したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜

1迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:57
愛しのフレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、          ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・       ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 )    ヘヘ         ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー     ライトH位なら許してあげる。
|       .〈〈.ノノ^ リ))    ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
        |ヽ|| `∀´||.      ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
     _φ___⊂)__
   /旦/三/ /|     前スレ:フレイ様人生劇場SSスレpart4〜雪花〜
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |    http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1070633117/
   |オーブみかん|/    
              既刊作品は書庫にあるわ。
             ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html

              こっちも新しい書庫よ。
             ○フレイたんSS置き場 ttp://fllaystory.s41.xrea.com/top.html

2迷子のフレイたま:2004/03/02(火) 22:58
スンマソ、うっかりとってしまったのでたてますた。
自分は最近投下しておりませんが、皆さんの投下楽しみにロムってます。

3ミリアリア・あの子許せない 71:2004/03/06(土) 18:13
第2部 4. 私はどうすればいいんだろう? 8-1/8
[フレイ? 何よ、あの子!!]

カズイの言葉で、私の中に溢れ出したヘリオポリスの思い出。
まだトールとは彼氏・彼女でなく、キラへの打ち明けられぬ想いに、胸を焦がしていたころ。

* * *

騒がしい店内。あちこちで交わされる会話。カトウゼミと私のサークル、その他の合コン。
新しい友達、新しい出会いが、あちこちで生まれる中、私は結局、いつものメンバーで
話に花を咲かせていた。

「トール、今度出るCPUどう思う」
「ううん、結局ベンチマーク、大して変わんないのな」私の話に、トールは残念そうに答える。
「そうだね、量子サーキットの新技術を生産設備の関係で見送ったからね」キラの言葉。

「まったく、それ、やってりゃな」とトール。
「でも、本当は軍関係で先に発注されてて、キャンセル品が一部流れるという噂もあるよ」
「え!ほんと? キラ」キラの言葉に、私は目を輝かせる。

「ああ、複数の情報を総合するとね」
「キラ君、それだよ、それ。そうこなくっちゃ。よし、それ狙うぞ」盛り上がるトール。

「キラ、よく知ってる。色々、情報調べてるんだ」
「ミリィほどじゃ無いよ。たまたま、見つけただけで」キラは、少し照れるように話す。

私はキラを、うっとりと見つめる。キラは知識をひけらかすことはしないけど、
本当に良く知ってる。マニアックなトールになんなく話を合わしていける。そして、私とも。

サイは、そんな私達の話に付いて行けないようで、ヤレヤレという顔をしていた。

ふいに、後ろから、明るい声がした。
「サイ、こっちに来ない?」
「フレイ!」
サイは、そう言って振り向いた。声の主は、新入生のフレイ・アルスター。
私と同じサークル。結構いいとこの、お嬢さん。

「先輩たち、難しい話をしていますね」

フレイは、新入生らしい丁寧な言葉で話しかける。でも、それが、私には、ちょっと鼻につく。
サークルでは、友達と意外と好き勝手しているのだ。意識はしていないかもしれないけど、
表と裏を使い分けて、こういう場では、自分を飾るようなようなタイプ。合コンでも、
いろいろな人に愛想を振りまいている。そして、今、店の片隅でたむろしている私達の
ところへもやってきたのだ。

「ねえ、向こうにドリンクあるわよ。サイ、行きましょうよ」
「うん、フレイ、だけどね、今日はちょっと……」

「今日はどうだっての、サイ?」

フレイは、私のゼミの人とは、それほど会っていないはずなのに、サイには、やたら馴れ馴れしい。
男に甘えるような仕草が、私をイライラさせる。でも、それだけでは無い。私は、チラと後ろを見やる。
そこにいるキラの目は、さっきから、ずっと、フレイに注がれている。美しくセットした髪。
赤毛の後ろ髪が揺れる。それからキラの目は離れない。

キラ! フレイのこと見とれて! フレイ? 何よ、あの子!!

4ミリアリア・あの子許せない 72:2004/03/06(土) 18:17
第2部 4. 私はどうすればいいんだろう? 8-2/8
[みんな撮るよー!]

フレイに見とれているキラ。キラ、あの子のこと、まさか……
私は、振り向いて小さく声をかける。
「キラ!」

でも、私の声は少し上ずっているのが自分でも分かる。そんな私の言葉にキラはハッとしたように
視線を私に戻す。

「その人、キラっていうんですか?」 あの子が無邪気に聞いた。

「ああ、はじめまして、キラ・ヤマトです」
「私、フレイ・アルスター。よろしくね」

しばしの間、あの子とキラの視線が合う。

「あ、俺、トール・ケーニヒ」トールが割り込むように話す。

私の行動が、意図せずに、あの子とキラの自己紹介になってしまい。私は内心面白くなかった。

「みんな撮るよー!」
カズイの声がした。カズイが一眼レフのプロ用デジカメを構えて、私達を見ている。
あの子は、それだけで、カメラに向けて満面の笑顔を浮かべている。トールが立ち上がって、
大げさにポーズを付ける。私も慌てて笑顔を作る。

パシャッ! パシャッ! シャター音が数回響いた。

「どれどれ」トールが、わざわざカズイのデジカメのモニタを覗きに行く。あの子とサイも
肩を並べながらモニタを覗き込んでいる。残ったキラに、私は目を向ける。キラは、
あの子に見とれていた素振りは、既に消えて、見つめる私に微笑みを返す。
私はホッとして、嬉しくて堪らなくなる。

「カズイ、後で写真ちょうだい」と私。
「俺、データも、もらい!」とトール。
「僕もデータもらうよ」キラ。
「カズイ、2枚分な。フレイにも、後で写真渡すよ」あの子の方を向いて話すサイ。
「うん、サイ」サイを見つめている、あの子。

「ちょっと、ちょっと。いっぺんに言わないでよ」カズイは困ったような素振りながらも嬉しそうだ。

口々にカズイに話しかける声。カズイの撮る写真には平和が詰まっていた。カズイは平和な私達を残す大事な仲間だった。

* * *

私、キラ、トール。サイとあの子。そしてカズイ。平和な時。
あの子の存在も平和へのスパイス。成り行きにまかせる私を刺激し、キラへの想いを再確認させていた。
でも、あの平和な時は今は無い。

私達みんなを明るくさせていたトールは、もういない。
キラは昔とは変わった。悲しくなるくらい。
あの子は暴走し、キラを変えて、そして姿を消した。
サイは失意に落ち込み、そして、立ち直った後、私と微妙な関係になっている。
その上、平和な時を記録していたカズイも、私達の前から姿を消す。

昔の私達は帰って来ない。私はどうすればいいんだろう?

5ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/06(土) 18:20
うちのSS独自のヘリオ組回想です。結局、予定分をサイズ制限で二つに分けました。
これのフレイ版も存在していて、ちょっと先になりますが出てきます。
次は、またフレイSSに戻ります。

前スレ、目次を入れたら、いきなり、リストから消えてしまいました。
過去ログ倉庫まで行けば見れますが、一度に開くとサイズが大きいですし、
もう少し入れずに、保持しておいた方が良かったですね。済みません。

前スレの最後の投下への感想です。

>>The Last War
お帰りなさい。一連の作品、どんどん良くなっています。今回のクリスとセシウスの決着で、
アスランに言ったカガリの最終話の台詞の絡ませ方なんか最高でしたよ。

>>流離う翼たち
キースとカズイの会話、大笑いさせていただきました。

>>過去の傷
食事会、ラクスとアスランは、別なんですね。ミリィは、相変わらずモーションかけて、キラ困惑気味。
そして、マリューさん登場。ムウを失ったマリューさんは、どうしているのでしょうか?

6流離う翼たち・424:2004/03/06(土) 22:37
 そこは既に異界であった。異様な空気と臭気が充満し、かつては普通に美味しく食べられたであろう食材が異界の技によって形容し難い何かへと変貌を遂げている。それらを目の当たりにしている審査員たちは一様に顔色を失い、気の弱いサイは今にも気を失いそうになっている。
 そして、最初の料理が6人の前に並べられた。

「うーん、一応頑張ってみたんだけど」

 ミリィが出してきたのはトーストに半熟の目玉焼き。簡単なサラダにコンソメスープという朝食風味なメニューだった。これなら確かに失敗はしないだろう。出だしとしてはまあまあのメニューだ。だが、5人がトーストを手にする中で、何故かトールは何にも手を付けようとはしなかった。
 そして、サラダを食べたキラがいきなり糸が切れた人形のようにその場に突っ伏した。それを見た参加者たちがぎょっとしてキラを見やる。

「おい、どうしたキラ?」

 心配したサイが声をかけるが、キラは何かに堪える様に顔を顰め、ぴくぴくと痙攣している。そして、それを見たトールが落ち着いた声で目の前のメニューを見る。

「ふむ、今回はサラダか」
「どういうことだ?」

 フラガがトールに問いかける。トールはトーストにバターを塗りながらそれに答えた。

「いえ、ミリィの料理は必ずどれか一品が地雷なんです。今回はサラダのドレッシングでしょうね」
「つまり、君はそれを知っていて黙って様子を伺っていたと?」

 フラガの詰問に、トールは視線を泳がせることで答えた。フラガはトールの計算高さに呆れたものの、自分もキラの犠牲を無駄にせぬようサラダを横にどける。
 だが、4人の何ともいえない視線がトールに集まってしまう。その視線にさらされたトールが戸惑った声を上げた。
 
「な、なんだよ!?」
「いや、なんと言うか、なあ?」

 フラガが何とも言えない目でトールを見た後、視線を他の2人に向ける。他の2人にも同様の意思が見て取れる。そう、みんなトールに同情しているのだ。お前の未来の食生活は暗いぞと。2人の関係を知らないオルガは我関せずとばかりに食事を続けていた。勿論サラダは退けている?
 男たちがそんな失礼な事を考えているとも知らず、ミリィは目配せをしている男たちをキョトンとした顔で見ていた。ちなみに、キラは5分後に何とか復活した。

 しかしまあ、ミリィの食事は極めて問題点の無い、いや、恐ろしい問題があるような気もするが、食べれるので問題は無い。問題なのはここからなのだ。

7流離う翼たち・作者:2004/03/06(土) 22:43
>> 過去の傷
ラクスが怖い・・・・・・ミリィはモーションかけてるし
平和は何処に行ったんだ?
マリューさんは久しぶりに会ったようですね。大丈夫でしょうか

>> ミリアリア・あの子許せない
前スレのまとめ、乙でした
ミリィの過去の回想ですか。この頃は普通に平和だったのに
何気にカズィがとっても重要な位置にいるw

8過去の傷・71:2004/03/06(土) 23:26
マリュ−はフレイに微笑んだ。
「お久しぶりね」
「はい、会いたかったです」
「でもその前に聞いておきたいことがあるのよね・・・ほらなぜ転属したはずの貴女がザフトの脱出ポッドに乗っていたのか。
フレイは息を吸うと全てを話し始めた。
クル−ゼに捕らえられザフトに入れられたこと、ザフトでの生活のことなど、そしてクル−ゼにあるディスクを託されアズラエルに渡した・・・そしてそれが戦争の引き金になったことなど、全て話した。
「そう・・・そんなことがあったの・・・辛かったわね」
「はい、でもこれは罰だったのかもしれません」
「罰?」
「はい・・・私キラに酷いことしたから・・・いろんなことしたから、キラを戦争の道具として利用して・・・それがキラに対しての復讐だと決めて・・・そんな女なんです私は・・・だから罰だったんです・・・転属することが決まった時点で・・・私怖かった・・・それからはずっと一人で・・・ほんとにいつ死ぬかなって・・・私キラに謝りたかった、謝らなきゃって・・・ごめんなさいって・・・ずっと苦しくて、怖くて・・・闇に閉じこもってました・・・」
「そう、でも良かったわね戻れて、キラ君に会えて・・・怖かったでしょうね、ほんとに・・・」
フレイが涙声になる・・・そして泣き出した。
「は・・・はい・・・うう・・・私・・・怖かった・・・ずっと・・・うう・・・マリュ−さん!」
元上司の胸に泣きながら飛び込んだ、そしてマリュ−は微笑むと赤い髪の少女を優しく抱きしめた。
「辛かったわね、怖かったわね、一人でよく頑張ってきたわね・・・偉いわ貴女は」
「うう・・・そんな私・・・暖かい、バジリ−ル中尉も暖かく抱きしめてくれました」
「ナタルが?・・・そう・・・ねえフレイさん・・・顔を上げて皆を見てみて、ほら皆の場所に、キラ君の場所に戻れたじゃない」
顔を上げるフレイ、皆を見渡す・・・キラが・・・サイが・・・皆が優しい目でフレイを見ている、その光景にフレイは、泣き顔で嬉しそうに微笑んだ、そして・・・。
「皆・・・ただいま」

通路を歩いているキラとマリュ−。
「そうですか、来たばかりなのにもう帰還するんですか、残念です」
「ごめんなさいね、でもまた来るわ・・・それよりフレイさんは・・・」
「フレイは・・・彼女は・・・僕が全て悪いんです・・・フレイのお父さんを守れなかった僕が・・・彼女はいろんな運命に翻弄された・・・」
「ええ・・・もしかすると彼女がだれよりも一番の戦争の被害者かもしれないわね・・・」
「はい、僕もそう思います・・・これからは僕が彼女の側にずっといてあげます、ずっと見守ってます、もうフレイを一人にはさせません」
「ええ・・・お願い・・・キラ君」
「はい」
マリュ−去りながら言った。
「私は・・・あんな幼い少女の運命を狂わせた・・・彼女に心の傷を負わせた戦争というのを私は絶対に許さないわ」
「・・・・・・」(フラガ少佐のことで傷ついてるだろうにあの人は・・・やっぱり立派な人だ)

ドアの前に来たキラは、フレイの様子を見ようとしてつい嬉しそうに微笑んだ、フレイはカガリとミリアリアの間だ楽しそうにくすくすと笑っていた、それはキラが一番好きなフレイの表情だった、そう・・・ヘリオポリスのキャンパスで見たあの無邪気に笑っていたあのフレイだった、本当のフレイ・アルスタ−という一人の本当に楽しそうな表情だった。

9過去の傷・作者:2004/03/06(土) 23:39
>>ミリアリア・あの子許せない
おおお、これは平和だった頃の・・・ミリィの回想ですね、というよりミリィはこの頃からフレイ様にちょっとした敵意というか嫉妬というか。
>>翼たち
ここは戦争だ、おいおいミリィでこれなら、これから六人とも地獄以上の苦しみを味わうみたいですね、ある意味モビルス−戦より怖いです、なにげにト−ル同情されてるし、でもさすがに彼は詳しいですね、それよりもっと同情されるのはキラでは?

10リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/07(日) 08:59
ガロードは本屋で大藪春彦の本を数冊買った。
「戦士の挽歌」の全巻、「狼の追跡」「ヘッドハンター」「戦場の狩人」だ
ガロードは店長のロメロに言った
「おじさん?」
「なんだ」
「本買いに着たんだけど」
「そうか」
「大藪の新刊入れててくれよ」
「そうだ、いいものがある」
ロメロは小さなカプセルを出した
「なにこれ?」
「これを飲むと胃の中で消化され、数メートルの大爆発するものだ」
「もらっとくよ」
ガロードは店を出た
ガロードはジェリドとばったり会いあとをつけた。
ジェリドは喫茶店に入った。そこでジェリドはコーヒーとカレーを頼んだ
ガロードはジェリドの隣の席に着き、コーヒーを飲む
ジェリドはトイレに向かった。いまだ!ガロードは思った
ガロードはジェリドのコーヒーにカプセルを入れた。
ガロードは喫茶店を去った。数分後、コーヒーを飲んだジェリドは
喫茶店で大爆発をした。ガロードは明日の新聞にどうどう的に公表される
だろうと思った。

11刻還り:2004/03/07(日) 16:36
キラはカガリ達からバクゥを離すようにバクゥを誘導する。
その意図を察してフラガも追随する。

「逃がすかよ。」

バクゥより発射されるミサイルを盾で防ぎながらビームライフルによる牽制、離脱。
それを繰り返す。

「ここまで離れれば。」

照準をきっちりとバクゥに合わせ、トリガーを引く。
ビームは一直線に走る。
そして、砂塵を舞い上げた。

「外れた。」

もう一度撃つ。
しかし、結果は同じ。

「キラ、熱滞留のせいだ。」

熱滞留。
ストライクのビームが外れる原因。
地上での戦闘が初めてキラにとって気付かない現象。
さらに、ストライク自体が宇宙用に設定されている。
ちなみにスカイグラスパーは地上用であることによりある程度補正がされており、フラガ自身が地上での戦闘を経験しているため命中率が

ストライクより高いのだ。

「ありがとうございます。」

キラはすぐさま端末を引っ張り出し、瞬時にデータを打ち込んでゆく。
わずか10秒にも満たない時間にである。
キラの卓越した能力は戦闘時の不利を一瞬にしてなくした。
そして、次の一撃はバクゥに直撃、大破させる。

「やってくれるな、一瞬にして熱滞留をプログラムに組み込んだ。」

戦闘を遠巻きに見ていたバルドフェルドは、素直に感嘆の言葉を述べる。
バクゥは残り1機。
完全に不利である。

「隊長どうしますか?」
「後退する。これ以上の損害はごめんだからな。」
「はっ。」

ダコスタはすぐにバクゥのパイロットに撤退を命令し、自身もジープを走らせた。

「面白い相手というのは厄介なものだ。」

呟いたバルドフェルドの口元は狩猟者としての笑みを浮かべていた。

12刻還り:2004/03/07(日) 16:38
此度の戦争で“明けの砂漠”の被害は甚大であった。
先に駆け出していった者達のほとんどが還らぬ者となり、哀しみと怒りの空気が一帯を包んでいる。
生存者の中にも無傷ですんだ者は少なく、何とか一命を取り留めたような重傷者もいる。
カガリと一緒に戦っていたアフベドという少年だ。
アフベドはバクゥの爆発に吹き飛ばされた衝撃で意識を失っている。
カガリはそんなアフベドを心配して手を握り締めていた。

「あんたらはこんなことがしたかったのか?こんな風に命を捨てる。」

スカイグラスパーから降りてきたフラガは見下ろしながら言う。

「なんだと。」

フラガの言葉に突っかかってくるカガリ。
カガリは正面からフラガをにらみつけながる言う。

「みんな必死で戦った、戦っているんだ。大事な物、大事な人を護るために必死でな。」
「護るための戦い?死ぬための戦いの間違いじゃないのか。」

カガリの拳がフラガに向けられる。
しかし、その拳はフラガの顔を捉える前に腕を掴まれた。

「護るって言うんなら、死んじゃ意味ないんだよ。待っている人のところに帰らなきゃな。」
「痛っ。」

掴まれている腕に力が込められ、カガリの腕に痛みが走る。
フラガの言葉に、カガリは衝撃を感じる。
知っていたはずであった。
戦争で仲間死ぬのを見るのは初めてではない。
誰かが死ぬたびに誰かが哀しみに包まれる。
それを見るのが嫌だった。
だから、必死だった。

(なのに・・・)

カガリは自分の行動が正しいのかわからなくなってきた。

13刻還り・作者:2004/03/07(日) 17:14
短い・遅い・行間のミスと3拍子そろっております。
皆様が心配(期待)なされていたフレイ様の出撃はありません。
まだw

>>流離う
ミサじゃなくてマリューのみならずミリアリアまでとは・・・
フレイ様の料理に期待ですね。
きっと、胃が溶けるようなものを作ってくれるにちがいないw

>>過去の傷
マリューの登場で和やかな雰囲気です。
フレイ様も笑っておられます。
ミリアリアの行動がフレイ様にどんな影響をあたえるのか?
続きが期待です。

>>キラフレ
祝投下です。
黒々としたフレイ様が白くなることを願いながらも黒でもいいかなっと。。
続きを待っています。

>>The Last War
クリスとセシウスの決着がつき、着々と締めへと向かっていますね。
円満なる完結を願っています。

>>ミリアリア
平和な頃の思い出ですね。
ミリアリアはどういう思い出トールと付き合っていたのだろう?
少し、トールがかわいそうです。

>>リバアス
ガロード、他人を巻き込むのはどうかと・・・

14流離う翼たち・425:2004/03/07(日) 22:44
 ミリィの次に料理を持ってきたのはカガリだった。出てきたのは野菜スープと、何処から出てきたのかご飯である。一体アークエンジェルの何処に米があったのだろうと誰もが思ったが、あえて口にはしない。それよりももっと大きな疑問が先ほどからこの食堂に満ちているからだ。いや、時折調理場から聞こえる怪しげな声とか、謎の悲鳴とか、奇怪な音とか・・・・・・

「どうだ、私もやれば出来るだろう」

 えへんと胸を張るカガリ。だが、スプーンでご飯を口に運んだキラはすぐに顔を顰めた。

「・・・・・・生煮えだ」

 それを皮切りに次々と出てくる不満の山。

「この人参、皮が剥いてないぞ」
「なんで野菜スープに長ネギが?」
「塩が多すぎだ」
「煮込み時間が足りない。野菜に芯がかなり残っている」
「不味いぞ」

 最後のオルガの感想は余りにもストレートだった。その直後にオルガの頭にカガリの投げたお玉が直撃し、綺麗な音を立てる。額にモロに食らったオルガは大きくのけぞった後、強引に身体を戻して文句を口にした。

「ってえな、何しやがる!」
「やかましい。いきなり不味いなんて言いやがって!」
「本当の事だろうが。お前ちゃんと試食したのか!?」
「試食? そんな物いらん!」
「ちょっと待ちやがれ、この自信二乗女!」

 何とも酷い事を言うオルガ。カガリは顔を真っ赤にして怒っているが、他の5人はオルガの言葉に内心で頷いていたので、誰もカガリの擁護はしなかった。
 そして遂にカガリは切れた。

「もう怒った、表に出ろ!」
「良い度胸だ、後悔するなよ阿婆擦れ!」
「誰が阿婆擦れだ!?」

 右手に柳刃包丁持って怒りを露にするカガリと、拳を握るオルガ。このまま流血の惨事にと誰もが思ったが、それが激突するより早くオルガの頭に拳骨が落ち、カガリの後頭部にハリセンが叩き込まれた。

「ぐぁあああ!」
「きゅう・・・・・・・」

 頭を抱えて悶絶するオルガと、ハリセンの一撃で気絶してしまうカガリ。カガリを殴ったのはフレイだった。

「もう、この娘は。カッとなるとすぐに手が出るんだから」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 フレイの呆れた呟きを聞いて6人は思った。そのハリセンは何処から出てきたんだと。

15流離う翼たち・作者:2004/03/07(日) 22:50
>> 過去の傷
マリューさんが笑っている。でも、マリューさんよりキラが笑っている方が驚きなのは何故w?
とりあえずフレイ様は幸せそうですね。マリューさんはまだまだ大変でしょうが

>> リヴァオタと八アスのためでなく
コーヒーとカレー、ジェリドの食生活は一体?

>> 刻還り
アフメド君、生きてたんですねえ。良かった
何気にカガリを叱るのは兄貴の役目ですか。黒キラじゃないからキラは怒らないかな

16散った花、実る果実34:2004/03/07(日) 22:57
今日は・・・・色々なことがあったような気がする・・・・
いつもと同じだけの長さの一日だけど・・・・ミリアリア・・・リスティアと出会い、あれほど嫌っていたザフトの軍服に袖を通し・・・・
あんなに異端視していたザフトの軍人とこれだけ色々なことが話せるとは思ってなかった。
ミリアリアと同じ名前だって事で親近感を感じたせいもあるけど・・・多分それだけじゃないだろう。
・・・・少し前の私だったら、きっとコーディネイターだという事だけで、話そうともしなかったと思う。
コーディネイターが嫌いってずっと思ってたけど・・・多分、私の偏見が余計相手の態度を頑なにさせていた事もあったのだろう。
カレッジにいた頃は隠すようにはしていたけど・・・それでも私のコーディネイターへの偏見は、パパが死んだ後ほどじゃないけど、やっぱりしっかりとあったもの。
・・・・まだ・・・・・コーディネイターが怖くないわけじゃないけど・・・・・・・

ミリアリア・・・ミリィ・・・・クルーゼ隊はまだアークエンジェルを追っていると言う事だった。
という事は、ミリアリアは無事なのだろうか。
『違う・・・・違う、私・・・・・・違う!』
あの時彼女が本当に言いたかった事はなんだろう。
彼女がコーディネイターの捕虜にナイフを向けた瞬間、あの瞬間だけはやっぱり私と同じ気持ちだったろう、と今でも思う。
でも、その次の瞬間は・・・?
私はまだコーディネイターへの憎しみを止められずにいた。
復讐をとめようとしたミリアリアへわずかなりとも憎しみを感じた。
私を止めたミリアリアの気持ちは?何故彼女は私を止めたの。
人殺しが恐ろしくなった?ううん、違う。形はどうあれ私たちはキラにそれを強いてきた。
相手が生身の人間だから怖気づいた?でもそれなら自分の体を張ってまで助けることもないだろう。
自分が手を引けばそれで済む。
なら何故。
自分が間違っていることに気が付いた?コーディネイターというくくりで相手を決めてしまうことに。
たとえば今日リスティアに私が投げかけた数々の失言。
もし私が彼女をナチュラルだと思っていたら言わずに済んだこともあったろう。
その逆もまた言える。
彼女が私の事をコーディネイターだと思っていたらファーストネームで呼ばれることにあれほど拒絶を示しはしなかったろうし、その後の会話もまた違ったものになっただろう。
ミリアリアはそんな、“コーディネイター”と“ナチュラル”で人を決めることが間違っているとあの瞬間気が付いたのだろうか・・・・
私のコーディネイターへの憎しみを目の当たりにして?
それとも・・・・・・

17散った花、実る果実35:2004/03/07(日) 22:57
ピッ
電子音がして扉が開いた。
「ミ・・・・・リスティア・・・・・」
「あなたの生活必要品をお持ちしました。最低限必要と思われるものは用意しましたが、不足があれば申し出てください。本日は隊長は戻られませんが、明日には戻ると言う事でしたので。」
「ありがとう・・・・」
「いえ、これも仕事ですから」
そういう彼女の語調にはなにやら力がない。一体どうしたんだろう?
「そんな不思議そうな目で見ないで下さい。・・・あなたと話していて、そんな素直な反応が返ってきたのが初めてで、ちょっとびっくりしただけです。」
素直?
「『ありがとう』。最初の頃は神経を尖らせてピリピリしていましたし、コーディネイターを貶める発言が多かったように思います。・・・違いますか?」
「それは・・・・・・でも、あなただってお互い様じゃない。何かっていうと、『これだからナチュラルは』って反応してたくせに」
彼女は肩をすくめて
「だってそう思ってましたから。まあ、プラントで生活しているとナチュラルと接することも滅多にありませんし、少なかったそれもけしていい思い出ではありませんでしたしね。」
どう聞いてもナチュラルを認めていない台詞だったけど、今までの刺だらけの口調ではなかった。
「前に何かあったの?」
彼女は、しょうがないな、といった感じに微笑んで、
「まあまず妬まれます。戦争が始まる前は、プラントと地球で学生同士の交流会みたいなものが催されていたのですが・・・・そのときこう言われまして。」
「なんて言われたのよ。」
すると彼女はこれ以上ないだろう完璧な笑みを浮かべてこう言った。
「確かにコーディネイターだけあって綺麗よね。でも所詮作られたものでしょ。整形してるのと一緒じゃない。」
・・・・うわ・・・・・・・・・
そのコの気持ちもわからなくはないけれど・・・・言い過ぎというか・・・・・それは流石にみっともないというか・・・・・・
「それはその娘たちが悪いわね・・・・ひがみ根性もいいところだわ。私はコーディネイターは不自然な存在だと思っているし、やっぱり今も抵抗感があるけど・・・・でもその発言もどうかと思うわ。」
「それがナチュラルに対する嫌悪感がはっきり模られるのに一役買ったことは間違いないわね。まあ、元々能力の低いナチュラルに大してあまり評価していなかったことは否めないけど。」
あれ?ちょっと待って?
「ねえ、・・リスティア。彼女達の発言は勿論あちらに非があると思うわよ。でも、あなたにもそれを言われる原因があったんじゃないの?」
プライドの高いだろう彼女は途端にむっとして、
「どういうことよ」と構えてきた。
「・・・だって、それ以前から、ナチュラルに対して・・・いわゆる優越感を持っていたわけでしょう。もし、初対面の人間に『あなたは私より劣った存在よ』って態度隠そうともせずとられたら・・・・やっぱりあなただって気持ちいいものじゃないでしょう?」
しかし彼女は不服な様子を崩さなかった。
「でもナチュラルとコーディネイターの間に能力の差があるのは歴然とした事実よ。しょうがないじゃない、ナチュラルとコーディネイターは違うんだから。」
・・・私も少し前まではそう思っていた。でも・・・・
「でも、そういうのはやっぱり違うんじゃないかしら。私たち同じ人間でしょう。もしあなたの両親がナチュラルだったら、あなた両親を軽蔑するの?」
「・・・・!私は、両親のことを馬鹿にするようなことなんて絶対しないわよ。私の両親はコーディネイターだけど・・・・・」
「だけど辿っていけば、あなたの血は必ずナチュラルに突き当たるわよ。だって、コーディネイターは3代目以降は出生率が格段に下がるって・・・それにコーディネイターが生まれた歴史を考えてもあなたのおじいさんおばあさんあたりは多分ナチュラルにあた・・」
「でも今は!」
私の言葉を遮るように彼女は言った。
「今の戦争をごらんなさい。コーディネイターの旗頭であるパトリック・ザラがなんて言っているか。もう、ナチュラルとコーディネイターは別の種なのよ。
私たちは進化したの。自分の子供にもより確実に素晴らしい能力を与える事ができるのよ・・・・」

18散った花、実る果実/作者:2004/03/07(日) 23:15
>>ミリアリア・あの子許せない
前スレまとめお疲れ様でした!
ヘリオポリス回想、いいですね。こんな平和な時があったのに何故って、共通の印象だと思うんですが、切実な思いですよね・・・

>>キラ♀フレイ♂
男フレイ様、ますます黒々と・・・・・
ミリィがちと可哀想な気もしますが、この辺で危険に気がついて身を引けるといいですね。
・・・彼女等の保身のために・・・・・・(苦笑)

>>The Last War
連載中止しなくてよかったです。私も楽しみに待っている一人なので。
セシウス、どうも幸せになれそうでよかったです。セシウスとクリス、いいコンビですよね。
この戦争が終わった後もこの調子でからんでいて欲しいです。

>>流離う翼たち
フレイ様のハリセン、出た!!(笑)
いやしかし、すごい緊張感に満ちたコンテストが・・・・
フレイ様の料理が怖・・・いえいえ、楽しみです。

>>過去の傷
マリューとフレイ様の対話、心が温まりますね。
・・・・ナタルもここに帰ってこれたら・・・・

>>刻還り
フラガさん、カガリにもお兄さん役を果たしてますね。
この人、なんだかんだ言って面倒見いいですよねえ。本編で異動命令の出てた教官ってのも、あながち間違った選択でもなかったかもしれないですねえ・・・

>>リヴァオタ
爆破ですか!また過激な・・・(笑)

19過去の傷・72:2004/03/07(日) 23:16
「くすくす・・・あらキラ」
「フレイ楽しそうだね」
今のフレイはほんとに可愛い、やっと本来のフレイに戻ったようだ、あのへリオポリスのキャンパスで無邪気に友達と楽しそうにはしゃいでいたフレイ、ほんとうにあの頃のフレイに戻ってくれてよかったとキラは思った、やっと彼女を救い出すことが出来たような感じだ。
「ええと、では食事会を始めようか」
「あ、きゃ!キラごめんね」
ミリアリアが水を誤ってかけてしまったのだ。
「キラちょっと来て」
そしてミリアリアに外に連れ出された。
「そう、なら私はカガリと楽しくお話してるわ、カガリ好きになっちゃった!もうカガリったら可愛いんだから!カガリ最高♪もう親友よ♪」
「そ、そうか・・・お前・・・人変わってるぞ・・・」
(楽しそうですね、フレイさん)
(え!?ティファ)
通路にて。
「はい、拭いてあげる」
「あ、ありがとう」
「っていうかわざとだけどね♪」
「え!?なんでそんなこと」
「二人きりになれないでしょ・・・キラちょっと目を閉じて・・・」
わけがわからない様子のキラだったが、仕方なく目を閉じた。
それを確認したミリアリアは、キラに近寄ると胸を押し付けるようにキラに抱きつきそれから唇を唇に強く押し付けた。

「どうしたものか・・・」
マリュ−が部屋でラクスと話しているので部屋を出たアスランは、プロヴィデンスの前に来ていた。
(これが隊長の搭乗していた機体か・・・隊長は一体何者だったんだ?・・・俺達とは違うのか?・・・ま、まさか隊長は二ュ−タイプだったのか?・・・)

20過去の傷・作者:2004/03/07(日) 23:20
感想は明日書きます、すいません、時間が・・・それにずっとなかなかつながらなくて。
すいません、あわてて書いた感じです。

21リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/08(月) 08:18
キラとフレイは美術館に来ていた。美術館では「子供たちが書くドラえもん」
とテーマした子供たちが作者の展覧会である。
「ねぇキラあの絵いいね」
「うん」
フレイが指さした絵は「黄昏のドラえもん」である。
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-36.jpg
「フレイあれなんてどう?」
「あれってドラえもんがスイカ割する奴?」
絵のタイトルは「スイカ割りをするドラえもん」である
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-45.jpg
ほかに「一休みしているドラえもん」や
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-20.jpg
「サザエさんと競演」などある。
絵は「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-49.gif
だが今、フレイとキラにハプニングがあった。
フラフラする男がやってきた
「ねぇキラあれ?」
「なに?」
「ゾンビじゃない」
「えっ!んなありえないこというなよ」
そのときゾンビらしき男が隣の男に噛み付いた!
「ぎゃー!」
「フレイ!やっぱり逃げよう」
キラとフレイは一目散に逃げた。

22私の想いが名無しを守るわ:2004/03/08(月) 16:57
>>リヴァオタ
ほのかあにシュールな絵満載ですね。最初スゴイヤツがくるかと思ってビビッて
ましたが、何とも云いようもない絵ばかりです。予言の実現の阻止のために何か
しているかと思いきや、のん気に美術館に行ったりして、相変わらずヘンな人達ですな。

23The Last War・11:2004/03/08(月) 17:47
「くっ、何だこいつらは!?」
「動きが速すぎて・・・、捉えきれない!」

 その頃、キラとアスランは敵旗艦から出撃した全長50メートルは超えるであろう巨大なMS、そしてそれと共に出現したMAサイズの機体群から攻撃を受けていた。二人は人が乗っているかどうかさえ怪しまれるスピードを誇る小型機から射掛けられるビームに翻弄されていたが、巨大MSの方はまるで彼らの動きを窺うかのように全く動きを見せようとはしない。

「このままじゃ埒があかない!キラ、まずあのデカブツから片付けるぞ!!」
「分かった!」

 小型機からの攻撃を逃れ、アスランはS.ジャスティスをMA形態に変形させ、同機の最強武器であるヒュドラを、キラはネオストライクの全武装による一斉射撃を仕掛けた。

「!こっちの攻撃が、効かない?」
「馬鹿な、奴は回避すらしていないぞ!」

 それらは確かに敵MSに達した筈だった。しかし敵を撃破するどころか、まるでダメージを受けた様子も無い。だが次の瞬間、更に彼らを驚愕させる事態が起こった。

「うおっ!?・・・キラ、大丈夫か!?」
「あ、ああ!でも、今のは一体・・・?まるでこちらの攻撃を跳ね返したみたいだ・・・」

 突然敵MSが反撃に転じてきた。しかし敵が何らかの搭載火器を用いた様子は無く、そのタイミングはあまりに早過ぎた。

「・・・さっきのホークアイとかいう奴が言っていた隠し玉というのは、こいつのことか?」
「多分・・・そうに違いないよ!」

 その時、二人の間に何者かが横槍をいれてきた。

「・・・ようこそ、前大戦を終結させた英雄達よ。ファントム総帥の名の元に、私は君達を歓迎しよう・・・」
「!?お前は・・・!」
「やはり貴様だったか、アレクセイ・ブランバルト!」

 その賞賛の言葉とは裏腹に、全く感情というものを感じさせないその声は、この時の二人にとっては既に忘れられないものとなっていた。

(・・・あの時、僕を・・・、そしてフレイを殺そうとした・・・。こいつが、ファントムの・・・?)

 キラの中で、特殊医学研究所での記憶が甦ってきた。それに伴ってか、彼の右腕が僅かに反応した。

「・・・ここまで来れば分かるだろう?貴様等をここに誘い込んだ訳が・・・」
「ああ。どうやら貴様等は、余程俺達のことが恐ろしいようだな?」
「フッ、何とでも思うがいい。だがその逆を言えば、貴様等さえ除けば後は問題は無い、ということだ・・・」

 キラの様子を知る訳も無く、アスランとアレクセイは互いに皮肉を交えている。長きに渡り戦い続けてきただけに、言葉の一つ一つには積み重ねられた重みが込められている。

「それはこちらも同じだ!トップである貴様さえ倒せば、ファントムは瓦解してこの戦いも、そしてこんな狂った時代も終わる!」
「・・・」

 アスランのその台詞を聞き、キラはハッとした表情を見せた。

「のこのこと俺達の前に出てきたことを、後悔させてやる!行くぞ、キラ!!」

 そう言うと、アスランはアレクセイの乗る巨大MSに突撃を仕掛けようとした。しかし・・・。

「・・・待ってくれ、アスラン!」
「!・・・キラ!?どうしたんだ!?」

 S.ジャスティスの前に突然キラのネオストライクが立ちはだかった。キラの突然の意外な行動に、アスランも驚きを隠せなかった。やがてネオストライクはアレクセイの乗るMSへと向き直った。

「お願いだ!もうこんなことはやめて、降服してくれ!」
「!なっ!?キラ、何を言ってるんだ!?」
「・・・」

 キラがアスランを止めてまでしようとしたこと、それは敵への降服勧告だった。その突拍子も無い行動に、アスランも思わず絶句した。

「分かってよアスラン!コロニーも地球に迫ってるのに、僕らがこんな無意味な戦いをしてる暇は無い筈だよ!だから、出来ることなら無用な戦いを避けたいんだ!!」
「しかし、お前も分かっている筈だ!こいつが、こいつ等が今まで何をしてきたかぐらいは・・・!」
「でもっ、戦うだけじゃ何も解決しないよ!」

 その時、二人の様子を窺っていたアレクセイが口を開いた。

「・・・フッ、急に何を言い出すかと思えば・・・。ではキラ・ヤマト、貴様に一つ聞こう・・・」
「!?」

 そして彼は、キラに思いもかけないことを問い掛けてきた。

「貴様は、私を許すことが出来るのか?あの時、あの女を撃ったこの私を・・・」

24The Last War・作者:2004/03/08(月) 18:14
 本当に申し訳ありませんでした。何で自分はあんな先走ったことをしたんでしょうか?
 それからこのSSにはフレイ様ももちろん登場します。もちろん戦闘以外での出番ですので、ご安心下さい。

》流離う翼たち
 ミリィやカガリの時点でこんな有様なんですね。カガリはなんとなく予想がつきましたがw。
 この先どんな料理が登場するのか、そして誰が優勝するのか、あと皆生きて帰れるかが気になりますw。

》過去の傷
 マリューさん、自分だって辛いのでしょうに・・・。強い人ですよね。フレイ様と同じく幸せになってもらいたいです。
 ミリィのアプローチはどんどん積極的になってますが、そろそろフレイ様にも知られやしまいか不安です。

》刻還り
 アフメドが助かりましたね。これだけでも大きな変化だと思います。反対にキラはいまいちパッとしない気もしますがw。
 この後は虎さんとの出会いになりますが、ここにも変化が生じるんでしょうか?期待です。

》散った花、実る果実
 フレイ様とリスティアさんの関係が次第に変わってきましたね。親密とは呼べませんが、互いの正直な思いを言い合えるような仲にはなってきたのではないかと。
 今回のエピソードはナチュラルとコーディネイター、両者の溝の深さを感じました。

》リヴァオタ
 ジェリドが爆死・・・。ちょっとスカッとしたというのは酷いでしょうかw?でもガロードのしたこともどうかと思いますが・・・。

25リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/08(月) 20:44
ガロードはこの調子なら銀行強盗と列車強盗ができると思った。さっそく彼は
中古車会社でロータリー搭載で赤の75年型マツダコスモを買った。次に銃砲店で
ウィンチェスターM70を買った。
愛車になったコスモをかっ飛ばしている途中、あるものを見た。
それはクルセイダーズのメンバーのチェーン・アギだ。ガロードはチェーンの
ところで車をストップさせた。
「やぁチェーン」
「あら?ガロード」
「このところどうだ?」
「いまいちよ」
「なぁ?チェーン,俺とやり直さないか?今なら間に合うぜ」
「おことわり」
「ちぇ」
ガロードはコスモを急発進させた。

26リヴァオタと八アスのためでなく:2004/03/08(月) 20:55
キラとフレイは美術館から出た。すると目の前に
ヤンキー座りをするドラえもんのコスプレをした三人の男に
であった。はっきり言ってこういうのだ「http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-118.jpg
赤いドラえもんが声をかけてきた
「よぅよぅ姉ちゃん金かしてくれよ」
次に青いのが
「俺たちお小遣いないのよ」
そして最後に緑のが
「俺たち「魔太郎」の新刊がほしいのよ。姉ちゃん、金貸さないと
 恨み念法使うぜ」
「あんたたち馬鹿じゃないの!貸すわけないでしょ」
フレイはタンカを切った。
「だいたいいい年してドラえもんのコスプレをおかしいわ」
「んだとこのアマ!」
「恨み念法使うぞ!」
逆にフレイはイオナズンを唱えた。
ドラえもんのコスプレをした三人を吹っ飛ばしたのだ。
すごいよフレイ!
「すごいよフレイ」
キラはつぶやいた。

27流離う翼たち・426:2004/03/08(月) 22:30
 そして、遂にフレイの料理が出てきた。器に盛られているのはシチューだと言う。赤っぽい色からするとアイリッシュシチューなのだろうか。しかし、問題なのはそこではない。何故に鍋から出されたはずのシチューからポコリと泡が立つのだ? この不可思議な香りは何だ? そもそも煮込んだ筈の肉や野菜は何処に行った?
 疑問は尽きないが、当面の問題はそこではない。問題なのは、この怪しげな物体Xを口に運ばなくてはならないという現実だ。
 サイは無言でトールを見た。トールもまた自分を見ている。

「ど、どうぞ、サイ」
「い、いやいや、トールこそお先に」

 お互いにスケープゴートは御免だとばかりに笑顔で先を譲り合っている。その表情には生き残るのに必死なサバイバルの現実がまざまざと浮かんでいる。生き残る為には友情など売り渡すほどの利己心が必要なのだ。

 そして、誰も手をつけないこのシチュー? の製作者、フレイは悲しそうな顔でキラを見た。

「キラ・・・・・・・・・」
「くぅっ」

 上目遣いの悲しげな視線にキラは自分の心がぐらつくのを確かに感じた。所詮は彼も男だということなのだろう。そして遂にその視線に耐えられなくなったキラはスプーンを掴むと、まるで特攻をかける直前のパイロットのような、何かを諦めた表情で宣言した。

「キラ・ヤマト、突貫します!」

 スプーンでシチューをすくい、口に運ぶ。それを誰もが固唾を呑んで見守る中、ふいにキラが小さなうめき声を上げた。

「大丈夫か!?」
「傷は浅いぞ、しっかりしろ!」

 トールが肩を叩き、フラガが何処からとも無く洗面器を持ち出してくる。だが、次のキラの反応は全員の予想とは大きく違うものであった。

「あれ、食べられる?」

 失礼極まりない発言だが、この場では誰もそれをおかしいとは思わなかった。まさか、この異臭を発する物体Xは可食物だというのか。キラを除く5人は信じられないという表情でスプーンにそれを1匙すくい、恐る恐る口に運んだ。

「・・・・・・・・・確かに、食えるな」
「不味いけど、食べられるぞ」
「・・・・・・この匂いと見た目で何故食べられる?」
「こう、理不尽なものを感じるな」
「だが不味い事は隠せないぞ」

 一同はどうしてこれが食べられるのかしきりに首を捻っていた。見た目からすれば今までで一番ヤバげと言うか、どう見ても食える代物ではないのに。しかし、食べられるだけで不味い事には変わりは無かった。
 そして、その真の恐怖はこの後襲ってきたのだ。

ドンッ!! ズズ、ズゥゥゥンン・・・・・・

 突如として下腹部から衝撃がきた。
 これまで経験したことも無いメガトン級の衝撃が全身を駆け抜ける。破壊の中心点は腹から下腹部へと移行し、お尻の辺りがやんごとなき状態に陥った。キラのコーディネイターとしての強靭な肉体でさえ、その猛威の前には全くの無力であった。

「だ、誰か・・・・・・助けて・・・・・・」

 キラが必死の形相で助けを求めるが、誰にも彼を救う事は叶わなかった。他の5人も同様に真っ青な顔に滝のような脂汗を流し、全身全霊の力でよろよろと食堂を後にして行く。あの凶暴なオルガでさえ顔を悲痛に引き攣らせ、苦悶に脂汗を流しているのだ。
 そのまま彼らは暫くの間、トイレから帰って来なかったのである。

28過去の傷・73:2004/03/08(月) 22:49
ミリアリアからの突然のキスにキラは驚いたあと戸惑った、なおも彼女は唇を押し付けてくる、目を閉じている彼女は伺わずキラは呆然とした表情でされるがままになっていた。
それにしてもこのキスといいミリアリアの意図はなんなのだろうか、それにしてもこんなに積極的なミリアリアもめずらしい、まるでフレイのようだ・・・おそらく、いや推測であるがミリアリアはト−ルが死んで彼氏がいない状態だ、いままではキラやフレイを励ましたりアドバイスしたりする位置にいた彼女、だが頭のどこかに寂しいという気持ちがいつもあったのだろう・・・さらに知り合いを見るとカップルばかりだ、キラとフレイ、ラクスとアスラン(この二人とはあまり親しくはないが実際の現状である)、カガリとサイ(これは違うかもしれないが)その時気が付くと自分だけ一人だった・・・そしてキラとフレイに嫉妬してしまう・・・そしていままでつもりに積もった気持ちが我慢出来なくなり一気に爆発してしまったというのが実態だと思われる。
まだ唇を押し付けていた彼女がゆっくりとキラの唇から離れる、するとキラはつい唇を手で触る、それを色気のある目で微笑むミリアリア。
「あ、あのミリアリア・・・」
ミリアリアはキラの顔と当たりそうなぐらい近くでささやく。
「ミリィって呼んで・・・ト−ルがそう呼んでたように」
「ミ、ミリィ・・・その」
「じゃあ戻るわね・・・夜、部屋で待ってるわ・・・」
そう言うとミリアリアは戻っていった・・・残ったキラは・・・ミリアリアのやわらかい唇の感触を残したまま呆然とその場に立っていた。

「お、おい抱きつくなフレイ!」
「いいじゃない、ほんとカガリって可愛い♪頬にキスしたくなっちゃう」
「や、やめろ私はそんな趣味はな、ないぞ!」
「友達になってくれる?なら離れてあげる」
「も、もう十分友達だろ!た、たのむ離れてくれ!私あんまり体触られるの嫌いなんだ!」
「そう、ならいいわ離れてあげる」
そしてあわててカガリはフレイから逃げるように反対側の席に座る。
「ねえ、カガリなんっていうのかしら・・・ええと・・・そうモビルなんとかってやつの操縦って難しいの?」
カガリはその話題に安心したように落ち着きを取り戻した。
「モビルス−ツか、お前操縦に興味あるのか?」
「う−んというより好奇心ってやつ?ほらキラの姿見るとなんか知りたくなっちゃって」
(二ュ−タイプ能力持ってるフレイさんなら大丈夫です)
(あらそう?ありがとうティファ)
「よし、なら基本的なことから言うからちゃんと聞いておけよ」
「うん、カガリおねがい」(それのしてもキラ遅いわね、どうしたのかしら・・・)

「なんかこの前戦闘になったんですって?」
「はい・・・残念なことになりましたわ、もう戦争は私も嫌ですのに」
ラクスの部屋で話しているラクスとマリュ−、艦長同士の対談だ。
「ア−クエンジェルはどうですか?キラ様にアスラン、サイさんとミリアリアさんとフレイさんはこの艦に正式に所属することになりましたが他のクル−の皆さんなどは全てそちらにいらっしゃいますよね?」
「ええ、でも人員不足もないし、上手くやってるわ、ところでキラ君も皆元気そうでよかったわ、特にフレイさんがね、彼女は可哀相な子なの、だから元気な顔が見れて本当に良かったわ」
「はい、アスランもキラ様も皆元気です、皆が元気な顔でいてくれて艦長であり指揮官である私としても嬉しいことですわ・・・とっても・・・ところでア−クエンジェルはこの後どうなさるおつもりですか?もう発つと聞きましたが」

29流離う翼たち・作者:2004/03/08(月) 22:49
フレイ様の料理が終わりました。次はいよいよ本命、マリューさんです。
フラガ少佐は愛の為に死地わが身を躍らせるのでしょうかw

>> 散った花、実る果実
ううむ、リスティア嬢の言うことも正しいけど、私はコーディネイト反対派
フレイ様は随分おとなしくなってますね。さて、次はどうなるか楽しみです

>> 過去の傷
ふ、フレイ様の性格がはっちゃけてきている。カガリが引くほどにw
ティファは何時でも何処でも出てきますな。ある意味恐ろしい能力です

>> リヴァオタと八アスのためでなく
すいません、ネタが分かりませんでした。絵は微妙にシュールですがw

>> The Last War
化け物が出てきましたね。まるでクインマンサです
しかし、キラはまだ不殺なんて考えてるんですか。そんな考えが誰も守れなかった原因なのに
アレクセイの質問にキラは答えられるのでしょうかな

30過去の傷・作者:2004/03/08(月) 23:07
>>散った花、実る果実
ううむ、リスティア嬢の意見も正しいかもしれませんね、ただなんかな、でもフレイ様もだんだん和解し合うかもしれませんね。
>>The Laut War
おお、なんというこれは危険すぎるっていうよりもキラにとってアクセレイの質問は辛いものかもしれませんね、どう答えるんでしょうか?
>>翼たち
え!?フ、フレイ様・・・まあこうなるとは思ってはいましたが、それにしてもキラって運が無いというか、でも六人ともなんとか耐えて(違うか?)ますな、そしてお待ちかね艦長さんですね♪私はフレイ様が最後だと思ってました。

31ザフト・赤毛の虜囚 20:2004/03/09(火) 04:03
5.充足 1/1
[私は、今、満たされている]

私はキラのメモリチップを素肌に抱きしめて眠っている。キラを感じる。心が暖かくなる。
キラが、私の心を満たしている。それは心と繋がった肉体をも満たして行く。

* * *

私は、裸の女性を抱きしめている。心には愛しさを感じる。下半身に昂ぶりを感じる。
爆発しそう。裸の女性は、顔を上気させ、さっきから、ひとつの言葉だけを呟いている。

「ユーレン、ユーレン、ユーレン、ユーレン!!」

私が、この女性を満たしている。私の体が愛しいと感じている。

* * *

メモリチップに眠るキラの言葉が、私を酔わせる。
「僕は君を必ず守る。何があっても守るよ。いつまでも。約束する」
キラ守ってね。私をいつまでも見守っていて。

* * *

私が爆発する。汗に濡れる柔らかい肌を抱きしめる。やがて、それが終わり、
体には現実感が戻って来る。でも、私の心は、まだゆっくり引いて行く興奮の余韻を求めている。
そして、私の抱く女性も、その余韻を慈しむように、私に囁きかける。
「ユーレン、もう少し抱いていて」

私の心が体を動かし、とろけるようなキスをかわす。
「ヴィア……」
「ユーレン、嬉しい……」

* * *

私の体はキラを待っている。熱いキラを求めている。体が覚えている幾重ものキラの記憶が、
私を満たしていく。

* * *

余韻を慈しみながら女性を抱きしめる私。でも、既に放出を果たした体は、急速に醒めて行く。
周囲を見回した。そこにある鏡に映った私の顔。それは、金髪で、優しい目の男性。私が以前から
見ている愛しい人。私の愛しい人。切なさで一杯の私の心は、それに触れたくて鏡に手を伸ばす。

唐突に、感覚が切り替わった。私の本当の体に……
そこで感じたのは痛み。床に打ち捨てられた体。心に繋がれた解き放てない鎖。

これは、数年前の虜囚の私。私は赤毛の虜囚、メルデル・シェトランド。
そのころ、私は分からなかった。でも、今は、時々感覚が切り替わっていた相手が誰なのか分かる。
私の愛しい人。私達は出会った。でも出会った時は、既に遅かった。
求めても手の届かない想い。満たされない想い。

* * *

私は捕虜、フレイ・アルスター。私は、今、満たされている。キラの思い出に満たされている。
だけど、それは、既に終わったこと。私に未来はない。今、このときだけ……

32ザフト・赤毛の虜囚 21:2004/03/09(火) 04:05
6.継承 1/12
[戦争に行くのだよ]

「フレイ・アルスター。疲れているところ済まないが、出かけることになった。
すぐに準備をしてくれ。もっとも、準備するような荷物も無いだろうが」

昨夜は、キラのメモリチップを抱いて、少し安らかに眠れた私を、クルーゼは急きたてるように、
また外套を着せて部屋を連れ出し、潜水艦のデッキの連絡機に乗せた。キャビンを通るクルーゼと私を、
じろじろと見るザフトの兵士達。昨日見たイザークという兵もいた。赤い軍服を着ている。
他にも赤い軍服の兵士は何人もいて、その中には私と年が変わらないような女の子もいた。
クルーゼは、私を個室に入れると機長と話すからと行って出て行った。
やがて、連絡機が離陸した。戻ってきたクルーゼは、私に言った。

「少しアチコチ連れ回すことになるが我慢してくれ」
「私を、どこに連れて行くつもりなの」

「戦争に行くのだよ」
「え?」

「連合が油断しているところを、間を置かず、パナマを落とせとは評議会も無茶を言う。
確かにアラスカと両面作戦で軍備を展開してはいたのだがな」

私にはクルーゼの言っていることが分からない。

「まあ、君には後でゆっくり聞かせよう。また、君の方の話を聞かせてくれ」

私は答えずに、服の中の拳銃に手を触れる。

「ここでは銃は出さない方がいい、すぐ隣はザフトの兵士が一杯だ。撃たなくても
銃を持っているところを見られれば、君は射殺される」

私はさぐる手を止めた。

「話したくなければ、それでもいい。いつか、君の言うパパのことを聞かせてもらおう」

クルーゼは、椅子に深く座ると、やがて寝息をたて始めた。

パナマ? また戦争? 私には不安だけがある。だけど、少しでも不安をやわらげるものは、
私の手の中にあった。キラのメモリチップ。私は見つからないように厳重に隠し持っていた。
今は中身を見ることはできなくても、それがあるだけで、キラの色々なことが思い出され、
私を癒した。私は、キラの胸に抱かれて眠ったことを思い出しながら、クルーゼ同様、
眠りについた。

33ザフト・赤毛の虜囚 22:2004/03/09(火) 04:11
6.継承 2/12
[でもね、ユーレンとは、腐れ縁だもの]

「ねえ、メル元気出して」

私は、ハッとした。私の前にはヴィアがいる。私を癒すように優しい声を出している。
私は病室のベッドに横になっている。体の芯に痛みが残っている。やがて、意識が
はっきりしてくる。それは、心にも残った痛みを思い出させる。

「メル大丈夫よ、今は体を直すことだけを考えて」
「うん、ありがとうヴィア」

ここは、L4コロニー・メンデル。私が結婚して、既に二年が経過している。
私の夫アル・ダ・フラガは、自分の子供をコーディネータとして生ませるために、私を、
ここメンデルの遺伝子研究所に行かせた。既に知り合っていたユーレンとヴィアは、今は、
私がコーディネータの子供を産むための担当医になっている。

私は何度も手術を受けている。だけど、遺伝子操作して受精させた胚は、どうしても
私に着床せず、着床しても流産したりで、失敗続きだった。ヴィアは、手術の度に傷つく私を
親身に心配してくれている。私も本当にヴィアを信頼している。

「アルって、とても優しいのよ。失敗は私のせいじゃ無いって言ってくれてるし。
少し良くなったら、ヨーロッパへ旅行に連れて行ってくれるって」
「うらやましいな、メル。うちの旦那なんか、研究ばっかで、どこも連れて行ってくんないもの」

私は、ヴィアを心配させたくなくて嘘を付いている。一生懸命、夫のフラガのいいところを探して
話をする。だけど、本当はヨーロッパへも仕事で行く話。私の夫フラガが優しかったことなんて一度も無い。

「でも、ユーレンだって優しいでしょ」
「昔の話だわ。もう口喧嘩ばっか。現在、別居生活、記録更新中よ」

でも、ヴィアはひとしきりぼやいた後、必ず、こう付け加える。
「でもね、ユーレンとは、腐れ縁だもの。離れられないよね」

私は、そんなヴィアが羨ましい。憎らしいくらい。

「何の話だい?」
ユーレンが入ってきた。私達に話しかける。

「少なくとも、アンタを誉めてる話じゃ無いわね」
ヴィアは、私に目くばせして入れ代わりに部屋を出て行った。

「どうしたんだ、ヴィアは?」
「ううん、大したことじゃないから」私は、ごまかすようにユーレンに言った。

「ところで、メルデル。また、フラガ氏から、君を調べるように言ってきたけど」
「そう。いいわ、うちの人の気の済むようにして」

「それで、また君は傷つくことになる。本当にいいのか?」
「仕方ないもの……」

失敗する度に、フラガは、私を虐待し、私の体を徹底的に調べさせた。
だけど、何の解決にもならなかった。ユーレンの検視では、私には問題は無いはず
だと言っていた。

私は、私を奴隷のように扱うフラガを憎んでいる。絶対、フラガの子供なんか
産んでやるもんかと思っていた。それが、失敗の引き金になっているのかもしれなかった。

フラガに無理矢理に結婚させられた時、私は学校の親友を事実上失った。誰も、私を軽蔑して
近寄って来ない。フラガの知り合いの婦人も、私を汚らしいものを見るような目で見る。
私の気の許せる友達はヴィアだけだった。だから、私がフラガを憎んでいることを
ヴィアには知られたくなかった。

でも、それ以上に、ユーレンに、自らの手で傷ついていく私を見せるのが辛かった。

34ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/09(火) 04:20
フレイSS新章開始します。パナマ戦の話ですが、かなり、TV本編と変更してます。
フレイSS前半第一部の最初の山場となる予定ですが、正直言って重い話です。
次の章を経て、その次くらいになると、少し明るくなるはずですが……

>>刻還り
黒キラで無くても、戦闘中にOS書き換えて、ブートストラップ再起動するのは同じですね。
しかし、結局、カガリは殴られこそしないものの、黒キラの代わりにフラガに怒られましたか。
一応、怒るのはサイーブの役目でもあるはずなんですが、カガリにはスポンサーの弱みがあるからでしょうか。

>>散った花、実る果実
ミリアリア・リスティアとフレイ様の話、重いテーマに入っていて、この戦争の縮図のようになっていますね。
「自分の子供にもより確実に素晴らしい能力を与える事ができるのよ」このリスティアの言葉は純粋な親心で、
美しいと思います。でも、TV本編の回想シーンからすると、祖父母の世代で、それを考えていたかというと……。
それに、リスティアの世代以降は、出生率が低いのですよね。厳しい話です。

>>The Last War
アレクセイ、無茶苦茶なものに乗ってますね。キラは、どうするつもりなのでしょう。

>>流離う翼たち
なにげに最初の被害者になるキラが哀れ。それにしても、この惨事に際して女性陣の
リアクションが無いのが、結構恐い。
それと、オルガ君「阿婆擦れ」は酷いです。せめて、ひらがなで……

>>過去の傷
ミリィの心情分析しているとこみると、まさかキラは正当化して…… それと、キラは、ディアッカのことに気づいていないのか?
フレイ様、異様なテンションで、カガリと仲良くしてますが、このままMSへ、なだれ込み?
そして、フレイ様を気づかうマリューさん。どうして、すぐに行ってしまうのでしょう?

35The Last War・12:2004/03/09(火) 21:34
「!・・・それは・・・」

 キラは戸惑いの表情を見せた。その問いが、明らかに自分を試すためのものであることは、すぐに分かった。しかし、その意図には誤算があった。もしあの時、フレイ、かつてのネメシスがこの男に命を奪われていたとしたら、キラは許すことは出来なかったかもしれない。だが・・・。しばらくして、彼はその問いに答えた。

「・・・僕は、元々貴方を恨んではいないよ」
「何・・・?」
「彼女は、今でも生きてる。・・・但し、あの時の記憶は、無くしてるけど・・・」
「・・・そうか。まさか、そんなことが・・・」

 その事実を聞かされ、アレクセイはやや驚いた様子は見せたものの、すぐに元のポーカーフェイスを取り戻した。そして彼は同じ問いをアスランにも投げかけてきた。

「・・・それではアスラン・ザラ、貴様にも聞こう。この戦いの元凶であり、幾人もの貴様の仲間を殺してきた私をどう思う?」
「!・・・」

 アスランはしばし考え込んだ後、答えを導き出した。

「・・・正直なところ、俺は貴様を許せない。だが、これからの貴様の心次第でそれがどうなるかは分からない」
「!アスラン・・・」

 その言葉を聞き、キラの顔が綻んだ。親友であるアスランが自分の意図を理解してくれたことは、何より嬉しかった。
 そしてアレクセイは何かを思案した上で、結論を下した。

「・・・成る程、貴様達の言いたいことは理解できた・・・」
「じゃあ・・・!」

 人は必ず分かり合える。かつて自分とネメシス、現在はフレイがそうすることが出来た時以来、キラは再びそう考える様になっていた。そしてその僅かな望みに、彼はこの場所においても賭けてみたかった。しかし・・・。
 
「やはり貴様等は、只の愚か者だ・・・!」
「えっ?」
「!避けろ、キラッ!!」

 アスランの声が耳に入った次の瞬間、巨大MSが咆哮した。その時、キラの意識が一瞬途切れた。

「・・・外れた、か・・・」
「・・・貴様ぁ!」

 望みは、無残にも踏み躙られた。アレクセイは搭乗する巨大MSの頭部に内蔵された大型ビーム砲によってキラを狙撃した。それにいち早く気がついたアスランは、間一髪でキラを救出した。

「・・・”許す”?何様のつもりだ?私と同じ、価値無き命の分際で・・・!」
「何だと・・・!?」
「第一、もう分かっている筈だ。我々はもう、理解し合うことなど出来ないことにな・・・」
「・・・薄々、分かってはいたよ・・・」

 アレクセイの非情な言葉を前に、キラは悲しげに呟いた。

「分かってはいたけど・・・、それでも僕は・・・!」
「止せ。お前の気持ちは分かる。だが、もう無駄だ・・・」

 アレクセイを睨みつけながら、アスランはキラを諭した。

「・・・アスラン?」
「・・・こいつはもう・・・、『人間』じゃない・・・!」
「フン、何を今更・・・?」

 キラは驚きを隠せなかった。アスランが口にしたその台詞には、相手への明確な敵意が込められていた。まさか、彼が他人にそのような言葉を吐きかけるなど、思いもよらなかった。しかしそれを聞いても尚、アレクセイの顔から余裕の表情が消えることは無かった。

「・・・それと、ようやく思い出したぞ、貴様の乗るその機体のことを!・・・貴様等は、この戦いに父上の亡霊まで甦らせたのか!?」
「ほう、気付いていたか。このアプカリプスについて・・・」
「!アスラン、それって・・・!?お父さんの亡霊って、どういうことさ!?」

 キラは何かを知っているらしきアスランにそのことを問い質した。その時の彼からは、普段の冷静さは感じられなかった。

「・・・あのMSの名はアプカリプス。かつて、ザフトでジェネシス防衛を目的に計画された機体だ・・・!」
「!・・・ジェネシス・・・!?」

36過去の傷・74:2004/03/09(火) 22:48
(勉強になりますね、私も今度乗ってみます、ガロ−ドに内緒で)
(私も乗るわよ)
「どうだ?理解できたか?」
「ええ、とても参考になったわ、ありがとうカガリ」
「しかし驚いたな、まさかお前みたいな奴が操縦に興味あったなんてな」
「そう?あらミリアリア」
「ねえ皆、もう今日は遅いし食事会は明日にしない?」
「そうね、私もそう思うわ、パックする時間だし、カガリは?」
「そうだな、私もそう思う、ところでサイはどこ行ったんだ?」

通路を歩いていたキラは部屋の前で待っていたミリアリアと会う。
「あ、ミリィ・・・」
「部屋に来て」
「いや、そのことだけどミリィ、あの・・・」
「来てくれないと部屋に上がるわよ、大丈夫よフレイはシャワ−室にいま入ってるわ」
キラは大きくため息をつくと。
「分かったよ」

「さあキラなぐさめて」
「いや、ミリィあの・・・ト−ルに悪いよ、それに僕はフレイが・・・」
「ト−ルは死んだわ、ねえキラ・・・ト−ルの代わりになって・・・」
ミリアリアが抱きついてくる。
「そんな・・・ごめん、ト−ルの代わりなんて僕には出来ないよ」
「キラはいつも優しいのね、でもねキラ、その優しさで傷つく人もいるのよ」
「え?・・・」
ミリアリアは涙を流す。
「キラは優しすぎるのよ!キラ!!!キラは私にも優しくしてくれた!でもその優しさで傷つく人もいるの!!!キラ分かってない!なにも分かってない!全然分かってない!!!キラはただ優しいだけ!!!物事からただ逃げてるだけじゃない!」
「!!!・・・く!」
ミリアリアはキラの胸に泣きながら顔を埋めて何度も胸を叩いた。
キラはそんな彼女を見て心が痛みショックを受けた、ミリアリア自身もなにを言ってるのかは自分自身理解してない、ただト−ルやディアッカがいないという寂しさや苦しさ、そしてイライラがたまっていた、そしてそれを全てキラにぶつけてしまったみたいだ。
「ミリィ、落ち着いて、ね?」
キラが手を差し出す、しかしそれを彼女は手で振り払う。
「同情してんの?あたしに」
「え?そんなつもりは」(どうしたんだ?ミリィは・・・まるでア−クエンジェルにいた頃のフレイみたいだ・・・)
「嘘よ!私にト−ルがいないからって同情してるんでしょ!それで私を完全に拒絶しないだけなんでしょ!?なんでよ・・・なんでキラなんかに!勘違いしないで!キラに恋愛感情なんて私持ってないわ!」
ミリアリアの表情はかなり険しかった、相当怒っているようだ、こんな彼女の表情をキラは見たことない、それにしても彼女は一体どうしてしまったんだろうか・・・?
「同情で付き合ってくれたのならはっきり言って迷惑だわ!!!」
キラはそんな彼女を哀れんでいるような表情で見ていた、胸も痛んだ、それは叩かれているからではない。
「なんで・・・なんでキラに同情されなきゃなんないのよ!!!なんでキラなんかに!!!」
「ミ、ミリィ・・・僕そんなつもりは・・・悪いことしたなら謝るよ・・・だからもうやめて・・・」
「黙って!!!いまは私がしゃべってるの!!!それに謝りたいならなぐさめてよ!いつも可哀相なキラ!いつも一人ぼっちのキラ!だれかに頼らないと駄目なキラ!そうでしょ!寂しいのキラの方じゃないの!同情されたいのはキラのほうじゃない!なのになんで・・・なんで私があんたなんかに同情されなきゃなんないのよ!!!なに勘違いしてんの!」
「ミリィ・・・」
この言葉にはキラも傷ついた、それにしてもミリィがこんな一面を見せるなんてキラは思ってもみなかった。
「ごめん、なら帰るね、もうこういうのはやめよう、フレイに悪いし・・・」
「キラ失礼だよ」
「え?」
「女の子の前で他の女の子のこと考えるなんて目の前にいる女の子に対して失礼よ・・・」
そう言うとキラの唇に自分の唇を強く押し付けた。
キラには抵抗する気力がなかった。

37過去の傷・作者:2004/03/09(火) 23:01
>>ザフト・赤毛の虜囚
なんかフレイ様孤独ですね、でもいい能力持って、でもザフト以降のフレイ様は見ていて可哀相だった、はやく開放してほしかったな。
>>The Last War
やはり理解し合うことは無理ですね、この人には言っても無駄かもしれませんね。
それにしてもザラ議長の亡霊ですか、でもまさかジェネシスが関係していたとは、これはやっかいだぞ、どうするキラにアスラン。

38ザフト・赤毛の虜囚 23:2004/03/10(水) 06:47
6.継承 3/12
[そんな自分が辛かった]

「フレイ・アルスター起きたまえ、ここで乗り換える」
「う、うううん」

私は目をこすりながら起き出した。移動する連絡機の座席で、すっかり眠っていた。
眠っているうちに、また、まぶたが潤んでいる。覚えていないけど、また悲しい夢を
見たのだろうかと思った。

クルーゼに連れられて連絡機を降りている時、また、他のザフトの兵隊達が、私を
冷ややかな目で見ている。その視線が私は辛かった。アークエンジェルでも、私は
クルーに溶け込めず冷ややかな視線に晒されたことがある。キラを探そうと、
整備兵やサイ達のいる食堂を訪れた時のこと。あの時は、キラに会いたいという意思が、
その視線に晒されて逃げ出したくなる私を押さえた。それで、私のことを理解してくれた人もいた。
でも、ここはザフト、私は捕虜だ。私を理解してくれる人などいるはずが無い。

* * *

その後も、数日、クルーゼに連れられるまま、何度も飛行機を乗り継いで行った。移動ばかりで
疲れたけど、乗り換えの準備で忙しくて、クルーゼが、あの時のように私に迫って来ないのが救いだった。

* * *

途中、夜眠れずに連絡機の窓から、まっくらな外を眺めていると、はるか下の遠くに
火のような点が一つだけ灯るのが見えた。昼間は、ずっと海しか見えなかった。
島の都市の光か、なにかだったのだろうか。個室に入ってきたクルーゼが、私が、その光を見ているのに
気づいて言った。

「ああ、あれは島で大きな戦闘があったらしい。島全体が燃えている。詳しいことは不明だが、
近くに連合の艦船もキャッチしている。こちらには気づいていないようだがな」

話している時、クルーゼは少し頭を押さえるような素振りをした。私は不審な顔で、
クルーゼを見つめる。

「ふむ、生きていたのか…… いやなんでも無い。少し気になっただけだ。ちょっと因縁のな。
まあ、君には関係…… 無くは無いが…… いや、気にしないでくれたまえ」

なんだか、訳の分からないことを言っている。
そう言って、クルーゼは、また個室を出て行った。いったい何しに来たんだろう。

私は、再び窓の外に視線を移した。
あれは、戦闘の火の光。また人の命が失われている。私は、その光を見ているうちに、悲しくなった。
ずっと戦争ばかり。キラがまた泣いているような気がした。戦争の辛さに涙をこぼしているような気がした。
泣かなくなったキラだったのに、一人逝って、また泣いているような気がした。

でも、そんなキラを、もう二度と私の胸で癒してあげることはできない。そんな自分が辛かった。

39ザフト・赤毛の虜囚 24:2004/03/10(水) 06:51
6.継承 4/12
[ユーレンの馬鹿野郎!]

「自然の受精ってのはね。二億もの精子が競い合い、たった一つだけ卵子と結ばれるのよ。
まさに劇的瞬間」

私は、その声に我に返った。私は研究室のソファに座っている。その前で、ヴィアは
大げさに手を広げて語っている。

「それまで、精子は長い長い旅をして、卵管まで辿りつくのよ。そして卵子と結ばれて、
また卵管を戻って子宮に入って行く。ここで私の仮説だけど、精子って子宮を旅してきて
そこで、自分の戻るべき場所を先に見つけて覚えているのだと思う。そして、卵子と一緒に、
そこへ戻って着床する。それで赤ちゃんになる」

ヴィアは遺伝子工学と産婦人科の専門だけど、話す内容は難しい用語とかは使わずに、
くだけていて、私でも分かりやすい。

「それに対して、体外で受精させた精子は、自分の戻る場所を覚えていないじゃない。
それで迷って失敗することが多いんじゃないかな」

ヴィアは自説を唱え終え、私に目くばせする。

「おい、ヴィア、面白い説だけど、精子に記憶なんてないぞ。それに、そんなこと言ったら
コーディネータなんて出来ないだろ。実際には、もう何人ものコーディネータが社会に
出ているんだから」

ユーレンは言う。ユーレンはヴィアほどはロマンチストじゃ無い。それにヴィアは反発する。

「そんなの分からないじゃない、生きて動いているんだもの、ねえ、メルもそう思うでしょ」

「でも、ヴィア、二億の残りの、ほとんどは死んじゃうでしょ。それって可哀想だと思う」
私は生きて結ばれる方より、なぜか死んで行く方が気になる。それを辛く感じる。

「だから、そういう考え方すると辛くなるよ。精子は、男から女に遺伝子を運ぶ単なる器だ。
個々の精子ひとつひとつは捨て駒でも生命のシステムの一部なんだよ。可哀想と
いうのは当たらない。そう思わなきゃ。なあ、メルデル」

ユーレンの言葉は厳しいようで、私への気づかいがある。でも、ヴィアは、いつものように憎まれ口を叩く。

「はいはい、分かった、分かった。ロマンの無いこと。まったく、冗談の分からない男ね」
「おい、やめろよ。メルデルも見ているのに」

「メルがいるんだもの。だったら、もうちょっと優しく言ってもいいじゃない」

「やめてよヴィア、私のことはいいから」私は、二人の喧嘩を止めようとする。

「もう、せっかく、メルが退院する日なのに。ユーレンの馬鹿野郎!」

ヴィアは乱暴な言葉を吐くと、逃げるように出て行った。

ヴィアは興奮すると、男言葉になって、相手に正論を突きつけて決して譲らない。だから、
横暴で頑固なフラガと話すと、こじれることは確実だ。だから、研究所の所長は、決してヴィアを
フラガに合わせず、フラガとの応対は、もっぱらユーレンが担当だった。だから、ユーレンは
私とフラガとの関係に気づいていた。

「明日、フラガ氏は宇宙港に迎えに来る。やはり、君には問題が無いと報告書には書いておいたが」
「そんなの素直に聞く訳ないわ。ユーレン、いっそ、本当に、私が子供を産めないように、
無茶苦茶にしてちょうだい。その方が楽」

「そんなに、自分を傷つけるなよ」
「同情はいらないわ。私、どうせ汚れた奴隷だもの」

「メルデル……」

ユーレンは私を悲しそうに見つめていた。私も目に涙を浮かべてユーレンを見つめる。
私はユーレンに顔を埋めたかった。

──「ユーレンの馬鹿野郎!」

でも、ヴィアの乱暴な言葉使いに潜む愛情を知る私に、そんなことはできない。
私はヴィアとユーレンを仲直りさせたいと思っていた。

40ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/10(水) 06:53
ヴィアの性格とか、TV本編では限られた情報しか無いので、かなり脚色してますけど、どうかな。
次は、フレイSSの一部ですけど、章としては番外となるヴィア視点のエピソードを一話入れます。

>>The Last War
アレクセイは、ネメシスのことには、少し反応したようですね。しかし、ジェネシスは自身が
ローエングリーンさえ受けつけないほど強固なのに、プロヴィデンスとか、アプカリプスとか無茶苦茶に
強いMSに守られることになっていたなんて……

>>過去の傷
まさか、ミリィがフレイ様のTV28話と同じシチュエーションになるとは……
この後、フレイ様はキラの言葉に逃げ出しましたが、ミリィは逃げない様子。いったいどうなるのでしょう。

41流離う翼たち・427:2004/03/10(水) 19:23
 そして、とうとうマリューの番がやってきた。何となく精根尽き果てている審査員たちは、それでも不屈の闘志、ではなく、話の都合の為にゾンビの如く復活してきている。些か耐久力に欠けるためか、サイとトールはすでに目の焦点が合っておらず、根性が足りないキラは何やらシンジ君症候群に陥り、「逃げちゃ駄目だ・・・・・・」とかぶつぶつと呟き続けていた。
 テーブルに置かれたカレーの皿を見て、とりあえず正気の4人は安堵した。正気を無くしてるっぽいサイとトールは目の前のカレーに気付いているかどうかが怪しい。
 見た目は赤みがかったカレーソースのかかった白米。つまりカレーライスである。匂いも問題は無い。だが、調理中に呟いていた材料を考えるとこれもまともな食べ物でない事くらい、容易く察する事が出来る。というより、フラガの持つ第六感が全力で告げているのだ。

「これを食えば、死して屍拾うものなし」

 と。

 だが、出された以上最低でも一口は口にしないといけないだろう。たとえそれが死に至る行為だと分かっていても、だ。フラガは恐る恐る視線を上げ、調理をしたマリューを見る。マリューは期待と不安を顔一杯に映し出しながら固唾を呑んで自分を見ている。
 その顔を見て、フラガは覚悟を決めた。あんなに期待されてるのに、今更逃げられるかよ!
 意を決したフラガはスプーンに山盛りのカレーを迷うことなく口に頬張った。

「・・・・・・・・・ぐぅ!?」

 一瞬意識が飛んだ。これはもう不味いとかいうレベルではない。今までに食べたいかなる物体にも共通点が見出せない不思議な味わいと、舌にねっとりと粘りつき、何時までも後を引く不可思議な舌触り。まるで舌の上でこの世の悪意が塊となって踊っているかのようだ。これを食べ慣れれば不味い事で有名な軍用のレーションが珠玉の美味に感じられるようになるだろう。
 だが、フラガはその苦痛を顔に出すことなく、表面自然を装いながら1匙、また1匙と皿の中身を減らしていった。ちなみに制服で隠された部分には脂汗が滝のように流れており、その苦痛を伝えている。
 なんだか平気そうなフラガを見てオルガとキサカがスプーンを取った。キラだけは何故か先ほどからフレイが必死な目で自分を見ているのが気になっており、あえて2人の様子を伺っている。ちなみに残る2人は既に一口食べる前の段階でリタイア状態である。
 オルガとキサカがスプーンを口に運び、次の瞬間には悶絶して声も上げられ無い苦痛を全身で訴えている。それを見たキラとフレイとミリアリアがビクリと体を半歩引き、改めて視線を交し合う。

「な、何なの、このカレーは?」
「さあ?」
「ナタルさんが食べたら病院送りと言ってたけど・・・・・・」

 ちなみにカガリは未だに昏倒中。
 
 この恐るべき料理を、フラガはなんと完食してしまった。最後の一口が口に運ばれ、殻になった更にスプーンが置かれる。そしてグラスに残された水を飲み干した後、何とも開放感に包まれた爽やか過ぎる笑顔になった。

「美味しかったよ」

 それだけ言い残し、フラガは食堂から出て行った。残る5人はというと、オルガとキサカはカレーの皿に顔を突っ込んで何やら断末魔としか思えないヤバゲな痙攣をしているし、相変わらず二人は復活していない。そしてキラはといえば再びシンジ君症候群、いや、もっと後ろ向きに「逃げなくちゃ駄目だ」とか呟いている。

42流離う翼たち・作者:2004/03/10(水) 19:43
>> ザフト・赤毛の虜囚
メルデルは意外と怒ってるんですね。
ユーレンに横恋慕するのも凄いですが、ユーレンもまた悪意を持つ男だしなあ
ヴィアさんは案外口が悪いんですね。まるでカガリだw

>> The Last War
流石はパトリック。準備万端でジェネシスを動かしてたんですなw
これがあの時あったら、プラントの勝利で戦争は終わってたでしょうに
何気にアスランが切れてる

>> 過去の傷
頑張れミリィ、このままキラを押し切るんだw
このまま行けばキラは人間失格の烙印を押される事に

43過去の傷・75:2004/03/10(水) 22:40
強引に唇を押し付けてくるミリアリア・・・。
「く・・・やめてくれ!」
キラはミリアリアを突き放した、しかしまた抱きつきキスしてくる。
「ミリィ・・・やめ・・・やめろ・・・やめてくれ!」
再度ミリアリアを突き放す。
「なによ、フレイとだってこれくらいのことしてるんでしょ!」
「ミリィいいかげんにしてくれ!でも・・・多少同情の気持ちも・・・少しはあったよ・・・ごめん・・・でも・・・」
「やっぱりそうじゃない・・・同情してるんじゃない!なによ・・・同情!?あんたが私に!?なんでキラなんかに同情されなきゃなんないのよ!いつも可哀相なのはキラの方じゃない!そんなに心が弱いからフレイに付け入れられるのよ!それなのになんでよ・・・なんであんたなんかに同情されなきゃなんないのよ!同情なんて迷惑だわ!だいたい・・・同情されたいのはあんたの方でしょ!!!寂しいのはあんたの方じゃない!いまのキラはいえ・・・以前からそう・・・キラはただの偽善者よ!!!」
「!!!・・・く!」
キラは部屋を飛び出した。

「そうだ、つまり遠距離ではビ−ムライフルで攻撃したり威嚇するんだ、そして接近したらビ−ムサ−ベルで攻撃だ、要領はだいたい分かったみたいだな・・・そして攻撃されそうになったらシ−ルドで防御するんだ」
「シ−ルド?盾みたいなの?」
「盾か、まあそうだな・・・モビルス−ツにはだいたい付いてるぞ、まあモビルア−マ−にはほとんど付いてないけどな、でもお前素質あるかもな」
「そう、カガリありがとう」
「あ、ああ、明日は実際機体に触れさせてやる」
「ほんと!?カガリ・・・ありがとう、で、どの機体に乗るの?」
「私の機体・・・ストライク・ル−ジュだ」

カガリと別れたフレイは、部屋に戻った。
「キラ?遅くなってごめんね」
「・・・・・・」
キラは下を向いて座っていた。
「キラ?どうしたの?」
「あ、いや・・・なんでもな・・・く!うう・・・ああ・・・あああ」
突然キラが泣き出す、なにがあったのだろうか・・・どうやらなにかショックを受けているようだ。
「キラ!」
フレイはキラを抱きしめる。
「うう、フレ・・・く!・・・うう・・・あ・・・ああああ!」
キラの体が震えている・・・どうしたのだろうか・・・なにかに怯えているようにも見える。
「くう、うあああ・・・うう・・・僕は・・・く!」
キラが声を出して泣いている、相当なにかにショックを受けている様子だ。
「あああ!うう・・・あ・・・あ・・・あああ・・・」
フレイは驚いていたが・・・優しく微笑んだ。
「キラ・・・大丈夫よ、私がいるわ、だから大丈夫・・・貴方には私がいるじゃない、キラには・・・キラには私がいるから、大丈夫・・・」
「フレイ・・・うああ・・・うう・・・ああ」
フレイはキラの背中を優しく揺すってやる。
「私がいるから・・・ね?」
キラは怯えた表情で泣きながらフレイを見上げた、それにフレイは優しく微笑む。
「うう、フレイ・・・僕・・・」
「キラ、私がずっとキラにはついてるから・・・キラには私がいるから・・・だから怖がらないで・・・大丈夫だから・・・ね?キラ」
「ううう・・・フレイ!!!」
キラはフレイの胸に顔を埋めた、そのキラをフレイは優しく見つめる。
「守るから
「うう・・・フレイ」
優しくキラの髪を撫でる。
「私がキラは守るから」
キラの顔をこちらに向けさせる。
「私の想いがキラを・・・」
「うう・・・」
「私の想いが・・・貴方を守るから」
そう言うと同時にキラの震えている唇に優しく唇を重ねた。
フレイのキスにキラは・・・目を開けていたが、フレイに甘えるように目を・・・瞳を閉じた、フレイのキスの感触は温かく感じた、ミリィとは比べ物にならにほど・・・心まで温かく守ってくれた。

44過去の傷・作者:2004/03/10(水) 22:51
>>ザフト・赤毛の虜囚
メンデル・・・結構その気ありみたいですね、それにしてもヴィアはどことなく性格とはカガリに似てますね。
>>翼たち
最後なんか奇跡起きるかなと思ってましたが。
少佐は絶対無理してると思う・・・たぶん・・・出た瞬間吐き出すとか?

45ザフト・赤毛の虜囚 25:2004/03/11(木) 01:36
番外 1
[ヴィアとユーレン]

私は、今、ユーレンに抱かれている。まだ、ユーレンに初めて抱かれて、それほどは
経っていない。でも、私は大きな声を上げている。
「ユーレン、ユーレン、ユーレン、ユーレン!!」

私は、彼に感じている。彼に満たされている。

* * *

ユーレンは幼馴染。小さい頃、両親の仕事で大西洋連邦に引っ越して、言葉も分からず
戸惑う私に、何くれとなく接してくれたのがユーレンだった。でも、私は素直じゃない。
まわりの環境が悪かったから、覚えた言葉も乱暴なものの方が早かった。

「お前、大きな、お世話だ。私のことなんてほっとけよ!」
「親父とお袋の馬鹿野郎! あんなの本当の親じゃない」
「私は一人でやっていく。いつまでも子供じゃない。見守ろうなんて思い上がりもいいとこだ」
「お前さぁ、お前さぁ。本当に、そう思って言ってるのかよ。本当に、私のこと思って言っているのかよ!」
「あいつは汚いやつだ、なんで、あんなのの肩持つんだよ。私の論文の内容を盗んだんだぞ」
「なんで、こんな私のこと気にかけるんだよ。もうダメだよ。徹夜したって間に合う訳ないだろ。
 もう、落第で充分だよ。どうせ私なんか、誰も振り向かないんだ」
「合格おめでとうだって? 何だよ、私は感謝なんてしないぞ。くそ、なんで涙なんか、くそ!」
「何考えてんだよ。お前が落第して、どうすんだよ。それで恩を売ったつもりかよ。この馬鹿野郎!!」

泣いたり怒ったり、喧嘩ばっかり。何回、酷い言葉をかけたか、もう覚えていない。
それでも、私とユーレンはカレッジのドクターコースまで付き合った。離れられない。私の本当の心。

二人、遺伝子研究所への就職が決まった時、やっと、女らしい言葉で言えた素直な気持ち。

「ユーレン良かったな……
 ……ユーレン。こんな私でも、ずっと一緒にいていい?」

* * *

「もう、せっかく、メルが退院する日なのに。ユーレンの馬鹿野郎!」

また、私はユーレンに酷い言葉を投げかける。私がせっかくメルを元気づけるために
考えてきたこと否定して。ユーレンの馬鹿野郎。メルもメルよ、ユーレンにやさしい言葉なんて
いらないわ。付け上がるばっかりよ。

遺伝子操作、コーディネータ。ジョージ・グレンによって世界に広まった新たな人類の進む道と混乱。
私は、遺伝子操作にアレルギーを持つ人達みたいに何でもかんでも否定はしない。使い方で、
いくらでも役に立つ道はある。でも、単に人を複製するクローンだけは許せない。生命のシステムを
否定して、人を作り出す。それには所詮、女が犠牲になる。自分の子供でもない他人を産むなんて。
産ませるだけの役目を女に押しつけるなんて。私は絶対許さない。

ユーレン。私は、そんな研究に取り組む、あなたを絶対認めない。何度でも言ってやる。
「ユーレンの馬鹿野郎!!」

* * *

ユーレンの動きとともに、私もクライマックスに達する。だけど、その余韻は、私を捕らえて離さない。
身動きも出来ない私は、体から離れたユーレンを、なんとか掴もうと必死で手を伸ばす。
すると、ユーレンは自ら、私を抱きしめキスをくれた。とろけそうに熱いキスを。

「ヴィア……」
「ユーレン、嬉しい……」

ユーレン、愛してる。

* * *

あの時の、あなたの温もり。今でも覚えている。私一人の家。私一人のベッド。
バカ…… ユーレンのバカ……

46ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/11(木) 01:39
ヴィアとユーレンのお話しでした。次は、フレイの話に戻りますが……
ちなみに、公式年表ではフレイ様は、拉致から二週間以上かけて潜水艦でパナマまで行っていますが、
うちのSSでは、飛行機を使って何気に時間を巻いています。

>>流離う翼たち
フラガ少佐って漢(おとこ)ですね。マリューさんと二人の行く先に幸有らんことを……
キラは、これのトラウマで、もうエヴァ(?)には乗りたく無いとか、言いだすんじゃないでしょうか。

>>過去の傷
キラの方がミリィから逃げ出しましたか。
ミリィは切れると恐いですね。ディアッカの時もそうでしたが。
でも、キラの自業自得もあるような気がする。それで、フレイに泣きつくとはキラ情けないぞ。
「シ−ルド?盾みたいなの?」このフレイ様のリアクションは、らしくて笑いました。

47私の想いが名無しを守るわ:2004/03/11(木) 18:17
>>ザフト・赤毛の虜囚
メルデル篇はE○Aの「ネ○フ誕生」のエピソードみたいで好きですね。
しかし後の展開を考えると物悲しいですね。「お前が落第して、どうすんだよ」
←バカな会話ですな。だけど微笑ましいです。
>>過去の傷
㍉の主張は結構利己的だったりするわけですが、話の中に結構真実が
混じっているから、始末に負えないというか、たちが悪いですね。
>>流離う翼たち
フラガはいいですね。「開放感に包まれた爽やか過ぎる笑顔になった」
←目に浮んできますね。読んでて目頭が熱くなってきました。
「不可能を可能にする」漢の生き様を見せていただきました。
>>The Last War
また生ぬるいことを言ってますが、良くも悪くもキラらしいというところ
でしょうか。巨大MSを前にキラとアスランの動揺が良く伝わってきます。
>>リヴァオタ
なぜにフレイ様イオナズンを唱えられるのだ。キラでなくても驚きます。
三人ドラえもんコスプレ笑えました。何者?
>>散った花、実る果実
リスティアは種族の優越の話と親の情愛の有無が簡単に結びつくところが
ちょっと軍国少女ぽくって面白いですね。フレイ様は逆に少し冷静になっ
てきて、寛容になったというか、立場が少しずつ優位に立った感じがしますね。
>>刻還り
フラガが美味しいところというか、ヨゴレ役引き受けてますね。本編の
キラがいきなり殴っちゃっていたので、フラガの落ち着いた対応が引き立ってます
>>キラ♀
㍉とトールも意図せざる共犯者へと転落してしまったようですね。恐るべし。
キラが死ねばAAの撃沈の可能性も大きくなるのに、もう刺し違える気満々ですね。

48流離う翼たち・428:2004/03/11(木) 19:37
 フレイとミリアリアはどうしたものかと顔を見合わせたが、一応出された料理を一口も食べずに下げるというのは流石に礼儀に反するので、ここは心を鬼にして一口食べさせなくてはならないだろう。すでに現実から逃避している2人は意図的に除外されている。

「キラ、一応、一口は食べてね」
「フレイ、それは僕に死ねと?」

 キラは隣で突っ伏している2人を横目に問いかける。既に2人とも痙攣という状態が終わり、動かなくなっている辺りがかなり怖い。
 フレイは嫌々と首を横に振るキラを見て小さく溜息を吐くと、無言でミリアリアを見た。それを見たミリアリアが仕方なさそうにキラに一枚のプリントを見せる。それを見たキラが一瞬首を捻り、そしてそのプリントが示す真の意味を悟って顔を引き攣らせた。

「ミ、ミリィ、これは!?」
「これから暫くの献立予定。ピーマンとか人参とかばかりよねえ」
「ミリィ・・・・・・」

 キラが泣きそうな顔でミリアリアを見る。キラは野菜が嫌いなのだ。それを見たミリアリアが邪な笑顔でキラに交換条件を突きつける。

「でも、キラがちょっと頑張ってくれたら、この献立を変えても良いんだけどなあ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 暫く考えていたキラは、がっくりと肩を落とすとスプーンを取り、死刑執行を待つ囚人のような、何かを諦めた表情でスプーンを口に運び、3人目の失神者となった。
 カレーに顔を突っ込んでピクピクと痙攣しているキラを見ながら、フレイはミリアリアに問いかけた。

「ところでミリィ、あなた、食事のメニューなんか弄れるの?」
「そんなのできるわけ無いでしょ」
「え、じゃあさっきのは?」
「よく見なさいよ」

 ミリアリアは先ほどの献立表をみせた。そう、日付の辺りを。そこには、丁度先月の日付が付いていたのである。

「・・・・・・先月の献立?」
「そう。キラはそれに気付かずに取引しただけよ。だから明日からの献立はこれとは違ってるわ」
「・・・・・・悪魔ね」

 フレイはミリアリアの知略に恐れを抱いた。彼女は敵にしてはいけない人間なのだろう。
 なお、フラガは自室に戻った後倒れてしまい、内臓疾患で2日ほど生死の境をさまよう事になる。そんなフラガをすっかり機嫌の直ったマリューが手の空く限り看病して一層の病状悪化を招いたという些細な事件もあったりする。

49流離う翼たち・429:2004/03/11(木) 19:38
 戦いが終わった食堂に足を踏み入れたナタルは、予想通りの惨状にやれやれと呆れた声を漏らした。もはやその心境は悟りの境地か、はたまた最初から諦めていたのか。

「まったく、後片付けはその日のうちにやっておかないか。あいつら、これでは将来に貰ってくれる当てが無いぞ」

 仕方なく軍服の袖を捲り上げ、食堂に残されていたエプロンを付けて積み上げられている食器や鍋を洗いだす。その手際は中々に大したもので、あれだけ荒れ放題だった調理場が少しずつ、だが確実に綺麗になっていく。
 何やら楽しげに手を動かしていたナタルだったが、ふいに調理場の入り口からかけられた声にその手を止めた。

「バジルール中尉?」
「ん?」

 誰かと思って入り口に目をやれば、些か憔悴した感じのキラが立っていた。

「キラ・ヤマト少尉か。もう身体は良いのか?」
「はい。流石にまだちょっと体の調子がおかしいですけど、少しお腹がすいてしまって。何か無いかなと見に来たんですけど、この様子じゃ無理そうですね」

 動けるだけ大したものだろう。他の5人はまだへばっている。オルガもパワーに戻る事が出来ず、医務室のベッドで唸っているくらいだ。ちなみに1名は現在重態である。
 少し考えたナタルは、部屋に戻ろうと踵を返したキラを呼び止めた。

「待て、ヤマト少尉」
「はい、何ですか?」
「もう少し待てるなら、適当に腰掛けていると良い。余っている食材で何か作ってやろう」
「え?」

 キラは驚愕してナタルを見た。まさか、この副長に料理が出来るというのか? 女性は家事が出来る、という妄想を今日の出来事で粉微塵に打ち砕かれてしまったキラは、詐欺商売に騙さて高額屑商品を買ってしまった馬鹿な男そのものの目でナタルを見た。

「あ、あの、本当に大丈夫ですか?」
「なにがだ?」
「いや、中尉が料理って・・・・・・」

 キラが恐れている何かを察したナタルは、まあ仕方が無いなと思った。かつて自分もあの地獄を味わった事があるのだから。

「心配するな。上手くは無いが、それなりには出来る」
「ど、どれくらいです?」
「そうだな、艦長よりは上手いかな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 キラの顔を滝のような汗が流れ出した。マリューよりは上手いというか、あれより下手な料理など想像も出来ない。いや、それはもう戦略兵器だろう。存在そのものが神の摂理に逆らうことに違いない。
 だが、キラは知らなかった。この世にはマリューさえも上回るマッドクッキング技能の持ち主、ラクスがいるのだ。あれを食べたアスランは文字通り生死の境を彷徨った。
 しかし、ここまで破滅的な料理技能の持ち主が周りにいる辺り、キラもアスランも神様に嫌われているに違いない。

50流離う翼たち・作者:2004/03/11(木) 19:54
もう少しでマドラス到着。久しぶりに街の中です
そこでフレイ様たちが出会う人々とは。これまでの経験からフレイ様とカガリが選ぶ答え
キラとアスランの成長ストーリーも随分遅れながらスタートします
何故かアズラエルも出演予定w

>> 過去の傷
はう、フレイ様がルージュで遊ぶ日がw
キラはどんどんヘタレな駄目人間に。このままだと全員から見捨てられる気が

>> ザフト・赤毛の虜囚
何故だろう、カガリとアスランの会話に見えてしまうのはw?
何気にユーレン氏が良い人になってますな。

51過去の傷・76:2004/03/11(木) 23:12
次の日の朝である。
起きたらフレイがいない、どこに行ったのだろうか、結局は昨日はあのあと二人でそのまま寝たのだ。
(フリ−ダムの整備でもするかな)

パイロットス−ツに着替えようとしていたキラは、赤い女の子を目撃する。
「フレイ、こんなところに・・・」
まさか・・・そんなフレイ。
「あ・・・キラ、その・・・私」
「フレイなにやってるんだい?・・・こんなところで、え?・・・まさか」
パイロットス−ツを手に取っているフレイ。
「ああ・・・なんて馬鹿なこと!無理だよモビルス−ツなんて、君みたいな女の子が」
「キラ、だって私・・・キラ・・・私」
「いいんだよ、君はそんなことしなくても、戦いは僕の仕事だから、それに危険すぎるよ」
「でも私だってなにか出来ることをしないと・・・皆だって戦ってるのに、私だけ・・・だから私・・・」
「いいんだよフレイは、それに無理だよ、君みたいな女の子には!」
「そんなの・・・やってみないと分かんないじゃない!」
「フレイはモビルス−ツ操縦の大変さが全然分かってない、どれだけ危険か分かってないよ」
「なによ!私だって!」
「フレイ、そんな甘いもんじゃないよ、興味本位や遊び半分の気持ちならやめてくれ、絶対後悔する、それにそんな気持ちで乗られても機体に対して失礼だよ・・・それと君を僕は危険にさらしたくないんだ・・・君は大切な人だから・・・」
「キラ・・・でも私ニュ−タイプだもん!キラよりすごいんだから!」
その言葉にキラは言葉を詰まる、そうだフレイは二ュ−タイプなのだ、それは事実だ。
「キラ・・・お願い・・・
「う・・・」
フレイは少し頬を赤く染めて可愛い顔を浮かべるとキラはまじまじと見つめた、キラはこのフレイの表情に弱い、いつも可愛いフレイだがこの表情になるといつもの可愛さが倍増する、一つのフレイの武器だ。
その一時間後。

「ストライク・ル−ジュって口紅?」
「なに言ってんだお前?」
「だってル−ジュって口紅じゃない」
「しかし、そんなふうに言ったのはお前が始めてだ」
フレイは化粧や肌のお手入れに目がないのだ、フレイは化粧水の香りがいつも漂っているのだ、だからル−ジュって聞いたらすぐ反応したのだ。
「さあ乗るぞ、基本は分かったよな?」
「うん、もちろんよ」

「よしビ−ムを撃ってみろ」
「ええと・・・これかな?」
「馬鹿!それは自爆装置だ!」
慌てて止めるカガリ。
「私まだ死にたくないぞ」
「分かってるわよ、冗談よ冗談」
「・・・ほんとか・・・」
冗談ですまされるものではないのだ。
「大丈夫よカガリ、ほんとに操作は覚えたから、これもカガリのおかげよ」
「そ、そうか?・・・」

休憩室で休んでいた二人。
「お前なんのために機体の操縦覚えようなんて思ったんだ?」
「私、キラの力になりたいの・・・だから・・・私」
「・・・キラがそんなに好きか?」
そのカガリの言葉にフレイは嬉しそうに微笑んだ。
「好きよ、大好き!ほんとに大好き!もう死ぬほど好き!もうたまらないわ!もうキラは目に入れても痛くないぐらい大好き♪愛してるわ♪結婚したいの!」
「そ、そうか・・・もういい、もう分かりすぎるくらい分かった・・・ところでお前すごいな関心するぞ」
「え?」
「そうか・・・そんなにあいつが好きなんだな、そこまで好きなんだな、お前真っ直ぐな奴だな、そこまで好きなんてすごいな・・・お前のことほんとに見直した、お前っておかしな奴だな、でもキラ幸せだな、お前みたいに一途な奴に惚れられて、こんないい彼女持ってあいつは幸せだな」
「カガリ・・・」
「お前になら言ってもいい、いつかは話すことになるだろうと思ったしな・・・」
「カガリ?どうしたの?なにが言いたいの?」
「・・・私とキラはな・・・事実上は親が同じだ、つまりは・・・」

通路を歩いていたキラは・・・ミリアリアと会う、だがどうも様子がおかしい、下を向いている、暗い・・・。
「ミリィ・・・」
「キラ・・・昨日は言い過ぎたわ・・・ごめんね・・・」
「いや、いいんだよ、あんなことは」
「ト−ル見なかった?今日いないの」
「え!?」(なに言ってるんだ?ミリィは)
「あれ?ト−ルの部屋はどこ?ねえキラ・・・」
「ミリィ・・・」
「ディアッカは?今日食事会はあいつも来るのよね?ト−ルを探さなきゃ・・・どこ?ト−ル・・・ト−ル・・・」

52過去の傷・作者:2004/03/11(木) 23:17
>>ザフト・赤毛の捕囚
あれ?この二人の会話、だれかさんに似てるよ。
フレイ様は孤独ですね、可哀相。
>>翼たち
ええと・・・ミリィおそるべし、ミリィって怖いね。
やはり少佐は無理してたか・・・やっぱりな、それにしてもラクス嬢の料理って・・・一体・・・可愛い顔して怖い。
キラ、ナタルさんの食事ですか・・・ナタルさんは上手そうですけどね、でも女性陣はフレイ様を始めとして強いな。

53ザフト・赤毛の虜囚 26:2004/03/12(金) 04:51
6.継承 5/12
[おやすみ、キラ]

それから、また、数日連絡機に乗って最後に着いた場所は、小島の急ごしらえの基地のよう場所だった。
私は、大きなモニタパネルが一杯ある部屋に連れて来られた。アークエンジェルのブリーフィング・
ルームも、こんなだった。

「ここで、しばらく待っていてくれまえ、私は戦争の準備がある。
 食事は、ここにある。適当に食べておいてくれたまえ」
クルーゼはそう言って、忙しそうに部屋を出て行こうとする。

「また、インスタント……」
私は、思わず呟いた。贅沢を言っても仕方ないのだけど……

「済まないな。後で、暖かいものを運ぼう。夜まで待ってくれ」
「夜……」

私は、また不安になる。

「明日、朝早く作戦開始だ。今夜、私は徹夜になる。君はゆっくり休んでいてくれたまえ」

クルーゼは、そういうと部屋を出て行った。ドアが外からロックされた音がした。
私は、一人残された。

私は、何をしてるんだろう。こんな敵の基地に一人いて。
敵の基地に、その敵の私がいる。連合とザフト。二つを仲良くさせられたら。戦争なんて無くせたら。
でも、私は捕虜。自由を奪われた虜囚。何もできはしない。

さっきから眠い。飛行機で、ずっと寝ていたのに、まだ眠くて堪らない。なにか、私の意識が
別のところに飛び出そうとしている。でも、心地よい。いつのまにか、キラの胸の中で感じていた暖かさ、
それにつながっていくのを感じる。

眠い。眠い。私寝るから…… おやすみ、キラ。

54ザフト・赤毛の虜囚 27:2004/03/12(金) 05:00
6.継承 6/12
[来るんだメルデル!]

私は、目を覚ました。ホテルの部屋。

(仲良くさせるなんて…… 私に何もできはしない)

でも、やらなきゃ。ヴィアとユーレン、二人を仲直りさせなくちゃ。
でないと、私が吸い込まれる。ヴィアを不幸にする。

私は、明日、フラガが迎えに来る宇宙港に行くまで一泊するホテルから夜の町に出て行った。
退院の日、私はヴィアとユーレンを別々に食事に呼び出した。そして、二人を外で会わせたら、
そっと席を外す。高級な店なら、いつものような喧嘩はできないだろう。それで、二人を仲直りさせたかった。
そして、私は、もうユーレンと会わない。私はユーレンに惹かれている。でも、ユーレンは
大切な友達ヴィアのもの。私はアル・ダ・フラガの奴隷、赤毛の虜囚。愛しい人を手に入れる
ことは叶わない。このまま会えば、どんどん辛くなる。これでいいのよ。これで。

先に店に来たのはユーレンだった。いつも研究所の白衣姿を見慣れているので、珍しい
スーツ姿に緊張する。

「メルデル、ありがとう呼んでくれて」
「いいのよ、ユーレンには、ずいぶんお世話になってるから」

「地球に戻って、それからどうする?」
「考えていない。けど、私、もうコーディネータは嫌。ヴィアの言うように自然に産みたい」

「フラガ氏と相談するかい」
「言っても無駄。うちの人はコーディネータにこだわって、普段は私に妊娠しないように
 体になにか入れてるの。だから、私、もう子供なんていらない」

「そんな、君は、まだ若いのに……」
「もともと、結婚なんて望んでいた訳じゃないもの。私、本当は……」

私は、ユーレンを見つめる。心が吹き出しそうになる。
ダメ、これじゃ意味無いじゃない。私はヴィアのためにしているのに。

その時、後ろから急に声がかかった。
「メルデル、お前、男と会って何をしている」
「アル? 何でここに……」

フラガと、その部下らしい男が数人後ろに立っていた。迎えに来るのは明日のはず。こんなところに、
なんでフラガがいるの? 離れた席に、私よりずっと年上の女性が一人座って私を見ていた。
私は思い当たった。このコロニー・メンデルにはフラガの愛人がいるらしいことを。

「若い男を誘っているのか」
「私、そんなつもりじゃ無い。知ってるでしょ。研究所の先生よ。お礼で食事誘って何が悪いのよ」

「うるさい! まったく、なんと、ふしだらな女だ!」
フラガは、私を平手で叩いた。私は手で頬を押させて、フラガを睨みつけた。
自分のこと棚にあげて、なんと傲慢な……

「この上、また失敗しただと。許さん! もう一度、地球で調べさせる。そして、
 私のコーディネータを生むまで何度でもやりなおさせる」

ユーレンは、フラガに詰め寄った。
「彼女は、自然に生むことを望んでいます。彼女のことを考えたことがありますか」
「やめて! ユーレン」

「うるさいぞ、研究所の青二才が」
「いやぁ、やめてアル! やめて!」

フラガは、ユーレンも殴った。既に、高級レストランは女性の金切り声が響き、騒然としている。
連れて行かれる私を、ユーレンは突然、手を引いて走り出した。

「来るんだメルデル!」
「ユーレン!」

私達は店の外に飛び出した。路地に走り込む。少し息をついて、私はユーレンを見た。
ユーレンは殴られて口から血を流している。その時、私の携帯電話が鳴った。ヴィアだった。

「メル、ゴメン。仕事で遅れて、今から行くけど。メル聞こえてる?」
「ヴィア大変なの、ユーレンが……」
「え? 何でユーレンがいるの?」

フラガの追っ手の男が追い付いて来た。また、ユーレンが殴り倒される。
私は手を捕まれ、携帯が地面に落ちる。その時、ユーレンがタックルして、男を倒した。
その隙に、ユーレンは私を連れて、丁度来たエレカに乗り込んだ。

私は、助手席で、ユーレンの片腕に抱かれていた。
さっき、携帯電話で聞いたヴィアの声が、私の耳に残っていた。

55ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/12(金) 05:04
フレイ様、パナマ戦始まるまで少し眠っていただいて、先にメルデル編片づけます。
メルデルの話は、次で現在の章の区切りをつけて、やっとこさフレイ様の話が進みます。
中々、活躍しなくて済みません。でも、話の構成上必要なんです。

>>流離う翼たち
キラ、子供じゃあるまいし、野菜の好き嫌いくらいで、自爆に走ってはいけません。
しかし、最後には復活するのは、やはりコーディネータだから? ナタルにとどめを刺されませんように。
ここのミリィは知将ですね。MS管制よりも戦闘指揮に回ったほうがいいのかも。

>>過去の傷
フレイ様、ついに、MSに搭乗。しかし、シート横の自爆装置には、冗談でも手を出さないほうが。
でも、アスランは、これ二回も使っているんだな。
ミリィは、すでに心身喪失状態。カウンセラが必要。こういう時にテクス医師…… は無理か。

56流離う翼たち・430:2004/03/12(金) 21:54
 暫くしてナタルが皿に野菜炒めのようなものを作って持ってきた。その中身を見たキラが僅かに顔を引き攣らせる。それは、自分の嫌いな野菜のオンパレードだったのだ。

「あ、あの、これは・・・・・・?」
「うむ、君は好き嫌いが激しいと聞いている。栄養が偏るのはパイロットとしての能力に影響を及ぼしかねないからな。こんなものを作ってみた」

 ナタルらしい意見だが、それを食わされる自分にしてみればたまったものではない。だが、食べないという選択はキラの中には無かった。だって怖いし。もし逆らったりしたら何されるのか分かったものではない。相手はあのキースやフラガでさえ黙らせるアークエンジェル最後の常識人、フレイとカガリの師匠、苛烈なる良識派ナタル・バジルールなのだ。
 仕方なく意を決して箸を掴み、渋々それを口に運ぶ。だが、口の中に入ったそれは、キラの想像を超えて普通に美味しかった。

「あ、あれ、美味しい?」
「君は一体どういうものを想像していたんだ?」

 ナタルの問いに、キラは素直に想像していたものを語った。それを聞いたナタルはやれやれと肩を落とし、エプロンで手を拭うと、キラと向かい合うように腰掛けた。

「まあ、今日は災難だったな。明日にはマドラスに着く。そこで一週間ほどの休暇が出せると思うから、羽を伸ばすと良い」
「え、休暇、ですか?」
「ああ、何とかなると思う。溜まった給料でも使うと良いだろう。使える時に使わないと溜まる一方だからな」

 いかにも自分は溜め込んでますという感じのナタルの言葉に、キラはなるほどと納得して頷いた。

「まあ、フレイなりカガリでもデートに誘ったらどうだ。多分喜ぶと思うが?」
「な、何を言ってるんですか!」

 顔を真っ赤にして焦った声を上げるキラに、ナタルはやれやれと呆れながらも、女性の扱いに慣れていない事が丸分かりな反応に微笑を浮かべた。そして、自分らしくない感想に今度は苦笑してしまう。こういう役は本来はキースの分担の筈なのだが、何で自分が演じているのだろうか。

「多分、らしくない、のだろうな」

 自分もこの艦の空気に随分染まっているとは分かっていたが、子供にアドバイスをするほどに角が取れていたとはな。
 だが、苦笑を浮かべるナタルというのが余程珍しかったのだろう。キラが口を半開きにして呆然としている。それに気付いたナタルがどうしたのか問いかけると、そのままずばりの返事が出てきた。それを聞いたナタルは納得してしまったが、同時にまた笑いが込み上げてきてしまい、小さく声に出して笑ってしまった。

「ふふふふふ、そうだな、確かに、昔に較べれば変わったかな」
「いえ、その、ヘリオポリスの頃のバジルール中尉は、厳しいとか、怖いとか、そういう印象でしたから」
「・・・・・・ふむ、否定できんな」

 胸の前で腕を組み、昔の自分を思い出してみる。確かにあの頃は肩肘を張って、全てを杓子定義にはかろうとしていたように思う。今にして思えば何と余裕が無かったのだろうと失笑してしまうが、あの頃はあれが自分にとって当然だったのだ。

 キラとナタルの雑談は、キラが野菜炒めを食べ終えるまで続いた。夜食を食べ終えたキラは礼を言って食堂を去り、残されたナタルはその皿を洗って棚に戻し、ふと考え込む。

「・・・・・・休暇、か」

 キラをからかった自分だったが、考えてみれば自分も人の事をからかえるほど経験を積んでるわけではない。というか、全く経験が無い。それに気付いてしまったナタルは、どうしたものかと深刻に考え込んでしまったのである。
 ちなみに、エプロンを付けて食堂で悩みこむナタル、という珍しい姿は、幸いにして誰にも目撃される事は無かった。

57私の想いが名無しを守るわ:2004/03/12(金) 22:04
>> 過去の傷
フ、フレイ様まで自爆スイッチを押したがるのかw?
とりあえずカガリ、他人のミスで自爆じゃあ浮かばれんだろうなあ
ミリィは何故にここまで急激に壊れたのか。とりあえずどこかの医者に見せるのが良し

>> ザフト・赤毛の虜囚
とりあえず、愛の逃避行モドキ? フラガ父がどんどんただの外道に
ヴィアさんが変な誤解しなければ良いけど

58過去の傷・77:2004/03/12(金) 22:54
「ミリィ・・・」
「ト−ルは?・・・・・ト−ル・・・・・・ト−ル・・・」
「ミリィ落ち着いて・・・」
「ト−ルはどこにいるの?キラ・・・ト−ル・・・」
「ミリィ!ト−ルは・・・く!」
キラにはっきり言うことが出来なかった、ミリィとてそれは知っている、だけど・・・。
「ト−ル・・・あっちかな?」
歩き出そうとしていたミリィをキラは止める。
「さ、部屋に入ってて」
ミリィを部屋に入れる。
しかし、また部屋から出てくる。
「ト−ル・・・・・・ト−ル・・・・・・」
「ミリィ・・・部屋に戻るんだ」(昨日ト−ルの話をしたのがまずかったか)

フレイとのの部屋に戻ったキラは苦悩した、そうだ・・・ト−ルが死んだときキラのストライクは近くにいたのだ・・・それなのに・・・結局僕は・・・何も出来ない・・・フレイのことにしたってそうだ、力が無いからフレイの父さんを守れなかったんじゃないか・・・そもそも彼女を傷つけた自分が彼女と恋人同士になる資格なんてあるのか?・・・フレイが変わったのは・・・彼女は悪くなんかない・・・利用?復讐?されて当然だ、僕が被害者だって?とんでもない、被害者がフレイ自身じゃないか、それだけじゃない、あの時だってそうだ、彼女の笑顔に見とれて油断した隙にプロヴィデンスに・・・そもそもあんな危ない状況で笑い返すなどとんでもなかった、ニコニコ笑って戦争は出来ないのだ、僕は甘いのだ・・・ほんとはあの時フレイを救ってあげるべきだったのだ、彼女が生きてるからいいじゃないか?とんでもない、そんなものは結果論にすぎない、後の祭りだ・・・ミリィのト−ルの呼んでいる姿を見ると頭がおかしくなる、力が無いのだ自分には、あの少女が乗っていたシャトルだって守れなかったではないか、これ以上誰も傷つけさせない?嘘もいいとこだ、結局口だけだ・・・自分にはなんにも出来ないのだ、最高のコ−ディネイタ−?なんだそれ?そして無意識に呟いた。
「最高もコ−ディネイタ−っていうのは友達を守れない人のことを言うのか・・・?」
キラの視点から見た最高のコ−ディネイタ−とは・・・強いだけじゃない、人を守れる人のことだと思っている。
ミリィは・・・彼女は・・・彼女だってそうだ・・・まだあんなに苦しんでいる、ト−ルだけじゃない、フレイだけじゃない、ミリィまでも・・・あんな女の子までも救うことが出来ないのだ。
「ト−ル・・・?・・・ト−ルは・・・?」
ドアの外からミリィの声が聞こえる、また部屋を出て来たみたいだ。
力が無いから・・・自分にもっと力があればト−ルは死なずにすんだ、フレイはあんな怖い思いを知らずにすんだのだ・・・
ト−ル・・・まるで彼がすぐにでも部屋に入って来るような気がした・・・しかし来ることはなかった。
「ト−ル・・・・・・ト−ル・・・・・・」
ミリィの声が聞こえる、それを聞くと沈痛な思いになってしまう・・・ミリィ・・・彼女すら僕は・・・
「ちくしょう!!!!!」

「きょうだいなんだ・・・私とキラは・・・」
「!!!・・・そうだったの・・・でもそんなことって!」
「ああ、私も最初は信じられなかった・・・でもお前表情変えないんだな」
「・・・びっくりしたわよ、私だって・・・でも実感ないのよね、どうせいままで通りの付き合いになるんでしょ?キラとは」
「ああ、まあな」
「でもちょっと嬉しいかな」
「どうしてだ?」
「ライバルが減ってたもの、恋のライバルよ、キラに近寄る女は私が絶対許さないけど、キラは私と結ばれるというのは決まってるもの、これは運命よ赤い糸で結ばれてるの、私とキラは」
「赤い糸ねえ・・・まあ頑張れよ、それよりさっきからなにジロジロ見てるんだ?」
「だって・・・カガリ可愛いもん♪カガリちゃん♪こっちおいで♪」
「や、やめろ!抱きつくな!」

59過去の傷・作者:2004/03/12(金) 23:08
>>ザフト・赤毛の捕囚
なんていうか、フラガ父が完全な悪役とかしている、逃げ切れるのか?どうも怖いことがおこりそうな予感。
>>翼たち
うむ、ナタルさんのはまともでよかったですな。
それからフレイ様やカガリをデ−トに誘えとは大胆発言を・・・ナタルさん、自分のことも考えはじめてますし、ほんと変わってよなあ。

私のSS、キラの発言。
「最高のですね、訂正しておきます。

60散った花、実る果実36:2004/03/12(金) 23:51
「こちらには少しは慣れたかね。」
当然のように彼は聞く。
「居住区の配置は覚えました・・・ここに居ることについては・・・そう慣れるものではありません・・・・」
しかしもう私に帰るすべはない。
本当は帰りたかった、懐かしいアークエンジェルに。
パパと過ごしたヘリオポリスの、オーブの家に、帰れるものなら帰りたかった。
あきらめたつもりの郷愁が、彼の声によって思い起こさせる。
パパの声。誰より愛してた。もう、2度と会えない。

「疲れたのではないかね?」
口元に笑みを浮かべ、いたわるようにそうささやく彼に、私はすこし癒されるような気がした。
そう、確かに私は疲れていた。
リスティアと・・・少しずつ色々なことが離せるようになってきたけれど、ナチュラルとコーディネイターの溝は簡単に埋まるものではなく、彼女との会話はどうしても緊張感をはらんだものになる。
誰も私の味方ではない、その現実に・・・やはり少し疲れていたのだろうと思う。
「はい・・・・少し・・・・」
しかし私はどこまで、誰に心をひらいてゆけばいいのだろう。
リスティアに、パパの声を持つこの人に心を許していっていいのだろうか。
それでいい、と・・思い始めてはいる。
コーディネイターだと言う事で人を決めるのはやはり正しくない、とも思い始めている。
でも、先ほどのリスティアの拒絶は私の胸に突き刺さったまま。
『コーディネイターとナチュラルは違う種』
・・・そんなことはない。ない、と、思う・・・・・・でも・・・・・・・
「ミリアリアは、真面目すぎるきらいもあるが、あれで中々気の効くいい娘だ。私のいない時は彼女に頼るがいい。もちろん、私がいる時には私を頼ってくれてかまわないがね。」
パパによく似た声・・・でもこの人はパパではない。わかってる、でも・・・
「・・・どうしたね?」
「あの・・・私の扱いは・・・どうなるのでしょう・・・・」
「扱い、とは?」
この人は本当にわからないのだろうか。それともはぐらかしているの?
「私は・・・捕虜、なのでしょう。本来であれば拘束を受けてしかるべき立場だと・・・そう聞きました。ミリアリア・・・・・リスティアも、私が出歩くことで皆に反感を抱かさせる事になっている、と・・・」
すると彼は、ふ、と笑って
「そのような事は君が気にするまでもない事だ。こちらにも色々と事情があってね・・・・君がここに引きこもっていたいというのなら私はかまわないが・・・いずれ役に立ってもらえるのでは、と期待しているのだよ。」
「私が、役に・・・・?」
私がここで役に立つことなどあるのだろうか。彼は私に何を求めているというのだろう。
「そう。まあ、まだわからないがね・・・・しかし、いざというときのために君にもここに慣れていてもらったほうがいいだろう。それもあって、同じ年頃のミリアリアをつけたのだがね。」
「そう、ですか・・・わかりました・・・・」
ではこの服も、私がここで浮いたりしないように、という彼の心遣いだったのだろうか。
意識を取り戻したばかりの時の恐ろしい感じはなかったけれど、彼の考えていることは私には全くわからなかった。

61散った花、実る果実/作者:2004/03/13(土) 00:02
>>流離う
「逃げなくちゃだめだ」・・・逃げとけばよかったのに。
ナタルさんは料理上手ですか。この調子ならキラも野菜好きになれるでしょうか。

>>赤毛の虜囚
今時期的に似たような時期に来てますね。
しょんぼりフレイ様がかわいいと思ってしまいました。うちのフレイ様はちょとしょげてて可哀想ですが。
メルデル編面白いです。しかしあんまり幸せな夫婦生活ではないようですね・・・

>>過去の傷
フレイとカガリの組み合わせは和気藹々として中々いいですね!
うちのフレイ様とミリィにもそうなって欲しいものですが・・・難しいかなあ・・・

>>The Last War
こうなってくると、キラよりアスランの精神状態の方が心配ですね。
アスラン結構もろいところがあるから・・・大丈夫かなあ・・・

>>リヴァオタ
シュールですね!!
写真&イラストは爆笑させていただきました。
それにしてもあの写真はどこからもってきたんでしょう。

62ザフト・赤毛の虜囚 28:2004/03/13(土) 08:24
6.継承 7/12
[ダメ、心が解ける]

私とユーレンは、フラガに見つかって逃げ出した。仲直りさせるはずだったヴィアと会う前に。
ユーレンは、私が泊まっているのとは別のホテルに部屋を取った。呆然とベッドに
座り込む私にユーレンは話しかける。
「とりあえず、シャワーを浴びて落ち着きなよ。僕は部屋を出るから」

私は、ユーレンの気づかいを感じながら、それを受け入れられない。

「なんてことしちゃったの。もうフラガは、あなたを許さない。ユーレン、あなた、
 殺されるわよ。私になんかに構ったために」
「僕が望んでやったことだ。後悔はしないよ」

「嘘! あなたにはヴィアがいるでしょ。今からでも、ヴィアのところへ帰って、
 コロニーから逃げて。私のことは、いいからほっといて」
「ダメだ。君を見捨てる訳にはいかない」

「言ったでしょ。私はフラガの奴隷よ。あいつのオモチャよ。守る価値なんか無い」
「いや、君は、そんな悲しい目をするべき人じゃ無い」

「いやよ、同情してるならやめて。後悔するわ。死ぬほど後悔するわ。さっさと出ていって!!」

返事の代わりにユーレンは、私を抱きしめた。
「いつのころからか、一瞬、自分の視点が別人のそれに変わることがあった。誰なのか、
 分からなかった。ある時、視点が鏡を見ていて、やっと女性なのだということが分かった。
 悲しい目をしていた。それが、君だ。君と出会って、その感覚は無くなったけど、
 僕は、君に悲しい目をさせないことを願った。だから、ヴィアといる君を見るのは、
 僕には嬉しかった」

ユーレンの語る内容に、私は驚いた。私も幽閉されている頃、ユーレンの視点と一瞬重なることがあった。
その目が見るのは、研究室の複雑な器具だったり、同じ研究員だったり。そして、裸で顔を上気させ
見つめるヴィアだったり。私とユーレンは、出会う前、不思議な感覚で繋がっていた。
出会った今は失ってしまったけど、私達二人には出会う運命があった。

でも、もう遅いのよ。ユーレンはヴィアと結ばれ、私はフラガの虜囚となった。今さら出会っても、
悲しいだけ。

「いや、離して。私を離して。ダメよ絶対ダメ」
「僕が君を守る。研究所だって、フラガ氏の言いなりじゃない。君を守る力はあるよ」

「嘘! 嘘よ、嘘! 嘘ばっかり。みんなフラガが壊しちゃう。みんな不幸になる。
 私のせいで、私のせいで」
「大丈夫だ! 大丈夫だ、メルデル。心配しないで。僕を信じて」

ユーレンは、私に口付けしてきた。私は抵抗する。ダメ、心が溶ける。ダメ、絶対ダメ……

私は溶けてしまいそうな心をなんとか繋ぎ止めようと、やっと言葉を出した。
「私、奴隷よ。妊娠できないように、体に何か入ってる。フラガの奴隷の証しが……」

「知ってるよIUDのこと。僕がコーディネータの妊娠のために取り出したから。そして、
 今は入っていないことも。あれは装着する時期があるんだ。今、君は自然に受精できる。
 奴隷なんかじゃない。自分の意思で恋して子供を授かる、普通の女性だよ」

ユーレンは、さらに私をきつく抱きしめた。私の心は、もう……

「ヴィアを捨てるの……」
「後悔していないと言ったら嘘になる。でも、君を見捨てることはできなかった。
 もう、戻れない。だけど、君のためなら覚悟を決める。
 …… 君を守りたい。…… 愛してるメルデル」

私の心は溶け落ちた。

63ザフト・赤毛の虜囚 29:2004/03/13(土) 08:30
6.継承 8/12
[二億分の一の奇跡]

「私、こんなの初めて、こんなに安らかな気持ちになれたの……」
私は、心の底から呟いた。隣に寝ている男は、それを聞いていないかのように何も言わない。

「ねえ、聞いてる? 答えてよユーレン」
「言うまでもないだろ、僕もさメルデル」

私は、ユーレンの感覚に入り込んだことがある。男の生理を感覚で分かっている。
私は自分で体をユーレンにピッタリくっつけ、その言葉だけで満足する。
ユーレンは、私に入った時の記憶を思い出したのか、余韻を求める私の腰に手を回し、
ゆっくり、さすり続ける。

私、ユーレンと不倫している。大切な友達のヴィアを裏切って。
でも、私はもうユーレンを手放せない。ヴィアに絶対返したくない。

* * *

私、ヴィアと会っている時、こんなことを話したことがある。

「私、幸せなんかじゃないわ」私は、ヴィアと談笑する中、急に暗く視線を落として言った。
「そんなこと無いわよ」ヴィアは、急に態度の変化した私を慰めるように話す。

「嫌、違うわよ。私……私、あなたに嫉妬しているかも」
「どうしたのメル。私、そんなつもりは……」

「奪うかもしれない。私、あなたからユーレンを奪うかもしれない」
「メル、そんな馬鹿なこと……」

私の口から漏れた心のかけらに、ヴィアは不安げに顔を曇らせた。
そんなヴィアを見て、私は自分の心を押し込め、表情を明るく変えた。

「嘘。そんなの嘘。嘘よ…… 私が、そんなことする訳ないでしょ」
「もう何言ってるのよ!」

「本気にした?」
「この馬鹿!! 意地悪!」

その時、ヴィアは不安に表情を曇らせ、次に、私の否定の言葉に、恥ずかしそうに
顔を真っ赤にしていた。まるで、一途に恋する純情な乙女のように。

* * *

時折、男っぽい言葉をするくせに、心は純真なヴィア。それを、汚れた女の私が侮辱した。
ヴィアは、多分、許してくれないと思う。もう、私はヴィアには会えない。
さようなら、ごめんなさい、ヴィア。

私は、私のお腹に触れた。ヴィアが、退院の日に、私のために送ってくれた言葉を思い出した。

「自然の受精ってのはね。二億もの精子が競い合い、たった一つだけ卵子と結ばれるのよ。
 まさに劇的瞬間」

「それまで、精子は長い長い旅をして、卵管まで辿りつくのよ。そして卵子と結ばれて、
 また卵管を戻って子宮に入って行く。ここで私の仮説だけど、精子って子宮を旅してきて
 そこで、自分の戻るべき場所を先に見つけて覚えているのだと思う。そして、卵子と一緒に、
 そこへ戻って着床する。それで赤ちゃんになる」

今、ユーレンの精子が、私の体を旅している。私の体を覚えながら。そして、卵子と出会う。
いや、もうコーディネータの手術で無茶苦茶になった私の体は、いつ排卵するかも分からない。
そのまま精子は、捨て駒として死んで行くのかもしれない。でも、それは、可哀想じゃない。
精子は二億分の一の奇跡を信じて死んで行く。後から、それを継ぐものがあるから。

ああ、ユーレン。これで良かったのかな。私には分からない。でも、私、今とても幸せよ。
もっとして。一杯して。あなたのに、私の体をしっかり覚えさせて。
二億分の一の奇跡のために。

64ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/13(土) 08:35
メルデルの話、ひとまず終了です。次は、やっとフレイの活躍。パナマ戦、独自解釈でお送りします。

>>流離う翼たち
ナタルは、まともで良かったですね。次のマドラスは休暇ですか。ファーストだと、
アムロが母を尋ねて行ったり、セイラとミライが水着で、ぬえの松崎さんが、後で訂正した
問題の台詞を言ったりしてましたが、TV本編では、ほとんど、こんな雰囲気の無かったSEEDでは、
どんなことになるのでしょう。楽しみです。

>>過去の傷
ミリィは、いつのまにかカップル鞘当てを繰り返しているエターナルの中で一人取り残されて、
しかも、キラにトールの思い出を刺激されて、心が壊れかけているのですね。今のところ、
そんなミリィに気づいているのはキラだけ。キラは、どうするのでしょう。
でも、フレイ様は、悩んでいるキラに気づかず、カガリにハグ。キラ・ハグ魔のカガリの面目まるつぶれですね。

>>散った花、実る果実
フレイ様、少しずつクルーゼに心を開いてきていますね。この部分が、一番難しいところだと思います。
私の方も頑張ります。メルデル編、お誉めくださって、ありがとうございます。この後も出てきますので
期待していてください。

65流離う翼たち・431:2004/03/13(土) 21:23
 マドラスにたどり着いたアークエンジェルは、基地のドックに入渠するなり早速修理が始められた。何しろヨーロッパでは完全な修理を受ける事は出来なかったので、これが始めての本格的な修理と点検という事になる。考えなくても試作艦を整備無しで数ヶ月運用する事それ事態が間違っているのだが。
 入渠中の艦艇のクルーには当然の事ながら休暇が出される。普段は忙しくて仕方が無いマリューやナタルも、あんまり忙しくないフラガやキースも暫くは艦を追い出されて休暇を楽しむしかないのだ。

「ふう、困りましたね。私はどうしたら良いんでしょう?」

 ナタルに問われたマリューは荷物袋を担ぎながらナタルを見やった。

「どうしたらって、貴女は休暇をどうするのか考えてなかったの?」
「はい。てっきり艦の補修のチェックをやらされるとばかり考えていましたので」
「ここのドックは設備も人員も充実してるから、私たちの出番はほとんど無いわよ。時々回されてくる報告書に目を通すくらいで、私1人で楽に終わるわ」
「・・・・・・では、私はどうすれば?」
「街にでも出てショッピングでもしてこれば。どんなに不満でも一週間はやる事無いんだし」
「1人でですか?」

 困った顔で言うナタルに、マリューはニヤァと嫌らしい笑みを口元に浮かべ、表情を崩した。それを見たナタルがビクッと身体を引く。

「何言ってるのよナタルゥ? こういう時こそチャンスじゃないの」
「な、何のことです?」
「惚けちゃって。キース大尉に決まってるじゃない」

 ニヤニヤ笑いを浮かべて近付いてくるマリューに、ナタルはじりじりと後ずさった。何と言うか、表情が追い詰められた小動物のように引き攣っている。対するマリューはもう面白くて仕方ないと言いたげに緩みまくっていた。

「チャンスよ。ここで一気に勝負に出なさい」
「ななななん、何の勝負です!?」
「分かってるくせに。いい、ポイントは如何に男をその気にさせるかよ。少佐と違って大尉はちょっと枯れてるから、うまくムードを作って誘導するか、露骨にアピールするかのぢちらを選ぶかが問題だけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 マリュー御姐さんの為になるデートの決め手講座を、いつの間にかナタルは神妙な顔で聞き入っていた。だが、それが些か熟練というか、男を扱うのに慣れたマリューから出たものだという点に問題があり、マリューには当たり前のことでもナタルには顔から湯気が出そうなほどに刺激的なアドバイスばかりであった。

「じゃあ、頑張りなさいよ、ナタル」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ポンとナタルの方を叩いてマリューはアークエンジェルから出て行く。残されたナタルは顔を真っ赤にして本当に頭から湯気を出してそうなくらいにのぼせていた。

66流離う翼たち・作者:2004/03/13(土) 21:34
>> 過去の傷
ミリィさんは本当に病院に入れる必要がありそうですな。キラの苦労はどんどん増えて
フレイ様とカガリは、まさか百合w?

>> 散った花、実る果実
ミリアリア嬢は今回出てきませんでしたか。
クルーゼの甘言に踊らされてはいけないぞ、フレイ様

>> ザフト・赤毛の虜囚
はうう、泥沼だ、火曜サスペンス劇場だ
人は何時も過ちを繰り返すのでしょうか・・・・・・

67The Last War・13:2004/03/13(土) 23:03
「そうだ。この機体はかつて、パトリック・ザラがジェネシスの『番人』として準備していたもの・・・」

 ジェネシス。その名を聞き、キラの中で悲惨な記憶が甦った。それはかつての大戦末期、たった一撃で地球軍主力艦隊を、そして月面の大西洋連邦軍本部基地を灼き払った禁断の兵器。そのことを思い出すこと自体、彼には悲痛さを伴うものであった。

「・・・だが結局、ボアズへの核攻撃が原因で計画は凍結され、開発中だった機体そのものは解体され登録を抹消された筈だ!にも関わらず、何故貴様等がその機体を?!」
「これは彼が遺してくれたデータを元に、我々が手を加えて生み出したものだ。貴様の知っているデータなど何の役にも立たんぞ、アスラン・ザラ?」
「・・・『彼』?」
「そう・・・、私の、たった一人の友だった男のことだよ」

 『友』、その意外な言葉を前に、キラとアスランの二人は呆然とした。この冷酷非情な男にも、そのような存在がいたなど、考える方が難しいだろう。そんな二人の様子を知ってか知らずしてか、アレクセイは語り始めた。

「・・・彼と出会ったのは、私がまだプラントにいた頃。その時、彼は私に色々なことを教えてくれた。特に人の愚かさ、そして今あるこの世界の無意味さをな・・・。キラ・ヤマト、アスラン・ザラ、貴様達のことも彼から聞かされていた・・・」
「!!」
(まさか・・・!?)

 その瞬間、二人の脳裏に一人の男の顔と名前が浮かび上がった。

「彼は、誰よりもそんな堕落した世界のことを憂れいていた。それを救済することだけが、彼の望みだった。だが結局、彼はその望みを叶えることは出来なかった・・・」
「・・・・・・」
「・・・しかし、彼の夢はまだ終わっていない!彼は私に、その役目を委ねたのだ!」
「・・・黙れ」

 突然、アスランが口を挟んだ。その荒い声には、明確な敵意が込められている。

「その男に何を吹きこまれたかなどに興味は無い。だが、貴様のしようとしていることだけは分かる・・・!」
「・・・ほう。ならば、どうする?」
「これ以上、貴様達を野晒しには出来ない!貴様が隊長・・・、いや、ラウ・ル・クルーゼの怨念に取り憑かれているというなら、尚更だ!!」
「フフッ・・・、そうだ、それで良い!我が首、挙げてみせろ!!」

 相手にそう告げると、アスランはキラに向き直った。事実を明かされたためか、彼は項垂れる様にシートに座っていた。

「・・・キラ、俺は奴を倒す。もう他に方法は無いからな」
「・・・アスラン、僕のしたことは、やっぱり無意味だったのかな?」
「!キラ、お前・・・」

 その時のキラは、今にも消えて無くなりそうなほどに沈んでいた。そんな様子の彼を励ますように、アスランは彼に語りかけた。

「・・・いや、お前のしたことは間違っていない。だからこそ、俺は奴らが許せない・・・」
「アスラン・・・、有難う・・・」

 しかし、キラの表情は未だ沈痛な面持ちのままで、それが変わることは無かった。

(・・・そう、お前はお前のままで良い。業を背負うのは、俺だけでいいんだ・・・!)

 この時、アスランは一つの決意を固めていた。

68過去の傷・78:2004/03/13(土) 23:05
通路を歩いていたキラは。
「あ、サイ」
「キラ」
そうだ・・・。
「あの・・・サイそのミリィのことでちょっと・・・」
事情を説明した。
「そうか・・・そういうことなら今日も中止だな、じゃあミリィは俺にまかせろ」
「うん、ありがとう」
そんな時だった。
「あら、お二人方どうなさいましたの?」
「あ、ラクスさんこんにちは」
「あ、こんにちは」
「キラ様にサイさんこんにちは」
キラは彼女しかないと思った、キラは話をきりだした。
「あの・・・ラクスさんに頼みたいことがあるんですけど」
事情を説明した。
「そういうことですの、分かりましたわ、私の歌でよければ・・・」
「はい、ラクスさんの歌ならミリィも落ち着くと思うんですよ、ですから・・・お願いします」

その夜のことである。
キラとフレイの部屋では。
「ええ、ばっちり覚えたわ、私才能あるかもしれないわ」
「そう・・・でもカガリがねえ・・・そうだ」
「キラ?」
「明日からは僕が君に教えよう」
「え!?キラが教えてくれるの!?やった!」
「う、うん・・・さっそくだけど明日は実戦練習にするよ、カガリとモビルス−ツ戦をやってもらう」
「ええ、分かったわ」
「でも・・・実をいうと僕は君にはモビルス−ツの操縦はしてほしくない・・・だから明日もできるだけ練習時間の少なくする」
「キラ・・・分かったわ・・・・ねえキラ」
「なに?」
「話しない?」
「話?」
「うん、ほらア−クエンジェルにいた頃の私達ってろくにちゃんとした話なんてしたことなかったじゃない・・・傷つけ合うばかりで・・・私もそう・・・復讐のことで頭がいっぱいだった、キラは戦って死ぬのってずっと思ってた、そのために貴方に女として接近したわ、貴方を誘惑した・・・いろんなことがあった・・・貴方の好意に対して同情だと思い込んで貴方に罵声を浴びせた・・・でもいまは違うわ・・・貴方も分かってると思うけど、それで貴方のことが知りたいの・・・ゆっくりこうして二人で話したかったの」
「フレイ・・・」
そう、私はキラとゆっくりこうして目と目を向き合って正面から話がしたかったの、それが私の望みでもあったの・・・ごめんねキラ、ほんとの貴方を見ようとしないで、悲しませて・・・傷つけて・・・ごめんね、キラは私の行為に対して全て許してくれた・・・だからこれからはキラの彼女として、恋人として、そしてキラの人生のパ−トナ−としてこれからもうんとやさしくしてあげよう・・・パパ、私この人に決めたわ、キラと将来結婚するわ、私キラが好きで好きでたまらないの、キラに決めたわ。
「うん、そうだね・・・僕も君とゆっくりこうして話がしたかった・・・僕の思い出について話すね」
キラは話した、名前が出さなかったがアスランとの幼少時代について話した、フレイは黙って話を聞いていた、一時間程話した、ア−クエンジェルの頃の二人では考えられないことだっただろう、いまの二人がほんとうの恋人というものだろう。
「そうなの・・・大事な友達なのね」
「うん、トリィも彼が作ってくれたものなんだ、僕にとっては一番の友達なんだ」
「そう、あら、もうこんな時間ね、キラ寝ましょ」
「うん」
キラとフレイは同じベッドで同じシ−ツの中に入る。
「キラ・・・おやすみ」
「うん、フレイ・・・おやすみ」
二人は眠りについた。

69過去の傷・作者:2004/03/13(土) 23:25
>>散った花 実る果実
クル−ゼ隊長の言葉に飲み込まれないようにしてくださいねフレイ様。
フレイ様頑張れ。
>>ザフト・赤毛の捕囚
この恋愛劇にはなにがあるんだ?まあ・・・これを元にした人達は誰だか想像できますが。
そして次からはフレイ様ですね、頑張ってください、いつも面白くて早く読むのが楽しみです。
>>翼たち
なんという、マリュ−さん機嫌いいですね、そしてナタルさんにアドバイス、頬が赤くなったナタルさんはやっぱりいいですね、ナタルさんがどういった行動を起こすのか楽しみです。
>>The Last War
この男は・・・まさかあの人とも知り合いだったとは。
アスランが怒っている、決意・・・だいたいは分かります。
不穏な空気が。

70The Last War・作者:2004/03/13(土) 23:29
 アプカリプスのイメージはクロスボーンのディビニダドみたいな非人型の機体です。
 
》赤毛の虜囚
 アル・ダ・フラガは酷い奴ですね。メルデルさんだけでなく、ムウさんも幼い頃苦労したんでしょう。
 それに比べるとユーレンは良い人に思えますが、そんな彼が後に何故あんなことをしてしまったのか、気になります。
 次回のフレイ様サイドに期待させて頂きます。

》過去の傷
 ミ、ミリィが大変なことに・・・。取り敢えずトールは無理でも、ディアッカを無理矢理にでも引っ張ってきた方が良いのではw?
 フレイ様とカガリが仲良しになってきてますが、ここまでくると別の意味で怪しいですねw。

》散った花、実る果実
 今更ですがクルーゼ・・・、そこまで優しくしておいて何故あんなことを・・・(涙)。役に立つとか言ってますが、メンデルでの場面はいつ頃になるんでしょうか?

》流離う翼たち
 今回のナタルさん、可愛かったですね。キラに対してはまるで姉のような接し方でしたし。
 次回は久々に休暇ですか。今回はどんなことが起こるんでしょうか?楽しみです。

71ザフト・赤毛の虜囚 30:2004/03/14(日) 07:40
6.継承 9/12
[私に一杯染み込ませて]

「キラ、私達、間違ってなんか無い…」
「ああ、そうだねフレイ、僕は君のこと………」

(とても幸せ……)
私は夢を見ていた。

ブリーフィング・ルームのような部屋の椅子で、私は長い眠りから目を覚ました。
まだ、夢の余韻で、頭がぼうっとしている。夢の内容は思い出せない。でも、心には、
その残り香がある。キラと見つめ合った時のことだったかもしれない。私は、しばし、
それを慈しむように反芻する。

(もっとして。一杯して。私に一杯染み込ませて)

あれ、私、こんなこと考えてたっけ?
どうして、分からないの? 自分のことなのに……

キラとのこと、最初は無我夢中だった。考えもしなかった。痛みだけを感じていた。
これが復讐なのだと思っていた。

途中、月のものがあって、それから避妊を意識しだした。でも、戦艦の中、孤立している私には、
どうしたらいいのか分からなかった。そんな時、キラもフラガ少佐に言われたらしくて、
避妊に協力してくれることになった。

でも、それから、私達は欲望に溺れて……
避妊のために、いろいろして…… かえって、エスカレートして……
マリューさんからピルと避妊具をもらったのは、キラがオーブに仕事に行った後だった。
もっと、早くもらっておけば……

キラが私を最後に抱いたのは、オーブに仕事に行く日の前日。キラを一杯、私の中に染み込ませた。
それが、キラとの最後。お姫様の奇麗なドレスを着たカガリに嫉妬して、私の方からキラを
満足させたくて、それができなくて、翌日、私はキラに懇願したのだ。キラを力一杯抱きしめて……

あれから数えると、もう一ヶ月も過ぎている。夜ごとに、私を悩ませた体の渇きも、いつのまにか、
すっかり納まっている。キラの体の感覚は、ずいぶん遠くなってしまった。今は、時折、思い出される
記憶のみがキラの体を呼び起こさせる。私は、また、夢の余韻にすがるように想いを馳せた。

72ザフト・赤毛の虜囚 31:2004/03/14(日) 07:44
6.継承 10/12
[ここは君専用の観覧室だ。堪能してくれたまえ]

一人想いにふける私。やがて、ドアの開く音がした。入ってきたのはクルーゼだった。
私は、また上着から銃を取り出して構えた。銃を持つ手は、やはり震えている。今までと同様、結局、
撃てないのは分かっている。それでも、何も無い無防備な姿を晒すよりは心が休まった。

相変わらず、クルーゼは銃を向けているのを、意識していないかのように話しかける。
「戦争が始まるよ。見たいかね」

クルーゼは、私の意思を聞くまでもなく、モニタのスイッチを付けた。いくつかあるモニタに、
戦場を写す各所のカメラからの映像を映しだした。

「司令部は別の場所にある。ここは君専用の観覧室だ。堪能してくれたまえ」
「なんで私を……」

私は困惑した表情でクルーゼに問いかける。銃は相変わらず震えている。

「世界がどうなっているのか。私が何をやっているのか君に知ってもらおうと思ってね」
クルーゼは、モニタを示した。

やがて、戦争が始まった。モニタの映像は次々と自動的に切り替わりながら、戦いの様子を
映し出して行く。

──海から現れたずんぐりしたモビルスーツがミサイルを打ち出し、船を次々に沈めて行く。
──羽根を持つモビルスーツが次々と戦闘機を打ち落とし、地上の砲台をつぶして行く。
──宇宙から降りて来たらしい降下ポッドが飛び散り、中からモビルスーツが現れる。
   それらは次々と銃を打ち、戦車をつぶし、施設を破壊して行く。

だけど、それらのモビルスーツも無事とは限らない。

──海のモビルスーツの体に無数の穴が開き沈んで行く。
──羽根のモビルスーツも、地上から放たれた火線で手足を失い四散していく。
──降下ポッドから出てきたモビルスーツも、やがて多数の戦車に囲まれ地に倒れて行く。

というより、攻め込んだ、ほとんどのモビルスーツが最終的には倒されているように見えた。
なまじ人に似た姿をしていることで、その破壊される様は、とても残酷に見える。
私は、その恐ろしさに目を蓋った。

「どうだね。戦争を、こういう形で見るのは」
クルーゼは満足そうに話す。

「爆発するモビルスーツ、戦闘機、戦車の一つ一つの影で、どれだけの人命が失われるか、
 考えたことがあるかね。戦場では命など安いものだ。一瞬で失われる。それでも、
 母国のため大義のために人は戦い続けるのだ」

クルーゼは、私には構いもせず、一人、悦にいったように語り続けている。

「やめて! こんなこと」
私のクルーゼに向ける銃の動きがピタと止まった。クルーゼの心臓に向けられた。

73ザフト・赤毛の虜囚 32:2004/03/14(日) 07:48
6.継承 11/12
[そのために、一人の命を犠牲にしたというのに]

戦場で、次々に破損し、四散していくモビルスーツ。戦闘機。戦車。そして、死んで行く人。
それをモニタで見ながら語り続けるクルーゼ。

私のクルーゼに向けていた震える銃の動きが止まった。クルーゼの心臓に向けて。

「ほう……」 クルーゼは関心したように声を上げて、私を見ている。

私の中には、かつての自分自身の言葉が蘇っていた。

  ── キラ、守ってね。あいつらみんなやっつけて。
  ── キラ、あなたは戦って戦って死ぬのよ。じゃないと許さない。

  キラは、こんなものをずっと見てきたの。私は、キラにこんなことをさせていたの?
  戦って辛くて泣いて、それでも私のために立ち上がって、泣くのを我慢して。
  そして……、いつの間にか泣かなくなったキラ。

  私は、アークエンジェルで同じように戦場を見ているはずだった。でも、ずっと目を
  背けていた。ベッドで毛布にくるまり、キラが守ってくれることだけを考えていた。
  そして、戦場で身も心も傷ついて帰ってきたキラに、私は安堵と、さらなる保身の契約のつもりで、
  自分の欲望をぶつけることしかしていなかった。

  当たり前だ、キラが、私以上に欲望に溺れたのは。私を狂ったように抱いたのは……
  キラが変わっていったのは……

「やめて! こんなこと」 私は、銃を突きつけて、もう一度言った。

「フレイ・アルスター、連合の兵士として、私を撃つかね。私を撃てば、少しは、
 この状況も動くかもしれないな」

クルーゼは、相変わらず動じない。まるで自分の命そのものに興味が無いように。

「だが、戦争は一人でするものでは無い。ほんのちょっと状況が変わっても、戦争そのものは
 終わらない。どちらの優勢に働いても、立場が入れ代わるだけで、そこで失われる人命は同じだ。
 何も変わらない。そのために、一人の命を犠牲にしたというのに」

また、私の銃が揺れ始めた。

  キラ…… その命を散らして、得られたものが何一つ無かったことに私は愕然とした。
  結局、アラスカに行っても何も変わらなかった。そのまま、アラスカも自爆して……
  残ったのは、私一人。それも、何もできない捕虜。

  アークエンジェルで、キラが守ろうとした人の顔が次々に浮かんだ。マリューさん。
  フラガ少佐。ノイマン少尉。マードック曹長。サイ、カズイ。そして、ミリアリア。

  私の中に、ミリアリアの狂気の顔が浮かんだ。ミリアリアはトールを失った。
  いや、ミリアリアはキラとトールの二人とも失ったのだ。なのに、それで得られたものは、
  なんだったというのだ。ただ、悲しみの心だけ。だから、ミリアリアも狂った。
  私を傷つけた。私から全てを奪った。私を失意のどん底に落とした。

  だけど、それを責めることはできない。それは戦いの生んだ狂気、誰にでも内に秘めるもの。
  私は、それを一番良く知っているから。私も同じようにパパを失って、キラを傷つけたのだから。
  そして、サイまでも辛い目に合わせてしまった。

「それに、以前も言ったように、君が、今ここで私を撃っても、その直後に君は死ぬ。
 兵に撃たれてな」
クルーゼは、薄笑いを浮かべている。

「それでも、自軍の大義に忠実であり、命を捨てる覚悟があるのなら構わないが……
 だが、君には似合わんな。軍服を着ていても君は軍人ではあるまい」

  そう、私は、そんな覚悟なんか無い。軍に入ったのだって復讐のためだった。それすら、
  自分では手を汚さずキラを頼っていた。

「もうすぐ、フィナーレが始まるよ。何が起こるか期待していてくれたまえ」

クルーゼは出て行った。私は、銃をダラリと下に垂らした。そのまま、銃は床に落ちた。
そして、二度と拾われることは無かった。

74ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/14(日) 07:50
パナマ戦、TV本編ではフレイの出番は、ここまでですが、SSでは、まだクルーゼの言う
フィナーレの一話が残っています。

>>流離う翼たち
A.A. 修理ですか。TV本編のような訳の分からない理由でオーブで修理というよりもいいですね。
マリューさん、ナタルの援護で、迷指揮官ぶりを発揮してますね。しかし、ナタルが実直に、その作戦を
実行するとしたら見物です。

>>The Last War
クルーゼの狂気の連鎖再びですか。彼のことを言われると、まだキラは辛いのですね。
アスランが男として決意している。これが状況を動かすのでしょう。かっこいいです。

>>過去の傷
ついに、キラが動きだしました。サイにラクスとは、TV本編を考えると以外(?)な人脈ですね。
見事、ミリィを癒すことができるのか? キラとフレイ様の、ほのぼのシーンも良かったです。

75流離う翼たち・432:2004/03/14(日) 20:19
 同じ頃、アークエンジェルが入渠しているドックの外では、同じ官舎をあてがわれた(というより、フレイが与えられた士官用官舎にカガリとミリアリアが転がり込む形で一週間同居する事になった)3人が荷物袋を背負ったり、鞄を持って歩いていた。

「とりあえず、今日は宿舎に行って部屋割り決めたり、色々しなくちゃね」
「そうだな。まあフレイのおかげで雑魚寝から解放されるんだから、フレイの指示優先だけどな」

 そう、兵士であるミリアリアと傭兵扱いのカガリは本来なら兵士用の共同官舎に放り込まれる筈だったのだが、フレイがそれなら家に来ないかと誘ったのだ。本来なら士官とはいえ、仮官舎に一軒あてがわれる事は無いのだが、仕官の消耗が早くて官舎に空きが多かったのだ。これまでのアークエンジェルの苦労を考えたマドラス基地司令の好意でこれらの官舎が士官に開放され、マリューたちは大きな家を1人で使える幸運に恵まれたのである。
 ちなみに、キラの家にはサイ、トール、カズィが転がり込んでいる。トールは官舎を与えられていたのだが、キラの所に転がり込むからといって辞退している。
 他にもキサカがキースの家に転がり込んでいたりと、中々面白い状態になっている。

「でさあ、午後からどうする。街にでも行く?」
「街かあ。大丈夫かなあ」

 ミリアリアの提案にカガリが考え込む。何か都合が悪い事でもあるのだろうか。そしてフレイもまたすまなそうに両手を顔の前で合わせている。

「御免、私はこれからマドラス基地に行かなくちゃいけないのよ」
「あら、何かあるの?」
「士官は全員司令官に挨拶に行くんだって。艦長に私やトールも出ろと言われてるのよ」
「ふうん、じゃあキラやキースたちも出るんだ」
「そうね。だから悪いけど、街には貴女たちだけで行って頂戴。なんならサイやカズィも誘ってさ」

 フレイに謝られたミリアリアとカガリはどうしたものかと顔を見合わせたが、2人して同時に溜息をつくと、仕方なさそうに微笑を浮かべた。

「まあ、まだ明日もあるし、今日は良いさ」
「そうね、今日は官舎の掃除でもしてましょう。一週間はお世話になるんだし」
「うう、御免」

 すまなそうに謝るフレイに、2人は小さく笑って気にしなくて良いと言うのだった。料理の出来ない3人だが、掃除くらいはできるのだろうか。



 ちなみに、男どもの方はというと・・・・・・・・・

「何だよこの家、埃が溜まってるぞ」
「こりゃまず掃除しないと使えないよ」
「大変だねえ」
「そうだなあ」

 困り果てたサイとカズィとは対照的に、キラとトールは余裕の表情だ。その一言にサイとカズィがギンと2人を睨む。

「お、お前ら、まさか俺たちに押し付けて逃げ出そうとは思ってないよな?」
「御免ねサイ。これから基地に行かなくちゃいけないんだ」
「ああ、軍人は辛いよなあ」

 そう言ってずりずりと後ずさっていく。それを見たサイとカズィが何か言おうと口を開いた瞬間、2人は脱兎の如く逃げていった。

「待てこらぁ!」
「この卑怯者〜〜!」

 2人の非難の声は届かず、キラたちが帰ってくる事も無い。サイとカズィは裏切り者2人に憎しみで人が殺せたら、と言わんばかりの憎悪を向けていたのだが、やがてそれも空しくなり、仕方なく掃除道具を手に掃除を始めるのであった。

76流離う翼たち・作者:2004/03/14(日) 20:32
>> The Last War
むう、キラとアスランは運命の対決をする事に。アスラン君が特攻しそうですが
しかし、仮面の遺志を継いだならば、やはりホークアイが決着をつけるべき・・・・・・

>> 過去の傷
あえて言おうフレイ様、人生そんなに早く決めちゃいけませんw
将来にもっと良い男が現れる可能性はかなり高いので、キープ君に留めておきましょう

>> ザフト・赤毛の虜囚
パナマ戦ですか。フレイ様は抜け殻状態でぼんやりしてる時期ですな
反応は少しは違うのかな。とりあえず拳銃のブレが止まったのは、撃つ気になったと
グングニル後の惨状にどう反応するのでしょうなあ

77過去の傷・79:2004/03/14(日) 21:31
その一時間後のことだ。
(ミリィの様子でも見に行くかな)
フレイと部屋を一緒に過ごし、一緒に寝ているキラ、こんな可愛い子にべた惚れされてるだけでも幸せなのだが、一緒に寝るなんてキラは幸せだろう・・・ただ一緒にずっと寝ていて分かったのだが、一つだけ気になることがあるのだ・・・それがこの・・・
「パパ・・・私将来はサイと結婚するの」
(まただ・・・)
そう・・・この寝言である、それも毎晩だ・・・。
「あんた、自分もコ−ディネイタ−だからって」
(!!!)
「本気で戦ってないん・・・う−ん・・・むにゃむにゃ・・・」
(なんなんだ!?あの時の夢を見てるのか・・・?)

「ト−ル・・・ト−ル・・・」
「困りましたわ・・・先程からそればっかり・・・」
ラクスがミリアリアを落ち着かせるようと歌を歌ったりしているのだが、ミリアリアはこの調子だ。
「あらら?もうこんな時間・・・アスラン・・・今日は一緒に強引にでも寝ていただきます」
「・・・ト−ル?」
ト−ルではなかった。
「ミリィ」
「あら、キラ様・・・では私は失礼します」
「あ、ラクスさんありがとうございました」

「ミリィ・・・昨日ト−ルの話をしたのは悪かったよ、だからごめん」
もっとも全ての原因を作ったのは出て行った歌姫なのだが・・・。
「うう・・・ト−ル」
浮気になるのは分かってる、でも・・・ほっとけないのだ、特にこんな可愛い女の子は、それにミリィとは友達だから・・・友達は励まさないと。
ミリアリアの目の下には隈が出来ていた、昨日は眠れなかったのか。
「キラ・・・そんなはずないの」
「ミリィ」
「ト−ルが死んだなんてそんなの、信じられないよ・・・私・・・遺体はまだでしょ?・・・」
「・・・くそ・・・くそ!!!」
地面と思い切り叩く、戦争というものをキラは憎んだ、叩いた手が痛む。
「痛い・・・痛い・・・痛い!!!」

次の日の朝、そう・・・ついにフレイのモビルス−ツ戦初日である。
「さあ、頑張るわよ・・・」

ハッチでは。
「今日存分に楽しまなきゃ、だって明日は休みだもん」
そう、実はあのあとモビルス−ツに乗る代わりにキラに条件を出されたのだ、操縦は二日に一回、それもたったの一日一時間(さらに休憩時間十五分も含まれている)なのだ、フレイは不満そうだったが・・・渋々条件を呑んだのだ、まあこれもキラがフレイをそれだけ大切に思ってるからである、恋人でもあるがキラにとっては(フレイにとってもそうだが)フレイはこの世で一番大切な存在なのである、アスランよりもだ・・・。
カガリがやってきた。
「おはよう」
「カガリ♪おはようカガリちゃん♪」
「や、やめろその呼び方は!」
「だって可愛いんだもん」
「な!・・・」
「ふふ・・・可愛い♪」
そんな時キラがやってきた。
「そろったね」
「あ、キラ!」
あわててカガリは逃げるようにキラの後ろに回った。
「キラ・・・」
フレイはキラが来たので頬を少し赤く染める、フレイも本気で好きになった人に対しては可愛い仕草を見せるのである。
カガリが機体について聞いた。
「機体はどうするんだ?ル−ジュは一つしかないぞ」
「ああ、カガリはMIアストレイに乗ってもらう、大丈夫組み換えも完了したから」
「キラ・・・私は?」
「フレイは・・・僕の愛機フリ−ダムで」
「な!?ちょっと待て!?」

78過去の傷・作者:2004/03/14(日) 21:40
>>ザフト・赤毛の捕囚
あの頃ですかですか・・・でもクル−ゼ隊長・・・貴方は・・・
フレイ様、よかった・・・でも震えている・・・うむうむ・・・可哀相・・・一人ぼっちで・・・でもとりあえず銃を離してよかった。
>>翼たち
掃除・・・軍人のいいところと悪いところが感じられるなあ・・・フレイ様はいないけど、カガリとミリィはどうするんでしょ・・・サイ達を誘うのかな?それも見てみたいです・・・

79ザフト・赤毛の虜囚 33:2004/03/15(月) 04:28
6.継承 12/12
[キラを継ぐ資格]

やがて、また宇宙から降りてきたらしい、ひときわ大きなポッドがモニタに映った。
複数のモニタに同じものがいくつも映っていた。それに、モビルスーツが取りついて行く。
その途中、モビルスーツは次々に打ち落とされていく。その中で、コーディネータという人が
死んで行く。やがて、何機もの犠牲を糧に一機のモビルスーツがポッドに辿りついた。
別のモニタのポッドでも、辿りついたモビルスーツがいる。未だ、取りついていないのもある。

その様子は、ここで、まったく場違いなものを、私に想像させた。卵子への受精。
二億もの精子が、数々の困難を経て、遺伝子を継ぐために卵子を目指す。
そして、辿りつけるのはたった一つの精子。それだけが、実際に受精できる。
残った精子は、捨て駒として死んで行く。でも、それは可哀想じゃない。
精子は生命でさえ無いから。生命を創るためのシステム。遺伝子を男から女に
運ぶだけの器。

これは、誰から聞いたことなんだろう。サイと、こんな話するはず無い。
やっぱり、キラ? でも、いつ聞いたのか思い出せない。

やがて、ほとんどのポッドにモビルスーツが辿りついた時、モビルスーツの操作で、
一斉にポッドが弾けた。まばゆい光。だけど、爆発では無かったように思う。
Nジャマーがあるから核は使えない。だけど、この光はなんだろう。私は目を細める。
次々とモニタの映像が消えて行く。この光で、カメラが破壊されたのだろうか。

たったひとつ残ったカメラには信じられないものが映っていた。私もオーブで何回も
見たことがあるマスドライバー。それが、宙に浮くように不自然にバラバラと崩壊して
いった。私には、その理由は分からない。ただ、それが核爆弾にも劣らない超兵器の
ためであることは分かった。そして、次々と破壊されていったモビルスーツが、
これを使うための捨て駒に過ぎなかったことを。

卵子と受精しないほとんどの精子、その死んで行く精子のように、この次々に死んで行く
モビルスーツ達、それに乗っている人達も、可哀想とは思ってもらえない。
戦争のシステムとしか思われていない。

キラは、モビルスーツをアラスカ基地に渡せば、戦争は変わると言っていた。
でも、結局、モビルスーツだけでは戦争は変わらない。核じゃない、核みたいなものが
結局出て来る。モビルスーツも、それを使うための駒のひとつ。その中に乗っている
人の命が、いくら失われようと顧みられることは無い。キラがアラスカに着いても、
結局、この運命が待っていただけなのかもしれない。ましてや、キラはコーディネータ
なのだ。アラスカの人は、道具として、人とさえ考えないかもしれない。いくら、私が
キラを愛していようと…… アークエンジェルの人達がキラと私を認めていようと……

「キラ、私のキラ……」

私はキラのメモリチップを出して、また握り締めたまま泣いた。
私は、初めてキラが死んだことを運命として受け入れていた。
キラは死んで、永遠に私のものになった。連合の捨て駒として使われる運命だけは
逃れられた。私は、それで良かったのだと思った。

後は、私が継ぐのだ。キラの後を私が継ぐのだ。

さっきのポッドに辿りつくモビルスーツから想像した受精のイメージ。それが、私に
別の想像を抱かせていた。もし、それが私の想像通りなら、私はキラを継ぐ資格を
得たことになる。いや、資格というより宿命だ。だけど、私は、それを受け入れるだろう。
それが、私の生きる証しだから。

モニタのいくつかが復帰して、その後の様子を伝えていた。あれ程の損害を出して、
やっと生き残ったモビルスーツが、既に無抵抗になった連合を次々に撃ち殺して行く。
音の無い映像だけなのが、かえって、その悲惨さを大きくした。私は、その様子を
正視できず目を背けた。一人うつむいて震えていた。

それでも、そんな悲惨な事を無くすために、何かしなければならないと思っていた。

──「そして、いつか戦争を終わらせたい。そうすれば、みんな悲しまなくてすむ。いつか…」

キラを継ぐ資格。キラを継いで、キラの理想をかなえるために。

80ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/15(月) 04:33
これで、パナマ戦編「6.継承」は終わりです。「クローン・フレイ」、「コスプレ」へと続くため、この展開は
避けて通れず、メルデルの話も、これに乗っ取ったものでした。
次は、ミリィSS、二章連続で行きます。迷っていたミリィは、ここで転機を迎えます。

>>流離う翼たち
官舎とは言え、仕官が家一軒まるごと借りれるとは豪勢ですね。もっとも、三、四人の同居状態ですから、
A.A. とは、また別の趣の共同生活になるみたいですけど。憎しみで〜 というところでは、小説版ガンダムで
「憎しみで人は殺せませんよ」というアムロの台詞を思い出しました。このときは、セイラのそもそもの
「シャアを殺してくれて」という願いそのものの意味合いも複雑でしたけど。一方、TV本編のSEEDでは、
憎しみが連鎖して人殺しまくってましたなあ。

>>過去の傷
フレイ様、キラの心臓に悪い寝言言うんですね。キラも申告して改善要求しないと、結局、
寝室は別なんてことに。
歌姫の歌は、どうもミリィには効かないようですね。私は「水の証」なんかは好きなんですが。
それに、あの時の衣装が一番ラクスに、似合っていると思いますし。

81白い羽:2004/03/15(月) 06:43
そうと意識しないでも日々は過ぎていく。
思う通りにいかなくとも。
守るべきものが守れなくても。
悲しみに打ち沈んだとしても時間は律儀に歩みを止めることはない。

とうとう15歳を越えることのなかった彼女。
守りたかった。守れなかった。
最後に微笑んで見せたあの表情が、今でも忘れられない。
今までで一番綺麗な彼女の顔。
守れたと思った。今度こそ。
やりなおせると思ったのに・・・・

「雪だ・・・・・・」
3月も半ばにして季節はずれの雪。
知らず僕はつぶやいていた。
羽のように軽い雪が舞い降りては溶けてゆく。
雪の白さがまぶしくて僕は目を閉じた。

『泣かないで・・・・・』
彼女の声が聞こえた気がして目を開ける。
しかし、もちろんそんなはずはなく、瞳に映るのは雪の白さばかりだった。
ポケットに入っているリップスティックを握り締め、僕は彼女の名をつぶやく。
頬に落ちた雪が溶けては流れ・・・僕の代わりに泣いてくれているようだった。
「何故、君が・・・・・」
あの時から何度となく繰り返した問いに答えるものは何もない。

『私の本当の思いがあなたを守るから・・・・・』
見えるはずのない、感じるはずのない彼女をあの時僕は感じた。
それは、僕の感傷による思い込みだったかもしれないし、意識を失って夢を見ていたのかもしれない。
でもあの時、確かに僕は彼女の優しさ、暖かさを感じたと、そう思えた。
『あなたは、幸せになって・・・・・・』
声が聞こえた気がして振り向くと、一筋の光が差し込んできて目を眩ませた。
その瞬間、光に包まれた視界に、少女の肢体が見えた気がした。
雪の羽を従えた彼女は、まるで天使のように・・・・・・

「こちらにいらしたのですね・・・」
どの位そうして立っていたのか、遠慮がちにそう声をかけられ、呆然としていた自分に気がつく。
「ごめん、ちょっと・・・考えたい事があって・・・・・」
彼女の瞳に少しの翳りを見つけながらも僕はうまくそれを消してあげる事はできなかった。
今日は、今日だけは、紅い髪のわがままな少女の事を考えていたかった。

誰より明るい笑顔が似合う娘だったのに。
戦争が、僕の弱さが彼女の微笑を奪ってしまった。
どんなに悔やんでももう彼女が帰ってくることはない。
本当なら今日16歳を祝ってあげられるはずだった。
彼女の幸せを守ってあげたかった・・・

「行きましょう。わたくし達の戦いは、まだ始まったばかりなのですから・・・・」
瞳には決然とした光を、唇には微かな笑みを浮かべて彼女は言った。
「そうだね・・・まだ、僕たちに出来ることがたくさんあるはずだ・・・・」
僕達の世界がどこに向かっていくのかまだわからない。
でも一つでもできることをしよう。
力だけが僕のすべてじゃない、そう信じさせてくれた人達の世界を生きていこう。
『それでいいのよ・・・・・・』
覚えのあるぬくもりが、僕を包んだ、そんな気がした。

82白い羽:2004/03/15(月) 06:47
散った花作者です。懲りもせず誕生日記念投下。
この間、雪の降った日に思いついたものです。固有名詞はあえて出さないようにしました。
16歳になれなかったフレイ様を悼む作品です。

感想は帰ってからUPしますね。
本当は日付が変わってすぐ投下する予定だったのですが、どうしても入れなくて出勤前に投下。(笑)

83過去の傷・作者:2004/03/15(月) 08:17
アクセレイですね・・・間違えやすい・・・訂正してます。

84過去の傷・80:2004/03/15(月) 08:38
「ちょっと待て!あきらかにお前ひいきしてるだろ!」
カガリが声をあげる。
「う−ん」
「だいたい、この機体はアストレイじゃない!お前自分の世界を考えろ!ここは外伝の世界じゃないんだ!オ−ブを馬鹿にするなよ!あの機体にはな・・・アサギ、ジュリ、マユラの魂が宿ってるんだぞ!」
「・・・なんのこと・・・?」
「たしかにお前達は恋人同士だ・・・でもひいきはやめろよな!」
「カガリ様〜」
一人の女の子が駆けつけてきた。
「な!マユラ!?生きてたのか!」
「お久しぶりです!私だけですけど・・・なんとか・・・ぎりぎりに・・・いままで入院してたんですよ、もうこの通り元気になりました、キラさんもお久しぶりです」
「や、やあ」
顔を赤くしてキラは少し照れた・・・
「痛っ!」
「なにでれでれしてんのよ!この浮気者!」
物凄い形相のフレイに足を思い切り踏まれたのだった。

「ミリィさん・・・こうなったら荒治療しかありませんね、サイさん」
「はい?」
「ミリィさんにト−ルという人になったつもりでキスしてあげてください」
「え!?いや無理です・・・俺には・・・」
「仕方ありませんわね・・・なら私が・・・」
「え!?」
ラクスはミリィの唇に・・・。

85キラ(♀)×フレイ(♂)・40−1:2004/03/15(月) 19:43
「こちら、ブラボーワン。敵機影…」
「遊んでいるんじゃない。真面目にやらんか!」
「へへっ、すいません。一度やってみたかったもので。……それでは、改めて、
こちら、空中探査中のディン部隊。敵機影、熱反応共にありません」
「同じく海底探査中のグーン部隊。足付きは影も形も見当たりません」
斥候を続ける各MS隊からの報告にモラシムは軽く眉を顰める。
足付き討伐に失敗してから一夜が明けた。カーペンタリア基地からの増援部隊と合流し、
戦力を回復させたモラシム隊は再攻勢に出たが、標的はまるで神隠しにでもあったかの
ように消失した。空中探査は当然の事として、本来、宇宙戦艦である足付きに潜水能力
はないと思われたが、念の為に海底探査まで行ったというのに一向に梨のつぶてである。


「隊長、この近くには例のオーブ領サドニスがあります。もしかして、足付きはうっかり
デーモン・ウォールに迷い込んで、既に海の藻屑となったのでは?」
「馬鹿を言え。そんな間抜けな敵なら、クルーゼがあそこまで梃子摺るわけはない」
クストーのブリッジで艦長がそう意見を具申したが、一刀両断で切り捨てられた。
モラシムに限らずザフトの隊長クラスで、仮面の道化者(クルーゼ)を好いている
者は恐らく皆無であろうが、その能力を疑問視する者もまたいなかった。
ザラ国防委員長の懐刀と称され、高い作戦遂行能力を持ち、自身もザフト軍最高クラスの
パイロットと目される智勇兼備の名将であるクルーゼに比肩出来る者は少ない。
故にザフトの一線級指揮官の羨望の眼差しである、オペレーション・スピッドブレイク
の総指揮官という栄誉を授けられたのだろう。
そのクルーゼに能力的に唯一対抗出来そうな逸材は砂漠の虎ぐらいだったが、(彼も彼で
クルーゼとは違った意味で性格に癖がありすぎたので、軍の主流とは言い難かったが)
その虎は砂塵での戦闘で既に戦死し、ザフト内部での足付きとMSパイロット(キラ)
のWANTED(賞金首)としての価値は鰻登りに高まる一方である。

「判りませんよ、先週もジブラルタルからカーペンタリアへ向かっていた輸送機が、
計器の故障とかでデーモン・ウォールに嵌まって行方不明になっていますからね。
不沈艦の末路も案外あっけないものかも知れませんよ」
悪魔の壁の怖さを知り尽くしている艦長が再度注意を喚起したが、モラシムは軽く
肯いただけで、気にも留めなかった。第二級戦闘配備を解かずに、より一層哨戒体勢
を強めるように部下たちに指示を下した。
だが、油断や楽観論とは無縁の優秀な戦術指揮官であるモラシムも、まさか足付きが
オーブ中枢の意を汲む者の手引きで、難攻不落のデーモン・ウォールを突破して、
悪魔の壁に囲まれた楽園の中で、その身を癒しているとは想像もつかなかった。



キラは高台にあるカフェの椅子に腰を下ろして、緑溢れるサドニスの自然美を堪能
しながら、カルピスをストローで啜り、咽喉の渇きを癒している。
今のキラの格好は白の清楚なワンピース姿で、日除け用に麦藁帽子を被っている。
この何処にでもいそうな大人目の少女を、数え切れないほどのザフトの歴戦の兵達
を地獄に叩き落してきたA級賞金首と看破し得る千里眼の持ち主などサドニス島には
いないであろう。

「へへっ、見つけたぜ。まさか、こんな場所で再会出来るとは夢にも思わなかったぜ。
キラ・ヤマト。いや、裏切り者のコーディネイターで、ストライクのパイロットか」
否、一人だけいたようだ。その人物は、キラのいるカフェのさらに高みの位置から
獲物を狙う禿げ鷹のような目付きでキラを睨んでいる。金髪に碧眼、中背でキラと同い年
ぐらいの少年だが、他者を見下すようなギラギラとした瞳と余裕のない表情が、端正と
言っても良い少年の顔を歪めて、第一印象を暗いものとしている。

彼の名前はマイケル・タカツキ。キラやアスランと同じ月の幼年学校時代の級友である。

86キラ(♀)×フレイ(♂)・40−2:2004/03/15(月) 19:44
未だ朝靄が残る早朝時、サドニス島南岸部の港町の波止場に数台のモータボートが接舷
され、私服に着替えたアークエンジェルのクルーがわらわらと上陸してきた。
寛大にも艦長のマリューから臨時休暇をもらった彼らは、かつて観光名所として栄えた
サドニス島で、各々リフレッシュ休暇を楽しむ所存だ。壮年のクルー達に混じって
学生ぐらいの少年少女もいる。云わずと知れたヘリオポリス組のメンバーである。
「それでは、集合時間までには全員波止場に集まること。
尚、ヘリオポリス組に関してはその限りではないので、一端、艦に戻るなり、
ホテルに宿泊するなり自由にすること。では、解散!」
「うおぉおぉおおお!!!!!」
率先役のノイマンの解散合図と同時に、休暇第一陣のクルーは奇妙な雄叫びを上げて、
激しい地響きの音を立てながら、蜘蛛の子を散らすような勢いで駆け出して行く。
自由と娯楽に餓えたクルーの迫力に唖然としていたキラは、気づくとポツンと一人
波止場に取り残されていた。


「ミリィ達も薄情なんだから…。一人ぐらい待っていてくれてもいいのに」
キラは友達甲斐のない級友達を詰ると、ガイドブックを片手に繁華街へと繰り出した。
人の数自体は少なかったが、街中は意外に活気付いている。例の事情から、訪問客が途絶
えて久しく、観光島としては寂れざるを得なかったが、島の人々は、乱世のご時勢での
平穏な生活をそれなりに楽しんでいるようだった。また二重の安全性(中立と悪魔の壁)
を買われて、富豪の一家が避暑の如く移民してくるケースも多く、彼らの投資により、
今現在は自給自足に近いシステムが確立されているらしい。

「どうしようかな、アミューズメント・パークなんか一人で行っても詰まらないし」
ガイドブックのお勧めコースに従って、キラはまずは土産屋を冷やかしながらも、
孤独な一人旅に物足りなさを感じて、横顔に暗い影を落とした。
途中、ナンパに精を出すトノムラやチャンドラ達と遭遇したが、お互いの存在に気づくと
気まずそうに俯いて互いをやり過ごした。コーディへの偏見や、味方殺し疑惑が土壌と
なったキラとAAクルー達との精神的な隔離状態は根強く続いている。以前、フレイは
キラを「醜い家鴨の子」と評したが、その評価は正鵠を得ていたかも知れない。
そんなキラが何とか普通に話せそうな大人のクルーは、フラガぐらいだったが、幹部三人
は健気にも休暇返上で艦に残ったので、翌日の休暇第二陣にすら組み込まれていない。
コーディに差別意識のないヘリオポリス本家の級友達の有り難味をキラが実感した刹那、
海岸線を見下ろせる高台の公園で、仲睦まじく腕を組んだトール達を発見した。


「綺麗ね、トール」
太陽の光を乱反射して、万華鏡のような幻想的な美しさを醸し出す海岸線の景色を
眺めながら、ミリアリアはウットリとした表情でトールに問い掛ける。
悪魔の壁に取り囲まれているとは思えないほど、サドニスの海は透明で穏やかだ。
「確かに綺麗な景色だね。けど、その海も君の美しさの前には霞んでしまうよ、ミリィ」
急に詩人のような戯言を宣うトールに、ミリィはパチクリと瞬きした後、プッと噴出した。
「に…似合わないよ、トール」
「そ…そうかなあ」
照れ隠しに軽く頭を掻くトールに、ミリアリアは目に涙を溜めながら笑い転げた。
「そうよ、トール。あなたはあなたの良さがあるんだから、肩肘張らずにドーンと
構えていれば良いのよ。一時は物足りないと思ったこともあったけど、今はトール
のそういう野暮ったさが私は大好きよ」
「ミリィ…。俺も君が好きだよ」
トールはミリィを抱き寄せると、そのまま自然とお互いの唇を重ね合わせた。
気の利いた台詞回しなど使わずとも、いくらでも雰囲気は作れるみたいだ。
特に才走った所はなかったが、二人は極めて等身大の似合いのカップルだった。

87キラ(♀)×フレイ(♂)・40−3:2004/03/15(月) 19:45
遠目から一部始終を眺めていたキラは、結局、声を掛けずにその場から離れた。
最初は合流したいとも思ったが、完璧に二人の世界を作り上げたトール達の間に
お邪魔虫として割って入れるほどキラも野暮ではない。
何があったかは知らないが、まるで壊れた古時計が再び時を刻み始めたかのように、
アークエンジェルに巻き込まれて以後、ずっと停滞していたトールとミリィの二人の
時間が、突然動き始めたかのようだった。

「いいな、二人とも…」
トールとミリィのフレッシュな関係を羨ましく思ったキラは、人知れず溜息を吐いた。
単純な異性関係の深さだけなら、キラとフレイの一組の方がトール達よりも一歩も二歩
も先んじているのだが、身体の結び付きが強まれば強まるほど、反ってお互いの心が
離れていくような嫌な錯覚をキラはずっと感じているのだ。
恋人(?)のフレイとは、昼と夜とで態度が180度異なる奇妙な二重生活が未だに
続いている。今朝方も、ついフレイを避けるかのように、彼とは別のボートに
乗り込んでしまったキラの反抗的な態度に気分を害したのか、フレイはキラを
待つことなく、殺気立ったクルーに紛れて姿を消している。
こういう時、フレイの代役を務めるのは、キープ…ではなく、プラトニック担当のカガリ
なのだが、彼は不法入国したアークエンジェルの滞在許可交渉を目的に、キサカと一緒に
領事館を訪問中だ。ザフトに狙われている軍船の寄港など、サドニス側からすれば傍迷惑
な話だろうが、カガリはオーブ領共通の水戸黄門の印籠を所持しているので、きっと何と
かしてくれるだろうとのAA幹部達の強い期待を受けていたからである。

「あれは…、フ…フレイ!?」
神のお導きであろうか。一人に寂しさを覚えていたキラは、極めてレアな確率の元に
涼みに入ったカフェの一つで、捜し求めていた想い人と再び遭遇(エンカウント)した。
軽いロンリーシックに掛かっていたキラは、パッと表情を輝かせ、子犬なら尻尾がはち
切れんばかりの勢いでフレイに駆け寄ろうとしたが、途中でその動作を停止させてしまう。
フレイの座っているテーブルには、キラと同い年ぐらいの少女が二人、楽しそうにフレイ
と会話している。高価な身なりからすると、彼女達は良い所のお嬢様なのかも知れない。
どちら側から誘ったのかは不明だが、まるで磁石のS局とN局が惹かれ逢うかのように
女性に対する異常な吸引力を発揮するフレイは、ナンパの相手にも事欠かないようだ。

キラは落ち窪んだ表情で、フレイに気付かれないようにカフェの外に出ると、屋外の
テーブルの一つに腰を下ろして、飲み物を注文した。目の前には緑溢れるサドニスの
美しい大地が広がっていたが、その景色を堪能出来る心の余裕はキラにはなかった。
女連れのフレイに見咎めでもされたら惨めでしょうがないので、咽喉の渇きを癒せたら、
早くこの場を立ち去ろう。そう考えて、キラはストローを氷の隙間に差し込んで、
乱雑な勢いでカルピスを一気飲みする。
そんなささくれだったキラの心の隙間に浸け込むかのように、何者かが声を掛けてきた。
「おい、ヤマト。そこにいるのは、キラ・ヤマトじゃないか?」
慌てて振り返ったキラの前には、冒頭でキラを吟味するように眺めていたボロのシャツ
を着込んだ金髪の少年が立ち尽くしている。今の少年の顔付きは先のギラギラした態度
が嘘のように穏やかで、こうして見ると中々の美男子だ。
「だ…誰?」
一瞬、ナンパされたのかと思ったが、相手が自分の姓名を知っているのは妙だ。
カガリに無防備すぎると称されたキラも、流石にちょっとばかり警戒心を発揮しながら、
そう尋ねると、少年は少しだけ傷ついた表情をしながら苦笑いする。
「覚えてないかな。ヤマト、俺だよ。月の幼年学校で一緒だったタカツキだ」
少年が素性を名乗ってから数瞬後、キラの瞳孔が大きく開くと同時に、
手に持っていたグラスを床に落としてしまい、グラスは粉々に砕け散った。
「タ…タカツキ君?」
キラは信じられないという表情で、タカツキという級友の少年を見上げている。
予期せぬ旧友との再会に、キラは驚き戸惑っているのだろうか。
いや、そうではないようだ。キラは天敵を見つけた小動物のように身を縮ませて、
膝元はガクガクと震えている。月の幼年学校時代、キラにとって、タカツキという少年
は天敵というよりも敵(エネミー)そのものの存在だった。

88キラ(♀)×フレイ(♂)・40−4:2004/03/15(月) 19:45
戦争の激化によりヘリオポリスに疎開する以前、キラは5歳から13歳までの
長きに渡る間、小中教育に該当する月の幼年学校に通っていた。

「えっとお…、わたしのきょーしつは…あうっ!?」
「じゃまなんだよ!ボーっとしてんじゃねえよ、たーこ!」
入学式の翌日、自分の教室を探して要領悪くマゴマゴしていたキラは、後ろから意地悪
な級友に突き飛ばされて尻餅をついた。今とは比べ物にならないぐらい涙腺の弱かった
幼少時のキラは、「え〜ん、え〜ん」と泣き喚いていたが、薄情な級友たちは、遠巻きに
クスクスとキラの醜態を嘲笑うだけで、誰も手を貸そうとはしなかった。
「だいじょうぶ?」
そんな折、彼女に救いの手を差し伸べた一人の少年がいた。その黒髪の少年は、キラの
手を引いて、立ち上がらせると、懐から取り出したハンカチで涙を拭いてあげた。
「きょうしつはこっちだよ。君とはおなじクラスみたいだね。いっしょに行こうか?」
「だ…だれ?」
「ぼくは、アスラン。アスラン・ザラだ。よろしくね」
黒髪の可愛らしい少年はニッコリと微笑むと、軽くキラの手を握った。
これが、キラとアスランとの最初の出会いだった。

それから刷り込みの如く、キラがアスランに懐いたのは自然な流れというものだろう。
キラはアスランの袖の裾を掴んで、彼の後ろに隠れるように半歩下がった位置をキープし、
世智辛い世の中に対して、常に彼の肩越しに気弱そうな表情を覗かせていた。
「こいつ、だい一せだいのコーディネイターなんだって!?」
「それじゃ、おやはナチュラルかよ。プッ、だせぇ!」
子供という人種が、異分子を冷遇したがる傾向にあるのは、ナチュラルでもコーディでも
変わらないらしく、ほとんど第二世代のコーディの子息で構成された幼年学校で、第一
世代のキラは珍しく、そんな下らない理由で入学当初のキラは苛めの対象になっていた。
「身体的特徴(目の色やルックスなど)や、潜在能力(知力、運動神経など)を自由に
遺伝子操作可能な偉大なるグレン・マニュアルにも、性格を好みにコーディネイトする
術は記されていなかった」
後の歴史家が、そう皮肉を混めて書き残したように、コーディでも有数の潜在能力を誇る
キラも、その引っ込み思案の性格はいかんともし難く、アスランはそんな臆病なキラの
誠実な騎士として、彼女を付け狙う有形無形の魔の手から、キラを守り続けてきた。
そんな二人が、自然と両想いになるのに、それほどの時間は必要なかっただろう。
蜜月と言ってもよい幸福な時期が長く続いたが、アスランは家の事情から、キラは
勇気の欠如から、その想いを相手に伝えることはなかったが…。
学校にも馴れ、苛めもそれなりに収まり、アスラン以外の友達もチラホラと増え出し、
ようやくキラが独り立ちし始めた頃、マイケル・タカツキがキラ達の視界に現れた。


マイケルは、幼年学校では常に主席だったアスランに次ぐ優秀なコーディの一人だった。
親はプラントの下級議員で、プライドが高く、常に取り巻きとなる級友を引き連れている。
優等生だが、他人を見下す癖があり、ナチュラルはおろか、同類の中でも劣った者には
侮蔑心を隠さなかったので、人望は低く、取り巻き以外の級友達からは嫌われていた。
そんなマイケルにとって、能力・家柄など全てにおいて彼の上を行くアスランの存在は、
まさしく目の上のタンコブだっただろう。とはいえ、意外と身の程を知っている彼は、
マトモに戦っても勝てないことも悟っていたので、敢えてアスランとはぶつからずに、
井の中の蛙に徹してプライドを維持してきた。
彼がアスランに根強いコンプレックスを抱いていたのは確かだが、そのアスランという
惑星の周りをうろつく衛星としか映らないキラのことなど当初は眼中にはなかった。
キラに全校生徒の前で赤っ恥を掻かされるまでは…。

89キラ(♀)×フレイ(♂)・40−5:2004/03/15(月) 19:46
まだMSが実戦投入される前の時代、幼年学校に後のMSの雛形になる戦闘用ロボット
のシミュレータが導入された。各種訓練が授業科目にも取り入れられてから数ヶ月後、
その成果を試す為のトーナメントの大会が開かれた。
「何だよ、緒戦の相手はザラの腰巾着か。歯応えが…!?な…なにぃ!?」
大会に優勝してアスランの鼻を明かそうと意気込んでいたマイケルだったが、運悪く
一回戦で最高のコーディたるキラと当たり、手痛い敗北を喫した。
結局、大会で優勝したのはアスランだ。キラはマイケルの異常な悔しがり様から、
身の危険を悟って、ワザと手を抜いて二回戦で敗退したが、時既に遅く、その行為は
反ってマイケルの下馬評を下げ、彼の反感を買うだけの結果となった。
「ねぇ、見た?タカツキの奴、泣き虫のキラにコテンパンにやられたんだって」
「何時も偉そうにしている癖に、本当は口先だけかよ。最低じゃん」
身から出た錆ともいうべきか、普段から他人を貶めることで、相対的に自分を高く
見せようとしてきたマイケルに募っていた全校生徒の反感が一気に爆発して、
彼は学校中の笑い者になった。自業自得の末路ではあるが、内省とは無縁の彼は、
自身の態度を省みることなく、ひたすら自分を窮地に貶めたキラを憎悪した。

それ以来、キラは逆恨みされたマイケルのグループから陰湿な虐めを受け続ける事になる。
キラの身の周りにはアスランが常に目を光らせていたので、大抵は事なきを得ていたが、
ある時などは、人気のない体育倉庫に連れ込まれて危うく乱暴され掛けたことさえあった。
鳥頭…、もとい自己転移療法の大家であるキラは、嫌な(あるいは自分にとって都合が
悪い)記憶を封印する術に長けていたので、ヘリオポリスに疎開しアスランと別れて以後、
マイケルの存在もすっかり失念していた。サドニス島で再び彼と遭遇するまでは。


予期せぬ運命の邂逅(ここで会ったが百年目的であるが)を演じてマイケルと相対した
キラは、両腕で自分自身を抱き締めるような体勢になって、強く身を固める。
それも当然で、虐めというのは、不器用なコミュニケーションの一部などと行為を正当化
出来るような代物ではなく、受ける側にとっては、まさしく死活問題そのものなのである。
マイケルを見上げるキラの脅えた瞳には、恐怖とトラウマに満ち満ちていた。
「やっぱり、俺の事、恨んでいるみたいだな。まあ、当然か…」
マイケルは憂いを帯びた表情で、軽く溜息を吐くと、ガラスの割れる音に気付いて、
何事が起こったのかと駆け寄ってきたウェイターに声を掛けた。
「すいません、コイツは俺の昔の知り合いなんです。何か驚かせちゃったみたいで。
勘定と壊れたグラス代はこれでよいですか?」
萎縮して声も上げられないキラに代わり、マイケルは弁償を代行すると、再びキラに向き
直った。その蒼い瞳は、遣る瀬無さに溢れている。少なくとも、キラの目にはそう映った。
「俺、前々からずっと、お前に謝りたかったんだ。
あれから色々あって、自分の馬鹿さ加減にようやく気付けたんだ。
けど、今更そんな事言うのは虫が良すぎるし、ヤマトにとっても迷惑な話しだよな」
自嘲するように心情を告白するマイケルを、キラは唖然とした表情で見つめる。
今現在のマイケルが、キラの記憶にある悪鬼のような姿と全然一致しないからだ。
「じゃあな、ヤマト。一目、お前の元気そうな姿が見れて良かったよ」
マイケルは最後にそれだけを告げると、クルリと身を翻した。謝罪でなく、別れの言葉
を口にせざるを得なかった彼の背中は、キラにはとても小さく見え、キャッチセールス
の電話を自分から切ることが出来ない典型的な弱気人間のキラは、こうまで下手に
出られると、このまま帰しては申し訳ないような複雑な想いに囚われ始めた。
「ま…待って!」
思わずキラはマイケルを呼び止め、場を去ろうとしていた彼はピタリと足を止めた。
「ねぇ、どこか落ち着いたところで、ゆっくりと話しをしない?」
ガヤガヤと自分達を見つめる野次馬の存在に気付いたキラは気恥ずかしそうに俯いて、
マイケルを誘った。キラに背を向けたマイケルの口元は、「かかった」とでも言いたげに、
怪しく歪んでいる。もしかすると、先の誠実そうな態度は単なる演技なのかも知れない。
以前もキラは、最悪に近い関係からフレイを許した前歴があり、その結果、泥沼の愛憎
関係を未だに継続中だというのに、再度、同じ過ちを繰り返そうとしているのだろうか。
「最悪の出会いは、やがて最良の伴侶を得る温床となる」という恋愛小説の黄金の不文律
でも信じているのか、浪漫主義者(ロマンチスト)のキラは、上っ面だけで男性を判断
する傾向があり、性質(たち)の悪い男に騙される妙な才能にも恵まれているみたいだ。

90キラ(♀)×フレイ(♂)・40−6:2004/03/15(月) 19:47
「あれは、キラか?んっ、なんだ、あの男は?」
店の外が騒がしくなったので、軽い好奇心に駆られて外に飛び出したフレイは、見知らぬ
少年と仲良く二人連れで、店から離れていくキラの姿を発見する。
「チッ、あの尻軽女、相変わらず…」
フレイは軽く舌打ちしたが、彼も女性と同伴だったので、あまり人の事は言えないだろう。
それよりも、フレイはキラの隣にいる金髪を尻尾のように後ろに束ねた少年が気になった。
「あいつ…、なんか嫌な感じだな」
嫉妬心とは無縁に、フレイは謎の少年(マイケル)の性根をそう断定する。
本来、人間とは善悪二元論に分類出来るほど単純な生命体ではないが、対人鑑定眼に
優れるフレイは、大よそ第一印象だけで、その人間の魂がどっち寄りかを見分けられる
という稀有な技能(スキル)を所持していた。
ほとんど直感としか呼べないあやふやな代物だが、実際に深く付き合ってみて、第一印象
を外した体験はなかったので、フレイは自分の先入観を是正する必要性を認めなかった。
「アルテミス要塞の軍人さん達を除けば、彼でちょうど二人目か。こんなご時勢なのに、
世の中は意外と善人に満ち溢れているみたいで、けっこうなことだね」
己自身を遠くの棚に放り投げるなら、ヘリオポリスが崩壊してから、フレイが直接お目に
掛かった民間人で、魂が悪(エビル)寄りに傾いた逸材に出会えたのは、二人目となる。
ちなみに、一人目の逸材は、既にアークエンジェルを降りて、今はプラントにいるはずだ。
「ねぇ、どうしたの、フレイ君?何か面白いことでもあったの?」
後ろから、サドニスで知り合った女性二人が声を掛けてきた。少女達は、この島に疎開
した富豪の娘で、実は先にフレイに声を掛け、逆ナンパしてきたのは彼女達の方である。
「あっ、いや。何でも、ありませんよ」
お嬢様方の問い掛けにそう応じながらも、フレイの視線はキラ達に注がれていた。
まあ、いいか。一瞬、尾行しようかとも思ったが、その誘惑をフレイは払い除けた。
奴がどの程度のワルかまでは判らないが、大方、キラの身体が目当てのチンピラだろう。
どれほどキラが傷つこうが、生きて戻ってきさえすれば、後はどうにでも慰められる。
相変わらず、女性の貞操観念を軽視するフレイはそう悪ぶりながらも、何故か彼の
スコープ(視線)はキラ達をロックオンして離れることはなかった。


キラとマイケルは、横並びに坂道を下りながら、キラ達がボートを泊めた波止場と
正反対の港町を目指して歩んでいた。そこに彼の家があるというのである。
「ふーん、タカツキ君は今は家族みんなでサドニス島で暮らしているの?」
「そうだよ。姉ちゃんがナチュラルの男性と結婚したんで、そのツテでね。
正直、昔はナチュラルの奴らを、「進化し損ねた出来損ないの猿共」とか見下して
いたけど、実際付き合ってみれば、俺達と同じ温かい血の通った人間なんだよな。
本当に馬鹿みたいたぜ。能力だか下らないことで一々他人にラベルを貼るなんて」
「タカツキ君…」
キラは感心したような顔つきで、マイケルを見上げている。

先程からのマイケルの与太話は全て嘘八百である。彼は一人っ子で姉などいなかったし、
そもそもサドニス島に住居など構えていない。ここに辿り着いてから、まだ一週間も
滞在していないのだ。彼が本気で猿と見下しているナチュラルを持ち上げるような戯言
をほざいたのも、そう主張すれば、今現在、ナチュラル達と一緒に行動しているキラ
の心証が良くなるだろうとの打算からである。案の定、他人を疑うことを知らない、
極めて善人よりの魂(ホーリー・ソウル)を持つキラは、完璧に騙されて、マイケルに
抱いていた警戒心をみるみる氷解させている。
「それより、ヤマトはどうやってサドニスに来たんだ?
知っていると思うけど、この時期にここに入るのはかなり苦労するんだぜ」
「そ…それは……」
キラは言葉に詰まった。まさか、コーディである彼に、連合に所属してザフトと
戦っているなどと馬鹿正直に打ち明けるわけにもいかないだろう。
嘘を吐くことに慣れていないキラには、適当な言い訳の一つすら思いつかなかった。
「別に言いたくなければ、構わないよ。人それぞれ事情はあるだろうし」
「ご…ごめんなさい」
それとなく探りを入れたマイケルは、キラの口から彼女を取り巻くバックグラウンド
を吐かせたいと思ったが、この場では断念した。キラを捕獲しようと企んでいる
彼としては、万が一にも逃げられでもしたら、元も子もないからだ。

91キラ(♀)×フレイ(♂)・40−7:2004/03/15(月) 19:48
薄々気がついている人もいるだろうが、彼もまたアスランと同じザフトの軍人である。
キラが月から去った後、アスランと同じく、プラントの仕官学校(アカデミー)に
入学し、そこで初めて彼は人生の挫折を味あうことになる。
アスランが、イザーク、ディアッカなど後のクルーゼ隊の連中と共に士官学校でも
優等生グループを維持したのに対して、幼年学校ではエリートだったマイケルは、
アカデミーでは物の見事に「その他、大勢の一員」に落ちぶれてしまった。
マイケルがあまり褒められた人格の所有者ではないことは確かだが、彼は、決して無能
ではない。むしろ、コーディ全体の中でも上から数えた方が早い優秀な逸材ではある。
ただ、アスランやキラのような超がつくエリート達と正面切って張り合えるか?
と聞かれると、生まれ持ったプロパティ(潜在能力)の容量を呪うしかない。
彼のようなタイプは、分を弁えて「蛇の頭」を抑えて天狗となっていれば、自他共に幸せ
であったのだが、何を間違えたのか、「竜の尻尾」に必死にしがみ付いてしまったので、
「竜の頭」に位置するアスランに、いらぬコンプレックスを抱く羽目となったのだ。

戦時による需要から、弱齢の彼らが士官学校を早期卒業し、アスラン達がザフトの
エリートの証たる「赤服」を与えられ、エリート街道(クルーゼ隊への配属)を歩んだ
の対して、「緑服」のマイケルは地球のアフリカ地方に飛ばされた。
当時、アカデミーでは宇宙軍をエースとして、地球部隊を、「地上モグラ」と嘲る傾向に
あったので、彼の野心感覚では左遷されたも同然の最低の扱いだった。
砂漠の虎の指揮下に配属され、悶々たる日々を送っていた彼は、サドニスでキラと再会
する以前にも、実はバラディーヤでもキラと遭遇していたのである。
「あいつ、もしかしてヤマトか?何だって、バルトフェルド隊長と一緒に!?」
例のブルーコスモスのテロ事件の折、一兵士として虎の屋敷の警備をしていたマイケルは、
真っ先にキラの存在に気付いた。(キラの方は、全く彼の存在に気がついていなかったが)
好奇心に駆られて持ち場を離れ、扉の外から虎とカガリの会話を盗み聞きした彼は、
キラがストライクのパイロットで、ザフトのA級賞金首である事実を知ることになる。

その翌日、マイケルはカーペンタリア基地への転属辞令を受け、慌しく虎の元を離れた。
ビクトリア攻略戦の際に使用した水中用MSグーンが一機レセップスに余っていたが、
この砂漠では単なる宝の持ち腐れなので、輸送機でカーペンタリアまで届ける為だ。
「また左遷かよ。まっ、あの変人の虎の指揮下にいるよりはマシかもしれねえな」
横着して自動操縦で楽をしていた彼は、計器の故障に気付かずにデーモン・ウォールに
迷い込んで、輸送機を沈没させてしまう。沈没寸前に何とかグーンに乗り込んだ彼は、
悪運強く一命を取り留め、気付くとサドニス本島に流れ着いていた。
グーンはあちこち傷ついていて戦闘用MSとしては全く遣い物にならず、任務に失敗した
わけだが、あの状況では生命が助かっただけでも僥倖だろう。

本来なら、すぐに軍本部に事の子細を報告する責任があった彼だが、その意思はない。
悪い意味での主体性と行動力に恵まれていた彼は、軍の禁欲的な生活に飽き飽きとして
いたので、闇市で売れそうな輸送機の残骸を売り払って、当座の資金を稼ぐと、グーン
を港町の今現在使われていない倉庫に隠し、軍に対しては沈黙を守った。
「これも俺の常日頃の善行に対して、神様が与えてくれた臨時休暇だろう」
どちらかといえば仏教圏の癖に、クリスマスだけはちゃっかり祝う東洋の島国の住民の
ように、本来無心論者だが、都合の良い時だけ神頼みする癖のあるマイケルは、派手に
豪遊し、サドニスという楽園での生活を心行くまで楽しむことにした。

それから一週間近くが経過し、悪魔の壁が開放される日が近づいてきて、マイケルは
軍に戻る決意をした。楽園での安穏とした暮らしに未練はあったが、生活費も底を突いて
いたし、何より、この機会を逃すと、また一ヶ月はこの島から出らなくなるからだ。
ただ、輸送機を落として、グーンを半壊させてしまった手前、手ぶらで軍に戻ることを
躊躇わせていた彼の前に、キラという格好の手土産が、忽然と姿を現したのだ。
バラディーヤでは、虎の厳命で取り逃がしたが、ここには彼を律する上官もいなければ、
キラは無敵のMSに守られておらずに、コーディとはいえか弱い女性の生身のままである。
マイケルは、天から振って沸いたこの幸運に舌なめずりして歓喜し、葱背負った鴨
そのもののキラを見逃す意思は欠片もなかった。

92キラ(♀)×フレイ(♂)・40−8:2004/03/15(月) 19:48
「ここが俺の家だよ、ヤマト」
「お家って、倉庫じゃないの、タカツキ君?」
ガラガラと扉を開けるマイケルを、流石にキラも胡散臭そうな瞳で見ていたが、
嘘で塗り固めたマイケルの主張の中では、今回は珍しくも真実を告白していた。
彼はこの廃棄された倉庫を根城にして、この島でずっと生活していたのだから。
マイケルに釣られるように倉庫の中を覗いたキラはあるモノを発見して唖然とする。
薄暗い倉庫内には、何故か片腕が捥げて半壊したグーンが鎮座していたからだ。
「ど…どうして、MSがここに……んっ…んぐぅう!?」
突然、キラは後ろからマイケルに羽交い絞めにされ、湿った布着を押し当てられる。
異臭を嗅ぎ取ったキラは必死にもがいたが、MS乗りとしては彼のはるか上をいく技量
を誇るキラも、生身の単純な腕力では、男性のコーディであるマイケルには敵わない。
「ちょ…ちょと、何をするの!?タカツキく……………………………zzz」
豹変した彼の態度に今更ながらに身の危険を感じてジタバタと暴れていたキラだったが、
やがて目がトローンとし始めて、グッタリと動かなくなった。

「へへっ…、一丁上がりと。チョロイもんだぜ」
マイケルは片腕でキラを抱きかかえたまま、クロロフォルムを染み込ませた布着を
放り捨てると、軽い寝息の音を立てるキラの懐をガサゴソと弄り始める。
やがて目的のブツを探し当てることに成功したマイケルは、小さくガッツポーズした。
「あった、あった。こいつが欲しかったのよ」
彼の手の内には、キラの連合での身分を示す、写真入のIDカードが握られていた。
軍本部に戻って、このカードを解析すれば、彼女がストライクのパイロットである事実
を証明する電子データが、恐らく詳細に組み込まれている筈である。
「やったぜ。コイツを軍に突き出せば、俺も赤服になれる」
マイケルは勝ち誇った表情でキラを見下ろした。元々、ナチュラルはおろか、同類で
さえも見下す傾向のある彼にとっては、苛め・虐められの関係であったとはいえ、
かつての幼年学校時代の級友の、それも自分と同い年の戦争に巻き込まれた女の子
でさえも、単なる出世の道具としか見ていないみたいだ。ザフトに虜囚として送検
されたキラが、その後、どんな目に遭うかなど知ったことではないのだろう。

「それにしても、こいつ。幼年学校の時は、ピーピー泣き喚くしか能のない痩せっぽちの
色気のないガキだった癖に、しばらく見ない間に随分と女っぽくなりやがったな」
IDカードを探す際に、キラの豊満な肢体を弄っていたマイケルは思春期の少年らしく、
キラの身体に劣情を抱き始めた。ヘリオポリスに移ってからの三年間の成長期に、
バストサイズが9cmも発育したのは、キラの密かな自慢だったりする。

「こいつは軍に引き渡す前に、色々と楽しまないと損だよな」
後の世で「最高のコーディネイター」として伝説となるキラと対比するかのように、
一部から「最低のコーディネイター」との悪評を得ることになるマイケルは、
早くも、その下種振りを発揮して、卑しい笑顔を閃かした。

93私の想いが名無しを守るわ:2004/03/15(月) 19:56
キラ(♀)×フレイ(♂)キタワァ・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!

