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FFDQかっこいい男コンテスト 〜ドラゴンクエスト4部門〜

1名無しの勇者:2002/10/18(金) 20:17
DQ4の小説専用スレです。
書き手も読み手もマターリと楽しくいきましょう。

*煽り荒らしは完全放置。レスするあなたも厨房です*

2とびねずみ:2003/03/16(日) 16:23
 バルザック×オーリン『断罪されるべきは』、4レスお借りします。
 最後の3行は蛇足かなと思いつつ、初やおいです。やおいに限らず、こんな強引な愛情を書いたのは初めての事で、皆様の感想が怖いです……。
 おまけにDQ4作品って、こちらではまだ書かれていないのですね。ドキドキ。
 
『断罪されるべきは 1/4』

 私の気持ちに何故応えてくれないのですか‥‥‥‥っ!
 そんなにもエドガンが良かったと? いえ、今日からは、あなたは私のモノです!

 自分の中からほとばしる叫びを、私はあなたにぶつけ続けた。
 壁にあなたを押しつけて、身体をつなぐ。激しく荒々しく何度も体内をえぐる。
 あなたの身体は私から逃げ出そうとして、逃げ切れなくて、ただただ指先で壁を引っかき続けていた。
 指先からは血が流れ出し、壁に模様を描く。
 そして、あなたは喘いでいる。おそらく、心にもなく、喘いでいる。
 目からは涙、額には汗、そして、イチモツからはだらしない白濁液。
 私のモノを包み込むあなたの体内は、あなたの心に反して温かい。

 わかっていても。
 身体はつなげても心をつなぐことはできないとわかっていても。
 身体だけでもひとつになれるなら、それでいい。あなたの身体に私を教え込んで、二度と離れられないようにしてしまいたい………私の欲望は止まらなかった。

3『断罪されるべきは 2/4』:2003/03/16(日) 16:24
 あなたはいつも優しかった。
 弟子入りした当初、失敗しては叱られて泣いてた私に差し出されたあなたの手。
 いつも「次に頑張ればいいんだよ」と笑ってくれた事。
 3度に1度は、私の失敗を肩代わりしてくれた事。
 全てが、残酷なほどの優しさだった。

 思えば、私が初めてエドガンの家に来た時、あなたはすでに一人前の錬金術師だった。それなのに、あなたはいつまでもエドガンを師と慕い、一人立ちしなかった。
 あなたに「田舎の村で埋もれるような才能の持ち主ではない、エドガンはあなたを飼い殺しにするつもりだ」と、幾度も言ったが、聞き入れてはもらえなかった。
 あまつさえ、エドガンは私とあなたの研究成果を闇に葬ろうとしたというのに!

 「進化の秘法」という名は、私がつけたのだ。私が発案、あなたが調合し、私が精製を担当した研究。その成果に、私は狂喜乱舞した。
 金属を変化、進化させる錬金術とは違って、生きている物を進化させる秘法。
 それは、長年研究してもラチのあかない錬金術よりもはるかに出来上がっていた。
錬金術で富を得られるようになるまでは途方もない年月がかかりそうだったが、この秘法さえあれば、他者よりも優れた存在へ進化する事が可能なのだ。この成果を国王に売り付けて兵士たちに施せば、強い国を作る事ができる。
 私はキングレオの王子が強い国を作ろうと執心している事を知っていた。この研究を持ち込めば、必ず採用されるだろう。そして、宮廷づきの研究者ともなれば、あなたはもう研究費の為に力仕事を引き受けなくてもよくなるし、こんなおんぼろな家に住まずとも済む。
 私はあなたに誉めてもらえる事を期待、していた……。

4『断罪されるべきは 3/4』:2003/03/16(日) 16:25
 だが、エドガンはもとよりあなたさえ私の成果を喜んではくれなかった。
 研究室への私の立ち入りは禁じられ、連日エドガンとあなたの密談が続く。食事の際に顔を合わせても、ふたりとも押し黙ったままだ。いつも脳天気にしゃべりつづけるマーニャでさえ黙ってしまうほどの、重苦しい沈黙に満ちた食卓。まして、もともと勘の鋭いミネアはほとんどひきつけを起こしてしまいそうな顔で必死に食事をする有り様だった。
 さらに、その原因が私にあるとうすうす気付いているらしい姉妹は、時折ちらちらと私を見るのだ。少女2人にそうやって見られるのは、あまりいい気分ではない。そもそも、私は悪い事などしていないのだ! 素晴らしい研究成果をだしたのに、何故私が悪者のような扱いをうけなくてはならない?

 そんな日々が過ぎたある日。あなたは「出ていった方がいい」と、言った。
 私の考え方が歪んでいるから、明日、エドガンが破門を言い渡すのだという。
 正式に破門されてしまっては、他の錬金術師の元で働く事が難しくなる。でも今の内に自ら去れば私の経歴に傷がつかないと。

 そんな欺瞞は いらない。

 だから、私は、進化の秘法を持ち出し、キングレオの王子に売り付けたのだ。
 それを察知して追い掛けて来たエドガンは、私の一撃で吹っ飛び、動かなくなった。進化の秘宝が効いて、私は素晴らしい力を手にしていたからだ。
 師の死を知ったあなたは、恐ろしい顔で私を見つめ、がむしゃらに突っ込んで来た。私の罪をなじりながら、体当たりしてきたあなた。昔なら押し倒されて殴られるままになった事だろうが、今の私には大したダメージではない。
 あなたの拳を受け止めて、押さえ付け、そして、接吻をしてのけるなど、今の私にはたやすい。私はそのままあなたの自由を奪って、私のくさびを打ち込んだ。

5『断罪されるべきは 4/4』:2003/03/16(日) 16:26

 そもそも、師匠殺しの罪がどれほどのものだろう?
 あなたを密やかに慕って来た私をあざ笑ったあの男に死を与える事に、どんな罪があるというのだろう?
 そう、あの男は、笑ったのだ。死ぬ間際に、こう言って。
「オーリンは、私を慕っている。お前のモノにはならないぞ」 と。
 あのカオは、万死に値する。

 あなたの体内は、あたたかい。
 あなたは心では受け入れてくれなくても、こうやって、体では私を受け入れてくれる。あなたのイチモツも、ほら、あんなに喜んでいる。
 ぐったりと果てる間際、あなたの唇は「エドガンさま」と動いていたが。
 いずれ、必ず、心も私のモノにしてみせる。このままあなたを逃がしたりはしない。絶対に!

 …………オーリンがバルザックの元から逃げ出した後でひどい怪我を負っていたのは、連日のこんな責め苦のせいだったのだが、もちろん姉妹には知る由も無かったのだった……。
                     〜Fine〜

6名無しの勇者:2003/03/17(月) 04:47
(・∀・)イイ!!新鮮なカプでつね…萌えでした!
バルザックの独白がせつない…けど、カッコよかったでつ。

7<削除>:<削除>
<削除>

8名無しの勇者:2003/05/18(日) 04:55
誰もいないの・・・?
ショボーン

9名無しの勇者:2003/05/27(火) 04:10
(゚д゚)ノ゛いまつよ。

男勇者受けが読みたいなあ。クリ勇とかな…

10名無しの勇者:2003/06/04(水) 16:44
 勇者受けが読みたいというのをみて、山奥の村で剣術を教えてくれた先生に
攻められる勇者を思いついてしまった自分は………
「まだまだ俺の剣にはかなわないみたいだな」
「せ、先生! もっと、もっとくださいぃ」
とか………w

 魔法の先生のギガデインで逝ってきまつ。

11今宵、君は満月を見つめる【1】:2003/06/04(水) 22:47
 達した衝撃で意識が真っ白になったソロの頬に伝う涙を、ピサロの指先が優しく拭う。
「ん…っ、ふっ」
「悦かったか?」
 こくりとソロが頷くのを確認して、ピサロは自分の上にいる彼の腰を抱き、ベッドに横たえた。
 情事の余韻で潤んでいるソロの瞳がピサロを見上げる。彼は既にベッドから降り、服を着始めていた。
「あのひとのところへ…行くんだ…」
 責めるつもりはない。ただ気になっただけだ――そう言い聞かせる。
 長い銀髪を微かに揺らしただけで、彼はソロを見ようともしない。
「…二週間、帰ってないからな」
 分かっていたことだった。ピサロにとって『帰る場所』とは、彼女の――ロザリーが待っているあの村。自分の隣ではないのだ。
彼女の存在を知っていて、しかも男でありながらピサロに関係を迫っているのは自分だ――だから、行かないで、なんて口になんかできない。
泣かないように、声が震えないようにと、身体中の全神経を使って彼を見送る。
「…行ってらっしゃい」
 いつ帰ってくるのかは聞かない。詮索しないというのがお互いの暗黙のルールだった。
 あぁ、と微かに言って、ピサロはマントを翻し、部屋を出る。
 彼の靴音が聞こえなくなるのを待って、シーツに包まったソロは静かに泣き始めた。

12今宵、君は満月を見つめる【2】:2003/06/04(水) 22:48
「何を考えているんですか?」
 ピサロの下で、ロザリーは怪訝そうに問い掛ける。
 二週間ぶりに合わせた柔らかな肌は、かつての――人間達に邪魔されるまでの二人の幸福な時間を思い起こさせてはくれなかった。いや、そうではない――ピサロは一人ごちる。ここのところずっと…そう、ソロと関係を持ってから、だ。
「いや、何でもない」
 そうは言ったものの、ロザリーには通用しないことは分かっていた。
 柔らかな膨らみよりも紅い実が綻ぶ薄い胸が、ピサロを優しく包み込む膜よりも、ぎりぎりと彼を締め付け快感を訴える襞が恋しかった。どうしてそう思うのかまでは分からなかったが。
 黙り込んだピサロにため息を吐いて、ロザリーは彼の下から抜け出す。掛けてあったローブを軽く羽織って、窓際に立った。
 ロザリーの住まいである塔は、かつて人間達から守るためにピサロが命じて造らせたものだ。そのため窓には遠くガーデンブルグまで見渡せるほどの美しい景色が広がる。
 今夜、窓から塔に差し込む月明かりはあたたかな色を帯びて、窓際に立つロザリーに降り注いでいた。

13今宵、君は満月を見つめる【3】:2003/06/04(水) 22:49
「…ピサロ様がわたしを生き返らせてくれてよかった…」
「ロザリー?」
 しみじみと呟くロザリーに、今度はピサロが怪訝そうに問い掛ける。
「わたしが人間に殺されて、ピサロ様は憎悪に駆られて彼らを滅ぼそうとしたけれど、結局は思い留まって、人間の仲間と一緒にわたしを生き返らせてくれた…それが嬉しいんです」
「…今だって人間を嫌悪する気持ちは変わってはいない」
 起き上がって窓に目を向けたピサロに、ロザリーは微笑む。
「うそ。その肩の痣は誰が付けたんですか?」
「痣?」
 ベッド脇にある鏡を見れば、左肩の付け根にうっすらと紅い痣がある。多分、ソロが噛んだ跡。
「これは――」
「いいんです」
 ピサロの言葉をロザリーは優しく遮った。

14今宵、君は満月を見つめる【3】:2003/06/04(水) 22:49
「…ピサロ様がわたしを生き返らせてくれてよかった…」
「ロザリー?」
 しみじみと呟くロザリーに、今度はピサロが怪訝そうに問い掛ける。
「わたしが人間に殺されて、ピサロ様は憎悪に駆られて彼らを滅ぼそうとしたけれど、結局は思い留まって、人間の仲間と一緒にわたしを生き返らせてくれた…それが嬉しいんです」
「…今だって人間を嫌悪する気持ちは変わってはいない」
 起き上がって窓に目を向けたピサロに、ロザリーは微笑む。
「うそ。その肩の痣は誰が付けたんですか?」
「痣?」
 ベッド脇にある鏡を見れば、左肩の付け根にうっすらと紅い痣がある。多分、ソロが噛んだ跡。
「これは――」
「いいんです」
 ピサロの言葉をロザリーは優しく遮った。

15今宵、君は満月を見つめる【4】:2003/06/04(水) 22:50
「ピサロ様と肌を触れ合わせるくらい近しい方が、人間の仲間達の中にいると知って、嬉しいんです」
 ピサロ様が長い間人間を許せなかったのは、わたしのせいだから――ロザリーはそっと付け加える。
「…ロザリー、すまない」
 小さく呟く。ソロと深く繋がるまで、ロザリーは彼の心の中のどこよりも大切な場所にいたのだ。そんな彼女に自分の心を偽ることなどできなかった。
「わたしなら大丈夫。わたしの仲間もこの村にたくさんいます。だからわたしのことなら心配しないで」
 ロザリーはピサロを振り返り、ふふ、と微笑む。そしてすぐに夜空に掛かる月に視線を戻した。
「今夜は満月です。ピサロ様の大切な方も、同じ月を見ているかもしれませんね」
 行ってあげて――ロザリーの言葉に深く頷いて、ピサロは塔を後にした。

16雫夜:2003/06/04(水) 23:24
【3】二重うpスマソ…。
あと少しだけ続きます。

17今宵、君は満月を見上げる【5】:2003/06/07(土) 22:31
優しい月明かりを背に受けながら、ピサロはソロの待つ家に向かっていた。
(泣いているような月だな)
仄かにあたたかく感じる月明かりは、まるでソロのようだと思う。
出会ったときの彼は、七人の仲間達の中で打ち解けずに、どことなく独りぼっちな感じだった。そんなソロに声を掛けたのは、ただの好奇心。おそらく、故郷を滅ぼした当事者である自分を憎んでいるだろう彼が、抵抗するだろうと思ったのだ。
ソロもおそらく復讐を考えてはいたはずだが、今まで誰とも寝たことがないという彼の身体は、ピサロの愛撫の前にあっさり陥落した。
(所詮、人間か…)
何て脆い生き物なんだろう、と妙な感慨を抱いて、その後もことあるごとに彼を抱いた。

18今宵、君は満月を見上げる【6】:2003/06/07(土) 22:32
 ソロが初めて泣いたのは、背に走る傷痕のことを話した時だ。
 人間に襲われかけたロザリーを庇って出来た、とただ事実を語っただけなのに、ソロは静かに泣き始めたのだ。
(なぜ、泣く?)
 自分を傷つけた側に属する彼が泣くのは不思議だった。傷を負った時より狼狽している自分にピサロは気付く。
(…イムルの村でも夢で見たけど…っ、あんなことをされたり、こんな傷を負わされたりして…あんたが人間を憎むのは当然かも、しれない)
 そう言って傷痕を指先で優しく辿る。
 ソロをそっと抱き締め、頬を濡らす涙を拭い取りながら、不思議な感情が徐々に覚えのある感情に変化していくのをピサロは感じていた。
 とても優しくて、柔らかい感じ。まるで今夜の月明かりのような――今思えば、これがソロへの恋を自覚した瞬間だったのだろうか。

19今宵、君は満月を見上げる【7】:2003/06/07(土) 22:32
寝室の大きな窓から、満月の優しい光が射している。
 ソロは一睡もできずに、ベッドに座って空を眺めていた。ピサロがロザリーの元に行っているときはいつもそうだった。
 ひとり寝が出来なくなったのは、多分ピサロと寝るようになってから。故郷が滅ぼされシンシアも死に、七人の仲間と出会って、元々得意ではなかった人付き合いに疲れていた頃、ピサロに出会った。
(シンシアは俺をどう思っているだろう)
 敵である男に抱かれ、彼なしでは眠ることすらできなくなった自分を。
 考えていた復讐すら実行できずに、彼の顔色を窺う日々――だが幸せだった。
 ピサロが人間を嫌いだと言っていても、自分を抱く腕は優しさに溢れている――それが分かるから。
 だから今、彼の腕を離したくなかった。
(ピサロが早く戻ってきますように――)
 心の中でだけ願うから、だから叶えて下さい――ソロは静かに満月に祈った。

20今宵、君は満月を見上げる【8】:2003/06/07(土) 22:33
夜明け近くなった頃、寝室の扉が微かな音を立てて開いた。ソロははっとして振り返る。
「今、戻った…」
 ピサロが相変わらずの無表情で立っていた。が、ソロの頬に残る涙の跡に気付いて、怪訝そうな顔でベッドに駆け寄ってくる。
「…泣いていたのか…それに瞳も赤い」
「あ、うん…ちょっと眠れなくて」
 理由は言いたくなかったから、ソロはすぐに話題を変える。
「それより、何でこんなに早く戻ってきたの?」
 自分の密かな祈りが通じたのだろうか。ロザリーの元へ帰ると三週間は戻ってこないのが常だった。ピサロはソロの隣に静かに腰掛けて、口を開いた。
「ロザリーとは、もう会わない」
「え…?」

21今宵、君は満月を見上げる【9】:2003/06/07(土) 22:33
 それってどういう、こと?――ソロの言葉を遮って、ピサロは続ける。
「彼女に言われたよ。私の心には他の誰かがいる、と」
「他の…誰か?」
 ピサロの言葉を反芻する。不安な気持ちが沸き起こって、ソロは思わず目を伏せた。そんな彼の頬をピサロは優しく撫でる。
「正直言って人間は今でも好きになれない…だが、お前は別だ」
「ピサロ…それって」
 『他の誰か』ってもしかして――不安と微かに湧き上がる喜びで瞳を潤ませながら、ソロはピサロを見上げた。彼は微かに微笑む。
「ソロを――愛している」
 一呼吸置いて告げた。
 ソロの瞳から涙が溢れる。ごしごしと擦るソロの手を取りながら、ピサロは彼の気持ちを無視していたと今更気付いた。
 そんなピサロの様子が分かったのか、ソロは微笑んで言う。
「悲しくて泣いてるんじゃないから」
「…では、お前も?」
 答える代わりに、背を伸ばして彼にそっと接吻けた。
 人間の涙には色々な想いが込められているのだな――長い接吻のあと、ピサロはしみじみそう言ったのだった。

22今宵、君は満月を見上げる【10】:2003/06/07(土) 22:34
「あ、実はこれから、マーニャさんとミネアさんが来るんだ」
 ピサロに押し倒されたソロは、シャツの裾から差し入れられたピサロの指先を押し留めながら言った。
「マーニャさんが、またエンドールのカジノで…モンバーバラへの船賃を…スっちゃったって」
 当分泊めて欲しいんだって、だから準備をしなくては、とソロは名残惜しそうにピサロの腕を抜けようとする。
「奴らが来るのか…」
 ピサロの脳裏に、やたら露出度の高い服を着て秋波を送ってくる姉とソロに近づく自分を胡乱げな瞳で自分を見る妹の二人が浮かぶ。彼女達のことはやはり好きになれないが、ソロには黙っておこう、と彼は思った。
「まぁいい…エンドールからならまだ時間が掛かるだろう」
「でも…」
 うなだれるソロの腕を取り、再度ベッドに押し倒す。
「今、欲しいんだ、お前が」
 お前が私の腕の中にいると実感したい――ピサロに告げられて、ソロは観念したようにピサロの首に腕を伸ばした。
 愛されているという喜びを感じながら――。

xxx a happy endeing xxx

23雫夜:2003/06/07(土) 22:38
ピサ勇完結です。
タイトルを少し変えましたが同じ話です。
今回は心理描写重視を目指してみましたが…玉砕(w
それではDQ3と6の方に戻ります。
ナンカエチーガカキタイキブン…。

24名無しの勇者:2003/07/01(火) 16:06
栗受け読みたいor書きたい
PS版やるかな

25檻【1】:2003/07/22(火) 18:43
 豪奢な造りの姿見には、全裸で下肢だけ女物の衣服を巻き、しどけなく口を開いている男が映っていた。その背後には彼よりも少し若い男――少年というべきだろうか――が座り、恥らう男の様子を揶揄するかのように薄く笑っている。
「あんたってホントにアリーナが好きなんだね。クリフト? 包んだだけで、」
 言って少年は服の上から男の中心を軽く撫でる。クリフトと呼ばれた男はその僅かな刺激にさえ身体を震わせ、喘ぎが漏れないよう唇を噛んでいた。
「…っぅく…ん」
 彼の漏らした体液が、アリーナの衣服に大きな染みを作っていた。少年の指が確かめるようにそこに触れる。
「挿れてないのに、こんなに濡らしてる…」
「あの、わ、私は…っ」
 少年の言葉にクリフトは狼狽する。恥ずかしそうに俯く彼に、少年は満足そうな笑みを見せた。
「あんたの仕える神様は、こんなことはしてくれないよね」
 気持ちいい? 少年はそう言って、指先で触れていた染みに爪を立てる。敏感になっていた先端は、あっけなく達した。
「あ…んっ」
 小さく喘いで、熱を吐き出す。布に覆われて見えないが、どくどくと溢れ出しているのが分かった。
 長い放出の後でぐったりとしているクリフトに、少年は命令する。
「服、外してよ。それからあんたがいつもオレを咥え込むところが鏡に映るように、膝立てて」
「できません…っ。いやです、勇者殿っ」

26檻【2】:2003/07/22(火) 18:44
 自分の浅ましい姿を想像したせいか、クリフトは涙を浮かべながら哀願する。
 勇者と呼ばれた少年は途端に不機嫌な表情になり、背後から指先でクリフトの乳首を抓った。
「ひぁ…んっ」
「この前教えたよね? 二人だけのときは名前で呼べって」
 おしおきだよ、と勇者は耳元に囁いて、乳首を更に揉みしだく。そこは鏡越しでも分かるほどぷっくりと紅く勃ち上がっていた。
「も…やめて、く、ださい…んっ」
「乳首を少し弄っただけなのに、またここが勃ってきてるよ」
 クリフトの抵抗など知らぬふりで、まだ布に包まれたままの彼の中心を指で弾いた。クリフトは喘いで身を震わせる。
「分かった。いいよ、服は外さなくても。その代わり、肩を落として腰を高く上げてよ。あ、オレにだけ見えるように、ね」
 尻を突き出すようにしろというのだ。鏡に映すのと変わらない勇者の仕打ちに、クリフトは思わず首を振る。
だが勇者は薄く笑っただけだ。あんたに拒む権利なんてないよね――そう言って。
「アリーナがあんたの今の姿を見たら、何て言うかな。男に触られて弄られてよがってるあんたを見てさ…」
「う…くぅ…んっ」
「ついでにクリフトを包んでいるのがアリーナの服で、それもクリフトが君の部屋から持ち出した、なんて言ったら、アリーナは――」
「やめ…っ、もう、言わないで…っ…くだ、さい」
 クリフトは観念したかのように身体をゆっくりと前に倒す。勇者はそんな彼の様子を見て、嘲笑った。

27檻【3】:2003/07/22(火) 18:44
「アリーナの名前は、あんたを黙らせるのにホント効果あるな。っと、そのまま両手で、挿れて欲しいところが見えるように開いて」
「…っ、く、ふ…っ」
 勇者が命じたように、両手で自分の尻を広げるようにする。彼を受け入れる場所が空気に触れて震えた。
「いやらしい眺めだね。あんたの襞、紅く蕩けてひくついてるよ…まだ何もしてないのに」
 クリフトはあえて勇者の言葉を無視し、囁くように言った。
「もう、やめましょう…こんな、ことは、もっとお互いを…っ、虚しくするだけ、です」
 クリフトの懇願を勇者は鼻で笑う。彼は太く滾った自身を、収縮を繰り返すクリフトの蕾に押し付けた。その熱さに、クリフトは身悶える。
「また、あんたのお説教? あんただって挿れちまったら、あんあん喘ぐだけのくせに」
 しかしクリフトは残った理性を振り絞るように、根気強く勇者に訴えた。
「今なら、神も…っ、私たちの、あやまちを許して、くださる、でしょ…う。
そうして、救い、をっ…」
「うるさい!!!」
 勇者は激昂し、そのままクリフトのなかに自身を突き入れた。ローションを使わず、指で慣らされることもないままの挿入が、クリフトに痛みをもたらす
「ひ、あぁん…っ、あ」
「むかつく…。オレの前で神とか言うな。前にも言ったが、オレは神なんか信じていない。シンシアを見捨てた神なんて…許さない!!」
 唸るように言う勇者に、クリフトはもう掛ける言葉がなかった。
「ゆ…しゃ、どの、あ、あぁ…や、ぁ…んっ」
怒りに任せて、彼は強引に腰を使う。その激しさにクリフトは遂に理性を手放した。

28檻【3】:2003/07/22(火) 18:45
 ミントスで高熱を出して倒れたクリフトに、パデキアの根っこを与え助けてくれたのは、まだ年若い少年だった。
その少年は以前、コナンベリーを苦しめていた灯台の魔物を倒したことから、町の人に『勇者』とあだ名されていた。その呼び名は、彼の仲間内ですっかり定着しているらしい。
あなたに出会えたことは神のお導きに違いない――助けてくれた礼を共にそう言ったクリフトを、勇者は嘲笑った。
(神なんて、いるわけないよ。ただみんなが勝手に拝んでるだけじゃないか)
 神官として長い間、神に仕えてきたクリフトには勇者の言葉が信じられなかった。
(でも、あなたが大灯台の魔物を倒せたのは――)
(神のおかげじゃない。実力だよ、オレの)
 クリフトの言葉を遮り、勇者が言った。じゃあさ、と彼は続けた。
(証明してみせてよ、オレに)
(え?)
 戸惑うクリフトに、勇者は暗い笑みを見せる。彼は無言でクリフトの衣服に手を掛け、引き下ろした。

29雫夜:2003/07/22(火) 18:46
>>28は【4】でつ。スマソ。

30雫夜:2003/08/03(日) 01:47
訂正です。
【1】で文章が抜けてるところがありました。
>「あんたってホントにアリーナが好きなんだね。クリフト? 包んだだけで、」
の後に、『もう、こんな風になってる』が入ります。

31檻【5】:2003/08/03(日) 01:48
(なに、するんですか?!)
(だから、証明してもらうんだよ。あんたに)
 二人はミントスの宿屋の屋上にいた。彼ら以外は誰もいないのが、せめてもの救いかもしれない。
 下着はまだ纏ったままとはいえ、夜気の冷たさにクリフトは身震いする。
勇者は彼の背を壁に押し付け、耳元に囁いた。
(これからあんたを犯してやるよ)
(お、犯すって、私たちは男同士、ですよ? それに私が仕える神は男色を禁じていて――)
 怯えるクリフトを頭一つ分高い位置から見下ろし、勇者は笑った。
(あんたの神様が正しくて、いつも見守ってくれるっていうんなら、こんな状態のあんたを助けてくれるだろ?)
 そんなことはありえないけどね、とくすくす笑いながら、勇者はクリフトのうなじに唇を這わせる。冷えた肌に彼の唇は驚くほど熱く感じて、それだけでクリフトは喘いだ。
勇者の手は下着を取り去り、クリフトの下肢に触れた。嘲る口調とは裏腹の彼の優しい仕草が、クリフトを撫で、高めていく。
(神様、助けに来てくれないね)
 クリフトの状態を揶揄するように、勇者が笑いながら言う。
(あんた、もうこんなに濡らしてるのに、まだ助けて欲しいとか思ってる?)
(ん…あっ、ん)
 先端に爪を立てられ、クリフトは喘いだ。そのまま勇者の指先は彼の雫を拭い取り、後ろへと伸ばす。
(ひっ、い、痛っ…やめ、て…っ)
 指を一本、なかを抉るように挿入され、クリフトの目尻に涙が浮かんだ。
(慣れてきたら、痛くなくなって、気持ちいいって思えるようになるよ)
 痛みに震えるクリフトのおとがいを撫でながら、勇者は優しく告げる。
慣れない行為に麻痺してしまったクリフトの涙腺は、静かに大粒の涙を頬に零した。

32檻【6】:2003/08/08(金) 23:48
勇者はクリフトの涙に一瞬戸惑ったようだがやめようとはしなかった。
なかの指を二本三本と増やされていく度に、クリフトの喘ぎも悩ましいものになっていく。遂には立っていられなくなって、ずるずると床に崩れ落ちた。
(あん…はっ、あぁっ、あ)
(気持ちいい?)
 力なく床に倒れこんでいるクリフトを見ながら、勇者がうっすら笑う。
クリフトは声を発せず、ただ荒く息を吐くことしかできなかった。
(これだけ解せば、大丈夫かな)
 なかに挿れていた指をゆっくり引き抜いて、勇者は、クリフトの膝を抱え上げる。
(いや、です。こんな、の…)
 自分がどんなにはしたない格好をしているのかがクリフトには分かって、力の入らない手足で必死に抵抗を試みた。だが勇者によって難なく押さえ付けられてしまう。
(後ろからの方が多分痛くないと思うんだけど…今、暴れたからやめた。前からあんたの恥らってる顔を見ながら犯してやるよ)
(や…っ)
 低く笑って、勇者は自身をクリフトに突き入れる。
 指とは比べ物にならない質感に圧倒され、なかを擦られる感触に身悶えた。
(あぁんっ…っは、ん)
 勇者が言った通り、クリフトの身体は挿れられる痛みを快楽に変換するようになっていた。。
 ぐちゅぐちゅといやらしい音を立てて擦られると、強引にこじ開けられた蕾は快感に震えて収縮する。
(も…ゃ、あぁ…っ、んぁ、っ)

33檻【7】:2003/08/08(金) 23:51
 もう、助けて欲しいなんて思わないだろう? ――熱い吐息混じりで囁かれ、それだけで耳元は紅く染まる。
(私は――)
 神のことなど、いつの間にか頭から消え去っていた。
 禁じられていた男色に耽って、その快感の凄まじさに喘いでいる自分。
 神に許しを請う資格など既にないことを知りながら、心では免罪の聖句を呟く。
(私は――堕ちて、しまった)
 そんなクリフトの動揺に気付いたのか、勇者は腰の動きをそのままに、空いた指先で彼の左胸を摘む。
(あぁ――んっ)
 軽く摘まれただけなのに、それだけでクリフトの思考は真っ白になり、なかの勇者を締め付けてしまう。
 大きく喘いでしまってから、自分たちが外にいることを思い出した羞恥と、快楽に耽る自分への情けなさからか、クリフトの目尻に涙が浮かんだ。
(何、考えてたの?)
(…っ)
 隠しても無駄だった。勇者は気付いている。
 意地悪く微笑んで、クリフトを見下ろす。
(少し弄っただけなのに…こっちの胸だけ、すごく紅くなって膨らんでる)
 そのまま指の腹で尖った先を撫でられて、切なく喘ぎながら身を捩る。
(う…くふぅ…ん、ぁんっ) 
 勃ち上がったクリフト自身が勇者の腹に触れて、放出が近いことを訴えた。だが逆に彼はクリフトの根元を握りこんでしまう。
(ゆ…しゃ、ど…の…っ?)

34檻【8】:2003/09/04(木) 18:27
 達かせてもらえず、下肢に熱が溜まったままで苦しそうにクリフトは勇者を見上げる。犯されてから初めて彼を呼んだ、と半ばぼんやりとした頭で思った。
 根元を握る手の力を緩めないまま、勇者が訊いた。
(達きたいんだろ?)
(ん、ふ…っ)
(答えなきゃ、達かせてやんない)
 握る力を更に強くされ、クリフトは身を捩った。
(ゃ、はぃ…ん)
 小さくクリフトが呟く。もう神のことは頭にはなかった。身体の中の熱をどうにかして欲しい――その欲求だけが彼を支配していた。
(じゃあ、オレのことを名前で呼んでよ。知ってるよね?)
 そうしたら、達かせてあげる――囁くように勇者は言った。
 クリフトが頷くのを確認して、彼は握った手を緩め、止めていた動きを再開する。すさまじい快楽に意識が遠のきかけていたクリフトも、勇者の背に両腕を回した。
 突き上げられ、襞を擦られる度にクリフトは切なく喘ぎ、小さく勇者の名を呟く。彼の背にも気付かないまま爪を立てていた。
(あぁ―――っん…)
 勇者が最奥を突き上げるのと同時に、クリフトは細い悲鳴を上げて達する。その瞬間、勇者も強い力で締め付けられ、クリフトのなかに熱を注いだ。
 達して身体の力を抜いたためか、勇者がクリフトの上にゆっくりと覆い被さる。まだ繋がったままの下肢が、ぴちゃりと濡れた音を立てた。
 クリフトのうなじに顔を寄せた勇者が、愛しげに呟く。
(シンシア…)
 その目は虚ろで、クリフトではない誰かを見ているようだった。
 誰のこと、と訊きかけたが、勇者は既に寝息を立てていた。
 初めて勇者に犯された、ミントスでの夜。
 神の教えを破り、禁じられた男色の快楽に浸ったことと並んで、勇者が呟いた知らない女性の名前が、クリフトを何故か不安にさせた。

35檻【9】:2003/09/07(日) 22:10
 窓から差し込んだ朝日の眩しさで、クリフトは目覚めた。
どうやら昨夜、鏡の前で犯されたあと、気を失ってベッドに運ばれたらしい。焦点の定まらないクリフトの目に、ようやく上から覗き込んでいたらしい勇者の姿が映る。素肌にシーツを纏っただけのクリフトと違い、既に彼は服を着ていた。
 何も着けていない身体には、特に胸元に紅い鬱血がぱらぱらと散っている。昨夜の激しさと自分の浅ましさを訴えているようで、クリフトは頬を染めながらシーツを手繰り寄せた。
「あんたを居間から寝室まで運ぶの大変だったんだからな。全然目、覚まさないから困った」
 勇者はふてくされたようにそう言って、クリフトから背を向ける。身体は清められていて、勇者がタオルで拭ってくれたのだと分かった。
 その彼の背中に小さく、すみません、と呟けば、ふぅ、とため息とも取れない返事が返ってきた。
 勇者の故郷の村に程近い木こりの家に、この地方の偵察という名目で彼らは数日前から宿泊している。主の木こりはブランカへ行商に出てしまったため、ずっと二人きりだった。
(ミントスの夢、か)
 あのときは勇者の行為が、そしてそれを受け容れてしまった自分が嫌で嫌で堪らなかったのに、今では彼の手に触れられ堕ちることを望むようになってしまっている。

36檻【10】:2003/09/07(日) 22:11
 お互いを虚しくするだけ――勇者に言ったその言葉は真実だと思う反面、彼を拒めない理由が自分の中にあることもまた事実だった。
(醜い感情が私の心に巣食っているのは…神がくだされた罰だろうか)
 シンシアという女性が、勇者の故郷の村に住んでいた幼なじみだということも、後になって知った。彼が故郷と共に喪った大切な恋人だったということも。
 ここからそう遠くない場所に、彼女は眠っている。そのせいか感傷的になっている自覚はあった。
 シンシア――勇者が達するときに囁く名前に、胸を焦がされるようになったのはいつからだろう。

「――悪かったな」
「え?」
 不意に呟く声に視線を向ける。勇者がいつの間にかこちらを振り返っていた。
「ちょっとオレも…やり過ぎた。あんたが意識飛ばすなんて思わなくてさ」
 その物言いに何故かクリフトの方が気恥ずかしくなって、彼から視線を逸らして俯く。
「……」
 頬が染まっているのが自分でも分かった。勇者にはおかしく見えているだろうと思ったそのとき、屈み込んだ彼が指先でクリフトの頬に触れた。
「顔が少し赤いけど、熱でもあるの? つーか、身体、動かせる?」
「いえっ、別に。大丈夫、です」
 いたわるような仕草に、クリフトはかえってあおられる形になる。反動で少し身体が動いて、腰に疼くような痛みが走った。
 かろうじて声は上げなかったものの、一瞬顔を歪めたのは勇者に伝わったらしい。

37檻【11・ラスト】:2003/10/31(金) 23:53
 ふぅ、とため息を吐き、指の腹で軽く頬を撫でたあと彼は立ち上がった。
「あんたさ、今日は寝てていいよ。ま、半分はオレのせいだしね。それと大丈夫じゃないときはそう言えよな…神様が全部分かってるわけないんだから」
「え…っ?」
「無理はするなってこと」
 クリフトの反応をよそに彼は、何か飲むもの持ってくるから、と 部屋を出て行った。
今の自分はどんな表情をしているのかと思う。
(…憎めたら、いいのに。彼を憎み切れたなら、どんなに…っ)
 何も知らなかった身体を強引に拓かれ、禁じられた快楽を知ってしまった。旅を終えてサントハイムに戻ったら、いずれ国を継ぐであろうアリーナを支え、神官として残りの生を過ごす――勇者に出会う前はそう考えていたのに。だが抱かれる悦びを覚えた自分に、もうそんな生き方ができるとは思えなかった。
「……っ」
 溢れた涙は頬を伝い、寝台の上で握り締めた手の甲に零れ落ちる。
 いっそのこと、勇者が自分を物のように扱ってくれていたら良かったのに。
 体温を持つ己の肉体さえ疎ましいほどに、そう思う。
 クリフトが失神するまで苛め尽くすくせに、いつも情事の後の勇者は酷く優しい。だから戸惑ってしまうのだ。
 シンシアという名を耳元で囁かれる度に沸き起こる醜い感情――その理由ももう分かっていた。
「…き…です」
 一生伝えることはできない彼への想いを、涙混じりに口にする。
自分たちの関係が禁忌だと勇者に訴え続けるのは、もはや神に赦されたいからではない。
旅の終わりに、自分から彼の手を離せる自信がないから。
(勇者殿には笑われるだろうか。私はあんなに嫌がっていたのに、と)
 虚しい関係だと思う。我ながら浅ましいとも思う。
だがそう思われても、クリフトは未だ彼の腕に囚われることを願った。
飲み物を運んできたと思われる勇者の足音が、クリフトの耳に届く。
 涙を拭い、赤く腫れた目をそっと伏せる。
自分の涙の理由に、優しい勇者は気付いてしまうだろうから。
(罰を受けるのは、どうか私だけでありますように――)
 心の中で、静かに祈った。

〜終わり〜

38名無しの勇者:2004/12/19(日) 23:52
クリフト受け今更ながら凄い萌えるなぁ・・・・

39名無しの勇者:2004/12/23(木) 00:56
PS化バンザイですわ。
FCの頃はクリフト受けなんて殆ど無かったもんなー。

40名無しの勇者:2004/12/24(金) 15:12
いたストのクリフトはまじ可愛らしくて受けうけしさ全開で萌だ
これを気にクリフト受が増えるとよい
ジャンルの生垣を超えて・・・・
クククリとか(笑

41名無しの勇者:2005/01/14(金) 02:52
いたストでククに「せっかくだから楽しもうぜ。なあ、クリフト」
と言われた時はどうしようかと思った。

42名無しの勇者:2007/11/19(月) 23:37:06
DS化でここが賑わってくれるといいなぁ…。
で、やっぱりクリフト受が増えるといいんだけど…。

43名無しの勇者:2008/01/08(火) 14:12:26
勇クリすごく萌えますた
随分前のSSみたいだけどどうもありがとう

44どくがのナイフ1/3:2008/01/13(日) 00:04:02
勇クリです。


「やっぱりここに居た!
 クリフトさんはみんなと飲みに行かなかったんだ?」

 僕が部屋に戻った時、クリフトはベッドに腰掛けて荷袋の中を整理してくれていた。
 芸人のパノンさんが仲間になってくれ、「歓迎会をするわよ!」とマーニャが今夜、
仲間全員を酒場へ強制連行したはずだったんだけど。

「あー、私はお酒が苦手なので…。
 先日もみなさんにご迷惑をお掛けしましたから。」
「あれは病み上がりなのにマーニャが『あんたたちの歓迎会なのよ!』って
 クリフトに無理矢理飲ませたからでしょう。」
「あ、じゃあ、今日はパノンさんが…。」

間違いない。マーニャさんに絡まれている。そう思ったとき、クリフトと目が合って
僕らは思わず吹き出してしまった。

「でも、クリフトさんはつぶれたって構わないけど。
 ライアンさんやトルネコさんを背負って歩け、と言われたら
 さすがに泣くかもしれないけどさ。」

 実際、クリフトがつぶれた時、宿まで背負って歩いたのは僕だ。
僕より年上なのに

びっくりするほど軽くて、

あと、びっくりするくらい顔も手も綺麗に薄ピンクに染まってて、

こんな絵になる酔っ払いを見たのは初めてだと思ったんだ。

45どくがのナイフ2/3:2008/01/13(日) 00:07:31
「勇者さんもこっそり抜け出してきたんですか?少し赤いみたいですけど。」
 クリフトがさっきの笑いを顔に残したまま、僕を覗き込んでくる。
「うん、ちょっと飲んできたけど。」
 でも顔が赤いのはそれだけじゃないだろう。

「酒場は他に大勢お客さんがいてさ、マーニャとミネアが帰ってきてるって盛り上がってて。
 あ、手伝おうか?」
「ああ、いえ。もうすぐ終わりです。ありがとうございます。」

 今夜の宿泊地はモンバーバラだ。みんな今日のうちに帰ってこれるか分からないな。
僕はクリフトが荷物の整理をしているのを椅子に座ってぼんやり眺めていた。
あ、と、言うことは今夜はこの宿でクリフトと2人きりになる、ということか。

「ああ、やっぱり満月草がもう切れてますね。
 予備用に明日、出発前にでも道具屋で買ってきておきます。」
「えー。ミネアがキアリク覚えてるから大丈夫なんじゃない?」
「ああ…そうですね。私達だけで旅をしている時は誰もキアリクを唱えられなかったので
 満月草が必需品だったんです。」

 やはり、仲間が増えるとありがたいですよね、とクリフトさんはまた嬉しそうに笑った。
ミネアさんに甘えてばかりはいられないから私もキアリクを覚えなくては、と言いつつ、
続けて今度は1本の短剣と杖を取り出した。

46どくがのナイフ3/3:2008/01/13(日) 00:12:14
「これ、今日の戦闘で魔物が落としたんですけど、こちらはまふうじの杖だと思うのですが、
 こちらは何の武器か分からないんですよ。」
「トルネコさんに鑑定してもらわなきゃなあ…明日、二日酔いになってなければ、の話だけど。」
「そうですね。トルネコさんもお酒が強いから、マーニャさんと最後までお付き合いされるでしょうねぇ。」

 クリフトは短剣の鞘を抜いた。剣は長いこと鞘から抜かれていなかったのか、ところどころ汚れてさび付いている。
「あ、ここに何か書いてあ…痛っ!!!」
クリフトの指から血がこぼれた。「大丈夫!?クリフト!!」
「ああ…大丈夫です。」とクリフトが指をくわえてまた笑った。「すみません、そそっかしくて。」
 可愛い、と思った瞬間、僕は自覚した。僕はやはり、この人が好きだ。好ましい、とかそんなんじゃない。
きっとこの気持ちは…

「剣にうっすらと字が彫ってあります…『ど』…『どく』…」
そこまで言って、クリフトはカタン、と手から力が抜けたみたいに短剣を床に落とした。不思議そうに自分の手を見つめている。
「クリフト?」
「力が…」

 続けて腰掛けていたベッドからすべりおち、クリフトは床にしりもちをついて目をパチクリさせている。

「クリフト?どうしたんだ!?」
「力が…入りません…多分…これ…」

 情けなさそうな顔でクリフトが見つめている先を目で辿ると、短剣に書かれている文字が血で浮き上がっていた。
「『どくがのナイフ』…。」

47名無しの勇者:2008/01/13(日) 00:16:11
途中で「さん」付け忘れちゃいました…。
続き書けたらまた来ます。

48名無しの勇者:2008/01/13(日) 00:34:33
勇クリktkr!
続き待ってますねハァハァ

49どくがのナイフ1/3:2008/01/13(日) 12:52:44
勇クリ、続きです。

「やっぱり満月草、いりましたね。買ってきましょう。
 ミネアさん当分帰ってこないですよ。」
「お恥ずかしい…です…。でも…今日はもう…遅いですし…。」
 クリフトが苦しげに息を吐く。「このまま寝てしまえば…明日の朝には…治って…。」

 なんとか立ち上がろうとしているようだが、全く力が入っていない。
泣きそうな顔が可愛くてしばらく様子を見守りたくなったけど、助けを目で訴えてくるクリフトを
放っとくわけにもいかず、僕はベッドの上に乗り、背後からクリフトを抱え上げることにした。

「大丈夫、クリフトさん?」
「ご…ご迷惑を…お掛け…してしまって…」

 クリフトの切なげな吐息が僕の顔にかかる。
 潤んだ目ですぐそばから僕を見上げている。
 後ろから抱きしめたら驚くほど細く、それでも鍛えられた体だということと、

 そしてクリフトの体温が伝わってきた。

 僕の理性を麻痺させる理由なんて、それだけで十分だった。

 必要以上に背後から抱きしめて、一向にベッドに上げようとしない僕に、クリフトはまた苦しげに息を吐き、不思議そうに振り返り、僕の名を呼んだ。
「…ど…したんです…んッ!!」
 最後まで言わせずにその口を奪う。僕の口腔内でクリフトの言葉にならない抗議の声が木霊する。
 顎さえ痺れているのか、クリフトは易々と僕の侵入を許してくれて、痺れながらも逃げ惑う温かな舌をつかまえるのは至極簡単だった。
 僕は夢中になってクリフトの舌を吸い上げていたが、ふと、弱々しくもクリフトが力が入らない左手だけでなんとか抵抗しようとしているのに気が付いた。

50どくがのナイフ2/3:2008/01/13(日) 12:55:58
 僕がようやくクリフトを解放すると、クリフトは再びベッド下でずるずると伸びてしまう。
 酸欠状態だったのか、肩で大きく呼吸を繰り返す彼の右手を見たとき、なんで片手だけなのか、その理由が分かった。
 右手人差し指が血で染まっている。今度はその右手で苦しそうに胸を抑えて何度か咳き込む。
「クリフトさんは、僕を自分の血で汚したくなかったんですか。」
 ひょ!とクリフトの喉下から変な音が鳴った。指のことは本人も無意識だったようで、胸元に置かれた震えた右手を呆然と見つめている。
 その胸元は血でかすかに汚れていた。どこまで優しいんだろう、彼は。
 嬉しくなって僕は再び益々力が入らなくなった彼を今度こそ一気にベッドに引き上げた。
そのまま横たえると、クリフトは泣きそうな顔で…いや、もう涙がにじんでいたけど…僕を見上げた。

「や…やめてくださ…」
「僕、クリフトさんが好きなんだ。」

 またクリフトの言葉を遮ると、彼は大きく目を見開いた。僕がホイミを唱え、クリフトの指の傷を癒しても、目を見開いたまま固まっている。
上半身を抱き上げても抵抗が無い。天然メダパニ状態だ。そのままクリフトを抱きしめて再び体温を味わい、そのままうなじに唇を落とした。
再びビクリと体を震わせたのに味を占め、今度はすでに寝巻き姿だった彼のシャツの下から彼の体に直接触れる。そこでやっとクリフトが我に返った。
何度も僕の名を、力の入っていない声で呼んで、行為を中止するように懇願してくる。

51どくがのナイフ3/3:2008/01/13(日) 13:02:17
 シャツをまくり上げ、胸元を触る頃にはクリフトはすでに泣きっ面になっていた。
 シャツを脱がし、胸の飾りをそっと口で転がす。
 もう片方の手でもう一つの飾りをつぶす。またクリフトが震えた。

 何度も繰り返し、胸元を中心にキスを降らすと、クリフトの息がまた荒くなってきた。

「お…お願いします…もう…くるし…」
「イかせて欲しい?」
「イク…?」

 その反応に今度は僕が軽く目をむく。こんな簡単なスラング知らないの?いや、まさかこの人…。

 僕の心中に沸いた疑惑を知ってか知らずか、クリフトは鼻先を赤くして泣き続けながら、
「こんなの…間違ってると…言ってるんです…」と訴えてきた。

「こういうのは…男女間で…するもの…だと…っ…ひッ…」
「じゃあ、アリーナとだったらいいの?」
「!…そういう意味じゃ…愛し合って…いる者同士で…する行為で……!
 や…!!!やめ」
「クリフトさんは僕が嫌い?こんな事する僕が嫌いなんだ?もう止めて欲しい?」

 今度は僕が泣きそうな顔でクリフトを覗きこむ。
 クリフトは涙で顔を濡らしまくっていたが、少し安堵したような顔で
「止めて…くれますか?」と嬉しそうに聞いてきた。

「やだ。」

 僕がクリフトのすでに立ち上がっていたものをズボン越しに鷲づかみにすると、
クリフトが面白いくらいにのけぞって細い声で喘いだ。
 白い喉元が良く見え、僕はそこにはまだキスしていない事に気が付く。

 激しく動く喉元に唇を当てても、クリフトはピクリ、と動いただけで抗議の声を上げなかった。
 不思議と首がピンク色に一気に染まっていく。見るとその顔は耳の先まで赤くなっていた。
恥ずかしそうに動かない両腕を持ち上げようとしているところを見ると、なんとか顔を隠そうとしているようだ。
 あれ、怒らないのかな、と不思議に思いつつ、僕はクリフトのズボンを下着ごと一気に下ろす。

「あ、ごめん!」
 そこで初めて、クリフトが今の一掴みで達していたことに気が付いた。

52名無しの勇者:2008/01/13(日) 13:09:38
次でなんとか終わります。改行不慣れで読みづらかったらすみません。

53名無しの勇者:2008/01/14(月) 09:16:45
おおなんという無垢なクリフト!
食われてしまうのかなどうなのかなwktk
初ものイイヨ初もの

54どくがのナイフ1/3:2008/01/16(水) 01:43:02
勇クリ、続きです。

 見る間に全身をピンクに染め上げたクリフトは、顔を隠そうと必死に腕を持ち上げようとして、
途中で断念したのかパタリと両腕をベッドに落とした。
 僕は自分も着衣を脱いで、「恥ずかしがらなくてもいいのに。」とクリフトを覗き込んだ。

