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フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

1迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:57
愛しのフレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、          ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・       ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 )    ヘヘ         ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー     ライトH位なら許してあげる。
|       .〈〈.ノノ^ リ))    ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
        |ヽ|| `∀´||.      ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
     _φ___⊂)__
   /旦/三/ /|     前スレ:フレイ様人生劇場SSスレpart4〜雪花〜
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |    http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1070633117/
   |オーブみかん|/    
              既刊作品は書庫にあるわ。
             ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html

              こっちも新しい書庫よ。
             ○フレイたんSS置き場 ttp://fllaystory.s41.xrea.com/top.html

2迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:58
スンマソ、うっかりとってしまったのでたてますた。
自分は最近投下しておりませんが、皆さんの投下楽しみにロムってます。

3ミリアリア・あの子許せない 71:2004/03/06(土) 18:13
第2部 4. 私はどうすればいいんだろう? 8-1/8
[フレイ? 何よ、あの子!!]

カズイの言葉で、私の中に溢れ出したヘリオポリスの思い出。
まだトールとは彼氏・彼女でなく、キラへの打ち明けられぬ想いに、胸を焦がしていたころ。

* * *

騒がしい店内。あちこちで交わされる会話。カトウゼミと私のサークル、その他の合コン。
新しい友達、新しい出会いが、あちこちで生まれる中、私は結局、いつものメンバーで
話に花を咲かせていた。

「トール、今度出るCPUどう思う」
「ううん、結局ベンチマーク、大して変わんないのな」私の話に、トールは残念そうに答える。
「そうだね、量子サーキットの新技術を生産設備の関係で見送ったからね」キラの言葉。

「まったく、それ、やってりゃな」とトール。
「でも、本当は軍関係で先に発注されてて、キャンセル品が一部流れるという噂もあるよ」
「え!ほんと? キラ」キラの言葉に、私は目を輝かせる。

「ああ、複数の情報を総合するとね」
「キラ君、それだよ、それ。そうこなくっちゃ。よし、それ狙うぞ」盛り上がるトール。

「キラ、よく知ってる。色々、情報調べてるんだ」
「ミリィほどじゃ無いよ。たまたま、見つけただけで」キラは、少し照れるように話す。

私はキラを、うっとりと見つめる。キラは知識をひけらかすことはしないけど、
本当に良く知ってる。マニアックなトールになんなく話を合わしていける。そして、私とも。

サイは、そんな私達の話に付いて行けないようで、ヤレヤレという顔をしていた。

ふいに、後ろから、明るい声がした。
「サイ、こっちに来ない?」
「フレイ!」
サイは、そう言って振り向いた。声の主は、新入生のフレイ・アルスター。
私と同じサークル。結構いいとこの、お嬢さん。

「先輩たち、難しい話をしていますね」

フレイは、新入生らしい丁寧な言葉で話しかける。でも、それが、私には、ちょっと鼻につく。
サークルでは、友達と意外と好き勝手しているのだ。意識はしていないかもしれないけど、
表と裏を使い分けて、こういう場では、自分を飾るようなようなタイプ。合コンでも、
いろいろな人に愛想を振りまいている。そして、今、店の片隅でたむろしている私達の
ところへもやってきたのだ。

「ねえ、向こうにドリンクあるわよ。サイ、行きましょうよ」
「うん、フレイ、だけどね、今日はちょっと……」

「今日はどうだっての、サイ?」

フレイは、私のゼミの人とは、それほど会っていないはずなのに、サイには、やたら馴れ馴れしい。
男に甘えるような仕草が、私をイライラさせる。でも、それだけでは無い。私は、チラと後ろを見やる。
そこにいるキラの目は、さっきから、ずっと、フレイに注がれている。美しくセットした髪。
赤毛の後ろ髪が揺れる。それからキラの目は離れない。

キラ! フレイのこと見とれて! フレイ? 何よ、あの子!!

4ミリアリア・あの子許せない 72:2004/03/06(土) 18:17
第2部 4. 私はどうすればいいんだろう? 8-2/8
[みんな撮るよー!]

フレイに見とれているキラ。キラ、あの子のこと、まさか……
私は、振り向いて小さく声をかける。
「キラ!」

でも、私の声は少し上ずっているのが自分でも分かる。そんな私の言葉にキラはハッとしたように
視線を私に戻す。

「その人、キラっていうんですか?」 あの子が無邪気に聞いた。

「ああ、はじめまして、キラ・ヤマトです」
「私、フレイ・アルスター。よろしくね」

しばしの間、あの子とキラの視線が合う。

「あ、俺、トール・ケーニヒ」トールが割り込むように話す。

私の行動が、意図せずに、あの子とキラの自己紹介になってしまい。私は内心面白くなかった。

「みんな撮るよー!」
カズイの声がした。カズイが一眼レフのプロ用デジカメを構えて、私達を見ている。
あの子は、それだけで、カメラに向けて満面の笑顔を浮かべている。トールが立ち上がって、
大げさにポーズを付ける。私も慌てて笑顔を作る。

パシャッ! パシャッ! シャター音が数回響いた。

「どれどれ」トールが、わざわざカズイのデジカメのモニタを覗きに行く。あの子とサイも
肩を並べながらモニタを覗き込んでいる。残ったキラに、私は目を向ける。キラは、
あの子に見とれていた素振りは、既に消えて、見つめる私に微笑みを返す。
私はホッとして、嬉しくて堪らなくなる。

「カズイ、後で写真ちょうだい」と私。
「俺、データも、もらい!」とトール。
「僕もデータもらうよ」キラ。
「カズイ、2枚分な。フレイにも、後で写真渡すよ」あの子の方を向いて話すサイ。
「うん、サイ」サイを見つめている、あの子。

「ちょっと、ちょっと。いっぺんに言わないでよ」カズイは困ったような素振りながらも嬉しそうだ。

口々にカズイに話しかける声。カズイの撮る写真には平和が詰まっていた。カズイは平和な私達を残す大事な仲間だった。

* * *

私、キラ、トール。サイとあの子。そしてカズイ。平和な時。
あの子の存在も平和へのスパイス。成り行きにまかせる私を刺激し、キラへの想いを再確認させていた。
でも、あの平和な時は今は無い。

私達みんなを明るくさせていたトールは、もういない。
キラは昔とは変わった。悲しくなるくらい。
あの子は暴走し、キラを変えて、そして姿を消した。
サイは失意に落ち込み、そして、立ち直った後、私と微妙な関係になっている。
その上、平和な時を記録していたカズイも、私達の前から姿を消す。

昔の私達は帰って来ない。私はどうすればいいんだろう?

5ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/06(土) 18:20
うちのSS独自のヘリオ組回想です。結局、予定分をサイズ制限で二つに分けました。
これのフレイ版も存在していて、ちょっと先になりますが出てきます。
次は、またフレイSSに戻ります。

前スレ、目次を入れたら、いきなり、リストから消えてしまいました。
過去ログ倉庫まで行けば見れますが、一度に開くとサイズが大きいですし、
もう少し入れずに、保持しておいた方が良かったですね。済みません。

前スレの最後の投下への感想です。

>>The Last War
お帰りなさい。一連の作品、どんどん良くなっています。今回のクリスとセシウスの決着で、
アスランに言ったカガリの最終話の台詞の絡ませ方なんか最高でしたよ。

>>流離う翼たち
キースとカズイの会話、大笑いさせていただきました。

>>過去の傷
食事会、ラクスとアスランは、別なんですね。ミリィは、相変わらずモーションかけて、キラ困惑気味。
そして、マリューさん登場。ムウを失ったマリューさんは、どうしているのでしょうか?

6流離う翼たち・424:2004/03/06(土) 22:37
 そこは既に異界であった。異様な空気と臭気が充満し、かつては普通に美味しく食べられたであろう食材が異界の技によって形容し難い何かへと変貌を遂げている。それらを目の当たりにしている審査員たちは一様に顔色を失い、気の弱いサイは今にも気を失いそうになっている。
 そして、最初の料理が6人の前に並べられた。

「うーん、一応頑張ってみたんだけど」

 ミリィが出してきたのはトーストに半熟の目玉焼き。簡単なサラダにコンソメスープという朝食風味なメニューだった。これなら確かに失敗はしないだろう。出だしとしてはまあまあのメニューだ。だが、5人がトーストを手にする中で、何故かトールは何にも手を付けようとはしなかった。
 そして、サラダを食べたキラがいきなり糸が切れた人形のようにその場に突っ伏した。それを見た参加者たちがぎょっとしてキラを見やる。

「おい、どうしたキラ?」

 心配したサイが声をかけるが、キラは何かに堪える様に顔を顰め、ぴくぴくと痙攣している。そして、それを見たトールが落ち着いた声で目の前のメニューを見る。

「ふむ、今回はサラダか」
「どういうことだ?」

 フラガがトールに問いかける。トールはトーストにバターを塗りながらそれに答えた。

「いえ、ミリィの料理は必ずどれか一品が地雷なんです。今回はサラダのドレッシングでしょうね」
「つまり、君はそれを知っていて黙って様子を伺っていたと?」

 フラガの詰問に、トールは視線を泳がせることで答えた。フラガはトールの計算高さに呆れたものの、自分もキラの犠牲を無駄にせぬようサラダを横にどける。
 だが、4人の何ともいえない視線がトールに集まってしまう。その視線にさらされたトールが戸惑った声を上げた。
 
「な、なんだよ!?」
「いや、なんと言うか、なあ?」

 フラガが何とも言えない目でトールを見た後、視線を他の2人に向ける。他の2人にも同様の意思が見て取れる。そう、みんなトールに同情しているのだ。お前の未来の食生活は暗いぞと。2人の関係を知らないオルガは我関せずとばかりに食事を続けていた。勿論サラダは退けている?
 男たちがそんな失礼な事を考えているとも知らず、ミリィは目配せをしている男たちをキョトンとした顔で見ていた。ちなみに、キラは5分後に何とか復活した。

 しかしまあ、ミリィの食事は極めて問題点の無い、いや、恐ろしい問題があるような気もするが、食べれるので問題は無い。問題なのはここからなのだ。

7流離う翼たち・作者:2004/03/06(土) 22:43
>> 過去の傷
ラクスが怖い・・・・・・ミリィはモーションかけてるし
平和は何処に行ったんだ?
マリューさんは久しぶりに会ったようですね。大丈夫でしょうか

>> ミリアリア・あの子許せない
前スレのまとめ、乙でした
ミリィの過去の回想ですか。この頃は普通に平和だったのに
何気にカズィがとっても重要な位置にいるw

8過去の傷・71:2004/03/06(土) 23:26
マリュ−はフレイに微笑んだ。
「お久しぶりね」
「はい、会いたかったです」
「でもその前に聞いておきたいことがあるのよね・・・ほらなぜ転属したはずの貴女がザフトの脱出ポッドに乗っていたのか。
フレイは息を吸うと全てを話し始めた。
クル−ゼに捕らえられザフトに入れられたこと、ザフトでの生活のことなど、そしてクル−ゼにあるディスクを託されアズラエルに渡した・・・そしてそれが戦争の引き金になったことなど、全て話した。
「そう・・・そんなことがあったの・・・辛かったわね」
「はい、でもこれは罰だったのかもしれません」
「罰?」
「はい・・・私キラに酷いことしたから・・・いろんなことしたから、キラを戦争の道具として利用して・・・それがキラに対しての復讐だと決めて・・・そんな女なんです私は・・・だから罰だったんです・・・転属することが決まった時点で・・・私怖かった・・・それからはずっと一人で・・・ほんとにいつ死ぬかなって・・・私キラに謝りたかった、謝らなきゃって・・・ごめんなさいって・・・ずっと苦しくて、怖くて・・・闇に閉じこもってました・・・」
「そう、でも良かったわね戻れて、キラ君に会えて・・・怖かったでしょうね、ほんとに・・・」
フレイが涙声になる・・・そして泣き出した。
「は・・・はい・・・うう・・・私・・・怖かった・・・ずっと・・・うう・・・マリュ−さん!」
元上司の胸に泣きながら飛び込んだ、そしてマリュ−は微笑むと赤い髪の少女を優しく抱きしめた。
「辛かったわね、怖かったわね、一人でよく頑張ってきたわね・・・偉いわ貴女は」
「うう・・・そんな私・・・暖かい、バジリ−ル中尉も暖かく抱きしめてくれました」
「ナタルが?・・・そう・・・ねえフレイさん・・・顔を上げて皆を見てみて、ほら皆の場所に、キラ君の場所に戻れたじゃない」
顔を上げるフレイ、皆を見渡す・・・キラが・・・サイが・・・皆が優しい目でフレイを見ている、その光景にフレイは、泣き顔で嬉しそうに微笑んだ、そして・・・。
「皆・・・ただいま」

通路を歩いているキラとマリュ−。
「そうですか、来たばかりなのにもう帰還するんですか、残念です」
「ごめんなさいね、でもまた来るわ・・・それよりフレイさんは・・・」
「フレイは・・・彼女は・・・僕が全て悪いんです・・・フレイのお父さんを守れなかった僕が・・・彼女はいろんな運命に翻弄された・・・」
「ええ・・・もしかすると彼女がだれよりも一番の戦争の被害者かもしれないわね・・・」
「はい、僕もそう思います・・・これからは僕が彼女の側にずっといてあげます、ずっと見守ってます、もうフレイを一人にはさせません」
「ええ・・・お願い・・・キラ君」
「はい」
マリュ−去りながら言った。
「私は・・・あんな幼い少女の運命を狂わせた・・・彼女に心の傷を負わせた戦争というのを私は絶対に許さないわ」
「・・・・・・」(フラガ少佐のことで傷ついてるだろうにあの人は・・・やっぱり立派な人だ)

ドアの前に来たキラは、フレイの様子を見ようとしてつい嬉しそうに微笑んだ、フレイはカガリとミリアリアの間だ楽しそうにくすくすと笑っていた、それはキラが一番好きなフレイの表情だった、そう・・・ヘリオポリスのキャンパスで見たあの無邪気に笑っていたあのフレイだった、本当のフレイ・アルスタ−という一人の本当に楽しそうな表情だった。

9過去の傷・作者:2004/03/06(土) 23:39
>>ミリアリア・あの子許せない
おおお、これは平和だった頃の・・・ミリィの回想ですね、というよりミリィはこの頃からフレイ様にちょっとした敵意というか嫉妬というか。
>>翼たち
ここは戦争だ、おいおいミリィでこれなら、これから六人とも地獄以上の苦しみを味わうみたいですね、ある意味モビルス−戦より怖いです、なにげにト−ル同情されてるし、でもさすがに彼は詳しいですね、それよりもっと同情されるのはキラでは?

10リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/07(日) 08:59
ガロードは本屋で大藪春彦の本を数冊買った。
「戦士の挽歌」の全巻、「狼の追跡」「ヘッドハンター」「戦場の狩人」だ
ガロードは店長のロメロに言った
「おじさん?」
「なんだ」
「本買いに着たんだけど」
「そうか」
「大藪の新刊入れててくれよ」
「そうだ、いいものがある」
ロメロは小さなカプセルを出した
「なにこれ?」
「これを飲むと胃の中で消化され、数メートルの大爆発するものだ」
「もらっとくよ」
ガロードは店を出た
ガロードはジェリドとばったり会いあとをつけた。
ジェリドは喫茶店に入った。そこでジェリドはコーヒーとカレーを頼んだ
ガロードはジェリドの隣の席に着き、コーヒーを飲む
ジェリドはトイレに向かった。いまだ!ガロードは思った
ガロードはジェリドのコーヒーにカプセルを入れた。
ガロードは喫茶店を去った。数分後、コーヒーを飲んだジェリドは
喫茶店で大爆発をした。ガロードは明日の新聞にどうどう的に公表される
だろうと思った。

11刻還り:2004/03/07(日) 16:36
キラはカガリ達からバクゥを離すようにバクゥを誘導する。
その意図を察してフラガも追随する。

「逃がすかよ。」

バクゥより発射されるミサイルを盾で防ぎながらビームライフルによる牽制、離脱。
それを繰り返す。

「ここまで離れれば。」

照準をきっちりとバクゥに合わせ、トリガーを引く。
ビームは一直線に走る。
そして、砂塵を舞い上げた。

「外れた。」

もう一度撃つ。
しかし、結果は同じ。

「キラ、熱滞留のせいだ。」

熱滞留。
ストライクのビームが外れる原因。
地上での戦闘が初めてキラにとって気付かない現象。
さらに、ストライク自体が宇宙用に設定されている。
ちなみにスカイグラスパーは地上用であることによりある程度補正がされており、フラガ自身が地上での戦闘を経験しているため命中率が

ストライクより高いのだ。

「ありがとうございます。」

キラはすぐさま端末を引っ張り出し、瞬時にデータを打ち込んでゆく。
わずか10秒にも満たない時間にである。
キラの卓越した能力は戦闘時の不利を一瞬にしてなくした。
そして、次の一撃はバクゥに直撃、大破させる。

「やってくれるな、一瞬にして熱滞留をプログラムに組み込んだ。」

戦闘を遠巻きに見ていたバルドフェルドは、素直に感嘆の言葉を述べる。
バクゥは残り1機。
完全に不利である。

「隊長どうしますか?」
「後退する。これ以上の損害はごめんだからな。」
「はっ。」

ダコスタはすぐにバクゥのパイロットに撤退を命令し、自身もジープを走らせた。

「面白い相手というのは厄介なものだ。」

呟いたバルドフェルドの口元は狩猟者としての笑みを浮かべていた。

12刻還り:2004/03/07(日) 16:38
此度の戦争で“明けの砂漠”の被害は甚大であった。
先に駆け出していった者達のほとんどが還らぬ者となり、哀しみと怒りの空気が一帯を包んでいる。
生存者の中にも無傷ですんだ者は少なく、何とか一命を取り留めたような重傷者もいる。
カガリと一緒に戦っていたアフベドという少年だ。
アフベドはバクゥの爆発に吹き飛ばされた衝撃で意識を失っている。
カガリはそんなアフベドを心配して手を握り締めていた。

「あんたらはこんなことがしたかったのか?こんな風に命を捨てる。」

スカイグラスパーから降りてきたフラガは見下ろしながら言う。

「なんだと。」

フラガの言葉に突っかかってくるカガリ。
カガリは正面からフラガをにらみつけながる言う。

「みんな必死で戦った、戦っているんだ。大事な物、大事な人を護るために必死でな。」
「護るための戦い?死ぬための戦いの間違いじゃないのか。」

カガリの拳がフラガに向けられる。
しかし、その拳はフラガの顔を捉える前に腕を掴まれた。

「護るって言うんなら、死んじゃ意味ないんだよ。待っている人のところに帰らなきゃな。」
「痛っ。」

掴まれている腕に力が込められ、カガリの腕に痛みが走る。
フラガの言葉に、カガリは衝撃を感じる。
知っていたはずであった。
戦争で仲間死ぬのを見るのは初めてではない。
誰かが死ぬたびに誰かが哀しみに包まれる。
それを見るのが嫌だった。
だから、必死だった。

(なのに・・・)

カガリは自分の行動が正しいのかわからなくなってきた。

13刻還り・作者:2004/03/07(日) 17:14
短い・遅い・行間のミスと3拍子そろっております。
皆様が心配(期待)なされていたフレイ様の出撃はありません。
まだw

>>流離う
ミサじゃなくてマリューのみならずミリアリアまでとは・・・
フレイ様の料理に期待ですね。
きっと、胃が溶けるようなものを作ってくれるにちがいないw

>>過去の傷
マリューの登場で和やかな雰囲気です。
フレイ様も笑っておられます。
ミリアリアの行動がフレイ様にどんな影響をあたえるのか?
続きが期待です。

>>キラフレ
祝投下です。
黒々としたフレイ様が白くなることを願いながらも黒でもいいかなっと。。
続きを待っています。

>>The Last War
クリスとセシウスの決着がつき、着々と締めへと向かっていますね。
円満なる完結を願っています。

>>ミリアリア
平和な頃の思い出ですね。
ミリアリアはどういう思い出トールと付き合っていたのだろう?
少し、トールがかわいそうです。

>>リバアス
ガロード、他人を巻き込むのはどうかと・・・

14流離う翼たち・425:2004/03/07(日) 22:44
 ミリィの次に料理を持ってきたのはカガリだった。出てきたのは野菜スープと、何処から出てきたのかご飯である。一体アークエンジェルの何処に米があったのだろうと誰もが思ったが、あえて口にはしない。それよりももっと大きな疑問が先ほどからこの食堂に満ちているからだ。いや、時折調理場から聞こえる怪しげな声とか、謎の悲鳴とか、奇怪な音とか・・・・・・

「どうだ、私もやれば出来るだろう」

 えへんと胸を張るカガリ。だが、スプーンでご飯を口に運んだキラはすぐに顔を顰めた。

「・・・・・・生煮えだ」

 それを皮切りに次々と出てくる不満の山。

「この人参、皮が剥いてないぞ」
「なんで野菜スープに長ネギが?」
「塩が多すぎだ」
「煮込み時間が足りない。野菜に芯がかなり残っている」
「不味いぞ」

 最後のオルガの感想は余りにもストレートだった。その直後にオルガの頭にカガリの投げたお玉が直撃し、綺麗な音を立てる。額にモロに食らったオルガは大きくのけぞった後、強引に身体を戻して文句を口にした。

「ってえな、何しやがる!」
「やかましい。いきなり不味いなんて言いやがって!」
「本当の事だろうが。お前ちゃんと試食したのか!?」
「試食? そんな物いらん!」
「ちょっと待ちやがれ、この自信二乗女!」

 何とも酷い事を言うオルガ。カガリは顔を真っ赤にして怒っているが、他の5人はオルガの言葉に内心で頷いていたので、誰もカガリの擁護はしなかった。
 そして遂にカガリは切れた。

「もう怒った、表に出ろ!」
「良い度胸だ、後悔するなよ阿婆擦れ!」
「誰が阿婆擦れだ!?」

 右手に柳刃包丁持って怒りを露にするカガリと、拳を握るオルガ。このまま流血の惨事にと誰もが思ったが、それが激突するより早くオルガの頭に拳骨が落ち、カガリの後頭部にハリセンが叩き込まれた。

「ぐぁあああ!」
「きゅう・・・・・・・」

 頭を抱えて悶絶するオルガと、ハリセンの一撃で気絶してしまうカガリ。カガリを殴ったのはフレイだった。

「もう、この娘は。カッとなるとすぐに手が出るんだから」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 フレイの呆れた呟きを聞いて6人は思った。そのハリセンは何処から出てきたんだと。

15流離う翼たち・作者:2004/03/07(日) 22:50
>> 過去の傷
マリューさんが笑っている。でも、マリューさんよりキラが笑っている方が驚きなのは何故w?
とりあえずフレイ様は幸せそうですね。マリューさんはまだまだ大変でしょうが

>> リヴァオタと八アスのためでなく
コーヒーとカレー、ジェリドの食生活は一体?

>> 刻還り
アフメド君、生きてたんですねえ。良かった
何気にカガリを叱るのは兄貴の役目ですか。黒キラじゃないからキラは怒らないかな

16散った花、実る果実34:2004/03/07(日) 22:57
今日は・・・・色々なことがあったような気がする・・・・
いつもと同じだけの長さの一日だけど・・・・ミリアリア・・・リスティアと出会い、あれほど嫌っていたザフトの軍服に袖を通し・・・・
あんなに異端視していたザフトの軍人とこれだけ色々なことが話せるとは思ってなかった。
ミリアリアと同じ名前だって事で親近感を感じたせいもあるけど・・・多分それだけじゃないだろう。
・・・・少し前の私だったら、きっとコーディネイターだという事だけで、話そうともしなかったと思う。
コーディネイターが嫌いってずっと思ってたけど・・・多分、私の偏見が余計相手の態度を頑なにさせていた事もあったのだろう。
カレッジにいた頃は隠すようにはしていたけど・・・それでも私のコーディネイターへの偏見は、パパが死んだ後ほどじゃないけど、やっぱりしっかりとあったもの。
・・・・まだ・・・・・コーディネイターが怖くないわけじゃないけど・・・・・・・

ミリアリア・・・ミリィ・・・・クルーゼ隊はまだアークエンジェルを追っていると言う事だった。
という事は、ミリアリアは無事なのだろうか。
『違う・・・・違う、私・・・・・・違う!』
あの時彼女が本当に言いたかった事はなんだろう。
彼女がコーディネイターの捕虜にナイフを向けた瞬間、あの瞬間だけはやっぱり私と同じ気持ちだったろう、と今でも思う。
でも、その次の瞬間は・・・?
私はまだコーディネイターへの憎しみを止められずにいた。
復讐をとめようとしたミリアリアへわずかなりとも憎しみを感じた。
私を止めたミリアリアの気持ちは?何故彼女は私を止めたの。
人殺しが恐ろしくなった?ううん、違う。形はどうあれ私たちはキラにそれを強いてきた。
相手が生身の人間だから怖気づいた?でもそれなら自分の体を張ってまで助けることもないだろう。
自分が手を引けばそれで済む。
なら何故。
自分が間違っていることに気が付いた?コーディネイターというくくりで相手を決めてしまうことに。
たとえば今日リスティアに私が投げかけた数々の失言。
もし私が彼女をナチュラルだと思っていたら言わずに済んだこともあったろう。
その逆もまた言える。
彼女が私の事をコーディネイターだと思っていたらファーストネームで呼ばれることにあれほど拒絶を示しはしなかったろうし、その後の会話もまた違ったものになっただろう。
ミリアリアはそんな、“コーディネイター”と“ナチュラル”で人を決めることが間違っているとあの瞬間気が付いたのだろうか・・・・
私のコーディネイターへの憎しみを目の当たりにして?
それとも・・・・・・

