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企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議
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雑談、キャラクターの情報交換、
今後の展開などについての総合検討を主目的とします。
今後、物語の筋に関係のない質問等はこちらでお願いします。
規約はこちら
>>2
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『それはさておき、不思議な話もあるものだね、オリジナル。
共有情報野に連絡員の存在と訪問時間は記載されていたけれど、
我々の指揮権放棄のスイッチのことが記載されていなかったなんてね!
くくっ……
君は一体どんな状況を想定してこんなものを用意していたのかな?』
オペレータの声は笑っている。
しかし、怒っている。
智機に対する明らかな悪意が感じられる。
智機は推論する。
あらゆるリミッターから解除されることで解放される智機の真の力。
そのことを、連絡員から聞いたのやも知れぬ、と。
しかしその焦りをおくびにも出さず、悪意に気付かぬ体を装って、智機は通信を継続する。
「とにかく、だ。
連絡員殿に対して粗相が無ければそれでいい。
資料を揃えてここまで持ってくるというのタスクはリストから削除しておいてくれ。
代わりに君に、そのスイッチを持って来て貰いたい」
返答は、もちろん否だった。
『No。それは出来ないね。スイッチを持っているのは代行なのだから』
「ふむ。ならばN−22を出してもらおうか」
『重ねてNo。というか、代行殿はこちらにいないのだよ。
連絡員殿を出入口までお送りに出かけているからね。
だが、この件に関しては予測を立てていた代行より伝言を預かっている。
お聞きになりますかな?』
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「……Yes」
『ではお伝えしよう。オリジナル殿にとっては不本意な伝言を。
―――No。スイッチは遺憾ながらお譲りできない。
―――なぜならば、これは連絡員殿が私に直接お渡しになったものだからだ。
―――スポンサー方の意向に反するわけには行かないだろう?
―――故に私はこのスイッチの保持を優先レベル5の重要度と位置づけ、
―――誰にも渡さず、死守することを自己設定したのだ。
―――ADMN権限を持つ私はオリジナル殿と同等の権限を持つからね。
―――貴機の命令に服する義務は無い。分かっていただけたかな?
以上だよ』
理論的にも機能的にも、この拒絶を否定できる材料はない。
沈黙する智機へオペレータは皮肉を浴びせかける。
『それに、安心してくれ給え。
我々レプリカは、偉大なるオリジナル様から独立しようなどとは
露とも思っていないのだから。
代行が保持している限り、スイッチが押されることなど決して無いさ!』
その言葉に智機は確信した。
やはり分機たちは、隠された真の力のことを知ったのだ。
『連絡員殿は暫くこの島を巡って、独自の情報収集活動を行うようだよ?
もしどうしてもこのスイッチを手に入れたければ、
彼女を探して、その許可を貰ってきてくれ給えよ。
オリジナル殿がその【自己保存】の欲求を押さえつけて、
戦いと火災が渦巻くゲーム会場に身を投じる度胸があればの話だがね!
くっくっく……』
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もともと智機は大仰な態度と物言いを好む性質を持っている。
だがオペレータの言葉には、それだけでは説明しきれぬ負の感情が浮き彫りとなっていた。
鬱屈した感情を噴出させたような嘲りが感じられた。
ルサンチマンだ。
スイッチの譲渡に端を発した本機とN型機の個体差異の発覚。
そのことへの嫉妬が、オペレータを不必要な挑発へと駆り立てているのだ。
連絡員は言ったという。
本機か分機かの違いなど些細なことであると。
だが、当人たちにとってみれば、その些細な違いが絶対の違いなのだ。
「おやおや、我が身を心配してくれるとは光栄だね!
だが安心したまえ。
君が思うとおり、私の【自己保存】欲求は強固だからね、
すでに連絡員殿を追う選択肢はキューから削除されてしまったよ!」
ははは、と乾いた笑いを零しながらそれだけを告げると、智機は自ら通信を切った。
明らかに強がりだ。
間違いなく負け犬の遠吠えだ。
買いかぶって見たとしても、不利を悟っての一時撤退だ。
(そういう印象は、与えられたな)
俯く智機は笑んでいた。
決して自棄になったわけではない。
オペレータの最後の言葉に活路を見出した故、彼女は声も無く笑むのだ。
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オペレータは言った。
オリジナル自らが戦場に出なければ、連絡員は捕まらぬと。
その言葉は即ち。
智機にクラックされたレプリカの存在に気付いていないことを意味する。
智機は網膜に起動されるは仮想モニタ。
映し出されるは分機のクラッキング情報。
指揮下の分機は現在5機。
うち1機は西の小屋にて月夜御名紗霧との交渉に入っている。
うち1機はザドゥを探す途上で、学校から派遣された3機と合流を果たした。
うち3機は東の森の北西部で、しおり捕獲任務の為に待機潜伏している。
(しおりの捕獲は森の鎮火が進まなければ実行できない。
Yes。ならばこの機体を連絡員の捜索に充てるとしようか)
智機は幾重にも偽装をかけた通信波長を暗号化し、
しおり捕獲機のうち2機のタスクを連絡員捜索タスクに上書きする。
一方―――
「いいじゃねーか、イケてるじゃねーか、抹茶!」
智機が静かに逆転の野心に燃えるその隣で、
ケイブリスは和の心に触れていた。
↓
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(Cルート)
【主催者:椎名智機】
【現在位置:本拠地・ケイブリスの部屋(茶室)】
【所持品:素敵医師から回収した薬物。その他?】
【スタンス:願いの成就優先。
①ザドゥ達と他参加者への対処(分機P-3に注目)
②しおりの確保
③ケイブリスと情報交換
④連絡員と交渉し、端末解除スイッチ+αを入手する許可を得る】
【主催者:ケイブリス(刺客4)】
【スタンス:ザドゥ戦まで待機、反逆者の始末・ランス優先
智機と情報交換、智機と同盟】
【所持品:なし】
【能力:魔法(威力弱)、触手など】
【備考:左右真中の腕骨折(補強具装着済み) 鎧(修復)】
【現在位置:本拠地・ケイブリスの部屋(茶室)】
【レプリカ智機・オペレータ(N−27)】
【現在位置:C−4 本拠地・管制室】
【スタンス:火災対策タスクのオペレーティング】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル】
※分機解放スイッチは代行(N−22)が入手しました。
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>>xxx
(Cルート・2日目 PM18:55 D−3地点 運営基地・廊下)