「……わ…私は…。」
「僕、嬉しいよ。クリフトが僕の愛撫でイッてくれたんだもの。」

 ようやく「イク」の意味を身を持って分かってくれたのか、彼は眉根を寄せて目を閉じた。
僕はもっと気持ち良くなって欲しくて、柔らかな茂みの中でぐったりと寝ているものを今度は直に優しく握る。
クリフトが小さく息を吸って目を開けた。身を震わせている。

「大丈夫だよ。今度は乱暴にしたりなんかしないから。」
僕はクリフトの両足を軽々と割り、自分の体を間に入れた。
「こ…今度って…ま…まだ…何かするつもり…?」
 クリフトの声が緊張の為か少し高くなっている。
「え、まさか、これからじゃない。」僕は両手でクリフトのものを愛撫する。

 少し、クリフトの言葉が滑らかになってきたな。
 もしかしたらナイフの効き目が薄れてきたのかも知れない。
 こんだけ汗とか色んなもの出したら毒素も抜けたのかも。
 まぁ、こんな状態じゃ一緒だけど。

「イッてすぐだから応えるかも知れないけど、クリフト若いから大丈夫だよね。
 ほら、もう復活してきた。」
「だ…大丈夫なんかじゃ…も…ホントに…やめてください…。汚いです、そんなとこ…。」
 また目尻に涙がこぼれている。僕はクリフトへの愛撫を続けながら、次第に不安になってきた。

 僕の行為を拒否する言葉を必死に並べても、僕自身を否定したり、傷つけたりする言葉は一切口にしないクリフトの優しさが嬉しい。
 そして、僕の愛撫で感じてくれるクリフトの悩ましい姿を見ているだけで嬉しいし、何より興奮する。
 だけど、彼自身は…本当は辛いだけの行為でしかないのか。

「ねえ、今、気持ち良いでしょ?良くない?」
「く…苦しいんです…体が…熱くて…力が入らないから…堪えられな…。」

 なるほど。僕はほっとして行為を続行することにした。
確かにクリフトの両手は必死にベッドのシーツを掴もうとしているようだけど、
空しく指がシーツをなぞっているだけだ。

「熱が逃げればいいんだよね。」
「や…だから…もうやめてくれれば…て、な、何を…?」

 クリフトの顔が見えなくなるのは残念だけど、僕は手の中で震えている彼のものを口腔で覆った。
 さっきクリフトが放ったものの味もしたけど、僕は手と口を使って愛撫を早めた。
 クリフトの声は悲鳴から再び行為の中止を請うものになり、すぐに言葉にならなくなってあえぎ声しか発さなくなった。
 クリフトが腰を大きく揺らして小さな悲鳴を再度上げたのは、僕が舌を絡ませて吸い上げて、2度目にイかせた時だった。

55どくがのナイフ2/3:2008/01/16(水) 01:47:22
 クリフトは大きく上下する鬱血だらけの胸部以外、ナイフの毒が回った時以上にぐったりと動かなくなっている。
 僕はクリフトが放ったものを両手に吐き出した。
 彼の最奥を指でそっと探り、ぐっと力を軽くこめると、幸いにも(クリフトには不幸にも、かも)
麻痺がまだ続いていてくれたのか、それとも体が弛緩していたのか、
あまり拒絶されること無く指を沈めることができた。
 温かさを味わって、すぐに指を増やす。だけど2本目はさすがにきつい。
 このままじゃ僕も辛いし、クリフトも泣くどころじゃ済まないな。

「な…何を…なんでそんなとこに…」
 体内で動き出した指でさすがに我に返ったのか、クリフトは震える声で僕に問う。
「…聞かない方がいいと思うよ。」
 僕の台詞を受けて、僕の立ち上がったものを見て、上気してピンク色だった体が今度は見る間に白くなっていく。

「ま…まさか…。」
「大丈夫だよ。『初めての子でもちゃんと解せば入るんだ』って、マーニャさんが言ってた。」
「普段どんな会話してるんですか!は…入るわけ…無いでしょう!そ…そんなとこに…!!…やッ!」
「あ、ここの膨らんでるところがいいんだ?」

 しつこく指で引っかいてやると、クリフトはすすり泣きながらまたまた切ない声を上げてくれた。声がかすれてきてる。
 さすがに罪悪感が芽生えてきて、もう止めた方がいいのかな、とも思ったけど、
これまたクリフトのものが立ち上がりかけているのを見て速攻その考えも消えた。指を3本に増やす。
 クリフトは大きく何かを振りきるように首を横に数回振った。

「もう…やめて…わ…私はもう…耐えられません…か…体がもう…。」
「僕ももう耐えられないよ、一緒にイこうね。」

 明らかに言葉の意味が違うのは分かっていたけど、気付かない振りをして絡みつく粘膜から指を抜いた。
 クリフトの力の入らない両足を折り曲げて、腰を軽く持ち上げ、僕のものをあてがった。

「や…やめて…もう…許してくださ…」

 恐怖感か快楽か、声も体も震わせながら最後の訴えをしてくるクリフトの口を、ぐっと右手の平で覆った。
 左手がクリフトの左肩をしっかりと掴むと、彼は大きく目を見開いて僕の顔を見つめてくる。
 その目が観念したように閉じられ、彼の歯が震えてかすかにカチカチと音を鳴らしているのを聴いた瞬間、僕は彼を貫いた。

「!!!!!!!!!〜〜〜〜〜〜!!!!」

56どくがのナイフ3/3:2008/01/16(水) 01:51:27
 上へと逃げる体を押さえつけ、何度か休憩しながらも全てを入れてしまった時には、彼のものはすっかり萎えてしまっていた。
 そっと右手をクリフトの口から外し、歯を食いしばって痛みに耐えている彼の表情を見守りながら、その手を彼のものに添えて何度か擦ってみた。
 険しい表情だったのが驚きで固まり、やがて再び泣き顔に変わってくれたのを見届け、手を離す。
 逸る気持ちを抑えつつ、自分のものをゆっくりと抜き差しすると、何度目かにクリフトのいいところに当たったのか、ぴくんと体が揺れた。
 はッ!と小さく息を飲む音に僕は機嫌を良くし、しつこいくらいにその場所を何度も僕のもので擦り上げる。
 もうすすり泣きだけではなく、かすれがちで小さな喘ぎ声が混じっている。その口がまた苦しげに何かを呟いた。

「…て…くださ…」

 まだ拒否の言葉を口にしているのか、と僕は少し落胆しつつも腰を動かし続ける。
 クリフトは僕のそんな表情を見て、何故かまた顔をピンク色に染めながら涙をこぼした。

「お…お願いですから……」
「え?何?何て言ったの、クリフトさん。」
 
「『イかせて』…。」

 その言葉に僕自身がイきそうになり、ピタと動きを止めた。
 僕が必死に嵐が過ぎ去るまでトルネコさんやらパトリシアやらの顔を思い浮かべて耐えているというのに、
クリフトは「お願いします…もう耐えられな…」と泣きじゃくりながら懇願を繰り返してきた。
 僕は言われるまま、早くクリフトを楽にさせてあげたくて繋がったまま夢中で彼のものを握って一気に擦り上げ、3度目の絶頂を迎えさせてあげた。
 吐き出されたものはもう、薄くて水のようだったが、何度かに渡ってこれまでで一番長く精を吐き出し続けていた。

 クリフトは一瞬気を失ったけど、やがて僕の腰の動きが再開して、僕がもう一度彼のものを握りだした時にまた我に返って顔面を白くした。

「な…何してるんですか…」
「え、だって一緒にイこうって約束したじゃない。」
「一緒にイけば良かったじゃないですか!!!」
「うん、僕もそう思ったんだけどね。あまりにも突然可愛いこと言うもんだから計算できなくなっちゃって。」

 ぱくぱくと、何か言いたげにクリフトは唇を動かしたけど、結局その唇から紡ぎ出されたのは、涙まじりの喘ぎ声だった…。

57名無しの勇者:2008/01/16(水) 01:52:38
以上。終わりです。
ザキ防止用にまふうじの杖も用意していたんですが
結局使いませんでした…。

58名無しの勇者:2008/01/18(金) 22:25:17
フヒヒヒ、クリフトバージンごち(゚д゚)ウマー!
まぁ、クリフトが身動きできなくなっていたら犯されるのは当然ですよね
でもきっとちっとも学習しないんですよ、この人は
早く姫様に顔向けできない身体にされてしまうがいい

59名無しの勇者:2008/01/19(土) 23:47:06
54-57です。どうもありがとうございます。
クリフトがキアリク覚えられないと気付いた時から
なんとなくネタを考えてできた話だったんですが、
よくよく考えれば麻痺してたら魔法も唱えられないので
あまり意味は無かったなぁ、と今、気が付いた…。
でも勇クリ書けたからすっきりしたー。どうもでした。

60名無しの勇者:2008/01/23(水) 00:48:00
勇クリゴチでした!!!
なんと可愛らしい神官。罪すぎる。

61名無しの勇者:2008/01/23(水) 21:52:19
ボリュームのある勇クリありが㌧
禿しく禿しく萌えますた
よかったらまた来てください

62名無しの勇者:2008/01/31(木) 00:58:55
54-57書いた者です。喜んでもらえて嬉しいです。
実は続けてクリ受小説を書いたので投下します。

ただ、これ、読む人を選ぶかも知れないのですが、
クリ→アリ前提のあらくれ×クリフトです。
しかも聖域かも知れないパデキアイベントです。
それぞれの思い入れがあると思うので、イメージ崩されたくない方は
どうかスルーしていただけたらな、と思います。

63ミントスにて 1/8:2008/01/31(木) 01:05:04
 最近、旅をしていて自分がどうしようもなく役立たずなのではないか、と気が滅入るときがある。
 自分が忠誠を誓ったはずのサントハイム国の王や城内の人々が姿を忽然と消してしまった時から
芽生え始めたこの想いは、すでに大きく膨れ上がり、今は気が付くと自分の思考のほとんどを覆ってしまっていた。
 自分が守るべき、サントハイムの血筋で唯一残された姫が、逆にお供の者を守るように先頭を歩き続けているのを見て、私はひそかにため息をつく。
自分は彼女ほど武道に秀でているわけでもないし、かと言って自分の後ろを歩く教育係の宮廷魔術師であるブライ様ほど魔力が強いわけでもない。
せめて持久力だけでも一番になりたかったが、昔から体も弱いし、城の外に出たのもこの旅が初めてだ。
しかも長旅が祟っているのか、コナンベリーの港を出た辺りから体調が思わしくなかった。

「クリフト、ワシはてっきり、おぬしは鉄の槍を買ったものだとばかり思っていたがのう。」
 ブライ様がチラリと私を見る。「そりゃ『鉄の杖』と名前を変えた方がいいかも知れんの。」
「す、すみません。」
 私はギクリと足を止めた。足が重く、戦闘が終わった後、何も考えずに槍を背負い直さずに杖代わりに使っていたのだ。
「大丈夫、クリフト?顔色悪いわよ。」
 アリーナ姫が振り返り、私を見上げる。
「回復魔法がまだ使えるなら唱えちゃいなさいよ。」
 私は慌てて首を振る。まずい、心配されてしまった。ベホイミくらいなら唱えられるが、もうすぐ魔力が尽きそうだ。
 姫様やブライ様の為に残しておきたかった。

「いえ、もう、町が見えていますから。ありがとうございます。」
 自分は自然に言えただろうか。最後に微笑んだつもりだが、上手く笑えたかどうか自信は無かった。
私は姫様の目線から顔を逸らしたけれど、今度は彼女の腕に打撲痕があるのが目に飛び込んできた。
気付いたアリーナ姫がさっと腕を隠す。
「姫様!腕にお怪我が…!!」
「平気よ、これくらい。だから今は自分の体を癒して。
 クリフトが倒れたら、私が思う存分戦えなくて困るでしょ。」
 私は彼女の言葉にグッと胸が詰まった。アリーナ姫の優しさもありがたかったが、彼女の打撲すら気軽に治せない自分が不甲斐なかった。
姫を追ってサントハイムを出た時は、これほどまでに過酷な旅になるとは思っていなかった。
アリーナ姫は何も言わないが、戦闘の前線で戦い続けるのが辛くないはずが無い。ブライ様も体力的に連戦はきついだろう。
回復役が自分だけなのも、正直、体力も気力も限界に近かった。

 一向に自分の体を癒す様子を見せない私に呆れ果てたのか、「まぁ、確かにもうすぐ町に着くわね。」と肩をすくめた
アリーナ姫はすっと前を向き直り、再び歩き出した。私はホッとして後を追う。ブライ様がポツリと
「クリフト、おぬし、ヒットポイントが黄色くなっているのが分からんのか。」
と呟いたが、何のことを言っているのか問い返す前に魔物が現れ、それどころでは無くなってしまった。

64ミントスにて 2/8:2008/01/31(木) 01:10:26
「クリフト、あなたってホンットウに馬鹿よ!大馬鹿よ!!」

 アリーナ姫はミントスの町に入ってからも怒りまくっていた。
私は何も反論できず、ただ、杖にすがりつくようにして歩き続けるだけである。
先ほどの戦闘でアリーナ姫の腕に二つ目の打撲痕ができたのが分かった途端、
私はアリーナ姫が止める間もなくベホイミを唱えていたのだ。
直後、私は魔物から攻撃を受けて危うく命を落としかけ、しかも回復手段が無く、
這うようにしてミントスに辿り着いたのだった。
町の中の池が夕焼けに照らされ、キラキラと美しく光っているのが見えた。

「とりあえず、宿屋で部屋を取ってくるわ。」
 姫の言葉に「あ、私が…」と言いかけ、じろりとにらまれた。
そのまま姫は背中を向けて宿屋らしき大きな建物に向かって走っていってしまう。
ブライ様も私のことを険しい顔で見上げ、
「しばらくそこで頭を冷やしておれ。どこにも行くでないぞ。」
と姫様について行ってしまった。私は自分が途轍もなく大きな失態をしたような気持ちになり、気が付くと涙がにじんでいた。

 ただ、自分は見たくなかっただけなのだ。姫様が怪我をしている姿を。
自分が彼女を守れなかった上に、その傷を癒してもやれないことを目の前に突きつけられたような気がして、耐えられなかったのだ。
自分勝手な行動を責められれば、反論の余地も無かった。姫様にもブライ様にも呆れられたに違いない。
2人の背中を見ていて、このまま自分が見捨てられてしまうのではないか、と私は急に不安に駆られた。

 ひとりきりで置いていかれたことが心細さに拍車を掛け、私は宿屋に向かって歩き出し、途端に眩暈に襲われ体のバランスを崩した。
地面に激突する!と覚悟したが、横から逞しい腕が伸びてきて、私を抱きとめてくれた人が居た。
代わりに帽子が地面に転がり、鉄の槍もガシャンと足元に倒れてしまう。

「大丈夫かい、お兄さん。」
 無精ヒゲを生やした羨ましいくらいに体格のいい男だった。良く日焼けをしている。どこかの船員のようだ。
「あ、はい…ありがとうございます。」
 助けてくれたのには感謝したが、どうもこの男が酒臭い。しかも私の腕を放さずにニヤニヤ笑って私の顔を見ている。
先ほどの戦闘で鼻血でも出てたのかな、と空いた方の手でさりげなく顔を触ったが何も付いていないようだった。

「あ、あの…?」
「兄さん、具合悪そうだな。ちょっと俺たちが介抱してやるよ。」
 反対側からも声がして、振り向くとバンダナを巻いた若い男がこちらを覗き込んでいる。
この男も船員のようだ。ああ、この人も酒臭い。

65ミントスにて 3/8:2008/01/31(木) 01:14:20
「大丈夫です。連れが居ますから。」
 嫌な予感がして手を振り解こうとするがビクともしない。すぐにもう1人の男も反対の腕をつかんできた。片方の手で鉄の槍を拾い上げる。
「そうだな。さっきから見てたんだ。あの爺さんたちが戻ってくるまでに行こうぜ。」
 両脇から抱えられ、足を踏ん張ろうとしてもズルズルと引きずられてしまう。変だ。なんなんだろう、この人たちは。
「やめてください。もう、大丈夫ですから。離して…。」
「いいから、いいから。」
 路地裏に連れ込もうとしているのに気が付き、私は思わず姫様とブライ様に助けを呼ぼうと振り返った。

どうしよう、ここで助けを呼んだら、1人で待ってることもできないのか、とまた怒られるかも知れない。
これ以上2人の足を引っ張っては…。酔っ払いをあしらう事もできないなんて、役立たずもいいとこだ。

 躊躇している間に、路地裏へと引きずり込まれてしまう。腕を離されたので逃げようと身を翻すと、喉元に鉄の槍を突きつけられた。
助けを呼ばなかったことを今更激しく後悔する。

「大人しくしろよ、兄さん。俺達、船が出なくて仕事も無いし、イライラしてんだ。」
「神官さんなら俺達の不満を解消してくれたっていいだろ?」
「お話を聞かせていただくだけでしたら…。」
 熱が出てきたらしく、こんな時だというのに頭がボンヤリしてきた。
そんなに変なことを言った覚えは無いが、男達は声を立てて笑う。
「それだけで済むわけ無いだろ?」

 気が付くとバンダナ男に唇をむさぼる様に奪われていた。抵抗しようとしたが、ヒゲ男に羽交い絞めをされて動けない。
酒の味がする舌が口腔内をなめ尽くす。逃げようにも痛いくらいに顎をつかまれ、歯を閉じることもできない。
息苦しさと嫌悪感でなんとか首をひねって顔を背けると、今度はそのまま耳に舌を入れられ、ガクン!と膝から力が抜けた。
自然、体重が背後のヒゲ男に掛かったが、ビクともせずに、力が抜けた私の体を、服の上からまさぐりだしている。
2本の手が上着の脇からシャツ越しに私の体を這いずり回った。

66ミントスにて 4/8:2008/01/31(木) 01:17:52
「やめて…」
 気持ち悪さと恐怖で再び涙がにじんできた。力が入らない。助けを呼ぼうと息を吸い込んだが、再びバンダナ男が私の口を自分の口で塞いだ。
 背後からヒゲ男が今度は反対の耳をなめ回してくる。ゾクゾクとわけの分からない痺れが何度も体を走った。
もう私は自分の足で立っていられなくなり、ヒゲ男が低い声で笑いながら手を離した時には崩れるように地面に座り込んでいた。
やっと口も解放され、何度も息を吸い込んだ。どうしよう、変態さんだ。男にこんな事するなんて。
情けないのと恐怖感と息苦しさで止めようとしても涙が止まらなかった。

「こいつ、本当に具合悪いんじゃねぇの?口の中熱いぜ。変な病気持ってんじゃねぇだろうな。」
「突っ込まなきゃうつりゃしねぇよ。」
「病気持ちはあんまり高く買い取ってくれなかったぜ?」
「黙ってりゃ分かりゃしねぇって。しかし、どんな服の構造になってんだ。脱がすの面倒だな。」
「何、泣いてんだよ兄さん。あんた、さっき、切なそうに俺達の体見てたじゃねぇか。好きなんだろ?こういうの。」

 頭上で飛び交う言葉が頭の中で意味を成すこともできず、私は息を必死に整えながら涙で濡れた顔を上げた。
男たちは私を見下ろし、何故か息を飲む。
「なんだ…兄さん、結構クルね、その顔。」
「あんたも気持ち良くしてやるからさ。」
 ヒゲ男は槍を手にして、槍先を私の胸元に突きつけた。「破られたくなかったら、その服、さっさと脱ぎな。」

 私は何度も首を振り、再び逃げるために立ち上がろうとしたがしたが、足元がふらつき、また倒れてしまった。
ヒゲ男が無言で近づき、私の腹部に激痛が走る。どうやら思い切り蹴られたらしい。しばらく起き上がれず、うめき声を上げてうずくまった。
 その時、ふと自分の魔力がまだわずかに残っているのに気が付いた。心のどこかで「MP3」という謎の数字が浮かんで消える。
ホイミくらいなら唱えられるかも知れない。しかし、ホイミを唱えたところで、今の体調ではこの男達に敵うとは思えなかった。
この男達が私をどこかへ売り飛ばそうとしているのは分かる。
ただ、今の一撃ですっかり私は絶望感に打ちひしがれていた。

67ミントスにて 5/8:2008/01/31(木) 01:22:10
「言うこと聞かないと、次は槍で貫いちゃうよ?」
「貫くのは槍じゃないかも知れないけどさ。」
 男達がゲラゲラ笑う。私はなんとか体を起こし、震える手でベルトを外した。上着を脱ぐと寒気が襲ってくる。
ああ、どうしよう。本当に体が不調を訴えてくる。シャツを脱ぐ時、ちらりと男達を見上げたが、嬉しそうにこちらを見つめているだけだ。
上半身裸になった途端、男達からほぅ、と息が漏れ、胸部をぺたぺたと触られたが、私は寒さを堪えるので必死だった。

 4本の手が離れるとすぐに頭をヒゲ男につかまれた。目の前に現れたモノに思わず「ひ…」と叫び声を上げてしまった。
きつい匂いが鼻につく。
「しゃぶってよ、兄さん。」
「い…いやだ…!!」
 拒否した瞬間、後ろからバンダナ男に鼻をつままれた。息苦しくなり、思わず口を開くとそこへヒゲ男のモノが突っ込まれる。
「歯、立てたら承知しねぇからな。」
 そう言って、私の頭をつかんだままヒゲ男が腰を動かし始めた。嘔吐感が急激にこみ上げてきたが、必死で耐える。
しばらくして、バンダナ男が私の前をズボン越しに掴んできて、危うく口の中の物を噛みそうになった。
くぐもった悲鳴を上げると、そのままヒゲ男のものが口の中で弾けた。
「こえー!急に握ってやんなよ、お前!!」
ヒゲ男に責められ、バンダナ男が愉快そうに笑う。
私は口の中のものを吐き出すとそのまま反射的に吐き気を催し、胃の中のものも全て嘔吐してしまった。
服を脱いでて良かったかも知れない。危うく精液と胃液まみれになるところだった。
 バンダナ男が私の腕をつかんで無理矢理に立たせた。そのまま壁に押し付ける。

「なんだ、元気ないじゃん。吐いて萎えちゃった?」
「もう…許してください…。」
 ヒゲ男は膝で私の前をぐっぐっ…と押し続けてくる。
「なぁ、こいつ、もう俺達でヤっちゃわね?どうせ次の船がいつ来るか分かんねぇんだし。
 すぐ死んじまいそうだしさ。」
「大灯台の魔物退治に向かったヤツが居るって聞いたぜ。
 どこの命知らずか、と思ったらどっかの商人らしいけど。
 それに聞いた話じゃ、伝説の勇者を見たヤツが居てさ。
 美人の踊り子と占い師を連れてて、剣術が優れているどころか、
 攻撃魔法も回復魔法も使える連中らしい。
 もうすぐどっちかが大灯台の魔物やっつけてくれるかも知れないぜ?」
「へぇ。じゃあ、俺達の仕事ももうすぐ再開できそうだな。
 その美人の姉さん達にもお目に掛かりたいもんだ。」

68ミントスにて 6/8:2008/01/31(木) 01:26:57
 ぼんやりと話を聞いていると、パシン!と頬をはたかれた。
「おい、下も脱げって言ってんだろ?」

「クリフトー!!」
 姫様の声が表通りから聴こえ、私は息を飲んだ。アリーナ姫の姿が路地の隙間から見える。
遠目からでも、姫様が私の帽子を抱きかかえて辺りを見回しているのが分かった。
ただ、向こうからはこちらが薄暗いせいか見えていないらしい。姫様が不安げにうつむいて、再び走り去った。

「あんた、クリフトっていうんだ?」
「あんたの連れの娘も可愛いな。少し幼いが、一緒に連れて行くか?」

 何をしてるんだ、私は。
 彼女を守ると、サントハイム国の神官になった時に誓ったのではなかったか?
 今、ここで力尽きるわけにはいかない。せめて、今聞いた情報を、彼女に伝えなくては。

「…あの子に見つかりたくない…。もっと奥でやってくれませんか…?」
 細い声で言うと、男達は笑って顔を見合わせた。「ああ、構わねぇぜ?」
 ヒゲ男が先に奥へと向かう。バンダナ男が私を奥へ連れて行こうとして腕をつかもうとした。
私は素早くスカラを唱え、その腕を弾き、腰をかがめて鉄の槍を拾い上げた。
驚くバンダナ男の足を切りつけると、男は悲鳴を上げてうずくまる。
そのまま私は鉄の槍を逆手に持ち、振り返ったヒゲ男の喉元目掛けて突き上げた。
ヒゲ男のうめき声が聴こえたが、結果を見ずに身を翻し、ふらつく足をなんとか走らせたのだった。

 路地裏から飛び出したものの、人通りが少なく、誰もこちらに気が付いていない。叫ぼうとしても、力が入らなかった。
振り返るとヒゲ男がバンダナ男と共に路地の奥から怒りの形相で向かってくるのが見えた。
再び前方を見ると、町の入り口辺りに姫様とブライ様の後姿が見えた。
声が聴こえれば振り向いてくれるだろうが、大声でも出さねば聴こえないだろうし、
第一、この汚れた姿のままでは姫様に会うことは断じてできない。
焦る気持ちで辺りを素早く見渡すと、絶好の逃げ場所が目に飛びこんできた。

 そのまま倒れこむように絡まる足をなんとか走らせ道を横断し、私はキラキラ光る夕暮れ時に赤く染まった池へと跳躍した。
 派手な水音が町中に響き渡った。

69ミントスにて 7/8:2008/01/31(木) 01:30:54
 足が立つかと思いきや意外と池は深く、意識が朦朧とする中で、それでも必死に水面から顔を出し、池の淵にしがみつく。
と、誰かに腕をつかまれた。ヒゲ男だ。反対の手でナイフを振り上げている。

 悪いことをする人でも、聖なるナイフを装備できるんだな。神は本当に残酷なほど平等だ。
と何故か私はのんびりそんな事を考えつつ、続けて絶望感でいっぱいになり、とっさに両目を閉じた。

 どこか遠くでヒャダルコを唱えるブライ様の声と、私の名を呼ぶアリーナ姫の声がする。
と、私の腕を握っていたヒゲ男の気配が吹っ飛んだ。
 訳が分からないままに、それでも今のうちだとばかりに池からなんとか這い上がると、目の前に泣きそうな顔のアリーナ姫と、どこから拾ってきたのか私の神官の制服を手にしているブライ様が私を見下ろしていた。
その背後に先ほどの2人組が折り重なるようにして倒れていた。

「頭を冷やせ、とは言うたが…どこまでアホウなんじゃ、おぬしは。」
「何してたのよ、クリフト。どれだけ探したと思ってるの。」
「すみません。…酔っ払いに絡まれまして…。」
「どんな絡まれ方をすればそんな格好で水泳する羽目になるのよ!」
 姫様にしては至極最もな意見だが、それどころじゃなかった私は池の淵に座り込み、気を失いそうになるのをなんとか必死で堪えていた。
体の震えが止まらない。

「姫様…伝説の勇者様が、旅をしているそうです。」
「え?」
「連れの方も居て…攻撃魔法と回復魔法が使えるのだとか…
 もしかして、目的は我々と同じかも知れません。」
「その話はあとよ。顔色、さっきよりひどくなってるわ。お医者さんに診てもらいましょう。」
「大丈夫ですから…!」
「大丈夫なんかじゃないわ!」

 姫様の目元が赤くなっている。でも今、言わなければ、と私はなんとか言葉を紡ぎ続けた。
「姫様、その方たちに力を貸してもらいましょう。仲間を増やせば…姫様の負担も…軽く…。」
「ブライ、その槍、貸して。」
「いや、あの、姫様、それは…。」
「私は…姫様の足を引っ張ってしまいますから…もう…ここで…。」
 次の瞬間、腹部に再度衝撃を受け、目の前が赤く弾けた。
「姫様、殺してしもうたのではないでしょうな!?」
「みね打ちよ!頭も診てもらえばいいんだわ!!」
 2人の声が遠くなっていく中、私はスカラで守備力上げといて良かった…と思ったのを最後に、意識は深い闇の中へと溶けていってしまった。

70ミントスにて 8/8:2008/01/31(木) 01:34:30
 …こうして病が回復した今なら分かります。
あの時、無力感を感じていたのは私だけでは無かった。
姫様も…恐らくはブライ様も自分自身に無力感を感じ、苦しんでいたんだと思います。
私は、病に侵されていたとは言え、とても後ろ向きな考えを持ってしまいました。
姫様の重荷になりたくない一心で言った言葉だったのですが、
あの後、しばらく意識が回復しなかったでしょう?
まるで死を予感させるような内容でしたから、益々姫様を苦しませてしまったようです。
目が覚めてからブライ様にまた怒られてしまいました。反省しています。

 それだけに、あなた方が我々の前に現れてくれたのは、本当にありがたかった。
あなたは「勇者」と呼ばれるのがあまり好きではないようですが、
少なくとも、私にとってだけではなく、我々3人にとっては、やはり救世主そのものだったんですよ。

 …しかし、2人組の男達のことを聞いて、すごく怒ってくれたのは嬉しいのですが、
何故、あなたはさっきから路地裏で起こったことをそこまで詳細に聴きたがるのですか?
あの…やはり話していて楽しい話ではないではありませんし、ここらでお仕舞いにしてくださいませんか?
え?ええ、そうですね、耳が弱いのは認めますけど、何故、そんな嬉しそうなんですか?
え、ちょっと…腕を放してください。
え、まさか、冗談ですよね、そんな。ちょっ…!!!

71名無しの勇者:2008/01/31(木) 01:36:19
以上です。改行不慣れで、読み辛かったらすみません。

72名無しの勇者:2008/02/01(金) 21:26:33
「変態さん」ってなんて可愛いんだクリフト・・
全てにおいてかわいいクリフトゴチでした

73名無しの勇者:2008/02/02(土) 04:18:18
ラストの勇クリにニヤニヤ。
クリフトかわいいなあ。まんべんなく萌えた。
作者様GJです!

74名無しの勇者:2008/02/11(月) 17:13:16
どうもありがとうございます。性懲りも無くまたクリ受です。
何だか申し訳なくなってきたので、これ以降、しばらく自粛します。
掲示板占領しまくってすみません。

では、勇クリ前提のピサクリです。

75無題 1/7:2008/02/11(月) 17:33:48
 ピサロさんを仲間にしてから初めてきちんと宿に泊まった町はエンドールだった。
「世界樹の葉」が無くなったから取りに行こう、と勇者さんが提案して、メンバーの一部はエルフの里に向かっている。
勇者さんは嬉しそうに私を「世界樹」に登らせようとしていたが、今回ばかりは固辞させてもらった。
あの人は何故、私が高い場所が苦手だと何度言っても忘れてしまうんだろう。
何度も伝えているはずだし、実際に登らされた時にも私がどれだけ青くなっているか、ちゃんと見ているはずなのだけど…。

 今夜は家族と過ごす、と言うトルネコさんをご自宅まで送ってから宿屋に戻ると、ライアンさんとマーニャさんが宿屋の食堂で向かい合わせにテーブルについて、夕食を摂っていた。
マーニャさんが私に気が付き、手招きしてくる。
「クリフトくん!ピーちゃんと今夜、同室になる勇気ある?」
「え…?」
 私はライアンさんの隣に座る。
「実は今夜、3人部屋を2つと2人部屋を1つ、宿を取ったんですが、
 夕食に誘っても ピサロ殿がさっさと2人部屋に入ってしまいましてな。
 我々とは食べるものが違うんでしょうかなぁ…?」
「まぁ、私達は3人部屋を使うとして、問題は男性陣よね。
 勇者クンは絶対ピーちゃんと同室なんてならないだろうし。」
「こういう事で気を使うのは信条に反しますのでな。ここは私が…。」
「すでに気ぃ使ってるわよ。もう欠席裁判でさ、『世界樹の葉』メンバーから選べばいいじゃない。」
「それではもうブライ殿しか居ませんぞ!どんな会話が繰り広げられるか考えるだけでも恐ろしい!!」

「あ…あの、いいですよ、私が同室になります。」

 2人がピタリと黙ってマジマジと私を見る。「クリフトくん、いいの?」
「ええ。正直に言ってしまえば、私はあの方が苦手ですが、一緒に戦う同志となったわけですから、
 そうも言っていられません。一度ゆっくりお話してみなければ、と思っていました。」
「いいのですかな、クリフト殿?あなたは神官ですぞ?方や向こうは…」
「いらっしゃい、ご注文はいかがなさいますか?」
 店員さんがやって来て、ライアンさんは慌てて口を閉ざす。
「あ、この定食と同じものを。それから、部屋に持っていけるよう、
 後からもう1人前追加で作ってくださいますか?」
 店員さんが下がると、マーニャさんが肩をすくめた。
「怖かったらいつでも言いなさいよ。
 それから、またいつかどっかの町で泊まることがあれば、
 歓迎会兼ねて飲みに行くから、ピーちゃんと打ち解けられそうなら誘ってみてよ。」

76無題 2/7:2008/02/11(月) 17:36:33
 夕食の乗ったトレイを持って部屋へ行き、緊張しながら扉をノックする。返事は無い。
そっと声を掛けてから扉を開けてみてもピサロさんの姿は無かった。
 なんだか気が抜けて部屋のテーブルの上にトレイを置く。と、その時、部屋のシャワールームが開き、全裸でピサロさんが現れた。
 あまりにも見事な体で絶句してしまう。美しい銀色の長髪に鍛えられた筋肉。まるで神話を描いた彫像のようだ。
「あ…あ、すみません。勝手に入ってしまって。」
 私は我に返って視線を落とす。ピサロさんがまるで観察するかのように炎のような赤い眼でしばらく私を見つめているのが分かる。
やっぱり…怖い。

「…構わん。今夜はお前が私の相手をしてくれるのか。」
「はい…あの、ご迷惑ではありませんか…?」
「お前は神官ではないのか。私と寝ることが辛くはないか?」
 私はピサロさんの言葉に驚き、顔を上げた。
「今は共に戦う仲間です!た…確かに、あなたを敵と思って長く旅をしてきましたから、
 上手く接することができず、こうしてあなたのそばで話していても…
 正直恐ろしいと思う気持ちもあります…。
 ですが、分かり合うことができれば、きっと…!」
「これは、お前の夕食か?」
「え?…あ、いえ、これあなたの分です。良ければ食べてください。」
「お前がシャワーを浴びている間に食べておこう。」
「シャワー…?ああ、そうですね。入ってきます。」
 食べているところを見られるのが嫌なのかも知れない。私は特に疑問も持たず、シャワーを使わせてもらうことにした。

 私が寝巻きを着て、脱いだ服を持って部屋へ戻ると、ピサロさんはまだ裸のままでベッドに腰掛けていた。
ジロリとこちらをにらまれ、ビクッと体を震わせてしまう。
「何故わざわざ服を着る。面倒だろう。」
「え?いえ、別に。これは習慣のものですから。あなたこそ、裸のままでは風邪をひきます。
 寝巻きをお持ちじゃなければ、そうですね、
 ライアンさんの服ならサイズが合うかも知れません。借りてきましょうか。」
「いらん。」
 一刀両断。またこちらをにらみつける。何だかさっきから会話に違和感を感じるのだが、やはり魔界の住民ならば多少言葉の表現にズレがあっても不思議じゃないかも知れない。

77無題 3/7:2008/02/11(月) 17:40:04
 私はピサロさんの視線に耐えられず、咄嗟にまた顔を逸らした。テーブルの上の夜食が全て平らげられているのが目に入る。
良かった、食べるものは私達と同じなんだな、
これならば、マーニャさんから頼まれた歓迎会の話も始めやすい。
「あの、ピサロさ…」
 振り返るとすぐ目の前に当人が立っていたから面食らった。
 その時、何か破裂したような音がして思わず天井を見る。なんか…少し息苦しくなったような…。
「えーと…あ、あの、良ろしければ今度…」
「お前は誰かに抱かれたことはあるのか?」
 ピサロさんは私の右腕を掴んで聞いてきた。質問の意味を飲み込むのにしばらく掛かる。え、今、なんて…
 次の瞬間、凄まじい衝撃が右腕から私の体を走り抜けた。数日前に体を重ね、最後に果てた時の記憶とその絶頂感が一気に蘇り、足から一瞬にして力が抜けた。
 構えることも無く突然襲った衝撃に私は思わず絶叫していた。腕を掴まれたままでなければ、そのまま座り込んでいただろう。
「…あ…あぁ…。」
「なんだ、相手はあの小僧か。初めてでないのなら遠慮する事は無いな。」

 私は、そこで初めてピサロさんが私を最初から抱く気で質問を重ねていたことに気が付いた。
今までの会話のわずかな違和感が全てストンと理解できた。
「え…?」とぼんやり彼の体を改めて見上げ、その冷ややかな赤い眼に映る自分を見つけ、一気に恐怖感で頭がいっぱいになる。
腕を振り解こうとしたが、解放してもらえない。体が震えてきた。
「や…すみません…私はそんなつもりじゃ…へ…部屋を変えて…。」
「お前の意思など関係ない。それとも、お前の代わりに誰かを差し出すのか?」
「ダメです!!
 そ、それに、今、私は大声を出してしまったから…すぐに誰かがここにやって来ます!」
「誰も来ない。」
「…え…?」
「さっき、この部屋の空間を『閉じた』。
 この部屋は私が元に戻すまでは異空間に留まっている。」
 今の破裂音か!やっと私はピサロさんの腕を振り解くことができ、ふらつく足で扉に向かった。ドアノブはピクリとも回転しない。
何度もドアノブを捻ろうとしている私の肩に、ピサロさんの手が乗せられた。痛いくらいに肩を掴まれ、自分でも滑稽なほど体が大きく震える。

78無題 4/7:2008/02/11(月) 17:43:48
「ど…どうして…。」
「私は人間を抱いた事が無い。人間を深く知るためには
 一度抱いてみた方が早いと思った。」
「もし、私ではなくライアンさんがここに来てたら、どうするつもりだったんですか。」
 私の言葉にピサロさんは愉快そうに笑った。
「さすがに好みはある。お前か、占い師の女か、
 あの気に食わない勇者の小僧が来れば良いと思っていた。私は運がいい。」

 私は息を飲んだ。
「やめて下さい!…あ、あの…私だけで…勘弁してください…。」
 自然と声が消えそうになったが、なんとか言葉になったらしい。ピサロさんは楽しげに「お前はそれほどの価値があるのか?」と私を覗き込んだ。
「他の者に無いものがお前にあるというのか。」
 その言葉にすぐさま必死で考える。

 この部屋から逃げられない以上、腕力や魔力で敵うはずが無く、私がピサロさんに抱かれるのはもはや決定事項だ。
恐ろしいが、殺されまではしないだろう。私が耐えればそれで済む。
しかし、ここで否定の言葉を言えば、他の仲間も同じ目に遭わされるかも知れない。
相手によっては2度と立ち上がれないほど傷つくだろう。
何か…私にしかできないこと…他の方にはできないような…しかし…。

「…あのお前が護衛している女も楽しめそうだな。」
「待ってください!!あの…私は…神官ですから…神の教えを説いたり、祈ることができます…!」

 ピサロさんが笑みを消した。私は自分の言葉に青ざめる。何を言ってるんだ、相手は魔王だというのに!

「す…すみません…あ、あまり、人に自慢できるようなものが無くて…。」
「面白い。」
 ピサロさんは私の肩から手をはずした。そのまま背を向けて自分のベッドに向かい、腰を掛ける。
「やってみせろ。」
 扉の前から動けずに、私は呆然とピサロさんを見つめる。
「私に抱かれながら神を説いてみせろ。」
 私は目の前が暗くなった。

79無題 5/7:2008/02/11(月) 17:46:53
「あ…あなたが目の前のよ…欲望に負けそうなとき…その欲望は…
 け、けして我々の神が…仕向けたわけでは…。
 私たちは…自分自身に芽生えた欲望に心を奪われ……落とされるのです…。」
「聴こえぬ。もっと声を張り上げねば、お前の下から聴こえる音でかき消されるぞ。
 もっとも、お前の下の口はその欲望を説いているようだがな。」

 裸に剥かれた私は、すでにピサロさんに組み敷かれ、体を貫かれている。
ピサロさんが放ったものか、私が2度ほど達して放ったものが流れたのか、それとも体が自己防衛で出したのか、私とピサロさんの結合部から耳を覆いたくなるほどの水音が部屋に響き渡っている。
私は涙で目の前が見えず、上手く呼吸もできなくなっていた。説教を続けているせいで喘ぎ声を堪えることもできず、言葉の合間合間にこれまで自分でも聴いた事の無いような声を出してしまって、情けなくて羞恥で体が震えた。
体中、透明なものと白く濁ったものとで汚れている。

「…悲しまないで下さい。私たちが信じる神は…悪を…許容しています。」

 こんな情けない惨めな姿で、私は神を説いている。一番耐えられないのはこのことだった。
何度か耐え切れずに思わず体が逃げたり、拒否の言葉を口にしたが、その度に押さえ込まれては、罰としてまた自分の体の記憶を呼び覚まされた。
それは彼との秘め事の数々で、ピサロさんはそれを読み取っては愉快そうにそれぞれの過去に対して侮蔑の言葉を、過去と現実の境界が曖昧になってきて混乱している私にいくつもいくつもぶつけてきた。
 何度か死の呪文が頭をよぎり、口にしかけたが、私はそれをなんとか飲み込んだ。

 これまで経験したことが無いような大きな存在が何度も私を侵し続け、嵐のような快楽に体がついていけない。
最初のうちは機嫌を損なわせるのが怖くて、なんとか愉しませなくては、と思っていたが、今は最初の言いつけの説教を続けているだけでも、たどたどしかった。
今なら教会の門番の子の方が上手く神を説けるに違いない。

 永遠とも思えるほどの時間、抱かれ続けているような気もしたが、実際にどれだけの時間が過ぎているのか皆目見当もつかなかった。
ピサロさんは一度私の中で達しているが、止める気配すら無い。
もしもこれが彼ならもう許してくれているのに…。
私は現実逃避もあっただろうが、彼に体を揺すられながら、意識が朦朧としてきた。

80無題 6/7:2008/02/11(月) 17:49:11
「神は…我々にそれを乗り越え…神の存在により近くなるよう…強くなるよう、望んでいるのです。
 ただ…現実は神が許したとは思えないほど苦しい。
 あなたが神を信じていないことは、ある意味正しい。」

 ピサロさんの動きが止まったが、私は気付かなかった。

「この世の中には色んな神が居て、それぞれの神を信じている者たちが居ます。
 遥か遠い極東の島では木や、土や、風に至るまで全てにそれぞれの神が息づいていると
 信じられているといいます。きっと…あなたの村をこんな姿に変えてしまった者にも…
 絶対に守り抜いて信じなければならない何かがあったのでしょう。
 もちろん…彼らがしたことは許されるものでは…ああぁっ!」

 私からピサロさんが出ていったことで、私は我に返った。「続きは?」とピサロさんが私を見下ろす。
「え…?」私は息を整えながらピサロさんを見上げる。
「今の説教の続きを言えと言っている。」
「え、続き?」
「やはり意識が飛んでいたのか…。また過去を読めばいいのか?」
「ひッ…!!」
 腕をつかまれ、身を縮めて震える私の姿がおかしかったのか、ピサロさんがふっと微笑む。そして「…もういい。」と私の横に寝転んだ。
2人寝るには狭いので、私はずり落ちるようにベッドから抜け出た。床にしりもちをつく。
「何処へ行く?」
「も…もう許してもらえたのかと…」
「上に乗れ。」
 私は冗談かとピサロさんを見つめたが、ピサロさんが眉をひそめたのが見えて、慌てて腰を上げた。
「ひぁぁ…。」私は再びぺたりと座り込む。
「何をしている?」ピサロさんはベッドを抜け出し、私の腕を掴んで、首を横に振り続けている私を無理矢理立たせた。
私の座っていた床で血と混じって白濁した粘着力のある液体が小さな音を立て、私は自分が一気に赤面していくのが分かった。
「ほぉ…?」
「す、すみません、あの…」
「私がお前に注ぎ込んだものだ。気にするな。」
 予期しない言葉に私は思わずピサロさんを見つめた。

81無題 7/7:2008/02/11(月) 17:52:53
 崩れ落ちそうな体を必死に動かし続ける私を見上げ、ピサロさんは「何故、さっき死の呪文を唱えなかった?」と聞いてきた。
「私を殺そうとしたのだろう?」
 私は首を横に振る。「あなたに…死の呪文は効きません。」
「ならば何故…」
「死のう、と思いました…。」
 私は微笑もうとしたが、顔が歪んでしまい、逆に涙がこぼれた。
「私1人耐えれば…と軽く考えていましたが、神の教えを口にしながら、
 こんなに乱れてしまって…耐えれるものでは無かった。」
「何故、死ななかった?」
「私たちの神は…自害を禁じていますから。」
 私の体はついに動けなくなった。ピサロさんの上に倒れるのだけは避けようとしたが、そのままベッド下まで落ちそうになった。
ピサロさんの腕に抱きとめられる。
「お前は死ぬ自由さえ奪われているのか。」
 そのまま体位を変えられ、再び下に組み敷かれる。ピサロさんは私の胸の中央に手を当てた。
「今、楽にしてやる。」


「……リク!!」
 私が目を覚ました時、ピサロさんの赤い眼が覗き込んでいて、一気に記憶が蘇って飛び起きた。不思議と体が軽い。
「無理するな。体力は全快しているはずだが、精神的には疲れ切っているはずだ。
 もうしばらく寝ていろ。」
「か、回復呪文を唱えてくださったのですか…。」
「蘇生呪文だ。成功したのは初めてだ。」
 また思考が固まりそうになった。「そ…蘇生…?」
「死姦も試してみたが、人間相手ではつまらなかった。」
「試しちゃったんですか…。」
 もうついていけない。想像することが恐ろしく、私は自分の体に視線を落とした。体が綺麗に拭かれ、寝巻きを着せてもらっている。
「あ、あの、ありがとうございます。」
「そんなに嬉しいなら、もう一度死んでみるか?」
「その事じゃありません!」
「ロザリーを蘇生させてくれたことには感謝している。」
 ピサロさんは夕食のトレイを持ち上げた。そして、軽々と部屋の扉を開ける。
「約束は守ろう。共に旅を続ける間、お前以外には誰にも手は出さない。」
「そ…そうですか!」
 私は安堵して礼を言いかけ、ふと言葉の意味が気に掛かった。お前以外に?
「なかなか面白かった。次の説教を楽しみにしている。」
 私が自分の血の気が一気に引いていくのを感じたのと、扉が閉まったのはほぼ同時だった。
「は…早く勇者さんに真の敵を倒すようお願いしなければ…。」

82名無しの勇者:2008/02/11(月) 17:55:18
以上です。どうもでした。

83名無しの勇者:2008/02/11(月) 20:34:42
ピサクリ!!
鬼畜魔王×神官実にゴチでした。萌えに萌えた。
これからも書き込んでください・・お待ちしております。

84名無しの勇者:2008/02/12(火) 20:14:59
アアアーピサクリぃぃぃ!
動悸が鎮まりません…!悶えました!
自粛するなんて言わずに、また書きに来て下さい!