94流離う翼たち・433:2004/03/15(月) 21:08
 マドラス近海では、1隻のザフト潜水空母がマドラス港を監視していた。その中にはもう執念さえ感じさせるしつこさでザラ隊とジュール隊が乗っており、アークエンジェルをここまで追って来たのである。
 潜水艦内に自分用の部屋を与えられたアスランは、そこのモニターからじっとマドラスを見ていた。

「・・・・・・キラ、フレイ、お前たちはそこにいるのか?」

 アークエンジェルがいる以上、それは分かりきった問い掛けである。敵として出てこれば今度こそ倒すと決めているのだが、あそこに居ると思うともう一度会って説得したり、話がしたいという気持ちも出てきてしまう。やはり、顔を知っている相手と戦うのは良い気がしない。
 アスランがそんな事で悩んでいると、何時ものように書類の束を抱えたエルフィが入ってきた。

「隊長、今日の仕事ですよ」
「・・・・・・1日くらい書類を見ない日が欲しいな」
「平和になったら幾らでも満喫してください」

 ピシャリと言ってエルフィはデスクの上に書類の束を載せた。それをパラパラめくりながらアスランは嫌そうに顔を顰める。そこにはまたしても部下たちの出した始末書やら他部署から苦情が積み上げられている。なぜか上司に関する苦情まで混じっている。アスランが世を儚むのも仕方が無いだろう。最近、比喩ではなく生え際が後退しているし、胃薬の量も増えている。精神安定剤に手を出す日も遠くは無いだろう。
 それを見たエルフィは仕方なくモニターに手を伸ばした。

「そういえば隊長、マドラスのTVが入るんですよ。気晴らしにどうです?」
「TV? そうだな、それも良いか」

 アスランが同意したので、エルフィは早速モニターを操作してマドラスのTV用電波を受信させた。そして、最初に飛び込んできたのは、なんとも奇妙な宣伝であった。

「何をしている!」
「はぁ?」
「うちの会社の規則を見ろ!」

 上司が指差す先には、天井から下げられた看板があり、そこにはこう書かれている。
【必ず半ズボン着用】

「さあ、これを穿くんだ」

 上司が半ズボンを手に迫ってくる。彼は焦りながら仲間を振り返るが、そこには半ズボンを穿いた部下たちがずらりと立ち並び「係長、早く穿いてください。規則なんですから」と言っていた。
 彼はズボンを剥ぎ取られそうになりながら電話を取り、とっさに番号を押した。

 部下や上司に恵まれなかった時は、フリーダイヤル○○○−×××××・・・・・・

「ヘルプゥゥゥゥゥ!!」
『はい、スタッフサービスです』

95流離う翼たち・434:2004/03/15(月) 21:10
「・・・・・・なんでしょうね、この宣伝?」

 顔に苦笑を貼り付けながら振り返ると、何故かアスランは電話を手に外線に繋ごうとしている所であった。エルフィの顔が僅かに引き攣る。

「た、隊長、何をしてるんですか?」
「はっ!?」

○○○−××まで押した辺りで我に返ったアスランは、なにやらジト〜とした目で見てくるエルフィの視線に耐えられないように慌てふためいて弁解を始めた。

「ち、違うぞ、別に俺はイザークやディアッカの代わりの部下を派遣してもらおうとか、クルーゼ隊長の代わりの上司が欲しいなんてこれっぽっちも思ってないぞ。ましてこいつら居なくなれば仕事が減って助かるなあ、なんて欠片も考えてないからな!」

 思いっきり本音を暴露しまくるアスランに、エルフィは情けなさの余りひたと壁に手を付いた。

「隊長、一応お2人とも赤を着るザフトのエリートなんですよ。それをなんです。ちょっと手がかかるくらいでスタッフサービスに変わってもらおうだなんて、何考えてるんですか?」
「いや、もしかしたら意外と優秀な社員が派遣されてくるかも」
「仮にそうだとしても、民間人を戦わせるわけにはいかないでしょう。それにクルーゼ隊長の代わりなんて、本気で言ってるんですか?」
「いや、クルーゼ隊長と話すだけで最近は胃が痛いし、このままだと俺は胃潰瘍で後送されかねん」
「それはそうですけど・・・・・・」

 アスランの胃薬使用量が増えている事を知るエルフィは、アスランの言葉に渋々頷いた。確かにこのままだとアスランは胃を壊して倒れるだろう。

「でも、本当に派遣してもらったら、どんな奴らが来たのかな?」
「そうですねえ・・・・・・有名なサーペントテイルの群雲劾とか」
「ああ、それはそれで扱い辛そうだなあ」

 はっはっはと笑い会う2人。だが、その時マドラス基地でクシャミをする目付きの鋭い傭兵が居た事を2人は知らなかった。

96流離う翼たち・434:2004/03/15(月) 21:50
>> 過去の傷
ミリィが豪快に壊れている。不味いです、精神不安定すぎです
フレイ様はフリーダムにって、流石に無理では。ここはM1で艦隊防空にした方が
カガリは何を怒ってるのでしょう? アストレイはMBFシリーズの通称の筈ですが
マユラたんが生きてた!?

>> ザフト・赤毛の虜囚
グングニルですか。イラクで使ったE爆弾をイメージしたんでしょうが、あれだけ放電するなら歩兵は全員黒焦げだ! と画面にツッコんでましたなw
フレイ様はあれを受精とイメージしましたか。想像力が豊かだ。
次回のミリィの転機は何なんでしょう?
あと、サイとカズィの台詞はGS御神に出てきたギャグ台詞ですw

>> 白い羽
テーマは祝う人無き誕生日ですか。一年後ですね。場所は雪が降ってるから地球でしょうか?
なんだかしんみりとしました。

>> キラ(♀)×フレイ(♂)
おお、久しぶりのフレイ君以外の悪役登場。キラは幸運の女神に忌み嫌われてますな
でも、フレイ君の目に適う悪党第1号とは誰です? プラントに戻ってるというからにはコーディなんでしょうが
AAクルーはキラを見ると逃げ出すほどの敬遠ぶりですか
何気に頑張って探してるモラシムが哀れw

97過去の傷・81:2004/03/15(月) 21:55
「キラさん、可愛いね」
「え?・・・その」
「やめろ・・・それよりマユラ、お前も実戦練習どうだ?」
「え?私ですか・・・う−ん・・・いょっと見学します・・・キラさん♪あとで、カガリ様もまた・・・」
そう言うとマユラは去った。

「まったくなに考えてんのよ!顔赤くしちゃって馬鹿じゃないの!!!」
「いや、ただ挨拶しただけなんだけど・・・」
「それでも駄目なの!私以外の女とは食事なんてもってのほか!部屋に行くのもだめ!二人で話しをするのもだめ、目を合わすのもやめて!」
そう言うとフレイは機体に乗った。
「・・・・・・」(行動が限られる・・・)
聞いていたカガリは・・・。
「お前、大変だな・・・ご愁傷様」

ラクスはミリィを抱きしめるとキスする寸前で止める、というよりラクスの唇とミリアリアの唇がかなり接近している、ほんとに当たりそうなぐらい・・・。
サイが呆然とした表情で声をかける。
「あの・・・なにを?」
はっと目を開けるミリアリア。
「や・・・いや!きゃあ!!!」
ラクスを突き放す。
「な・・・なにをするんですか!?私そういう趣味は・・・」
「ちょっとショックを与えてみたんです、効果抜群でした、それでも目を覚まさなかったら・・・衝突してたかもしれません」
ラクスは笑顔で答えた、サイとミリアリアは今一度この歌姫の怖さを知った。

結局カガリがストライク・ル−ジュ・・・フレイはフリ−ダムにそれぞれ搭乗した。
ブリッジにいるキラにカガリから声がかかる。
「おい、キラ、ナチュラルのフレイにフリ−ダムなんか操縦できるのかよ」
<いいんだ>
そういいのだ、彼女は普通のナチュラルじゃないのだ、二ュ−タイプなのだ。
<では訓練・・・いや実戦練習のル−ルを説明するよ・・・まず機体の損傷が半分以上になるかエネルギ−切れになった状態で負け>
「分かった」
「分かったわ」
<そして・・・一応安全は第一に考えてちゃんと脱出しやすいようにしてるけどもしものことを考えてコクピットは狙わないこと、それからこれあくまで練習だからあまりむきにならないように・・・いいね>
「大丈夫だ」
「キラ・・・分かってるわ」
<機体は起動してるね・・・フレイ・・・無理しちゃだめだよ、体を第一に考えて・・・頑張って・・・>
「え?キラ・・・うん・・・ありがとう」
フレイは頬を照れるように赤く染める。
「まったく見せつけてくれるよなあ」
カガリが面白くないようにつぶやく。
<あ、キラさんいた!>
「その声マユラか!?」
「・・・キラ・・・」(私がいないところで他の女と話すなんて・・・浮気だわ、完全な浮気よ・・・キラ・・・)
<え、ええと・・・さあ準備は整ったところで・・・>
「・・・・・・」
「・・・・・・」(頑張るわ)
<・・・練習開始!>
二つの機体が同時に動いた。

98過去の傷・作者:2004/03/15(月) 22:22
>>ザフト・赤毛の捕囚
フレイ様らしいというか、でも怖いなあ、それにしてもフレイ様の想像力に私は・・・そして次はミリィですね、これも楽しみにさせていただきます。
>>白い羽
キラ・・・そうだ、それでいい・・・しんみりしてますねえ、でもフレイさんの幸せにって・・・心にぐんときますね。
でもそう、いまのキラには歌姫ラクス嬢がいる・・・フレイ様はキラが誰と結ばれようと幸せになってくれるといいんでしょうね、これからもキラを本当の想いで守る・・・。
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
悪役登場しましたね、キラは遠く見られてますな。
可哀相な気がしますね、女の子だからなおのことです、う−む・・・難しいですね、どうこれから皆の向き合っていくんでしょうか?
>>翼たち
エルフィというのはしっかりしてますね。
なにげに少し度胸もありますし、しかしアスラン、君それは少し嫉妬してるんですな、彼はいつも・・・。
こんな部下でよかったですね。

99刻還り:2004/03/15(月) 23:37
先の戦争により家を失った村人達は隠れ家へと移動し生活を行っている。
そこには少なからず子供達の笑みがある。
笑みは戦争を一時忘れさせる。
だが、戦争とは切っても切れない関係のモノがこの場にはある。
アークエンジェルだ。
艦内ではいつ戦争になっても対処できるように整備が行われている。
キラもストライクの整備に勤しんでいる。
それはパイロットの仕事であり、コーディネーターであるためキラ自身でしたほうがやりやすいからであった。

「接地圧に、熱滞留、重力値の設定で・・・」

宇宙と地上での戦争の違いを考えながら、端末を操作する。

「キラ。」

自分を呼ぶ声を聞き、キラはコクピットより顔を覗かせる。

「フレイ。」

寝ているはずのフレイが起きていることに驚く。
ひとまず、端末をしまいストライクから降りるキラ。

「もう、起きて大丈夫なの。」
「ええ。先生からも了解を得ているわ。」

と言って笑みを浮かべる。
キラはドキッとして顔を赤くする。
キラを赤くさせる笑みはすぐさま、真摯な表情へと変わった。

「キラ、また戦争したのね。」
「えっ、う、うん。」

哀しみの表情を浮かべるフレイ。

「キラ、辛いでしょ?」
「仕方がなかったから。誰も死んでほしかなかったんだ。」

俯くキラ。
それはフレイが見たくない、させたくないこと。
キラが戦争をしていると感じた時に決意。

「もう戦争しないで。」
「無理だよフレイ。ここはザフトの勢力圏、アークエンジェルは必ず狙われる。僕がやれることをしないと護れない。護りたいんだ。」
(君を護りたいんだ。)

想いを胸に抱き、キラは自分の意思を伝える。
だが、フレイの意志はキラとは違う。

「キラが傷つくなら、護ってくれなくていい。」



「えっ・・・。」

フレイの言葉に自分という存在が崩れそうになる。
この場にいれるのは、自分に力があるためだとキラは考えていた。
そうでなければコーディネーターがいる必要がない。

「そいつは無理ってもんだ、お嬢ちゃん。」

二人の会話に割り込んできたのはマードックである。
マードックは頭を掻きながらゆっくりと二人に近づく。

「坊主を心配するお嬢ちゃんの気持ちもわかるが、アークエンジェルが堕とされたら意味無いだろ。」
「そ、そんな・・・」

フレイは俯き言葉を失う。

「坊主もそんな顔をするな。お嬢ちゃんはお前のことが心配だから言ったんだ。わかるだろ?」
「はい・・・。」

キラはフレイを見る。
フレイはただ俯いている。
哀しみを宿した姿である。

「ほら、坊主。」

マードックはバンッと背中を叩く。

「痛ぅ。何するんですか?」
「お嬢ちゃんの心配を払拭させてやれ。」
「は、はい。」

マードックに促され、キラはフレイに話しかけた。

「フレイ、心配してくれたありがとう。僕は大丈夫だよ。でも、もし辛くなった時あったら正直に話すよ。」

キラは精一杯の笑顔を作って言った。

「キラ・・・。わかった、約束よ。」
「うん。約束する。」

頷きながらも、フレイの表情はさえない。
それでも、キラの言葉を信じるしかない現実がそこにあった。

100散った花、実る果実37:2004/03/15(月) 23:38
「リスティア!おはよう・・・・あの・・・・」
私は勢い込んでリスティアを呼び止めた。
「・・・・おはようございます・・・・なんでしょう?」
昨日のクルーゼ隊長の言葉が私の中でいつまでも回っている。
『いずれ君にも役にたってもらえるのでは、と期待しているのだよ』
今、私ができることはなんだろう。
この艦の中で、私のできること。まず知ること。それから。
「何か、私にできる仕事はないかしら。何もしていないのも落ち着かなくって」
「あなたにできる事って・・・・」
リスティアは虚を衝かれたような表情で私を見つめている。
「何よ、変?」
リスティアにはふくれて見せるけど、変だと思う彼女の気持ちもわかる。
昨日までの私は、本当に後ろ向きだった。
自分の可哀想な境遇に酔って、地に足をつけて生きる事を考えていなかった。
私は昨日、一晩考え抜いた。
私はなんのためにここにいるのか。
今はまだ、例えばクルーゼ隊長が私に期待している何か、それに答えることはできないだろう。
でも、何もしないではいられない。
彼が何を考えているのかは、一晩考えてみてもわからなかった。
でも、誰かの役にたつ、というその発想は私のここでの支えになり得るような気がした。
何かを目標にしていなければ、この私と相容れない世界で押しつぶされてしまいそうな気がしたのだ。

「そうは言っても・・・そうね、お茶汲みくらいかしら?」
え・・・お茶汲み?
「だって、やっぱり軍事的なことは捕虜には任せられないし、同じ理由で事務仕事も駄目だし、雑用くらいしかないんだもの・・・」
しょげたように言い訳するリスティアを見ていると、昨日の拒絶が嘘のようだった。
「じゃ、お茶汲みやるわ。お茶っ葉の場所とか教えてよ。」
ここは年上らしく、私から一歩歩み寄ってあげよう。
違う人間だって拒絶されても、もう私はここで生きていくしかない。
お互い違う中でどういう関係を作っていくかって、きっとそれも大切な事だから。

101刻還り:2004/03/15(月) 23:39
「青春だな。」

二人の感じがなんともほほえましく、マードックはうんうんっと頷く。
今のキラを見ればまさに、年相応の少年である。
とても、MSに乗って戦争に出ているとは思えない。
だからこそ、それが歯がゆいものでもある。

「を、いたいた。」

声の主はフラガ。

「探したよ。」
「坊主ですか?」

フラガの言葉にマードックが反応する。
だが、フラガの探していた相手はキラではない。

「違う違う、俺が探していたのはこの子。」

と言って、フレイを指差す

「え、私ですか?」
「そっ。」

驚くフレイに、軽く応えるフラガ。
フラガはそそくさとフレイを促し、格納庫から連れ出していく。
それをキラとマードックは唖然と見ていた。



「さあ、ここだ。」

ある部屋の前に促される。
プシュッというエアー音とともにドアが開かれ、フレイは中に入る。

「ラミアス艦長、バジルール中尉。」

そして、フレイの後から入ってきたフラガ。
つまり、この場にはアークエンジェルの責任者が集まっているのだ。

「もう身体は大丈夫かしら。」

正面に座っている、マリューがフレイの体調を心配して声をかけた。

「は、はい。」
「そ、それはよかったわ。」

マリューはホッと息を吐き、ほがらかな表情を見せる。
しかし、すぐに真剣な表情へと変わり、フレイの目を見る。

「なぜ、この場に連れてこられてかわかるかしら?」

マリューの言葉に少し考え込むフレイ。
思いつくことは唯一つ。

「ストライクに勝手に乗ったためですか?」
「ええ、そうよ。」

頷くマリュー。

「とりあえず、訳を聴こうかしら。」

フレイはマリューだけでなくナタル、フラガの視線を強く感じる。
緊張のあまり震えてきそうだが、それを我慢するように俯く。
そして深呼吸をし、正面を見て胸を張って言った。

「シャトルを、キラ達を護るためです。あのままではシャトルはデゥエルに撃たれていました。」
「そうね、結果的にそうなったと言えるでしょう。」

事実、フレイが知っている通りにデゥエルはシャトルを撃とうとし、フレイはそれが視えた。
フレイは自分の行為が正しかった感じていた。

102刻還り:2004/03/15(月) 23:41
しかし、その行為は万人に対して正しいものではない。

「アルスター二等兵、君の行為がどれほど危険な行為であったとうことを理解していないようだな。」

今まで黙って見ていたナタルが口を開いた。

「えっ・・・」
「君が勝手にストライクで出撃したことによって、クルー全員の命が危機に瀕したのだ。」

ナタルの言葉を聞いて驚くフレイ。
次第に、その意味がわかってくる。
ナタルは言う。
まずは、ストライクが出撃しなくてもアークエンジェルがザフトを振り切れる可能性が十分にあったこと。
ストライクが出撃したことにより、大気圏突入のタイミングを失う可能性。
ストライクが堕とされる可能性の高さ。
そして、アークエンジェルの現状。
目的地への困難さ。

「アルスター二等兵。君の行為は重大な軍規違反だ。」

その言葉はフレイだけに言ったのではない。
最高責任権をもつマリューにも言っているのだ。
その証拠にナタルはマリューを見ている。
マリューとナタルの間に沈黙が流れる。

「銃殺刑と言いたいのかい?バジルール中尉。」

声を発したのは以外にも今まで黙っていたフラガであった。
その言葉にフレイは恐怖を思い出し、震えだす。
ナタルはフラガの質問に沈黙で答える。
沈黙は肯定。
それは世間一般の常識である。

「それはやめた方いいと思うんだよね。俺は。」
「なぜですか?ヤマト少尉ときとは違います。彼女はすでに軍人です。」

厳しい口調のナタル。

「亡くなったアルスター事務次官は結構有名な官僚だろ。そして、彼女はその娘だ。その子を軍規違反とはいえ殺したとあっては上、それに政治屋は黙っていないだろう。」
「だからといって、規律を乱すようなことはできません。」
「規律を乱すんじゃなくて緩めるってこと。ダメかな、艦長?」

突然ふられ、呆気にとられるマリュー。
だが、フラガの案はマリューにとって魅力的であり、マリュー自身もフレイの処置を重くするつもりはなかった。

「そうですね。」

と言って、マリューは表情を緩める。

「営倉に5日間。アルスター二等兵、これがあなたへの処罰です。」

それを聞いて、フラガはにこっと笑い、ナタルは苦虫を潰したような納得できない表情、フレイは張り詰めていた緊張がほぐれホッと息を吐く。
フレイは自分をかばってくれたフラガを見ると、ウインクをしていることに気付く。
まるで『よかったな』っよ言っているようだ。
フレイは、この場の3人を見て頭を下げる。

「ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした。」

キラ以外に自分を護ってくれている存在を感じたフレイ。
その中にはナタルも入っている。
ナタルはドミニオンで唯一、自分を理解し護ってくれた恩人なのだから。
この後、ロメル・パル伍長が呼ばれフレイは彼に連れられて営倉へと連れて行かれた。

103刻還り・作者:2004/03/15(月) 23:56
久々の投下となりました。
そして、投下した後にミスに気付きました。
フラガにある役目をしてもらう予定だったのにすっかりと忘れていましたね。
別のポイントで入れなければなりません。

>>流離う
最近、すっかりギャグテイストに染まっていますね。
一時の休息の後、シリアスな展開になることが予想されますね。
さて、逃げたキラとトールは何処に行ったのかな?

>>過去の傷
壊れかけていたミリィがようやく正気を戻してよかったです。
それにしても、歌姫は過激ですね。

>>赤毛
キラの後を継ぐなんて、フレイ様すさまじいい決意です。
どうか無理なさらぬように。

>>白い
悲しい思い出を背負ってキラは生きていくのですね。
なさねばならぬことをする時でも、ほんの一時、フレイ様を思い出してください。

>>散った花
まずはお茶くみですね。
嫌な上司には雑巾の絞り汁が定番ですフレイ様。

>>キラフレ
キラがやばい奴に捕まってしまいました。
助けはいったい誰が・・・
本命がフレイ、対抗がカガリ、穴にカズィでどうでしょう。

104散った花、実る果実/作者:2004/03/16(火) 00:43
お茶汲み補完・・というわけではなく、本当にフレイ様に自主的に働いてもらおうと思ったところ、リスティアに制限されてしまったのです。
フレイ様秘書ライフがここから始まるわけですが、さてどうなることやら。
おちゃらけ番外編でも書こうかな。

>>刻還り
割り込んでしまう形になってしまってすいませんでした。
丁度同じようなタイミングで投下してしまったらしく・・・・
軍事会議ですね。周りの気持ちを汲み取れるようになってフレイ様本当に大人になってきましたね。
一生懸命なところはそのままで、うまく成長してくれたらいいなあ。

>>キラ♀フレ♂
また(腹が)黒い人が登場しましたね。しかし最低のコーディネイターって。(笑)
しかしフレイ様の観察眼はすごいですね。でもここで一発王子様のようにキラを助けに行ってあげてほしいです。

>>赤毛の虜囚
フレイ様、戦争の問題点に気づくという所ですね。
本編を考えるとこの辺で問題に気がつき自分の過ちに気がつく、という感じを受けるのですが、やはりこの近辺はテーマが重くなりますね。
それはそうと、フレイ様ご懐妊でしょうか?だったら無事出産してほしいなあ。

>>The Last War
世界の救済。それは彼等にとって、結局世界の破壊ということになってしまうのでしょうか?
キラ達は今度こそ彼等の悲しみを救ってあげることができるのでしょうか。

>>流離う
おお人事、おお人事。
アスラン、いっそのことAAに転職しましょう。今ならフレイ様のハリセン付!お得!!

105ミリアリア・あの子許せない 73:2004/03/16(火) 02:38
第2部 5. 私だけ違う、私だけ…… 1/4
[私だけだ、そんなキラがイヤなのは]

カズイがアークエンジェルを降りた。私服に着替え、軍から支給されたバッグに
持ち出しを許された私物を詰めて、カズイは出て行った。それをサイと私、キラが見送った。
見送るキラの傍らには、なぜかカガリさんもいた。カガリさんは、カズイとはあまり話をして
いないはずだけど、やはり自分が乗っていた艦のクルーが去って行くのは寂しいのか、
悲しそうな顔つきをしていた。

「寂しくなるわね」
同時に見送っていた艦長が私達を見て言った。フラガ少佐も頷いていた。

キラは終始無言だった。見送った後も、踵を返すようにモビルスーツデッキに歩きだす。
カガリさんはキラに付き従うように、それを追って行った。キラを見るカガリさんの
横顔は陶酔するような感じが伺える。レジスタンスの時の、直情的だけど、
ピリピリと毅然とした雰囲気が見られない。クールなキラに、変わってしまったキラに
惹かれている。

フラガ少佐も、ストライクのチェックと演習のために、キラとは反対方向のデッキに
向かって行った。残ったサイと私に、艦長は言った。
「あなた達は残るの?」

「はい」
サイは速答した。その目には決意の色が伺えた。

「ミリアリアは、どうするの?」
艦長の問いに私は答えられなかった。そんな私を艦長は一人自室に招いた。
艦長は感慨深く話しかける。

「ミリアリア、ナタルもフレイさんも艦を降りて、最初からのクルーで残っている女性は、
 もう私達二人だけ。寂しくなっちゃったわね」

私は、あの子が降りて寂しいとは思わない。罪悪感は、疼くけど……
バジルール中尉も、本当に、いつも叱られていた思い出しか無い。艦長とは想いは違っている。

「ミリアリア、あなたは、どう考えているの。これからについて」
「分かりません。戦争はイヤだけど、だけど、逃げても戦争から逃れられるとは思えません。
 だったら、私はどうすればいいのか、考えても、考えても結論は出てきません」

「それなら、私も同じよ」
「艦長は、降りるつもりなんですか」

「できれば、もう、艦長なんて仕事から離れたい。今までも、私が艦長なんて思いもよらなかったから。
 頼りない艦長で、みんな、迷惑をかけて申し訳なく思っている」
「そんなことは……」

「でもね、私、降りることは考えていないわ」
「どうして?」

「こんな私でも支えてくれる人がいるから。ムウや、ブリッジのみんな。そして、キラ君……」
「キラ?」

「キラ君、オーブとの会談でも、ウズミ様との話を、私に代わって進めてくれたわ」
「キラが……」

「人って短期間で、ああも変われるものかしらね。凛々しかった」

宙を見上げるような素振りの艦長。変わってしまったキラ、私の信じられないキラを賛美する、その瞳。
艦長、カガリさん、サイ、みんなそうだ。私だけだ、そんなキラがイヤなのは。
私だけ、私だけ、みんなと違う。

「ミリアリア、あなたの働きもすごいわ。モビルスーツ管制、通信、情報整理。多分、もう、
 CICで、あなたの右に出るものは、そうはいない。強制はしないけど、もし、その気が
 あるなら、また、私を助けて欲しい」

私には、既に艦長の私に対する言葉が耳に届いていなかった。

みんな、今のキラが好きなんだ。
変わってしまったキラが好きなんだ。
昔を振り返りもしないキラが好きなんだ。
あの子が変えてしまったキラが好きなんだ。

「いや! 不潔よ」
「どうしたのミリアリア?」

「不潔だわ! キラをそんな風に思うなんて」
「ミリアリア、私、そんな意味じゃ…… ミリアリア、あなた?」

艦長が、私のことに気づいたような言葉に、私は顔が真っ赤になった。いたたまれなくなって、
私は艦長室を飛び出した。

通路を力なく歩く私には、今、頼る人がいなかった。サイさえも頼ることができない。
私は、孤独感にさいなまれた。トール、もう私にはあなたしかいないの?

106ミリアリア・あの子許せない 74:2004/03/16(火) 02:43
第2部 5. 私だけ違う、私だけ…… 2/4
[しまったな……]

当ても無く通路を歩いていた私は、ふと気づくとディアッカのいる独房のあるドアの近くにいることに
気がついた。捕虜のディアッカに、私の悩みを解決できるはずは無い。でも、話す相手さえいない
今の私は、すがるような思いで、独房のある部屋に入って行った。おそらく、監視カメラが様子を
映しているだろうけど、オーブから宇宙への打ち上げ準備で忙しい中、特に意味も無い捕虜の
監視カメラなど誰も見ていないことは、私自身が知っていた。
私の入る物音で、ディアッカは起き出して来た。

「ミリアリア、いや、あなた様……」

変な呼び方。まだ、やってる。しまったな……。名前をすっかり覚えられてしまったと後悔する。

「ねえ、ちょっと話聞いてくれる。聞いてくれるだけでいいから」
「なんだ、その……キラってやつのことか?」

「キラとか、私のこととか」
「俺が聞いて言いのか?」

「いいから、おとなしく聞きなさい」

私は話した。キラのこと、私のこと。今の想いを。私は鉄格子の前に横向きに座り込み、
膝を抱えながらディアッカに話し込んでいた。

「キラはね、MIAから帰ってきて、変わったのよ。それまでは、あの子のせいで変わったと
 思っていたけど、あの子がいなくなっても変わったままだった」
「あの子って、いったい誰なんだ? 女?」

「あの子は、あの子よ。アンタには、それでいいの。
 キラは、戦争全体を見るようになって、立派だとか言って、みんな頼るけど、
 同時にキラはね、冷たくなった。残酷になった。秘密のためなら私でも殺すかもしれない。
 昔、あんなに優しかったのに。いつも私達と親しく話していたのに。つまらないバカ話ばかり、
 それでも、私は、そんなキラが好きだったのに」
「だがな、軍人だろ。軍に入っちゃ、そうも言ってられないだろ」

「違うわ、キラも私も戦争に巻き込まれたのよ。ヘリオポリスにアンタ達が攻めて来て、
 私達を守るためにキラはストライクで戦うしかなくて。それで、やっと逃れて、
 元の生活に戻れると思ったのに。あの子が、キラを戦争に駆り立てた。
 キラを誘惑して、貶めて。私からキラを奪って。
 ずっと戦ってばかりで、キラの心は変わっていった」
「なんで、そのキラばかりなんだよ。戦艦には、いろいろ軍人がいるんだろ」

「ストライクを動かせるのはキラだけだったもの」
「キラだけって、まさか」

「キラはコーディネータよ」
「なんだって! そうか、道理で手ごわい訳だ」

「なによ、今さら……」
「じゃあ、お前コーディネータに……」

「悪い? 私もトールもコーディネータとか、そういうの全然気にして無かったわ。
 キラはキラだもの」
「じゃ、俺のことも、そう思うのか?」

「別に、アンタのことコーディネータだからって恐がったり憎んだりしないわよ。
 ただ、下品なアンタそのものを嫌いなだけ」
「おい! だったらなんで俺なんかに?」ディアッカは、腹を立てたように、私に聞いた。

「誰も相談する人がいないの。変わったキラをみんな好きなのに、私だけイヤなの。私一人違うの。
 誰にも打ち明けられなくて。大嫌いで無関係なアンタなら話してもいいかと思って」
「チッ! 人の気も知らないで。で、何を相談したいんだって」

「私、どうしたらいいと思う。みんなキラと一緒に、このままアークエンジェルに残るわ。
 でも、私はキラが信じられない。今のキラといるのが辛い。このまま降りてオーブの
 故郷に帰った方がいいのかな。それとも、キラを信じて、このまま残ったほうがいいのかな」

ディアッカの答えは無かった。当然だ。いきなり言われて答えられるはずは無い。
でも、胸の中に隠していた想いを話すことで、私の心は少し楽になった。

「ありがとね、ディアッカ。話聞いてくれて」
「今度、いつ来る?」

「分からない。もう来ないかもしれない」
「ああ、そうか。こちらこそ、その……ありがとうな、ミリアリア。俺のこと名前で呼んでくれて」

その言葉を聞いて、私は、しまったと思った。油断してた。

「調子に乗るんじゃないわよ。アンタなんか大嫌いなんだから」

私は背を向けて独房を出て言った。なぜか、最後の切なそうなディアッカの顔がしばらく頭の中に残っていた。

107ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/16(火) 02:49
ミリィSS新章です。TV本編だと、話は無くともディアッカへの差し入れが続いていましたが、
本SSでは、話をしたい時に来るだけです。そう言えば、TV本編ではキラがコーディネータなのを、
話すシーンも無かったですが、こっちでは、後の繋がりもあって入れています。

今日は投下多いですね。読むのが大変ですが、盛況で嬉しいです。
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
マイケル君の、ちょっと悲惨な過去に同情したりもしたんですが、その後の行動に幻滅。
フレイ(♂)様、こういう小悪党は、遠慮無くのしてやってください。

>>流離う翼たち
アスラン大変そう。中間管理職の悲哀ですね。クルーゼは、現在、どの時分かは分かりませんが、
TV本編で、鍵を見つけたうんぬん言っているころだと、話を聞く人はさぞ胃が痛くなったろうと思います。
イザーク、よく無事でしたね。

>>過去の傷
マユラいきなり復活してキラ誘惑しまくりですね。キラは自分の心をフレイ様に読ませて、フリーダムの
操縦を教えるつもりみたいですけど、誘惑かけられているのまで分かってしまって、変な考えもできず大変そう。
ミリィは、ラクスのおかげで、やっと復活できそうですか?

>>刻還り
フレイ様、やっとキラと話せましたが、思いとどかずでしょうか。その後営倉入りで、また話せなくなるようですが、
少しですからガンバレ、フレイ様。

>>白い羽
いい作品ですね。握り締めるリップスティックに込められた想いが切なかったです。

>>散った花、実る果実
フレイ様、仕事始めましたか。前向きになってきましたね。お茶汲み仕事、なんか、A.A. のころよりも
後退している気もしないでもないですが、これで、クルーゼに水持ってきたり、紅茶持ってきたりする、
あのシーンが拝める訳ですね。

108私の想いが名無しを守るわ:2004/03/16(火) 03:41
>>ミリアリア
ディアミリの描写が面白いです、この小説のミリィは憎みきれない。
可愛いとすら思うな。ディアッカもイイヤツ。
キラに反感を持っている人間は必要だったよなぁ。補完させてもらってます。

>>刻
フレイ様…ガンガレw

109流離う翼たち・435:2004/03/16(火) 21:53
「あら、どうしたの劾?」
「いや、急に鼻がむずむずしてな」
「風邪でもひいたんじゃないのか。健康管理がなってない証拠だ」
「イライジャ、言い過ぎよ」

 ロレッタに窘められてイライジャは不満そうに顔を逸らせた。3人が居るのはマドラス基地の本部で、色々と溜まった事務書類を提出しに来ているのだ。

「ふう、傭兵家業も楽ではない」
「仕方ないでしょ。今は大西洋連邦に雇われてるんだから」
「金払いが良いから文句言えないしな。何しろうちは貧乏だ」
「くっ、ブルーフレームは高く付きすぎる。やはり実弾は止めてビーム主体に変えるべきだろうか。それともロウのように剣一本で頑張るか?」

 言った瞬間、劾は2人に張り倒された。

「劾、装甲の修理代幾らすると思ってるの。前の戦闘なんかメインフレームにまで及んで、家の台所は火の車なのよ」
「レッドフレームは格闘戦使用だろうが。あんた、家を破産させる気か?」
「す、すまん・・・・・・」

 2人に言われて劾は仕方なく謝った。
 傭兵の契約というものにも色々あるが、劾が請けている仕事はMSを擁する傭兵部隊としては普通の仕事である。まず契約期間に応じた基本手当てを渡され、戦闘1回ごとに戦闘手当てを受け取る。敵1機ごとに追加ボーナスを得る。敵機を捕獲したりすれば更にボーナスを出す。
 その代わり、武器弾薬や食料、推進剤、装甲板といった消耗品は全て自弁となる。大西洋連邦から買うわけだ。お情けで調達価格は正規軍の調達価格と同じにしてもらっているのだが、これでもかなり苦しい。サーペントテイルの台所は年中火の車なのである。
 そんな事を話していると、アナウンスがロレッタを呼び出した。

『サーペントテイルのロレッタ・アジャーさん。事務処理が出来ました。13番窓口までお越しください』
「あら、終わったみたいね。劾、次で敵MSをせめて3機は落としてくれないと、本当に大赤字になるからね」
「・・・・・・努力する」

 地球圏屈指の傭兵部隊、サーペントテイルといえど、大赤字は怖いらしかった。ついでに言うと、通帳片手に青筋浮かべるロレッタさんもかなり怖かった。イライジャさんといえば、情報誌を片手に簡単にできるアルバイトなどを探している。もしかしたら隊員の給料さえ支払いが滞っているのかもしれない。

110流離う翼たち・作者:2004/03/16(火) 22:01
>> 過去の傷
キラ、ご愁傷様です。君はやはり不幸の星に好かれているのでしょう
とりあえず、フリーダムが動くかどうかに注目

>> 刻還り
とりあえず、している知識を使うと回りが訝しがる。逆行の定番ですねw
キラはとりあえず余裕ありそうなので、ヘリオ組も壊れないかな。でも黒サイの動きが気になる

>> 散った花、実る果実
頑張れフレイ様、お茶汲みも立派な仕事だ。仕事に貴賎は無いぞ
とりあえずクルーゼのお茶に変な物質を混ぜるのを推奨w

>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィガンバですが、卑屈なディアッカが笑えるのは何故w
何となく愚痴のはけ口にされてるディアッカが哀れですが、それもAAヒエラルキーの最下層に位置するが故ですかな

111過去の傷・82:2004/03/16(火) 22:23
<フレイ、バラエ−ナ・プラズマ収束ビ−ム砲は使わないで、威力が高すぎるから、危険だよ、いいね?>
「分かったわ・・・さあ・・・いくわよ、カガリ!貴女はすごく可愛いし大好きで親友だけど・・・容赦はしないわ!」
「私もだ!」
(あのフレイさん援護しましょうか?)
(ティファ・・・ありがとう・・・でもいいわ、私一人で戦いたいの・・・それにカガリだって一人なんだし卑怯な真似は出来ないわ・・・それからこれは私自信の戦いだから・・・ア−クエンジェルの頃は皆が戦ってるのに私何も見ようとしなかった・・・私いたのに!・・・私いつも戦いが始まったらキラの部屋のベッドの中にいつもこもってた・・・キラを・・・皆を見ようとしなかった・・・キラや皆は命かけて戦ってたのに!・・・もう後悔したくないの逃げたりしたくないの・・・もう同じ過ちは繰り返したくないから・・・)
(・・・分かりました、私は見守ってます、頑張ってください)
(ありがとう・・・さあ行くわよ)
フリ−ダムはルプス・ビ−ムライフルをストライク・ル−ジュへ放つ・・・しかし、あまりにも正面で狙いが分かりやすいのか、それを回避される。
「お前射撃下手だな!」(というより馬鹿か?)
「うっさいわね!」
(フレイさん、二ュ−タイプの能力を使ってください、せっかくフレイさんには素質があるんですから、無駄にしちゃだめですよ)
(そ、そうよね・・・ありがとう)
ル−ジュからビ−ムライフルが放たれた・・・。
「は!この感じ・・・正面・・・来るわ!」
回避する。
(いいです、その感じですフレイさん)
「あはは!カガリ♪その程度でどうするつもりなのかしら?」
<当たっても大丈夫だよ、フレイ・・・フェイズシフト装甲とNジャマ−キャンセラ−が防いでくれるから>
「そう、つまりはバリアね、これで思う存分戦えるわ!」
(そうだったな、そういえばル−ジュにもたしか)
ル−ジュが接近してきた。
(こうなったら接近戦だ、素人に負けられるか!)

「キラさん♪せっかくブリッジは二人きりなんだし、楽しみましょうね♪」
「え?・・・いや・・・その」
「デ−ト楽しもうね♪キラさん可愛い♪アサギやジュリともキラさん可愛いって言ってたんですよ、私、キラさんタイプ♪キラさんの彼女に立候補しちゃいま〜す!」
「・・・・・・」
「あ!アスランさん!」
「え・・・?アスラン?」
「どうだ?様子は、お前の大好きなフレイ・アルスタ−は」

(な!こいつほんとに素人か!?強い・・・)
ル−ジュがビ−ムを放つが簡単に回避する。
(私だってやればできるんだから、バリアはエネルギ−を消費するみたいだし、回避よ回避!そして・・・反撃よ!反撃!)
フリ−ダムの放ったクスィフィアス・レ−ル砲がル−ジュに直撃した。

「キラ・・・彼女は一体!?ほんとにナチュラルなのか?コ−ディネイタ−に見えるぞ」
「それよりすごいかもね・・・」(フリ−ダムの操縦が出来るなんて・・・あれで空を飛んだら・・・)
「どういうことだ?」
「彼女は・・・フレイは二ュ−タイプなんだ・・・」
「なんだと!?」(そんな馬鹿な)
「僕にもまだ信じられないよ、実は朝フリ−ダムの操縦の基本について少し教えただけなんだけどね・・・」
「お前、カミ−ユ・ビダンって知ってるよな?実は・・・イザ−クがひそかにカミ−ユのファンなんだと」(ザフトのある時期は俺とイザ−クとミゲルの三人で機動戦士Zガンダムよく見てたなあ・・・あの時だけはイザ−クとは意見合ったんだよな)
「それより、アスラン!カガリが危ない・・・翻弄されてる、そろそろ止めるね、休憩にさせるよ」
(これも二ュ−タイプの力か・・・?なるほど・・・)
「そうか、なら俺は戻る」
アスランは出て行った。
<フレイ、カガリ休憩だよ!>
機体が停止したのを確認するとキラは安心したようにほっと胸を撫で下ろした。
「あの・・・次・・・私、MIアストレイでカガリ様の援護します」
マユラが言った。
「え?・・・別に構わないけど」(それもいいかもね)
「ほんと!?やった!キラさん大好きです」
マユラはキラに抱きついたのだった。

112過去の傷・作者:2004/03/16(火) 22:36
>>刻
フレイ様頑張ってくださいね。
私のサイのことが気になりますね、なにもなければいいんですけど。
>>散った花 実る果実
いいなあ、フレイ様が必死に頑張り努力している姿を見ると、さあ頑張ってください。
>>ミリアリア・あの子許せない
ミリィ、頑張って。
でもディアッカも可哀相に見えるけど、これも仕方ないですね。
ミリィにはト−ルが・・・。
>>翼たち
ロレッタさん大変ですね。
でも、皆がいれば大丈夫ですよ。
なにげにこの三人合ってるし。

113刻還り:2004/03/16(火) 23:32
フレイが営倉に入れられたことは艦内にすぐに伝わった。
その理由もである。
もっとも、一部を除いたアークエンジェルのクルーはフレイに対して何らかの処罰が下ることは十中八九予想していた。

「フラガ少佐。」

歩いているフラガにキラ、トール、ミリアリアが寄ってきた。
現在、サイとカズイはブリッジに勤務中である。

「ん、どうした?」
「どうしてフレイが処罰されないといけないんですか。」
「そうですよ。フレイは俺達を助けるためにストライクを。」

ずいっと前に出てキラとトールが詰め寄る。
あまりの喧騒にフラガは腰を引く。

「お、おい、落ち着けよ。」

馬をなだめるように二人を落ち着かせようとする。

「しょうがないじゃないか、あの子は勝手にストライクを発進させたんだぞ。」
「僕もしました。」

フラガの言葉に反論するキラ。
しかし、フラガは諭すように話す。

「お前の時とは立場が違うんだ。彼女はすでに軍人だったんだよ。無罪放免ってわけにもいかないのさ。」
「でも・・・」

尚も食い下がろうとするキラ。

「これでも軽い方だぞ。普通なら銃殺刑でもおかしくないんだからな。」

軽い言葉で話すフラガ。
しかし、聞いているほうには重く圧し掛かる。

「銃殺刑・・・」

キラはあの時のことを思い出す。
自分がラクスを連れて飛び出した後、マリューに言い渡された言葉と同じ。
しかし、自分は無罪放免、フレイは処罰を与えられた。
一般市民と軍人の差があるとはいえ納得できない。

「営倉なんて少しばかり窮屈な暮らしになるだけだよ。心配ないさ。」

フラガはキラ達の心配を振り払うかのように笑いながら言う。

「あの〜、具体的にどういう暮らしになるんですか?」

ミリアリアが控えめに質問をする。

「ここの場合だと、トイレ以外は営倉の中だな。」
「え、シャワーも浴びれないんですか?」
「ああ、そうだよ。」
「そんな〜・・・。」

可哀想にという気持ちが一杯につまってるような声だ。

「どうしたんだ?」
「フレイはヘリオポリスにいた頃は一日に二回、お風呂に入っていたみたいなんです。」
「・・・そいつはきついかもな。」

呆れたような声をだすフラガ。
ミリアリアの心配事も三人の男にはわからない。
女の子は綺麗好きなのだ。
同時刻、フレイがくしゃみをしたということは知られていない。

114刻還り・作者:2004/03/16(火) 23:44
さて、次回はみなさんが楽しみにしているアレの予定です。
彼が動くのです。
上手く描写できるかな〜w

>>流離う
ザフトよりサーペントテールにこそおー人事、おー人事ですw

>>過去の傷
精神での会話とはいえ、何気に余裕ありますな、フレイ様w
PS装甲は実弾を無効にするだけだから、ビームはやばくない?

115ミリアリア・あの子許せない 75:2004/03/17(水) 08:08
第2部 5. 私だけ違う、私だけ…… 3/4
[ミリアリアにね、不潔って言われちゃった]

私は、ディアッカのいる独房を出た。喋りすぎで喉がカラカラでたまらなかった。
食堂にジュースを飲みに行こうと思うけど、一般用の食堂までは遠い。
仕官用食堂は、すぐ近くにあった。一応、一般兵と仕官の食堂や休憩施設は別れてはいる。
二等兵の私は、みだりに入ってはいけない規則になっている。でも、ほとんど仕官のいない
アークエンジェルでは仕官用食堂は使われていないに等しかった。ノイマン少尉は、曹長から
形ばかりの昇級をした後でも一般用食堂へ顔を出している。艦長達は、自室に食事を運んで
もらうことが多かった。

ドアを開けて覗いてみると、やはり仕官用食堂は誰もいなかった。いけないと思いつつ入って、
自販機のジュースで喉を潤す。そのとき、話しながら食堂に近づいてくる声がした。私は思わず
厨房の影に隠れる。ストローから飲みかけのジュースが口の中に残っている。

仕官用食堂に入ってきたのは声からすると艦長とフラガ少佐だった。ドアが閉まる音がする。

「私、ミリアリアにね、不潔って言われちゃった」
「また、どうしてなんだ」

「キラ君に欲情しているように見えたらしいわ、私」
「おい、マリュー、お前、年下の趣味があるのか」

「まさか。私は叔父さん趣味よ。年上好き」
「ちぇ、それも手厳しいな」

「でも、ミリアリアに、そんな風に見えていたなんてショックだわ」
「ミリアリア嬢ちゃんは、ちょっと潔癖症なところがあるからな」

フラガ少佐の、私の認識、全然違う。私って、そんな風にまわりから見えているの?

「言われてみれば思い当たる節あるもの。私、キラ君に頼りすぎていたかも」
「キラのやつも成長したからな。まあ、相変わらず無理してるところもあるけどな」

「そうね。フレイさんがいてくれたらキラ君も、もう少し気が楽にできたのに」
「しかた無いな。今、考えるとアラスカでの転属は残酷だったな」

「ムウも、フレイさんを一緒に連れてきてくれれば良かったのに」
「戻ってきたのは成り行きでな。正直、そこまで気が回らなかった。面目無い」

「仕方ないわね。そう言えば、ムウは、なぜ最初に転属待ちの艦から戻ったの? アラスカの時。
 そりゃ、サイクロプスのことを知った後は、分からないでもないけど」
「おい、今さら、そんなことを聞かれるとは思わなかったよ」

「んっ!」

艦長とフラガ少佐がキスをする気配がした。そうだろうと分かっていたことだけど、
自分のすぐ近くでしていることで、私は緊張した。飲みかけのジュースを
飲み込むこともできずに、息を潜めた。

「あ、もう…… 私、モビルアーマー乗りは嫌いなの……」
「また、そんなことを。心配すんなよ。俺、今、モビルスーツ乗りだから。ルーキーだけど」

「あっ、あっ ……」

私は、頭の中が真っ白になっていた。身動き一つできず、呼吸さえ停まったかのようになっていた。

「あっ、うくっ …… ちょっと駄目、ムウ。私、今日、まだピル飲んでないの。後で……」
「ん、そうしますか」

艦長とフラガ少佐が出て行く物音がした。私は、急いで仕官用食堂を出て、
自分の部屋に戻った。ベッドに横になった。落ち着かなかった。
声と音だけとは言え、大人の本物の色事を聞いて、私の体は熱くなっていた。
しばらくぶりに、自分で自分を慰めていた。あの子が私と同室のころ、
あの子がキラの部屋に行くたびに、そのことを想像して、嫉妬に狂いながら
していたこと。また、その時と同じことをしていた。

私の頭の中ではいくつもイメージが渦巻いていた。

艦長とフラガ少佐の抱き合うシーン。
そのイメージに重なるサイ。私を抱きしめてキスをするサイは、いつのまにか裸で……
愛撫する手はいつしか別人に変わる。私を躊躇いがちに触るトールに。
そして…… 私の息が荒くなる。
シャワー室で、がっしりした背中に、私は裸の体を押しつける。キラ! 振り向いたキラの顔は、
昔のままの優しい微笑みで……

息を整えながら、徐々に戻ってきた意識で、私は呟いた。

「艦長って違ってたんだ。私の方が不潔だったんだ」

116ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/17(水) 08:11
一応、これで2章くらいから、ずっと引っ張ってたマリューさんのキラ疑惑は決着です。
でも、これでミリィの頭の中がモード変換されていて……

>>流離う翼たち
ついに、外伝キャラまで出てしまいましたか。それにしても、アスランといい、戦争中にも
関らず、小市民的な愚痴の言い合いでおかしくなります。

>>過去の傷
フレイ様、まさにゲーム感覚ですね。なんか強そう。次はカガリ・マユラとの二対一、ガンバレ。
ところで、イザークとアスラン、ミゲル先輩が、カミーユのファンとは…… この三人が仲良く
TVアニメを見ているシーンは、スーツCDの雰囲気だと想像付きませんでした。

>>刻還り
フレイ様、シャワー浴びられないのは辛いでしょう。けど、我慢我慢。ミリィ、フォローしてあげてね。

117流離う翼たち・436:2004/03/17(水) 20:49
 手続きを終えて出てきた3人の前に、無人タクシーから降りてきた奇妙な3人組が現れた。2人は連合の見習い兵士の制服を着ているが、1人はくたびれた野戦服を着ている。傭兵か何かだろうか。

「でも良いの、私たちまで付いてきて?」
「別に構わないわよ。食堂でお昼でも食べて待ってて。支払いは私がするから」
「おお、太っ腹だな」
「・・・・・・なんか複雑な表現ね。私が太ったみたいじゃない、カガリ」
「でも良いのフレイ、あなたそんなにお小遣いあったっけ?」
「准尉になってから給料が二ヵ月分くらい溜まってるからね。二等兵と准尉じゃ給料がかなり違うのよ。だから2人がお茶してるくらいの払いはなんとも無いわ」
「そういや、軍隊ってのは給料に随分差があったな」
「そうなのよねえ。まあ、懐が暖かいのは良いことだけど」

 何やら3人で許し難い事を話している。ロレッタの額に浮かぶ青筋が増え、イライジャが拳を握り締め、劾の肩がピクピク震えている。そして、怒りから出た行動は、実に大人気ないものであった。
 わざととしか思えないが、ぶつかった相手に劾が文句を付けた。

「周りを見て歩け、坊主」
「・・・・・・ぼ、坊主?」

 カガリの顔がいきなり険しくなる。何やら腰が微妙に下がり、喧嘩の態勢を取る。

「お前、そっちからぶつかっておいて、何いちゃもん付けてやがる!」
「はっ、威勢だけは一人前だな、坊主」

 睨み合う劾とカガリ。それを面白そうに見るイライジャとどうしようかと考えているロレッタ。だが、カガリの方はフレイがその手を取った。

「カガリ、関わらない方が良いわよ」
「フレイ、これは私のプライドの問題だ!」
「カガリ? 女みたいな名前だな」

 馬鹿にするような劾の言葉がカガリの堪忍袋を締めていた細い糸を一瞬でぶちきった。頭の中で何かが弾けるイメージが浮かび、誰の目にも留まらぬ速さで右足が振り上げられる。

「私は、女だあぁぁ―――――!!」
「はぉうぁ!!」

 振り上げられた右足が見事に劾の股間にクリーンヒットし、何とも言えない悲痛な声を上げる。そのまま股間を押さえてその場に蹲り、脂汗を流しながらピクピクと痙攣している劾を、カガリは何とも晴れ晴れとした笑顔で見下ろしていた。

118流離う翼たち・作者:2004/03/17(水) 21:04
まあ、元ネタはZの序盤を見てくださいw
ヒントは声優

>> 過去の傷
フレイ様、まさか自由を動かすとは。何時からそんなに頑丈な身体にw?
鬼の居ぬ間にとばかりに迫るマユラたんが強い

>> 刻還り
さあ、頑張れフレイ様。でも営倉入り。
次回は遂に彼が暴走!? でも、その前に虎と会うのかな

>> ミリアリア・あの子許せない
頑張れミリィ、世の中少しは汚くないとやってられないぞ
大人組みは濃厚に行ってますなあw

サーペントテイルは何故か貧乏w まあ、裕福な傭兵なんて滅多に居ないんですが
実際に戦争帰りの人の手記を読んでも、兵士は漫画みたいに落ち込んだり理想持ったりなんてしてませんよ
国に帰ったら何するかとか、前向きに考えるようにしてたみたいです
というか、後ろ向きな人は直ぐに死ぬか、戦争神経症にかかって病院送りになるそうです

119過去の傷・83:2004/03/17(水) 21:41
「ちょっと・・・あの・・・」
「照れた顔のキラさんも可愛い、こんな彼氏欲しいなあ、アタックしてもいいですか?キラさん、貴方に惚れました、この想いずっと伝えたかったんですよ、年齢的にも近いし、私と付き合いませんか?いつでも私待ってますから、いい返事くださいね♪」
マユラは去って行った。
「・・・・・・」
仕方なくキラはマユラの後を追った。

「カガリ様〜」
「な!マユラ!?・・・はあ、疲れた」
「どうしたんですか?でももう完敗でしたね、カガリ様弱い〜だって手も足も出なかったじゃないですか」
「うるさいな、お前そうはっきり言うなよな!もうちょっと遠慮というかだな・・・」
「だってそうだもん、あ!キラさん♪」
「や、やあ・・・それよりカガリ大丈夫?」
「あ、ああ・・・あいつ強いぞ・・・」
「・・・・・・」(カガリでは苦しいかな)
「ところでキラさん彼女いるんですか?私いまフリ−ですよ」
カガリが、目を閉じると言う。
「マユラこいつには手を出すな、彼女?いるぞ・・・超美人の彼女がな、まずお前じゃ勝てない」
そう、キラにはいまもうちゃんとした彼女がいるのだ、キラにとっては心のオアシスでもある存在だ、ずっとゼミの頃から気になっていた・・・憧れていた女の子、そうア−クエンジェルの頃の関係は微妙な関係だったが今はもう胸を張って恋人同士と言える。
「ええ!?そうなんですか〜そんなに綺麗な人なんですか?私でも勝てないなんて・・・」
「ほらあの翼の白い機体を見ておけ、いまから出てくる」
フリ−ダムから赤い髪の女の子が出てくる、こうして今一度見てみるとほんとに可愛い。
「キラ・・・私・・・疲れた・・・」
「フレイ、お疲れ様」
「この人がキラさんの彼女ですか?まあ綺麗ではありますけど・・・」
「だろ?・・・フレイ・・・お前才能ありすぎるぞ」
マユラがとんでもないことを言い出す。
「でも別れちゃったらいいじゃないですか〜キラさん♪・・・この人に飽きたらいつでも私と・・・」
「え!?いやその・・・」
フレイがだんだんと顔が険しくなりマユラを睨み付ける。
フレイが口を開きかけたときだった。
「ああ、もう喧嘩はやめろよ!よしキラもう休憩はいいからまた実戦練習だ!」
「うん、そうしよう」
「次は私も出撃します、カガリ様援護しますよ」
「そうか!助かる!」
「・・・・・・」(まあどうせザコでしょ、だいたいマユラとかいう女一体なんなのよ、私のキラになれなれしくするなんて・・・まあ丁度いいわ、思う存分痛めつけてあげる・・・)

<よしじゃあ機体も出撃したところで・・・練習開始!>
「さあ、あんたたちいつでも来なさい、私がモビルス−ツ戦の厳しさを教えてあげるわ!」(キラが・・・好きな人が見てくれてるもの・・・とても恥ずかしい姿なんか見せられないわ)

120過去の傷・作者:2004/03/17(水) 21:55
>>刻
フレイ様可哀相です、でも仕方ありませんかね。
そして彼が暴走ですか、どんな騒動を巻き起こす?
>>ミリアリア・あの子許せない
ミリィの心理が面白いです、どうやってこれから突き進んでいるんでしょうか?マリュ−さんとフラガさんのやりとりを見た後ミリィがどういうふうに変わっていくのか楽しみです。
>>翼たち
ああ、衝突していまいましたか、カミ−ユもカガリも短気な性格ですからね、でも間違えたほうが悪いですね。
次が気になります。

121ミリアリア・あの子許せない 76:2004/03/18(木) 03:08
第2部 5. 私だけ違う、私だけ…… 4/4
[なんで私を奪ってくれないの?]

「んっ! んん……」

ここは私の四人部屋。実質は、私の個室。私は、サイにキスをしている。本物のキスを……
ゆっくり付き合いたいと思っていたサイ。それを、今日は私から誘っている。
昨日のことが、私の頭の中にある。

──「あ、もう…… 私、モビルアーマー乗りは嫌いなの……」
──「あっ、うくっ …… ちょっと駄目、ムウ」

艦長とフラガ少佐の声と音の記憶が、私を熱くさせている。

私達は、互いに声を呼び合う。サイの手が、私の腰にかかっている。
私の息が荒くなる。私はサイに体をピッタリくっつける。そして、じっと感触を確かめる。
だけど、私の心の中には別のイメージが渦巻いている。昨日、私に蘇っていた、いやらしい妄想……

シャワー室で、キラのがっしりした背中に、私は裸の体を押しつける。私の体が直接キラに
触れている。私の体すべてがキラに触れられている。柔らかい膨らみもすべて……

押しつけた体に、サイが少し戸惑って離すようにする。

「ミリアリア、これぐらいにしよう。これ以上すると俺……」
「サイ、どうして……」

「ミリアリア、ゆっくり付き合いたいって言ってたことあるよね」
「いいのよ別に」

「ミリアリア、今日は、どうしたんだい」
「どうもしない」

サイは、私から完全に離れると壁にもたれるようにして言った。

「俺、フレイのこと、完全に吹っ切れたと思ってる」
「そう」

「だけど、ちょっと違うんだ、フレイとのこと。フレイは俺達とは違うみたいなんだ」
「生まれのこと? 結構、いいとこの出身だし、でも、それだったらサイだって」

「そういう意味じゃないんだ。俺の親父が言ってた。オーブで会った時」
「そう言えば、前のオーブでの面会から、サイのフレイを見る目、変わった気がする」

「フレイの親父さんが亡くなって、婚約が事実上解消になって、親父も、お袋も良かったって言ってた。
 フレイは、自分は地球生まれだって言ってたけど、本当はコロニーで生まれたんだって。
 L4コロニー郡。あのバイオハザードがあった」
「それって……」

L4コロニー郡、コーディネータや遺伝子研究のメッカ。そして、何回かバイオハザードがあり、
数年前にもコロニー自体が廃棄された事件があった。そのためか、ここで生まれた人はナチュラルでも、
少し引いた目で見られる。偏見だとは分かっているのだけど。

「それにさ、信じられるかい? フレイってさ、…… いや、そんなことなんて……」
「?……」

サイは、嫌な考えを追い払うように激しく首を振った。

「…… とにかく、違うんだよフレイは。親父は、あんな娘と縁が切れて良かったって言ってた。
 それから、俺はフレイを、まともに見れなくなった。あんなに一緒だったのに。
 フレイに触れるのさえ、恐ろしくなって」
「サイ……」

サイは、まだ、あの子のことを何か隠しているような気がした。でも、私は、あえて詮索しようとはしなかった。

「だから、ミリアリアと、急に、こうしてても不安になる。もう少しお互いを分かり合いたい」
「そんなこと無いわよ。私、そんなこと無いから」

私は慌てて否定する。心を見透かされるのを恐れるように……
サイは話題を変えた。

「ミリアリアは決めたかい。アークエンジェルに残ること」
「サイは私に残って欲しいの?」

「いや、そんなこと言えないよ。君が決めなきゃ」
「サイが決めてくれたら、私も残る……」

「カズイみたいなことを言うなよ。みんな違うんだ。自分で決めなきゃ」
「違う?……」

「みんな、違うんだ。それぞれ理由はみんな違う。でも、それでいいんだよ。
 人の意見なんて当てにならないよ」
「サイはどうなの?」

「俺は、できることがある。確かにキラに比べたら大したことないけど、キラは、
 俺にしかできないことがあると言ってくれたから。俺はアイツを信じる」
「違う……」

「どうしたミリアリア?」
「ううん、何でも無いの」

「行くよ、ミリアリア。また今度」
「うん、また今度、サイ」

サイは、私の部屋を出て行った。やっぱり、私はサイと違う。キラを信じられない。
艦長も、キラを信じてる。私の誤解は解けたけど、キラを信じていることは変わりない。

違う。やっぱり違う。私だけ違う。私だけ……

私は、ベッドに横になった。

サイ、なんで私に一緒に残れって言ってくれないの。なんで私を奪ってくれないの?
やっぱり違うから? 私が不潔だから? 私がキラからリタイヤしたいだけだから?
サイの体を通して、私の幻想のキラを見ているから?

122ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/18(木) 03:10
今回の章は終わりです。サイのフレイの秘密の件、結局引っ張ってます。次はTV46話の後あたりか?
続いて、次章に移ります。ここがミリィSS第二部前半の山場の予定です。

>>流離う翼たち
そうですか、あの汚名挽回する人と中の人が……
私は中の人つながりに関する知識は疎いんですが、好きなキャラだとレイズナーのエイジなんかもやってますね。
あの主人公の名前のコンプレックスと、カガリの名台詞とのマッチは見事でした。

>>過去の傷
マユラとフレイの火花激突寸前、カガリがなだめ役に回って回避しましたね。小説のオーブ編でも、こんな感じの
シーンありました。キラも何とか言って欲しいですが、まあ無理なんでしょうね。

123流離う翼たち・437:2004/03/18(木) 20:47
「ふん、失礼な事を言った報いだな」
「あ、あの、カガリ、これはちょっと酷いんじゃあ?」

 フレイがおずおずと話しかけるが、カガリは実に気持ちよさそうである。そして、遅ればせながらキラとトールもやってきた。

「あれ、何してるの3人とも?」
「そこで蹲ってる人はどうした?」

 不思議そうに問い掛けてくる2人にミリアリアが簡単に事情を説明し、それを聞いた2人は心底同情した眼差しで劾を見やる。これは男にしか分からぬこの世の地獄なのだ。

「しかし、中々復活しないわね。キラの時はもっと早く復活したんだけど」
「何のこと、フレイ?」

 妙な事を口走ったフレイにミリアリアが問いかける。フレイは言ってから自分が何を口走ったのか気付き、慌てて誤魔化しにかかった。

「な、なんでもないわよ、気にしないで」
「・・・・・・何があったのよ、フレイ?」

 ずいっと顔を寄せてくるミリアリアに、フレイは渋々ポツリと白状した。

「その、キラって結構乱暴な所があるから、つい嫌がって暴れたんだけど、その時に膝が、ね」

 肝心な所はぼかしているが、何が言いたいのかはよく分かってしまったミリアリアとカガリは、揃ってポンとフレイの肩を叩いた。

「まあ、その話の続きは家に帰ってからゆっくりと聞かせてもらいましょう」
「そうだな、後学のためにも夕食後にじっくりな」
「え、ええと、言わなくちゃ駄目?」
「「駄目」」

 きっぱりと言い切る2人の目は微妙に熱を帯びており、フレイは引き攣りまくった顔で頷くしか出来なかった。そしてキラはというと、こちらは汗をかきながら視線を泳がせており、ポンと置かれたトールの手にビクリと反応した。

「ま、若さゆえの過ちって奴だな、キラ」
「アハハハハ、ナニヲイッテルンダイとーる、ボクガふれいニヒドイコトスルワケナイジャナイカ」

 無茶苦茶怪しい返事だった。

124流離う翼たち・作者:2004/03/18(木) 20:57
>> 過去の傷
マユラのM1参戦。カガリのバックアップは出来るのか?
でもフレイ様、素人がプロを雑魚呼ばわりしちゃいけません

>> ミリアリア・あの子許せない
何故かサイが現実から逃げた脇キャラの台詞を言っている。ミリィはどうする?
しかし、結局サイに出来ることは何? という命題が語られる事は無かったなあ
あの時が彼の最後の出番だった。もう台詞も無かった・・・・・・

125過去の傷・84:2004/03/18(木) 22:26
「きゃああ!」
「カガリ様大丈夫ですか!?」

フレイが断然優勢だった。
ル−ジュが放つビ−ムライフルをフリ−ダムが余裕で回避し、ルプス・ビ−ムライフルがシ−ルドでダメ−ジを半減させられながらも攻撃を与え相手を少しずつだが損傷していく。
「カガリ様ビ−ムで援護します、突撃してください」
「わ、分かった!」
ル−ジュがビ−ルサ−ベルを構えると突進してきた。
「・・・・・・」(なるほど・・・でもこういう場合は元を狙えばいいんじゃないかしら?)
「飛行した!?マユラ!気をつけろ!」
「や、やば!」

飛行したフリ−ダム、アストレイをビ−ムサ−ベルで攻撃する、あわててシ−ルドを構えるアストレイ。
「いくわよ!」
「あ、あああ!きゃああ!」(な、なんとか・・・)
「この!」
「あはは!きゃはは・・・!!!」
フレイがなにかを感じとったように飛行する。
で、ル−ジュとアストレイが同士討ちになりそうな格好になる。
「カガリ様来ないで〜!」
「マユラ避けろ!」
上空を飛んでいたフリ−ダムは・・・。
(おバカさんね・・・)
衝突しそうになっている二機に構えるとクスィフィアス・レ−ル砲を発射した。

「圧倒的だな・・・ニュ−タイプか・・・」
「キラ・・・あの・・・」
「あ、ミリィ」
「ここにいたのね」
「何か用?それより少し落ち着いたみたいだね」
「ええ、ねえキラは優しいね」
「え?あ、いや」
「ト−ルを今だけ忘れさせて・・・」
ミリアリアはキラに歩み寄りキラの肩に両手をかけると衝突してしまった、といっても唇と唇が衝突しているだけなので、これは別の言い方をするべきかもしれない。

「マユラ大丈夫か!?」
「は、はいアストレイの損傷率は40パ−セントです!」
「くそ!フレイ!・・・このままやられてたまるか!」(なんであんな素人に!)
そんなときカガリの頭の中で何かが・・・種がはじけた気がした。
「カガリ様?」
「・・・・・・」(・・・・・・)
カガリのSEEDが発動した瞬間だった。

126過去の傷・作者:2004/03/18(木) 22:32
>>ミリアリア・あの子許せない
ミリィ積極的で、サイは少し戸惑ってますね、これからのミリィの行動は?ミリィはサイを好きになりそうな感じでキラを忘れようとしているんでしょうか?
>>翼たち
なんか怪しい展開に?問い詰められるフレイ様・・・これもいいなあ、で?どういうふうに説明するんでしょうか?

127ミリアリア・あの子許せない 77:2004/03/19(金) 05:03
第2部 6. 私はキラの特別…… 1/7
[ありがとね、そして、さよならディアッカ]

その後もポツポツとアークエンジェルを降りる人がいた。ヘリオポリスからアークエンジェル
開発中のまま乗り込んだ技術者。連合のやり方に失望し、オーブに亡命を希望する人。
ユーラシア連邦や赤道連合でも、大西洋連邦の暴走で、やや反戦派の動きがあり、
それらとオーブの非公式のやりとりで故郷の地に戻れるという人もいた。

艦を降りた人の代わりにオーブ軍から派遣の人が何人も乗り込んできた。残る人は、
その受け入れと仕事の引き継ぎに翻弄されていた。私もそうだった。ブリッジの情報システムにも、
モビルスーツにも詳しい私は、新しい人の教育に重宝がられ、忙しい日々が続いた。

艦を降りる最終期限の一週間が迫ってきている。それなのに、私は誰にも相談できず、忙しさに、
考える時間もなく、自分がどうすべきか決められずにいる。このままだと、ずるずると
残ることになってしまいそうだった。それは、それでいいのかもしれない。
もう、考えても結論が出ないなら、また、成り行きにまかせればいい。
でも、私の心には、まだ少し迷いが拭えなかった。

大西洋連邦を中心とした反ザフト勢力の拡大も大きく、それは、中立国だけど
マスドライバーを持っているオーブへの風当たりが、ますます激しくなり、場合によっては
武力介入の可能性も出てきている。それに対してオーブは絶対に中立を譲らない構えだ。
政府や軍に緊張が高まっている。オーブが戦場になる。そんな不安が、私の迷いをますます助長していた。

そんな時、ディアッカ、あの捕虜のザフト兵が釈放されると聞いた。釈放後は、オーブの町で
自由行動になるらしい。まあ、ずっと独房に入りっぱなしだったディアッカは、連合でもオーブでも、
特に機密を知った訳でも無いので幸運だったということだろう。ザフトのエリート部隊だった
ディアッカのことだ、後は自分でなんとかするだろう。別に心配をしている訳では無い。
ただ、私の話を聞いてくれて、少し心を楽にしてくれたディアッカに最後の挨拶くらい
してもいいと思った。釈放の前日、私は再びディアッカの独房を尋ねて行った。

「アンタ、明日釈放だって」私はディアッカに告げる。
「え、なんだって?」ディアッカは驚いている。

「アークエンジェルは、もうすぐ次の任務に出発するわ。もう、アンタ乗っけといても
 仕方ないから。良かったわね出られて」
「で、俺はどうなるんだよ」

「オーブに移されて、後は自由よ。そっから先は、アンタ、自分でなんとかしてね」
「バスターは、どうなった?」

「あれは、モルゲンレーテが、とっくの昔に持って行ったわ。元々、こっちのものだもの」
「げ……」

「何、不服なの?」
「いや、何でもねえよ」

「こんなことになっちゃって、ごめんね」
「いや、いいよ別に。それで、ミリアリアは、どうすんだ。この前のこと」

「もう、いいの。アンタには無関係なんだし」
「だがな、この前、相談してきといて…… 最後にどうするのかくらい教えてくれよ」

私は口を閉ざす。やがて、躊躇いがちに話しだす。

「オーブが、もうすぐ戦場になるかもしれない」
「え、なぜ、そんなことに」

「地球連合に味方しないから、武力介入があるかもしれない」
「おい、ナチュラル同士で戦争してどうなるってんだよ」

「でもね、このまま言いなりになることもできないの。戦うわ、きっと」
「お前も戦うのか?」

「うん、このままだと……
 私、アークエンジェルのCIC担当だもん。それに、オーブは私の国だから……」
私は目を伏せる。そして、思い切って話した。

「なんて、かっこいいこと言えたらいいんだけどね」
「なんだ、まだ、迷ってんのか?」

「でも、もう、ほうっておいて、アンタには関係無いから」
「キラってやつのこと迷ってんだろ」

「もういいから」
「迷ってんならさ、そいつに直接相談してみろよ」

ディアッカは声を荒げていた。

「ぐちぐち迷って無いでさ。お前、そいつのこと好きなんだろ。だったら、
 ぶつかって聞いてみろよ」
「でも……」

「そんなこと言ってないで、さっさと聞きに行けよ。でないと、後悔するぜ」

ディアッカは、私をじっと見つめた。
これが、この前の、私の相談に対する答えなのだろうか。キラに相談する。
私が、今まで、一番避けてきたこと。でも、ディアッカの激しい口調の言葉は、
私に、そうしなければならないという強迫感を与えていた。

私は、少しして言った。
「分かった。キラと相談してみる。ありがとね、そして、さよならディアッカ」

私は、自分からディアッカを名前で呼んでいた。

128ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/19(金) 05:05
ミリィSS続きの新章です。まずはディアッカとの、あのシーンから。大分、変えてますけど。

>>流離う翼たち
トールが、あの伝説の人の台詞を使うとは…… キラ、声裏返しですか。フレイ様宅の今夜は激しくなりそう。

>>過去の傷
あれ? ミリィは直ったんじゃ無いのか? そして、カガリのSEED発動。NTとの対決は、どっちが強いのでしょう。

129過去の傷・85:2004/03/19(金) 22:52
(さあ、チャンスだわ!チャンス!)
ルプス・ビ−ムライフルをル−ジュに向けて放つ。
(タイミングもバッチリよ!)
辺り一面が光に包まれる・・・しかしそこにル−ジュの姿はなかった。
「え?・・・どこに・・・」(あれ!?どうしてなの?読めないわ)
そのときどこからきたのかビ−ムがフリ−ダムにかすめる。
「きゃああ!!!」
光がなくなると・・・。
「あ、カガリ!!!」
地上に降りるフリ−ダム。
「よくもやってくれたわね!」
「・・・・・・」
(カガリ?なんなのかしら、急に無口に)
そんなことを考えている間にル−ジュがビ−ムを放ってきた。
アストレイもビ−ムを放つ。
なんとか回避するフリ−ダムだが・・・
(え!?一体どこに・・・カガリが消えた?)
(フレイさん・・・あの・・・背後に)
(え!?)
振り返ろうとしたフリ−ダムだが・・・相手が待ってくれるはずはなく・・・ル−ジュのビ−ムライフルが直撃した。
「きゃああああ!!!やだ!いやあああ!」

その頃ブリッジでは・・・。
「・・・んん・・・フレ・・・」
フレイが気になりモニタ−に目を通そうとしたキラだがミリアリアのキスがそれを許さない。
ミリィがしっかりと抱きついているのだ、キスも強引でぐいぐいと唇を押し付けてくる。
なんとかミリィの唇から唇をずらしたキラは・・・。
「あの、ミリィこんなのって・・・」
「じっとしててよ、いい雰囲気なのに」
「あの・・・まずいよこんなの」
「キラ・・・なんで分かってくれないの!?私だってちゃんとした彼氏欲しいわよ!ト−ルはもう昔の彼氏よ!」
「!・・・・・・」
必死に話すミリアリアにキラは返す言葉が無かった。
その様子を見たミリアリアは勝ったとばかりにキスを交わしてきた、今度のキスにはキラも逆らうことが出来なかった。

序盤の戦闘が嘘のようにカガリのル−ジュとマユラのアストレイが押していた、もはやフリ−ダムの損傷率も30パ−セントまで来ていた。
「い、いやあああ!」
(フレイさん落ち着いて・・・)
「死ぬのはいや・・・」
(え?)
「死ぬのはいや・・・死ぬのはいや・・・死ぬのはいや・・・死ぬのはいや・・・死ぬのはいや・・・死ぬのはいや・・・死ぬのは・・・いやあああ!!!」
(フレイさん、落ち着いてください、まだフレイさんは生きてますよ)
フレイの脳裏に・・・いままで自分が発してきた言葉が入ってきていた。
(あんた自分コ−ディネイタ−だからって・・・本気で戦ってないんでしょう!?)
「あああ・・・やめてえ!!!」
(そうよ・・・私は賭けに勝ったもの・・・キラは戦って死ぬの・・・じゃなきゃ許さない)
「いや!やめて!」
いろんな自分と・・・いろんなフレイ・アルスタ−と頭のなかで話す。
(そうよ、あんた今でもキラを利用するつもりなんでしょう?キラは戦って死ぬのよ、そうよじゃなきゃ許さないもの・・・)
(違うわ!あんたと一緒にしないで!)
(くすくす・・・だからそうなんだってばあ!あんたパパが死んだ時点で私の心を捨てたじゃない♪違って?)
(そんなことないわよ!勝手に決めないで!)
(・・・私は・・・ただキラに謝りたいだけ・・・会ってちゃんと話がしたいの・・・そのためなら死んでもいいわ・・・)
(バッカじゃないの?キラに謝るですって!?冗談じゃないわ!パパはキラのせいで死んだのよ!だいたいあんた暗すぎだわ、あんただってフレイ・アルスタ−じゃないの!この偽善者!心の中ではどんなこと考えてるか分かったもんじゃないわ!)
(そんな・・・違うわ・・・私は)
(皆もうやめて!)

(え!?フレイさん)
(・・・もう大丈夫よ・・・過去は振り切ったつもりだから)
そしてフレイの頭の中でなにかがはじけた。
(フレイさん・・・目が・・・瞳が真っ赤に・・・)

130過去の傷・作者:2004/03/19(金) 22:57
>>ミリアリアあの子許せない
ディアッカいい奴じゃないですか、ほんとに・・・ミリィはキラに相談してみるつもりんですね、やっと一つの答えを見つけたみたいで。

131ミリアリア・あの子許せない 78:2004/03/20(土) 06:05
第2部 6. 私はキラの特別…… 2/7
[私とキラの二人にして]

私は、キラのいるモビルスーツデッキへ向かった。足取りは、はっきりしていた。
ディアッカの言葉が、私の行動から迷いを取り去っていた。

デッキのキラは、相変わらずの着たきりのザフトの赤いパイロットスーツ姿だ。
作業をしているキラに、今もカガリさんが付き従って話をしている。
いつもの私なら、それだけで、何も言わずに立ち去っていたはずだった。
だけど、今日は違った。カガリさんを邪魔者だと感じていた。

「キラ!」 私は、キラを呼んだ。

キラとカガリさんが振り向いた。私は、続けて話しかける。
「キラ、話があるの。二人だけで。カガリさん、お願い。ちょっと外して。私とキラの二人にして」

カガリさんは怪訝そうな顔つきをした。
「なんでだ。お前って別にキラとなんでも」

「カガリ、ごめん、ミリィの言う通り、ちょっと外してくれないか」
キラの言葉に、不服そうな顔をしながらカガリさんはデッキを出て行った。

「キラ、またフリーダムのコクピットに入れて。誰にも聞かれないように」
私は熱に浮かされたようにキラにねだった。キラは何も聞かず、私をフリーダムの狭いコクピットに
入れてくれた。パイロットシートに座る私。傍らの計器板に腰をかけているキラ。
私は話しはじめた。

「カズイは艦を降りた。サイは残る。でも、私、本当は決めてないの。どうしたらいいの?」
「ミリィは降りたいの? 戦いが恐いの?」

「恐いわ、トールもいなくなった。もともと戦いたくて軍に入った訳じゃない。巻き込まれたから」
「じゃあ、迷うことは無い」

「でも、これからオーブも戦争に巻き込まれる。降りても、戦争になるのは同じかもしれない。
 だったら、このまま残った方が安全かもしれない。出来ることが無いわけじゃない。
 CICの仕事、今だって、やること山のようにある。でもね、そんな風に割り切ることもできないの」
「何が、君をそんなに迷わせるんだ」

「キラよ」
「え?」

「みんな、マリューさんもサイもキラを信じてる。カガリさんだってそう。
 キラの理想を信じて戦うことを決意している。
 でも、私はダメ。以前、アークエンジェルを離反した連絡機のこと、
 キラが島に不時着させた後、ザフトの攻撃に会ったこと。私、まだキラの嘘じゃないかと疑ってる。
 私、キラが信じられない。キラが恐い」
「ミリィ、君は、そんなことを……」

「降りても戦争に巻き込まれる。残っても、私だけ信じられないキラを見て戦わなきゃいけない。
 どっちをとっても私は辛い。でも、どっちかを選ばなきゃいけない。
 どっちにしたらいいのか、自分で決めなきゃいけない。でも、私、ずっと決められない。
 誰にも相談できない。誰も決めてくれない。
 ねえ、キラならどう思う?」
「僕に、そんなこと……」

私は、縋るような目でキラを見た。キラも曖昧にごまかそうとする。でも、それでは私は
救われない。救われないなら、もう、どうなったっていい。私はキラに運命を委ねる。

「ねえ、キラ、私、Nジャマーキャンセラーの秘密を知っているわ。そんな私を、このまま艦を
 降ろしてオーブの故郷に戻してもいいの? また、秘密を漏らすかもしれない。
 キラ、私をアークエンジェルに縛り付ける? それとも、ここで私を殺す?」
「ミリィ、そんなはずないだろ」

「キラ、本当は違うでしょ。キラ、変わったもの。昔と全然違うもの」

キラは黙り込んだ。そして考えている。やがて、決意したように話しだした。

「ミリィ、君は、やはり艦を降りたほうがいい」

132ミリアリア・あの子許せない 78:2004/03/20(土) 06:06
>>過去の傷
SEED発動したカガリ強いですね。ピンチに追い込まれたフレイ様、過去の自分を乗り切って、こちらも覚醒?
ティファは、まだ一緒にいますね。それにしても、キラは何をやってるんだ。

133流離う翼たち・437:2004/03/20(土) 22:23
 苦悶に喘ぎ、内股でヒョコヒョコと仲間に連れられて行った男を見送った5人は、時間も無いからと急いで中に入った。ロビーには既にマリューやナタル、フラガ、キース、ノイマンが待っていた。

「すいません、遅くなりました」
「いや、まだ時間には間があるから、気にせんでも良いぞ」

 フラガが右手を上げて答えてくる。キースも読んでいた新聞を棚に戻し、腰掛から立ち上がる。

「やれやれ、軍務に付いているとどうにも世界情勢から置いていかれますな。知らぬ間に色々と起きている」
「どういう事がありましたか?」
「ああ、ザフトが南米と東南アジアで攻勢を強めてるらしい。中東は突破されそうになってるそうだ。東アジア共和国とユーラシア連邦の弱体化は避けられないだろうな」

 キースの表情は険しい。過去が過去であるだけに、連合内の軍事バランスが崩れるのは面白くないのだろう。彼自身は余り大西洋連邦に肩入れしている訳ではないらしい。

「まあ、ザフトにしてみればヨーロッパと宇宙での敗北を取り返したいのだろうけど、無茶をする。これだけの規模で攻勢に出たら消費する物資は半端な量じゃないだろうに」
「ザフトは戦力的には劣勢にあるのに、よく多方面で同時攻勢に出られましたね」

 ナタルが感心している。だが、キースは苛立たしげに新聞の拍子を軽く弾いた。

「無理してるだけさ。こんな無茶は大西洋連邦だってそうそうはしないよ。何があったか知らないが、向こうも色々事情があるらしい」
「事情ですか?」
「そう、理由は分からないけど、どうやらザフトは実績を欲しがってるみたいだな。あるいは、何か別に作戦を用意しているかだけど、まさかこの規模で陽動とは思えないし」
「ふむ、敵も大変だという事ですか」

 なるほどと頷くナタル。キースは感心しているナタルに、キースはやれやれと肩を竦めた。どうしても自分達の会話はこういう方向を向いてしまうらしい。
 だが、こんな所で世界情勢を気にしている訳にもいかない。とりあえずは当面の課題を片付けるべきだろう。マリューがパンパンと両手を叩いて引率の先生のように声をかける。

「はいはい、それじゃあ行きますよ。カガリさんとハゥ二等兵はここで待ってる事、勝手に変な所に行くんじゃないわよ」
「分かってますよ」
「払いはフレイ持ち出し、何か適当に食べてようぜ」
「・・・・・・払うと言っておいてなんだけど、余り高いのを食べまくるのは止めてよね」

 何となく不安を感じたフレイは一応2人に釘を刺しておいたが、それが有効に機能するかどうかは甚だ危ぶまれる所だった。

「それじゃあ、何頼もうか」
「ねえカガリさん、このマンゴージュースってどうかな?」
「いやいや、こっちの魚料理のほうが」

 2人が楽しそうにメニューを選ぶ声が聞こえてくる。どうやら私の刺した釘は何の役にも立ちそうもなかった。
 はあ、と溜息をつく私に、ナタルさんが少し心配そうに声をかけてくる。

「どうしたフレイ、そんな疲れた溜息をついて?」
「いえ、2人に好きな物を食べてもいい、と言ったんですけど」
「なるほど、それは迂闊だったな」

 女の子は奢りという言葉を聞いたら容赦はしない。2人は高いものをこれでもかと食べてさぞかし満足するに違いない。ナタルは肩を落とすフレイに同情混じりの視線を向けつつ、ぽんとその肩を叩いた。人はこうやって強くなっていくのだ。

134流離う翼たち・作者:2004/03/20(土) 22:34
はう、438の間違いでした

>> 過去の傷
はうう、カガリに続いてフレイ様まで。種ってやはり怒りで発動するのか
とりあえずティファ、手を貸して何か出来るのか?
フレイ様はなんだか人格会議中・・・・・・

>> ミリアリア・あの子許せない
こいつは、ミリィガンバ。多分降りた方が良いでしょう
つうか、この状況でキラを信じるAAクルーのがおかしく見えるのは気のせいw?
まるで別人化してるんだから少しは疑えと言いたいです

135過去の傷・86:2004/03/20(土) 23:02
「カガリ様来ます!」
「・・・・・・!」(あれは・・・)
「え!?さっきより動きが違います、どうなってんの?」
ビ−ムを撃つル−ジュ、だがフリ−ダムはそれを簡単に回避するとル−ジュにルプス・ビ−ムライフルを放つ・・・回避するル−ジュだが・・・。
「!」(連続で撃ってきただと!?)
二発目がル−ジュを直撃した。
「!」
「カガリ様!」

(フレイさん・・・瞳が真っ赤になってる・・・)
(・・・・・・)
SEEDを発動したフレイは自分の持つ二ュ−タイプとしての力も存分に引き出していた。

その頃ブリッジでは。
「キラ、フレイとは別れちゃいなさいよ、キラの彼女は私がなってあげるから」
「いやだよ、そんなの」
「私と付き合えって言ってるの!!!」
「そんな勝手に決めないでくれ、僕はフレイが好きなんだ、部屋だって一緒に暮らしてるんだ、それに・・・ミリィに対してそんな感情はないよ・・・」
「キラ、ト−ルが死んだとき近くにいたのよね?」
「!!!・・・う・・・うん」
「なら責任取ってよ!」
責任?責任とはどういうことだ?キラは驚愕な表情になった。
「ええ、ト−ルの代わりになって・・・そして私と結婚して・・・キラにはその義務があると思うの・・・だから・・・私と付き合って、そして結婚して」
結婚!?・・・これが僕の責任・・・?彼女と一緒になることが僕の責任・・・?

「カガリ様やっと普通のカガリ様に戻ってくれましたね」
「なに言ってんだお前!?それよりもう損傷率50パ−セント超えたぞ・・・もう私の負けだな」
「カガリ様・・・」
「フレイ、私の負けだ!」
「ええと・・・私も棄権します」
フリ−ダムの通信から声が・・・。
「・・・・・・ル−ジュは撤退していいわ・・・・・・」
「あ、ああ!」
ル−ジュが離脱した、残ったアストレイは・・・。
「あ、あの・・・私棄権します」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ふざけないでよ・・・」
「・・・え!?」
「よくもキラに慣れなれしくしてくれたわね・・・」
「あの?意味が分からないんですけど」
「人の彼氏を横取りしようだなんて・・・」
「!」
フリ−ダムはアストレイに突進してきた。
「え!?」
「私のキラに慣れなれしくしないで!!!」
シ−ルドでなんとか防御するアストレイ。
(こうなったらキラさんに止めてもらうしか)

「ミリィ・・・ん?」
<キラさん戦闘を中止してくれませんか!?>
<え!?分かった!フレイ!>
<!・・・分かったわよ・・・キラが言うなら・・・>
こうして両機とも停止した。

136過去の傷・作者:2004/03/20(土) 23:10
>>ミリアリア・あの子許せない
ミリィ、降りたほうがいいですよ、それにしてもキラは完全の別人ですね、皆キラの変わり様になんの反応も示さないんですね、逆に怖い気もします。
>>翼たち
フレイ様、大きく出ましたからね、奢りに上手く二人とも食いついてますね、女はこういうものなんでしょうね。

137The Last War・14:2004/03/20(土) 23:39
 かつて、世界の全てを憎んだ男がいた。『滅亡』、只それだけが、その男の望みであった。彼はそれを実現させるために暗躍したが、それと相反する理想を持った者達によって阻まれ、自身は命を落とした。
 しかし、男は予め一つの『種』を蒔いていた。その種は闇の中で成長し続け、そして今最悪の形となって花開こうとしていた。

「はぁぁぁっ!!」
「今度こそ、これで!!」

 アプカリプスの巨体目掛け、アスランのS.ジャスティス、キラのネオストライクはそれぞれ攻撃を仕掛けた。だが、先ほどから彼等の仕掛けているそれらの攻撃により、アプカリプスが損傷を受けた様子は無かった。

「・・・無駄だ」

 アレクセイの言葉が言い終わるや否や、アプカリプスの前方に先ほどまで二人を翻弄していた小型機が飛び出した。それらがフォーメーションを組むとそこに虹色に輝く光の壁が形成され、やがて二人の放った攻撃の全てを受け止め、無効化した。その光景を見て、二人は悔しげな呟きを漏らした。

「くそ、またか!!」
「まさか、ドラグーンが光波防御帯を発生させるなんて・・・!」

 その兵器の名は、攻防一体型ドラグーンシステム《アイオ―ン》。アプカリプス再生にあたり、ファントムが独自に開発・装備させた、その名の示す通りこの機体の剣となり盾となる”守護天使”でもあった。従来の遠隔誘導兵器としての機能に加え与えられた光波防御帯発生機能により、二人の攻撃は悉く無効化されていた。

(駄目だ、このままではこちらが消耗していくだけか。ならば・・・)
「・・・キラ、俺は奴に突っ込む。お前はここから援護してくれ」
「!そんな、危険過ぎるよアスラン!!いくら君でもあれが相手じゃ・・・!うわっ!?」

 キラがアスランを制止しようとしたその時、キラの右腕が再び麻痺し始めた。

(な、何で・・・?あれからこんなこと、しばらく無かったのにどうして今更・・・?)
「・・・それに、お前の右腕は今正常じゃない。違うか?」
「!アスラン・・・君、知って・・・?」
「何年お前と友達をやっていると思うんだ?そんなこと、お前と合流した時から気付いてたよ。・・・万が一の時は、お前だけでも逃げろ・・・」
「待って、アスラ・・・!」

 キラの制止を振り切ったアスランは、S.ジャスティスのビームサーベルを引き抜き、アプカリプスへと突撃した。その動きを感知し、その周りに無数のアイオ―ンが群がってきた。そこから放たれる砲撃の数々を、アスランは機体の身を翻してかわし、またはシールドで受け止めながらその中を突き進んでいった。

「まだ何かするつもりなのか?貴様が相手の力量が分からんほど馬鹿な男には見えんがな。それとも、勝機というものが見つかったのか?」

 そんなS.ジャスティスの様子を確認しながら、アレクセイは自分に向かって来るアスランへと問い質した。しかし、次にアスランの口から出たのはそれに対する返事ではなかった。

「・・・お前は、今までお前達の身勝手な都合の巻き添えを受けた人達のことを、考えたことはあるか?」
「何を言っている?私の聞いたことに答える気はないのか?」
「いいから答えろ。その人達のことをどう思っている」

 自分の言葉を無視されたことにやや苛立ちを感じながらも、アレクセイは少し間を置いてアスランのその問いに答えた。

「・・・悪いが、興味は無いな」
「・・・そうか!」

 その言葉を最後に、S.ジャスティスの姿が視界から消えた。それはやがてレーダーに映し出された。

(回り込んだだと!?いつの間に!)
「・・・なら、その人達の感じてきた痛みや苦しみを・・・」

 S.ジャスティスは、手にしていたビームサーベルを横に薙いだ。その動きに、アイオ―ンでさえも反応が遅れた。

「・・・お前に教えてやる!!」
「チィッ!!」

 ビームサーベルが直撃する寸前、アプカリプスはその巨体に似合わぬ機敏な動きで回避行動を取り、ギリギリのところでそれをかわしていた。いや、正確には僅かにビームサーベルが装甲に達し、この戦闘で初めて損傷を受けていた。

「・・・アイオ―ンを装備したこの機体に、初めて傷をつけた者が貴様だとは・・・」
「お前達はやり過ぎた。今までに多くの人達に無用な血や涙を流させてきた報いを、今ここで受けろ!」

 静かに怒りを露にしているアスラン。にも関わらず、アレクセイはその口元を歪めた。

「・・・フッ、『平和のため』、などと言っておきながら、所詮は貴様も憎しみから戦うのだな?」
「俺はお前達を絶対に許さない。あの頃の俺達から、全てを奪い取ったお前達をな!」

 アスランの瞳からは、光が失われていた。彼はその時SEEDの力を発現させると共に、自らの内側から涌き出た黒い感情に身を委ねていた。

138The Last War・作者:2004/03/21(日) 00:08
》ミリアリア
 相変わらずキラは何処か達観していますね。AAの人達はそれをすっかり信用しきってますし・・・。自分だったらラクスに洗脳されたのではと疑うと思いますw。
 それとディアッカが良いこと言ってましたね。

》流離う翼たち
 ついに劾&サーペントテールメンバー(一部)が登場しましたね。その上従来の彼等のイメージを感じさせない役どころが面白かったです。特に劾がw。会話の中にはロウの名前が出てましたが、個人的には彼にも何処かで登場してほしいと思っていたりします。
 ちなみに今後サーペントテールのメンバーの一人が自分のSSにも登場予定です。

》過去の傷
 マユラ生きてたんですね。他の二人はどうなんでしょうか?本編の最後の方の彼女達の扱いが悲しかっただけに良かったです。
 そしてフレイ様がNTだけでなくSEEDまで覚醒ですか。こうなるともう最強?

》キラ♀
 キ、キラが危ない。フレイ♂様、お願いだから逆ナンに引っ掛かってないでタカツキの奴を止めてください!

》刻還り
 皆の為にした行動が結果的に皆を危険にした。現実はいつも辛いですね。フレイ様、負けないで貰いたいです。

》散った花、実る果実
 取り敢えず、お茶汲みがお仕事になったんですね。フレイ様の入れるお茶は果たしてどんなお味なんでしょう?
 『白い羽』も読ませて頂きました。キラの切ない感じが良かったです。

139ミリアリア・あの子許せない 79:2004/03/21(日) 02:50
第2部 6. 私はキラの特別…… 3/7
[それほど悩むならば、本当のことを言うよ]

ディアッカの言葉に従うまま、私は、フリーダムのコクピットでキラと二人きり、私が、どうすべきか
相談した。その時、キラから帰ってきた答えは、これだった。艦を降りろ……

「ミリィ、君は、やはり艦を降りたほうがいい」
「キラ、どうして?」

「ミリィが、それほど悩むならば、本当のことを言うよ」
「本当のこと?」

「君の疑っている通り、僕は秘密のために残酷になっている。あのオーブに入る前の
 アークエンジェルの連絡機。あれを不時着させたなんて言うのは嘘だ」
「キラ、やっぱり……」

「ああ、説得に応じなくて、近くに連合の艦を確認した時点で、撃墜したよ。僕の手で……」
「キラ、ああ……」

私は脅えた目でキラを見た。キラの手は震えていた。でも、それ以上に私の心は震えていた。
キラは震える拳を自分の目の前に持って来ると、ゆっくり、手のひらを広げた、それを虚ろな目で見ながら言った。

「迷わなかった訳じゃない。だけどね、核を使わせてはいけない。秘密を守らないといけない。
 そのためには、仲間だろうと撃たなければならない。そのために、犠牲になった仲間の痛みを
 忘れてはいかない。それがフリーダムを任された僕が背負った宿命だ」

キラは、虚空を見上げ、思い出すように言った。

「Nジャマーキャンセラーの開発阻止、そして、搭載プロトタイプの奪取、あるいは破壊する作戦は、
 クライン派が、早くから計画していたものだった。僕は、シーゲル・クラインに話を聞いて、
 自ら、この計画に参加した。フリーダムのパイロットとして抜擢されたラクス・クライン。
 歌姫である彼女までも戦争に巻き込まないためにも。

 プロトタイプ五機のうち、フリーダムの奪取と二機の破壊、関連資料の消去、そこまでは成功した。
 だから、プラントではフリーダムと同じレベルの長時間運用できるNジャマーキャンセラーは、
 すぐには作れない。だけど、残るプロトタイプ二機の破壊と一部資料の消去は達成できなかった。
 脅迫された仲間の裏切り。それで、クライン派の何人もの人の命が失われた。
 僕は亡くなった人達の命を背負って、プラントを脱出した。そして、地球に降りた。

 ザフトには、まだ二機のNジャマーキャンセラーが存在し、また核爆弾を使うだけの短時間
 動作するものなら開発できる。こんな核戦争の引き金そのものを不要にするために。

 僕は、この目的のためには躊躇わない。躊躇うことは許されない。
 例え、僕自身が命を奪う立場になったとしても。
 僕も既に罪人だから。守るためでも、もう、銃を撃ってしまった僕だから」

キラは、フリーダムの操縦桿に手を伸ばした。操縦桿に複雑に付いたボタンやトリガーをいじっている。
コンソールの明滅する光が、キラの顔を赤に緑に彩っている。その中でキラは熱に浮かされたように言った。

「ミリィ、フリーダムの銃はね、今の僕にとっては信じられないほど軽いんだよ。
 引き金一つで、簡単に、何十人もの人の命を奪える。プラント脱出の時に、それを思い知らされた」

「アラスカの時、敵を殺さないで倒していたのは、何だったの?」
アラスカでのキラの活躍に胸を踊らせていた私は、縋るようにキラに問いかける。

「アラスカでは助けたいと思った。非道な作戦から、みんなを…… だから、そうした。
 戦闘では殺さないという誓いを……」

だけど、私の期待は、次のキラの言葉で打ち砕かれた。

「そして、僕の中の魔物を押さえることを……
 意識して殺さない縛りを課さないと、歯止めが効かなくなる。皆殺しにしてる」
「キラ、そんな……」

私は、目の前のキラに恐怖を感じ震えた。

「信じてもらえないかもしれないけど、あの連絡機を落とした後、島を焼いたのは僕じゃない。
 前に、見せたように、もう一つのNジャマーキャンセラーを持ったザフトの部隊だ。でも、
 それで僕の罪が消える訳じゃない。僕は、もう血塗られている」
「キラ、そんな、そんな……」

私は、激しく動揺していた。着たきりのザフトのパイロットスーツの赤い色が血の色に見えた。
このキラは、本当に血に飢えた戦士なのだ。あの子をきっかけに、戦争に飲み込まれ、
変わってしまった狂戦士。それが、今のキラ。

140ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/21(日) 02:52
悟りキラ⊆黒キラⅡという、私の趣味の路線でした。しかし、ミリィ視点とは言え、オーブでの悟りキラの、
外づらが表現できていなかったのは、まずかったです。プロトタイプ五機は、SEED-MSV の設定参照した結果です。

>>流離う翼たち
情勢的には、大西洋連邦とザフトの二極化はTV本編と変わらないようですね。
カガリとミリィへのおごり、それと、夜のアレの件追求と、フレイ様は前途多難。
ナタルの言うように強くなるんだフレイ様。

>>過去の傷
フレイ様、逆襲しましたね。それにしても、ミリィまだ直ってませんね。

>>The Last War
アプカリプスはユーラシアの技術も入っているんですね。もう、何でもありの最強の機体ですが、
それを突破したアスランはスゴイ。でも、その引き換えに闇に囚われたアスランに何が待っているのか心配です。

141過去の傷・87:2004/03/21(日) 23:23
「皆、お疲れ様」
「キラ・・・ただいま」
「フレイ、無事で良かった」
「それにしてもこいつ強いぞ、勝てる気しなかったからな」
「私だってやればできるんだから」

その夜、フレイは部屋でティファと雑談していた、キラは出かけているようだ。
(ねえティファ聞いてよ)
(なんでしょうか?)
私は話した、これはティファにだけは話していいと思ったから、そんな気がしたの。
(そういえば言ってましたね、過去の自分を振り切ったって)
フレイは頷いた。
(自分の中で話した、いろんな私がいた)
(いろんなフレイさん?)
(そうよ、まずサイと許婚だったときの私、いまよりほんとにワガママだった・・・軍に入る前の私よ・・・)
(・・・・・・)
(二人目は復讐の闇に閉ざされていた私よ、そしてもっとも私自身が嫌いな私なの・・・)
(嫌い?フレイさんがフレイさんを?)
ちょっとおかしな会話になってしまったが、まあそういうことなのだろう・・・フレイ自身もキラを利用したりしようとしたフレイが嫌いだったのだ。
(そう・・・嫌いよ、あの私は・・・)
(・・・・・・)
(最後は・・・ザフトに囚われていたときとドミ二オンっていう艦にいたときの私、怯えていた・・・キラに会ってたった一言・・・謝ることだけを考えていたときの私・・・あの時が一番苦しかった・・・)
(そうですか、辛かったですね)
(ええ、怖かった・・・いろんな意味でね)

その頃。
「でもまさかお前が生きてたとはな、ほんとに信じられないな」
「私も」
「お前だけでも生きててくれて良かったよ」
「私だけじゃないですよ」
「そうか・・・!お前いまなんて言った!?」
「アサギのジュリも生きてますよ、そろそろカガリ様の部屋に来るはずですよ」
「ちょっと待て!だってお前私だけですけどって言ってなかったか!?」
「あれはちょっとした冗談ですよ」
「「カガリ様♪」」
カガリの部屋に二人の女の子が入ってきた。
「「私達クサナギからエタ−ナルに転属になりましたのでカガリ様よろしくお願いします〜♪」」
転属といっても皆軍服はばらばらだ、アスランもザフトの軍服を着用している、フレイやミリアリアはもちろんア−クエンジェルで着用していた軍服だ。

その頃、ミリアリアの部屋では・・・。
「私ってそんなに女として魅力ない?まあフレイは可愛いもんね・・・」
「え?そんなことはないよ、ミリィは凄く可愛いよ」
(フレイはもっと可愛いけど)
「そう?ありがとう、ならいいじゃない」
「でも・・・ごめんミリィ、僕はやっぱりト−ルの代わりにはなれない」
「・・・・・・」
「こんな形で付き合ったってどうせすぐ駄目になるよ・・・それにお互い好きでもない人とそういう関係になるのはよくないと思う・・・それにもうはっきり言わしてもらうけど・・・僕とフレイは付き合ってるんだ、それにミリィにそんな感情はないよ」
これでミリィが納得してくれるかは微妙だった。
「それでも私寂しいの!責任取ってよね!キラにはその義務があるはずよ、私と絶対結婚してもらうんだから!私に恋愛感情がないですって?なら・・・その気にさせてあげるわ」
そう言うと上着を脱ぎキラに歩み寄ってきた。

142過去の傷・作者:2004/03/21(日) 23:33
>>The Last War
とんでもない機体だな、プロヴィデンスといい、ザフトというのは・・・。
そのとんでもない機体にアスランは・・・でも彼が心配です。
>>ミリアリアあの子許せない
とにかくこのキラはほんとに怖いです、ミリィの気持ちもよく分かります、もう以前のキラの面影が全然ないな・・・。
さて真実を知ったミリィはこのあとどうするんでしょう。

143ミリアリア・あの子許せない 80:2004/03/22(月) 02:40
第2部 6. 私はキラの特別…… 4/7
[ハイ! キラ……]

艦を降りるのか残るのか。ディアッカの言葉に従うまま、どうすべきかをキラとフリーダムの
コクピットで話した私は、キラの打ち明けた話から、残酷な戦士となったキラの真実を知った。
キラは、操縦桿から手を離し、私を覗きこむようにして話を続ける。

「それでも進まなきゃいけない。戦争を、このまま悲劇に向かわせないために。
 僕は、もう昔の僕には戻れない。ミリィがいくら望んでも……
 ミリィ、君は艦を降りるんだ。こんなことを君に背負わせることはできない」
「でも、私、そんなこと知ったら余計に、ここから降ろしてもらえない」

「降りるんだミリィ。そして、忘れるんだ僕のこと。忘れてしまえばいい。
 誰も、君が知っているなんて気づいていない。君さえ忘れてしまえばいいんだ。
 降りて避難するんだ。オーブ政府の指示に従えば、少なくとも戦争には巻き込まれない」
「そんな、そんな」

「こんな僕のこと忘れてしまえばいい。ヘリオポリスの思い出だけを残して。僕は、いなかったと思うんだ」
「そんな、私、キラのこと忘れられる訳ない」

「忘れるんだミリィ!!」
キラは私の肩を激しく掴んで体を揺さぶり、大きな声を上げた。キラの顔が私のすぐ前にあった。
それは、私の望む優しいキラでは無く、冷たい目をした戦士のキラだった。

「ハイは? ミリィ」
「ハイ……」

「艦を降りるんだな?」
「ハイ……」

「ミリィ、それでいいんだ」
「ハイ!」

もう、見る影も無い『私のキラ』。私はキラ自身の手でリタイヤさせられたことを知った。

私の中のキラが完全に破壊されたことを知りながら、一方で、私の心は開放されていた。
だれも、私にこうしろと言わなかった。サイも、私の自由意志にまかせて、決めてはくれなかった。
でも、キラは決めてくれた。私に命令した。今、私はキラの命令に従うことが快い。
キラの言いつけに従うことが、私の無上の喜びだった。私は、ずっとそれを待っていたことを知った。

私は、引きつった笑顔を浮かべていた。涙が一しずく、頬を伝った。『私のキラ』との決別の涙だった。
今までのキラとのことが走馬灯のように私の中に蘇った。優しいキラ。トールと三人の楽しい日々。
そして、それを壊していった、あの子。私の過ちで失われた三人。帰ってきたキラ。信じられないキラ。
残酷なキラ。

「キラ、あの子だったら、フレイだったら、キラのこと話した?」
「フレイなら言わなかったろう。血塗られた僕のこと。Nジャマーキャンセラーのこと。
 僕の背負った宿命を。何でも言うとフレイには約束した。だから、秘密にすると怒るだろうけど、
 僕はフレイを辛い目には合わせたくないから。ずるいけど、フレイを手放したくないから」

「私、フレイとは違うのね」
「ああ、君は特別なんだ」

「特別?」
「そう、特別だ。ずっと前から……」

私の表情は、さらに歪んだ。熱い涙が、また、頬を流れ落ちた。
「キラ、酷いよ…… こんな特別なんて……」

私は、成り行きでNジャマーキャンセラーの秘密を聞いてしまった自分を呪った。
キラにとって悪い意味の特別な自分を呪った。そして、そうじゃない、あの子が許せなかった。

「コクピットを出るよ、ミリィ。もう退艦の期限はギリギリだ。艦長に一人で話せるね」
「ハイ!」

「ミリィ、トールのこと頼むよ。弔ってやってくれ」
「ハイ! キラ……」

再び、キラの命令を受けて、私は口元を緩ませ、歪んだ笑みを浮かべた。
そして、自分と、あの子への呪詛の心さえ押し込めて、私は命令される快感に溺れていった。
時の止まったような感覚の中で、私は思考さえ曖昧になっていった。

* * *

カガリさんが、またフリーダムの前に来ていた。乗降ワイヤーでキラと二人で降りる私を、
信じられないような目で見ていた。

私は、カガリさんを無視して、歩き去った。
後ろでカガリさんとキラの話している声が聞こえた。

「キラ、なんでフリーダムに乗せたんだよ。私にだって、触らせてもくれないのに」
「いいんだよ、ミリィは特別なんだ」

私は、キラの言う特別の意味を噛み締めた。

144ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/22(月) 02:41
>>過去の傷
フレイ様が、過去の、いろいろな自分を振り返って想いを話すところ良かったです。
もうすっかりティファとは心を許せる友達ですね。
ミリィは、まだ壊れてますね。キラの危機。うちのSSと逆ですね。フレイ様、どうする?

145流離う翼たち・439:2004/03/22(月) 21:57
 司令官オフィスにやってきた8人は、そこでマドラス基地司令のスレイマン少将と、民間人らしい30代半ばと思われる男性と面会する事になった。その民間人を見た時、キースは表情を露骨なまでに嫌悪に歪め、相手は面白そうにキースを見ている。
 キースの変化に驚いたナタルがキースに問いかけた。

「あの、どうかしましたか、大尉?」
「・・・・・・いや、何でもない、気にしないでくれ」

 キースはナタルの問いを誤魔化した。だが、キースが露骨な嫌悪感を見せるなど滅多にあることではなく、この民間人がキースと深い関係にあることは間違いないだろう。
 キースはそれ以上民間人と視線を合わせる事は無く、スレイマン少将に向き直っていた。
 スレイマンは8人にこれまでの苦労を労うと共に、アークエンジェル隊のこれまでの多大な戦果を褒め称え、幾人かの昇進を伝えてきた。

「昇進、ですか?」

 マリューが訝しげに聞き直す。つい4ヶ月ほど前に少佐に昇進したばかりであり、また昇進だなどと言われても正直信じられるものではない。パイロットならいざ知らず、技術畑上がりの自分が26歳で少佐というだけでも異例なのだ。
 だが、マリューの疑問に答えたのはスレイマンではなく、司令官オフィスに置かれているソファーに腰を沈める民間人であった。

「それは簡単ですよ。たった1隻でザフトに打撃を与え続ける連合軍の最新鋭戦艦とそれに乗るエース部隊。そして数日前には中央アジアを西進していたザフト第4軍にさえ痛撃を与えて撤退に追い込んでいる。宣伝材料としてはこれ以上の材料は無いでしょう」
「・・・・・・つまり、英雄が欲しい、と?」
「まあそういう事だね。確かに連合もMSを配備しだして、ザフトの攻勢に対抗できるようにはなってきたけど、やはりここは景気の良い話が欲しい」

 民間人の男が浮かべる笑いに、マリューは生理的な嫌悪感を隠せなかった。間違いない、私はこの男が嫌いなのだ。
 そして、この男は8人の機嫌を決定的なまでに悪くする内容を話し出した。

「それに、美人の艦長さんに大西洋連邦事務次官の遺児である『真紅の戦乙女』フレイ・アルスター嬢、『エンディミオンの鷹』ムウ・ラ・フラガ少佐、『エメラルドの死神』キーエンス・バゥアー大尉といったエース3人に、ナチュラルの両親の為に戦うコーディネイターの少年。これは宣伝材料としては実に使い易い。上手く流せば連合諸国の戦意を高揚させる事が出来ます」
「・・・・・・英雄願望か、人は何時もヒーローを求めている」
「そういう事だよ、キーエンス・バゥアー」

 2人の視線が再びぶつかり合う。お互いに相手を知っているのだろう。何やら不穏な空気を纏うキースの変化を察したスレイマンが慌てて場を取り繕うように辞令を取り出す。

「ま、まあ、そういう事だ。ラミアス艦長は中佐に、バジルール副長は大尉に、ノイマン操舵士は中尉に、アルスター、ケーニッヒ両名は少尉にそれぞれ昇進してもらう。下士官や兵士達にも昇進する者はいるので、艦長から通達してやってくれたまえ」
「・・・・・・分かり、ました」

 マリューは表面平然と、内心では不満が渦巻いているのがはっきりしている返事でそれを受け取った。

146流離う翼たち・作者:2004/03/22(月) 22:04
>> 過去の傷
フレイ様怒ってる〜〜!
ミリィは暴走しまくりだし、この事態は一体何処に向かうんでしょう?

>> The Last War
ドラグーンで光波防御帯、つまりフィンファンネル・・・・・・
アスランはフレイ様殺された後のキラになってるし、世界は憎しみで覆われるのか
まあ、憎しみも無しで戦争やってる奴の方が余計に怖い気もしますが

>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィ、これはもう洗脳では?
キラがどんどん怖い子になっていく。ミリィ、やっぱり降りた方が良いよ

147過去の傷・88:2004/03/22(月) 23:14
「ミリィ・・・」
「・・・・・・」
ミリアリアは無言で近寄るよキラを無理矢理ベッドに押し倒し強引にキスを交わしてくた。
「・・・・・・」
「・・・んん・・・」
「・・・・・・」
「・・・や・・・め・・・ろ・・・やめてくれ!!!」
覆いかぶさっているミリアリアを突き放すと部屋を飛び出した。
「キラ!!!」
ミリアリアも部屋を出るとキラを追った。

(フレイさんにいいお知らせがあります)
(なにかしら?)
(あと一週間程でフレイさんと会うことが出来ます)
(あらそうなの!ねえところでティファってナチュラル?コ−ディネ−タ−?)
(はい?あの・・・なんのことですか?)
(え?知らないの?)
(はい、まったく・・・聞いたこともありません)
(そう変な子ね・・・まあいいわ)
(あ、私これからカガリと遊ぶから話しかけないでね)
(分かりました、私そろそろ寝ないと・・・やかましく言われるから・・・)

「ええと・・・ここね、カガリいる?」
カガリの部屋に入ろうとしたが・・・留守みたいだ。
「なによいないの〜?」
結局通路を歩いた。

「よし、お前達の部屋はここだ、一応ラクス艦長と同じ部屋にしてあるから三人でも広いと思う、じゃあまたな」
「「「カガリ様おやすみ〜」」」

「あら、カガリ♪」
「フレイ!」
「探してたのよカガリのこと、部屋にもいないし」
「私を探してた?」
「そうよ、遊ぼうと思って」
「まあ、いいけど、ついて来い」
歩いている二人。
「今日はごめん、ちょっと私むきになってた、練習なのに」
「私もだ・・・つい本気を・・・だってお前が予想以上に強かったから・・・危機感というかだな」
「途中でなんか自分じゃないような感覚に襲われたの、なんだったのかしら、すぐに解けたけど」
「私もなんか・・・私が私じゃないような感覚に襲われた、なんかあの時だけ少しな・・・」
カガリもだったなんて・・・キラにもああいう感覚があるのかしら、なんていうのかしら、ほんとに意識はあるんだけど・・・ちょっと口では表せないわね・・・。
フレイもキラやアスランと同じくSEEDを持つ者だったのだ・・・しかし改めて考えてみるとこのフレイ・アルスタ−という少女は不思議だ、二ュ−タイプの素質があるだけでなくSEEDすら発動させてしまうとは・・・もしかするとこれはいろんな経験をした彼女の強さの表れなのかもしれない。
「あ、私先に部屋行ってるからな」
というとカガリは先に去って行った。
カガリを見てフレイは思った、あんないい子を嫌っていたなんて・・ううん、違う私は嫉妬していたのかもしれない、幸せそうに・・・恵まれているように見えた彼女に・・・私には両親がいないから、でも彼女も父親が亡くなったのは聞いた・・・それも本当の父親では無かったという・・・カガリも辛いのだ・・・可哀相なのは私よりも彼女の方かもしれないとすら思うこともある・・・カガリと友達になろう、ううん親友になろう。
「離してったら!」
「キラ、私は!」
そんな時キラとミリアリアが通路の奥から姿を現した。
逃げようとしているキラに追いすがり付きまとうように手を引っ張るミリアリアの姿があった。
「キラ?ミリアリア?」
フレイは二人の方へ向かった。

148ミリアリア・あの子許せない 81:2004/03/23(火) 06:30
第2部 6. 私はキラの特別…… 5/7
[トールとキラの遺品。私が持って行ってもいいでしょうか?]

翌日、ディアッカは釈放され、オーブの係官に連れられてアークエンジェルを降りた。
通路で、それを見かけた私は、軽く会釈して、ディアッカを見送った。

私は、そのまま艦長の部屋へ行き、退艦の意図を告げた。

「そうミリアリア、残念だわ。あなたの働きは、とても優秀で惜しいとも思うけど。
 あなたが、そう思うのなら仕方ないわ」
「済みません。最後の最後に我が侭言って」

私の考えじゃない。キラの命令。私は、それに従う。私は、それで幸せだ。
昨夜は、何も考えずに眠れた。何一つ考えずに……

「それと、お願いなんですが」私は艦長に尋ねる。
「何、ミリアリア?」

「トールとキラの遺品。私が持って行ってもいいでしょうか?」
「どうして? トール君のは分かるけど、キラ君のなんて」

「キラ、あれには手を付けてませんし、私には思い出のものなんで」
「それは、キラ君に直接、お願いしたほうがいいわ。トール君のは、私の方からも、
 お願いする。トール君の両親に渡してあげて」
「はい、艦長」

「本当は、私がお詫びに行かなきゃならないのだけど、私の立場は、あまり良くないから、
 モルゲンレーテからは、あまり外に出られないの。辛いこと、お願いして悪いけど、
 トール君のこと、私からも申し分け無かったと伝えて頂戴。お願いね」

艦長は、私に頭を下げていた。

「分かりました」

今まで、キラのことで誤解していた艦長。私は涙ながらに艦長の言葉を素直に受け止めた。

* * *

<トリィ! トリィ!>

「トリィ黙りなさい。邪魔しないで」

私は、まとわりつくトリィを生きている鳥であるかのように、言葉をかけながら追い払う。
まるで、トリィを生き物だと思っていた、あの子のように。

<トリィ!! トリ、トリィ!!!>

「トリィ邪魔よ! あっち行ってなさい!!」

私は、トリィを追い払うと、ロックのかかっていないキラの部屋から出た。
キラの遺品箱を持って……

私は、キラの部屋から遺品箱を自分の部屋に黙って持ってきた。
私には分かっていた。遺品箱を持って行くのをキラが許さないことを。
そして、あの子が帰ってくるかもしれないから、キラは、このまま置いておきたいということも。
キラに頼みに行っても、そこでキラに持って行くなと命令されれば、今の私には逆らえない。
結局、私は、キラに黙って遺品箱を、密かに自分のバッグに入れた。

自分がしていることが、どういうことなのか、自分でも説明できなかった。
昨夜から、何も考えられなかった。キラの命令だけが頭の中に響いて、何一つ。

149ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/23(火) 06:32
>>流離う翼たち
アズラエル出ましたね。マリューさんは、単に第一印象だけで、もう嫌っているみたいですけど。
しかし、フレイ・アルスター少尉、トール・ケーニヒ少尉、ついにキラとタメですね。
キラとキースが昇進しないのは、関っている相手が相手だからしょうがないですね。

>>過去の傷
ティファがフレイと会えるってどういうこと? それはともかく、フレイ様がついにキラとミリィの
現場を目撃。これから修羅場でしょうか。

150私の想いが名無しを守るわ:2004/03/23(火) 19:34
>>ミリ
㍉視点で見ると、キラはラスボス並みの迫力です。
口調は、いつもと変わらないのに。不殺は端から
見れば、矛盾してますが、気持ちはわかりますね。
「もう、銃を撃ってしまった僕だから」←巧く当てはまってます。
>>過去の傷
ティファもナチュとコーディの区別は分からない
でしょうね。Xを見ましたが、ほんとフレイ様とは
真逆のおにゃの子ですね。アストレイ組も復活して
エターナルは騒々しさ増大ですね。
>>流離う翼たち
民間人さんは相変わらず、軍事や政治に口出しして
ますね。やっぱり、この人出ないと話がしまって
きませんね。マリューのリアクションは、まあ当然
というところでしょうか。
>> The Last War
C.E.最強のコンビ相手に、アプカリプスは引けを取
っていないですね。堂々としてます。アスランは、
普段冷静な分だけこの手の危機の時は安易な死を選択
したりするので見てて危なかっしいですね。

151流離う翼たち・440:2004/03/23(火) 22:17
 これで会見は終わりの筈だったのだが、何故かソファーに座る民間人がキースを呼び止めた。

「まあ待ちたまえ。久しぶりに会ったのだ。どうだい、旧交を温める意味でも一緒に飲みにでも?」
「・・・・・・お前と温めるような関係があったか?」
「酷い事言うね。これでも僕は君を喧嘩友達だと思っていたんだよ」

 やれやれと肩を竦める男に、キースは仕方なくその足を止めた。

「いいいだろう。で、何処に行くんだ?」
「任せておきたまえ。僕が誘うんだ、それなりの所へ案内してあげるよ。ああ、何ならそちらの皆さんも一緒にどうです?」

 男から誘われた7人はどうしたものかと顔を見合わせる。どう考えてもこの男は友達になれそうもない男だが、断ると後で色々と問題になる気もする。

「・・・・・・分かりました。私とフラガ少佐でよければ」
「え?」

 俺も? と言いたげなフラガを目だけで制し、マリューは男の誘いに応じる答えを返したが、何故か男は首を縦には振らなかった。

「僕としてはそちらの少年少女の方に興味があるんだけどねえ」

 そう言って民間人の男はキラとフレイを見やる。その視線を受けたフレイはビクリと身を振るわせてキラの背中に隠れ、キラは何やら息苦しそうに身動ぎした。男はフレイの動きを見て意外そうな表情になった。

「おや、アルスター嬢はその少年を信頼しているのですかな。お父様が見たらどういう顔をなさるでしょうねえ」

 男の言葉にフレイの顔色が変わり、キースが顔を顰めて小さく舌打ちした。フレイはキラの背中から出て男に問いかけてしまう。

「パパを、パパを知ってるの?」
「勿論知ってますとも。まあ、余り付き合いがあったわけじゃないですがね」
「貴方は、一体誰なの。パパと知り合いって、政府の人なの?」
「まあ、政府の人では無いんですが、政府と関わりのある人ですよ。私は連合軍需産業理事を務めています、ムルタ・アズラエルです。君のお父様とも何度かあっていますよ。ついでに、そちらのキーエンスとは昔馴染みなんですよ」

 そう言ってアズラエルはキースを見る。キースは心底嫌そうに、だが真正面からその視線を受け止めていた。

「昔馴染み、ね」
「昔馴染みには違いないだろう。君は相変わらず僕の事が嫌いなようだけど、僕は君の事を結構気に入っていたんだよ。何しろ僕にはっきりと噛み付いてきたのは君くらいだったからね。鬱陶しくはあったけど、1人くらいは君みたいなのが居た方が良い」
「ふん、お前のやり方は過激過ぎる」
「相変わらず、甘い事だね。そんな事だからこんな戦争が起きたんだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あの日、君がパトリックとシーゲルを始末するのに賛同してくれてれば、事態がここまで悪化する前にコーディネイターどもの首根っこを押さえられたのにね」

 アズラエルの言葉にその場にいる全員がキースを見た。キースは表情を殺していたが、強く噛み締めている口元がその内心の憤りの激しさを示しているかのようであった。

152流離う翼たち・作者:2004/03/23(火) 22:31
>> 過去の傷
ティファがどうしてこっちに来れるのでしょう?
しかし、遂にミリィとキラの現場を見られたか。キラの命日は今日なのか?

>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィさん、悩むのは後でも出来る。今はそのまま降りて平和を掴んだ方が良い
君の今の仕事はトールの両親に死亡報告をする事だ。

153過去の傷・89:2004/03/23(火) 23:10
「キラ、そんなんじゃ分かんないわよ!」
「もう十分断っただろ!」
「ちょっとキラ!ちゃんと部屋で話し合うわよ!」
強引に自分の部屋にキラを連れ込もうとするミリアリア。
そんな時通路からフレイが歩いて来た。
「あ、フレイ!」
キラはミリアリアの手をなんとか振り払うと逃げるようにフレイに駆け寄った。
「どうしたの?」
「ミリィが・・・付き合えって・・・断ったんだけど、しつこいんだ」
「キラ!!!」
「ミリアリア、もうやめなさいよね」
フレイはキラを守るようにキラの前に立った。
ミリアリアは少し冷静になると・・・。
「フレイには関係ないわ、向こう行ってて、私はキラに話があるの」
「だからそれをやめてって言ってるの、キラだって嫌がってるじゃない、そういえば昼間もブリッジでキラに言い寄ってたでしょう?聞こえたんだから、もうやめてくれない?」
その言葉にミリアリアの顔がだんだんとこわばってきた。
「フレイには関係ないって言ってるでしょう!?私はただキラと話したいだけなのよ」
「関係なくなんかないわよ」
「・・・・・・」
「それにこの状況じゃどう見ても嫌がるキラにあんたが付きまとってるように見えるんだけど」
その言葉にミリアリアの表情が一気に険しくなる。
「なによそれ・・・なにが言いたいわけ?」
「だから迷惑だって言ってるの、もうキラに付きまとったりするのやめて、キラが可哀相じゃない、ト−ルがいない寂しさも分からなくはないけど・・・キラには関係ないでしょ、それに私だって練習で疲れてるのよもうやめてくれないかしら、キラ行きましょ」
そう言うとキラを連れて去ろうとした。
「フレイちょっと待ちなさいよね!!!」
(!この感じ・・・来るわ)
ミリアリアがフレイに背後からつかみかかってきた、しかし知っていたかのようにそれを簡単にかわしたフレイは逆にミリアリアの手をひねるとそのまま地面にたたきつけた。
「きゃあ!」
地面に伏せるミリアリア、その彼女を冷たくけいべつしたような目でフレイは見つめると冷たく告げた。
「いいかげんにして!本気で喧嘩したらあんたが私に勝てるとでも思ってんの!?」
「・・・フレイ・・・」
このフレイの行動にはキラも驚いているようだ。
「とにかく・・・もうやめて、キラ・・・部屋に戻るわよ、私達の部屋に」
「うん」
フレイが先に歩き出す。
「キラ!」
ミリアリアがキラの肩をつかんだ・・・しかしキラはその手を離しミリアリアを少し睨みつけるとフレイのあとを追った。
残ったミリアリアは・・・。
「バカ・・・」
二人の後姿を物凄い形相で睨みつけていた、まるでディアッカをナイフで襲ったときのような表情だった・・・。

その頃・・・。
「フレイの奴、いいかげん遅すぎるぞ」
カガリが部屋で一人呟いていた。

ここはサイの部屋だ。
「・・・・・・」
一人本を読んでいた、そんな時だれかが訪ねてきた。
「サイさん♪」
ジュリだった、この二人は昼ずっとデ−トしていた、読書だけだが・・・気が合うらしい。
「あ、やあ入りなよ」
「失礼しますね」

「サイさん」
「ん?」
「私達って気が合いますね」
「ああ、そういえばいろいろと」
「あのサイさん」
「なに?」
「私・・・彼氏募集中です」
「え?」
「サイさんはいま彼女とかいるんですか〜?」
「ええと・・」
そういえばとサイは思い出した、カガリのことだ・・・しかしだれがみても彼女が本気のようには見えない。
「彼女?いないよ」
「そうですか・・・よかった」(サイさんって優しい)
サイは思った、この子とは付き合っても気も合うし面白そうだな・・・と。
「あのさ・・・」
「なんですか?」
「俺と・・・付き合わない?」
その言葉に嬉しそうに飛び跳ねた。
「もちろんです!」(やった彼氏出来た!それも優しそうだしサイさん顔もいいしやった!マユラ、アサギ・・・先行くね)

154過去の傷・作者:2004/03/23(火) 23:19
>>ミリアリア・あの子許せない
ミリィ・・・キラの奴隷だ・・・可哀相すぎるぞ・・・ていうかこのキラはもう普通じゃない、戦争の血についに染まったか。
ミリィもう、キラのことは完全に忘れて自分のこれからの人生切り開いてね。
>>翼たち
アズラエル登場ですか、あいかわらず嫌なやつですね、まあフレイ様のお父様とはお知り合いでしょうね、ブル−コスモスということで。
キ−スさん修羅場に?

155ミリアリア・あの子許せない 82:2004/03/24(水) 05:20
第2部 6. 私はキラの特別…… 6/7
[今度会えたら。君のことミリィって呼んでいいかい]

私が艦を降りることを決めたのを聞いて、サイは、私の四人部屋を尋ねてきた。
サイは残念そうに言った。

「そうか、降りるんだミリアリア」
「うん」

「ミリアリア、君の決めたことなんだから仕方ないな」
「サイ、ごめんね。今まで慰めてくれたのに、私、何もお返しできなくて」

「こっちこそ、そんなミリアリアの想い分からなくて。
 俺ってさ、ミリアリアが降りるはず無いって思い込んでたんだよ。
 俺に付いてきてくれるって勝手に思い込んでて。やっぱり馬鹿だな俺って」
「そんなことない。サイは悪くないから。今でも頼ってる。また会いたい」

サイは、優しい言葉をかける。
「きっと、戦争が終わったら。また会えるよ」

私はサイに熱い視線を送る。私はサイを好きにならなきゃいけない。
キラを忘れる。それが、キラの命令……

サイは、少し迷った素振りを見せた。そして決意したように言った。
「なあ、今度会えたら。君のことミリィって呼んでいいかい。キラやトールみたいに」

「うん、いいわ。でも、不思議だったの。なんで、ミリィって呼ばないのか。
お父さんも、お母さんも、トールもキラも、みんな、そう呼んでたのに」

「遠慮してたんだよ。君とトールとキラ。いつも三人でいて仲良くて、俺達、入りこめなくてさ。
 ミリィは、三人だけの呼び名だと思っていた」
「お母さんが小さい時から、そう呼んでただけだもの。別に特別じゃない」

私は、そう言ってハッとした。気がつかなかった。
『ミリィ』は、私達カトウゼミの中では特別な言葉。それを、キラは最初から使っていた。
私はキラにとって最初から特別だったんだ。トールにとっても。

そして、キラにとっての特別の意味は違う。私が考えたくも無い意味の特別な……
はは、やっぱり、私、特別だったんだ。キラに最初に会った時から、もう既に。
はは、あはは、私って馬鹿だ……

「サイ……」
「ミリアリア……」

私はサイと別れのキスをした。長い長いキスをした。

「じゃあ、行くよ」サイは言った。私は、サイに縋るような視線を送る。

「退艦の準備大変だろうけど。俺も仕事あるから」
サイは何かを振り切るように言った。

「さよなら、ミリアリア。この次はミリィって呼ぶよ」
「さよなら、サイ」

サイは、私の四人部屋を出て行った。真面目なサイは、最後も、やはり私を奪ってくれなかった。
サイが言えば、私は何も言わず身を任せたのに……

私は、サイに心の中で呟いた。
(今度ミリィって呼ぶ時には、私を奪って。キラを忘れさせて……)

156ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/24(水) 05:25
うちのSSで『ミリィ』と呼ぶ人は、最初から意図的にTV本編と変えていました。今回伏線回収します。
昨日のトリィの出番。実は投下直前に入れました。いつも、トリィの出番は、最初、気づかなくて
後から忘れてたってことで慌てて追加してます。難しいキャラですね。

>>流離う翼たち
TV本編では、アズにはアルスター家のこと思い切りスルーされましたが、知ってるはずですよね。
これからフレイ様、アズにパパのこと、いろいろ聞く事になるのかな?

>>過去の傷
想像通り、あの修羅場が再現されましたね。恐いミリィ状態になって、これから一体何が……
ジュリとサイは、いい雰囲気ですが、ジュリはロウはもういいのかな。樹里と争ってたけど、身を引いたみたいだし。

157流離う翼たち・441:2004/03/24(水) 23:08
 アズラエルはキースを楽しげに見やると、小さく笑いながら言い過ぎた事を謝罪してきた。

「悪いね、少し言い過ぎた。あの時に今のような事態を予想しろと言っても無理な話だしね」
「・・・・・・・・・・・・」
「まあ、今日はこれで別れるとしよう。君に殴られたら怪我じゃすまないからね。そう、明日の午後3時ぐらいに人をやるとしよう。ここにいる全員を食事に招待しますよ。何か聞きたい事があるのでしたら、その時にお答えしましょう」

 アズラエルはソファーから立ち上がると、キースの肩をポンと叩き、薄笑いを浮かべて部屋から出て行った。残された人々は何も言わず、ただ棒立ちしているだけのキースに戸惑った視線を向けている。彼がここまで言われ放題になるというのは、いつのも彼を知る者には信じられない事だったから。
 暫くの間、じっと何もいわずにその場に佇んでいたキースであったが、やがて、妙に重々しい息を吐き出すと、スレイマン少将に敬礼をして踵を返した。その背後にナタルが手を伸ばしかけたが、その背中が触れられるのを拒んでいるように見えて、空中で空しく停止してしまう。キースはそのまま何も言わず、黙って司令室から出て行ってしまった。


 キースが出て行った扉を呆然と見ていた7人だったが、ようやく思い出したかのように彼らも司令官オフィスから出て行った。だが、誰もが一様に不満と疲れを見せており、昇進したばかりの軍人にはとても見えなかった。

「アズラエルですか。なんか、人目で嫌な人だと思っちゃいました」
「同感、出来れば2度と会いたくないな」

 キラとトールが愚痴る。よほど印象が悪かったのだろう。いつもなら窘めるナタルやノイマンさえ小さく頷いているのだから、その第一印象の悪さは想像を絶するものがある。ちなみにマリューはアズラエルの名を口にする事さえ嫌だと言いたげに顔を顰め、フラガは不機嫌そうなマリューの様子にどうしたものかと頭を悩ましていた。
 だが、その中でただ1人だけ、アズラエルに興味をもっている者がいた。自分にしか聞こえない程度の声でボソボソと内心を呟いている。

「なんで、ブルーコスモスのTOPと、パパが知り合いなのよ?」

 フレイだ。フレイは父があのような男と知り合いであったという事にショックを受けていたが、同時に湧き上がる疑念を抑えられなくなっていた。そう、自分の父親がブルーコスモスだったのではという疑念を。もしそうならば、父親が自分にコーディネイターを嫌うような言動を繰り返していたのも頷ける。てっきり仕事の都合で問題ばかり起こすコーディネイターを嫌っているのだとばかり思っていたのに、ブルーコスモスに加わる程の憎悪をコーディネイターに対して抱いていたのだろうか。

「もしそうなら、私は・・・・・・」

 ブルーコスモスの父を持つ娘が、コーディネイターに惹かれるなど滑稽を通り越して性質の悪いジョークだ。昔話の敵味方に別れた男女の恋物語じゃあるまいし、現実に起きたら誰もが軽蔑するであろうシチュエーションだ。そして自分は物語の主人公やヒロインを真似できるほどに強くはない。

 ナチュラルとコーディネイター、これまで必死に問題は無いと自分に言い聞かせてきた現実が、再び自分の前に立ち塞がってきたのだ。自分はキラが好きだ、この答えには偽りはない。だが、現実は自分の想いを否定するのではないのか。自分の気持ちが如何であれ、世界の流れは自分の想いを許さないのではないのか。今この瞬間にも何処かでナチュラルとコーディネイターは戦い、血を流している筈だ。その現実を前にすれば、自分の想いなど、暴風の前の蝋燭の灯火にも等しいのではないのか。
 フレイはいつも自分の中にあるもう1つの答えと再び向き合う事態に直面する事になった。そう、自分の想いは、間違っているという答えに。

158過去の傷・90:2004/03/24(水) 23:11
「え?カガリと?」
「そうなの、ごめんね・・・あ、キラその・・・ミリアリアが来るかもしれないから・・・サイのところかどっかに行ってて」
「うん、分かった」
「それじゃ」
フレイは出て行った。

「カガリごめん遅くなっちゃった・・・て・・・寝てるし」
待ちくたびれたのかカガリはベッドの中で寝ていた。
カガリを見ているうちフレイはついカガリの寝顔の可愛さに見とれてしまった。
「・・・可愛い」
ほんとこうしてみると可愛いカガリって、みとれちゃった。
そして自然にベッドの近くまでくるフレイ。
「もう風邪ひいたらどうするのよ」
シ−ツが半分でかかっていたのでちゃんとかけてやる。
「カガリ・・・おやすみ・・・貴女はほんとに可愛いわね」
カガリの頬に軽くキスをすると部屋を出た。

フリ−ダムの前まで来ていたミリアリアは。
「・・・・・・」
フレイ・・・あの子に出来て私に出来ないわけないわ、だいたいさっきのはなによ偉そうに・・・あの子にあんなこと言う資格あるわけ?なによちょっといい子になったからって・・・。
私に説教?あの子がア−クエンジェルでキラやサイにした行為に比べたら私のなんて可愛いものじゃない、それなのになによ自分のやってきた行為を棚に上げてよく言うわ。
フリ−ダムに乗り込むミリアリア。
「私だってやればできるはずよ・・・負けられないわ」
私にとって今日の夜の出来事は屈辱だった、キラ・・・私の気持ちなんで分かってくれないのよ!寂しいのに・・・ト−ルの代わりになってくれるだけでいいのに・・・。


通路に出たフレイは・・・夜といっても艦は明るいのでいつも昼に近い。
「あれれ〜キラさんの彼女!」
マユラと会う。
「あ!あんた!ちょっとねえ!」
「それどころじゃないんです!だれかがハッチを開けたみたいで」
「フレイ!」
「サイ?」
サイとジュリが部屋から出てくる。
「キラは?」
「分からないわ、たぶん部屋にいると思うけど」
「そうか・・・いやそれどころじゃないんだ!誰なんだよ勝手にハッチを開けたのは!」
とにかくまずブリッジに向かった。
「いやミリアリアっていう通信してるお嬢ちゃんがたしかうろうろしてたぞ」
「え!?ミリィが!?」
「・・・ミリアリア・・・」
モニタ−で確認する。

「ええと・・・どうするんだっけ・・・」
なんとか起動したミリアリアだったが。
それからは動かすことが出来ない、歩くことすらできないのだ・・・。
「あ、こうよこう!」
もちろんだがフレイのように動かすことは出来ない・・・それどころか・・・。
「あ、やだ、きゃあああ!!!」
ついにフリ−ダムは転倒してしまう。
「・・・・・・」
そんなはずない・・・あの子に出来て私にできないなんて・・・そんなこと・・・こんな屈辱的なことってあんな閉じこもってた子に私は負けるの?ずっとフレイなんかより近くで戦闘を見てた・・・いつも逃げてた臆病者のあんな子とは違うって思ってたのに・・・。
「いや・・・いや・・・なんで・・・なんでよ・・・いや・・・いやあああああ!!!」
ミリアリアは操縦席で絶叫でして泣いた。
ブリッジにも聞こえた。

「ミリィ・・・」
いま来たキラが虚しそうに呟いた。
(バカだなミリィは・・・)
「キラ行きましょう・・・こんなの見てたってしょうがないわよ」
「そうだね、僕達には関係ないしね」
フレイはキラを優しく抱きしめると・・・手を繋いで二人は部屋に戻った。

159流離う翼たち・作者:2004/03/24(水) 23:14
>> 過去の傷
はわわわ、恐ろしい、フレイ様が昔のサイになってる
一方のサイはなんだか幸せを掴めそうだけど、カガリ、暴走しちゃ駄目だよ

>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィは降り、サイは残りましたか
ミリィはオーブ戦をAAの外から見るのでしょうか

160過去の傷・作者:2004/03/24(水) 23:20
>>ミリアリアあの子許せない
うむ・・・ミリィの気持ちもすごく分かるんですよ・・・でもなあ。
サイに奪ってほしかったんですね、ミリィなりにキラを忘れようとしてるんですね、艦を降りた彼女の運命は?ディアッカとはこれで終わりなんでしょうか?
>>翼たち
フレイ様・・・これはいつかは乗り越えなければいけない壁です・・・フレイ様戸惑ってますね、これでなにも影響がなければいいんですが・・・。

161ミリアリア・あの子許せない 83:2004/03/25(木) 04:28
第2部 6. 私はキラの特別…… 7/7
[特別な私に、さよなら……]

翌朝、私はいつもの四人部屋のベッドで目を覚ました。昨夜も、よく眠れた。
キラの命令を反芻して、それに従っている自分に心地よく体を揺られながら
眠りについていた。夢も見なかった。

私は、真新しい下着に替えると、連合の軍服の代わりに、退艦のためにオーブから
支給された質素な服に着替えた。今までの普段着はワンピースが多かったけど、これは
払い下げらしいシャツとジーンズだった。これからは、戦争から逃げ回るだけになる私には、
この方がいいのかもしれないと思った。

ヘリオポリスからアークエンジェルに乗り込んで、自ら志願して着せられたピンクの
見習い兵の軍服。それは昨夜畳んで、使っていないベッドの上に置いてある。
私の軍服は、このまま置いて行く。悲しい想いの詰まった軍服は、もう必要なかった。

ヘリオポリスのころの私服や、持ち出しを許された身の回り品はバッグに詰め込んである。
トールの遺品箱も入っている。そして、密かに持ち出したキラの遺品箱も……
私のバッグは大きく膨れている。

時間が来た。私は、その大きなバッグを持って、長い間住み慣れた四人部屋を見回した。
上の段のベッドに、相部屋だった時の、あの子のイメージが少しだけ浮かんだ。

「あの子…… 許せない」

私は、一言だけつぶやいて、私の四人部屋を出た。

私は、みんなに見送られながらアークエジェルを降りた。最後の退艦志願者だった。
サイは手を振っていた。艦長とフラガ少佐は悲しそうだった。なぜか、また、カガリさんが
キラと一緒に見送っていた。

「さよなら、ありがとね、みんな」 私は最後の挨拶をかわす。
「さよなら」 みんなは答えた。

キラは、やはり無言だった。無表情な、その顔は、私には冷たくて残酷に見えた。

* * *

オノゴロにあるオーブ政府の受け入れ事務局で、私は故郷の両親に連絡を取った。でも、
両親には連絡がつかなかった。私が降りるまで迷って時間がかかったのと、その間に、
オーブと連合との情勢が悪くなり、自主的に国外退去した人も多くて、両親も、それに
含まれるかもしれなかった。とにかく、私の故郷まで行って、そこから行方の手がかりを
探すしかなかった。

トールの両親とは連絡が付いた。私は、とりあえずトールの両親に会うことにして、
受け入れ事務局を後にした。

オノゴロから、オーブ本土に向かう連絡機が発進した。窓に見えるオノゴロが離れて行く。

私は、最後にそっと呟いた。
「さよなら、キラ」

そして、キラの特別な私に、さよなら……

162ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/03/25(木) 04:32
ミリィSS、5, 6章終わります。今あるメモだと、これで第2部の半分くらいです。これから舞台はオーブに移ります。
次は、フレイSSに戻ります。ここで新しいオリキャラが登場します。

>>流離う翼たち
お話しの世界では望まれない二人のシチュには憧れますが、実際、自分がそうなると醒める気も分かります。
まわりの環境はフレイ様の自身の心とは関係無いはずなんですけど、実際には、それで壊れてしまう関係も多いのでしょう。
別に、どちらの結論を出しても、間違いでは無いです。

>>過去の傷
ううむ、ミリィがサイの二の舞を…… でもキラとフレイの反応が冷たすぎる。さらに、一波乱ありそう。

163流離う翼たち・442:2004/03/25(木) 21:48

 窓から注ぐ朝日に、ナタルはゆっくりと半身を起こした。何となく頭が重いのは昨日飲み過ぎたせいだろう。昨日は司令部を後にすると、そのまま艦長が買い込んだ酒をフレイの家に持ち込んで・・・・・・

「ふう、艦長の酒豪ぶりも恐ろしいが、まさか子供達があんなに飲むとはな」

 水でも飲むかのように平然とビールを開けていくフレイとカガリの姿には流石に驚いてしまった。ミリアリアはまあ人並みだったが、それでも平然と飲んでいた。マリューに至ってはもう空の酒樽の如く飲んでいたから恐ろしい。
 狂乱の酒宴は怒涛の暴露トークへと雪崩れ込み、マリューの過去やら自分の経歴やら、果てはフレイとキラの経験談にまで及んだのだ。


「何、2人は二桁経験済み!?」
「艦内でそんな破廉恥な事を・・・・・・」
「「・・・・・・・・・(黙って聞き入っている)」」
「うう、でもキラって酷いんです・・・・・・もう疲れたって言っても盛った犬みたいに延々と」
「まあ若いからねえ」
「そ、そんな破廉恥な、事を・・・・・・」
「「・・・・・・・・・(現在妄想中)」」
「一番酷い時なんか5時間ぶっ続けで・・・・・・もう腰が痛くて痛くて」
「・・・・・・超絶倫人ね」
「プシュ〜〜〜(どうやら限界を超えて体内ブレーカーが落ちたらしい)」
「「・・・・・・・・・・・・(現在妄想中)」」


 思い出してしまい、襲い来る頭痛に顔を顰めた。あれは地獄絵図だった。いや、早々に戦線離脱した自分はこうして誰のものかも知れないベッドを占領して朝を迎えたわけだが、果たして下はどうなっているやら。

「余り見たくはないが、そうもいかんだろうな」

 仕方なくベッドから降り、皺だらけになった私服はまあ諦めてトコトコと一階に降りると、案の定残りの4人はリビングで泥酔死体と化していた。マリューは酒瓶抱えて横になっているし、ミリアリアとカガリは背中を合わせるようにして座った姿勢のまま眠っている。どういう訳かフレイだけはタオルケットをかけてソファーを占有していた。全員潰した後に1人だけきちんと寝たのだろうか。
 我が弟子ながら、この辺りは実に侮れない少女だ。すでにハリセンをマスターしたというし、本当に物覚えが良い。

「ふむ、まあ、放っておいても大丈夫だろう」

 そう確信すると、ナタルはリビングを横切って家を出て行こうとしたのだが、リビングの戸に手をかけたところで声をかけられた。

「帰るの、ナタル?」
「艦長、起きていたのですか?」
「ええ、あれくらいで酔い潰されたりしないわよ」

 そう言って上半身を起こしたマリューは、大きな欠伸をしつつきょろきょろと辺りを見回し、潰れている3人を見て優しい笑みを浮かべた。

「まあ、本当ならいけないんでしょうけど、たまにはこういうのも良いかなと思ったのよね」
「艦長は随分楽しんでいましたからね」
「お酒があればとりあえず幸せよ」

 はっきりと言い切るマリューにナタルは額を押さえたが、すぐに立ち直ると扉を開けてリビングを出て行った。彼女も随分と逞しくなったものだ。

164流離う翼たち・作者:2004/03/25(木) 22:00
>>過去の傷
2人とも、なんだか冷たい。ミリィがサイ化してるのはちょっと怖い
1人平和を勝ち取るのはサイなのだろうか・・・・・・

>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィさん、やっと艦を降りましたか。とりあえずトールの両親の戦死の報告ですね
ある意味これが一番辛い仕事なのだが。ミリィを見送るキラの冷たさは、はたして錯覚か?

165過去の傷・91:2004/03/25(木) 22:58
部屋の前でフレイはキラだけ先に部屋に戻らせた、カガリのあの可愛い寝顔がまた見たいのである。
「・・・・・・」
カガリはベッドの上で静かに眠っている。
カガリの顔に顔を寄せる。
「カガリ・・・大好きよ」
起こさないようにシ−ツをゆっくりと取るとカガリの胸に顔を埋めた。
「気持ちいい」
数分そうしていたが・・・。
「カガリ・・・おやすみ」
シ−ツをかぶせカガリの頬にキスすると部屋を出た。

「ただいま」
「おかえり」
フレイは思った。
ミリアリアはなぜあんな行動を取ったのだろうか・・・いまだに信じられなかった、私に対抗するため・・・?もしそうだとしたら・・・でもだからといって・・・あそこまでするだろうか・・・機体を動かそうなんて・・・それにしてもこの頃の彼女は変だ・・・フレイがそんなことを考えていると・・・。
ミリアリアが入ってきたのだ。
「キラ入るわよ」
「ミリィ・・・」
「なんの様よ?」
ミリアリアはフレイの言葉を無視しキラの手を取る。
「キラ、部屋に行くわよ」
「いやだよ僕は!」
「来るの!!!私の部屋でちゃんと話し合うわよ」
「話なら十分しただろ!もういいかげんにしてくれ!こんな時間まで押しかけてきて!」
ほんとうんざりするわね・・・ト−ルがいないからって、この女どこまでいつこいのかしら。
仕方ないわね。
フレイはキラの手を引っ張るミリアリアの手を振りほどいた。
「なにするのよ!」
「なにするのよじゃない!」
なんでよ・・・なんでどいつもこいつも・・・。
「出てって!」
なんで・・・唯一の宝まで私から取ろうとするの・・・?
ミリアリアを部屋から突き出すと転んだ彼女を冷たく見下ろすと告げた。
「私が・・・いままでどんな気持ちでいたか・・・」
私の気持ちなんて知りもしないくせに・・・でもキラだけは・・・。
「キラは私を許してくれたわ・・・優しくしてくれた・・・こんな私みたいな女を好きになってくれたわ・・・私みたいな女を・・・キラだけだった・・・」
私はミリアリアを鋭く睨みつけると言った。
「私がどんな気持ちで・・・ザフトにいたか・・・ドミ二オンという艦でどんなに怖い思いをしたか・・・誰を分かってくれようとしなかったくせに!!!私のキラを取ろうとしないで!なんでよ・・・なんであんたもラクスも私のキラを取ろうとするわけ!?私は幸せになっちゃいけないの!?」
これを言うのは卑怯かもしれない、でも・・・止められなかった・・・そうキラだけじゃない、カガリもティファだって私のことを理解してくれている、それは分かっている。
ミリアリアも私の言葉に圧倒されたのかなにも言えずにいた、そして驚いたような表情を浮かべている。
私はドアを閉めた。
外からミリアリアの声が聞こえた。
「馬鹿・・・なによ!!!・・・キラ・・・私あきらめないわよ・・・ト−ルの代わりになってもらうんだから・・・そのことを忘れないでよ」
それから声は聞こえなくなった。

「ミリィ・・・馬鹿だよね」
「え?」
「フレイに敵うはずなんかないのにほんとに馬鹿なんだから」
「キラ・・・」
「うう・・・フレイ・・・」
「大丈夫よ・・・私はキラの側にずっといるわ」
「フレイ・・・」
フレイは軍服の上着の脱ぎタンクトップ姿になるとキラの顔を手で胸に埋めさせた。
「キラ・・・私がずっといるからね・・・」
「うん」

次の日の朝である。
「ミリアリアさん、どうして呼ばれたか分かってますね?」
「はい」
ここはラクス・クラインの部屋だ。
ミリアリアは朝からラクスに呼び出されたのだ、側にはアスランが目を閉じながら立っている。
「なぜあのようなことをなされたのです?」
「それは・・・」
まさかフレイに負けたくないからなんて言えないわよね・・・。
「まあいいでしょう」
「・・・・・・」
「ただ貴女が犯した行動について私は許すおつもりはありません、無断で機体に搭乗するなど」
「でも、私だって軍人だし」
「お黙りなさい!!!たかが二等兵ごときが私に逆らうおつもりですか!?」
ラクスは鋭い視線でミリアリアを睨みつけた。

166過去の傷・作者:2004/03/25(木) 23:11
>>ミリアリア・あの子許せない
ミリィ降りましたね、キラそれにしても冷たすぎやしませんかね?まあ分かっていたことではありますけど。
そしてト−ルの両親に彼の死を報告・・・辛いだろうなあ。
>>翼たち
おいおい、いいのかよフレイ様・・・お酒はほどほどに・・・ってそれどころじゃない、カガリもミリィも未成年でしょう!いけませんね、でもさすがというかマリュ−さんは強いですね、ミサトさんといい勝負したりして?

あの聞きたかったのですが・・・ミリアリア・あの子許せないの作者様もミリィお好きですか?私はミリィ大好きですね、SEEDキャラではフレイ様は当然ですがラクスに続いて好きですね、いえそのミリィも主役になってますので一度聞きたかったものですから・・・変な意味はありませんので。

167ザフト・赤毛の虜囚 34:2004/03/26(金) 21:55
7.幼子(おさなご) 1/8
[こんな自分をキラに見られなくて良かった]

パナマでの戦争が終わって、また、私は潜水艦の士官用個室に幽閉されている。

私は戦争の後、放心したままだった。いくら、キラを継ぐ思いを受け入れたとしても、
今の私に出来ることは何も無い。ただ、先の分からない不安に支配されるだけだった。

すでに、自分を守るための銃も失っている。今、私にクルーゼが迫ってきたら、私は
抵抗しきれなかっただろう。でも、クルーゼは逆に、潜水艦に戻って大人しくなった
私に迫ることは無かった。一日、二度、私に食事を運び、机で書類整理の仕事をして、
ときどき、疲れたようにソファーで眠る。そして、夜の時間帯だというのに、部屋を出たまま
帰って来ない。私は、そんな様子をベッドに横たわりながら虚ろに見つめていた。

私に無関心なクルーゼに、以前なら逆に女のプライドを傷つけられたかもしれない。
だけど、今の私には、それが当たり前なのだと思った。今までと打って変わったように、
男を拒む気持ち。もしかしたら、キラに対しても手酷く拒んでいたかもしれない。

それ以外にも、私は、今の自分に女の魅力など、ひとかけらも感じなかった。
私は、アラスカで捕虜になってから、一度もシャワーも着替えもしていない。クルーゼは
士官用個室にあるシャワーを自由に使っていいと言うけど、いつ、クルーゼが入って来るかも
分からない中、おいそれとシャワーを使えるものでは無かった。髪はボサボサになり、
今、私の体からは、酷い匂いがしている。元々、それがいやで、アークエンジェルにキラといる時は、
こまめにシャワーを浴び、香水も付けてキラと寝ていたくらいだから、捕虜になって一週間、
着替えもせずにいたらどうなるか分かるだろう。また、特にショーツの汚れが酷かった。
私は、その嫌悪感に堪えられなくなる一歩手前まで来ていた。パパに恥ずかしかった。
私はかえって、キラがいないことに安堵していた。こんな自分をキラに見られなくて良かった。

元々、クルーゼの部屋であるここには、女物の替えの下着など見つからない。また、クルーゼに
それを頼むのも、クルーゼの寝た子を起こしそうで躊躇われた。仕方ない、せめて、今のを洗わないと。

クルーゼが、朝、私に食事を運んで出て行った後、だいたい昼過ぎまで帰って来ない。私は、
思い切って服を脱ぐとシャワーを浴びた。石鹸は安物で、私がキラの部屋に無理を言って揃えさせた
高級石鹸では無い。私の体臭を、すべて洗い流すものでは無かったけど、久しぶりの熱い湯を全身に浴びて、
心も少し落ち着いたような気がした。私は自分の体を鏡に写してみる。手であちこち触ってもみる。
そこに、以前との変化を感じることはできない。だけど、私はパナマで感じたことはきっと真実
なのだと確信していた。

私は体を奇麗にすると、今度はショーツに石鹸をつけて洗いだした。とりあえず、今はこれで
我慢するしか無い。アークエンジェルの雑用係りのころなら、新しい下着を準備するのは
訳なかったのに、あの時はいやらしい意味でしか仕事の立場を使っていなかった。今は、真面目な
意味で必要だというのに。

洗ったショーツと髪を交互にドライヤーで乾かしながら。私はショーツを穿かずに服を着た。
クルーゼが、いきなり入ってきてもなんとかごまかせるように。私はベッドの毛布で下半身を隠し、
ドライヤーでショーツを乾かしている。スカートの下に違和感を感じる。私は、なんと破廉恥な真似を
しているのだろう。

だけど、私は、この感覚が不快では無い。というか、既にこういうシチュエーションは経験済みなのだ。
キラの前で……

あれは、私が腰痛で動けなかった時のこと。今は私から失われてしまった、キラを狂おしいほどに
求めていた記憶を。

168ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/26(金) 21:58
フレイSS新章開始します。

>>流離う翼たち
フレイ様、ポッ…… マリューさん、猥談にも酒にも平然としてますね。やはり経験が違うか。ナタルさんもガンバレ。

>>過去の傷
ついにラクスまで怒らせてしまいましたか、ミリィの運命や如何に……

私もミリィは大好きですよ。中々、TV本編のストーリーには噛んで行けなかったのですが、
人を気づかう素振りや、それでいてディアッカに激情をぶつけるところが自然で良かったです。
その後は、特に小説版を読むと、もの分かりが良すぎてしまうのが、ちょっと残念でしたけど。

元々のミリィSSは別の意図もありましたが、TV本編のミリィがキラを気づかうシーンを
中心に膨らまして創作した、最初の「私、キラが好き」と言う台詞を書いた途端、ミリィ自身が
徐々に独り歩きを始め今に至っています。

169過去の傷・92:2004/03/26(金) 23:27
「私は逆らったりは・・・」
前にいるピンクの髪の少女を見る、私と年齢は同じぐらいなのに、なぜこんなにこの子に頭を下げなければならないのか、なぜこんなにかしこまなければならないのか・・・だがそれが軍というものだ、彼女はこの艦で一番偉い、それに比べて私はただの二等兵、立場がまったく違う、それに彼女はなにか威圧感があるのだ・・・たとえ彼女が自分と同じ地位にいても敬語を使うだろう。
「それが逆らってるというんです!」
「すいません」
「では処分を申し上げます」
ラクスが怒ってるからして・・・そんな時だった。
「あの・・・ラクス」
「なんです?アスラン」
側にいたアスランが口を挟んだ。
「彼女が行った行為は初めてですし・・・それに怪我人も出ず機体も傷ついてはいないのですから、今回だけは・・・」
「アスラン・・・分かりました、貴方がそうおっしゃるなら」
「ありがとうございます、勝手なことを言って申し訳ありませんでした」
「あ、あの・・・」
「ミリアリアさん、今回だけは一日だけ、謹慎処分とします、ですが食事は一日に一食、シャワ−は当然ですが禁止します、よろしいですね?」
「・・・はい・・・」
「あ、食事は誰に持っていってほしいですか?」
そう言われてミリアリアは・・・。
「サイで・・・サイ・ア−ガイル二等兵でお願いします」
「そうですか、分かりました、ではサイさんをこちらにお呼びください」
「え?」
「聞こえませんか!?サイさんをお呼びくださいと言ってるんです!人の話もちゃんと聞けないのですか!!!」
「あ、ごめんなさい・・・では」
ゆっくりとドアのほうに歩きかけるミリアリア・・・。
そのミリアリアにラクスは隣にいたハロを投げつけた。
「きゃあ!」
「早く行きなさい!私を待たせるおつもりですか!?」
「ごめんなさい」
ミリアリアは急いでサイを呼びに行ったのだった。

ここはカガリの部屋だ、フレイが来ていた。
「アストレイ三機?」
「そうだ、明日は私が指揮を取る、それでお前にはアストレイ三機を相手にしてもらうからな」
「分かったわ」

その夜。
サイとフレイは通路を歩いていた。
ミリアリアの部屋に入ろうとしていたところでサイが足を止める。
「フレイはミリィとは会わないほうがいいよ」
「え?」
「ほら、またミリィが怒り出したりしたらいやだろ?だから・・・」
そう言うとサイは一人ミリアリアの部屋に入って行った。
中から声が聞こえる。
「ミリィ、シャワ−は浴びられないけど一日だけの辛抱だから我慢して、いいね?」
「いいの、ありがとう・・・分かってるわ」

部屋の中からサイとミリアリアの話し声が聞こえる。
だめ、私は入ってはいけない・・・なぜなら私と彼女はいま不仲だから・・・でもそれは私のせいじゃないミリアリアが悪いのよ、キラを誘惑したりキラにしつこく付きまとったりしてるから・・・謹慎が解けたらまたキラに接近してくるだろう・・・。
「そんなことはさせないわ」
ト−ルがいないから代わりを彼女は求めているだけ、彼女には渡さない、キラは私だけのもの・・・誰にも渡さない。
私は自然に歩き出していた。
「・・・ミリアリア・・・自業自得よ・・・ざまあないわ」
そう彼女は自業自得だ・・・私には関係ない。

170過去の傷・作者:2004/03/26(金) 23:35
>>ザフト・赤毛の捕囚
フレイ様・・・それにしてもクル−ゼ隊長が憎い、よくもフレイ様を・・・そうかシャワ−も浴びられないのか・・・それは辛いでしょうね・・・特にフレイ様は・・・。

それからミリィやはり好きでしたか!答えてくれてありがとうございます、私はミリィのフレイ様とは違った可愛さ、活発なところ、頑張ってるところ・・・いろんなミリィが大好きですね・・・もっとキラと絡んでほしかった気もしなくはないですね、本編にも・・・もうちょっと活躍してほしかったです・・・。
(あ、フレイ様けっして浮気では・・・なぜここに・・・ぐわあああ!!!)

171私の想いが名無しを守るわ:2004/03/27(土) 02:55
>>167
気になるところで終わるなぁ。次回期待してます。
なんというか随所に見られる女性的な表現が好みです。

172ザフト・赤毛の虜囚 35:2004/03/27(土) 17:45
7.幼子(おさなご) 2/8
[素肌にシャツを着ただけの姿で]

アークエンジェルが太平洋を航海していたころ、戦闘でMIAになったカガリを捜しに、
キラが出て行ったことがあった。その時、私は船酔いで、戦闘中にアークエンジェルが
回転飛行をして、それがなお、一層ひどくなっていた。その私を置いてキラは出て行った。
私の心を麻痺させるようにして……

「フレイ愛してる。すぐに戻るから」

キラは、出て行く時、すぐに戻ると言ったのに、結局、一日戻って来なかった。出る時に、
キラがしたこと、言った言葉、それに、私は、いつしか船酔いも忘れドキドキしながら
待っていたというのに……

やっと戻ってきたキラに腹を立てて、回転飛行のせいで散らかったままの部屋にまで、
八つ当たりして文句を言う私を、キラがなだめながら片づけた。そして、その後のこと。

夜、キラと寝るベッドから抜け出した私は部屋のトイレで足を滑らせて腰を思い切り床に打ちつけた。
私は、しばらく立てないくらいだった。滑った理由や、転んだ後にあったことは、恥ずかしくて
思い出したくない。ただ、動けない私をキラが軽々と抱き上げてベッドに運んだことだけは、
ありありと記憶に残っている。私は思いもかけず力のあるキラに驚き、キラがコーディネータであることを
今さらのように意識するとともに、そのキラの逞しさに、感情を揺さぶられていた。

翌朝、私は腰の激痛で動くことさえできなかった。だけど、キラが医務室に連れて行くという申し出を、
私は頑強に断った。キラの部屋を出たくなかったのと、何より、腰痛の理由を聞かれる恥ずかしさが
あった。キラは、私の腰に医務室からもらってきた湿布薬を貼ると、腰に気を使って、私にキラの大きめの
シャツだけを着せて、安静にしているように言った。私はブラもショーツも付けずに、素肌にシャツを
着ただけの姿で、数日間、キラの部屋で暮らした。最初は違和感ばかりを感じていたけど、しばらくして、
慣れてしまった。部屋にはキラしか入って来ない。何を恥ずかしがる必要があるのだろうと思うように
なっていた。

キラは、しばらくは敵襲も無く、休み時間など事あるごとに、部屋に帰ってきて私の面倒を見てくれた。
船酔いに続いてのことだ。それでも、船酔いの時は自分自身が始終気持ち悪くて余裕が無かったけど、
腰痛は痛みで動けない不自由さを除けば、気分そのものは普通の状態だったのが違っていた。
にも関らず、キラは船酔い以上に、優しく世話をしてくれる。私は、これを機会にと我が侭を
言いまくった。キラは船酔いの時と同じく困った顔をしながらも、なんでも言う事を聞いてくれた。

私は、それに加えて、時々、毛布をはだけ、私の素足を見せつつ、わざとシャツの胸元や裾が覗くように
寝返りをうち、それにドギマギするキラの反応を楽しんだ。

「ちょっと、フレイ、その……」
「ん、どうしたの? キラ」

「今はさ、待機中だから。僕は、もう行かないと」
「行けばいいのよ。それともどうしたの? キラ歩きにくい?」

「フレイ!!」

キラはふくれっつらで軽く怒鳴りつける。私は、それに恐そうな素振りをしながらも、顔は笑っている。
キラは、腰が悪い私に、数日間、手出ししなかったから、仕事の途中にも関らず、欲望だけを刺激されて、
それを我慢しなければならないキラは可哀想なくらいだった。でも、この前のカガリの件、そして、
このころ、私はベッドでの主導権をキラに取られていたことと、そもそもの腰痛の原因であるキラの行動への、
ちょっとした復讐でもあった。本当の復讐は別にあったというのに、それとは別に、私は小さな意地悪を
思うまま楽しんでいた。

夜、キラは、ベッドにうつぶせになった私のシャツをめくり、腰をマッサージしてくれる。
時々、ノートパソコンの画面を見ている。マッサージ方法をどこかのデータベースから調べてきたらしい。

「フレイ、昼間は困ったよ、まったく」
キラは、マッサージを続けながら、少しだけぼやく。

「じゃ、今する? できるものなら」
「もう……」

キラは、私のお尻をピシャっと軽くたたく。そして、エッチなことができない代わりに、腰をさすりながら、
私が眠るまで色々な話をしてくれた。砂漠で会った敵将の話。ヘリオポリスでの話。小さい頃暮らしていた
月の話。どちらかというと無口で、あまり自分のことを話さないキラだったけど。この時ばかりは、
私はキラの話に夢中になった。

本当は、あの時に自分のキラへの気持ちに気がついていたはずだった。そうすれば、オーブでのことは
無かったかもしれない。

173ザフト・赤毛の虜囚 36:2004/03/27(土) 17:48
7.幼子(おさなご) 3/8
[ねえ! キラ、早く脱がせて]

腰の痛みは、結局、それほど酷くなかったらしく、湿布薬とキラのマッサージのおかげで
数日でおさまった。でも、その間の開放的な状態、ただ体を求め合うのでは無いキラとのスキンシップ、
そして、そもそも腰痛の原因となった思い出したくもない恥ずかしい体験。それが、一方では、
私の心と体に変化をもたらしていた。

仕事に復帰した時、丁度、洗濯物を持ってきたミリアリアに話をしながら、私は自分の体の
変化への戸惑いを感じていた。

「ハーイ! ミリアリア」 私は、なにか浮かれたようにミリアリアに声をかける。
「フレイ。久しぶりね。船酔いとか、腰とか、もういいの?」

「うん! もう大丈夫。これ洗っとくわね」
「どう、仕事」

「ちょっとサボってたんで、仕事たまってて大変。なんか、洗濯とか掃除とか、
 今まで、自分では、あまりやってなかったことだけど。
 私、こんなことくらいしかできないし。キラも、みんなも戦っているのにね」

ハイな気分のまま、なんだか、ミリアリアを昔からの友達のように親しげに心境を話しかける。
ヘリオポリスの時でも、アークエンジェルに乗ってからでも、あまり快く思ってなかった相手なのに……
そして、ミリアリアも多分、そうだったはず。彼女の本心を知ってしまった今からすれば。

私は、ミリアリアにキラのことを聞いてみる。多分、その時の私は熱い目をしていたと思う。

「キラは、どうしてる?」
「今、ザフトの機影は見つからないから、とりあえず待機中。
 モビルスーツデッキにいると思う。ストライクのメンテとか、スカイグラスパーとの
 連携シミュレーションとか、やってるんじゃないかな」

「ふうん」

私はミリアリアにキラへの伝言を頼む。彼女の秘めた想いに、まるで気が付かないまま。

「私、夕方、早めに仕事上がるから、もし、話できたらキラに言っといてもらえるかしら」
「うん」

ミリアリアは、その時の私を見て、何を考えていたのだろう。
私は、それどころじゃなく、今の自分の体に感じる違和感に戸惑うばかりだった。

「どうしたの、まだ腰痛むの ?」 ミリアリアが聞く。
「ん! なんでも無いの。ちょっとね。きつくて… あ、なんでも無い」

結局、違和感に我慢できなくて、予定よりも、さらに早く仕事を上がった私は、同様に
心配で早く帰ったキラに部屋の前で出会って、今までに無い甘えた声を出していた。

「昨日まで腰痛で、ずっとショーツ脱いだままだったでしょ。なんか、きつくてたまらないの。
 ねえ! キラ、早く脱がせて」

私は自分で脱いではいけない。これはキラの仕事なのだ。

ミリアリアが結局、私の話をキラに伝えていなかったことさえ、その時は気にしていなかった。

174ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/27(土) 17:52
今回の話は、かなり前にミリィSSでやった話の視点変更版です。ただ、今回の章の狙いは、この次以降なので、
あまりこだわらなくても構いません。

>>過去の傷
TV本編2クールのころのピリピリした雰囲気が再燃しているようですね。フレイ様とミリィの戦いは、この後、
本格化するのでしょうか。

175キラ(♀)×フレイ(♂)・41−1:2004/03/28(日) 17:09
万華鏡(カレイドスコープ)のように虹色に乱反射する、サドニス海の美しさを
演出した太陽の日が沈む。すると、夕日に照らされた紅海は、今度は真紅のルビーを
溶かし込んだような鮮やかな赤一色に染まり、新しい顔を覗かせる。
やがて、日は完全に沈む。最後は黒の絵の具をぶちまけたかのように、色彩を失う。
こうして、楽園(サドニス)での一日が終わる。各々リフレッシュ休暇を堪能し、
戦いの疲れを癒やした休暇第一陣のクルーは波止場に集結した。


「ひぃ、ふぅ、みぃ…っと。全員来てますね」
「意外だな。こういう時は必ず一人か二人、門限を破る奴が出てくるものだが」
「俺達はれっきとした軍人ですからね。修学旅行の学生のようにはいかないでしょう?」
点呼を取っていたパルと相方を務めていたノイマンは、互いの顔を見合わせて苦笑する。
「ヘリオポリス組の方は?」
「ここにいるのは俺とサイだけです」
今度はカズイが、隣にいるサイをチラリと見ながら、何故か後ろめたそうに宣告した。
「いないのは、ヤマト少尉、アルスター、ケーニヒ、ハウ二等兵の四人か。
もう集合時間を一時間近く過ぎているし、彼女達は島に滞在するとみて良いだろう」
腕時計で時刻を確認しながら、引率役のノイマンがそう断を下す。半交代での一日オフ
の正規クルーと異なり、キラ達学生組は、二日間のフリー休暇が与えられていたので、
外泊も許可されていた。サドニスの治安の良さは折り紙つきなので、特に彼女達の
身の上を案じる必要性はないだろう。心配なのは、この四人は各々カップルで行動し
ているらしいと推測される点だが、敢えてノイマンはその点には触れなかった。

「キサカ氏。そちらの首尾はどうですか?」
「一時的滞在は許可するけど、悪魔の壁が開くタイミングで出て行ってくれってさ。
人とか物資の出し入れが激しい時期に、中でドンパチされたら困るってことだろ」
領事館での交渉結果を尋ねると、キサカが口を開くよりも先に、カガリが横槍を入れて
きて、ノイマンは胡散臭そうな瞳で二人を見つめる。この凸凹コンビが、オーブに
何やら深い縁があるらしいのは確かだが、その正体についてはサッパリ見当もつかない。
艦長のキサカ氏への信頼度や、フラガ少佐の坊主(カガリ)の可愛がり振りを見ると、
幹部達は彼らの正体を知っているのだろうか。

「キラはあの悪魔と一緒か」
ノイマンの懐疑の視線に気付かず、妹の現在の所在を、そう当りをつけたカガリは
強く舌打ちする。ナンパな娯楽には一切興味のないカガリだが、キラが喜ぶならと、
彼女をアミューズメント・パークに連れて行こうと企図していた矢先に、艦長から
AAの滞在許可交渉を依頼され、サドニス島を紹介した手前断れなかったのだ。
この時間になっても戻ってこない所を見ると、キラはフレイと外泊するとしか思えず、
カガリとしては、鳶に油揚げ…、もとい悪魔に姫を攫われた騎士のような気分だ。
実は今現在、愛妹はとんでもないピンチに陥っているのだが、双子のテレパシーも
フレイへの嫉妬心で曇っていて、有効に機能していないようだ。

「まさか、キラ達だけじゃなく、トール達まで戻ってこないなんてな」
激動の渦の中、そうやって人は大人になっていくのだろうか(ちょっと違う)。
ヘリオポリス組の中で、自分独り取り残されたように感じたカズイは暗い表情で俯いた。
「いや、俺独りじゃないか」
カズイの隣には、彼と同じく、落ち窪んだ表情のサイが佇んでいる。
婚約者(フレイ)に捨てられた彼女。それ以後、サイの笑った顔をカズイは一度も
見たことはない。揉め事には関わらず、長い物には巻かれろ…がモットーの事勿れ主義者
のカズイではあるが、人当たりが良く、明るさと優しさを絶やさなかったサイのこんな
覇気のない姿を見るのは、彼女に密かな憧憬を抱いていたカズイには辛かった。
自然、彼女を苦しめている背徳カップルについて、あまり好意的ではいられない。


大人も子供も、それぞれに複雑な想いを抱えながらも、モーターボートに乗り込んで、
サドニス島を後にしていく。そしてキラは、その窮地を仲間達に知られることなく、
一人島へと置き去りにされる羽目になった。

176キラ(♀)×フレイ(♂)・41−2:2004/03/28(日) 17:09
廃棄された倉庫内で、マイケルはグーンのコックピットに乗り込み、コーディ自慢の
高速プログラミング・モードで端末を操作し、自機の最終調整を行う。ザフト製MS
の特徴である一つ目のモノアイがギョロリと緑色の光を灯らせ、隻腕の右手の指先が、
閉じたり開いたりを繰り返し、接続神経が生きていることを確認する。

「良し。これで悪魔の壁さえ解ければ、島の外に出られるな」
診断パネルには、水深の浅い位置なら十分に水圧にも耐えられるという計算結果が
弾き出されている。武装も含めて、傷ついた部分は徹底的に切り捨てたので、戦闘は
不可能だが、運よくスクリューは生きていたので、水中慣行そのものは可能だ。
この短期間で、スクラップ同然だったグーンを修復した手並みは確かに非凡なモノで、
腐ってもマイケルは優秀なコーディネイターではあるらしい。
「島外に脱出したら、救助信号を送って、仲間に手土産ごと回収してもらうだけか」
グーン頭部の緑色の光点が左側へスライドする。モノアイが捉えた映像の中には、
彼の土産となる少女が冷たい床下に転がされている。僅かにキラの身体が身じろく。
そろそろ目覚めの時が近いことを悟ったマイケルは“お楽しみ”の為に、グーンの
コックピットから降りることにした。


「………んっ……………………ここは……………?」
キラは目を覚ました。彼女の虚ろな視界に、埃臭い倉庫の天井の蛍光灯が映し出される。
「わたし…どうして……こんな………ところに…………!?…い…痛っ!」
記憶の一部が断裂していることに気づいたキラは、眠気マナコでキョロキョロと辺りを
見まわしたが、両手首に激痛を感じて思わず顔を顰める。良く自分の体勢を確認すると、
後ろ手に手錠を掛けられて、床下に寝転がされていた。
「そうだ、私、タカツキ君から…」
ぼやけていたキラの思考が徐々に鮮明になる。必死に記憶の糸を辿っていたキラは、
自分が突如彼に襲われ、布きれのようなモノを嗅がされたのを思い出し、息を呑んだ。
……まさか、寝ている間に乱暴されたんじゃ………。
女性の持つ防衛本能から、まずは彼の真意をそう疑ったキラは、自分の思考に戦慄したが、
身体には特に違和感を覚えなかったので、軽く安堵する。マイケルにはサディストの気が
あり、敢えて目が覚めるまで手をつけないでくれたのは、キラには僥倖だっただろう。
「良い格好だな、ヤマト。気分は良いかよ?」
悦に入った声と同時に、脅えるキラの眼前にマイケルが姿を現した。


「タ…タカツキ君。これは一体どういうこと!?どうしてこんな真似を!?」
既に涙目になったキラだが、気丈にも涙を堪えてキッとマイケルを睨む。
だが、彼はキラを小馬鹿にしたように、ニヤニヤと彼女を見下ろすだけで何も応えない。
キラは芋虫のように身体を揺すって必死に起き上がろうとしたが、後ろ手に拘束された
上に、まだ薬の効果が完全に抜き切れておらず、床下にしゃがみ込むのがやっとだ。
それでも仰向けの状態よりは少しだけマシな姿勢を確保出来たキラは、マイケルの
全体像を確認して唖然とする。
何故なら、現在の彼は私服ではなく、ザフトの緑色の軍服を纏っていたからだ。

「あ…あなた、まさか……」
「ご名答、俺はザフト軍カーペンタリア部隊所属のマイケル・タカツキだ。
地球連邦軍所属、ストライクのパイロットのキラ・ヤマト少尉」
キラから奪い取ったIDカードを、見せびらかすように提示しながら、真相を告白する
マイケルに、御人好しで世事にも疎いキラも、ようやく彼の本意を正確に把握した。
彼は、自分を虜囚としてザフトに連行して、手柄とするつもりなのだ。
かつてキラが見知り嫌悪した、卑下た表情を覗かせるマイケルに、彼はこの三年間で
何一つ変わってなどいない現実をキラは思い知らされて、強いショックを受ける。
何よりも、まんまと彼にしてやられて、こんな窮地へと陥られた自分の御目出度さが
情けなくなって、キラは涙が止まらなかった。

177キラ(♀)×フレイ(♂)・41−3:2004/03/28(日) 17:10
「騙したのね!?」
「そうだよ。けど、それがどうかしたか?騙される方がアホなんだよ」
「卑怯者!」
「ふんっ、俺が卑怯者なら、お前は裏切り者じゃないのか?
お前、一方的に被害者ぶってるけど、これまで何人の同胞を殺してきたんだよ!?」
「あっ!?」
久しぶりに、今まで目を背け続けてきた己が咎を叩き付けられたキラは、苦悩に喘いだ。
ハイエナのような嗅覚で、キラの弱気を嗅ぎ取ったマイケルは、指先でキラの顎を
しゃくり上げながら、悦に入った表情でキラを詰り続ける。
「お前は本当に酷い奴だよな。何の恨みがあって、プラントを守ろうと必死に戦い
続けてきた同胞の生命を虫けらのように捻り潰してきたんだよ?
俺でさえ、実はそっち(殺人)の方はまだ童貞のままだぜ、人殺し非処女さん?」
傭兵隠語を交えながらキラを嬲るマイケルの言葉が鋭い刃物となって、キラの胸を
抉った。今更ながらに、自分の業(カルマ)を正面から突き付けられたキラは涙目に
なってガタガタと震えながら声も上げられない。

「判ったか、ヤマト。ザフトに仇なすユダ(裏切り者)を捕獲した俺は、
プラントでは卑怯者どころか英雄となるんだよ。
もしかしたら、赤服どころか、ネビュラ勲章まで授与されちゃったりしてな」
愛国主義の厚化粧の中に、マイケルはさり気無く本音の野心を漏らしたが、
そんな事はキラにはどうでも良かった。戦場でアスランのような雄敵に討たれるのなら
まだしも、こんな場所でかつての級友に騙されて拿捕されるなど、何とも情けない末路
だが、それこそ同胞を裏切り続けてきたキラに下された神罰なのだろうか。
今の落ち窪んだキラには、現在の自分の立場と、これから自分に訪れるであろう
暗い未来がそれほど不条理なものには思えなかった。


「さて、ようやくお前も自分の罪の重さを自覚出来たようだし、俺が亡くなった
同胞達の無念を晴らしてやるとするか」
観念したかのように無言のまま大人しくなったキラに、マイケルは言葉嬲りを止めて、
次のステップへと移行する。先程からずっと呆けていたキラだったが、ワンピース越し
に自分の豊満な乳房を掴もうとしたマイケルに、反射的に後方に仰け反った。
「ひぃっ!?なっ……何を!?」
「制裁だよ。己の罪深さを、その身体にたっぷりと教え込んでやるよ。
もっとも、反ってお前を楽しませちまうことになるかも知れないけどな」
明らかにキラの身体に欲情を抱きながら、嫌らしい笑顔を閃かすマイケルに、
キラは否応でも彼の本心を悟らざるを得ず、サーッと表情を青ざめさせる。
こ…この人、仲間の復讐に託けて、私を強姦する気なんだ。


「ほ…捕虜への虐待、暴行は、ジュネーブ…いえ、コルシカ条約で禁止……」
「あ〜ん。何、寝言ほざいてんだ?そんなもの、とっくに有名無実化してるぜ。
ビクトリア攻略戦の際に、猿共(ナチュラル)の捕虜が全員虐殺されたのを知らないのか?
もっとも、俺の隊は偽善者の虎が指揮官だったから、参加させてもらえなかったけどな」
「そ…そんな……」
色んな意味でショックを受けたキラは、言葉を詰まらせる。改めて軍人に対する倫理観
が大きく揺れ動いたキラだったが、今は目の前のピンチをどうにかする方が先決だろう。

マイケルがキラに踊りかかり、強引にキラを押し倒すと、そのまま馬乗りになって、
スカートの下の膝元へと手を伸ばした。直に太腿を撫でられたキラは、激しい嫌悪感に
身を震わせて、全身に鳥肌が立った。
「へへっ…、ここでは俺が法律だぜ。観念しろ!」
「い…いやぁ!!!誰か、誰か…助けてぇ〜!!」
狭い倉庫内に、キラの悲痛な悲鳴が木霊した。

178キラ(♀)×フレイ(♂)・41−4:2004/03/28(日) 17:10
「まさか、こんな素敵なショーを拝めるとは夢にも思わなかったな」
先ほどから機材の影に隠れて、この狂乱の舞台を堪能している一人の観客がいた。
あの後、再び考えを改め直して、キラ達の行く末を見届けようと決意したフレイである。
フレイはお嬢様方の御屋敷への夕食のご招待を丁重に断って、彼女たちと別れると、
キラ達の消えた方角へと飛び出し、私立探偵のように地道な聞き込みを繰り返した。
やがて、それらしいカップルが北側の港町に向かったのを聞き出したフレイは、
そこで運よく買出し帰宅中のマイケルに遭遇し、コッソリと彼の跡を尾ける。
マイケルが古ぼけた隙間風だらけの倉庫に足を踏み入れたい地点で、彼の目的を看破
したフレイは、倉庫の裏側に人一人潜れそうな横穴を発見して倉庫内に侵入すると、
マイケルから死角になる位置に上手い具合に橋頭堡を確保するのに成功した。
MSの修理に勤しむマイケルが、直ぐにキラに手を出さないのを確認したフレイは、
一端倉庫の外に出て下準備を整えた上で、再び戦場(倉庫)に帰参したのだが、キラを
救出する機会を窺っているにしては、フレイを取り巻く空気には緊張感の欠片も無い。
というのも、フレイの手の内には、外で購入した魔法瓶構造の缶コーヒーが握られており、
その上で、いかにもツマミかポップコーンが無いのが悔やまれる…とでも言いたげな
横柄な態度で、チビチビとコーヒーを飲み干し、暖を取っていたからだ。


「手変わりの好機(チャンス)が訪れたということかな」
フレイは冷めた瞳でキラの窮地をじっと鑑賞しながら、状況判断に努める。
フレイにしてみれば、キラにアスラン君を討たせた上で、返す刀(合法的暗殺術)で
キラを屠るのこそが最高の結末(グランド・フィナーレ)ではあるが、このまま
アスラン君がキラの前に再び姿を現さなければ、とんだ茶番である。
とすると、ここでタカツキ君とやらにキラを預けるのも一興のような気もする。
軍事には疎いフレイだが、それでもキラがコーディの中でも有数の潜在能力を誇る
最高クラスの戦士であることは知っていた。その彼女が、こんな取るに足らない小物
に足元を掬われて、恥知らずの裏切り者として、冷たい檻の中で従来の仲間達の憎悪と
嘲弄を受けながら、惨めにその生涯を終えるというのは、なかなかに魅力的な末路だ。

「このまま流局(アラスカ到着)覚悟で、あくまで単騎(アスラン君)待ちに固執し、
ひたすら四暗刻の役満を狙い続けるか、この場所でロン上がり(キラを見捨てる)して、
とりあえず三暗刻で満足し、それなりの点棒を拾うかだな」
この年で悪い遊びを覚えているらしいフレイは、今のシチュエーションをそう比喩した。
ちなみに強い直観力と度胸を併せ持つフレイは、学園時代、麻雀でも敵無しである。
一部の生徒間で、闇の帝王と恐れられていたとかいないとかの逸話を残していたりもする。


「さて、どうするべきか……」
フレイにしては珍しくどちらを選ぶか躊躇したが、あまり迷っている時間はない。
その手の恋愛ゲームの主人公のように、フレイの頭の中に二つの選択肢が浮かび上がる。

どちらを、選択しますか?
→「このままキラを見捨てて、この場所から引き上げる」
「キラを助ける。ただし、キラがタカツキ君に犯され終わるまで待つ」

……………………どちらにしても、キラにとって碌な未来じゃない。
アスランと別れて以後、キラの男運の悪さは天中殺を極めているみたいで、仮にキラが、
フレイの助力でこの窮地を脱したとしても、今度は別の地獄が口を開けて待っていそうだ。

179キラ(♀)×フレイ(♂)・41−5:2004/03/28(日) 17:11
「い…いやぁ!!やめてぇ〜!!」
「うるせえ、大人しくしろ!どうせザラの野郎に穴だらけにされた身だろうが!?」
「なっ!?」
かつての想い人への信じられない侮辱の言葉に、涙目のキラの瞳が釣りあがる。
「違うのかよ、それが目当てだったんだろ?そうでなきゃ、誰がお前みたいに直ぐに
ピーピー泣き喚くうざったいガキのお守りなんかするかよ!」
自分がそう生きてきたからだろうが、彼には、友情にも全て打算が伴われるのだろう。
かつてのアスランとの貴重な絆に、汚い汚物を擦り付けられ冒涜されたと感じたキラは、
今現在の自分の窮地も忘れて、毅然とした表情でマイケルを睨んで吠え立てた。
「ふざけないでよ!アスランはそんな人じゃないわ!敵である今も彼は立派な人間よ。
あなたみたいな、暴力で女を手篭めにしようとする最低な人と一緒にしないで!」
「へぇ〜、そうかよ。それじゃ、ヤマト。お前はまだ処女のままなわけか?」
「!?」
プライドを傷つけられ、怒りで顔を真っ赤にしたマイケルは、ヒクヒクと頬を引き攣らせ
ながら、大人気ない質問を発したが、これがキラには意外なクリーン・ヒットとなる。
何故かキラは後ろめたそうに目線を逸らす。その仕草から敏感に彼女の異性体験を
悟ったマイケルは勝ち誇った表情で、キラを嘲笑するように口元を歪めた。
「な〜んだ。偉そうな口叩いておいて、結局、開通済みかよ。それも、あれだけ懐いて
いたザラ以外の男に奪われるとは本当に最低な女だな、このヤリマンの淫乱雌犬が!」
「ひ…酷い!」
あまりに卑猥な侮蔑の言葉にキラの心は傷つき、屈辱に顔を歪めてポロポロと涙を零した。

「もしかして、お前が猿達(ナチュラル)に味方し、ザフトに敵対している理由って、
足付きの中で新しい男(情人)でも出来たからかよ?」
先から無神経だが意外と鋭い質問を連発するマイケルに、キラはドキリと心臓を震わせる。
今現在のフレイとの泥沼の愛憎関係を恋人同士と称して良いのかは甚だ疑問だが、
彼の推測は当らずとも遠からずだ。
「図星かよ?猿に誑かされて同胞を売るなんて、とんでもない売女(ばいた)だぜ。
そういう悪い娘には、キツイお灸を据えてやる必要性があるな」
「やめて!、離してよ、この変態!!」
柔道の押さえ込みのように、上からキラに覆い被さったまま、再びスカートの中へと
手を侵入させる。今度は無作法にも下着に手を伸ばしかけたマイケルに、後ろ手に
縛られ拘束されたキラは、辛うじて動かせる足元をバタつかせて必死に抵抗する。
「へへっ…、無駄だって………!?ぐおぉおおう……!!?」
油断していたマイケルの大事な部分に、偶然、暴れていたキラの左膝がヒットする。
したたかに急所を蹴り上げられたマイケルは、股間を押さえたまま無様に蹲る。

「あ…、あの、大丈夫?」
極めてお人好しのキラは、内心で密かに良い気味だとは思いながらも、情けない格好
で悶絶する彼の様子を心配して、頬を羞恥で染めながら声を掛ける。
だが、そんな心遣いは彼には一切無用なようで、マイケルは激しい憎悪の瞳でキラを
睨むと、彼女の襟首を乱雑に掴んで、手加減無しでキラの頬を複数回張った。
「このアマぁ!!優しくしてやっていたら、つけあがりやがって!もう容赦しねえぞ!」
どこがよ!?
涙目のキラはそう心中で彼を詰りながらも、暴力に屈して心が折れたキラは、恐怖に
打ち震えて声も上げられない。再びキラに馬乗りになった彼は、コーディ特有の怪力で
キラのおべべを力尽くで引き裂いた。白の清楚なワンピースは無残にも単なる布切れと
化し、半裸に引ん剥かれてキラは、ピンク色の下着姿のまま押し倒される。
いよいよキラの貞操(今更という気がしないでもないが)も、風前の灯だ。

180キラ(♀)×フレイ(♂)・41−6:2004/03/28(日) 17:12
「い…いやぁ、助けてぇ、フレイ!!フレイっ!!!」
追い詰められたキラの脳裏に、かつての…ではなく、今現在の想い人の姿が浮かび上がる。
キラはフレイの名を、魔法の呪文のように唱えながら、必死に泣き叫んだが、
今度はブラジャーに手を掛けたマイケルは、キラの乙女思考を嘲笑った。

「フレイ?そいつが今の男の名前かよ?でも、馬鹿だよなあ、お前は。
ドラマや漫画じゃあるまいし、そうそう都合良く助けなんか…」
「ところが、往々にして事実は小説よりも奇なりってね」
突然、耳慣れない第三者の声が彼の耳に届いたのと同時に、ブンっという鈍い音が
彼の後頭部に炸裂して、マイケルは前のめりにぶっ倒れた。
「無事だったかい、キラ?」
突如、マイケルの暴行が中止され、聞き覚えのある声に、恐る恐るキラは目を開ける。
すると、そこには彼女の愛しい人(フレイ)が、凛々しい笑顔でキラを見下ろしていた。

「フ…フレイっ!!?」
泣いていたカラスが何とやら…で、囚われのお姫様を救出にきてくれた白馬の王子様の
出現にキラは一瞬で破顔する。フレイは、マイケルを撲滅した凶器の鉄パイプを
放り捨てると、ガサゴソと気絶した彼の懐を漁った。やがて、手錠の鍵を探り当てた
フレイは、キラの手枷を外してあげると、自分の上着を半裸の彼女に被せて上げる。
キラは瞳を涙で潤ませると、フレイの胸の内に飛び込んで激しく泣きじゃくった。
「フレイっ!フレイ〜!!」
「キラ、無事で本当に良かった」
フレイは彼女を慈しむようにキラの頭を撫でる。白々しくも自身も涙を流しながらも、
内心では軽く安堵していた。マイケルは腐ってもコーディネイターの正規兵であり、
初撃の奇襲で仕留め損なったら、非戦闘員のフレイにはまず勝ち目はなかったからだ。
その昔、どこかの偉いお医者さんが、「女にうつつを抜かした男の背後を取るのは容易い」
と豪語していたが、どうやらそれは真実だったみたいだ。


「お…おのれぇ…、ふざけた真似しやがって!」
倒されたと見せかけて、最後に往生際悪く再び襲い掛かってくるホラー映画のお約束
の怪物役のように、マイケルはゾンビのような緩慢な動作でフラフラと立ち上がった。
怨嗟に満ちたマイケルの血走った目線に、キラはビクッとし、フレイは軽く舌打ちする。
おやおや、殺しても構わないつもりで、手加減無しで振り抜いたというのに、
こんな短期間で回復してくるとはコーディネイターとは随分と頑丈な生き物だね。
もしかすると、彼らならMSの爆発に巻き込まれても生きていられるんじゃないか?
そう関心しながらも、フレイは彼の神経を逆撫でするようにラブシーンの続きを演じる。
「駄目だよ、オイタをしちゃ。この身体は既に売却済みなんだからね」
フレイがキラを身体ごと抱き寄せ、キラは「きゃん」と嬉しそうな悲鳴を上げながら、
ポッと頬を染めて恥ずかしそうに俯いた。

「てっ…てめえ!!」
「タカツキ君と言ったね?僕には赤服とやらの価値は判らないけど、君もMS乗りなら
こんな姑息な真似でなく、MS戦で堂々と、ストライクに乗るキラに挑んだらどうだい?
…などという強者の理論を振り翳すつもりは毛頭ないさ」
最初、彼の卑劣漢振りを詰るのかと思ったが、そうではないようだ。
フレイは軽蔑するよりも、むしろ憐れむような視線でマイケルを見下している。
「生まれついての獅子であるキラやアスラン君達と違って、ハイエナに産み落とされた
君には、強者の残飯に集る以外に餌(手柄)にありつける方法など一つもないのだからね。
いやいや、本当に同情を禁じえないよ」
一見、相手の境遇に同情するように見せかけて、相手を逆上させるのがフレイの得意技
のようである。マイケルは瞬間湯沸かし器のように沸騰して、冷静な状況判断を放棄し、
衝動のままにフレイに自分の殺意を叩きつけた。

181キラ(♀)×フレイ(♂)・41−7:2004/03/28(日) 17:12
「この猿がぁ!!!!ぶち殺してやるぅ〜!!!」
怒りに打ち震えたマイケルが、フレイを射殺そうと腰元に手を当てたが、ホルスター内に、
何故か目当てのブツが見つからずに、「アレっ」と小首を傾げる。
「君の探し物はこれかい?」
ギョッとしたマイケルの視線の先には、銃身をこちらに向けたフレイの姿が映し出された。
どうやら、手錠の鍵を探していた折、フレイは目聡くも彼の拳銃まで徴収していたようだ。
次の瞬間、狭い倉庫内に銃声の甲高い音が連続して木霊する。
「ぐわぁあっ!!」
左膝を打ち抜かれたマイケルは仰向けにぶっ倒れて、片膝を押さえながら痛そうに蹲った。

「やれやれ、この至近距離から四発も放って一発しか当らないとは…。
やっぱり、僕には戦闘の才能はあまりないみたいだね」
「フレイっ、素敵…」
謙遜して軽く頭を掻くフレイを、キラは乙女コスモを満開にして頼もしそうに見上げる。
今の一撃で形勢は完全に定まり、プリンセスを救出するプリンスのミッションを
完璧に果たしたと言えるだろう。ただ、ここで止めておけばカッコ良かったのだが、
キラの想像以上に、彼女の王子様は少し過激すぎた。

「ち…畜生、絶対にぶっ殺してやる!」
グーンに乗り込んでキラ達を捻り潰そうと、片足を引き摺りながら、ズリズリとしぶとく
地を這い続けるマイケルに追いついたフレイは、外れようのないゼロ距離から、今度は
マイケルの右膝を打ち抜いた。
「ぎゃああっ!!」
「流石にこの距離だと僕でも当てられるね。やっぱり的は動けなくするに限る」
激痛にのた打ち回るマイケルや、唖然とするキラの様子には全く頓着せずに、
フレイはキラから回収した手錠を使ってマイケルを後ろ手に縛ると、ダルマのように
身動きの取れない彼の咥内に直接銃身を埋め込んだ。
「ひっ…、ひぃ、ひゃに(何を)を!?」
「誇り高いコーディネイターの戦士は、猿(ナチュラル)の捕虜に甘んじるぐらいなら、
孤高の死を選ぶつもりだろ?介錯を手伝ってあげるよ」
「ひぃ…、ひゃめろぉ(止めろぉ)!!!」
フレイは恍惚とした表情で、マイケルを見下ろしながら、彼の命乞いを無視して、
引き金に力を込めようとしたが、その指先をキラが押さえつけた。
「待って、フレイ。何をそこまでしなくても…」
「邪魔しないでくれよ、キラ。僕は一度人間を殺す経験を積んでおきたいんだよ」
「なっ!?」
フレイの殺人予告にキラは絶句する。人殺しの体験など、知らずに済めばそれに越した
ことはない筈なのに、自らの手を血で染めようとするフレイの思考は理解不能だ。
それと悟ったかのようにフレイはまるで子供をあやすような口調で解説する。

「この先、戦い続けていれば、いつかは僕も銃を取って自分の身を守らねばならない
状況に追い込まれるだろう。その時、人を撃った経験がないと、敵を殺すのを躊躇
するかも知れない。こういう覚悟だけは口先だけじゃ身につかない。判るだろ?」
「で…でも」
「先に撃てば助かったのに、詰まらない道徳観に縛られたが故に生命を落とす。
そんな後悔だけは死んでもしたくはないんだ。別に無抵抗の赤子を殺すわけじゃない。
コイツは僕たちに戦争を吹っかけてきた敵だから、殺すのに支障はないはずだ。
何よりこの手の子悪党は、世界を自分中心で回しているから、ここで助けても、反って
逆恨みされ、しつこく付き纏われるのがオチさ。禍根を断った方が君の為でもあるよ」

相変わらず、筋が通っているのか否か判らない戯れ事を、得意の口八丁手八丁で、
尤もらしい理由付けを加えて相手を丸め込もうとするのが、フレイの真骨頂である。
口下手なキラにはフレイを説き伏せる自信はなかったし、マイケルが改心する可能性
が低いことには同意できたが、それでもフレイにだけは人殺しをさせたくなかった。
何よりも、もう抵抗できない相手を見殺すなど、キラの倫理観が許さなかった。

182キラ(♀)×フレイ(♂)・41−8:2004/03/28(日) 17:13
「へ…平気よ、フレイ。フレイが戦わないで済むように私が守るから。だか…!?」
何とか翻意を促そうとしたが、キラは最後まで言い終えることは出来なかった。
さっきまで飄々としていたフレイの黒い瞳に危険な雷光が閃き、キラは息を呑んだ。
「当てになるかよ!君の約束なんて!」
余裕のないフレイの顔には、かつてキラが見知った狂気と殺意の波動が混在しており、
キラは否応なくモントゴメリが撃墜して、フレイが母を失った瞬間を思い出した。

「大丈夫よ、フレイ。私がきっと何とかするから」
「大丈夫だって確かに言っただろうが!?この嘘つきが!!」
「お前、自分がコーディネイターだから、真面目に戦ってなかったんだろう!?」

「くたばれ、コーディネイター!!」
一瞬、呆然としていたキラが再び我に返った時は、フレイはその殺意を再びマイケルに
突きつけていたが、何故かキラにはその殺気は自分に向けられたものとしか思えなかった。
驚異的な動態視力で、フレイの指先が動くのを確認したキラは、考える前に行動して、
フレイに身体ごと体当たりを敢行した。鳴り響く銃声の音。六連装の最後の一発は、
マイケルの頬を掠めただけで、彼の生命を奪うまでには至らなかった。

「キラぁ〜!!」
「お願い、フレイ。守るから!今度こそ絶対に約束を守るから!
フレイが戦わないで済むように、フレイの敵は全部私が倒してあげるから!
だから、だから…」
ポロポロと涙を零しながら必死に哀願を続けるキラに、暴発仕掛けたフレイの魂は
沈着化を余儀なくされる。この時フレイが何を思ったのかは不明だが、キラに見えない
ように薄い笑いを浮かべると、フレイは童貞(殺人体験)を捨てるのを断念した。
「良いだろう、キラ。僕も大概お人好しだからね。もう一度だけ君を信じてみるよ」
フレイがチラリとマイケルの方を見下ろすと、彼は泡を吹いて失神している。
どうやらコーディの彼も、身体ほどには精神の方は頑丈には出来ていないみたいだ。



「行こうか、キラ」
キラにグーンのOSを弄ってMSを使用不可能にさせている間に、マイケルの両膝を
打ち抜いた弾丸が二発とも綺麗に貫通しているのを確認したフレイは、軽く応急処置を
した上で、彼の為に携帯で救急車を呼んでやることにする。
こうして、この戦いの後始末を済ませた二人は、互いに肩を寄せ合って倉庫を後にした。
「集合時間はとっくに過ぎているね。どこかホテルにでも部屋を取ることにするか」
「ええっ…」
フレイの誘いに機械的に頷きながらも、キラは辛そうに表情を伏せた。その理由は、
さきの後始末の最中に、まだ温度を保った缶コーヒーを偶然発見してしまったからだ。

「もしかして、フレイは私が襲われる様をここで観賞していたの?」
フレイの身体からも微かにカフェインの臭気を嗅ぎ取ったキラは、この二つを結び付けて
戦慄し、そう考えた刹那、自分の踏みしめている大地が崩れ落ちるような錯覚を覚える。
この時、キラはもう自分達の関係はお終いだと密かに予感していた。
フレイが、本当に自分の窮地を楽しんでいたかなど、実はどうでも良いことなのだ。
ただ、本来他人を疑うことと無縁だったキラが、自分の危地を救ってくれたフレイの性根
を真っ先にそう疑ってしまうほど、彼への不信感はキラの心中に根強く蔓延っているのだ。

疑心暗鬼に陥った今のキラには、島内を取り囲む暗闇同様に、自分達の未来も深い闇に
閉ざされているとしか思えなかった。

183キラ(♀)×フレイ(♂)・41−9:2004/03/28(日) 17:14
これで良いはずだ。
軽くキラの肩を抱いて、暖かい笑顔で落ち窪んだキラを慈しみながらも、フレイは胸の奥
に打算を巡らせる。この時フレイは、彼女の落ち込み具合は乱暴され掛けたが故と信じた。
なら、その心の傷を癒やしてやる為に、今夜もキラを可愛がることになるだろう。

一時は、マイケルにキラを売り渡す選択肢も視野に入れたフレイだが、結局断念した。
仮にキラをザフトの虜囚にしたとして、この戦争がプラント側の勝利に終われば、
キラは冷たい檻の中で一生を終えるか、最悪処刑される憂き目となるだろう。
だが、戦況がナチュラル優位に進展すれば、前線復帰を条件に、恩赦を受ける危険性
もあるからだ。戦争とはそういうもので、綺麗事だけでは済まされないのだ。
フレイはそう悪ぶりながら、自分を納得させようとしたが、一つだけ彼が無意識に
目を逸らしていた事実がある。それは、キラが自分の名を叫んだ瞬間に、後先考えず
に反射的に、修羅場に踊りこんでしまったという変えようがない現実だ。

かつてのフレイは、キラに対して憎悪一辺倒の感情しか抱いていなかったが、
今現在のフレイは、明らかに愛憎並存(アンビバレンス)状態へと移行していた。
その己の感情にフレイが気づくのは、二人の関係が本当に取り返しのつかない
地点にまで発展した時である。


キラへの感情を微妙に変化させつつあるフレイと、フレイを想いながらも、彼の想いを
信じきることが出来ないキラ。この平行性を辿っていた二人の心の絆が交差した瞬間、
物語はさらなる佳境へと進化することになる。

184ザフト・赤毛の虜囚 37:2004/03/28(日) 18:07
7.幼子(おさなご) 4/8
[身勝手さは、キラ以上]

私はキラの回想にふけりながら、今の自分との違いを噛み締めていた。オーブに着くまで自分の心に
気が付かないまま、熱く欲望に溺れていった。あの時のことが、まるで嘘のように私の体は、
かたくなに閉ざされている。体は熱っぽい状態が続いているけど、あの時とは、まるで違う。
でも、それは私がキラを継ぐ資格を得たことの証しなのだろう。変わって行くことは恐くない。
これまででも、私は信じられないほど変わってきている。私は、今の自分を受け入れていた。
ただ、忘れてしまうことだけは恐い。キラの記憶をいつの間にか記憶の底に沈めることだけは。

そんなことを想いながらドライヤーでショーツを乾かしていた時、突然、ドアのロックが解除される音が
してクルーゼが部屋に帰ってきた。私は、驚いた。クルーゼの突然の入室に慌てた私は、隠そうとした
ショーツを、なんとベッドの下に落としてしまった。でも、ショーツを履いていない私は腰にかけた
毛布を外してベッドを出る訳にはいかない。なんとか、見つからないように意識して視線をベッド下から
そらし、クルーゼに向けようとする。

クルーゼは、そんな私にまるで気が付かないように、持ってきた書類を溢れそうな
書類入れに放り込み、さらに机の引き出しから書類を探している。そして、目的の書類が
見つかると、私にやっと目を向けて言った。

「おや、フレイ・アルスター。やっと、シャワーを使ってくれたようだな。
 遠慮しなくても良いのだよ。どんどん使ってくれたまえ」

私は、シャワー室のドアをきちんと締めていなかったのに、今さらのように気がついた。
そう言えば、ドライヤーも毛布の上に出しっぱなしだ。

「そうか、そう言えば、替えの下着も無いな。これは気がつかなかった。
 早く言ってもらえれば用意させたのだがな。後で、誰かに持って来るよう
 言付けておこう」

クルーゼは、それだけ言うと、そそくさと部屋を出て行った。私は安堵の声を上げた。

クルーゼの行動は、やはり私には読めない。私が帰って来て欲しく無い時は部屋に帰ってきて、
逆に、いても構わない時には部屋にいない。そして、行動予定を、私に一言も言わずに、
勝手に決めてきて、後から私に言う。その上、一人で訳の分からないことを語りまくって
自己満足すると、私の返事も聞かずに去って行く。その身勝手さは、キラ以上だ。

キラも結構、身勝手だった。砂漠で体を許して、これで大人しく私になびくかと思ったら、
モビルスーツに篭って、何度、私が言っても出て来なかった。カガリのMIAの時だって、すぐ戻ると
約束して、ちっとも守らなかったし、私が、たまにはゆっくり寝たいのに毎日毎日求めてきたり、
その時も私のいやがることばかり、やらせたり……
そのくせ、自分のこと何も言わない。ずっと内に抱え込んでる。腰痛のことが無ければ、私はキラの
昔話なんて知ることもできなかったろう。

本当に二人とも勝手だ。生真面目だったサイが、少し懐かしくなる。

クルーゼが、しばらく帰って来ないのを確認してから、私は、ベッドからゆっくりと降りた。
短めのスカートがまくれあがり、奥を少し覗かせる。今は、自分自身に男を挑発する意識が
無いとは言え、こんな姿をクルーゼに見せる訳にいかなかった。

床に落ちたショーツを拾うと、まだ少し湿っているのも構わず履いて、机の椅子に座った。
うう、気持ち悪い。くんくんと体を匂ってみる。さっきのことに緊張していて、また、
汗をビッショリかいてる。せっかくシャワーを浴びて、さっぱりしたのが台無しだ。

ただ、クルーゼは、どうやら私の下着の用意はしてくれるらしい。こんなことなら早く頼めば
良かったと後悔した。さっきのクルーゼの話だと誰か別の人を、私に寄越すらしい。女性兵士ならば、
今の私に、必要なものをいろいろと頼めるかもしれないと考えていた。

185ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/28(日) 18:10
前振り長かったですが、次回、新しいオリキャラ登場です。

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
フレイ(♂)様、偉い! そして、二人とも心が動き始めていますね。でも、やはり互いに、すれ違いの方向ではあるのですけど。
ところで、トールとミリィは、どうしました? ひょっとして…… でも、それならば…… あんな悲しい顔は……

186散った花、実る果実38:2004/03/28(日) 20:38
「あの・・・お茶を入れてきました。」
そう言って、お茶を配る毎日。
普通にお茶に口をつける人もいれば、頑なに手をつけないようにしている人もいる。
中には、お茶を置かれた途端自分で入れなおしにいく人も・・・
その行為に傷つかないわけではなかったけれど、しょうがない、ということがいい加減私にもわかってきていたので、特に食って掛かったりすることはしなかった。

「毎日こうやってお茶を配って歩いてるけど・・・だからって特にどうなるわけでもないのね。」
ある日、たまたまリスティアとお茶をする余裕があった時、私はつい愚痴をこぼしてしまった。
「だから言ったじゃないの。コーディネイターとナチュラルがわかりあえるはずはないのよ。だから今戦争をしているんじゃないの。」
そうかな。本当にそうなのかしら。
わかりあえないから戦争をしている?
戦争をしていることによってわかりあえる道を絶っているのではないの?
「でも・・・・・」
でも私は自分の気持ちをうまくいい表す言葉を見つけることができなかった。
なんて言ったらわかってもらえるんだろう。
コーディネイターとナチュラルだって同じ人間だって。でもこの間リスティアにその考えを拒絶されたばかりだ。
同じ言葉ではきっと彼女の心を動かすことはできない。
「いいじゃないの。あなたはナチュラルにも関わらず、この艦で迫害もされずに呑気にお茶汲み程度の労働ですんでるんだから。普通だったらこうはいかないわよ?」
優雅にティーカップを持ち上げながら彼女は言う。
普通の捕虜より私は恵まれている。それは確かだ。だけど違う。それだけじゃだめなのに。
「でも・・・捕虜だから・・・って事でしょ・・・?建前上手を出せないだけで、本当にお互いの関係が改善されているわけじゃないのよね・・・・」
その私の言葉にリスティアは苦く笑う。
「・・・そうでもないみたいよ」
「・・・どういうこと?」
「身内の恥を晒すようだけど・・・・・パナマ戦では捕虜の扱いはひどいものだったと聞くわ。というか・・・・・・パナマではナチュラルの捕虜はほとんど発生しなかったの。何故だかわかる?」
私は首を横に振った。
「ナチュラルの捕虜なんかいらない・・・・そういって、降伏した捕虜を惨殺したらしいわ・・・・」
「そんな・・・・!!」
なんてこと・・・そんなこと許されるはずが・・・・・
「ひどい話よね・・・本来なら許されることではないんだけど・・・・・この戦争は何かが狂っている・・・」
「なんで・・・なんでそんなことが許されるの?捕虜を惨殺って・・・そんな・・・そんな事・・・・・!」
すると彼女は複雑な表情で言った。
「声が大きいわよ・・・外に聞こえたらどうするの。・・・実際のところ、その証拠がないからもみ消されている、というのが現状のようよ。公表されたらただでは済まない、とは思うけど・・・・現実的にザフトを抑えられる機関がない、というのもひとつにはあるわね・・・・」
私は足元が崩れていくような錯覚に陥った。そんなことって・・・・・
「だから、あなたの扱いは破格のものだと考えていいと思うわよ。平時にしても寛容すぎるくらいだもの。だから・・・・これだけは覚えておいて。今、ナチュラルだという事だけで考えられないひどい扱いを受ける可能性は現実にあるの。だから・・・・言動には十分気をつけて。でないと・・私と隊長のフォローがあってもどうなるか・・・・・」
信じられない・・・・・・・
「そんな・・・・同じ、人間なのに・・・・・・・」
思わず口をついた言葉にリスティアはさっき私が考えたほどには反応しなかった。
「そう考えていない人間が多数いると言うことよ。ナチュラルの方だって・・・・・アラスカの時にとった手段はひどいものだったじゃない・・・・」
この戦争は終わらないの・・・・?どこまでエスカレートしていくの・・・・・私、ここで・・・・どうしたらいいの・・・・・・・

187散った花、実る果実39:2004/03/28(日) 20:39
その日、それ以上外にいるのも怖くて、私はクルーゼ隊長の部屋に閉じこもってしまった。
私はひたすら、彼の帰りを待った。
「あのっ・・・・!」
扉が開いた瞬間、私は彼のもとに駆け寄った。
彼は私を抱きとめ、顔を覗き込む。
「どうしたんだね?何かあったのかね。」
「あの、私・・・・っ!」
私の心は恐怖に囚われていた。
「あの・・・・パナマで・・・・・投降した捕虜が惨殺されたって・・・・・」
「ああ、その話かね。」
彼はなんでもない事のようにそう言った。
わからない、彼が何を考えているのか。ナチュラルの死なんてなんとも思わないのだろうか。彼はコーディネイターだから?
「そんな心細い顔をしなくても大丈夫だよ。私の元にいれば君がそんな目に会うことはない。私の言うことに従っていれば・・・それでいいのだよ。」
彼に従っていれば・・・・?私にはわからなかった。彼をそんなに信用していいのかどうか。
「怖いかね。この艦にいるのが・・・それとも私が?」
この人には何もかも見抜かれているような気がする。
私はザフトの捕虜なのではない、この人の捕虜なのだ。
この人は人の人生を玩具にして・・・・一体何がしたいのだろう。
自分の死さえ何とも思っていないようなそぶりで・・一体何が欲しいの?
「あなたは・・・・・誰?」
「不思議な事を言う。私は私だ。ザフトのラウ・ル・クルーゼ。君は何が知りたいのかね?」
知りたい、彼が何を考えているのか。でも・・・・・
知りたくない。彼の考えている事を知ってしまったら、もう後戻りできないような気がする。
彼はただのザフトの軍人とは何かが違うような気がする。何かが・・・・・・・
「私に、させたい事があるって・・・・・」
「まあまだ具体的にどう、と目途がついているわけではないがね。そういえば君はお茶汲みを始めた、と聞いたが・・・」
問うことを許しながらも彼は答えようとはしない。
「そうですけど・・・・・それが何か?」
「君こそ、どうしてそんなことを始めたのかね?」
この人は知りたがり・・なのだろうか。それとも自分の駒のことはすべて把握していたい、と?
「私でも・・・何かできる事があればと・・・・ミリアリアが、お茶汲みくらいなら、と許してくれたので・・・・」
すると彼は満足げな微笑でこう言った。
「では、私にもお茶を入れてきてくれないかね。仕事が終わって戻ってきたばかりで、少しばかりのどが渇いていてね。それに、薬を飲みたいので水が欲しいのだが。」
そう言われて私はお茶と水を用意しに立った。
彼は私を何かに利用したいようだ。・・・という事は彼の目の届く範囲で私が害される事はないだろう。しかし・・・・
「持って来ました。」
そう言って、お茶と水を彼の前に出すと、彼はお茶の香りを満足そうに嗅いで言った。
「ふむ。悪くないね。味も・・・・・うん、フレイはお茶を入れるのがうまいな。」
「ありがとうございます・・・」
やはり、そう言われると悪い気はしない・・・それに・・・・父の声で語られる優しい言葉に幸せだった過去を思い出されるのは私にとってはしかたのないことだった。
「皆も喜んでいるだろう。可愛い娘からおいしいお茶を入れてもらって悪い気のする男はいないだろうからね。」
「そうでしょうか・・・・」
リスティアの話を聞いたばかりの私にはとてもそうは思えなかった。
「まああまり気に病まない事だ。どの道、君にはここにいるしか道はないのだから。」
「でも、私・・・・・・」
「私のために役に立ってくれないかね、フレイ。」
それはもはや彼の切り札だった。
パパに似ているその声。彼は気づいているのだろうか。
「私は他の誰からも君を守る。ここにいれば君が恐れるものなど、何もないのだよ。」
パパに似たパパと似つかぬこの男。私はこれからどうすればいいのだろう。
「その薬は・・・・?」
何の気なしに口をついた質問にも、彼は微笑を浮かべるだけで返答が得られることはなかった。

188散った花、実る果実/作者:2004/03/28(日) 20:51
うーん、フレイ様追い詰められてきました・・・どうしよう・・・・

>>キラ♀フレイ♂
キラの貞操(?)が守られてよかった。しかし、フレイ様の思惑はどうも外れてきたようですね・・・・
でもフレイ様も愛に目覚めてきたようだし・・・・自分の気持ちに気がついてくれるといいのですが。

>>赤毛の虜囚
オリキャラは女性キャラですかな?
クルーゼの元にいるフレイ様は痛々しいけど・・・回想のフレイ様は可愛くていいですね。
こういう痛々しいシーンて中々筆が進まないんですよね・・・・

>>流離う
キラ、絶倫ですね!!(笑)
しかしフレイ様も現実に気がついてきたところで、またここが成長点になるのかな、という気がします。

>>刻還り
シャワーなし・・・これがフレイ様にとって一番きついお仕置きになるのでしょうか。(笑)
懲罰的には妥当な気もしますが、キラのわだかまりがどう消化されるんでしょうね・・・

>>The Last War
自分の道を信じて戦うアスラン。これだけ迷いのない彼は久しぶりに見たような気がします。
しかし右腕を損傷して思うように加勢できないキラ。頑張れアスラン。無事に帰れないとキラのトラウマになっちゃうぞ。

189過去の傷・93:2004/03/28(日) 23:31
キラとフレイは部屋にいた。
「明日は実戦練習だね、頑張ってね・・・」
とキラは言う。
たしかにそれはそう・・・私自身も楽しみにしている・・・でも私はいまそのことよりもキラとミリアリアのことが気になって仕方なかった。
「ミリィ馬鹿だよ・・・」
「え?」
「ほんとに馬鹿なんだから」
キラは下を向くと言った。
「キラ・・・」
フレイは思った。
キラはいまミリアリアのことを考えている・・・絶対そうだわ・・・キラ・・・流石に二ュ−タイプといっても全ての心を見透かすことは出来ないみたい・・・でもキラの顔と言葉を見たら分かる、キラもいまもしかしたらミリアリアの部屋に行きたいのかしら、彼女を元気付けたい気持ちでいっぱいなのかもしれない・・・だめそんなことは私が許さない、絶対に許さない・・・
それときになったのはキラが言った馬鹿という言葉・・・これには文句ではなく可哀相という言葉が隠れて見える・・・。
それからミリアリアとキラの会話を聞くと少しは私の知らないところで恋人に近い関係になっていたのだろうか・・・キスぐらいはしたのかもしれない、ミリアリアだ、彼女から誘ったのよ、絶対そうよ・・・キラを女の色気で誘惑したんだわ、キラはそういうのに弱い子だから、それは私が一番知っているつもり、ミリアリアはト−ルがいないから寂しいのよ、だからキラに関係を求めてきたんだわ。
「フレイ?」
フレイの様子が気になったのかキラが声をかけてきた。
キラ・・・ミリアリアと抱きしめ合う、キスをしている姿を想像してしまう。
フレイは思っていた、キラが手に入った、やっと自分のものになったと思い込んでいた、でも違った・・・キラ自身もミリアリアに心が向き始めているかもしれない・・・そんなことって・・・ミリアリアが優しいから?ミリアリアが可愛いから?認めたくないけど、ミリアリアは確かに可愛い、それに優しい、でも私だって・・・私だってキラに優しくしてきたつもりだ、それに自分で言うのは変かもしれないけど、容姿にも自身はある、ミリアリアにも・・・いえ彼女に勝ってる自身すらある・・・それなのに・・・キラ、私じゃ不満なの?私のゆくもりじゃいやなの?
フレイは勝手にキラがミリアリアを好きだと思い込み始めている。
「フレイ?どうしたの?」
「・・・・・」
「大丈夫だよフレイ、僕ずっと君のそばに・・・君には僕が・・・」
「キラ・・・」
キラがフレイの肩に手を触れてきた。
「や・・・やめて!!!」
その手をフレイは振り払った。
ミリアリアと抱き合った手で触れないで・・・。
次の瞬間フレイは部屋を飛び出していた。
「フレイ!」
キラの声が追ってくる。
しかしかまわずフレイは逃げるように走った。
キラから肩に手を触れてきた・・・いつも誘うのは私からなのに・・・いや違う、キラはただ肩に手を触れてきただけ・・・。
キラはミリアリアに心が向き始めているんだわ・・・。
どうしたら?
どうしたらキラに完全に好きになってもらえるのかしら?
考えながらフレイはカガリの部屋に向かっていた。
私はキラが大好き、私は結婚まで考えてるのに・・・。

「なんか用か?」
カガリが顔を出す。
「ちょっと入れてくれる?」
「入れよ」
フレイはカガリの部屋に入った。
彼女の顔を見ると癒される。
「お、おいなにするんだよいきなり!」
部屋に入ったとたんフレイはカガリに抱きついた、ぎゅっと強く抱きしめる、カガリは離そうとするがフレイはしっかりと抱きついていて離れない。
「このままで・・・」
「え?」
「もう少しこのままでいさせて・・・お願い」
「・・・・・・」
「カガリ・・・好きよ・・・」
「そうか・・・分かった」
カガリも抱きしめ返した。

190ヘリオポリス・1.24〜:2004/03/29(月) 13:59
1.24
[可愛い手帳を買った]
手のひらに収まるくらいの小さな電子手帳。
オレンジ色ですごく可愛いので、衝動買いしてしまった。
明日はジェシカ達とショッピングの予定なのに。
ジュブールのお店の新作手帳は見ないようにしよう。
去年は手帳を三度も買えて、パパのお小言をくらったんだった。
今年はこれを使い続けるのを目標にする。

1.25
[授業中]
今日は午前だけだから、これからショッピングの予定だったのに…
最悪、臨時テストなんて聞いてない
できるわけない。夜更かししちゃったし…
史学の授業は得意だけど、電子工学は…キライ
なんていうか、ロマンを感じないのよね。
でも私が、赤点なんてとれるはずがないわ。どうしよう…。

1.27
[信じられない]
ここ数日、あまりにいろいろありすぎて、パニックになっていた。
私が今いるのは、戦艦の中。戦艦は、アルテミスの中にいる。
地球軍が極秘開発した「アークエンジェル」っていう船。
極秘って言っても、私を含め、民間人が乗ってるんだけど。
すごく怖い。ヘリオポリスはなくなってしまった。一瞬だった。
ジェシカとミッシェルはどこにいるのか、会えて無い。
ここの艦長(ラミアスさんというらしい)が言うには、民間人の被

害はほとんどない、
だそうから、二人も無事なんだと思う。大丈夫かな…。
でも少なくとも、私よりは安全だと思う。
この艦は、戦争をしているなんて。あんまりだ。

私を拾ってきたのは、キラというサイの友達。
モビルスーツに乗れる、コーディネイターだった。
ほんものと喋ったのははじめてだ。なんだか平凡な感じだった。
子供っぽい顔だし。
私がテレビで見たのは、みんな大人だったからかな?
でも、やっぱり怖い。
サイ達は優しくていいやつだって言うけど、モビルスーツに乗って
銃なんて撃てる人が、ふつうなわけないわ。


同日:
やっぱりキラって子は怖い。大人のひと、しかも軍人を軽々と投げ

飛ばしてしまった。
コーディネイターなんかと、どうしてみんな仲良くできるの。あれ

を見て怖くないの?わからない。
逆に、私が責められた。私は間違ってない。
なんか、みんな、おかしい。
サイも、もっと私に優しくていいと思う。パパがいないんだから尚

更だ。

ここは嫌。早くパパに会いたい。通信機器も没収された。ほんとう

に最悪だ。


1.29
[凍った大地]
ユニウス・セブンはひどいことだと思う。
ミリアリアの話を聞いて、ますます思った。
核なんて、廃止されてよかったんだと思う。
パパも核使用には反対していた。私もよくないと思う。
死んだ人たちのために、折花を折った。
ちいさい女の子にも、私が教えてあげた。

同日:
お墓泥棒みたいなものだと思ったけど、
水が使えるようになったのは嬉しかった。
化粧品を沢山買っておいて良かったかもしれない。
軍のシャンプーじゃ枝毛が出来そうだし。
あと、においも良くない。年寄りくさいにおい。
やっぱり、ボディソープはエリザリオがいちばん。

191ヘリオポリス・1.24〜:2004/03/29(月) 13:59
2.3
[むかつく]
また、コーディネイターが来た。
なんていうか、むかつく女。
話し方とか、癇に障る。なんだか身分が高いみたいだけど。
キラが連れてきた。拾ってきたらしい。
あの子、ほんとうはコーディネイターのほうにつきたいんじゃない

だろうか。
信用ならない。どうしてみんな、キラを信用し続けるんだろう。
無口で、何考えてるかわからないし。

ザフトの子が軟禁中なのに、勝手に食堂に入ってきた。
よくわからないことを言って、握手しようとしてきた。
わけわからない。なんて空気が読めないんだろう。なんで誰も咎め

ないんだろう?
ほんと、イライラする。
なのに、私のほうが空気が読めてないって顔で、みんな見てくる。
違和感を感じる。むかつく。

帰りたい!!