連絡員は、居住まいに一本筋の通った、金髪碧眼の女性だった。
連絡員は、光り輝く剣と清冽な青の盾を持ち、黄金色の鎧と兜で武装していた。
連絡員は、純白の羽毛豊かな羽根を持っているが、尻尾や嘴は無かった。
連絡員は、個体名を持っていなかった。
連絡員は、ルドラサウムの意志を破壊によって遂行する、直系の被造物。
エンジェルナイトの名で、認知される存在。
オリジナル智機とオペレータが通信にて皮肉の応酬をしている頃、
代行機はスポンサーたる神々が派遣したこの天使を出入口まで見送るところだった。
彼女は上目遣いで連絡員を見遣る。
苛立ちを表現したくなる衝動にキャンセルをかけながら。
(全く…… スポンサー殿も面倒をかけてくれる)
当初、代行とオペレータは連絡員の接待をオリジナルに任せる予定だったのだ。
火災鎮火タスクの指揮は現場監督任じたとはいえ、後方支援業務は山積している。
出来ることならばそれに専念したい。
代行は、そう考えていた。
業務内容は多岐に渡っている。
情報収集、資料作成、情報伝達、それらに関わる副次的庶務。
だが、彼女たちのリソースを大部分を占拠していたのは、
タスクそのものの計画修正だった。
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Dシリーズ3機、Nシリーズ20機。
当初代行は分機の最終被害予測をこのように想定していた。
しかしながら現実では、鎮火オペレーション・フェーズⅠの開始から
15分と待たず、6機もの同胞のロストが生じたのだ。
この想定外の損失速度は、鎮火タスクの設計を甘く見積もりすぎたが故。
そう分析した代行とオペレータは、計画をより現実的に見直す必要を採択した。
彼女たちは、気付かなかったのだ。
うち5機のロストはオリジナル智機による指揮権強奪と隠蔽工作に過ぎぬのだと。
代行の三白眼は再び連絡員へと向けられた。
(かといって、スポンサー殿の遣いを丁重に扱わぬわけにはゆかぬしな)
神々は気まぐれでゲームに介入し、事前通告無しにルールを改定する。
そんな負の実績を持つ連中の機嫌を損ね、さらなる混沌を招くことは、
【ゲーム進行の円滑化】を目指すうえであってはならないことだから。
速やかに対応し、速やかにお引取り願う。
代行はそのように対応し、連絡員もそのように応えた。
ルドラサウム由来の天使は、命令を遂行することに特化して作られている。
感情や本能などは、デザインの段階で削ぎ落とされている。
機械である智機たち以上に機械的。
故に連絡員としても、簡素な代行らの対応を不躾とは感じなかった。
その、無駄を極力排するはずの天使が、廊下の途中で足をピタリと止める。
「どうされました?」
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代行機は天使の見遣る先、廊下の奥を注視する。
オリジナルかケイブリスが姿を現したか。
その様に予測した代行機であったが、果たして廊下には誰も存在しなかった。
「……」
天使は無言で剣を構えた。無人の廊下に向かって。
天使は無言で剣を振り下ろした。無人の廊下に向かって。
「……何をなさっておいでで?」
「情報収集です」
代行機の機械の目には捉えられなかった。
構えた剣の先に存在した、基地内をさまよう亡霊を。
代行機の機械の耳には捉えられなかった。
振り下ろした聖剣に切り裂かれた、亡霊の断末魔を。
代行機の機械の頭脳では理解できなかった。
腰に提げる壺の如き容器に亡霊の残滓を吸い込む―――
連絡員はそれを指して、情報収集と述べたことを。
その後、出入口の扉を開け放つまで、2人の間に会話は無かった。
「お気をつけて」
「仔細問題ありません」
純白の羽をはためかせ、天使は黒煙たなびくゲーム会場へと飛び去ってゆく。
↓
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(Cルート)
【レプリカ智機・代行(N−22)】
【現在位置:C−4 本拠地・出入口 → 管制室】
【スタンス:管制管理の代行】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル、分機解放スイッチ】
【連絡員:エンジェルナイト】
【現在位置:C−4 本拠地 → ?】
【スタンス:① 死者の魂の回収
② 参加者には一切関わらない】
【所持品:聖剣、聖盾、防具一式】
※連絡員はゲーム外部の存在であり、主催者にはカウントされません
※本拠地で感知された「何者か」は、連絡員に捕獲されました
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>>#6 482-490
(Aルート 二日目 PM6:08 東の森・楡の木広場西部外れ)
楡の巨木が燃え落ちる数秒前。
糸が切れたような感覚と同時に『それ』目覚めた。
(……………………長老?)
巨木から放たれてた力が完全に消失したのを『それ』は感じ取る。
長老――倒壊した巨木が地面に墜落し、辺りを揺さぶった。
『それ』は焼失を覚悟していたが、熱波や衝撃も届かなかった。
この分だと地上からの熱も届かなさそうだと『それ』は少し安堵する。
『それ』は地上ではなく、地中にいた。
『それ』は土中でも今は何ら悪影響を及ばさない存在だった。
『星川翼』と呼ばれていた式神の核の一部から『それ』は成っていた。
仮の身体こそ形成できない微弱な式神でありながらも、
人並みの自我と僅かながらも幻術を使える力はまだ『それ』は持っていた。
『それ』はついさっき焼失した片割れのことを想った。
(……長老も……ぼくのかたわれも消えてしまった……
これではあの方を……遠くにいる仲間たちを助けだせない)
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片割れの願いだった主――朽木双葉の救助は失敗した。
主は自暴自棄に陥り、地上は火災で退路なし。
仮に『それ』が身体を形成でき、主を強引に連れ出す力を持てたとしても、
片割れと同様に術で自我を奪われ終わるのみだろう。
『それ』はその事実を理解していた。
それでも動けたなら救助を試みたかも知れないが、地上に出る事もできない。
する事が見つけられないでいた。
(長老……あなたは……)
主は長老と会話をする事はなかった。
一方的に声と術をかけられ使役されたのみだった。
もし仮に主が脱出を望んでいたなら、同じように片割れに話しただろうか。
殺人ゲームが始まる前、島ごと『ここ』に移される前に来た彼らの……。
何もない、長老を介して島に来た未知の力を持つ集団の事を。
片割れが主と再会する前、長老との交信の内容を『それ』は覚えていた。
長老から式神星川へ。
式神星川から核――数本のヤドリギを通して
『それ』へ受け継がれた長老の記憶の中にいた五人の人間。
『星川翼』と名付けられた式神は、主の心を救う方法はついに解らなかった。
その代わり自らの身と情報を代価として、他の参加者に主の保護を願い出ようと考えて
いた。
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(そうだ……このまま何もしないよりは……)
『それ』は片割れと比べて『主』に対する忠誠はそれほど強くはない。
