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FFDQかっこいい男コンテスト 〜ドラゴンクエスト4部門〜

1名無しの勇者:2002/10/18(金) 20:17
DQ4の小説専用スレです。
書き手も読み手もマターリと楽しくいきましょう。

*煽り荒らしは完全放置。レスするあなたも厨房です*

201無題 4/7:2010/08/19(木) 23:45:41
「…大丈夫?」
 目が覚めると、勇者さんの顔が私をのぞきこんだ。私はぼんやりとその顔を眺めていたが、次の瞬間には全てを思い出して、目を見開いた。
しかし、五感の鋭さは先ほどよりも幾分和らいでいる。ベッドに寝かせてもらったようだ。
「毒消し飲ませたんだ。さすがに全身性感帯になられちゃ死ぬんじゃないかと思ってこっちが怖くなる。」
 勇者さんは肩をすくめ、「ごめん、ちょっとやり過ぎた。」と頭を下げた。
「いえ、元はと言えば、薬を無防備に服用した私が悪いんです。」
 私の言葉に勇者さんは苦笑する。
「人がいいよね、クリフトは。もっと怒っていいのに。
 ピサロにされたことだって、みんなに訴えていいのにさ。」
「そんなことできませんっ…。それに、ピサロさんは私にもうそれほどの興味はないですよ。
 もう、あんなことは起きません。」
 勇者さんは私の言葉に何故か驚いたようで、「ピサロ、クリフトを気に入ってると思うけど?」とベッドサイドに置かれた薬瓶を指差した。
「試してみたら?ピサロが自分にたいしてどんな感情を抱いているか。」

『普段気になってる人が、赤面して荒い呼吸して手足の自由が利かなくなって涙目で不安そうに自分にすがり付いてきて、
 しかも触ってみたらやたら感度良かったら、普通、そのまま押し倒してやっちゃうでしょ。』

 勇者さんの言葉を思い出し、私は吹き出した。
「まさか。私に対してそんな気は最初からありませんよ。」
「クリフトはピサロの事、好きなんじゃないの?薬、試してみなって。」
 今日は勇者さんに度々驚かされる日だ。絶句する私に「あ、やっぱり?」とニヤリと笑う。
「…報われる事はありません。想いを告げることもありません。それに、もうその薬を飲むのは真っ平ごめんです。」
 むくれた私の言葉に勇者さんは軽く笑い、「分かった分かった。んじゃ、おやすみ。」と私に背中を向けて出て行った。

 私ももう休もう、と部屋の灯りを消そうとしてシャツのボタンが千切れたままなのに気が付いた。一瞬迷ったが、疲労感が上回り、そのままで休む事にして灯りを消す。
目を閉じると、未だに体が熱く、五感が研ぎ澄まされているのが分かる。窓の外に何か近付いてくる気配を感じ、それがピサロさんである事を確信すると、数秒後に部屋の窓がきしみながら開き、夜気と共にピサロさんが部屋に入ってきた。

「クリフト、まだ起きてるか?」
 ピサロさんの言葉に私は目を開く。「おかえりなさい」とベッドの中から声を掛ける私に、ピサロさんは「体の具合はどうだ?」と尋ねてきた。
 私は胸が熱くなり、「もう大丈夫です。ありがとうございます。」と体を起こそうとした。
「いい。寝ていろ。薬を買ってきた。」
「く、薬!?」
 ギョッとする私をピサロさんは怪訝そうに見る。「パデキアの根だ。病ならなんでも効くそうだな。」
 私は声も出なかった。思わず体を起こし、ピサロさんが持つ根っこを見つめる。
「あ、ありがとうございます…。」
 声が思わず震える私に、しかし、返ってきた言葉は氷のように冷たかった。
「クリフト、その首の跡は誰にやられた?」

202無題 5/7:2010/08/19(木) 23:48:27
 私はビクッと硬直し、思わず首元に手をやる。「あ、あの、これは…。」
 ピサロさんがベッドに近付いてくる。部屋が暗い中、月明かりでピサロさんの顔が浮かび上がるが、そこから感情を読みとることはできなかった。
「そのシャツは誰に破られた?」
 私はぎこちなく首を横に振る。
「お前は求められれば誰にでも自分の体を与えるのか。」
「!!…違いますっ!」
 さすがにムッとして言い返すと、ピサロさんはふん、と軽く鼻を鳴らし、ベッドサイドに視線を走らせた。
置かれたままの薬瓶に気が付き、私は慌てて手を伸ばしたが、わずかの差でピサロさんに薬瓶を奪われる。彼は説明書きにさっと目を走らせると、
「知ってて飲んだのか?」
と私を見下ろした。私は恥ずかしさで顔に血が上るのを感じた。

「あ、あの、栄養剤か何かだと思って。」
「そいつに騙されたのか。」
「いえ…薬は姫さまがうっかり買ってしまわれたのです。説明も読まずに私が浮かれて飲んでしまって…。」
 声が消え入りそうに小さくなり、私はそれを吹っ切るように「で、でも!」と顔を上げた。
「もう、解毒してもらいましたから!」と早口で答え、「誰に?」という問いに再び言葉を詰まらせる。
「まぁ、いい。パデキアももういらぬようだな。私は寝る。」
 ピサロさんは突然話を切ってしまい、そのまま上着を脱ぐとベッドに潜ってしまった。私は分かってもらえたのかどうか不安になりつつ、気分が落ち込んだままベッドに横になった。
責められるのも辛いが、切り捨てられるのも辛い。折角、薬を買ってきてくださったのに、不愉快な思いをさせてしまったのだったら申し訳無いな、明日、改めてお礼を言おう…。
私はウトウトと眠りの淵へを落ちようとしていた。

 誰かが私の上で何か呪文を唱えているのを、夢の中で聴いたような気がする。上半身を誰かに抱き起こされて、ようやく覚醒し始めた私はそのまま口の中に小さな丸い物をいくつか入れられ、冷たい水が口腔内に続けて注がれて一気に目が覚めた。
唇の端から冷たい水が溢れ、首筋を通ってシャツを濡らす。続けて唇が塞がれ、私の口の中を散々探るように誰かの舌が動き回った。私がなんとか仰け反って顔を逃がすと、その舌の主の顔を離れて顔が認識できた。

「ピ…ピサロさん…?」
「この赤い錠剤はどれほどの時間で効果が出てくるんだ?」
「はぁ…おおよそ半時くらいか、と…。」

 何故、そんなことを聴くんだろう?
 私がピサロさんから視線を外ずと、自分の着ていたシャツがベッドの下に落ちているのが目に入ってきた。なんで、あんなところにあるんだろう、寝る前に着替えたんだっけ…。自分の手を伸ばし、胸元を触ると直に自分の肌に触れてしまった。「あれ…」と自身の体を改めて見る。
 何故、裸なんだろうなぁ…。

203無題 6/7:2010/08/19(木) 23:50:38
 やっと自分がされたことに思い当たり、私は次の瞬間ベッドから抜け出そうと身をよじった。しかし、すぐに捉えられ、ピサロさんは軽々と私をベッド戻してしまう。
 何故?何故?私の頭に疑問符がいくつも湧き上がる。ピサロさんはベッド側に置いてあった椅子に腰をかけ、完全に観察体勢に入ってしまった。
彼は私に興味が無いはずじゃないのか?

「な…何錠飲ませたんですか…?」
「4錠だ。」

 息を飲んだ。私はすぐさま解毒の呪文を唱えようとして、自分の魔法が封印されていることに気が付き、思わず呻いてしまった。夢の中の呪文はこれだったんだ…!
 ピサロさんを見上げても、そこから表情を読み取る事は出来ない。黙って私を見つめている。そのまま数分が経過した。私は沈黙に耐えられず、自分から言い訳を始めてしまう。

「あの、薬がきつくて、私が死ぬかも知れない、とその方も途中で止めてくれたんですよ。
 そ、その時は3錠でも本当に辛くて…4錠って…きっと、私、耐えられないと思うんです。」
 ピサロさんの表情は動かない。薄く笑っているようにも見え、私は体が震えだした。
「ご、ごめんなさい…許して…。本当にきついんです…。」
 何故、私が謝っているのか。自分でも分からなかったが、とにかくこの状況を脱出できるなら、鬼でも魔王にでもすがりたかった。
「お願いします、ピサロさ…」
 私はピサロさんに手を伸ばそうとして、遂に『ザッ』と耳元で血の流れる音を聴いた。私は力が抜けてベッドに倒れ伏す。全身が脈打ち、体温が上昇していくのが分かる。
呼吸も短くなっていき、なんとか起き上がろうとしてもがくと、ベッドのシーツが肌に当たるのさえ反応してしまって小さく悲鳴を上げてしまった。
恐る恐るピサロさんの方を向くと、興味深そうにこちらを眺めているのと目が合い、私は泣きそうになった。
ピサロさんが立ち上がり、逃げようとする私をまたあっさり押さえつけ、指で私の背中をなぞった。全身に電気が走った。

「うあぁぁぁっ!」

 体がビクンと跳ね、背後から笑い声が聴こえる。私は目に涙がにじんだ。
近付かれても自由が利かずに、背中から抱かれ、背後から胸元に与えられる刺激にビクビクと体を震わせ、押さえられないまま喘ぎ声を上げる。息が続かず、私は何度も首を横に振った。
「ダメです、ダメです、無理です。」果たして相手に聴こえたかどうかも分からない。
「もう…やめ…いや…あぁぁぁぁっ!!」
 胸元で立ち上がったものを指で潰され、私は目の前が真っ白になった。力が入らないまま半ば意識を失ったが、また脇を撫で上げあられ、意識が引き戻される。
「あぁ…も、もう…やめ……。」
 体を裏返され、ピサロさんが私の体を跨いで上に乗ってくる。そのまま、私の胸に残されていた勇者さんの痕の上に唇を落としてきた。
「ひっ……」
 ゾクゾク、と体に大きく震えが走る。次いで2つ目の痕も吸われる。
「許して…もう…許して…」

204無題 7/7:2010/08/19(木) 23:53:59
「この後、そいつは何をしたんだ?」
 ピサロさんの声が耳元で囁かれる。私はその吐息さえも辛くて
「何もされてません…お願いもう止めて…」と懇願してすすり泣いた。ピサロさんが小さく笑い、私の下腹部に手を伸ばす。
「やめ…ッ!」
 息が止まった。触れられただけで私のものが弾け、私の腹部やピサロさんの手に飛び散る。
「これはすごいな…。」
 嬉しそうにピサロさんが呟く。私は呼吸さえもままならなくなっていた。耐えられない。なんで、こんなことになったんだ、何故、何故…。
「待って…待って…」
 続けて前にピサロさんの指が絡まってきて、達したばかりの私は、泣く力も無く、なんとかピサロさんの手を押し返そうとした。

「なんで…なんでこんなこと…」
「お前を組み伏せられたんだ。どうせ、お前を抱いたのは勇者の小僧かそのあたりだろ?」

 ピサロさんの指が蠢く。私の体がまたゾクゾクと震えだした。

「他の男にお前の卑猥な姿を見せておいて、何故私にだけ見せられない?」
「やめて…」

 爪が先端に食い込み、私は悲鳴混じりの泣き声を上げた。ピサロさんの別の指が私の両大腿部を割り、最奥を突き、私の中へと入ってくる。
私はまた許しを乞おうとして、涙声のまま、ただ懇願を続けた。ピサロさんは優しく微笑み、私に口付けをした。

「もう、怒ってなどいない。」
 私は、すがりつく様に、必死にうなづいた。ピサロさんは私の中で指を動かしながら、もう片方の手で私の頭をなでた。

「何故、こんなことをするのか、だと?そんなことも分からないのか。」
 穏やかな表情で、今度は私の耳元に顔を寄せた。

「お前が乱れていやらしく泣き叫ぶ姿が見たいからだ。」
 

『ピサロ、クリフトを気に入ってると思うけど?』
 意識が朦朧とする中で勇者さんの言葉が蘇る。そして、走馬灯のように、幼き頃出入りしていた教会の神父さんの悲しそうな顔が浮かんできた。