85名無しの勇者:2008/02/14(木) 20:23:08
や、ありがとうございます。あまりこういう掲示板に小説出すの初めて
だったんで1人で勝手に恐縮してたんですけど、
んじゃまた、いいネタ思いついたら落としにきます。
3作連続で落としたのでさすがに今は全く何も思いつきませんが…。

86名無しの勇者:2008/02/18(月) 22:52:03
久々に来たら栗受けの宝庫になっとる…!!
どれもこれも萌えまくりでした。ごちです。

87名無しの勇者:2008/02/24(日) 00:41:23
今日ここに初めて来たのですが、いいもの読ませていただきました!
もともとDQで801萌えはなかったのですが、クリファンでしたので
思いっきり禿げました(≧∇≦)

あぁ、美味しかったです〜(*´Д`)ハァハァ

88名無しの勇者:2008/03/04(火) 21:55:22
序盤、ちょっとピサ勇っぽくなったんですが、勇クリ投下します。
紛らわしくてすみません。
ちなみに単独でも読めるつもりですが、75−81の続きです。

89あやしいかげ 1/10:2008/03/04(火) 21:58:09
 最近のクリフトはどこかおかしい。なんとかクリフトさんが僕に自ら体を許してくれるようになってから、毎晩お願いしたいトコロをなんとか週2回ペースで頑張って耐えて、やっとこさ関係を保ち続けているというのに、ここんとこ、そのうち1回は拒まれるようになってしまった。その上、残りの1回もどこか辛そうな顔をする。
確かに真の敵との対決に備えて、これまで以上に激しい戦闘が続いているけど、そんなの今に始まった訳じゃない。
それにもっと気に入らないのが、神の教えを説く、とかで毎週、短時間だけど部屋でピサロと2人きりになっていることだ。
昨夜もそのことで僕はクリフトさんとケンカしている。

「その時間はわずかに15分位よ?だけど、その間、鍵が無いはずの部屋でも何故か魔法が掛かってて
 扉を開かなくしているし、扉に耳をつけても、クリフトくんの声どころか物音ひとつ聴こえないのよ。」

 マーニャさんが僕に声を潜めて疑問を投げかけてきたのは、2人でエンドールの城下町でネネさんの銀行にお金を預けた帰り道だった。

「しかもよ、部屋から出てくるクリフトくんが入る前よりも、体力全快してるのよ!
 一度、声掛けたらビクビクしちゃってさ。本人笑ってるつもりでも、顔が引きつってるのよね。」
「疲労困憊してるならともかく、元気になっているなら別にいいじゃないですか。」
 僕も気になっていた事だったけど、マーニャさんの推理が聞きたくて気の無い返事をしてみたら、マーニャさんは綺麗な眉をひそめた。

「あんたね、考えてもみなさいよ。クリフトくんかピーちゃんか、
 どちらが唱えたか知らないけど、体力全快ってことは、ベホマ使ってんのよ?
 ってことは、あの部屋でクリフトくんが瀕死の状態になってる、ってことじゃないの?」
「ベホイミかも知れませんよ。」
「一緒よ!なんでボーズが10分かそこら説教するだけで回復呪文掛けなきゃなんない位体力消耗する訳!?
 どこまで全力投球なのよ。馬鹿も休み休み言いなさいよね。」

 宿屋に到着すると、その前でマーニャさんは足を止めた。
「あんたさ、クリフトちゃんのこと大事に想ってんなら、なんとかしなさい。
 近い将来に旅を終わらせたとき、仲間全員でそれを喜びたいのよ、私は。」

 マーニャさんはそのまま振り返らずに宿屋に入っていった。
 僕らのこと、バレてたのか。

90あやしいかげ 2/10:2008/03/04(火) 22:00:25
 クリフトが道具屋に不用品を売りに行っている間にさっさと部屋割りを済ませた。
今日、ピサロと同室だったのは本来ライアンさんだったけど、僕は代わって欲しい、とライアンさんに頼んでみた。
ライアンさんは心配そうにしていたけど、僕が武器まで預けると最後は納得して部屋を譲ってくれた。

 僕が部屋に入ると、ピサロはベッドに座り、一本の杖を面白そうに眺めていた。部屋に入ってきた僕をチラリと一瞥し、ピクリと眉を動かす。
「話がしたいんだけど。」
 僕はピサロの前に立った。ピサロは何も言わず、目だけで先を促す。僕はマーニャさんの話していた疑問をそのままピサロに話した。

「…クリフトさんを密室に閉じ込めて、あの短時間でいったい何をしてるんだ?」
「1ヶ月も掛かるとはな。」
 ピサロは愉快そうに笑った。「いつお前が私を追求に来るか、と待っていたんだが、少し鈍すぎるな。クリフトも気の毒に。」
「ふざけるな!何をしたんだ、クリフトさんに…!」
「知りたいか?」
 笑みを浮かべたまま、ピサロは僕に問いかける。僕がうなづくと、部屋のどこかで破裂音がした。少し、息ぐるしさを感じる。
ピサロはそのまま僕の腕を握った。驚いた次の瞬間、大きな衝撃が体を走り、目の前に昨日、ケンカの末に無理矢理押し倒したクリフトさんの泣き顔が蘇る。
これは僕が絶頂を迎えた時だ。一気に体が熱くなった。

「…あんた、体の記憶まで触っただけで蘇らせることができるのか。」
「大事に想っているわりには、無茶をするな。私を責める権利がお前にあるのか?」
「抱いたのか、クリフトさんを…!」
「分かってて来たんだろう?」
 ピサロは立ち上がり、僕の顎に指を添えた。そのまま僕に口付ける。驚くほど長い舌が歯肉をなぞり、僕の舌を絡め取る。こいつ、腹が立つけど、上手い…。
体の熱が徐々に高まってくるが、心に浮かんできたのは、目の前の男に滅ぼされた僕の故郷の光景だった。

 ピサロが体を離す。僕は何の感動も無く、ピサロを眺めていた。どうやら僕の心を読み取ったらしい。
「私は信念に基づき、あの村を滅ぼしたまでだ。少しも間違った事をしたとは思っていない。」
 ピサロは冷ややかに僕に言い放った。
「だが大切なものを失う悲しみは分かる。一度は、ロザリーを失った今ならば……。

91あやしいかげ 3/10:2008/03/04(火) 22:02:17
「村ひとつ滅ぼしといて何を言っている!あんなに残酷にシンシアを殺しといて何を言っているんだ!」
 僕は思わず大声を出した。「シンシアは…シンシアとして死ぬことさえ出来なかったんだぞ!!」

「お前は自分の信念に基づき、ロザリーヒルにたどり着いた。
 そして、ロザリーに会う為だけに、門番を殺した。
 門番が居なくなったことで、ロザリーは誰に守られること無く人間になぶり殺しにされた。」

 僕は冷水を浴びせられた気分だった。ピサロは表情も無く、その血のように赤い眼で僕を見据えている。
「お前らが殺した我々の仲間はどうだ?
 お前が住んでいた村人の数よりもお前が殺してきたモンスターの数の方が遥かに多いとは思わないか?」
 僕は向かいのベッドに座り込んだ。怒りと戸惑いと不安が一気に僕の心を凍りつかせた。

「お前は何故、我々の仲間を殺してきた?私を殺す為に邪魔になるから殺し続けてきたのではないのか?
 勇者という芽を摘むために、それを守る村人を殺した我々と何がどう違うというのだ。」

「僕の怒りは…間違いだと言うのか?あんたが僕の村を滅ぼしたのも、
 サントハイムを無人の城にしたのも仕方ないと言うのか…!!」
「同じことだ。私がロザリーを殺されたことが仕方ないと納得できることではなかった、ということと。
 所詮、お前も私と同じ穴のムジナだということだ。」

 違う違う違う違う!僕は両手で顔を覆った。   だが、何が違う?

「お前はここに何しに来たんだ。折角あの神官がけなげにお前らを守っているのに、その努力を無にしに来たのか?」
「…守ってる?」
「他の人間に手を出さない、という約束だ。あまりに楽しませてもらえたのでな。約束を守ってやることにした。」
 ピサロは愉快そうに僕の顔を眺めながらベッドに腰を下ろした。

92あやしいかげ 4/10:2008/03/04(火) 22:03:52
「最初は人間というものを知りたかっただけだ。誰でも良かった。最初の部屋割りがあの神官の運の尽きだな。
 お前があの男を気に入るのも分かる。あれは貪り付きたくなる体だ。人間にしておくのはもったいない。」
「15分ほどの短時間で出てきていた…。」
「今、この部屋は異空間に留まっている。私が扉を開くまでは何人たりとも入室できない。
 ここの閉鎖空間は通常よりも時間が流れるのが遅くてな、外の15分はここでは2時間半ほどだ。」
「クリフトさんを…抱き続けていたのか。」
「週に1度の約束だ。ちゃんと体力を回復しておいてやっている。責め殺してしまったのも2回だけだ。」
「二度とクリフトに触れるな!!」

 感情が沸点に到達した。武器はライアンさんに預けてきてしまった。もし装備していたとしても、一対一では僕はこの男に敵わない。
相打ち覚悟で挑んでも、僕が死に、彼は瀕死で生き残る。そんな気がした。
 部屋を沈黙が支配する。ピサロからは反省する素振りが全く感じられず、僕は次第に怒りが静まってくるのを感じた。
ピサロはクリフトに対しても僕に対しても全く罪悪感を感じていない。むしろ楽しんでいたんだろう。

 ピサロは興味を無くしたのか僕から視線を外し、ベッドに転がった杖を再び手に取った。そして、薄く笑った。

「ひとつ、ゲームをしようじゃないか、勇者殿?
 お前が勝てば、私はもう2度とクリフトには手を出さん。約束しよう。」


 部屋の封印が解かれた途端、突如扉が開かれて、クリフトさんが血相を変えて部屋に飛び込んできた。
すぐに扉を閉め、素早く部屋を見回し、僕を見上げてにらみつける。
「勇者さんはどこですか!」
 僕は必死で感情を殺す。本当はすぐにでも抱きしめたかった。
「勇者の小僧はここには居ない。」
「じゃあ、何故、部屋の空間を閉じていたんですか!私以外には手を出さないと約束したのに!!」
「息苦しくなったんだろう。すぐに出て行った。空間を閉じたのは、ゆっくり休みたかっただけだ。」

 そう、僕は今、変化の杖でピサロの姿をしている。耳元でクスクス笑い声を立てているのは僕の影の姿となったピサロだ。

93あやしいかげ 5/10:2008/03/04(火) 22:06:24
 ピサロが提案した賭けは、僕がピサロの姿で正体を明かさないまま、クリフトを抱くことだった。
「もし途中で放棄したり、クリフトがお前に気が付いた時点でお前の負けだ。
 クリフトを異空間に閉じ込めたまま、2度と外へは出さん。絶対にだ。」

 クリフトは青ざめた顔で僕を見上げていたが、やがて緊張の糸が切れたのか崩れ落ちるようにその場へ座り込んだ。
「良かった…良かった…」と声を震わせた後、クリフトはハッと息を飲んだ。

「す、すみません、勘違いをしてしまって…。」
 部屋全体に何かの破裂音がする。ピサロが空間を閉じたんだろう。クリフトは弾かれたように顔を上げた。顔は血の気が引いたままだ。
「きょ…今日は約束の日ではありません…。」
「お前が勝手に決めた約束だ。私にはどうでもいい。」
 いいから早く僕に抱かれろ。僕はクリフトの腕をつかんだ。クリフトはこちらが驚くほど大きく体を震わせた。
まるで殴られるのを待っている子供のように体を竦ませる。もちろん何も起こらず、クリフトは目をぱちくりさせて僕を見上げた。
 あんた、この1ヶ月どんな抱き方してきたんだよ、と僕は呆れて影をにらみつけると、影は素早く床から伸びてきて、クリフトの腕に触れた。

 途端、視界が急に変わり、突然、揺れる天井が見えた。涙で歪んで見にくいが、これは昨日泊まった部屋の天井だ。僕の切羽詰った顔が現れる。

 クリフトの細い悲鳴で我に返った。昨日の僕との記憶を呼び起こされたのか。気の毒に、折角身構えていたのにフェイントを掛けられた形になってしまったクリフトの体は一気に薄い桃色に染まり、ガクガクと体を震わせている。
恐怖に震える姿だけならクリフトに同情するだけだっただろうが、残念ながらこんな状況だというのに、昨日のことをクリフトの視点で見させられただけで、僕はすっかりクリフトを抱く気になっていた。
何故なら、昨日、クリフトと僕の達したタイミングがほぼ一緒だったからだ。これを喜ばずに何を喜べというのか。

 ホント、こんな状況でおかしな話だけど、僕はどうやら微笑んでいたらしい。クリフトが僕の顔を見て益々青ざめた。

「あの、今日は…今のでお分かりになったと思うのですが…さすがに連日になるので…。」
「ごめん、無理。服脱いで。」

 クリフトは面食らった顔をして、目が何度か言い訳を探すように部屋をさ迷ったが、やがて目線を落とし、素直に震える手で服を脱ぎだした。
ノロノロと全裸になるとピサロのせいですでにクリフトの前が半立ちになっていた。
泣きそうな顔で恥ずかしそうに顔を逸らしたクリフトの胸元には昨夜の僕が付けた痕が残っている。
僕は、自分でも思いがけない感情が沸いてくるのを感じていた。
後ろめたい思いを急速に掻き消すほどの黒い感情。それは怒りだった。

「あの、シャワーを浴びさせてくださ…。」
「ヌく必要があるならここですればいい。」

94あやしいかげ 6/10:2008/03/04(火) 22:08:06
 僕の言葉にクリフトが固まる。

「いえ!今日は、汗をまだ流していませんから!」
「構わない。目の前でしてみせろ。」

 クリフトは耳の先まで赤くなり、途方に暮れた顔をした。何か言いたそうに口を開きかけたが、唇を噛んで向かいのベッドに座る。
もう一度僕の顔を確認し、諦めがついたのかクリフトはおずおずと自分のモノに手をかけ、拙い手つきでゆっくりと擦り始めた。

 熱をある程度引きずり出された後だっただけに、ぐちゅ、と水音が静かな部屋に響き渡る。
その音でますますクリフトは消え入りそうに体を小さくしたが、繰り返すほどに水音は消えず、クリフトの耳朶を犯し続けた。
クリフトは必死に泣きそうになるのを堪えながらも、律儀に言いつけを守って自分のモノを擦り続ける。

 段々と息が浅くなっていき、ようやくイけそうになって、クリフトは小さく何かを呟いた。
何と言ったか、こちらが身を乗り出しかけたとき、クリフトは不自然にピタリと動きを止めて、切なげに小さな悲鳴を上げた。
 不審に思って視線の先を辿ると、ピサロの影がいつの間にかクリフトのモノの根元を締め付けている。

「ちょ、あんた…!」
「もう…モンスターは連れてこないでください、とお願いしたじゃありませんか!」

 え、2度目なの!?僕が視線を戻すとクリフトが涙を溜めてこちらを見つめていた。

「そ、そんな約束したかな。」
「前は…ホイミスライムを連れてきて…!もう連れてこない、と言ったのに、次に連れてきたのはマドハンドだった…!」
 息絶え絶えに訴えられて、僕のキャパはもうパンク寸前だった。マドハンドてあんた。
「喜んでいたんじゃないのか?」
 僕の答えにクリフトは目を大きく見開いた。
「そんな…モンスター相手は嫌だと…あれだけ…やっ…!」
 続けてクリフトは座位を崩してベッドに両手を突いた。影がクリフトのモノに絡みつき、蠢いている。
「や…やめてください…今度は…何をさせるつもりなのですか…?」
 もう、ダメだ。僕の頭は真っ白になり、そのままクリフトを押し倒し、噛み付くように唇を奪った。

95あやしいかげ 7/10:2008/03/04(火) 22:11:32
 表情でバレる恐れがあったので、クリフトを背中から組み伏せて貫いた。
ピサロの影は気まぐれにクリフトを愛撫し、また何度かクリフトの喉元を軽く締め付けた。
クリフトの体は首にいつまでも影がまとわりついているせいか、いつも僕に抱かれている時よりも萎縮していて、その分いつも以上に締め付けて、なかなかに具合が良かった。
すすり泣きに近い喘ぎ声が漏れ聴こえる。本人はさぞ辛いだろう。

 クリフトが3度目に達した時、本人はそのままくたりと気を失ったが、影が「この男はこれからが楽しい。もう少し揺さぶり続けてみろ。」と言うから、僕はとり憑かれたかのようにその言葉に従った。
言われたとおり、クリフトは何度か揺すられると目を覚まし、今まですすり泣くだけだったのに、弱々しく行為の終了を途切れがちな声で訴えてきた。

 この光景は見たことがあった。僕が初めてクリフトを抱いた日だ。あの時も、こんな風に泣きながら相手を煽るだけの無駄な哀訴を繰り返してきた。
僕がやってきた事はピサロがクリフトに強いてきたことと、何ら変わりは無い。

 僕がこの状況でクリフトを攻め続けているのは、クリフトを愛しているからではなく、ピサロが相手でも出てくるクリフトの無意識の媚態に、猛烈に心が掻き乱されたからだ。
最初は傷つけずに抱こうと思っていたけど、もう構ってはいられなかった。
 クリフトは優しい。悩める若き勇者に体を提供するほどに。相手が僕じゃなくても体を許すほどに。

『何を呆けている。クリフトが逃げるぞ。』
 ピサロの声に我に返ると、クリフトがベッド脇にいる影が恐ろしいのか、必死に僕の下から這い出そうとしていた。
こんなことして何の意味があるんだ。どうせ部屋からは逃げられやしないのに。
クリフトはベッドからバランスを崩して床へと大きな音を立てて落下した。痛みでうずくまっている。
 とにかく彼を攻め殺せばピサロは満足するのだろう。僕がベッドから降りようとしたとき、クリフトの目線が何かを捕らえたのに気が付いた。
クリフトはそのままベッドの下へ腕を伸ばす。果たして出てきたのは、変化の杖だった。

 僕は次の瞬間、変化の杖を奪い取った。クリフトの目に力が戻り、すでに正気を取り戻しているのが分かる。
ヤバい。この人は妙に勘がいいところがある。

「誰でもいいんだろ?」

 咄嗟に出た僕の言葉にクリフトは目を見開く。
「お前は誰が相手でも悦楽に溺れるんだ。娼館の女よりもタチが悪い。」

 杖を振る。僕の体は再び姿を変える。クリフトは床の上で体を起こしたまま驚愕の表情をした。

96あやしいかげ 8/10:2008/03/04(火) 22:13:55
「やめて下さい。冗談が過ぎます…!」
 僕はその言葉を無視してクリフトに近づいた。クリフトは力の入らない体でなんとか逃げようとするが、すぐに僕に後ろから抱きすくめられ、「嫌です!離してください!」と必死に叫んだ。
僕の体は…いや、ライアンさんの体はビクともしない。クリフトさんは自分の最奥に当たる熱を感じたのか、「ひ…!」と引きつったような悲鳴を上げた。
そのまま僕はベッドに腰掛け、クリフトを僕の上に降ろした。胸が締め付けられるような悲鳴を上げ、クリフトが僕の、ライアンさんのモノを美味しそうに飲み込んでいく。
僕は萎えたクリフトのモノを絞り尽くすように愛撫した。
クリフトはその僕の手を外そうと手を掛けたきたが、何度か体を揺するとすぐに力が入らなくなり、後はただ僕の手の上に自分の手を添えているようにして一緒に動いているだけになった。

 やがてクリフトは小さく僕の名を呼び、水のような精を吐いた。
こんな状態でも僕の名を呼んでくれるのか。それだけで僕は自分の中の黒い感情が消えていくのを感じ、同時に沸き上がる罪悪感に目頭が熱くなった。

 クリフトから自分のモノを抜き、彼をベッドに横たえる。僕自身も何度か擦り、手の中に精を吐き出したが、一部、クリフトの腹部に掛かってしまった。
クリフトがぼんやりと目を開く。僕の顔を見つめる。そして、吐息に近い声で呟いた。

「あなたは何も悪くない。」

 僕は目を見開いた。いつの間にか僕の姿は元の姿に戻っている。クリフトはそのまま瞼を閉じた。
「クリフト…?」僕はクリフトを覗き込んだ。「クリフト!!」

「お前がやり過ぎて気絶してるだけだ。休ませてやれ。」
 影はピサロの姿に戻っていた。そしてまた僕にあの言葉を囁く。
「お前がやってきたことは、私がやってきたことと何ら変わりは無い。」

 僕は首を横に振った。
「それで大事な人が守れるなら、魔物になろうと構わない。」

 ピサロの眉がピクリと動く。僕は宿の備え付けの布でクリフトを清めることにした。しばらく部屋に沈黙が訪れる。

「…全く、人間というものはもう少し脆いものかと思っていたがな。」
 ピサロが突然笑いを含ませながら言うから、僕は驚いて布を取り落としそうになった。

「『あなたが安易に人間を滅ぼそうと考えたのが全ての元凶ではないのですか』」
 ピサロは顔を歪めた。「あの神官が言った言葉だ。」

97あやしいかげ 9/10:2008/03/04(火) 22:15:34
「お前に言ったのと同じ台詞をあの神官を抱きながらぶつけてやったんだ。
 痛恨の一撃を喰らった気分だった。
 確かにそのとおりだ。騙されていたとは言え、
 何故これほどまでに人間を滅ぼそうと容易く考えてしまったのか。」

 ピサロは肩をすくめてベッドに腰を下ろした。
「普段は私に大人しく抱かれているくせに、さすがに腹が立ったらしい。
 その後すぐに青くなっていたが、
 なんとなく癪に障ったので思わず責め殺してしまった。」

 僕はピサロを見つめ、彼が背負っているあらゆるものの重さに思いを馳せた。そしてその十字架を背負わせたクリフトさんに視線を落とす。
彼は青ざめた顔をして目を覚ます気配が無かった。
「クリフトさんは最後まで僕に気が付かなかった。もう2度と行為を強制しないでくれ。」
 僕の言葉にピサロは「そうか?」と笑みを浮かべた。

「この神官は早々にお前の正体を見抜いていた。ゲームは最初からお前の負けだ。」
「クリフトさんは何も言わなかったじゃないか!」
「『夜の帝王』だ。」
「は?」
「2度目に連れてきたモンスターは『夜の帝王』だった。
 本当にネーミングどおりなのか知りたくてな。」
 ピサロは笑みを浮かべたまま話を進める。
「この男はお前を試したんだ。しかし、マドハンドとはな!笑いを堪えるのが大変だった。
 ご要望にお答えして3匹ほど連れてこようかと思ったぞ。」

「あんたじゃない、と分かっても中身が僕だとは気付いてなかったかも知れない。」
「お前が自慰行為をさせた時、お前の名を呼んだ。
 まぁ、これは普段から達する時にはお前の名を呼ぶことが多いからな。
 お前がその事を知って喜ぶと面白くないから、今回はお前の名を呼びそうになったら首を絞めていたわけだが。」

 僕は自分の馬鹿さ加減を思い知らされた。なんとくだらない嫉妬をしていたのか。

98あやしいかげ 10/10:2008/03/04(火) 22:16:54
「じゃ、なんでクリフトさんは何も言わずに抱かれるままになってたんだ…?」
「訳が分からなかったんだろう。どうせ私に脅されてるか、
 自分の不貞にお前が怒り狂ってるか、
 それぐらいは察していたかも知れないがな。」

「ゲームはあんたの勝ちってことか?クリフトさんを解放してくれないのか?」
 僕が震える声で言うと、ピサロは指を鳴らした。再度破裂音が部屋に響き渡る。部屋の封印が解けたのだ。

「蘇生呪文を完璧に詠唱できる者が私以外にこの神官しか居ないからな。
 本当の元凶を倒す為には幽閉など馬鹿げたマネはできん。」

 ピサロはあっさりと言う。僕はポカンとピサロを見つめた。まさか、最初からその気が無かったとか?

「今夜はお前がこの部屋を使え。私はロザリーヒルへ向かう。」
「ロザリーヒル?何しに行くんだ。」
 ピサロは目を逸らした。「クリフトの為、もう一部屋用意しておこうと思ってな。」
 僕が思わず大声を出しそうになった瞬間、ピサロは「冗談だ。」とベッドから立ち上がった。
「急にロザリーに逢いたくなっただけだ。しかし最後まで面白かった。
 これで終わりなのは正直惜しいな。」

 ピサロが部屋から出て行った。僕はクリフトの清拭を終え、彼が目覚めるのを待った。
 僕はクリフトに全身全霊で謝るつもりだ。目が覚めたら泣くだろうか、それとも怒るだろうか。
 どちらにしても全て受け入れる。僕はクリフトの何を見ていたのか。早くクリフトと話がしたかった。


 ピサロがマドハンドを呼ぶのなら一度くらいは許してやってもいいかもな、と少し考えてしまったことはクリフトには絶対に内緒だ。

99名無しの勇者:2008/03/04(火) 22:18:01
以上です。どうもでした。

100名無しの勇者:2008/03/05(水) 19:41:34
ぬああああー続き的新作ゥゥゥ!!ktkr!!
ゴチです!

101名無しの勇者:2008/03/06(木) 23:36:55
キターーー!!!乙です!
栗ももちろん、一途な勇者も可愛いなぁー

102洋二郎:2008/03/07(金) 08:41:37
半信半疑で試したらマジだった件w
騎乗位してあげただけで万冊くれるとかww
最近の若者は分からんわww
ttp://jbbs.livedoor.jp/movie/8433/?Pz87rm4v

103名無しの勇者:2008/06/23(月) 01:28:17
勇クリです。エロさ少なめ。
トランプの模様(?)はうろ覚えです。

104運命のカード 1/5:2008/06/23(月) 01:30:49
 きっかけはエンドールのカジノだった。格闘場でマーニャさんが3連続の大当たりを出し、ハイテンションになったメンバーが嬉々としてベットを続ける中、僕はその中にクリフトが居ないことに気が付いた。そういや、クリフトはいつもカジノには入ってこない。
先に宿屋に戻ったのかな、と入口に目をやると、クリフトの姿が見えた。少し寂しげに見えたその姿に、他のメンバーは全く気が付いていない。
僕はそっとその場を離れ、クリフトに近づいた。

「クリフト、どうしたの。マーニャが妙にツキまくって変なテンションになってて面白いよ。
 見にくりゃいいのに。」
 声を掛けると、クリフトは「いえ、さすがにこの姿では目立ちますから。」と首を横に振った。
なるほど、神官が格闘場で狂喜乱舞している姿は確かにあまり人にはお見せできないだろう。
「じゃあ、着替えてきなよ。僕の服貸してあげるからさ。」
「いえ、あの、賭け事自体、教えに反しますから。」
「えー、じゃあ、なんでここへ来たのさ?」

 僕にとっては特に何の意味も無い質問だったのに、クリフトが思いきり動揺した表情になったのに驚いた。
目が何度か言い訳を探すようにさ迷い、「すみません!宿屋に戻っていますから!!」と身を翻した。
「えー、ちょっと待ってちょっと待ってよ、クリフト!ごめん、僕、何か悪いこと言った?」
 とっさに腕を掴むと、クリフトは目を見張り、「いえ、勇者さんは悪くありません。」と申し訳なさげに言い、小さな声で、
「カードゲームが気になりまして…」と呟いた。
「え、何、ポーカーやりたいの?」

 僕の問いにピクリと肩を震わせ、観念したように顔を上げて、恥ずかしげに微笑んだ。
 ああ、もう、可愛いなぁ、この人。どうしてこういう事が素でできるんだろ。

「マーニャさんが以前、ポーカーをやっているのを後ろで眺めていたのですが、役を作っていくのが面白そうだな、と思いまして。」
「いいじゃない!やろうよ、ポーカー。」
 掴んだ腕をそのまま引っ張ると、クリフトは「いえ…」と僕の腕をやんわりと解いた。
「賭け事できないんです。ごめんなさい。ありがとうございます。」
「クリフトってそうやって何でも我慢しちゃうの?人生の半分損して無い?」
 思わず出た僕の言葉にクリフトの顔が面食らったように目をみひらいたけど、すぐに「気を悪くされましたか?」と不安げに僕に聞いてきた。
何、その反応。我慢している、という認識が無かったのか?

「分かった、分かったよ、クリフト!」
 僕はハァー、とため息をついた。
「僕、カード借りてくる。教えてあげるから宿屋で一緒にポーカーしよう。」
 その時のクリフトの顔は忘れられない。一瞬、ぽかんと僕を見つめて、
「え、あの、いいんですか?カジノを楽しまれなくても?」
と早口で僕の意思確認をし、僕が再度「マーニャかミネアがカード、持ってたし」とうなづくと、こちらが驚くほどの笑顔になった。

105運命のカード 2/5:2008/06/23(月) 01:32:47
「はい、ストレート。」
「スライムのフラッシュです。」
「!!」

 僕はガクリとうなだれた。お互いのベッドに腰掛け、サイドテーブルを間に挟んでポーカーを始めたのはいいけど、実はこれで3連敗だ。
クリフトはニコニコとカードを切りながら、
「本当に面白いですね、このゲーム。もっと早く教えてもらえば良かったです。」
と、カードを再び配り始めている。

 クリフトはポーカーの役や強さの順番をすぐに覚えた上に、慣れてくると異様に強かった。クリフトは表情豊かだし、思考を読むのは簡単だと思っていたけど、生憎、ポーカーができる喜びからか、終始笑顔を浮かべたまま、表情を崩さないのだ。
そういや、元々僕よりも魔力や運の強さも上だったな。今度、カジノに強制連行してやる。
 幸せそうに微笑み続けるクリフトを眺めていると、ふと、いい考えが思い浮かんだ。そうか、動揺させてみればいいんだ。

「クリフト、何も賭けてないとつまらないよ。」
「はぁ、でも、先ほども言いましたけど、賭け事は禁じられていて…」
 向かいのベッドに腰掛けているクリフトは困ったように眉根を寄せた。

「お金じゃなくてさ、負けた方が勝った方の言うことをきくってのはどう?」
「え?そんな、勇者さん、無理難題を言うつもりじゃないでしょうね?」
「無理難題なんかじゃないよ。僕が勝ったらクリフトを抱くだけだから。」
 クリフトは息を飲んだ。笑みが消え、みるみる青ざめていく。

 過去、僕は1度だけ嫌がるクリフトを無理矢理抱いたことがあった。最後には十分悦ばせたつもりだったけど、本人は結構ショックだったらしく、
「お酒に酔ってらしたからですよね?」と事故に遭遇したかのように、忘れようと努力しているようだった。その様子は僕にも衝撃を与えた。別に軽い気持ちで彼を抱いたわけではない。
こんな風に何もかも無かったことにされるくらいなら、忘れられないように何度も繰り返すまでだ。

「冗談はやめてください…」
「冗談なんかじゃないって。この前もそう言ったろ?僕はクリフトを好きだから抱く、それだけだ。」
「わ…私なんかを抱いて、何が楽しいのか分かりません。」
「僕だって何でこんな気持ちなのか分からないよ。でもクリフトが最後に僕にせがんでくれた時、すごく幸福になれたよ。」

 ガタン!とサイドテーブルを鳴らしてクリフトが立ち上がった。顔が赤いんですけど。どうしよう、可愛いな、畜生。

106運命のカード 3/5:2008/06/23(月) 01:34:17
「こんな賭け、私は認められません!もう今日はやめにしましょう。」
「クリフトが勝ったら、もう2度とこんなことは言わないよ。約束する。」

 目を逸らしていたクリフトが弾かれたように僕を見下ろす。正直、そんな約束守る気は無かったけど、クリフトには絶大な効果を発揮したらしい。
ここでゲームを降りたら、僕がクリフトを求めることを今後も許すことになるのだ。クリフトは泣きそうな顔で再びベッドに座る。僕は内心、気合を入れ直した。
「じゃあ、ここから3勝した方が勝ち。OK?」
 クリフトに確認すると、怯えたような顔でこくりとうなづいた。
よし、ゲーム開始だ。

 そこからはもう、面白いようにクリフトはボロボロになった。配られたカードを見て、色の白い顔をますます白くさせ、僕の笑顔を見てはビクリと大きく体を震わせる。
「ツ…ツーペアです。」
「騎士とクイーンのツーペア。はい、こっちの数字がでかいから僕の勝ちね。」
 こんな小さな役で勝てるとは。続けて今度はクリフトが勝利する。1勝1敗となったクリフトは、それでも見ていて気の毒になってくるほど手を細かく震わせていた。

「スリーカードです。」
「お、こっちはただのワンペアだ。クリフトの勝ちだね。」
 2勝したクリフトがホッとしたように笑顔を浮かべる。そんなに嫌なのか。分かる気はするけど、やっぱり腹が立つ。

「ソードのストレートです。」
「おっと、ごめん。フルハウスだ。」
 クリフトが「ひっ!」と喉を鳴らした。2勝2敗。次で勝負が決まる。
「も…もう、いいです。やめにしませんか?」
 耐え切れなくなったのか、クリフトが訴えるように僕に詰め寄った。キスできますけど、今は見逃してあげます。
「やだよ。それとも勝負を捨てて、僕に抱かれてくれるの?」
 僕の言葉にクリフトはグッと詰まって身を引いた。目が少し潤んでいる。手が震えてカードが上手く切れないから、僕が代わりにカードを配布した。
「私は…修行中の身です。恋愛はご法度なんですよ。」
 クリフトはわずかに震えた声でおずおずと言った。僕はカードを配り終えた。
「僕は僧侶じゃないから。」

107運命のカード 4/5:2008/06/23(月) 01:38:46
 僕はカードを確認する。ワンペアだ。やばい。表情を変えないまま、クリフトをチラリと見ると、クリフトはカードを手に取らず、まだ僕を見つめていた。
目が合った瞬間、泣きそうな顔で慌ててカードを手に取った。少し、表情が緩む。うわ、いい役だったのかな。こうなったら心理戦だ。

「人間、いつ何が起こるか分からないんだ。
 僕は二度と後悔したくない。欲しいものは絶対手に入れる。」

 僕はすでにいい役が固まっているフリをして1枚だけカード交換した。ラッキー、ジョーカーだ。これでなんとかスリーカード。
クリフトの目線は僕の顔とカードを何度も行き来した。さぁ。無駄な勝負に出ろ、クリフト。
今の「ほどほどいい役」を捨ててしまえ。
 クリフトはギュッと目を瞑った。顔は青ざめているけど、鼻先が赤い。ああ、泣かしちゃったか。
クリフトが震える手で1枚、カードを捨てた。カードの束から1枚抜いて、それを見た瞬間、

 彼は驚愕したように大きく体を震わせた。

「あ…あぁ…!」
 クリフトの手からカードが全てこぼれ落ちる。軽いパニック状態に陥ったようで全身を震わせていた。
「クリフト!」
 クリフトの腕を掴むと、クリフトはすでに涙を流して「い…今のゲームは無効です…」と搾り出すように言った。
「それは無理だ。約束だよ。」
「でも…でも、私の…!」

 無駄な抵抗をするクリフトの唇を自分のそれで塞いだ。自分の気が済むまで何度もキスを繰り返し、そのままベッドに押し倒す。
キスのせいで虫の息になったクリフトの服をさっさと身包み剥ぐと、クリフトは恐怖で硬直していた。

「…そんなに怖がられちゃ、ちょっと傷つくんだけど。」
「い…今の…ゲームは…無効にしてください…。」
「まだ、そんなこと言うんだ!?」
 涙目で訴えられたら、こちらも惚れた弱みもあるし、心が咎めてしまう。僕は彼の上に乗ったまま、サイドテーブルに手を伸ばした。
 クラウンのキング、クイーン、騎士、10。え、これ、まさかのロイスト!?最後のカードは…!?


「THE HANGED MAN」


「うっわ、これ、タロットじゃん!」
 ミネアから借りたから混じっちゃったのかな。裏面も良く見るとサイズだけしか合ってなくて他のカードとデザインも違った。

108運命のカード 5/5:2008/06/23(月) 01:42:40
「その…そのカード、どういう意味ですか?」
「え?」
 クリフトは僕にすがるような目で見上げてきた。

「こんな…こんな状況で出てくるなんて、何か神からの啓示としか思えません!
 『吊るされた男』なんて!
 な…何か、不吉な意味でもあるんでしょうか?」
「や、でも、成位置みたいだし。これは苦行に耐えて出た結果を…」

 ミネアからの受け売りを説明しようとして、僕は気が変った。ベッドに散乱したクリフトの着衣からベルトを手に取り口に咥えると、クリフトの両腕を掴んだ。
縄結びの速さは旅を始めて身に付いたものだ。
「え?え?何を…」
「こんなのが神の啓示なら、そういう姿で頑張りなさい、ってことじゃないの?」
「そんな!」
「拘束はベッド柵が定番だけどねぇ。今日は後ろからいっとこうかな。」
「なに?何の定番ですか!?後ろって何!?…あぁぁっ!」

 体をすっと撫で上げるだけでクリフトはまるで僕を煽るように細く悲鳴を上げて、背中を仰け反らした。これで無意識の行為だから恐ろしい。
「終わったら、説明してあげるよ。ちゃんと意識を飛ばさずに居てくれたらね。
 さて、みんなが帰ってくるといけないから、とりあえず、この部屋には鍵を掛けておくね。」
 
 始めは辛いけど、いつかは報われる。気長に考えろ…だったかな。あとは「自己犠牲」。最近の僕の状況にも、クリフトの状況にもピタリと当てはまる。
さすがはミネア。居なくても占いをピタリと当てちゃうんだもんなぁ。
 少し冷えたクリフトの体を後ろから僕が抱きしめた時、クリフトの体の震えが少しマシになったのが救いと言えば、救いかな。諦めただけかも知れないけどね。

109名無しの勇者:2008/06/23(月) 01:44:21
以上です。どうもでしたー。

110名無しの勇者:2008/06/24(火) 00:29:28
勇クリきてたー!
クリフトかわいいです。ゴチでした。

111名無しの勇者:2008/07/11(金) 00:31:18
新作きてたー!ヽ( ゚д゚)ノヽ(゚д゚ )ノ2人ともかわいいよ!!
乙でした!!

112名無しの勇者:2008/07/20(日) 23:55:57
「前は…ホイミスライムを連れてきて…!もう連れてこない、と言ったのに、次に連れてきたのはマドハンドだった…!」

このあたりの詳細をお聞かせ願いたい。
と言ってみるテスト。

113108:2008/07/24(木) 00:22:07
>110
>111
ありがとうございます!

>112
のんびり待っててくれるなら夏休みの課題だと思って書いてみます。

114108:2008/07/28(月) 00:09:03
…すみません。のんびり待ってて、と言いながら、書き始めたら3日間で書き上げちゃいました。
ピサクリ前提のホイミスライム×クリフトです。
触手、書き方が良く分からず、勢いで書いてます。

115108:2008/07/28(月) 00:15:24
「無理なさらないでくださいね、クリフトさん。
 今はマシになりましたけど、朝はひどく疲れた顔でしたよ?」

 戦闘が終了したところで、ミネアさんへの交代を断った私に、彼女は顔に疲労の色を浮かべつつも心配してくれている。
戦闘終了後の回復はほぼ彼女が担ってくれているから魔力が乏しくなってきているのはお互い様のはずだった。
「大丈夫です。高いところも終わりましたし、ここから先は安心して歩けそうですから。」
 冗談めかして言うとミネアさんはクスッと笑い、「じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらいますね」と馬車の中へと引っ込んだ。ちなみに現在は隠しダンジョン探索中だ。

「大丈夫ですかな、クリフト殿?」と先頭を歩いていたライアンさんが振り返る。
「心配しないでください!さあ、行きましょう。」

 笑顔を作り、ふと振り返ると無表情でこちらを見ているピサロさんと目が合った。ビクッと体が振るえ、慌てて目を逸らして歩き出す。
 そうだ、気付かれてはいけない。私がここ最近3日と置かず、彼に体を提供していることを。

 ダンジョンの角からモンスターが数匹現れた。私は腰に差してあった魔封じの杖を素早く抜き前方へ大きく振るった。魔法を封じられた魔物たちが力任せに襲ってくるのを前衛でライアンさん、ピサロさん、勇者さんが応戦してくれている。私も杖をベルトに差しなおすと素早く背中に背負った剣を抜いたが、すでに半数以上の魔物が倒されていた。
ピサロさんが仲間になってくれたおかげで最近は後衛に居る事が多い。炎などのブレスを吐く魔物さえ出なければさほど大怪我をすることも少なくなった。
 だから、おそらく油断していたのだと思う。すぐ背後にモンスターが迫っていたことに気が付かなかったのだから。
鞭のように風を切る音を立て、剣を持っていた手を弾かれ、ギョッと振り返るとそこに居たのはベホイミスライムだった。

 心臓が止まるか、と思うほど体が恐怖で萎縮したせいで2撃目は脇に入ってしまい、横へ吹っ飛ばされて馬車に体が衝突、中から女性陣の短い悲鳴が聴こえた。
驚かせてしまったことを申し訳なく思いつつ体を起こせば、3撃目のためにベホイミスライムが長い触手を再び持ち上げるのが見えた。ダメだ、これも防げない。

「何やってんだ、クリフト!」
 前衛からひとっ飛びで走りこんできた勇者さんが一撃でベホイミスライムを仕留めてくれた。

「ありがとうございます…。」
「あんなのに何ボコられてんだ!何の為にはぐれメタルのフル装備渡してると思ってんの!?」
 勇者さんに一喝され、私は「す、すみません!」と慌てて立ち上がった。
「おかげでダメージはそれほど受けてません。」
「そういう意味じゃ無いだろ!」
 確かに今の行動はまずかった。べホイミスライム相手に吹き飛ばされるなんて、昨日までの私ではあり得なかった失態だ。
「まぁまぁ、私もホイミスライム系を倒すのは未だに迷いますからなぁ。あいつを思い出してしまって…。」
 ライアンさんが間に入ってくれたが、フォローが的を得ていない。しっかりしなくては、と自分自身に言い聞かせ、
「いきなりで驚いてしまったんです。今後、気をつけますから。すみませんでした。」
と、勇者さんの叱責を封じた。勇者さんは「どうしちゃったの?」という目でしばらく私を見つめていたが、
「…傷、深かったら治しといてよ?じゃあ、出発しようか。」
と肩をすくめ、私に背中を向けた。パトリシアが動き出してから、私は馬車の中へも「驚かせてすみません。」と声を掛け、気持ちを奮い立たせるように一歩目を踏み出した。

 大丈夫、大丈夫だ。「通常」ならホイミスライム系はそれほど強くないし、攻撃以外のことなんてしてこない。また自分自身に言い聞かせるように心の中で呟き、顔を上げた時、再びピサロさんと目が合った。

 微笑んでいる。

 私は再び恐怖心で縛られそうになり、ギュッと杖の柄を握り締めた。もうダメだ。これ以上は耐えられない。もうダメだ。もうダメだ。これ以上は耐えられない…

116ツワモノ 2/5:2008/07/28(月) 00:20:35
↑ すみません、タイトル入れるの忘れてました…。
↓ 続きです。


 これ以上は耐えられない…。

 昨夜、私はピサロさんの部屋の前に立ち、いつものように心に沸く恐怖心と戦っていた。宿屋に泊まる度にピサロさんに呼び出されていて、もうこれで3度目だ。
人間を抱いたことが無い、というピサロさんに、他の仲間には手を出さない、という交換条件で始めたことだが、1度目はもう死ぬか、と思うほど凄まじかった(実際一度は死んだらしいし)。
2度目は驚くことに私が話す神の教えを、1時間何もせずに興味深そうに聴き入っていた。まぁ、途中で飽きてきたのか、説法を続けるように言うと、そのまま私を着衣ごしに触りだして泣いて頼んでもやめてくれなかったのだが。
 私は自室から持ってきた聖書に視線を落とした。中で何をされるか分かっているのに、それを阻止する術が分からない。いつも悩んだ時は聖書を読んで様々な苦難を乗り越えてきたが、今回ばかりは解決法が分からなかった。
ページをめくる度、ピサロさんにされた事を思い出すのだから、集中して読めるはずも無い。

 私が何度目かのため息をついた時、突然、扉が勢い良く開いた。とっさの事に反射的に身を引いたが避けきれず、鼻先に扉が直撃した。
痛みのあまりに左手で顔を覆った次の瞬間、右上腕に何かが絡み、扉の中から思いっきり引っ張られた。バランスを崩して部屋の中に倒れこんだ私の背後で扉がまた勢い良く閉まる。
ピサロさんの仕業かと鼻を押さえつつ顔を上げると、部屋の奥のベッドで腰掛けている姿が見えた。今日は裸じゃない。私が手にしていたはずの聖書が吹っ飛んでしまったようで、彼の足元に何度も回転しながら滑り込んでいく。
 聖書を拾い上げるピサロさんを見上げつつ、では今、私を引っ張り込んだのは誰だったんだろう、とぼんやり考えた。パシン!とまた空間が閉じられる音がする。
これで、当分の間、この部屋にはどれだけ叫んでも誰も入ってこなくなるのだ。

「部屋の前で突っ立ったままいつまで待たせるんだ。」
「あの…頻度が高すぎませんか?
 魔族の方は普段どれだけなのか存じ上げないのですが、さすがに辛くて…。」
「終了後、全快させているはずだが?こちらは毎日でも構わな…」
「無理です!絶対無理ですから!!」
 私は床に座り込んだまま慌てて言った。「き、気持ちの切り替えができなくなるのです。」
「ほぅ。」
 ピサロさんは興味深げに私を見つめる。「昼間でも貫かれている気分になるということか?」
「そ、そんなあからさまに…。」
 私は顔が火照るのを感じた。ピサロさんはじぃっと考え込んでいる。

「…試してみたいが、この旅が落ち着いてからの方が良さそうだな。
 分かった。今後、もう少しペースを落としてやろう。」
「ありがとうございます…。」
 礼を言いつつも、旅が落ち着いてから、ってどういう意味だろう、真の敵を倒すまで、って言ってなかったっけ?と不安な気分に陥った。
「ところで、この本は何だ?」
「あ、それは聖書です。神の教えが書かれています。
 興味がおありのようだったので、読んでいただこうかと思いまして。」
「ふーん。」
 興味無さげに鼻を鳴らし、ピサロさんはベッドに腰掛けたまま、ページをめくり出した。私は途端に手持ち無沙汰になり、床に座ったままでピサロさんを眺めていた。

 頭上に異様な気配を感じたのはその時だ。

117ツワモノ 3/5:2008/07/28(月) 00:24:02
 つま先で床を蹴り、部屋の奥へ飛んで振り返ると、先ほどまで座っていた場所に、ビチャビチャビチャ!と大きなクラゲのお化けのようなモノが降ってきた。
ホイミスライムだ。しかも3匹も。表情が掴めない3つの顔がじぃ〜と私を見つめている。私は立ち上がって剣を抜こうとしたが、すでに武装解除していて、手が空しく空を切った。

「さすがだな。顔面に落としてやる予定だったんだが、猫並みの反射神経だ。」
 ピサロさんが笑みを浮かべて私に顔を向けた。
「何の目的で、こんな事!?」
「無論、お前を襲わせるつもりだったんだが。」

 ホイミスライムは普通のものより一回り大きめだった。3匹は顔を見合わせ何か呟きあっている。
「…これ、いつも見かけるホイミスライムよりもレベル高くないですか?」
 ホイミスライムから目を離さずに訊いてみると、視界の端でピサロさんが枕の下から金色に光る腕輪を取り出すのが見えて、思わず振り返ってしまった。
「そ、それって、黄金の腕輪ですよね?」
「進化の秘法でレベル60前後に成長させてみた。」
「そんなことに使わないでください!」

 ホイミスライムから目を離した瞬間、私の左足に1本の触手が巻き付いて引っ張られた。転倒した私は、そのまま3匹の元へと寄せられる。
抵抗しようとした両手を別の触手で拘束され、触手という触手が首や足首や胴回りに絡みつき、私は一気に体が恐怖で凍りつくのを感じた。粘液が体にまとわりつき、生理的にも嫌悪感が湧き上がるのを抑えられない。
力を込めて引っ張っても何本も絡みついた触手はビクともしてくれなかった。数本の触手が着衣の裾から入ってきて直接胸部に触れ、心臓の上で這い回った。

 殺される…!