17散った花、実る果実35:2004/03/07(日) 22:57
ピッ
電子音がして扉が開いた。
「ミ・・・・・リスティア・・・・・」
「あなたの生活必要品をお持ちしました。最低限必要と思われるものは用意しましたが、不足があれば申し出てください。本日は隊長は戻られませんが、明日には戻ると言う事でしたので。」
「ありがとう・・・・」
「いえ、これも仕事ですから」
そういう彼女の語調にはなにやら力がない。一体どうしたんだろう?
「そんな不思議そうな目で見ないで下さい。・・・あなたと話していて、そんな素直な反応が返ってきたのが初めてで、ちょっとびっくりしただけです。」
素直?
「『ありがとう』。最初の頃は神経を尖らせてピリピリしていましたし、コーディネイターを貶める発言が多かったように思います。・・・違いますか?」
「それは・・・・・・でも、あなただってお互い様じゃない。何かっていうと、『これだからナチュラルは』って反応してたくせに」
彼女は肩をすくめて
「だってそう思ってましたから。まあ、プラントで生活しているとナチュラルと接することも滅多にありませんし、少なかったそれもけしていい思い出ではありませんでしたしね。」
どう聞いてもナチュラルを認めていない台詞だったけど、今までの刺だらけの口調ではなかった。
「前に何かあったの?」
彼女は、しょうがないな、といった感じに微笑んで、
「まあまず妬まれます。戦争が始まる前は、プラントと地球で学生同士の交流会みたいなものが催されていたのですが・・・・そのときこう言われまして。」
「なんて言われたのよ。」
すると彼女はこれ以上ないだろう完璧な笑みを浮かべてこう言った。
「確かにコーディネイターだけあって綺麗よね。でも所詮作られたものでしょ。整形してるのと一緒じゃない。」
・・・・うわ・・・・・・・・・
そのコの気持ちもわからなくはないけれど・・・・言い過ぎというか・・・・・それは流石にみっともないというか・・・・・・
「それはその娘たちが悪いわね・・・・ひがみ根性もいいところだわ。私はコーディネイターは不自然な存在だと思っているし、やっぱり今も抵抗感があるけど・・・・でもその発言もどうかと思うわ。」
「それがナチュラルに対する嫌悪感がはっきり模られるのに一役買ったことは間違いないわね。まあ、元々能力の低いナチュラルに大してあまり評価していなかったことは否めないけど。」
あれ?ちょっと待って?
「ねえ、・・リスティア。彼女達の発言は勿論あちらに非があると思うわよ。でも、あなたにもそれを言われる原因があったんじゃないの?」
プライドの高いだろう彼女は途端にむっとして、
「どういうことよ」と構えてきた。
「・・・だって、それ以前から、ナチュラルに対して・・・いわゆる優越感を持っていたわけでしょう。もし、初対面の人間に『あなたは私より劣った存在よ』って態度隠そうともせずとられたら・・・・やっぱりあなただって気持ちいいものじゃないでしょう?」
しかし彼女は不服な様子を崩さなかった。
「でもナチュラルとコーディネイターの間に能力の差があるのは歴然とした事実よ。しょうがないじゃない、ナチュラルとコーディネイターは違うんだから。」
・・・私も少し前まではそう思っていた。でも・・・・
「でも、そういうのはやっぱり違うんじゃないかしら。私たち同じ人間でしょう。もしあなたの両親がナチュラルだったら、あなた両親を軽蔑するの?」
「・・・・!私は、両親のことを馬鹿にするようなことなんて絶対しないわよ。私の両親はコーディネイターだけど・・・・・」
「だけど辿っていけば、あなたの血は必ずナチュラルに突き当たるわよ。だって、コーディネイターは3代目以降は出生率が格段に下がるって・・・それにコーディネイターが生まれた歴史を考えてもあなたのおじいさんおばあさんあたりは多分ナチュラルにあた・・」
「でも今は!」
私の言葉を遮るように彼女は言った。
「今の戦争をごらんなさい。コーディネイターの旗頭であるパトリック・ザラがなんて言っているか。もう、ナチュラルとコーディネイターは別の種なのよ。
私たちは進化したの。自分の子供にもより確実に素晴らしい能力を与える事ができるのよ・・・・」

18散った花、実る果実/作者:2004/03/07(日) 23:15
>>ミリアリア・あの子許せない
前スレまとめお疲れ様でした!
ヘリオポリス回想、いいですね。こんな平和な時があったのに何故って、共通の印象だと思うんですが、切実な思いですよね・・・

>>キラ♀フレイ♂
男フレイ様、ますます黒々と・・・・・
ミリィがちと可哀想な気もしますが、この辺で危険に気がついて身を引けるといいですね。
・・・彼女等の保身のために・・・・・・(苦笑)

>>The Last War
連載中止しなくてよかったです。私も楽しみに待っている一人なので。
セシウス、どうも幸せになれそうでよかったです。セシウスとクリス、いいコンビですよね。
この戦争が終わった後もこの調子でからんでいて欲しいです。

>>流離う翼たち
フレイ様のハリセン、出た!!(笑)
いやしかし、すごい緊張感に満ちたコンテストが・・・・
フレイ様の料理が怖・・・いえいえ、楽しみです。

>>過去の傷
マリューとフレイ様の対話、心が温まりますね。
・・・・ナタルもここに帰ってこれたら・・・・

>>刻還り
フラガさん、カガリにもお兄さん役を果たしてますね。
この人、なんだかんだ言って面倒見いいですよねえ。本編で異動命令の出てた教官ってのも、あながち間違った選択でもなかったかもしれないですねえ・・・

>>リヴァオタ
爆破ですか!また過激な・・・(笑)

19過去の傷・72:2004/03/07(日) 23:16
「くすくす・・・あらキラ」
「フレイ楽しそうだね」
今のフレイはほんとに可愛い、やっと本来のフレイに戻ったようだ、あのへリオポリスのキャンパスで無邪気に友達と楽しそうにはしゃいでいたフレイ、ほんとうにあの頃のフレイに戻ってくれてよかったとキラは思った、やっと彼女を救い出すことが出来たような感じだ。
「ええと、では食事会を始めようか」
「あ、きゃ!キラごめんね」
ミリアリアが水を誤ってかけてしまったのだ。
「キラちょっと来て」
そしてミリアリアに外に連れ出された。
「そう、なら私はカガリと楽しくお話してるわ、カガリ好きになっちゃった!もうカガリったら可愛いんだから!カガリ最高♪もう親友よ♪」
「そ、そうか・・・お前・・・人変わってるぞ・・・」
(楽しそうですね、フレイさん)
(え!?ティファ)
通路にて。
「はい、拭いてあげる」
「あ、ありがとう」
「っていうかわざとだけどね♪」
「え!?なんでそんなこと」
「二人きりになれないでしょ・・・キラちょっと目を閉じて・・・」
わけがわからない様子のキラだったが、仕方なく目を閉じた。
それを確認したミリアリアは、キラに近寄ると胸を押し付けるようにキラに抱きつきそれから唇を唇に強く押し付けた。

「どうしたものか・・・」
マリュ−が部屋でラクスと話しているので部屋を出たアスランは、プロヴィデンスの前に来ていた。
(これが隊長の搭乗していた機体か・・・隊長は一体何者だったんだ?・・・俺達とは違うのか?・・・ま、まさか隊長は二ュ−タイプだったのか?・・・)

20過去の傷・作者:2004/03/07(日) 23:20
感想は明日書きます、すいません、時間が・・・それにずっとなかなかつながらなくて。
すいません、あわてて書いた感じです。

21リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/08(月) 08:18
キラとフレイは美術館に来ていた。美術館では「子供たちが書くドラえもん」
とテーマした子供たちが作者の展覧会である。
「ねぇキラあの絵いいね」
「うん」
フレイが指さした絵は「黄昏のドラえもん」である。
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-36.jpg
「フレイあれなんてどう?」
「あれってドラえもんがスイカ割する奴?」
絵のタイトルは「スイカ割りをするドラえもん」である
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-45.jpg
ほかに「一休みしているドラえもん」や
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-20.jpg
「サザエさんと競演」などある。
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-49.gif
だが今、フレイとキラにハプニングがあった。
フラフラする男がやってきた
「ねぇキラあれ?」
「なに?」
「ゾンビじゃない」
「えっ!んなありえないこというなよ」
そのときゾンビらしき男が隣の男に噛み付いた!
「ぎゃー!」
「フレイ!やっぱり逃げよう」
キラとフレイは一目散に逃げた。

22私の想いが名無しを守るわ:2004/03/08(月) 16:57
>>リヴァオタ
ほのかあにシュールな絵満載ですね。最初スゴイヤツがくるかと思ってビビッて
ましたが、何とも云いようもない絵ばかりです。予言の実現の阻止のために何か
しているかと思いきや、のん気に美術館に行ったりして、相変わらずヘンな人達ですな。

23The Last War・11:2004/03/08(月) 17:47
「くっ、何だこいつらは!?」
「動きが速すぎて・・・、捉えきれない!」

 その頃、キラとアスランは敵旗艦から出撃した全長50メートルは超えるであろう巨大なMS、そしてそれと共に出現したMAサイズの機体群から攻撃を受けていた。二人は人が乗っているかどうかさえ怪しまれるスピードを誇る小型機から射掛けられるビームに翻弄されていたが、巨大MSの方はまるで彼らの動きを窺うかのように全く動きを見せようとはしない。

「このままじゃ埒があかない!キラ、まずあのデカブツから片付けるぞ!!」
「分かった!」

 小型機からの攻撃を逃れ、アスランはS.ジャスティスをMA形態に変形させ、同機の最強武器であるヒュドラを、キラはネオストライクの全武装による一斉射撃を仕掛けた。

「!こっちの攻撃が、効かない?」
「馬鹿な、奴は回避すらしていないぞ!」

 それらは確かに敵MSに達した筈だった。しかし敵を撃破するどころか、まるでダメージを受けた様子も無い。だが次の瞬間、更に彼らを驚愕させる事態が起こった。

「うおっ!?・・・キラ、大丈夫か!?」
「あ、ああ!でも、今のは一体・・・?まるでこちらの攻撃を跳ね返したみたいだ・・・」

 突然敵MSが反撃に転じてきた。しかし敵が何らかの搭載火器を用いた様子は無く、そのタイミングはあまりに早過ぎた。

「・・・さっきのホークアイとかいう奴が言っていた隠し玉というのは、こいつのことか?」
「多分・・・そうに違いないよ!」

 その時、二人の間に何者かが横槍をいれてきた。

「・・・ようこそ、前大戦を終結させた英雄達よ。ファントム総帥の名の元に、私は君達を歓迎しよう・・・」
「!?お前は・・・!」
「やはり貴様だったか、アレクセイ・ブランバルト!」

 その賞賛の言葉とは裏腹に、全く感情というものを感じさせないその声は、この時の二人にとっては既に忘れられないものとなっていた。

(・・・あの時、僕を・・・、そしてフレイを殺そうとした・・・。こいつが、ファントムの・・・?)

 キラの中で、特殊医学研究所での記憶が甦ってきた。それに伴ってか、彼の右腕が僅かに反応した。

「・・・ここまで来れば分かるだろう?貴様等をここに誘い込んだ訳が・・・」
「ああ。どうやら貴様等は、余程俺達のことが恐ろしいようだな?」
「フッ、何とでも思うがいい。だがその逆を言えば、貴様等さえ除けば後は問題は無い、ということだ・・・」

 キラの様子を知る訳も無く、アスランとアレクセイは互いに皮肉を交えている。長きに渡り戦い続けてきただけに、言葉の一つ一つには積み重ねられた重みが込められている。

「それはこちらも同じだ!トップである貴様さえ倒せば、ファントムは瓦解してこの戦いも、そしてこんな狂った時代も終わる!」
「・・・」

 アスランのその台詞を聞き、キラはハッとした表情を見せた。

「のこのこと俺達の前に出てきたことを、後悔させてやる!行くぞ、キラ!!」

 そう言うと、アスランはアレクセイの乗る巨大MSに突撃を仕掛けようとした。しかし・・・。

「・・・待ってくれ、アスラン!」
「!・・・キラ!?どうしたんだ!?」

 S.ジャスティスの前に突然キラのネオストライクが立ちはだかった。キラの突然の意外な行動に、アスランも驚きを隠せなかった。やがてネオストライクはアレクセイの乗るMSへと向き直った。

「お願いだ!もうこんなことはやめて、降服してくれ!」
「!なっ!?キラ、何を言ってるんだ!?」
「・・・」

 キラがアスランを止めてまでしようとしたこと、それは敵への降服勧告だった。その突拍子も無い行動に、アスランも思わず絶句した。

「分かってよアスラン!コロニーも地球に迫ってるのに、僕らがこんな無意味な戦いをしてる暇は無い筈だよ!だから、出来ることなら無用な戦いを避けたいんだ!!」
「しかし、お前も分かっている筈だ!こいつが、こいつ等が今まで何をしてきたかぐらいは・・・!」
「でもっ、戦うだけじゃ何も解決しないよ!」

 その時、二人の様子を窺っていたアレクセイが口を開いた。

「・・・フッ、急に何を言い出すかと思えば・・・。ではキラ・ヤマト、貴様に一つ聞こう・・・」
「!?」

 そして彼は、キラに思いもかけないことを問い掛けてきた。

「貴様は、私を許すことが出来るのか?あの時、あの女を撃ったこの私を・・・」

24The Last War・作者:2004/03/08(月) 18:14
 本当に申し訳ありませんでした。何で自分はあんな先走ったことをしたんでしょうか?
 それからこのSSにはフレイ様ももちろん登場します。もちろん戦闘以外での出番ですので、ご安心下さい。

》流離う翼たち
 ミリィやカガリの時点でこんな有様なんですね。カガリはなんとなく予想がつきましたがw。
 この先どんな料理が登場するのか、そして誰が優勝するのか、あと皆生きて帰れるかが気になりますw。

》過去の傷
 マリューさん、自分だって辛いのでしょうに・・・。強い人ですよね。フレイ様と同じく幸せになってもらいたいです。
 ミリィのアプローチはどんどん積極的になってますが、そろそろフレイ様にも知られやしまいか不安です。

》刻還り
 アフメドが助かりましたね。これだけでも大きな変化だと思います。反対にキラはいまいちパッとしない気もしますがw。
 この後は虎さんとの出会いになりますが、ここにも変化が生じるんでしょうか?期待です。

》散った花、実る果実
 フレイ様とリスティアさんの関係が次第に変わってきましたね。親密とは呼べませんが、互いの正直な思いを言い合えるような仲にはなってきたのではないかと。
 今回のエピソードはナチュラルとコーディネイター、両者の溝の深さを感じました。

》リヴァオタ
 ジェリドが爆死・・・。ちょっとスカッとしたというのは酷いでしょうかw?でもガロードのしたこともどうかと思いますが・・・。

25リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/08(月) 20:44
ガロードはこの調子なら銀行強盗と列車強盗ができると思った。さっそく彼は
中古車会社でロータリー搭載で赤の75年型マツダコスモを買った。次に銃砲店で
ウィンチェスターM70を買った。
愛車になったコスモをかっ飛ばしている途中、あるものを見た。
それはクルセイダーズのメンバーのチェーン・アギだ。ガロードはチェーンの
ところで車をストップさせた。
「やぁチェーン」
「あら?ガロード」
「このところどうだ?」
「いまいちよ」
「なぁ?チェーン,俺とやり直さないか?今なら間に合うぜ」
「おことわり」
「ちぇ」
ガロードはコスモを急発進させた。

26リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/08(月) 20:55
キラとフレイは美術館から出た。すると目の前に
ヤンキー座りをするドラえもんのコスプレをした三人の男に
であった。はっきり言ってこういうのだ「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-118.jpg
赤いドラえもんが声をかけてきた
「よぅよぅ姉ちゃん金かしてくれよ」
次に青いのが
「俺たちお小遣いないのよ」
そして最後に緑のが
「俺たち「魔太郎」の新刊がほしいのよ。姉ちゃん、金貸さないと
 恨み念法使うぜ」
「あんたたち馬鹿じゃないの!貸すわけないでしょ」
フレイはタンカを切った。
「だいたいいい年してドラえもんのコスプレをおかしいわ」
「んだとこのアマ!」
「恨み念法使うぞ!」
逆にフレイはイオナズンを唱えた。
ドラえもんのコスプレをした三人を吹っ飛ばしたのだ。
すごいよフレイ!
「すごいよフレイ」
キラはつぶやいた。

27流離う翼たち・426:2004/03/08(月) 22:30
 そして、遂にフレイの料理が出てきた。器に盛られているのはシチューだと言う。赤っぽい色からするとアイリッシュシチューなのだろうか。しかし、問題なのはそこではない。何故に鍋から出されたはずのシチューからポコリと泡が立つのだ? この不可思議な香りは何だ? そもそも煮込んだ筈の肉や野菜は何処に行った?
 疑問は尽きないが、当面の問題はそこではない。問題なのは、この怪しげな物体Xを口に運ばなくてはならないという現実だ。
 サイは無言でトールを見た。トールもまた自分を見ている。

「ど、どうぞ、サイ」
「い、いやいや、トールこそお先に」

 お互いにスケープゴートは御免だとばかりに笑顔で先を譲り合っている。その表情には生き残るのに必死なサバイバルの現実がまざまざと浮かんでいる。生き残る為には友情など売り渡すほどの利己心が必要なのだ。

 そして、誰も手をつけないこのシチュー? の製作者、フレイは悲しそうな顔でキラを見た。

「キラ・・・・・・・・・」
「くぅっ」

 上目遣いの悲しげな視線にキラは自分の心がぐらつくのを確かに感じた。所詮は彼も男だということなのだろう。そして遂にその視線に耐えられなくなったキラはスプーンを掴むと、まるで特攻をかける直前のパイロットのような、何かを諦めた表情で宣言した。

「キラ・ヤマト、突貫します!」

 スプーンでシチューをすくい、口に運ぶ。それを誰もが固唾を呑んで見守る中、ふいにキラが小さなうめき声を上げた。

「大丈夫か!?」
「傷は浅いぞ、しっかりしろ!」

 トールが肩を叩き、フラガが何処からとも無く洗面器を持ち出してくる。だが、次のキラの反応は全員の予想とは大きく違うものであった。

「あれ、食べられる?」

 失礼極まりない発言だが、この場では誰もそれをおかしいとは思わなかった。まさか、この異臭を発する物体Xは可食物だというのか。キラを除く5人は信じられないという表情でスプーンにそれを1匙すくい、恐る恐る口に運んだ。

「・・・・・・・・・確かに、食えるな」
「不味いけど、食べられるぞ」
「・・・・・・この匂いと見た目で何故食べられる?」
「こう、理不尽なものを感じるな」
「だが不味い事は隠せないぞ」

 一同はどうしてこれが食べられるのかしきりに首を捻っていた。見た目からすれば今までで一番ヤバげと言うか、どう見ても食える代物ではないのに。しかし、食べられるだけで不味い事には変わりは無かった。
 そして、その真の恐怖はこの後襲ってきたのだ。

ドンッ!! ズズ、ズゥゥゥンン・・・・・・

 突如として下腹部から衝撃がきた。
 これまで経験したことも無いメガトン級の衝撃が全身を駆け抜ける。破壊の中心点は腹から下腹部へと移行し、お尻の辺りがやんごとなき状態に陥った。キラのコーディネイターとしての強靭な肉体でさえ、その猛威の前には全くの無力であった。

「だ、誰か・・・・・・助けて・・・・・・」

 キラが必死の形相で助けを求めるが、誰にも彼を救う事は叶わなかった。他の5人も同様に真っ青な顔に滝のような脂汗を流し、全身全霊の力でよろよろと食堂を後にして行く。あの凶暴なオルガでさえ顔を悲痛に引き攣らせ、苦悶に脂汗を流しているのだ。
 そのまま彼らは暫くの間、トイレから帰って来なかったのである。

28過去の傷・73:2004/03/08(月) 22:49
ミリアリアからの突然のキスにキラは驚いたあと戸惑った、なおも彼女は唇を押し付けてくる、目を閉じている彼女は伺わずキラは呆然とした表情でされるがままになっていた。
それにしてもこのキスといいミリアリアの意図はなんなのだろうか、それにしてもこんなに積極的なミリアリアもめずらしい、まるでフレイのようだ・・・おそらく、いや推測であるがミリアリアはト−ルが死んで彼氏がいない状態だ、いままではキラやフレイを励ましたりアドバイスしたりする位置にいた彼女、だが頭のどこかに寂しいという気持ちがいつもあったのだろう・・・さらに知り合いを見るとカップルばかりだ、キラとフレイ、ラクスとアスラン(この二人とはあまり親しくはないが実際の現状である)、カガリとサイ(これは違うかもしれないが)その時気が付くと自分だけ一人だった・・・そしてキラとフレイに嫉妬してしまう・・・そしていままでつもりに積もった気持ちが我慢出来なくなり一気に爆発してしまったというのが実態だと思われる。
まだ唇を押し付けていた彼女がゆっくりとキラの唇から離れる、するとキラはつい唇を手で触る、それを色気のある目で微笑むミリアリア。
「あ、あのミリアリア・・・」
ミリアリアはキラの顔と当たりそうなぐらい近くでささやく。
「ミリィって呼んで・・・ト−ルがそう呼んでたように」
「ミ、ミリィ・・・その」
「じゃあ戻るわね・・・夜、部屋で待ってるわ・・・」
そう言うとミリアリアは戻っていった・・・残ったキラは・・・ミリアリアのやわらかい唇の感触を残したまま呆然とその場に立っていた。

「お、おい抱きつくなフレイ!」
「いいじゃない、ほんとカガリって可愛い♪頬にキスしたくなっちゃう」
「や、やめろ私はそんな趣味はな、ないぞ!」
「友達になってくれる?なら離れてあげる」
「も、もう十分友達だろ!た、たのむ離れてくれ!私あんまり体触られるの嫌いなんだ!」
「そう、ならいいわ離れてあげる」
そしてあわててカガリはフレイから逃げるように反対側の席に座る。
「ねえ、カガリなんっていうのかしら・・・ええと・・・そうモビルなんとかってやつの操縦って難しいの?」
カガリはその話題に安心したように落ち着きを取り戻した。
「モビルス−ツか、お前操縦に興味あるのか?」
「う−んというより好奇心ってやつ?ほらキラの姿見るとなんか知りたくなっちゃって」
(二ュ−タイプ能力持ってるフレイさんなら大丈夫です)
(あらそう?ありがとうティファ)
「よし、なら基本的なことから言うからちゃんと聞いておけよ」
「うん、カガリおねがい」(それのしてもキラ遅いわね、どうしたのかしら・・・)

「なんかこの前戦闘になったんですって?」
「はい・・・残念なことになりましたわ、もう戦争は私も嫌ですのに」
ラクスの部屋で話しているラクスとマリュ−、艦長同士の対談だ。
「ア−クエンジェルはどうですか?キラ様にアスラン、サイさんとミリアリアさんとフレイさんはこの艦に正式に所属することになりましたが他のクル−の皆さんなどは全てそちらにいらっしゃいますよね?」
「ええ、でも人員不足もないし、上手くやってるわ、ところでキラ君も皆元気そうでよかったわ、特にフレイさんがね、彼女は可哀相な子なの、だから元気な顔が見れて本当に良かったわ」
「はい、アスランもキラ様も皆元気です、皆が元気な顔でいてくれて艦長であり指揮官である私としても嬉しいことですわ・・・とっても・・・ところでア−クエンジェルはこの後どうなさるおつもりですか?もう発つと聞きましたが」

29流離う翼たち・作者:2004/03/08(月) 22:49
フレイ様の料理が終わりました。次はいよいよ本命、マリューさんです。
フラガ少佐は愛の為に死地わが身を躍らせるのでしょうかw

>> 散った花、実る果実
ううむ、リスティア嬢の言うことも正しいけど、私はコーディネイト反対派
フレイ様は随分おとなしくなってますね。さて、次はどうなるか楽しみです

>> 過去の傷
ふ、フレイ様の性格がはっちゃけてきている。カガリが引くほどにw
ティファは何時でも何処でも出てきますな。ある意味恐ろしい能力です

>> リヴァオタと八アスのためでなく
すいません、ネタが分かりませんでした。絵は微妙にシュールですがw

>> The Last War
化け物が出てきましたね。まるでクインマンサです
しかし、キラはまだ不殺なんて考えてるんですか。そんな考えが誰も守れなかった原因なのに
アレクセイの質問にキラは答えられるのでしょうかな

30過去の傷・作者:2004/03/08(月) 23:07
>>散った花、実る果実
ううむ、リスティア嬢の意見も正しいかもしれませんね、ただなんかな、でもフレイ様もだんだん和解し合うかもしれませんね。
>>The Laut War
おお、なんというこれは危険すぎるっていうよりもキラにとってアクセレイの質問は辛いものかもしれませんね、どう答えるんでしょうか?
>>翼たち
え!?フ、フレイ様・・・まあこうなるとは思ってはいましたが、それにしてもキラって運が無いというか、でも六人ともなんとか耐えて(違うか?)ますな、そしてお待ちかね艦長さんですね♪私はフレイ様が最後だと思ってました。

31ザフト・赤毛の虜囚 20:2004/03/09(火) 04:03
5.充足 1/1
[私は、今、満たされている]

私はキラのメモリチップを素肌に抱きしめて眠っている。キラを感じる。心が暖かくなる。
キラが、私の心を満たしている。それは心と繋がった肉体をも満たして行く。

* * *

私は、裸の女性を抱きしめている。心には愛しさを感じる。下半身に昂ぶりを感じる。
爆発しそう。裸の女性は、顔を上気させ、さっきから、ひとつの言葉だけを呟いている。

「ユーレン、ユーレン、ユーレン、ユーレン!!」

私が、この女性を満たしている。私の体が愛しいと感じている。

* * *

メモリチップに眠るキラの言葉が、私を酔わせる。
「僕は君を必ず守る。何があっても守るよ。いつまでも。約束する」
キラ守ってね。私をいつまでも見守っていて。

* * *

私が爆発する。汗に濡れる柔らかい肌を抱きしめる。やがて、それが終わり、
体には現実感が戻って来る。でも、私の心は、まだゆっくり引いて行く興奮の余韻を求めている。
そして、私の抱く女性も、その余韻を慈しむように、私に囁きかける。
「ユーレン、もう少し抱いていて」

私の心が体を動かし、とろけるようなキスをかわす。
「ヴィア……」
「ユーレン、嬉しい……」

* * *

私の体はキラを待っている。熱いキラを求めている。体が覚えている幾重ものキラの記憶が、
私を満たしていく。

* * *

余韻を慈しみながら女性を抱きしめる私。でも、既に放出を果たした体は、急速に醒めて行く。
周囲を見回した。そこにある鏡に映った私の顔。それは、金髪で、優しい目の男性。私が以前から
見ている愛しい人。私の愛しい人。切なさで一杯の私の心は、それに触れたくて鏡に手を伸ばす。

唐突に、感覚が切り替わった。私の本当の体に……
そこで感じたのは痛み。床に打ち捨てられた体。心に繋がれた解き放てない鎖。

これは、数年前の虜囚の私。私は赤毛の虜囚、メルデル・シェトランド。
そのころ、私は分からなかった。でも、今は、時々感覚が切り替わっていた相手が誰なのか分かる。
私の愛しい人。私達は出会った。でも出会った時は、既に遅かった。
求めても手の届かない想い。満たされない想い。

* * *

私は捕虜、フレイ・アルスター。私は、今、満たされている。キラの思い出に満たされている。
だけど、それは、既に終わったこと。私に未来はない。今、このときだけ……

32ザフト・赤毛の虜囚 21:2004/03/09(火) 04:05
6.継承 1/12
[戦争に行くのだよ]

「フレイ・アルスター。疲れているところ済まないが、出かけることになった。
すぐに準備をしてくれ。もっとも、準備するような荷物も無いだろうが」

昨夜は、キラのメモリチップを抱いて、少し安らかに眠れた私を、クルーゼは急きたてるように、
また外套を着せて部屋を連れ出し、潜水艦のデッキの連絡機に乗せた。キャビンを通るクルーゼと私を、
じろじろと見るザフトの兵士達。昨日見たイザークという兵もいた。赤い軍服を着ている。
他にも赤い軍服の兵士は何人もいて、その中には私と年が変わらないような女の子もいた。
クルーゼは、私を個室に入れると機長と話すからと行って出て行った。
やがて、連絡機が離陸した。戻ってきたクルーゼは、私に言った。

「少しアチコチ連れ回すことになるが我慢してくれ」
「私を、どこに連れて行くつもりなの」

「戦争に行くのだよ」
「え?」

「連合が油断しているところを、間を置かず、パナマを落とせとは評議会も無茶を言う。
確かにアラスカと両面作戦で軍備を展開してはいたのだがな」

私にはクルーゼの言っていることが分からない。

「まあ、君には後でゆっくり聞かせよう。また、君の方の話を聞かせてくれ」

私は答えずに、服の中の拳銃に手を触れる。

「ここでは銃は出さない方がいい、すぐ隣はザフトの兵士が一杯だ。撃たなくても
銃を持っているところを見られれば、君は射殺される」

私はさぐる手を止めた。

「話したくなければ、それでもいい。いつか、君の言うパパのことを聞かせてもらおう」

クルーゼは、椅子に深く座ると、やがて寝息をたて始めた。

パナマ? また戦争? 私には不安だけがある。だけど、少しでも不安をやわらげるものは、
私の手の中にあった。キラのメモリチップ。私は見つからないように厳重に隠し持っていた。
今は中身を見ることはできなくても、それがあるだけで、キラの色々なことが思い出され、
私を癒した。私は、キラの胸に抱かれて眠ったことを思い出しながら、クルーゼ同様、
眠りについた。