 あの日、神父様は若い女性の恋愛相談に乗った後、『私の考えを言っても構わないですか?』と彼女に尋ね、相手がしっかりとうなづくのを待ってから遠慮がちにこう告げた。


『それは、もはや“愛”ではありません。きっと、“支配”と呼ぶのですよ。』

205名無しの勇者:2010/08/19(木) 23:54:48
以上です。どうもありがとうございました。

206名無しの勇者:2010/08/20(金) 11:52:15
投下乙です
片思いのクリフトが健気で可愛いよ
媚薬で乱れた上に勇者とピサロに無理強いされるクリフトがたまらん!
素晴らしいものをありがとうございます(*´Д`)
オチがそうきたかーって感じで、
この先のピサクリがどうなるのかすごく気になりました

207名無しの勇者:2010/10/06(水) 16:52:46
おぉ…なんという…
受けが片思いとか激萌える
私得でした

208夜の海 1/8:2010/11/23(火) 23:35:57
ピサクリです。
※204の続きで大団円にしましたが、やっぱりクリフトが理不尽な目に遭います。
※水中で溺れる描写が出てきます。苦手な人は避けてください。


 こんなご時世に夜の海辺でぼんやり考え事をするなんて、ブライ様に知られたら大目玉だな…。

 流木の上に腰を掛けたクリフトは聖水の入った瓶を弄びながら、ため息をついた。今夜はこの町に宿を取っている。明日もダンジョン攻略だから体を休めないといけないのは分かっている。
だけど、部屋は魔王・ピサロと同室だ。彼と同室になる度、身体を求め続けられる夜が続いている。抵抗しても、懇願しても、自分の意思に反して身体に強い悦楽を刻み込まれる事実を、クリフトは自分の中で消化できないでいた。
今夜も部屋に戻れば、会話する間も与えられずなし崩しに身体をいいようにされるだろう。それを思うとなかなか宿に戻れず、クリフトはぐずぐずと砂浜で聖水で撒きながら座り込んでいた。

「あーーー、どうしたらいんだ…!勇者さんのバカーーー」

 クリフトは寄せては返る海を眺めて1人、頭を抱え続ける。脳裏に昼間の勇者との会話が蘇ってきていた。


 それはダンジョンを馬車で探索していた時の事。馬車の後ろを歩いていたクリフトに、同じく馬車の横を歩いていた勇者が
「何か悩み事ですかお兄さん?」
と囁きかけてきた。
「え、どうしてですか。私は別に、何も…。」
「嘘だね。こないだから塞ぎこんでることが多いしさ。
 戦闘中も集中できてないよ。ザキ系の確率も益々低い。」
 クリフトはグッと詰まり「申し訳ありません、気をつけます。」と声のトーンが落ちた。
「あー。もう、いいからちゃっちゃと心のモヤモヤ吐き出しちゃってよ。」と勇者がバシッと肩を叩く。
 クリフトはしばらく迷ったが、何度も促され、ようやく重い口を開いた。

「あの、例えば、ですよ。勇者さんに好きな人が居たとしてですね、
 その人に想いを伝える前から…えっと、無理矢理に関係を持たされちゃったら…どうしますか?」
「超絶ラッキー。」
「いや、あの、自分はそんなこと望んで無いのにですよ。」
「なんで?好きなのに?」
 勇者は怪訝そうな声を出す。「好きな人と抱き合えるなんて最高だけどな。」
「抱き合うだけなら、いいんです。私だって、嬉しい。」
 クリフトの目が揺れ動く。
「だけど…怖いんです。何を考えているか分からないし、私に辛い想いをさせたいだけなんじゃ…。」
 クリフトはハッと我に返り、口を押さえた。恐る恐る勇者を見ると眉根を上げて驚いた顔をした後、ニヤーッと口角を上げている。
「へぇー。贅沢な悩みのように思うけど?相手に愛されててさ。」
「愛されてなんか…いません。」
 クリフトは自嘲気味に笑った。「散々痛めつけられてるから、むしろ嫌われているのか、とさえ思うときもあります。」
 勇者は笑みを引っ込めてクリフトを見つめた。

「ねぇ、好きな人が同じ宿のベッドに座ってたら、健全な男なら相手をどうすると思う?」
 クリフトは唐突な質問に戸惑いながら、とりあえず状況を想像してみた。
「えーと、お茶を用意して相手の方とお話をします。」

209夜の海 2/8:2010/11/23(火) 23:39:38
「それ、マジで言ってんの!?」
 勇者が恐ろしいものを見るような顔でクリフトを凝視した。
「マ、マジです…。勇者さんは違うんですか?」
「適当なこと言って押し倒して、若さに任せて相手の涙が枯れるまで攻め倒す。」
 今度はクリフトが驚愕して勇者を見つめた。
「そ、そんなひどいことできません!」
「何、クリフト、ピサロに『そんなひどいこと』されたんだ?」
「勇者さんっ!!!」
「へぇー。」
 勇者が先頭を歩くピサロにチラッと視線を投げかけた。
「そりゃピサロ相手だと泣かされるだろうね。向こうは魔王なんだから、ひどい事言うのもするのも商売なんじゃないの?
 『お前を蝋人形にしてやろうか』なんて言葉も日常的に出ちゃうよ。
 で?なんか落ち込むようなこと何か言われたの?」
「い…言えません、そんなの。蝋人形って何ですか。」
「じゃあ、本人に直接聞いてこようっと。」
「やめてくださいっ!」
 足を速める勇者を慌てて止めて、クリフトはすでに泣きそうになりながら、
「私が乱れて…いやらしく泣き叫ぶ姿が見たいそうです。」
と抑えた声で早口で呟いた。
「ごめん、聴こえなかった。もう1回言って。」
 勇者が身を乗り出して笑顔で言う。クリフトは恥ずかしさで一気に顔が熱くなって消えたくなったが、なんとか堪えて、もう一度同じ台詞を小声で呟いた。
「ごめん、もう1回…。」
「聴こえてるでしょ。」
 クリフトは手刀で勇者の頭を殴る。勇者は涼しい顔でクリフトへ向きなおった。
「ちゃんと、話し合ったこと無いんだろ。自分の想いも伝えてないなら、ピサロがクリフトのことどう思ってるかも訊いてみたこと無いんだろ。」
「そんなこと…」
「勝手に好きになって、勝手に傷ついてたら世話無いよ。」
 勇者はクリフトを見つめた。
「今日も同室にするからね。ちゃんと自分の言いたい事言えば?うじうじ悩むのはそれからにすればいい。」

 決意も固まらぬまま夜になり、ピサロが部屋に居ると思うと居たたまれなくなって窓から見えたこの海へと逃げてきてしまった。
自分自身がどうしたいか、すら分からなくなってきたのに、ピサロに自分のことを問うなんて想像もできなかった。

210夜の海 3/8:2010/11/23(火) 23:43:24
「何をしている。」

 頭上からふいに話しかけられ、見上げると、夜空にピサロがマントをわずかな夜風にはためかせて浮かんでいた。クリフトはたちまち萎縮してしまう。
「あの、ちょっと考え事を。」
「…そんなに私に抱かれるのが嫌なのか。」
 いきなりメインの問題に切り込んできたピサロにクリフトは絶句してしまう。でも、訊かなければ。自分のことをどう思っているのか。
「ピサロさん、あの…!」
「…もう、お前の身体に触れない。それならいいんだろ?」
 自分の言葉に重なるようにしてピサロが呆れた口調で言い放った。砂浜から立ち上がったクリフトは再び言葉に詰まる。
「先に帰る。夜風は身体に障るぞ。いい加減に切り上げて戻って来い。」
 ピサロはそのまま町のほうへと飛び去ってしまう。クリフトはピサロの言葉を心の中で転がし、それが冷たい一片の氷のように胸を急激に冷やしていくのを感じていた。
 もう、自分はピサロに抱かれることは無い。プライドを根こそぎ奪われ、思い出すだけで羞恥の極みの行為を強要されることが無くなり、感情の堰を崩壊させられる事が無くなる。
もう、こんなに思い悩む事は無くなるなんて、喜ばしいことじゃないか。

「うっ…。」

 涙が急に溢れてきた。胸の中に開いた大きな穴からは安堵よりも身を切られたような痛みしか感じられなかった。
私とあの魔王の関係は、身体だけの繋がりだった。それでも、私は抱かれている間は彼に必要とされている思っていたのに、ピサロにとっては簡単に切る事ができる関係だったのか。
今頃気が付くなんてどうかしている。

 もうしばらく1人で居たかったが、早く戻れ、というピサロの言葉が引っかかり、無理矢理に深呼吸を繰り返す。泣き止んで、何事も無かったような顔で戻らなくては。
結果がどうあれ、私を思い悩ます問題が今、消滅したことは間違いない。クリフトは涙を服の袖で強く拭き取ると、町の方に一歩足を踏み出した。

 かすかに魔力を感じ取ったのはその時だった。
 ビロードのように穏やかな夜の海の方から、魔法の力を持つ何かの気配がした。魔物ではない。何かのアイテムだろうか。

 クリフトは逡巡し、聖水がまだ効果を発している事を確認すると、意を決して上着を脱いだ。裸になるべきか迷ったが、暗闇の中で岩場で身体を切る可能性もあり、薄手のシャツとズボンを着たまま、真っ直ぐ海へと駆け寄った。
 想像以上に昼間の日光を浴びた海は温かく、服が水を吸って多少重たかったが、クリフトは潮の流れに合わせて泳ぎだした。何もかも忘れて身体を動かしたい気持ちもあり、魔法の気配を感じるポイントまで一気に泳ぎ着く。
今夜は新月で星の光だけでは海の中を照らすには不十分だったが、クリフトは覚悟を決めて息を深く吸って海中へと潜った。

 海中は海面近くに光る夜光虫以外は真っ暗だ。自分が上に向かっているのか下に向かっているのかさえ、分からなくなるくらい、海は闇に包まれていた。
胸が苦しくならないよう、静かに息を吐き続け、クリフトは魔力を感じるポイントを目指す。身体から空気が減れば、その分体は自然と下へ下へと沈んでいく。
やがて、息苦しさを感じ始めたとき、そのアイテムが淡い緑の光を帯びて海底に転がっているのが見えた。
綺麗だな…クリフトはアイテムに手を伸ばす。祈りの指輪だ…いいお土産ができた。

 指がそのリングに掛かった瞬間、ふいに自分の脇を強い力で掴み上げられた。次の瞬間にはものすごい速さで海上に向かって引っ張り上げられる。あまりの速さに身体がついていかず、海面に顔が出た瞬間、クリフトは激しくむせ返った。
脇を掴んでいた何かがスッと離れ、クリフトは体を海面に浮かせようとしたが、眩暈がしてもう一度身体が海に沈みこんだ。
今度はシャツの襟元を掴み上げられ、再び海面から顔を出したクリフトはようやくその手の正体を認識した。

「ピサロさん…!?」

 同じく着衣のままのピサロが不機嫌な顔で目の前に浮かんでいた。長い銀髪が水面に揺れている。

211夜の海 4/8:2010/11/23(火) 23:47:08
「何のつもりだ。」
 クリフトの襟元から手を離したピサロが低い声で問い掛けてくる。それはこちらの台詞のはずで、クリフトはパチクリと瞬きをする。

「私に抱かれたのが死ぬほど嫌だったのか。」

 その言葉でクリフトはようやくピサロが何を思って自分を海上へ急浮上させたか理解した。入水したと思われたんだ!
「違いますっ!私は…」
 クリフトはハッと両手の平を海面に上げた。いけない。指輪を落としてきてしまった。思わず海中に潜りかけ、またピサロから猫のように襟首を掴み上げられる。
クリフトは指輪を見失った焦りもあり、思わず「いい加減にしてくださいっ!」とピサロの手を振り払った。
 ピサロの目が益々剣呑なものになり、一瞬で後悔したクリフトが言葉を発する前に、その手はクリフトの後頭部の髪を鷲づかみにした。