「助けてください!助けて!!」
 私の叫びにピサロさんは聖書から顔を上げ、私の姿を眺めると「もう少し経ってから呼んでくれ。」と再び視線を戻した。
「お、お願いします…!う、うわッ!」
 触手が私の脇腹をなぞっていく。体を仰け反らせた私は、今度は背中を背骨に沿ってなぞられ、「あああぁぁっ!」と声が漏れた。自分で思ったよりも大きな声が出て、途端に気恥ずかしくなったが、それを恥じ入る隙すら与えられず、耳やら脇やら胸部やらを何本もの触手で触られ続けた。声を堪えようと歯を食いしばっても、意識が体に容赦無く与えられ続けている愛撫に流され、思考に霞が掛かってしまう。

 …愛撫。自分の中で浮かんだ言葉にハッと我に返る。そうだ、このホイミスライムには私を殺す気が無い。私の体を弄んで、私の体の熱を一方的に上げようとしているだけだ。
一体だけならなんとか素手でも抵抗できただろうが、複数で来られると為す術も無い。それを全て考えた上で、ピサロさんは3匹もここへ連れてきたのか。

 触手がズボン越しに下肢の付け根あたりを触れてきて、私は背筋が凍りついた。嫌だ、こんなのに触れられるのは嫌だ。こうなったら3匹まとめて…

「ザラ…ッ」

 口を開けた瞬間、2本の触手が私の口腔に飛び込んできた。

118ツワモノ 4/5:2008/07/28(月) 00:26:24
 舌を絡めとられ、口腔内を這い回られる。噛み付こうとしても力が入らず、粘液の苦味が口に広がった。
 強い悦楽を耐える事も逃がす事もできず、ただ私は喘ぎ続けるだけの生き物となった。粘液とも唾液とも分からぬものが口の端からこぼれ出て、私の胸に落ちた。
上着はもうとっくに脱がされ、ズボンも下着ごと破かれた。両下肢を強引に開かされ、拒否を口にしようとしても「ううぅぅん!」と鼻に掛かった情けない声しか出ない。
私は朦朧とする意識の中で、それでもまだしぶとく逃げる方法を必死で考えていた。視線をさ迷わせ、ふと、ピサロさんが聖書を読むのをやめて、こちらを見ているのに気が付いた。

「た…助けて…」

 絡め取られた不自由な舌を動かし、なんとか言葉を紡いだが、ピサロさんはピクリとも動かず、こちらを静かに見つめているだけだった。その視線は、私を現実に戻すのに十分有効だった。
こんなに乱れ、喘ぎまくっている姿を、いつから彼は眺めていたのか。いや、声は最初から聴こえていただろう。羞恥の余り、足を閉じようとしたが、全く動かす事ができなかった。
 触手が、私の持ち上がった物に絡みついた瞬間、私は大きく体を震わせ、か細く悲鳴を上げた。勢い良く出た私の精が床に飛び散り、パタパタパタ、と音を立てた。
堪えていたはずの涙が頬を伝う。もう、羞恥の涙なのか、快楽のための生理的な涙なのか、自分でも分からなかった。触手は再び、私の物を捉えている。
私はまた大きく体を震わせ、自分でも情けないくらい力無い声で小さく喘いだ。

 長い触手が持ち上がり、ゆっくりと私の下肢へ近づく。その目的地が分かり、私は泣きながら首を振り、何かわめいたようだが、もう、自分でも何を言っているのか分からなかった。
頭の中が混乱し、逃げ出したくて力の入らない体を必死に動かそうとしたが、ホイミスライムの拘束は緩むどころか益々強くなり、与えられ続けている愛撫も激しくなるだけだった。
 かすかな抵抗を物ともせず、触手はズルリと私の内部に入ってきた。自在に動くそれに私は再び一気に昇り詰めさせられた。ホイミスライムが私の顔を覗き込む。
私は藁をもすがる思いでホイミスライムにまでもう行為を止めてくれるよう拙い口調で哀願してみたが、願いも空しく、再び精を吐き出さされた。私は呼吸困難に陥り、笛のように喉を何度も鳴らした。
意識が闇に飲まれようとしており、私はもう抵抗せず、そのまま気を失うことにした。

「ホイミ!」

 暖かな空気が私を包みこむ。私は意識を取り戻した。触手の動きが止まっている。

「え…?」
 私はホイミスライムを見つめる。3匹のホイミスライムは私が覚醒したのを確認すると、再び活動を再開した。
「嘘…そんな…。」
 再び体の芯で触手が蠢き、自分でも不思議なくらい体が跳ねた。全身を弄ぶような愛撫が続き、水のように薄い精を吐き出す。

 あとは、もう、何も考えられなくなった。

119ツワモノ 5/5:2008/07/28(月) 00:30:57
 前方を肩を落として歩く若い神官を眺めながら、さすがにやり過ぎたか、と私は昨夜の事を思い出していた。


 ホイミスライムが何度目かの回復呪文を唱えようとしたのを止めて、私はぐったりとホイミスライムに身を預けているクリフトに近づいた。私は触手の拘束を緩めさせ、クリフトを眺めた。
この男は今、自分がどれだけ淫らで卑猥で悩ましい姿をしているのか分かっているのだろうか。口腔内から触手が抜けた途端、苦しげに顔をしかめ、激しく咳き込み始める。
 私が上位の回復呪文を唱えると、短めの睫毛を震わせ、クリフトは薄く目を開けた。再びホイミスライムたちが次々と彼の顔を覗き込む。クリフトの目の焦点が合った。

「うわあああぁぁぁぁ!!!!」

 恐怖で顔を歪め、拘束が緩んでいることでクリフトは触手の束から抜け出した。クリフトは立ち上がろうとして床を濡らす粘液に足を滑らせ倒れたが、私の存在に気が付くと泣きそうな顔で必死にこちらに向かってきた。
殴りかかるのか、と思いきや、クリフトは私の背後に周り、左足にすがりつくと、「助けてください…!」と小さく呟いた。血の気が引いた顔で、体をガクガクと震わせている。
 ホイミスライムたちはまた、顔を見合わせ、ズズッとこちらに近づいてきた。「ひぃッ!」とクリフトは喉を鳴らし、ギュッとこちらの衣服を震える手で強く握り締めた。
 私は涙で目を濡らしたクリフトをしばし見下ろしていたが、指を鳴らし、別の空間へホイミスライムたちを飛ばした。クリフトはしばらく体を強張らせ、やがて脱力して私の足から手を離した。
「もう…モンスターは呼ばないで下さい…。」
「……。」
 沈黙で返した私に、クリフトはやや強めの口調で同じ事を繰り返した。私は肩をすくめ、「分かった分かった。もうホイミスライムは呼ばん。」と約束する。

「ホイミスライムだけじゃありません!」
「今日初めてお前を愛しく思った。神官という職種は皆、そんなに愛らしいものなのか?」
「え?」
 クリフトは面食らった顔をして、「きょ…今日の私のどこにそんな要素を見出したのか…私には解りかねます…。」と眉根を寄せ、怯えたように顔を逸らせた。
身の危険を感じたのか、立ち上がろうとしてまたバランスを崩す。
どうやら腰が抜けているらしい。シャワールームに向かおうとしているようだったので、私はひょいとクリフトを担ぎ上げた。クリフトは体を強張らせた。

「ひ、1人で大丈夫です。降ろしてくださ…」
「おとなしくせねば腕をへし折る。」

 クリフトはギョッと私の顔を見上げ、やがて諦めたように私に身を任せたのだった。


「ちょ…!なんでこんな場所にホイミスライムが居るんだよ!?」

 勇者の言葉で我に返った私の視界に、ダンジョンの天井からボトボトッとホイミスライムが3匹落ちてきたのが映った。
「こやつら、異様にレベルが高いようですぞ!?」
 勇者とピンクの戦士の会話で、これらが昨日、どこかへ飛ばしたLV60のホイミスライムたちだ、と思い至る。こいつはやっかいだな、とクリフトを振り返った。

「ザラキ!」

 容赦の無い死の呪文を喰らい、ホイミスライムたちはもんどり打って倒れていく。
 クリフトはつかつかとホイミスライムに歩み寄り、剣を抜くと、躊躇する事無く3匹に次々と剣を突き立て、足で転がし生死を確認した。

「…絶命しました。行きましょう。」

 呆気に取られている2人に声を掛け、クリフトは馬車の横の定位置に戻る。剣を戻そうとして、粘液に汚れているのに気が付くと、ピクッと動きが止まったが、イラついたようにブンッと剣を振るって鞘に戻した。
私は笑いを堪え、先頭に立って馬車を出発させた。

 人間というのは実に興味深い生き物だ。滅ぼすには惜しい存在なのかも知れないな。

120名無しの勇者:2008/07/28(月) 00:32:16
以上です。相変わらず長々とすみません。

121名無しの勇者:2008/07/28(月) 00:53:41
リクエストした者です。こんなに早く読めると思ってなかったので驚きです!
ああぁ、やっぱりクリフト可愛い(*´Д`)ハァハァ
もう連れてこないでって言ってるのに、この次はよるのていおうなんですね。
しかしピサロがモンスター呼ぶ気持ちもワカル…。

122121:2008/07/28(月) 18:10:48
お礼を言うのを忘れていました。
リクエスト答えてくださってありがとうございました(*´∀`)ノ

123119:2008/07/28(月) 22:49:06
いえいえ、こちらこそ、読んでもらってるんだな、と嬉しかったですよ。
ありがとうございます。

124名無しの勇者:2008/11/02(日) 11:20:38
ライ×ホイです。
※最後に僅かに性描写あるのでイメージ崩れるのが嫌な人は避けてください。
※ホイミン誘い受け
※ホイミン転生説があるそうで、それをベースにしています。
 だから一度ホイミン死んじゃいます。ごめんなさい。

125さよなら ライアンさん 1/6:2008/11/02(日) 11:27:34

 僕 ホイミン。今は ホイミスライムなの。
 でも 人間になるのが 夢なんだ。
 ねえ 人間の仲間になったら 人間になれるかなあ……?


 今まで自分の酒の強さにこれほどうんざりした事は無く、酒場の席を立つ事にした。
強い酒をいくら飲んでも、ヤツを忘れる事など出来やしない。そんなことは分かっているつもりだが、それでも止められなかった。

「ダンナ、さすが戦士さまだわねぇ!こんなに飲んでも顔色ひとつ変りやしない!」
 酒場女がウットリした顔で声を掛けてきた。「ねぇ、部屋で一緒に飲みましょうよ。」
 女でも抱けば、ヤツを忘れられるか、と思ったが、なんだかそんな気持ちにもなれず、首を横に振った。
「いや、残念だが、明日に大仕事が待っているんでな。」
 私は酒代を女に渡した。「生きて帰ってきたら付き合ってくれ。」
「アンタも死にたがりなの?」
 女は肩をすくめ、あっさり引き下がる。
「昨夜も旅の吟遊詩人がモンスターに殺されにいったのよ。」
 足を止めた私に、女は自分の話に興味を持った、と思ったらしい。
「恋人がモンスターに捕まって殺されたらしいわ。後を追って死のうと思ったのか、何の装備もせずに街の外へ出て行ったのよ。バカよね。」
「知っている。」
 私は足早に酒場を出た。そのバカにホイミンは犠牲になったのだ。


 ホイミンは勇者を探す途中で仲間になったホイミスライムだ。モンスターのくせして言葉を操り、人間になるのが夢だ、と言っていた。
魔力が無く回復手段を持たぬ自分にとって、人間になる方法を探す為に旅に出たい、というホイミンは渡りに船だった。
内心、モンスターが人間になどなれるはずが無い、と思っていた。

「ライアンさん、ライアンさん!
 今日はとってもいい天気だからひなたぼっこでもしようよ。」

 子供のように無邪気に私の名を呼び、自分の感じた事を素直に口にする。旅が長引くにつれ、正直、ホイミンをかばって戦い続けるのは辛い、と感じることもあったが、険しい旅の間、気持ちを和ませてくれたのはホイミンの温かく柔らかい言葉の数々だ。
長い間、共に旅をするうちに、ホイミンがこれからも自分のそばに居続けてくれれば良い、と望むようになった。もし、本当に人間になれたなら、私の養子になれば良い。
 ホイミン自身の考えは聞いたことが無かった。だからあの日、この町に来る途中でふと気になって聞いてみたのだ。青く晴れ渡った、静かな日だった。

126さよなら ライアンさん 2/6:2008/11/02(日) 11:30:31
「もし、人間になれたら…?」
 ホイミンは首を傾げ、私を見上げて、顔を逸らした。「秘密!」
「ホイミン、何かやりたいことがあるのか?」私は内心、慌てて聞いてみた。
「うん。でもライアンさんには内緒だよ。」
 えへへ、とホイミンは笑ったが、私は逆に不安感に襲われる。
「…ホイミンさえ良ければ私の元に来ればいい、と思っていたのだ。」
「ライアンさん…!?」
 ホイミンは立ち止まった。
「ホイミン…もし、ホイミンさえ良ければ…私の子として…。いや、人間になってからじゃなくてもいいのだ。」
 ホイミンは立ち尽くしている。沈黙が怖くて私は喋り続けた。
「母親が必要なら、城で私のことを慕って帰りを待ってくれている女もいる。寂しい思いをさせたりはしな…!」
 私は言葉を切った。ホイミンが私の足にしがみ付いてきたからだ。綺麗に澄んだ目を涙でにじませて私を見上げてきた。
「ありがとうライアンさん…。僕、本当に嬉しい。でも、僕…!」

 甲高い魔物の鳴き声が聴こえたのはその時だった。声のした方を見ると、丘の上で誰かがライオンのような魔物に襲われていた。吟遊詩人のようで、どうやら得物を持っていないようだ。
私は舌打ちをした。バカめ!殺されたいのか!!丘を目指して走ろうとした時に、別の魔物が私の前に立ちはだかった。私はホイミンをかばうように立ち、剣を抜く。

 男の悲鳴が聴こえた。振り向くと吟遊詩人が崩れるように倒れる姿が見える。
「いけない!」ホイミンが私の脇をすり抜けた。

「ダメだ!ホイミン、戻れ!!」
「でも、あの人、動かないよ!早く手当てをしないと、僕、蘇生魔法が使えないんだから!!」

 ホイミンはよくその足で、と感心するほど素早く丘へと向かっていく。私はホイミンを心配しながらも目の前の魔物に意識を集中させた。一太刀を相手に浴びせ、さっと身を引く。
ホイミンの詠唱が聴こえてきて…途切れた。

 魔物を倒し、丘へと駆けつけた私は、ホイミンが物言わぬ屍になっているのを見つけた。魔物は姿を消していた。
 何度もホイミンの名を呼んだが、声も鼓動も聴こえず、私はうろたえ、ホイミンを抱き寄せた。

「ホイミン…私の家族になってくれ…」

 ホイミンの体がくたりと何の抵抗も無く私の腕の中に納まっている。「嘘だ…ホイミン、嘘だろう?」
 返事が無い。その代わり、足元で呻き声が聴こえた。吟遊詩人の男だ。まだ息がある。ホイミンが助けようとした男だ。なんとか救わねば。
 この時ほど、自分が回復呪文が使えないのを苦しく思った事は無い。私はホイミンを左肩に、男を右肩に担ぎ上げると、もう目の前に見えていた町へと大急ぎで走っていった。

127さよなら ライアンさん 3/6:2008/11/02(日) 11:33:02
 結果を言えば、担ぎ込んだ教会で結局男は息を引き取った。男は生きる気力が皆無だったから、ホイミンは遺体の損傷がひどかったから蘇生は不可能とのことで、神父がひどく気の毒がってくれた。
男はキングレオ城の王、キングレオに恋人を殺され、自暴自棄になっていたそうだ。何でも「進化の秘法」とかいう術の実験体として彼女が犠牲になったらしい。
 明日、2人の埋葬をさせてもらう、と神父は言い、寄付金を払おうとした私をやんわりと断った。その金があるなら酒でも飲んで来い、と神父は痛ましそうに私を見た。

 結局、酒にも酔えず、私は宿屋の自室に戻ってきた。鎧を脱ごうとして手が震えている事に気が付く。平気だ。一人に戻っただけではないか。違う。ここ数年はずっとホイミンと共に居た。
モンスターなどではない。ヤツはもう、私にとって大切な家族だった。急速に目の前が歪み、床がぽたぽたと音を立て、それが自分の涙だと分かった時には号泣していた。
志半ばで果てた無念はどれほどだったろう。ヤツに家族は居たのだろうか。私はどうすればいい。どれだけの時間があればヤツを忘れられる?

 トントン!と扉がノックされ、私はハッと我に返った。大の男が大声で泣いているのだ。宿の者が驚いて飛んできたのやも知れぬ。私はグッと涙を堪え、顔を袖で拭った。
「すまない、うるさかったか。」
『ライアンさん、ライアンさん、僕だよ!!』

 私は次の瞬間、扉を全開に開け放っていた。見知らぬ青年が目の前に立ち尽くしている。違う、ホイミンではない。私は急速に心が沈み込んだ。
「…旅の連れが亡くなってな…うるさくしてすまなかった…。」
「ライアンさん、僕だよ。ホイミンだよ。」

 カッと頭に血が上り、私は男をにらみつけた。「お…お前は、よく見れば昼間の吟遊詩人だなっ!!仲間が亡くなって苦しんでいる私を笑いに来たのか!!?」
「違う!昼間の吟遊詩人の人は死んじゃったんだよ。覚えてないの!?」
「何をっ!…そうだ…蘇生してもらえたのか…?」
「僕、ホイミンなんだって!バトランドの古井戸の下で僕を旅に連れ出してくれたでしょ!?空飛ぶ靴でお空も一緒に飛んだじゃないか!!」
「お空って…」

 私は絶句した。頭が混乱して状況についていけなかった。「な…何故それを…?」
「だから、僕はホイミンだって言ってるじゃない!」
「でも…私のホイミンは…ホイミスライムだった…あ、あんたは人間で…。」
「僕、人間になれたんだよ。ずっと夢に見てた、人間にようやくなれたんだよ。」
 青年は嬉しそうに私を見つめる。

「心の中に神様が現れて、この男が恋人の元に行きたがっているし、僕に対してすごく申し訳なく思っているって。
 だから、この体を使ってもいいんだって、そう言ってくれたんだ。」

 この時の衝撃をどう言い表せばいいのだろう。私は頭が真っ白になり、気が付けば男を…いや、ホイミンを抱きしめていた。

128さよなら ライアンさん 4/6:2008/11/02(日) 11:36:18
「わっはははは!こんな…青年として人間になるとは思っていなかったぞ!子供として引き取ろうと思っていたのに、どうしてくれるんだ。」

 落ち着いてから私とホイミンは自室で向かい合って乾杯をした。人間になったホイミンは神父に今までのことを話したらしい。
神父は全て了解し、ホイミンの亡骸だけ、手厚く埋葬しておく、と約束してくれたそうだ。明日は私も埋葬に立ち会おうと思う。

「でも、考えてみればもう何年も一緒に旅してきたのだからな。ホイミンももう子供ではなくなっていたんだなぁ。」
 寂しさも感じたが、今は喜びの方が勝っていた。人間になったことよりも、生きていてくれた、それだけでこんなに嬉しいとは。

「私の子に、と思っていたが、これでは親子は無理だな。家族に、と言われてお前が困っていたのもよく分かる。」
 興奮しているせいか、もしくは酒のせいか体が熱かった。風呂に入りたかったが、ホイミンから目を離した途端、どこかへ消えてしまいそうで怖かった。
「家族になることが嫌だったわけじゃないよ。」
 ホイミンは真顔で私を見つめてきた。私は沈みかけた気持ちがその一言で簡単に急浮上したのを感じた。「そ、そうか。そうか。」
「僕は…ライアンさんのパートナーになりたかったんだ。」
「パートナー…?ああ、相棒のことか。ずっと一緒に旅してきたからな。」
 私はさっとホイミンの体を一瞥した。元々は吟遊詩人だった体だ。顔は穏やかそうで、色が白い。ひょろりとした体型をしているし、魔法を唱えられるかどうかは知らないが、武器を持って一緒に旅ができるようには見えなかった。きっと、ホイミン以上に戦闘能力が低いに違いない。
 ホイミンを二度と危険な目に遭わせたくは無かった。しかし、どう言えば傷付けずに言えるだろう。私は視線を机の上のグラスに落とした。

「バトランドで…待っててくれないか。私が勇者殿を見つけて、彼を守り、世界を救える手助けができるまで。
 何年掛かるか分からない。だけど、私はお前をもう喪いたくは無いんだ。」
 ホイミンは目を見開き、しばらく固まっていたが、やがて柔らかく微笑んだ。「それって、プロポーズみたいだけど、そういう意味じゃ…ないんでしょ?」
「あっはっは!そうだな、確かに求婚のようだった。だけどお前を大切に思っているのは違いな…んんん!!!」

 私の唇がホイミンのそれに当たっていた。机を乗り越え、彼は私の唇を吸い続けようとする。私は席を立ち、ホイミンの両肩を掴んで身体を離した。
「酔っ払ったか?ホイミン?」
「…愛しています。」
 ホイミンが搾り出すように言う。「子供としてじゃなく、あなたが好きなんです。人間になればなんとかなるかと思ってた…!」
 私はホイミンを見つめた。うなだれて涙を落とす彼は、冗談を言っているようには見えなかった。

「な、泣くな、ホイミン。驚いただけだ。お前を嫌いなわけじゃない。」
「僕、子供としてなんて耐えられない。バトランドであなたの奥さんと一緒に暮らす、なんてできないよ。
 女の人に生まれ変われば良かった?それなら僕を抱いてくれた?」
「抱いて、って…」
 私は放心して椅子に座り直した。酔っ払って幻聴を聴いているわけではあるまい。ホイミンが私に恋愛感情を抱いているとは気付かなかった。
女性ならば望まれれば素直に抱いていたか、と言われると自信は無い。ホイミンに対し、今朝まで自分の子供か幼い弟のような気持ちで居たのだ。
急に恋愛対象として見ろ、と言われても気持ちの切り替えなどできぬではないか。しかし、ホイミンの想いを拒否して彼を喪うのが一番怖かった。
 汗が額から頬へと流れたのに気が付いた。酒のせいか、それとも冷や汗か?元々物事をあれこれ思い悩むのは苦手な性質だ。ホイミンが涙を手で拭いながら私を見つめている。

「ふ…風呂に入らせてくれ…。」

 何かを考え、結論を出して言った言葉ではなかった。ただ、問題を先延ばしにしたくて、今やりたい事を口にしただけだった。
 しかし、自分が発した言葉の持つ意味に気付いた時には、すでにホイミンが私を抱きしめていた。

129さよなら ライアンさん 5/6:2008/11/02(日) 11:39:19
 入浴中も結局逃れる上手い言い訳が思いつかなかった。風呂から上がって体を拭き、裸のままベッドに座った。ホイミンは軽く汗を流し、また裸のままでベッドのそばに立った。

「…泣きそうな顔してるよ、ライアンさん。」
「ホイミン…私はお前を抱けるか自信が無い。」
「僕はライアンさんを抱けるよ。」

 私はビクリと体を震わせてしまった。
「…さすがにそこまでの覚悟はしてなかった?」ホイミンはふわりと笑う。
「僕も、ライアンさんを泣かせたくなんかない。ライアンさんは何もしなくていいよ。僕はそれでも十分幸せだから。」

 ホイミンはベッドに座る私にキスをし、そのまま跪いて私の足の間にあるものを綺麗な手で愛撫し始めた。私は思わずホイミンを離そうとしたが、首を横に振って拒否し、一心不乱に愛撫を続けた。拙い手技でも久々の行為だけあって徐々に立ち上がってくる。ホイミンは左手を添えるとそれにキスを落とした。

 ホイミンの表情が見えず、私はあまりのことに混乱し始めていた。不安感がずっと漂っている。我が子だと思っていた子にこんなことをさせて良いものか。バトランド国の兵士らの中には男色を好む者も居て誘われそうになったこともあったが、自分は女性以外をそんな対象に見た事は無かった。
 こんな行為をするなんて、この男は本当にホイミンなのか。むしろ別人であって欲しくて、私は発作的にホイミンの肩を押した。

 ホイミンは綺麗に澄んだ目を涙でにじませて私を見上げてきた。

「お願い…お願い、ライアンさん。僕を嫌いにならないで。」

 ホイミンがホイミスライムだった頃と何も変らぬ目で、彼はぽとりと涙を落とした。体を震わせ、ごめんなさい、ごめんなさい、と私の物をつかんだままで泣き続ける。ホイミンの右手は、自分の後ろを解そうとしていた。
 私が困惑して何もしようとしないから、ホイミンが全てを自分だけで処理しようとしていた。
 私は彼の右手をつかんだ。ホイミンは息を飲んで身を小さくさせた。

「自分が入るところだ。自分で解す。お前は何もしなくていい。」

 ホイミンは目をみひらき、また身を震わせて泣いた。

130さよなら ライアンさん 6/6:2008/11/02(日) 11:41:09
 ライアンさんがキングレオ城から嬉しそうに走って行くのが見え、僕は安堵した。
 もう、このままライアンさんに会わず、僕も旅に出た方がいいだろう。バトランド城へ行って待っているように言われたけれど、バトランドへ送ってもらうのも申し話無いし、何年掛かるか分からないライアンさんたちの魔王退治を大人しく待ち続ける気もサラサラ無かった。
いつの日か、僕がライアンさんと一緒に戦えるようになるように、僕も修行の旅に出よう。

 城から勇者さん達が出てくるのが見えて、僕は彼らにライアンさんへの言伝を頼んだ。無事で旅を続けて欲しいこと、僕が感謝していること。
ライアンさんよりも遥かに若そうに見える少年のような勇者さんだったが、僕を安心させるようにしっかりとうなづき、必ず伝えると約束してくれた。
 遠ざかる彼らの背を見送りながら僕はこれまでのこと、そして昨夜のことを思い返していた。城の前に停めてあった馬車が動き出す。僕も出発する事にしよう。

 さよならライアンさん。
 あなたは本当に 優しかった。

131名無しの勇者:2008/11/02(日) 11:42:03
以上です。ありがとうございました。

132名無しの勇者:2008/11/06(木) 16:42:56
ホイミン可愛いよホイミン
いいものを見せてもらいました

133名無しの勇者:2008/11/11(火) 18:52:41
ライホイきてたー!乙です

134名無しの勇者:2008/11/17(月) 17:22:51
泣けました!心の底から乙です
ホイミンかわいいよホイミン
ライアンさん無骨で優しいよライアンさん

135名無しの勇者:2009/02/02(月) 21:46:35
ピサロザ前提のピサクリです。
6章を思いっきりネタバレしています。
暴力描写あり。苦手な人は避けてください。

136籠の小鳥は3度鳴く 1/7:2009/02/02(月) 21:52:27
 ロザリーをも殺した愚かな人間どもを滅ぼす為、ピサロ自身が進化の秘法で究極の力を手に入れることを決めた夜、彼は急にデスキャッスルから出て、外の世界を見たくなった。
 進化の秘法を試して、自分が正気を保っていられるか、一抹の不安を覚えていたのかも知れない。ロザリー亡き今、狂気に走ったところでピサロに惜しいものなど何も無かったが、ロザリー自身を忘れ去るのは忍び難がった。
しかし、ロザリーヒルへ赴くには彼女との想い出が強すぎる。ピサロは夜空に浮かびながら、ふと、岩山に囲まれた砂漠地帯に目が向いた。ロザリーが生まれ育ったというエルフの里がそこにある。
 ロザリーの故郷のその里は世界樹という不思議な巨木がそびえ立っており、ロザリーが昔語りをするときにはよくその大樹のことを愛しそうに口にしていたものだった。実際、人目につかないよう2人で出掛ける時は夜が多かったが、夜間でも柔らかく光る世界樹にはピサロ自身も何度か足を運んだことがあった。
 最後に彼女が愛した世界樹を愛でるのも悪くは無いだろう、とピサロはエルフの里へと滑空した。

 エルフの里に人間が近付く事は少ないが、ピサロは念のためモンスターを内部に入れて見張らせてある。実際、忌々しい勇者達が足を踏み入れた事もあったらしいから腹立たしい。
 ピサロは入口に立ち、過去、ロザリーとここで過ごした時間を思い出す。そう言えば、世界樹の中は迷宮のようになっていたので、「かくれんぼ」をしないか、とロザリーがいつになくはしゃいで言い出したことがあった。

『3回、私を捕まえたらピサロ様の勝ち、ということにしましょう。
 私はここの構造を知り尽くしていますから手強いですよ?』

 嬉しそうに身を隠す為に奥へと走っていくロザリーを、ピサロは気配を辿って瞬く間に3度見つけてしまい、ロザリーの口を尖らせてしまったのだが。

 世界樹の中に入った途端、ピサロの顔が険しくなる。人間が内部に侵入している気配があった。小さく舌打ちし、意識を集中させる。居る。もう少し上層に気配がある。1人だけのようだ。

「ピサロ様。」

 ふいに声が掛けられ、振り返ると世界樹の入口に部下のエビルプリーストが陰気な顔で立っていた。
「この大切な時に何故、このような場所へ。デスキャッスルに戻りましょう。」
「少し外の空気が吸いたくなっただけだ。夜明けには戻る。」
「それならば良いのですが…。」
 疑わしそうな目でピサロを見上げていたが、やがて顔を上部へ向ける。
「おや、人間が1匹潜んでいますな。」
 エビルプリーストはどこから持ってきたのかボウガンを構えた。
「おおかた、世界樹の葉を狙ってきたのでしょう。私めが仕留めて参ります。」
「待て。…そいつは私の獲物だ。邪魔をするな。」
「そうでしたか。」あっさりとエビルプリーストは引き下がる。
「では、私は先に戻っておりますので。ピサロ様もお早く願います。」

 エビルプリーストの姿が消えるのを待ってから、ピサロは奥へと進み、その人間を見つけた。20歳過ぎの青年のようで、顔や神官姿に見覚えがある。
勇者の一味の1人に違いない。どうやら世界樹の葉を探しに来たようだが、他に人間の気配を感じないところを見ると、自分の強さを過信してのこのこ単身で乗り込んできたのだろう。好都合だ、とピサロは長剣を抜いた。
ヤツは勇者らの中で唯一完璧な蘇生魔法が唱えられるという。ここで息の根を止めてしまえば、ヤツらの戦力を削ることができる。
 ピサロは神官に飛び掛ろうとして、ふと奇妙なことに気が付いた。この男はすでに葉を入手しているようだが、まだ何か周りを見回して探し物をしているようだ。
しかも、枝先を見たがっているようだが、なかなか幹から枝へと身を移せないで居る。世界樹の放つ光に神官の白い顔が浮かび上がった。優しげな顔をしてとても屈強なモンスターを倒してきたようには見えない。
その顔も何故か今は血の気が引き、不安げな表情を浮かべていた。ロザリーヒルの塔の中で佇んでいたロザリーと同じような…
 ピサロは舌打ちし、自分の中に浮かんだ思いを打ち消した。神官がそれに気が付いたのかハッと振り返る。ピサロはすかさず神官に向かって一瞬で距離を詰め、相手を袈裟懸けに斬り付けた。

137籠の小鳥は3度鳴く 2/7:2009/02/02(月) 21:56:53
 クリフトは一瞬で自分の懐近くまで攻め寄ってきた相手から間合いを取るため後ろへと飛んだ、が、左肩から右腹部に掛けて相手の長剣が浅く自分の身を裂くのを感じる。
仲間の疲労具合から、高所の恐ろしさを必死で抑えて世界樹まで1人で来てしまったことを、その一瞬で後悔した。
そして、10歩と離れていない所に追い続けてきた魔王・ピサロが感情の無い目で自分を見つめている事に気が付き驚愕する。

「デ…デスピサロ…!?」
「忌々しい人間風情が単身、エルフの里にのこのこと現れるとはな。
 人間など根絶やしにしてもまだ足りぬ。貴様、覚悟はできているのか。」
 クリフトは息を飲む。
「ま…待ってください!私達は長年、あなたに遭う為に旅を続けてきたのです。
 最初はあなたを倒す為でしたが、今は違うのです!」
「何が違う?変わらぬ。お前も、他の人間も自分以外の存在を許す事ができない愚かな生き物なのだ。」
「それはあなたも同じでしょう!あなたが滅ぼそうとしている人間も、
 モンスターやエルフと同じ生きとし生ける者なのです!」

 ピサロの眉間に皺が寄る。要らぬ事を言ってしまったか、とクリフトはまた激しく後悔したが、どうせ殺されるなら、と言葉を続けた。
「確かに、人間は愚かで欲深い生き物です。でも…滅ぼす前にチャンスをください。
 これから少しずつでも歩み寄れるかも…」
「無駄だ。」
 ぴしゃりと言われ、クリフトは口をつぐんでうな垂れた。身にまとっていたマントや上着が剣で裂かれ、胸部から血が流れているのが目に入った。
志半ばで、仲間に知られずこんなところで死ぬなんて。せめて自分の命が何かの役に立たないだろうか。
「あ、あの、私を殺す事によって、人間を滅ぼす気持ちが晴れますか。」
 ピサロに睨まれ、クリフトは三度自分の言動を後悔したが、次の瞬間、我が目を疑った。ピサロが微かに笑ったのだ。

「分かった、神官。お前にチャンスをやろう。」
「え…?」
「3回、私が夜明けまでにお前を捕まえたら私の勝ち。お前が逃げどおせたらお前の勝ちだ。
 何処へなりとも行けば良い。しかし、私が勝てば、お前を嬲り殺すからな。」

 ピサロは楽しげに微笑んだ。「さぁ、逃げろ、人間。3分待ってやる。」

 クリフトは咄嗟に駆け出した。ピサロの脇をすり抜ける時に、ピサロが素早く何かを詠唱した。それが魔封じの術だと分かった時にはすでに1階へと駆け下りていた。
出口を目指して走ったが、出口はモンスターたちが集結していて近寄るのは無謀な行為と思われた。他のメンバーが居る時ならともかく、自分ひとりであれだけの数を倒すのは困難だろう。クリフトは絶望して逆戻りした。
 胸の傷が痛むが、魔力を封じられ、傷を癒すこともできない。夜明けまではまだ数時間ある。自分がそこまで魔王相手に逃げとおすことができるか。答えは限りなくゼロに近い。やはり、一刻も早くここから逃げ出さなければ…。
 クリフトは塞ぎこみそうになる気持ちをなんとか奮い立たせた。考えなければ。考えなければ、待つのは「死」だ。
 下からの脱出が不可能なら、上から飛び降りなければならない。しかし、それはクリフトにとっては究極の選択だった。上へ戻って身を隠そう。
 そう思って顔を上げた時、目の前にピサロが立っていた。

138籠の小鳥は3度鳴く 3/7:2009/02/02(月) 22:01:50
 左頬を裏拳で殴られ、クリフトはよろめいた。そのまま腹部にピサロの右足が入り、仰向けに蹴り倒される。立ち上がろうと横向きになったところへ、脇腹にピサロの爪先がめりこんだ。
息が止まって、クリフトはうずくまった。あまりのことに涙がにじんでくる。咳き込んだクリフトの後頭部をピサロが鷲づかみにして無理矢理顔を上げさせた。
目線を上げると、ピサロの燃え上がるような深紅の目がこちらを覗きこんでいた。殺される、とクリフトはギュッと目を閉じた次の瞬間、クリフトはピサロに唇を奪われていた。
口の中に、鉄の味がしたが、それを舐め取るように長い舌がクリフトの口内を万遍なく侵していく。舌が絡み、逃げてもすぐに捕まえられる。
息が上がり、何とかピサロから体を逃れようとして、強い力で押さえつけられた。あまりに長い行為に膝立ち状態の足が振るえ、押し返そうとする手さえもただ、ピサロの着衣に必死にしがみ付いているだけだった。
 ようやくピサロの唇が離れた時、クリフトは大きく息を吸い込み、そのまま前へと倒れそうになった。が、ピサロに再び裂かれた襟元を両手で掴まれて左右に引っ張られた。かろうじて付いていた服のボタンが弾け飛び、ピサロの舌が胸の傷をなぞっていく。クリフトは恐怖で錯乱しそうだったが、ピサロの目を見て、我に返った。
「や…やめて…やめてください…」
 震える声でなんとか言葉を発すると、ピタリとピサロの動きが止まった。クリフトを抑えていた手を離し、スッと立ち上がると、1歩後ろへ下がった。

「3分待ってやる。」

 クリフトは目をみはった。どこまで本気か想像が付かないが、これは彼の中でゲームなんだ。クリフトは立ち上がろうとして足がふらつき転倒した。
どうやら今の長時間のキスか恐怖のどちらかが足と腰から力を奪ったらしい。力が抜けそうな足をなんとか動かし、クリフトはピサロのそばから離れた。

 ピサロから逃げるには、やはり世界樹の上から地上へと飛び降りるしかないだろう。不思議とアリーナ姫と旅に出てから、高所から飛び降りても傷を負わなくなった。仲間の占い師・ミネアは「それは私達が『選ばれし者』だからじゃないでしょうか」と言った。何か、神のような存在が「死」から守ってくれている、と。
だから、今回も世界樹の上から飛び降りたって、無傷で居られるだろう。だが、クリフトは極度の高所恐怖症だった。今は3階だが、外の景色が見えていなくても、ここが地上から離れた位置にある、と考えるだけで足がすくんでしまうのだ。飛び降りるなど、その場所に行き着くまでに気を失うかもしれない。
 クリフトは痛みを堪えて息を整えた。気配を絶たなくては、相手はすぐにここへやって来るだろう。しかし、凄まじいまでの憎悪を叩きつけられた。クリフトは思い返すだけで震え上がる。
 しかし、クリフトの血を口腔内や胸元から舐め取っていた時、彼の目からは憎悪ではなく、むしろ慈愛さえ感じられた。憎悪は自分にぶつけられたもので、あの慈しむ心はきっと亡きロザリーに向けられたものだ。
これ以上何をされるか分からない恐ろしさと彼の傷つきように芽生えた切なさが心の中で膨れ上がり、思わず中止を請うたが、あのままそれを受け止めれば彼の哀しみは癒えただろうか。
 一介の神官ごときが魔王を癒すなどおこがましいにも程があるだろう。クリフトはため息をつく。それに、今、ここで彼を受け止める事はそのまま死を意味しているに等しい。
今は、生きてここを出なければ。そしていずれ仲間と共に、彼に会いに行こう。
 何が何でもここから脱出する。だが、もし彼に捕まった時は、全身全霊で彼を受け止めよう。

139籠の小鳥は3度鳴く 4/7:2009/02/02(月) 22:06:09
 どれだけの時間が過ぎただろう。ピサロの姿を見かけては慌てて姿を隠し続けていたが、体力的に限界を感じ始めていた。途中、都合良くキメラの翼を拾ったが、ダンジョンを脱出しなければ使っても意味が無い。
やはり、枝から下へ飛び降りようか。クリフトは重くなる足をなんとか前へ進め、逸らしたくなる目線をなんとか外へと向けた。世界樹の枝葉が優しく光るその向こうに夜の闇が広がっていた。
 これが昼間ならば下の世界が見えて、ますます足が竦んだだろう。飛び降りよう。クリフトは決意した、と、その時、フッとクリフトは体が少し軽くなったのに気が付いた。
 魔封じの術が解けた。どうしよう…今、回復呪文を唱えるのか。それとも脱出してから?

 瞬時迷ってから、クリフトは回復呪文を先に唱える事にした。高所から飛び降りる、という恐怖を心のどこかで先延ばしにしたかったのかも知れない。
目を閉じ、小声で詠唱をして、目を開けた瞬間、ピサロが素早く詠唱しながらこちらに向かってくる姿が目に飛び込んできた。思わず魔法を唱えるのを一瞬忘れる。途端に魔封じの術が掛けられた。
 クリフトは素早くピサロから距離を取った。背後に世界樹の枝が広がる。クリフトはちらっと背後を見て眼下に広がる光景に息を飲んだ。た…高い…。

「何故、飛び降りないのか様子を伺っていたが、お前は高い所が苦手のようだな。」
 ピサロが近付いてくるに従い、クリフトは後ずさりした。枝がギシッと音をたて、寒気が走る。
「勇者の一行は高所から飛び降りても怪我を負わずにいられる、と報告を受けている。」
 ピサロは愉快そうに言った。
「だが、お前もそうなのか?」
「…近付かないで下さい。」
「『選ばれし者』なのは、お前の姫だけであって、
 配下のお前はただ、そばに居たから無事だっただけではないか?」
 クリフトは弾かれたようにピサロを見つめた。
「違います!私だって…」
「なら、飛び降りてみろ。私から逃げたいのだろう?」
 クリフトはピサロに背中を向け、枝先へと足を進めた。足元が揺れ、枝葉から透けて遠く下に地面が見える。地面に叩きつけられるイメージが浮かび、その恐怖が足元から全身へと瞬く間に広がる。
 我に返ったときにはもう、目前に立っていたピサロが剣を抜いていた。そのまま左足の甲に長剣が勢い良く突き立てられる。激痛に絶叫し、思わず腰の剣を抜こうとしたが、血の滴る剣が先にクリフトの喉元直前にまで詰め寄った。
「武器を捨てろ。」
 クリフトは震える手で腰にぶら下げていた剣を放り投げた。目線で促され、クリフトは世界樹の幹の方へと戻る。ズキズキと足が痛み、血が溢れているのが分かる。骨が折れたかも知れないな、とクリフトは恐怖の中、どこか他人事のようにぼんやりと考えた。
 襟首を掴まれ、乱暴に上着を脱がされる。前は全て裂かれていたから、あっさりと上半身を裸にされた。夜の外気がひやりとクリフトを震わせる。
「両手を壁に付けろ。」
 言われたとおりにすると、「そこから指1本離すな。」と言って、ピサロはクリフトを後ろから覆うように抱きしめた。ピサロの冷たい手がクリフトの胸元や脇、背中に這い回り、時折、クリフトの体を震わせた。声が漏れそうだったが、1度目に自分の声でピサロが我に返ったのを思い出し、クリフトは必死に声を出すまいと歯を食いしばった。
口付けをされ、また足から力が抜けそうになっても、クリフトは子供が親の言いつけを守るように頑なまでに幹から手を離さなかった。
 だが、ピサロの手がズボンの中にまで届いた時はさすがに驚いて身をよじって逃げようとした。

140籠の小鳥は3度鳴く 5/7:2009/02/02(月) 22:10:08
「動くな。」
 ピサロの一声にクリフトは息を飲んだ。本当は、怖くてたまらなかった。ピサロの指が自分のものに絡まった途端、「やッ…」と声が漏れてしまい、クリフトは咄嗟に唇を噛む。
「何故、声を堪えている。ちっぽけなプライドでも守っているつもりか?」
 手を止めずに耳元でピサロが不機嫌そうな声で問い掛けた。頭に靄が掛かりそうになりながらも、クリフトは慌てて首を振った。
「わ…私は…男ですから…声など出せば…きょ…興醒めされるかと…」
「心配しなくともお前がロザリーの代わりになるとは思わん。
 おのれの命さえ風前の灯だというのに、私への同情か?」

 心の中を見透かされたような気がしてクリフトは恥ずかしさのあまり、体温が一気に上がるのを自覚した。
「同情などでは……!やっ、ちょ…お願いです、あの、本当を言うと、わ、私は、こういうことが不慣れで…。」
 クリフトは動揺し過ぎてすでにピサロを癒すどころでは無くなった。ピサロの指の動きが早まったせいで、息が上がって足がガクガクと震えている。手が幹から外れそうになるのを泣きそうな思いで耐えていた。
「も、もうダメです、手を、手を離して…んッ!ああ…ッ!」
 ピサロの指の中で精を出し、クリフトは大きく息をした。
「す…みませ…。手を汚してしまいました…。」
 もう、手を離してもいいだろうか。これ以上されると3回目がスタートしても明け方まで体力が持ちそうも無い。そう思った時、ピサロの手がクリフトのズボンを下着ごと膝まで一気に下ろした。
「もう止めて…!」思わず自分の手でピサロを止めそうになり、慌てて自制する。
「今、指が離れたな?」
 ピサロの声が背後で放たれた。「いえ、私は…。」クリフトは必死に首を振る。
「何本、指を離した?」
「す、すみません、許してください…!」
「何本、指を離した?」
 同じ質問を繰り返すピサロにクリフトは心が凍てつく思いがした。
「ご、ごめんなさい…、3本くらいだったと…思います。」
「3本か。まぁ、無難なところだな。」
「い…痛い…ッ!!」
 そのままピサロはクリフトの最奥へと無理矢理指を突き入れてきた。しばらくデタラメに動かしたあと、続けて2本目が入る。
クリフトはあまりの展開に思考が付いていかず、幹にこめかみを当てるようにして痛みを耐えた。指がどこかを掠め、途端にクリフトがビクリと跳ねた。ピサロが笑ったような気配がして、振り向こうとした瞬間、3本目が入った。
息が詰まりそうになり、大きく息を吸った瞬間、また急激な波に飲まれそうになる。思わず「うぁぁっ!」と喘いでしまい、クリフトはまた恥ずかしさの余り体温が上がるのを感じた。
いや、もう、この体温の上昇は恥ずかしさの為だけではないだろう。クリフトが内心パニックに陥っていることを知ってか知らずか、ピサロの指はクリフトを追いたて、耐えようと空しい努力をしているクリフトの口から何度も喘ぎ声をこぼれさせた。

 2度目に精を放った時、自分がまだ幹から手を離していないのがクリフトは我ながら不思議に思えた。そのまま、ずるずるとその場に座り込む。ピサロが覗き込んできたので、クリフトは肩で息をしながら、
「もう…手を離してもいいですか…?」と恐る恐る尋ねてみた。
「勝手にしろ。」
 クリフトは安堵の息を吐き、手を幹から剥がした。両手共に血の気が引いている。クリフトは痺れた両手をすり合わせ、なんとか動くようになるともたもたとズボンを履き直し始めた。
「お前がここで降参するなら、お前を生かしておいてやっても構わんぞ。」
 ピサロの声にクリフトは驚いて顔を上げた。「え、本当ですか。」

「ああ、次の3回目でお前を殺すのは少し惜しいからな。
 ただし、お前にはロザリーヒルの塔へと入ってもらう。
 人間を滅ぼせば、モンスターどもに最後の人間として狙われるようになるやも知れんからな。
 一生塔の中で可愛がってやろう。お前はロザリーの代わりになってくれるのだろう?」

141籠の小鳥は3度鳴く 6/7:2009/02/02(月) 22:14:13
 全身をピンク色に上気させて息を切らしていた神官は、ピサロの言葉に悲しげに眉をひそめた。
「そんなもの…何の解決にもなりません。」
 そのまま無言で傷ついた足をかばう様にして武器を拾いに行く。
「私などが…あなたを癒そうとするなど、おこがましいことでした。やはり…ロザリーさん自身でないと…」
 ピサロは思わず詠唱し、手の平の上に火の球を素早く作ると、裂かれた上着をどうしようか躊躇しているクリフト目掛けて放っていた。火弾は上着に直撃し、クリフトが衝撃で倒れている間に燃え上がる。
クリフトはようやく上着を諦め、「3分、お願いします。」と言って肩を落として部屋を出て行った。
 今の提案が気にいらなかったのか?命を捨ててまで何を解決させようというのだ。ピサロは燃え続ける衣類を見つめていたが、身を翻してクリフトを追う事にした。夜明けまでさほど時間は無い。
 瞬殺してやろうか、とも思っていたのに、意外とこのゲームを楽しんでいた自分に驚く。あの男はロザリーの代わりにはならない。しかし、あの男が言った言葉は、ロザリーがよく口にしていた言葉と同じだった。

“人間も、モンスターやエルフと同じ生きとし生ける者なのです!”

 あの男はキメラの翼を持っていた。ダンジョン内部で翼が使える場所と言えば世界樹の天辺しかない。
極度の高所恐怖症のあの男が青い顔をして向かっているだろう、と思うと何故だか妙に面白かった。あの男は気配を消すのは上手いが、思考は読みやすい。

 ピサロがのんびりと時間を掛けて最上階へと向かうと、案の定、クリフトはそこでうずくまっていた。何かを隠すように必死に枝や葉を集めている。
世界樹の枝葉はまるで自分の意思があるかのように、普通は別の力によって折れたり千切れる事は無い。しかし、何故かクリフトの手に従うように枝や葉が千切れてはクリフトのそばへと集められていく。

「クリフト、ここまでだ。」
 ピサロが声を掛けるまで気が付かなかったらしい。顔を上げて見えたその表情は涙に濡れながら、しかし、微笑んでいた。
「これで3度目なのは分かっているな?
 屋上まで来ていながら、何故キメラの翼で脱出しない?」
「え?あ、キメラの翼って、屋上でなら使えるんでしたね。
 うっかりしていました。」

 クリフトは左足をかばうようにして立ち上がる。そしてキメラの翼を取り出した。周囲の空がやや明るくなりだした。夜明けが近い。

「あなたに言わなければならないことがあります。
 いくら人間の私が言ったところで信じてはくれないかも知れませんが…。」
「何だ?」
「ロザリーさんをあんな目に遭わせたのは、人間だけでは無いのです。
 本当は彼らを操った者が…」

 ひゅ、という風を切る音の後に、ドン、という鈍い音がした。クリフトの腹部に長い矢が深く突き刺さっていた。クリフトの目が険しくなり、ピサロの背後に向けて怒りの目を向けた。
 エビルプリーストがボウガンを構えて立っていた。もう1本発射しようとしているのを、ピサロは「止めろ!!」と一喝し、ボウガンを叩き落した。
「あのような馬鹿馬鹿しい話を信じる気じゃありますまいな、ピサロ様!?」
 エビルプリーストはボウガンを拾い上げる。
「人間を生きて帰すなど正気の沙汰とは思えん。この世界樹も早く焼き払っていれば良かったのだ!」
「ヤツはこのまま帰す。」
「何故!?」
「夜明けだ。約束だからな。」

142籠の小鳥は3度鳴く 7/7:2009/02/02(月) 22:16:34
 キメラの翼を構えるクリフトの背後から、朝日が昇り始めていた。クリフトの姿がキメラの翼に覆われ、光の中へと消える。エビルプリーストは舌打ちしたが、ニヤリと笑ってピサロに1本の腕輪を手渡した。黄金の腕輪だった。
「さぁ、ピサロ様。進化の秘法をお試しになるときです。」
 ピサロはクリフトが何を隠そうとしていたのか気になったが、何故かこのことをエビルプリーストに知られるのはまずいような気がして、言われるままに腕輪を手にはめた。やがて、急激に自分の力が上昇するのが感じ、反比例するように意識が曖昧になっていく。
 エビルプリーストに導かれるままデスキャッスルに戻った時には、世界樹で出会った神官の事やロザリーのことなど、忘却の彼方へと流してしまっていた。


 実際にあの時の神官が屋上で何をしていたのかは、蘇ったロザリーが目の前に現れた時に分かった。ロザリーの言葉で全てを思い出し、そして全ての元凶を知ったピサロは彼女から数歩下がった所で涙を必死で堪えている神官を目の端で捕らえた。

「お前は花を探していたのか…。」

 ピサロがロザリーを抱きしめながらクリフトに問うと、クリフトはビクリと体を震わせた。
「まだ蕾の段階で摘んで帰れませんでしたので…。お待たせしてしまってすみません。
 あの節はご迷惑をお掛けして…」
とやや見当違いの返答をする。
 マーニャという踊り子が「とりあえず、馬車に戻りましょうよ!積もる話はたんとあるでしょ。」とピサロとロザリーの肩を気安くたたく。
「そうだな。」とピサロは微笑んだ。落ち着いた時に、クリフトには礼をせねばならない。ピサロは馬車に乗り込んだ途端、ポツリと思いついたことを口にした。
 誰にも聴こえないように言ったつもりだが、横に座ろうとしていたロザリーのとんがり耳には伝わったらしい。無邪気な声でロザリーは尋ねてきた。

「ピサロ様、『3度目が途中』って何のことですの?」

 馬車に乗り込もうとしたクリフトが足を踏み外して落ちていくのが見えた。彼の仲間が不思議そうにクリフトを見ていたが、ピサロは気にせずデスキャッスルを後にした。

143名無しの勇者:2009/02/02(月) 22:20:15
以上です。
世界樹の構造がうろ覚えの上、本当に天井が無ければキメラの翼が使えたのかも曖昧です。
違ってたらごめんなさい。

144名無しの勇者:2009/02/12(木) 00:01:50
久し振りのピサクリありがとうございました!
ドキドキしながら楽しませていただきました。
次回作もお待ちしております。

145名無しの勇者:2009/02/21(土) 00:28:39
ピサクリ来てたー!
クリフトの一挙手一投足に激しく悶えました!
途中のままの3度目成就祈願ww!