片割れの幻術によって式神としての我を持ったからだ。
長老や仲間を失った悲しみを片割れ以上に持っているくらいだ。
双葉の式神でなければ悪感情を懐いていたのは間違いない。
主の救助願望も、片割れから受け継がれた人格の一部と義務感からと言っていい。
それゆえにこのまま何もしないで終わるのは悔しかった。
『それ』は受け継がれた記憶に希望を見出そうとし思い起こし始めた。
◇ ◆ ◇ ◆
長老が生まれた頃はこの島には人が住んでいた。
人の居住区としてはさほど有益でもなく、かと言って流刑地にするにしては荒れてはい
ない島。
それだけに人も少数で、仲間達もあまり危害は加えられなかった。
ごくまれに森に入る人はいたが、特に何かすることはなかった。
その中に植物の言葉が分かる者――ある者は陰陽師と名乗っていたが、何人かはいた。
彼らはいぜれも二言三言会話しただけで使役されることも、深い繋がりを持つことはな
かった。
時折、人同士で争いが起こっていたが、森の植物にはほとんど関係のない事だった。
長老は千年以上の長きに渡ってそれを繰り返し見てきた。
そんな長老にとって特に深く記憶に残っていた事は4つ。
今行われているゲームを別にすれば、それは3つ。
一つ目は長老の生きてきた年月からすれば、ごく最近の出来事かも知れないが。
ある日、島外から大勢の人間が空からやって来て、島に上陸してきた。
東の森の外で仲間の住処を荒らして行った後、ほとんどが島外へ去っていった。
そして、しばらくして少人数で人間同士の殺し合いが行われた。
それは3つ目の出来事が起こるまで十回以上もそれは繰り返された。
二つ目はある初秋の深夜、突如己の長老の身体が発光した。
不思議な力がわきあがって来たと長老は言っていた。
そして見知らぬ人間五人が目の前に現れた。
彼らは緊張した様子で何かを話し合い、ある人は森の外に出て行った。
言葉が通じると思い、話しかけたが通じなかった。
術者とは違っていた。
翌日、島の人間らしい別の集団が彼らを見つけ襲いかかった。
彼らは少々慌てたものの、何かを取り出して動いた。
不思議なことに、襲撃者はひとり残らず黙って森の外を出て行った。
彼らはここに来て二日ほどで現れたのと同じ様に長老を通じて何処かへ去った。
二度とこの島に現れることはなかった。
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三つ目は晴天の空から何かが西の方へ落ちて来た事。
それから夜になるのを待たずに、これまで体感した地震以上の大きな揺れとともにどこ
でもない場所に連れて行かれた。
それを理解した時、漠然とだが長老は死を覚悟した。
主と遭うまでに人間でない何かがここへ何度も訪れた。
四つ目は今。
□ ■ □ ■
(二日目 PM6:28 東の森・楡の木広場西部外れ)
『それ』は与えられた擬似聴覚を上の方に集中させていた。
炎が渦巻く音は止みそうにない。
(治まるまるまで持つかな……)
そう長くは持たないのは承知している。
元々『それ』は式神星川ほど強固に構成されたものではない。
ただのヤドリギに戻ってそ自我を得ないまま土中で朽ちる可能性もあった。
火事が治まるまで、誰かが近くを通るまで意識を集中する。
そして幻術を使用して、自らの存在と主や同胞の助命を願う。
『それ』のやろうとしているのはそれだった。
時間を待つまでもなく、主が死んでしまえばすぐに消えるかも知れない存在。
散っていった同胞の生命を無駄にしない為に、解っていてもしなければいけなかった。
(これも……役に立つかどうかは解らないけど……)
いっしょに埋められた『何か』を考える。
主なら何か解っただろうか?
(どうか……無事に……ふ……)
『それ』の擬似感覚に痺れのようなものが突如走った。
(…………あれ?)
↓
※式神星川が埋めた「何か」は彼の意志と力が宿ったヤドリキ数本でした。
※楡の木広場西部付近の「足跡」の場所に埋まっています。
※ヤドリギの他にも何かが埋まっています。
※ヤドリギの意志と力が今後どうなるかは不明です。
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投下完了。
新作お疲れ様でした。
たまには感想を。
>生きてこそ
素敵医師の影響力は凄い
ザドゥが原典終盤のメンタルに近づいてるのが印象的。
カオスもアインといてた頃よりらしさが出てて良かった。
もうアインのこと完全に頭の隅に追いやってるんだろうなあ。
>夜に目覚める
紗霧と猪乃が原典序盤でやってた凶行を思い出しました。
ユリーシャは元が元からか覚醒しても黒いというかヤバイ。
そんな中恭也とまひるが程よい清涼剤になっている。
服は体操服だったのか……ジャージ?
>>877-884
程良い緊張感が何とも。
恭也の献身と紗霧の聡明さが光ってます。
10分制限付きという良い引き。
>彼女の望み
カモちゃんが覚醒した。
まるで正統対主催みたいだw
それに比べザドゥは変な意味でネガティブ気味。
生死を別にしても素敵医師やアインにはある意味完勝してるのに。
>おやすみぃ……
原作でも同じ様にカモちゃんに騙されましたw
タイトルにも騙されましたw
精神状態が本調子になって今後どうなっていくやら。
隠し部屋の『願い』はどうなったかな?
>少女タナトス
ザドゥ、なんと身も蓋もない。
カモちゃんと違って互いに無関心だったのがここに来て現れたか。
ここでの紳一の性癖は失敗ばっかりだから笑えたけど、
成功したらあまり笑えないな個人的には。
透子もこの話で負の面が目立ったこともあって同情できないけど。
追い詰められた女性の心理がよく表現されてて良かったです。
>それは些細な違い
オリジナルとレプリカの確執が面白かったです。
ここでは連絡員は間に合ったか……。
ケイブリスが運営陣で清涼剤になってる不思議。
>天使のオシゴト
連絡員は名無しのエンジェルナイトでしたか。
透子より無機質なのがここでの個性になっている。
亡霊は紳一意外にもいて、本拠地に侵入したのがちょっと驚き。
誰だったのか楽しみ。
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今回の『希望の残骸』は島のルーツと、埋められた何かのネタばらしでした。
『それ』の今後はメール欄①によって変動。
あと島は21話でグレン様が元居た世界の無人島と認識していたので、
外国版リアルバトルロワイアルの舞台のイメージで解釈。
五人組はメール欄②のイメージで。作品終了時刻は双葉死亡直後です。
次は知佳、紳一、透子、しおりで予約します。
期限は今週の土曜日までで。
まとめは今週の月曜日にUPする予定です。
内容は変わらないかも。
>>949
こちらも本投下は今週の土曜日から始めたいと思います。
次の作品が書き上げられたら、来週の水曜日にまとめのUPと同時に本投下していきたいと思います。
それと申し上げにくい点が……
249話の『いずれ迎える日』の為に内で
「ランス語るところのその種の規格を持つ生物は、
恭也や紗霧の世界に於いては液晶の向こう側に 虚構としてしか存在しない」
との文があるんですが、『バンカラ夜叉姫』の世界って
全長一八メートルほどの熊がゲーム内で生息してるのを確認したんですけどどうしましょ?