「ら、乱暴は止めてください。」
「そんなに海の中がいいんなら、満喫させてやろうじゃないか。」

 噛み付くようにクリフトの唇を奪ったピサロは間髪いれずにクリフトの頭を抱きかかえたまま海中へと沈めた。クリフトの悲鳴がピサロの口腔内で響くが、ピサロは無視してその口付けを深いものにしていく。鼻で息継ぎする事もできず、クリフトは必死でもがいたが、魔王の身体はビクともしなかった。
ピサロの唇が離れても、その手がクリフトのシャツの中へと潜りこみ、クリフトはゾクリと身体を震わせた。

 まさか。もう抱かないと言ったじゃないか。

 思わず水を吸い込み、クリフトの胸は悲鳴を上げる。強い苦しさと恐怖を感じて逃れようとするが、ピサロの両腕がクリフトを抱え込み、シャツを捲し上げて愛撫を繰り返していた。
息を詰めると身体に与えられる感覚を逃がす事が難しい。しかし、喘ぐ事もできず、急速に体内の熱を上げられてしまう。クリフトは気が付けばか弱く悲鳴を漏らしていた。
 再び口付けされ、空気が送り込まれる。クリフトはむさぼるように空気を肺に送り込んだ。ピサロは自分と同じく一度も海上に浮上していないはずなのに。
目の前に居る者は人間ではない。クリフトの心は不安と恐怖で支配される。こちらの苦しさはちゃんと伝わっているのだろうか。
 身体の脇を撫で上げられるたび、クリフトは思わず声を上げ、大量に空気を吐き出してしまう。定期的に空気を与えられるが、身体が追い上げられ息も上がっていく状況で、それは拷問だった。
海中では言い訳も懇願もできない。

 どうしよう、このままの状態で達してしまったら、確実に溺れ死ぬじゃないか。
 暴れて身体を動かす方が酸素を大量に必要としてしまう事は分かっている。それでもクリフトは闇の海の中で必死に自分を愛撫するピサロの手を止めようと探した。しかし、手は何度も空しく水を掻く。暗闇の中、ピサロの身体はいつの間にか自分の背後に回って自分を拘束している。
ズボンも下着も脱がされて、暗い海の中で何処へ行ったか分からなくなってしまい、クリフトの恐怖が息切れと共にピークに達した。その時、予告も無く前を擦られ目の前が弾ける。

 精を放った瞬間、クリフトは悲鳴を上げて大量に海水を飲み込んだ。身体からピサロが手を離しても、クリフトは再び海中で上下が分からなくなる錯覚を感じた。空気を求めて、浮力が働く方へ浮上すれば良いのだろうが、身体から空気が大量に奪われているせいで身体が浮上し辛いのだ。

 パニックに陥ったクリフトを見兼ねてか、再びピサロに腕を掴まれて海面へ引っ張り上げられた。ようやく外の空気に触れたクリフトは激しく咳き込み、必死に水を吐き出した。
海中に潜って数分ほどしか経過していなかったが、永遠に等しいほどの苦しさだ。
 自分1人で浮き続けられなくて沈みがちなクリフトを置いて、ピサロは自分の全身を水面から浮上させた。そのまま放置されるような気がしてクリフトは慌てて「待ってください!」と呼び止める。

「私は死のうとしていたわけじゃありません!祈りの指輪が落ちてて…」

 声を張ったつもりだが、実際にはかすれて弱々しいものになっていた。

212夜の海 5/8:2010/11/23(火) 23:50:44
「私には…まだまだやらなければならないことがいっぱいあるんです。死ぬなんて私は…」
「何をしたいんだ。」

 頭上からのピサロの問いにクリフトは水上でもがきながら答える。

「元凶を倒します。それはあなたも同じでしょう?」
「それが終わったら?」
「サントハイムの皆さんが戻ってきたら、国内の復興をしなければなりません。」
 溺れそうになりながら、それでもクリフトは悩みもせずに即答した。
「それが終わったら?」
「王に許してもらえるならば、勇者さんの村の復興をお手伝いします。」
「…それが終わったら?」

 クリフトはそのまま海に沈んでしまい、尽きそうな体力を振り絞って水上へ顔を出す。ピサロは表情も変えずに同じ場所に浮かんでクリフトを見下ろしていた。

「それが…それが終わったら。」

 クリフトは震える声で続けた。

「人間も、エルフも、天空人も、魔族も一緒に暮らせる世界を作るにはどうすれば良いのか考えます。」

 ピサロは驚いた顔をしたが、次の瞬間ふっと笑みを浮かべた。
 
「……一生掛かるな。」
「かも知れません。」

 再び沈みそうになったクリフトの腕を再び水面へ降りてきたピサロが掴む。呼吸がままならなくて落ち着こうとクリフトが深呼吸をした途端、ピサロから肩を抱かれて一瞬息が止まった。
自力で身体を浮かせ続けるのも辛いので、クリフトは抵抗する気力も無くそのままピサロに身体を寄せ、おずおずと両腕をピサロの両肩に添えた。ピサロから唇を寄せられ、クリフトはまだ肩で息を続けていたが、大人しく唇を合わせた。
ますます息が上がっていく中、ピサロの指が自分の下肢に伸びていく事も分からない。気が付いた時は下の入口をピサロの指がこじ開けようとしていて、クリフトを再び恐怖に陥れた。
 クリフトはピサロの唇から逃れると「無理です…」と弱々しく首を横に振ったが、ピサロはクリフトの耳に唇を寄せ、「力を抜け」と囁き、耳を甘咬みしてきた。
再びピサロを怒らせたくなくて、クリフトは必死に深呼吸を繰り返すが、やがて指が中に入ってきて、クリフトは再び呼吸困難に陥った。指の数が増え、クリフトが海上で震えるたびに、それに反応して夜光虫の青の光が輝きを増すのだが、クリフトはそれに気付く余裕すら無い。

 やがて指が引き抜かれ、片足を抱えられ、すぐ後に熱いモノがあてがわれても、クリフトはチラリとピサロの顔を見ただけで抵抗する気力すら湧かなかった。
自分の中が貫かれていく間、クリフトはかすかに声を漏らしながら目を閉じた。全てが入ってクリフトがこれから自分の身に起こる事に覚悟を決めた時、そのまぶたの上に温かいものが数秒押し当てられた。それが唇だと気が付き、驚いて目を開くのと、再びピサロに海に引きずりこまれたのはほぼ同時だった。

 恐怖で萎縮するクリフトの背にピサロの手が回る。ピサロは抱き合ったままの体勢で闇の海を潜り続ける。ただ海中にゆっくりと漂うだけの行為は思いのほか心地良く、クリフトも落ち着きを取り戻してピサロの背に手を回した。
こうして、ただ単純に抱き合うのは初めてだった。私も簡単だな、とクリフトは苦笑を浮かべ、ピサロを抱く手にそっと力を込めた。あんなにひどい目に遭ったのに、こんなことが嬉しいなんて。

 やがて、息が尽き、暴力的な苦しさの中、それでもクリフトはピサロから離れようとはせず、徐々に意識を失った。

213夜の海 6/8:2010/11/23(火) 23:53:33
 ピサロは自分のマントを砂浜に敷くと、そこへクリフトをそっと寝かせた。落ちていた流木に火炎の呪文を唱えると、やがて小さく爆ぜながら赤々と周囲を照らす焚き火となる。
自分の服を脱いだ後は、気を失っているクリフトの服も脱がせて、興味本位で集まってきたドラキーたちに突き出した。ドラキーたちは嬉しそうに服を咥えて焚き火の熱気の上でパタパタと飛び交い始めた。ちなみにクリフトのズボンも祈りの指輪も拾い上げてある。

 本当に、こいつは無自覚だ。ピサロはクリフトに回復呪文を掛けながら心の中で呟く。

 体調を崩したクリフトの服が破られているのを見たとき、ロザリーが息絶えた日を思い出してしまったことなど、こいつは気付きもしないのだろう。
私がどれだけ衝撃を受けたか。相手にどれだけの怒りを感じたか。それなのに、何でも無いことのように振る舞い、ごまかそうとする態度に無性に腹が立った。
あの時感じた怒り、動揺を全てぶつけ、クリフトが何度も気を失い、遂にはピクリとも動かなくなってしまうまで責め立てた。
 そして今も、夜の海にアイテムが落ちているからと平気で潜っていく。

 ロザリーのように塔の中に閉じ込めて誰からも傷つけられることなく護る事ができるのならば、今すぐにでもクリフトを連れ去ってやるものを。
 しかし、ヤツを倒すまではこいつの力が必要だ。回復にかけて、この男の右に出る者は居ない。そして、ヤツを倒せたとしても、こいつは自分の国を始め、ピサロたちが滅ぼした村や町の再建に尽力すると言う。その次はこれらの原因を作った種族の垣根さえも一生掛けて壊すと言う。
 こいつを閉じ込めても、満足するのは私だけだ。

 ピサロはクリフトの左手薬指に祈りの指輪を通した。関節でつっかえたが無理に押し込むと指の付け根まで指輪が進んだ。痛みを感じたのかクリフトがかすかに呻いて目を開いた。
自分が真っ裸で居る事に気が付いて慌てて身を起こすと、すぐそばに同じく全裸のピサロが流木に座っていることに気が付き目を丸くする。

「あの…私の服は…?」
 恐る恐る声を掛けてくるクリフトに無言で空を指差してやると、焚き火の上のドラキーたちに気が付いたようだ。自分のズボンや下着も空にたなびいているのを確認して、ホッと胸をなでおろしている。そして、今度は自分が寝ている下のマントに気が付いた。
「ピサロさん、これは…あなたのマントでは!?」
 クリフトは慌てて飛びのき、眩暈がしたのかへなへなと座り込んだ。
「死に掛けたんだ、寝ていろ。」
「はい…すみません。」
 クリフトは大人しく横になる。

「ありがとうございます。あの、心配させてすみませんでした。」
「いや、私も悪かった。しかし、指輪を取りに行く事が目的だったにしても危険なことには違いない。もう夜の海に入るのはやめろ。」
「昼間の海の方が私には脅威です。」
 クリフトは軽く笑う。「綺麗な海だと海底が見えるでしょう?高さに震え上がって泳げなくなるんです。」
「なるほど。盲点だったな。」
 ピサロは肩をすくめる。
「次からは私に言え。海の魔物に頼んでやる。」
「あ、ありがとうございます。」

「私に抱かれるのが嫌なんだろう?」

214夜の海 7/8:2010/11/23(火) 23:55:01
 クリフトは息を飲んで、いきなり話題を変えたピサロを見つめた。
「なんでそんなこと…。」
「昼間の会話は私の耳にも届いていた。」
「ええっ!?あの声と距離で聴こえたんですか。」
 次の瞬間、クリフトは昼間と同じく顔が一気に熱くなった。

「いや、その、私は…っ!」
「もう2度とお前を抱かない、と誓えば気が済むのか?」
 その言葉に、クリフトはふるふると首を振った。
「答えろ、クリフト。」
「わ…私は…。」クリフトは両手で自分の顔を覆った。

「怖かったんです。あなたに抱かれるのが。」

 クリフトは、振り絞るように吐き出した。
「力だって敵わないし、自分で自分の体がコントロールできなくなるし…
 何より、あなたに言われなくとも、散々いやらしく泣き叫んでしまう。
 自分が自分で無くなるようで…神官だというのに、どんどん快楽に弱くなっていって、情けなくて…。」