33ザフト・赤毛の虜囚 22:2004/03/09(火) 04:11
6.継承 2/12
[でもね、ユーレンとは、腐れ縁だもの]

「ねえ、メル元気出して」

私は、ハッとした。私の前にはヴィアがいる。私を癒すように優しい声を出している。
私は病室のベッドに横になっている。体の芯に痛みが残っている。やがて、意識が
はっきりしてくる。それは、心にも残った痛みを思い出させる。

「メル大丈夫よ、今は体を直すことだけを考えて」
「うん、ありがとうヴィア」

ここは、L4コロニー・メンデル。私が結婚して、既に二年が経過している。
私の夫アル・ダ・フラガは、自分の子供をコーディネータとして生ませるために、私を、
ここメンデルの遺伝子研究所に行かせた。既に知り合っていたユーレンとヴィアは、今は、
私がコーディネータの子供を産むための担当医になっている。

私は何度も手術を受けている。だけど、遺伝子操作して受精させた胚は、どうしても
私に着床せず、着床しても流産したりで、失敗続きだった。ヴィアは、手術の度に傷つく私を
親身に心配してくれている。私も本当にヴィアを信頼している。

「アルって、とても優しいのよ。失敗は私のせいじゃ無いって言ってくれてるし。
少し良くなったら、ヨーロッパへ旅行に連れて行ってくれるって」
「うらやましいな、メル。うちの旦那なんか、研究ばっかで、どこも連れて行ってくんないもの」

私は、ヴィアを心配させたくなくて嘘を付いている。一生懸命、夫のフラガのいいところを探して
話をする。だけど、本当はヨーロッパへも仕事で行く話。私の夫フラガが優しかったことなんて一度も無い。

「でも、ユーレンだって優しいでしょ」
「昔の話だわ。もう口喧嘩ばっか。現在、別居生活、記録更新中よ」

でも、ヴィアはひとしきりぼやいた後、必ず、こう付け加える。
「でもね、ユーレンとは、腐れ縁だもの。離れられないよね」

私は、そんなヴィアが羨ましい。憎らしいくらい。

「何の話だい?」
ユーレンが入ってきた。私達に話しかける。

「少なくとも、アンタを誉めてる話じゃ無いわね」
ヴィアは、私に目くばせして入れ代わりに部屋を出て行った。

「どうしたんだ、ヴィアは?」
「ううん、大したことじゃないから」私は、ごまかすようにユーレンに言った。

「ところで、メルデル。また、フラガ氏から、君を調べるように言ってきたけど」
「そう。いいわ、うちの人の気の済むようにして」

「それで、また君は傷つくことになる。本当にいいのか?」
「仕方ないもの……」

失敗する度に、フラガは、私を虐待し、私の体を徹底的に調べさせた。
だけど、何の解決にもならなかった。ユーレンの検視では、私には問題は無いはず
だと言っていた。

私は、私を奴隷のように扱うフラガを憎んでいる。絶対、フラガの子供なんか
産んでやるもんかと思っていた。それが、失敗の引き金になっているのかもしれなかった。

フラガに無理矢理に結婚させられた時、私は学校の親友を事実上失った。誰も、私を軽蔑して
近寄って来ない。フラガの知り合いの婦人も、私を汚らしいものを見るような目で見る。
私の気の許せる友達はヴィアだけだった。だから、私がフラガを憎んでいることを
ヴィアには知られたくなかった。

でも、それ以上に、ユーレンに、自らの手で傷ついていく私を見せるのが辛かった。

34ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/09(火) 04:20
フレイSS新章開始します。パナマ戦の話ですが、かなり、TV本編と変更してます。
フレイSS前半第一部の最初の山場となる予定ですが、正直言って重い話です。
次の章を経て、その次くらいになると、少し明るくなるはずですが……

>>刻還り
黒キラで無くても、戦闘中にOS書き換えて、ブートストラップ再起動するのは同じですね。
しかし、結局、カガリは殴られこそしないものの、黒キラの代わりにフラガに怒られましたか。
一応、怒るのはサイーブの役目でもあるはずなんですが、カガリにはスポンサーの弱みがあるからでしょうか。

>>散った花、実る果実
ミリアリア・リスティアとフレイ様の話、重いテーマに入っていて、この戦争の縮図のようになっていますね。
「自分の子供にもより確実に素晴らしい能力を与える事ができるのよ」このリスティアの言葉は純粋な親心で、
美しいと思います。でも、TV本編の回想シーンからすると、祖父母の世代で、それを考えていたかというと……。
それに、リスティアの世代以降は、出生率が低いのですよね。厳しい話です。

>>The Last War
アレクセイ、無茶苦茶なものに乗ってますね。キラは、どうするつもりなのでしょう。

>>流離う翼たち
なにげに最初の被害者になるキラが哀れ。それにしても、この惨事に際して女性陣の
リアクションが無いのが、結構恐い。
それと、オルガ君「阿婆擦れ」は酷いです。せめて、ひらがなで……

>>過去の傷
ミリィの心情分析しているとこみると、まさかキラは正当化して…… それと、キラは、ディアッカのことに気づいていないのか?
フレイ様、異様なテンションで、カガリと仲良くしてますが、このままMSへ、なだれ込み?
そして、フレイ様を気づかうマリューさん。どうして、すぐに行ってしまうのでしょう?

35The Last War・12:2004/03/09(火) 21:34
「!・・・それは・・・」

 キラは戸惑いの表情を見せた。その問いが、明らかに自分を試すためのものであることは、すぐに分かった。しかし、その意図には誤算があった。もしあの時、フレイ、かつてのネメシスがこの男に命を奪われていたとしたら、キラは許すことは出来なかったかもしれない。だが・・・。しばらくして、彼はその問いに答えた。

「・・・僕は、元々貴方を恨んではいないよ」
「何・・・?」
「彼女は、今でも生きてる。・・・但し、あの時の記憶は、無くしてるけど・・・」
「・・・そうか。まさか、そんなことが・・・」

 その事実を聞かされ、アレクセイはやや驚いた様子は見せたものの、すぐに元のポーカーフェイスを取り戻した。そして彼は同じ問いをアスランにも投げかけてきた。

「・・・それではアスラン・ザラ、貴様にも聞こう。この戦いの元凶であり、幾人もの貴様の仲間を殺してきた私をどう思う?」
「!・・・」

 アスランはしばし考え込んだ後、答えを導き出した。

「・・・正直なところ、俺は貴様を許せない。だが、これからの貴様の心次第でそれがどうなるかは分からない」
「!アスラン・・・」

 その言葉を聞き、キラの顔が綻んだ。親友であるアスランが自分の意図を理解してくれたことは、何より嬉しかった。
 そしてアレクセイは何かを思案した上で、結論を下した。

「・・・成る程、貴様達の言いたいことは理解できた・・・」
「じゃあ・・・!」

 人は必ず分かり合える。かつて自分とネメシス、現在はフレイがそうすることが出来た時以来、キラは再びそう考える様になっていた。そしてその僅かな望みに、彼はこの場所においても賭けてみたかった。しかし・・・。
 
「やはり貴様等は、只の愚か者だ・・・!」
「えっ?」
「!避けろ、キラッ!!」

 アスランの声が耳に入った次の瞬間、巨大MSが咆哮した。その時、キラの意識が一瞬途切れた。

「・・・外れた、か・・・」
「・・・貴様ぁ!」

 望みは、無残にも踏み躙られた。アレクセイは搭乗する巨大MSの頭部に内蔵された大型ビーム砲によってキラを狙撃した。それにいち早く気がついたアスランは、間一髪でキラを救出した。

「・・・”許す”?何様のつもりだ?私と同じ、価値無き命の分際で・・・!」
「何だと・・・!?」
「第一、もう分かっている筈だ。我々はもう、理解し合うことなど出来ないことにな・・・」
「・・・薄々、分かってはいたよ・・・」

 アレクセイの非情な言葉を前に、キラは悲しげに呟いた。

「分かってはいたけど・・・、それでも僕は・・・!」
「止せ。お前の気持ちは分かる。だが、もう無駄だ・・・」

 アレクセイを睨みつけながら、アスランはキラを諭した。

「・・・アスラン?」
「・・・こいつはもう・・・、『人間』じゃない・・・!」
「フン、何を今更・・・?」

 キラは驚きを隠せなかった。アスランが口にしたその台詞には、相手への明確な敵意が込められていた。まさか、彼が他人にそのような言葉を吐きかけるなど、思いもよらなかった。しかしそれを聞いても尚、アレクセイの顔から余裕の表情が消えることは無かった。

「・・・それと、ようやく思い出したぞ、貴様の乗るその機体のことを!・・・貴様等は、この戦いに父上の亡霊まで甦らせたのか!?」
「ほう、気付いていたか。このアプカリプスについて・・・」
「!アスラン、それって・・・!?お父さんの亡霊って、どういうことさ!?」

 キラは何かを知っているらしきアスランにそのことを問い質した。その時の彼からは、普段の冷静さは感じられなかった。

「・・・あのMSの名はアプカリプス。かつて、ザフトでジェネシス防衛を目的に計画された機体だ・・・!」
「!・・・ジェネシス・・・!?」

36過去の傷・74:2004/03/09(火) 22:48
(勉強になりますね、私も今度乗ってみます、ガロ−ドに内緒で)
(私も乗るわよ)
「どうだ?理解できたか?」
「ええ、とても参考になったわ、ありがとうカガリ」
「しかし驚いたな、まさかお前みたいな奴が操縦に興味あったなんてな」
「そう?あらミリアリア」
「ねえ皆、もう今日は遅いし食事会は明日にしない?」
「そうね、私もそう思うわ、パックする時間だし、カガリは?」
「そうだな、私もそう思う、ところでサイはどこ行ったんだ?」

通路を歩いていたキラは部屋の前で待っていたミリアリアと会う。
「あ、ミリィ・・・」
「部屋に来て」
「いや、そのことだけどミリィ、あの・・・」
「来てくれないと部屋に上がるわよ、大丈夫よフレイはシャワ−室にいま入ってるわ」
キラは大きくため息をつくと。
「分かったよ」

「さあキラなぐさめて」
「いや、ミリィあの・・・ト−ルに悪いよ、それに僕はフレイが・・・」
「ト−ルは死んだわ、ねえキラ・・・ト−ルの代わりになって・・・」
ミリアリアが抱きついてくる。
「そんな・・・ごめん、ト−ルの代わりなんて僕には出来ないよ」
「キラはいつも優しいのね、でもねキラ、その優しさで傷つく人もいるのよ」
「え?・・・」
ミリアリアは涙を流す。
「キラは優しすぎるのよ!キラ!!!キラは私にも優しくしてくれた!でもその優しさで傷つく人もいるの!!!キラ分かってない!なにも分かってない!全然分かってない!!!キラはただ優しいだけ!!!物事からただ逃げてるだけじゃない!」
「!!!・・・く!」
ミリアリアはキラの胸に泣きながら顔を埋めて何度も胸を叩いた。
キラはそんな彼女を見て心が痛みショックを受けた、ミリアリア自身もなにを言ってるのかは自分自身理解してない、ただト−ルやディアッカがいないという寂しさや苦しさ、そしてイライラがたまっていた、そしてそれを全てキラにぶつけてしまったみたいだ。
「ミリィ、落ち着いて、ね?」
キラが手を差し出す、しかしそれを彼女は手で振り払う。
「同情してんの?あたしに」
「え?そんなつもりは」(どうしたんだ?ミリィは・・・まるでア−クエンジェルにいた頃のフレイみたいだ・・・)
「嘘よ!私にト−ルがいないからって同情してるんでしょ!それで私を完全に拒絶しないだけなんでしょ!?なんでよ・・・なんでキラなんかに!勘違いしないで!キラに恋愛感情なんて私持ってないわ!」
ミリアリアの表情はかなり険しかった、相当怒っているようだ、こんな彼女の表情をキラは見たことない、それにしても彼女は一体どうしてしまったんだろうか・・・?
「同情で付き合ってくれたのならはっきり言って迷惑だわ!!!」
キラはそんな彼女を哀れんでいるような表情で見ていた、胸も痛んだ、それは叩かれているからではない。
「なんで・・・なんでキラに同情されなきゃなんないのよ!!!なんでキラなんかに!!!」
「ミ、ミリィ・・・僕そんなつもりは・・・悪いことしたなら謝るよ・・・だからもうやめて・・・」
「黙って!!!いまは私がしゃべってるの!!!それに謝りたいならなぐさめてよ!いつも可哀相なキラ!いつも一人ぼっちのキラ!だれかに頼らないと駄目なキラ!そうでしょ!寂しいのキラの方じゃないの!同情されたいのはキラのほうじゃない!なのになんで・・・なんで私があんたなんかに同情されなきゃなんないのよ!!!なに勘違いしてんの!」
「ミリィ・・・」
この言葉にはキラも傷ついた、それにしてもミリィがこんな一面を見せるなんてキラは思ってもみなかった。
「ごめん、なら帰るね、もうこういうのはやめよう、フレイに悪いし・・・」
「キラ失礼だよ」
「え?」
「女の子の前で他の女の子のこと考えるなんて目の前にいる女の子に対して失礼よ・・・」
そう言うとキラの唇に自分の唇を強く押し付けた。
キラには抵抗する気力がなかった。

37過去の傷・作者:2004/03/09(火) 23:01
>>ザフト・赤毛の虜囚
なんかフレイ様孤独ですね、でもいい能力持って、でもザフト以降のフレイ様は見ていて可哀相だった、はやく開放してほしかったな。
>>The Last War
やはり理解し合うことは無理ですね、この人には言っても無駄かもしれませんね。
それにしてもザラ議長の亡霊ですか、でもまさかジェネシスが関係していたとは、これはやっかいだぞ、どうするキラにアスラン。

38ザフト・赤毛の虜囚 23:2004/03/10(水) 06:47
6.継承 3/12
[そんな自分が辛かった]

「フレイ・アルスター起きたまえ、ここで乗り換える」
「う、うううん」

私は目をこすりながら起き出した。移動する連絡機の座席で、すっかり眠っていた。
眠っているうちに、また、まぶたが潤んでいる。覚えていないけど、また悲しい夢を
見たのだろうかと思った。

クルーゼに連れられて連絡機を降りている時、また、他のザフトの兵隊達が、私を
冷ややかな目で見ている。その視線が私は辛かった。アークエンジェルでも、私は
クルーに溶け込めず冷ややかな視線に晒されたことがある。キラを探そうと、
整備兵やサイ達のいる食堂を訪れた時のこと。あの時は、キラに会いたいという意思が、
その視線に晒されて逃げ出したくなる私を押さえた。それで、私のことを理解してくれた人もいた。
でも、ここはザフト、私は捕虜だ。私を理解してくれる人などいるはずが無い。

* * *

その後も、数日、クルーゼに連れられるまま、何度も飛行機を乗り継いで行った。移動ばかりで
疲れたけど、乗り換えの準備で忙しくて、クルーゼが、あの時のように私に迫って来ないのが救いだった。

* * *

途中、夜眠れずに連絡機の窓から、まっくらな外を眺めていると、はるか下の遠くに
火のような点が一つだけ灯るのが見えた。昼間は、ずっと海しか見えなかった。
島の都市の光か、なにかだったのだろうか。個室に入ってきたクルーゼが、私が、その光を見ているのに
気づいて言った。

「ああ、あれは島で大きな戦闘があったらしい。島全体が燃えている。詳しいことは不明だが、
近くに連合の艦船もキャッチしている。こちらには気づいていないようだがな」

話している時、クルーゼは少し頭を押さえるような素振りをした。私は不審な顔で、
クルーゼを見つめる。

「ふむ、生きていたのか…… いやなんでも無い。少し気になっただけだ。ちょっと因縁のな。
まあ、君には関係…… 無くは無いが…… いや、気にしないでくれたまえ」

なんだか、訳の分からないことを言っている。
そう言って、クルーゼは、また個室を出て行った。いったい何しに来たんだろう。

私は、再び窓の外に視線を移した。
あれは、戦闘の火の光。また人の命が失われている。私は、その光を見ているうちに、悲しくなった。
ずっと戦争ばかり。キラがまた泣いているような気がした。戦争の辛さに涙をこぼしているような気がした。
泣かなくなったキラだったのに、一人逝って、また泣いているような気がした。

でも、そんなキラを、もう二度と私の胸で癒してあげることはできない。そんな自分が辛かった。

39ザフト・赤毛の虜囚 24:2004/03/10(水) 06:51
6.継承 4/12
[ユーレンの馬鹿野郎!]

「自然の受精ってのはね。二億もの精子が競い合い、たった一つだけ卵子と結ばれるのよ。
まさに劇的瞬間」

私は、その声に我に返った。私は研究室のソファに座っている。その前で、ヴィアは
大げさに手を広げて語っている。

「それまで、精子は長い長い旅をして、卵管まで辿りつくのよ。そして卵子と結ばれて、
また卵管を戻って子宮に入って行く。ここで私の仮説だけど、精子って子宮を旅してきて
そこで、自分の戻るべき場所を先に見つけて覚えているのだと思う。そして、卵子と一緒に、
そこへ戻って着床する。それで赤ちゃんになる」

ヴィアは遺伝子工学と産婦人科の専門だけど、話す内容は難しい用語とかは使わずに、
くだけていて、私でも分かりやすい。

「それに対して、体外で受精させた精子は、自分の戻る場所を覚えていないじゃない。
それで迷って失敗することが多いんじゃないかな」

ヴィアは自説を唱え終え、私に目くばせする。

「おい、ヴィア、面白い説だけど、精子に記憶なんてないぞ。それに、そんなこと言ったら
コーディネータなんて出来ないだろ。実際には、もう何人ものコーディネータが社会に
出ているんだから」

ユーレンは言う。ユーレンはヴィアほどはロマンチストじゃ無い。それにヴィアは反発する。

「そんなの分からないじゃない、生きて動いているんだもの、ねえ、メルもそう思うでしょ」

「でも、ヴィア、二億の残りの、ほとんどは死んじゃうでしょ。それって可哀想だと思う」
私は生きて結ばれる方より、なぜか死んで行く方が気になる。それを辛く感じる。

「だから、そういう考え方すると辛くなるよ。精子は、男から女に遺伝子を運ぶ単なる器だ。
個々の精子ひとつひとつは捨て駒でも生命のシステムの一部なんだよ。可哀想と
いうのは当たらない。そう思わなきゃ。なあ、メルデル」

ユーレンの言葉は厳しいようで、私への気づかいがある。でも、ヴィアは、いつものように憎まれ口を叩く。

「はいはい、分かった、分かった。ロマンの無いこと。まったく、冗談の分からない男ね」
「おい、やめろよ。メルデルも見ているのに」

「メルがいるんだもの。だったら、もうちょっと優しく言ってもいいじゃない」

「やめてよヴィア、私のことはいいから」私は、二人の喧嘩を止めようとする。

「もう、せっかく、メルが退院する日なのに。ユーレンの馬鹿野郎!」

ヴィアは乱暴な言葉を吐くと、逃げるように出て行った。

ヴィアは興奮すると、男言葉になって、相手に正論を突きつけて決して譲らない。だから、
横暴で頑固なフラガと話すと、こじれることは確実だ。だから、研究所の所長は、決してヴィアを
フラガに合わせず、フラガとの応対は、もっぱらユーレンが担当だった。だから、ユーレンは
私とフラガとの関係に気づいていた。

「明日、フラガ氏は宇宙港に迎えに来る。やはり、君には問題が無いと報告書には書いておいたが」
「そんなの素直に聞く訳ないわ。ユーレン、いっそ、本当に、私が子供を産めないように、
無茶苦茶にしてちょうだい。その方が楽」

「そんなに、自分を傷つけるなよ」
「同情はいらないわ。私、どうせ汚れた奴隷だもの」

「メルデル……」

ユーレンは私を悲しそうに見つめていた。私も目に涙を浮かべてユーレンを見つめる。
私はユーレンに顔を埋めたかった。

──「ユーレンの馬鹿野郎!」

でも、ヴィアの乱暴な言葉使いに潜む愛情を知る私に、そんなことはできない。
私はヴィアとユーレンを仲直りさせたいと思っていた。

40ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/10(水) 06:53
ヴィアの性格とか、TV本編では限られた情報しか無いので、かなり脚色してますけど、どうかな。
次は、フレイSSの一部ですけど、章としては番外となるヴィア視点のエピソードを一話入れます。

>>The Last War
アレクセイは、ネメシスのことには、少し反応したようですね。しかし、ジェネシスは自身が
ローエングリーンさえ受けつけないほど強固なのに、プロヴィデンスとか、アプカリプスとか無茶苦茶に
強いMSに守られることになっていたなんて……

>>過去の傷
まさか、ミリィがフレイ様のTV28話と同じシチュエーションになるとは……
この後、フレイ様はキラの言葉に逃げ出しましたが、ミリィは逃げない様子。いったいどうなるのでしょう。

41流離う翼たち・427:2004/03/10(水) 19:23
 そして、とうとうマリューの番がやってきた。何となく精根尽き果てている審査員たちは、それでも不屈の闘志、ではなく、話の都合の為にゾンビの如く復活してきている。些か耐久力に欠けるためか、サイとトールはすでに目の焦点が合っておらず、根性が足りないキラは何やらシンジ君症候群に陥り、「逃げちゃ駄目だ・・・・・・」とかぶつぶつと呟き続けていた。
 テーブルに置かれたカレーの皿を見て、とりあえず正気の4人は安堵した。正気を無くしてるっぽいサイとトールは目の前のカレーに気付いているかどうかが怪しい。
 見た目は赤みがかったカレーソースのかかった白米。つまりカレーライスである。匂いも問題は無い。だが、調理中に呟いていた材料を考えるとこれもまともな食べ物でない事くらい、容易く察する事が出来る。というより、フラガの持つ第六感が全力で告げているのだ。

「これを食えば、死して屍拾うものなし」

 と。

 だが、出された以上最低でも一口は口にしないといけないだろう。たとえそれが死に至る行為だと分かっていても、だ。フラガは恐る恐る視線を上げ、調理をしたマリューを見る。マリューは期待と不安を顔一杯に映し出しながら固唾を呑んで自分を見ている。
 その顔を見て、フラガは覚悟を決めた。あんなに期待されてるのに、今更逃げられるかよ!
 意を決したフラガはスプーンに山盛りのカレーを迷うことなく口に頬張った。

「・・・・・・・・・ぐぅ!?」

 一瞬意識が飛んだ。これはもう不味いとかいうレベルではない。今までに食べたいかなる物体にも共通点が見出せない不思議な味わいと、舌にねっとりと粘りつき、何時までも後を引く不可思議な舌触り。まるで舌の上でこの世の悪意が塊となって踊っているかのようだ。これを食べ慣れれば不味い事で有名な軍用のレーションが珠玉の美味に感じられるようになるだろう。
 だが、フラガはその苦痛を顔に出すことなく、表面自然を装いながら1匙、また1匙と皿の中身を減らしていった。ちなみに制服で隠された部分には脂汗が滝のように流れており、その苦痛を伝えている。
 なんだか平気そうなフラガを見てオルガとキサカがスプーンを取った。キラだけは何故か先ほどからフレイが必死な目で自分を見ているのが気になっており、あえて2人の様子を伺っている。ちなみに残る2人は既に一口食べる前の段階でリタイア状態である。
 オルガとキサカがスプーンを口に運び、次の瞬間には悶絶して声も上げられ無い苦痛を全身で訴えている。それを見たキラとフレイとミリアリアがビクリと体を半歩引き、改めて視線を交し合う。

「な、何なの、このカレーは?」
「さあ?」
「ナタルさんが食べたら病院送りと言ってたけど・・・・・・」

 ちなみにカガリは未だに昏倒中。
 
 この恐るべき料理を、フラガはなんと完食してしまった。最後の一口が口に運ばれ、殻になった更にスプーンが置かれる。そしてグラスに残された水を飲み干した後、何とも開放感に包まれた爽やか過ぎる笑顔になった。

「美味しかったよ」

 それだけ言い残し、フラガは食堂から出て行った。残る5人はというと、オルガとキサカはカレーの皿に顔を突っ込んで何やら断末魔としか思えないヤバゲな痙攣をしているし、相変わらず二人は復活していない。そしてキラはといえば再びシンジ君症候群、いや、もっと後ろ向きに「逃げなくちゃ駄目だ」とか呟いている。

42流離う翼たち・作者:2004/03/10(水) 19:43
>> ザフト・赤毛の虜囚
メルデルは意外と怒ってるんですね。
ユーレンに横恋慕するのも凄いですが、ユーレンもまた悪意を持つ男だしなあ
ヴィアさんは案外口が悪いんですね。まるでカガリだw

>> The Last War
流石はパトリック。準備万端でジェネシスを動かしてたんですなw
これがあの時あったら、プラントの勝利で戦争は終わってたでしょうに
何気にアスランが切れてる

>> 過去の傷
頑張れミリィ、このままキラを押し切るんだw
このまま行けばキラは人間失格の烙印を押される事に

43過去の傷・75:2004/03/10(水) 22:40
強引に唇を押し付けてくるミリアリア・・・。
「く・・・やめてくれ!」
キラはミリアリアを突き放した、しかしまた抱きつきキスしてくる。
「ミリィ・・・やめ・・・やめろ・・・やめてくれ!」
再度ミリアリアを突き放す。
「なによ、フレイとだってこれくらいのことしてるんでしょ!」
「ミリィいいかげんにしてくれ!でも・・・多少同情の気持ちも・・・少しはあったよ・・・ごめん・・・でも・・・」
「やっぱりそうじゃない・・・同情してるんじゃない!なによ・・・同情!?あんたが私に!?なんでキラなんかに同情されなきゃなんないのよ!いつも可哀相なのはキラの方じゃない!そんなに心が弱いからフレイに付け入れられるのよ!それなのになんでよ・・・なんであんたなんかに同情されなきゃなんないのよ!同情なんて迷惑だわ!だいたい・・・同情されたいのはあんたの方でしょ!!!寂しいのはあんたの方じゃない!いまのキラはいえ・・・以前からそう・・・キラはただの偽善者よ!!!」
「!!!・・・く!」
キラは部屋を飛び出した。

「そうだ、つまり遠距離ではビ−ムライフルで攻撃したり威嚇するんだ、そして接近したらビ−ムサ−ベルで攻撃だ、要領はだいたい分かったみたいだな・・・そして攻撃されそうになったらシ−ルドで防御するんだ」
「シ−ルド?盾みたいなの?」
「盾か、まあそうだな・・・モビルス−ツにはだいたい付いてるぞ、まあモビルア−マ−にはほとんど付いてないけどな、でもお前素質あるかもな」
「そう、カガリありがとう」
「あ、ああ、明日は実際機体に触れさせてやる」
「ほんと!?カガリ・・・ありがとう、で、どの機体に乗るの?」
「私の機体・・・ストライク・ル−ジュだ」

カガリと別れたフレイは、部屋に戻った。
「キラ?遅くなってごめんね」
「・・・・・・」
キラは下を向いて座っていた。
「キラ?どうしたの?」
「あ、いや・・・なんでもな・・・く!うう・・・ああ・・・あああ」
突然キラが泣き出す、なにがあったのだろうか・・・どうやらなにかショックを受けているようだ。
「キラ!」
フレイはキラを抱きしめる。
「うう、フレ・・・く!・・・うう・・・あ・・・ああああ!」
キラの体が震えている・・・どうしたのだろうか・・・なにかに怯えているようにも見える。
「くう、うあああ・・・うう・・・僕は・・・く!」
キラが声を出して泣いている、相当なにかにショックを受けている様子だ。
「あああ!うう・・・あ・・・あ・・・あああ・・・」
フレイは驚いていたが・・・優しく微笑んだ。
「キラ・・・大丈夫よ、私がいるわ、だから大丈夫・・・貴方には私がいるじゃない、キラには・・・キラには私がいるから、大丈夫・・・」
「フレイ・・・うああ・・・うう・・・ああ」
フレイはキラの背中を優しく揺すってやる。
「私がいるから・・・ね?」
キラは怯えた表情で泣きながらフレイを見上げた、それにフレイは優しく微笑む。
「うう、フレイ・・・僕・・・」
「キラ、私がずっとキラにはついてるから・・・キラには私がいるから・・・だから怖がらないで・・・大丈夫だから・・・ね?キラ」
「ううう・・・フレイ!!!」
キラはフレイの胸に顔を埋めた、そのキラをフレイは優しく見つめる。
「守るから
「うう・・・フレイ」
優しくキラの髪を撫でる。
「私がキラは守るから」
キラの顔をこちらに向けさせる。
「私の想いがキラを・・・」
「うう・・・」
「私の想いが・・・貴方を守るから」
そう言うと同時にキラの震えている唇に優しく唇を重ねた。
フレイのキスにキラは・・・目を開けていたが、フレイに甘えるように目を・・・瞳を閉じた、フレイのキスの感触は温かく感じた、ミリィとは比べ物にならにほど・・・心まで温かく守ってくれた。

44過去の傷・作者:2004/03/10(水) 22:51
>>ザフト・赤毛の虜囚
メンデル・・・結構その気ありみたいですね、それにしてもヴィアはどことなく性格とはカガリに似てますね。
>>翼たち
最後なんか奇跡起きるかなと思ってましたが。
少佐は絶対無理してると思う・・・たぶん・・・出た瞬間吐き出すとか?