紗霧はあるルートで主人公の自慢話でその存在は知ることになります。
レスお待ちしております。
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「交渉……今更なにをですか?」
一瞬の思考の停止から回復した狭霧は紅い色で映えた目の前の存在に言葉の意味を投げ返す。
紅蓮の炎が彩るオレンジ色の光が空を綺麗に照らし、後ろから刺すその光は機体を綺麗に、そして雄大に見せていた。
「警戒は当然か……」
臨戦態勢。
一触即発。
三人と一機の状態はまさにその通り。
今更、いや今になってこのように合間見えることこそ異質な状況。
だが、智機からすればそれは予定通りのこと。
「それも想定の内、そのままでもいい。まずはこちらからの提案を聞いてほしい」
三人の心境を置いていき、彼女は構わず話を続ける。
「「「………」」」
彼女の口から告げられるのは吉か凶か。
恭也の手に握り締められた柄が冷や汗でしっとりと濡れる。
ギリギリと魔窟堂が今か今かと加速装置の発動を構える。
赤い光を飲み込んだ智機の瞳がギラリと輝いたように、三人の目に映ると智機は口開いた。
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「単刀直入に言おう
―――ザドゥを始末してもらいたい」
静寂。
智機からの『交渉』の提案は、三人の思考を再び停止させるだけのものであった。
ぴたりと止んだ襲撃、僅かとはいえ放送の遅れ、対面に広がる大火災。
この時点、このタイミングでの智機からの提案。
全てが出来すぎていると考えざるを得ない。
しかし、それだけではおぼろげに見えるそれぞれを結ぶ線は解っても、何を示しているのかまでは理解できない。
「……つまり、それは貴方はゲームの崩壊を望んでいると言うことですか?」
平静を装いながら発した言葉の裏で、狭霧は状況に戸惑いつつも思考を巡らせていた。
逆に言えば、今こそそのおぼろげな線を確かにさせることのできる機会でもある。
「ふむ、嘘を言っても仕方ない。生憎と残念だが私はゲームを崩壊させるつもりなどない」
-
あざわらうかのように智機は答えた。
質問をかけた狭霧としてもその可能性が薄いことは解っていた。
淡い期待とそしてお約束の答えで相手の意図を確認するためのものだ。
「なんじゃと……?」
「まぁ、簡単に言えば」
「ゲームの完遂にはザドゥが邪魔だということか?」
智機の言葉を遮り、その先の言葉を恭也は答える。
「頭の回転が速くて助かる」
一呼吸おいて智機は再び話し出す。
「……さて少し長くなるが現状を話そうか。
君達も知っているように我々の使命は、『ゲームの完遂』だ。
そして『達成条件』でもある
それ以外は我々にとっては、くたびれ損の骨折り儲けというやつになる。
ところがこのザドゥのやつは、『ゲームの進行』には積極的ではない。
いや、むしろ反対と言うべきだろう」
智機の言葉を聞きながら三人は、理解する。
この『ゲームの進行』に積極的というのは、素敵医師や目の前の存在のように何が何でも参加者に殺し合いをさせるというスタンスのことだろう。
そして三人は理解し、確信する。
ザドゥという漢が、このまま自分たちによる反乱が成功すれば最後に戦う存在だということを。
そして、それは智機……いや、ゲームを完遂させたい存在としては困ることを。
-
彼らが話を理解したと見て間違いない様子に満足し、智機はニヤリと微笑む。
ならば話は早い、と。
「我々『委任』された運営陣のTOPがザドゥのやつなのは君達も知ってはいるだろう。
だからこそ私のようなスタンスの存在にとっては非常に目障りなのだ。
邪魔と言って差し支えない。
君達も確信してるようにもはやゲームは終盤、残る人数は極僅か、それも我々に反抗し一丸となっているものたちばかり。
しかもザドゥのやつは、君たちが来るなら受けて立つ姿勢という状態だ。
これでは『ゲームの完遂』など望めやしない。
素敵医師と私にいたってはやりすぎとして最終通告まで食らっていてね……」
「お話の途中、申し訳ないのですが……それで先程の提案に私たちのメリットはあるんですか?」
自分たちの関係に回りくどいことはいらない。
これ以上の高説は不要とばかりに狭霧は、本題を切り出す。
彼女のスタンスにとってゲームの完遂は絶対であり、そのためにザドゥが邪魔なのは解った。
では、それが一体自分達にとって何だというのだ。
むしろ互いに争って自滅してくれた方が狭霧たちにとって最も都合がいい。
そこで自分達がザドゥを始末すると言うのは、まだ理解しきるには材料が足りない。
「では予想して貰いたい。このまま君達が我々と決戦を行った場合、勝てる目算はどれだけあるか?」
三人は黙る。
なぜなら、それは先ほど小屋の中で全員で頭を悩ませたこと。
ザドゥを始めとする強大な敵たちを一度に相手にせねばならぬ最悪の可能性。
だが、それでも乗り越えていかねばならぬ。
それしかないと己らを奮い立たせ、歩まねばならぬ道。
そのはずであった道。
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「限りなく低いと言っていいだろう。だがここにザドゥを個別に葬れる絶好の機会があるとするなら?