2.6
[パパに会える!]
嬉しい!さっきサイが教えてくれた。パパがこっちに来るって!
ほんとうに嬉しい!でも、私ったらずっと同じ服で情けない。
せめて、お肌くらいはきれいにしよう!
パパの娘として、パパが恥をかかないように。

パパ……パパの顔見たら、私きっと、泣いちゃう。


2.8
[]


パパが、死んでしまった。
なんだか、よくわからない。
ずいぶん寝ていたみたいだ。
起きたくない。

パパ。


2.9
[許さない]
パパが死んだ。パパは殺された、ザフトに殺された。
ゆるせない、ゆるせない、私のパパを返して!!

さっき廊下でサイの話を聞いた。
キラはザフトに友達がいるって。
だから手を抜いたんだ。最初から戦うつもりなんてなかったんだ。
うそつき。最低。ずるい。ゆるせない!
コーディネイターのくせに!

でもいいことを思いついた。
どうせ、みんなキラの味方をする。
前みたいに、私が一人反発したって、意味がないのはもう分かって

る。
私もキラの味方になればいい。
キラが戦わざるを得ないようにすればいい。

そして、パパを殺したやつらを殺して、
そしてキラも死ぬんだ。

あんな子、死ねばいい。
絶対、許したりしない。


2.11
[キラに謝った]
謝るのは二度目だけど、やっぱり前回と同じだった。
キラはお人よしなふりをして、こうやって自分の居場所を作ってる

んだ。
それに気付いてるのは、私だけってこと。
でも内緒にしててあげるつもりだ。

同日:
嫌なニュース。
第八艦隊の本隊と合流するらしい。
これで私達は艦を降りれるって。
みんな喜んでる。私以外、みんなうるさいくらい。

どうしよう。考えてなかった。
折角、キラに敵を殺してもらうつもりだったのに。

どうしよう??


2.12
[決めた]
決めた。私は、軍に志願する。
もうそれしかない。

パパ、大好きよ。


2.13
[地球にて]
砂漠に下りた。アフリカらしい。
当初アラスカに降下する予定だったのに、あの子のせいで、降下ポ

イントがズレたって聞いた。
でもちょうどいい。
ここはザフトの勢力圏内らしいから、いっぱいコーディネイターが

いる。
キラにたくさん、やっつけてもらおう。

そう思ったんだけど、キラは今寝込んでる。
モビルスーツのまま大気圏を突入したから、コックピットはすごい

温度になってたんだって。
ナチュラルだったら生きてない温度らしい。
でももう、だいぶ汗も引いてる。やっぱり違うんだ。

そういえば、昨日…(まだ、今日?時間がわからない)
キラとキスした。
思ったより、なんてことなかった。
好きじゃない人にキスをするのは初めてだったけど、
嫌悪感より、キラが戦ってくれることが嬉しかった。
これは、ご褒美。

今、キラが何か寝言言った?
起きたら、いっしょにご飯をたべよう。

192ヘリオポリス・1.24〜:2004/03/29(月) 14:00
2.14
[キラの熱が下がった]
ずっと看病してた甲斐があってキラはもう完治した。
すごい回復力だ。なんだか、ありえない。

サイに、お別れを言った。すごくびっくりしてた。
どうせ、まだパパとサイのご両親が、パーティの席でお話しただけ

だけど、
サイのご両親はとくに、本気だったみたいだ。
サイは優しいし、好きだ。
でも最近のサイは、あまり優しくなかったけど。
でもそんなことはどうでもいい。

私のために、軍に残ったサイには可哀想だけど。
でもサイにはもう、関係ないことだ。

あとでまたキラの部屋に行こう。
ご飯のときはあの子、なんだかぼーっとしてて、あまり喋らなかっ

た。
こっちをあまり見なかったし。
もうちょっと私に興味を持ってると思ったのに…


2.15
[]

体が、痛い。
なんだかさっきから、外がうるさい。

キラが戦ってる音だ。
早く服を着なくちゃ。
シャワー浴びたい。でも今は動けない。

キラは私を守るって言った。
私は成功したんだ。
たぶん。

からだ、気持ち悪い。
くさい。
早く戦闘が終わるといい。

同日:
戦闘が終わったらしい。外が静かになった。
てきとうにひっかけてた服を脱いで、シャワーをさっき、浴びた。
でもなんか寒い。エアコンの調整、済んでないのかな。

わたし、キラとした。
したかったわけじゃないけど、泣いてるキラに、キスしてたら、
キラが夢中になって。胸を触られた。

そのまま心臓を掴まれたみたいな気分だった。
でもここで突き放したら終わりだと思って、私からベッドに誘った


あのときのキラの顔は忘れない。馬鹿みたいな顔。
ぜんぜん嬉しそうじゃなかった。さっきまで泣いてたから当然だけ

ど。

あとはもう分からない。思い出すのもイヤ。
キラが勝手にやった。私は抵抗しなかったけど、痛いのに我慢した

だけ。

キラはいつ帰ってくるんだろう?

193ヘリオポリス・1.24〜:2004/03/29(月) 14:01
前にフレイ様大天使日記というのがありましたが、
そういう感じですね。

ちなみにあれの作者さんとは関係ありません。

194流離う翼たち・443:2004/03/29(月) 23:02
 フレイの官舎を出たナタルはどうしたものかと考えたが、とりあえず行きたい所も無いと気付いてしまう。それで暫し玄関の前で悩んでいたのだが、結局浮かんだのは港にあるアークエンジェルの入港しているドックに行くことであった。とりあえず艦の修理状況を聞くだけでも良いだろうと思ったのだ。

「ふむ、1人になるとこうも時間の潰し方が分からなくなるとはな。若い頃はまともに遊びに行った事も無かったから、仕方ないのかもしれないが」

 考えてみれば随分と寂しい青春時代だったように思う。中学の頃にはもう未来は軍人と決めていて、ずっとそれを目指して努力を重ねてきた。おかげで25歳で大尉になり最新鋭戦艦の副長などという大任を任されるまでになった。軍人としてみればまあ順風満帆とまでは言わなくとも、それなりに充実した人生なのだろう。
 だが、フレイやカガリと接するうちに、何となくその生き方が空しく思えてくるようになったのだ。目の前で皮肉の応酬をしたり男女関係でからかい合っている姿は、自分には全く縁の無いものであった。あの頃はそんな物は馬鹿馬鹿しいと気にもしていなかったが、こうして目の前でそれを再現されると、少しくらい横道に逸れていても良かったのではないかと後悔にも似た感情が過ぎってしまう。
 しかしまあ、そんな感傷も内心をよぎる別の思いにあっさりと打ち消されてしまう。
ふと空を仰ぎ見れば太陽は朝と呼ぶにはやや高い所にあり、自分が起きたのが随分遅かった事を教えてくれる。なんだか、こんなに遅い時間に起きたのは随分久しぶりだ。何となく艦長たちと同じ駄目人間になってしまった気がして、ちょっと気落ちするナタルであった。

 アークエンジェルが入港しているドックは海軍の軍港内にある。アイボリーのタイトスカートに白いシャツの上から水色の薄手のカーディガンを羽織ったナタルは身分証明で中に入るとそのままドックに行こうとして、ふと灯台のある堤防の先の方に人影を見つけて足を止めた。

「・・・・・・あれは、何処かで見たような」

 いや、何を馬鹿な事を言っているのだ。あの後姿は何度も目にしている。間違いなくあれはキースだ。しかし、あんな所で一体何をしているのだろうか。

「まあ、あの人の事だから自殺しようとしている可能性は無いだろうが」

 そんな事を呟いて、ふと、何でそんな方向に考えが行ってしまったのかと深刻に悩んでしまった。もし彼女の悩みをキースが知ったら、きっとこう言うに違いない。

「朱に交われば赤くなる」

 と。


 キースは堤防の先でのんびりと釣竿を手に釣りをしていた。ややくたびれている軍服は歴戦の軍人を感じさせるのだが、口に咥えたタバコと脇に置かれたウィスキーのボトルが些かだらしなさを感じさせる。この姿を見ても誰も彼が連合屈指のエースパイロットだなどとは思わないだろう。
 その目は水平線に向けられ、なんだか哀愁を漂わせている。まるで何かに負けたかのような寂しさを見せるその背中は何者をも拒絶する重さを背負っているかのようだ。そんな彼に声をかけられる物などいるはずが・・・・・・

「釣れますか、大尉?」

 たまには居るらしい。そういう変わり者が。ナタルの声にキースは驚いて背後を振り返り、私服姿のナタルを見て馬鹿みたいにあんぐりと顎を落とした。

195流離う翼たち・作者:2004/03/29(月) 23:19
>> 過去の傷
なんというか、フレイ様、百合は不毛ですw!
カガリもサイはどうした。ジュリに負けっぱなしかw
ミリィの大攻勢にキラはどう対応するのでしょう?

>> ザフト・赤毛の虜囚
さて、フレイ様は捕虜生活をどうやっていくのやら
まああの仮面を見て素直に信用する人間が居たら逆に正気を疑いますがw

>> キラ(♀)×フレイ(♂)
フレイ君、だんだん現実の行動と野望が噛み合わなくなって来てますね
キラの方は逆に真実を垣間見ているようですが
とりあえず鉄パイプをフルスイングで食らっても生きてるマイケル君に敬礼w

>> 散った花、実る果実
リスティアさんとなにやら中立状態になってますね。お茶飲み話ですか
まあ、話してる内容は凄くアレですが。ザフトは軍人教育受けてないから軍規への認識が薄いんでしょうねえ
クルーゼが表面まともな人なのがなんだか・・・・・・

>> ヘリオポリス
日記ですね、とりあえずは砂漠の辺りまでですか
次はオーブまでいきますかな。クルーゼの所でも日記は続くのだろうか

196ザフト・赤毛の虜囚 38:2004/03/30(火) 00:56
7.幼子(おさなご) 5/8
[えへ! クルーゼ隊長に言われたの]

しばらく、また、ぼうっと考え事をしていると、部屋のロックの開く音がした。
にも関らずコール音だけ鳴らして部屋に入って来ない。クルーゼであるはずが無かった。
誰なんだろう?

私は部屋の戸を開けた。そこには、赤い軍服を着た女の子が立っていた。前の戦争に行く時に乗った
連絡機で見かけた、私と同年代の子。手には、パックされた官給の下着の束を抱えている。

立ってみると上背は、私よりもあって、丁度キラと同じくらい。比較的プロポーションの取れた体形。
膝まである丈の長い赤い軍服は、そんな体形を見せないように隠しているけど、それでも、その胸の
膨らみは隠せなかった。私と同じくらいか、ひょっとしたら、それ以上あるのかもしれない。
髪の毛は、少し赤みがかった金髪。軍人らしくショートにまとめている。だけど、髪質は、さらさら
していて、私と似た感じ。ロングにすれば、もっと似合いそうだった。そして、その髪型をした顔の
つくりは、かなり童顔に見える。私のキラへの第一印象のように。

その唇が声を発した。
「えへ! クルーゼ隊長に言われたの。これ持って行けって」

(えへ!?)
私は、引きつったような表情を浮かべた。こんなリアクション。私くらいの年だと、
さすがに恥ずかしくてできない。この子って一体……

この子は、私に下着を手渡した。そして、顔には満面の笑みを浮かべている。
そんな笑みの表情はザフトの捕虜になって辛い生活をしている私にとっては、少し心休まるもの
だったけど、今は、あまりの場違いな雰囲気に、逆に戸惑いを隠せなかった。

私は、さっき考えていた、頼み事を思い出した。私と同年代の女の子なんだから大丈夫なはず。
だけど、少し不安を感じながら話しかける。

「あの…… これと、その他にも頼みたいものがあるの」
「何? お姉ちゃん」

その子の返事に、さらに不安を感じながら話を続ける。

「下着、もっとたくさん、この倍くらい用意して欲しいの」
「何で?」

「あの……、よごれるの。それと…… それと念のためナプキンも用意してくれないかしら」
「ナプキン? って何?」

「知らないの? 生理用の……」
「ううん。分かんない。誰かに聞いとく」

そのリアクションに、私は予感が的中したことを知って落胆した。
『お姉ちゃん』だって? この子の幼稚な物言いは、ひょっとしたら……

だけど、この子の次の言動は、もっと私を戸惑わせた。

「ねえ、お姉ちゃんって、アタシのママでしょ」
「え?」

声も出せない私に、この子は抱きついた。私は、それに驚いて下着類を床に落としていた。
この子は、かがんで私の胸に顔をすりつけながら言った。

「ママ見つけた。やっと見つけた。ミコト、いい子にしてたよ」
「ミコト?」

ミコトと言うらしい子の、行動と言動に、私は頭の中が真っ白になったようで、
身動きもできなかった。やがて、ミコトは顔を上げて、いじらしい瞳を、
私に向けながら言った。

「ねえ、ママ、パパはどこにいるの。パパもいるよね」
「ちょっと、なによ。この子……」

私は、この子の行動に驚いていた。だけど、かといって容易に振りほどけないでもいた。
私に触れた髪の毛の質が、見かけどおり私とまったく同じなのが分かり、親近感さえ、
感じていた。

197ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/30(火) 00:59
ご想像通りオリキャラは女性キャラでした。正体は近く明らかに。

>>散った花、実る果実
フレイ様、クルーゼに紅茶と水を…… あのシーンですかな?
でも、フレイ様、クルーゼへの依存度が高まってきましたね。このままでは危ない。なんとかしなくては。

>>過去の傷
ええと、これは フレイ様が20話のキラで、キラがフレイ様で、ミリィが…… ああ、ややこしい。
でも、キラが一人でしゃがみこんで泣いてたのに比べて、フレイ様はカガリに慰めて出もらえて良かった。

>>ヘリオポリス
新作ですね。公式年表に添ってフレイ様の心境を綴る。しかも、もう問題の 2.15 まで。
微妙に漢字が少なくて、フレイたん?って感じも…… 1.29 の「ボディソープはエリザリオがいちばん」が良かったです。

>>流離う翼たち
久々復活おめ。考えていることは真面目過ぎるくらいまともなのに。台詞がボケまくっているナタルに脱帽。

198過去の傷・94:2004/03/30(火) 22:17
「・・・はあ・・・」
自分から肩に手をやろうとした・・・それはフレイに将来決めたからだ、だが拒絶されてしまった・・・なぜ?僕も少しショックを受けた・・・やはりまだ彼女は本気じゃないんだ・・・。
そうだ、ミリィはどうしているのだろう・・・?一応様子でも見に行ったほうがいいだろうか?でも・・・もし行ったらまた・・・でも一度も顔見せないというわけにもいかないだろう。
そんな時電話が。
「はい」
<キラ・・・?>
「ミリィ!」
<寂しいな・・・私・・・外出禁止なんだよ・・・>
「・・・・・・」
<フレイは・・・?>
「フレイ?ああ、いま出かけてる」
<・・・そう・・・ねえ・・・会いたいな>

「あの・・・ラクス」
「何です?アスラン」
ここはアスランの部屋だ、ラクスが訪ねてきたのである。
「いえ、その・・・今日のことなんですが、ラクスらしくない行動や言動が目立ちましたので」
「・・・・・・」
ミリアリアとの出来事のことだ、あれほどまでミリアリアを責め立てたことやハロを投げたことについてである。
アスランは目を疑った、平和の歌姫であり、プラントのアイドルでもある彼女がなぜあんな態度を取ったのか。
クライン邸でハロとはしゃいでいたラクス、誰にも笑顔を絶やさず、いつもスクリ−ンで歌を歌っていた彼女・・・アスランもその歌に心を癒されまたそんな彼女自身が好きだった。
「アスラン・・・私らしくとはなんなんでしょうか?」
「え?」
「アスランにとっての私・・・ラクス・クラインとはどういう女性ですか?」
「ラクス・・・」
「クライン邸のお庭にハロとはしゃいでいる私ですか?ステ−ジで歌っている私ですか?エタ−ナルの指揮官である私ですか?」
「私は・・・」
ラクスはアスランを鋭い眼差しで見つめる。
「アスラン、人は変わるのです」
「!」
「もう以前の私を見るのはおやめください」
「な!」
「ここにいる私はもうプラントの歌姫ではありません、この艦の艦長であり指揮官です」
「・・・・・・」
「分かりましたか?」
「・・・はい・・・」
「ですが・・・クライン邸に帰れば・・・以前の私に戻るおつもりですわ」
「はい」
「ですがそれはこの艦から降りたらの話です、分かりますね?」
「はい、分かっています」
「では私の部屋にお泊りください、これは命令です」
「はい、お言葉に甘えさせていただきます」

ミリアリアの部屋に入るキラ、中の様子を伺う・・・真っ暗だ。
「キラ・・・?来てくれたの?」
「うん、ミリィ・・・」
何を考えてるんだ僕は?昨日言ったじゃないか、迷惑だって、付きまとわないでくれって・・・なのになんで?なんでここに来てるんだ?
「入って・・・ご覧の通り電気もつけちゃだめだって・・・ラクスさん厳しいね・・・シャワ−も・・・」
「それは仕方ないよ」
「シャワ−浴びられないのって女の子にとっては寝れないのに近いくらい辛いことなのよ」
「そう」
謹慎処分を受けて部屋に閉じ込められているミリアリアの様子だが、そんなにショックを受けた様子はないようだ。
そしてキラには聞きたいことがあったのだ。
「ミリィあの・・・なんで?なんで機体に乗ったりなんか」
「フレイに対抗するためよ、あの子にも出来たんだから、私にだって出来るんじゃないかって思ったりして・・・」
「ミリィ・・・」

「ありがとう、少し落ち着いたわ」
「そうか、良かったな」
「じゃあ戻るわね」
「ああ」
あのあとも数分間抱き合っていたフレイとカガリ。
これで少しは気分が落ち着いたようだ。

「・・・・・・」
キラ・・・無意識に貴方を拒絶していまった、貴方の手を振り払ってしまった、つい頭にミリアリアのことがよぎってしまって・・・変な誤解招いてしまったかしら。
「キラ・・・?」
いない、キラが部屋にいない・・・一体どこに・・・?怒ったかな・・・?キラ・・・誤解させてしまったのならごめんなさい、貴方のこと私大好きよ・・・。

199過去の傷・作者:2004/03/30(火) 22:22
>>翼たち
ナタルさん、やはりこういうのは苦手ですか、それにしてもナタルさんの発言に笑いを堪えてます、すいません。
>>ザフト・赤毛の捕囚
な、なんなんだこの子は!?おいおい、フレイ様困惑ぎみ、それにしても一瞬シホちゃんかなと思ってしまいました、この子の正体は一体!?年齢的にはフレイ様と変わらないんですよね・・・。

200流離う翼たち・444:2004/03/30(火) 22:32
 なにやら目を瞬かせていたキースは、袖でごしごしと目をこすり、もう一度ナタルを見てもう一度驚いた。

「え、これは、私服? スカート? 可愛い? 何で?」
「大尉、落ち着いてください。言ってる事が支離滅裂です」

 ナタルに落ち着けといわれてようやく我に返ったキースは小さく頭を振り、何とか吃驚仰天状態を脱する事が出来た。

「バ、バジルール中尉・・・・・・じゃなかった、大尉、何でここに?」
「艦の状況を確かめに来たのですが、大尉を見つけましたので。こんな所で釣りですか?」
「ああ、ここ暫くドタバタしてて忙しかったからな。たまにはこうのんびりして、平和ってのを実感したいのさ」
「大尉は、戦うのが嫌いなのですか?」
「まあ、あんまり好きじゃないな。元ブルコスで色々と悪い事もしてきたが、人を殺すのは余り良い気のするもんじゃない」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「と言っても、俺は元々復讐で軍に入ったからな。最初は殺しまくって悔やむどころか清々してた。正気に戻った頃には殺しても何も感じなくなってた。人間の感性なんて、毎日やってりゃどんな事でも慣れちまうもんだな」

 口調は軽いが、それが持つ意味は恐ろしいほどに深刻だ。殺す事に慣れ、死体を見ても何も感じない。それは歴戦の兵士ならば誰でも持つようになる当り前の特徴だ。だが、歴戦の兵士とは大別して二つに分かれる。大半は誰が死んでも自分だけは生き残ろうという生への執着を見せる。だが、ごく稀に磨耗し尽くした神経の負担からか、自分の命さえ軽く感じてしまう者である。
 ナタルはまだ死体を見た事が余り無い。宇宙軍での戦闘は死者を見ることがほとんど無いからだ。仲間が死体となっている時には大抵自分もすぐに死んでしまうので、乗艦が沈むか生き残るか、これが運命の分かれ道となる。加えて艦で指揮をとるだけの身だから人を殺しているという実感も余り無い。キースのように殺すのに慣れるなどという状況には遙かに遠かった。

「・・・・・・私には分かりません。殺すのに慣れるというのは」
「ああ、分からない方が良い。俺みたいになっちまうからな」

 キースは新しいタバコに火を付けて煙を吐き出した。

「大尉だって嫌でしょう。平和な、硝煙の匂いと戦場の緊張感が無い世界に居ると、違和感を覚えるなんてのは」
「違和感、ですか?」
「そう、違和感。何て言うのかなあ、ここが自分の居場所じゃないって言うか、落ち着かないんだな。まあ、そんな事言っても戦場に戻ればまた平和が恋しくなるんだが」

 煙草を吹かせながら釣りをするキース。その背中が妙に人を寄せ付けない重さを見せていたのはそのせいだったのかと理解し、ナタルは不謹慎にも小さく頷いてしまった。しかし、なんで平和を実感するのに釣りなのだろうか。
 何となく話題が無くなってしまったナタルは、立っているだけなのも疲れるのでキースが脇に置いていたクーラーボックスを引っ張ってきてそれに腰掛けた。キース本人は堤防に直に腰を降ろしている。

「うん・・・・・・」

 気持ち良い潮風に吹かれながらナタルは両手を挙げて背を伸ばした。海に来たのは初めてではないが、こんなに何の意味も無く、ただぼんやりとそこに居るだけというのは初めてだ。堤防にうちつける波の音が立てる単調なリズムも妙に心地良いものに聞こえてしまう。
 うなじを流れていく風に表情を緩めたナタルは、子供の頃以来になる無意味な時間を満喫していた。

201流離う翼たち・作者:2004/03/30(火) 22:42
>> ザフト・赤毛の虜囚
何者ですか、この怪しさ大爆発なキャラはw?
とりあえずフレイ様、頼る相手は選んだ方が良い

>> 過去の傷
キラ君、キサカさんじゃありませんが、いいかげんに学びなさい
姉弟揃って経験を生かしてないじゃないですか
フレイ様、このままだとサスペンスドラマのノリでナイフを手にする日が来るかも

202ザフト・赤毛の虜囚 39:2004/03/31(水) 00:02
7.幼子(おさなご) 6/8
[キラはコーディネータよ]

ミコトという女性兵士に抱きつかれて戸惑う私。その時、大きな声がかかった。

「こらあ、ミコトぉぉ〜!!」
聞き覚えのある声、あのイザークという兵士の声だ。

「こら、ミコト! クルーゼ隊長の部屋で何をしている」
「アタシ、クルーゼ隊長に言われたんだもの」

「ん? その女は?」
「イザークお兄ちゃん、アタシのママだよ」

「また、それか。ママを探してだの、いいかげんにしろ! さっさと行け!」
「イザークお兄ちゃんの意地悪。パパが見つかったら、また叱ってもらうから」

「さっきから、何を言っている。まったく……」

ミコトという子は、渋々、私から離れて去って行った。取り残された私に、
イザークという兵士は、イライラした目つきを向ける。

「貴様は何だ?」
「え……」

「クルーゼ隊長の部屋に居付いて。貴様、連合の捕虜だろ。なぜ独房に入れられない?」
「知らない……」
私はポツリと呟く。自分だって不思議だ。私にはそれしか言えなかった。

「まったく!」 イザークは頭をくしゃくしゃとかきむしった。そして、思い出したように、私に言った。

「お前、『足つき』のことを知っているか?」
「『足つき』?」

「連合軍戦艦アークエンジェルのことだ」
「私の艦……」

「何、貴様、『足つき』に乗っていたのか。なら、ストライクはどうなった。アスランが
 撃ったと言っていたが、どうなったんだ。パイロットはどんなやつだ?」
「キラ……」

私は、また涙を浮かべた。止められなかった。泣き虫フレイ。私は、相変わらずダメだ。
キラの死を受け入れたけど、人から言われると、悲しみが再燃してくる。

「おい、どうした? キラって、なにもんだ」
「キラ…… キラ・ヤマト。モビルスーツのパイロット。私のキラ……」

「まさか、貴様、ストライクの……、キラってやつの恋人か?」

私は、コクリと首を縦に振る。私の目から涙が零れ落ちる。
「もういないの…… 燃えて、いなくなってしまったの……」

「そうか、亡くなったのか」
「私が死なせたの。友達と戦わせるように仕向けて…… それを、謝ることもできなくて……」

「なんだと? 何を言っている。ストライクはアスランが…… 友達? 友達って何だ」

ザフトにキラの友達がいる…… 私の復讐のきっかけとなった、立ち聞きしたサイの話。
そして、その友達の名。それも私は知っている。キラがMIAになる前の和解の時に聞かされた名。
そして、私の腰痛の時に聞いたキラの昔話。月の幼年学校の友達の名。私は、それを思い出し、結びつけていた。

「アスラン、そう、アスランって言ってた。友達だって。私、キラをそそのかして、
 その友達と戦わせるようにして…… それでキラは……」

「アスランと友達だと!? アスランは宇宙生まれの生粋のコーディネータだぞ。ナチュラルと友達なぞ」
「キラはコーディネータよ!」

イザークは驚いて顔をこわばらせた。顔に斜めに走る傷痕が苦痛にゆがんでいるようにも見えた。
そして、しばらくの逡巡の後、イザークは私に言った。

「なんだと…… なんだと! なら、コーディネータとナチュラルの貴様が恋人なぞ、おかしいぞ!」

「おかしくなんかないわ! キラがコーディネータでも、私は、もうどうでも良かった。
 最初コーディネータは嫌いだったけど、いつの間にか、そんなこと忘れてた。
 コーディネータとナチュラルでも、私とキラは分かり合った。キラと心が繋がった」
まくしたてるように話す私の言葉にいつしかイザークは言葉少なになっていた。

「そうなのか?…… それで、なぜ戦わせるなど」

イザークという兵士は、本気で混乱しているようだった。でも、私だって混乱している。
それほど、私とキラとの関係は複雑だったのだ。

「私はキラと分かり合えた。でも、遅かったの。分かり合った時には、もう……
 間違った関係だと思っていたのに、間違っていないと分かった時には、もうキラは還って来なかった。
 謝りたかったのに謝ることもできなかった。こんなのってある? 私、どうすればいいのよ!」

声を上げて泣き出した私に、イザークは何も言わず、戸惑うように見つめているだけだった。

203ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/03/31(水) 00:06
フレイのイザークへのキラ・コーディネータ宣言でした。本当は、この話はミリィのディアッカへの話と
コンボで同時に投下する予定でしたが、あえなくボツ企画となりました。現在、2つは作内時間では、
一週間ほどミリィSSが先行しています。

>>過去の傷
キラもあれだけ迫られて、逆にミリィのことが気にかかるようになっている? フレイ様どうする?
それはそれとして、このホワイト・シンフォニーでの話っぽいラクスの台詞結構好きです。
私的には、この回のラクスが最高でした。フィギュアも今度出るので期待。もち、フレイ様とミリィも。

>>流離う翼たち
緩やかに流れる時間、しみじみしてますな。キースの発言は恐いものがありますけど。
でも、ナタルは、これでキースへ一歩ステップアップ。

204過去の傷・95:2004/03/31(水) 22:15
「アスランさんのような美形もいいけどキラさんのような可愛い子もいいわよね〜」
「ね〜♪ところでそのキラさんの彼女って?でもショック・・・私もあの子狙ってたのに」
「アサギも!?そうなんだ、ええと・・・カガリ様に教えてもらったんだけどね、名前がフレイ・アルスタ−・・・悔しいけど可愛いわよ、すっごい美人、あの燃えるような赤い髪が綺麗なの・・・」
「そう、でもまあ私も彼氏欲しいし・・・奪っちゃおうかな」
「私も同じ気持ち」
「そう、ところでジュリは?」
「サイさんの部屋にいるよ」

僕はなんでこんなところに来てしまったんだろう・・・昨日はあんなにミリィを非難してたのに・・・ミリィに呼ばれたから?いや・・・今日フレイに手を振り払われたから?そうかもしれない・・・。
「ミリィ・・・」
「私・・・馬鹿なことしたかな・・・私才能ないのかな?あの子より・・・フレイよりずっと戦場見てきたのに・・・結局なにも出来ないのね」
私あの子に負けたの?悔しい・・・悔しい・・・悔しい・・・。
「キラどうしたの?暗いね」
「え・・・?いやなんでもないよ」
「話してみて・・・キラがそんな表情のときは隠し事してるときなんだから」
迷った・・・話すべきか・・・。
「あのさ・・・さっき・・・フレイが暗そうにしてたから励まそうと思って肩に手を触れたら振り払われた・・・やめてって・・・」
私はこれはチャンスだと思った。
「そう・・・キラの気持ちよく分かるわ」
「え?」
「私思うんだけどフレイ本気じゃないのよ」
ト−ルはもう帰ってこない・・・だから・・・。
「あの子まだいまでもキラを利用するつもりなんじゃないかしら?」
私は無我夢中だった・・・。
「そんな・・・フレイはもうそんな子じゃないよ」
「分かんないわよ、だいたいほんとにキラのこと好きなら拒絶したりしないわよ」
いいわ・・・この調子よ・・・なんとしてもこの二人を引き裂いてキラを手に入れないと・・・ト−ルの代わりになってもらうわ・・・結婚してもらうわよキラ・・・そのためなら私の唇くらいやるわよ何度でも・・・そして私の体も・・・。
「現実を受け入れなきゃいけないわよね、ト−ルはもう死んだのよね・・・もう・・・」
「ミリィ・・・」
このときばかりは自然と涙が出てきたことには私自身も驚いた、そしてついに耐えられなくなって声を出して泣いた、そしてキラに私は抱きついた・・・。

キラ自身もミリアリアも突き放す気にはなれなかった、キラの胸で泣いている彼女を見るととてもそんなことは出来ない。

その数分後。
「ミリィ落ち着いた?」
「ええ・・・もう・・・ありがとう・・・」
「そう、よかった」
「そうよね、ト−ルはもう死んだんだから」
「ミリィ・・・うう!!!」
そんな時、キラにあの悪夢がよぎった、ト−ルの・・・あの悪夢が・・・。
「キラ・・・」
「僕は・・・ト−ルを・・・君の恋人を・・・守れなかった!!!僕には力があるのに・・・うう!!!」
ミリィの胸でキラは泣き出した、精一杯泣いた。
キラが泣いている・・・こんなとき私は・・・私はこういうのは苦手だ・・・フレイなどは得意かもしれないけど・・・泣きつかれたりされるのは苦手・・・でも・・・こういうとき私は。
「キラ・・・もういいの・・・もういいから」
キラが驚いたように顔を上げる。
「泣かないで・・・もういいから」
そう言うと私はキラを抱きしめキスをした。
じっくりと唇を押しつけた、もうどうなってもいいと思った、キラからも唇を押し付けてきた。

まだキラが帰ってこない・・・一体どこにいるのだろうか・・・。
いまどこでなにをしているのだろうか・・・!
「まさか・・・」
私は部屋を出た。

205流離う翼たち・445:2004/03/31(水) 23:17
「・・・・・・しかし、釣れませんね」
「そうだなあ、釣り糸を垂れて1時間、アタリはあるんだが中々のってくれない。餌だけ取られていく」

 些か寂しそうに答えるキース。ナタルは何となく好奇心が湧いてしまい、キースに頼んでみた。

「あの、大尉。私にも釣らせて貰えませんか?」
「良いけど、釣った事あるの?」
「いえ、無いので一度やってみたいんです」
「なるほど、そういう事か」

 キースはなるほどと頷くと、釣竿をナタルに渡した。

「まあ、そう簡単には釣れないだろうけどな」
「そうでしょうね」

 どこか憮然と負け惜しみのような事を口走るキースに、ナタルはクスクスと噛み殺した笑いを漏らした。それを見てキースがますます憮然としてしまうのだが、形勢が不利なので何も言い返せない。
 その時、いきなりナタルの持っている竿の竿先が下へと強く引っ張られた。

「あ、これがアタリ、というものでしょうか?」

 少し驚きながら竿を上に上げると、いきなりガツンと一気に下に引っ張られた。いきなりの事に驚いたナタルは慌てて竿を立て、キースは口に含んでいたウィスキーを噴出して驚愕している。

「馬鹿な、ビギナーズラックだと!?」
「た、大尉、驚いてないで!」
「しかも何だよこの引きの強さは。大物じゃねえか!」

 これまでの俺は何だったんだあ、とばかりに頭を抱えて苦悩するキース。ナタルは強烈な引きに何時もの冷静さを失い、半ばパニックを起こしかけていた。

「キ、キース、助けてくださいい!!」
「あ、そ、そうだった。その竿高いんだから手を放すなよ!」
「そんな事言われても――――!!」

 必死に竿を立てるナタルの腰を掴んでグイっと堤防に引き寄せるキース。だが、相手は一体なんなのか、キースをして驚くほどの力強さで2人を海に引き摺り込もうとしている。

「た、大尉、これが噂の鯛なのでしょうか!?」
「いや、たとえ磯の石鯛でもこんなにパワフルじゃない!」
「では、マグロでしょうか!?」
「可能性は否定しないぞ!」

 なにやら戦闘中以上の必死さで魚と格闘する2人。遠くから2人をニヤニヤ見ている視線にも気付かず、頑張って魚を釣り上げようとしていた。

206流離う翼たち・作者:2004/03/31(水) 23:24
>> ザフト・赤毛の虜囚
イザーク、このスレでは真人間というのが多いですね。
しかし、お兄ちゃんですか。イザーク、苦労してそうですな・・・・・・

>> 過去の傷
ミリィがどんどん怖いキャラに。キラはどんどんヘタレに
何気にアサギとマユラが可哀想だったw

207ザフト・赤毛の虜囚 40:2004/04/01(木) 01:26
7.幼子(おさなご) 7/8
[ミコト〜 ママはじめまして]

アタシ、ミコト・ヒイラギ。14歳。
アタシはクルーゼ隊の一人。モビルスーツに乗っている。赤い服を着て、みんなえらいと言ってくれる。
でも、アタシさびしい。小さい時、気づいたらひとりぼっちだった。パパもママもいなかった。
他の人はみんなパパ・ママがいるのに、なんで、アタシだけひとりぼっちなの。変だよ。

でも、今日やっとママを見つけた。クルーゼ隊長の部屋にいた、お姉ちゃん。
あれは間違いなく、アタシのママだ。アタシ分かる。見たとたん、ドキドキしたもの。
抱きついた時の暖かさも思い描いていたママのもの。あれが、ママだ。

ママはじめまして。ミコトです。アタシ、いい子にしてたよ。
これから、ずっといっしょだね。

アタシ、ミコト・ヒイラギ。でも、ほんとはヒイラギじゃない。ほんとのほんとはヒビキ。ミコト・ヒビキ。
アタシの先生がヒビキじゃ無いほうがいいって言った。それでヒイラギになった。でも、
ほんとはヒビキの方が好き。ミコト・ヒビキ。ママもこっちの方がいいと思うでしょ。

ねえ、ママ。今度はパパのこと教えてね。パパもいるよね。
アラスカでモビルスーツに乗っていた時、声がしてた。無線で聞こえてきた。
みんな逃げろって言ってた声、あれがパパだよね。ねえ、ママ、そうだよね。
アタシ、パパの言うこと、すぐ分かったよ。だから、みんなにも逃げようって言ったよ。

声がする前、イザークお兄ちゃん、パパにつっかかって行ったけど、パパにはぜんぜんかなわない。
だけど、パパ、イザークお兄ちゃんを殺さずに、ミコトのところへ落としてくれた。だから、
アタシ、ちゃんと拾ったよ。それでパパの言う通りいっしょに逃げたよ。

後で、みんな逃げて良かったって言ってた。パパの言うこと間違ってない。
パパ、アタシのこと思ってくれてるんだ。

ねえ、ママ。いつか、パパを連れてきてね。いっしょにプラントの公園散歩しよう。
とっても気持ちいいよ。そんでパーティしよう。イザークお兄ちゃんも呼んで、
みんなでやろう。

アタシの約束。後で指きりげんまんしよう。ね、ママ。

208ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/01(木) 01:27
>>過去の傷
地文のミリィの心情が結構恐い。でも、互いに涙を流し合って……
キラに泣かれて戸惑うミリィの心境の辺は新鮮でした。
って、ええい、そんな場合じゃないフレイ様、急げ!

>>流離う翼たち
釣りというと三平君しか知らない私、これから外道のウツボでも釣り上げるのでしょうか?
いずれにしろ、ナタルはキースとスキンシップできて、おいしい展開?

209私の想いが名無しを守るわ:2004/04/01(木) 03:21
>>赤毛の虜囚
なんと、あのディンパイロット?
できるな!!この娘。

210The Last War・15:2004/04/01(木) 22:10
「どんな手品を使ったかは知らんが・・・」
「・・・・・・」
「・・・不愉快だな・・・!!」

 乗機を傷付けられた怒りか、それともアスランの変化に気がついたのか、アレクセイの表情が次第に険しくなり始めていた。
 S.ジャスティスから距離を置くと、彼は再びアイオーンに攻撃を命じた。その命に従い、無数のアイオーンが変則的な動きで迫ってきた。この予測不能な動きこそ、ドラグーン、有線式ガンバレルといった誘導端末兵器の醍醐味であり、並のパイロットではこれに対応することが出来ず、為す術無く撃墜されてしまう。
 しかし、この時のアスランはその例外であった。

(・・・上から3、下から2・・・、正面から4、か・・・)

 恐ろしいまでの冷静な判断力で、彼は自分に向かって来る全てのアイオーンの動きを把握すると、瞬時にその攻撃パターンを読みに掛かった。そして攻撃が開始されると同時に、S.ジャスティスが動いた。
 機体を加速させ正面からの砲撃を回避した後、続け様に上下から攻撃が加えられる。そのうちの一つはS.ジャスティスを捉えており、そのまま行けば直撃するコース上にあった。

(終わりだな・・・!)

 だが、アスランは手にしていたビームサーベルでそれを受け止め、無効化した。

「何・・・?」

 思わず驚嘆の声が漏れた。その後何も無かったかのように、アスランはS.ジャスティスの両肩に搭載されたビームブーメランを手に取り、それらを大振りのモーションから前方のアイオーンに向けて投擲した。それに反応したアイオーンがそれぞれ回避行動を取った為に、フォーメーションが崩れそこに僅かな一点の隙間が生じた。それを見逃すことなく、アスランは即座に機体を突進させ、包囲網を突破した。
 アイオーンを振り切ったS.ジャスティスは、その勢いで再びアプカリプス目掛け一気に詰め寄ってきた。その姿をモニターから目視しながら、アレクセイはそこから放たれる強烈な威圧感を機体越しに肌で感じているような感覚に襲われた。強いて何かに例えるのなら、それはまるで狼に喉笛を狙われているような感覚だった。

(ここまで純粋な殺意を向けられたのは初めてだ。こうなると、心地良くさえ感じる。それに、あの動きは・・・)

 アスランの戦闘能力はすでに常軌を逸脱したものと化していた。それについては、アスランがコーディネイターであることや、SEEDを持つ者であることなどでは、最早説明がつかなかった。

(・・・『人』を捨て、修羅にでもなったか、アスラン・ザラ?そうなると・・・)

 先ほどから動きを見せないキラのネオストライクを一瞥し、アレクセイは嘲笑を浮かべた。

(・・・この場に、人間はいないな・・・)

 キラとアスラン、そして自分自身を揶揄すると、彼は迫り来るS.ジャスティスを迎え撃った。

211The Last War・作者:2004/04/01(木) 22:36
 この頃忙しかったので随分間が空いてしまいました。アスランが暴走していますが、次回は番外編として彼に何が起こったのか、そしてキラがその間に何を思っていたか、それぞれの視点からの語りになります。

》赤毛の虜囚
 ミコトちゃん、何だかインパクトのあるキャラですね。何やらプルやロザミィを思い出しました。しかしキラとフレイ様が両親だとか、ヒビキという姓を持つやら謎が多いですね。これからの活躍に期待させて頂きます。

》流離う翼たち
 キース大尉やナタルさんの意外な一面が見れました。この二人お似合いですね。結局魚は釣れたんでしょうか?何だか二人して海に落ちちゃってそうですがw。

》過去の傷
 キラ、また相手のペースでズルズルと引きこまれてますね・・・。まさか今度はフレイ様VSミリィですか!?前以上の修羅場と化しそうです。
 あと最近WやXの面々の出番がありませんが、どうしているんでしょうか?

》ヘリオポリス
 久々に本編を振り返れたようで懐かしかったです。こうしてみると序盤から色々ありましたね。続編をお待ちしています。

212過去の傷・96:2004/04/01(木) 22:55
「あの・・・キラは?」
赤い髪の青年、マ−チン・ダコスタにフレイは聞いた。
「彼は見ませんでしたね」
「・・・・・・」
フレイは無言でダコスタに頭を下げるとブリッジを出た。

一体どこにキラはいるのだろうか・・・。
「フリ−ダムの整備でもしてるのかな」
いえ違うわね、こんな時間に・・・。
やっぱりサイの部屋かな?
私はサイの部屋に歩き出していた。

「サイ、いる?・・・!」
サイの部屋に入った私は・・・サイの隣にピンクのメガネをかけた女の子がいた、年齢的には私と同じで16くらいだろう、でもこんな子見たことない・・・こんな子いたかな?でも二人の様子は恋人同士という感じだった、それにこの子結構可愛い。
「お邪魔みたいね」
「・・・ごめん・・・ちょっといま話が盛り上がってるところなんだ、だから悪いけど・・・」
「・・・でもサイ、それにその子誰?」
サイはため息をつくと私に言った。
「君には関係ないだろ、もう俺達はなんの関係もないんだから教える義理はないね、分かったら黙って出てって」
「分かったわよ」
「・・・さ、話の続きしようか」
私に対するときとは態度があきらかに違った・・・でももう無視してサイの部屋を出た。
仕方なく私は部屋に戻ることにした。

一時間後のミリアリアの部屋では。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ベッドから出たキラは脱いでた軍服を着た。
シ−ツの中からミリアリアがキラを覗き込む。
「帰るの・・・?そうよね・・・フレイが・・・」
「・・・うん、そろそろ行くよ・・・ほらあんまり遅いとフレイに怪しまれるから」
「ねえ、明日は?フレイは・・・」
「明日も来れるよ、いや必ず来るよ、フレイの実戦練習はカガリに任せてあるんだ・・・ミリィ・・・じゃあおやすみ・・・それにしても君をこういう関係になるなんて思わなかったよ・・・」
そう言うとキラは部屋を出た。
「・・・・・・」
そう・・・キラと寝た、私はキラと寝た・・・キラに私の全てを奉げた・・・初めてだった、キラを慰めるつもりで私はキラと長いキスをした・・・そして・・・私からベッドに誘った・・・キラは応じてくれた、キラに抱かれたことに私は後悔していないわ、いえそれどころか私は満足してるわ。
キラ・・・あの時イ−ジスをもっと早く倒していればト−ルは死なずにすんだわ・・・キラ・・・私と絶対結婚してもらうわ・・・それがキラの私に対するせめてもの責任よ・・・ト−ルの代わりになってね・・・じゃなきゃ許さない・・・絶対私と結婚せてもらうわ、私はあの女とは違う、フレイのように戦争の道具として利用しようなんて考えてないわ・・・でも・・・私を抱いたからには結婚してよね・・・結婚して・・・。
そして呟いた。
「キラ・・・結婚してよね・・・結婚・・・」
私はキラと寝たわ・・・これでキラは私の虜よ・・・。
「ははは・・・ははは・・・」
私は笑った・・・頬に涙が溢れているのにも気付かないくらい・・・キラは私の虜よ・・・キラに抱かれることくらいなんとも思わなかった、だって私達夫婦になるんだから・・・それに・・・。

213過去の傷・作者:2004/04/01(木) 23:06
>>ザフト・赤毛の捕囚
ミコトちゃん・・・たいかにプルやロザミィに感じが似てますね、イザ−クも大変そうで、でも彼の以外な一面を見れた気がします。
>>翼たち
ナタルさん頑張ってますね、それよりこの大物は一体?二人とも海にダイビングですか?遠くから見てるのはマリュ−さん?それとも・・・
>>The Last War
アスランが覚醒してますな、カミ−ユみたいだ、この場に人間はいない、ある意味怖いですね。
アスランはアストレイを倒すことができるのか?そして自分は?

214流離う翼たち・446:2004/04/01(木) 23:16
 2人の珍妙な釣りを、停泊しているパワーのウィングから眺めながらアルフレットは大笑いしていた。

「だあっはっはっはっは、キースの奴、今までに見たこともねえような焦った顔してやがる!」
「・・・・・・おっさんよお、流石に覗きは情けなくねえか?」

 呆れたように肩を落として忠告するオルガだったが、アルフレットにはかすり傷も与えられなかったようだ。それどころかアルフレットはいかつい顔にふてぶてしい笑みを浮かべて詰め寄ってくる。

「何言ってやがるオルガ、他人の色恋沙汰なんてのは最高の笑い話じゃねえか。これを楽しまねえで何を楽しむ!?」
「力説するなよな」
「たく、若いくせに枯れてるなあ、お前」
「うるせえ、馬鹿なこと言ってるんじゃねえよ!」

 枯れてる、といわれたのが余程気に障ったのか、オルガは殺気さえ込めてアルフレットを睨み付けたが、それくらいで恐れ入るようなアルフレットではなかった。

「へっ、なら吼えるだけじゃなく、実践してみな」
「な、なにをだ?」
「基地の女の子を引っ掛けて遊びにでも行って来いって言ってるんだよ。面は悪くねえんだし、ガラの悪ささえ何とかすれば結構もてるぞ」
「余計なお世話だ!」

 アルフレットを怒鳴りつけると、オルガは「付き合ってられるか」と言って艦の中に引っ込んでしまう。

「何処に行くんだ?」
「MSの整備だよ!」

アルフレットの問いに叩きつけるように返してオルガは視界から消え去った。それを面白そうな顔で見送ったアルフレットは、やれやれとウィングの手摺に背中を預け、空を流れていく雲に視線を移した。

「余計なお世話だ、か。まあ、少しは成長したって辺りかな」

 オルガは気付いていないのだろう。昔のオルガは話しかけても一言も口を聞かず、全てに興味を持たない男だった。やる事が無ければ一日中寝るか文庫本を読むという奇妙な生活をし、艦のクルーとは決して交わろうとはしなかった。いや、クルーに興味を持っていなかったのだ。
 それが、今では自分のMSの整備をするようになり、整備兵などの僅かな範囲ではあるが言葉を交わすようになった。自分を嫌う素振りは見せているが、こうして話に付き合っているのだから面白い。

「似てるよなあ、お前とあいつは」

 言われれば2人ともそれを激しく否定するだろうが、アルフレットから見れば2人は実に良く似ていた。今、視線の先にある堤防で必死に竿と格闘している男も、昔はああして俺に逆らっていたものだった。今では良い思い出話だが、あの頃には血で血を洗う殴り合いさえした事があるのだ。まあ、その時の経験が今に生かされ、手より先にスタンガンや模擬弾を込めた銃が出るようになったのだが。
 なんとなくオルガがキースの被害者のような気もするが、まあそれはどうでも良い事なので無視する。

「まあ、後はお前に任せた方が良いかもな。俺よりお前の方があいつを分かってやれるだろ。何しろ同類なんだからよ」

 呟くアルフレットの見ている前で、魚とのバトルに敗れた2人の体が堤防の上から海に向けて仲良くダイブしていた。

215流離う翼たち・作者:2004/04/01(木) 23:27
>> ザフト・赤毛の虜囚
赤服、この性格で赤服!? イザークのプライドがどんどん安っぽく思えてきましたw
しかし、ヒビキですか。しかもコーディ。まさか、メルデルさんのお子さんですか?

>> The Last War
アスランがバーサクしてる。アレクセイさんがビビるとは
キラは何処で何をしている?

>> 過去の傷
サイ君、完全に自分の世界を作ってますね
しかしキラ君、今の君の立場は非常に危険だ。連続の浮気はいけない
ところでティファはいつ出るのでしょう?

216私の想いが名無しを守るわ:2004/04/02(金) 01:54
>>流離う翼たち
オルガの描写いいですね。こういう普通のリアクション
を他の二人と違ってオルガには期待してしまいます。
>>過去の傷
もはやキラは光源氏のように寝室を渡り歩いて物語作って
いってますね。しかし本編の台詞が巧く当てはまってますね。
>>The Last War
アスランの修羅覚醒?には興味ありますね。ビームサーベル
で止めちゃうのはすごいですね。あとはキラの次の一手でしょうか。
>>ザフト・赤毛の虜囚
イザークがフレイ様の話に耳を傾ける場面はダムAの漫画みたい
な乱暴者モードを、この時期、脱していたと思うので違和感なく読めました。
>>ヘリオポリス・1.24〜
フレイ様のキラ分析は結構当たっているかも。「キラはいつ帰って
くるんだろう?」←フレイ様の本音かどうかわかりませんが面白いです。
>> 散った花、実る果実
リスティアも少しずつフレイ様の話を受け入れているようですね。逆に
クルーゼはフレイ様とガチで向き合わない分、言葉に嘘っぽさが充満してますね。
>>キラ♀
タカツキの小悪党っぷりが最高でした。エロ台詞がHビデオみたいで
シチュエーションに酔ってますね。しかし最後のフレイ様とキラの心境
の変化はそれまでのタカツキへの関心をふきとばすくらい興味津々です。

217ザフト・赤毛の虜囚 41:2004/04/02(金) 02:31
7.幼子(おさなご) 8/8
[ママ、ミコト悪いことしたの?]

私は、クルーゼの部屋に戻り、ベッドで一人泣いていた。イザークに話したキラのことで、
またキラへの悲しい想いが私を苦しめた。キラを継ぐ思いを受け入れながら、未だ何も
できない私を悲しんでいた。私は、またキラのメモリチップを出して握り締めた。
結局、くじけそうになる私。今、私は切実にメモリチップの中身が見たかった。
オーブで、キラと別れ、一人でくじけそうになっていた私を励ましたキラのメールを、
もう一度見たかった。そのためなら、何でもしようと思った。でも、今は、まだ、
何をすればいいのか分からなかった。

また、ドアのコール音が鳴った。さっきのミコトっていう子だろうか。
ドアを開けると、想像通りミコトが、はちきれそうに一杯の下着の束の入った袋をもって、
やはり一杯の笑顔を私に向けていた。

「ママ、下着いっぱい、いーっぱい持ってきた。それと、あったよナプキン」
「あ、ありがとう」

「それと、これに使ったの入れて。アタシ呼んでくれたら持って行くから」

私は、ナプキンと可愛い模様の入れ物を受け取って、思わず感謝した。
確かに、これで私はずいぶん助かる。さっきは、分からない素振りだったけど、
どうしたのだろう。

「本当に助かるわ。よく分かったわね」

それに、ミコトは嬉しそうに答える。

「えへ、ミコト、全然分からなかったの。それで、イザークお兄ちゃんに聞いたら、
 代わりにいろんな人に聞いて用意してくれた。イザークお兄ちゃんて親切だね」

「なんですって!!」
私は耳まで真っ赤になった。そして、怒鳴りつけていた。

「なんてこと話したのよ! 私を笑い物にする気! 人のこと捕虜だと思って見下してるんでしょ!!」
「ママどうしたの? なんで怒ったの?」

「私は、アンタのママなんかじゃ無いわ。そんな風に呼ばないでよ!」
「ママ、ミコト悪いことしたの? どこが悪かったの?」

「アンタなんか嫌いよ。とっとと、どっかへ行って!!」
「ママ、怒っちゃヤダ。怒っちゃヤダ」

泣きそうな顔で見つめるミコトを無視して、私はドアを閉めた。
まだ、呼んでいるらしいミコトの声がしばらくしていたけど、やがて、小さくなって
聞こえなくなった。

「なによ…… 泣きたいのは、こっちよ」

でも、ミコトの泣きそうな声が耳について、さすがに悪いことをしたような気がしていた。

しばらくして、ミコトのことで、キラへの悲しい想いを、少しの間は忘れられたことに気がついた。

218ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/02(金) 02:36
話は続いてますが、現在の章はこれで終わります。続いて短い次章に行きますが、その前に、
フレイSSの番外的な一編の第二段を挟みます。久々にヴィア先生に登場してもらい、
皆さんの疑問にお答えします。

>>The Last War
お待ちしてました。アスランの異常な戦闘能力の表現スゴイですね。
次のアスラン視点、キラ視点の話も期待してます。

>>過去の傷
キラやってしまいましたか。しかし、ミリィの「結婚」とフレイの「復讐」が同じことに見えるのはなぜ?
キラも後腐れ無くしないと…… って、それはそれで、ナイフ持ったミリィに追いかけられるのだろうけど……
サイもアレだし、フレイ様、男性不審になるのでは?

>>流離う翼たち
アルフレットさん登場。いい感じで忘れかけてました。恥ずかしい過去を暴くだけで無い、
印象が残りましたです。しかし、オルガは、このSSでは、どんどん人間ぽくなってますな。
それにしても戦いに破れた二人、ナタルがアタリをとった魚は、カジキだったのか、それともグラブロだったのか?

219ヘリオポリス・1.24〜:2004/04/02(金) 03:02
>>赤毛
イザーク、どんな顔したんだろう…
ところで彼女、例の萌え隊員ですか?本編では胸はなかったけど…

220過去の傷・97:2004/04/02(金) 21:45
「ただいま」
部屋に戻ったキラは・・・。
フレイはシ−ツを被っている、シ−ツの中から声が聞こえた。
「こんな遅くまでどこ行ってたのよ」
「え?・・・うん、ちょっと」
「ずっと探してたのよ!心配したんだから!」
フレイはシ−ツの中から出てくるとキラを叱りつけた。
「なんで勝手にどっかに行くわけ?私があんたの手を拒絶したから!?」
「・・・・・・」
キラは下を向いた・・・やっぱりそうなんだわ・・・それで・・・。
「馬鹿ねえ・・・なに誤解してるんだか・・・あれは違うのよ、ミリアリアのことが頭をよぎっちゃってついね」
ミリアリア・・・その名前にキラは反応してしまう。
ミリィ・・・僕は今日は彼女と寝た・・・それはなりゆきだった・・・ミリィは優しい、それなのにフレイはこういうふうにすぐ怒る・・・ミリィは優しい。
「そう・・・」
そう言うとキラは寝た。
このところフレイは僕に冷たい、やっぱりそうだミリィの言う通りだ僕のこと本気じゃないんだ、そうか・・・結局そうなんだ、フレイは。

次の日の朝。
「キラ・・・?」
朝起きたらキラがいない。
そうだ・・・今日は実戦だ。
「さあてと・・・ハッチに向かおうかしら」

「で、カガリ・・・アストレイ三機って?」
「ああ、つまりはだな・・・」
「「「カガリ様〜」」」
「お、来たなお前等!」
え・・・?この子達は・・・?まさか・・・。
「あの・・・カガリもしかして・・・」
「その通りだ、こいつ等が今日のお前の相手になる」
キラになれなれしくしているマユラとかいう女と昨日サイの部屋で見かけたメガネの女の子、それにもう一人の子も私と同じくらいの年齢ね。
「よしじゃあ私ブリッジに行ってるからな」
そう言うとカガリは出て行った。
「「「よろしくお願いします〜♪」」」
「・・・ふん」
私この子達なんだか好きになれない。
「あ・・・サイさん」
「邪魔しちゃ悪いか・・・私達は先行くね」
そう言うとアサギとマユラは奥に向かった。
「・・・サイ」
「やあ・・・今日実戦なんだって?」
サイはフレイは無視するように横を通り過ぎるとジュリに歩み寄った。
「はい」
「頑張ってね、あんまり無理しちゃ駄目だよ・・・いいね」
「はい、ありがとうございます、ジュリ頑張ります」(やっぱりサイさん優しい)
そう言うとジュリも二人の方に向かった。
残ったフレイとサイは・・・。
「あの・・・サイ」
「・・・なに」
「なに・・・ってその・・・私も出撃するの」
「そう」
そっけない態度を取るサイ。
「私がモビルス−ツに乗るのよ?」
「・・・そう・・・でも俺は君がモビルス−ツに乗っても乗らなくても関係ないし、興味もないから・・・じゃ」
そう言うとサイは去って行った。
さっきの子と私に対するときのあきらかな態度の違いに私は嫌悪感を覚えた。
サイ・・・そういえばキラは?なんで来てくれないの?

そのキラは・・・ミリアリアの部屋に来ていた。
「ミリィ、良かったね謹慎ラクスさんが軽くしてくれて」
「ええ」
キラ・・・貴方はフレイとは合わないわ、だから私が恋人になってあげる、そして結婚してあげる。
愛してあげる・・・ト−ルの代わりとしてね・・・結婚してあげる・・・きゃはは、一生離さないわ・・・死ぬまで貴方から離れないわよ私・・・。

221私の想いが名無しを守るわ:2004/04/02(金) 23:50
……。この話においてミリィのどこが優しいのか、
それはキラにしかわからないな。

222ザフト・赤毛の虜囚 42:2004/04/03(土) 03:19
番外 2
[ヴィアとミコト]

静かな時間の流れる病室、ひとつだけ置かれたベッド。そこで半身を起こして
外の景色を見る私。外の景色は明るく晴れ渡っている。しかし、その空は
人工的なもの。周期的に訪れる雨に、住んでいる人は、明日の天候に一喜一憂すること
さえなくなっている。いずれにしろ、ずっと病室にいる私には関係ない話だけど。

その時、病室のドアが開いて、年配の男が入って来た。

「ヴィア、その後、具合はどうかね?」
「大丈夫、変わりはありません。ヒイラギ博士」

ロナルド・ヒイラギ博士は、かつて、私がいた研究所の所長を務めたこともある人だ。

「研究所は、その後、どうなりました?」
「またバイオハザードがあってね、研究所は封鎖されている。今、コロニー・
 メンデル自体から退去命令が出て取り調べになっている」

「そうですか」
「君の家も、もう、どうなったのかも分からないな」

「いいんです。ユーレンは死んだから。もう、私もあそこに戻る必要はありません」

私の言葉にヒイラギ博士は辛そうな顔をした。
しばらく、沈黙が流れた。その後、ヒイラギ博士は独り言のように呟いた。

「あの双子は、その後、どうなったかな?」

私は、今だ双子と呼ばれることに顔を曇らせながらも、それに答えた。
「私のカガリは、カリダに任せたわ。私はカリダを信じてる」

地球のオーブに去ったカリダのことが思い出された。あの、いじらしいまでに、
かたくなな瞳が記憶に残っている。

「キラも一緒なのかな?」
ヒイラギ博士の問いに、私は無言で答える。そんなこと言うまでもないでしょ……

私は、もう一人の子供について想いを馳せる。

「あの女の子、どうなったかしら。ユーレンとメルの子」
「人工子宮で育成していたが、ユーレン・ヒビキ博士が亡くなられて、人工子宮の管理が
 うまくいかなくなって、かなり危ないところを、ようやく助かった」

「予定より長い間、子宮に入っていたみたいだけど大丈夫だったの?」
「正直、なにかの後遺症が残るのかもしれない。だが、それは今後のことだ。今は無事、
 成長しているよ」

「名前は?」
「まだ付けていない」

「私が付けていいですか?」
「頼むよ、父も母もいない子だ。君が付ければ浮かばれることだろう」

「ミコト……」
「ミコト?」

「東アジアの漢字で『命』と書いてミコト。あの女の子、ユーレンとメルから命を受け継いだのよ」
私は、想いを確かめるように言った。

「それにミコトは一人じゃないわ。兄妹。お兄さんがいる。それに、私のカガリも、ミコトの
 腹違いの姉よ。ミコトは決して一人じゃない。 …… そう、そうね、キラもね……」

「今は、離れてしまっているけど。そうだな。いつか出会えるかもしれないな」
「きっと出会えるわ」

「一度、ミコトを連れて来ようか?」
「今は、やめておいて。正直、素直な気持ちで、ミコトを抱けるかは分からない」

私は、悲しい気持ちで言葉を続ける。

「私、ユーレンもメルも許せないと思う。でも、二人とも、もう一度会いたくてたまらないの。
 また、仲良く話したいの。初めて出会った時のように。だから、私、こんなこと……」

また、涙が溢れてきていた。もう、涙も枯れたと思っていたのに。

「ヴィア、眠りなさい。君には休息が必要だ」
「はい、分かりました」

私は、ベッドに横になった。窓の天候は、いつのまにか曇り、雨が落ちそうにになっていた。
私がずっと見ている周期とは違う。けど、それが当たり前なのだ思った。
そんな予測できないところが天気というものなのだから。

「おやすみ、ヴィア」
ヒイラギ博士はドアの前で言った。私は言葉を返した。

「おやすみなさい」

223ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/03(土) 03:26
ミコトの正体に関しては、こんなところです。SS中のバイオハザードは公式年表とは別のもので、
まだコロニーの廃棄には至っていません。

ミコトの設定に関してはプルやロザミィは意識に無かったです。メルデルのストーリー上必要だった
キャラを、フレイの話相手として当てはめた結果出来上がりました。TVの萌え隊員はヘアスタイルなど
若干、意識にありましたが、その他の容姿は、設定上から、SSの描写のようになっています。

名前は、わざと某アニメのヒロインにダブらせましたが、まさか、アバレのラストでも出て来るとは……

>>過去の傷
すれ違いまっしぐらですね。ミリィも、いい感じで壊れてる……

224ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/03(土) 09:38
「ザフト・赤毛の虜囚 42」で誤解されそうな表現があったため下記の通り訂正します。
読み直しが足りませんでした。すんません。

>「キラも一緒なのかな?」
>ヒイラギ博士の問いに、私は無言で答える。そんなこと言うまでもないでしょ……

--->

>「キラも一緒なのかな?」
>ヒイラギ博士の問いに、私は醒めた心のまま無言で答える。そんなこと…… そんなこと
>言うまでもないでしょうよ……

225流離う翼たち・447:2004/04/03(土) 23:24
 その頃、フレイとカガリとミリィは家で軽い二日酔いに苦しんでいた。いや、正確にはカガリとミリィが苦しんでいた。

「ううう、頭が重い、気持ちも悪い」
「頭痛がする、艦長って化け物?」

 青い顔をしてソファーに伸びている2人に水を渡しながら、フレイは驚異的な酒量を見せたマリューに恐れを抱いていた。まさか、3人がかりで完全敗北間際まで追い込まれるとは。

「やるじゃない艦長、まさかこの私を潰す寸前まで追い込むなんて」
「フレイ、お前も十分化け物だ〜」

 ソファーから死にそうな声でツッコミを入れて来るカガリに、フレイは少しむっとしてしまった。両手を腰に当ててカガリの前に仁王立ちしている。

「ちょっとカガリ、誰が化け物よ!」
「フ、フレイ〜、大声出さないで〜」
「頭が、頭が割れる〜」

 苦しそうにうめき声を上げる2人。フレイはやれやれと呆れながらもこれからどうしたものかと思案を巡らせた。確か今日はあのアズラエルが3時ぐらいに迎えを寄越すと言っていた。ならばそろそろ来るのだろう。でも、この2人をこのまま置いて行くのもなんだか気が引けてしまう。

「ええと、2人とも、トールか誰か呼んでおこうか?」
「いや、それは困る・・・・・・」
「こんな格好、見せられない〜」

 言われてみて、改めてフレイは頭を抱えてしまった。下着だけのカガリに皺だらけのワンピースを着ただけのミリィ、確かに男どもには見せられない姿だ。いや、ミリィはトールになら構わないかもしれないが。

「確かにカガリは不味いわね。かと言って艦には他に頼めそうな女性はいないし」
「大丈夫だ〜、死んだりしないって」
「フレイは安心して行ってきなさい〜」

 フルフルと片手を上げて答える2人だが、その様子はフレイにはまるで墓場から蘇ろうとするゾンビのように見えた。

「そ、そうなの、頑張ってね。私はとりあえず制服に着替えてるから」
「おお、あの白い制服か」
「いいなあ、私も着たい〜」
「そのうち支給されるわよ」

 頭が痛い割には元気な2人を一瞥して、フレイは着替えをしに自分の部屋へと戻っていった。そこで支給されたばかりの連合士官制服に袖を通す。いくら洒落っ気のない軍服とはいえ、やはり真新しい服を着るのは楽しいものだ。しかも士官制服は見習い制服よりも見た目がカッコよく、少し大人になれた気がしてしまう。
 まあ、フラガやアルフレットが聞いたら「そんな事を言ってるうちは子供だよ」とか言われるのだろうが。
 鏡に向かい、くるりと回ってみる。うん、私は何を着ても似合う、と自画自賛してからようやく空しさに気付き、ちょっと気落ちするフレイだった。

226流離う翼たち・作者:2004/04/03(土) 23:35
>> ザフト・赤毛の虜囚
イ、イザークよ、一体どうやって集めたんだ? 何となく変な噂が立ちそう
しかし、ミコトが妙に精神年齢が低いのは後遺症のせいですか。脳障害でもでたのかな
しかし、障害者は直観力では正常者より優れている場合が多いと聞きますが、ミコトがママと言ったのはそのせい?
でも、何故にイザークがお兄ちゃん?

>> 過去の傷
相手は3人娘ですか。M1という時点で終わってる気も・・・・・・
しかし、これはミリィを危険と言うべきか、浮気者のキラを責めるべきか

227過去の傷・98:2004/04/04(日) 00:06
機体フリ−ダムに搭乗したフレイだが・・・。
キラ、なんで見に来てくれないの・・・?私達付き合ってるのよ、なのになんで?いろんなことをお互い経験した仲じゃない・・・。
(フレイさん、いまは戦闘に集中してください、もうすぐ練習始まりますよ)
(あ、ありがとうティファ)
<よし、じゃあ実戦開始だ!>
「相手はアストレイ三機、あの子達か・・・キラ・・・」

シ−ツの中から出て、ベッドに座る、キラも隣の座る。
「今日一日いてよね」
「分かってる」
キラにとっては昨日ミリアリアに慰めてもらったことは相当キラ自身救われたことだろう、そしてあのあとミリアリアと・・・フレイ以外の女の子と寝てしまった、関係を持ってしまった・・・。
「あのさ、ミリィ」
「なに?」
「その・・・ミリィはディアッカのこと、その」
「ああ、あいつね・・・あいつとはただの知り合いよ、まあ友達に近いかもしれないけどね」
ディアッカ・・・まさかあいつの名前が出てくるなんて・・・キラなにか勘違いしてる、私があいつに惚れてると思ってる、私とあいつが恋人に近い関係だと思ってる・・・違う!あいつとはただの知り合い・・・まあ悪い奴じゃないけど・・・最初の頃は知り合いにすらなりたいとは思わなかった、それどころか私あいつのこと殺そうとしたこともあった、でも・・・それからあいつのことが少しだけだけど分かってきた・・・でも恋愛感情なんて持ってない、いまでも。
「そう、ならいいんだ」
私はキラを抱きしめた、胸まで押し付ける、胸の膨らみをキラに感じさせる、そう・・・キラだ、私はキラと結婚するの・・・そう決めたの、キラには私が相応しい、フレイではキラを幸せには出来ない、そもそもいま私が一人なのは誰のせい?キラには私と付き合い結婚して私を幸せにする義務があるの、キラは私と一緒になるのよ、私がそう決めたの。
「フレイどうだった?」
「フレイ・・・フレイはすぐ怒るよ、でもミリィは優しい」
優しい?私が?・・・キラを慰めてよかった、キラと寝てよかった、そう・・・キラは私の虜になったのよ・・・。
「キラ・・・私ずっと貴方の側にいるわ」
「ありがとう」
「キラ、私フレイよりも貴方との付き合い長いわよ、そしてあの子より・・・フレイよりも貴方のこと知ってるつもりよ・・・」
そう、私はフレイよりキラとの付き合いは長いのだ、キラはフレイに密かに憧れていたというのはキラのフレイに対する反応を見てれば一目瞭然だった、でもキラはフレイをずっと遠くから見ていただけ、そうなのだ・・・私のほうがあの女よりキラとの付き合いは長いのだ。
「ミリィ・・・」
ミリアリアを見つめたキラは思った、今一度見たがこうしてみるとあまり気付かなかったがミリアリアは可愛い、ほんとに可愛い・・・こんな可愛い子が近くにいたなんて・・・フレイだけじゃない、ミリアリアも美少女だ。
「・・・・・・」
結婚・・・キラ、幸せにしてあげるわ・・・そのためならこんな私の唇なんて何回でもやるわ。
「キラこっち向いて・・・」
キラが私に顔を向けた、
「ミリ・・・」
私はキラの肩に両手を回すと唇に唇を強く押し付けた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
驚いていたキラだが、静かに瞳を閉じて自分も唇を押し付けた。
そうそれでいいのよ、これでいいの・・・。

228ザフト・赤毛の虜囚 43:2004/04/04(日) 14:48
8.歓喜 1/6
[この指、この力。これは、キラから貰ったもの]

私は、少し清潔になった。クルーゼの目を盗んで頻繁にシャワーを浴びるようにし、汚れた
下着も替えている。ミコトの持ってきてくれたものも使ってはみている。ただ、結局は、
下着をこまめに変えた方が良いみたいだ。やはりミコトが持ってきてくれた大量の下着が
役に立っている。これで、キラにも、パパにも恥ずかしくない。

でも、泣きそうな想いは変わらない。相変わらず、何も出来ない捕虜の私。キラを継ぐために
できることが何も無い。くじけそうな想いを励ましたい。キラのメモリチップの中身を見たい。
でも、見るためのパソコンが無い。

クルーゼは、自分のパソコンを常に持ち歩いていて、私には決して使わせなかった。
どうすれば、キラのメモリチップを見ることができるのだろう。

クルーゼは、今日は部屋で書類入れに一杯になった大量の書類を片づけている。時々、パソコンで
清書してプリンタで打ち出したりしている。でも、その量は膨大だ。それに、事あるごとに新しいものを
作って書類入れに積みなおしている。とても、終わりそうにない。クルーゼは、疲れているようだった。
時々、ため息をついている。クルーゼの部屋のベッドは、私が占領している。最近はソファで寝ているのを
見るのも希だ。いつ休んでいるのだろう。疲れるのも無理はない。

クルーゼがパソコンで書類を打ち込んでいる時、通信のコール音が鳴った。それと話した
クルーゼは、しばらくぶりに、私の方を向いて言った。

「フレイ・アルスター、私は用事で出て行くが、ちょっと頼まれてくれはしないだろうか」
「はい?」

「この書類を、清書して打ち込んでくれないか。急ぎの書類なのだよ。私が出ている間に
 少しでも進めておいてくれたまえ。ただし、パソコンの他のデータは見ないように。
 見ればログが残るようにしてある。もし、見たことが分かった時は、君は深海に放り出されることになる」
「はい、分かりました」

私は捕虜。抵抗の意思は見せても、抵抗しきれるものでは無い。クルーゼの脅しは嘘ではない。
私は従うことにした。

部屋を出て行ったクルーゼに変わって、机の椅子に座った私。これを使えば、キラのメモリチップを
見ることができる。誘惑が私を襲う。それに、私は耐え、書類に目を通し、パソコンのキーに手を
触れる。その途端、私の指は、私の意思を離れる。別人のもののように動きだす。
それに伴い、目の前の手書きの書類の文字は、私の意識から見えなくなり、指に直接つながったようになる。
それは、文字の羅列としてパソコンの画面に並んで行き、そして、その文字さえ、高速に流れて行き、
私には読み取ることができない。あれよあれよという間に一枚が終わり、書類をめくる。

私の、この指、この力。これは、キラから貰ったもの……

229ザフト・赤毛の虜囚 44:2004/04/04(日) 14:51
8.歓喜 2/6
[素晴らしい、素晴らしいよフレイ・アルスター]

さっき出て行ったクルーゼが、すぐに部屋に帰ってきた。あれから、5分と経っていない。

「フレイ・アルスター、済まないな。用事は必要なかった。やはり、その書類は、私がやる。
 まあ、まだ書き出しもしていないだろうが」
「いえ、終わりました」

私は、プリントアウトした書類を見せた。それは、10ページにも及んでいた。クルーゼは驚いて、
それに目を通した。

「ふむ、間違い無い。誤字も、すべて訂正されている」
クルーゼは関心したように声を出した。そして、別の書類を、私に渡した。

「この書類も清書してみてくれないか」
私は、それを書類台におくと、また、パソコンのキーに触れた。私の指が、再び踊り出す。
それを、クルーゼは信じられないように見つめていた。そして、私の手を止めさせた。

「ちょっと、止めてくれたまえ。今度は、私の話す言葉を打ち込んでみてくれないか」
「はい」

私は、クルーゼの意図も分からず、それに従う。

「ユーレン・ヒビキ、ヴィア・ヒビキ」
┌──────────────────────────
│ユーレン・ヒビキ、ヴィア・ヒビキ

「L4コロニー・メンデル、遺伝子研究所。彼らの研究成果は驚くべき内容だった……」
┌──────────────────────────────────────
│L4コロニー・メンデル、遺伝子研究所。彼らの研究成果は驚くべき内容だった

クルーゼの話す内容は、コンマ数秒の遅れで、パソコンのモニタに文字として並んで行く。
話す内容には、かなり専門的な内容も含まれているようだけど、ただ、聞いて、
その通り打ち込む分には、問題なかった。

クルーゼは言葉を切った。そして、はしゃいだように話し出した。

「素晴らしい、素晴らしいよフレイ・アルスター。まさか、君に、こんな才能があったとは。
 コーディネータなら、この程度のことができるものは珍しくないが、ナチュラルの、
 しかも君ができるとは思わなかった。君は、なんと素晴らしいのだ。
 少し待ってくれたまえ。君専用のノートパソコンを用意させよう。
 私の仕事を手伝ってくれたまえ。やってくれるね」

私に、ノートパソコンをくれる? ということは、キラのメモリチップを見ることができる。
私は迷うことなく答えた。
「はい、やります」

「君は、素晴らしい。ははは。待っていてくれたまえ。今、用意させよう」
クルーゼは、自分のノートパソコンを閉じると、持って部屋を出て行った。

私は、『素晴らしい』を連呼され、少し、くすぐったい思いで、それを見送った。
指だけでなく、私の心も躍っていた。

230ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/04(日) 14:55
フレイSS新章です。
ちなみにミコトは、最初フレイを、お姉ちゃんと呼んでいたように、親しみを持った少し年上の人は誰でも、
お兄ちゃん、お姉ちゃんと呼びます。おじちゃん、おばちゃんとの境目は不明。クルーゼは隊長がついているのでセーフ。
パパ・ママだけは血縁を嗅ぎ取る直感と言うことにさせてください。

>>流離う翼たち
フレイ様の肝臓は化け物か。マリューさんにも匹敵するとは……
とりあえず、TV本編より先に、フレイ様、グレーの連合仕官服に、お着替え。少尉だから肩章も
マークが入って、さらにカッコいいはず。それとも、ナタル専用と同じ黒かな?
そして、ミニとニーソから変わって、ストッキングに映える脚のラインとタイトスカートの腰回りで男共を悩殺?
でも、胸揺れは注意ね。しっかりしたブラをしましょう。

>>過去の傷
キラ、まったく、人の心の裏を読めないのだから。
ミリィもディアッカのこと、そんなこと言うなんて…… ディアッカが、この場にいれば違うのだろうけど。

231流離う翼たち・448:2004/04/04(日) 21:26
 暫くすると、アズラエルからのものと思われる迎えの車がやってきたので、フレイはそれに乗り込んでアズラエルの店とやらに向かった。黒塗りのリムジンという所がいささか怪しさを感じさせる上、完璧な防弾仕様車だったりするのが少し怖い。運転手曰く、「アサルトライフルでも弾けます」だそうだ。
 それを聞いたフレイは表情を引き攣らせたものだが、車は別に襲撃される事もなく無事に目的地に到着した。そこは、一見するとごく普通の小さな中華料理店であった。看板には『海燕』と書いてある。
 一瞬の躊躇の後、フレイはその扉をくぐった。中には自分達以外にも客がいるようだが、奥のテーブルについているアズラエルとノイマン、フラガが自分を見つけてくれた。

「フレイ、こっちだ」
「あ、ノイマン中尉」

 こういう状況では顔を知っている人がいるのは嬉しいものだ。フレイはトコトコと3人の所に来ると、アズラエルにぺこりと頭を下げてノイマンの隣に腰掛けた。そして、ふと視線を感じてそちらを見てみれば、何故かフラガがニヤニヤとこちらを見ていた。

「な、何ですか?」
「いや、馬子にも衣装だなっと思ってさ。なかなか似合うじゃないか」
「それって、褒めてるんですか?」

 馬子にも衣装ってのは余り褒め言葉にはならない。フレイの視線にフラガは右手を顔の前で振りながら悪い悪いと謝った。

「いや、別に悪気はないぞ。似合ってるのはマジだから。なあノイマン」
「ええ、そうですね。でもまだ制服に着られてますか」

 サラリと毒舌じみた事を言われ、フレイはちょっと気落ちしてしまった。まあ、服なんてものは着ていればそのうち板につくものだから、今はまだ仕方が無いのだが。
 それから少ししてやはり支給されたばかりの士官制服に身を包んだキラとトールがキースに引き摺られるようにして現れた。キラにしてみればブルーコスモスと食卓を囲むなんてのは御免こうむりたいだろうから嫌がって当然だろう。でもまあ、連合の士官である以上、我侭を通す事も出来ないのでキースが引っ張ってきたのだが。トールは単純にアズラエルが嫌いだからだったりする。
 そして最後にやってきたマリューとナタルが加わった事で、やっと面子が揃った事になる。だが、アズラエルは時計を見て少し渋い顔になった。

「悪いね。もう少し待ってくれるかな」
「まだ誰か来るのでしょうか?」
「ああ、僕の部下みたいな奴だけどね。今ここに来ているんで、ついでに声をかけておいたのさ。君達も会った事があるはずだよ」

 アズラエルに関係がある人物で自分達が会った事がある。そんな人が居ただろうかとフラガたちは考えただが、生憎とそんな人物は浮かんでこなかった。

232流離う翼たち・作者:2004/04/04(日) 21:38
>> 過去の傷
ミリィさん、前にディアッカを求めた貴女は何処に?
ティファ久しぶりに登場w

>> ザフト・赤毛の虜囚
クルーゼ、何となくマジで仕事減らす事が出来そうだと分って喜んでるのではw?
フレイ様はお茶汲みじゃなく秘書みたいになってしまいそうですな

233The Last War・Inside1/2:2004/04/04(日) 21:54
アスラン・〜Power〜 

 ―――力は魔物だ。それは強大であればあるほど御すことが難しくなる。そうすることが出来なくなった者はその魔力に魅入られ、心を食われる。その先にあるのは自らの破滅だけだ。俺の父、パトリック・ザラがそうだったように・・・。あの日を境に、俺はそう考える様になっていた。
 その所為か、俺は力を持つことに恐れを抱くようになっていった。何時しか俺も自分の力を押さえられなくなって、自分自身を見失ってしまうのではないかという不安が、常に心の中にあったからだ。
 そう言えば、ラクスからS.ジャスティスを渡された時、俺はその不安を彼女にこう漏らしたことがある。

「俺達は、こんな力をどれほどまで持たねばならないんでしょう?」と。

 すると、彼女はこう答えた。

「力を持つ者に必要なのは、それに決して溺れることの無い強い心です。その心を貴方がお持ちだからこそ、私は貴方にこの機体を託すことを決めたのですわ、アスラン」

 彼女が俺のことを信頼してくれていることは分かった。だが俺には、その信頼に応えるだけの自信が無かった。真実を知ったあの時から、俺の心には暗い影が差すようになっていた。

 「戦争による人類の統制」、それが奴等ファントムの掲げる理想というものらしい。・・・そんな下らないものの為に、ニコルは死んだ。それだけじゃない。母上も、ミゲルも、ラスティも、そしてキラの仲間達も死んだ。多くの人々が、死んだ。奴等に、殺されたも同じことだ。
 俺は奴等を憎んだ。徹底的に奴等を叩き潰し、皆の無念を晴らしてやりたいとまで思った。そして改めて誓った。もう二度と、あんな悲劇を繰り返させはしない、と。それなのに・・・、結局全ては奴等が描いたシナリオ通りに進んでいた。

 ・・・俺は、今まで一体何をしてきたんだ?その先に平和な世界があることを信じ、死に物狂いで戦ってきた。だが、それで何が変わったというんだ?・・・何も変わってはいない。あの時のまま・・・、いや、クリスやユフィーといったあの戦いと関わりが無かった者まで巻き込んでしまっている以上、あの頃より悲惨なものになってしまっていると言える。

「どうしてだよ!?どうしてお前が戦わなきゃならないんだ!?戦うこと以外にも平和の為に出来ることなら、幾らでもある筈だ!!」

 カガリ、お前の言う通りだったのかも知れないな。だけど俺は不器用だから、こんな生き方しか出来ないみたいだ。
 俺の手は、すでに血で塗れている。いつか、その報いを受ける時が来るだろう。その時が来るまで、俺の命を次の時代を生きる者達の為に喜んで捧げよう。それが俺に出来る、只一つの償いだから・・・。
 今の俺では、奴には勝てない。奴の力は、人の持ち得るそれを超えている。それなら、俺も人で無くなれば、奴に勝てるかも知れない。

 ラクス、結局俺は貴女の信頼を裏切ってしまった。
 カガリ、俺はもうお前と会うことは出来ない。こんな俺の姿を、お前にだけは見られたくない。
 キラ、お前は新しい時代を生きろ。お前の代わりに、俺が戦う。
 そして皆、済まない。この男を倒すために、俺は今EYESの理想に反する。

 ―――さあ、来い。俺の心を食わせてやる。その代わり・・・、奴を倒せるだけの力を俺に・・・、俺に、よこせ―――。

234過去の傷・99:2004/04/04(日) 22:07
ブリッジにいたカガリは。
「あ・・・アスラン」
「カガリ・・・」
なんだよ、なにしに来たんだよ、こっちは忙しいのに、まったく・・・。
「な、なにか用か?」
「これをお前に返しに来た」
そういうとペンダントのような物をカガリに差し出した。
ハウメアも護り石・・・!?アスラン・・・お前。
「どういうつもりだ?」
「・・・俺にはもう必要なくなった、俺にはこれがある」
と言うとアスランは指輪を取り出した。
なに!?なんだそれは?
「アスランそれは?」
「この指輪はラクスから授かったものだ」
そうか・・・ラクスさんが・・・そうだよな、こいつとあのお方は許婚というか婚約者同士だった・・・そうか・・・よりを完全に戻したんだな。
「そうか、分かった、これは返してもらう」(それならこれはあいつにやるか)

「マユラ!右!」
「まかせて!」
アストレイ三機とフリ−ダムの戦いは互角だった。

(フレイさん頑張ってください)
「いって、いって・・・いっちゃって!!!」
ルプス・ビ−ムライフルをアストレイ三機に放つ。

「皆よけて!」(サイさん見てくれてるかな・・・?)
「「もっち!」」
この三機連携が取れているのかぎりぎりで回避する。

<お前らこれはあくまで練習なんだからな!あまりむきになるなよ!>
カガリの声が四機に聞こえた。
<それから今日の練習はもうすぐ終わるぞ!>

「・・・んん・・・」
私とキラはキスをしている、それも長いキスを。
私ってこんなに積極的な女だったんだ、私はなおを唇を押し付けていた、両手でキラを離さないようにしっかりとかき抱いている。
「・・・んん・・・ミリィ・・・」
キラが私を離してきた、なおも食い下がりキスしようとした私・・・それもキラは離す。
「キラ・・・どうしたの?」
「いまはもうここまでにしよう」
「どうして?私はいいのよ?」
そうか、そうよね、キラはそういう子だもんね、ほんと鈍い子、そこがまたいいんだけど・・・私はまだキスしたかったのに・・・あ・・・ちょっと頭痛が・・・。
「ええと・・・キラちょっと・・・頭痛がしてきた」
「え!?ミリィ大丈夫?先生呼ぼうか?治療室にでも」
「いいの、ありがとう・・・でも大丈夫よ」
キラがミリアリアの額を優しく触る。
「ミリィ、熱があるよ!」
「え?」
「とにかく寝るんだ!」
「え、ええ、ちょっと具合悪くなってきた」
私はシ−ツを被った。
「キラ、付いててくれる?」
「うん、ずっと付いてるよ君の側に・・・」
「ありがとう・・・ねえ」
「なに?」
「私と付き合ってくれる?」
「・・・分かった、分かったから安静にしてるんだよ、ゆっくり寝るんだ」
「ありがとう・・・少し寝るわ」
そう言うと私は寝た・・・そういえばこの頃あんまり寝てないんだっけ・・・睡眠不足も多少あるのかな。
電話をかけたキラは・・・。
「あ、サイ?うん、ミリィがさ・・・うん、分かった」

235過去の傷・作者:2004/04/04(日) 22:23
>>ザフト・赤毛の捕囚
ミコトちゃん可愛いですね!いろんな意味で。
それよりクル−ゼ隊長からあんな言葉が聞けるとは思いませんでした。
でもミコトちゃん可愛いです!(フレイ様浮気ではありません・・・な、なぜここに!?)
>>翼たち
フレイ様大活躍ですね!なにげにお酒強いな・・・。
そしてフレイ様制服もお変わりになられるのですね、またお美しくなられる・・・。
>>The Last War
こ、これはアスランの・・・。
悲しい悲しすぎます、ついにアスラン・・・貴方は・・・力を手に入れる変わりとして・・・恐ろしや恐ろしや。
でもラクス嬢を始めとしていろんなキャラに対しての思いをを述べるところは非常によく出来ていて感動しました。

236流離う翼たち・449:2004/04/05(月) 22:54
 それが出てきたのは、当人が店の暖簾をくぐった時である。長身痩躯の40代の連合士官。その人物を、フラガたちは確かに見た事があった。

「サ、サザーランド大佐!?」

 マリューが吃驚した声を上げる。それでようやくこちらに気付いたサザーランドが何時ものしかめっ面のままでこちらにやってきた。

「アズラエル様、今日はお招き頂き、ありがとうございます」
「いやいや、君はよく頑張ってくれてるからね。たまには労ってやらないと僕の人間性が疑われそうだ」
「心配しなくても誰もおかしいとは思わないだろ」

 サラリとツッコミを入れるキース。アズラエルのこめかみにビシリと青筋が浮かぶがキースは意に介した風もなくお茶を啜っている。アズラエルが特に言い返さないところを見ると、どうやらキースが彼にツッコミを入れるのは珍しい事ではないようだ。
 サザーランドが来た事で面子が揃い、全員の前に料理が並べられていく。中華料理店なので出てくるのは中華ばかりなのだが、それを見たキラは、何故か頭の中で警鐘が鳴り響くのを感じていた。ここ最近酷い目にばかりあっているせいか、その危険を感じ取る嗅覚は異常に発達してきているのだ。何と報われない、幸薄い人生であろうか。
 そして、その料理を口に運んだフラガが一瞬固まり、そしていきなりグラスの水をがぶ飲みしだしたのである。

「フ、フラガ少佐!?」
「何だこれ、無茶苦茶辛いぞ!?」

 フラガの言うとおり、その料理は全てが激辛であった。ナタルは口を押さえ、トールとキースは汗をだらだらと流し、キラはおろおろとしている。男性陣が口に運んでいるので仕方なく女性たちもそれを口に運び、ナタルはフラガのようにグラスを手に取り、フレイはフルフルと身体を震わせてキラを見た。その目からはポロポロと涙が零れている。

「キラ、これ、凄く辛いの」
「う、うん、分かったからフレイ、何も泣かなくても」

 どうやら辛い物が苦手らしいフレイには、この料理はわりと耐えられなかったようだ。だが、そんな中で1人だけ気にした風も無くそれを口に運ぶとんでもない人がいた。それを見たナタルが唖然として問いかける。

「か、艦長、平気なのですか?」
「え、何が?」
「こんなに辛いのですよ?」
「何言ってるのよナタル、これ位じゃないと美味しいとは言えないのよ」

 全く気にした様子も無く真っ赤に染まった麻婆豆腐を平らげていくマリューの姿に、ナタルは戦慄を禁じえなかった。この人の味覚は一体どうなっているのだ、という疑問だけが頭の中を締めている。そして、マリューと同じ物を平然と平らげたアズラエルが嬉しそうにマリューを見ていた。

「いやあ、この味が分るとは、艦長さんは中々に味が分る人ですねえ」
「あら、アズラエルさんこそ、まだまだ食べられそうですね」
「当り前ですよ。後2皿はいけます」
「私も追加をお願いしていいでしょうか?」
「勿論。味の分る人にこそ食べていただきたい」

 アズラエルは随分機嫌が良いようで、平然と追加オーダーを出してくれる。だが、運ばれてくる毒々しい赤色の豆腐を見て他の者は顔を引き攣らせてしまった。キラは相手がブルコスで軍のお偉いさんだということも忘れてサザーランドに小声で問いかけた。

「あ、あの、この人っていつもこうなんですか?」
「・・・・・・うむ、アズラエル様の味覚は常人とはかなりずれていてな。所謂悪食という奴なのだよ」
「これって悪食って言うんですか?」
「そうとしか言えまい。付き合わされる私は必ず体調が悪くなるのだ」

 この人も苦労してるんだなあと知り、キラは天敵とも言えるブルーコスモスの幹部に何となく同情してしまった。ひょっとしたら、自分よりこの人の方が不幸なのではとこの時ばかりは思ってしまった。

237流離う翼たち・作者:2004/04/05(月) 22:57
>> The Last War・Inside1/2
ああ、アスランが壊れた。キラは落ち込んでるのにアスランは壊れるなんて
やっぱりここは精神的に安定しているイザークとシーナをw!
兄貴は何処いったんでしょう?

>> 過去の傷
アスランとカガリが完全に断交状態に!? 
キラはミリィの部屋にいついてるし、フレイ様、こうなったらカガリと百合に!

238過去の傷・100:2004/04/05(月) 23:06
「熱下がんないね」
「ああ」
ミリアリアを見守るキラとサイ。
「あ、サイはもういいよ、あとは僕が見てる」
「そうか・・・分かった」
そう言うとサイは出て行った。

なんとフレイは苦戦していた。
(なによこいつら!連携取れてる)
そう、フリ−ダムの放つビ−ムはことごとく回避される。
「ていうか・・・全然攻撃してこないじゃない!」

「「「だってあの機体怖いんだもん」」」
<お前等ちゃんと戦えよ!もういい!今日は終わりだ!>
「え?もう終わりなの?」

ハッチはら出てくるフレイ。
「カガリ」
「お疲れ」
「ええ、ありがとう・・・」
カガリは何かを取り出すとフレイの首にかけた。
「これは・・・ペンダント?」
「ハウメアの護り石だ、お前これで守ってもらえ」
「え・・・?カガリ・・・ありがとう」
カガリはフレイを見つめると・・・。
「死なせないから・・・お前」
「ええ・・・ありがとう」
その数時間後。
「あ、ミリィ起きた?」
「え?キラ・・・」
あれ?そうか・・・私眠ってたのね。
「具合どうかな?」
「まだ、苦しいわ・・・全然駄目」
「そう、まだ寝たほうがいいよ、安静にしてなきゃ、いいね?ずっと僕は君の側にいるから・・・」
キラ・・・優しい。
「ええ、眠るわ」
そう言うと私は再び眠りについた、キラに看病してもらえる・・・。
話を聞いたのかフレイ、サイ、カガリ、アサギ、ジュリ、マユラが入ってきた。
「キラ、ミリィはどうだ?」
「うん、まだ眠ってる、熱が引かなくて」
そう言うとミリアリアの額から出る汗をタオルで優しく拭う、そしてまた水で冷やした別のタオルでミリアリアの額に乗せた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ミリアリアの看病をしているキラを困惑した表情のフレイが見つめている、そのフレイの視線に気づいているはずのキラだがフレイに目を合わせずひたすらミリアリアを見守る。

239ザフト・赤毛の虜囚 45:2004/04/06(火) 03:47
8.歓喜 3/6
[うーん、悔しい…… キラ、もう一度]

クルーゼは、私に官給のノートパソコンとベッドで使える簡単なパソコン台。それと、
パソコン台に付けられる書類立て、手元を照らすランプなどを用意してくれた。
私は、ベッドに座りながら、いくつかの手書きや訂正の入った書類をクルーゼから受け取り、
それを次々にパソコンに打ち込んで行く。できたものは、部屋のプリンタでプリントアウトするか、
ワイヤレス回線からファイルサーバに送り込む。私のパソコンは、かなりアクセス制限がきつく、
ファイルを送り込む以外は、サーバの何も見ることはできないけど、私は、もとより見る気は無かった。
やがて、書類入れの山は、増える量を越えて、少しずつ減り始めた。

「フレイ・アルスター。君は、まったく素晴らしい。どこで、こんなことを覚えたかね」
クルーゼは、また関心したように話しかける。

「まさか、パパに教えられたのかね」
「…… ご想像におまかせします」

私は、キラの思い出をクルーゼに明かしたくなかった。だから、曖昧に、ごまかした。
私の、この指の動きはキラに教えられたもの。打ち込みを続けながら、私の心はキラの
思い出を彷徨っている。

* * *

キラが部屋で、パソコンを使って戦闘レポートを作っている時、私はベッドで、
トリィと戯れながら、いつも、キラの高速で動く指の動きを目で追っていた。
ときどき、キラを見ながら、指でキーボードを打つ真似をしていたこともあった。

それを見たキラは、口述筆記のゲームをしようと持ちかけてきた。片方がボイスレコーダを
持って喋り、もう片方がパソコンで、それを文章にする。後で、照らし合わせながら得点を
付けて競い合う。当然、私がキラに叶うはずはないので、何回かに一回、私はハンデとして、
トリィを相手にできた。

繰り返すうち、私は少しずつ打ち込みが早くなって行った。キラは私の指を触って打ち方を教え、
私はキラの指を触り、その形、動きを感覚として記憶した。自分でははっきり気づいていなかったけど、
私はキラの指の動かし方を指でも体でも理解していった。

ルールは、二人で話し合いながら、少しずつ変わっていった。打ち込めていても、
誤字は減点対象になった。

「嘘、こんなはずじゃないのに」
「フレイ、ほら、こっちが正しいよ」

「うーん、悔しい…… キラ、もう一度」
「負けたら、どうする」

「負けたら、私を好きにしていい」
「それじゃ、賭けにならないよ」

「それじゃ、アレもらってきて、こうするというのは?」
「…… やってみようかフレイ」

「その代わり、私が勝ったら、今日は無しよ。たまには、ぐっすり寝かせてね」

飽きっぽい私がキラとのゲームにあれこれ賭けながら、のめり込んで行った。
そして、一度だけキラに勝てた。

「よし、正解。満点だフレイ」
「キラ、一文字綴り間違えたわよね! それじゃ……」

「フレイの勝ちだよ」
「え……、わ、わーっ、わーっ、勝った!! 私勝った、キラに勝った!」

私は自分でもびっくりするほど大声を立てていた。トリィのハンデがあったとは言え、私は、
ついにキラに勝った。

「おめでとうフレイ」
「ありがとうキラ」
<トリィ! トリィ!>
「ありがとうトリィ」

二人抱き合って、共に喜んでいた。トリィも一緒に喜んでいた。結局、そのまま朝まで抱き合ってた。
キラがアレもらってきて………………

翌朝、私は、やすらかに眠り、キラは一人寝不足で仕事に行き、夕方、やっと目覚めた私に、
またも、いきなり休んだ私のことで、私の仕事の先輩に怒られてたとぼやいていた。

* * *

この指は、キラからもらった指。私の指にはキラが乗り移っている。それは、私に、このザフトの中で、
キラのメモリチップを見るためのノートパソコンをもたらした。
私はキラの魂に感謝した。

240ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/06(火) 03:55
>>The Last War・Inside
ラクスとカガリ、言っていることは正反対なんですけど、アスランを信じているのは同じなんでしょうね。
その想いを振り切って修羅になったアスラン。彼は戻って来られるのでしょうか。次回、キラ編も期待しています。

>>流離う翼たち
キラも昇進こそしなかったもののグレーの仕官服なんですね。
アズは、サザーランドも、もて余す存在なんですな。私、麻婆豆腐好きなんで、ついマリューさんに同感して
しまうけど、本場の店だと辛いんでしょうか。甘党?のフレイ様には辛いか。アルコールも甘口の日本酒が好きなのかな。

>>過去の傷
連載100回おめ。三人娘は回避能力は抜群?だから助かったのかな。
カガリはアスランからハウメアの護り石を返してもらって、フレイ様に渡した意図は?
そして、病魔に倒れたミリィ。看病するキラ。フレイ様、相手が病気だと言いたいことも言えないですよね。

241過去の傷・101:2004/04/06(火) 23:19
サイがミリアリアの隣で看病していたキラに声をかけた。
「キラ、俺がミリィにはついてるから少し休んだら?」
キラはサイに微笑むとそっけなく、「大丈夫だよ」と答えた。
遠くで聞いていたフレイも慌てたようにキラに声をかけた。
「で、でもキラ、ミリアリアにつきっきりだったんでしょ?ここはサイにまかせていいじゃない・・・」
キラは少し顔を上げて微笑んだ。
「今日はフリ−ダムの整備も終わったし、もうすることないから」
「で、でもキラ!」
気づかうフレイに対してキラは・・・フレイの言葉を封じ込めるような硬い声でフレイに言った。
「ミリィに・・・ついていたいんだ」
そうフレイに言うとミリアリアに顔を向ける。
「フレイ、行くぞ・・・あんまりうろうろしないほうがいい」
カガリがフレイに声をかけた。
「え、ええ・・・そうね」
フレイはキラを気にしていたがカガリについて出て行った。
フレイ達が部屋を出て行った一時間後。
「あ・・・キラ・・・?」
ミリアリアが目を覚ます。
「あ、起きた?」
起き上がろうとしたミリアリア。
もう夜になっていた。
「あ、ミリィ駄目だよ無理しないで」
「そ、そうね・・・ありがとう」
キラの気づかいが私は凄く嬉しい。
「ミリィ・・・その・・・夕食の時間なんだけど、どうする?食事持ってこようか?」
「・・・どうしよう・・・あんまり食欲ないのよね、ヨ−グルトとか冷たいの欲しい・・・」
「うん、ミリィ、ヨ−グルト好きだもんね」
「キラ、ごめんねつきっきりで・・・疲れたでしょ?」
そうか・・・キラずっとついていてくれたんだ・・・キラはやっぱり優しい。
「いいんだ、君に僕もついていたいから」
「ありがとう、ねえキラ・・・その・・・結婚しようね」
「え!?」
さすがにこの言葉にはキラも少し戸惑ったが・・・想像してしまう、ミリアリアとの結婚、そして新婚生活など・・・それもこんな可愛い子とだ。
「うん、結婚したいね、よしじゃあヨ−グルト持ってくるよ・・・僕もここで食べるから」
「ええ、ごめんなさい、具合よければ私がするんだけど」
「いいんだ、そういえば具合どう?」
「ええ、少し落ち着いたみたい」
その一時間後の食堂。
フレイ、サイ、カガリ、アサギ、ジュリ、マユラが同じ席で食事を取っていた。
「あ、キラ」
サイが入り口から歩いて来たキラに気づいた、キラに気づいたフレイは慌ててキラに目をやる。
どうやら食器を戻しにきたようだ。
「どうだ?ミリィの様子は」
「順調だよ、熱も少し下がって落ち着いたみたい、ヨ−グルトを食べさせて、少し元気になったよ」
「そうか・・・良かった」
そしてフレイが慌てた口調でキラに声をかけた。
「キ、キラも疲れたでしょ?ずっとついてたから、少し休んだほうがいいわよ」
気づかうフレイの言葉を遮るようにキラはフレイに冷ややかに告げた。
「僕は大丈夫、食事もミリィの部屋ですませたし・・・ミリィには早くよくなってもらわないと」
キラはフレイに背を向け出て行こうとした。
「キ、キラでも、そこまでキラがすることないじゃない」
慌ててフレイが席から立ち上がりキラの腕をつかんで止めようとした、キラはさっと振り返りその手を振りほどくとフレイに挑むような目つきで睨んだ。
「なに!?」
「え・・・いや・・・なにって・・・」
キラは顔を少し下に向けると冷たく告げた。
「フレイ・・・君とのことはさ・・・ア−クエンジェルであんな関係になって・・・別れを経験したけど・・・もうその時点で君とは終わっていたんだよ・・・もういいと思わないかな?」
フレイは驚愕の表情になる。
「お互い傷ついた・・・君は僕を傷つけた・・・でも僕も君を傷つけた・・・それにまたよりを戻したってお互い傷つくだけだと思う・・・傷つくと分かっていて付き合う必要もない、お互いあの頃に縛られることはないと思うんだ、僕も君も・・・そう、もう呪縛からお互い開放されようよ・・・あの頃の僕たちの呪縛からさ・・・だからこれからは普通の友達でいようよ・・・」
「!!!・・・キラなに言ってるの・・・?そんなこと私が納得するわけ・・・ないわよ・・・」
キラはもうフレイの言葉には耳をかさずに無視するように食堂を出て行った。

「君がいけないんだ・・・僕の手を拒絶したりしたから・・・ミリィは僕を許してくれた・・・僕はミリィと結婚するんだ、そう決めたんだ」

242過去の傷・作者:2004/04/07(水) 14:16
>>ザフト・赤毛の捕囚
おお、フレイ様頑張ってますね、そうかキラと・・・それもキラにハンデとはいえ勝ったとは。
いいですね、これからも期待させていただきます。

ついに目標の連載100を超えました、これからも頑張っていきますので、皆様よろしくお願い致します。

243ザフト・赤毛の虜囚 46:2004/04/08(木) 02:19
8.歓喜 4/6
[思い出が溢れ出した]

夜、また、なんだかんだでクルーゼが部屋を出て行った後、私はシャワーを浴びて、
さっぱりした状態でベッドに横になった。そして、そろそろとベッド横にパソコン台を
引き寄せた。ついに、キラのメモリチップを見ることができる。メモリチップを取り出し、
パソコンの端子に差し込む。開いたフォルダのメールアイコンをクリックする。
メールが開いた。これに添付された動画データをクリックする。パソコンのスピーカから、
キラの声が流れ出した。

「フレイ、この前、通信で裸になったろ。今日は、メールにするよ。
 通信には秘匿かかっているけど、どこで見られているかもしれないから、もうこんなことは
 しないでくれ。フレイ、お願いだ。
 今日はね、フレイ、シナプス融合の代謝速度を向上させて、モビルスーツの動作が、
 かなり軽くなったんだ。でも、逆に姿勢制御が難しくなって、自律神経系を、もう少し
 改良しないといけない。もう少し、かかりそうだよ。
 フレイ、迷惑をかけてごめん。なるべく早く終わらせるから、ちゃんと待っててくれ」

キラの映像は、まるで本当に私を見つめるように、熱い瞳をしている。
その映像に私の心は、これまでに無いくらい解放される。体がふわふわして宙を彷徨うよう。

これは、オーブでキラがモルゲンレーテに仕事に行っている時にくれた唯一のビデオメール。
一週間の約束の日に帰って来ないキラに癇癪を起こして、通信の時に、私が裸になってキラを
誘った翌日に来たもの。今残っている、唯一の動くキラ。話すキラ。
私は、それを何度も何度も繰り返して見た。見るたびに新しい発見があった。
いつまで経っても飽きなかった。

次に、オーブでキラが別れた時に来た二通のメールを見た。

┌──────────────────────────────────────
│題名:フレイ、もう一度だけ弁解させて欲しい

キラが両親と会うことへの戸惑いの真意を告げていたメール。私とキラを繋ぐ言葉を、
私に気づかせてくれたメール。

┌──────────────────────────────────────
│題名:フレイ、僕の部屋に居てくれていい

│ でも、僕は君を必ず守る。何があっても守るよ。いつまでも。約束する。

ザフトの戦闘中、一人部屋で震える私を勇気づけたメール。
結局、果たされなかった約束。でも、それは、私が逆に守るべき約束をなのだ。
私は、キラを継ぐ。あなたの理想を果たす。
くじけそうな私に勇気が沸き起こる。オーブを出た、あの時、震えていた自分から
立ち上がったように。

さらに、私はキラが大切に持っていた私の写真を開いた。ヘリオポリスで撮った、
みんなの写真。フレームの右側に立って微笑む私、そのそばで優しい顔をしているサイ。
ポーズを付けて立ち上がっているトール、奥で座って作り笑いをするミリアリア。
そして、一番奥にいるキラ。微笑むような切なそうな目をしている。

これは、ヘリオポリスの合コンの写真。カズイが撮ったもの。私も一枚持っていたけど、
ヘリオポリス崩壊で失った。

それを見て、私の中に思い出が溢れ出した。そう、それはまだサイとの婚約を
隠していた頃、そして、キラに初めて出会った時のこと。

244ザフト・赤毛の虜囚 47:2004/04/08(木) 02:24
8.歓喜 5/6
[私、フレイ・アルスター。よろしくね]

私は、サークルの新歓コンパに出ていた。このコンパにはいくつもサークルやゼミも参加している。
その中でも、私を心躍らせたのはサイのいるゼミが参加していることだった。サイは、パパの決めた
私の婚約者。でも、私もサイが大好きだ。小さい頃から家族ぐるみで付き合ってきて、お兄さんの
ような存在。でも、カレッジに入ってからのサイには、特に心引かれるものがある。サイに男を
感じている。サイに近寄る女性に嫉妬する。こんな自分に不安とともに胸が弾むものを覚える。

私はサイの婚約者だと、みんなの前で叫びたい。でも、サイは許してくれない。まだ、隠しておくようにと
サイは釘を差す。私は不満だけど仕方ない。パパも言ってることだから。パパは、私にサイと付き合うように
言う。他の人と、私が仲良くすると怒る。でも、その一方で、パパはサイに冷たい。門限は厳しかったし、
度々、家に電話を入れろっていう。私とサイのこと、パパは応援してるの、どっちなの?
でも、私もカレッジに入学したからには、そんなことは無い。これからは寄宿舎生活。少し、私の
自由もきく。これから、もっとサイとの関係を進めるのよ。

でも、最初からサイにベタベタすると、まずいだろうから。私は、みんなに挨拶して回っている。
サイには後から、ゆっくり会う。それまで、連邦事務次官の娘として、恥ずかしくないようにしなきゃ。

やっと、サイのいるグループのところに来た。サイは、自分のゼミのグループで固まっている。私に、
気を使っているのはみえみえだ。気にしないでいいのよ。私が来たから。

「サイ、こっちに来ない?」 私はサイに話しかける。

「フレイ!」
サイは、そう言って振り向いた。ちょっと、罰が悪そうな表情。でも、そんなサイが、私は可愛くてたまらない。
一緒にいる人達はサイのゼミの仲間、なんだかCPUとかどうとか、おたくっぽい会話をしている。
その内の一人、ミリアリアは、私のサークルでも先輩。女性なのに、ちょっと話題が合わない人。
でも、サイの友達なんだから、愛想良く振る舞わなきゃ。

「先輩たち、難しい話をしていますね」
私は、明るい声でそれとなく話しかける。相手の気を悪くしないように、それでいて、自分に
話題を振られないように防波堤もはっておく。

「ねえ、向こうにドリンクあるわよ。サイ、行きましょうよ」
「うん、フレイ、だけどね、今日はちょっと……」

「今日はどうだっての、サイ?」
意地悪っぽくサイに迫る。サイは困っているようだけど、そんなサイを見るのも、私には楽しい。

「キラ!」
ふいに、ミリアリアが小さく、しかも、きつい声で話すのが聞こえた。ミリアリアの向こうにいる人。
童顔で、まだ少年の面影を残している、その顔はミリアリアの声で視線を外したけど、
それまで、ずっと視線が私に注がれていたのに気がついた。私は興味を覚えて話しかけた。

「その人、キラっていうんですか?」
「ああ、はじめまして、キラ・ヤマトです」

甘いマスクから、想像される通りの優しい声。

「私、フレイ・アルスター。よろしくね」
私も、釣られて自己紹介をした。にこやかな笑顔を見せた。ゼミのグループのところに来て、ほとんど
サイに向かって話していたのが、初めて他の人に視線を向けた。二人の視線が合う感触がした。
横から、誰か話しかけたようだけど、私は聞き流していた。

「みんな撮るよー!」

私の後ろからの大きな声に、やっと、私は視線をそらした。声の主は、大きなカメラを構えている。
知らない人だけど、サイの友達の一人だろう。私は自然に笑顔を作る。カメラを向けられると、つい、
作ってしまう笑顔。パパの呼ばれるパーティで、いつもそうしてる。でも、この笑顔を私は好きじゃない。
本当の自分じゃないような気がするから。いつもの自然な私の笑顔をしなきゃ、サイが写真を撮る時のように。

パシャッ! パシャッ! シャター音が数回響いた。

サイと一緒に、カメラのモニタを覗きこむ。小さい画面では、分からないけど、偽りじゃない
自分が映っているようだ。

「カズイ、2枚分な。フレイにも、後で写真渡すよ」
「うん、サイ」

サイの話す声に、私は頷いた。

私は、チラと横目で、さっきのキラという人を見た。私に注がれていた視線は既に無く、ミリアリアと
親しそうに話している。私は、関係ないと思いつつも、ちょっと不満だった。さっきまで、私に
見とれていたくせに、もう別の女性に目を向けてる。フン、ミリアリアよりも、私の方が、ずっと
美人なのに…… そして、心の中でそっと呟いた。

(キラ、もっともっと、私を見てよ!)

245ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/08(木) 02:28
昨日は、なぜか掲示板に繋がらずに投下できませんでした。
ビデオメールや二通のメールは、前作「オーブ・フレイの心」で出てきたものを補足 or 省略してます。
次の回想シーンは、以前ミリィSSでカズイ退艦に絡めてやったもののフレイ視点版です。このSSでは、
これが、フレイとキラの初めての出会いということにしています。けどね……

>>過去の傷
キラ、フレイ様になんてことを言うんだ!! とは言え、別れ話を、ちゃんと書けない私には勉強になる点も(バキ!)

246流離う翼たち・450:2004/04/08(木) 23:28
 食事も終わり、飲茶などを手にのんびりとした時間が漂うかに見えるのだが、実はわりとヤバゲな空気が漂っている。その発生源はもっぱらアズラエルとキースだ。アズラエルはにこやかに、キースはむっつりとして会話を弾ませている。

「いやあ、あの頃は散々だったねえ」
「お前のせいでな」
「コーディネイターの輸送船に爆弾を仕掛けた事もあったねえ」
「俺はやった覚えは無いぞ」
「一緒にパトリックやシーゲルの命を狙った事もあった」
「・・・・・・あれは貴様の仕業だったのか」
「各国の政界や財界に圧力かけてプラントに強攻策を取らせたり」
「・・・・・・おのれは、人の足引っ張る事しか出来んのか?」
「やだなあ、僕がいつ君の邪魔をしたんだい?」
「とりあえず、今までの自分の台詞を思い出してみろ」

 どう見てもこの2人は友達ではない。いや、と言うか本当に元同僚だったのだろうか。アズラエルはニコニコと笑いながらキースの機嫌を損ねる事ばかり言ってるし、キースは何やら殺気さえ滲ませてツッコミを繰り返している。
 余りの空気の悪さに耐えられなくなったキラはまたサザーランドに問いかけた。

「あ、あの、この人たちって一体、どういう関係なんですか?」
「うむ、まあ、昔に比べればこれでも随分関係改善しているのだよ」
「あの、そんなに酷かったんですか?」

 フレイとトールも話しに加わってきた。サザーランドは3人の子供に視線を向けられて少し戸惑っていたが、それくらいで話に詰まったりはしない。流石は参謀本部の切れ者参謀である。

「元々、キーエンスはアズラエル様に迎えられる形でブルーコスモスに入ってきたのだ」
「あの、キースさんにどういうツテがあったんです?」
「それは彼から聞いてくれ。私が言うべき事ではないだろう」

 どうやらかなり複雑な事情があるらしいと察するフレイとトール。だが、キラだけは前から時折感じているキースの持つ不思議な能力に関係があるのではないかと思っていた。キースはかつて、暴れる自分を取り押さえた事があったし、コーディネイターの歩兵に白兵戦で勝利している。
 ナチュラルが訓練したコーディネイターの兵士に勝てるわけが無いのだ。なのにキースは平然と勝ったと言っていた。敵中に最後まで留まり、帰ってきたら前進返り血まみれだったのだから、それは嘘ではないのだろう。

「あの、1つ教えて欲しいんですが」
「なんだね、キラ・ヤマト少尉」

 サザーランドの灰色の目がキラの顔を射抜く。その視線に晒されたキラは文字通り竦みあがってしまったが、別にとって食われる訳でもないだろうと思い、気を落ち着かせた。しかし、このサザーランド大佐の持つ迫力はどこか桁が違っている。ナチュラルとコーディネイターの分類を超えて、本当に凄い人は凄いということなのだろう。どれだけ力があって知能が高くても、自分などこの人の前では呼吸さえ困難になるほどに気圧されてしまうのだから。

247流離う翼たち・作者:2004/04/08(木) 23:36
>> 過去の傷
キラァ、貴様、とうとう完全に乗り換えたか
これでフレイ様はカガリと百合ルート一直線?
何気に正直な3人娘に少し共感したりw

>> ザフト・赤毛の虜囚
とりあえずフレイ様、音声出すなら防音を考えておきましょうね。潜水艦の艦内の壁は薄いです
でも、もしばれたらクルーゼの興味をかなり引いてしまうような気も

248ザフト・赤毛の虜囚 48:2004/04/09(金) 06:30
8.歓喜 6/6
[私が知らないキラ、私と会う前のキラ]

私の中に溢れ出した合コン写真での回想。

私、サイ。ミリアリアと、サイの友達トール、カズイ。そして、キラ。初めて会ったキラは、サイの
友達の内の一人で、私に賛美の視線を送る人。でも、別に取り立てて、どうということの無い存在だった。
平和な時、それが続けば、永遠にキラは、それだけで終わったかもしれない。

なのに、今はキラの存在が、私の中でいっぱいになっている。でも、それは戦争があったから。
パパを失って、キラに復讐して、キラの心を知って……
そして、キラは死んだ。私は、また独りぼっち。

私はパソコンのモニタに映るコンパの写真に視線を戻す。サイのための私の笑顔。その笑顔は、
それを、いつも手元に置いていたキラも癒していたはずなのだ。私は、キラと一緒にいる時、こんな
笑顔をキラに見せられていただろうか。

「キラ……」
私は、胸に一杯の想いを詰まらせて、キラの名を呼びつづけた。

その他にも、キラのメモリチップの中にはいろいろなものが詰まっていた。

軍に提出するザフトとの戦闘レポートの下書きのようなもの。
よく分からない難しい数式やプログラムのデータ。
何かの覚え書きのような短い文章。
ヘリオポリスのカレッジの宿題やレポートの一部。

そして、サイ、トール、ミリアリア、カズイらと食事をしているところの写真。
どこかの野外レストランで写したのだろう、背景に夜空が写っている。
撮影したのはカズイらしく、カズイ以外はいろいろな組み合わせで写真に写っている。
キラとミリアリアが、隣り合わせにテーブルに座っている写真もある。ミリアリアは嬉しそうに
カメラに向けてVサインをしている。

仲がよい頃のみんなといる時のキラの表情は、私が見たことも無いほど明るい。私も、この時、
一緒にいたかった。こんな、キラが見られたのなら……

いくつものキラ、明るく微笑むキラ、どれも、私が知らないキラ、私と会う前のキラ。
私は飽きることなくキラの残した軌跡を辿って行った。ひとつひとつが、私に勇気をくれた。
泣いていた私を励ましてくれた。

私はメモリチップを大切にしまうと、ベッドに、もう一度横になった。今までに無いくらい
安らかな気持ちで眠りについた。

249ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/09(金) 06:33
これで、現在の章は終わりです。次はミリィSSの方に戻ります。今回出てきたレストランの写真は、
例によってミリィSS次章とリンクしてます。

>>流離う翼たち
キースとアズの罵り合い、外野には結構面白い。ええと前のを見直すと、ブルコスでは
アズ(急進派)、キース(穏健派:シーゲルと似た思想)、サザ(中立)でしたっけ。
もっとやって欲しいけど、聞いてるキラには、それどころじゃ無いのですな。しかし、
悟りキラで無いキラは、サザーランドとかハルバートンとか威厳のある人には弱いですね。
潜水艦の船室に関しての情報サンクス。既にプロット的には間に合わないかもしれないけど、なにかの参考にします。

250過去の傷・102:2004/04/09(金) 12:47
食堂でただ一人フレイは呆然としていた。
キラ・・・あの可愛い顔は、あのぬくもりは私だけの物、そう思っていたのに、有頂天になってた私、調子に乗ってた、勝手にキラの恋人気取りしてた、でも違った・・・どうすれば、どうすれば好きになってもらえるのかしら?どうすれば・・・ミリアリア・・・あの子も可愛いけど、私の方が美人よ、それなのになんで・・・?なんでそんなこと言うの・・・?
寂しそうにサイに顔を向けた、サイは私と目が合うと気づくと俺には関係ないとばかりに目を逸らした、そのあとは私の方を見ようともしない、それどころかあの子と微笑みあっている、ジュリとかいうピンクのメガネをかけた女の子。
ただ一人カガリは私を見てる、心配そうに私を見てる。
「サイ・・・あの」
フレイは思い切ってサイの声をかけた。
「その子とどういう関係なの・・・?」
「・・・・・・」
「ねえったら!」
「ああもう!うるさいな君は!」
サイは私を睨んだ。
「関係ないだろ君には!」
「・・・関係ないって・・・そんな」
「いいかげんにしろよ!」
そんな中アサギとマユラは。
((キラさんがフリ−に・・・?これはチャンス!))

その一時間後。
キラの部屋の前に来ていたフレイは。
(あんなこと言われて部屋に馴れ馴れしく入れないわよね・・・)
そしてフレイは小さな声で話し始めた。
「キラ・・・こんな時間にごめんね」
部屋の中からはなにも言ってこない、無視されているのかしら・・・?
「さっきのことなんだけど、その・・・ちゃんと話し合いたいの、だからちょっと起きてきてくれない・・・?キラ」
そのフレイの様子を部屋の隙間からカガリが隠れて見ているのには気づかなかった。

「ミリィ大丈夫?」
「ええ、気分もよくなってきたわ、ちょっと寝たからかな、あとキラがついていてくれていたあかげよ」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
ミリアリアの額に手を触れる。
「うん、もう熱もないよ」
「ええ、今日は一日寝ていたから」
よかった、私が倒れたりしたらどうするのよ、キラ・・・ありがとう・・・私はあの女とは違う・・・違う。
「キラ」
「?」
「入ってきて」
「ミリィ・・・今日は泊まっていいかな?」
泊まる、キラが泊まる・・・今日もキラと寝よう・・・。
「ええ、いいわよ・・・」
キラが泊まる、これで・・・やっと私の目的の一つは達成された、次は・・・。

251リヴァオタと八アスのためでなく:2004/04/09(金) 17:48
そのころ、ギレンの妹のキシリアの仕事部屋の事務所では新入りの若い部下
が、突然入ってきた。
「大変です!」
「なんナリか?」
「ギレン閣下が・・・」
「コロ助口調でしゃべるナリ」
「ギレン閣下が買ったブルーコスモスの200万株が大暴落したナリ」
「なにそれはほんとナリか!?」
「はいナリ」
キシリアはギレンのいる家に電話をかけた
「兄上ちょっとお尋ねしたいことがあるのだが」
「なんだキシリアお尋ねしたいこととは」
「兄上はブルーコスモスの株を買ったそうだな」
「ああ」
「そのことできてほしい」
キシリアは電話を切った。

252流離う翼たち・451:2004/04/10(土) 00:40
 些かの怯みを見せながらも、キラは自分の抱いた疑問をサザーランドにぶつけた。

「キースさんは、前にコーディネイターを白兵戦で倒したと言っていました。ナチュラルに出来る筈が無い事を、どうしてキースさんは出来たんです?」
「それは・・・・・・」

 答えるのを渋るサザーランド。余程深い理由があるのだろうとキラは察したが、サザーランドが答えるよりも早く第3者がそれに答えてしまった。

「ああ、それは簡単ですよ。キーエンスはコーディネイターを殺す為の力を人工的に付与された強化人間だからです」
「は?」
「強化人間?」
「なんです、それ?」

 キラとトールとフレイがアズラエルの方を見る。逆に語るのを躊躇っていたサザーランドは顔を引き攣らせ、キースの顔色が一気に青褪めた。アズラエルはキースとサザーランドの慌てぶりを楽しむかのように薄く笑うと子供達の疑問に答えだした。

「君達も会っただろうけど、オルガ・サブナックが現在の技術で作られたブーステッドマン。彼は脳内インプラントと薬物強化で身体強度と反応速度をコーディネイター以上に引き上げた戦闘用の人間なの」
「なんで、そんな酷い事を・・・・・・」

 人間を強化したと聞かされ、フレイが悲痛な声を漏らした。他の者も信じられないという目でアズラエルを見ているが、アズラエルは詫びれずにそれに答えた。

「元々彼は死刑囚だったんだよ。それを研究に手を貸すことで生きる道をあげたんだ。感謝されこそすれ、文句を言われる筋合いは無いでしょう?」
「でも、そんな非人道的な事をするなんて。人の身体を弄んでどうしようって言うんですかっ?」
「決まってますよ。コーディネイターどもを地球から叩き出すんです。元々はキーエンスだってコーディネイターに対する抑止力として当時の遺伝子研究者達が生み出したんですからね」
「抑止力?」
「そう、抑止力。遺伝子研究者たちは際限なく人類の究極を求め続け、次々に強力なコーディネイターを生み出していきました。ですが、その際限ない強化に畏怖した研究者達はコーディネイターがいずれ自分達に牙を剥く日を予見し、コーディネイターに対する抑止力としてブーステッドマンの研究を始めたのです」
「それが、その・・・・・・」
「そう、彼。キーエンスはその時に体の一部を人工物に置き換えられた実験体の1人なのです。彼は神経系や筋組織、肺など運動に関わる部分を人工物に置き換えることでコーディネイターでも到達しえない身体能力を持ったわけです。彼がコーディネイターでも不可能とされるGに平然と耐え切ってMAを使いこなし、「エメラルドの死神」と呼ばれるようになったのはその人間の限界を超えた身体のおかげなんですよ」

 アズラエルの言葉にサザーランドを除く全員がキースを見た。キースは怒りに身体を小刻みに震わせていたが、否定しない所を見るとそれが真実だということなのだろう。ナタルがキースに気遣うような視線を向けているが彼が気付く様子は無い。

253流離う翼たち・作者:2004/04/10(土) 00:48
>> ザフト・赤毛の虜囚
昔の写真見て懐かしむフレイ様は可愛いかもw
しかしカズィ、君は中々に芸達者な男なのですな
アズとキースとサザの関係はそうですよ。でも、全員コーディは嫌い、という点では一致してます

>> 過去の傷
サイ君暴走中。何気にフレイ様を追いかけるカガリの真意はw?
実は結構逞しいマユラとアサギw

>> リヴァオタと八アスのためでなく
コロ助口調って、一体何者?
しかし、早くも大暴落ですか。まあ予想できた運命・・・・・・

254ミリアリア・あの子許せない 84:2004/04/10(土) 05:05
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 1/12
[ミナシロでのこと]

オノゴロからオーブ本土に向かう連絡機。窓から見えるオノゴロが、どんどん小さくなっていく。
これから、私はオーブの首都に向かう。

私は、アークエンジェルを降りた。残酷な冷たい戦士のキラ。それに命令されるままに。
私は幸福だ。キラの命令に従っている。それだけで、私は幸福だ。人の少ないキャビンの中、
私は小さく感嘆の声まで上げて、身を揺すっている。

でも、かすかに抵抗する心の声がする。
(いいの? 本当にいいの?)
(忘れられるのキラを?)
(キラの遺品を持ってきたのは、なぜ?)

登り行く朝日の光を受けて、首都から山を隔てた向こうにある都市の建物が光るのが見えた。
ミナシロ市。キラの実家がある都市。私の故郷の隣町。

カレッジの二週間の長期休暇。ヘリオポリスからオーブへ帰った時。その時にキラ達と
ミナシロに行った記憶。ミナシロでのこと。それが私の中に蘇った。

まだ、あの子がカレッジに入学もしていなかったころ。まだ、トールが彼氏じゃ無かったころ。
私とキラ、トール。みんな。仲良く過ごした日々の記憶を……

255ミリアリア・あの子許せない 85:2004/04/10(土) 05:11
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 2/12
[やられた……]

ヘリオポリス工業カレッジの二週間の長期休暇。あれこれ忙しい授業や研究から解放され、私達は、
それぞれの故郷に戻った。私、キラ、トール、サイは地球のオーブへ。カズイはヘリオポリスの実家へ。
早朝の便で、オーブ近海の宇宙港へ着いた私達は、連絡機で首都まで行き、電車で、それぞれの故郷へ
戻って行った。山を挟んで隣町どうしの私とキラは、最後まで電車に一緒に乗りあわせていた。

「キラの家、ミナシロの郊外でしょ。私、隣の市なのに、ミナシロには、あまり行ったことないの。
 休みの間に、ミナシロの中心街案内してよ」
「ああ、いいよミリィ」

「じゃ、電話するわ。またねキラ」
「それじゃ、また、ミリィ」

私達は、乗り継ぎの列車で別れた。一人電車に乗りながら、私は想いをめぐらす。

(キラにいつ電話しよう。今晩、いきなりじゃ急かな…… 電話する勇気あるかな……)
(やっぱ、トールに言ってもらった方が…… でも、キラと二人きりでミナシロの港の夜景見たいな……)

登り始めた太陽が照りつけ、蝉の声の響く中、私は実家のマンションに足を進める。
カレッジに入学して、久しぶりに、お父さん、お母さんの顔を見る。どうしているかな。
私はドアのベルを鳴らした。何の反応も無い…… 何度ベルを鳴らしてもダメ。

「やられた……」

私はうっかりしていた。うちの両親ってこうなのだ。共働きで、いつも家を空けがち。
ものごころついた時には、私は一人、家に取り残されることが多かった。
今日だって、ちゃんと着く時間連絡していたはずなのに、これだ。
ドアの電子ロックのコードも変えられている。何で、連絡した時に教えてくれなかったのよ。
携帯電話を出して、両親に電話する。例によって、海外まで出る仕事をしている両親には、
電話も繋がらない。

私は、だんだん腹が立ってきた。私はマンションを出ると、近くの喫茶店に駆け込んだ。
ほとんどの喫茶店や駅、公共施設でパソコンをワイヤレスでネットワークに接続できる。
私は、カバンに入れてきたノートパソコンを喫茶店のテーブルに置き、ネットワークに接続すると、
ドアの電子ロックをネットワークからハッキングして解除しようとした。目を血走らせてパソコンに
取りつく私に、喫茶店の他の客は恐そうに見つめている。

電子ロックの解除は、うまくいかない。私は、パソコンをいじりながら、携帯電話を首にはさみ電話をかけた。
キラの携帯へ。もう、ほとんど無意識だった。

「はい、キラ・ヤマトです。ミリィ、どうしたんだい。さっき別れたとこなのに」
「キラ、パソコン持ってるわよね。そっちからネット入って、これから言う住所の電子ロックを
 解除してくれない?」

「ちょっと、ミリィ、いきなり何言ってんだよ」
「聞いてよ、キラ。うちの親酷いのよ。私を締め出しにして仕事出てるのよ!」

「だからって、電子ロックの解除はまずいよ」
「キラ、よくカレッジで研究室のドアロック解除したりしてたでしょ。お願い」

「いくらなんでも、ここからじゃ、防犯システムにひっかかるよ。人を犯罪者にするつもりかい」
「ダメ?」

私は話しながら、さっき、いつ電話しようか迷っていたキラに今、電話していることに気がついた。
ゼミの研究で分からないことがあると、すぐキラに電話していた癖で、そのままかけてしまっていた。
でも、これってチャンス!

「ねえキラ、今日、暇?」
「とりあえず、家でゆっくりする予定だけど」

「ミナシロの案内、今からじゃダメかな?」
「うん、別にいいけど。両親への連絡は大丈夫かい」

「いいのよ、あんな無責任な親なんか。行こうキラ」
「それなら…… じゃ、ミナシロ・センター街駅の北口、噴水の前で待ち合わせでいいかい」

「分かった。それじゃね、キラ」

さっきの目を血走らせた表情から打って変わって、ニコニコとパソコンを閉まって店を出て行く私に、
他の客は、目を丸くしていた。

256ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/10(土) 05:23
ミリィSS新章です。アークエンジェルを降りてトールの遺品を両親に返しに行くところでしたが、
ちょっと、その前に回想シーンに入ります。ここでは、私のSSではあまり無かった明るいミリィが登場します。
ミナシロ市は、私の創作です。オーブ北海岸に面した都市だと思ってください。

>>過去の傷
ミリィ次はって! アァタ……
フレイ様、留守のキラの部屋の前で小声でって、これインターホンですよね。
さすが、外からの小さな声が聞こえるくらいだと、まずいし。

>>リヴァオタ
お久です。コロ助口調で喋るのはキシリア閣下? 次は、〜ザンス、 〜でゴンス、フンガ、フンガーでも……

>>流離う翼たち
ふうむ、アズ君、そんなに簡単に、みんなの前でキースのこと、バラさなくてもいいじゃありませんか。
実はキースは誰がために戦う戦士だったという訳ですね。しかし、そういう人がブルコスの幹部候補とは……
まるで、黒い幽霊団かショッカーみたいじゃありませんか。
それはそうと、皆さん。とある事情でアズ語を研究しようとしているのですが、こんな喋り方で
良かったんでしょうかね。どうです、お若い艦長さん?

257リヴァオタと八アスのためでなく:2004/04/10(土) 08:46
40分後、ギレンがキシリアの事務所にやってきた。
「なんだ、キシリア、私は忙しいのだよ、話なら早く 終わらせて
 ほしいものだな」
「兄上落ち着くナリ、簡単に問いただすナリ、兄上はブルーコスモスの株
 200万株を買って大暴落させたナリね、こうなってしなったらばザビ家は
 破産してしまうナリ」
ギレンはニヤッと笑った
「いうことはそれだけか」
ギレンの席を立った
「私はこれで帰らせてもうよ」
「待つナリ」
キシリアはギレンの頭に拳銃を向けた
「ほうなんのまねだ?」
「まだ帰るなという合図ナリよ」
「そんじゃ俺帰るわ」
ドキューン!
キシリアはギレンの頭に弾を撃ち込んだ
「うわっ」
びっくりするキシリアの部下
「落ち着くナリ!、ギレン閣下は名誉の自殺をしただけナリよ!」
キシリアの声は響き渡った。

258過去の傷・103:2004/04/10(土) 16:19
「ねえ、キラってフレイのことずっと気になっていたでしょ?」
「え?突然なにを・・・」
「だってそうだったじゃない、見てれば誰だって分かるわよ、フレイは学園のアイドルだったもんね」
「・・・・・・」
「なら今はどう?」
「今?」
「ええ、今」
まずはキラをフレイから奪うことには成功したわね、あとは結婚するだけ。
キラは下を向くと言った。
「分からない」
「分からない?」
キラはうなずいた。
「はっきり言うとフレイは僕にとっては遠い存在だった、話もしたことなかったから、遠くから見ているだけだったから・・・でもいまは違う・・・」
そう、いまは違う、フレイはもう遠い存在ではないのだ、付き合っている。
「そうよね、いまは一番キラの近くにいるもんね、で?どうなの?」
「・・・・・・」
「・・・飽きたとか?」
「飽きた?」
「ええ、この頃はずっと一緒にいるでしょ?ずっと・・・もういやになるくらい一緒に・・・それで飽きたとか?そうなんでしょ?」
「分からないよ・・・」
「・・・まあいいわ・・・この話はもうやめ、それより・・・ねえ・・・結婚しない?来週にでも、両親も貴方とのこと話したらいいって言ってくれたわ、キラ君ならいいってね・・・」
「・・・え!?」
「形だけでもいいじゃない、もうこのことはずっと決まっていたのかもしれないわね」
そう、どんな手を使ってでも私と結婚してもらうわ、私と・・・絶対に・・・じゃないと私なにするか・・・。

「キラ・・・」
無視されたの?それとももう寝たのかしら。
キラを呼び続けていたフレイだが応答はなかった。
なら今日はどこで寝ればいいんだろう。
フレイは歩いた、そして通路でサイと会う。
しかしサイは彼女を一目見たが無視して通り過ぎようとしている。
「・・・・・・」
「あ、あのサイ!」
仕方なさそうにサイが立ち止まる。
「俺に・・・何?」
「いや・・・あの・・・キラの部屋には入れなくてどうしようかなって・・・」
「・・・俺には関係ない・・・君達の問題だろ、自分の問題くらい自分で片付けなよ、俺は知らない」
「そんな・・・だって私達だって・・・」
「俺達の仲を勝手に解消してきたのは君だろ!それをなんだよいまさら!俺には新しい彼女も出来たんだ、もういいだろ」
そう言うとサイは部屋に入って行った。
・・・私ってサイに完全に嫌われたのね・・・でも裏切ったのは私・・・。
サイ・・・今日私はどうすれば・・・前の私の部屋に戻る?それとも・・・カガリ・・・カガリ!
「あの・・・カガリ」
カガリの部屋を訪ねたフレイは・・・。
「フレイ」
「泊まっていいかな?一日だけ」
カガリは優しく微笑むとうなずいた。

259 ヘリオポリス・1.24〜:2004/04/10(土) 23:36
2.16
[砂漠・三日目]
キラを殴った子、あの子カガリって言うらしい。
なんか凄く偉そうで、気に入らない。

アークエンジェルはレジスタンスと一時協力をすると聞いた。
土臭い、田舎くさいレジスタンスなんか、役に立つんだろうか?
カガリって子も、そう。荒っぽくて、女じゃないみたい。

まだモニターでしか見たことがないけど、
あの子は、嫌いだ。

同日:
サイは、優しい。とてもいい人。
パパがそう言うように、私もそう思っていた。
お兄ちゃんみたいな感じ。でも、今はすこし鬱陶しい。
なんで放って置いてくれないのだろう。私を好きだから?
私もサイを好きだった。それは当たり前のことで。

キラは、サイとはぜんぜん違う。
ひどい、自己中心的で、心が弱くて、卑屈で。
サイに暴力をした。私のすぐ傍で。すごく怖かった。
でも、それがちょうどいいと思う。
キラがひどいコーディネイターのほうが、私は助かる。

キラは、私のために戦うの。
キラはいつも、怯えた顔をしている。いい気味だ。
もっと、苦しめばいい。私がこんなに、苦しいんだから。


2.17
[苦しい、もうイヤ]
するのは嫌い。すごく痛い。
もうイヤ。

キラの部屋に荷物を全部持ってきた。
これからキラと、毎日するのだろうか。
そんなのイヤだ。嫌、嫌、嫌!!
気持ち悪い!!

してる最中、私はキスする時のように、演技できないけど、
キラはもっとめちゃくちゃで、私のことすら見ていないんじゃないか。
なのに、私の名前を呼ぶのをやめてほしい。
うるさいし、イライラする。


2.18
[キラがいない]
起きたら、キラがいない。
探しに行かないと。

どうしたんだろう?
わたし、さっき何かまずいこと、言った?


2.19
[困った]
キラはMSのコックピットに篭ったまま、寝泊りしているみたい。
どうしてそんな所で寝るの、私が嫌なの?と聞いた。
そうしたらキラは、沢山調整しないといけないことがあって、それは
自分しかできないから、かかり切りになってしまうと言った。
そのうちに眠くなるから、仮眠をとって作業を続けてるだけだと。

部屋に私がいるのは、構わないと言う。
私が部屋にいると、嫌なのかとキラに拗ねて見せると、キラはすごく
慌てていた。それから嬉しいよ、とか言っていた。
顔を真っ赤にして。ほんとうに馬鹿な子。

キラを操るのは簡単なようなのに、どこか、うまくいかない。
どうすればいいんだろう?もっと考えなきゃ。うまくやらなきゃ。


2.20
[つまらない]
キラが買い物に行ったきり、帰ってこない。
あのカガリって子と一緒に行くって言った。(しかも私に謝らない!)
どういう神経してるんだろう。なぜわざわざカガリって子と行く必要があるの?
現地のことがわかる、ということだけど、それなら他の大人のほうがいい。
(だって、カガリって子は人種が違うように思う。肌もそんな焼けていないし)

もしかして…艦長さんが私とキラのこと快く思ってないって感じるけど。
そういうこと、なのかな?だったら余計なお世話なのに!!
キラは、私の言うとおりに私を守れば、あの人たちにとってもありがたいはず。
キラを普通の少年のようにさせようなんて、馬鹿みたいだ。


今日はもう仕事は終わり。(掃除だけだけど)
暇だ。キラに頼んだエリザリオの化粧品、あればいいけど。
どうせ、無いに決まってる。どうせあてつけだから、構わないけど。
あの子がどう謝るのか、みものだわ。

260ヘリオポリス・1.24〜:2004/04/10(土) 23:39
>>ミリアリア
ミリィ、ふつうの可愛い女の子だなぁ。
キラはトールの気持ちに気付いてないのか、深読みするタイプじゃないのか…?

>>流離う
アズ、暴露っちゃいましたか。しかし、この話の笹島大佐はわりと好きですね。

261流離う翼たち・452:2004/04/10(土) 23:53
 そして、アズラエルは決定的な事を口にし始めた。

「まあ、普通のコーディネイターに対するならそこまでの力は必要なかったんですがね。彼のような無茶をしたブーステッドマンは、当時は調整体と呼ばれていましたが、メンデルという研究所で研究されていた、最高のコーディネイターに対する抑止力だったんです。まあ結果としてはこれだけ無茶をしても一対一ではその最高のコーディネイターの想定ポテンシャルを超えられなかったんですがね」
「なんで、そんな下らない物を求めたんでしょうか。その科学者達は?」
「その理由は、全ての始まり、諸悪の元とも言える理論、随分昔に出てきたSEEDと呼ばれる理論です。人の進化の可能性、更なる高みへの階梯、言葉を介さず、状況を超えて理解しあえる人間。それがSEEDを持つ者たちと呼ばれています。元々コーディネイターとはこのSEEDを持つ者をナチュラルに受け入れさせる為の橋渡し的な役目を負わされていたのですが、何処をどう間違ったのかコーディネイターたちは自分を進化した人類だと言い出しました」

 そこでアズラエルは一度言葉を切り、ジロリとキラを睨み付けた。その視線に含まれた悪意にキラは息苦しさを感じてしまう。

「君もそうでしょう。ナチュラルは自分より劣った存在だと、これまで考えたことが無いとは言わせませんよ。そのナチュラルを見下した視線が許せないから僕たちはコーディネイターを認められないんですから」
「でも、だからって何も殺さなくても。核まで使って・・・・・・」
「核を使ってまで自分達を殺したいのか、ですか。どうしてそこまで憎悪されることになったのか、その理由を考えたことはありますか?」

 アズラエルの問いにキラは言葉に詰まり、そして力なく首を横に振った。これまで両親に伴われて月からヘリオポリスと移り住んでいたが、何処でもなるべくコーディネイターである事を隠し続けて生きてきた。もしばれれば周りの自分を見る目が変ることは明白だったし、何よりブルーコスモスに見つかるのが怖かったのだ。
 どうして自分達を狙うのか、何で自分達がこんな目に会わなくてはいけないのか、これまでずっと考えては苦しみ、そしてナチュラルへの憎しみを常に心のどこかに抱え続けてきた。だが、自分たちが何故憎まれているのかを考えたことは無かった。いや、そんな事を考える人間はまずいない。いるとすれば、それは何かが壊れている人間だろう。
 そしてアズラエルは、今度はフレイを見た。

「言ったでしょう、フレイ・アルスター。コーディネイターなどに近付いては、お父様が悲しみますよ。あの方もブルーコスモスだったのですから」
「・・・・・・そんな、嘘よ」
「嘘じゃありません。ジョージ・アルスターはブルーコスモスとして大西洋連邦内における我々の勢力拡大に随分役立ってくれました」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「そのジョージ・アルスターのお嬢さんがコーディネイターの少年と仲良くなるのは、色々と問題があるんじゃないですか。お互いの為にも距離をとっておいた方が良いですよ。まして、彼の同胞は貴女のお父さんの敵なのですよ」

262流離う翼たち・453:2004/04/10(土) 23:55
 アズラエルの言葉に、フレイは足元が崩れていくような衝撃を受けた。忘れたかった過去、目を背けていた現実、知りたく無かった父の素性、その全てが自分に再びこれまで犯してきた罪を蘇らせてしまう。

『コーディネイターの癖に、馴れ馴れしくしないで!』

「嫌・・・・・・・・・」

『あんた、コーディネイターだからって、本気で戦ってなかったんでしょう!?』

「やめて・・・・・・・・・・・」

『キラは、戦って戦って死ぬの、そうじゃなきゃ許さない』

「私・・・・・・私は・・・・・・・・・・・・」

『私はあなたを、道具にする為に近付いたのよ』

 両腕を抱えてカタカタを震えだしたフレイを心配そうに見るキラ。何をそんなに怯えているのかと思い、その肩に手を置こうとしたが、手を近づけた途端、フレイはビクリと震えて避けた。

「フレイ?」

 避けられたことに少しショックを受けながらも問いかけたが、フレイは混乱したように右手で髪を掻きあげ、何か聞き取れない声で呟いている。そして、いきなり表情が恐怖に歪んだかと思うと、泣き出しそうな声を紡ぎ出した。

「ご・・・ごめ・・・・・・ごめんなさい。わ、わたし・・・・・・」

 堪らなくなった様にフレイは立ち上がるとそのまま駆け出して店を飛び出してしまった。

「フレイ!?」

 残されたキラは呆然とその場に立ち尽くし、フラガやノイマン、サザーランドは事態に付いていけず戸惑っている。フレイとキラの余りに複雑すぎる関係を知っているキースやトール、マリュー、ナタルはフレイの変化の理由を察しており、アズラエルに憎悪の篭もった視線を向けていた。
 だが、誰もアズラエルを咎める言葉を口に出来ないでいる。何故なら、アズラエルの言った事は決して間違っているとは言えないからだ。

 誰もがフレイの後を追えないでいる。いつしか外には雨が降り出し、彼女の姿を闇の中に完全に隠してしまう。フレイは、マドラスを包む闇の中に消えてしまった。

263流離う翼たち・作者:2004/04/11(日) 00:07
>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィさんの過去ですか。しかし、ミリィは家に1人型でしたか
キラにハッキングを頼む辺り、キラの普段の生活って一体・・・・・・
実はキースは若干ショッカーw
実際はサイバーテクノロジーとバイオテクノロジーが生み出したキメラみたいな物で、赤子の段階で改造されてます
で、身体的に拒否反応を起こさずに安定した固体がキースです。拒否反応が起きた奴は全員死亡
キース以外にも幾人か生き残りが居て、ずっと前にカガリがキースの実家で見たファイルに少し内容が載ってました

アズ語ですか、私はそれで良いと思いますが

>>  リヴァオタと八アスのためでなく
ギレンは何がしたかったんでしょう? キシリアは実権が欲しかったのかな?

>> 過去の傷
いかん、フレイ様とカガリが傷を舐めあう関係になってしまうw
しかし、サイはなんだか冷たい。いつからこんな酷い奴に

>> ヘリオポリス・1.24〜
丁度砂漠の頃ですな。キラがストライクで寝泊りしだした頃ですか
懐かしいですが、今思い出すと整備班には凄く迷惑でしょうね

264ミリアリア・あの子許せない 86:2004/04/11(日) 05:10
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 3/12
[キラ、待った?]

私の住む市から、トンネルで山を隔てた隣の市、ミナシロ。シティレジャーとショッピングの街。
中心街は、奇麗に整備されていて、緑とビルが美しく融和されている。大きなショッピング街や、
いくつもの遊戯施設もあり、港は、赤道連合などの近隣国への交易船でにぎわっている。沖には、
漁場や海洋都市などの研究を目的とした海洋プラントがあり、海岸には、そことのやりとりをする
研究施設とドックが立ち並ぶ。またそれだけでなく、海洋遊園や、美しいホテルも一杯あり、
レジャーについても抜かりが無い。夜を美しく彩る夜景は情報誌によると、アベックには
絶品なのだそうだ。

キラと二人っきりで、港の夜景を眺める…… 私は期待に胸を膨らませた。そして、反面、
緊張で胸がドキドキした。だんだん、落ち着かなくなってくる。

ミナシロ・センター街駅。帰省荷物をコインロッカーに入れると、待ち合わせの北口の噴水前に行った。
キラは、すでに来ていた。肩にはトリィを乗せている。もう、子供っぽいから置いてきて欲しかったのに。

「キラ、待った?」
「いや、今来たとこだよ」

キラの笑顔に、私のドキドキは最高潮に達し、声まで上ずって来る。キラとの二人きりで
夜の港のデート、期待しすぎで胸はパンクしそう。

「あはは…… それじゃ、どこから行こうか? 夜まで時間つぶして…… 二人っきりで……
 あ、そうじゃ無くて……、今は……」

みえみえの下心が口に出そうになって私は慌てて口を閉ざす。
ダメだこりゃ。まともに会話できない。それだけならまだいいけど、口が滑って、
私の知られちゃいけないアレやコレや、みんなバラしてしまいそう。
ああ、どうしよう。どうしよう……

「その前に、もうちょっと待ってくれる。待ち合わせに、まだ来てないから」

キラの言葉に、私はポカンとあっけにとられる。

「キラ、誰のこと? まさか……」
「あ、来た来た。トール、こっちだよ」

アレ?……

「やあ、ミリィ、大丈夫か。締め出しくらったって」
「私、トールは呼んでないわよ」

「ちょっと、そりゃずいぶんだなミリィ」
「ミリィの電話の後、トールからも電話があったんだよ。ミナシロのこと話したらトールも来るって」

キラ、余計なことを…… せっかく、キラと二人きりのはずだったのに…… 港の夜景が……

でも、そう思う一方で、トールが来てくれたおかげで、私は内心ホッとしているのは確か。
ドキドキがおさまって、声も落ち着いてきた。私はトールに笑顔を向けた。

「そうね、トールも一緒に行こう。案内して、キラ」

その声にトールとキラは顔を見合わせ、そして、トールが腕を振り上げて言った。
「よし、それじゃ行こう」

「どこへ行くのよ」 私は、その二人のやりとりに不安を感じる。

「決まってんだろ」とトール。

私は、さらに不安を感じた。トールが、こういう言い方をする時は、多分、おそらく、大方、きっと……

そんな、私の不安をよそに、トールとキラは笑いながら足を進めていた。

265ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/11(日) 05:13
>>過去の傷
キラは相変わらず、はっきりしない。なんとかせいや。ところで、ミリィはエターナルから
いつの間にオーブの両親に連絡を…… それとも、計略のでまかせ?

>>ヘリオポリス・1.24〜
フレイ様から見ると、黒キラは自己中で、卑屈で、嫌なやつで、手がかかる。確かにそうですね。

>>流離う翼たち
フレイ様、辛いですね。せっかく自分の気持ちを切り替えてきたのに、それが、周りから
認められないと思ってしまうと気持ちも落ち込みます。ところで、アズの話、途中から、
個人的感情に走って説得力失ってるような気がするのは気のせい?まあ、それを突っ込んでも、
どちらから先に戦争始めたかの水掛け論で誤魔化されるだけでしょうけど。

アズ語評価どうも。これをベースにもう少し語彙増やして、さらに年齢シフトします。

266過去の傷・104:2004/04/11(日) 10:39
「ラクスさんってバジル−ル中尉に似てきた」
と、ミリィは呟いた.
「ナタルさんに?想像出来ないな・・・」
「なんかね、話し方はあたりまえだけど違うわよ」
「そりゃあね・・・」
ラクスさんがナタルさんの話し方するのは想像出来ない、というより怖い。

「なにが君は俺が守るだよ、アスラン・ザラの嘘つきめ!」
「ほんとに勝手な男ねそいつ」
「だろ!そう思うだろ!?さすが我が同志であり親友だ」
フレイとカガリは慰め合っていた。
「あの・・・カガリ酔ってない?」
「ああ、さっき飲んだ、やけ酒だ」
そしてカガリはフレイの首のきけてあるペンダントを取り出した。
「カ、カガリちょっと・・・」
「私はこれを大切な人に上げるを決めてあるんだ」
「え・・・?」
カガリは頬を少し赤く染めると言った。
「そう、フレイ・・・以前はいろいろあったが私にとってお前は大切な存在だ・・・だから渡した・・・死んでほしくない・・・」
「カガリ・・・」

「ト−ルのことが頭をよぎるんだ」
「キラ・・・」
「ごめん、でも!」
「まだ気にしてるの・・・?あの時のことを」
キラはうなずいた。
「でも・・・アスランは僕の親友だ、彼に対してはそんな感情はない、だからミリィもさ・・・」
「分かってるわ、その人だってキラを殺そうとしたんでしょ?なら仕方ないわよ、それが戦争なんだから」
戦争・・・その言葉にキラはいろんなことが頭をよぎる。
(お前がなんで地球軍にいる?)
(あんた自分のコ−ディネイタ−だからって・・・本気で戦ってないんでしょ!?)
(逃げ出した腰抜け兵士が!!!)
(君とてその一つだろうが!)
突然キラが苦しみだす。
「キラ!?」
「うう・・・うああああ!」
そして泣いた、ミリィの目の前で泣いた、また女の子にすがりつき泣いた。
これはキラの感情値を上げるチャンス。
それにキラは私の前で泣いている、これは・・・。
キラを慰めれる、そう・・・この子は私の物になったのよ、こんなとき私は・・・。
「キラ・・・もういいの、もういいから、もういいのよ・・・」
私こういうふうに泣きつかれるのは苦手、ほんとは逆の立場ばっかりだったから、フレイやラクスさんはこういうの得意だろうけど・・・でもここで・・・頑張らないと。
「うう・・・」
私はキラを抱きしめるとキスした。
目を開け泣きついているキラもミリアリアからのキスに酔ったのか、目を閉じた。
その数分後。
キラを優しく離したミリアリアは・・・軍服を脱ぎ始めた。
「キラ・・・入ってきて」
ベッドにキラを誘った。

次の日。
また寝た、キラと寝た・・・でもいいの・・・来週結婚するんだから・・・。

267リヴァオタと八アスのためでなく:2004/04/11(日) 14:27
ロラン・セアックはドズルが校長を務める高校の食堂で雑誌を読んだ
雑誌の記事はこうだ、「10代が選ぶ藤子漫画ベスト10」
第10位 チンプイ
第9位 21えもん
第8位 忍者ハットリくん
第7位 キテレツ大百科
第6位 パーマン
第5位 オバケのQ太郎
第4位 笑ゥせぇるすまん
第3位 エスパー魔美
第2位 ドラえもん
ロランはラーメンを食べながらつぶやいた
「一位はやっぱりこれだよな・・・」
第1位は「魔太郎が来る」だった。ロランの感は早かった。
「やっぱり、魔太郎は最高だよ」
めんを食べ終わったロランはラーメンの汁をすすう。
隣に同級生のニコルが座った。
「やぁロラン」
「あっニコルいまからお昼ごはん?」
「ええ」
「ニコル、藤子漫画で第一位はなにかしってる?」
「ドラえもん?」
「違う違う」
「パーマン」
「違うって、魔太郎だよ」
「ええ!あの復讐漫画が第一位なんて」
「あれが今はやりなんですよ」
「しんじられないなぁ・・・」
「信じなくってもいいけどね」
ドズルが割り込んできた
「声優さんが一人二役でやっている朴路美のキャラはお前等か」
「そうだけど」
「僕は違うよ」
ニコルは言った。ドズルは
「いや、お前の声優さんは朴路美に変わった」
「えっ!」
ニコルは唖然とした。

268リヴァオタと八アスのためでなく:2004/04/11(日) 15:31
キラとフレイが家まで歩いているとまた変なのがいた。
今度はシャア・アズナブルのコスプレをしたケツアゴ大佐だった。
ケツアゴ大佐について知りたいのならば、プレステの実写版ガンダムを
見よう。
「フッフッお嬢さん俺のオチンチンをなめてくれないか?」
ケツアゴ大佐はズボンを下ろした。しかもパンツまで脱いだ
「キラ行こう」
ケツアゴ大佐は道を通さないようにガードした
「フッフッここはとうさん!」
「フレイここは任せて」
キラは道の下にペーパーナイフを見つけた。ナイフを手に取り
すばやく切った。
「うっ!」
ケツアゴ大佐は自分の下半身を見た。なんとアレが切られていた。
ケツアゴ大佐は一目散に逃げた。
「助かったわキラ」
「ああ」
とにかく一安心だ。

269The Last War・Inside2/2:2004/04/11(日) 16:09
キラ・〜Sympathy〜

 「アスラン、もう止めてくれ!!」

 ―――怖い。その光景を前に、僕はそう思っていた。アスランがあんな戦い方をするなんて、尋常じゃない。それにさっきからずっと呼び掛けているのに、僕の声に反応する様子すら無い。通信回線が切られている訳でもないのに。まるで、僕の声が届いてないみたいだ。
 ・・・それだけじゃない。あれは、本当にアスランなのか?僕の知っているアスランは、何処か遠くへ行ってしまったんじゃないのか?もう戦うしかない。彼はそう言っていた。・・・本当にそうなのか?僕らはもう、引き返すことが出来ない所にまで来てしまっているんだろうか?

「・・・許せないのだよ。人ならざるものでありながら、人間面をしようとする貴様等がなぁ!!」

 フレイ、そして『彼』と出会ったあの日から、僕はその言葉の意味をずっと考えていた。あの時彼は自分のことを、『最高のコーディネイター』のプロトタイプと名乗った。それがもし本当なら、彼もまた僕の実父、ユーレン・ヒビキによって生み出された『子供達』の内の一人。そういう意味では、僕達は『兄弟』ということになるんだろうか?でもあの時彼が僕とフレイに向けた視線は、僕らだけでなく、この世界そのものを憎んでいるみたいだった。
 彼がこれまでどんな生涯を、どんな気持ちで歩んできたかは、僕には想像も出来ないだろう。僕自身、自分が何者かなんて知る訳も無かったし、それに何より、父さんや母さん、アスランやサイ達は、僕に何の隔たりも無く接してくれたから。でも・・・、彼はそうすることが出来なかった。何も知らないまま自分が望みもしなかった力を人から与えられ、それと共に背負わされた過酷な運命を、只受け入れるしかなかったんだ。
 そう考えた時、僕はあることに気が付いた。

 ―――彼は、誰にも出会うことが出来なかった、もう一人の『僕』であることを―――。

 だから、僕は彼に手を差し伸べてあげたかった。自分が決して一人じゃないことを、世界はそこまで残酷じゃないことを教えてあげたかった。あの時、フレイが僕に心を開いてくれたように、彼を救ってあげたかったんだ。
 だけど、今僕の目の前にいる彼は『僕』ではなく、『あの人』そのものになってしまっていた。・・・どうして?

 ・・・ラウ・ル・クルーゼ、貴方は何故そうまでして世界を憎むんだ?どうしてそこまで、人を信じることが出来ないんだ?貴方にとって他者は、只利用するだけの存在でしかないのか?一体何が、貴方をそうまで追い詰めたんだ?
 貴方は僕が殺した。だからもう、貴方はこの世界にはいない。貴方の真意を知ることはもう出来ない。それでも、貴方がまだ滅亡を望むというのなら、僕はもう一度・・・、いや、何度でも貴方を止めて見せる。貴方が彼の心を縛り付けているというなら、僕がその呪縛から彼を解き放って見せる。そうすることで、僕は初めて貴方に『勝つ』ことが出来る筈だから・・・。

 ―――!!右腕が、動く・・・?なら止めなきゃ、あの二人の戦いを。今それが出来るのは、僕しかいない。もう二度と、あの時と同じ結末を迎えるのは嫌だ。もう、迷わない。僕は今度こそ・・・、僕らの戦いを終わらせる―――。

「憎しみで戦っちゃ駄目だ、アスラン!!」

270The Last War・作者:2004/04/11(日) 16:31
 2回に渡って番外編をお送りしましたが、少し表現が強引なところもあって反省しています。

》過去の傷
 遅くなってしまいましたが、100回達成おめでとうございます。最近の展開に目が離せなくなっています。このままキラはミリィの企み通り結婚してしまうのか?そしてフレイ様はカガリと?何はともあれこれからも応援させて頂きます。

》流離う翼たち
 アズラエル、余計なこと言わなくても・・・。かつての傷に触れられたフレイ様、そしてキースさんはこれからどうするんでしょう?特にキースさんはもしかしてキラとは天敵同士ということでは・・・?
 それからオルガの時みたいにアズラエルとAA組との対面は凄く斬新でした。

》ミリアリア
 思い出の中のミリィは凄く女の子らしくて可愛いですね。戦争に巻きこまれる前はこんな風に3人一緒に遊んでたと思うと微笑ましいです。

》ヘリオポリス
 あの頃のフレイ様、よっぽどキラが嫌いだったみたいですね。自分もあの頃の彼には抵抗があります。でも時間が経つに連れ次第にその気持ちが変化してきているところが良く出来ていますね。

》リヴァオタ
 お久しぶりです。ロランまで登場し、相変わらず独特な世界ですね。主人公キャラは大方揃ったのでは?ところでニコルの声優さんって、変わったんですか?

271ミリアリア・あの子許せない 87:2004/04/12(月) 04:31
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 4/12
[ここで見て買わずに帰れるか]

私とキラ、トールは、人ごみの中にいた。まわりにいるのは、男連れか、化粧ッ毛のない
アベックや若夫婦、そんなのばっかり。

「キラ、やはりオーブだな。こんなの、もう出てるよ。しかも、安い」
「トール、ちょっと買い過ぎだよ。お金足りるの?」

「ここで見て買わずに帰れるか。キラ、貸してくれ」
「僕も、そんなに余裕無いのに。ミリィはある?」

「私はパス……」私は、そっけなく答える。

ここは、ミナシロの電気街。パソコンとアニメとマンガの街。そりゃ、首都ほどじゃ無いけど、
ここも、結構、物は揃っている。でも、せっかく、ミナシロまで来て、こんなとこに……

トールは、なおも、お金を借りようとねだるけど、帰省のシャトル代で、私の財布は、すっからかん。
ここで散財するとヘリオポリスに戻れなくなる。

「ほら、ミリィの欲しいって言ってた新型のPDAだよ」キラの言葉。
「あ、これ欲しかったんだ。手持ち無くて買えないけど」私の声のトーンが変わる。

「ちょっと、いじってみたら」
「うん、いいな。いいな」

キラと肩を並べて、狭い画面を覗きながら操作する。まあ、私も、ここ楽しんでるけどね……

やがて、大量に買い込んで満足したトールは昼の食事にと場所を移動しようとした。

「何食べる?」
「牛丼」とトール。
「カレーライス」とキラ。

「せっかく、ミナシロなんだから、もっと、いいもの食べようよ。ショッピングモールとか行ってさ」
私は提案する。

「それじゃ、僕の知ってる店に行こうか。モールの中にあるやつ」キラが言った。
「行こう、行こう」 私はキラの提案に乗って足を進める。

「高かったら、キラの、おごりな」
「大丈夫だよ、トール」

後ろで、まだ話をしているトールとキラに先立って歩いていた私の目に、近くの店の
ショーウインドウに飾れられているものが目に入った。私は通り過ぎながらも足を緩め、
そして、財布の中身を思い出して逡巡する。

電気街から少し遠ざかったころ、私は決断を下した。既に追い付いていたキラとトールに声をかける。

「私、ちょっと見たいとこ思い出しちゃった。二人、先に行っといて」
「すぐなら、一緒に行くよ。ミリィ」

「いや、いいの。先に行っといて」
「じゃ、ショッピングモールで。分からなくなったら携帯で連絡して」

私は、一人電気街へ戻った。そして、さっきの店に駆け込んだ。
ここで見つけたのは、ヘリオポリスでは、即売会はおろか、ネットオークションでも、
どうしても手に入らなかった伝説の801同人誌。それはそれは、エロエロな逸品。
過去販売された分も含めて、5冊のセット。プレミア付いてて、正直手持ちギリギリだけど、
ここで見て買わずに帰れる訳無い!!

私が、ネットで、いやらしいサイトに出入りしたり、エロな同人誌を大量に買い込んで、
寮の部屋中積み上げていることは、みんなには内緒。特に、キラには秘密中の秘密。

数分後、私は、すっかり軽くなった財布の代わりに同人誌の入った紙袋を下げて、
嬉々とした気分で、ショッピングモールへ足を進めていた。

272ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/12(月) 04:34
>>過去の傷
カガリがアスランから取り返したハウメアの護り石はフレイ様のもとに。それよりカガリ未成年だろ。
酒飲んでいいのか? ミリィは来週結婚って、そんな馬鹿な……

>>リヴァオタ
一番は魔太郎ですか。私はA作品だと黒ベエかな。怪物くんは別格。F作品だと「みきおとミキオ」も。

>>The Last War・Inside
このキラの言う『フレイ』は、本物のフレイなのでしょうか、それともネメシスのことなのでしょうか。
まあ、キラにとっては同じなのかもしれませんけど。アレクセイとの戦いを最初避けようとした気持ち、
よく分かりました。キラの右手が、元に戻って良かったです。さあ、アスランと共に戦いを終わらせるんだ。

273過去の傷・105:2004/04/12(月) 17:59
「形だけの結婚よ、オ−ブで正式には式を挙げるの」
キラはよもや冗談だと思っていたのだが、ミリアリアは本気で来週結婚したいのだそうだ、しかし二人ともまだ年齢は18歳にすらなっていないのだ、さすがに無理すぎると思うのだが・・・。
「そんなにミリィは僕と結婚したいわけ?」
「ええ、今すぐにでも」
そうよ、絶対に私と結婚して一緒になってもらうわよ、プラントに逃げようが追いかけていくからね私・・・。
「・・・そうだね」
「キラ・・・いい家庭作ろうね」
「うん・・・」
そうか、このゆくもりだ、ミリィは優しい、この子と結婚するんだ僕は、この子はこんな僕を必要としてくれてるんだ、僕はそれに答えよう。

その夜のことである。
「キラ探してたんだから」
キラは通路でばったりフレイと会ってしまったのだ。
その数分後。
キラはどこに行ってのかしら?私はもう・・・。
ラクスさんに見つからないようにしなきゃ。
「あら、ミリアリアさん」
「え・・・?ラクスさん・・・?」
「はい」
ラクスは微笑んだ。
そんな時だった。
「キラそんなんじゃ分かんないわよ、ちゃんと話を!」
「話なら十分しただろ!」
喧嘩した若い男女の声が聞こえた。

274リヴァオタと八アスのためでなく:2004/04/12(月) 19:41
ある雑誌にはこう書かれている
『今、子供たちの間にドラえもん人気がある。その人気につられて過去の
 藤子作品がリリースしている。ドラえもん以外の藤子作品に興味を
 もった、小学生たちがそれを読んでいる、子供たちは「ドラえもん」を
 はじめ 「パーマン」「プロゴルファー猿」「怪物くん」「オバQ」
 「バケルくん」「ハットリくん」「みきおとミキオ」「キテレツ」
 「チンプイ」「21えもん」「エスパー魔美」「ポコニャン」「ビリ犬」
 などがある、小学生たちはそれらの単行本を買い、コロコロでは藤子漫画の
 再録などがある。藤子フェアは子供たちの間に大ブーム、そのなかに今、
 小学生を熱狂させている漫画が登場したそれは「魔太郎が来る」である。
 最初にコロコロに掲載されたとき、子供から大反響を呼び、単行本が販売される
 やいな、各書店の本屋から品切れが続発した、こうして小学生の間で「魔太郎」が
 はやり始めた、アンケートで10人のうち9人が「魔太郎」の単行本を持っていると
 いうのだ』
「なっニコル、本当面白いんだよ」
「そうかなぁ、僕はドラえもん好きだけど」
「一度読んだら面白いよ」
ロランは二コッとニコルに笑った。

275流離う翼たち・454:2004/04/12(月) 23:56
 雨の中に飛び出したフレイを探す為に飛び出していったキラたち。店に残ったキースは仲間が居なくなった事を確認すると、いきなりアズラエルの胸倉を掴み挙げた。

「貴様、どういうつもりだ。ここで俺に殺されたいのか?」
「殺すねえ。本当に殺せるの?」

 挑発するようなアズラエルの言葉に、キースは仕方なくその手を放した。ここでこの男を殺すのは簡単だが、もしそうなればアークエンジェルクルー全員に罪が及ぶ可能性さえある。悔しいが、目の前の男は連合にとってそれ程に重要な位置に居る。
 だが、怒りに顔を赤くするキースに変わって、サザーランドがアズラエルをたしなめた。

「アズラエル様、キースの事は周囲に言いふらして良い類ではありませんぞ。些か軽率すぎます」
「サザーランドは真面目だねえ。でも、キースも悪いよ。何でコーディネイターなんかを放って置くのさ?」
「俺は別にお前と違ってコーディネイターに生理的嫌悪感を感じてるわけじゃないんでな。戦友をどうこうする気は無い」
「相変わらず、優等生だね」

 やれやれとアズラエルは肩を竦める。そう、アズラエルはコーディネイターに生理的嫌悪感を感じるタイプなのだ。確かに仕事が絡めばそんな物押さえ込むし、必要とあれば幾らでも心にも無い台詞を吐く事が出来る。だが、今回は違った。アズラエルはコーディネイターのキラがその場に居る事に耐えられなかったのだ。だから理性的な言葉に感情を交えてぶつけてしまった。
 だが、フレイにあそこまで言う気はなかったのだ。それに関してはアズラエルも少し反省していた。

「悪かった。確かにあのお嬢さんを追い込んだのやり過ぎだった」
「今更言っても遅い。これからどうする気だ?」
「そうだねえ。まあ、こちらにも些かの非はあったし、何かアークエンジェルに有利になるような手を打たせてもらおう。それでどうだい?」
「フレイへのフォローはこっちに押し付けか?」
「そういうのは専門外でね」

 完全に他人事の口調で言うアズラエルに、「こいついつか殺る」と幾度目かの決意をするキースであった。
 
 一方、外に飛び出したフレイを探し回ったキラたちは、地理不案内もあってフレイの足取りを全く追うことが出来なかった。アジア特有の猛烈な雨もフレイの姿を隠してしまっている。結局その日はもう無理だと判断し、フラガの号令の元に彼らはそれぞれの宿舎へと引き上げたのである。




 軍務を終えて基地から官舎へと戻ろうとしていたアルフレットは、途中の路地で人影を見つけ、首を捻ってしまった。こんな雨の中、傘も差さずにあいつは何をしているんだ? しかもその人影は赤い女性兵用見習服を着ている。
 さすがに不信に思ったが放っておくこともできず、アルフレットはその兵士に声をかけた。

「おい、こんな雨の中で何してるんだ。風邪ひくぞ」

 自分の声が聞こえたのだろう。その少女兵はゆっくりと振り返った。その顔に見覚えのあったアルフレットはまた驚いてしまった。

「お前、アークエンジェルのフレイ・アルスター少尉じゃねえか。こんな所で何してるんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 答えないフレイ。その瞳には光が無く、その顔色は冷え切って血の気が無い。仕方なくアルフレットはフレイを傘に入れた。

「たくっ、しょうがない奴だな。とりあえずキースにでも迎えにきてもらって、アークエンジェルに帰れ」
「っ!」

 帰れと言った途端、フレイの肩が震えた。初めて目の焦点があい、アルフレットを見上げてくる。

「・・・・・・嫌・・・・・・」
「あん?」
「戻れない・・・・・・私、キラに会えない・・・・・・」
「はぁ、何言ってるんだ、お前は?」

 アルフレットは訳が分からず聞き返したが、フレイは帰りたくないの一点張りで要領を得ない。ただ、その目が余りにも弱々しい事、どうにも情緒不安定なことが気にかかった。たんなる喧嘩というわけでもないらしいと悟り、仕方なく妥協案を出した。

「分かった分かった。とにかく、こんな所に居たら風邪をひくぞ。帰りたくないなら、今日は俺の家に泊まれ」

 アルフレットの提案に、フレイは少し悩んだ後、こくりと頷いた。それを見てアルフレットは傘にフレイを入れたまま歩き出したが、内心ではなんでこんな事になったのやらと思っていた。

276流離う翼たち・作者:2004/04/13(火) 00:09
ミスりました。フレイ様は赤い見習い服じゃなく、白い士官制服を着てます。

>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィ・・・・・・君って奴は、まさかそういう方面の人だったとは
でもキラとトールも結構マニアな人みたいですし、お似合いか?
何気にトールに対するミリィの反応が酷いです

>> 過去の傷
どんどん妖しい関係が進んでいく。マリューさんがここに居たら今度こそ胃潰瘍で倒れるかも
フレイ様がサイと化してますが、さてどうなるやら

>> リヴァオタと八アスのためでなく
すいません、ネタが分らなかったです。あの方の作品には詳しくないので

>> The Last War・Inside2/2
キラは過去の清算ですな。アレクセイを倒せるのか、それとももう一度話すのか
何気にアスランは壊れキラに似てますな。でもアレクセイも種割れるし
キースはキラの天敵です。実はキースは初期の頃からキラを知ってる素振りを見せてましたが、こういう理由があったんです。ちなみにキースがブルコスに入ったのも、この頃に最高のコーディを殺す為の教育を受けたからで、コーディ嫌いになったんです
キースを生み出した技術者を知ったら、キラは今度こそ再起不能かもしれません

277過去の傷・106:2004/04/13(火) 17:31
言い争う若い男女の声がして、ミリアリアはそちらに目を向ける、ラクスは物陰に隠れて見ている。
姿を見せたのはキラと彼女に追いすがるフレイだった、キラはミリアリアの姿をみとめ、助けを求めるように駆け寄った。
「ミリィ!」
キラはミリアリアの腕に両手でしがみつき、その背後に隠れた、女の子に追われて別の女の子に助けを求める・・・軍人でパイロットであるキラとしてはあまり人に見られたくないほど情けない光景でもある・・・。
「キラ!」
フレイはいらだたしげにキラを叱りつけるように呼ぶ。それに答えたのはミリアリアだった。
「どうしたの?」
冷たい目で私はフレイを見つめる・・・その私を見てフレイは戸惑ったような表情になるのが分かった。
「キラに話があるの、ミリアリアには関係ないわ」
「関係なくなんかないよ!」
ミリアリアの背後からキラが叫ぶ。
「だって僕、昨夜からはミリアリアの部屋にずっといたんだから!」
物陰に隠れていたラクスは顔が赤くなりそのまま退散した、そして事実上その場には三人だけが残った。
フレイはしばらく事態がのみ込めないない様子で、ぽかんと立ち尽くしていた・・・信じられないといった様子だ。
「ど・・・・・・どういうことなの・・・・・・キラ、貴方・・・」
震える声でフレイが言いかけると、キラはその言葉を断ち切るように叫んだ。
「どうだっていいだろ、フレイには関係ないよ!」
ミリアリアの手に回していた両手に、ぎゅっと力がこもる。
そうよ、キラはもうフレイの物ではないの・・・私の物になったのよ、これで私も一人寂しい思いをしなくてすむわ。
「関係ないですって?関係ないってどういうことなのよキラ!」
声を荒げてきたフレイに私は強気に言った。
「もうその辺でいいじゃない、フレイ」
「・・・ミリアリア?」
まさか私が口をはさむとはフレイも思わなかったのか、驚いくようにフレイは私を見た。
「どう見てもあんたが、嫌がるキラを追っかけてるようにしか見えないんだけど」
「・・・なんですって・・・?なによそれ・・・」
フレイの目が言っている、あんたも私を裏切るの?・・・と。
私は思わず目を伏せた。
「もう・・・みっともない真似やめなさいよね、場違いよ」
私はこれ以上フレイと話をするのは耐えられなくなった、フレイに背を向けると私は部屋に向かって歩きはじめた、キラが私に寄り添ってくるのが分かった。
「・・・ちょっと待ちなさいよ・・・」
小さくフレイが呟く、しかしその言葉にはあきらかに怒りがこもっていた。
「ミリアリア・・・この!」
フレイが背後からつかみかかってきた。
「きゃああ!」
そして地面に突き放された。
「・・・うう・・・」
「ミリィ!」
キラがミリアリアを気遣う、しかし彼女はそれを拒否するとフレイにつっこんでいった。
フレイにタックルをかませる。
「きゃああ!」
おもむろに倒れるフレイ。
「・・・はあ・・・はあ」
「やったわね・・・」
たまらずキラはミリアリアを守るように前で出て叫ぶ。
「やめなよ二人共!」
フレイとミリアリアは立ち上がった。
「もういいかげんにしてくれフレイ・・・」
「キラ!?」
フレイが目を大きく開く。
「ミリィは優しかったんで、もういいんだって、もういいのって・・・ト−ルを守れなかった僕を許してくれた、心から・・・」
フレイは驚いたままだ、なにも言い返すことが出来ないのか・・・。
「フレイ・・・君は僕の手を拒絶した・・・嫌がった、僕もやっと素直に君を好きになろうとしていたのに・・・それなのに・・・君は僕になにもしてくれなかったじゃないか!!!僕が君にどれだけ傷つけられたか・・・うう・・・」
もう声が出ないのか・・・そして泣いた。
そのキラにミリィが優しくフレイに見せ付けるように肩を抱く。
「大丈夫よ・・・私ずっと貴方の側にいるから」
そして私はフレイを睨みつけた、そう・・・もうキラはあんたの物じゃないのよ・・・やっと開放された、ト−ルがいない寂しさから・・・やっと新しいぬくもりが出来つつあるの、それなのにこの女はそんなかすかなぬくもりを奪おうというの・・・?
キラは見る、やっぱりキラは可愛い、そしてこのぬくもりも・・・もうこの子なしでは生きていけないわ。
「なによ・・・あんただってキラを利用しようとしてるんじゃないの!そうじゃないの!?ト−ルをこの子が守れなかったから、違うの!?」
フレイは私を睨みつけると叫ぶように言ってきた。
「違う・・・あんたなんかと一緒にしないで!私はあんたとは違うわ!私、キラが好きなの、利用するためにキラと寝たんじゃないわ!」
しまった・・・。
フレイの表情が消えた。
「・・・え・・・?ミリアリア・・・あんた・・・いまなんて言ったの・・・?」

278過去の傷・作者:2004/04/13(火) 17:51
彼女に追いすがるではなく彼に追いすがるの間違いでした、すいません・・・。

>>ミリアリア・あの子許せない
ミリィ、君そんな趣味が・・・怖いです・・・。
っていうかト−ルは彼氏でしょ、もっとなれなれしく接すしたほうがいいかと・・・。
それにしてもKのミリィある意味可愛いですねw
>>The Last War
これはキラの・・・やはりフレイ様は出てきましたがネメシスかどちらなのか気になるところですが、さあアスランを救いだしてあげてください。
>>翼たち
フレイ様迷い込んだか、しかしアルフレットさんのところにいるとは。
しかし誤解されないように・・・大変ですねいろんな意味で。
フレイ様がキラに会えないというのは手を振り払ったことに対してなのでしょうか・・・?