「性欲は魔族でも人間でも動物でもある。何を当たり前のことを嘆く。」
「私にとっては堕落です!それに…。」
 クリフトはハッと顔から手を離した。
「指輪が…。」
「それに、何だ?」
「えっ!?い、いえ、いいんです、何でも無いです。」
「言わねば、この間の薬をまた寝ている間に飲ませるぞ。」
 クリフトはビクッと体を震わせた。
「私は…そんな情けない姿を…よりにもよって、あなたに見られてしまって、
 軽蔑されるんじゃないか、嫌われてしまうんじゃないか、と思って怖いんです。」

 ピサロさんは軽く眉を上げた。「私がそんな体にしたのに?」
「ずいぶん、好き勝手してくれましたよね。」
「大体、お前がいちいち言葉に反応するからだ。流せば良いものを、わざわざ真正面で受け止めて傷つく。面白い。」
 クリフトは思わず起き上がってピサロと向かい合った。
「なっ…私がどれだけ辛かったか分かっているんですか。」
「これからは少し手加減してやろう。まぁ、しばらくは手加減具合が分からんかも知れんが。」
「これからって…?」
 ピサロが自分の肩に手を乗せてきて、クリフトは目をむく。
「死に掛けたんだから寝ていろって言いましたよね!?」
「回復呪文は掛けてやった。もう少しは大丈夫だろ。」

215夜の海 8/8:2010/11/24(水) 00:00:52
 反論を待たずにピサロはクリフトに深く口づけた。海水を散々含んだ口腔内を長く味わい、体を離すと、クリフトは涙で濡れた目で戸惑ったようにピサロを見つめた。
 そのまま体を押し倒して、ピサロがクリフトを見下ろすと、そこでクリフトは我に返り、慌てふためいて、
「や、あの、人の話を聞いてましたか?
 ひあっ!わ、私はこういうことが辛い、と言ってるんですよ。」
とピサロが愛撫を開始しても必死で両腕で相手の胸を押し返しながら訴えた。

「少しは慣れろ。これも特訓だ。」
「特訓の成果が出たって…確認する人はあなたしか居ないじゃないですか!
 止めてくださいっ!ドラキーが見てますっ!」

 クリフトが必死に放った言葉は、逆にピサロの顔に再度薄い笑みを浮かばせた。
「その代わり、終わったら宿で一緒にお茶を飲んでやる。それでは不服か?」

 クリフトは抵抗を止め、驚いたようにピサロを見つめる。
「いえ……それで十分です。」
 クリフトの目は恥ずかしげに伏せられ、ピサロを押し返そうとしていた手をパタンと降ろした。
「あの、お手柔らかにお願いします。」
 ピサロは微笑み、心の中で誓いを立てる。

 お前を監禁できないのならば、見えない檻に入れてやろう。
 お前が目的に向かって走り続けるのを止めた時、私はお前を連れ去って本物の檻に入れてやる。

 そうしてピサロはクリフトの指に光る祈りの指輪にキスを落とした。

216名無しの勇者:2010/11/24(水) 00:02:21
以上です。ありがとうございました。

217名無しの勇者:2010/11/24(水) 00:38:43
投下乙です
相思相愛!
甘く優しいピサロと見せかけて「本物の檻に入れてやる」とか
しっかり魔王らしくて惚れます
相変わらず一途なクリフトに萌えました
いつも良い味を出してる勇者くんにもいつか良い思いをさせてやってください

218名無しの勇者:2010/11/24(水) 01:24:33
乙です!
実はそろそろ新作が来るのではと2日ほど前から張ってました!
前作のすれ違いっぷりが歯痒くもあり可愛くもありましたが、
大団円おめでとうございます!!
これからも適当に嫁にいたずらしてくださいねw、魔王様!
そして勇者くんに幸あれ〜

219216:2010/11/25(木) 00:15:02
本当にありがとうございます。こんなに早く感想がいただけるとは
思ってもいませんでした。
またこれまで感想を書いていただいた方々もありがとうございます。
感謝感激です。拙い文章ですが、またいいクリフトのいじり方(?)、
勇者の活躍ッぷりを思いついたら書きに来ます。
その時はよろしくお願いします。

220名無しの勇者:2011/01/02(日) 23:01:15
>確認する人はあなたしかいない
本当、無意識に凄い発言するなぁw
お茶を飲んでチェスするようなほのぼのマターリの光景も見てみたい

221ロールプレイング 1/4:2011/01/31(月) 23:49:41
ピサクリです。
※215の続きです。
※会話中心。薬あり(?)。


 その日、クリフトは上機嫌で宿屋に帰ってきた。
 いつもより早い夕暮れ前にダンジョン探索が終わったので、ダメ元でピサロに部屋でお茶でも飲まないか、と誘ってみたところ、「構わん」とうなづいてくれた。それだけのことが、天にも昇るような気持ちになってしまう。
体の関係から始まってしまったからなのか、ただ、ゆっくりと話がしたい、というそれだけのことがこれまでできないでいた。
情事の後なら構わない、と言われた事もあったが、体力を根こそぎ奪われるような抱かれ方をされて、お茶を入れる気力など残っているはずも無かった。

 宿屋の女将にお湯を分けてもらい、部屋に戻るとピサロは約束どおりどこにも行かずに軽装になってベッドに腰掛けていた。

「お待たせしてしまってすみません。道具屋さんで薬草のことを相談していたら遅くなってしまって。
 でも、ハーブをおまけしてくれたんですよ。良かったら、今日はハーブティーにしませんか。」

 ピサロが無言でうなづくのを確認し、クリフトは上着を脱ぐと急いでティーソーサーとカップを二人分用意した。袋からハーブを取り出すと小さじ2杯分をティーポットに入れてお湯を注ぐ。
「優しいご主人でして。お年を召された方ですが、その分、とても薬草や道具に詳しいんですよ。
 トルネコさんと話が合うかも知れませんね。」
「ああ、あの逆さ絵のような店主か。」
「逆さ絵…って確かに頭よりも髭の方が見事な方ですが…。」

 カップにハーブティを注ぎ、クリフトは「どうぞ」とピサロに手渡した。ピサロは匂いを嗅ぎ、カップに口を付けた。
「パッションフラワーです。さっぱりして飲みやすいでしょう?」
 クリフトはピサロの向かいの位置の椅子に腰を掛け、自分もカップの香りを楽しむ。

「パッションフラワーはまたの名を時計草というんです。その名の通り、時計に良く似た花が咲くんですよ。とても不思議で綺麗な花なんです。
 これの効用なんですけど…。」
「パッションフラワー、か。」
 ハーブの説明を続けようとしたクリフトの言葉に重ねるようにピサロはポツリと呟くと、話し続けようとしたクリフトに微笑み
「もう少し甘くして飲みたいのだが?」
と穏やかな声で言った。
「あ、そうですね!気が付きませんでした。蜂蜜をもらってきます!」

222ロールプレイング 2/4:2011/01/31(月) 23:52:24
 クリフトはピサロのまさかの甘党発言にいささか驚きながら、慌てて席を立つと部屋を飛び出した。

 そうか、甘いの好きなんだ。お茶受け代わりに焼き菓子でも買ってくれば喜んでもらえたのかな。またゆっくりお茶ができる機会があればきちんと用意しておこう…。

 宿の女将に少しだけ蜂蜜をもらうと再び部屋に舞い戻る。
「もらってきました!どうぞ。」
「わざわざ、すまないな。」
 ピサロは優しく微笑み、蜂蜜の入った小瓶を受け取ったが、そのままそれをサイドテーブルに置いた。
「甘くしなくてもそれなりに美味かった。折角取りに行ってもらったんだが。」
「ああ、そんな。別に構いません。美味しく召し上がっていただいたのなら。」
 クリフトは手を振って、再び椅子に腰掛ける。カップを下の皿ごと手に取ると、ハーブティを何口か口にした。ああ、落ち着くなぁ…。

「クリフトは、想像力は豊かな方か?」
 ふいにピサロが口を開き、クリフトはカップから口を離した。

「そうですねぇ…昔は色んな物語を読んだり、神父様から絵本を読んでもらったりしましたから、どちらかと言うと想像力は人一倍強いかも知れません。
 ただ、不安症なもので、後ろ向きなことを考えてはよく姫様やブライ様に怒られていますが。」
「では、今からゲームをしよう。私が今から物語を話すから、
 お前はその主人公となって、様々なシーンでどのように行動するか答えていくんだ。いいな?」
「ええ。面白そうですね。」
 クリフトは少し前傾姿勢になりつつ、ピサロがこれから紡ぎだす物語の始まりを待った。

「主人公の名前は…クリフトのままでいいだろう。舞台はここだ。魔王・ピサロとお茶を飲んでいる。」
「今のところ、想像力はいりませんね。」

「お前はふと、身体に異変を感じる。体内が熱くなり、体の自由が利かなくなる。
 どうやら媚薬入りのお茶を飲んでしまったらしい。」
「えっ。」

 クリフトは自分のカップを見つめた。

「ピサロはただ黙ってこちらを見つめているだけだ。
 そう言えば自分はお茶を入れた後、席を外し、何かを入れる機会を相手に作ってしまっている。」
 ピサロは微笑を浮かべたまま、淡々と話し続ける。

「……入れたんですか?」
「ゲームだと言ってるだろう。」
 間髪入れずに答えられ、クリフトはまたカップに視線を落とした。茶色がかった透明なお茶が残っている。

223ロールプレイング 3/4:2011/01/31(月) 23:54:25
「ピサロは何も言わないし、何もしてくれそうも無い。お前はこれからどうする?」
「あの、足も立たなくなっているんでしょうか?」
「いや、ふらつきながらも何とか歩行は可能だ。手も震えはあるがとりあえず動く。」
「ならば、道具袋から毒消しを探します。」
「道具袋は隣の部屋の勇者が持っている。」

 グッとクリフトは詰まった。以前、実際に媚薬を誤飲したとき、勇者は泣いて拒否するクリフトを散々弄り倒したことがある。

「ど…道具袋はやっぱり止めて、ミネアさんを探します。」
「なるほど。やはり先日の首の跡の下手人は勇者の小僧か。」
「ゲームなんですよね、これ!?」
 慌てて言い繕おうとしたクリフトを鼻で笑い、ピサロは「まぁ、いい。部屋を飛び出したお前は、踊り子・マーニャに出会った。」と話を続けた。
「ミネアさんを見なかったか、と確認させてください。」
「道具屋に行った、とマーニャは答えた。マーニャはふらついている上に顔が赤いお前を不審がっている。」
 カチャカチャカチャ…とカップとソーサーが小刻みに鳴る音で、クリフトは初めて自分の手が震え始めていることに気が付いた。これは、恐怖故か、それとも…。

「『一緒に行ってあげようか』とマーニャは声を掛けてくれたが、お前はどうする?」
「お、お断りして、顔を伏せて宿屋を出ます。」
「道具屋まで歩くのか?」
「ええ…あの、身体はそれまで持つのでしょうか?」
「持った。クリフトはフラフラになりながら道具屋に着く。扉を開けると例の逆さ絵の店主が目を丸くして立っている。
 『どうしましたか、お客さん?』」
「『毒消しをください!!』」クリフトは台詞を言いながら必死にピサロを見つめる。

「生憎、店頭のが切れてしまい、在庫が奥の倉庫にあるようだ。
 店主は薬が回って立てなくなっているお前を心配して店の奥に入って待つように言っている。どうする?」
「ご主人に甘えます。」

「店主はベッドを用意してくれた。お前はもう、足腰が立たなくなって赤く火照った顔でベッドに倒れこむ。」

 ピサロの表情は、微笑を浮かべたまま変わらない。いや、薄笑い、と言うべきか。

「店主はお前の肩をつかんでこう言った。
 
 『薬はよく効いたみたいだな。今から楽しませてもらおうか。』」

224ロールプレイング 4/4:2011/01/31(月) 23:57:08
「えええっ!?そんなっ!」
 クリフトは思わず立ち上がった。

「あの道具屋のご主人に限ってそんなひどい事をされるはずがありません!!」
「それが道具屋の店主の裏の顔だったのだ。」
「でも、ハーブに異変はありませんでした!」
「宿の女将もグルだったんだ。」
「ええ!?まさか、お湯の方に薬が入っていたんですか!あんなに優しい方なのに…!」

