組が全滅した。

夕暮れの草原をトラが行く。
ザラザラドロドロになったトラが行く。
走るほどでなく、歩くより早く。
テンポのいい歩速。
背にはタル獣。
正装に白いマフラーと手袋のその姿。
なんだかトラの背に仔羊が乗ってるような、毛玉がくっついてるような。
トラの脚運びに合わせてポヨンポヨンとまるまっちいお尻を跳ねさせながら、タル獣はしっかりと掴まってる。
けど…。
「あーすっきりしたなぁ。どや、怖なかったか?」
トラの言葉に答えがない。
「?」
立ち止まるトラ。
と、
スースースー
聞こえてきたのは小さな寝息。
「なんや、寝てもうたんか」
眠ってても、しっかりとトラの毛皮に掴まってる。
「…そろそろ今夜の寝床探そうか…」
夕暮れの草原をトラが行く。
ザラザラドロドロになったトラが行く。
ゆっくりとゆっくりと。
背中で眠る小さな相棒を起こさないように。

−おわり−

928 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:22 [ 80sH9ekg ]
「名無しの話」の18 −チョコ−

その日へ向けて、ヴァナの男たちは希望という名の坂を登る。
けど、その先には二つの運命。
ある者は喜びの頂きで感激の涙を流し
ある者は悲しみの断崖で絶望の涙を流す。
それを分けるのは、ただ一日。たった一つのアイテム。
男たちは、溢れる希望を胸に、その日を目指す。そのアイテムを目指す。
その名はバレンタインデー。
男たちの一年を決するという究極の一日。
その名はハートチョコレート。
男たちの一生さえ左右するという、至高の一品。

…でよかったかな?

「んー、ま、そんなものにゃ」
軽くうなずくミスラ。
「?」
「だれとおはなしー?」
見上げるタル白タル黒。
ミスラの前には誰もいない。
「なんでもないにゃ。と、言うことで!」
キュンと振り向くミスラ。
輪になってヒュム戦たちが座ってる。
狩場のお昼。
食後のひと時。
「チョコあげるにゃ」
差し出した手には、五つの包み。
色紙で綺麗に包んでリボンで飾って。
でも…味も素っ気もない渡し方。
「はあ…」
がっくりとうなだれるヒュム戦。
「あの…もう少し、こう…」
頬染めて校舎裏とか、早朝の下駄箱の中とか…。
それらしいシチュエーションがあるのではと言いかけたところで
「ヒュムさん、いらないにゃ?」
ギロン
睨まれる。
「あ、いや、ありがとう…」
小さくなって受け取るヒュム戦。
「これはタルちゃん。これはエル姉。で、ガルさんにゃ」
それぞれに、決まってるらしい。
「あけていいー?」
とタル黒。
もう食べる気満々。
「どうぞ〜にゃ」
「「「「「いただきます」」」」」
五人の声がそろう。

ガサガサと包みを開くタル白タル黒。
「「うわぁ」」
二人で声を上げる。
現れたのは、おっきなハート型のチョコレート。
しかも白と黒のストライプ。
一口かじって
「「おいしい〜」」
嬉しそうな声を上げるタル白タル黒。
白いのはホワイトチョコ。
黒いのはブラックチョコ。
なんだけど、ブラックチョコも苦くない。
「タルちゃん用の特製ブラックチョコにゃ。苦さ控えめ100%にゃ」
とタル白タル黒の反応に満足そうなミスラ。

929 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:24 [ 80sH9ekg ]
ガサガサと包みを開くエル騎士。
ほんとは女性が男性に愛を伝える為のチョコなのだけど
「…」
タル白タル黒やガル戦にも渡してるから、まあ、深い意味はないだろう。
「ふむ?」
現れたのは、ピンク色のチョコレート。
フワリと広がるバラの香り。
一口かじって
「ほう…」
驚きの声が漏れる。
柔らかな甘味とかすかな苦味のバランスは絶妙。
口に広がる香りは高貴で華麗。
それでいてくどくなく、しつこくなく。
「特製バラチョコにゃ。自家製のバラエキスが決め手にゃ」
とエル騎士の反応に満足そうなミスラ。

ガサガサと包みを開くガル戦。
性別の無いガルカにとってはあまり関係の無い日だけど、チョコはうれしい。
「んー?」
現れたのは豆のように小さなチョコレートの山。
ガル戦の指では一粒一粒食べるのはちょとつらいサイズ。
一摘みほどをまとめて口へ。
「…」
美味しい。
美味しいけど、普通のチョコ。
タル白タル黒やエル騎士のチョコを見てると、なんだか物足りない。
ちょと悲しくなりながら、もう一摘みしようとして
「!」
気づく。
小さなチョコの一粒一粒が、ある形になってる。
それは、ガル戦の大好きなモノの形。
「んーむむむ…」
とたん、悩んでしまうガル戦。
食べたいような、もったいないような…。
「特製型抜きチョコにゃ。たくさん作るの苦労したにゃ」
とガル戦の反応に満足そうなミスラ。

「…」
みんないいチョコをもらってる。
さて、自分のは?
ガサガサと包みを開くヒュム戦。
「あう…」
現れたのは真っ黒なチョコレート。
艶々と黒光りしてる。ごつくて固そう。
そして、その表面には、いっぱいに模様が彫ってある。
「?」
なんだろうと首をかしげるヒュム戦。
見た事の無い模様。
その手元を覗き込んで
「あー、しってるー」
とタル黒。
「これねー、ひがしのくにのもじー」
「…なんて読むの?」
聞くヒュム戦。
「ギリってよむのー」
「ギリ?」
「えーっと…」
しばらく考え込んで
「ぎりのことー」
とタル黒。
「義理と彫ってあるのか」
「んー、よく知ってるぅ」
関心するエル騎士とガル戦。
「あぅ…」
ふたたび、がっくりとうなだれるヒュム戦。
あたりまえの事でも、こうもハッキリと宣言されると、なんだか悲しい…。
「わざわざ彫らなくても…」
一口かじろうとして…
「ん?」
固い。とても、固い。
「んぎぎぎ…」
アゴの力を全開にして、
バキィ
ものすごい音と共に、やっとひとかけらが口へ転げ込む。
ほっとしたのもつかの間。
「う゛…」
苦い。
「う゛う゛…」
とても苦い。
「特製のHNM級ビターチョコにゃ。ヒュムさんには渋くてたくましい男になってほしいっていう親心にゃ」
とヒュム戦の反応に満足そうなミスラだった。
親じゃないけど…。