279リヴァオタと八アスのためでなく:2004/04/13(火) 22:14
>ガロード、他人を巻き込むのはどうかと・・・
ジェリドやっつけたんだからいいだろ
>爆破ですか!また過激な・・・(笑)
日本に住んでいていいけど、イラクはこういうことは日常茶飯事なの
>のん気に美術館に行ったりして、相変わらずヘンな人達ですな。
あんな小説はノストラダムスの予言と同じもん、当たりっこないって
>ジェリドが爆死・・・。ちょっとスカッとしたというのは酷いでしょうか?
大藪の小説は悪党がもっとひどい死にかたしている、こういうやっつけかた
好きなのよ。
>三人ドラえもんコスプレ笑えました。何者?
魔太郎ファンのドラえもんのコスプレをした不良
>一番は魔太郎ですか。
質は僕自身も魔太郎好きなんですよ。知らない人はキテレツのような漫画
だと思ってください。トンガリとブタゴリラのようなキャラがいないので
注意。みよちゃんのようなキャラはいますよ。
>ニコルの声優さんって、変わったんですか?
ニコルが死んだあと、摩味さんがアメリカ行って、総集編では朴路美に変わり
ました。
>ギレンは何がしたかったんでしょう?
ギレンはブルコスの株を買い占めてブルコスを乗っ取るつもりでした。
>お久です。コロ助口調で喋るのはキシリア閣下?
小山さんはキテレツでコロ助やったナリ
>ダシ取りに生肉は不味いと思います
都市伝説で手首の入ったラーメンがあって、汁の味がうまかったという。
>MS族って、騎士ガンダム?
「機動戦士SDガンダム」みろ、MSが日本語しゃべっているぞ
>でもガロードが教師って・・・。やっぱり声優ネタですか?
そーですー!
>これは小説のタイトルだったんですねえ。でも、まるで預言書何故にこれが
>売れたのかが謎ですが
売れた売れた売れまくったベストセラーだ
>あのかっこいいシュタイナーが墓荒らしですか。
あのねぇ、シュタイナーはソーセージを作る肉のコストを削るために墓荒らし
して死体の肉使ってんの。
>エリシャはVに出てきた女の子
エリカ・シモンズと同じ声です
>エリス・クロードって、Gジェネのオリキャラの人ですか?
そうです。声はカテジナのナベクミ
>ガロードが教師・・・・・・世も末だな。
鬼塚はどうなんだよ

280私の想いが名無しを守るわ:2004/04/13(火) 22:38
過去の傷>>
一時期はやっといい方向に話が展開してたのですが、ここ最近また
泥沼展開ですねえ。やっとフレイ様が良い感じになったのに今度は
ミリィが・・・。いつまでこの状態が続くのでしょうか?フレイ様は
勿論、ミリィもキラも好きキャラなので少し辛いです。

流離う翼>>
キースはキラを倒すために教育されたのはショックでした。
彼はキラ個人を知ってもキラを嫌いなのでしょうか?

281流離う翼たち・455:2004/04/13(火) 22:54
 官舎に戻ったアルフレットは、フレイに着替えとバスタオルを放ると、バスルームを指差した。

「とりあえずシャワーでも浴びて服を着替えろ。まったく、いい年して何考えてるんだか」
「すいません」
「謝るならさっさと暖まってこい。風邪でもひかれたらかなわんからな」

 叱られたフレイは小さく頷くと、着替えとバスタオルをもってシャワーを浴びに行った。それを見送ったアルフレットは小さくため息を吐くと、上着を脱いでエプロンを手に取った。

「とりあえず、メシでも作るか。しかしまあ、何があったんだかねえ」

 夫婦喧嘩は犬も食わないが、子供の痴話喧嘩は虫も手を付けないに違いない。だが、雨の中で1人歩いていたフレイを思い出すと、単なる痴話喧嘩とも思えない何かを感じてしまう。我ながら自分の御節介ぶりに呆れてしまうが、そういう星の元に生まれたのだと諦めるしかないのだろう。

 シャワー室から出てきたフレイはアルフレットの物らしい大きなワイシャツを着て現れた。体格が違いすぎるのでワイシャツ一枚で体がすっぽり覆われてしまっている。
 でてきたフレイは顔を赤くしながらアルフレットの居るキッチンに来て、思わず目を丸くしてしまった。筋骨隆々の大男がエプロン付けて料理しているのだから、似合わないことこの上ない。ほとんどギャグの世界だ。
 フレイに気付いたアルフレットは首だけ向けた。

「おお、お嬢ちゃんか。もうすぐ出来るから、座っててくれ」
「は、はい・・・・・・・」
「少しシャツが大き過ぎたようだな。下着はさすがに無いから我慢してくれ。俺が女物の下着を持ってたらただの変態だからな」

 椅子に腰掛けたフレイは、大男が料理を腕を振るっているという奇妙な光景にしばし圧倒されていた。そして出来た料理を皿に盛り付け、並べていく。出来上がったのは見事なグラタンであった。

「まあ、遠慮せずに食べてくれ」
「は、はい」

 フォークを手に取り、パイ生地を破ってみる。中からはクリームと一緒に鰯の香りが漂ってくる。どうやら鰯グラタンらしい。意を決して食べてみると意外においしく、空腹感もあってフレイは嬉しそに口に運びつづけた。

「どうだ、悪くないだろ?」
「ええ、とってもおいしいです」
「単身赴任が長いからな。料理の腕も上がっちまった」
「単身赴任って、奥さんが居るんですか?」
「ああ、オーブにな」

 アルフレットはフレイより早く食べ終わるとフォークを置き、少し真面目な顔になった。

「それで、何であんな所で傘も差さずに突っ立ってたんだ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「心配するな。事情が何であれ、今日は泊めてやるよ。その様子じゃ追い出すのも気が引けるしな」
「・・・・・・ありがとう、ございます」

282流離う翼たち・作者:2004/04/13(火) 23:00
>> 過去の傷
ああ、ミリィ口を滑らしましたね。
これでフレイ様は完全に二人から離れるかな。
フレイ様が会えないと言ってるのは、過去の自分と親父さんがブルコスだったからです

>>280
キースはキラを気に入ってます。幾度かキースはキラを気に入ってると言ってますから
ただ、キースはキラを殺す為に作られ、教育されたせいでブルコスに入ったんです
ちなみに、キースを引き取って育てたバゥアー父母はメンデルの研究員で、研究対象だったキースをメンデル襲撃時に連れて逃げ出した人です
コーディ憎しだったキースが丸くなったのはこの両親のおかげです。

283ミリアリア・あの子許せない 88:2004/04/14(水) 04:45
7.ミナシロのこと覚えてる? 5/12
[こら、ちょっとくらい謝りなさいよ]

ショッピングモールに着いた私は、その人ごみの多さにびっくりするとともに、キラと
トールの居場所を見つけるのは無理と判断し、キラの携帯に電話して、目の前の喫茶店の
名を言って、待ち合わせすると告げた。キラの方も店が混んでいて、席が空くのを待っていた。

「こっちも店に席とれたら迎えに行くよ」
「うん、了解」

私は喫茶店に入り、水を持ってきたウエイトレスに言った。
「待ち合わせで、すぐ出るので、水だけでいいですか」
「そう言う訳には参りません。何か注文してください」

「一番安いのなんですか」
「ブレンドです」

「じゃ、それください」

注文を取ってウエイトレスが下がった時、私の後ろの席で囁く声がした。

「なんか、見てて、いやらしいわね。ああいう言い方」
「ビンボなんだから、悪いわよ。そういうの」
「そもそも、こんなとこに来るのが悪いんじゃない」

「まあ、そこまで言うことは無いけど。ちょっと、あまり好ましくないわね」

三人組の女性が、明らかに私をネタに話している。私は無視した。そういう言い方されることも、
一度じゃない。もう慣れっこだ。どんな人なのか気にも留めようとしなかった。

私は、キラの迎えを待ちながら、手元の紙袋の同人誌の内容に思いを馳せる。早く見たい
気持ちを落ち着かせようとする。いつの間にか、ブレンドコーヒーが運ばれてテーブルの端に
置いてあるのさえ、気づかずにいた。

「それじゃ、デートがんばってね」
「後で、ホテルの得点聞かせてね」
「ちょっと、そんなんじゃ無いって言ったでしょ。パパの仕事のパーティなんだから」

「分かった、分かった。じゃね」

やがて、後ろの三人組の二人が出て行った。残った一人も、しばらくして席を立つ。両手に
一杯の紙袋をかかえて私のテーブルの横を通り抜ける。その時、紙袋がコーヒーカップに触れた。
カップが跳ねる。隣の水の入ったコップが倒れる。

「や、何よ!」その女性が、大声で叫んだ。
「冷たい!」私は、それどころじゃ無い。コップの水がスカートにかかって水びたし。
慌てて大切な同人誌の入った紙袋をどかして、ハンカチでスカートとストッキングを拭く。

「ちょっと、上着にコーヒーの雫付いちゃったじゃない。どうしてくれんのよ」
その女性は叫んでいる。頭には唾の広い帽子を目深にかぶり、大きなサングラスをかけている。
そして、夏用の白い上着を羽織っている。その子も、紙袋を床に降ろしてハンカチでコーヒーの
雫を拭いている。

「冗談じゃ無いわよ。こっちこそ、水かけられて、いい迷惑だわ」
「これ高いのよ。染みになったら、どうすんのよ。ああ時間だ。まったく、何て災難かしら」
その女性は慌てて紙袋を拾うと清算して店を出て行った。

「こら、ちょっとくらい謝りなさいよ。ちょっと!!」

まったく、何考えてんのよ、あの子。
私は、腹を立てながら、同人誌の入った紙袋に目をやったけど、あるはずの場所には、
何も無い。まさか、あの子が間違えて持って行った? あの、貴重なものを……

「ちょっと、待ちなさい。アンタ」
私は店を走り出ようとした。ウエイトレスに止められる。

「お願い、大事なもの間違えて持ってかれちゃったのよ。行かせて」
「清算が済むまでダメです」

そんな、いざこざの中、キラが喫茶店に現れた。
「ミリィ、お待たせ。店の座席、トールが取ってるから。行こう」
「キラ、いいところに。ここの支払い、お願い。私、急ぐから!」

「どうしたのミリィ?」
同人誌と言おうとして、私は慌てて言葉を飲み込んだ。
「大切な買い物の紙袋を、さっき、間違えて持ってかれちゃったの。私追いかけるから」
「ちょっと、ミリィ?」

私は、キラを置いて、喫茶店から飛び出した。人ごみの中、既に、あの子の姿は無い。
私は、キョロキョロと見回しながら、アチコチを走り回る。やがて、支払いを済ませたらしい
キラが追い付いてきた。
「ミリィ、どう見つかった?」
「ダメ、見つからない」

「安いものなら、僕がもうひとつ買うよ」
「ダメ、安くもないし、もう、アレだけなの。絶対に見つけなきゃ」

「そこまで大事なものって何なの?」
「何でもいいから。キラ、トールも呼んで、一緒に探して」

「食事は?」
「そんなもの、後でもいいから」

「分かったよ。トールを呼んで来る」

走っていくキラの背中に私は声をかける。
「あ、キラ。ついでにハンバーガーも買ってきて。ポテトとジュースも」

とりあえず、さっきの喫茶店代と、お昼は、私の財布は傷まずに済んだようだ。

284ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/14(水) 04:50
一応、現在の章の1話で書いときましたが、この時点ではトールとミリィは彼氏・彼女になっていない設定です。
フレイとも、まだ知り合っていません。別に見返す必要も無いけど、うちのSSでのミリィの趣味については、
ミリィSS第一部でも「オーブ・フレイの心」にも書いてました。

>>過去の傷
ついに修羅場やってしまいましたな。ラクスは退散?聞いていたらミリィただじゃ済まなかったろうけど。

>>リヴァオタ
他は大抵読んでるけど、魔太郎だけは読んでない。そうだったんですか。ロランって情報通ですな(笑)

>>流離う翼たち
アルフレットさん、やっとここでフレイ様に関ってきましたな。なんか理想的で頼りになる大人の軍人像が
溢れ出てます。もう、TV本編のとは大違い。キースの両親の話、もったいない。ちゃんと小説で読みたかったよ。
本編のキャラとの絡んだ話で…… もう出てましたっけ。

285過去の傷・107:2004/04/14(水) 12:45
つい夢中で言ってしまった、キラと寝たことを白状してしまった。
「寝た・・・?キラとミリアリアが・・・?どういうことなの?キラ?ミリアリア?」
少し戸惑っていたミリアリアだが、強気に。
「そういうことよ、フレイには関係ないでしょ、つまり私達はそこまでの関係になってるってことよ」
「そうだよ、フレイには関係ない、僕がミリィと寝ようが勝手だろ!」
フレイはまだ現実がのみ込めない様子だ。
「キラなに馬鹿なこと言ってるの?」
「もういいでしょ」
いままでキラとの仲を見せつけていた女を見下すように見つめるとキラの手に優しく触れた。
「キラ・・・私は優しくしてあげるから・・・包んであげるからね」
「ミリィ・・・うん」
ミリアリアは部屋に向かって歩き出す。
「ミリィ!」
キラもミリアリアの後を追う。
「あ、キラ!」
フレイがキラを行かせまいと肩を手でつかむ、しかし瞬時にキラは振り返りフレイを睨みつけ、手を振り払うと急ぐようにミリアリアの後に続いた。

ミリアリア・・・あの子よくも・・・キラの前であの子は私に恥をかかせた、私のプライドは完全に引き裂かれた、一昨日なんで・・・無意識とはいえなんでキラの手を拒絶したりしたのかな、私は後悔した、キラが私に逆らった・・・私に・・・。
フレイはその場に崩れる。
「まったく手間がかかるな、お前は」
「え・・・?カガリ・・・」
側に来たカガリが手を差し出す。
「ありがとう」
フレイは微笑んだ。

カガリを部屋に戻したあとフレイは一人休憩室で休んでいた。
「・・・・・・」
信じていたプライドがずたずたにミリアリアに引き裂かれた、なんで・・・?なんで・・・?
「あらあら?フレイさん?」
「ラクス・・・」
ラクスが休憩室に入ってきた。
私はいまイライラしていた。

勝った、私はフレイに勝った。
「キラ、これでフレイはもうあきらめるはずよ」
「だといいけど・・・」
「じゃあ来週楽しみね、私達の結婚」
「・・・・・・」
キラ・・・貴方はト−ルの代わりでしかないのよ、でも・・・まあ愛してあげる、キラ離さないからね、それに貴方のことも好きよ、好きだから結婚してあげるの、貴方の意思に関係なく・・・。

286流離う翼たち・456:2004/04/14(水) 23:16
 落ち込みながらも礼を言い、フレイはぽつぽつと語りだした。自分がどうしてあんなところに居たのかを。

「私、前はヘリオポリスに住んでたんです」
「ヘリオポリス、あのザフトの攻撃で破壊されたっていうオーブの工業コロニーか」
「はい。そこからアークエンジェルに拾われて地球を目指したんですが、アークエンジェルを出迎えてくれた艦隊に、パパが乗ってたんです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「でも、私の目の前で、パパの乗った戦艦は沈められました。その時、ストライクに乗ってたのが、キラというコーディネイターだったんです」
「あの坊主か」
「私はパパを守れなかったキラを憎みました。パパを殺したコーディネイターを憎みました。だから、キラも戦って一人でも多くのコーディネイターを殺して、そして死ねばいいと考えたんです。その為にキラが軍に残るように仕向けて、戦わせて、喜んでたんです」
「・・・・・・・復讐か」

 その気持ちは分からないでもなかった。戦争が始まって以来、そういう奴は多い。だが、フレイのそれは少し事情が違うようだった。

「でも、キラは優しくて、弱くて、だんだん憎めなくなって、気が付いたらキラの事好きになってて・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「一度は別れたんですけど、もう一度やり直そうって事になって。最初はぎこちなかったんですけど、何時の間にか普通に話せるようになって、あの頃のことを忘れてて・・・・・・・・・」

 このまま全てを忘れてやり直せると思っていたのだ。回りがどうであれ、自分たちには関係がないと。だが、父親がブルーコスモスだと知ったとき、全ては壊れてしまったのだ。ブルーコスモスの娘がコーディネイターと恋仲になるなど、余りにも異常だとしか言いようが無い。結局自分たちは最後まで間違っていたのだ。
 だがフレイの話を聞いていたアルフレットはマグカップに淹れたコーヒーを音を立てて啜ると、不味そうに顔をしかめてそれをテーブルに置いた。

「ちっ、官給品は相変わらず不味いなあ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「それで、お嬢ちゃんはそのコーディネイター、確かキラ・ヤマトだったか、ときっぱり縁を切りたいと、つまりそういうことか?」
「・・・・・・・・・はい」
「親父さんがブルコスだったから、キラには相応しくないと?」
「はい」

 アルフレットの問いに頷くフレイ。アルフレットはそれを聞いて小さく鼻を鳴らし、また不味いというコーヒーを口にした。

「へっ、くだらねえ悩みだな」
「・・・・・・どういう事です?」
「親がブルコスだからコーディとは付き合えねえ、か。その程度の覚悟しかねえなら、さっさと別れて正解だって事だ」

 アルフレットの答えにフレイは怒りを覚えたが、すぐにその怒りが萎えてしまった。この人の言う通りだと分かってしまったから。目に見えて落ち込むフレイの様子など気にもとめず、アルフレットは話を続ける。

「さっさと気付いて良かったじゃねえか。まだ若いんだし、これから幾らでも出会いなんてあるぞ。そんなコーディネイターとはさっさと別れてもっと良い男を捜しな」
「・・・・・・でも、キラは何も悪くないのに」
「何言ってやがる。お嬢ちゃんの言い分なら、そいつがコーディネイターだって事がすでに悪い事なんだろうが」
「それは、その・・・・・・」
「まあ別に珍しい話じゃねえよ。交際相手がコーディネイターと気付いた途端、相手を嫌って別れるなんてのは良くある話さ」

 突き放すようなアルフレットの言葉。だが、それは何よりもフレイの心に深く突き刺さった。そう、それが、今の世界の常識なのだ。

287流離う翼たち・作者:2004/04/14(水) 23:26
>> ミリアリア・あの子許せない
何と言うか、恐ろしい出会いですな。最初の接点が喧嘩で次が同人誌・・・・・・
何となくミリィがフレイ様嫌う理由が分かったような気がw
キースの両親は出てきてません。キースの背景キャラですから、フレイ様には全く絡まないので出してないのです。設定等は出来てるので書くことは出来ますがね。
ちなみに、キースを強化した研究者はオフィシャルキャラでキラの関係者ですよ。

>> 過去の傷
ミリィさん、そんな怖い事考えちゃいけませんってば
平和なのはカガリだけになってしまったようですな。
そういえば、虎とダコスタ君は何処に行ったんでしょう?

288ミリアリア・あの子許せない 89:2004/04/15(木) 03:11
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 6/12
[昨日別れたばっかなのに]

「鍔の広い帽子にサングラス。白い上着で、その下は?」とトール。
「なんかパーティドレスみたいなの」私は答える。

「顔は覚えていないんだよね」キラは言う。
「うん」

「これだけで、捜せっていわれてもな」

ショッピングモールとデパートやビジネス街は、いくつもの橋や通路で繋がれている。
私達は、そこで、眼下の車や人の流れる様を眺めながら、キラの買ってきたハンバーガを
頬張りつつ話をしている。

「あの人は?」
「違う」

「あの子なんかどうだ」
「違うわ」

キラとトールは、通路をアチコチを見回って、通りを歩く、それらしい人影を捜すけど、
中々、本人を見つけることはできない。

「なんか、手がかりあればな」私は欄干に肘を付き、手を頬に当て、頬を膨らまして呟く。

「ふうん、俺の写真の中には、そういう子いたかもな」
「へえ、どれ、あ、この子よ」
私はデジカメのモニタを見て叫んだ。
「ふうん、こんなのか」とトール。
「なんか、ファンッションモデルみたいだね」とキラ

「ありがとうカズイ、恩に着るわ」
そう言ってから私は気づいた。カメラバッグとデジカメを抱えたカズイが、いつの間にか、ここにいる。

「カズイ、なんでここにいるの?」
「いや、せっかくの休みだからオーブに撮影旅行にと」

「両親とは、いいのかい」とキラ。
「俺、自宅通学だよ」

「なんで、俺達と一緒に、来なかったんだよ」とトール。
「ファーストクラスにいたから」

そう言えば、カズイはパソコンでもデジカメでも、結構、こづかいで揃えているのだった。
裕福な家庭が羨ましい。

「しかし、昨日別れたばっかなのに、もうゼミのメンバーが四人まで揃うとはな」
「これで、サイがいれば、勢揃いだね」
「サイは、首都の高級住宅街だし、いくらなんでも、それは無いでしょ」

話し合う三人を尻目に、カズイは言った。
「でも、あそこに見えるオープンカフェに座ってるのは誰だろう?」

私達三人は口を揃えて言った。
「サイ!」

なんと、橋からすぐ近くのビルのテラスにあるオープンカフェにサイが座っている。しかも、
ジャッケットにネクタイ姿と、やけに着飾っている。

「デートだ。これは、相手を聞き出さないと」トールは駆け出して行った。

「トール、やめときなよ」キラは追いかける。
「ちょっと、待ちなさい。トール、キラ」私も後を追う。

「じゃ、俺はこれで」
「ダメよ。一緒に来なさいカズイ」
逃げようとするカズイを、引っ張りながらオープンカフェのあるテラスに辿りついた時には、
トールのサイへの質問攻めが始まっていた。

「ちょっとぉ! トールとキラだけでなく、ミリアリアにカズイまで! 君たちぃ、何やってんだ」
サイは、あまりの気まずさに、声を裏返らせたようにトーンが変わっている。

「何やってんだは、こっちだぜサイ。デートだろ。相手はどんな人」
「トールやめなって」
「いいかげんにしなさいトール」

「何言ってんだよ。キラやミリィも興味あるだろ」
「どんな娘か知りたいけど。って、トール、だからサイに悪いって」
「興味無いことも無いけど。って、トール、それどころじゃ無いでしょ。さっさと来なさい」

キラと私の返答に、サイは、もはや可哀想なくらい顔を引きつらせている。

「ミリアリア、それどころじゃ無いって?」
でも、表情をこわばらせたままの苦し紛れの質問がサイの福音となった。

「ミリィが、さっき買ったもの、間違って持ってった人捜してるんだ」とキラ。
「何を?」
「何でもいいから、つまんないものよサイ」私はキラを押しのけるようにして誤魔化す。
「そうそう、ミリィは、親に締め……」話しかけたトールの口を塞いで引き戻す。

801同人誌のことは誰にも知られてはいけないし、両親からの締め出しも、この二人以外に、
口外するのは恥ずかしい。

「サイ、ごめんね。この二人、私がなんとかするから」
「はあ」

サイは救われた。私は、トールの耳をつまみ、キラの腕を掴んで、オープンカフェを後にする。
「痛い、痛いよミリィ」
「ちょっと、ミリィ、何で僕まで」

「どうしたんだ? ミリアリアは」
「なんか、ファッションモデル風の女を捜しているらしいよ」

やっと、落ち着いたようにサイはカズイと話をしている。

「カズイ、あなたも早く来るのよ。さあ!」
私の声に、カズイは怖々と付いてきた。

サイは、いきなり来て、嵐のように去って行った私達をポカンとした顔で見つめたままだった。

289ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/15(木) 03:21
>>過去の傷
もう、一種爽快なくらい、各女性キャラが泥沼に。アスランは、しばらく出ませんが、出なくて正解かな。

>>流離う翼たち
ちょっと前ですが、454 のアズの話。生理的嫌悪感ということですが、病気でも無いのに遺伝子を
いじったことに対する、潔癖さゆえの嫌悪という初期のフレイ様と同じことが理由なのかな?
そうすると、キースにも半端じゃない嫌悪感を感じているのでしょうね。だから仲が悪い?

なんか、本気でフレイ様、アークエンジェルを降りてしまいそう。
アルフレットの弁だと、親がブルコスなのも悪い原因になってしまいますな。
こういうことにこだわると、次の男選びに一生付いて回って、結局、手近なブルコス関係者を
安易に選んでしまいがち。フレイ様、こちらについても早く心の整理をつけた方が……

キースの両親の件、残念ですが無理は言えませんね。これだけの群像劇だし、コーディネータという
異分子への心の見方の変化が、SSを創る上では、フレイ様のテーマのひとつでもありますから、
対比的な意味で絡ませられないことは無いと思いますけど、作者さんのストーリー展開の構想もありますから。

290私の想いが名無しを守るわ:2004/04/15(木) 04:27
>>ミリアリア
オーブ本国の描写は、なんか良いですね。帰省先でドタバタが
発生するというネタは何故か郷愁を誘います。チャームポイン
トの赤毛が捜索の手がかりにならないのも面白いです。
>>流離う翼たち
フレイ様はパパはパパ、自分は自分と分けて考えられなさそう
なので厄介ですね。前回の和解が、なんとなく棚上げ状態だった
ような気がするので、ここに来てこの展開は楽しみです。
>>過去の傷
結婚願望や独占欲は強いのに熱しやすく冷めやすいこのSSの
キャラに最近興味が沸いております。ウイルスのように
フレイ様→ラクス→㍉と伝染してますね。
>>リヴァオタ
ショタでも婦女子でもありませんが、ニコルとロランの組合わせ
は好きですね。ニコルがコンサバな趣味でちょっとホッとしてます。
ドズルに言われれば衝撃も二倍という感じですね。
>>The Last Wa
ラウも、ここまで書いてもらえれば、浮かばれます。キラが
ラウに対して、屈折した共感というか同情をしているのが面
白いです。もはや三大怪獣決戦という感じで、大変なことになりそうですね。
>>ヘリオポリス
フレイ様がイライラしているのが、よく伝わってきますね。
キラのことを下に見ようと頑張っているのが、かわいらしい
というか痛々しいというか。エリザリオの話もそれっぽいですね。

291過去の傷・108:2004/04/15(木) 12:56
フレイは少し考えると話した。
「ねえラクス」
「なんでしょう?」
「私、あんたと仲良くなれるかな?」
ラクスは少し驚いた表情をすると、苦笑いを浮かべた。
「私はコ−ディネイタ−ですよ?よろしいのですか?」
フレイは下を向いたが・・・。
「差別はいけないと思うわ、人は平等よ」
「はい・・・?」
「コ−ディネイタ−もナチュラルも平等よ、差別はいけないわ」
「はい、私もそう思います、でもまさかフレイさんがそんなこと言うなんて思いませんでした、去年のこともありますし・・・」
去年のこと・・・あれだ・・・。
(冗談じゃないわ・・・なんで私があんたなんかと握手しなきゃなんないのよ・・・コ−ディネイタ−のくせになれなれしくしないで!)
という発言をア−クエンジェルの艦内で丁度一年前ラクスに言ったことがあるのだ・・・。
「・・・私も・・・キラと親しくなっていくうちに・・・少しは考え始めたの、でも・・・いまでもキラ以外のコ−ディネイタ−はまだ好きにはなれないわね・・・あんたも」
「・・・・・・」
「でもあんたとは仲良くしたいわけよラクスちゃん」
「え・・・?」(ラクス・・・ちゃん?)
フレイは身を乗り出すと・・・。
「というわけで今日は泊めて!お願いラクスちゃん♪」
「・・・その呼び方をやめていただけるのなら、よろしいですよ」
「ほんと!?ラクス大好き!」
「あ・・・あの・・・フレイさん」
フレイはラクスに抱きついたのだった。
その光景をカガリが遠くで寂しそうに見つめていた。
(ラクスさん・・・よくも私のフレイを・・・貴女様にはアスランがいるはずだろ・・・)

「ねえ、キラもう明日結婚しましょ♪」
ミリアリアは甘えるような声で言いキラに抱きつく。
「いやさすがにそれはちょっと・・・」
「いいじゃない」
「せめてこの艦を降りてからとか」
「いや!絶対明日結婚するわよ!フレイに見せつけてやればいいのよ、私達の関係・・・」
いまのミリィはト−ルに接する感じで僕に接してきている・・・これは僕を認めた証拠か?
「だいたい年齢的にもまだ無理だよ」
「そんなのどうにでもなるわよ」
「いやならんし・・・」
私はこの子なしでは生きていけないわ。
「もうフレイのことはカガリに任せてあるんだ、実戦もさ、でももうフリ−ダムには乗せないよ」
「フレイの話は・・・他の女の話はしないで・・・」
「あ、ごめん・・・」
やっぱり無理かしら・・・でも私は決めたの・・・でもあの女にはならない・・・フレイのようにはならない。
「ミリィ・・・そのさ」
「・・・・・・」
黙って私はキラの肩に両手をかけキスをした。
長いキスだった、私はキラとキスするとき実感した、キラは私のものだと、やっぱりこの子なしでは生きていけないわ。

292過去の傷・作者:2004/04/15(木) 13:05
>>翼たち
よかったですね、フレイ様暖かい物が食べられて。
でも心の傷は深いかも・・・。
ダコスタ君はいますよ、少し前出したはずですが・・・虎はプラントです。
>>ミリアリア・あの子許せない
サイが可哀相に、ミリィはリ−ダ−みたいですね、女は強しだな、サイはミリィに感謝しないと。

293リヴァオタと八アスのためでなく:2004/04/15(木) 21:37
キラとフレイは交差点に行くと、前からドラえもんのコスプレした男が現れた
今日は、なんてコスプレをした人が多い日だ。
「ねぇキラまた変な人が」
「横向いとけ」
「なんで」
「ああいうのは目を合わせないのがいいよ」
「そう・・・」
そのドラえもんの男は写真で言えばこうである
http://www.geocities.co.jp/MusicStar-Guitar/1658/d-119.jpg

キラとフレイはその男からとおりすぎようとしたとき
「おぅおぅ姉ちゃん、おめぇ俺の子分をイオナズンで吹っ飛ばしただって?」
「なんのことかしら・・・」
「とぼけんじゃねぇよ、俺たちは「魔太郎ファンクラブ」の会員さまなんだぜ!」
「それがなんなのよ」
「おめぇ魔太郎、軽蔑しているな、そうかお前はキテレツが好きだな!ショタが!」
「魔太郎とキテレツ関係ないじゃない!」
フレイはタンカを切った。

294私の想いが名無しを守るわ:2004/04/15(木) 23:25
リヴァオタ作者さんへ>>
作中とはいえ、直リンは良くないと思います。
あとメール欄は何か意味あるのでしょうか?

295流離う翼たち・457:2004/04/15(木) 23:49
 アルフレットに突き放されたフレイは心ここにあらず、という感じでぼんやりとしており、それ以上話しても無駄だと感じたアルフレットは仕方なく食器を片付け、フレイに今日はもう寝ろと言った。

「奥の部屋にベッドがあるから、お前が使え」
「でも、私のが部外者なのに」
「いいから使え。どう見てもお前は床やソファーで寝るタイプじゃないだろうが」

 アルフレットに言い切られたフレイはそれに反論することが出来ず、ペコリと頭を下げて寝室へと向かった。アルフレットは暫くキッチンで安物のスコッチを傾けていたのだが、フレイが寝静まった頃を見計らってアークエンジェルに電話を入れた。暫くして出た軍の係員にフラガ少佐に繋ぐように伝え、そのまま待つ事1分。ようやくフラガが出た。

「はい、フラガですが」
「おうフラガ、休暇は楽しいか?」
「隊長ですか。いきなり何です?」
「実はな、俺の所にお前の所のアルスター少尉が転がり込んでてな」



 何だか寝られなかったフレイはそっとベッドから起きだし、トイレに行こうと廊下を歩いていた。やはりベッドが変わるとなかなか寝付けない。だが、キッチンの前を通りかかった所でアルフレットの声が聞こえてきた。


「・・・・・・・・・・・・アルスター少尉が転がり込んできてな」
『私の事、アークエンジェルに引き取りに来て貰うつもり?」

 咄嗟にアルフレットがアークエンジェルに連絡を入れているのだと察し、フレイは身体を強張らせた。扉に近付き、そっとその会話を盗み聞きする。
 アルフレットはヴィジフォンで相手と話しているようだ。声からして相手はフラガ少佐らしい。

「おう、夜中に雨の中でとぼとぼ歩いててな。ほっといたら死んでたぞ」
「そいつは、助かります。すぐに迎えに行きますから」

 その言葉にフレイはビクッと反応したが、それに対するアルフレットの返事は意外なものであった。

「いや、そいつは少し待ってくれ」
「へ、何でですか?」
「まあ、お嬢ちゃんも色々と悩みがあるみたいだからよ。少し考える時間が必要だってことだ。どうせ艦が直るまでは休暇なんだし、構わねえだろ」
「そりゃまあ、構わないと言えばそうですがね。こっちにも体面って奴が・・・・・・」
「艦長には、俺が基地の方で野暮用を頼んだと言っておいてくれや。心配しなくても出航までには艦に戻すからよ」
「ですが・・・・・・」
「責任は全部俺が取る。お前は俺に命令されて逆らえなかったとでも言ってくれりゃ良いんだ」

 アルフレットの頼みに暫し黙るフラガ。そして、本当に渋々という感じでフラガがそれを了承した。

「分りました。こっちは俺が上手く言っておきます」
「すまねえな、色々と迷惑かけてよ」
「いや、迷惑をかけてるのはこっちのようですし。隊長の所に居るなら、下手に俺達が面倒見るより今のフレイには良いかもしれません」

 フラガの返事に、アルフレットはもう一度礼を言って通信を切った。これでフレイは出航の日まではアークエンジェルに戻らずに済むことが決定したらしい。フレイは扉の前でぺたりと座り込み、その頬には安堵の涙が一筋の流れを作っている。
 この時、フレイはアークエンジェルに乗って以来、初めてとも言える安心感を得ている。きーすが頼れるお兄さんなら、ナタルはカッコいいお姉さんだ。だが、アルフレットのそれはまさに父親だった。キースが尊敬する偉大な男が持つ力強さをフレイも感じていたのだ。

296私の想いが名無しを守るわ:2004/04/15(木) 23:50
>>293
漏れは思わず吹き出してしまったw

297流離う翼たち・作者:2004/04/16(金) 00:00
>> ミリアリア・あの子許せない
カズィ、君は一体何者なんだ? サイはフレイ様と逢引ですか
ミリィは必死ですねえ。まあ見つかったら色々と不味いでしょうからw
アズラエルはコーディは生理的に嫌ってますが、キースはたんにブルコス時代の方針で対立していただけです
むしろキースのほうがアズラエルを嫌ってますね。
キースの両親、出るとしたらカガリが昔に手に入れた資料の事をキースに聞く時でしょうかね。その時ならキースの昔話が出来ますから、2人も少し出れます

>>290
2人の和解以降の関係を棚上げにしてたのは、わざとです。特にキラはまだ怖がってますし
フレイ様がここで壁にぶつかるのも初期からの構想だったんです。

>> 過去の傷
カ、カガリさん、まさか、マジで百合!?

298ミリアリア・あの子許せない 90:2004/04/16(金) 07:58
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 7/12
[こういう時こそ、トリィの出番だよ]

「ミリィ、何怒ってるの?」
「せっかく、面白いとこなのに、無理矢理引っ張って、横暴だぞ」
キラとトールは、私が連れ出したことに文句を言っている。

「アンタ達、遊び半分でやらないで。ちゃんと捜してよ!」私は二人に一喝する。

「カズイ、とにかくさっきの写真プリントして来て。それで、皆で聞いて回りましょう」
「あの、俺、撮影旅行の予定が……」

「困ってるんだから、協力して。ねえ、お願いカズイ」
「はあ……」

断りきれず、フォトラボ・スタンドに向かうカズイの背中に、私は声をかけた。
「ついでに、クレープもあったら買ってきて。特大の甘いやつ。後、ジュースもね」

甘いものに目がないキラとトールは、一応、それで機嫌を直したようだ。
今回も、私のサイフは傷まなかった。

* * *

東アジア風の料理店が軒を連ね、店頭で売っている点心や麺の器を持ったアベックで、ごったがえすストリート。
ブティックをはじめ、さまざまな店が並び、高い天井からの飾り物や垂れ幕が華やかさを彩るアーケード街。
しばらく、四人で手分けしてアチコチの人に聞き回ったけど、私の大事な同人誌を持って行った、
あの子の手がかりは掴めなかった。

「こんなことなら、サイを隠れて見張っておけば良かったな」
大きな時計塔のある広場のベンチに座り込んだトールは、飽きてきて、またサイのことを話し始めている。

「トール、人のこと、あまり構うのはやめなよ」キラは言う。

「あの子は?」トールが、広場の上にかかったアーチ陸橋の上を指差す
「あの子? でも、帽子もサングラスも無いよ。上着も着てないし」 キラは言う。

「いや、キラの好みだと思って、オーイ! あ、こちらに気づいた。手を振ったぞ」
「赤毛の、かわいい子……」

キラが見つめる。距離があって、ここからは顔までは分からないけど、キラは目がいいから……

「キラ〜! あんな関係ない人ほっといて。トールも! ナンパなんかしてないで、真面目に捜してよ!」
私は、面白くない。

キラは、不機嫌な私を見て目の色を変え、まるで誤魔化すかのように話しだした。

「こういう時こそ、トリィの出番だよ。空を飛べるし、対人認識能力も抜群だから」

<トリィ? トリィ?>
キラは肩で首を振っているトリィを指に移らせた。

「だったら、なんで最初から使わなかったんだよ」トールが突っ込む。
「いや、多分だよ、多分……」

「多分……?」
キラの歯切れの悪さに、私は不機嫌な顔のまま呟き、疑いの目を向ける。

「とにかく、カズイ、ちょっとデジカメ貸して。パターンを登録してと」
「ほんとに大丈夫?」

キラの言葉にカズイも半信半疑だけど、とにかく、デジカメを貸して、キラはそのデジカメの
撮影データを、PDAで加工してトリィにパターン登録した。

キラはトリィを、晴れ渡った大空に放つ。空中を一回りしたトリィは、すぐに目標を見つけたように、
一目散に、ある人目がけて降りてきた。陸橋の上の、さっきの赤毛の女の子に……
トリィは、さかんに、その女の子にじゃれついている。そこから、他へ飛ぼうとしない。
私は、キラをジロリと見つめる。

「キ〜ラ! トリィのプログラムしたのって誰だっけ?」
「いや、あれ作ったのは僕じゃなくて…… でも、プログラムは僕かも……」

「ということは、キラが、ああいうスケベなプログラムしたのよね」
「違うって、ミリィ……」

「キラ、あなたの好み見せてもらったわ」
「ミリィ、あの、僕…… トリィ、回収してきます」

キラは走っていった。

「さっさと行ってらっしゃい、キラ! それと、ついでにフランクフルトのチリソースも買ってきて!」
私はキラの後ろからまくしたてる。

「キラも、俺と同じ目に」
「いや、実はキラは二度目なんだ。俺、ミリィのそばを離れない方がいいかもな」

小声で話すカズイとトールを、私は横目で睨みつけた。それに気づいて二人とも恐そうに黙り込んだ。

299ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/16(金) 08:00
ここで、トリィに入れた対人データが、その後、トリィがフレイになつく要因になってたりするのは、
SS内で語られない裏設定 (=後づけの思つき) だったりします。

>>過去の傷
フレイ様がラクスに? また、少し壊れ気味な感じも…… ミリィは、どんどんキラにはまってますが、
このままでは済まないのでしょうな。

>>流離う翼たち
アルフレットさん父親の位置づけでしたか。フレイ様にとって、父親とは我が侭を聞いて可愛がって
くれるジョージ・パパですから、それとは、また違った見方を感じとることになるのでしょうね。
でも、とりあえず出港まではアークエンジェルにある現実から逃避するとして、それでは解決しない
でしょうから、もう一波乱あるのかな。それにしても、VisiPhone は通話相手の話まで盗み聞きできて便利?
キースの両親の話、無理にとは申しませんが、少しだけ期待しておきます。
アズの件了解です。そう言えばコーディネータは嫌いでも、ブーステッドマンは使ってますね。あいつらは道具扱いですけども。

300過去の傷・109:2004/04/16(金) 08:30
「じゃあ上がるわね」
「どうぞ、お上がりください」
フレイはラクスの部屋に入った。
そして唖然とする、このハロの多さに。
「あのさ、この丸いの達なんとかならない・・・?」
「分かりました」
「ラクス、失礼します」
そう言うとフレイの見知らぬ少年が入ってきた。
「あら、アスラン!」
「・・・・・・」(誰・・・?)
「・・・・・・」(フレイ・アルスタ−・・・か)

数分後のキラの部屋では。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私、彼氏いたこともあってこういうの得意だわ。
ミリアリアは暖かくキラの手を握る、キラといえばミリアリアの膝に寝ている、キラにとっては幸せの絶頂だろう・・・。
「通信はいいの?」
「ええ、私がいないときはダコスタさんが代わりにやってくれてるの、それに・・・私はこうしてキラの側にいたいし・・・」
「ありがとう」
どうかしら?演技完璧?さあこれからもト−ルの代わりとして私の寂しさ忘れさせてねキラ・ヤマト、でも半分は演技じゃないのよ、ありがたく思いなさいよね、そのためにフレイから奪ったんだから、それに結婚したら少しは変わるかも?なんてね・・・。

「フレイ・アルスタ−か?」
「あ、はい・・・」
フレイはかしこまってしまう、どうもこの少年、キラとは雰囲気が違うのだ、軍人としての風格が感じられるのだ、こういう子にフレイは弱い、年齢的にもキラと同じくらいだと思うのだが。
「そうか、アスラン・ザラだ」
なんだか怖いこの人・・・。

301The Last War・作者・予告:2004/04/16(金) 16:20
 『The Last War』はまだ続いていますが、ハードな展開の息抜きとして近々フレイ様メインのギャグものを投下させて頂きます。内容は前作と今作の間の時間軸に位置するフレイ様とカガリが織り成すドタバタものです。

》流離う翼たち
 アルフレットさんは単身赴任されてたんですね。奥さんとの仲はどうなんでしょう?0083のバニング大尉の例もあるので少し心配です。
 それにオルガやフレイ様といった若者への接し方が手馴れてるみたいですが、ひょっとしてお子さんもおられるんでしょうか?

》ミリアリア
 サイやカズィも加わり、まるで『踊る大○査線』みたいな雰囲気に・・・。ミリィが仕切ってるのが面白いです。それとトリィがフレイ様になついてた理由が妙に納得出来ました。

》過去の傷
 フレイ様、いよいよアスランと対面しましたね。原作ではあり得なかった組み合わせだけにどんな会話をするのか楽しみです。
 それにしてもキラは本当にミリィと結婚しそうな流れになってますね。

302流離う翼たち・458:2004/04/17(土) 00:01
 フレイをアルフレットが暫く預かることになったという話は、フラガからマリューとナタル、キースへと伝えられた。アルフレットをよく知らないマリューとナタルは困惑していたのだが、キースはそれを聞いてうれしそうに頷いていた。

「そうですか。なら、とりあえずフレイの方は安心ですね」
「まあな。ただ、1つだけ不安なことがある」
「何です?」
「いや、あの隊長に関わると、どいつもこいつも何でか妙に強くなったり、図太くなるだろ。特にフレイは今が成長期だし・・・・・・」
「つまり、帰ってきたフレイはまた一段と逞しくなってるかもしれないと?」
「ああ、あれでフレイの奴、既に戦闘感覚を覚醒させてるし、何だかんだ言って実戦経験も多いからな。キラのせいで目立ってないが、多分同じ条件でやったら俺でも5回やって2回は負けるかもしれん」
「だけど、フレイは精神的には些か脆い」
「ああ、その弱さを隊長に鍛えられて克服されたりしたら、ひょっとして俺たちの立場は無くなるんじゃないかと思うんだよ」
「・・・・・・まあ、既に俺はフレイに勝てる自信は無いですけどね。前にシミュレーターで模擬戦やったら負けましたし」

 いきなり自分達の存在意義を語りだすエース2人。これが連合諸国全体を見回しても屈指の実力を持つ超エースなのかと思うと些か悲しくなるが、志願して5ヶ月程度のパイロットに追い抜かれたとあっては流石に心中穏やかではいられないようだ。いや、これはキラやフレイが異常と見るべきか。
 だが、目の前でアホな事を真剣に語り合っているエース2人に、マリューはこめかみに青筋浮かべて声をかけた。

「お2人とも、何時まで馬鹿げた事を言ってるつもりですか?」
「いや、これはパイロットとして重要な問題だぞ」
「そうですよ。これは俺たちのプライドの問題です」
「そんな物、燃えないゴミにでも出してください」

 パイロットのプライドを燃えないゴミ扱いされて、フラガとキースは目に見えて落ち込んでしまった。そんなフラガの襟首掴んでマリューが子供達に口裏合わせて説明する為に引き摺っていく。このことは子供達には直接伝えない方が良いと思ったのだ。
 そして残されたキースに、ナタルは少し躊躇いながらも声をかけた。

「あの、大丈夫ですか、キース大尉?」
「・・・・・・ふっ、別に気にしちゃいないさ。どうせ俺はアークエンジェルの墜落王だからな。一番沢山撃ち落されてるし」
「まあ、それはそうですけど」
「少しは否定して欲しかったな・・・・・・」

 物凄く悲しそうにナタルに訴えるキースだったが、ナタルはそんな戯言に付き合う気などは無かった。いや、彼女には聞きたい事があったのだ。それを聞くまでは引く気は無いという覚悟を持っていた。

「大尉、お聞きしたいことがあります」
「・・・・・・改まって、何かな?」
「調整体とは、何なんですか。貴方は一体何者なんです。貴方がメンデルという研究所に関わっていることは調べられましたが、そこから先はすべて闇の中だった」

 ナタルの視線は誤魔化すことを許さない強さがある。その視線を受け止めたキースは仕方なさそうに頭を掻いた。

303流離う翼たち・作者:2004/04/17(土) 00:14
>> ミリアリア・あの子許せない
むう、ミリィさん逞しいです。キラもカズィもパシリですか
トリィよ、お前さんに入ってるプログラムは一体・・・・・・・

>> 過去の傷
アスラン、なんだか1人だけ真面目君やってたんですね
すっかり周囲の流れの中で自己を確立してるなあ。ある意味勝者かな

>> The Last War
ほう、それは楽しみです
アルフレットさんの家族関係はもう少し後で出ます。でも、アルフレットさんはキースやナタル以上にフレイ様にとって重要キャラかもしれません

304過去の傷・110:2004/04/17(土) 08:20
「ア、アスラン・ザラって!」
「聞いたことがあるのか?キラか?」
「あ・・・はい・・・」
フレイは初めて見た、この少年を・・・だがそれよりも気になったのは。
「その軍服って・・・」
それは見たことあった、ザフトであの怖い頬に傷のある少年と同じ服を着ていたからだ。
「俺は元ザフトだ、だがいまはもう違う、分かるな?」
フレイは下を向いて黙ってうなずく。
「俺とキラは幼なじみであり親友だ」
その言葉にフレイは顔を上げる。
「君とキラの間になにがあったかは聞いた」
黙ってフレイは聞く。
「だがもう終わったことだ、それとも君はいまでもキラを利用するつもりか?」
フレイは黙って首を横に振る。
「違う・・・違う・・・いまはキラが好き」
「そうか・・・だが君よりは俺の方がキラのことはよく理解しているつもりだ」
「私だってキラのことよく知ってる・・・」
アスランはそれには答えず出て行く。
「フレイ・アルスタ−、話せてよかった、ではラクス失礼します」
「はい、また」
「フレイ!」
カガリが飛び込むように部屋に入ってきた。
「カガリ・・・?」
アスランの方のは目もくれず真っ直ぐにフレイを見つめる。
「どういうつもりだ?今日も私の部屋で過ごすんじゃないのか?」
「カガリさん・・・」
「ラ、ラクス様・・・フレイは私だけの・・・もう私はアスランのことなど・・・」
「カガリ、全て演技だ」
「演技・・・?」
アスランは目を閉じると告げた。
「俺はお前を好きになったことはない、一度もな」
その言葉にラクスは微笑む。
フレイだけ一人わけが分からない様子だ。
「そんな・・・じゃあ・・・」
ラクスを見る。
「カガリさん、私はアスラン一筋ですわ、婚約も解消はずっとしておりません」
「なら私も白状する、フレイ・・・」
カガリに突然声をかけられて驚いたフレイ。
「え・・・?」
「フレイ、私は初めて見たときからお前のことが・・・」
「カガリ・・・?初めて見たときから・・・?」(それって・・・ア−クエンジェルに所属していてキラを利用していたときだわ・・・どういうこと・・・?)
カガリはうなずく。
「ああ、お前可愛くて」
「・・・カガリだって可愛いわよ」
「そうか!?」
「ええ」

カガリが出て行くと。
「じゃラクス、今日は一緒に寝るわよ」
「はい」
(キラ・・・カガリ・・・私は)

305私の想いが名無しを守るわ:2004/04/18(日) 09:56
書き込みテスト

306私の想いが名無しを守るわ:2004/04/18(日) 09:56
もいっちょテスト

307ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/18(日) 18:52
現在、今まで可能だったはずの長い文章が書き込めません。とりあえず、感想のみ上げさせていただきます。

>>過去の傷
そう言えば、ミリィ、いつ仕事しているのかと思ったら、代わりにダコスタ君が…… いいのか? CICの席なくなるぞ。
フレイ様、アスランと対面、とりあえずは挨拶まで。しかし、カガリは、本当に百合?

>>The Last War
ネメシス・フレイ様とカガリのドタバタですか、これは楽しみです。『The Last War』も期待してます。

>>流離う翼たち
アルフレットさんって、なにか言いにくいのでアルフさんでもいいですか。
アルフさんの、スポーツの有名監督みたいな人を育てる実績で、外野は盛り上がっているようですが、
ここまで、約束されていると、ちょっと天の邪鬼に感じてしまいます。フレイ様、成長するにしても、
型にはまらずアルフさんを振り回すくらいして欲しいな。
ナタルさんとキース、こちらはどうなるのでしょう。キースのこと、かなりショックだったでしょうし。

308流離う翼たち・459:2004/04/18(日) 22:39
「どうしても、聞きたい?」
「はい」

 淀みなく返してくるナタルに、キースはどうしたものかと視線を落とした。

「・・・・・・もう少し待ってくれないかな」
「何故です。私には聞かせられないことなのですか?」
「いや、いつかは話そうと思ってた。ただ、俺の素性を話してしまうと、色々と困る奴も居るんだ。こうなった以上、他にも話しておかないといけない奴が居る」
「それは誰なんです?」
「・・・・・・・・・カガリと、キラだよ」

 それだけ言うと、キースはナタルの脇を抜けて部屋を出て行こうとした。その背中にナタルが声をかける。

「何時まで待てば宜しいので?」
「そうだな、多分キラもアズラエルの話で俺に疑問を感じてるだろうし、早い方が良いだろう。明日にでも俺の家で話そう」
「そうですか、分りました」

 キースはナタルに背を向け、部屋から出て行った。それを見送ったナタルは小さく嘆息すると、なんだか不安そうに両手で体を抱きしめ、壁に寄りかかる。こんなに不安な気持ちになったのは初めてだ。

「キース、貴方は、本当に何者なんです。私は貴方を信じて良いんですか?」

 これまでずっと信じてきたし、実際キースは自分達を裏切ったりしなかった。だが、今のキースは得体が知れない。これまでずっとちょっと変わった、凄腕のパイロットとしか思っていなかった。ブルーコスモスだといっても、それは過去の事だと割切っていた。実はマリューに一度相談したこともあるのだが、その時は笑って考えすぎだと言われてしまった。

「馬鹿ね、知り合う前の事なんか気にしてたら、何でもかんでも疑う事になるわよ」
「ですが、その、不安なんです」
「何が?」

 マリューの問いに、ナタルは答え難そうに顔を俯かせている。だが、その顔色が真っ赤だったり、もじもじと膝をすり合わせていては口にしなくてもマリューにはハッキリと伝わっていたりする。
 マリューはまさか戦艦の中で、それもナタルから恋愛相談を受けることになるとは夢にも思っていなかったのだが、それがこんなハイスクールかそれ以下のレベルの相談事とは更に思っていなかった。
 だからマリューは、表面平然と、内心では大爆笑していたりするのだ。

「ナタル〜、1つ聞きたいんだけどさあ」
「な、何ですか、艦長?」
「もしキース大尉に、別れた女性が10人いたとか言ったら、どうするの?」
「な、ば、馬鹿な、フラガ少佐ではあるまいし、そんな事はありません!」
「あらあら、どうかしらね〜。キース大尉だって男なんだし、女性関係の10やそこらはあるかもよ。なにしろフラガ少佐と長い事一緒にいたんだし」
「まさか、そんな事は・・・・・・・・・・」
「ナタル〜、お姫様チックな夢も良いけど、そろそろ現実を見ましょうね」

 まあ、こんな感じでからかわれたのだが、それでもマリューは色々と教えてくれはした。だが、どれだけ教えてもらおうがいざとなると不安が拭えない。それも、女性関係どころか、相手が人間かどうかという問題なのである。まさか、自分がフレイのような問題に直面する日が来るとは思ってもいなかった。

309流離う翼たち・作者:2004/04/18(日) 22:44
>> 過去の傷
アスラン、流石に演技というのはどうかと。
まあ去年まで付き合ってたカップルが久しぶりに会ったら別れてたってのは良くあるけど
でも、やっぱり同性愛は不毛ですよ、カガリさん

>>307
別に略称は構いませんよ。奥さんはアルと呼んでますし
アルフレットさんはキースとは接し方がまるで違いますよ。フレイ様がそこで何を見つけるかは、もう少し後で。

310ミリアリア・あの子許せない 91:2004/04/19(月) 03:44
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 8/12
[真っ先に、ここへ連れて来ようと思っていたんだよ]

結局、夕方になっても、捜している、あの子は見つからなかった。私達四人は力なくミナシロの
市街地を歩いていた。

「ごめんね、キラ、トール、カズイ。いろいろ引っ張り回しちゃって。私、もうあきらめる」
私はみんなに謝った。あきらめるには惜しい買い物だったけど、仕方ない。縁が無かったことに
するしかない。

「ミリィ、いいのかい?」
「いいの、もう帰ろう、家へ」

残念そうなキラの言葉に、私はしょんぼりと頷いた。
「本当は、港の夜景も見たかったけど、もういい」

せっかく、ミナシロにキラと来たのに、私は、何してたんだろう。後悔の念がもたげて来る。
元は港の夜景をキラと二人で見たかった。でも、どんどん話が変な方向に行ってしまった。

「そうだな、おなかも減ったし。金も無いし」
「俺も、撮影旅行の予定組み直さなくちゃな」
「そうね、ごめんトール、カズイ」

あきらめて、三人、駅の方に歩きだそうとした時キラは言った。

「ミリィ、みんな。もう一つだけ寄って行こうよ」
「え、どこ?」

「ここだよ」キラは、すぐ隣の建物を指差した。
「ミナシロPARKS、できたばかりのアミューズメント施設。いろんな公園が階層上に
 積み重なっている。港だって、ここから見えるよ」

そこは見上げると、都会のビルの上に、緑の木々が幾重にも、生い茂っているような不思議な建物だった。
今にも沈みそうな夕日を受けて、それらは赤く色づいてる。

キラは建物の入り口の幅の広い階段に向かって行った。そして、階段の端にあるエスカレーターで
登って行く。私達も後に続く。上がってみると、そこは建物の上なのに、緑に囲まれた公園が広がっていた。
ベンチに座ったアベックや親子連れが、次第に落ちて行く夕日を眺めている。私達も、それに見とれた。

上の階へ上がるたびに、趣の異なった公園があり、やがて日が落ちて夕闇に色を変えて行く空と、
次々にライトアップされていく公園の噴水などの施設が幻想的に溶け合って、まるで異世界に
入り込んだような感じを私達に与えていた。トールは関心したように辺りを見回している。
カズイは三脚を出してデジカメで夕日とライトアップが、刻々と、その色合いを変えて行く様を
写真に記録している。

「いいね、ここ知らなかった」私はキラに呟く。
「本当はね、今朝、ミリィにミナシロのこと案内してと言われた時、真っ先に、ここへ
 連れて来ようと思っていたんだよ」

私は、そんなキラの瞳に吸い込まれそうになった。いつもは、子供っぽくて、好ましく思わない
キラの肩にとまったトリィさえ、夕日に染まるキラの顔に映えて、私は心臓の鼓動が高まった。

「ミリィ、あそこにサイがいるぞ」
トールの呼ぶ声に、私はハッとしたように振り向いた。サイが公園の片隅にあるベンチに
一人で座っている。顔は、なにか虚ろだ。私達はサイのところまで駆け寄った。

「サイ、どうしたの?」 私が話しかける。
「デートは、どうなったの?」 とキラ。
「彼女はどうした」 とトール。
「サイ、大丈夫?」 カズイは、サイを気づかうように言葉を掛ける。

サイは、呟くように答えた。サイの左頬は叩かれたような後が少し残っていた。

「やあ、君たちぃ。俺って、悪かったのかな。俺は、俺はさ。相手を理解しようと勤めているんだ。
 例え、どんなことでも、それはそれで彼女の一部なんだから。だから、俺は悪く無いだろ。
 別に隠さなくても構わないよって言ったんだ。それなのに。それなのに、違うって言い張って、
 意地でも否定して…… 俺は悪くない。悪くないぞ」

言っていることが、さっぱり分からない。

「だからって…… だからって、勝手に怒って…… なんでだよ。
 いいんだよ…… 別にいいんだよ。別に特殊でも、趣味は趣味なんだから。
 そんなこと言ったら、俺の趣味なんか、どうなるんだよ」

サイの趣味って一体何? 恥ずかしくて隠すような趣味あったっけ? それは、それで興味あるけど
ともかく、サイはどうしたんだろう? なんか壊れてる……

311ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/19(月) 03:54
ようやく投稿できました。書き込みフォームが、なにかシステム変更になって、制限がかかっていたのを、
サポートが設定変更して緩和してくれたそうです。一応、これで今まで通りの分量が送信できます。
したらば様、ありがとうございました。

>>流離う翼たち
キース君、わざわざキラとカガリを指定するということは、螺旋の回廊をやる気ですかな。
しかし、マリューさん、ナタルにアドバイスする(これ事体が信じられないが)のはいいけど、
主題が違ってますよ。フラガ少佐との味勝負で頭の中が恋愛モードに染まっているのか。

アルフさん、オフィシャルの愛称は「アル」ですか。うちでは、大物の「アル」がいるので、
済みませんけどアルフさんにさせてください。

312過去の傷・111:2004/04/19(月) 08:31
「ラクスってなんだか暖かい」
「そうでしょうか?」
「ええ、ほんとに」
ここはシ−ツの中である・・・フレイとラクスは同じシ−ツで寝ていた。
(サイ・・・サイはもう私のことを嫌いはじめている・・・でも悪いのは全て私、私の行いがサイをあんなふうにさせた)
サイをあそこまで追い詰めたのは私・・・。
「サイ、ごめんなさい・・・ごめんなさい!!!」
「・・・・・・泣きたいですか?」
そのフレイの様子をラクスが覗き込む。
「泣きなさい、泣きたいときは泣けばいいのですよ」
ラクスはフレイに微笑む。
「ラクス・・・うう・・・サイ、ごめんなさい!ごめんなさい!」
フレイはラクスに抱きついて泣いた、思う存分泣いた。
その二人をカガリがドアの外から聞き入ると、嫉妬の眼差しで見つめていた。

その数時間後。
「じゃあ、エタ−ナルでラクスさんにも手伝ってもらって式挙げようね、キラ?」
「・・・・・・」
「私達こんなに愛し合ってるんだもの、大丈夫よ」
そう私だって少しはキラのこと好きよ、決めた、キラのことト−ルって思うことにするわ。
さあてあとでシャワ−でも浴びようかしら。

シャワ−室に入ったミリアリアは・・・。
(ふう、気持ちいいわ・・・)
そしていい偶然でもあった、赤い髪の少女も入ってきたのである・・・。
「・・・・・・」(フレイ・・・)
「・・・・・・」(キラを取ろうとしている悪女ミリアリア・・・)

313過去の傷・112:2004/04/19(月) 12:07
「・・・・・・」
「・・・・・・」
無言でシャワ−を浴びている二人。
フレイはパックまでしている。
ミリアリアは思った・・・なんなのこの感じは?罪悪感?この子に対して?この子からキラを奪い取ッたことに対しての?
ミリアリアは首を振った。
違う!私は悪くない、私に取られたフレイが悪いのよ、だいたい私に取られるってことはそれだけフレイのキラに対する気持ちはその程度のものだったのよ。
そんな女がキラと付き合う資格はないわ。
私は着替えると黙ってシャワ−室を出た、フレイとは一言も話さなかった、いえ話したくもなかった、フレイだって同じ気持ちだろう。

一時間後、ラクスの部屋に戻ったフレイは。
「軍人はお続けになられるおつもりなのですか?」
「え?」
「貴女が軍に志願した理由はをキラ様を利用してキラ様自身と私を含めたコ−ディネイタ−全てに復讐するためなのでしょう?」
「それは・・・」
そういえばそうなのだ、キラに復讐するため、キラが死ねばいいと思った、キラの死を望んでいた、その為にキラを戦わせた、キラを道具として・・・紛らわすために女として接近した、キラと寝た、キラとキスもした。
ならいまの私は?いま軍人である私は一体なんなのだろうか?なぜいまだにこういうア−クエンジェルの軍服を着ているのだろうか?それは・・・キラが好きだから?キラの側にいたいから?軍人ならキラの近くにいられるから?キラのことは好き、それば事実、だけど・・・。
フレイはもう自分自身が分からなくなってきた。
そしていまさらだが後悔した、なんで私あんなことしたの?キラを酷く傷つけて、サイを傷つけて・・・なんで・・・。
私はなんて身勝手な女なんだろう、いつも自分のことばっかり考えて。
キラごめんね、酷く傷つけて、なにも見ようとしないで・・・ごめんね。
「フレイさん・・・」
ラクスが覗き込んでいた。
「ラクス・・・」
この女、悔しいけど可愛いわね・・・。
(俺には関係ない)
(関係を勝手に解消してきたのは君だろ!)
(君には関係ないだろ!)
サイの言葉を思い出す。
あんなに私に優しくしてくれたサイが・・・。
でも私は言い返すことが出来なかった。
そして私が気づかないうちにラクスを押し倒し覆いかぶさっていた。

314『明日』と『終わり』の間に・1日目:2004/04/19(月) 23:26
「よっ、フレイ!」
「あら、カガリ。今日はいつもより少し早いわね?」
「ああ、今日は大した仕事じゃなかったからな。どうだ?リハビリとか順調か?」

 ―――キラがオーブを経って大体1ヶ月。私はアイツに頼まれて、仕事の合間を縫っては入院中のフレイの見舞いに来ている。アークエンジェルにいた頃は、別に仲が良かった訳でもなかったから最初は渋々だったけど、こいつと話してるうちにだんだん仲良くなってきて、今じゃ自分から通うようになっている。ただキラの奴、下手に刺激するような真似はするなってやたら釘刺してたけど、あいつ何か私に隠してないか?まぁ、それは別に良いんだが。でも最近、こいつとの関係でちょっとした悩みを抱えてる。それは・・・。

「ねぇカガリ。またお願いがあるんだけど・・・」
「えっ!?」
「・・・何、その反応・・・?」

 そう、悩みとは他でもない。こいつの「お願い」のことだ。例を挙げていけば切りが無いけど、中でも一番酷かったのは茶色のかつらを被って一人称を「僕」に変えて欲しいってやつだった。私も最初は断ったんだが、結局その日は1日中その格好で過ごした。これから毎日その格好で来て欲しいと言われた時は流石に勘弁してもらったけど。
 それに、つい最近じゃトリィを伝書バト代わりにしてキラの元に手紙を届けようともしてたな。それを聞いてすぐにいなくなったトリィを探して大騒ぎになった(騒ぎ立てたのは私だけど)。ちなみにトリィはこの病院から500メートルぐらい離れた所にある木の上で迷子になってるところを無事保護された。
 つまり、こいつの「お願い」を聞いて私がろくな目に会わなかった試しが無い。・・・でも、だからといって断るのも可哀想な気もするし、しかもこんな病室に篭りっきりじゃ気分も滅入るだろうし、仕方ないか・・・。

「い、いや、何でも無い。で、頼みって何だ?」
「あのね・・・」


「は!?料理がしたい?・・・何だ、そんなことかぁ〜」
「・・・だからどーしてそんなに安心してるの?」
「悪い悪い。・・・でも、急にどうして料理なんだ?」
「ほら、私も自分一人で着替えとか色々出来るようになったじゃない?だからもっと色んなことをしてみたいって思うようになったの」
「ふ〜ん。・・・とか何とか言って、ホントはキラにでも食べさせてやるつもりなんだろ?」
「・・・カガリって、エスパー?」
「・・・お前、そう言う前に普段の自分の言動を振り返ってみろよ」

 冗談半分で言ったのに、図星だったのか。・・・まぁ、それだけ私もこいつのことが分かってきたっていう証拠か。

「・・・キラが私に会いに来てくれた時、私、お仕事が終わったらすぐに会いに来てって一方的に約束しちゃったの。それじゃキラに悪いから、せめてその時に私の手料理をご馳走したいなぁ・・・なんて」
「・・・そっか」

 ・・・今思えば、こいつの言う我侭は皆キラに会いたいっていう気持ちから来てるんだろうな。そういう意味じゃ、私も同じだな。はぁ〜・・・、アスラン、元気にしてるかなぁ?

「よし分かった、私に任せとけ!お前、私の家に来いよ。そこで私が料理教えてやるから」
「えっ、良いの?」
「ああ、病院の方には私から言っておくから。何、1日ぐらいなら何とかなるだろ」
「有難うカガリ♪私、頑張るわ!」

 ふふふ、あんなにはしゃいで・・・。キラ、私達やこいつの為にも必ず生きて帰って来いよ?

「ところでキラの好きな物、何だか分かる?」
「そうだな・・・。確かカレーが好きって言ってたな。まぁカレーならそんなに難しくも無いし、お前には丁度良いかな?」
「カレーね?分かったわ!・・・ところでカレーって、どんな料理?」

 ・・・まずそこから始めなきゃいけないのか?

315流離う翼たち・460:2004/04/19(月) 23:46
 翌朝、目を覚ましたフレイはベッドから起き、着替えをどうしようかと悩んだ。幾らなんでもここには女物の服は無いだろうし、もっていたらそれはそれで怖い。かといって昨日着てた制服はびしょ濡れで今日は着れないだろうし、本当にどうにもならない。仕方なく昨日借りたシャツを着て部屋の外に出る。すると、何だかベーコンの焼ける匂いが漂ってきた。

「あれ、食事?」

 どうやらまたアルフレットが料理をしているらしい。あれはちとダメージが大きいのだが、泊めて貰っている以上文句も言えない。とぼとぼと食堂に入り、椅子に腰掛ける。

「よう、起きたのか」
「はい、昨日はありがとうございました」
「ハムハムハム」
「なあに、気にすんな。ガキの1人くらい何でもねえよ」
「でも、迷惑かけました」
「モグモグモグ」
「まあ、さっさと食ってくれ。食ったら出かけるぞ」
「え、何処にですか?」
「むむむ、目玉焼きが見事な出来栄え」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ようやくフレイは隣を見た。いや、さっきからいるのは分かっていたのだが、あえて無視していたのだ。そこには、連合兵士の制服を着た20過ぎくらいの女性兵が座って何故か朝食を食べていた。何というか、顔立ちの整った美人だ。

「あの、この人は?」
「おお、俺の部下で、セランだ。整備班の奴だよ」
「はあ、そのセランさんがどうしてここに?」
「ああ、お前の着替えを持って来てもらった。昨日の夜にちょっと走り回って貰ったんでな、こうして労を労ってる訳だ」

 アルフレットもテーブルに付いて自分のトーストを齧る。隣に座るセランという兵士は自分の方を見ると、右手で略式の敬礼をしてきた。

「セラン・オルセン軍曹です。少尉の着替えを手に入れてくるように少佐に命令されました。少尉の制服と下着は洗濯と乾燥をしてそこに置いてあります」
「あ、ありがとう」
「いえ、構いません。あ、自分のことはセラン軍曹と呼んでください」

 どうやらアルフレットが自分の生活を考えて手を回していてくれたようだ。だが、アルフレットは自分を何処に連れて行くつもりなのだろう。

 朝食を終えた3人はセランの運転する車で何故かマドラス基地へと向かった。フレイにしてみればアークエンジェルから離れられるならそれで良いのだが、基地に行くというのもなんだか気が引ける。アークエンジェルの中では顔見知りばかりだったから余り表に出ていなかったが、実はフレイは結構人見知りが激しい。味方と分かってはいても、知らない人と一緒に居るのはどうにも落ち着かないのだ。

316流離う翼たち・作者:2004/04/19(月) 23:58
>> ミリアリア・あの子許せない
サイが完全に壊れている。一体何があったんでしょうw
でも、これって諸悪の根源はミリィのような気が・・・・・・キラとトールも危ないか

>> 過去の傷
フレイ様の趣味って一体。何故に今度はラクスに・・・・・・

>> 『明日』と『終わり』の間に
が、頑張れカガリ、未来はきっと明るい、と思う
でも、何となく同情してしまう。でもトリィを伝書鳩代わりって、無茶だよフレイ様

317ミリアリア・あの子許せない 92:2004/04/20(火) 06:09
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 9/12
[あった。私の捜し物]

虚ろな目で、ブツブツと呟き続けるサイに、トールとキラは頷き合う。
「とにかく振られたらしいな」
「そうみたいだね」

「君たちぃ!、俺は振られてなんていないぞ」
サイは、キラとトールに絡みだしている。カズイも、ヘリオポリスでは、あまり見たことが無い
サイの取り乱しようにビックリしている。

一歩引いて見ていた私の目に、サイから少し離れたところにあるゴミ箱に、見覚えのある紙袋が
入っているのが見えた。私は駆け寄ってみる。確かにそれは、間違って持って行かれた私の紙袋だった。
キラ達に隠れて紙袋を調べると、包みが破かれて中身を見た後があるものの、同人誌は、ちゃんと、
そこに有った。なぜ、ここにあるのかは分からないけど。

ひょっとしたら、あの持って行った子が、これに気づいて中身を見て、あまりの過激な内容に
ビックリしてゴミ箱に放り込んだのかもしれない。これ、その筋の人でないと正視できないような
シーン一杯あるもの。普通の人に、これ持ってるの知られたら品性疑われること必須。
もし、デートの最中だったら、破局の可能性大。私も気をつけないと。

とにかく、やっと私は捜しているものを見つけることができた。私の顔に笑みが戻った。

「どうしたのミリィ?」キラが呼んだ。

私は、同人誌を紙袋に戻して、みんなのところに戻るとキラに答えた。
「あった。私の捜し物」

「ミリィ、良かったね」キラが優しい目で言った。
「うん、キラが、ここに来ようって言ったおかげよ」

「え!見つかったって。良かったなミリィ。一体何だっ……」
トールの声は、絡んできたサイに打ち消された。

「悪くないぞ、俺はぁ、悪くないぞ! お月様のバッキャロー」
既に日は落ちて、輝きだした月に向かってサイは吠えだしていた。
私とキラは、そんな見慣れないサイの姿を見て、二人でキョトンとした顔を見合わせた。

やがて、キラが真面目な表情に戻って言った。

「ミリィ、屋上行こう。夕食おごるよ」
「そんな、悪いわよキラ」

「いいよ、捜し物見つかったお祝いだ」

「キラ、俺達もおごりか?」トールが目を輝かせながら聞く。
「ああ」キラは答える。
「やりぃ!」
「やった!」
トールもカズイも歓声を上げた。

「サイも行こうぜ」トールはサイに声をかける。
「サイ、奮発するから、美味しいもの食べて元気出して」キラが笑いかける。
「サイっ」カズイも優しい目で問いかける。
「サイ、行きましょう」
みんなの声に、やっとサイも立ち上がった。

屋上の公園。ガーデン・レストラン。本来は予約しないと席が無いところ。キラは一応、
予約は入れていたのだけど、三人の予定が五人に増えていた。だけど、幸運にも、大口の
キャンセルがあったらしく、私達は一番高いところにある特別席に座ることができた。
その眺めは格別だった。すっかり、日が落ちて闇が広がったミナシロの街のライトアップ、
私の市を挟む山の住宅やアンテナなどの灯、街を取り巻くように光が流れ、やがて四方八方に
散って行く環状ハイウェイ。そして、なにより、私が望んでいた港の波止場やホテルが
明滅する、期待を裏切らない幻想的な美しい光が一望に見渡せた。

確かに、港へ行けば、それを間近で見て、もっと美しかったと思う。でも、そこでは、港しか
見えない。ここは、港はおろか、ミナシロの美しい夜景すべてが見える。ミナシロの全てを
キラ達みんなと一緒に占有している。私達は、それを眺めながら、美味しい料理に舌鼓を打っていた。
アルコールも、ちょっと入っていた。

トールは相変わらずブツブツ言っているサイの話に付き合わされている。カズイは、三脚を付けた
デジカメで夜景を撮るのに夢中になっている。トリィも、キラの肩から離れて公園の木々を飛び回っている。
まわりに、みんないるんだけど、今、この瞬間だけ、キラと二人きり。

「すっごく奇麗! こんなの初めて」
「そうだね、ミリィ」

私は、慣れないビールに、少し顔を染めて、キラの方に、ちょっとだけ頭を傾け、港や
ミナシロ全体の夜景の幻想的な景色に酔いしれた。

「ミリィ、さっきの捜し物。結局、何だったの?」
「キラ、大したものじゃ無いのよ。これ」
私は紙袋を後ろ手に隠す。顔が、さらに赤くなっていたかもしれない。

「ミリィが、そう言うなら」
キラは、それ以上は詮索せず、優しい目のまま微笑んだ。私も、笑顔を見せた。

「みんな撮るよー」
カズイが、やっと私達の撮影を始めたようだった。落ち込んでいるサイを引っ張り込むようにして、
みんなVサインをしながら、カズイの写真に収まっていった。

318ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/20(火) 06:18
>>過去の傷
フレイ様とミリィは冷戦真っ只中ですね。しかし、なぜにラクスと……

>>『明日』と『終わり』の間に
「The Last War」の番外編ですね。
ネメシス・フレイ様、魅力に天然ボケ・パワーがプラスされて可愛いです。トリィに、大気圏
脱出させる気だったんですかな。そして、カレー、お約束の予感。

>>流離う翼たち
ハムハム、モグモグは、セラン軍曹の台詞ですか。ハム太郎かと思ってしまいました。
まあ、以前からですが、喋り方もキャラによってはTV本編と違うときがあるので、
複数人の会話が並ぶと、時々、誰の台詞なのか分からないことがあります。今回は意図的なんでしょうけど。
ところで、TV本編にならうとオルセン軍曹と呼ぶところですが、なにかあるのかな。
とにかく、フレイ様のTV本編でも感じられた人見知り。まずは、これから?

319過去の傷・113:2004/04/20(火) 12:24
「あの・・・?フレイさん?」
「ラクス・・・」
突然ベッドに押し倒されときょとんとしているラクス。
「あの・・・」
ラクスが起き上がってくると、再度押し倒す。
「!」
「私を慰めてラクス」
「寂しいのですか?フレイさん」
フレイはうなずく。
「キラ様に会わなくてもよろしいのですか?」
「キラには会いたいけど・・・いまは同姓の女に慰めてほしいの」
ラクスは疑った顔になる。
「もしかしてフレイさんそういう趣味がおありなのですか?」
「ええ、最近ね」
私はラクスの唇を見つめた、ピンクの口紅が可愛い、これほしいわ。
そしてフレイは一瞬我を忘れた、自分が女ということも・・・。
フレイはラクスの唇に唇を重ねた・・・。
ラクスが目を大きく見開く。
まさか・・・まさか・・・ファ−ストキスの相手が大好きなアスラン・ザラでもなくキラ・ヤマトでもなくイザ−ク・ジュ−ルでもなく大好きなエドワ−ド・エルリックでもなく・・・女性のフレイ・アルスタ−だったとは。

「さっきシャワ−室にフレイがいたよ」
キラは反応する。
「フレイが!?」
「でも、なにも話さなかったわ、話す気にもならなかったし・・・」
「・・・・・・」
フレイ・・・もうあの子との仲は冷え切ってしまったみたい、でもあの子が悪いのよ、全てなにもかもあの子が悪いの・・・フレイの自業自得だわ。

320流離う翼たち・461:2004/04/20(火) 23:19
 アルフレットが連れて行ったのはMSの置かれている格納庫だった。整備兵たちがそれぞれ担当の機体に取り付き、汗水流して機体の整備をしている。そこにはフレイにとって見慣れたストライクやデュエルもあるが、敵として戦ったバスターやブリッツ、パワーと一緒に助けに来てくれたストライクダガーとかいうMSもあった。特にダガーの数はかなり多い。
 セランはジープを格納庫の脇に停めると、フレイにこの場所を説明してくれた。

「ここはMS格納庫です。大西洋連邦の南アジア方面軍では数少ないMS部隊なんですよ。特にストライクダガーはまだこの基地にしか配備されていません」
「ストライクダガーって、ストライクの量産機なんですか?」
「あはははは。名前はそうですけど、中身はデュエルです。デュエルが敵に奪われて縁起が悪いからストライクダガーになったそうです。試作機はデュエルダガーだったそうですよ」

 セランは楽しそうに説明してくれる。どうやら彼女はここの整備兵であるらしく、MSに限らず自分の整備している機体に誇りを持っているらしい。

「セラン軍曹は、どの機体を担当してるんです?」
「私は、手前から4番目のデュエルです」

 見れば確かにそこにはデュエルがあった。自分にも慣れた機体だし、攻してみると何だか乗りたくなってくる。いつの間にか、自分はすっかりパイロットになっていたらしい。
 そこに、部下と話していたアルフレットが声をかけてきた。

「おい、お嬢ちゃん、ちょっとこっちに来い」
「え・・・・・・あ、はい!」

 言われて急いでアルフレットの所に走る。アルフレットは近くに来たフレイを目の前にいる部下に紹介した。

「フレイ・アルスター少尉だ。短い間だが、預かることになったから、上手くやってやってくれ」
「はあ、それは構いませんが、何でここに?」
「予備のダガーがあるだろ。あれに乗せてやってくれ」

 とんでもない事を言い出すアルフレット。フレイは勿論、目の前の部下までがビックリしている。

「な、何考えてるんですか。貴重なMSをこんな女の子に使わせるつもりですか!?」
「女の子って言っても、こいつくらいのパイロットも結構いるだろ」
「そりゃいますが、彼らはちゃんと訓練を受けてます」

 あくまで譲ろうとはしない部下に、アルフレットはニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべ、フレイを見てきた。

「つまり、MSを使えるなら文句はねえんだな?」
「はあ、まあそうですが、MSを使うにはそれなりの訓練が必要ですよ」
「というわけだ。確かお嬢ちゃん、MSには乗れたよな?」
「え、あ、まあ、乗れますけど」
「そういうわけだ、文句は無えな?」

 アルフレットは勝ち誇ってそう言い放ったが、言われた方は唖然としていた。そりゃまあ、こんな女の子がいきなりやってきてMS乗れます、などと言うのだから普通はこうなるだろう。
 部下が黙ったのを見て、アルフレットはフレイとセランを連れて格納庫へと入っていく。格納庫内には整備兵やパイロットが沢山いて、アルフレットと一緒に入ってきた見慣れない女の子に何だか注目している。アルフレットはそんな部下達を無視して奥に立て掛けてあるダガーにフレイを案内した。

「さて、こいつが予備のダガーだ。ここにいる間、お嬢ちゃんの好きにして良いぜ」
「でも、何で私が?」
「気にすんな。まあ、強いて言うなら教官役だな。何しろここには実戦経験豊富なのは俺しかいねえんだ。俺が面倒見てやれりゃ良いんだが、生憎俺もそう暇ってわけでもねえしな」
「それで、私はどうすれば?」
「こいつに乗ってここにいる連中と模擬戦をしてくれりゃ良い。別に難しいことでもねえだろ。ああ、機体の整備と調整はセランに任せな。こいつは良い腕だぜ」

321流離う翼たち・作者:2004/04/20(火) 23:23
>> ミリアリア・あの子許せない
サ、サイ、哀れすぎる。だが、一体どういう内容だったのだろう?
とりあえずミリィを信じたキラたちは幸運と言うべきなのでしょうか
軍曹の呼び名には意味がありますよ。

>> 過去の傷
フレイ様、いよいよ見境が無くなりつつありますな
ラクスもそりゃショックでしょう

322ミリアリア・あの子許せない 93:2004/04/21(水) 06:03
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 10/12
[ごめんね、お母さん]

夕食の後、すっかり夜遅くなり、キラ、トールは、私を家まで送ってくれた。
サイは、両親とミナシロにホテルを取ってあったらしく、同じくミナシロに撮影旅行で
ホテルを予約していたカズイが送って行った。

マンションの前に近づくと、私のお母さんがマンションの出口から走り出るのが見えた。

「お母さん!」
「ミリィ!」

「お母さん! どうして朝、居なかったのよ。私、せっかく帰ってきたのに」
「何言ってるんですかミリィ、連絡してきた時間は今日の夕方でしょ。いつまで待っても
 帰って来ないし、電話にも出ないから、お父さんと一緒に心配してたのよ」

「え! なんで?」

私は携帯電話を取り出した。いつの間にかバッテリ切れになっている。キラの予備電池を
借りて、携帯の電源を入れて、両親に連絡した時のメールを確認する。私は、連絡の時、
午前と午後を間違えていた。

「ごめんね、お母さん」
「もう、こんな心配かけないでね。それでこちらは?」

「カレッジの友達で、同じゼミのキラとトール。二人とも挨拶して」

「初めましてキラ・ヤマトです」
「トール・ケーニヒです」
「ミリアリアの母です。娘が、迷惑をかけて済みません」

お母さんは挨拶しながらも、その目はじっとキラに注がれていた。
「ミリィ、お前、このキラって人、まさか……」

私は、今になって気がついた。
「あ、お母さん。何でもないのよ。単なる偶然だから」

キラは不審そうに、私とお母さんを眺めている。

「どうです。ちょっと家でお茶でも」お母さんが言う。

「いえ、もう遅いですし」
「そうだな」
キラとトールは顔を見合わせる。

「そうだよね。もう遅いもんね。疲れてるお父さんもいるんだし」
私も調子を合わせる。急に家で紹介だなんて、こっちも心の準備が……

「僕達、帰ります」
「それじゃ、ミリィ、また今度」
キラとトールは帰って行った。

私は、お母さんと並んでマンションの部屋に向かって行った。お母さんは歩きながら私に言った。

「ミリィ、安心したわ。二人も男友達できて。あれから、酷く落ち込んでいたから心配してたけど」
「うん、ごめんね、お母さん」

私は、様々な想いを胸に、お母さんに心から謝った。あれから、もうかなり経つんだ……

「で、あなた、あの二人のどちらが好きなの」
私は黙っている。

「やっぱり、あのキラ君?」
私は、お母さんを見つめた。そして、小さく頷いた。お母さんに分からないはずが無い。

「そう、良かったわね。今度、二人を家に連れてきてね。キラ君に、いろいろお話し聞きたいわ。
 トール君にもね」
「うん、今度、いつか」
私は、小さく言った。

「ミリィ、今まで、どこに行ってたの?」
「ミナシロ」 お母さんの問いに、私は答える。

「じゃ、あの震災慰霊所に行ってきたの?」
「あ、忘れてた」

お母さんの言葉で、私の中に、ある思い出が蘇った。
ミナシロ市は、私が小さいころ、大きな震災に見舞われたことがある。
そして、それが復興された時にできた震災慰霊所。私は、かつて、そこに一度だけ、
連れられて行ったことがある。お父さんでもお母さんでも無く、ある人に。

「お母さん、ちょっといい」
私は一人、マンションの通路の端まで行くと、キラの予備バッテリを付けたままの携帯で、
キラに電話をかけた。

「ミリィ、今度は何だい」
「ねえ、キラ、ミナシロ、震災慰霊所に行ったことある?」

「行ったことあるよ。僕が両親とオーブに越してきて二年ほどだけど、ここは行っておかないと
 いけないって言われて」
「キラ、今度、そこに連れてって」

「どうしたんだい?」
「行きたかったの」

「明日以降は、ちょっと予定あるけど、行けるようなら連絡するよ」
「うん、キラよろしく……」

キラと二人でと言おうとして、私は、また躊躇した。そして、しばらくして、私は言った。

「また、トールと三人で…… 良かったら、サイやカズイも誘って、みんなで……」

323ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/21(水) 06:05
>>過去の傷
全然見てないんで最初分からなかったけど、ラクスってハガレン・ファンなんですか。
ミリィ、あの子、あの子って、うちのミリィみたい。

>>流離う翼たち
ストライクダガーでの模擬戦、フレイ様、まずは楽勝では?
ストライクダガーの元がデュエルとは言われていますが、デュエルダガーとは。
MSVで出た105ダガーだと、ほんの少しの差なんですが、ストライク度は
増すんですけどね。

324過去の傷・114:2004/04/21(水) 08:37
「!・・・や・・・やめてください・・・」
覆いかぶさっていたフレイを突き放すとラクスは唇に手をやりハンカチで何度も拭く。
「ラクス・・・ごめんなさい」
「出て行ってください・・・」
「でもラクス・・・私どうかしてて・・・」
「・・・あれが貴女の本心でないのなら構いませんが・・・あんなことは初めてです」
「ラクスごめんなさい・・・私、男好き・・・だから・・・もうあんなことしないから・・・泊めてくれない・・・?」
ラクスは少し考えたが・・・。
「よろしいですよ」
「ラクス・・・ありがとう・・・」
サイ・・・そうだ、ちゃんとサイに謝ろう・・・サイは私に以前は優しかったから、謝ればきっと許してくれる・・・もしかしたら私が謝るの待ってるのかもしれない・・・。
そして・・・私・・・ラクスと・・・同姓とキスした・・・気持ちよかった・・・ラクスは嫌がってたから・・・。

「サイ・・・あの・・・」
フレイは通路を歩いていたサイに声をかけた。
「あの・・・一緒にジュ−スでも・・・」
「ごめん・・・お断りするよ」
「あ・・・そう・・・」
横を通り過ぎようとしていたサイに慌てて声をかけた。
「サイでも!」
「なんだよ!」
苛立ったように私を見るサイ。
「え・・・なにって・・・」
「なんなんだよいまさら!ええ!なんでいまさらなれなれしくしてくるんだよ!」
そう言うと話は終わりというように立ち去ろうとした。
「サイごめんなさい!」
サイが立ち止まる。
「そうよね、私、貴方になんて酷いことしたんだろ、ほんとよね・・・裏切ったのは私よね、ごめんなさい、ほんと私ってなんて身勝手な女なんだろう・・・キラにも貴方にもなんて酷いことしたんだろう・・・ごめんね、サイごめんね・・・サイ・・・ごめんなさい!」
サイは少し黙っていたが。
「そうか・・・分かった」
「え?」
「聞こえなかったのか?いいかげんなところはあいかわらずだな、分かったって言ったんだよ」
そう言うとサイは立ち去った。
「・・・・・・」
サイの分かったってどんな意味なんだろう・・・あ、ミリアリア。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
キラを取ろうとするなんて最低な女。
「ミリアリア、私あんた嫌い、大嫌い」
「奇遇ね、私もあんた嫌いよ」
「馬鹿女」

325過去の傷・作者:2004/04/21(水) 10:46
>>翼たち
ストライク・ダガ−の模擬戦フレイ様頑張ってください、期待します、見せ付けてください、力の差を・・・。
>>ミリアリア・あの子許せない
サイご愁傷様、というよりどんな内容だったんでしょう?
ミリィはやっぱりキラに気があったんですね、ト−ルに少し同情してしまいます。

326ミリアリア・あの子許せない 94:2004/04/22(木) 05:42
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 11/12
[ミナシロのこと覚えてる?]

これが、長期休暇の時にミナシロであったことの顛末。

私の同人誌を持って行った、あの腹の立つ女性は、結局見つけられずじまい。一言謝らせた
かったけど、もう済んだことだし、別に、どうでもいい。

その後の状況……

その休みの間、キラやトールに用事があったり、うちの両親が忙しくて、出張準備や家事に、
こき使われたりで、結局、みんなでミナシロの震災慰霊所に行くことも、キラとトールを
家に呼ぶこともできなかった。私は次の休みには震災慰霊所に連れてってくれるよう、
キラと約束した。

補足すると、その家事手伝いも、私が料理を、まったくできないせいで、インスタントものと、
買ったままの食品トレイが、そのまま並ぶ食卓に、主にお母さんが小言を並べていたことを
付け加えておく。

トールと私は、帰りのシャトル代を使い込んでしまい、代わりに払ってくれるよう、親に
泣きついたけど聞き入れてくれず、親に借金した形でヘリオポリスへのシャトルに乗った。
その後、仕送りから、少しずつ、さっ引かれて、金欠に苦しんだ。キラも、カッコつけて
私達に食事をおごったことで、親からの前借りを使い込んだらしく、同様に金欠状態に陥っていた。

さらに、私が親へのぼやきで、休み中、毎晩のようにキラやトールに携帯で長電話をかけて
時間をつぶし、さらに、時々二人からも、かけ直しで繋いでいたものだから、後から来た
電話代の請求書に、三人のサイフはもう……。

結局、私達三人はカレッジに戻った後、授業そっちのけでバイトに追われ、出席日数ギリギリで
進級した。その間、私達三人の間では、互いの稼ぎを日々の食費で奪い合う醜い争いが繰り広げられた。
私達の場合、光熱費と通信費。それと教養費、っていうか趣味の本とかの費用は絶対に削れないから。

さすがに、私の金欠時の常套手段「ついでに……」も予防線を張られてしまい、代わりに、
カトウ教授の怒る回数で夕食代の賭けをしたり、各自のバイト先へ陣中見舞いと称してタカリに行ったり、
トールと二人して、唯一、二人以上の棲息スペースのあるキラの寮に転がり込んで、授業のノートを
チェックし合いながら、元手はタダのバイトの残り物を、三人の間で金銭オークションにかけたり……

でも、キラやトールとの、そんな、おバカな日々が私の幸せだった。進級して、徐々に三人の関係が
変わって行くまでは……

サイは、ヘリオポリスに戻ってからも、しばらく落ち込んでいた。苦しい財政の元、元気づけようと
みんなで何回か食事に誘ったけど、中々、元気が出ない中、ある日、研究室でメールを見て
喜んでいるのを見てから、いつもの状態に戻った。彼女と仲直りしたらしい。
今、思えば、サイのデートの相手って、あの子…… フレイのことだったんだろうけど……
なんで喧嘩したのかは不明。サイが、なにやら、ぼやいてたの、さっぱり要領を得なかったから。

サイの趣味については、その後判明した。サイってアイドルおたくだったらしい。しかも、アレコレと
節操が無いタイプ。おっかけまでは行かないけど、ヘリオポリスでコンサートあるときは誰彼なく、
行きまくっていたらしい。でも、隠すほどのことじゃないと思うけどな。

カズイは、あの後、撮影旅行で、海洋遊園や海洋プラントの見学に行った。
海洋プラントの海底居住ブロックまで、潜水艇で行って入ったと、しばらく自慢していた。
もっとも、その時見たクジラに驚いたらしく、海には大きい生き物がいると恐がっていて、
アークエンジェルが紅海に出た時、このことで私はカズイをからかったことがある。

海洋遊園、海洋プラントの写真も見せてもらった。その写真を見ると、横倒しのボンベのような
概観の居住ブロックは、中は意外と広く、中央を吹き抜ける広い通路がカズイの写真に写っていた。
そこも、一度行ってみたかった。今は戦争のせいで、計画が中断し、廃棄同然になってしまったと聞いている。

カズイは、ミナシロで撮った写真をホームページに登録した。ミナシロの街の風景、
夕闇に染まるPARKSの光景。きらめく夜景。結構、好評だったらしく、アクセスカウンタの
桁も跳ね上がっていた。

カズイのホームページを見るたびに、あのミナシロでのことを思い出す。楽しい思い出。
あの時のミナシロのこと覚えてる? キラ。

P.S.
あの801同人誌、エロかったです。とっても実用的。さすが伝説の本。

327ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/22(木) 05:44
>>過去の傷
ラクスは、フレイ様をどう考えているのか謎ですね。嫌っている訳でも無いみたいだし。
ここのサイは冷たい。もうちょっと話聞いてあげても……
ミリアリアとの罵り合い、平手打ち合戦に発展しなければいいけど。

328過去の傷・115:2004/04/22(木) 12:40
「馬鹿女ですって!?」
ミリアリアが声を張り上げる。
「ええ、馬鹿女に馬鹿女っていってなにが悪いのよ!人の彼氏横取りしようとするなんてあんたって最低な女!」
「その言葉そのままお返しするわ、あんただって二人の男、手玉に取ったじゃない、悪女はあんたよこの腹黒女!」
「なによ、ト−ルがいない寂しさをキラで紛らわしたいだけなんでしょ!?キラは道具じゃないのよ!?」
あんたが言うなって。
「道具って・・・道具として利用してたのはそもそも誰かしら?」
「あれは・・・でももういまは違うわ!なによあんたこそ人の彼氏取ろうとしてるじゃない」
「ええ悪い?でもあんたみたいにお嬢様ぶったりしてないわ!」
「なんですって!?」
フレイはミリアリアの頬を平手でぶった。
ぶたれたミリアリアは・・・頬を押さえるとフレイを殺意をこめるような表情で睨んだ。
「なによ・・・なにすんのよ!」
そしてフレイにつかみかかっていった、女二人が倒れる。

「ラクス・・・失礼します」
「あら、アスラン♪」
「それで話とは?」
ラクスは微笑む。
「いいえ、貴方にお会いしたかっただけですの」
アスランはため息をつくと入ってきた。
「ラクス・・・貴女は私が守ります・・・」

カガリは部屋の中でただ一人。
「明日のフレイの実戦練習どうしようかな・・・でもあいつだけは危険にさらしたくない・・・私もフレイを援護するか・・・フレイ、お前は私が守る・・・」

329流離う翼たち・462:2004/04/23(金) 00:09
 セランを指して気分良さそうなアルフレット。フレイは逆らう気も起きなくなり、仕方なくセランのほうを見る。

「あの、御免ねセラン軍曹、こんな事になって」
「いえ、構いません。それより早く機体の調整をしましょう。一応使える状態にはしてありますから、少尉が乗って調子を確かめてください」
「うん、分かった」

 フレイは制服のままでコクピットに入っていく。下からセランが大事な事を聞き忘れたと声をかけてきた。

「そういえば少尉、少尉は前は何に乗ってたんです!?」
「私はデュエルよ!」
「ああ、なら問題ないです。操縦系はデュエルと同じですから。ただ、パワーはデュエルほど高くないので気をつけてください!」

 フレイは礼を言ってコクピットに収まった。確かにコクピットの作りはデュエルと全く同じだ。これなら動かすにも戸惑うことは無いだろう。フレイは慣れた手つきで機体を起動させ、ダガーを起き上がらせた。外部スピーカーを起動し、格納庫に声を流す。

「よし、これなら動かせるわね。とりあえず外に出るから、道を開けてください!」

 フレイの声に吃驚した整備兵やパイロットが慌てふためいて格納庫の中央から退いていく。フレイは兵員が退いたのを確認すると、ダガーを外に出そうとして、早くも違和感を感じた。

「あれ、なんか反応が鈍いかな?」

 最初は気のせいかと思ったが、やはり動きが鈍い。自分の操作に機体が付いて来ない。それでも普通に動かす分には問題は無いので機体を格納庫から出し、広い所まで持ってくる。そして戦闘時のような機動を軽くこなしてみて、違和感を確信に変えた。この機体は間違いなく鈍い。
 そんな不満を感じていると、後ろから付いてきたセランがジープの無線で質問をぶつけてきた。

「どうです少尉、ダガーは?」
「デュエルと同じなのは嬉しいけど、何だか動きが鈍いです。こっちの操作と動きにかなりズレがあって気持ち悪いというか」
「そうですか、とりあえずソフトの方を弄りますから、機体を屈ませてください」

 言われて機体を屈ませ、コクピットを開けるフレイ。セランはコクピットのハッチに一っ飛びで飛び乗ると、機体のOS用キーボードを引き出し、物凄い速さで打ち出した。その余りの速さにフレイも驚いてしまう。

「少尉、機体を動かしてみてください。それで当たりを出します」
「え、でも、危ないわよ?」
「体は器具で固定してあります、大丈夫。ですが、余り無茶はしないで下さい」
「う、うん、分かった」

 言われてフレイは機体を適当に動かしてみる。そのフレイの動きと機体の動作の誤差をセランが修正していくが、だんだん表情が悩むように顰められていく。

「・・・・・・・・・はあ?」

 セランがあんぐりと口を開けてフレイを見る。フレイは何かおかしかっただろうかと不安になったが、その不安はすぐに別の驚きに変わることになる。セランは、信じられないという表情でフレイにこう言ったのだ。

「あの、少尉、これって、本当に問題ないですか?」
「え、なんで?」
「だって、これが本当なら、少尉はコーディネイター並の反応速度を持ってることになりますよ」
「へ?」

 フレイは気付いていなかったのだ。自分が、一体どれほどの化け物になっているのかを。MSパイロットとしての比較対象はキラしかいなかったからこれまでフレイ自身が気付いていなかったのだが、彼女の反応速度は既にフラガと同様にナチュラルの常識を超えていたのである。

330流離う翼たち・作者:2004/04/23(金) 00:19
>> ミリアリア・あの子許せない
何とも大変ですな。本当に全員が金欠になるとは。
学業そっちのけでバイトに走るのはある意味正しい学生の姿かもw

>> 過去の傷
なんか、だんだんヘリオ組全員が怖くなっている
サイとミリィ、フレイ様が壊れ、次はキラが壊れるのかな?

331ミリアリア・あの子許せない 95:2004/04/23(金) 06:06
第2部 7.ミナシロのこと覚えてる? 12/12
[ハイ、キラ、忘れました]

回想が終わり、私の意識は、オノゴロから首都に向かう連絡機に乗る私に戻った。

私は大きなバッグから、私の携帯電話を出した。軍に入っている間は、バジルール中尉に
没収されていたもので、アークエンジェルを降りる際に返されたものだった。やがて、
首都が近づくと共に、アンテナの電波強度を示すバーの本数が増えて来る。私は、携帯電話に
登録されたブックマークを選んでホームページを表示した。

それは、カズイの個人ホームページだった。ヘリオポリスは崩壊したけど、ホームページの
サーバのデータはオーブにもコピーされていて無事だった。カズイが、あの休みの時、
撮影したミナシロの写真が携帯電話の画面に現れる。ミナシロの街、ショッピングモールの
人ごみ、時計塔の広間の様子、海洋遊園、海洋プラントの中。私は、それを言葉無く虚ろな瞳で
眺めながら、ボタンを押して次々と送っていく。

そして、最後まで来た時、私は、もうひとつのブックマークを叩いた。覚えているパスワードを
入力する。それは、カズイが撮った、あの時の私達の写真を掲載した裏ページ。
ミナシロPARKSの屋上レストランでの写真を次々と送りながら見つめる。

「キラ、トール、サイ、カズイ」私は一人呟く。

「トール、トール、……」私は、みんなにVサインをしながら抱きつくトールの写真に、
その騒がくも、周りを明るくさせたトールの声を思い出す。「トール……」

そして、キラの隣で顔を染める私の写真をじっと見つめる。
「キラ、キラ、キラ ……」

連絡機がオーブに到着したアナウンスがした。私は携帯電話を持ちながら、タラップから
連絡機を降りた。降りた一団は、海浜空港から出て、連絡駅へ歩きだす。

── 降りるんだミリィ。そして、忘れるんだ僕のこと。忘れてしまえばいい。

私は、私とキラの写真を出したままの携帯電話を持って、駅では無く海岸の桟橋の方に歩いて行く。

── 忘れるんだミリィ!!

私は携帯電話を海へ投げた。また、涙が一しずく流れた。

(いいの、こんなことしていいの!)
(後から後悔しても遅いのよ!)

私は、ベンチを探して座り込んだ。

「ハイ、キラ、忘れました。仰せの通り」
私は呟いた。そのまま、しばらく、私は放心したように、じっとベンチに座っていた。

どれくらいの時間が経ったのだろう。
私は、やっと立ち上がると、大きなカバンを引きずるようにして、首都に向かう電車の駅へ、
ゆっくりと歩き始めた。

332ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/04/23(金) 06:10
これで、7章「ミナシロのこと覚えてる?」終わります。10/12 [ごめんね、お母さん] で出した、
いくつかの不明点は二章後で補完される予定です。また、ミナシロ市そのものも、また出てきます。
次は、フレイSSに戻って、7章「幼子(おさなご)」から続いていた一連の話の締めを、お送りします。

>>過去の傷
うう、ほんとに殴り合いになるとは。私が想像した二人は、だからと言って仲良くはならなかったですね。
結局、一方は、寝返った敵の男を好きになったりして不幸路線でしたが、応援してました。

>>流離う翼たち
フレイ様の、この力、表面上の現れ方はコーディネータやブーステッドマンと同じなんですね。
フレイ様自身が、整備兵に気味悪がられる路線に行かなければいいけど。それには、今のオリキャラの
なにかの活躍要素が必要なんでしょうね。

333過去の傷・116:2004/04/23(金) 08:59
「ラクスさん、なんでしょうか?」
とキラは尋ねた。
「アスラン・・・貴方に剣を託します」
「剣といいますと・・・?」
「はい、自由を・・・フリ−ダムを貴方に託します」
「ラクスさん、どういうことですか!?」
「キラ様、いえキラ・ヤマト!貴方にあれを託したのは間違いでした、はっきり言わせていただきます、貴方にフリ−ダムに乗る資格はありません!!!」
な!?なんだって・・・?
「そ、そんな・・・」
「キラ様・・・・・・ではもう用はありません、帰ってください、アスラン・・・あれをお願いします」

「大丈夫だ、ラクスに秘密で乗せてやる」
「アスラン・・・」
「や、やめて・・・」
「あんたなんか・・・あんたなんか!」
ふいに女同士の言い争いがあったので・・・キラはそちらに向かった。

「フレイ・・・ミリィ・・・」
ミリアリアに馬乗りになりフレイが頬を叩いていた。
お互い頬が腫れていたがミリアリアは酷く・・・痛そうだった。
「はあ・・・はあ・・・」
「・・・うう・・・」
「ミリアリア、分かったでしょ!?女の色気でも容姿でも喧嘩でもあんたは私には勝てないのよ!」
「・・・・・・」
その数時間後。
ミリアリアは食堂にいた。
「ミリィ、キラの様子は?」
「うん・・・大丈夫よ、いまは眠ってるわ・・・」
サイの声に私は答えた。
実はあの一時間後、キラが倒れたのだ・・・熱も下がんないし・・・。
「皆は来ないでね・・・私一人でついていたいの・・・」
カガリやアサギ、ジュリ、マユラにも聞こえるように言うと食堂を去ろうとする、そして赤毛の少女の隣を通り過ぎようとした、すると・・・消え去りそうなくらい小さな声だった・・・。
「キラを・・・頼むわね・・・」
ほんとに消え去りそうなくらい小さな声だ・・・フレイは私に顔を向けようとしない・・・。
「え・・・ええ・・・」
私はそう言うと逃げるように食堂を出た。
これは罪悪感?フレイからキラを私は奪った、それは事実。
「フレイ・・・ごめんなさい・・・」
いまさらだけど罪悪感が出てきた、ト−ルがいないという理由で私はフレイからキラを奪った、いえまだ奪おうとしている・・・。

334流離う翼たち・463:2004/04/23(金) 23:37
 コーディネイター並の反応速度を持つと言われたフレイは唖然としてしまった。馬鹿げている。ナチュラルでは及ばない能力を身に付けたのがコーディネイターである筈だ。そのコーディネイターの能力にただのナチュラルである自分が匹敵するなど、ありえる事ではない。
 だが、自分を見るセランの目がそれを否定させない。セランは興奮してキーボードを操作し、設定を次々に変えていく。そして、設定変更が終わったのかフレイに親指を立てて見せた。

「これで良いと思います。もう一度やってみて下さい。私は下で見ていますから、もう一度結果を教えてくださいね」
「ええ、分かった」

 セランが機体から飛び降り、ジープに戻ったのを確認したフレイは、早速機体を動かした。最初は簡単な機動、そこからだんだんとスピードを上げていき、フレイはダガーの応答速度が十分なレベルにまで引き上げられて居るのを確認して機体を止めた。そしてコクピットから体を出し、駆け寄ってくるセランに大きく頷いて見せた。

「大丈夫、これなら問題ないです!」
「そうですか、それは良かった!」

 セランが拳を握って喜んでいる。そのままダガーの足元にまで駆け寄り、フレイに手で格納庫の方を示している。

「少尉、あそこに練習用の模擬サーベルと模擬ライフルがあります。システムを訓練モードにしてあれを装備してください」
「えっと、どうして?」
「さっき少佐が言ってたじゃないですか。これから模擬戦なんです」
「ちょ、ちょっと待ってください。なんでいきなり!?」
「さあ、私も無茶だと言ったんですが、少佐がいいからやらせろと」

 困った顔になるセラン。フレイが急いでサブモニターに格納庫前の拡大画像を映し出し、アルフレットの姿を確認する。すると、思ったとおりそこには心底面白そうにニヤニヤと笑っているアルフレットの姿があった。

「・・・・・・なるほど、フラガ少佐やキースさんの上官だわ」

 アルフレットは2人に似て人が悪い。良い人なのだが状況を楽しむ癖がある。丁度フラガやキースが自分達をからかって遊ぶように、あの人もそういう人の悪さがあるのだ。

「・・・・・・良いわよ、やってやるわよ」

 暫し悩んでいたフレイはこのアルフレットの露骨な挑発に乗ることにした。何を考えているのかは知らないが、これでもデュエルに乗って総合撃墜スコア30機以上なのだ。フラガ少佐やキースさんに褒められるくらいの技量にはなっているし、誰が相手でもそう簡単に負けるつもりは無い。
 覚悟を決めたフレイは、セランに分かったと答えて訓連用の装備を取りに行った。

 フレイの返事を聞いたアルフレットは面白そうに鼻で笑うと、チラリと背後を振り返った。

「よし、とりあえずは1対1だ。お前ら、誰か行きな」
「それじゃあ俺が!」

 フレイと同じくらいの年の少年が名乗りを上げた。黒髪の東洋系の少年だ。アルフレットはその少年を見ると、ポンポンとその頭を叩いた。

「ようし、その意気だ。勝ったら何か頼み事を聞いてやろう」
「本当ですか!?」
「おお、俺に叶えられるなら何でも聞いてやるぞ。何なら明日一日休暇とかな」
「おおおおおおおおお!!」

 志願した少年は喝采を上げて自分のダガーに乗り込んでいく。それを見送った同年輩の少年達は羨ましそうにその後ろ姿を見送っていたが、彼らより年長のパイロット、多分隊長級のパイロットは不満顔でアルフレットに問いかけた。

「良いんですか隊長、あんな約束をして?」
「何、構やしねえさ。あのお嬢ちゃんに勝てたならそれくらいは安いもんだ」
「どういう事です?」
「まあ、黙って見てなって」

 不信そうに自分を見る部下に、アルフレットは不敵に笑うだけで何も答えはしなかった。

335流離う翼たち・作者:2004/04/23(金) 23:50
>> ミリアリア・あの子許せない
ミリィ、とうとう携帯を捨てちゃいましたか。ドラマのラストシーンですな
次からは再びフレイ様に戻られるようで、楽しみにしてます。

>> 過去の傷
喧嘩は終わったようですが、さてこれからどうなるやら
フレイ様はカガリに走るしかなくなったのか

336ザフト・赤毛の虜囚 49:2004/04/24(土) 07:32
9.母親(ママ) 1/8
[え、行くって、どこのことだっけ?]

私は、安らかな眠りについている。ここは、多分夢の中……

──「フレイ、迷惑をかけてごめん。なるべく早く終わらせるから、ちゃんと待っててくれ」
ビデオメールに残るキラの言葉。
初めて出会った合コンの写真。みんなとの食事の写真。にこやかに微笑むキラの写真。
キラのメモリチップに残る思い出。

そして、そこに眠る私の知らないキラに癒されている。
これで、また歩いて行けると思う。キラの求めるもののために。

「うふ、うふふ……」
思わず笑みがこぼれてしまう。こんな楽しい気持ち、本当に長い間、忘れていた。
ヘリオポリスの平和の中で。友達と、いろいろ、おしゃべりして、買い物して、
あの時以来のこと。

あら、あちらも、なんだか楽しそう。ちょっと行って来よう。

え、行くって、どこのことだっけ?

いいわ、キラも一緒だもの。どこにだって行ける。どこでも安心できる。私はキラに話しかける。
「一緒に行こう、キラ」

ふと、傍らを見ると、今にも泣き出しそうに顔をクシャクシャにしている子供がいる。見たことない子。
私の腰くらいしかない女の子。でも、私には、それが誰なのか分かる。私は、その子に酷いことを
言って追い返した。泣きそうな顔して必死に耐えている姿が記憶に残っている。

「ミコトでしょ。あなたも一緒に行かない」

小さいミコトは、おそるおそる手を伸ばす。その両手を私とキラがひとつずつ繋ぐ。

「一緒に行こう。キラ、ミコト」

二人でミコトの手を振って歩くうちに、少しずつ表情が和らいで来るのが分かる。
私は、キラと小さいミコトを暖かい気持ちで見つめる。

いつのまにか、キラの向こうには、ミコトよりも少し年上の金髪の男の子が手を繋いでいる。
キラは、あの食事の写真のような優しい微笑みを、その男の子に向ける。そして、ミコトにも、私にも……
私達は四人、微笑みながら歩いて行った。

え、行くって、どこのことだっけ?

337ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/24(土) 07:34
フレイSS新章です。前章の続きで、フレイは今だお休み中です。
ここで、しばらく、メルデルの方に話を移します。
メルデル編では、メインの一人である新キャラが登場します。
ただ、オリキャラでは無く、TV本編のオフィシャル・キャラです。

>>過去の傷
よく分からないけど、キラはフリーダム剥奪と、ミリィ・フレイ様の喧嘩を見て
ショックで寝込んだのでしょうか。キラが倒れるのを見て、ミリィ・フレイ様の
喧嘩は少し納まった?なんか、二人の意識が変化してますね。キラは、どんな
倒れ方をしたのでしょう。

>>流離う翼たち
展開引っ張りますね。フレイ様、自分に対する意識も思い込み一杯ですね。
こういうところがフレイ様らしいです。凄い力を持っている主人公の場合、
その力を本番のみとか発現に特定の条件を持たせて、一方で人柄的なところで、
味方に受け入れさせるようにしますが、今のフレイ様は、そのどれもしてません。
アルフさんは、フレイ様をどうするつもりなのでしょう。

338過去の傷・117:2004/04/24(土) 11:29
キラの側について看病している私。
キラの側にいられるだけで私は幸せ。
「うう・・・ト−ル・・・ごめん・・・」
「!」
キラはト−ルのことでまだ苦しんでるのね、そこまでト−ルを・・・。
「・・・・・・」(・・・・・・)
私は笑みを浮かべた、そう・・・苦しめばいい・・・私だって苦しいんだから・・・。
でもキラにとってはいいはず、私と付き合えるんだから、それに私もキラを好きになりかけてるから・・・ううん、好きよ、キラのことは好き。
「キラ?」
一人の少年が入ってきた。
この人って・・・。
「キラの様子は?」
と、アスランは言った。
「いえ、状態はそのままです」(この人がト−ルを・・・)

アスランが出て行く、残ったミリアリアは。
(気にしたって仕方ないわね、あの人はト−ルを殺そうとしたわけじゃないんだから、あの人はキラを殺そうとしたって・・・)
「・・・ミリィ・・・」
「あ、気がついた?」
キラが目を覚ます。
「ずっと眠ってたわよ」

通路を歩いたフレイ。
こんなときもキラになにもしてやれない自分が悔しかった、どうして?どうして・・・ミリアリアよりは容姿もなんでも勝ってる自身はあった。
それなのになんで?なんで・・・ミリアリアにキラを取られたんだろう?キラを責めてしまう、キラだって悪いのよ・・・なんでミリアリアに行ったのよ、分からない?あの子はほんとはキラのことなんか・・・。
そう思っているうちキラの部屋に向かっていた、明日はアストレイに乗る、でもいまはそれどころじゃない・・・キラには私が必要・・・私にもキラが必要・・・。

「ト−ルが・・・そう・・・」
「まだ、まだ苦しいんだ・・・ごめん、君のことを思うと」
「アスランって人が来たわよ」
キラの表情が変わり曇る。
「アスランが?そう・・・くう・・・アスランもト−ルも僕にとっては大切な友達なんだ・・・だから・・・うう」
泣きながら告げる。
「ごめん・・・ごめん・・・ミリィ、ごめん!」
「ト−ルのことはもういいの、終わったことよ、それよりもいまはキラが大切よ、大好き」
キラは震えながらミリアリアに顔を上げる。
私は微笑むと。
「大丈夫・・・大丈夫・・・私が・・・いるわ・・・キラには私が・・・」
「く・・・ト−ル、僕は無力!守れなかっ!」
力も剣もあるのに僕は守りたいものを呪いにでもかけられてるように守れない、あのシャトルの少女もト−ルも・・・僕には神様はいないのか?いや・・・ミリィがいる、それでも・・・。
「キラ、私を貴方に上げる・・・だから泣かないで・・・」
ミリアリアはキラの顔を上げされるとキスした、キラも戸惑いながらも目を閉じミリアリアの背中に手を回し唇を押し付けてきた。
そして二人はベッドに入って行く。

339『明日』と『終わり』の間に・2日目・午前:2004/04/24(土) 22:22
 料理がしたいというフレイの願いを叶えてやるため、私は病院にあいつの仮退院を願い出た。幸いにも一日だけという条件で認めてもらうことができ、その翌日私はフレイを自宅に招待した。そして今、私達はキッチンでカレー作りの真っ最中である。

「―――よーし、あとはじっくり煮込むだけだな。なっ、簡単だったろ?」
「・・・確かに簡単だったけど、材料切るのはカガリが全部やっちゃって、私ほとんど何もしてない気がするけど・・・」
「お前に任せてたらお前の指が何本あっても足らないだろ?切るどころか切り落としかねない勢いだったし、あんなの見てたら気が気じゃないぞ」

 ピ〜ンポ〜ン!

「!ン?誰か来たのか?今日は私達以外誰もいないし、ちょっと行って来るよ。その間鍋の中の様子見といてくれ」
「ええ、分かったわ」

 ピ〜ンポ〜ン!

「煩いなぁ、今行くよ。じゃ、頼むな」
「・・・・・・」


「は〜い、どちら様ですか?」
「あ、訪問販売の者です。商品の実演に来たんですけど・・・」

 ちっ、セールスマンか・・・。忙しい時に限ってこういうのが来るんだよなぁ。まぁいいや、適当に相手してやるか。・・・それにしても今の声、何処かで・・・?

「お嬢さん、包丁とかいかがですか?こいつがまたグゥレイトな奴で今なら抗菌まな板とセットでおまけにもう一本・・・って、ゲッ!?」
「・・・何やってんだ、ディ・・・!ディ〜・・・、ディディー?」
「・・・ディアッカな」
「そう、それ!・・・で、何してんだお前?」
「いや〜、大事な仕事トチってまた給料減らされたんだわ!それでそれだけじゃもう食っていけなくて、会社に内緒で色々とバイトを・・・。!!いっ、いやいや、あっしはただのしがねえセールスマン、ディアッカなんて名前じゃありやせんぜ?」
「・・・いや、一目でばれてるから。無理してキャラ変えなくていいぞ?」

 そうか、こいつ今オーブにいたんだった。でもこいつ、すっかり丸くなったなぁ。一応元ザフトの赤服だろ?・・・いいのかよ、こんなんで・・・。

「とにかく、ここであんたに会ったのも何かの縁だ。頼む、包丁買ってくれ!このままじゃ今月のノルマを達成出来ねーんだよ!」
「ここで会ったのもって、ここ私の家だぞ?それに別に包丁には困ってないしさ」
「そう言うなよ、知らない仲じゃないだろ?あ、そうか。ならこの包丁がどれだけ凄いか見せてやるよ!」

 ・・・まずいな、長くなりそうだ。早いとこ追っ払うか。

「例えばこの分厚い電話帳もこいつなら・・・、〜〜〜ッ、あれ?〜〜〜くっ!・・・おかしいな、何で切れねーんだ?」
「・・・無理しなくていいぞ。どうせ切れても買わないから。・・・なぁ、いい加減帰ってくれよ?今日は人が来てるんだ」
「んあ、人?・・・ハハ〜ン、分かったぜ。取り敢えず、アスランには内緒にしといてやるよ。・・・だからその代わり包丁買ってくれよ」
「・・・何を勘違いしてるか知らないけど、今すぐ失せないとその包丁の切れ味、お前で試すことになるぞ?」


 ―――くそ、あれから大分時間が掛かったな。初めから『警察呼ぶぞ!!』って言えば良かった。手間取らせやがって、ディ〜・・・、何だっけ?ま、いっか別に。それより、もうカレー出来上がってるんじゃないか?

「すまん遅くなって!」
「カガリ遅〜い!何やってたのよー!?」
「まぁ、色々とな・・・。それより鍋の方は大丈夫だったか?」
「うん。そろそろ出来たんじゃないかしら?」
「そうだな。どれどれ〜・・・?」

 ・・・・・・えっ!?

「・・・フレイ、私がいなかった間に何かしたか?」
「別に、ただ様子見てただけよ?」
「・・・そうか」

 ・・・変色してるな、”赤”く・・・。それになんかツ〜ンとする匂いもするし・・・。あいつ、何入れたんだ?・・・取り敢えず、盛付けしてみようか・・・。

340ザフト・赤毛の虜囚 50:2004/04/25(日) 07:12
9.母親(ママ) 2/8
[ユーレン・ヒビキだな。ちょっと、ご同行動向願おうか]

私は安らかな気持ちで目を覚ました。ここはホテルの部屋。

私はコロニー・メンデルのホテルを点々としていた。私は、彼を必要としている。
彼が私のところへ来るのを、ずっと待っている。ホテルのドアが、そっと叩かれる。

「誰?」私は問いかける。
「メルデル、僕だ」
「ユーレン!」

私は、喜んでユーレンを部屋に入れる。
「どう様子は? 研究所はどうなっているの? フラガは何もしていない?」
「とりあえずは大丈夫だ。ヴィアも、所長に言って、しばらく研究所に
 寝泊まりさせてもらっている」

「ヴィアは、なんて言っている」
「君が宇宙港に来なかったことで心配している。僕が最後に会ったことになっているから。
 食事に誘った時のこと。色々、聞かれているけど。途中で別れたと言ってある」

「ヴィア…… ごめんなさいユーレン、あなたにも嘘つかせて」
「構わないよ。君のためだ」

ユーレンは、私にキスをする。それで、私は、その気にさせられてしまう。

「メルデル、そろそろ、ここも引き払わないといけない」
「ユーレン、出て行く前に…… して」

「おい、そんなことしてる場合じゃ」
「ずっと待ってたの。してくれなくちゃ嫌」

「しょうが無い、お嬢様だな」
「誰のせいよ」

私はユーレンを手放すことができない。ヴィアに返したくない。ユーレンにヴィアの匂いが
付いていないか確かめたい。なんて醜い心の私。

* * *

私とユーレンは抱き合いながらホテルを出た。その時、私達二人を数人の集団が取り囲んだ。
私は青ざめた。ユーレンが私をしっかり抱き寄せる。私も、ユーレンの胸に隠れるように抱きついた。

「ユーレン・ヒビキだな。ちょっと、ご同行動向願おうか」
「ユーレンは見逃して。あなた達の目的は私でしょ」私は必死の声をあげる。

「誰だ? この女」

戸惑ったような声。おかしい、私を連れに来た、フラガの雇った者達じゃ無いの?

「お前など関係ない。我々が用事があるのはユーレン・ヒビキだ」
「だけど、この女も見逃せないわ。私達を見たんだから」

メンバーの中の、学生とも思えるような少女が言った。私が見ても美しい少女。髪は、
ややウェーブがかった細い髪質、それを後ろに簡単に結んでいる。その少女は、顔に
似合わない冷たい瞳で私を睨みつけた。そして、懐に忍ばせた手に拳銃をチラリと覗かせた。
私を殺すつもりだ。

「よせ、カリダ。無駄に血を流すな。一緒に連れて行くんだ」
「カリダ?」 私は呟いた。

「分かったわ」カリダと呼ばれた少女は拳銃に触れた手を放すと、他の男と一緒に私達を
近くに止めてあった車に乗せた。

「一体何者だ?」
ユーレンは車の後部座席で、隣に座る、さっきのカリダという少女に聞く。
「フラガの手のものじゃないの?」私も問いかける。

カリダは車の中で遠慮無く銃を抜いた。
「黙ってて、汚らわしい悪魔の使い。そこの女、フラガなんて知らないわ。
 私達はもっと崇高なものよ」

「カリダ、お前は過激すぎる。財団の理想を忘れたか」助手席の男がたしなめた。

カリダは、謝るように言葉を返した。
「済みません。この言葉に誓います。青き清浄なる世界のために」

「ブルーコスモス!」ユーレンが恐ろしいことを聞いたように呟いた。

私も聞いたことがあった。コーディネータ排斥を謳い、密かに暗殺までしていると
噂される圧力団体のことを。私はユーレンに体を寄せて震えた。

341ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/25(日) 07:13
>>過去の傷
ミリィは、アスランには、そっけない。逃げてる? キラは、相変わらずですな。

>>『明日』と『終わり』の間に
ディアッカが、なんというか…… マニアックなMSばかり作ってたせいでしょうか。
ネメシス・フレイ様、煮込むの見ていただけなのに何が…… 次も楽しみです。

342過去の傷・118:2004/04/25(日) 21:02
「ミリィ・・・」
「もう・・・こんなときくらい黙っててよ」
私はそう言うとキラを抱きしめる。
「ごめん」
「私と結婚するんでしょ、もっとしっかりして・・・ト−ルはまだしっかりしてたわよ」
「うん、そうだね、もっとしっかりしないと・・・」
そう言うとキラは立ち上がる。
「その調子よ」
ミリアリアも立ち上がる。
「ミリィ・・・君は僕が守る・・・」
「なら・・・私も一緒に戦うわ・・・キラの想いの分まで・・・」
そしてお互いキスを交わした。
これでキラは完全に私の虜・・・。

ミリアリアとキラは気づかなかった、フレイが殺意ともとれる険しい表情で二人のキスをドアの隙間から見ていたのを・・・この表情はあれより怖い、父を守れなかったキラに怒りをぶつけたときの・・・それくらい怖い表情でミリアリアとキラのキスを見ていた・・・。

キラ・・・こんなに憎しみを覚えたのはパパが死んだとき以来だわ、なんで・・・なんでミリアリアとキスしてんのよ・・・馬鹿。

「ミリアリアさんとお会いしたのですね?」
「はい」
ラクスの部屋というより指揮官の部屋にアスランは来ていた。
「それでどうでした?」
「私はどうすれば・・・」
そう思うのは当然であろう、あの子の恋人を意思がないとはいえ殺してしまったのだから・・・これは戦争だからといって許されるものではないのである、たしかにアスランも軍人だ、何度もあった、しかし・・・殺した相手の恋人と同じ艦にいるというのは・・・。
「どうすればというのは?ミリアリアさんに対してですか?」
「はい・・・私はあの時キラを殺すつもりでした、しかし・・・結果としてキラの友人を・・・私は・・・」
「でも敵だったのでしょう?お互い・・・なら仕方ないのではありませんか?戦争なんですもの・・・少なくとも私はそう思いますわ」
これはキラ様にも言ったことです。
「そう言ってくださいますと私としても・・・」

343流離う翼たち・464:2004/04/25(日) 23:26
 対戦相手のダガーを前にしたフレイは緊張していた。何しろ初めての連合MSとの対戦であり、模擬戦としては初めてキラ以外のパイロットと戦うのだ。今まで自分がキラに勝てたことは無い。キラは自分を「強くなった」と言っていたが、それがどれくらいのレベルなのかを実感として捉えられたことは無い。何しろ測る目安となる相手がキラしか居ないのだから。航空機のシミュレーターでは流石にフラガやキース相手では勝負にならない。というかキラでも2人には負ける。
 だからフレイは、目の前に立つダガーが少し怖かった。初めてのキラ以外の味方との対決。同じ機体、同じ武装、乗っているのは同年代のナチュラル。こんな条件で戦ったことは一度も無いのだから無理は無いのだから無理も無いだろう。
 些か緊張しているフレイの耳に、通信機からアルフレットの声が聞こえてきた。

「お嬢ちゃん、準備は良いか?」
「は、はい!」
「ようし、それじゃあ模擬戦開始だ!」

 アルフレットの合図と共に相手のダガーが突っ込んでくるが、それはフレイの意表をつく動きだった。

「えっと、どういう事かしら?」

 相手はドタドタと走ってくる。その動きはキラどころか、これまで相手にしてきたデュエルやバスターよりも遙かに劣る動きであった。通常のジンやシグーでもこれよりは速く動くだろう。余りにも遅いその動きにフレイがかえって何かの罠かと警戒してしまう。だが、隙だらけのその動きにフレイは訳が分からぬままにライフルの照準を合わせ、トリガーを退いた。実際に弾が出るわけではなく、コンピューターが命中判定を出すだけなのだが、そのコンピューターは一撃で判定撃破を出している。

「えっと?」

 余りにも弱すぎる相手にフレイは状況が理解できなくなっていた。このダガーは何しに出てきたのだろうか。呆然とするフレイの下にアルフレットからの通信が送られてくる。

「ご苦労さん。一瞬だったな」
「あの、さっきのストライクダガーは何しに出てきたんですか?」
「ああ、この基地の新米パイロットだ」
「ああ、訓練生だったんですか」

 それなら納得だ。幾らなんでもあんな動きでは前線に出ても死ぬだけだろう。あれではヨーロッパで初陣したときの自分よりもさらに性質が悪い。ジンを相手に次々と撃ち落される様が目に浮かんでしまうほどだ。
 アルフレットはそれには答えず、次の相手を前に出した。

「ようし、次行け。勝ったら嬢ちゃん連れてデートさせてやる!」
「ちょ、ちょっと待ってください、何とんでもない事言ってるんですか!?」

 自分をダシに部下を煽りだしたアルフレットにフレイが文句を言うが、アルフレットはニヤニヤ笑いを崩さぬままにフレイの文句に答えた。

「お嬢ちゃん、昔から一宿一飯の恩って言うだろ」
「うぐっ」
「まあ全勝すりゃ問題ないんだから頑張りな。ちなみにうちのガキどもは俄然やる気になってくれたぞ」
「しょ,少佐、貴方って人は〜〜〜」

 フレイは歯噛みしてこの上官の性格を呪ったが、それで事態が好転するわけでもない。暫しブツブツと文句を言っていたのだが、とうとう観念して気持ちを切り替えた。確かに勝てば良いのだ。

「もう良いわ、何人でも来なさい。全員返り討ちにしてやるから!」

344流離う翼たち・作者:2004/04/25(日) 23:37
>> ザフト・赤毛の虜囚
むうう、カリダさんがいきなりブルコスに参加しているとは
でも、カリダさんってキラの叔母さんじゃなかったでしたっけ?記憶違いかな
いずれにしても、ユーレンピンチw

>> 過去の傷
フレイ様までダークサイドに取り込まれてしまった
ラクスの言う事だけはずっと変化してませんね

>> 『明日』と『終わり』の間に
ディアッカ、なかなかに多芸な奴。とうとう訪問販売まで
しかし、このカレーは一体。フレイ様が何もしてないのなら、カガリの材料の問題か?

345ザフト・赤毛の虜囚 51:2004/04/26(月) 01:59
9.母親(ママ) 3/8
[我々を利用するつもりか?]

「手荒な真似をして済まなかった。だが、どうしても来ていただいて話をしたいと思っていた」

私の前にいる男は、まだ30歳前後と若そうながらも、丁寧でいて、かつ、威厳のある口調で話している。
私とユーレンは、広いテーブルについている。後ろには、私達をさらってきた者達が、
かしこまったように突っ立っている。その中には、あの少女カリダもいた。

「もっとも、そうは言っても容易には納得しないかもしれんが、そちらの、お嬢さんには
 危害を加えないことを約束しよう」
「自分でした約束をお忘れなきよう。それと、こちらはミセスです」ユーレンが話す。

そう、私はユーレンに抱かれた時、フラガの指輪を外して、そのままにしていた。

「これは失礼した。確か、そなたの奥様とは違うようだが」
「ミセス・フラガです。私との関係は、ご想像にお任せします」

「フン!」 カリダが軽蔑したように小さく声を漏らすのが聞こえた。

「フラガ……、ということは、あのアル・ダ・フラガか。若い妻をもらったと聞いたことがある。
 そう言えば、顔に覚えがある」

私は、事もなげに話す男に、睨むような暗い瞳を向ける。

「ところで、本題に入りたいところだが」
「その前に、もう一つ約束をしてもらいたいことがあります」

「ほう、この状況で、さらに要求するとは」
「私も馬鹿ではありません。あなた達ブルーコスモスが気づいていること、真に望んでいることが
 何なのか、私も知っているつもりです。それが、分かった上で、約束をお願いしたいのです」

「なんと! うむ、言ってみたまえ」
「私とミセス・フラガが、あなた達ブルーコスモスに拉致されていることを公表してください」

「なぜ、そんなことを?」
「私達二人と、彼女の夫、フラガ氏には、あるトラブルが起こっています。このまま二人が
 行方不明になれば、私の研究所にフラガ氏の圧力がかかります。
 私の妻に危害が加わる恐れがあります」

私は不安げにユーレンの顔を見た。ユーレンは真剣そのものの目付きだった。私の心はざわめいた。

「我々を利用するつもりか?」
「ありていに言えばそうです」

後ろに立っている男達が、どよめいた。カリダは、もう手を懐に忍ばせている。

「カリダ、やめい! まったく、お前は何度言ったら分かるのだ!」

男の一喝で、カリダの手が止まった。その後のカリダの顔は、さっきとは違う、まるで、
叱られた猫のように、しょぼんとしていた。

「いいだろう、聞いてやろう。それにしても、自分の立場さえ危ういというのに、この場に
 居ない妻の身を案じ、しかも、我々を利用することを公然言い放つとは……
 大した自信だ。変わった男だな」
男は関心したように呟いた。

「いえ、逆です。私の力など限られています。この場にいないからこそ、こうして、あなた方に
 妻を任せるのです。自分と、そして、ここにいる私の愛しい人は、自分自身で守ります」
ユーレンは、私の肩に、そっと手を置いた。

「ユーレン……」
私は肩に置かれたユーレンの手に、自分の手を重ね、ユーレンを見つめて言葉をかけた。
ヴィアのことだけを想っていると不安だった。私のこと、やっぱり……。

「よし、約束しよう。そなたの奥様の身は保証すると。このウズミ・ナラ・アスハの名にかけて」
「頼みます。ウズミ様」

ここは、オーブ。私達はL4コロニー・メンデルから連れ出され地球に降りた。
そして、オーブの、とある場所に監禁された。このウズミ・ナラ・アスハは、オーブの王族の血筋の人。
だけど、ブルーコスモスに密かに関っていた。何を目的にしているのか、私には分からない。
ただ、私には、自分とユーレンが、どうなるのかということだけが気がかりだった。
そして、その心配も今消えた。ユーレンは私を守ってくれる。

そして、もう一つ。ウズミの言葉の後、うって変わったように、おとなしくなり、切なげな瞳で
ウズミを見つめるカリダの姿が気になった。

(カリダって、ウズミのことが……)

346ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/26(月) 02:01
カリダは公式年表ではヴィアの妹ということになっていますが、クローン・フレイの
話を考えていった時は、それが明らかになる遥か前で、その時点で最初からカリダは
ブルーコスモス所属のつもりでした。その他、ストーリーの都合もあり、本SSでは、
妹設定は無視させてもらいます。他にも、色々都合があって、公式年表から改変を加えています。

>>過去の傷
ミリィも、そう言ってるんだから、キラしっかりしないと。で、フレイ様とは?
アスランは、直接ミリィと話しないんですね。結局、「星のはざまで」でも絡みませんでしたし。

>>流離う翼たち
なんかレベルが違う気が。フレイ様、後は全勝するという己自身のプレッシャーに勝てるかどうかですな。

347過去の傷・119:2004/04/26(月) 09:51
「あ、僕、少し出かけてくるよ」
そう言うとキラは出て行った。
その数分後。
キラ遅いな・・・どこ行ってるんだろ。
あ、来た。
「・・・キラ?・・・!!!」
入ってきたのは黒い髪の少年ではなく赤い髪の少女だった。
「フレイ・・・ちょっと勝手に入ってこないでよ」
しかしフレイはミリアリアの言葉には耳をかさずに強引に部屋に入ってきた、あきらかに怒りの表情を浮かべて。
「なによ」
「うるさい」
一言でミリアリアを黙らせると辺りを見渡す。
「この美容液も化粧水も私のじゃないんだけど、あんたのでしょ?部屋から出しなさいよね」
「どうして私がそんなことしなくちゃなんないのよ」
「ここの部屋は私とキラの部屋よ!ラクスの許可も取ってるの!」
苛立たしげに叫ぶフレイ。
たしかに・・・キラ・ヤマト、フレイ・アルスタ−専用個室となっている。
「早く出て行きなさいよね!・・・ちょっと・・・なにいつまでもなれなれしくキラのシ−ツかぶってんのよ!」
フレイはミリアリアのいる寝室まで来るとミリアリアのかぶっているシ−ツを強引に奪い取ろうとする。
「いや、やめて!」
ミリアリアも必死に抵抗する・・・。
女同士の奪い合いとなるが、フレイの方が若干、力が強いのかシ−ツを強引に奪い取る。
「・・・・・・」
「だいたいあんたなにやってるの?仕事しなさいよね、それでも軍人なの!?」
「それはあんただって・・・」
「私はモビルス−ツ操縦をカガリとやってるわ、あんたはなにしてんの?ここで」
「私は・・・CICはダコスタさんが・・・」
声が消え去りそうなくらい小さなミリアリアの声、しかしフレイは容赦ない。
「結局はその人に任せっきりなんじゃないの、モビルス−ツも歩くことすらできない、なんの役にも立ってないじゃない、情けない女だわ、はっきり言ってあんたア−クエンジェルにいた頃の私と同じだわ、さらにキラまで騙して利用しようとしてるなんてほんとあんたって救いようがない女だわ」
利用という言葉に反応した。
「違うわ、私・・・」
「なにが違うのよ!私が知らないとでも思ってるの!?」
「違う、最初は・・・でもいまは違うわ!だいたい・・・フレイになにが分かるのよ!ト−ルが死んで悲しい私の気持ちなんて・・・」
「他人でしょ?恋人といっても他人じゃない」
他人?この女は・・・。
「なんですって!?もういっぺん言ってみなさいよ!」
「ええ、何度でも言ってるやるわ、ト−ルは他人よ、肉親じゃないの!」
「!」
「私にはパパもママもいないわ、あんたにはいるじゃない!あんただけ寂しいなんて勝手に思わないでよ!!!いいかげんにしなさいよね!」
そしてキラが戻ってきた。
「キラの馬鹿!」
「フレイ!?」
「あんたミリアリアに騙されてるのよ!?」
終わったわ・・・。
「キラの嘘つき!あんたなに考えてるのよ!ええ!あんたは私が好きなんじゃないの!?」
フレイの迫力にキラも圧倒されてるみたい。
「あんたには私がいないと駄目なんだから!私がいないとなにも出来ないくせに!この馬鹿!!!キラ、黙ってないでなんとか言いなさいよね!私はあんたが好き!あんたはどうなの!?」

348キラ(♀)×フレイ(♂)・42−1:2004/04/26(月) 17:51
絶望と希望が、まるでコインの裏表のように目まぐるしく入れ替わった夜が明けた。
サドニス島二日目。爛々と輝く太陽は、東の海を赤く染めながらゆっくりと立ち昇る。
その太陽が穏やかに本島普天に鎮座した時分、安ホテルの出口から一組のカップルが
のそのそと姿を現した。キラとフレイである。
二人は互いに身体を寄せ合いながら、まるで徹夜明けのリーマンのような寝不足の
顔を覗かせている。今の時刻は正午過ぎ。一見、お寝坊さんの身分を詐称しながらも、
実は一晩中情事に明け暮れており、ほとんど一睡もしていなかったからだ。
前日の恐怖体験のトラウマを癒やすかのように、はじめてアークエンジェル以外の場所で
濃密な一夜を過ごした二人の共通の感想は、「部屋にシャワー室があるのって便利」である。
いやはや、フレイはともかくキラまでもが、随分と思考が廃れ始めたみたいだ。

集合時間までまだかなり間の合った二人は、思考をアンプラトニック(自堕落モード)
から、プラトニック(フレッシュモード)へと切り替え、アミューズメント・パーク
で時間を潰すことにした。



「わぁい。遊園地なんて何年ぶりかしら」
ホテルからバスを二つほど乗り継いで、二人はパークのゲート前に辿り着いた。
意外とお子様ランチなキラは、遠目からでも視認可能な大型観覧車の存在に瞳を
キラキラと輝かせていたが、それとは逆にフレイは退屈そうに欠伸を噛み殺した。
こんなご時世だから、客足もガタ落ちしているだろうし、採算が合わずに営業停止して
いるだろうと高を括っていたフレイだが、彼にとって不幸(キラにとって幸い)
なことに、悪魔の壁が開かれる前後の日付は、パークは臨時営業していたのだ。

「流石に中は空いてるわね。これなら待たずに済みそうだわ」
フリーパスを買い込んで、全乗り物制覇に浮かれて「ルンタッタ♪、ルンタッタ♪」
とワルツのダンスを踊りながら鼻歌を演奏するキラに、フレイは軽く肩を竦める。
「なんで、こうも極端なのかね…」
今のキラのドリィーミングな姿と、彼だけが知る彼女のアダルティックな
夜の顔とのギャップの激しさに、フレイも些か戸惑いを感じざるを得ない。
「早速乗り物に乗ろうよ」「その前に軽く腹ごしらえが先だろう」
と意見が真っ二つに分かれていた二人の前に、デート中のトール達カップルが姿を現した。


「あっ、ミリィ達も来ていたんだ………って、どうしたの二人とも?」
軽い笑顔で話しかけたキラとは打って変わって、二人は警戒心バリバリで、キラ達
…というよりはキラの隣にいるフレイを睨んでいる。彼氏の影にそそくさと隠れた
ミリアリアは小動物のように脅え、トールは身体全体から敵意を発散させている。
「それじゃ、僕は何か飲み物とフードを買ってくるよ」
脅怒の相反する二人の視線を軽く受け流したフレイは、この機を幸いにと自分の意見を
押し通すことにして、その場を離れていく。フレイを過剰に意識しているトール達とは
対照的に、フレイの方は二人に一瞥もくれることなく、彼女達の存在を無視していた。

くそっ!キラが関わらなければ、俺らのことは眼中に無しかよ!?
てっきり二人でいることを皮肉られて、嫌味の一つでも投げ掛けられるのでは
身構えていたトールは、シカトされた事に腹を立てて内心で歯軋りした。
フレイと天中殺に近い相性の悪さを誇るトールは、彼がどういう行動をとっても
負(マイナス)の感情しか刺激されないみたいだ。

349キラ(♀)×フレイ(♂)・42−2:2004/04/26(月) 17:51
本当に二人ともどうしたんだろう?
トールがフレイを嫌っているのは何時ものことだけど、どうしてミリィまで…。
そういえば、ミリィ達の格好が昨日と全く同じだけど、それと関係あるのかな。
キラは小首を傾げたが答えは出てこない。
営倉でのフレイと二人の確執を知らないキラにとっては、解けない謎だった。
それから、三人のいる空間(スペース)に間の悪い沈黙が続いた。
鈍感なキラにも、フレイとミリィ達の間に何かあったことぐらいは簡単に察せたが、
いくら何でも直接問うのは躊躇われた。
逆にトール達は、キラに対する一種の負い目のような感情に囚われてしまい、
その業が彼らを金縛りにして、この場から立ち去らせるのを躊躇させていた。
「やっぱり、皆ここに来ていたんだ」
この奇妙な三竦み状態を打破したのは、さらなる第三者グループの出現だった。


「カズイ、サイ……それに、カガリ?」
愛想笑いに近い笑顔を浮かべているカズイ。ポーカーフェイスを維持しているサイ。
何故か不貞腐れたような表情でソッポを向いているカガリ。キラが振り返った先には
私服姿の三人が三者三様のポーズで佇んでおり、あまり日常での接点を感じさせない
奇抜なトリオの発生にキラは驚きの声を上げる。
「ははっ…。こんな偶然もあるんだね。
これでフレイがいたらヘリオポリス組全員集合じゃないか?」
「フレイは今、場を外しているだけよ。もうすぐ戻ってくると思うけど」
なんとなく沈滞していた場の雰囲気を和らげようとしたカズイの一言は、逆効果みたいだ。
フレイの存在を確認した刹那、サイは態度を硬化させ、カガリは軽く舌打ちする。
これを契機として、停滞していた場は大きく乱れ始めた。


「キラ、行こうぜ」
「えっ!?ちょ…ちょっと、カガリ!?」
唖然とするキラや周りの様子には全く頓着せずに、カガリは大胆にもヘリオポリス組
環視の前でキラの腕を掴むと、強引にキラを引き摺り出した。
どうやら、鬼の居ぬ間に何とやらで、この好機にキラをフレイから掻っ攫う腹らしい。
「カズイ、行きましょう」
次に行動を起こしたのはサイだ。こんな場所でフレイと顔を合わせたくなかった彼女は、
極めて消去法的に道連れを選択すると、キラ達とは逆の方向へ姿を消していった。
「ねぇ、トール。これって?」
ミリアリア達が呆然としている間に、場は激変し、二人だけがこの場に取り残された。
さらには、極めて間の悪いタイミングで、買出しに出かけていたフレイが戻ってきて、
トール達にとって最悪のフォーメーションが組まれることになった。

「ねぇ、君たち。キラがどこに行ったか知らないかい?」
トレイ一杯に食料を抱えたフレイは、キョロキョロと辺りを見回してキラの不在を
確認すると、あたかもそれだけがミリアリア達の存在意義であるかのように、
初めて彼の方からトール達に声を掛けてきた。
そのフレイの傲慢さにカッとなったトールは彼の質問を無視しようとしたが、
「キラならカガリが連れて行ったわよ」
揉め事はゴメンとばかりに、ミリィがやや後ろめたそうな表情で、情報をリークする。
「ふ〜ん」
「ご…誤解しないでよね。本当にカガリが勝手にやったことで、私たちは関わっていない」
意味深な目付きでミリアリアを眺めるフレイに、ミリィは必死に弁解した。

350キラ(♀)×フレイ(♂)・42−3:2004/04/26(月) 17:52
「おい、ミリィ!」
先の彼女の言い草は、トールにとってあまり気持ちの良いモノではなかった。
妙な喩えだが、虐めっ子の魔の手から必死に逃れようとした気弱な級友の逃走先を
売り渡した(チクった)悪辣な女生徒の姿とダブってしまったからだ。
トールはミリアリアの態度を嗜めようとしたが、彼の腕を強く掴みながら、縋るような
瞳で自分を見上げるミリィの脅えた表情を見せられたら、何も言えなくなってしまう。
これが、あのミリィかよ…。
かつて、親友のキラの為に何が出来る…と共に語り合った彼女はもういない。
今のミリィから感じられるのは自己保身だけだ。あんな脅しを受けた後だから、
無理からぬことかも知れないが、トールは眩暈に似た苛立ちを覚えた。


「なるほどね」
トールの内心の葛藤などお構い無しに、フレイはキラ拉致事件をどう片付けるか思案する。
それから何を思ったのか、フレイは二人に近づくと、トールの掌の上に二人分の食料と
飲料の置かれたトレイを押し付けた。
「何のつもりだよ?」
「情報料だよ。キラに振られてしまった僕にはもう必要のないものだからね。
ここは大人しくパークから引き上げることにするよ」
元々遊園地でのお子様デートにさほど未練を抱いていなかったフレイは、トール達が
拍子抜けするぐらい、あっさりとカガリにキラとのデート権を譲渡することにした。
このフレイの余裕は、例のお姫様救出ミッションをクリアした件が大きかった。
単なるデートイベントと命懸けの救出イベント。世界が正しく出来ているのなら、
どちらがより多くヒロインの好感度を得られるかなど、比べるべくもない。
まあ実際は、逆にますますキラのフレイへの疑惑度が高まっていたのだが、
流石のフレイも読み違えていた。というか、悪魔的にキラの思考と心情を、
完璧に把握・操作していた初期の頃に比べれば、最近のフレイの言行は空回り
しているケースが多々見受けられる。
人間とは、己から遠く離れるほど客観的な判断が可能で、逆に自分に近づくほど、
情が混じって正確な判断が出来なくなるというが、それだけキラの存在がフレイ
の裡に深く浸透しているという証なのかも知れない。


「本当にこのまま黙って手を引くつもりなのか?」
「それじゃ何かい。君たちは僕がキラを追いかけて、パーク全体が注目するほどの
派手な修羅場をカガリ君と演じるのを期待しているわけかい?」
「そ…そんなわけじゃ」
トールは言葉を詰まらせる。彼は別にトラブルを望んでいるわけではなく、先の件で
フレイのキラへの異常な執着心を思い知らされていたので、キラ誘拐犯(カガリ)への
寛容さを不審に思っただけだ。そのトールの疑惑に感応したのかは不明だが、フレイは
彼が感じているキラの恋愛観(二股理論)について簡単に説明した。

「最近、何となく気付いたんだけどね。どうもキラは、僕とカガリ君をそれぞれ
別の役割に分けて、器用に両天秤を掛けているみたいなんだ。
強いて呼び方を定めるのなら、プラトニックとアンプラトニックってところかな?」
「プッ…プラトニックとアンプラトニック!?」
「どうやら、キラの中ではカガリ君はプラトニック担当らしい。つまり、こういうお子様
…もとい健全なデートをするなら、僕より彼の方が楽しめるってことだろう。
逆に僕はアンプラトニック担当さ。何がアンプラトニックかは想像にお任せするよ。
もしかすると、僕はキラに良いように身体だけ利用されているのかも知れないね」
そのフレイの物言いにトール達は絶句した。彼の言い分に全く理がないわけではないが、
本来なら到底、男子の側から主張されるような台詞ではない。

351キラ(♀)×フレイ(♂)・42−4:2004/04/26(月) 17:53
「おい、フレイ。何時も自分の立場だけ主張して、相手を一方的な加害者にしやがって。
言うに事欠いて「身体だけ利用されていた」だぁ!? それはテメエだろう!?
お前、今日までに何人の女の子を食い物にしてきたと思ってるんだよ!?」
ある意味、今のトールは自分の彼女(ミリィ)をフレイに人質に取られたようなもので、
キラに関して静観のスタンスを貫こうとしていたが、その誓いは、早くも破られた。
「だ…駄目よ、トール!」
沸騰してフレイに踊りかかろうとするトールをミリアリアは必死に宥めようとする。
ミリィはフレイを怖がっていたし、何よりも、どうせ最終的には、また例の口八丁手八丁
で言いくるめられるのが目に見えていたからだ。無論、トールとて馬鹿ではない。
彼女の予測している顛末ぐらい弁えていたが、それでも言わずにはいられなかったのだ。

「僕は今日まで一目惚れされたことはあっても、一度も一目惚れしたことはなくてね」
先の二人の期待(?)に応えてか、フレイがまた何やら珍妙な事を宣い始める。
「はあっ!?」「だから?」
ミリィは素っ頓狂な声を上げたが、トールは軽く眉を釣り上げただけで鉄面皮を守った。
流石にトールもいい加減フレイの遣り口に慣れてきたので、この後、話しがどう展開
するにしても、一々驚きのリアクションなど取ってはいられないということだろう。
「僕は超能力者ではないからね。その娘が自分に合うか否かは実際に付き合って
みなければ判らない。趣味や役割分担、一緒にいて楽しいか、さらには身体の相性
などを色々と試してみた結果、互いを不幸にすると判断したから別れたまでさ。
勿論、これは僕が大変に我儘なだけなので、彼女達には何の落ち度も責任もないけどね」

やっぱり、フレイは確信犯的なプレイボーイだわ。
彼の恋愛スタンスを聞かされたミリィは、今更ながらにフレイは悪辣だと思った。
確かに互いを知り合うのは大切な事だろう。けど、男の側の理論が勝ちすぎている。
男と女では失うモノの大きさが違うのだ。試される女の側としては溜まらない。
「それで、キラはお前の適正審査に合格したというわけか?」
その彼女の想いを代弁するかのように、トールが口を挟んだ。
「ああ、彼女は限りなく僕の理想に近いね。特に身体の相性は最高だよ」
再びミリアリアが絶句するぐらい、フレイはいっそ抜け抜けと男側の理(利)を主張する。
「それが納得いかないんだよ。許婚がいて、その上で、選り取り見取りの立場のお前が、
どうしてあれだけ嫌っていたコーディネイターのキラを選ぶんだよ!?そもそも…」
「おいおい、人を好きになるのに一々尤もらしい理由がないといけないわけかい?
それなら君は、ミリアリアを好きになった訳を原稿用紙800字以内で語ってみせろよ。
話の筋や思考に矛盾がないか、一つ一つネチネチと添削してあげるからさ」
トールが、前々から感じていた疑問をぶつけたが、反って茶化されてしまう。
暖簾に腕押しというか、フレイには何を言っても、霧散霧消されてしまうみたいだ。
「悪いけど、これで失礼させてもらうよ。君達だって僕と議論しても全然楽しくないだろ?
他人の色恋沙汰よりも、もっと自分達自身の幸福を追求した方が人生は楽しいと思うよ?」
フレイは再度、最後通告を突きつけると、二人を振り返ることなくパークから出て行った。


「ええい、くそ!」
トールはフレイから手渡されたトレイの中身を、勿体なくもゴミ箱の中に放り捨てる。
食べ物を粗末にするのは気が引けたが、「キラの件は観て見ぬ振りをしろ」とまるで
フレイに買収されたかのような嫌な錯覚を覚えたからだ。
トールは先のミリィの態度を苛めに喩えたが、それは彼自身にも適応可能な事象だ。
「苛めというのは、積極的に参加しなくても、ただ黙って見ている者もまた同罪である」
小さい頃から正義感が強く、竹を割ったように真っ直ぐな性格だったトールは、
そう信じて、加担はおろか、周りの虐めを見過ごした事さえも一度もない。
故にヘリオポリスの学園時代、単にコーディというだけで村八分状態だったキラを、
サイと共に自分達のゼミに招いて、彼女と交流を深めてきたのだ。

352キラ(♀)×フレイ(♂)・42−5:2004/04/26(月) 17:53
フレイがキラを害しようとする敵なら、トールは刺し違えてでもフレイと戦う覚悟を
持てただろう。けど、色々と腑に落ちない点はあるにしても、フレイは今の過酷なキラの
心に安らぎを与えている彼氏なのだ。客観的に見れば、その構図を揺さぶり無用な揉め事
を起こしている闖入者は自分達の方だろう。それもトールが踏み切れない理由の一つだ。
何よりも…。
トールはチラリと自分の片腕に抱きついている愛しい人(ミリィ)の姿を見下ろす。
「この件に深入りするつもりなら、君達自身の破滅を賭けて僕に挑んでくるんだね」
どうあっても、彼女を巻き込む訳にはいかない。もう他人同士ではない自分達なのだから。
けど、俺はそうやって理由を付けて、奴から逃げ、キラを見殺しているだけじゃないか?
今まで、矛盾や葛藤とはさほど無縁に生きてこられた少年は、人生で初めて抱える板挟み
の問題に、そう心を痛めて自問自答したが、この場で回答は得られなかった。



「ひいっ!?カガリぃ!で…出た、出た!!」
「落ち着けって、キラ。単なる作り物じゃないか」
トールとミリアリアの二人が、まるでカガリの尻拭いのようにフレイと相対していた頃、
その事態を招いた張本人達は、暢気にお化け屋敷でデートと洒落込んでいた。

「ちょ…ちょっと、カガリ、離してよ」
左手首を掴まれたキラは、両足で踏ん張ってその場に留まろうとしたが、ズルズルと
カガリに引き摺られていく。その様は、まだ遊び足りずに帰宅を嫌がって駄々を捏ねる
愛犬の手綱を必死に引っ張る飼い主との構図と似ていなくもなかった。
「いいから大人しく付いて来い、キラ。これはお前の為でもあるんだぜ」
「えっ!?」
キラはキョトンとした表情で、意表を突かれたかのように、カガリの顔を覗きこむ。
「カズイとか言ったけ?あいつ、どうやら優男に振られた許婚(サイ)に気があるらしい。
サイの姉ちゃんも元婚約者(フレイ)とは顔を会わせたくないだろうから、俺たちが
いなくなれば、二人だけでしけ込む公算は高いぜ」
「カズイがサイを?」
「多分な。俺は午前中、あいつらと一緒に行動していたから何となく判ったんだ。
二人がくっついてくれれば、お前にとっても有難い話じゃないのか、キラ?」
胡散臭そうな表情のキラに、カガリは再度、建前の口上を口にする。
カズイのサイへの恋慕に気付いたこと自体は嘘ではないが、本来ならカガリは他人の
色恋沙汰を影で応援してやるほど殊勝な性格ではない。欲しい物(者)は、他人から
与えられるのではなく、自分で奪い取るのが、彼の人生哲学だからだ。
今回だけ例外的に、キラを説き伏せるための方便として、相互利用するつもりだ。


カガリの提案を聞いたキラは、その場に足を止め思案顔で俯いた。
確かにサイが新しい幸せを見つけてくれれば、キラの罪悪感も幾分薄まるのではあるが…

カガリ、いくら何でもそれはチョト無理があるんじゃないの。
改めてカズイの姿を心の中に思い浮かべたキラは、内心でキツイ判定を下した。
もし、キラがトリビアの泉に出演していたら、へぇボタンを連打していただろう。
意中の高嶺の花に振られたヒロインが、身近にいる自分を慕っている平凡な男性と
くっつくというシチュもまた恋愛物の黄金の不文律ではあるが、現実としてどうだろう。
キラは、カズイを友人としてはともかく、異性としては全く評価していなかったので、
フレイの許婚だったサイが、いきなりカズイに転ぶとは思えなかった。
キラの男性基準は、物心ついた時から最も彼の身近にいた異性(アスラン)をベース
としていたので、理想が高くなってしまうのは仕方が無い傾向なのかも知れない。
ただ、アスランほど優秀で誠実な男性は極めてマレ(稀有)な存在であり、彼を測りに
して篩いにかけられたら、ほとんどの男性にとっては、堪ったものではないだろう。

353キラ(♀)×フレイ(♂)・42−6:2004/04/26(月) 17:54
「でも、そういう事なら仕方ないよね。サイには悪いことしちゃったしね」
内心でサイ・カズイカップルの不成立を予言したキラだったが、まあ、それはそれ…と
いうことで、カガリの提案に乗り、デート相手をアンプラトニックからプラトニックの
パートナーへの切り替える事にする。
キラは神妙そうな表情を取り繕うとしていたが、どうしてもニヤついてしまう。
カガリの強引な拉致行為自体は、恋人と逃避行…というシチュに密かに憧れていたキラ
は実はあまり悪い気はしていなかったし、フレイの予測通り、彼に疑惑を覚えて以後は、
ベッド以外の場所では、カガリの方が心が休まるのは確かな事実だ。
ただ、このままだと後(フレイ)が怖そうなので、一応の抵抗を見せていたキラだったが、
カガリの甘言を渡りに船とばかりに、一時の快楽の為に悪魔に魂を売り渡すことにした。


「うらめしやぁ〜!」
「ひいっ!?カガリぃ!で…出た、出た!!」
薄暗い館内の中で、お岩さんに扮した幽霊が、まるでクストーから打ち上げられるグーン
のように、井戸の中からピョーンと飛び出し、キラは涙目になってカガリに抱きついた。
「こらっ、くっつくな、キラ!…って、お前、本当に怖いのか、これが?」
自分に胸元に必死で取り縋るキラをカガリは呆れたような瞳で見つめる。
本物の戦場で生命の遣り取りを体験している者が、何でこんな作り物のお化けを
恐れるのか、カガリには理解不能だった。

お化け屋敷を出た二人は、次はジェット・コースター、絶叫マシンなど定番の乗り物
を次々と制覇していく。流石に今度はキラも怖がることはなかったが、キャーキャー
叫んで心底楽しんでいるようだ。
本当に、何でこんな物を楽しめるんだ?子供騙しも良いところじゃないか。
戦闘機での空戦経験のある彼にとっては確かにそうだろうが、それはキラにも言える
ことの筈なのに、キラはまるで飽きること無く、カガリの手を掴むと、逆にカガリを
引き摺って次の乗り物へと突進していく。
もしかして、俺はあの悪魔にキラのお守りを押し付けられただけなのか?
十個以上の乗り物を盥回しされたカガリは、自分からキラを拉致した分際で、
そんな自己中な被害妄想に陥るほど、心身共にヘトヘトに疲れ切ってしまった。


「はぁ、はぁ、やっとこれで終わりか」
二人が最後に辿り着いたのは、パーク目玉の大型観覧車だ。今現在の時刻は夕暮れ時。
この時間帯に、観覧車の頂点付近から見られる夕焼けは絶景で、恋人たちが甘い一時
を過ごす為のデートスポットとして定評がある。
観覧車は緩やかに上昇し、ここへ来てようやくカガリは一息つくことが出来た。
「ほら、海岸線が見えてきたぞ、キラ?」
カガリは窓の外を指差したが返事はない。先程までのパワルフさが嘘のように、
キラは押し黙ったまま、軽くカガリにもたれ掛かり、身体を預けてきた。
「おい、キラ……」
キラの身体を揺すりかけてカガリは言葉を飲み込んだ。ここに来るまでキャーキャー
騒ぎ続けて遊び疲れたのか、キラはカガリの肩に頭を乗せたまま熟睡していた。
「しょうがない奴だな、まったく…」
カガリは軽く苦笑する。こうしてキラのあどけない寝顔や、先までの子供のように
楽しそうにはしゃぐ姿を見ていると、自分の心労にも意味があるように思えてきた。
「でも…」
さっきから、キラのふくよかな肢体の感触がカガリの心を掴んで離さない。
彼女の豊かな胸の谷間や、ミニスカートから覗かせる白い太腿を至近で捉えたカガリは、
キラを妹ではなく性の対象として意識してしまいゴクリと生唾を飲み込んだ。
「どんなに幼そうな表情をしていても、こいつはもう女なんだ」

354キラ(♀)×フレイ(♂)・42−7:2004/04/26(月) 17:55
次の瞬間、ハッと我に返ったカガリはブンブンと頭を振って、煩悩を押しやった。
「いけない、いけない。何、考えてるんだ。こいつは俺の妹なんだぞ。それを…」
それでもカガリは想像する。
もし、メンデルを訪ねる事無く、あの忌まわしい出生の秘密を知らなければ、
自分達は今頃どうなっていただろう。
ひょっとすると、彼はキラを実の妹とは知らずに、異性として惹かれていたかも。
今現在も時たま妹である現実を忘れてしまいがちなので、十分に有り得る話しだ。
「何、やってるんだろうな。俺は…」
カガリは溜息を吐いた。こんな子供染みた真似をしてキラを拉致し、一時的にフレイ
から引き離したところで、単なる対処療法でしかなく、抜本的な解決にはならない。
最終的には、キラは自分ではなく、またあの悪魔の元へと戻っていってしまうのだから。
けど、他に方策が無いのもまた事実だ。現在の所、自分はキラに横恋慕していると
AA内では見られており、そんなカガリがフレイの危険性を訴えた所で、単なる痴話喧嘩
の延長としか思われないだろう。或いは自分がキラの兄である事実を打ち明けられれば、
キラも耳を傾けてくれるかも知れないが、それはキラ自身の為に暴露出来ない真実だった。
「何で、あの悪魔なんだ。本当にキラを大切に想ってくれている人間が、
キラを支えてくれたなら、俺が余計な心配をする必要性はなかったのに…」
カガリはキラの本当の想い人であり、今現在キラと対立しているアスラン・ザラの存在を、
この時はまだ把握していなかった。


「うっ…う〜ん」
突然、彼是悩んでいるカガリの隣にいるキラが僅かに身じろいだ。
「おっ…おい、どうした、キラ?」
キラは脂汗を掻きながら、ウーン、ウーンと苦しそうに唸っている。
もしかすると、昨夜、マイケルに襲われた時の悪夢を見ているのかも。
「だ…駄目。フレイ。……は、お尻は嫌だよぅ………」
「へっ?」
どうやら違ったみたいだ。カガリは、最初は羞恥で傷のない側の頬を赤く染め、
さらには怒りで顔全体を真っ赤に染めた。
「あの野郎、キラに一体何しやがった!?」
或いはカガリのフレイへの憎悪が殺意に転換されたのは、この瞬間だったかも知れない。
カガリ自身は特に意識していなかったが、彼はかなりのレベルのシスコンだった。

355キラ(♀)×フレイ(♂)・42−8:2004/04/26(月) 17:55
一方、その頃、ジブラルタル基地には、宇宙から降下したアスランとニコルが到着して、
クルーゼ隊の赤服チームが全員集結した。先着のイザーク、ディアッカコンビと
久しぶりの会合を果たしたアスラン達だが、場の雰囲気はあまりよろしくなかった。
原因は、彼らの隊長であるクルーゼが、イザークの直訴を受け入れて足付き討伐チーム
を編成した際に、そのリーダーにアスランを指定してしまったからだ。

「俺…いえ、私がですか?」
「そうだよ、この任務が勤まるのは君しかいないと私は思っている。
期待しているよ、アスラン」
クルーゼは仮面の下に、他者からは窺い知れないある種の笑いを浮かべると、
彼らの間に不和の種をばら撒いて、そのまま会議室から出て行った。
「大出世だな、アスラン。いや、今はザラ隊の隊長か」
クルーゼの撒いた種は早くも発芽し、早速イザークがアスランに絡んできて、
アスランは軽く舌打ちする。
「クルーゼ隊長の命令だから、仕方なくお前を隊長と敬ってやるが、隊長殿の失策は
隊全員の評価に関わってくるのでな。以前、独断でストライクを捕獲しようとして、
結局、取り逃がしてしまった時のような失態は見せてくれるなよ」
「イザーク!」「くっくっく…」
ニコルは大声を張り上げてイザークの非礼な態度を嗜めようとし、明らかに今の事態を
面白がっているディアッカは、瞳に陽気そうな色を浮かべて笑いを押し殺した。
クッ、コイツ。
イザークの慇懃無礼な態度に、アスランはうんざりした様な表情を啓かした。
彼は何時もそうだ。アカデミーの時から何かに付けてアスランに執拗に絡んできたのだ。
野心剥き出しで、自分に対抗意識を燃やすのも結構だが、その前に、少しはそれに
相応しい実績をあげてみせたらどうなのだ。
砂漠での戦闘で、彼らが何ら戦況に寄与することなく、反って味方の足を引っ張って
バルトフェルト隊の全滅に貢献したという基地内の噂はアスランの耳にも届いていた。
そういえば幼年学校時代も、今のイザークのように、妙に自分に敵対心を抱いている
上昇志向の強い級友がいたのをアスランは思い出しが、名前までは思い浮かばなかった。

結局、「善処する」と、まるで誠意のない政治家のようなコメントをイザークに返した
アスランは、心配そうに声を掛けるニコルを無視し、クルーゼに続いて会議室を後にする。
キラ…。
既に彼の心の中には、イザークへの苛立ちなど完全に消失している。
かつての級友…いや、大切な想い人への複雑な想いに満ち満ちていた。
キラ、俺は再びお前と戦わなくてはならないのか…。
「昨日の友は、今日は敵」というわけでもないだろうが、その運命の理不尽さに苦悩する。
自然、キラの良心を悪用し、兵器として利用しているとしか思えない足付きの軍人共や、
その非力さ故に、彼女を自分と敵対せざるを得ない事態にまで追い詰めた、キラの
「守るべき大切な友達」とやらに対してさえも、アスランは好意的ではいられなかった。


それから、数時間後。ジブラルタル基地から、三機のガンダムを乗せた輸送機が
カーペンタリア基地に向けて発進した。
イージスを搭載した輸送機は計器の故障が見つかり、離陸許可が下りなかったので、
アスランはしばらくの間、基地内での待機を命じられていた。
この些細な運命の悪戯が契機となって、キラの心に深く浸透している彼女の知人から、
現在のキラの近況を直接聞き出す機会を得られることになるなど、当然、今のアスラン
には想像もつかなかった。

356ザフト・赤毛の虜囚 52:2004/04/27(火) 06:32
9.母親(ママ) 4/8
[うふ、うふふ……]

「うふ、うふふ…… うふ」

私の表情は自然にほころんでいた。ユーレンが、私のことを『私の愛しい人』と呼んだことに
舞い上がっていた。

「さらわれた身のくせに、気持ち悪い笑い方してるんじゃ無いわよ」
私に与えられた部屋まで連行してきたカリダが、不快感を投げかける。

「いいじゃない。嬉しい時は笑わなきゃ。今まで笑うことさえできなかったんだから」
私はカリダに、自分でも馴れ馴れしいと思うような言葉使いで話しかける。

「アンタって変! 何考えてるの。自分の立場分かってるの?」
「分かってる。私は、あなた達ブルーコスモスに拉致された。囚われの身。
 だけどね、ここにはユーレンがいる。私を『愛しい人』と言って守ってくれる。
 だから、私は安心していられる。フラガのとことは大違い」

「まったく変なやつね。信じらんない。自分の夫のところより、私達にさらわれた方が嬉しいですって」
「そう、嬉しい。私とユーレンをさらってくれて、ありがとう」

カリダは、顔を真っ赤にした。懐に手を伸ばすけど、そこには銃は無い。
私の面倒を見る役目のため、取り上げられたのだ。私も、それを見ていた。

「あなたって、すぐ銃で人に言うことを聞かそうとするけど、そんなことじゃ、人の心は動かないわ」
「余計な、お世話よ」

「特に、あなたの愛しいウズミ様にはね」
「!?……」

カリダは、さらに顔を真っ赤にして、パニックになっていた。
私は、そんなカリダの様子をじっくり楽しんだ。

実は、この手のやりこめ方って、ヴィアに、よくやってたのよね。ヴィアは意思が強くて頑固だけど、
女らしい弱点突かれると、すぐに顔を真っ赤にして何も言えなくなるもの。この子ってヴィアと似てるわ。

「うるさいわよ。この不倫女!」
「そっちこそ、身分の違う道ならぬ恋に憧れて。切ないわね…… 人のこと言えないんじゃない?」

「冗談じゃない、アンタと一緒にしないでよ!! それに違うわよ、ウズミ様は、あんな擦れた男じゃないわ!」

カリダは、捨て台詞を残して奥へ引っ込んだ。

結果的に、この先制攻撃が功を奏して、私とカリダとの関係は、終始、私が優位に立てた。

ユーレンはウズミと話をして、何かブルーコスモスのための研究に手を貸しているらしい。
私は、それが何なのかは気にしない。夜にはユーレンが私のところに来てくれるから。
フラガとの虜囚生活とは大違い。私は、ここが幸せだわ。ユーレンを独り占め。

…… ごめんね、ヴィア。

357ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/27(火) 06:34
>>過去の傷
ラクス、キラとフレイ様の専用個室って、なんて札を付けてるんだ……
フレイ様、ミリィには、ちょっと言い過ぎ。肉親以外でも大切な人がいることを
自分で分かっているはずなのに。でも、そうであっても譲れない気持ちも分かります。

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
ヘリオ組 1 の遊園地アバンチュール、良かったです。
ミリィとトールは、せっかくの思い出の日が、フレイ(♂)のせいで台無しに。
カズイは、それでも、サイ(♀)と、少しは、いい思いが出来たのかな。
キラ(♀)は、やっぱり、TV本編のフレイ様と合成されているのか、危ない魅力を発散してますね。
カガリ君(♂)も大変でしょう。で、次は運命の出会いですか。

358過去の傷・120:2004/04/27(火) 13:02
フレイは言ってた、心が読めるって・・・、心・・・そうよ、心の中では誰もどう思ってるのか分からない、フレイがそうだったように・・・。
あの男も・・・アスラン・ザラ、キラの前では言ってた、お前を殺そうとしたって・・・ディアッカと聞いたことがある、でも本当は違うのかもしれないわ、キラと喧嘩になるのがいやで、嫌なように見られるのが嫌でああ言ったのかもしれない・・・いえきっとそうよ・・・あの男はト−ルを殺したのよ、虫けらのように・・・許さない、絶対に許さない・・・。
「このままには・・・しないわ」
私は決心した・・・。
でも、どういうふうに?力では到底敵わない、相手はキラと同じコ−ディネイタ−、それに女の力では男に勝てないのも分かってる・・・でも女にも武器がある・・・色気・・・そして魅力・・・キラと同じように私の魅力で・・・婚約者がいても関係ない。
ミリアリアはもはやキラのことなど頭に片隅にもなかった。
だってキラのことはどうも思ってなかったから・・・。

次の日の朝。
「まだまだだな、君達はまだアストレイの性能を引き出せてない」
「「「だって〜!」」」
「よし昼からはカガリにアルスタ−二等兵も加えての練習だ、いいね?」
「「「は〜い!アスランさんと一緒なら私達どこまでもついていきます!」」」

パイロットロッカ−に来たアスランは。
「キラ・・・もしお前が・・・二コルと知り合っていたら・・・そのときは・・・!」
ふいに香水というか化粧水の香りがした。
「ラクス?いや・・・」
振り向くとそこには・・・。
「君は・・・」
「ミリアリア・ハウです」
あの少女だ。
いつみても可愛い。
ナチュラルでもフレイやミリアリアは飛び抜けているほどの美人だ。
アスランも可愛いとは思っていた。
ラクスに匹敵するほどの可愛さだろう、フレイ、ミリアリアは。
「すまない・・・」
「え・・・?」
「俺、いや私は君になんてことをしてしまったんだろう」
アスランはミリアリアに頭を下げる。
そのアスランをミリアリアは冷たく見下ろす。
「意思が無かったとはいえ君の大切な人を死に追いやってしまった・・・すまない」
卑怯な人、偽善ね、自分を助けたいだけなんだわ。
「いいんです・・・もう」
無理に笑顔を作りこの男を油断させる。
「終わったことですから・・・気にしないでください」
「しかし!」
「それが戦争です、分かってたことですから」
「君は・・・え!?」
突然ミリアリアに抱きつかれ戸惑うアスラン。
至近距離から可愛い少女にみつめられ、背中に暖かい腕の感覚を感じてドキンとする。
「私はどうすればいい・・・?」
「なにもしなくていいです・・・」
「いやしかし・・・だが私に出来ることは君を・・・君達を守ることだ、それが彼に対するせめてもの償いになればいい・・・」
そうだ、彼に対するせめてもの償いはしなくてはならない、この艦の人を、この少女も守りぬくことだ・・・。
「なら・・・私も一緒に戦います、貴方と共に・・・」
ミリアリアの体がさらに擦り寄ってきた。
そして自分の唇に彼女の唇が触れてくるのが分かる。
「私をあげる・・・」
そしてアスランは気づいた、彼女にキスされているのだと・・・そして彼女の唇と吐息につい酔って目を閉じてしまった、そして彼女の魅力の前にアスランは忘れた、婚約者であるプラントの歌姫のことを一瞬忘れてしまった、それくらい暖かかったのである。
(キラ・・・お前が地球軍の残った理由が少し分かった気がする・・・)

359私の想いが名無しを守るわ:2004/04/28(水) 02:42
>>過去の傷
ミリィは矛先をアスランに変えましたか。で、その武器で、どうするのでしょう。
まあ、方法はともかく、ミリィとアスランが直接向かい合うところは見てみたいです。
TV本編は、あれはあれでひとつの解決なのでしょうけど、やはり直接話をしなかったのは
残念でしたから。

360過去の傷・121:2004/04/28(水) 13:30
やっぱりこの子は可愛い、こんな可愛い子と・・・。
ミリアリアからの突然のキスに戸惑うアスラン。
なんてやわらかい唇なんだろう。
そして自然と二人は離れた。
「き、君は・・・」
「ミリィって呼んでください」
「あ・・・いや、ええと・・・」
戸惑ってるのね、やっぱりそうだわ、男なんてちょっとキスしてやれば思いのままだわ、この男も虜にしてあげる・・・男はキスに弱いんだから。
「私・・・信じてます、アスランさんが好きです・・・」
甘える声で言うと今度は頬に軽くキスする、そして唇にキスしようとするとアスランに離される。
「やめてくれないか・・・失礼する・・・すまない」
そう言うとアスランは慌てたように出て行った。
残ったミリアリアは口元に笑みを浮かべた。
好きでもない・・・ト−ルを殺した嫌いな男とキスした、でもいい・・・これであの男も・・・男なんてこんなもんだわ、少し誘惑すればこの通りだわ、思惑どうりね・・・ふふ。
そういえばあの男、ラクス・クラインさんと婚約者同士だったわよね・・・使えないかしら、アスランさん・・・これからも誘惑してあげる・・・。

通路を歩いていたアスランは呟いていた。
「キスは浮気じゃないよな・・・?さっきのあの子とは浮気になるのか?」
「アスラン、どうなさいましたの?」
「な!?ラクス・・・」
ラクスはきょとんとしている。
「アスラン・・・?」
「い、いえなんでもありません」
「めずらしいですわね、貴方が慌てているとは」

「フレイ、その・・・」
「なによ」
「まさか、ミリィに騙されてるなんて・・・僕は馬鹿だったよ」
「ほんとに馬鹿よね、キラは馬鹿よ」
「・・・・・・」
「まあそこがいいんだけどね」
「え・・・?」
「今日はカガリの部屋で寝るわ、まあ明日からなら・・・ここで寝るから」
そう言うとフレイは微笑んだ。

361流離う翼たち・465:2004/04/29(木) 00:31
 訓練生相手に本気になったフレイ。それを見たアルフレットは口笛を吹いてみせ、徐に後ろを見る。

「お前ら、どんどん行け、一度に掛かれば勝てるかもしれんぞ」

 何と多対1の勝負をさせるつもりらしい。言われて訓練生達が自分のダガーに乗り込んでフレイに挑んで行ったが、アルフレットの挑発ですっかり気が立っていたフレイは同時に5機ぐらいで襲い掛かられても不敵、というより何か壊れた笑みを浮かべているだけだった。

「素人は引っ込んでなさい!」

 ライフルを使って2機を続けて判定破壊するフレイ。コンピューターに強制停止されたダガーがその場に止まり、驚いた3機が左右に散ろうとするがさらに1機が直撃を受けてしまう。
 左右に散った2機を見てフレイは動きの悪い左に回った機体に目を付けた。ダガーを走らせてあっという間に距離を詰め、そのままシールドごと相手にぶつかって姿勢を崩して模擬サーベルを突き込む。それでこいつも停止し、残るは1機となった。
 最後の1機は仲間が全員倒されたのを見て怯えたように後ずさりしている。フレイには相手の怯えの感情がはっきりと伝わってきており、その経験の無さに憐憫さえ覚えた。そして最後の1機もまた、フレイの前に沈んだのである。

 一瞬で5機のダガーを撃破したフレイの強さに、格納庫の前に居たパイロットや整備兵は声を無くしていた。あんな女の子がダガーを平然と乗り回し、新兵が使ってるとはいえ5機のMSを1機で撃破してしまったのだ。俄かには信じられないことであり、言葉を失うのも無理は無い。
 フレイは訓練生と勘違いしていたが、彼らは新兵とはいえ一応正規のパイロットである。

「ア、 アルフレット少佐、彼女は、コーディネイターなんですか?」
「いや、ただのナチュラルだ」
「でも、あの強さは・・・・・・」

 声を無くしている部下にアルフレットは組んでいた腕を解くと、背後を振り返った。

「ボーマン、お前が行け」
「ええ、俺ですか?」

 20代前半の士官が自らを指差して驚いていたが、アルフレットが頷いたのを見て仕方なく自分の機体の方に歩いていく。その背中にアルフレットは声をかけた。

「油断するなよ。あのお嬢ちゃんは、お前が考えてるより強いぞ」
「どういう事です?」
「まあ、戦ってみりゃ分かるって」

 アルフレットは一度はぐらかすと何も教えてくれない。それを知っているボーマンはやれやれと自分のデュエルに乗り込んでいった。機体を起動し、格納庫の外へと出す。そしてダガーの前に立ち、じっとその機体を見据えた。

「あんな女の子がMSを使いこなすとはなあ。一体何処で訓練を積んだんだか」

 ボーマンはそんな事を考えながら、いきなり模擬ライフルでダガーを狙った。だが、撃とうとした時にはダガーは射線上にはおらず、急いで自分もデュエルを走らせる。フレイのダガーは彼の想像を超えて速く、しかも攻撃位置を掴ませない動きを見せている。その練達の動きにボーマンは舌を巻いていた。

「何だよあの娘は、経験があるどころじゃないぞ!?」

 アルフレットが自分が考えているより強いといった意味がようやく分かった。あのフレイという娘は確かに強いというレベルではない。こちらの動きを全て読みきっているかのような機動をしているし、射撃は正確そのものだ。
 だが、ボーマンは知らなかった。自分を振り回すほどの強さを見せる今の状態でさえ、フレイはまだ全力ではないということを。キラと戦った時のフレイは、今見せている動きを遙かに上回っていたのだ。

362流離う翼たち・作者:2004/04/29(木) 00:42
>> ザフト・赤毛の虜囚
ウズミまでブルコスキャラに!? 
しかし、ウズミは何をさせてるんでしょうねえ。まさかキラを作ってる?

>> 過去の傷
ああ、とうとうアスランまで巻き込まれだした
フレイ様はミリィと喧嘩してなんだか吹っ切れたかな
キラはさてどうするのやら

>> キラ(♀)×フレイ(♂)
遊園地・パニックですな。トールとミリィは大変そうですが
フレイは今回はあっさりと手を引いて、キラはカガリを振り回してたか
でもカガリ、君のシスコンは結構怖いぞ。w

363ザフト・赤毛の虜囚 53:2004/04/29(木) 08:18
9.母親(ママ) 5/8
[カリダも触ってごらんなさいよ]

「ねえ、ユーレン、動いてるの分かる?」
「ああ、分かるよ」

私はユーレンに甘い声で話しかける、一時は気分が滅入ったり、落ち込んだりしたけど、
今は、もう安定している。毎日が楽しくて堪らない。

「フン! なによ……」
カリダは、私を見ると、いつも面白く無さそうな顔をする。私は、その理由を既に知っているから、
カリダに優しい声をかける。

「カリダも触ってごらんなさいよ」
「いいわよ、ほっといて」

「遠慮しないで、さあ」
私はカリダの手を取って、無理矢理、私のお腹に手を当てさせる。

「感じるでしょ。動いているの。私の中にいるのよ、赤ちゃんが。ユーレンの子が……」
「や、離して」

カリダは、いやがりながらも、その感触に戸惑うように、そのままにしている。

私は、やっとナチュラルに子を授かった。ユーレンの子を産むことができる。
フラガの独り善がりな考えで、コーディネータを強いられることは無い。私は、幸せだ。

「動いてる…… メルデル」
カリダは、やがて感動したように、私の名を呼んだ。

* * *

私にナチュラルの子ができたと喜んでいるのを見て、最初、カリダは不審がった。

「アンタの不倫相手って、コーディネータを作るお医者さんでしょ。
 それだから、私達ブルーコスモスがマークしてたのに……
 なんで、そのアンタがナチュラル妊娠して喜んでいるのよ!」

「カリダ、私はね。フラガがコーディネータを欲しいために、本当に酷い目にあった。
 体を傷つけられた。それも、ユーレン自らの手で。だから、コーディネータは嫌い。
 私はナチュラルに子を授かって、ほんとに嬉しいの。二億分の一の奇跡を体験したのよ」

カリダは怒りの表情を、私に向けた。

「なによ、勝手に喜んで! アンタこそ残酷だわ。私がどんな想いでウズミ様を見ているのか
 知らないくせに。決して、結ばれること無い。報われること無い」
「そりゃ、年齢は離れているけど…… でも、フラガが私と結婚したくらいだし。世間体は……
 フラガと私は、そんないい関係じゃないけど……」

「違うわ、年なんかじゃ無い。そんなだったら、私の友達でも、もっと、おじさんと結ばれた子も
 いたわよ。違う、違うのよ。私……」
「カリダ、一体……」

「産めないの、赤ちゃん」
「え? 嘘!」

「奇形だって。セックスだって、きちんとできないの」
言ってしまって、カリダは、真っ赤になった。なんで、私に言ったのか戸惑っている様子だった。

「カリダ……」
私は、カリダを抱きしめた。カリダは涙を流して、私に抱かれるままになっていた。
ずっと辛い想いを隠してきたのだろう。それが、一気に吹き出していた。

カリダは、私がフラガにされたものの何倍もの仕打ちを、生まれつき背負っている。可哀想な子。
だから、世間では、今やファッションにまでなりつつあるコーディネータの出産を、
あんなに憎むようになって、こんな団体にまで入ってしまった。

「大丈夫よ、カリダ。いずれ、ユーレンがなんとかしてくれるわ」
「うん、分かった。えと…… 名前……」

「メルデルよ」
「うん、メルデル、メルデル、分かった……」

カリダは泣きながら、私の胸で頷いていた。

364ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/29(木) 08:23
>>過去の傷
ミリィ、ラクスに逆らって謹慎させられたこと忘れているような。仕事しないとヤバイぞ。
どうせなら、CICから意味ありげな通信送って悩殺するのが、管制官の正しい誘惑方法(?)金髪さんに負けるな。
フレイ様とキラは、よりを戻したの? キラ、良く助かりましたね。

>>流離う翼たち
フレイ様怒るとNT能力覚醒するようですね。相手の感情分かっても、おかまいなしですな。
アルフさんは、それが分かっているのかな。それにしても、ボーマンなんて懐かしい名が。
ガンダムAだと、レナ・イメリア搭乗機に、前に言ってたデュエルダガーとかバスターダガーとか本当にありました。
だけど、別の本のジャン・キャリー機はロングダガーとも書いてあったけど、設定混乱しているのか?
個人的にはフレイ様はルージュ+ガンバレル・ストライカーに乗って欲しい。これだと、弾数無限大でも許されそうだから。

365過去の傷・122:2004/04/29(木) 11:30
「昼からだって、実戦練習・・・なんか僕も呼ばれてる」
「キラも?・・・そう、でもキラが見ていてくれてるなら私、安心」
通路にて、キラとキラに寄り添い腕を組んだフレイが歩いている。
「アスランは安心していいよ、無口で冷たい印象あるけどほんとはとっても優しいから」
「ええ、キラがそう言うなら・・・」
そして、歩いてきたミリアリアと会う。
「熱々ね」
二人を見たミリアリアは冷ややかに告げる。「
「相変わらずね、ほんとお似合いのカップルだわ!」
「ミリィ・・・」
「私に裏切られたからフレイとよりを戻したわけ?いえ別れてもいなかったの間違えかしら!?」
ミリアリアは怒っているのか分からなかった。
「それで?昨日は一緒にベッドの中で慰め合ったのかしら?」
声を張り上げるミリアリア。
「ミリィ・・・全部芝居だったの・・・?慰めてくれたのも全て」
キラが呟く。
「・・・そうよ・・・ええそうよ!全部芝居よ!馬鹿じゃないの!?騙されちゃって!なんで私がキラを好きになるのよ!勘違いしちゃってほんと馬鹿みたい!本気だとでも思ったの!?」
「ミリィ・・・」
「ちょっとなれなれしくしないでよ!ただの友達でしょ!」
たまらずフレイが口を挿む。
「ミリアリア、そこまで言うことないじゃない」
キラを庇うフレイをミリアリアは睨みつけた。
「フレイ、あんたなに偉そうなこと言ってるのよ、昨日よく言ってくれたわね、救いようがない女なんて・・・ア−クエンジェルにいたときの大騒動を巻き起こした張本人のくせに!」
「!」
「救えない女はあんたの方じゃない!自分の行為を棚に上げてよく言うわね!」
「うるさいのよ・・・」
「キラ、よかったわね、今日からはまた貴方の大好きなフレイ・アルスタ−さんと寝れるんだから!こんなに幸せなことないんじゃない?どうせならこのまま結婚すれば!?」
「うるさいって言ってるでしょ!」
フレイが叫ぶがそれを無視するとそのままミリアリアは去って行った。

その一時間後。
パイロットロッカ−に来たフレイとキラは。
「キラも着替えるの?」
「一応ね・・・」
「そういえばさ・・・艦は違うけどここよね・・・私とキラが初めてキスした場所・・・」
ああ、恥ずかしい・・・でもほんとに・・・。
「うん・・・」
「でもあのときはキラのこと好きじゃなかったの、ただキラを信用させるために・・・女として貴方に近づくために私・・・」
「いいんだよ、もう・・・忘れよう、今の君自身を大切にしてくれ、それとも今もそうなのかな?」
「違うわ!違う!今はほんとに貴方のことが好き!大好きなの!」
フレイが無邪気な顔でそう言うとキラは微笑んだ。
「ありがとう・・・」
そして着替えた二人歩き出した、過去のあやまちを忘れるように・・・。
フレイは思った。
確かに間違ったかもしれないわ・・・でも間違ったならやり直せばいいの・・・キラと共に・・・。

366ザフト・赤毛の虜囚 54:2004/04/30(金) 07:53
9.母親(ママ) 6/8
[私がママよ]

「ハッ! ハッ!」
下腹部に痛みが走る。一杯で、はちきれそうなお腹。耐えられない。
私は唇を噛み締めて、体に力を入れようとする。

「まだ、駄目だメルデル。呼吸を整えて楽に」
「ハァーッ ハァーッ」

「まだ、先は長いんだメルデル。今は落ち着いて
「ハァーッ ハァーッ 分かったユーレン」

いよいよ、私とユーレンの子が生まれる。私はユーレンの手を握り、彼の言葉に自分を委ねる。
ユーレンは、産婦人科の専門、そして、私の子の父。私の愛しい人。これ以上に安心なことは無い。
私は心配そうに見ているカリダに目を向ける。
「大丈夫よ」

あれから何時間も過ぎた。痛みの周期が短くなってくる。モニタをチェックしているユーレンの
声が興奮を帯びて来る。

「いきんで、メルデル」
「ウゥーッ」

それを何度も繰り返す。手が分娩台のバーを握り締める。汗ビッショリになる。ユーレンは手を握らせて
くれない。万が一の場合にユーレンが動けなくなるから。私が、頑張らなきゃ。

「ウゥーッ!!」
「見えた。メルデル、もういい、後はまかせて」

「ハッ! ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!」

「オギャア、オギャア」

痛みがスーッと引いていった。私は汗にまみれ、息も絶え絶えでユーレンを見つめる。
やがて、赤ちゃんを取り上げ、毛布にくるんだユーレンが、私に手渡してくれた。

「私の子、ユーレンの子」私はユーレンに微笑みかけた。
「よくやった。頑張ったねメルデル。男の子だよ」

私は涙ぐんで言った。
「うん、ありがとうユーレン」

カリダが近づいてきた。カリダも涙ぐんでいた。
「すごい、メルデル。すごかったよ。私も一緒に産んでるみたいだった。
 ありがとう見せてくれて。私、これだけでも充分よ」

カリダは、私の妊娠を、ずっと見ていて徐々に心を開いていた。そう、既にカリダは、私の親友だ。

「いや、君もいずれ子供を抱ける日がくるよ。君自身の子を。約束する」
ユーレンの言葉に、カリダはユーレンに抱きつくように涙をこぼした。

「カリダ、抱いてみる? 今は、私達の子だけど、自分の子のために」
「うん、抱かせて」

カリダは生まれたばかりの赤ちゃんを抱いた。まるで自分の子のように、大切なもののように。

「名前は、もう決まっているんだっけ?」
「うん」

「教えて」
「ムウ」

「ムウ?」
「そう、ムウよ。ムウ・ヒビキ」

私は、またカリダからムウを受け取った。そして、ムウの耳元で優しく囁いた。

「可愛いムウ、私がママよ」

367ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/04/30(金) 07:54
>>過去の傷
ミリィ、開き直って言いたい放題ですな。こんなんじゃ友達できないぞ。
フレイ様、キラとどうにか関係復活。だけど、カガリとラクスは? 次の傷は何?

368過去の傷・123:2004/04/30(金) 11:40
「君のお父さんのことだけど」
「それは言わないで・・・パパの話はしないでほしいの・・・」
フレイが青ざめたのでキラも下を向く。
「あ、ごめん・・・」
「また貴方を責めそうで怖いの、貴方にもうそんな感情抱きたくないから・・・それにパパが死んだのはキラのせいじゃないでしょ?ただ貴方にあたっただけなの・・・」
「フレイ・・・」
フレイは微笑んだ。
「もう!なんでこんな暗い話になるのよ!」
「あ、そうだねごめん」
やっとキラと歩み続けることができるわ・・・。
キラ、貴方となら私・・・。
ワガママで意地っ張りで自分勝手な私だけど、貴方の前なら素直でか弱い女になれるかな・・・?
フレイは頬を可愛く染めるとキラの腕にしがみついた。
「フレイ・・・?」
「なんでもない♪それより行くわよ、実戦」

ラクスの部屋の前に来ているミリアリア、中の様子を伺う。
「では行って参ります」
「アスラン、お気をつけて・・・貴方のご無事をいつも願ってます」
「ありがとうございます」
馬鹿じゃないの?なんで婚約者同士なのに敬語で話してるんだろう、頭おかしいんじゃないかしら?この二人。
そしてラクスの顔がアスランに近づいてくる、アスランが静かに目を閉じるとラクスはアスランの頬に軽くキスをした。
私は見せつけられたみたいで内心面白くなかった。
「では失礼します」
ミリアリアは慌てて隠れる。
アスランが出て行った。
なおも残ったミリアリアは・・・。
中のピンクの少女を見つめる。
ほんわりとした白い肌、ほっそりした細い腕、そして柔らかい綺麗なピンクの髪。
そして同じ女であるミリアリアは見とれるほど可愛い顔立ちである。
しかし目がきりっとしている、指揮官としての風格を感じさせる、そのためかピンクの髪の結んでいるのだ、それから衣装は羽織りだろうか?そんな衣装を着ている。
ミリアリアは・・・ラクス・クラインさん・・・貴女だけ幸せなんて・・・。
だいたい気にいらないのよ、なにもしないくせに私に偉そうに言う、だいたいなんでこの人だけこんないい部屋にいるのよ。
<ハロ!ハロ!>
「ネイビ−ちゃん、どうしました!?」
「きゃあ!」(しまった・・・ばれた?)
ハロに見つかってしまったミリアリア。
「誰かそこにいるのですか?」
「・・・・・・」
「さっきの声はミリアリアさんですね?出て来なさい」
「・・・・・・」
「この艦から降ろしましょうか?いいのですよ貴女がいなくてもCICはダコスタさんがやってくれますから、それにこのところ貴女仕事してないみたいですがどうしました?」
仕方なくラクスの部屋に入る。
「・・・失礼します・・・」
「ミリアリアさん・・・ここでなにをしてるのです?」
そうだ、ラクスさんを滅茶苦茶にしてやろうかしら・・・困らせてあげる、この女の驚く顔が目に浮かぶわ・・・。
「あの・・・アスランさんを知ってますよね?」
「・・・はい?アスランですか?アスラン・ザラは私の婚約者ですが・・・」
ミリアリアは突然笑い出した。
「ふふ・・・あはははは!!!」
「ど、どうなさいました・・・?」
ミリアリアはイタズラっぽく微笑み、挑発的に告げた。
「私、アスランさんと・・・キスしたんです」

369過去の傷・作者:2004/04/30(金) 14:28
>>翼たち
まあ当然か、力の差見せつけましたね、もう想像以上の強さですねフレイ様♪

>>ザフト・赤毛の捕囚
これはムウの・・・しかしこの人達のやり取り見てると妙に懐かしいですね。
フレイ様の感覚を感じさせてくれます。

370流離う翼たち・466:2004/04/30(金) 23:59
 結局懐に入られたボーマンの敗北でこの模擬戦は終わってしまった。まだ新兵は沢山いたのだが、小隊長であるボーマンが負けたことで皆すっかり萎縮してしまっている。アルフレットは挑戦者が出なくなったのを見てフレイに通信を入れた。

「よし、もう良いぞ。降りてこいお嬢ちゃん」
「分かりました」

 フレイはダガーを格納庫の前まで持ってきて膝を付かせ、コクピットから降りた。そして駆け寄ってきた整備兵に幾つか注文をつけてアルフレットの所まで行く。

「少佐、私をダシにしてとんでもない事しないで下さい!」
「う、す、すまねえ」

 怖い形相で怒っているフレイにアルフレットは気圧されていた。どうやらこいつも女に頭が上がらないタイプであるらしい。
 とりあえずアルフレットが謝った事でフレイは溜まった不満を押さえる事にした。フレイが落ち着いたのを見てか、アルフレットがフレイを全員に紹介する。

「まあ、さっき見た通り、このお嬢ちゃんはMS戦においては連合中探しても屈指の腕前だ。これから暫くお前らの模擬戦の相手をしてもらう事になるから、覚悟しておけよ」
「あの、その娘は誰なんです?」

 先ほどフレイに負けたボーマンがアルフレットに問い質す。アルフレットはチラリとフレイを見た後、少しだけもったいぶって答えた。

「何だボーマン、こんな有名人を知らねえのか?」
「有名人なんですか?」
「ああ、こいつがかの有名なアークエンジェル隊のエースパイロットの1人、真紅の戦乙女、フレイ・アルスター少尉だ。撃墜スコア30機以上という凄腕だぞ」

 アルフレットの紹介に、全員の視線がフレイに集中した。全員に見られたフレイは居心地が悪そうに身動ぎしたが、フレイに向けられる視線は驚きからすぐに好奇心へと変わっていった。

「す、凄いや、あの真紅の戦乙女!?」
「30機以上のスコアって、カスタフ作戦が初陣なのに、どうやって落としたんだよ?」
「ねえねえ、アークエンジェルってあの「エンディミオンの鷹」や「エメラルドの死神」が居るんだろ。どういう人か教えてよ!」
「あの、今日の夕食を一緒にどうでしょう?」
「あのクルーゼ隊と戦ったんだって?」

 たちまちフレイを揉みくちゃにする新兵たち。その全員がフレイと同年輩の少年少女たちだ。連合はこんな子供たちまで実戦に駆り出しているらしい。それがおかしいと感じないのは今の時代がそういう時代だからなのだろうか。

371『明日』と『終わり』の間に・2日目・お昼時:2004/05/01(土) 00:09
「しつこいわね!だから違うって言ってるじゃない!」
「嘘つくな!ただ見てただけでカレーが赤くなるか!!お前以外に誰がそんなこと出来るんだよ!?」
「知らないわよそんなの!キッチンに住んでる妖精が悪戯でもしたんじゃないの!?」
「妖精って・・・、今時子供でもしないよそんな言い訳!!」

 ―――この状態、一体何時まで続くんだ?正直に言えば許してやるつもりだったのに、何だかお互いやけにむきになってしまった。それにしても私も口喧嘩には自信があるんだが、こんな強敵は初めてだ。キラの奴も大変だったんだろうな・・・。よーし・・・。

「しかしこのカレー、マズそうだなぁ〜・・・」
「!食べても無いくせに、マズいですってぇ!?どーいうつもりよ!?」
「そんなの見れば分かるだろ!色も赤いし、よく見ると変なものが入ってるし、それに随分水っぽいし・・・。誰だってそう思うさ!これカレーじゃなくて血の池地獄じゃないのか?」
「何よ!ただ隠し味にと思って入れてみただけなのに、そこまで言われる筋合いは・・・って、あっ!」
「・・・やっぱり何かしたんだな・・・?」

 やっとボロを出したか。・・・何だかこの勝利、誇らしくすら思えるな。

「で、何でこんなことをしたんだよ?食べ物を粗末にしちゃ罰があたるぞ?」
「・・・嘘をついてたことは謝るわよ。・・・でも、別に悪気があったわけじゃないわ。ただ・・・」

 ん?どーいうことだ?