「そうやってパニックになっている間に、お前はどんどん逆さ絵に裸に剥かれていくんだ。
 泣いて叫んでも親父はお前の身体を弄んでいく。」
「全力で抵抗します!」
「しかし、歩き回っている間に媚薬は完全に体中を巡ってしまった。お前の抵抗は赤子の力に等しい。」
「そんな…。」

 クリフトは途方に暮れて力無く椅子に腰を下ろした。

「私は…誰にも助けてもらえないのですか…?」
「助けて欲しいのか?」
「助けてください…このままではあまりにも…。」
「よし、それでは、そこに私が登場することにしよう。店主は私の一撃であっさりと気を失い、私はお前に服を着せて宿屋へと抱いて帰る。
 お前をこの部屋に戻した私はハーブティを入れて落ち着くように言った。
 お前の身体は逆さ絵に熱を上げられたせいでなかなか鎮まらない。」

 沈黙が部屋に訪れる。舞台が再びこの部屋に戻ってきたことで、まるで今がその物語の状況のような錯覚さえ覚えてきてクリフトはカップをサイドテーブルに置いた。

「『……どうぞ、抱いてください。』」
「『最初からそう言えば良かったんだ。』」


「あの、私、何かピサロさんの機嫌を損ねることをしたんでしょうか。」
 ベッドに移動してから恐る恐るクリフトはピサロに尋ねた。
「パッションフラワーの効用くらい知っている。安眠効果があるんだろう?」
「ええ…それが何か…?」
「お前は私と同室で居ながら、お茶を飲んだ後は眠るだけだ、と無意識にでも思っていた、ということだ。
 考えを改め、これからも自分から進んで私に抱かれるように鍛え直してやろう。」

 服を脱ぎながらパッションフラワーの名前の由来を思い出し、クリフトは道具屋の店主を恨んだ。

 パッションフラワー……“受難の花”。

225名無しの勇者:2011/01/31(月) 23:58:12
以上です。ありがとうございました。

226名無しの勇者:2011/02/04(金) 20:01:52
ピサロの誘導尋問の手際のズルかっこよさと、それに引っかかるクリフトの可愛さでニヤニヤしました

227名無しの勇者:2011/02/04(金) 20:50:25
ピサロマジエロ魔王
いいぞもっとやれ

228名無しの勇者:2011/02/17(木) 01:30:45
ストーリーの面白さにめっちゃ引き込まれました。
いいぞもっとやれ

229復讐 1/8:2011/05/31(火) 01:00:10
ピサクリ前提の勇クリです。
※無理矢理・拘束・勇者が黒いです。すみません。
※>215の続きですが単独でも読めます。

 僕が旅立つきっかけとなったあの最悪の日、僕は幼馴染に部屋に閉じ込められ、何もできないまま、

 その幼馴染を始めとするありとあらゆる大切なものを殺され、破壊されてしまった。

 ほとぼりが冷めてから、ようやく開いた扉の向こうで僕が見たのは変わり果てた村の姿だった。
 何故、僕も連れてってくれなかったんだろう、としばらく村を歩きながら、ぼんやり考えてたら、あの娘がお気に入りだった帽子が転がっているのが見えた。
 最後のか細い望みさえ、途絶えたような気がして僕はそこで崩れるように座り込んだ。

 そうして、僕は汚れてしまった羽根帽子に誓ったんだ。

「絶対に許さない。この村を滅ぼしたやつを世界の果てまで追い詰めて、必ず同じ苦しみを与えてやる。」

 そいつの名前はデスピサロ。巷で噂の魔王様だった。魔王相手なら、とことん追い詰めたって、世界中が許してくれるよな。
 旅を続けているうちに、踊り子と占い師の美人姉妹を初めとして、共通の目的を持った仲間が続々増えて、僕は単純に嬉しかった。
 サントハイム組なんて城中の人間が消された、と言う。その中でも若い神官の兄ちゃんが僕の話に共感して涙してくれた。
 彼や仲間たちはこの強烈な孤独を埋めてくれたように思えたんだ。僕のこの気持ちを少しでも共感して理解してくれる。僕は正直、彼らに救われた。
 全てを失った僕にもこうして大切な仲間ができた。これが再び奪われたらどんなにか辛いだろう。
 そんな時にイムルの村であの夢を見た。だから、デスピサロへの報復として、ロザリーを見つけ出して殺してやったらどうかと思ったんだ。

 分かってるよ。でもその時はそう思っちゃったんだ。ロザリーヒルで彼女を出会ったとき、もし僕一人なら彼女を殺していただろう。
 だけど、デスピサロを追っている間に、他の人間が彼女を殺してしまった。イムルの村でその光景を見たとき、ロザリーには悪いけど、僕はいい気味だとさえ思ってたんだ。
 だけど、お人好しの神官が言ったんだ。

 『欲に走った人間と、愛のためにわが身を滅ぼしても復讐をちかう魔族。私にはもうどちらが正しいのか分からなくなりました。』
 『人間の犯した罪は私たち人間がどうにか罪滅ぼしをしたいです。』

 僕は混乱した。クリフトは僕に共感してくれたけど、ロザリーやピサロにも共感しちゃってた。クリフトの言葉が正しいのは分かる。
 だけど、僕の復讐心は治まらなかった。ロザリーは死んじゃったのに。

 ロザリーは復活した。でも、さすがにもう殺せない。シンシアが重なっちゃうし。あんな辛い目に会った娘に何もできないよ。
 だから僕は、次にピサロの大切な人は誰だろうと思ったんだ。ピサロさえも仲間になったというのに、僕は何も成長できてなかった。
 平気な振りして、ずっとピサロを観察してた。彼がロザリーの他に大切にしているものは何だろう、と思って。
 そこへ、共感を通り越して、魔王に恋心を持ってしまった神官が現れる。僕は彼を煽ってみた。

 不思議と上手くいったよね。魔王は神官に対して愛情を持ち始めたようだ。


 では、この神官を目の前から奪ってしまえば魔王を苦しめることができるんじゃないの?

230復讐 2/8:2011/05/31(火) 01:03:54
 全裸で横たわったクリフトが戸惑った顔で自分の体の上に乗っかっている僕を見上げている。いきなり仲間にラリホーマ掛けられて、目が覚めたらベッド上で両腕を拘束されてるんだから動揺するのも無理は無い。
クリフトは首を仰け反らせて自分の両腕を縛り付けているロープがベッド柵に括り付けられているのをもう一度確認すると、今度ははっきりと困りきった顔で僕を見つめた。

「あの、確かに私は勇者さんからすれば許し難い事をしてしまったのかも知れませんけど、ここまでされなくても…。」
 最もなことをクリフトは訴える。クリフトの大腿部の上には僕が腰掛けて押さえ込んでいるから、身動きは取れないはずだ。


 クリフトが考えている“僕が許し難いこと”というのは、今日、探索したダンジョンの中で、自分が大怪我している事を黙っていた事だ。
 階段を下りようとしたところでモンスターの群れに襲われ、応戦している最中、ドン、と鈍い音が階下から響いた。僕がモンスターを斬り捨ててようやく音がした方を覗き込むと、クリフトが階段の下でうずくまっていた。慌てて階段を駆け下りると、僕に気付いたクリフトがよろめきながら立ち上がる。
 心配する僕に「ちょっとつまづいちゃって」と笑ってごまかしたクリフトは、回復呪文を詠唱して腕についた打撲を癒した。
クリフトは自分が怪我をしても他者を優先する癖があるから、僕は「大丈夫です、行きましょう。」と笑顔で戦闘に戻っていく姿を見て、安心したんだ。
 まさか、服に覆われて見えないところを全く癒して無かったなんて、夢にも思わなかったから。

 その後、宿屋に戻った時にクリフトはミネアさんの部屋に行って回復を頼もうとしたようだけど、ミネアさんも魔力が残っていないことを知ると、逆にミネアの体調を心配した挙句、大丈夫だと分かると、また逃げるように部屋に戻ってしまったらしい。
なんでこの事を僕が知っているかと言うと、ミネアと同室だったマーニャがあきれた顔で食堂で食事を摂っていた僕のところへやって来て、
「あのバカ神官、自分の怪我を隠してるわよ。誰かお仕置きしてから治してやってよね。」と教えてくれたからだ。
 離れた席に座っていたピサロがチッと舌打ちし、席を立とうとしたところを僕が止めた。

 僕がクリフトの部屋をノック無しで入った時、彼は軽装に着替えて床の上に両膝を付き、聖書に手を置いて祈りを捧げているところだった。
こちらに振り向き、「今日は勇者さんと同室ですか」と微笑みかけてくる。『ピサロと一緒じゃなくて残念だったね』と言いそうになり、僕はひとつだけ咳払いをした。

「腐った死体と間違いそうなほど顔色が悪いんだけど。」
「ひどいですね。せめて“死体”で止めてください。」
 クリフトは顔を逸らして聖書を棚に置くと、ベッドに潜り込もうとする。

「少し疲れただけです。もう今日は休ませていただきますから。」
「クリフト。」
「何ですか。」
「服脱いで。」

 ピタ、とクリフトの動きが止まる。ベッドを見つめたまま、「…嫌です。」と呟いた。

「リーダーは僕だ。命令に従わないなら、ずっと馬車に入っててもらうよ。」
 クリフトはやっと僕の方に振り向いた。しばし口を真一文字にして沈黙していたが、やがて、肩を落とすと小さく、「すみませんでした。」とうなだれた。
「いいから、まず服を脱いでよ。一旦眠って魔力が回復してから治すつもりだったんだろうけど、そのままじゃまず眠れないだろ?」
 ばれたというのに、クリフトの動きが鈍い。しばし躊躇したあと、モゾモゾと上着を脱いで上半身裸になった。
色白の地肌が、青やら赤やら土色やらの打撲痕で背中も腹部も鮮やかなほど彩られている。
「…よくこれで我慢してたね。」
 想像以上の怪我に思わず感心すらしてしまう。クリフトは益々小さくなり、力無くベッドに腰掛けた。

231復讐 3/8:2011/05/31(火) 01:05:57
「背中が色とりどりになってるよ。これが意味してること、自分で分かってる?」
 僕は回復呪文をかけながら問い掛けると、クリフトはこくりとうなづいて「階段からモンスターに落とされたから…。」と小声で呟いた。
「あれって階段から落ちてたんだ。よく耐えたな!…っていやいや、そうじゃないだろ。階段落ちだけじゃないだろ、これ。」
「打撲の色が違うのは、怪我をした時間がそれぞれ違うからです。」
 クリフトは益々消え入りそうな声で呟いた。
「正解。つまりこれって今日は最初の戦闘から自分に対して回復呪文をほとんど掛けて無かった、ということかなぁ?」
 回復呪文が早速効いてきて、打撲痕が綺麗になっていく。クリフトは痛みが消えたはずの背中をますます丸めた。
「申し訳ありませんでした…。」
「なんでこんなことしたのか聞いていい?まさかしょっちゅうやってるんじゃないよね?」
 ひとまず全ての打撲を消して、僕が少し強い口調で言うとクリフトは慌てて首を振り、「そんなにはやってません!」と語るに落ちる台詞を吐いた。
「じゃあ、時々やってるわけだ。なんで?魔力を温存するため?」
「あっ…いえ、その…。」
「で、今日はなんで節約モードに入ってたの?僕が命令したわけじゃないよね?」
「姫さまが…。」
「アリーナが自分の怪我治すの我慢しろっつったの!?」
「違います!姫さまはそんな事おっしゃったりしません!」
「じゃあ、アリーナ姫がどうしたんだよ。」
「私が勝手に判断したことなんです。」
「前置き長い。いいから早く吐いちゃって。」