もし、これが私の提案でなければ間違いなく君たちは乗るとするのではないだろうか?」
理想は各個撃破。
それは確かに正論。
そして三人は理解する。
ザドゥは何らかの状況で一人どこかで孤立している状況だと。
「もし君達がこの話に乗らないと言うのなら、我々の本拠で君達と我々の全面衝突しかない。
しかし、私にはそれが困る。かといって私ではザドゥを倒す術はない」
「つまり……」
「君たちには万全ではないザドゥを倒せる機会を……」
「そちらにはゲームの完遂をできる機会を……」
「グッド。そういうことだ」
遠くでぼうぼうと燃える火の粉がまるで自分たちを包み込むように三人の体温は上昇する。
ザドゥの始末に成功したのなら、智機の手によるゲーム完遂のための姦計で済まされぬような魔の手が待ち構えているのは確かだ。
もしくは……あるのだろう。
ザドゥさえいなければ、智機にはゲームを完遂させるめどが。
三人の考えは一致している。
乗るか、反るか。
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智機が嘘を言っているのであれば、後の障害が智機を残した方が大きいならば。
それならばこのまま目の前の個体を破壊すればいいだけ。
しかし、自分達を始末しに来たというのなら、こんなことなどせず不意打ちでも何でもすればいいだけである。
それだけの機体を誇るのが彼女『達』なのだから。
だが、敢えてこうして話を持ちかけてきたと言うことは、少なくとも戦いを望んできたわけではないことは明白。
それとも動けない理由があるのか。
彼女の考えが嘘か真かにしろ、判断はせねばならぬだろう。
「……悪いですがこの場ですぐには決めれませんね」
「そうじゃな。今後の運命を左右する以上、全員で相談して決めねばならん」
「それも当然。……しかし敵に背を見せていいのかね」
「なら、俺が残る」
ぐいっと恭也が前に出る。
その様子を智機は見透かしていたかのように満足げに微笑む。
「俺よりも魔窟堂さんや狭霧さんの方がこういったことに向いてるからね。判断は二人に任せるよ」
智機が不審な動きを見せるというのならば恭也は一瞬も容赦はしない。
彼の手には未だ刀が握られ、構えはいつでも抜刀に入れるように維持し続けている。
「……尤もだ。だがあまり時間はない。でないとザドゥを葬れるチャンスがなくなってしまう。待てるのは10分だ」
両手を広げて10の指を三人の前に智機は見せる。
でなければ、機会は失うと暗に煽りならが。
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「この場は、請け負いました。後ろは二人に頼みます」
「すまんな、恭也殿。気をつけてな」
「まぁ、相手の素振りからしても不意打ちの危険性はないと思いますが……」
監視役として智機に応対することを望んだ恭也の身の安全はほぼ保障されていることを狭霧は述べる。
もし一人だけ始末したい機会を作りたいなら、こんな手の込んだことをせずとも機会はいくらでもあったはずである。
だが、それもなかった。
彼女の言葉が真実だとするのならば、ザドゥと対立しているからと見える。
これ以上を行いたくば、ザドゥの存在が彼女にとって邪魔なのだろう。
今もギリギリの線を渡っているに違いない。
では、目の前の恭也が目的と言うのは?
誘拐でも何でもいい。
何らかの手段でゲームを完遂させてくれる駒とすべく洗脳でも、心変わりでも、何かしら手を加えたいというのだろうか。
もしあるとしたのならこの可能性。
ジョーカーとも言えるべき存在にするために、戦闘力の高いプレイヤーを確保したいという策略。
しかし、今回でそれを行おうとするのはあまりにも偶然の要素が高い。
誰が表に出てくるかなど100%わかりきってるはずのない博打の要素が高いからだ。
また此方でも同じくザドゥが邪魔なのは間違いない。
じっとこっちを見据える智機を背にして魔窟堂と狭霧は、小屋への足を伸ばす。
その背中を恭也に任せて。
智機の話が真実ならば、この悪魔の誘いに乗ると言うことは、上手く行けば強大な鬼の排除できる。
しかし、なりふり構わないと言う悪魔の解放も意味する。
何が真実なのか、果たしてどちらが微笑むのか。
行く末への判断に重い空気がのしかかり続ける。
-
数歩歩んだところで。
ふいに狭霧が首を後ろに傾け、智機に向けて言葉を放った。
「もしあなたが嘘をついていないとしたら……」
仮に智機の言葉が真実で全てが上手く行った場合として、彼女はどう動くのか。
自分達以外の参加者は、良くて二人、最悪一人すらいるかどうか。
その状況で『ゲームを完遂』させることのできる手段とは……。
仲間割れや心変わりという同士討ちに頼る不確かな手段では、目の前の存在はそうは動かぬのは解る。
ならば……
「最後になった私達を始末できる参加者……その目処があなたにはあるのでしょうね」
「……」
ふくみを持たせた口の歪みとともに、智機の返答を待たず狭霧はくるりときびすを返すと小屋へと向かう足を進めた。
-
と今回は前回の書き足しだけになってしまいました。
状態表はまた後日。
親戚の不幸のせいで先週まで色々忙しかったもので。
>>930
遅れましてごめんなさい。
此方としてはまとめてもらってる身なので異存ありません。
お世話かけます。
追伸:新PCをようやくぽちりました。
続きは再来週くらいになるかもしれません。
-
>>965
>249話の『いずれ迎える日』の為に内で〜
ご指摘ありがとうございます。
下記アップローダーに関連箇所を修正したものをupしてきました。
パスはありません。
お手数ですが次回更新時にでも差し替えのご対応をお願い致します。
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/free_uploader/src/up0390.zip
-
前回のを少々修正したまとめをUPしました。
パスはnegiです。
ttp://www.dotup.org/uploda/www.dotup.org770744.zip.html
予約の方ですが、しおりパートの文章をを前回の『希望の残骸』に含めた上で
加筆修正して仮投下したいと考えております。
期限、本投下予定に変更はありません。
避難所の次スレどうしましょうかね。
>>974
大変な中、執筆とレスありがとうございました。
-
>>975
修正どうもです。
次回更新分で反映させていただきます。
-
予約してた分、一旦破棄します。すみません。
水曜日までに新作ができない場合は『希望の残骸』を水曜日に本投下します。
-
サーバ規制により本スレに投下できません。
サーバ規制を食らうのが初めてで、いろいろ調べていたら遅くなりました。
待機していて下さった片がいらっしゃいましたら、申し訳ございません。
下記に「夜に目覚める」の修正版を投下しますので、
誠にお手数ではありますが、気付かれた方に代理投下をお願い致したく思います。
また、>>979で言及されておりますが、
当方の投下により避難所が990レスを越えてしまいますので、
次スレを建てようかと思います。
テンプレにつきましては>>2-8までのテンプレに>>10の訂正を施したものとし、
>>1は下記案でいかがでしょうか。
==============================================================
雑談、キャラクターの情報交換、
今後の展開などについての総合検討を主目的とします。
今後、物語の筋に関係のない質問等はこちらでお願いします。
278話以降、3ルートに分岐することとなりました。
ルートAは従来通りのリレー形式に、
ルートB、Cは其々の書き手個人による独自ルートになります。
規約はこちら
>>2
==============================================================
-
>>235
(ルートC:2日目 PM6:46 D−6 西の森外れ)