「・・・駄目だと思ったのよ。普通のカレーじゃ!」
「は?」
「だって、私はキラに満足してもらえる、私にしか作れないカレーが作りたいの!」
「・・・いや、別にいいだろ何事も普通で。何だその変なチャレンジ精神は・・・?」
「何言ってるのよカガリ!何時までも古い形に拘ってたら、新しい道は切り開けないわ!」
「・・・!」

 ・・・そうだ、私は、何て馬鹿だったんだ!そんな大事なことを忘れてたなんて・・・。今私やアスラン達は、ナチュラルとコーディネイターが仲良く共存できる世界を作らなきゃいけないんだ。それが今は亡きお父様の、そして私達の夢。そのためには、今あるしがらみを壊さなきゃならない。それなのに・・・、私がそれを否定してどうするんだよ?
 それにこのカレー(?)は、あいつが心をこめて(私に対してじゃないけど)作ったもの。それをマズいだなんて、あいつの想いを踏み躙るような真似までして・・・、私は最低じゃないか。すまんフレイ、許してくれ。

「・・・そうだったのか。ごめんなフレイ、お前の気持ちも知らないで、酷いこと言って・・・」
「いいのよカガリ。私だって悪かったんだし・・・。でも、そう思ってくれるのなら・・・」
「!何だ?」
「・・・これ、食べてみて!折角二人で作ったのに、捨てちゃったら勿体無いわ」

 ・・・えっ!?それってつまり・・・、実験台になれってことじゃ・・・?

「どーしたの?・・・やっぱり、イヤ?」
「!あっ、いや、別にそういう訳じゃ・・・」
「・・・そうよね。こんなんじゃきっと、美味しくないわよね・・・」

 うわっ、泣いちゃいそうだよ!何だか私が悪いみたいじゃないか!どっ、どーすればいいんだこんな時!?・・・えーい、こうなったらなるようになれだ!!

「たっ、食べる!食べるよフレイ!何だかよく見たら美味そうだし、それに赤いカレーってのもありなんじゃないか?」
「ホント?じゃあこれ、どうぞ召し上がれ」
「・・・い、いただきます・・・」

372流離う翼たち・作者:2004/05/01(土) 00:10
>> ザフト・赤毛の虜囚
ム、ムウって、ヒビキって・・・・・・兄貴もこれで不幸に!?
このあと兄貴は陰険オヤジに連れていかれるんでしょうなあ
たしか、ダガーの試作がデュエルダガーで、その後にダガーを強化兵用に再設計したのがロングダガーだったはずです。
だから両者は違う機体の筈です。
ガンバレル・ストライカーは出ますが、兄貴やフレイ様は乗らない予定です。兄貴には別機体がありますから

>> 過去の傷
ミ、ミリィさん!?
キラがフレイ様と話しているのも凄いけど、ミリィも凄い。ラクスに攻撃している
アスランに明日はあるのか?

373『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/01(土) 00:23
 最近投稿が滞り気味で申し訳ないです。フレイ様がカレーに何を入れたかは次回で明かします。

》赤毛の虜囚
 ムウさんの誕生秘話ですね。以前フレイ様の夢に登場していた金髪の男の子とは彼のことだったんですね。ずっと気になっていましたので。
 
》流離う翼たち
 フレイ様、お見事な勝利でしたね。それにしてもアルフレット少佐の思惑は一体・・・?

》過去の傷
 ミリィが何をしたいのか分からなくなってきました。まさかキラの次にアスランに狙いを定めるなんて・・・。ラクスを挑発したりとまだまだ波乱が続きそうですね。

374私の想いが名無しを守るわ:2004/05/01(土) 07:04
>>『明日』と『終わり』の間に
カガリ一人称語りって、実はあまりなかったことに
今更ですが、気づきました。素直に反省して、食べて
しまうところがカガリらしいです。
>>流離う翼たち
フレイ様の人相と二つ名の認知度のギャップが、フ
レイ様の今の位置をよく表しているというところで
しょうか。なにげに新兵達も健気ですな。どさくさ
にまぎれて夕食誘っているヤツもいますね。
>>過去の傷
艦名が「エターナル」なだけに永遠に傷つけ合いそ
うで…特に㍉は何がしたいのか、私も知りたいところです。
トール喪失の傷はクライン派を内側から解体しそうな勢いですね。
>>ザフト・赤毛の虜囚
後年のカリダの人懐っこそうな部分と幸薄そうな部分
が同時に垣間見える章ですね。30代のウズミはカッコ
よさそうです。ブルコスメンバーなのにもびっくりしました。
>>キラ♀
フレイ様の策は、相変わらずズバズバヒットしますな。
カガリもトールもフレイ様の手のひらで踊らされていますね。
確かにこのフレイ様は遊園地って柄ではなさそうです。

375ザフト・赤毛の虜囚 55:2004/05/01(土) 08:30
9.母親(ママ) 7/8
[会いたかったよう…… ママぁ]

(私がママよ)

朝、私はここちよく目を覚ました。体に喜びが満ちあふれているようだった。
私は、自分のお腹に手を当てる。しっかりした充実感が感じられ、それ自体が喜んで
いるようだった。

私はフレイ・アルスター。…… そうよ、私が……
私はゆっくりベッドから体を起こし、しばし、その感覚を慈しむようにジッとしていた。

ドアのロックが開いて、コール音がした。そのまま入って来ない。おそらく、ミコトっていう子だろう。
私はドアを開けた。

ミコトは沈んだ顔をしていた。
「ママ、新しいの持ってきたよ。それと、お洗濯とか、入れ物とか……」

ミコトには、以前、きついことを言って追い返してしまったことがある。可哀想なことを
したという気持ちが残っている。私は、優しく答える。

「ええ、ありがとう。助かったわ。ちょっと待って、洗濯物取って来るから」
私は、ミコトの持ってきた新しい下着などを受け取ると、代わりに、どっさりある洗濯物などの袋を
持ってきた。それを受け取ったミコトは、私の顔色を伺うように、小さな声を出す。

「ママ、怒ってない?」
「ええ、怒ってないわよ。前は悪かったわ。ごめんね」

「ほんと、ママ? ほんとに怒ってない?」
「ほんとよ。怒ってない。ありがとうミコト」

さっき、自分のお腹に手を当てて、それを実感したせいだろうか。今の私は、ママと
呼ばれることが嫌じゃなかった。暖かい気持ちになっていた。

「ママ、大好き!」

ミコトは、洗濯物の袋を床に落とし、かがんで私の胸に顔を埋めた。以前、マリューさんが
教えてくれたママのすることを思い出した。私は思わずミコトの頭を抱え、髪を撫でていた。
自分の髪をいじっているのと同じ感じがする。本当に自分の娘の髪を撫でているような気がした。

「ミコト……」
私はミコトに優しい声をかけた。
それが合図のように、ミコトは切ない声で泣き出した。
「ママ、ママぁ…… 会いたかったよう…… ママぁ」

この間、私が追い返した時は泣きそうな顔をしながらも我慢していたのに、
私が許した今は、涙をポロポロこぼして泣いている。私はミコトの背中をさすりながら、
しばらくの間、じっと抱きしめていた。

私はミコトを受け入れていた。ミコトが大好きになった。

捕虜として捕まっているザフト。でも、その中の人達に私は少しずつ心を許している。
キラといて分かったこと。コーディネータとナチュラルも同じ。その心に変わりはない。
キラの望む戦争の無い世界。そのためにできることが、今の私にもあるんじゃないかと、
思い始めていた。

376ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/01(土) 08:36
>>過去の傷
フレイ様は、素直で、か弱いだけでなく、我が侭で意地っ張りでも魅力的ですよ。
ミリィ、ラクスと戦うには、まだ手駒不足だぞ。もうちょっと管制官特権を利用してからの方が……

>>流離う翼たち
二つ名は偉大ですね。これで新兵達には溶け込めたようです。整備兵には分かることですが、
メンテしたセランさんはアルフさんになにか聞かされているようですし、これで第一ステップはクリア?
でも、これだけでは無いですよね。
ムウの新機体はメビウス系統なのかな? 楽しみにしておきます。

>>『明日』と『終わり』の間に
ネメシス・フレイ様の普通じゃ満足できないという論理は、お約束で、分からないこともないけど、
カガリは、それにナチュラルとコーディネータの未来を重ねているのは予想外でした。
カガリはオーブの仕事に取り組み過ぎなのでは? そして、このまま被害者に?

377過去の傷・124:2004/05/01(土) 09:36
「そうだ、私とフレイは愛し合ってるんだからな!」
「でもカガリ様は女ですよね?」
「そんなの関係あるもんか!男同士だろうが女同士だろうがだ!恋愛にそんなのは不要だ!」
「限りなく関係あると思いますけど・・・」
マユラがそう言うがカガリは気にしてない様子だ。
「でもカガリ様、フレイさん、キラさんと腕を組んでますよ」
「なにぃ!?」
カガリの視線の先には完全に関係を戻した二人がいた。
カガリは慌てて駆け寄るとキラをフレイから強引と突き放す。
「キラ貴様!私のフレイになれなれしく触るな!」
「カガリ・・・君?」
「カガリ・・・貴女」
フレイとキラが戸惑うようにカガリの名を呼ぶ。
「キラ、姉に対しての気遣いをたまにはしろ」
「カガリ、ごめんね、私やっぱりキラが・・・貴女とは女同士だし・・・」
「そうか・・・誘ってきたのはお前だったのに・・・もういい・・・」
カガリがショックを受けた様子で青ざめる。
「皆、いるな・・・」
そしてアスランが来た。
皆が挨拶するなかフレイも・・・。
「お、おはようございます・・・今日はよろしくお願いします」
フレイも丁寧に挨拶した。
ザフトの捕虜の頃、クル−ゼにもこんな感じで挨拶していたのでなれてはいた・・・。
「うん、アルスタ−二等兵ちょっといいか?」
「あ、はい」
アスランに呼ばれ返事をしたフレイ。
「今日は君はこれに乗るんだ・・・」
「え?」
「プロヴィデンスX改だ、しかし普通にプロヴィデンスと呼んで構わない」
「これが・・・私の機体・・・?」
「そうだ、この機体で・・・君はカガリ達と手を組みキラと俺の二人の相手をしてもらう・・・」
フレイは突如怯える・・・。
「い・・・いや・・・これって・・・」

そんな頃ミリアリアは・・・。
「キス・・・?」
「はい、キスしました、ちょっとアスランさんを誘惑したら・・・」
「そんなはずはありません、アスランはそんな人ではありません・・・私はアスランを信じてますから」
「男なんてだれだって誘惑すれば思いのままです、アスランさんだって冷静そうに見えて私の色気の前では・・・」
「なにを馬鹿なことを言ってらっしゃるのです?そんなこと絶対にありませんわ」
「なんて・・・冗談ですよ!あはは!」

378流離う翼たち・467:2004/05/01(土) 23:47
 揉みくちゃにされて困っているフレイを見かねたのか、ボーマンが子供達を引き剥がしに掛かった。

「こらこら、アルスター少尉が困ってるぞ。お前達もいい加減にしておけ」

 ボーマンに言われて新兵たちは仕方なくフレイから離れる。ボーマンはフレイの前まで進むと、右手を差し出した。

「まさかああも簡単に負けるとは思わなかった。正直驚いたよ。俺はボーマン・オルセン中尉だ」
「いえ、ボーマン中尉も強かったです」

 フレイはその右手を握り返した。だが、ボーマンは何故か渋い顔になり、視線をフレイからずらした。

「まあ、何と言うかな。あれだけはっきり負けた後で言われると、少し凹むな」
「あ、それは、その・・・・・・」

 憮然とするボーマンしどろもどろになりながら必死にフォローの言葉を探している。だが、フレイが何か言うよりも早く、やってきたセランがボーマンの頭を持っているボードで叩いた。ドカンという音がしてボーマンが頭を押さえている。

「セ、セラン、手前、本気で殴りやがったな!」
「兄さんこそ、何少尉を苛めてるの。模擬戦で負けたくらいで大人気ない」
「ぬぐっ、別にそれを含んでるわけじゃないぞ」
「兄さんにその気がなくても、こっちから見ればそう見えるのよ」

 手でボーマンを追いやったセランがフレイの隣に立った。

「すいません少尉、うちの馬鹿兄が迷惑かけたようで」
「あ、兄って、お兄さんなの?」
「はい、あれが残念ながら私の不肖の兄、ボーマンです」

 セランは心の底から残念そうな声で兄を紹介する。それが余程気に入らなかったのか、ボーマンはこめかみに青筋浮かべてプルプルと体を震わせている。

「セラン、一度お前に兄の偉大さというものを分からせる必要がありそうだな」
「あら、やるつもり兄さん。これまでの5戦全敗の過去をもう忘れたのかしら」
「ふん、ならばこれが6度目の正直だ!」

 ボーマンが一切の躊躇無く繰り出してきた拳を、セランは腰に挿していたモンキレンチで迎撃した。ガギンという鈍い音を立てて両者が激突する。というか、さっきの音は絶対に人間の体が立てる音じゃない。よく見てみればボーマンは右拳にメリケンサックを付けているではないか。

「少尉、少し離れていてください。今からこの学習能力の無い貧弱な兄さんをぶちのめして自分の身の程というものを分からせてやりますから」
「え、ええと?」

 事態の急展開に付いていけず、頭がフリーズしてしまっているフレイの腕を新兵の1人が掴んで安全圏まで引っ張ってくる。それを合図に兄妹の壮絶なバトルが始まった。2人ともどういう体をしているのか、無茶苦茶な速さで動き、素人目にも分かるほどの強烈な一撃を叩き込み合っている。
 フレイはその動きを見ていて、何故かキラやアスランを思い出してしまった。

「凄い」
「ああ、そりゃ凄いさ。ボーマン中尉もセランもコーディネイターだからな」
「コーディネイター?」

 新兵のうちの1人がフレイの疑問に答えてくれたが、その答えにフレイは驚いてしまう。何故に大西洋連邦軍にコーディネイターが居るのだ。

「なんで、コーディネイターが大西洋連邦軍に居るの?」
「あの2人はマドラス生まれのマドラス育ちなんだよ。両親もコーディネイターだから第2世代って事になるか」
「地元出身のコーディネイターって、結構珍しいんじゃない?」
「まあ珍しいさ。でもまあ、地元の人たちはあの2人に好意的らしくて、コーディネイターにありがちな迫害ってのも少なかったらしい。ブルーコスモスに狙われた時も両親共々近所の人に匿って貰ったそうだし」

 その話にフレイは驚きを感じたが、一方で納得してしまう部分もある。世の中にはいろんな人が居るし、世界中の全てのナチュラルがコーディネイターを憎んでいるというわけでもない。ましてこの街で生まれ、この街で育ったと言うのなら、この街の住人ならば敵とは感じないだろう。
 だが、幾らこの街で生まれたといっても、よく同じコーディネイターを相手に殺し合いなどする気になったものだ。キラは同じコーディネイターを殺すことにかなりの抵抗を感じていたのに、2人はそういうものを感じることはないのだろうか。
 目の前でセランの持ち出したパイプレンチがボーマンを殴り飛ばしたのを見ながら、フレイはその辺りを聞いてみたいと思っていた。

379流離う翼たち・作者:2004/05/01(土) 23:54
>> 『明日』と『終わり』の間に
何かしていたのかフレイ様、でも、何入れたんでしょう。トマトとか?
とりあえずカガリ頑張れとしかいえません。

>> ザフト・赤毛の虜囚
ミコトが泣きついている。でも、ユーレンとの子供はフラガなわけで、この娘は何なんでしょうね、ちょっと分からなくなりました
そういえばミコトに相談されたイザークは何してるんでしょうw?

>> 過去の傷
プロヴィに乗れってのはちょっとトラウマになってると思うのですが
しかしカガリさん、マジだったんですかw!
一方でミリィはなにやら暗躍中ですな

380『明日』と『終わり』の間に・お昼過ぎ:2004/05/02(日) 01:04
 ―――駄目だ、スプーンが進まない。一体どーしてこんなことに・・・?ああ、ジッと見てるよあいつ。こうなったらちゃんと食べないといけないだろうし・・・、何であんなこと言っちゃったんだ、私?・・・このカレーは美味い、このカレーは美味い、美味い、美味いんだ・・・!よしっ、いくぞ!

 パクッ!

 !こ、この味は!?
 
 何だこの辛さは?違う、カレー粉やスパイスとかそんな類のものじゃない!カレーの中にもう一つの全く異なる辛さが隠れてる!何なんだこの味の正体は!?ハッ、この歯触りに独特の匂い、さては”キムチ”だな!?カレーにキムチを入れることでカレーの辛さを更に引き立てようとしているんだ!!
 それだけじゃない!この何処か不思議なまろやかさは何だ?この甘さは、果物・・・、苺・・・!そうか、”苺ジャム”だ!カレーにキムチ、そして苺ジャムを加えることによってこの絶妙のハーモニーが醸し出されてるのか!?
 それにこの喉ごしの良さ、これは”完熟トマト”か!?新鮮なトマトのみずみずしさがカレーにあっさりした風味を与えてるんだ!!

 ―――私は、この味をどう表現したらいいんだ?今まで味わったことの無いこの味を?・・・!あれ、何だか涙が出てきたな?どうしてだろう・・・?そんなの、決まってるじゃないか。さぁカガリ、あいつに言ってやるんだ。このカレー・・・。

「・・・マズいに決まってんだろーがぁぁぁーーーーっ!!!」

 言ってやった、言ってやったよ、私・・・。あっ、気が遠くなってく。アスラン、キラ、助けて・・・。御館様、ミツヒデ様が御謀反なされました。・・・って、なんだこの記憶?―――。

 ―――数十分後―――

「・・・ねぇ、カガリ・・・」
「・・・何だ、フレイ・・・?」
「・・・そんなに美味しくなかった?」
「・・・まぁな・・・」
「・・・やっぱり、苺ジャムじゃなくてブルーベリージャムにしとけば良かったかしら?」
「・・・そーいう問題かあれ?」

 ・・・これはもう、料理の才能が有る無いの問題じゃない。こいつ、料理というものが何なのかということ自体が分かってないんじゃ・・・?とにかく、まずそこから教えてやらなくちゃいけないな。久々に、本気を出すか・・・。

「・・・フレイ、今からだと少し時間が掛かるけど、昼ご飯は私の手料理をご馳走してやるよ。その間お前はトリィとでも遊んでろ!」
「カガリが?一人で大丈夫なの?」
「なぁに、心配するな。何たって私は、今までに何度もアスランに手料理を振舞ってるんだ」
「ハイハイ、その話は病院で何百回も聞いたから。いいわよ別に。でもお腹が減ったから、なるべく早くしてよね?」
「ああ、任せとけ!」

 ―――さらに数十分後―――

「わぁ、すっごぉーい!まるでレストランのフルコースじゃない!これ全部一人で作ったの?」
「ふふふ、私が少しでも本気を出せばこんなもんだ。さぁ、冷めないうちに早く食べろ」
「ええ。いただきまーす!」

 まぁ、ざっとこんなもんさ。これで少しぐらいはこいつも料理ってもんが分かるだろ?それにしても何だか懐かしいな。初めてアスランに手料理を食べてもらったあの日みたいで。あの時アスランの奴、残さず全部食べてくれたっけ。『血を吐くほど美味い』って言ってホントに吐いてたしな。あっ、そういえばあいつ、『これから俺以外の人間には誰にもご馳走しないでくれ!』って言ってたような・・・?ごめんなアスラン、妬かないでくれよ?

 ドサッ!

 ん、何の音だ?・・・ってフレイ、どーした?床の上で寝るなよ。・・・おーい、フレイー・・・!?

381ザフト・赤毛の虜囚 56:2004/05/02(日) 07:59
9.母親(ママ) 8/8
[ミコト〜 もう離れちゃやだよママ]

アタシ、ミコト・ヒイラギ。
今日また、クルーゼ隊長の部屋にいるママに会った。この前、ママは怒って、アタシに
どこかへ行っちゃえって言った。ミコト、なにか悪いことしたの? でも、ママは怒るだけだった。

でも、今日のママは違った。優しかった。怒ってないって聞いたら、

「ほんとよ。怒ってない。ありがとうミコト」

って言った。笑ってた。アタシ、ママ大好き。
アタシ、ママに抱きついた。ママ、アタシの髪を撫でてくれた。優しく撫でてくれた。

アタシ、そうしてたら、いつのまにか泣いてた。うれしいのに泣いてた。
ママ、ママ、会いたかったママ。いつも一人で寂しかった。会いたかったようママ。
もう離れちゃやだ。いつもいっしょ。もう離れちゃやだよママ。

クルーゼ隊長言ってた。アタシ達、基地についたらプラントに帰るって。
ママもいっしょだよ。ぜったい、ぜーったい、いっしょだよ。

パパ…… パパは、どうしたのかな。アラスカで声がしてたパパ。パパもいっしょに来て欲しい。

パパどこにいるのかな。ママ、今度教えてね。

382ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/02(日) 08:02
これで、7章「幼子(おさなご)」から9章「母親(ママ)」まで続いていたミコトとフレイの出会いの話は、
ひとまず終わります。次は、ちょっと、いろいろ展開の見直しを行うため、ひょっとしたら時間が空くかもしれません。
その間は、フレイの番外的な章を入れる予定です。ミリィSSの方、展開伸ばして済みません。
でも、おかげで、やっとフレイSSとの劇中時間差が埋まりつつあります。

>>過去の傷
ミリィの攻撃、ラクスに意外と効いている?
プロヴィデンスX改って、どこが、Xで、どこが改なのかも気になりますが、アスランが、どこから持ってきたのかも
気になります。

>>『明日』と『終わり』の間に
ううむ、想像するだに無気味な赤のカレーですな。しかし、カガリも負けず劣らずのようで……

>>流離う翼たち
なるほど、そう来ましたか。コーディネータと戦争とのあり方を、今一度考えさせられます。
どんな道を示してくれるのか、ずっと見えなかったのですが、やっと期待が持てるようになりました。
本題は、これからですが、小説内で明らかにされること気長に待っています。

セラン軍曹と呼ばれる理由は、ボーマン艦長、もといボーマン・オルセン中尉という、お兄さんが近くにいる
からなんですね。ところで、セランさん、パイプレンチは、充分、凶器になりますので気をつけましょう。

私のSSへの疑問の方ですが、ムウとミコトは、番外編でヴィアが話していたように、両親を同じくする、
一番まっとうな兄妹です。ただ、SS内独自年表だと10歳離れていることになります。ムウの年齢は、都合により、
TV本編より若い設定になっています。

383過去の傷・125:2004/05/02(日) 10:31
「フレイ!?」
キラが慌てて駆け寄る。
(やはりな・・・怯えている・・・)
「いや・・・これ・・・私を・・・私を殺そうとした・・・」
「アルスタ−二等兵、いいかよく聞け」
「アスラン!もういいだろ、この機体は彼女の心と体を傷つけた機体だ、これに彼女を乗せるなんて」
キラがフレイを庇おうとしたが。
「お前は黙ってろ、アルスタ−二等兵・・・君は何か勘違いしている」
フレイが顔を上げる。
「君を撃ったのはこの機体じゃない、隊長だ」
フレイがハッとする。
「機体にはなんの責任もない、恨むならクル−ゼ隊長を恨め、それに乗るのが嫌なら乗らなくても構わない」
そうだわ、私なにやってるんだろう・・・機体にはなんの関係もないじゃない・・・私って相変わらず馬鹿だわ、一人に振り回されて自分だけいつも回りが見えない・・・クル−ゼ隊長は私を生かしてくれた・・・もしかしたら芝居かもしれない、私に死んでもらったら困るからかもしれない、私を生かしたくて生かしたわけじゃないかもしれない、でもそれでも・・・生かしてくれたことには変わらない。
機体に怯えたら駄目、怯えて逃げるのは以前の私、もう以前の私は忘れるの・・・。
「あ、あの!アスランさん!」
フレイはアスランに叫びながら必死に声をかけた。
アスランが振り向く。
「アルスタ−二等兵、なにか言いたいことがあるなら言ってみろ・・・」
「あ、あの!私みたいな女に乗れるか分からないけど、私もう逃げない!私、プロヴィデンスに乗ります!いえ乗らせてください!」
とたんアスランが微笑んだ。
「そうか・・・よしなら褒美をやろう」
「褒美?」
「君はキラのフリ−ダムと手を組み、俺達と実戦練習だ、君もその・・・好きな男と一緒に戦いたいだろう・・・?」
フレイの顔が赤くなった。
「待て、アスラン!なんで私がお前と手を組んだよ!私はフレイを守って決めたんだ!私はフレイの援護をする!」
カガリが声を張り上げた。
「・・・勝手にしろ・・・カガリ・・・敵になるならお前でも容赦しない」

「ミリィ・・・?」
食堂で一人ジュ−スを飲んでいたサイのもとにミリアリアが笑みを浮かべながら歩み寄ってきた。
あのあとラクスにこっぴどく叱られ逃げてきたのだ・・・。
「ねえサイ・・・」
ミリアリアは色気ある目でサイの隣に座るとゆっくりとサイの手を握る。
「ミリィ・・・?どうした?」
「ううん・・・なんでもない・・・ふふ」
不審そうな目でサイはミリアリアを見る。
「ちょっと手伝ってほしいのよ、ラクスさん・・・ラクス・クラインとアスラン・ザラの仲を引き裂きたいのよ、上手くいったら私、サイの彼女になってあげてもいいわよ」
「興味ない・・・なんで俺がそんなことを・・・」
「ねえ・・・サイお願い・・・」
そう言うなりミリアリアはサイを振り向かせるとサイの首を両手をかけた、キョトンとしているサイに構わずサイの唇にキスした、軽くではなくじっくりと押し付けるキスだった。
「サイ・・・いいでしょ・・・?」
「やめてくれ!」
抱きつくミリアリアを突き放すとサイは慌てて食堂から出て行った。
残ったミリアリアは舌打ちをたてていた。
キスしてやったのになんなのよサイは・・・ほんと役立たずなんだから・・・。

384私の想いが名無しを守るわ:2004/05/02(日) 21:25
>>「明日」と「終わり」の間に〜
カガリが気を失う寸前の記憶は、某ゲームの声優ネタからですよね?
フレイ様に負けず劣らずカガリの料理も壊滅的でしたか(汗)。
血を吐きながらも全部食べたアスランは凄い!!

385流離う翼たち・468:2004/05/03(月) 00:23
 同時刻、マドラスの近くに上陸した者達が居た。ゴムボートを引き上げて海岸の窪地に隠し、目立たないよう私服に着替えていく。それはアスランとフィリス、エルフィの3人であった。

「さて、これからマドラス基地に潜入するわけだが、もう一度確認しておくぞ。俺たちの仕事はあくまで沿岸の防御設備の確認と、脚付きの居所だ。間違っても連合兵士と問題を起こさないように」
「それは分かってます」
「私たちより、隊長の方が心配なんですが」

 エルフィが頷き、フィリスが逆にツッコミを入れてくる。フィリスのツッコミを受けてアスランは些かの怯みを見せ、エルフィが困った顔でフィリスを見ている。

「あ、あの、フィリスさん、今回はザラ隊長の気分転換も兼ねてるんですから、余り追い詰めるような事は言わない方が良いと思うんですが」
「そ、そうでしたね、すいません」

 生来のツッコミ気質からついついアスランに言い返してしまったフィリスだったが、エルフィに窘められてすまなそうに頭を下げた。そう、今回の上陸はストレス性胃潰瘍を起こしかねない状態に陥っているアスランの、言うなれば気分転換を兼ねた任務なのである。その為に同行者も良識派の2人で固められ、アスランの負担を極力軽くするように配慮されているのだ。
 今回の偵察任務はエルフィが潜水艦隊司令のモラシム隊長に具申したものだった。当初はエルフィの意見具申を歯牙にもかけずに却下しようとしたモラシムだったが、エルフィが余りにも執拗に食い下がってくる為に仕方なく彼女の話しを聞くことにしたのだ。そしてエルフィの話を聞き終えたモラシム隊長は、何故か感動した表情でエルフィに頷き、持ってきた意見具申書にその場で承認を与えている。
 敵中に偵察に赴く方が精神的に楽、というアスランの悲惨極まりない現状に同情してしまったモラシム隊長は、アスランの体調を心配するエルフィの心遣いに打たれて今回の偵察任務を許可し、支援までしてくれたのである。
 エルフィが今後の予定表を持ち出してアスランとフィリスに確認を取る。

「それでは、今日の14:00に潜水艦隊から支援のミサイル攻撃がマドラスに向けて行われます。私たちはその後のゴタゴタに紛れてマドラスに潜入、情報収集を行う事になります。旅費の関係でこちらに留まれるのは1日だけ、1泊2日となります」
「エルフィ、1泊2日って、修学旅行じゃないんだから」
「う、そうですね。でもまあ、明日の14:00までにこの回収地点に来ないと死んだと思われて攻撃開始なんで、気を付けて下さい。モラシム隊長は待ってはくれませんよ」

 エルフィはアスランのツッコミに少したじろぎならがも通達事項を伝え終えた。フィリスは自分の手に持つを取り、マドラス市街を見やる。

「それじゃあ行きますか。一応あそこは敵地ですので、気を付ける事だけは忘れないで下さい」
「うう、イザークたち、また問題起こして無ければいいんだが」
「それは大丈夫でしょう。モラシム隊長が引き受けるといってましたから」
「なら、良いんだが」

 胃の辺りを押さえながら不安そうに答えるアスランに、エルフィとフィリスは小さく肩を落としてしまう。全く、この隊長はどうしてこうもっと余裕も持って生きられないのだろうか。
 ちなみにアスランの胃痛の原因たるイザークとディアッカはというと、実はもう既に、問題を起こしてモラシムに罰則を受けさせられていたりする。モップを手に格納甲板を掃除させられていたイザークは三角帽を被った姿で右手を握り締めて文句を言っていた。

「畜生、何でアスランが偵察任務に出れて、俺がこんな所でモップかけなくてはいかんのだ!?」
「イザークよお、流石にこれ以上騒動起こすのは不味くねえか。次やったらモラシム隊長がサメの餌にするとか言ってったぜ」
「はっ、やれるものならやってみろって言うんだ!」
「ほお、ならそうしてやろうか?」

386流離う翼たち・469:2004/05/03(月) 00:26
 いきなり背後から聞こえてきたその声に、イザークとディアッカはビクリと体を震わせて恐る恐る背後を振り返った。すると、そこには何とモラシム隊長が不機嫌そうな顔で腕を組んで立っているではないか。

「あ、あの、モラシム隊長、何時からそこに?」
「ジュールが拳を握り締めて文句を言ったあたりからだな」
「あ、あ、それは、ですねえ。ディ、ディアッカ、お前からも何か・・・・・・」

 イザークは言い訳の言葉さえも浮かばなくなって友人に助けを求めようとしたが、既にディアッカはその場にはおらず、離れた所で鼻歌を歌いながら楽しそうにモップがけをしていた。

「フンフンフン〜〜♪ 俺は愉快な掃除屋さ〜ん♪」
「ディ、ディアッカ――――――!!?」

 友に見捨てられた事を悟ったイザークは悲痛な声を上げたが、ディアッカはイザークの方を見る事さえなく、イザークはモラシムに首根っこを捕まえられて引き摺られていったのである。

「さあ、インド洋がお前を呼んでいるぞ」
「ま、待って、待ってくださいモラシム隊長!?」
「たまには海水浴もいいものだ。なあに、そう滅多にサメに襲われたりはせん」
「滅多にってことは、襲われる確立もあるってことでしょうがあ!」

 悲鳴を上げながら引き摺られていくイザークを、整備中の機体から顔を出したミゲルとニコル、ジャックが見送っていた。

「あ〜る〜はれた〜ひ〜る〜さがり〜、いちば〜へつづ〜くみち〜」
「なんですかミゲル、その変わった歌は?」
「ドナドナっていう、大昔に流行った流行歌だ」
「へえ。でも、何でいきなりそんな歌を?」
「・・・・・・いや。この歌はそのまま聴くとちょっとシュールなだけなんだが、実はある国が行っていた組織的な虐殺をテーマとした歌なのだ。丁度、イザークのように処刑場に連れて行かれる囚人の歌なんだ」
「・・・・・・・・・だからですか?」
「ああ、あのイザークはまさにこの歌が似合う、そう思ったからな」
「ジュール隊長も可哀想にと言いたいですが、まあ自業自得ですね」

 連れて行かれるイザークを見送った3人には一抹の同情もありはしない。残念だが、イザークは少し懲りた方がいいと考えていたのだ。ディアッカもイザーク同様に懲りた方が良いのだが、彼は引き際を心得ているので中々法の網に掛からない。肝心な所で抜けているイザークよりもはるかに厄介な相手なのだ。

「でも、大丈夫ですかねえ、ザラ隊長たち」
「まあ、フィリスとエルフィもついていってるし、大丈夫だろ」
「最近のアスランは顔色が悪かったですからね」

 一応敵地に潜入するという危険極まりない任務に行っているのだ。3人がアスランたちを心配するのも仕方が無いだろう。
 ちなみにイザークはというと、本当にモラシムに海に叩き込まれて30分ばかり泳ぎ続けていたらしい。途中でなにやらとても大きな魚影を見たモラシムに急いで引き上げられたそうだが、詳しい事をイザークは遂に最後まで語らなかった。ただ、その時の事を聞かれるとガタガタと震えだして逃げてしまうようになったとか。

387流離う翼たち・作者:2004/05/03(月) 00:36
>> 『明日』と『終わり』の間に
も、森蘭丸!? カガリの前世は一体・・・・・・
しかしカガリも似たような物か。という事はカレー事件の責任は誰に行くのやら
アスランにとりあえず敬礼!

>> ザフト・赤毛の虜囚
ミコトさんも一緒に宇宙へ。ゲイツにでも乗るのかな。一応赤服だし
回答ありがとうございます。なるほど、兄貴の妹ですか

>> 過去の傷
フレイ様がプロヴィに、なんか、イメージが・・・・・・
カガリとアスランは仲が悪そうだし
サイはミリィの手を逃れたようですな。感心感心

388ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/03(月) 02:50
今日は執筆が間に合わなかったので感想だけ書き込みます。

>>過去の傷
アスランは言葉使いも変わって隊長の風格というか、偉そうというか。
ミリィは、やはり、まだラクスには適いませんか。サイを味方に引き込むのは失敗したし、
次は誰を…… って、すっかり悪党の器ですな。でも、ちょっと気が短いかも。

>>流離う翼たち
いいところで場面転換ですね。また話が交差するのを待ちましょう。
いまさらですが、マドラスってインド半島の東側の都市で、ムックなどでは、中立よりの赤道連合に
属する場所ですが、ここでは、連合の拠点になんですね。連合のどんな拠点なのかは、あまり説明が
無いのですが、戦艦修理や、アズが居たり、アスランまで潜入したりと、すっかり、TV本編のオーブの
ような重要な位置付けになってますね。

ちなみに、ミコトは今の予定ではゲイツ改に乗せるつもりです。

389過去の傷・126:2004/05/03(月) 09:17
「この感じは・・・この機体・・・私使えるかもしれないわね」
(いい感覚ね、それより月光蝶システムってなにかしら・・・?武器かな・・・?それからこのドラグ−ンシステムって・・・?)
(それはいわゆる・・・Gビットみたいな感じです)
(ティファ・・・)
(フレイさん、こんにちは・・・あ!この世界に来るという話なんですけど・・・駄目でした、マイクウェ−ブ施設で・・・あ、そんなことより通信が)
<アルスタ−二等兵も発進するんだ、宇宙に出る>
アスランの声だ。
<あ、はい分かりました・・・フレイ・アルスタ−!プロヴィデンス出るわよ!>

<ミ−ティア装着完了!>(これくらいのハンデはないとな)
宇宙の出た四機の機体は・・・。
<アルスタ−二等兵、君はキラのフリ−ダム、カガリのストライク・ル−ジュと協力し、俺と戦うんだ>
<アスランさんと?そんな・・・>
<これは練習だ、気負いすることはない>
<は、はい分かりました!>
<いくぞ!練習開始!>

「じゃ、じゃあ行くわよ!」
(ええっと・・・キラに言われたとおり・・・ファンネル!いって!)
そしてプロヴィデンスから、無数の飛び道具系のビ−ムが飛び出した。

(さあて、どれを狙うか、キラが厄介だな・・・しかし・・・俺はプロヴィデンスとニュ−タイプと戦いたかったんだ・・・いくぞ、フレイ・アルスタ−!)
そしてジャスティス・ミ−ティアはプロヴィデンスの放ったドラグ−ンシステムをなんとか回避しながら突っ込んだ。
(やはりまだまだ素人だな・・・)

(フレイさん、モビルス−ツ接近!)
(え!?もう来たの!?)
<フレイ大丈夫だ!>
<カガリ!?>
そしてジャスティス・ミ−ティアが無数のビ−ムの前から突如姿を現した。
(ああ・・・来たわ・・・いや)
切りかかってきた敵機、しかしプロヴィデンスの前にストライク・ル−ジュが現れシ−ルドで防ごうとする。
<ここは・・・通さん!>
<カガリ!そんなもので防げるとでも思ってるのか!>
しかし、さすがに全ては防ぎきれなかったらしくル−ジュも多少だが損傷した。

その頃キラのフリ−ダムは・・・。
「くくく・・・皆殺しだ・・・」

そして同時刻。
「キラ・・・そろそろ薬が効いてきたころかしら・・・さあ・・・殺してねキラ」
とミリアリアが部屋で一人呟いていた、不気味な笑みを浮かべて。
「殺して、殺して・・・あははは!」
(ふふ・・・だいたい十五分ってとこかしら一つしかないんだ大事の使ってねキラ・・・ふふ・・・あはは!)

390『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/03(月) 09:32
>>384
 その通りです。ガンダムと関係のない声優ネタだったので使うかどうか少し迷いましたが、分かってくださった方がいてくださって良かったです。

》流離う翼たち
 フィリスさんのツッコミ気質は生まれつきなんですねw。しかしアスランは本当に苦労しているみたいですね。
 それにしてもモラシム隊長、あんなこと言っておいていざという時に焦っちゃ駄目ですよ。イザ―クにまた新しいトラウマが出来ましたねw。

》過去の傷
 アスラン、何だか無理強いしてるみたいですね。フレイ様に対してここまで高圧的になる理由は何でしょう?それにプロヴィデンスX改は月光蝶システムまで装備しているとは。ひょっとして『SEED』も黒歴史の一部?
 それとミリィ、キラに何飲ませたんだい?凄いことになってるけど・・・。

》赤毛の虜囚
 ムウさんとミコトちゃんは兄妹なんですね。本編と年齢が異なるとありましたが、何歳になるんでしょうか?それと他にもそうした設定の違うキャラはおられますか?

391過去の傷・127:2004/05/03(月) 10:14
<なんか、キラの様子が変だ!>
<アスランさん!キラが!>
<キラがどうした・・・?>
一時止まった三機。
そしてフリ−ダムが駆けつけてきた。
<僕の邪魔をするなら・・・死ぬよ?皆・・・皆殺しだ>
(なにかにやられたな・・・薬か?それとも・・・おそらく十五分程度で切れるだろう・・・仕方がない)
<アルスタ−二等兵にカガリ!キラは薬にやられている、十五分程度と思うが・・・それまで粘るぞ!今日はこれで終わりだ!>
<分かりました、これも練習のつもりで・・・>

<そら・・・いくよ!>
フリ−ダムがプロヴィデンスに遅いかかってきた。
「キラ・・・」
ルプス・ビ−ムライフルを放ってきた。
しかし、Iフィ−ルドがそれを無効化する。
そしてすかさずドラグ−ン・システムを放つ。
そしてそのまま突っ込む。
無数のビ−ムを回避しているフリ−ダムにプロヴィデンスが斬りつける。
(キラって・・・たいしたことないわね)
いや、機体の性能のおかげだと思うが・・・。
そして・・・。
<フレイ・・・?僕は・・・>
<よかった、気づいたみたいね・・・もう十五分過ぎたころかしら>

機体から降りた四人は。
「気づいてないの?」
「うん、どうも意識がなくてさ」
「そう・・・」
フレイはキラを気遣っていた、そして背中を優しくさする。
「もう・・・心配かけないで」
「フレイ、ごめん・・・ありがとう・・・」
「もう・・・馬鹿」

一人でいたアスランは・・・。
「・・・・・!」
「アスランさん・・・」
「君・・・」
ミリアリアは歩み寄るとアスランの隣に座る。
なんだ、生きてたんだ・・・でも少しやりすぎたかしら。
「どうしてここに?」
「アスランさんがとっても心配で・・・」
「俺が・・・?」
ミリアリアはアスランを抱きしめた。
「な・・・君」
「言ったはずです、私も一緒に戦うって・・・貴方とともに・・・」
アスランは抵抗もせずされるがままになっていた。
「疲れたよ」
「なら・・・私の部屋に来ませんか?」
「いや、いい・・・」
「ならアスランさんの部屋に行ってもいいですか」
それにアスランは戸惑う。
「いや、しかし・・・」
「分かりました・・・」

392流離う翼たち・470:2004/05/03(月) 23:48
 基地の食堂でフレイはセランとボーマンの2人を加えて食事を摂っていた。セランは上官とはいえ経験の浅いフレイを何かと気にかけてくれており、フレイもそんなセランに随分気を許していたのだ。そしてボーマンもパイプレンチを食らった頭に止血を施して包帯を巻いてセランの隣に座っている。
 フレイはスパゲティを食べながらセランに自分の疑問をぶつけてみた。

「ねえセラン軍曹、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「はい、何ですか少尉?」

 セランは食べようとしていたハンバーグを止め、フレイの方を見る。フレイは少しだけ躊躇った後、その疑問を口にした。

「軍曹達は、どうして大西洋連邦軍にいるの?」
「は?」
「大西洋連邦はコーディネイターに優しい国じゃないわ。なのに、同じコーディネイターと戦ってまでどうして?」
「ああ、そういう事ですか」

 納得したのか、セランはおかしそうに笑っている。ボーマンの方も同様で、どうもこの2人はキラとは何かが違うらしい。

「私たちはこの町で生まれて、この街で育ったんですよ。その故郷を攻撃してきたプラントの連中なんかにどうして肩入れしなくちゃならないんです?」
「全くだな。同胞だか何だか知らんが、行った事も無いプラントや、顔も見たことも無い連中に義理なんぞ感じんよ」
「そういうものなの?」
「当り前ですよ。第1、同胞だから味方しろなんて冗談じゃないです。会ったことも無い遠くの親戚より、近所の人たちの方が大事です」

 セランの答えに、フレイは動揺を隠せない。キラは同じコーディネイターと戦う事にあれほど苦しんでいたのに、そのコーディネイターから全く違う意見を聞かされたのだ。2人とキラは生まれた場所も育った環境も違うというのは分かるのだが、こうも違うものだとは。
 考えこんでしまったフレイに、ボーマンが声をかけた。

「何でそんな事を聞くんだ?」
「・・・・・・アークエンジェルにも、コーディネイターがいるんです。かれは同じコーディネイターと殺しあう事に苦しんでました」
「なるほど、そういう事か」

 ボーマンは納得して頷いた。だが、セランは納得していなかったらしく、むしろ糾弾口調でそのコーディネイターに文句を付けた。

「そのコーディネイターは覚悟が足りないんですよ。そりゃ色々事情はあるんでしょうけど、一度こっちに付くって決めたんなら悩んでどうするんだか」
「でも、相手には友達も居るっていうことだし」
「それがどうだって言うんです。私たちの親戚だってプラントに居ますよ。会った事は無いですけどね」

 セランの反論にフレイはまた衝撃を受けた。何でそんなに簡単に言えてしまうのだ。戦争で敵同士だという事は、自分でその親戚を殺してしまうかもしれないというのに。

「なんで、そんな風に割り切れるの?」
「そんなの簡単です。さっきも言いましたが、私は会った事も無い親戚より、両親とこの街とそこに住んでる人の方が大事だからです。親戚が居るかもしれないから、何て考えてたらこの街も守れないですし、私たちも死んじゃいますよ」
「そういう事だな。そいつがどうかは知らないが、俺たちは身近な人たちを守りたいから軍に入った。それが全てだよ」
「でも、大西洋連邦軍だと、色々と問題も起きるんじゃないの。嫌がらせをされたりとか、ブルーコスモスに狙われたりとか」
「そういう事も確かにありますけど、それくらいは仕方ないですよ。それに隊の仲間達は良くしてくれますし、アルフレット少佐が色々と手を回してくれてからは嫌がらせも無くなりました。兄さんなんかは勲章も貰ってるんですよ」

 どうやら自分が考えていたより2人はずっと苦労していたらしい。だが、それを全く感じさせないのは、キラと違って1人ではなかったからだろうか。それにアルフレットみたいな上官も居たのが大きかったのだろう。

393流離う翼たち・作者:2004/05/03(月) 23:51
>> 過去の傷
月光蝶って・・・・・・なんでそんな物騒な物を。世界を滅ぼす気かアスランは?
しかし、キラって何使われたんでしょうね

394私の想いが名無しを守るわ:2004/05/04(火) 03:25
>>流離う翼たち
このSSの大西洋連合はまだアルフレッドの影響力が浸透すると
いう点でマシなというか、より勝利に貪欲な組織に見えますね。
ちょっと間の抜けたというか油断しっぱなしのザフトと対照的です。
>>過去の傷
「月光蝶である」のあれですね。私はダブルXとプロヴィデンス
のMIXを想像してました。アスランは、前の戦争だけでは戦い足
りないという感じですね。㍉の意図も見えてきた感じがします。
>> ザフト・赤毛の虜囚
フレイ様とミコトの関係が親密になればなるほど、ゲイツ改に
乗るという設定が不安を誘いますね。キラともぶつかることに
なるのでしょうか。じっと次の展開を待つことにしましょう。
>> 『明日』と『終わり』の間に・お昼過ぎ
カガリ成分がかなり強いらしいという噂はよく聞いてます。
「ごめんなアスラン、妬かないでくれよ」←調子に乗るカガリ
の顔が目に浮かぶ一言ですね。フレイ様大丈夫だったのかしら。

395ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/04(火) 08:50
用意していた番外的な新章。最終チェック中に、サイズ超過になって時間切れです。投下は今晩以降になります。
感想を聞いていると、「ヴィアとミコト」の番外は、9章「母親(ママ)」の後にすれば良かったですね。
間に、ミリィのミナシロ編挟んでしまいましたからね。

>>過去の傷
プロヴィデンスXのXって、あっちのXでしたか。ティファは、出て来れなくて残念です。
ミリィは一体何の薬を使ったんだ。キラを誘惑している時に一服盛ったとすると、かなり遅効性。
意外と、隠れた策略を用意しているみたいで、これからのミリィ vs アスラン・ラクス戦線に期待。

>>流離う翼たち
セランとボーマンの戦う理由、キラと同じなんですね。フレイ様は気づいていないようですが、
キラにとっての近しい人は、フレイ様を始めとするヘリオポリスの友人とともに、アスランがいるはずです。
それが、二人との考えが違うように見える理由なのでしょう。そのアスランもマドラスに潜入したようですし、
フレイ様、その辺に触れることができるのかな。そういえば、この世界ではトリィはいるのでしょうかね。

>>390
ムウは、24、5歳といったところです。当然、マリューさんやナタルも、それにつれて若干シフトする
ことになります。うちのSSの年齢設定で、一番、影響が大きいのはジョージ・アルスターでしょうね。
かなり老け込んでいることになっています。その他は、年齢がはっきりしないのを自分なりに
決めていっているぐらいです。ただ、設定は変えていないですが、フレイ達は、自分では、
大学生くらいのつもりでいます。

396過去の傷・128:2004/05/04(火) 12:15
「ちょっと・・・いいか?」
パイロットロッカ−でフレイはアスランに声をかけられたのだ。
ス−ツをまだ着ていたが仕方なく座る。
「君は・・・キラが好きか・・・?」
突然の質問に戸惑いながらフレイは頬を少し赤く染めると小さくうなずいた。
「はい・・・」
「そうか・・・あいつは・・・泣き虫で・・・甘ったれで・・・優秀なのにいいかげんな奴で・・・でも優しい奴で、ほっとけない奴だ」
「そうですよね・・・泣き虫で、でもそこが可愛いんですよ・・・私も何度か泣きつかれて慰めたことが」
「そうか、大変だったな」
「いえ、そんなことないです」
アスランは微笑んだ。
「あいつが地球軍にいた理由も残った理由も君がいたからかもしれないな・・・」
「え・・・?」
驚いたようにフレイはアスランを見た。
「いや・・・アルスタ−二等兵、君に頼みがある」
「え?はい、私に出来ることでしたら・・・」
「キラを見れば分かるが君はあいつにとっては世界の中で一番の女性だ・・・」
「え・・・?私が」
そしてアスランは地面を見ると告げた。
「だからあいつを・・・キラを頼む・・・」
フレイは微笑んだ。
「はい!」
この人にとってもキラは大切なのね・・・だから私はこの人のためにもキラを愛して本当の想いでキラを守るわ・・・。
「あの・・・アスランさん」
「アスランさんこんなところにいたんですか〜♪」
少女の声がしたので二人が振り向いくといつもより綺麗なミリアリアがいた。
「君・・・」
「う〜ん、やっぱり入浴後はいい気持ちね」
そうか・・・入浴後なのだ、それでいつもより色気があるのだろう・・・それから香水だろうか、いい香りがミリアリアからした、普通でも可愛いミリアリアがさらに可愛くみえた、アスランは美少女二人を目にして婚約者である歌姫のことなど頭の片隅にも置いてなかった。
アスランもついミリアリアに見とれてしまった、フレイには悪いがパイロットス−ツの彼女よりは今のミリアリアは色気や魅力があり、目がいってしまうのは当然だろう。
「アスランさん、探しちゃったわよ〜♪」
「あ、ああ・・・すまない・・・」
そしてアスランの手を取ると立たせてフレイに見せつけるようにどきまぎしているアスランを抱き寄せ腕を組み胸のふくらみをアスランに感じさせる。
「アスランさん♪」
「・・・・・・」
フレイというと・・・予想通りうんざりした様子でいちゃいちゃしている二人をあきれた目でため息をつきながら眺めている。
「ここ雰囲気ないわ、私の部屋にでも行きましょう?」
甘える声で言われ戸惑うアスラン。
フレイが立ち上がる。
「私行くわ・・・お邪魔みたいだから・・・」
そう呟くとフレイが立ち去る。
「あ、アルスタ−二等兵・・・」
アスランとしても面白くなかった、フレイとまだ話したかったし、ア−クエンジェル内でのキラの話もまだ聞きたかったのだが・・・とんだ邪魔をされた感じだ。
そしてアスランはぎょっとした・・・ミリアリアがフレイの後姿を敵意のような眼差しで・・・警戒するように睨みつけていたのだ。
「君は・・・彼女が」
「ええ、私・・・あの女が大嫌いなんです」
さっきまでの甘えた声や表情は完全に彼女からは消えていた。
全てフレイに見せつけるためだったのだ。

397散った花、実る果実40:2004/05/05(水) 02:27
「地球の人々と私たちは同胞です。コーディネイターは決して進化した違うものではないのです。婚姻工作を行ってもなお、生まれてこぬ子供達。
すでに未来をつくれぬ私たちの、どこが進化した種だというのでしょう」
スクリーンの中で切々と訴える彼女。その声と顔は覚えのあるものだった。
「愛する人々を失ってもなお、戦いつづけるその未来は、間違いなく待つものなのでしょうか。」
ナチュラルとコーディネイターの併合を説く彼女の演説に対して政治家の反論が入る。
「苦しくとも今を戦い、そして、平和で輝かしい・・・・・」
プツッと言う音を立ててスクリーンのスイッチが切られた。
ラクス・クライン。ザフトの歌姫。
初めて見たとき、なんて不快なコなんだろうって思った。
コーディネイターのくせに、ナチュラルの私たちの艦で馴れ馴れしく近づいてきて。
いかにもお嬢様といった振る舞いでイライラさせられた。
でも、スクリーンの彼女は違う人のように見える。
ぽやぽやして無神経なことを言うばかりだと思っていたけど・・・・このコ、こんな事考えていたのね。
『愛する人々を失ってもなお』・・・・・彼女は愛する誰かを失ったのだろうか。
私は、・・・・これからどうしようと言うのだろう。
今なら彼女と話せる気がした。
彼女は、あの時、あの爆発を見て、何を思っただろう。
あの激しい戦闘の中、静かに歌を歌いながら、何を考えていたんだろう。

「ラクス・クラインには、議長も大分手を焼いておいでのようだ。よもやそれで我等に帰国命令出たわけでもあるまいが。」
嘲笑うようにそう言った仮面の男はモニターのスイッチを切り、こちらを振り返った。
「しかし、私には信じられません。・・・彼女が反逆者などと。」
血気さかんな顔に傷のある少年がその言葉に反発する。
「そう思うものがいるからこそ、彼女を使うのだよ、クライン派は。君たちまで惑わされてどうするね。」
仮面の男はそれに動じることなく諭す様に続ける。それがまるで彼の演説であるかのように。
「様々な思惑がからみあうのが戦争だよ。何と戦わねばならないのか・・・・見誤るなよ」
そう言って去っていく彼の背中を、銀髪の少年はは睨みつけるようにいつまでも見つめていた。

398散った花、実る果実41:2004/05/05(水) 02:28
「あの・・・リスティア。ラクス・クラインって・・・・・」
私の質問に、なんでもない事のように彼女は答える。
「ああ・・・ザフトの歌姫。ちょっと前までは慰問団の中心というか・・・・追悼式で歌を歌ったり、私たちの平和のシンボルとして活躍していたのだけれど・・・・先日、戦艦を奪って離反したらしくてね。」
え・・・・・?
「離反て・・・・・どうして?」
「彼女は・・・・コーディネイターを特別な種だとは考えていないようね。コーディネイターとナチュラルは同じ人間だと・・・・・そう、主張しているわ」
なんで・・・・そう思えるのかしら・・・・・・コーディネイターであることに優越感を持たず?
「それを聞いて・・・・あなたはどう思う?」
「え・・・・どう思うって・・・・・」
リスティアは意外そうに問い返す。
「だって・・・ラクスは今まではむしろコーディネイターの象徴だったわけでしょ・・・?それが・・・・コーディネイターを否定する側にまわっている。それって・・・・コーディネイターの側からすればどう思うものなの?」
「・・・・そうね・・・・・・」
彼女は随分考え込んでいるようだった。
「コーディネイターとして・・・・っていうのはちょっと答えにくい面もあるわね。私個人の意見になっちゃうもの。ただ・・・・彼女の言うことが全部間違ってる、とは・・・思わない・・・・・・・」
「それって・・・・・・」
「誤解しないで、ナチュラルを認めたわけではないわ。でも・・・第二世代、第三世代とコーディネイトを重ねるに従って低下する出生率・・・・不安を覚えるのは確かだわ・・・・・だからこそ・・・皆彼女の言葉に動揺せずにはいられないのでしょうね・・・・・」
「コーディネイター自身も、自分達のありように不安を抱いている・・・・・?」
「ただ、彼女の言うことが全面的に正しい、とも思わないわ。出生率の問題に関しては、これからそれを解消するためのコーディネイトがきっと見つけ出されると思うし・・・・それに・・・・・」
「それに?」
促すと彼女は自分を励ますように一つ頷いて言葉を続けた。
「コーディネイターはやはり優れた種よ。みてごらんなさいよ、ナチュラルとコーディネイターの能力にいかに格差があるか。今更コーディネイターが間違ってました、だなんて・・・現実を見ていないにも程があるわ。」
確かにコーディネイターとナチュラルには歴然とした能力差がある。でもナチュラルにもコーディネイターと比べて能力に遜色のない者もいる。
ナチュラルとコーディネイターに違いがない、とは今の私にも思えない。でも、初めから違う種なのだと、共存できないのだ、と他者を排除しようとする今の戦争は・・・・・・

ラクス・クラインの演説は、やはりザフトの意識にも影響を与えているようだった。
最初の頃のピリピリした空気はなりをひそめ、私と話してナチュラルを知ろうとするものも少なくなかった。
「君、ナチュラルにしては美人だよね。コーディネイターの血は入ってないんだよね?」
「ナチュラルは遺伝子を操作せずに出産するけど、どうなの?例えば遺伝子異常があったりとか、極端に能力の低い子供が産まれて来たり、とか考えて怖くなったりしないの?」
その意見にははっきり言って失礼なものも多かったけど、人間扱いして私と向き合って話してくれる人がいる、というのはいいことに思えた。
「私はコーディネイターではないわ。だから捕虜としてここにいるの。地球軍にはほとんどナチュラルしかいないわよ。美人?ありがと。パパとママからの贈り物ね。私のママ、美人だったんだから。」
「ナチュラル能力が皆低いわけでもないわよ。遺伝子はいじらなければ確率の問題なんだから、コーディネイターより能力的に高い子供が産まれる確率だってあるわ。遺伝子異常は、考えられなくはないけど・・・でも、ナチュラルだって、遺伝子異常の検査はするし、遺伝子異常があって、それで遺伝子操作することまでは否定してないわよ。」
私は知った。コーディネイターとナチュラルの間には大きな誤解があることを。
コーディネイターを生み出した一世代目はどうだかわからない。
でも、2世代目、3世代目になると、ナチュラルに対する知識そのものに偏りがあり、コーディネイトによる能力付加がむしろ標準だと考えられている節があり、ナチュラルに出産するということは遺伝子上欠陥の生じる可能性が高かったり、能力が平均より劣る、というように捉えられているらしかった。

399散った花、実る果実/作者:2004/05/05(水) 02:49
お・・・お久しぶりです。すいません。
ちょっとばかし忙しかったのと鬱入ってたので投下控えてました。
未熟なもので、精神状態が話に影響出やすいのですねえ・・・・

>>過去の傷
み・・・ミリ・・・怖・・・・・・・
なんだかタンクトップフレイ様みたいになってますが・・・・・
しかしアスランにフレイ様が理解してもらえたみたいでよかった。これで嫁姑問題は解決ですねって、あれ?(笑)

>>流離う
セラン、えらい清々しい!ここまで言い切れる彼女は素晴らしい。
まあ、会ったことのない親戚と兄弟のように過ごしてきた親友と比べてしまうのはキラには酷な気もしますが。
放送中「キラ、どうするんだ、はっきりしろ!!」って思った事は確かに一度や二度じゃないですねえ・・・

>>赤毛の虜囚
ミ、ミコトちゃんが!えっらい可愛いんですけど!!!
もうキラとフレイとミコトちゃんで三人で仲良く暮らしましょうよ、そうしましょう。
・・・って血迷ってしまう位、ミコトちゃんに萌えてしまいました。(汗)
幸せになってもらいたいものですねー。

>>明日と終わりの間に
カガリ一人称、中々いいですね。感じ出てます。
いやー、しかし・・・・カガリもですか・・・・そうですか・・・・・(爆笑)
アスランの一言に愛を感じますね。アスランはそれでも食べるのですね。頑張れアスラン!!
>>Last War
キラの成長を感じました。
今までのキラだったら、アスランを止めることまではできず、また苦しんでいたことでしょう。
続きが気になりますね。

>>キラ♀フレイ♂
キラの不信感が育っていると思ったのでほのぼのデート(未遂だけど)は意外でした。
まあまだそこまで不信感を抱いているわけでもないのでしょうか。
しかしカガリのシスコンっぷりは・・・・犯罪に走らないように注意、でしょうか。w

>>へリオポリス
フレイ様はまだキラへの想いに目覚めてはいないのですね。
うーん、ちょっとつらそうな感じ。

>>リヴァオタ
いつもリンクしているイラストや写真はご自分で調達してるんでしょうか。
すごいですね・・・・・

400ザフト・赤毛の虜囚 57:2004/05/05(水) 08:55
10.親友 1/8
[ジェシカとミーシャ]

私の前に座っている二人、ジェシカとミーシャ、二人とも私の親友。

「フレイ、いい加減白状しなさいよ」
「何よ、ジェシカ。何のことよ?」

「とぼけるんじゃないわよ、アンタの彼氏、サイのこと。どこまでいったのよ。もう、したの?」
「ジェシカ、サイとは、そんなんじゃ無いんだから」

「でも、今日会うんでしょ。今夜はホテルかしら」
「ミーシャ、そうだけど、今日はパパのパーティだし、私、パパと泊まるから。サイだって両親来てるし」

「ホントかな、二人抜け出して……」
ジェシカとミーシャが声を揃えて言う言葉に、私は癇癪を起こす。

「いい加減にしてよ、二人とも!」
私は置いてあるパフェをひっくり返さんばかりにテーブルを叩きつける。

ここは、ミナシロ市ショッピングモールの、とある喫茶店。ヘリオポリスの工業カレッジに
在学しているサイが、二週間の休みでオーブに帰って来る。家族ぐるみ、兄妹のように頻繁に
会っていたのに、ヘリオポリスに行ってから、長期の休みにしか会えなくなったサイ。
メールやビデオレターのやりとりはしてるけど、直接、会うのはやっぱり違う。サイに会いたい。
サイの表情を間近で見たい。パパの仕事のパーティが、ここミナシロ市で開かれ、サイも両親と
パーティに来るということで、私はサイと事前に、ミナシロのショッピングモールで待ち合わせをしたのだ。

ところが、それをジェシカとミーシャに気づかれた。結局、朝から呼び出され、買い物に
付き合わされた上に、質問責めにあっている。

私はサイとの約束で、婚約を隠しとかなきゃいけないから、いろいろと突っ込んで来る二人を
かわすのに大わらわ。私とサイとのこと、あること無いこと想像して、もう、なんてやつらよ。

「まったく、のんびりしてるんだからフレイは。ぼやぼやしてると、他に取られるわよ」
「別に、それで一生決める訳じゃなし、他にも男いるんだから、堅苦しく考えないでさ」

「一線越えちゃえば、男なんて変わるから。思い切って、こっちから言っちゃいなよ」
「やってみて気に入らなかったって、平気だから、お試し期間だと思って」

「私の彼なんて、あの後、まるで手のひら返したように態度変えたわよ。今までの奥手は何だったのよ」
「男なんて、いっぱい居るし、フレイなら、ちょっと着飾れば、みんな寄って来るわよ」

「お試しって、人のこと、なんだと思ってるのよ……」
私はミーシャの言葉に、後ればせながら、ぼそっとツッコムけど、まるで気づかないように、
二人はハイペースで、話し続ける。

そりゃいいわよ、二人とも男の子と付き合い上手だし。ジェシカなんて、何度、彼氏の話を聞かされたか。
もう微に入り細に入り、私、顔を真っ赤にして、まともに聞けなかった。ミーシャは、そこまで
いかないけど、結構もてるって。特に、港にあるイベント場では、そうらしい。他人を見る目も特別。
あの人と、あの人はデキてるとか…… 二人とも男なんだけど……

ジェシカとミーシャ、二人との付き合いは長いけど、私はなんとなく距離を感じる。
サイのこと隠していることもあるけど、どうも二人のノリには付いて行けない。基本的に自分が
面白がれば、みんな喜ぶと思っているのよね。要するに自分勝手。私だって、まあ、そんなところあるけど。
人が困ってるの察して話を聞くとかいう訳でも無い。別に、ジェシカとミーシャが嫌いだって訳じゃないけど、
これで親友って言えるのかな。

「もう行くわよ。パーティの前に、パパと待ち合わせしてるし」
「パパとだなんて嘘ばっかり」
「ちょっと、フレイ逃げる気、ちゃんと答えてよ」

サイが待ってるんだから、もう早く行かせてよ、二人とも……

401ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/05(水) 08:59
フレイSSの番外的な新章開始します。テーマは親友。さて、うまく書けているでしょうか。

>>過去の傷
ミリィはアスランに標的を変えても、フレイ様への敵視は変わっていないみたい。
アスラン、戦闘訓練では偉そうでしたが、フレイ様を認めてるんですね。よかったです。

>>散った花、実る果実
お久しぶりです。カーペンタリアに着いてからの話ですね。
ザフトのフレイ様に対する接し方も変わって、随分、打ち解けた雰囲気になっていて微笑ましいです。
だけど、ミリアリア・リスティアのように、まだ、戦争の目までは捨て切れていないのでしょうね。

402過去の傷・129:2004/05/05(水) 13:07
「そうなのよ!すごいでしょ、私あのキラと互角だったんだから」
夜の食堂だ、フレイは当然、キラ、カガリ、アサギ、マユラ、そしてラクスがいた。
ジュリはサイの部屋にでもいるのだろう。
それを入り口からミリアリアが見ているのだ。
実戦練習のことを自慢しているフレイを見て、ミリアリアは正直面白くなかった。
ふんなによ、どうせ練習なんでしょ、馬鹿じゃないの?キラが本気で戦うわけないじゃない、手を抜いたに決まってるでしょ、それに機体の性能のおかげに決まってるわ、それなのになんなのよあの女は、そこまでして自慢したいのかしら、まあフレイの思いつくことだわね。
「でもフレイ、君にそんな才能があったなんて」
と、キラがフレイを褒める。
ああ、やだやだ、いやになるわね、恋人同士褒め合っていちゃいちゃしてるわ、このバカップル。
「すごいですわフレイさん」
「ふふ、ありがとうラクス」
今度はラクスだ。
駄目、私はあの中に入ってはいけない、どうせ私が行ってもしらけて暗くなるのは分かってるもの、そしてフレイと喧嘩になるのも。
そう・・・ミリアリアはいつのまにか皆と距離が離れていたのだ。
特に気に入らないのが、フレイが輪の中にいるということ、ア−クエンジェルの頃とは立場が逆になってしまった、あの女がなんで皆と溶け込んでいるのよ、おかしいわ、こんなことがあっていいの?いいわけないわ。
あの女は悪い女なのよ?なのに・・・そうよ、もうここはア−クエンジェルじゃない、ト−ルはいない、去年は楽しかった、もう艦長はマリュ−さんじゃない、歌姫のくせに規則にいちいちうざいくらいうるさいラクス・クライン。
キラだってそう、もうキラはまるで私のことは忘れたみたいにフレイといちゃいちゃしている、少し私に裏切られたからもう私のこと忘れるなんて私に対する気持ちなんてその程度のものだったのよ。
ああ、もうここにいるのもいやになるわ。
私はフレイの顔も見るのがいやで食堂の入り口を後にした。
あいつ等なんか皆いなくなればいいのに・・・。
ト−ルがいないのになんであいつ等がいるのよ・・・。
あ、アスランさんは・・・?
ミリアリアは笑みを浮かべた。

「プロヴィデンスに問題なしと・・・」
コンピュ−タ−を打ち込んでいるアスラン。
「しかし、彼女にあれだけの力があるとは・・・しかしあのキラにな・・・」
そんなとき誰かが入ってきた。
「アスランさん、いたんですか」
ミリアリア・ハウだった。
「あ、ああ・・・」
「お疲れ様でした、疲れたでしょう?」
ミリアリアは座ると微笑んだ。
「いや、そんなに」
「私が癒してあげます・・・」
そして抱きついてきた。
「私を抱いて・・・」

403過去の傷・作者:2004/05/05(水) 13:29
>>散った花 実る果実
ラクス嬢に対してのフレイ様ですね、真実の彼女を見たフレイ様の感想が良かったです、フレイ様も少し見直した感じですね。
嫁姑・・・笑ったです。
>>ザフト・赤毛の捕囚
フレイ様の必死が伝わってきます、これはサイとのことですね、しかし・・・女の子はこんな話題が好きですからね、この頃はフレイ様もサイが好きだったのかもしれませんね。
それから親友をテ−マにした新章も期待させていただきます、これからも頑張ってください。
それにしても作者様は女性同士の会話が上手なんですね。

404散った花、実る果実42:2004/05/05(水) 21:16
隊員のお茶を入れ、洗濯をし、クルーゼ隊長の帰りを待つ毎日。
帰還命令が出たとはいえ、地球での仕事の後始末や、色々片付けなくてはならないことが多く、すぐには宇宙に出発することはできないようだった。
ラクス・クラインの演説により多少軟化された兵士達の反応によって私は救われていた。(主にそれは男性兵士によるものだった。男って、男って・・・ナチュラルもコーディネイターも一緒よね!)
気持ちが落ち着いてくると、周囲に対する好奇心も芽生え、許される範囲で歩き回ったり、クルーゼ隊長のデスクの引出しを見たり・・・ついしてしまっていた。まあ、軍事機密がこんなところに残っているはずもないのだけれど。

この薬・・・・・・一体なんなのだろう。
一日に何度も、彼はこの薬を口に運ぶ。
何か持病でも持っているのだろうか。
遺伝子操作により頑健な体を持っているコーディネイターが、何故・・・・・?
普段は健康を害している様子は見られなかったけど・・・

405散った花、実る果実43:2004/05/05(水) 21:17
プシューッ
無機質な音をたて扉が開く。
私はトレーに薬を乗せ、水差しからコップへと水をうつす。
「・・・・・どうぞ・・・・・・」
クルーゼ隊長の薬の時間はもうすっかり覚えてしまった。
捕虜である私が大して重要な仕事を任せられているはずもないので、薬の時間にはなるべくこの部屋に戻って用意するよう、心がけていた。
「あの・・・・宇宙へは、いつ・・・・・私も一緒に行くのですよね・・・・」
「今すぐというわけにもいくまいよ・・・・私にも、隊にもまだ、片付けねばならない仕事がある・・・・・地球に残る隊に任せられればそれに越したことはないのだが、例のアラスカ戦で大分人数を減らされたからね・・・人手不足は否めない、と言ったところか・・・・・」
捕虜である私に詳細が明かされることはないが、地球である仕事を済ませたら宇宙へ上がるように、との命令が下っているらしかった。
それにしても彼は私に軍の事情をしゃべりすぎている気がする。
私の信用を買うため?それとも逃げられはしないという安心感から・・・・?
「ラクス・クラインの演説は・・・・・皆に不安を与えているようですね・・・・」
「おやおや・・・・この間のテレビ演説だけを見て言っているわけでもなさそうだね・・・・君にそんなことまで言っている兵士がいる、という事かね?」
彼の口調にかすかな不快感が混じる。
「いえ・・・・そういうわけでは・・・・お茶を運んだりした時に噂話を耳にしただけです」
「ほう・・・・そうかね。時に君はどう思うね?」
私は彼の意図が読めず、問い返した。
「どう・・・・とは?」
「ナチュラルとコーディネイターは同じ種なのか。完全に決別すべきか、和解すべきか。まあ、君の父上のことを考えると・・・・おのずと答えが出てくるという気もするが。」
「父のことを・・・・ご存知なのですか」
意外に思ったが、すぐに当然のことだと気がついた。私は名前、所属共に隠してはいないし・・・・事務次官である父の名は、コーディネイターにも知られて不自然でないものであったから。
「ああ・・・・ブルーコスモスの一員としても活躍していた、とか。君もそれで地球軍に志願したのかね?」
・・・ブルーコスモス・・・?
「あの・・・・それはどういう・・・・・?」
すると彼は意外そうに答えた。
「知らなかったのかね。君のお父上はブルーコスモスに所属して、それなりに名をあげた人物だ。」
そう・・・だったの。だから、パパのあれほどまでのコーディネイターへの嫌悪・・・・・
「コーディネイターなんか大嫌いだったわ・・・・皆死んじゃえばいいって思った・・・・・」
気がつくと口をついていた、誰にもいえなかった私の心。
「パパが死んで・・・・守るって言ったキラが、大丈夫だって言ったのに、パパが死んで・・・・・キラは、戦って、戦って、戦って・・・そうやって死んでいくことしか許せないってそう思った・・・・・」
何故だか止まらなかった。パパの知らない面を聞かされたからかもしれない。周りに味方のいないこの状況に疲れてしまったからかもしれない。
何故だか私は言葉を止めることができなかった。
「なのに・・・・キラは優しくて・・・・馬鹿よ、キラは・・・・・・私、キラを許せないのに・・・許しちゃいけないのに・・・・なのに・・・・」
思考がぐるぐるまわっている。私、とっくにキラを許していた。キラにひどいことをした。
「いっぱい傷つけて、泣きながらキラは戦って・・・・守るって、私の言葉なんて嘘なのに・・・・あんなに傷つけたのに笑って、『帰ってから』って・・・それきり・・・・・・・」
ふと気がつくとすぐ目の前に白い軍服があった。次から次へと流れる涙はしみ一つ無いその軍服に吸われて水の跡を作り・・・・私は背中に暖かい腕を感じていた。
「フレイは、パパが死んだから、その復讐で軍に入ったのかね?」
「そうよ・・・・パパが死んだから、コーディネイターのキラのせいでパパが死んだなんて、許せなかった!キラも苦しめばいいってそう思った!私のためにコーディネイターを殺せばいいって・・・・でも・・・・・・・」
「でも?」
やさしく髪をなでながらパパが言う。
「パパ・・・ごめんなさい、私何もできなかった!自分で戦うことも、キラを利用しきることも!何もできなかった!ザフトに連れてこられても結局、死ぬのが怖くてザフト兵一人手にかけることもできなかった。ごめんなさい!ごめんなさい!!」
私は子供のように泣きじゃくり叫んでいた。
思えば軍に志願してからこんな風に心をさらけ出すことはできなかったのだ。
この人は私のパパではない、そんな声が理性の片隅でしたけれども、人の体温と髪を撫でる優しい手つき、そして何より穏やかなパパの声で、すっかり私は緊張の糸が切れてしまっていたのだった。

406散った花、実る果実44:2004/05/05(水) 21:18
────フレイ・・・私の大切なフレイ・・・・
パパの声・・・・一番大好きだった・・・・・・・
────コーディネイターは、極めて不自然な種だ。彼等は人より優れた能力が欲しいがために、利己的な理由で遺伝子操作を繰り返しているのだよ。
でもパパ・・・・子供は自分の産まれ方を選ぶことはできないわ・・・・コーディネイターとして産まれた彼等は・・・・それが彼等自身の責任ではなくても・・・それでも忌避されねばならないものなのかしら・・・・・・
────フレイ、私のフレイ。おまえは騙されているのだよ。みてごらん、コーディネイター達のナチュラルへの蔑視を。そして自らの子供にコーディネイトを繰り返す親のなんと数多いことか。
でもパパ・・・それで苦しんでいる人もいるわ・・・・・
────フレイ・・・・可哀想に・・・・・お前は惑わされているんだよ。可哀想に、こんな所に連れてこられて疲れているのだろう・・・彼等のあの化け物じみた能力を見なさい。あれがなんと不自然な事か。
そんな風に言っちゃいけないわ・・・だって・・・彼等はただ、自分の子供達に能力を、あるいは美しい容姿を与えてあげたかっただけ・・・・彼等も最初から傲慢な思想や欲にまみれてコーディネイトをしているだけではないのよ・・・・・
────フレイ・・・・それでも現状はコーディネイターによるナチュラルへの蔑視に満ちている。あのような不自然な生物に人間の歴史を乗っ取られても良いと言うのかね?否!それは許されるべきことではない。
パパ・・・パパ、やめて。そんな風にどちらかを全否定してはいけない。それじゃこの戦争は終わらない。こんな悲しみを増やしていくのはもうたくさんよ。もう嫌なの。誰かが泣くのは、つらい思いをするのは、もう嫌なの。
────フレイ、何を言っているんだい?誰よりコーディネイターへの嫌悪感を持っていたのは君じゃなかったのかね。ほら・・・・・

────コーディネイターの癖に、馴れ馴れしくしないでっ!!!

「嫌あっ!!」
飛び起きると全身にぐっしょり汗をかいていた。
夢・・・・なんてリアルな夢だったんだろう。
今なら分かる、アークエンジェルにいた頃の私がどんなにひどい言葉をキラに投げかけていたのか。
それでもキラは、偽りの私の優しさにすがらずにはいられなかった。
何故ならどんなに誤魔化そうとしても、コーディネイターであるキラの能力への羨望、嫉妬、恐怖・・・それはアークエンジェルの皆に歴然として存在するものだったから。そして、それを認めまいと、隠そうとする心の動きゆえに、彼等は逆に心のうちをキラにさらけ出すことになった。
だから・・・・一番コーディネイターを嫌っていた私の、それでも優しくしてくれる、という偽りの毒に、キラは手を出さずにはいられなかったのだ・・・

407散った花、実る果実/作者:2004/05/05(水) 21:27
こま切れになってしまってすいません。まとめて投下できなかったもので。
もしかして、以前より投下できる容量少なくなってます?

まず一つ、謝らなければならないことがあります。
すいません、昨日投下した分、時間軸を間違えまして、ラクスがまだエターナル手に入れてないのに略奪したことになっちゃってます。
>>398のリスティアのセリフの「戦艦を奪って離反」というのを「機密を奪って離反」という事にしておいて下さい・・・

>>赤毛の虜囚
新章ですね。カレッジ時代のフレイを見るのはほほえましくていいですね。
フレイの男女交際に対しての初々しさがいいですね。

>>過去の傷
ミリィ、本当に一時期のフレイ様のようになってしまっています。
彼女、大丈夫なんでしょうか・・・・・

408流離う翼たち・471:2004/05/05(水) 22:27
 だけど、それでも、この2人は強いとフレイは思った。いつも後ろ向きだったキラ。人に手を引かれなければ歩くことさえ出来なかった自分に較べれば、この2人の強さはフレイには眩しくさえある。差別や迫害を覚悟して何かをするなんて事は、自分には出来ないことだ。

「なんか、2人が羨ましいです」
「はい、何がです?」
「だって、とっても強いじゃないですか。私は弱いから、羨ましいです」

 フレイの言葉にボーマンとセランは顔を見合わせた。そしてセランが兄を指差してフレイに問いかける。

「強いって、この兄さんは少尉にボロ負けしましたよ?」
「ボ、ボロ負けって・・・・・・」
「違います、そういうのじゃないです」

 なんだか楽しそうにクスクスと笑うフレイの2人は顔を見合わせて首を捻っている。きっと2人には分からないのだろう。いや、分かるはずが無いのだ。この2人のほうが普通なのであって、自分やキラのほうがおかしいのだから。
 フレイはどう伝えたらいいのか分からず、自分の語彙の少なさに悩みながらも必死に言葉を探している。だが、フレイが何か言うよりも早く、セランが凄い事を教えてくれた。

「そういえば知ってますか。アルフレット少佐の奥さんもコーディネイターなんですよ」
「ええっ!?」
「あはははは、やっぱり驚きましたね。私も知ったときは驚きましたけど」
「で、でも、どうしてそんな事に!?」
「何でも、プロポーズしたのは少佐だそうですよ。何度も振られたけどしつこく食い下がってOKして貰ったって。奥さんは大西洋連邦に住んでたそうで、今はオーブに移り住んでるそうです」
「そうなんですか。少佐も大変だったでしょうね」
「そうみたいですね。でも、少佐は当時から結構凄い人だったそうで、奥さんの立場を確保する為にブルーコスモスの支部にまで乗り込んで文句を付けたそうです。一時期は命も狙われた事もあったそうですけど、遂に最後まで折れなかったそうで、ブルーコスモスや軍の上官の方が根負けしたって話です。まあ、少佐は軍の優秀なテストパイロットだったそうで、手放したくない上層部が我侭を聞き入れたという事みたいですが。当時はまだ抗争も今ほど酷くは無かったからというのもあるでしょうけど」

 セランの話にフレイは持っているフォークを落としてしまった。何というか、そこまで豪快に我が道を行くような人だったとは。まあ、そんな人だからこそこの2人を庇ったりキースを立ち直らせたりしているのだろう。

「セラン、そういう事は余り言うことじゃないだろ。少佐の奥さんは例外みたいな物なんだからな」
「分かってるわよ。条件を飲まなきゃテストパイロットを降りるなんて言って上層部を脅して、それを上層部が飲んだなんて無茶な事、少佐くらいにしか出来ないって事でしょ」
「いや、それだけじゃあないんだが、まあそういう事だな」

 ボーマンは妹を嗜めると、フレイを見た。

「まあ少尉、こいつの言った事は余り周りには言いふらさないでくれ。少佐もこれに関しては余り喋らないんだ」
「はい、分かってます」
「そうか、なら良い」

 フレイの返事を聞いて、ボーマンは食後のコーヒーを啜った。この話はこれで終わりなのだという意志の表れだろう。
 フレイは、アルフレットが自分をこの2人と引き合わせた訳がやっと分かった。世の中にはこういう奴も居る、という事を私に教えたかったのだろう。いや、自分はお前の悩んでる事をとっくに乗り越えてるんだぞとも言いたかったのかもしれない。それを自分でではなく、この2人に言わせたのも、この2人に言わせた方が私に受け入れ易いと考えてのことに違いない。
 もっとも、自分の考えすぎと言う可能性もあるが。

 だが、2人と話した事で随分気持ちがすっきりしたのは事実であり、アルフレットの計らいにフレイは感謝するしかなかった。だが、フレイの知らない所でアルフレットは更にとんでもない事を進めていたのである。

409流離う翼たち・作者:2004/05/05(水) 22:45
>> 過去の傷
ミリィがどんどん悪人に・・・・・・アスランピンチ?
何気にサイは1人安全圏に居る

>> 散った花、実る果実
お久しぶりです。そろそろカーペンタリアから打ち上げですか。
しかし、男は何処でも一緒なのかw! ある意味正直だ
クルーゼはパパを知ってたんですねえ

>> ザフト・赤毛の虜囚
これは、ミリィの秘蔵の品を拾う前の話ですね
この後サイが心に深い傷を負うシーンが来るのですか

>>

410『明日』と『終わり』の間に・おやつの時間・1/2:2004/05/06(木) 00:17
 その頃宇宙、EYES所属のアークエンジェル級第9番艦セラフィム艦内食堂にて

「あら、美味しい」
「・・・うむ、悪くはないな・・・」
「本当ですね。まるでお店で売ってるやつみたい」
「本当ですか?良かったぁ〜、皆さんのお口にあって!」

 艦のメンバー達は、ユフィーの作ったチーズケーキを頬張りながらその味に舌鼓をうっていた。・・・あ、今回は展開上語り役のカガリさんにはお休みして頂いていますのでご了承下さい。

「それにしても、ユフィーさんにこんな才能があったなんて、知らなかったわ」
「私、コロニーで暮らしてた頃はこうしてよくケーキやお菓子を作ってたんです」
「まぁこいつ、これぐらいしか能がありませんから」
「・・・そう言うお兄ちゃんにはハイこれ。辛子とタバスコと山葵をたっぷり練りこませた特製ケーキを・・・」
「そんなもんよこしてお前は俺をどーするつもりだ!?・・・しっかし、俺達今こんなのんびりしてる暇あるんですかね?ラインザフトやらブルコスとかいるのに・・・」

 こらこらクリス君、今回は番外編だからそーした細かいことは気にしないように!

「・・・今誰か何か言いましたか?」
「・・・さぁ?気のせいじゃないの?それにしてもホントに美味しいわ。ねっ、隊長もそう思いませんか?」
「全くだ。シーナ、お前も武術ばかりしてないで少しは見習ったらどうだ?」
「・・・C.E75、○月×日。隊長のセクハラ発言プラス1。・・・これで三日連続ね。そろそろエザリア様に報告しようかしら?」
「!なっ何メモってんだ貴様ぁ!!というか貴様と母上は一体どーいう間柄だぁっ!?」

 『The Last War』で出番が未だにやってこない二人が何やらもめ始めた頃、マリュ―はあることに気が付いた。

「・・・そういえばザラ大尉、さっきからずっと黙ったままだけど、どうかしたの?」

 そう、実は先ほどから彼らと共にケーキを食べていたアスランだったが、一口食べたっきり下を俯いて一言も喋ろうとはしていなかった。

「・・・あのアスランさん。もしかして私のケーキ、美味しくありませんでしたか?」
「・・・・・・」
「おいアスラン!ユフィーが不安げにしてるぞ。せめて何か一言言ってやれ!・・・って貴様、震えてないか?」

 イザ―クの言葉通り、よく見るとアスランの体は小刻みに震えていた。そのことに気付いたクリスが声を上げた。

「・・・ハッ!まさかユフィーお前、間違えてアスランさんに例の特製ケーキを・・・?なんてことしたんだよ!!」
「そんなのホントに作るわけないでしょ!マタベー、お兄ちゃん噛んじゃって!!」
「ニャ―ッ!!」
「じゃあなんでアスランさんがこんなに震えてるんだよ!?・・・あ、痛い!すっごく痛い!ごめん、謝るから止めさせて!!」
「・・・艦長、これはもしや・・・」
「・・・ええ、まさかと思いたいけど・・・」
「?」

 アスランの様子、そしてその場にいた艦の古参メンバー達の表情に重苦しい雰囲気が漂い始めたことに、ヒースロー兄妹は疑問形で激しく進行中だった。その時、アスランが突然顔を上げた。そして次の瞬間・・・。


「・・・美味い・・・」

411『明日』と『終わり』の間に・おやつの時間・1/2:2004/05/06(木) 00:19
 その頃宇宙、EYES所属のアークエンジェル級第9番艦セラフィム艦内食堂にて

「あら、美味しい」
「・・・うむ、悪くはないな・・・」
「本当ですね。まるでお店で売ってるやつみたい」
「本当ですか?良かったぁ〜、皆さんのお口にあって!」

 艦のメンバー達は、ユフィーの作ったチーズケーキを頬張りながらその味に舌鼓をうっていた。・・・あ、今回は展開上語り役のカガリさんにはお休みして頂いていますのでご了承下さい。

「それにしても、ユフィーさんにこんな才能があったなんて、知らなかったわ」
「私、コロニーで暮らしてた頃はこうしてよくケーキやお菓子を作ってたんです」
「まぁこいつ、これぐらいしか能がありませんから」
「・・・そう言うお兄ちゃんにはハイこれ。辛子とタバスコと山葵をたっぷり練りこませた特製ケーキを・・・」
「そんなもんよこしてお前は俺をどーするつもりだ!?・・・しっかし、俺達今こんなのんびりしてる暇あるんですかね?ラインザフトやらブルコスとかいるのに・・・」

 こらこらクリス君、今回は番外編だからそーした細かいことは気にしないように!

「・・・今誰か何か言いましたか?」
「・・・さぁ?気のせいじゃないの?それにしてもホントに美味しいわ。ねっ、隊長もそう思いませんか?」
「全くだ。シーナ、お前も武術ばかりしてないで少しは見習ったらどうだ?」
「・・・C.E75、○月×日。隊長のセクハラ発言プラス1。・・・これで三日連続ね。そろそろエザリア様に報告しようかしら?」
「!なっ何メモってんだ貴様ぁ!!というか貴様と母上は一体どーいう間柄だぁっ!?」

 『The Last War』で出番が未だにやってこない二人が何やらもめ始めた頃、マリュ―はあることに気が付いた。

「・・・そういえばザラ大尉、さっきからずっと黙ったままだけど、どうかしたの?」

 そう、実は先ほどから彼らと共にケーキを食べていたアスランだったが、一口食べたっきり下を俯いて一言も喋ろうとはしていなかった。

「・・・あのアスランさん。もしかして私のケーキ、美味しくありませんでしたか?」
「・・・・・・」
「おいアスラン!ユフィーが不安げにしてるぞ。せめて何か一言言ってやれ!・・・って貴様、震えてないか?」

 イザ―クの言葉通り、よく見るとアスランの体は小刻みに震えていた。そのことに気付いたクリスが声を上げた。

「・・・ハッ!まさかユフィーお前、間違えてアスランさんに例の特製ケーキを・・・?なんてことしたんだよ!!」
「そんなのホントに作るわけないでしょ!マタベー、お兄ちゃん噛んじゃって!!」
「ニャ―ッ!!」
「じゃあなんでアスランさんがこんなに震えてるんだよ!?・・・あ、痛い!すっごく痛い!ごめん、謝るから止めさせて!!」
「・・・艦長、これはもしや・・・」
「・・・ええ、まさかと思いたいけど・・・」
「?」

 アスランの様子、そしてその場にいた艦の古参メンバー達の表情に重苦しい雰囲気が漂い始めたことに、ヒースロー兄妹は疑問形で激しく進行中だった。その時、アスランが突然顔を上げた。そして次の瞬間・・・。


「・・・美味い・・・」

412『明日』と『終わり』の間に・おやつの時間・2/2:2004/05/06(木) 00:19
「・・・アスランさんが・・・」
「・・・泣いてる・・・」
「・・・やはりな・・・」

 アスランは嗚咽を漏らし、目から涙を流しながらケーキに噛り付いていた。この時ヒースロー兄妹は自分達の思考回路が一瞬ストップしたことを確かに感じたという。そして再び機能が回復した時、二人はデータの解析が間に合わず混乱していた。

「・・・う、美味い。・・・美味い。・・・美味いぃ、うううっ・・・」
「・・・え?・・・えっ!?・・・ええーっ!?」
「これ何!?どーいうこと!?っていうよりもこの人本当にアスランさん!?」
「落ち着け。これはこいつの持病みたいなものだ・・・。シーナ、医務室から鎮静剤を貰って来い」
「了解です」

 明らかにキャラが変わってしまったアスランの様子に戸惑うこともなく、イザ―クは冷静でやけに場慣れしている様子だった。・・・というよりもその場にいた全員がそうだった。

「『持病』ぅ!?これ病気なんですか!?確かにいつものアスランさんじゃないことは見れば分かりますけど・・・」
「医師の診断によると、かなり特殊な味覚障害らしいの。分かりやすく説明するなら、食べ物を口にした際に脳が『美味しい!』と判断した瞬間に彼の理性のリミッタ―が外れるそうよ?」
「・・・はぁ、そうなんですか・・・?」

 説明を受けてもやはりポカーンとしている二人。目の前の現実は、彼らがこれまで築き上げてきたアスラン像をこなごなに破壊するには充分なものだっただけに、無理はない。

「・・・あの、もしかして昔からこうだったんですか?」
「いや、俺達がまだザフトに所属していた頃は、まだ大丈夫だった。だが、俺とシーナがEYESに出向してきた時には既にこうだったな・・・」
「そういえば、彼がこうなり始めたのは確か・・・。そうよ!彼が仕事でオーブに2週間ぐらい滞在して、帰ってきた頃にはもうこんな様子だったわ!」
(・・・いっ、一体その間に何が・・・?)

 その時アスランがどのような食生活を送ってきたかなど、二人には想像もつかなかった。ただ一つ分かることは、その時アスランにとって決して良かったとは言えないような出来事があったということだった。

「・・・だが、これでも随分マシになったほうだ。俺達がセラフィムに合流した頃には何を食わせてもこうなってたからな。だが、まさか再発するとは・・・、っておいアスラン!俺の食いかけを食うなぁ!!」
「!あ、あの!まだたくさんありますから!!」
「よっ、良かったら俺の分もどうぞ!!」
(・・・あの二人が哀れみの視線を送ってるわ。・・・ザラ大尉、貴方それでいいの・・・?)

 理想と現実の間にある冷たさを感じながら、幼い二人はまた一歩大人に近付いていった・・・。

413『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/06(木) 00:41
 すいません、また不覚にも二重投稿を・・・。
 色々ありましたが、この番外編も次回でラストです。

》赤毛の虜囚
 ジェシカとミーシャ、思い返せばフレイ様はこの二人と一緒に登場したんですよね。何だか懐かしいです。フレイ様を加えた三人の仲の良さが伝わってきました。
 あれから彼女達はどうなったんでしょうか?脱出出来ずに死んじゃったとかいう噂を聞きましたが・・・。

》過去の傷
 ミリィが孤立し始めていますね。周りは全て敵だとか思ってそうです。そして続くアスランへの誘惑。君は負けるなアスラン!

》流離う翼たち
 大切な故郷を守りたいというセランさんとボーマンさんの気持ち、何だか共感できます。フレイ様も彼らから学ぶことは多いのでは?
 それとアルフレット少佐の奥さんはコーディネイターだったんですね。周りから奥さんを守り抜こうとした様子がカッコイイです。

》散った花、実る果実
 お久しぶりです。お待ちしていました。
 実はずっとフレイ様達は宇宙にいると思ってましたので、ラクスが演説していることでまだ地球にいることを知りました。すみません。
 コーディネイターとナチュラル、二つの種の考え方はこうも違うものなんですね。何だかもう一度考えさせられます。それにしてもクルーゼの台詞の表現がお上手ですね。雰囲気がよく出ていると思います。自分はこういった悪役の台詞を考えるのが苦手なもので・・・。

414ザフト・赤毛の虜囚 58:2004/05/06(木) 05:41
10.親友 2/8
[一体、どんな人なんだろう]

その時、喫茶店に、新しい客が入ってきた。私と同じくらいの歳の学生らしい女性。

「待ち合わせで、すぐ出るので、水だけでいいですか」
「そう言う訳には参りません。何か注文してください」

「一番安いのなんですか」
「ブレンドです」

「じゃ、それください」

ウエイトレスとの、やりとりを聞いて、ジェシカとミーシャは興味を示したように囁きだす。
私も、あまりいい気分はしなかったけど、陰口みたいに囁くのは、逆に悪いと思い、わざと
ジェシカとミーシャに話しかける。

「なんか、見てて、いやらしいわね。ああいう言い方」
「ビンボなんだから、悪いわよ。そういうの」とジェシカ。
「そもそも、こんなとこに来るのが悪いんじゃない」とミーシャ。

「まあ、そこまで言うことは無いけど。ちょっと、あまり好ましくないわね」

二人の興味が、この人に移って、私への追求は逃れられた。おかげで助かったのはいいけど、
明らかに悪意のある二人の言い方に、気がとがめて、ちょっと弁護するように話をする。
女性の後ろ姿は、私達の声が少しは聞こえているだろうに、わざと気が付かないかようにしている。

その様子に、私は、別の興味を惹かれていた。私なら、こんなこと言われてたら、すぐに
席を立って逃げて行くだろう。私は、小さい頃からパパに我が侭を聞いてもらって育ったせいか、
自分でも、堪え性が無いと思う。ちょっとでも、辛いことがあると、すぐに逃げ出してしまう。
なのに、この人は、私達の話が聞こえているはずなのに平気な素振りだ。この人って、強いのか。
それとも、単に、ずぶといだけなのか。

やがて、立ち上がろうとするジェシカとミーシャ。

「じゃ、行くわね、フレイ。パフェごちそうさん」
「んじゃ、私も、頼むねフレイ」
「ちょっと、ちょっと、二人とも。私、オゴるなんて一言も……」

「それじゃ、デートがんばってね」
「後で、ホテルの得点聞かせてね」
「ちょっと、そんなんじゃ無いって言ったでしょ。パパの仕事のパーティなんだから」

「分かった、分かった。じゃね」

二人は、誤魔化すように出て行った。あーあ、結局、また、私が払うことになるんだから。
まったく、人の気持ちも知らないで、茶化してばっか。これから会うサイに、どんなこと話そうか、
まだ、何も考えてないのに。どうすれば、サイに自分の気持ちを伝えられるか、相談できる人が
居ればいいのに……

私は、ぼんやりと、背中を向けているさっきの女性に目を向ける。セコイことを言っていたけど、
別に身なりが悪い訳では無い。ファッションセンスはダサいけど、酷いってほどでもない。
ヘアスタイルは、ふわっと広がった感じで、凝ったものでは無いけど、それなりに手入れされている。
男の子にも普通に、もてるだろう。いや、こういった素朴な子の方が、男の子の印象はいいかも
しれないし、自然な付き合い方をしているのかもしれない。

なんだか、その女性に話をしてみたくなる。サイとの付き合い方、サイに何を話したらいいのか、
相談してみたくなってくる。そして、彼女のことも聞きたくなってくる。なんで、わざわざ、
目立つことを言って、平然としていられるのか。何か、心に強いものを持っているのか。
一体、どんな人なんだろう。

415ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/06(木) 05:50
今回の話、前作「オーブ……」のころの懐かしい台詞も、ちょこっと入れてます。
連休も終わるというのに、この投下ラッシュに嬉しい悲鳴です。

>>過去の傷
ミリィとフレイ様の立場、あのトール初陣のころの食堂でのやりとりと逆転してますね。辛いです。
さて、ミリィ再びの色気攻撃、アスランに通じるんでしょうか。

>>散った花、実る果実
クルーゼのパパの声、クルーゼの話すパパのブルコスの話が、フレイ様にコーディネータについて、
キラとの関係について考え直させていますね。ドラマが格段に厚みを帯びてきていて凄いです。
私のSSも、後から同じ時点を通るので頑張らないと。

ラクスのこと、訂正了解しました。最初、意図的に順序入れ換えしたのかと思っていましたが、そう言えば変ですね。
私などは、自分の話の都合で、順序入れ換えを結構やっているので、読んでいる方はややこしいかもしれません。

投下量の件、私も一度、システム変更の時に、大きいサイズが書込めなくなって、したらばのサポートさんに直していただきました。
その時の話は避難所にも書込んでいます。1レスの最大量については、以前と変わっていないとは思うのですが、HTML化の部分も
変化があるのかもしれません。最近は、2ch で知った kie.exe というアウトライン・プロセッサで
1レスのサイズを計りながら書いています。

>>流離う翼たち
アルフさん、最初、フレイ様を見て突き放すような態度を見せたのは、こんな理由があったからなんですね。
心暖まる話ですが、オルセン兄弟が言うように、あまり、おおっぴらにできない話であるのも事実でしょう。
話してくれたのは、フレイ様が見せた力ゆえですかね。しかし、アルフさん、この上に、まだ奸計をはかっていますか。
フレイ様、自分で言っていますが、手を引かれるのを脱すべき時ですよ。

>>『明日』と『終わり』の間に
アスランの状態に何事かと思ったら、前の話と、そう繋がるのですか。笑いました。
セラフィムのメンバーの、ほのぼのぶりも良かったです。番外編ラストも期待しています。

416過去の傷・130:2004/05/06(木) 09:29
少し見とれるというよりこんな可愛い子に抱きつかれたら男なら誰でもだろうが(イザ−クは分からんが)幸せな気分だろう、しかし・・・(アスランが信じて戦うものはなんですか?軍の勲章ですか?お父様の命令ですか?)
(ラ、ラクス!?)ラクスを思い出し慌ててアスランはミリアリアを離す。
「君はおかしい、なんのつもりか知らないが・・・」
「アスランさん・・・?」
アスランは目を下に向けると告げた。
「俺は・・・君の大切な恋人を・・・知らなかったとはいえ殺した男だ、それなのに君は・・・」
「だからなんです」
「え!?」
アスランが驚いたようにミリアリアを見る。
「アスランさんはト−ルの為にも私を大切にしなきゃいけないと思います、それはアスランさんの義務ではないですか?、私はそう決めましただから・・・」
「義務・・・いやしかし俺には婚約者が!」
「アスランさんは殺した人の恋人を見捨てるんですか?そんなのは不公平だと思います、ラクスさんとは別れるべきです、ラクスさんとは縁を切ってください」
「!」
ミリアリアは笑みを浮かべた、苦しんでよね、そして・・・死んで、結婚して・・・幸せの絶頂のときに殺してあげるわ。
「それは・・・出来ない、ラクスとのことは親が決めたことだ・・・たしかに父上はお亡くなりになられた、しかし意思はそのままだ、だから・・・母上・・・それに俺はラクスが好きだ、愛している・・・だから・・・」
「お母さん?・・・構いません、でも・・・一緒に戦わせてください」
こいつマザコン?フレイはファザコンだけど・・・でもいいなにもかも、この男が苦しんでいるのを見るのは楽しい、私にとっては一番癒されるわ、私この男の涙を見たい。
「アスランさん・・・」
アスランを優しく抱きしめる。
アスランが驚いた顔でミリアリアを見上げる。
「戦うわ・・・」
「戦う・・・?」
「はい、心から・・・貴方と共に・・・私の想いも・・・」
そしてミリアリアの唇がアスランの顔に近づいた。
そしてアスランも無我夢中で、ミリアリアの色気の前に・・・アスランはミリアリアを押し倒した。
これでいいわ、この男に抱かれよう。

フレイはコ−ディネイタ−嫌いが解消しつつあるようだ。
ワガママお嬢様はあいかわらずだがフレイ自身も成長はしつつあるのだろう。
コ−ディネイタ−であるキラを好きになったというのが大きい、ラクスにも打ち解けてきた。
「ラクス♪」
「あ、あの・・・困ります」
「いいじゃない、私達の部屋も大部屋にしてよね、それからシャワ−室もっと大きくならない?それから今日泊まらせてもらうわよ」
キラが慌てる。
「フレイ!?ラクスさんの部屋に泊まるってどういう・・・そんな」
「朝言ったじゃない、私の部屋に戻るのは明日からだって、一日私がいないからって寂しがらないの」

417ザフト・赤毛の虜囚 59:2004/05/07(金) 06:23
10.親友 3/8
[親友なんてとんでもないわ]

ぼうっと考え事をしていた私は、ふと時計を見て、サイとの待ち合わせの時間が近づいて
いることに気がついた。慌てて日焼け対策の帽子とサングラスを掛けて席を立つ。
たくさんある買い物の紙袋を持って、その女性の脇を通り抜ける。
ちょっと、顔を覗きこもうと視線を女性に向ける。その時、……

紙袋がコーヒーカップに触れた。カップが跳ねる。隣の水の入ったコップが倒れる。

「や、何よ!」
コーヒーカップの跳ねた雫が、サイに見せようと着てきた、お気に入りの白い上着に跳ねた。

「ちょっと、上着にコーヒーの雫付いちゃったじゃない。どうしてくれんのよ」
私は、お気に入りを汚されて、ヒステリックに声を上げる。慌てて、ハンカチで雫をふき取ろうとする。

「冗談じゃ無いわよ。こっちこそ、水かけられて、いい迷惑だわ」

その、もの言いに、私は思わず言い返してしまう。
「これ高いのよ。染みになったら、どうすんのよ。ああ時間だ。まったく、何て災難かしら」

私は、女性の顔も見ずに、荷物を拾うと清算に向かった。

「こら、ちょっとくらい謝りなさいよ。ちょっと!!」
その女性は、私に向かって叫んでいる。私は無視して喫茶店を出た。

結局、染みのついた上着は、サイに見せられなくて、帽子とまとめて、コインロッカーに
放り込まざるをえなかった。おかげで、サイとの待ち合わせにも遅刻するし……
何よ! もうちょっと言い方あるじゃない。嫌な子。
サイのこと相談しようとも思ったけど、とんでもないわ。

でも、その子の酷さは、それだけじゃ無かった。間違って持ってきた、その子のものらしい紙袋。
手がかりになるかと思って、包みを開けてみた。その中身は……

いやらしいマンガの本。
まさか、ジェシカの言ってた彼氏とのあれやこれやって、こんなことするの……
ミーシャの言う、あの人と、あの人はデキてるって、こういうことなの?
わー わー わー!!

「フレイって、そういうの趣味だったんだ」
「ちょっとサイ、違うのよ。これは違うの。私、こんなの知らない」

そうなの、私は、もっともっと純粋に…… サイのことが……

「いや、いいんだよ。そういうのよくあるし。別に構わないよ。俺も、まさか、
 フレイがそうだとは思わなかったけど…… ちょっと見せてよ……
 へえ、凄いな…… フレイ、こんなので興奮するんだ」

カチン!!

「サイ〜、私のこと、そんな風に思ってた訳…… サイなんて嫌い!!」

パチン!!

嘘、嘘…… サイに怒っちゃった。喧嘩しちゃった。
もう、何よ、あの女。全部、アイツのせいよ。親友なんてとんでもないわ。嫌いよ嫌い!!
もう思い出したくも無いわ。

* * *

その数日後、ジェシカとミーシャに会ったときの会話。

「どう、フレイ? サイのどうだった。大きかった?」
「今度、港のイベント会場来ない。うちの男共紹介するから、彼氏持参でカラオケ・ハウスに
 篭って、アレコレ騒ごう」

「二人とも、ほっといてよ!」私は大声で怒鳴りちらす。

サイに謝るキッカケに人が悩んでいるのに、こいつらはもう!!
ああ、本当の親友が欲しい。なんでも、私のこと相談できる、本当の親友が……

418ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/07(金) 06:26
とりあえず、ミリィSSミナシロ編とのリンクは一段落。この後、もう一回くらい別の箇所をリンクして
使いまわす予定です。

>>過去の傷
ミリィ黒いぞ。そして、とうとうアスランも…… まさか、アスランも、誰かみたいに、マザコン呼ばわりされるとは。
フレイ様は、余裕が出てきてワガママぶりも復活。ラクスと仲が良いのはいいけど、カガリは、ほったらかし? かわいそ。

419過去の傷・131:2004/05/07(金) 10:59
アスランも自分自身が分からなかった、エリ−トだった、ザフトでもクル−ゼ隊に所属し、それなりに成果を上げてきたつもりだ、父上にラクス・クラインとの婚約の話も持ち出されこの17年間いい人生を歩んできた、キラのこと意外は。
それなのに自分は今・・・。
気がついたらミリアリアと寝ていた。
シ−ツの中に自分とミリアリアが二人でいることさえ気がつくのに時間がかかった。
なぜ?初めての体験だ・・・生まれて初めて、なぜ自分はこんなことをしているのか?自分は・・・なぜ?婚約者がいるのに自分はなんで・・・。
ミリアリアがそのアスランの様子を見て笑みを浮かべていることさえ気づかなかった。
成功だわ、この男と寝ることに・・・え!?
「すまない!」
アスランはベッドから起き上がるとミリアリアに頭を下げた。
「黙って出て行ってくれないか、ほんとにすまない!俺はどうかしてて・・・ほんとはキラとラクスとカガリとフレイ・アルスタ−、エザリア・ジュ−ル以外の人間には興味ないんだ」
ミリアリアは黙って起き上がると服を着始めた。
「アスランさん、やめてください・・・私いいかげんな気持ちでアスランさんと・・・だから・・・それにもう私達関係を持ったんですから今更それはないと思います・・・」
「分かるだろ!?ラクスに見つかったら俺だけじゃなく君もただではすまないんだぞ!」
「そんなことは関係ありません」
そう言うと抱きつく。
アスランは絶望する。

「キラ君、このあと予定ある?」
アサギに問われ。
「え・・・?フレイもいないし暇だけど」
「ねえねえ!なら・・・部屋に上がってもいい?」
「え!?それは・・・ひ!?」
答えようとして言葉につまる、フレイが物凄い形相でキラを見ているのだ。
「キラ、浮気は許さないわよ、て・・・なにこの子達となれなれしく話してるのよ!」
フレイの嫉妬深さはある意味異常である、キラが他の女の子と話してるだけですぐ怒り出す、カガリのときもそうだった。

「いままで意地悪したりしてごめんね」
「いえ、いいんです」
一時間後、ラクスの部屋に泊まることになったフレイだが・・・。
「あ、私ちょっとアスランに会いに行きます」
「アスランさん?」
「はい」

420散った花、実る果実45:2004/05/07(金) 22:18
私の悲しみとは別のところで、日々は風のように過ぎ去ってゆく。
「フレイ!あのね、私、今まで程あなたの面倒を見れないかもしれないの」
何故か嬉しそうにリスティアは言う。
「どうしたの?私の面倒見ないことがそんなに嬉しい?」
意地悪な気持ちも手伝ってそう問い返したけれど、今は彼女がそんな冷たい人間ではないということを知っていた。
彼女はナチュラルを知らないだけだ。・・・以前の私がコーディネイターを知らなかったように。
知らないことでナチュラルとコーディネイターへの溝は、なんと深く刻まれたことだろう。
なんて悲しい戦いが、そのせいで起こったのだろう。
「違うわよ!そうじゃなくて!私、実戦に出られることになったの!」
思ったとおり、私の問いを否定して、彼女は全身で喜びを表している、けど・・・実戦って・・・
「嫌だ・・・実戦って・・・危ないじゃないの・・・・・死んじゃったり・・・怪我でもしたらどうするのよ・・・・」
おびえた私に、リスティアは諭す様に続ける。
「いやあね、何言ってるの。コーディネイターである私が、ナチュラルになんて遅れをとるわけないじゃない。それにね、最初だし、そんなに危険な任務ってわけじゃないのよ?地球での小競り合いをある程度鎮めておかないと、宇宙に出るとき、邪魔になるでしょ?それで少し叩いておこう、ってわけ。大した戦闘じゃないのよ」
彼女はそういうけど・・・・・・『帰ってから』そう、何でもない事のように言ってそれきり帰らなかったキラの思い出が胸をつく。
戦場に出るからには確実に無事に帰ってこられる保証なんて誰にもできないのに。
「でも・・・・・・」
「それにね。私は軍人なの。プラントの皆のために戦えるってことを、とても誇りに思っているのよ。あなたはナチュラルだから共感はできないかもしれないけど・・・・でもこれが私の仕事なの」
リスティアは、もう自分のできることが何か、見つけたんだ。
私がまだ、見つけられずにいるもの。自分の存在意義。自分のなすべきこと。
「そう・・・・おめでとうって、言ってあげるべきなのかしらね」
「そうよ!だからあなたももうちょっとしっかりしてね。私が付いていなくても大丈夫なくらいに」
そう言って晴れがましく笑う彼女の顔は生き生きしていて、彼女を応援しなくちゃって、そう思った。
「怪我なんかして帰ってきたら笑ってやるからね。まして、もし帰ってこなかったりしたら、末代まで語ってやるから。だから無事に帰ってきなさいよ。あなたの分まで仕事とっといてあげるから」
そう言って、彼女の無事を祈る。今の私にはその程度のことしかできなかった。
でも彼女には、キラのようにいなくなって欲しくはなかった。どうか彼女に何事もありませんように・・・・

421散った花、実る果実46:2004/05/07(金) 22:19
リスティアを心配する私を気遣ってか、それともナチュラルの捕虜なんて大して意識もされていないのか、私はリスティアの戦闘の様子を時々見せてもらう事ができた。
彼女が「さして危険な戦闘ではない」と言ったのは偽りではないらしく、その多くは小さな小競り合い、といった風情だった。
「ナチュラルも馬鹿だよなあ・・・俺たちに敵うはずも無いのに」
戦闘を見ながら、おそらく私の見張り役を任されているのだろう男性兵士が言った。
目を向けると軽蔑もあらわに言葉を続ける。
「お嬢ちゃんもナチュラルだっけか?わかるだろう。ナチュラルがコーディネイターに敵う訳が無い。産まれ持った能力が違うんだから」
その言葉には反論の余地はなく、私は黙ってモニターへ視線を戻した。
「ミリアリアも隊長も甘い扱いをしているらしいが、これが俺たちの情けだって事を忘れないで貰いたいね。本当ならお前はこんなところで自由に過ごせる身分じゃないんだから。まあ隊長が何を考えているのか知らないが、俺たちはお前を認めたわけじゃないぜ」
反応しない私にかまわず彼はなおも続ける。
「ナチュラルなんか生かしておいても意味はないが、お前一人ここにいても何もできるはずがないからな、だから殺されないだけだ。お前はここにいるべき人間じゃない、そう思っている人間は少なくはないぜ。わかってるんだろう、それくらい」
「だから何よ」
思わず私はそう答えてしまっていた。
「生意気なんだよ、ナチュラル風情が。大きな顔して歩いてるんじゃないよ。少しばかり甘やかされたって、それで認められたと勘違いされたら敵わないからな。何しろナチュラルは馬鹿だから。」
むっとしたが、こんな男をまともに相手にするのも馬鹿馬鹿しいと思い、それ以上相手にする事をやめた。
ただ・・・・今でも私に敵意を持っている人が多いのは、確かにそうかもしれない。最近軟化してきた皆の態度や打ち解けてきたリスティアとのやりとりですっかり油断してしまっていたけれども・・・・・
でも、こうしていて、敵意のこもった視線を向けられることが少なくないのも確かだった。

それでも私の行動が制限されることはあまりなかったし、向けられる敵意も耐えられない程のものではなかった。
たまに話し掛けられてちょっとした会話をすることは私にも慰めになったし、リスティアの仕事ぶりを見ることはやはり励みになったから。
そう、頑張っているリスティアを見ることは楽しかった。
最初の頃の肩に入っていた力が抜けてきて、誇らしげに自分の仕事を語る様子には羨望を覚えた。
でも、プラントからの放送で、ラクス・クラインの叛意が自らの意思ではなく、ナチュラルに騙されてのものだ、という演説が始まってからは、私への視線も少しずつ厳しいものへと変わっていった。
そんな時だった、非常事態を知らせるベルが鳴り響き、リスティアの所属する部隊が帰ってきたのは。

「何があったんですか!?」
その辺にいるザフト兵を捕まえても忙しそうにするばかりで中々教えてもらえない。
「あの・・・・!」
とても仲良くはできそうにないが、いつも私の見張り役としてついていたあのザフト兵の顔を見つけ、私は必死に彼に訊いた。
「何があったの?今帰ってきたのはリスティアのいる部隊でしょう?今の非常ベルは何?」
「うるさいな!」
邪険に扱われたが、ここで頑張らないと事態を把握することができない。私はもう一度必死に彼に詰め寄った。
「お願い、教えて!どうなってるの!?」
「じゃあ教えてやるよ!今回の作戦は何があったのか大きな負傷者が出たんだ。それが誰だか教えてやろうか。お前の面倒を見ていたミリアリアだよ!」
ミリアリア・・・嘘・・・・・・
「まったく、あれだけナチュラルの面倒をみて、それでこんな怪我をして帰ってくるなんざ、ミリアリアもいい面の皮だな。恩をあだで返されるって言うのか・・・・おい!どこ行く気だよ!」
私は思わず駆け出していた。帰還したばかりだということは、きっとまだモビルスーツのデッキにいるか、医務室へと向かう途中に違いない。
ミリアリアの様子を、確かめなくちゃ・・・・・・・
────そうしてモビルスーツデッキへたどり着いた私の見たものは、コックピット周辺が異様に変形しているジンと、そこから運び出されたばかりのぐったりとして生気の無いミリアリアの姿だった。

422散った花、実る果実/作者:2004/05/07(金) 22:34
・・・ちょっととんでもない所で止めてしまったかも・・・・・
週末は外出してますので、週明けに続きを投下します。

>>流離う
アルフレット・・・素敵だ・・・・・・
フレイ様やキラにもこういう図太さがあったらもうちょっと人生楽なんだろうけど、やっぱり彼等はそういう器用な生き方はできないんだろうなあ・・・・

>>明日と終わりの間に
いやー、いいですね!こういうコメディー風の話。
作者さんのつっこみが絶妙で笑えました。
アスラン・・・哀れな・・・・・でもまあ、彼らしいと言えば彼らしいですかねー。

>>赤毛の虜囚
やはりミリィの同人誌を拾ったのはフレイ様だったのですね。
しかしサイ・・・・物には言い様が・・・・(笑)
フレイ様の彼に対する扱いも哀れと言えば哀れですが、まあ自業自得かな。

>>過去の傷
>ほんとはキラとラクスとカガリとフレイ・アルスタ−、エザリア・ジュ−ル以外の人間には興味ないんだ
・・・ええええーー??
ある意味ストライクゾーン広いような気もしますが・・・・アスラン・・・・どの道君は絶対絶命だよ・・・(文字通り)

423散った花、実る果実/作者:2004/05/07(金) 22:36
>>赤毛の虜囚
投下容量の件、ありがとうございました!
新規規格でどの程度か様子をみながら投下量を決めていこうとおもいます。

424流離う翼たち・472:2004/05/07(金) 22:52
 キラとカガリがナタルに呼び出されたのは、その日の昼頃であった。呼び出しを受けた2人はここ最近の行動を思い返し、何か落ち度があっただろうかと首を捻っている。何しろナタルに呼び出されるという事は、何らかのお説教を受けるという事だからだ。
 だが、2人の予想に反してナタルは2人を叱ったりはしなかった。ナタルの家のリビングには何故かキースもおり、入ってきた2人に右手を上げて挨拶してきた。

「よお、来たか2人とも」
「キースさん?」
「何の用なんだ、一体?」

 キラとカガリは良く分からないという顔を向かい合わせながら、勧められるままにナタルの部屋にある椅子に腰掛ける。そしてキースはいつもより少し暗めの表情でキラとカガリを見た。

「さてと、いきなりハードな話になるが、覚悟はいいか? まあ、決まって無くても言うけどな」
「「聞いた意味が無い!!」」

 キースの断りにキラとカガリが同時に突っ込みを入れた。そして言った後に何故かカガリとキースとナタルが驚いた顔でキラを見ている。キラは集まった視線に何だか居心地が悪そうに身動ぎした。

「あ、あの、何か?」
「いや、キラがツッコミ入れたの初めて見たからさ」
「お前にもそんな感性があったんだな。てっきり受け専門かと思ってた」
「いい傾向だ。このまま続けば良いのだが」

 何だかおもいっきりボロクソ言ってくれる3人。キラはキースの話を聞くまでも無くボロボロにされ、早くも肩を落として項垂れてしまっていた。
 キースはそんなキラを一瞥した後、コホンと咳払いを入れて話を切り出した。

「さてと、キラはもう知ってると思うが、アズラエルが言った通り、俺は最高のコーディネイターを殺す為に強化された調整体だ。今は強化人間とか言うらしいな」
「調整体って、何なんだよそれ?」

 カガリがキースに問いかける。彼女はその名に覚えがあった。前に立ち寄ったアティラウの街で、キースの実家で見つけた資料の中に確かにその名があったからだ。そこで見つけた資料から得た情報は自分には理解できなかったが、とんでもない代物だというのは何となく理解できている。

「調整体とは、ナチュラルがコーディネイターと戦うために生み出した戦闘個体だ。まあ、番犬みたいなものだな。ナチュラルの体に手を加えてコーディネイターと戦えるようにしたものだ。まあ、現実はそう都合よくいかなくて、俺たちは想定された敵ほどの能力を得られなかったわけだが」
「その、想定された敵っていうのは、何なんだよ?」

 カガリの問いに、キースは黙ってキラを見た。キースに見られたキラはビクリと肩を震わせ、慌てて顔を逸らせたが、キースはキラを見るのをやめなかった。そのキースの態度が何よりも雄弁に答えを伝えている。
 それに気付いたナタルとカガリは顔を青褪めさせてキースを見た。

「まさか、アズラエル氏の言っていた最高のコーディネイターというのは?」
「キラ、なのか?」

 2人の問いにキースは頷いた。それを見て2人はキラを見やる。確かにそう言われれば納得できない事も無い。これまで、キラはとてつもない強さを自分達に見せ付けてきた。ドゥシャンベで友軍と合流する前に敵と遭遇した時には、たった1機で並み居る敵機を蹴散らしていたし、あの砂漠の虎、バルトフェルドでさえ倒されている。自分達はそのキラの凄まじさに恐れを抱き、彼を避けたのだ。
 あの時感じた恐怖は、余りにも異質すぎる力を持つキラに対する恐れだったのだが、その力が最初からそのように考えて作られた力だとすれば、確かに納得できる。コーディネイターの中でも最強を目指したというのなら、それは確かに最強となりえるだろう。

425流離う翼たち・作者:2004/05/07(金) 23:19
ようやくフレイ様、成長ストーリーがほぼ完結。ここまでフレイ様はキース、マリュー、トール、ナタル、アスラン、カガリに手を引かれ、遂にアルフレットさんまで来ました
実はそれぞれが過ち、母、友情、厳しさ、鏡、絆ときて、最後のアルフレットが父を示してたりします。
一応、まだ最後にもう1つ残っていますが、それもいずれ出ます。
とりあえず次はキラの番、真実は劇薬なのです

>> 『明日』と『終わり』の間に・おやつの時間
シーナさん、貴女は閻魔帳まで付けていたのですか。既にイザークは完全に尻に敷かれてますね
しかしアスラン、お前は苦労したんだな。2週間ずっと食べたんだな。フレイ様は一口持たなかったのにw
ひょっとして、フレイ様もこうなる?

>> ザフト・赤毛の虜囚
ミリィの視点だった喫茶店のフレイ様バージョンですね。友達2人にたかられていたのか
この後ミリィから発したドタバタ劇が起こるのですね。っと思ってたら、その次であっさり見られてるw
これでサイは一生消えない傷を・・・・・・ジェシカとミーシャは普通の友達ですね

>> 過去の傷
ア、アスラン、君の好みの幅は一体? とりあえず1人に絞りたまえ。
なんかラクスがアスランに会いそうで、ちょっと不安です。

>> 散った花、実る果実
リスティアさん、張り切ってますねえ。まあ、出撃できなかった新兵なら仕方ないですが、戦局傾いた時の初陣は死亡率高いですよ
とか考えてたらいきなり負傷ですか。まあ、生きてただけ良かったですが
これでまたフレイ様と喧嘩、何て事にならなければいいけど。

426私の想いが名無しを守るわ:2004/05/08(土) 00:27
あんまりセックスネタはやめた方がいいと思う
ここがフレイ板でフレイ様はいい立場におかれているものの
他と兼任してる人もいるわけだしね
まあ、創作に余計なお世話だったら流してくれ。

427私の想いが名無しを守るわ:2004/05/08(土) 10:03
どこまでokかどうかが難しいところだよね。
創作の名を借りて他キャラがひどい目にあってるのも…自分はどうかと思う。
他所にも貼られることもあるんだしさ、フレイ板の住民でもここを見てる人は
少ないから誰も気付かないだけかもしれないけど。

428ザフト・赤毛の虜囚 60:2004/05/08(土) 10:42
10.親友 4/8
[ハーイ! ミリアリア]

本当の親友じゃないのかもしれない。だけど、それでもジェシカとミーシャは私の親友。
あれから二人はどうなったんだろう。

ヘリオポリスの襲撃で二人と離れ離れになって、アークエンジェルに乗り込んだ私は、親友どころか、
大好きだったサイとさえ関係を断って、ただ一人孤立した。復讐という暗い想いに囚われて。

私の心を打ち明けられるのは、憎いはずのキラの持つトリィだけだった。

<トリィ?>
「ねえ、トリィ聞いてくれる? 私のこと」
<トリィ……>
「私、キラにうまく話できているかな。また、キラに避けられたら、私、もう、どうしたら……」
<トリ、トリィ!>
「そうね、もう少しキラに優しくしてみる。キラの言うこと、すること、我慢してみる」

トリィは、言葉を話さないから、所詮は、私の独り言に過ぎない。だけど、それでも、トリィには
随分助けられた。

そして、アークエンジェルで旅を続けるうち、少しだけ私の心が他人に溢れた瞬間があった。
あの船酔いと腰痛で、自分の我が侭をキラにぶつけて、私が少し変わり始めた時のこと。

「ハーイ! ミリアリア」
「フレイ。久しぶりね。船酔いとか、腰とか、もういいの?」

「うん! もう大丈夫。これ洗っとくわね」
「どう、仕事」

「ちょっとサボってたんで、仕事たまってて大変。なんか、洗濯とか掃除とか、
 今まで、自分では、あまりやってなかったことだけど。
 私、こんなことくらいしかできないし。キラも、みんなも戦っているのにね」

キラへの復讐を少しだけ忘れて、ハイな気分のまま、なんだか、ミリアリアに昔からの
友達のように親しげに心境を語りかけた。ヘリオポリスの時でも、アークエンジェルに
乗ってからでも、あまり快く思ってなかった相手なのに……

私は、ミリアリアにキラのことを聞いてみる。

「キラは、どうしてる?」
「今、ザフトの機影は見つからないから、とりあえず待機中。
 モビルスーツデッキにいると思う。ストライクのメンテとか、スカイグラスパーとの
 連携シミュレーションとか、やってるんじゃないかな」

「ふうん」

部屋では、ずっと一緒にいるのに、キラが普段の仕事は何をしているのかさえ、よく知らなかった自分に、
今さらのように気がつく。それを教えてくれるミリアリアに親近感を感じる。
そして、ミリアリアに頼み事までしている自分がいる。

「私、夕方、早めに仕事上がるから、もし、話できたらキラに言っといてもらえるかしら」
「うん」

ミリアリアが、私の仕草を覗きこむ用意して聞く。

「どうしたの、まだ腰痛むの ?」
「ん! なんでも無いの。ちょっとね。きつくて…… あ、なんでも無い」

ミリアリアの私の素振りを心配したような言葉に、私は戸惑い、下半身に違和感を感じている、
いやらしい自分が恥ずかしくなった。

ジェシカやミーシャと、こんな話をしたことあったっけ?
自分の想いを話し、共通の人について話を聞き、そして、気づかいの言葉を掛けられる。
この瞬間、ミリアリアは私にとっては親友だったような気がする。
ミリアリアの方は、このとき、どんなことを思ったんだろう。

でも、もうミリアリアと、こんな話をすることなんてありえない。

「ミリアリア、あなたもキラが好きだったの……
 私もそうなの。そんなはず無かったのに、最初、そんなはず無かったのに。私、キラのことが……
 ミリアリア、あなたも同じなのね。私と同じなのね」
「違うわ、あなたがキラのことなんて…… コーディネータが嫌いなあなたが、そんな訳無い」

「変わったの私。変わってしまったの。キラが変わったように。キラと一緒に成長したのよ私……」
「違う! あなたなんか! あなたなんか!
 奪ってやる。キラのことなんか忘れさせてやる……」

* * *

物思いにふけっていた私は、ドアのロックが外れる音に我に返った。コール音が鳴る。
それで、私には誰が来たのか分かる。私は自分が捕虜として囚われている部屋のドアを開けた。

「ミコト……」
「ママ、また、お洗濯物」

「いつもありがとうミコト」
「ううん、こんなの、なんでもないよ。それにアタシ、ママに会えるの、うれしいもの。
 ママ、また髪撫でてちょうだい……」

「うん、いいわよ。泣き虫さん」
「嘘、違うって…… ママ」

はた目には、歳が近くて友達に見えるミコト。だけど、ミコトも、なにか親友とは違う気がする。
私の中に芽生え始めているものが、違うことを私に感じさせる。

親友って、私にできるんだろうか。心の内を少し相談できるだけでいい。本当の親友が……

429ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/08(土) 11:00
今回、まるでTV本編のような引用の羅列でした。すんません (汗)。
この時のミリィの心境は、ミリィSSの最初の方にあって、フレイの心境とは、まったくズレてるんですが、
だからこそ、私は面白いと思います。そして、現在の章のテーマと、今後の展開には必要な話でした。

>>過去の傷
アスラン我に返ると、キラよりずっとまともな反応を。しかし、エザリアはOKとは。カナーバは?
ミリィは、とりあえず目的達成だけど、これから、どうする。この話のラクスって、フレイ様以上に
嫉妬深かったような……

>>散った花、実る果実
ミリアリア・リスティアがなんてことに! MSに乗れることを喜んでいただけに、悲劇もひとしお。
フレイ様自身は、大分、ザフトでの身の振り方も身についてきたようですが、この事件に、
どんな想いを抱くのでしょうか。さらなる今後の展開も気になります。
ところで、リスティアが行ったのはビクトリア戦線じゃ無いですよね。

>>流離う翼たち
キースはクルーゼと違って、重大なこと、やけに明るいノリで伝えてますな。まあ、あの時は、
クルーゼもテンパってましたし、最高の…… の以前に、人工子宮がショックだったでしょうし。
後、TV本編も、これが不満だったんですが、最初に、二人がフレイ様を心配していることを、
なにげなく入れてくれると嬉しかったんですが。

フレイ様、成長ストーリーは完結というより、必要な出会いを経て、これから自分で考え、模索することが、
始まりではないかと思います。多分、作者さんも、そのつもりの言葉なのかもしれません。
これも個人的なワガママかもしれませんが、アルフさんが父だとすると、フレイ様の中で、ジョージ・パパとの
比較があると嬉しいです。
そう言えば、私の話でのジョージ・パパは、回想中では、慕いながらも、あまり、いい想いがありませんね。
なにせ、正体が、あの人なもので。

>>426-427
今後にも関係あり、考えさせてもらいます。しばらく小説を読んでいなかったので、もうちょっと、色々な分野の
小説を読んで、それに頼らないストーリー展開を勉強しないと……

430私の想いが名無しを守るわ:2004/05/08(土) 12:26
キャラの兼任もいることを配慮時して欲しい

431過去の傷・132:2004/05/08(土) 12:50
アスランはミリアリアに背を向けた。
今だ、この男がト−ルを・・・こいつが・・・。
ミリアリアはアスランの上着から護身用のナイフを取り出すとアスランを険しく睨みつける。
「ふうう!ふう・・・!」
「!」
「うわあああ!」
ミリアリアはアスランにナイフで襲い掛かった。
それをかわすアスラン、コ−ディネイタ−の反射神経のよさだ、しかしそれすら苛立たしく思える。
(やはりこういうことだったのか)
「馬鹿な真似はやめるんだ!」
馬鹿な真似?どこが馬鹿な真似よ?私をこんなふうにしたのは誰よ!?
「ト−ルの・・・ト−ルの仇!」
起き上がるとナイフを振り上げまた襲う。
「アスランどうしました!?騒がしいようですが」
「ラクス!」
ラクスが物音が聞こえたのかドアの前に立っていた、背後にはフレイも驚愕した表情を浮かべている。
「ミリアリアさん落ち着いてください」
ラクスがミリアリアを押さえつける。
「いやあ!離して!」
ミリアリアは押さえつけられながらも涙を浮かべながらアスランを凄い形相で睨みつける。
「あんたなんか・・・あんたなんか!なんでよ・・・なんでこんな奴が!ト−ルがいないのに・・・なんでこんな奴がいるのよ!ト−ルを返して・・・ト−ルを返してよ!」
ラクスも必死にミリアリアを押さえつけている。
ミリアリアも相当必死だったらしくラクスをなんとか突き放しラクスの衣装から銃を奪い取る。
「ミリアリアさんやめなさい!銃を返すのです!」
ラクスが叫ぶが無視すると銃をアスランに向ける。
「ふう・・・!コ−ディネイタ−なんか・・・皆死んじゃえばいいのよ!」
「駄目!!!」
瞬時にフレイがミリアリアに跳びつき銃声はこだましたが銃口はそらした。
「はあ・・・はあ・・・」
ミリアリアは今度はフレイを睨みつけた、その形相にフレイもたじろぐ。
「なによ・・・なにするのよ!なんで邪魔するのよ!なに正義感ぶってんのよ!あんただって憎かったじゃない!パパを殺したコ−ディネイタ−が!守れなかったキラが!あんただってキラを殺そうとしてたじゃない!それと同じよ!」
「違う・・・違う・・・」
「違わないわ!あんたも私と一緒!だいたいこの男はト−ルを殺しただけじゃなくキラも殺そうとしてたのよ!許せないわよ!こんな奴となんで同じ艦にいるのよ!」
「駄目、コ−ディネイタ−にもいい人いるわ、キラは好きだし、ラクスもアスランさんも・・・だから駄目、殺しちゃ駄目、大事な人達だから・・・」
そう駄目よ私気づいたの、だから駄目、殺しちゃいけないわ、駄目・・・。
「皆・・・どうしたの!?」
ドアの外にキラがいた、そして皆の様子に唖然としている。
「キラ・・・」
フレイはキラの胸に泣きながら飛び込んだ。
「フレイ・・・」
キラは恋人であるフレイを安心させるように抱きしめた。

432私の想いが名無しを守るわ:2004/05/08(土) 12:58
>430
自分も兼任だが、ここはフレイ板だしな。

433過去の傷・作者:2004/05/08(土) 13:01
>>ザフト・赤毛の捕囚
そうですね、フレイ様が他人を触れ合い成長しているところを見ると楽しいですね。
>>426、427、430
そうですね、これから気をつけます、他のキャラも考慮することも忘れないようにしなくては。

434『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/08(土) 13:57
 自分もこうした点への配慮に欠けていました。これからは気をつけさせて頂きます。

》赤毛の虜囚
 なるほど、ミリアリアのミナシロでの思い出とこのようにリンクしていたんですね。何だかサイが気の毒でした。
 フレイ様にとっての本当の親友とは誰になるのか、気になりますね。

》散った花、実る果実
 リスティアさんが怪我を!?本人は喜んでいたばかりなのに何てことが・・・。帰還できたのは良いんですが大丈夫なんでしょうか?
 それと彼女がビクトリアに行ったかどうかは自分も気になります。何せあのソードカラミティやらゴールドフレーム・天やらが出撃してたぐらいですし、もしそうだったらよく生きて帰れたと思えます。

》流離う翼たち
 キースさんの口から真実が語られる時が来ましたか・・・。内容が衝撃的なだけにキラが耐えられるかどうか心配です。
 それにしてもキラがツッコミに回るなんて・・・、これも成長ということなんでしょうねw。

》過去の傷
 ま、またミリィが暴走を・・・!あの時の彼女は本当に怖かったです。しかも目の前にいるのは本物の仇ですし。
 それとアスラン、必死に秘密にしようとしてましたが、今回の件で何してたのかラクスにばれちゃったのでは・・・。

435私の想いが名無しを守るわ:2004/05/08(土) 14:02
過去の傷の職人さんはミリが嫌い?

436過去の傷・作者:2004/05/08(土) 15:52
>>435
いえ、そんなことはないですミリィは好きですよ、それにSSに感情を持ち込むことはないです。
それから言われた通りフレイ様以外のキャラに対しても配慮するように心掛けることにしてますので、これから出来ればこんなことはないようにしています。

437流離う翼たち・473:2004/05/08(土) 23:54
 だが、この話で誰よりも衝撃を受けたのはキラだった。まさか、自分がそんな存在だなどと、普通は考えない。

「僕が、最高のコーディネイター?」
「そうだ。お前はこれまで、自分の力に疑問を持った事は無いか? 訓練も無しにMSに乗り、クルーゼ隊の歴戦のパイロットを複数相手取って圧倒したりする。そんな事がありえると思うか?」
「それは・・・・・・・・・無いと思います」
「そう、ありえない筈だ。なのにお前はそれを平然と成し遂げてきた。立ちはだかる全てを薙ぎ倒し、死山血河を築いてきた。普通に考えればありえないはずなのに、お前にはそれが出来た。それはお前が特別な存在だからだ」
「僕が、どうして・・・・・・」

 キラは衝撃の余り焦点のあっていない目でうわ言を事を呟いている。まあ、自分が化け物として作られた、などと聞かされれば大きな衝撃を受けるだろう。だが、キースの話はこれで終わりではなかった。更に酷い話が続くのだ。

「さてと、話の掴みはこれ位で、ここからが本題だ」
「掴みって、あれでか!?」

 カガリが驚愕の声を上げるが、キースはそれにただ頷くだけで返した。

「キラ、まずお前の両親だが、あれはお前の本当の親じゃない」
「・・・・・・え?」
「お前の本当の両親はもう死んでいる。父親はユーレン・ヒビキ、母親はヴィア・ヒビキという。今のお前の母親、カリダ・ヤマトはヴィア・ヒビキの妹だ」
「な、なんで、僕の親は死んだんです?」

 その言葉に、キースは言い難そうに顔色を暗くした。

「お前は、メンデル研究所を知っているか?」
「いえ、知りませんが」

 キラはその名を聞いた事が無かった。カガリはあの資料に載っていた名前に緊張の色を見せている。そんな2人に変わってナタルが答えてくれた。

「確か、バイオハザードで放棄された研究所でしたね。L4にあるコロニーの1つの筈です」
「表向きにはね」
「裏があると?」
「そう、本当はブルーコスモスのテロで破壊されたのさ。遺伝子研究所なんて、ブルーコスモスの良い標的だからな。それに、そこでは最高のコーディネイターや、何と秘密裏に人間のクローンの研究まで行われていた。狙われるのも当然だろうな」
「馬鹿な、人間のクローンの研究は禁止されている筈です!?」

 ナタルがキースの言葉に驚きの声を上げるが、キースはそれを右手で制した。そう、クローンの研究は世界的に研究を禁止され、それを破る科学者はほとんどいないはずだ。だが、それが居たと言うのだ。

「そう、禁止されてる筈だが、ユーレン・ヒビキは自分の研究の資金援助を得る為にそれを行っていた。そして資金を得て最高のコーディネイターを研究し続け、膨大な犠牲の果てに生まれたのがキラ、お前だよ」
「その人は自分の子供まで犠牲に?」
「俺も詳しい事は知らないが、ユーレンは自分の妻から受精卵を取り出して使ったらしい。それがお前になったわけだ」

 それは、キラにとって悪夢とさえいえる話だった。出生を否定されるという事は、それまでの人生の根幹を否定される事にも繋がりかねない問題である。しかもその出生の秘密がここまで狂ったものとなれば、キラの受けた衝撃は生半可なものではあるまい。

438流離う翼たち・473:2004/05/09(日) 00:10
私はベッドシーンが出る事はないですが、戦闘などで酷い目にあうキャラはいるんですよね。こればっかりはちょっとどうにもならないんですが

>> ザフト・赤毛の虜囚
回想シーンですな。ミリアリアサイドのフレイ視点、ですか

>> 過去の傷
完全に医務室の再現ですな。ミリィは何処で銃を手に入れたんでしょう?

439過去の傷・133:2004/05/09(日) 09:15
この事件に関してラクスは非常に責任を感じていた。
「私の配慮が足りませんでした」
とラクスは言う。
もう深夜だ、食堂にフレイ、キラ、アスラン、そしてラクスがいた。
「ラクスは悪くなんかないわよ、自分を責めないの」
フレイが庇う。
「はい・・・すいません」
ラクスには二つの顔がある、一つは天然系・・・というよりプラントの歌姫の頃のラクス、もう一つはエタ−ナルの指揮官としての顔である。
今は歌姫の方だ。
「やっぱりアスランと、ミリィを会わせるのはまずかったかな」
「キラ!そんな言い方はないじゃない!」
「いや、いいんだ」
キラをフレイが叱りつけるがアスランはそれを押さえる。
「俺自身も分かってはいたんだ、俺と彼女が近くにいるのはまずいっては感じてはいたんだ。
そう、やはり少し無理はあったのかもしれない、アスランは言わばミリアリアにとっては恋人の仇である、ディアッカの頃とは違って本物だ、やはりアスランとミリアリアが一緒にいるのはいけなかったのだ。
そのミリアリアはキラと後から来たサイによって部屋に戻された、まだ感情が高ぶり体を震わせ涙を流しながらアスランにつかみかかる勢いだったが部屋に戻ると少し落ち着いたようだ。
「フレイは実際見たんだって?ア−クエンジェル内でも一度そんなことがあったって・・・僕はそのときいなかったし」
「ええ、サイと私とミリアリアと・・・捕虜がいたなんか金髪かしら?そんな髪の男」
「!」(ディアッカか・・・)
フレイは成り行きを説明した。
「そうですか、そんなことが・・・やはり近くに捕虜がいるというのは怖いですわね・・・」
「ラクス、それで彼女のことに関してはどういたしましょう、私と彼女が一緒にいるのはやはり無理があるのでは・・・」
「そうですね・・・やはり・・・」
今日は遅いこともありフレイはラクスの部屋に、キラとアスランはそれぞれ部屋に戻った。

次の日ミリアリアはラクスに呼ばれた、処罰だろうか・・・ラクスの婚約者に襲いかかったことや艦内でラクスの銃を発砲したことに対しての?
「・・・失礼します・・・」
ミリアリアはやつれていた、顔は青白かった。
「昨日はあんな事件を起こしてしまいすいませんでした・・・」
「それについては何も言いません、それより貴女に聞きたいことが」
「?」
「ディアッカさんに会いたいですか?」
「!?ディアッカ!?はい、会いたいです」
「分かりました、ならプラントに行きなさい、彼はいます」
「え・・・!?それって・・・」
「はい・・・ミリアリアさん、貴女は解雇です、艦から降りなさい・・・」

440私の想いが名無しを守るわ:2004/05/09(日) 18:10
ライトHなら〜とあるし、物語の進行上必要ならイイのでは。
自分はエロむしろ歓迎だけどw、エロパロスレになられてもなぁというのはある。
特定キャラが酷い目にあったり、というのも創作なのだから悪意はない、
または仕方ないというのも分かるが、ここはフレイ板であって、管理人さんにお借り
している場所なんだよね。2ちゃんとはまた違う。
本スレと違って、うやむやになってる感があるな。たまに避難所で話題には上るけど。
今はHPも無料で借りれるし、個人サイトを持つという手もあると思うけど。

441SEED if 〜Fllay Selection〜 ①:2004/05/09(日) 23:06
「状況が状況だから家にも帰してあげられないし、短い間だけど軍本部で面会が許可されました。」
マリュー艦長の声はサイ達にはとても優しく聞こえたと思う。
でも、私にはとても残酷だった。



オーブについて少したった日、私達はキラを除いて集められマリュー艦長から告げられた。
キラは何でもMSのOSどうのこうのとオーブの軍の方に行っているから。
キラにはもう伝えられているのか、これから伝えるのかはわからない。
だけど、サイ達と一緒よ。
「わ〜い。」
「うふふふ。」
「やったー。」
ただただ、喜ぶだけ。
マリュー艦長も微笑んでいる。
私だけが違う。
私には何もない。
あの時、パパを失って、サイを切り捨てた私には待つ人はいない。
みんなが喜んでいる中、私はこの場を離れる。
私の場所はもうどこにもない。
それがただただ悔しかった。
悲しかった。



サイ達が家族と会っている間、私は言われた仕事をしていた。
それは艦内の日常生活品の整理、家政婦みたいな仕事。
私にはみんなのようにコンピューターを扱うことができないから、こんな仕事しかなかった。
『何で軍隊なんかにいるんだろう。』
時々、そんな考えが頭に浮かんでくる。
意味のないこと、現に私は軍隊にいるのだから。



私は仕事を終え、艦内をぶらついていた。
ヘリオポリスの時にあった私の場所はどこにもない。
艦内の人たちとはほとんど話をしたことがない。
それは、当たり前のこと。
ずっと部屋に閉じこもっていたから。
だから、どこにいても声をかけられることもない。
廊下を歩いていた時に見てしまった。
なにも変哲もないただの部屋。
だが、私には感じることができない暖かい部屋だと思う場所。
サイ達のベットがある部屋。
気が滅入ってくる。
ため息を吐き、私はその場を離れた。
そこにいたら考えてしまう。
サイ達が家族に会って笑っていることを。

442SEED if 〜Fllay Selection〜 ①:2004/05/09(日) 23:07
どうしょうもなくたどり着いた場所はキラの部屋だった。
そこは私が寝起きをしている部屋。
だけど、つめたい部屋。
でも、なぜかここしかくる場所がなかった。
「おかえり。」
身体がビクッと震えた。
いるはずのないキラの声。
私は思わず振り返った。
『・・・キラ。』
コンピューターに向かって座っているキラがいた。
トリィがじゃれるようにキラの頭の上にのる。
いつもどおり。
『そんなはずない、そんなはずない。』
その思いが、口から漏れた。
「どうして・・・」
私の疑問の答えは返ってこない。
「ああ、ごめん。もう少しで終わるから。それとも先に食堂にいく?」
キラが信じられなかった。
いつもそばにいてくれたままのキラ。
「なんで行かないの?」
感情がコントロールできなくなる。
「ええ?」
キラは画面に向かいながらコンソールを操作する。
「キラも家族が来てるんでしょ?」
一瞬の沈黙の後、キラが言った。
「これ、思ったよりかかりそうでさ。早くやんないと。アークエンジェルの出向までに「うそっ。」」
私は机を叩きつけ、声を荒げた。
「なによ、同情してんの?あんたが、私に。」
目頭があつくなる。
「フ、フレイ・・・」
キラは呆然と見上げる。
当たり前のこと。
こんなにも感情が高ぶったのははじめてのことなんだから。
「私には誰も会いに来てくれないから。だから、可哀想って。」
「フ、フレイ。そんな・・・」
キラは思わず立ち上げる。
「冗談じゃないわよ。やめてよね、そんなこと。なんであたしがあんたなんかに同情されなきゃいけないのよ。
「フレイ・・・」
私は差し出してきたキラの手をはたく。
「辛いのはあんたの方でしょ。」
涙があふれてくる。
キラの同情に対する怒り。
同情される自分の立場への哀しみ。
そして、それでもキラがいてくれたことに対するほんの少しのうれしさ。
それが心の中に渦巻いて、言葉を止めることができない。
「可哀想なキラ。一人ぼっちなキラ。戦って辛くて、守れなくて辛くて、すぐ泣いて、だから。」
私はキラの胸を叩く。
「なのに、なのに何で私が同情されなきゃなんないのよ。」
涙が止まらない。
無力で、すがり泣くしかできない。
「もうやめてよ。・・・違うんだ、同情なんかじゃない。」
「うそよ。うそよ、うそよ、うそよ。」
キラは苦しそうな表情を浮かべる。
そして、私の背中に腕を回して抱きしめた。
「同情なんかじゃない。僕は君の事が好きなんだ。ヘリオポリスにいた時からずっと・・・。君の華やかな笑顔を見るだけで心が熱くなった。」
キラはギュッと腕に力を込めてくる。
「だから、君が傍にいてくれたことはたとえ同情でもうれしかった。」
私は呆然とキラを見上げた。
「だから、守りたかった。でも、僕は君を傷つけてしまった・・・」
キラが私を守ってくるていることは知っている。
そう、私が仕向けたから。
でも、キラの気持ちは知らない。
『キラは私のことがずっと好き・・・』
ぼっと顔が赤くなってくる。
何も考えられない。
「ごめんなさい。」
私はキラを押して、その場から逃げた。
「フレイ。」
キラの声を無視して走る。
キラの胸の中にいてはいけない。
その思いが私の中にあった。

443SEED if 〜Fllay Selection〜 作者:2004/05/09(日) 23:12
皆々様、はじめましてです。
このたび、フレイスキーとしての初めてのSSを書きました。
多々未熟なところがあると思いますので。
存分に指摘してください。
皆様のすばらしい作品はこれからじっくりと読ませていただきます。
後ほど、感想を書きます。
それでは失礼します。。

444流離う翼たち・474:2004/05/10(月) 00:22
 キースは更に話を続けようとしたが、ナタルに止められてしまった。

「大尉、一度休みましょう。既にヤマト少尉は限界です」
「そう、だな。落ち着くための時間を入れるか」

 キースは立ち上がると、ナタルとカガリを連れて部屋の外に出る。カガリが最後にもう一度室内を振り返ると、残されたキラの背中は、まるでこれまでと別人のように小さく、頼りなげに見えた。これがあのキラかとカガリが疑ってしまうほど、その姿は悲しかった。
 リビングを出た3人は、別室に移ると深刻そうな顔を見合わせた。キースは予想通りの結果に、ナタルは衝撃的なキラの過去に、そしてカガリは自分と繋がりがあるらしい数々の単語から導かれる答えにそれぞれ苦々しさを感じ、あるいはショックを隠せない。

「まあ、予想通りではあった」
「当り前ですよ。自分の両親が実は養父母で、本当の両親はテロで死んでいる。しかも実の親に実験動物にされていたなどと言われれば、私だって暫くは立ち直れないでしょう」
「まあそうなんだがな、かくいう俺だって、真実を知った時は流石に世の中が嫌になったもんだ」

 辛いのはキラだけじゃない、という事だ。確かにキラの生い立ちは不幸という言葉だけではすまないほどに悲惨でふざけた物だが、それに対抗するいう目的だけで体を弄繰り回されたキースも負けず劣らず不幸だと言えるだろう。まあ、性格の関係上、キースは余り深刻ではなかったりするが。

「まあ、あっちはもう少し置いておこうか」
「そうですね。それでは、紅茶でも淹れましょう」
「ああ、頼むよ」

 キースはやれやれと椅子に腰掛け、そしてカガリを見た。何故かさっきからカガリがじっとこちらを睨んでいるからだ。

「どうした、カガリ?」
「キース、私は、お前にどうしても聞きたい事が、確かめたい事があるんだ」
「確かめたい事?」

 不思議そうに聞き返すキースに、カガリはポケットから取り出したパスケースのような物から1枚の写真を取り出し、キースに渡した。それを受け取ったキースは写真を見やり、そして顔を驚愕に引き攣らせてしまう。

「・・・・・・どうして、お前がこれを?」
「やっぱり、あんたは知ってるんだな、この写真がなんなのか。私が何者なのかを」

 カガリは、これまでに無い程にきつい視線でキースを睨んでいる。それは、まるで敵を見るかのような眼差しであったが、同時に危うさ、儚さも含んでいる。それは昔の、自分の居場所を見失ったフレイにどこか似ていた。

445流離う翼たち・作者:2004/05/10(月) 00:29
>>440
こっちに載せるのは止めて、個人ページのみにした方が良いですかね

>> 過去の傷
ミ、ミリィが解雇・・・・・・いや、御時世で解雇という言葉はちと怖い
ミリィ、ディアッカに会いにいけるのかな

>> SEED if 〜Fllay Selection
初めまして。オーブでの一幕ですな
キラが本編よりも多く語ってるというシーンですか。続きを期待します

446ザフト・赤毛の虜囚 61:2004/05/10(月) 09:25
10.親友 5/8
[ジェシカとミーシャ side-M]

私の前に座っている二人、ジェシカとミーシャ、二人とも私の親友。

「メルデル、アンタ、ホントに彼氏いないの?」
「ええ、ジェシカ、何か変かな?」

「変って、アンタいくつよ。居て当たり前じゃない」
「でも、女子校だし」

「男子校とのコンパなんて、いくつもあるわよ。なんだったら紹介する?」
「ミーシャありがとう。でも、私、なんか違う気がして」

「何考えてるのよ、メルデル」ジェシカが顔を寄せる。

「なんかね、いつも思うのよ。誰か、私を待ってる人がいるような気がするの。
 もうすぐ会えるんじゃないかって」私は二人に思い切って、自分の想いを話す。

「メルデル、アンタ、まだ白馬の王子様待ってるの」
「いい加減、そんな少女趣味捨てなさいよ」

ジェシカもミーシャも呆れたように声を上げる。

「いいじゃないのよ。私の勝手なんだから」

私は、二人の呆れ顔に、言わなきゃ良かったと後悔する。

ここは、学校からの帰り道にある喫茶店。私は、パパの仕事のパーティで早く帰ろうとしていたところを、
ジェシカとミーシャに引き止められた。そして、いつの間にか、恋愛談義に花を咲かせている。

「今は、そんなの流行らないわ。いい男がいたら、こっちからモノにしないと」
「男なんて掃いて捨てるほどいるし、どんどん付き合わないと」

「そうそう、私の彼氏だってね。こっちから押さないと手も握れないような情けない男で……」
「ちょっと、ツボを擽るファッションで迫れば、男なんて向こうから寄って来るわ。よりどりみどり」

「ところが、ちょっと許した途端、その気になってもう…… 男なんて所詮こんなもんよ」
「一人の男なんて、堅苦しく考えないほうがいいよ。失望するのがオチ。もっと楽しまなきゃ」

「もう、いい加減にしてよ。二人とも!」
私は癇癪を起こして、私は置いてあるパフェをひっくり返さんばかりにテーブルを叩きつける。

ジェシカもミーシャも、勝手なことばかり言ってる。自分がどうだからって、人のことまで、
構うことないじゃない。さすがに、白馬の王子様は恥ずかしいけど、私には理想があるんだもの。

そりゃいいわよ、二人とも男の子と付き合い上手だし。ジェシカなんて、何度、彼氏の話を聞かされたか。
もう微に入り細に入り、私、顔を真っ赤にして、まともに聞けなかった。ミーシャは、そこまで
いかないけど、結構もてるって。男友達一杯いて、意外とみんな仲良くしているらしい。

ジェシカとミーシャ、二人との付き合いは長いけど、私はなんとなく距離を感じる。
男性感が違うのがあるんだけど、どうも二人のノリには付いて行けない。基本的に自分が面白がれば、
みんな喜ぶと思っているのよね。要するに自分勝手。私だって、まあ、そんなところあるけど。
人が困ってるの察して話を聞くとかいう訳でも無い。別に、ジェシカとミーシャが嫌いだって訳じゃないけど、
これで親友って言えるのかな。

「今日は、もう帰るわ。パパのパーティだし、フラガ叔父様も来るし」
「フラガ叔父様って、どんなの? カッコイイ人?」
「年上の叔父さんっていうのもツボよ。メルデル、ちょっとコナかけてみれば?」

私は、怒って叫ぶ。
「フラガ叔父様は、20歳以上離れてるのよ。そんな訳無いでしょ!」

私は、パフェを掻き込むと、レシートを持って席を立った。ちなみに、今日の払いは、
最初のジャンケンに負けた結果で私持ち。こんなこと言われると知ってりゃ、
素直に払うなんて言わなかったのに。

447ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/10(月) 09:27
私も個人サイトはありますが、数年間更新していませんし。著作権の関係から、創作系の模型を
謳っているので、SSは載せられません。人にすれば新規開設など、簡単にできると言われるかも
しれませんけど。とにかく、当初目的としていた一区切りまでは、ここでやらせていただきたいと思います。
そのために、投下方法の変更もあるかもしれません。

>>過去の傷
ううむ、この展開、私も失念してました。勘違いな感想付けてて済みません。
いろいろありましたが、ミリィは、これでディアッカと会えるようですね。良かったです。
話からは抜けることになりそうなのが残念ではありますけど。

ミリィがアスランと向き合う展開は、私のSSでも大きなテーマとして予定していました。
さて、そこまでできるでしょうか。

>>SEED if 〜Fllay Selection〜
オーブの、このシーン。私も、これをメインにして40数話のSSを書きました。
結果的に行動は変わらなくても、フレイ様は、キラのこんな言葉が欲しかったのかもしれませんね。
後、タイトルだけ見ると、今度出るゲームに関連した話かと思うのですが、違うのですよね。

>>流離う翼たち
螺旋の回廊始まりましたね。この時点のキラは、オーブ面会で両親を避ける気持ちになって
いないでしょうから、まさに寝耳に水の展開でショックだと思います。キースが大丈夫なのは、
性格以上に、それを乗り越える時間があったからでしょうね。単純に比較してはダメですよ。
とにかく、次はカガリですね。TV本編ではスルーされたので期待しています。
でも、フレイ様も、一緒に聞いて欲しかったですね。受け入れるために、まだ、大きな試練が必要だとしても。

個人サイトありますね。知りませんでした。章ごとにまとめられているので、話を追い易くはあります。
だけど、ほとんど、毎日のように更新され、リアルタイムで感想のやりとりがある、このスレは
楽しくもありますので、できれば、もう少し、こちらでも続けて欲しいと思っています。

448440:2004/05/10(月) 09:47
なんだか「投下やめろ」というふうに聞こえてしまったのなら申し訳ない。
自分も楽しみにしている作品もありますし、そういうつもりではないです。
ただ過度の性描写や、特定キャラが酷い目にあう、という場合、
カットするかしないで迷ったらそこは個人サイトに載せるというテもあるかなと。

ただたまに、こういう議論もすべきだとは思います。無法地帯にならんように。
では。

>>IF
面白そうですね。楽しみだー。

449私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 13:49
でも、過去の傷、はミリイをどうしたいのかわからん。
一人だけあんなポジションにおいてミリイを嫌いじゃないといわれても
信じられないというか。
実際どういうつもりで書いているのか知らないけど
フレイ板住人っってこんなやつばかり、て感じでコピぺられるのもいやなんだよな。
中の事は職人しかわからないんだから、最後まで読ませてもらってどういうつもりだったのか
見届けさせてもらおうと思う。
実際フレイ様マンセーは嬉しいけど、他のキャラを普通に好きな人間にとっては
ここで落とさなくても良いんじゃないの?とまで思えてくる。
そういうとここフレイ板だから、とかいう奴が出てくると思うが。
マンセー意見だけが欲しくて落としているわけでもないんでしょ?

450私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 14:41
ミリスレによく貼られてるのを見て、両スレの仲が悪くなるものはな、
と思う時もある。
貼るやつが悪いのは当たり前なんだけど。

451私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 16:47
その作品はミリィもフレイも酷い目にあってるけどね。
どっちかっていうとキラマンセーなのかなとすら思うよ。

452過去の傷・134:2004/05/10(月) 17:33
「いやあ!なんで私だけ!私残りたい!」
その数時間後のことだ。
ミリアリアは解雇という現実を付きつけられショックを受けていた、そしてアスランに連れられている、艦の外に出たとしても宇宙だ、乱暴だが脱出ポットに乗せることにした、ラクスにオ−ブに戻るかプラントに行きディアッカを探すか決めさせられ迷った結果プラントに行くことに渋々決めたのだが実際なってみると嫌になり駄々をこめているのだ。
「嫌です!なんで解雇なんて・・・クビなんて嫌です!」
「いいかげんにしろ!」
アスランに怒鳴られミリアリアは黙り込む。
「君はラクスによって解雇されたんだ、それだけのことをしたんだ君は!現実を見ろ!ラクスの命令なんだ、君はそれに従わなければならない!」
「そんな・・・」
「どうしてもというなら・・・ラクスさんに僕から取り下げるように頼み込んでもいいけど・・・」
キラが言うが。
「意思の固い彼女が許すと思うか?そもそも俺達が口出すことじゃないだろ」
アスランが否定した。
そうだ、ラクス・クラインという女性は一度決めたことはまげない、そもそも彼女は指揮官だ、部下のキラ達が口を挿むことはできない、それは婚約者のアスランも同様だ、それにいくらキラやアスランが頼み込んでもラクスは否定するだろう、それ以前に指揮官の命令だ、背くなど問題外である、例を上げればラウ・ル・クル−ゼにアスランが任務を受けそれを断ると同じである。
「キラ・・・サイ・・・」
悲しそうにキラと遠くから見ているサイに助けを求めるように見つめる、しかし彼らにはどうすることも出来ないのだ。
フレイもキラに寄り添い複雑そうな表情で見ている。
「それになんの不満がある?軍から抜けられるんだぞ、それともまさかア−クエンジェルに転属したいなどと言うつもりか?」
ミリアリアは諦めたのか小さく呟いた。
「・・・分かりました・・・艦から降ります」
「当然だ、君に選択の余地はない、では行くぞ・・・付いて来い、こっちだ」
「ミリィ・・・」
キラは悲しそうな表情で見ている。
ミリアリアはキラ達に頭を下げた。
「皆・・・さようなら・・・元気でね・・・フレイもサイも・・・」
「ミリアリア・・・」
フレイは悲しそうに呟く。
「それから・・・キラ」
「ミリィ・・・?」
「ごめんね・・・」
そう言うとアスランを追った。

一時間後。
ミリアリアの乗った脱出ポットが発射された。

453私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 19:45
これって本編のフレイ様にされて悔しかった扱いを全てミリイに押し付けてるかんじ。
フレイ様だけ凄くいい感じに扱われていて最高に気分はいいんだが。

454私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 19:56
>>453
う〜ん、フレイ様前半は酷いこといっぱいしているし、凄くいい扱い
って訳じゃないと思うけどね。とにかく最後まで読んでみないと作者さんの
意図もわからないしさ、しばらくは見守る方向で。

455私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 21:25
まあまあ皆、過去の傷の職人さんだって頑張ってるんだろうから・・・。
そう言わなくても・・・。
序盤は・・・だけどなんだかんだいってこのところはフレイ様いい感じに扱われてるし俺は応援するけどね。

456私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 21:31
このスレ、こんなに読んでる人がいたのか。
普段は死んだようなスレだし、みんな無視してると思ってたけど。

457私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 21:34
何を書くかは作者の自由、何を読むかは読者の自由のはず
でも無造作なコピペができるからネットは厄介なんだろうな

スレ間の諍いや軋轢までは知ったことじゃないが、比較的ノンポリな俺でも
創作中での扱いをそのままキャラヘイトに利用するのはどうかとは思う

458私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 21:42
あんまり言うとさ、作者さんがショック受けて投下やめる可能性もあるから少しくらいは褒めてもいいんじゃないかな。

459私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 21:42
ミリィの性格変わってるし。
カガフレもどうかと思った。

460私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 21:45
とりあえず、SSもしくは感想以外の書き込みは
本スレか避難所でやろう。以下何事もなかったかのようにどうぞ。

461私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 21:46
本気で対処したければ、「二次創作一切禁止、スレ閉鎖」これしかない。
要するに、余所にコピペするような厨に対処する方法は無いってことだ。
どうせ何がどうなっても厨は馬鹿なことをするのだし。
何も言わずに放置するのが一番です。

462『明日』と『終わり』の間に・作者:2004/05/10(月) 21:57
 この前は場の空気を読まない書きこみ、申し訳ありませんでした。ですがこの機会に皆さんにお知らせさせていただきます。
 かつて早まって連載休止を宣言してしまった時その理由に『自信を無くした』とお知らせしましたが、実はあの時自分のSSがこのスレに相応しいものではなく、単なる自己満足ではないかと思ったからです。
 皆さんもご承知の通り、自分のSSは既に『SEED』本編とかけ離れたものになっており、フレイ様SSとは名ばかりのものになりつつあります。そういう意味ではこの先の展開もまた皆さんのご期待に添えられるものでは無いのかもしれません。
 今話題に登っている個人サイトに掲載するという手も考えましたが、根気も無い自分にサイトの経営が務まるかどうかという不安もあります。このまま続けるかどうか、正直悩んでいます。
 そこでお手数ですが、もし宜しければ皆さんのご意見をお聞かせ下さい。

》過去の傷
 解雇、ですか・・・。何だかそこまでしなくてもとも思いますが、あれだけやってしまうと仕方が無いんでしょうか?ミリィがディアッカに会えることを願います。 
 そしてこうなると次回から新展開でしょうか?期待させて頂きます。

》赤毛の虜囚
 なんと、メルデルさんの場合ですか。これは以外でした。彼女もこの頃はフレイ様と同じく恋愛に初々しいですね。
 しかし、真実を知らないというのは時として恐ろしくもあります。

》SEED if
 新作ですね。とても面白かったです。このようにキラも、あの時もう少しフレイ様のことを気にかけてあげれば良かったと思いました。
 これからも応援させて頂きます。

》流離う翼たち
 この場面はキラだけでもなくカガリにとっても辛いところでありますね。二人はこの試練を乗り越えることが出来るのでしょうか?
 作者様のサイト、自分も拝見させて頂きました。ですが自分もこのスレで『流離う翼たち』を楽しく拝見させて頂いているので、出来ればこれからもこちらで続けて頂きたいと思っています。

463散った花、実る果実47:2004/05/10(月) 22:01
嘘でしょう・・・・・?
「ミリアリア!ミリアリア、しっかりしてよ!!」
必死で呼びかけた声に彼女はうっすらと目を開いた。
「・・・まったく・・・その呼び方で呼ぶなって、言ってるでしょう・・・」
語調は弱いものの、いつもの調子でやり返してくる彼女に少しだけ安心したら、涙が出てきた。
「ごめん・・・・リスティア・・・・・」
「大体、それ、ナチュラルの友達の名前なんでしょう・・・同じ様に呼ばれるなんて嫌よ・・・・」
「うん、ごめん、ごめん、リスティア・・・・・・」
一度流れ始めたら涙は止まらない。
「泣かないで・・・あんた馬鹿だから、また間違えるといけないから、私のこと、リアって呼んで。傷が痛くて、怒ったりするの、気合いるのよ・・?」
「うん、ごめん、ごめんね、リア・・・・・」
もう、それしか言葉が出てこなかった。
腰から下が、真っ赤な血に染まっている。
それに、脚の形が・・・・・・・・・・・
顔色も、元々透き通るような肌だったのが、今は青ざめてまるで蝋細工のようだ。
「リア・・・・・」

「そこどいて!病室に運びます!」
ばたばたと騒々しく医師たちが駆け込み、リアを運んでいった。
私もそれに付いて行ったけれど、病室の中に入れるはずもなく、ただ待つしかなかった。
「おまえらがやったんだ」
後ろから憎憎しげなつぶやきが洩れる。
振り向くと2,3人の男達が私を睨みつけている。
「ミリアリアにあんなひどい怪我させたのは、ナチュラルどもじゃないか。なのになんでおまえがそんな所にいるんだよ。」
「そんな・・・」
私、そんなつもりじゃなかった。ただリアが心配で・・・・・
私はリアを傷つけたいなんて思ったことないのに・・・・
「見たところ、相当ひどい怪我だった。あれじゃ、完全に元に戻るかどうかあやしいよ。おまえ等ナチュラルが、俺達の将来を奪っていくんだ」
「そんなつもり・・・!!」
私は叫んでいた。
「私はリアを傷つけるつもりなんかない、リアが怪我して悲しいのは、心配なのは私も一緒よ!」
「どうだかな!」
叩き付けるような叫びと共に鋭い視線がつきささる。
「所詮おまえはナチュラルだろう。俺達コーディネイターとは違うんだ。親切面して誤魔化そうったってそうはいくかよ!」
「だから私は・・・・」
「おまえがナチュラルだって事は事実なんだ。目障りなんだよ!俺達が誰と戦争してると思ってるんだ?」
ナチュラルってだけで、私の言葉はもう聞いてもらえないの?どんなに私がリアを思っても、それとは関係ないところでしか見てもらえないの?
その瞬間、私は気づいた。
私、アークエンジェルにいたとき、この人たちと同じ事してた。
キラに、ラクスに、コーディネイターだからって、だから利用していいんだって。

464散った花、実る果実48:2004/05/10(月) 22:02
結局私はその場から追い出されてしまって、リアが意識を取り戻すまで会わせてもらえなかった。
私が認められた、というより・・・リアの言葉があって、私がリアの面会に行くことが許可されたようだった。

「遅いわよ」
部屋に入るなり、リアはそう言った。
「ごめんなさい、もっと早く来たかったんだけど、その・・・」
言葉につまっていると、リアは怒っている振りをやめ、軽く微笑んで、
「嘘よ。聞いているわ。・・・ごめんなさいね。彼等も悪気はないのよ。」
「いいの・・・無理もないから。」
「何よ、今日は随分殊勝じゃないの。どうしたのよ。」
なんでリアはこんなに優しいんだろう。何故こんなに何もかも許して見えるの?
「リアこそ・・今日は随分やさしいじゃないの。どうしたのよ。」
リアは微笑を崩さなかった。
「あのね、私の脚・・・・治らないかもしれないんだって。」
治らないって・・・・・
「あ、もちろん、歩けなくなるってわけじゃないのよ。コーディネイターは医療もナチュラルより進んでるんだから。でも・・・・でも、歩き方に癖が残ったり、傷が残ったりは・・・するかも知れないって・・・・・」
微笑を崩さないまま、リアはぽろぽろ泣いていた。
「リア・・・・・・」
そっと抱きしめて頭をなでてあげると、彼女はしゃくりあげて泣き始めた。
「・・・・っく・・・・せっかく、コーディネイターに、生まれたのにね・・・・・ひっ・・・・きれいにな娘に・・・生まれますようにって・・・お母さんが・・・・ぅっく・・・せっかく・・・・・・」
私は彼女のやわらかい、触り心地のいい髪の毛をいつまでもなでていた。
「そう・・・そうね、両親からの何よりの贈り物だったんだものね・・・・・・リア・・・・可哀想に・・・・・・」
「フレイ・・・・どうしよう、私・・・・!どうしよう・・・・・」
今までなんでも完璧にこなしてきたリアは、きっとこんな挫折を知らなかったんだろう。
「リア。まず、怪我を治そう。ご飯食べて、よく眠って、まず怪我を治そう。コーディネイターの医療はすごいんでしょ。きっといいお医者様がいるよ。ほら、ここ、軍艦だから、きっと整形の方はそんなにお医者様そろってないのよ。怪我を治していいお医者様探しに行こう?ね?」
「でも、でも、フレイ・・・・・」
「大丈夫だから。ね?大丈夫よ・・・・・」
そんな言葉しか出なかったけど、その言葉と、人の暖かさが与える安心感を、私はとてもよく知っていたから、リアを抱きしめて繰り返した。
「大丈夫、大丈夫よ・・・・・」


私は、クルーゼ隊長の帰りを、ただ待った。
リアの負傷によって神経をささくれ立たせている艦内で、ちゃんと話をしてくれるのは彼だけだと思えたから。
「クルーゼ隊長!」
少し疲れた感じではあったが彼は私に向き直った。
「どうしたね、フレイ。」
「リアが・・・リスティアが・・・・!」
知らず瞳からは涙があふれてくる。
「ああ・・・・ミリアリアの件か・・・・・彼女も優秀な軍人だったのだが・・・・・・」
「リアは・・・・ミリアリア、どうなるんですか・・・?ひどい怪我だった・・・・・・ちゃんと治るの・・・・?」
不安が昂じて次々問いかける私に、落ち着けるように彼は肩に手を置いた。
「彼女は・・・・・完全にはよくはならないようだ・・・・報告によると、リハビリをすれば歩行には問題は残らないが・・・・今までと同じ運動能力は保証できないし・・・・傷が残る可能性も、否定できないと・・・・・・」
「そんな・・・・!なんとかならないんですか?ねえ・・・・・!」
焦れたように問い掛ける私を、彼は抱きしめた。
彼の胸に包まれて、視界が塞がる。白い軍服も涙でにじんでよく見えない。
「落ち着きなさい・・・・フレイ。」
そう言って頭をなでてくれる・・・そしてパパの声・・・・・・
「何も見なくていい。目を閉じて、ゆっくり息を吸ってごらん。大丈夫だから・・・・・」
深呼吸するように息を吸うと、鼻腔にパパと同じコロンの香り。
・・・大丈夫?本当に・・・・・・?パパ・・・・・
「リアが・・・・リアが・・・・・本当に、大丈夫・・・・?」
少し落ち着いてきた私を彼も感じ取ったようで、優しく髪を撫でる手の動きも少しゆっくりになった。
「大丈夫だ・・・・・・私にまかせなさい・・・フレイは、私の言うことを聞いていればいいんだよ・・・・・・」
パパの香りと声に包まれて、私の意識は深い闇に落ちていった・・・・・・・

465私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 22:14
創作の合間に失礼します。

>>462
基本的に創作は自己満足ありきです。
他人がどう思うかよりもまず、自分が満足できるもの、自分が納得できるものでなければ書きたくないでしょう?
二次創作は何かの作品の設定を借りるから"二次"創作なんです。Ifの程度で気に病んでいても仕方ありません。
誰がどう受け取るかなんて事を不安に考えてたら筆は進まないですよ。
やりたいようにできる自由と、やりたいようにされるリスクを持っているのがインターネットです。
作品に愛着があるのなら、作品を載せているサイトの運営だってできるはず。

冷たい言い方かもしれませんが、自分に自信が無ければ今すぐ止めた方がよいです。
誰かに背を押してほしい気持ちもわかりますが、まずは自分の本音を考え直しましょう。

それでも続けたいと思うのなら、どうぞ頑張ってください。影ながら応援します。

466私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 22:22
皆さん見守ってあげましょうよ、普通に感想書いてあげませんか?でないとすぐいろんなこと言われると作者さんも投下しにくいじゃないですか。
作者さんだって皆さんに楽しく読んでもらいたいでしょうし、苦労して投下してるでしょうから。

467散った花、実る果実/作者:2004/05/10(月) 22:42
話を作る時になるべく人に不快感を与えないように気をつけてはいるのですが、とりあえず酷い目にあっているキャラは今日一名・・・・話の進行上避けがたい進行だったため、修正せずに投下させていただきました。
個人サイトで書いてもいいのですが、できればたくさんのフレイが好きな人たちのいるここで書いていきたいと思います。
力不足で読んでいてはがゆい面もあるかもしれませんが、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
一読者としては、楽しみにしている話がたくさんあるので、連載中のSSが中断されてしまうのは悲しいです・・・・お互い頑張りましょう。

>>流離う
おお、ちゃんとキャラとテーマが考えられているのですね。
アルフレットは父ですか。フレイ様にとってやっぱり父というのは大きな存在だったと思うので、どんな係わり合い方になっていくのか楽しみです。

>>赤毛の虜囚
ミリィSSとのリンク、ずれがあるからこそ面白い、というのは私もそう思います。
とても人間らしいやりとりですよね。でも確かに、フレイ様と「親友」と言うのは本編では描写はありませんでした。
これからのテーマは親友のようなので、フレイ様にどんな親友ができるのか、楽しみに待っていますね。

>>SEED if 〜Fllay Selection〜
初投稿ですね。期待しています。
本編ではもうすぐキラとの別れが待っているシーンなので、キラとフレイのやりとりがこれからどんな風になっていくのかドキドキしてます。
ifだから本編とは違う舞台設定で関わりあうのでしょうか。それとも・・・・

>>過去の傷
ミリィの最後の言葉「ごめんね・・・・」が胸に響きます。
できればミリィも幸せをつかんで欲しいですね。

468私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 22:47
>466
色んな意見があっていいと思うけどな。

469私の想いが名無しを守るわ:2004/05/10(月) 22:48
>>466
少し強い言い方かも知れませんが
多人数に見てもらう=ほめてもらう
を期待しているんですが職人さんは?
確かに楽しんでもらおうという気持ちはあるのかもしれませんが、
ベースは「自分の作品を見てもらいたい」だと思います。
その結果、さまざまな反響があるのはある程度覚悟の上での投下だと思います。
ここはフレイ板だし、自分の中にあるフレイ像を通して表現したいという人がSSを書いて投下するのでしょうが、
同じキャラを好きだから、という条件に甘えてほめ事場だけを求めるのであれば
>>465
の言うとおり、自分でサイトを作ってそこでご自分のSSを大好きな人のみに読んでもらうほうがいいのでは?
>>466
の言う普通の感想がただ面白かったです〜
でいいのであればそれが正しいのでしょう。
私もSSじゃなく投下して、いい感想だけもらえない事も経験していますが
少々風当たりがきつくても、キャラへの愛(ここがポイント)あれば
次はもっと良いものを、とかもっとニーズにあったものを、とか奮起すると思うんですが・・・

470散った花、実る果実/作者:2004/05/10(月) 23:23
>>469
「誉め言葉だけを求める」という事と 「同じキャラを好きだから」という事とは同一視される事柄ではないと思いますが・・・
もし私の書き込みを読んでそのように誤解されてしまったのだとすればすみません。
個人的には、批判も含めて感想を書いていただければそれが一番嬉しいです。

471私の想いが名無しを守るわ:2004/05/11(火) 00:40
>>460
ここでやるべき。以前避難所や本スレで取沙汰されたこともあったが、
「SSスレのことはSSスレで〜」で片付けられた、ということで。

472流離う翼たち・475:2004/05/11(火) 00:44
「何処で、それを手に入れた。ウズミ氏はお前にその事を話しているのか?」
「・・・・・・いや、この写真は、あんたの家から、無断で持ち出したものだよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 それを聞いたキースは目を見開いたが、別に怒鳴りつけたりはしなかった。むしろ怒鳴られるのを覚悟して身を竦めたカガリにしてみれば拍子抜けであり、恐る恐るキースの顔色を伺っている。

「お、怒らないのか?」
「連れて行った俺のミスだ。お前を怒鳴りつけても仕方ないだろう。それに、どうせいつかはばれる事だ」

 しかし、それでもどうしてこんな時にとは思ってしまう。本当はキラが落ち着いてからカガリたちに話そうと思っていたのだが、まさか当のカガリが自分の知らない内に自分の手元から情報を掠め取っていたとは。

「まあ、誤魔化してもしょうがないな」
「じゃあ?」
「ああ、お前もそれを見たなら想像が付いてるだろうが、キラとお前は双子だよ」

 キースの言葉を聞いて、カガリはようやく胸の痞えが取れたような気分になった。何となくこの答えは予想できていたので、思っていたほどの衝撃は無かったのだ。ただ、それが事実ならばどうしても確かめなくてはいけない事がある。

「なあ、どうして私はナチュラルなんだ?」
「そこまでは流石に俺も知らん。双子だったから片方だけ使ったとかだろう」
「じゃあ、あんたは何処まで知ってるんだ。どうして私はアスハ家いるんだ。キラとはどうして離れ離れになったんだよ!?」

 興奮して自制が効かなくなってきたのか、カガリはキラの胸倉を掴みあげてキースの喉を締め上げている。勿論カガリの力ではキースを絞め落とす事などはできないのだが、キースは苦しそうに顔を顰めて右手でカガリを腕を掴んだ。

「ま、待て、落ち着けカガリ!」
「これが落ちついてられるか。私はカガリ・ユラ・アスハじゃなく、カガリ・ヒビキなんだ。それじゃあ、これまでの私は何だったんだよ!?」
「わ、分かった、話す、その辺りも全部話すから手を放せって!」

 キースの降参を聞いてカガリはようやく手を放した。だが、開放されたキースがやれやれと首周りを緩めて一息つこうとした時、何故か視線の先には吃驚しているナタルの顔があった。

「バ、バジルール大尉」
「カガリ・ユラ・・・・・・アスハ?」

 ナタルがカガリの名を呟く。それを聞いたキースは頭が痛そうに右手で顔を押さえ、カガリはまともに顔色を蒼くしている。これまで秘密にしてきたのに、自分のミスで正体がばれてしまったのでは流石に冗談にも出来ない。
 ナタルは驚愕から立ち直ったのか、厳しい目でキースとカガリを睨み付けた。

「どういう事です、アスハとはまさか!?」
「ああ、まあ落ち着いて大尉、そっちも纏めて話すから」

 もうヤケクソ気味にナタルを宥めるキース。カガリが何だか嫌そうな顔をしたが、流石に文句を言う事は無かった。何しろあのナタルが逆らったら噛み付かれそうなほどに険悪な表情をしているのだから。

473流離う翼たち・作者:2004/05/11(火) 01:05
>>471
そうだったんですか。内容が避難所向きだと思ったので、あっちに意見を書いてしまいました

>>465
二次創作への考えは同意しますが、個人サイトの運営は真面目にやると結構疲れますよ。ウィルスメールも増えますし。まあ、昔に較べれば作るのも楽になりましたけど


>> ザフト・赤毛の虜囚
はて、前にフレイ様がやったやり取りのメルデルバージョン?
これは一体どういうことでしょう。ちょっと今回は分からないので次回以降の結果を待たせて頂きます

>> 過去の傷
ミリィが退艦ですか。戦争終わったのだから軍を抜けるのは志願兵の常ですけどね
アスランは珍しく軍人口調ですね

>> 散った花、実る果実
リスティア、後遺症が残る怪我を負いましたか。生き残っただけマシとはいえ、辛いですね
フレイ様はなにやらクルーゼに頼ってますな。先行きが不安です・・・・・・

474ザフト・赤毛の虜囚 62:2004/05/11(火) 03:24
10.親友 6/8
[お願い、ジェシカ、ミーシャ話を聞いて!]

フラガ叔父様は、私と20歳以上離れている。もう数年で40に手が届く。私が叔父様と、
どうにかなる訳が無いと思っていた。

だけど、パパ、ママの死とともに、私はフラガ叔父様に囚われた。私を閉じ込めて、そして……
いや、もうフラガと呼ぶ。なんて酷い男。フラガ、許さない。許さない!!

助けて、誰か私を助けて。だけど、誰も助けに来ない。ジェシカとミーシャ、私を助けに来て。
フラガのところへ来て。私に会いに来て。会いに来てくれるだけでもいい。でないと、
私、壊れてしまう。毎日辛いの、辛くて堪らないの。でも、逃げることもできないの。
お願い、ジェシカ、ミーシャ話を聞いて!

私が、フラガに婚約させられて学校を退学する時、少しだけ、学校に来たことがあった。
その時、学校の理事長室をフラガより先に出た私は、ジェシカとミーシャと偶然再会した。

「メルデル、あなた……」
「ジェシカ…… ミーシャも。会いたかった」

「会いたかった?」
「うん、話したくてたまらなかった。一度も来てくれないんだもの」

「当たり前でしょ」
「え、ジェシカ、どうしたの」

「どうしたのは無いでしょ。あんなこと言ってて、叔父さんと婚約したって本気?」
「ミーシャ、それは違う」

「本気でも無いなら、よけい不潔だわ」
「そうそう、アンタ、叔父さんの何を狙ってるの? 財産?」
「違う、違う……」

「だったら、さっさと断って逃げりゃいいじゃない」
「そうそう」

私は、勝手なことを言う二人に怒りが込み上げる。
「逃げられるものならそうしてる。ダメなの。逃げることもできないの。どうすることもできないの!」

その時、フラガが理事長室から出てきた。

「メルデル、友達か。行くぞ、早く来い」
「ハイ、フラガ……叔父様…… あの、もう少し友達と……」

「メルデル、どう呼べばいいか教えたはずだ。呼ばないのなら今夜は、お仕置きだ」
「ハイ、済みません。ア、アル…… すぐに行きます。先に行っておいてください」

「うむ、さっさとしろ」

フラガは先に行った。ジェシカとミーシャは、そんな私を見て、避けるような目付きで言った。

「アンタって奴隷?」
「気持ち悪い…… 近寄らないで」

「ジェシカ、ミーシャ!」
二人は、私から去って行った。私は、友達を失った。フラガのせいで……
もう二度と友達なんてできない。私は一人フラガに囚われて……

ただひとつ私の救いとなる人。囚われている時、ときどき、私と体の感覚が入れ代わる人。
不思議な体験。名も知らぬ男性。白馬の王子様。

ああ、私の心を救ってくれるのは、あなたへの微かな想いしか無いの?

475ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/11(火) 03:38
ここに投下していて、いろいろな感想のリアクションが楽しいというのはあります。
特に普通の感想でも、こちらの意図が伝わっていなくて反省させられたこと多いです。
自分も勘違い感想は結構ありますし、それで荒らしたこともあって反省してます。
それはSSにも、投下のナンバリングにも反映してはいます。

キャラへの愛というか、このキャラに、こうさせたい。報われるようにしたい、というのは
大いにあります。そして、SS連載復活してから、まだ、それは完全に達成していません。
そこまでは続けるつもりで日々努力しています。

>>過去の傷
とりあえず、プラントに行けることになったミリィですが、脱出ポッドは、ちょっと……
でも、連絡艇にしても、SEEDでは前科がありありですからね。一番、安心なのは
キラがフリーダムに一緒に乗せて送ることでしょうが、フレイ様が許す訳ないか。

>>散った花、実る果実
ミリアリア・リスティアの中でフレイ様の存在は大きくなっていたようですね。フレイ様を
呼びかける言葉に心の繋がりを感じました。再び、辛く当たって来る周りにクルーゼを頼るフレイ様。
このSSでは、パパの声が前面に押し出されていますね。私は、この声を説明するために、
クローン・フレイの設定を創ったのですが、結局、うまく使えずにいるので羨ましいです。
ただ、私だと変な方向に話が進みそうなので、このまま使うことはないでしょう。

>>流離う翼たち
結構、マイペースだと思ったら、カガリが先に情報掴んでいると、不機嫌になるキース。
実際は、傲慢なタイプだったのですね。でないと、SSの進行を牛耳れないか。

避難所での書込みですが、ここのSSスレは伝統的に戦記物っぽいものが歓迎されていた
みたいなので、かえって、ふさわしい気がしてますよ。

>>『明日』と『終わり』の間に
作者さんのSSは、抜群のネーミングセンスと迫力ある戦闘シーン、それと、ラストシーンの
締めのうまさで、とても楽しませてもらっています。個人的な難を言えば、オリキャラのみ話が
続く場合、以前の話を前提にして進めるため、見逃していると、とっつき難いことがあるかも
しれません。ただ、それに気を使って、極力、フレイ様を話に加えているのは分かります。
決して、ここにふさわしくないとは思っていません。特に、今いる作者さん達は、戦闘シーンが
少なめの方が多いので、貴重だと思っています。以前、ちょっとペースが早くて大変だろうと
思ったことはありますので、無理をなさらないでいいと思いますから、できれば続けて欲しいと
思っています。

476過去の傷・135:2004/05/11(火) 08:27
一時間後の食堂。
「ミリィ・・・行っちゃったね」
キラが呟く。
「そうね」
フレイも少し寂しそうだ。
「寂しくなるね」
「そうね」
「これで・・・ヘリオポリスの知り合いっていったら僕達とサイだけに・・・」
「ええ、ねえ最後のミリアリアのごめんねってどんな意味なのかしら」
ごめんね・・・キラを騙していたことに対しての?分からないがまあそうだろう。
「脱出ポット、無事だといいわね」
「大丈夫だよ、モビルス−ツなんていないよ、それにいまは戦闘中でもないし」
「そうね・・・」
ほんと寂しくなるわ・・・喧嘩相手もいなくなったし、ミリアリア・・・あんたとは軍に入ってからは喧嘩ばっかりしてたけど・・・それでも、友達だって思ってたのよ私。
「ミリアリアさんは行きましたか」
ラクスとアスランがフレイに歩み寄ってきた。
「ラクス・・・アスランさん」
「少し冷たい言い方だったが彼女のためだ」
「はい、私も・・・ところでアスラン」
「はい?」
「なぜミリアリアさんが貴方の部屋にいらしたのですか?」
アスランさんの顔が凍りつくのが私には分かった。

その頃ミリアリアの乗った脱出ポットは一機のモビルス−ツと遭遇していた。
「あれって・・・デュエル!?」
<お前はディアッカの!?>
とイザ−ク・ジュ−ルは言った。

477『明日』と『終わり』の間に(終)・夕方:2004/05/11(火) 08:36
「うわぁーーー!?フッ、フレイ!しっかりしろぉっ!!」
「・・・・・・」
 
 いきなり倒れるなんて、一体どうしたっていうんだ?何だか私の料理を口にした瞬間こうなったような・・・?まさか・・・、食中毒!?いや、それはないな。食材は全て昨日仕入れたものばかりだ。それとも、私が半ば強引に病院から連れ出したから、そのストレスで?でもあれだけ楽しそうだったんだし、それもどうかなぁ?・・・てそんなことのん気に考えてる場合じゃないだろ!!

「・・・カ、ガリ・・・」
「!フレイ、気が付いたのか!?」
「大丈・・・夫、よ・・・。私・・・は・・・」
「今の状態からはどー見ても説得力無いぞその台詞!無理して喋るな!」
「平気よ。私の想いが・・・キラを守ってるように、キラの想いが・・・私を守ってくれてるから・・・」
「・・・言ってる意味がよくわかんないぞ?」
「・・・ねぇ、カガリ。いつか、聞こうと思ってたんだけど・・・」
「何をだ?」
「・・・私、知ってたの。本当のことを・・・。でも、本当はカガリの口から聞きたかったの・・・」
「!それって・・・!?」

 こいつ、もしかして記憶が戻ったっていうのか!?まさかこんな時に!どうしよう?キラからは本当のことは言うなって言われてるし・・・。

「だから今、本当のことを教えて・・・。本当は・・・」
 
 ・・・ゴクッ!

「・・・カガリ、彼氏なんていないんでしょ?」

 ・・・え?

「いいのよカガリ。私と話を合わせようとして今まで無理してたんでしょ?でも気にしないで。私はそんなことでカガリを笑ったりはしないから・・・」
「・・・・・・」
「さぁカガリ、今貴女の口から本当のことを教えて・・・」
「・・・だよ・・・」
「えっ?何?」
「本当のことだよ!!お前まさかずーっと疑ってたのか!?」
「・・・ガクッ」
「ってオイ!都合良く気を失うなぁ、しっかりしろ!!」

 こいつ、今までそんなこと考えてたのか?・・・正直ショックだったよ、今の・・・。とにかく救急車を・・・。!んっ、指がかすかに動いてる?それも零れたソースをつけて。ひょっとして、何かを伝えようとしてるのか?一体何を・・・?・・・『カ』・・・、・・・『ガ』・・・。ってそれ私の名前かよ!?まさかダイイングメッセージのつもりか!?止めろ!!

 あーもう、どうすりゃいいんだ!?キラ、アスラン!!どっちでもいいから早く帰って来てくれぇーーー!!!

 次回予告
『始まりはただ純粋な想いから。大切な者の笑顔が見たいという切なる願いは悲しい結末を呼ぶ。それでも想いは潰えることなく、新たな可能性へと向かい羽ばたく。次回、「『明日』と『終わり』の間に」、『編物編』。立ちはだかる試練に、立ち向かえ!ガンダム!!』

 !えっ、予告!?これ続くのかよ!?

 ・・・嘘です。

478『明日』と『終わり』の間に(終)・夕方:2004/05/11(火) 08:57
 様々なご意見、有難うございました。自分がいかに甘ったれた考え方を持っていたか分かりました。取り敢えずしばらくはもう一度じっくり考えてみるつもりです。お騒がせしました。

》散った花、実る果実
 リスティアさん、足を・・・。ようやくフレイ様と分かり合えてきたというのに悲しすぎます。フレイ様も根拠の無い敵意を向けられていますし・・・。
 何だかまたクルーゼが目立ち始めましたね。悪い方向に進まなければいいんですが。

》過去の傷
 アスラン、やはりピンチを迎えましたね。これからは何となく彼とラクスが中心になりそうな気がします。この二人の喧嘩ってどんなでしょう?
 ミリィはイザークに保護され一安心ですね。やっぱり脱出ポッドじゃ心持たないですし。

》赤毛の虜囚
 メルデルさん、まるで手のひらをひっくり返されるように・・・。悲しいですね。悪いのは全部アル・ダ・フラガなんですが。そしてこれから彼女を待つのはあの波乱万丈な人生なんですね。
 
》流離う翼たち
 カガリ、ナタルさんに正体を知られてしまいましたか。彼女はよくこうした重要な場面に登場していますが、今回も何らかの役割があるんでしょうね。果たして彼女やキースさんはこれからどうするんでしょう?