930 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:25 [ 80sH9ekg ]
夕暮れの通り。
少し肩を落として歩いてるヒュム戦。
「はぁう…」
まだ歯が痛い。
アゴががくがくしてる。
チョコは、どうにか1/3程までかじって根性が尽きた。
残りは皮袋に収まってる。
後は湯煎で溶かして食べるしかない。
−なんかミスラさんに悪いことしたっけ…−
とりあえずは思い当たらない。
と、そこへ。
カシャカシャカシャ
背後から早足な鎧の音が近づいてくる。
「おい」
知った声に呼ばれて振り向くヒュム戦。
瞬間、
バシーン
顔面に、何かが叩きつけられる。
「あででで…」
顔を押さえて座り込むヒュム戦。
涙目になって顔を上げると、歩き去るエル騎士の後姿。
「やる。食え」
背中で言って、振り向きもしない。
見下ろせば、足元に落ちてる包み。
ミスラのそれほどじゃないけど、一応綺麗に飾ってある。
−もしかして。もしかして?−
包みを開けば中身はチョコ。
ちゃんとハート形。
義理の文字もない。
「おおぉぉぉーー!!!」
ヒュム戦の叫びを背に聞きながら、うつむき加減で足早に去るエル騎士の顔は真っ赤。

「にゃー。塩を舐めたら砂糖が甘いにゃ。冷水につかるとぬるま湯でも温かいにゃ。苦いチョコの後の甘いチョコ。これも親心にゃー」
うんうんとうなずくミスラだった。
だから、親じゃないって…。

931 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:28 [ 80sH9ekg ]
そして翌日。
ヒュム戦は狩を休んだ。
熱を出して寝込んでるらしい。
「にゃ?」
首を捻るミスラ。
まさかもしかして、昨日のHNM級ビターチョコが原因?
苦すぎた?
でも、身体を壊してしまうようなチョコに作ったはずは無いのだけど…。
考え込んでると、隣にエル騎士。
「これを」
差し出したのは、紙包み。
開けると中にはチョコの山。
型抜きを失敗したのだろう、割れたり曲がったり。
「味を見てくれないか」
真剣な顔。
やっぱりエル騎士もお年頃。
自分の作ったチョコの味が気になるらしい。
といっても、ヒュム戦には昨日渡した後のはず。
普通は渡す前に味を見てもらうものだと思うのだけど。
「いいにゃ」
と食べかけて…手が止まる。
「…」
メープルシロップの甘い香りに隠れた匂い…。
ミスラの本能が、危険信号を発してる。
「んー、今日もチョコォ?」
運良く又は運悪く、ミスラの手元を覗き込むガル戦。
「ガルさん、食べてみるにゃ?」
「いただきまーす」
言うが早いか、チョコを一掴み口へ放り込むガル戦。
もぎゅもぎゅ。
もぎゅもぎゅもぎゅ。
もぎゅ…。
も……。
ガル戦の、動きが止まる。
顔色が赤くなり、紫を通って青くなり、やがて土色。
そして、ゆ〜っくりと傾いてくガル戦。
地響きを立てて倒れ、そのままぴくりともしない。
「…」
キリキリキリとエル騎士を向くミスラ。
「エル姉…なに入れたにゃ…」
「失礼な!毒になるモノなど入れていない!」
とエル騎士。
「なに入れたにゃ…」
「ククル豆にセルビナミルクとメープルシロップ…」
指折り数える。
「コカトリスの肉にマウラにんにくとワイルドオニオンだ。辛くなるからカザムがらしは入れなかった」
「…」
なんだか、いや〜なものが混じってる。
ミスラの表情に気づいたのだろう、首をかしげるエル騎士。
「力が付くと思うのだが?」
別々ならね。
「…味は見たにゃ?」
「いいや」
きっぱりと言うエル騎士。
「だから味を見てくれと言っている」
「にゃ〜」
ぐた〜っと、耳と尻尾を下げるミスラ。
視界の隅で、倒れたガル戦をタル白タル黒が楽しそうに突っついてる。
−ヒュムさん、これ食べたにゃ…−
ミスラは、心の中でヒュム戦の無事を祈った。
…すでに無事じゃないけど…。

「…あと…ひとくち…あと…ひとくち…」
いやな汗をかいてうなされてるヒュム戦の枕元には、エル騎士とミスラにもらったチョコ。
残りひとかけらになったチョコ。
「あと…あと…」
あと一口。されど一口。
…南無…。

−おわり−

932 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/14(土) 22:35 [ 80sH9ekg ]
ごめんなさい、ごめんなさいm(_ _)m
もうなにから謝っていいやら、ありすぎます…。
とりあえず
売れ残って安くなったチョコをこっそり買ったりしてません。
「ごめんねー、昨日渡すの恥ずかしくってー♪」
なんてこと言ったり言わせたりしてません。
ほんとかな…。

933 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/14(土) 23:00 [ iMlB20oM ]
おお、名無しさん二本立て!
相変わらず良い味出してますな!

