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俟宵月 -千代神楽-
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名前:
五 「紫天」
投稿日: 2005/10/28(金) 06:14:08
確かに、その目の持つ力は尋常なものではなく、空夜の使う術などを強化するような働
きをするものの、それは余剰な力が漏れ出ているだけにしかすぎない。戦場で相対する者
の死を視たとしても、それが己との戦いの果てによる結果でなければそれは、自分がその
相手に敗れる事を示す。ここで相手が死なないのであれば、戦う相手である己は敗れるの
が道理であるし、戦場であれば敗北は死に直結する。
そんな目のどこが偉大であるのか。
空夜は自嘲気味に龍禅へと告げ、半身に身構える。だが、その目に踊らされているのは
紛れもなく自分自身であるという事に、激しい自己嫌悪と共に、だからこそ自分が成さね
ばならない事、それを思い浮かべながら。
「一応、加減はするが……やりすぎても文句は言うんじゃねぇぞ?」
「加減?そんな器用な真似はできそうに見えないが」
軽く答えて、見えない右目で己の右側が死角になる事を不利であるとすら思わずに空夜
は気合を全身に巡らせる。
「弱ぇ奴を嬲る趣味はねぇんでな。つまり……お前次第、って訳だ。いくぞ」
にや、と猛獣のような笑みを浮かべて、龍禅が動いた。
「流離、大丈夫かい?」
部屋を走り出た流離を追った紫月は、部屋のすぐ外で流離がうずくまっている事に気付
いて声をかけた。流離の肩は、小刻みに震えていた。
「紫月さま……」
かけられた声に名前を呼んで答える流離。紫月は答えが返ってきた事に安堵の息を漏ら
して、部屋の襖を後ろ手に閉める。その場所は昨日紫月が龍禅と語った場所だった。
「やれやれ、私の妹分を泣かしてくれちゃってさ」
明るい口調で言いながら、龍禅と話していた時と同じように手すりに座る紫月。流離は
紫月に視線で促され立ち上がるが、紫月とは視線を合わさないように手すりにもたれかか
って立つ。二人の間に静寂が産まれた。
雪は相変わらず振り、空は変わらず灰色のまま。見慣れたというよりは、もう見飽きた
といった顔をする紫月だが、何も言わない。
流離は振り返って肩越しに空を、そこから降り注ぐ雪を見る。紫月がそうしているよう
に。しんしんと振る雪にお互い何を思っているのか。何を見ているのか。言葉を交わす事
もなく、ただ雪を見続ける二人。時がゆるやかに流れて、流離の濡れた頬を乾かし切った
頃になってようやく、紫月が口を開いた。穏やかな眼差しで。
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わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は”妖精さん”のものだったりします
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