45ザフト・赤毛の虜囚 25:2004/03/11(木) 01:36
番外 1
[ヴィアとユーレン]

私は、今、ユーレンに抱かれている。まだ、ユーレンに初めて抱かれて、それほどは
経っていない。でも、私は大きな声を上げている。
「ユーレン、ユーレン、ユーレン、ユーレン!!」

私は、彼に感じている。彼に満たされている。

* * *

ユーレンは幼馴染。小さい頃、両親の仕事で大西洋連邦に引っ越して、言葉も分からず
戸惑う私に、何くれとなく接してくれたのがユーレンだった。でも、私は素直じゃない。
まわりの環境が悪かったから、覚えた言葉も乱暴なものの方が早かった。

「お前、大きな、お世話だ。私のことなんてほっとけよ!」
「親父とお袋の馬鹿野郎! あんなの本当の親じゃない」
「私は一人でやっていく。いつまでも子供じゃない。見守ろうなんて思い上がりもいいとこだ」
「お前さぁ、お前さぁ。本当に、そう思って言ってるのかよ。本当に、私のこと思って言っているのかよ!」
「あいつは汚いやつだ、なんで、あんなのの肩持つんだよ。私の論文の内容を盗んだんだぞ」
「なんで、こんな私のこと気にかけるんだよ。もうダメだよ。徹夜したって間に合う訳ないだろ。
 もう、落第で充分だよ。どうせ私なんか、誰も振り向かないんだ」
「合格おめでとうだって? 何だよ、私は感謝なんてしないぞ。くそ、なんで涙なんか、くそ!」
「何考えてんだよ。お前が落第して、どうすんだよ。それで恩を売ったつもりかよ。この馬鹿野郎!!」

泣いたり怒ったり、喧嘩ばっかり。何回、酷い言葉をかけたか、もう覚えていない。
それでも、私とユーレンはカレッジのドクターコースまで付き合った。離れられない。私の本当の心。

二人、遺伝子研究所への就職が決まった時、やっと、女らしい言葉で言えた素直な気持ち。

「ユーレン良かったな……
 ……ユーレン。こんな私でも、ずっと一緒にいていい?」

* * *

「もう、せっかく、メルが退院する日なのに。ユーレンの馬鹿野郎!」

また、私はユーレンに酷い言葉を投げかける。私がせっかくメルを元気づけるために
考えてきたこと否定して。ユーレンの馬鹿野郎。メルもメルよ、ユーレンにやさしい言葉なんて
いらないわ。付け上がるばっかりよ。

遺伝子操作、コーディネータ。ジョージ・グレンによって世界に広まった新たな人類の進む道と混乱。
私は、遺伝子操作にアレルギーを持つ人達みたいに何でもかんでも否定はしない。使い方で、
いくらでも役に立つ道はある。でも、単に人を複製するクローンだけは許せない。生命のシステムを
否定して、人を作り出す。それには所詮、女が犠牲になる。自分の子供でもない他人を産むなんて。
産ませるだけの役目を女に押しつけるなんて。私は絶対許さない。

ユーレン。私は、そんな研究に取り組む、あなたを絶対認めない。何度でも言ってやる。
「ユーレンの馬鹿野郎!!」

* * *

ユーレンの動きとともに、私もクライマックスに達する。だけど、その余韻は、私を捕らえて離さない。
身動きも出来ない私は、体から離れたユーレンを、なんとか掴もうと必死で手を伸ばす。
すると、ユーレンは自ら、私を抱きしめキスをくれた。とろけそうに熱いキスを。

「ヴィア……」
「ユーレン、嬉しい……」

ユーレン、愛してる。

* * *

あの時の、あなたの温もり。今でも覚えている。私一人の家。私一人のベッド。
バカ…… ユーレンのバカ……

46ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/11(木) 01:39
ヴィアとユーレンのお話しでした。次は、フレイの話に戻りますが……
ちなみに、公式年表ではフレイ様は、拉致から二週間以上かけて潜水艦でパナマまで行っていますが、
うちのSSでは、飛行機を使って何気に時間を巻いています。

>>流離う翼たち
フラガ少佐って漢(おとこ)ですね。マリューさんと二人の行く先に幸有らんことを……
キラは、これのトラウマで、もうエヴァ(?)には乗りたく無いとか、言いだすんじゃないでしょうか。

>>過去の傷
キラの方がミリィから逃げ出しましたか。
ミリィは切れると恐いですね。ディアッカの時もそうでしたが。
でも、キラの自業自得もあるような気がする。それで、フレイに泣きつくとはキラ情けないぞ。
「シ−ルド?盾みたいなの?」このフレイ様のリアクションは、らしくて笑いました。

47私の想いが名無しを守るわ:2004/03/11(木) 18:17
>>ザフト・赤毛の虜囚
メルデル篇はE○Aの「ネ○フ誕生」のエピソードみたいで好きですね。
しかし後の展開を考えると物悲しいですね。「お前が落第して、どうすんだよ」
←バカな会話ですな。だけど微笑ましいです。
>>過去の傷
㍉の主張は結構利己的だったりするわけですが、話の中に結構真実が
混じっているから、始末に負えないというか、たちが悪いですね。
>>流離う翼たち
フラガはいいですね。「開放感に包まれた爽やか過ぎる笑顔になった」
←目に浮んできますね。読んでて目頭が熱くなってきました。
「不可能を可能にする」漢の生き様を見せていただきました。
>>The Last War
また生ぬるいことを言ってますが、良くも悪くもキラらしいというところ
でしょうか。巨大MSを前にキラとアスランの動揺が良く伝わってきます。
>>リヴァオタ
なぜにフレイ様イオナズンを唱えられるのだ。キラでなくても驚きます。
三人ドラえもんコスプレ笑えました。何者?
>>散った花、実る果実
リスティアは種族の優越の話と親の情愛の有無が簡単に結びつくところが
ちょっと軍国少女ぽくって面白いですね。フレイ様は逆に少し冷静になっ
てきて、寛容になったというか、立場が少しずつ優位に立った感じがしますね。
>>刻還り
フラガが美味しいところというか、ヨゴレ役引き受けてますね。本編の
キラがいきなり殴っちゃっていたので、フラガの落ち着いた対応が引き立ってます
>>キラ♀
㍉とトールも意図せざる共犯者へと転落してしまったようですね。恐るべし。
キラが死ねばAAの撃沈の可能性も大きくなるのに、もう刺し違える気満々ですね。

48流離う翼たち・428:2004/03/11(木) 19:37
 フレイとミリアリアはどうしたものかと顔を見合わせたが、一応出された料理を一口も食べずに下げるというのは流石に礼儀に反するので、ここは心を鬼にして一口食べさせなくてはならないだろう。すでに現実から逃避している2人は意図的に除外されている。

「キラ、一応、一口は食べてね」
「フレイ、それは僕に死ねと?」

 キラは隣で突っ伏している2人を横目に問いかける。既に2人とも痙攣という状態が終わり、動かなくなっている辺りがかなり怖い。
 フレイは嫌々と首を横に振るキラを見て小さく溜息を吐くと、無言でミリアリアを見た。それを見たミリアリアが仕方なさそうにキラに一枚のプリントを見せる。それを見たキラが一瞬首を捻り、そしてそのプリントが示す真の意味を悟って顔を引き攣らせた。

「ミ、ミリィ、これは!?」
「これから暫くの献立予定。ピーマンとか人参とかばかりよねえ」
「ミリィ・・・・・・」

 キラが泣きそうな顔でミリアリアを見る。キラは野菜が嫌いなのだ。それを見たミリアリアが邪な笑顔でキラに交換条件を突きつける。

「でも、キラがちょっと頑張ってくれたら、この献立を変えても良いんだけどなあ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 暫く考えていたキラは、がっくりと肩を落とすとスプーンを取り、死刑執行を待つ囚人のような、何かを諦めた表情でスプーンを口に運び、3人目の失神者となった。
 カレーに顔を突っ込んでピクピクと痙攣しているキラを見ながら、フレイはミリアリアに問いかけた。

「ところでミリィ、あなた、食事のメニューなんか弄れるの?」
「そんなのできるわけ無いでしょ」
「え、じゃあさっきのは?」
「よく見なさいよ」

 ミリアリアは先ほどの献立表をみせた。そう、日付の辺りを。そこには、丁度先月の日付が付いていたのである。

「・・・・・・先月の献立?」
「そう。キラはそれに気付かずに取引しただけよ。だから明日からの献立はこれとは違ってるわ」
「・・・・・・悪魔ね」

 フレイはミリアリアの知略に恐れを抱いた。彼女は敵にしてはいけない人間なのだろう。
 なお、フラガは自室に戻った後倒れてしまい、内臓疾患で2日ほど生死の境をさまよう事になる。そんなフラガをすっかり機嫌の直ったマリューが手の空く限り看病して一層の病状悪化を招いたという些細な事件もあったりする。

49流離う翼たち・429:2004/03/11(木) 19:38
 戦いが終わった食堂に足を踏み入れたナタルは、予想通りの惨状にやれやれと呆れた声を漏らした。もはやその心境は悟りの境地か、はたまた最初から諦めていたのか。

「まったく、後片付けはその日のうちにやっておかないか。あいつら、これでは将来に貰ってくれる当てが無いぞ」

 仕方なく軍服の袖を捲り上げ、食堂に残されていたエプロンを付けて積み上げられている食器や鍋を洗いだす。その手際は中々に大したもので、あれだけ荒れ放題だった調理場が少しずつ、だが確実に綺麗になっていく。
 何やら楽しげに手を動かしていたナタルだったが、ふいに調理場の入り口からかけられた声にその手を止めた。

「バジルール中尉?」
「ん?」

 誰かと思って入り口に目をやれば、些か憔悴した感じのキラが立っていた。

「キラ・ヤマト少尉か。もう身体は良いのか?」
「はい。流石にまだちょっと体の調子がおかしいですけど、少しお腹がすいてしまって。何か無いかなと見に来たんですけど、この様子じゃ無理そうですね」

 動けるだけ大したものだろう。他の5人はまだへばっている。オルガもパワーに戻る事が出来ず、医務室のベッドで唸っているくらいだ。ちなみに1名は現在重態である。
 少し考えたナタルは、部屋に戻ろうと踵を返したキラを呼び止めた。

「待て、ヤマト少尉」
「はい、何ですか?」
「もう少し待てるなら、適当に腰掛けていると良い。余っている食材で何か作ってやろう」
「え?」

 キラは驚愕してナタルを見た。まさか、この副長に料理が出来るというのか? 女性は家事が出来る、という妄想を今日の出来事で粉微塵に打ち砕かれてしまったキラは、詐欺商売に騙さて高額屑商品を買ってしまった馬鹿な男そのものの目でナタルを見た。

「あ、あの、本当に大丈夫ですか?」
「なにがだ?」
「いや、中尉が料理って・・・・・・」

 キラが恐れている何かを察したナタルは、まあ仕方が無いなと思った。かつて自分もあの地獄を味わった事があるのだから。

「心配するな。上手くは無いが、それなりには出来る」
「ど、どれくらいです?」
「そうだな、艦長よりは上手いかな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 キラの顔を滝のような汗が流れ出した。マリューよりは上手いというか、あれより下手な料理など想像も出来ない。いや、それはもう戦略兵器だろう。存在そのものが神の摂理に逆らうことに違いない。
 だが、キラは知らなかった。この世にはマリューさえも上回るマッドクッキング技能の持ち主、ラクスがいるのだ。あれを食べたアスランは文字通り生死の境を彷徨った。
 しかし、ここまで破滅的な料理技能の持ち主が周りにいる辺り、キラもアスランも神様に嫌われているに違いない。

50流離う翼たち・作者:2004/03/11(木) 19:54
もう少しでマドラス到着。久しぶりに街の中です
そこでフレイ様たちが出会う人々とは。これまでの経験からフレイ様とカガリが選ぶ答え
キラとアスランの成長ストーリーも随分遅れながらスタートします
何故かアズラエルも出演予定w

>> 過去の傷
はう、フレイ様がルージュで遊ぶ日がw
キラはどんどんヘタレな駄目人間に。このままだと全員から見捨てられる気が

>> ザフト・赤毛の虜囚
何故だろう、カガリとアスランの会話に見えてしまうのはw?
何気にユーレン氏が良い人になってますな。

51過去の傷・76:2004/03/11(木) 23:12
次の日の朝である。
起きたらフレイがいない、どこに行ったのだろうか、結局は昨日はあのあと二人でそのまま寝たのだ。
(フリ−ダムの整備でもするかな)

パイロットス−ツに着替えようとしていたキラは、赤い女の子を目撃する。
「フレイ、こんなところに・・・」
まさか・・・そんなフレイ。
「あ・・・キラ、その・・・私」
「フレイなにやってるんだい?・・・こんなところで、え?・・・まさか」
パイロットス−ツを手に取っているフレイ。
「ああ・・・なんて馬鹿なこと!無理だよモビルス−ツなんて、君みたいな女の子が」
「キラ、だって私・・・キラ・・・私」
「いいんだよ、君はそんなことしなくても、戦いは僕の仕事だから、それに危険すぎるよ」
「でも私だってなにか出来ることをしないと・・・皆だって戦ってるのに、私だけ・・・だから私・・・」
「いいんだよフレイは、それに無理だよ、君みたいな女の子には!」
「そんなの・・・やってみないと分かんないじゃない!」
「フレイはモビルス−ツ操縦の大変さが全然分かってない、どれだけ危険か分かってないよ」
「なによ!私だって!」
「フレイ、そんな甘いもんじゃないよ、興味本位や遊び半分の気持ちならやめてくれ、絶対後悔する、それにそんな気持ちで乗られても機体に対して失礼だよ・・・それと君を僕は危険にさらしたくないんだ・・・君は大切な人だから・・・」
「キラ・・・でも私ニュ−タイプだもん!キラよりすごいんだから!」
その言葉にキラは言葉を詰まる、そうだフレイは二ュ−タイプなのだ、それは事実だ。
「キラ・・・お願い・・・
「う・・・」
フレイは少し頬を赤く染めて可愛い顔を浮かべるとキラはまじまじと見つめた、キラはこのフレイの表情に弱い、いつも可愛いフレイだがこの表情になるといつもの可愛さが倍増する、一つのフレイの武器だ。
その一時間後。

「ストライク・ル−ジュって口紅?」
「なに言ってんだお前?」
「だってル−ジュって口紅じゃない」
「しかし、そんなふうに言ったのはお前が始めてだ」
フレイは化粧や肌のお手入れに目がないのだ、フレイは化粧水の香りがいつも漂っているのだ、だからル−ジュって聞いたらすぐ反応したのだ。
「さあ乗るぞ、基本は分かったよな?」
「うん、もちろんよ」

「よしビ−ムを撃ってみろ」
「ええと・・・これかな?」
「馬鹿!それは自爆装置だ!」
慌てて止めるカガリ。
「私まだ死にたくないぞ」
「分かってるわよ、冗談よ冗談」
「・・・ほんとか・・・」
冗談ですまされるものではないのだ。
「大丈夫よカガリ、ほんとに操作は覚えたから、これもカガリのおかげよ」
「そ、そうか?・・・」

休憩室で休んでいた二人。
「お前なんのために機体の操縦覚えようなんて思ったんだ?」
「私、キラの力になりたいの・・・だから・・・私」
「・・・キラがそんなに好きか?」
そのカガリの言葉にフレイは嬉しそうに微笑んだ。
「好きよ、大好き!ほんとに大好き!もう死ぬほど好き!もうたまらないわ!もうキラは目に入れても痛くないぐらい大好き♪愛してるわ♪結婚したいの!」
「そ、そうか・・・もういい、もう分かりすぎるくらい分かった・・・ところでお前すごいな関心するぞ」
「え?」
「そうか・・・そんなにあいつが好きなんだな、そこまで好きなんだな、お前真っ直ぐな奴だな、そこまで好きなんてすごいな・・・お前のことほんとに見直した、お前っておかしな奴だな、でもキラ幸せだな、お前みたいに一途な奴に惚れられて、こんないい彼女持ってあいつは幸せだな」
「カガリ・・・」
「お前になら言ってもいい、いつかは話すことになるだろうと思ったしな・・・」
「カガリ?どうしたの?なにが言いたいの?」
「・・・私とキラはな・・・事実上は親が同じだ、つまりは・・・」

通路を歩いていたキラは・・・ミリアリアと会う、だがどうも様子がおかしい、下を向いている、暗い・・・。
「ミリィ・・・」
「キラ・・・昨日は言い過ぎたわ・・・ごめんね・・・」
「いや、いいんだよ、あんなことは」
「ト−ル見なかった?今日いないの」
「え!?」(なに言ってるんだ?ミリィは)
「あれ?ト−ルの部屋はどこ?ねえキラ・・・」
「ミリィ・・・」
「ディアッカは?今日食事会はあいつも来るのよね?ト−ルを探さなきゃ・・・どこ?ト−ル・・・ト−ル・・・」

52過去の傷・作者:2004/03/11(木) 23:17
>>ザフト・赤毛の捕囚
あれ?この二人の会話、だれかさんに似てるよ。
フレイ様は孤独ですね、可哀相。
>>翼たち
ええと・・・ミリィおそるべし、ミリィって怖いね。
やはり少佐は無理してたか・・・やっぱりな、それにしてもラクス嬢の料理って・・・一体・・・可愛い顔して怖い。
キラ、ナタルさんの食事ですか・・・ナタルさんは上手そうですけどね、でも女性陣はフレイ様を始めとして強いな。

53ザフト・赤毛の虜囚 26:2004/03/12(金) 04:51
6.継承 5/12
[おやすみ、キラ]

それから、また、数日連絡機に乗って最後に着いた場所は、小島の急ごしらえの基地のよう場所だった。
私は、大きなモニタパネルが一杯ある部屋に連れて来られた。アークエンジェルのブリーフィング・
ルームも、こんなだった。

「ここで、しばらく待っていてくれまえ、私は戦争の準備がある。
 食事は、ここにある。適当に食べておいてくれたまえ」
クルーゼはそう言って、忙しそうに部屋を出て行こうとする。

「また、インスタント……」
私は、思わず呟いた。贅沢を言っても仕方ないのだけど……

「済まないな。後で、暖かいものを運ぼう。夜まで待ってくれ」
「夜……」

私は、また不安になる。

「明日、朝早く作戦開始だ。今夜、私は徹夜になる。君はゆっくり休んでいてくれたまえ」

クルーゼは、そういうと部屋を出て行った。ドアが外からロックされた音がした。
私は、一人残された。

私は、何をしてるんだろう。こんな敵の基地に一人いて。
敵の基地に、その敵の私がいる。連合とザフト。二つを仲良くさせられたら。戦争なんて無くせたら。
でも、私は捕虜。自由を奪われた虜囚。何もできはしない。

さっきから眠い。飛行機で、ずっと寝ていたのに、まだ眠くて堪らない。なにか、私の意識が
別のところに飛び出そうとしている。でも、心地よい。いつのまにか、キラの胸の中で感じていた暖かさ、
それにつながっていくのを感じる。

眠い。眠い。私寝るから…… おやすみ、キラ。

54ザフト・赤毛の虜囚 27:2004/03/12(金) 05:00
6.継承 6/12
[来るんだメルデル!]

私は、目を覚ました。ホテルの部屋。

(仲良くさせるなんて…… 私に何もできはしない)

でも、やらなきゃ。ヴィアとユーレン、二人を仲直りさせなくちゃ。
でないと、私が吸い込まれる。ヴィアを不幸にする。

私は、明日、フラガが迎えに来る宇宙港に行くまで一泊するホテルから夜の町に出て行った。
退院の日、私はヴィアとユーレンを別々に食事に呼び出した。そして、二人を外で会わせたら、
そっと席を外す。高級な店なら、いつものような喧嘩はできないだろう。それで、二人を仲直りさせたかった。
そして、私は、もうユーレンと会わない。私はユーレンに惹かれている。でも、ユーレンは
大切な友達ヴィアのもの。私はアル・ダ・フラガの奴隷、赤毛の虜囚。愛しい人を手に入れる
ことは叶わない。このまま会えば、どんどん辛くなる。これでいいのよ。これで。

先に店に来たのはユーレンだった。いつも研究所の白衣姿を見慣れているので、珍しい
スーツ姿に緊張する。

「メルデル、ありがとう呼んでくれて」
「いいのよ、ユーレンには、ずいぶんお世話になってるから」

「地球に戻って、それからどうする?」
「考えていない。けど、私、もうコーディネータは嫌。ヴィアの言うように自然に産みたい」

「フラガ氏と相談するかい」
「言っても無駄。うちの人はコーディネータにこだわって、普段は私に妊娠しないように
 体になにか入れてるの。だから、私、もう子供なんていらない」

「そんな、君は、まだ若いのに……」
「もともと、結婚なんて望んでいた訳じゃないもの。私、本当は……」

私は、ユーレンを見つめる。心が吹き出しそうになる。
ダメ、これじゃ意味無いじゃない。私はヴィアのためにしているのに。

その時、後ろから急に声がかかった。
「メルデル、お前、男と会って何をしている」
「アル? 何でここに……」

フラガと、その部下らしい男が数人後ろに立っていた。迎えに来るのは明日のはず。こんなところに、
なんでフラガがいるの? 離れた席に、私よりずっと年上の女性が一人座って私を見ていた。
私は思い当たった。このコロニー・メンデルにはフラガの愛人がいるらしいことを。

「若い男を誘っているのか」
「私、そんなつもりじゃ無い。知ってるでしょ。研究所の先生よ。お礼で食事誘って何が悪いのよ」

「うるさい! まったく、なんと、ふしだらな女だ!」
フラガは、私を平手で叩いた。私は手で頬を押させて、フラガを睨みつけた。
自分のこと棚にあげて、なんと傲慢な……

「この上、また失敗しただと。許さん! もう一度、地球で調べさせる。そして、
 私のコーディネータを生むまで何度でもやりなおさせる」

ユーレンは、フラガに詰め寄った。
「彼女は、自然に生むことを望んでいます。彼女のことを考えたことがありますか」
「やめて! ユーレン」

「うるさいぞ、研究所の青二才が」
「いやぁ、やめてアル! やめて!」

フラガは、ユーレンも殴った。既に、高級レストランは女性の金切り声が響き、騒然としている。
連れて行かれる私を、ユーレンは突然、手を引いて走り出した。

「来るんだメルデル!」
「ユーレン!」

私達は店の外に飛び出した。路地に走り込む。少し息をついて、私はユーレンを見た。
ユーレンは殴られて口から血を流している。その時、私の携帯電話が鳴った。ヴィアだった。

「メル、ゴメン。仕事で遅れて、今から行くけど。メル聞こえてる?」
「ヴィア大変なの、ユーレンが……」
「え? 何でユーレンがいるの?」

フラガの追っ手の男が追い付いて来た。また、ユーレンが殴り倒される。
私は手を捕まれ、携帯が地面に落ちる。その時、ユーレンがタックルして、男を倒した。
その隙に、ユーレンは私を連れて、丁度来たエレカに乗り込んだ。

私は、助手席で、ユーレンの片腕に抱かれていた。
さっき、携帯電話で聞いたヴィアの声が、私の耳に残っていた。

55ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/12(金) 05:04
フレイ様、パナマ戦始まるまで少し眠っていただいて、先にメルデル編片づけます。
メルデルの話は、次で現在の章の区切りをつけて、やっとこさフレイ様の話が進みます。
中々、活躍しなくて済みません。でも、話の構成上必要なんです。

>>流離う翼たち
キラ、子供じゃあるまいし、野菜の好き嫌いくらいで、自爆に走ってはいけません。
しかし、最後には復活するのは、やはりコーディネータだから? ナタルにとどめを刺されませんように。
ここのミリィは知将ですね。MS管制よりも戦闘指揮に回ったほうがいいのかも。

>>過去の傷
フレイ様、ついに、MSに搭乗。しかし、シート横の自爆装置には、冗談でも手を出さないほうが。
でも、アスランは、これ二回も使っているんだな。
ミリィは、すでに心身喪失状態。カウンセラが必要。こういう時にテクス医師…… は無理か。

56流離う翼たち・430:2004/03/12(金) 21:54
 暫くしてナタルが皿に野菜炒めのようなものを作って持ってきた。その中身を見たキラが僅かに顔を引き攣らせる。それは、自分の嫌いな野菜のオンパレードだったのだ。

「あ、あの、これは・・・・・・?」
「うむ、君は好き嫌いが激しいと聞いている。栄養が偏るのはパイロットとしての能力に影響を及ぼしかねないからな。こんなものを作ってみた」

 ナタルらしい意見だが、それを食わされる自分にしてみればたまったものではない。だが、食べないという選択はキラの中には無かった。だって怖いし。もし逆らったりしたら何されるのか分かったものではない。相手はあのキースやフラガでさえ黙らせるアークエンジェル最後の常識人、フレイとカガリの師匠、苛烈なる良識派ナタル・バジルールなのだ。
 仕方なく意を決して箸を掴み、渋々それを口に運ぶ。だが、口の中に入ったそれは、キラの想像を超えて普通に美味しかった。