…どうでもいいですが、売れ残りチョコが怖い調理人だったりする。

934 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/15(日) 03:13 [ M0VL4J9A ]
あー虎さんすごい好きだなあと思ったら天の瞳っつう本で出てくる
主人公のじーちゃんに似てるんだ。虎さんかっこいいよなあ。渋すぎる。
渋いもの好きな自分にはたまらない登場人物(?)でした。
また次回楽しみにしてます。作者さん面白い作品いつもありがとうございます。

935 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/15(日) 14:06 [ swO0IF7A ]
名無しさんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
良すぎ・・・・・まじ最高です。
これからも、よろしくお願いしますだ〜m(__)m

936 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/16(月) 13:35 [ BKKEm3a. ]
タル獣ちゃん 
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

よかった。待ったかいがあります

937 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/16(月) 15:54 [ 1eObhGr. ]
>それは、ガル戦の大好きなモノの形。
が何のことか分からん俺はここの住人失格?

938 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/16(月) 20:53 [ i03EfWhc ]
>>937
よく投げたりいぢめたりしてるもの・・・だと思うよーーー
ピーーーーーーーーーーー!

それぞれの人に答えがあっても良いと思ったりもした。

939 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/17(火) 04:49 [ 5QnLxFgA ]
白き探求者キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

940 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/17(火) 08:44 [ I4yKZvE. ]
タル戦・・・orz


名無しの話着てター-----

941 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/17(火) 14:47 [ zYX1fh2I ]
白き探求者キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

まってたよーーーーーーーー。
毎度最高っす。

942 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:40 [ G9grFF56 ]
タルタル戦士は夢を見る 第六十二話 涙たちの物語

―― タロンギ大峡谷・メア岩 ――

「その死に体で…何をしようと言うんだい?…トッパラッパ」
「へっ…オイラ、しぶとさが自慢でね」
「ふふ…それじゃあ、何処まで僕を楽しませてくれるか…見せてもらおうじゃないか!」
言い放ったババドラバドが、トッパに迫る、トッパや槍を構え、鎌の刃を受け止める。
「目を覚ませ…アンタは自分を…見失ってるんだよ!」
全身の力を込めて、鎌を押し返そうとするが、押し負けている。トッパの姿勢が崩れる。
「そういう説教は…僕を倒してから言ってもらおうか!」
ババドラバドは鎌を持ち上げ、再びトッパの頭部目掛けて振り下ろす。
急に槍に込めた力が抜け、一瞬ふらついたトッパだが、これをチャンスとばかり、
素早く後退し、逆にババドラバドの背後に回り込んだ!
(意外と…すばやい!)
ババドラバドは舌打ちし、意識を背後に向ける。
(しかし、動きがまるで素人…!)

その時だった。

(……う…!?)
ババドラバドの体が、思いもよらぬ方向へよろめいた。
(く…こんな時に!)
発作…とでも言うべきだろうか?理由の分からぬ、彼の体を蝕む何かが、
ババドラバドの体を襲った。
「うおおおお!!」
背後から、トッパの雄叫びが聞こえる…
(はは…まさか、こんなお粗末な結果になるとは、ね…)

943 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:41 [ G9grFF56 ]
トッパは、体勢を崩したババドラバドの背後に立ち、今まさにその槍で
彼の背中を突かんとしていた。

(これで…これで全てが終わる!…何もかも…!)

だが、しかし…その無防備な背中を見て、トッパは一瞬ためらってしまった。
それは、後ろから敵を切るという行動に対しての嫌悪とか、そういうものではない。
本当に、本当に自分はこれでいいのか?
…この感覚はグスタベルグで修行をしていた頃にも感じた事だ。

殺せば それで いいのか?

(オイラは…こいつを…畜生!!)
トッパの動きが止まった。

「オイラは…オイラは…!」

ずん、と腹部に鈍い衝撃が走る。
(あれ…?)
月も、星も無い真っ暗な空が見えた。それから数秒して、どすんと鈍い衝撃が走り、
今度は地面が目の前にあった。少々土が口に入り込んでしまったようで、なんともいえない
味覚が口内を支配する。
「…トッパ!」
クリームの叫び声が聞こえる。

(なんだよ…なんなんだよ…?)

944 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:42 [ G9grFF56 ]
ゆっくりとトッパは立ち上がった。体を見るが、特に手足に異常は無い、
何やら腹部が燃えるように熱いが…
「トッパ…何故だ…何故……ぐっ!」
ババドラバドが鎌を持ち、ゆっくりとこちらに向かってくる。
口元を押さえながら、ゆっくりと。そして、口を押さえた手の指の隙間から
血が流れ出しているのが見えた。

「ふ…ははは…あはは…これが…これが限界という事か…僕の体も…」
「…ババドラバド…!」
トッパは足元に落ちている槍を拾い上げた。
「…ためらうな…やるなら今だぞ…?トッパ…!」
「オイラは…オイラは…ちがう、ちがうんだ…」

トッパの手が震えている。

「ぐっ…はぁ…はぁ…貴様…僕を舐めているのか…」
「違う、違う…僕は…父さん!…僕は…!」

「貴様は!!そんなもので僕を救えると言うのかぁぁ!!」

ババドラバドの体から漆黒のオーラが溢れ出す。それは今までに無く強力な力だった。

「僕を倒してみせろよ!…トッパラッパ!」

「駄目…ババドラバド…!そんな事したら…!もう体が…!」

945 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:43 [ G9grFF56 ]
クリームが泣き叫ぶ。そして、その時彼女は見た。
ほんの、一瞬だったが…ババドラバドはクリームを見つめた。
それは気のせいだったのかも知れない…しかし、彼女には彼が見たことの無い、
安らいだ顔をしていた。そう、それはまるで…



決着は一瞬だった。

「…ぁ…あぁ…な、なんで…なんでだよ!!」

「これで…これでいいんだ…ありがとう…トッパ…トッパラッパ…」

「父さん…嘘だ…父さん!」

「強くなったな…トッパラッパ…」

”槍”が、本来の持ち主である、タルタルの戦士の体を貫いていた。

その生涯を終えたタルタルの戦士の表情はとてもとても安らいだ寝顔だった。

946 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:43 [ G9grFF56 ]
―それから、数時間後、たまたまメア岩にテレポの魔法で移動してきた冒険者達は、
そこで思いもよらぬ光景を見ることになった。