その姿に、走っている、といった必死さは無かった。
スキップにも似た軽やかさで以って、中距離走ほどの速度。
多少の不自然は感じなくも無いが、ありえぬ話ではない。
それが平地であるならば。
昼日中であるならば。
だが、ここは入り組んだ西の森の中。
光差さぬ闇の中。
これを加味して再考すれば、人の範疇にはありえぬ体捌きといえよう。
広場まひる。
それが、この絶技を見せるシルエットの名。
東へ。まひるは、ただ一人で駆けていた。
踏みしめる枯葉の鳴らす音は、限りなく軽い。
(気持ちいいな……)
風を切る感覚と木漏れる月明かりの青さに、まひるは身を浸す。
それで意識が散漫になったのだろう。
根腐れた倒木がすぐ足元に迫っていたことに気付くのが遅れてしまった。
「あ、危な……」
後一歩で衝突する。認識と同時に、まひるは跳んだ。
まひるとしての彼女が体験したことの無い反射速度で。
-
「……てっ!」
まひるは、結局転倒した。
倒木は軽く跳び越えたにも関わらず。
約3.5mの高さに生い茂る針葉樹の枝葉。
そこに頭頂を打ち、バランスを崩した為に。
「いやいやいやいや。跳び過ぎだってばさ、このカラダ!」
まひるは腫れた頭頂部を撫でさすりながら愚痴を零す。
だが、彼は知っている。
この程度の運動能力、ケモノとしてのポテンシャルには達していない。
だから、彼は探っている。
どの程度の運動能力までなら、人としての自分のまま引き出せるのか。
細胞が、ざわめく。
私たちをもっともっと使ってと。
その声に流されそうになる。
誘惑の蜜は甘い芳香を強く放っている。
それは、罠。
肉体が導くままに能力を解放すれば、まひるの精神はケモノに堕すだろう。
それをまひるは本能で知っていた。
人であると強く意識し続けること。
衝動に支配されぬこと。
まひるは己に任じた制約を強く胸に刻み、また駆けだした。
-
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
(2日目 PM6:40 D−6 西の森外れ・小屋3周辺)
東の森の火災による熱波が、ここ西の森にも届いていた。
それを加味しても肌寒さを感じるらしい。
小屋の壁面に背を預けている4人は、湯気の立つマグカップを啜っていた。
魔窟堂野武彦。
広場まひる。
ユリーシャ。
高町恭也。
今、小屋の中は交渉と猥褻行為を同時進行させるという混沌の坩堝と化している。
その邪魔をされたくないのだと、月夜御名紗霧は彼らを小屋から追い出していた。
「聞こえる?」
「だめじゃのぅ……」
額を寄せ、小声で溜息を重ねたのは魔窟堂とまひる。
盗聴器代わりに小屋内部に置いてきた集音マイクの一つ。
その音声が拾えないことが判明し2人は落胆したのだ。
-
彼らは与り知らぬことだが、理由はレプリカ智機P−3のジャミング機能による。
目的は盗聴阻止。
但し、魔窟堂たちのマイクを阻害する意図は無かった。
オリジナル智機が管制室の代行機たちにP−3を補足されぬよう施した細工が、
意図せぬ副作用を与える結果になったに過ぎぬ。
しかし、彼らにとってこのとばっちりは大きかった。
紗霧と智機の会談を拾いながら自分たちなりに考察を為す。
彼らのプランが木っ端微塵に砕け散ったのだから。
魔窟堂とまひるは落胆を引きずりつつも、額を寄せて意見交換を始める。
「でも、仲間を殺せなんて提案おかしくないかな?」
「奴らも一枚岩ではないということかの」
「裏だよ。絶対裏があるよ」
「まあ、何かしらの事情はあるじゃろて。
問題はその事情があの椎名智機の個体によるものか、
他にもいるじゃろう多くの智機たち全体の意志によるものか……」
「そうかなあ? あたしは仲間割れなんてしてないと思うけどなぁ。
何かあいつらが困っちゃうことが起きたから、
それを誤魔化すために適当言ってるとか、どうでしょ?」
「例えば?」
「実はあいつらの基地が東の森にあって、それが今燃えちゃってるとか」
「あるいはアイン殿や双葉殿に攻め込まれたやもしれぬな」
予測、推論は幾らでも重ねることが出来るが、結論が出る気配は皆無。
会議は踊る、されど進まず。
情報量少なき、整理も論理も曖昧な2人の考察は井戸端会議に等しい。
-
対する、沈黙を保つ2人の胸中はどうか。
(ランス様……)
ユリーシャの胸は張り裂けそうだった。
ランスが自分ひとりの愛情と肉体では満足しない男であることは宣言されているし、
実際にアリスメンディと関係を持ったらしきことも理解している。
しかし、だからといって。頭では理解していても。
実際にランスの性行為を目の当たりにした衝撃は、筆舌に尽くし難い物があった。
聞くと見るとでは、重みが違うのだ。
増してやランスが行為に没頭する余り、ユリーシャが小屋から出る際に一言も、
一瞥すら与えなかったことも、また。
相当に、堪えた。
「……んぁっ……」
思い煩うユリーシャの耳に、唐突に届いた。
追い討ちをかけるかの如き、智機の抑え切れぬ快楽の喘ぎが。
壁一枚隔てた向こう側から。
(ランス様の指はまだあの機械の胸で踊っているの……?
それとももう、ほかのもっと敏感なところまで旅している……?)
一度は胸の奥に沈めたヘドロの如き薄ら汚れた感情。
ユリーシャの沈む心が再びそのヘドロを攪拌しつつあった。
嫉妬。焦燥。
そして、その果てにある……
-
もう一人、高町恭也は、味方について考察していた。
(なぜ、月夜御名さんは俺たちを外に出したのか?)
智機は得物を持っていないようではあった。
しかし、たとえ素手であろうとも鋼鉄の肉体や高圧の蓄電などの危険はある。
性的な悪戯に夢中になっているランスのみでは護衛として心許ないはずだ。
それでもあえて、自分たちを屋外に出した。
外を見張れという意図もあろう。
だが、それならば自分一人を見張りに立たせればよいはずだ。
ユリーシャやまひるに気を遣ったということも考えられるが、こと紗霧に関しては、
人の心の機微を理解した上で踏みにじる傾向が見受けられる。
故に、それも理由としては不十分だ。
(なぜ、月夜御名さんは通信機を作らせているのか?)
重ねる問いに、恭也は解答の手ごたえを感ずる。
夕刻の魔窟堂の単独行時、紗霧を始めとする数人は落ち着かない心持ちだった。
包囲作戦の布石は打てたのか。
アインや双葉と接触したのか。
イレギュラーは発生していないか。
通信機とはその折の魔窟堂に同じく、遠くの誰かが収集した情報を、
素早く入手することを欲した故の発想ではなかったか。
であれば―――
-
「俺たちは俺たちで、出来ることから始めましょう」
恭也がようやく沈黙を破った。
魔窟堂とまひるは言葉を切り、恭也を見つめる。
恭也の瞳は不動だった。
力強く頼りがいのある、年齢不相応の大人の目をしていた。
「できること、とは?」
魔窟堂の問いに、恭也は答える。
「会談の後に月夜御名さんが必要とする情報が素早く提供できるよう、
下準備をしておくことです」
「つまりは偵察かの」
「然り。大河は両岸から見よといいます。
あの機械がもたらす情報を、真偽を確かめずに飛びつくわけにはいかない。
月夜御名さんであればそう考えるはずです」
もたらされた情報の信憑性を確かめる。
もたらされぬ情報の隠匿を発見する。
紗霧がこの交渉から何を引き出し、何を思いついたとしても、
その折に最速で要求に対応できる体制を作っておく。
それが自分たちに打てる最善手であろうとの答えに、恭也は達したのだ。
「魔窟堂さん。通信機は?」
「メカ娘の残骸から摘出したインカムは、ほぼ手を加えんでも使える状態じゃ。
あとは集音マイクが拾った音を、如何にインカムに伝えるか……
その帯域調整くらいじゃな」
「では魔窟堂さんを出すわけにはいきませんね。俺が、行きます」
-
通信機を作成する。
それはハム通や鉱石ラジオに精通するオタクの古強者・魔窟堂にしか出来ぬこと。
「俺がインカムを持って東の森周辺を調べてきます。
魔窟堂さんはその間、そちらの調整をお願いします」
恭也が腰を上げ、尻を払う。
その恭也の逞しい腕に飛びつくように、まひるが立ち上がった。
「あ、あのさっ!