146143:2009/02/27(金) 00:49:10
ありがとうございます。なんとなく痛々しい話になっちゃったのに
読んでもらえて嬉しいです。
ぼんやり続編も思いついたので書けたらまた来ます。

147名無しの勇者:2009/03/08(日) 01:24:24
と、言う訳で書いてきました。
142の続きです。ピサクリ。

148無題 1/5:2009/03/08(日) 01:30:00
 クリフトはぼんやりと窓の外を眺めていた。もう、ここへ連れて来られて何日になるだろう。ロザリーヒルの隠された塔の一室で、クリフトは遠くに立ち上る黒煙を見つけて、また何度目か分からぬほどの絶望的な思いに駆られる。
 あの若き魔王がまたどこかの国を襲ったのだろうか。勇者の郷のように。我らがサントハイムのように。
 いずれまた、ここへやって来ては、嫌がる私を押さえつけ、今日、どのように町を焼いたか、どのように命乞いを受けたか、耳元で囁くのだろう。クリフトは震える己の手を見つめる。武器を奪われ、部屋にある果物ナイフでピサロを殺そうとしたときもあった。死の呪文を唱えて殺そうとした時もあった。ナイフなどではピサロは死なない。ましてやザラキなどでは言わずもがなだ。
 絶望感に打ちひしがれ、何度か自害しようか、とも思った。神は自害を禁じているが、耐えられずに自分に対して死の呪文を唱えた事も幾度と無くあった。1度成功した事もあったが、すぐにピサロに蘇生呪文を使われ、最近はザラキの効きさえ悪くなって、自分がいかに飼い慣らされて神官として使い物にならなくなっているか、を思い知る。
 クリフトは鉄格子のはまった窓を恨めしげに見る。何故、ここに居るのか過去の記憶さえ曖昧になってきていた。自分は壊れてきているのかも知れない。いっそ、狂ってしまえるのなら、その方が楽なのだろうか。

 前触れも無く鍵を開ける音がして扉が開き、クリフトは息を飲んで振り返った。鎧に返り血を浴びたままの姿で魔王が立っている。部屋に一瞬で溢れる生臭い匂いにクリフトは気分が悪くなった。昔、旅をしていた頃はこんな匂いで怯むことなど無かったのに、と、再び自己嫌悪に陥る。
 ピサロはクリフトの心中を知ってか知らずか、ズカズカ中へ入ってくると嫌がるクリフトの顎を強引に掴み、口づけた。離れようともがくが、すぐに体から力が抜けて、血で汚れた魔王の体に
倒れこむ事になる。自分の体に付く紅い汚れに、クリフトは泣きそうになった。彼に浴びせられた返り血は、間違いなくどこか誰かの人間から流れたものだからだ。

「お前の体を汚した血が、誰のものか教えてやろうか?」

 抵抗するクリフトの汚れた服のボタンを難なく外しながら、ピサロは楽しげに言う。

「もう…止めてください。人間を滅びしたって、世界は変わりません…。」
「この血は、お前の大切な姫様のものだ。」

 クリフトは全身の血液が死の呪文に遭遇したかの如く凝固するのを感じた。一気に体が震え、耳鳴りがし始める。
 ピサロは獣のように咆哮を上げて激しく抵抗するクリフトを、しかし易々と抑え込んでベッドに放り投げた。神官だった男の上に乗り、嬉々として耳元に囁き続ける。

「お前の名を呼びながら死んでいったよ。お付のジイさんもな。」
「嘘だ、嘘だ、嘘だっ!!!」
「明日は勇者を探し出して血祭りに上げてやる。」

 裸に剥かれながら、クリフトは暴れ、抵抗が敵わないとなると自分を殺すように叫んだが、ピサロは「ああ、死ぬような思いをさせてやるさ。」と笑って抱きしめ、組み敷かれて力尽きた彼を、一気に貫き悲鳴を上げさせた。

149無題 2/5:2009/03/08(日) 01:33:17
「うわぁぁぁ!!!」


 見覚えの無い天井が見え、クリフトは一瞬、自分の所在が分からなくなった。浅い息を繰り返していると、一気に記憶が戻ってくる。ここは温泉町アネイルだ。
 今日は朝からずっとゴットサイドに隠されたダンジョンを探索していた。モンスターのレベルが高くて回復役の自分とミネアが疲労困憊してきたから、途中で切り上げ、疲れを癒そうと今日の宿をアネイルにしたのだ(ちなみにここは安い方の宿だ)。
 現在の状況把握ができた瞬間、クリフトは吐き気に襲われてベッドから飛び降り、ふらつく足で洗面所に駆け寄った。昼から何も食べてないから胃液しか出ない。
体調が悪い、というより夢の内容を体が拒否した、というのが正しいだろう。クリフトは吐瀉物を水で流し、タオルで口を拭った。窓の外を見るとすでに暗い。部屋には自分以外に誰も居なかった。テーブルにメモが残されていたので、部屋のランプを点けて手に取ると、勇者の字で

『よく寝ているようなので先に温泉に行ってくる。もし起きられて何か食べられそうなら、今日はここの宿屋で飲む、とマーニャさんが言ってたし、多少遅くなっても食堂で
 騒いでると思うから、後から来ても大丈夫だよ。』
と走り書きがしてあった。少し安心したが、夢だと分かっていても仲間の無事を確認をしなくては落ち着かない。クリフトは部屋の扉を開けてにぎやかな声がする階下へ向かった。
 ここのところ、毎晩のようにロザリーヒルに幽閉された夢を見る。よほど、世界樹でピサロに言われたことがショックだったのか、とも思ったが、ピサロが仲間になる前にはこんな夢はみていなかった。仲間になったというのに、恐怖感からこんな夢をみるのだろうか。おかげで最近、うなされることが多く、疲れが取れない夜もあった。
夢の内容が内容なので誰にも相談できないし、ピサロにもなんだか申し訳が無い。敵が強くなっているし、疲労が溜まっているのだろうか。1時間ほど寝ただろうが、MPがほとんど回復されていないようだ。食欲も沸かないし、仲間の無事を確認したら、自分も温泉に浸かって、マーニャさんに捕まらないうちにとっとと寝てしまおう。

 そっと食堂を覗くと、仲間の全員が揃ってワイワイ食事をしていた。湯上りの者もちらほら居るようだ。アリーナ姫も凄まじい勢いでスープを飲んでいるし、ブライも麦酒を美味そうに飲んでいた。ピサロも無表情でミネアの隣りで葡萄酒を飲んでいる。良かった。これ以上無い、というくらい姫もブライ様も元気そうだ。
 クリフトはホッとして部屋に戻ろうとしたが、「起きたのか?」と、気付かれていないと思っていたピサロに声を掛けられた事で仲間全員の注目を浴びてしまった。
「ああ、クリフト復活した?部屋に入るなりバタンキューしたから心配したよ!」
 勇者が明るく言ったが、すぐに眉をひそめる。「なんか、まだ顔色悪くない?」
「大丈夫です。ご心配をお掛けしてすみません。私も温泉に浸かってきますから。」
 慌てて逃げようとしたが、ピサロが続けて「吐いたのか?」と言ったから息を飲んだ。
「何故それを…」
「吐いた!?」「吐いたってどういうことよ!?」
 仲間全員に詰め寄られ、クリフトは絶句する。「あ、あの、本当に大丈夫で…」
「大丈夫、大丈夫ってミントスのときもそうだったじゃないの!」
 アリーナが間髪入れずに突っ込む。「夢見が悪かったんです。」「夢見たくらいで吐いてたらベッドが凄まじいことになるわよ。」とマーニャが言う。
 それは自分もそう思ったが、なんせ、夢がリアルだったから仕方が無い。そう…リアルなのだ。恐ろしいくらいに。

「もう少し、ベッドで横になってらした方がいいんじゃありませんか?
 私もまだ疲れが取れてないのでもうすぐ部屋に戻ろうと思っていたんです。」
 ミネアが言ったが、夢の続きを見そうな気がしてクリフトは首を横に振った。

150無題 3/5:2009/03/08(日) 01:36:29
 仲間の追及をなんとか振り切り、着替えを持って1人温泉に向かった。ピサロを除く男性陣が「誰か一緒に行こうか?」と聞いてきたが、食事中なのが申し訳無く、必死にそれを断った。
最後はアリーナまでもが「じゃあ、私が一緒に行く」と言い出し、逃げ出すように宿を出たのだが。

 英雄リバストの像の前でなんとなく一礼してから温泉に向かっていると、「おい。」とふいに声を掛けられた。一瞬、リバストの幽霊が現れたか、と身構えたが、振り返るとピサロが自分を追いかけてくるのが見えた。
 クリフトは戸惑い、「あの、どうかされましたか?」とそばに立ったピサロを見上げた。

「あの後、やっぱり誰かお前についていけ、という話になってな。」
「え、それでピサロさんが!?」
「お前には借りがあるからな。」

 ピサロはそのまま温泉の入口に入っていく。ピサロとふたりっきりになるのは世界樹以来だったのでにわかにクリフトは緊張した。ピサロの好意を無にするのは悪いし、まさかここで引き返しては仲間に不審がられるだろう。温泉内に誰か居るかも知れないし、彼はそんなに怖い人間ではない…と言うか、人間ではなく魔王なんだけど…。
「何をしている?」
 温泉の入口からピサロが不機嫌そうに顔を出す。「いくら私でもこんなところでお前にどうこうするつもりは無い。」
「いえ!そんなつもりでは…。」
 クリフトは慌てて中に入った。じゃあ、どこで何を私にするつもりなんだろう、と一瞬、疑問が心に過ぎる。
 脱衣所に入り、籠に荷物を放り込んで、ふと振り返るとピサロは何もせずに壁にもたれてジッとクリフトを眺めていた。
「ピサロさんは入られないのですか。」
「お前が寝ている間に入った。…まさか吐くとは思わなかった。今日のはきつかったか?」
 一瞬、赤い鮮血が脳裏に過ぎり、クリフトは顔が強張ったが、きっと今日のダンジョン攻略のことを言っているのだろう、と思い直し、服を脱ぎながら「そうですね。」と苦笑した。
「だけど、今日でレベルアップできましたし、次にあのダンジョンに入るときはもう少し頑張れそうですから。」
「…まぁいい。今日で仕上げに入ってやる。」
 ピサロの言っている事が良く分からず、「それはどういう意味ですか?」とクリフトは首を傾げて話の続きを待ってみたが、何も言ってもらえず諦めて服を脱ぎ続けた。

 湯船にはクリフト以外に誰も入浴しておらず、洗身を終えたクリフトは湯の中でとろけそうになりながら「うーん!」と伸びをした。頭上に星が広がり、クリフトはささやかな贅沢を噛み締めた。
もうしばらく浸かっておきたい所だったが、脱衣所でピサロが待っている、と思うと気持ちが急いてしまう。クリフトは体が温まったところで湯船から出た。
 脱衣所に入った途端、突然頭から大きなタオルを被せられた。視界が奪われつつも、クリフトは「ありがとうございます」と言いながら頭を拭き始めた。

「お前にチャンスをやろう。クリフト。」

 頭上からピサロの声が降りてくる。クリフトは動きを止めた。
「お前が服を着る前に、私が裸のお前を捕えることができたら私の勝ち。先に服を着られたらお前の勝ちだ。」
 ポタ、と頭から雫が堕ちた。
「3分待ってやる。」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
 タオルから顔を出した時にはピサロの姿は無かった。幻聴じゃない、はっきりとこの耳で聴いた。あの世界樹の口調と同じだ。クリフトは血の気が引き、慌てて脱衣籠に手を伸ばす。

 脱衣籠は忽然と姿を消していた。

「えええぇぇぇぇェェェェ?」
 世にも情けない声を吐き出し、クリフトは頭をタオルごと抱えてうずくまった。と、足元にキメラの翼が落ちている。

151無題 4/5:2009/03/08(日) 01:40:39
「ずるいですよ…。キメラの翼で町の入口に飛んでも人目につかなくて、
 私の服が置いてあるところなんて、ここしか無いでしょう…?」

 サントハイム城内の自室の扉のノブを掴んだまま、クリフトは泣きそうになりながら目前に立つピサロに訴えた。
「世界樹でのゲームが途中のまま邪魔が入ったからな。続きをしたくていい場所を探していたんだ。」
「あれは私が脱出してゲームは終了じゃないんですか。」
「ヤツが来なければ、お前を捕まえていたさ。それに最後までやらなかっただろう。」

 何を持って最後とするのか良く分からなかったが、考えるのも怖くてクリフトは小さな声で「私の服を返してください。」とつぶやいた。タオル1枚を羽織ったままだ。
「どうせすぐ脱がす事になるんだ。別に着なくて構わないだろう。」
「……ですよね。」
 クリフトは絶望的な思いで周りを見回した。サントハイム城内はピサロに住人を別空間に閉じ込められたせいで、全くの無人となっている。世界樹と同じ条件なのだ。
一瞬、逃亡しようか、とも考えたが裸の自分がどこまでピサロから逃げられるというのか。また、キメラの翼すらもう無くなっている状態でどうやって脱出すればいい。
 夢の中の出来事のように、これからピサロに抱かれるのだ、と考えると足が震えだした。抱かれて、それから私はどうなるのだ。まさか、塔での監禁生活も正夢になるのではあるまいか。恐怖感に襲われ、クリフトは急に不安感に襲われた。平静を装うとしたが、むしろ逆効果で涙が溢れそうになる。ピサロが訝しげに見つめているのが分かったが、どうしても震えを抑える事はできなかった。夢の中とはいえ、生き地獄とも言うべきあの世界。
 クリフトは搾り出すように「あの…終わったら…私はどうなるんでしょう…?皆の元へ返していただけますよね?」と震える声で尋ねた。ピサロは驚いたように目をみはった。
「や…約束してください。お願いします。」
 訪れた沈黙が恐ろしく、クリフトは言葉を続けた。
「お前が大人しく私に抱かれるのならば、お前をちゃんと仲間の元へ返してやるさ。」
 ピサロは優しく微笑む。整った顔が神々しささえ感じ、クリフトは思わずコクコクと何度もうなずき、鼻先を赤くして涙をこぼした。
「い…一度だけなら。」
「ふーん…。まぁ、行こうか。」
 ピサロはクリフトを促して部屋の外に出る。「私の部屋では…ダメなんですか?」
「もっと広い場所を見つけてある。」
 ピサロはどんどん奥へと進んでいく。クリフトは涙を手の甲で拭い、裸足のままピサロについていった。
 以前なら城内はとても賑やかで、衛兵達が幼い頃から顔馴染みのクリフトによく声を掛けてくれた。今は悲しいほど静かで、ピサロの靴の音だけが響き渡っている。本来なら兵士が止めるはずの謁見の間までピサロはずんずんと入って行き、クリフトは嫌な予感がして足が重くなる。案の定、ピサロは玉座の前で止まるとクリフトの方へ振り返った。
「玉座の上と王の寝室、どちらがいい?」
 美しく微笑むピサロの言葉に、クリフトは凍りついた。
「じょ…冗談は止めてください。臣下の私が使うなど、許されるはずがありません。」
「選ばないなら玉座だ。憧れの場所だろう。」
 腕を引っ張られ、クリフトは足を踏ん張りながら叫ぶように「止めてください!!寝室!寝室でお願いします!!」と訴えた。ピサロは小さく舌打ちし、クリフトの手をつかんだまま奥へと進んだ。

152無題 5/5:2009/03/08(日) 01:42:50
 城内は人が居ない時間が長いのに不思議と埃が積もっていなかった。王の寝室の大きなベッドもつい先刻、ベッドメイキングされたかのごとく、美しく整えられていた。
王の部屋に入った途端、クリフトは萎縮して固まってしまったが、その顎をピサロに指ですくわれ、拒否する間も無く口付けをされた。2度ほど軽いキスの後、深々と口腔内に侵入される。
ピサロの口付けは唇から離れた後、そのままうなじへと進み、首筋、鎖骨へと進んでいく。いつの間にかベッドに寝かされたクリフトは、ピサロの愛撫を受けながら、自分がこうしてピサロに抱かれている事に抵抗感が余り無い事に我ながら驚き、ショックを受けていた。
息が徐々に上がり、自分の体が嬉々として快楽を得ようとしているのが分かる。声が漏れそうになって、必死で堪える。自分の体はどうなってしまったんだろう。クリフトの瞳が不安でキョトキョト揺れ動き、ピサロが目を閉じさせて瞼の上に唇を落としても、なお、不安で涙がこぼれた。
クリフトはすでにピサロの行為よりも自分の体に戸惑い、恐怖を感じていた。夢と現実の狭間に落ち込んだようで、何度もここがロザリーヒルのあの塔の中ではないか、と部屋の中を確認した。そうする間もピサロに快楽を引きずり出され、何度も声を上げては自己嫌悪に陥る。

「あ…あの、もう…止めてもらうわけには…」
 ピサロの体が一時離れた時、クリフトは体を起こそうと横向きになって訴えた。が、ピサロは再び、彼を背後から抱きしめ、耳を甘噛みしてクリフトを震わせると、
「なんだ、今日は後ろからか?」と呟いた。クリフトは弾かれたように振り返る。
「『今日は』…?」
 ピサロは何も答えず、クリフトの肩甲骨あたりを口付け、クリフトの体を跳ねさせた後、もの言いたげなクリフトの唇に背後からもう一度口付けた。

 前を愛撫され、自分の後ろにピサロのものが当たった時、クリフトは力を抜こうと自然と息を吐いた。途端、驚きで体が凍りつく。熱で浮かされそうだった頭が、ピサロが侵入した痛みで一瞬冴える。
やっぱり自分は、こういう行為に慣らされている。夢で何度も体験してきたからだ。夢の中で、抵抗しても逃げる事も叶わず、何度も何度もピサロに抱かれてきた。痛みから逃れる為に、自然と色んなことを体が覚えてきたのだ。ピサロに揺さぶられながら、クリフトは必死で霧散しそうになる考えをまとめていく。あれは自分で勝手に見た夢の中の出来事だったじゃないか。にも関わらず、体が慣らされているなんて。

「ピ…ピサロ…さ…。き、聞きたいことが…」
 接合部で鳴る水音がクリフトの耳を打ち、赤面しながら、それでも言葉をなんとか紡いでいく。ピサロは動きを止めてくれない。
「わ、私の体…おかしいんです…は、初めてのはずなのに…こんな…」

「『不慣れ』でこんな行為はやめて欲しい、と世界樹で言ってただろう?」

 後ろから耳元でピサロが囁き、途端に大きく突いてきた。クリフトは自分の体が支えられなくなってシーツに突っ伏す。

「だから学習させたんだ。最初は夜に頭の中でシミュレーションさせてたんだ。
 宿のベッドで喘ぐお前が可愛くて何度か本当に抱いた事もあったがな。なんだ、覚えていないのか?」

 クリフトは頭が真っ白になって、パタパタとシーツに自分の精が放たれた音がしたのを最後に意識を手放した。

153名無しの勇者:2009/03/08(日) 01:45:08
以上です。実は、塔の方を現実にしようか、とも思ってたんですが、
あまりにもクリフトが気の毒かと思って止めときました。

154名無しの勇者:2009/04/01(水) 17:23:05
>>153
遅ればせながら、GJです!
監禁が現実で、和みシーンは夢?!と途中ハラハラでした。
楽しそうなピサロ様に禿萌え。クリフト可愛いよクリフト。
次回作も期待しています。

155名無しの勇者:2009/04/02(木) 14:03:55
>153
勇ピサ派だったんですが攻ピサロも萌えます…!
クリフトも可愛いです

156名無しの勇者:2009/04/24(金) 00:53:37
ピサクリ来てたー!
クリフトかわいいよクリフト

157名無しの勇者:2009/05/17(日) 23:19:02
勇クリです。勇者がかなり極悪人になってしまいました。
注意:若干、DQ6が混ざってます。

158月の戯れ 1/6:2009/05/17(日) 23:22:46
「んんー、その人数じゃ、一組ダブルベッドになってしまうようですが、構いませんか?」

 夕刻、移民の町の宿屋でのことだ。宿屋との間に入って宿泊手続きをやってくれたホフマンさんは申し訳無さそうに僕に頭を下げた。

「ダブルベッド…。」ピクリと反応した僕に、慌てたのかホフマンさんは早口でアピールタイムに入った。
「かなり年代物なんですが、可愛らしいベッドなんで、女性のお客さんには人気がありまして。
 カップルの方だと特に喜ばれているようですよ。」
 僕はさっと後ろを振り返る。みんな成長した町が物珍しいのか、宿屋の予約は僕に任せて散ってしまったので誰も居ない。僕はまたホフマンさんに向き直る。
「仕方ありません。それでお願いします。」
「かしこまりました。じゃあ、その部屋はマーニャさんたちが泊まられる、ということでよろしいですか?」
「いや!あの、部屋割りは後で決めますから。他のメンバーにはダブルベッドのこと、黙ってていただけますか?」
「…分かりました。」
 ホフマンさんはニヤリと笑ったが、僕は何も気付かないフリをして渡された宿帳にサインをした。

 ひとまず案内された部屋に入ると、なるほどアンティークなベッドが大きなバルコニーが見える位置に置いてあった。窓も大きく、夕日に照らされた海が見える。
夜は星空がさぞ美しいだろう。カップルに人気が高い訳が分かる気がした。しかし、このベッドは可愛い、というか、むしろ子供向けのような気がする。

「ほう、珍しいものがあるな。噂には聞いていたが、本物を見るのは初めてだ。」

 声に驚いて振り返るといつの間に戻ってきたのか、ピサロが物珍しげに部屋に入ってきた。
「今夜はこの部屋も取ってるのか。」
「そうだけど…このベッド、そんなに有名なのか?」
「ほう、知らないのか。まぁ、マスタードラゴンが生まれる前のシロモノだからな。
 まだ残っていた事が奇跡に近い。」
「えぇ!?そんなに古いの!?」
「ここの店主は知らずに買ったんだろう。でなければ普通に客を寝かせたりはしない。
 ベッドが持つ力も薄れてきているようだ。」
 ピサロはベッドのそばに片膝を突いて座り、ベッドに視線を走らせたあと、薄く笑った。

「この部屋はお前と神官で使う気だったのか?」
「え!?いや、あの…。」
 言葉に詰まった僕を見て、ピサロは楽しげに笑った。
「よし、このベッドの力を戻してやる。その代わり今から言う条件を飲むと約束するならば、だ。」

159月の戯れ 2/6:2009/05/17(日) 23:26:01
 皆とワイワイ夕食を済ませたあと、クリフトを宿屋の一番上の階にある例の部屋に案内する。
 高所恐怖症であるクリフトは上の階の部屋というだけで遠慮したかったようだが、ベッドが宿屋中で一番古いから僕らの部屋にした、と言うと納得したようにうなづいた。
 が、部屋に入ってベッドを目にした途端、硬直されてしまった。

「こ、これ、ベッド、ひとつしか無いんですか。」
「うん、この部屋だけダブルベッドなんだ。ごめんね。」

 窓からも近く、外の景色が丸見えで満月が見える。海も見下ろせる絶景ポイントだ。この部屋の高さが十分身に染みるほどに。クリフトは元来白い顔を益々青褪めさせてクルリと窓から背を向けた。

「私、今からライアンさんと部屋を交換してもらってきます。」
「な!?ダメだよ!みんなもう休んじゃってるって。疲れてるのに迷惑だよ。」

 慌てて通せんぼすると、クリフトは僕の言葉にグッと詰まった。かなり正論を行ったつもりだが、過去、何度か僕に一方的に抱かれてしまった身としては、このままこのベッドを使って無事に朝を迎えられるとは到底思えなかったのだろう。
ベッドを背に向けたまま固まってしまったクリフトに、僕はわざとらしくため息をついた。

「分かった分かった。クリフトさんが抱きついてこない限りは手は出さないよ。」
「…本当ですか?」
「約束する。」

 僕は今まで約束を違えたことはない。クリフトはやっと肩の力を抜いて笑顔を見せた。寝相には自信があるのだろう。確かに彼は死んだように静かに眠る。が、今夜は悪いがゆっくり寝てる暇は無いぞ、神官。


「可愛らしいベッドですよね。次回はアリーナ様達に譲ってあげてくださいね。」
 寝巻きに着替えてベッドの左側に潜り込んできたクリフトはそう言うと小さく欠伸をして目を閉じた。なんとなくその顔を眺めていると、疲れていたのか早々に小さな寝息が聞こえ始め、窓から入ってきた月光がクリフトを白く浮かび上がらせた。もういい頃合かな。そう思った途端、すっと音も無く部屋の窓が開いて、冷たい夜気が入り込んだ。

 そしてベッドが、音も無くふわりと浮かび上がった。

160月の戯れ 3/6:2009/05/17(日) 23:29:09
 気付かずに眠り続けるクリフトが愛しく感じられ、引き寄せられるように彼の頬に触れる。
「ん…」と小さく息を吐いた彼の髪をなでようとした時、クリフトの目がゆっくり開いた。

「何…?」
 ベッドは少し揺れて、部屋の窓からバルコニーに出た。クリフトは首をひねって状況を把握する。僕が彼の口を押さえるのと、彼が絶叫したのはほぼ同時だった。
危ない危ない。クリフトは僕の腕にしがみつき、息が続かなくなったのか叫ぶのを止めた。気の毒に、手が震えだしている。ベッドはそのままバルコニーの柵を追い越し、その高さのまま、町の屋根のそばを飛翔する。

「な、な、な……何ですか、これ!?」
「うん、何だか、急に飛び出したんだよね。勝手に動いてるから戻し方が分からなくって。」
 嘘だ。実は自分の意思で操る事ができる。このベッドはマスタードラゴンが生まれる少し前に病気だった子供の夢から生まれた魔法のベッドなんだそうだ。こんな事に使ってごめんね、と見知らぬ子供に対して内心こっそり謝っておく。
僕は震えが止まらなくなっているクリフトをそっと抱き寄せた。

「まぁ、しばらくしたら元の部屋に戻ってくれると思うし、大丈夫だよ。」
「そんな!?しばらくっていつまでですか!?」

 クリフトは泣きそうな顔で今までに無いくらい自分から僕に密着してくれる。僕はクリフトの目から一粒だけ流れた涙に唇を寄せたあと、そのままその唇に口付けた。
ビクリとクリフトの体が震え、離れようとしたが、そのまま押さえ込み、思う存分クリフトの口腔内を味わった。顔を離した途端、クリフトは肩で息をしながら真っ赤な顔で
「ちょ、ちょっと待って…。」と弱々しく僕の肩を押したが、僕は無視してクリフトの寝巻きのボタンを外し始めることにした。クリフトは僕の手を掴んで、
「やめてください!約束が違うじゃないですか!何やってるんですか、こんな状況で!」と僕に抗議した。

「約束?約束って、クリフトさんが抱きついてこない限りは手は出さない、ってやつだろ?抱きついてきたじゃない。」
「え!?」
 クリフトはギョッとして体を勢い良く僕から離したが、手を突いた先がベッドの端だったようで「うわぁぁぁッ!」と再び僕にしがみついた。なんとか息を整えるのをしばらく待ってあげる。

「だ…だってこれは…。条件が違うでしょう。」
「条件って何の?抱かれるのが嫌なら僕から離れればいいじゃないか。」
「そんな、だって、これは非常事態で…」

 僕は痺れを切らしてベッドを大きく揺らしてやった。クリフトは「ひやぁぁ!」と叫んで僕に正面からしがみつき、体を震わせる。僕がそのまま無言で寝巻きのボタンを外し続けるのを見て(本人が貼り付いてきてるからやり辛かったけど)、クリフトは「ひどい…」と小さく文句を言った。無理に抵抗してベッドが揺れるのが怖いらしい。
下手すればベッドから落ちるかも知れないし、残念ながらクリフトに逃げ場は無かった。

161月の戯れ 4/6:2009/05/17(日) 23:36:05
 クリフトは緊張からか体は震え、落ち着こうとして深呼吸を繰り返している。体を押すと、あっさりとベッドに倒れ、そのまま自分を愛撫する手を不安げに見続けていた。
震える手は必ず僕の体をすがるように触れ、どんなことをしても逃げる事は無く、ただ、「やめてください…」「嫌です…」とこちらを逆に高揚させる拒否の言葉を震えた声でつぶやいた。
これが高所でなければ、これほどクリフトに必要とされている事に感激しただろう。彼は身を離そうとした僕に「放さないでください!」とまで言った。いつもこうならいいのに…と呟く僕を涙目で睨みつけてくれたけど。

 クリフトはなかなか行為自体には集中できないようで、熱が体にこもったまま、苦しげに息を吐き出していた。クリフトのものを握っても、大きく震えはしたが、精を吐き出すまでには至らない。クリフト自身も自分が達するのは難しい、と早々に理解したらしく、
「も、もう…私は結構ですから…」と涙目で訴えてきた。
 しかしながらこれも僕には逆効果で、このままだとクリフトが可哀想だし、一度無理にでも絶頂を迎えさせておこうか、と思ってクリフトの前を指で弄ってみた。
クリフトは悲鳴を上げ首を何度も横に振る。なかなか思うようにイかせてやれず、段々、この後も長くクリフトを持たせるにはそのままにしておいた方がいいか、と考えを改め、僕はクリフトから手を離した。クリフトが驚いたように僕を見たので、間髪居れずにクリフトの奥の方へ手を伸ばした。
 クリフトは緊張のために体に力が入ったままで、指すら入らなかった。力を抜くように頼んでも「もう、許してください…」と泣くばかり。
僕は後ろをほぐす行為に夢中になって、ベッドが降下し始めている事に気が付かなかった。

「勇者さんっ!」
 クリフトが悲痛な叫び声を上げるので顔を上げると、いつの間にかベッドは海上まで進んでいてて、その海へと急降下していた。クリフトが絶叫する中、なんとかベッドを再浮上させる。ベッドが安定し、一息ついてクリフトを見ると、彼は気を失っていた。

 一瞬、もう諦めて帰ろうか、とも思ったが、先ほどとは一転して脱力しきっている彼の体に気が付き、そのまま行為を続行させることにした。指を入れて慣らし、彼の中に入って中を味わっていると、やがて彼が目を覚まし、僕を締め付けてきた。
クリフトは状況に気が付き慌てて起き上がろうとしたが、それで益々僕との結びつきが深くなり、「ひっ!」と体を強張らせてシーツに倒れた。
きつい締め付けの中、僕がゆっくり動き出すとクリフトは切なげに悲鳴を上げ、ギュッと目を閉じた。僕の動きは知らず激しいものとなって思わず彼の中で達してしまったが、それでも彼は一度も達せず仕舞いだった。
 クリフトは苦しそうに「もう…私は大丈夫ですから…帰りましょう…」と涙目で僕を見上げたが、逆にそれが追い風となり、抜かないまま再び立ち上がったモノで、そのまま彼を揺さぶった。
今の発言は、まるで僕がベッドを動かしている事を気付いているみたいじゃなかった?僕はその考えを消すように、無言で彼を攻め立てた。

 しばらくクリフトは行為の終了を懇願していたが、やがて何か吹っ切れたように自分から腰を急かすように動かし始めた。
「あっああっ…早くっ…お願いです…」
 喘ぎ声も箍が外れたようにこぼれ出し、僕はそれに興奮して2度目の精を彼の腹部へ吐き出した。クリフトもようやく長い苦しさから解放されて、満月の明かりに白い裸を仰け反らせ、長く精を吐き出すと再び意識を失った。僕は青白いクリフトの頬にキスをすると、宿屋に向かってベッドを動かした。

162月の戯れ 5/6:2009/05/17(日) 23:43:23
 とにかく、早く宿屋のあの部屋に帰りたかった。私は高所の恐怖に耐えながら勇者の執拗な愛撫に身を晒していた。自分が今居る場所が、屋外でしかも高所であることを夜気と満天の星空が教えてくれる。おかげで行為に集中できず、恐怖が私の体を占領していた。
 それでも全身をくまなく弄られれば、否応無く体が熱を持つ。普段の私はどうもこういう悦楽に弱いのか、すぐにも精を吐き出し彼に笑われる羽目になるのだが、今回ばかりはなかなか達する事ができず、どんどん体が熱を持って苦しくなってきた。
 しかし、もしここから堕ちたら、いや、ベッド自体が落下したら、という恐ろしい想像に囚われている限り、このベッド上で私自身が達する事は無いだろう、と予想がつく。
もう私のことはいいから、自分だけ楽しんで早く終わらせて欲しい、と心底願い、実際口にもしたが、逆効果だったらしい。彼が私の前を触ってくれた時には突然の事で体が強い衝撃に大きく震えた。だが、ようやくこの苦しみから楽になれるかも、と淡い希望を抱きそうになったが、無情にも彼はすぐさま私から手を離したどころかベッドを落下させ、私を更なる絶望へと叩き落した。

 急降下したベッドが再度浮上したことを知ったとき、私はこのベッドが勇者によって操作されていることを確信した。なんて人だ…!私は彼を非難しようと口を開いたが、口からこぼれ出たのは細い悲鳴のみ。情けなさに涙が溢れ、やっと私は彼から目を逸らせた。今まで存在を忘れていた大きな満月が目に飛び込んで、その美しさに私は一瞬、心を奪われ、今の状況を忘れそうになった。
この月の美しさは海上に居るからこそ映えたのだろう。この神々しい景色がが見られた事は彼に感謝してもいいかも知れない、と目を固く閉じた途端、勇者が私を激しく攻め立てはじめた。
 ベッドが揺れ、再び恐怖に包まれた私は今度も達する事ができなかった。とにかく、苦しい。もう早く部屋に帰して欲しい。彼にその思いを伝えても、無視されて再び体を揺さぶられた。
 苦しい。ベッドが再び揺れ、泣きそうな思いで勇者に行為を終えてくれるよう頼んだが、聞く耳さえ持ってもらえない。熱に浮かされた頭で、どうすれば彼が行為を止めるか必死で考えた。

 そうか…とにかく彼が満足すれば良いのだ。

 私は自ら体を揺らし、彼から精を搾り取る事にした。早くイけ!このガキッ!!頼む、イってくれ!!
 うっとりするように私を見る勇者に、破れかぶれになった私は喘ぎ声を我慢する事無く聴かせてやった。彼が2度目にイったとき、ようやく私も精を吐き出すことができた。
月をぼんやりと見つめているうちに私は意識を失った。

163月の戯れ 6/6:2009/05/17(日) 23:47:09
 ふと気が付くと、ベッドはゆっくりとバルコニーから宿屋の元の部屋に戻るところだった。
 やっと終わった…私はどっと緊張感から解放され、手の震えを抑えようと両手をぎゅっと組み合わせた。
 怖かった。怖かった。とてつもなく怖かった…!!!私はシーツを被り、握り締めた手を解き、涙を拭い、必死に嗚咽を耐えた。

 ベッドが元の位置に戻ると、勇者は2度も達したとは思えない身の軽さでベッドから降りた。やがて戻ってくると、私からシーツを突如奪い去った。
 泣き腫らした私の顔を見て、勇者は驚いたらしい。「…ごめん、そんなに怖かったのか。」と私に謝ると、どこからか持ってきたタオルで私の体を丁寧に拭き清め始めた。その心地良さとようやく訪れた安堵感から睡魔が戻ってきて、意識が朦朧としてくる。
反省しているのか、私を大切に扱ってくれる事が嬉しく、勇者が私にした悪魔のような所業を忘れてしまいそうになる。
 彼に礼を言わなければ、となんとか気力をフル動員させて
「あ…ありが…と…ございま…す」と口を動かした。

 勇者はピタ、と動きを止め、「眠ってなかったの?」と尋ねてくる。
「気が…遠のきそう…ですが…。」
 勇者はふぅ、と何故かため息をついた。そのまま私の下腹部まで拭き終わると、また私から離れていき、戻ってきた時に、長い布でさっと私の両手を拘束した。
「な…何を…ふぐぅっ!!」
 今度は別の布で猿轡される。驚きではっきりと覚醒した時には目隠しまでされていた。

「ごめんね。暴れて堕ちたら危ないから。」

 勇者が私から離れるのを感じ、何をするつもりなのか不安になってベッドから起き上がろうとした途端、隣りに誰かが座る気配がした。ベッドがかすかに軋み、私は新たな恐怖に思わず身を強張らせた。

「約束しちゃったし。あともう少し頑張ってよ。」

 勇者の声が前方から聴こえ、ぐらりとベッドが傾いた。再び浮上したことを認識し、私は見えないままベッドから飛び降りようとしたが、隣りの人物に抱き止められてしまった。
暴れてもビクともせず、私の頬を再び夜風が当たったのを感じて、私はピタリと動きを止めた。猿轡越しに叫び声を上げたが、くぐもった呻き声にしかならなかった。

 ふいに目隠しが外され、眼下に広がる町の灯にまたもや恐怖感に包まれる。目を逸らした私の目に飛び込んできたのは、月光に光る長い銀髪だった。
「あの小僧の後というのが気に食わんが、たっぷりと可愛がってやるからな。」
 ピサロは薄く笑って、動きが凝固した私の口から猿轡を取り去る。その口から飛び出した悲鳴は、満月と魔王が呑みこんでしまった。

164名無しの勇者:2009/05/17(日) 23:48:24
以上です。ありがとうございました。

165名無しの勇者:2009/05/20(水) 00:45:48
>>164
投下きてた!乙です〜
虐げられてるクリフトがツボすぎる

166名無しの勇者:2009/05/25(月) 01:09:15
久々に来たら勇クリが。
高所恐怖症のクリフト可愛すぎる、もゆりました・・・・!
ぜ、ぜひピサロ様のバージョンもお願いいたしまゲフゥ

167名無しの勇者:2009/05/25(月) 04:23:55
このクリフトかわいそうすぎ
最後はアリーナと幸せになってほしい

168164:2009/07/05(日) 15:43:57
ピサロバージョンを考えている内に、別の話を思いついてしまいました。
2章とエンディング後の話でピサクリ。
エロ描写&無理矢理。苦手な人は避けてください。

169無題 1/6:2009/07/05(日) 15:46:08
 大工が金槌を打ち鳴らす音が響いてきて、サントハイム城の若き神官、クリフトは自然と微笑を浮かべた。2度も壁を打ち破った本人も、きっと嬉しそうにその様子を眺めているに違いない。それを邪魔するのは悪い気がして、クリフトは階段で方向転換すると、こちらを見上げている人物と目が合った。

「王様…!姫様の部屋にいらっしゃると思っていました。」
「クリフト…よくぞ無事に我が城へ平和を戻してくれた。」

 クリフトは息を飲み、慌てて王の居る階下へと駆け下りると、自分の位置を王よりも低くして頭を下げた。
「もったいないお言葉です!私はアリーナ姫や勇者さんのお手伝いをさせていただいただけで…。」
「謙遜をするな。お前も選ばれし者だったのだろう?辛い思いをさせたな。」

 クリフトは目頭が急激に熱くなり、頭を下げたまま、黙って首を振った。何かを言えばそのまま泣き崩れてしまいそうだった。

「あの日、お前に全ての責任を負わせてしまったような気がしてな。別空間に飛ばされてからも後悔したものだ。」

 王の言葉にクリフトは驚いて顔を上げる。途端に相手の目が赤くなっているのが知れたのか、「本当によく泣くヤツだ。」とおどけた様に王は両眉を持ち上げると、そのままクリフトに背を向け、先に階段を降り始めた。
杖を突きながら、接見の間を通り抜け、自室へと戻っていく王の背中に誘われるように、クリフトは後へと従った。


 あの日…デスピサロが、この城を襲った日、サントハイム王は玉座から立ち上がり、目の前に現れた長身の男を睨み付けていた。

 サントハイムの繁栄を願い知恵を絞ってくれていた大臣達も、不穏な空気を感じ取り、日夜城内外を見張ってくれていた兵士達も、彼らを元気付けようとせっせとまかないを続けてくれていたメイド達も……皆、目の前に居る男とその家来の魔物が消滅させてしまったのだ。

170無題 2/6:2009/07/05(日) 15:49:19
「何が望みなのだ、お前らは!私が邪魔なら、私だけを消せばいいだろう!」

 信じ難い現状に、王は怒りと恐怖で声を震わせながら男に怒鳴った。銀髪の男は涼しい顔をして答えた。

「現・サントハイム王は未来を読むというからな。
 王という立場上、その部下にも様々なことを命令している可能性がある。
 実際、あなたは急遽兵士らを鍛え直している。どこかへ派遣しようとしていたんだろ?」

 男の顔には見覚えがあった。夢の中で、どこかの村を滅ぼしている深紅の目をした男が居た。それが未来の話ならば、この男は、魔族を束ねるリーダーで…後々魔王となる男だ。
名は…そう、デスピサロと呼ばれていた。

「残念ながら、私は悠長に貴様らの兵士が育っていって、どこかに派遣されるのを待っていられん。
 サントハイム王、あんたには結局消えてもらうこととなるが、最後に、勇者が何処に居るのか、教えてもらおうと思ってね。」

「知らん!知っていたとてお前などに教えるものか…!!」
「王よ、我々が消したあんたの家臣は別に死なせた訳じゃない。
 別の場所に封印させてもらっただけだ。
 あんたがそれを教えてくれないなら、一人ずつ殺したって構わないんだがな。」

 王はグッと詰まった。「家臣が生きている証拠など無いではないか。」

「…それもそうだ。しかし、彼らをまた再び目の前に出すのも面倒だしな。…おい。」

 ピサロは背後に控えていた甲冑の男を振り返る。甲冑の男はうなづき、王の間を出ると、すぐに大きな袋を背負って戻ってきた。

「勇者が出ているか、と思ってエンドール国で行なわれた武道大会に出てみたのだ。
 すると、お前の娘が出場するという。
 娘にも未来を読む力があるのか、と思って、部下に命じて捉えてもらった。」

 ドサッと目の前に袋が投げ出される。娘のアリーナが捉えられたのか、と王は背筋が寒くなったが、袋から覗いていたのは男と思わしき腕だった。床に投げられた衝撃で目が覚めたのか、かすかなうめき声が聴こえる。果たして袋から出てきたのは、血と泥で汚されてはいたが、サントハイムの神官の制服を着た若者だった。

「クリフト…!!」

 娘の護衛で旅に付いていった神官だった。王はクリフトに駆け寄り、両肩を掴んだ。ピサロたちは離れたところで無表情でそれを眺めている。王はピサロを再度にらみ、
「クリフト、大丈夫か!?アリーナは無事か。ブライはどうしたのだ?」
とクリフトに矢継ぎ早に話しかけた。クリフトはかすれた声で何事かを訴える。
 王はクリフトの目を覗き込み、「すまない…」とつぶやいた。クリフトは無反応だ。王がクリフトを抱きしめると、ビクリと驚いたように体を硬直させる。

 王はいくつかクリフトの耳元で話しかけてみたが、クリフトがくすぐったげに首を振るだけなのを見て取ると、座り込んでいるクリフトを置いて立ち上がった。

「目も見えていないし、耳も聴こえていない…。ここまで痛めつける必要があったのか?」

171無題 3/6:2009/07/05(日) 15:51:39
「おや…?そこまで乱暴するようには言ってなかったがな。
 まぁ、お宅の娘は腕っ節が強いだけで未来を読む力は無いらしい、との報告をもらっている。
 そこで神官を殺してしまっても良かったんだが。
 あんたもこの神官が可愛いだろう、と思ってな。」

 ピサロは腰の剣を抜くと、クリフトの喉元に当てた。クリフトは剣の冷たさに一瞬体を震わせる。

「やめろっ!」

 王は息を飲み、力無くうなだれた。
「分かった…。話す。だから、その子はアリーナの元へ返してやってくれ。」
「了解した。さぁ、話せ。勇者の居場所を。」

 王は苦しげに言葉を紡いだ。「…山奥の…ブランカ国をまだ北上したあたりの村だ…。」

「そうか。名前は?」
「名前など分からぬ。」
「まぁ、いい。その村を全滅させてみればどれかは勇者の死体だろう。
 もうお前に用は無い。」

 ピサロは微笑を浮かべ、王に向かって手をかざした。王はクリフトを見下ろす。

「クリフト…アリーナを頼んだぞ。」

 王の姿が消された。ピサロは身を翻し、「ブランカへ向かうぞ。」と甲冑の男に告げる。
「ピサロ様、神官の男はどうします?始末しておきますか。」

 ピサロは今、思い出した、というように振り返った。神官はここがどこか分かっているのか、玉座の方に向いたまま、微動だにしていない。
 これで恐怖に怯えた顔をしていれば、ピサロは同じく消すか、殺すかしただろう。しかし、やや青褪めた白い顔は、何かの決意を固めたような、逆に何かを諦観したような、不思議な表情だった。

「…あの神官は実は目も耳も正常なのではないか?」

 ピサロが甲冑の男に尋ねると、男は「確かめてみます。」と、そばにあった花瓶を持ち上げ、クリフトに足音高く近付いていった。微動だにしないクリフトの顔面に向け、男は花瓶の水を花ごと浴びせかけた。

「ひあぁっ!」

172無題 4/6:2009/07/05(日) 15:55:04
 目に花が当たったのか、クリフトは目を覆い、うずくまった。
 近付くピサロに男は「少なくとも目は見えていないと思いますが。」と逃げようとしているクリフトの腕を背後から捩じ上げた。

「殺しますか?」
「いや、何か知っているかも知れんからな。」
 ピサロはクリフトの顎をつかんで顔を上げさせた。痛そうに瞬きを繰り返す、その目の焦点は合わず、ただ不安げに揺れ動いている。
 どうやら目には呪いが掛けられていて、本当に闇に覆われているらしい。ここまでやれ、とは命じた覚えが無いがな、とピサロは苦笑した。耳からは血が流れている。怪我のせいで聴こえていないのか?

 後から思い返せば、クリフトの不幸は(もしくは幸運は)ピサロが上機嫌だったことだろう。
 ピサロはこの場でこの若き神官を殺さず、いたぶる事を決めた。

 クリフトの上着を引き裂くように脱がし、その布で濡れた顔を拭いてやると、血で汚れていた顔が綺麗になる。耳元の血も拭い取ってやると、痛みからか、体を震わせた。

「王はお前を可愛がっていたようだが、体も可愛がってもらっていたのか?」

 クリフトは甲冑の男に羽交い絞めにされており、しきりに逃れようともがいているだけだ。本当に聴こえていないのか、と少し残念に思いながら、ピサロはクリフトに口付けた。クリフトの悲鳴が漏れ聴こえ、ピサロは体を離す。

「な…何をする気ですか…」

 初めて言葉を発したクリフトに、ピサロは笑い、クリフトの細身の体を撫で上げた。筋肉が付いてはいるが、まだまだ鍛え足りていない。これでは大事な姫に逆に守られる立場だろう。
「やめてください…嫌です…!」
 訴える声は怒りを含んだ声だったが、ベルトを外してやると驚いたような声をあげ、やがて怯えたような哀願に変わった。
 萎縮したモノをそのままに、ピサロは奥へと指を進めた。堅く閉じられたそこに無理矢理指を突き入れると、クリフトは痛みに悲鳴を上げた。どうやら王に可愛がられていた訳ではないらしい。指で中を掻き回すと、神官の体が時折、大きくのけっぞった。
 散々暴れて力尽きたのか、それともすでに受けていた拷問で元々体力が残っていなかったのか、指を増やした頃にはクリフトは苦しげに浅い呼吸を繰り返すようになった。
無抵抗となったのを見て取ったのか、いつの間にか甲冑の男もクリフトの胸の飾りを黙々とこね回してはかすかな悲鳴を上げさせている。周りが見えていない分、体が敏感になっているのか、初めての割には、声が濡れ始めるのも早い。
ピサロはクリフトの耳元でそれを揶揄する言葉を吐いてみたが、クリフトはピサロから逃れようと顔を背けようとし、それが叶わないとなると困ったように眉を寄せただけだった。

 ピサロが自身のモノをクリフトを貫いた時、彼の絶叫が接見の間に響き渡った。クリフトの中は狭く、強引に体を進めたが、半分も入らない。
 人間というものはなんと不便なのだ、とピサロは肩をすくめ、歯を食いしばって耐えているクリフトの耳元へ再度、囁きかけた。

「全て入るようになるまで、お前を飼っておく事にするよ。」

 その瞬間、クリフトは目を見開き、泣きそうな目で虚空を見上げた。ピサロは満足そうに笑った。



「 聴 こ え て い る な ? 」

173無題 5/6:2009/07/05(日) 15:58:01
 クリフトはピサロの言葉に硬直した。目が見えていないのは事実だが、耳は袋から出される前から聴こえている。
 王が自分の目に呪いを掛け、耳が聴こえていないフリをするように命じたのも、クリフトが生き残り、彼が素早く言い残した『命令』を遂行させるためだった。何も見えず、何も聴いていないのなら、ピサロがクリフトを放置していく可能性がある、と王は判断したのだろう。王の決死の『予言』の為にも、クリフトは必死に聴こえていない演技をするしかなかった。
 王の言葉が正しいのなら、自分はここで死ぬわけにはいかない。

 ピサロはクリフトの耳に触れてきた。不意打ちにクリフトはビクンとのけぞる。その途端、自分でも呆れるような言い訳を思いついた。その言葉がどんな結果を導くか、考える余裕すら無く、クリフトは素早く呟いた。


「耳…やめてください。弱いんです…。」


 ピタリ、と相手の動きが止んだ。恐ろしいほどの静寂が訪れ、クリフトは恐怖で涙が溢れた。今まで必死に堪えてきたが、涙腺が決壊したようにみるみるうちに涙がこぼれ落ちる。
 実際、ピサロから幾度か耳元で囁かれる度、背筋がゾクゾクと震え上がった。それは聴こえていることがバレるかも知れないという恐怖と、耳元で息を吹きつけられる、という行為のせいだ。
ちなみに、何か卑猥な言葉を何度か言われたような気がするが、言葉の意味の大半を、クリフトは理解していなかった。

 笑い声が響き渡る。クリフトは心臓が縮む心地だったが、何とか耐え抜いた。
「そうか…なるほどな。お前に囁く度、身体が震わせていた理由がそれか。」
 またいきなり耳に触れられてクリフトは細い悲鳴を上げた。今度は頭上の男が弄っているようだ。しつこい…。クリフトは顔を背けたが、指が離れない。身体がガクガクと震えてきた。
「止めてくださ…。あ…!痛いッ!!ひぁっ…!」
 ピサロの動きが再開する。力が抜けたのか、自分の中を圧迫しているものが前進した。耳の中に生温かいものがぬるりと入ってきた。身体が急激に熱くなっていく。息が続かず、苦しさにまた目頭が熱くなった。今、耳に舌が這い回っているのだ、と分かった時には目の前の闇が一瞬白く弾け飛ぶ。
 クリフトの精が吐き出されても、ピサロと男の動きが一向に止む気配が無い。再び身体が熱を帯びていくのを感じ、クリフトは弱々しげに行為の中止を懇願したが、笑い飛ばされただけだった。


 クリフトから反応が無くなり、ただ突き上げるたびに喉から空気が漏れるような悲鳴が上がるだけになった時、ピサロは自分の精をクリフトに叩きつけて立ち上がった。

「連れて行くのですか?」
 甲冑の男は足元で死んだように横たわる神官を見下ろした。

「止めておこう。ロザリーが怒る。」
「仲間が増えて喜ばれるかも知れませんよ。」
 男の言葉にピサロが気を失っているクリフトを見下ろした。

「まぁ、探している者が同じならば、いずれ出会うことになるだろう。」
 ピサロはマントを翻し、甲冑の男を連れて城から出て行った。

174無題 6/6:2009/07/05(日) 16:01:12
「しかし、よく無事で居られたな。デスピサロの気まぐれだけに賭けたのだが。」

 自室に戻った王は、寝室でベッドに腰を掛けると感心したようにクリフトを見た。その言葉にクリフトは青ざめる。
「やっぱり…。何の確証も無く呪いを掛けたのですね。」
「ピサロはお前を放置していったのか?」
「…まぁ、結果的にはそうなります。」
 クリフトは一瞬顔を歪ませたが、「生き残れたのは、王のお蔭かも知れません。」と付け加えた。

「勇者と出会えたのも、私の『予言』どおりだったのだろう?」
「ええ…。あの日に教えていただいた、
 『勇者は病に倒れた瀕死のクリフトの病床に現れる』という予言どおりでした。」

 あれも辛かった。その予言を現実化するためにも、あの日、サントハイム城内でピサロに殺されるわけにはいかなかったのだ。
 無事に脱出し、姫様と合流できても、素知らぬ顔をしているのは辛かったし、どれだけ疲労が溜まっても医者にかからず、手の施しようが無い末期の状態にまで、自分を追いやらねばならなかったのも辛かった。
 クリフトの身体を心配し、医者を呼びに行こうとした宮廷魔術師のブライに王の予言を話さざるを得なかった。ブライは勇者が現れた時、喜んでパデギアを探しに行くのを手伝ってくれたという。

「しかし、そのデスピサロが勇者と共に戦ってくれた、というのが信じ難いな。」

 王の言葉に、クリフトはうなづく。それも大変だった…。相手とは初対面である、というフリを必死で演じなければならなかった。ピサロは不敵な笑みを浮かべてクリフトを見てきたが、結局は真の敵との戦いに集中してくれた。
 まぁ、時々耳を触られて悲鳴を上げさせられる、というセクハラはあったが。

「でも、全て終わった事だ。これから、サントハイムと、そして勇者の村の再建に力を注ぐ事にする。
 彼の村を滅ぼしたのは、私の責任でもあるからな。」
「王様、それは…!」
 慌てるクリフトに、王は首を振った。手に持っている杖を弄りながら、王は穏やかな声で言った。
「何も言うな。…ついては、クリフト。勇者の村の再建、お前を我が国のリーダーとして派遣させることにしたが、構わないか?」
「……!!ええ、それはもちろん、喜んで。」
 クリフトは晴れがましい気持ちで頭を下げた。ふと、王の手にある杖が目に入る。これは…何の杖だ…?