重症を負った、ガルカとエルヴァーンの女が二人倒れており、
そこから少し離れた所に、槍で心臓を貫かれたタルタルの遺体があった。

すぐさまガルカとエルヴァーンの二名はジュノへ運ばれ治療を受け、一命を取り留めることができた。
タルタルの遺体は身元確認をしたところ、数年前に死亡と登録された冒険者と判明した。

この事件はよくある冒険者同士のいざこざという事で処理されたが、二つ、腑に落ちない点があった。
それは、生存者の二名が言うには、後二人程、その場に冒険者がいた事。
そしてもう一つであるが、数年前に死亡登録されたタルタル。
…彼の遺体は当時のウィンダスで確かに埋葬された、という記録があったのだ。

これがウィンダス連邦のミスなのか、あるいは死んだはずの冒険者が歩き回っていたのか、知る由はない。
真実は闇の中である。

947 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:45 [ G9grFF56 ]
―― 東サルタバルタ ――

「トッパ…あれ見て!…ほら、あれ!」
クリームがトッパを背負ってサルタバルタの大地を歩いている。
その足元を数匹のマンドラゴラがぐるぐると回っていた。
まるで、故郷に帰ってきた二人を出迎えているようにも見える。
「星の大樹にゃ…ここから見るとすごく大きいにゃ!」
「あの根元にウィンダスがあるにゃ…やっとここまできたにゃ…」
クリームが歩き出すと、それにつられてマンドラゴラ達も歩き出す。
「ん〜。君達なんなんだにゃ〜?一緒にウィンダス行くにゃ?」
マンドラゴラは無表情で、何を考えているのかよく分からない。両手をじたばたさせて
ぴょんぴょん飛び跳ねたり、クリームの足に抱きついたり。
「旅は仲間が多いほうが楽しいにゃ〜…」
「…ねぇ、トッパ…あたいね、トッパが一人で行っちゃった時、とても悲しかったにゃ…
 だって…また一人になっちゃったにゃ…あたい、一人は寂しくて嫌にゃ…
 だから、頑張ってあたいも強くなってここまできたんだにゃ〜」
そこで、彼女の足が止まった。
「ねぇ…トッパ…もうすぐウィンダスにゃ…そろそろ起きるにゃ…」
…トッパの反応は無かった。
「ねぇ…トッパ…起きてよ…言ったでしょ?…あたい、一人は嫌…嫌って…」
…それでも、彼女に背負われているトッパからの返事は無い。
「お願いだから…トッパ…起きてよ…ね?…トッパ…」

948 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:52 [ G9grFF56 ]
それから数年後、一組の夫婦が、長い旅路を終えて故郷であるウィンダスを目指していた。

「懐かしいわね…何年振りかしら?」
「はは…そうだね…そういえばあの不思議な人、覚えてる?」
「ええ、勿論よ。私達の命の恩人ですもの!」
「…結局、見つからなかったなぁ…」

夫のタルタルは、ぼんやりと空を眺めながら、あの時の事を思い出していた。
「もう、夢から覚めたのかな?」
「そうね…きっとそうよ……あら?」
妻のタルタルが、何かをみつけたようだ。
「ん?…どうかした?」
「いえ…あそこ、マンドラゴラ達が一杯集まってる?」
「ほんとだ…」
そこは、普通に歩いていると見落としそうなくらい、ひっそりとした
小高い丘の隅っこだった。
「へぇ〜。ここに上れば星の大樹やウィンダスの町並みがよく見えるんだね」
「あ、見て…あれは…お墓かしら?」
…タルタルの体くらいの大きさの石を削っただけの簡素な墓があった。
よく見ると不恰好だが、文字が彫られている。それには、こうあった。

”愛しき家族・トッパラッパ ここに眠る”

「…トッパラッパ…誰かしら?」
「うん…でも…何でこんな所に墓があるんだろうね?」
「不思議ね…」
妻は、数秒考え込んでから、こう言った。
「ねぇあなた。これから生まれる子供、もし男の子だったらトッパラッパっていう名前にしない!?」
「…はは、僕も同じ事を考えていたよ。…そうしよう。僕達の子供はトッパラッパだ!」




…ここに、二人の小さなタルタル戦士の夢は終わった。しかして、この物語はまだ終わっていない。
長い長い旅の終わりは、数年後のヴァナディールが舞台となる。


                                        続く

949 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:53 [ G9grFF56 ]
ガンガレ…超ガンガレ自分…( `・ω・´)
@ちょっとだ自分…_| ̄|○

950 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:56 [ Hj6KHOfo ]
kita- だなんて下品な絶叫はもう止めだ。
粛々と感想を書かせていただこう。




キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
続きが気になるけど、もう終わりっぽいデスネ

951 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 01:57 [ eUR5e.hI ]
うぉぉーーーーー!!!
すんごい待ってましたぁぁ!
頑張ってくださぃぃぃーーー!!!!!!

952 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 02:09 [ rnKUuuTI ]
キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!

…トッパ……(´・ω・`)

953 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 03:07 [ .4MNOjVM ]
キ、キターーーーファs;けljファpウェktfg;lskfg;亜lkファぽktg派終えrtがl;rgk;ろkt;tlがl

954 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 03:46 [ VhSImgro ]
j利g;gfjgk;skどだfkr;gg
キテターーーーーーーーーーーー

955 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 08:59 [ jPFBVAQY ]
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!

とりあえず、新スレ立てました。
涙たちの物語6 『旅の途中で』
http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/game/6493/1077148674/

トッパが、トッパァァァァァァ……(つωT)

956 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 10:35 [ JHvfezgs ]
タルタル戦士は夢を見る
↑このタイトルも結構深いタイトルだったのな・・・

957 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/19(木) 11:01 [ .oZD7xmM ]
キテタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!




次スレもタッテタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!