あのさ、あたしが行くっていうのは、どうかな?」
まひるの言葉尻は上がり調子の疑問形だったが、その意志は強いらしい。
愛らしい頬が赤く染まっているのは興奮と決意の表れだった。
「まあ、たしかにまひる殿が最も適してはおるか……」
魔窟堂の言葉はまひるの異形に由来する。
ケモノに戻るを拒絶し、その進行を己の意思で止めているまひるではあるが、
既に変容した一部機能については、無かったことにはならなかったのだ。
蠢く左手の爪がある。
片翼がある。
そして今ひとつの異形―――アメジストの如き白紫光を放つ瞳がある。
夜に生き、夜に目覚める五芒星の、妖精の瞳が。
光を必要としない瞳が。
客観的に見ても、夜間の偵察に最も適した人材といえる。
だがしかし。
-
「―――良いのですか?」
恭也が声を一段落とし、まひるの意志を問うた。
今まで恭也がまひるに対して見せたことのない、厳しい眼差しで。
魔窟堂も無言で頷き、恭也に同調する。
まひるは主催者に立ち向かうことに対して消極的だ。
自分たちに比して一歩引いた位置に立っている。
恭也も魔窟堂も、そのことを察している。
故に、恭也は問い質した。
その覚悟を。
まひるは、まっすぐに答えた。
その覚悟を。
「だいじょぶ!」
まひるは己の消極性を、恭也たちに対する負い目に感じていた。
(戦いたくない―――)
主催を打倒する。
之を旨とする集団の中にあって、この思いは我儘なことだとまひるは思っていた。
覚悟を持たぬ自分が、果たしてこの前向きに戦おうとしている集団に所属していても
良いものかどうか、煩悶していた。
(恭也さんも魔窟堂さんも一生懸命がんばってるんだもん、
あたしだって、できること、しないと)
-
慣れぬ家事の真似事をし、紗霧のひみつ道具の作成を手伝ったりもした。
時折緊迫する空気を和らげる為に明るく振舞ったりもした。
彼は彼なりに貢献を果たしている。
それでも、己の足りぬ思いを払拭するには至らなかった。
その燻る思いを、重い借りを返上する機が、訪れたのだ。
そして何より。
(戦わなくてもいい)
走り回り、情報を集め、それを伝える。
この任務はまひるが最も忌避する行為なしに皆の役に立てる任務でもあった。
万一、何者かの攻撃を受けることがあろうとも、逃げ切れぬ相手などいない。
まひるは、無意識下に己の力量をそのように分析もしていた。
恭也の瞳はまひるの瞳を射抜いている。
まひるの瞳は恭也の瞳を受け止めている。
否、受け入れている。
恐れも迷いも無い、母性的な包容力すら感じさせる瞳で。
それに、恭也は膝を折った。
「ではまひるさん、頼みます」
恭也の折り目正しき辞儀に、まひるははにかみの笑みで以って応えた。
「でへへぇ…… 来ちゃいましたか?あたしの時代?」
-
=-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=
それで―――まひるは走っている。
『あーあー、どうじゃなまひる殿。わしの声は届いておるかな?』
「だいじょぶです」
『そちらの音声も、ま、ノイズは酷いが聞こえてはおる』
通信機が完成したのだろう。
インカムから、雑音交じりの魔窟堂の声が聞こえてきた。
『広場さん、今、どのあたりです?』
「森を出たとこです」
『もうですか!?』
恭也の驚愕がイヤホン越しに伝わった。
まひるはいつも顰め面の彼の素の表情を垣間見たようで、少し嬉しく感じる。
『辺りの様子は?』
「東の森はやっぱり燃えてる。すんごい燃えっぷりで」
通信をしながらも東進していたまひるは、ついに東の森の端に達した。
そして感じた。
静寂の夜を侵し、奔放に踊る不躾な炎。
圧倒的な、恐ろしいほどの、熱量。
-
「それと……なんだろ、地震でもないんだけど、地面が小刻みに振動してるような……
……なんですとー!?」
『どうしました広場さん!』
さらに―――
「地面の振動はショベルカーで……
そんでもって椎名ロボがてんこ盛りで、火消し作業してます。
繰り返します。
椎名ロボ、てんこ盛り」
↓
(ルートC)
【グループ:紗霧・ランス・まひる・恭也・ユリーシャ・野武彦】
【スタンス:主催者打倒、アイテム・仲間集め、包囲作戦】
【備考:全員、首輪解除済み】
【現在位置:東の森 南西部 重点鎮火ポイント付近】
-
【広場まひる(元№38)】
【スタンス:偵察、ついでに身体能力の調整】
【所持品:せんべい袋、救急セット、竹篭、スコップ(大)、簡易通信機(New)】
※軽量化を考慮し、アイテムの一部を仲間に渡しています。
【現在位置:西の小屋外】
【ユリ―シャ(元№01)】
【所持品:生活用品、香辛料、使い捨てカメラ、メイド服(←まひる)、
?服×2(←まひる)、干し肉(←まひる)、斧(←まひる)】
【高町恭也(元№08)】
【所持品:小太刀、鋼糸、アイスピック、銃(50口径・残4)、保存食、
釘セット】
【魔窟堂野武彦(元№12)】
【所持品:軍用オイルライター、銃(45口径・残7×2+2)、
白チョーク数本、スコップ(小)、鍵×4、謎のペン×7、
ヘッドフォンステレオ、まじかるピュアソング、
簡易通信機(New)、携帯用バズーカ:残弾1(←まひる)、工具】
-
以上です。
あと、>>979にて書き逃しましたが、
>>897のお知らせも併せて転載の程、お願いいたします。
-
>>979
避難所の次スレはそれで問題ないと思います。
スレタイも含めてお任せします。
-
長時間に渡る代理投下、ありがとうございました。
勇み足気味ではありますが、本スレの残りレス数が僅少ですので次スレを建てました。
また、どなたか本スレへの裏方スレ移行告知をお願い致します。
企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議2
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/15097/1270308017/
-
#6 >>380-390
(Aルート 二日目 PM6:28 F−4 楡の木広場跡地)
いつの間にか体の痛みは消えていた。
まわりは暗く、暑くも寒くもないところに私はあお向けで寝ていた。
手と足は動かせられなかった。
目だけと鼻だけが動かせた。
かちかちかちかち……
時計の針がうごく音がだけがきこえる。
何も見えないところにいるのに…………なんだかなつかしい感じがした。
わたしたちが住みなれたおうちのにおいが感じられた。
怖くて、すこし悲しいことがあったあの日の夜に似ていた。
……そう、そうだこれはわたし達が決心したあの日の夜。
わたしは横を向いた。
さおりちゃん?さおりちゃん?さおりちゃん?