479過去の傷・作者:2004/05/11(火) 09:41
ミリィのことに対してなんですが、これからはこんなことはほとんどないですが、少しは・・・でないと物語が狭まれてくるんです・・・すいません、でもミリィはほんとに好きなんですよ、ただ皆さんに不満を持たれあまりいい印象を受けなかったことに対しては作者として反省すべきことかもしれません、すいませんでした。

>>478
もっと自身もってください、お上手なんですから、私なんてとても。
>>翼たち
こ、これは凄い修羅場に・・・正体ばれましたか、怖いです・・・。
>>ザフト・赤毛の捕囚
メンデルさん可哀相です、悲しい運命に振り回されてますね・・・。

480過去の傷・136:2004/05/11(火) 12:31
「は・・・?」
「いえ、ですからなぜミリアリアさんが貴方の部屋にいたのか気になりまして、どうなんですか!?」
「そういえばそうよね、どうしてなんですかアスランさん?」
「ア、アルスタ−二等兵まで・・・」
これで分かる、いや前々から分かってはいたがアスランはラクスには頭が上がらない、尻に敷かれているのだ。
というわけで・・・。
「ラクス・・・その・・・申し訳ありませんでした」
そしてラクスに頭を下げた。
「謝るということはやましいことがおありなのですね?」
流石に鋭いわねこの女。
「ではお部屋でじっくりとお話を聞かせていただきます」
「あ、あの・・・これからキラと実戦練習が」
「そうですか、ではそれが終わりになられましたら私のお部屋に来てくださいね」
「は、はい了解しましたラクス・クライン、では!」
そして逃げるようにアスランさんは去って行った。
「じゃあ僕も・・・」
そしてキラもそのままアスランさんを追った。
残った私とラクスは・・・。
「ラクス、お互い大変よね・・・」
「はい・・・」

その一時間後。
「え!?」
通路を歩いていたフレイはアサギとマユラに会い話を聞いていた。
「また昨日みたいにキラさんと語りあいたいよね」
キラと語り合う?なんのこと言ってるのかしら・・・。
そして私は二人に声をかけた。
「あの・・・なんのこと話してるの?」
「いえ、昨日私達キラ君と話したくて夜部屋に誘ったんです、そしてら来てくれて、それからお菓子食べながらいろんな話を・・・」
な、なんですって!?あれだけ他の子とは話すなって言っておいうたのに・・・あの馬鹿!もう許さない!部屋に上がったですって!?他の女の子の部屋に!?
そしてフレイはパイロットロッカ−に急いで走っていった。

481SEED if 〜Fllay Selection〜 ②:2004/05/11(火) 22:50
キラを拒絶した私には往く当てがなく、とぼとぼと廊下を歩いていた。
途中、誰かとすれ違ったが誰も気に留めることはない。
当たり前のことだった。
私を見てくれる人もうはいない。
最初はサイが私を見てくれていた。
でも、それが邪魔になって私はサイを傷つけた。
そして、キラ。
私だけを見るように、そして私の思うとおりにするために関係をもった。
それだけを、パパの復讐だけを考えていた。
でも、キラは違った。
『キラは・・・』



立ち止まって、キラのことを思い浮かべる。
『コーディネーターなキラ、泣き虫なキラ、怖いキラ、苦しんでいるキラ、優しいキラ。』
いろんなキラが浮かんでは消えていく。
心がチクチクと痛む。
どうして?
キラを、コーディネーターを怨んでるはずなのに。
自問自答をしていた時、通路の先から明るい声が聞こえた。




「お父さん達、元気でよかった。」
「ああ、ほんとな。」
サイたちだ。
声にはうれしさがあふれている。
私とは対極な存在。
『どうして、私だけ・・・』
私はサイ達とは逆のほうに走り出す。
私には誰もいない。
どこにも場所がない。
私にはアークエンジェルが出口のない迷路に思えた。



迷路を彷徨いながら、何度もキラの部屋の前に着く。
キラに会いたくないのに、心のどこかでキラが気になる。
ここにはキラはいない。
オーブに出向している。
この部屋は私がいた部屋。
でも、私の部屋じゃない。
キラの部屋。
来てはいけない場所。
時間的に、キラが帰ってくる。
だから、ここから一番離れたところにいこう。
私は何度も振り向きながらキラの部屋から離れる。
たどり着いた場所は。
誰も使っていない、冷たい部屋。
私は毛布で身体をくるみ、部屋の隅でひざを丸めた。
『寒い・・・』
誰の匂いもしない部屋はとても寒かった。

482SEED if 〜Fllay Selection〜 作者:2004/05/11(火) 23:07
この話は基本的にフレイ様視点で進むので独白が多いです。
とりあえずIFな話を目指します。

〉〉赤毛
  メルデルさんは、波乱万丈の人生へと急転直下ですね。
  辛い道ですな。
  アルダ・フラガ、やばすぎですよ。

〉〉過去の傷
  ミリアリアはひとまずイザークに保護されたみたいでほっとしてます。
  だけど、すぐさま修羅場2連発。
  休まることなくどきどきです。

〉〉流離う
  カガリ自身の正体とカガリの正体がいっぺんに語られるといううまい展開ですね。
  キースの話に二人は納得できるのでしょうか。

〉〉『明日』と『終わり』
  壊滅的な料理を食べて都合よく気絶するフレイ様が素敵です。
  ダイイングメッセージに語られる真実はいかにって感じですね。
  応援してます。

483キラ(♀)×フレイ(♂)・43−1:2004/05/11(火) 23:44
サドニス島で最も忙しい一日。
一月に一度、悪魔の壁(デーモン・ウォール)が開放される時間帯を、サドニスでは
そう呼んでいる。禁断の開かずの扉が開いてから、再び門(ゲート)が閉じるまでの
凡そ十八時間以内に、物資の流入や、入国または出国手続きを全て果たさねばならない。
遅延は一ヶ月の島内封印で済めばまだマシな方で、場合によっては生命に関わるケース
も十分に有り得るので、この日は一日中、島全体が緊迫感に包まれている。
まあ中には、この機に入国し、用件を済ませたら、再び壁が閉じる前にとんぼ返りで
出国を果たすタフなビジネスマンの兵(つわもの)もいたりするが…。
出国用に使用される北岸部の港に、様々な大きさの船が団子状態でひしめき合っている中、
航路局からの指示により、本来なら入国に使われる南岸部の港に、まるで貸し切り状態
のように、悠々と一隻の大型船が停泊している。
“足付き”のコードネームでザフトから追われている、地球連合軍の強襲機動特装艦
アークエンジェル(大天使)だ。一見、VIP待遇を受けたかのように見えるが、
実は揉め事(戦争)に他の民間船を巻き込まない為の単なる隔離処置である。


「どうやら何とかなりそうね」
マードック軍曹からの報告書を読み上げたマリューはホッと安堵する。
この二日間の滞在中に、AAの外装修理はほぼ完了し、緊急(スクランブル)発進
の準備も整っている。ただし、修理の方はあくまで応急的なモノでしかなかったが、
この廃棄されたドック内では設備も資材も不十分だったので、致し方ないだろう。
「これでも、以ってあと一・二回の戦闘ってところかしら。やっぱり、一度は本格的
な修理をする必要性があるわね。となると、どうしてもオーブ本国に寄港…」
「あんまり難しく考えるなって、マリューさん」
元整備兵の視点から艦の耐久度を皮算用して、気難しそうに唸っている彼女に、
何時の間にか艦長室に入室してきたフラガがコーヒーを運んできた。
「ムウ…」
彼から珈琲のカップを受け取ったマリューは、頼もしそうにフラガを見上げる。
この二人は、既にプライベートではお互いを名前で呼び合う仲になっている。
「サドニスに寄ったのは正解だったみたいだな。艦の修理もそうだけど、クルー連中や、
とくにキラ達ヘリオポリス組にとっては、良いリフレッシュ休暇になったみたいだぜ」
「そうであってくれれば良いのだけど…。キラさんには色々と酷い事をしちゃったしね」
マリューは例の一件を未だに気にしているみたいだ。尚、二人は、フレイの匙加減一つで、
危うくキラがザフト兵に拉致され掛けた事実を知らない。
「まあ、その分は、俺ら(幹部)が割りを喰う羽目になっちまったけどな」
フラガは軽く両肩を竦め、マリューは少しだけ申し訳なさそうに俯いた。
「それは仕方ないわよね。私たちは「死ね」「殺せ」と命令する立場なんだから。
一度、戦闘が始まったら、あの子達には何もしてあげられないしね」
個としては極めて善良な領域に属するマリューを、フラガは擽ったそうな表情で見つめる。
戦術判断能力に関しては、フラガでさえも疑問符を付けざるを得ない艦長さんだが、
下々の労働の成果を不当に搾取する上役が多い中で、職権を乱用することなく、
自ら貧乏籤を引こうとする彼女の姿勢は、指揮官として高く評価出来ると思う。
あとは、彼女に欠けている能力(戦術眼)を補ってくれる有能な副長(ナタル)と、
もう少し折り合いをつけてくれれば…と考えたが、これが一筋縄ではいかない難事だ。

「…で、ここからは仕事の話なんだ。先程、バジルール中尉とも話し合ったんだが」
再びフラガは、精神のチャンネルを戦闘用へと切り替える。ナタルの名前を聞いた瞬間、
マリューな眉がピクリと動いたが、フラガは敢えて無視する事にする。
「じきに悪魔の壁が消えそうなので、航路局から出港をせっつかれているだろう?
なら、発進と同時に、戦闘準備を整えておいた方が良いぜ」
「えっ!?」
「今、俺達を躍起になって捜索している敵さんも、まさか俺達がデーモン・ウォールの中
から出てくるとは思ってないだろ?何時もは襲撃に脅える側だったけど、上手く機先を
先んずれば、今度はこっち側から奇襲を仕掛けられるかも知れないぜ」
狐につままれたような顔のマリューに、フラガはウインクしながら手順を説明した。

484キラ(♀)×フレイ(♂)・43−2:2004/05/11(火) 23:45
まるでサドニス島を外敵から守るかのように島外を取り囲む磁気嵐が消失し、この海域
一帯は穏やかな晴れ模様に包まれる。ホバークラフトのように海水を巻き揚げながら
海上を移動するアークエンジェルの艦内に、第一級戦闘配備の警報が鳴り響いた。
「おいおい、もうドンパチをおっぱじめるつもりかよ!?」
サドニスでのバカンス気分に幾分緊張感が薄らいでいた艦内のクルーは、大わらわで
自分達の持ち場へと走っていく。カガリもそんな中の一人で、他のクルーに紛れ込み
ながら、慌ててスカイグラスパーの格納庫へと向かっていたが、人の流れに逆流する
かのように反対側から歩いてきた人物と肩をぶつけ合ってしまう。
「あっ…悪い…って、お前!?」
反射的に謝罪しかけたカガリの瞳に隠しようのない敵意が浮かんだ。
「これは、これは、カガリ君じゃないか。昨日は僕のキラがお世話になったみたいだね」
何とまあ、カガリが衝突した相手は、彼がAA内で最も嫌っている人物だ。


淀んだ空気が二人の間を覆った。良くしたもので、フレイの方でもカガリを疎ましく
思っているようで、非好意的な視線でカガリを見下ろしていたが、第一級戦闘配備が発令
されている緊急時を考慮してか、そのまま大人しくカガリの脇を通り過ぎようとしたが、
「おい、待てよ。どこへ行くんだ?この警報が聞こえないのかよ!?」
これから戦闘が始まろうとする時に、非戦闘区域に向かおうとするフレイの行動を
訝しんだカガリに呼び止められ肩を掴まれた。
「どこって、自分の部屋へ戻るんだよ。これから昼寝をするつもりなんでね」
「はあっ!?」
あまりにピントぼけした回答にカガリは唖然とする。ドンパチの最中に仮眠を取ろう
とするフレイの胆力(能天気さ)には、感心するよりも、呆れ返る他ないだろう。
「そんなわけで、邪魔しないでくれないかな。最近、キラがどんどん手強くなってきて、
中々満足してくれなくなったから、ここのところ、少し寝不足なんだ」
カガリのキラへの想いを知ってか知らずか、わざわざ彼の神経を逆撫でするような台詞を
平気で吐き、カガリは必死に歯軋りを堪えたが、それ以上にカガリの勘に触ったのは、
戦時中に安全な場所へ逃げ隠れしようとするフレイの軟弱な態度そのものだ。


「お前、本気で言ってるのか!?皆がこれから生命を賭けて戦おうって時に、
一人だけ安全な所から高みの見物を気取るつもりかよ!?」
「おいおい、あまり人聞きの悪い事を言わないでくれよ。単なる役割分担の違いだろ?
非常(戦闘)時だけ活躍すればよい助っ人の傭兵君と違って、朝昼晩とクルー全員の食事
を毎日作り続けている僕は、多分、AAで一番の働き者なんだぜ」
フレイはさり気無く、短時間で美味しい所だけを総取りしている分際で、手前勝手な理論
を振り翳すカガリに、労働基準法違反オーバーの自分の実労働時間の長さをアピールする。
「確かに君達戦闘パイロットはエースかも知れない。けど、華やかなスポットライトを
浴びるF1ドライバーも、それを支えるメカニック無しでは存在しえないのと同じように、
君の機体を整備するクルー達や、さらにその下で、クルーの健康基盤を支える僕のような
下積みがいなければ、軍隊そのものが成り立たないのだよ。判るかい、エース君?」

そうだよ。僕がその気になれば、ザフトに対して難攻不落を誇っているこの不沈艦を、
内側から壊滅させることも十分に可能なんだぜ?
フレイは子供をあやすような穏やかな口調の裏側で、相当に悪魔的な考えを閃かす。
極めて性質(たち)の悪い事に、このフレイの宣言は虐められっ子の誇大妄想ではなく、
現実的に具現化可能な事象だ。彼の部屋には、クルー全員を毒殺可能な分量の無味無臭
の強力な毒物がストックされている。フレイには、毒殺を実現する立場と手段と、
何よりも、本当に大量殺戮をやってのけられるだけの覚悟(狂気)を保持していた。

485キラ(♀)×フレイ(♂)・43−3:2004/05/11(火) 23:45
「判ったかい、君達が忙しい時(戦闘中)こそが、僕に許された唯一の休憩時間なんだ。
それに、何ら専門的な技術も持っていない素人の僕が、戦意だけを空回りさせて、
戦闘部署間をノコノコとうろつかれるよりも、部屋に篭もって、枕を抱え込んでガタガタ
震えて大人しくしている方が、各部署にとっても有り難い話しだと思うけどね?」
実に分を弁えた発言ではある。確かに、世の中には『有り難迷惑』という諺があり、
ヤル気多寡、能力不明な人間の参入ほど、修羅場で足を引っ張る存在は他にない。
(例:一レジスタンス(明けの砂漠)の、正規軍同士の戦闘への強引な介入など)
カガリもその辺りの理屈が判らない程、もう子供(世間知らず)ではなかったが、
それがフレイの口から出ると妙に白々しい響きを帯びるは何故だろうと不思議に思った。


「キラは…お前の彼女は、お前を守る為に危険な戦場で必死に戦っているんだぞ。
それでも、お前は何とも思わないのか!?」
フレイの本音は別の所にあるのではないかと当たりをつけたカガリは、今度は別口から
攻めてみる。だが、キラの名前にも、フレイはさしたる感銘を受けた様子はなかった。
「だからって、今の無力な僕に一体何が出来るというんだい?
僕に可能なのは、彼女が無事に僕の元へと戻って来てくれるように祈る事だけさ。
ああ、キラ。愛しき殉教者よ。君の涙を思うと、僕の心は張り裂けそうだ」
両掌を胸に当てる大仰な仕草で、キラの身を案じる振りをしながらも、大きな欠伸を
噛み殺そうとするフレイの不誠実な態度に、プツンとカガリの中で何かが切れた。
カガリは改めて、自分が滅ぼさねばならない本当の敵は、これから戦うザフト軍など
ではなく、目の前のこの悪魔(フレイ)であることを、本能的に確信する。
傍から見ればカガリの思考は、シスコン全開の理不尽な言い掛かりそのものでしかないが、
結果的には、彼は偏見の密林を強引に突破して、真実の城に辿り着いた事になる。

「…じゃ、そういうわけで!?」
いい加減にこの場を去ろうとしていたフレイの腕を、カガリは強く掴んだ。
「おいおい、何のつもりだい、カガリ君?僕にそっちの趣味はないと…」
フレイは冗談っぽく軽口を叩いたが、カガリは乗ってこなかった。
「……来い!」
「はぁ!?どこへ連れてくつもりだい?」
「いいから、黙ってついてこい!」
困惑した表情のフレイの質問を無視すると、カガリは強引にフレイを引き摺り出した。
何時もキラばかりを危険な戦場で矢面に立たせて、自分は安全な処で、涼しい顔して
大物風を吹かしやがって…。お前にも、戦場の本当の恐怖をたっぷりと味合わせてやる。

486キラ(♀)×フレイ(♂)・43−4:2004/05/11(火) 23:46
その頃、不眠不休で哨戒を続けていたザフト軍の二隻の潜水母艦は、捜し求めていた標的
(足付き)を突如発見したことで、反ってパニック状態に陥っていた。
「レーダーに機影あり。足付きです!
出現ポイントからすると、どうやら今までサドニスに潜伏していたものと思われます」
「何だと!?どうやって悪魔の壁(デーモン・ウォール)を突破していたというのだ!?」
クストーの艦長が大声でオペレーターに問い掛けたが、当然満足する解答は得られない。
本来なら探し物を見つけた事を喜ぶべきだが、甚だ不味い事に、MSの半数以上は哨戒
の為に遠出で出払っていたのだ。このままでは各個撃破の格好の餌食である。
「モラシム隊長に連絡しろ!哨戒中のMS隊をすぐに呼び戻せ!」
クストーの艦橋内は大慌てだ。そうこうしている間に、アークエンジェルから出撃した
二機のスカイグラスパーに、自分達の位置を捕捉されてしまった。

「見つけたぞ。ドンピシャみたいだな」
レーダー内に、ボズゴロフ級二隻の機影を発見したフラガは軽く口笛を吹く。
今回はフラガは、海中の潜水艦を攻撃するケースを視野に入れている為に、
お気に入りのソードパックではなく、狙撃用のランチャーパックで出陣している。
スカイグラスパーを海上すれすれの位置に低空飛行させたフラガは、この高度を維持
しながら、320mm超高インパルス砲アグニを発射する。かつてヘリオポリスのコロニー
の外壁を一撃で貫通したゴッドフリートに匹敵する高密度のエネルギーの塊は、海壁を
薄紙のように貫き、ボズゴロフ級の一隻に直撃し海の藻屑にした。

「クッ!、海上に浮上しろ!ディンを射出して撃退させろ!」
カーペンタリア基地からの増援である僚艦を失い、さらには惜しみなくアグニ砲を
連射するグラスパーの猛撃に恐れをなしたクストーは慌てて浮上を開始する。
だが、その行動はフラガの想定範囲内でしかなく、敢えてクストーがディンを打ち上げ
ようとする瞬間を狙って、再度アグニの照準をボズゴロフ級のMSハッチに定めた。
「残念だが、一歩遅い。悪く思わないでくれよ」
火神(アグニ)の鎚が一振りする。派手な水飛沫と共に、艦は爆発炎上し、クストー内
のMS隊は、戦死する機会すら与えられないまま母艦共々消失した。


「これで仕事の半分は終了だな」
ここまでの戦闘経過は、呆れるほどワンサイドにAA側のペースで推移している。
敵母艦二隻撃墜という偉業を成し遂げたフラガだが、その成果に奢ることなく、既に
心は次の標的を定めている。そろそろ、敵の哨戒部隊が戻ってくる頃である。
「カガリ、今回はお前が囮役だが、出来るか?」
レーダー内にディン数機の機影を発見したフラガは、ソードストライカーパックで
出撃したカガリに是非を問い掛ける。若輩のカガリにフラガの真似事(戦闘機での接近戦)
をしろなどとは結構無茶な要求ではあるが、フラガの見立てでは、彼の本来の適正は
アグレシッブな性格に由来する攻撃力でなく、野生本能的な防御勘の方だと見ているので、
撃破は無理でも、敵を撹乱するぐらいの芸当はしてくれるだろうと期待していた。
「任せてくれよ、兄貴。ディンを十七個に分解してやるよ」
そのフラガの期待に応えてか、極めて頼もしい返事が通信機から聞こえてきた。
「だといいんだけどね…」
…続けて、カガリ以外の男性の声が聞こえたような気がしたフラガは軽く小首を傾げる。
「んっ!?今、何か言ったか、カガリ?」
その回答を得るよりも先に、母艦を沈められて怒り心頭のディン部隊が接近してきた。
兄弟鷹は、前回の役割を変更した上で、再びディン隊と激突する。

487キラ(♀)×フレイ(♂)・43−5:2004/05/11(火) 23:46
「ええい、一体全体どうなっておるのだ!?」
モラシム隊長は不機嫌さを隠せなかった。足付き発見の報を受けて、慌てて戻ってきた
のは良いが、クストーからは一向に続報はない。海中にはボズゴロフ級の外壁と思わしき
残片が多数浮遊しており、何が起きたかの大凡の推測はつくが、彼の理性がその現実を
認めるのを躊躇わせていた。確かに、この短時間に、ザフト軍の潜水母艦二隻が、
たかだが数機の戦闘機に沈められたなど、在ってはならない由々しき事態だ。
本来、寡兵で数倍の敵と渡り合えるのが、コーディネイターとナチュラル間の正しい
キルレシオなのであり、実際、クルーゼ隊は、足付きを逃し続けているとはいえ、
ハルバートン提督率いる第八艦隊の十倍近い戦力を壊滅させているのだ。
このままオメオメと帰参する事は出来ない。何としても、足付きを沈めなければ…。


モラシムが苦悩している間に、エールモードのストライクが、海中に飛び込んできた。
ストライクを迎撃しようと、周りのグーンが前腕部のミサイルを向けかけたが、
悪戯に交戦させても、反って被害が増すばかりだと判断したモラシムは部下達を制した。
「お前達の敵う相手ではない。奴は私が引き受けるから、その間に、足付きを撃破しろ」
その隊長のお言葉にパイロット達のプライドが傷ついたが、ストライクの手強さは前回の
戦闘で身に染みているし、PS装甲を短時間で突破する有効な武装がグーンには装備
されていないのも事実だ。渋々ではあるが、モラシムの命令を受け入れたグーンの群れは、
標的をストライクから足付きに変えて、次々と海上へと浮上していく。

「行くぞ、ストライクめ。モラシム隊の底力を見せてくれるわ!」
PS装甲に唯一有効なフォノンメーザー砲で牽制しながら、ゾノはヒット&アウェイ
を繰り返して、少しずつ戦場を移動させ、ストライクを足付きから引き離した。
部下たちに豪語したモラシムだが、実は彼にもキラと互角に渡り合う自信はない。
隊長自身が囮となり、手負いの足付きを仕留めるまでの時間を稼ぐつもりである。
ストライクの攻撃を必死で避けながら、部下達が凱歌を挙げるのを待ち続けていたが、
グーンの集中砲火を浴びながらも、何故か一向に沈む気配を見せない足付きのしぶとさ
にモラシムは次第にイラつき始める。
モラシムの一連の状況判断自体はそれほど戦理から外れたものではなかったが、
彼にとって不幸なことに、足付きはサドニスでの応急修理により、前回の戦闘終了時
のモラシムの見立てよりも、艦の耐久力を大幅に回復させていたのだ。
遣る事成す事、全てが裏目裏目にと出ており、彼は今年、相当な厄年のようだ。


グーンの絶え間ない波状攻撃によりアークエンジェルの艦橋は揺れ続けている。
軍事上の通念を大幅に凌駕する艦の異常な耐久力により何とか持ち堪えてはいるが、
物理的法則に従って運用されている以上、ラミネート装甲にも何時かは限界が訪れる。
だが、ヘルダートでは、海中と海上を行き来するグーンに決定的なダメージは与えらない。
ここで、艦長のマリューは常人には及びもつかないとんでもない奇策に出た。
バレルロール(180度の宙返り)である。
常識人のナタルの反論を一蹴して、艦長権限で自分の意見を押し通したマリューは、
艦橋のクルー全員にシートベルトを付けさせて、艦内放送でその旨の警告を流すと、
その奇抜なアイデアを実行へと移した。

「な…何だ!?」
ラッコのように海中に仰向けにプカプカと浮かんでいたグーンのパイロット達は、突然
バレルロールを敢行し、船腹と艦首の位置をそっくり入れ換えた足付きにパニクった。
さらに不味いことに、今まで死角に潜り込んで、好き放題に一方的な攻撃を繰り返して
いたというのに、今では自分達はゴッドフリートの射角に入り込んでしまっているのだ。
彼らがその事に気付いた瞬間、ゴッドフリードが火を噴いた。アークエンジェルの下に、
水柱が連続して炸裂し、グーン隊は一瞬にして壊滅した。

488キラ(♀)×フレイ(♂)・43−6:2004/05/11(火) 23:47
アークエンジェルは、そのままクルリと一回転して、艦首を正常な位置へと戻した。
「良し良し、上手くいったわね」
自ら発案した戦術で、はじめて成果を収めたマリューはホクホク顔である。
「指揮官が局地的な戦況に一喜一憂していてどうする!?」
クルーにシートベルトの着脱を指示していたナタルは天邪鬼にそう考えたが、
大人気ない発想だし、今の彼女に忠告しても効果はないだろうから沈黙を守った。
それよりも、今回の奇手に支払った代償への後始末の方が大変そうである。
自分達の部屋がどんな状態になっているか考えただけでナタルは憂鬱になった。
ただ、副産物的に一つだけ良いことも存在している。
何故か宿主不在のフレイの部屋で、彼の机の引き出しの中に隠されていた毒物の瓶が、
バレルロール敢行時に、床下に投げ出されて、内容物が溢れ出たのだ。
今、フレイの部屋はバイオハザードに汚染されたL4コロニーのような惨状になっており、
これはこれで、後始末が面倒そうではあるが、結果としては、マリューはAA内に内包
されていた潜在的な危機を意図せずに取り除いたことになる。


「何たる様か…」
海中へと沈んでいくグーンの残骸をモラシムは呆然として見下ろす。
クストーはおろか、空中に展開するはずのディン部隊からも応答はない。
どうやらこの戦場で生き残っているのは隊長である彼自身のみのようだ。
「お…おのれぇ、ナチュラル共めぇ〜!!かくなる上は…」
既にこの戦闘の勝敗は決している。ただ、隊を全滅させた上で、自分一人が逃げ戻るなど、
出来よう筈がない。余裕を失ったモラシムは血走った目をストライクに向けると、ゾノを
水中モードに変形させて突進してきた。キラはミサイルで迎撃しようとしたが、何故か
モラシムは避けようともせずに、被弾しながらも、最短距離を突っ切ってきた。
「よ…避けない!?」
モラシムの神風特攻にキラは唖然とする。PSで守られていないゾノはかなりのダメージ
を負ったが、機体の損傷を無視して、そのままストライクに体当たりを敢行する。
「貴様も道連れだ、ストライク!一緒に地獄に堕ちろ〜!!」
ストライクに抱きついたゾノは、スクリューをフル回転させて、7000m級の深度を
誇るジャワ海溝へとストライク共々沈んでいく。

「こ…この人、まさか私と一緒に…」
モラシムの意図を悟ったキラはサーッと表情を青ざめさせる。冗談ではない。
無意識のうちに地獄逝きの相棒を探していたキラだったが、フレイやアスランなら
ともかく、顔も知らないムサイおっさんと心中するなどゴメンだった。
キラはゾノを振りほどこうと必死にもがいたが、モラシムの執念が憑りついたかの
ように手負いのゾノはビクともせず、あまりに懐深くに潜りこまれて拘束されている
為に、アサルトナイフの一撃も空を切るばかりで、ゾノの背中まで届かない。
その間にも、深度はどんどん深まっており、コックピット内もミシミシと嫌な音を
立てながら軋み始めた。何かこの状況でも使える武装は…。追い詰められたキラの
視界に、メインスクリーン上のゾノの赤色のモノアイが映し出された。

次の瞬間、ストライク頭部のイーゲルシュテルンが火を噴き、モノアイを直撃する。
「な…何だ!?」
メインカメラを潰され、視力を失ってモラシムが混乱した隙を逃さずに、キラは
ゾノの拘束を振る解くと、そのままゾノを踏み台のように蹴って、海上へ浮かび
上がるための浮力(推進力)を確保する。
「ぐおおぉおお!!!!!」
ストライクに蹴落とされ、さらなる奈落の底へと落下していったゾノはとうとう水圧に
耐え切れずにペシャンコに潰れ始めた。モラシム隊長の最期を見届けながら、ゆっくりと
海上に浮上していくキラの瞳からは涙が溢れ出して止まらなかった。

489キラ(♀)×フレイ(♂)・43−7:2004/05/11(火) 23:47
キラがモラシムと交戦し始めたのと時を同じくして、敵母艦を撃破したフラガとカガリ
の二人は、そのままディンの群れを相手に延長戦を行っていた。
戦況は、ナチュラル、コーディ間のキルレシオを無視したフラガの異常な活躍で、
敵ディンの残数は既に残り一機まで減らされている。囮役のカガリも、良く役割を
果たしていたが何故か不機嫌だ。それは、目に見える類の派手な武勲を挙げられないが
故ではなく、彼の後ろにいる男性の存在に起因していた。スカイグラスパー二号
の後部座席には何故かフレイが乗っていて、退屈そうに欠伸を噛み殺している。

「おい、フレイ…」
ディンの機関銃の連射を避けながら、カガリが忌々しそうに声を掛ける。
「何だい、エースパイロット君?」
「もっと焦れよな、お前。もし被弾したら、この瞬間にも俺達はそれでお陀仏なんだぞ」
カガリはそれとなく脅しを掛けたが、フレイは何ら危機感を覚えた様子はない。
「ナンセンスだね。僕が慌てた所でどうしようもないだろう?
この機体の命運は、君の意思と力量のみで成り立っているんだからね」
涼しげな表情で実に可愛げのない口を叩くフレイにカガリは舌打ちする。
実際、当てが外れた気分だ。こんな筈ではなかった。あいつのようなタイプは、
自分が安全圏にいられることを前提にしているからこそ、大物ぶっていられるのだ。
ちょっと危険区域に放り込んでやれば、直ぐに本性を現して醜態を晒すものと思い、
わざわざここまで拉致してきたというのに、一向に堪えている様子がない。
どうやらフレイは悪い意味で、口先だけの凡人とは一線を画する存在らしい。

これだけじゃ、まだ、恐怖心が足りないのか?
そう思い込んだカガリは、ソードを展開すると左舷方向からディンに近接戦闘を
挑んでいく。接近し、どんどん大きくなっていくディンの迫力に流石のカガリも
生唾を飲み込んだ。ディンがサーベルを大きく振りかぶった。左か?右か?
カガリはヤマ勘で、ディンのサーベルの軌道を先読みして空中旋回を行う。
ヤマは見事に命中し、ディンの斬撃を紙一重で回避したカガリは、そのまま
ビームソードの一撃でディンを真っ二つに切り裂いた。


「ははっ…。どうだ見たか、フレイ?流石にビビっただろ?」
カガリの心臓はまだドキドキいっている。もう一度やれと云われても多分出来ないだろう。
「これは、君が女装していた時の鬘じゃないか?そうか、前回の戦闘中に脱げたんだね?」
…どうやら全く正面を見ていなかったようだ。フレイは実に興味深そうに小脇に落ちて
いた焦茶色の鬘を拾い上げた。
「お…お前なぁ………!?」
一世一代の清水の舞台を物の見事にスルーされて切れたカガリは、怒りと共に後ろを
振り返ったが、途中でその表情が凍りついた。戦場でも飄々としたポーズを維持
しながらも、フレイの瞳が灰色に濁っている事実に気付いたからだ。
こ…こいつ、壊れてやがる!?
カガリは戦場で、こんな目をした人間を幾人か見たことがあった。常軌を逸した戦闘で
精神に異常をきたした者、大切な人間を失って心を閉ざした者は皆、ああいう濁った瞳の
色をしていたのだ。どうやらフレイは何らかの要因で既に魔に憑りつかれていたらしい。
じょ…冗談じゃない、こんな奴にキラを…。
カガリがフレイの危険度を再認識した刹那、そのキチガイ(フレイ)の口元が動いた。

490キラ(♀)×フレイ(♂)・43−8:2004/05/11(火) 23:48
「カガリ君。前、前…」
フレイはそう呟きながら、前方を指差している。慌てて正面を振り向いたカガリの視界に
ザフトの輸送機の姿が映った。どうやら、カガリがフレイに気を取られていた一瞬の間に、
機体はアークエンジェルへの帰還コースから外れて、とんでもない場所に迷い込んで
しまったみたいだ。
「な…何い!?」
カガリは反射的に機銃の引き金を絞ったが、同時に輸送機側からの反撃も行われた。
グラスパーと輸送機との短い交戦は、痛み分けという形を取り、共に推進部に被弾して、
黒煙を吐き出しながら、そのまますれ違った。

「クッ!両足しっかり踏ん張ってろよ、フレイ!このまま不時着する!」
機体の制御が効かなくなったカガリは、グラスパーをそのまま無人島の近くの海域
に強行着陸させる。グラスパーは派手な水飛沫を上げながら、辛うじて陸地に乗り上げ
る地点でストップした。

二人はまだ知らなかった。先程カガリが相打ちで仕留めた輸送機には、イージスと
そのパイロットであるアスランが搭乗しており、その機体をパイロットごと、
カガリ達が不時着した無人島へと落下させていた事実を…。

キラの初恋の君であり、現在キラと敵対しているアスラン・ザラ。
キラの双子の兄であり、キラの身を案じているカガリ・ユラ。
キラとの肉体関係を持ちながらも、キラを母の仇と付け狙うフレイ・アルスター。

キラを巡る三人の男性が、狭い無人島の中で、仲良く(?)呉越同舟する羽目となった。




次回偽予告「黒フレイ VS 純情アスラン」

「君がアスラン君かい?」
「何だ、お前は?」
「キラの最初(はじめて)の男かな?」
「なっ!?」

「『もう戦いたくない』、『これ以上、誰も殺したくない』、『まだ死にたくない』とか、
泣き言ばかり抜かす軟弱なキラを、宥め、賺し、時に抱き締めたりキスしたりして、
再び戦場へと送り込むのが、アークエンジェルでの僕の役目さ。
まっ、言ってみれば、キラ専属のメンタル・カウンセラーってところかな」

「き…貴様、貴様はキラを利用し…」

「おいおい、アスラン君。あまり人聞きの悪いことを言わないでくれよ。
これでも、僕はキラを愛しているんだぜ?
飴と鞭の理論で、ちょっと彼女の居場所に危機感を与えてやれば、
僕の大嫌いなコーディネイターを泣きながら殺し尽してきてくれるし、
人を殺して傷心の晩に、甘い言葉を耳元で囁いてやれば、夜伽の相手だって務めてくれる。
こんな素敵な恋人が他にいるかい? くっくっく…」

「殺す!殺す!殺してやる!お前だけは絶対に許さねえ!!」


「……おい、お前ら。本編(オリジナル)での主役だった俺の立場は?」

491ザフト・赤毛の虜囚 63:2004/05/12(水) 08:12
10.親友 7/8
[そう、メルデル。メルでもいい?]

親友だったジェシカとミーシャに絶交された。私を軽蔑している。

誰もが、私を、こんな目で見る。フラガと婚約させられてから、誰と紹介されても、いつも、
気持ち悪いと引いた目で見られる。そうじゃなきゃ、私を珍しいものを見るようにする。
フラガに連れられて、コーディネータの出産に関することを聞きにL4コロニー・メンデルの
研究所に行った時もそう。フラガは仕事があると早々に退散し、私一人残されて、担当医の
好奇の目にさらされた。担当医は、いやらしい目で私を見て、変なことばかり聞く。

その時、書類を取りに来た若い女医が、私の担当医に言葉をかけた。

「何、変なこと聞いてるのよ。この人、嫌がってるじゃない」
「なんだよ、必要事項だろ」

「どう見ても、そうは見えないわ。興味本意で聞いてるようにしか思えない。
 別に関係ないじゃない、これから結婚する人との歳が多少離れてたって」
「だけど、この二人は異常だぞ。なにか不穏な関係の匂いがする」

「どこが、異常だ! そういうアンタの方が、よっぽど異常で、無神経だ。いい加減にしろ!」
「なんだ、年上に向かって。お前、入ったばかりの新人だろ。自分の立場って言うものを」

「年上でもなんでも、間違っている事は許さない。アンタ謝んな。でないと、私が相手になってやる」

「あの、私、こんなの慣れてるから、もういいから、こんなこと……」私はさすがに女性を止めに入る。

「心配しなくていいよ。こんなのって、私は許さない。謝れ、このヤロウ!」
「なんだと! 所長に言って、お前なんぞ、やめさせてやる。覚えてろ!」

捨て台詞を残して、担当医は診察室を出て行った。私は、その女医と二人残された。

「フン!勝手に言ってな。間違ってるのはアンタの方なんだから」

「あの、ホントに大丈夫なの。あなた?」 私は問いかける。
「平気、平気。あんな女の敵のセクハラ医師許せないから」

私は、この女性を見つめた。
「あなた、名前は?」
「ヴィア・ヒビキ。あなたは?」

「メルデル、メルデル・シェトランド……」

だけど、私は、もうすぐシェトランドの名前さえ奪われることになる。私もフラガになってしまう。
私は辛い想いに目を伏せる。

「そう、メルデル。メルでもいい? なんか、呼びやすいし」

その言葉に、私は懐かしくなった。ママを始め、小さい時はいつも『メル』と呼ばれた。
フラガになることで感じていた辛い想いが、ヴィアに『メル』と呼ばれることで癒された気がした。

「いいわ。ヴィア、よろしく」
「メル、よろしく。彼氏と歳が離れているからって、色眼鏡で見られても、くじけちゃダメよ。
 愛してるんだったら胸を張って」

「うん…… ありがとう、でも、私……」チクリと胸が痛む。否定しようとして言葉を濁す。

でも、その前にヴィアは大きな声を上げた。
「あ、いっけない!」

「どうしたのヴィア?」
「ユーレンに止められてたんだった、こういうの。また、怒られる。ヤッバー!」

「え、え、ユーレンって誰?」
「私の旦那。私の言葉づかい荒くて、すぐ喧嘩するの直すように言われてたんだった」

「あなた、結婚してるの?」
「そう、あなたも若いけど、こっちも研究所に入って、すぐ結婚したもんだから。色々言われて」

「旦那さんって年上?」
「私はタメ歳。でもね、結構、頼れるんだ。あんま考えてること言わないけど」

「ヴィア、愛してるんだ旦那さんのこと。羨ましい……」

私の見つめる目に、さっきまで男言葉で威勢の良かったヴィアは、真っ赤になって黙り込んだ。
そして、照れ臭い顔で話す。

「いや、そんなんじゃ。やめてよ。そんなこと言うの……」

なおも、羨望の眼差しで見つめる私に、ヴィアは真っ赤な顔のまま、ポツリ、ポツリと自分のことを話しだした。

「ユーレンとは、小さい頃からの幼馴染よ。それで、いつの間にかズルズルと。こんなのありふれてるよね」
「いえ、全然、そんなことない。幼馴染って素敵だわ」

「そうね、ユーレン、私のこと、いつも、気にかけてて。私が両親と喧嘩して家出同然で飛び出した時も、
 いろいろ助けてくれた」
「それで、旦那さんと結ばれて…… ヴィア幸せそうね」

自分の恋愛を、大切なもののように話すヴィアに、私は、心が暖かくなり、もう忘れてしまったかと
思っていた笑顔を見せている自分に驚いた。

492ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/12(水) 08:22
>>『明日』と『終わり』の間に
ネメシス・フレイ様、記憶が戻ったかと焦りましたが、カガリへの勘違いで済んで良かったです。
カガリもくじけることは無いぞ、コーディネータのアスランは、きっと料理も、すぐにうまくなるでしょう。ん?
という訳でおもしろかったです。また、「The Last War」の再開を楽しみにしています。

>>過去の傷
ミリィはイザークに助けられたことで、どうやら早くディアッカと会えそうですね。良かったです。
しかし、その後、ラクスとフレイの修羅場が。アスランはともかく、キラは自業自得でしょう。

>>SEED if 〜Fllay Selection〜
しばらく、この時点で話が進むのですね。抜け殻状態のフレイ様。しばらくは一人寂しい部屋で
今の自分を見つめ直し、どんな結論を出すのでしょうか。

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
エール・ストライカーが水中で使えたりと、モラシム艦長もとい下村さん、大喜びの内容でしたね。
バレルロールもやってましたし。ということは船酔いはスルー? って、フレイ(♂)様じゃ無理ですな。
ところで、潜水母艦のクストーって、アラスカの後、クルーゼが乗るやつじゃなかったかな。
あっさり沈んでしまったけど、この辺も変わるんでしょうね。
次は、フレイ(♂)様も加えて、野郎ばかりの運命の出会いですか。助けに来たキラ(♀)が
誰に抱きつくのかが楽しみだったりします。

493過去の傷・137:2004/05/12(水) 09:58
フリ−ダムとジャスティスは壮絶な戦いを繰り広げていた。
といっても実際は練習なので当然だが両者とも本気ではなかった。
フリ−ダムが斬りつける、しかしジャスティスは回避するとビ−ムを叩き込む、そんな練習が繰り返されていた、そんな時。
<キラ、ちょっと待ちなさい!>
プロヴィデンスが接近してきた。
<フレイ!?なんで?君は今日は休みの日じゃ・・・>
<そうだ、アルスタ−二等兵、君は・・・>
<アスランさんは黙っててください、こんな浮気者・・・許さないんだから!>
プロヴィデンスはフリ−ダムに向けてドラグ−ン・システムを発射すると同時に斬りかかった。
<フレイ!落ち着いて!>
<私を好きとか言いながら・・・この・・・浮気者!!!>
<フレイごめん!仕方なかったんだ!誘われて・・・>
<なによ!私のことは遊びだったの!?>
そう言いながらプロヴィデンスは斬りつけるがそれをフリ−ダムは全て回避する、このあたりは流石である、というよりコ−ディネイタ−にナチュラルが敵うはずはないのだが、フレイの戦闘能力は凄まじい。
<フレイ、早とちりしないで!君のことは好きだよ!だいたい守ってくれるって言ってたじゃないか!>
<なんで避けるわけ!?>
<だって損傷するだろ!痛いし!>
<知ったことじゃないわ!>
そしてプロヴィデンスはジャスティスを見た。
<アスランさんも手伝ってよ!>
<手伝うってなにを・・・>
<この浮気者の緩んだ心を叩きなのすのよ!この男は私という女がいながら・・・>
<・・・・・・>
<アスランさんは私とキラいえこの浮気者のどっちの味方なのよ!?>
<俺は・・・アルスタ−二等兵の味方だ、浮気など許せるものか・・・!>
と自分のことを100%棚に上げアスランは言った。
そしてこれからプロヴィデンス、ジャスティスとフリ−ダムの戦いが始まる。

494過去の傷・138:2004/05/12(水) 10:16
「おかえりなさい、イザ−ク」
「ただいま戻りました、それより母上も戻っておられたのですか!?」
「ええ、でもまたでかけなきゃならないのよ、だから後は頼みますね・・・」
「はい・・・」
「ところでそちらは?」
と、隣にいる少女を見る。
まだ幼く年齢的にも17くらいだろうか・・・なかなかの美少女である。
「始めまして・・・ミリアリア・ハウです」
と、その少女は言った。
「イザ−ク、男女交際は私認めてませんが・・・?」
「いえ違いますこの女はディアッカの・・・」
ミリアリアは一瞬思った、この男もアスランと同じくマザコンかもしれない・・・と。

その頃。
「「キラぁぁぁぁ!!!」」
プロヴィデンスとジャスティスはフリ−ダムに襲いかかっていた。

495過去の傷・作者:2004/05/12(水) 10:36
今回はフレイ様の嫉妬を中心に書き込んでます、これからも頑張ります、最後は少ななってしまいました、このところ変わってますので戸惑ってしまってこんなことになってしまいました。
>>SEEDif〜Fllay
この頃のフレイ様ですか、だんだんとキラの優しさに惹かれ始めた頃ですよね、ただ実際優しくされて素直になれない頃ですよね、これからも期待してます。

>>キラ(♀)
とにかくフレイ(♂)様頑張れ!そしてキラはどうするんでしょうか?抱きつくのか?

>>メンデルさん、可哀相そうに、でもヴィアさんのおかげで元気になれてよかったです、でもヴィアさんカガリにピッタリですね、でもメンデルさんこのところ可哀相でしたからほんとによかったです。

496ザフト・赤毛の虜囚 64:2004/05/13(木) 03:56
10.親友 8/8
[私は、本当の親友を見つけた]

「メルの方は?」

明るく自分のことを話し、私のことも聞いて来るヴィアに、私も、つい、おどけて心境を話しだす。
かつて、恋に憧れていたころのことを……

「私は…… 白馬の王子様……」

「え、彼って、そうなの」
「嘘、違うけど…… でもね、そんなのに憧れてたのよ。私って少女趣味かな」

「いや、そんなこと無い。そういうのって素敵よ。メルが憧れてても不思議は無いわ」

ヴィアの言葉に、私は心が暖かくなった。ヴィアには、私のこと、なんでも相談できると思った。
私は、ヴィアに、自分の不安を打ち明けた。

「ねえ、聞いてくれるヴィア? コーディネータのこと。私、不安なの」
「ああ、まかせといて、私、専門だし。なんならユーレンと一緒に相談に乗るよ」

「ええ、お願い」
「メル、彼氏のこと思ってるのね。コーディネータって彼の希望?」

ヴィアは、無邪気に私のことを聞いて来る。本当は私にとって辛いことを。

フラガは、離婚した前の妻との間に、子供ができなかった。それで、私の間に子供をもうけようと
している。名家シェトランドの血を引き、かつ、若くして聡明で、やり手で、自分の築いた資産を
狙っている他の親戚に奪われず、自分の生きている間でも、さらに富を大きくするような、そんな息子を……
それで、ビジネスに関連する能力を強化したコーディネータを望んでいる。娘なんて眼中に無い。
私は、そんなフラガの考え方は馬鹿らしいと思う。そんなのに私が突き合わされるなんて考えたく無い。
だけど、私は、いずれにしろフラガに逆らうことはできない。逆らえば、また、虜囚生活に逆戻りするだけだ。

私は、こんな自分の暗い想いをヴィアに告げるのは躊躇われた。せっかく友達になれそうな彼女に
最初から話すのは辛い。どうせ逆らえない運命なら、精一杯前向きに、フラガの考えを理解しようとした。

「そう……、彼、優れた子が欲しいと言うの。賢くて、安心して自分の仕事を継がせられるような……
 そんな自慢できるような男の子を…… コーディネータって、こういうのできるんでしょ」
「そうね、産み分けは完璧だし、他の親御さんも、みんな同じような想いを託しているわ。
 メル、大丈夫…… きっと望みは叶うわ」

そのヴィアの言葉に、私のコーディネータへの、そして運命への不安が少し和らいだ。

「ありがとう、ヴィア。お願い、もっと、いろいろ教えて」
「オッケー」
ヴィアは、親指を立てて、ニコリと笑う。

私は、本当の親友を見つけた。今は、フラガのこと言えないけど。いつか、きっと、みんな話す。
そして、ヴィア、私の心の鎖を解放して……

私の担当医と起こした一件に関して、特にヴィアに、お咎めはなかった。ヴィアは「正義は勝つ」とか、
言っていたけど、後で聞いた話だと、所長さんの力添えがあったらしい。

そして、ヴィアが、私の担当医になってしばらくしてから……

「メル、紹介する。私の旦那、ユーレン」
「初めまして、ユーレン・ヒビキです」
「え!? 嘘……」

私はビックリした。そして改めてヴィアを見た。気がつかなかった。そうだ、私が、フラガの
家で閉じ込められている間に不思議な感覚で見た時は、ほとんど裸で、顔を真っ赤に上気させてたから。
そうだ、ヴィアって、そうだ。そして、その旦那さんって……

嘘、嘘…… 私が、待ってた人。白馬の王子様?

ジェシカとミーシャの言葉が蘇る。

── メルデル、アンタ、まだ白馬の王子様待ってるの
── いい加減、そんな少女趣味捨てなさいよ

そう、白馬の王子様は、すでに人のもの。それも、本当に心を許せると思った親友のもの。
私は、どうすれば、どうすれば……

* * *

「ヴィア、ごめん……」私はポツリと呟いた。

「どうしたの、メルデル」カリダが覗きこむように見ている。

「え、え、何?カリダ、アレ、アレ?」
「メルデル、また、ぼうっとしてる。育児疲れってヤツ?」

「そんなんじゃないけど」
「ねえ、ねえ、メルデル。それより、また、ムウ抱かせて、抱かせて」

すっかり、私になつくようになったカリダは、頻繁にムウを抱かせてと、ねだって来る。

「ええ、いいわよカリダ。泣かせないでね。さっき、やっと泣きやませたんだから」
「オッケー」

私は、にこやかに微笑むカリダを、親友を見るように、暖かく見つめた。

497ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/13(木) 04:00
今回は番外的な章で、親友というテーマで、フレイとメルデルを比較してみました。
二つの時代のジェシカとミーシャは、そのための鍵で、名前と性格が同じ以外は、おそらく容姿も
違う別人のつもりです。ミリィSSのミナシロ編とのリンクは、たまたまジェシカ・ミーシャを
絡ませるのに都合が良いシチュエーションだったからで、リンクする出来事もテーマに添った
部分のみに絞っていました。

次は、ミリィSSの予定ですが、もう少し各所の調整が必要なので、しばらく時間をください。

>>過去の傷
NJC搭載MSの一大決戦が始まりましたね。動機が嫉妬というのはアレなんですが……
エザリアさんのミリィを見る目が恐いです。17歳で幼いって……

498私の想いが名無しを守るわ:2004/05/13(木) 04:34
>>過去の傷
㍉が出てくるだけでハラハラします。フレイ様はラムちゃんみたい。
あまりにも怖い予測なのですが、作者様、次の㍉のターゲットはこの
母子なのでしょうか。その展開は「悪夢は再び」という感じなので……
くれぐれも御身をご自愛ください。

499私の想いが名無しを守るわ:2004/05/13(木) 11:36
>>過去の傷
とりあえず他キャラにも配慮を。
貴方の職人としての意識を最後まで見届けさせていただきます。
全ヒロインファンとして。

500過去の傷・139:2004/05/13(木) 12:49
<フレイ、機体を傷つけないで!>
<傷ついたのは私の心よ!>
プロヴィデンスの攻撃を必死にかわすフリ−ダム。
<反省しなさいよ!少しは謝ったら!?>
<ご、ごめん・・・>
<心がこもってない!!!>
<心から誓う、ほんとにごめん・・・フレイ・・・ごめん・・・」
<まあ・・・いいわ、ならもうやめるわね、他の女の子とは喋らないのと、部屋には絶対に行かない>
<はい、もう行きません・・・>

一時間後。
「ではアスラン、お部屋にお上がりください」
「はい・・・」
顔を青ざめたアスランさんが部屋に入って行くのに私は気づいた。
私とキラも部屋に入った。
「アスラン・・・では全てをお話ください・・・」

「あの・・・ミリアリアさん?少しこちらに・・・」
エザリアに呼ばれミリアリアは付いて行く。
「どういうつもりか知りませんが・・・あまりイザ−クと仲良くしないでください、あの子の交際相手も結婚相手も私が決めますから、いままであの子に近づいた女は私が全て退けてますから・・・」
「はい・・・分かってます」
どうやらこの人、息子を溺愛しているようだ、それにしても綺麗な人。
「ではイザ−ク、後は頼みますね」
「はい・・・」

501私の想いが名無しを守るわ:2004/05/13(木) 13:28
そうです、配慮です・・・まあこれは別に過去の傷の職人様だけに言えたことじゃないですけどね。

502散った花、実る果実49:2004/05/13(木) 23:24
リアの怪我は、すぐに動かせる程軽い怪我ではなかった。
戦艦の中で治療を済ませる、というわけにもいかないらしく、程なくしてリアは地球にあるザフトの保有する病院に転院することになった。

「リア・・・・・」
転院の準備を手伝おうとリアのいる病室を訪ねると、リアは半身を起こして私に微笑みかけた。
「フレイ、いらっしゃい。聞いたでしょ?私、病院にうつることになったの。クルーゼ隊長のお計らいで、ちょっと腕のいい先生のところにまわしてもらえるらしいわよ。もちろん、ある程度以上回復したら、本国でもっとちゃんとした治療を受けることになると思うけど」
つらいだろうに、微笑を絶やさないリア。
彼女が取り乱した様子を見せたのは、最初のあの時だけだった。
「なんて顔してるのよ。あなたのせいで怪我したわけじゃないでしょう。きっと治るわよ。ううん、治してみせる。だって私はコーディネイターだもん、あなたたちナチュラルとは体の出来が違うのよ」
「リア・・・その冗談、面白くないわよ・・・・・」
私はちょっと泣きそうになりながら、そう返していた。
リアが頑張っているのに、私が弱音を吐くわけにはいかなかった。
「治療に専念しなくちゃいけないから、あなたについて宇宙に上がるわけにはいかないけど。大丈夫よ、私も除隊になったわけじゃないし、また会えるわよ。怪我を治して、きっと戻ってくるから。その頃にはこんな戦争、終わってるかもしれないけどね。まあ、この調子だとクルーゼ隊長があなたのこと手放すようにも思えないし、大丈夫、大丈夫。」
きっと実際にはここで別れたら二度と会えない可能性の方が高いのだろう。
戦争が長引けば、いつまでも捕虜を連れまわすわけにもいかないのだろうし、戦争が終わったのであれば尚更クルーゼ隊長が私を連れて歩く意味は無い。
おそらく、これが最後のリアとの別れになることだろう。
「リア・・・・私頑張るから・・・・・元気で・・・・・・」
「何言ってるのよ、こんな怪我人つかまえて。元気で、も何もないでしょう?」
苦くわらってリアは私の手をとる。
彼女にもわかっているのだろう、これがおそらく最後になると。そう思うと、我慢しきれずに涙が一つ落ちた。
「いやだ、泣かないで。私だって、寂しくなっちゃうじゃないの。それより、もう、しっかりしてよね。フレイってば、私より年上の癖に、てんで頼りないんだもの。それに・・・・」
そこで彼女の声が真剣みをおびた
顔を上げると、思いつめたような顔でリアがこちらを見ている。
「もう、私がフォローしてあげることは出来ないわ。フレイ、あなた・・・気をつけて。今回の事で、ナチュラルへの反感はまた大きく育ってしまった。私、あなたが激情したザフト兵に害されました、なんてニュース聞くの、嫌だからね。」
「わかった、気をつける・・・・・ねえ、ナチュラルとコーディネイターがわかりあえる時代って、こないのかしらね・・・私、リアと会えて、コーディネイターに対して一杯誤解していたって、気がついたの。リアと会えてよかった。こんな風に、皆わかりあえたらいいのに。戦争は、どうしたら終わるのかしら・・・・・」
「私もよ」
リアは優しく頷いた。
「私もフレイに会えてよかった。・・・大きな声では言えないけど、ナチュラルもそう捨てたもんじゃないって、思うことができたわ。それでも私はコーディネイターである自分に誇りを持っているし、体が治ったらやっぱりコーディネイターのためにザフトで働くと思うけど・・・それは今までのナチュラルを否定する気持ちからじゃない。守りたいものがあるから、守るための力がある限り、私にできる事をすると言うことよ。」
「戦争が、終わるといいわね。そしてリアの体が早く治るといい。リア・・・本当に、どうか元気で。私リアの事忘れないわ・・・・」

503散った花、実る果実50:2004/05/13(木) 23:27
「本国は久しぶりだろう、イザーク。家族に顔を見せて、安心させてやるといい」
「は!ありがとうございます。・・・・・早く座れよ!」
クルーゼ隊長への誇らしげな応対とは対象的に、私に侮蔑するような視線と言葉をなげかけるイザーク。
私は彼のことが怖かった。彼のナチュラルへの蔑視は終始変わらぬものとしてそこにあるように思えたから。
ザフトのナチュラルに対する反感を、彼は代表しているように思えたのだ。
「ふんっ」
怯えた様子でクルーゼ隊長の横に座った私をみて、彼は軽蔑するように息を吐いた。
ここにはもう、リアはいない・・・・・・敵意に囲まれたこの状態でどうやってすごしていけばいいのだろう。
宇宙には・・・・これから戻る、この広い宇宙(そら)には、何が待っているのだろう。
「怖がることはない、私のそばにいれば安全だよ。私がちゃんと君を守る。だから安心したまえ、フレイ」
その声に、パパの優しい声が重なった。
「大丈夫だよ、フレイ」
パパ・・・・・
いつでも私を守ってくれていたパパ。
この人に従っていれば、本当に大丈夫かもしれない・・・・・
パパの声で、パパの言葉で私を包んでくれる人。
目をつぶればほら、パパの香り・・・・パパの声しか聞こえない・・・・・
パパといれば、大丈夫。昔からそうだったじゃない・・・・・
民間機とは違い、ひどく揺れる機体に恐れをなして目をつぶってしがみついている私の腕を、彼の手が優しく押さえた。

504散った花、実る果実/作者:2004/05/13(木) 23:48
とりあえずミリアリア・リスティアとはここでお別れ。
フレイ様にミリィを思い出させるために引っ張り出してきた彼女ですが、彼女自身は思ったより生き生きと動いてくれました。
ミリィとの関連性はあまり使えませんでしたけどね・・・ちょっと反省。

>>過去の傷
逆上フレイ様、実は結構好きだったりします。
ちょっとすっきり・・・・なーんて。

>>流離う
うーん、だんだん情報が拡散してきましたね・・・
あの状態のあの面子に納得させなきゃならないなんて、キースさんも可哀想に・・・・

>>赤毛の虜囚
そうだったのですね。すいません、最初、メルデル、ジェシカ、ミーシャ?と、ちょっと迷ってしまいました。
にしても、ヴィア格好いいですね!メルデルが惚れるのもわかります。
しかし、親しい友人の旦那さんを好きになってしまうというのは・・・そしてこの後は・・・って事を考えると中々つらいですね・・・・

>>キラ♀フレイ♂
なんとなくフレイ様動じはしないかなー、とは思ってたのですが、予想より状態やばめな感じがします。
しかし、アスランvsフレイ様って・・・・・アスラン勝ち目ないような・・・・・
予告素直に笑いました。

>>SEED if
ここは辛いところなんですよね・・・・
フレイ一人称、情報量が少ないのが大変なんですよね。私も苦労しました。

505散った花、実る果実/作者:2004/05/14(金) 01:31
>>明日と終わりの間に
面白かったです!パロディもお上手ですね。
きっとアスランはカガリの料理をこれからも食べつづけていくことでしょう。
そしてキラも赤いカレーを食べてくれる・・・・・かな?

506私の想いが名無しを守るわ:2004/05/14(金) 03:31
>>過去の傷
フレイ様コワッ。<フレイ、機体を傷つけないで!>
<傷ついたのは私の心よ!>←間の抜けた会話ですが笑えました。
会話中心の展開は、イマイチキャラの心情が分らなくて、他の職人さん
みたいにキャラに自分の心情を語らせるとか、作者がキャラのとりまく状況を説明
するといった作業の比重を増やさないと、あるいは台詞が過激なもの多いだけに
色々誤解を招くかもしれませんね。とりわけ本編の過激なフレイ様の台詞を他キャラ
が言う場合特に、強く感じました。しかし、こればかりは職人さんのスタイルもある
でしょうし、えらそうに書きましたが私自身SSを書いたことないので、なんともいえ
ないところですが。読み手の側からの一意見として聞き流してください。
昨日は言い忘れましたが私も作品完結まで応援してます。

>> 散った花、実る果実
リア篇、面白かったです。個人的には交換留学で整形云々の話が面白かった
です。ザフトの4人組ではなく、平凡な感じのコーディの女の子との出会い
というのは良かったと思います。しかしこれから宇宙に上がるのかあ…
かなりブルー入りますね。

507ザフト・赤毛の虜囚 作者:2004/05/14(金) 07:48
SS調整遅れてますが、一区切りついた話もありますので、感想だけ上げさせてもらいます。

>>過去の傷
フリーダム対プロヴィデンス、キラは完全にフレイ様に陥落ですか。
アスランは、こちらはこちらで修羅場のようで……
今度は、エザリアさんが…… いや、TV本編も、そうだったかな?

>>散った花、実る果実
ついに 50話まで行きましたね。リアとフレイ様の語らい、互いにコーディネータとナチュラルの
意識の変化が見えて心が癒されました。こんな二人なら、もっと、身近な女の子らしい趣味の会話とかが
あっても良かったとさえ思います。
クルーゼには心を許しているフレイ様ですが、イザークとは、あまり絡んでいないようですね。
次の舞台は宇宙、プラント。どういう話が補完されるか楽しみです。

>>506
私のSSは一人称で心情語りがありますが、これはこれで状況説明が一面的になるので、
逆に会話を増やさないと話が進展しないです。少なくとも、私のスタイルはそうですね。
三人称で各キャラの心情を客観的に説明するのはいいんですが、作者の立場で説明しすぎる
小説スタイルは、個人的には、あまり歓迎しません。作者自身が読み手の感じ方を制限するみたいで。
まあ、うまく話が構成できなかった場合は、私もやってしまいますけど。

他キャラの台詞やシチュエーションの流用はSSの醍醐味で、書く方からすると知らずに
使っていることがあります。ですが、私、以前のスレで読み手としては拒否反応起こしたことが
ありました。あの時のことは反省してます。それで、流用は本当に難しいことだと実感しています。
やはり、書いた後、できるだけ時間を置いて、読み手の立場でチェックを入れることが必要なんでしょうね。

508過去の傷・140:2004/05/14(金) 11:54
私だって興味津々だった、アスランさんとミリアリアにあの夜、一体何があったのか・・・。
まずアスランさんの顔を伺った、いつも冷静そうに見えたアスランさんがオドオドとしているのが私には分かる。
ラクスというと落ち着いている、いつものラクス・・・私と同じくらいの年にしてはこの子いつも大人びて見える。
「とりあえずコ−ヒ−でもお飲みください」
そう言うと沸騰していたお湯をコ−ヒ−カップに注ぎアスランさんと自分の席に・・・そして私とキラにも注いでくれた。
「ありがたくいただきます」
ため息をついたラクスが席に座ると口を開いた。
「アスラン・・・ではお願いします」
「・・・・・・」
アスランが戸惑っているのに気づいたラクスは微笑んだ。
「アスラン・・・正直に全てをお話ください、私は怒ったりしません、ですから・・・クライン邸でも言ったことがありましたが、私達に隠し事は無しですわ」
きりっとした口調で言うラクス、やっぱりこの女は強いわ。
アスランさんがゆっくりと話しはじめた。
ラクスの顔が少しずつ引きつってきた、珍しいことよね、この子が。
「ラクス・・・落ち着いて」
私はラクスの肩に手をかけて優しく言った。
「は、はい・・・分かってます」
そして・・・全て・・・一部始終を全て話した。
「ほ、本当なのですか!?そ、その話は全て・・・」
「は・・・はい、申し訳ありませんでした!」
ラクスはもはや放心状態だ。
「そ、そんな・・・アスラン・・・貴方は浮気を・・・」
「も、申し訳ありません、私もどうかしてて・・・」
ラクスはほんとに信じられないという顔をしていた。
私だって信じられなかった、アスランさんがミリアリアと・・・。
「アスラン、君がミリィと・・・君がラクスさんを裏切るなんて・・・」
キラも戸惑う。

その頃プラントでは。
イザ−クさんに留守番を頼まれ残っていた私は・・・。
なんで?なんでイザ−クさんは私をここに置いてくれているのだろうか、怖そうな人だけどほんとは優しい人なのかもしれない。
そしてイザ−クさんの部屋を整理していた私はある写真に目が行く。
ディアッカにアスランさんにイザ−クさんに・・・ええと・・・名前が書いてるので読んでみるけど・・・ミゲルって人とニコルって人が一緒に写っている。
この人達皆仲間なのね・・・。
それから引き出しに手紙が置いてある、ええと・・・ラクス嬢への手紙?読んでみると・・・。

509私の想いが名無しを守るわ:2004/05/14(金) 13:52
>>過去の傷。
一人称の変化にとまどいます。
誰のモノローグか時々ついていけない自分は修行がたりないようですねw

510流離う翼たち・476:2004/05/15(土) 00:35
 キースはナタルが運んできた紅茶を一口啜りながら、内心ではどうしたものかと必死に悩んでいた。話すとは言ったものの、実は2人を満足させられるような答えなどキースには無かったのだ。かといって今更誤魔化しも効くとは思えない。何より既にこの状況が自分の退路を断っている。
何しろ自分の前には不機嫌さと困惑を同時に浮かべるカガリと、黙ってじっと自分を見続けているナタルがいるのだ。

「ああ、その、なんだ、怒らない?」

 表面冷静に、内心では混乱気味だったキースは、ポロリと不味い事を口走ってしまった。古今東西、こういう事を聞かれて怒らない奴はいないのだ。

「何だ、何か都合の悪い事でも隠してるのか!?」
「事と次第によりますね」

 いきり立って飛び掛ってきそうなカガリと、もうその辺のマフィアが逃げ出しそうな目で睨んでいるナタル。どっちかというとナタルの方が怖い。

「い、いや、そういう訳じゃなくて、多分期待には答えられないと言ってるんだ」
「どういう事だよ!?」
「つまりだな、俺はお前がどうやってアスハ家に渡ったのかは知らないんだよ。何しろヘリオポリス崩壊後にアークエンジェルでキラを見るまで、2人とも死んだと考えていたんだからな」

 キースの言い訳じみた答えにカガリは顔を赤くしたが、すぐにガクリと肩を落としてその場に崩れ落ちるように膝を付いてしまった。その表情は衝撃に打ちのめされているようにも見えるが、不安も見て取れる。
 キースはそんなカガリの姿に罪悪感さえ抱いてしまった。本当はこのまま墓場まで持って行く気だった事実であり、知らせれば平静ではいられない事くらいは想像が付いていたのだから。自分も真実を知った時には暫く塞ぎこんだのだ。
 だから、キースにはカガリにただ謝る事しか出来なかった。

「すまん、カガリ」
「・・・・・・なんで、あんたが謝るんだよ。別にあんたのせいじゃないだろ」

 カガリはキースに謝って欲しくなどは無かった。いや、同情などされたくないだけかもしれない。子供っぽい意地と言われるかもしれないが、これは子供だろうと大人だろうと変わらないだろう。
 そして、それが分かるだけにキースもそれ以上は何も言わず、ただ頷くだけでカガリに答えた。カガリも立ち上がり、自分の席に戻って紅茶を手に取り、音を立ててそれを飲み干してしまう。
 そしてそれをソーサーに戻したのを見計らって、キースは自分の知っている事を話し出した。

「・・・・・・カガリ、お前の過去の経緯だが、知っていそうな人間を俺は知っている」
「本当か!?」
「ああ、一人はお前の育ての親、ウズミ氏だ。そしてもう1人はカリダ・ヤマト。キラの育ての母親だ」
「お父様とキラの母さんか。でも、何でキラの母さんが知ってるんだ?」
「カリダ・ヤマトはキラの叔母、つまりお前達の母、ヴィアの妹だからだ。どういう経緯かは知らないが、カリダ・ヤマトがお前たちを何とか脱出させたんだろうな」

 キースも全てを知っているわけではない。全てを知っているであろう者達は多くがメンデル研究所と共に死んでいるし、僅かに断片を知る者たちは世界中に散ってしまっている。その知っている者がキースの育ての親やアズラエル、サザーランド、パトリック、ウズミ、マルキオたちであり、キースの知識は研究所での教育と育ての両親から聞かされた話でしかない。
 そして、彼らでさえメンデルの全てを知っている訳ではない。それぞれが断片を知っているだけで、実際にメンデルで何が行われていたのかは謎に包まれている。その中でカガリとキラのことを知るのは3人に限られてしまうのだ。そうでなければ2人どころかヤマト夫妻は生きてはいないだろう。特にキラはブルーコスモスの最優先抹殺対象だったのだから。

511流離う翼たち・作者:2004/05/15(土) 01:04
忙しい間に随分進んでいる。頑張らねば
ちなみにキースは今回で引き出しの中身を大体出してしまいました。

>> ザフト・赤毛の虜囚
メルデルさんも大変ですねえ。ヴィアさんとの出会いはまるで熱血青春物ですな
しかし、兄貴もこれから大変でしょうなあ

>> 過去の傷
ラクスとフレイ様も大変そうだけど、キラとアスランも大変そう。男は自由を求める生き物です!
ミリィはちゃんとディアッカの所に行けるんですかね。なんか迷子になりそうな気が

>> 『明日』と『終わり』の間
ダイビングメッセージって、発見されたらカガリは逮捕w?
帰ってきたキラの運命や如何に

>> キラ(♀)×フレイ(♂)
アークエンジェル隊強い。でもカガリ、なんだか道無き道を突っ切ってゴールに行っちゃった様な
でも、この2人とアスラン、出会ったら常識人なアスランはついていけない気がw

512過去の傷・141:2004/05/15(土) 10:10
その昼。
プラントの歌姫、ラクス・クラインが低気圧を頭の上に漂わせながら、通路を歩いていた。足取りは荒く、目つきもあまりよろしくない。
明らかに「私は今、とても機嫌が悪いです」といった様子だ、こんな彼女は見たことがない、いつもプラントでは笑顔を絶やさず誰にも微笑んでいた彼女が・・・。
アスラン・ザラはその後ろを、こそこそと歩いていた。
ラクスはアスランの方を見ようともしない、アスランは仕方なくついていった。
誰もいなくなったところでアスランは思いきって声をかけた。
「あ、あのーラクス」
「・・・・・・」
返事はない。
「ラクス・・・その・・・」
歩みがぴたりと止まった、ぐるんとこちらを向く。
「なんでしょうか?」
恐ろしげな視線と共に彼女は返事をした、それも敬語だはあるが明らかに冷たい言い方で怒った口調だ。
「その・・・なにかあったのですか・・・?」
「・・・・・・」
「い、いえその、ずっと口を聞いていただけませんし、話かけようとして無視されますし、そのわりには私を刺すように睨みますし、なにか嫌なことでもあったのかなと・・・思いまして」
アスランはつっかえながら話した、対するラクスは冷たく冷え切った口調で。
「・・・・・・ご自分の胸に手を当てて考えてみたらいかがですか・・・?」
アスランは言う通りにした。
「あの・・・覚えがないんですが・・・」
「覚えがないとはなにごとですか!!!」
突然ラクスに大声を出されアスランは仰天した。
「先程のことです!私の部屋!アスランはあのときなんとおっしゃったかお分かりですか!?貴方は婚約者がいながらミリアリアさんと・・・」
「で、ですからあれはですね・・・」
「よくもぬけぬけと・・・この浮気者!!!」

その頃フレイとキラは。
「なんだかいまごろ修羅場になってるんじゃないかな・・・」
「そうね・・・」
そい言いながら歩いていた二人は腕を組んだサイとジュリに会う。
「サイ・・・」
フレイが寂しそうに呟いた。

513私の想いが名無しを守るわ:2004/05/15(土) 23:54
>>過去の傷
色々粘着レスしてすみませんでした。つい上の議論が色々
考えさせられる内容だったので、自分も意見を書いてみた
のですが、どうも他人様の尻馬に乗って追い討ちかけてしまっ
た気がします。また何か書くかもしれませんが、批判なり意見を
書くにしてももそっと気をつけたいと思います。
>>ザフト・赤毛の虜囚
色々教えていただきありがとうございました。どうも会話中心の
SSは音声や画像の無いTVや映画の脚本をそのまま見せられている
ような気分がして、文字媒体のメリットを全然生かしていないよう
に思っておりました。これではキャラの心情が伝わらんなどと思い、
先日書いて見たのですが、ご意見を読んでみると、どうも、そう
単純な話ではないようで、いろいろ学ぶこと多かったです。あと
他キャラ台詞流用の件はちょっと読み手オンリーの側からでは分
らない心理で面白かったです。

全ての職人の皆様、これからも投下期待しております。

514私の想いが名無しを守るわ:2004/05/18(火) 22:51
職人の皆様、避難所で問題が起きていますが気にしないでSS続けて結構です、応援する人達だっているんですから。

515私の想いが名無しを守るわ:2004/05/19(水) 07:22
問題自体は避難所で起きたのではなくここが発火点だと思います。

ですので概要をご存じない職人さんたちも、今後のために一応目を通してみてください。
作品発表をされていらっしゃる方々なら、読後の感想(辛口のものもありますが)
知っておかれるほうが良いかと思います。
もちろん、今のところは何か方針が決定しているわけではありません。
とりあえず何も無かった事では議論した意味が無いと思います。
批判だとの声もありますが、あくまで議論だと私は思います。

516私の想いが名無しを守るわ:2004/05/19(水) 08:39
過去の傷の作者様と他の作者様、もし議論や批判のせいで投下が進んでないなら、すいません、住人の一人として謝ります。

517私の想いが名無しを守るわ:2004/05/19(水) 09:45
投下する、しないは厳しいようだがもう本人の裁量だろうね。
とりあえずはこっちに持ってくるのをやめようって事で
あちらに移動したんだからこの話はあちらで。

518注意書き:2004/05/20(木) 00:46
他のキャラへの配慮を忘れずにお願いします。キャラへイト・他キャラへの配慮が足りない、と思われるSSはこちらではなく個人サイトでどうぞ。SS職人さん、投下をどうぞ再開してください。

519キラ(♀)×フレイ(♂)・44−1:2004/05/20(木) 02:47
「カガリが行方不明!?」
「らしいぜ。俺も最後のディンをあいつが撃墜した所までは確認したんだが、
あの後、何があったのやら…」
モラシム隊長からの熱烈なラブコール(無理心中宣言)を跳ね除けて、命辛々AA
に帰還したキラは、パイロットルームへ着替えに行く途中で合流したフラガから、
二号機がロストしたという情報を聞かされ息を呑んだ。
「それと、これはまだ未確認情報なんだが…」
そこでフラガは言い難そうに口篭もる。カガリ失踪事件にはさらなるオマケがついていた。
「フ…フレイが、カガリと一緒に!?ど…どうして!?」
「俺にもさっぱり判らねえよ。マードック軍曹が、フレイが二号機に乗り込んだのを
目撃したらしいんだけど、どうすりゃ、そういう事態になるのやら見当もつかねえよ。
まあ、ガセネタの可能性…というか、こんな支離滅裂な話しは多分デマだと思うけどな」
キラだけでなく、フラガも困惑している。正規軍人である彼には、シスコン的な動機から、
非戦闘員のクルーを拉致したカガリの思惑など永遠に解けない謎だろう。
カガリにフレイという、彼女の両翼を担う男性を立て続けに失ったキラは唖然とする。
しばらく茫然自失状態だったキラだったが、意を決したように頷くと、突然駆け出した。
「おっ…おい、キラ!?」
「私、確認してくる」
キラは着替えを後回しにして、フレイの不在を確かめるつもりみたいだ。
フラガも、事の仔細が気になったので、キラの後を追うことにした。


「おい、何の騒ぎだ?」
前方の居住区域に人だかりの山を発見したフラガは不審そうな表情を啓かす。
良く見ると、フレイの部屋の前で、SF映画に出てきそうな白い防護服を着たクルーが、
シュー、シューと派手な音を立てながら、消毒液を撒布している。
「何でも、ここら付近一帯で毒物が検出されて、今、衛生兵が掃除している所みたいです。
少し前に異臭が発生して、調べてみたら、どうやらフレイの部屋が震源地みたいで…」
野次馬の一人として見物に来ていたカズイが、フラガ達に気付いて簡単に状況を説明した。
「はぁっ!?一体、何がどうなっているんだよ!?」
フレイがカガリと一緒に行方不明になったと思ったら、そのフレイの部屋から毒物が
発生したという。せっかく、無傷に近い状態で敵を撃破したというのに、次から次へと、
彼の常識からは想定不可能なトラブルが続出し、フラガの頭はパニックになりそうだ。

「けど、これでフレイが本当にカガリと一緒に消えたのは確かみたいだな」
事態の真相究明にはしばらく時間がかかりそうだが、未確認情報の一つは確定したらしい。
ふと、不安そうに俯いているキラの様子に気付いたフラガは、軽く彼女の肩を叩いた。
「心配すんな、キラ。カガリもフレイもそう簡単にくたばるような柔な玉じゃないだろ?
超過勤務手当てはつかないだろうけど、一緒に探しにいくか?」
「は…はい!」
フラガの暖かさに絆されたキラは、太陽のように表情を輝かせて大声で返事をする。
普段はおちゃらけているが、彼は緊急時には極めて頼りになる兄貴分だった。

「フレイが行方不明か…」
ミリアリアと一緒に野次馬の中に紛れ込んでいたトールはボソッと呟いた。
ほんの一瞬だが、「あいつを、このままMIA扱いして先に進めないだろうか」
などという考えが頭を掠めてしまい、その発想の卑しさに軽く自己嫌悪する。
ふと、隣にいるミリアリアと目が合った。トールの視線に気付いたミリィは何故か
後ろめたそうに顔を背ける。トールは多分、彼女が自分と似たような邪な考えを
巡らせて、同じように良心を咎めさせているんだろうなと思った。

520キラ(♀)×フレイ(♂)・44−2:2004/05/20(木) 02:47
「まさか、こんな所でザフトと遭遇するとはな…」
フレイと一緒に匍匐前進の姿勢で、崖下に仰向け状態で安置されているザフトのMS
を発見したカガリは瞳に好戦的な色を浮かべる。ザフトの輸送機との予期せぬ邂逅で
無人島に不時着した二人は、無線が一切通じないのを確認すると、島内探索へと出掛け、
そこで運よくザフト側よりも早く敵(エネミー)の存在を把握した。
MSの胸元のコックピット部分が開く。すると中から赤いパイロットスーツを着込んだ
男性のパイロットが出現した。
「あれは、イージス。とすると、今のがアスラン君か?」
赤服のザフト兵(アスラン)に対して強い敵意を発散するカガリとは逆に、彼を見つめる
フレイの視線には、新しい玩具を見つけた幼児のような無邪気な好奇心に溢れている。
フレイが騒ぎ一つ起こさず、カガリに拉致されるに任せて素直に同行したのは、
何となく面白そうなイベントに遭遇しそうな予感がしていたからだ。どうやら危険覚悟で、
わざわざカガリ君についてきた甲斐があったみたいだ。フレイは密かにほそく笑む。

「おい、やるぞ。フレイ」
カガリはフレイの心中の思惑を無視すると、ガサゴソと懐の脇のリュックを漁って、
中から取り出した拳銃をフレイの掌に差し出した。
「やるって、何をだい?」
「決まってるだろ、アイツをやっつけるんだよ。あの敵兵を殺すか拿捕するかして、
ザフトに奪われたMSを再び奪い返せれば、大手柄だろ?」
カガリは何を今更当たり前の事を…と言いたげな表情で逆に問い返してきた。
狭い無人島内で、敵同士で仲良くするのも叶わない以上は、まあ妥当な判断ではある。
「おいおい、ちょっと待ってくれよ。君は僕に何を期待しているんだい?」
有り難くもド素人のフレイを戦力の頭数に加えた上で、アタックを仕掛けようとする
カガリの暴挙に、フレイは待ったを掛ける。彼は至近距離から四発ぶっ放しても、
一発当てられるかどうかという腕前なのだ。ましてや、あのザフト兵が本当にアスラン君
だとしたら、彼がサドニス島で手玉に取った間抜けなコーディの兵士とは訳が違うだろう。
二対一(フレイは戦力とは換算できないので、実質一対一だが)でも到底勝ち目はない。

それでも、あの時のように、敵の不意をつければ、話しは別か…。
フレイは、自分には役に立たないであろう拳銃をカガリに返すと、小声で囁いた。
「良く聞けよ、カガリ君。僕が今から囮になって、彼の注意を惹きつけるから、
その隙に、君は彼の後方に回りこんで、後ろから敵を撃つんだ。いいね?」
「お…お前、何、勝手な事を言って……」
「それじゃ、任せたよ」
「お…おい!?」
フレイはカガリの抗議を無視すると、派手に土煙を上げながら、崖下へ滑り降りていった。


「何だ?」
コックピットのハッチを閉めようとしていたアスランの眼前で、地球軍の軍服を着た
少年が、崖の上から滑り落ちてきた。彼は崖下まで辿り着くと、軽く両腕を挙げたまま、
堂々とこちらに向かって歩いてくる。
「動くな!それ以上近づくと撃つぞ!」
あまりに無防備な敵兵の大胆さに幾分戸惑いながらも、アスランはMSから飛び降りると、
ホルスターから銃を取り出して、解剖学的な正確さで、銃口をフレイの心臓に定めた。
その威嚇命令に従い、フレイはその場に足を止めたが、臆した様子は見られない。
「君がアスラン君かい?」
ピクリとアスランの眉が動く。己の姓名をピタリと言い当てた初対面の敵兵の存在に、
アスランの瞳に強い警戒心が浮かんだ。
「何者だ、お前は?」
「キラが君を敵に回してでも守ろうとしていたお友達の一人かな?」
フレイは薄い笑いを浮かべて、口元を皮肉に歪めながら、自身の正体を明かした。

521キラ(♀)×フレイ(♂)・44−3:2004/05/20(木) 02:48
「な…何?」
キラの名前を聞いたアスランの心に動揺が走る。しばらくの間、迂闊にもアスランの
意識は目の前にいるキラの知人を名乗る男(フレイ)一人に集中された。

「動くな!銃を捨てろ!」
フレイが生命賭けで作った隙を逃さずに、崖を大きく迂回して、アスラン達の後方に
回り込んだカガリは、数メートルの至近距離から銃を突きつけた。予期せぬ事態の連続に、
一瞬、呆然としたアスランだが、直ぐに意識を回復すると、冷静に状況判断に努める。
どうやら、自分は地球軍兵士の連携プレイに見事に嵌められたらしい。背中にヒシヒシと
突き刺さってくる殺気は確かな敵兵の存在を感じさせる。いくらアスランが銃の名手でも、
流石にこの状態だと、振り返るよりも早く、敵の弾丸が彼の背中を貫くだろう。
「もう一度だけ言う。その姿勢のまま銃をこちらに向かって放り投げろ!でないと撃つ!」
カガリが威嚇するかのように撃鉄を鳴らす。敵を可能な限り生かしたまま捕虜にしようと
するカガリの人道的な処置(騎士道精神)に、フレイは内心で舌打ちした。
何をやっている!?警告なんかしている暇があったら、何故さっさと撃たない!?
フレイはコーディネイターを嫌っていたが、その能力を過小評価してはいなかった。

アスランは最後通告に従い、カガリに背を向けたまま、銃をカガリの目の前に放り捨てた。
カガリの意識が、一瞬、銃に集中した刹那を見逃さずに、アスランは行動を開始する。
電光石火。アスランはまるでワープしたかのようにフレイの後方に一瞬で回り込むと、
後ろから彼を羽交い絞めにしながら、フレイの頚動脈に軍用ナイフを押し当てた。
「形勢逆転だな。仲間の命が惜しければ、お前の方こそ銃を捨てるんだな」
フレイの悪い予感は物の見事に的中した。オセロの白黒セルのように優劣は引っ繰り返り、
彼はアスランを守る為の盾にされてしまった。アスランは鋼のような強力(ごうりき)で、
フレイの身体を押さえつけて、フレイを金縛りにする。どうやら、MS戦ならともかく、
生身の白兵戦では、アスラン君の戦闘能力はキラをはるかに凌駕するらしい。

フレイを人質に取られて投降を迫られたカガリは、最初、軽く舌打ちし、次に、頭の上に
ピカリと豆電球を灯らせると、最後は、凶悪な肉食獣の笑顔でニヤリと微笑んだ。
微速度撮影の画面のような速さで、カガリの一連の顔面の筋肉の変化をリアルタイムに
見せつけられたフレイの頬から、流石に冷や汗を滲み出てきた。
「だ…駄目だ、アスラン君。彼は僕ごと君を撃つつもりだ」
「ふん、何を馬鹿な事を…」
アスランはフレイの世迷言を無視したが、次の瞬間、カガリは何の躊躇いもなく、
本当に発砲した。島内に銃声が連続して木霊し、森の中にいた鳥達は銃声に驚いて、
悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を散らすように、彼方此方に飛び去った。

「何い!?」
コーディ特有の驚異的な動体視力で、カガリの指先が動くのを視認出来たアスランは、
反射的に地面に仰け反って銃弾を回避する。弾丸は、少し前まで彼らがいた空間を
貫いて、そのまま崖に減り込んだ後に、ポロリと地面に落ちた。

「ふ〜う。危なかった」
アスランの拘束が解除されたと同時に、彼と同じく地面に寝転がって、銃弾を回避した
フレイは安堵の溜息を吐く。そのフレイと低い位置で目が合ったアスランは、地面に両手
を着くと、忌々しそうにフレイを睨んだ。
「一体何なんだ、お前らは!?」
アスランは自分の精神がどんどん失調していくのを感じた。ザフトのエリート部隊
(クルーゼ隊)の一員として、数多の戦場を駆け抜けてきたアスランだが、こんな
ふざけた敵に出会った体験はない。もしかして、自分はドッキリカメラにでも出演
させられているのではないか…などという現実逃避的な考えが頭の中を過ぎった。

522キラ(♀)×フレイ(♂)・44−4:2004/05/20(木) 02:48
「ちぃっ!!」
フレイとアスランの位置が大きくばらけてしまい、敵ごと撃ち殺すという大義名分(口実)
を失ったカガリは、大きく舌打ちすると、仕方なくアスランの方に銃火を集中させる。
こいつ等の本当の正体は、軍人ではなくコメディアンではないかと疑ったアスランだが、
使われている銃器が本物である以上は、不本意だが真面目に戦わざるを得ない。
アスランは、再びカガリの銃撃を避けると、山猿のような身軽さで、崖から崖へと跳躍を
繰り返し、10m近くはある崖の上を飛び越えて姿を消した。

「全く、世話が焼ける…」
奇襲に失敗した地点で、フレイはこの戦闘そのものを見限った。カガリも一廉の戦士
ではあるが、アスランの今の忍者染みた身体能力といい、敵の力量はそれをはるかに
上回ると思われ、こうして一から仕切り直されてしまった以上、勝敗の帰趨は明らかだ。
だとすれば、この場はフレイが何とか収めるしかないだろう。現場(戦場)の軍人の
失態を上手く取り繕うのが、外交家の本来の責務なのだろうから。そう思い込んだフレイ
はMSの上に攀じ登ると、何故か、イージスのコックピット内部に潜り込んでいった。



フレイの推測通り、アスランとカガリのバトルは瞬く間に勝敗が決した。襲撃を警戒する
カガリを尻目に、逆側の崖に回りこんだアスランは大きく跳躍して、カガリの懐に一気に
潜り込むと、銃を構えたカガリの利き腕を掴んで、そのまま柔道の一本背負いの要領で
カガリを投げ飛ばした。
「女を殺すのは気が引けるが、売られた喧嘩だしな…」
背中を強く打った呼吸困難を堪えて、必死に銃に手を伸ばそうとしたカガリを嘲笑うかの
ように、銃を遠くに蹴飛ばしたアスランは、そのままカガリに馬乗りになる。
「ふざけんな、俺は男だ!いい加減にしろよな、お前ら!!」
カガリの告白に、軽く瞬きしたアスランだが、すぐに眼を細めると殺意を漲らせる。
「そうか…。それなら、何の気兼ねもなく殺せるな」
アスランは大きく軍用ナイフを振り被る。いっそ、芸風を広げて、女の振りをして悲鳴
の一つでもあげて見せれば、アスランも躊躇したかも知れないのだが、生命よりも
男のプライドの方が大事そうな彼に、そういう類の副芸を期待するのは無理だろう。
カガリは死を覚悟して歯を食い縛ったが、意外な人物がカガリの窮地を救った。


「おっと、そこまでだ、アスラン君」
その声にナイフを振り下ろそうとしていたアスランの動きがピタリと止まった。
反射的に二人が振り返った声の先には、アスランもカガリも一時的にその存在を失念
していたフレイが、イージスのコックピットから丸腰のまま這い出しきた。
「イージスの内部にプラスチック爆弾を仕掛けた。この時計の数値がゼロになる
前に特定の解除コードを打ち込まない限り、君の愛機は木っ端微塵だよ」
フレイはそのままMSの上から飛び降りると、これ見よがしに、彼の左腕に巻かれた
腕時計を模した起爆装置の存在をアピールする。デジタル数値は刻一刻と値を
減らしており、爆発まで既に二分(120秒)を切っている。
「フェイズシフト装甲とやらも、内側から爆発されたら一溜まりもないだろ?
尤も、今はPSは展開されていないみたいだけどね。さて、どうする、アスラン君?」
「き…貴様!?」
アスランは慎重にカガリの首元にナイフを押し当てて威嚇したまま、フレイを睨んだ。
とんでもない失態だ。彼が任された大事な機体の命運を敵の手に委ねてしまうとは…。

523キラ(♀)×フレイ(♂)・44−5:2004/05/20(木) 02:49
一見、形勢は最逆転したかのように見えたが、このままイージスを爆発させても、
二人ともアスランに殺されるだけだ。ここからが、フレイ(交渉人)の真骨頂だ。
「取引といかないか、アスラン君?こちらから仕掛けておいて何だけど、この無人島に
いる間は、お互いに一時休戦としないか?そうすれば、こちらも起爆を解除するよ」
フレイからの予期せぬ停戦案にアスランは眉を顰める。この不愉快な長舌族(フレイ)
は今度は一体、何を企んでいるのか。だが、迷っている時間はあまり無い。この間にも、
爆破時刻はどんどん迫っており、フレイの腕時計の数値は既に三桁を下回っている。

「やれ!、いいから爆発させろ、フレイ!」
アスランが答えるよりも先に、真下にいるカガリが、自分の立場も弁えずに大声で喚いた。
「このまま放っておけば、あのMSはまた地球の人間を大勢殺すんだろ!?
それに起爆コードを解除したら、どのみち俺達は殺されるぞ。ビクトリアのナチュラルの
捕虜は全員虐殺されたって聞いた。ザフトがナチュラルとの約束なんて守る筈がない!」
平和的な解決手段(?)を模索するフレイと異なり、カガリは玉砕の道を選んだようだ。

おいおい、命乞いをしないのは立派だけど、何、いきなり仲間意識で訴えているんだよ。
君はついさっき、僕に何をしようとしたか、すっかり忘れたのかい?
都合の悪い記憶(現実)は、直ぐに脳内から消去されるのが、性格が天と地ほど離れた
この兄妹(カガリ&キラ)に共通する数少ない特徴の一つであるらしい。
フレイは内心でそう呆れながらも、交渉成功の為に、敢えて私心を抑える事にする。
「心配いらないよ、カガリ君。キラの話によると、アスラン君は一度交わした約束を
破るような卑劣漢ではないらしい。キラが恥知らずの嘘吐きなのか、それとも、
長年、キラがアスラン君に騙されていたのでない限りは、僕らは助かるよ」
フレイは巧みに、キラの存在を盾に取り、アスランのキラへの想いそのものを
人質にすることによって、交渉をリードしようと試みた。
「どうする、アスラン君?もう、ほとんど時間はないよ。ストライクのパイロット(キラ)
ならともかく、どこの馬の骨とも判らないナチュラルの雑魚二人の首を持ち帰った所で、
イージスを失った君を、君の仲間や上官は暖かく迎えてくれるとは思えないけどね」
フレイは敢えて自分達の存在を卑下し、そう謙遜してみせる。フレイ自身は、連邦の亡き
外務次官の子息で、カガリはオーブの王子様(これはフレイもまだ知らないことだが)だ。
彼ら本人の価値はともかく、彼ら二人に付随する政治的価値はそれほど見下したもので
はないが、そんな事は、彼らと初対面のアスランに判るはずは無く、彼の脳内では、
勝ち誇った表情で、自分の失態を弾劾するイザークの様子が映し出された。
時間は既に残り一分を切っている。確かに、フレイの言う通り、このお笑い芸人達の
生命と、虎の子のイージスを引き換えにする価値はないようにアスランには思えた。


「良いだろう、取引に応じよう」
こいつら二人を取り逃がした所で、戦線には何の影響も無い筈だ。アスランはそう
自分に言い聞かせながら、忌々しさを押し殺して、敢えてフレイの手に乗ることにする。
「ザフト兵士の名誉に賭けて誓う。この島にいる間は、お前たちには、手は出さない。
だから、早く解除コードを打ち込んで、起爆を解除しろ!」
キラの名誉に賭けて誓う…と宣誓してくれた方が、僕としては安心できるんだけどな…
とフレイは思ったが、あまり図に乗って要求を上乗せし、相手の気分を害するのは得策
ではない。彼の気が変わらない内に、さっさと交渉を終結させてしまおう。
そう考えたフレイは、「了解した」と呟いてから、腕時計のパネル部分を開いて、
解除コードを入力しようとしたが、その瞬間、とんでもない邪魔が入った。
「止めろ、フレイ!」
フレイに気を取られて、隙だらけのアスランの拘束を跳ね除けたカガリが、そう叫び
ながら、フレイに体当たりを敢行してきた。どうやら彼は敵のお情けに縋る不確実な
未来よりも、確実に敵の主力MSを道連れにする現在(いま)を選んだらしい。
「き…貴様ら!?」
契約を不履行されたアスランは怒りと共に、拾った銃をフレイ達に突きつけた。
その間にも、二桁を切った起爆時間は刻一刻と減少(カウントダウン)を続け、
とうとう時計の数値はゼロ(タイムリミット)に達してしまった。

524キラ(♀)×フレイ(♂)・44−6:2004/05/20(木) 02:49
アスランは爆発に備えて反射的に身構えたが、衝撃は来なかった。

「起きなさい、私の可愛い、フレイ。早く起きないとお目覚めのキスをしちゃうわよ」

………………………………………………………………………………………………
………その代わりというわけではないだろうが、フレイの腕時計から、甘ったるい
女性の声が聞こえてきた。あまりに常軌を逸した現象にアスランもカガリも、
敵と交戦中であるという現実を忘れて暫し呆然としている。
「いやいや、こいつは恥ずかしい物を聞かれてしまったな」
傍若無人なフレイも流石に赤面して、照れ隠しに軽く頭を掻いた。
どうやら、あのカウントダウンは爆弾の起爆時間ではなく、音声入力式の目覚まし時計
のアラームらしい。この声の持ち主の女性が誰であるかは、今更、言うまでもない。

「お…お前…」
フレイに覆いかぶさったカガリは、信じられないという表情でフレイを見下ろしている。
「ハッタリだよ。君に拉致同然でここまで連れてこられた僕が、プラスチック爆弾なんて、
便利な代物を携帯しているわけはないだろ?
まあ、良く考えれば、ブラフだって簡単に判りそうなもんだけど、思考する時間を
与えなければ、ああいう荒唐無稽な脅迫もけっこう有効だったりするんだ。
君が余計な真似をしなければ、交渉(詐欺)は上手くいったんだけどね」
フレイは大きく溜息を吐き出しながら、カガリの後方を見上げている。
カガリが振り返ると、アスランがワナワナと肩を震わせながら、彼らを見下ろしていた。



「酷いな、アスラン君。何も縛ることはないだろ?武器さえ取り上げておけば、
僕たちは二人掛かりでも、君に敵わないのは実証済みじゃないか?」
「煩い!この、ペテン師が!殺されなかっただけでも、有り難く思え!」
アスランは殺意の篭もった視線で、フレイの主張を一蹴した。
フレイとカガリの二人は後ろ手に縛られて上で、仲良く彼の前に並べられている。
アスランはフレイを詐欺師扱いしたが、実際、性質(タチ)の悪い悪質な詐欺に
騙されて、不渡りの手形を掴まされたような嫌な気分だ。
こういう時、イザークだったら、衝動のままに、さっさとこの不愉快な奴らを
撃ち殺して、それで何もかも終わりにしているんだろうな。
そう考えたアスランは、一度誓約してしまった事だと…律儀に契約内容を履行しようと
する自身の御目出度さに呆れ、産まれてはじめて、自分の生真面目な性格を恨んだ。

イライラした表情で、フレイ達を見下ろしているアスラン。
不貞腐れたような表情で、ソッポを向いているカガリ。
アスランに生殺与奪の全てを握られているのに、そんな事はまるで意に介さずに、
今度はどう攻めようかと内心で密かに思案中のフレイ。

この男三人の潤いのない無人島での長い一日は、まだ始まったばかりである。

525私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 05:07
おおお投下されてる。ちょっと感動した。ボリュームあるから
じっくり読ませてもらいます。

526私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 08:20
久しぶりの投下ですね♪
でも・・・他はまだか・・・過去の傷の職人さんなんてひどいくらい叩かれてたからな・・・。
少し可哀相なくらい・・・。

527私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 09:14
>>526
いい加減あんたもしつこい。
テンプレも出来たんだからそれに沿ったSSにしているのかもしれないだろ?

つーか、
>>524 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)
実はすごく続きが読みたかったのは貴殿のSSです!
これからもがんばってください。

528私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 09:26
>>526
投下すれば?
待ってるよ。

529過去の傷・作者:2004/05/20(木) 10:10
・・・私のSSがこれほどまでに皆様にご迷惑をかけてしまって誠に申し訳ありませんで
した・・・。
それからミリィをわざと痛めつけたいだけなのではという意見を見ましたがそんな考えは絶対にありませんので。
ただそういうふうに見られるということはそれだけ私に力がないということかもしれません。
SSの方はもう少し休ませていただきたいと思います。

530私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 12:14
>>529
今回の事はきつかったかもしれないけど、
へこまずに創作活動頑張ってください。
>>526さんのように、貴方の作品を愛してくれている人もいますし。
落ち着かれたら又投下なさってください。

531私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 18:16
>>529
考えがあろうが無かろうが、そう思われた時点で貴方の落ち度ですから。
言われる通り力が無かったのでしょう。出直して下さい。

532私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 18:32
>>531
反省している職人さんに対してその言い方はないよ・・・。
大人げない発言よそう!!

533私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 18:45
>>532
>>531の出直して来いは確かに無いと思うな。
が、意図したにせよしないにせよ、不特定多数が読無場所に投下した以上、
賛辞と批判は覚悟しないと。
>>526や貴方のように過去の傷が大好きな人もいれば、そうでない人もいる。
職人冥利に尽きると思いますよ。
批判意見と絶大な賛辞を両方聞けたんだから。
>>524 男フレイ待ってました!
フレイイラストが描きたくなるような内容でいつも楽しみにしています。
新規投下してくださって本当にありがとうございました。
続きも期待しております。

534私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 22:27
>>531
その言い方はないだろ、荒らしか?それにしてもやけに偉そうだな。
反省している職人さんに追い討ちをかける君こそ出直してこいと言いたい!

535私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 22:45
両者ともよそでやれ。邪魔。

536私の想いが名無しを守るわ:2004/05/20(木) 23:04
>>535
同意。
いい加減にしろ。

537ミリアリア・あの子許せない 96:2004/05/21(金) 03:56
第2部 8. 平和の国を見守って 1/14
[このオーブの町で]

オノゴロから連絡機で、海浜空港へ着いて、そこから鉄道で、さらに数十分。私は、オーブ首都の
駅に降り立った。私は駅を出て、オーブの首都の町を見つめた。私は放心したように
景色を眺めるだけだった。私の故郷に帰ってきたと言うのに。

本当に久しぶりのオーブ。以前、アークエンジェルがオーブへ寄港した時は、オーブ政府の
施設に入っただけで、外に出ることはできなかった。今は、自分の足でオーブの地に立っている。
カレッジ入学でマスドライバーからの連絡機で旅立って以来のことが、私の中に思い出される。
楽しい日々、悲しいこと。やがて、私は、それを振り払うように歩きはじめた。

久しぶりに見るオーブの町は、私の知っているものよりも静かに見えた。本来なら、ここは繁華街。
もっとにぎやかなはずだ。商店が営業していない訳では無いけど、なにか人手が少ないように思える。
やはり、戦争が近づいていることで、人が減っているのだろうか。

私は大きなカバンを持って、引きずるように歩みを進めている。中には、トールの遺品。
そして、キラの遺品。キラは生きている。これは、『私のキラ』の遺品。
昔の明るく優しかったキラはもういない。あの、MIAの時、いや、地球に降りて、あの子が
キラに接近した、あの時に、もう死んでいたのだ。

今のキラは別人。あの子に変えられた存在。
冷たく残酷な戦士。その存在は、キラの顔で、私に命令した。

── 降りるんだミリィ。そして、忘れるんだ僕のこと。忘れてしまえばいい。
── 忘れるんだミリィ!!

私は、従わねばならない。たとえ、心はキラで無くても、キラの口から発せられた言葉に、
私は逆らえない。キラを忘れなければならない。忘れる。忘れるのよ。
空港から首都に向かう列車の中で常に私の中で、何度も何度も渦巻いていた言葉。

連絡機で空港に着く直前、私の中に昔の楽しい思い出が蘇った。キラ、トール、サイ、カズイ、みんな……
私は、それを振り払うように、私の携帯電話を海へ投げた。忘れる。忘れるのよ。
繰り返し、唱えていた言葉、それは、既に私の中で一杯になっている。

── こんな僕のこと忘れてしまえばいい。ヘリオポリスの思い出だけを残して。
── 僕は、いなかったと思うんだ

「ハイ、忘れましたキラ。忘れました」

私の口元には笑みが浮かんでいる。キラの命令に従う。それが、私の幸福だ。それは、いつか
私の体にも至福をもたらしている。幸福だわ。幸福よ。

(いいの、本当にこれで? こんなので、いい訳無い)

ただひとつ抵抗する心が、キラの遺品を無断で持ち出させた。悪いことだという実感は無い。
どうするかなど考えていない。矛盾する心のまま、私はひたすら歩みを進めている。

連絡駅にたどりついた。これからトールの両親に会いに行く。トールの遺品を渡すために。
これも、キラの命令。そして、艦長の願い。私の贖罪。

列車に乗る。ここも人は少なくかなり席は空いている。椅子に座り、大きなカバンを隣に置く。
発車時間まで、窓から駅をぼんやりと見つめる。アークエンジェルのブリッジから、宇宙を、
そして、地球の青い空を眺めていたことを思い出す。一緒に見つめていたトールのことを。

トール、私、これでいいのよね。私、トールをお父さん・お母さんに返す。これで許してくれるよね。
これで、また、私、歩きだせばいいんだよね。

これから、私は、どこへ行こう。誰と歩けばいいんだろう。キラは忘れなければならない。
サイ。サイならいいよね。トールも、そう思うでしょ。私、自分の両親捜して、戦争から逃げて、
ひたすらサイを待てばいいんだよね。

列車のベルが鳴った。私の新しい日々が始まる。その第一歩が。
発車ベルとともに、列車に走り込んでくる人がいた。列車は動きだした。
走り込んだ人は、私のいる車両に入ってきている。興味の無い私は、窓の外の流れる景色を
ずっと見つめている。と、その入ってきたらしい人が、私に話しかける声がした。

「ここ、席空いてんのか」

私の正面の席なら空いている。

「ええ、どうぞ」
そう言った私は、それが聞き覚えのある声だということに気づいて、車内に目を向けた。

「ディアッカ!」
「ミリアリア! こりゃどういうことだ」

私がアークエンジェルを降りる前日、捕虜から釈放されたディアッカ。艦からオーブに移されて、
そこで自由の身になった。多分、ザフトへ帰るだろうから、もう会うことは無いと思っていた。

でも、私とディアッカは、また再会した。このオーブの町で。

538ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/05/21(金) 04:04
「ミリアリア・あの子許せない」ならびに「ザフト・赤毛の虜囚」の作者です。
今回のがSSでは最後の投下になります。ミリィとディアッカの再会だけは、小説として
公開したかったので、投下させていただきました。

避難所及び継続スレで続けられていた議論静観しておりました。方向的には他キャラへの
配慮ということでしたが、その前のフレイ以外のキャラを改変して扱うのは、個人サイト向きで、
この板では好ましく無いという意見もあり、私のミリィSSは、これに該当します。
実際、過去に投下したものも、あまりいい扱いをしていたとはいいがたいですし、
基本設定の変更で、ミリィ以外のトールやサイと言ったキャラへも、あまりいい扱いでは
無かったと反省しています。従って、私のSSはここで中断させていただきます。

フレイSSだけというのは、以前も書いたことがある通り、私の腕だと、描写が一面的に
なりますし、こちらも妊娠などの微妙な話題を扱っていますので、こちらも合わせて中断いたします。

私が現在持っているサイトは、自分で著作権を侵害しない創作デザインの模型を謳っている関係上、
二次創作小説を置く訳にはいきませんので、置くならば新たにサイトを借りることになります。
しかし、これから忙しくなる関係上、いつになったらできるか疑わしいものがあります。

また、議論では個人サイトの方が自由にできて合理的だということですが、個人サイトであっても
制限が無い訳では無いと思います。ただ、その風当たりが板全体から個人になるだけの話で、
自分で、それを、こなせないと判断するならば諦めざるをえません。

それと、ここで連載していたものを、個人サイトへ移ったからと言って制限を外して書けば、
やはり、フレイ板に風当たりが返るでしょう。おそらく、制限がかからなくなってしまう
自分を危惧する私は、このまま、消えた方がいいと思います。

何も無しに中断するのは、読んでいただいていた方にも失礼なので、以下、決まっていた範囲の
プロットを公開します。全ては、小説になっておらず、また、展開を迷っていた部分も
少し残っています。

539ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/05/21(金) 04:07
「ミリアリア・あの子許せない」ならびに「ザフト・赤毛の虜囚」の作者です。
今回のがSSでは最後の投下になります。ミリィとディアッカの再会だけは、小説として
公開したかったので、投下させていただきました。

避難所及び継続スレで続けられていた議論静観しておりました。方向的には他キャラへの
配慮ということでしたが、その前のフレイ以外のキャラを改変して扱うのは、個人サイト向きで、
この板では好ましく無いという意見もあり、私のミリィSSは、これに該当します。
実際、過去に投下したものも、あまりいい扱いをしていたとはいいがたいですし、
基本設定の変更で、ミリィ以外のトールやサイと言ったキャラへも、あまりいい扱いでは
無かったと反省しています。従って、私のSSはここで中断させていただきます。

フレイSSだけというのは、以前も書いたことがある通り、私の腕だと、描写が一面的に
なりますし、こちらも妊娠などの微妙な話題を扱っていますので、こちらも合わせて中断いたします。

私が現在持っているサイトは、自分で著作権を侵害しない創作デザインの模型を謳っている関係上、
二次創作小説を置く訳にはいきませんので、置くならば新たにサイトを借りることになります。
しかし、これから忙しくなる関係上、いつになったらできるか疑わしいものがあります。

また、議論では個人サイトの方が自由にできて合理的だということですが、個人サイトであっても
制限が無い訳では無いと思います。ただ、その風当たりが板全体から個人になるだけの話で、
自分で、それを、こなせないと判断するならば諦めざるをえません。

それと、ここで連載していたものを、個人サイトへ移ったからと言って制限を外して書けば、
やはり、フレイ板に風当たりが返るでしょう。おそらく、制限がかからなくなってしまう
自分を危惧する私は、このまま、消えた方がいいと思います。

何も無しに中断するのは、読んでいただいていた方にも失礼なので、以下、決まっていた範囲の
プロットを公開します。全ては、小説になっておらず、また、展開を迷っていた部分も
少し残っています。

540ミリアリア・あの子許せない ザフト・赤毛の虜囚 プロット 1/7:2004/05/21(金) 04:10
●ミリアリア「平和の国を見守って」

ディアッカと再会したミリアリアは、二人連れ立ってトールの両親の家を訪れ、遺品を返す。
その時、自分のせいでトールを死なせたという罪の意識と、ザフトへの憎しみが再燃してしまう。
ディアッカから、具体的な憎しみの対象であるアスランの名を知り、その憎しみを胸の内にしまい込んだ
墓前に祈り、トールの家に一泊したミリアリアは、さらにキラに惹かれていることを
隠してトールと付き合っていた罪悪感への贖罪に、トールの家に娘として置いてくれるよう懇願。
キラの「トールを弔い」「自分を忘れろ」という二つの命令を守っていくことを決意する。
しかし、ミリアリアにとっては、キラを忘れることは、同時に三人でいたトールの思い出も
忘れるという矛盾した命令だった。ほとんどの思い出を失い追い詰められたミリアリアを
救ったのはディアッカの、なにげない言葉だった。
「忘れちまえよ、そんなこと。キラってやつとの約束の方さ」
トールの母の暖かい言葉で、再び立ち直ったミリアリアは、トールの家を後にする。だが、
アスランへの暗い想いは胸に秘めたままだった。

●フレイ「暗雲」

フレイはミコトを部屋に入れて話をするうちに、ミコトの目の前で、メルデルへ意識を遷移
してしまう。一時的に放心状態になったフレイを心配するミコトは、そのことで、パナマ戦後の
惨殺に立ち会っていたことをフレイに伝える。フレイは人を殺すのはいけないことだとミコトに教え、
部屋を送り出す。

ミコトを見送った後、フレイは通路でのザフト兵の雑談を聞き、クルーゼの書類整理を
手伝っている自分は、既にザフトから釈放される望みが無いことを知る。さらに、ザフト兵に
見つかりそうになるのを、通りかかったイザークに救われたものの自分の今の境遇を知り、
フレイはベッドに潜り込んで震え続ける。

●メルデル「暗雲」

カリダはユーレンに手術を受け、念願のウズミとの初体験を果たした。
メルデルとカリダは妊娠・出産・育児について語り合うが、その時、ブルーコスモスの
パトロンであるサトゥルノ・アズラエルに会い不快感を抱く。その後、ウズミはユーレン、
メルデル、カリダを呼び、アズラエルと袂を分かつことを伝える。大西洋連邦のユーレンの
故郷の田舎町へ逃亡を決めたユーレン、メルデル、ムウの親子。別れを惜しむカリダに、
ウズミはこの親子を守り、安全を見届けるよう命じた。

事情を理解できないメルデルは、ベッドでユーレンを問い詰める。「ムウの前で黙ってるの」
メルデルはユーレンの研究がクローンであり、その一環として人工子宮を手がけていたことを知る。
アズラエルは人工子宮を、代理母、卵子売買の生殖産業ビジネスに利用しようとしていた。

※ サトゥルノ・アズラエル (オリキャラ、ムルタの父)

541ミリアリア・あの子許せない ザフト・赤毛の虜囚 プロット 2/7:2004/05/21(金) 04:13
●ミリアリア「どうしてキラが好きなのか」

ミリアリアは黙って持ってきたキラの遺品を両親に返すことにした。ディアッカと話し合ううちに、
ミリアリアは、なぜキラを好きになったのかをディアッカに話す。
「キラはね、お兄さんに似ているの」
それは、幼い頃両親が不在がちなミリアリアの面倒を見てくれた近所のコーディネータの青年だった。

お兄さんに恋心を抱くミリアリアは、やがてプラントへ行き、婚姻統制で結婚して去って行った
お兄さんへの辛い失恋を経験する。ネット世界に逃避する荒れたハイスクール時代を過ごした
ミリアリアは、カレッジでトール、キラと出会い、お兄さんにそっくりの容姿のキラに惹かれる。
コーディネータでありながらナチュラルのミリアリアに暖かく接するキラに、ミリアリアは恋心を
募らせるとともに、自分の荒れた趣向をキラに知られまいと隠し続けていた。だが、結局、
お兄さんと同じく失恋を味会うことになった自分を悲しむ。
このことは、ディアッカには話さなかったものの、封印していた記憶を思い出したことで、キラの
命令の呪縛が、また薄まることになった。

● メルデル「奈落」

逃亡したメルデルらはオーブの空港で、アズラエルの手下に追われ、ユーレンは二人から離れる。
残されたメルデルとカリダに、ヒイラギ所長から情報を得たヴィアが迫る。男言葉は、なりを潜め、
女言葉のままメルデルとカリダを激しく罵倒するヴィアは、ユーレンを侮辱されて興奮したカリダを
突き飛ばした時の事故で、カリダの手術跡を悪化させてしまう。怒りのヴィアに加え、苦しむカリダと
泣き出すムウ。追い詰められたメルデルに、不思議な力で、ユーレンの手の感覚が繋がった。
手に伝わるユーレンの心臓の鼓動に勇気づけられたメルデルはムウを泣きやませ、カリダに
救急車を呼び、ヴィアを妻の資格は無いと言い負かす。だが、その後、ヴィアの後を付けた
アル・ダ・フラガに、メルデルとムウは捕らえられ、連れ去られてしまう。

● フレイ「奈落」「背徳」

フレイはクルーゼにプラントに秘書として同行することを告げられる。連合服からザフトの制服に
着替えるように言われ、フレイは抵抗するが、寝ている間に遷移したメルデルの辛い記憶のために
汗ビッショリになった体をシャワーで洗う間に、連合服をクルーゼに奪われてしまう。
フレイはクルーゼの前に肌を晒し、連合服を返すよう約束を迫る。クルーゼは、フレイの胸に、
まるで赤子のように縋った。(これは、実は子供のころのラウにメルデルがしていたことだった)
その時、クルーゼに発作が起こり、連合服を返す約束は守られることは無かった。

ザフト制服を着るのを拒否するフレイは、下着姿のままベッドに臥せっていた。
フレイは、キラのメモリチップによる癒しを得ようとするが、ビデオメールの最初の
「裸になったろ……」の言葉がクルーゼとの背徳感を思い出させ、メモリチップの癒しさえ、
一時的に封印されてしまう。

542ミリアリア・あの子許せない ザフト・赤毛の虜囚 プロット 3/7:2004/05/21(金) 04:17
●フレイ「弱虫」

ベッドに失意のままのフレイは、こんな想いをするのなら、キラはミリアリアを選べば良かったと
思うようになる。砂漠から太平洋に出る直前のキラとの逢瀬で、ミリアリアとトールの馴れ初めを
聞いた時、ミリアリアとキラに告白を思わせる出来事があったと聞いたこと思い出す。だが、
実際には告白は無く、その後、ミリアリアはトールが好きとキラに告げ、トールからの告白を
受け入れたことをキラに聞いていた。だが、フレイはミリアリアが今だキラに想いを残して
いることから、ミリアリアに対するキラの想いまで疑い始めていた。

悩むフレイを尋ねたミコトは、どうしてもザフト制服を着ないフレイに弱虫と言い放つ。
それをフレイは、キラに対して弱気になっていることへの叱咤とも受け取っていた。

●ミリアリア「風が私を押してくれたら」

ミリアリアは、オーブ開戦直前の避難状況の中、キラの両親を捜し出す。キラの遺品を見た
キラの母カリダは、ミリアリアにキラへの想いを聞く。既にキラに好きな人がいると伝える
ミリアリアに、カリダは、かつて自分が運命で結ばれた二人のために、ついに相手に
伝えることができなかった想いをダブらせ、「運命になんか負けちゃダメよ」と声援を送る。
キラの命令の呪縛が完全に消えたミリアリアはキラの遺品箱を抱きしめ「キラを忘れられる訳無い」
と再確認する。

オーブの平原で風の舞う中、ミリアリアはヘリオポリスのゼミ旅行のキャンプで、キラに
告白できなかったことを思い出していた。風が私を押してくれたら……

●メルデル「背徳」

アル・ダ・フラガは、捕らえたメルデルとムウを人質にユーレンを脅迫し、メルデルの卵子を
用いて、自身のクローンを創らせる。妊娠を煙たがる代理母がクローンのラウを育てる一方、
フラガは用済みとなったメルデルに手術を施し子供を産めなくしてしまう。

3年後、フラガはアズラエルらと組み、生殖産業を立ち上げる秘密の会合に、メルデルを
連れてきていた。そこでメルデルは偶然にも3歳になったムウと短い再会を果たす。
会合中にブルーコスモスのアズラエルに与しない残党による暴動が起こった。
それに加わっていたユーレンとカリダにメルデルは救われる。だが、ムウも救い出そうとする
メルデルらの前に立ちふさがったのは、アズラエルの秘密工作員ブーステッドマンの三人だった。
その三人に、カリダの先輩だったブルーコスモスの残党達は惨殺される。ムウも巻き込まれ
死んだものと思い込むことになる。かろうじて脱出したユーレン、メルデル、カリダ。
ムウを失ったことと、再び虜囚生活を送っていた背徳感からメルデルはユーレンを拒否する。
カリダはメルデルを励まそうとするが、カリダ自身もヴィアとの事故で、再び、子を持てない体に
なっていた。

543ミリアリア・あの子許せない ザフト・赤毛の虜囚 プロット 4/7:2004/05/21(金) 04:20
●ミリアリア「体ごと胸に預けて」

再びキラの遺品を手にしたミリアリアは、それが入ったバッグをバイクの男にひったくられる。
ディアッカのバイクに乗って追いかけるミリアリアは、いつしかミナシロの市街地に来ていた。
ミナシロPARKSの屋上でバイクの男を追い詰めたディアッカとミリアリアは、ついに
キラの遺品を取り戻す。だが、そこでオーブへの大西洋連合の攻撃が開始された。
無人の町を逃げ惑う中、レイダーとフォビドゥンのミナシロ攻撃に巻き込まれたミリアリアは、
炎の中にキラの遺品を失う。呆然とするミリアリアを、ディアッカはミナシロの震災避難所に置いて、
故障して放置されたM1アストレイに乗り、カラミティを加えた3Gに一人立ち向かう。
その様子に意識を取り戻したミリアリアは、通信社のビルから救援の通信を飛ばす。
それは、なんとオノゴロのアークエンジェルまで繋がった。そのことで、Nジャマー
キャンセラーが働いていることに気づいたミリアリアは、通信社のビルからキラのフリーダムが
近くにいることを見つけ、キラに通信で叫ぶ。しかし、フリーダムは、Nジャマーキャンセラーを
稼働したことで、ザフト特務隊のジャスティスに発見され、交戦中だった。
そして、通信で居場所が見つかったミリアリアはフォビドゥンの攻撃で通信社のビルの破壊に
巻き込まれる。

死んだと思っていたミリアリアは、強烈な振動で目を覚ます。そこはフリーダムのコクピットの
キラの胸の中だった。キラはディアッカの乗るM1を助け出すが、3Gとジャスティスの攻撃の中、
ミリアリアをディアッカに託すことはできなかった。戦い中の荒々しいキラの様子に戸惑いながらも、
ミリアリアは体ごと胸に預けてキラとともに戦い続けることになる。

●フレイ「奇縁」

フレイが捕らえられている潜水艦クストーはオーブ戦の偵察のため、領海付近の海底に潜んでいた。
フレイは、クルーゼがオーブ偵察に飛ばしたピーピングアイでミナシロが戦果に巻き込まれて
いく様子を見る。ミナシロの町での出来事を思い出していたフレイは、そこで、知らないうちに
トリィと出会っていたこと、キラに初めて会って言葉をかわしたこと。そして、ミナシロPARKS
屋上で親しそうに話をし、入り込めない絆を感じたアベックが、キラとミリアリアであったことに
気がつく。さらに、ピーピングアイの映像は、ミリアリアがキラの遺品を失う様まで捉え、自分の
持ち去られた連合服とともに、キラの連合服まで炎に包まれて消えて行くのを見てショックを受ける。

ミリアリアがザフトのパイロットスーツを着た人物に救い出される様子を映像で見ていた
クルーゼは、友達に一言だけ通信してみろと、フレイの名をNGワードにした電文を一つ
送信することを許可し、フレイを部屋に一人残して、司令室へ戻った。

544ミリアリア・あの子許せない ザフト・赤毛の虜囚 プロット 5/7:2004/05/21(金) 04:25
●ミリアリア「キラの胸で拭った」

激しい戦いの中、ジャスティスが破壊して崩れるビルの爆煙に紛れ、フリーダムとジャスティスは
ワイヤーで結ばれた状態で、崩れたアーケード街に隠れた。そして、ジャスティスに乗るアスランは
ワイヤーでの有線通信でキラに話しかけた。映像に切り替えたアスランは、キラに抱きつくミリアリアを見て、
ミリアリアがキラの恋人であり、このためにキラが連合に味方していたと思い込む。ミリアリアは、
アスランを前にしてトールを殺された憎しみを思い出し、呪詛の叫びをアスランに投げかける。
だが、キラはトールとニコルを失い復讐に狂った二人を、すでに戦争では無い私闘だったと、
アスランに告げる。そして、憎しみの連鎖を断ち切らない限り、戦いは終わらないと諭す。
ミリアリアは、それにトールの母の言葉を思い出し、キラの胸でトール追悼の涙を拭う。

Nジャマーキャンセラーの意見、戦犯となったラクス、これからの戦争に対する意見、結局、
アスランとキラは相容れることなく、再び二人は別れ、戦いに戻る。

3Gの無茶苦茶な攻撃で、既に廃墟と化そうとしているミナシロ市。
ミナシロを脱出しようとするキラ。故郷が破壊されるのを見捨てるのと迫るミリアリア。
その二人にカラミティが立ちふさがる。カラミティはスキュラの弾幕でフリーダムの攻撃を
無効化し、さらにバックアップ電源車の供給でエネルギー切れを知らずに攻撃し、フリーダムは
押され始める。苦戦するキラはミナシロの町に潜むザフト特務隊のラゴウを発見し、カラミティと
やり合わせる隙に、原子炉を落とし、Nジャマーキャンセラーを停止させて、特殊装備の
ミラージュコロイドを発動させる。ストライクの武装であったアーマーシュナイダーと
ソードストライカーのパンツァーアイゼンを携行していたフリーダムは、姿を消した状態で、
バックアップ電源車に近づき、アーマーシュナイダーで、これを破壊。カラミティを敗退させる。

襲い来るレイダーとフォビドゥン。町を破壊しながら高速で追撃するレイダーに
パンツァーアイゼンを打ち込んだフリーダムは、これでフォビドゥンまでも搦め取って、
動きを封じ、この二機を敗退させた。

だが、残るアスランのジャスティスに加えて、隠れていたザフト特務隊のラゴウ、ディン、
そして、グーン爆撃飛行型の攻撃にフリーダムは原子炉を再起動するチャンスも無いまま、
オーブ領海線近くまで追われ、ようやく海中に逃れる。

深海に隠れたフリーダムは、そこで、オーブ領海線付近に潜んでいたザフトの潜水艦クストーに接触する。
クストーからのグーン、ゾノの応戦に、フリーダムはクスィフィアス・グレイブしか使用できる
武器が無く、原子炉の再起動も、ままならない中、バッテリのみのエネルギーで対峙することになる。

※ クスィフィアス・グレイブ
オリジナル武器。クスィフィアス・レールガンの砲身にシュベルトゲベールの実体刃と高周波振動子を
接続したナギナタ状格闘兵器。アークエンジェルのデッキでキラがフリーダムに篭っている時に製作した。

●フレイ

潜水艦クストーにフリーダムが接近し、スクランブルが発令される中、ミコトはフレイに、
「パパがいるよ」と告げ、今だ失意の中にいるフレイに「パパを連れて来る。元気出してママ」と
言い残して出撃する。

●ミリアリア

ロングレンジ攻撃主体のグーンに、ショートレンジの武器しか持たないフリーダムは苦戦する。
さらに、フリーダムの攻撃を巧みにかわす強敵のグーンに懐に入られ、潜水艦まで引きずられて行く。
その中、接触通信でのグーン・パイロットの声。
「パパ、パパでしょ。ママが泣いてるの、一緒に来て」
戸惑うキラとミリアリア。
グーン・パイロットはミコトだった。ミコトは、パパが別の女性と一緒にいることにショックを受ける。

一瞬をついて、フリーダムはミコトのグーンから脱出。カズイのホームページにあったミナシロ旅行時の
海洋プラントの写真をフリーダムの記録メモリから引き出したキラは、それにあった放棄された
海洋プラントの居住ブロックに入り込む。追う、グーン、ゾノ。フリーダムは、居住ブロックの入り口に
引きつけた敵に対し、内部からバラエーナ・ビーム砲を放ち全滅させる。だが、それで、バッテリの残りを、
ほとんど使い果たしてしまった。

ミコトは間一髪、イザークの乗るゾノに救われて無事だった。パイロットの命までも奪ったパパに、
ミコトはフレイの人を殺してはいけないという言葉への矛盾に心を悩ませる。

545ミリアリア・あの子許せない ザフト・赤毛の虜囚 プロット 6/7:2004/05/21(金) 04:31
●フレイ「電文」

フレイは、部屋のモニタから苦しいフリーダムの戦いを見ていた。それは、砂漠のころ、泣きそうに
なりながら必死で戦っていたキラを思い起こさせた。そして、キラにミリアリアのことを聞いた
記憶は、自分がキラの部屋から離れられなくなり同棲していく過程でもあったことを思い出す。
フレイは、自分はミリアリアに負けていない、キラとの絆は大きかったことを自覚する。

もしも、あのモビルスーツ・パイロットが実は生きていたキラだったら。そう思ったフレイは、
クルーゼが許した電文に、あるメッセージを込めて送り出す。
「Kizashi kiZashi 私はプラントに行く」

「Kizashi kiZashi」= 「キザシ(兆)とキザシ(萌)」
それは、アークエンジェルで同棲状態になったキラとフレイ二人の部屋のドアのパスコードだった。

●ミリアリア

キラは電文を受け、フレイが潜水艦に居ることに気がついた。だが、時既に遅く、フリーダムの
バッテリは稼働限界に来ていた。深海に沈んで行くフリーダム。キラはミリアリアに、
「キザシ(兆)とキザシ(萌)」の意味を語った。ミリアリアも、キラの好きだった、
この二つの漢字に特別な思い入れを抱くことになる。

●フレイ「希望」

電文の返事は来なかった。だけど、フレイは、その電文を受けたことで、微かな反応を見せた
フリーダムに、キラが生きているかもしれないという希望を託した。
「私は、くじけずにキラの想いを継いで生きていく。キラ、もし、生きているのなら、追ってきて……」

ミコトはフレイのいる部屋に失意のまま帰ってきた。パパを連れて来れなかったと寂しそうに
話すミコトをフレイは励ます。そして、ミコトの前で、ザフトの制服を身につけた。

フレイは、ミコトにパパのことを話してあげると言い、少しずつキラのことを話しだした。
ミコトは、その話を聞き、パパが人を殺したことの矛盾をフレイに問いかけるが、フレイも
明確には答えられない。ただ、迷っていたキラの想いのみ伝えた。ミコトは、戦闘で人命を
奪う矛盾への葛藤から、子供の心を脱し、徐々に大人の心へと成長して行く。

●ミリアリア「もう、迷わない……」

深海の底で、無言のキラとミリアリア。やがて、ポツリポツリと互いの想いを話しだす中、
ミリアリアは、変わったキラの奥底に、以前と変わらないキラが隠れていたことに気がつく。
自由の翼に乗りながら、心を縛られるキラは、周りには人当たりの良い態度を見せていたが、
実はミリアリアに見せていた辛い態度こそが、本来の優しいキラの裏返しだった。

キラへの想いを高めていったミリアリアは、今までキラに隠していた自分をさらけ出す。
キラも、フレイを激しく求めていた。キラはフレイを想い、ミリアリアは、そのキラの
イメージのフレイを自分に置き換え、触れ合うことなく、ただ赤裸々な言葉だけを交わし合う。
ミリアリアは自分がキラに隠していたことは、既に意味が無かったことを悟る。

一晩休ませたバッテリの、わずかの電力を使って、キラはNジャマーキャンセラーを作動させ、
原子炉を再起動した。再び翼を広げたフリーダム。キラとミリアリアは、通信で、オーブが
大西洋連合を退け、つかの間の勝利を得たことを知る。しかし、ミナシロに戻った二人が、
そこで見たものは、一面廃墟の町だった。その中で、ミリアリアはキラに言う。

「ねえ、キラ。町も世界も変わって行くのね」
「ああ、そうだ。これからも、どんどん変わって行く。心さえも。でも、心が求めるものは変わらない」

「そうね、私も変わる。変わって行く。私は変わっていくことが恐かった。
 でも、もう恐れない。いくら変わっても、私にも変わらないものがあるから」

キラは、再びミリアリアに命令する。

「ミリィ、君は逃げてくれ。戦争の無い世界へ。そして、今度こそ僕を忘れてくれ。
 こんな酷い僕なんか覚えている必要はない」
「イヤ」

「聞くんだミリィ、僕を忘れろ!」
「イヤ!」

「ミリィ、ハイは?」
「イ! ヤ! 絶対イヤ!!」

いくら命令しても無駄。私は、もうキラの命令になんか従わない。

「キラ、私も行く。アークエンジェルのCICで戦う。変わらないもののため戦う。キラと一緒に」

ミリアリアは、キラの胸に体ごと預けて思った。もう、迷わない……

546ミリアリア・あの子許せない ザフト・赤毛の虜囚 プロット 7/7:2004/05/21(金) 04:32
●フレイ「希望」

ザフトの制服を身につけたフレイは幽閉されていたクルーゼの部屋から、外へ歩みだした。
クルーゼに誘われ、クルーゼ隊のメンバーに紹介される。
キラを継ぐ資格。フレイは、それを密かに「キザシ」と名づけた。キラが生きているかもしれない。
単に思い込みかもしれないが、フレイは、それを希望として、キラを継いで生きていこうと思った。
そんな、フレイを、無関心そうに振る舞うイザークと、笑顔を取り戻したミコトが出迎えた。

●メルデル「希望」

ユーレンは、ムウを失ったメルデルを励ますため、新たな子をもうけようとする。
既に子を持てなくなったメルデル、カリダも含む同様の境遇の女性、そして不妊治療も含めた
目的で、ユーレンは人工子宮を完成させることを決意し、そのために、コロニーの研究所に
戻ることを告げる。
「ユーレン、信じていいのね」
メルデルはユーレンと再び体を合わせた。そこで、メルデルはユーレンの体にできた無数の傷に
気がつく。ユーレンは、アズラエルのブーステッドマンに襲われ、傷だらけになりながらも
命を拾ってきていた。

寝室を出たメルデルは、カリダが寂しそうに部屋の戸の前にいたことに気がつく。
カリダにも、なぜ仲直りしたメルデルとユーレンに心がざわめくのか分からなかった。

547ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/05/21(金) 04:40
ここまでが、「ミリアリア・あの子許せない」第2部、「ザフト・赤毛の虜囚」前半の
プロットです。プロットだと省略してしまいましたが、ミリアリアがキラと再会するまでの間、
ディアッカとミリアリアの会話は、配慮抜きでも、かなり多かったと思います。

ただ、他には、結構、キャラの扱いが悪かったり、陰惨、破廉恥なところは、かなりあります。
なんとか押さえようと模索していましたが、すべて配慮しきれるものでは無かったと思います。

この後の展開は、明確に決まっていた訳ではありません。

メルデルの今後のストーリーは、構想はありましたが、かなり錯綜したものとなっていて、
プロットが膨大になりますし、やはり、この板には、そぐわないものだと思うので、公開は
見合わさせていただきます。

途中、提示したフレイの親友のテーマは、この先のミリアリアが担うことなっていました。
以下が、そのために構想していた台詞です。Nジャマーキャンセラーに絡めたものになっています。
正確には、Nジャマーキャンセラーの設定変更が先にあって、この展開に辿りつきました。

* * *

最終戦直前、ジェネシス攻略のため、アークエンジェルとドミニオンは一時的に同盟を結ぶ。
ナタルとフレイは連絡艇でアークエンジェルに赴き、マリューらと再会する。キラ達は、
すでに前線に向かった後だった。サイに自分のことを謝るフレイ。フレイはキラの部屋で、
トリィとも再会し、自分が降りた時そのままの部屋の様子に感激する。そして、その部屋を尋ねた
ミリアリアと話し合う。

「私が運んだNジャマーキャンセラーの情報から、こんな悲惨な戦いになったんだもの。
 自分が許されないことは分かってる。だから、戦いにも出たし、それで、もし、キラが
 私を許さないなら、それで仕方ないと思ってる」

「キラは許すと思う。キラもNジャマーキャンセラーの十字架を背負っているもの。
 キラが今乗っているモビルスーツ・フリーダム。あれはNジャマーキャンセラーが搭載された
 ザフトのもの。キラは、そのために、たくさん人を死なせてきた。自分でも手に掛けた。
 キラの手は血塗られていると、いつも嘆いていた。フレイのこと、いつも悲しんでた。
 フレイは怒るだろうけど、本当のことを言えないって」

「キラ…… 私、そんな訳無いじゃない」

「フレイ、そんなに悲しいことばかりじゃない。知ってる? Nジャマーキャンセラーって、
 人と人を繋ぐものでもあることを」
「え! どういうこと?」

「Nジャマーキャンセラーはね、Nジャマーの通信妨害も消すの。今まで、話もできなかった
 遠くの人とも話ができるようになるの。いつもキラと話ができるの」
「そんなの知らなかった。核を使えるようにするものだとばかり思ってた」

「使い方なの。どんなものも使う人によって変わるの。私は、早くからキラとNジャマー
 キャンセラーを使ってきたから、それが分かる。キラが飛んだ場所はしばらく通信ができるし、
 Nジャマーキャンセラー同士だと、無線が使えなくても、お互いの居場所が分かる。
 私とキラとを、いつも繋げていたの。多分、あなたでもできる」

「本当なの?」

「キラの使っている通信の暗号パターンを教えるわ。これで、キラと話できるはず」
「いいの、ミリアリア」

「うん、じゃないとフェアじゃ無いような気がするから」

フレイとミリアリアは、戦後、キラを、どちらがものにできるか張り合うことを約束し、
フレイはドミニオンに戻る。

その後、一向に攻略できないジェネシスに痺れを切らしたムルタ・アズラエルの命令で、
ドミニオンはプラントへの核攻撃のため、再び、アークエンジェルと袂を分かつことになる。

* * *

以上の箇所は、やりたいという意思はありましたが、それまでに大量のエピソードを、
こなさないいけなかったため、実際に人目にだせたかどうかは分かりません。

548ミリアリア・あの子許せない 作者:2004/05/21(金) 04:46
・「オーブ・フレイの心」「ザフト・赤毛の虜囚」
・「ミリアリア・あの子許せない」
・「コスプレ」(短編)

これらは、いずれも、私がTV本編最終回放映直後に投下した「クローン・フレイ」に繋がる
補完となり、全体として「真クローン・フレイ」というべきものを構成していました。

結果的に、この「真クローン・フレイ」でのヒロインは、フレイとミリアリアの二人となりました。
さらに、フレイのオリジナルであるメルデルのストーリーでは、メルデルは途中で亡くなりますが、
カリダに加えてヴィアも、フレイらと同じ時点まで生き残り、二つの時代のストーリーを繋げて
いくつもりでした。フレイだけでは話が進まなくなってしまっていました。

一人称小説でありながら、複数を並行させることで、全体をカバーしようとして、結果的に
群像劇となってしまったのが、私のSSが、この板にふさわしくなくなった原因でしょう。
他の方は、真似しない方が良いと思います。制作面でも、執筆の分量、関連する箇所の調整、
投下順序の決定など、いろいろと大変でした。でも、一つの事象を複数の視点で見ることで、
書いていて、本当に楽しかったのも事実です。

しばらくは、この板として、ふさわしい作品が、どんなものなのか静観させてもらいます。
私も、また、ふさわしい作品ができたと思ったら、寄らせていただきます。

私の拙い文章を読んでいただいてくれた方、ありがとうございました。

最後に、この「真クローン・フレイ」の終章として考えていたもののプロットを以下に掲載して
終わります。

● 真クローン・フレイ終章 「キザシとキザシ」

戦争が完全に終結してから、さらに数年が経ったある日。
一人の少女が停留所でバスを待っていた。その時、近くで待ち合わせをしていた少年に、
車で乗りつけた若い女性が声をかけた。その声に、振り向いた少女は、その少年が自分と
同じ名前であったことを知る。それをきっかけに話をし、二人とも空港に親を迎えに行くことを
知った少年は、同じ名前を持つ少女を車に同乗させた。
運転する女性を少年は、「ミコト姉さん」と呼んだ。

空港に着いた二人は、ゲートから、自分達の親が仲良く話しながら、連れ立って出て来るのに
目を丸くする。

「母さん?」
「お母さん、これ、どういうこと?」

「嘘、キザシが……」
「キザシ? えー、信じられない」

少年の名はキザシ。少女の名もキザシ。

キザシとキザシ。 キザシ(兆)とキザシ(萌)。
それは、かつての二人の物語の扉を開くパスコード。
二人のキザシが出会う時、新たな物語の扉が開くのか。それは、また別のお話。

549流離う翼たち・作者:2004/05/21(金) 21:59
とりあえず避難所の議論は目を通しました
他キャラへの配慮、という点では私もSSもファウルな気がしています
何しろ、ここから先でもキャラが死にますし、本編とは運命が変わる人も多いですし

そういうわけで、ここでの連載は諦め、個人サイトで続きを書くことにします
これまでどうもありがとうございました。

550私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 22:19
>>549
SSいつも楽しみに読んでたのですが、撤退本当に残念です。
あなたのSSのフレイ様や、キラ、カガリ、ラクス、アスラン
そしてオリキャラのキースなどなど、どのキャラも好感持てて
好きでした。(今も好きです)個人サイトでの連載は続けられる
とのことなので、そちらで拝見させてもらいます。お疲れ様でした。

551過去の傷・作者:2004/05/21(金) 22:26
皆様申し訳ありません、私の連載も打ち切らせていただきます。
皆様に迷惑をかけた時点で考えていたことでもあります、これまで私のような作者に付き合っていただきありがとうございました。
私のサイトはSEED関連ではありませんので、もしかしたら、大幅に内容を変えて連載の続きを投下するかもしれませんが。
最後に・・・ばれてしまいましたね、女ということ・・・実は私・・・ただのSEED好きな女子高生でした、すいません。

552私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 22:34
>>549
私もいつも楽しみにしていました。
個人サイトまで追っかけさせていただきます。

553私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 22:38
>>549
そうですか残念です、個人サイトまで見に行かせていただきます。
>>551
やはり続けるのには無理があるよね・・・でも本当に女だったとはね・・・女子高生だったのには驚きました、連載の続きいつでも投下してください、もう来ないかもしれませんが。

554散った花、実る果実51:2004/05/21(金) 22:41
「ラクス・クラインは利用されているだけなのです。その平和を願う心を。その事を、私たちは知っています。だから私たちは、彼女を、救いたい。彼女までを騙し、利用しようとするナチュラルどもの手から。そのためにも、情報を、どうか彼女を愛する人たちよ・・・・・・」
エザリア・ジュールの演説によって、ザフト兵の心理状況はいくらか安定しているようだった。最も、それは私にとってはありがたくはない、『反ナチュラル』という一言にまとめられるものではあったけれども・・・・・
「やっぱりなあ。あの優しいラクス様が、反乱なんておかしいとおもってたんだ。」
「ナチュラルどもめ・・・どこまで卑怯な手を使えば気が済むんだ!」
世評はここまで偏ったものではなかったようだけれども、「ナチュラルと戦う」という一つの目的をもったこの艦の中ではうまく統制がとれてきたようだ。

いつものようにクルーゼ隊長にお茶を入れていると、彼は何かのディスクを起動しているようだった。
「ほう・・・・」
彼は満足げに息をついた。
「あの・・・・・」
何か重要なものなのだろうか。
気になって問い掛ける私に彼は謎めいた笑みを浮かべた。
「フレイ・・・私はどうやら、今度こそ鍵を見つけたようだよ。」

彼が部屋を去ってから、私はデスクの引出しを開ける。
やはりディスクは持ち去ったらしく、引出しの中には入っていない。
その中には、見慣れた薬が無造作にしまわれていた。

「クライン派がさほどの規模とは思えんが・・・・・」
何故私はここにいるのだろう。何故私が作戦会議に参加しているのだろう。
意図の読めない会話が多い中、薄霞の向こうで会話が交わされているような錯覚を覚えた。
「奇跡の生還のヒーローだしな」
ふと私の耳に入った言葉に顔をあげる。
奇跡の生還のヒーロー・・・・砂漠の虎、私が直接知っているわけではないけれど、キラが一時期落ち込んでいた頃、それが砂漠の虎を討った時からだった、と後から知った。奇跡の生還・・・・キラが帰ってきてくれるのだったらよかったのに。
ありえないことだとわかりながら、私は願わずにはいられなかった。
砂漠の虎に対する一連の愚痴を封じ込めるかのようにクルーゼ隊長に口にされた一言が、物思いにふける私の意識を再度引きずりあげた。
「ましてや人が胸のうちに秘めた思惑など・・・・容易にわかるものではない」
胸のうちに秘めた思惑・・・・・その仮面の下に、彼はどんな思惑を秘めているというのだろう。
鍵って、何・・・?
呆然としている私にかまわず会議は進んでいく。
当たり前だ。私はここでは部外者なのだから。
しかし、なら何故彼は・・・・クルーゼ隊長は、私をこんな場所にまで連れてくるのだろう・・・・・
「イザーク!今度出会えばアスランは敵だぞ。・・・撃てるかな?」
アスラン・・・キラの友達だった・・・・・?イザークにとっても、そうだった・・・・?
「無論です!裏切り者など!!」
言い切る彼の瞳には悲壮な決意が満ちてはいたが・・・私はそれがいかに難しいことかを知っていた。
キラが、それでどれだけ苦しんだのか、それを一番近くで見ていたのは私だったのだから。
苦しみの連鎖は止まらない・・・どうしたらこの連鎖を断ち切ることができるのだろう。
どうしたら、戦争は終わるというのだろうか・・・・・

555散った花、実る果実52:2004/05/21(金) 22:43
部屋に戻るとクルーゼ隊長は深い息を付き、シートに沈み込んだところだった。
「疲れてるんですね」
声をかけると彼は微かに笑みを浮かべながら答えた。
「私とて生身の人間さ。戦場から戦場へ・・・ずっとそんな暮らしだ。軍人なのだから・・・といわれてしまえばそれまでだが・・・我等とて、何も初めから軍人だったわけではない」
その言葉にヘリオポリスの平和だった日々が思い起こされ、思わず私は目をそらした。
誰も初めから軍人だったわけではない・・・つまらない授業をきいて、放課後はジェシカ達と買い物に行ったりお茶をしたり・・・そんな何気ない日々がいかに愛しい日々だったことか。キラだって・・・・私が巻き込まなければ、あんなことには・・・・・・
「早く終わらせたいと思うのだがね。こんなことは。・・・君もそう思うだろう?」
思わず私は彼の顔を見た。
この人も、私と同じ気持ちなのだろうか。戦争を、早く終わらせたいと。そう、願っているのだろうか。
「そのための最後の鍵は手にしたが・・・・・ここにあったのでは扉はひらかん。早くあけてやりたいものだがね。」
彼の手のひらの上で、一枚のディスクがくるくると踊っていた──

戦況は、ますます複雑な状況になっているようだった。
アークエンジェル、エターナル(ラクスの乗っている艦らしい)、そして地球軍の艦が戦闘をしている、という事で、私はまた一人取り残され、鍵だと言って仕舞われたままになっていたディスクを見つめていた。
戦闘が始まれば、私にできる事は何も無い。
お茶を入れる、などと呑気なことをしている場合ではないし、非常時に掃除や洗濯をしてもいざという時邪魔になるだけだ。
だから、戦闘中は私にとって、一人でのんびりと出来る時間、とも言えた。
本当はそんな呑気なことは言っていられないはずなのだけれど・・・ザフトの戦艦はやはり機能が高いらしく、よほどのことがなければ、私のいる居住区まで戦闘の余波が及ぶことはないようだった。
戦争を終わらせる、最後の鍵・・・・・・・このディスクで何が終わらせることが出来るというのだろう。
このディスクの中には何が入っているのだろう。
見てみたかったが、もちろん私にその権限があるはずもなく、また、それを見るだけの・・・つまりロックをはずしたりするための技能を私は持ってはいなかった。
アークエンジェル・・・・・この宇宙のどこかに・・・・それも遠くない場所に、アークエンジェルがいる。
私はそこに帰りたかった。しかしまだ戦争を終わらせるだけの何かは足りず・・・私が帰れるだけの術も、何もなかった。
私はアークエンジェルにいる間、本当に何もできなかった。
もっとできる事があったはずなのに、今できる事があるって、そう気がついたことをアークエンジェルにいる間に気がつけばよかったのに・・・・
何も出来ず、何もせず、ただ人を傷つけてばかり。
キラのことも・・・・サイのことも・・・・・ミリアリアのことも・・・・・・・
私が何もわからず口にしたコーディネイターへの蔑視。そのおかげでヘリオポリスの皆がどれだけ傷ついただろう。
そんなことを考えていると、扉が開き、クルーゼ隊長が帰ってきた。

556散った花、実る果実53:2004/05/21(金) 22:43
「・・・・ぐ・・・・ぁ・・・うああ・・・・・う・・・ううう・・・・・・は・・・・・・ぜえっ・・・・ぜえっぇ・・・・・・」
彼は獣のようなうめき声をあげ、引出しをかき回すとむさぼるように薬を飲み、いつもの仮面を身につけた。
その様子は尋常ではなく、一瞬固まってしまったがやはり心配になって彼の傍に駆け寄った。
「アデス!ヴェサリウス発進する!モビルスーツ隊出撃用意!ホイジンガーとヘルダーリンにも打電しろ!」
「しかし!」
いつも冷静なクルーゼ隊長の人が変ったかのような物言いに驚いてか、それとも指示そのものに疑問をもったか、反論をする通信にクルーゼ隊長は言葉を荒らげる。
「このまま見物しているわけにもいかんだろう!あの機体、飛球軍の手に渡すわけにもいかんのだからな!」
「ですが!」
「私も出る!シグーを用意させろ!すぐブリッジに上がる!」
そこまで言うと、彼は強引に自らの息を整え、こちらを向いて不敵に笑った。
「ふっ、さて・・・・・君にも手伝ってもらおう・・・・最後の賭けだ・・・・・・扉が開くかどうかのね」
私は初めて彼に本気で恐れを抱いていた・・・何か・・・・・私はとてつもなく恐ろしいものと対峙しているのではないだろうか・・・


「ほら、乗れって」
促されて脱出ポットに乗せられたが、カメラもマイクも生きているらしく、機体の外で話すザフト兵の言葉が聞こえる。
「しかし、どうするんですか。この女。」
「さあな、また何かの作戦だろうよ。隊長の」
私はディスクを渡されたときのクルーゼ隊長の言葉を思い出していた。

「私も疲れた・・・・だから届けておくれ、最後の扉の鍵を」
先ほどの狂態がまるでなかったかのように、いつもの笑みを浮かべるクルーゼ隊長。
「それが地球軍の手に渡れば戦争は終わる」
「えっ・・・」
私はクルーゼ隊長への恐れを忘れ、思わず彼の顔を見返していた。
しかしその瞳は仮面に隠れて見えず、彼の心を伝えることはなかった。
・・・でもこれで、戦争は終わる。
早く終わらせたい、彼は以前にもそう言っていた。
信じよう、彼の言葉を。戦争を終わらせたい、と言った彼の思いを。
そして、戦争を終わらせるためにできる事、初めて私はそのために働くことができる。
一つでも、私にできることを。その決意を胸に、私はこのディスクを地球軍に届ける事を心に決めたのだった。

「地球連合軍軍艦アークエンジェル級に告げる」
戦場に、静かに私の運命を決める声が流れる。
「戦闘を始める前に、本艦で拘留中の捕虜を返還したい。」
これで戦争が終わる・・・・パパを、キラを奪った戦争が・・・・・・・皆を悲しみに沈めた戦争が、これでやっと終わるのだ・・・・・
リア・・・見ていて・・・・私にもできる事があったの・・・・・このディスクを地球軍に届ければ戦争が終わる・・・・・・
私は、そっと、目を閉じた。

557散った花、実る果実/作者:2004/05/21(金) 22:50
私は一応投下を続けさせていただきます。物語の終盤も近いことですし。
ただ、今までは感想も一緒にUPしていたのですが、作者同士の感想が多いという事もとっつきにくい原因になっていたようですので、以降は感想は無名であげさせていただきます。

今回、楽しみにしていた作品がいくつも連載中止になってしまって悲しいですが、これもしょうがないことなのかもしれませんね。
流離う翼作者様、ザフト・赤毛の虜囚者様、過去の傷作者様、今までお疲れ様でした。
最後まで続けるかわかりませんが、私はもうしばらくここに残らせてもらおうと思っています。
お互いに気がつかないでしょうけど、どこかでまたお会いできるといいですね。

558私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:04
>> 散った花、実る果実
メンデルコロニーの1コマですね。フレイ様はポッドで射出されて、さて原作通りにドミニオンへ渡るのでしょうか?
ドミニオンに移ったら今度はリスティアの居るプラントを核で狙うわけで、心中穏やかではないでしょうな

すいませんです、流離う翼を出来ればこっちで完結させたかったのですが、やはり死亡するキャラのファンには不快感を与えてしまうでしょうし、一部キャラもギャグ化してますから、テンプレ違反と判断したんです
勿論投げ出す気は無いので、サイトでは完結させるつもりです。こちらにはまた短編などを出す気です
暫くは一読者として読ませて頂こうと思っていますので、どうか頑張って完結させてやってください

559私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:09
>>549
それは残念です・・・。
>>551
続けてください!私はいい作品だと思ってますから、お願いします!また明日から来て!!!

560私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:15
>>549
貴方の作品が新テンプレにファウルになるとは思えなかったんですが、
サイトで発表されるということでしたら、
そちらにお伺いさせていただきます。
力強い作風で、情景、人物などの描写が素晴らしいと憧れていましたので。
続きを楽しみにしています。
これからも頑張ってください。

561The Last War・作者・お詫び:2004/05/21(金) 23:15
 避難所にて皆さんの議論を生還させて頂き、あれからじっくり考えました結果、まことに勝手ではありますが、自分のSSも連載を休止させて頂くことにしました。正直にお話しますと、これから先本編のキャラがオリキャラの噛ませ犬になりかねないような状況もありましたので。
 今まで自分のSSを呼んでくださっていた方々、本当に有難うございました。これからもこのスレで素晴らしい作品が生まれることを願っております。失礼致しました。

562私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:25
>>561
残念。お疲れ様でした。
自分のサイトで続きを書いたりはしないんですか?
もしするなら是非読みたいんですが。

563過去の傷・作者:2004/05/21(金) 23:27
>>559
あ・・・ありがとうございます・・・でも時間をください、まだいろんな心の準備とかありますので。
それに今はそういうこと考えたくないんです、とにかく打ち切りにした以上はそのままです、期待にそえなくてすみませんが・・・。

564私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:34
>>563
そう言わずに・・・出来ればまた作品が読みたいんですよ・・・。
それに中途半端な終わりでしたから。

565私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:35
まあ当人が時間をと言ってるんだから汲んであげなよ。
お疲れさまでした。

566私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:43
お疲れ様。

567私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:49
>>561
ええっ、あなた様も休止ですか!!戦闘シーンが多めで
中々読みごたえあって私的にヒットだったのですが。
えっと、個人サイトは持ってなかったですよね?(違って
いたらごめんなさい)一読者として続き読みたいです。
うーん、こういうとき匿名掲示板は連絡が取れなくて不便だ・・・。

568私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:53
>>564
作者さんの罪悪感を煽る発言はやめれ。

569私の想いが名無しを守るわ:2004/05/21(金) 23:55
>>561
失礼かもしれませんが、半分オリジナルとして楽しませてもらってました。
ひそかに本編でこんなキャラいたら面白かっただろうなと思いつつ。
>>567
じゃありませんが、こちらでなく違う場所での発表をお考えでしたら
ぜひお知らせくださいませ。
とりあえずはお疲れ様でした。

570567:2004/05/22(土) 00:05
肝心なことを言い忘れていました。

今までいっぱい楽しませてもらいました。
いつかどこかで作品発表されることがあった
時には、お知らせ下さったら嬉しいです。
本当にお疲れ様でした。

571私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 00:56
こちらで連載を打ち切った方でHP等で続きを掲載されるかたはせめてそのURLとか
どこぞに残してもらえませんか?
無理なお願いかもしれませんが、完全打ち切りで無い以上、続きを楽しみにしている
読者への配慮も少しだけしていただければと思います。
ここで晒すのがまずければ、フリーメールアドレスでも一つ作って頂いてそこに
メールよこせでも良いので何か対応していただけると助かります。

572私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 01:13
ググれば分かるだろ。
あんまり手間取らせるようなことするなよ。

573私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 01:34
>>572
検索すればいいの意見には同意だけど、もう少しやんわりと
言ったほうがいいのではないでしょうか?

574私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 01:44
二次創作をぐぐればわかるようなところに置かれても正直困るわけだが・・・
というか職人さんだってしないだろ。

575私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 01:46
>>572
ググッて出てくるという保証は100%ですか?貴方が保証してくれるのですか?
まともそうな事を書いていてその裏に見え隠れする貴方の悪意には呆れます。

576私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 02:25
あ〜、喧嘩を売るような書き込みはよそうよ。

>>574
タイトルで検索したら引っかかることはある。

>>575
100パーセントとはいえないけど。>>572の吐き捨てる
ような言い方も問題だけど、あなたの言い方も穿ちすぎな
ように取れるので気をつけたほうが良いと思います。

577私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 02:27
>>575
私は572ではありませんが一言。
続編を明言された方のものは少なくともMSNサーチだったら確実に検索できますよ。
ご自分で一回検索してみましたか?
やってみてできなかったのであれば上記の書き込みもやむを得ないと思いますが、試さずにそういう発言をするのはあなたも感心しませんよ。
572の言い方もよくなかったかもしれませんが、あなたの書き込みも場を荒らす嫌な雰囲気を作るものです。
同じ事を言うのでも言い方を変えるだけで印象は随分違います。
お互いに気をつけるようにしたいですね。

578私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 02:37
>>576
いやその、だから引っ掛かったら困るから引っ掛からないようにして欲しいなと・・・日登だし
まあその辺は職人さんの良識に期待するっきゃ無いけど。

579私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 03:50
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
フレイ(♂)様大活躍。一応、二人を捕まえたものの、振り回されたアスランは可哀想に……
私は断念しましたけど、ぜひ、これからも投下を続けてください。

>>散った花、実る果実
投下続けられるということでなによりです。作戦会議での部外者的な描写良かったです。
他の部分も本編のストレートな雰囲気が伝わりました。やはり、私のは改変しすぎなんでしょうね。
この作品は、私と近い本編の時点を扱っていたこともあり、ずいぶんと私の製作意欲の助けになりました。
最後まで続けられること期待しています。

>>流離う翼たち
こちらでの投下中止残念です。キースがスーパーマンでは無くなったこれから、やっと親しみが持てるかも
しれないと思っていました。感想では、いろいろ失礼なことを言ったこともあり、お詫び申し上げます。
続きは、個人サイトの方で拝見させていただきます。

>>The Last War
連載中止残念ですが、決められたことですから仕方ありませんね。また、いつか作品を拝見できること
期待しています。

>>過去の傷
連載中止本当に残念です。私は楽しませてもらいました。最後に貴殿のミリィに、以前感想に書いたと同じ
声援を送らせてもらいます。「金髪さんに負けるな」

>>578
件(くだん)のは、私も題名で見つけましたが、やはり難しいことですね。うちのような模型のサイトに
関することでも、あのアナウンスは、結構、騒ぎになりましたし。

580私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 09:46
>>流離う
あなたの作品に文句を言っている人を見たことが無いが
個人サイトはブクマしてるので、そちらに伺いますよ。

>>キラフレ
アスランに笑った。さすがフレイ様。
一体いつ録音したんだろう…?

>>散った〜
とうとう46話か、期待しています

581私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 10:03
>>551
女子高生職人さん〜♪また来てね!

582私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 10:48
>>581
そういう茶化かしたような言い方しちゃダメだって。ワザとですか?

583私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 11:31
>>581 お前最低だな

584私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 17:41
>>576
物言いに対して指摘するのも結構だけどさ、喧嘩を売る真似しているのは572ではないかと。

それから検索に関してはどうかとも思われるMSNの検索で出てくるレベルだと
実際他の方も書いてるけど、検索で引っかかるレベルで公開しているとチェックを食って
結局と言う部分もあるから、ある程度地下に潜る必要性あるかもしれない。
となると職人さんの判断とは言え、上手く検索できない人の為に読みたい人への道
しるべ位残してと言うのも間違ってないですな。

最近の傾向として検索しろで片付ける人が多いけどそういう人って結局、その裏に
ある部分まで考えてない思慮の浅い人も居るのではないかと思ってしまうね。
これ以上はスレ違いなので

585私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 23:27
>>584
>物言いに対して指摘するのも結構だけどさ、喧嘩を売る真似しているのは572ではないかと。

相手が喧嘩売ってるからって買ってたら板が荒れますよ。そういうことを容認する発言もあまりよろしくはないのでは。
なるべくスルー、または、喧嘩を買うような書き方ではなく、別の書き方をしたほうがいいと思います。

HPの公開に関しては難しい面があると思うのですよ。
職人さんのHPが荒れる可能性を高めることになるのですから。
なので検索できる状況なら検索を勧める事は間違っていないのではないかと。(検索できる状況がいいかどうかはまた別の話ですが)
もちろん検索が難しい状況なら話は別ですが。

586私の想いが名無しを守るわ:2004/05/22(土) 23:46
ここはSSスレですよ、と。

587私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 03:23
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
再開していただけて嬉しいです!
無人島エピソードは本編でも気に入っていた所ですので。
フレイ様無敵かも。
次投下を楽しみにお待ちしております。
>>散った花、実る果実
同様に再投下ありがとうございました。
こちらも続きが気になっていたので、最後まで拝見したいです。
個人的には、空白の数ヶ月のフレイ様が読めると嬉しいです。
>>流離う翼たち
こっそり追っかけさせてくださいませ。
最後が気になるSSですので、付いていきます!

他の職人さまも、今までお疲れ様でございました。
今後のご活躍をお祈りいたしております。

588SSスレpart5 中間目次:2004/05/23(日) 15:38
500 越えているので、中間目次作成しました。今回、終了状況も追記しています。

新テンプレ >>518
>他のキャラへの配慮を忘れずにお願いします。キャラへイト・他キャラへの配慮が足りない、
>と思われるSSはこちらではなく個人サイトでどうぞ。

ミリアリア・あの子許せない >>3-4>>105-106>>115>>121>>127>>131>>139>>143>>148
                 >>155>>161>>254-255>>264>>271>>283>>288>>298>>310
                 >>317>>322>>326>>331>>537 終了

流離う翼たち >>6>>14>>27>>41>>48-49>>56>>65>>75>>79>>94-95>>109>>117>>123
         >>133>>145>>151>>157>>163>>194>>200>>205>>214>>225>>231>>236
         >>246>>252>>261-262>>275>>281>>286>>295>>302>>308>>315>>320
         >>329>>334>>343>>361>>370>>378>>385-386>>392>>408>>424>>437
         >>444>>472>>510 個人サイト移転

過去の傷 >>8>>19>>28>>36>>43>>51>>58>>68>>77>>84>>97>>111>>119>>125>>129
       >>135>>141>>147>>153>>158>>165>>169>>189>>198>>204>>212>>220
       >>227>>234>>238>>241>>250>>258>>266>>273>>277>>285>>291>>300
       >>304>>312-313>>319>>324>>328>>333>>338>>342>>347>>358>>360
       >>365>>368>>377>>383>>389>>391>>396>>402>>416>>419>>431>>439
       >>452>>476>>480>>493-494>>500>>508>>512 終了

リヴァオタと八アスのためでなく >>10>>21>>25-26>>251>>257>>267-268>>274>>293

刻還り >>11-12>>99>>101-102>>113

散った花 実る果実 >>16-17>>60>>100>>186-187>>397-398>>404-406>>420-421
             >>463-464>>502-503>>554-556

The Last War >>23>>35>>67>>137>>210>>233>>269 終了
※ The Last War・Inside は The Last War に含めました。

ザフト・赤毛の虜囚 >>31-33>>38-39>>45>>53-54>>62-63>>71-73>>79>>167>>172-173
             >>184>>196>>202>>207>>217>>222>>228-229>>239>>243-244
             >>248>>336>>340>>345>>356>>363>>366>>375>>381>>400
             >>414>>417>>428>>446>>474>>491>>496 終了

白い羽 >>81 完結

キラ(♀)×フレイ(♂) >>85-92>>175-183>>348-355>>483-490>>519-524

ヘリオポリス・1.24〜 >>190-192>>259

『明日』と『終わり』の間に >>314>>339>>371>>380>>411-412>>477 完結

SEED if 〜Fllay Selection〜 >>441-442>>481

589私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 22:35
>>赤毛の虜囚/ミリアリア
一人称語りについては過去の傷の作者さんへの批判をした時
過去の傷さんへのアドバイスとして想定していたのは(SS書い
たこともないのにエラそうですが)こちらのSSでした。会話
中心のSSへの物足りなさは少なくとも貴殿の書かれた「赤毛〜」
「ミリアリア」の両作品からは感じることなく、とても楽しく
読ませてもらいました。プロットを見るといろいろ面白い展開が
あるようで残念です。
「故障して放置されたM1アストレイに乗り、カラミティを加えた
3Gに一人立ち向かう」←個人的にはこれは激しく見たかった。
>>流離う翼たち
スレ史上最長の連載で他の方が投下されていない間投下されたり
してスゴイ筆量に毎度驚いておりました。私自身は押しの強い
オリキャラにどうも馴染めなかった部分もあったというのが正直な
ところでしたが、どなたかも書いていたようにキースの動きはちょ
っとこれから面白くなりそうだったし、他のSSよりもポジティブなフ
レイ様が見れなくなり投下中止は本当に残念でした。しかしこれか
らもサイトで投下していくとのことなので楽しみに読ませていただきます。
>>過去の傷
以前に何度か批判を含めて感想を書きましたので、特に書くことはありま
せんが、せっかくあれだけコンスタントに投下していたのですから、これ
からも良いアイデアができ、かつこのスレが存続していたらぜひ投下して
ください。楽しみにしています。
>>The Last War 
オリキャラの運用で色々差し支えがあるとのことで、なんともこればかり
は見てみなくてはわかりませんが、こればかりは職人さんの決めること
でしょうから…といいつつも残念です。個人的にはちょっとキンケドゥっぽ
いお兄さんなアスランの描写が気に入っておりました。

投下終了の職人様方、お疲れ様でした。

590私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:02
いや過去の傷さんはあれだけ言われたからにはもう戻ってこられないだろ、589も含めて可哀相なくらい批判の嵐が凄かったからな。
あ、勘違いするなよ俺は過去の傷さんを掩護してるわけじゃないからな、思った意見を言っただけだ。
それから職人の皆さんお疲れ様でした、また投下お待ちしてます。

591私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:07
>>590
589は批判ではないと思うが・・・。

592私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:09
>>591
いつもの人だよ。
スルーしとけ。

593私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:12
>>591
いや589も批判していた一人だったと言うことさ。
ていうかもう掩護に近いレスは俺で終わりね。
これで最後です、だから過去の傷さんに言い足りない奴は勝手に言えばいいさ・・・589もね。

594591:2004/05/23(日) 23:14
>>592
了解、ここのスレの意味理解してないのが何人かいるんですね、一人じゃないと思うけど・・・どうでもいいか。

595私の想いが名無しを守るわ:2004/05/23(日) 23:30
SSの投下・感想以外の意見・要望は議論スレでお願いします。
SS職人さんに対する妨害行為になりかねませんので。

596帰還:2004/05/26(水) 00:46
「ほらアルスター、自己紹介をするんだ」
「あ、ハイ」

ナタルに肩を押され、フレイはおずおずと
士官らの訝しげな目の前へ歩み出た。

「フレイ・アルスター…二等兵、です」

白い士官服の並ぶ中で、赤い髪と緑のザフト服はひときわ鮮やかで…
それは美術品のような、現実離れした姿であった。
戦艦という殺風景な特殊を敢えて現実と呼ぶならば、であるが。

「…アルスター、って…」
「彼女は」

政治にある程度通じた者がいたのだろう、かすかな呟きがもれたのを察して
ナタルはすかさず口を挟んだ。

「故アルスター事務次官の娘だ」

故、という言葉にフレイは僅かに肩を震わせる。
それを知ってか、励ますようにナタルは一段と声をはりあげた。

「やむをえぬ事態を除き、礼を失する事のないように。よいな」
「は」

乗務員は歯切れよくそれに応えた。

「彼女について、詳しい処遇などは追って知らせる。散開!」

揃った敬礼の後、乗務員らは各自の持ち場につくべく散ってゆく。
それを見届けて、ナタルはフレイへと振り向いた。

「アルスター」
「…はい」
「ご苦労だったな。…疲れただろう」
「は…あ、いえ」

フレイは少し縮こまる様にして返事を返す。
ナタルはそれを見、小さく口元を綻ばせた。

「私の部屋へ来い。まずは休むといい。着替えも必要だろうしな」
「…」

先に立って進もうとしたナタルだったが、フレイがついて来ない事に気付き
不思議そうに振り返る。

「どうかしたか」
「いえ。…そのう」

フレイはうつむいた。

「さっきは、すみませんでした」

ナタルは暫し記憶を巡らし、ああ、と思い当たる。
この少女は、先ほど何の挨拶もなく泣きついた事を、詫びているのだろうか?
ひどく殊勝なその口調に軽く驚きながら、ナタルは口を開いた。

「…気にすることはない」

いささかぶっきらぼうな言葉が出る。
このような時どう言えばいいか、ナタルはよくわからないのだった。
だがそれが、フレイには嬉しかったのだ。
彼女の顔がようやく緩み、微かに赤みがさした。

「…」

ああ、バジルール中尉だ。なぜだかそんな実感がやっとわいたのだ。
昔から、遠目にも、厳しくて、怖かった中尉。
この突き放すような、ぎこちない語調は、アラスカで手を引いてくれた時と同じ。
本物の、中尉。
私の知ってる…アークエンジェルの、副長。
キラがいて、サイがいて、ミリィがいて。
艦長。ノイマンさん。マードックさん。整備士のみんな。…
そんなあの頃の欠片が、ここにある。

少し違うけれども、よく似たこの通路。この手すり。この照明。
ここは、私の知っている世界だ。それはとても、僅かでしかないけれども。
私は。
帰ってきた。

「…アルスター?」

フレイはまた、我知らず泣いていた。

597596:2004/05/26(水) 01:20
突発ですが、フレイ様に会いたくなったため書いてしまいました。
特にメッセージやプロットはないので、続くかもしれないし続かないかもしれません。
お目汚し失礼いたしまするる。

598私の想いが名無しを守るわ:2004/05/26(水) 01:27
ガンバレー(・∀・)
桑島姉妹ハァハァ

599散った花、実る果実54:2004/05/26(水) 22:40
既に外では戦闘が始まっているようだった。
「私が出たら、ポットを射出しろ」
そう言い放ちすぐクルーゼ隊長は出撃したらしく、私はまもなく宇宙へと放り出された。
宇宙服を着てはいるものの、姿勢の安定せずくるくる回る脱出ポットに私は怯えていた。
窓の外にはきらめく何色もの光。
あの一つ一つが命を消すための恐ろしい力を持った光なのだ。
私は・・・私は今まで何もわからず戦場にいたのだと知った。
何度となく考えた思いが再び私を襲う。
私は、なんてひどいことをキラに強いてきたのだろう。
戦って、戦って、戦って死ねばいい、なんて・・・・こんな恐ろしい場所でキラは戦い、ずっと私たちを守ってくれたのだ。
でも、今はそんなことを考えている余裕もなかった。
私の乗っているポットを回収しよう、という動きは今のところ全く無い。
私はさっきまでの決意すら忘れてただ助けを求めた。
「アークエンジェル!アークエンジェル!!」
私はとにかく必死で呼びかけた。
「お願い。アークエンジェル!!」
どのボタンがなんだかわからないまま、私は必死であらゆるボタンを押した。
「アークエンジェル!私!私ここ!!」
めちゃくちゃにいじったボタンのどれかが通信ボタンだったらしく、通信のランプが点灯した。
「フレイです!フレイ・アルスター!!」
私がわからないのか、戦闘中でそんな余裕がないのか、返答はない。
「サイ!マリューさん!誰か!!」
思いつく限りの名前に呼びかけ、必死で助けを求める。
「やめて、もうやめて!!」
窓の外に映る恐ろしい戦闘に耐え切れず私は叫んだ。
怖かった、耐え切れなかった。
「か・・・鍵を持ってるわ、私。戦争を終わらせるための鍵・・・・・だから、だからお願い!!」
私は必死だった。初めて自分が命の危険にさらされた戦場にいるという実感を持ち、それゆえの恐怖で他のことは何も考えられなかった。
しばらくしてせわしなく回転していたポットの姿勢が固定され、見慣れぬMSによって私は回収されたのだと気がついた。
とりあえずの身の安全を確保されたのだと思い、私は安堵のあまりこらえていた涙を流した。
と、その時、信じられない声が私の耳に届いた。
「フレイ・・・・・フレェイー!!!」

「キラ・・・・・」
信じられないまま、私はつぶやいていた。
「フレイ!!」
呼びかけてくる声は、間違いない、キラのものだった。
モビルスーツは、ストライクに酷似していたけれど、破損したらしく首がなかった。
「キラ・・・・嘘・・・・・・」
MIAだって・・・・キラは死んだって、そう言ってたのに・・・・
「下がれ、キラ!その状態で、一人で敵艦に突っ込む気か!」
そう言って紅いモビルスーツがキラの機体を捕獲する。
「僕が傷つけた・・・・僕が守ってあげなくちゃいけない人なんだ!」
さっきまでとは違う種類の涙が私のほおを濡らした。生きていてくれた・・・・キラ・・・・
しかしキラの叫びもむなしく、キラが乗っていると思われたモビルスーツは紅いモビルスーツに連れられ、遠ざかっていく。
「キラ・・・・・キラぁ・・・・・っ・・・・・」
いくら叫んでもキラは戻ってこなかった。・・・・でも戻ってきたとしてもあのぼろぼろのモビルスーツではキラに危険を及ぼすだけだ。
でも・・・・・呼ばずには、いられなかったのだ・・・・・

600散った花、実る果実55:2004/05/26(水) 22:40
「へえー、君がぁ」
スーツを着た、戦艦には似つかわしくないような、男の人が私を覗き込むように言った。
この人・・・ムルタ・アズラエル?
「で、鍵って何。本当に持ってんの?」
恐る恐るディスクを差し出すと、当然のようにそれを受け取り、検分した。
「なんだか本当ぽいじゃない?で、誰に渡されたの?」
「クルーゼって隊長・・・・仮面をつけた・・・・・・・」
「ふーん」
そのまま彼は鍵を持ってその場を去っていった。
すると、シートからこちらに向かって知っている人がふわり、と向かってきた。
「バ・・・バジルール中尉!」
「久しぶりだな・・・・フレイ・アルスター・・・・大丈夫か」
久しぶりにかけられた優しい言葉に、私はしらず抱きついて泣き出していた。
「うっ・・・・・うぅー・・・・バジルール中尉・・・・・・・・」

落ち着いた私は、バジルール中尉に連れられて、個室へと案内されていった。
「まずは少し休め。これからのことは・・・・一晩休んでから考えよう。・・・・つらかっただろう」
不器用なバジルール中尉の優しさに、私は再び涙を流した。
「着替えも置いておく。この部屋にはシャワーもついているから良かったら使うといい。まずはゆっくり休むことだ。」
「バジルール中尉っ・・・・私・・・・」
「少しでいい、眠った方がいい。ザフトでは、心の休まる暇はなかっただろう?」
私はバジルール中尉の心遣いに甘えて、一晩休んでから私の決意を彼女に伝えることにした。

601散った花、実る果実56:2004/05/26(水) 22:41
「私を、ブリッジで使ってもらえませんか」

バジルール中尉は・・・いや、少佐は(昇進したのだそうだ)まさか私がそんなことを言い出すとは思っていなかったらしく、目をみはった。
「フレイ・アルスター・・・・・」
「私・・・・考えたんです。何をしたらいいかって。バジルール少佐は、私が軍に志願したときの事をおぼえていらっしゃいますか?」
「覚えている・・・しかし・・・・・」
アークエンジェルにいた頃の私は、ただの雑用係でしかなかった。
しかもそれもしぶしぶやっていたに過ぎなかったし、おそらく態度にも出ていたのだろう。
真面目なバジルール少佐がそれを快く思うはずも無い。
「私・・・・・、アークエンジェルにいた頃は何もできなかった。いいえ、しようともしなかった。私、あの頃、ただ父を殺したコーディネイターに復讐がしたかったんです。パパを殺したザフトと・・・・見殺しにしたキラに。・・・いえ、今ではちゃんとわかってます、・・・本当はあの時も分かっていて考えないようにしていたのかもしれない。・・・キラのせいじゃない。少なくともキラを責めるのは間違ってるって」
バジルール少佐はただ真剣な表情で聞いていた。
「でも私・・・知ってますよね?私が自分の体を、偽りの恋をキラに与えて戦わせていたのだっていう事を。・・・バジルール少佐は軽蔑なさるかもしれませんが・・・・・」
「知っていた」
そう語るバジルール少佐の声は苦いものだった。
「だが、それでいいとも思っていた。ヤマト少尉の戦力なくしてあの時のアークエンジェルが無事に済むとも思えなかったし・・・卑怯な手段を講じようとしたのは私も同じだ」
「バジルール少佐?」
「私は、『両親の身柄を確保してでも・・・』そう艦長に提案した。尤も、そのような提案が通すような人ではなかったがな」
苦笑するバジルール少佐の表情に、どこか懐かしげな影が宿る。
「私は、戦争を終わらせたい。あの時は・・・・あの時、バジルール少佐に話した言葉は嘘じゃないです。でも、甘えもあったし、本当に何も分かってなかった。今も何もわかってないのかもしれないけど・・・・」
「そうだろう。・・・やめた方がいい。戦場は、甘えの通る場所ではない。月基地に戻りなさい。どうせこの艦は補給のために一度月基地に戻る。その時にお前も降りればいい」
「いいえ」
私はもう、決めていた。
「私が持ってきた、戦争を終わらせる鍵って、なんですか?私はまだ教えてもらってない。」
「あれは・・・・まだ、公表されていない。・・・アズラエル理事が、何かなさっているのだろうが・・・・」
もう、自分のおこした行動を投げ出したままなんてことはしない。
「私が持ってきた鍵です。・・・最後まで見届けます。これで月基地に帰ってしまったら私、アークエンジェルにいた頃と同じ事になってしまう。口先だけ立派なことを言って、あの時は結局皆を巻き込んでしまっただけだった。私、もうそんな無責任なことしたくないんです。」
「・・・・いいのか?ここにいたら、アークエンジェルと敵対することになるんだぞ?」
それは私も考えた。でも、ここを離れたら2度と会うこともできない。
「でもここを離れたら2度と会えない。・・・軽蔑しますか?それでも、一瞬だけでも・・・・・キラに会いたい。会って、ごめんねって・・・・・」
思わず一筋だけ零れ落ちた涙を、バジルール少佐がポケットから取り出したハンカチで押さえてくれた。
「では、・・・・通信席に、座るか?通信士の研修なら・・・おそらく次の作戦行動までに間に合うだろう。それに・・・・一言でも、言葉の交わせるチャンスがあるかもしれない。」
「バジルール少佐・・・・・」
「私とて、できればアークエンジェルを沈めずにすませたい。・・・だがこれが任務だ。しかし、もし誰かの呼びかけでアークエンジェルが投降に同意するなら・・・・命だけでも助けることができるかもしれない。ヤマト少尉も、お前の呼びかけになら応じるかもしれん。」
正当な理由をつけるふりをして、バジルール少佐が大目に見てくれているのがわかった。
アークエンジェルにいた頃は、こんなに融通の利く人だっただろうか。でも、とにかく今は彼女の優しさが嬉しかった。
「ありがとうございます・・・・・」
「しかし、最悪演じることになるのは殺し合いだ。その時は・・・・・覚悟を決めなさい。」

602私の想いが名無しを守るわ:2004/05/27(木) 08:27
期せずして、同じ時点の競作ですね。

>>帰還
ナタルらしい軍人としてのやりとりと、ドミニオンの通路の様子にアークエンジェルを感じる
フレイ様の心情が良かったです。

>>散った花、実る果実
救命ポッドで、キラが生きていたことに気づくシーン。これだけは初めて見た映像の衝撃を
中々凌駕できない気がします。同じ書き手としては歯痒いですけど。

鍵を見届けたい…… その言葉に強くなったフレイ様を感じました。
通信士の設定。本編では、あまり活かせなかったと思うのですが、うまく使えるといいな
と思うのはワガママでしょうか。

603さよならトリィ 1/8:2004/05/30(日) 09:23
[ほらね……]

トリィは、なぜか私になついていた。私の心をなごませた。寂しい時、勇気づけてくれた。

トリィのことを初めて意識したのは、ヘリオポリスからの脱出ポッドがアークエンジェルに
拾われた時。ポッドから助け出された時、私の目の前に飛び込んできた。
そして、それが飛んできた方向には、その時はサイの友達という意識しかなかったキラがいた。
私はザフトに捕まったと思っていて、不安が一杯だった時、知っている人を見つけて思わず
胸に飛び込んだ。私の周りを飛び回るトリィは、私の心を安心させるために導いてくれたような気がした。

それから、サイに再会して、しばらくはトリィのことは忘れていた。そして、パパが死んで……
私は暗い想いに囚われて……

次にトリィに会ったのはキラの部屋。折り紙の花を手に声を上げて泣き続けるキラ。それに、
暗い笑みを浮かべながら、偽りの言葉をかける私。

「私の想いが、あなたを守るから」

その時の二人をトリィは静かに見ていた。

* * *

「もう誰も死なせない」
まるで、私のことなど気にかけないように自分に呟いて飛び出して行くキラ。でも、それで良かった。
あなたは、戦って戦って死ぬのよ。じゃないと許さない。目に涙を浮かべながら笑った。
体の痛みと、心の痛みが私を苦しめた。もうどうにでもなれと思っていた。

<トリィ……>

私の目の前に、いつの間にかトリィがいた。涙を浮かべる私を、薄暗がりの中でジッと見つめていた。
まるで、私を心配している。そんな素振りで……

「私、馬鹿ね、馬鹿よ……」
<トリィ……>

「惨めだわ…… 嘲笑(わら)ってよ……」
<トリ……ィ>

私は身を起こした。乱れた髪と匂う体が急に気になってきた。

「シャワー浴びて来る……」
<トリィ>

私は、トリィ話しかけるようにシャワー室へ立った。熱いシャワーで洗われて、さっきの
痛みと嫌悪感も少し薄れて、放心したようにベッドに腰かける。

<トリィ、トリィ>
トリィは少しさっきより、はしゃいでいるようだった。部屋を飛び回っている。
その時、部屋がズンと揺れた。ザフトの攻撃?

<トリィ! トリィ!>
トリィは慌てたように羽ばたいて、ベッドの私の近くにとまる。それに、私は独り言のように呟く。

「大丈夫…… あの子が守るから…… 私を守るから……」
さっきとは違い、まるで熱に浮かされるような恍惚感に支配されてベッドに体を倒す。

トリィは身を寄せてきた。震えるように動くトリィに手をかけて、その動きを感じながら、
私は、なぜか優しい気持ちになる。

やがて、部屋の振動は止まった。

「ほらね……」

私は安堵に包まれて、トリィの動きを掌に感じながら眠りに落ちた。さっきの、惨めな気持ちが
嘘のように安らかに……

604さよならトリィ 作者:2004/05/30(日) 09:26
どうも、元「ザフト・赤毛の虜囚」「ミリアリア・あの子許せない」の作者です。
とりあえず何か書かなければと思って、出来上がったのがこれです。
本当は、もっと明るい話が良かったのでしょうけど、私、こんなのが好きですので。

まだ、仕切り直したスレに、ふさわしい作品が掴めていないこともあり、創作部分はできるだけ
押さえています。基本的には史実に従っていて、トリィの設定もTV本編通りとしています。
その上で、他の登場人物はキラを始めとして、台詞を極力少なくしています。

ただし、本題となるフレイとトリィの会話事体は、TV本編には、ほとんど存在しないのと、
短編内での整合性を取るためにフレイの心情の流れは、若干、創作しています。

全8話の短編で、一度に投下しても構わないのですが、1話ごとにシーンが変わりますし、
スレの活性化を願って、1日1話ずつ投下します。以降、最終話投下まで、コメントは付けません。
SSのみ、1話ずつ投下しますのでよろしくお願いします。

605私の想いが名無しを守るわ:2004/05/30(日) 23:59
がんがれ。
期待してるぞ。

606さよならトリィ 2/8:2004/05/31(月) 06:26
[トリィ、お留守番ね]

夜、キラの部屋へ通うようになった。同室のミリアリアの目が徐々に厳しくなる。
でも、私のやってること、誰にも文句なんか言わせない。

キラの部屋。キラは仕事から帰っていなかった。キラと二人で決めた勝手知ったパスコードでドアを開ける。
ドアを開けた途端、トリィが私に飛びついて来る。

<トリィ…… トリィ>
「トリィ、お留守番ね。先にシャワー浴びちゃおうか」

頭に乗って来るトリィを手に乗り移らせて、ベッド端にとまらせながら、私は服を脱いで
シャワーを浴び、体に高級石鹸の匂いをまとわせた。髪をバスタオルで拭きながら、ベッドに
座りトリィに話しかける。

「キラのやつ、遅いわね。せっかく、私が来てやってるっていうのに……」
<トリィ、トリィ>

「でもキラって、いやらしい。あんなヤツとは思わなかった。いやらしい、いやらしい」
<トリィ?…… トリィ! トリィ!>

私はキラへの想いを口にする。トリィは、首を傾げ不思議そうな顔をしながらも、私の
意見を肯定するかのように返事をして聞き耳を立てている。トリィが私のことを
他に喋ることは無いから、私は、ここに一人だと思い切り自分の心を打ち明けられる。
私は、この部屋だと心が解放される。

やがて、キラが帰ってきた。

<トリィ!> トリィが喜ぶようにキラに飛びつき、キラの指の上に乗る。
「キラ、お帰り」 私は、意識的に優しい声を作りながらキラに話しかける。
「フレイ! ただいま…… 来てたの」

「ええ、キラ疲れてる? 迷惑じゃなかった?」

その少し前、サイが懲罰房に入れられた時、私がサイを心配そうに覗いていたことで、
サイのことを想っていること、キラを騙していることをキラに感づかれたかもしれなかった。
でも、砂漠の敵を倒して脱出した後、私とキラは、どちらともなく寄り添い、自らを誤魔化す
ように関係を続けていた。多分、私の復讐に気づいたと思ったのは気のせいだったのだろう。
そのころ、私はキラに拒否されるのが恐くて、いつも下出に出ていた。

「いや、大丈夫、構わないよ」

キラの言葉に、私は近づいてキスをする。キラの脱ぐ上着をハンガーにかける。
キラがシャワーを浴びる。その音を聞きながら、私は下着姿になり香水を付ける。照明を
暗くして、ベッドでキラを待つ。

この時、トリィはなぜか察したように、もうひとつのベッドのカーテンレールにとまり、
まるで見張るように、視線を他の方向へ向けている。おかげで、私は見られているという
意識が和らぎ、その代わりに外敵から守られているように安心できる。

シャワーから出てきたキラがベッドに入る。私は、それに体を委ねる。いつの間にか、
そのことにまで安心感を感じている自分に気づかずに……

* * *

朝、目を覚ますと隣に寝ていたはずのキラはいない。トリィだけが部屋を舞っている。

<トリィ! トリィ!>

元気なトリィの声に、私は、少しむくれたように声をかける。

「キラ行っちゃったのね。キラって冷たいヤツ。あんなヤツ…… 私、眠い…… もう少し寝る」

まだ、やることが決まっていない私は、そのまま、昼過ぎまでキラの部屋で寝てしまう。
やっとのこさで起き出して遅い昼食を取る。話し相手は誰もいない。デッキで働くキラの様子を
遠巻きに見て、自分の部屋へ戻る。でも、やることが無くて、しばらくして、またキラの部屋へ戻る。

<トリィ トリィ>
「トリィ、一緒に留守番しようか」

<トリィ!>

こんなことを繰り返して、私はいつの間にかキラの部屋に居付いていた。

607過去の傷・142:2004/05/31(月) 11:39
「ではこれより法廷を開かせていただきます」
フレイの声がかかった。
「なんでこんなことを・・・」
アスランが呟くがフレイとラクスは無視した。
実はラクスの怒りが収まらず勝手にラクスの部屋で仮想裁判をすることになった。
フレイがテレビで見ていたので提案したのだ。
裁判官にフレイ、検事にカガリ、弁護士にキラ、そして被告人がアスランとなりラクスは見守る形となった。
「では、アスラン・・・いや被告人は婚約者ラクス・クライン嬢がいながらミリアリア・ハウ二等兵と関係を持ったことを認めるな?」
「だから彼女とはなんでもないって言ってるだろ!」
カガリの質問にアスランが叫ぶ。
「よくもまあ・・・ぬけぬけと嘘をおっしゃいますわね・・・」
ラクスが冷たく言った。
「いえ、ラクスですから!」
「ラクスさん、そんな一方的に・・・」
「あらキラ様もアスランの肩を持つのですか!?」
「静粛にしなさいよね!!!」
フレイが叫んだ。
「被告人は質問に答えてください」
アスランはやつれたように座るとため息をついた・・・。
「ぐ・・・分かった、認めるよ・・・」
「な・・・アスランやはり・・・」
ラクスが涙声になる。

一時間後。
ラクスの部屋では、アスラン一人だけ残った。
なぜかステ−ジ衣装に着替えているラクス。
「アスラン、クライン邸で一度言ったはずですが?私は浮気は許さないと」
「は・・・はい・・・返す言葉もありません・・・」
「ピンクちゃん、ハロの皆も外に出てください、これからは起こることは見るものではありません」
ハロを全て外に出すとラクスは微笑んだ。
「アスラン、許しませんからね・・・」
そしてラクスが微笑むと近づく。
アスランは震え上がった。
そしてその五分後、アスランの悲鳴がエタ−ナル艦内にこだました。

608過去の傷・作者:2004/05/31(月) 11:45
皆様ご迷惑おかけして大変申し訳ありませんでした。
とりあえず一作だけ投下してみました。
ですがまだこれからも作品を続けるかは未定です、またしばらく静観させていただきます。

609私の想いが名無しを守るわ:2004/05/31(月) 15:27
>>606さよならトリィ 2/8
フレイ一人称もの好きなので続きがたのしみです。
新作という事で期待しています!
>>帰還
フレイ&ナタルの話ってあまり無いのでどきどき。
>>散った花、実る果実
いきなり通信士だった本編描写の素敵な補完を期待しています。

男フレイ様の続きも投下待ってます!!

>>

610私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 00:01
>過去の傷
アスランの悲鳴……(((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル

611私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 08:12
>>さよならトリィ

あえて以前の作品を中止して、さらに新作を投下してくださる姿勢に頭が下がります。
トランプ絵のトリフレを思い出させられて、切なくなってきます。
キラのいやらしい…って所が個人的に気になったりしてw

612私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 08:19
>>さよならトリィ
お帰りなさいませ、でも相変わらずいい文章がよく表現されてますね、フレイ様の心情を見てると・・・。
>>過去の傷
法廷とは面白いことしますね、フレイ様が裁判官・・・ところで・・・ラクス、アスランにどんなお仕置きを!?

とにかく女子高生職人さんお帰りなさい、貴女のことレス見れば分かる通り嫌いな人もいるけど私みたいに好きな人もいるので。

613私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 09:53
>>さよならトリィ
新作キタ━━━━━━━━━━━━!!!
フレイ様、トリィの前でだけでしか本音を言えないんですね…
気持ちの移り変わりなど、どうなっていくのか楽しみ!
前作も最後まで見たかったですが、
潔さに職人としてのプライドを見た気がします!
超がんがれ!

>>散った花、実る果実
>>帰還
フレナタ!
無能(失礼)ながらも自分と向き合う事を始めたフレイ様。
本編描写が無かった分、フレイ様の真実が見えてくるようです。
やっぱり人間、進歩がなくっちゃ。

614私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 12:35
新作来たね!!!超美少女女子高生も来たね!!!

615私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 12:38
>>614
やめとけ。
テンプレ違反以外はSSと感想のみだろ。
違反の無い限りは、だが。

616私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 14:12
超美少女は余計だな

617私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 15:05
女子高生ってばらさなきゃよかったのにな。

618私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 15:09
>>617
そうそう、こういうふうにいきがる奴が多くなってきたからな。
職人さん後悔してるだろうな、ネタにされてるよ。

619私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 15:32
つか、テンプレ守った内容?

620私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 16:33
ラストがギャグでオチるならテンプレ範囲内
なし崩しにシリアスならなんだかなって感想

621私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:22
ラクスがあのままだと…

622私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:36
あれはあきらかに大丈夫だろ、ギャグだと思うけどね。
あれで駄目だと言われたらたぶん投下やめるだろうな。
ラクスがアスランになにしたかは分からないが・・・。
でも細かいとこつくよね、あれでラクスが汚れキャラかよ・・・。
まぶらほの夕菜ちゃんはあんな感じだけどね・・・。

623私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:42
>>あれでラクスが汚れキャラかよ・・・。

この板のフレイファンが言っても説得力皆無だよ。
自分もギャグオチならアリ、シリアス展開なら微妙。

624私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 17:56
フレイ様以外にスポット当てるのやめた方が無難だな。

625私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:02
まあ、あれだ。
ギャグに見えない雰囲気を作ってきてるってのが、ちょっとまずいと。

626私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:05
そろそろ避難所使った方が。

627私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:20
君達そんなに批判したいのかね?女の子が頑張ってるのに・・・。
そもそもこのSSはフレイ様が主役では?ラクスとか他キャラにスポット当てるのやめようよ・・・。

628私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:24
女の子とかオヤジとかそんな事全然関係ない

629私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:30
女の子だからって優しくしたり甘くしたらつけあがるよ。
こういうふうに批判ばかりするのも彼女のためでもあるんだよ。

630私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:33
2ちゃんじゃなくてよかったね、と。
つーか避難所使おうよ。

631私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 18:35
>>627
なんつか、女の子だから、って理由はまずいと思われ。

632私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 22:40
>>過去の傷の作者さん
もう投下やめなよ、それが君のためだから。
これ以上傷つきたくないよね?

633私の想いが名無しを守るわ:2004/06/01(火) 23:04
>>トリィ
おお!楽しみにしてるよー。

キャラ萌えスレ以外に投下すればいいんじゃない?
タイトルが過去の傷っていうのも皮肉な・・・

634私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 01:11
というより、あからさまにラクスとかを叩くことのみを目的として書いてる
腐女子はスルースルー。どうせ女子高生とかいってもキモいんだろうし。

635私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 01:56
あれでラクス叩き?
むしろアスラン叩きじゃ。

どっちでも同じか。

636私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 04:16
キラ至上主義じゃね?
あいつだけいい目をみているのにモテモテだ。
アスランを糾弾するラクスだけど、キラと付き合ってたんだろ…
辻褄を合わせる気があるのかわからないな。まぁこれはただの叩きになってしまうがな。

637私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 07:48
ここには複数の方が投稿されますので、感想については、対象を明確に入れる
ようにした方が良いかと思います。

>>過去の傷
自分の作品を大事にされているのは分かりますが、やはり、今の時期、
この内容は、キャラへの配慮と言うよりも、場全体への配慮が
足りなかったのでは無いかと思います。
私だと、フレイの、テレビドラマかぶれの部分を落とし所にしたでしょうね。

切り口を変えることで印象を良くすることもできるでしょうけど、
やはり、今は新しい道を探された方がよいかと思います。
辛いのは、あなただけではありません。
書く人も読む人も、みんなそうなのですから。

638さよならトリィ 3/8:2004/06/02(水) 07:55
[トリィ…… こんなものっ!!]

キラの部屋に同棲して、少しキラと、いろいろな話をするようになった。

トリィのこと、キラから聞いた。友達から、もらった大事な贈り物。
友達…… 多分、ザフトの…… パパが死んだ時にいた……

キラの居ない部屋。私はドア脇のデスク上を歩き回るトリィを暗い目で睨みつける。
トリィが立ち止まり、私と目を合わせるのを感じ、私は呟くように語りかける。

「トリィ、あなたは……」
<トリィ?>

パパを殺したザフト、コーディネーター。それが作ったもの。

「トリィ、あなたって…… 許さない…… こんなもの……」
<トリィ? トリィ?>

ベッド横にある棚。そこには、私がキラに言って入手してもらった化粧品が、いくつも並んでいる。
私は棚にある化粧品の瓶を手に取った。ガラス製の一番大きいもの。そして、トリィを目の前に、
それを振り上げる。

壊してやる! こんなもの……

キラには、事故だったって言えばいい。キラは、私を怒ったりしない。私は責められることは無い。
これはロボット。生きてはいない物なんだから。

「トリィ…… こんなものっ!!」

私は叫んで、ガラスの瓶を振り降ろそうとした。

<トリィ…… トリ? トリィ>

トリィの声と仕草が変わって、私の手は止まった。

少し小首を傾げるような仕草。まるで、本当に生きているよう。
違うわよ。これはロボットよ。生きてなんかいない。この動きも、この声も、みんなプログラム
されたもの。そういう風に作られているのよ。最初から、そういう風に。
騙してるのよ。私を騙しているの。私は騙されない。こんなもの、こんなもの……

<トリィ…… トリィ…… トリィ……>

トリィの声を聞いているうちに、瓶を振り降ろせなくなった。瓶を床に放り出し、ベッドに戻って座り込む。

「うっ、うっ、ううう」

涙がこぼれる。なんで、こんなことで泣かなくちゃならないの。

<トリィ…… トリ、トリィ! トリィ!>

トリィがベッドの私の近くまで来て、さえずりながら、私に語りかけるように、頭をときどき、
突き出している。なんで、トリィの鳴き声が、私を元気づけるように聞こえるの?
ロボットなのに…… 物なのに…… 私は、おかしくなったの?