「あ、あれ、美味しい?」
「君は一体どういうものを想像していたんだ?」

 ナタルの問いに、キラは素直に想像していたものを語った。それを聞いたナタルはやれやれと肩を落とし、エプロンで手を拭うと、キラと向かい合うように腰掛けた。

「まあ、今日は災難だったな。明日にはマドラスに着く。そこで一週間ほどの休暇が出せると思うから、羽を伸ばすと良い」
「え、休暇、ですか?」
「ああ、何とかなると思う。溜まった給料でも使うと良いだろう。使える時に使わないと溜まる一方だからな」

 いかにも自分は溜め込んでますという感じのナタルの言葉に、キラはなるほどと納得して頷いた。

「まあ、フレイなりカガリでもデートに誘ったらどうだ。多分喜ぶと思うが?」
「な、何を言ってるんですか!」

 顔を真っ赤にして焦った声を上げるキラに、ナタルはやれやれと呆れながらも、女性の扱いに慣れていない事が丸分かりな反応に微笑を浮かべた。そして、自分らしくない感想に今度は苦笑してしまう。こういう役は本来はキースの分担の筈なのだが、何で自分が演じているのだろうか。

「多分、らしくない、のだろうな」

 自分もこの艦の空気に随分染まっているとは分かっていたが、子供にアドバイスをするほどに角が取れていたとはな。
 だが、苦笑を浮かべるナタルというのが余程珍しかったのだろう。キラが口を半開きにして呆然としている。それに気付いたナタルがどうしたのか問いかけると、そのままずばりの返事が出てきた。それを聞いたナタルは納得してしまったが、同時にまた笑いが込み上げてきてしまい、小さく声に出して笑ってしまった。

「ふふふふふ、そうだな、確かに、昔に較べれば変わったかな」
「いえ、その、ヘリオポリスの頃のバジルール中尉は、厳しいとか、怖いとか、そういう印象でしたから」
「・・・・・・ふむ、否定できんな」

 胸の前で腕を組み、昔の自分を思い出してみる。確かにあの頃は肩肘を張って、全てを杓子定義にはかろうとしていたように思う。今にして思えば何と余裕が無かったのだろうと失笑してしまうが、あの頃はあれが自分にとって当然だったのだ。

 キラとナタルの雑談は、キラが野菜炒めを食べ終えるまで続いた。夜食を食べ終えたキラは礼を言って食堂を去り、残されたナタルはその皿を洗って棚に戻し、ふと考え込む。

「・・・・・・休暇、か」

 キラをからかった自分だったが、考えてみれば自分も人の事をからかえるほど経験を積んでるわけではない。というか、全く経験が無い。それに気付いてしまったナタルは、どうしたものかと深刻に考え込んでしまったのである。
 ちなみに、エプロンを付けて食堂で悩みこむナタル、という珍しい姿は、幸いにして誰にも目撃される事は無かった。

57私の想いが名無しを守るわ:2004/03/12(金) 22:04
>> 過去の傷
フ、フレイ様まで自爆スイッチを押したがるのかw?
とりあえずカガリ、他人のミスで自爆じゃあ浮かばれんだろうなあ
ミリィは何故にここまで急激に壊れたのか。とりあえずどこかの医者に見せるのが良し

>> ザフト・赤毛の虜囚
とりあえず、愛の逃避行モドキ? フラガ父がどんどんただの外道に
ヴィアさんが変な誤解しなければ良いけど

58過去の傷・77:2004/03/12(金) 22:54
「ミリィ・・・」
「ト−ルは?・・・・・ト−ル・・・・・・ト−ル・・・」
「ミリィ落ち着いて・・・」
「ト−ルはどこにいるの?キラ・・・ト−ル・・・」
「ミリィ!ト−ルは・・・く!」
キラにはっきり言うことが出来なかった、ミリィとてそれは知っている、だけど・・・。
「ト−ル・・・あっちかな?」
歩き出そうとしていたミリィをキラは止める。
「さ、部屋に入ってて」
ミリィを部屋に入れる。
しかし、また部屋から出てくる。
「ト−ル・・・・・・ト−ル・・・・・・」
「ミリィ・・・部屋に戻るんだ」(昨日ト−ルの話をしたのがまずかったか)

フレイとのの部屋に戻ったキラは苦悩した、そうだ・・・ト−ルが死んだときキラのストライクは近くにいたのだ・・・それなのに・・・結局僕は・・・何も出来ない・・・フレイのことにしたってそうだ、力が無いからフレイの父さんを守れなかったんじゃないか・・・そもそも彼女を傷つけた自分が彼女と恋人同士になる資格なんてあるのか?・・・フレイが変わったのは・・・彼女は悪くなんかない・・・利用?復讐?されて当然だ、僕が被害者だって?とんでもない、被害者がフレイ自身じゃないか、それだけじゃない、あの時だってそうだ、彼女の笑顔に見とれて油断した隙にプロヴィデンスに・・・そもそもあんな危ない状況で笑い返すなどとんでもなかった、ニコニコ笑って戦争は出来ないのだ、僕は甘いのだ・・・ほんとはあの時フレイを救ってあげるべきだったのだ、彼女が生きてるからいいじゃないか?とんでもない、そんなものは結果論にすぎない、後の祭りだ・・・ミリィのト−ルの呼んでいる姿を見ると頭がおかしくなる、力が無いのだ自分には、あの少女が乗っていたシャトルだって守れなかったではないか、これ以上誰も傷つけさせない?嘘もいいとこだ、結局口だけだ・・・自分にはなんにも出来ないのだ、最高のコ−ディネイタ−?なんだそれ?そして無意識に呟いた。
「最高もコ−ディネイタ−っていうのは友達を守れない人のことを言うのか・・・?」
キラの視点から見た最高のコ−ディネイタ−とは・・・強いだけじゃない、人を守れる人のことだと思っている。
ミリィは・・・彼女は・・・彼女だってそうだ・・・まだあんなに苦しんでいる、ト−ルだけじゃない、フレイだけじゃない、ミリィまでも・・・あんな女の子までも救うことが出来ないのだ。
「ト−ル・・・?・・・ト−ルは・・・?」
ドアの外からミリィの声が聞こえる、また部屋を出て来たみたいだ。
力が無いから・・・自分にもっと力があればト−ルは死なずにすんだ、フレイはあんな怖い思いを知らずにすんだのだ・・・
ト−ル・・・まるで彼がすぐにでも部屋に入って来るような気がした・・・しかし来ることはなかった。
「ト−ル・・・・・・ト−ル・・・・・・」
ミリィの声が聞こえる、それを聞くと沈痛な思いになってしまう・・・ミリィ・・・彼女すら僕は・・・
「ちくしょう!!!!!」

「きょうだいなんだ・・・私とキラは・・・」
「!!!・・・そうだったの・・・でもそんなことって!」
「ああ、私も最初は信じられなかった・・・でもお前表情変えないんだな」
「・・・びっくりしたわよ、私だって・・・でも実感ないのよね、どうせいままで通りの付き合いになるんでしょ?キラとは」
「ああ、まあな」
「でもちょっと嬉しいかな」
「どうしてだ?」
「ライバルが減ってたもの、恋のライバルよ、キラに近寄る女は私が絶対許さないけど、キラは私と結ばれるというのは決まってるもの、これは運命よ赤い糸で結ばれてるの、私とキラは」
「赤い糸ねえ・・・まあ頑張れよ、それよりさっきからなにジロジロ見てるんだ?」
「だって・・・カガリ可愛いもん♪カガリちゃん♪こっちおいで♪」
「や、やめろ!抱きつくな!」

59過去の傷・作者:2004/03/12(金) 23:08
>>ザフト・赤毛の捕囚
なんていうか、フラガ父が完全な悪役とかしている、逃げ切れるのか?どうも怖いことがおこりそうな予感。
>>翼たち
うむ、ナタルさんのはまともでよかったですな。
それからフレイ様やカガリをデ−トに誘えとは大胆発言を・・・ナタルさん、自分のことも考えはじめてますし、ほんと変わってよなあ。

私のSS、キラの発言。
「最高のですね、訂正しておきます。

60散った花、実る果実36:2004/03/12(金) 23:51
「こちらには少しは慣れたかね。」
当然のように彼は聞く。
「居住区の配置は覚えました・・・ここに居ることについては・・・そう慣れるものではありません・・・・」
しかしもう私に帰るすべはない。
本当は帰りたかった、懐かしいアークエンジェルに。
パパと過ごしたヘリオポリスの、オーブの家に、帰れるものなら帰りたかった。
あきらめたつもりの郷愁が、彼の声によって思い起こさせる。
パパの声。誰より愛してた。もう、2度と会えない。

「疲れたのではないかね?」
口元に笑みを浮かべ、いたわるようにそうささやく彼に、私はすこし癒されるような気がした。
そう、確かに私は疲れていた。
リスティアと・・・少しずつ色々なことが離せるようになってきたけれど、ナチュラルとコーディネイターの溝は簡単に埋まるものではなく、彼女との会話はどうしても緊張感をはらんだものになる。
誰も私の味方ではない、その現実に・・・やはり少し疲れていたのだろうと思う。
「はい・・・・少し・・・・」
しかし私はどこまで、誰に心をひらいてゆけばいいのだろう。
リスティアに、パパの声を持つこの人に心を許していっていいのだろうか。
それでいい、と・・思い始めてはいる。
コーディネイターだと言う事で人を決めるのはやはり正しくない、とも思い始めている。
でも、先ほどのリスティアの拒絶は私の胸に突き刺さったまま。
『コーディネイターとナチュラルは違う種』
・・・そんなことはない。ない、と、思う・・・・・・でも・・・・・・・
「ミリアリアは、真面目すぎるきらいもあるが、あれで中々気の効くいい娘だ。私のいない時は彼女に頼るがいい。もちろん、私がいる時には私を頼ってくれてかまわないがね。」
パパによく似た声・・・でもこの人はパパではない。わかってる、でも・・・
「・・・どうしたね?」
「あの・・・私の扱いは・・・どうなるのでしょう・・・・」
「扱い、とは?」
この人は本当にわからないのだろうか。それともはぐらかしているの?
「私は・・・捕虜、なのでしょう。本来であれば拘束を受けてしかるべき立場だと・・・そう聞きました。ミリアリア・・・・・リスティアも、私が出歩くことで皆に反感を抱かさせる事になっている、と・・・」
すると彼は、ふ、と笑って
「そのような事は君が気にするまでもない事だ。こちらにも色々と事情があってね・・・・君がここに引きこもっていたいというのなら私はかまわないが・・・いずれ役に立ってもらえるのでは、と期待しているのだよ。」
「私が、役に・・・・?」
私がここで役に立つことなどあるのだろうか。彼は私に何を求めているというのだろう。
「そう。まあ、まだわからないがね・・・・しかし、いざというときのために君にもここに慣れていてもらったほうがいいだろう。それもあって、同じ年頃のミリアリアをつけたのだがね。」
「そう、ですか・・・わかりました・・・・」
ではこの服も、私がここで浮いたりしないように、という彼の心遣いだったのだろうか。
意識を取り戻したばかりの時の恐ろしい感じはなかったけれど、彼の考えていることは私には全くわからなかった。

61散った花、実る果実/作者:2004/03/13(土) 00:02
>>流離う
「逃げなくちゃだめだ」・・・逃げとけばよかったのに。
ナタルさんは料理上手ですか。この調子ならキラも野菜好きになれるでしょうか。

>>赤毛の虜囚
今時期的に似たような時期に来てますね。
しょんぼりフレイ様がかわいいと思ってしまいました。うちのフレイ様はちょとしょげてて可哀想ですが。
メルデル編面白いです。しかしあんまり幸せな夫婦生活ではないようですね・・・

>>過去の傷
フレイとカガリの組み合わせは和気藹々として中々いいですね!
うちのフレイ様とミリィにもそうなって欲しいものですが・・・難しいかなあ・・・

>>The Last War
こうなってくると、キラよりアスランの精神状態の方が心配ですね。
アスラン結構もろいところがあるから・・・大丈夫かなあ・・・

>>リヴァオタ
シュールですね!!
写真&イラストは爆笑させていただきました。
それにしてもあの写真はどこからもってきたんでしょう。

62ザフト・赤毛の虜囚 28:2004/03/13(土) 08:24
6.継承 7/12
[ダメ、心が解ける]

私とユーレンは、フラガに見つかって逃げ出した。仲直りさせるはずだったヴィアと会う前に。
ユーレンは、私が泊まっているのとは別のホテルに部屋を取った。呆然とベッドに
座り込む私にユーレンは話しかける。
「とりあえず、シャワーを浴びて落ち着きなよ。僕は部屋を出るから」

私は、ユーレンの気づかいを感じながら、それを受け入れられない。

「なんてことしちゃったの。もうフラガは、あなたを許さない。ユーレン、あなた、
 殺されるわよ。私になんかに構ったために」
「僕が望んでやったことだ。後悔はしないよ」

「嘘! あなたにはヴィアがいるでしょ。今からでも、ヴィアのところへ帰って、
 コロニーから逃げて。私のことは、いいからほっといて」
「ダメだ。君を見捨てる訳にはいかない」

「言ったでしょ。私はフラガの奴隷よ。あいつのオモチャよ。守る価値なんか無い」
「いや、君は、そんな悲しい目をするべき人じゃ無い」

「いやよ、同情してるならやめて。後悔するわ。死ぬほど後悔するわ。さっさと出ていって!!」

返事の代わりにユーレンは、私を抱きしめた。
「いつのころからか、一瞬、自分の視点が別人のそれに変わることがあった。誰なのか、
 分からなかった。ある時、視点が鏡を見ていて、やっと女性なのだということが分かった。
 悲しい目をしていた。それが、君だ。君と出会って、その感覚は無くなったけど、
 僕は、君に悲しい目をさせないことを願った。だから、ヴィアといる君を見るのは、
 僕には嬉しかった」

ユーレンの語る内容に、私は驚いた。私も幽閉されている頃、ユーレンの視点と一瞬重なることがあった。
その目が見るのは、研究室の複雑な器具だったり、同じ研究員だったり。そして、裸で顔を上気させ
見つめるヴィアだったり。私とユーレンは、出会う前、不思議な感覚で繋がっていた。
出会った今は失ってしまったけど、私達二人には出会う運命があった。

でも、もう遅いのよ。ユーレンはヴィアと結ばれ、私はフラガの虜囚となった。今さら出会っても、
悲しいだけ。

「いや、離して。私を離して。ダメよ絶対ダメ」
「僕が君を守る。研究所だって、フラガ氏の言いなりじゃない。君を守る力はあるよ」

「嘘! 嘘よ、嘘! 嘘ばっかり。みんなフラガが壊しちゃう。みんな不幸になる。
 私のせいで、私のせいで」
「大丈夫だ! 大丈夫だ、メルデル。心配しないで。僕を信じて」

ユーレンは、私に口付けしてきた。私は抵抗する。ダメ、心が溶ける。ダメ、絶対ダメ……

私は溶けてしまいそうな心をなんとか繋ぎ止めようと、やっと言葉を出した。
「私、奴隷よ。妊娠できないように、体に何か入ってる。フラガの奴隷の証しが……」

「知ってるよIUDのこと。僕がコーディネータの妊娠のために取り出したから。そして、
 今は入っていないことも。あれは装着する時期があるんだ。今、君は自然に受精できる。
 奴隷なんかじゃない。自分の意思で恋して子供を授かる、普通の女性だよ」

ユーレンは、さらに私をきつく抱きしめた。私の心は、もう……

「ヴィアを捨てるの……」
「後悔していないと言ったら嘘になる。でも、君を見捨てることはできなかった。
 もう、戻れない。だけど、君のためなら覚悟を決める。
 …… 君を守りたい。…… 愛してるメルデル」

私の心は溶け落ちた。

63ザフト・赤毛の虜囚 29:2004/03/13(土) 08:30
6.継承 8/12
[二億分の一の奇跡]

「私、こんなの初めて、こんなに安らかな気持ちになれたの……」
私は、心の底から呟いた。隣に寝ている男は、それを聞いていないかのように何も言わない。

「ねえ、聞いてる? 答えてよユーレン」
「言うまでもないだろ、僕もさメルデル」

私は、ユーレンの感覚に入り込んだことがある。男の生理を感覚で分かっている。
私は自分で体をユーレンにピッタリくっつけ、その言葉だけで満足する。
ユーレンは、私に入った時の記憶を思い出したのか、余韻を求める私の腰に手を回し、
ゆっくり、さすり続ける。

私、ユーレンと不倫している。大切な友達のヴィアを裏切って。
でも、私はもうユーレンを手放せない。ヴィアに絶対返したくない。

* * *

私、ヴィアと会っている時、こんなことを話したことがある。

「私、幸せなんかじゃないわ」私は、ヴィアと談笑する中、急に暗く視線を落として言った。
「そんなこと無いわよ」ヴィアは、急に態度の変化した私を慰めるように話す。

「嫌、違うわよ。私……私、あなたに嫉妬しているかも」
「どうしたのメル。私、そんなつもりは……」

「奪うかもしれない。私、あなたからユーレンを奪うかもしれない」
「メル、そんな馬鹿なこと……」

私の口から漏れた心のかけらに、ヴィアは不安げに顔を曇らせた。
そんなヴィアを見て、私は自分の心を押し込め、表情を明るく変えた。

「嘘。そんなの嘘。嘘よ…… 私が、そんなことする訳ないでしょ」
「もう何言ってるのよ!」

「本気にした?」
「この馬鹿!! 意地悪!」

その時、ヴィアは不安に表情を曇らせ、次に、私の否定の言葉に、恥ずかしそうに
顔を真っ赤にしていた。まるで、一途に恋する純情な乙女のように。

* * *

時折、男っぽい言葉をするくせに、心は純真なヴィア。それを、汚れた女の私が侮辱した。
ヴィアは、多分、許してくれないと思う。もう、私はヴィアには会えない。
さようなら、ごめんなさい、ヴィア。

私は、私のお腹に触れた。ヴィアが、退院の日に、私のために送ってくれた言葉を思い出した。

「自然の受精ってのはね。二億もの精子が競い合い、たった一つだけ卵子と結ばれるのよ。
 まさに劇的瞬間」

「それまで、精子は長い長い旅をして、卵管まで辿りつくのよ。そして卵子と結ばれて、
 また卵管を戻って子宮に入って行く。ここで私の仮説だけど、精子って子宮を旅してきて
 そこで、自分の戻るべき場所を先に見つけて覚えているのだと思う。そして、卵子と一緒に、
 そこへ戻って着床する。それで赤ちゃんになる」

今、ユーレンの精子が、私の体を旅している。私の体を覚えながら。そして、卵子と出会う。
いや、もうコーディネータの手術で無茶苦茶になった私の体は、いつ排卵するかも分からない。
そのまま精子は、捨て駒として死んで行くのかもしれない。でも、それは、可哀想じゃない。
精子は二億分の一の奇跡を信じて死んで行く。後から、それを継ぐものがあるから。

ああ、ユーレン。これで良かったのかな。私には分からない。でも、私、今とても幸せよ。
もっとして。一杯して。あなたのに、私の体をしっかり覚えさせて。
二億分の一の奇跡のために。

64ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/13(土) 08:35
メルデルの話、ひとまず終了です。次は、やっとフレイの活躍。パナマ戦、独自解釈でお送りします。

>>流離う翼たち
ナタルは、まともで良かったですね。次のマドラスは休暇ですか。ファーストだと、
アムロが母を尋ねて行ったり、セイラとミライが水着で、ぬえの松崎さんが、後で訂正した
問題の台詞を言ったりしてましたが、TV本編では、ほとんど、こんな雰囲気の無かったSEEDでは、
どんなことになるのでしょう。楽しみです。

>>過去の傷
ミリィは、いつのまにかカップル鞘当てを繰り返しているエターナルの中で一人取り残されて、
しかも、キラにトールの思い出を刺激されて、心が壊れかけているのですね。今のところ、
そんなミリィに気づいているのはキラだけ。キラは、どうするのでしょう。
でも、フレイ様は、悩んでいるキラに気づかず、カガリにハグ。キラ・ハグ魔のカガリの面目まるつぶれですね。

>>散った花、実る果実
フレイ様、少しずつクルーゼに心を開いてきていますね。この部分が、一番難しいところだと思います。
私の方も頑張ります。メルデル編、お誉めくださって、ありがとうございます。この後も出てきますので
期待していてください。

65流離う翼たち・431:2004/03/13(土) 21:23
 マドラスにたどり着いたアークエンジェルは、基地のドックに入渠するなり早速修理が始められた。何しろヨーロッパでは完全な修理を受ける事は出来なかったので、これが始めての本格的な修理と点検という事になる。考えなくても試作艦を整備無しで数ヶ月運用する事それ事態が間違っているのだが。
 入渠中の艦艇のクルーには当然の事ながら休暇が出される。普段は忙しくて仕方が無いマリューやナタルも、あんまり忙しくないフラガやキースも暫くは艦を追い出されて休暇を楽しむしかないのだ。

「ふう、困りましたね。私はどうしたら良いんでしょう?」

 ナタルに問われたマリューは荷物袋を担ぎながらナタルを見やった。

「どうしたらって、貴女は休暇をどうするのか考えてなかったの?」
「はい。てっきり艦の補修のチェックをやらされるとばかり考えていましたので」
「ここのドックは設備も人員も充実してるから、私たちの出番はほとんど無いわよ。時々回されてくる報告書に目を通すくらいで、私1人で楽に終わるわ」
「・・・・・・では、私はどうすれば?」
「街にでも出てショッピングでもしてこれば。どんなに不満でも一週間はやる事無いんだし」
「1人でですか?」

 困った顔で言うナタルに、マリューはニヤァと嫌らしい笑みを口元に浮かべ、表情を崩した。それを見たナタルがビクッと身体を引く。

「何言ってるのよナタルゥ? こういう時こそチャンスじゃないの」
「な、何のことです?」
「惚けちゃって。キース大尉に決まってるじゃない」

 ニヤニヤ笑いを浮かべて近付いてくるマリューに、ナタルはじりじりと後ずさった。何と言うか、表情が追い詰められた小動物のように引き攣っている。対するマリューはもう面白くて仕方ないと言いたげに緩みまくっていた。

「チャンスよ。ここで一気に勝負に出なさい」
「ななななん、何の勝負です!?」
「分かってるくせに。いい、ポイントは如何に男をその気にさせるかよ。少佐と違って大尉はちょっと枯れてるから、うまくムードを作って誘導するか、露骨にアピールするかのぢちらを選ぶかが問題だけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 マリュー御姐さんの為になるデートの決め手講座を、いつの間にかナタルは神妙な顔で聞き入っていた。だが、それが些か熟練というか、男を扱うのに慣れたマリューから出たものだという点に問題があり、マリューには当たり前のことでもナタルには顔から湯気が出そうなほどに刺激的なアドバイスばかりであった。

「じゃあ、頑張りなさいよ、ナタル」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ポンとナタルの方を叩いてマリューはアークエンジェルから出て行く。残されたナタルは顔を真っ赤にして本当に頭から湯気を出してそうなくらいにのぼせていた。

66流離う翼たち・作者:2004/03/13(土) 21:34
>> 過去の傷
ミリィさんは本当に病院に入れる必要がありそうですな。キラの苦労はどんどん増えて
フレイ様とカガリは、まさか百合w?

>> 散った花、実る果実
ミリアリア嬢は今回出てきませんでしたか。
クルーゼの甘言に踊らされてはいけないぞ、フレイ様

>> ザフト・赤毛の虜囚
はうう、泥沼だ、火曜サスペンス劇場だ
人は何時も過ちを繰り返すのでしょうか・・・・・・

67The Last War・13:2004/03/13(土) 23:03
「そうだ。この機体はかつて、パトリック・ザラがジェネシスの『番人』として準備していたもの・・・」

 ジェネシス。その名を聞き、キラの中で悲惨な記憶が甦った。それはかつての大戦末期、たった一撃で地球軍主力艦隊を、そして月面の大西洋連邦軍本部基地を灼き払った禁断の兵器。そのことを思い出すこと自体、彼には悲痛さを伴うものであった。

「・・・だが結局、ボアズへの核攻撃が原因で計画は凍結され、開発中だった機体そのものは解体され登録を抹消された筈だ!にも関わらず、何故貴様等がその機体を?!」
「これは彼が遺してくれたデータを元に、我々が手を加えて生み出したものだ。貴様の知っているデータなど何の役にも立たんぞ、アスラン・ザラ?」
「・・・『彼』?」
「そう・・・、私の、たった一人の友だった男のことだよ」

 『友』、その意外な言葉を前に、キラとアスランの二人は呆然とした。この冷酷非情な男にも、そのような存在がいたなど、考える方が難しいだろう。そんな二人の様子を知ってか知らずしてか、アレクセイは語り始めた。

「・・・彼と出会ったのは、私がまだプラントにいた頃。その時、彼は私に色々なことを教えてくれた。特に人の愚かさ、そして今あるこの世界の無意味さをな・・・。キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、貴様達のことも彼から聞かされていた・・・」
「!!」
(まさか・・・!?)

 その瞬間、二人の脳裏に一人の男の顔と名前が浮かび上がった。

「彼は、誰よりもそんな堕落した世界のことを憂れいていた。それを救済することだけが、彼の望みだった。だが結局、彼はその望みを叶えることは出来なかった・・・」
「・・・・・・」
「・・・しかし、彼の夢はまだ終わっていない!彼は私に、その役目を委ねたのだ!」
「・・・黙れ」

 突然、アスランが口を挟んだ。その荒い声には、明確な敵意が込められている。

「その男に何を吹きこまれたかなどに興味は無い。だが、貴様のしようとしていることだけは分かる・・・!」
「・・・ほう。ならば、どうする?」
「これ以上、貴様達を野晒しには出来ない!貴様が隊長・・・、いや、ラウ・ル・クルーゼの怨念に取り憑かれているというなら、尚更だ!!」
「フフッ・・・、そうだ、それで良い!我が首、挙げてみせろ!!」

 相手にそう告げると、アスランはキラに向き直った。事実を明かされたためか、彼は項垂れる様にシートに座っていた。

「・・・キラ、俺は奴を倒す。もう他に方法は無いからな」
「・・・アスラン、僕のしたことは、やっぱり無意味だったのかな?」
「!キラ、お前・・・」

 その時のキラは、今にも消えて無くなりそうなほどに沈んでいた。そんな様子の彼を励ますように、アスランは彼に語りかけた。

「・・・いや、お前のしたことは間違っていない。だからこそ、俺は奴らが許せない・・・」
「アスラン・・・、有難う・・・」

 しかし、キラの表情は未だ沈痛な面持ちのままで、それが変わることは無かった。

(・・・そう、お前はお前のままで良い。業を背負うのは、俺だけでいいんだ・・・!)