「『今日はダンジョンの最奥まで行きたい。』」

 僕は全てを理解して天を仰いだ。「それ、アリーナの言葉?」
 クリフトがこくりとうなづく。
「その言葉に、クリフトは縛られちゃったわけだ。
 姫さまが喜んでくれるなら、高いところから階段落ちしても耐えてみせるって?」
 クリフトは怯えた顔で下を向く。
「さすがに、今日は気が付いたら魔力が本当に残ってなくて。
 自分がどれだけ愚かなことをしたのか、分かっているつもりです。」
「ダンジョンの最奥で回復役に死なれる方が辛いんだけど。
 それに、このことをアリーナが知ったら、自分自身を責めるんじゃないの?」
「姫さまには…!」
 うな垂れていたクリフトがすがるように僕を見上げる。
「言わない、言わないよ。」
 僕は肩をすくめた。クリフトはやっと安堵して笑顔を浮かべる。僕はその顔面に素早く唱えたラリホーマを浴びせてやった。


 そして、今に至る。

232復讐 4/8:2011/05/31(火) 01:08:14
「いや、普通、階段の上からモンスターに突き落とされてたなんて思わないもんね…。」
 僕がため息をつくと、クリフトが口をへの字にして少し不満気な表情をした。

「下のフロアまでの高さに眩暈を感じたところをやられてしまったんです。
 でも、黙っていたのは申し訳なかったですが、縛られて責められるほど悪い事をしたとは思えません。」
「うん。クリフトの言うとおりだ。罰を与えようと思ってやってるわけじゃないよ。」
「じゃあ、どうしてこんなこと…」
「クリフトを抱きたいから。構わないかな?」

 僕が単刀直入に言った言葉に、クリフトはポカンとこちらを見つめ返したけど、次の瞬間にみるみる頬を紅潮させた。

「何を馬鹿なことを!いきなりそんなこと言われて『どうぞ』と言えるはずがありません!」
「経過を語るより結論から言った方が早いかと思ったんだけど。」
「結論から話されたって理解などできませんよ!」
「ここに至る過程を聞いたら、クリフト後悔すると思うけど?」
「訳が分からないまま拘束されて…その、事に及ばれるよりはマシです。」
「えー、でも、ちゃんと話すと長くなるよ?」
「ちゃんと聞きますから。あなたは理由も無くこんなことする人じゃありませんよ。」
 クリフトの表情が途方に暮れたように不安げに揺れた。話次第では僕を説得できると思っているのか。なんて甘い人だ。
僕は素早く思考を巡らせたが、クリフトを傷つけず、彼を納得させられそうな上手い言い訳を用意できなかった。

「…えーと、じゃあ、隙あらばと虎視眈々と狙っている青少年の前で、クリフトが裸になったり涙目になったりするから悪い。
 お仕置きも必要なので やっちゃいます、というのはダメ?」
 僕はクリフトの脇腹を撫で上げる。クリフトは「ひぁっ」と息を飲んで、自分の反応に赤面した。
「待ってください!あなたが裸になれ、と言ったんじゃないですか!
 ちょっ…ひっ!こ、こういう行為は軽い気持ちでできることじゃありません!」
「軽い気持ちからなんかじゃないって。」
「だからちゃんと理由を話してくださいと言ってるじゃありませんか。ふぁっ…や、やめてってお願いしてるのにっ!」
「理由、理由って…本気で話したら結構重い話になるよ?」
 僕は手を止め、クリフトを見つめる。
「お願いします。話を聞かせてください。」

 僕はふぅ、と息をつき、本腰を入れてクリフトを抱こうとする理由を語ることにした。僕はベット脇に置いてあった剣を手に取って鞘から抜く。
クリフトが不思議そうに見上げている。

「僕が旅立つきっかけとなったあの最悪の日、僕は何もできないまま、僕の大切なものを殺され、破壊されてしまったって言ったよね。」

 クリフトの顔色が変わる。だから聞けば後悔すると言ったのに。
 僕は剣の柄を握り締め、全てをぶちまけてやった。

233復讐 5/8:2011/05/31(火) 01:09:46
 あの日の衝撃も。仲間への感謝も。ピサロへの復讐心も。ロザリーに抱いた殺意も。自分の成長の無さも。
 クリフトは瞬きすら忘れたように、じっと僕を見つめていた。

 そして、今、クリフトに対して抱いているドス黒いマグマのようなこの思いもぶつける。

「ほら、魔王は神官に対して愛情を持ち始めているみたいじゃない?
 だったらさ、この神官を目の前から奪ってしまえば魔王を苦しめることができるんじゃないかな?」

 僕は剣を振り上げた。クリフトは息を飲んで僕を見上げている。僕は剣をクリフトの胸目掛けて振り下ろす。


 強い口調でクリフトが僕の名を叫んだ。

「…大丈夫だよ。冗談だからさ。」
 僕は剣を寸止めし、そのままベッドに繋いであったロープを切った。僕が微笑むとクリフトは両目に涙を湛え、両手を拘束されたまま腹筋だけで起き上がってきた。

「ごめん、怒らないでよ。まさか本当に殺……。」
「何故、それをもっと早く私に言わなかったんですか?」

 クリフトの真剣な眼差しに僕は言葉を切る。
 殴られるか、と身構えた僕を、クリフトは両手を繋がれた状態のまま、その両腕の中に僕の頭をくぐらせ、そのまま僕を抱きしめてきた。

「ク、クリフト!?」
「あなたをそんなに苦しめていたなんて知りませんでした。お許しください…!」

 僕の頭を抱き締めて、クリフトが僕の耳の側で声を震わせる。
「私を殺したところで、あの人にどれだけ響くかは分かりません。でも、それであなたの気持ちが晴れるのなら、今すぐは無理ですけど全てが終わった後で私を…。」
「僕がクリフト殺せるはず無いだろっ!それぐらい分かれっ!」
 僕はクリフトから身を離す。それでも僕の顔はクリフトの腕の中にあったから、すごく至近距離にクリフトの顔があった。
「クリフト殺しても、今ならあいつ、すぐ生き返らせちゃうしさ。」
 僕はクリフトの瞳を見つめる。目を赤くして涙を堪えているクリフトに、愛おしさを感じて唇を重ねた。クリフトがビクリと体を震わせる。
逃げようとするクリフトを押さえつけ、悲鳴に近い制止の声を上げようとしていた彼の口腔内をゆっくりと味わってから唇を解放してやると、クリフトは大きく息を吸って僕を見つめ返した。

「えっと、あの…」
 クリフトは視線をさ迷わせた。「この行為はいったいどういうつもりで?」
「抱くと言っただろ?“奪う”手段は何も殺すだけじゃない。」
 僕の言葉にクリフトはこぼれそうなほど目を大きく見開いた。
「やっ…!」

234復讐 6/8:2011/05/31(火) 01:11:10
 クリフトは拘束された両腕を僕の頭から外すと、僕から逃れようと暴れだす。
「そんな理由で私のことを…!?離してください!」
「僕には必要な事なんだ。それに僕はピサロよりも前からクリフトの事ずっと抱きたいと思ってた。」
「私の意志はどうなるのですか!こんな事をしても何もなりません!!止めてください!」
 僕はクリフトを押さえつけ、顔を背けるクリフトのうなじに吸い付いてやった。
「ひぁっ!」
 クリフトが悲鳴を上げ、「本当に…いい加減にしてください!」と尚も逃れようと抵抗を止めない。僕は痺れを切らし、「なんでだよっ!」とクリフトの両肩を掴んだ。
「なんで、ピサロは良くて僕にはダメなんだ!ピサロにだって最初は無理矢理やられたんだろ!?」
 クリフトははっきりと悲しそうな表情をしたが、すぐに首を振った。
「違います、望んで抱かれたんです。あの人を繋ぎとめたかったから…!」

「僕はどうなってもいいの!?」
「あなたはそれほど弱くないでしょう?」
「クリフトに何が分かるんだ!!」
 僕が怒鳴っているのに、相手は今度は労わるように見上げている。その目を見ていられなくなって、僕は顔を逸らした。
「…僕だって傷付いてる。みんな家族や大切な人がそばに居るじゃないか。だけど、僕は独りだ…!」
「勇者さん、それは……」
「違わない!本当は僕はあの日からずっと独りのままだったんだ!」

 クリフトが息を飲んで僕を見つめる。動きが止まったのをいいことに、僕はクリフトへの愛撫を開始した。胸や脇を撫で上げ、震えるクリフトの
下肢へと愛撫の手を伸ばす。僕がいきなりクリフトのものに指を絡めると、大きくクリフトが震えた。縛られた両手を自分の口元に押し付け、必死に声を殺す様子に逆に煽られ、僕の行為はエスカレートしてしまう。
 僕がクリフトの中に指を突き入れても、クリフトは「ひっ」と息を飲んで目を閉じ、浅い呼吸を繰り返すだけだった。指を動かしても、声を堪える気配はあるけど、抵抗する様子も無い。
ふと気が付くと、クリフトは泣き腫らした顔で、すがる様にどこか一点を見つめていた。僕はクリフトの視線の先を追いかける。クリフトが見つめていたもの、

 それは聖書だった。

 僕が指を抜くと、クリフトはびくりと身体を震わせて戸惑ったように僕を見た。僕は手をシーツで拭いてから聖書に手を伸ばした。ページを繰り、心当たりのある文章を探し出す。

“もしあなたの周りに飢えている者がひとりでも居るならば、その者に対して心をかたくなにしてはならない。
 また手を閉じてはならない。
 あなたは心から彼に与えなければならないし、それに対して悩んでもいけない。
 その為に我らの主は、あなたのすべての働きと手のわざを祝福してくださっているのだ。”

235復讐 7/8:2011/05/31(火) 01:12:40
「…これか。」
 僕はため息をつき、クリフトを見下ろした。体の熱を中途半端に煽られた挙句、突然放り出されたというのに、クリフトは必死で熱を鎮めようと深呼吸を繰り返している。
続きをして欲しい、と強請っても来ない。そんな発想は無いのだろう。彼はひたすら受け入れるだけだ。全ての罪悪を許し、癒し、与えるために。


「アリーナの言葉に縛られたように、今度は聖書の言葉に縛られるわけ?」
「……。」

 クリフトは上気した顔で不自由そうになんとか起き上がる。クリフトは拘束された両腕のまま、祈るように両手の指を組み合わせている。
「縛られたわけでは……」
「縛られたんだろ!?僕が“飢えている者”だから!!哀れだと思って……」

 バンッ!と僕の頬をクリフトが拘束された両手で殴った。衝撃でよろけた僕を、クリフトがにらみつける。

「あなたが馬鹿だからですよ!今まで一緒に旅をしてきたんです。
 誰一人としてあなたを一人になんかさせやしませんっ!!
 考えれば分かるでしょう!?全てが終わっても、あなたの側から誰も離れていくことなんか無い!!
 自分のことだけ考えているのはあなただけだッ!!」

 クリフトの声が震えている。彼の頬を濡らす涙を、彼は縛られた両手の甲でなんとか拭っているが、涙は両目から溢れてきりが無いようだ。

「どうしてそんな馬鹿なことを思うのか…目で見えるものしか信じられないのなら、カタチで与えるしか無いじゃありませんか……。」

 クリフトの言葉に、僕は目が覚めた思いだった。「ごめん、クリフト。」
 目頭も熱くなってきて、僕は気恥ずかしくて目を逸らした。

「……本当は僕が独りじゃない、ってことも、ピサロだけが悪いんじゃないことも、解ってるんだ。
 あいつもそれなりに苦しんだ事も解ってる。だけど、さ。羽根帽子に誓ったあの日から一歩も動けないんだ。」