次スレ行ってくる(´・ω・`)

958 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/20(金) 01:10 [ jK6hRnIM ]
涙たちの物語6 『旅の途中で』
http://jbbs.shitaraba.com/game/bbs/read.cgi?BBS=6493&KEY=1077148674
2chブラウザ使用の人はこれで飛べるかな。

959 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/20(金) 02:19 [ Tw8r3o6w ]
パパさん無理はしないでね!応援しか出来ないけどゴールまでガンガレ!


トッパ…



        .。::+。゚:゜゚。・::。.        .。::・。゚:゜゚。*::。.
      .。:*:゚:。:+゚*:゚。:+。・::。゚+:。   。:*゚。::・。*:。゚:+゚*:。:゚:+:。.
ウワ━.:・゚:。:*゚:+゚・。*:゚━━━━゚(ノД`)゚━━━━゚:*。・゚+:゚*:。:゚・:.━ン!!
  。+゜:*゜:・゜。:+゜                   ゜+:。゜・:゜+:゜*。
.:*::+。゜・:+::*                        *::+:・゜。+::*:.

960 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/22(日) 18:40 [ d1xrJAKU ]
ここは梅?SS待ち?
よくわからんが保守しておくよ。

961 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/22(日) 20:56 [ q1Jo.K7w ]
じゃちょっと言いたいことがあるので。
前にとある話を書いた者だが、その時、もらった数レスがすごい嬉しかった。

本題は、も少し感想書いてもいいんじゃない?ってことです。
話は作者さんにしかかけないが感想は一人一人の読者にしか書けないものと思うのよ。

荒れる原因となりかねないことは自覚しているが、
作者諸氏の励み、研鑽となるという考えをよかったら片隅に留めておいてくれ・・・

962 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/22(日) 22:38 [ g4uT.mqk ]
>>961
思わず書きたくなるほど心を動かされたら書いてるけどな。
面白くなかったら書かない。
ていうか、感想がないのも感想だと思う。
研鑽を望むなら、けなされても負けない気概も持ったらどうかと
いう気もする。ぬるま湯で気楽に書きたいならそれもかまわんけど。

963 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/23(月) 01:32 [ sOG7zzZ2 ]
感想が増える→つまんねえ、スレの無駄だからこんな話書くなとかいう感想でる→
どこが悪いとかこうしろというように書けと言う→別に感想スレをたてようという→
それだと本スレが寂れると言う→じゃあほどほどな感想だけ書こうという→感想なんでみんな書かないの?

という流れを何回か見てる気がします。
面白い以外の感想がないのはまさに荒れ易いからなんでしょうかね。
つまり「感想がない=荒れる感想を書くよりは・・・=つまんない」なのか?
個人的には書きたい人だけ書けばいいかと。↑に出てる感想がないのも感想ってことですね。

964 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/23(月) 16:31 [ tpQfdbpo ]
そだね。 感想が無いってことは、感想を書くほどのものではないということで

でも、うまく言葉にできないってこともあるだろうけどね( ゜Д゜)y─┛~~

965 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/23(月) 19:23 [ EtwEfbo2 ]
>>961とは別の作者です。
作者としては何か聞きたい・・・・という気持ちは凄くよく分かるのです。
>>962さんは"けなされても負けない気概"というが、失礼ながら問題はそこではない。
レスポンスが無い、と言う事は作者を凹ませる以上に、やる気を保つことが出来なくさせる。
「私の作品は果たして読まれているのだろうか?もしかしたら、書く価値などないのではないか?」と。

見たところ、自分のサイトで小説を書いていらっしゃる方のBBSには、一月に一回程度ではあるものの、
感想の書き込みあるようだ。よしんば掲示板に書き込みがなかろうと、日々のアクセスカウンタの回転は
自分の作品への反応を無言で示してくれます。これは、大変うらやましいことです。
と、なると、このスレで小説を書く意味とはなんだろう?
なるほど、ここはしたらばでも有数のヒット数を誇る大掲示板だ。ふらっと立ち寄る人も多いだろう。
だけれども、立ち寄った人がタル戦だけ読んで去っているとしたらどうだろう。
全員がそうではないと誰がいえる?もしかして貴方もそうでは?私の作品などあぼーんされてスレ汚しですらない?

・・・・ほんの少しでいいのです、気が向いて、一度だけ読んだら。
ちょっとだけ楽しみかもしれない作品があるなら
一声、一声だけかけてやってください。

966 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/23(月) 20:08 [ NNq94HaA ]
>>965
俺は小説サイトの人ではないが、趣味のサイトを開いているし
ちょっとした文章も書いている。
が、感想など月に一度か二度、掲示板に書かれる程度だ。
…あのな、アクセスカウンタが増えるだけじゃ、かえって空しいんだよ。
生の感想くれくれ!って気持ちは痛いほどわかる。
だが、うらやましいと言われたら、てめえもサイト作れよ!と叫びたくなる。

反応欲しければ、それ相応の努力とかいろいろ必要なんだ。
あーくそ、腹立って罵倒しか出てこんからこれでやめとく。

967 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/23(月) 21:50 [ LyuDRyGk ]
まあ、なんていうか やっぱりね
感想くださいなんて言ってる時点でだめだと思うんだよね。

968 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/24(火) 05:46 [ o8JYFiew ]
>>965
あのさ、そんな同情誘うような書き方してさ、それで感想を書かれるようになったら、
更に空しくならないかな。
そうか、可哀想にな、って書いてもらう感想だと疑念持たずにいられる?
既にいろいろ考えちゃってるじゃないか。素直に自分の力量不足を認めたらどうかな。
まあ、空回りに疲れたら諦められると思うけど。

969 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/24(火) 13:47 [ 0QZLu2iQ ]
梅代わりにチョコとだけ

楽しく読んでいて、投稿のたびに
眼を輝かせながら呼んでいる読者もいると思ってください。
で、ずっとここに居る人は知っていると思うのですが、
ほんとに感想のみが続くと荒れてしまうのです。963さんも言ってますが。
書きたくても我慢している人って結構居ると思いますよ。

970 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/24(火) 13:55 [ uXxRqFSs ]
>>965
そもそも、書きたいから書いたものをupしてるだけなのに、
他者の評価に支えられないとモチベーションが保てないのはおかしな話では?
そこまでして作品を上げ続ける必要って…果してあるのかなあ??

