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俟宵月 -千代神楽-
134
名前:
五 「紫天」
投稿日: 2005/10/29(土) 06:36:37
にやり、と笑む紫月。そこには神が定めた筋書きになど、決して乗りはしないという決
意と共に人という存在が持つ強さがあった。人は神を信じている。それは確かな事。だが、
それは神代の頃のように強くはなく、人は生きる為に神の生きるとされる山や、自然を切
り開いて人の領土を広げている。祀る事を止めず、敬う事を止めず、それでもなお木を切
り倒し、山を焼いて大八島に根を広げていく。
結局は人という存在は神が愛した頃の土地には満足できず、それらを破壊する事でしか
生きているという実感を得られない存在なのかもしれない。今はまだそれほどではないけ
れど、石や銅を武器にしていた頃からは考えられないほどの武器――種子島のような存在
を産み出してしまうような人。いずれは、もっと強い武器、或いは何か別のものによって
今よりも遙かにこの大八島を汚していく事になるのだろう。
だが、それはまた人という存在の持つ強さをも同時に現していた。強すぎる欲は人を滅
ぼすけれど、欲が全く無いというものまた、人を滅ぼしてしまうものだから。
「空夜の言ってた組織。それに私は残りの人生と命との全てを賭ける。神にすがる人々を
救い、人を救うのは人であると教えてやるのさ。神に祈った所で何も変わらないと教えて
やって、この世から神を殺してやる。それが、私の戦いさ」
意識しているのかどうかは分からないが、紫月はかたく拳を握り締めていた。振る雪の
せいで、冷えて白くなっている肌。その肌に指を食い込ませて、さらに白くする。
「だから、一人でも信頼できて力になれる奴が欲しい。空夜が言ったように、水を捨てて
この大八島に生きるのなら、一緒に――やるかい?」
微笑みながら、真っ直ぐに流離を見つめて手を伸ばす紫月。手すりに座ったままのその
格好では少し締まらないが、それもまた紫月らしいと流離には思えた。
「流離――私、にもそんな生き方ができるでしょうか?」
体を起こして、紫月を見上げながら問いかける流離。
「流離の生き方を決める事ができるのは、流離だけさね」
笑う紫月。
「そうでした。では、水冴流離はやはりここで死ぬ事に致します」
微笑み、紫月の手を取る流離。お互いに触れ合った手の冷たさに苦笑しあう。
「紫月さま。一つだけ我が儘を言わせてください。その組織の名、私が決めてもよいです
か?」
握る手に力を込めながら問いかける流離。紫月は少し意外そうな表情をしながらも頷い
て続きを促す。
「それでは――紫天、と。空夜さまは夕と夜の境目、紫の空がお好きですから……」
頬を朱に染めて言う流離。空夜が好きなもの、それをいつでも思い返して、同時に空夜
を想い続ける事ができるように、と小さく呟きながら。
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この画像じゃわかりませんが。。。
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