「お前を派遣する前に、伝えておきたい事があるのだ、クリフト。」
 王はクリフトへ手を差し伸べた。反射的に腕を伸ばしたクリフトの手首を掴むと、王は年配者とは思えない力でクリフトを引っ張りこんだ。
 ベッドへと投げ出されたクリフトは息を詰めて、王を見上げた。手にしている杖は…変化の杖だ。王の目の色が深紅に変わり、嬉しそうに笑みを浮かべた。


「貴様の嘘など、この私が見抜いていないと思っていたのか?」

175名無しの勇者:2009/07/05(日) 16:03:39
以上です。クリフトにカッコいい(?)言い逃れをさせてあげよう、と
散々悩んだのですが、結局こんなオチになりました。すみません。

176名無しの勇者:2009/07/13(月) 00:35:02
クリフトの忠臣ぷりがイイですね

177名無しの勇者:2009/07/18(土) 20:02:16
遅ばせながら。
いいですねピサクリ。
耳が弱いと聞いたピサロの心情はもう推して知るべしでしたw
掌でコロコロ転がるクリフトが可愛くてしょうがない。

178名無しの勇者:2009/07/26(日) 00:06:43
>>175
乙です!
鬼畜魔王×清廉無垢な神官(・∀・)イイ!

179パペット 1/6:2009/10/11(日) 23:24:00
ピサクリ+諸々。エロあり。
クリフトがあまり救われません。すみません。



 まだ夜も明けきらぬ薄暗い早朝、クリフトはそぉっと宿屋の扉を開けて人が居ないのを確かめると静かに外へ出た。疲労した身体に朝特有の冷えた風が堪えて首をすくめる。
入口のそばで眠っていた茶色い毛の仔犬が目を覚まし、背後から甲高い声で一声鳴いてクリフトを飛び上がらせた。手にしていた聖水が大きな水音を立てる。
クリフトは足元で朝からテンション高くじゃれつく仔犬を見下ろし、小声で
「お前に罪は無いのは分かっているけど、昨日の今日でどうしても遊んでやる気にはなれないんだ。
 眠っていてくれないか。」
と声を掛けた。仔犬は首を傾げ、それでもクリフトの周囲を走り回り、自分の小屋に戻る気配は皆無だ。クリフトは困ったように眉を顰めたが、やがて諦めて目指す場所へと歩き出した。

 目的の場所は宿屋の裏手にあるゴミ箱で、クリフトは再び周囲を見回し、その前に立つと静かに蓋を持ち上げた。ゴミの一番上に、ぼろきれのような人形が乗っている。
布と綿とで作られた簡単な人形だ。赤ん坊位の大きさのその人形は薄汚れ、右腕は千切れかけ、胴は裂かれて綿がわずかにのぞている。
クリフトの顔は泣きそうに歪み、足元で千切れんばかりに尻尾を振る仔犬を再び見下ろした。

「お前ねぇ…ちょっとひどすぎるだろ?加減をしなさい、加減を。」

 やはり理解した様子の無い仔犬を見て、ため息をつきながらゴミ箱の蓋を地面に置くと、クリフトはブツブツと小声で悪魔祓いの言葉を呟いた。
手にしていた聖水を人形に振り掛ける。途端、人形からシュゥッ!と黒い煙が噴出し、霧散した。
次の瞬間、クリフトは全身の力が抜け、その場に崩れるように倒れた。仔犬が驚いて犬小屋へと逃げていく。

「本当にひどいヤツだな…。」

 走り去る仔犬を見送りながら起き上がろうとしたが、ひどい眠気に襲われ、クリフトはそのまま地面に突っ伏した。

 そういえば、昨夜はほとんど眠れなかったんだっけ…。
 昨日、人形を手放さなければこんな事にはならなかったのに…。


 その人形を拾ったのは戦闘終了後の事で、逃げていくモンスターが、草むらの中へと落としていった品々の中に入っていた。
簡単な作りの人形はまるでパペットマンのミニチュアのようで、仲間たちは気味悪がって拾おうとしなかった。クリフトもそれがただの人形ならば拾わずに立ち去っただろう。
しかし、それにはわずかに邪念が込められていて、このまま放っておけば、この人形もモンスター化するのではないか、とクリフトを振り向かせるには十分な代物だった。
だから、せめて清めてから処分しようと、クリフトは大事に抱えて荷物袋の中に入れたのだ。
 まさかその呪詛が、自分に降りかかるとは思わずに。

 その日泊まった街はカジノがあり、勇者たちは宿屋の宿泊手続きもそこそこにさっさと夜の街へと繰り出してしまった。
クリフトも誘われたが人形を教会でお払いをしてもらおうと思っていたので、丁重に辞退し、仲間らの荷物を引き受けて一旦宿の2階の部屋に入ることにする。
宿屋の入口に可愛らしい仔犬が構って欲しそうに尻尾を振っていた。

180パペット 2/6:2009/10/11(日) 23:27:51
「お前はカジノに行かなかったのか。」

 部屋で人形を取り出したとき、ふいに後ろから声を掛けられて振り返ると最近仲間になった魔王・ピサロが部屋の入口に立っていた。

「賭け事や飲酒は教会で禁じられていますから。」

 やばいな、とクリフトはピサロから目をそらす。以前にピサロと身体の関係を持ってから(無理矢理だったけど)、2人っきりになるのをずっと避けてきたのに。

「私は今から教会へ行ってきます。」

 人形を手にピサロの脇を通り抜けようとしたが、あっさりと腕をつかまれ行く手を阻まれて、思わず人形を床へと落としてしまった。

「何を怯えている。」
「怯えてませんっ!」

 ムッとして言い返すと、ピサロは笑いを浮かべて腕から手を離し、人形を拾い上げた。

「これは昼間の人形か。放っておけば良いモンスターになるものを。」
「それではこの人形も浮かばれません。意思を持ち始める前に払ってあげないと。」
「お前は神官だろう。何故、自分でやらない。」
「そ、それはそうなんですけど…。こういうのは疲れるんですよ。
今日の戦いで魔力も尽きてしまっているので。」

 人形に視線を落とす。この人形の持つ邪念は残念ながら人間の誰かが吹き込んだものだ。
どんな使われ方をしたのか分からないが、早くお払いしてあげないと人形が可哀想に思えた。

 突然、ピサロの手がクリフトの長めの前髪をかき上げた。驚いて顔を上げると、予想以上にピサロの端整な顔が近くにあって「ひっ!」と思わず顔が後ろに仰け反った。
次の瞬間、ピサロの顔が恐ろしく険しくなり、クリフトの肝を心底冷やした。

「この人形は私が預かる。」
「え!?駄目です!お払いをしなければ…」
「私が教会へ持っていく。文句は無いだろう。疲れているんならお前は寝ておけば良い。」

 ピサロは後ろ手で扉を閉めて出て行った。怒ったのだろうか。いや、だって、今、キスされそうになったじゃないか。
…また顔が怯えていたかも知れない。失礼だったかな。

 クリフトはおろおろと部屋の中を右往左往していたが、ふと、ピサロは神の力が強い場所は苦手だったことを思い出した。
教会など行く気はさらさら無いだろう。

181パペット 3/6:2009/10/11(日) 23:31:31
 慌てて外へ出ようと扉のノブへと手を伸ばしたとき、全身が急に重たくなってペタンと床へしりもちをついた。きょとんとして周囲を見回したが誰も居ない。
身体は重いが、何とか立ち上がれそうだ。クリフトが床に両手をついた途端、下腹部から足に掛けて湿った何かを押し当てられた感触がしてゾクッと体が震えた。

「ひあぁっ!」

 思わず悲鳴を上げると、続けて原因を追究する間も無く何度も何度も全身をくまなく撫で上げられて、クリフトは床の上で慌てて悲鳴を押し殺した。
見えない魔物が部屋に居るのかと自分の着ている服の中を覗いてみても何も見つからない。
気配を必死に集中させたが、部屋の中に何も邪悪な気配は感じられなかった。あえて言うなら、呪いの気配を自分自身に感じる。

 呪い…あの人形か!

 クリフトは目を見開いた。ピサロが何か仕掛けたのだろうか。例えば彼はクリフトの髪をかきあげた。あの時に髪の毛が1本でも彼の指に絡まったのかも知れない。
その髪をあの人形に植え込んだとしたら?

 思考を巡らせている間にも全身を弄られているような感覚は消えない。必死に声を堪えるが、身体が熱を持っていくのは抑えられず、鼓動や呼吸が早くなるのを感じた。
目を瞑って耐えていると、まるで大きな魔物に何度も全身を舐められているようで、益々恐怖が募ってくる。
「んんっ…!やッ…。」
 遂に声が漏れて思わず扉を見上げる。扉に鍵は掛けていない。
正直、全身を弄られ続けて早く精を吐き出してしまいたかったが、自分で慰めるなど神官にあるまじき行為だし、正体不明の魔物にここまで身体がいいように弄ばれていることに自分自身が不甲斐無く思えて身体の欲求を認めたくなかった。
とにかく、この嵐のような出来事が早く終了する事を祈るほか無く、クリフトは床からベッドに掛かったシーツをギュッと握り締めて高められていく身体の熱を必死に耐えていた。

 クリフトは荷物袋から覗く聖水が目に入り、ようやく暗闇に光明を見た心持ちで荷袋に近付いた。
呪いが自分自身に掛けられているのなら、自分に対してお払いをすればいいのではないか。
息をしようとする度、漏れる自分の濡れた声に嫌悪感を抱きながら、クリフトは這うように荷物を置いてある部屋の奥へと必死に移動した。

 しかし、聖水を取り出して自分自身に振り掛けようとしたとき、急に右肩から鈍い音がして激痛が走る。聖水の瓶が床へと転がり、続けて胸部から腹部に掛けて強い衝撃を受けた。服が裂かれ、ジワリと血がにじんでいく。

 殺される?

 全身の血の気が引き、とにかく早く呪いを解かなければと聖水に右腕を伸ばそうとして痛みに悲鳴を上げた。肩の関節が外れていたのだ。
どこまでエスカレートするか分からない事態に、クリフトは遠くなってしまった扉を振り返った。

 どうしよう…人に見せられた姿ではないが、助けを求めた方がいいんじゃないか、これは。

 仔犬の不満げな鳴き声が窓の外から聴こえ、ピタッと見えない何かからの攻撃(?)が止まった。外の様子を見ようとクリフトは右肩を押さえて立ち上がろうとして、バランスを崩した。
続けて再び全身を舐められるような感覚が始まる。

「だ…誰か…助けてくださ…」

 扉に向けて叫ぼうとしたが、声が掠れて上手く助けを求められない。
肩を脱臼し、服を裂かれて血まで流しているのに、再び熱を持とうとしている自分の身体が浅ましく思えてクリフトは絶望感に目を閉じた。

182パペット 4/6:2009/10/11(日) 23:34:31
「いい格好だな。」

 ふいに声を掛けられ弾かれたように顔を上げるとピサロが涼しい顔をして立っている。
ピサロに文句をぶつけたい気持ちはあったが、言われた言葉でクリフトは自分の姿を、壁に立て掛けられていた全身鏡で改めた。
確かに、ひどい。裂かれた服や血がにじむ胸部もそうだが、顔が上気して赤くなっている。目にも涙の跡が残り、とてもじゃないが勇者と共に選ばれた者とは思えない。
未だに続く身体への見えない愛撫に声を震わせながら、後ろ手で扉を閉めて自分に近付いてくるピサロにクリフトは「あの外の…仔犬…ですか…?」と質問をぶつけた。

「人形に、私の髪を入れて、あの仔犬に渡したんですね。」
「察しがいいな。あの犬のミルクが入ったボールに放り込んでやったんだ。
 一応、無茶しないかそばで様子は見ていてやったんだぞ。」

「…腹を裂いて、腕を噛み千切ったでしょう。」
「取り上げてみたんだが、まぁ死ぬほどじゃなさそうだったんでな。
 もう噛むなよ、と元へ戻してやったんだ。」

 自分を愛撫していたのがあの仔犬だという事実にクリフトは羞恥で益々赤面するのを感じた。取り戻そうとふらつく足で立ち上がりかけ、ピサロに抱き止められる。


「はっ…離してください!早く人形をお払いしないと…んんっ!
 こ、今度は頭を噛み千切るかも知れません!」
「安心しろ。今度は暗示を掛けておいた。自分より上位にある人間から声を掛けられるまで人形を舐め続けろ、とな。
 あの犬にとっちゃ、上位はここの宿屋の主人だろう。今は晩飯の準備で忙しいだろうが、
 あと1、2時間後には犬の異常に気が付いて声を掛けるだろう。」
「もうこれ以上耐えられません!!い、今すぐ、呪いをっ…あああッ。」

 涙目で訴えるクリフトのそばに屈みこみ、ピサロはクリフトの顔を覗き込んだ。
「明日になったら人形を回収してやろう。」
「そんな!」

 元凶の人形を取り戻さなくては、身体が持たない上に自分の命に関わる。ゴミとして宿屋の主に燃やされる可能性だってあるのに。

 ピサロに抱き寄せられて、クリフトは右肩の痛みに顔をしかめた。脱臼した肩が異様に鋭角に変形している。
「離して…自分で回収に行きますから…お願いです…もう私は魔力が残って無くて肩も胸も治せないんです。肩を…。」
 クリフトは必死に言葉を紡ぎだす。


「い、入れてください。自分ではできないんです…」


 ピサロの動きが止まった。何故だか驚かれているような気がしてクリフトは首を傾げた。何か、変な事を言っただろうか。
「入れて欲しいのか。」
「はい、お願いします…んっ…あ…!早く入れてください…っ」
「本当にお前は自分の状況が分かってないな。どれだけ自分が相手を煽る発言をしているかちょっとは考えろ。」

 ピサロは愉快そうに笑い、クリフトを軽々と抱え上げるとベッドに放り投げた。驚くクリフトにピサロはタオルを渡した。

「ご希望通り入れてやる。」

183パペット 5/6:2009/10/11(日) 23:36:43
 その時点でもクリフトは自分の腕を治す為にベッドに寝かせてくれたのだ、と信じて疑わず、怯えたようにうなづくとタオルを口に咥えて、右肩をピサロに向けた。
ピサロはクリフトの右腕を持ち上げると鈍い音を立てて一気に元の関節へと戻してやった。

「んんんんんんんーーーーーッ!!!!」

 クリフトがタオル越しにくぐもった悲鳴が上げ、痛みに涙を溢れさせながら自分に回復呪文を掛けてくれるピサロを見上げた。そっとタオルから口を離し、頭を下げる。

「ありがとう…ございます。じゃあ、今から着替えて…に、人形を…。」
「まだ終わっていないだろう。」

 ピサロはクリフトの髪をかき上げてきた。クリフトは一瞬怯んだが、そのままその口付けを受け止めた。仔犬に全身を撫で上げられながらだったため、ピサロが離れた時は呼吸が浅くなって一気に身体の熱が上昇していた。
肩で息を繰り返しているとピサロはクリフトの頭を撫でた。

「もう、拒むんじゃないぞ。」

 クリフトは驚いてピサロを見返した。「や…やっぱり、私に仕返しをするつもりで…んんんんッ!!」


 ピサロが手をクリフトの下腹部に伸ばしてきていた。

「や、止めてくださいっ!」
 慌てて止めようとするクリフトの腕をピサロはあっさりと掴んでベッドに縫いとめる。
「お前が頼んできたんだろう。自慰すら禁じられている神官が、いったいどうやって今夜一晩やり過ごすつもりだ。」
「私が…頼んだ?」

 状況が飲み込めないまま、ピサロがクリフトの服を剥ぎ取っていくのを満足に抵抗できずにさっさと全裸にされてしまう。
すでに立ち上がり震えている自分自身をピサロに見られ、クリフトは必死にシーツで隠そうとしたが叶わず、逆にピサロに握られて悲鳴を上げた。


「コラ!お前、どこからそんな人形拾ってきたんだ!」

 窓の外から宿屋の主の声が聴こえてきたのは、クリフトがピサロの愛撫に半分意識が飛び掛っているときだった。
ハッとクリフトは我に返り、息も絶え絶えの状態で自分を組み敷く魔王に掠れた声で訴えた。

「暗示が…解かれました…!早く人形を取りに行かないと…」
「心配するな。死にそうになったら助けてやるさ。」
「も…もうすでに死にそうです…!もう勘弁してください!」

 クリフトはなんとかピサロの下から抜け出そうとしたがあっさり押さえ込まれ、ピサロに取ってゼロに等しい自分の抵抗にクリフトは力で対抗することを諦めた。

「ピサロさん…お願いです…行かせてください…。」

 消えそうな声で訴えるクリフトに、ピサロは動きを止めた。
「行かせて…お願いします…。」
「…何度言わせるんだ、お前は。ねだっているとしか思えん。」

 ピサロは優しく微笑み、クリフトを一瞬だけ安心させると、そのままクリフトの奥を自分のモノで貫き、クリフトに悲鳴と精を吐き出させた。

184パペット 6/6:2009/10/11(日) 23:39:32
 クリフトの話を聞き終えた僕は呆気に取られてベッドの上で不安そうに僕の表情を窺ってくる彼を見つめてしまった。
宿屋の裏でクリフトが青い顔して倒れていたから自室へ連れて帰り、休ませた後、なんとか事実を隠そうとしたクリフトから話を半ば強引に吐き出させた結果がこれだった。

「お…お恥ずかしい話で面目ありません…。
 でも、勇者さんはどうして私がピサロさんに…えっと、あの…」

「クリフトがピサロに食われた、って何で分かったかってこと?」
「く…食われた…?ああ、なるほど、そういう表現もあるのですね。」

 赤面しながらも感心した様子のクリフトに内心ため息をつく。この世間知らずめ。

「気を失っている時にピサロの名前を呼びながら
 何度も『止めて』とか『入れて欲しい』とか『イかせてください』とか言ってうなされてたからだよ。」

 クリフトは首を傾げていたが、やがてやっと自分が発した言葉の意味が分かったのか、今度は顔だけじゃなく耳の先まで赤くなった。

「ちがっ…違います!私はそんな意味でピサロさんに訴えていたわけじゃありません!」
「ピサロも分かってたと思うけど、盛大に煽ってる言葉だよ、それ。」
「そんな…!」

 動揺して頭を抱えたクリフトを見ながら、クリフトが気を失っている間、ずっとそのうわ言で煽られていた僕の方はどうしてくれるんだ、という文句をなんとか飲み込んだ。
どうせ、例の人形も拾ってある。まだまだ旅は続くんだ。この隙だらけの神官を「食う」機会はたっぷりあるに違いない。
 僕は涙目で途方にくれるクリフトを眺めながら、今後の作戦をじっくりと練り始めた。まぁ、なんなら今すぐにでも?

185名無しの勇者:2009/10/11(日) 23:40:26
以上です。ありがとうございました。

186名無しの勇者:2009/10/18(日) 18:32:57
>185
乙です!!
久々新作ーーーー!
世間知らずで信仰心強そうな神官に禿萌えました!!
勇者と共に喰らい尽くしたいwww

187名無しの勇者:2009/11/01(日) 18:03:34
新作きてたー!
MPのないクリフト…いい
勇クリ?にも期待w

188無題 1/7:2010/03/22(月) 00:45:45
ピサクリです。無理矢理。クリフトが理不尽な目に遭います。
すみません。


 デスマウンテンの玉座でピサロは座り込み、苛立ちを押さえきれずにいた。すでにピサロは“ヤツ”の裏切りを知り、勇者らと仲間になっている。なのに、再びここへ舞い戻ってじっと玉座で考え事をしているには訳がある。
 今日、“ヤツ”と戦い、惨めにも逃げ帰ったからだ。

 デスパレスでのその戦いは、戦い始めた時から相手との強さの違いが歴然としていた。勇者から真実を聞き、“ヤツ”への怒りの余りに勇者らの力を借りてその足でデスパレスまで来た。
このままの勢いでヤツにも勝てるんじゃないか、と思っていた。しかし、明らかに相手の攻撃力が圧倒的にこちらを凌いでおり、ピサロは冷水を浴びたかの如く衝撃を受けた。
この世界で自分よりも優れた力を持つ者は居ないと思っていた。なのに、この差は何だ。一方的と言えるほどの攻撃を受け、回復や防御に回るばかりで相手へ全く攻撃できない。
ピサロは苛立ち、自分への回復を半ばで中断した。全快には程遠いが、これ位の痛みは耐えられる。念の為、他のメンバーへと目を向けると、勇者も踊り子の娘も神官も、無傷の
者は誰も居ないが、神官・クリフトが必死に回復に専念しているせいで、なんとか戦闘不能者を出さずに居るようだった。

 しかし、前衛に居るピサロに分かる、ということは、ヤツにもその様子が見える、ということだ。案の定、“ヤツ”は後衛をも巻き込むほどの灼熱の炎を吐き出した。勇者が全回復の呪文を唱えようとしたが、魔力が残っていない。
勇者の動揺した目を見て、ピサロはとっさにクリフトを見た。一番負傷しているのは最悪な事にクリフトだったが、クリフトはしっかりとピサロの目を見てうなづき、再び回復呪文の詠唱を始めた。自分の回復くらい自分でできるだろう。とにかく、なんとか攻撃の隙を見つけなければ。

 ピサロは自分に対し鋭いツメを振り降ろそうとしている“ヤツ”に視線を戻す。舌打ちして避けようとしたが、間に合わなかった。
ツメがピサロの胸に突き刺さった瞬間、背後から暖かい光がピサロを包んだ。裂かれた胸元の傷が、たちまち消えていく。“ヤツ”が舌打ちして身体を翻す。

“ヤツ”は1ターンのうち、2度も3度も行動できる素早さを持っている、とピサロが気付いた時には、鋭い爪で胸を裂かれて崩れるように倒れていくクリフトの姿があった。

 ピサロは忌々しげに舌打ちをする。回復役の神官が戦闘不能になってしまえば、負けは決定したも同然だった。“ヤツ”は次々と勇者と踊り子・マーニャを戦闘不能にし、ピサロの喉笛寸前に冷たく光るツメを迫らせ、
「こんな者たちを仲間にして何をする気だったんですか、ピサロ様?」
とせせら笑った。

「連れて帰ってください。今度『私の城』に来る時は、もっとマシなのを連れてきてくださいよ。」

 屈辱で目の前が赤く染まりそうだった。城の外に命からがら脱出し、占い師の女に3人の介抱を任せると腹立ち紛れにここまで飛んできた。すでに配下の者ではなくなった魔物たちが次々とピサロに襲い掛かったが、全て血祭りに上げてやった。
少しは気が紛れたが、この玉座に座っていると、ここから始まった自分の行動が正しかったのか、根本的なことから分からなくなってしまっていた。人間を仲間にするなど、意味のあることだったのか。


「やっぱりここに居たんですか。探しましたよ。」

 ふいに声を掛けられ、顔を上げるとデスマウンテンの入口に神官の姿があった。笑顔で近付き、剣を鞘に戻しながら玉座の前に立ったクリフトの全身に、ピサロは視線を走らせた。
蘇生されてはいるが、全回復まではいかなかったようだ。しかも1人でここまでやって来るとは、先刻まで瀕死状態だった者のする事ではないだろう。やはりこいつはバカだ。

「あの、モンスターはほとんどピサロさんが倒してくれていたので、あまり戦闘はしていませんよ?」

 心を読んだかのようにクリフトが言い、続けて、「帰りましょう。みんな気落ちしていますけど、これからの事を話し合わないといけませんから。」と言った。

「これから?」
「はい。私は先刻までゴットサイドで情報を集めていました。」

 じっとこちらの目を見つめてゆっくりとした口調で言う。「やはり、準備不足だったんです。だから今度は…。」

 ゴットサイドだと?準備不足だと?蘇生されたての人間がそんな場所で何をしている。

189無題 2/7:2010/03/22(月) 00:50:40
「バカな男だ。何を話せと言う。
 4人掛かりで“ヤツ”をほとんど傷付けられなかったのだ!
 人間などに頼った私が愚かだったのだ!!」

 ピサロは一気に怒鳴ったあと、息を吐いた。このまま目の前に居る神官を殴りつけそうになる衝動に駆られ、それをなんとか押さえる。
「…戻る気など、無い。」

 クリフトは目をみはった。視線をピサロの震えている右こぶしに走らせ、続けて泳ぐようにあたりに視線を走らせる。
ピサロは怯えて逃げるかと思って見ていたが、クリフトは両手をギュッと握り締めた。

「私が悪かったんです。殴ってください。」

 今度はピサロが目をみはる番だった。

「私が、あの時、自分ではなくピサロさんを回復したから、一気に崩れるように負けてしまったのです。
 私のせいです。」

 ピサロは一瞬呆気に取られた。
 負けたのはこの神官1人のせいではない。敗因のひとつではあったが、例え、クリフトが自分を回復していたとしても、遅かれ早かれ同じ結果となっていたに違いない。
 ただ……誰かのせいにしてしまうのは気が楽だった。

「私のせいです。どうぞ、気が済むまで殴ってください。
 痛みを耐える事には慣れてますから。」
 クリフトが両目を堅く閉じる。

「私が本気で殴ったら、お前の頭が吹っ飛ぶぞ。」

 クリフトの両肩がビクッと跳ねる。
「あ、あの、その時は蘇生呪文を唱えてくださいね。」

 ピサロは立ち上がり、クリフトの胸倉を掴んだ。クリフトは怯えて身体を固くする。
 1日に2度も戦闘不能になる気なのか、この男は。ピサロは青ざめた神官の顔をまじまじと眺めた。

 ならば、お言葉に甘えて、気が済むまで傷付けてやろうか。

 ピサロはそのまま、噛み付くようにクリフトの唇を奪った。クリフトは驚いて両目を開けて顔を離そうとしたが、ピサロはそのままクリフトの口腔内を侵し続けた。
 何度もくぐもった悲鳴が上がったが、やがて静かになり、ピサロがクリフトを解放した時には、クリフトはピサロの足元にずるずると座り込んだ。

 色白の神官の鼻先と耳がピンクに染まり、涙目で苦しそうに息をする姿にピサロはふん、と鼻を鳴らした。

190無題 3/7:2010/03/22(月) 00:53:59
「お前の大事な仲間の元で慰めてもらえ。……出て行け。」

 クリフトは肩で息をしながら地面を見つめていたが、すぐに頭を横に振った。

「あなたも、仲間です。一緒に戻りましょう。」
「そのままお前を襲う。お前が泣き叫んでも止めない。それでいいんだな?」

 クリフトは息を飲んだが、小さくうなづいた。ピサロはひざまずき、クリフトの顎を指先ですくった。
「本気か?」
 クリフトは視線を逸らし、「はい」と消え入りそうな声で返事をすると、そのまま自分の上着を脱ぎ始めた。

 ピサロはその後、文字通り気が済むまでクリフトを責めた。
 クリフトから服を脱いだのは引き裂かれるのを恐れていたからのようだが、そのままその破壊欲はクリフトの身体に向く事までは気が回らなかったようだ。
 しかし、痛みや恐れから体が思わず逃げる事はあっても、クリフトは拒否する言葉を一切吐かなかった。
 にも関わらずピサロはクリフトはアザだらけし、ろくに慣らしもせずに身体を貫き、回りで誰かが聴いていれば胸を痛めるような悲鳴を上げさせた。
 ピサロは自分から進んで身を捧げたクリフトは、誰かに抱かれる事に慣れているのだ、とばかり思っていたが、行為の最中にどうやら自分が最初らしい、と気が付いた。何故だ、とピサロは眉根を寄せて耐えるクリフトを自身で揺さぶりながら考えた。
 必死で目を瞑り、嵐が過ぎ去るのをひたすら待つような行為に快楽など有りはしないだろうに。

 ピサロが精を放つ頃、クリフトの意識はほとんど飛び掛っていた。色々と聞きたい事はあったが、これから問いただしたところで、意味のある言葉を吐くとは思えない。
 ピサロはクリフトの耳元に唇を寄せ、何事かを呟いた。ピクン、とクリフトは軽く震えてぼんやりとピサロを見上げた。

「戻れ、と言うからには策はあるんだろうな?」

 ピサロが言うと、クリフトはその瞬間に覚醒し、「…は、はいっ!」とかすれた声で跳ね起きるとゴホゴホッと咳払いした。

「策は、あります。ゴットサイドから入れるダンジョンの奥に凄まじい威力を持つ武具がある、と聞きました。
 あなたの能力を最大限引き出してくれるはずです。」
 咳払いしても声はかすれたままだ。しかし、青ざめた顔でも嬉しそうに話すクリフトの姿にピサロは遂に折れた。

「今回はお前に免じて戻ってやる。その情報が間違っていた時は、命は無いものと思え。」
「はいっ!ありがとうございます!!」

 礼まで言うクリフトを奇異なものでも見るような目で眺めていたピサロだが、急にすっと手を上げた。クリフトは怯えて一瞬堅くなったが、次の瞬間、回復魔法を掛けられた事に慌てて、
「すみません、助かります。」
と再び頭を下げた。

191無題 4/7:2010/03/22(月) 00:58:37
 ピサロが再加入して1ヶ月程が過ぎたある晩、クリフトは安堵の息をついた。
 あの日、一晩掛けて仲間全員で話し合った結果、クリフトが集めてきた情報を頼りにゴットサイドでピサロが装備できる優れた武具を集め、その過程で仲間全員がスキルアップを目指すことになった。結果、武具は少しずつではあるが集まり始め、一人一人の能力も確実に上がっていった。
 ようやくはっきりと光が見え始めたな、どうやらピサロさんに殺されずに済みそうだ、と考え、クリフトはふっと苦笑する。今日は、デスマウンテン以降、初めて2人部屋でピサロと同室になった。
 クリフトは手中の剣の猛々しさを改めて眺めてから、扉をノックして中へ入る。ピサロがベッドに腰掛けていた。

「これ、手入れが済んだそうです。トルネコさんから預かってきました。」

「そうか。」

 ピサロが手を伸ばす。クリフトは「本当に何度見ても素晴らしい剣ですよね。トルネコさんも感動していましたよ。」と話しながら、ピサロに近付いて、剣を渡そうとした。
 その時、突然腕を引っ張られ、バランスを崩したクリフトはピサロの胸の中に倒れこむ。
「な、何を…」
 顔を上げるとすぐに唇を奪われた。必死で抵抗しようとするが、力では正直、魔術師ブライやマーニャの次に弱いのだ。押さえ込まれ、相手の舌で口の中をなぞられた。
 萎縮する自分の舌にピサロの舌が絡みつく。ぞくぞくと身体に震えが走って魔王の剣が床へ落ちてしまい、クリフトはトルネコに心の中で詫びた。
 口が解放された時には、クリフトの身体はピサロの下で易々と押さえ込まれていた。クリフトは突然降りかかった我が身の災いに信じ難い思いになりつつ、心細い気持ちで自分に跨っているピサロを見上げた。
 ピサロの鮮血のように紅い目としっかり見合った、その途端、クリフトは体が動かなくなった。目をそらすこともできず、クリフトは自分の上に居る男が魔王であることを今更のように思い出す。思わず生唾を飲み込んだところで、口は自由に動く事に気が付いた。
 クリフトが恐る恐るピサロに理由を問いかけようとした時、ピサロはクリフトを見下ろし、静かに問い掛けた。

「何故、1ヶ月前のあの日、私がデスマウンテンに居ると分かったのだ?」

 偶然です、と口を開こうとしたが、クリフトの口から出てきた言の葉は違うものだった。

「ピサロさんは私達の居ないところで1人になって何かにヤツ当たりしたいだろうな、と思ったんです。
 ロザリーさんを傷付けたくは無いだろうし、暴れられる居場所としたらデスマウンテンしか無いだろう、と思いました。」

 自分の言葉にクリフトは愕然とする。ピサロは「ほぉーぅ?」と薄笑いを浮かべ、クリフトが着ていたシャツの下から右脇に手を入れた。その感触にクリフトが小さく悲鳴を上げたが、手はそのままシャツをまくり上げ、脇を撫で上げ、クリフトの身体を震えさせた。

「何故、私を追ってデスマウンテンまで1人で来たんだ?」

「み…皆さん、気持ちを整理したり、傷を癒したりするので手がいっぱいで、
 あなたが居なくなっていることに気が付いても、どこへ行ったのかは気が付いていませんでした。
 ピサロさんはプライドが高そうだから、いじけている姿は見られたくないだろう、と思って。」

 クリフトはもう、恐ろしさで気を失うかと思った。さっきから無難な言い訳をする為に考えをまとめる前から本音の部分を言葉に紡いでしまう。

「あの…、私に何かしたんですか?」
「あの日、暗示を掛けておいたのだ。」

 シャツはすでに脱がされて、ピサロの手がクリフトの上半身を這い回っている。
「お前が舌を絡めるほどの口付けをした時、相手の質問に嘘、偽り無く正直に答えるようになれ、とな。
 お前は穏便に話を進めるためには、小さな嘘をつき続けても平気なんだろう?」

192無題 5/7:2010/03/22(月) 01:02:15
 クリフトは息を飲んだ。「私は……!」
 嘘なんて、と続けようとしたが、言葉が喉に引っかかり、外へ出て行かない。心まで裸に剥かれたようで、恐ろしさの余りクリフトは咄嗟に目を閉じた。
「ゆ、許してください。良かれと思ってやった事です。
 あなたの怒りを買ってるとは気が付かなくて…!!」
「怒ってなどいない。ただ、お前に興味を持っただけだ。
 お前は私がいじけている、と思ったのだな?それは何故だ。」
「きっと…今回の事が初の挫折なんじゃないか、と思ったんです。」

 声が自然と震える。これは恐怖からか、それとも今も胸を指でなぞられているからか。

「我が国、サントハイムはあなたのせいで城の人間全てを消されてしまった。
 勇者さんはあなたに村を滅ぼされ、モンバーバラの姉妹は父親の敵のキングレオに大敗したことがあります。
 ライアンさんとトルネコさんはそれほど大きな挫折はあまり無いでしょうが、少なくとも、あなたよりは心が打たれ強いだろう、と思って…ひぃッ!」

 胸を捻られ、クリフトは痛みだけでは無い感覚に目を泳がせた。これから何をされるのか、想像したくないのにあの日の記憶が蘇る。

「続けろ。」
「あなたが…心配だったんです。きっと、自分自身を許す事ができなくて、途方に暮れているんだろうと…。
 だから、先にあなたを安心させる為、ゴットサイドで情報を探してからあなたを追いました。」

 ピサロの手がクリフトのズボンへ伸び、クリフトはイヤイヤをするように首を小さく横へ振った。

「やめてください…!」
「お前は何故、私に抱かれたのだ?」

 ズボンの中へピサロの手が伸びる。すでに反応し始めている部分を握りこまれ、クリフトは息を飲んだ。

「あんな場所に…延々自分を傷つけ続けているあなたを1人残していくわけにはいきません。
 殺風景で、花も無い…悪い考えしか出てきませんから……んんッ!」

 クリフトの目尻から涙がこぼれた。怖い。またデスマウンテンでされた行為と同じ事をされるのか、と思うと背筋が凍りそうだった。

「それくらいなら、私に怒りをぶつけた方が、立ち直りも早いと思って…。
 実は、何をされるのかは良く分かってなかったんです。
 殴られるのではなく、その…そっち方面になるとは…裸になる方がいいだろう、くらいは分かってましたけど…
 や、やめて……。」

 前を弄られ、握りつぶされるかも知れないとクリフトは恐怖で体が震え始めた。
「許してくださいッ!私が浅はかでした!もうこれ位で…」

「何を勘違いしている。私はむしろ感謝しているんだ。」
 ピサロの言葉にクリフトが目を剥く。これで!?

「お前が言った言葉はイチイチ的を得ている。少し腹立たしいが仕方ない。
 私は誰かに敗北する事が初めてだったし、その屈辱を跳ね返す方法も分からなかった。
 あの時、お前が来てくれなかったら、私はヤツの下僕にされていたかも知れない。」

 萎縮してしまったそれを弄びながら、ピサロは首を傾げた。

「お前を悦ばせてやろう、と思ったんだが。
 お前、あの日に痛みしか感じていなかったのなら申し訳ない、と思ってな。
 どうだ?あの日、お前は私に抱かれて、1度でもイったのか?楽しんでくれていたのなら、もう解放してやるが。」

 クリフトは目をみはった。楽しんでいた、もう十分だ、と答えようとしたが、口から出たのはやはり別の言葉だった。

「イく、というのが射精する、という意味なら、あの日、私は一度も射精しませんでした…。」

 絶望感に打ちひしがれるクリフトを見下ろし、ピサロはそうか、と眉根を寄せてうなづいた。
「ならば、今夜は寝られると思うな。」

193無題 6/7:2010/03/22(月) 01:07:27
 正直、クリフトはこういう行為は気持ちいいのは相手だけで、受ける立場の人間は苦痛を我慢しなければならない、と思っていた。
 事実、ピサロから受けた行為がそうだったし、女性と言うのは無条件で辛い立場に居るんだな、と身を持って知ったつもりだったのだ。だが。

「も…もう許してくださ…」
 全身を隅々まで触れられ、噛まれ、舐められ、射精を迎えて「見たでしょう!私はイきました。もう満足ですっ!」と必死に訴えても一向に許されず、2度3度と射精させられ、しかもまだピサロは自分の中にさえ入っていない。
 先日はじっと耐えていたが、今回は「お礼」という名目である為、クリフトは必死に逃げようともがき、ピサロを押し返そうと腕で突っぱねようとしたが、相手はびくともしない。遂には自分を守る為に守備力を上昇させる呪文の詠唱さえを始めたクリフトだったが、「怪我をさせたくない」という理由で魔法を封じられた挙句、両腕を頭上で拘束させられてしまった。
 震える声で何度も制止を訴えても、それらを一切無視したピサロは微笑を浮かべ
「今まででどこが一番強く感じた?どこをどうしたら気持ち良かった?」
などと聞いてくる。答えたくなくても、クリフトの口は主人を裏切り、(クリフトにとっては)卑猥な言葉を口走り、その都度、クリフトは羞恥と今からされる行為の恐怖に耳の先まで赤面したり、肌が透けるかと思うほど青ざめたりしては、ポロポロと涙をこぼした。
 ピサロはクリフトの目尻に口付け、涙を舐め取り優しく微笑むと、許してくれるのか、と釣られて微笑むクリフトの身体を易々と押さえつけてリクエストに応えてやっていた。


 ピサロの指がクリフトの中に何本も沈められている時、ふいに扉がノックされ、意識が薄れかかっていたクリフトを一気に正気にさせた。

『クリフトー?』

 クリフトが護衛している姫の声だった。

「ピサロさん、私の暗示はあなた以外にも有効なのですか!?」

 クリフトは疲労困憊した身体でピサロにすがりつく。指を抜き、「ああ。」とうなづくピサロの答えにクリフトは一瞬目を泳がせると
「腕を解いてくださいっ!」
と小声で訴えた。一向に動こうとしないピサロにクリフトは再度小声で訴える。
「口を押さえますから!お願いしますっ!」

『クリフトー?もう寝ちゃったのー?起きてるのー?』

 クリフトは自分からピサロに口づけた。“寝ていません”とピサロの口の中にくぐもったクリフトの声が漏れる。

 ピサロは一瞬驚いた顔をしたが愉快そうに目で笑うと、今まで指を入れていたところに、そのまま自身を一気に挿入させた。悲鳴を堪えて仰け反ったクリフトが、また慌てて自分からピサロの口でを自分のそれで塞ぐ。


『ねぇ、今何してるのー?』

 クリフトは、泣きながらその日一番、卑猥な言葉を口にした。

194無題 7/7:2010/03/22(月) 01:10:03
『クリフトってばー』
「アリーナ、すまない。クリフトはすでに疲れきって寝てしまったようだ。
 明日にしてやってくれないか。」
『え、ごめん、あなたも今ので起きちゃった?ごめんなさいね。
 分かった、明日にするわ。おやすみなさい。』

 パタパタと立ち去る足音が消えると、クリフトは泣きじゃくりながら唇を離した。

「さすがに嘘をつくのが上手いな。姫様相手だと嘘の出来も違うようだな?」

「…大切な人相手だと、嘘の出来が…違いますから…」
 ひっ、ひっ、と泣きながらも、口は勝手に答えているため、息苦しくなってクリフトは落ち着こうと目を閉じた。

「ふん、見事だな。まぁ、いい。お前が意識を失えば暗示も解けるだろう。それまで耐えろよ。」

 ピサロがクリフトの身体を揺さぶり始め、クリフトは空気を求めて天を仰ぐ。
 そうだ、もう少しの辛抱だ。クリフトは必死に意識を手放そうとするが、逆にそれが薄れ行く意識を繋ぎとめる。


 しかし、良かった、とクリフトは心の中で安堵する。ピサロ自身に絶対に知られたくないことは質問してこなかった。あと、もう少し耐えたら、きっと隠し通せる。


 実はあなたが好きなのだ、ということを。


 あの日の戦闘であなたが勇者と同じようにすがるような目で私を見たことが、実はとても嬉しかったのだ、ということを。

 きっと、“ヤツ”も同じ想いを抱いている、と分かったのも、そのせいだ。
“ヤツ”はあなたを殺さず、逃がすのではないか、と思ったから、あなたが最後まで生き残っているように回復呪文を掛けたのだ。

 あなたにこんな事を知られては、次にどんな目に遭うか分からない。
 こんなに長い時間を掛けて私を抱いたのだ。ここまで強く苦しい快楽に私を突き落としたのだ。十分、満足してくれているだろう。
 もう、私があなたに抱かれる事は無い。
 私にとってはそばにいることが出来るだけで十分幸せなのだから。報われないままで構わない。


 私は嘘が上手い。大切な人相手には嘘の出来が違うのだ。

195名無しの勇者:2010/03/22(月) 01:11:46
以上です。
初っ端、説明が長くなっちゃって読みにくくなってすみません。

196名無しの勇者:2010/03/31(水) 10:32:14
このクリフト、なんという萌…!
ありがたや〜(´ヮ`)

197名無しの勇者:2010/06/08(火) 11:29:35
声を殺すとこが最高に萌えた。ありがたいありがたい

198無題 1/7:2010/08/19(木) 23:36:51
※ピサ←クリ前提の勇クリ+ピサクリ。
※媚薬・無理矢理・ラストが暗い
※一応188〜194の続きです。


 神官の見習いの頃、出入りさせてもらっていた城下町の教会で神父様と相談に来ている人と話をうっかり聞いてしまった事がある。
 その若く綺麗な女の人は、教会の隅で子どもだった私が教会に寄付された絵本を読んでいる事に気が付かず、泣きながら、今の恋人の話を始めてしまった。
夜に拒否しても無理矢理どうとか、殴られる事もあるとか。まだ幼かった私は上手く話が飲み込めなかったが、この女性が恋人にひどい目に遭わされながら、それでも彼が自分を愛してくれていると思うと離れられない、と悩んでいる事はなんとなく理解できた。
 神父様は静かに話を聞いていたが、「私の考えを言っても構わないですか?」と彼女に尋ね、相手がしっかりとうなづくのを待ってから口を開いた。


 私は扉のノックの音で目が覚めた。宿屋の天井が見えて、私はすぐに今の状況を思い出す。疲労が溜まっていたのか、今日のダンジョン探索が終わってから微熱を出してしまったのだ。
 自己嫌悪に陥っている私を置いて、同室のピサロさんはさっさと夜の散歩に出掛けてしまった。
 再びノックの音がして、私は慌てて返事をした。私が護衛している姫がひょいと不安そうに顔を覗かせる。

「クリフト、ごめん、寝てた?具合はどう?」
「はい、だいぶと楽になりました。明日には体調も戻っていると思います。」
 私が笑顔で答えると、姫さまもホッとしたように笑ってくれた。倒れて生死をさ迷った前科があるだけに胸が痛み、私は言葉を重ねた。
「ご心配をお掛けしてすみません。本当にもう大丈夫です。」
「そっか。良かった。私ね、薬を買って来たんだけど、もう要らなかったかな。」
「薬?」
「うん、宿屋の裏に薬売りの人が居てね。元気が出るよ、って売ってくれたの。」
 アリーナ姫はポケットから小さな瓶を出した。赤い錠剤が詰まっている。そのきつい発色に私は一抹の不安を覚えた。
 姫が折角買ってくれたのに服用しないのは申し訳ないが、もし変な成分が入っていたら治りかけていた体調が悪化しかねない。

「効きが悪ければ1日3錠まで飲んでいいんだって。」
「だ、大丈夫なんでしょうか。」
 思わず顔が引きつる私に姫さまはニッコリと笑って「大丈夫よ、私、1錠飲んでみたもの。」と胸を張った。
「飲んだ!?」
「ええ、半時ほど前よ。だけど何ともないでしょ?」
「私の為にそんなことを…」
 涙腺にグッときて私は姫から目を逸らした。
「危ない事はお止めください。でも……ありがとうございます。
 クリフトはあなたにお仕え出来て本当に幸せです。」
「ああ、もう、いいからそんなことは。早く飲んじゃってよ。」
「はい。ありがたくいただきます。」

 姫が水差しでコップに水を入れてくれる。私は頭を下げてそれを受け取った。とりあえず2錠手のひらに置き、水と共に飲み込む。
「じゃあ、薬はここに置いとくから。夕飯どうする?」
 正直、食欲はあまり沸かなかったので、私は姫に不安を抱かせないよう笑顔のまま首を横に振った。
「いえ、今日はもうこのまま寝ておきます。」
「そう。ゆっくり休んでね。」
「はい、おやすみなさい。」
 姫が出て行くのを待って、再びベッドに横になる。半時ほど経った時、ふと体が熱くなるのを感じた。

199無題 2/7:2010/08/19(木) 23:40:54
(あ…あれ…?)
 胸の鼓動も少し早いような気がする。微熱だったのに、体温が上がってきたのだろうか。私は薬の瓶に手を伸ばし、追加で1錠口に入れて水で飲み込んだ。
コップをサイドテーブルに戻そうとして指から力が抜ける。テーブルから転がり落ちそうなコップに慌てて手を伸ばそうとして、そのまま脱力したように全身がベッドの下へと転落した。
コップは幸いにも割れずに目の前を転がっていく。身を起こそうとしてもがき続けたが、手足に力が入らず、私は床の上にシーツと共に倒れ伏した。
 まさか、以前ミントスで罹患した病が再発したのだろうか。私はゾッとしてなんとかベッドに戻ろうしたが、手が空しく空振りし、私の上に今度は薬瓶が降ってきた。
頭に瓶が当たった痛みをきっかけに私の目から涙がにじんだ。バカな、泣くなど。しかし、私はすっかり恐怖と心細さに襲われ、涙が止まらなくなっていた。