いくら感想を書くなと言った所で、見ている側も人間だから、
感動したり、好きなものには、ついついレスポンスしてしまうものだと思う。
それがないってのは、そこまでの物だったりするだけではないかな。
まあ、大抵は他の人が代弁してくれてたりしてレス前に満足するけどね。

971 名前: 965 投稿日: 2004/02/24(火) 17:33 [ qumNh04s ]
わぁい怒られた。ごめんなさい特に>>966さん。
分かってたけど言ってもよさそうだったから言ってみたんだ。
でも本当にみんなこういうマイナスの感情かかえつつそれでも書いてるんですよね。
そしてそれをのりこえれと。それが確認できてよかった。
余計と知りつつ書き込んでよかったです。この書き込みもそうであると思おう。

>>969さんの様な存在こそがこのスレを価値あるものにしてるのでしょうね。ブラボー

972 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/24(火) 17:49 [ vlQsCb3M ]
なんか非常に馬鹿にしてる感じだな。

973 名前: 965 投稿日: 2004/02/24(火) 19:54 [ qumNh04s ]
>>972
そうみえるかもしれない。orz
そんなつもりはないんです。

974 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/24(火) 22:10 [ D04sjAp2 ]
春の訪れを感じさせてくれるなw

975 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/24(火) 22:34 [ 9mZfgo96 ]
なんというかー、ただの埋めよりは有益に使ってる気がしてイイと思ってしまったのは自分だけでしょうか。(次スレに雪崩れこまなければ)
小説スレもかなり長く続いてるわけですし、何度もこういう議論が起こるのはしょうがないかなと思ってます。
結論出にくいし。
ほんと感想は難しい気がします。思いの丈を何十行に及んで書けば怒られるしw
だから自分が書くなら一瞬の感情を書くって感じになってるのかなあ。まとめる力がないというのかもシレナイガorz
作者さん方にはいつも作品ありがとうございますと思ってます。ほんと。
面白いものも読みにくいものも両方あるから活気があるんじゃないかなと。
というわけで時々しか感想書けないのですがそれでも気長に待って投入しつづけてください。お願いします。
がんばれーみんなー。そしてプレステ壊れて禁FF生活が2ヶ月続いてる自分がんばれー。夢見ますホントorz
長文ごめんよ。

976 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/25(水) 06:31 [ 7oaPsfFY ]
タル戦 細い兄弟(復活した時ちょっと涙でた)
騎士手紙 名無しの話 闇を背負う者  心にくるもんがあります。
他の物語もガンガン読んでいきます。
作者のみなさんほんとありがとう。

977 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/25(水) 06:35 [ 7oaPsfFY ]
すいません 下げ忘れました

978 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/25(水) 11:29 [ TNfIEbZE ]
人々に感想を求めるより、人々の感動を求めるべし。

(´・ω・`)いや、私は何も書いてないのに偉そうな事いってるだけなんですけどね。
感想がほしければ適当なアドレス書いてメール下さい、とか書けばしてくれる人もいるかもね。

作者の皆さん、体に気をつけて頑張って下さい。毎回新たな作品を楽しみにしてます。

979 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/25(水) 12:46 [ 6qPzFNN. ]
>>978
ここには投下した事無いけど、ちょっとぐっときた。
がんがって書こう。

980 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/25(水) 15:38 [ Oi1NcdL6 ]
いま >>978がいい事言った! ( ̄▽ ̄)b グッ!

981 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/28(土) 04:57 [ DEAHT6FE ]
「名無しの話」の番外

むかーしむかし、小さな小さなタルタルがいました。
いつも白いチュニックに身を包んでいるのでみんなからは白ずきんちゃんと呼ばれていました。
ある日、お母さんが
「白ずきん。ちょっとお使いに行ってくれないか」
と白ずきんを呼びました。
「はーい」
「森のおばあちゃんに届けてほしいんだ」
お母さんは大きなカゴを白ずきんに手渡しました。
「?からっぽー?」
「ああ、これから入れる。えーっと、パンが一斤。ぶどう酒一本…持てるか?」
「だいじょうぶー」
「それから、コカトリスの肉4キロ…」
ズシ…
「ミ?」
「マウラにんにく4キロ」
ズシ…
「ミー」
「ワイルドオニオン4キロ」
ズシ…
「ミ゛…」
「カザムがらし4キロ」
ズシ…
プチッ
「あと、大羊の肉10キロと…」
ズ…
「載せるなぁー!」
すぱーん!
「なにをする!」
「タル白がつぶれとるでしょーが!」
「…おおっ!?」
「おおっ、じゃない、おおっ、じゃ」
「…意外と入らないカゴだな」
「ちがうだろー!」
すぱーん!
「だいいち、なんでこんなにいるの!?」
「いや、騎士として備えは必要だ…」
「おばーちゃんへのお使いでしょー!?」
「…そうか?」
「台本読めー!それに、なんでお母さんがそんな口調なの。もっと優しい言い方があるでしょ」
「…」
「ちょっとお使いに行ってちょうだい、とか。だいじょうぶ?ちゃんと持てる?とか」
「…それは…女みたいで気持ち悪いぞ…」
「おまえは何者だぁー!?」
「私はエルヴァーンだ」
「ちがうでしょー!?」