 僕が呟いた言葉に、クリフトはこくこくとうなづき、再び僕に手を伸ばし、不自由そうに両手を僕の頬に添えて囁くように回復呪文を唱えた。頬の痛みが消える。
「それ、やっと回復してきたMP使っちゃったんじゃないの?」
「私の傷はあなたが癒してくれましたから、おあいこです。見える傷なら、こうしてすぐに治せるんですが。」
「MPがあればの話だろ?」
「返す言葉もありません。」
 クリフトは泣きながら笑った。

「私は、サントハイムが再び活気に溢れたら、王の許しを得て、あなたの村の再興を手伝うつもりでいました。
 押し付けがましく思われるのではないか、と思って黙っていたんです。でも、きちんとお話しておけば良かったですね。」
「……ホントなの。」
「ホントです。」
「参ったな。」今度は僕が泣き笑いをする番だった。「僕1人が馬鹿みたいじゃないか。」

236復讐 8/8:2011/05/31(火) 01:14:19
 僕の声が震えていることに気付いたのか、クリフトはまた両手を僕の頭にくぐらせようとしかけて、ぴたり、と動きを止めた。
キスされたら再び逃げられなくなる、とさすがに学んだらしい。逡巡した気配がして、そのままクリフトは両手を下ろすと、僕のそばに寄り添ったままポスッと僕の肩に自分の首を置いた。

「解っていただけて嬉しいです。もう、二度とこんな真似しないでくださいね。」
「……ねぇ、クリフト。」
「はい。」
「それさ、すごく逆効果。」

 クリフトが、きょとんとして身体を離す。「えっと、何がですか?」
「僕、やっぱりクリフトが取られたことが一番応えたんだと思うよ。自分で煽っといてなんだけど。
 ま、今日のところはタイムリミットっぽいから止めとくけど。」

 僕はもう1度クリフトの唇に軽くキスをしてクリフトを固まらせてから、ベッドから降りて扉に向かう。
 我に返ったクリフトは慌てて「あの、これ!!」と自分の両腕の拘束を僕に向けた。

「この趣向を横から奪われるのも癪なんだけど、仕方ないよね。」

 僕が扉を開けると、そこには無表情でピサロが立っていた。クリフトが凝固した。

「魔王のくせして律儀だな。きっちり約束の1時間だ。少しは僕に遠慮した?」
「あまりこいつを悩ませるな。あとで引きずって難儀だ。」
「誰のせいだよ…。」
「行かないで下さいっ!」

 クリフトが僕に追いすがるように声を掛ける。この後、ピサロと2人っきりになった時、自分の身に何が降りかかるか痛いほどに読めるのだろう。クリフトは顔面蒼白だった。

「何だ、今日は2人の相手をしてくれるのか。」

 ピサロの言葉にクリフトは僕と魔王を交互に見上げ、次の瞬間、激しく首を横に振った。
 僕は苦笑してピサロの脇を通り過ぎる。

「お前の復讐は受けて立つ。しかし、全てはこの戦いが終わってからだ。」

 ピサロはすれ違い間際に言い放った。


 僕が部屋を出た時にクリフトが拘束を解いてくれるよう、ピサロに必死に訴えているのか聴こえ、扉を閉めた瞬間、クリフトのかすかな悲鳴が漏れ聴こえた。

「終わってから、なんて待てないかもよ。」

 僕は小さく呟いて、部屋を後にした。

237名無しの勇者:2011/05/31(火) 01:16:40
以上です。…すみません、上げるつもりは無かったんですけど
久しぶりでうっかりやってしまいました。ごめんなさい。

238名無しの勇者:2011/06/05(日) 15:54:52
久々にチェックしたら新作来てるじゃないですか!来てるじゃないですか!
この後の話が知りたいです、乙です

239名無しの勇者:2011/06/05(日) 21:37:48
クリフト最低

240名無しの勇者:2011/10/28(金) 00:54:40
今さらドラクエ4をプレイしてすっかりクリフトにはまってしまった
クリフト可愛いよクリフト

241告白 1/5:2012/01/31(火) 22:20:36
勇クリで若干無理矢理&寸止めです


「さ、クリフトくんに何したのか、ゆっくりと聞かせてもらいましょうか。」
 宿屋の一室で踊り子・マーニャが仁王立ちで鉄の扇の先を僕に向けている。マーニャが部屋の扉を背にしているのを見て僕は逃げ場が無いことを悟り、とりあえず笑ってごまかしてみることにする。
「ごまかそうったって無駄よ。昼間のアリーナとの会話は何?」
「ああ、あれのことか。冗談だってば。じゃれ合ってたんだよ。」
「なんで歳が近い真面目っ子の神官があんたとの同室を嫌がるの。」
 マーニャが形の良い眉をひそめる。やっぱ、引っかかったのはそこですか。確かに、今朝、クリフトは僕との同室を拒絶しようとした。
「気が合わないんだろ。」
「それなら逆にあんたが積極的に同室になろうとしているのも気になる。」
「それは……。」

 どう言い訳したもんか。それとも全てぶちまけようか、と迷っている時、コンコン、と控えめに扉をノックする音が聴こえた。良かった、話を逸らせるかも…。

「あの、マーニャさんいらっしゃいますか。クリフトです。」

 扉の外の声に僕は息を飲む。マーニャは軽く眉を上げたが、次の瞬間には「こっちへ!」と僕を小声で誘導し、クローゼットの中に僕に身を隠すよう指示し、僕は素直にそれに従った。
「開いてるわよー。どうぞ入って。」
 マーニャが明るい口調で言うと、扉からクリフトが周りを伺いながら部屋に入ってくる。クローゼットの中は薄暗く、隙間からクリフトとマーニャの姿が良く見えた。
 椅子に腰掛けたクリフトはマーニャが入れたワインを固辞しようとして結局押し切られ、恐る恐る何口か飲んでいる。

「で、何か話があるんでしょ。どうしたの。」
「あの……。」
 散々逡巡して話を切り出せないクリフトにマーニャは肩をすくめた。
「勇者くんとのことなんでしょ。」
 肩をビクンと震わせてクリフトがマーニャを見つめる。
「同室になりたくないって、ブライさんとかトルネコのおっちゃんはケンカでもしたんだろう、と思ってるみたいだけど、
 物腰の柔らかそうな神官さんは、魔王を倒す勇者様相手にケンカなんて起こさないでしょ。何があったの。」
 マーニャの言葉にクリフトは目を伏せ、「私は…どうしたら良いのか、分からなくて…」と消え入りそうな声で呟いた。
「いいから、話してみなさいよ。」
「何から話せば良いか…。」
「最初からでいいから。素面で話せないんならもっとワイン飲みなさい。」
 マーニャの言葉にクリフトは思い切ったようにワインを一気に飲み干した。あーあ、無理しちゃって。案の定、クリフトは何度か咳き込み、落ち着いたときには涙目になっていた。
そしてゆっくりとグラスをテーブルに戻すとポツポツと話し出す。僕からされた全ての事を。

「寝ている最中に…上半身を抱き上げられていたことがありまして…。」

242告白 2/5:2012/01/31(火) 22:23:12
 眠りから覚醒させられた私はぼんやりと目を開き、視線を動かして自分を抱き寄せている人物を捉えました。
「えっと…勇者さん、どうかなさいましたか?」
 勇者さんが私のベッドに腰掛け、私を抱き起こしていたんです。いつからそうしていたのか。その体勢にされるまで彼がベッドの傍らに座っていることも気付きませんでした。
ぼんやりと勇者さんを眺めていると、彼はふっと微笑みました。
「ごめん、クリフトがあまりに静かに眠ってるからさ、息してるのか心配になっちゃって。」
「ええ…?」
 だからって抱き上げるのはどうかとも思ったのですが、勇者さんとは出会って日が浅いこともあるし、私は先日まで高熱で病床にあった身です。彼なりに心配してくれたんだな、
と私は申し訳無い気持ちになってきて「ご心配かけてすみません。」と身を縮めて彼を見上げました。
「ううん。こちらこそ起こしてごめんね。」
 勇者さんの体の温かみがすっと離れて、私も体を毛布の中に戻し、再び眠りに付きました。

 次の朝、宿で朝食を食べている時は勇者さんは何事も無かったように明るい調子で他の仲間と話していました。私は共に旅に出た宮廷魔術師のブライ様に
「私って、いつも寝るとき、死んでいるみたいでしたか?」
と尋ねてみたのです。ブライ様が眉根を上げ、
「まぁ、確かに寝息も静かじゃからな。勇者殿に言われたか?」
と笑ったので、私も「ええ。知りませんでした。」と笑い返しました。
「あの方もそうだが、お前にとっても歳の近い友人ができるのは悪い事じゃない。
 あの若さで魔王討伐の使命を与えられ、重圧に耐えかねることもあるだろう。支えになってやりなさい。」
 ブライ様に言われ、私は気が引き締まる思いがして、
「はい、勇者さんもそうですが、姫さまをはじめ、他の方々も、もちろんブライ様のことも全身全霊で守り抜く所存です!」と答え、
「お前に守ってもらうほど老いてはおらぬわ!」とブライ様の杖で軽く殴られてしまいました。

 その数日後、宿屋で休む事になったとき、また勇者さんと同室になりました。部屋の割り振りは勇者さんの仕事です。
彼が歳が近い同性の私と同室になりたがるのを、誰も不審には思いませんし、事実、私もそれを特に変だとは思いませんでした。身の上やこれまでの旅であったことをお互いに話してから、ベッドに横になる。
体が急に動かなくなる夢を見て、はっと目が覚めると私はいつの間にかベッドに潜り込んでいた勇者さんに背中から抱きしめられていました。

「ゆ、ゆ、ゆ…勇者さん!?」
「ごめん、起こしちゃった?」
 耳のそばで囁かれてビクンと体が震えました。ええ、耳が弱いんですよね。
「悪い、1人で寝てると怖くてさ…。人肌が恋しくなっちゃって。」
 私の両脇の下から勇者さんの手が伸びて私の胸元を抱き寄せて言いました。緊張はしましたが、勇者さんの身に降りかかった災難を思い出すと、ぐっと涙腺が緩んでしまって。
勇者と言えどもまだまだ彼は幼いのです。それなのに、こんな過酷な運命に翻弄されて、それでも必死に旅を続けて、我々さえも救ってくれたのだと思ったら…。
泣いている事に気付かれないように素早く枕で涙を拭いて、私はなんとか彼に向きなおりました。勇者さんって顔が端整なんですよね。
目の前にあるとドキッとしちゃったのですが、私は手を伸ばして、彼の背中をぽんぽんと軽く叩きました。

「怒らないの、クリフト…?」
「怒るものですか。そうやって辛い気持ちを1人で耐える事はありません。」
「ありがとう…。また、こうして一緒に寝てもらってもいいかな?クリフトに触れていたいんだ。」
 勇者さんが恥ずかしそうに尋ねてきて、私は彼が可愛く思えて、笑みが浮かんできました。

「独り寝が怖くなくなるまで、いつでも頼ってください。」


 その夜から、宿屋で泊まる度、彼に抱きしめられながら眠る日が続いたのです。

243告白 3/5:2012/01/31(火) 22:26:08
 私は時々くらいの感覚で言ったのですが、彼の孤独感はかなり深いようで、ほぼ宿で泊まる度に彼の体温を感じながら眠る事になりました。
しかも私が眠りに堕ちてから行動に移すから、いつも気が付けば正面から、または背面から体格のいい彼にがっしりと抱きしめられています。
顔を首元や胸元にうずめられていたりすることもあり、正直、気恥ずかしい気持ちなのですが、自分で言った手前、やめて欲しいとも言えず、私は無抵抗にされるがままになっていました。彼の動きが段々エスカレートしていることに気付かなかったんです。