「クリフト!」

 突然扉が開き、旅の仲間である勇者さんが部屋に現れた。シーツに包まって床の上で震えていた私は、目の前に現れた彼が救世主のように思え、必死に彼の名前を呼んだ。
勇者さんは驚いたように私を見下ろしていたが、部屋の扉を閉め、私に駆け寄ってくれた。
「お願いします!パデキアを…私、病気が再発しちゃったみたいなんです。
 早く、早く薬を飲まないと、また…!!!」
 必死に泣きながら助けを求めるばかりの私を抱き起こした勇者さんは感心したように「ホント…すごい効果だよね。」と呟いた。
「え…何が?」
「ごめん、やっぱ我慢できない。」
 そう言うと勇者さんはいきなり私の唇を自分のそれで塞いだ。驚く私の口腔内に勇者さんの舌が侵入して私の舌を探り出し、私の体はそれにイチイチ反応してビクビクと跳ねた。
息が苦しく、力の入らない手でなんとか勇者さんを引き剥がそうとしたが全く効果がない。ようやく解放された私が息を吸うため大きくのけぞると、そのまま勇者さんに首筋に吸い付かれ、「ひあぁっ!」と弱々しい悲鳴を上げてしまった。
 おかしい。こうして人にいいようにされるのは恥ずかしながら初めてではない。だけど、こんなに容易く体が反応するなんて、今までに無かったことだった。やはり、私の体はおかしくなってしまったのだろうか。
しかし、何故勇者さんは体調が悪いと訴えている私の体を嬲り続けるのだろうか。

 なんとか逃れようとする私と、服を脱がせようとする勇者さんのタイミングが悪かったのか、シャツのボタンがいくつか弾け飛んだ。ボタンが転がり、床に落ちていた薬瓶にカチンと当たる。その音を聴いた途端、私は全てを悟った。

「く…薬のせい…!?」
 私の胸元に手を伸ばそうとしていた勇者さんの動きがピタリと止まる。勇者に上に乗っかられたまま、私は血の気が一気に引いた。

「姫さまッ!!姫さまが薬を飲んでしまわれました!!解毒をっ!勇者さん、姫さまに解毒を!!」
 なんてことだ、こんな発熱や麻痺が起こるなんて、毒薬だったのではないか。
「ああー、もう、やってきたから。アリーナは今、眠ってるよ。」
「姫さまは無事なんですね!?」
「うん。クリフトの部屋を出てすぐに倒れたから、ミネアがベッドに運んでくれたよ。そんで、毒消し飲ませて、全て自供させた。」
 勇者さんは肩をすくめ、「マーニャがそっち方面詳しくてさ。訳分からずに薬の名前だけで判断して媚薬買っちゃったんじゃないか、ってさ。」
「ビヤク?」
 勇者さんは薬瓶に手を伸ばし、説明書きが見える部分を「ほら」と私の目の前に差し出した。

『あなたの大切な人が元気になる薬』

『効用…発熱、動悸、手足の軽い麻痺、感度上昇、涙腺の弛緩、不安感増幅、依存傾向の上昇』

『あなたがこの薬を服薬することにより、あなたの大切な人が元気になるでしょう』

 私は2回、説明書きを読んだが、何故これらの症状が媚薬となり得るのか理解が及ばなかった。

200無題 3/7:2010/08/19(木) 23:43:49
「ああー、ホント鈍いなクリフトは。」
 勇者さんはベッドに薬を放り投げた。

「普段気になってる人が、赤面して荒い呼吸して手足の自由が利かなくなって涙目で不安そうに自分にすがり付いてきて、
 しかも触ってみたらやたら感度良かったら、普通、そのまま押し倒してやっちゃうでしょ。」
「…あなた、私のことそのまま押し倒してやっちゃう気だったんですか。」
「過去形じゃないよ。今もその気だけど。」
 勇者さんのひとことに、再び私の不安感が増幅される。いや、これは薬のせいだけじゃないだろうけど。

「普段、私のことなんて気にして無いでしょ…?」
「気になってるよ。クリフトがピサロに抱かれた時、僕、隣りの部屋に居たからさ。壁薄くて丸聴こえ。」
 全身が凍りつくほどの衝撃を受け、私の思考は一瞬にして麻痺してしまった。勇者さんは私の耳元に近付き、「クリフト、すんごくいやらしかった」と囁いた。
「ち…違っ…私は……!!」
「知ってる。なんか暗示かけられてたんだよね。クリフトが泣きながら普段言わないような言葉を吐くだもん。」
 勇者さんは私の胸をなぞった。「ひっ」と息を飲む私を見て、勇者さんは薄く笑って胸元に顔を寄せてきた。
「最初、止めに行った方がいいのか、と思ってたんだけどさ。どうも、ピサロはクリフトと親睦を深めようとしてたみたいだから。」
 胸元をきつく吸われ、私は「あぁっ!」と声を上げてしまい、また情けなさで涙がこぼれる。もう感情が反乱を起こしたとしか思えなかった。
「クリフト、いったい何錠飲んだの。アリーナもここまでじゃ無かったよ。」
 勇者さんが私の胸元を指でなぞり、脇を撫で上げる。また体に痺れが走り、私は大きくのけぞった。
「に…2錠…。お願いします、もう、止めて…。」
 答えてから、追加で飲んだ事を思い出す。私は息を飲んだ。大変だ。飲んでからどれだけの時間が過ぎたろう。
「…あぁっ!も、もう止めてください。こ、こういうこと、私、好きじゃないんです!!」
 これ以上感覚が鋭くなったら体がついていけない。予測が想像を絶し、私は遂にパニックを起こして涙が堰を切ったように溢れだした。
「落ち着いて、クリフト。あんまり可愛いと、もっとひどいことしたくなっちゃうじゃん。」
 勇者さんの言葉も理解不能だ。私はメダパニ状態の頭でなんとか解決方法を導き出そうと必死になった。そ、そうだ、解毒呪文を唱えればいいんじゃないか?
呪文の最初の言葉はなんだっけ…?
また胸元を吸われ、「ひあっ」と呼吸が詰まり、思考が拡散する。
「ちょ…ちょっと待って…。」
 こんなに頼んでいるのに勇者さんの手がズボンに掛かり、一気に脱がされる。その時、『ザッ』と耳元で血の流れる音がした。

「あ…。」

 肌に直接当たる空気さえもはっきりと分かるほど、一気に感覚が研ぎ澄まされる。体内に流れる脈動が全身から感じ取れた。
部屋の灯りさえも眩しく感じ、思わず目を閉じたその時、勇者さんの指が私のモノに絡んだ。電撃が一瞬で私の全身を貫いた。

201無題 4/7:2010/08/19(木) 23:45:41
「…大丈夫?」
 目が覚めると、勇者さんの顔が私をのぞきこんだ。私はぼんやりとその顔を眺めていたが、次の瞬間には全てを思い出して、目を見開いた。
しかし、五感の鋭さは先ほどよりも幾分和らいでいる。ベッドに寝かせてもらったようだ。
「毒消し飲ませたんだ。さすがに全身性感帯になられちゃ死ぬんじゃないかと思ってこっちが怖くなる。」
 勇者さんは肩をすくめ、「ごめん、ちょっとやり過ぎた。」と頭を下げた。
「いえ、元はと言えば、薬を無防備に服用した私が悪いんです。」
 私の言葉に勇者さんは苦笑する。
「人がいいよね、クリフトは。もっと怒っていいのに。
 ピサロにされたことだって、みんなに訴えていいのにさ。」
「そんなことできませんっ…。それに、ピサロさんは私にもうそれほどの興味はないですよ。
 もう、あんなことは起きません。」
 勇者さんは私の言葉に何故か驚いたようで、「ピサロ、クリフトを気に入ってると思うけど?」とベッドサイドに置かれた薬瓶を指差した。
「試してみたら?ピサロが自分にたいしてどんな感情を抱いているか。」

『普段気になってる人が、赤面して荒い呼吸して手足の自由が利かなくなって涙目で不安そうに自分にすがり付いてきて、
 しかも触ってみたらやたら感度良かったら、普通、そのまま押し倒してやっちゃうでしょ。』

 勇者さんの言葉を思い出し、私は吹き出した。
「まさか。私に対してそんな気は最初からありませんよ。」
「クリフトはピサロの事、好きなんじゃないの?薬、試してみなって。」
 今日は勇者さんに度々驚かされる日だ。絶句する私に「あ、やっぱり?」とニヤリと笑う。
「…報われる事はありません。想いを告げることもありません。それに、もうその薬を飲むのは真っ平ごめんです。」
 むくれた私の言葉に勇者さんは軽く笑い、「分かった分かった。んじゃ、おやすみ。」と私に背中を向けて出て行った。

 私ももう休もう、と部屋の灯りを消そうとしてシャツのボタンが千切れたままなのに気が付いた。一瞬迷ったが、疲労感が上回り、そのままで休む事にして灯りを消す。
目を閉じると、未だに体が熱く、五感が研ぎ澄まされているのが分かる。窓の外に何か近付いてくる気配を感じ、それがピサロさんである事を確信すると、数秒後に部屋の窓がきしみながら開き、夜気と共にピサロさんが部屋に入ってきた。

「クリフト、まだ起きてるか?」
 ピサロさんの言葉に私は目を開く。「おかえりなさい」とベッドの中から声を掛ける私に、ピサロさんは「体の具合はどうだ?」と尋ねてきた。
 私は胸が熱くなり、「もう大丈夫です。ありがとうございます。」と体を起こそうとした。
「いい。寝ていろ。薬を買ってきた。」
「く、薬!?」
 ギョッとする私をピサロさんは怪訝そうに見る。「パデキアの根だ。病ならなんでも効くそうだな。」
 私は声も出なかった。思わず体を起こし、ピサロさんが持つ根っこを見つめる。
「あ、ありがとうございます…。」
 声が思わず震える私に、しかし、返ってきた言葉は氷のように冷たかった。
「クリフト、その首の跡は誰にやられた?」

202無題 5/7:2010/08/19(木) 23:48:27
 私はビクッと硬直し、思わず首元に手をやる。「あ、あの、これは…。」
 ピサロさんがベッドに近付いてくる。部屋が暗い中、月明かりでピサロさんの顔が浮かび上がるが、そこから感情を読みとることはできなかった。
「そのシャツは誰に破られた?」
 私はぎこちなく首を横に振る。
「お前は求められれば誰にでも自分の体を与えるのか。」
「!!…違いますっ!」
 さすがにムッとして言い返すと、ピサロさんはふん、と軽く鼻を鳴らし、ベッドサイドに視線を走らせた。
置かれたままの薬瓶に気が付き、私は慌てて手を伸ばしたが、わずかの差でピサロさんに薬瓶を奪われる。彼は説明書きにさっと目を走らせると、
「知ってて飲んだのか?」
と私を見下ろした。私は恥ずかしさで顔に血が上るのを感じた。

「あ、あの、栄養剤か何かだと思って。」
「そいつに騙されたのか。」
「いえ…薬は姫さまがうっかり買ってしまわれたのです。説明も読まずに私が浮かれて飲んでしまって…。」
 声が消え入りそうに小さくなり、私はそれを吹っ切るように「で、でも!」と顔を上げた。
「もう、解毒してもらいましたから!」と早口で答え、「誰に?」という問いに再び言葉を詰まらせる。
「まぁ、いい。パデキアももういらぬようだな。私は寝る。」
 ピサロさんは突然話を切ってしまい、そのまま上着を脱ぐとベッドに潜ってしまった。私は分かってもらえたのかどうか不安になりつつ、気分が落ち込んだままベッドに横になった。
責められるのも辛いが、切り捨てられるのも辛い。折角、薬を買ってきてくださったのに、不愉快な思いをさせてしまったのだったら申し訳無いな、明日、改めてお礼を言おう…。
私はウトウトと眠りの淵へを落ちようとしていた。

 誰かが私の上で何か呪文を唱えているのを、夢の中で聴いたような気がする。上半身を誰かに抱き起こされて、ようやく覚醒し始めた私はそのまま口の中に小さな丸い物をいくつか入れられ、冷たい水が口腔内に続けて注がれて一気に目が覚めた。
唇の端から冷たい水が溢れ、首筋を通ってシャツを濡らす。続けて唇が塞がれ、私の口の中を散々探るように誰かの舌が動き回った。私がなんとか仰け反って顔を逃がすと、その舌の主の顔を離れて顔が認識できた。

「ピ…ピサロさん…?」
「この赤い錠剤はどれほどの時間で効果が出てくるんだ?」
「はぁ…おおよそ半時くらいか、と…。」

 何故、そんなことを聴くんだろう?
 私がピサロさんから視線を外ずと、自分の着ていたシャツがベッドの下に落ちているのが目に入ってきた。なんで、あんなところにあるんだろう、寝る前に着替えたんだっけ…。自分の手を伸ばし、胸元を触ると直に自分の肌に触れてしまった。「あれ…」と自身の体を改めて見る。
 何故、裸なんだろうなぁ…。

203無題 6/7:2010/08/19(木) 23:50:38
 やっと自分がされたことに思い当たり、私は次の瞬間ベッドから抜け出そうと身をよじった。しかし、すぐに捉えられ、ピサロさんは軽々と私をベッド戻してしまう。
 何故?何故?私の頭に疑問符がいくつも湧き上がる。ピサロさんはベッド側に置いてあった椅子に腰をかけ、完全に観察体勢に入ってしまった。
彼は私に興味が無いはずじゃないのか?

「な…何錠飲ませたんですか…?」
「4錠だ。」

 息を飲んだ。私はすぐさま解毒の呪文を唱えようとして、自分の魔法が封印されていることに気が付き、思わず呻いてしまった。夢の中の呪文はこれだったんだ…!
 ピサロさんを見上げても、そこから表情を読み取る事は出来ない。黙って私を見つめている。そのまま数分が経過した。私は沈黙に耐えられず、自分から言い訳を始めてしまう。

「あの、薬がきつくて、私が死ぬかも知れない、とその方も途中で止めてくれたんですよ。
 そ、その時は3錠でも本当に辛くて…4錠って…きっと、私、耐えられないと思うんです。」
 ピサロさんの表情は動かない。薄く笑っているようにも見え、私は体が震えだした。
「ご、ごめんなさい…許して…。本当にきついんです…。」
 何故、私が謝っているのか。自分でも分からなかったが、とにかくこの状況を脱出できるなら、鬼でも魔王にでもすがりたかった。
「お願いします、ピサロさ…」
 私はピサロさんに手を伸ばそうとして、遂に『ザッ』と耳元で血の流れる音を聴いた。私は力が抜けてベッドに倒れ伏す。全身が脈打ち、体温が上昇していくのが分かる。
呼吸も短くなっていき、なんとか起き上がろうとしてもがくと、ベッドのシーツが肌に当たるのさえ反応してしまって小さく悲鳴を上げてしまった。
恐る恐るピサロさんの方を向くと、興味深そうにこちらを眺めているのと目が合い、私は泣きそうになった。
ピサロさんが立ち上がり、逃げようとする私をまたあっさり押さえつけ、指で私の背中をなぞった。全身に電気が走った。

「うあぁぁぁっ!」

 体がビクンと跳ね、背後から笑い声が聴こえる。私は目に涙がにじんだ。
近付かれても自由が利かずに、背中から抱かれ、背後から胸元に与えられる刺激にビクビクと体を震わせ、押さえられないまま喘ぎ声を上げる。息が続かず、私は何度も首を横に振った。
「ダメです、ダメです、無理です。」果たして相手に聴こえたかどうかも分からない。
「もう…やめ…いや…あぁぁぁぁっ!!」
 胸元で立ち上がったものを指で潰され、私は目の前が真っ白になった。力が入らないまま半ば意識を失ったが、また脇を撫で上げあられ、意識が引き戻される。
「あぁ…も、もう…やめ……。」
 体を裏返され、ピサロさんが私の体を跨いで上に乗ってくる。そのまま、私の胸に残されていた勇者さんの痕の上に唇を落としてきた。
「ひっ……」
 ゾクゾク、と体に大きく震えが走る。次いで2つ目の痕も吸われる。
「許して…もう…許して…」

204無題 7/7:2010/08/19(木) 23:53:59
「この後、そいつは何をしたんだ?」
 ピサロさんの声が耳元で囁かれる。私はその吐息さえも辛くて
「何もされてません…お願いもう止めて…」と懇願してすすり泣いた。ピサロさんが小さく笑い、私の下腹部に手を伸ばす。
「やめ…ッ!」
 息が止まった。触れられただけで私のものが弾け、私の腹部やピサロさんの手に飛び散る。
「これはすごいな…。」
 嬉しそうにピサロさんが呟く。私は呼吸さえもままならなくなっていた。耐えられない。なんで、こんなことになったんだ、何故、何故…。
「待って…待って…」
 続けて前にピサロさんの指が絡まってきて、達したばかりの私は、泣く力も無く、なんとかピサロさんの手を押し返そうとした。

「なんで…なんでこんなこと…」
「お前を組み伏せられたんだ。どうせ、お前を抱いたのは勇者の小僧かそのあたりだろ?」

 ピサロさんの指が蠢く。私の体がまたゾクゾクと震えだした。

「他の男にお前の卑猥な姿を見せておいて、何故私にだけ見せられない?」
「やめて…」

 爪が先端に食い込み、私は悲鳴混じりの泣き声を上げた。ピサロさんの別の指が私の両大腿部を割り、最奥を突き、私の中へと入ってくる。
私はまた許しを乞おうとして、涙声のまま、ただ懇願を続けた。ピサロさんは優しく微笑み、私に口付けをした。

「もう、怒ってなどいない。」
 私は、すがりつく様に、必死にうなづいた。ピサロさんは私の中で指を動かしながら、もう片方の手で私の頭をなでた。

「何故、こんなことをするのか、だと?そんなことも分からないのか。」
 穏やかな表情で、今度は私の耳元に顔を寄せた。

「お前が乱れていやらしく泣き叫ぶ姿が見たいからだ。」
 

『ピサロ、クリフトを気に入ってると思うけど?』
 意識が朦朧とする中で勇者さんの言葉が蘇る。そして、走馬灯のように、幼き頃出入りしていた教会の神父さんの悲しそうな顔が浮かんできた。

 あの日、神父様は若い女性の恋愛相談に乗った後、『私の考えを言っても構わないですか?』と彼女に尋ね、相手がしっかりとうなづくのを待ってから遠慮がちにこう告げた。


『それは、もはや“愛”ではありません。きっと、“支配”と呼ぶのですよ。』

205名無しの勇者:2010/08/19(木) 23:54:48
以上です。どうもありがとうございました。

206名無しの勇者:2010/08/20(金) 11:52:15
投下乙です
片思いのクリフトが健気で可愛いよ
媚薬で乱れた上に勇者とピサロに無理強いされるクリフトがたまらん!
素晴らしいものをありがとうございます(*´Д`)
オチがそうきたかーって感じで、
この先のピサクリがどうなるのかすごく気になりました

207名無しの勇者:2010/10/06(水) 16:52:46
おぉ…なんという…
受けが片思いとか激萌える
私得でした

208夜の海 1/8:2010/11/23(火) 23:35:57
ピサクリです。
※204の続きで大団円にしましたが、やっぱりクリフトが理不尽な目に遭います。
※水中で溺れる描写が出てきます。苦手な人は避けてください。


 こんなご時世に夜の海辺でぼんやり考え事をするなんて、ブライ様に知られたら大目玉だな…。

 流木の上に腰を掛けたクリフトは聖水の入った瓶を弄びながら、ため息をついた。今夜はこの町に宿を取っている。明日もダンジョン攻略だから体を休めないといけないのは分かっている。
だけど、部屋は魔王・ピサロと同室だ。彼と同室になる度、身体を求め続けられる夜が続いている。抵抗しても、懇願しても、自分の意思に反して身体に強い悦楽を刻み込まれる事実を、クリフトは自分の中で消化できないでいた。
今夜も部屋に戻れば、会話する間も与えられずなし崩しに身体をいいようにされるだろう。それを思うとなかなか宿に戻れず、クリフトはぐずぐずと砂浜で聖水で撒きながら座り込んでいた。

「あーーー、どうしたらいんだ…!勇者さんのバカーーー」

 クリフトは寄せては返る海を眺めて1人、頭を抱え続ける。脳裏に昼間の勇者との会話が蘇ってきていた。


 それはダンジョンを馬車で探索していた時の事。馬車の後ろを歩いていたクリフトに、同じく馬車の横を歩いていた勇者が
「何か悩み事ですかお兄さん?」
と囁きかけてきた。
「え、どうしてですか。私は別に、何も…。」
「嘘だね。こないだから塞ぎこんでることが多いしさ。
 戦闘中も集中できてないよ。ザキ系の確率も益々低い。」
 クリフトはグッと詰まり「申し訳ありません、気をつけます。」と声のトーンが落ちた。
「あー。もう、いいからちゃっちゃと心のモヤモヤ吐き出しちゃってよ。」と勇者がバシッと肩を叩く。
 クリフトはしばらく迷ったが、何度も促され、ようやく重い口を開いた。

「あの、例えば、ですよ。勇者さんに好きな人が居たとしてですね、
 その人に想いを伝える前から…えっと、無理矢理に関係を持たされちゃったら…どうしますか?」
「超絶ラッキー。」
「いや、あの、自分はそんなこと望んで無いのにですよ。」
「なんで?好きなのに?」
 勇者は怪訝そうな声を出す。「好きな人と抱き合えるなんて最高だけどな。」
「抱き合うだけなら、いいんです。私だって、嬉しい。」
 クリフトの目が揺れ動く。
「だけど…怖いんです。何を考えているか分からないし、私に辛い想いをさせたいだけなんじゃ…。」
 クリフトはハッと我に返り、口を押さえた。恐る恐る勇者を見ると眉根を上げて驚いた顔をした後、ニヤーッと口角を上げている。
「へぇー。贅沢な悩みのように思うけど?相手に愛されててさ。」
「愛されてなんか…いません。」
 クリフトは自嘲気味に笑った。「散々痛めつけられてるから、むしろ嫌われているのか、とさえ思うときもあります。」
 勇者は笑みを引っ込めてクリフトを見つめた。

「ねぇ、好きな人が同じ宿のベッドに座ってたら、健全な男なら相手をどうすると思う?」
 クリフトは唐突な質問に戸惑いながら、とりあえず状況を想像してみた。
「えーと、お茶を用意して相手の方とお話をします。」

209夜の海 2/8:2010/11/23(火) 23:39:38
「それ、マジで言ってんの!?」
 勇者が恐ろしいものを見るような顔でクリフトを凝視した。
「マ、マジです…。勇者さんは違うんですか?」
「適当なこと言って押し倒して、若さに任せて相手の涙が枯れるまで攻め倒す。」
 今度はクリフトが驚愕して勇者を見つめた。
「そ、そんなひどいことできません!」
「何、クリフト、ピサロに『そんなひどいこと』されたんだ?」
「勇者さんっ!!!」
「へぇー。」
 勇者が先頭を歩くピサロにチラッと視線を投げかけた。
「そりゃピサロ相手だと泣かされるだろうね。向こうは魔王なんだから、ひどい事言うのもするのも商売なんじゃないの?
 『お前を蝋人形にしてやろうか』なんて言葉も日常的に出ちゃうよ。
 で?なんか落ち込むようなこと何か言われたの?」
「い…言えません、そんなの。蝋人形って何ですか。」
「じゃあ、本人に直接聞いてこようっと。」
「やめてくださいっ!」
 足を速める勇者を慌てて止めて、クリフトはすでに泣きそうになりながら、
「私が乱れて…いやらしく泣き叫ぶ姿が見たいそうです。」
と抑えた声で早口で呟いた。
「ごめん、聴こえなかった。もう1回言って。」
 勇者が身を乗り出して笑顔で言う。クリフトは恥ずかしさで一気に顔が熱くなって消えたくなったが、なんとか堪えて、もう一度同じ台詞を小声で呟いた。
「ごめん、もう1回…。」
「聴こえてるでしょ。」
 クリフトは手刀で勇者の頭を殴る。勇者は涼しい顔でクリフトへ向きなおった。
「ちゃんと、話し合ったこと無いんだろ。自分の想いも伝えてないなら、ピサロがクリフトのことどう思ってるかも訊いてみたこと無いんだろ。」
「そんなこと…」
「勝手に好きになって、勝手に傷ついてたら世話無いよ。」
 勇者はクリフトを見つめた。
「今日も同室にするからね。ちゃんと自分の言いたい事言えば?うじうじ悩むのはそれからにすればいい。」

 決意も固まらぬまま夜になり、ピサロが部屋に居ると思うと居たたまれなくなって窓から見えたこの海へと逃げてきてしまった。
自分自身がどうしたいか、すら分からなくなってきたのに、ピサロに自分のことを問うなんて想像もできなかった。

210夜の海 3/8:2010/11/23(火) 23:43:24
「何をしている。」

 頭上からふいに話しかけられ、見上げると、夜空にピサロがマントをわずかな夜風にはためかせて浮かんでいた。クリフトはたちまち萎縮してしまう。
「あの、ちょっと考え事を。」
「…そんなに私に抱かれるのが嫌なのか。」
 いきなりメインの問題に切り込んできたピサロにクリフトは絶句してしまう。でも、訊かなければ。自分のことをどう思っているのか。
「ピサロさん、あの…!」
「…もう、お前の身体に触れない。それならいいんだろ?」
 自分の言葉に重なるようにしてピサロが呆れた口調で言い放った。砂浜から立ち上がったクリフトは再び言葉に詰まる。
「先に帰る。夜風は身体に障るぞ。いい加減に切り上げて戻って来い。」
 ピサロはそのまま町のほうへと飛び去ってしまう。クリフトはピサロの言葉を心の中で転がし、それが冷たい一片の氷のように胸を急激に冷やしていくのを感じていた。
 もう、自分はピサロに抱かれることは無い。プライドを根こそぎ奪われ、思い出すだけで羞恥の極みの行為を強要されることが無くなり、感情の堰を崩壊させられる事が無くなる。
もう、こんなに思い悩む事は無くなるなんて、喜ばしいことじゃないか。

「うっ…。」

 涙が急に溢れてきた。胸の中に開いた大きな穴からは安堵よりも身を切られたような痛みしか感じられなかった。
私とあの魔王の関係は、身体だけの繋がりだった。それでも、私は抱かれている間は彼に必要とされている思っていたのに、ピサロにとっては簡単に切る事ができる関係だったのか。
今頃気が付くなんてどうかしている。

 もうしばらく1人で居たかったが、早く戻れ、というピサロの言葉が引っかかり、無理矢理に深呼吸を繰り返す。泣き止んで、何事も無かったような顔で戻らなくては。
結果がどうあれ、私を思い悩ます問題が今、消滅したことは間違いない。クリフトは涙を服の袖で強く拭き取ると、町の方に一歩足を踏み出した。

 かすかに魔力を感じ取ったのはその時だった。
 ビロードのように穏やかな夜の海の方から、魔法の力を持つ何かの気配がした。魔物ではない。何かのアイテムだろうか。

 クリフトは逡巡し、聖水がまだ効果を発している事を確認すると、意を決して上着を脱いだ。裸になるべきか迷ったが、暗闇の中で岩場で身体を切る可能性もあり、薄手のシャツとズボンを着たまま、真っ直ぐ海へと駆け寄った。
 想像以上に昼間の日光を浴びた海は温かく、服が水を吸って多少重たかったが、クリフトは潮の流れに合わせて泳ぎだした。何もかも忘れて身体を動かしたい気持ちもあり、魔法の気配を感じるポイントまで一気に泳ぎ着く。
今夜は新月で星の光だけでは海の中を照らすには不十分だったが、クリフトは覚悟を決めて息を深く吸って海中へと潜った。

 海中は海面近くに光る夜光虫以外は真っ暗だ。自分が上に向かっているのか下に向かっているのかさえ、分からなくなるくらい、海は闇に包まれていた。
胸が苦しくならないよう、静かに息を吐き続け、クリフトは魔力を感じるポイントを目指す。身体から空気が減れば、その分体は自然と下へ下へと沈んでいく。
やがて、息苦しさを感じ始めたとき、そのアイテムが淡い緑の光を帯びて海底に転がっているのが見えた。
綺麗だな…クリフトはアイテムに手を伸ばす。祈りの指輪だ…いいお土産ができた。

 指がそのリングに掛かった瞬間、ふいに自分の脇を強い力で掴み上げられた。次の瞬間にはものすごい速さで海上に向かって引っ張り上げられる。あまりの速さに身体がついていかず、海面に顔が出た瞬間、クリフトは激しくむせ返った。
脇を掴んでいた何かがスッと離れ、クリフトは体を海面に浮かせようとしたが、眩暈がしてもう一度身体が海に沈みこんだ。
今度はシャツの襟元を掴み上げられ、再び海面から顔を出したクリフトはようやくその手の正体を認識した。

「ピサロさん…!?」

 同じく着衣のままのピサロが不機嫌な顔で目の前に浮かんでいた。長い銀髪が水面に揺れている。

211夜の海 4/8:2010/11/23(火) 23:47:08
「何のつもりだ。」
 クリフトの襟元から手を離したピサロが低い声で問い掛けてくる。それはこちらの台詞のはずで、クリフトはパチクリと瞬きをする。

「私に抱かれたのが死ぬほど嫌だったのか。」

 その言葉でクリフトはようやくピサロが何を思って自分を海上へ急浮上させたか理解した。入水したと思われたんだ!
「違いますっ!私は…」
 クリフトはハッと両手の平を海面に上げた。いけない。指輪を落としてきてしまった。思わず海中に潜りかけ、またピサロから猫のように襟首を掴み上げられる。
クリフトは指輪を見失った焦りもあり、思わず「いい加減にしてくださいっ!」とピサロの手を振り払った。
 ピサロの目が益々剣呑なものになり、一瞬で後悔したクリフトが言葉を発する前に、その手はクリフトの後頭部の髪を鷲づかみにした。

「ら、乱暴は止めてください。」
「そんなに海の中がいいんなら、満喫させてやろうじゃないか。」

 噛み付くようにクリフトの唇を奪ったピサロは間髪いれずにクリフトの頭を抱きかかえたまま海中へと沈めた。クリフトの悲鳴がピサロの口腔内で響くが、ピサロは無視してその口付けを深いものにしていく。鼻で息継ぎする事もできず、クリフトは必死でもがいたが、魔王の身体はビクともしなかった。
ピサロの唇が離れても、その手がクリフトのシャツの中へと潜りこみ、クリフトはゾクリと身体を震わせた。

 まさか。もう抱かないと言ったじゃないか。

 思わず水を吸い込み、クリフトの胸は悲鳴を上げる。強い苦しさと恐怖を感じて逃れようとするが、ピサロの両腕がクリフトを抱え込み、シャツを捲し上げて愛撫を繰り返していた。
息を詰めると身体に与えられる感覚を逃がす事が難しい。しかし、喘ぐ事もできず、急速に体内の熱を上げられてしまう。クリフトは気が付けばか弱く悲鳴を漏らしていた。
 再び口付けされ、空気が送り込まれる。クリフトはむさぼるように空気を肺に送り込んだ。ピサロは自分と同じく一度も海上に浮上していないはずなのに。
目の前に居る者は人間ではない。クリフトの心は不安と恐怖で支配される。こちらの苦しさはちゃんと伝わっているのだろうか。
 身体の脇を撫で上げられるたび、クリフトは思わず声を上げ、大量に空気を吐き出してしまう。定期的に空気を与えられるが、身体が追い上げられ息も上がっていく状況で、それは拷問だった。
海中では言い訳も懇願もできない。

 どうしよう、このままの状態で達してしまったら、確実に溺れ死ぬじゃないか。
 暴れて身体を動かす方が酸素を大量に必要としてしまう事は分かっている。それでもクリフトは闇の海の中で必死に自分を愛撫するピサロの手を止めようと探した。しかし、手は何度も空しく水を掻く。暗闇の中、ピサロの身体はいつの間にか自分の背後に回って自分を拘束している。
ズボンも下着も脱がされて、暗い海の中で何処へ行ったか分からなくなってしまい、クリフトの恐怖が息切れと共にピークに達した。その時、予告も無く前を擦られ目の前が弾ける。

 精を放った瞬間、クリフトは悲鳴を上げて大量に海水を飲み込んだ。身体からピサロが手を離しても、クリフトは再び海中で上下が分からなくなる錯覚を感じた。空気を求めて、浮力が働く方へ浮上すれば良いのだろうが、身体から空気が大量に奪われているせいで身体が浮上し辛いのだ。

 パニックに陥ったクリフトを見兼ねてか、再びピサロに腕を掴まれて海面へ引っ張り上げられた。ようやく外の空気に触れたクリフトは激しく咳き込み、必死に水を吐き出した。
海中に潜って数分ほどしか経過していなかったが、永遠に等しいほどの苦しさだ。
 自分1人で浮き続けられなくて沈みがちなクリフトを置いて、ピサロは自分の全身を水面から浮上させた。そのまま放置されるような気がしてクリフトは慌てて「待ってください!」と呼び止める。

「私は死のうとしていたわけじゃありません!祈りの指輪が落ちてて…」

 声を張ったつもりだが、実際にはかすれて弱々しいものになっていた。

212夜の海 5/8:2010/11/23(火) 23:50:44
「私には…まだまだやらなければならないことがいっぱいあるんです。死ぬなんて私は…」
「何をしたいんだ。」

 頭上からのピサロの問いにクリフトは水上でもがきながら答える。

「元凶を倒します。それはあなたも同じでしょう?」
「それが終わったら?」
「サントハイムの皆さんが戻ってきたら、国内の復興をしなければなりません。」
 溺れそうになりながら、それでもクリフトは悩みもせずに即答した。
「それが終わったら?」
「王に許してもらえるならば、勇者さんの村の復興をお手伝いします。」
「…それが終わったら?」

 クリフトはそのまま海に沈んでしまい、尽きそうな体力を振り絞って水上へ顔を出す。ピサロは表情も変えずに同じ場所に浮かんでクリフトを見下ろしていた。

「それが…それが終わったら。」

 クリフトは震える声で続けた。

「人間も、エルフも、天空人も、魔族も一緒に暮らせる世界を作るにはどうすれば良いのか考えます。」

 ピサロは驚いた顔をしたが、次の瞬間ふっと笑みを浮かべた。
 
「……一生掛かるな。」
「かも知れません。」

 再び沈みそうになったクリフトの腕を再び水面へ降りてきたピサロが掴む。呼吸がままならなくて落ち着こうとクリフトが深呼吸をした途端、ピサロから肩を抱かれて一瞬息が止まった。
自力で身体を浮かせ続けるのも辛いので、クリフトは抵抗する気力も無くそのままピサロに身体を寄せ、おずおずと両腕をピサロの両肩に添えた。ピサロから唇を寄せられ、クリフトはまだ肩で息を続けていたが、大人しく唇を合わせた。
ますます息が上がっていく中、ピサロの指が自分の下肢に伸びていく事も分からない。気が付いた時は下の入口をピサロの指がこじ開けようとしていて、クリフトを再び恐怖に陥れた。
 クリフトはピサロの唇から逃れると「無理です…」と弱々しく首を横に振ったが、ピサロはクリフトの耳に唇を寄せ、「力を抜け」と囁き、耳を甘咬みしてきた。
再びピサロを怒らせたくなくて、クリフトは必死に深呼吸を繰り返すが、やがて指が中に入ってきて、クリフトは再び呼吸困難に陥った。指の数が増え、クリフトが海上で震えるたびに、それに反応して夜光虫の青の光が輝きを増すのだが、クリフトはそれに気付く余裕すら無い。

 やがて指が引き抜かれ、片足を抱えられ、すぐ後に熱いモノがあてがわれても、クリフトはチラリとピサロの顔を見ただけで抵抗する気力すら湧かなかった。
自分の中が貫かれていく間、クリフトはかすかに声を漏らしながら目を閉じた。全てが入ってクリフトがこれから自分の身に起こる事に覚悟を決めた時、そのまぶたの上に温かいものが数秒押し当てられた。それが唇だと気が付き、驚いて目を開くのと、再びピサロに海に引きずりこまれたのはほぼ同時だった。

 恐怖で萎縮するクリフトの背にピサロの手が回る。ピサロは抱き合ったままの体勢で闇の海を潜り続ける。ただ海中にゆっくりと漂うだけの行為は思いのほか心地良く、クリフトも落ち着きを取り戻してピサロの背に手を回した。
こうして、ただ単純に抱き合うのは初めてだった。私も簡単だな、とクリフトは苦笑を浮かべ、ピサロを抱く手にそっと力を込めた。あんなにひどい目に遭ったのに、こんなことが嬉しいなんて。

 やがて、息が尽き、暴力的な苦しさの中、それでもクリフトはピサロから離れようとはせず、徐々に意識を失った。

213夜の海 6/8:2010/11/23(火) 23:53:33
 ピサロは自分のマントを砂浜に敷くと、そこへクリフトをそっと寝かせた。落ちていた流木に火炎の呪文を唱えると、やがて小さく爆ぜながら赤々と周囲を照らす焚き火となる。
自分の服を脱いだ後は、気を失っているクリフトの服も脱がせて、興味本位で集まってきたドラキーたちに突き出した。ドラキーたちは嬉しそうに服を咥えて焚き火の熱気の上でパタパタと飛び交い始めた。ちなみにクリフトのズボンも祈りの指輪も拾い上げてある。

 本当に、こいつは無自覚だ。ピサロはクリフトに回復呪文を掛けながら心の中で呟く。

 体調を崩したクリフトの服が破られているのを見たとき、ロザリーが息絶えた日を思い出してしまったことなど、こいつは気付きもしないのだろう。
私がどれだけ衝撃を受けたか。相手にどれだけの怒りを感じたか。それなのに、何でも無いことのように振る舞い、ごまかそうとする態度に無性に腹が立った。
あの時感じた怒り、動揺を全てぶつけ、クリフトが何度も気を失い、遂にはピクリとも動かなくなってしまうまで責め立てた。
 そして今も、夜の海にアイテムが落ちているからと平気で潜っていく。

 ロザリーのように塔の中に閉じ込めて誰からも傷つけられることなく護る事ができるのならば、今すぐにでもクリフトを連れ去ってやるものを。
 しかし、ヤツを倒すまではこいつの力が必要だ。回復にかけて、この男の右に出る者は居ない。そして、ヤツを倒せたとしても、こいつは自分の国を始め、ピサロたちが滅ぼした村や町の再建に尽力すると言う。その次はこれらの原因を作った種族の垣根さえも一生掛けて壊すと言う。
 こいつを閉じ込めても、満足するのは私だけだ。

 ピサロはクリフトの左手薬指に祈りの指輪を通した。関節でつっかえたが無理に押し込むと指の付け根まで指輪が進んだ。痛みを感じたのかクリフトがかすかに呻いて目を開いた。
自分が真っ裸で居る事に気が付いて慌てて身を起こすと、すぐそばに同じく全裸のピサロが流木に座っていることに気が付き目を丸くする。

「あの…私の服は…?」
 恐る恐る声を掛けてくるクリフトに無言で空を指差してやると、焚き火の上のドラキーたちに気が付いたようだ。自分のズボンや下着も空にたなびいているのを確認して、ホッと胸をなでおろしている。そして、今度は自分が寝ている下のマントに気が付いた。
「ピサロさん、これは…あなたのマントでは!?」
 クリフトは慌てて飛びのき、眩暈がしたのかへなへなと座り込んだ。
「死に掛けたんだ、寝ていろ。」
「はい…すみません。」
 クリフトは大人しく横になる。

「ありがとうございます。あの、心配させてすみませんでした。」
「いや、私も悪かった。しかし、指輪を取りに行く事が目的だったにしても危険なことには違いない。もう夜の海に入るのはやめろ。」
「昼間の海の方が私には脅威です。」
 クリフトは軽く笑う。「綺麗な海だと海底が見えるでしょう?高さに震え上がって泳げなくなるんです。」
「なるほど。盲点だったな。」
 ピサロは肩をすくめる。
「次からは私に言え。海の魔物に頼んでやる。」
「あ、ありがとうございます。」

「私に抱かれるのが嫌なんだろう?」

214夜の海 7/8:2010/11/23(火) 23:55:01
 クリフトは息を飲んで、いきなり話題を変えたピサロを見つめた。
「なんでそんなこと…。」
「昼間の会話は私の耳にも届いていた。」
「ええっ!?あの声と距離で聴こえたんですか。」
 次の瞬間、クリフトは昼間と同じく顔が一気に熱くなった。

「いや、その、私は…っ!」
「もう2度とお前を抱かない、と誓えば気が済むのか?」
 その言葉に、クリフトはふるふると首を振った。
「答えろ、クリフト。」
「わ…私は…。」クリフトは両手で自分の顔を覆った。

「怖かったんです。あなたに抱かれるのが。」

 クリフトは、振り絞るように吐き出した。
「力だって敵わないし、自分で自分の体がコントロールできなくなるし…
 何より、あなたに言われなくとも、散々いやらしく泣き叫んでしまう。
 自分が自分で無くなるようで…神官だというのに、どんどん快楽に弱くなっていって、情けなくて…。」

「性欲は魔族でも人間でも動物でもある。何を当たり前のことを嘆く。」
「私にとっては堕落です!それに…。」
 クリフトはハッと顔から手を離した。
「指輪が…。」
「それに、何だ?」
「えっ!?い、いえ、いいんです、何でも無いです。」
「言わねば、この間の薬をまた寝ている間に飲ませるぞ。」
 クリフトはビクッと体を震わせた。
「私は…そんな情けない姿を…よりにもよって、あなたに見られてしまって、
 軽蔑されるんじゃないか、嫌われてしまうんじゃないか、と思って怖いんです。」

 ピサロさんは軽く眉を上げた。「私がそんな体にしたのに?」
「ずいぶん、好き勝手してくれましたよね。」
「大体、お前がいちいち言葉に反応するからだ。流せば良いものを、わざわざ真正面で受け止めて傷つく。面白い。」
 クリフトは思わず起き上がってピサロと向かい合った。
「なっ…私がどれだけ辛かったか分かっているんですか。」
「これからは少し手加減してやろう。まぁ、しばらくは手加減具合が分からんかも知れんが。」
「これからって…?」
 ピサロが自分の肩に手を乗せてきて、クリフトは目をむく。
「死に掛けたんだから寝ていろって言いましたよね!?」
「回復呪文は掛けてやった。もう少しは大丈夫だろ。」

215夜の海 8/8:2010/11/24(水) 00:00:52
 反論を待たずにピサロはクリフトに深く口づけた。海水を散々含んだ口腔内を長く味わい、体を離すと、クリフトは涙で濡れた目で戸惑ったようにピサロを見つめた。
 そのまま体を押し倒して、ピサロがクリフトを見下ろすと、そこでクリフトは我に返り、慌てふためいて、
「や、あの、人の話を聞いてましたか?
 ひあっ!わ、私はこういうことが辛い、と言ってるんですよ。」
とピサロが愛撫を開始しても必死で両腕で相手の胸を押し返しながら訴えた。

「少しは慣れろ。これも特訓だ。」
「特訓の成果が出たって…確認する人はあなたしか居ないじゃないですか!
 止めてくださいっ!ドラキーが見てますっ!」

 クリフトが必死に放った言葉は、逆にピサロの顔に再度薄い笑みを浮かばせた。
「その代わり、終わったら宿で一緒にお茶を飲んでやる。それでは不服か?」

 クリフトは抵抗を止め、驚いたようにピサロを見つめる。
「いえ……それで十分です。」
 クリフトの目は恥ずかしげに伏せられ、ピサロを押し返そうとしていた手をパタンと降ろした。
「あの、お手柔らかにお願いします。」
 ピサロは微笑み、心の中で誓いを立てる。

 お前を監禁できないのならば、見えない檻に入れてやろう。
 お前が目的に向かって走り続けるのを止めた時、私はお前を連れ去って本物の檻に入れてやる。

 そうしてピサロはクリフトの指に光る祈りの指輪にキスを落とした。

216名無しの勇者:2010/11/24(水) 00:02:21
以上です。ありがとうございました。

217名無しの勇者:2010/11/24(水) 00:38:43
投下乙です
相思相愛!
甘く優しいピサロと見せかけて「本物の檻に入れてやる」とか
しっかり魔王らしくて惚れます
相変わらず一途なクリフトに萌えました
いつも良い味を出してる勇者くんにもいつか良い思いをさせてやってください

218名無しの勇者:2010/11/24(水) 01:24:33
乙です!
実はそろそろ新作が来るのではと2日ほど前から張ってました!
前作のすれ違いっぷりが歯痒くもあり可愛くもありましたが、
大団円おめでとうございます!!
これからも適当に嫁にいたずらしてくださいねw、魔王様!
そして勇者くんに幸あれ〜

219216:2010/11/25(木) 00:15:02
本当にありがとうございます。こんなに早く感想がいただけるとは
思ってもいませんでした。
またこれまで感想を書いていただいた方々もありがとうございます。
感謝感激です。拙い文章ですが、またいいクリフトのいじり方(?)、
勇者の活躍ッぷりを思いついたら書きに来ます。
その時はよろしくお願いします。

220名無しの勇者:2011/01/02(日) 23:01:15
>確認する人はあなたしかいない
本当、無意識に凄い発言するなぁw
お茶を飲んでチェスするようなほのぼのマターリの光景も見てみたい

221ロールプレイング 1/4:2011/01/31(月) 23:49:41
ピサクリです。
※215の続きです。
※会話中心。薬あり(?)。


 その日、クリフトは上機嫌で宿屋に帰ってきた。
 いつもより早い夕暮れ前にダンジョン探索が終わったので、ダメ元でピサロに部屋でお茶でも飲まないか、と誘ってみたところ、「構わん」とうなづいてくれた。それだけのことが、天にも昇るような気持ちになってしまう。
体の関係から始まってしまったからなのか、ただ、ゆっくりと話がしたい、というそれだけのことがこれまでできないでいた。
情事の後なら構わない、と言われた事もあったが、体力を根こそぎ奪われるような抱かれ方をされて、お茶を入れる気力など残っているはずも無かった。

 宿屋の女将にお湯を分けてもらい、部屋に戻るとピサロは約束どおりどこにも行かずに軽装になってベッドに腰掛けていた。

「お待たせしてしまってすみません。道具屋さんで薬草のことを相談していたら遅くなってしまって。
 でも、ハーブをおまけしてくれたんですよ。良かったら、今日はハーブティーにしませんか。」

 ピサロが無言でうなづくのを確認し、クリフトは上着を脱ぐと急いでティーソーサーとカップを二人分用意した。袋からハーブを取り出すと小さじ2杯分をティーポットに入れてお湯を注ぐ。
「優しいご主人でして。お年を召された方ですが、その分、とても薬草や道具に詳しいんですよ。
 トルネコさんと話が合うかも知れませんね。」
「ああ、あの逆さ絵のような店主か。」
「逆さ絵…って確かに頭よりも髭の方が見事な方ですが…。」

 カップにハーブティを注ぎ、クリフトは「どうぞ」とピサロに手渡した。ピサロは匂いを嗅ぎ、カップに口を付けた。
「パッションフラワーです。さっぱりして飲みやすいでしょう?」
 クリフトはピサロの向かいの位置の椅子に腰を掛け、自分もカップの香りを楽しむ。

「パッションフラワーはまたの名を時計草というんです。その名の通り、時計に良く似た花が咲くんですよ。とても不思議で綺麗な花なんです。
 これの効用なんですけど…。」
「パッションフラワー、か。」
 ハーブの説明を続けようとしたクリフトの言葉に重ねるようにピサロはポツリと呟くと、話し続けようとしたクリフトに微笑み
「もう少し甘くして飲みたいのだが?」
と穏やかな声で言った。
「あ、そうですね!気が付きませんでした。蜂蜜をもらってきます!」

222ロールプレイング 2/4:2011/01/31(月) 23:52:24
 クリフトはピサロのまさかの甘党発言にいささか驚きながら、慌てて席を立つと部屋を飛び出した。

 そうか、甘いの好きなんだ。お茶受け代わりに焼き菓子でも買ってくれば喜んでもらえたのかな。またゆっくりお茶ができる機会があればきちんと用意しておこう…。

 宿の女将に少しだけ蜂蜜をもらうと再び部屋に舞い戻る。
「もらってきました!どうぞ。」
「わざわざ、すまないな。」
 ピサロは優しく微笑み、蜂蜜の入った小瓶を受け取ったが、そのままそれをサイドテーブルに置いた。
「甘くしなくてもそれなりに美味かった。折角取りに行ってもらったんだが。」
「ああ、そんな。別に構いません。美味しく召し上がっていただいたのなら。」
 クリフトは手を振って、再び椅子に腰掛ける。カップを下の皿ごと手に取ると、ハーブティを何口か口にした。ああ、落ち着くなぁ…。

「クリフトは、想像力は豊かな方か?」
 ふいにピサロが口を開き、クリフトはカップから口を離した。

「そうですねぇ…昔は色んな物語を読んだり、神父様から絵本を読んでもらったりしましたから、どちらかと言うと想像力は人一倍強いかも知れません。
 ただ、不安症なもので、後ろ向きなことを考えてはよく姫様やブライ様に怒られていますが。」
「では、今からゲームをしよう。私が今から物語を話すから、
 お前はその主人公となって、様々なシーンでどのように行動するか答えていくんだ。いいな?」
「ええ。面白そうですね。」
 クリフトは少し前傾姿勢になりつつ、ピサロがこれから紡ぎだす物語の始まりを待った。