982 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/28(土) 04:59 [ DEAHT6FE ]
お母さんにおばあちゃんへのお使いをたのまれた白ずきんは森へとやってきました。
おばあちゃんのおうちは森の奥にあるのです。
「にゃあ、白ずきんちゃんにゃ」
やってきたのは、森の狩人さんです。
「こんにちはー」
「にゃ」
「あのねー、おつかいなのー」
「森へ入るのかにゃ」
「うん。おばあちゃんちー」
「このごろ悪い狼が出るにゃ。気をつけて行くにゃ」
「はーい」
りっくりっくりっく
ムズムズ…
りっくりっくりっく
ムズムズムズ…
りっくっりくりっく
ムズムズムズムズ…
「…」
キリキリキリ…
ピュンッ
プスッ
「ミ゛ッ?」
ぱたっ
「射るなぁー!」
すぱーん!
「痛いにゃ、なにするにゃっ!」
「タル白射てどうするの、タル白射て!」
「にゃー、動くもの射るのは狩人の本能にゃ」
「どんな本能なの!。だいいちミスラさんはシーフでしょうが!」
「今は狩人にゃ。台本には忠実にゃ!」
「…あ、ねずみ!」
「にゃっ、にゃにゃにゃっ!」
「…」
「…」
「なんの本能?」
「…狩人にゃ…」
「まだ言うかぁー!?」

983 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/28(土) 05:03 [ DEAHT6FE ]
森の奥の一軒家。おばあちゃんのおうちです。
まるで襲ってくださいといわんばかりにポツンと建ってます。
トントントン
「おばあちゃーん」
「ああ、白ずきんかい。入ってくるタルよ」
「はーい」
ガチャ
「あれー?おばあちゃん、びょうきー?」
「んー、ちょっと具合が悪いタル」
「だいじょうぶー?」
「大丈夫タル。おまえの顔を見たらすぐに元気になるタル」
「よかったー」
「さあ、もっとこっちへきておまえの顔を良く見せるタル」
「はーい」
トコトコトコ…
「?」
「どうしタル?」
「おばあちゃんのからだ、どうしてそんなにおおきいのー?」
「それはね、白ずきんへの愛情がいっぱい詰まってるからタルよ」
「おばあちゃんのて、どうしてそんなにおおきいのー?」
「それはね、白ずきんをしっかり抱けるようにタルよ」
「おばあちゃんのくち、どうしてそんなにおおきいのー?」
「それはね、おまえを一口に飲み込めるようにガルー!」
「ミー!」
ぱくっ
もぎゅもぎゅ
「食べるなー!」
すぱーん
ポーン
ボテッ
「ミィーー」
「んー、いたい…」
「タル白を食べるな、タル白を!」
「んー、台本どおりぃ…」
「本気で食べようとしたろーが!」
「…気のせいだぁ」
「その残念そうな目はなんだ、残念そうな目は!?」
「…つぶらな瞳だぁ」
「視線をそらすなぁー!」
ゲシゲシゲシ!
「だいたい、狼役はタル黒だろーが!タル黒タル白の、たべちゃうぞー、きゃー、とか言って戯れてるシーンで受けを狙ってたのに…」
「!」
キョロキョロキョロ
「…お゛い…」
「んー?」
「タル黒は?」
「んー?」
「タル黒は!?」
「んー?」
「首を傾げるなぁーー!!」
「んー」
ポンポン
「腹を叩くなぁーって…お゛い?」
ニカッ
「出せー、吐けー、もどせー!!」
「ミーー」

984 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/28(土) 05:10 [ DEAHT6FE ]
とガル戦が機嫌よく遊ぶベッドの下には、
「…」
出番を奪われたタル黒がいました。
そして、ボソリと呪文。
チュドドーン
家が爆炎に包まれます。
炎はすぐに森に広がりました。
天まで届くは紅蓮の炎。
「にゃー、あれにゃ。ふだんおとなしくても切れると怖いって言う教訓にゃ」
「そうなのか?」
「ポポトイモ焼くにゃ?」
「私は串焼きを温めなおそう」
パチパチ
バュージュー
「…今日はヒュムさん、いつもにましてヘンにゃ…」
「まあ、番外だからな。気が抜けてるんだろう」
パチパチ
ジュージュー

「おまえら助けろよなー!!」
パチパチ
ジュージュー

−おわり−

985 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/02/28(土) 05:15 [ DEAHT6FE ]
ごめんなさい、ごめんなさいm(_ _)m
なんか、誰もうめないみたいで寂しいので。
ちょとうめにと小ネタを考えてたらこうなりました。
と、いうわけで番外です。

986 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/28(土) 11:13 [ PgvTOIBs ]
おーもーしーろーいー。あああタルかわいいなあ。

987 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/28(土) 14:51 [ Rv2NeZV2 ]
いや、密かに短編梅を待ってたりw
>>985 GJ!

988 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/02/29(日) 02:50 [ 4WQH.GHE ]
ヒュム戦さん、好きだぁああぁああ!!!!!!

989 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/03/02(火) 06:07 [ Re9sifZs ]
「名無しの話」の番外2