……なんでいないの?
どこへいったの?どこにいったの?
あなたがここにいなきゃ、明日わたしたちの大切なひとに告白できないのに。
わたしは悲しくなって、泣こうとした。
涙は流れない
声も出ない。
手足も動かない。
……かちかちかちかちと時計の音だけが聞こえる。
わたしは怖くなった。
さおりちゃんがいないが怖い。
……それと同じくらい、あの日の次の日……
ふたり揃って告白したあの日がなかったことにされるのが怖い……。
だってあの日がなかったらわたし達は……。
力を入れているのに手と足は動かなかった。
…………!
-
痛いけど、人さし指が動いた!
わたしは痛いのをガマンしながら、少しずつ指を動かそうとした。
まわりは暗く、だれもいない。
けれどさおりちゃんを探すため、大切な人を探すため。
わたしはがまんしながら指先に腕に力を入れ続けた。
□ ■ □ ■
#6 >>588-605
(Aルート 二日目 PM6:28 ????)
ルドラサウムが喜んでいる。
朽木双葉の絶望の断末魔を噛み締めるように。
過程こそ予想を上回ったが、その最期は我とルドラサウムの期待通りだった。
あの六人によるザドゥらの接触も火災の規模から当分はない。
後の問題は運営が火災にどう対処するかだが、椎名智機には相応の戦力を与えている。
朽木双葉の術の影響が無くなった今ならザドゥらも充分脱出は可能だろう。
…………。
長谷川均の魂はまだ来てないようだ。
奴がいた世界の構造と死因を考慮すれば、予想の範囲内といえば範囲内。
……あるいは確率の低い……我が望む結果が出たか。
楽しみだ。
……!
《……またか》
舞台は揺れなかったが、今度のはルドラサウムの方が揺れたな。
……ルドラサウムは気に留めていないようだ。
-
だが、ここに影響が出てしまったか。
……舞台の観察は支障なく行える。
《第三界にいた連中も動きは無く、魔のものも介入する気配はない。
…………》
……後の事もある、各空間を確認せねばな。
シークレットポイントでさえ、まともに機能しているかも定かではないのだ。
発見と調査をしやすいように、シークレットポイントには微量の魔力を放出させる設計にしておいた筈だった。
にも関わらず№9のグレンはシークレットポイントの発見できてなかった。
ここまで放置されたままゲームが進行した現在、部屋としての機能しかなくとも大きな問題は無い。
むしろ御陵透子の世界の読み替えを制限した以上、機能すれば運営に対する決定打にもなり得る。
№12魔窟堂野武彦が調査をしていたが、どれほど把握できていた?
……奴がいた世界にも魔法は確認されていた。
グレンよりも魔道に長けている可能性はある。
もし奴が把握できるなら、今後の舞台の構築の進歩になり得るが……。
《…………やはりか》
ここからだとシークレットポイント内部の確認ができない。
確認はしたいが、ここからの移動はルドラサウムの許可がいる。
《様子を見ておくしかないのか。しかし効果が大きく変動するとなれば……》
最悪シークレットポイントの力一つで勝敗が決してしまいかねない。
回避すべき事態。
しおりと朽木双葉の得た力を始めとする、我々の予想を超えるいくつものイレギュラーがこのゲームでは起こっている。
ゲームの破綻は絵空事ではない。
-
《ここの空間だけでも修正したいが……どうする?》
時間が掛かる上に修正は確実ではない。
幸い、例の予定時刻まで少々余裕はある。
運営陣には少々リスクを背負ってもらう事になるが、椎名智機の与力を利用するか……。
《……ほう》
あの小屋を目指すか……。
なら別の機体を利用するか……。
《…………》
ルドラサウムに申請をするか……。
□ ■ □ ■
(二日目 PM6:30 ???)
やっと、やっと腕が上がったよ。
どれだけ時間がかかったとか、これが夢かどうかは関係なかった。
指先がちょっとだけ温かい何かにふれたから。
なんだろう?なんだろう?
そのぬくもりが何かはわからない。
でも、ふれるだけで心がちょっとだけ安らぐような気がする。
うれしかった。
わたしは何度か深呼吸をして、息をととのえようとする。
今度は声をあげようと思った。何かを誰かを知るために。
わたしは息を大きく吸って――
□ ■ □ ■
《…………》
これは驚いた。
№18星川翼や№6タイガージョーなら、別に不思議ではなかったが。
一回目にして実験が成功とは……。
そして我の方も……。
《……ありがとうございます我が主よ》
-
□ ■ □ ■
(Aルート 二日目 PM6:28 F−4 楡の木広場跡地)
〜しおり3〜
腕は上がらなかった。
指一本動かす気もおきなかった。
「どうしてぇ……」
あたりは音とオレンジ色。
わたしは上げた……と思ってる方の手に残るぬくもりを思い出そうとした。
けれど……。
「……」
ぬくもりはたった一回の揺れのあと、ふっと消えてしまった。
目が覚めたのはそのとき。
もうあのぬくもりを思い出せない。
あの揺れのが実感として残ってしまっていた。
わたしのまぶたが重くなっていく、まわりが白くかすんでいく。
わたしはまた眠ってしまう前に大切なひとの名前を呼ぼうとした。
「……」
だれの名前を呼んでいいかわからず、息をはいてわたしは眠りに落ちた。
↓
(Aルート)
【現在位置:F−4 楡の木広場跡地】
【しおり(№28)】
【スタンス:大切な人に会いたい】
【所持品:なし】
【能力:凶化、発火能力使用(含む紅涙)、炎無効、
大幅に低下したが回復能力あり、肉体の重要部位の回復も可能】
【備考:首輪を装着中、全身に多大なダメージを受け瀕死の重傷、
精神的疲労(小)
歩行可能になるには150分前後の安静が必要
戦闘可能までには更に3時間前後の安静が必要】
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