 おかしいな、と思い始めたのは宿で鏡を見たときです。鎖骨にうっ血した跡が付いていました。その時は宿に虫でも居たのか、と気にも留めませんでしたが、日を追うごとにその数は確実に増えていきました。
 ある夜、思わず出た「うぁっ」という自分の声で目を覚ますと、勇者さんが背後から私のシャツの裾から手を入れて、私の胸をまさぐっていたのです。
「あ、あの、勇者さん、くすぐったい…。」
 私が訴えても、聴こえてくるのは規則正しい呼吸音だけです。まさか、と思い振り返ると勇者さんは目を閉じて眠っているようでした。しかし、手は私の胸や脇腹を触り続けています。
寝ぼけているのか、と思いました。昼間、勇者さんは我々をかばって大怪我を負っていましたから。戦闘後、慌てて私とミネアさんとで回復呪文を掛けましたが、宿に帰ってきても勇者さんはかなり疲労しているように見えました。
眠っているのを起こすのが申し訳ないような気がして、私は彼を起こさないようにくすぐったいのを我慢することにしたのです。しかし、勇者さんの手は胸元を中心に蠢くようになり、私の呼吸はどんどん乱れてしまって…。
 ダメだ、もう限界だ、と思ったとき、私の大腿部に、何か固いものが当たったのを感じたのです。ええ、それが何かは私も男ですから分かります。まさか、これって…と思って息を飲みました。

「ゆっ…勇者さん…お、起きて…」
「あ、ごめん、寝ぼけてた。」
 勇者はやっと目が覚めてスッと手を抜いてくれましたが、私を抱きしめるのはやめない。私は、不安が湧き上がるのを止められず、その夜は恐ろしくて彼の方を向けませんでした。

 これだけのことをしておきながら、彼の昼間の態度は全く変わらないのです。通常どおり仲間と接し、私に対しても夜のことなど何も無かったのように接しています。私も、彼に夜の行為のことを聞けず、いつもどおりに振舞うしかありませんでした。

 次の夜はなかなか寝付けず、とうとう彼が私のベッドに入ってくるまで目が冴えていました。彼は私が起きていることに気が付かないのか、しばらく私を上から眺めている気配がしました。
彼はいつも寝ている私をこうして眺めていたのだろうか。そう思うと気恥ずかしくなってしまって。目を開こうとした瞬間、私の唇が塞がれていました。それが彼の唇で塞がれたものだ、と分かったのはそのまま彼の舌が私の口内に入ってきたからです。

「ふぅ…んッ!んッんんッ!!」
 これは毎夜されていたのか?さすがにここまでされたら目が覚めるだろう。息が上がり、私はなんとか引き剥がそうと勇者さんを押し返そうとしましたが、力では敵わず、キスをされたまま、シャツをまくられ、胸を弄られていました。力が入らず、長い口付けが終わって、首筋や鎖骨、胸元を勇者に吸われても、小さく悲鳴を上げるだけで抵抗らしい抵抗ができません。
私の力が抜ける、思わず悲鳴を上げてしまうポイントを知り尽くされているのか、と思うほど、的確に体が攻められていくのです。不甲斐無いことです。
私は力が入らないなりに必死で勇者さんの身体を押し返そうとしました。
そこで勇者さんはようやく動きを止めましたが、すぐに私の手首を掴んで私の指に口付ける。私の体は恐怖で萎縮してしまいました。

244告白 4/5:2012/01/31(火) 22:27:56
「ゆ、勇者さん、これ以上、何をなさるんですか…。」
「触れていいって言ったじゃない、クリフト。神官が約束破っちゃってもいいの?」
「でも、でも、これは……。」
「僕はクリフトの身体に触れているだけだよ。
 勝手に感じて腰砕けになってるのはクリフトの体が感じやすくてエロくできてるからじゃないの。」
「違うっ!私はそんな…ひっ!」
 勇者さんの手が私の足の付け根に伸び、ズボンの中へと入って、直接私のものを握りました。私の息が詰まるのを見て取ると、
「ほら、神官さん、気持ちいいんでしょ?反応してるもん。」
と勇者さんは愉快そうに笑い、そのまま私のものを擦り上げてきたのです。
「あっ、やめてください!やめっ…いやだ、いやだあっ!」
「嫌じゃないでしょ。こんなにしてさ。卑猥だなぁ。」
「ひあぁぁっ!!」
 私はがくがくと震え、勇者さんの手の中に射精してしまいました。私は羞恥で思わず彼に謝罪してしまったのですが、顔が熱くなるのを感じました。
いや、ああ、そうですよね、そもそも何故私が謝る必要があるのかは分かりませんが。
私が混乱の極みに陥ってる時に勇者さんは手に付いた白濁を眺めてから、私の顔を覗きこみました。
「これ、どうしようか、クリフト。」
「え…?」
「続き、していい?」
「続き?」
 これ以上、何があるというのでしょう。私は勇者さんの言葉の意味が分からなかったのですが、必死で首を横に振りました。勇者さんはしばらく私を見つめていたが、やがて肩をすくめ、
「次は止めてやらないからね。」
と自分のベッドに戻っていった。

「もう、同室にはしないでください。」
 翌日、宿を出て馬車の脇を歩きながら、そばを歩く勇者さんに小声で訴えました。勇者さんは心外そうに「なんで?」と私を振り返ったのです。
「なんでって…分かるでしょう、私は…」
「僕はクリフトと同じ部屋で寝たい。クリフトが拒否するなら僕はショックで他の仲間に相談するしかないなぁ。」
 勇者さんはそう言って「アリーナァ!」と馬車の中の姫さまを呼んで私を一瞬で青ざめさせました。
「何?交代?交代?」
 姫さまが嬉しそうに馬車から笑顔を出してきます。
「クリフトがさぁ、僕と同じ部屋になるのが嫌だって言うんだ。ひどくない?」
「えぇ?ケンカでもしたの、2人ともー。」
「実はさぁ、クリフトが昨日…」
「もういいですっ!同じ部屋でいいですっ!!」
 私は泣きそうな気持ちで勇者さんの腕を引っ張りました。
「え、なんで、クリフトが言ったんじゃない。」
「嘘です、すみませんっ!」
「何なの、クリフト。勇者くんのこと困らせないでよね。」
 姫さまに睨まれ、私は再び「申し訳ありません。」と泣きそうな思いで謝らざるを得なかったのです。

245告白 5/5:2012/01/31(火) 22:30:43
 以上が、クリフトの話だった。ああ、台詞部分は僕の回想も入ってるよ。さすがに自分がどんな喘ぎ声を出したのか、クリフトは知らないだろうし。
 クリフトの事は最初、ベッドの上で高熱にうなされているところを見た時から抱いてしまいたいと思っていた。エロいんだよな。色白神官が汗を浮かべて苦しんでるんだもん。
熱に浮かされ涙目で焦点も合わずに空間を見上げている姿にゾクゾクしたんだよね。
死なせるには惜しいと思って必死に薬を探したよ。本当に見つかってよかった。復活後に気恥ずかしげに礼を言ってくるところも儚げで可愛かった。病み上がりでまだフラフラしてるのに自分の病を治すのに結構な人数が巻き込まれたことを知って恐縮しまくって、馬車の外を率先して歩いてた。
だから宿屋でも疲れきってベッドに横になったら即行に静かな寝息を立てて寝てしまう。最初は本当に息してるのか不安で彼のベッドを覗き込んだだけだったんだ。何も知らず眠っているクリフトを見ていて、実はその時から色々身体に触ってたんだけどね。
 ある日、どうしても自分がこんな目に遭ってることに気付いたらどんな反応示すんだろう、と思ってわざと身体を抱き起こしてみたんだ。僕の気持ちに気付いてないクリフトの反応は、彼自身が話したとおりだ。面白くてどんどんエスカレートしちゃった訳だけど。

 マーニャはクリフトが止めようとしてるのに、2つのワイングラスを再び満たす。マーニャが美味しそうにワインを飲むのを見て、クリフトは渋々という調子で再度ワインに口をつけた。
「で、勇者クンの行動をやめさせて欲しいわけ?」
 マーニャがチラリとクローゼットに視線を走らせる。クリフトは以外にも「いえ、それは…」と言葉を濁した。
「え、続けてもいいの?もっとエスカレートするわよ。あのバカは。」
「いや、でも、彼は私の体に触ることで癒されていらっしゃるわけでしょう。私などよりも重責にあるわけですから、これくらいは…。」
「そりゃあ、さぞや、癒されて、いらっしゃるでしょうけどね…。」
 マーニャは含み笑いをして答える。

「んじゃクリフトちゃんはずっと我慢していくの?」
「昨夜は驚きました。正直、羞恥で死にそうでした。でも、私が勇者さんに身構えてしまったから、機嫌を損ねられたのかも知れませんし、
 特に抵抗しなければ、ひどいことはされないのではないか、と思ったんですが。」
「されるわよ。続き、今度は間違いなくされるから。羞恥で死ぬどころか、体が死にそうになるわよ。」
 余計な事言うなよ、マーニャ!ほら、クリフトが青ざめていくじゃないか。クリフトは緊張してきたのか、今度も一気にワインを煽った。
「続きって、何ですか。あの、我々は男同士ですし、身体を触る以上のことはできないでしょう?」
 一縷の望みを求めて、クリフトはすがるようにマーニャに教えを請う。しかしマーニャは
「できるわよ。ここがあるでしょ。」
と椅子に腰掛けているクリフトに近付き、ぽんと彼のおしりを叩いた。クリフトはきょとんと自分の腰を見つめていたが、やがて「あぁぁっ…!」と勢い良く立ち上がる。
そして酔いが一気に回ったらしく、ふらついてドン、とクローゼットにもたれかかってきた。こちらにもたれ掛かったまま、
「そんな…知りませんでした…!」と搾り出すように呟く。

「いや、でもっ…このこと、年若い勇者さんはご存知無いかも知れません。」
「知ってるわよ。私、教えた事あるもん。まさか実践する気だったとは思わなかったけど。」

 クリフトは卒倒しかねないくらい青ざめきって、ショックからか足がガクン、と折れて倒れそうになった。僕は慌ててクローゼットから飛び出し、彼の上腕を抱える。
「ゆっ、勇者さん!?」
 僕の登場でこれ以上ないくらい衝撃を受けたのだろう。酒のせいもあってか、クリフトはもう自力で立てなくなっていた。倒れないように後ろから抱きとめている僕の方を
まるで見ずに、クリフトはなんと気を失ってしまった。目から涙がこぼれているのが痛々しくも可愛らしい。マーニャはクリフトを抱き上げた僕をワインを飲みながら見上げた。

「あんまり苛めなさんな。可愛そうに現実逃避しちゃったじゃないの。」
「ワイン飲ませすぎなんだよ。酒の匂いで酔っ払うくらいの下戸なの知ってるくせに。」
「あんまり真っ白だと苛めたくなるのよねぇ。新雪の上に足跡を付けたくなるみたいなもんかしら。」
 僕には苛めるな、と言っといて良く言うよ。僕は肩をすくめた。

「部屋に連れて帰るよ。本当に昨日の続きから始めてやる。」
「協力する気は無かったんだけどね。まぁ、クリフトにはいい社会勉強でしょ。大いに悩んでもらいましょ。」

 肩をすくめるマーニャを背にして僕はそのまま部屋を出た。
 愛しい人を抱きかかえて。

246名無しの勇者:2012/01/31(火) 22:31:26
以上です。ありがとうございます。

247名無しの勇者:2012/01/31(火) 23:05:11
すごく萌える話をありがとうございます。

248名無しの勇者:2012/01/31(火) 23:07:20
…途中送信してしまった
睡眠中に色々されるクリフトの独白が色っぽかったです
マーニャ姐さん、予想外の対応にびっくりしました
寸止めの先もぜひお願いします!

249名無しの勇者:2013/01/21(月) 19:33:33
誰かおらんかねー

250名無しの勇者:2013/01/29(火) 17:45:19
亀だけどおりますよー
神をまってる、いつまでも待ってる


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