むかーしむかしあるところにヒュムおじいさんとエルおばあさんがいました。
「…」
ヒュムおじいさんは山へ芝刈りに、
エルおばあさんは川へせんたくにいきました。
「……」
エルおばあさんが川でせんたくをしていると、
川上から大きな桃が、ドンブラコドンブラコと流れてきました。
おどろいたエルおばあさんは
「…おい…」
おい…え?
「なぜ私がおばあさんなのだ」
「あう?」
ドンブラコドンブラコ…
「ミスラが、いる。私が、いる。で、なぜ私の方がおばあさんなのだ?」
「…えーっと…」
…ドンブラコ…
「なぜ、私が、お・ば・あ・さ・ん・な・の・だ?」
「あや゛や゛…チョークチョーク」
…ドンブラ…
「大丈夫だ。まだ息は止まらない」
「だ、だいじょうぶくない、だいじょうぶくない」
…ドン…プク…
「にゃー?いいのかにゃ?」
「すまん、すぐにすむから」
「じゃなくて、タルちゃんの入ってる桃、流れて沈んでるにゃ」
…プクプクプク…
「「あー」」
「た、たすけなきゃ」
「ちょうどロープがあるにゃ」
「準備がいいね」
「シーフの身だしなみにゃ」
「じゃ、このロープを」
グルグルグル
「なぜ私に巻く?」
「いってらっしゃーい」
「きさまぁー」
ドッボーーンッ
プクプクプク…
「で、どうやってタルちゃん助けるにゃ?」
「しまったあぁ!ろーぷがぁー!」
ザザザザ
「にゃっ?」
「え?」
ザバババッシャーン
「んー、私はこの川のガル女神だあ。お前の落としたのはこの黒いタルタルかぁ?それともこの白いタルタルかぁ?」
「ミー」
「ピー」
「…究極の選択にゃ…」
「どっちって…」
「にゃっ!そうにゃ!どっち選んでもタルちゃんにゃ。たいして違いは無いにゃ!」
「そういう問題かー!」
「さあ、どっちだぁ?」
「どっちも、両方、二人とも!」
「…んー、お前は欲深だぁ。欲の深いヤツにはこっちあげるぅ」
「え」
ズルッ
ピシャッ
「…」
「あ゛…」
「さて、なぜ私がおばあさんなのか、ゆっくりと聞かせてもらおうか」
「あ゛ー」
ズルズルズル…
「川底いやー!せめて浅瀬でーブクブクブク…」
ブクブクブク…
「ヒュムさん、浅瀬でなにするにゃ?」
ブクブクブク…
「…なんだか大変そうにゃ」
ブクブクブク…

というわけで、おじいさんとおばあさんは仲良く暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。

「…今回は教訓ないのかにゃ?」
「んー、女性に年齢ネタは振っちゃダメだぁ」
「それは自然界の掟にゃ」

「だから、助けてってば…ブクブクブク…」

−おわり−

990 名前: 名無しの話の作者 投稿日: 2004/03/02(火) 06:10 [ Re9sifZs ]
ごめんなさい、ごめんなさいm(_ _)m
えーまたまた、番外です。
前回につづいてヒュム戦さんが不幸です。
だって番外ですもの。…そういう問題じゃないか…。

991 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/03/02(火) 09:15 [ TfBKqSWg ]
GJ!!

ヒュム戦が幸福な話ってあったっけ?(;´Д`)

992 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/03/02(火) 12:58 [ gv/uPbtU ]
下げますね

993 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/03/02(火) 13:17 [ gv/uPbtU ]
sage

994 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/03/02(火) 17:20 [ emrYCjJk ]
sageって書いても下がらないヨ。他スレ上げないと。

ヒュム戦さん…(*´Д`*)
そんな不幸具合と突っ込み具合とたまにみせる常識人具合が絶妙で好きー。
名無しの話の作者様、いつも小説ありがとう!

995 名前: 1/1 投稿日: 2004/03/03(水) 01:38 [ 5xdIOD7A ]
にゅぅにゅぅ。
アタシはウインダス生まれのミスラ。
まだ小さいケド、冒険者なのにゃ。

「お祭りにゃー!ヒナ祭りなのにゃー!」
「わーい!雛祭りー!」

「あにゃ?でも、ヒナ祭りって、なんなのにゃ?
去年はなかったのにゃ。ナニすればイイのかにゃ?」
「しー!去年はなかったとか、言わないの!
ん〜とね。雛祭りは、桃の節句といって、女の子のお祭りなの。
元々は、平安貴族の子供達のおままごと『雛遊び』と、
無病息災を祈願する『流し雛(形代)』が融合合体して、
風土や時代によって分化、変遷を重ねてきたものなんだよ」

「ふにゃ?つまり、ナニをすればイイのにゃ?」
「……」

「どうしたのにゃ?」
「ごめんなさい。それが、わからないの……。くすん」

「うにゃ!折角のお祭りなのにゃ!だから、泣いちゃダメなのにゃ!
あ、そうにゃ!向こうに見慣れないセットが組んで在るのにゃ!
そこでお茶したり、お団子食べたりして、ちょっと一服するのにゃ!」
「あ、そうだよね。お祭りだもん。えへへ、泣いてちゃダメだよね。
うん。じゃあ、お茶にしよう」

「さ、イクにゃ!」
「うん!」

とてとて!
てむてむ!

にゅぅにゅぅ。
それからアタシ達は、真っ赤な布の掛かった腰掛に座り、
お茶したり、お団子食べたりして、のんびり過ごしたのにゃ。

「ピンクの花びら、満開なのにゃ〜」
「うん。桜、綺麗だね」

「そうにゃ!イイこと思いついたにゃ!」
「え?なになに?」

「えっとにゃ。この景色を写真に撮って残すのにゃ!
きっとイイ記念になるのにゃ〜!」
「あ、そうだね。イイかも」

「それじゃあ、アタシ、向こうの桜の木の下がイイのにゃ。
ポーズ決めるから、カメラ、お願いするにゃ」
「うん。わかった。あ、でも、走ると……」

すてん!カシャ!

「ふにゃ〜。痛いにゃ〜」
「ほら、転んだ……。大丈夫?」

「だ、大丈夫にゃ……。
にゃ!もしかして、今の写真に撮ったにゃ?」
「ん?撮ってないよ。くす」

「ホントにゃ?ホントに、ホントに、ホントにゃ?」
「うん。ホント、一瞬だったから、
白いモノなんて、写ってないと思うよ。くすくす」

「にゃー!」

996 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/03/03(水) 10:07 [ p6OXoOAc ]
>>994
まじで!!
今まで普通にこうしてたよ_| ̄|○
教えてくれてありがとう

997 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/03/03(水) 13:22 [ p6OXoOAc ]
FAQに書いてますね。
とりあえず埋めます

998 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/03/03(水) 13:27 [ p6OXoOAc ]
もういっちょ

999 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/03/03(水) 13:35 [ p6OXoOAc ]
あらよ

1000 名前: (・ω・) 投稿日: 2004/03/03(水) 14:50 [ eCPCI9VA ]
1000

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