 この時、アスランは一つの決意を固めていた。

68過去の傷・78:2004/03/13(土) 23:05
通路を歩いていたキラは。
「あ、サイ」
「キラ」
そうだ・・・。
「あの・・・サイそのミリィのことでちょっと・・・」
事情を説明した。
「そうか・・・そういうことなら今日も中止だな、じゃあミリィは俺にまかせろ」
「うん、ありがとう」
そんな時だった。
「あら、お二人方どうなさいましたの?」
「あ、ラクスさんこんにちは」
「あ、こんにちは」
「キラ様にサイさんこんにちは」
キラは彼女しかないと思った、キラは話をきりだした。
「あの・・・ラクスさんに頼みたいことがあるんですけど」
事情を説明した。
「そういうことですの、分かりましたわ、私の歌でよければ・・・」
「はい、ラクスさんの歌ならミリィも落ち着くと思うんですよ、ですから・・・お願いします」

その夜のことである。
キラとフレイの部屋では。
「ええ、ばっちり覚えたわ、私才能あるかもしれないわ」
「そう・・・でもカガリがねえ・・・そうだ」
「キラ?」
「明日からは僕が君に教えよう」
「え!?キラが教えてくれるの!?やった!」
「う、うん・・・さっそくだけど明日は実戦練習にするよ、カガリとモビルス−ツ戦をやってもらう」
「ええ、分かったわ」
「でも・・・実をいうと僕は君にはモビルス−ツの操縦はしてほしくない・・・だから明日もできるだけ練習時間の少なくする」
「キラ・・・分かったわ・・・・ねえキラ」
「なに?」
「話しない?」
「話?」
「うん、ほらア−クエンジェルにいた頃の私達ってろくにちゃんとした話なんてしたことなかったじゃない・・・傷つけ合うばかりで・・・私もそう・・・復讐のことで頭がいっぱいだった、キラは戦って死ぬのってずっと思ってた、そのために貴方に女として接近したわ、貴方を誘惑した・・・いろんなことがあった・・・貴方の好意に対して同情だと思い込んで貴方に罵声を浴びせた・・・でもいまは違うわ・・・貴方も分かってると思うけど、それで貴方のことが知りたいの・・・ゆっくりこうして二人で話したかったの」
「フレイ・・・」
そう、私はキラとゆっくりこうして目と目を向き合って正面から話がしたかったの、それが私の望みでもあったの・・・ごめんねキラ、ほんとの貴方を見ようとしないで、悲しませて・・・傷つけて・・・ごめんね、キラは私の行為に対して全て許してくれた・・・だからこれからはキラの彼女として、恋人として、そしてキラの人生のパ−トナ−としてこれからもうんとやさしくしてあげよう・・・パパ、私この人に決めたわ、キラと将来結婚するわ、私キラが好きで好きでたまらないの、キラに決めたわ。
「うん、そうだね・・・僕も君とゆっくりこうして話がしたかった・・・僕の思い出について話すね」
キラは話した、名前が出さなかったがアスランとの幼少時代について話した、フレイは黙って話を聞いていた、一時間程話した、ア−クエンジェルの頃の二人では考えられないことだっただろう、いまの二人がほんとうの恋人というものだろう。
「そうなの・・・大事な友達なのね」
「うん、トリィも彼が作ってくれたものなんだ、僕にとっては一番の友達なんだ」
「そう、あら、もうこんな時間ね、キラ寝ましょ」
「うん」
キラとフレイは同じベッドで同じシ−ツの中に入る。
「キラ・・・おやすみ」
「うん、フレイ・・・おやすみ」
二人は眠りについた。

69過去の傷・作者:2004/03/13(土) 23:25
>>散った花 実る果実
クル−ゼ隊長の言葉に飲み込まれないようにしてくださいねフレイ様。
フレイ様頑張れ。
>>ザフト・赤毛の捕囚
この恋愛劇にはなにがあるんだ?まあ・・・これを元にした人達は誰だか想像できますが。
そして次からはフレイ様ですね、頑張ってください、いつも面白くて早く読むのが楽しみです。
>>翼たち
なんという、マリュ−さん機嫌いいですね、そしてナタルさんにアドバイス、頬が赤くなったナタルさんはやっぱりいいですね、ナタルさんがどういった行動を起こすのか楽しみです。
>>The Last War
この男は・・・まさかあの人とも知り合いだったとは。
アスランが怒っている、決意・・・だいたいは分かります。
不穏な空気が。

70The Last War・作者:2004/03/13(土) 23:29
 アプカリプスのイメージはクロスボーンのディビニダドみたいな非人型の機体です。
 
》赤毛の虜囚
 アル・ダ・フラガは酷い奴ですね。メルデルさんだけでなく、ムウさんも幼い頃苦労したんでしょう。
 それに比べるとユーレンは良い人に思えますが、そんな彼が後に何故あんなことをしてしまったのか、気になります。
 次回のフレイ様サイドに期待させて頂きます。

》過去の傷
 ミ、ミリィが大変なことに・・・。取り敢えずトールは無理でも、ディアッカを無理矢理にでも引っ張ってきた方が良いのではw?
 フレイ様とカガリが仲良しになってきてますが、ここまでくると別の意味で怪しいですねw。

》散った花、実る果実
 今更ですがクルーゼ・・・、そこまで優しくしておいて何故あんなことを・・・(涙)。役に立つとか言ってますが、メンデルでの場面はいつ頃になるんでしょうか?

》流離う翼たち
 今回のナタルさん、可愛かったですね。キラに対してはまるで姉のような接し方でしたし。
 次回は久々に休暇ですか。今回はどんなことが起こるんでしょうか?楽しみです。

71ザフト・赤毛の虜囚 30:2004/03/14(日) 07:40
6.継承 9/12
[私に一杯染み込ませて]

「キラ、私達、間違ってなんか無い…」
「ああ、そうだねフレイ、僕は君のこと………」

(とても幸せ……)
私は夢を見ていた。

ブリーフィング・ルームのような部屋の椅子で、私は長い眠りから目を覚ました。
まだ、夢の余韻で、頭がぼうっとしている。夢の内容は思い出せない。でも、心には、
その残り香がある。キラと見つめ合った時のことだったかもしれない。私は、しばし、
それを慈しむように反芻する。

(もっとして。一杯して。私に一杯染み込ませて)

あれ、私、こんなこと考えてたっけ?
どうして、分からないの? 自分のことなのに……

キラとのこと、最初は無我夢中だった。考えもしなかった。痛みだけを感じていた。
これが復讐なのだと思っていた。

途中、月のものがあって、それから避妊を意識しだした。でも、戦艦の中、孤立している私には、
どうしたらいいのか分からなかった。そんな時、キラもフラガ少佐に言われたらしくて、
避妊に協力してくれることになった。

でも、それから、私達は欲望に溺れて……
避妊のために、いろいろして…… かえって、エスカレートして……
マリューさんからピルと避妊具をもらったのは、キラがオーブに仕事に行った後だった。
もっと、早くもらっておけば……

キラが私を最後に抱いたのは、オーブに仕事に行く日の前日。キラを一杯、私の中に染み込ませた。
それが、キラとの最後。お姫様の奇麗なドレスを着たカガリに嫉妬して、私の方からキラを
満足させたくて、それができなくて、翌日、私はキラに懇願したのだ。キラを力一杯抱きしめて……

あれから数えると、もう一ヶ月も過ぎている。夜ごとに、私を悩ませた体の渇きも、いつのまにか、
すっかり納まっている。キラの体の感覚は、ずいぶん遠くなってしまった。今は、時折、思い出される
記憶のみがキラの体を呼び起こさせる。私は、また、夢の余韻にすがるように想いを馳せた。

72ザフト・赤毛の虜囚 31:2004/03/14(日) 07:44
6.継承 10/12
[ここは君専用の観覧室だ。堪能してくれたまえ]

一人想いにふける私。やがて、ドアの開く音がした。入ってきたのはクルーゼだった。
私は、また上着から銃を取り出して構えた。銃を持つ手は、やはり震えている。今までと同様、結局、
撃てないのは分かっている。それでも、何も無い無防備な姿を晒すよりは心が休まった。

相変わらず、クルーゼは銃を向けているのを、意識していないかのように話しかける。
「戦争が始まるよ。見たいかね」

クルーゼは、私の意思を聞くまでもなく、モニタのスイッチを付けた。いくつかあるモニタに、
戦場を写す各所のカメラからの映像を映しだした。

「司令部は別の場所にある。ここは君専用の観覧室だ。堪能してくれたまえ」
「なんで私を……」

私は困惑した表情でクルーゼに問いかける。銃は相変わらず震えている。

「世界がどうなっているのか。私が何をやっているのか君に知ってもらおうと思ってね」
クルーゼは、モニタを示した。

やがて、戦争が始まった。モニタの映像は次々と自動的に切り替わりながら、戦いの様子を
映し出して行く。

──海から現れたずんぐりしたモビルスーツがミサイルを打ち出し、船を次々に沈めて行く。
──羽根を持つモビルスーツが次々と戦闘機を打ち落とし、地上の砲台をつぶして行く。
──宇宙から降りて来たらしい降下ポッドが飛び散り、中からモビルスーツが現れる。
   それらは次々と銃を打ち、戦車をつぶし、施設を破壊して行く。

だけど、それらのモビルスーツも無事とは限らない。

──海のモビルスーツの体に無数の穴が開き沈んで行く。
──羽根のモビルスーツも、地上から放たれた火線で手足を失い四散していく。
──降下ポッドから出てきたモビルスーツも、やがて多数の戦車に囲まれ地に倒れて行く。

というより、攻め込んだ、ほとんどのモビルスーツが最終的には倒されているように見えた。
なまじ人に似た姿をしていることで、その破壊される様は、とても残酷に見える。
私は、その恐ろしさに目を蓋った。

「どうだね。戦争を、こういう形で見るのは」
クルーゼは満足そうに話す。

「爆発するモビルスーツ、戦闘機、戦車の一つ一つの影で、どれだけの人命が失われるか、
 考えたことがあるかね。戦場では命など安いものだ。一瞬で失われる。それでも、
 母国のため大義のために人は戦い続けるのだ」

クルーゼは、私には構いもせず、一人、悦にいったように語り続けている。

「やめて! こんなこと」
私のクルーゼに向ける銃の動きがピタと止まった。クルーゼの心臓に向けられた。

73ザフト・赤毛の虜囚 32:2004/03/14(日) 07:48
6.継承 11/12
[そのために、一人の命を犠牲にしたというのに]

戦場で、次々に破損し、四散していくモビルスーツ。戦闘機。戦車。そして、死んで行く人。
それをモニタで見ながら語り続けるクルーゼ。

私のクルーゼに向けていた震える銃の動きが止まった。クルーゼの心臓に向けて。

「ほう……」 クルーゼは関心したように声を上げて、私を見ている。

私の中には、かつての自分自身の言葉が蘇っていた。

  ── キラ、守ってね。あいつらみんなやっつけて。
  ── キラ、あなたは戦って戦って死ぬのよ。じゃないと許さない。

  キラは、こんなものをずっと見てきたの。私は、キラにこんなことをさせていたの?
  戦って辛くて泣いて、それでも私のために立ち上がって、泣くのを我慢して。
  そして……、いつの間にか泣かなくなったキラ。

  私は、アークエンジェルで同じように戦場を見ているはずだった。でも、ずっと目を
  背けていた。ベッドで毛布にくるまり、キラが守ってくれることだけを考えていた。
  そして、戦場で身も心も傷ついて帰ってきたキラに、私は安堵と、さらなる保身の契約のつもりで、
  自分の欲望をぶつけることしかしていなかった。

  当たり前だ、キラが、私以上に欲望に溺れたのは。私を狂ったように抱いたのは……
  キラが変わっていったのは……

「やめて! こんなこと」 私は、銃を突きつけて、もう一度言った。

「フレイ・アルスター、連合の兵士として、私を撃つかね。私を撃てば、少しは、
 この状況も動くかもしれないな」

クルーゼは、相変わらず動じない。まるで自分の命そのものに興味が無いように。

「だが、戦争は一人でするものでは無い。ほんのちょっと状況が変わっても、戦争そのものは
 終わらない。どちらの優勢に働いても、立場が入れ代わるだけで、そこで失われる人命は同じだ。
 何も変わらない。そのために、一人の命を犠牲にしたというのに」

また、私の銃が揺れ始めた。

  キラ…… その命を散らして、得られたものが何一つ無かったことに私は愕然とした。
  結局、アラスカに行っても何も変わらなかった。そのまま、アラスカも自爆して……
  残ったのは、私一人。それも、何もできない捕虜。

  アークエンジェルで、キラが守ろうとした人の顔が次々に浮かんだ。マリューさん。
  フラガ少佐。ノイマン少尉。マードック曹長。サイ、カズイ。そして、ミリアリア。

  私の中に、ミリアリアの狂気の顔が浮かんだ。ミリアリアはトールを失った。
  いや、ミリアリアはキラとトールの二人とも失ったのだ。なのに、それで得られたものは、
  なんだったというのだ。ただ、悲しみの心だけ。だから、ミリアリアも狂った。
  私を傷つけた。私から全てを奪った。私を失意のどん底に落とした。

  だけど、それを責めることはできない。それは戦いの生んだ狂気、誰にでも内に秘めるもの。
  私は、それを一番良く知っているから。私も同じようにパパを失って、キラを傷つけたのだから。
  そして、サイまでも辛い目に合わせてしまった。

「それに、以前も言ったように、君が、今ここで私を撃っても、その直後に君は死ぬ。
 兵に撃たれてな」
クルーゼは、薄笑いを浮かべている。

「それでも、自軍の大義に忠実であり、命を捨てる覚悟があるのなら構わないが……
 だが、君には似合わんな。軍服を着ていても君は軍人ではあるまい」

  そう、私は、そんな覚悟なんか無い。軍に入ったのだって復讐のためだった。それすら、
  自分では手を汚さずキラを頼っていた。

「もうすぐ、フィナーレが始まるよ。何が起こるか期待していてくれたまえ」

クルーゼは出て行った。私は、銃をダラリと下に垂らした。そのまま、銃は床に落ちた。
そして、二度と拾われることは無かった。

74ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/14(日) 07:50
パナマ戦、TV本編ではフレイの出番は、ここまでですが、SSでは、まだクルーゼの言う
フィナーレの一話が残っています。

>>流離う翼たち
A.A. 修理ですか。TV本編のような訳の分からない理由でオーブで修理というよりもいいですね。
マリューさん、ナタルの援護で、迷指揮官ぶりを発揮してますね。しかし、ナタルが実直に、その作戦を
実行するとしたら見物です。

>>The Last War
クルーゼの狂気の連鎖再びですか。彼のことを言われると、まだキラは辛いのですね。
アスランが男として決意している。これが状況を動かすのでしょう。かっこいいです。

>>過去の傷
ついに、キラが動きだしました。サイにラクスとは、TV本編を考えると以外(?)な人脈ですね。
見事、ミリィを癒すことができるのか? キラとフレイ様の、ほのぼのシーンも良かったです。

75流離う翼たち・432:2004/03/14(日) 20:19
 同じ頃、アークエンジェルが入渠しているドックの外では、同じ官舎をあてがわれた(というより、フレイが与えられた士官用官舎にカガリとミリアリアが転がり込む形で一週間同居する事になった)3人が荷物袋を背負ったり、鞄を持って歩いていた。

「とりあえず、今日は宿舎に行って部屋割り決めたり、色々しなくちゃね」
「そうだな。まあフレイのおかげで雑魚寝から解放されるんだから、フレイの指示優先だけどな」

 そう、兵士であるミリアリアと傭兵扱いのカガリは本来なら兵士用の共同官舎に放り込まれる筈だったのだが、フレイがそれなら家に来ないかと誘ったのだ。本来なら士官とはいえ、仮官舎に一軒あてがわれる事は無いのだが、仕官の消耗が早くて官舎に空きが多かったのだ。これまでのアークエンジェルの苦労を考えたマドラス基地司令の好意でこれらの官舎が士官に開放され、マリューたちは大きな家を1人で使える幸運に恵まれたのである。
 ちなみに、キラの家にはサイ、トール、カズィが転がり込んでいる。トールは官舎を与えられていたのだが、キラの所に転がり込むからといって辞退している。
 他にもキサカがキースの家に転がり込んでいたりと、中々面白い状態になっている。

「でさあ、午後からどうする。街にでも行く?」
「街かあ。大丈夫かなあ」

 ミリアリアの提案にカガリが考え込む。何か都合が悪い事でもあるのだろうか。そしてフレイもまたすまなそうに両手を顔の前で合わせている。

「御免、私はこれからマドラス基地に行かなくちゃいけないのよ」
「あら、何かあるの?」
「士官は全員司令官に挨拶に行くんだって。艦長に私やトールも出ろと言われてるのよ」
「ふうん、じゃあキラやキースたちも出るんだ」
「そうね。だから悪いけど、街には貴女たちだけで行って頂戴。なんならサイやカズィも誘ってさ」

 フレイに謝られたミリアリアとカガリはどうしたものかと顔を見合わせたが、2人して同時に溜息をつくと、仕方なさそうに微笑を浮かべた。

「まあ、まだ明日もあるし、今日は良いさ」
「そうね、今日は官舎の掃除でもしてましょう。一週間はお世話になるんだし」
「うう、御免」

 すまなそうに謝るフレイに、2人は小さく笑って気にしなくて良いと言うのだった。料理の出来ない3人だが、掃除くらいはできるのだろうか。



 ちなみに、男どもの方はというと・・・・・・・・・

「何だよこの家、埃が溜まってるぞ」
「こりゃまず掃除しないと使えないよ」
「大変だねえ」
「そうだなあ」

 困り果てたサイとカズィとは対照的に、キラとトールは余裕の表情だ。その一言にサイとカズィがギンと2人を睨む。

「お、お前ら、まさか俺たちに押し付けて逃げ出そうとは思ってないよな?」
「御免ねサイ。これから基地に行かなくちゃいけないんだ」
「ああ、軍人は辛いよなあ」

 そう言ってずりずりと後ずさっていく。それを見たサイとカズィが何か言おうと口を開いた瞬間、2人は脱兎の如く逃げていった。

「待てこらぁ!」
「この卑怯者〜〜!」

 2人の非難の声は届かず、キラたちが帰ってくる事も無い。サイとカズィは裏切り者2人に憎しみで人が殺せたら、と言わんばかりの憎悪を向けていたのだが、やがてそれも空しくなり、仕方なく掃除道具を手に掃除を始めるのであった。

76流離う翼たち・作者:2004/03/14(日) 20:32
>> The Last War
むう、キラとアスランは運命の対決をする事に。アスラン君が特攻しそうですが
しかし、仮面の遺志を継いだならば、やはりホークアイが決着をつけるべき・・・・・・

>> 過去の傷
あえて言おうフレイ様、人生そんなに早く決めちゃいけませんw
将来にもっと良い男が現れる可能性はかなり高いので、キープ君に留めておきましょう

>> ザフト・赤毛の虜囚
パナマ戦ですか。フレイ様は抜け殻状態でぼんやりしてる時期ですな
反応は少しは違うのかな。とりあえず拳銃のブレが止まったのは、撃つ気になったと
グングニル後の惨状にどう反応するのでしょうなあ

77過去の傷・79:2004/03/14(日) 21:31
その一時間後のことだ。
(ミリィの様子でも見に行くかな)
フレイと部屋を一緒に過ごし、一緒に寝ているキラ、こんな可愛い子にべた惚れされてるだけでも幸せなのだが、一緒に寝るなんてキラは幸せだろう・・・ただ一緒にずっと寝ていて分かったのだが、一つだけ気になることがあるのだ・・・それがこの・・・
「パパ・・・私将来はサイと結婚するの」
(まただ・・・)
そう・・・この寝言である、それも毎晩だ・・・。
「あんた、自分もコ−ディネイタ−だからって」
(!!!)
「本気で戦ってないん・・・う−ん・・・むにゃむにゃ・・・」
(なんなんだ!?あの時の夢を見てるのか・・・?)

「ト−ル・・・ト−ル・・・」
「困りましたわ・・・先程からそればっかり・・・」
ラクスがミリアリアを落ち着かせるようと歌を歌ったりしているのだが、ミリアリアはこの調子だ。
「あらら?もうこんな時間・・・アスラン・・・今日は一緒に強引にでも寝ていただきます」
「・・・ト−ル?」
ト−ルではなかった。
「ミリィ」
「あら、キラ様・・・では私は失礼します」
「あ、ラクスさんありがとうございました」

「ミリィ・・・昨日ト−ルの話をしたのは悪かったよ、だからごめん」
もっとも全ての原因を作ったのは出て行った歌姫なのだが・・・。
「うう・・・ト−ル」
浮気になるのは分かってる、でも・・・ほっとけないのだ、特にこんな可愛い女の子は、それにミリィとは友達だから・・・友達は励まさないと。
ミリアリアの目の下には隈が出来ていた、昨日は眠れなかったのか。
「キラ・・・そんなはずないの」
「ミリィ」
「ト−ルが死んだなんてそんなの、信じられないよ・・・私・・・遺体はまだでしょ?・・・」
「・・・くそ・・・くそ!!!」
地面と思い切り叩く、戦争というものをキラは憎んだ、叩いた手が痛む。
「痛い・・・痛い・・・痛い!!!」

次の日の朝、そう・・・ついにフレイのモビルス−ツ戦初日である。
「さあ、頑張るわよ・・・」

ハッチでは。
「今日存分に楽しまなきゃ、だって明日は休みだもん」
そう、実はあのあとモビルス−ツに乗る代わりにキラに条件を出されたのだ、操縦は二日に一回、それもたったの一日一時間(さらに休憩時間十五分も含まれている)なのだ、フレイは不満そうだったが・・・渋々条件を呑んだのだ、まあこれもキラがフレイをそれだけ大切に思ってるからである、恋人でもあるがキラにとっては(フレイにとってもそうだが)フレイはこの世で一番大切な存在なのである、アスランよりもだ・・・。
カガリがやってきた。
「おはよう」
「カガリ♪おはようカガリちゃん♪」
「や、やめろその呼び方は!」
「だって可愛いんだもん」
「な!・・・」
「ふふ・・・可愛い♪」
そんな時キラがやってきた。
「そろったね」
「あ、キラ!」
あわててカガリは逃げるようにキラの後ろに回った。
「キラ・・・」
フレイはキラが来たので頬を少し赤く染める、フレイも本気で好きになった人に対しては可愛い仕草を見せるのである。
カガリが機体について聞いた。
「機体はどうするんだ?ル−ジュは一つしかないぞ」
「ああ、カガリはMIアストレイに乗ってもらう、大丈夫組み換えも完了したから」
「キラ・・・私は?」
「フレイは・・・僕の愛機フリ−ダムで」
「な!?ちょっと待て!?」

78過去の傷・作者:2004/03/14(日) 21:40
>>ザフト・赤毛の捕囚
あの頃ですかですか・・・でもクル−ゼ隊長・・・貴方は・・・
フレイ様、よかった・・・でも震えている・・・うむうむ・・・可哀相・・・一人ぼっちで・・・でもとりあえず銃を離してよかった。
>>翼たち
掃除・・・軍人のいいところと悪いところが感じられるなあ・・・フレイ様はいないけど、カガリとミリィはどうするんでしょ・・・サイ達を誘うのかな?それも見てみたいです・・・

79ザフト・赤毛の虜囚 33:2004/03/15(月) 04:28
6.継承 12/12
[キラを継ぐ資格]

やがて、また宇宙から降りてきたらしい、ひときわ大きなポッドがモニタに映った。
複数のモニタに同じものがいくつも映っていた。それに、モビルスーツが取りついて行く。
その途中、モビルスーツは次々に打ち落とされていく。その中で、コーディネータという人が
死んで行く。やがて、何機もの犠牲を糧に一機のモビルスーツがポッドに辿りついた。
別のモニタのポッドでも、辿りついたモビルスーツがいる。未だ、取りついていないのもある。

その様子は、ここで、まったく場違いなものを、私に想像させた。卵子への受精。
二億もの精子が、数々の困難を経て、遺伝子を継ぐために卵子を目指す。
そして、辿りつけるのはたった一つの精子。それだけが、実際に受精できる。
残った精子は、捨て駒として死んで行く。でも、それは可哀想じゃない。
精子は生命でさえ無いから。生命を創るためのシステム。遺伝子を男から女に
運ぶだけの器。

これは、誰から聞いたことなんだろう。サイと、こんな話するはず無い。
やっぱり、キラ? でも、いつ聞いたのか思い出せない。

やがて、ほとんどのポッドにモビルスーツが辿りついた時、モビルスーツの操作で、
一斉にポッドが弾けた。まばゆい光。だけど、爆発では無かったように思う。
Nジャマーがあるから核は使えない。だけど、この光はなんだろう。私は目を細める。
次々とモニタの映像が消えて行く。この光で、カメラが破壊されたのだろうか。

たったひとつ残ったカメラには信じられないものが映っていた。私もオーブで何回も
見たことがあるマスドライバー。それが、宙に浮くように不自然にバラバラと崩壊して
いった。私には、その理由は分からない。ただ、それが核爆弾にも劣らない超兵器の
ためであることは分かった。そして、次々と破壊されていったモビルスーツが、
これを使うための捨て駒に過ぎなかったことを。

卵子と受精しないほとんどの精子、その死んで行く精子のように、この次々に死んで行く
モビルスーツ達、それに乗っている人達も、可哀想とは思ってもらえない。
戦争のシステムとしか思われていない。

キラは、モビルスーツをアラスカ基地に渡せば、戦争は変わると言っていた。
でも、結局、モビルスーツだけでは戦争は変わらない。核じゃない、核みたいなものが
結局出て来る。モビルスーツも、それを使うための駒のひとつ。その中に乗っている
人の命が、いくら失われようと顧みられることは無い。キラがアラスカに着いても、
結局、この運命が待っていただけなのかもしれない。ましてや、キラはコーディネータ
なのだ。アラスカの人は、道具として、人とさえ考えないかもしれない。いくら、私が
キラを愛していようと…… アークエンジェルの人達がキラと私を認めていようと……

「キラ、私のキラ……」

私はキラのメモリチップを出して、また握り締めたまま泣いた。
私は、初めてキラが死んだことを運命として受け入れていた。
キラは死んで、永遠に私のものになった。連合の捨て駒として使われる運命だけは
逃れられた。私は、それで良かったのだと思った。

後は、私が継ぐのだ。キラの後を私が継ぐのだ。

さっきのポッドに辿りつくモビルスーツから想像した受精のイメージ。それが、私に
別の想像を抱かせていた。もし、それが私の想像通りなら、私はキラを継ぐ資格を
得たことになる。いや、資格というより宿命だ。だけど、私は、それを受け入れるだろう。
それが、私の生きる証しだから。

モニタのいくつかが復帰して、その後の様子を伝えていた。あれ程の損害を出して、
やっと生き残ったモビルスーツが、既に無抵抗になった連合を次々に撃ち殺して行く。
音の無い映像だけなのが、かえって、その悲惨さを大きくした。私は、その様子を
正視できず目を背けた。一人うつむいて震えていた。

それでも、そんな悲惨な事を無くすために、何かしなければならないと思っていた。

──「そして、いつか戦争を終わらせたい。そうすれば、みんな悲しまなくてすむ。いつか…」

キラを継ぐ資格。キラを継いで、キラの理想をかなえるために。

80ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/15(月) 04:33
これで、パナマ戦編「6.継承」は終わりです。「クローン・フレイ」、「コスプレ」へと続くため、この展開は
避けて通れず、メルデルの話も、これに乗っ取ったものでした。
次は、ミリィSS、二章連続で行きます。迷っていたミリィは、ここで転機を迎えます。

>>流離う翼たち
官舎とは言え、仕官が家一軒まるごと借りれるとは豪勢ですね。もっとも、三、四人の同居状態ですから、
A.A. とは、また別の趣の共同生活になるみたいですけど。憎しみで〜 というところでは、小説版ガンダムで
「憎しみで人は殺せませんよ」というアムロの台詞を思い出しました。このときは、セイラのそもそもの
「シャアを殺してくれて」という願いそのものの意味合いも複雑でしたけど。一方、TV本編のSEEDでは、
憎しみが連鎖して人殺しまくってましたなあ。

>>過去の傷
フレイ様、キラの心臓に悪い寝言言うんですね。キラも申告して改善要求しないと、結局、
寝室は別なんてことに。
歌姫の歌は、どうもミリィには効かないようですね。私は「水の証」なんかは好きなんですが。
それに、あの時の衣装が一番ラクスに、似合っていると思いますし。