「主人公の名前は…クリフトのままでいいだろう。舞台はここだ。魔王・ピサロとお茶を飲んでいる。」
「今のところ、想像力はいりませんね。」

「お前はふと、身体に異変を感じる。体内が熱くなり、体の自由が利かなくなる。
 どうやら媚薬入りのお茶を飲んでしまったらしい。」
「えっ。」

 クリフトは自分のカップを見つめた。

「ピサロはただ黙ってこちらを見つめているだけだ。
 そう言えば自分はお茶を入れた後、席を外し、何かを入れる機会を相手に作ってしまっている。」
 ピサロは微笑を浮かべたまま、淡々と話し続ける。

「……入れたんですか?」
「ゲームだと言ってるだろう。」
 間髪入れずに答えられ、クリフトはまたカップに視線を落とした。茶色がかった透明なお茶が残っている。

223ロールプレイング 3/4:2011/01/31(月) 23:54:25
「ピサロは何も言わないし、何もしてくれそうも無い。お前はこれからどうする?」
「あの、足も立たなくなっているんでしょうか?」
「いや、ふらつきながらも何とか歩行は可能だ。手も震えはあるがとりあえず動く。」
「ならば、道具袋から毒消しを探します。」
「道具袋は隣の部屋の勇者が持っている。」

 グッとクリフトは詰まった。以前、実際に媚薬を誤飲したとき、勇者は泣いて拒否するクリフトを散々弄り倒したことがある。

「ど…道具袋はやっぱり止めて、ミネアさんを探します。」
「なるほど。やはり先日の首の跡の下手人は勇者の小僧か。」
「ゲームなんですよね、これ!?」
 慌てて言い繕おうとしたクリフトを鼻で笑い、ピサロは「まぁ、いい。部屋を飛び出したお前は、踊り子・マーニャに出会った。」と話を続けた。
「ミネアさんを見なかったか、と確認させてください。」
「道具屋に行った、とマーニャは答えた。マーニャはふらついている上に顔が赤いお前を不審がっている。」
 カチャカチャカチャ…とカップとソーサーが小刻みに鳴る音で、クリフトは初めて自分の手が震え始めていることに気が付いた。これは、恐怖故か、それとも…。

「『一緒に行ってあげようか』とマーニャは声を掛けてくれたが、お前はどうする?」
「お、お断りして、顔を伏せて宿屋を出ます。」
「道具屋まで歩くのか?」
「ええ…あの、身体はそれまで持つのでしょうか?」
「持った。クリフトはフラフラになりながら道具屋に着く。扉を開けると例の逆さ絵の店主が目を丸くして立っている。
 『どうしましたか、お客さん?』」
「『毒消しをください!!』」クリフトは台詞を言いながら必死にピサロを見つめる。

「生憎、店頭のが切れてしまい、在庫が奥の倉庫にあるようだ。
 店主は薬が回って立てなくなっているお前を心配して店の奥に入って待つように言っている。どうする?」
「ご主人に甘えます。」

「店主はベッドを用意してくれた。お前はもう、足腰が立たなくなって赤く火照った顔でベッドに倒れこむ。」

 ピサロの表情は、微笑を浮かべたまま変わらない。いや、薄笑い、と言うべきか。

「店主はお前の肩をつかんでこう言った。
 
 『薬はよく効いたみたいだな。今から楽しませてもらおうか。』」

224ロールプレイング 4/4:2011/01/31(月) 23:57:08
「えええっ!?そんなっ!」
 クリフトは思わず立ち上がった。

「あの道具屋のご主人に限ってそんなひどい事をされるはずがありません!!」
「それが道具屋の店主の裏の顔だったのだ。」
「でも、ハーブに異変はありませんでした!」
「宿の女将もグルだったんだ。」
「ええ!?まさか、お湯の方に薬が入っていたんですか!あんなに優しい方なのに…!」

「そうやってパニックになっている間に、お前はどんどん逆さ絵に裸に剥かれていくんだ。
 泣いて叫んでも親父はお前の身体を弄んでいく。」
「全力で抵抗します!」
「しかし、歩き回っている間に媚薬は完全に体中を巡ってしまった。お前の抵抗は赤子の力に等しい。」
「そんな…。」

 クリフトは途方に暮れて力無く椅子に腰を下ろした。

「私は…誰にも助けてもらえないのですか…?」
「助けて欲しいのか?」
「助けてください…このままではあまりにも…。」
「よし、それでは、そこに私が登場することにしよう。店主は私の一撃であっさりと気を失い、私はお前に服を着せて宿屋へと抱いて帰る。
 お前をこの部屋に戻した私はハーブティを入れて落ち着くように言った。
 お前の身体は逆さ絵に熱を上げられたせいでなかなか鎮まらない。」

 沈黙が部屋に訪れる。舞台が再びこの部屋に戻ってきたことで、まるで今がその物語の状況のような錯覚さえ覚えてきてクリフトはカップをサイドテーブルに置いた。

「『……どうぞ、抱いてください。』」
「『最初からそう言えば良かったんだ。』」


「あの、私、何かピサロさんの機嫌を損ねることをしたんでしょうか。」
 ベッドに移動してから恐る恐るクリフトはピサロに尋ねた。
「パッションフラワーの効用くらい知っている。安眠効果があるんだろう?」
「ええ…それが何か…?」
「お前は私と同室で居ながら、お茶を飲んだ後は眠るだけだ、と無意識にでも思っていた、ということだ。
 考えを改め、これからも自分から進んで私に抱かれるように鍛え直してやろう。」

 服を脱ぎながらパッションフラワーの名前の由来を思い出し、クリフトは道具屋の店主を恨んだ。

 パッションフラワー……“受難の花”。

225名無しの勇者:2011/01/31(月) 23:58:12
以上です。ありがとうございました。

226名無しの勇者:2011/02/04(金) 20:01:52
ピサロの誘導尋問の手際のズルかっこよさと、それに引っかかるクリフトの可愛さでニヤニヤしました

227名無しの勇者:2011/02/04(金) 20:50:25
ピサロマジエロ魔王
いいぞもっとやれ

228名無しの勇者:2011/02/17(木) 01:30:45
ストーリーの面白さにめっちゃ引き込まれました。
いいぞもっとやれ

229復讐 1/8:2011/05/31(火) 01:00:10
ピサクリ前提の勇クリです。
※無理矢理・拘束・勇者が黒いです。すみません。
※>215の続きですが単独でも読めます。

 僕が旅立つきっかけとなったあの最悪の日、僕は幼馴染に部屋に閉じ込められ、何もできないまま、

 その幼馴染を始めとするありとあらゆる大切なものを殺され、破壊されてしまった。

 ほとぼりが冷めてから、ようやく開いた扉の向こうで僕が見たのは変わり果てた村の姿だった。
 何故、僕も連れてってくれなかったんだろう、としばらく村を歩きながら、ぼんやり考えてたら、あの娘がお気に入りだった帽子が転がっているのが見えた。
 最後のか細い望みさえ、途絶えたような気がして僕はそこで崩れるように座り込んだ。

 そうして、僕は汚れてしまった羽根帽子に誓ったんだ。

「絶対に許さない。この村を滅ぼしたやつを世界の果てまで追い詰めて、必ず同じ苦しみを与えてやる。」

 そいつの名前はデスピサロ。巷で噂の魔王様だった。魔王相手なら、とことん追い詰めたって、世界中が許してくれるよな。
 旅を続けているうちに、踊り子と占い師の美人姉妹を初めとして、共通の目的を持った仲間が続々増えて、僕は単純に嬉しかった。
 サントハイム組なんて城中の人間が消された、と言う。その中でも若い神官の兄ちゃんが僕の話に共感して涙してくれた。
 彼や仲間たちはこの強烈な孤独を埋めてくれたように思えたんだ。僕のこの気持ちを少しでも共感して理解してくれる。僕は正直、彼らに救われた。
 全てを失った僕にもこうして大切な仲間ができた。これが再び奪われたらどんなにか辛いだろう。
 そんな時にイムルの村であの夢を見た。だから、デスピサロへの報復として、ロザリーを見つけ出して殺してやったらどうかと思ったんだ。

 分かってるよ。でもその時はそう思っちゃったんだ。ロザリーヒルで彼女を出会ったとき、もし僕一人なら彼女を殺していただろう。
 だけど、デスピサロを追っている間に、他の人間が彼女を殺してしまった。イムルの村でその光景を見たとき、ロザリーには悪いけど、僕はいい気味だとさえ思ってたんだ。
 だけど、お人好しの神官が言ったんだ。

 『欲に走った人間と、愛のためにわが身を滅ぼしても復讐をちかう魔族。私にはもうどちらが正しいのか分からなくなりました。』
 『人間の犯した罪は私たち人間がどうにか罪滅ぼしをしたいです。』

 僕は混乱した。クリフトは僕に共感してくれたけど、ロザリーやピサロにも共感しちゃってた。クリフトの言葉が正しいのは分かる。
 だけど、僕の復讐心は治まらなかった。ロザリーは死んじゃったのに。

 ロザリーは復活した。でも、さすがにもう殺せない。シンシアが重なっちゃうし。あんな辛い目に会った娘に何もできないよ。
 だから僕は、次にピサロの大切な人は誰だろうと思ったんだ。ピサロさえも仲間になったというのに、僕は何も成長できてなかった。
 平気な振りして、ずっとピサロを観察してた。彼がロザリーの他に大切にしているものは何だろう、と思って。
 そこへ、共感を通り越して、魔王に恋心を持ってしまった神官が現れる。僕は彼を煽ってみた。

 不思議と上手くいったよね。魔王は神官に対して愛情を持ち始めたようだ。


 では、この神官を目の前から奪ってしまえば魔王を苦しめることができるんじゃないの?

230復讐 2/8:2011/05/31(火) 01:03:54
 全裸で横たわったクリフトが戸惑った顔で自分の体の上に乗っかっている僕を見上げている。いきなり仲間にラリホーマ掛けられて、目が覚めたらベッド上で両腕を拘束されてるんだから動揺するのも無理は無い。
クリフトは首を仰け反らせて自分の両腕を縛り付けているロープがベッド柵に括り付けられているのをもう一度確認すると、今度ははっきりと困りきった顔で僕を見つめた。

「あの、確かに私は勇者さんからすれば許し難い事をしてしまったのかも知れませんけど、ここまでされなくても…。」
 最もなことをクリフトは訴える。クリフトの大腿部の上には僕が腰掛けて押さえ込んでいるから、身動きは取れないはずだ。


 クリフトが考えている“僕が許し難いこと”というのは、今日、探索したダンジョンの中で、自分が大怪我している事を黙っていた事だ。
 階段を下りようとしたところでモンスターの群れに襲われ、応戦している最中、ドン、と鈍い音が階下から響いた。僕がモンスターを斬り捨ててようやく音がした方を覗き込むと、クリフトが階段の下でうずくまっていた。慌てて階段を駆け下りると、僕に気付いたクリフトがよろめきながら立ち上がる。
 心配する僕に「ちょっとつまづいちゃって」と笑ってごまかしたクリフトは、回復呪文を詠唱して腕についた打撲を癒した。
クリフトは自分が怪我をしても他者を優先する癖があるから、僕は「大丈夫です、行きましょう。」と笑顔で戦闘に戻っていく姿を見て、安心したんだ。
 まさか、服に覆われて見えないところを全く癒して無かったなんて、夢にも思わなかったから。

 その後、宿屋に戻った時にクリフトはミネアさんの部屋に行って回復を頼もうとしたようだけど、ミネアさんも魔力が残っていないことを知ると、逆にミネアの体調を心配した挙句、大丈夫だと分かると、また逃げるように部屋に戻ってしまったらしい。
なんでこの事を僕が知っているかと言うと、ミネアと同室だったマーニャがあきれた顔で食堂で食事を摂っていた僕のところへやって来て、
「あのバカ神官、自分の怪我を隠してるわよ。誰かお仕置きしてから治してやってよね。」と教えてくれたからだ。
 離れた席に座っていたピサロがチッと舌打ちし、席を立とうとしたところを僕が止めた。

 僕がクリフトの部屋をノック無しで入った時、彼は軽装に着替えて床の上に両膝を付き、聖書に手を置いて祈りを捧げているところだった。
こちらに振り向き、「今日は勇者さんと同室ですか」と微笑みかけてくる。『ピサロと一緒じゃなくて残念だったね』と言いそうになり、僕はひとつだけ咳払いをした。

「腐った死体と間違いそうなほど顔色が悪いんだけど。」
「ひどいですね。せめて“死体”で止めてください。」
 クリフトは顔を逸らして聖書を棚に置くと、ベッドに潜り込もうとする。

「少し疲れただけです。もう今日は休ませていただきますから。」
「クリフト。」
「何ですか。」
「服脱いで。」

 ピタ、とクリフトの動きが止まる。ベッドを見つめたまま、「…嫌です。」と呟いた。

「リーダーは僕だ。命令に従わないなら、ずっと馬車に入っててもらうよ。」
 クリフトはやっと僕の方に振り向いた。しばし口を真一文字にして沈黙していたが、やがて、肩を落とすと小さく、「すみませんでした。」とうなだれた。
「いいから、まず服を脱いでよ。一旦眠って魔力が回復してから治すつもりだったんだろうけど、そのままじゃまず眠れないだろ?」
 ばれたというのに、クリフトの動きが鈍い。しばし躊躇したあと、モゾモゾと上着を脱いで上半身裸になった。
色白の地肌が、青やら赤やら土色やらの打撲痕で背中も腹部も鮮やかなほど彩られている。
「…よくこれで我慢してたね。」
 想像以上の怪我に思わず感心すらしてしまう。クリフトは益々小さくなり、力無くベッドに腰掛けた。

231復讐 3/8:2011/05/31(火) 01:05:57
「背中が色とりどりになってるよ。これが意味してること、自分で分かってる?」
 僕は回復呪文をかけながら問い掛けると、クリフトはこくりとうなづいて「階段からモンスターに落とされたから…。」と小声で呟いた。
「あれって階段から落ちてたんだ。よく耐えたな!…っていやいや、そうじゃないだろ。階段落ちだけじゃないだろ、これ。」
「打撲の色が違うのは、怪我をした時間がそれぞれ違うからです。」
 クリフトは益々消え入りそうな声で呟いた。
「正解。つまりこれって今日は最初の戦闘から自分に対して回復呪文をほとんど掛けて無かった、ということかなぁ?」
 回復呪文が早速効いてきて、打撲痕が綺麗になっていく。クリフトは痛みが消えたはずの背中をますます丸めた。
「申し訳ありませんでした…。」
「なんでこんなことしたのか聞いていい?まさかしょっちゅうやってるんじゃないよね?」
 ひとまず全ての打撲を消して、僕が少し強い口調で言うとクリフトは慌てて首を振り、「そんなにはやってません!」と語るに落ちる台詞を吐いた。
「じゃあ、時々やってるわけだ。なんで?魔力を温存するため?」
「あっ…いえ、その…。」
「で、今日はなんで節約モードに入ってたの?僕が命令したわけじゃないよね?」
「姫さまが…。」
「アリーナが自分の怪我治すの我慢しろっつったの!?」
「違います!姫さまはそんな事おっしゃったりしません!」
「じゃあ、アリーナ姫がどうしたんだよ。」
「私が勝手に判断したことなんです。」
「前置き長い。いいから早く吐いちゃって。」

「『今日はダンジョンの最奥まで行きたい。』」

 僕は全てを理解して天を仰いだ。「それ、アリーナの言葉?」
 クリフトがこくりとうなづく。
「その言葉に、クリフトは縛られちゃったわけだ。
 姫さまが喜んでくれるなら、高いところから階段落ちしても耐えてみせるって?」
 クリフトは怯えた顔で下を向く。
「さすがに、今日は気が付いたら魔力が本当に残ってなくて。
 自分がどれだけ愚かなことをしたのか、分かっているつもりです。」
「ダンジョンの最奥で回復役に死なれる方が辛いんだけど。
 それに、このことをアリーナが知ったら、自分自身を責めるんじゃないの?」
「姫さまには…!」
 うな垂れていたクリフトがすがるように僕を見上げる。
「言わない、言わないよ。」
 僕は肩をすくめた。クリフトはやっと安堵して笑顔を浮かべる。僕はその顔面に素早く唱えたラリホーマを浴びせてやった。


 そして、今に至る。

232復讐 4/8:2011/05/31(火) 01:08:14
「いや、普通、階段の上からモンスターに突き落とされてたなんて思わないもんね…。」
 僕がため息をつくと、クリフトが口をへの字にして少し不満気な表情をした。

「下のフロアまでの高さに眩暈を感じたところをやられてしまったんです。
 でも、黙っていたのは申し訳なかったですが、縛られて責められるほど悪い事をしたとは思えません。」
「うん。クリフトの言うとおりだ。罰を与えようと思ってやってるわけじゃないよ。」
「じゃあ、どうしてこんなこと…」
「クリフトを抱きたいから。構わないかな?」

 僕が単刀直入に言った言葉に、クリフトはポカンとこちらを見つめ返したけど、次の瞬間にみるみる頬を紅潮させた。

「何を馬鹿なことを!いきなりそんなこと言われて『どうぞ』と言えるはずがありません!」
「経過を語るより結論から言った方が早いかと思ったんだけど。」
「結論から話されたって理解などできませんよ!」
「ここに至る過程を聞いたら、クリフト後悔すると思うけど?」
「訳が分からないまま拘束されて…その、事に及ばれるよりはマシです。」
「えー、でも、ちゃんと話すと長くなるよ?」
「ちゃんと聞きますから。あなたは理由も無くこんなことする人じゃありませんよ。」
 クリフトの表情が途方に暮れたように不安げに揺れた。話次第では僕を説得できると思っているのか。なんて甘い人だ。
僕は素早く思考を巡らせたが、クリフトを傷つけず、彼を納得させられそうな上手い言い訳を用意できなかった。

「…えーと、じゃあ、隙あらばと虎視眈々と狙っている青少年の前で、クリフトが裸になったり涙目になったりするから悪い。
 お仕置きも必要なので やっちゃいます、というのはダメ?」
 僕はクリフトの脇腹を撫で上げる。クリフトは「ひぁっ」と息を飲んで、自分の反応に赤面した。
「待ってください!あなたが裸になれ、と言ったんじゃないですか!
 ちょっ…ひっ!こ、こういう行為は軽い気持ちでできることじゃありません!」
「軽い気持ちからなんかじゃないって。」
「だからちゃんと理由を話してくださいと言ってるじゃありませんか。ふぁっ…や、やめてってお願いしてるのにっ!」
「理由、理由って…本気で話したら結構重い話になるよ?」
 僕は手を止め、クリフトを見つめる。
「お願いします。話を聞かせてください。」

 僕はふぅ、と息をつき、本腰を入れてクリフトを抱こうとする理由を語ることにした。僕はベット脇に置いてあった剣を手に取って鞘から抜く。
クリフトが不思議そうに見上げている。

「僕が旅立つきっかけとなったあの最悪の日、僕は何もできないまま、僕の大切なものを殺され、破壊されてしまったって言ったよね。」

 クリフトの顔色が変わる。だから聞けば後悔すると言ったのに。
 僕は剣の柄を握り締め、全てをぶちまけてやった。

233復讐 5/8:2011/05/31(火) 01:09:46
 あの日の衝撃も。仲間への感謝も。ピサロへの復讐心も。ロザリーに抱いた殺意も。自分の成長の無さも。
 クリフトは瞬きすら忘れたように、じっと僕を見つめていた。

 そして、今、クリフトに対して抱いているドス黒いマグマのようなこの思いもぶつける。

「ほら、魔王は神官に対して愛情を持ち始めているみたいじゃない?
 だったらさ、この神官を目の前から奪ってしまえば魔王を苦しめることができるんじゃないかな?」

 僕は剣を振り上げた。クリフトは息を飲んで僕を見上げている。僕は剣をクリフトの胸目掛けて振り下ろす。


 強い口調でクリフトが僕の名を叫んだ。

「…大丈夫だよ。冗談だからさ。」
 僕は剣を寸止めし、そのままベッドに繋いであったロープを切った。僕が微笑むとクリフトは両目に涙を湛え、両手を拘束されたまま腹筋だけで起き上がってきた。

「ごめん、怒らないでよ。まさか本当に殺……。」
「何故、それをもっと早く私に言わなかったんですか?」

 クリフトの真剣な眼差しに僕は言葉を切る。
 殴られるか、と身構えた僕を、クリフトは両手を繋がれた状態のまま、その両腕の中に僕の頭をくぐらせ、そのまま僕を抱きしめてきた。

「ク、クリフト!?」
「あなたをそんなに苦しめていたなんて知りませんでした。お許しください…!」

 僕の頭を抱き締めて、クリフトが僕の耳の側で声を震わせる。
「私を殺したところで、あの人にどれだけ響くかは分かりません。でも、それであなたの気持ちが晴れるのなら、今すぐは無理ですけど全てが終わった後で私を…。」
「僕がクリフト殺せるはず無いだろっ!それぐらい分かれっ!」
 僕はクリフトから身を離す。それでも僕の顔はクリフトの腕の中にあったから、すごく至近距離にクリフトの顔があった。
「クリフト殺しても、今ならあいつ、すぐ生き返らせちゃうしさ。」
 僕はクリフトの瞳を見つめる。目を赤くして涙を堪えているクリフトに、愛おしさを感じて唇を重ねた。クリフトがビクリと体を震わせる。
逃げようとするクリフトを押さえつけ、悲鳴に近い制止の声を上げようとしていた彼の口腔内をゆっくりと味わってから唇を解放してやると、クリフトは大きく息を吸って僕を見つめ返した。

「えっと、あの…」
 クリフトは視線をさ迷わせた。「この行為はいったいどういうつもりで?」
「抱くと言っただろ?“奪う”手段は何も殺すだけじゃない。」
 僕の言葉にクリフトはこぼれそうなほど目を大きく見開いた。
「やっ…!」

234復讐 6/8:2011/05/31(火) 01:11:10
 クリフトは拘束された両腕を僕の頭から外すと、僕から逃れようと暴れだす。
「そんな理由で私のことを…!?離してください!」
「僕には必要な事なんだ。それに僕はピサロよりも前からクリフトの事ずっと抱きたいと思ってた。」
「私の意志はどうなるのですか!こんな事をしても何もなりません!!止めてください!」
 僕はクリフトを押さえつけ、顔を背けるクリフトのうなじに吸い付いてやった。
「ひぁっ!」
 クリフトが悲鳴を上げ、「本当に…いい加減にしてください!」と尚も逃れようと抵抗を止めない。僕は痺れを切らし、「なんでだよっ!」とクリフトの両肩を掴んだ。
「なんで、ピサロは良くて僕にはダメなんだ!ピサロにだって最初は無理矢理やられたんだろ!?」
 クリフトははっきりと悲しそうな表情をしたが、すぐに首を振った。
「違います、望んで抱かれたんです。あの人を繋ぎとめたかったから…!」

「僕はどうなってもいいの!?」
「あなたはそれほど弱くないでしょう?」
「クリフトに何が分かるんだ!!」
 僕が怒鳴っているのに、相手は今度は労わるように見上げている。その目を見ていられなくなって、僕は顔を逸らした。
「…僕だって傷付いてる。みんな家族や大切な人がそばに居るじゃないか。だけど、僕は独りだ…!」
「勇者さん、それは……」
「違わない!本当は僕はあの日からずっと独りのままだったんだ!」

 クリフトが息を飲んで僕を見つめる。動きが止まったのをいいことに、僕はクリフトへの愛撫を開始した。胸や脇を撫で上げ、震えるクリフトの
下肢へと愛撫の手を伸ばす。僕がいきなりクリフトのものに指を絡めると、大きくクリフトが震えた。縛られた両手を自分の口元に押し付け、必死に声を殺す様子に逆に煽られ、僕の行為はエスカレートしてしまう。
 僕がクリフトの中に指を突き入れても、クリフトは「ひっ」と息を飲んで目を閉じ、浅い呼吸を繰り返すだけだった。指を動かしても、声を堪える気配はあるけど、抵抗する様子も無い。
ふと気が付くと、クリフトは泣き腫らした顔で、すがる様にどこか一点を見つめていた。僕はクリフトの視線の先を追いかける。クリフトが見つめていたもの、

 それは聖書だった。

 僕が指を抜くと、クリフトはびくりと身体を震わせて戸惑ったように僕を見た。僕は手をシーツで拭いてから聖書に手を伸ばした。ページを繰り、心当たりのある文章を探し出す。

“もしあなたの周りに飢えている者がひとりでも居るならば、その者に対して心をかたくなにしてはならない。
 また手を閉じてはならない。
 あなたは心から彼に与えなければならないし、それに対して悩んでもいけない。
 その為に我らの主は、あなたのすべての働きと手のわざを祝福してくださっているのだ。”

235復讐 7/8:2011/05/31(火) 01:12:40
「…これか。」
 僕はため息をつき、クリフトを見下ろした。体の熱を中途半端に煽られた挙句、突然放り出されたというのに、クリフトは必死で熱を鎮めようと深呼吸を繰り返している。
続きをして欲しい、と強請っても来ない。そんな発想は無いのだろう。彼はひたすら受け入れるだけだ。全ての罪悪を許し、癒し、与えるために。


「アリーナの言葉に縛られたように、今度は聖書の言葉に縛られるわけ?」
「……。」

 クリフトは上気した顔で不自由そうになんとか起き上がる。クリフトは拘束された両腕のまま、祈るように両手の指を組み合わせている。
「縛られたわけでは……」
「縛られたんだろ!?僕が“飢えている者”だから!!哀れだと思って……」

 バンッ!と僕の頬をクリフトが拘束された両手で殴った。衝撃でよろけた僕を、クリフトがにらみつける。

「あなたが馬鹿だからですよ!今まで一緒に旅をしてきたんです。
 誰一人としてあなたを一人になんかさせやしませんっ!!
 考えれば分かるでしょう!?全てが終わっても、あなたの側から誰も離れていくことなんか無い!!
 自分のことだけ考えているのはあなただけだッ!!」

 クリフトの声が震えている。彼の頬を濡らす涙を、彼は縛られた両手の甲でなんとか拭っているが、涙は両目から溢れてきりが無いようだ。

「どうしてそんな馬鹿なことを思うのか…目で見えるものしか信じられないのなら、カタチで与えるしか無いじゃありませんか……。」

 クリフトの言葉に、僕は目が覚めた思いだった。「ごめん、クリフト。」
 目頭も熱くなってきて、僕は気恥ずかしくて目を逸らした。

「……本当は僕が独りじゃない、ってことも、ピサロだけが悪いんじゃないことも、解ってるんだ。
 あいつもそれなりに苦しんだ事も解ってる。だけど、さ。羽根帽子に誓ったあの日から一歩も動けないんだ。」

 僕が呟いた言葉に、クリフトはこくこくとうなづき、再び僕に手を伸ばし、不自由そうに両手を僕の頬に添えて囁くように回復呪文を唱えた。頬の痛みが消える。
「それ、やっと回復してきたMP使っちゃったんじゃないの?」
「私の傷はあなたが癒してくれましたから、おあいこです。見える傷なら、こうしてすぐに治せるんですが。」
「MPがあればの話だろ?」
「返す言葉もありません。」
 クリフトは泣きながら笑った。

「私は、サントハイムが再び活気に溢れたら、王の許しを得て、あなたの村の再興を手伝うつもりでいました。
 押し付けがましく思われるのではないか、と思って黙っていたんです。でも、きちんとお話しておけば良かったですね。」
「……ホントなの。」
「ホントです。」
「参ったな。」今度は僕が泣き笑いをする番だった。「僕1人が馬鹿みたいじゃないか。」

236復讐 8/8:2011/05/31(火) 01:14:19
 僕の声が震えていることに気付いたのか、クリフトはまた両手を僕の頭にくぐらせようとしかけて、ぴたり、と動きを止めた。
キスされたら再び逃げられなくなる、とさすがに学んだらしい。逡巡した気配がして、そのままクリフトは両手を下ろすと、僕のそばに寄り添ったままポスッと僕の肩に自分の首を置いた。

「解っていただけて嬉しいです。もう、二度とこんな真似しないでくださいね。」
「……ねぇ、クリフト。」
「はい。」
「それさ、すごく逆効果。」

 クリフトが、きょとんとして身体を離す。「えっと、何がですか?」
「僕、やっぱりクリフトが取られたことが一番応えたんだと思うよ。自分で煽っといてなんだけど。
 ま、今日のところはタイムリミットっぽいから止めとくけど。」

 僕はもう1度クリフトの唇に軽くキスをしてクリフトを固まらせてから、ベッドから降りて扉に向かう。
 我に返ったクリフトは慌てて「あの、これ!!」と自分の両腕の拘束を僕に向けた。

「この趣向を横から奪われるのも癪なんだけど、仕方ないよね。」

 僕が扉を開けると、そこには無表情でピサロが立っていた。クリフトが凝固した。

「魔王のくせして律儀だな。きっちり約束の1時間だ。少しは僕に遠慮した?」
「あまりこいつを悩ませるな。あとで引きずって難儀だ。」
「誰のせいだよ…。」
「行かないで下さいっ!」

 クリフトが僕に追いすがるように声を掛ける。この後、ピサロと2人っきりになった時、自分の身に何が降りかかるか痛いほどに読めるのだろう。クリフトは顔面蒼白だった。

「何だ、今日は2人の相手をしてくれるのか。」

 ピサロの言葉にクリフトは僕と魔王を交互に見上げ、次の瞬間、激しく首を横に振った。
 僕は苦笑してピサロの脇を通り過ぎる。

「お前の復讐は受けて立つ。しかし、全てはこの戦いが終わってからだ。」

 ピサロはすれ違い間際に言い放った。


 僕が部屋を出た時にクリフトが拘束を解いてくれるよう、ピサロに必死に訴えているのか聴こえ、扉を閉めた瞬間、クリフトのかすかな悲鳴が漏れ聴こえた。

「終わってから、なんて待てないかもよ。」

 僕は小さく呟いて、部屋を後にした。

237名無しの勇者:2011/05/31(火) 01:16:40
以上です。…すみません、上げるつもりは無かったんですけど
久しぶりでうっかりやってしまいました。ごめんなさい。

238名無しの勇者:2011/06/05(日) 15:54:52
久々にチェックしたら新作来てるじゃないですか!来てるじゃないですか!
この後の話が知りたいです、乙です

239名無しの勇者:2011/06/05(日) 21:37:48
クリフト最低

240名無しの勇者:2011/10/28(金) 00:54:40
今さらドラクエ4をプレイしてすっかりクリフトにはまってしまった
クリフト可愛いよクリフト

241告白 1/5:2012/01/31(火) 22:20:36
勇クリで若干無理矢理&寸止めです


「さ、クリフトくんに何したのか、ゆっくりと聞かせてもらいましょうか。」
 宿屋の一室で踊り子・マーニャが仁王立ちで鉄の扇の先を僕に向けている。マーニャが部屋の扉を背にしているのを見て僕は逃げ場が無いことを悟り、とりあえず笑ってごまかしてみることにする。
「ごまかそうったって無駄よ。昼間のアリーナとの会話は何?」
「ああ、あれのことか。冗談だってば。じゃれ合ってたんだよ。」
「なんで歳が近い真面目っ子の神官があんたとの同室を嫌がるの。」
 マーニャが形の良い眉をひそめる。やっぱ、引っかかったのはそこですか。確かに、今朝、クリフトは僕との同室を拒絶しようとした。
「気が合わないんだろ。」
「それなら逆にあんたが積極的に同室になろうとしているのも気になる。」
「それは……。」

 どう言い訳したもんか。それとも全てぶちまけようか、と迷っている時、コンコン、と控えめに扉をノックする音が聴こえた。良かった、話を逸らせるかも…。

「あの、マーニャさんいらっしゃいますか。クリフトです。」

 扉の外の声に僕は息を飲む。マーニャは軽く眉を上げたが、次の瞬間には「こっちへ!」と僕を小声で誘導し、クローゼットの中に僕に身を隠すよう指示し、僕は素直にそれに従った。
「開いてるわよー。どうぞ入って。」
 マーニャが明るい口調で言うと、扉からクリフトが周りを伺いながら部屋に入ってくる。クローゼットの中は薄暗く、隙間からクリフトとマーニャの姿が良く見えた。
 椅子に腰掛けたクリフトはマーニャが入れたワインを固辞しようとして結局押し切られ、恐る恐る何口か飲んでいる。

「で、何か話があるんでしょ。どうしたの。」
「あの……。」
 散々逡巡して話を切り出せないクリフトにマーニャは肩をすくめた。
「勇者くんとのことなんでしょ。」
 肩をビクンと震わせてクリフトがマーニャを見つめる。
「同室になりたくないって、ブライさんとかトルネコのおっちゃんはケンカでもしたんだろう、と思ってるみたいだけど、
 物腰の柔らかそうな神官さんは、魔王を倒す勇者様相手にケンカなんて起こさないでしょ。何があったの。」
 マーニャの言葉にクリフトは目を伏せ、「私は…どうしたら良いのか、分からなくて…」と消え入りそうな声で呟いた。
「いいから、話してみなさいよ。」
「何から話せば良いか…。」
「最初からでいいから。素面で話せないんならもっとワイン飲みなさい。」
 マーニャの言葉にクリフトは思い切ったようにワインを一気に飲み干した。あーあ、無理しちゃって。案の定、クリフトは何度か咳き込み、落ち着いたときには涙目になっていた。
そしてゆっくりとグラスをテーブルに戻すとポツポツと話し出す。僕からされた全ての事を。

「寝ている最中に…上半身を抱き上げられていたことがありまして…。」

242告白 2/5:2012/01/31(火) 22:23:12
 眠りから覚醒させられた私はぼんやりと目を開き、視線を動かして自分を抱き寄せている人物を捉えました。
「えっと…勇者さん、どうかなさいましたか?」
 勇者さんが私のベッドに腰掛け、私を抱き起こしていたんです。いつからそうしていたのか。その体勢にされるまで彼がベッドの傍らに座っていることも気付きませんでした。
ぼんやりと勇者さんを眺めていると、彼はふっと微笑みました。
「ごめん、クリフトがあまりに静かに眠ってるからさ、息してるのか心配になっちゃって。」
「ええ…?」
 だからって抱き上げるのはどうかとも思ったのですが、勇者さんとは出会って日が浅いこともあるし、私は先日まで高熱で病床にあった身です。彼なりに心配してくれたんだな、
と私は申し訳無い気持ちになってきて「ご心配かけてすみません。」と身を縮めて彼を見上げました。
「ううん。こちらこそ起こしてごめんね。」
 勇者さんの体の温かみがすっと離れて、私も体を毛布の中に戻し、再び眠りに付きました。

 次の朝、宿で朝食を食べている時は勇者さんは何事も無かったように明るい調子で他の仲間と話していました。私は共に旅に出た宮廷魔術師のブライ様に
「私って、いつも寝るとき、死んでいるみたいでしたか?」
と尋ねてみたのです。ブライ様が眉根を上げ、
「まぁ、確かに寝息も静かじゃからな。勇者殿に言われたか?」
と笑ったので、私も「ええ。知りませんでした。」と笑い返しました。
「あの方もそうだが、お前にとっても歳の近い友人ができるのは悪い事じゃない。
 あの若さで魔王討伐の使命を与えられ、重圧に耐えかねることもあるだろう。支えになってやりなさい。」
 ブライ様に言われ、私は気が引き締まる思いがして、
「はい、勇者さんもそうですが、姫さまをはじめ、他の方々も、もちろんブライ様のことも全身全霊で守り抜く所存です!」と答え、
「お前に守ってもらうほど老いてはおらぬわ!」とブライ様の杖で軽く殴られてしまいました。

 その数日後、宿屋で休む事になったとき、また勇者さんと同室になりました。部屋の割り振りは勇者さんの仕事です。
彼が歳が近い同性の私と同室になりたがるのを、誰も不審には思いませんし、事実、私もそれを特に変だとは思いませんでした。身の上やこれまでの旅であったことをお互いに話してから、ベッドに横になる。
体が急に動かなくなる夢を見て、はっと目が覚めると私はいつの間にかベッドに潜り込んでいた勇者さんに背中から抱きしめられていました。

「ゆ、ゆ、ゆ…勇者さん!?」
「ごめん、起こしちゃった?」
 耳のそばで囁かれてビクンと体が震えました。ええ、耳が弱いんですよね。
「悪い、1人で寝てると怖くてさ…。人肌が恋しくなっちゃって。」
 私の両脇の下から勇者さんの手が伸びて私の胸元を抱き寄せて言いました。緊張はしましたが、勇者さんの身に降りかかった災難を思い出すと、ぐっと涙腺が緩んでしまって。
勇者と言えどもまだまだ彼は幼いのです。それなのに、こんな過酷な運命に翻弄されて、それでも必死に旅を続けて、我々さえも救ってくれたのだと思ったら…。
泣いている事に気付かれないように素早く枕で涙を拭いて、私はなんとか彼に向きなおりました。勇者さんって顔が端整なんですよね。
目の前にあるとドキッとしちゃったのですが、私は手を伸ばして、彼の背中をぽんぽんと軽く叩きました。

「怒らないの、クリフト…?」
「怒るものですか。そうやって辛い気持ちを1人で耐える事はありません。」
「ありがとう…。また、こうして一緒に寝てもらってもいいかな?クリフトに触れていたいんだ。」
 勇者さんが恥ずかしそうに尋ねてきて、私は彼が可愛く思えて、笑みが浮かんできました。

「独り寝が怖くなくなるまで、いつでも頼ってください。」


 その夜から、宿屋で泊まる度、彼に抱きしめられながら眠る日が続いたのです。

243告白 3/5:2012/01/31(火) 22:26:08
 私は時々くらいの感覚で言ったのですが、彼の孤独感はかなり深いようで、ほぼ宿で泊まる度に彼の体温を感じながら眠る事になりました。
しかも私が眠りに堕ちてから行動に移すから、いつも気が付けば正面から、または背面から体格のいい彼にがっしりと抱きしめられています。
顔を首元や胸元にうずめられていたりすることもあり、正直、気恥ずかしい気持ちなのですが、自分で言った手前、やめて欲しいとも言えず、私は無抵抗にされるがままになっていました。彼の動きが段々エスカレートしていることに気付かなかったんです。

 おかしいな、と思い始めたのは宿で鏡を見たときです。鎖骨にうっ血した跡が付いていました。その時は宿に虫でも居たのか、と気にも留めませんでしたが、日を追うごとにその数は確実に増えていきました。
 ある夜、思わず出た「うぁっ」という自分の声で目を覚ますと、勇者さんが背後から私のシャツの裾から手を入れて、私の胸をまさぐっていたのです。
「あ、あの、勇者さん、くすぐったい…。」
 私が訴えても、聴こえてくるのは規則正しい呼吸音だけです。まさか、と思い振り返ると勇者さんは目を閉じて眠っているようでした。しかし、手は私の胸や脇腹を触り続けています。
寝ぼけているのか、と思いました。昼間、勇者さんは我々をかばって大怪我を負っていましたから。戦闘後、慌てて私とミネアさんとで回復呪文を掛けましたが、宿に帰ってきても勇者さんはかなり疲労しているように見えました。
眠っているのを起こすのが申し訳ないような気がして、私は彼を起こさないようにくすぐったいのを我慢することにしたのです。しかし、勇者さんの手は胸元を中心に蠢くようになり、私の呼吸はどんどん乱れてしまって…。
 ダメだ、もう限界だ、と思ったとき、私の大腿部に、何か固いものが当たったのを感じたのです。ええ、それが何かは私も男ですから分かります。まさか、これって…と思って息を飲みました。

「ゆっ…勇者さん…お、起きて…」
「あ、ごめん、寝ぼけてた。」
 勇者はやっと目が覚めてスッと手を抜いてくれましたが、私を抱きしめるのはやめない。私は、不安が湧き上がるのを止められず、その夜は恐ろしくて彼の方を向けませんでした。

 これだけのことをしておきながら、彼の昼間の態度は全く変わらないのです。通常どおり仲間と接し、私に対しても夜のことなど何も無かったのように接しています。私も、彼に夜の行為のことを聞けず、いつもどおりに振舞うしかありませんでした。

 次の夜はなかなか寝付けず、とうとう彼が私のベッドに入ってくるまで目が冴えていました。彼は私が起きていることに気が付かないのか、しばらく私を上から眺めている気配がしました。
彼はいつも寝ている私をこうして眺めていたのだろうか。そう思うと気恥ずかしくなってしまって。目を開こうとした瞬間、私の唇が塞がれていました。それが彼の唇で塞がれたものだ、と分かったのはそのまま彼の舌が私の口内に入ってきたからです。

「ふぅ…んッ!んッんんッ!!」
 これは毎夜されていたのか?さすがにここまでされたら目が覚めるだろう。息が上がり、私はなんとか引き剥がそうと勇者さんを押し返そうとしましたが、力では敵わず、キスをされたまま、シャツをまくられ、胸を弄られていました。力が入らず、長い口付けが終わって、首筋や鎖骨、胸元を勇者に吸われても、小さく悲鳴を上げるだけで抵抗らしい抵抗ができません。
私の力が抜ける、思わず悲鳴を上げてしまうポイントを知り尽くされているのか、と思うほど、的確に体が攻められていくのです。不甲斐無いことです。
私は力が入らないなりに必死で勇者さんの身体を押し返そうとしました。
そこで勇者さんはようやく動きを止めましたが、すぐに私の手首を掴んで私の指に口付ける。私の体は恐怖で萎縮してしまいました。

244告白 4/5:2012/01/31(火) 22:27:56
「ゆ、勇者さん、これ以上、何をなさるんですか…。」
「触れていいって言ったじゃない、クリフト。神官が約束破っちゃってもいいの?」
「でも、でも、これは……。」
「僕はクリフトの身体に触れているだけだよ。
 勝手に感じて腰砕けになってるのはクリフトの体が感じやすくてエロくできてるからじゃないの。」
「違うっ!私はそんな…ひっ!」
 勇者さんの手が私の足の付け根に伸び、ズボンの中へと入って、直接私のものを握りました。私の息が詰まるのを見て取ると、
「ほら、神官さん、気持ちいいんでしょ?反応してるもん。」
と勇者さんは愉快そうに笑い、そのまま私のものを擦り上げてきたのです。
「あっ、やめてください!やめっ…いやだ、いやだあっ!」
「嫌じゃないでしょ。こんなにしてさ。卑猥だなぁ。」
「ひあぁぁっ!!」
 私はがくがくと震え、勇者さんの手の中に射精してしまいました。私は羞恥で思わず彼に謝罪してしまったのですが、顔が熱くなるのを感じました。
いや、ああ、そうですよね、そもそも何故私が謝る必要があるのかは分かりませんが。
私が混乱の極みに陥ってる時に勇者さんは手に付いた白濁を眺めてから、私の顔を覗きこみました。
「これ、どうしようか、クリフト。」
「え…?」
「続き、していい?」
「続き?」
 これ以上、何があるというのでしょう。私は勇者さんの言葉の意味が分からなかったのですが、必死で首を横に振りました。勇者さんはしばらく私を見つめていたが、やがて肩をすくめ、
「次は止めてやらないからね。」
と自分のベッドに戻っていった。

「もう、同室にはしないでください。」
 翌日、宿を出て馬車の脇を歩きながら、そばを歩く勇者さんに小声で訴えました。勇者さんは心外そうに「なんで?」と私を振り返ったのです。
「なんでって…分かるでしょう、私は…」
「僕はクリフトと同じ部屋で寝たい。クリフトが拒否するなら僕はショックで他の仲間に相談するしかないなぁ。」
 勇者さんはそう言って「アリーナァ!」と馬車の中の姫さまを呼んで私を一瞬で青ざめさせました。
「何?交代?交代?」
 姫さまが嬉しそうに馬車から笑顔を出してきます。
「クリフトがさぁ、僕と同じ部屋になるのが嫌だって言うんだ。ひどくない?」
「えぇ?ケンカでもしたの、2人ともー。」
「実はさぁ、クリフトが昨日…」
「もういいですっ!同じ部屋でいいですっ!!」
 私は泣きそうな気持ちで勇者さんの腕を引っ張りました。
「え、なんで、クリフトが言ったんじゃない。」
「嘘です、すみませんっ!」
「何なの、クリフト。勇者くんのこと困らせないでよね。」
 姫さまに睨まれ、私は再び「申し訳ありません。」と泣きそうな思いで謝らざるを得なかったのです。

245告白 5/5:2012/01/31(火) 22:30:43
 以上が、クリフトの話だった。ああ、台詞部分は僕の回想も入ってるよ。さすがに自分がどんな喘ぎ声を出したのか、クリフトは知らないだろうし。
 クリフトの事は最初、ベッドの上で高熱にうなされているところを見た時から抱いてしまいたいと思っていた。エロいんだよな。色白神官が汗を浮かべて苦しんでるんだもん。
熱に浮かされ涙目で焦点も合わずに空間を見上げている姿にゾクゾクしたんだよね。
死なせるには惜しいと思って必死に薬を探したよ。本当に見つかってよかった。復活後に気恥ずかしげに礼を言ってくるところも儚げで可愛かった。病み上がりでまだフラフラしてるのに自分の病を治すのに結構な人数が巻き込まれたことを知って恐縮しまくって、馬車の外を率先して歩いてた。
だから宿屋でも疲れきってベッドに横になったら即行に静かな寝息を立てて寝てしまう。最初は本当に息してるのか不安で彼のベッドを覗き込んだだけだったんだ。何も知らず眠っているクリフトを見ていて、実はその時から色々身体に触ってたんだけどね。
 ある日、どうしても自分がこんな目に遭ってることに気付いたらどんな反応示すんだろう、と思ってわざと身体を抱き起こしてみたんだ。僕の気持ちに気付いてないクリフトの反応は、彼自身が話したとおりだ。面白くてどんどんエスカレートしちゃった訳だけど。

 マーニャはクリフトが止めようとしてるのに、2つのワイングラスを再び満たす。マーニャが美味しそうにワインを飲むのを見て、クリフトは渋々という調子で再度ワインに口をつけた。
「で、勇者クンの行動をやめさせて欲しいわけ?」
 マーニャがチラリとクローゼットに視線を走らせる。クリフトは以外にも「いえ、それは…」と言葉を濁した。
「え、続けてもいいの?もっとエスカレートするわよ。あのバカは。」
「いや、でも、彼は私の体に触ることで癒されていらっしゃるわけでしょう。私などよりも重責にあるわけですから、これくらいは…。」
「そりゃあ、さぞや、癒されて、いらっしゃるでしょうけどね…。」
 マーニャは含み笑いをして答える。

「んじゃクリフトちゃんはずっと我慢していくの?」
「昨夜は驚きました。正直、羞恥で死にそうでした。でも、私が勇者さんに身構えてしまったから、機嫌を損ねられたのかも知れませんし、
 特に抵抗しなければ、ひどいことはされないのではないか、と思ったんですが。」
「されるわよ。続き、今度は間違いなくされるから。羞恥で死ぬどころか、体が死にそうになるわよ。」
 余計な事言うなよ、マーニャ!ほら、クリフトが青ざめていくじゃないか。クリフトは緊張してきたのか、今度も一気にワインを煽った。
「続きって、何ですか。あの、我々は男同士ですし、身体を触る以上のことはできないでしょう?」
 一縷の望みを求めて、クリフトはすがるようにマーニャに教えを請う。しかしマーニャは
「できるわよ。ここがあるでしょ。」
と椅子に腰掛けているクリフトに近付き、ぽんと彼のおしりを叩いた。クリフトはきょとんと自分の腰を見つめていたが、やがて「あぁぁっ…!」と勢い良く立ち上がる。
そして酔いが一気に回ったらしく、ふらついてドン、とクローゼットにもたれかかってきた。こちらにもたれ掛かったまま、
「そんな…知りませんでした…!」と搾り出すように呟く。

「いや、でもっ…このこと、年若い勇者さんはご存知無いかも知れません。」
「知ってるわよ。私、教えた事あるもん。まさか実践する気だったとは思わなかったけど。」

 クリフトは卒倒しかねないくらい青ざめきって、ショックからか足がガクン、と折れて倒れそうになった。僕は慌ててクローゼットから飛び出し、彼の上腕を抱える。
「ゆっ、勇者さん!?」
 僕の登場でこれ以上ないくらい衝撃を受けたのだろう。酒のせいもあってか、クリフトはもう自力で立てなくなっていた。倒れないように後ろから抱きとめている僕の方を
まるで見ずに、クリフトはなんと気を失ってしまった。目から涙がこぼれているのが痛々しくも可愛らしい。マーニャはクリフトを抱き上げた僕をワインを飲みながら見上げた。

「あんまり苛めなさんな。可愛そうに現実逃避しちゃったじゃないの。」
「ワイン飲ませすぎなんだよ。酒の匂いで酔っ払うくらいの下戸なの知ってるくせに。」
「あんまり真っ白だと苛めたくなるのよねぇ。新雪の上に足跡を付けたくなるみたいなもんかしら。」
 僕には苛めるな、と言っといて良く言うよ。僕は肩をすくめた。

「部屋に連れて帰るよ。本当に昨日の続きから始めてやる。」
「協力する気は無かったんだけどね。まぁ、クリフトにはいい社会勉強でしょ。大いに悩んでもらいましょ。」

 肩をすくめるマーニャを背にして僕はそのまま部屋を出た。
 愛しい人を抱きかかえて。

246名無しの勇者:2012/01/31(火) 22:31:26
以上です。ありがとうございます。

247名無しの勇者:2012/01/31(火) 23:05:11
すごく萌える話をありがとうございます。

248名無しの勇者:2012/01/31(火) 23:07:20
…途中送信してしまった
睡眠中に色々されるクリフトの独白が色っぽかったです
マーニャ姐さん、予想外の対応にびっくりしました
寸止めの先もぜひお願いします!

249名無しの勇者:2013/01/21(月) 19:33:33
誰かおらんかねー

250名無しの勇者:2013/01/29(火) 17:45:19
亀だけどおりますよー
神をまってる、いつまでも待ってる


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