「トリィ、私、あなたのこと……」

私は、トリィに手を伸ばした。さっきとは打って変わって、私自身をトリィに委ねるように、ゆっくりと……
その手を、トリィは優しくクチバシでついばむようにつつく。それを快く感じながら、私は、
トリィを本気で憎むことはできないことに、心を迷わせる。

自分の想いを隠し、一人孤立する私の中で、トリィの存在は既に大きくなっていた。
自分の想いを、ただ一人話せる相手。ロボットでは無い。本物の鳥でも無い。
なにかひとつの人格のある存在。キラの部屋の、私とキラ二人以外の三人目の住人。

トリィ。憎いコーディネーターが作ったロボット。キラと友達の友情の印。私にとっては、
パパを奪った許せない絆のはず。だけど、そのトリィは、私の心に深く入り込んでいる。
作られた目的とは裏腹に……

ドアが開いてキラが戻ってきた。涙を流している私を見て、心配そうな顔になる。

「フレイ、どうしたんだ」
「なんでも無い…… なんでも無いの」

「フレイ……」

キラは、ベッドの私の隣に座る。だけど、私にかける言葉も無く、ただ辛そうな表情で、
顔を背けている。私もキラから目を逸らしてうつむく。

<トリィ! トリィ!>
そんな二人の前で、トリィは相変わらず愛敬を振りまくように羽ばたき続けている。

「トリィ、お前は元気だね」

キラが、トリィの仕草に、少し表情をなごませた。私は、その横顔を見て、少し心が落ち着くのを感じた。
私は、キラの肩に頭を預けた。キラが何も言わず、それを受け入れたのを感じ、私は、体全体を
キラにもたれかける。キラは私の肩を抱こうとさえしない。それでも、私は、一時の安らぎに
縋るかのように体を預けている。

コーディネーター。それぞれの目的のために、遺伝子をいじって作った特別な存在。そう思っていた。

だけど、今、私の隣にいるキラは、特別でもなんでもない、不器用とさえ思えるくらいの、ごく普通の人間。
なんのために作られたのかなんて、思いもつかない。

639私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 10:05
言うまでも無いけどトリィだって立派なキャラだ。
>>638
そいつはトリィ叩きでありすぎるから自粛推奨だぞ。

640私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 10:11
少し作者さん休むって言ってただろうが、それなのになんで複数で過去の傷の作者さんいじめてるんだ?
634なんて作品じゃなく職人自体を批判して侮辱してるだろ、最低だな。

641私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 10:57
>>640
感想以外は避難所で。
テンプレ推奨作品でお願いしますって事なので。

642夢と希望・1:2004/06/02(水) 21:48
「フ、フレイ・アルスタ−!?こんなところに!」

赤い髪がたなびいた。救難ボ−トから出てきた避難民の中から、一人飛び出した少女はフレイ・アルスタ−だった。
長くつややかな赤、肌はミルクのようになめらかで、高貴さを感じさせる整った顔立ち、いつ見ても大輪の薔薇のような華やかさを感じさせる、彼女を見るとキラはいつもどきどきとしてしまう、いつもろくに話すらできずに遠くから見ていることしかできないのだが・・・。
その彼女に抱きつかれた、夢じゃないかと思ってしまう・・・。

「たしか、サイの友達よね?よかった・・・怖かったの!」
「だ、大丈夫だよ、僕もサイもいるから・・・」

つい顔を赤くしてしまった。
間近で憧れている子がいるので無理もないが・・・。
なぜフレイ・アルスタ−が救難ボ−トに乗っていたのかというと・・・。
ヘリオポリス・・・地球の衛星軌道上、L3に位置していた宇宙コロニ−であった。
キラ達も住んでいた、もちろんフレイ・アルスタ−も・・・。
しかし、あるときプラント・・・いやザフトの艦が降り接近してきたのだ、そんなとき近くにいたキラ達は戦闘に巻き込まれてしまった。
その後幼なじみ今はザフト兵となっていたアスラン・ザラと衝撃の再会をして、さらにストライクというモビルス−ツに乗り戦場に出てしまった。
その後も戦闘が続きヘリオポリスは・・・。

643夢と希望・作者:2004/06/02(水) 21:51
初めての投下です、これからできるだけ投下していきますのでよろしくお願いします。
最初ということもあり少なくしましたが次からは容量を多くしていきます。

644私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 22:37
>>640
今まで散々荒らし紛いですらない荒らし作品を投入し、
フレイファン全体の評価を著しく貶めたから。

虐めではなく、その落とし前つけさせてるだけ。
奴に限れば職人自体を非難する事自体が当たり前の事だ。

645私の想いが名無しを守るわ:2004/06/02(水) 22:39
>>644
もちつけ。
せめて避難所でやれ。

646私の想いが名無しを守るわ:2004/06/03(木) 00:29
644じゃないが、この板がずっと避難所だと思ってたよ。
避難所の避難所があるのか?
放送中から住人だったのに…○| ̄|_ゴメンヨ フレイタマ

647私の想いが名無しを守るわ:2004/06/03(木) 00:31
>>646
ィ㌔

っつーかよく板を観察しろw

648夢と希望・2:2004/06/04(金) 22:33
「サイ!」
フレイはサイの姿を見つけるとキラから離れ真っ先にサイの胸に飛び込んだ。
「あ、ああ・・・」
しかしサイ自身は戸惑ってる様子だ、しかしキラはそんなサイの態度などよりも抱き合っている二人を見て目を少し曇らせた。
そんな時、キラにムウ・ラ・フラガが歩み寄った。
そして・・・。

「へえ、驚いたな」
「な、なんですか?」
突然歩み寄ってきた、背の高い軍人にキラは思わず身を引く、しかしムウはそんなキラの様子を気にせずさらっと言った。

「君さあ・・・コ−ディネイタ−だろ?」

ムウの言葉にその場が凍りつきざわめきが起こる。
マリュ−がムウを睨んだ。
キラは戸惑いながらも小さな声で答えた。

「はい・・・」

その言葉を言った瞬間マリュ−とナタルの背後に控えていた兵士達が銃を構えキラに向ける。
普通ならなぜ?だと言いたくなるかも知れないが仕方ないことでもあるのだ。
コ−ディネイタ−・・・それは遺伝子を人為的に操作されて生まれた人間である、人の持つ潜在能力を最大限に引き出された彼らは知力、体力ともに優れている。
あらゆる病気にもかかることない体でもある。
だがコ−ディネイタ−とナチュラル・・・遺伝子改変を変えずに生まれた普通の人間との能力の差があからさまになりそれを排斥する勢力が生まれた、流血の歴史や時代を繰り返し、ナチュラルに比べ、宇宙での生活が適していたコ−ディネイタ−達は地球外に移り住むようなった。そして最終的に彼らの住処となったのが、L5に建造された宇宙コロニ−群・・・プラントである。
そして今、プラントの擁する軍隊ザフトと地球、コ−ディネイタ−とナチュラルは敵対しており戦っているのだ。
戦争中ということもあり軍人はぴりぴりしている者も多い、そんななか突然コ−ディネイタ−と名乗られ兵士達が反射的に銃を向けるのも悲しいことだが、無理のない状況ではあった。

「ま、待てよ!なんなんだよ一体!」
ト−ルが叫び庇うようにキラの前に出た、ト−ル・ケ−二ヒ・・・キラと同じくヘリオポリスに住んでいたキラの友人で同じ工業カレッジに通っていたがキラと共に戦争に巻き込まれ事情もあり艦に乗ることになってしまった、ちなみに同じキラの友人である女の子、ミリアリア・ハウとは恋人同士だ。
「コ−ディネイタ−でもキラは敵じゃない!ザフトと戦って俺達も守ってくれただろ!?あんたら見てなかったのかよ!?」
自然とミリアリア、サイもキラの前に出た・・・そして・・・。
「そうよ!キラは敵なんかじゃないわよ!」
「え・・・?」
キラの前にもう一人歩み出た少女がいた・・・。
フレイ・アルスタ−だ・・・。

649私の想いが名無しを守るわ:2004/06/04(金) 23:08
>>さよならトリィ
せつなすぎ…
すごい心理描写ですね。
つ、続きをお願いします〜

650キラ(♀)×フレイ(♂)・45−1:2004/06/05(土) 17:27
「ふうっ。やっぱり、繋がらないか…」
あらゆる通信チャンネルを試してみたが、一向に音沙汰がない。とりあえず、仲間との
コンタクトを一時的に諦めたアスランは、通信機の電源を落とした。
それから、軽く島内探索に出掛けたアスランは、海岸線に漂流したスカイグラスパー
を発見する。どうやら、あの不愉快な連中は、彼の乗った輸送機を落とした敵のようだ。
他にも連合の伏兵がいないか、島全体を慎重に捜索したが、どうやらこの狭い無人島内
に滞留しているのは、自分達三人だけらしい。念の為に、グラスパー内部の通信機器
も動かしてみたが、聞こえてくるのはノイズばかりだ。サドニス島の近辺はNJの
密集地帯だと聞いてはいたが、この通信状況の悪さは想像以上だ。
「そろそろ、帰るか。あのチンドン屋達を野放しにしておくのは危険だ」
一応、拘束してはいるが、例の捕虜二人を長時間、自分の目の届かない所に放置
することに嫌な予感を覚えたアスランは、大急ぎで戻ることにした。


「おい、ザフト兵。いつまで俺達をこのままでいさせるつもりだ!?」
不安に反して、彼らはその場所にいた。フレイは、借りてきた猫のように背中を丸めて
大人しくしていたが、カガリは、アスランの姿を見つけるや否や、番犬のような勢いで
元気に吠え立ててきた。閉口したアスランの鼓膜に、カガリの悪口雑言が響いてくる。
心身共にエネルギーが有り余っているらしいカガリは、無為に耐えられない性質らしく、
一箇所でじっとしているのが苦手のようだ。もし、二人が座禅を組んで、精神修行中の
身だったら、カガリは、精神注入棒でビシバシと折檻されていただろう。
「煩いぞ。お前たちは戦いに敗れて、お情けで生かしてもらっている捕虜なんだぞ。
身の程を弁えろ。ましてや…」
そこでアスランは忌々しそうにフレイを睨んだ。当然ではあるが、どうやら空手形の件を
深く根に持っているようだ。フレイは禅でいう無我の境地に達したかのように、アスラン
の殺気を軽く受け流し、カガリはガルル…と、獰猛犬のような唸り声を上げている。
こいつら、本当に自分達の立場が判っているのか?
露骨に強者に媚いる輩よりはマシかも知れないが、生殺与奪の全てを握られている
この緊迫化で、こうまで尊大に構えられると、自分に軍人としての貫禄が足りないから
舐められているのではないか…という深刻な疑惑がアスランの脳裏から離れない。

「そろそろ、本題に入ったらどうだい、アスラン君?」
今までずっと押し黙っていたフレイがはじめて口を開き、アスランは軽く眉を顰める。
「不渡り手形を掴まされたのに、契約を不履行せずに、わざわざ僕たちを生かして
おいてくれたのは、不戦同盟を誓約してしまったからだけじゃないだろう?
僕らの口から、キラの近況について聞きたかったからじゃないのかい?」
フレイの推測は、彼の深層心理の核(コア)の近くを掠ったが、アスランは心中の
好奇心を押し殺して沈黙を守った。フレイのペースに乗せられるのも癪だったし、
このペテン師の口から出た言葉など、あまり信用ならないような気がしたからだ。
フレイの方は、今の状況を上手く利用し、アスラン君のキラへの想いを見極めるつもりだ。
ジュリエット(キラ)が、敵であるロミオ(アスラン)に恋心を抱いていたのは、
ほぼ間違いないとフレイは確信しているが、果たしてロミオの側はどうなのだろう。

「おい、フレイ。こいつはキラの一体何なんだよ!?」
フレイやアスランの思惑を完璧に無視して、横からカガリが、前々からキラへの
浅からぬ縁を匂わせている敵兵の正体について尋ねてきた。
「アスラン・ザラ君。プラントの急進派・ザラ国防委員長の子息で、現最高評議会議長
のご令嬢でプラントの歌姫として有名なラクス・クラインの婚約者らしい。
肝心のキラとは、月の幼年学校時代に特に仲の良かった級友みたいだよ」
「キラの友人!?この悪逆非道のザフト兵が!?マジかよ!?」
「マジらしいよ。キラの話じゃ、アスラン君は、誰よりも優しくて、とても人殺しを
出来る人間じゃなかったそうだけど、どこでどう捻くれ曲がって、道を誤ったのやら」
フレイはわざとらしく溜息を吐いてみせる。捕虜の分際で、本人を目の前にして好き勝手
な論評を繰り広げる命知らずの二人組にアスランは軽い眩暈がする。何故、このフレイと
いう男は、キラも知らないような彼のプライベート情報をここまで熟知しているのだろう。
一時期、アークエンジェルに捕虜として滞在していたラクスが、アスランの個人情報を
漏らし捲っていたなど、守秘義務感覚の強い軍人のアスランには想像もつかなかった。

651キラ(♀)×フレイ(♂)・45−2:2004/06/05(土) 17:28
「一応、こちらも自己紹介しておこうか。僕はフレイ・アルスター二等兵。
アークエンジェルでは調理主任として厨房を任されている。
こちらはカガリ・ユラ君。明けの砂漠というゲリラから、助っ人として、
スカイグラスパー二号のパイロットに抜擢された凄腕の傭兵君さ」
頼まれもしないのに、フレイも自分たちの側の姓名と身分を明らかにする。
フレイから「傭兵」という単語を聞かされたアスランは、ようやく彼らの行動を得心した。
「やはりそうか。連合の軍服も着てないし、地球軍の兵士とは思えなかったが、金で
雇われた戦闘屋か。理念も愛国心もない奴らなら、仲間を平気で見捨てるのも無理はない」
軽蔑した瞳で見下すアスランに、カガリはグッと口を結んで、怒りで顔を赤くする。
戦争を終結させたいと願うカガリの崇高な参戦動機を思えば、あんまりなアスランの
言い草ではあるが、カガリもカガリで、停戦を受け入れてくれた寛大なアスランを、
不義理にも貶していたので、このぐらい言い返してもバチは当らないだろう。

「それは、ちょっとばかり違うよ。アスラン君。
彼が僕を撃とうとしたのは、冷徹なる打算からではなく、下らない私情だよ」
カガリが口を開くよりも早く、フレイが彼の弁護(んな訳ない)を買って出た。
「どうやらカガリ君は、不埒にも僕のキラに横恋慕しているみたいでね。
僕が死ねば、キラを自分のモノに出来るとでも錯覚していたんだろ?
自分の魅力で女の子を振り向かせるのではなく、戦時のドサクサに紛れて競争相手を
消し去ろうなんて負け犬の発想だよね。まったく狡っからいたらありゃしない」
さっきまでカガリの尻馬に乗ってアスランを口撃していたフレイだが、今度はあっさりと
その対象をカガリへと切り替えた。元々、この二人の間に協調性などあろう筈はないが、
タッグは早くも内部崩壊し、リングは混沌のバトル・ロイヤルへ移行しようとしている。

「ち…違う、俺はキラが嫌いだ。俺にあいつの力があれば、俺は迷わなかった」
幾分の誤差はあるものの、物の見事にフレイ暗殺動機を見当てられたカガリは、羞恥と
多少の後ろめたさの入り混じった怒りで、傷のない側の頬も含めて顔全体を真っ赤にする。
さらには、照れ隠しに心にも無い弁明をする間際に、迂闊にも、自分達兄妹の出生の秘密
の一端に触れる情報まで洩らしてしまう。

「僕のキラだと?どういう意味だ!?」
フレイの発言の一部を聞き咎めたアスランは、意図せず、強い敵意の視線でフレイを睨む。
既に彼の意識のステージから、さっきまで弾劾していたカガリの存在は消去されている。
やっと獲物が撒き餌に喰らい付いてくれたらしい。フレイは内心でそうほそく笑むと、
自分がキラと交際している旨について、簡単に説明した。


「付き合っているって、キラとお前がか?」
フレイはコクリと頷いた。チラリとアスランはカガリの方を見たが、カガリは不貞腐れた
ようにソッポを向いている。この一件に限り、どうやら奴の戯言は事実らしい。
「で…でも、お前はナチュラルだろう?コーディネイターのキラと…」
「おやおや、アスラン君。君もナチュラル侮蔑主義者なのかい?
僕らを猿扱いして小馬鹿にしていた、君の同僚のタカツキ君のように?」
もはや体裁を取り繕う余裕もなく、それでも執拗に食い下がるアスランに、
フレイは澄まし顔で、彼が知る「最低のコーディネイター」の名前を口にする。
「タカツキ?……誰だ、それは?」
「知らない筈はないだろう。一応、君と同じザフトの軍人だし、月の幼年学校時代の
同級生だとも聞いた。尤も、キラとは苛められていた間柄だったらしいけどね」
「ああ、あのマイケル・タカツキの事か…。そういえば、そんな奴もいたな」
アスランはジブラルタルのイザークとの確執の時にも思い浮かべた、彼とはあまり仲の
良くなかった級友の名前を確定させたが、喜びの感情が湧き上がる事はなかった。

652キラ(♀)×フレイ(♂)・45−3:2004/06/05(土) 17:28
「持つ者は、持たざる者の気持ちは判らないか…」
フレイは内心でそう呟いた。キラを苛めていたという悪友に好意を持ち得ないのは判るが、
それ以前に、彼の存在など眼中にないという無意識の驕りが、アスラン君から感じられた。
「虎は生まれつき強いから虎」だと言うが、彼には、タカツキ君が何故、これほどキラや
アスラン君にコンプレックスを剥き出しにするのかなど、恐らく理解できないだろう。
彼のような、あまり悪意を感じさせない誠実そうなタイプですら、コレなのだ。
一般のコーディネイターがナチュラルに持つ優越・侮蔑感と、逆にナチュラルの側から
コーディの側へと抱かれる反感・憎悪などの、連鎖の悪循環は並大抵ではあるまい。
苛めや差別という問題が、虐待する側が悪であること事体には議論・反論の余地はないが、
それを受ける側にも、常に何らかの要因を抱えているというのもまた無視出来ない真理だ。
そういう、ナチュラル−コーディ間で、多々発生したであろう問題が、同じコーディ同士
の間でも頻繁に起こっていたらしいという事実は、フレイには意外であり新鮮でもあった。


「んっ、待てよ。どうして、お前はタカツキの事など知っているんだ!?」
フレイが自分の思考の淵に嵌っている間に、アスランは、彼の情報の豊富さに疑念を抱く。
A級選抜試験に漏れたマイケルは、アスラン達とはクラスが異なっていたので、
プラントのアカデミー時代は、アスランでさえも彼の存在そのものを失念していた。
それに、キラが幼年学校時代の嫌な思い出を、わざわざ第三者に話すとも思えない。
「実は僕とキラは、二日ほど前に彼と遭遇していてね」
思考を慌てて現実世界へと引き戻したフレイは、アスランの疑惑を氷解させる為に、
サドニス島でのマイケルとの馴れ初めについて、得々と語ってみせた。



「コ…コーディネイターの面汚しめ…」
フレイからキラ拉致未遂事件の仔細を聞かされたアスランは頭を抱えた。
キラを赤服に換えようと姑息の限りを遣り尽くした上で、レイプ未遂まで引き起こし、
挙句の果てには、目の前の非力なペテン師如きにしてやられたなどという漫画の小悪党役
そのものの末路を迎えた同胞を好意的に解釈するなど、アスランでなくとも不可能な難事だ。
済まない、イザーク。お前はやっぱりエリートだったんだな。
思い遣りや協調性には欠けるが、基本的には追従や卑劣な行いとは無縁だった同僚を、
最近、少し見損なっていたことに思い当たったアスランは、心の中でそう謝罪した。

カガリは複雑そうな瞳でフレイを睨んだ。彼の与り知らぬ間に、キラはとんでもない
窮地に陥っていたようだ。以前、カガリは、最高のコーディのキラにとって、本当に危険
な場所は戦場(MS戦闘)ではないと予感していたが、どうやらそれは真実だったらしい。
本来なら、キラの息災に安堵すべきなのだろうが、その愛妹のピンチを救った勇者が、
彼が危険視しているフレイだという現実が気に入らず、カガリの気分は晴れなかった。


「君にとっては余計な真似をしてしまったよね、アスラン君?
キラがアークエンジェルにいなければ、君達の仕事も随分と遣り易くなっただろうにね」
アスランのキラへの葛藤を知った上で、敢えてフレイは、彼の神経を逆撫でするような
言葉をわざわざ投げ掛けているようだ。キラが不在ならAA攻略が楽勝なのは事実だし、
キラの退艦を望んではいたが、彼女が咎人とされる未来など彼の本意ではない。
「そ…そんな事は無い。その一点に限っては、俺はキラを救出したお前に感謝する。
軍人としてという以前に、人として恥じ入るような行為を、俺は絶対に認めない」
「そう見捨てたものじゃないさ。タカツキ君に会って、僕ははじめてコーディネイター
という存在を見直したんだからね」
アスランはマイケルの行為を絶対悪として切り捨てたが、フレイの見解は異なるようだ。
これには、アスランだけでなく、彼に密かに同調していたカガリも驚きを隠せない。

653キラ(♀)×フレイ(♂)・45−4:2004/06/05(土) 17:29
「連合の一部の兵士が、君らを何と呼んでいるか知っているかい?『空の化け物』だよ。
まあ、僕の君たちに対する認識も似たようなものだった。一切の喜怒哀楽の感情を持たぬ、
青き地球を侵略するSF映画に出てくるエイリアン。それが君らへの率直なイメージさ」
フレイの言い草はあまりにコーディネイターを侮辱していたが、今のは単なる前置き
だと判っていたので、アスランはここでは口を挟まなかった。むしろ、マイケルの行動
に美点を感じたという、この先の続きが気になった。
「ところがだ、実際にコーディの実物を見てみると、キラのような泣き虫はいるし、
タカツキ君のような、世間で僕が腐るほど見てきたステレオタイプな俗物もいる。
君らも案外、能力以外はさして僕らと変わらない不完全な存在である事に気付いたんだ」
アスランはポカンと、だらしなく口を開けている。このフレイという男は、人間性悪説
の信奉者なのか、自己犠牲精神のような美徳(ピュア)よりも、他者を踏み躙ってでも
生き残ろうとする悪徳(エゴイズム)の方にこそ、人間味を感じる性質みたいだ。
結局、何だかコーディネイターを馬鹿にされたままのような気もするが、自分たちを
擬人化(或いは神聖化)せずに、等身大に見てくれるというのは、貴重な視点ではないか?
アスランには判らなかったが、プラント内の一部のコーディ絶対主義者が思い上がって
いる程には、自分達が完璧な存在などでは有り得ないことは、アスランも悟っていた。


「ただ、タカツキ君が君達に根強いコンプレックスを抱いて、手段を選ばず這い上が
ろうとしていたように、コーディネイターの間にも、他者との出世競争や、それに伴う
妬み・嫉妬の感情もあるみたいだね。
元々、君達は、この厳しい競争社会を勝ち抜く為に産まれてきたらしいけど、ナチュラル
全員がコーディネイターに生まれ変わったとしたら、その優勢(アドバンテージ)は
消滅し、結局、依然と変わらぬ競争社会が続くだけの話しだね。そもそも……」

「だああぁああ〜!!!!いい加減にしろよな、お前ら!!」
コーディネイター論を叩き台にした妙に哲学的なフレイの演説がさらに続き掛けたので、
小難しい話しが苦手なカガリの左脳がオーバーヒートを起こし、カガリは発狂した。
「んなこたぁどうでも良いんだよ!戦争は会議室で起こっているんじゃあない。
戦場で起こっているんだ。綺麗な背広を着たインテリ共が、安全な密室に篭って、
小賢しい屁理屈を振り翳した所で、戦はなくなりゃしねえんだ。判っているのかよ!?」
ノンキャリアのキャリア批判染みた口上を口にしたが、それがカガリの信念だ。
だからこそ、カガリ自身はどちらかといえば特権階級に連なる身でありながらも、
口先だけの親父みたいな人間になるのが嫌で、銃を取り戦う道を選択したのだ。
そのカガリが口先だけと信じる彼の父親は、局地的な視点に固執するのではなく、
大局的な視野の広さを身に付けて欲しいと願って、息子を平和の国の外の世界(戦場)
へと送り出したのだが、今のカガリを見るにつけ、道はまだ果てしなく遠そうである。


鼻息を荒くしながら持論を捲くし立てるカガリに閉口したフレイは、縛られた状態で器用
に両肩を竦めると、そのまま沈黙する。すると今度は、矛先はアスランに移し替えられた。
「おい、アスランとか言ったな?お前、ヘリオポリスを襲った奴らの仲間だな!?」
聡いアスランは、カガリが何を主張したいのかを悟って、後ろめたそうに顔を背ける。
「俺たちだって、あんな事になるとは思わなかったんだ」
それは、アスランの正直な本音だ。ストライクと足付きを仕留めるための戦闘継続で、
どれほど夥しい数の民間人が犠牲になったのかと思えば、とても空虚ではいられない。
「何を今更、白々しい事を…」
「だが、中立だと謳っておきながら、あんな代物(戦闘用MS)を密かに造り上げて
いたのは事実だ。俺たちザフトがそれを見過ごせるわけはないだろう!?」
「そ…それは…」
アスランが軽く反撃し、逆にカガリが言葉を詰まらせる。オーブと大西洋連邦の密約に
何の責任も持たぬ身だが、自分の父親が仕出かした不祥事だと思うと、親の因果が子に
祟り…というわけでもないが、性格的に、無関係を決め込むことは出来なかった。

654キラ(♀)×フレイ(♂)・45−5:2004/06/05(土) 17:29
「くっくっく…」
彼ら二人の真摯な討論の場を茶化すような、フレイのくぐもった笑い声が聞こえた。
「何が可笑しい?」
「いやねえ、君達の会話があまりにもピント呆けしていて笑えたからさ。
中立もへったくれもない。ヘリオポリスが崩壊したのはキラの責任だろ?」
「なっ…何だと!?」
フレイの暴言に、意図せずカガリとアスランの行動が完全にシンクロした。
二人の強い敵意の視線も意に介さずに、フレイはアスランに身体ごと向き直る。
「アスラン君に聞こうか?君達は例のMSを奪う際に、ユニウス7の意趣返しに、
ヘリオポリスの住民をジェノサイド(大量殺戮)する命令でも受けていたのかい?」
そのフレイの大胆すぎる質問に、一瞬、アスランは息を呑む。
次の瞬間、怒りで顔を真っ赤に震わせたアスランは、大声で抗弁した。
「ば…馬鹿な!そんな筈はあるか。連合のMSさえ奪えればそれで良かったんだ!」
「そう。つまり素直に五機のMSをザフトに差し出してさえいれば、君達は大人しく
ヘリオポリスから出て行ってくれたわけだ。ところが、運が良いのか悪いのか、
あのコロニーには、ずば抜けた才能を持つ一人のコーディネイターの少女が住んでいた」
フレイは、敢えてそこで一端論を切る。アスランとカガリの貌に不愉快さを含んだ理解
の色が広がっていく。この先に展開されるであろう、フレイの仮説を読み取ったからだ。
フレイは、キラの強固な抵抗こそが、ザフトに危機感を与え、敵の再攻勢を呼び寄せたと
主張しているのだ。感情論さえ差し引ければ、確かにそれほど的外れの論拠ではない。
「ここから先は、言わなくても判るだろう?とにかく、キラが余計な奮戦をしなければ、
ヘリオポリスの被害は最小で済んだと思うよ。まあ、その際には、多分キラとその仲間達
(トール達ヘリオポリス組)も、浮沈艦(AA)と共にお陀仏だったと思うけどね」
「お前なあ、ヘリオポリスは壊れなくても、その時には、お前も一緒に死んだんだぞ!?」
クルーの一員でありながら、アークエンジェルの撃沈を他人事のように捉えているフレイ
に、カガリはそう呆れたが、彼はフレイ入隊に纏わる前後の事情を知らな過ぎた。
「残念ながら、そうはならなかったよ。僕は当初は避難用のシェルターにいて、
アークエンジェルに拾われたタイミングは、ヘリオポリスが崩壊した後だったからね。
仮に、命運を共にしていたとしても、この件に母さんが巻き込まれない方がマシだったさ」

「母さん?」
まるでB型人間同士の会話のように、議論中に目まぐるしく題材が入れ替わり、
アスランはつい反射的に、己にも所縁の強い単語に反応した。
「僕の母は、連合では外務次官という結構なお偉いさんでね。アークエンジェルを
迎えにきた第八艦隊の先遣隊のモントゴメリという戦艦の中にいたんだ。
アスラン君も知っての通り、モントゴメリは宇宙の塵と化してしまったけどね」
フレイの態度は、さほど恨みがましくなく、むしろ淡々と供述していたが、その内面に
渦巻く怨念の質量はアスラン達の想像を大きく絶していた。フレイは、母の死の責任者と
彼が信じた、キラとその想い人を同士討ちさせようと、色々と画策し続けてきたのだから。

「そ…そうだったのか」
アスランは何とも言えずに言葉を濁した。彼自身も血のヴァレンタインで母を失った
身だったので、戦争だからの一言で全てを済ませるには、暗澹たる想いがあった。
「同情はいらないよ。母さんを守れなかったのは、僕に力と知恵が足りなかったからさ。
もっと早く君の婚約者を人質にする案を具申していれば、運命も変えられたのにね」
「人質って……!?あの時、ラクスを人質にさせたのは、お前の入れ知恵だったのか!?」
フレイを見下ろすアスランの瞳に、露骨な嫌悪の色が浮かんだ。
と同時に、いかにもこのペテン師が考え付きそうな所業だと奇妙な納得もした。
ただ、フレイと知り合う以前とは異なり、フレイの醜悪な行為を絶対悪として
切り捨てるには、彼と同じく母親を失った身分としては、些か複雑な心境だ。
肉親の生命が賭かれば、誰だって悪魔に魂を売ってでも救いたいと願うのが心情だろう。

655キラ(♀)×フレイ(♂)・45−6:2004/06/05(土) 17:30
「少し脱線してしまったね。話しを元に戻そうか。とりあえず、ヘリオポリス崩壊の責任
の是非は置いておくにしても、キラはあの時、死んでいた方が本人の為だったと思うよ。
彼女が慕っていたアスラン君は敵として襲い掛かってくるし、遣りたくもない人殺しに
何度も手を血で染めている。これじゃ、生きていても幸せなんて言えないだろう?」
何よりも、僕のような悪党に付け狙われて、人生を狂わされることもなかった筈さ。
フレイは心の中だけで、多少の自嘲の感情と共に、さらに業の一つを追加した。

「何を偉そうに!キラに人殺しを強要させているのは、お前たちナチュラルだろうが!
それに、お前は本当にキラの彼氏なのか!?」
母の件では同情して、フレイにそれなりのシンパシーを示したアスランだが、相手が
キラとなれば話しは別だ。盗人猛々しい理論を振り翳した上に、キラの恋人を詐称しな
がらも、彼女の未来を全面否定する薄情極まりないフレイに、当然の如く切れ掛かる。
「彼氏だからこそ、尚更僕は、今のキラをこれ以上見てはいられないんだよ」
フレイはアスランの激発をやり過ごすと、今度はカガリに万感たる想いを訴えた。
「カガリ君。君はさっき自分がキラなら、力の行使を躊躇わなかったと主張していたよね?
けど、何の迷いも葛藤もなく人を殺せるキラなんて、そんな怪物はもうキラじゃないだろ?
悪鬼のような巨大な力を持ち、その己の力に脅えながらも、仲間を守る為に、健気にも
戦い続ける、泣き虫でお人好しの優しい娘。それが、キラという女の子じゃないか?」
カガリは唖然として言葉が出てこない。キラに悪意を抱いていると思われたフレイが、
意外にも、キラという人間の本質を理解してあげていたという事実に、驚かされたからだ。

「もしこの先、キラが冷酷な戦場に適応して、彼女の中から、泣き虫のキラが消失する
としたら、それは、単純な肉体的な死よりも、はるかに辛いことだと僕は思うけどね」
『キラを、キラのままでいさせること』
それは、フレイの今回の一連の計画の中でも、最も留意した点の一つである。
痛みも悲しみも感じない機械人形(オートマタ)に復讐した所で、何の意義がある?
故にフレイは、キラを慰める際、得意の口八丁手八丁で、キラの行為を自己正当化させて、
彼女の罪悪感を消し去る事も可能だったのだが、敢えてそうせずに、借金生活者のような
「生かさず、殺さず」に近い状態をキープして、血の色で真っ赤に侵食されつつあった
キラの心のキャンパスを、原色(純白)そのままに留めておくように腐心してきたのだ。
フレイの真の目的を別とすれば、今現在、キラがキラ自身のままでいられたのは、
皮肉にもキラの破滅を願っているフレイの功績だった。今更ながらに、その事実を
思い知らされたカガリは、己を害しようとするフレイを必要とせざるを得ないという
矛盾を抱え込んだ妹の不幸を思い煩って、身を焼かれるような想いを味わった。


「フレイ、確かにお前はキラの事を、誰よりも本当に良く理解している」
今のカガリには、さっきまでのような誰彼構わず見境なく噛み付いてきた狂犬のような
雰囲気は欠片もない。彼に似合わぬ憂いを帯びた表情で、大きな溜息を吐き出した。
「それでも、お前はキラを大切に想っていない。お前はキラを抱いたというのに…」


何だって、今、コイツは何て言った!?
…た。 …いた。 …抱いた。 …を抱いた。 …ラを抱いた。 キラを抱いた!?
アスランは、自分の身体全体からスーッと血の気が引いていくのを感じた。
皮肉にも、今の放心したアスランの貌は、キラが、ラクスがアスランの婚約者だと
知った時の姿と瓜二つだ。お互いを想い合っていながらも、双方共にその事実に気付かず、
何度もすれ違いを繰り返すのは、古今東西のあらゆる恋愛活劇で愛用された黄金の不文律
ではあるが、アスランは今まさしく、その洗礼を最悪に近い形で浴びようとしていた。

656キラ(♀)×フレイ(♂)・45−7:2004/06/05(土) 17:30
おやおや、こいつは手間が省けたみたいだな。フレイは軽く苦笑する。
さて、これからどうやって、キラとの本来の仲について切り出そうかと、フレイが思案
していたところに、わざわざカガリ君の方から勝手に爆弾を投下してくれるとは。
カガリ自身は、愚痴に近い形で放たれた自分の言葉の重みを全く理解していないようだ。
プレイボーイのフレイは処女貞操願望など持ち合わせてはいないが、恋愛に手馴れてない
童貞男子の中には、意外と女性に対して潔癖な幻想を抱く者も存在することを、経験上
悟っていた。果たしてアスラン君はどうだろう。試してみる価値はありそうだ。

「そういえば、アスラン君。君の方はどうだったか知らないけど、
キラはどうも、本当は君の事が好きだったみたいなんだよね」
フレイは敢えて「過去系」で、キラの気持ちを代弁し、虚ろだったアスランの
瞳に強い動揺が走る。

「はじめて、キラとベッドを共にした晩だったかな?
行為の後に、「アスラン、アスラン」て、キラにシクシク泣かれちゃってね。
あの時は本当に参ったよ。もしかしてメロドラマに出てくる間抜けな間男の役を
演じてしまったのかと思ってさ」
フレイは、実際に在った事実を少しばかり脚色して、効果的な寝取り物語を演出する。
一瞬、フレイの頭の中に強い警告信号が灯ったが、アスラン君の真意を確かめる絶好
の好機は今をおいて他にない。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」の諺通り、多少の危険
に目を瞑って、フレイは、彼の心の洞窟のさらなる奥へと、無造作に足を踏み入れた。

「けど、最近、ようやくキラの心が僕の方に振り向いてくれたみたいで良かったよ。
やっぱり、身体の結び付き何度も重ねて、お互いの心の絆を強めることによって、
かつての少女時代の憧憬を単なる過去の存在へと押し遣って…」
フレイの舌はそれ以上回転することは出来なかった。フレイよりも小柄なアスランが、
フレイの襟首を掴むと、片腕だけの力で、中背のフレイをそのまま宙吊りにした。


「ア…アスラン君?」
バイオハザード警報が、大きなサイレンの音を打ち鳴らして、頭の中を駆け巡っている。
洞窟の中には、確かに、危険に見合うだけの価値を持った虎の赤子が大量に眠っていた。
ただ、お宝の虎児を発見する際に、フレイは親虎の尻尾を加減抜きで踏み潰してしまった。

「僕がここでアスラン君に殺されたら、キラは僕の仇を討ってくれるのだろうか?」
フレイがそんな埒も無い考えを巡らせた刹那、彼の顔面を鈍い衝撃が縦に貫いた。

657私の想いが名無しを守るわ:2004/06/05(土) 17:59
男フレイキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!
一番好きなシリーズです!
男3人の痴話げんかはどこまで行くのか、目が離せません。
フレイ様、小気味いいくらい憎たらしいですね。
種2でこういうキャラが出てくれれば最高ですのに。

658夢と希望・3:2004/06/05(土) 22:11
「え・・・?フレイ?」
と、キラは呟いた。
この場面で不謹慎だがなんだか嬉しかった、一目惚れしている少女に守られている気がした。
「銃を下ろしなさい」
マリュ−が命じた。
「そう驚くことでもないでしょう・・・へリオポリスは中立国のコロ二−だった、戦火に巻き込まれるのが嫌で逃げてきたコ−ディネイタ−が不思議ではないわ」
その言葉に渋々ながらも兵士達は銃を下ろした。
「悪かった、とんだ騒ぎになっちまって」
と、騒ぎを起こしたムウが悪気がない口調で言った。
「だってさ、初めてにしてはあの機体の操縦凄すぎから気になったんだよ」

「おいおい無茶言うなよ!」
ムウが大きく手を振った。
「ですが・・・ストライクの力は必要かもしれません、ですから・・・」
「冗談だろ?無茶言わないでくれ!あの坊主のOSのデ−タ見てないのか?あんなもんが俺にというより・・・普通の人間に扱えるかよ!」
困ったようにマリュ−とナタルは下を向いた。
「あのな、もし戦闘になったら、あの坊主がめいっぱいまで上げた機体の性能、そしてそれを完全に使いこなせるパイロット、その両方がなきゃ、ザフトにはとても対抗できないで」
それは必然的に悲しい一つの結論を出していた。
ア−クエンジェル内に設けられた居住区の一室で、少年達は不安に肩を寄せ合っていた。

「私達・・・どうなるのかしら・・・」

抑えようのない不安から、ミリアリアからこぼれた。
ヘリオポリスが崩壊しているところを彼女らも船内のスクリ−ンから目撃していたのだ。
これまでその存在を意識したことさえない確固たる現実が、目の前であまりにも脆くに崩れ去るさまを。
住み慣れた場所を失い、親の安否も知れない、こうして地球連合軍の軍艦に乗っているからには、いつまた戦闘が始まるとは限らない。
「キラか・・・」
カズイが呟いた、そして寝棚で眠っているキラを見る。
「この状況で寝られちゃうなんて凄いよな・・・」
「疲れてるのよキラは、ほんとに大変だったんだから」
ミリアリアがそう言うと、カズイは小さく笑った。

659夢と希望・4:2004/06/05(土) 22:44
「大変だったか・・・キラにはあんなことも「大変だった」ですんじゃうんだもんな」
「なにが言いたいの?カズイ」
と、とがめるような視線を向けてミリアリアは言った。
「別に・・・たださ、キラ、OS置き換えたって言ってたじゃん、アレの・・・それっていつだと思う?」
「いつって・・・」
ミリアリアは考えた。
キラだって、ストライク・・・あのモビルス−ツのことは知らなかった、OSを置き換えたのはあれに乗り込み、戦闘が始まってすぐにということになる。
戦闘の様子がフレイを除く全員が見ていた。
その状況を見れば説明する必要はないだろう。
「コ−ディネイタ−・・・つまりザフトにはそんなばかりなんだぜ・・・そんな奴らに地球軍は勝てるのかよ」

<敵艦影発見!第一戦闘配置!軍籍にあるものはただちに持ち場につくように!>
切迫した艦内アナウンスに、ミリアリア達ははっと顔を上げる。

「戦闘になるの・・・?この艦」
<キラ・ヤマトは艦橋へ、キラ・ヤマトは・・・>
それを聞いて、ミリアリアはそっとト−ルに話しかけた。
「キラ・・・どうするのかな」
サイが小さく呟いた。
「あいつが戦ってくれないと・・・困ったことになるんだろうな・・・」
そんな中、ト−ルは何かを考えていた・・・。
そしてミリアリアがその腕を揺すった。
「ねえト−ル・・・キラはこれから戦場に行くのよ?それなのに私達だけ・・・」
「できることをやれか・・・」
フラガがキラに先程言ったのだ。
ミリアリアは皆の顔を見回り、皆がうなずくとブリッジに向かった。

660私の想いが名無しを守るわ:2004/06/05(土) 23:34
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
おかえりなさいまし
アスランを本気で怒らせたフレイ様(♂)どうなってしまうんでしょう。
誰かフレイ(♂)イラ描いてほすぃ

661私の想いが名無しを守るわ:2004/06/05(土) 23:51
キラ(♀)×フレイ(♂)キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
自分も一番好きなシリーズです。
種とは別のもうひとつの種として楽しませて頂いてます。
ぜひ完結してくだせぇ!

662さよならトリィ 4/8:2004/06/06(日) 07:00
[フレイ、トリィを部屋に連れて行っておいてくれ]

オーブでキラと別れた。

修理のためオーブに寄港したアークエンジェル。そこでのヘリオポリスの学生の両親との面会。
だけど、私には誰も会いに来てくれる人はいない。ママは小さいころ死んだし、もう、パパも……
当日、両親面会に行かずに、私のいる部屋に来たキラ。それに、私は同情されたと思って
激情を爆発させた。

「辛いのはアンタの方でしょ! 可哀想なのはアンタの方でしょ!
 可哀想なキラ…… 独りぼっちのキラ……
 戦って辛くて…… 守れなくて辛くて…… すぐ泣いて……
 なのにっ!! なんで私がアンタに同情されなきゃならないのよ!」

感情のまま、言葉を投げかけて、そのままキラの胸で涙を流していた私の耳元で呟くキラの言葉。
二人の関係は……間違った……

…… そう、そうよ!…… 間違いよ!!
…… そんなの最初っから分かってるわよ!…… だけど …… だけどっ!!!

私はキラを突き放し部屋を飛び出そうとする。痛い、心が痛い。なんでよ、なんで、私まで
心が痛いの? キラ一人傷つけばいいんじゃない。キラ一人可哀想ぶってればいいんじゃない。
なのになぜ?

開けたドアの前で振り返った時、トリィは辛そうに俯くキラの肩で、キラに話しかけていた。
トリィはキラを選んだ。キラを慰めている。当たり前だ。私が辛い言葉でキラを傷つけたのだから。
可哀想なのはキラ。悪いのは私。キラを復讐に利用していた私。トリィが慰めるべきなのはキラ。
トリィはキラのものなんだから。

部屋を飛び出した私は、涙を流しながら、目的もなく、ただ通路を走っていく。
自分でも、どうして、こうなったのかさえ分からずに……

グルグルと通路を歩き回って、行くところが無くて。また、私はキラの部屋の前に立っていた。
躊躇いながら、パスコードを入力し、ドアを開ける。部屋は真っ暗だった。キラはいなかった。
トリィもいなかった。キラはトリィまで連れて行った。私は、もう顧みられることは無い。
終わりなんだ。もう何もかも。

* * *

アークエンジェルはオーブを出発した。
私は行くところが無い。今さら、ミリアリアと同室の部屋なんて顔を出せない。
ただ、夜中じゅう、通路を彷徨い続ける。空いている仮眠室で、つかの間の眠りに落ちる。

トリィもいない。私に話しかける人も、私の話を聞いてくれる人も誰もいない。ただ、一人
彷徨い続ける。食堂では、みんなが談笑している声が聞こえる。私は、その輪の中に入ることもできず、
一人寂しく立ち去るしかない。

私は何をしているの? なんで、こんな想いをしなくちゃいけないの? 誰が悪いの?
誰か答えてよ。

深夜、歩き回って行き当たった通路の先、モビルスーツデッキ。見下ろすと、そこに、
キラとトリィは居た。キラも、暗い表情をしている。何かに悩んでいる。私と同じように?
何かの答えを求めて? 何を求めて?

敵襲を告げるアラートの響く中、私はキラとトリィを追った。

「キラ、私……」
「ごめん、後で…… 帰ってから」

そう言ってキラは走り出した。トリィも付いて行く。二人とも行ってしまう。やはり、私には誰も……

「トリィ、お前は帰ってろ。フレイ、トリィを部屋に連れて行っておいてくれ」

それに、私は許されたような気がした。飛んできたトリィを手で受け止めると、軽くキラに頷いた。
それを見て、また、キラは駆け出した。

私は揺れ始めた艦の通路を、壁に寄りかかりながら歩いて、トリィと一緒にキラの部屋へ戻った。
パスコードも変わっていない。キラの部屋は何も変わっていない。

私はベッドに飛びこんで毛布をかぶった。トリィも毛布に潜り込んできた。
恐い戦闘。でも、これが過ぎれば、何かが変わると思っていた。

戦闘が終わった。キラが帰って来る。足音が部屋に近づく。私は弾かれたようにベッドから飛び起きた。
ドアの前で期待を胸に踊らせる。トリィも、私の肩に乗って、ドアを見つめる。

でも、足音は通り過ぎた。

私はドア脇の机に座り込み、頭を組んだ腕の間にうずめて、ドアの向こうの足音に聞き耳を立てながら、
目の前のトリィを見つめ続ける。

足音は通り過ぎ続ける。次の足音も、その次も、その次も……

「キラ、遅いわね。何してんるんだろう……」
<トリィ……>

私はトリィに呟きながら待ち続ける。
キラが帰ってくれば、何かが分かる。私の答えが見つかるはず。そう思って、ひたすら待ち続ける。

でも、その答えは得られなかった。キラは帰って来なかったから……

663私の想いが名無しを守るわ:2004/06/06(日) 10:45
さよならトリィも再開ですね。
人の痛みを知るフレイたま。
本編の補完SSとして萌えさせていただいております。
こういう形でキャラの気持ちを最初からなぞり直してもらえると
ファンとしては嬉しい限りです。
半分まで読ませていただきましたが最後まで頑張ってくださいね。
(あ、もう書き終えられているんでしたっけ)

664夢と希望・5:2004/06/06(日) 21:42
ストライクのコクピットで、敵機接近の警告音が鳴り響いた。ビ−ムライフルを構える。
真紅の機体が接近してきた、イ−ジス(アスラン)だ。

「アスラン!?」
<キラ!キラだな・・・>

あの声が頭の中に響いた。
<やめろ!やめるんだキラ!俺達は敵じゃない、味方だ、仲間なんだ、そうだろ!?>
スピ−カ−からの声にキラははっとする、そうだ・・・なぜ?なぜ僕達は友達なのに戦ってるんだろうか。
<同じコ−ディネイタ−のお前がなぜ地球軍にいる!?なぜナチュラルの味方をするんだ!?>
<僕は地球軍じゃない!でも・・・あの艦には友達が・・・大切な人達が乗ってるんだ!>
そんななか別の二機がア−クエンジェルに攻撃していることにキラは気づき掩護に向かおうとした。
しかしイ−ジスが割り込んでくる。

<やめろ!お前は俺達の味方だ!>
<アスラン・・・!君こそなんでザフトになんか!戦争なんか嫌だって、君だって言ってたじゃないか!>
<状況も分からぬナチュラルどもがこんな物を作るから・・・>

そんなとき、一機の機体が割り込んできた。
二人は我に返りかわす。

<なにをモタモタやっている!?アスラン!>
聞き覚えのない声が割り込んできた。
「これは・・・デュエル!?じゃこれも!」

バスタ−とブリッツに取り付かれたア−クエンジェルは、回避行動を取りながら必死の防戦につとめていた。
爆雷が撃ち出され、それがさらに炸裂して細かな粒子をまき散らす。
新型艦ア−クエンジェル、大天使の火力にバスタ−、ブリッツも攻めあぐねている様子だ。

その頃、ストライクのコクピットでは、息を切らし、必死で機体をコントロ−ルしているキラがいた。
しかし・・・。
「しまった!エネルギ−切れ!?」
フェイズシフトが落ちた・・・。
その隙を見てデュエルが突っ込んでくる。
やられた!しかし次の瞬間キラのストライクはイ−ジスに捕らえられていた。

665夢と希望・6:2004/06/06(日) 22:33
<なにをするんだ!?アスラン!>
<ストライク、捕獲する!>
<なにを馬鹿なことを言っている!?命令は撃破だぞ!>
<捕獲できるなら捕獲したほうがいい!撤退する!>
イ−ジスはストライクを捕獲したまま離脱している。

<アスラン!どういうつもりだ!?>
キラが叫んだ。
<このまま連行する、お前も一緒に来るんだ>
<ふざけるな!僕はザフトになんか行かない!>
<いいかげんにしろ!>

アスランの一声にキラは黙った。
<このまま帰るんだ!でないと・・・僕はお前を撃たなきゃならなくなるんだぞ!そんなことはしたくな!俺はもう大切な人には誰にも死んでほしくないんだ!>
<アスラン・・・なら、君が来るんだ・・・>
<な・・・?なんだと!?>
<君が地球軍に来るんだ・・・アスラン、君もおいでよ>
<な!?馬鹿なことを言うな!>

その頃。
「あのキラって子・・・大丈夫なのかしら・・・?」
居住区に一人取り残されていたフレイはベッドの中で心配そうに呟いていた。

ムウのネビウス・ゼロが二機に近づいてくる。
<離脱しろ!ア−クエンジェルがランチャ−ストライカ−を射出する!>
<キラ・・・く!>
ストライクはイ−ジスを一目見るとそのまま宙域を離脱した。
そんな中メビウス・ゼロを迎撃していたイ−ジスのアスランは先程のキラの言葉が頭をよぎっていた。

無事帰還したキラ、その後のア−クエンジェルはアルテミスへ入港した。
しかし・・・ユ−ラシアの軍には面白く思われていなかったのか、いろんないざこざがあった。
そんなときに限っていいことは起こらないもので、ザフトが攻めてきたのだ。
そして結局アルテミスは壊滅したがア−クエンジェルは無事で済んだのである。
戦闘ばかりで心が疲れていたキラ、この後の謎の少女の出現によりまた・・・。

666私の想いが名無しを守るわ:2004/06/06(日) 23:04
>>さよならトリィ

フレイ様せつな杉…
折角スレ違っていた二人が少し近づいたと思ったら…
凄くいい作品ですね。
うわ〜〜〜ん

667さよならトリィ 5/8:2004/06/07(月) 06:42
[一緒に来るんだフレイ。約束の地へ]

「キラはMIAさ。多分、死んだんだよ」
カズイの言葉が、いつまでも耳に残っている。

頭の中はキラのことばかり考えていた。何で、そうなの?
キラは、私の思惑通り、戦って死んだんじゃない。何でそうなるの。何で、こんなに心が苦しいの。

<トリィ……>

トリィが慰めるような声を出す。
そうよ、私は復讐を終えたのよ。これで終わったの。戻らなきゃ。元のところに。

私はキラの部屋を出た。肩にトリィがとまった。それを私は追い払おうともしなかった。
ごく自然に。既に、私の一部であるかのように。

通路を歩き回って捜した。医務室の前で、やっと見つけた。サイを……
この前の戦闘で、同じようにトールを亡くして、悲しみに震えるミリアリア。
サイは彼女を癒すように付き添っていた。

「サイ…… あの……」サイに声をかけた。

サイが振り向く。その時、トリィが急に私の肩を飛び立ってサイの肩にとまった。身じろぎするサイ。

いや、違う! 私にはキラが見えていた。幻想のキラが……
私に明るい微笑みを返すキラ。現実に無かった光景。そのキラに私は吸いこまれそうになる。

── おいで、フレイ

キラが、そう囁いたような気がした。トリィが私のところへ飛んできた。

── 一緒に来るんだフレイ。約束の地へ。

「イヤッ! イヤ!!」
手を振り回してトリィを叩き落としそうになった。トリィは、私の手をかいくぐって、
通路を飛び去って行った。私は激しく動揺して、息を乱していた。

「やめなよ」サイは憮然とした表情で私に声をかけ、「後で」と言い残してミリアリアを
連れて医務室に入った。

私は、まだ呆然として立っていた。キラの亡霊? キラは私を呼んでいるの? 私を恨んで?
トリィが、また戻ってきて天井近くを滑るように飛び回っている。トリィ、あなたは一体何を言いたいの?

ほどなく、サイは医務室から出てきた。

「俺に、何?」
「何って……」私は言葉に詰まる。

サイは、私によそよそしい。私を慰められないと言う。他の人と話せって? サイ以外に
話せる人がいる訳ないじゃない。どうして? 私は帰ってきたのに、なんでサイはこんなことを言うの?

「サイ! けど、私、ほんとは…… あなたも分かってたじゃない。私ほんとはキラのことなんか」

「いいかげんにしろよ! 君はキラのことが好きだったろ」サイは、はっきり言った。

「違うわ」
「違わないさ!!!」
思ってもみなかったサイの怒鳴るような声。厳しい表情。それに、私は気圧された。

「ちがうぅぅ! 違う、違う」
私は叫んだ。首を振りながら自分に言い聞かせるように叫んだ。そんなはずが無い。そんなはずが……
私がキラのことを、そんな風に思っているなんて、そんなはずが無い!

私はキラが憎いのよ。キラに復讐したのよ。復讐を果たしたのよ。だから……
違うのよ、違うって言ってよ。そうじゃないと私、私……

トリィが、またサイの肩に舞い降りた。そして、私に視線を向ける。真実を見通すような
まっすぐな目で。トリィ、あなたは……

その時、医務室で大きな音がした。悲痛な叫び声。トリィは、また飛び立ち、サイは、急いで
医務室に戻った。後を追った私が見たものは、手にナイフを持ってサイに取り押さえられている
ミリアリア。医務室の奥には、頭から血を流している捕虜のコーディネーター。
ミリアリアは、私が見たことも無いような形相で叫んでいる。トールを失った悲しみ、憎しみ。
それが、私の心を痛ませる。それは、私にも、やがて……

ふと、机の半開きの引き出しに、銃が入っているのが見えた。私は、感情に突き動かされるまま、
それを手に取った。

「コーディネーターなんて、みんな死んじゃえばいいのよ!」

私は銃を、その捕虜に向けて叫んだ。復讐のために。

…… キラを失った復讐のために ……

さっきのキラの亡霊。あれは、キラが恨んでいるのでは無い。私が呼んだのだ。
キラを呼んだのは私なのだ。私がキラを求めているのだ。

トリィは、そんな私を通路でジッと見ていた。トリィの言いたかったことって、そういうことだったの?

668夢と希望・7:2004/06/07(月) 22:29
「あそこの水を・・・!?本気なんですか?」
ア−クエンジェルのブリッジに戻ったキラは、驚愕の声に上げた。
「あそこには一億トン近い水が凍りついているんだ」
なんの理由も説明しない事実を、ナタルが口にする、彼らはユ二ウス・セブンの残骸から水を運ぶことを決定したのだ。
「でも・・・あのプラントは何十万人もの人が亡くなった場所で・・・!」
キラは懸命に抗議した、あの場所は彼にとっても特別な意味を持っているのだ。
マリュ−は言った。
「気持ちは分かるけど・・・水はあれしか見つかってないの・・・」
キラは仕方なく黙る。
「俺達だってできればあそこには踏み込みたくないさ」
勢いづくようにムウは言った。
「けど、しょうがねえだろ!俺達は生きてるんだ!ってことは生きなきゃなんねえってことなんだよ!分かるか!?」

地球軍に壊された大地、虐殺されたコ−ディネイタ−の記念碑に、キラは祈りを捧げた。
だが、僕に祈る資格なんてあるのか?事情があるとはいえ虐殺を行った地球軍と共に戦っている僕に・・・。
殺したくなんかない、ただ守りたいだけなのに、頭の中に赤い髪の少女が浮かぶ。
その時・・・電子音が鳴り始めた、敵か!?
だがモニタ−に写っていたのは敵の機影ではなかった。

ア−クエンジェルの格納庫には、キラが見つけた救命ポットが横たわっていた。
ハッチはかすかな音を立てて開いた。
兵士達が一斉に銃を構える。
<ハロ・ハロ・・・!>
間抜けな声を発しながら出てきたのはピンク色の丸い物体だった。
ぱたぱたと耳が羽ばたくように動き、球の真ん中には目が二つ光っていた。

「ありがとう・・・ご苦労様です・・・」

柔らかなピンクの髪と、長いスカ−トの裾をなびかせて、ハッチから出てきたのは、天使のような可愛い少女だった。ほんわりと白い肌、ほっそりした腕、優しく愛らしい顔は見るものを幸せにしそうだ。
「あら・・・あらあら?」
彼女をキラは抱きとめた。
「ありがとう」
間近で彼女がにっこりする。キラはつい顔が赤くなった。
「あら?」
彼女はあたりを見回した。
「まあ・・・これはザフトの艦ではありませんのね?」
全員が大きなため息をついた。

669夢と希望・8:2004/06/07(月) 23:04
士官室の中にいたピンクの髪の少女はキラの姿を見つけると手を振った。
顔を赤くしたキラは手を少し振るとそのまま去って行った。

「私はラクス・クラインですわ、これは友達のハロです」
少女はマリュ−達の前にピンク色のロボット、ハロを差し出して紹介する。
ムウがため息をつく、どうもこの少女の前では調子がでない・・・。
「クラインねえ・・・そういやプラント最高評議会議長もシ−ゲル・クラインといっていたような」
ムウが思い出したように呟いた。
それを聞いたラクスは嬉しそうに。
「あら、シ−ゲル・クラインは私の父ですわ」
無邪気というか、天然というか・・・自分の置かれた状況を分かっているのないないのか・・・こんなに認めるとは・・・三人はまたため息をついた。
「・・・そんな方が、どうしてこんなところに?」
「ええ、私、ユニウス・セブンの追悼慰霊のために事前調査に来ておりましたの」
黙って聞く、やっと本題に入ったようだ。
「そうしましたら、地球軍の艦と出会ってしまいました、臨検するとおっしゃいましたので、お受けしましたのですが、地球の方々には、私どもの目的がお気に障ったようで・・・ささいないさかいから、船内はひどいもめごとになってしまいましたの・・・」
少女の表情が悲しく曇った。
「私はポットで脱出させられたのですが・・・あのあと、どうなったのでしょう、地球軍の方々が、お気をしずめめてくださってい下さっていればよろしいのですが・・・心配ですわ」
この宙域に、ごく最近破壊されたような民間船があったなどと、言う必要はない、その船に砲撃の痕があったなどと・・・言う必要はない・・・。

仕官達が立ち去るとラクスは壁のモニタ−に近づいた。船内の様子が写し出されている。砕かれ・・・荒れ果てた大地が真空の闇にさらされているのが見える。
ラクスはハロを膝の上に抱き上げると、手を合わせ目を閉じるとささやきかけた。
「祈りましょうね、ハロ・・・どの人の魂も安らぐようにと・・・」

その一時間後である。
部屋に連れられたラクスは・・・。
「お腹がすきましたわ・・・食事はくるんでしょうか・・・?」
プシュ−とドアが開いた。
「あらあら?貴女が?食事をお持ちしてくださいましたのね、ありがとうございます、はしたないことを言うようですけど、私ずいぶんお腹がすいてましたの、よかったですわ」
「どうぞ・・・」
入ってきたのは赤い髪の少女だった。
「私はラクス・クラインですわ、貴女は?」
「フレイ・・・フレイ・アルスタ−よ・・・よろしくねラクスさん」
フレイは優しくラクスに微笑んだ。

670さよならトリィ 6/8:2004/06/08(火) 08:19
[トリィ、ずっと一緒に居て。約束して、絶対離れないって]

私は復讐の心に突き動かされるまま、コーディネーターに向けて銃を撃った。

だけど、ミリアリアに突き飛ばされて、弾は外れて、天井の照明を壊しただけだった。
蛍光灯の破片が散乱する中、私に覆いかぶさるように涙を流しているミリアリア。
どういうことなの? ミリアリアの考えが分からない。

私はミリアリアに問いかける。
「なんで邪魔するのよ…… アンタだって私と同じじゃない」

「違う、私…… 違う……」
ミリアリアは涙を流しながら、ただ、それを呟くだけだった。

いつの間にか、自分も涙を流しているのに気がついた。復讐の高揚感も消えていた。
手に残る銃の衝撃が、急に恐ろしく感じられた。

騒ぎを聞いて医務室にクルーが集まる中、バジルール中尉が仕切って、私とミリアリアは
守られるように、それぞれの部屋へ戻された。私はキラの部屋へ…… トリィも一緒だった。

キラの部屋で、電気も付けず暗いまま、私は、まだ銃の衝撃が残り震える手を、トリィに、
啄ばませながら、さっきのことを思っていた。

…… 私がキラを呼んでいる。私がキラを求めている ……
それは、もう隠すことはできない。何で、今になって……

グルグルと思考だけが空回りする。うわ言のようにトリィに話しかける。

「ねえ、トリィ、何で今ごろ気がつかなきゃいけないの? なぜ、気づかせたの?」
<トリィ!>

「もう居ないのに。キラは居ないのに。何で今ごろなの」
<トリィ!>

「キラ、なぜ居なくなってしまったの。あんなに強いのに。あんなに一緒だったのに」
<トリィ?>

「キラの馬鹿…… 馬鹿、馬鹿!! もうちょっと居てくれたら。私……」
<トリィ! トリィ!>

私は記憶の中のキラの姿を追っていた。

ヘリオポリスにいる頃のキラは、友達と優しい目で笑い、時々、私に向かって遠巻きに熱い目を向ける。
だけど、私は、その頃のキラのことを、ほとんど知らない。

アークエンジェルに乗ってからのキラは、私の手の中にあった。いつの間にか、キラの仕草の癖や、
食べ物の好みも、みんな分かっていた。キラが心のうちに持つ痛みさえも……
…… ただひとつ知らなかった。本当に明るく笑っているキラ……

「トリィ、キラに会いたい。キラのこと、もっと知りたい。みんな知りたい」
<トリィ>

「教えて、教えてよ、トリィ! あなたが、気づかせたんだから。教えてよ!」
<トリィ! トリィ!>

トリィに答えられる訳が無い。それが分かっていて、私は問いかけずにいられない。

さっきのミリアリアの行動。自分もコーディネーターに復讐しようとしながら、なぜ、私の復讐を
止めたのかは、今でも分からない。でも、ミリアリアに止められてから、私には、もう復讐の心は無かった。
パパの復讐にキラを利用しようとして、キラが死んで、また、その復讐を……
そんなことが、すべて虚しく感じられた。心に、ぽっかり空いた空洞。それを埋めるかのように、
私はトリィに話しかけ続ける。

「私、キラのこと…… キラのことが…… もう、ずっと前から……」
<トリィ!>

「ここにキラと居たことが…… キラと…… トリィ、あなたと一緒に居たことが、私……」
<トリィ……!>

「大切だった。それが…… とても、大切だった……」
<トリィ!!>

私はトリィを手の平に乗せ、そっと頬に当てた。

今の私にはトリィが必要だった。砕けてしまいそうな心を繋ぎ止めるにはトリィが必要だった。
あの時、折り紙の花を手にキラが泣きじゃくった時、私を必要としてくれたように。

「トリィ、ずっと一緒に居て。約束して、絶対離れないって」
<トリィ!! トリィ!!>

トリィの強い声に、私は一時の安らぎを覚えた。

* * *

だけど、私には、その約束さえ守られなかった。転属で、私はアークエンジェルを降りることになった。

「イヤよ! イヤです私! はなしてっ!」

バジルール中尉に手を引かれて、私はサイやミリアリア、マリューさんの見守る中、アークエンジェルを
降ろされた。

トリィは、私に付いて来なかった。サイのところへ行ったまま、私の手には戻って来なかった。
なぜ? どうして? 約束したじゃない。嘘つき! なんで、私と来ないのよトリィ。

嘘つき! 絶対離れないって言ったのに。嘘つき! トリィの嘘つき!!

トリィは私に付いて来なかった……
…… でも、その方が良かったのかもしれない。

なぜなら……
アークエンジェルを降りた私は、ラウ・ル・クルーゼに捕らえられて、ザフトへさらわれたのだから。

671私の想いが名無しを守るわ:2004/06/08(火) 09:32
>>トリィ
フレイ様視線でありながら、フレイ様に都合の良い解釈だけでない
冷静な文体に本当に(フレイ様)がお好きなんだと感じさせられます。
独白も真に迫り、心打たれるものがあります。
書き終えられている作品の分割投下という事で、
とても読みやすく、エンディングが楽しみです。
文章力のある方のSSは読んでいてとても安心いたします。

672夢と希望・9:2004/06/08(火) 21:29
「私ね・・・ほんとはコ−ディネイタ−って本当は好きじゃないのよ」
そう呟いたフレイの表情をラクスは伺った。
「でもね・・・貴女は安心出来るの」

<ハロ!ハロ!>
「ふふ・・・可愛いわね、どうしたのそれは?」
ハロを見ながらフレイは言った。
「ハロですか?これは大切な人に貰ったものですわ」
「大切な人?」
「はい・・・とっても大切な人です・・・愛してるんですの」

「しかしまあ・・・補給の問題が解決したかと思ったら、今度はピンクのお嬢様か・・・」
ムウがマリュ−を見やり、からかうように敬礼する。
「悩みの種がつきませんな、艦長さん」
よくもまあ他人事のように言ってるれるものだ、と思うマリュ−だが、ただ、この頃は彼女もムウのスタイルになれてきた、普段はいいかげんに見えても、いざというとき非常に頼りになる男だ、補給のことだけでなく、これまでだって、もの飄々とした態度も・・・いややめとこう。
「あの子もこのまま、連れて行くしかないでしょうね」
マリュ−はため息をつきながら呟いた。

「じゃあまたねラクスさん!話せてよかったわ!」
「ええ、こちらこそ楽しかったですわ」
部屋から出て行くフレイをキラは目撃した。

673夢と希望・10:2004/06/08(火) 22:05
「あ、駄目ですよ部屋から出たら!」
部屋から出ようとしたラクスをキラは士官室に入れる。
「またここに居なくてはいけませんの?」
フレイを追おうとしていたラクスは寂しそうに呟く。
「ええ・・・そうですよ」
キラは沈んだ気持ちを押し隠し、無理に笑いかけた。
「私もあちらで皆さんとお話ししたいですわ」
そんな顔もまたなんとも愛らしい、キラはまぶしいものを見たように目をそらした。
「これは地球軍の艦ですから、コ−ディネイタ−のこと・・・その・・・あまり好きじゃないって人もいるし・・・」
(たぶん、僕のことも・・・)
口にした瞬間走った胸の痛みをまぎらすように、彼は言葉をついだ。
「ってか、今は敵同士だし・・・だから仕方ないと思います・・・」
なぜ僕は・・・僕はこうやって、ナチュラルの肩を持つようなことを言ってるのだろう、それで彼等に溶け込めるわけでもないのに。
そう思うとますます悲しくなってキラは目を落とした。
「残念ですわね・・・」
ラクスはそんな彼の顔を見上げ、切なげな表情になる、だがそれはたちまち消え去り、すぐに包み込むような笑顔になった.
「でもフレイさんという方は私に優しくしてくれましたわ、励ましてくださいました、食事も持ってきていただいて・・・」
ラクスは嬉しそうに微笑んだ。
「フレイが?そうですか・・・そうなんですか!フレイが・・・」
キラはつい嬉しくなった、フレイが彼女に優しくしてくれたのはなんだか嬉しかった・・・なんで・・・おかしい、そんなこと考えても仕方ないか。
「貴方もとても優しくしてくださいますのね、ありがとう」
「僕は・・・」
キラははっとした、なぜか後ろめたい気分になり、彼は思い切って言った。
「僕も、コ−ディネイタ−ですから」
ラクスは目を丸くし、きょとんと首をかしげた、驚いているのだろう、とキラは思った、そして次にはきっと、「コ−ディネイタ−がなぜ地球軍にいるのか」尋ねるだろう。
だが、キラの予想は裏切られた、ラクスは、不思議そうに訊いた。

「・・・貴方が優しいのは・・・貴方だからでしょう?」
どきん、と、キラの心臓が大きく打った。
・・・この子は、誰なんだろう・・・?
「お名前を、教えていただけます?」
ラクスはほわりと笑う、その笑顔に見入っていたキラは、一泊おいてあわてて答えた。
「あ・・・キラです・・・キラ・ヤマト・・・」
「そう・・・ありがとう、キラ様」
そう呼ばれたとたん、キラは自分が大昔の騎士または伝説の勇者、もとい錬金術師になったような気がした。

674さよならトリィ 7/8:2004/06/09(水) 07:58
[トリィは、こうなることまで知っていたの?]

私はラウ・ル・クルーゼによってザフトにさらわれた。

ラウ・ル・クルーゼ。仮面を付けたコーディネーターの軍人。そして、パパの声のする人。
その人物に、私は、まるで籠に囚われた鳥のように飼われた。私を脅し、部屋に閉じ込め、
自由を奪い、それでいて、自分を頼れば安全だと、私にパパの声で話す。
クルーゼ…… あの人は、一体、何を考えていたの?

周りはザフトの軍人ばかり、少しでも逆らえば、私の命は無い。ただ、クルーゼの言葉を信じて
従い続けるしかない。その状況の中で、私は心を押し殺し、脅えながら生きてきた。

「早く終わらせたいものだな。こんな戦争は…… 君も、そう思うだろ。
 そのための最後の鍵は手にしているが、ここにあったのでは、まだ扉は開かぬ。
 早く開けてやりたいものだがな」

だから、戦争終結を語るクルーゼの想いも、私は信じた。偵察に行くクルーゼから手渡された
鍵と呼ばれるディスク。私は、それを手に平和な頃に想いを馳せた。

そして、作戦室で聞いていた。同じ空域にアークエンジェルが居ることも……
トリィのこと、キラの思い出は忘れなかった。アークエンジェルに帰りたかった。

偵察から帰ってきた時のクルーゼ。仮面が外れている?
激しく苦しみながら、引き出しから、いつも私の前で飲んでいた薬を捜し出して噛み砕くように
飲み込み、獣のような、うめき声を上げる。長髪に隠れた素顔は、私のところからは覗くことは
できない。やがて、クルーゼは慌てて新しい仮面を付け直した。

偵察で何があったのかは分からない。だけど、私は、恐ろしくて逆らえなかった。
次のクルーゼの命令に……

「さて、君も手伝ってもらおうか。最後の賭けだ。扉が開くかどうかのね」

私は、救命ポッドでドミニオンへ…… 戦闘の光の、ただ中へ……
成す術も無い私は通信で、ただ叫ぶ。

「アークエンジェル! 私、私ここ! フレイです。フレイ・アルスター!
 鍵、鍵を持ってるわ私。戦争を終わらせるための鍵…… だからお願い……」

その時……

「フレイ…… フレイっ……」
嘘…… キラの声がする。嘘…… 嘘……

「フレイ!!」
間違い無いキラの声。生きてた?…… キラ、生きてた…… 生きてた!!

「キラ……、嘘……」
私は涙を流して呟く。私の心は、それだけで解放される。それまでの辛い想いも、悲しみも、
すべて打ち消すように。

「フレイィーーー!!」
「キラーーーーー!!」

キラと私の叫びは、暗闇の宇宙を越えて、互いの想いを伝えた。

トリィは、キラが死んだと思って自分を誤魔化そうとする私に、キラへの想いを気づかせた。
それから私は自分自身も死んだも同然の辛さを味わった。

だけど、悲しくても、辛くても、それを乗り越えれば、より強い繋がりが生まれる。
今、キラの声を耳にした私は、それが実感できる。
ひょっとして、トリィは、こうなることまで知っていたの?

「キラ、キラーーーー!」 私は、想いをこめて、いつまでも叫びつづけた。

生きていたキラの声を聞けた…… だけど、ドミニオンに回収された私は、キラの顔さえ
見ることができなかった……

* * *

私がクルーゼからドミニオンへ運んだ鍵のディスク。戦争を終わらせる鍵。そう思っていた。
だけど、それは、核を解放するディスク。さらに悲惨な戦争。あのクルーゼが望んでいたものは……
許されない罪の意識。それを感じながらも、私には、すでに強い意思が生まれていた。

── 会いたい。キラに会いたい!

私はドミニオンへの乗艦を志願した。アークエンジェルを追いかけるために。
昇進し、ドミニオンの艦長になっていたバジルール少佐は、私のことを理解して、
通信士としてブリッジに置いてくれた。

私は、激しい戦争を目の当たりにしながらも、歯を食い縛って、ブリッジからアークエンジェルの
行方を追い続けた。

…… キラに会いたくて。謝りたくて。
私と一緒に居た、みんなに謝りたくて。何も知らなかった私を……

そして、キラに、せめて一言でも、私の想いを伝えたくて。
もしも…… もしも、許してくれるのなら、キラのいる、トリィのいる、あの部屋へ戻りたくて。

そして……
戦争は、そんな私の想いさえ飲み込んだ……

届かなかった。後、一歩のところで…… キラにも…… トリィにも……

675私の想いが名無しを守るわ:2004/06/09(水) 10:27
さよならトリィ作者さま
フレイ様が…!!!
ラスト一回、腹をくくって読ませていただきます
でも涙で前が見えないかも知れない…

676私の想いが名無しを守るわ:2004/06/09(水) 13:42
本編のフレイ様が本当に考えていた事のようなお話ですね>さよならトリィ
短期間でこんなお話が作れる職人さんすごい!
毎日更新を心待ちにしています

677さよならトリィ 8/8:2004/06/10(木) 06:18
[さよならトリィ]

トリィが飛んで来る。私に向かって飛んで来る。

── トリィ……
<トリィ! トリィ!>

── トリィ、やっと会えた
<トリィ!!>

トリィは再会を喜ぶように、私の目の前で翼を盛んに羽ばたいている。トリィの瞳が、私を
ジッと覗きこむ。そんな、トリィに、私は今までに無い笑顔を向ける。解放された私の心は、
とても素直に私を振る舞わせる。

やがて、トリィは私の胸に飛び込んできた。それを私の手は受け止めようとする。
だけど、トリィは私の手をすり抜け、私の胸の中を突き抜けて通り過ぎる。

<トリィ……?>

トリィは不思議そうな顔をする。悲しそうな顔をする。私もトリィの、そんな顔を見て、
少し表情を曇らせる。

── トリィごめんね、私、届かなくて…… あなたにも…… キラにも……
<ト……リ……ィ……>

── ごめんね。トリィごめんね……
<トリィ…… トリィ……>

宇宙。周りは一面の星。既に、そこで繰り広げられていた暴力的な強い光の興亡は影を潜め、
見回す限り、まるで夢のように幻想的な淡い光で彩られている。その中、トリィは、私の周りを
舞うように飛び続ける。

── トリィ、ありがとう。元気づけてくれてありがとう。トリィ、私、あなたに会えて良かった。
<トリィ! トリィ! トリィ! トリィ! トリィ! ……>

トリィは精一杯叫びながら、私の周りを回り続ける。私を逃さないかのように。

だけど、私は別れの時が近づいていることを知っている。
私はトリィに指差した。

── トリィ、キラがいる。私はいいから、あそこまで飛びなさい
<トリィ?>

── カガリとキラの友達が、あっちにいる。その二人をキラのところまで連れて行きなさい
<トリ? トリィ……>

── ここで、お別れよトリィ
<トリィ……>

── 今まで、ありがとうトリィ。私を助けてくれて。私に本当のことを気づかせてくれて。勇気づけてくれて。
<トリ……ィ……>

── トリィごめんね、そんなに、私を助けてくれたのに。私、お返しできなくて……
<ト……リ……>

── 悲しまないでトリィ。私はキラと一緒にいるから。
<トリ……?>

── キラには、さっき伝えたから。私の本当の想いは、ずっとキラの中にあるから。
<トリィ…………>

── さよなら。キラを、お願いトリィ。
<トリィ!>

トリィは、キラの方向に体を向けた。そして、私を、もう一度振り向いた。私はトリィに無言で頷いた。
トリィは飛び去って行った。

── さよならトリィ

それが最後の言葉だった。トリィ、キラ、本当に今までありがとう。
さよならトリィ。

さよならキラ……

678さよならトリィ 作者:2004/06/10(木) 06:32
「さよならトリィ」これで終わります。

最初に、すべて書き上げてから投下を始めたんですが、途中、議論の行方を見守ったり、
それを元に、再度、見直したりして投下が遅くなってしまいました。むしろ、加筆しているうちに、
描写がエスカレートしていった感もあります

テンプレはあるとしても、まだ、仕切り直したスレの雰囲気が定まっていないため、
フレイの心情描写以外の実際に起こった出来事は、本編に忠実であることを心がけました。
そのため、フレイの最後は変えられませんでした。ただ、今までの私の作品では、それから
逃げていただけに、今回、自分なりに、きちんと描けて良かったと思っています。

SEEDのSSを書き始めてから読んだ某小説の書き方の本で、「猫を猫として書く」
という主張がありました。動物を作中の人物の比喩として使うものでは無いと言うことなのですが、
それでも、私の中では、やはり、トリィは、ロボットでも鳥でも無く、『トリィ』という、
ひとつのキャラクターとなっています。そのつもりでトリィの意思が見えるように描いてきました。

これは、前作の長編で、量産のオモチャの改造品という設定改変を加えたトリィでも同じでした。
設定改変は、ミリアリアとも絡めやすくなるという意味合いもありました。

まとめてのコメントになりますが、感想つけてくれた方々、ありがとうございました。
投下の励みになりました。

SSスレも少し落ち着いてきたようですし、また、いろいろな方の作品が集まることを祈っています。
私も、また、なにか思い付きましたら、投下します。

679夢と希望・11:2004/06/10(木) 23:16
「パパが?」
フレイが可愛い笑顔になった。
「ええ、先遣隊と一緒に来てるらしいわよ、フレイのことは知らないでしょうけど、こっちの乗員名簿を送ったわ」
ミリアリアはそう言うとフレイの楽しそうな笑顔に自然と自分も微笑んだ。
ミリアリアとフレイは同室になっている、寝ているフレイをミリアリアが起こしたのだ。

<大西洋連邦事務次官、ジョ−ジ・アルスタ−だ、まずは民間人の救助に尽力してくれたことに礼を言いたい>
マリュ−は思いあたる、フレイの父のことは、ミリアリアから聞いていた、こうして、あとから考えてみると、政府の重要人物の令嬢を保護できたことは、今後の評価に役にたつだろう、キラのおかげだ。
<あ・・・その・・・乗員名簿の中に、私の娘、フレイ・アルスタ−の名があったのだが・・・できれば顔を見せてくれるとありがたい・・・>
ア−クエンジェルクル−達はきょとんとした顔だ、ここは軍艦ということが分かっているのだろうか・・・気持ちは分かるが・・・。
「こういう人なのよね・・・フレイのお父さんって、ね、サイ?」
戻ったミリアリアが告げるとサイは困ったように・・・。
「俺はよく知らないよ・・・」
と告げた。

「これは・・・」
「どうしたの?」
「ジャマ−です!エリア一帯、干渉を受けています!」
それが何を意味するか、誰もがはっきりと分かっていた。
先遣隊は、敵に見つかったのだ。

ア−クエンジェル艦内に、警報が鳴り響いた、自室を飛び出したキラはパイロットロッカ−へと向かう、ちょうどラクスの部屋の前を通り過ぎようとしていたとき、ドアが開いた。
「また!」
どうなってるんだここの鍵は?ここは軍艦だぞ?
ラクスは部屋から完全に出てくると大きな目できょとんとキラを見つめた。
「なんですの?急ににぎやかに・・・」
「戦闘配備なんです、さ、中に入ってください」
「まあ・・・戦いになるんですの?」
「そうです、てか・・・もうなってます」
「キラ様もフレイさんも戦われるのですか?」
どうしてフレイも・・・と思ったが・・・曇りのない淡い瞳で見つめられ、一瞬キラは言葉につまった。
「とにかく、部屋から出ないでください、今度こそ、いいですね?」
せめて優しい口調で言い、ラクスを部屋に押し込み、また鍵をかけ直した。

680私の想いが名無しを守るわ:2004/06/11(金) 11:33
>>さよならトリィ
お疲れ様でした!
フレイ様が死んじゃうという現実は、
彼女のファンの全員が向き合わねばならないつらい現実なんですが…
こういう形のSSにしてくださった事で
彼女も浮かばれるんじゃないのかな、と思いました。
放映最後でトリイがキラの元へアスランとカガリを案内したシーンと
今回のSSが合わさって、何ともいえない気分になりました。
投下終了時のみのコメントでも、凄く真剣に作品に取り組んでいらっしゃるんだなあ、
と感動いたしました。
自分もSSを書くのですが、一作一作にチャレンジ精神を持ち込んで
自分を甘やかさない作者様の姿勢は見習いたいです。
そして、こういう連載形式で話数が決まっている作品は
内容が吟味されているのが感じられ、読者の立場からは大歓迎です!
素敵な作品をありがとうございました。
次の作品投下を心からお待ちいたしております。

681夢と希望・12:2004/06/11(金) 21:47
「キラ!」

ラクスの部屋を通り過ぎたキラは途中でフレイと会う。
不安げな顔のフレイはキラの腕を強くつかむと揺さぶった。
「戦闘配備ってどういうこと?パパの船は?」
パパの船?どういうことなんだろう?事情を聞かされてないキラは内心戸惑いつつ、憧れている少女の前に心臓が高鳴った。
「だ、大丈夫よね?パパの船やられたりしないわよね?ね?キラ!」
よく分からないが、とにかく行かなければ、キラはフレイの欲しがっている言葉で安心させるためにあせったように言った。

「・・・だ、大丈夫だよフレイ、僕達も行くから」
無理に微笑むと、きつく腕をつかんでいる指を外す、フレイはなおも不安げだったが、走り出すキラを見送りながら手を合わせると目を閉じた。

着替えて格納庫へ飛び込むと、ムウの乗ったゼロはすでに発進していた。
ストライクのシ−トに着くと、ミリアリアが状況を教えてくれた。
<敵はナスカ級にジンが三機、それとイ−ジスがいるわ!気をつけて!>
イ−ジス・・・その単語に・・・キラの顔は曇った、そしてミリアリアからの通信が再び入った。
<キラ!先遣隊にはフレイのお父さんがいるの!頼むわ!>
そういうことだったのか・・・。
「分かった・・・」

その頃フレイは・・・ラクスの部屋にいた。
「ラクスさん・・・私・・・パパ、大丈夫かな・・・」
「フレイさん・・・大丈夫ですわ、キラ様が助けてくれます・・・」

682私の想いが名無しを守るわ:2004/06/11(金) 23:51
>>さよならトリィ
連載お疲れ様でした!
フレイたま一人称SSは大好きなので
フレイたまやトリィと一緒になって読ませていただきました。
他の登場人物が動かないので余計に感情移入しやすかったです。
なんていうのか、職人さんの腕なのかな、読みやすくてよかったです。
やっぱり本編の悲劇のヒロインであるフレイたまが大好きだって再確認しました。

683私の想いが名無しを守るわ:2004/06/12(土) 03:22
>さよならトリィ
連載終了お疲れ様でした。
短編でとても心に残るラストでした。
個人的には最後にフレイ様の思いがトリィに乗り移って
アスランとカガリにキラの場所を教えてくれたんじゃないかな、なんて思ったりして。
次の作品も楽しみにしてます!

684私の想いが名無しを守るわ:2004/06/12(土) 16:29
>>さよならトリィ
今日まとめて全部読みました。
フレイ様せつな杉…
素敵なお話をありがとうございました!

685私の想いが名無しを守るわ:2004/06/13(日) 13:26
>>さよならトリィ、
良かったです
光フレイたま、やすらかだったんですね
こういうお話大好きなので、またよろしくお願いいたします

686私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 19:41
>>さよならトリィ
いいですね、本当に切なげでした、感動しました、また新投下をお待ちしてます。
>>夢と希望
新投下どうもです、頑張ってください。
本編とまず違うところはフレイ様がラクスを怖がらず親しく接しているところなどですね、これからもうどう変わっていくかなどなど楽しみです。

それにしても・・・感想書いてる人達って少し冷たいですね。
私はどんなSSでも感想書きますけどね。

687私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 20:24
>さよならトリィ
自分はしがない絵描きなんですが、
ラストのトリィとフレイ様にすごくインスパイアされました。
イラストを描いて見たいと思わせるシーンでした…
字の持つ力って読んだ人に絵のように直接的ではないけれど
その分幅広い影響があると思われます。
すばらしいSSをありがとうございました。

>男フレイシリーズ
次投下、すごくすごく待っています!
大好きなシリーズですのでどうなるか超楽しみです!
誰かも書いてらっしゃいましたが、
男フレイ様も絵にして見たいキャラですね。
頑張ってください!

688私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 23:32
トリィ>> 短いけどすごく胸に迫りました。
個人的にはトリィに当たるフレイ様の回が切なかったです。
暁の車が聞こえてきそうでした。
次回作も楽しみにしていますね。

689私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 23:43
>>トリィ  
フレイ様がトリィに苛立ちをぶつけるあたり、本当に胸が痛くなりました
なんだか暁の車が聞こえてきそうで、死にネタですが無茶苦茶好みなお話で、良かったです。

690私の想いが名無しを守るわ:2004/06/14(月) 23:45
すみません。
投下ミスしたと思ったので同じ内容のものを投下しました。
>>688>>689は自分が書いてます。

691私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 05:45
>>さよならトリィ
ウワァァァン・゚・(ノД`)・゚・。
えらく感想がついているので纏めて読ませてもらい
住人ツボにガツンと入れられた気分です!
フレイ様好きよ、初心に帰れ的ないい作品でした。
短期連載、お疲れ様でした。

692私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 07:51
>>さよならトリィ
お疲れ様でした!次もまたお待ちしてます

>>686
たしかに無視は酷いですね、いつからここの感想者って冷たい人達ばがりになったんだ!?あ、私もその一人か^^

693私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 10:52
>>帰還
>> 散った花、実る果実
こっそりとこの2作の続きを待ち続けてます。
ナタル&フレイのドミでのお話読みたいので。

694私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 11:35
>>686>>692

あえて感想を書かないんじゃなくて、単にみんなその作品を読んでないだけじゃないかな?
どの作品を読み、どの作品に感想を寄せるかは読者の自由だからね。
冷たいと思うなら個人サイトでやったほうがいいですよ。

695私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:30
自作自演につられすぎだ。お前ら。
>>686は夢と希望の作者。あんなのを誉める人間なんて
全世界探しても片手で数えるほどしかいない。

696私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:42
>>695
あんた言い過ぎだよ、そこまで言うか?普通、最近相手の気持ちなどを考えずにはっきり言う住人が多い。

697私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:47
>>あんなのを誉める人間なんて。
この発言は暴言だな、どんな気持ちでこういう発言したんだろうか、心無い人もいるんだね、ていうか作者の自作自演ってなんで決め付けてるんだよ!

698私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:49
>>696
漏れと荒らしはスル−して。

699私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:56
感想とSS以外の書き込みはご遠慮願います。

700私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:59
自分は素直に
>>さよならトリィ
に感動したのでスレ活性化の願いを込めて感想を書きました。
本当にいい作品だと思いました。

701私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 12:59
【夢と希望作者】=【過去の傷作者】

702私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:04
>>701
いいかげんにしろ!しつこすぎだよ。

703私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:04
>>701
いいかげんにしろ!しつこすぎだよ。

704私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:17
>>701
あえて言うことはない。
みんな知ってても生暖かく見守っていたんだから。

705私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:31
とりあえずこれでまた連載止まるだろうな、いやもう来ないかもな・・・。
くだらない話し合いと695のような人を侮辱したような暴言によってだ。

706私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 13:39
>>705
又擁護&貶め作戦で荒らすつもり?

707私の想いが名無しを守るわ:2004/06/15(火) 16:45
以後この件については避難所でどうぞ。
発端はどうやら>>686のようだが、感想以外の意見は避難所でやってくれ。
このレスに対するレスも、もしあるなら避難所で書いてくれ。

では以後SS感想で。
職人さんたち、ほんとにお騒がせしました。

708私の想いが名無しを守るわ:2004/06/16(水) 10:34
えっと…
とりあえず雰囲気を変えるために感想書かせていただきます。
>>さよならトリィ、
短いお話なので読みやすく、フレイ様の感情がストレートに伝わってくる
余韻が残る素敵なストーリーでした。
自分が今まで読んだフレイ様死のストーリーは、
キラ視点や残された人視点が多かったのですが、
フレイ様視点だからこそ、読んだ後に妙に共感を覚えたのかなあと思います。
すごく良かったです。
どうもありがとうございました。
こんな状態ですが、ぜひ次の作品も読ませて頂きたいです。

709リヴァオタと八アスのためでなく:2004/06/16(水) 12:13
ラスボスとの決闘のとき,カガリがやってきた。
「キラ、打ち上げ花火もって来たぞ」
「なにほんとか!」
「いまから飛ばすからちゃんと見ろよ!」
ポチ
ドガァァァァァァァァァァンンンンンン
コロニーだけでなく地球,月,火星なども地球破壊爆弾で消滅した。
全宇宙は粉々に砕け散り,生き物はすべて絶滅した。
この物語はあの小説のラストのようなものだった。

終わり

710私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 06:55
>>リヴァオタ
連載終了お疲れさん。
独特の世界観と語り口で、なかなか感想を付けられなかったが、
巨人の星ネタや、藤子不二雄作品ランキングなど、古いネタでは楽しませてもろた。
また、どこかで新しい作品が見られること期待してる。

711私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 10:51
某小説が何故感想がなかったか

・腐女子臭がする
・犯罪行為を堂々とする
・過去の荒らしの作品、又は過去の荒らしの作品と似た文体である
・パクり部分以外の文章が稚拙極まりない。
・初めての投下。と嘘の疑惑を盛り立てる発言をした事。
・擁護、良感想は殆ど自作自演を疑わせる、特徴ある物であること。
・サイなどの良行動を全てフレイ様に分担させる事で、
ファンですら引く位に原作との剥離が甚だしいこと。
・上記の行動をさせるために行動に無理が生じ、余計に作品の質を下げている事
・誤字、脱字、文法ミスの多さ

712私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 10:52
誤爆スマソ。

713私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 11:26
>>711
そんなことはどうでもいい、他の職人さんに迷惑だからやめろ。

714私の想いが名無しを守るわ:2004/06/17(木) 12:02
過去の放置による評判悪化の憂き目を繰り返す気はない。

続きは避難所で。

715キラ(♀)×フレイ(♂)・46−1:2004/06/18(金) 00:56
「こちらキラよ。ねぇ、カガリ。どこにいるの?いたら返事をして」
これで何度目だろうか。キラは、凶悪犯の母親が自首を訴えかけるかのような必死さで、
通信機に呼びかけたが、全く応答は無い。キラがブルーになり掛けた瞬間、通信機の
応答ランプが赤く点滅した。
「はい、こちらキラです!カガリ!?それとも、フレ……」
「キラ、俺だ。そろそろ日が暮れてきたから、俺達も一端引き上げるぞ」
少女漫画のヒロインのようにパッと瞳を輝かせたキラは、大慌てで通信機のチャンネルを
合わせたが、ノイズ混じりにフラガの声が聞こえてきたので、軽く意気消沈する。
「ま…待ってください、フラガさん。もう少しだけ…」
「駄目だ。艦長からも、二時間したら戻るように言われただろうに。
夜になれば、NJの影響が一層濃くなる上に、視界まで効かなくなる。
これじゃ、どうにも探しようがないだろ?」
「で…でも……」
意志薄弱で、今まで易々と命令を受託してきたキラにしては珍しく執拗に食い下がる。
この付近は、未だに敵の勢力圏内だし、この機会に、カガリ達を探し出せなかったら、
このまま彼らをMIA扱いして、先に進まれてしまうのでは…と危惧しているようだ。
そのことに思い当たったフラガは、優しい声色で、キラを諭しはじめた。

「心配するな、キラ。絶対にカガリ達を置き去りにはしないよ。
探索効率が悪いから、あくまで一度出直すだけだ。夜が明けたら、再び捜索開始だ」
「えっ!?ほ…本当ですか!?」
「俺達は軍人だ。緊急時となれば、左手か右手か辛い選択をしなければならない時もある。
でも、そうでない場合は、最後まで仲間を見捨てるような真似はしないさ」
「フラガさん…」
キラは神妙な顔つきでフラガの話しに聞き入っている。ここ最近、色々と不祥事
が相次いでいたので、キラの中で軍人の株は値崩れを続けていたのだが、
フラガの仲間想いの力説に、少しだけ再び株価が高騰しだしたみたいだ。
「まっ、そういう訳だ。お前の今の仕事は、明日の捜索に備えて、じっくり休むことだ。
もっとも、最近キラお嬢様は、あまり独り寝に慣れていないみたいだから、人恋しくて
なかなか寝付けないかもしれないけどな。ウッシシシ…」
「もうっ、フラガさんのエッチ!」
せっかくシリアスに決めた場面でさえも、ついつい要らぬボケをかましてしまうのが、
フラガ兄貴の病んだ性癖のようだ。キラは、モニター上のフラガのニヤケ面に軽く
デコピンを放つと、プゥーと頬を膨らませながら、乱雑に通信を切断した。
それから、海中をエール推進で泳いでいたストライクは、水泳のターンの要領で、
クルリと一回転して方向転換すると、アークエンジェルの方角へ帰投していく。
フラガのセクラハ発言に幾らか気分を害したようだが、キラは彼の忠言を受け入れ、
英気を養うことにしたらしい。


「ふうっ。大人って狡いよな」
キラの脹れっ面が消えた途端、光を反射した漆黒のモニターは鏡の役割を果たす。
鏡の中のフラガは、例の人好きのする笑顔で、フラガを嘘吐きと罵っている。
アークエンジェルの幹部達が、敵に捕捉される危険を承知の上で、彼らの探索に
拘るのは、人道的な見地故ではなく、カガリの政略的な価値に起因していた。
それなのにフラガは、この件を最近、上層部への信頼度が低下していると思われた
キラの信用回復のダシに利用したのだ。ここの所、大人達の不誠実な態度ばかりが
目に付くが、何時かは子供達と心を分かちあえる時が来るのだろうか。
「副長の事をあまり悪く言えないよな。むしろ、体裁を取り繕おうとする分だけ、
悪役に徹しようとするナタルより、俺の方がよっぽど性質が悪いかもな。でも…」
代謝行為という訳でもないが、フラガはマリューの人が良さそうな笑顔を思い浮かべた。
甘いかもしれないが、彼女なら、たとえカガリ達に何の利用価値がなかったとしても、
それでも損得勘定抜きで、子供たちの捜索を指示していただろう。
フラガが知っているマリュー・ラミアスとは、そういう女だった。

716キラ(♀)×フレイ(♂)・46−2:2004/06/18(金) 00:57
時刻は既に夕暮れ時。この時間帯のサドニス海近辺の島々は、夕日に照らされた
美しい紅海を堪能できるのだが、島全体がどんよりとした雲に覆われ、日の恩恵を
受けられない海は灰を溶かしたかのように濁り、島本来の美観を大きく損ねている。
その灰色の海と同じ色をしたフェイズシフト・ダウン中のイージスガンダムは、
ボディの彼方此方から水滴を滴らせて、抜かるんだ大地の上に寝そべっている。
イージスの近辺には、黒と金色の髪をした二人の少年が、崖に背も垂れるような
体勢で座っている。アスランとカガリだ。フレイは、何故かこの場にはいない。
今現在、雨は止んでいるが、突然の夕立にでも降られたのか、二人とも、軍服と
色の異なる髪の毛をビショビショに濡らしている。
カガリはチラリと、自分の真横にいるアスランの横顔を覗く。アスランは体育座り
の姿勢のまま、呆けた瞳で目の前の空間を見つめている。
突然、崖上の草木に貯まっていた水滴が、その重さに耐えられずに、一塊の水の弾丸を
レールガンのように崖下に弾き出した。水の塊は真下にいたアスランの頭に直撃したが、
アスランはピクリとも動かない。黒髪からポタポタと水滴を滴らせながら、まるで雨中
で乱暴され掛けた女性のような放心した表情で、心ここにあらずといった状態だ。

あいつ…。
カガリは、見えない鎖で拘束されているかのようなアスランの無気力な姿を、
彼にしては珍しく、同情した瞳で見つめている。
アスランとか言ったっけ?あいつ、本当にキラのことが好きなんだな。



「ア…アスラン君?」
フレイの問い掛けに無言のまま、アスランは彼の襟首を掴むと、左腕一本で軽々と
フレイを宙吊りにする。彼ら三人のモヤモヤとした内面とシンクロしたかのように、
突如、黒雲が、東の海岸から急速に流れてきて、島内を隈なく覆った。
フレイが右頬に冷たい水滴の存在を感じた刹那、鋭い灼熱感がフレイの逆側の頬を襲った。
予想外の事態に唖然とするカガリの目前で、アスランに渾身の力でぶん殴られたフレイは、
派手に吹っ飛ばされて、崖岩に背中をぶつけると、そのままズルズルと沈み込んだ。

「うぉおぉおおぉ…………!!!!」
アスランは獣のように咆哮すると、そのまま瀕死のフレイに馬乗りになり、再び利き腕
を大きく振りかぶった。フレイの後頭部は、硬い岩石の上に置かれており、このまま
コーディネイターの腕力で殴られたら、パンチの威力よりも、岩石との衝突でフレイの
頭蓋骨が砕かれるだろう。
「お…おい、待てよ、アスラン!?止めろぉ〜!!」
理性の箍が外れているとしか思えないアスランが、本気でフレイを殺そうとしていると
悟ったカガリは、縛られた体勢のまま、アスランに体当たりを敢行する。
側面からの予期せぬ奇襲に、アスランはカガリ共々もつれ合うように、崖側に転がった。
アスランが昏睡中のフレイから引き離されたと同時に、物凄い勢いでスコールが降り始める。
ミサイルのような大粒の雨は、水捌けの悪いここら一帯の大地を水浸しにし、ものの数秒
と経たない内に、地面に転がり込んだ三人の髪は雨で濡れ、軍服は泥塗れになる。

「き…貴様!?なぜ、庇う!?」
「落ち着け、アスラン!お前、自分が何をしているか判っているのか!?」
血走った目付きで、今度はカガリの襟首を締め上げるアスランに臆することなく、
カガリは堂々とアスランを睨み返しながら、彼の暴挙を訴える。
カガリ自身も、一度は本気でフレイを射殺そうとした身なのだ。
ならば、余計なチョッカイを掛けずに諦観し、黙ってアスランに、
フレイを殴り殺させるに任せておけば良かった筈である。
ただ、身動きの取れない捕虜に、理不尽な理由で一方的な加虐を加えようとする構図
がカガリの潔癖な倫理観に引っ掛かり、ほとんど反射的に危地に飛び込んでしまった。
何よりも、今のアスランを支配している殺意が、極めて衝動に近い感情である事実を
カガリは知っていたので、アスラン自身の為にも、彼の軽挙を止める必要性があった。

717キラ(♀)×フレイ(♂)・46−3:2004/06/18(金) 00:57
捕虜の分際でのカガリの叱咤に、アスランは忌々しそうにカガリを睨んだが、流石に
カガリにまで手を挙げようとはしなかった。こうしている間にも、雨足はさらに加速
し続け、フレイに挑発され熱し上がったアスランの激情を、少しずつ醒ましはじめる。
その時、縛られた状態のまま、仰向けに寝そべっていたフレイが蘇生し、彼の唇が動いた。

「………何を………怒っているんだい……………アスラン君?」
フレイはノロノロとした緩慢な動作で、座したままの体勢で上半身だけを起き上がらせる。
彼の顔は泥水で汚れ、切れた唇の中から真っ赤な血が滴り落ちている。
「……君にはラクスという、れっきとした許婚がいるのだろう?
もしや、ラクスを正妻とし、キラを愛人として囲む邪な計画でも巡らせていたのかい?」
危うく殺害されかけたフレイだが、淡々とアスランの非を打ち鳴らすフレイの態度からは、
微塵も怒りも恐怖心も感じられない。能面のような無表情に、妙に危機感の欠落した
冷めた瞳でじっとアスランを見つめ、逆にその静けさが、スコールのシャワーを浴びて、
正気に返りつつあるアスランを怯ませた。

「…以前、君はキラに、民間人を人質にするのは卑劣だとか、偉そうに説教したらしいね?
なら、拘束中の捕虜に私怨で暴行を加えるのが、君とザフトの信じる正義なわけかい?」
フレイは最後まで、強者に媚いることなく、強者が犯した不条理を訴えた。
その結果、ここで屍を晒すことになったとしても、アスランが筋の通らぬ逆恨みで、
フレイを害しようした事実だけは、彼の胸の内に永久に刻み込ませるつもりだ。


フレイから命懸けの告訴を受けたアスランは、無言のままガックリと肩を落とした。
今日までザフトの軍人として、数え切れない程の敵兵を殺してきたが、全ては祖国と正義
の為と信じた信念に支えられての行動であり、後ろ暗さを感じたことは一度もない。
だが、アスランが目の前で行った虐待は、明らかに正義ではなく、戦争ですらない。
彼は私怨で、目の前のナチュラルの兵士を、死刑(リンチ)にしようとしたのだ。
正規の軍人でありながら、仲間の死を冒涜されたとかの高次な話しではなく、痴話喧嘩
レベルの低次な挑発に惑わされて、理性を喪失してしまったという己の馬鹿さ加減が
信じられなくて、アスランは大幅に精神を失調させた。

「僕を殺す気がないのなら、縄を解いてくれないか?この傷の治療がしたい」
フレイがさり気無く、傷口をアピールし、アスランはまるでフレイの言いなりなった
かのように、彼の縄を解いた。こうしてフレイは、久方振りに自由を確保した。



フレイは手鏡を覗き込みながら、救急用バックから取り出したオキシドールを
染み込ませた綿を傷口に当てて、治癒に努める。
妙に口の奥がズキズキ痛むと思ったら、奥歯が一本叩き折れている。
「痛ぅ!!あの馬鹿力め!」
彼にしては凡百な悪口でアスランを罵りながら、フレイは折れた歯を吐き出したが、
コーディネイターの男子に本気で殴られて、生命があったどころか、自慢の高い鼻
も潰されずに、歯一本程度の被害で済んだのは、むしろ僥倖だろう。

一通りの応急治療を済ませ、錠剤の痛み止めを飲んだら、少し痛みが和らいできた。
痛みが引いてくるのと同時に、フレイの中から、今まで抑えこんできた怒りの感情
がフツフツと噴出してきた。
「こいつもか…」
フレイは項垂れたアスランを、醒めた瞳で見下ろしながら、心の中でそう独白する。
ジュリエットだけではない。ロミオの側も無意識に結託し、茶番を演じてきたのだ。
ヘリオポリスを脱した当時のアークエンジェルと、未熟な素人パイロットだったキラ。
過酷な環境下で、ザフトの精鋭部隊たるクルーゼ隊に度々襲われながらも、
キラが今日まで生き延びてこれた裏面のカラクリを、フレイを垣間見た気分だ。

718キラ(♀)×フレイ(♂)・46−4:2004/06/18(金) 00:58
「こいつら、ふざけやがって!戦争を愚弄するにも程がある!」
互いに愛し合っている者同士が、敵と味方に別れて、殺しあうのは確かに悲劇だろう。
だが、その悲劇に無理やり巻き込まれた者がいたとすれば、それは、むしろ喜劇でないか?
戦場では、人の生命ほど儚い存在は他にない。
己の全知全能を出し尽くした所で、報われるとは限らず、戦いを支配する何者か(神?)
の些細な気紛れにより、理不尽な死を賜るケースもしばし見受けられるが、
それでも戦争に携わった者達は、大切な何かの為に必死に戦っているのだ。
なのに、中には、そういう弱者の生命賭けの足掻きを嘲笑するかのように、敵味方の
枠組みを無視し、殺しても良い味方と殺したくない敵とを分類した上で、あまつさえ、
その絶大なる能力故に、自分の身さえも余裕で守れる強者が存在していたりする。
キラやアスラン君という闘神の申し子達が、まさしくそれだ。

「お前たちは神の身遣いか!?全ての人間が、自分と仲間を守ろうと戦っている戦場で、
殺す相手を選り分ける権利が、貴様らには与えられているとでも言うのか!?」
フレイがキラ個人を目の敵にしている本当の理由は、彼女の戦争そのものを冒涜する
許されざる背信行為に、自分の母親も巻き込まれたと信じ込んだからだ。
意外かも知れないが、フレイは直接、母を殺したザフトをそれほど憎んでもいないし、
コーディネイターを宇宙から抹殺しようという馬鹿げた妄執に囚われている訳でもない。
殺し合いの場には、無辜の被害者などという奇特な人種は、例外なく存在しないのだから。

「『ペンは剣よりも強し』だ。神様も法律も、奴らを罰しないというのなら、僕が裁く。
力で、全ての暴挙が罷り通ると信じている奴らに、言葉の恐ろしさを思い知らせてやる!」
個人として見れば、キラが自分などよりはるかに善良な人間で、母を見殺した一件も、
彼女自身には何らの悪意も持ち合わせていなかったことなどは、フレイも承知している。
フレイが問題としているのは、人柄の善悪ではなく、行為の善悪なのだ。
戦場での力ある者の『手抜き行為』を立証するのは、至難というよりも不可能だ。
これは、ある種の超越者だけに許された合法的犯罪に等しいからだ。
ならば、こちらも同等の手段によって、報復を実行する以外に道はない。
フレイならば、それが可能な筈である。
何故なら、彼は口先一つで他者の運命を自在に操れる、言霊(※)の魔術師だからだ。
※(言葉に内在する霊力。昔は言語が発せられると、その内容が具現化すると信じていた)

フレイは意趣返しとしての合法的犯罪性に拘っているが、毒殺の準備を別にすれば、
実際、今回の復讐劇の中で、法に接触する行為は何一つ犯さなかった。
キラに戦いを強要した覚えはないし、日常生活で誰もが使用しうる範囲の嘘方便なら
巧みに用いたが、詐欺罪に問われるレベルの深刻な虚言は慎重に避けてきた。
(だから、フレイはキラに「愛している」とさえ、囁いたことは一度もない)
全てはキラが、自分の責任において、勝手に仕出かした事だ。
フレイに在ったのは、「自分がこう言えば、きっと彼女はこう動くだろう」と予測し、
それを躊躇なく実行してのけた、明確な悪意の感情だけである。
そして、「手抜き行為」同様に、「悪意」を裁ける法律は、世界中のどこにも存在しない。

シェークスピアの戯曲通りに、ジュリエットにはロミオと心中してもらう。
そこから先のシナリオは白紙だが、軍属として過酷な最前線で戦っている以上、
キラという盾を失ったフレイの命数が尽きるのも、そう遠い先の話ではないだろう。
いかにフレイが、自分のインナースペースに高貴な悪魔を飼い馴らしていたとしても、
その魔族の魂を覆う彼の肉体そのものは、通常の人間のそれと何ら変わらない。
タカツキ君や、非武装のシャトルを撃ち落したというデュエルのパイロットのような、
脊髄反射で引き金を引ける類の人間の放った銃弾の一発でも、簡単に死ねるのだ。
フレイは自分の無謬性を過信してはいなかったし、何よりも、母のいないこの世紀末
の世界には、もはや、何の未練も無かった。

フレイ独特の復讐動機は、世間一般の感性に照らし合わせれば、到底、理解や共感が
得られるような代物ではなく、狂人の逆恨みの烙印を押された事は間違いないだろう。
またフレイは、キラへの憎悪が無尽蔵に溢れ出ていた初期の頃に比べて、
最近は己が怒りを定期的に確認し鼓舞し続けない事には、キラへの悪意を維持
できなくなりつつある、自身の心情変化には全く気がついていなかった。

719キラ(♀)×フレイ(♂)・46−5:2004/06/18(金) 00:58
フレイは心中から湧き上がる強い軽蔑感を押し隠して、自分の殻の中に閉じこもって
いるアスランを眺める。昂ぶる感情に反応するかのように歯欠けの歯茎がズキリと痛む。
高い代償を支払わされはしたが、お陰で、今まで風聞でしか知りえなかったアスラン君
の実像を、フレイは凡そ把握することが出来た。
「軍人として有能で、個人としても善良だが、軍隊という枠組みから一歩でも外に出たら、
まだまだ人間としての完成度には程遠く、良家のお坊ちゃまの域は出ていない」
それが、フレイがアスランに下した評価の全てだ。
世の中には、他人の善意や純粋(ピュア)な想いを正確に理解した上で、それを悪意を
以って踏み躙れる、フレイのような確信犯的な小悪党が結構存在しているのだ。
アスラン君は、そういう輩に踊らされて犬死するか、または人間に絶望し、今度は彼自身
が世界を滅ぼす魔王へと転身を果たしてしまうようなタイプだとフレイには思われた。

「プラントが世襲制度じゃなくて残念だな。アスラン君が将来、父親の後を引き継ぐ
ことにでもなれば、プラントとの外交交渉も随分と遣り易くなりそうなんだけどな」
一瞬、フレイはそう考えたが、そのアスランの婚約者で、現最高評議会議長の令嬢
であるピンク頭のお姫様の笑顔を思い浮かべた瞬間、慌ててその思考を打ち消した。
「危ない、危ない。そうなると、あの歌姫がプラントの指導者となるわけか」
酢を一気飲みしたような渋い表情を浮かべ、フレイは胃の辺りを撫で始めた。

フレイは、コーディネイター云々を抜きにして、ラクスが嫌いだった。
あの天然を装ったお姫様に、どことなく自分と似たペテンの匂いを嗅ぎ取ったからだ。
他人を騙せる詐欺師は世間にたくさん溢れているし、フレイもまた、その中の一人である。
けど、自分を騙せる詐欺師となると、どうだろう?
それは稀有というより奇跡に属する領域だ。何故なら、ヒトは他人を騙す事は出来ても、
基本的には自分自身にだけは、嘘を吐けない生き物だからだ。
「アレは、己自身も含めた総ての生命体を欺ける希代のペテン師だ」
フレイはラクス・クラインの正体をそう睨んでいる。
そういう意味では、普段、彼女が見せている天然お嬢様の仮面も、ラクスにしてみれば、
演技をしている自覚はないのだろう。ラクス自身、今はまだ卵の殻の中身を知らないのだ。

「あの女、今はアイドルの真似事をして満足しているみたいだが、そのうち自分の本性に
気づいたら、宇宙をあっと震撼させるような、とんでもない真似をやらかすのではないか?」
フレイは何らの根拠も無しに、頑なにラクスの性根をそう決め付けていた。
尚、このフレイの妄想染みた予言ないし言霊は、後日、完璧に現実の世界の出来事となる。



雨は既に止んでいる。
先のドサクサに紛れて、そのまま要領良く身柄の自由を確保したフレイは、
「食事の準備をしてくる」と宣言して、この場所から姿を消し、後には
カガリとフレイの二人だけが、取り残された。
未だ拘束中のカガリの存在を無視し、ひたすら自分独りの世界に閉じこもって
いるアスランの姿に、カガリは憐憫に近い感情を抱いた。
「あいつ、本当にキラのことが好きなんだな」
先のアスランの無様な醜態を見るにつけ、フレイほどの洞察力を必要としなくても、
アスランの本当の想いが誰に向けられているのか、カガリにも痛いほど良く分かった。
彼にはプラントに許婚がいるみたいだが、カガリ自身も親族から顔も知らない婚約者を
押し付けられそうになった口なので、身分の高い家柄の者には、昔の封建社会さながらに、
自由恋愛など許されてはいない現実をカガリは良く知っていた。

「キラの隣にいるのが、あいつだったらな…」
カガリ自身の恋愛感にマッチしたからかも知れないが、フレイの手馴れたスマートな
恋愛感覚よりも、アスランの不器用な誠実さの方にカガリは好感を抱いた。
少なくとも、キラを支えていたのが、不誠実の塊のフレイではなく、精神の骨格の半分は
優しさで構成されているアスランだったら、カガリも今ほどヤキモキしなかった筈である。
だが、現実にはアスランこそが、AAと今のキラの生命を脅かしている敵なのだ。
信用ならぬ危険な味方と、敬意に値する敵。キラを巡るその矛盾した構図が、いつかは
逆転する時は、来るのか?来ぬのか? 予言者ではないカガリには分からなかった。

720キラ(♀)×フレイ(♂)・46−6:2004/06/18(金) 00:59
日が完全に落ち、真っ暗闇になった頃、ようやく、フレイは二人の前に戻ってきた。
茸、果実、草花、木の実などが大量に詰まったらしいリュックを左腰に抱え、
どこかで捕らえてきたらしい野兎を、細長い耳を右手で掴んで、ぶら提げている。
「おっ?、ちゃんと火を炊いといてくれたみたいだね」
あれから、少しだけ精神の失調を回復させたアスランが、濡れた服を乾かす為に
仕込んだ焚き火の存在に気づいたフレイは、感心したように呟き、今までフレイの
手の内で大人しくしていた兎が、本能的に危険を感じ取ったのか、突如暴れだした。
「こらっ、暴れるんじゃない。味が落ちるだろう。美味しく調理してやるからさ」
フレイは笑顔で兎を諭しながら、一気に兎の頚骨を捻ろうとしたが、その手首を
アスランが強い力で掴んだ。アスランの異常な握力に耐え切れずに、フレイは
兎の耳を掴んでいた掌を離し、自由を得た兎は、慌てて森の中に逃げていった。

「食料なら俺の手持ちの携帯食を分けてやる。だから、逃がしてやれ」
フレイが何か言うよりも先に、アスランが口を開いた。キラは、アスラン君のことを
優しい人と表現していたが、彼は無益な殺生を好まない性格らしい。
「ふ〜ん。面白いんだね、君って。人は平気で殺せても、動物は駄目なんだ?」
スタスタとアスランの横を通り過ぎる間際に、フレイはボソッと彼の耳元に囁き、
その皮肉の痛烈さにアスランはビクッとする。

「私、アスランがそんな人だなんて、思わなかった」
「えっ!?キ…キラ!?」
有り得ない事態にアスランは呆然とする。彼が振り返った先には、焦茶色の髪をした
キラがキョトンとした表情で、彼の偽善を追求するかのように、じっと見つめている。
「て…テメエ、何しやがる!?」
突然、キラが、隣にいるフレイに、彼女らしからぬ乱暴な言葉遣いで難癖をつけ始めた。
いや、良く見ると、キラではない。そのキラに似た物体は縄で縛られた上に、緑を基調
としたコンバットスーツを着込んでいる。確か、カガリ・ユラとか名乗っていたっけ?
「似ているだろう?カガリ君はキラの変身の達人でね。案外、キラの血族だったりしてね」
開いた口が塞がらない状態のアスランに対して、カガリに焦茶色の鬘を被せた挙句、
キラの声帯模写までやってのけたフレイは、軽くウィンクしながら悪戯っぽく説明する。
この茶目っ気の為だけに、わざわざグラスパーまで戻って、鬘を回収してきたらしい。

「外せ〜!」と喚きたてるカガリの姿を尻目に、フレイはアスランから受け取った食料
を加えた上で、調理の仕込みに入る。フレイの目の前には、彼が採取してきた怪しげな
食材が並べられていたが、毒物の目利きに関しては、フレイはエキスパートなので、
食中毒の心配をする必要性は………………ひょっとすると、大いにあるかも知れない。
淡々と調理を続けるフレイの傍らで、カガリは、頭から鬘を外そうと暴れ狂ったが、
鬘はゴムで、両耳の耳元にキッチリと固定されているので、その努力は徒労に終わる。
「うがぁ〜!!」と発狂したかのように、のたうち回るカガリの姿は、自分の尻尾を
餌と勘違いし、必死に喰らいつこうとグルグル回転する間抜けな犬の姿にソックリで、
思わずアスランの顔からも笑みが零れた。
「この野郎、何が可笑しい!?」
涙目で睨むカガリに、アスランは慌てて目を逸らしたが、鬘を取ってやろうとはしない。
別に意地悪してではなく、単に自分にその選択肢があるのを忘れていただけの話しだが。

「ほら、出来たぞ」
特性のスープを煮込んだフレイは、料理を皿に盛ると、カガリの目の前に置いた。
「…って、お前、この状態で、どうやって食えっていうんだよ!?」
「そのまま食べればいいだろう。とにかく、君の縄は解けないよ。
自由の身を確保したら、君はまた身の程知らずにも、アスラン君に戦いを挑みそうだからね。
君が返り討ちにあって、くたばるのは勝手だけど、僕まで巻き込まれるのはゴメンだよ」
「何だと!?テメエ、ふざけるな!!」
カガリは当然の抗議をしたが、フレイはカガリを無視すると自分の食事に入った。
フレイは美味そうにスプーンでスープを掬い、目の前に置かれたスープの皿からは、
野生の食材で構成されているとは思えない、食欲中枢を擽る香ばしい匂いが漂ってくる。
カガリのお腹がグーっと鳴り、今朝から何も食べていない事に気付いたカガリは、
背に腹は変えられぬ…とばかりに、目の前の御椀に喰らいついた。

721キラ(♀)×フレイ(♂)・46−7:2004/06/18(金) 00:59
くっそぉ!!フレイの野郎、アスランから助けてやった恩を忘れやがって!!
殺す、殺す。絶対に殺してやるぅ!!
内心でフレイを呪怨しながら、オーブの王子様とは思えない、情けない格好で、
カガリはスープを啜った。猫舌のカガリが、舌を火傷しかけた刹那、フッと軽い音
がすると、カガリを拘束していたロープが切断された。アスランである。
彼は、キラの顔そのままで、泣きながら犬食いするカガリのあられもない姿を
見てられなくなったのだ。カガリは大慌てで、頭の鬘を外し、地面に叩き付けた。

「考えてみれば、こいつだけ動けるのじゃ不公平だからな。
ただし、銃を奪おうとするなら、その時は、躊躇い無く殺すから覚悟しておけよ」
手持ちのナイフで、カガリを戒めていたロープを切断したアスランは、照れ隠しに、
そう警告すると、無防備にもフレイから手渡されていた、敵の作ったスープを啜る。
重ね重ねのアスランのお人よし度にカガリは呆れたが、今の敵はアスランではない。
実力行使でフレイへの報復を敢行しようとしたが、既にフレイは忽然と姿を消している。
相変わらず要領の良いフレイは、カガリのほとぼりが醒めるまで、怒りをやり過ごす
所存のようだ。仕方無しに復讐のレベルを二段階ほどダウンさせたカガリは、
奴の分は残すまいと、鍋の中の美味のスープを、全部、自分の胃の中に押し込んだ。



あれから、カガリの怒りが静まった頃合いを見計らってフレイは戻ってきた。
洞窟の中で、三人は焚き木を囲んだが、元々彼ら三人は互いを潜在的な敵と見做し
合っていたので、キャンプファイアのような友好的な雰囲気とは無縁だ。
「そういえば、アスラン君。君にはお礼を言わなければならないよね?」
ピリピリとした緊張状態が長く続いたが、まずはフレイが口火を切る。
アスランは煩わしそうに、フレイの方角に振り向いただけで、頷きもしなかった。
あれから三人の間で、様々な貸借関係が発生したので、今更、不必要なオベッカだと
アスランは切り捨てたが、フレイの謝意は、無人島に来る以前の過去に向けられていた。

「今まで、キラが死なないように、それとなく手心を加えていてくれたんだろう?
お陰で、僕らもキラのお零れに与って、今日まで生き延びる事が出来たわけで…」
「ば…馬鹿を言うな。俺はザフトの軍人だ!戦場で私情を織り交ぜるなど有り得ん!」
アスランは内心でキグリとしながらも、大声でフレイの仮説を打ち消した。
今まで、フレイの口車に乗せられ、何枚化けの皮を剥がされたか判らないが、
アスランの立場上、確かにそれだけは認める訳にはいかなかっただろう。
「ふ〜ん。じゃあ、まあ、そういう事にしておこうか」
内心を見透かしたかのようにフレイの視線に、アスランは後ろめたそうに目を逸らす。

「君には色々とお世話になったから、最後に一つだけ忠告しておこうか。
君がこの先も、戦いの中でキラに温情を掛け続けるのは、それは君の勝手だけど、
もうキラの方では、そういう君の想い(馴れ合い)には頓着してくれないと思うよ?」
「な…何!?」
もう、これ以上、このペテン師の言葉に惑わされるのは止そう…と決意した傍から、
ついアスランは反射的にフレイの言葉に反応してしまう。
キラが絡む限り、彼はフレイの言葉の魔力から、自由にはなれないらしい。
「キラは僕と約束してくれたんだ。僕がもう戦わないでも済むように、僕の敵…つまり、
アークエンジェルに襲い掛かってくる君たちを、キラが一人残らず始末してくれるって。
こんな健気な恋人を持って、僕は本当に幸せ者だよ」
フレイはポタポタと涙を流しながら、サドニス島でマイケル君を殺害しかけた際の
キラの宣誓を、故意に拡大解釈した上で、アスランに最後通告として突きつけた。
自然と涙が出てしまう泣き虫のキラと異なり、泣きたい時に自由に嘘涙を流せるのが、
極上の詐欺師たるフレイお得意の御家芸の一つだ。

722キラ(♀)×フレイ(♂)・46−8:2004/06/18(金) 01:00
「フ…フレイ、お…お前、まさかその為に、キラに近づいたのか!?」
フレイは、ザフトに母親を殺されたと自己申告していた。
その上で、恋人であり、最高クラスのコーディの戦士であったキラの心の支えとなり
ながらも、同時にキラに対して、何故か不可解な憎悪をも抱き続けてきた。
この二つの符号が意味するものは何なのか?カガリの中で、その情報が一本の線で
繋がり、フレイの謎めいた行動がはじめて明確な指針を帯びた。
フレイは、単にキラを、母親の復讐の道具として利用していただけなのでは!?
かつてフレイを良く知るサイが、辿り着いたその仮説に、ようやくカガリも到着した。
さらには、そのカガリの疑惑が伝染したかのように、アスランも強い疑惑の眼差しでフレイ
を睨んだが、四面楚歌に晒され、守勢にまわされても、フレイは一向に動じた様子はない。


「心の貧しい奴らだな。一々、利害打算を絡めない事には、恋愛の一つも出来ないのか?
ただ、好きな人の役に立ちたいと願う、キラの切ない想いがどうして判らないんだ?」
キラに便乗した、ここまで図々しい反論は、想像の遥か彼方だったので、二人は絶句する。
将棋の対局中に、王手の掛かった将棋版を180度反転させたかのように、フレイは
口先一つで、あっさりと弾劾する側とされる側の立場を入れ替えた。
「まあ、一切の見返りを求めない無償の愛など、君達には一生掛かっても辿り着けない
領域だから、無理もない話しか。けど、そういう不器用な愛情に殉じる人間を愚かと
嘲笑していたら、いつかきっと手痛いしっぺ返しを食らうから気をつけた方が良いよ」
フレイはアスラン達を憐憫するような瞳で見下ろしながら、わざとらしく両肩を竦めた。

コ…コイツは!?
アスランの中で、再びフレイへの明確な殺意の感情が芽生え始めた。
何故、こんな不真面目そうな奴に、キラへの想いをここまで侮辱されねばならないのか?
アスランは、今日まで生きてきて、これほど憎たらしい人間に出会った事はない。
このまま衝動の命じるままに、コイツの首を捻じ切ってやれたら、どれほど爽快だろう
との誘惑に駆られたが、似たような挑発に惑わされて醜態を晒した先の件を思い出し、
その殺意の波動をアスランは辛うじて抑制した。

「僕にもサイという親が定めた許婚がいたよ。幼馴染の気立ての良い子で、
僕の軍属への志願に一緒に身柄を預けてくれた、僕想いの本当に優しい娘だった」
そんなアスランの内心の葛藤などお構いなしに、フレイは話を先へと進める。
サイの名前を出した時、ほんの僅かだが、フレイの瞳に、芝居でない後ろめたい光が宿る。
「でも、キラと付き合うために、彼女とはキッチリと別れたよ。ただ、許婚というだけで、
愛してもいない女性と付き合うのは、その相手の娘にとっても失礼な話しだからね」
フレイはアスランの殺気に臆することなく、自分が彼と似た境遇にありながらも、
アスランが超えられなかった壁を、超越してのけていたという現実を誇示してみせる。
ラクスというアキレス腱を巧みに斬りつけられたアスランは、心中で密かに呻いた。

「僕は、キラの為なら、許婚も、アルスター家も、生命さえも全て捨ててみせるよ。
アスラン君、君はどうだい?キラの為に、婚約者(ラクス)や、ザラ家の名誉や、
軍人としての責務などの、全てを投げ出せるだけの覚悟が君にはあるのかい?」
フレイは敢えて、純朴というよりは、むしろステレオタイプな恋愛観でアスランに挑んだ。
その方が、恋愛方面では極めて稚拙なアスラン君に、一番効果があると踏んだからだ。

フレイの宣誓布告を聞かされたアスランは、幼年学校時代のキラとのデートで、彼女と
一緒に見た映画の内容を思い浮かべた。題名は覚えていないが、主人公は、世界を救う
よりも一人の女を愛する事を選んだ物語で、キラも感涙に泣き咽ていた記憶がある。
彼の身体に執拗に絡み付く現実の柵を、何一つ振り解く事も叶わずに、キラの敵と化した
自分と、映画の主人公さながらに、キラの為に、全てをかなぐり捨てたというフレイ。
映画同様に、キラがフレイを選んだのは、むしろ、当然のフィナーレではないか?
フレイの魔術めいたペテンに惑わされて、自分の想いに迷いを抱いたアスランは、
深刻な疑心暗鬼に陥った。

723キラ(♀)×フレイ(♂)・46−9:2004/06/18(金) 01:00
「もう、止めとけ、アスラン。そいつに何を言っても無駄だ」
実に意外な人物が、精神的な呼吸困難に喘いでいたアスランを救った。
本来、仰ぐ旗の色から、アスランよりもフレイに組する立場であるはずのカガリが、
まるでアスランを庇うかのように、嫌悪の感情を隠さずにフレイを睨んだ。
アスランは驚いた表情で、フレイは興味深そうな瞳で、カガリを見つめている。

「さっき、コイツの母親は、連合の外務次官とか言っていただろ?
お前が戦闘のプロであるように、多分、フレイは言葉のスペシャリストだ。
会話を正論と理論武装で塗り固めた上で、己の主張の矛盾を排して言質を取らせず、
逆に敵側の言質を抑えた上で、相手の主張の矛盾には鋭く突っ込みを入れてくる。
そういう、口先一つで、黒いカラスを白と言いくるめる事も可能な厄介な連中さ。
だから、アスラン。あんまり、コイツの言うことを真に受けない方が良いぞ」
アスランを慰めながら、カガリは、フレイに感じていた潜在的な反発心の源が何なのか、
ようやく、把握する事が出来た。ようするに、フレイは、カガリが世界で一番嫌いな人物
と良く似ていたのだ。そう、口先一つで、世界を欺き続けてきた、オーブの獅子とかいう
偉そうな呼称で呼ばれている、彼の実…ではなくて、最近、仮と知らされた父親に。


「僕は、単に老婆心から、アスラン君に忠告しただけなんだけどね。
アスラン君はキラに討たれても本望かも知れないけど、彼のキラへの葛藤なんて、
彼の仲間達にとっては、どうでも良い話しだろ?」
かつて、トールがフレイの正体を見破ったように、カガリも数多の失敗から、
フレイの本性を突き止め、最良の対処の仕方を学んだようだ。
一瞬、今度はカガリを論破しようかとフレイは思ったが、そろそろ眠くなってきたので、
止めることにした。結局、彼は、カガリに拉致られたまま、一睡もしていなかったのだ。
「君とキラの愛憎劇に巻き込まれて、君の仲間が死んだりしなければ良いけどね」
睡魔の誘惑に身を委ねながら、最後にそれだけをアスランに告げると、フレイはゴロン
と寝転がって、会話を打ち切った。眠気がフレイの理性に皹を入れたのか、今まで、
完璧な理論武装を施していたフレイの論述の中に、僅かに本音が入り混じっていたが、
自分一人の思考に囚われていたカガリもアスランも、その傷の存在に気がつかなかった。

フレイは毛布に包まって、軽い寝息の音を立て始めた。もはや、目の前の二人の敵兵
に対して、物理的な危険度は感じていなかったアスランは、フレイの言葉の刃に、
心をズタズタに切り刻まれて精神的に参っていたので、自分もそろそろ寝ようかと
考えた刹那、テレパシーのような小さな音声が、彼の耳元に届いてきた。

「心配するな、アスラン。フレイが何と言おうと、キラはお前が知っているキラのままだ。
泣き虫でお人好しで……、まあ、ちょっと…いや、かなり気が多いのが少し困り者だけどな」

一瞬、頭の中を妖精が囁いたのかとアスランは己の理性を疑ったが、どうやら声の発生源
はカガリのようだ。彼は照れているのか、例の傷のない頬だけを赤く染めて、ソッポを
向いている。どうやらカガリは、フレイには聞かれないように、コーディの聴力なら
聞き取れるであろう可聴域すれすれの小声で、態々アスランに囁きかけてくれたようだ。

「ありがとう」
アスランは心からの謝意と笑顔でそう呟き、カガリは傷のある側の頬も含めて、真っ赤に
なると、ぶっきらぼうに、そのまま毛布を被って、アスランから顔を背けた。


今回の無人島での長い一日で、アスランは最大の敵と同時に、一人の知己を得た。
アスランはカガリとの間に、無意識化での奇妙な友情を成立させ、キラを挟んだ
二人の間に、アンチフレイ同盟が結成される運びとなる。

724キラ(♀)×フレイ(♂)・46−10:2004/06/18(金) 01:01
翌日の早朝、アスラン達が目を覚ますと、無人島の周辺は雲一つ無い澄み切った青空が
広がっている。こういう天気の時は、NJの影響率が低い事を知っていたアスランは、
イージスのコックピットに乗り込んで、無線を試してみると、ノイズ混じりに仲間から
の通信が聞こえてきた。
「こちらは、アスラン。アスラン・ザラだ。その声はニコルか?」
「そうだよ、良かった。生きていたんだね、アスラン。心配したんだから…」
ニコルの涙ぐんだ声に、アスランは顔を綻ばす。無人島の座標マップを送信して、
救助に関する打ち合わせを終えたアスランがコックピットから降りると、
カガリとフレイの二人が、アスランを出迎えてくれた。

「それじゃ、ここでお別れだね、アスラン君。こちらも、迎えが来ているかも知れない
から、グラスパーの方に戻ってみる事にするよ」
フレイはわざとらしく握手を求めたりはしなかったので、アスランは無言のまま、
彼らを見送る事にした。殺すという選択権を行使しなかった以上、彼ら二人を捕虜
として、ザフトへ連行する意思などない。フレイなど、イザーク達にキラの件で、
何を吹き込むやら分かったものじゃないからだ。

こうして、男三人の無人島での共同生活は、たったの一日で終わりを告げた。


「カガリ!?フレイ!?私よ。良かった。二人とも無事だったのね」
アスランと同じく、フレイとカガリの二人にも、極上のお出迎えがすぐ側まで来ていた。
グラスパーの通信機に、キラの嗚咽の声が聞こえてきて、フレイとカガリの行動は、
ほんの一瞬の半秒ほどだけシンクロし、二人は苦笑未満の表情を浮かべた。

二人が海岸線で待機していると、突如、モーゼの奇跡のように海が割れ、中から海坊主
のような巨大なMSが出現し、のっしのっしとこちらに向かって歩いてきた。
「フレイっ〜!!、カガリぃ〜!!」
コックピットから転がり落ちるように、飛び降りたキラは、ヘルメットを投げ捨てると、
泣きながら二人に駆け寄ろうとしたが、彼らの手前2mの砂浜でピタリと足を止める。
相変わらずの愛玩犬さながらの優柔不断な仕草で、キョロキョロと二人を見渡すキラ。
どちらの胸元に先に飛び込むか、彼女にとって、結構デリケートな問題だったりするのだ。

どちらを選んでも角が立つと判断したキラは、折半案(二股)を選択したらしい。
無駄にコーディネイターの身体能力を発揮して、二人の手前で大きくジャンプし、彼ら
の頭上を飛び越えると、そのまま後方に回り込んで、二人の片腕に自分の両腕を絡めた。

「えへへ…。二人とも、生きていてくれて、本当に良かったよ〜」
キラは、CIAの職員に連行される宇宙人さながらに、二人にぶら下がりながらも、
軽い涙を含んだ上目遣いで、フレイとカガリを笑顔で見上げた。
キラの本心は見え透いていたので、フレイもカガリも呆れていたが、
このキラの泣き笑いの表情を見せられたら、何も言えなくなってしまう。
緊急事態でもあったことだし、一時的に停戦同盟を結んだ二人は、
敢えてキラのミエミエの誤魔化しに、騙されてやる事にした。


結局、キラはアスランと同じ無人島の大地に足を踏み入れながらも、
アスランとの邂逅を果たすことなく、この島を去る事になる。
この先、キラとアスランの二人に、さらなる過酷な運命が待ち構えていた事を、
当人達は勿論、二人の未来の鍵を握る、言霊の魔術師たるフレイでさえも、
この地点では全く予期していなかった。

725私の想いが名無しを守るわ:2004/06/18(金) 02:58
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
いつも楽しみにしてます!
ここしばらくはフレイの魔術師ぶりが全開でとても面白かったです。
自分は男フレイ様は黒い方が好きですね。

726私の想いが名無しを守るわ:2004/06/18(金) 08:28
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
待ってましたよぉ〜〜〜!
もう読めないのかと心配していましたので本当にうれしいです!
個人的にはあの、暁の車のシーンを男三人でやっちゃうのかと想像し、
はらはらしていたんですが、
何事もなく(?)救出されて良かったです。
カガリ少年も大好きなので、今後の活躍を期待しています。

727私の想いが名無しを守るわ:2004/06/18(金) 08:35
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
キラ(♀)の抱きつきシーン期待してましたが、その優柔不断ぶりが素敵でした。
かなりの筆量に圧倒されつつ、これだけ費やしてもアスランの考えが心に響いて来ない。
逆に、不可解と言われるフレイ(♂)様の方の考えが理解できるのは、既に毒され過ぎでしょうか。

キラ(♀)とアスランの映画ネタ。映画の結果じゃなく、そこに至るプロセスが気になるな。
比喩として使うのなら…… もし、イメージする作品があるなら、それ匂わすだけでも。

728私の想いが名無しを守るわ:2004/06/18(金) 09:50
「フレイ=アルスターです。よろしくお願い致します。」
バジルール少佐の力添えで通信士としての仕事をすることに決まった私は、まず最低限の仕事を覚えるために月基地にいる間研修を受けることになった。
研修と言っても、通信士担当の人から操作方法を教えてもらう、アークエンジェルにいた頃にはおざなりになっていた軍規を覚える、という程度のことだという話だったけれど。

「このパネルのここを操作して・・・・・」
皆丁寧に教えてくれるけれど、私は中々一度で覚えることができなかった。
本当に、私、できる事って少なかったんだ・・・・・
さして難しくない(少なくともMSの操縦よりは簡単なはずだ)操作ですら飲み込みの悪い私が、アークエンジェルにいた頃、何ができただろう。
何かできたはずだ、本当は。
本当はあの時やらされていた雑用だって大切な仕事だった。でも、真面目にやらなかったから、アークエンジェルで私は中途半端な立場でしかなかった。
今は通信士ならできるだろうって、バジルール少佐の信頼を受けたんだから頑張らなくちゃ。
私は必死で勉強した。皆の邪魔にならないように。
次にキラに会ったときに恥ずかしくないように。
私にもちゃんとできる事があったんだって、そう言えるように。

「フレイ=アルスター軍曹!」
ふと振り向くと、見覚えのある、同じ年頃の少年兵士が駆け寄ってきた。
「はい。ええと・・・・」
彼の名前はなんだっただろう。今度こそクルーの皆をちゃんと覚えなくちゃ。
アークエンジェルにいた頃みたいに自分の周りだけ見ていればいいわけじゃない。
バジルール少佐に迷惑をかけないようにしないと・・・・
「ケリィ=エヴィンス二等兵です。お話ししてもよろしいでしょうか。」
「え・・・・ええ・・・・何か?」
彼はきらきらと目を輝かせて私を見ている。
一体何なんだろう?
私は今はまだただの落ちこぼれで・・・何もこんな目で見られる事はないと思うんだけど・・・・・
「ジョージ・アルスター事務次官のご令嬢でいらっしゃいますよね。俺、あなたの話を聞いて、感動して軍に志願したんです。」
・・・私の話?
「『これでもう安心でしょうか?これでもう平和でしょうか。そんなこと全然無い。』・・・本当だ、と思いました。例えば中立国に逃げ込めば自分は平和なまま暮らしていけるかもしれない。でも、それは戦争が終わったわけではないんですよね。ただ、逃げているだけなんだ。」
「・・・それ、誰から?」
「志願の時に、映像を残されませんでしたか?正直俺は志願を迷っていたんですが、あれを見て決意したんです。俺も自分で戦わなくちゃって。」
「・・・私の映像が、志願を促すために使われているということ?」
信じられなかった。通信の時の記録を残してあったということだろうか。
「じゃあ、あなたは、私の言葉がなければ、軍には志願しなかった?」
彼は少しだけ笑みを浮かべて首をかしげた。
「正直・・・よくわかりません。ただ、あの時の迷いを断ち切ってくれたのは、貴女の言葉だったのだ、と。」
私は・・・・・・
「私は、そんなつもりで、あんな事を言ったわけじゃ・・・」
「いいえ、気持ちは同じです。俺も自分が平和な場所にいて、自分だけ平和でいることに疑問を感じたんです。だから俺は、戦う事にしたんです。あなたと同じように。」
私と同じように?違う。私は、本当はそんなこと思っていなかった。
「違うわ。私・・・・・私、あの時は、パパの復讐のことしか・・・・・・」
こんなの間違ってる。キラと同じように、サイと同じように、私のせいで戦争に巻き込まれる人なんてこれ以上いちゃいけないのに。
「わかります。お父上の事も聞いています。さぞつらかっただろうと思います。その状態で悲しみに沈むのではなく、戦う事を選んだ貴女を、俺は尊敬します。」
「違うの。私、そんな立派な事を考えていたわけじゃないのよ。あなたが私のせいで志願したというなら・・・・」
それは間違ってる。キラの時と同じだ。偽りの言葉に動かされて戦うなんて。
今だって私は自分のためにドミニオンにいるのに。
「あなたのおかげです。あの時決心できたのは。それだけ言いたかったんです。お忙しいところ失礼しました!」
言うなり彼は踵を返す。
「ちょっ・・・・・」
呼び止めたけれど彼はもう振り向かず、私は自分のしたことの恐ろしさを考えずにはいられなかった。

729散った花、実る果実57:2004/06/18(金) 09:55
「フレイ=アルスターです。よろしくお願い致します。」
バジルール少佐の力添えで通信士としての仕事をすることに決まった私は、まず最低限の仕事を覚えるために月基地にいる間研修を受けることになった。
研修と言っても、通信士担当の人から操作方法を教えてもらう、アークエンジェルにいた頃にはおざなりになっていた軍規を覚える、という程度のことだという話だったけれど。

「このパネルのここを操作して・・・・・」
皆丁寧に教えてくれるけれど、私は中々一度で覚えることができなかった。
本当に、私、できる事って少なかったんだ・・・・・
さして難しくない(少なくともMSの操縦よりは簡単なはずだ)操作ですら飲み込みの悪い私が、アークエンジェルにいた頃、何ができただろう。
何かできたはずだ、本当は。
本当はあの時やらされていた雑用だって大切な仕事だった。でも、真面目にやらなかったから、アークエンジェルで私は中途半端な立場でしかなかった。
今は通信士ならできるだろうって、バジルール少佐の信頼を受けたんだから頑張らなくちゃ。
私は必死で勉強した。皆の邪魔にならないように。
次にキラに会ったときに恥ずかしくないように。
私にもちゃんとできる事があったんだって、そう言えるように。

「フレイ=アルスター軍曹!」
ふと振り向くと、見覚えのある、同じ年頃の少年兵士が駆け寄ってきた。
「はい。ええと・・・・」
彼の名前はなんだっただろう。今度こそクルーの皆をちゃんと覚えなくちゃ。
アークエンジェルにいた頃みたいに自分の周りだけ見ていればいいわけじゃない。
バジルール少佐に迷惑をかけないようにしないと・・・・
「ケリィ=エヴィンス二等兵です。お話ししてもよろしいでしょうか。」
「え・・・・ええ・・・・何か?」
彼はきらきらと目を輝かせて私を見ている。
一体何なんだろう?
私は今はまだただの落ちこぼれで・・・何もこんな目で見られる事はないと思うんだけど・・・・・
「ジョージ・アルスター事務次官のご令嬢でいらっしゃいますよね。俺、あなたの話を聞いて、感動して軍に志願したんです。」
・・・私の話?
「『これでもう安心でしょうか?これでもう平和でしょうか。そんなこと全然無い。』・・・本当だ、と思いました。例えば中立国に逃げ込めば自分は平和なまま暮らしていけるかもしれない。でも、それは戦争が終わったわけではないんですよね。ただ、逃げているだけなんだ。」
「・・・それ、誰から?」
「志願の時に、映像を残されませんでしたか?正直俺は志願を迷っていたんですが、あれを見て決意したんです。俺も自分で戦わなくちゃって。」
「・・・私の映像が、志願を促すために使われているということ?」
信じられなかった。通信の時の記録を残してあったということだろうか。
「じゃあ、あなたは、私の言葉がなければ、軍には志願しなかった?」
彼は少しだけ笑みを浮かべて首をかしげた。
「正直・・・よくわかりません。ただ、あの時の迷いを断ち切ってくれたのは、貴女の言葉だったのだ、と。」
私は・・・・・・
「私は、そんなつもりで、あんな事を言ったわけじゃ・・・」
「いいえ、気持ちは同じです。俺も自分が平和な場所にいて、自分だけ平和でいることに疑問を感じたんです。だから俺は、戦う事にしたんです。あなたと同じように。」
私と同じように?違う。私は、本当はそんなこと思っていなかった。
「違うわ。私・・・・・私、あの時は、パパの復讐のことしか・・・・・・」
こんなの間違ってる。キラと同じように、サイと同じように、私のせいで戦争に巻き込まれる人なんてこれ以上いちゃいけないのに。
「わかります。お父上の事も聞いています。さぞつらかっただろうと思います。その状態で悲しみに沈むのではなく、戦う事を選んだ貴女を、俺は尊敬します。」
「違うの。私、そんな立派な事を考えていたわけじゃないのよ。あなたが私のせいで志願したというなら・・・・」
それは間違ってる。キラの時と同じだ。偽りの言葉に動かされて戦うなんて。
今だって私は自分のためにドミニオンにいるのに。
「あなたのおかげです。あの時決心できたのは。それだけ言いたかったんです。お忙しいところ失礼しました!」
言うなり彼は踵を返す。
「ちょっ・・・・・」
呼び止めたけれど彼はもう振り向かず、私は自分のしたことの恐ろしさを考えずにはいられなかった。

730散った花、実る果実/作者:2004/06/18(金) 09:57
すみません、728はタイトル入れるの忘れました。
わかりにくいので729にタイトルつけてもう一度同じ物をUPしました。

731私の想いが名無しを守るわ:2004/06/18(金) 10:48
>>散った花、実る果実
続編投下ありがとうございます。
フレイたまの一生懸命な姿がいじらしいです。
新キャラ登場ですが、どうなっちゃうんでしょう?
ひそかに連合のアイドルになっていたなんてちょっと嬉しいかも。
続きもお待ちしています。

732私の想いが名無しを守るわ:2004/06/19(土) 01:43
ここってアスラクだのアスキラだの、フレイ様の小説なのに
わざわざ他カプの設定まで変えてアスカガは書きません…という
職人さんが多いのでしょうか?前から不思議だったのですが。
書かないのは勝手なんですが他ヒロインの事とはいえ、何か設定の
変更が気になったので失礼します。

733私の想いが名無しを守るわ:2004/06/19(土) 02:08
アスカガを【書かない】じゃなくて、アスラクとかアスキラを【書きたい】なんじゃ?
二次創作ってそういうもんでしょ。>設定変更
ぬっちゃけキラフレラブラブってのも設定変更っちゃ変更なんだし、
そういう突っ込みは野暮ってもんだ。

と思うわけだが、さらに議論になるようなら次は議論スレでよろ。

734私の想いが名無しを守るわ:2004/06/19(土) 07:33
>>散った花、実る果実
フレイ様、研修に一生懸命な様子。いじらしいです。
>>次にキラに会ったときに恥ずかしくないように。
この台詞が、心に染みました。

それにしても、フレイ様の軍志願の台詞が、ここで使われるとは。
確かに、サザーランドは志望理由と共にプロパガンダに利用すると
マリューに公言していましたが……
私の場合、この後の鍵のディスクの真実と共に、フレイ様に試練の予感がします。
どちらに話が転ぶのかは、この先次第ですが……

それにしても、この空白期間の通信士研修は、フレイ様SS書きにとっては、
挑戦しがいのある素材ですね。私は、残念ながら、そこまでできませんでしたが。

735私の想いが名無しを守るわ:2004/06/19(土) 08:44
>>732
私も、ここで書いていましたが、カガリは、キラとの関係が、オーブでの「友人」から、
オーブ戦の「依存」に変わるところまでで、アスランを出す前に話が終わってしまったので、
そこまで進みませんでした。
もっとも、フレイ様に対する、もう一人のヒロインの設定変更が、とてつもなく人を選ぶのですが……

バトルの得意な書き手さんのは、アスランが可哀想なくらい(?)カガリに慕われていましたし、
毎日連載の人は、確かに設定変更して、アスランとカガリは出会いませんでしたが、カガリは
今後、結構重要な役目を持っていたようです。カガリとフレイ様は友人関係築いていましたし、
フレイ様とアスランは出会っていましたので、そのうち、三人が出会うのじゃないかと期待してます。
フレイ(♂)様の人は、まあ……

それ以外の人はフレイ様関係の設定変更が中心で、カガリが出ないものも多かったです。
ううむ、思い返すと、カガリとアスランに関して変えた人は、このスレでは少なかったんじゃ
ないでしょうか。

736私の想いが名無しを守るわ:2004/06/20(日) 11:37
>>散った花、実る果実
続編投下ありがとうございます
フレイ様が謙虚になってがんばってる姿がうれしいです
どちらかというと、前半DQNよりもドミ後のフレイ様が好きなので
次も楽しみにしています

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
フレイ様の黒さがどんどん増してきて…
大好きなお話ですので、大量投下本当にうれしいです
アスランを言い負かしてしまうほど頭の良いフレイ様、カコイイ
こちらも続きを楽しみにしています

>>さよならトリィ
短編完結ものはここでは珍しいので、集中して読めました
フレイ様の気持ちの変化が、すごく身近に感じられて
ラストがすごく切なかったです
先にも書きましたが、後半フレイ様好きにとってはとても印象的な作品です
新作の投下もぜひぜひお待ちしています

737私の想いが名無しを守るわ:2004/06/20(日) 17:06
>>さよならトリィ
トリィに対する感情、キラに対する感情がリンクして切なかったです。
ラストはあんな書き方もあるんだ、と感心しました。
フレイ様の想いをトリィが運んで・・・・・・
とてもいい作品でした。次の作品の予定がありましたら楽しみにしてます。

738あぼーん:あぼーん
あぼーん

739私の想いが名無しを守るわ:2004/06/20(日) 20:58
此処は私、フレイ・アルスターのためのスレ。アツくなり過ぎちゃダメよ!
■気に入らない書きこみは全て放置しましょう。

740私の想いが名無しを守るわ:2004/06/20(日) 21:26
>>散った花、実る果実
フレイ様空白の2ヶ月間!
フレイファンならどうしても補完したいところです。
今回出てきた少年兵の行く末が気になります
続きを待ってます。
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
毎回毎回すごく楽しみにしているんですが、
今回も期待を裏切らない面白さでした!
アスランとカガリの共同戦線もこれからどうなるのか気になります。
>>さよならトリィ
切ないという感想が多かったので読みました。
……本当に切なかった。
葛藤しながら生きて、光になったフレイ様に
読んだ後しばらく最終回後と同じ脱力感が来てしまいました。
次作も期待しています。
余談ですが、ここでは未完だった前作も楽しませていただいていました。

741散った花、実る果実58:2004/06/20(日) 22:30
私は私の疑問をそのまま放っておく訳にはいかない、と思った。
「バジルール少佐・・・・・」
ブリッジにはいない、バジルール少佐の自室にも。さっき食堂は見たし、あとは・・・・・・
次の作業時間までにバジルール少佐に会わなければ、というあせりと共に私は彼女を探した。
「バジルール少佐!!」
休憩時間だったのか、バジルール少佐は宇宙を眺めることの出来る後部デッキにいた。
「アルスター軍曹・・・・・うわっ・・・・・」
勢いあまって飛び込んでしまった私を、バジルール少佐はなんとか受け止めた。
「どうした。そんなに慌てて。何かあったのか?」
姉のよう私を覗き込む彼女の瞳は優しい。アークエンジェルにいた頃怖い人だと思っていたのが嘘のようだ。
「あの・・・っ・・・私の、軍に志願したときの・・!」
「志願?」
バジルール少佐は何のことだか分からない、と言ったように首をかしげた。
「ええと・・・・・私が、軍に志願したとき・・・・・・あのっ・・・」
焦っていてうまく言葉がつながらない。ああもう、こんなことしてる場合じゃないのに。
「どうした。少し落ち着きなさい。軍に志願した時の事で何かあったのか?」
「そうなんです。あの・・・私が軍に志願したときの映像って・・・・・!」
バジルール少佐の助けを得て私はせき止められていた流れが決壊するように話し始めた。
「私の言葉が志願を促すために使われているってどういうことですか?私、あれが映像として残されているなんて知らなかった。あの時バジルール少佐は傍にいましたよね、少佐もご存知だったんですか?何故そんなものが使われているんですか?私がザフトの艦に乗っていた間ずっとあれが使われていたの?私は死んだと思われていたのではなかったのですか?どうして、どうしてあんなものが使われなきゃいけないの・・・・?私、私そんなつもりじゃ・・・・」
「ちょっ・・・・・アルスターぐんそ・・・ちょ、ちょっと落ち着きなさい」
「だって・・・・・!」
なおも勢いの止まらない私を、バジルール少佐はなだめるように両肩をおさえ、座らせた。
「落ち着きなさい、フレイ・アルスター。お前はそもそも、何のために軍に志願したのだ?」
そもそもの理由。パパの復讐。キラへの謀略・・・・・?
顔が熱くなるのがわかった。
「パパが死んで・・・・このままにできない、と思って・・・・・・」
「父上の復讐のためか?」
こくん、と頷く。
「それに、キラに・・・・・・・」
「ヤマト少尉に?」
「キラは、コーディネイターだから、ちゃんと戦ってないんだって・・・だからパパは死んだんだって・・・・あの時は、そう、思ったんです。」
それは、今となっては違う、とわかる。ちょっとだけ本当かもしれないけど、それはキラのせいじゃない。
「でも、お前自身が軍に志願しよう、と思った理由がちゃんとあるだろう。・・・平和のために何かしたい、と思ったのだろう?」
とても優しいバジルール少佐の言葉が、今の私にはつらかった。

742私の想いが名無しを守るわ:2004/06/21(月) 03:46
>>散った花、実る果実
ナタルさんを捜して、焦って一生懸命なフレイ様可愛い……
月じゃないと、転げまくっているところでしょうね。
しかし、いきなり、復讐の真実を打ち明けても動じないナタルさんは、
艦長になって成長したのでしょうか。それとも、隠しごとだと思っていたのは
フレイ様だけで、大人組はみんな知っていた?

743私の想いが名無しを守るわ:2004/06/21(月) 05:50
 >さよならトリィ
全話一気に読みました。
台詞回しも放映中のフレイ様を思い起こさせ、AA時代のあたりなどは圧巻でした!
キラが出てこない分、お話としてフレイ様に集中できたような気がします。
 >キラ(♀)×フレイ(♂)
実は、このスレになってからの分しか拝見していないんですが
(近々過去ログから纏めて読ませていただきます)
フレイ様を男の子にしちゃったのに、すごく面白いです!
きちんとキャラ立ちしていてすごく魅力的な悪役ぶりにはまりました。
 >散った花、実る果実
こちらもこのスレからなんですが
自分的にはナタルフレイのコンビが好きなので、これからが楽しみです。
二人の会話をもっと聞きたいです。

744あぼーん:あぼーん
あぼーん

745私の想いが名無しを守るわ:2004/06/21(月) 09:15
>>散った花、実る果実
再開ありがとうございます!
自分もナタルフレイの桑島姉妹萌えですので
最新作の二人の会話に口元がゆるみっぱなしでした〜
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
こんなフレイ君なのに、なぜかキラとうまくいってほしいと願う自分がいます。
優柔不断なキラは最終的にどこに落ち着くんだろ?
>>さよならトリィ
すごく良かったです!
フレイSSではフレイ様の死を他キャラが語るってほうが多いと思ってたんですが
こういう感じはあまり目にしなかったので
キラフレ的にはアンハッピーエンドですが
フレイ様自身的にはある意味幸せエンドだったのかなって。
又の投下、お待ちしております〜

746あぼーん:あぼーん
あぼーん

747私の想いが名無しを守るわ:2004/06/21(月) 10:46
一応修正テンプレ
こちらに添った書き込みをお願いします。
↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   

愛しのフレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、         ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・         真似では無い、あなたの本当の創作(おもい)を読みたいわ。
| 編 )    ヘヘ           自分では似ていないと思っても、今一度、読み直して確かめてみてね。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー  ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|       .〈〈.ノノ^ リ))       ライトH位なら許してあげる。
        |ヽ|| `∀´||.        キャラヘイトは駄目よ。私以外のファンのためにも配慮をお願いね。
     _φ___⊂)__     ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
   /旦/三/ /|        感想だけよ。議論したいなら議論スレでね。
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |        感想が無くっても私負けない! 次は絶対がんばるから。
   |オーブみかん|/     ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。

             前スレ:フレイ様人生劇場SSスレpart5〜黎明〜
             http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1078235844/

748あぼーん:あぼーん
あぼーん

749あぼーん:あぼーん
あぼーん

750私の想いが名無しを守るわ:2004/06/21(月) 13:38
>>749
>>747

751私の想いが名無しを守るわ:2004/06/22(火) 09:10
>>散った花、実る果実
フレイファンなら誰もが知りたいドミでの空白の2ヶ月
新米軍人さんのフレイ様が愛らしいです

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
筋と関係ないのですが
ウサギ狩中のフレイ様を想像してしまいました
絞めるのも、毛をむしるのも平気なんでしょうか?
ワイルドな一面も良いです!

>>さよならトリィ
トリィに感情があるかのようで…
フレイ様死にエンドですが、感動的でした
余韻の残るお話で大好きです

752散った花、実る果実59:2004/06/28(月) 00:04
「平和のために、なんて・・・・私、本当はそんな立派な理由で軍に志願したわけじゃなかった。」
私は握り締めた自分の拳を見つめながらつぶやいた。
「違うんです。本当は、私。・・・・本当に、パパの復讐のことばかり考えていた。」
「それがおまえの戦う理由というわけか・・・・」
淡々と囁くバジルール少佐の声。しかし私は少佐の顔を見ることができなかった。
「平和のために、なんて、嘘。・・・・ちょっとは本当だったけど・・・・・でも、パパを殺したコーディネイターなんて皆死んじゃえばいいって。そう思ってた。戦争なんて、嫌だったけど・・・・・早く終わって欲しかったけど・・・・・・」
自分がわからなくなった。
本当に戦争を終わらせたくてあんな事を言ったのか。
本当に復讐のことだけを考えてあんな事を言ったのか。
「結局私はあそこにいる時なんにもしなかった。・・・・私はただキラを、皆を戦争にかりたてただけ。それなのに自分は安全なところで怯えて丸くなっていた、ただそれだけだった。」
バジルール少佐は知っているはずだ。あの頃の私の情けない行動を。
「そうだな。正直、軍に志願した時の毅然とした様子とかけ離れた勤務態度に呆れなかった、と言えば嘘になるが・・・」
私は唇をかみ締めた。
「しかし、そんなものだろうとも思っていた。ヘリオポリスで最初お前達を見かけた時は『同じ年頃でもう戦場に立っている者もいるのに』と腹立たしく思ったものだったが・・・・・」
「ヘリオポリスで?」
気がつかなかった。私は、この人とヘリオポリスで出会っていたのだろうか。
「お前は気がつかなかったろう。いや、恐らく皆忘れているだろうと思うが・・・・お前と、ヤマト少尉と・・・・ミリアリア・ハウ二等兵もいたか?あまりはっきり記憶しているわけではないが・・・・ラブレターがどうの、とか騒いでいたような・・・・話題の中心はお前だったな?フレイ・アルスター」
バジルール少佐は悪戯っぽく微笑んだ。
「え?いや、あの・・・・・」
ラブレター?え?もしかして、サイの?
「ヘリオポリスでは随分もてていた様子じゃないか?アークエンジェルではヤマト少尉とアーガイル二等兵と一悶着あったようだし・・・・ここは女性兵士も少ないから、変な男にからまれないように気をつけるんだぞ?」
「あ、ああああの、ええええぇ!?」
バジルール少佐はこんなにお茶目な人だっただろうか。もっと厳格な人だったような気がするんだけど・・・・
「いや、あのですね、そうじゃなくて。」
そう、そうじゃなくて。私はもっと大事な話をしにきたはず。
「私はそんな立派な信念があって軍に志願したわけじゃなかったんです。だから、だから私・・・・私の志願理由を軍の広報に使うなんて間違ってる。」
流石にバジルール少佐は真顔に戻り、しかしこう言った。
「いいや、間違ってはいないよ、フレイ・アルスター。軍と言うのはこういうものだ。」
「でも・・・・!」
「まあ聞け。・・・軍としては、できるだけ兵士の士気を高めたいわけだ。それもできるだけ自然な方法の方が好ましい。ここまでは納得できるか?」
「はい。」
それはそうだろうけど、でも・・・
「軍にとって重要なのは、お前の言葉が真実であるかどうか、ではない。聞く人間にとって真実に聞こえるか。それを聞いて軍の士気があがるかどうか、だ。」
「・・・私の言葉が嘘でもいいって事ですか?」
理屈はわかる。わかるけど感情は納得できない。
「ああ。いいんだ、嘘でも。それが本当かどうかは本人にしかわからないだろう?・・・お前がやっていたのも、そうではないのか?」
私の、やっていたこと?
「ヤマト少尉を戦わせていた時。・・・・全て真実によって、お前は彼を動かしていたか?」
・・・キツイ一言だった。
今までの言葉が優しかっただけに尚更効いた。
「・・・私は・・・・・・・」
「いいんだ、フレイ・アルスター。お前を責めているわけじゃない。しかし、人と言うのは、多かれ少なかれそういう側面を持っている物ではないのか?私もそれを利用した。お前とヤマト少尉が寝食を共にしても何も言わなかったその理由がこれだ。」
バジルール少佐もキラを利用した?キラを利用するために私を利用したの?
「・・・私がそばにいればキラが戦う、ってそう思っていたから?」
「そうだ。あまつさえ私はヤマト少尉の両親を人質にとろうか、とも考えたことのある人間だ。しかしそれはしょうがないことだ、とその頃は思っていた。」

753私の想いが名無しを守るわ:2004/06/28(月) 06:31
>>散った花、実る果実
コンスタントに連載続けられていて、頭が下がります。
まだまだ、ナタルさんとの話は続きそうですね。
とりあえず、第一話のことまで正確に記憶しているナタルさん、スゴイです。

>>あ、ああああの、ええええぇ!?
フレイ様の言動も、お茶目になってる? ナタルさんに会って、今までの張り詰めた
気分が解き放されているせいでしょうか。

754散った花、実る果実60:2004/07/03(土) 00:30
キラの両親を人質に・・・・それはとてもひどい考えだ、と思った。
でもすぐ気づいた。私はザフトに対してラクスを人質にしようとしたじゃないか。
「そんな顔をするな。今はそれが正しいとは私も思っていない。」
複雑な表情の私を見て、バジルール少佐は苦笑しながら言った。
「ただ・・・・やはり他人の人生に立ち入るのには覚悟のいることだ。・・・・もうわかっているだろうと思うが。」
「はい。・・・私は・・・・・キラの人生を狂わせたのですから。キラには謝っても謝り切れない。でも、謝らなくてはいけないと思っています。それに・・・キラには伝えたい事があります。」
「伝えたいこと?」
「はい。キラに会ったら・・・会えたら、そうしたら言います。それまで内緒です。」
不安だった。とても。
この広い宇宙の中、もう一度キラに会えるという保証はどこにもない。
けれど、賭けてみようと思った。
キラの乗っているアークエンジェルを追いかけているこの艦に乗るのが一番可能性が高い。
ここにいて会えないのならもうきっと、キラには会えないだろう。
だから、可能性にかけてみよう、と思ったのだ。

「でも、だからこそ。もう、私のせいで誰かの人生が狂わされるのは嫌なんです。」
そう、そのためにバジルール少佐を探していたのだ。
「しかし、あの放送によって決意を固めたものがいるとして、それはある意味自身の選択であるとも言える。それを覆すのは、難しいのではないか?それに、今更覆すというのも彼らのためになるのかどうか・・・・」
「そうかもしれないけど・・・・でも、もう何もしないで後悔するのは嫌なんです。それがなんであれ・・・私にできることはやりたい、と思っています。」
アークエンジェルにいたときのような後悔はしない。もう二度と。

755散った花、実る果実61:2004/07/03(土) 00:36
「ケ・・・・・エヴィンス二等兵!」
「ああ、アルスター軍曹」
私を見る彼は本当に嬉しそうだ。
「どうかされましたか?」
子犬のような彼の瞳にかすかに罪悪感がうずく。
いいの?どのみち彼は軍を抜けることなんてできないんじゃないの?
だったら、夢を見せてあげたままの方がいいんじゃないの?
「何か?」
だめ、できることはしなくちゃって、そう決めたじゃないの。
「エヴィンス二等兵・・・私は、あなたが思っているほど立派な人間じゃないんです。」
「・・・どうしたんです?急に」
私は気持ちを落ち着けるために一つ大きく深呼吸をしてから話し始めた。
「私の映像を見て軍に志願したって言ってたでしょ?あの時の私の言葉・・・半分は、嘘なの。」
彼は黙って私の言葉を聞いている。
「私・・・・ヘリオポリスの出身なの。あそこで、友達と買い物をしている時に戦争に巻き込まれたの。それまでは私、とても幸せな人生を送っていたわ。ママは死んじゃっていなかったけど・・・・でもね、パパはとっても私を愛してくれたわ。私、片親の家庭だから不幸だなんて思ったこと一度も無い。でも、ヘリオポリスが崩壊して・・・・聞いたでしょ?ザフトとの戦闘に巻き込まれて跡形もなく消えてしまったわ。そして、私の乗っている避難シェルターが壊れて、それをアークエンジェルに拾われたわ。」
「アークエンジェルに行くまではあなたは軍人ではなかったんですね。」
「そうよ。・・・アークエンジェルに乗ってからも、私、軍の仕事なんてしようとも思わなかったわ。・・・皆は自分にできる事をしようって頑張っていたのにね。」
泣きながら戦っていたキラ、苦悩しながらもキラを受け入れたサイ、トールを失ったミリアリア、始終怯えていたカズイ・・・・・
「私、アークエンジェルさえ降りれば、自分はもう平和だって思ってたの。戦争なんて関係ないって。」
緊張に、私ののどが鳴る。
「パパが・・・死んだの。殺されたの、ザフトに。その時、アークエンジェルにはろくな戦力はいなかった。二人を除いて。エンデュミオンの鷹、フラガ少佐と・・・キラ・ヤマト。ヘリオポリスの学生だった、コーディネイター。」
何度も脳裏を掠めた、キラのあの時の言葉。
「出撃する前、パパを心配する私にキラは言ったわ、『僕たちも行くから大丈夫だ』・・・って。でもパパは死んだ。私は思ったの。パパが死んだのはキラが真面目に戦わなかったからだって。・・・コーディネイターだから手を抜いてたんだろうって。」
「あの戦闘での悲劇は俺も聞いています。・・・・ひどい損害だった、と。」
ひどい損害。そう、戦争においては大切な人の死が、そんな簡単な言葉で切り捨てられてしまう。
当事者が、親近者がどんな悲しみを覚えたかなどそこに入る隙間など無い。
あの時までは私もそれに気がつかなかった。
「パパは私のすべてだった。パパを失って、私は帰る場所を無くしてしまった。そして・・・パパを殺したコーディネイターを許せない、と思ったの。」
「そしてあなたは軍に志願なさったのですね。」
そう語る彼の瞳にはいまだ憧憬の影が色濃くその姿をあらわしている。
「『かつて父の愛情だけを受けて育った少女。父を奪われた少女は復讐を誓う。少女は健気にもその身を戦いの最中に置き、偽りの平和ではなく真の平和をつかむために戦う事を決意したのだ』・・・・あなたが考えていることは、こんな感じ?」
「・・・何故、それを・・・?」
「見たのよ、あれを、私も。例の私の志願した時の言葉を使った映像を。まさかあんな言葉で装飾されてるとは思わなかったけど。」
ため息と共に私は言葉を吐き出した。
「・・・・今のって、あの時の言葉でしたっけ?忘れてました。」
ケロっとして彼は言う。
それはそうだろう。大体、人は自分が重要だと思ったことしか記憶に残さないものだ。
「その言葉だけ聞けば感動的な話よね。でも違うのよ。実際はそんな感動的な話じゃないの。」
「ご謙遜なさらなくても。」
にこにこして彼は言う。・・・・思わず脱力しそうになる自分を励まして私は続ける。
「そうじゃないのよ。話を聞いて頂戴。・・・私はね、自分で戦うつもりなんて、全然なかったの。・・・私が軍に残ればキラも残ると思ったの。私がキラに身を委ねれば、キラは私のためにコーディネイターを殺してくれるって、そう思ったのよ。」

756散った花、実る果実62:2004/07/03(土) 00:40
「身をゆだね・・・・・って、その・・・・・」
「いいわよ、遠慮しなくても。・・・寝たのよ、キラと。思い通り、彼は私のために、アークエンジェルのために戦ってくれたわ。・・・殺したいわけじゃない、守りきれなかった、そう言って、泣きながら、ぼろぼろになるまで。・・・・あげくMIAになって。」
眉をひそめて彼は言った、
「それって・・・・なんだかとても貴女が悪女のように聞こえます。」
私は苦笑する。
「そうよ。悪女よ。ひどいでしょ?あなたの思っている私と本当の私は違ったでしょう?目がさめた?もう、虚像を追いかけて戦争をするのはやめなさい。でないと後悔するわ。戦争なんて、何かをなくすためにあるようなものよ。」
「でも貴女はここにいるじゃないですか・・・・なら何故まだ戦争から離れようとしないんです・・・・」
焦点を失った目で彼は呆然とつぶやく。もはや無意識なのかもしれない。
「戦争を終わらせたいからよ。そしてどうしても会いたい人がいる。謝らなきゃいけない人がたくさんいる。・・・だから私はここから逃げ出すわけにはいかないの。」
「俺は・・・・・・」
「さあ、あなたがそもそも軍に志願した理由は消えたわ。・・・あなたは、なんの為に、戦っていくの?」
「俺は・・・・・・・・」
言い過ぎたかもしれない。そう思った次の瞬間。
「何故、だったら何故、放っておいてくれないだ!」
彼は突然叫び始めた。
「あんたがどんな理由でここにいようとそれはいいよ。そりゃ個人の自由だ。だけどだからって俺の理想をわざわざ崩さなきゃいけない理由はないだろう?せめて放って置いてくれればよかったんだ。だったら俺はあのまま迷わずに戦いつづけることができたのに。何故わざわざそんな事を言うんだよ?」
やっぱり間違っていたんだろうか。そんな迷いがありつつも私は反論した。
「ではあなたはやはり私の言葉だけで軍に入ったという事?だったら今のうちにやめればいい。戦争って、そんなに甘いもんじゃない。知らずに済めばどんなに幸せなことか。そんなスクリーンを、マイクを通した脆い虚像が壊れただけで迷うような決心なんて持たなければいい。」
私は彼を睨みつける。
「あなたは何のために戦っているのよ。」
言葉を失った彼に、それ以上かけてあげる言葉を見つけることは、できなかった。

757私の想いが名無しを守るわ:2004/07/03(土) 06:33
>>散った花、実る果実
知らなければ、ごまかせば、それで何事も無く済むことだけど、それをしなかったフレイ様。
案の定、エヴィンスを怒らせてしまったけど、それは、以前のような考えの無い発言じゃなく、
自分のように後悔しないため、後悔させないための覚悟を持った重い言葉です。
狂い始めている戦争を止めるためキラ達が、どこかで戦っているように、フレイ様も戦っているんですね。
こんなフレイ様を見せていただいて感謝です。

758人為の人・プロローグ:2004/07/21(水) 18:08
戦争は終わった。
けれど僕の心にはまだ熱い、そして苦しい痛みが残っていた。
たとえどれほど時が流れようとも、それは僕の中ではじけ、
飛び散り、悲しみの破片をあちこちにばらまくことだろう。
色んな事があった。そして今も色んな事が起こっている。
もう取り戻せない過去と、進むべき未来が今、僕の中に生きている。
僕はキラ・ヤマト。最高のコーディネーター。

759人為の人・PHASE−1・1:2004/07/21(水) 18:10
戦争が起こって何ヶ月もが過ぎた頃。
その時僕は、コロニー「ヘリオポリス」の中にいた。
連合とザフト、どちらにも所属しない中立コロニーの中で、
僕はいつもと変わらない平和な日々を送っていた。
柔らかな日の光―偽りとは思えない―そんな光が辺りを照らす中、
僕は外のベンチに座ってキーボードを叩いていた。
そしてふいに幼い時別れた、無二の親友の顔を思い出した。

彼の名はアスラン・ザラ。きりっとした瞳と責任感あふれる顔立ちが
印象的だった。僕達は別れの日、桜舞う空の下で言葉を交わした。
彼の可愛らしく―そういうと失礼なのかもしれないが―着飾った恰好が
いつもとは違う雰囲気をどこか起こさせ、僕は不思議な気分だった。
彼は別れ際一羽の機械仕掛けの小鳥をくれた。
「トリィ」と鳴きながらまるで本物のような仕草をみせるその小鳥を
指先に留め、僕は鳴き声そのままに「トリィ」と名付けた。
その思い出は何故か、その日に限ってひどく鮮明に思い出された。

僕ははっと気づいた。見るとミリアリアとトールが立っている。
過去の記憶は水晶の砕け散るように消えて、現実が戻ってきた。
トールがいつものように僕に悪ふざけをしてくる。ミリアリアは
それを見て少し呆れつつも、自分のボーイフレンドの事を
楽しそうに見ている。僕も一緒になって楽しんでいた。
何の変わりもない、いつもの出来事だった。

道に3人、女の子が立っていた。どうも恋の話題で盛り上がっている
らしく、賑やかで明るい喧騒が僕の耳をなでた。
話題の中心になっているのは紅い髪の女の子で、友人の話に
困り果てたような口調で、それでも楽しそうな顔で言い返していた。
その子はミリアリアに話しかけてくる。話の内容はその子が
ラブレターをもらったというものだった。
その相手は、僕の親友でもありその子の婚約者でもあった少年、
サイ・アーガイル。僕はそれを聞いて、少し悔しかった。
僕は確かにその時、その子に淡い恋心を抱いていたのだ。

760人為の人・PHASE−1・2:2004/07/21(水) 18:11
ディスプレイで見ていた遠い地球での戦争。爆発が起こり、人が死に、
巨大なMSが大地を蹂躙する映像を僕はずっとこの目で見てきた。
それは酷い事だと思ったし、とても悲しい事だとも思った。
けれど僕はその時、まだ「思っていた」にすぎなかったのだ。
恐ろしい光景が繰り広げられていたのはまさに僕の生きている世界で、
僕がトールとふざけあっていた頃、地球では何人もの人が一瞬で
死に追いやられていたのだった。それはやはり現実だった。
突如、大きな震動が部屋にいた僕達を襲った。僕は初め何の事か
分からず、ただ他の人にあわせて避難を始めた。戦争が僕達のもとに
現れたのは明らかだったが、信じる事はできなかった。
ここは中立だから、絶対安全だから、僕はそこにいたのだ。
駆けぬけていく途中、一人の男の子に出くわした。正確には女の子で、
ずっと少年だと思っていた僕はびっくりした。彼女は部屋の中で
人待ち顔を続けていたのだが、平和が破られるとただ走り続け、
後を追った僕はとんでもないものを目にする事となった。
それはMSだった。
お父様の裏切り者、と彼女は地の底から絞り出すような叫び声で
その場にへたり込み、階下にいた敵の銃声が僕の耳に轟いた。
僕のすぐ側に戦場があり、赤い兵士が人を殺していた。
少年と見間違えた少女を連れ、僕は彼女をシェルターに押しこめた。
大きな瞳と、手入れのない真っ直ぐな金髪が僕の目に焼きついた。

そして僕は作業員姿の女性、マリュー・ラミアス大尉の指示に従って
彼女のもとへ向かった。何度も爆発が起こり、縛めを解かれたMSが
次々に動き出していた。ザフトが地球軍の極秘MSを奪いに来たのだ。
僕は熱い空気とすぐ近くで聞く銃声に心臓をこわばらせ、生きた気が
しなかった。喉はカラカラで、指先まで震えが止まらなかった。
恐怖の中、ラミアス大尉が撃たれた。僕の前に敵が迫ってくる。
僕はあまりに理不尽な死の可能性を限りなく100%に近づけられ、
その赤いザフト兵の持つナイフの切っ先に混乱寸前だった。
死ぬ。僕は死ぬ。本当に死ぬのかという思いが何度も頭に浮かんだ。
ふいにそのナイフが止まった。敵は驚いた顔をしていた。その顔は
はっきりと見えた。僕は目を見開き、懐かしい名前をつぶやいた。
そこには返り血にまみれたアスラン・ザラが、桜舞う昔の思い出から
成長した姿で呆然と手を止めていた。僕の頭は空白になった。

ラミアス大尉が隙を突いて僕をMSのコックピットの中に
突き落とした。僕達はMS、X−105ストライクの上にいたのだ。
そして僕と中に入ったラミアス大尉はMSを起動させた。
アスラン・ザラはその場から身を退き、別のMSのもとへと
向かっていった。僕にとっての真の戦争は、その時始まった。

761人為の人・作者:2004/07/21(水) 18:16
初めまして。放送中からかれこれ一年以上ROMらせてもらっていた結果、
ついに一念発起して書き込んでみることにしました。
内容はキラの軌跡を彼の自身の視点でたどるというものです。暗いです。
ちなみにフレイ様が「あの子」という表現になっているのは
こちらで読ませていただいた某作品に由来するものなのですが、
よろしいでしょうか?作者さんがいらっしゃったらご了承いただきたいのですが……

762私の想いが名無しを守るわ:2004/07/21(水) 20:01
おお、新作!!
最近投下が無くて自然消滅してしまうんじゃないかと危惧していただけに感激。
そういえば今までキラ視点てあんまりありませんでしたね。
楽しみにしています!

763私の想いが名無しを守るわ:2004/07/21(水) 20:39
>>人為の人
その某作品の作者ですが、別に私の専売特許でも無いので、全然構いませんです。
二話のうちに、本編一話を過不足無くまとめて、かつ、キラの心情も追加しておられてますね。
題名が純文学みたいな感じで、これから、どんな話になっていくのか期待しています。

764人為の人・PHASE−2:2004/07/22(木) 18:58
それから後の戦闘では、もうずっと生きた気がしなかった。
僕はただただ死に物狂いで、自分の生きる道を探っていた。
住み馴れた居住区に出たところで敵のMS、ジンに遭遇した。
そしてそんな戦場にトールが、ミリアリアが、カズイが、
サイがいた。僕の友人があんな所で、死ぬかもしれない。
死ぬ。その一言の恐怖に支配され、僕はおぼつかない足取りの
ストライクを操縦するラミアス大尉からMSの支配権を奪った。
ほとんどが初めて見る機器だというのに僕の頭はそこから流れ出る
滝のような情報を一つ一つ手に取るように理解し、行動につなげた。
敵がこちらの駆動の異常な変化に戸惑う中、僕は戦うための怒りを
全身にこめて、唯一の武器をジンの肩口に突き刺した。
敵の兵士が死ぬことなく脱出したのを確かめると、僕は自分が死から
逃げ切ったことにほっとする気持ちでいっぱいだった。

でもその安心は長く続かなかった。傷を負ったラミアス大尉を
友人達と介抱してから、今度はその彼女に銃を突きつけられたのだ。
僕達は一列に並ばされ、一人ずつ名前を言った。
トール・ケーニヒ。いつも明るさをたやさない、楽しい友達。
ミリアリア・ハウ。トールの恋人で、つんと外に跳ねた髪が印象的。
サイ・アーガイル。みんなのまとめ役で、僕にとって頼もしい存在。
そして、彼はあの子と婚約の話が進んでいた。
カズイ・バスカーク。目立たないけど、根は優しい少年。
そして僕、キラ・ヤマト。
僕達は地球軍に拘束される形でMSの傍に留まる事になった。

僕はストライクの設定を確認しながらあちこちの操作系統を確認し、
またいつ来るとも分からないザフトの攻撃に備えていた。
町はあちこちがひどく破壊され、動いている人影も見えない。
僕はモニターに表示される「GUNDAM」の文字を見つめながら、
日常から離れすぎた現在の状況をどこか恐れていた。
そして心の影には、あの子の事も含めてついさっきまでの平和な
暮らしが過去の思い出のようにぼやけて浮かんでいた。
あの時、透明なバイザー越しに見たアスランの顔。彼は確かに
僕の事をキラと呼んだ。たくさんの人を殺して、その血を纏って。
ザフトが再び攻めてきた。真っ白なMSがこちらに向かってくる。
続いてオレンジ色の戦闘機のようなものが現れた。メビウスだ。
僕は必死に気持ちを奮い立たせてストライクを起動し、頑丈な
フェイズシフト装甲を展開させて敵の攻撃を防いだ。
僕が戦わなければ、みんなが死ぬ。その気持ちでいっぱいだった。
そしてその後に、僕にとって忘れる事のできない思い出をいくつも
作り出した戦艦、アークエンジェルが姿を現した。

765人為の人・作者:2004/07/22(木) 19:05
続編が迫ってきたのも投稿を決心したきっかけの一つでした。続編での
キラの性格が、この小説と結構似ているんじゃないかと考え始めたもので。

>名前の件
何だかそのまま使うのはためらわれたので、お伺いした次第です。
丁寧な心情描写や台詞回しが私的にとてもツボだったもので。

766人為の人・PHASE−3:2004/07/23(金) 21:29
現れた純白の巨大戦艦を警戒し、敵MSは去っていった。
あとには撃墜を辛くも免れたメビウスと、ストライク、
アークエンジェルが残され、僕達は町の片隅で一堂に会した。
戦艦を指揮していたのはナタル・バジルール少尉。誰かと思えば、
ゼミに行く途中に見たサングラス姿の女性だった。その時は
軍服姿で、軍帽を真っ直ぐにかぶって鋭い視線を投げかけていた。
メビウスに乗っていたのはムウ・ラ・フラガ大尉。少し変わった
名前だと僕は思ったものだが、彼は名前だけでなく行動にも
一風変わったユニークさがあった。飄々としていて言葉は軽く、
僕には初めあまり物事を深刻に考えないような人に見えた。
そんな彼が、僕を一目でコーディネーターだと見抜いたのだ。
周りの人の僕を見る目が変わった。
その言葉に反応してトールが僕の前に立った。キラは友達だから、
彼はそう言って僕のことをかばってくれた。他のみんなも、
しっかりとした眼差しで地球軍の人達を見つめていたように思う。
僕はその時、本当に救われる思いがしたものだった。
フラガ大尉はそんな僕達の姿を見て微笑むと、別にそんな事は
どうでもいいという感じでそれ以上の追求をやめた。
それだからか、彼が悪い人だという気持ちは起こらなかった。

ラミアス大尉は技術士官で戦艦操作の経験もほとんどなかったが、
バジルール少尉はそんな彼女に階級上一番適した場所を勧めた。
ラミアス大尉は、アークエンジェルの艦長になった。
そしてバジルール少尉はその副官をしばらく務める事となった。
この二人が次第に対立し、悲劇的な結末を迎える事など
当時の僕には知る由もない。ただ一つ言えるのは、死の悲しみを
背負って今を生きている人が僕だけではないという事だ。
戦艦のクルーには他に、アーノルド・ノイマン曹長を初めとして
みな経験の浅い、襲撃で生き残る事のできた人達が就いた。
そしてその中には、後に僕の友達も含まれることになる。

ザフトはまた襲ってきた。
僕はストライクに搭乗して、みんなを守るために戦った。
けれど戦うたびに、今までの平和な暮らしは確実に遠のいていく。
コロニーの外壁を突き破って侵入してくる敵はバズーカを撃った。
僕は使った事があるはずもないランチャーストライクのアグニで
応戦し、アークエンジェルは豊富なビーム兵器を駆使した。
その時の僕は戦うことに手一杯で、コロニーがどうなろうと
知った事ではなかったし、敵が僕に考える余裕を与えてくれる
はずもなかった。中立という名の揺りかごにいくつも穴が空いた。
僕はさらにソードストライクに切り替えてジンと相対し、
相手の気迫を全面に受け止めて跳ね返そうと試みた。
敵が人ではなく機械だとか、急所を外せば助かるとか、そんな事は
考えていられない。ただ自分が死ぬという事に脅え、そこから
抜け出すために必死で戦い、結果僕は人を殺した。
上下真っ二つになったジンを爆破して、僕は一瞬ほっとした。

アスランは僕の戦闘をずっと見ていたのだろうか。彼は奪取した
MS、イージスでコロニーの中にいた。人殺しでアスランの仲間に
なった僕は、通信から聞こえてくる彼の変わらない声を聞いた。
お互いの名前を確認しあう。僕達はMSで向かいあっていた。
頭の中を信じられないという単語が幾度も駆け巡り、操縦桿を
握る手に力がこもった。動けない体の真ん中に痛みが集まって、
脳天へと突き抜けていった。何故という言葉をひどく軽く感じた。
そして軸を失ったコロニー「ヘリオポリス」は大きな音を立てて
分解を始め、僕は漆黒の宇宙へと投げ出されていった。

767私の想いが名無しを守るわ:2004/07/24(土) 09:59
>>人為の人
キラが緒戦で、躊躇い無くミゲルを撃墜した部分の感情が補完されてますね。
人が乗っていると実感しだしたのは、確かデブリ帯のころなんでしたか。
しかし、今のところ台詞が、まったく無いんですね。作者さんのスタイルなの
かもしれませんが。

この次は、多分、フレイたま登場。キラの感情の変化の表現に期待します。

768人為の人・PHASE−4:2004/07/24(土) 23:39
寂しさに死んでしまうのではないかと思うほどの孤独な宇宙。
次第に冷静さを取り戻し始めていた僕の目が捉え続けていたのは、
今やただの瓦礫の塊となってそこら中に飛び散っているだけの
元・コロニーだった。僕は手の震えが止まらなかった。
ヘリオポリスが、僕達の家が、こんなにあっさり崩れてしまった。
その事実に圧倒され、僕は通信機から響くバジルール少尉の声を
無視すらしていなかった。当然だ、聞こえていなかったのだから。
そして僕はわずかな生命の輝きを見つけ出そうとするかのように、
あの子の乗った脱出ポッドを半ば運命的に拾い上げたのだった。

彼女がポッドから出てきた時はびっくりした。
僕の胸に跳び込んで本当に嬉しそうだった彼女は、サイの姿を見ると
再び僕の手を離れて彼に喜びの表情を見せていた。今思えば、
それは彼女の一種の特技と呼べるものだったのかもしれない。
どんな人に対しても同じ中身のない笑顔を振りまくような、そう、
短絡的に言えば八方美人のような所があった。でもそれも少し違う。
彼女は本当に美人だったのだ。見る者を惹きつけるようなオーラが
体中からあふれていて、その輝きに僕は何かを見失っていた。
けれどその時の僕に何ができただろう。僕は幸せそうな二人を複雑に
見守る、一人の取巻きでしかなかった。そして、変わっていく彼女を
僕が誤った方向へ導いた結果、誰もが傷つく事になった。
過去は何もしゃべってはくれない。あるのはただ、一つの現実だけ。

僕はストライクに搭乗するのを嫌がった。だんだん思考が冷静になる
につれ、なんで自分がはっきりとした理由も無いままMSに乗り、
地球軍に従い、ザフトと戦わなければならないのか分からなくなって
きたからだ。「大人の都合で」という、子供に都合のいい理屈を
振り回して僕は抵抗した。でも戦争はそんな事を許してはくれない。
トール、ミリアリア、カズイ、そしてサイ。友人達が少年兵の服装で
僕の前に現れた時、僕は自分一人だけが駄々をこねる子供のように
思えた。みんなの顔は決意と自信に満ちていて、当たり前ながら
ゼミにいた時よりも幾分引き締まって見えた。僕は取り残されるのを
恐れ、次に臆病な自分とそれなりに格闘した。そして答えが出た。
自分には戦うための力がある。そして、今がそれを使う時なのだと。
僕はそうして、今まで隠してきた自分の異常性を人々に知らしめた。

補給を得るため、月基地ではなくより近いアルテミスへの航路を
とったアークエンジェル。ダミーを見抜いて追撃するザフト艦。
僕はフラガ大尉に及びもつかない決心から、ストライクに搭乗した。
ノーマルスーツを着こみ、ヘルメットのバイザーを下ろした心に
迷いはもうないと思いこんでいた。だが動揺は確実に存在していた。
みんなを守る事ができれば、それでいいんだ。
僕は笑顔で話しかけるミリアリアの声にわずかな安心を得て、
再び広い広い宇宙へと自ら飛び出していった。

769人為の人・作者:2004/07/24(土) 23:43
なんかだんだん投稿する時間が遅くなっている……大丈夫かいな?

>セリフの件
この小説を書くにあたって、自分なりにいろんな制限を課してみました。
その一つに「カギカッコなしでどれだけうまく感情を表現できるか」
というのを入れてみたのですが、今更ながらに後悔w
最終的にどんな形になるのか自分でも楽しみな反面不安というか。

770私の想いが名無しを守るわ:2004/07/25(日) 03:07
>>人為の人
一人称語りだから、キラの感情は表現できますよね。挑戦してるのは、キラ以外の
キャラの感情表現かな。軍を手伝うことになったヘリオ組に対するキラの隠れた劣等感が、
彼らの純粋な思いを伝えているように思います。
でも、難しいよね…… がんばって。

771人為の人・PHASE−5:2004/07/25(日) 13:37
敵は奪った新型機を全て投入してきていた。
基礎的で格闘重視のデュエル、遠距離支援型のバスター、
偵察能力を高度に有したブリッツ、そして一撃離脱攻撃の可能な
高速可変MS、イージス。僕はほぼ他の三機をアークエンジェルに
任せる形で、アスランの駆るその赤い機体と交戦した。
アスランはなぜ僕が地球軍にいるのかと詰問した。彼は軍人だった。
そして民間人でずっと平和を貪ってきた僕に、その問いかけは
果てしなく理不尽で答えようのないものだった。僕は思い出の中の
アスランを探し求めようとした。けれどそこにはもう誰もいない。
戦争なんか嫌いだと言っていた「あの」アスランはどこかに消え、
一人のザフトの軍人が戦闘慣れしない僕を追い詰めていった。
そうして焦るばかりの僕に、宇宙はあまりにも無表情だった。

しばらくすると、無駄撃ちのせいでPS装甲が切れた。
それは自分がいつ爆死してもおかしくないという事を意味したが、
僕にそれを理解する余裕があるはずもなかった。僕は、いや
ストライクは変形したイージスの脚に捕らえられて運ばれていた。
アスランは僕をザフトヘ連れていくのだと言った。
僕は何のためにこんな宇宙にいるのかすら分からなくなった。
分からない事だらけで、ザフトに行くのか、ああそうなんだと
訳もなく納得し、直後そんな事は嫌だという思いが現れた。
脳裏にアスランが、続いてトール達が次々に現れては消えた。
僕の思考は混乱の極みを迎えてあちこちに錯綜していた。
もしあの時ザフト艦に一撃与えて戻ってきたフラガ大尉の声が
無かったら、僕はまた成り行きでザフト兵になっていたのだろうか。
ともかく、ストライクは決死の換装を行って装甲を取り戻し、
僕達は奇跡ともいう形でザフト軍を一旦は撤退させる事に成功した。

アークエンジェルに帰艦した僕は、依然としてまとまらない頭の中を
整理しようと一人で勝手にもがき苦しんでいた。
宇宙。それは想像していたよりずっと暗くて、寂しい所だった。
でも僕は戦わなければならない。そう決めた以上、後戻りができない
事は自覚していたし、楽じゃない事も分かっているつもりだった。
そんな僕に、フラガ大尉はストライクの操縦系統をロックしておく
ように言った。なぜそんな事をしなければならないのか。
その答えはこれから入港しようとしていた友軍基地、アルテミスの
中で初めて分かる事だった。僕はそこで、あまりに無知だった。
結局、何も分かってはいなかったのだ。そう、何も。

772人為の人・作者:2004/07/25(日) 13:38
>感情表現
度々の感想ありがとうございます。「まだ誰もやってないかな?」と考えたのが
会話無しでの描写をしようと思ったきっかけなのですが、誰もやらないのは
それが面倒だからなわけで……ともかくがんばってみます。

基本的にキラのいない場での出来事はスルーされてしまいますが、
それでもさりげなく出てくるかもしれません。さてどうなることか……

773人為の人・PHASE−6:2004/07/26(月) 19:16
食堂に集まっていた僕達の前に突如、銃を構えた軍人が入ってきた。
やっと一息ついて、快適な時間を過ごせると思っていた僕はやはり
甘すぎたのだ。物々しく張り詰めた緊張の中で、階級の高そうな
軍人がストライクのパイロットは誰かと尋ねた。立ちあがろうとする
僕を整備のマードック軍曹が止めた。代わりにノイマン曹長が
なぜそんな事を尋ねるのかと聞き返した。相手側の返事にはどこか
僕達を蔑むような口調が含まれていた。ミリアリアが腕を捕まれた。
彼女がパイロットのはずはない。軍人の目つきに僕は怒りを覚えた。
心が体を突き動かし、僕は立った。軍人は相変わらず不愉快な顔で、
なぜ子供がというような事を言った。するとあの子が口を開いた。
彼女の正直な一言は、僕がコーディネーターだという事を驚くほど
あっさり、そして確実に伝える事となった。

アークエンジェルには確かに「識別コード」がなかった。
でもそれはただの口実で、実際はもっと問題はこじれていた。
大西洋連邦とユーラシア連邦は仲が悪くて、僕達は大西洋、
アルテミスはユーラシアに所属していた。我々はMSの開発も
知らされていない。だから見せろというのが相手の要求だった。
戦争って何なんだろうと僕は思った。そんなこと今更考えるとは
思ってもみなかったのに、気がつけば僕はそこに囚われていた。
戦争の大義を一兵卒が知ったところでどうにもならない。
けれど僕はついさっきまで民間人だったのだ。それは嘘ではないし、
何の誇張もなかった。そこに甘えるつもりもなかった。
だが結局僕は自分が当然だと思っていた事を次々に否定され、
あげく「裏切り者」の「コーディネーター」の名を冠された。
僕は二重の意味で、軍人たるべき枠からはみ出ていた。

ブリッツは体を透明にする事ができた。
もちろん存在を消してしまうわけではなく、ミラージュコロイドと
呼ばれる特殊な粒子を撒いて姿を悟られないようにするものだった。
そしてそのたった一機のMSが、そんな「姿を消す」能力を使って
アルテミスの防御システムを破壊した。そう考えると皮肉なものだ。
ユーラシアが大西洋の開発したMSを知らなかったから、
それにやられた。そう言ってしまう事だってできる。
戦争とはつまりそんなものなんだろうと僕は思った。そんな事ばかり
繰り返して、その度にたくさんの人が死んで、ようやく気づく。
僕は基地内に鳴り響いた警報に反応してストライクを起動させ、
ブリッツと一瞬交戦し、そしてアルテミスの人間を完全に無視した。
拘束されていた艦長、副長、フラガ大尉も無事帰還し、
アークエンジェルは爆発し崩壊していくアルテミスを残して
第8艦隊への孤独な旅を続ける事となった。そう、孤独な旅だ。
もちろん僕は、ヘリオポリスの最期を見届けた時の喪失感など
微塵も感じてはいなかった。つまりはそれが戦争なのだ。

774人為の人・PHASE−7:2004/07/27(火) 19:36
フラガ大尉が一つの提案をした。
それは補給を受けられなかったアークエンジェルのため、
近くにあったデブリ帯で必要物資を探すというものだった。
僕は反対した。それは墓場を荒らす事に等しいと思ったからだ。
人が死んで、それを悲しんで、弔って、お墓に埋めたその亡骸を
蹂躙する「悪人」の姿が僕の目に浮かんだ。そんなのひどすぎる。
でも僕の考えはまたしても浅はかなものだった。

デブリ帯には戦争で傷ついたものが何でも「捨てられて」いた。
それは墓場というより、死んだ人を邪魔物のように遠ざけた
死体置き場の印象を強く与えた。僕はあまりの凄惨にただ驚愕した。
俺達は生きているんだ、だから生きなければならない。
フラガ大尉の言葉が痛いほど胸に染みた。僕達は生きているのに、
ここにいる死者達を弔う事さえせずただ放り出していたのだ。
そして漂う残骸の中でも一際目を引いたのが、ユニウス7。
地球軍のたった一発の核ミサイルによってバラバラに砕け散った、
ザフトのコロニーだった。その冷えきった中心部を僕は見た。

僕達は作業を始めた。トール達が物資を集め、僕がストライクで
哨戒活動にあたるというものだった。でも僕は少し油断していた。
こんな所に好き好んでやってくる「軍人」なんているわけがない、
もっと他にする事があるだろうから、と。少なくとも僕にとっては、
アークエンジェルの人達はそれとは何か違うもののように思えた。
その時、残骸の陰に一機のジンが見えた。僕はにわかに緊張した。
そして相手が気づいてくれない事をただただ願った。
でもその願いは届かなかった。ジンがこちらに目を向けた。
視線の先には友達の乗った作業用機械があった。攻撃される。
僕は精一杯の葛藤を抱えながらそれでも銃の引き金を引いた。
ヘリオポリスでジンを斬った時よりも遥かにあっさり、ジンは
爆発した。そうして僕はまた一人、人を殺した。
友達を守るために戦ったはずなのに、ひどく心が苦しかった。
アークエンジェルから放たれていく折り鶴の群れを眺めながら、
僕は弔いと懺悔に満ちた思いをそこに委ねようとしていた。

君はつくづく拾い物をするのが好きなようだな。
そう副長に言われた。実際そうなのだろう。僕はこの廃墟の中で、
やはり「捨てられる」ようにしてたたずむ一つの脱出ポッドを
見つけたのだ。そして僕は二度目の運命的な出会いをした。
相手は桃色の髪を持つザフトの歌姫、ラクス・クラインだった。

775人為の人・PHASE−8:2004/07/28(水) 16:07
ポッドの中からまず現れたのはピンク色の丸い変な機械だった。
自分からボールのようにあちこち跳び回ったり、随分とクセのある
言葉を甲高い音声で発したりして、なかなか愛らしいものだった。
そしてすぐ後から現れた一人の少女。戦争とはおよそ無関係の
ような幻想的な衣装、凍てついた心を溶かすような歌声、いつも
純粋な笑みを浮かべている完璧なまでの顔立ちがそこにはあった。
彼女は自分がどんな状況に置かれているのか全くわからない、
というような空気を振りまきながら僕達に挨拶をした。
やれやれ、おいおい、困ったな。そんな声が聞こえてきそうだった。

ラクスは戦場追悼慰霊団の代表としてやってきた所を地球軍に
見つかり、攻撃を受けて避難させられたらしい。そんな大変な事が
あったのに、彼女はまるでそんな素振りを見せなかった。
もちろん彼女の目にだって戦争は映っていたはずだ。人が人を憎み、
殺し合い、多くの犠牲を撒き散らしてなお続く無意味な争いの姿を。
でも当時の僕にそんな事を考えている余裕はなかった。僕は彼女の
非の打ち所のない外面に見とれ、浮わついた心に思考を寸断された。
天使のような微笑みの奥に潜む無限の苦悩を分かる事ができず、
ただ導かれるだけの存在に甘んじて無邪気に照れていたのだった。

あの子はラクスの手を振り払って、馴れ馴れしくしないでと言った。
そこには明確に拒否の形が現れていたし、それ以上のものがあった。
あの子はコーディネーターのくせに、とその時言ったのだ。
僕は二度目の衝撃を受けた。初めはアルテミスでの一言だった。
そしてこの時の態度が、僕にある一つの結論を導き出させた。
僕はあの子の考えの中にはっきりとした差別感情がある事を知った。
でもそんな感情は誰にでも備わっているものだと、僕は思っていた。
サイの何気ない一言が悪意から出たものでない事は明らかだったし、
僕の友達がナチュラルである以上仕方がないんだと考えていた。
だから衝撃は長続きしないものと思っていた。今は苦しいけど、
いつも通りに我慢すればいい。そうすれば大丈夫だと。
だがやはりそんな甘い考えは通用しなかった。

ラクスの歌声は美しい。そう僕は思った。戦争と全く無関係のように
紡ぎ出される響きには、それでも作り変えられた遺伝子を嫌悪する
人にしか感じ取れないような排他的な刺が含まれていたのだろうか。
少なくともコーディネーターの僕には全く気にならない事だった。
そんな彼女を乗せて、戦艦アークエンジェルは第8艦隊先遣隊との
接触の時を迎えつつあった。再び穏やかな空気が艦内に漂い始めた。
けれど悲劇の足音は確実に、僕と、そしてあの子に迫ってきていた。

776人為の人・PHASE−9:2004/07/29(木) 22:53
先遣隊の構成は、バーナード、ロウ、そしてモントゴメリ。
モントゴメリにはあの子の父親、ジョージ・アルスター事務次官が
乗っていた。僕は彼がどんな人だったかをよくは知らない。
サイなら知っていただろうが、それも今となっては尋ねようもない。
どこかで一度聞いた事があるのは、あの子は早く母親に死なれて
すごく大事に育てられたというものだった。でもその事で
苦労しているという様子は無かったし、彼女のお父さんは
とてもよくできた人なんだと何気なく思っていた。
僕の父さんと母さん―――ヤマト夫妻も僕の事を本当の息子のように
育ててくれたし、その時は僕も本当の息子だと信じて疑わなかった。
親子の仲は、その親密さが第一に重きをなすのではないかと思う。

接触間近になって、先遣隊がザフトの攻撃を受けた。
アークエンジェルは宙域から離脱するよう打電を受けたが退かず、
先遣隊の救援に向かう事となった。艦長と副長が少し対立した。
第一戦闘配備の放送で艦内がにわかに騒然とする中、ストライクの
もとへ急ごうとしていた僕はあの子に出会った。彼女はとても
動揺していて、怯えた声で僕にパパは大丈夫なのと尋ねた。
僕は彼女の気持ちを理解したつもりになった。僕が彼女の立場に
もし置かれていたなら同じ気持ちになっていただろう、と。
僕は彼女を安心させようとして、大丈夫だよと言った。
だってみんなを守りたくて、戦い始めた戦争だから。
守るべき命を守るために戦おう。僕はそう安易に決意して、
MS格納庫へと走っていった。不安げなあの子の顔が焼きついた。

ザフト艦からはアスランの駆るイージスと、数機のジンが
出撃していた。僕はジンをフラガ大尉に一手に任せる形で、
再びアスランとの辛い戦いを余儀なくされた。
彼の動きに以前のようなためらいは無いように思えた。何より速さが
前回とは段違いで、僕は彼の攻撃を受け止めるのに必死だった。
アスランは僕と違って、ずっと前から軍人としてMSに触れている。
だから何とか応戦できるだけでも充分だと思っていた。しかし彼は
いまだに本気を出してはいなかったし、その時僕は彼との戦いに夢中に
なりすぎて、先遣隊の事など考えにも及ばなくなってしまっていた。
彼と過ごした日々を振り切って前へ進む事に固執した僕の罪だ。
バーナード被弾、ロウ撃沈。フラガ大尉の専用機、メビウス零式も
損傷して帰艦し、戦局は悪化の一途をたどっていた。
僕はずっと、本気でもないアスランと一人よがりの「戦争」を
していたのだ。今となっては仕方がない事だけれど、胸が痛む。

ザフト艦の主砲がモントゴメリを貫き、爆発するのを僕は見た。
僕はそこで初めて守るべきものの存在を大きく直視した。
そこでアスランのイージスが動きを一瞬止めた事にも気づかなかった。
敵はさらにアークエンジェル目がけて攻撃を仕掛けてくる。万事休す、
その時副長の声がコクピットに響いた。ラクスを人質に取った、と。
続けてアスランの苦しげな叫び声が聞こえた。こんなもののために
お前は戦っているのか。ラクスは返してもらう。それは僕の心に
どうにもならないやりきれなさを残し、彼は引き揚げていった。
穏やかなラクスの微笑みと、あの子の不安げな表情が同時に浮かんだ。

777リヴァアス・作者:2004/07/30(金) 19:48
リヴァアスの作者の最新作。ついに登場!

778燃える戦士:2004/07/30(金) 20:02
キラ・ヤマトはヒッチハイクしていたフレイ・アルスターを車に乗せた。
「ところで、エチオピアにはいつ着くの?」
「ああ、あと2時間くらい」
キラはコロニーから地球に来て、飛行機に乗り、モガディシュに行き
レンタカーの74年型いすゞジェミニを借りて、エチオピアに向かって
いった。そのとき、ヒッチしていたフレイに出会った。
「フレイは何しにエチオピアに行くんだい?」
「観光旅行よ」
「そう、なにもないけどさ」
キラはカーラジオをかけた、曲はジョン・レノンの
「スターティング・オーバー」だった。
「ねぇキラ、どっかで昼食とらない?」
フレイは言った。

779リヴァアス・作者:2004/07/30(金) 20:06
リヴァアスを書いていた作者です、とうぞ最新作「燃える戦士」
をご堪能してください。

780人為の人・PHASE−10:2004/07/30(金) 22:27
帰艦した僕は、まずそこにいたフラガ大尉に不満をぶつけた。
僕は人質に取るためにラクスを助けたんじゃない、そう言いたかった。
けれど大尉の返事は的確だった。そう、確かにあの時彼女を人質に
取らなければアークエンジェルは沈められていたかもしれないのだ。
僕にも大尉にも艦長や副長を責める資格はない。だったらどうすれば
いいのか。僕達が弱いからああせざるを得なかった。僕が弱いから。
「弱い」という言葉が頭の中で何度も僕を殴りつけ、あざ笑った。

僕は、あの子が分かってくれるだろうと思っていたのかもしれない。
戦争で人が死ぬのは異常な事ではないのだから、あの子は僕の事を
悲しみながらも分かってくれるんじゃないか。僕はそう考えていた。
それは辛い環境に置かれていた僕の、一種の防衛本能だったのか。
今となっても僕はそこに答えを見出す事ができない。
僕は友達とあの子がいる部屋の前で立ち止まり、中を見た。
そこには最愛の父を失った少女の、あまりにも痛々しい姿があった。
彼女は床に崩れ落ち、サイに泣きついていた。そして僕に気づいた。
こちらへ向けたその目は圧倒的な悲しみと僕への憎悪に満ちていて、
一瞬ひるんだ僕はようやく想像以上の事の重大さに打ちのめされた。
嘘つき。大丈夫だって言ったのに。彼女の言葉の刃が僕を襲った。
みんなから半分可愛がられるようにして育ってきた甘い僕に、
その切っ先は鋭すぎた。僕は何も言う事ができなかった。
やがて彼女の口から、残酷ながらも核心を突いた一言が飛び出した。
あんたコーディネーターだからって、本気で戦ってないんでしょう。
僕はその場から逃げ出し、自分の中に抑え込まれたあらゆる感情を
一緒くたにして吐き出すように泣いた。泣き続けた。

理性を失って泣き続ける僕の耳に、ラクスの声が聞こえた。
僕は見開かれた瞳に浮かぶ涙を拭って、彼女の整った顔を見つめた。
彼女はまっすぐに僕の目を見つめてくる。僕は切れかかっていた
心の糸が、再び元のしなやかさを取り戻していくのを感じていた。
僕とラクスはその後色々な話をした。とは言っても話題のほとんどは
アスランにまつわるものだった。ハロというボール状のロボットを
作ったのもアスランなら、ラクスの婚約者なのもアスランだった。
彼女と話していると不思議な気持ちになる。さっきまで戦っていた
イージスのパイロットとしての彼の姿が頭からすっかり消えて、
ちょっと無口で頑固だけど頼れる、親友だった少年の面影が
僕の心の中に現れ始めていた。僕は彼女に救われたのだと思った。
アスランがなぜあそこまで苦しげな叫び声を上げたかも分かった。
そして、このままではいけないと強く思うようになっていた。

向かい合ったストライクとイージスのコクピットが開いた。
僕は抱きかかえたラクスをそっと放し、アスランのもとへやった。
彼女はずっと、全てを包みこむような微笑みを絶やさなかった。
アスランが僕に向かって言った。お前も一緒に来い。
それはできなかった。あの艦には守りたい人が、友達がいるから。
ラクスを連れて無許可で発進する計画を立てた時、ミリアリアと
サイが手伝ってくれた。サイは僕に何度も、帰ってこいよと言った。
その時の必死に呼びかける彼の表情を、僕は今でも覚えている。
あの声が、あの気持ちがあったから、僕は地球軍に残ったのだ。
もしそうでなければ、僕は今度こそアスランを選んでいただろう。
彼は僕の返事に体を震わせ、今度会う時にはお前を討つ、
そう言った。僕達はもう戻れない道を別々に歩み始めていた。

真っ白なMSが視界の隅に映った。仮面の男、ラウ・ル・クルーゼの
駆るシグーだ。僕はその時大して気にも留めていなかったが、
やがて彼は僕の心に癒しがたい傷を残す事になるのだった。
本当に、世の中には後になってから気づく事が多すぎるのだ。

781人為の人・作者:2004/07/30(金) 22:28
>リヴァアス作者さん
どうも初めまして、最近ここを半占拠状態にしておりました者です(おい)
新作ということで期待が高まりますね。これから何が起こるのでしょうか。

782人為の人・PHASE−11:2004/07/31(土) 11:36
僕はアークエンジェルの一室で、小さな軍事裁判にかけられた。
フラガ大尉がさりげなく僕の事を擁護してくれたが、結果は銃殺刑。
その時は一瞬全身の血が凍ったかと思った。でも艦長の判断は、
僕を厳重注意に処するだけのとても優しいものだった。僕はほっと
して、僕の事を散々きつく問い詰めていた副長から目を反らした。
艦長と副長の対立は、その時から何となく感じていた。

外に出るとサイとミリアリアがいた。あの時僕を手助けした二人は、
罰としてトイレ掃除1週間を命じられたらしい。僕は自分だけが
何もお咎め無しだった事を申し訳なく思ったが、彼らは笑顔で逆に
僕を励ましてくれた。僕はここに残って本当に良かったと思った。

食堂で友達と食事をとっていると、あの子が現れた。僕はあの時の
彼女から僕に向かって発せられた、ほとんど殺意に近い憎悪を
その身に感じ取ろうとしたが、しかし入り口に立っていた彼女に
そんな気配は微塵も無かった。彼女は辛そうな顔をしていた。
あの子は僕の前に立ち、憎しみではなく謝罪の言葉を口にした。
僕はその一言一言に彼女の悲しみを共有しようとしながら、
彼女が僕を許してくれたのだと信じて疑わなかった。ついに彼女が
分かってくれたのだと、むしろ清々しい感謝の気持ちで一杯だった。
あの子はそんな態度を見せる僕を目にして、前以上の憎悪と嘲りの
感情とを高め続けていたに違いない。僕は全く気づかなかった。

第8艦隊との合流が目前に迫る中、ザフトが襲ってきた。
その中にアスランはいない。やってきたのは別の奪われた3機、
デュエル、バスター、ブリッツ。僕達は食堂を飛び出した。
そこへ艦内でよく見かけていた女の子が走ってきて、カズイに
ぶつかった。倒れた女の子をあの子が立たせた。僕は立ち止まった。
あの子が言った。大丈夫、このお兄ちゃんがみんなやっつけて
くれるからね。とても優しい響きをもって聞こえたその声は、
僕の心のどこかに急速に染みわたっていった。

バスターをフラガ大尉に任せ、僕はデュエルと1対1で切り結んだ。
相手のパイロット―――イザーク・ジュールは機体の特性もあってか
ほとんど射撃攻撃を行わず、ビームサーベルでひたすら押してきた。
僕はその動きからにじみ出る気迫に負けまいと必死に戦った。
でも敵は僕を倒すために襲ってきたのではなかった。残ったもう1機、
ブリッツがアークエンジェルへと向かった。ミラージュコロイドの展開
には対応できても、対空砲火でPS装甲を打ち砕くのは難しい。
たちまち取りつかれ、ブリッツのビーム兵器が直接船体を揺さぶった。
キラ、戻って。ミリアリアの声が聞こえた。
アークエンジェルが敵の攻撃を受けている。
目の前のデュエルは一向に攻撃を止めない。
フラガ大尉は性能ではるかに勝るバスターを相手に互角の戦いを
しているが、戻る事はできない。あの白い戦艦は、やがて沈む。
僕の脳裏に爆発するモントゴメリが映った。同じ事がアークエンジェル
で起こるのか。サイも、トールも、ミリアリアも、カズイも、そして
あの子も。いたいけな女の子に語り聞かせた彼女の声が蘇った。
弱いから守る事ができなかった。力がないから傷つけた。人が死んだ。
そして僕は極限状態の中に、はじけ飛ぶ一つの種子を目撃した。

頭の中で大量の情報が一度に訪れ、一度に処理されていった。
手と足はまるで自分のものではないかのように機能した。
世界が独り歩きを始め、駆け足の僕がそれを追い抜いていった。
視界には最大限の事実が誤りなく表示され、僕の感情を消し飛ばした。
僕はあっという間にブリッツを蹴散らし、続いてやって来たデュエルに
ナイフ型格闘兵器、アーマーシュナイダーを突き立てた。
コクピット近くに入り込んだそれがデュエルの内部を破壊する感覚を
催させたが、僕は何のためらいも感じなかった。これが力なのか。
僕の中の一部が戦いの高揚感に目覚め始めていた。敵は撤退した。
やがて、遠い宇宙の闇の中に第8艦隊の頼もしい明かりが見えてきた。

783燃える戦士:2004/07/31(土) 19:13
キラとフレイはレストランで車を止めて、昼食を
とることにした、二人はカレーを頼んだ。
「キラ、やっぱりカレーは辛いわ」
「うん」
後ろの席ではエチオピア駐屯の傭兵のジーン、スレンダー、デニムが
ニヤニヤ笑ってみていた。キラは無視した、ジーンはニヤリと笑って
コップの水をキラにかける。そして3人はレストランから出た。
キラは近くにいる棺桶屋に
「三つ用意しておけ」
キラは外に出た、ジーンはニヤニヤ笑っている
「おや?まだ居たのか!さっさと戻らねえと殺されちまうぜ」
「話があるんだ。カンカンなんだ」
「誰が?」
「僕さ」
「何に・・・」
「人に水をかけることさ、ここで、おたくが謝るって言うなら
 話は別だが」
「ギャハハハ」
ジーンは笑う
「笑うのもほどほどにしな!笑われるのが一番嫌いなんだ。このままじゃ
 気もすまねェ。どう片をつけるのか、ハッキリしてもらおう!」
ジーン、デニム、スレンダーがトカレフを取り出して乱射する。
しかし、キラが44マグナムと早撃ちで3人を撃ち殺した。
「行こうフレイ」
キラはフレイに言った。

784私の想いが名無しを守るわ:2004/08/01(日) 08:47
「燃える戦士」って、いくらなんでもひどすぎ。

785人為の人・PHASE−12:2004/08/01(日) 08:53
第8艦隊の総司令官、ハルバートン提督はとてもいい人だった。
彼は僕がコーディネーターである事を知っても特に不快感や
差別するような感情を見せたりせず、まっすぐに僕を見てくれた。
おかげであのアルテミスでの体験以来抱いていた、地球軍への恐れ
とでも言うべきものが僕の中でほんの少しばかり小さくなった。
そこに押し潰されてしまうような事になっていたら、僕はやはり
自分の帰る場所を失い心にまた傷を一つ増やしていただろう。
僕の心は弱い。どれほど強さを手に入れても、それは変わらない。

アークエンジェルは地球に降下し、一路アラスカを目指す事となった。
それに伴って、僕達民間人も降下用シャトルに乗り移る事が決まった。
僕は短い間だったけど色んな経験をしたストライクの調整をしつつ、
もうこの機体に乗る事も二度とないだろうという思いを馳せていた。
そこに艦長がやって来た。彼女は、一度あなたに謝りたかった、と
言って、僕の事を真正面から見つめた。わずかの微笑みがあった。
その姿がハルバートン提督に少し似ていたような気がした。
艦長もいい人だ。その意味合いは複雑だけれど、彼女はとても温厚で
母性を感じさせるような人だった。だから僕もむやみに腹を立てたり
する事は無かったし、そもそもそんな気持ちにはなれなかった。
彼女は僕がアークエンジェルに残る必要はない旨を伝えてくれた。
色々あったが、これでこの艦とも別れる事になる。そう考えて僕は
ほっとすると同時に、分不相応な戦力の心配をしてしまうのだった。
アークエンジェルはこのままアラスカまでたどり着けるのだろうか。
現に副長は僕を貴重な戦力として、戦艦に留め置く事を考えていた。

艦内でよく見かけていた女の子が僕に折り紙の花をくれた。
肩紐の片方が外れたオーバーオールをいつも着ていた彼女は、
すっとその小さな手であどけない作品を僕の目の前に差し出した。
守ってくれてありがとう。その無邪気な言葉に僕は励まされた。
こんな僕でも、誰かを守る事ができたんだ。良かった。
そしてあの子の事を思い、先程目覚めた力に無謀な勇気を覚えた。

一緒に艦を降りるとばかり思っていた友達が、まだ軍服を着ていた。
サイ、トール、ミリアリア、カズイ。みんな除隊許可証を破り捨てて、
アークエンジェルに残ってしまったのだ。理由はあの子だった。
あの子は戦争を終わらせるために自分ができる事をと言って、
自ら地球軍に志願したのだった。僕は後ろめたい気持ちに駆られた。
結局僕はみんなの優しさに甘えているだけではないのか?
友達を置いて僕だけが安全な所に避難していていいのか?
みんなの優しさに報いたい思いと、そうすればみんなの優しさに
背く事になるという矛盾した関係が暴き出され、僕は迷った。
そしてそんな中、敵が攻めてきた。
僕は結局、みんなを守る事ができたという直前の事実に満足し、
浮かされていたのかもしれない。ここで僕が出撃すれば大丈夫、と。
もちろんその時の僕はどうしようもないほどの切迫感を感じていて、
一瞬の逡巡の中に数えきれない種類の苦悩を抱えていたに違いない。
しかしいくら悩んでみたところで、僕にはMSを取る選択しか
残されていなかったのだ。僕はあの子の憎しみの内で踊っていた。
僕は踵を返し、ストライクの待つ方角へと駆け出していた。

786人為の人・作者:2004/08/02(月) 23:36
在庫が尽きてきたんで、しばらく投稿をお休みします。
再開まで、今しばしのお待ちを。

787人為の人・PHASE−13:2004/08/18(水) 22:32
信じられない光景が目の前にあった。
あの子はロッカールームで、僕のパイロットスーツを取り出していた。
何をするつもりなのかが一瞬でわかった。彼女は戦おうとしていた。
自分の父親を殺した、無意味な戦争を終わらせたい願いから。
あの時の彼女の表情、言葉、仕草。今でも嘘だったとは思えない。
確かに彼女は僕を待っていた。僕が来るはずだと確信していた。だから
芝居を打つためにそこにいたのだ。全て演技。そう考える事は簡単だ。
しかし僕は今思う。
彼女はあの時、本当に戦おうとしていたのではないか。
僕が来なければ実際にストライクに乗っていたのではないか。
結局、僕はそこへやって来た。やって来て、彼女の夢を叶え始めた。
私の想いが、あなたを守るから。
僕達は生まれて初めての甘く呪わしいキスを交わした。

僕は完全にその興奮に支配され、酔わされていた。
第8艦隊の艦艇が次々と沈黙し爆破されていく中、僕は笑んでいた。
あの子の偽りの愛情を全身に浴びて、新たな力を得た気がしていた。
出撃を止められたフラガ大尉を尻目に、僕はストライクに搭乗した。
ザフトが何だ。MSが何だ。みんな僕が守ってやる。
山のように出てきてはあっという間に壊されていくメビウスを尻目に、
僕は最深部にまで飛びこんできたデュエルと対峙した。
アスランのイージスは見えなかったが、バスターはすぐ近くにいた。

心なしかデュエルの動きは以前よりも大振りで、精密さに欠けていた。
それはこちらへ向かって来ようとする気迫ばかりが余計に増幅されて
いるようで、僕は内心冷や汗をかきつつも力強く対処しようとした。
ストライクがデュエルを蹴り飛ばす。ビームサーベルが火花を散らす。
僕は敵のパイロットが自分より必死である事にどこか気づいていた。
そしてそうこうしているうちに、次第に大気圏が近づいてきた。

信じられない光景が目の前にあった。
デュエルが射出された民間人のシャトルにライフルを向けていた。
なぜ。僕と戦っていたはずの敵が、どうして無関係の人に。
自分の中にわずかに生まれていた余裕が瞬時に消え去るのを感じた。
そして守るべきものが今まさに絶命の危機に瀕していることを悟った。
僕はスラスターを全開にして、シャトルに手を伸ばそうとした。
こんな所で、僕の目の前で、僕のせいで人が死ぬのは嫌だ。
利他的なようで限りなく自己中心的でもあった僕の気持ちが焦った。
結局、あれはどうしようもない事故と捉えるしかなかったのだろうか。
それとも、何か他に彼女達が救われる手立てがあったのだろうか。
いずれにせよ、それは僕に「守る」の限界を嫌というほど見せつけた。
そのシャトルには折り紙をくれた女の子が乗っていた。
デュエルのライフルから放たれたビームは僕より早くそこに到着した。
そして―――爆発が起こった。

僕は地獄のような高熱を全身に感じながらコクピットの中で一人、
その業苦を当然の報いであるように受け入れていた。
大気圏突入。その際にあれほどの熱が生じる事など、知らなかった。
ストライクの他にも、シャトルを「撃墜」したデュエル、そして
バスターが単独で地球へ落ちていこうとしていた。
僕を、と言うよりストライクを失わないようにアークエンジェルが
突入ポイントをずらして機体を拾い上げた。僕の責任だった。
第8艦隊は全滅。ハルバートン提督もザフト艦の特攻に命を散らした。
守れないものは必ずある。その事実が僕の心に消えない爪跡を残した。

788人為の人・作者:2004/08/18(水) 22:33
投稿再開しました。と言っても20日から遠出するのですぐに止まってしまいますが、
1週間後くらいからまた再開したいと思っています。

789私の想いが名無しを守るわ:2004/08/19(木) 12:50
フレイ様!こんなとこに居られましたか!