81白い羽:2004/03/15(月) 06:43
そうと意識しないでも日々は過ぎていく。
思う通りにいかなくとも。
守るべきものが守れなくても。
悲しみに打ち沈んだとしても時間は律儀に歩みを止めることはない。

とうとう15歳を越えることのなかった彼女。
守りたかった。守れなかった。
最後に微笑んで見せたあの表情が、今でも忘れられない。
今までで一番綺麗な彼女の顔。
守れたと思った。今度こそ。
やりなおせると思ったのに・・・・

「雪だ・・・・・・」
3月も半ばにして季節はずれの雪。
知らず僕はつぶやいていた。
羽のように軽い雪が舞い降りては溶けてゆく。
雪の白さがまぶしくて僕は目を閉じた。

『泣かないで・・・・・』
彼女の声が聞こえた気がして目を開ける。
しかし、もちろんそんなはずはなく、瞳に映るのは雪の白さばかりだった。
ポケットに入っているリップスティックを握り締め、僕は彼女の名をつぶやく。
頬に落ちた雪が溶けては流れ・・・僕の代わりに泣いてくれているようだった。
「何故、君が・・・・・」
あの時から何度となく繰り返した問いに答えるものは何もない。

『私の本当の思いがあなたを守るから・・・・・』
見えるはずのない、感じるはずのない彼女をあの時僕は感じた。
それは、僕の感傷による思い込みだったかもしれないし、意識を失って夢を見ていたのかもしれない。
でもあの時、確かに僕は彼女の優しさ、暖かさを感じたと、そう思えた。
『あなたは、幸せになって・・・・・・』
声が聞こえた気がして振り向くと、一筋の光が差し込んできて目を眩ませた。
その瞬間、光に包まれた視界に、少女の肢体が見えた気がした。
雪の羽を従えた彼女は、まるで天使のように・・・・・・

「こちらにいらしたのですね・・・」
どの位そうして立っていたのか、遠慮がちにそう声をかけられ、呆然としていた自分に気がつく。
「ごめん、ちょっと・・・考えたい事があって・・・・・」
彼女の瞳に少しの翳りを見つけながらも僕はうまくそれを消してあげる事はできなかった。
今日は、今日だけは、紅い髪のわがままな少女の事を考えていたかった。

誰より明るい笑顔が似合う娘だったのに。
戦争が、僕の弱さが彼女の微笑を奪ってしまった。
どんなに悔やんでももう彼女が帰ってくることはない。
本当なら今日16歳を祝ってあげられるはずだった。
彼女の幸せを守ってあげたかった・・・

「行きましょう。わたくし達の戦いは、まだ始まったばかりなのですから・・・・」
瞳には決然とした光を、唇には微かな笑みを浮かべて彼女は言った。
「そうだね・・・まだ、僕たちに出来ることがたくさんあるはずだ・・・・」
僕達の世界がどこに向かっていくのかまだわからない。
でも一つでもできることをしよう。
力だけが僕のすべてじゃない、そう信じさせてくれた人達の世界を生きていこう。
『それでいいのよ・・・・・・』
覚えのあるぬくもりが、僕を包んだ、そんな気がした。

82白い羽:2004/03/15(月) 06:47
散った花作者です。懲りもせず誕生日記念投下。
この間、雪の降った日に思いついたものです。固有名詞はあえて出さないようにしました。
16歳になれなかったフレイ様を悼む作品です。

感想は帰ってからUPしますね。
本当は日付が変わってすぐ投下する予定だったのですが、どうしても入れなくて出勤前に投下。(笑)

83過去の傷・作者:2004/03/15(月) 08:17
アクセレイですね・・・間違えやすい・・・訂正してます。

84過去の傷・80:2004/03/15(月) 08:38
「ちょっと待て!あきらかにお前ひいきしてるだろ!」
カガリが声をあげる。
「う−ん」
「だいたい、この機体はアストレイじゃない!お前自分の世界を考えろ!ここは外伝の世界じゃないんだ!オ−ブを馬鹿にするなよ!あの機体にはな・・・アサギ、ジュリ、マユラの魂が宿ってるんだぞ!」
「・・・なんのこと・・・?」
「たしかにお前達は恋人同士だ・・・でもひいきはやめろよな!」
「カガリ様〜」
一人の女の子が駆けつけてきた。
「な!マユラ!?生きてたのか!」
「お久しぶりです!私だけですけど・・・なんとか・・・ぎりぎりに・・・いままで入院してたんですよ、もうこの通り元気になりました、キラさんもお久しぶりです」
「や、やあ」
顔を赤くしてキラは少し照れた・・・
「痛っ!」
「なにでれでれしてんのよ!この浮気者!」
物凄い形相のフレイに足を思い切り踏まれたのだった。

「ミリィさん・・・こうなったら荒治療しかありませんね、サイさん」
「はい?」
「ミリィさんにト−ルという人になったつもりでキスしてあげてください」
「え!?いや無理です・・・俺には・・・」
「仕方ありませんわね・・・なら私が・・・」
「え!?」
ラクスはミリィの唇に・・・。

85キラ(♀)×フレイ(♂)・40−1:2004/03/15(月) 19:43
「こちら、ブラボーワン。敵機影…」
「遊んでいるんじゃない。真面目にやらんか!」
「へへっ、すいません。一度やってみたかったもので。……それでは、改めて、
こちら、空中探査中のディン部隊。敵機影、熱反応共にありません」
「同じく海底探査中のグーン部隊。足付きは影も形も見当たりません」
斥候を続ける各MS隊からの報告にモラシムは軽く眉を顰める。
足付き討伐に失敗してから一夜が明けた。カーペンタリア基地からの増援部隊と合流し、
戦力を回復させたモラシム隊は再攻勢に出たが、標的はまるで神隠しにでもあったかの
ように消失した。空中探査は当然の事として、本来、宇宙戦艦である足付きに潜水能力
はないと思われたが、念の為に海底探査まで行ったというのに一向に梨のつぶてである。


「隊長、この近くには例のオーブ領サドニスがあります。もしかして、足付きはうっかり
デーモン・ウォールに迷い込んで、既に海の藻屑となったのでは?」
「馬鹿を言え。そんな間抜けな敵なら、クルーゼがあそこまで梃子摺るわけはない」
クストーのブリッジで艦長がそう意見を具申したが、一刀両断で切り捨てられた。
モラシムに限らずザフトの隊長クラスで、仮面の道化者(クルーゼ)を好いている
者は恐らく皆無であろうが、その能力を疑問視する者もまたいなかった。
ザラ国防委員長の懐刀と称され、高い作戦遂行能力を持ち、自身もザフト軍最高クラスの
パイロットと目される智勇兼備の名将であるクルーゼに比肩出来る者は少ない。
故にザフトの一線級指揮官の羨望の眼差しである、オペレーション・スピッドブレイク
の総指揮官という栄誉を授けられたのだろう。
そのクルーゼに能力的に唯一対抗出来そうな逸材は砂漠の虎ぐらいだったが、(彼も彼で
クルーゼとは違った意味で性格に癖がありすぎたので、軍の主流とは言い難かったが)
その虎は砂塵での戦闘で既に戦死し、ザフト内部での足付きとMSパイロット(キラ)
のWANTED(賞金首)としての価値は鰻登りに高まる一方である。

「判りませんよ、先週もジブラルタルからカーペンタリアへ向かっていた輸送機が、
計器の故障とかでデーモン・ウォールに嵌まって行方不明になっていますからね。
不沈艦の末路も案外あっけないものかも知れませんよ」
悪魔の壁の怖さを知り尽くしている艦長が再度注意を喚起したが、モラシムは軽く
肯いただけで、気にも留めなかった。第二級戦闘配備を解かずに、より一層哨戒体勢
を強めるように部下たちに指示を下した。
だが、油断や楽観論とは無縁の優秀な戦術指揮官であるモラシムも、まさか足付きが
オーブ中枢の意を汲む者の手引きで、難攻不落のデーモン・ウォールを突破して、
悪魔の壁に囲まれた楽園の中で、その身を癒しているとは想像もつかなかった。



キラは高台にあるカフェの椅子に腰を下ろして、緑溢れるサドニスの自然美を堪能
しながら、カルピスをストローで啜り、咽喉の渇きを癒している。
今のキラの格好は白の清楚なワンピース姿で、日除け用に麦藁帽子を被っている。
この何処にでもいそうな大人目の少女を、数え切れないほどのザフトの歴戦の兵達
を地獄に叩き落してきたA級賞金首と看破し得る千里眼の持ち主などサドニス島には
いないであろう。

「へへっ、見つけたぜ。まさか、こんな場所で再会出来るとは夢にも思わなかったぜ。
キラ・ヤマト。いや、裏切り者のコーディネイターで、ストライクのパイロットか」
否、一人だけいたようだ。その人物は、キラのいるカフェのさらに高みの位置から
獲物を狙う禿げ鷹のような目付きでキラを睨んでいる。金髪に碧眼、中背でキラと同い年
ぐらいの少年だが、他者を見下すようなギラギラとした瞳と余裕のない表情が、端正と
言っても良い少年の顔を歪めて、第一印象を暗いものとしている。

彼の名前はマイケル・タカツキ。キラやアスランと同じ月の幼年学校時代の級友である。

86キラ(♀)×フレイ(♂)・40−2:2004/03/15(月) 19:44
未だ朝靄が残る早朝時、サドニス島南岸部の港町の波止場に数台のモータボートが接舷
され、私服に着替えたアークエンジェルのクルーがわらわらと上陸してきた。
寛大にも艦長のマリューから臨時休暇をもらった彼らは、かつて観光名所として栄えた
サドニス島で、各々リフレッシュ休暇を楽しむ所存だ。壮年のクルー達に混じって
学生ぐらいの少年少女もいる。云わずと知れたヘリオポリス組のメンバーである。
「それでは、集合時間までには全員波止場に集まること。
尚、ヘリオポリス組に関してはその限りではないので、一端、艦に戻るなり、
ホテルに宿泊するなり自由にすること。では、解散!」
「うおぉおぉおおお!!!!!」
率先役のノイマンの解散合図と同時に、休暇第一陣のクルーは奇妙な雄叫びを上げて、
激しい地響きの音を立てながら、蜘蛛の子を散らすような勢いで駆け出して行く。
自由と娯楽に餓えたクルーの迫力に唖然としていたキラは、気づくとポツンと一人
波止場に取り残されていた。


「ミリィ達も薄情なんだから…。一人ぐらい待っていてくれてもいいのに」
キラは友達甲斐のない級友達を詰ると、ガイドブックを片手に繁華街へと繰り出した。
人の数自体は少なかったが、街中は意外に活気付いている。例の事情から、訪問客が途絶
えて久しく、観光島としては寂れざるを得なかったが、島の人々は、乱世のご時勢での
平穏な生活をそれなりに楽しんでいるようだった。また二重の安全性(中立と悪魔の壁)
を買われて、富豪の一家が避暑の如く移民してくるケースも多く、彼らの投資により、
今現在は自給自足に近いシステムが確立されているらしい。

「どうしようかな、アミューズメント・パークなんか一人で行っても詰まらないし」
ガイドブックのお勧めコースに従って、キラはまずは土産屋を冷やかしながらも、
孤独な一人旅に物足りなさを感じて、横顔に暗い影を落とした。
途中、ナンパに精を出すトノムラやチャンドラ達と遭遇したが、お互いの存在に気づくと
気まずそうに俯いて互いをやり過ごした。コーディへの偏見や、味方殺し疑惑が土壌と
なったキラとAAクルー達との精神的な隔離状態は根強く続いている。以前、フレイは
キラを「醜い家鴨の子」と評したが、その評価は正鵠を得ていたかも知れない。
そんなキラが何とか普通に話せそうな大人のクルーは、フラガぐらいだったが、幹部三人
は健気にも休暇返上で艦に残ったので、翌日の休暇第二陣にすら組み込まれていない。
コーディに差別意識のないヘリオポリス本家の級友達の有り難味をキラが実感した刹那、
海岸線を見下ろせる高台の公園で、仲睦まじく腕を組んだトール達を発見した。


「綺麗ね、トール」
太陽の光を乱反射して、万華鏡のような幻想的な美しさを醸し出す海岸線の景色を
眺めながら、ミリアリアはウットリとした表情でトールに問い掛ける。
悪魔の壁に取り囲まれているとは思えないほど、サドニスの海は透明で穏やかだ。
「確かに綺麗な景色だね。けど、その海も君の美しさの前には霞んでしまうよ、ミリィ」
急に詩人のような戯言を宣うトールに、ミリィはパチクリと瞬きした後、プッと噴出した。
「に…似合わないよ、トール」
「そ…そうかなあ」
照れ隠しに軽く頭を掻くトールに、ミリアリアは目に涙を溜めながら笑い転げた。
「そうよ、トール。あなたはあなたの良さがあるんだから、肩肘張らずにドーンと
構えていれば良いのよ。一時は物足りないと思ったこともあったけど、今はトール
のそういう野暮ったさが私は大好きよ」
「ミリィ…。俺も君が好きだよ」
トールはミリィを抱き寄せると、そのまま自然とお互いの唇を重ね合わせた。
気の利いた台詞回しなど使わずとも、いくらでも雰囲気は作れるみたいだ。
特に才走った所はなかったが、二人は極めて等身大の似合いのカップルだった。

87キラ(♀)×フレイ(♂)・40−3:2004/03/15(月) 19:45
遠目から一部始終を眺めていたキラは、結局、声を掛けずにその場から離れた。
最初は合流したいとも思ったが、完璧に二人の世界を作り上げたトール達の間に
お邪魔虫として割って入れるほどキラも野暮ではない。
何があったかは知らないが、まるで壊れた古時計が再び時を刻み始めたかのように、
アークエンジェルに巻き込まれて以後、ずっと停滞していたトールとミリィの二人の
時間が、突然動き始めたかのようだった。

「いいな、二人とも…」
トールとミリィのフレッシュな関係を羨ましく思ったキラは、人知れず溜息を吐いた。
単純な異性関係の深さだけなら、キラとフレイの一組の方がトール達よりも一歩も二歩
も先んじているのだが、身体の結び付きが強まれば強まるほど、反ってお互いの心が
離れていくような嫌な錯覚をキラはずっと感じているのだ。
恋人(?)のフレイとは、昼と夜とで態度が180度異なる奇妙な二重生活が未だに
続いている。今朝方も、ついフレイを避けるかのように、彼とは別のボートに
乗り込んでしまったキラの反抗的な態度に気分を害したのか、フレイはキラを
待つことなく、殺気立ったクルーに紛れて姿を消している。
こういう時、フレイの代役を務めるのは、キープ…ではなく、プラトニック担当のカガリ
なのだが、彼は不法入国したアークエンジェルの滞在許可交渉を目的に、キサカと一緒に
領事館を訪問中だ。ザフトに狙われている軍船の寄港など、サドニス側からすれば傍迷惑
な話だろうが、カガリはオーブ領共通の水戸黄門の印籠を所持しているので、きっと何と
かしてくれるだろうとのAA幹部達の強い期待を受けていたからである。

「あれは…、フ…フレイ!?」
神のお導きであろうか。一人に寂しさを覚えていたキラは、極めてレアな確率の元に
涼みに入ったカフェの一つで、捜し求めていた想い人と再び遭遇(エンカウント)した。
軽いロンリーシックに掛かっていたキラは、パッと表情を輝かせ、子犬なら尻尾がはち
切れんばかりの勢いでフレイに駆け寄ろうとしたが、途中でその動作を停止させてしまう。
フレイの座っているテーブルには、キラと同い年ぐらいの少女が二人、楽しそうにフレイ
と会話している。高価な身なりからすると、彼女達は良い所のお嬢様なのかも知れない。
どちら側から誘ったのかは不明だが、まるで磁石のS局とN局が惹かれ逢うかのように
女性に対する異常な吸引力を発揮するフレイは、ナンパの相手にも事欠かないようだ。

キラは落ち窪んだ表情で、フレイに気付かれないようにカフェの外に出ると、屋外の
テーブルの一つに腰を下ろして、飲み物を注文した。目の前には緑溢れるサドニスの
美しい大地が広がっていたが、その景色を堪能出来る心の余裕はキラにはなかった。
女連れのフレイに見咎めでもされたら惨めでしょうがないので、咽喉の渇きを癒せたら、
早くこの場を立ち去ろう。そう考えて、キラはストローを氷の隙間に差し込んで、
乱雑な勢いでカルピスを一気飲みする。
そんなささくれだったキラの心の隙間に浸け込むかのように、何者かが声を掛けてきた。
「おい、ヤマト。そこにいるのは、キラ・ヤマトじゃないか?」
慌てて振り返ったキラの前には、冒頭でキラを吟味するように眺めていたボロのシャツ
を着込んだ金髪の少年が立ち尽くしている。今の少年の顔付きは先のギラギラした態度
が嘘のように穏やかで、こうして見ると中々の美男子だ。
「だ…誰?」
一瞬、ナンパされたのかと思ったが、相手が自分の姓名を知っているのは妙だ。
カガリに無防備すぎると称されたキラも、流石にちょっとばかり警戒心を発揮しながら、
そう尋ねると、少年は少しだけ傷ついた表情をしながら苦笑いする。
「覚えてないかな。ヤマト、俺だよ。月の幼年学校で一緒だったタカツキだ」
少年が素性を名乗ってから数瞬後、キラの瞳孔が大きく開くと同時に、
手に持っていたグラスを床に落としてしまい、グラスは粉々に砕け散った。
「タ…タカツキ君?」
キラは信じられないという表情で、タカツキという級友の少年を見上げている。
予期せぬ旧友との再会に、キラは驚き戸惑っているのだろうか。
いや、そうではないようだ。キラは天敵を見つけた小動物のように身を縮ませて、
膝元はガクガクと震えている。月の幼年学校時代、キラにとって、タカツキという少年
は天敵というよりも敵(エネミー)そのものの存在だった。

88キラ(♀)×フレイ(♂)・40−4:2004/03/15(月) 19:45
戦争の激化によりヘリオポリスに疎開する以前、キラは5歳から13歳までの
長きに渡る間、小中教育に該当する月の幼年学校に通っていた。

「えっとお…、わたしのきょーしつは…あうっ!?」
「じゃまなんだよ!ボーっとしてんじゃねえよ、たーこ!」
入学式の翌日、自分の教室を探して要領悪くマゴマゴしていたキラは、後ろから意地悪
な級友に突き飛ばされて尻餅をついた。今とは比べ物にならないぐらい涙腺の弱かった
幼少時のキラは、「え〜ん、え〜ん」と泣き喚いていたが、薄情な級友たちは、遠巻きに
クスクスとキラの醜態を嘲笑うだけで、誰も手を貸そうとはしなかった。
「だいじょうぶ?」
そんな折、彼女に救いの手を差し伸べた一人の少年がいた。その黒髪の少年は、キラの
手を引いて、立ち上がらせると、懐から取り出したハンカチで涙を拭いてあげた。
「きょうしつはこっちだよ。君とはおなじクラスみたいだね。いっしょに行こうか?」
「だ…だれ?」
「ぼくは、アスラン。アスラン・ザラだ。よろしくね」
黒髪の可愛らしい少年はニッコリと微笑むと、軽くキラの手を握った。
これが、キラとアスランとの最初の出会いだった。

それから刷り込みの如く、キラがアスランに懐いたのは自然な流れというものだろう。
キラはアスランの袖の裾を掴んで、彼の後ろに隠れるように半歩下がった位置をキープし、
世智辛い世の中に対して、常に彼の肩越しに気弱そうな表情を覗かせていた。
「こいつ、だい一せだいのコーディネイターなんだって!?」
「それじゃ、おやはナチュラルかよ。プッ、だせぇ!」
子供という人種が、異分子を冷遇したがる傾向にあるのは、ナチュラルでもコーディでも
変わらないらしく、ほとんど第二世代のコーディの子息で構成された幼年学校で、第一
世代のキラは珍しく、そんな下らない理由で入学当初のキラは苛めの対象になっていた。
「身体的特徴(目の色やルックスなど)や、潜在能力(知力、運動神経など)を自由に
遺伝子操作可能な偉大なるグレン・マニュアルにも、性格を好みにコーディネイトする
術は記されていなかった」
後の歴史家が、そう皮肉を混めて書き残したように、コーディでも有数の潜在能力を誇る
キラも、その引っ込み思案の性格はいかんともし難く、アスランはそんな臆病なキラの
誠実な騎士として、彼女を付け狙う有形無形の魔の手から、キラを守り続けてきた。
そんな二人が、自然と両想いになるのに、それほどの時間は必要なかっただろう。
蜜月と言ってもよい幸福な時期が長く続いたが、アスランは家の事情から、キラは
勇気の欠如から、その想いを相手に伝えることはなかったが…。
学校にも馴れ、苛めもそれなりに収まり、アスラン以外の友達もチラホラと増え出し、
ようやくキラが独り立ちし始めた頃、マイケル・タカツキがキラ達の視界に現れた。


マイケルは、幼年学校では常に主席だったアスランに次ぐ優秀なコーディの一人だった。
親はプラントの下級議員で、プライドが高く、常に取り巻きとなる級友を引き連れている。
優等生だが、他人を見下す癖があり、ナチュラルはおろか、同類の中でも劣った者には
侮蔑心を隠さなかったので、人望は低く、取り巻き以外の級友達からは嫌われていた。
そんなマイケルにとって、能力・家柄など全てにおいて彼の上を行くアスランの存在は、
まさしく目の上のタンコブだっただろう。とはいえ、意外と身の程を知っている彼は、
マトモに戦っても勝てないことも悟っていたので、敢えてアスランとはぶつからずに、
井の中の蛙に徹してプライドを維持してきた。
彼がアスランに根強いコンプレックスを抱いていたのは確かだが、そのアスランという
惑星の周りをうろつく衛星としか映らないキラのことなど当初は眼中にはなかった。
キラに全校生徒の前で赤っ恥を掻かされるまでは…。

89キラ(♀)×フレイ(♂)・40−5:2004/03/15(月) 19:46
まだMSが実戦投入される前の時代、幼年学校に後のMSの雛形になる戦闘用ロボット
のシミュレータが導入された。各種訓練が授業科目にも取り入れられてから数ヶ月後、
その成果を試す為のトーナメントの大会が開かれた。
「何だよ、緒戦の相手はザラの腰巾着か。歯応えが…!?な…なにぃ!?」
大会に優勝してアスランの鼻を明かそうと意気込んでいたマイケルだったが、運悪く
一回戦で最高のコーディたるキラと当たり、手痛い敗北を喫した。
結局、大会で優勝したのはアスランだ。キラはマイケルの異常な悔しがり様から、
身の危険を悟って、ワザと手を抜いて二回戦で敗退したが、時既に遅く、その行為は
反ってマイケルの下馬評を下げ、彼の反感を買うだけの結果となった。
「ねぇ、見た?タカツキの奴、泣き虫のキラにコテンパンにやられたんだって」
「何時も偉そうにしている癖に、本当は口先だけかよ。最低じゃん」
身から出た錆ともいうべきか、普段から他人を貶めることで、相対的に自分を高く
見せようとしてきたマイケルに募っていた全校生徒の反感が一気に爆発して、
彼は学校中の笑い者になった。自業自得の末路ではあるが、内省とは無縁の彼は、
自身の態度を省みることなく、ひたすら自分を窮地に貶めたキラを憎悪した。

それ以来、キラは逆恨みされたマイケルのグループから陰湿な虐めを受け続ける事になる。
キラの身の周りにはアスランが常に目を光らせていたので、大抵は事なきを得ていたが、
ある時などは、人気のない体育倉庫に連れ込まれて危うく乱暴され掛けたことさえあった。
鳥頭…、もとい自己転移療法の大家であるキラは、嫌な(あるいは自分にとって都合が
悪い)記憶を封印する術に長けていたので、ヘリオポリスに疎開しアスランと別れて以後、
マイケルの存在もすっかり失念していた。サドニス島で再び彼と遭遇するまでは。


予期せぬ運命の邂逅(ここで会ったが百年目的であるが)を演じてマイケルと相対した
キラは、両腕で自分自身を抱き締めるような体勢になって、強く身を固める。
それも当然で、虐めというのは、不器用なコミュニケーションの一部などと行為を正当化
出来るような代物ではなく、受ける側にとっては、まさしく死活問題そのものなのである。
マイケルを見上げるキラの脅えた瞳には、恐怖とトラウマに満ち満ちていた。
「やっぱり、俺の事、恨んでいるみたいだな。まあ、当然か…」
マイケルは憂いを帯びた表情で、軽く溜息を吐くと、ガラスの割れる音に気付いて、
何事が起こったのかと駆け寄ってきたウェイターに声を掛けた。
「すいません、コイツは俺の昔の知り合いなんです。何か驚かせちゃったみたいで。
勘定と壊れたグラス代はこれでよいですか?」
萎縮して声も上げられないキラに代わり、マイケルは弁償を代行すると、再びキラに向き
直った。その蒼い瞳は、遣る瀬無さに溢れている。少なくとも、キラの目にはそう映った。
「俺、前々からずっと、お前に謝りたかったんだ。
あれから色々あって、自分の馬鹿さ加減にようやく気付けたんだ。
けど、今更そんな事言うのは虫が良すぎるし、ヤマトにとっても迷惑な話しだよな」
自嘲するように心情を告白するマイケルを、キラは唖然とした表情で見つめる。
今現在のマイケルが、キラの記憶にある悪鬼のような姿と全然一致しないからだ。
「じゃあな、ヤマト。一目、お前の元気そうな姿が見れて良かったよ」
マイケルは最後にそれだけを告げると、クルリと身を翻した。謝罪でなく、別れの言葉
を口にせざるを得なかった彼の背中は、キラにはとても小さく見え、キャッチセールス
の電話を自分から切ることが出来ない典型的な弱気人間のキラは、こうまで下手に
出られると、このまま帰しては申し訳ないような複雑な想いに囚われ始めた。
「ま…待って!」
思わずキラはマイケルを呼び止め、場を去ろうとしていた彼はピタリと足を止めた。
「ねぇ、どこか落ち着いたところで、ゆっくりと話しをしない?」
ガヤガヤと自分達を見つめる野次馬の存在に気付いたキラは気恥ずかしそうに俯いて、
マイケルを誘った。キラに背を向けたマイケルの口元は、「かかった」とでも言いたげに、
怪しく歪んでいる。もしかすると、先の誠実そうな態度は単なる演技なのかも知れない。
以前もキラは、最悪に近い関係からフレイを許した前歴があり、その結果、泥沼の愛憎
関係を未だに継続中だというのに、再度、同じ過ちを繰り返そうとしているのだろうか。
「最悪の出会いは、やがて最良の伴侶を得る温床となる」という恋愛小説の黄金の不文律
でも信じているのか、浪漫主義者(ロマンチスト)のキラは、上っ面だけで男性を判断
する傾向があり、性質(たち)の悪い男に騙される妙な才能にも恵まれているみたいだ。

90キラ(♀)×フレイ(♂)・40−6:2004/03/15(月) 19:47
「あれは、キラか?んっ、なんだ、あの男は?」
店の外が騒がしくなったので、軽い好奇心に駆られて外に飛び出したフレイは、見知らぬ
少年と仲良く二人連れで、店から離れていくキラの姿を発見する。
「チッ、あの尻軽女、相変わらず…」
フレイは軽く舌打ちしたが、彼も女性と同伴だったので、あまり人の事は言えないだろう。
それよりも、フレイはキラの隣にいる金髪を尻尾のように後ろに束ねた少年が気になった。
「あいつ…、なんか嫌な感じだな」
嫉妬心とは無縁に、フレイは謎の少年(マイケル)の性根をそう断定する。
本来、人間とは善悪二元論に分類出来るほど単純な生命体ではないが、対人鑑定眼に
優れるフレイは、大よそ第一印象だけで、その人間の魂がどっち寄りかを見分けられる
という稀有な技能(スキル)を所持していた。
ほとんど直感としか呼べないあやふやな代物だが、実際に深く付き合ってみて、第一印象
を外した体験はなかったので、フレイは自分の先入観を是正する必要性を認めなかった。
「アルテミス要塞の軍人さん達を除けば、彼でちょうど二人目か。こんなご時勢なのに、
世の中は意外と善人に満ち溢れているみたいで、けっこうなことだね」
己自身を遠くの棚に放り投げるなら、ヘリオポリスが崩壊してから、フレイが直接お目に
掛かった民間人で、魂が悪(エビル)寄りに傾いた逸材に出会えたのは、二人目となる。
ちなみに、一人目の逸材は、既にアークエンジェルを降りて、今はプラントにいるはずだ。
「ねぇ、どうしたの、フレイ君?何か面白いことでもあったの?」
後ろから、サドニスで知り合った女性二人が声を掛けてきた。少女達は、この島に疎開
した富豪の娘で、実は先にフレイに声を掛け、逆ナンパしてきたのは彼女達の方である。
「あっ、いや。何でも、ありませんよ」
お嬢様方の問い掛けにそう応じながらも、フレイの視線はキラ達に注がれていた。
まあ、いいか。一瞬、尾行しようかとも思ったが、その誘惑をフレイは払い除けた。
奴がどの程度のワルかまでは判らないが、大方、キラの身体が目当てのチンピラだろう。
どれほどキラが傷つこうが、生きて戻ってきさえすれば、後はどうにでも慰められる。
相変わらず、女性の貞操観念を軽視するフレイはそう悪ぶりながらも、何故か彼の
スコープ(視線)はキラ達をロックオンして離れることはなかった。


キラとマイケルは、横並びに坂道を下りながら、キラ達がボートを泊めた波止場と
正反対の港町を目指して歩んでいた。そこに彼の家があるというのである。
「ふーん、タカツキ君は今は家族みんなでサドニス島で暮らしているの?」
「そうだよ。姉ちゃんがナチュラルの男性と結婚したんで、そのツテでね。
正直、昔はナチュラルの奴らを、「進化し損ねた出来損ないの猿共」とか見下して
いたけど、実際付き合ってみれば、俺達と同じ温かい血の通った人間なんだよな。
本当に馬鹿みたいたぜ。能力だか下らないことで一々他人にラベルを貼るなんて」
「タカツキ君…」
キラは感心したような顔つきで、マイケルを見上げている。

先程からのマイケルの与太話は全て嘘八百である。彼は一人っ子で姉などいなかったし、
そもそもサドニス島に住居など構えていない。ここに辿り着いてから、まだ一週間も
滞在していないのだ。彼が本気で猿と見下しているナチュラルを持ち上げるような戯言
をほざいたのも、そう主張すれば、今現在、ナチュラル達と一緒に行動しているキラ
の心証が良くなるだろうとの打算からである。案の定、他人を疑うことを知らない、
極めて善人よりの魂(ホーリー・ソウル)を持つキラは、完璧に騙されて、マイケルに
抱いていた警戒心をみるみる氷解させている。
「それより、ヤマトはどうやってサドニスに来たんだ?
知っていると思うけど、この時期にここに入るのはかなり苦労するんだぜ」
「そ…それは……」
キラは言葉に詰まった。まさか、コーディである彼に、連合に所属してザフトと
戦っているなどと馬鹿正直に打ち明けるわけにもいかないだろう。
嘘を吐くことに慣れていないキラには、適当な言い訳の一つすら思いつかなかった。
「別に言いたくなければ、構わないよ。人それぞれ事情はあるだろうし」
「ご…ごめんなさい」
それとなく探りを入れたマイケルは、キラの口から彼女を取り巻くバックグラウンド
を吐かせたいと思ったが、この場では断念した。キラを捕獲しようと企んでいる
彼としては、万が一にも逃げられでもしたら、元も子もないからだ。

91キラ(♀)×フレイ(♂)・40−7:2004/03/15(月) 19:48
薄々気がついている人もいるだろうが、彼もまたアスランと同じザフトの軍人である。
キラが月から去った後、アスランと同じく、プラントの仕官学校(アカデミー)に
入学し、そこで初めて彼は人生の挫折を味あうことになる。
アスランが、イザーク、ディアッカなど後のクルーゼ隊の連中と共に士官学校でも
優等生グループを維持したのに対して、幼年学校ではエリートだったマイケルは、
アカデミーでは物の見事に「その他、大勢の一員」に落ちぶれてしまった。
マイケルがあまり褒められた人格の所有者ではないことは確かだが、彼は、決して無能
ではない。むしろ、コーディ全体の中でも上から数えた方が早い優秀な逸材ではある。
ただ、アスランやキラのような超がつくエリート達と正面切って張り合えるか?
と聞かれると、生まれ持ったプロパティ(潜在能力)の容量を呪うしかない。
彼のようなタイプは、分を弁えて「蛇の頭」を抑えて天狗となっていれば、自他共に幸せ
であったのだが、何を間違えたのか、「竜の尻尾」に必死にしがみ付いてしまったので、
「竜の頭」に位置するアスランに、いらぬコンプレックスを抱く羽目となったのだ。

戦時による需要から、弱齢の彼らが士官学校を早期卒業し、アスラン達がザフトの
エリートの証たる「赤服」を与えられ、エリート街道(クルーゼ隊への配属)を歩んだ
の対して、「緑服」のマイケルは地球のアフリカ地方に飛ばされた。
当時、アカデミーでは宇宙軍をエースとして、地球部隊を、「地上モグラ」と嘲る傾向に
あったので、彼の野心感覚では左遷されたも同然の最低の扱いだった。
砂漠の虎の指揮下に配属され、悶々たる日々を送っていた彼は、サドニスでキラと再会
する以前にも、実はバラディーヤでもキラと遭遇していたのである。
「あいつ、もしかしてヤマトか?何だって、バルトフェルド隊長と一緒に!?」
例のブルーコスモスのテロ事件の折、一兵士として虎の屋敷の警備をしていたマイケルは、
真っ先にキラの存在に気付いた。(キラの方は、全く彼の存在に気がついていなかったが)
好奇心に駆られて持ち場を離れ、扉の外から虎とカガリの会話を盗み聞きした彼は、
キラがストライクのパイロットで、ザフトのA級賞金首である事実を知ることになる。

その翌日、マイケルはカーペンタリア基地への転属辞令を受け、慌しく虎の元を離れた。
ビクトリア攻略戦の際に使用した水中用MSグーンが一機レセップスに余っていたが、
この砂漠では単なる宝の持ち腐れなので、輸送機でカーペンタリアまで届ける為だ。
「また左遷かよ。まっ、あの変人の虎の指揮下にいるよりはマシかもしれねえな」
横着して自動操縦で楽をしていた彼は、計器の故障に気付かずにデーモン・ウォールに
迷い込んで、輸送機を沈没させてしまう。沈没寸前に何とかグーンに乗り込んだ彼は、
悪運強く一命を取り留め、気付くとサドニス本島に流れ着いていた。
グーンはあちこち傷ついていて戦闘用MSとしては全く遣い物にならず、任務に失敗した
わけだが、あの状況では生命が助かっただけでも僥倖だろう。

本来なら、すぐに軍本部に事の子細を報告する責任があった彼だが、その意思はない。
悪い意味での主体性と行動力に恵まれていた彼は、軍の禁欲的な生活に飽き飽きとして
いたので、闇市で売れそうな輸送機の残骸を売り払って、当座の資金を稼ぐと、グーン
を港町の今現在使われていない倉庫に隠し、軍に対しては沈黙を守った。
「これも俺の常日頃の善行に対して、神様が与えてくれた臨時休暇だろう」
どちらかといえば仏教圏の癖に、クリスマスだけはちゃっかり祝う東洋の島国の住民の
ように、本来無心論者だが、都合の良い時だけ神頼みする癖のあるマイケルは、派手に
豪遊し、サドニスという楽園での生活を心行くまで楽しむことにした。

それから一週間近くが経過し、悪魔の壁が開放される日が近づいてきて、マイケルは
軍に戻る決意をした。楽園での安穏とした暮らしに未練はあったが、生活費も底を突いて
いたし、何より、この機会を逃すと、また一ヶ月はこの島から出らなくなるからだ。
ただ、輸送機を落として、グーンを半壊させてしまった手前、手ぶらで軍に戻ることを
躊躇わせていた彼の前に、キラという格好の手土産が、忽然と姿を現したのだ。
バラディーヤでは、虎の厳命で取り逃がしたが、ここには彼を律する上官もいなければ、
キラは無敵のMSに守られておらずに、コーディとはいえか弱い女性の生身のままである。
マイケルは、天から振って沸いたこの幸運に舌なめずりして歓喜し、葱背負った鴨
そのもののキラを見逃す意思は欠片もなかった。

92キラ(♀)×フレイ(♂)・40−8:2004/03/15(月) 19:48
「ここが俺の家だよ、ヤマト」
「お家って、倉庫じゃないの、タカツキ君?」
ガラガラと扉を開けるマイケルを、流石にキラも胡散臭そうな瞳で見ていたが、
嘘で塗り固めたマイケルの主張の中では、今回は珍しくも真実を告白していた。
彼はこの廃棄された倉庫を根城にして、この島でずっと生活していたのだから。
マイケルに釣られるように倉庫の中を覗いたキラはあるモノを発見して唖然とする。
薄暗い倉庫内には、何故か片腕が捥げて半壊したグーンが鎮座していたからだ。
「ど…どうして、MSがここに……んっ…んぐぅう!?」
突然、キラは後ろからマイケルに羽交い絞めにされ、湿った布着を押し当てられる。
異臭を嗅ぎ取ったキラは必死にもがいたが、MS乗りとしては彼のはるか上をいく技量
を誇るキラも、生身の単純な腕力では、男性のコーディであるマイケルには敵わない。
「ちょ…ちょと、何をするの!?タカツキく……………………………zzz」
豹変した彼の態度に今更ながらに身の危険を感じてジタバタと暴れていたキラだったが、
やがて目がトローンとし始めて、グッタリと動かなくなった。

「へへっ…、一丁上がりと。チョロイもんだぜ」
マイケルは片腕でキラを抱きかかえたまま、クロロフォルムを染み込ませた布着を
放り捨てると、軽い寝息の音を立てるキラの懐をガサゴソと弄り始める。
やがて目的のブツを探し当てることに成功したマイケルは、小さくガッツポーズした。
「あった、あった。こいつが欲しかったのよ」
彼の手の内には、キラの連合での身分を示す、写真入のIDカードが握られていた。
軍本部に戻って、このカードを解析すれば、彼女がストライクのパイロットである事実
を証明する電子データが、恐らく詳細に組み込まれている筈である。
「やったぜ。コイツを軍に突き出せば、俺も赤服になれる」
マイケルは勝ち誇った表情でキラを見下ろした。元々、ナチュラルはおろか、同類で
さえも見下す傾向のある彼にとっては、苛め・虐められの関係であったとはいえ、
かつての幼年学校時代の級友の、それも自分と同い年の戦争に巻き込まれた女の子
でさえも、単なる出世の道具としか見ていないみたいだ。ザフトに虜囚として送検
されたキラが、その後、どんな目に遭うかなど知ったことではないのだろう。

「それにしても、こいつ。幼年学校の時は、ピーピー泣き喚くしか能のない痩せっぽちの
色気のないガキだった癖に、しばらく見ない間に随分と女っぽくなりやがったな」
IDカードを探す際に、キラの豊満な肢体を弄っていたマイケルは思春期の少年らしく、
キラの身体に劣情を抱き始めた。ヘリオポリスに移ってからの三年間の成長期に、
バストサイズが9cmも発育したのは、キラの密かな自慢だったりする。

「こいつは軍に引き渡す前に、色々と楽しまないと損だよな」
後の世で「最高のコーディネイター」として伝説となるキラと対比するかのように、
一部から「最低のコーディネイター」との悪評を得ることになるマイケルは、
早くも、その下種振りを発揮して、卑しい笑顔を閃かした。

93私の想いが名無しを守るわ:2004/03/15(月) 19:56
キラ(♀)×フレイ(♂)キタワァ・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!

94流離う翼たち・433:2004/03/15(月) 21:08
 マドラス近海では、1隻のザフト潜水空母がマドラス港を監視していた。その中にはもう執念さえ感じさせるしつこさでザラ隊とジュール隊が乗っており、アークエンジェルをここまで追って来たのである。
 潜水艦内に自分用の部屋を与えられたアスランは、そこのモニターからじっとマドラスを見ていた。

「・・・・・・キラ、フレイ、お前たちはそこにいるのか?」

 アークエンジェルがいる以上、それは分かりきった問い掛けである。敵として出てこれば今度こそ倒すと決めているのだが、あそこに居ると思うともう一度会って説得したり、話がしたいという気持ちも出てきてしまう。やはり、顔を知っている相手と戦うのは良い気がしない。
 アスランがそんな事で悩んでいると、何時ものように書類の束を抱えたエルフィが入ってきた。

「隊長、今日の仕事ですよ」
「・・・・・・1日くらい書類を見ない日が欲しいな」
「平和になったら幾らでも満喫してください」

 ピシャリと言ってエルフィはデスクの上に書類の束を載せた。それをパラパラめくりながらアスランは嫌そうに顔を顰める。そこにはまたしても部下たちの出した始末書やら他部署から苦情が積み上げられている。なぜか上司に関する苦情まで混じっている。アスランが世を儚むのも仕方が無いだろう。最近、比喩ではなく生え際が後退しているし、胃薬の量も増えている。精神安定剤に手を出す日も遠くは無いだろう。
 それを見たエルフィは仕方なくモニターに手を伸ばした。

「そういえば隊長、マドラスのTVが入るんですよ。気晴らしにどうです?」
「TV? そうだな、それも良いか」

 アスランが同意したので、エルフィは早速モニターを操作してマドラスのTV用電波を受信させた。そして、最初に飛び込んできたのは、なんとも奇妙な宣伝であった。

「何をしている!」
「はぁ?」
「うちの会社の規則を見ろ!」

 上司が指差す先には、天井から下げられた看板があり、そこにはこう書かれている。
【必ず半ズボン着用】

「さあ、これを穿くんだ」

 上司が半ズボンを手に迫ってくる。彼は焦りながら仲間を振り返るが、そこには半ズボンを穿いた部下たちがずらりと立ち並び「係長、早く穿いてください。規則なんですから」と言っていた。
 彼はズボンを剥ぎ取られそうになりながら電話を取り、とっさに番号を押した。

 部下や上司に恵まれなかった時は、フリーダイヤル○○○−×××××・・・・・・

「ヘルプゥゥゥゥゥ!!」
『はい、スタッフサービスです』

95流離う翼たち・434:2004/03/15(月) 21:10
「・・・・・・なんでしょうね、この宣伝?」

 顔に苦笑を貼り付けながら振り返ると、何故かアスランは電話を手に外線に繋ごうとしている所であった。エルフィの顔が僅かに引き攣る。

「た、隊長、何をしてるんですか?」
「はっ!?」

○○○−××まで押した辺りで我に返ったアスランは、なにやらジト〜とした目で見てくるエルフィの視線に耐えられないように慌てふためいて弁解を始めた。

「ち、違うぞ、別に俺はイザークやディアッカの代わりの部下を派遣してもらおうとか、クルーゼ隊長の代わりの上司が欲しいなんてこれっぽっちも思ってないぞ。ましてこいつら居なくなれば仕事が減って助かるなあ、なんて欠片も考えてないからな!」

 思いっきり本音を暴露しまくるアスランに、エルフィは情けなさの余りひたと壁に手を付いた。

「隊長、一応お2人とも赤を着るザフトのエリートなんですよ。それをなんです。ちょっと手がかかるくらいでスタッフサービスに変わってもらおうだなんて、何考えてるんですか?」
「いや、もしかしたら意外と優秀な社員が派遣されてくるかも」
「仮にそうだとしても、民間人を戦わせるわけにはいかないでしょう。それにクルーゼ隊長の代わりなんて、本気で言ってるんですか?」
「いや、クルーゼ隊長と話すだけで最近は胃が痛いし、このままだと俺は胃潰瘍で後送されかねん」
「それはそうですけど・・・・・・」

 アスランの胃薬使用量が増えている事を知るエルフィは、アスランの言葉に渋々頷いた。確かにこのままだとアスランは胃を壊して倒れるだろう。

「でも、本当に派遣してもらったら、どんな奴らが来たのかな?」
「そうですねえ・・・・・・有名なサーペントテイルの群雲劾とか」
「ああ、それはそれで扱い辛そうだなあ」

 はっはっはと笑い会う2人。だが、その時マドラス基地でクシャミをする目付きの鋭い傭兵が居た事を2人は知らなかった。

96流離う翼たち・434:2004/03/15(月) 21:50
>> 過去の傷
ミリィが豪快に壊れている。不味いです、精神不安定すぎです
フレイ様はフリーダムにって、流石に無理では。ここはM1で艦隊防空にした方が
カガリは何を怒ってるのでしょう? アストレイはMBFシリーズの通称の筈ですが
マユラたんが生きてた!?

>> ザフト・赤毛の虜囚
グングニルですか。イラクで使ったE爆弾をイメージしたんでしょうが、あれだけ放電するなら歩兵は全員黒焦げだ! と画面にツッコんでましたなw
フレイ様はあれを受精とイメージしましたか。想像力が豊かだ。
次回のミリィの転機は何なんでしょう?
あと、サイとカズィの台詞はGS御神に出てきたギャグ台詞ですw

>> 白い羽
テーマは祝う人無き誕生日ですか。一年後ですね。場所は雪が降ってるから地球でしょうか?
なんだかしんみりとしました。

>> キラ(♀)×フレイ(♂)
おお、久しぶりのフレイ君以外の悪役登場。キラは幸運の女神に忌み嫌われてますな
でも、フレイ君の目に適う悪党第1号とは誰です? プラントに戻ってるというからにはコーディなんでしょうが
AAクルーはキラを見ると逃げ出すほどの敬遠ぶりですか
何気に頑張って探してるモラシムが哀れw

97過去の傷・81:2004/03/15(月) 21:55
「キラさん、可愛いね」
「え?・・・その」
「やめろ・・・それよりマユラ、お前も実戦練習どうだ?」
「え?私ですか・・・う−ん・・・いょっと見学します・・・キラさん♪あとで、カガリ様もまた・・・」
そう言うとマユラは去った。

「まったくなに考えてんのよ!顔赤くしちゃって馬鹿じゃないの!!!」
「いや、ただ挨拶しただけなんだけど・・・」
「それでも駄目なの!私以外の女とは食事なんてもってのほか!部屋に行くのもだめ!二人で話しをするのもだめ、目を合わすのもやめて!」
そう言うとフレイは機体に乗った。
「・・・・・・」(行動が限られる・・・)
聞いていたカガリは・・・。
「お前、大変だな・・・ご愁傷様」

ラクスはミリィを抱きしめるとキスする寸前で止める、というよりラクスの唇とミリアリアの唇がかなり接近している、ほんとに当たりそうなぐらい・・・。
サイが呆然とした表情で声をかける。
「あの・・・なにを?」
はっと目を開けるミリアリア。
「や・・・いや!きゃあ!!!」
ラクスを突き放す。
「な・・・なにをするんですか!?私そういう趣味は・・・」
「ちょっとショックを与えてみたんです、効果抜群でした、それでも目を覚まさなかったら・・・衝突してたかもしれません」
ラクスは笑顔で答えた、サイとミリアリアは今一度この歌姫の怖さを知った。

結局カガリがストライク・ル−ジュ・・・フレイはフリ−ダムにそれぞれ搭乗した。
ブリッジにいるキラにカガリから声がかかる。
「おい、キラ、ナチュラルのフレイにフリ−ダムなんか操縦できるのかよ」
<いいんだ>
そういいのだ、彼女は普通のナチュラルじゃないのだ、二ュ−タイプなのだ。
<では訓練・・・いや実戦練習のル−ルを説明するよ・・・まず機体の損傷が半分以上になるかエネルギ−切れになった状態で負け>
「分かった」
「分かったわ」
<そして・・・一応安全は第一に考えてちゃんと脱出しやすいようにしてるけどもしものことを考えてコクピットは狙わないこと、それからこれあくまで練習だからあまりむきにならないように・・・いいね>
「大丈夫だ」
「キラ・・・分かってるわ」
<機体は起動してるね・・・フレイ・・・無理しちゃだめだよ、体を第一に考えて・・・頑張って・・・>
「え?キラ・・・うん・・・ありがとう」
フレイは頬を照れるように赤く染める。
「まったく見せつけてくれるよなあ」
カガリが面白くないようにつぶやく。
<あ、キラさんいた!>
「その声マユラか!?」
「・・・キラ・・・」(私がいないところで他の女と話すなんて・・・浮気だわ、完全な浮気よ・・・キラ・・・)
<え、ええと・・・さあ準備は整ったところで・・・>
「・・・・・・」
「・・・・・・」(頑張るわ)
<・・・練習開始!>
二つの機体が同時に動いた。

98過去の傷・作者:2004/03/15(月) 22:22
>>ザフト・赤毛の捕囚
フレイ様らしいというか、でも怖いなあ、それにしてもフレイ様の想像力に私は・・・そして次はミリィですね、これも楽しみにさせていただきます。
>>白い羽
キラ・・・そうだ、それでいい・・・しんみりしてますねえ、でもフレイさんの幸せにって・・・心にぐんときますね。
でもそう、いまのキラには歌姫ラクス嬢がいる・・・フレイ様はキラが誰と結ばれようと幸せになってくれるといいんでしょうね、これからもキラを本当の想いで守る・・・。
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
悪役登場しましたね、キラは遠く見られてますな。
可哀相な気がしますね、女の子だからなおのことです、う−む・・・難しいですね、どうこれから皆の向き合っていくんでしょうか?
>>翼たち
エルフィというのはしっかりしてますね。
なにげに少し度胸もありますし、しかしアスラン、君それは少し嫉妬してるんですな、彼はいつも・・・。
こんな部下でよかったですね。

99刻還り:2004/03/15(月) 23:37
先の戦争により家を失った村人達は隠れ家へと移動し生活を行っている。
そこには少なからず子供達の笑みがある。
笑みは戦争を一時忘れさせる。
だが、戦争とは切っても切れない関係のモノがこの場にはある。
アークエンジェルだ。
艦内ではいつ戦争になっても対処できるように整備が行われている。
キラもストライクの整備に勤しんでいる。
それはパイロットの仕事であり、コーディネーターであるためキラ自身でしたほうがやりやすいからであった。

「接地圧に、熱滞留、重力値の設定で・・・」

宇宙と地上での戦争の違いを考えながら、端末を操作する。

「キラ。」

自分を呼ぶ声を聞き、キラはコクピットより顔を覗かせる。

「フレイ。」

寝ているはずのフレイが起きていることに驚く。
ひとまず、端末をしまいストライクから降りるキラ。

「もう、起きて大丈夫なの。」
「ええ。先生からも了解を得ているわ。」

と言って笑みを浮かべる。
キラはドキッとして顔を赤くする。
キラを赤くさせる笑みはすぐさま、真摯な表情へと変わった。

「キラ、また戦争したのね。」
「えっ、う、うん。」

哀しみの表情を浮かべるフレイ。

「キラ、辛いでしょ?」
「仕方がなかったから。誰も死んでほしかなかったんだ。」

俯くキラ。
それはフレイが見たくない、させたくないこと。
キラが戦争をしていると感じた時に決意。

「もう戦争しないで。」
「無理だよフレイ。ここはザフトの勢力圏、アークエンジェルは必ず狙われる。僕がやれることをしないと護れない。護りたいんだ。」
(君を護りたいんだ。)

想いを胸に抱き、キラは自分の意思を伝える。
だが、フレイの意志はキラとは違う。

「キラが傷つくなら、護ってくれなくていい。」



「えっ・・・。」

フレイの言葉に自分という存在が崩れそうになる。
この場にいれるのは、自分に力があるためだとキラは考えていた。
そうでなければコーディネーターがいる必要がない。

「そいつは無理ってもんだ、お嬢ちゃん。」

二人の会話に割り込んできたのはマードックである。
マードックは頭を掻きながらゆっくりと二人に近づく。

「坊主を心配するお嬢ちゃんの気持ちもわかるが、アークエンジェルが堕とされたら意味無いだろ。」
「そ、そんな・・・」

フレイは俯き言葉を失う。

「坊主もそんな顔をするな。お嬢ちゃんはお前のことが心配だから言ったんだ。わかるだろ?」
「はい・・・。」

キラはフレイを見る。
フレイはただ俯いている。
哀しみを宿した姿である。

「ほら、坊主。」

マードックはバンッと背中を叩く。

「痛ぅ。何するんですか?」
「お嬢ちゃんの心配を払拭させてやれ。」
「は、はい。」

マードックに促され、キラはフレイに話しかけた。

「フレイ、心配してくれたありがとう。僕は大丈夫だよ。でも、もし辛くなった時あったら正直に話すよ。」

キラは精一杯の笑顔を作って言った。

「キラ・・・。わかった、約束よ。」
「うん。約束する。」

頷きながらも、フレイの表情はさえない。
それでも、キラの言葉を信じるしかない現実がそこにあった。

100散った花、実る果実37:2004/03/15(月) 23:38
「リスティア!おはよう・・・・あの・・・・」
私は勢い込んでリスティアを呼び止めた。
「・・・・おはようございます・・・・なんでしょう?」
昨日のクルーゼ隊長の言葉が私の中でいつまでも回っている。
『いずれ君にも役にたってもらえるのでは、と期待しているのだよ』
今、私ができることはなんだろう。
この艦の中で、私のできること。まず知ること。それから。
「何か、私にできる仕事はないかしら。何もしていないのも落ち着かなくって」
「あなたにできる事って・・・・」
リスティアは虚を衝かれたような表情で私を見つめている。
「何よ、変?」
リスティアにはふくれて見せるけど、変だと思う彼女の気持ちもわかる。
昨日までの私は、本当に後ろ向きだった。
自分の可哀想な境遇に酔って、地に足をつけて生きる事を考えていなかった。
私は昨日、一晩考え抜いた。
私はなんのためにここにいるのか。
今はまだ、例えばクルーゼ隊長が私に期待している何か、それに答えることはできないだろう。
でも、何もしないではいられない。
彼が何を考えているのかは、一晩考えてみてもわからなかった。
でも、誰かの役にたつ、というその発想は私のここでの支えになり得るような気がした。
何かを目標にしていなければ、この私と相容れない世界で押しつぶされてしまいそうな気がしたのだ。

「そうは言っても・・・そうね、お茶汲みくらいかしら?」
え・・・お茶汲み?
「だって、やっぱり軍事的なことは捕虜には任せられないし、同じ理由で事務仕事も駄目だし、雑用くらいしかないんだもの・・・」
しょげたように言い訳するリスティアを見ていると、昨日の拒絶が嘘のようだった。
「じゃ、お茶汲みやるわ。お茶っ葉の場所とか教えてよ。」
ここは年上らしく、私から一歩歩み寄ってあげよう。
違う人間だって拒絶されても、もう私はここで生きていくしかない。
お互い違う中でどういう関係を作っていくかって、きっとそれも大切な事だから。


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