790人為の人・PHASE−14:2004/08/19(木) 19:54
僕はかぶりを振った。頭にもやもやとした霧が立ち込めている。
辺りを見回すと、がらんとした薄暗い部屋にただ一人。
気分を落ち着けるため少し水を飲む。冷たい感覚が喉を潤おした。
また気を取り直して机に向かう。机上には一枚の紙と、ペン。
僕は何かに取りつかれるように「自伝」のようなものを書いていた。

今どこまで書き進めていただろうか。そう、大気圏突入の所だ。
あの出来事は僕にとって本当に大きな意味を持ったのだと思う。
僕の目の前でよく知っている人が亡くなった、初めての体験だった。
不思議だ。戦争で数え切れないほどの命が奪われたはずなのに、
僕の中では自分に近しい人の死の瞬間ばかりが思い起こされる。
それも僕がストライク、やがてフリーダムに搭乗し、それでもなお
守る事のできなかった戦場の人々の死が特別な存在となっている。
人は自分の知らない他人の死を悲しむ事ができるのだろうか?
それは慈愛なのかもしれないし、あるいは偽善なのかもしれない。
ただ一つ言えるのは、僕にとってあの子の死ほど強烈な、そして
絶対的なものは他に無いという事だった。それもまた悲しい。

今僕は生者の世界にいる。そこにはアスラン、カガリ、ラクスが
いて、平和を築くために奔走している。みんなが目指すのは、
ナチュラルとコーディネーターが争う事なく暮らしていける世界だ。
僕はみんなの試みについていく事ができなかった。みんなのように
人の上に立つ資質、理解を求める心、強い信念、全てに欠けていた。
代わりに僕は、死者の世界と交わる日々を続けていた。
あの子は死者の世界にいる。あの子の他にもトール、ナタルさん、
ムウさん、クルーゼさん、会えなくなってしまった多くの人達がいる。
時々彼らの声が聞こえてくる。自分達が親しみ、愛し、憎み、
滅ぼそうとした生者の世界がどうなっているのかを尋ねてくる。
僕はこう答える。大丈夫です、みんなしっかり生きていますよ。
その「みんな」の中に、僕が含まれる事はおそらくないのだろう。
キラ・ヤマト、人間の営みから大きく逸脱した僕が取るべき道は、
生死を分かつ境目で本当の平和を迎えた世界に賛辞を送る事。
それが真実なのだと信じたい。

僕は再びペンを手に取り、戦争の記録を綴り始めた。
この行為に何の目的があるのか、それは自分にも分からない。
しかしキーボードを叩いて苦もなく仕上がる印刷物を目にするよりは、
紙に記されていく頼りない字を確認しながら果てしない時間を
過ごす方が自分にとってはずっと居心地がいいような気がした。
次は砂漠。忘れもしない記憶ばかりで彩られた、熱く冷たい大地。

791人為の人・PHASE−15:2004/08/20(金) 07:21
僕は熱く苦しい悪夢の中をさまよい続けていた。
アスランとの別離、血にまみれた再会、MSの戦闘、殺人の経験、
ヘリオポリスの崩壊、あの子との出会い、ラクスとの出会い、
戦艦の撃沈、戦闘能力の覚醒、そしてシャトル爆発。
それらがきちんと順番通りに再現され、そして永遠に繰り返された。
僕は頭の中で作り上げられたイメージの渦に放りこまれ、回され、
血を吐くような悲しみに声を上げる事ができなかった。
あげく自分が今何に苦しんでいるのかさえ分からなくなるほどに
意識は混濁し、それでもなお目が覚める事は無かった。
そんな僕の傍らに、あの子はずっと付き添っていた。

ようやく現実に戻ってきた頃には、様々な出来事が起こっていた。
まず、アークエンジェルの主だったクルーが1階級昇進した。
艦長とフラガ大尉は少佐に、副長は中尉に。その他の人達もみな、
それまでの立場より少しだけ高い所へ上る事になった。
サイにトール、ミリアリア、カズイ、そしてあの子も正式に軍属と
なり、もちろん僕にもMSのパイロットとして「少尉」が与えられた。
これで僕達は「民間人だから」という言い訳を使えなくなった。

少尉になった僕には個室が与えられた。
僕はその部屋で、周りの人の自分を見る目がどこか変化した事について
考えを巡らせていた。そう、並みの人間ではとても生き残れないほどの
高熱の中、コクピットから引きずり出された僕は生きていたのだ。
みんなはコーディネーターが「化け物」である事を改めて認識したに
違いない。そんな事を考えていると、つくづく自分が嫌になった。
なぜ僕はコーディネーターなのだろう。それは僕の意志がそうさせた
のではないし、他人にない力を持っていてもそれは当然と見なされる。
しかしそんな事を考えても何も始まらなかった。僕は依然として
遺伝子を調整された人間であり、その事実は一生ついて回る。それに、
僕には自分の事をよく理解してくれる友達がいる。今は恐れていても、
時が経てばまた分け隔てなく付き合えるだろう。僕はそんな希望を胸に
抱いて、前向きに生きる事に目を向けようとした。
そこにあの子が現れた。

あの子は手に折り紙の花を持っていた。
やや形の崩れたその物体を目にした途端、僕の顔は凍りついた。
夢で何度も再生された女の子の姿と、シャトルを貫く一筋のビーム。
「守ってくれたお礼」として手渡されたささやかな贈り物が、
「守れなかった現実」を僕に突きつける何よりの証拠へと変わった。
僕はそれをコクピットに入れ、そのまま忘れてきたのだった。
大気圏の熱にも消えない鮮烈な悲劇がそこにはあった。
いつしか僕は部屋の床に膝をつき、救いを求めるように泣いていた。
過ちに許しを乞う言葉は涙でほとんど意味を成さなかった。
あの子はそんな僕の前に座りこみ、私がいるわと言った。
優しく甘美な旋律が僕の耳を撫でた。顔を上げた先にはあの子の笑顔。
うるんだ視界は彼女を紅い聖女のごとく見立て、僕から理性を奪った。
二度目の口づけに僕は本能を止める事ができなかった。
僕達は絡まり合いながらベッドへともつれ込み、そして交わった。
あの子の復讐はまもなく頂点を迎えようとしていた。

792キラ(♀)×フレイ(♂)・47−1:2004/08/26(木) 18:36
二百海里水域。
堅苦しい条文を記載するなら、
『海洋法による国際連合条約(以下、「国連海洋法条約」)によって定められた沿岸国の
主権的権利その他を行使する水域として設けられた排他的経済水域』
と条約に明記されており、もっと簡潔に述べるなら、海に囲まれた島国が、主に漁業権や、
多国籍の船や飛行機(軍船含む)の侵入を規制する為の、海上の領土である。


かの条約に挑むかの如く、南太平洋に位置するオーブ首長国連邦の海域(二百海里水域)
に侵攻している一隻の大型の軍船がある。“足付き”のコードネームでザフトから追われ
ている、地球連合軍の強襲機動特装艦アークエンジェルだ。この艦を遠目からシルエット
だけ眺めれば、ショートケーキに四匹の蝿が集っているように映ったかもしれない。
アークエンジェルの周囲には、グゥルと呼ばれる無人輸送機の上に乗った四体の
モビルスーツが、執拗にAAに取り付いて、攻撃を仕掛けているからだ。

イージス、ブリッツ、バスター、デュエル。
ヘリオポリスでザフトが奪った地球連合製のMS隊で、この四者を率いるのは、
足付き討伐チームとして新たに結成されたザラ隊の隊長に就任したイージスのパイロット
であり、数日前、フレイ達と奇妙な無人島での共同生活を強いられたアスラン・ザラだ。
このザラ隊を迎撃する側のアークエンジェルの方は、AAの甲板上に、ランチャーパック
で出陣したストライクが陣取って、アグニ砲を連射し、フラガの乗るスカイグラスパーも
共に出撃してストライクを援護している。
ここ最近の戦闘で、AAの勝利に少なからぬ貢献を果たしてきたスカイグラスパー二号
を駆るカガリは、何故かこの会戦には参加していない。
その訳は、二人がキラに無人島から救助された地点まで遡る。



「二人とも無事に戻ってきてくれて何よりです」
事情徴収の為に艦長室へと呼び出されたカガリとフレイの二人に、艦長のマリューは
まずは労いの言葉を掛ける。AAきっての問題児(トラブルメーカー)二人の生還に
際して、彼らの息災を喜んだ者と密かに落胆した者、どちらが多数派を占めるのかは、
艦内アンケートを採ったわけでもないので、実に微妙な所ではあるが、少なくとも、
この時のマリューの笑顔からは、利害や打算を超えた暖かい思い遣りが滲み出ていた。
フラガが賞したように、子供たちの幸福を願う彼女の真心に嘘偽りはないらしい。
ただし、可愛げのない少年兵二人は、マリューの態度に特に感応した風もなく、
カガリは居心地悪そうにソッポを向き、フレイはそれと判る営業スマイルで、
形だけは恭しく頭を下げてみせる。
「さて、本来なら直ぐに休憩を取らせたいところですが、その前に二人に2、3、
お尋ねしたいことがあります」
マリューは軽く表情を引き締めると、そう前置きしてから、すぐさま本題に入る。
「遭難中の詳細報告は一先ず置いておくとして、何故、非戦闘員のフレイ君が、
カガリ君と一緒にスカイグラスパーで出陣する事態になったのかしら?」
今回の失踪事件における最大の疑問点について、マリューは単刀直入に質問する。
「そいつは僕でなくカガリ君に尋ねて下さい。
僕は彼に銃で脅され、無理矢理グラスパーに拉致された被害者の身分ですので」
多少の嫌味の篭もった口調で、フレイは自身の身の潔白を訴える。それに応じて、
室内に控えていたフラガ、ナタルの幹部二人と、カガリのお目付け役のキサカも、
カガリに好奇の視線を注いだが、カガリは不貞腐れたように俯いて無言のままだ。
今回の一連の事件に対して、事後的に査問会が開かれるであろうことはカガリも予測
していたはずだが、まさか、馬鹿正直に妹絡みの本音を語るわけにもいかないだろう。
とはいえ、フレイなどとは異なり、性格的にあまり嘘方便を吐くことに慣れていない
カガリは適当な言い訳の一つも思い浮かばずに苦悩し、得意の百面相を演じている。
そんなカガリの様子を見かねたフレイが、彼の弁護(んな訳ない)を買って出た。

793キラ(♀)×フレイ(♂)・47−2:2004/08/26(木) 18:37
「僕が愚考するに、カガリ君の動機は、彼の公人としての非戦闘クルーへの偏見と、
私人としての痴情の縺れとが融合した結果だと推測します」
黙秘権を行使する被告人(カガリ)の弁護を担当するかのようにフレイが口を挟む。
この場合、フレイはどちらかといえば原告に近い立場の筈なのだが、まるで弁護人
のように、被告人の情状酌量を求めるが如く、カガリの拉致動機について代弁する。
「華麗なる戦闘パイロットであられるカガリ君は、僕のような非戦闘クルーの、
日常エリアでの地道で下積み的な働きを随分と軽視しているみたいでした。
特に、彼が恋慕を抱いていると思われるキラが、過酷な最前線で戦っているのに対して、
恋人の僕が常に安全な艦内勤務である事実が気に入らなかったらしく、僕を最前線に
引っ張り出して、びびらせてやろうとかいう浅ましい魂胆があったように感じます。
勿論、今の測論は単なる僕の邪推に過ぎず、もしかするとカガリ君には、どうしても
僕を連れ出さねばならない正当な理由があったのかもしれません。
ここは是非とも、彼の意見を慎重に拝聴してみるべきでしょう」

カンニングペーパーも無しに、一息に見解を述べると、そのままフレイは貝のように
口を閉ざして、以後の答弁をカガリに丸投げする。親切にも、カガリが言えなかった
本心を代弁してあげたフレイだが、この行為は一層カガリを追い詰める効果を持っていた。
何しろ、フレイの憶測は、百点満点中、九十点はつけてもいいほどの、全くの事実で、
不備があるとすれば、キラがカガリの妹である点が抜け落ちている点ぐらいである。
完全に言葉に詰まり、蝦蟇蛙のようにダラダラと脂汗を流して沈黙するカガリの態度に、
どうやらフレイの与太話が真実だったらしいと悟らされたAA幹部三人のカガリを見る
視線が白けだした。思考もカガリに対する思い入れも大きく異なる三者だが、この時、
カガリを戦闘機のパイロットの任から解く事に、無意識に見解を一致させた。

90点の解答用紙の残り10点分の真実(シスコン的嫉妬心)を知っているキサカは、
強い失意の感情と共に内心で大きな溜息を吐き出しながらも、それでもフレイに
追い詰められた主君を救う為に、意を決して、強行手段に訴えることにした。


「カガリ様、お許しください」
スタスタとカガリの背後に廻り込んだキサカは、山男のようなゴツイ拳骨を振り上げると、
意味不明な謝罪の言葉と共に、そのまま容赦なく、カガリの後頭部をぶっ叩いた。
「ギャンっ!!?」
蛙が車にひき潰された時のような奇抜な悲鳴と共に、カガリは前のめりにぶっ倒れる。

「フレイ君と言ったね?カガリ様が迷惑をかけたようで申し訳ない。許して欲しい」
突然の下克上劇に唖然とする一同を尻目に、キサカが、ファンネルのビットのように
頭の周りにお星様を展開させて目を回しているカガリの代わりに頭を下げる。
「カガリ様は正規の軍人ではない故、ラミアス殿の側では処罰し辛いでしょう。
私の方から後できつく申し上げておきますので、カガリ様の処遇は私に一任ください」
キサカはそうマリュー達にも宣誓すると、コーディの男性に匹敵する膂力で、気絶した
カガリを軽々と抱き上げて、まるで米袋のようにカガリを左肩に背負と、そのまま
ノッシノッシと大股に歩んで部屋から出て行った。


「いやはや、大した忠臣だね」
キサカという大型台風に匹敵するハリケーンの来襲にいち早く理性を回復したフレイは、
キサカの行動をそう賞賛した。彼はあの力業で主君たるカガリの名誉を救ったのだ。
非ある時は、己が主君にさえ手を上げる覚悟を持つとは真に武士(もののふ)の鏡である。
その昔、有名な武蔵棒弁慶は、敵の目から欺くために、主君である牛若丸をあえて棒で
鞭打ちしたという故事もあるが、彼の忠勤振りはそれに匹敵するかもしれない。
「それじゃ、僕もそろそろ失礼してよいですか?痛めた歯の治療をしたいので」
「待ちなさい、フレイ君。あなたには、彼とは別に聞きたい事があります。
それに今、自分の部屋に戻っても、あなたの部屋は使用出来ないわよ」
退出許可を求めるフレイに、マリューは意味深なニュアンスで、彼を呼び止める。
訝しむフレイに対して、マリューは、フレイの部屋から毒物が検出され、その瘴気が
未だに部屋中を蝕んでいる現状と、何故、そうなったかについての事情説明を求めた。

794キラ(♀)×フレイ(♂)・47−3:2004/08/26(木) 18:37
外見上、鉄面皮を維持していたフレイだが、内心は流石に動揺していた。
どういう了見で、彼の室内での毒物の保持が露見してしまったのだろう?
フレイの脳細胞は、創造性に恵まれていたし思考の柔軟性にも富んでいたが、
バレルロール(180度の宙返り)の結果、上下真っ逆さまになった部屋内に、
引き出しの奥の毒物の瓶が投げ出されたなどという発想は思い浮かばなかった。
それでも、聡い(狡賢い)フレイは、どうして発覚したかという経緯を尋ねるよりも
先に、まずは毒物を所持するに値する尤もらしい理由をでっち上げる方を優先する。

「僕には戦闘は出来ないけど、僕なりの遣り方でAAに貢献したいと思いましてね」
フレイはそう前置きすると、バラディーヤで買い集めた花類から毒物を調合したという
出所について申告し、さらには、それを兵器として応用可能な旨について簡単に説明する。
「具体的には、アルテミス要塞の時のように、AA内部を敵に占拠されたような場合に、
食事に毒物を混入したり、もしくは、敵の密集している区域にガスを流し込んだりする
なりすれば、武器を使わずに敵を無力化する事も十分に可能です」
健気にも、独自の路線でAAに奉仕する道を模索していたらしいフレイの力説に、
マリュー達は、感動したり感涙に泣き咽たりはしなかった。
むしろ、三人は得体の知れない物の怪でも見るような眼つきでフレイを睨む。
「フ…フレイ君、あなた、そのようなケースが発生した場合、本気で毒物の使用に
踏み切るつもりだったの?」
「当然です。味方を守り敵を殲滅する為には、手段など一切選んでいられませんから。
艦長だって、例のアルテミス要塞脱出の際に、「アルテミスと心中するのはゴメンよ!」
とか宣言して、景気よく要塞一つをポンと破壊してきたじゃないですか?」

澄まし顔で、堂々とそう答えたフレイにマリューは絶句する。彼女には、目の前にいる
少年が、つい先日まで、戦争とは無縁の平凡な学生であるという事実が信じられなかった。
まさか、その毒物を機会さえあればマリュー達の食事に混ぜようとフレイが企んでいた事
までは見抜けなかったが、フレイという少年の危険性だけは十二分に認識できた。
フレイがどうやら自分の良識とは異なる世界の住人であり、到底、彼女の手に負える相手
ではないと本能的に悟ったマリューは、「以後、艦内での毒物の生成、使用は禁じます」
という常人には恐らく一生縁がないであろう禁句事項だけを通達すると、そのまま
事情徴収を有耶無耶のまま打ち切って、フレイを退出させる。
毒物の件を上手く誤魔化し、さらには無人島内での、敵兵(アスラン)と遭遇した事実
についてまで隠蔽する事に成功したフレイは満足して艦長室から出て行った。
今現在、彼の寝床は使用不可能みたいだが、ここ最近、フレイはキラの処に入り浸りで、
自分の部屋で寝た記憶はほとんど無かったので、さして問題ではなかった。


カガリ、フレイという問題児共との査問を終了させ、大きな溜息を吐き出したマリュー
の横顔は何時もより五歳ほど老けて見えた。この時ばかりは、フラガだけでなく、
彼女と対立しているナタルの瞳にさえも幾分かの同情の要素が見て取れた。

それから、カガリがスカイグラスパー二号のパイロットから解任される旨の通達が
正式に届けられた。
以後、戦闘中は、カガリはキサカと共に室内での艦内待機を命じられる事になる。
元々、彼らは、AA幹部が密かに中間ポイントとして定めたオーブ首長国連邦に
辿り着くまでの期間限定の臨時戦力であったのだが、万が一の事態が発生した有事の
際には、彼らにしか果たしえない最後の役割を演じてもらう事になるだろう。

795キラ(♀)×フレイ(♂)・47−4:2004/08/26(木) 18:38
このような経緯で、グラスパー二号という貴重な戦力を欠いたまま、アークエンジェルは、
オーブ近海の海域でのザラ隊の挑戦を受ける羽目となる。
今回は水の中に潜る必然性が無いので、ストライクの換装装備の中では、最も使用頻度
が低いと思われているランチャーパックで出陣したキラは、AAの固定砲台として
アグニ砲を連射する。バッテリー部分をAA本体と連結し、エネルギーの供給を母艦
から受けているので、PS切れを起こす心配が無いのは良いが、一撃必殺の大出力砲
も当らなければ意味が無い。戦闘機顔負けの機動性能で空中を自在に駆け巡るグゥルを
駆る四機のMSは、大砲のアグニを避けて、執拗にAA本体に纏わりつき攻撃を敢行する。
ただ、アークエンジェル側が片手落ちの戦力で万全の防御態勢を敷いていないのと同様に、
攻撃側であるザラ隊にも、穴が無いわけではない。ただし、それはAAのような戦力
(能力)的な要因ではなく、むしろ、人為的要因(チームワーク)に起因していた。


「イザーク、出すぎだぞ!それ以上、近づくとストライクの射程圏内に入る。
それに、足付きのラミネート装甲の理論は、学んだ筈だ。
ここはビーム兵器よりも、実体弾で……」
「五月蝿いぞ、アスラン!俺に指図するな!」
イザークの視界には、足付きでは無く因縁深いストライクの姿しか映っていないようだ。
それ故にPSを無効化するビーム兵器の使用に拘っているらしく、エネルギーライフルを
構えると、ストライク目掛けてグゥルを突っ込ませる。それを見た、イザーク派である
ディアッカも、彼を援護するかのように、AA本体ではなく、わざわざストライクに
砲火を集中するが、艦首に背後を守られ、前面からの砲撃にだけ備えれば良いキラは、
対ビームシールドで、易々と二人のビーム攻撃をシャットアウトする。
「あ…あいつら……」
指揮官機(イージス)からの、隊長命令を無視した二人組にアスランは大きく舌打ちする。

ラミネート装甲は、艦体全体を一つの装甲に見立てて、点で受けたビームを面全体に拡散
する事でダメージを防ぐと、クルーゼ隊長がどこからか仕入れてきた情報に記されていた。
その為に、排熱が追いついている限りは無敵に近く、ビームで仕留めるには途方も無い
時間を必要とする。だから、PSとは逆発想で、実体弾中心の攻撃で、まずは足付きを
沈めるように、予め作戦を立てておいたのだが、実弾兵器の豊富なバスターとデュエル
の足並みが揃わないものだから、攻撃が非効率的に成らざるを得ない。
「どうするの、アスラン!?」
「仕方が無い、ニコル。俺達もビーム兵器で攻撃するぞ!」
イザーク達があくまで我が道を突き進む以上は、不本意だがこちらが併せるしかない。
アスランは、心配そうに尋ねる隊で唯一のシンパであるニコルにそう指示すると、
イージスとブリッツの二機は、ジン用のD型装備であるバズカー砲を放り捨てて、
それぞれの手持ちのビームライフルによる攻撃に切り替える。
こうしてザラ隊がモタモタしている間に、足付きは、オーブ領の海域に到着する。
領海の防衛ラインには、オーブ本土を守護する複数のイージス艦が、手薬煉引いて
マリュー達を待ち構えていた。


「何とか無事、ここまで辿り着けたわね」
ザラ隊の拙攻にも助けられ、相応のダメージを負いながらも、目的のポイントに到達
したマリューは軽く安堵の溜息を吐いたが、ノイマンをはじめとした艦橋のクルーは
依然、緊張したままだ。絶対中立国であるオーブ本土に軍船の寄港など簡単に認められる
訳が無く、これ以上侵攻すると、下手をしたらザフトではなく、オーブ艦隊の手に
よって沈められる危険性もあるからだ。
案の定、前方のイージス艦から、「貴官らの艦は、我が国の領海に近づきすぎている。
これ以上近づいたら撃つ」という旨の警告が通信で送られてきた。さらには、ご丁重
にも、威嚇発砲が行われ、アークエンジェルの周りに三つの巨大な水柱が炸裂したが、
後半歩まで足付きを追い詰めているザラ隊は、ここまで来て、引き返す意思は
さらさら無いらしく、オーブ側の存在を無視して執拗にAAへの攻撃を続行する。

前門の虎、後門の狼という絶対絶命のピンチだが、マリューには、この窮地を乗り切れる
秘策がある。その時、艦橋の自動ドアが開き、彼女の切り札となる人物達が登場した。

796キラ(♀)×フレイ(♂)・47−5:2004/08/26(木) 18:39
「だ…誰!?」
突如、艦橋に見知らぬ二人組の男性が乗り込んできて、ミリアリアは軽く息を呑む。
大柄な壮年男性と小柄な少年のコンビで、男性は、髪を七三に分け、見慣れぬ紫色の
軍服を着ている。ヘリオポリス組の少年達には判らなかったが、何人かの正規クルーは、
それがオーブ軍の軍服である事実に気づいた。もう一人の少年は、端正な顔立ちに、
金髪をオールバックに纏め、白を基調とした将帥服を着用し、貴族然とした神々しい
雰囲気を醸し出している。

「お待ちしていたわよ、カガリ君」
「えっ…カ……カガリぃ〜!!?」
唖然とする艦橋のクルーの中で、ナタルと二人、落ち着き払っていたマリューが、
あっさりと爆弾を投下し、艦橋のパニックがさらに拡散する。
ミリアリア達は、金魚のように口をパクパクと泡めかせながら、カガリを指差している。
最初、ミリィ達は本当にカガリだとは気づかなかった。頬の傷跡を消した今のカガリは、
普段の山猿のようなワイルドな姿からは程遠く、皇族の子女と偽っても、十分通じそう
なレベルで、キラの女装までしていた人間と同一人物だとは信じられないぐらいだ。
とすると、隣にいるエリート軍人っぽい将校は、例のランボー似の大男(キサカ)なの
だろうか。こちらも、かなりのシンデレラ(変身)振りであり、トール達は、普段はダサ目の
女の子が眼鏡を外すと美少女に生まれ変わるという、少女漫画のお約束を思い浮かべたが、
今回の笑劇(フォルス)はまだ半分しか消化しておらず、これからが驚きの本番である。


キサカ(と思わしき人物)は、通信を担当していたカズイから、インカムを借り受けると、
自分達を映像の範囲内に位置取らせた上で、さっそく演説を行った。
「前方のオーブ艦隊に告げる。私は、オーブ陸軍第21特殊空挺部隊に所属している
レドニル・キサカ一佐だ。そして、こちらにおられるのは、オーブ首長国連合代表
ウズミ・ナラ・アスハ様の嫡子であられるカガリ・ユラ・アスハ王子である」
自分達の正体を明かしたキサカの爆弾発言に、艦橋のドヨメキは最高潮に達している。
艦橋で私語は禁じられているが、ヘリオポリス組だけでなく、正規クルーの間でさえ、
ザワメキがおさまらず、厳格なナタルも、事態の急転性を考慮してか、それを鎮めよう
とはしなかった。

「おい、アスラン。これは一体どういうことだよ!?」
キサカの発言は、味方だけでなく、敵であるザフト側にも少なからぬ衝撃を与えていた。
困惑した表情で問い掛けるディアッカに、アスランも「お…俺にも判らん」と返すのが
精一杯であったが、彼には、通信スクリーンに映し出された人物に見覚えがあった。
忘れるわけが無い。数日前に、アスランは無人島で、その人物(カガリ)と命の遣り取り
をした上で、最後はキラを巡っての、奇妙なシンパシーを芽生えさせたのだから。
もし、あいつが本当にオーブの王子なら面倒な事態になるやも知れぬと思いながらも、
件のペテン師(フレイ)に対する不信感がMAX値にまで達していたアスランは、
「これも、もしかしたら、あの詐欺師のシナリオか?」との疑惑を拭えなかったが、
舞台はそんなアスランの思惑とは無関係にどんどん進行していった。

「私とカガリ王子は、某国とのとある外交交渉を成功させる為に、本国政府の密命を
帯びて、密かに某国を訪問中であったが、その帰り道、嵐に襲われ遭難していた際に、
こちらの軍艦に救助され、保護を受けている身である。
或いは、我々が身分を詐称していると疑われるかも知れぬが、特務コード「Z5B291-EQ」
で、本国政府に照会されたし。私たちの身の保証となるであろう」

キサカの演説はさらに続き、周りのヘリオポリス組でさえ、絶句するような嘘八百が
並べられたが、どうやら既に、オーブ本国とは話しが通っていたみたいである。
「コードを確認した。貴官らを本物のカガリ王子と護衛のキサカ一佐と認定する。
本国への軍艦の滞留は認められないが、カガリ王子をこちらで引き取る為の、
一時的寄港だけは特例的に許可する」
やがて、艦隊側から、上記の旨のメッセージが通達され、アークエンジェルは悠々と
周りをイージス艦に護衛されながら、オーブ領海の奥へと消えてゆき、後には、
未だに事態を上手く把握出来ていない、茫然自失状態のザラ隊だけが取り残された。

797キラ(♀)×フレイ(♂)・47−6:2004/08/26(木) 18:39
「「大西洋連邦艦(足付き)は、カガリ王子を降ろした後、即座にオーブ領海を離脱した」
だと!?ふざけるな!こんな馬鹿な話しがあるか!?」
「だよねえ。あれだけのダメージを負った足付きが、そう簡単に、すぐに動ける筈がない
じゃない。舐められてるんじゃないの、俺たちは。隊長が若いからさ…」
「ディアッカ。それは関係ないでしょ?すぐにアスランを貶す材料にするんだから」
ボズゴロフ級の作戦司令室に集まったザラ隊の四人は、オーブからの正式回答に対して、
それぞれの憤りをぶつけ合っていたが、なかなか建設的な意見は出てこない。
「大体、あんなどこの馬の骨とも判らない小僧を、いきなり王子ですとか言われても、
「ハイ、そうですか」と納得出来るか。オーブ側との出来レースに決まっている。
邪魔するなら、オーブ艦隊ごと、一緒に沈めてやれば良かったんだ!」
知的生物のコーディネイターの割には、妙に単細胞な意見をイザークは主張するが、
戦力比的に可能かは別にして、外交的な見地から、それは難しい問題だろう。
フレイあたりは、コーディネイターには知識は在っても、知恵は無いと見立ていたが、
彼らの問答を見ていると、それほど的外れの評価では無いのかもしれない。

「いや、案外、あいつがオーブの王子であるというのは、意外と事実なのかもな」
今まで黙っていたアスランがはじめて口を開き、他の三者の視線がアスランに注がれる。
アスランも当初は例の詐欺師(フレイ)の策略かと疑ったが、彼は無人島で出会った時
から、既にカガリ・ユラと名乗っていた。データベースに問い合わせた結果、ウズミ代表
に、カガリという嫡子がいるのは確かで、仮にアイツが偽者だとしても、あの地点で
わざわざ偽名を名乗らせる必要性は無かった筈である。
「まあ、そんな事はどうでも良いけどな。肝心なのは、それらがオーブ首長国連邦の
正式な回答であるという事実だけだ」
そう、それこそが重要な問題なのである。カガリの真偽は別にしても、イザークが主張
した通り、足付きとオーブが裏で繋がっているのは間違いないと思われるが、オーブは
れっきとした主権国家であり、下手をすると重大な外交問題にまで発展しかねない。

「それでは、どうするというのだ、隊長殿?このまま泣き寝入りか!?」
イザークが慇懃無礼な態度で、そう問いかけ、アスランは軽く思案する。
アスランの弱腰な対応にイザーク達が憤る気持ちは判るが、正直に本音を言うなら
アスランにも、彼らに不満がない訳ではない。そもそも、イザーク達が、アスランの
指示通りに足並みを揃えていたら、面倒な事態に陥る前に、そう、オーブ領海に辿り着く
以前の地点で、足付きを沈める事も十分に可能だった筈なのだ。アスランはそう考え、
彼らの造反を苦々しく思ったが、隊長の責務を与えられながらも、イザーク達を御しえ
なかった自分にも責任の一端はあるような気がしたので、それは主張しなかった。
彼が代わりに主張したのは、次のような提案である。

「とにかく、足付きがオーブにいるという確証が必要だ。
ここは単身、生身でオーブに潜入してみるというのはどうだ?」
このアスランの予期せぬ提案に、三人はキョトンとした表情を見合わせた。

798キラ(♀)×フレイ(♂)・47−7:2004/08/26(木) 18:40
「まさか、こんな形で、再びオーブに舞い戻ってくるなんてね」
ドッグに入港したアークエンジェルの甲板上にワラワラと、ヘリオポリス組&カガリの
子供達七人が姿を現した。未だに艦の外に出るのは禁止されているが、ここも一応は
彼らの生まれ故郷の一部なので、少しでも外の空気に触れてみたかったからだ。
キラは居心地悪そうな表情で、隣にいるカガリを見る。今のカガリは先の正装から
普段の軽装に着替えており、せっかくオールバックに纏めた髪もボサボサに崩してラフな
スタイルを取り戻していたが、それで、カガリの正体が有耶無耶になったわけではない。
「何だよ、キラ。俺のオヤジが国王だろうと宇宙人だろうと、俺は俺だ。関係ないだろ?」
キラの視線に気付いたカガリがムッとした表情で、そう主張し、キラも「そ…そうよね」
と愛想笑いを浮かべたが、未だに戸惑いは抜け切っていない。アスラン、フレイ、
そしてカガリまでも、彼女が惚れ込んだ男性は皆、やんごとない家柄の血筋なので、
パンピー(一般人)である自分に、キラは些か引け目を感じてしまったりするのだ。
「俺に言わせれば、俺なんかより、お前の方がよっぽど特別な存在なんだぜ、キラ」
妙に煮え切らないキラの態度に、カガリは内心でそう謙遜したが口にはしなかった。
キラの隣にいるフレイは、互いにコンプレックスを抱いているらしい非公認兄妹の
遣り取りを興味深そうに拝見している。カガリの正体について、実はどこぞのボンボン
ではないかと密かに当りをつけていたフレイだが、オーブの王子様とは想像以上だ。
まだ、彼にはキラを巡った秘密がありそうだが、それらも追々判ってくる事なのだろうか?


その頃、交渉の為に艦外へとキサカに連れられていった幹部三人と入れ違いになるように、
三つのシルエットが、密かにアークエンジェルの中へと忍び込み、探索活動を行っていた。
途中、AAのクルーに見咎められたりもしたが、三つの影は屈託のない笑顔で挨拶して、
堂々と彼らの詰問をやり過ごす。やがて、甲板の出口まで来て、目当てのブツ(者)を発見
した影達は、一斉に甲板に飛び出して、その本性を現した。



「「「カガリさま〜ぁ!!!!」」」
「ゲっ!!?お…お前ら!?」
突如、後方から黄色い声が聞こえてきたので、慌てて振り返ったカガリは表情を
引き攣らせた。お揃いの真っ赤な軍用のチョッキに、グレーのズボンをはいた
三人の少女が、猛牛のような勢いでこちらに突っ込んできたからだ。
直ぐに廻れ右したカガリは、脱兎の如く、その場を駆け出そうとしたが、

「ジュリ!、マユラ!、フォーメーション・デルタよ!!」
「「ラジャー(了解)!!!」」
彼女達の中でリーダー格っぽい、カガリと似た金髪の少女の掛け声の下、少女達は
陣形を定めると、カガリを基点とした三角形(デルタ)の形にカガリを取り囲んだ。
それから、三人は、グルグルと時計回りに回転しながら、ジワジワと包囲網を狭めてゆき、
カガリに離脱する一ミクロンの隙さえも与えずに、見事、カガリを捕獲するのに成功する。
手前勝手な攻撃を繰り返して、結局、足付きを取り逃がしてしまったザラ隊に比べれば、
彼女達の方が八百倍ぐらい統率が取れているみたいである。

「カガリ様、お久しぶりです。マユラ、本当に寂しゅうございました」
「ザフトとの戦闘交渉、見てましたよ。凛々しかったですね、カガリ様」
マユラと名乗ったボーイッシュな娘は自分の頬をカガリの頬に猫のように擦りつけ、
リーダー格の少女は瞳をキラキラと輝かせながら、カガリの手を強く握る。
「キャア!、見て、アサギ。おいたわしや。カガリ様の玉のお肌に傷が!?」
「それ所じゃないわよ、マユラ。御身体の方はもっと酷い惨状よ!」
マユラがカガリの頬の傷にツーっと指を這わせ、アサギはカガリの襟首を掴んで、
赤いシャツの下から見え隠れする夥しい数の傷跡に、目を瞬かせる。
「ま…まさか、下の方も!?」「………………確かめなくては」
「ひいっ!?何をする、お前ら!?や…止めろぉ〜!!」
少女達は二人掛かりでズボンを下ろしにかかり、カガリは悲鳴を上げて、必死に抵抗する。

799キラ(♀)×フレイ(♂)・47−8:2004/08/26(木) 18:41
「アサギ、マユラ。もう、止めてあげなよ。カガリ様、本気で嫌がっているよ。
それに皆さん、呆れてこっちを見ているわよ」
三人娘の中の良心っぽい眼鏡の子が、軽くはにかみながら、そう訴える。
「またジュリは良い娘ぶちゃって…」「そうそう……、ところで、皆さんって!?」
ようやく、少女達は外野(ヘリオポリス組)の存在に気づいたみたいだ。
「い…嫌だわ、私達ったら…」
唖然とした表情で、自分達の痴態を見つめていたヘリオポリス組の面々に、
アサギとマユラは、今更ながらに羞恥で顔を真っ赤に染めながら、カガリから手を離す。
危うく公衆の面前で、逆レイプされ掛けたカガリは、大慌てで三人から距離を取ると、
キラの後方へと逃げ込んだ。

「そうそう、自己紹介がまだだったわね。私達は学園時代のカガリ様ファンクラブの者で、
私は、ファンクラブの会長を務めていた、アサギ・コーデウェルでぇ〜す」
「同じく、副会長のマユラ・ラバッツよ」
「……書記のジュリ・ウー・ニェンです」
先の照れ隠しのつもりなのか、少女達は妙にノリノリで自分達の姓名を明らかにする。
どうやら彼女達は、カガリの学生時代の級友らしい。立場的には、明けの砂漠にいた
アフメと似たカガリの追っかけ(ストーカー)という事になるのだろうか。
ただ、カガリにゾッコンだったアフメと異なり、何となくだが、この三人はカガリを
玩具にして遊んでいる節があるように感じられる。もしかしなくても、カガリの女性不信
の原因には、学園時代の彼女達の存在が大いに寄与していたのかもしれない。


「こ…ここは、軍用基地だぞ。何で、民間人のお前らがいるんだ!?」
情けなくもキラの影に隠れて、慌ててずり落ち掛けたズボンを引き上げながら、カガリは
当然の質問をしたが、「私達、実は軍に志願したの」という突拍子もない返事が戻ってきた。
「ほら、オーブって、ユーラシアや大西洋連邦とかの他の軍事大国と違って徴兵制度を
敷いていないから、軍は慢性的な人手不足じゃない?
だから、エリカさんの口利きで、私達、今、M1のテストパイロットをやっているのよ」
「エリカって、あのシモンズの婆ぁか!?」
「またまた、カガリ様ったら、本当に口が悪いんだから。
とにかく私達が動かせるようになれば、どこへ出しても恥ずかしくない仕上がりになる
から…って、エリカ主任に拝み倒されたら、ちょっと断れないじゃない?」
「そうそう、ここで仕事していれば、いずれカガリ様とも再会出来るって言われたしね」
「それって、お前らでも動かせるようになれば、誰にも操縦可能になるって意味じゃないか?」
とカガリはシニカルに思ったが、意外とフェミニストのカガリは、持ち上げられて
舞い上がっているらしい三人に、敢えて冷や水を浴びせようという気にはなれなかった。


「おやおや、中々、コミカルなお嬢様達みたいだね」
三人娘のハイテンションなノリに順応出来ずに、呆然としていたヘリオポリス本家と
異なり、興味深くカガリとの漫才を見物していたフレイが早速アサギ達に声を掛ける。
「キャッ、美少年!?」
美形なら誰でも良さそうなミーハーっぽいアサギが軽く頬を染め、他の二人も興味深々
という顔つきで、フレイの透明感溢れる笑顔を食い入るように眺めている。
「僕はフレイ・アルスター。君達と同じ少年兵さ。一応、彼女持ちの身分なんで、
あまり深い仲になることは出来ないけど、良きお友達としてお付き合いできるかな?」
「え〜!?やっぱり、もう既に売却済みなんですか?あうっ、残念」
「はっはっは。駄目じゃないか、浮気っ気を出すと、カガリ君が嫉妬するだろう?」
「馬鹿野郎。んな事あるか!……って、おい、お前ら。
コイツにだけは絶対に近づかない方が良いぞ。マジで食われちまうぞ」
「キャア、もしかして、カガリ様。私に嫉妬してくれてるの!?」
「だから違うって言ってるだろう!俺は親切心から……」
「酷いな、カガリ君。僕と君とは無人島で、お互いに肌と肌とを寄せ合って、
共に一夜を過ごした仲じゃないか…」
フレイはセクシィーな流し目でカガリの耳に息を吹きかけながら、芝居掛かった仕草で
カガリの肩を抱き、身体全体に鳥肌を立たせたカガリは、反射的にフレイの手を払いのけた。

800キラ(♀)×フレイ(♂)・47−9:2004/08/26(木) 18:41
「き…気色悪い真似するんじゃねえ!」
「済まないね、カガリ君。君の本命は兄貴と慕っているフラガ少佐なんだよね?」
「だから、さっきから誤解を招くような紛らわしい言い方は止め……」
そこまで言いかけて、ふと、カガリが三人娘の方を振り返る。
フレイの発言に、ショックを受けた者、頭に?マークを浮かべている者、
瞳をキラキラと星のように輝かせている者と、三者三様の反応が見て取れた。
「カ…カガリ様。何度モーション掛けても全然反応がないから、もしや女性に興味が
無いのかと思いきや、まさかそっち側の人だったとは…」
「ねえ、聴いた!?兄貴だって!?キャア、ヤオイよ。ヤオイ!耽美すぎるわ」
「カガリ様、私は決して諦めません。私の愛の力で、カガリ様の男しか愛せない
という病気を癒やして……」
「だから違うって言ってるだろ!お前ら人の話を聞け!!」
再び三人娘はカガリの身体にしな垂れる。四面楚歌でホモ扱いされたカガリがとうとう
発狂したが、自分達の世界に填まり込んでしまったらしい三人には全く効果が無かった。

フレイの正体を知っているヘリオポリス組の面々は、カガリをダシにして、
さっそく三人娘を上手く懐柔しているフレイの手並みに呆気に取られている。
既に三人娘の中では、フレイはかっこ良くて、面白い男性と認識されているみたいだ。
例の悪魔的な本性をひた隠したフレイは実に爽やかで、博識で口当りも良いので、
初対面の女の子が、フレイの上っ面に騙されてしまうのは、無理からぬ事であろう。


「そんなに怒るなよ、カガリ君。この三人は君の物だよ。僕には、キラさえいてくれれば
十分だから、この三人娘に手を出すつもりはないさ。しかしまあ、女に興味が無いような
振りして、影でハーレムを拵えるなんて、やっぱり王子様は凡人とは遣る事が違うね」
ここぞとばかりに、フレイがカガリを畳み掛ける。
実際、フレイは、デート中に恋人(キラ)を連れ去られたり、戦場(無人島)へと
無理やり拉致されたり、危うく敵(アスラン)ごと撃ち殺され掛けたりと、
何だかんだ言っても、カガリへの怨み辛みがけっこう溜まっていたのである。
まあ、カガリの一方的な認識では、妹を悪魔の手から救うためにやった事ではあるが。

今まで、この場のペースに戸惑っていたキラも、呆れたようなジト目でカガリを睨み、
「誤解だ、キラ!」とカガリは大声で叫んだが、三人娘を身体中に侍らせている
今の状況では、説得力が無いこと甚だしかった。


「そう、あなたがキラさんだったね?例のMS(ストライク)のパイロットの」
自分達の世界にトリップしていた三人は、カガリの発した「キラ」というキーワードを、
復活の呪文として、現実世界へと帰参し始めた。
「実は私達、本当なあなたに用があったのよ。カガリ様の姿を見つけたら、
ついつい、そんな事は頭から吹っ飛んでしまったけど」
照れ隠しに軽く頭を掻きながら、三人娘はようやくカガリに絡めていた身体を離すと、
真正面からキラに向き直り、弛み切っていた表情を引き締め直した。
「キラ・ヤマトさん。エリカ・シモンズ主任がお呼びです。
是非とも、あなたにお願いしたい事があるそうです」
三人を代表する形で、アサギがキラにメッセージを伝え、キラは軽く瞬きしながら、
不安そうな目付きで、自分と歳の変わらない三人娘の顔を覗きこんだ。



その頃、断崖絶壁に囲まれた人気の無いオーブ沖に、ダイバーのスーツを着た四人の
少年少女が泳ぎ着いた。足付きの動向を探るために、オーブへの密入国を果たした
ザラ隊のメンバーである。
数日前の無人島でも為しえなかった、キラと生身で邂逅出来る日が近づいている事を、
この時、彼らを率いる隊長のアスランは、未だに気がついていなかった。

801私の想いが名無しを守るわ:2004/08/26(木) 19:35
>>キラ(♀)×フレイ(♂)

久々の投下乙です。もう続きは読めないのかなと思ってた
矢先だったので大変嬉しいです。

802人為の人・PHASE−16:2004/08/26(木) 22:12
目を覚ました僕の耳に、第一戦闘配備の警報音が飛び込んできた。
僕はベッドから起き上がった。「何か」が僕の中で変わっていた。
体のあちこちがガラスの切っ先のような自信に満ち溢れていた。
自分を押さえつけていた膜のようなものが壊れたのを僕は感じていた。
全てはあの子と寝た事がもたらした、羽のように軽い快感だった。
僕は大切なものを絶対に守る事ができる確信を得て、部屋を出た。
それは結局、傷ついた僕の一時的な闇への逃亡だったのかもしれない。
けれど、僕は今でもそれを憎んではいない。そうしなければ、きっと
僕は誰も守る事ができないまま消えてしまっていただろうから。
隣で眠っていたあの子の本当の気持ちを、僕は知らなかった。

すぐに出撃できるとの旨を伝えた僕は、ミリアリアにさえ乱暴な態度を
とった。敵が攻めてきてるのに、戦わないといけないのに、みんな何を
呑気にやっているんだ。さっさとハッチを開けろ。僕は怒鳴った。
僕は少しでも早く敵を滅ぼす事を望んでいた。そうすれば、多くの人が
助かるのだと考えていた。以前にもまして必死な心がそこにはあった。
僕はランチャーストライクで飛び立った。

砂の大地に落ちた僕は予想外の動きの悪さにてこずった。手に感じる
衝撃が宇宙とあまりに違う。そんな僕に敵は攻撃を仕掛けてきた。
地上を縦横無尽に動き回る事を目的として設計されたMS、バクゥ。
犬のような形をしたそれは、鈍いストライクに次々とミサイルを
撃ち込んでくる。PS装甲の頑丈さに守られながら、僕はストライクの
操作系統を自分でも驚くほど瞬時に修正した。生きるためではなく、
倒すための力。戦場で無力な者は失う事しかできない。砂への接地圧を
調整し、初めての環境に適応を開始していた僕はバクゥの軽やかな
動きに翻弄されつつも、確実に反撃を展開していった。
僕にはあの子の「想い」がある。託された気持ちが、僕の力となる。
一見正しいようでいて底知れぬ誤解を含んだ僕の信念が再び弾け、
未知の力が感情を支配し始めた。

僕はいつしか、敵のMSを生意気とさえ思うようになっていた。
砂漠を飛び跳ねるバクゥを僕はストライクの足で押さえつけ、そのまま
ヘリオポリス破壊の引き金ともなったアグニで容易く吹き飛ばした。
遠くから飛んでくる敵艦の主砲にはそれの一匹を投げつけて相殺した。
僕にはそれがただの機械でできた紛い物の犬としか思えなかった。
その気になればアークエンジェルを守るためにいくらでも壊してやる、
だからかかってこい。僕には力がある。そんな残酷な心があった。
しかし僕の黒い一面は長続きしなかった。PS装甲が切れたのだ。
これ以上の戦闘は危険だった。僕は正気に返り、生存の道を探した。
そこに有線通信でコクピットに声を入れてくる者がいた。
レジスタンスの一員らしく、敵に地雷を踏ませる作戦を僕に提案した。
やがて思惑通り、そのポイントを飛び越えた僕を追ってきたバクゥが
残骸となって空に舞った。僕は無責任なまでにそこに残酷さを感じた。
結局、戦闘はザフト側に多大な損害を残して終わった。
三度目の運命的な出会いがすぐそこに迫っていた。

803人為の人・作者:2004/08/26(木) 22:16
投稿再開しました。9月いっぱいの完結を目指して頑張ってみます。

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
最初から拝見しておりました。濃厚な地の文とひねられた会話が
とても面白く、続きを期待していたのでうれしいです。
個人的に、例の夕焼けのシーンがどうアレンジされるのかが楽しみです。

804私の想いが名無しを守るわ:2004/08/26(木) 22:30
がんばって!

805人為の人・PHASE−17:2004/08/27(金) 12:03
戦闘を終えてMSから下りた僕に、一人の少女が駆け寄ってきた。
乱れるに任せた金髪と、見る者を愛情とはまた違った意味で惹きつける
瞳を持つ彼女の顔がたちまち怒りに満ち、僕を問い詰めた。
何であんなものに乗っているんだ。あまりに直接的な質問だった。
僕の中で過去の記憶が次々と呼び起こされた。それらはみな複雑に
絡み合い、巨大な力となって僕を追いたてているように感じた。
そして長く辛い説明をする事をためらううちに、僕はようやく彼女が
ヘリオポリスにいたあの時の事を思い出したのだった。
色んな出来事がありすぎてどこかへ置き忘れてしまったのだろうか。
そのせいか、彼女との再会はひどく新鮮なものに思えた。
訳も分からないまま結局彼女に殴られてしまったのもその一因だろう。
彼女の名はカガリ・ユラ・アスハ。僕の数少ない血縁者の一人だ。

アークエンジェルは地元のレジスタンス組織「暁の砂漠」に協力する
という形で、アフリカに駐屯するザフト軍を撃破し紅海へ抜ける事に
なった。そのザフト軍を率いていたのは、「砂漠の虎」と名高い
アンドリュー・バルトフェルド。僕はこの人と後々戦う事になる。
もちろんその時の僕はそんな事を知るはずもなく、ただただこれからの
旅路への不安とそれを押し殺すための歪んだ自信を抱え続けていた。

僕は岩場の間にカモフラージュされて横たわるアークエンジェルを
眺めながら、砂漠の熱い空気を苦痛に思うことなく肌身に感じていた。
そこへ金髪の少女、カガリが涼しげな恰好で上ってきた。
僕の横に座り、とても正直な言葉で先程の謝罪と弁明を行う彼女は
どこかおかしくて、自然と笑みがこぼれた。カガリのようにまっすぐで
偽りのない気持ちを持った人を僕は今までに見た事がない。傍にいると
顔の表情一つに注目するだけで退屈しないし、本当に癒されるのだ。
もちろん血の繋がった者の贔屓目もあるかもしれないが、少なくとも
カガリは、僕なんかが決して持ち得ていないような魅力を備えていた。
そんな彼女と話をしている時、僕はあの子の事を一時的に忘れた。

僕はその時、MSの調整を終えて外へ出てきたところだった。
昼とは打って変わって冷えこんだ空気が漂う中で、二人は争っていた。
あの子がまず僕に抱きついてきた。視線の先にサイが見えた。
腕の中であの子は小さく震えていた。サイは苛立っていた。
僕は彼らが何を問題にしているのかを悟った。
二人は深い関係にあったはずなのだ。すっかり忘れてしまっていた。
もし覚えていれば、あの子と寝る事も無かったのだろうか。
僕はあの子を抱いて、サイがどう思うかなんて考えもしなかった。
自分の辛く苦しい状況に溺れ、遠くにいる友人を思い出さなかった。

ゆうべはキラの部屋にいたんだから―――。
あの子の痛切な響きを伴った声が、僕の心を完全に狂わせた。
僕の腕にしがみつくあの子の温もりが、無意味な力を引き寄せた。
やめなよ、サイ。信じられないような冷たい自分の声が耳を打った。
強い衝撃を受けていたサイの顔が次第に怒りへと変わっていく。
しかし僕は全く動揺していなかった。すぐに小さくなって謝るはずの
僕が暗黒の僕に踏みつけられ、蹴飛ばされて泣いていた。
昨日の戦闘で疲れてるんだ。もうやめてくんない。
その言葉にサイは僕の名前を呼び、向かってきた。僕はその動きを
冷酷なまでに予測して、彼の腕をひねり上げた。
やめてよね。本気で喧嘩したらサイが僕に敵うはずないだろ?
彼を砂地に突き飛ばした僕は、圧倒的な優越意識に酔いしれていた。
自分がコーディネーターである事実を喜んで受け入れていた。
それは僕が僕自身を最も醜いと感じた瞬間だった。
僕はその時点で悪魔とも成り得ていたのだ。
やがて臆病な自尊心は切実で身勝手な言い訳へと変わった。
僕がどんな思いで戦ってきたか、知りもしないくせに―――。
首を僕の肩に傾けるあの子の優しさに触れ、僕は力を感じていた。
僕の人生に、逃れようのない罪の一点が築かれた。

806人為の人・PHASE−18:2004/08/28(土) 16:56
町のある方角から火の手が上がっていた。
僕はあの子に優しい言葉をかけ、戦闘に備えるべくその場を去った。
MS格納庫へ向かう僕の頭の中では、先程の出来事が幾度も頭を
かすめていた。僕はサイの手をひねり上げ、地面に突き飛ばしたのだ。
サイはヘリオポリスの工業カレッジで、僕の友人だった。
僕達のリーダー的な存在で、いつも頼もしく思っていた。
困った時にはお互いに助けあい、協力し、手を取りあって喜んだ。
僕達はお互いを理解しあっている。そう思っていた。
それなのに、僕はそれを裏切る酷い行為をしたのだ。
高揚が次第に罪悪感へと変わり、僕の胸を締め付け始めていた。

「砂漠の虎」はレジスタンスの家族の住む町を強襲した。
彼は事前に攻撃する事を予告していたらしく、皆命からがらで
逃げ出したものの死者は皆無だったという。不思議なものだった。
しかし住居、食料、武器弾薬は完膚無きまでに焼き尽くされ、
町の人は明日を生きる手段にも事欠く状態で呆然としていたそうだ。
もちろんそんな状況に「暁の砂漠」のメンバーが黙っている訳もなく、
カガリを含めて多くの男達がジープでザフト軍の跡を追った。
彼らは純粋な怒りのもとに敵に一矢を報いようとしていたのだった。
たとえその結果が何を意味するかを分かってはいても、止められない。

僕はストライクで待機していたが、レジスタンスの人々がそんな行動に
出たという連絡を受けて出撃した。砂塵の向こうでは柔軟に飛び回る
バクゥと、その下でおもちゃのように攻撃を加えるジープが戦闘を
繰り広げていた。その戦力差は一目瞭然で、犬が次々と車を破壊する
奇妙に恐ろしい光景が続いていた。僕はそこに乱入していった。
砂漠での戦闘に慣れ始めていた僕に対し、敵は独特の陣形を組みながら
襲ってくる。僕は心の奥に溜まったどす黒い感情を吐き出すように、
そんな技巧を凝らした相手の攻めをかわして反撃に転じた。
しかし、それでもなお続く戦いは僕を一層深い闇に落とし込んだ。
何物にも代えがたい想いに守られた自分の力をただ信じて、僕はまた
弾け飛ぶ種子の姿を瞳の奥に感じた。そうして敵を殺し、退けた。

戦闘が終わってストライクの眼下にあったものは、「結果」だった。
カガリが泣き叫んでいた。キサカさんが隣にいた。誰かが死んだ。
それはアフメドという名の少年で、カガリと活動を共にしていた
らしい。今度は僕がそんな光景に複雑な憤りを抱く番だった。
死にたいんですか?
僕は精一杯の怒りと軽蔑をこめて、自分の命を顧みようともしない
「勇敢な」人々に対する言葉を紡ぎ出した。拳に力が入った。
MSの前では、人はゴミのように蹴散らされ、踏み潰されてしまう。
その時僕は、自分の守るべき人々が自分から命を投げ出す事に
我慢できなかったのだ。そう、僕はただ庇護の意識に固執していた。
カガリの強い口調にも僕はたじろがなかった。誰かが誰かを
守るために必死になったところで、死んだらどうなる?
この少年は?カガリは?その代償は決して小さくはない。
気持ちだけで、いったい何が守れるって言うんだ―――。
僕はカガリが女の子である事も忘れ、無我夢中で彼女の頬を張った。

807人為の人・PHASE−19:2004/08/29(日) 11:04
あれから僕とカガリの間にはしばらく微妙な空気が流れていた。
険悪なものではないが、それでいて別段仲が良いというわけでもない、
そんな関係だ。それはきっと僕がいつまでも心の隅で気にしていたのに
対して、カガリの方はすっかり忘れてしまったような態度で日々を
過ごしていたからだろう。細かいことを気にしない彼女が羨ましい。
そうだ、僕はいつでも気にしている。そして都合の悪いことはすぐに
忘れる。でも僕は今も悲しい思い出を、忘れることなく気にしている。

そんな中、僕達は物資の調達のために大都市パナディーヤに赴いた。
武器商人との交渉に向かった大人達と別れ、僕とカガリは雑用品の
買出しに四方八方を歩き回る。買い物リストの中にはあの子の依頼品も
あって、カガリは少し顔をしかめた。行く先々で繁栄の陰に潜む戦争の
気配を感じ取りながら、僕は彼女の自由奔放さに振り回されつつ
ひと時の平和な安らぎを覚えていた。

僕とカガリが昼食をとろうとカフェテリアに落ち着いたときのことだ。
まず、注文したドネル・ケバブという料理にかけるソースをめぐって
一悶着あった。妙に派手な服装の、明るい声で話しかけてきた男性が
カガリのチリソースをかける嗜好に異を唱えたのだ。冒涜だ、邪道だ、
彼はそう叫んで僕のケバブにヨーグルトソースを注ごうとし、それを
止めようとしたカガリと激しい競争を繰り広げた結果、僕のケバブは
見事に紅白ミックスへと染め上げられてしまった。僕は軽く驚愕した。
だが、本当の恐怖はここからだった。
蒼き清浄なる世界のために―――そう叫ぶ一団が、先ほど現れた男性を
狙うようにして銃を手に僕達を襲った。刹那にテーブルを倒して防壁を
築いた男性は、さっきとは打って変わって周りにいた部下達に一団の
排除を命令していく。それはまさしく指揮官のものだった。
死角から僕達に銃を向けていた男を蹴り飛ばし、波乱の終結を悟った
僕の前で、男性はサングラスを外して名を名乗った。
「砂漠の虎」、アンドリュー・バルトフェルドその人だった。

襲われた時にチリソースを頭から被ってしまったカガリのため、僕と
彼女はバルトフェルドさんの屋敷へと連れて行かれることになった。
冗舌でコーヒー好きな彼の性格を知って敵とは思えない親近感を
抱き始めていたその時、汚れを洗い落としたカガリが現れた。
若草色のドレスを着た彼女はすっかり容姿を変えてしまったようで、
僕は素直に驚きの感想を述べて彼女を愉快に怒らせてしまった。
続くバルトフェルドさんの言葉は何やら意味深で、こちらはカガリを
普通に苛立たせたようだった。彼のふざけたような数々の言動に彼女は
純粋に怒りを覚え、彼を問い詰める。彼ははぐらかす。彼女は叫ぶ。
そして彼は冷たい銃口を向け、僕達に一つの問いを投げかけた。
どこで戦争を終わりにすればよいのか。全てを滅ぼして、なのか。
やや遅れて僕に衝撃が走った。僕達は今戦争のただ中にいる、それは
分かっているつもりだった。けれど僕は「今」を生きることに必死で、
戦争の終わるべき「未来」を見つめていなかった。ただ単に目の前の
危機を振り払おうとしてストライクを起動し、敵を滅ぼしていた。
「敵」の考えに触れることができたのは、それが初めてのことだった。
やがてバルトフェルドさんはどうでもいいことのように銃を下げ、
僕達に戻るべき場所へ帰るよう促した。僕達は殺されなかった。
その頃アークエンジェルでは、サイがストライクを起動させていた。

808人為の人・PHASE−20:2004/08/30(月) 11:01
それから「砂漠の虎」との決戦の時が訪れるまで、血は流れなかった。
しかしそれを本当に平和な日々と呼ぶことができただろうか?
僕がアークエンジェルに帰ったその時から、僕はあの子を抱くことに
心の底で言い知れない不安を抱き始めていた。表面上は何も変わらず、
外側から見れば何の変哲もない穏やかな日々。だがそこには、戦争を
生々しく感じさせないからこそ漂う甘い不吉な影があった。

僕とカガリのいない間に無断でストライクを起動させたサイは、
罰として営倉に入れられ食料を届けられる生活を余儀なくされていた。
彼はどんな思いで、僕がアークエンジェルを守るために多くの敵を
葬ってきたそのMSを起動させたのだろうか。僕が帰らなかったから、
自分を砂漠に突き落としたかつての親友が戻らなかったから、
僕にできることを自分も成し遂げようとして結局失敗したのだろうか。
いずれにしろ僕が彼を追い詰めたことは明らかで、そのことに対する
僕の苦しみはそのままあの子との関係に跳ね返ってきた。僕はあの子と
出会うことを避け、ストライクのコクピットで寝起きするようにした。
そうでもしなければ、僕自身が耐えられないという身勝手な理由で。

サイに食料を届けに行くところだったカズイと一緒に、僕はサイの
入れられている営倉の前までやってきた。カズイはいつもの力なく
静かな声で僕に扉の前で待つよう指示した後、一人で営倉の中へ入る。
戦争が僕達の前に訪れるまでは頼もしく聞こえていたはずのサイの声。
その声が、カズイとの会話から以前よりもずっと弱々しく響いて
僕の耳に流れ込んでくる。あれほどみんなの尊敬していたサイが、
今は屈辱的な立場に置かれて苦しんでいる。その時、僕はすべてが
自分の責任なのだと思った。僕のためにみんなが傷ついているのだと
思った。しかしそれが安易な思い上がりであることには気づかず、
この鬱々とした日々を何とか生き抜くことしか考えていなかった。
ふと、あの子の姿が瞳の片隅に映った。僕が顔を向けると、彼女は
通路の向こう側に姿を消した。不安は数え切れなかった。

久方ぶりに部屋へと戻った後、しばらくしてあの子が目の前に現れた。
あの子は僕に近づき、ベッドに腰掛けた僕に肩を寄せ、甘い声で僕を
混乱させる。サイの悲惨な状況に目もくれず、人を魅了する笑顔で
彼の行動を暗に非難する。違う。何かが違う。僕達は、僕とあの子は、
こんなことをしていい関係じゃない。突然心の中に明らかな拒絶が
生まれ、僕はベッドの上での空しい抱擁を求めてきた彼女を
振り払った。ほんの一瞬だけあの子を邪悪だと思い、直後にその考えを
打ち消し、そう考えた自分に嫌悪した。心はずっと泣いていた。

やがて「砂漠の虎」との決着を目前に控え、僕の中を新たな思いが
駆け巡った。ザフト軍。親友だったアスランもそこにいる。
彼は今どこで、何をしているのだろうか。急速に彼の姿を思い出す。
僕とは違う誰かにイージスの銃を向け、ただひたすら「戦争」に
徹しているのだろうか。僕はそう考えたくはなかった。

809人為の人・PHASE−21:2004/08/31(火) 09:35
ついにサハラ砂漠を抜ける時が来た。それはつまり、紅海への道を
閉ざしているレセップス、「砂漠の虎」との正面衝突を意味する。
戦争から少しでも遠ざかっていた間に考えていたあまりにも多くの
出来事を断ち切り、僕は戦いに専念することを決意しようとした。
アークエンジェルを、みんなを守れるのは僕しかいない―――。
だがやはりバルトフェルドさんの言葉は重くのしかかってくる。
一度見知って、ただの「敵」とは思えなくなってしまった人を
僕は容赦なく討つことができるのだろうか。自信などあるはずもなく、
必要以上のノルマを自分に与える身勝手さがまたしても僕を責めた。

出撃前、僕はフラガ少佐に問いかけた。あの時、バルトフェルドさんが
僕の戦いぶりを見てたとえた言葉、「バーサーカー」の指し示す意味。
返ってきた答えは、正にストライクに乗った僕そのものを表していた。
狂戦士。普段は大人しいのに、戦いが始まると狂ったように強くなる。
限界を超えたと思った瞬間に脳裏に浮かぶ、弾け飛んだ紫紺の種子の
イメージを想像して、僕はいつもの通り暗い気持ちになった。

「砂漠の虎」との決戦は予想通り非常に激しいものとなった。
敵はレセップス以外の陸上艦も動員して待ち伏せ作戦を行っていた上、
襲撃を避けようと廃墟に逃げ込んだアークエンジェルは瓦礫が艦体に
引っかかって離脱不可能に陥ってしまった。僕はバクゥとの戦いに
全神経に取られて援護することもできなかったし、
少佐のスカイグラスパーも空の戦いに集中せざるをえなかったため
どうすることもできない。もうだめか。そう思いかけたその時だった。
ストライクと同じく地上に降り立っていたバスターが、
アークエンジェルへの砲撃を誤射して何とか危機は回避された。
不思議な気分だった。後で聞いてみればカガリも参戦していた
というし、何だか今になって思うと幻のような戦いにも思える。
そう、まるで真実が砂塵の中へ埋もれるのを拒否したかのように。

バクゥを一通り蹴散らしたところで、ついに見たことのないMSが
現れた。バルトフェルドさん、そして彼の愛人だったアイシャさんの
搭乗するラゴゥ。オレンジ色に塗装された機体が砂漠を猛烈なスピード
で駆け回り、対砂漠用にOSを書き換えたストライクを翻弄する。
ためらいの気持ちを捨てきれないまま僕は戦闘になだれ込んだ。一撃、
また一撃。ビームライフルを巧みに回避し、ラゴゥが迫る。僕は通信を
開いて必死に言葉を伝えてはみるものの、彼の荒々しい返事は僕の
空しい理想を否定して現実を伝えてくる。戦うしかない。どこまで?
どちらかが滅びるまで。ストライクのビームサーベルがラゴゥの足を
切断する。まだ戦いは終わらない。ルールなどない。PS装甲が切れ、
無防備になるストライク。手負いで襲いかかるラゴゥ。これが現実。
覚醒した僕は―――狂戦士となった僕は、アーマーシュナイダーを
ラゴゥの額部分に突き立てた。殺したくなかった人が、爆炎に消えた。

長い長い悲しみの叫びは、こうしてまた僕を少しずつ変えていく。
僕の敵への対し方も、僕のあの子との関係も、何もかも。

810人為の人・PHASE−22:2004/09/01(水) 12:27
紅海へ出たアークエンジェルは、インド洋を経てアラスカへと向かう。
「砂漠の虎」は倒したものの、海洋にはザフト軍が潜水艦で息を潜めて
おり、油断することはできない。僕は戦争に巻き込まれて以来感じた
度重なる悲しみも癒えぬままに、ただ戦い続けなければならなかった。
戦うこと。その言葉が僕にとって、新たな意味を帯び始めていた。

僕はデッキに出た。澄み切った青空の下、カモメ達が楽しそうに空を
飛んでいる。自由な鳥。縛られた自分。僕はなぜ戦っているのだろう。
殺してしまったと思ったバルトフェルドさんの姿が繰り返し脳裏に
浮かび、僕はいつもの通り耐え切れなくなって涙した。自分の運命が
つらかった。コーディネーターだから、戦える。コーディネーター
だから、簡単に死なない。死なない?でも僕はあの人を殺した。
果てしなく自分を絶望に追い込んでいく思考の渦に囚われようとして
いたその時、目の前にカガリが現れた。いつになく優しい顔と声で
僕を抱き寄せ、静かに安心させてくれる。あの子の時とは違う、
何か懐かしくて温かいものが全身を駆け巡った。僕は癒されていた。
直後、急に我に帰ったように弁解をするカガリ。彼女の行動はいつも
短絡的で、それでいて情に厚くて面白い。僕がコーディネーター
だからといって差別しないとはっきり言ってくれた彼女は、どこか
他人ではないような気持ちを与えてくれたのだった。

ふと、あの子の僕を呼ぶ声が聞こえる。見上げるとタンクトップ姿で、
僕のことを甘く誘惑するような視線のあの子。カガリは不機嫌そうに
立ち去ってしまい、アークエンジェルのデッキには僕とあの子の二人が
残された。僕は困惑したものの、結局のところ嫌な気分ではなかった。
今となって思えば、あの頃のそんな思い出でさえ僕の中にしっかりと
息づいている。官能的で、扇情的で、でも心は傷ついていたあの子。
僕は今あの子の手にすら触れることもできない。

初めての水中戦闘。巨大斬艦刀、シュベルトゲーベルを装備して
ザフトのMSと対峙する。グーンがクローを振りかざす。速い。
いや、水中用ではないストライクが遅いのか。冷たい海の底で
緊張を最大限に高めながら、守るべき人のことを思う。思わなければ
戦えずに死ぬ。僕は最初の頃とは違う妙に落ち着いた恐怖心を
心に抱えながら、敵の動きを識別した。そこだ。最も効率的な運動を
はじき出して実行に移す。敵に近づく。やがて攻撃を受けた敵MSは
水圧で紙くずのようになって爆発し、勝負はついた。そう、爆発した。
またバルトフェルドさんの顔が頭をよぎる。なぜ彼は死んだのか?
僕が殺したから。何度でも繰り返してきた結論にまた直面した僕は、
誰にも見られることのないコクピットの中で一人空しく泣いた。
それがどれほど無駄で意味のないことだと分かっていても、
僕には決して止められない。なぜなら、僕は弱い人間だから。

811人為の人・PHASE−23:2004/09/02(木) 15:19
しばらく航海を続けるうち、あの子が船酔いにかかった。
僕の部屋で寝ている彼女は、甘えたような声で僕に様々な催促を
してくる。タオルの取り換え、飲み物の用意、その他色々。僕はそれに
忙しく応じながら、戦うことのつらさから少しでも目を背けようと
していた。少なくともあの子の相手をしていれば、平和でいられるのだ。
そして同じ理由から、僕はあの子との関係にも目をつぶって何も言わない
ことにした。少しでも僕があの子の気持ちに疑いを持っていることを
話したりしたら、今の平和な関係が崩れ去ってしまうかもしれない。
そんなことは考えたくはなかった。僕は純粋にただ怖かったのだ。
しかしそれも結局、あの子との破局を遅らせるだけにすぎなかった。

サイ。昔はいつも頼りにしていて、今でもとてもいい性格のサイ。
その彼が僕に一言、頼むな、と言った。あの子のことだった。僕はもう、
その言葉に対してうつむいたまま無言で返事をすることしかできない。
僕もサイもつらいし、苦しい。サイは何にも悪くない。悪いのは僕だ。
彼の悲痛な表情が、その奥にあるそれ以上の苦悩を表しているように
思えて、僕はそのまま立ち去るしかなかった。

第一戦闘配備の放送が鳴り、僕とフラガ少佐とカガリが出撃した。
空中を舞う無数のMS、ディンの相手を二人が、水中のMSを
僕が引き受ける。僕に襲いかかってきた敵は前回のグーンに加え、
隊長機らしい緑色の機体をしたゾノが新たに増えていた。前にも増して
激しい攻撃にさらされるアークエンジェル。僕が対処しきれなかった敵は
そのまま戦艦の攻撃に回ってしまう。僕はさらに覚悟を決めなければ
ならなかった。もう人を殺す云々を考える余裕もなかった。とにかく
敵を倒すこと、目の前の危険を取り除くこと、みんなを守ることだけを
考えて、僕はグーン、そしてゾノに対決を挑んでいった。もちろんその間
上空でどんな戦闘が行われていたかなど、僕には知る由もない。

バレルロールを行って水中の敵に直接ゴットフリートを照射した
アークエンジェルの戦略もあり、残るMSはゾノ一体。体当たり同然で
攻撃してくる相手に対し、追加武装をほとんど失っていたストライクは
備え付けのナイフ形兵器、アーマーシュナイダーを取り出そうとする。
しかし敵もその瞬間を見逃さない。ストライクがナイフを取り落とす。
僕は焦った。敵パイロットが捨て身なのがよく分かった。このままでは
道連れにされてしまう。僕は素早くもう一方のナイフを取り出し、
間髪いれずにゾノの装甲に深々と突き刺した。素早く離脱し、敵が
爆発するのを見届ける。僕はまた生き延びた。そう、死ななかったのだ。
戦いに勝ち、自分の死が遠い存在に思えてくるにつれて、少なくとも
戦闘中の僕は「戦争」という現実を素直に受け入れ始めていた。
要するに、人殺しに慣れてきたということだった。

この後帰艦した僕は、カガリがMIA、すなわち行方不明になったことを
告げられる。少なからず僕にとっても重要な意味を持つ運命の出会いが、
彼女とアスランを待ち受けていた。

812人為の人・PHASE−24:2004/09/03(金) 12:36
いつだったか、アスランとカガリの両方からお互いに初めて出会った時の
話を聞いたことがある。無人島に不時着した二人。相手がどんな人間か
分かるはずもなく、手持ちの武器で争い、そしてもう少しで悲劇を
生み出す所だったのだと。馬乗りになったアスランがもしカガリの悲鳴を
聞く前にナイフを振り下ろしていたとしたら、少なくとも僕の世界は
今よりもずっと暗いものになっていただろう。いや、ひょっとしたら
もうとっくに終わっていたかもしれない。運命は不思議で、切ない。

副長はカガリを見捨てて離脱するように進言したものの、結局艦長は
僕とフラガ少佐が捜索活動に出ることを認めてくれた。僕はそれが
全く軍人らしからぬ行為であることに薄々気づきながらも、カガリを
捜すことに全力を注げるよう手配してくれた艦長に心の中で感謝した。
マリュー・ラミアスさん。あの人は本当にいい人だ。年下の僕が言うのも
変かもしれないが、彼女は四方八方から吹き付ける風に翻弄されて、
最愛の人さえも目の前で彼女を守るために命を散らして、悲しんで、
それでも最後まで立ち続けることのできた可憐な花のようだった。
今、彼女はどこで何をしているのだろう。しばらく姿を見ていない。

偶然とも言える形で最悪の事態を免れたアスランとカガリが、その後
僕が迎えに来るまで何をしていたかについてはよく分からない。何しろ
当事者である本人たちが少し微笑みながら黙り込んだり、顔を赤くして
怒ったり、ほとんど内容を語ってくれなかったから。でもその方が
いいのだろう。きっとあの二人にとっては初めての出会い以上の意味が
あったのだ。決して殺し合おうとした事実や、今あるような相思相愛の
関係にまつわるものですらない、熱くぶつかりあった鮮烈な記憶。
彼らは無人島で、二人だけの「戦争」を繰り広げていたのかもしれない。

夜が明けて、ストライクのコクピットにカガリの声が飛び込んできた。
刹那に喜びで満たされる僕。ずっと探し回ってあの子には申し訳ないと
思ってはいたが、そんな心配も一気に吹っ飛んでしまった。水上から
その巨体を露わにするストライクに、満面の笑顔で手を振るカガリ。
僕は感動で胸が一杯だった。本当に良かったと心の底から思った。
その彼女のすぐ向こう側でイージスへと乗り込むアスランには気づかず、
僕はカガリを連れてこれ以上になく晴れやかな気持ちで帰艦した。
あの時、僕にとって特別な存在となり始めていた彼女を無事に助け出せた
ことは、間違いなく僕を明るくしてくれたように思う。現に僕は、
何か失ってはならないものを失ってしまいそうな気がしていて
ひどく焦っていたのだ。それはあの子への思いを既に越えていた。
しかし、運命はやはり分不相応な喜びを僕に長く与えてはくれない。
この後僕はアスランと、これ以上にないほど激しい憎しみを戦わせる
ことになるのだった。原因は、悲しい「死」という名の現実。

813人為の人・PHASE−25:2004/09/04(土) 11:55
襲い来る4機のガンダム。迎え撃つ僕、フラガ少佐、アークエンジェル。
かつて宇宙で繰り広げられた戦いは、ついに海上でも始まった。敵は
グゥルと呼ばれる飛行土台に乗り、空中を自在に飛び回りながら攻撃を
仕掛けてくる。逆にそのグゥルを壊してしまえば後は海中に沈むだけ
なので、僕はビームライフルで土台を徹底的に狙っていった。
3種類の装備を換装できるストライクは、エール形態で多少の飛行が
可能であるもののその機動力はどうしても敵に劣ってしまう。しかし
僕と幾多の戦場を駆け抜けてきたストライクは、これ以上にないほど
こちらの細かい操作に応えてくれる。右、上、前方左斜め45度後ろ。
自分でも信じられないほどの機動性が、4機のガンダムを翻弄した。
それでも、アークエンジェルの損傷は次第に大きくなっていった。

オーブの領海が近づいてくる。中立国のオーブには地球連合もザフトも
手を出すことはできない。オーブ側が離脱するよう警告を促す。
無理だ。この状況では先にアークエンジェルが沈んでしまう。もはや
取るべき手段は一つしかなかった。カガリが叫び、自らの身分を明かす。
エンジン部分に被害を受けたアークエンジェルは着水して、オーブの
艦艇群の中に入り込む。自衛と称した敵意のない砲撃が海に沈む。
ザフトは撤退し、僕達は「平和の国」オーブへと入港した。

カガリ・ユラ・アスハ。彼女はオーブの前首長、ウズミ・ナラ・アスハの
一人娘になっていた。かつて「オーブの獅子」と呼ばれ、中立国としての
尊厳を貫いたウズミさん。けれど連合のガンダム開発に協力した責任を
取って、首長の座を退いた人。カガリはそんな「父」の中立精神に疑問を
持ち、国を飛び出した。そして、偶然にも僕と巡り会ったのだった。
オーブは僕の育った国でもある。でもカガリが「オーブのお姫様」だった
なんて全然知らなかったし、まして後々明らかになる事実など、
どうして素直に受け止められただろうか。僕もカガリも、この頃はまだ
何も知らなかった。もちろん、この国がやがてたどる運命さえも。

美しく着飾ったカガリが、僕の前を通り過ぎていく。大半のクルーは
それを見て驚きにも似たため息をついている。僕は前に一度見たことが
あったけれど、僕の隣にいたあの子は嫉妬するような目で強く彼女を
にらんでいた。それを感じた僕は、あの子の僕に対する気持ちが
どうなっているのかますます分からなくなり混乱した。表面上は
困ったように微笑むだけの、複雑な心境が僕を支配していた。
あの子は僕を憎んでいる?それとも本当は―――
僕はその先を考えるのが怖かった。何か絶対に手を出してはいけない、
簡単に壊れてしまいそうなものがあるように思えたから。

オーブがアークエンジェルの入港を認めた理由には、僕たちを助けようと
いう意志も少しはあったのかもしれない。けれど結局、主な目的は
コーディネーターである僕のストライク搭乗経験から来る技術提供の
ようだった。中立を、平和を守るための力。僕は従った。

814人為の人・PHASE−26:2004/09/05(日) 12:43
ふと、ペンを持った手を止めてみる。たくさんの文字がびっしりと
書き込まれた紙。その上に乗っている僕の手は、小さく震えていた。
僕は少し感動した。ああ、僕も人間なんだ、と。神がかりのごとく
キーボードを叩いていた小さな指先が、コントロールスティックをほんの
数ミリ傾けて敵を撃墜していた自分の手が、今はこうして筆記に疲れて
カタカタと震えている。そんな当たり前のような光景が懐かしかった。
机の上にペンを置き、僕は目を閉じて大きく伸びをする。過去の記憶が
容赦なく僕の良心を襲う。それはもう慣れてしまった思い出。あの時
ああしていれば、こうしていれば、彼は傷つかなかった、彼女は
死ななかった。もう後悔で涙にむせぶこともない。慣れてしまったのだ。
そんな自分を悲しいと思いながらも、やはり涙は流れなかった。

世界は確実に平和の方向に向かっている。そう信じようとして、僕は
限りない安寧を享受できる孤島に住み着いた。毎日が穏やかに、優しく、
何事もなく過ぎていく生活。それでいて過去と常に向き合うような、
後ろ向きの暗い心。僕は何か途方もない矛盾を抱えて生きているかの
ようで、このままではいけない、そんな警告を受け取りながらもそれを
無視し続けている気がしてならなかった。なぜ?戦争はもう終わって、
平和が来て、ナチュラルとコーディネーターは仲良く暮らして―――
事実、争いは絶えない。戦争というのはただの入れ物であって、そこで
人々は殺し合いをして、滅ぼし尽くして、やがて離脱して、それでも
終わらない。また別の入れ物で争いあう。そして結局、また戦争になる。
ある時、僕は何のために戦ってきたのだろうと考えたことがある。
戦争を終わらせるため。そう即答した瞬間、僕は自らを軽蔑した。
―――確かに戦争は終わった。でも争いは終わらない。明日がある限り。
それ以来、僕は自分の戦った理由を考えないように努力してきた。

僕が「自伝」を書いている時、一つ一つの瞬間が僕を通り過ぎていく。
それは微笑む人であったり、蹂躙するMSであったり、破滅の光で
あったり、様々な姿を見せながらやがて遠ざかっていく。
時間はそんなごく小さな瞬間が何百、何千、数え切れないほど集まって
流れている。そこで何が起こり、誰がどうなるかは誰にも分からない。
分からないから「自伝」を書くのだろうか。僕は何とかそれを明らかに
しようとして、悪戦苦闘しているのだろうか。だとすれば、僕は今も
「戦争」を続けているのだ。これから始まろうとしている戦争では
ない、もう終わってしまった戦争を無意味な想像の中で繰り返して、
そうやって何かをしようとしているのだ。いや、実際は何もしていない
のかもしれない。「何か」が分からない以上、それは当然のことだと
割り切るしかないのかもしれない。でも、でも。
―――僕は書かないではいられない。

815人為の人・PHASE−27:2004/09/06(月) 12:00
オーブの技術主任であるエリカ・シモンズさんに連れられて、
僕はモルゲンレーテのMS格納庫にやってきた。
そこで見たのは、整然と一列に並ぶたくさんの「ガンダム」だった。
正確にはM1アストレイという名称で、ヘリオポリスで製造された
5機の量産型のようなものらしかった。確かによく見れば、
所々ストライクなんかより軽装という感じがする。
まあ、ストライクはもともと3種の換装が可能な機体なのだから
重装備になるのも無理はないのかもしれないけれど。そんなことを
考えながらMS群を見上げていると、横からカガリの声が聞こえた。
いつもよりやや苛立ったような声で話す彼女の、片方の頬が赤く
腫れ上がっていた。どうもウズミさんとの並々ならぬ意見の対立が
あって、最終的にぶたれたようだった。カガリは言う、こんなものを
作りながらよくオーブが中立だなどと言えたものだ、と。
守るための力とは言っても、それが軍隊であることには変わりがない。
彼女は彼女なりにオーブの外へ出て戦争の空気を肌で感じ取り、
そして確かな口調で強い意見を述べている。それを見て聞いた僕は、
いつまでも優柔不断なままに流されていくだけの自分を情けなく
思っていた。本当に、僕はこのままでいいのだろうか。
周囲の状況に慣らされていくだけの、毎日が殺し合いの日々。
その問いに対する答えの一つは次第に近づきつつあった。

マードック曹長が着ているような整備服に着替え、僕は黙々とOSの
作成に取り組む。自分にそんなことをする義務があるのかという
疑問からは目を背けていた。その答えは「軍務だから」の一言で
済むものであったし、考えたところで逃れることはできない。
せわしなくキーボードを動かしながら大量のデータを処理し、
有用なものだけをピックアップしていく。とんでもない単純作業の
積み重ねだが、集中力は一向に切れる気配がない。自分のことなのに、
自分の意志で行われてもいないような感覚だった。
僕はパソコンに向かうと自然と手が動くようになっている。さながら
ピアノを弾くように、しかし美しい旋律の代わりに無機質な打鍵音だけ
を残して、作業はどこまでもどこまでも続いていく。
不思議なことだが、そうしていると時々残像のようにあの子の姿が
目に浮かぶことがあった。僕はそのたびに頭を振って作業に徹した。
以前は限りなく癒されていたはずの笑顔に、邪魔されてしまうなんて。
そんな気持ちを引きずりながら、僕の目はモニターを追い続けた。
作業中にフラガ少佐がMSに興味を示していたり、時々見かけていた
カガリの友達的な立場にある3人の女の子がM1アストレイの
パイロットだったりしたことを、今となってぼんやりと思い出す。

やがて完成したOSは、地球軍の量産型MS「ダガー」に組み込まれる
ことになる。ザフト軍のMSに対抗しうる存在として後々大きな影響を
及ぼしていくこの機体は、結局のところ僕の手が加わったものだった。
最高のコーディネーター。その言葉は、今も僕を礼賛し罵倒する。

816人為の人・PHASE−28:2004/09/07(火) 12:27
艦長の計らいで、僕達は両親との面会を許されることになった。
サイ、トール、ミリアリア、カズイ。きっとみんな安心と喜びの笑顔に
満ち溢れながら、長く隔てられていた家族と再会したのだろう。
でも僕は決して会いに行こうとはしなかった。父さんと母さんのことは
オーブにたどり着いて以来ずっと気になっていたことだけれど、
それはもうどこか手の届かない遠い世界のことのように思えていた。
日常が崩れて戦争に追われ、闘争本能をむき出しにする狂戦士。
それが僕だ。コーディネーターであるがために大きすぎる力を
何の苦もなく使いこなし、結果妬まれ憎まれて疎外されていく。
他の多くの人が苦しんできたように、僕もまたどうして自分が
コーディネーターとして生まれてきたのかを両親に尋ねたいと、
そんな気持ちばかりが膨らんでいった。しかし、そんな問いかけを
してみた所で何の解決にもならないのだ。僕が依然として「異常」な
存在であることに変わりはなく、両親の苦悩を増すだけにすぎない。
家族に会えないことは涙の出るほどに悲しかったが、すでに僕は
涙に彩られた自分の運命に違和感を感じさえもしていなかった。

その日、久しぶりに作業が早く終わった僕はアークエンジェルの
自分用の個室へと向かっていた。扉を開けてみると、中には誰も
いない。てっきりあの子の名前を呼ぼうとした僕だったが、
どこかへ出かけているのだと考えて帰ってくるまで部屋にいることに
した。最近ずっと彼女には会っていなかったし、心配しているだろう
と思ったからだ。ドアを開けた先にいる、コンピューターに向かう僕を
あの子はどう思うだろう。久しぶりに会えたことを喜ぶだろうか?
それとも長く一人にされたことに怒りをぶつけるだろうか?
僕は二つの選択肢のどちらがあの子の本心を得ているかどうかを
考えながら、背後にスッと自動式の扉が開かれる音を感じた。
笑顔を見せて振り向く。できるだけ優しい声で、彼女に語りかける。
どんな考えを持っているか分からないあの子がどう応じるのか、
僕の中をやや一定した量の緊張が流れた。そして、返答の時間。
―――冗談じゃないわ。やめてよね。
返された答えは全く予想だにしないものだった。

僕があの子にかけた言葉は同情と受け取られ、彼女はなぜあなたに
同情されなければならないのかと強い調子で詰め寄った。そこには
怒りや憎しみだけでなく、愛情や悲しみですら織り込まれている
ように思えて僕はひどく焦った。これほどにまで複雑化した気持ちを
僕はとても理解してあげることができない。あの子の僕への思いは
いつの間にか言いようのないほどに大きく変化していて、その衝撃を
僕はまともに受け入れることさえ不可能だった。可哀想なキラ、
一人ぼっちのキラ。あの子が見ていた「僕」そのものがあふれ出す。
戦ってつらいことも、守れなくてつらいことも、すぐに泣くことも、
みんなみんな嘘なんかじゃない。間違いなく本当のことだった。
そして―――それが本当のことである以上、彼女が僕のそばにいる
ことは僕にとっても彼女にとっても悪い結果しか導かないのでは
ないか、そんな考えが急速に頭をもたげてくる。
悪くない考えだった。そして、第一に卑怯な逃亡手段でもあった。
―――何よ、そんなの。
あの子が悲痛な叫びとともに出ていく。僕はその後を追わない。
とうとう僕は、彼女との関係を「間違ったもの」として拒絶した。

あの子との関係を断ち切った後、僕がOS設定の作業している最中の
ことだった。ずっと肩に止まっていたトリィが動き出し、どこかへ
飛んでいってしまったのだ。まるで新たな主人を見つけたかのように
旅立っていったトリィを捜すべく、僕はモルゲンレーテの工場を出て
敷地内を歩き回った。そしてついに見つけ出したのだ。
フェンスの向こう側で静かにたたずむトリィと、それを肩に乗せた
青い作業服の青年、アスラン・ザラを。他に向こうには何人かいた。
僕は思わず駆け寄った。彼の方でもこちらに気づいたのか、そのまま
ゆっくりと歩いてくる。やがてフェンス越しに僕達は再会した。
君の、というアスランの声。差し出された手にはトリィ。僕にはただ
それを受け取ることしかできない。いや、本当にそれしかできない?
僕は必死の思いで言葉を探し、アスランへの言葉を他ならぬ彼自身に
よそよそしく伝える。昔友達にもらった、大事なものなのだと。
アスランは去っていく。後ろにいた同じ作業服姿の少年たちは
敵のガンダムのパイロットだったのだろう。
沈みかけていた夕日が、すでに遠く隔てられてしまった僕たちを
オレンジ色に染め上げていた。ひどく悪魔的な美しさだった。

817人為の人・PHASE−29:2004/09/08(水) 11:25
アークエンジェルがオーブを去るときがついに来た。艦体の修理も
終わり、再びアラスカを目指す旅が始まろうとしていたのだ。
僕はついに両親に会うことのないまま、出発の準備を始めていた。
「平和の国」で得られたものは結局、自分がコーディネーターで
あることから来る休まらない心がもたらした数々の悲しみだった。
これからどうなるかが全く分からない状態はヘリオポリスが崩壊した
時からずっと続いていたものだったが、その時僕はそれとはまた別の
不安を抱き始めていた。この先待ち構えているのは間違いなく、
かつての親友との何度目かの無意味な争いに他ならないのだ。
別れを悲しむカガリに抱擁されたことが、わずかな慰めになった。

オーブ近海。予想は完全な形で的中し、アスラン達が襲ってきた。
すっかり見慣れた4機のガンダムがグゥルに乗って空を舞う。僕は
自分と一体化したようなストライクを操縦して迎撃に当たった。
血気盛んなパイロットの駆るデュエルは土台を破壊して海の中へ。
むやみに近づいてくるバスターはフラガ少佐の戦闘機が応戦する。
イージスとの連携攻撃で攻めてくるブリッツにも苦戦することは
なかった。うまくいかないことは何もなく、全てが成功していた。
そう、トールも初めての出撃で「うまくやってしまった」のだ。
スカイグラスパーの助けを借りた空中換装、次々に戦闘不能に陥る
敵のガンダム達、残ったイージスもグゥル破壊で島に落とし、数の
差を覆した圧倒的な戦いが展開されていた。過去に何があったかは
今の戦いにはもう何の関係もないんだと、僕は自分に言い聞かせて
ビームサーベルを振り、アスランを追い詰める。俺を討てばいいと
彼は叫ぶ。僕がそう言ったのは自分でもよく分かっていた。でも、
そんなことできるわけがない。いくら実力でアスランを上回り、
彼を凌駕したところで、僕には彼を殺すことなんてできなかった。
月で僕と別れてから核がプラントに打ち込まれ、軍人となって
正義のために戦い続けた結果、ただの民間人だった友達に自分を
殺せと命じるアスラン。彼と自分への、思い上がった同情が一瞬
僕を包み込んだ。それをアスランの「今」の友達は見逃さなかった。

巨大な斬艦刀、シュベルトゲーベル。その刀身がブリッツの
コクピット部分を爆破するのに時間はかからなかった。
ほんのわずかな間の出来事。ミラージュコロイドを解いてイージスの
前に出た黒い機体が片腕で僕に襲いかかる。僕は敵の鈍い動きを
確実に捉えて、そのガンダムを真っ二つに―――できなかった。
思わず飛びすさった僕と、その場から動けないアスランが見たもの、
そして聞いたもの。半分だけ食い込んだ武器、火花を上げる機体、
僕よりも若かった少年の、断末魔の苦しそうな声。それは自分の
死の間際にあっても他の人を心配する優しさに満ちて―――爆発。
僕は彼のニコル・アマルフィという名前すら知らなかった。
もう後戻りできないことを示す楔が、荒々しく打ち込まれた。

818人為の人・PHASE−30:2004/09/09(木) 11:44
眼前で爆炎に消え去ったブリッツの残骸を眺め、しばらくの沈黙。
やがてアークエンジェル、敵の機体がその場に現れ、僕とアスランを
戦闘から切り離していった。アスランの慟哭の声がいつまでも耳に
残り、帰還した僕は敵機破壊を喜ぶ整備兵達の歓迎を嫌った。
痛々しい死を間近で体験した僕はひどく冷静で、それを知らない
人々の歓声は僕をますます罪悪感に駆り立てるだけだった。
俺たちは人殺しじゃない、戦争をしているんだというフラガ少佐の
言葉にも納得できないまま、僕は一人ストライクの前に立つ。
まだ笑っていた頃のアスランを想像しながら、彼の敵が誰なのかを
嫌というほど自分に分からせる。そう、僕だ、僕は敵なんだと。
それでも―――「全てを滅ぼす戦い」にはまだ足りなかった。
まだ、僕には決定的な憎悪が欠けていた。

暁光に照らされて3機のガンダムがアークエンジェルに迫る。
悲しみの癒えないうちに出撃を余儀なくされた僕は、廊下であの子と
すれ違った。何かを言おうと口を動かす彼女。でも僕はその時
彼女の顔を見るのがたまらなくつらかった。成すに任せていた様々な
出来事が今になって全て僕の前に立ちはだかるような感覚の前に、
僕は彼女との「決着」を先延ばしにした。ごめん、帰ってからと
言い残してデッキへ走る僕。不安そうな顔で見ていただろうあの子。
こうして僕は、永遠に彼女への言葉を失った。

怒りに満ちた敵の攻撃が僕達を襲う。まずはデュエル、強引な突撃と
同時にストライクを急襲。今までになく闘志をみなぎらせた機体が
僕に言いようのない焦りを呼び起こさせる。それでも撃墜されること
はなく、グゥルから切り離して海中に蹴落とす。まずは1機。
バスターにはフラガ少佐がスカイグラスパーで応戦している。すると
残っているのは―――アスランの駆るイージスだ。赤いMSに
渾身の憎悪をたぎらせてかつての友が迫る。思わず後ずさりしそう
になるが、逃げることはできない。こうなってしまった運命だから、
ニコルという名の少年が死んだのは仕方のないことなのだから、
僕達が敵なのはもうどうすることもできない事実なのだから。
出撃の前に固めていたはずの決心とともに、僕はストライクを操る。
―――その時だった。トールの声が聞こえたのは。
刹那に僕は恐怖を覚えた。だめだ、僕とアスランの戦いは誰の介入も
許してはくれない。これは僕達の戦いで、誰かがどちらか一方を
助けようとすれば―――今となって思うことはただそればかり。
イージスの放った赤いシールドの刃が、トールの首を跳ね飛ばした。
僕が斬艦刀を失った瞬間から決まっていたかのような、親友の死。
彼の名をひとしきり叫んでから、僕は飢えた野獣へと変化した。

もう何のために二人が戦っているかも分からない。戦争という大きな
枠組みの中で確かに行われているはずの「戦い」は、大義や名誉など
何の関係もない、単なる「殺し合い」に成り下がっていた。
元々戦いたくもなかった僕達をそこまで駆り立てたのは、
結局は「巻き込まれた者の死」という悲痛な惨劇だったのだろうか。
水上にぽつんと落ちた紫紺の種子のイメージはとても美しいのに、
そこから割れてあふれ出る力は僕を狂戦士へと導いていく。
僕とアスランはビームの剣を重ね合わせ、絶え間なく激突した。
友情、離別、再会、喪失。全ての思考が捻じ曲げられ、破壊への
道を突き進む。既にイージスは片腕と頭部を失い、ストライクも
コクピット部分を大きく切り裂かれていた。外気が入り込んでくる。
それでもまだ戦いは終わらない。終わらないのだろうか。
―――やがてついにその刻は訪れた。
変形したイージスがストライクに組み付き、自爆。アスランは直前に
脱出し、巨大な爆発は閃光となって曇天の空を駆け抜けた。
そしてキラ・ヤマトという少年は、確かに一度「死んだ」のだった。

819人為の人・作者:2004/09/09(木) 11:45
この辺りは書いていて何だかつらい……

820私の想いが名無しを守るわ:2004/09/09(木) 15:31
>人為の人
大作毎回楽しませていただいてます。
ニコル好きなので、キラ視点でどうなるのかとちょっと楽しみでした。
最後まで頑張ってくださいませ

821人為の人・PHASE−31:2004/09/10(金) 14:36
僕がMIAとなりアークエンジェルの戦列を一時離れた時、みんなは
一体何を考えたのだろう?同じくMIAとなったトールは本当に
死んでしまった。艦長、副長、フラガ少佐、サイ、ミリアリア、
カズイ、それにあの子、その他たくさんの人はどうしたのだろうか。
涙を流したり、声を押し殺したりして僕を悼んでくれたのだろうか?
それとも僕の死が信じられなくて、ただ放心していたのだろうか?
僕にそれだけたくさんの人から悲しまれる資格なんてないのかも
しれないけれど、何だか不思議な気持ちにとらわれる。
僕は「死んだ」。そしてその後、みんなの前に「蘇った」?
そう考えると、自分が自分でなくなるような気分と同時に
あの頃の自分が「何」だったのかを改めて問い直したくなる。
そう、もう誰も殺さない、泣かないと誓ったあの頃の自分を。

僕達の不毛な戦いが終わってからその場に残ったのは、
ばらばらに砕け散ったイージスと焼け焦げたストライク。バスターの
パイロット、ディアッカ・エルスマンは降伏したらしい。そして
アークエンジェルは敵の追撃をかわすために即座に離脱しなければ
ならず、傷を負ったアスランを発見したのはオーブの部隊だった。
その時カガリとアスランが何を語り合ったかは大体想像がつく。
あの二人のことだから、語り合う以上の激突があったのは確かだと
思うけれど。僕の「死」が二人を争わせ、何かを生み出したのだ。
もしかすると、僕はその為に「死んだ」のかもしれない。今の時代を
動かし、明るい方向に導いていける彼らを思いながら考える。

土砂降りの雨。冷たい水しぶきに打たれながら、その時僕は瀕死で
倒れていたのだと言う。それを見つけた島の住人、マルキオ導師は
僕を介抱し、プラントへと連れていった。僕が「SEEDを持つ者」
であり、それゆえに会わせなければならない人がいたからと。
目が覚めた時にはもう血塗られた戦場からは遠ざかっていた。
小鳥のさえずる声と暖かな日差しと美しい緑、爽やかな風が
僕を取り囲んでいた。それは今までの日常からかけ離れすぎていて、
しばらく僕は何が起こったのかを判断できなかった。
やがて聞こえてくる一人の少女の言葉。ずっと昔にどこかで会った
ような、そんな記憶を必死に手繰り寄せながら、僕は彼女を見た。
それはザフトの歌姫、ラクス・クライン。
あまりにも予想外の、そして定められたかのような再会だった。

822人為の人・作者:2004/09/10(金) 14:37
>キラ視点
彼がニコルの名前を知っているという前提で書いてみました。
あの話は本編のシナリオが大きく動き出すきっかけだったと思うので……。
励ましの言葉ありがとうございます。ようやく半分越えたくらいですが、
ここからが正念場と思って書き進めていきたいです。

823人為の人・PHASE−32:2004/09/11(土) 13:44
僕はクライン邸の庭にあるベッドに寝ていた。傍らには笑顔を
たたえたラクスと、以前と変わらずその回りを動き回るハロ。
ラクスの一挙手一投足はみな優しさに満ちていた。目覚めから
まだ意識がぼんやりしていた僕は、そんな彼女に引き込まれる
ような気持ちで話を聞いていく。彼女は多くを知っていた。
僕とアスランが「敵」と戦い、殺しあったことを平然と語って
静かに僕を見つめてくる。思い出したくなかった出来事が
ついさっきのことのように脳裏を支配し泣き崩れる僕を、
ラクスは神秘的とも言える微笑みで包み込んでくれた。
爆発するMSの記憶は次第に遠くへ追い払われるようになり、
僕は甘えという名の現実逃避への道をひた走った。今僕の
いる場所は信じられないほどに心地よくて、戦争とは無縁で、
何よりラクスという存在は僕にとっての何よりの「癒し」と
なりえたのだった。多くを知りながら多くを語らないラクスが
傍にいるということ。僕はただその優しさにすがろうとした。
それはアークエンジェルであの子を求めた時のように必死で、
切羽詰って、どうしようもないものを心に抱えたままで終わる
ものではなかった。時間と、空間と、そして僕そのものでさえ
ラクス・クラインという一人の少女の手に委ねられたかの
ような、圧倒的な心の平穏と満たされた感覚。
まるで夢を見ているかのようだった。戦いの狭間におかれた
人間が渇望する、現実と正反対の理想を体現した世界。
しかしそれは傷を抱えた僕の、紛れもない事実だった。

ギッという音がして、無我夢中にペンを走らせていた僕は
気づく。インクが切れたのだ。紙は破れずに残っていたが、
そこにはしっかりと筆圧の加えられた跡が見て取れた。
その直前に書かれた文字は人名だった。ラクス・クライン。
偶然のことながら、僕は思わず彼女に思いを馳せる。
目に浮かぶのは桃色の髪、曇りのない瞳、透き通った声。
「美しい」と素直に出てくる言葉は、それでも遺伝子を
改造したからという理由にもとづいていなくてはならない
のだろうか。そして独特の空気を振りまく愛らしい姿と、
凛とした司令官であろうとする姿勢が交錯する。ラクスは
自分が何をしようとしているのかを明確には言わない。
あくまで一人一人に自らの言葉の判断を任せ、行動を促す。
きっと僕はそれに「答える」ことはできたのだろう。
けれど、彼女の気持ちに最後まで「応える」ことは
できなかったのだと、今思う。プラントで再会したラクスの、
僕への期待とでも言うべきものが急速に膨らみ始めたのは
この時だったが、僕はまだ何も知らなかった。
彼女を愛する資格など、結局僕にはなかったのだ。

824人為の人・PHASE−33:2004/09/12(日) 13:49
突然雨が降り出した。既にベッドから起き出せるほどに回復していた
僕はその音につられて外に出る。雨は周りの景色を少しずつ
曇らせながら、シトシトと霧のように地面へ落ちていく。
ああ、ここは地球ではない場所で、降る雨も照らす太陽も美しい緑も
全て人間が作り出したものなんだ。頭の中をよぎった考えは僕の視界を
急速に固定しながら見えるもの全てに広がっていく。自分が今どれほど
奇妙な環境に置かれているのかを理解しているつもりなのに、
それを認めたくないような心の葛藤。僕は立っていることしかできず、
その間にも人工的な雨は淡々と己の役割をこなしていくようだった。
ふと、ラクスが僕の隣に立つ。雨はお好きですか、そう尋ねる彼女。
よく分からなかった。その時僕は彼女が何を求めているのかを
探そうとして、結局まともな返事を返すことができなかった。
―――ただ、不思議だなあと思って。
そんな漠然とした僕の答えにも彼女は微笑みを崩さずに、空を仰ぐ。
雨天は僕の心を見透かすかのような、限りなく白色に近い灰色。
暗黒に侵されてはいないのに、よく分からない大きなもやもやが
立ち込めて何も見えなくなってしまっている内心を象徴している
ようだった。こんな時間が永遠に続くのだろうか、そう考えて
僕は何かひどい焦りのようなものを覚えたが、それがどこから
来るのかは明確にならなかった。全ては見えているはずなのに、
何か「きっかけ」がなければ動けもしない、そんな自分がいた。

僕がいない間に、地球では本当に色んな出来事があった。
アークエンジェルは無事にアラスカへ到着したものの、虎の子の
ストライクを破壊してしまい戦闘データを提出できなかったことから
連合軍本部で査問会にかけられたらしい。それでも表立った処分が
下ったわけではなく、代わりに3人のクルーの転属が言い渡された
のだそうだ。それは僕と一緒にアークエンジェルを守ってきた
フラガ少佐、副長として厳格に任務を実行してきたバジルール中尉、
そしてみずから軍に志願したあの子。フラガ少佐は後々すぐに
アークエンジェルへ戻ってきたけれど、残る2人とはついに
「最期」まで直に対面することはかなわなかった。
以上の話は僕がフリーダムを駆って地球に降下した時にサイから
聞いたものだ。今彼はどうしているだろうか。もう長らく彼とは
会っていない。胸のうちに苦しみを抱えながら、彼も彼なりの
人生を送ることができているのだろうか。だとしたら、僕は
サイの幸せな行く末を願わずにはいられない。
そう言えば、以前ディアッカもこの頃ひどい目にあったと言っていた。
一体何だったのだろうか。聞けずじまいだったのが残念だ。

825人為の人・PHASE−34:2004/09/13(月) 14:32
いつまで自分はここにいていいのだろうか。そんな考えが繰り返し
脳裏をかすめる中、その日僕とラクス、それにシーゲルさんを
加えた面々はクライン邸の庭で「優雅」に紅茶を飲んでいた。
もう戦争は遠いどこかの話なのだと思い始めていた。できることなら
このまま逃げ続けて、楽をしたい。そんなふざけた考えすら頭を
もたげるようになって、僕はティーカップを取る手も進まなかった。
そんな中、目の前のディスプレイに衝撃的な事実が映った。
オペレーション・スピットブレイク。直前までパナマと告げられていた
攻撃の矛先は、その実行にあたって突然アラスカに変更されたのだ。
アラスカ。そこにはアークエンジェルが「いる」。僕のことを死んだと
思い、ザフトが攻撃を加えてくることも知らないたくさんの人達が。
僕は自分を呪った。結局そういう奴なんだ、きっと攻撃対象が
アラスカでなければ見向きもしなかっただろうと。それでもただ
思い出すのは懐かしい人々、そして最後にあの子の不安そうな顔。
ティーカップを取り落とし震え始めた僕を、ラクスが見つめていた。

確かに僕は何もできないのかもしれない。僕一人が戦場に突っ込んで
いった所で、急に戦争が終わるわけでもない。でも、このまま何も
できないからといって何もしなかったらもっと何もできない。
そのまま世界は僕の、平和を願う人達の手の届かないところへと
行ってしまう。だから、僕はまた戦わなければならない。本当に
戦わなければならないのが何かを見極めて、ただそのために。
ラクスは僕の決意に似た言葉を受け止め、僕を案内していく。
まだ心のもやもやは取れていなかった。けれど突き上げるような衝動は
それすら無視させていくようで、僕はとにかく行動することを望んだ。
ザフトのエリートの象徴である赤服を身につけて、僕は新たなる剣への
道を歩む。その先導者であるラクスがクライン邸で僕に言いたかった
のが何であるかを、僕は分かったつもりになっていた。

目の前に置かれたMSは「ガンダム」だった。そして僕の横にいた
女性の名はラクス・クラインだった。そして彼女の頬に口づけを
したのは、キラ・ヤマトという名の僕だった。僕の行く道に必要だと
言ってくれたラクスのためにも、平和を望む全ての人々のためにも、
そして何より僕自身のためにも、僕はすぐさまMSを起動させる。
そう、果てしなく矛盾する可能性を秘めた決心が揺らぐその前に、
僕はこの戦争を何としてでも終わらせたいと願っていたのだった。
そして事実、僕にはそのための力があった。フリーダム。
自由の翼を得た僕は、再び漆黒の宇宙へと飛び出した。
すさまじい機動性を持つ機体が僕の手で、迎え撃つザフトの
パイロットを圧倒する。コクピットを狙わないように、爆発しない
ように。これ以上の犠牲を出さないためにもそれが一番と考えた僕は、
敵の武器や移動手段だけを破壊していくことに集中した。
途中で一機のシャトルとすれ違ったが、その時の僕はそこにアスランが
乗っていたことなど気づきもしなかった。気持ちは前だけを見ていた。
やがて青い地球は次第に大きくなり、僕の目が北米大陸を捉えた。
ごく一部の人だけしか知りえない結末が、すぐそこに迫っていた。

826人為の人・PHASE−35:2004/09/14(火) 12:21
僕を乗せたフリーダムが大気圏を突き抜けていく。
かつて折り紙の花をくれた少女が命を落とし、僕を高熱と罪悪の渦に
飲み込んでいった空間を、今度はただ託されたMSの盾をかざし
通り過ぎていく感覚。しかし悲しみに浸る余裕などなかった。
彼女のような犠牲者をもうこれ以上出すわけにはいかない。
広大なアラスカの大地はもう目前にその荒涼とした姿を現していた。
互いに平和を作るべき人が、あそこで殺し合いをしている―――。
一瞬アスランとの死闘を思い出し、僕は暗い気持ちになった。
けれどそれはすぐに壮大な意義を持った。あれほど激しく争ったから
こそ、今の僕がある。それゆえに、僕は殺戮の空しさを知っている。
そうだ、僕はアークエンジェルだけではなく、全ての人を守りたい。
戦争という巨大な機械の中に放り込まれてしまった、罪もない人たちを。
思い上がった理想が砕け散る瞬間を目撃するのは、まだ先のことだった。

眼前に繰り広げられていたのは数えきれないほどの惨禍だった。
連合軍の基地に大挙して攻め込むザフト軍。迎え撃つ守備隊はその
高性能を誇るMSに蹴散らされ、次々と破壊されていく。
彼らの考えも及ばないほどの高所から状況を読み取った僕は、
改めて辺りをぐるりと見回した。悲しみ、怒り、そんな感情に
もう動かされない自分。この戦争を終わらせないと―――。
その時、僕の視界に敵の集中攻撃を受ける白い戦艦が映った。
アークエンジェルだった。
何かとてつもなく大きな不安に駆られた僕は、スラスターを全開にして
戦いの場へと急ぐ。苦楽をともにした戦艦―――いや、違った。
アークエンジェルと聞いて僕が思い出すのはつらい記憶ばかりだった。
それでも僕は守りたいと思った。あの艦が爆発する瞬間など、
絶対に見たくはないと強く心に願った。
不安は的中した。艦に取りついていたMSのうち、一機のジンが
対空砲火の雨を抜けてブリッジにたどり着いたのだ。
僕の手を一筋の汗が伝った。間に合ってくれ、フリーダム。
ジンが機銃をかまえる。もしこのまま発射されたら、みんな―――。
悲劇の引き金が引かれる瞬間、僕は剣とともに舞い下りた。
はじけ飛ぶ機銃。バランスを失って落ちていくジン。
僕を戦争へと導いた艦を背後に、フリーダムは空に静止した。

退艦を促した僕に対し、返ってきた艦長の言葉は驚くべきものだった。
アラスカ本部の地下に仕掛けられた、サイクロプスシステム。
電子レンジの要領でマイクロ波を発生させ、高熱で人はもちろん、
建物やMSを含めた機械さえも跡形もなく消し飛ばす装置だった。
僕はクライン邸で聞かされた事実を思い出した。攻撃目標を直前になって
変更し裏をかいたはずのザフトが、逆に連合の自爆にも近い罠に
はめられてしまうという皮肉。死ぬのは敵だけではないのに、
なぜこんなことができるのか。ともかく、ここから早く離脱しなければ
ならない。割れた種からあふれ出す力の胎動はもはや自在に操ることの
できるものとなっていた。この力があれば、きっとみんなを助けられる。
ニュートロンジャマーキャンセラーを装備したフリーダムの
全方位通信機能を最大限に生かし、僕は退避を呼びかけていった。
モニターに示される大量の機影にはビームを放ち、機体を破壊することなく
次々と武器だけを奪っていく。そんなことすらあの頃の僕には可能だった。
もちろんこちらに攻撃を加えてくる者もいる。そうなればビームサーベルを
かざし、人を殺す手段を剥ぎ取るだけ。何も問題はないはずだった。
そんな僕の前に、イザークの駆るデュエルの機体が立ちふさがる。激しい
つばぜり合いを行った後、フリーダムのビームサーベルがコクピットを
捉えた。僕に一瞬の逡巡が生まれる。今なら少女の命を奪ったこの男を
殺せるというのか。思い出すのはブリッツの最期。幸せなど訪れないのだ。
僕はポイントをずらしてデュエルの足を切断し、海中に蹴り落とした。

やがてサイクロプスは発動した。
中心部から猛烈な勢いで外へと広がっていく爆風から必死で離脱しようと
しながらも、多くの機体が地獄の熱気に飲み込まれていく。
同じように取り残されそうになっていたザフトのMSを救い上げ、
僕はアークエンジェルとともに脱出を急いだ。
やがて光が去っていった後、アラスカの方角に見えたものは無数の黒煙。
助け出せたはずのザフトの兵士は、僕への言葉とともに砂浜で力尽きた。
手に悔しさがにじむ。叩きつけた拳は、ただ砂を軽く舞い上がらせた。

827人為の人・作者:2004/09/14(火) 12:25
今回は長くなりました。あと、これから本編の内容と少し変わってくるかもしれません。
かなり記憶があやふやで細かい部分が飛んでいたりしますので……

828人為の人・PHASE−36:2004/09/16(木) 12:14
アラスカ近辺の砂浜にたどり着いたフリーダムと、アークエンジェル。
やがてその白い戦艦から、かつての仲間たちが続々と飛び出してきた。
守ることができると思った人の亡骸を残し、僕はそちらへ向かう。
たくさんの人が僕を出迎えてくれる中、中心にマリューさんがいた。
連合軍総本部から敵前逃亡した彼らはもう軍属ではなかった。
少尉、中尉、少佐といった肩書きは脱走兵となった時点で無意味と
なっていたのだ。そう言う僕もMIAとなった時点で連合の兵士では
なくなっていた。もちろん、ザフトのパイロットスーツを着ているからと
いってプラントのため「だけ」に戦うものでもない。僕は連合にも
ザフトにも属さない立場であることを彼らに強調した。そして、
核エネルギーを自由に使用できるニュートロンジャマーキャンセラー、
通称NJCを持つフリーダムは誰の手にも触れさせないことを主張した。
今思えば、僕はあの時の自分が僕そのものであるとはとても信じられない。
自分一人の力で戦争を終わらせられるとは思っていなかった。けれど、
あれほどのフリーダムという機体を駆る自分はそこに限りなく大きな形で
貢献できるのではないか、そんな甘い考えはずっと所持していた。
誰も殺さず、平和を作り出すためだけにフリーダムという兵器を使う。
どこか誤った方向性を持つその思想は、修正されるべき運命にあった。

駆け寄ってきた人々の中には、もちろんヘリオポリス以来の友人もいた。
サイ、ミリアリア、カズイ。けれど、やはりトールはいなかった。
誰よりもこの目ではっきりと彼の死の瞬間を目撃したからこそ、
疑念は生まれなかったのかもしれない。ミリアリアはスカイグラスパーの
爆発する様子を見ていなかった。彼女は大丈夫なのだろうか。
僕はそう思ったが、それにも増して気になる事柄がそこにはあった。
あの子が、いない。

どこにも属さないと言いながら再び連合の少年服に袖を通した僕は、
サイから詳しい話を聞くことができた。サイ・アーガイル、彼には
本当にいくつものつらい思いをさせてしまったと後悔している。そんな
彼からよりにもよってあの子の話を聞くのはためらわれたが、それでも
僕は聞かずにはいられなかった。サイからはすぐに返事が返ってきた。
―――転属したんだ。
連合の上層部は広告塔としての彼女の役割に目をつけたらしかった。
本当はムウさんもカリフォルニアの方へ異動することになっていたらしい。
彼は帰ってきたけれど、あの子の他に副長のナタルさんも転属していった
のだと言う。長く同じ艦でともに戦いをしのいできた二人。ナタルさんとは
ほとんど言葉を交わさなかったけれど、的確な指示はいつも艦の危機を
救った。そして、あの子。僕は彼女を裏切ったのだと思った。帰ってからと
いう言葉を残して僕は姿を消し、再び舞い戻れば彼女はすでにいない。
最悪、アラスカで転属のための艦を待っている間に巻き込まれて―――。
なぜ後回しにしたのかという思いが僕の胸を締め付け始めた、その時。
サイが苦しそうな声で僕に言った。俺はお前とは違う、キラのように
できない自分が悔しいと。その時僕は自分を棚に上げて彼を哀れみ、
ラクスから伝えられた慈愛の精神でもって彼を諭した。
君にできないことを僕はできる。でも、僕にできないことを君はできる。
人の心の痛みに触れては涙を流していた僕の、大きな変化だった。

アラスカを完全に離脱したアークエンジェルは、一路オーブに向かった。
もはや連合軍に帰順したところで、脱走艦は乗組員もろとも処分されるのが
目に見えている。そう考えた僕は、果てない希望を胸にオーブへの進路を
明るい未来へと続く道しるべだと信じて疑わなかった。
仕方なかった。あの時点で他に方法など、とても考えられなかった。

829人為の人・PHASE−37:2004/09/16(木) 12:15
オーブに到着した僕を最初に待っていたのは、カガリの熱烈な歓迎だった。
勢いに任せて飛びついてきた彼女に押され、思わず一緒に床へと倒れこむ
二人。見つめあえば何か大きな絆を感じていた僕たちの数奇な運命を、まだ
この時点ではオーブという国の悲しい結末とともに知ることはなかった。
僕の胸の上で再会に涙を流すカガリ。そうだ、彼女は僕のことをずっと
死んだとばかり思っていたんだ。途端に彼女を愛おしく思う感情が生まれ、
僕はそのまま成すに任せた。全てはラクスの慈愛の精神のもとにあった。
アスランとカガリは僕が死んだと思ったことで随分と激しくぶつかりあった
らしい。彼は僕を殺したと思って泣き、彼女は僕が生きていたと知り泣く。
二人の橋渡しになれたという意味で、僕も少しは人の役に立てたのかも
しれない。今思うことは、それ以外に何ができたのかという悔恨の気持ち。

オーブの前代表にしてカガリの父、ウズミ・ナラ・アスハに僕は会った。
大人たちが居並ぶ中、一人僕は戦争を終わらせるために何が必要なのかを
説いていく。僕の問いかけに返答するウズミさんの言葉は頼もしく、
力強く、ますます僕の決意を固めることとなった。もはや剣を飾っている
時ではなくなった、そう宣言する彼の決意もまた固かったことだろう。
そうやってみんなを「先導」しようとした僕の行動は、結局「扇動」でしか
なかったのだろうか。強く何かを信じていたかつての僕を思い出せば、
何を信じていたのかを問い直し答えの出なくなる自分が今ここにいる。

僕が平和を説く間にも、戦争は次々に人々を滅ぼしていく。
アラスカ攻撃の失敗にもザフトは動じなかった。それどころか、今度は
本来の攻撃目標であったパナマを急襲したのだ。格段に少なくなった
兵力で、それでも士気の高さからだろうか破竹の勢いで進軍していく
ザフト軍。またしても迎え撃つ連合軍の中には見慣れないMSの姿。
ナチュラルにも操作できるようOSに改良を加えた機体、ダガーだった。
統制の取れた動きでジンに襲いかかるダガー。争いは長く続くと思われた、
その時だった。空から降ってきたザフトの機械が恐ろしい威力を発揮した。
グングニールと名付けられたその機械は、極めて強力な電磁パルスを
放射することで防備が万全でなかった連合軍の機体を完全に無力化した。
機能しなくなったダガー、戦車、砲台、全てが無残に破壊されていく。
そしてパナマを攻めた目的である、マスドライバーも自然と瓦解した。
僕の目にその姿はまるで、軸を失い回転崩壊していったヘリオポリスの
ように映った。あの場所に、デュエルはいたのだろうか。もしいたと
すればそのパイロット、イザーク・ジュールは何を思っただろうか。
投降した連合軍兵士が憎悪に殺された瞬間を、目撃したのだろうか。
戦場からはるか離れたオーブで見る光景は、もはや他人事ではなかった。

ストライクに乗ることを決意したムウさんが、僕に模擬戦を申し込んで
きた。まだ早すぎると己の実力を過信しながらも、僕は嬉しかった。
たとえフリーダムは孤独に戦場を駆け抜けても、キラ・ヤマトという
一人の人間は多くの人に囲まれていたい。そう、コーディネーターである
ことなんか関係なく、一人の人間としてともに生きていきたい。
切実な願いを心の奥底に隠したまま、僕は平和な戦いを開始した。
やがてこの地に、禁断の災厄が急襲する。

830人為の人・作者:2004/09/16(木) 12:16
昨日は書き込めなかったので、今日は二話構成で。

831人為の人・PHASE−38:2004/09/17(金) 12:11
サイクロプスのアラスカ、グングニールのパナマ。連合とザフトが互いに
新兵器を持ち出しては人が死に、互いの憎しみは深まるばかりだった。
そしてその連鎖の一方の果てにいたブルーコスモスの盟主、
ムルタ・アズラエル率いる連合軍の大部隊が遂にオーブへと侵攻した。
正確には最後通牒という形で、条件を受け入れたなら攻撃を見送るという
ものだったが、パナマで失ったマスドライバーを欲する大西洋連邦は
到底受諾不可能な要求を突きつけてきたのだ。当然のごとくウズミさんは
これを拒否し、開戦まで一刻の猶予もならない事態が訪れた。
この状況にアークエンジェルはオーブ側として参戦する。艦を去る者、
残ってかつての所属軍に砲火を向ける者。除隊許可証を持ったカズイは
前者となり、サイにミリアリア、その他たくさんのクルーが留まった。
僕は自分の説いた理想が受け入れたのだと、強く信じて戦いに備えた。
その時はもうあの子のことなど、とっくに忘れたものと思っていた。

連合軍はオーブが要求を拒否するのを前々から分かっていたのだろうか。
規定の時間が過ぎると同時に、海上から大量のミサイルがオーブ本土へと
降り注ぐ。一面に並んだ迎撃装置がいくつかを撃ち落して破壊される。
僕はフリーダムに搭乗し、オーブ軍の先陣を切った。後にはムウさんの
ストライク、M1アストレイが続く。上空から降下したダガーの大群に
突っ込み、ビームサーベルの一閃が敵の武器を薙ぎ払った。行ける、
この状況でも。僕は敵機を最小限の損害で戦闘不能にできることを
確信しながら、激戦の続く戦地を点々としていた。しかし、その時。
見たこともないような巨大な鉄球が投げ込まれ、僕は思わず機体を
横にのけぞらせる。振り返った先には、空を飛ぶ黒いガンダム。
それは続けざまに高速で攻撃を仕掛けてくる。まるで僕だけを狙うかの
ように駆け回るその姿を的確に捉え、僕はフリーダムの足で海中に
蹴落とした。そこへさらにやってくるのは、くすんだ緑色のガンダムだ。
手に鎌を携えたその機体はやはり僕を狙ってくる。武器を警戒した僕は
距離をとってビームを放つが、敵機に装備されていた巨大な盾が
ビームそのものを弾いて曲げてしまった。さらに、地上から放たれる
大出力のビーム。とっさに見下ろした先には、暗い青色のガンダムの姿。
レイダー、フォビドゥン、カラミティ。3機は連合軍の新型だった。

戦闘を続けるうちにだんだんと僕の疲弊は増大していく。あまり連携が
取れているとは言えない3機のガンダムは、それでも機体の性能を
生かしてこちらの攻撃を無力化する。僕はだんだん焦り始めた。
アラスカで縦横無尽の活躍を遂げたはずのフリーダムが追い詰められつつ
あった。レイダーとフォビドゥンの手柄を争うような挟撃が、次第に
回避反撃の芽を摘むような隙のなさを生み出していく。このままじゃ、
危ない。地上からのカラミティの砲撃が真横をかすめる。フォビドゥンの
放ったプラズマビームが偏向し、すぐ下方を通り過ぎる。あまりの危険に
バーニアを吹かせようとした瞬間、レイダーの鉄球が命中した。
強い衝撃で機体の自由が利かない。隙の生まれた僕を見逃さず、上空の
2機が迫った。レイダーの口部ビーム砲が目の前に見える。
―――僕は、もう死ぬのか。
最悪の事態を覚悟した瞬間、視界を赤い機体が遮った。
見慣れたその色を持つガンダムから聞こえてきたのは、忘れられない
友の声。アスラン・ザラの駆るジャスティスの登場だった。

832人為の人・PHASE−39:2004/09/18(土) 14:43
何の前触れもなく突然現れたジャスティスに対し、僕は強く問い質した。
―――ザフトが、何のつもりだ。
それはかつて僕と殺し合った相手である彼の真意を確かめるものだった。
―――この介入は、俺個人の意志だ。
返答には一つの迷いも見られない。僕はアスランを信じることにした。
ともかく今はこの危機を乗り越える方が先だ。あっけに取られていた敵に
先んじて僕たちは反撃を開始した。赤と白二つのガンダムが、敵の新型を
圧倒していく。先ほどまであんなに劣勢だった僕の攻撃とアスランの
信念が、ただ暴れ回るだけの敵を確実に捉えていくように感じた。
しばらくすると、3機の新型は損傷が少ないにもかかわらず撤退した。
まるで早く帰艦しなければ命が危ないかのように、隼のごとく。

夕日が沈む頃、オーブに一旦の平穏が訪れた。もちろん、敵を撃退できた
わけではない。連合軍の一時撤退があっただけで、疲れきった兵士たちが
瓦礫の合間に横たわって休む姿があちこちに見られた。
僕のフリーダムはアスランのジャスティスと向き合ったまま降下した。
話がしたいと言った彼の声は落ち着いていて、僕はそれを受諾したのだ。
ワイヤーを伝って降りてくる赤いパイロットスーツの少年は、間違いなく
アスランだった。一方に海、もう一方に駆けつけた多くの人が見守る中、
僕と彼とは少しずつ距離を狭めていく。彼に銃を向けた兵士を牽制し、
2、3歩の距離を隔てて僕はついに彼と向き合った。そうだ、柵越しに
トリィを渡してくれたあの時のアスランと話したのも夕暮れのオーブだ。
そして僕の肩にはトリィが止まり、彼をじっと見つめている。
今、二人の間に遮るものは何もない。アスランが僕の名前を呼び、
拳を固めた。彼に殴られる準備はできていた。何があったのかは知らない
けれど、彼の目は複雑に僕を捉えていた。さあ殴ってくれ、アスラン。
覚悟を決めた瞬間、僕たちのもとに走り寄ってくる一人の少女がいた。
彼女はとても嬉しそうな声で僕たちを抱き寄せ、再会を祝してくれた。
僕は予想外の結果に戸惑いつつも、それはアスランも同じことだろうと
思いながらカガリの祝福にしばらく身を委ねることにした。
何だか、とても気分がよかった。

オーブの工場で彼と言葉を交わした僕は、かつての戦いを振り返った。
僕はニコルという少年を殺した。でも、僕は彼を知らない。
アスランもトールという少年を殺した。でも、彼もトールを知らない。
そう言って納得するなんて無理なのは分かっていた。でも、そう言って
納得するほかに今は仕方がない、どうしようもない、そんな風に
思っている自分がいた。全ては時が解決してくれるのだろうか。
いつかは何もかも受け入れられる気持ちになって、トールの墓に
落ち着いた気持ちで祈りを捧げることができるのだろうか。
自信などあるはずもなかった。僕はアスランと分かり合えたとは
思っていなかった。でも分かり合えたのだと自分に思い込ませることで
戦争を終わらせることができるのなら、それで充分な気がした。
アスランも僕の言葉に納得していないだろう。しかも、彼は僕よりずっと
真面目で信念の強い男だ。到底認められないのは目に見えている。
でも、真面目だからこそ彼は信じてくれる。今を生き抜くためには
そうするしかないということを。僕は笑顔を浮かべながら、止めどない
悲しみの気持ちが胸にたまっていくのを感じていた。
そしてそんな僕たちの気持ちを上回りながら、戦争は加速を続けていく。

833人為の人・PHASE−40:2004/09/19(日) 13:36
再び連合軍のオーブ攻撃が始まった。例の新型3機の姿も見える。
出撃前、アスランはオーブに勝ち目はないと言った。それは僕も
分かっていた。けれど、僕は彼に得意げに言った。大切なのは、
僕たちが何のために戦うのかを自分でしっかりと分かっていることだと。
愚かだった。いまだに頭の中でぼんやりとした像しか作り出せず、
かつて僕たちが何と戦ったのかにすら答えを出すことのできない自分が、
よりによってアスランを導こうとするなんて。認識できていなかったのは
僕も同じだった。そしてザフトの捕虜から僕たちとともに戦うことを
願い出てくれたディアッカも、僕の考えに賛同してしまったようだった。
分からない。オーブが占領されたのは僕たちのせいなのだろうか。
僕たちが理想を胸に宇宙へ旅立たなければ、オーブの人々は幸せで
いられたのだろうか。今、得体の知れない不安が胸をよぎる。

戦闘を中断し、僕たちはマスドライバーの設置されたオノゴロへと
向かった。ウズミさんが僕たちにオーブを離脱し、宇宙へと上がるように
指示を出したのだ。オーブが陥落するのも時間の問題だと言う
ウズミさんの顔は苦渋に満ちてはいたが、それでもその惨禍の先に見える
小さな炎をしっかりと見据える力強い目をしていた。小さくとも、
強い炎は消えない。ウズミさんはマリューさんの言葉に大きくうなずき、
僕たちのオーブ離脱に向けた準備を着々と始めていった。

世界は認めぬ者同士の際限ない争いへと突き進んでしまいかねない。
そう言ったウズミさんは、二人の危険人物の名を挙げていた。
地球の軍需産業理事にしてブルーコスモスの盟主、ムルタ・アズラエル。
マスドライバーとモルゲンレーテ取得の目的でオーブ侵攻を後押しした
張本人だった。彼もやがて僕たちを追って宇宙へ上がることとなる。
そしてプラントの最高評議会議長兼国防委員長、パトリック・ザラ。
その名前を聞いた時、アスランの顔に陰りが見えたのは明らかだった。
きっと彼の苦悩は察して余りあるものだったに違いない。
実の父親が、真に倒すべき「敵」のようになってしまっていたのだから。

ローエングリンを放出し、空への道を開くアークエンジェル。
マスドライバーにその白い艦体をあずけ、上へ上へと突き進んでいく。
やがてエンジンを最大に吹かせたアークエンジェルは彼方の空に消えた。
次はクサナギ、多数のオーブ国民とカガリたち軍関係者を乗せた艦が
旅立つ時だ。そしてまさにその時、連合軍の新型3機が襲来した。
このまま艦を行かせるわけにはいかないとばかりに速度を生かし、
クサナギの進路に立ちはだかるカラミティ、レイダー、フォビドゥン。
地上に残っていた僕たちはクサナギを守るため、また宇宙に向かうため、
彼らを迎え撃つ。マスドライバーに攻撃を当てるわけにはいかない敵は
動きが鈍く、僕たちは何とか厳しい状況の中を応戦していく。
やがてフリーダムの手をジャスティスの手がしっかりと握り締め、
僕たちはクサナギの甲板へと無事着地できた。急上昇を続ける艦体から
見えるオーブ本土の姿が、次第に遠くなっていく。
そして―――次の瞬間だった。最初は小規模の爆発、やがて巨大な連鎖。
暁のような炎がマスドライバーを焦がし、オノゴロの施設を次々と
飲み込んでいった。それは美しくもあり、悲しくもある喪失の景色。
たった今飛び去った場所のあまりの光景に、僕は声も出なかった。
その時ほどカガリの泣き叫ぶ姿をはっきりと想像できたことはない。
「オーブの獅子」ウズミ・ナラ・アスハさんは、たとえ死を前にしても
自分の信念を曲げることはなかったのだ。それが一方的に誉められるべき
ものでないことはよく分かっている。でも、彼はカガリに対して
最後まで、本当に最期まで「父親」としての役目を果たしたのだと思う。
僕にそれだけの誇りと理想を抱くことは不可能だけれど、カガリなら
きっと築いていける。生まれ変わった、想いを受け継いだオーブを。
―――「種」を乗せた2隻の艦は、広い暗黒の宇宙へと飛び出した。

834人為の人・PHASE−41:2004/09/20(月) 13:32
世界は揺れる。世界は変わる。そこに生きる全ての人々の運命を
翻弄しながら、世界は少しずつ少しずつその姿を変えていく。
宇宙に上がった僕たちは、退路を断たれた切迫感とこれから何を
すべきかという問いへの不安に駆られながら取るべき道を模索した。
アスランと、ディアッカ。彼らはもともとザフトの人間だったが、
もうとっくにそんなことを気にしていられる状態でないことはみんな
分かっていた。かつて敵だった者たちとの共闘に違和感はなかった。
そして、ウズミさんからカガリに託された写真の存在。実の父と思って
時に反抗しながらも慕い続けてきたであろう人物を亡くして涙に暮れる
カガリを慰めようとした僕はアスランとともに彼女のもとに出向き、
そして真実の一部を知った。写真の中で双子の赤ん坊を抱えながら
優しそうに微笑む茶髪の女性は確かにどことなく自分に似ていた。
でも、だからと言ってそのままその女性が僕の本当の母親であるなんて
とても信じられなかった。最初にその考えが浮かんだ瞬間感じた思いは
単純な驚きと純粋な疑問で、それだけでは僕たち三人が家族として
暮らしてきた平和な生活を怪しむものとは到底なりえなかった。
そう、あの人が僕に嘲りを込めて事実を伝えるその時までは、自分の
存在があれほど禁忌に彩られたものであることなど知るはずもなかった。

フリーダム強奪と地球軍への情報漏洩。二つの大罪を押し付けられた
クライン派はプラント各地で追討の憂き目にあっていた。
その過程でシーゲルさんは死に、ラクスは電波ジャックによる地下演説を
続けながら居場所を転々と変えていたらしい。そんな彼女が僕たちと
合流することなど僕は夢にも思わなかったが、それでも僕たちが実際に
その結果への道を着実に歩み始めていたのは事実だった。アスランが
父ともう一度話がしたいと言い、プラントに向かうことを決意したのだ。
開戦以後、お互いに心から話し合うことができなかったという二人の関係
にあえてメスを入れ、自分の「正義」を示す。その証としてジャスティス
を艦に残し、彼はシャトルでプラントへと赴いた。僕は彼が自分から
危険に飛び込もうとしていることを知り、別れ際に笑顔で彼を励ました。
―――君は、まだ死ねない。君も僕も、まだ死ねないんだ。
「まだ」の部分に自然と力がこもったのを、今でも僕はよく覚えている。
初めてストライクに搭乗した時以来、僕は自分の死を意識したことは
数え切れないほどあった。その度に「ここで死んでたまるか」という
反発、自分の死への恐怖と遺された者たちの悲惨な結末を想像することで
僕は「死ねない自分」という虚像をいつの間にか作り上げていた。
そして戦争が犠牲者を限りなく生み出していく中、その虚像は姿を変え
「まだ死ねない自分」として僕を束縛した。目的を達成するために死力を
尽くして戦い、そしてそれが達成された後は―――悲壮感が全てだった。
そんな恐ろしい虚像をアスランに重ね合わせるほど僕は理想を追い求め、
自分がその実現に貢献できるという過信に酔っていたのかもしれない。
けれど今となっては―――それはただの夢幻にすぎなかったのだ。

対面の時は近づく。宇宙で、プラントで、そしてまた宇宙で。
ラクス・クラインという一人の歌姫が僕たちの指揮官となる時まで、
残された時間はそう多くなかった。そして彼女たちが加わった瞬間、
あてもなくさまよう二隻の戦艦は行くべき道を見出していく。

835人為の人・PHASE−42:2004/09/21(火) 14:15
プラント最高評議会議長兼国防委員長、ザフトの最高権力者、そして
実の父親。パトリック・ザラと話し合うためにプラントへと向かった
アスランだったが、一向に帰ってくる気配はなかった。
僕は最悪の結果が胸をよぎるのを感じ取ったが、そのことに対して妙に
醒めた視点で見つめているもう一人の自分がいることを発見した。
僕は彼の心配をする一方で、そうなっても仕方がないと考えている?
そんなはずはない、「まだ死ねない」はずのアスランは必ず生きて
帰ってくる。僕の親友として、またジャスティスのパイロットとして。
そう考えるようにして自分の中に潜む冷酷な人格を追い払った僕は、
来るべき時に備えてフリーダムのチェックを欠かさなかった。
フリーダム。それは自由の翼、戦場に平和をもたらす剣―――いや、
そんな美しい言葉で飾れるものではない。どれだけコクピットから
外してビームを当てようと、敵の攻撃手段を断つだけのサーベルを
振りかざそうと、それは大きすぎる力を持て余した者の偽善にしか
ならないのではないか。やがて慢心が衝撃とともに僕を脅かし、
悲劇を呼び起こし、真実を直視させるようになるのではないか。
当時の僕がそこまで考えていたかどうかは分からない。けれど、現在
心に傷を抱えたままの自分がそれでも生きていることを考えれば、
そんなはっきりとしない不安が見事に的中したのだと思えてくる。
思考の片隅に消えた彼女が再び眼前に現れる時まで、そう遠くない。

宇宙に飛び出したフリーダムが漆黒の宇宙に熱源反応を捉える。僕は
スラスターを全開にしてその場に直行し、ザフトのMSジンに
襲撃を受けている桃色の戦艦を目撃する。多勢に紛れても明らかに
それと分かるような配色に僕がある人物を思い浮かべた瞬間、
ラクス・クラインの喜びに満ちた声がコクピットに伝えられた。
間髪を入れずに僕は攻撃を開始する。フリーダムに取り付けられた
大量のビーム砲が火を噴き、敵の武器や手足を次々と奪っていく。
それを当然のように感じながら、僕は敵の機体が撤退した空間に
素早く到達して戦艦の無事を確認した。中にはアスランもいた。
ラクスはザフトの新造戦艦、エターナルを手中に収めたのだった。

艦から降りてきたのはラクスやアスランだけではなかった。
「砂漠の虎」アンドリュー・バルトフェルドさんもそこにはいた。
それでも若干の衝撃を受けただけで、僕は彼の憎しみに囚われない
思考に同意しながら隻腕義足の彼の体を静かに見守った。
間違いなく、この人と戦ったことで僕の何かは変わったのだ。
戦争が互いを滅ぼし尽くすまで終わらない殺戮ともなり得ることを
僕は彼との戦いで知った。そして世界は実際にそうなりつつある。
一時的とはいえ互いの過去を乗り越えることができた僕と彼は、
こうして戦争終結のため共に戦うこととなった。

僕との再会を本当に喜んでいるようだったラクス。僕は彼女の
気持ちを汲み取るように笑顔で接しようとした。ところが。
ラクスが僕を連れ、人目を避けるように場所を移した。
一体どうしたのだろうと不思議に思う僕の前で彼女の目から
流れ落ちたのは、一筋の涙。シーゲルさんが死んでしまったことを
悲しんで僕の胸に身を寄せた彼女の姿は、毅然とした衣装や
言葉からは想像もつかないほどに小さく、そして儚く見えた。
天真爛漫の中にどこか理解の及ばないものを含んでいたラクスが
流した涙、その冷たさに濡れながら、僕は彼女をいたわっていた。
自分にその資格があるのかという問いを、常に心に抱きながら。

836人為の人・PHASE−43:2004/09/22(水) 12:44
合流することのできた三隻の戦艦が当分の潜伏拠点として選んだのは、
廃棄されたコロニー「メンデル」。過去にバイオハザードを起こして
居住困難となり、既に無人となっているコロニーだった。
今思えば、僕があんな所に行くことになったのも何かの運命だった
のかもしれない。あそこへ行かなければ、そしてあの人から真実を
語られなければ。歴史に「もしも」は存在しない。けれどそれが
なかった時のことを空想してみるたび、知らない方が今よりも平和に
生きられたんじゃないかと思うことがある。でもそうやって考え出すと
そもそもヘリオポリスが襲われなければ―――と仮定の連鎖は
とどまることを知らなくなる。だから半分諦めたような気持ちで、
無気力になって、現実に目を背けて、笑いも泣きもしないで、
僕は今も重く暗い過去を引きずっている。

僕たちがメンデルに潜伏して間もなく、連合軍の戦艦が宙域に
現れた。その戦艦の名はドミニオン、アークエンジェルの同型艦で
より黒い艦体が特徴的だった。実質的な艦長として艦の指揮を
執っていたのは、アラスカで転属を言い渡されアークエンジェルを
離れたナタル・バジルール少佐。そしてオブザーバーとして
ブルーコスモスのムルタ・アズラエルも乗り込んでおり、同時に
オーブで戦ったガンダム3機も搭載されていた。
フリーダムとジャスティスのニュートロンジャマーキャンセラーを
手に入れる目的もあってやって来たドミニオンは、一旦こちら側に
通信を入れてきた。スクリーンに映ったのは間違いなくかつての
副官、ナタルさんだった。でももう彼女は僕たちとは違う陣営、
違う思想のもとにいたのだ。かつての同僚に降伏を勧められても
マリューさんは受け入れず、今の連合そのものに疑念があるのだと
言って退けた。そして、その言葉に残念そうな顔をしたナタルさんの
横から、金髪に空色のスーツを着た青年風の男が口を出す。彼こそが
ムルタ・アズラエルだった。挑発的な口調でコーディネーターへの
差別意識を隠そうともしない態度が僕の心を強くえぐったが、
かえって敵への対抗意識は高まった。絶対に、落とされはしない。
やがて話し合いの決裂した両者から、次々とMSが放たれていった。

場所がコロニー跡と言うこともあって、残骸が点々と漂う暗礁宙域が
主な戦場となった。その地形の特性を生かし、時間差でレーダーの
追跡を逃れたミサイルを連続してこちらに命中させてくるドミニオン。
一方こちらはエターナルが整備中で出港できないのに加え、開始早々
クサナギにコロニーのワイヤーが絡まり行動不能となってしまった。
急いでその切断が始まったものの、ナタルさんの統制のとれた指揮が
寄せ集めの僕たちの攻撃を乱し、そこに例の新型3機が思い思いに
襲いかかる。新型3機はとてもナチュラルとは思えない反応速度で
次々と攻撃を仕掛け、応戦するフリーダムとジャスティスを次第に
翻弄していく。そして物理的にも精神的にも全く余裕のない状況の中、
コクピット内に突然警報が鳴り響いた。一体何が起こったのか。
―――目前にドミニオンから放たれた大量のミサイルが迫っていた。

837人為の人・PHASE−44:2004/09/23(木) 11:10
僕は必死の回避を試みたものの、フリーダムに向かって飛んできた
ミサイルの照準は正確で数発が命中した。機体が大きく揺らぎ、
急いで立て直したところに敵の新型が迫る。相次ぐ危機の襲来に
僕は幾度となく繰り返してきた弾ける種のイメージを脳裏に構築し、
無重力の空間を掌握しようと努めた。ここで負けるわけにはいかない。
その意志の根拠にまで考えが回らぬまま、致命傷とはなりえない攻撃を
繰り返して反撃を続ける。切迫感から苛立ちが募り、僕は声を荒げた。
まだ終わらないのか。やがてようやくワイヤーの外れたクサナギが
動き始めると、敵は即座に退却。戦闘は一旦終わりを告げたかに見えた。
しかし戦場からは、ストライクとバスターの反応が消えていた。

消えた2機のMSはおそらくメンデル内部に向かったのだと推測された。
その時、事態は混迷を極めていた。先ほどのドミニオンに加えて
暗礁宙域の外にはエターナルを追ってきたザフト艦も控えており、
うかつな行動はできない。僕は自分がメンデル内部に向かうとラクスに
告げ、彼女はそれを了承した。アスランに外の警戒を任せた僕は、
のしかかる不吉な予感を振り払うようにコロニーへと突入していった。

視界が開け、荒廃した大地が目に飛び込んでくる。生命の存在を何も
感じさせないような冷え切った感覚をコクピットの中で体感しながら、
僕は周囲へと目を凝らした。いる。デュエルと向き合うバスターの姿が
モニターに映った。かつてザフトで同じ隊に所属していた者同士だと言う
ディアッカの言葉を信じ、僕はその場を去る。かつての僕とアスランを
見ているようで一瞬不安がよぎったが、そうならないことを祈りつつ
僕はもう一人の居場所を探した。いた。ムウさんの乗るストライクと、
そのストライクを追い詰める見たこともないザフトらしきMS。
僕はかつてのアラスカのようにその場へ急行し、速度を生かして
敵MS―――ゲイツに斬撃を加えた。行動不能となったゲイツを捨てて、
パイロットが地面に降り立ち走り出す。地表付近はまだ空気と重力が
残っているらしく、その足取りは地球と何ら変わりがない。
それに続いてムウさんがストライクを降り、彼を追い始めた。
思わず銃を手に取ってその後に続く僕を待ちかまえていたのは、
廃棄された地にあってなお負の遺産を保ち続ける巨大な施設だった。

僕はムウさんと二人、物陰に隠れて奥にいる敵の様子をうかがった。
銃のセーフティーを外し、MS同士ではない生身の戦いに緊張が走る。
やがて声とともにムウさんが銃を撃つが外れ、姿は見えないながらも
クルーゼさんは余裕に満ちた態度でこちらに一冊のアルバムを投げた。
その勢いで外に飛び出した写真、そして中に収められていた記録。
間違いなかった。僕たちは来るべくしてこの建物に来たのだ。
クルーゼさんは最初からそれを望み、そして実現させてしまった。
深い因縁に彩られた僕たち3人の真実が、容赦なく明かされる時だった。

838人為の人・PHASE−45:2004/09/24(金) 09:04
まだメンデルが快適な居住区としての立場にあった時代。
15年以上も前、そこではコーディネーターが次々と生み出されていた。
自分の子供が生まれながらに他者より優れていることを望み、大金を
払って思い通りの容姿と能力を子供に身に付けさせようとした親たち。
そして彼らが絶えることなく訪れていた研究施設がここであり、
ここで多くの研究者たちが愚かな見果てぬ夢を見たのだとクルーゼさんは
言った。確かに、見渡せば不思議で不気味な巨大試験管が所狭しと並び、
その中では今なお怪しげな物体がうごめいている様子を確認できた。
さらに彼は続ける。その研究者の中でもリーダー的存在であった男性と
その妻、さらには彼らに資金協力を惜しまなかったある一人の資産家の
話。彼らこそ、今の我々を存在せしめているのだと。彼の雄弁な口から
放たれる数多くの言葉は異常なまでの自信と説得力に満ち、戦闘中にも
関わらず僕とムウさんは彼の言葉に耳を傾け続けた。

「最高のコーディネーター」を作り出すこと。遺伝子技術を研究する人間
にとっての最大の夢とも言えるこの計画に乗り出した研究者がいた。
彼の名はユーレン・ヒビキ。彼は人工子宮の中で、妻ヴィアとの受精卵を
最高の条件の下育成させようとした。そして数多くの「失敗作」を経て、
一人の男の子が生み出される。その時ヴィアのお腹から産まれた女の子と
双子で、たった一つの「成功例」とされたコーディネーター。
名前を「キラ・ヒビキ」と言った。

資産家は自分の跡取りとなるべき実の息子が気に入らなかった。
いや、正確にはその息子の母親を気に入らなかった。そのためメンデルの
ユーレン・ヒビキに話を持ちかけ、自分のクローンを作り出そうとした。
その試みは成功し、全てがうまく行くかに見えた。だがしばらくして
資産家の住む屋敷は火事に見舞われ全焼、彼以下多くの人間が死亡し、
実の息子が数少ない生存者として生き残ることになる。
その資産家の名前は「アル・ダ・フラガ」、そして息子の名前は
「ムウ・ラ・フラガ」。アルのクローンは行方知れずとなった―――。

クルーゼさんは語る。そのクローンは自分自身であると。もちろん
ムウさんは言下に否定するが、それを上回る口調でクルーゼさんは
意見を封殺し、こちらの退路を断ってくる。僕はと言えば、あまりに
信じられない真実の連続に自分の存在意義さえ見失いそうになっていた。
自分が「最高のコーディネーター」?人工子宮で調整され生まれた人間?
いや、人間とさえ呼べるのかも怪しい。僕と双子であることが確定した
カガリとはあまりに異なる出生。彼女が「誕生」なら、僕は「発生」した
とでも言うべき存在だ。頭が奥底から熱くなり、銃を握り締めた手元が
震えだす。周りの風景が歪み、驚きと恐怖に全身から力が抜けていく。
クルーゼさんは得意気に言葉を重ねていった。間もなく最後の扉が開く。
私が開く。そして世界は終わる、この果てしなき憎しみの世界は―――。
また彼は世界で自分こそがただ一人、全人類を裁く権利を持つとも言った。
そこで僕ははっと我に帰った。世界が終わる?憎しみに包まれた世界が
何か強大な「力」に押し潰されていくイメージをその瞬間僕ははっきりと
想像できた。そんなこと、させるものか。自分でも何が起こったのか
分からぬままに体が動き、僕は物陰から飛び出すとクルーゼさんに
襲いかかった。そして―――彼の目を覆っていた仮面が外れた。
それを見た僕、あるいはムウさんの衝撃は計り知れない。なぜならそこに
あった顔は、恐ろしいまでに「あってはならない」ものだったからだ。
僕たちが気を取られた隙にクルーゼさんは素早く逃げ出し、そして静寂が
辺りを包んだ。もうそこには何もなかった。その場に留まる理由を失った
僕たちは、急いでMSのある建物の外へと向かっていった。

コロニーのさらに外では再び激しいMS同士の戦いが始まっていた。
休む間もなく戦線に復帰した僕はムウさんをアークエンジェルに預け、
新型3機との戦闘を開始する。真実を知ったことによる動揺が次第に
重みを増し、双肩にずしりと乗りかかってくるのを僕は感じていた。
それでも、ギリギリの状態ではあったがまだ戦うことはできた。
―――まさか、あの子の声を聞くことになるなんて。

839人為の人・PHASE−46:2004/09/25(土) 11:53
アークエンジェル、クサナギ、エターナルの三隻は連合とザフト両方から
攻撃を受けていた。このままでは次第に距離を詰められ、挟み撃ち状態で
一斉射撃を受けてしまう。ラクスはザフトの戦艦、ヴェサリウスに火線を
集中することでこの突破網を抜けようとしていた。ヴェサリウスは
クルーゼさんの指揮する艦だったが、彼はこの攻撃が成功して
ヴェサリウスが撃沈した後も生きていた。同じくそこにいたアスランや
ディアッカの親友、イザーク・ジュールも無事だったようだ。
その時僕はただひたすらこちらに襲いかかる敵を相手にしていた。心身に
かなりの負荷がかかっていることは分かっていたが、ここで帰艦するわけ
にはいかないという気持ちが辛うじて僕を戦線に留まらせていた。
そんな中、通信がある一つの声を捉えた。

最初は信じられなかった。こんな戦場に、しかもいつ撃墜されるとも
分からない小さなポッドに乗せられて漂っているとは思いもしなかった。
知っている人の名前をほとんど全て挙げて、必死に助けを求める声。
その多くを僕は知っていた。当然、死んだはずの僕の名前はなかった。
間違うはずもない。それは確かにあの子の声だったのだ。
僕はもう、彼女には二度と会うことはないだろうと思っていた。
そう決め付けて、確かにあったはずの心の迷いを断ち切ろうとしたのだ。
アラスカでは無事に脱出できて、今頃はどこか平和な場所にいる―――。
しかし、現実に彼女の声はフリーダムのコクピットに響き渡った。
僕はその声一つに、今まで築き上げてきたものが一瞬崩れ去るのを感じた。
そのわずかな迷いは僕に無謀な行動を起こさせるには充分な衝撃だった。
僕は周りの状況を顧みず、一直線に発信源へと急行していった。
もちろん、何の迎撃も行わずただ直進するだけのフリーダムを敵が見逃す
はずがない。僕は次々に敵の射撃を受けた。ビームが命中するたびに
僕はあの子から引き離され、頑丈を誇るフリーダムの機体にいくつも
傷が入る。だが、それでも僕は諦めなかった。魂を削るようにあの子の
名前を幾度も呼びながら、懐かしい声に向けて手を伸ばす。次の瞬間、
強い衝撃とともにフリーダムの頭部が破壊された。これ以上後を追うことは
命にも関わる危険があることもよく承知していた。それなのに僕は
まだ追いかけようとしていた。フリーダムが動けるのならあの子を、
僕が傷つけた、僕が守ってあげなくちゃならない人を助けないと―――。
けれども無謀な追跡は遂に親友のアスランによって引き止められた。
僕は彼の声すらどこか遠い世界から呼びかけているような気持ちで、
種の弾けた瞳を漆黒の宇宙に向けて何も考えることができなかった。

目が覚めると僕はエターナルのベッドにいた。フリーダムとジャスティスの
専用運用艦として作られたエターナル。最近はそこでずっと生活していた
のだから当然の景色のはずなのに、それはどこかいつもと違って見えた。
視線を上にやると、心配そうにこちらを見つめるラクスの顔があった。
いや、ラクスではなかった。その顔は微笑んでいた。魔性の優しさを
秘めていた。そして僕に覆い被さり、あの子と僕は―――。
心に激痛が走った。昔の記憶は自分の罪悪感を深めるだけだった。
そうする他に道がなかったなどとはとても考えられなかった。僕はあの子と
交わることで救われ、快楽すら覚えていた。事実として互いを傷つけた。
過去は戻らないのか。戻らないから僕はあの子を追い求めようとしたのに。
気がつけば景色は再びエターナルの中、ラクスが僕を見つめていた。

アスランやカガリも見舞いに来てくれたが、ラクスは彼らをそっと表に
出し、慈悲に満ちた優しい声と表情で僕を慰めてくれた。僕はその清さに
癒されながら、一方で後悔の念を抱かないわけにはいかなかった。
泣いていいのですよと彼女は言う。人は泣くことができる生き物だからと。
泣かないようにと張り詰めていた気持ちが途切れ、僕のひどく脆弱な一面が
さらけ出された。また僕は繰り返してしまった。自身で解決するすべを
知らず、自分に優しさを与えてくれる女性にただすがろうとする愚行にも
似た甘え。それが戦争という無慈悲な現実の中で続けられ、根のない草の
ごとく僕はふらふらとさまようことしかできなくなった。これが、こんな
生き物が「最高のコーディネーター」だと言うのだろうか。
安息の場所は見つからない。あの子を抱き、ラクスに癒される僕などには。

840人為の人・作者:2004/09/25(土) 11:54
今日は運命の再会、でした。
次回からはいよいよ最終決戦へ……。

841人為の人・PHASE−47:2004/09/26(日) 11:46
地球軍がニュートロンジャマーキャンセラーを手に入れてしまった。
あの子は「戦争を終わらせるための鍵を持っている」と言っていたけれど、
それが地球軍に核兵器を再び使うことを許すためのものであったとしたら。
僕たちが最悪の結果の回避に向けて動き始めたその時、あの子はドミニオン
の中で何を考えていたのだろうか。かつては行動をともにしていながら、
僕とあの子は手の届かない遠い場所であまりにも一方向な関係だけを
互いに持ち続けていたのだ。それは最後となるべき戦いにあって、
持たないほうがよいはずの「守護」の意識。その結末はじきに明かされる。

地球軍は物量でザフトを圧倒し、プラント防衛要塞の一つボアズへと迫った。
ザフト軍も懸命の抵抗を続けるが、やがてその防衛網をかいくぐった部隊が
彼らに恐るべき破滅の光をもたらすこととなる。
平和を作る者。文字通りピースメーカーと名づけられたメビウスの部隊は、
それぞれに一基ずつ搭載された核弾頭ミサイルを容赦なく発射した。
迎撃も間に合わず、悪夢の弾丸がボアズへと突き刺さる。そして爆発。
かつてユニウス7を解体した核の炎はボアズを無数の残骸へと変えた。
勢いづいた地球軍はさらにその奥の最終防衛拠点ヤキン・ドゥーエ、
そして最深部に位置するプラント群へと侵攻していく。僕たちは彼らの
見境のない行動を止めるためにその後を追う。もうこれ以上の惨禍を
呼び覚ますことはできない。戦争の一刻も早い終結、そして平和への道のり
に希望を見出しながら、僕たちは三隻の戦艦からMSを続々と発進させた。

宇宙に点在する得体の知れない生き物が住む砂時計を破壊すべく、
蒼き清浄なる世界というひどく漠然とした概念を達成させるべく、
核弾頭ミサイルを抱えたメビウスがプラントへ次第に迫る。対するザフトは
ヤキン・ドゥーエのMSを結集させての必死の抵抗。その中にはアスランの
友人でありクルーゼ隊でただ一人ザフトへの忠誠を誓い続けたデュエルの
パイロット、イザーク・ジュールもいた。彼らは生まれ育ったプラントを
死守するため地球軍の大部隊に向かっていった。それでも数に勝る地球軍を
止めることはできず、ピースメーカー隊は核ミサイルを発射。放たれた
一つ一つがプラントを焼き尽くす勢いのもと飛んでいく。もはや彼らに
止めるすべはなく、背後の故郷は失われようとしていた―――。

それはさながら英雄のごとく、現実にありもしない能力者のごとく、
明確な理想に近づこうとしながら最後まで形のないものに拠り続けた
弱い人間の駆るMSによって核ミサイルは撃破される結果となった。
プラントの目前でいくつも無意味な核の炎が宇宙を照らしては消える。
多くの人々が予期しなかった核兵器の末路を僕は踏みしめながら、
ピースメーカー隊の殲滅に向けてミーティア装備のフリーダムで
空間を駆け巡った。もう誰も殺させはしない、その誓いのもとで僕は
核搭載型メビウスに乗るパイロット、そしてそれを発進させる戦艦の
クルーを次々と殺していった。彼らがそんなことをしなければ殺さなかった、
僕は戦争を終わらせるために最小限の犠牲だけを望んでいる、そんな
身勝手な解釈を通用させる力によって核兵器はその数を限りなく
減らしていくこととなった。それは自由という名の驕りだったのか。
ジャスティスを駆るアスランは同じくミーティア装備のもと己の正義を
信じて人の乗る機械を切り裂き貫いていく。だからと言って僕と彼とは
違う、そんな理論は通用しない。やっていることは変わらないのだ。
最後に必要なのはやはり「犠牲」なのだと、今僕はそう思う。

地球軍の核攻撃はザフトの怒りを呼び、かつてない巨大な破壊兵器の使用を
実現させてしまった。その名はジェネシス、核を上回る史上最悪の人造物。
やがてその砲門から、膨大なエネルギーが解き放たれる時が訪れた。

842人為の人・PHASE−48:2004/09/27(月) 07:16
ジェネシスから放出された巨大な光の渦は、その第一射だけで地球軍の
戦力の大半を奪い去った。強力なガンマ線により、核をも上回る
破壊力を見せつけたジェネシス。ミラージュコロイドによって今まで
隠されていたその巨体は、同時にPS装甲を展開することでほぼ無敵と
化していた。僕たちの攻撃目標は核装備のメビウス撃破からジェネシスの
破壊へと次第に移行していく。そしてその激戦の途中、フリーダムや
ジャスティスさえ凌ぐ最強のMSと僕は戦うことになる。そのMSの名は
プロヴィデンス。操縦するのは、全人類に裁きを下すことを望むあの人だ。

ジェネシスの照射によって戦場が混乱したところを見計らい、僕たちは
一旦各々の所属する戦艦へと戻ってきた。初めはジェネシスの威力に
圧倒されていた僕たちも、段々とあれを撃破しなければならないという
使命のようなものへと駆り立てられていく。そしてそんな状況の中で、
ついにカガリがパイロットとして戦場に立つ時がやってきた。彼女の乗る
MS、ストライクルージュの整備が完了したのだ。僕はカガリが何度も
ウズミさんに戦争の危険を説かれていたことを知っている。きっと彼女も
そのことは充分承知しているのだろう。けれど、カガリの性格上安全な所で
いつまでもじっとしていることなどできなかった。彼女はみずから戦場に
出て、行動によって意志を示すナチュラルの少女だった。そして僕は、
その少女と血を分けた兄もしくは弟。僕の性格から推測するに、おそらくは
弟なのだろう。生きることそのものが戦いなんだと言ってのけたカガリを、
僕は心から尊敬したい。そうすることが、僕の生に意味を与えるのだから。

出撃の時が来た。MS格納庫へと歩き始めた僕を、ラクスが引き止める。
今や彼女はエターナルという戦艦を率いる艦長としてではなく、一人の
儚げな少女として僕の前に立っていた。必ず帰ってきて下さいねと、
シンプルな形状をした銀色の指輪を渡すラクス。彼女は僕が死も厭わない
覚悟で戦場へ飛び出し、そのまま二度と帰ってこなくなることを
恐れているのだ。事実僕はそうなってもかまわない、むしろ仕方がないと
さえ考えていた。僕は所詮作られた存在なのであって、人間として生きる
資格などないのではないか。しかしラクスの僕を見る目は心から僕を
心配、いやそれ以上の感情を含んでいるように見えた。彼女が僕のことを
愛しているのは分かっていた。でも、その気持ちに応えられるほど僕は
立派な男だと言えるのだろうか。目を閉じ、僕はそっと彼女の頬に口づけを
する。ラクスが他に望んでいたことがあったかもしれない、そんな思いを
胸の奥に秘めたまま、僕の足は最終決戦へ向けて動き出していた。

三隻の戦艦からMSが出撃する。それは地球軍でもザフト軍でもない、
戦争の少しでも早い終結を願う人々の集団。戦場へと駆ける僕の横には
アスランのジャスティス、そしてカガリのストライクルージュが見えた。
彼らには互いに守るべき者がすぐ傍にいる。僕の守るべき人は今どこに
いるのだろうか。ラクスはエターナルの中、ではあの子は―――。
混沌と破滅をひた走る両軍の中を、僕はただひたすら駆け抜ける。

843人為の人・作者:2004/09/27(月) 07:18
今日がフレイ様の一周忌のようですね。
少し遅れてしまいましたが、最終話まであと少し。

844人為の人・PHASE−49:2004/09/29(水) 19:03
誰も止める術を持たないまま、ジェネシスの第二射は放たれた。
今度の目標は地球軍艦隊ではなく、ヤキン・ドゥーエ宙域に戦力を
送り込み続けていた地球軍月面基地、プトレマイオス・クレーター。
長い年月をかけて築かれた人類の建造物は、一瞬にして崩壊した。
そして次にジェネシスの攻撃目標に設定されていたのは、地球軍の
中でも大西洋連邦首都であったワシントン。もしその膨大なガンマ線が
地球に向けて放たれていたならば、人類にとっての真の滅亡は格段に
近づいていたに違いない。人の住める環境ではなくなった地球と、
その地球に住む人々の恨みからじきに破壊されていただろうプラント。
最悪の結末は間違いなく、限りなく現実のものになろうとしていた。

ミーティアを装備したフリーダム、ジャスティスは戦場を駆け巡った。
もう核を搭載したメビウスはほとんど残っていなかった。しかし、
「少しでも戦争を早く終わらせること」を目的としていた僕たちは
いつしか目的を「人類の滅亡を止めること」にすり替え、そのための
「犠牲」を次々に増やしていった。巨大ビームサーベルは幾度となく
ジン、ゲイツ、ダガーを切り裂き、キャノンから放たれたビームの
奔流は戦艦一隻を簡単に沈めることができた。破壊すべきジェネシスへ
向かう途上にある両軍のMSは全て攻撃対象となった。「愚かな争い」
を続ける彼らは僕たちに協力することなく死すべき運命にあった。
その時僕は僕たちだけに「正義」があるのだと信じて疑わなかった。
カラミティがミーティアの巨大ビームサーベルを避けきれずに両断され、
フォビドゥンもカガリを助けたデュエルの捨て身の攻撃に貫かれて
消え果てる。誰に「正義」があろうと変わりはしない。あるのは延々と
続く殺し合いのみ。目的は違っても、それらの行動には「人類の滅亡」
を速めるか遅くするかの違いしか存在しない。みんな、同じなのだ。

M1アストレイに乗っていたというカガリの友人の少女は3人とも
死んだ。そして、損傷の激しいストライクを何とかアークエンジェルに
近づけていたムウさんも、愛する人を守るため盾となり散った。
彼を消し去ったのは、ナタルさんの指揮していたドミニオンの兵器、
陽電子砲ローエングリン。ドミニオンから脱出艇が放たれ、戦闘意志の
ないものとしてアークエンジェルが接近した矢先の攻撃だったらしい。
ムウさん、ナタルさん、そしておそらくドミニオンに乗っていただろう
ブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエル。どれほど優れた能力を
持っていても、それがMSの操縦技術や、戦艦の指揮管制や、
人民の統率指導における才能であっても、人は死ぬ時はあっさり死ぬ。
そう、どれほど常人よりも優れた能力で守ろうとした人であっても、

―――死は彼女を僕の手の届かない所へと運んでいってしまう。

845人為の人・PHASE−50・1:2004/09/30(木) 14:14
ジェネシスへと向かうラクスの艦隊。その中にミーティアを装備して
同行していたフリーダムのモニターが、1機の見慣れないMSを捉えた。
黒を基調とした、全体に不吉な雰囲気を漂わせたその機体の名は
「プロヴィデンス」、神意を司るもの。ラウ・ル・クルーゼさんの駆る
そのMSに言いようのない不安を覚えた僕は、アスランやカガリたちと
離れアークエンジェルの位置する空域へとフリーダムを走らせた。
今ここに、僕とクルーゼさんとの最初で最後の死闘が始まる。

満身創痍のアークエンジェルとバスターに襲いかかるプロヴィデンス。
その機体の背部に取り付けられた無数の小型ビーム射出ポッド、
ドラグーン・システムが僕のよく知る人々に向けて容赦なく放たれていく。
僕はミーティアをフル稼働させて迫り、巨大ビームサーベルをかざすものの
その小型兵器の縦横無尽に張り巡らされたビームの雨を前にして次々と
武装を破壊されていくこととなってしまう。そしてその雨の中、
クルーゼさんは全てを高みから見下ろした口調で僕に絶望を語りかける。
僕の必死の否定の反論は全て打ち消され、その度に彼の攻撃はますます
鋭さを増し僕へと刃を向ける。僕はあってはならない存在で、もし僕が
「最高のコーディネーター」であると知れば、誰もがそうであることを
望むゆえに僕は許されないのだと彼は言う。力だけが僕の全てじゃないと
いう魂の叫びすら、彼はそんなものなど誰も分からないと切り捨てる。
彼の想像を絶する動きの連続でついにミーティアは行動不能となり、
僕はミーティアを切り離してフリーダム単体での戦闘に切り替えた。
かつてないほどの緊張と死に対する恐怖感が僕を支配し始めていた。
だがここで退くわけにはいかない。ここで敗北すれば、世界はこの人の
望んだとおりの結末へと突き進んでしまう。僕が決意を固めた、その時。
僕のあまりにも優秀すぎた視力は、宇宙に漂う脱出艇、その中にいた
あの子を確実に視界へと招き込んだのだった。

守らなければ。僕が傷つけたあの子を、こんな所でその儚い命の危険に
さらされているあの子を、何としてでも守らなければ。ミーティアを
失って速度の落ちたフリーダムに例えようもないもどかしさを
抱きながら、僕はただひたすら彼女のもとに駆けていく。あと少し、
あと少しで彼女を守ることができる。視界の隅ではクルーゼさんが
ビームライフルをこちらに向けている。速く、早くしないと。ついに
引き金が引かれ、光線が一直線に目標を目指し走り抜けてくる。
あと少し、もうほんのあと少し―――僕は間に合うことができた。
フリーダムの盾に弾かれたビームが威力を失い、空しく拡散する。
脱出艇の中に見ることのできたあの子の笑顔。何の偽りもない、真の
微笑みがそこにあった。僕の顔にも安堵の表情があったのだろう。
でもその行為は無意味だった。クルーゼさんは初めから知っていたのだ。
僕たちがたとえ微笑み合うことができたとしても、それは一瞬の出来事に
すぎないのだと言うことを。そしてその後に必ず悲しみが訪れることも。
後ろに回り込んでいた小型兵器が一つ、あっさりと脱出艇を爆破した。
みるみるうちに表情を変えた僕が見たものは、もう爆炎だけだった。

あの子は僕の目の前で、本当にすぐ手の届いたはずの場所で、
命を落とした。もう触れようとしても、その温かさにすがろうとしても、
永遠にそれは叶わない。洪水のようにとめどなくあふれ出る悲しみが、
僕の心の何かをそのまま押し流していった。それは封印された笑顔の記憶、
受け取ることのできた優しさのかけらとでも言うべきものだったのか。
それらは全て、永遠に、もう決して取り戻すことはできないのだ。
僕はどこか遠い世界の中で彼女を守れなかった自分を責めた。責め続けた。
目の前に広がるぼんやりとした光の中には、ひょっとしたらあの子が
いたのかもしれない。僕には見えなくなってしまったあの子が、それでも
僕を許してくれたというのだろうか。僕のような人間は、それでも
本当のあの子の想いで守られていたというのだろうか。彼女を守ることの
できなかった僕を守る、遺されたあの子の気持ちを心に秘めた僕。
僕の今すべきことは、あの子を死へ追いやった、僕に絶望を見せつけた、
そして全人類に破滅をもたらそうとしている人物を「殺す」こと。
それは紛れもなくラウ・ル・クルーゼ、その人に他ならない。
自由の翼が再び力を取り戻し、倒すべき「敵」へと動き出す。
―――種は弾けた。

846人為の人・PHASE−50・2:2004/09/30(木) 14:17
ジェネシス破壊を目指し進むエターナルを攻撃したMS、プロヴィデンス。
機体が限界を訴える中、僕はフリーダムでその前に立ちはだかった。
―――もう誰にも、あなたの手で悲しい思いになどさせはしない。
僕の最後の怒りの矛先が今までにないほどに鋭く、しかし切なく、
世界を滅ぼすことだけを生きる糧としてきた人に向けられようとしていた。
なぜそんなことを。問いかけられた彼の心には夢も希望も、平和を願う
人々の想いも届かないのか。彼は人の業の罪深さを延々と説き、滅ぶべき
「理由」をそこに作り出そうとする。違う、人はそんなものじゃない。
決死の思いで希望を捨てずにいる僕の心をあざ笑うかのように、
彼は僕の言葉をまた否定する。憎しみの目と心、そして引き金を引く指しか
持たぬ者たちの世界で、何を信じ、なぜ信じるのかと。クルーゼさんは
それしか知らない、だからそんなことを言えるのだ。僕はなおも反論する。
それでも、彼の暗黒の思考回路は人の愚かさを如実に示してみせた。
―――知らぬさ。所詮人は己の知ることしか知らぬ。
もう僕は何の言葉も返すことができなかった。そうだ、その通りなのだと
考える他に道はなかった。己の知ることしか知らぬ者同士が互いを認めず、
互いを理解せず、互いを愛せずに凶行へと走り、結果訪れた破滅の危機。
暗い嘆きに満たされた彼の仮面の奥をわずかでものぞき見た僕は、その
どうしようもない感情に彼自身のもどかしさを重ね合わせることさえできた。
この世でただ一人全人類に裁きを下すことができると豪語する、それが彼、
人ならぬ存在。クローン。生まれながらにして短命を余儀なくされた運命。
結局は僕もそんな彼を生み出した罪深い世界に生きる人々の業、その一部に
過ぎないのだ。最高のコーディネーター。全てを調整され完成した一作品。
偽りに覆われ、長く真実を知ることのなかった僕の、本当の存在意義は
何なのだろうか。いつかは分かってもらえる、いつかは信じてもらえる、
いつかはつらい時が終わる。そうやってただ思い続けるという甘い毒こそが
僕を苦しめ、戦場でない場所でさえも僕を戦わせ続けてきた。自分の行動で
傷つき、自分の思いで悩み、自分の境遇に涙する、それが僕の人生だった。

いつしか僕たちの背後では、ジェネシスが最後の時を刻み始めていた。
ヤキン・ドゥーエの自爆と連動して設定されていた、ジェネシスの第三射。
地球へと向けられた想像を絶する砲火が放たれようとする中で、僕たちは
まだ戦っていた。すでに僕はプロヴィデンスの持つドラグーン・システムの
ほとんどを撃破していたが、同様にフリーダムも片足と盾を失っていた。
それでもクルーゼさんは語り続ける。地は焼かれ、涙と悲鳴は新たなる
争いの狼煙となるだろうと。彼は既にジェネシスが照射された後のことを
頭に描いていた。だが、それは早かったのだ。僕はアスランとカガリの
存在を忘れてはいなかった。そんなこと、絶対に起こりはしない。
彼らがいる限り、多くの人の想いがある限り。そして僕も、守りたい世界を
持つ者の一人として、あなたを倒してみせる―――。
両腕を切り落とされたプロヴィデンスを、ビームサーベルを一心に抱えた
隻腕のフリーダムが一直線に貫いた。小爆発を起こし動きを止める
プロヴィデンスに続き、ジェネシスの膨大なエネルギーが僕へと迫る。
それを大きく回避した後、ジャスティスの核爆発でジェネシスは崩壊した。
ラウ・ル・クルーゼ。彼は死に際に何を思っただろうか。もし彼が
微笑んでいたのだとしたら、僕は誰にも勝ってはいないことになるのだろう。
理想を追い求めたはずの僕が結局彼を殺したという事実は変わらないのだ。

パトリック・ザラは死に、地球とプラントの間に停戦協定が結ばれた。
そして死んでいった人々の想いを乗せたかのような幻想的な宇宙を、
フリーダムから投げ出された僕は静かに漂っていた。死の恐怖はもうなく、
ただ目の前の宇宙の神秘的な情景に僕は感動すら覚えていた。
―――僕たちはどうして、こんなところに来てしまったんだろう。
バイザーの前でゆらゆらと揺れるラクスの指輪が輝き、こちらへと
向かってくるストライクルージュの姿を僕は見てとることができた。
涙と微笑みと喜びと、何もかもが入り混じった表情のアスランとカガリが
僕を迎えてくれる。僕も涙にあふれ、しばらく宇宙という名の海に
その身を委ねることにした。目を閉じれば浮かんでくる、たくさんの顔。
―――僕たちの世界は、ここにある。

847人為の人・エピローグ:2004/09/30(木) 14:21
僕はペンを机の上に置き、両手を広げて大きな伸びをした。
終わりだ。これでようやく「戦争」は終わったんだ。そう考えようとする
自分とは裏腹に、こんなことをしても何にもならないという諦めの気持ちが
ふつふつと湧き上がってくるのを僕は感じていた。こんな「自伝もどき」を
書いたところで、失われたものは何も戻らないなどと言われればそれまでだ。
―――自分の行為が何の役に立った?どれだけの大切なものが失われた?
でも僕はどこか満足感を感じずにはいられなかった。それはもしかすると、
今こうして僕が生きている環境に由来するのかもしれない。かつて僕を
助けてくれたマルキオ導師のもとに、ラクスと生活する僕。ここは確かに
平和だけれど、どこか大事なものを失くしてしまったような静けさがある。
その中で自分の系譜とでも言うべきものを書き上げたことは、僕にとって
何か特別な意味を残してくれるのではないかと思えるものだった。

あえて紙には記さなかった名前が一つある。彼女は僕の手からこぼれ落ちた
存在だから、僕の手で記される必要はない。彼女は僕の中で生き続ける。
そしてそれがある限り、僕はラクスの気持ちに応えることはできないのだ。
僕は彼女を愛してもいなかった。いや、愛情を超えた想いで結ばれていた。
それが何なのかを理解するすべは僕にはない。だからこそ、分からないまま
そっとしておいてほしい。それでいいだろう?―――フレイ。

―――世界がこれ以上戦争に巻き込まれないことを祈りながら、
偽らざる人、「人為の人」は生きる。

848人為の人・作者:2004/09/30(木) 14:32
以上で「人為の人」全話終了です。
キラの思いとは裏腹に戦争がまた始まる―――そのまさに直前に
過去の出来事を思い出して筆記していく、という形式をとってみました。
先日最終話を見たせいか、PHASE−50はえらく描写が細かくなっているような……
ともかく最後まで読んでくださった皆様、どうもありがとうございました。

849私の想いが名無しを守るわ:2004/10/01(金) 20:48
連載終了おめでとうございます。
放送終了してから種を見返す機会が無かったので、50話全体の流れを思い出すことが出来て非常にありがたかったです。
2ヶ月にわたる長期連載は大変だったと思いますが、多分このスレ最後になるだろう作品にふさわしい出来だったと思います。本当にお疲れ様でした。

850人為の人・作者:2004/10/02(土) 11:43
>>849
丁寧なレスありがとうございます。
どうも自分が小説を書いた所はやたら閉鎖されていくというジンクスみたいな
ものがあるので心配だったのですが、ともかく最終話まで続けられたことには
ほっとしています。2ヶ月……長いようでいて短かったです。
内容はあくまで自己流の解釈ですが、読んだ人が何かそれなりのものを
感じることができたらいいなと思っています。

851私の想いが名無しを守るわ:2004/10/05(火) 00:20
連載お疲れさまです。
最終回の色々な問題が綺麗に片づけられていて良かったです。
断片的にしか映らないキラの心情もうまくつなげられててなるほどと思いました。

852前作でラクスが死んでフレイが生きてたらスレの4:2005/08/29(月) 00:22:34
お借りします
http://anime.2ch.net/test/read.cgi/shar/1124899669/からの出張です


第09話「驕れる牙」

<ユニウス7落下により、プラント連合の間には不信感が増した。そしてついに連合はプラントに対して宣戦布告。核を発射するも、ジュール隊の奮戦によってプラントは守られたのだった>

アスランは正装に身を包みながら、脇に映っていたテレビを見た
デュランダル議長が会見をしているのが見える
「済みません、ちょっと顔を洗ってきます」
案内の背広の男に断りを入れると、洗面所に足を運んだ
わずか数時間。アスランがここに来るまでのそのわずかな間に情勢は怒涛の展開を見せた
連合によるユニウス7落下の犯人達の公表、デュランダルによる説明と災害支援、連合の宣戦布告、そして……オーブの連合との同盟締結
何故だ!?とまでは言わない。どのみち避けられない事態であっただろう。しかしあまりにも早すぎた
蛇口を捻り、勢いよく放出されていた水を止めると、アスランは鏡に映った自分に自問した
「また戦う場所を失った……」
舌打ちを打つと、アスランは身を翻した。自分の顔を見ていたくなかった


「ええ、大丈夫。ちゃんと解ってますわ。時間はあとどれくらい?」
「ん?」
公式の場にはやけに似つかわしくない、若い女性の声が聞こえたから、アスランは思わず視線を合わせてしまった
「ならもう一回確認できますわね……ぁ…ぁ…あぁ…!?」
「ハロハロ、Are you O.K.?」
「ラ……クス…?」
初めは幻でも見てるのかと自分を疑った。しかし、走りよって手を握ってきたラクスの温もりは本物だった
舞台衣装を着たラクスは、感極まったようにアスランの顔を覗いてまくしたてた
「あぁ…アスラン!うれしい!やっと帰って来て下さいましたのね」
「ぁ…ぇぇ?…ぁ…」
帰った?どこに?ここはプラントで、自分はアレックス……
動転するアスランに、ラクスは畳み掛けるように話続けた
「ずっと待ってたのよ、あたし。貴方が来てくれるのを!!」
「どうして……ラクスは……死んだ筈じゃ……」
そう、死んだ筈だ。アスランは、ジェネシスに向かって散っていったエターナルも、そのエターナルの中で歌っていたラクスの声も聞いていた。忘れようも無い
「死んだ?ふふっ、おかしなアスラン。私はここにおりますのに。貴方の目の前に」
「………」
「ずっと……お待ちしてましたわ。貴方のお帰りを」
俺は帰ってきてなどいない…そう言いかけたアスランより先に、ラクスの付き添いらしい男がラクスを咎めた
「ラクス様」
「ああ、はい解りました。ではまた。でも良かったわ。ほんとに嬉しい。アスラン」
「Hey,hey,hey! Ready go!!」
「まぁ!ハロも喜んでいるのね」
ピョンピョンと跳ねるハロに語りかけるラクスの仕草は、アスランには懐かしいものであった
しかし、アスランはあのような色のハロを作った記憶もなければ、ハロの言語にそのような言語登録をした覚えは無かった
「君は本当に……」
ラクスなのか?という問いは、低い男の声に遮られた
「おや、アレックス君?ああ君とは面会の約束があったね。いや、たいぶお待たせしてしまったようで申し訳ない」
「デュランダル議長……」
カツカツとなる足音が、アスランの前で止まる
「ん?どうしたね?」
「あ…いえ…ぁぁ…」
訊ねながら、デュランダルは返答を許さない空気を持っていた
アスランはまるで父を相手にしたときのような錯覚を感じた。これが政治家というものなのだろうか
「いえ、なんでもありません…」
「そうかね?……あぁ、ラクス、仕事が終わったらまた行政府においで?私とアレックス君の話も終わっている頃だろうから」
「まぁ!はい!わかりましたわ。キングさん、早く行きましょう!私、お仕事頑張りますわ!」
「っ!!?」
戸惑いと、少しの畏怖を含んだ目で、アスランはデュランダルを見つめた
デュランダルは張り付いたような微笑と崩さず、アスランを逆にその黒い瞳で覗き込み、飲み込むようであった

853前作でラクスが死んでフレイが生きてたらスレの4:2005/08/29(月) 00:26:51
第10話「父の呪縛」


大人たちは皆、俯き、気力を失っていた
ただ、子供たちはフレイ達が作るスープの匂いにワクワクし、声を上げながら並んでいた
「……どうしたの?早くいきなさい、後ろ並んでいるんだから」
「もっと注いでよぉ」
「……アンタね、欲張らないの。沢山食べたかったらおかわりすればいいでしょ?」
「やだ。無くなっちゃうもん」
きかん坊な顔をした男の子は、口をへの字に曲げて、フレイに対抗している
「……」
フレイは黙って、お玉で男の子のお椀からスープの具を取り返した
「ああ゛ーーー!!お肉ーーー」
「……冗談よ。ホラ、これでいいでしょ?大盛り」
「……人参ばっかりだよーぼく食べれない!!」
「 リ ク エ ス ト 通 り 大 盛 り で し ょ ? 」
「……はい」
はぁ…とフレイは溜息をつくと、次の子のお椀を受け取った
しかし、流れていたラジオの緊急速報を聞き思わずそのお椀を落してしまった
『大西洋連邦をはじめとする地球連合各国はプラントに対し、宣戦を布告し、戦闘開始から約1時間後、ミサイルによる核攻撃を行いました。
 しかし防衛にあたったザフト軍はデュランダル最高評議会議長指揮の下、最終防衛ラインで此を撃破。現在地球軍は月基地へと撤退し攻撃は停止していますが、
 情勢は未だ緊迫した空気を孕んでいます』
「……どうしたの?」
子供たちは変わりなく、ご飯を求めている
大人たちは沈黙を守ったまま、動こうともせずにいる
ボランティアの仲間たちだけが、この速報にたいして反応を見せた
「核だってよ……」
「信じられない…」
「開戦?」
「ぶっそうなもんバカスカ撃ちやがって……これならニュートロンジャマーで核使えない方がマシだったな」
「それは……でも、そうかもね」
「馬鹿言わないでよ。アレが撃ち込まれて、エネルギー不足で何億人が死んだと思ってるのよ」
フレイは胸を締めつけられるようだった
生きているのが辛かった。こうしてボランティアで各地をめぐるたび、そう思った
ニュートロンジャマーキャンセラーを運んだのは自分なのだと思うたび、アークエンジェルにいたことすら、自分が戦争を長引かせたような気すらして
「キラ……」
昨日、もっと話せばよかった。泣きついて、甘えればよかった……本当は近くに居たいと言ってしまえば良かった
そうすれば、キラは受け入れてくれただろう。言葉じゃなくて、暖かいその両手で私を抱きしめてくれただろう
「でも……許せないもの」
落したお椀を拾って、別のお椀に変えて、女の子にスープを注いであげた
フレイは俯かないことにした

854前作でラクスが死んでフレイが生きてたらスレの4:2005/08/29(月) 00:34:47



同じニュースを、アスランも聞いていた
デュランダル議長と共に
「そんな…まさか…!」
「と言いたいところだがね、私も。だが事実は事実だ」
テレビのニュースキャスターはこの異常な事態を繰り返し、繰り返し報じていた
プラントのテレビだからであろう、キャスターは噴気に耐えれぬ声で、読み上げている
「君もかけたまえ、アレックス君。ひとまずは終わったことだ。落ち着いて」
そういうと、デュランダルはスッとその手をソファに向けて、アスランを促した
この男の、こういった間こそ、若くしてプラント最高評議会議長に上り詰めさせた天性の才能であった
「…んッ…」
「しかし…想定していなかったわけではないが、やはりショックなものだよ。こうまで強引に開戦されいきなり核まで撃たれるとはね」
自分は想定すらしていなかった……アスランは自分の甘さに歯噛みをした
「隠しきれるものではない。プラントには事実を全面的に公表している。当然、市民の感情は……」
「 しかし…それでも、どうか議長!怒りと憎しみだけでただ討ち合ってしまったら駄目なんです!
 これで討ち合ってしまったら世界はまたあんな何も得るもののない戦うばかりのものになってしまう…。どうか…それだけは!」
悲痛な、それは芝居がかったと言っていいくらいの顔をしてみせたデュランダルに、アスランは懇願する
「そうだな。この状況で開戦するということ自体、常軌を逸しているが……我々がこれに報復で応じれば、世界はまた泥沼の戦場となりかねない。
 解っているさ。無論私だってそんなことにはしたくない。だが市民は皆怒りに燃えて叫んでいる。許せない、と」
デュランダルは薄暗い応接室の窓を開いた。窓からはプラント市内を一望出来る
この行政府の下に集まる市民のデモも
「私が只一人のギルバート=デュランダルならば、あそこに混じりたい気分だがね
 既に再び我々は撃たれてしまったんだぞ、核を。ここからでも彼らが何を言っているか充分に聞こえるよ、私には
 「報復を!」 「守る為よ、戦うわ!」 「犠牲が出てからでは遅いんだぞ!」 「もう話し合える余地などない!」
 ………どうかな?君も聞こえるだろう?アレックス君」
振り向いたデュランダルの視線に耐え切れず、アスランは声を荒げ、否定した
「俺は…俺はアスラン・ザラです!」
テーブルに置いていたサングラスを拳で叩き割りながら、アスランは叫ぶ
「二年前、どうしようもないまでに戦争を拡大させ、愚かとしか言いようのない憎悪を世界中に撒き散らした、あのパトリックの息子です!
 父の言葉が正しいと信じ、戦場を駈け、敵の命を奪い、友と殺し合い、間違いと気付いても何一つ止められず、全てを失って…なのに父の言葉がまたこんなッ!」
「ではアスラン、その血塗られた手で私を殺し、あの民衆に迎えられるといい。そしてザフトの兵を率い、弔いの戦いの先頭をゆくがいい」
感情を込めない声で、デュランダルはアスランを見下ろし、そして自分は代弁者であるかのようにアスランを促して見せる
「違う!絶対に繰り返してはいけないんだ!あんな…!」
アスランはこれでもかと、きかない子供みたいに首を振った

855前作でラクスが死んでフレイが生きてたらスレの4:2005/08/29(月) 00:37:27
「アスラン…ユニウス7の犯人達のことは聞いている。シンの方からね。
 君もまた……辛い目に遭ってしまったな」
デュランダルはゆっくりとしゃがむと、サングラスの破片が突き刺さって、血を流すアスランの手をとって父親のような優しさで包み込んだ
「いえ違います。俺はむしろ知って良かった。でなければ俺はまた、何も知らないまま…」
「いや、そうじゃない、アスラン。君が彼等のことを気に病む必要はない。君が父親であるザラ議長のことをどうしても否定的に考えてしまうのは、
 仕方のないことなのかもしれないが。だが、ザラ議長とてはじめからああいう方だったわけではないだろう?」
「いえそれは…」
否定しようとして、出来なかった。アスランの知ってるパドリックは……あの頃の、父も母もいたザラの家族は……優しかった。大好きだった
それをずっと否定したかった。忘れようとしていた。その自分に、アスランは……気づいた
「彼は確かに少しやり方を間違えてしまったかもしれないが、だがそれもみな、元はといえばプラントを、我々を守り、より良い世界を創ろうとしてのことだろう
 想いがあっても結果として間違ってしまう人は沢山居る。またその発せられた言葉がそれを聞く人にそのまま届くともかぎらない。受け取る側もまた自分なりに勝手に受け取るものだからね」
「議長…」
「ユニウス7の犯人達は行き場のない自分達の想いを正当化するためにザラ議長の言葉を利用しただけだ」
断言したようにデュランダルは言った。それは矛盾を孕んでいた言葉だったが、アスランに気づくだけの余裕は無かった
「だから君までそんなものに振り回されてしまってはいけない。彼等は彼等。ザラ議長はザラ議長。そして君は君だ。
 例え誰の息子であったとしても、そんなことを負い目に思ってはいけない。君自身にそんなものは何もないんだ」
「議長…」
「今こうして、再び起きかねない戦火を止めたいと、ここに来てくれたのが君だ。ならばそれだけでいい。一人で背負い込むのはやめなさい」
アスランが幼い頃、彼の父がしてくれたように、デュランダルは肩に置いた、
「ぁぁ…」
「だが、嬉しいことだよ、アスラン。 こうして君が来てくれた、というのがね
 一人一人のそういう気持ちが必ずや世界を救う。夢想家と思われるかもしれないが私はそう信じているよ」
それは我が子の成長を喜ぶような言い方であったと、アスランは記憶している

856前作でラクスが死んでフレイが生きてたらスレの4:2005/08/29(月) 00:39:45



アスランはデュランダルについていきながら、二年ぶりのザフトの軍事基地内を歩いた
「……」
「どうかしましたの?」
隣を歩くラクス=クラインが話しかける
「何でもない、ミーア」
君には隠しきれるものではないだろうと、デュランダルはこの少女の正体を明かしたが、実を言えば、それほど彼女と深い関わりは無かったとアスランは思った
この少女はラクス=クラインの身代わり。笑ってくれてかまわないとデュランダルは言った。小賢しくプラントに強い影響力をもつ彼女の虚像を使うことを
そして、君の力も必要としているのと言われた時、心が躍ったことを、必要とされたことを、
だが、この前をいく男の背中を、そこまで信用していいのだろうかとも、アスランは思う
「ここだ」
厳重にロックされ、警備されたドアが、デュランダルによって開かれる
おそらく、ザフトの基地が変わっていなければここはMS格納庫であった筈だと、アスランは思い、足を踏み入れた
「ぁぁ…これは…」
「まぁ…」
アスランとミーアは息を呑んだ
冷たい、無機質な格納庫の中で、主を待つ鉄の剣が仁王立ちしていた
「ZGMF-X23Sセイバーだ。性能は異なるが例のカオス、ガイア、アビスとほぼ同時期に開発された機体だよ。この機体を君に託したい、と言ったら君はどうするね?」
切れ長の、自信に溢れた目が、アスランに注がれた。自分に無い、この目にアスランは弱い
「…どういうことですか?また私にザフトに戻れと」
怪訝そうな顔をアスランは向けてみせた
そうでもしなければ、自分はこの状況を何も疑わずに受け入れてしまいそうだったからだ
「ん…。そういうことではないな。ただ言葉の通りだよ。君に託したい。
 まあ手続き上の立場ではそういうことになるのかもしれないが。私の想いは、先ほど私のラクス・クラインが言っていた通りだ。だが様々な人間、組織、そんなものの思惑が複雑に絡み合う中では、願う通りに事を運ぶのも容易ではない。
 だから想いを同じくする人には共に立ってもらいたいのだ。出来ることなら戦争は避けたい。だが、銃も取らずに一方的に滅ぼされるわけにもいかない。
 そんな時のために君にも力のある存在でいてほしいのだよ。私は。ミーアにはその立会い人になって欲しくてね」
「議長…」
「先の戦争を体験し、父上の事で悩み苦しんだ君なら、どんな状況になっても道を誤ることはないと信じてる。我等が誤った道を行こうとしたら君もそれを正してくれ。その為の力だ
 ……急な話だから、直ぐに心を決めてくれとは言わんよ。今日はミーアと一緒に食事でもして、休んでくれたまえ。そして考えてくれ、君に出来ること。君が望むこと」
デュランダルは灰の鉄の巨人に手を触れると、アスランに言った
「それは君自身が一番よく知っているはずだ」

857私の想いが名無しを守るわ:2005/08/29(月) 01:08:34
>>852-856

フレイはキラに依存しない様にしてるみたいだね
その辺りが「成長したんだな」って感じで良い
最初の二人の関係が依存から始まったし

それと、アスランは無意識の内に両親って存在を求めてるのかなと
新シャアスレのカリダとのやり取りや
今回の議長とのやり取りにふっとそう思った
今はいない父親の姿を議長に求めて、認められたい…ってね
その辺り、シンとも似てるのかもしれないが

858私の想いが名無しを守るわ:2005/09/03(土) 22:47:40
乙です。

ラクスが死んでいたらというIFのせいで、
ミーアと会ったときのアスランの動揺ぶりが切実そうでなるほどなぁと。
そうすると議長がやってること(ラクスという偶像が必要)の正当性って強くなりますしね。

まぁそれはそうとフレイのこれからの役割がどうなるか期待。

859私の想いが名無しを守るわ:2005/09/24(土) 10:16:22
フレイ・・・

860私の想いが名無しを守るわ:2005/10/23(日) 14:59:23
他キャラが死んでいたらな過程での話自体が、どうかとオモ。

861私の想いが名無しを守るわ:2005/12/26(月) 22:08:43
人いな杉
過去ログ見て結構良いSSとかあったりしたのになぁ

862私の想いが名無しを守るわ:2006/09/23(土) 03:11:20
フレイ厨って痛杉

863 ◆eOdxQcpQdk:2009/04/24(金) 20:50:11
tesuto

864バーバリー バッグ:2012/11/06(火) 21:08:11
こんにちは、またブログ覗かせていただきました。また、遊びに来ま〜す。よろしくお願いします
バーバリー バッグ http://burberry.suppa.jp/

865もしフレイが生きていたら:2015/03/22(日) 21:28:25
18歳にしてオーブ軍准将となったキラヤマト、彼はプラント代表ラクス・クライン
と公認パートナーがいながら2人の関係はプラトニックだった。
彼には16歳の時から囲い人のような関係にあるナチュラルの恋人がいた。
故大西洋連邦事務次官ジョージアルスター令嬢フレイアルスター。

866もしフレイが生きていたら:2015/03/22(日) 21:30:54
というssが書きたいのですが自信がありません。

867私の想いが名無しを守るわ:2015/08/22(土) 02:58:21
読みたいです。ぜひ^-^


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板